2003年7月分


2003-07-31.

『あなたの愚かさに私の心は痛みます』

 『グロテスク』読了。メインとなる語り手の他にも何人かの作中人物による手記や手紙などが載せられ、重層的に物語は紡がれていくが、それらが相互に食い違って不安定な状況をつくり出している。メインの語り手さえどれだけ本当のことを言っているのか疑わしく、落ち着かない心地で読み進めていくこととなった。あらゆる人物の過去と現在のギャップが激しいあたりも気まずい心境を覚える。一本だけ足の長さが違う椅子に腰掛けてしまったかのような座りの悪さ。

 “悪意”を熟成させて塗り固め武装することで脆い自分を隠し、偽りを偽りとも思わず頑なに生き延びた語り手。怪物的な美貌を持ちながら純朴さも明晰さも狡猾さも悪辣さも伴わなかったがためにただ堕ちて死んだ妹。徹底的に鈍くズレた方向にばかり努力して空転し暴走し腐爛し行き着くところに行き着いたOL。様々な材料が転がっていながら最後の最後までイメージを明確なものとさせない男。邪悪はどこにも存在しないのに暗黒が至るところにポッカリと穴を開いていて、その向こうにグロテクスな様相が広がっている。一度覗き込めんだら目が離せない。無惨で悲痛でおぞましく愉快でシャープにして何よりもグロテスク。面白かった。Q女子高時代が特に面白く、ここ一本に的を絞ってほしくもあったほど。


2003-07-30.

 『てのひらを、たいように』感想文。長かったけど面白かったデス、ハイ。プレー開始から3ヶ月もかかっただけに総合して見るのが難しいくらい。

 桐野夏生の『グロテスク』を読み中。面白い。まだ第二章、語り手が女子高生だった頃のことを回想しているあたりですが、目がぐいぐいページに惹きつけられます。タイトルの「グロテスク」が何を指すのかまだハッキリはしませんが、語り手の性格というか感性、思考形態もなかなかに奇怪で興味深い。頑なで冷淡といった印象、しかしそれ以上に粘つく微温液めいた不快さを読み手に与える。たとえばエスカレーター式名門女子校の高等部で、初等部や中等部から上がってきた「内部生」と受験で入ってきた「外部生」を指して綴った次の件。

 和恵もそうでしたが、外部から来て内部生を真似して装う生徒には余裕というものがありませんでした。内部生が発散する富の淫らさが決定的に欠いていたのです。富というのは、常に過剰を生むものです。だからこそ自由で淫らなのです。それは、だらだらと内部から自然にこぼれ溢れるものなのです。その淫らさは、たとえ外見が平凡でも、その生徒を特別な存在に仕立て上げることができるのです。豊かな生徒は、皆淫らで享楽的な表情をしていました。わたしはQ女子高で富の本質を学んだのだと思います。

 淡々と連ねられていく語り手の言葉は決して読んでいて気持ちの良くなるものではなく、むしろ微かな、微か過ぎてよく分からず苛つくほどの薄気味悪さが漂っている。読者に不快感を与え、「本を閉じたい」と思わせながらも興味を惹きつけてやまない奇怪な魅力。まざまざと内側を晒した無惨な死体を前にして湧く「目を逸らしたい」「じっくり見つめたい」という二つの相反する衝動、それを思わせるテイストが行と行の狭い間からひっそりと立ち昇ってくる。

 西尾維新の作品をこよなく愛し、『アトラク=ナクア』で比良坂初音に感情移入し、灰崎抗の大雑把な狂気と惨劇に魅せられる当方はやはり「グロテスク分」を必要としている身体なのではないかと思われる文月終わりも間近の夜。そう言いつつ『マイナス』は1巻目で挫折して以来、2度と読む気が起こらないというヘタレっぷりですが。あれは不思議なくらい拒否反応が出たマンガでした。「他人に嫌われたくない」の一心でグロテスクな言動に走る主人公をひとつの残酷対象として咀嚼することができず、ひたすら苦痛ばかり覚えました。……どうやら、「強かなグロテスク」は好物でも「敗北的グロテスク」はダメポみたいです。


2003-07-29.

「そっか、二人きりか……」
「そう二人きりだよ」
「……襲うなよ」
「なんで、あたしがにいちゃんのことを襲わなきゃいけないのよ」

 『てのひらを、たいように』、ようやくコンプリートしました。長かった……感想文は後日アップします。

 ひらたいをやり尽くして疲れてしまったので今日はこれだけ。手抜き気味。


2003-07-28.

 『本格小説』読了。とても楽しかった。感想文はここに掲載

 予告していた『てのひらを、たいように』のSSをアップしました。「まとりのSAT」。一話目のみ。大小含め設定がかなり変わっていますゆえ、純粋に『ひらたい』が好きでオフザケが嫌いな方はスルーしてくだされ。書いている当方自身、バカバカしさのあまり何度も放棄しようとしたほどアレな内容ですんで、読む人も読む人で軽くサッと読み流してください。で、続きとなる二話目は来週にでも載せる予定です。とりあえずしょっぱなから連載に挫折というのは防ぎたいところ。


2003-07-27.

 水村美苗の『本格小説』は下巻に入りました。貪るように読み進めています。

 それはそれとして『浄火の紋章』、プレーしました。あらかじめ「そんなに量はない」とアナウンスされていましたが、確かに短かったです。一行一行舐めるように読み耽りましたが、それでも時間は1時間も掛からなかったです。内容については……一言で言い表せと強要されたら「面白い」の他に回答はなく、これだけで済ませてもイイ気がするんですけどもうちょっとだけ言い足します。実際に映像で見せるのならともかく静止画CGと文章だけでガン=カタを表現するのは難しいんじゃないか、などとプレー前は心配していましたがあっさり杞憂に終わりました。「確率統計学」云々といった例のもっともらしい薀蓄を更に掘り下げつつ、簡潔な描写を積み重ねて見事にガン=カタ・アクションを再現し、盛り上げています。ただ単純に面白かったです。筋に関しては、なにぶん短いコトもあってアレコレ書く余地もないですが、『リベリオン』の世界観を引っ張りながらもオリジナルの要素を組み込み、「なんとなく『リベリオン』の設定をパクっただけの話」とせずにちゃんとアナザー・ストーリーとして機能させています。二次創作としてのレヴェルはかなり高い、と言って差し支えないかと。ひたすらベタ誉めしてしまいましたが、やはりネックは分量。同人作品、手掛けたのはプロ、期間が短かった、安価という点を差し引いてなお、客観的には割高であると思われます。しかし、虚淵テキストが好きな方、中央東口の野郎CGがたまらない方、『リベリオン』を観てガン=カタに狂うほど恋焦がれてしまった方には「話が短い? だから何?」と軽く流せるくらいに極上の逸品でしょう。お茶やお菓子さえ必要としない面白さデス。あ、またベタ誉めしてしまった。まあ、当方があれこれ騒がなくても、薦められて然るべき人は薦められるまでもなく購入に走るであろうから「迷わず買うがよろし」「なくても買え」「買い過ぎ注意」などといったことはわざわざ言いません。この調子で各方面からガン=カタの種が芽吹くのを心待ちにするとします。

 『てのひらを、たいように』、略して『ひらたい』。結構気に入ってしまったのでSSも書き進めてみたりしてるんですが、50KB越えてまだ完成しません。ネタ自体は至ってオバカなんですが、日数喰いまくってどんどん膨れ上がっていってしまいました。割と序盤をプレーしていた頃から書き出しているのに、未だ目途が立たない有り様。「連載形式にすると挫折しそう」と弱音をほざいていた当方ですが、もう思い切って分載します。だいたい3回くらいになりそうです。1回目は明日あたりアップするとします。


2003-07-26.

 変な夢見ました。

 高校生の頃に戻り、ちんたら道草を食いながら帰宅の途についていたところ、商店街の方が何やら騒がしい様子となっている。
 野次馬精神を働かせ現場を見に行くと……そこでは白昼堂々、激しく銃刃を交えるジェイソンとクリスチャン・ベールの姿が。もちろんベールはクラリック・スタイル。
 無言で斧を振り回すジェイソン。
 ベールは中腰で左へ右へと紙一重の動作で数閃を巧みに避けた後、くるくると無意味なくらい身体を回転させながらジェイソンの周りをぐるっと360°回り、身体がジェイソンの方を向きたび手にした銃を発砲。
 ジェイソンの全身にポツポツと小さな穴が穿たれまくる。もちろん本人は少しも気にせずヌンチャクを振り回す。あれ? 得物変わってる?
 ヌンチャクを左手に持った銃の底で弾きつつ右手の銃をジェイソンの顔に向けてガンガン撃つベール。しかしホッケーマスクはカキンカキンと銃弾を弾き飛ばす。
 そこでベールは銃を持ち替え、例の銃底から「シャキン」と出てくる突起でホッケーマスクを叩く。叩く。叩いて叩いて叩いて更に叩く。まだ叩く。『太鼓の達人』みたいにひたすら叩く。ガシュンガシュンッと硬質な金属音とともに火花が散る。
 ジェイソンは怯む気配もなく腕を振りかぶり、ベールの胴体を薙ぎ払う。ヌンチャクは既に忘却の彼方。
 ベールはアレクサンダー・ガーレンに投げられたジャック・ハンマーの如くまっすぐ水平に飛んでいく。遠ざかりながらもジェイソンへの銃撃はやめない。
 あわや商店街の立ち看にぶち当たる、という寸前ですぐ横に張られていた縄を掴んで腕の力だけで跳躍。瓦葺の屋根に着地してポーズを取った後弾倉を交換し、今度は両足で跳躍。電柱のてっぺんに着いたところで下方のジェイソンをパカパカ撃つ。
 ジェイソンは勢い込んで電柱に向かっていくものの登れない。為す術もなく上からベールに弾を貰いまくる。悔しそうに電柱を揺らすがベールは余裕でバランスを取って射撃を続ける。
 呆然と事態を見守っていた当方の横に、突然ひとつの影が近寄ってきた。
 咄嗟に振り向くと、そこにはクラスメートの佐藤君が。痩身で当方より背が高くイケメンかつサッカーが得意だった彼とは特に会話した覚えはない。
 彼は思い詰めた表情で電動チェーンソーを持っている。心なしか手が震えている。
 「俺、これをジェイソンに渡さなきゃ……」 濃い死相を浮かべながら呟く彼を、「こいつは止めとかないとヤバイ」と察した当方は必死に服の袖を引っ張って制止をかけようとするが、果たせず。佐藤君はまっすぐジェイソンへ向かって行く。
 佐藤君がジェイソンの肩を叩き、首を巡らせたジェイソンにチェーンソーを示す。
 ごく自然な動作で受け取ったジェイソンの姿は、どこか普通のオッサンみたいで密かに幻滅する。
 と、そうこうするうちに佐藤君の身体が真っ二つに斬られた。それも縦。「だからやめろって言ったのに」と呟く当方。
 かくしてチェーンソーを手に入れたジェイソンは水を得た魚となって電柱を切り落としにかかる。
 頂上のベールは少しも焦りを見せない。実を言うとこのあたりでは既にベールじゃなくて胡散臭い中年男に代わっているのだがあえて無視。
 ぶった斬られた電柱は、電線を引っ張りながら傾いでいく。奇妙にゆっくりした速度で逆さまに落下するベール。
 チェーンソーを足元に捨てたジェイソンがタイミングを見計らって右ストレートを放つ。
 ベールも逆さまの状態で銃を伸ばす。
 両者の腕が交錯し──
 ドンッ
 巨大な衝撃音を発する。
 首をのけぞらせるジェイソン。
 無様な格好で吹っ飛ぶベール。
 勝敗が不明なまま、朝が来た。

 だいたいこんなところ。そんなに楽しみにしていたのか、自分。

 「『姉しょ』がないから『おねきゅー』買う気がしない? よく分からん理屈だが、なら『姉しょ』も買えばいいじゃないか」という友人の説得にほだされ、帰りしな『姉、ちゃんとしようよ!』『お姉ちゃんの3乗』を購入。あ、もちろん『浄火の紋章』も。しかし、今読んでいる水村美苗の『本格小説』が面白くて中断できず、どれも手がついていない状況。とりあえず短めらしい『浄火の紋章』から始めてみようと思っています。

 あ、そういえば『マルドゥック・スクランブル』の3巻を買うの忘れてた。これでようやく完結だから、「揃えて一気に読もう」と楽しみにしていたのに……。


2003-07-25.

「『おれがおまえで おまえがおれで』ってあるだろ、いや別に『どっちがどっち』でもいいんだけどさ」
「なんだ、今更。なに、撲殺天使の話?」
「違う違う、そうじゃない。俺はな、とにかくあれを幼稚園児って組み合わせでやりたいんだよ!」
「は?」
「幼稚園児(中身は姉)に甘やかされ! 幼稚園児(中身は姉)の言うことに逆らえず全面降伏し! 幼稚園児(中身は姉)を肩車しながら『そういや、ねーちゃん昔はよくおんぶしてくれたなぁ』と発言し! その一方で姉(中身は幼稚園児)を甘やかし! 姉(中身は幼稚園児)に言うこと聞かせて躾し! 姉(中身は幼稚園児)におんぶとかだっことかを強要されて往生する! そんなシチュエーションがお望みだ」
「……はぁ」
「あ、ちなみにこの場合、幼稚園児はショタな」
「俺が耳鼻科に行くかお前が精神科に行くか二つに一つだな」

 脳病院へまゐります、こんばんは。気がつけば『お姉ちゃんの3乗』、『ドキドキお姉さん』とタイトルに「姉」の冠されたゲームが2本も発売される日がやってきました。で、「どっちに行く気なん」「愚問だ」「ま、まさか両方?」などといった遣り取りは別になく、ひとまずは様子見です。ヘタレかつチキンな態度。というか、『姉、ちゃんとしようよ!』もなんとなく買い逃しているせいか姉ゲーにいまひとつ興味が湧かんのです。おねきゅーは体験版の評判が微妙っぽいですし。むしろ新規にアナウンスされたドラマCD『秋桜の空に外伝 〜秋桜の海に〜』の方がより注目されている気配。

 あと姉は関係ないんだけれど、個人的に注目している『Maple Colors』も突っ込む意欲を掻き立てず。んー、おねきゅーにしろこれにしろ、初回版にはこだわらないので来月まで待ちの姿勢を取り、おとなしく積みゲーを崩すとします。『てのひらを、たいように』もまだ残っているし、『ヴェドゴニア』に至っては開封すら済ませていないし……。

 『ヴェドゴニア』で思い出しましたが、『浄火の紋章』の先行委託も今日でしたっけ。From dusk till dawnによるとリベリオンの続編が出る可能性とてなきにしもあらずといった状況なので、一層熱い気分になりそうです。ああ、それと一ヶ月以上も晒しっ放しになっていた「けものがれ、俺らのネロと」は『浄火の紋章』発売を記念して次回更新でいい加減そろそろTOPから外すとします。やっと引っ込めるいいタイミングが見つかって安堵。

「いや、やっぱり『ある朝起きたら20歳過ぎた姉が魔法少女に!』というシチュも捨てがたい……従来とは逆に変身すればするほど幼くなっていくという寸法で、最終的には胎児……」
「もういい。病院に行こう な!」


2003-07-24.

 『てのひらを、たいように』、たいよう編をプレー中。話の謎が既にだいぶ分かってしまっているだけに、やっててちょっとダルいところはあるけど、ヒロインズにそこはかとなく魅力があるのでプレーしていて楽しい。主人公のイメージがてのひら編のときに受けた印象と異なるが、さして問題というほどのことでもなく。

 気がつけばもう一ヶ月もSSを更新していないという現実。ぱらぱら書き続けてはいるんですが、どうにもうまくまとまらないんですよね……短くサクッと終わるはずの話が、こねてるうちにどんどん大きくなってしまったりして。結果、中途半端なところまで書いて放置。いっそ連載形式にするという手もありますが、当方の性格からして見切り発車で始めたらまず間違いなく挫折するので却下。

 更新していないと言えばリンクのコーナーも。割とクローズドなサイトになっています。というわけで思いついたように上座蔵を追加。TYPE-MOONの第4回キャラクター人気投票で美麗な秋葉支援CGが「上座」の名で投稿され、「この上座ってのはいったい誰だ」とばかりに情報漁りが始まったものの「見覚えあるようなないような……いや、わからんわ」と網に引っ掛かるものはなく、「世の中にはまだまだスゴい人たちが潜んでいるのだ」という結論になっていない結論で納得せざるをえなかったことがあったのです。当方は氏のCGサイトが開設されたと知ったとき狂喜乱舞、変な笑いが止まらなかった次第。「月姫」関連の絵が多く、その一方で何やら企画が進行しているみたいです。まったり事態を観察しています。

 リンクコーナーなんて別に無理して更新する必要もないと思いますが、気に入っているサイトは今後どんどん張っていこうかと。

 あとはアバウトのコーナーも未整理状態ですね。これはもう放っときますか。


2003-07-23.

 『てのひらを、たいように』、やっとてのひら編終了。このゲームって実は判定が結構厳しい? 共通部分が多いせいで二周目以降はほとんどスキップかけっ放しになるけど、どのヒロインも派手な特徴づけをされていないながらも魅力があり、日常シーンでの遣り取りがとても微笑ましかったデス。シナリオ後半のサスペンスフルな展開も良し。主人公の性格にやや難を感じないでもないが、「ともだち」がテーマのストーリーとしては程好く楽しく、適度に盛り上がる良作かと。すぐにたいよう編に入ります。

 小川雅史の『悪1013』を購入。このマンガ家、知名度はどのくらいなのかよく知らないけど、さりげなく好んでいます。主に絵ですが。『速攻生徒会』にしろ『風林火嶄』にしろこの新刊にしろ、人にはちょっと薦めがたいところがある。基本的に勢い任せだし、「話をまとめる」という概念自体が元からないっぽい。ひたすら展開するだけ。ただ、妙なところに当方のツボ要素を仕込んでくる──たとえば『風林火嶄』の3巻はファイスタばっかりだとか──ので、なんとなく新刊が出るたび買ってしまいます。


2003-07-22.

 はあ、デモベのPS2移植決定が発表されましたね。いろいろ追加要素があってウハウハかもしれませんが、「明日できることを昨日するな」というハイライン由来のタイム・パラドキシカルな座右の銘を持つ当方としては別に悔むところなどありません。問題は「存在自体が18禁」なティベリウスのティベり具合がソフトになっちゃうな、とか、チラリと先っぽが見えてた暴君のCGが明らかに変更だろうな、とか、九郎やマステリを「大砲野郎」と呼んでも通じなくなるだろうな、とか、そんなところですかな。

 で、肝心なのは「たぶんフルボイス化する」ってことと「追加シナリオあるかも」ってことですね。しかし、フルボイスのデモベなんてコンプまで何十時間かかるんだろうか……。追加シナリオは「あるならエルザだろうな」「OHPで『男とロボのCGの増殖が着々と進んでいるようです』ってんだから西博士に決まってるだろ」「ルルイエ異本が望みだ!」等など言われていますが、何を言ってますか? 追加シナリオが必要なキャラと言ったらダンセイニに決まってるじゃありませんか。終盤に入るとほとんど存在を忘却されるんですよ? あんまりって奴ですよ。もしくは「あらまあ……それは君、あらまあって奴だぜ」。ラストバトルだろうが、ダンセイニさえ出てくりゃ邪神も運命も触手が叩き潰す!ってなノリです。渇かず飢えずてけり狂え。

 んー、とりあえずもっと情報が出揃うまで態度は保留ということに。


2003-07-21.

 割とスゴイらしい、と聞き及びつつもなんとなく手をつけないでいた伊達将範の『DADDYFACE』を、特に理由らしい理由もなく買って読了。感想を一言で表現すると「うへえ」。年齢差9歳の娘が出てくるアクションもの、という設定は一見どうってことなさそうで、じっくり考えればスゴすぎ。平気で「宇宙ヤバイ」の改変ネタがつくれる。ストーリーもストーリーで好き放題やってるし。中学生が機関銃やらミサイルやら戦闘機やら最新鋭の兵器を操る一方で初期ドラゴンボール並みの強さを誇る古武術が炸裂し、秘密組織は人員の数にモノを言わせて暴れまくり、超能力者や人外やオーパーツまで出てくる。ムチャクチャかつザッパな設定はある意味で非常にライトノベルらしいと言えるが、らし過ぎてライトノベル度が200%とか300%とか突破していて、もうここまで来ると既にライトノベルじゃないだろって気もする。濃縮して還元しないジュースみたいなものだ。「果汁500%」とか謳っていたらそれはもはやジュースではあるまい。粗いというより荒々しい出来で、とにかく勢い任せだけど、これはこれで好きなノリだ。ひとまず既刊を買い揃えてしまうとしよう。

 時折思い出したようにちまちまプレーしていた『てのひらを、たいように』、てのひら編をようやく一周した。始めたのが確か五月だったから二ヶ月くらいかかったことになる。掛かった時間は累計して13時間ほどだが、終わりの3時間ほどを除くと、「早く先が読みたい」という思いに駆られる場面は少なかった。終盤で一気に畳み掛けてきた感じ。まだ謎とかもいっぱい残っているので、プレーは続けるつもりだけど……なんとか早めにケリをつけることができればいいなぁ。

 友人に借りた矢作俊彦原作の『鉄人』というマンガを読む。微かにずんぐりした体型の鉄人萌え。ボーイ・ミーツ・ガールも好きだがボーイ・ミーツ・マシーンも好きだ。このウブな少年も長じればやがてドクター・ウェストのように……と考えたらロマンが音を立てて崩れ去っていくけれど。つか、きっとあやつにも巨大ロボットを前にして目を輝かせ頬を紅潮させて「うわあ……!」と言葉にならない喜びを噛み締める純真な年頃があったはずなのじゃよ。思いもよらず暴走させてしまって「止まれよう、止まってくれよう」と半泣きでコンソール・パネルをぱしぱし叩いたり、エラーで動かなくなった巨大ロボに「絶対に直すから! 絶対、また動けるようにするから!」と叫びかけて必死に修理したり、人工知能を搭載された巨大ロボがウェストを助けるために「ダメだ! 行くなぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!」という制止を振り切ってミサイルに自らぶつかって盾となり爆散したとか、そういった過去があったはずなのじゃよ。……ごめん、ちょっと無理があるな。


2003-07-20.

 おとねちんに手ひどく詰られたい人々が、おとねちんの暴虐に晒されたい人々が、おとねちんに半笑いで蹂躙されたい人々が、列を成して行進していく。規則的な足音を響かせ、砂塵を蹴散らして。一糸乱れぬ動きの中で個々の精神は磨耗し、集団は群体となり軍隊となって一つの意志に集約される。

 これが、即ち超絶マゾヒスト集団・OT-ONEだ。

 現代に甦ったバビロンの空中庭園──浮動産と化した家を目指し、一個の生物となり果てた集団(当方含む)は現実と虚構の淡いを踏み越え突き進む。

「おとねちん、怖いよ! なにか来るよ! 大勢でおとねちんに殺されに来るよ!」 ガクガクブルブル

 というわけで『家飛』のWeb小説第2弾「ピコピコとふごごごとカシャカシャとがしゃん」を読みました。前回チョイ役で登場し、幼馴染み撲滅委員会すら逆殺しかねない「仁義なき幼馴染み」として空想的被虐嗜好を持つ人々(主に当方)の胸をときめかせた小鉄おとねのストーリー。おとねちんは大暴れというほどでないにしろ中暴れくらいに炸裂してイマス。欲を言えばもっと兇悪なおとねが、もっともっと兇悪なおとねが見たかった。主人公の心をおはぎに混入可能なほど半殺しにして欲しかった。

 ところで確か、横溝正史の『三つ首塔』に音禰(おとね)というヒロインが出てたな。金田一耕助はほとんど脇役だった。

 「飛ぶ」繋がりで……佐藤友哉のWEB小説、「鏡姉妹の飛ぶ教室」がいよいよ連載開始。始まったばかりなだけにまだよく分からないけど、とりあえず今後を期待。


2003-07-19.

 BaseSonの新作『屍姫と羊と嗤う月』の体験版をプレーしました。ゴテゴテした「いかにも伝奇」というタイトルに発表当初からさりげなく期待してましたが、いざやってみると……。

 やってみると……。

 ………

 あー、すみませんが、もしイスカリオテの連中に会ったら荒縄を貸してくれるように頼んでください。その間に枝っぷりの良い木を探しておきますので。

 シナリオライターは青山拓也。今は亡きPL+USから『蒼刻ノ夜想曲』という伝奇ゲーでデビューしただけに、そっち方面では地味に名を知られている存在のよう。以降は『想い出の彼方』『ONE2』とおとなしめの学園モノが続いたから、「青山=伝奇」という図式はそれほど広まってもいないみたいですが。

 幼い頃に両親が離婚して父親に引き取られたものの父親との関係はよくなくてちょっとヤサグレている主人公が、なんだかんだで怪事に巻き込まれる……大まかなストーリーはこんなん。割と序盤(体験版では終盤)でヒロインのひとり、黛叶子と付き合う展開もあり、体験版ながらカップルのイチャつきを「ほ〜ら、ほ〜ら」とばかりに見せ付けられる仕様となっております。茶目っ気溢れる強気少女にいぢり回されるシチュがそこはかとなく美味。

 テキストに関しては「眠気が吹っ飛ぶほど面白い」とかいった派手な特色はないもののぼちぼち安定していて、「序盤はダルい」が通例となっている学園モノに耐性がある人なら退屈せずに読めるくらいの代物。友人との遣り取りなども、ゲラゲラ笑ってしまうようなネタは仕込まれちゃいないが、クリック連打に走ってしまわん程度には楽しげデス。ウィンドウ形式なのにセリフも地の文もごた混ぜにして表示してしまうのは最初ちょっと戸惑ったが、進めているうちに慣れマシタ。

 イオとかエラとかいった人外っぽい連中が怪しげな言動をしたり、「メザマレクの石」という小道具が出てきたりと、伝奇的な要素もちらほら点在してますが、体験版ではあくまで「ほのめかし」程度。何が何なのかはよく分からないまま「続きは本編で」となる。聞いた話では『蒼刻ノ夜想曲』の設定が引き継がれているらしいのですが、詳細は知りません。

 面白いかどうか、で訊かれれば「面白い」です、はい。「ムカつく」と「おもろい」の中間にある後輩の花など、微妙な部分もなくはありませんでしたが、全体を通せばなかなか楽しかったと言えます。累計して4時間くらいかかりましたから、分量も結構あります。何より、ラストのサスペンスたっぷりな展開が……。

 展開が……。

 ………

 銀貨はいらん、荒縄を寄越せ!


2003-07-18.

 たまたま特売で買ったティッシュが「エルザ」でした、こんばんは。というかティッシュの銘柄っていちいち意識したことがあんまりないっス。

 ( ´Д`)/  先生! 『てのひらを、たいように』がまだ終わりません! 面白いからいいんだけどね。でもこれ、始めてから何ヶ月経ったんだろう……。

 テキスト更新。『ベル・カント』の紹介兼感想文です。時間をかけて──だいたい半月ちょっとだったと思いますが、とにかく通常より長く読み続けたせいで愛着の湧く一冊となりました。楽しかったなぁ。

(追加更新) うっかり忘れていましたが、直木賞の発表がありました。石田衣良の『4TEEN』と村山由佳の『星々の舟』、2冊同時受賞。「真保裕一がいくんじゃないか」などと発言してましたが、ふたりとも好きな作家なので素直に喜んでおくとします。石田衣良は「池袋ウエストゲートパーク」シリーズよりも単発長編の『うつくしき子ども』が印象的。村山由佳は受賞作の『星々の舟』が時間を忘れるほど面白かった。ところでついさっきまで自分が「村山由佳」を「村上由佳」と間違えていることに気づきました。「冲方丁」を「沖方丁」と間違えていた並みにショック。


2003-07-17.

 「トリビアの泉」を見ながらおもしろ替歌用のネタを作成。これです(歌詞)。ちなみに楽譜はこちらのサイトの「替え歌データ」を使用しました。ついでに昔書いたネタの分もあげておきます歌詞)。同サイトの「142◆HG/wMdOqOさんの電波ソングデータ」を使用。


2003-07-15.

 ちょっと微妙視していたTerraLunarの『家飛』、Web小説の「三和土とクンタマと私と猫と涙と男と女」を読み。強く惹かれる要素はないものの、なかなかノリ良さげ。少なくとも当方の好みには合うテンポです。お騒がせ年下キャラのみちるにヘタレな主人公ではなく、仁義なき幼馴染みのおとねがツッコミを入れる構図は割とツボ。主人公がヘタレだと相対的かつ自動的にヒロインたちの魅力が増すので当方的にはOK。もうちょっと検討を重ねるつもりですが、「余裕があったらイッてみてもええかなぁ」ってくらいに心が揺れてきとります。

 小川一水の『第六大陸1』読了。「月に基地を建てる……素晴らしいじゃないか」 サハラ砂漠、南極、ヒマラヤ、海底──ありとあらゆる難所での工事を成功させてきた後鳥羽総合建設。新たに受注した計画は、前代未聞だった。月面開発。予算は1500億円、工期は10年。月という過酷な環境に、男たちは己の技術を信じて立ち向かう……。民間企業が月に「あるもの」を建設する、ちょっとプロジェクトXのノリが入ったSF長編。表紙は『プラネテス』の幸村誠が描いてます。全2巻構想で、8月刊行予定の2巻で完結とのこと。なんとなくSFには苦手意識のある当方ですが、これは楽しくすらすらと読めました。あざとすぎない程度にキャラクターが立っている一方で、物語そのものにも魅力が感じられます。個人的にはNASAが絡み始めるあたりでかなりの盛り上がりが。

 だが、人類すべてが祝福してくれたわけではなかった。
 彼らがいた。人類初の実用ロケットを産んだ男を祖に持ち、人を空の上に送り、十二種の足跡を月に刻み、八つの惑星すべてと冥王星の素顔を撮影し、直径百億キロの太陽系が自分たちの庭だと豪語する、この星でもっとも優秀で野心的な集団が。
 アメリカ航空宇宙局。
 NASAは、負けていなかった。

 素直に次巻を期待。


2003-07-14.

 ところでちょっと遅めの話題ですが、第129回直木賞の候補作が発表されています。選考委員会は17日だそうです。時代物に関してはアンテナが低いせいで、宇江佐真理の作品は知りませんでした。6作中当方が読んでいるのは『星々の舟』だけ。この面子なら真保裕一が行きそうかな……特に根拠はありませんけど。

 それにしても伊坂幸太郎が入っているのには驚いた。や、だってデビュー作が「予言者である案山子が殺された! なぜ自らの死を予知できなかったのか?」ってストーリーなんですよ。『オーデュボンの祈り』。「ヒャー いい設定した僕好みのかっこいいバカミス! タイトルも決まっちゃって…」ってなもんです。二作目の『ラッシュライフ』以降評判が上向きになってきた作家なので、注目していることは注目しているんですが。


2003-07-13.

 なんとなく思い立ってコンテンツに「日記ログ」を追加。7月分だけ。加えてテキストも久々に更新。『捕虜収容所の死』の紹介兼感想文を追加。見た目といい内容といい地味な作品ですが、割と面白いのでオススメです。

 甲斐透の『双霊刀あやかし奇譚1』読了。「手にした者は必ず変死を遂げる」という無銘の脇差には、ふたりの霊が憑いていた──刀匠の吉光と、禰宜の兵衛介。押し入ってきた強盗に襲われ、助けを求めてその脇差を手にした安曇早苗。彼女は霊の力に操られるがまま、鯉口を切った。鞘を払うや袈裟懸けに一刀。頭の中で声がする──「どいつもこいつもぶっ殺せぇ!!」。調子に乗って強盗諸共一家惨殺に走りかけ、すんでのところで踏みとどまった。曰くありげな脇差に恐怖を感じつつ、宿ったふたりの霊に並々ならぬ関心を示す早苗だったが……。大正が舞台の時代伝奇。少女小説はあまり読んでませんが、この甲斐透という人は結構好きです。表紙に惹かれて購入した『金色の明日』が地味ながらも良作で、続けて漁った『月の光はいつも静かに』も良い出来だったため、この作品も迷わず購入しました。最初の一文、一ページから惹き込まれたというのだから、我ながら大した惚れっぷりです。ただ、この本は連作集なんですが、どれも時代伝奇としてはありきたりなストーリーと言えなくもありません。文章とイラストに魅力を感じなければ、「平凡」とか「地味」といった一言で終わってしまう可能性もあり。機会があったら試しに「序」だけでもパラパラと読んでみてください。ほんの6ページですが、そこで「面白そう」と思ったらたぶんイケるでしょう。気になる2巻の刊行予定は不明。しかし9月には『金色の明日』の続編が出るらしいのでそっちに期待しております。

 なんだかこのままだと読書ネタばっかになりそうだなぁ、と思いつつファミ通文庫の『月姫 アンソロジーノベル2』を読んでいる現在。琥珀エンド後日談の「天へと至る梯子」がイイ感じです。


2003-07-11.

 パセリを食べたくらいで一瞬変な目して視線を逸らせるのはやめてください、と昼食時のことを引きずりつつこんばんは。

 結構前にダウンロードしていたものの、すっかり存在を忘却していたフリーウェア、「1999ChristmasEve」をプレーしています。「かまいたちの夜」に触発されたとのことですが、共通点は「冬の夜の怪事」を描いているところ、雪道を彷徨する展開があるところの二点くらいで、ストーリー自体はまったくのオリジナル。展開にうねりがあって飽きさせず、ぐいぐい惹き込まれてしました。全六話構成なので割と長いです。まだベスト・エンディングに辿り着いてません。ストーリーは基本的に一本道ですが、チョコチョコと細かい分岐があり、自分がいま本筋を行っているのか脇に逸れているかがなかなか判断しにくい。おかげで一層サスペンスフルに盛り上がりマス。ホラー系のノベル・ゲームが好きな人にはオススメ。まあ、今更ってくらい有名みたいんですが。流行に疎すぎる自分を省みることなくプッシュ。

 上記のゲームと併行して『てのひらを、たいように』も進めています。ホラー・ムードに疲れたところでこっちに移って回復、しばらく後またホラー世界へ……といった塩梅。順当に穂波さんに骨抜きにされていっとります。「控えめなのは日本人の心」。ところで乾が喋ったり喋らなかったりするのはどういった仕様ですか? いきなりあいつの声聞かされたときは「クララが立った!」っつうくらい驚きましたよ。

 いとうのいぢの絵が好きな当方としては無論のこと『こもれびに揺れる魂のこえ』が気になっとりますが、試しにプレーしていた体験版の感触があまり良くなかったせいで迷い中。どういうシナリオなのか伝わってこず、「雰囲気ゲー」なのだとしてもうまく雰囲気に浸れるかどうか微妙。おとなしくシャナでも読みながら動向を窺います。


2003-07-09.

 ハルヒに引き続き谷川流の『学校を出よう!』読了。細々した点を含め、設定に関してはこっちの方が好みかな。キャラの掛け合いに関してはキョンとハルヒの方が愉快だと思うけど。問題はストーリー。中盤がやたらとダルく、眠気を催した。そして唐突な真相究明。「起承転結」の「転」が欠落し、代わりに「承」が長いせいで「起承承結」とヘンテコな構成になってしまっている。「結」自体は悪くないんだから、間に「転」を挟むよう力を注いでもっと自然に真相を引き出してほしかったデス。段階の踏み方が甘く、説得力が乏しい。「欠点はないものの微妙」というハルヒに対し、「長所はあるものの粗い」といった印象でした。どちらも作品としては手放しに絶賛できないが、「谷川流」という作家については今後が楽しみです。どう成長して、どう成長しないか。

 新刊は『終わりのクロニクル1(下)』、『灼眼のシャナV』、『シャープ・エッジ2』、『悪魔の闇鍋』の4冊を購入。ひとつ混ざっている異分子は灰崎抗の新作。「狂気」で「太郎」な人、と書けば一部には通じるかも。『想師』の続編みたいです。「無数にある真実の中で都合の良い真実を見る」という異能を扱ったサイコダイバーっぽい伝奇バイオレンスで、個人的に結構気に入っています。そこはかとなく悪趣味なとことか。

 ネタがないせいか本の話題ばっかりに。そんな日もあるさ……というよりそんな日ばっかりな罠。


2003-07-08.

 「ベルギーワッフル」を「ベェウギィワッホー」と楽しげに発音する同僚に対してどうリアクションすればいいのか分からなかった月曜日。というか半ば感染しかかってます。「ベェウギィワッホー」。この言葉の響きは一度聞いたら耳にこびり付いて離れなくなるほどアレです。

 サラ・ウォーターズの『半身』、それと谷川流の『涼宮ハルヒの憂鬱』を読み終えました。『半身』は19世紀後半、ヴィクトリア朝のロンドン、テムズ河を前にしてそびえるミルバンク監獄を舞台にした小説。花びらのような形をした一望監視型の監獄に、「慰問」と称して足を運ぶ貴婦人マーガレット。彼女は陰鬱な石の牢獄の中、独房で菫の花を手に祈る女囚を目にする。ここに花なんて咲いているはずないのに……。「詐欺と暴行」が容疑の霊媒師シライナ・ドーズに、マーガレットは惹かれていく。「花」を象った迷宮に咲く妖花。物語は日記を介して進行し、次第に混乱した様相を見せ始める。特殊であった「監獄」がだんだん日常の中に溶け込んでいくことで監獄そのものの閉塞感は薄れていくが、代わりに世界全体が監獄化していくように感じられるため、結局読んでいる間は閉塞感を覚えっぱなしとなります。昏い情念が開花するまでの過程がなんとも息苦しく、爽快感とは無縁。重厚と言えば重厚。かったるいと言えばかったるい。まあ、どちらにしろ結構面白かったです。

 『涼宮ハルヒの憂鬱』はもう再版が出回っているくらい売れている、スニーカー大賞受賞作。スニーカー大賞は学園小説大賞含め「アタリ」が少ないと評判の(?)ライトノベル系新人賞であり、久々の大賞とはいえあまり期待できなかったが。えー、ストーリーは、涼宮ハルヒという「ありきたり」に飽き飽きした奇矯な女子生徒が、「早く乱れろよ、平和……!」とばかりに怪事・珍事を渉猟する、といったところ。こうやって詳しいことを省いて書くとあんまり面白くなさそうだが、実際どうかというと、微妙。プロットというか、大まかな設定やシチュエーションは面白いのだけど、小道具──細部の設定が実につまらない。キャラクターも魅力的か否か、断言しにくいとこがある。『ネガティヴハッピー・チェーンソーエッヂ』をよりライトノベルっぽくしたような、『成恵の世界』を裏返したような、なんとも言えないムードの作品。でも、割と肌に合うノリなので個人的には好きかも。


2003-07-06.

 西尾維新の『ヒトクイマジカル』購入。そして読了。んー、そこそこ面白かったデス。事件発生までがひじょーに長いけど、むしろそのダラけっぷりが楽しいというか。今回、シリーズとしての盛り上がりはともかく、一個の作品としての面白さにはいささか不満が残るかな。いまひとつテーマが収斂せず、バラけてるよーな感じがします。それと“戯言”シリーズは後半で一気に加速がかかるのが楽しみだというのに、今回はスピードが足らず、勢いが中途半端になってしまったというあたりも残念。……まあ、何を書こうと自分がこのシリーズを好んでいる事実は変わらんのだけど。にしても「パブリックエネミーナンバーワン」とか、相変わらずネタに節操がないね。実にのびのびと書いているのが分かり、微笑ましいデス。

 『てのひらを、たいように』。ちまちまとプレーしています。最初らへんはかったるかったが、「ともだち」を取り戻していくうちにじわじわと盛り上がってきた。Clearのゲームは『Moonlight』以来だけど、相変わらず地味に面白いなぁ。とろけるように絶妙なおーじ絵とも相乗して、まったりした心地良さが味わえるという寸法。なんとなく伝奇要素が絡みげな気がしないでもないが、とりあえず進めてみます。


2003-07-04.

 物凄く紹介したいところがあったものの、時限式で消えてしまったため断念。無意味に思わせぶりな書き出しでこんばんは。

 代わりと言ってはなんですがこっちの方を紹介。『セイレムの魔女たち』のデモムービー。「第二弾」の方です。18禁。それと心臓の弱い方は回避してください。そうでない方はどうぞくつろいで御鑑賞あれ。

 追加更新。佐藤友哉の『フリッカー式』が表紙変更のうえ重版されるそうな。個人的にユヤタソは『フリッカー式』だけ好きで、後はそうでもない(『灰色のダイエットコカコーラ』と『サグラダ・ファミリア』はちょっと読みたいが)という作家なだけに喜んでいいのか複雑な心境。まあ、とりあえずweb連載の「鏡姉妹の飛ぶ教室」に期待したりしなかったり。


2003-07-03.

 ところでいつだったか、アクセス解析のデータ見てたらbeaker氏のサイトのgoogleキャッシュから飛んできた方がおられたのですよ。「検索ワードはなんだろう、『デモンベイン』『SS』とかそのへんかな」と思いつつ調べたら。

「執事」「九郎」「指」

 なんですか、このやけに意味深なワードは。特に「指」。この場合は執事の指なのか、九郎の指なのか、そのどちらでもないのか。当方の場合はこの三つを並べられるとついついあらぬ妄想を湧かせてしまいそうになります。

「無理しなくたってイインだぜ、執事さン」
 九郎の指が絡みつく。ウィンフィールドの体温が上がった。
「ふっ、く……!」
 呻くような吐息が漏れる。
(このままではダメです、わたしは仮にも執事……大十字様に負けてはいられません)
 覚悟を決め、恐る恐る、たどたどしい指つきで必死に絡ませようとするウィンフィールド。けれど、九郎は悪戯な笑みを浮かべてひょいひょい軽やかに逃げ回る。
「甘いな。ダメだぜ、そんな攻め方じゃ。攻めるってのはな……こういうのを言うンだよ!」
「はっ、うあ!」
 思わず悲鳴にも似た声を挙げ、慌てて退こうとするウィンフィールドを九郎がガッツリと押さえ込んだ。
「あ……!」
「ほらほら、数えちゃうぜ。いーち」
「うう……!」
 懸命にもがき、なんとか逃げようとするウィンフィールドの様子を見て、九郎が鼻でせせら笑った。
「おいおい、もっと本気出して見たらどうだい。にーい」
「ぃぁ……!」
 ぐっ、と力を込めて跳ねのけようとするが、九郎の押さえ所はあまりに絶妙で、どんなに頑張ってもウィンフィールドは動けなかった。
 逆らえない。
 抗えない。
 ただ為されるがまま。
 そんな、これでは……
「……てしまう」
「さーん。はい、カウント終了。俺の勝ちだな」
 満足げな笑みを浮かべ、九郎が指を離した。次いで、握り締め合っていた拳をほどく。一分足らずの熱戦を繰り広げた手と手は、短いながらも濃厚な試合によってすっかり汗ばんでいた。
「しかしアレだな。執事さンって、あンがい弱いんだね……指相撲。やったことないのかい?」
「ええ……どうも、指を動かすのは勝手が違っいますね。拳のようにはうまくいきません」
 そう言うと、ウィンフィールドは僅かに頬を赤くして、恥らうような微笑みを唇に浮かべた……。

 うわ。恐ろしく貧弱な妄想でした。というかなぜ小池一夫調が混ざってるンだ。

 自分でも気になってぐぐってみましたが、時代ネタっぽいのばっかり引っ掛かり何が何やら。あのとき検索した人は何を求めていたのか……そもそもこの三つの検索ワードはデモベ目的なのかどうか。


2003-07-02.

 なにげなく、積んでいた坂入慎一の『シャープ・エッジ』を崩した。第9回電撃ゲーム小説大賞[選考委員奨励賞]受賞作。4月に出た分で、今月2巻が出る。その2巻が「買い」かどうか判断するため、ぼりぼりと卵黄ボーロを食べながら読み出したのだが……やばい、全然期待ゼロだったのにやたらと面白ぇ。卵黄ボーロを掴む指が震えます。それにしても、うまいのかまずいのかハッキリしない味だ、卵黄ボーロ。真っ先に変換されたのが「乱王ボーロ」というのもなんだかなぁ。

 話を戻して『シャープ・エッジ』、同月発売の『シルフィ・ナイト』と微妙にタイトルがかぶって(『シ』と『・』、字数)いて判別が付き難かったことと、表紙がパッと見で地味だったことから読む前はちっとも気分が盛り上がらなかった。「どうせ宇宙のどっかを舞台に美形エイリアンとねーちゃんがくんずほぐれつな話なんだろーなー」とか思いつつ卵黄ボーロを貪っていたけど、そもそもSFじゃなかった。暗黒街を舞台にしたアクションもの。大事な人を殺された暗殺者(少女)が復讐するってのが大まかな筋。ある意味『レオン』の続きみたいなノリ。ファミリーとの抗争にもつれ込んでいくのだが、はっきり言ってストーリーは地味。かなり地味。「伏線を張っといて、後で回収」と一応やるべきことはやってるが、ヒネリらしいヒネリもないんで読む人によっちゃ退屈してしまうだろう。「魔女」とか「異端審問官」といった設定も取って付けた臭く、お世辞にも活かし切っているとは言えない。だが、抑制の利いたムード、控え目でいてピリッとセンスの煌きが垣間見える文章、「お約束」のレールから微妙に外れたひどく当方好みの展開。かなりツボです。卵黄ボーロのなんともいえない味がどうでもよくなるくらい気に入った。凪良のイラストも表紙を除けば概ね素晴らしい出来。客観的に見て良い作品というのではなく、主観的に見て「輝いてるよ……!」ってな作品ゆえ、単純にオススメできるかと言うとそうでもない。迷うところはある。フロックかもしんない。とりあえず購入予定になかった2巻が緊急浮上してきたことは確か。

 あとWeb Otsuichiで読めるショートストーリー「むかし夕日の公園で」を見ました。ほんの二、三分で終わる程度のごく短い話。BGMやエフェクトなどを混ぜてますが、むしろこれはテキストだけで読んだ方が良かったかなぁ、と。具体的に絵で示されるより、強制的に想像させられた方が一層「クる」気がしたりしなかったり。

 「リリカル トカレフ キルゼムオール」で(一部にのみ)有名な『大魔法峠』も読みましたが、これの作者って警死庁の人だったのか。裏表紙のまんまアホなノリの魔法少女モノ。上記の呪文もさることながら、「肉体言語」と書いて「サブミッション」とルビを振るセンスなど、見事にはっちゃけています。1冊だけなので明確なストーリーはないものの、マスコットの回は激しく笑った。話は飛びますが、いつ発刊されるんだかよく分からない新雑誌「ファウスト」に西尾維新による魔法少女モノの小説が掲載されるらしいけど、触手の代わりにロボばっかりとのことであんまり期待していません。

 勇者アラミスの「絶対にノー!」という言葉がふとした機会に甦ってくる最近のこと。「きみは『朱』のことが本当は好きなんじゃないのかな?」。例のF9を夢中になって攻略した覚えがあるだけに否定しきれません。


2003-07-01.

 電車の座席から立ち上がろうとして吊革に頭をぶつけた水無月最後の日。

 特にネタもなく、『てのひらを、たいように』も遅々として進まず、SSは書きかけたまま放りっぱなしで、なんだか本来の姿に立ち返ったようなダラけぶり。そういえば『リベリオン』のリバイバル上映が始まったらしいですね。リバイバルといえば『ほしのこえ』を見逃して、「あんとき見ときゃ良かったなぁ」と悲嘆に暮れていたところ再上映の話を聞き、「今度こそは絶対見よう」と決心したものの結局ド忘れして、またもや見逃してしまった去年のことを思い出してしまいます。なんか悔しいのでDVDは買わず終い。

 あー、どうでも良さげなことですが今月の予定。小説は西尾維新の『ヒトクイマジカル』、川上稔の『終わりのクロニクル1(下)』、バリー・ヒューガートの『八妖伝』、倉知淳の『過ぎゆく風はみどり色』、佐神良の『S.I.B』、冲方丁の『マルドゥック・スクランブル3』と『カオス レギオンO 聖双去来篇』、殊能将之の『子どもの王様』。漫画は篠房六郎の『空談師(3)』と沙村広明の『無限の住人(14)』。ゲームはMarronの『お姉ちゃんの3乗』、余裕があればクロスネットの『Maple Colors』。主にこんなところです。

 ところで、雫井脩介の『火の粉』がもう新書化してるんですが。ハードカバーで出たのが今年の2月なのに……早すぎ。


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