2003年12月分


・本
 『疫病神』/黒川博行(新潮社)
 『オアシス』/生田紗代(河出書房新社)
 『僕は天使の羽根を踏まない』/大塚英志(徳間書店)
 『葉桜の季節に君を想うということ』/歌野晶午(文藝春秋)
 『覘き小平次』/京極夏彦(中央公論新社)
 『国境』/黒川博行(講談社)
 『相続人』/保科昌彦(角川書店)
 『魔女の息子』/伏見憲明(河出書房新社)
 『黄金の羅針盤(上・下)』/フィリップ・プルマン(新潮社)
 『接近』/古処誠二(新潮社)
 『バウワウ!』/成田良悟(メディアワークス)
 『姉飼』/遠藤徹(角川書店)
 『強救戦艦メデューシン(上・下)』/小川一水(朝日ソノラマ)
 『げんしけん(3)』/木尾士目(講談社)
 『灰よ、竜に告げよ』/浅井ラボ(角川書店)
 『災厄の一日』/浅井ラボ(角川書店)
 『Astral2』/今井隆文(メディアワークス)
 『聖遺の天使』/三雲岳斗(双葉社)

・ゲーム
 『Clover Heart's』(ALcot)
 『PIZZICATO POLKA』(ぱじゃまソフト)
 『銀の蛇 黒の月』(project-μ)
 『沙耶の唄』(Nitro+)――(1)
 『沙耶の唄』(Nitro+)――(2)
 『白詰草話』(Littlewitch)


2003-12-31.

・大晦日も間近なので、ランキング形式で今年の趣味生活を振り返ってみます。

[小説]

 『葉桜の季節に君を想うということ』
 『イリヤの空、UFOの夏 その4』
 『12月のベロニカ』
 『シャープ・エッジ』
 『マークスの山(上・下)』
 『捕虜収容所の死』
 『あなたの人生の物語』
 『忌まわしい匣』
 『紙葉の家』
 『本格小説(上・下)』

 読んだ冊数は具体的な数字を出すとヒかれるので書きませんが、優に三桁いっています。ジャンルごとにランキングもつくれるほどなのですが、さすがに疲れるのでやめておきました。かと言ってジャンルを跨るとなると何を基準にして順位を付ければよいのだか分からなくなってしまうので、仕方なくこの部門は順不同で印象深かった10作を挙げるに留めておきます。

 『葉桜の季節に君を想うということ』は「ジャンル:ミステリ」より。ミステリにハマったことがキッカケで読書を始めた当方ですが、今年はパッとする作品がこれくらいしかなかった。『密室殺人大百科(上・下)』『聖遺の天使』『ネジ式ザゼツキー』『ハードフェアリーズ』『ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎』『テンプラー家の惨劇』『千年の黙』あたりも悪くはなかったが、かつての情熱を呼び覚ましてくれるほどでもなく。ともあれ、『葉桜〜』は歌野マジックが冴え渡る一冊。思った以上に楽しく読めて、予想もあっさり裏切られた。

 『イリヤの空、UFOの夏 その4』『12月のベロニカ』『シャープ・エッジ』は「ジャンル:ライトノベル」より。短時間で読めるせいもあって、このジャンルだけでも読んだ冊数は三桁。他に『BLOODLINK』『デルフィニア戦記』『終わりのクロニクル』『Dクラッカーズ』『されど罪人は竜と踊る』など、良質シリーズが掘り出せたこともあり、収穫はかなりのものです。イリヤ4巻は没入性・吸引力の高さから挙げずにはいられない1冊。賛否はありますが、何であれ無視はできない。『12月のベロニカ』はファンタジア長編小説大賞の「大賞」に相応しい出来と思えたし、『シャープ・エッジ』は評判が芳しくないものの個人的にはとても好き。作風にベタ惚れ。今年の新人の中で一番しっくり来ました。新人といえば浅井ラボ、成田良悟、谷川流あたりも精力的な活動を見せており、来年も注目するつもり。

 『マークスの山(上・下)』と『捕虜収容所の死』は「ジャンル:冒険小説」。このジャンルは一昨年当方がスティーヴン・ハンターにハマるまでほとんど無視していたのですが、去年、今年はそこそこのウェイトで読んでいます。上記以外では『ヒートアイランド』『ワイルド・ソウル』『書剣恩仇録』あたりも良かった。特に、垣根涼介はこのジャンルにおいて福井晴敏以来の個人的ヒット作家。『マークスの山』は文庫化に際し大幅に改稿されたとあり、聞いた話では「ほとんど別物になっている」そうです。警察機構の陰湿さを描きつつ、犯人の造型を深め、印象的なラストシーンへ持ち込む手腕に叩きのめされました。作者の高村薫はあまり好きではないではないけれど、この作品の面白さは認めざるを得ない。『捕虜収容所の死』は脱獄計画と不審死の謎解きを並行展開させるところに面白みを感じた。大作というより小品だが、無駄なくまとまっていてキレイだ。

 『あなたの人生の物語』は「ジャンル:SF、ファンタジー」より。ちょっと前までは苦手意識の強かったジャンルだが、ハリポタと飛浩隆、ジョー・R・R・ランズデールなどの「アタリ」に遭遇したことで徐々にハマりつつあります。『ダークエルフ物語』3部作や、『鳥姫伝』『霊玉伝』『八妖伝』の李老師3部作、『第六大陸』2部作、『月に繭 地には果実(上・中・下)』など、今年も「アタリ」が多かった。そんな中で際立っているのが『あなたの人生の物語』。バラエティに富んだ短編ばかりで、下手すると1編が1冊の長編に匹敵するほどの威力を秘めている。是非とも推したい1冊。

 『忌まわしい匣』は「ジャンル:サスペンス、ホラー、伝奇」より。このジャンルは可もなく不可もなくといったムード。『青い虚空』『狩人の夜』『虚貌(上・下)』『邪光』『交渉人』『ハーツ』など、そこそこの「アタリ」が集まった。『忌まわしい匣』は短編集で、『あなたの人生の物語』と同じくバラエティに富んだ内容。「おもひで女」がひたすら怖く、かと思えば「翁戦記」がひたすらカッコ良く。人を選ぶきらいはありますが、当方の好みで言えば『あなたの人生の物語』に勝るとも劣らない。

 『紙葉の家』と『本格小説(上・下)』は「ジャンル:その他」より。ここはジャンル分けしにくい、あるいは普段読まないジャンルの小説をまとめてぶち込んでいるため混沌の極みです。『昏き目の暗殺者』『NHKにようこそ!』『星々の舟』『歌の翼に』『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『ベル・カント』『死なないで』etc...。『紙葉の家』は「メタのメタによるメタのためのメタ・フィクション」というメタメタどころかメタメタメタメタな1冊。もはやJOJOに出てくるスタンドの掛け声です。高いし厚いし字は細かいしふざけた真似もするしと散々ですが、読む価値は必ずある。『本格小説(上・下)』は『嵐が丘』を読んだことのない当方にはうってつけでした。もうこれで『嵐が丘』を読むことはないでしょう、たぶん。これも物語を徹底的に物語化するためメタメタな手法を取っていますが、そこにこだわらずとも普通に大河小説として面白い。

[マンガ]

 第一位 『げんしけん』
 第二位 『ホーリーランド』
 第三位 『School Rumble』
 第四位 『美鳥の日々』
 第五位 『今日の5の2』

 今年になってから読み始めた作品のみ。昔はマンガ人間でしたけど、最近めっきり読まなくなりましたねぇ……こっちは三桁も行ってないかもしれない。あんまり関係ないですけど、アニメの方はレンタルビデオで借りた『カリオストロの城』くらいしかまともに見てません。趣味の時間はもっぱら小説とエロゲーに注いでおりました。

 『げんしけん』は加奈子萌え。『ホーリーランド』は解説ででしゃばる作者萌え。『School Rumble』は八雲萌え。『美鳥の日々』は右手萌え。『今日の5の2』は小学生萌え。ものすごく単純明快な楽しみ方をした当方は底の浅い人間かもしれず。でも大して気にならないのが実際のところ。

 既存シリーズの新刊に関しては『ヘルシング』と『G戦場ヘヴンズドア』が二強。特に『G戦場ヘヴンズドア』の方はあまりの迫力に「語ろう」という発想自体が湧き上がってこなかったほど。つまらなくて語る気がしないというのはよくあるけど、面白すぎて語る気力を根こそぎ奪われるなんて体験はかなり久しぶりでした。

[映画]

 第一位 『リベリオン』
 第二位 『ラスト サムライ』
 第三位 『マトリックス・リローデッド』

 この3つしか見ていません。『リベリオン』で今や言わずと知れたガン=カタに心を奪われ、『ラスト サムライ』の合戦に圧倒され、『マトリロ』のスミス101匹大行進にわくわくしながら燃えた一年でした。

・ゲーム(エロゲー)については次回更新。

アル絵TOP

 (゚∀゚)<あいあいはすたー!

 跪き叩頭しながら「あの腹を突っつかせてくれッ」と懇願したくなる一枚。見れば見れるほどSAN値が物凄い勢いで目減りしていきます。


2003-12-30.

・年末。積ゲーや積読を崩しつつゴロゴロとしております。蜜柑も相変らず食べ放題。

・現在は『白詰草話』をプレー中。FFDなるシステムを採用し、マンガとアニメを折衷したような雰囲気を醸しているゲーム。そして何より大槍葦人の少女絵(*´Д`)ハァハァな一本。なんというか、従来のノベルゲーとは違ってサクサクとスムーズに進行する感覚が気持ちいい。クリックするタイミングが掴みにくいとか、絵と演出に頼って地の文を端折っているためどうしても説明が不足しがちになるとか、難点もありますけど試みとしては面白い。

 ユーザーインターフェースが凝っていてゲームの雰囲気を壊していない点については高評価。話の方はアクションあり秘密あり陰謀ありまったりした日常ありと、エンターテインメント的にはバランスの良い配分。突き抜けるほどの面白さや溺れるほどの萌え加減を有しているわけではないにしろ、優れた出来であることに違いはなく。

 で、攻略に行き詰まりました。早っ。しばし自力で頑張ったものの、結局攻略サイトを当てにすることに。……えーと、要はこのゲーム、とりあえず1周してからタイトルの「Game Start」を選んで2周目を始めないといけないみたいです。セーブ&ロード魔の当方にとってこの仕様は鬼門。

・三雲岳斗の『聖遺の天使』読了。

 レオナルド・ダ・ヴィンチを探偵役に据えた館ものミステリ。

 嵐の晩、「沼の館」で館主が死んだ。磔にされるような形で、2階南側の窓枠にぶら下がって。死体の発見者たちは叩きつける雨の向こうに天使の姿を見た……。「奇跡を起こす聖遺物」と噂される香炉を巡り、館に集っていた聖職者たち。やがて問題の香炉も消失したことが知れ、事件の謎は深まっていく。数十年前、「奇跡」によって400人もの軍勢を一夜にして滅ぼしたという言い伝えの残る館。レオナルドはすべての真相を見抜けるか。

 無論、レオナルド・ダ・ヴィンチは天才肌のキャラと設定されており、難なく謎は解き明かされます。物証集めをしたり裏づけを行ったりともったいぶっているせいで話は長引きますが、無駄な要素というものはなく、キレイにまとまっている。ライトノベル的な余剰もほとんどないので、普通にミステリと断じて読んでも差し支えないほどだ。

 『M.G.H』という実績があるだけに不安はなかったが、思った以上に本格らしい体裁を保った内容でした。伏線があからさま過ぎるところなど、必ずしも通好みと言える歯応えではないが、こうやって一読して率直に「面白い」と思える本格を読んだのは久しぶり。手堅くまとまっています。

神の12「好き好き大好きっ」経由)

 胃痙攣起こしたかと思うくらい笑いました。まだ腹が痛いです。


2003-12-29.

・暇があったら蜜柑を食べてる状態の焼津です、こんばんは。まだ手指は黄色くなっておりませぬ。

『沙耶の唄』、エロシーンとかに関しては「冷静に見ると萎える」「深く考えると負け」という意見が圧倒的ですが、むしろ考えれば考えるほど(*´Д`)ハァハァの度合いが深まってしまう当方はもはや人間失格かもしれず。当方、異形博覧会という短編集に収録されている「脱ぎ捨てる場所」が大好きなことからも明白であるように、どうもこういった傾向の話には弱い。

・今田隆文の『Astral 2』読了。

 幽霊を見て会話して憑依される能力(体質?)を持つ高校生が主人公のストーリーズ、第2集。「childhood's end」という副タイトルが付いているくらいで、テーマの方向は露骨というか明け透けに率直。

 前巻は主人公がそれぞれの事情を抱えている少女霊に対し、悩み相談という立場で向かっていたため、彼自身の存在はかなり希薄でしたけれど、今回はむしろ霊たちよりも彼自身の方に重点が置かれている。250ページ足らずで、文章密度も高くないものの、地味にステキな1冊です。派手さや斬新さはなくとも、優しくキレイで温かみのある要素を盛り込むことで巧く話をまとめている。短いけども読後感はスッキリ。「され罪」とは異なるこういうあっさりしたテイストも好き。


2003-12-28.

・何の伏線もなく沙耶の妹(しかも双子)が出てくる『沙遊と沙予のおしえてA・B・C』を続編として希望したい焼津です、こんばんは。もちろんニトロゲー歴代のロリをゲストキャラに詰め込んで。

 いや、漢祭りがアリならロリ祭りだってアリじゃない?

『沙耶の唄』、コンプリート。

 面白かったです。のっけから意表を衝き、そのまま仮借なき悪趣味の世界へ雪崩れ込んでいく様には目と心を奪われました。後退のブレーキが見事なまでに壊れている。ただ前へ前へ突っ走るのみの展開。こうしたバリバリのホラー・サスペンス系統のゲームは今年だと『腐り姫』くらいしかやっていませんし、ニトロ分を吸収しつつホラー欲を満たすことができて良かった良かった。普通の意味合いでの「エロさ」とは違うものの、いろいろ勃起もんのシーンが多く、虚淵作品の中では一番18禁に相応しいソフトかと。

 真夜中にプレーしながら蜜柑、それと生ハム挟んだトーストを黙々と食べていましたけど問題なく美味しかったので、極度にグロが苦手という人以外は大丈夫な程度だと思います。とはいえ想像力に訴えかけてくるシーンもあり、「自分自身の天邪鬼めいた妄想が一番怖い」という人は油断禁物。

 ホラーと純愛ストーリーを両立させようとして中途半端になっているところと、分量が少ないところは不満点。サスペンス性重視ですから一周あたりの尺は現状で充分ですけれど、せめてもう一つくらい違うルートが欲しかったですね。

 新境地とはいえ、虚淵玄はやはり虚淵玄で中央東口はやっぱり中央東口だった。これだからニトロゲーはやめられない。唄って凍える『沙耶の唄』に乾杯。

『ラスト サムライ』見に行きました。

 官軍(*´Д`)ハァハァ

 ピシッと着込んだ軍服が明らかに場違いで浮きまくっているところが萌え。号令とともにマス・ゲームめいた行進を繰り出すところは燃え。銃剣がカッコ良すぎて背筋が痺れました。

 出てくるなり不機嫌な顔して酔いどれのろくでなしを演ずるトム・クルーズや、侍を「未知の戦闘集団」として扱っている冒頭も良かったですが、やはり圧巻はラストの合戦シーンですか。ド迫力。人目がなかったら当方は号泣・失禁に到っていたかもしれず。突撃する様を見ているだけでも射精級。大人数が入り乱れる画ってのにはたまらんものがあります。

 殺陣もしっかりしていて見飽きなかったし、なかなか良く出来た大作。ストーリーに関しては一部首をひねるところもありましたけど、総合的にはかなり楽しめました。キャストがひとり残らず味をしっかり出しているあたりなど最高。興奮したせいか頭の悪い感想文しか書けませんけど、ともあれ一年を締め括る映画としてこれを選んで良かったです。ってか、今年はこれ以外『リベリオン』と『マトリックス リローデッド』しか見ていません。『英雄』や『座頭市』なんかも見る気でしたけど、生憎と機会に恵まれず。


2003-12-27.

・沙耶る準備は万端。人間やめる覚悟を1ダース揃えてこの日を迎えました。

『沙耶の唄』購入。プレー開始。

 容赦ゼロ──素適過ぎる。

 これはもう予備知識なしでそのまま楽しみに行ってください。内容に関しては何を書いてもネタバレになってしまいそうです。ただ、とにかく虚淵はニトロファンの嗜好がどんなものであるかをよく分かってるッ! ってか、虚淵の芸風に適応できた人がニトロファンになっていくのが通例な分、当り前っちゃ至極当り前なんですが。一方でホラーやサスペンスの呼吸は充分に心得られており、万人向け……とまで行かなくとも、そうニッチのみを狙ったソフトではなさそう。

 魅惑的なくらいに悪趣味。「虚淵と中東のコンビだから大丈夫だろう」とは思っていましたけど、ちょっと息抜き程度のブレイク・タイム・ホラー、なんてふうにタカを括っていたせいか、あっさり反撃されて噛み付かれました。こうも簡単に期待を上回られると、幸福と同時にいかに自分の読みが甘いかを思い知らされる。でも楽しいのでやっぱり幸せ。関係ありませんけど、プレーしながら食べてる蜜柑も美味しくてより幸せ。早く続きが見たい。

めりぃくりってるアル・アジフ

 ところで想像してみようか。にし〜絵の『沙耶の唄』を。

 ……当方がいま抱いている感情は果たしてホラーアドベンチャーとして相応しいのか、と不安になるほどムチムチでした。つうか、主人公の顔にドクターウェストが混ざってしまい、「どんどんおかしくなっていく」というより最初からおかしいだろとツッコミたくなったり。でも、これはこれで。


2003-12-26.

・クリスマスの夜に見た夢は咒式まみれの奇怪すぎる代物でした。祝福されてない見込みが濃厚です。

『FOLKLORE JAM』の維月壁紙

 ツンデレスキーに好評なFJ、キャラ人気投票で一位を獲得した八乙女維月の壁紙です。年上・長身・高圧、その割に胸が大きすぎもせず、割合当方の好み。や、年下・低身長・無愛想の木乃内ひなたも捨てがたいですが。

「ジンガイマキョウ」にてクリスマス・プレゼント(12月24日付)

 (*´Д`)ハァハァ。

 しかし一瞬名前が浮かばなかった当方はニトロファン失格かもしれず。半濁点付けるとマヌケになる人ですよね。なんとなくこっちの人(一番上)とも似ているように思います、外見が。

ラ板浅井ラボスレの「されど罪人は竜と踊る」吉牛ネタ

 痙攣するほど笑って笑って笑いまくりました。もっともらしく、それでいて嘘臭いラボ風味が滲み出していて最高。ネタバレではないので「され罪」を未読の人も安心して見てください。「され罪」は概ねこんなノリ。

・浅井ラボの『災厄の一日』読了。

 『されど罪人は竜と踊る』の3冊目にして短編集。時制は1巻の前だったり、1巻と2巻の間だったり、2巻の後だったりとバラバラです。内容に関してはほとんどがシリアス路線で、スレイヤーズやオーフェン、フルパニみたいに「短編はギャグ一辺倒」というドラマガのノリとはだいぶ違う。ただ、「禁じられた数字」という作品だけは突き抜けるほどのバカですが。周りがシリアスなだけに一層バカっぷりが際立っています。本編のギャグパートも充分に壊れまくってましたけど、こっちもこっちで仮借なくぶっ壊れている。腹がよじれました。昨日といい今日といい、「され罪」関連のネタで笑ってばっかりです。

 この1冊を読んで加速度的にハマってきました、され罪。そろそろ最新刊の4巻も出る頃ですし、いい時期に魅了されたと思いマス。いやー、1巻を読んだときには「大丈夫かいな、これ」とか不安バリバリでしたけど、今となっては何の問題もなくファン化。ガユス視点のトボけた文章にも馴染んできましたし、思いつきで追加してんじゃねーかというくらい膨大な設定にもワクワクしている有り様。ところで巻末の初出一覧がすべて「2002年」になっているのは誤植でしょうか?


2003-12-25.

・予想通りの忙しさにより死の一歩手前。ケーキも酒もなく水をぐびぐび飲んだだけです。水おいしい。

rufホームページでクリスマス企画、灰村キヨタカの壁紙4枚。

 クリスマス・プレゼントはこれで充分、というか充分すぎるくらいです。当方的に。マッチ売りの少女が気に入って早速使っていたり。

・浅井ラボの『灰よ、竜に告げよ』読了。

 『されど罪人は竜と踊る』の続編。分量もグンと増しており、ライトノベルにしては結構厚い。前巻は特に前半が読みにくく、かなり往生した記憶があるため、今回この厚さとあっては「死ねるんじゃないか……」と不安になりましたが、案外読み易くて苦にはなりませんでした。当方がノリに慣れたというのもあるでしょうけど、作者の文章もこなれて来ていると思います。まあ、それでも読み終わるまで幾日か要りましたけど。

 話自体はそれほどダイレクトに繋がっていませんが、一応続編モノだけあってベースとなるものは共通しています。いくらか読み易くなったとはいえ、青臭さやインフレぶりがますます強まっている印象もあり、万人に薦め難いところは変わっていない。戦闘シーンはクドさと大雑把な感じが同居しており、ひと口に「燃え」と言っても人によって好悪が分かれそうですし。個人的には好きなので、興味を感じている方には迷わずオススメしますが。

 それにしても126-127ページの遣り取りには笑いました。いや、想像したらツボに入ってしまい、大爆笑。キャラたちにもだいぶ愛着が湧いてきた気がします。


2003-12-24.

・デモンベインのクリスマスSS「G戦場のメリー・クリスマス」公開。

 先月からこそこそ書き溜めていましたが、ギリギリでなんとか形になりました。間に合わなかったら「無かったこと」にするつもりだったのでひと安心。タイトルはテキトーに付けただけで深い意味はありませぬ。

 それにしてもSSは8月以来ですから4ヶ月ぶり、デモベに限れば半年ぶりとかなりの間が空いてます。さすがになかなか勢いが出なくて往生しました。読むと書くとは大違いですね、やっぱり。

 ちなみに当方のクリスマスは「忙しい」の一言に終始しそうです。ロマンも何もあったものではなく。

『沙耶の唄』も発売目前。情報が出たのは2ヶ月前ですから、結構待ったようでそれほど待ってもいないですね……というより、ニトロファン以外での知名度は低いような。つまり、待っていた云々以前に「え? ニトロ、新作出すの?」と素で驚く人がいても不思議ではないムード。発売される前にいろいろ情報が二転三転して楽しかったことは確かですが、願わくば発売後も盛り上がりたいものです。


2003-12-23.

『銀の蛇 黒の月』に惚れてproject-μの過去作品を買い漁り。『忘れな草』『彼女の願うこと。僕の思うこと。』『ほとせなる呪 ちとせなる詛』の3作です。『北麻鞍博士の憂鬱』は見かけず。それにしても、3作全部を合計しても4k行かないあたり、オトクというより侘しさを覚えてしまいます。

 あと、『銀の蛇 黒の月』のマイナーぶりはかなり気合入っているみたいで攻略情報も見かけません。銀蛇はルート分岐の条件がいまいち不透明なので、ひょっとすると現在熱烈に詰まっていて「 ど う す れ ば い い ん だ 」状態になっている方がうちのページを覗いている……ことはほぼありえないと思いますが、一応攻略のための役に立つんだか立たないんだか、よく分からないアドバイスを一つ。

 たぶん、詰まっている人の多くは「九章が岐路なのは分かるのに、どうやっても分岐しない」という状況であろうかと。当方もこれで悩んで時間を食いました。細かくは書きませんが、方針としてはマリィに優しくしつつ、ブロンコの言葉は無視することで行けると思います、恐らく。

・巡回先のサイトで見かけた「このミスどんだけ読んだかにゃ」「本ミスどんだけ読んだかにゃ」。当方も数えてみたところ、前者が55冊/161冊、後者が30冊/80冊。結構読んでないものです。読んだ気になっていて「ああ、そういやまだ積んでたんだ」と思ってしまった本も数冊ありました。

 当方、どちらかと言えばそれぞれ作家の作品を刊行順に沿って読む傾向がありますので、前年の作品を読んでないと今年の新作に手を伸ばす気があまりせず、興味のある本も結構スルーしています。『終戦のローレライ』『川の深さは』が未読のため丸一年積んだままですし、伊坂幸太郎の作品に関しては先月末に文庫版『オーデュボンの祈り』を購入したばかりで、『重力ピエロ』『陽気なギャングが地球を回す』は興味津々ながら購入すらしていません。横山秀夫、連城三紀彦もそれぞれ1冊ずつしか読んでおらず、旧作をいくつか積んでいますから新作の方にまでなかなか気が回らない。特に横山秀夫はここ最近になって刊行速度が上がってきましたから、少し目を離している隙に新作が平台に並ぶといった状況で、もうどれがいつ頃出たのか把握できなくなってきています。

 積み崩しを優先すべきか、新作チェックを熱心に行うべきか──このへんはそのときどきの気分でいいと思っていますが、もう少し何とかバランスを取りたいところです。

『げんしけん(3)』を購入、読了。

 このマンガを読んでいるとニヤニヤ笑いが止まらなくなるあたりからして当方は重症です。ゴチャゴチャした部室が舞台になっている場面なんか、電車でたまたま席に座れたときのような中途半端な居心地良さを感じます。雑然とした狭い空間に妙な安らぎを見出してしまうのもオタクの性だろうか。あと加奈子は今巻割と地味に萌えます。しかし、彼女の属性に合うエロゲーなんてあるんだろうか。……あ、柳生十兵衛が出てくるあれとか。


2003-12-22.

・友人が100円で1.5リットルのコーラを買ってきました。「安すぎないか?」と思いつつも試飲。少し味が薄いことを除けばフツーに飲める味で拍子抜け。もっと怪しげで未知のテイストを期待したのに……。

・予想よりも早く『銀の蛇 黒の月』が終わってしまい、ネタに困っております。ちまちまプレーして『沙耶の唄』が出るまで持たせるつもりだったのですが……かと言って何か他のゲームに手を出そうというほどの気力も湧いて来ず。中途半端な空白。仕方なく、銀蛇のフローチャート機能を使って反芻するようにお気に入りの戦闘シーンを読み返し、持て余す気持ちを宥めてみたり。うーん、人には薦めにくいけれど、やっぱり当方は好きです、このゲーム。越智氏の引退は惜しまれてなりませんが、ともあれぷろみゅーの過去作品は是非ともチェックしておかねば。

『モエかん』の飯島、下の名前は……

 何を隠そう当方は『モエかん』のキャラの中で飯島が一番好きです。あれだけ明るい空気を撒き散らすパッケージをしておきながら、始まって早々に不穏なBGMが流れ、厳つい顔した悪役っぽい男(飯島)が出てくるあたりにケロQのマインドを感じて(*´Д`)ハァハァしてしまいました。もうあの時点で胸キュン。出番こそ少ないのですが、要所要所で美味しいトコを取っていくのが心憎い。ルート次第では可愛い面も見せます。彼をして「萌え漢」というタイトルが付けられたのではないか、と血迷った推測をするほどハマりました。客観的に見ればただの脇役なんですけど……見せ場はそこそこありますが。

 それにしても「かつみ」とは。「愚地克巳」ならまだ辛うじて猛々しさがありますけど、「飯島克巳」ではあの凶相とのギャップを大いに感じてしまいます。それもそれで萌えないことはないですが。それにしても愚地克巳、飯島克巳、小川勝己と当方の知っている「かつみ」は名前の響きに反した野郎どもばかりですね。ちょっと素晴らしい。

 ところでURLの「moecom」という部分を見るに、『モエかん』は「萌えっ娘カンパニー」の略でもあったんですね……「モエ」に「萌え」と「燃え」、「かん」に「缶」と「漢」(あと「姦」も?)を掛けただけのタイトルとばかり思っていましたが。うーん、1年もしてやっと気づきました。遅すぎですね。


2003-12-21.

『銀の蛇 黒の月』、コンプリート。

 うーん、短い。声が付いてないことを差し引いても、ボリューム不足の観は否めない。一応マルチエンド形式になっていますが、ストーリーはほぼ一本道です。ルートによって一部のエピソードが見れたり見れなかったりすることはありますが……たとえば、敵キャラがザコを屠っているシーンが、あるルートではちゃんと出てくるのに、別のルートでは省略されていたり。何を以って「表示するか・省略するか」の判断をしているのか、基準が曖昧で、フラグ管理にはえらく苦労しました。なにせ、Aという選択肢を取ってもBという選択肢を取っても直後の展開は変わらず、少し先に進んでようやく変化が見られるようになるんです。しかも、展開を左右する選択肢が一見どうでもいいようなものだったりします。攻略に手間取っていくらか時間を食いました。

 攻略に浪費した時間を抜けば、シナリオは全体で『鬼哭街』と同じか、ちょっと超えるくらいの分量です。だいたい文庫本1冊分? 4400円の『鬼哭街』すら「コストパフォーマンスが悪い」と言われたくらいですから、倍額の銀蛇はフォローするべくもなく。CG枚数はそこそこですし、演出にも凝っていますけど、それらのポイントだけでオススメするには障壁があります。

 ボリューム不足でコストパフォーマンスが悪くても、作品としてまとまってさえいればいくらでもプッシュできますが……残念なことに、シナリオを盾にしてオススメすることも難しい。最終章手前までは、しっかりストーリーを盛り上げつつも程好くプレーヤーを焦らす見事な話運びでしたけれど、「これからどうなっていくんだろうなぁ」とワクワクしているところにいきなり「最終章」と来たもんですから「えっ!?」となってしまいました。展開が早すぎます。こちらの意識としては「起承転結」の「承」が終わって「転」に入るところだと思っていたのに、突然「結」が来たんですから、「起承結」というまことに座りの悪い構成になってしまっている。肝心の最終章にしても非常に駆け足で、なんだか打ち切りが決定した連載マンガみたいな慌しさ。折角それまで巧い具合に積み上げてきた話が台無しです。消化不良を起こしている要素が山積みで、実に惜しい。

 んー、もっと話が膨らんでいってスケールも大きくなると思っていたのになぁ……こぢんまりとまとまってしまいました。「人としての欲望が希薄で、表情を動かさず淡々と仕事をこなしていた殺し屋青年が、ひとりの少女と出会って『生きる価値』を見出し、感情を取り戻していく」という大筋はベタなものの、それ自体は悪くない。途中までは調理も巧くいっていましたが、仕上げでマズったという印象です。システムの使い辛さ、エロの薄さから言って、「パッケージの絵が好みなんだがどうしよう?」という方にはオススメし辛いです。エロよりもむしろグロの比重が高い。

 と、さっぱり誉めていませんが、実のところ当方は本作を結構気に入っています。「買った良かった」と思うくらい。TrueEndに辿り着いたときは不覚にもホロリと来るモノがありましたし。確かにこちらの期待を下回られてしまいましたけど、演出やBGMのおかげで戦闘シーンは燃えまくりましたし、「粗い」と思っていたテキストも読み進めるうちに慣れてきて最終的には気に入った。「口が利けない」というヒロインも、身振りで感情表現を行っているため、声がなくても充分に萌えられる。というより、ボイスレスってマイナス要因を巧く逆手に取っていますね──三人称なのでヒロインの感情は描き放題ですし。

 コンパクトなシナリオ・サイズに目を瞑りさえすれば、「男臭くて熱くてよく燃える、ちょっとダークでグロなファンタジー」にしては佳作。ファンタジーといっても、『黒と黒と黒の祭壇』みたく設定が「仕掛け」となってシナリオと直結しているタイプではありませんので、凝った話を期待すると肩透かし。光る部分が少なくないだけに詰めの甘さが悔まれますが、燃えゲースキーの方にはこそっと控え目にオススメしておきます。本当に惜しい出来。

 ところで、シナリオライターの越智自由はこれを最後にproject-μを退社、ひいてはシナリオライターも「ひとまず引退」するとのこと。注目しようかと思った矢先でしたのでショック。ただ当方は過去作品が未プレーですからそちらへ手を伸ばすことも可能につき、幾分かショックは和らぎましたが……うーん、それでもショックはショックです。しょんぼり。


2003-12-20.

『銀の蛇 黒の月』購入。ダーク燃えゲーとはいえ、パッケージは裸のおにゃのこです。この絵に期待して買った人は予想を裏切られる可能性、大。ところで『そこに海があって』も予想を反してアレな内容だったということで、逆に興味が湧いております。が、まずは銀蛇を終了させてから考えようってことで。

 まだ序盤を2時間ほどしかやっていませんが、実にイイ感じです。戦闘シーンなど、殺伐とした場面で演出に工夫を凝らしており、なかなか楽しい。エロもおざなりにされてはいなくて、時折思い出したように濡れ場が挿まれます。濡れ場と言いつつ、結構グロい展開が多いんですけどね……「エロ!グロ!ヴァイオレンス!」の掛け声に違わぬ内容ではある。

 んー、まだあれこれ言えるほど雰囲気を掴んでいないんですが、今のところ抱いている雑感をいくつか。

 1) テキストは粗い。体験版でもなんとなく見えてましたが、読んでいて引っ掛かりを覚える箇所が多いです。「ように」「ような」といった直喩を頻発しているし、センテンスを長くしすぎて意味が取りにくくなっていることもままある。三人称・作者の視点であることを前提とした書きぶりとなっていることも含め、読む人によって好悪が分かれそうだ。「美文じゃないと読めない」という方には薦めにくい。『デモンベイン』のテキストに耐え切った当方としてはそんなにキツくもないのですけど。粗いとはいえ、冗長ではありませんし。

 2) 演出はたまにうざったくなる。確かに緊迫感のある場面や、動的なアクションシーンでは凝った演出が話を盛り上げてくれるのですけれど、演出のそれぞれに所要時間が決められており、スキップすることができない。進行のペースを一定のモノとして押し付けられるため、たまに苛々することがあります。先が気になって、早く次の場面に行きたいのに、演出の都合上ゆっくりと読み進めなければならない……といった事態が発生してしまう。なまじ凝っているだけにこの点は残念。

 3) ストーリーは面白そう。章分けが細かく、現在十章を過ぎていますが、それでもまだ全体像が見えてきません。「お約束としてこう来るだろうな」と予測していたことも、実際の展開では微妙に意表を衝く形でその予測を裏切りに掛かる。こっちの注意を引き付け、適度に眠気を払って覚醒状態に促してくれる。物凄く斬新なことをやっているわけではないけれど、それなりの刺激があって退屈しません。「先が気になる」「全体像を捉えたい」という気持ちが湧いてくる分、続きも期待できそうな塩梅です。これだけ期待させといてあっさり話を終わらせてしまったら恨みますよ。

 4) 脇役が活きている。OHPのキャラ紹介に出てくる人数が少ないので「ひょっとすると話のスケールが小さいのでは?」と不安がっていましたが、サブキャラがバンバンと投入され、この点については安心できました。何せ荒廃した世界を描くダーク・ファンタジーとあって、ゴロツキ、ろくでなし、世紀末悪党といった風味満々のゲス野郎どもがたくさん出てくる。そしてたくさん死ぬ。素晴らしい。エロゲーは野郎絵となると極端に手を抜かれる傾向がありますが、この作品は野郎絵もキチンと濃く魅力的に仕上げられています。下手するとヒロイン勢よりもステキなくらいに。というか、当方は吸血伯爵(ドラクル)の魁偉な凶相にめろめろです。女性キャラはなにぶん序盤だと出番が少ないので、まだどうとも言えない。

 といった感じで、文句を垂れつつも割と楽しんでいます。断言はしかねるものの、たぶん燃えゲーとしてはアタリです、このソフト。グロがイケる人、テキストの粗さを許容できる人にはオススメできそう。


2003-12-19.

・「どうせやり込む時間ないから」と『大番長』を回避し、『銀の蛇 黒の月』に狙いをつけた当方。長すぎるとコンプリートし損ねるかもしれず、そこそこの分量を期待しています。

ハバネロたん壁紙(画展)

 辛いものは苦手だけど好きという難儀な嗜好の当方、怖気づきつつもチャレンジしたみたい気持ちがほのかにあります。今のところ商品の在り処を見つけてすらいませんが。ちなみに「LEE」は10倍が限度。冗談で買った20倍はとても食えなくて他のルーを混ぜて薄めました。

・小川一水の『強救戦艦メデューシン(上・下)』読了。

 「看護婦だらけの巨大航空艦」──と書けばなんだか挿絵の魅力に頼った萌え系ライトノベルを連想してしまいそうですが、実のところ本書に「萌え」を期待すると裏切られる可能性が高い。ヒロインたちは自らを戦傷者たちにとってのマスコットではなく、あくまで医療を行う立場の者として認識しており、作中においては露骨な「萌え」関連の描写はほとんど排除されている。「白衣の天使」という表現は聞こえが良いが、ヒロインのひとり、アルテは自分の仕事を「肉屋」と語っている。「肉を縫い合わせるのよ。それが仕事の大半。戦傷は外傷ばっかりだから」。中身が見た目を裏切っている度合いで言えば『E.G.コンバット』とイイ勝負だ。

 半島国家フレナーダは高度な科学技術を拠り所に、自然資源を求めて多島海国家のココンへ侵攻した。戦争は16年続いてもなお終わる兆しを見せず、フレナーダの国内では反戦ムードが高まる。それを少しでも押さえようと生み出した苦肉の策が、「艦隊病院団」。「移動する病院」としてつくられた全備重量3050トンの純白航空艦4隻──そのうちの1隻が、メデューシンだった。砲弾の飛び交う前線へ繰り出し、懸命に戦傷者たちの治療に励む看護婦たちの姿が国民を心を打ったが、当の看護婦であるアルテ・フランベルは常々一つの疑問に悩まされていた。傷ついた兵士を治してまた危険な前線へ送り返すことは、兵士自身の命と、彼と戦う敵兵の命を奪うにも等しい行為ではないのかと……。

 「医療、戦争、政治」。ドラマ『ER』を意識した各話構成の物語は緊迫感に満ちた雰囲気と鼻に付きすぎない程度の人間ドラマを盛り込んで加熱していく。柱となるテーマを3本も用意したせいか、600ページ弱の分量を以ってしてもまだ足りないとさえ思わせる。作者がその気になればあと何冊でも増やすことができただろうが、それこそいつまでも経っても「Final」が出ない『E.G.コンバット』状態になられても困るので、ちゃんと完結していることを一つのプラスとして見ておきます。

 『E.G.コンバット』と違って本作のヒロインは看護婦──つまり、非戦闘員ばかりです。そのため、「戦争」をテーマにしているといっても戦闘シーンに関する描写そのものは少ない。けれど、銃を向け合い弾雨を潜り抜け血肉を撒き散らすばかりが「燃え」じゃない。『ER』の、「一分一秒でも争う」といった慌しく、それでいて張り詰めた空気を持った展開に「燃え」が感じられるように、本作も確かな熱気で読み手に迫ってきます。オペシーンはもちろんのこと、非武装で前線を駆ける姿にも。特に終盤あたりの熱さはただごとではありませぬ。

 先に『第六大陸』を読んでいましたから、「萌え」は期待しておらず、「見た目に裏切られた!」とは思いませんでした。それにしてもここまで「萌え」を度外視した内容とは予測してませんでしたけど……いえ、確かに「萌え」はないんですが、キャラクターに魅力がないかって言うと違います。最初は誰が誰だか、名前とイメージが一致しませんでしたけれど、下巻の途中あたりからは名前を見ただけでパッとイメージが浮かび、表紙イラストのどの子に当たるかも分かるようになりました。とはいえ、キャラの魅力だけで読もうとするのは難しい作品なので、「多少重たいストーリーでも大丈夫」「『萌え』よりも『燃え』を」という方にだけオススメしておきます。ちなみに当方、容姿で言えばアルテが好みですが、何分ロリスキーなので麗燕に(*´Д`)ハァハァ。1点もイラストがないのは悔まれる。


2003-12-18.

・物凄く単調な店内ソングに洗脳されかかった焼津です、こんばんは。クリスマス&新年でいろんなところにいろんな歌が溢れていますが、微妙にヘタレていて電波が入っているヤツも多くて結構ヤバい。長時間に渡って聞いていると耳から何かが垂れてきそうです。

・遠藤徹の『姉飼』読了。

 第10回日本ホラー小説大賞にて大賞を受賞した表題作含む4編を収録。なんとも曰く言い難い独特の作品世界をつくり出している話が多く、率直な感想を書けば「気色悪い」。表題作の「姉飼」も、タイトルから当方含む一部の人は主人公がベジータ声で「円華ぁ!」と叫んで実姉を襲い、監禁・調教するようなエロエロの話を期待していたにも関わらず、現実は全然違った代物です。そもそもこの作品において「姉」は血縁関係云々以前にまず人間ですらない。言わば野生の獣であり、見た目は人間女性と似ているが極めて凶暴で捕獲には決死の覚悟が必要となるらしい。で、捕られた姉はお祭りの屋台で串刺しにして見世物にする、と。串に胴体を貫かれ、血を垂れ流し、悲鳴とも怒号とも嬌声ともつかぬ叫びを挙げ続ける「姉」に姿に主人公は魅入られていく。

 祠部矢(しぶや)、海老巣(えびす)、葉等熟(はらじゅく)、夜余木(よよぎ)など、村の名前もふざけていて、嗜虐と諧謔の入り混じったテイストがなんともグロテスクで悪趣味。人によってはどこが面白いのかさっぱり分からない作品だと思います。少なくとも「ぼっけえ、きょうてえ」ほど万人受けする内容には見えない。

 他の作品も発想の奇抜さ、イメージの鮮烈さで言えばなかなかのもの。一人称の「キューブ・ガールズ」は言語感覚が微妙でしたが、発想はそこそこおもろい。よくあるインスタント美少女ネタですが、少しヒネリが利いてる。ジャングル・ジムに人格を与えた短編「ジャングル・ジム」はあまりにもストレートな内容で却ってインパクトが大きい。「姉飼」と対になるようなタイトルの「妹の島」も、当然の如く「その島には数え切れぬほどの妹たちが『おにいちゃん』の到来を待ち望んでおり……」とかいう話ではなく、萌えどころなど目を皿にしても見つかりません。腐爛する果実の甘過ぎる匂い、群がる蟲の鳥肌立つヴィジョン──やはり、行き着く先は「気色悪い」。

 気味が悪いのにそれでも目が離せない、といったタイプの読み物を追求した「姉飼」と「妹の島」、発想の面白さで勝負を掛けた「キューブ・ガールズ」と「ジャングル・ジム」のおよそふた通りに分類できますが、とりあえず「気色悪い」話は嫌いって人に関してはパス推奨。タイトルとあの装丁に怯まない人にはオススメです。「あの装丁」で怯んでしまった人には、強く薦める気はしません。

・それにつけても眠い……。


2003-12-17.

・はいどらー!

Project-μ『銀の蛇 黒の月』体験版をプレー。

 「Multi Inside.」からダウンロード。殺し屋の青年を主人公に、荒み切った暗黒時代の世界を描くダーク・ファンタジー。敵役として多頭蛇(ハイドラ)なるキャラが出てきます。冒頭の意味不明な叫びはつまりこれ。安直なネタです、はい。当方には独創性という荒野を進むための地図がない。

 Project-μは演出の凝ったノベルゲームをつくるメーカーとしてごく一部で評判になっているみたいなんですが、生憎と当方は『ほとせなる呪 ちとせなる詛』の体験版しかプレーしたことがありません。あれもあれでホラーサスペンスとしては面白そうでしたが、いまひとつ食指が動かなくて製品版は回避してしまいました。

 で、この銀蛇黒月も「演出がイイ」と話題になっていましたが、実際なかなか良い感じです。敢えて言えば『Fate/stay night』『白詰草話』を混ぜ合わせたような、独特の演出。カット、効果音、テキストの3つが巧い具合に重なり合って、静的なシーンと動的なシーンの両方にメリハリがついている。前記した2作品に比べ、どこか泥臭く垢抜けない印象はあるが、それとて味の一つとして見れないでもなく。プレーしていてワクワクすることは確かです。少年漫画のようであり、青年劇画のようでもあり。

 それほど長くないせいもあって、大筋がどんなストーリーなのかよく分かりませんでしたが、どうもベタベタのダーク・ファンタジーにもつれこんでいきそうです。ダークとはいえ濃厚に王道の匂いが漂っている。システムが若干使い辛い点と、テキストにいくらか粗さが見え隠れする点は不安要素だけど、「燃え」を期待する分には良さそうな気配。今週はこれに突っ込んでみようかな。

・成田良悟の『バウワウ!』読了。

 『バッカーノ!』シリーズで人気を集めつつある著者の単発長編です。近未来の日本を舞台に、香港映画あたりのB級テイストを混ぜ込んだストーリー。微妙に男臭い。

 佐渡と新潟を結ぶ越佐大橋の真ん中に、名もない人工島が存在していた。様々な人間が様々な理由でやってきては住み着き、さながら九龍城のような無法地帯と化したこの島へ、奇しくも同じ日にふたりの男が別々の方向から上がりこんだ。狗木誠一と戌井隼人──2匹の犬。彼らはそれぞれの遣り方でのしあがっていき、5年後、狗木は西区画の管理者に、戌井は最下層の顔役になっていた。5年の間ずっと接触を持たず、他人同士でいたふたりが互いに顔を合わせたとき、両者は鏡に映った自分を見るような錯覚に陥る……。

 対決する男と男、それに巻き込まれる男がもうひとり。計3人の野郎たちがドンパチだ何だで右往左往するドタバタした話です。『バッカーノ!』で感じられたタランティーノ色はだいぶ薄くなっていて、技巧的に工夫を凝らしているシーンはあれども、基本的なノリは「友情と裏切り」の叙情派香港アクションに終始する。作中でわざわざ「ジョン・ウー」「ワイヤーアクション」と言及しているくらいなので、どういった内容かは詳しく解説する必要もなかろうかと。

 勢いで書いたような、殴り書きスレスレの文章と、何が主題なのか曖昧な前半でやや引っ掛かりましたが、ピースがあるべきところにカチッと填まって全体の構図が見下ろせるようになった後半部の盛り上がりはなかなか。やはり『バッカーノ!』同様「勢い」が重要なファクターとなっており、とにかく本作は「勢い」に乗った以降が面白い。「勢い」を楽しむのが乙な作品。細かいことを考えるのは最後でいいです。

 『バッカーノ!』とはほんのひと味違っただけの話。しかし「ほんのひと味」の差が意外に大きい。ヤスダスズヒトのタッチも好きなので、『バッカーノ!』とどちらがよいかと訊かれても決めかねるところです。それにしても作中に出てくる映画の「スペツナズナイフ十万発連射のシーン」は率直に見てみたいと思いました。『英雄』の矢襖みたいになるのだろうか。


2003-12-16.

『PIZZCATO POLKA』、コンプリート。

 案外早く終わってしまいました。短いってほどでもないですけれど。『パティシエなにゃんこ』の半分くらいかな? 攻略にてこずった部分があるので、実質的には更にそれ以下となりますが。

 メインヒロインは4人いて、一応それぞれに個別エンドはありますが、見方次第では一本道と言えますね。ステラのルートへは他のヒロインたちの3シナリオをクリアしてからじゃないと入れない構成になっているうえ、中身の方もそれまでの3シナリオを総合し、+αして物語の空欄を残らず埋めるようなものとなっています。伏線があらかた消化されるため「風呂敷の広げすぎ」というふうになることもなく、そういう意味では気持ち良く終わる。

 サスペンス・ストーリーとしては、「萌え」の要素を捨て切れなかったせいで及び腰というか、ぶっちゃけヌルくなっています。プレーしていて危機感を覚えるシーンも少なかったし、ショッキングな展開ともなれば数えるほどしかありませんでした。かと言って「萌え」が良いのかというと、これまた微妙。ヒロインたちの個性は出ていますが、その個性を活かすための場が充分に与えられていないせいで魅力を発し切れていない。残念。

 物語のテンポが早いってのが難なのですよね……こっちの心の準備が終わっていないのに、さっさと先に進んでしまっていつの間にかクライマックスとか濡れ場に差し掛かってしまっている。前半で比較的だらだらして、後半に入るや否や全力疾走──といった感じです。当方、主人公のテンションに付いていきかねました。

 そんなこんなでメインのステラルートに入るまでは不満まみれだったのですが、いざステラルートに突入してみると、さすがメインだけあって尺も長く、他のシナリオよりかはしっかりしています。過去の挿話も挟まれて、物語がイイ具合に膨らむ。そして怒濤のクライマックスへと流れていくわけです。スペクタクル・シーンが燃え切らなかった憾みはありますけれど、伝奇サスペンスとしてはごく順当に楽しむことができ、「まあ、なんとか元は取れたかな」という気分になりました。佳作の一歩手前といった感触。絵柄が不安定でころころ変わりがちなところや、スキップが遅く、その他もいろいろ微妙に使いにくいシステムについてはマイナス。

 「萌え」や「燃え」、「サスペンス」や「謎解き」など、一つの要素に絞って期待を掛けると肩透かしになりそうな気配が濃厚です。こちらの要素をバランス良く薄味で盛り込んでおり、「ハマる!」というほどでないにしろ、誰がやっても徹頭徹尾つまらないということはまずないと思います。一点特化系を偏愛する人でなければ地味にオススメ。

 余談。気に入っていたユーリ&ユーニ姉妹の出番が少なくて鬱です。「萌え」で言えばメインヒロインたちにも負けていないのに……その代わり、いくつか燃え関連のCGが混ざっていたことは満足。これで戦闘シーンの演出、描写、セリフ回しがもっと「燃え」を意識したものなら偏愛対象として見ることができたかもしれず。まあ、ぱじゃまソフトがニトロ化しても困るっちゃ困りますけど。

・古処誠二の『接近』読了。

 第6長編。ハードカバーとしては『ルール』『分岐点』に続く3冊目。「主な著書」の中に講談社ノベルスの3作が挙げられていないのは、『ルール』以降の路線を作者のイメージとして強調したいからだろうか。

 本土の桜が咲く頃、沖縄に米軍が上陸した──数えで12歳、満で11歳の少年・安次嶺弥一。国民学校の児童である彼は皇国民としての誇りを抱き、「鬼畜」の米兵に憎悪を燃やす一方で、生まれ育った沖縄を「守り抜く」と断言する神軍に期待と敬意を寄せていた。ある夜、米軍の攻撃が激化する中、大人とともに雑木林へ入っていった弥一は洞穴で取っ組み合っている兵たちを目撃する。誰何に驚いたふたりの兵士が逃げ出し、洞穴には負傷した兵士と連れの兵士が残された。負傷したのは北里中尉、もうひとりは仁科上等兵。襲ってきた兵士たちのことはよく知らないと言った。日々後退する戦線。人間を紙屑のように破壊する空襲。島民を「スパイ」と疑う兵隊。兵士を疎む民間人。少年の心と、沖縄の実態。状況はひたすらに悪化していく……。

 ミリタリー・テイスト漂うミステリからミステリ・テイストを持った戦争文学へ、微妙にフィールドを移りつつある古処誠二の最新作。舞台は沖縄。主人公が少年という点は前作の『分岐点』と同じだが、今回は一段組で200ページ足らずと短い。しかしながら、プロットはキチンと練り込まれており、淡々とした文章も目に優しく読み易い。日常が戦争に侵蝕される悲惨な環境の中で、次第に感覚が鈍磨していく少年の姿が興味を引きつけて離さない。ストーリー構造はシンプルでいて面白い。1作読むごとにどんどん古処への好意が高まっていきます。彼の作風はある意味「地味」とも言えるけれど、ゆっくり読めば読むほど美味しくなる要素を含んでいる。是非とも遅読をオススメしたい1冊。


2003-12-15.

・ファウストのメールマガジンをよく見たら、来年の1、2月に清涼院流水の『彩紋家事件(上・下)』が連続刊行とありますよ……JDCシリーズの、時系列的には一番最初となる話なんですが、4年前に『カーニバル』連作で「うへえ」な世界を強制体験させられたことが読書経験における軽度トラウマとなっている当方、正直言って少し尻込み。

 去年の『みすてりあるキャラねっと』はネーミングや文章の肌寒さに目を瞑れば真っ当に面白い作品だったので、御大も書こうと思えばちゃんとしている話は書けるはずなんです。でも、新作がJDCシリーズともなれば──「ちゃんとしている」なんてことはまずありえない。『コズミック』『ジョーカー』『カーニバル』と良くも悪くも読者の度肝を抜き続ける作品ばっかり出し続けておいて、これでガチガチの本格だったりしたらマジでビビりますし。

 無茶苦茶なことをやってくれる、という予感は一種の期待でもありますが、果たして4年ぶりの「無茶苦茶」に当方の精神がついていけるかどうか……すこぶる不安。まあ、なんだかんだ言って結局は買っちゃうと思います。

「須達龍也のホームページ」、移転。リンク張り替え。

『PIZZCATO POLKA』プレー中。

 ミリアムを攻略し、ようやくステラのシナリオへ突入することが可能になりました。このピチポルは「固定BAD → ヘンリエッタ、ニコ、ミリアムの3シナリオ → ステラのシナリオ」と大枠で攻略順が決まっており、メインとも言えるステラシナリオは最後の最後まで伏されています。攻略のヒントについてはディスク中の「index.html」というファイルを参照されたし。ただひとつ付け加えるなら、面倒でも「はじめから」でプレーをし直す癖を付けていれば却って時間が省略できます。急がば回れ。

 昨日も書いた通り、ヘンリエッタ、ニコ、ミリアムの3人のシナリオ展開には若干物足らない気分が残りました。主人公とヒロインの互いに惹かれ合っていく過程がいまいちおざなりなせいか、クライマックスに差し掛かっても盛り上がらず、エンディングを迎えても「なんだかな……」といった感触。日常シーンは量にしろ内容にしろあっさり気味で「萌え」は控え目ですし、シリアスなシーンについてもプレーしていてドキドキするようなサスペンス性が希薄で、なんか中途半端でした。

 扱いから言ってステラのルートがメインみたいだから、これでなんとか遅れを取り戻してもらいたいな……と願っておりましたところ、実際なかなか良さげな展開に直行しています。今は、過去の挿話あたりをやっている最中ですが、このゲーム、下手すると現代の話より過去の話の方が面白いかもしれない。ふつうにプレーしていて楽しいです。昨日の日記は「がっかりムード」を前面に押し出して書いてましたけれど、うまい具合に挽回してくれているので、この調子なら「残念な結果」にはなりそうにありません。期待してもいいのかも……。

・フィリップ・プルマンの『黄金の羅針盤』読了。

 “ライラの冒険”3部作の第1弾。ダイモンという、幽波紋(スタンド)みたいな守護精霊を持つ人々が暮らす世界を描いたパラレル・ワールド・ファンタジー。続編の『神秘の短剣』で主人公ライラは「あちら」の世界から、ダイモンが存在しない「こちら」の世界へ移行し、シリーズ最終巻の『琥珀の望遠鏡』になると「あちら」と「こちら」を行ったり来たりするとのこと。

 ライラの住むジョーダン学寮──好奇心旺盛な彼女は、学寮長がライラのおじであるアスリエル卿のワインに怪しげな粉末を注ぎ込むところを目撃してしまった。あわやアスリエル卿がそのワインを飲み干そうとし、慌てて止めたライラ。この瞬間から、彼女の数奇な冒険は運命によって決定付けられた。「ダスト」なる謎の言葉を巡り、子供を攫って妙な実験を仕掛ける集団ゴブラーや、鎧をまとうホッキョクグマたち、空を飛ぶ魔女たちと出会って加速度的に巻き込まれていく。真実を告げる羅針盤「真理計(アレシオメーター)」と、何よりも分かち難い半身のダイモン「パンタライモン」を頼りに歩み続け、ついには世界の秘密を知る。オーロラの向こうに透けて見えるもう一つの世界とは……。

 パラレル・ワールドを舞台にした物語ですが、ファンタジー色よりもスペクタクル色が濃い。派手なシーンが満載されています。主人公のライラが相当なお転婆で且つ機知も働き、11歳という設定でありながら獅子奮迅の活躍を見せ付ける。スタンドのように付きまとうダイモンの存在もしっかりストーリーに組み込まれており、ライラの住む世界ではダイモンがあって当り前のものと認識されている。作中の表現によればダイモンがないのは「顔がなくなったのと同じ」で、地方によってはダイモンを失った人間は生ける屍になると言い伝えられている有り様。お互いのダイモン同士でコミュニケーションするシーンもあって過不足なく設定が活かされている。

 けれど、本作において注目を外せないのは何と言ってもイオレク・バーニソン。人語を解するホッキョクグマです。彼の一族パンサービョルネは鉄の鎧をまとって戦うことを誇りとする集団で、彼はとある理由から一族を放逐されて一匹熊になっている。ライラと出会った頃は鎧もまとわず人間の工場で働きつつ酒場でアルコールに溺れる零落ぶり。

 彼が自らの「魂」と言い切る鎧を取り戻してからが本番だ。ただでさえ頑健な身体を持つクマが、更に重々しい鎧を装備するのだから攻撃力に防御力を含めた総合戦闘力数値の跳ね上がりは凄まじい。迅雷の如く暴れ回るイオレクの姿ともなれば「燃え」の一言に尽きる。クマの王と決闘するシーンは本作随一の名場面と断言しても差し支えない。

 「主人公は11歳の少女」という部分を見て「萌え」を期待すると、あまりにもやんちゃなヒロインを目にしてがっくり来るかもしれませんが、罷り間違って「燃え」を期待していたならば、予想を上回る激しさに喜び踊り狂うことは確実。ハリー・ポッターよりもアルテミス・ファウル寄りといった印象を受けた。続きも文庫化するらしいのでのんびり待つとします。


2003-12-14.

『沙耶の唄』、マスターアップ

 これでひと安心。

『PIZZCATO POLKA』プレー中。

 どうも初周はバッドエンドで固定されているみたいです。その後もう一度「はじめから」を選ぶと新しい選択肢が出てくるって仕掛けでして……この構造に気づかなかった当方は無意味なセーブ&ロードを幾度か繰り返してしまいました。思わず『歌月十夜』での失敗を連想する徒労感。当方、基本的に「はじめから」は一回しかクリックしないタチです。あとはセーブ&ロードで賄うのが常。

 というわけで、一度バッドエンドを経由して「はじめから」を選んでやり直せばオンリー・プレーでもOK。当方はまずドジっ娘属性の巨乳大学教授ヘンリエッタに狙いをつけてクリアし、続く2人目をちっちゃいスリ少女ことニコに定めてクリア。あとはミリアムとステラですか。

 パテにゃんは結構長いゲームでしたが、ピチポルは意外なことにそれほどでもなく、割とサクッと話が進む。ちょっと拍子抜けかな。事件の方は思った通りオカルト要素が絡んできますので、「連続殺人犯の容疑者を地取り・鑑取りで炙り出し、アリバイの一覧表をつくって多少アクロバティックな推理を働かせつつも物証固めを行い、関係者を一堂に集めていざ大団円! 探偵のネチネチと嫌味ったらしく回りくどい口調! うっかり口を滑らす犯人! そして明かされる意外なトリックと動機! だが背後にはまだ真犯人の影が……」といった本格っぽいノリの展開はなし。でも敷かれた伏線をちゃんと回収するところはミステリマインド。

 うーん……ぶっちゃけ、期待していたほどの面白さではないです。萌えにしろサスペンスにしろ、互いに譲り合っている状態であり、結果として両方ともヌルくなっている。出会って交流して事件に関わって危険に晒されて……とバタバタしていたら、いつの間にか主人公がヒロインに「君のことが好きなんだ」とか口走っている始末。どうも、物語のテンションに身体が付いていかないみたいです。

 まだコンプリートする前なので断言し切れませんが、この調子では残念な結果になりそうな予感がします。なんとかラストで挽回してもらいたいのですけど……。


2003-12-13.

『PIZZCATO POLKA』を購入。特別パッケージ版の方です。早速プレーしてみました。

 ストーリー。留学していた先輩が失踪し、「巷で騒がれている連続殺人事件に巻き込まれたのではないか」と心配する主人公。同じ大学へ留学が決まったのを幸いに、先輩の行方を調べることにした。ヘクセンブルグ──「魔女の街」。彗星が接近する夜空。果たして先輩を探し出すことはできるのか……。

 と、サスペンス・ムード漂う物語。ミステリっぽいですが、「魔女」云々というところからして超常要素も混ざってきそうです。いきなり5分で強制送還された挙句、続くプレーで物の見事にバッドエンドへ突入してしまいました。何が原因なのかよく分からないので、こりゃあひょっとしたら結構てこずるかもしれない。どうやら、気になるヒロインにだけアタックしていればいいオンリー・プレー型のゲームではなく、重要なところを押さえていないと先に進めない昔気質のAVGみたいです。最近はヌルいのばっかりやってますから、ちゃんとクリアできるか不安げ。

 んー、ストーリー重視とあってか、「萌え」の要素は控え目。キャラクターの魅力よりも話の面白さで引っ張ろうとするタイプの模様です。で実際に面白いかどうかと言えば、現時点では微妙。よく分からないうちにバッドエンド迎えちゃいましたし。テキストは可もなく不可もなく。ウィンドウからして小さいので一度に表示できる文字量がかなり少なく、必然的に文章をシンプルにせざるを得ない──といったところ。

 とりあえずユーリたんに(*´Д`)ハァハァ。ウェイトレスの姉の方。小さい姉と大きい妹っていう設定も乙ですが、単純に可愛くて萌えます。これだけ魅力的でエロシーンなり見せ場なりがなかったら泣ける。

・伏見憲明の『魔女の息子』読了。

 第40回文藝賞受賞作。同時受賞作の『黒冷水』『オアシス』が良かっただけに期待を掛けていましたが、この作品も無事「アタリ」でひと安心。本当に今回の文藝賞は豊作だったみたいだ。

 主人公は40歳直前で、ライターで、ゲイ。特定の恋人を持たず、いつもハッテン場で相手を探している。飲んだくれで気性が荒かったのに癌であっさり逝ってしまった父、新しい恋人を見つけて老いらくの恋を楽しんでいる母、普通に結婚して妻子を持つ兄、3歳のときに一度見たきりだった姪。近親者の誰とも気持ちを共有することがなく、仕事上の付き合いがある女性編集者や、よく行くゲイ・バーのママにもよそよそしさを感じている。寄り添うのは孤独だけだったが、ただひとり、ハッテン場で出会った右脇腹に傷のある名も知らない男のことが気になっていた……。

 傍観者として周りの事態をよく見、よく聞いてはいるが、自身はあまり行動らしい行動を起こさず流されるままに流されていく。エイズに感染している可能性を頭の隅で把握しながら、深く考えようとはしない。何かが近づいたかと思えばすぐに遠ざかっていき、手を伸ばしてもうまく掴めない。「現実」とか「世界」とか、自分や自分以外のものに距離感を覚えている中年男の物語です。複数のラインが同時進行し、各々で各々の決着を見せて話はキレイに畳まれます。「魔女」については片鱗を微かに匂わせるだけで深く突っ込んでおらず、タイトルと内容の間には少しギャップがある。が、緩やかでいて弛まぬ絶妙な語り口のおかげで読んでいる間は気にならなかった。

 周りのものが自分に気紛れで近寄ったり遠ざかったりするのをただ観察して恨むのではなくて、何かを求めるんだったら自分の方から歩み寄って行けばいい。そんな当り前のことが温かい結論として喉を通っていく。縄跳びで、回っている縄に入り込むタイミングを計っている瞬間──思わず記憶が甦ってくる読後感だった。

都筑道夫、逝去

 本格もホラーもスリラーも、なんでも面白い小説が書ける作家で、当方も一時期ハマってあれこれ読み耽ったものでした。『七十五羽の烏』とか『悪魔はあくまで悪魔である』とか『猫の舌に釘をうて』とか『翔び去りしものの伝説』とか、好きな本はたくさんあります。句点の多い文章を見る度真っ先に「都筑道夫みたいだな」と思うほど印象が強かった。さすがにショックがでかい。ここ最近になって復刊が進み、入手困難な作品も見つかりやすくなってきたところだったというのに……ご冥福をお祈りします。


2003-12-12.

・ピチポルこと『PIZZCATO POLKA』への期待を漲らせ中。トイレの電球も替えたし準備は万全です。

・保科昌彦の『相続人』読了。

 第10回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作。「偶数回に限って良作に恵まれる」というジンクスのあるホラー大賞ですが、「受賞作なし」だった前回に対して今回は大賞・長編賞・短編賞のすべてが揃い踏み。その中では大賞を取った『姉飼』がなんとも言えない存在感を放っている。受賞作の中で唯一長編だった本書はその影に隠れてしまい、いまいち目立っていない気がします。

 詳しく書くと結構面倒臭いストーリーなので思い切り端折りますが、要はある「事故」で無念を抱いたまま死んだ女性が、どうも幽霊になって復讐行為を働いているみたいだ……と新聞記者の主人公が気づき、現在において連続する不審な事故を追う一方、過去の「事故」についても調べるといったもの。これだけならよくある怨霊話に過ぎないのですが、事態が飲み込めてくるにつれ、疑問点も増えていくあたりが定型とは異なっている。「なぜ、『事故』を起こした当人たちを直接復讐するのではなく、ネチネチと彼らの子供を狙うのか?」「なぜ、幽霊と思われる女性にはショートカットとロングヘアーの2パターンが存在するのか?」「なぜ、部外者であるはずの主人公の周りにも幽霊が出てくるのか?」……こういった謎がストーリーを混迷させ、先の見えない展開に仕立て上げている。文章はこなれていて充分なレベルに達しているし、筋立てもサスペンスフルで読者を飽きさせない。そういう意味ではよくできている作品です。

 一方、難点を挙げておくと、はっきり言って「怖くない」こと。角川ホラー文庫の作品はほとんどがホラーにしては怖くないんですが、特にこの『相続人』は上記した「謎」の要素が濃く、ホラーとしてよりミステリとして盛り上がってしまう。謎解きの方に関心が行ってしまって、幽霊が出てきたり事故が起こったりしても「ああ、新たな局面に移ったな」と思うだけでゾクッとするものがない。主人公はどちらかと言えば事態に巻き込まれたタイプなのですが、事態を外側から見ようとする性格が強く、幽霊に魅入られた「被害者」という性格は薄い。それから、展開は定跡を外しているものの、真相そのものは結局パターンを踏襲してしまっている点。逆を言えば、ありふれた真相から凝ったストーリーを紡ぎ出しているとも言えますが……。

 工夫の利いたアイデアと危なげない文章でキレイに話をまとめている。その代わり、タイトルと同じくどこか掴み所がなくて地味、といった面もある。読んでみると結構面白いのですけれど、読む前に「面白そう」と予感させる要素が少ない。そこがネックかと思われます。とりあえず、ただ血まみれで出てきてみんなを驚かせる幽霊よりも、変に理屈をこねてわざわざ面倒臭い遣り方で復讐をする幽霊が好き──って方にはオススメ。


2003-12-11.

・一瞬ド凄い閃光が走ってトイレの電球が消えました。いや、居合の達人がぶっ斬ったかと思うくらい凄かったですよ。ホラー映画なら確実に殺されているシチュエーション。替えがないため薄暗い空間での用足しを余儀なくされていますが、とりあえず当方は元気です。

・黒川博行の『国境』読了。

 あの『疫病神』のコンビが再登場。産廃問題を巡って散々な目に遭ったふたりが、今度はよりによって北朝鮮でもっと散々な目に遭います。相変らず抜けている主人公・二宮と、相変らず凶暴で剽げたヤクザの桑原が痛快無比のボケとツッコミを繰り広げる。韓国語も中国語も飛び交うが、ふたりは「アンニョンハセヨ」「カムサハムニダ」くらいしか言わず、後はひたすら関西弁。桑原は北朝鮮の惨状を目にするたび「あのパーマデブが」と毒づく。

 要はヤクザを騙して金を取った詐欺師が北朝鮮へ逃げ込み主人公のふたりが追いかける話で、分量の長さからも察せられる通り前半は割合のんびりと観光に励んでいます。それが中盤あたりから「ほな国境を越えるか──無断で」という話になっていき、一気に緊迫感が高まっていく。

 金目当てでいろんな人間が複雑怪奇に入り乱れるのは前作と同じ。主人公と桑原の遣り取りが愉快極まりないのも、もちろん同じです。たとえばアパートのある部屋に侵入しようとするシーンで、

「ここは最上階ですわ。屋上からベランダに降りるのは」二宮は非常口を指さした。
「朝っぱらからサーカスしてどないするんじゃ。ベランダは電車から丸見えやないけ」
 桑原も人目は気にするらしい。

 という遣り取りを経た後に桑原が代替案を出し、それが失敗したらどうすればいいんだ?と不安を滲ませる二宮に向かって

「屋上からベランダに飛ばんかい。線路に落ちて電車に轢かれてハンバーグになれ」

 ってな具合に解決案でもなんでもない無茶苦茶なことを言って結局自分の出した策を押し付ける桑原がステキ過ぎる。気弱キャラと凶暴キャラのコンビってのはコントラストがくっきりしているだけによく用いられる設定ですけれど、このシリーズは本当に桑原のイケイケヤクザぶりが読んでいて面白い。

 結構ハードな冒険ストーリーなのに、終始「笑い」の要素を忘れないというのも凄い話です。単独で読んでも楽しめますが、『疫病神』を読んでおくとより一層楽しめること請け合い。装丁&粗筋の重々しい雰囲気とは随分ギャップのある内容でしたけれど、たっぷり中身を堪能することができたので満足です。


2003-12-10.

・ここのところプロジェクトXを見ていない焼津です、こんばんは。そろそろ血中のトモロヲ分が乏しくなってきた頃かと。ちなみに当方はものつくり系の話が好みです。

テキストを更新、『Clover Heart's』。バカップルスキーには何が何でもオススメしたい一本。青臭いストーリーもさることながら、ヒロインとひたすらイチャイチャし続けるというコンセプトが素晴らしい。

・京極夏彦の『覘き小平次』読了。

 小さい頃に押入れの中で暮らしたいと思ったことがあります。別にドラ○もんへの憧れからではなく、ただ単に薄暗くて狭くてふかふかの布団が詰まった空間を、生きるのにとても心地良い場所だとぼんやり感じたからです。胎内回帰願望の一種かもしれませんが、そんな御託はともかく「押入れ」というモノには不思議な魅力がある。

 友人にも当方と同じかそれ以上に押入れを好んでいる奴がいます。さすがに今はどうなのか疑問ですが、学生時代は修学旅行先の旅館でも布団を敷かず「俺、押入れな」と宣言するやさっさと閉じ篭ってしまうくらいの押入れスキーで、宵のうちは襖を開け放しておりますが夜も暮れる頃になるとするする閉めていく。やがて消灯の時間を迎えます。けれども、消灯の時間が来たからって素直に眠り出す奴は少ない。一部の寝たがりは静かに鼾をかいていますが、ほとんどは目が冴えた状態でコソコソとうるさくない程度に騒いでおります。会話が地味に盛り上がり、誰かがうっかり妙なことを口走ったりでもすれば、スッと襖がちょっとだけ開いて、「そりゃ○○だろ」とか短いツッコミが飛ばされた後、間髪入れずピシャリと閉まる。狙い澄ました場面で一方的に言いたいことだけを言ってウケを取る、見方次第では美味しい役どころを獲得していたわけで、何も同室の生徒たちを拒否(ないし無視)しようとして閉じ篭っていたわけではないのだと思います。

 さて、『覘き小平次』は『嗤う伊右衛門』に続く怪談アレンジものです。当方、「生きてゐた小平次」という元ネタとなる怪談を知らず、そのせいでアレンジの面白みは味わえなかったのですが、展開が読めなかったという利点もあり、結果としては楽しめました。納戸の中に引き篭もって一寸五分の隙間から外の世界を覘く小平次は、当方の幼少期や友人の姿とは重なりそうで重ならず、そのズレが却って面白かったです。「幽霊役だけが巧い」「普段は納戸に引き篭もっている」「真っ暗闇は好きじゃないので一寸五分だけ隙間を空ける」──これらの設定が有機的に機能する一方で、綾なす人間関係が物語を何重にも錯綜させて盛り上げている。京極の業は相変わらず冴えに冴えている。

 ただ、すべての物事を一つに結び付けようとするあまり、構成がキレイになり過ぎて、怖がるよりも「ああ、巧いなぁ」と感心の念が先行してしまうのは怪談としてどんなものなのだろうか。細かく説明していくことで物語の厚みは増していきますが、厚くなれば厚くなるだけホラーの風味は薄くなっていく。京極夏彦の作風はどこかジレンマを抱えている節があります。

 「ベッドの下に手斧を持った殺人鬼がいて、鏡越しに目が合った」という都市伝説がある。割とポピュラーで、地域によって微妙に細部が異なるなどパターンも豊富らしい。しかし、この『覘き小平次』みたく、覘かれる側ではなく覘く側の「視線」に切なさすら覚える話はあったのでしょうか。たった数センチの隙間が、おぞましくもいとおしい。


2003-12-09.

クロハは結構後を引きます。未だにアンインストできず、思い出したように各種イベントをつまみ食いしている有り様。主に玲亜関連。あの声は麻薬だ。ピチポルまでの暇は問題なく潰せそうです。

・歌野晶午の『葉桜の季節に君を想うということ』読了。

 さすがに「本ミス」や「このミス」で1位の座を射止め、このままなら「文春」も制して三冠を為す可能性が高いとあってはおちおち積んでいられませぬ。およそ8ヶ月は放置していましたが、一念発起して読み出しました。この著者の作品は『ROMMY』以降未読であり、もう作風とかも忘れかけていた始末。

 成瀬将虎は「何でも屋」ならぬ「何でもやってやろう屋」。頭っから物事を「駄目だ」「無理だ」と決め付けたりせず、とにかくやりたくなってことをやって今まで生きてきた。探偵事務所に弟子入りし、成り行きで極道の盃を貰い潜入捜査を行ったこともある。そんな彼は2002年の夏、ある女性と運命的な出会いを果たす一方、悪どい霊感商法に騙されたあげく不審な死を遂げた男の遺族から「蓬莱倶楽部」なる組織の内偵を依頼される。そして、恋に捜査に荒事にと忙しい日々が続いていき……。

 良く言えば詩情の香る、悪く言えばクサいタイトルからベタベタと濃密な恋愛ミステリを予感させたが、別にそうでもありませんでした。重要とはいえ、あくまでも「恋」は物語の一要素です。布団セットを一組で百万円とか、ミネラルウェーターのペットボトルを一本二万円とか、まさしく暴利を貪っている霊感商法の組織にほとんど自分ひとりだけの力で向かって行く主人公の姿を、時に断章を挟みつつ描いていく長編ミステリです。タイトルに漂う詩情(乃至クサさ)の割にハードボイルド調ではなく、かなり明け透けに主人公の心情をバラしまくっています。主人公はカッコ良すぎず、かと言ってカッコ悪すぎもしない等身大のヒーローで、清々しい読み心地をしている。

 文章は正直に書けばこなれておらず、垢抜けない印象があります。出だしはちょっと退屈でした。しかし、テンポは良いのである程度まで読み進めれば後は勢いに乗って最後まで突っ切ってしまう。洗練された──という表現は似合わないけれど、多少泥臭くともキチンと練り込まれた丁寧さがあり、とても読み易かった。この『葉桜の季節に〜』はソフトカバーという体裁のせいで却ってハードカバーより厚く見えてしまいますが、実際のところ「うへえ」と唸るほどの分量でもありません。長そうだから、と尻込みされている方はご安心を。ぶっちゃけ、解説やらインタビューやらで巻末の30ページくらいは本編じゃないですし。ただ、巻末の「補遺」は本編のネタバレを高濃度で含んでいますので、絶対先には読まないようご注意。

 爽快。流麗。何よりも、巧い。どれくらい巧いかと申せば、柔道であまりにもキレイに技を決められて、自分が投げられたことも分からず、「あれ? なんで俺、倒れてるの?」と呆けてしまうくらい、巧い。スペクタクル性は薄いので、衝撃や刺激、スリルやサスペンスを求める向きには合わないかもしれない。堅牢なロジックで固めたガチガチの本格でもないから、狭義の本格ファンには薦めがたい面もある。しかし、超絶技巧であることは間違いなく、構成力は「抜群」の一言に尽きる。ジャンルの枠で囲わないことがこの作品の魅力を保つのであって、具体的に「こうだ!」と決め付けると却って魅力が損なわれてしまう。こだわりは一時的にでも棚上げすることをオススメ。この作品はこだわって読むよりも、こだわらずに読む方が楽しいかと。

 綾辻行人、法月綸太郎、有栖川有栖、我孫子武丸といった他の面子に比べ、第一期新本格作家の中ではもっとも地味とされていた歌野ですが、これでようやく「ウタノショウゴ? 誰それ?」「え、まだ新作とか出してんの?」「つーか、読んだことない」と言われ続けた冬の時代もやっと終わりそうでひと安心。今後もトリッキイなミステリ作家として活躍されることを切に希望しつつ、積んでいる他作品を地道に崩すとします。


2003-12-08.

『美鳥の日々』アニメ化DAIさん帝国経由)

 「右手が恋人」という衝撃的なキャッチコピーと、それに反して案外まともに面白い内容。絵柄も話も安定しているし、少年マンガとしては隙のない模範作だと思っていましたが、それにしても早いですねー。コミックはまだ4巻までなのに……せいぜい放映開始頃に6巻が出るペース。とりあえずは注目しておきます。

・大塚英志の『僕は天使の羽根を踏まない』読了。

 大塚英志の場当たり的な仕事は“摩陀羅”シリーズのみならず『多重人格探偵サイコ』でもよく見られ、一時はハマったものの「ついていけねぇ」と脱落していく知人のファンもいましたが、当方は半ば惰性のような形で追い続け、いろいろ呆れる思いをしながらも新作はチェックしていました。彼の作品群は一つのサーガになっていて、パッと見では独立しているのに実は話が繋がっているとか、無理矢理繋げたとか、とにかく全体を知っておかないと分からないネタがひょこっと出てくるものだから侮れません。

 で、この本は単発作品みたいなタイトルをしていますが、『MADARA 転生篇』の決着というか、完全版です。『MADARA MILLENIUM 転生編1』という、奥付によればかれこれ4年も前に出た、「これでようやく転生篇が終わるのか」とファンを期待させつつも結局2巻が出なかった角川スニーカー文庫所収小説を改題改稿したうえ、2巻となるべきだった後半部を継ぎ接いでいます。

 「前世」に魅せられ、堤防の上で自殺未遂をした89年の夏──あれから6年の月日が流れ、伏姫麒麟は郷里である淡路島へと帰ってきた。彼女にとって唯一の理解者、犬彦とともに。前世で恋人だった少年「摩陀羅」を見つけ出すための旅はそろそろ終わりつつあった。「摩陀羅」の居場所を探り当てるのではなく、麒麟が「摩陀羅なんていない」と諦める形で、彼女は自分の少女時代と訣別するつもりだった。しかし、淡路島では奇怪な殺人事件が発生し、ふたりのモラトリアムはもう少し長引きそうな様相を呈する。前世。転生。かつての仲間たち。かつての敵たち。天使の羽根を踏みにじらないよう細心の注意を込めて、ふたりの彷徨は続く……。

 当方は『摩陀羅 赤』が「マル勝」に連載開始されたときからリアルタイムで読み始め、古本で『壱』と『弐』を揃え、「電撃スーパーファミコン」に移行してからも追い続けていました。“摩陀羅”シリーズは大塚英志がうっかり勢いで「108のエピソードがある」と口を滑らせてしまったがために摩陀羅たちが107回も転生するハメになったある意味で凄いシリーズなんですが、大塚の根気が続かなかったせいで実際に出たエピソード数はそれほど多くもありません。当方、『ギルガメッシュ・サーガ』は押さえていないし、シリーズの全体像も把握していませんから、あんまり熱心なファンとは言えない。

 転生篇はそれまでファンタジーだった“摩陀羅”を現代物にするという企画で、107回目の転生──つまり最後の転生を描いてシリーズの掉尾を飾るエピソードとして始まりました。が、あっさり中止。麒麟も聖神邪(犬彦)も学生で、平和な学校に怪異が忍び寄る割とありがちの伝奇アクションだったのですが、なぜかマンガを描いてるのは田島昭宇じゃなかったし、アニメだのラジオだのとメディアミックスを謳いながらもかなり中途半端に立ち消えてしまいました。

 そのまま「なかったこと」になりそうな雰囲気も漂ったものの、大塚英志は電撃文庫で「天使篇」の刊行を開始しました。舞台は現代を越えて近未来になり、麒麟も犬彦も既に大人となっています。大塚英志にとっては初めての小説だから張り切ったのか、『JAPAN』や『東京ミカエル』といった彼が手掛けたマンガ原作のストーリーも合流させ、魔界都市ばりのオールスター伝奇と化していったのですが、3巻目でプッツリと途切れました。出版社と喧嘩したらしいです。かくして天使篇は幻の未完エピソードとなったのですが、『多重人格探偵サイコ』の小説版でチラッと麒麟を出すなど、「ひょっとしたら続きが……」とファンを生殺し状態にするような真似もあったりなかったり。

 『MADARA MILLENIUM 転生編1』は転生篇がポシャり、天使篇がポシャった後に出た、いわば転生篇のリベンジ作品でしたけど前述の通りいつまで経っても2巻が出ませんでした。「またポシャったのか!」とツッコむ気力さえ失い、『リヴァイアサン』とか『多重人格探偵サイコ』とか『木島日記』とか、別シリーズに精を出す大塚英志の姿をぼんやりと眺めることに。

 ですからこの『僕は天使の羽根を踏まない』は三度目の転生篇チャレンジとなるわけです。「三度目の正直」とはよく言ったもので、今度はポシャったりせず、ちゃんと話が最後まで書かれています。なんと言うか──ページを最後まで繰って、ようやく長年抱えてきたものを肩から降ろした気分になりました。やっと終わったのか、って。そのへんいろいろ思うところがありすぎて、却って何も書くことがないです。

 当方は前提として「前世」や「転生」といったネタが好きではないんです、本当は。小学生のときからずっとそうで、「前世で恋人だった」とか「来世で、また……」とかやられると萎えてしまいました。前世や来世というものが、たとえあったとしてはそれほど「今」と関係あるものなのか? と、つまりは輪廻というものにリアリティを感じることができなかった。MADARAにハマったのは田島昭宇の美麗絵に拠るところが多く、「転生して、誰が何になるか」なんて部分はパズルのピースがどこに嵌まるのかという程度にしか興味がなかった。筋もあんまりマジメに追わなかったので、今となっては相関関係や細かい設定など忘却の彼方。「天使篇」を読み出したら案外大塚英志の文章が面白かったので、そこでようやく大塚英志の方に焦点を当てる気が湧いてきたくらいでして、そういう意味でも当方は熱心なファンと言えない。

 ですから、敢えて書けば「転生」を軽視し、蔑ろにしたストーリーが読み易かった。やはり当方はどうしても「転生」という概念をポジティヴに捉え切れないので、「転生」のネガティヴ色を押し出した展開なら苦もなく馴染めます。ちょっと前に読んだ『忌まわしい匣』所収の「翁戦記」も、転生戦士の悲しみを含ませた内容につきお気に入りです。

 “摩陀羅”シリーズを踏まえていないと分からない小ネタは多いですが、既に作者自身“摩陀羅”を吹っ切っている部分が大きいので、細かいところはテキトーに流しても大丈夫な仕様になってます。1冊の独立した本として読んでも、まったく意味が分からないということもなかろうかとと思います。読んで楽しめるかどうかは別なんですが。そもそも大塚英志の作品だから好悪は分かれるでしょう。当方は彼の作品を追うのに毎年少しずつウンザリしてきている人間ですが、それでもいざ読み出してみれば即座に引き込まれ、夢中になって読み耽ってしまう。いささか理不尽なことではあるけれど、やっぱり当方は大塚英志が好きみたいです。世に自分の好みほど、どうしようもないものはない。

 伝奇やオカルトといった要素をスペクタクルの材料としてではなく、少年少女がイニシエーションを行うための踏み台として描いた青春小説。後半の強行軍的駆け足展開も一つの味として堪能することができ、充実した読後感を覚えました。それにしても、天使篇の続きはまd(ry


2003-12-07.

・一時間近く探し回った末、目的のブツを机の上で見つけた焼津です、こんばんは。手を伸ばせばすぐのところにあったのに、まるで目に入ってなかった……「灯台下暗し」を実感した瞬間。

『Clover Heart's』、コンプリート。

 終盤は思ったより短かったですね……もっとかかるかと予期していましたが。

 白兎サイドの最終章もちょっと歯痒さを覚える内容ではありましたが、夷月サイドのものに比べれば大分良いです。というかこのゲーム、「対視点」を謳いつつストーリーの展開がパラレルになっているんですけど……一方である秘密を明かし、もう一方で別の真実を暴露するってのが狙いなのだろうが、これだとマルチサイト形式を活かせていないどころか、むしろマルチサイトの旨味を殺している気がします。複数の視点によって一つの「流れ」を紡ぎ出すことで物語が多面的な構成になるのであって、複数の視点で複数の「流れ」を築いてしまえば物語はただのオムニバスになってしまう。

 とはいえ、白兎サイドの最終章で少しばかりホロリと来てしまったこともあり、コンプリートした後の感覚は清々しいものがありました。減点要素は多いですが加点要素も多く、結果として「良作」のゾーンに収まります。インターフェース等、システムも凝っていて不便は感じませんでしたし、Chapterごとに分けた構成も明快で分かり易く、変に混乱することはなかった。テキスト、グラフィック、サウンドのどれを取っても水準を超えており、また早めにヒロインとくっついてイチャイチャしたり揉めたりと波乱万丈の恋愛紆余曲折を描き込むコンセプトもしっくり肌に馴染む。「結ばれたらゴール」ではなく「結ばれてからがスタート」──人目を気にせず乳繰り合っては痴話喧嘩を巻き起すラブコメっぷりにニヤニヤしすぎて頬の筋肉が攣りそうになりました。ヤバいくらいに楽しいです。

 シナリオ面を高く評価するのが難しいせいで暴れるような布教活動を行う気持ちは湧いて来ませんが、11月に購入する新作をこれ一本に絞ったことは微塵も後悔していない。得したと思っています。

 あちらこちらの感想を見るにつけ、登場キャラが軒並み幼い容姿と幼い性格をしているって部分がやはり多くの人にとってネックになっているみたいです。主人公にしろその会話相手にしろ、一方がキレたかと思えばもう一方が逆ギレで迎え撃つ場面も多く、直情的な遣り取りが嫌いな人は「勝手にしろよ」と醒めた目で見てしまい、感情移入する気持ちが遠のいてしまう模様。体験版は一部の日常シーンとエロシーンしか切り取っていないので、シリアス展開がどんなふうか分かりにくい。素直にほのぼのラブコメディを期待していると、予想外に青臭いネタが待ち構えていてウンザリする可能性があります。そのあたりは少し覚悟されたし。ただ、従来の青春学園恋愛モノと比較すればエロ方面もかなり頑張っており、もはやDCにもPS2にも移植不可能の領域まで達していますゆえ、そっちが心配な方に関しては思う存分安心してください。

 それはともかく、当方は御子柴玲亜が放つ圧倒的な萌力の前に膝を屈して叩頭するほど参っています。確かに彼女は1×歳にしてはいろいろアレなんじゃないか、と思わんでもないです。シナリオが進むとともに成長していくってことを差し引いても若干ヤバい娘だ。しかしそんなことは些事であり瑣末。彼女の魅惑ボイスを延々耳にすれば判断力など面白いくらいに鈍っていく。あの蕩けるような声が脳の一番柔らかいところをつんつくつくつくと突貫する。そのうえマウントポジションまで取られたら抗いようはない。朝、布団の中に潜り込まれ、パンツの中に非言語的手段で「おはよう」と濃厚に挨拶されたときゃ、もうどうすればいいのやら……。「萌え」だなんて、たとえ思っていても絶対に言うもんか──と固く決心したつもりでいても、勝手に口から「萌え〜萌え〜」と言葉が漏れる。もはや自白剤級の萌え。当方、うたいまくりです。恋は理不尽であり萌えも理不尽。白旗を挙げる以外に術なし。

・クロハが終わったので、来週の金曜までは自由時間を読書主体にします。「来週の金曜」というのはもちろん「エロゲーの新作群」を指し、特に『PIZZCATO POLKA 〜彗星幻夜〜』が可能性として高い。『こなたよりかなたまで』も検討中。『あののの。』は第三候補であり、つまり様子見の可能性強し。

・積読の山から掘り出した、氷川へきるの『ぱにぽに(3)』読了。相変らず勢いと感覚に頼ったなんとも言えないノリですが、妙にツボにハマって抱腹絶倒。中途半端な萌えとヌルいギャグが相乗効果を叩き出す。「間」のつくり方というか、コマからコマへ移っていく際のテンポがすごくイイ。予想をズラすのも巧い。一時は劣化版『あずまんが大王』とか言われてましたけど、あれとはまた違った面白さかと。


2003-12-06.

・クロハが終わらないので『カラフルBOX』はスルー。のんびり人の評価を待つとします。

『Clover Heart's』、夷月サイドをクリア。

 嫌 な 予 感 的 中 。

 やっぱそっちの方に向かっていったか……体験版のときからうっそりと孵化し、いざ本編を始めるに至ってどんどんと成長していった不安。どう考えてもフツーの学園恋愛モノをやるには余計な要素がたくさんありましたから、これはきっと伏線なんだろうなぁ、と。そうして身も蓋もない終章が幕を上げました。

 別にこういう展開自体は嫌いじゃないんですけど、無理を押してまでやる必要はなかったのでは? 「雰囲気をぶち壊し」とまでは言いませんけど、明らかにそれまでの話から浮いている。いくら伏線を敷いていても強引って感じがします。加え、そういった事情を抜きにして見ても、単純に最終章の仕上がりはイマイチ。どうもイージーというか、つくりがお手軽すぎてマヌケな印象さえある。演出面に関しては特に。前章までの流れから言って、こういう展開は徹底的にやるか、まったくやらないか、極端な選択をしないとうまく盛り上がらないでしょう。中途半端が一番悪い。

 最終章だけで物事を畳もうとして消化不良を起こしています。使い方次第では如何様にも物語を加熱させられる材料をポンポンと無造作に使い捨てており、非常に勿体ない。莉織が幼少時から抱えていたトラウマとか、それに対する夷月の想いとか、処理を急ぎ過ぎて生煮え状態。お願いですからもう少し煮込む時間と手間を用意してください……。

 物語全体は長いのに、ラストが唐突なせいで随分と余裕のない構成になってしまっている。ただただ残念。個人的に白兎サイドの方が好みとはいえ、夷月サイドも悪い出来じゃなかったんです。Chapter3のさりげなくイチャイチャした雰囲気は良かった。夷月にも愛着が出てきた。それだけにこの最終章はなんともかんとも。

 なんだか、白兎サイドの最終章に入るのも不安になってきました。こっちはあまり無茶な展開をしないでくださいよ……。

『このミステリーがすごい!2004年版』

 出ましたね。国内1位は噂通りのアレ。本ミスとダブルでトップですか。上位10作の中で当方が読んでいるのは『グロテスク』『ワイルド・ソウル』の2冊だけ。8位に入っている石持浅海は『本格推理』の頃から好きな作家でしたが、思った以上に評価が高くて驚きました。本ミスはともかくこのミスのトップ10にまで食い込むとは。

 でも一番意外だったのはアレですね。16位のアレ。あまりにも予想外のタイトルでしたから「え?」と思わず表紙を見直してしまいました。自分が読んでいるのは本当に「このミス」なのか、と疑って。言われてみれば確かにハードボイルド・冒険小説の系統に属する作品かもしれませんが、よもやこっちのランキングで20位以内に入ってくるとは……トップ10はごく順当で大して意外性がありませんでしたけど、「16位のアレ」は当方にとってかなりのサプライズ。読むのがますます楽しみになりました。

 海外編もだいたい順当な結果。大方の予想通り、あの作品が1位に来ました。個人的には2位の作品の方が楽しめたんですけど、まあ、そこらへんは好みの問題かな。どっちも面白かったことは確かです。

・生田紗代の『オアシス』読了。

 第40回文藝賞受賞作。『黒冷水』と同期です。

 21歳のフリーター女性が主人公。どうということのない日常が比較的穏やかに流れていくストーリーですが、「盗まれた自転車」「無気力に囚われた母」という二つのラインがともすればバラバラになりそうなエピソード群を貫き、一つにまとめあげています。

 引っ掻き傷だらけで、かごも曲がっているのに、青い塗装が鮮烈で不思議としっくり馴染んでいた自転車。3800円の頑丈な防犯チェーンまで巻いていたにも関わらず盗まれてしまい、主人公は静かに癇癪を起こす。どうしても諦めがつかなくて、地図を引っ張り出し、どうにも絶望的な「自転車探し」を決行する。都合の良い偶然などなく、徒労だけが募る。

 一方で家事をしなくなり、日がなぼんやりと物思いに耽っている母。姉のサキとともに「粗大ゴミ」の隠語で呼び、鬱陶しく、早く離れたいと思いながらどこかしら完全には切り離せないモノを感じる。

 「暇は素敵だが、暇な人間は、全然素敵じゃない」。荒涼とまではいかないが、少し切れ味を含んだ冷ややかな視線。冬の寒い空気にぴったりとよく似合う雰囲気が漂っています。本当に「どうということのない日常」を描いた物語で、仕掛けらしい仕掛けは何もない。それでも何か好きです、これ。

 「夕飯までに帰ってこい」ではなく、「夕飯まで帰ってくんなよー」と言われる温かさ。分量もちょうどよいくらいに短くて、楽しく読み通せました。『黒冷水』も良かったし、今回の文藝賞は当たり年か? 残る『魔女の息子』も気になるところ。


2003-12-05.

・季節を一切気にせずアイスクリームなぞ買っている焼津です、こんばんは。溶けかかっている半生状態の奴を食べれば冷たすぎなくてちょうどいいです。

『Clover Heart's』、白兎サイドのChapter3をクリアし、夷月サイドのChapter3へ。

 不意に「はくと」の響きが「がくと」と似ていることに気づく。当方にとっての「がくと」は学徒でもGacktでもなく三雲岳斗です。『ランブルフィッシュ』シリーズが大好き。でもそれ以外の作品はあんまり。

 騒動が片付いたせいか、Chapter3は白兎・夷月両サイドとも大した筋はなく、まったりと平和な日常が続きます。最終章の前の小休止といった感じでしょうか。シリアス展開も悪くないけれど、ほのぼのした生活も好きなので当方に不満はありませぬ。

 とりあえず安心して「凛チャン(*´Д`)ハァハァ」「久遠サン(*´Д`)ハァハァ」と萌えアニマルになっておきます。どうも落とし所と言いますか、最終章の展開には嫌な予感がしますので……今のうちに和めるだけ和んでおく所存。


2003-12-04.

・「復讐権」でググるとトップに来るサイトです、こんばんは。

『Clover Heart's』、白兎サイドでちまりエンドをクリア。現在Chapter3をプレー中。

 今更書くのもなんですが、当方は4人のメインヒロインの中で御子柴玲亜が一番気に入っております。飛鳥凛乃木坂久遠もツボっちゃツボですが、このふたりはサブキャラとして好きって意味合いが強く、別に落としたい気はしない。やはりイチャイチャラブラブと濃厚濃密で居合わせた第三者が胸焼けのやまり反吐を出すほどのバカップル空間を展開したい相手は玲亜に尽きる。犬っぽい性格とか、バカっぽい脳天気とか、見ていて単純に可愛い。だがなんと言っても声。あの声は凶悪。『てのひらを、たいように』でヒロインの夏森永久(CV.まきいづみ)に「明生ちゃん、明生ちゃん」と主人公の名前をあの独特の舌っ足らずなボイスで囁かれ、「当方の名前は既に明生ですが何か?」と正気を失った記憶がまざまざと甦ってきます。というか、既に「白兎」が当方の名前ですが何か? 理性を蕩かせる麻薬の如き魅惑の声々に当方の薄い自我は決壊寸前の有り様。

 で、それなら玲亜を裏切らざるを得ない駒宮ちまりのシナリオをプレーするのは苦痛なのではないか……と言えばさにあらず。「修羅場スキー」という属性を抱えている当方には激昂し、罵り、泣き喚き、憔悴する玲亜の姿により一層「(*´Д`)ハァハァ」ゲージをUPさせるのみ。我ながら業の深きこと。『月姫』の秋葉も本人のルート以上に例の猖獗しまくるシナリオで興奮したクチです。

 随分あっさりと心変わりしてしまう主人公の南雲白兎に関してはそれこそ白兎海岸で生皮剥いで海水を磨り込んだ挙句に放置してカンカン照りの天日に晒してあげたい気分ですが、通り一遍の展開では到底発されることがないであろう憤怒と絶望を綯い交ぜした玲亜の叫びに黒い欲望が満ちていくことは確か。怒っても可愛いとか拗ねても可愛いとかはありがちですが、激昂しても可愛いとか絶望しても可愛いとかいうのはそうそうないかと。

 思う存分背筋をゾクゾクさせて堪能しました。ナイス修羅場。このクロハ、浮気ゲーというより乗換ゲーですな。

 ちまりエンドの話はそのへんにしてChapter3。前章までの問題はひと段落して平穏な日々が続いていますけど、なぜかやたらにコンドームを強調しております。ソレ関連の選択肢もチラホラと。これはもしかして──期待してイイのか? 「孕ませキタ━━(゚∀゚)━━!!」と叫ぶべきか? まだ予断は許されませんが、希望はいつも大きく持っていようと試みる所存。

 ところで、ここのところクロハに時間を取られて読書が滞っています。幸い攻略は簡単なので詰まることなくサクサク進んでいますけど、単純に量が多い。スタッフロールを見ると「シナリオ」の項にズラズラと7名ものライターが連ねられていますし……本当、どれだけあるのやら。


2003-12-03.

・タイトルが蠱惑的である一方、装丁がなんとも気味悪い『姉飼』、一瞬だけ迷って購入。

 ホラー大賞は『バトル・ロワイアル』を落としているから個人的にあまり心証が良くないけど、『混成種』とか『玩具修理者』とか『十三番目の人格−ISOLA−』とか『黒い家』とか『レフトハンド』とか『D−ブリッジ・テープ』とか『ぼっけえ、きょうてえ』とか、好きな受賞作が多いので注目を外すこともできず。

『Clover Heart's』、夷月サイドのChapter2まで終了。

 バッドエンドがさりげなく黒い。BEスキーの当方としては小興奮。

 実は白兎よりもサッパリした性格をしている夷月だけあって、プレー中に感じる苛々感はだいぶ少ない。ただ、このシナリオにおいて障害となる某キャラの暴れっぷりがとてもショボく、話としてはあまり盛り上がらなかった。同情の余地を与えず、単純な「障害」と設定している観があって、突破しても達成感が湧きませぬ。

 ヒロインにしてはとにかく地味っぽい莉織も、依怙地な性格が露骨に出るようになったあたりからちょっとずつ面白いキャラになってきます。夷月が彼女に興味関心を示し、やがてその想いは恋心に……と発展するわけで、この流れにいまいち説得力──真実味を強化する描写やイベント──が伴っていない気もしますが、「そういうものだ」と納得すれば付いて行くことは難しくなかった。

 んー、夷月サイドはあんまりクるものがないかな。開始当初から円華先輩と歪んだ関係に陥っているのはインパクトがありましたが、どう見てもその後の展開が初回のインパクトに負けてしまっているせいで退屈気味。乗れませんでした。

 まあ、まだ全体の半分を終えたかどうかというところですから、断言するのはよしておきます。次は白兎サイドに戻ってちまりシナリオを攻略し、その後でキャプチャー3に向かいます。

 それにしても、あの浮遊する謎物体は笑えばイイのかキモがればイイのか……「アレ」だけ透明になっているのはたまに見ますが、「アレ」以外何も描かれていないってのはかなり違和感あります。最初見たときは新手のギャグかバグかと疑いましたよ。

・乙一と羽住都の絵本『くつしたをかくせ!』読了。

 乙一の発想、ヨシ! 羽住都のイラスト、ヨシ!

 といった感じの1冊です。なぜか日英バイリンガル。ぶっちゃけ発想は良くともショートショート的なオチはないので、「心温まるクリスマス・ストーリー」とか「乙一のいつも通りなあとがき」とか「羽住都の美麗画」に興味がない人は読んでも仕方ない。

 絵本は最近だと『あらしのよるに』6部作『かえるの平家ものがたり』くらいしか読んでおらず、あとがきで触れられているゴーリーの著作も未読なので相当に疎いジャンルですが、乙一も羽住都も好きな当方には満足いく1冊でした。薄いので収納も困りません。

・黒川博行の『疫病神』読了。

 『Clover Heart's』は結構スキップが遅くて未読領域に達するまで時間が掛かるから、暇を潰すため合間にこれを読んでいました。すると、なかなか面白くてすぐに夢中となりました。いくら時間が掛かるといっても本を何十ページも読めるほどはありませんから、ふと顔を上げてスキップが止まっているのを見て「あ、もう終わってるのか」と少し残念がることもしばしば。何度かそれを繰り返した挙句、最後はクロハを中断して読み耽るようになってしまった始末。

 建設コンサルトの二宮啓之が産業廃棄物処分場を巡る仕事をしている最中、金の匂いを嗅ぎつけてきた極道・桑原保彦とコンビを組むハメになった。剽げた素振りを見せながらも抜け目がなく、酷薄で思い切りのいい桑原は、かつて鉄砲玉として対立していた組に単身ダンプで突っ込んだことがあるという。脅し、すかされ、いいように使われる二宮。「こいつは疫病神だ」と内心毒づくが、借金を返すためには仕事をこなさなければならなかった……。

 関西弁を基調とした軽妙な会話。無駄がなく読み易い文章。仲が悪くて特別な繋がりもないのになぜか息が合っているコンビ。タイトルも装丁もストーリーも暗くて黒いのに、いざ読んでみると結構明るくて不思議でした。「疫病神」って字面はスゴいですけど、どことなくユーモラスで憎めない感じがありますね。

 莫大な利益を巡って諸勢力が入り乱れる内容はベタベタで、ストーリーそのものに新味はありませんけど、とにかくこの疫病神コンビが面白い。主人公の二宮が極道の桑原を「疫病神」と見ている一方、桑原も「美味しそうな儲け話が転がってる」と思って手を突っ込んでみたら実はかなりの厄介事で、「キツネとツル」の皿や壺みたく中身が取り辛いことに気づき、二宮を「疫病神」と罵る。「男と男の絆」とか「固い友情」とかを謳ったりせず、見捨てるときは見捨てるのに、だんだん切っても切れない見事な腐れ縁と化していく展開が楽しくて一気に読み通してしまいました。

 このコンビの続編『国境』も評判がイイので、近いうちに読みたいと思います。


2003-12-02.

・噂によれば歌野晶午の『葉桜の季節に君を想うということ』がこのミスや本ミスの1位になるんだとか。歌野は地味に好きな作家なので嬉しいと言えば嬉しいのですが、これを機にしてマイナー作家を脱却してしまうかも……と思うと一抹の寂しさが。

創美研究所、活動休止

 ここのゲームは『ぱちもそ』しかやっていませんが、絵で惹かれ、更に設定の面白さに惹かれて購入し、いざプレーしてみると予想した方向とは違った内容で、しかしかなりツボにハマって満足致しました。ボリューム不足が唯一の不満点でしたが、パチ公やぱちとのやりとりはコメディゲームの中でもひと際印象的で未だに気に入っております。無常。

『Clover Heart's』、夷月サイドのChapter1をプレー中。

 気の赴くままにプレーして円華エンドに到達。円華先輩、結構エロいです。声とか困り眉とかいった興奮要素が重なってえも言われぬエロさを醸している。彼女の儚さや脆さを前に押し出した展開には最初、庇護欲とともに鬱陶しさも並列して湧きましたが、メキメキと精神的に成長してキャラまで変わる急展開が面白く、最終的には割と好きなヒロインになりました。それはともかく外に出したときの精液が人魂かスカイフィッシュにしか見えないんですけど……。

 ヤサグレてるように見えて実はナイーヴだったりする夷月には「逆ツンデレ」といった趣があり、第三者の視点から見れば「萌え」ですが、一人称の主人公としては若干感情移入し辛いかな……どうも、攻撃的・排他的な性格が徐々に解きほぐされていく流れに違和感があります。あっさり変わりすぎだろ、みたいな。白兎と比べれば夷月の方がキャラとしては好感持てますけど、主人公として面白いのはやはり白兎の方です。両者ともある種の「愚かさ」を抱えた少年ではあるが、エンターテインメントとして消化されている白兎の「愚かさ」に対し夷月の「愚かさ」はあまり魅力がなく、はっきり言って話の主題とするのは苦しい。

 あと、ライバルキャラも夷月サイドは精彩に欠くきらいあり。白兎サイドの駒宮ちまりは一見単なるお邪魔虫キャラのようでいて実は玲亜からヒロインの座を奪いかねない強力な伏兵だった、ということがストーリーの進展に合わせて少しずつ明らかになってきます。夷月サイドはライバルキャラが2人もいて、ちょっと捩れた配置にあるところが設定的には面白いものの、肝心の一方がどうにも扁平なDQNで造型が浅く、複雑な四角関係に緊迫感が漂ってこない。そいつがダメなせいで連鎖的に円華先輩の魅力も減じられてしまう。コンセプトそのものは悪くないだけに残念です。

 まだまだコンプは先のことですから確言はしかねますが、当方、どちらかと言えば白兎サイドのシナリオが好みみたいです。白兎や玲亜の幼さ・身勝手さといったDQNぶりがいろいろ目につきますが、実のところ「DQN大暴れ」なストーリーはきらいじゃありませんし。元気のいい話は多少香ばしくても楽しいものです。

 それにしてもこのゲーム、かなりの分量がありそう……今週中に終わるかどうかさえ微妙なくらい。章立て構成で選択肢もそれほど多くはないから攻略に詰まったりすることもないだろうけれど、単純に文章を読んで声を聞く時間が長い。量的には『てのひらを、たいように』『Ricotte』を超える気がします。でも『君が望む永遠』までは行かないかな? たっぷり遊べるのは良いことですが、その間ネタバレが怖くてスレを覗きに行けないのは残念。しぼむ。


2003-12-01.

・師走です。今年もそろそろ終わり。でも忙しくて感慨に耽る暇もあるかどうか……。

・話題沸騰中の『沙耶の唄』ムービーを見ました。やはりニトロか。やはり虚淵か。アヒルの子と言いつつ白鳥になってしまうのか。「0:00 赤い海からサイレンが響き、一つの医大が消えた」がネタではなくなるのか。

 

「人間って、『こんなの』だったんだね」

「そういや、田舎でウサギを轢いたときこんな音したっけなぁ……」

「ここってさ、凶器の楽園だよね」

「生きてるうちに死ね──下手すると、死ねなくなるぞ」

「あーあ。嫌なのつくっちまった」

「徹底的に人間じゃなくなって、完全な化け物になるんなら別に怖くない。一番恐ろしいのは、中途半端に『人間』が残ってしまうこと──」

「危険じゃないモノが、もっとも危険なんだ。さあ──そいつから離れろ」

「やめろ、出て行け! 入るな! 侵蝕(はい)るな、侵蝕るなぁぁっ!」

「ああ、弱い。滅法弱い。奴らは極めつけに不安定で、生命としてはあまりに脆い。こんなのは自然界じゃ生き残れない。分かるか? 必死すぎるんだ、奴らは。生きるのに必死すぎて、死ぬ。限度を計ることもできず暴走し、あらゆるものを巻き込んだ挙句に自滅しちまう。最悪の弱さだ」

「いろんなことを間違えすぎた。考えが足らなかった。突き詰めが甘かった。みんなの気持ちを蔑ろにしてしまった。もう何が正しいのか、分からない。そもそも今となっては、『正しい』ことにどれだけの意味があるのか──思ったところで実感することができない」

「ま、まだ動いてやがる……!」

「目を閉じて、抱き締めて──そして、信じて」

「逃げろ!」

「目を開けちゃ、ダメだよ」

「いやあああ! 潰して! 私の目を潰して! こんなもの……こんなものは見たくないぃぃぃ!」

「選ぶことを許された。選ばないことは、許されない」

「なんなんだよ……なんなんだよぅ、お前ら!」

「──忘れてしまいたい。この愛しさだけは」

「うおっ! と、溶け……ぐぴゃ!」

 

「ねえ、もうひとつだけ訊くけど、」

「ころしてほしい?」

「いや」

「死ぬのはお前だ」

 なんか一つの妄想ストーリーが脳内を高速で駆け抜けていきました。

『Clover Heart's』、白兎サイドのChapter2まで終了。

 高等b……げふんげふん、否、本校へ上がり、ライバルヒロインも登場。修羅場スキーの当方にとってはかなり美味しい展開になってきています。微笑ましくキャット・ファイトを繰り広げていたのも束の間、気がつけばChapter1と同じくシリアス展開へと雪崩れ込んでいる仕様。相変らず白兎のふやけ具合が腹立たしいものの、こういったヘタレ主人公に苛つかされるストーリーは割と好きなので楽しくプレーしています。ヘタレはヘタレだが、そんなに嫌悪感は湧いてこない。自他ともに白兎がヘタレであることを了解していて、その認識をもとに話が進んでいく分、変な違和感がないのもグッド。シナリオ運びはスムースです。

 クロハ、やはり青臭い話が好きな人にオススメというか、そっち系がダメな人には微妙な感触となりそう。『加奈』や『君望』、最近だと『Ricotte』のLargo編みたいに主人公への歯痒さが募る「愚者の領分」タイプのストーリーですから、「ヘタレ≒成長する余地(若さ、青さ)」と受け取れない人には辛いかと。現時点のところ、主人公が話の進展に合わせてステップアップしていく「成長物語」なのか、成長の余地はあっても結局最後までヘタレのままで終わる「成長しない物語」なのかは読み難い。個人的にはどっちでもいいんですが。当方はヘタレで愛らしいモノが好きです。

 ひと段落区切りがつきましたし、あまり白兎サイドのエピソードを突出させても何なので、Chapter3は後回し。代わりに夷月サイドの方を進めてみました。まだChapter1の序盤ですが、夷月きゅんも夷月きゅんでなかなか可愛いですな。(*´Д`)ハァハァ。普段腫れ物扱いされていてあんまりイジられていないだけに、イジられたときの面白みが一層増すというか。ヒロインの莉織がかなり地味ポだから、下手すると夷月の方が可愛いなんてことにもなりかねない。ま、それはそれとして、久遠さんに円華先輩と、ふたりも年上キャラがいて密かに美味しいですね、こっちのサイド。

・今月の予定。12月は忙しいので積みが一層激しくなりそうな予感が。

[本]
 『後巷説百物語』/京極夏彦(角川書店)
 『ダブルブリッド9』/中村恵里加(メディアワークス)
 『ウィザーズ・ブレイン4(上)』/三枝零一(メディアワークス)
 『深紅』/野沢尚(講談社)
 『Dクラッカーズ7-1』/あざの耕平(富士見書房)
 『武揚伝(四)』/佐々木譲(中央公論新社)
 『妖幻の血(4)』/赤美潤一郎(スクウェア・エニックス)
 『げんしけん(3)』/木尾士目(講談社)

 幸か不幸か、注目作は少ないです。しかし、どれも粒選りの期待作ばかりなので残念という感じはしない。ただ、前作を読んでなかったり分冊だったりで結局積みそう……。

[ゲーム]
 『カラフルBOX』(SoundTail)
 『PIZZCATO POLKA 〜彗星幻夜〜』(ぱじゃまソフト)
 『こなたよりかなたまで』(FC01)
 『あののの。〜君と過ごしたあの日あの時あの未来〜』(Spirit Speak)
 『レベルジャスティス』(ソフトハウスキャラ)
 『大番長』(アリスソフト)
 『銀の蛇 黒の月』(Project-μ)
 『沙耶の唄』(ニトロプラス)
 『魔法少女アイ DVD 壱 plus 弐』(colors)

 とりあえず注目しているものを挙げてみました。さすがに全部は買いません。確実に購入すると言えるのは『沙耶の唄』くらいかな……『大番長』は到底プレーする時間が確保できないだろうし、『魔法少女アイ DVD 壱 plus 弐』は特に急ぐ必要もなさそうなので、揃って来年にロングパス。沙耶に次いで買う可能性が高いのは『PIZZCATO POLKA 〜彗星幻夜〜』と『銀の蛇 黒の月』。前者は異国情緒サスペンス、後者は「エロ!グロ!ヴァイオレンス!」を掛け声にしたピカレスクファンタジー。ぱじゃまソフトは前作の『パティシエなにゃんこ』がとても心地良い仕上がりをしていたため、ブランドそのものに信頼感があります。Project-μは前作の『ほとせなる呪 ちとせなる詛』を回避してしまったこともあり、ブランドへの忠誠心はあまりないんですが、『銀の蛇 黒の月』は「燃えません。凍えます」の路線に行ってしまった『沙耶の唄』の代わりにイイ燃えゲーとなりそうな雰囲気ですので。


>>back