2003年11月分


・本
 『ネジ式ザゼツキー』/島田荘司(講談社)
 『雄呂血(上・下)』/富樫倫太郎(光文社)
 『きみとぼくの壊れた世界』/西尾維新(講談社)
 『今日の5の2』/(集英社)
 『新装版 風の果つる街』/夢枕獏(角川書店)
 『密室殺人大百科(上)』/二階堂黎人・編(講談社)
 『ヘルシング(6)』/平野耕太(少年画報社)
 『不思議じゃない国のアリス』/沙藤一樹(講談社)
 『白い部屋で月の歌を』/朱川湊人(角川書店)
 『密室殺人大百科(下)』/二階堂黎人・編(講談社)
 『黒冷水』/羽田圭介(河出書房新社)
 『光源』/桐野夏生(文藝春秋)
 『Bad! Daddy1』/野村美月(エンターブレイン)
 『神は沈黙せず』/山本弘(角川書店)
 『A君(17)の戦争4』/豪屋大介(富士見書房)
 『ユニット』/佐々木譲(文藝春秋)
 『されど罪人は竜と踊る』/浅井ラボ(角川書店)──(1)
 『されど罪人は竜と踊る』/浅井ラボ(角川書店)──(2)
 『死者を侮るなかれ』/ボストン・テラン(文藝春秋)

・ゲーム
 『鬼哭街』(Nitro+)
 『Fate/stay night』体験版(TYPE-MOON)
 『朝の来ない夜に抱かれて』(FC03・DreamSoft)
 『あののの。』体験版(Spirit Speak)
 『黒と黒と黒の祭壇』(FC03・DreamSoft)
 『Clover Heart's』体験版(ALcot)──(1)
 『Clover Heart's』体験版(ALcot)──(2)
 『姉、ちゃんとしようよっ!』(CANDY SOFT)
 『雪桜』体験版(D.O.)
 『Clover Heart's』(ALcot)──(1)
 『Clover Heart's』(ALcot)──(2)


2003-11-30.

・ウトウトして、「パッチワーク」が「バイツァダスト」に見えた焼津です、こんばんは。嘘みたいな本当の話。

『鬼哭街』で武侠小説に興味が湧き、金庸の『書剣恩仇録』に手を伸ばしました。一巻を読了。面白い。キャラ名が日本語読みになっているのは少し違和感がありますけど、物語の迫力は大したもの。前半はちょっと盛り上がりに欠けるきらいがあったものの、鉄胆荘で乱闘が始まったあたりから急激に面白くなりました。この調子で続きも読んでいきます。

『Clover Heart's』、白兎サイドのシナリオをプレー中。

 萌え一辺倒と見せかけてこの仕打ちとは……。

 「突然転がり込んできた同居人」という古今東西に溢れ返っている手垢設定を用いながらも、「なし崩しでエッチな関係に」って安易な展開はせず、ストーリーは少しばかりヒネた道を突き進んでいく。「純愛と性愛の狭間」みたいな関係と、それにまつわる葛藤。実に青臭い。マヌケですらあります。主人公がふやけた精神の持ち主で、なんとも面倒臭い悩み方をしてくれる。

 少年少女が右往左往する青春ストーリーとしては面白く、途中「なんだ? 黒冷水でも湧いてきたのか?」と思うようなシーンもあったりして別の意味でもちょっと面白かった。「萌え一辺倒」ではなく、シナリオの要求に合わせてシリアスな面も出てくるため、一気に青春スメルがキツくなる。「青臭さ」を苦手とする人にはNGかもしれない。だが、キャラクターたちにキチンと階段を一段ずつ上らせて行く姿勢に好感が持て、個人的には結構良い感触です。

 とはいえまだまだ今後の針路は読めず、期待と不安は混在中。そこらへんも楽しみながらプレーを続行させます。

「Yellow Life」「DAIさん帝国」経由)

 ステキなCGサイト。TOP絵のオッドアイ少女剣士もさることながら、Gallery内の釘バットプリンセスもカコイイです。

「最強!! 区立太東高校アルカノイド部」「DAIさん帝国」経由)

 リアルアルカノイド──身体を張ってのブロック崩し。発想からして素晴らしい、一気に読める短編スポ根マンガです。短編とはいえ40ページと、Webコミックとしては結構な分量。ノリ良く勢いがあって、途切れることなく引き込まれてしまう。続くのなら先がとても楽しみ。


2003-11-29.

・気づけばあっという間に月末。『Clover Heart's』を購入しました。しかし、パッケージにラメを蒔くのはいかがなものかと……キラキラするのがちょっと不気味。同時発売の『雪桜』も買おうかどうか逡巡した結果、回避を選択。体験版は良かったけど、いまひとつ決め手に欠けましたので。クロハ一本のみを堪能することにしました。

『Clover Heart's』、プレー開始。

 体験版で感触は掴めていましたけど、やはりイイ。兄弟仲の悪い双子のところに転がり込んできたもうひと組の双子。寒い国からやってきた少女たちが少年たちの心を溶かす……と、筋自体はシンプルなものの「萌え」についてはどっしりと腰を低く構えたような安定感がある。実に手堅い。「○○萌え〜」という感情がプレー意欲を淀みなく汲み上げ、ダラダラした日常も苦にならない。ストーリーはまだこれからですけど、「萌えゲー」としての出来は鉄板どころかバキュラ。この週末が楽しみになります。

 今のところ「玲亜たん(*´Д`)ハァハァ」「久遠さん(*´Д`)ハァハァ」「白兎きゅん(*´Д`)ハァハァ」のラインで進行中。まだ序盤なのにエロゲーらしいイベントも仕組まれていて良い感じです。ただコメディのネタはちょっと微妙か……ネタよりも雰囲気で笑わせるタイプかな?

「こ〜こはど〜この箱庭じゃ?」「まいじゃー推進委員会!」経由)

 うまい。最初はなんだか良く分からなかったが、あれこれやってるうちに引き込まれていく。発想の勝利ですね。ただ、単調な作業が多く、いまひとつ「参加している」という感覚は薄い。何か頭を捻るパズル要素でもあればより一層のめり込めた気も。ともあれ必見の面白さです。

・ボストン・テランの『死者を侮るなかれ』読了。

 「暴力の詩人」という微妙なあだ名をつけられた著者の第2長編小説。前作は02年度の「このミステリーがすごい!」で1位を取った『神は銃弾』。文章にかなり特徴がある作家で、「訳者の人も苦労したんだろうなぁ」と実感してしまう。作風は違えど、インパクトで言えば昨日の『されど罪人は竜と踊る』とも負けず劣らずの独特テイスト。面白いんですが、読み通そうと思ったら結構体力いりますよ、これ……。

 砂漠。少女の嘘に誘い込まれた警官サリーは半死半生となり、浅い穴に放り込まれる。少女はどんどん土を被せる。早すぎる埋葬。土の圧力。篭もる熱。無我夢中で掻き分け、地上に這い出したサリーは無線で救助を乞う。辛くも死ぬ寸前のところで命を取り留めたが、喜ぶ暇はない。痛めつけられた身体が癒えるよりも早く、同業者──警察官たちが病室に押しかけ、サリーへ身に覚えのない容疑を掛ける。麻薬の取引。「罠だ」と気づいても遅い。「悪徳警官」のレッテルが背中に貼り付けられる。絶望に呑み込まれる。やがて彼は行方をくらまし、7年の月日が経つ。復讐のために立ち直る充分な時が流れる。サリーはふたたび荒野に帰ってくる……。

 述語に一切過去形を遣わない文体はクセが強く、なんとも好みの分かれが激しそうなリズムを生み出す。そして何よりも比喩表現。秀逸というよりシュールで、「訳分からん」と頭を悩まされることもしばしばだ。

 彼には地図がない。疑惑のアナーキズムと、嘘と、捏造された証拠という荒野を進むための地図がない。

 というのは分かり易い方で、中には、

 ふたりは視覚も思想も超えたところにいる。剥き出しのシンメトリーになっている。上も下もないところで。彼女は実在しながら透明になる。逞しい腱と骨の強さを残したまま、その流動体となる。世界は全でもあり無でもあり、彼の肩は塩分の堆積した平原のにおいがする。彼の心が知っているものと彼の体が感じているものは、決して和解し合えない。暴力的な彼女の喘ぎはビロードのように柔らかく、彼は彼女を所有し、彼女を破壊し、彼女を救い、彼女の重要な一部になりたいと思う。

 とかいうのも。「考えるな、感じろ」と領域に到達している観があります。

 文章は「リリカル&ダーク」とかなりのセンス・オブ・ワンダーに満ち溢れていますが、筋立ての方は恐ろしく単純で単調です。陰謀を巡らす集団がいて、そいつらに復讐しようと計画する集団もいる。あまり凝ったギミックは使わず、ごくごくストレートに話は進む。第一部の熱に浮かされたような盛り上がりや、第四部「殺人」の狂的な錯綜ぶりに比べて、中盤の展開はとてもモッサリとしていてダルい。文章の歯応えに対して中身が薄く、味のない固焼き煎餅を噛んでいる気分にさせられる。

 面白い。けれどメチャクチャ疲れる。これもこれで読む人を選ぶためオススメがしにくい。とりあえず、第一部だけは文句ナシにオススメ。燃えます。生還の描写には震えが来ます。第二部以降に関しては強くは推しません。お好みに合わせてどうぞ。


2003-11-28.

『Clover Heart's』の発売も目前となりました。特に注目作がなかった今月で唯一当方が気を払っていた一本。「双子×双子」の設定にはそれほど惹かれませんが、体験版での感触にはしっかりとした安定感があり、割と期待してます。

「ジンガイマキョウ」、15万ヒットオーバー

 おめでとうございます。それにしても業の深い記念絵ですこと。(*´Д`)ハァハァ

「てのひらを、たいように」、PS2とDCに移植

 手には一刀、ナイチチは5人。水郷夏森に豊胸雪恨の剣が哭く。

 とにかくナイチチ率の高いゲームです。女性キャラ7人中、「胸がある」と言えるのは2人だけ。残り5/7はすべてナイチチ。とても倫理的ですね。でもナイチチ遺伝子が本筋に絡んでくることはない。惜しい。

 ところで「胸がアル」と書くとむしろなさそうに思えてしまうのが『デモンベイン』スキーである当方の群青色。

森博嗣曰く「小説家はメーカーなのだから…」(Mystery Laboratory)

 世の中には「予定した発売日を守らないのが当り前」というメーカー群によって成り立つ業界も存在していますが。しかし森博嗣なら「メーカー」ではなく「メーカ」なのではないか、とどうでもいい疑問を差し挟んだり。

・浅井ラボの『されど罪人は竜と踊る』読了。

 人によっては傑作だが、人によっては嘔吐剤にもなりかねない一作。「大賞」でも「佳作」でもなく「奨励賞」という位置付けの微妙さもむべなるかな。当方も最初100ページは「読み辛いぃ〜」と悲鳴を挙げていましたが、戦闘シーンに燃えるにつれだんだん慣れてきて、後ろ半分あたりからはフツーに楽しめました。

 相棒が絶世的美貌の持ち主だったり、主人公が暗い過去を背負っている設定になってたりするのなんかは「いかにも」って感じでベタですけど、一般のライトノベルみたく正義感や道徳感が強いわけでもなく、一部のライトノベルみたく私利私欲オンリィのDQNでもなく、強いて言えばその中間といったところ。この1巻ではそれなりにハードな目に遭うものの、悲劇の運命に翻弄される被害者って風ではなく、艱難辛苦を乗り越える英雄って風でもなく、半分くらいは巻き込まれ貧乏籤であと半分は自業自得と、かなり格好がつかない状況で頑張るハメになっている。

 戦闘シーンの描写と言えば、「まいじゃー推進委員会!」の名台詞にも取り上げられたこれ。

 その両掌の中の、魔剣ネレトーの回転式咒弾倉が咒弾開放の火花を吹く!
 ギギナの発動した生体強化系咒式第五階位 <金剛鬼力膂法(バー・エルク)> により、筋肉繊維の遅筋にグリコーゲン、速筋にグルコースとクレアチンリン酸が、両方にアデノシン三燐酸と酸素を送り込み乳酸を分解、ビルピン酸へと置換。脳内四十六野と抑制ニューロンによる筋肉の無意識限界制動を強制解除する。同時に甲殻鎧の各部を締める螺子を弾き飛ばすほどに、瞬間的に筋繊維容量が増大する。
 脚部の大臀筋、中臀筋、大腿四頭筋、縫工筋から下腿三頭筋が。
 胴部の大胸筋、前鋸筋と外腹斜筋と腹直筋が。
 背中の大菱形筋、広背筋、僧帽筋が。
 肩の三角筋、腕部の上腕三頭筋、上腕二頭筋が。
 全身の約四百種類六百五十の強化筋肉が限界まで膨張。そして超人化した全身の筋力が生む剛力を束ね、竜の下顎に刺さった屠竜刀に一点収束、前方へ振り抜くっ!

 終始このノリですからね……当方はひたすら呑まれて「すごい」と圧倒されることしきりでしたが、これを「くどい」と思ってしまう方には正直とてもオススメできません。文法の怪しさに目を瞑れるくらいの精神的余裕も必要。『デモンベイン』もテキスト圧は大したものでしたが、ここまで来ると描写の迫力だけで作品の印象が成り立っているようにすら感じられます。

・久々にカウンター見たら4万近くになっていて少し驚き。ダラダラやっているうちにいろいろ積もってますね……。


2003-11-27.

・現在『されど罪人は竜と踊る』を読んでいます。

 物凄く文章が読み辛い……造語と見慣れない化学用語の羅列。“星界”シリーズのルビ量よりも更に辟易させられました。読んでいて妙に疲れます。光るモノはあるんですけど恐ろしくこなれていない。情熱に溢れた荒削りな作風。これを読む作業ってのは活字スキーの当方にとってえらく中途半端な拷問です。楽しいけど苦しい。苦しいけど楽しい。それで結局本を閉じられずに読み進めてしまう疲労と快楽、疲弊と享楽の自動機関。『ラグナロク』も一冊読むたびにゲップが出そうになるシリーズですけど、スニーカー大賞はそんなにもゴリゴリのアクション・ファンタジーが好きなんだろうか。

 ところで日常シーンのダルさは実に殺人的であり、キャラクターの饒舌さが眠気に拍車をかけまくる。睡魔が瞬時に加速。しかし、いざ戦闘シーンに差し掛かるとこの狂熱的な文圧が一種異様な迫力を生み出し、「なんだかわからんがとにかくよし!」と変に納得させられてしまう。眠いせいで本当に何が何だか分からなくなっているにも関わらず。むしろ眠くて半分夢を見ているような心地にすらなります。

 作風の方向性は違いますけど、「情熱」「荒削り」という点で言えば『月姫』『空の境界』の奈須きのこを彷彿とさせるモノがあります。瑕疵だらけにつき、減点法で論じていけば誉められるところは少ない。だが、ハマる人にはとことんハマるんだろうな……と思わせる「何か」が確かにあります。当方は戦闘シーンならまだしも、日常シーンのノリはどうにも馴染めません。これで日常シーンも「超面白い」と感じられる人なら最強で無敵な作品となるんだろうなぁ……。

日記絵にてモーラ(上座蔵)

 スレッジハンマーでかっ。しかし作中で「モーラ自身よりも重い」「物理法則を無視して振り回す」とあったから、あるいはあの大きさでも持ち上げられるのかもしれず。

・佐々木譲の『ユニット』読了。

 『武揚伝』(現在2巻まで読了)がなかなか面白いので興味を持った作家、佐々木譲。作家歴は20年以上と長く、刊行されている著作も結構多い。何に手をつけようかと迷った末、新刊コーナーにあったこれを買ってみました。作者は北海道出身とあってか、本書の舞台となるのも北海道です。

 妻子を殺された男は、犯人である17歳の少年にくだされた「無期懲役」の判決について悩む。刑務所内の態度によっては最短7年で少年が仮釈放されることになる。満1歳の娘まで容赦なく殺した奴がたった7年で社会に戻ってくる──そんな事態を自分は許すことができるのか。一方、刑事である夫の暴力に耐えかね、5歳の息子を連れて家出した女はこれから先の生活を思って途方に暮れる。印象的な出会いを果たした後、札幌の工務店に職を見つけたふたりは、次第に心を通わせ合っていく……。

 「男は少年に妻子を殺された。女は夫の暴力に苦しんでいた。偶然出会ったふたりは、ともに再生を目指す。少年犯罪、復讐権、そして家族のあり方を鋭く問う。」──帯文より。この中の「復讐権」という単語から、被害者だった男女が結託して少年や夫に私刑の刃を向けるストーリーを予期していましたが、外れました。焦点となるのは「再生」の部分。生きる目的を失って自堕落になった男と生きることに精一杯で余裕のない女が「それなり」の幸せを獲得するまでの歩みにほとんどの描写が割かれている。

 冒頭は暗く、重い。しかし、男女、更には工務店の主・波多野をも絡めた心の交流によって物語は徐々に救いへと向かう。『武揚伝』で証明されたリーダビリティは本書にも活きており、500ページ近い分量を苦もなく読み通すことができた。淡々とした筆致で紡がれる展開は緩急を心得ており、読んでいて飽きない。ただ、後半の展開はなし崩し的で安直すぎるのが難。少年や夫を問答無用の悪役に据えてしまうせいでどうにも低級サスペンスじみたムードが漂う。「少年犯罪、復讐権、そして家族のあり方」とテーマが複数あり、まとめ切れていないところもやや散漫といった印象があります。

 うーん、割と惜しい一作。でも佐々木譲の作風は気に入りましたので、他にもいくつか読んでみることにします。


2003-11-26.

『鋼の錬金術師』を「はがれん」って略すと「剥がれん」を連想し、あまりのヒネリのなさに石もて逐われそうな焼津です、こんばんは。ちなみに何かで「荒川弘 作」と表記されていたのを見て作者名を「荒川弘作」と思い込んでいた恥ずかしい過去があります。

・いい加減、靴が履き潰れてきましたのでサックリと新調しました。履き心地は悪くないけど慣れないだけあって足に違和感がバリバリと。

・現在集中的にライトノベルの積読を崩しています。

 その中のひとつである『A君(17)の戦争』。主人公がカッコイイ美男子ではなくちんちくりんのいじめられっ子で、異世界に飛んだ結果勇者じゃなくて魔王になり、魔族を率いて人族と戦争するハメになるという設定からして一風変わったファンタジーです。合戦部分に重きを置くなど戦記モノの要素も色濃く、一時は「佐藤大輔が変名で書いてる」との噂も立ったほど。

 3巻まではほぼリアルタイムに刊行されてすぐ読んでいましたが、そこから先は積みっ放しになっており、空いた月日は実に1年以上。内容理解のためには既読分も読み返した方がベターでしたが、面倒なので直接4巻目を読み出しました。すると急展開。「あれ? こんな話だっけ?」どころではなく、「おいおい、あからさまに話が違うじゃないか」とツッコミたくなるレベルで物語が飛ぶ。あまりにも豪快で、いつになったら「ゴメン、ネタでした」とバラすものやら……と待っていたら結局1冊全部をソレで突き通した。

 こういった強引な飛躍自体は別に珍しくないけれど、1冊全部をほとんどネタみたいな内容で潰しに来るとは予想できなくてビックリした。でも、それが悪いのかというとそうでもなく、シリーズのターニング・ポイントというか、息抜き部分としてちゃんと作用してもいるので、呆れると同時に感心もさせられた。バラしてしまえば『A君』4巻は佐藤大輔の『レッドサンブラッククロス』の世界を背景にした学園モノになっており、シリーズ中において意義があるばかりではなく、これ1冊単体でも楽しめる仕様となっている。元ネタの方に関してはサッパリ知らなかったんですが、読んでて興味が湧いてきました。また読む予定の本が増えてしまい嬉しい悲鳴。

 あとは『伝説の勇者の伝説』『風の聖痕』など、2chのラ板あたりではあまり評判の良くないシリーズもいざ読んでみれば案外面白かったり。いえ、確かに、誰にでも薦められるタイプの面白さではないですけれど、「ライト性」を巧く活かしている印象があります。素で読めば「おいおい、それはないだろう」とツッコミたくなる部分も、文体や雰囲気の醸す「軽さ」であまり気にならない。鏡貴也はハッタリを利かせるのが上手で、山門敬弘はキャラクターの主義・信条における身勝手さをウザ過ぎない程度に処理して物語に取り込む感覚が巧妙。

幼秋葉「DAIさん帝国」経由)

 黒くて長い髪を持ったヒロインならばたとえ土着ホラーの怨霊だろうと入れあげてみせる当方、無論のこと秋葉には魅了され済み。秋葉ルートと琥珀ルート、表と裏で二重にKOされた記憶は未だもって鮮明です。

 「黒長髪系ヒロイン」で地味にツボだったのは『R.O.D』第六巻の墨蕾。黒髪、暗闇、墨。道具立てとしては最高すぎる。所詮ヤラレ役でサクッと倒される哀れさもたまらない。


2003-11-25.

・ついさっき、目の前に蜘蛛が浮いていました。「幻覚か?」と疑ったのも一瞬、単に天井から降りてきただけ。それにしても惚れ惚れとするような降下ぶりでした。一瞬とはいえ本当に浮いているように見えましたからね。ともあれ、あまりにも目障りなのでソフトに摘んで窓の外へ御退場願った次第。

・自室にて発掘作業を試みました。当方、整理整頓が不得手ゆえ、自室はカオス状態です。見掛け上はそれなりに小綺麗にしていますが、「見掛け上」に気を遣り過ぎたがために機能性を欠き、何がどこにあるのかまでは把握し切れていない有り様。

 とりあえずマンガ・ライトノベル区画にて『灼眼のシャナ』『伝説の勇者の伝説』『A君(17)の戦争』『されど罪人は竜と踊る』『っポイ!』『フルーツバスケット』などを掘り当て。順次崩していくとします。

・山本弘の『神は沈黙せず』読了。

 ハードカバー2段組で500ページ。なかなか迫力のある分量です。単純に文字数を計算すれば1段あたり25×22の550字、1ページにつき1100字となり、全部のページを合わせれば550000字。これを原稿用紙20×20の400字で割れば1375……概算で1400枚近いことになります。通常の文庫ならたぶん800ページ前後に相当するかと。

 著者はと学会の会長で、これまでいくつか小説も出していますが、ほとんど角川スニーカー文庫や富士見ファンタジア文庫といったレーベル的にはライトノベルのところで、ハードカバーの一般小説を出すのはこれが初めて……でしょうか? すみません、詳しいことはよく知りません。名前は見知っていましたが、作品を読むのは初体験です。

 舞台となるのは今から十年くらい後の日本。いわゆる近未来モノです。自然災害の影響で両親を喪ったことから神の存在を疑問視する兄妹。その妹の方が主人公で、ルポライターを営んでいる彼女は様々な宗教、哲学、科学の知識に触れていき、やがて遺伝的アルゴリズムを研究する兄から一つの仮説を聞かされる。途轍もない内容だったため最初は信じることができなかったが、資料をあたり、各種の事例を収集するうちに確信が芽生え出す。2012年、遂に「神」が人類の目に触れて……。

 内容を書こうとするとネタバレになってしまい興を削ぐ恐れがありますので、詳しいことについては言及しないでおきます。オカルト・非オカルトを問わず、ありとあらゆる知識・情報を披露する展開には「薀蓄の垂れ流し」「資料の引き写し」といった感想を得る人もいるかもしれない。しかし、常に話題が面白く、巻を措くにあたわない魅力があるという点については強調しておきたい。基本はトンデモ系のノリで、見方によっては「陳腐」の一言で片付けられかねない内容ではあるが、読んでいて飽きが来ない楽しさに満ちており、「早く次のページを、そのまた次のページを」といった具合にとにかく先が気になってしょうがない。サプライズ性を重視したストーリーではないので「驚天動地のクライマックス」「誰にも予想できなかった結末」「大スペクタクル・サスペンス」などといった謳い文句は似合わず、ショッキングを求めて読めば肩透かしかもしれません。

 こういう独特の味わいを持った本に行き当たるたび、どういった言葉で紹介すれば良いものやら惑わされますね……トンデモ要素が大して好きではなく、UFOの存在を信じて・いる/いない以前の問題としてまず全然興味がない当方ですが、本書は夢中になって楽しむことができました。「トンデモ」を丸のまま読者に呑ませようとするのではなく、細かく砕いてひと口サイズに仕上げてから提供しようとする姿勢にエンターテインメント性を感じます。いろいろとテーマ性を孕んでおり、薦めるにしても多様なアプローチが可能ですが、ここでは単に「娯楽小説として面白い」という方向でオススメしておきます。あくまでエンターテインメント作品として当方を引き込み、魅了し、楽しませてくれました。「神と人工知能」、このキーワードに心惹かれる人にはより一層オススメ。


2003-11-24.

・「ロータリー」を「ロリータ」と誤読するのはダメ人間の基本スキルですか? 声に出さなくて命拾いをした焼津です、こんばんは。もし口走っていたらニンジャばりに舌を噛み切っていたところ。

17回死亡、17回生還(「Edgeworth Box」経由)

 生死の判定とはかなり微妙なもので、「……ご臨終です」「う……あ……おとうさーん!」となっても、気がつけば顔に掛けていた布が小刻みに動いている→息を吹き返しているといったことがままあるそうです。それにしてもこの回数はすごい。数字から「十七分割」を連想しましたが、だからといってどうということもなく。

琴原りりす(『きみとぼくの壊れた世界』)のあだ名の解釈

 目から鱗とはこのことか。全然気がつきませんでした。西尾維新、名前ネタに関しては血道を上げまくってますね。

・野村美月の『Bad! Daddy1』読了。

 煉瓦絵は割と好きです。

 さておき、本書では父親が29で娘は中一という設定になっています。ヌルめの『Daddyface』といったところでしょうか。父が悪の組織の幹部であれこれと悪事に手を染めており、「なんとか真人間に戻したい」と切実に願う娘が正義の味方となって悪の組織を滅ぼさんとする。要は戦隊モノのパロディなんですけれど、「でもパパの再就職先はどうしたらいいんだろう……」と悩むところなど変に生々しくて笑えます。だってパパ、大学出てないどころか小学校すら卒業していない。経歴、「小学校中退」の一行。パパ凄すぎ。いろいろ設定はあるみたいですけど基本的に勢い重視のノリなので、ドタバタした話が苦手な人には合わぬやもしれません。感情に任せて笑って泣いて突っ走ってぶん殴って、というストーリーでもOKな人にだけオススメしておきたい。


2003-11-23.

・現在併読している『死者を侮るなかれ』『神は沈黙せず』の両方が面白くて密かに幸せな焼津です、こんばんは。『死者を〜』は前作の『神は銃弾』が個人的に合わなかったのでちょいと不安がありましたけど、今回はイイ感じです。リリカルにダーク、という実に独特の文章が目にも楽しい。かみちん(『神は沈黙せず』)は神、UFO、人工知能などの要素を絡めたオカルトっぽい……というかトンデモ系のノリをした近未来SFで、こうした要素にあまり関心がない当方も不思議と引き込まれてしまうような、曰く言い難い魅力を発散しています。

『沙耶の唄』、ストーリー紹介をアップロード。

 なんでストーリーについて言及されてないんだろうな……と思っていたら更新。あの、なんかやけにキナ臭い感じのする紹介なんですけど? 「次第次第に奇妙な世界へと踏み込んでいく」って。ニトロスレから「ジャンルはミステリーAVG」という情報もありましたし、やはりうっすら予感していたようにサスペンスでサイコでホラーな展開に雪崩れ込んでいくのかな? 「0:00 赤い海からサイレンが響き、一つの医大が消えた」とか。それは違うか。

『雪桜』の体験版をプレー。

 北海道を舞台にした学園恋愛モノ。でもセリフは標準語です。選択肢は一切ないものの、1時間半程度とそこそこ食いでのある長さ。「おまけ」でエッチシーンも見れます。

 シナリオは北側寒囲、原画はしけー。北側寒囲は『すめらぎの巫女たち』『れすとあ』を手掛けた方。どちらも未プレーですが評判は良さげ。ストーリーに関しては、体験版の範囲だと大して突っ込まれていないのでよく分かりませんけど、キャラの掛け合いに関してはノリが良くて楽しいです。しけーは『にゃんてCHATON』『虹の彼方に』に参加しているみたいですが、これまたどっちも未プレー。若干不安定な絵柄ですが、好き嫌いで言えば好みの方。美里の「ちっこいけどロリ過ぎない」と巧妙なバランスを取った容姿がGOODです。当方内部の「ちっこい年上事典」に忘れず登録。やっぱコドモ先生は萌え。チャンピオンで速攻終了したアレは別として。

 主人公は存在感が薄くて、居候先の家には同い年でツインテールのいとこがいて、クラスメートには天然系アイドルとそれに付きまとう知世的女子がいて、おちゃらけた男友達もいて、眼鏡かけた理知的な先輩がいて、ついでに担当教師はちっこくて微妙にロリ入っていると、鉄壁の「お約束」ぶりを誇っています。「てのひらサイズの妖精みたいな女の子」と伝奇っぽい要素もあり、向かう方向が薄々と察知できる仕様。各キャラの個性がしっかりしており、やはり掛け合いは楽しい。「共存感」とでも言いますか、みんながみんな一つの空間に収まっていながらも違和を生じさせないムードが漂っている。

 割と良さげ。強く訴えかけてくるアピールポイントはないものの、「萌え」と「笑い」を兼ね揃えた学園モノとしては危なげがなく、並程度の期待を寄せられそうです。買ったらそれなりに楽しめるでしょうが、一旦買い逃すとそのまま購入意欲が失われていく可能性は高い。こういう平均点狙いのゲームは話題となる旬の期間が短いですからね。話題が長く尾を引くのは良くも悪くも突出した部分のある奴。

 えーと、発売は今月の28日ですか。一週間切ってるな……もっと先かと思っていたので少し驚きました。感触は悪くなかったけど『Clover Heart's』の出る日でもあるし、手を伸ばすべきかどうか迷うところ。ひとまず様子見ってことにしておきます。

 余談。「野良犬戦闘日誌」で雪国描写の点についてツッコまれています。当方の郷里も割と雪が降るところだったせいか、当方は雪に対してうんざり感が強く、降雪する景色にロマンを感じることはほとんどありませぬ。「わあ……ホワイトクリスマスだね……!」なんてイメージよりも「天は……我々を見放した……!」というイメージの方がまだしっくり来る。アイスバーン化したクソ長い坂を自転車で下る最中に転倒して何メートルもザリザリと滑走したり、帰りは自転車が出せないほど積もって徒歩を余儀なくされ長靴の隙間に入ってくる雪を気持ち悪く感じながらトボトボ歩いた記憶など、思い出されるのは嫌なことが多い。

 でも冬という季節は好きです。切り裂かれるような冷気も、すぐにストーブやコタツへ直行できる環境下でなら雅と感じられます。学園モノでストーブにわらわらと群がる生徒の描写なんかあったら脳のどこかにあるノスタルジィ野が大ハッスルすること間違いなし。ぐしょ濡れの手袋や靴下を乾かしたりとか。たまに近寄りすぎでコートの裾を焦がす奴とかいるんですよね。凄い異臭が漂ってクラスは大顰蹙、みたいな。……すみません、それ、当方も一回やってます。あと、コメディものなら教室に雪入れるバカは絶対に欲しいところ。授業中に投げたりストーブに乗せて蒸発するの見て喜んだりすんの。それからイベントとして灯油ぶち撒け(以下エンドレスに思い出話)。


2003-11-22.

『保母さんといっしょ!』の隠語的表記が「≒3」というのは実に巧い、と唸らされた焼津です、こんばんは。「ほぼ3と一緒」──略称でも何でもなく、ドンピシャの地口ってのがこれまた。

・新作を尻目に『めぐり、ひとひら。』を購入。発売されたのはだいたい2ヶ月前なので準新作といったところですか。予想以上にハマってしまった『黒と黒と黒の祭壇』と同じく朱門優がメインライターを手掛けた作品。体験版でプレーした日常シーンはそれほど心惹かれなかったのですが、黒黒黒の人ならシリアス場面での盛り上げ方は巧かろうと。実際、体験版でチラホラ見かけたシリアス場面は結構イイ感じでしたし。この週末はちょっと時間が取れないので、プレーを開始するのはいつになるか分からず。できれば積みたくないものだが。

 そういえば朱門優はキャラメルBOXを退社されたようで。フリーになるのかな? 分かりませんが、今後とも活躍されることを切に望みます。

あんぱんにスタンド攻撃[11月21日](上座蔵)

 ワラタ。その下の智子も可愛い。しかし「委員長」で記憶していたせいか「智子」と書かれても最初はピンと来なかった。数分後にやっと名字も思い出しましたよ。錆び付いてるなぁ、記憶。

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 第三弾。これで最後です。黒のロンゲがすこぶる好みの当方には美味しすぎる逸品。ぐりぐりと回転させていろんな角度で矯めつ眇めつ。同好の士よ、こればかりは、こればかりはお見逃しになるな。


2003-11-21.

・実家の母に電話したらこんな一言が飛び出しました。

「あんた、そういや清涼院流水の作品が映画になるってな」

 ……はぁ?

 驚いて問い返せばなんてことない、『レディ・ジョーカー』が映画化するって話でした。どうも中途半端に清涼院流水の名前を聞きかじっていた母は『ジョーカー』と混同したらしい。高村薫という作家の存在を懇々と説いてから通話を切りましたが、清涼院を知っていて高村薫を知らなかった当方の母っていったい……。

第24回日本SF大賞候補作決定(Mystery Laboratory)

 お、『マルドゥック・スクランブル』が入ってるじゃないですか……当方は未だ積んでいますが。読んでるのは『ねじの回転』『グラン・ヴァカンス』だけ。どっちも良かったですけれど、強いて言えば応援したいのは『グラン・ヴァカンス』の方かな。あれには「文章の力」というものをまざまざと思い知らされました。ほんの些細な描写にすら虜にされ、いざ見せ場のシーンとなるや魅了されすぎて尻子玉を抜かれたみたいに腑抜けてしまった。どれだけ待たされるか分かりませんけど、続編はちゃんと出るとのことでメチャクチャ楽しみにしています。

・桐野夏生の『光源』読了。

 「光源」に憑かれたカメラマン、自分の脚本に執着する監督、自負心の強すぎる主演男優、野心に燃えすぎた元アイドル、右往左往のプロデューサー。映画制作を主題としたストーリーは、解説で執拗に繰り返されているようにまったく「先が読めない」。通常ならば、最初はそれぞれの主張が頑なすぎて噛み合わずとも衝突を経て徐々に共通の理解を深めやがては協力し合っていく……といった王道的で感動的なシナリオが採用されるところだが、実際に読んでみたら「そんな風にはならねぇだろうなぁ」ってことがすぐに分かってしまう。

 時に協力しながらも時に対立する登場人物たちは、それぞれの足りないところを補完し合うなんて優しい行動に出ることはほとんどなく、攻撃的といっていいくらい我を貫こうとして騒ぎが拡大してしまう。ぶつかり合って削り合う。互いに刃物でぶっ刺し合うが如き剣呑な撮影風景に引き込まれ、目が離せなくなった。400ページがあっという間に尽きて「もう終わり?」と物足りない声を挙げた。

 殺人は起こらないしヤクザも出ないし麻薬も絡まない。ミステリ作家のひとりとして数えられている桐野夏生の作品にしては異色だが、桐野テイストが損なわれているということはまったくなく、ストーリーテリングの腕はいつも通り抜群である。「先の読めなさ」が作品の良所のみならず欠陥にもなっている点は解説でも触れられているが、ガムシャラな狂熱ぶりに圧倒された当方はこの一筋縄ではいかない展開を「独特の味」と受け取っています。不安定だがとにかく熱くて惹き付けられる。人間模様の錯綜は技巧の拙さと映るかもしれない。だが、たとえば日本橋ヨヲコのマンガのノリがイケる人には是非ともオススメしたい。

 「逆プロジェクトX」という表現が心憎いほどピッタリと当て嵌まる。無意味なまでに溢れ返っているパワーが阿呆らしくもいとおしい。

・ところでリファーを調べたら中に「ヤシガニ屠る」のページが混ざっていました。ときどき関係ないところが混入するのはまあいいとして、なぜここが。ともあれ、抱腹絶倒間違いなしなので未見の方はどうぞ。


2003-11-20.

・「君だけしか見えない」というキャッチコピーを見るにつけ、実は純愛モノじゃなくてサイコ・サスペンスなんじゃないか……という思いを捨てきれない『沙耶の唄』。ひょっとすると主人公は濤羅大哥よりヤバい人なのかもしれん。

・いまちょうど『武揚伝』を読んでいるところですが、勝海舟が嫌な役どころでチクチクと登場してきます。それだけに昨日のトリビアは二重の意味でワラタ。それにしてもあれは絶対忍犬だ。

・羽田圭介の『黒冷水』読了。

 第40回文藝賞受賞作。作者は高3で17歳。若い。最近、どんどんと自分より年下の作家が出てくるようになってきて、「作家」という存在への距離感が変なふうに狂いつつあります。昔は作家なんて自分よりもずっと年上なのが当り前で、同年代の新人が出るたびちょっと興奮したりしましたけど、さすがに年下が増えて来ると興奮より混乱の念が強くなってくる。才能に年齢の上下など関係ないとは言え、やはり「読み手の自分より若い作家」って存在には複雑な気持ちにさせられる。まあ、西尾維新とかでだいぶ慣れては来ましたけれど。

 本書は「部屋漁り」を主題にした長編。仲の悪い兄弟、正気と修作。弟の修作は兄の部屋を漁るのが好きで、機会があれば引き出しだろうと何だろうと漁ってみせる。正気は弟の悪行に気づきながら、漁りを止めさせる効果的な方法が思いつかず、されるがままになっていた。やがて正気の中で修作に対する悪意が募っていく……。

 忍び寄る悪意を「黒く冷たい水」と喩えた物語は原稿用紙にして400枚以上と、文藝賞の作品としては微妙に長い。文章は少し引っ掛かるところもあるが、年齢を考えれば大したものだし、まだまだ成長の余地が感じられる。途中までは割と面白く読み進めることができたが、終わりの方に差し掛かるとだんだん話が崩れていく。結局、「うーん……」といった読後感を残して〆。発想はあっても畳み切れなかったか。惜しい。長さを感じさせない牽引力は買う。

 これだけ若いと作家としてのカラーも定着していないだろうから、2作目、3作目で別人級に変わっていく可能性も大きい。面白くなっていくかどうかは分からないが、とりあえずは注目しておく。


2003-11-19.

・地味に読み進めた結果、上巻が読み終わって現在下巻を読んでいる途中の『密室殺人大百科』。個人的に下巻のラインナップが好みです。トリックもさることながら、シチュエーションの面白さが際立っている。

 バリバリに正統派でありながら謎が魅力的な「縛り首の塔の館」(加賀美雅之)、変則的で先が気になる「夏の雪、冬のサンバ」(歌野晶午)と「チープトリック」(西澤保彦)。そして「時の結ぶ密室」(柄刀一)は変則的というより反則的ですが、当方的には結構ツボです。

 「扉を閉める最中に撃たれて死亡した被害者。なのに、誰も銃声を聞いていなかった。そのうえ、被害者は真正面から撃たれたにも関わらず、扉には弾痕等の痕跡が残されていない」──扉を盾と見做すことで成立する密室。ああ、こういうのもアリだな、と思わされました。

ろじっくぱらだいす『CROSS†CHANNEL』の話題。

 何年ぶりだろう、ここでエロゲーの話題を目にするのって。クラナド以来? いや、確かハロワもチラッと……。

 そういえば田中ロミオの正体が確定的に割れてしまったらしいですね。薄々そうじゃないかという空気が漂っていただけに「やっぱりか」程度の感想。

『PARADISE LOST』デモムービー

 一度視聴するや、思わず飛びつきたくなりました。

 ブランドがlightじゃなければ。

 ……イイ思いした記憶がないんですよ、『White Angel』とか、『Bluelight Magic』とか。『Sultan』『僕と、僕らの夏』あたりは評判宜しいですけれど、最近の『Magistr Temple』『紅』なんかは体験版をやっただけでもイマイチ感がヒシヒシと這い寄ってきます。

 で、パラダイスロスト。近未来の荒廃都市を舞台にしたSFファンタジーのようで、こういった「荒み系」の話は匙加減ひとつで面白くなったりつまらなくなったりします。よくある悪いパターンとしては設定倒れ。雰囲気重視でそれっぽい設定を構築した結果、張子の虎になってしまうという。主人公の中に「もう一人の凶悪な自分」みたいなのがいるのも不安要素。いい加減、擬似二重人格には飽きが来ました。とはいえ、この手のジャンル(荒み系アクション)で雰囲気だけでもしっかりしていそうな新作は稀少ですし。やっぱり気になる。

 このところ興味の方向が「萌え」から「燃え」へとシフトしつつあり、今年の残り分はせいぜい『大番長』くらいで他は特に注目しているものがない(『永遠のアセリア』は体験版がろくに作動しなかったので回避)のですが、来年分は『Fate/stay night』『DUEL SAVIOR』『ロストチャイルド』らへんが気になっています。この『PARADISE LOST』も、ブランドには一抹の不安を覚えますが……とりあえず入れておくとします。


2003-11-18.

『沙耶の唄』はフルボイスみたいですね。低価格なのに大したもんだなぁ……「いつのニュースだよ」と突っ込まれそうな書き出しでこんばんは。焼津です。

・Webコミック「ぱえりあ」

 「eso aparte」の一コンテンツ。兄と妹のほのぼの日常マンガ。力の抜け具合が絶妙につき、ツボに入りました。やはり「兄妹」は萌えの戦闘単位。個人的に第4話の「節分」が好み。

・朱川湊人の『白い部屋で月の歌を』読了。

 著者の第2短編集。表題作は第10回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作。第1短編集の『都市伝説セピア』は既に読んでいましたが、「これぞ朱川」といった強烈な個性はなく、ぶっちゃけ名前隠されたら同じ作者の手によるものとは気づけなかったと思います。

 収録作は「白い部屋で月の歌を」と「鉄柱」。どちらも100ページを超える分量があって短編というよりは中編。ホラー賞を取った「白い部屋で月の歌を」は憑坐(よりまし)が主人公となる話。明確な記憶がなく、身体が自由に動かない「私」は除霊師である先生のもとで働くが……霊魂にまつわる奇譚。続く「鉄柱」は「てっちゅう」ではなく「クロガネノミハシラ」。平穏な片田舎に左遷された雅彦は、村広場の端に突き立った一本の鉄柱を見て不審の念を抱くが……特に超常要素の絡まない話。

 どちらも怖さより寂しさ、肌寒さよりも物悲しさをまとった作品で、そのあたりは『都市伝説セピア』と共通している。あれこれ書くとネタが割れてしまうので詳しく書けないが、特に「鉄柱」の方、のんびりした田舎村と見せかけて裏では陰惨な儀式が──みたいな土着ホラーとはまたひと味違った展開を見せる。まあ、これを「ヌルさ」と取るならそれまでの話だが。感想を言えば、長さが中途半端に思えた。もう少し短くして引き締めるか、もっと徹底して描き込んで主題を掘り下げるか。現状では煮詰まっておらず、間延びして見えてしまう。

 インパクトやオリジナリティといった点では不足を感じますが、「切なさ」を絡めたホラーとしては水準を超えるレベルに達しています。タイトルに心惹かれるなら、手に取って損はないでしょう。あと、チラッとバラしますけど、「鉄柱」のテーマは「満足死」。興味がある方にはさりげなくオススメ。


2003-11-17.

・ショタコンなら(*´Д`)ハァハァするほど可愛かった従弟と、数年ぶりに会ったら巌のようにゴツい漢になっていました。野太い声で「にぃちゃん」と呼ばれるとチンピラに絡まれている錯覚すら湧いてくる始末。

 でも当方、ロリっ気はともかくショタっ気はあんまりないので特に残念とも思わず。しかし「全然ない」のではなく「あんまりない」と素で書いてしまうあたり、密かに病んでます。二次元限定ですが、「女装の似合う少年」は下手な美少女よりもよほどキますね。

・沙藤一樹の『不思議じゃない国のアリス』読了。

 アマリリ萌え。

 『X雨』以来なかなか本が出ないので消えてしまったのかと思っていましたが、どうも『小説現代』で不定期的に短編を載せていたみたいですね。全然知りませんでした。本書は表題作を含む6編を収録しており、書き下ろしの1編を除いて後はすべて『小説現代』に掲載されたものです。話と話の間には何の繋がりもなく、そういう意味ではごく普通の作品集。

 デビュー作の『D-ブリッジ・テープ』から読み続けている作家ですが、内容にしろ文章にしろ、鋭くあろうとする故の生硬さがあり、読み難いと言いますか読んでいて疲れるところのある作風でした。当方は割と好き(特に2作目の『プルトニウムと半月』が)なんですけど人気は微妙で、『X雨』あたりは凝り過ぎたせいか「凄い」という意見よりも「わけわからん」という声の方を多く聞きました。少しメタっぽい結末を迎えるため、「ひょっとしてこれを最後に作家やめるんじゃないか」との見方もあったほど。

 帯には乙一の推薦文みたいな文章が載っていますが、乙一テイストの内容を期待して読み出すと「あれ?」となるかもしれません。ある種の叙情味が漂っている点では乙一とも似通っていますが、乙一特有の朴訥さ、柔らかさは希薄で、むしろ硬質といった印象が強い。乙一は温かい話を書く一方で怖い話も書き、白乙一と黒乙一とか言われるけれど、黒乙一の方もたとえ内容が残酷であれ文章そのものは柔らかい。沙藤は「生硬」「硬質」と、とにかく「硬さ」を武器にしている面がある。

 オンラインRPGを題材にした「空中庭園」は比較的「硬さ」が目立たず、この作品集の中では一番乙一寄りに見える。読んでいて主人公の心情描写を極力排している点に違和感を覚えるかもしれないが、主人公の不透明さが最終的に効を奏す仕組みとなっている。クセの少ない作品なので、初沙藤の読者にはこれをオススメしたい。

 でも当方が一番気に入った作品は「銃器のアマリリ」

● アマリリは天使ではない。
   アマリリは銃を持っている。
   アマリリは十四歳くらいの女の子の外見をしている。
   アマリリはわたしにしかその姿が見えない。
● 今、わたしは重大な選択肢の前に立っている。

 こんな冒頭で幕を上げる「銃器のアマリリ」、ページ中に「●」が乱舞しているが、これは箇条書きっぽく文章を分断するために使用されている。時系列が入り乱れ、どれがいつのことなのか不明確なままポンポンとストーリーは進行していく。主人公がアマリリと名付けた正体不明の浮遊少女は主人公にしか見えず、主人公が撃ちたいと思ったモノを手にしている銃で撃ってくれる。拳銃、ショットガン、機関銃と様々な銃器を取り揃えているがどの銃弾も実効力がなく、主人公の目に映る破壊の痕跡は何もかもが幻に過ぎない。すべてが想像の産物と割り切るや、主人公は撃ちたがりのアマリリに指示を下し、目に付くあらゆるモノを撃って撃って撃ちまくる。

 端的に書くとトリガーハッピーの話。しかし時系列を錯綜させたのは与太でも伊達でもなく、しっかり構成の妙として機能している。アマリリがすることと言えば銃をぶっ放すこと、主人公と駄弁ることの二つに一つであり、『GUNSLINGER GIRL』みたく銃撃少女に多面的な属性や日常の要素を与えられていることもない。

 なのに当方にとっては胸きゅんレベルの魅力があります。無論、「何百年か前の西洋の男が着るような服」「黒い髪が長くまっすぐに伸びていた」「天使を連想させる純白の翼」「片方の瞳が黒く、もう一方の瞳が赤かった」といった外見の要素は外せないんですが、渡り廊下が好きで、「誰も通らなければいいといつも思う」主人公に、

●「だったら──」階段の踊り場でアマリリは振り返り、こちらを見下ろした。「誰も通らないようにしてあげる」

 と言い放つところとか、実際にその場面を想像すると物凄く燃え。でも撃ったところで本当は死なないから他の生徒が平気で渡り廊下を通っていく。そのことを指摘すると「生ける屍ってやつよ。ゾンビ、ゾンビ。あんなの、生きてるうちに入らないって」「殺したんだってば」「もういい!」って必死になるあたりもすげぇ可愛い。脳内彼女とか脳内妹にはあまり魅力を感じないが、こんなイマジナリィ・コンパニオンなら当方も是非とも獲得したいところ。

 でも、単純に物語としてだけを見ても結構面白いんですよね、これ。アマリリという燃え(萌え)キャラを取り除いたとしても、やはり作品としては「銃器のアマリリ」が一番好きです。オチが超せつない。


2003-11-16.

・中途半端な時間に目が覚めてしまったので忘れていた更新作業をしていたところ、猛烈な胸焼けが。どうやら昨日知人に奢ってもらってしこたま食べたパンがヤバイ感じになっているみたいです。「パンは別腹」とかほざいて1000円分は貪った記憶があり、当然の報いという気がして自分自身でも同情できず。

『ヘルシング』の最新刊(6巻)を読了。

 ちょうどアワーズを読むの止めたあたりから始まっているので、全編が未読領域。このマンガをまとまった分量で一気に読むのは気持ちいい。『黒と黒と黒の祭壇』をプレーした直後なだけに一層よく燃えた。アンデルセンやマックスウェルといったイスカリオテ絡みの場面が個人的に面白かった。いろんなパートが入り乱れるせいで話自体はそれほど進んでおらず、次巻への期待はいや増すばかり。

・六道ヶ辻に迷うとも──次の輪廻は畜生道の化生と定まるとも──儂は構わぬ。後悔はせん──六道ヶ辻にいくたびこの身は迷うとも、六道能化の導きはいらぬ。儂は幾度なりとも畜生道に踏み迷い、天上界へは成仏せぬ。

 いざ尋常に『姉、ちゃんとしようよっ!』を開始。「六人の義姉」から「六道」を連想しましたが、ソフ倫の規定がある限りエロゲーの主人公はどう足掻いても畜生道には堕ちること叶わず。まことに惜しい。いや、本当のところを述べるとどうでもいい。

 既に購入してから半年近くとあって積んでることすら半ば忘れかけていましたが、最近サルベージに成功したのでこうしてプレーし出した次第。微温コメディとしてはそこそこ面白いノリ。たくさんの姉が主人公を甘やかす点で言えば『お姉ちゃんの3乗』と一緒だが、あっちは過剰な「甘やかし」に馴染めなかったな……ギャグは非常に面白かったが、むしろ面白すぎて「萌え」要素がダメになっている印象もあった。その点、姉しょはギャグがヌルいものの「甘やかし」と「シバキ」、硬軟取り揃え、飴と鞭を使い分けた展開がやってて心地良い。このゲーム、奥行きについては不明だが、間口が広いってことは確か。

 当方は長女の雛乃に萌え。「長女なのに幼児体型」と、見た目のロリキャラぶりが露骨すぎてプレー前の印象はあまり良くなかったが、実際主人公との遣り取りを見てると一番落ち着く。詳しいストーリーは知らなかったので、素直に「カナメネエサン(*´Д`)ハァハァ」していた当方はあの展開にプッチンプリンの爪を折られるくらいのショックを覚えましたが、雛乃の存在でヒーリングされてめでたしめでたし。美味しいものは後に取っておきたいので雛乃の攻略は次以降に回します。まずは暫定的に巴狙い。特に何の予想もせず進めていましたが……いきなりポカーンとしてしまう展開へ雪崩れこんでいきましたよ? ひょっとして姉しょ、なんでもありなのか……。

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 第二弾。水着。ちなみに当方は自分自身でも不思議なくらいスクール水着や体操服やブルマに対しての執着心がありません。目にしても「へえへえへえ」と3へえで打ち止めって程度の関心薄。その代わり学生服は大好きですよ? セーラーもブレザーも学ランも。


2003-11-15.

『黒と黒と黒の祭壇』、コンプリート。

 こんなのトゥルーエンドじゃないっスよ。

 ……分量の割にやたらと選択肢が多く、またフラグ立ての条件も厳しくて、普段やっているヌルい難易度のノベルゲームと比べればかなり煩瑣でしたが、それでもある程度は苦労しいしい進められました。しかし、「ある程度」に達してからが進まない。チッセやレアルなど、他のキャラのイベントCGやエロシーンの回想欄は埋まっても、ユーディットにはかなりの空きがある。何か見逃しているルートがあるんじゃないかと散々再プレーを重ね、「もうこのシーン見るの飽きた……」と各所で思いながらもやっとこさ新規ルートを発見しました。蒔かれていた伏線が実り、着々と刈り取られていくのを見て満悦、これこそトゥルーエンドへの途だ──とばかりにプレーしましたが。

 このエンドはあんまりにも……・゚・(ノД`)・゚・

 いや、燃え展開もあるし盛り上がることは盛り上がります。それほどムチャクチャなオチをつけているわけでもなく、キレイっちゃキレイにまとまる。グランド・フィナーレとしては別段出来が悪くもない。けれど、これは当方を含めた「チッセたん萌え〜」なプレーヤーにはとてもムゴい終わり方。バッドエンド扱いでもいいから、せめてあそこに選択肢が欲しかった……。

 そんなこんなでやり終えました、黒黒黒。当初予想していた方向とは遙か別の路線へと突き進んでしまい、意外性があるという点については申し分のないストーリーでした。さりげに聞き及んでいた「燃え要素」についても過不足なく、イカレ台詞やシチュエーションの妙味で気分を盛り上げてくれる。選択肢を大量に仕込み、フラグ条件を厳しくしたせいか、ところどころで話の繋がりがおかしい部分も見受けられた(素手のキャラなのに「凶器を持って〜」という描写が出たり)けど、そういった些細な不整合を除けば物語としての仕上がりは良い。こまごました伏線もちゃんと回収されてゆくし、少ないキャラ数でああまで話を広げていくのは正直巧いと思いました。

 第一印象ではどうしても普通の調教モノにしか見えず、「話の幅が狭いんだろうなぁ」と高を括っていましたが、完全に裏切られました。当方としてはかなり気持ちイイ裏切られ方です。ただ、分量はそれほど多くもない。当方は攻略に詰まったせいでだいぶ時間がかかりましたが、効率良くやっていけば実際のところ10時間程度でひと通りクリアできます。フルボイスでこれくらいというのは小規模……とまでいかなくとも、中規模。長大化の目立つ昨今においてはボリューム不足と映りかねない。

 しかし、逆を返せばこのゲームは無駄が少ない。プレーヤーの飽きが来るような文章をダラダラ続けたりせず、サクサクと次へ次へ進んでいって退屈させられることがない。チッセたんの薀蓄はちょっと長いですけど、ハッキリ言って当方は彼女の演説を耳にしていて飽きを覚えたことはないです。攻略中もお気に入りのところはわざわざスキップを止めて聞き入ったり。テキストが魅力的ですね。たまに意味の分かりにくい言い回しや少し不自然に響く言い回しなどもありますが、ルビを多用した説明的なセリフ回しは燃える。復讐を誓った主人公の心情がいまいち不透明なところなど、内面描写が甘く、いくらか粗さを感じますがセンスは良い。ムードにぴったり嵌まっている。

 また、「ボリュームが少ないから話のスケールも小さいのではないか」という疑いに関してはまったくもって否。コンパクトにまとまっているくせしてテーマは結構壮大です。壮大なのにアッサリ決着を迎えてしまうところが一種の面白みとも言える。僅か数十ページの中で世界の秘密が明かされたうえで人類滅亡だの宇宙消滅だのと極端な結末を迎えるSF短編にも似た味わい。

 傑作と言うよりは佳作、逸品と言うよりは小品。過大の期待を込めてプレーすれば肩透かしかもしれませんが、「ちょっと燃えたい気分だなぁ」と軽い気持ちでやるにはちょうど良い内容です。『めぐり、ひとひら。』のおかげで再注目されつつある本作、とりあえず当方もオススメいたします。というか、めぐりも近く買いに行かないと。

 余談。当方は繰り返し述べた通りチッセ萌えですが、かと言って他のキャラクターたちもなかなか悪くはない面子でした。最初はキンキンした声にウザったさを覚えたレアルも美味しい活躍の場を与えられてうまく目立っていたし、メインのくせに「儀式の道具」扱いされていたユーディットも専用ルートではしっかり見せ場を演出して魅せる。何より意外だったのはベアトリーチェ。なんか強そうで脆そうな印象はありましたが、壊れた途端にあんな具合になってしまうとは。不覚にもクラッと来ました。

 そういえば、『きみとぼくの壊れた世界』に匹敵する「お兄ちゃん」連呼の狂的萌え台詞もありまして、ついこの間「夜月(*´Д`)ハァハァ」と興奮した記憶と混ざり合って変な笑いが止まらず、腹が苦しくなってしまいました。もう、どう形容すればいいのやら。致命的に萌えました。


2003-11-14.

・ポテトチップスは食べていると口内がズタズタになりそうなのであまり好きじゃない焼津です、こんばんは。イメージ的には折れたカッターナイフの刃を口に突っ込む感じ。必ずと言っていいほど食べた後は口の中がズキズキする当方は噛み砕き方が相当下手なのやもしれぬ。

『黒と黒と黒の祭壇』、プレー再開。

 ちょっと間が空いてしまったが、とりあえずあれこれやって何とかバッドエンドを回避し、先に進むことができるようになった。要はこのゲーム、キャラを個別に攻略しようとか思わないでストーリーの流れに沿った選択をしていかないとすぐバッド逝きとなる模様。ひょっとして一本道なのか?

 「聖女を処女のまま調教する」という魅惑漂う設定は本当のことを言えば注目を集めるための餌にすぎず、黒黒黒の本質というか本領が発揮される場面は別のところにある。それが何なのか、実際プレーしてみないと掴めないのがマイナー化という貧乏籤を引いてしまった理由ではなかろうか。

 何十時間もやり込むほどの分量はなく、中身もそれほど濃くはない。偏愛対象とするにはちょっと小奇麗にまとまっちゃっているため不適。しかし、まとまり方が決して悪くはなく、小粒だけれど個性的といった印象がある。ニトロやケロQのような、ある種の熱狂的なファン層を生み出すほどのパワーはないが、「そっち系」の嗜好を持つ御仁には充分ススメられる。スナック菓子めいた手軽さの燃えダーク・ファンタジー。しかしそれでも、惚れる人は結構な深度で惚れるハズです。当方も何か、説明のつかない範囲で惹かれつつあります。

 やはりチッセ(このページの右端)か。彼女の存在は無視できない。狂言回しといった役どころで、いかにも腹黒そうで何考えてるんだか分からない笑みを浮かべていますが、本編では調教される聖女・ユーディットよりも長く主人公と接しており、胡散臭いながらもプレーが進むうちに愛着が湧いてくる。というより、燃えどころはあっても萌えどころがほとんどない黒黒黒において唯一の萌え要員。延々と空疎に響くお喋りが独特の可愛らしさを育みます。だが全身から溢れる胡散臭さによってチッセたんが何を言っても主人公は信用せず、ふたりは普通の恋愛ゲーみたく感情がすれ違う。何度主人公に「このニブチンがッ!」と野次を飛ばしたくなったことか。

 チッセたんに目が行き過ぎて肝心の聖女がだんだんどうでも良くなってくるという弊害はありますけど、ストーリーはちゃんとツボを押さえた展開となっているのでプレーしていて楽しいです、はい。「予想を裏切る」ことが一つの面白さとなっています。

『Clover Heart's』体験版終了。

 全体で2時間くらいだったでしょうか。計ってないのでよく分かりませんけど。

 主人公が双子ということでそれぞれの視点を利用し物語を編み上げていく構成となっている様子。兄と弟で攻略できるヒロインも分けられているように見える。ちょうど『てのひらを、たいように』のてのひら編とたいよう編みたいな関係。ただ、あっちと違って主人公たちが近親者であり、物語の関わり合いももっと密接になるだろうと予測されますが。

 兄・白兎のプレリュードはあくまで青春学園恋愛エロゲーっぽい香り漂うフツーの導入部でしたが、弟・夷月のプレリュードはいきなりアレなシーンから始まる。だからと言って、物凄く爛れた展開になるわけでもない。夷月サイドも見方によっては「よくある青春学園恋愛エロゲー」です。真新しいことにチャレンジしてくれるといった期待は抱けないものの、「よくある〜」として楽しめそうな安心感はありますね。

 それぞれ性格の違う兄弟を起用することでストーリーのバランスを取ろうとしているところはなんとなく『Ricotte』のLargo編とAllegro編を彷彿したり。何にしろ、エッチが最後の一回だけとかじゃなくて複数回ありそうなのは当方好みです。「青春」と「学園」と「恋愛」をそこそこ味わいつつエロエロに耽る、と。パーペキな図式です。「寝取られ」や「修羅場」といったやや特殊な黒い期待とてなきにしもあらずだけど、こっちはあまり期待しない方がいいか。

 ともあれ購入の意志は固まりました。体験版を通じ、このゲームが当方にとってとても甘い蜜であると判明しましたゆえ。そっちの水が甘いなら、たとえ罠であろうとむざむざ誘われてやるのがエロゲーマーの常道というもの。月末はこれで決まり。


2003-11-13.

これを理解するため穴が開くほど見つめて目が痛くなった焼津です、こんばんは。原理はすぐ分かったものの、具体的なことへ考えが至るまで結構時間がかかってしまった。当方、パズルは好きですが苦手。ついでに書くと、弾幕張られた途端に死が確定する腕前のくせしてSTGが好きです。動体視力も反射神経もアテにならない。処理落ちこそ我が唯一の味方。

ALcot『Clover Heart's』体験版をプレー中。

 特に目玉のソフトがない今月、その中で割と注目されている1作。スタッフが『月陽炎』の面々とかいうコトで話題になっていますが、4月に買った『月陽炎DVD』は絶賛積み中につき当方の反応はいまいち鈍げでした。主人公が双子でヒロインも双子と、昔チャンピオンでやってた『2×2』というマンガを思い出す設定を除けばよくある学園青春恋愛エロゲーであり、さして注目したくなる要素もなかった。体験版をDLしたのも何となくで、大して期待しておりませんでした。

 で、今のところ白兎のプレリュードと玲亜のイベント2つをやりましたが、なかなか良さげですね。兄弟の関係が不和なところからして和解に至るまでのシリアスな過程が必ず何らかの形で入る──つまり、萌えやエロとは無縁のイベントに力点が置かれる可能性もあるということで少し不安もありましたが、玲亜の2番目のイベントを見て解消。「いっぱいしちゃったね」という会話からして複数回のエロは確実の模様だ。爽やかなムードさえ漂う学園青春恋愛ストーリーにエロの疾風が走り抜けるっつー状況は、当方の胸の底に横たわっている欲望が獣化して檻を突き破るほどの好打。萌えとエロの波状攻撃に心はデンジャラス・ライオン。

 基本はあくまで「よくある学園青春恋愛エロゲー」だと思います。きっとやたら時間のかかる日常シーンがダラダラと続き、エロまでの長き道のりを萌えで食い繋ぐことになるでしょう。テキストは込み入ったところがなく簡素な代物で、これなら疲労を覚えることなく長時間プレーできるハズ。寝取られとか黒い期待を抱いたりしない限りはまずまず楽しめそうな気配が醸されています。ふむ、月末はこれに突っ込むというのも悪くない。

萌え絵の参考書

 DAIさん帝国経由。よもや参考書のカバーを椎名優のイラストが飾る日が来ようなどとは、露ほども予想しておらなんだ。ちなみに椎名優は電撃ゲームイラスト大賞ファンタジー部門の金賞を受賞したイラストレーター。『月と貴女に花束を』『猫の地球儀』とかのイラストも手掛けており、画集も2冊出ている。さりげなく好んでいます。


2003-11-12.

・現在『密室殺人大百科(上)』を読んでいますが、密室と言えば扉の破壊。

「開かない……鍵が掛かっています」
「おい、○○さん、どうしたんだ!? ○○さん!? ……くそっ、返事がねぇ」
「あ、合鍵を持ってきます」
「バカヤロウ、そんな悠長なことやってる場合か! こじ開けるぞ、全力でぶつかれ!」
 ドンッ、ドンッ、バリッ
「○○さん! ……うっ」
「畜生、遅かったか……!」

 ミステリの世界は強肩が常識。こういうシーンを見るたび、凶器なんか使わなくてもタックルだけで人が殺せるんじゃないかと思ってしまいます。まあ、そんなことはともかく、密室は当方にとって大好物です。さすがにほとんどのパターンは出尽くしてしまった観があるので「おお、すげぇ」と感動するような目新しいネタは滅多に見ませんが、「鍵が掛かっていた」「衆人環視だった」「足跡が一条しかなかった」「そもそも被害者すら侵入不可能だった」などという設定を見るたび年甲斐もなくワクワクします。雪密室、視線の密室、セキュリティの密室といった変型も好むところだが、やはり何と言っても本式の「鍵の掛かった部屋(Locked Room)」が一番。

 そんな当方に強い印象を残した密室モノと言えば『斜め屋敷の犯罪』『翼ある闇』。後にも先にも「衝撃」の二文字に相応しい読書体験をした密室モノはこの2冊のみ。これらのおかげで当方の読書傾向はすっかり歪、いえ、決定づけられました。特に後者を書いた麻耶への耽溺ぶりはかなりのもので、ある時うっかり「麻耶って最高だよね!」と口にして周りから白い目で見られたことも今となってはいい思い出。麻耶雄嵩が異端視されていた時代なんて、西澤保彦もいれば清涼院流水もいて舞城王太郎や佐藤友哉、西尾維新に北山猛邦といったメフィスト勢が存在する現状から見れば遙か大昔のように思えます。それにしても麻耶の新作はまだ出ないのか。今度は何年待たすつもりだろう。ちなみにこれまでペースは2年に1冊といったところです。

・今月6日の日記で『きみとぼくの壊れた世界』を『ぼくときみの壊れた世界』と誤表記していたのをこっそり訂正。誤った文字列で検索しないとうちのサイトが引っ掛からない有り様には苦笑い。


2003-11-11.

・昨日書店に寄った際、『春ノ虫虫』というマンガを発見。作者名を一瞬「田中ロミオ」と読んで驚きかけたのは当方がいかにそそっかしいかの表れ。「幻想、ロリータ、音速の青春」なる惹句に興味を感じましたが、極端に虫嫌いな当方ゆえタイトルに不安を覚えて結局は回避。蜘蛛以外の虫は生理的にダメです。

・代わりに気になっていた例のヤツを購入。例のヤツというか、『今日の5の2』。「小学生ライトエロ」として一部でとてもとても好評のマンガです。早速読みましたが、嫌味のない寸止め感覚が心地良い。サッパリした味わいの絵柄もグッド。ただ当方は年齢表記のない世界に首まで浸かっているせいで読むうちに「主人公たちは小学生」という認識も希薄になり、キャラたちが年齢不詳の存在として捉えられてしまう始末。

 劣情をそそるエロではなくにやにや笑いを誘うタイプのエロ。どの途、これを読んでいるときの姿を誰かに見られたら終わりということに違いはないんですが。あと微妙に脳髄のノスタルジィ野を刺激される感触もありましたが、もはや素で自分が5の何だったか思い出せないゆえ、それほど懐かしくもなく……。

 お気に入りは第一話。グラグラする乳歯でバイティング。今にも外れそうな歯できつく噛んだり甘く噛んだりですよ? 当方、このお膳立てに歯向かう牙は持ち合わせておりませぬ。さながらハウンドを仕掛けられた狐の心境。

『黒と黒と黒の祭壇』、プレー2日目。

 またしてもバッドエンド。フラグを立て直そうとあれこれいじってみるもうまくいかず。んー、最初の方からやり直さないと行けないのか。このゲーム、物語の尺はあまり長くない気がするのですが、ひょっとすると攻略は結構面倒臭いかも。

 しかし、テキストは肌に合うし、オカルトやファンタジーの要素もちょうど良い濃度で混ざっている。状況、テキスト、BGM──これら3つが絶妙の調和を保ちつつ溶け合う様には思わず恍惚。攻略には詰まっていますけど、プレーしていて単純に楽しいです、はい。

 そしてチッセたん(このページの右端)マンセー。最初は「胡散臭い女だな」としか思わなかったが、進むごとに肝心の聖女がどうでもよくなるぐらい馴染んでくる。既に「処女調教」はゲームの目的ではなく、チッセたんと戯れるための手段と化している。「萌え」の要素などないと頭から決めてかかっていたが、迂闊だった。チッセたんの空々しい喋りと、その裏に隠されたモノのおかげで当方は順調に骨抜きにされていっております。もう、主人公と戦場とチッセたんがあればそれでいい気分だ。偏愛ムード横溢。

・夢枕獏の『新装版 風果つる街』を読了。

 賭け将棋を生業とする「真剣師」が主人公の連作集。日本中を放浪する主人公・加倉文吉が将棋を通じて様々な人間ドラマを目撃するといった構成で、文吉のキャラクターはのらりくらりとして掴み所がない割に強い個性を有している。最初の3編「銀狐」「くすぶり」「浮熊」はあくまで人間ドラマを主体とした内容でやや盛り上がりに欠けるきらいはあるものの、全体の半分以上を占める中編「妄執の風」は他の夢枕作品と比べても劣らぬ迫力が篭もっている。

 『月下の棋士』は読んでいるくせに格別将棋に関心を持たない当方だが、本書はなかなか楽しく読めた。将棋を中心に据えた小説と言えば、内田康夫に『王将たちの謝肉祭』という作品がある。細部はあまり覚えていないが、あれも「面白かった」と思った記憶がある。それでこの『風果つる街』はあとがきや解説によれば『獅子の門』というシリーズとも繋がりがあるようなので、機会があればそっちも読んでみたい。


2003-11-10.

・ジョジョは第五部が好きな焼津です、こんばんは。ギアッチョやプロシュートの兄貴が素敵過ぎる。

『黒と黒と黒の祭壇』、プレー開始。

 去年の5月にシーズウェアが発売したソフト。「黒」を三連呼したうえ、「蠱毒」を副タイトルに据えるセンスは紙一重のステキさです。そういえば佐藤友哉も「嘘と嘘と嘘の祭壇」なる章題を使っていたが……やっぱり狙っているんだろうか。

 シナリオライターは朱門優。今年9月に出た『めぐり、ひとひら。』も手掛けています。和風ファンタジーであるめぐりに対し、こっちの黒黒黒は異世界ファンタジー。同じファンタジーでありながら舞台や雰囲気が異なるものの、一部の設定は密かに共通しているとか。

 主人公はユディル皇国の第七皇子グルーヴェル。味方からは「聖地の守護者」と褒め称えられる名将であり、敵方の異教徒からは「殺戮の皇子」として恐れられる存在だった。取り戻しては奪われ、奪われては奪い返すといった戦いを延々と繰り広げてきた聖地レイアークにおいて10年もの間異教徒の侵攻を退けてきた彼に、突如「反逆者」の烙印が押された。皇女ユーディット──グルーヴェルの義妹にして、やがてはユディル皇国を統べる聖女となる姫巫女。彼女の賜った神託によってグルーヴェルは投獄され、公開処刑を待つ身となったのだ。国と民衆と彼女のために戦い続けてきたグルーヴェルにとっての、苦い裏切り。地下の牢獄で絶望する彼に、チッセと名乗る女が手を差し伸べる。その手を取ったとき、彼は自分が本当に「反逆者」となることを予感した。

 絶望と脱獄で幕を上げるストーリーは当然の如く暗い。義妹への怨嗟に満ちた主人公グルーヴェルは、きな臭い邪教の暗黒儀式に望んで参加する。唯一にして最大の聖女を汚し、堕落させることが目的とあっては、誰しも単純な調教エロゲーを想像するはずだ。攫うまでもなく最初からユーディットが捕まっているお膳立ての良さといい、いかにも手軽なエロを売りとしたゲームのように思える。キャラも少ないし、舞台は閉鎖環境にあるのだから尚更だ。実際、プレー開始から1時間ちょっとは変化に乏しいイベントが続く。これじゃ話を広げていくのは難しいんじゃないか、と微かな不安を覚え始めたところで急展開。

 なんなんだ、この燃えるシチュエーションは。

 あまりの差に少し呆けてしまった。「聖女を拉致監禁して処女のまま奴隷調教する」というコンセプトを聞いていったい誰が空中庭園で天使の軍勢を殺戮する展開を予想するだろう。皇女ではなく「反逆者」に(*´Д`)ハァハァするなんて。一瞬、ケロQやニトロの作品でもやってるんじゃないかと疑ってしまうほど、意外だった。

 たぶん、このソフトは調教エロゲーとしてはダメダメな内容になっている気がします。「処女調教」という狙いはマニアックでエロそうですが、現時点までの感触だとそっちは重視されていない雰囲気が濃厚。反面、燃えるダーク・ファンタジーとしては望外な出来となるかもしれない。焦らし勿体つけてムードを盛り上げるところや、『ヘルシング』ばりのイカレ台詞を多用するところなど、テキストがなかなかに熱い。

 この調子で素晴らしい内容に仕上がっていたら、一度は回避した『めぐり、ひとひら。』も再検討の必要に迫られる。めぐりは体験版をプレーしてシリアスな部分にはいくらか惹かれたが、どうにも日常シーンがだるくて購入予定から外してしまった。発売後に収集した評判は賛否両論につき、買おうとも諦めようとも決心がつかず、長らく迷っていました。幸い今月は出費の予定が少ないですし購入する余裕もありますが、さてはて。とりあえず黒黒黒を進めて判断を確かなものにしようかと。

 ちなみに、気の赴くままにプレーしていたら初回はあっさりバッドエンドになってしまいました。いや、もう、DOSゲーばりの唐突さ。バッドエンド好きの当方としてはこうやって理不尽なBEに襲い掛かられるのも悪くない感じです。

GA Graphic凪良の壁紙公開中

 第一弾。『シャープ・エッジ』のイラストを手掛けている絵師さん。ちょくちょくHPには訪ねていたので、SEのイラストレーターがこの人と発表されたときはかなり喜んだ記憶があります。SEは文・絵ともども好きなシリーズ。掘り下げは浅いのですが、B級的な表層感がやたらツボに入りました。


2003-11-09.

辰巳四郎先生、逝去。

 装丁を手掛けているデザイナーの中で、当方がもっとも名前を親しんでいた方です。一時期新本格にハマり、講談社ノベルスの諸作を読み耽った当方にとって「辰巳四郎」の四文字は忘れようにも忘れられない。装丁に特色があり、ひと目見れば「ああ、彼だな」と分かったものでした。右も左も分からず途方に暮れていた当初、「まずはこれを読んでみよう」と手を伸ばす気持ちを後押ししてくれた装丁も数多い。中身への期待は無論必要ですが、美麗な装丁があってこそ購入の意志は強まるというもの。アタリもあればハズレもありましたが、「装丁に騙された」という気はしません。いろんな本を読むキッカケになってくれました。もう彼の新しい成果を目にすることができないのは寂しいばかりです。

 ご冥福をお祈りします。

Fate絵(Crazy Clover Club)

 たぶんメインヒロインという扱いなのだろうが、体験版ではほとんど出番がなかったからまだキャラとしてはよく分からないセイバー。パッと見では無表情で口数の少ないところから翡翠を連想したりもする。

 あと、同サイトの月姫ページにはFateのマンガもあり。当方がこれを読んだときはまだ体験版をやっておりませんでした。そのせいか、「絶対命令権」というフレーズを目にすると体験版中のアレよりもこっちの方を連想してしまいます。それにしても「絶対命令権」ってネタにし易い設定ですね……なんか、「絶対このネタは誰かがこう使う」という予感がビシバシ脳裏をよぎっていく。エロありギャグありシリアスありで。

『朝の来ない夜に抱かれて』、コンプリート。

 「シナリオジャンプ」の機能が便利すぎるくらい便利。いちいちフラグ立てとか気にしないでサクサクと未見のイベントが拾えるのは物臭なヌルゲーマーである当方的にすごくありがたかったですけれど、ここまで簡単で良いものか、何か裏があるんじゃないかと勘繰ってしまいました。

 野球チップスのカードやビックリマンチョコのシール、ガチャポン、カードダスなどはコレクションを始めた当初はほとんど重複がなく、割と簡単に揃っていくのですが、収集量が完璧に近づいていくにつれ、だんだんダブりが多くなってくるものです。ダブった奴を友達とトレーディングして穴埋めしていっても、数の少ない稀少な分はなかなか手に入らない。「あと1個、あと1個で全部揃う」という状況に達したときに限って、その肝心の「あと1個」が出ない。そこまで来るともう意地になって諦めることはできませんから、正しくムキになって「あと1個」の入手に目を血走らせてしまうのがコドモ・ハート。収集作業は最後の一歩が難しい。最後まで手に入らなかったということはつまり入手難易度が高いってことでもあって、喩えれば宿題のどうしても解けなかった問題や、嫌いで最後まで残してしまった給食の一品のように攻略しがたいものです。

 同様にエロゲーのCGやイベントの回収作業も、最初は鼻歌をハミングしながらやっていたのが、最後の1枚や2枚という段になって詰まってしまうことが多い。どういうフラグを立てればこれは見れるんだろう? あれこれ考えて選択肢を組み合わせるものの巧くいかない。ノベルゲームは攻略が安易なことから「ゲームじゃない」とまで言われることもあるジャンルですが、なかなかどうして、選択肢の組み合わせは膨大であり、フラグ立てのシビアなゲームでは一個間違えただけでオジャンになってしまう。更に悪いのは、どこで間違えたのかがよく分からないってこと。スーパーマリオなんかと違って、ミスしても「次こそはやれる」という手応えが掴めず、また同じテキストをスキップで垂れ流しにするのは退屈で苦痛極まりない作業です。散々悩んだ末に結局降参し、攻略情報に頼らざるを得なくなるのは、屈辱というほどではないにしろ脱力感を誘う。

 だから、シナリオ全体を俯瞰し、たとえ未回収のイベントでもさっくり見れてしまう「シナリオジャンプ」の機能はあまりにも便利で却って心許ない。かつてはスキップなんて機能のない『弟切草』や『かまいたちの夜』を平気でやっていた自分が今はスキップなんて付いていて当り前と思い、時折「スキップが遅い」「未読と既読を判別しない」と文句を垂れるようになりましたが、この分ではごく普通の難易度を持ったノベルゲームに「攻略が面倒臭い」「コンプしたら全体を眺められる機能が欲しい」と言い出してしまいそう。

 それで肝心のストーリーの方ですが、予想していたのとは僅かにズレた方向へ進んでいって決着しました。最後の最後まで戦闘描写は薄く、「燃え」を求める気持ちは満たされなかったものの、「運命に抗う」という姿勢で戦う主人公たちには好感が持てた。ただ全体を見ると日常シーンの比率が多く、やはりもっと伝奇やサスペンスな部分を増やしても良かったのではないか、と思ってしまう。主人公が「無貌の神」憑きとはいえ、メチャ強すぎでバトルもバトルになっておらず、「死ね!」「ぎゃー!」並みの展開には危機感など微塵もない。演出は結構凝っているし、主人公が声付きで決めゼリフを選べるところも画期的だとは思ったんだが……。

 うーん、このゲームも『FOLKLORE JAM』みたくバランス良く仕上がっているのにエンターテインメントとしては薄味に感じられる。ニトロプラスやケロQを偏愛する当方にはどうにも物足らない。主人公を含め、キャラクターたちはみな魅力的だったし、ストーリーもツボに入らなかったとはいえキレイにまとまっていたから嫌いではない。買って損はなかった。「ああすれば、こうすれば」といろいろ不満が湧くのも当方の欲張りな性分が原因ゆえ、責めるには値しない。でもあと一つだけ敢えて要望を書くなら、「『無貌の神』と『邪を祓う剣』の共闘」は是非とも見たかった……続編出ないかな、これ。


2003-11-08.

・うっかり座り寝して足の血流が悪くなった焼津です、こんばんは。なんとも言えぬ不快感。睡眠はちゃんと取りたいものです。

・今頃『今日の5の2』というマンガの存在を知り、激しく気になっている当方は見事なダメっぷりですか? そうですか。「小学生」と大っぴらに書けない世界に馴染んでいるせいか、こうも気安く小学生小学生って連呼されると思わずトリガーハッピーになりそうです。何のトリガーなのか当方自身よく分かりませんが、脳の隅っこにある引いてはヤバい感じの奴をバンバン引っ張ってしまいそうなイメージ。もはや見かけたら買うより他に選択肢なし、といった雰囲気が漂ってきました。探してみます。

・西尾維新の『きみとぼくの壊れた世界』を購入し、即読了。

 メフィストに「体験版」と銘打って掲載された箇所は「もんだい編」となっており、ここだけで120ページあります。結構あるとは思っていたけれど、そんなにあったとは。著者にとって8冊目の本に当たり、また同時に初の学園モノでもあります。いえ、『クビツリハイスクール』という作品もありますが、あれを学園モノと言い切るのはちょっと難しいですし。「新青春エンタ」だなんだと謳われつつもあまり学園に目を向けてなかったってのは少し意外な気もしますね。

 ストーリーは特に触れませんが、やはり西尾維新。いつも通りカタログから引き出して来たような個性に溢れたキャラたちと、ページが真っ黒になるほどの饒舌さで物語を紡いでいます。印象的なシーンもちらほらと。

 今回は「本格」とか「パズラー」を強く意識したようで、後期クイーン問題なんかも引き合いに出しつつディスカッションを行っている。法月や霧舎、氷川を連想させるムードの中で推理活動は進展しますが……うーん、『ダブルダウン勘繰郎』あたりでも既存の本格や新本格に対する意識は晒されていますが、本作ではそれをより一層強化し、コードへの配慮やルール設定など細かいところに気を遣っているのはよく分かります。簡単に言えば、頑張っている。今までの西尾作品と比べれば一番真っ当に本格の形式を貫こうという姿勢が見られる。しかし、その頑張りが結実しているかどうかについては微妙。「立証」を主眼に置きつつも、論理展開がちょっと不安定です。

 「壊れた世界」云々や、最終的に至る結末については、なんとなく「一見して散らかっているように見える部屋だが、住んでいる当人にとってはよく整理され配置され了解され秩序立てられた空間であり、最適化されている」というような話を思い出したり。個性や特性を無視して整頓するよりは、それらに準じて乱雑である方が過ごし易いものかな、と。的外れですがそういった感想。粗い部分も多いですけども、割と気に入りました。


2003-11-07.

・西尾維新の新刊は見かけませんでしたが、電撃文庫の新刊は確認。『終わりのクロニクル2(上)』ほか数冊を購入しました。

 三雲岳斗の『i.d.』以外はシリーズものですが、恐ろしいことにどれも前巻を積んでいるせいで1冊として読める本がない。『灼眼のシャナ』に至っては前巻どころか1巻目すら未読という有り様。いとうのいぢのイラストに惹かれてズルズルと積み買いを続けています。

 何も一気にドッサリ買う必要はなく、逐次的に買って効率良く消化して行けばいいとは分かっています。少なくとも頭では。しかし、新刊コーナーに目新しい書籍が並んでいるのを見ると反射的に手が伸びて、とっくり眺めるとそのまま元の位置へ戻す意思が湧かずついつい買ってしまう。中高生の頃、小遣いのやりくりが大変で新刊は買えず、立ち読みや友人間の貸し借り、図書室・図書館にあるものなどで済ませたり、古本屋に安く出るのをひたすら待ってばかりいた、あの時代の反動じゃないかという気もします。扱える額が増えると箍が外れたように買いまくり生活へシフト。処理能力を超えてもなお買わずにはいられない身体となり、もはや一種の病気です。

 資金面はともかく、購入後の保存が問題ですね。つまらない本はあっさり処分できますけど、気に入った本はなかなか手放せない。読んでない本ともなると尚更。当方は生来収集癖があるので、「溜め込む」こと自体に喜びを感じてしまいがちです。だから油断していると止め処なく積む羽目となる。とりあえず惰性買い──面白くないと思いつつ、「もうすぐ完結だし」「なんか人気のある話題作だし」「ひょっとしたらこれから面白くなるかもしれないし」「リアルタイムで追い続けてきたんだし」「この作者の他作品は好きだし」「なんとなく」といった気持ちで買い続ける──をやめ、いくつかのシリーズは切りましたけど、切ったことで負担が減って「じゃあ、今まで興味あったけど手が出せなかった奴に」と別シリーズへ関心を移すようなことが多く、結果としてあまり変わらない。やはり病気かな、こりゃ。

『まいにち好きして』に突乳。

 評判は上々だし、あの激しいヒラメ顔を除けば概ね当方好みの絵柄ですので、遂に我慢ならなくなって購入。積読ばかりでなく積ゲーも多いです。前作『ONE and ONLY』がまだ積んだままなのでプレーするのは先となるでしょうが、この美事な乳っぷりを見るにつけ期待は弥が上にも増す一方。朝夜も早くケリをつけるとしよう。

うそモテ、1980

 _| ̄|○

 遂にこの日が来てしまったか。発売されたときからイヤなヴィジョンとして脳裏に描かれていましたが──1年近くなら保った方か。うそモテは頑張った。うん、頑張ったよ……。

 うそモテのシナリオは『Ricotte』を手掛けた千籐まさと。『Ricotte』の方は雰囲気との兼ね合いがあってかコメディはかなりセーブされていましたけど、うそモテは制止ゼロで突き抜ける爆走ギャグ──さりげない黒さも混ざっており、なかなかクセになる味わいをしています。当方がこのページを開設したとき、テキストのゲーム・コーナーにはデモンベインうそモテしか置いてありませんでした。つまり、「とりあえず置くならこの2本」と真っ先に選ぶほど惚れていたのです。そんな傑作がなんともお求め易い価格に。

 あーもうこうなりゃ持ってけドロボー! と、一ファンとしては半ばヤケ気味にオススメしたい所存。パッと見た感じの印象は冴えないけど、「笑い」においては去年当方がプレーしたゲームの中で一、二を争うレベルでした。「笑い」と表裏するシリアス部分の出来も良かった。ただツッコミの勢いを重視したタイプなので、ほんわか萌えコメディを期待するとアレですが。パートボイスというのも微妙。ともあれ、当方も供養と思ってもう一本買おうかな。

 それにしても、発売日はろくに積まれることのなかったうそモテが、1年経って特価品として山積みされていることを思うと泣ける。それがうちのページを開設した理由の一端なのだと思うと尚更泣ける。馬謖の首も斬れそうなくらい泣ける。「バカっ……! 泣いてるわけ、ないだろっ……!」と言いつつ足元に涙滴がこぼれるくらい泣ける。『同じ月を見ている』級に泣ける。

 まあ、これで少しでもうそモテの話題度が上がってくれればいいんだが。ポテンシャルで言えば『しすたぁエンジェル』にも負けず劣らずなのに……。


2003-11-06.

・C†Cネタ。霧が冬子と結婚して桐原姓になったら「桐原霧」で正真正銘のハラキリ娘だなぁ、と愚にもつかないことを考えた焼津です、こんばんは。結婚が無理なら養子という線で。ちなみに「キリハラキリ」と書くと「ハルハラハルコ」に似てる気がしそうでしなかった。

・ひょんなことから横山秀夫が『事件列島ブル』の原作者だったことを知り驚愕。もうほとんど覚えてないけど社会派っぽいノリだったな、確かに。ところで『ルパンの消息』が出るって話はどうなったんだろう。

・西尾維新の新刊『きみとぼくの壊れた世界』もそろそろ発売される頃ですが、イラストを手掛けるのはTAGROとのこと。えっと、この人のことはよく知りませんけど、こういった絵柄がカバーを飾るわけですか。なんかこう、白っぽくて抽象的に「壊れた世界」を表現した装丁になるんだろうな、と想像していただけにちょっと意外です。あくまでビジュアルな部分を重視して売っていくわけか……挿絵ゼロだった体験版がそれなりに気に入っているので少し残念。

・富樫倫太郎の『雄呂血』読了。

 文庫で1100ページ強。長い。確かに長いが、一度読み出したら作品世界に引き込まれてそのままどんどん読み進めていってしまうほどのパワーに溢れている。文章は至って平易で読みやすく、時代伝奇の類としては砕けている方。第一部の「狼災記」が筋立て、話運びともに良く、出だしは好調と言える。

 ストーリーは『地獄の佳き日』『修羅の跫』改題)の続きだが、どうやら解説によると富樫倫太郎の作品は全体でひとつの流れをつくっているようなので、他の作品とも関連があるかもしれない。鳥羽法皇や、タイトルにもなっている雄呂血など、数多くのキャラクターが入り乱れ綾を成しているあたりは『地獄の佳き日』と同様だ。上巻の「主な登場人物」のページには45名ものキャラクターが記載されている。エピソードとして名前が出てくるだけで、実際には登場しない奴もいるが。

 何せ平安京が舞台の時代物だけあって、父子などの名前がどれも似ているものばかり。平氏は清盛、忠盛、貞能、盛国、忠正、頼盛、源氏は為義、義朝、義賢、頼賢、為朝、義平といった塩梅でとにかく区別がつきにくい。正直言って歴史には明るくない当方ですから、たまに誰が誰だかごっちゃになります。長いこと出番がなかったキャラが久しぶりに登場すると「誰だっけこいつ? 新キャラ?」ってな反応を示してしまう。幸いストーリーがよく整理されているのと、一回書いたことでも度々説明し直してくれるビギナー向け親切設計のおかげで本筋を見失うことはなかった。

 史実を追う一方で要所要所に伝奇要素を盛り込んでもいますが、仕掛けた要素のすべてが作品中で消化されるわけではなく、「次回に持ち越し」となる部分も多い。エピローグはかなり思わせぶりな書き方をして終わるし、これ一作の完結性は低いです。著者による大河物語の中継点、といった性格が強く感じられる。歴史に疎くて時代物を苦手とする当方でも充分楽しめたこともあり、続きとなる作品や関連のある作品も読んでみたいところです。


2003-11-05.

・なんとなく『Fate/stay night』の体験版を再プレー。既に流れを把握しているせいか、前回やったときよりもしっくりと馴染んで面白く感じられた。やればやるほどに期待が高まっていく。出てくるキャラに偏りがあるので初回は若干物足らなさも感じたが、改めてやってみると体験版としてはこれくらいがちょうどイイかもしれない。最初はアーチャーに萌えましたけど、二回目では美綴さんに萌え。武内崇のほわっとした画、奈須きのこの砕けた文章はいまひとつ第一印象としてのインパクトが弱いものの、噛めば噛むほどに染み出してくるスルメ的テイストがあって美味。

『朝の来ない夜に抱かれて』、最終章へ。

 どうやら期待のし所を間違えた様子。てっきり「血沸き肉躍る凄惨なバトル」が描かれる伝奇サスペンスとばかり思い込んでいましたが、どうもこの朝夜はそっち方面ではなかったみたいです。むしろしっとり系。ある種悲劇的な状況を運命と受け容れつつも、それに抗おうともがく主人公たちの姿が物語の焦点となっている。予期していたものとは異なる方向へ突き進んで行ってますが、これもこれで悪くはない。けど……うーん、とりあえず最後を見届けるまで具体的な感想は保留ということに。うまく決着させてくれるといいが。

『あののの。』体験版をプレー。

 副タイトルは「君と過ごしたあの日あの時あの未来」。少しはにはにを連想してしまう略称的タイトルですが、内容はリプレイもの。3年前にタイムスリップして過ぎ去ったハズの学園生活をやり直すといったストーリー。事故死する後輩や海外留学する幼馴染みなど、改変対象が含まれる一方で、異なる行動をしたために出会うこととなったヒロインたちもいる。

 だいたい1時間くらいの量。タイムスリップ前・後の数日間をプレーすることができ、特にこれといったヒキもないまま途中で終わる。「ああ! 先が気になる!」というような構成をしていないのは良心的と言うべきかどうか。ともあれ、絵柄は当方好みでテキストもまあまあ安定しているから注目の視野には入れておきます。ただ、ヒロインたちは割合魅力的なのに、男キャラのグラフィックはひどいくらいに投げられてる気がしてならず。本来ならそこは「まあ、いいか」と流すべき箇所なのに、やたら不満を感じてしまうのは当方が「野郎萌え」の魔道から引き返せなくなっている証左であろうか。

 それはそうと、やはりノベルゲームはリプレイものやループものと相性がイイのかな。本格的なものばかりでなく擬似的なものも含めれば、今年やったエロゲーのうち5本は該当します。Lassの新作『3days』もリプレイ乃至ループもの。『永ワ刻』……は時間移動モノで、ちょっと違うかな。ちなみに「リプレイ」と「ループ」の違いは、前者が「繰り返し」の回数が決まっていたり主人公の意思により「やり直し」をするもので、後者は放っておけば際限なく「繰り返し」が起こるもの、と認識しています。リプレイものは主人公の取り巻く環境を「やり直し」の前よりも良くすることを目的としており、ループものは「繰り返し」という異常現象からの脱却を主眼に置いている場合が多い。

 この手の話を読んだりやったりしていて面白く感じるのは、「これから起こることを先読みできる」というところ。予言者になったかの如く、記憶の及ぶ範囲内で最適な言動を取れるのが気持ちいい。ただカオスやら何やらを絡ませると、主人公のちょっとした言動の違いで予測の範囲を遥かに超える変化が起こり得ることになってしまい、胃が痛くなる。また「ループするのに先がまったく読めない」と、設定を逆手に取ったモノ(『腐り姫』とか)なんかもあって侮れない。『あののの。』も思わせぶりな書き方をしている箇所があって、面白そうな一方、不安もあり。

 けど、一番不安なのは隅田川の扱いなんですが。メインヒロインではないみたいだし、本気で脇役? だとしたらめげるなぁ。

・高野和の『七姫物語』の続編、1月に刊行予定。

 やっと出るのか。『ウィザーズ・ブレイン』並みに待たされた。そのウィザブレの方も12月と1月に分冊で新作が出る予定となっている。いやはや、こりゃ縁起がイイ。


2003-11-04.

『朝の来ない夜に抱かれて』、現在第四章。

 一章よりも二章が長く、二章よりも三章が長く、といったふうにだんだん分量が増えていってます。ストーリー全体の構図は第三章であらかた示されるため、今後の展開もだいたい「こうなるだろうな」という手応えがあります。

 主人公はしっかり声付きで、戦闘シーンの演出も工夫が凝らされているから「カッコ良い」とは思うのですが……相変わらずブギポ並みの活躍度。確かに憑いているのがアレなら戦闘力はほぼ無敵の域に達しているんでしょうが、バトルものとしてはひどく味気ない。「萌え」要素はポツポツと配置されている割に「燃え」要素が薄く、主人公買いした当方としては今のところちょっと不満。とはいえ、物語も緩々と転換を迎えつつありますし、まだまだ今後には期待。

 ところで華蔵都子が思った以上に可愛い。いかにもメトセラっぽくて知識も豊富な人外ロリといった趣ですが、主人公である辰人との遣り取りはサクサクと軽快で、超然とした態度もコメディ的にいいアクセントとなっている。当方、実を申せば眼鏡っ娘がどうにも苦手で、それでもたまに「この子いいじゃない」と思うことがあるのですが、全体から言えばせいぜい2割程度。10人の眼鏡っ娘が出てきたら8、9人は拒絶反応が出る。特に「図書委員」「司書さん」といった役はかなりダメで、性格が引っ込み思案だったりおっとりしていると状況は壊滅的なものとなります。学園エロゲーなら3作に1作の確率でそういうタイプのヒロインが出現しますけど、まず攻略する気が起きない。幸い都子は消極的な性格をしておらず、どこか飄々としているおかげで馴染めました。

 人外ロリ万歳。

・島田荘司の『ネジ式ザゼツキー』読了。

 御手洗潔シリーズの最新長編。ある時期を境に物事を覚えることはできてもうまく思い出すことができなくなった記憶障害の男性・エゴンと御手洗が会話を重ね、徐々にエゴンの秘密を掘り下げていく。エゴンの書いた童話『タンジール蜜柑共和国への帰還』が作中作として掲載され、ここから多くのことが判明する構成は同シリーズの『眩暈』を彷彿とさせる。

 手当たり次第に等しい新人の推薦活動、深まるほどに周囲とのズレが拡大していく評論活動、読者たちの同人活動への過剰なまでの参加など、様々な迷走によって一時は国内の本格をブームまで導いた立役者として持て囃されたにも関わらず「島荘は何がしたいんだ、どこへ行きたいんだ」とファンを不安がらせた著者。当方も『占星術殺人事件』『斜め屋敷の犯罪』で島荘にハマり、そのまま新本格へ向かっていったクチですが、御手洗シリーズが長大化し始めた『暗闇坂の人喰いの木』のあたりからだんだん読まなくなって、『アトポス』をあまりの長さに投げて以来、系統立てて読むのをやめてしまいました。『龍臥亭事件』とか『涙流れるままに』とか『ハリウッド・サーティフィケイト』とか、とにかく長いのは敬遠がち。その一方で『御手洗潔のメロディ』とか『Pの密室』『最後のディナー』のような中短編集は読んでいて、「一時の壮絶さはないにしても、読み易くて面白いところは変わっていない」という感想を得ていました。

 この『ネジ式ザゼツキー』はノベルスで450ページ弱と、薄くはないけれど『アトポス』とかと比べれば「厚い」とも断言できない微妙な量で、手をつけたものかどうか迷いました。しかし変テコなタイトルに興味を惹かれたのと、久しく島荘作品を読んでいなかったことから「まあ、たまには」と買ってしまった。タイトルを見てなんとなく「糸ノコとジグザグ」を思い出したのも要因といえば要因かな。あの短編、好きなんです。

 なぜか横書きが多かったり、ほとんど会話文主体になっていたりと、タイトルばかりでなく中身まで変テコな構成になっていますが、それが悪印象を与えるかと言えばそうでもなく、「記憶障害に陥った男性」というネタと絡んでむしろイイ感じに独特の雰囲気を醸し出しています。奇想横溢といったところでしょうか。

 リーダビリティは優れている。本編とは関係なさそうな雑学ネタがふんだんに盛り込まれているくせして退屈を感じさせないようにこちらの興味を巧くコントロールしており、なかなか飽きが来ない。あっという間に100ページ以上読んでいることに気づいて驚かされる。展開が非常にスローペースなので「真相はどうなんだ」と苛々する場面もありますが、現実離れした話が少しずつ論理のもとに束ねられ整理されていく流れは読んでいて気持ちいい。幾分苦しく感じるところもありますが、それでも単純にワクワクさせられる。熟練工の手つきを見るようで、新鮮な驚きには欠いているにしても面白いことは確かです。

 匠の一作。なんだかんだとあっても島荘の作品はやっぱり面白くて、まだ見捨てる気はしない。

・あ、そういえば毎月恒例の「今月の予定」を書き漏らしていました。今月はだいたい以下の感じです。

[本]
 『きみとぼくの壊れた世界』/西尾維新(講談社ノベルス)
 『目隠しの国(8)』/筑波さくら(白泉社)
 『螺旋階段のアリス』/加納朋子(文春文庫)
 『悪魔のミカタ11』/うえお久光(電撃文庫)
 『終わりのクロニクル2(下)』/川上稔(電撃文庫)
 『シャープ・エッジ3』/坂入慎一(電撃文庫)
 『HELLSING(6)』/平野耕太(少年画報社)
 『妖幻の血(4)』/赤美潤一郎(スクウェア・エニックス)
 『ストーム・ブリング・ワールド3』/沖方丁(MF文庫J)
 『オーデュボンの祈り』/伊坂幸太郎(新潮文庫)
 『接近−白地図scene1−』/古処誠二(新潮社)
 『後巷説百物語』/京極夏彦(角川書店)

 今月はなんと言っても『HELLSING』。ちょうど5巻の終わりでアワーズ読むのやめましたから、6巻は未読のエピソードばっかり。楽しみにしないワケがない。西尾維新の『きみとぼくの壊れた世界』も980円という価格からしてたっぷり楽しめそう。『終わりのクロニクル2(下)』に関してはしばらく積むでしょう。まだ『1(上)』しか読み終えてませんので……。ハードカバーは古処誠二と京極夏彦の新作に大注目。

[ゲーム]
 『vision』(Wing)
 『Clover Heart's』(alcot)
 『巫女さんだーいすき!』(SCORE)

 んー、注目しているソフトはあんまりありません。大決戦となる12月を控えているから、上記のどれ1本も購入しない可能性さえ、なきにしもあらず。


2003-11-03.

・実は樟賈寶(ジャン・ジャボウ)という名前の響きが好きな焼津です。響きだけですが。

 それはそうと隠しページを見る前に本編をアンインストールしてしまい、もう一編インストールし直すハメになりました。間抜けな自分に乾杯。

・『グラディエーター』視聴。見るのはこれで2度目。ホアキンの嫌味な笑顔が相変わらず素晴らしい。この映画、どうも筋立てがB級というか、バカ映画のノリが濃くて見終わった後も感動とか湧いてきませんが、「あー、このシーンもう一度見たかったんだ」というところは多い。元老院相手に醜態晒すホアキンとか、マキシマスに再会してビビるホアキンとか、嫌そうにサムズ・アップするホアキンとか、やっぱり最後のみじめったらしいホアキンとか。ホアキン以外では首吊りの罠がお気に入りです。

『朝の来ない夜に抱かれて』、プレー開始。

 主人公である八雲辰人(CV.ルネサンス山田)の存在が購入動機でした。

 男目当てでエロゲー買って何が悪い。

 と開き直りつつ。この朝夜は去年の6月末に発売されたソフトで、デモがなかなか良さげだったために注目していたのですが、『D.C.』や『それは舞い散る桜のように』、『とらかぷっ!』など、同日発売のソフトでいろいろと気になるモノが多かったせいで結局購入には数ヶ月遅れてしまいました。F&Cのゲームはたまに価格が暴落してワゴン逝きとなるのですが、この朝夜はヒットこそ飛ばさなかったもののそういった不運を避けられた模様です。評判もそこそこ安定している。

 ストーリーを乱暴に要約してしまえば、いっぺん化け物に殺された主人公が「無貌の神」に憑依されたことで甦り、その力を使ってズシャー! バシャー! っと化け物を倒せるくらい強くなっちゃった、てな感じです。ノリとしてはまんま少年マンガやライトノベル。いかにも悪人めいたツラをしている主人公ですけど、性格の方はお気楽でお人好しで熱血漢で浮気性と、フツーにエロゲーの主人公してます。

 マルチサイト構成になっていて、視点が主人公以外のキャラであるときは主人公の声も付きます。そればかりでなく、ヒロイン等の独白までボイスになっていることもあり。とにかくこのゲームはボイス量が多い。一種のオートモードにあたるドラマモード(声の付くセリフは声だけ流す)が成立するほどに喋りまくる。だから、しっかり声を聞きながらやっているとなかなか先に進まない。根が貧乏性の当方としては、別に拙くもない音声を飛ばすのは抵抗が強くて、ついつい聞いてしまう。

 ジャンルは一応伝奇アクションだと思いますが、3章まで進めた現在のところ、主人公の活躍はブギーポップ並みの薄さです。話の最後にひょっこり現れてサクッと事態を解決してしまう。大したデウス・エクス・マキナっぷりだけど、もう少し主人公のスペックが分かるような形で戦って欲しい。どうにも強すぎて味気ないですから。

 でも割と好感触です。主人公目的だっただけに、「無貌の神」の力を借りて人外へ変身する様には(*´Д`)ハァハァしてしまいます。その一方でヒロインたちも結構魅力的。主人公の女房役に当たる美空は依存系幼馴染みですが、パケ絵からして凛々しい活躍の場も与えられそうな様子。

 にしてもこのゲーム、絵のバラつきが激しいなぁ。パケ絵の美空と本編の美空は微妙に別人っぽく見えます。パトリシアなんかも立ち絵とイベント絵では少し違っている。絵柄そのものにクセがあるのは良いとしても、もうちょっと統一感を出して欲しかった。

なんなんだ、この値段は……。

 どう考えてもこれはB6サイズのマンガに付ける値とは思えないんですが。こっちで確認しても一緒だし、ひょっとするとミスじゃないのかもしれない。桁一つ落としても画集並みの高さ。本当にこれで発売されたら勇者しか買わないでしょう。


2003-11-02.

「今日、乳を見た。もう怖くない」

 という調子で『まいにち好きして』に突乳したかったのですが、「この連休は積みを崩す」との方針を定めたこともあり、あの神懸かったオパーイの質感に危うく篭絡されそうになりつつも鋼の精神で反転し回避。背中で泣いてみました。『イシカとホノリ』は普通に評判が芳しくないので普通にスルー。

『鬼哭街』をプレー。

 忘我しました。

 実のところ香港アクションも武侠小説も造詣が浅いうえ、サイバーパンクを時折スチームパンクと混同するくらいアレな当方ですが、虚淵玄の織り成すしっとりと硬質な文章世界に耽り、溺れました。中央東口の絵も冴え渡り、4時間にも渡るプレー時間において一瞬も退屈を感じさせなかった。普段は意識しないBGMも、終了後にわざわざ聞き直してうっとりしたくらい素晴らしい。大事に眠らせておいた甲斐のある一本でした。

 プレー前は瑞麗(ロリ)に(*´Д`)ハァハァする予感がしていましたが、いざやってみるとむしろ濤羅に(*´Д`)ハァハァ。カッコ良いところとカッコ悪いところ、両方を曝け出すことで効率的にキャラ立ちしている主人公。燃えであり萌えです。黒のロングコートやポン刀に「(・∀・)イイ!!」と自動的に反応してしまうのは当方の精神において呪縛に近い。重たげな髪や暗い眼差しなど、アンチヒーロー、ダークヒーローを地でいく容姿にもうメロメロ。瑞麗(ロリ)の身体を拭いてるシーンはどう見ても変質者としか映らない。

 ほとんどが戦闘への準備と本番の戦闘シーンに割かれており、かなり遊びの少ない構成になっているのは良くもあり、悪くもあり。良い点はダレずに最後まで一気にやれるというところですが、悪いのはやはり先を急ぎ過ぎて話に余裕がないことでしょうか。敵キャラは適当に役割配分されているだけで造型が浅く、短い尺の中で斃されていくため、結果全員がただのヤラレ役に見えてしまう。媽姐やベネトナシュなど、女性キャラの存在感も乏しすぎる。物語の性質上、仕方ないとはいえ。特に、当方が密かに期待していたペトルーシュカに至っては……いや、アレはアレで興奮しましたが。んー、やっぱりこれは8800円ベースの作品としてプレーしたかったっていうのが正直な感想。短く無駄なくまとまっているとはいえ、もっと尺が欲しかった。当方の気に入っている『デモンベイン』は無駄も瑕疵も多かったけれど、それを推してなお余りある魅力に溢れていた。必ずしも過剰が不足に勝つとは申しませんが、この作品はただ使い捨てるには惜しい要素がたくさん詰まっている。だからこそ、もっともっと長く濃く堪能していたかった。読み手としての欲望はほぼ無限大です。

 エロに関しては壊滅的という状況もいただけない。せっかく黒社会が舞台になっているのに、少しも頽廃したムードが流れていないってのはいくらなんでも余裕がなさ過ぎる。濤羅に色魔になれとは言わないけど、もう少しなんとかならなかったものか。

 と、不満もさることながら、満足した箇所も充分にあります。掴みからして良く、一気に作品世界へ引きずり込まれてしまった。電磁発勁、サイバー武芸者など、ダサさとカッコ良さの隙間にある造語感覚も最高。セリフ回しの巧さについてはひたすら溜め息が出るばかり。ツボにハマれば凶悪に面白いですね、これ。

 個性あるキャラクターたちを使い捨てという方法でしか活躍させることのできなかったストーリーのサイズが恨めしいものの、楽しんだ総量の度合いからすれば贅沢な文句と言える。香港アクションや武侠小説が見たくなった。

『Fate/stay night』の体験版をプレー。

 『鬼哭街』の興奮も冷めやらぬまま、雪崩れ込むように開始。「製品版が出るまでスルー」とかほざいていた当方ですが、いざアップロードされているところを見ると矢も盾もたまらずダウンロードしてしまいました。脊髄反射じみた衝動。こっちは1時間半ほどでプレー終了しました。『鬼哭街』の40%くらいですか。単に比較しただけで深い意図はありませぬ。

 演出に凝っていますね。擬音表現を排し、効果音と絵で戦闘の激しさを語る手法が単純ながらもなかなか巧い。容易に盛り上がれます。直前にやっていたものがものだったせいか、テキスト圧はいささか物足りなく感じられたものの、こっちはこっちで面白い。秋葉スキーの当方ゆえ、たぶん凛にゾッコンだろうと思いきや、意外に馴染めなかった。代わりにアーチャー萌え。

 ……いかん、濤羅にしろアーチャーにしろ、最近はどうも野郎キャラに魅了されることが多くなってきた。昨日まで「ホノカタン(*´Д`)ハァハァ」とやっていたから別に女性キャラへの興味が喪失したわけではないんだろうけど、それにしてもエロゲーで男にばっか目を輝かせるってのは……ううむ。

 ともあれ、製品版への期待はいい感じに高まりました。プロローグ(正確にはプロローグから一部省いたもの)だけでこれなら、期待する対象としては申し分なく、購入ともなれば是非もない。来年の1月−2月はこれで決まりだ。


2003-11-01.

・果汁100%のジュースをニアウォーターで薄めて飲んでる焼津です、こんばんは。ケチってるというより、100%のままだと単に飲みにくい。かと言って最初から果汁10%とか濃度の薄いやつを買うのは業腹ですし。

 「業腹」と書いてる時点で既にケチ臭い、と言われたらグゥの音も出ません。

『いたいけな彼女』、コンプリート。

 純愛ルートより鬼畜ルートが何倍も楽しかった当方は終わってますか? そうですか。

 全体的に安っぽいつくりをしており、CGもバラつきが多くて安定感がありませんけど、シナリオは結構よくまとまっていて読める。ツボにハマれば夢中になること請け合いです。健気で且ついぢめて光線を照射しまくりのヒロイン・七瀬ほのかはかなり魅力的。目一杯可愛がりたい欲望と猛烈にいぢめたい衝動とが交互に押し寄せてくる。萌えと嗜虐の波状攻撃ですな。

 純愛ルートの方が穏やかでおとなしい展開をしている分、しっとりと萌えを楽しめますが、鬼畜ルートにおける「地獄経由の関係」とも言える凄絶な壊れ具合が与える鮮烈な印象と比べればいささか霞む。いえ、純愛ルートもクライマックス、ほのかが咆えるあたりは熱くて好きなんですけどね……問題は方々でも言われているあのエンド。試行錯誤を重ねた末の落とし所がそれかい、とツッコミたくなる。

 このゲームは「純愛→鬼畜」の順でやると相当キツイので、「鬼畜→純愛」を推奨したいのですが、そもそも「ほのかをいじめるなんて無理だ」という人は鬼畜ルートに行かない方が良い。ほのかを蔑ろにする選択肢がどうしても心理的抵抗を伴って選び取ることができないなら、耐性がないのだと判断して封印するが吉。「自分のモノが誰かによって虐げられていく姿に興奮する人種」にとっては美味しいことこの上ないんですけどね……。

 ありふれた学園恋愛モノに食傷気味ならば、ちょうどいい刺激になると思います。一切超常要素のないファンタジー。過不足なく適度な分量に収まっているから、激しくダレることもない。良い意味でコンパクトなサイズ。狙いをほのか一本に絞ったコンセプトが成功している。ちょっと嗜好を選びますけど、「求め合い、傷つけ合う、不器用な偏愛」というテーマに心惹かれる人にはオススメ。

・さて、待ちに待った三連休。とりあえずは『鬼哭街』を崩すところから始めるとしますか。『"Hello,world."』はかなり長いらしいので思案中。そろそろ2巻の下が出る『終わりのクロニクル』も崩したい。


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