「朝の来ない夜に抱かれて」
   /FC03・DremSoft


 日記の内容を抜粋。


2003-11-03.

『朝の来ない夜に抱かれて』、プレー開始。

 主人公である八雲辰人(CV.ルネサンス山田)の存在が購入動機でした。

 男目当てでエロゲー買って何が悪い。

 と開き直りつつ。この朝夜は去年の6月末に発売されたソフトで、デモがなかなか良さげだったために注目していたのですが、『D.C.』や『それは舞い散る桜のように』、『とらかぷっ!』など、同日発売のソフトでいろいろと気になるモノが多かったせいで結局購入には数ヶ月遅れてしまいました。F&Cのゲームはたまに価格が暴落してワゴン逝きとなるのですが、この朝夜はヒットこそ飛ばさなかったもののそういった不運を避けられた模様です。評判もそこそこ安定している。

 ストーリーを乱暴に要約してしまえば、いっぺん化け物に殺された主人公が「無貌の神」に憑依されたことで甦り、その力を使ってズシャー! バシャー! っと化け物を倒せるくらい強くなっちゃった、てな感じです。ノリとしてはまんま少年マンガやライトノベル。いかにも悪人めいたツラをしている主人公ですけど、性格の方はお気楽でお人好しで熱血漢で浮気性と、フツーにエロゲーの主人公してます。

 マルチサイト構成になっていて、視点が主人公以外のキャラであるときは主人公の声も付きます。そればかりでなく、ヒロイン等の独白までボイスになっていることもあり。とにかくこのゲームはボイス量が多い。一種のオートモードにあたるドラマモード(声の付くセリフは声だけ流す)が成立するほどに喋りまくる。だから、しっかり声を聞きながらやっているとなかなか先に進まない。根が貧乏性の当方としては、別に拙くもない音声を飛ばすのは抵抗が強くて、ついつい聞いてしまう。

 ジャンルは一応伝奇アクションだと思いますが、3章まで進めた現在のところ、主人公の活躍はブギーポップ並みの薄さです。話の最後にひょっこり現れてサクッと事態を解決してしまう。大したデウス・エクス・マキナっぷりだけど、もう少し主人公のスペックが分かるような形で戦って欲しい。どうにも強すぎて味気ないですから。

 でも割と好感触です。主人公目的だっただけに、「無貌の神」の力を借りて人外へ変身する様には(*´Д`)ハァハァしてしまいます。その一方でヒロインたちも結構魅力的。主人公の女房役に当たる美空は依存系幼馴染みですが、パケ絵からして凛々しい活躍の場も与えられそうな様子。

 にしてもこのゲーム、絵のバラつきが激しいなぁ。パケ絵の美空と本編の美空は微妙に別人っぽく見えます。パトリシアなんかも立ち絵とイベント絵では少し違っている。絵柄そのものにクセがあるのは良いとしても、もうちょっと統一感を出して欲しかった。


2003-11-04.

『朝の来ない夜に抱かれて』、現在第四章。

 一章よりも二章が長く、二章よりも三章が長く、といったふうにだんだん分量が増えていってます。ストーリー全体の構図は第三章であらかた示されるため、今後の展開もだいたい「こうなるだろうな」という手応えがあります。

 主人公はしっかり声付きで、戦闘シーンの演出も工夫が凝らされているから「カッコ良い」とは思うのですが……相変わらずブギポ並みの活躍度。確かに憑いているのがアレなら戦闘力はほぼ無敵の域に達しているんでしょうが、バトルものとしてはひどく味気ない。「萌え」要素はポツポツと配置されている割に「燃え」要素が薄く、主人公買いした当方としては今のところちょっと不満。とはいえ、物語も緩々と転換を迎えつつありますし、まだまだ今後には期待。

 ところで華蔵都子が思った以上に可愛い。いかにもメトセラっぽくて知識も豊富な人外ロリといった趣ですが、主人公である辰人との遣り取りはサクサクと軽快で、超然とした態度もコメディ的にいいアクセントとなっている。当方、実を申せば眼鏡っ娘がどうにも苦手で、それでもたまに「この子いいじゃない」と思うことがあるのですが、全体から言えばせいぜい2割程度。10人の眼鏡っ娘が出てきたら8、9人は拒絶反応が出る。特に「図書委員」「司書さん」といった役はかなりダメで、性格が引っ込み思案だったりおっとりしていると状況は壊滅的なものとなります。学園エロゲーなら3作に1作の確率でそういうタイプのヒロインが出現しますけど、まず攻略する気が起きない。幸い都子は消極的な性格をしておらず、どこか飄々としているおかげで馴染めました。

 人外ロリ万歳。


2003-11-05.

『朝の来ない夜に抱かれて』、最終章へ。

 どうやら期待のし所を間違えた様子。てっきり「血沸き肉躍る凄惨なバトル」が描かれる伝奇サスペンスとばかり思い込んでいましたが、どうもこの朝夜はそっち方面ではなかったみたいです。むしろしっとり系。ある種悲劇的な状況を運命と受け容れつつも、それに抗おうともがく主人公たちの姿が物語の焦点となっている。予期していたものとは異なる方向へ突き進んで行ってますが、これもこれで悪くはない。けど……うーん、とりあえず最後を見届けるまで具体的な感想は保留ということに。うまく決着させてくれるといいが。


2003-11-09.

『朝の来ない夜に抱かれて』、コンプリート。

 「シナリオジャンプ」の機能が便利すぎるくらい便利。いちいちフラグ立てとか気にしないでサクサクと未見のイベントが拾えるのは物臭なヌルゲーマーである当方的にすごくありがたかったですけれど、ここまで簡単で良いものか、何か裏があるんじゃないかと勘繰ってしまいました。

 野球チップスのカードやビックリマンチョコのシール、ガチャポン、カードダスなどはコレクションを始めた当初はほとんど重複がなく、割と簡単に揃っていくのですが、収集量が完璧に近づいていくにつれ、だんだんダブりが多くなってくるものです。ダブった奴を友達とトレーディングして穴埋めしていっても、数の少ない稀少な分はなかなか手に入らない。「あと1個、あと1個で全部揃う」という状況に達したときに限って、その肝心の「あと1個」が出ない。そこまで来るともう意地になって諦めることはできませんから、正しくムキになって「あと1個」の入手に目を血走らせてしまうのがコドモ・ハート。収集作業は最後の一歩が難しい。最後まで手に入らなかったということはつまり入手難易度が高いってことでもあって、喩えれば宿題のどうしても解けなかった問題や、嫌いで最後まで残してしまった給食の一品のように攻略しがたいものです。

 同様にエロゲーのCGやイベントの回収作業も、最初は鼻歌をハミングしながらやっていたのが、最後の1枚や2枚という段になって詰まってしまうことが多い。どういうフラグを立てればこれは見れるんだろう? あれこれ考えて選択肢を組み合わせるものの巧くいかない。ノベルゲームは攻略が安易なことから「ゲームじゃない」とまで言われることもあるジャンルですが、なかなかどうして、選択肢の組み合わせは膨大であり、フラグ立てのシビアなゲームでは一個間違えただけでオジャンになってしまう。更に悪いのは、どこで間違えたのかがよく分からないってこと。スーパーマリオなんかと違って、ミスしても「次こそはやれる」という手応えが掴めず、また同じテキストをスキップで垂れ流しにするのは退屈で苦痛極まりない作業です。散々悩んだ末に結局降参し、攻略情報に頼らざるを得なくなるのは、屈辱というほどではないにしろ脱力感を誘う。

 だから、シナリオ全体を俯瞰し、たとえ未回収のイベントでもさっくり見れてしまう「シナリオジャンプ」の機能はあまりにも便利で却って心許ない。かつてはスキップなんて機能のない『弟切草』や『かまいたちの夜』を平気でやっていた自分が今はスキップなんて付いていて当り前と思い、時折「スキップが遅い」「未読と既読を判別しない」と文句を垂れるようになりましたが、この分ではごく普通の難易度を持ったノベルゲームに「攻略が面倒臭い」「コンプしたら全体を眺められる機能が欲しい」と言い出してしまいそう。

 それで肝心のストーリーの方ですが、予想していたのとは僅かにズレた方向へ進んでいって決着しました。最後の最後まで戦闘描写は薄く、「燃え」を求める気持ちは満たされなかったものの、「運命に抗う」という姿勢で戦う主人公たちには好感が持てた。ただ全体を見ると日常シーンの比率が多く、やはりもっと伝奇やサスペンスな部分を増やしても良かったのではないか、と思ってしまう。主人公が「無貌の神」憑きとはいえ、メチャ強すぎでバトルもバトルになっておらず、「死ね!」「ぎゃー!」並みの展開には危機感など微塵もない。演出は結構凝っているし、主人公が声付きで決めゼリフを選べるところも画期的だとは思ったんだが……。

 うーん、このゲームも『FOLKLORE JAM』みたくバランス良く仕上がっているのにエンターテインメントとしては薄味に感じられる。ニトロプラスやケロQを偏愛する当方にはどうにも物足らない。主人公を含め、キャラクターたちはみな魅力的だったし、ストーリーもツボに入らなかったとはいえキレイにまとまっていたから嫌いではない。買って損はなかった。「ああすれば、こうすれば」といろいろ不満が湧くのも当方の欲張りな性分が原因ゆえ、責めるには値しない。でもあと一つだけ敢えて要望を書くなら、「『無貌の神』と『邪を祓う剣』の共闘」は是非とも見たかった……続編出ないかな、これ。


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