2003年10月分


・本
 『殺す警官』/サイモン・カーニック(新潮社)
 『500年のトンネル』/スーザン・プライス(東京創元社)
 『アマチャ・ズルチャ』/深掘骨(早川書房)
 『ヒートアイランド』/垣根涼介(文藝春秋)
 『Dクラッカーズ・ショート2』/あざの耕平(富士見書房)
 『炎と氷』新堂冬樹(祥伝社)
 『あなたの人生の物語』/テッド・チャン(早川書房)
 『都市伝説セピア』/朱川湊人(文藝春秋)
 『半分の月がのぼる空』/橋本紡(メディアワークス)
 『脳男』/首藤瓜於(講談社)
 『ワイルド・ソウル』/垣根涼介(幻冬舎)

・ゲーム
 『Ricotte〜アルペンブルの歌姫〜』(RUNE)
 『うたわれるもの』(Leaf)
 『CROSS†CHANNEL』(Flyingshine)
 『FOLKLORE JAM』(HERMIT)
 『いたいけな彼女』(ZERO)


2003-10-31.

・実は『イシカとホノリ』にはんなりと注目している焼津です。それにしても「はんなり」という言葉は日常会話で使った記憶がまったくない。しかも辞書で調べてみたら想像していたニュアンスとまったく違っていた。

 それはそれとしてイシホノ、注目した理由は絵です。日向悠二。今は亡きPL+USの『紫花』もこの人が原画してました。あっちは塗りが好みじゃなかったのであっさりスルーしましたが、今回は彩色もツボ。ただメーカーやソフトから漂うなんとも言えぬ微妙臭に正直腰が引けます。報告待ちというチキンな手を取らせていただく所存。良さげなら飛びつきます。

『いたいけな彼女』、プレー中。

 ほのかのたどたどしい喋りに和みつつ、のんびりやってます。いたく嗜虐心をそそられる展開が目白押しではありますが、「嗜虐」と「萌え」がぴったりウェハース状に重なり合って物凄い効果を発揮するため、その、なんですかな。

 ぶっちゃけ躯が保ちません。

 いろんな意味で堪えられない。CGのクオリティはかなりバラつきがあってアタリハズレの差が大きいですが、一度アタったら「ひ、膝が笑っ……!」なくらいの破壊力がありますよ。とにかく先に進みません。

 こりゃもう後生大事の一品となりそうな予感がビンビンします。まさしくスマッシュ・ヒット。救いなし、容赦なし、逃げ場なしの(*´Д`)ハァハァぶり。笑って地獄に堕ちる気分です。

・垣根涼介の『ワイルド・ソウル』読了。

 「第一章 アマゾン牢人」に篭もった鬼気──圧倒された。50ページ強という分量の中で描き出される地獄絵図。緩急を極めた筆致に注意が引き付けられ、時間感覚は根こそぎ奪われた。「夢中になって貪り読む」との形容が値する経験は実のところたくさんあって、今月中でも新堂冬樹の『炎と氷』やテッド・チャンの『あなたの人生の物語』を読んで意識が文字列の塊にまるっきり支配される感覚を味わった。決して珍しい体験というわけではない。しかし、時間に縛られた生活の中で文字通り「時を忘れて」読み耽ってしまう瞬間ってのは、「1日は24時間」という常識に穴を開けられたような気分に陥る。10分が1時間に感じたとか、5時間がほんの数分みたいだったとか、場合によってはそれどころですらなくなる。濃密すぎる読書体験は時間という物差しが通用しないのだと実感し、普段から「時間」という概念を指標に日々の暮らしを送っているせいもあって、まるで世界の底が抜けてしまったような恐ろしさが身に迫ってくる。怖いぐらいの興奮です。

 『午前三時のルースター』『ヒートアイランド』と来てこの『ワイルド・ソウル』。垣根涼介という作家がノンストップで成長していることを思い知らされました。まさかここまで面白くなるとは。高く評価していたつもりなのにまだまだ侮っていたみたいです。いや、もう、驚くほど当方の好みに合致する。肌に吸い付てくる錯覚さえ視えてしまう。作品の出来に感動し、それを書き上げた作者の存在にもっと感動してしまった。垣根涼介がこれからも作品を書き続けてくれるのだろうと思うとひたすらシンプルに嬉しくなります。

 第一章の狂ったような迫力に比べると二章以降の展開は若干おとなしく見えてしまうのが難点ではありますが、文章・筋立てともによく練られているため話としてはキチンと盛り上がり、どんどん先が読みたくなってページを繰る手が止まらなくなります。ただ本書は「話がどういう方向に行くのかまったく分からない」といった類のサスペンスではなく、具体的にどう転ぶかまでは予想し切れないとしても、大枠の展開はうっすら読めるタイプのストーリーです。そのあたりは前作の『ヒートアイランド』と同様。意外性とは別の領域で勝負していますが、どっちにしろ読者の興味を引きつけて離さない固着力の強さは確かなものです。

 全編、のべつまくなしに熱い。真っ赤な装丁に負けず劣らずの熱さ。それでいて熱の捌き方を心得ており、結果的にはしっかりと揺るがぬ出来に仕上がっている。作風が爽やか過ぎていまいち泥臭さが足りないという面もありますが、もはや当方は激しく気に入ってしまいました。原稿用紙換算で1314枚にもなるこの大作、オススメします。


2003-10-30.

・最近話題になっている日本ブレイク工業(繋がらない?)の社歌を今頃聴きました。爆笑。更にミステリー板西尾維新スレでこんなネタを発見。再度爆笑。

『FOLKLORE JAM』の人気投票開始。

 トップになったキャラを題材にした壁紙がつくられるそうな。ノリで茂蔵さんに入れるところでしたが、寸前にそれを知って危うく思い留まりました。木乃内ひなたか八乙女維月か、どちらにすべきかと散々迷った挙句、ひなたに投票。年上で長身で横暴な幼馴染みも捨てがたかったのですが、当方、割と可愛いものに逃げがちな性格ゆえ、ひなたの引力には逆らえませんでした。維月の二丁拳銃CGよりひなたのトンファーCGの方が好みだったってのもあります。

 しかし投票後、「よく考えれば『若き日の茂蔵をさりげなく描いた壁紙』みたいなのも有りだったかも」と思い至って悔む。更に茂蔵さん以外の面子(アリとか)まで含まれる可能性を考えたら悔んでも悔み切れない。というかそもそも、この投票は1人1票なんだろうか? それとも1日1票?

・垣根涼介の『ワイルド・ソウル』。まだ途中までしか読んでいませんが、凄いことになりそうな予感がヒシヒシと押し寄せてきます。前作、前々作の勢いを軽く凌駕している。垣根涼介は天井知らずか。


2003-10-29.

ニトロプラスの新作『沙耶の唄』のヒロイン・沙耶がやけに既視感を誘う理由について考え抜いた結果、時報ちゃんに行き着きました。いっそこうなったら沙耶が時報してくれる機能を切に希望。

『いたいけな彼女』、プレー中。たぶん鬼畜ルート。

 今ばかりは自分の壊れた嗜好に歓びを禁じえない。「好きな子をいじめたくなる」なんて次元を超えた展開に一歩も退かず順応し楽しむことのできる感性に自らささやかな祝福を捧げたい。

 さあ、何も迷わず心の赴くまま悪趣味の果てまで突き進んでいけ。そしてそのまま帰ってくるな。

 やはり、どうしても、人間的に壊れている主人公やヒロインが愛しくてしょうがない。C†Cで痛烈に感じた想いを再確認してしまった。段取りも何もかもが都合良すぎてイージー極まりないシナリオと言えるが、そんなことを気にしている暇がないくらい当方の感心はホノカタン(*´Д`)ハァハァの方面へと割かれています。鬼畜というには幸せすぎて純愛というには瑕だらけの関係。イタカノの醍醐味はジャンルの境界に存在しており、ちなみに醍醐味というのは今の言葉に翻訳するとクリーム味であって、舌先を滑るまろやかな「萌え」に当方はただ溺れるのみ。

 このゲームを端的に説明しようとすれば、ハートマン軍曹の「気に入った! うちに来て妹をファックしていいぞ!」や、ことわざもどきの「石橋叩いて壊す」といった言葉が婉曲ながら効果的に作用するように思われます。寝取られとはちょっと違う。

 新たな属性が目覚めてくる予感に打ち震え、かなり混乱した書きぶりになっています。自分によく懐いた愛くるしい仔犬を遠くの山に捨ててきて、「早く戻ってこないかなぁ」と自宅で物思いに耽るかの如き非道ぶりに「痺れる憧れる!」という人には是非ともオススメしたい一本。可愛い仔犬は部屋に閉じ込めて延々と自分ひとりだけで愛で続ける趣味を大事にしたい人は静かにスルーしてください。


2003-10-28.

・ハラキリ丸がやけに既視感を誘う理由はなんなのか、考え抜いた結果キャプテン・サワダに行き着きました。「ハラキリ!」「カミカゼ!」「バンザイ!」。今日から当方の内部では「ハラキリ冬子」が「キャプテン冬子」に変貌します。

 『ストリートファイター リアルバトル オン フィルム』や『ストリートファイター ザ ムービー』はなにげに結構好きでした。

『FOLKLORE JAM』、コンプリート。

 予想通り、パズルのピースがすべてあるべきところにぴったり収まるような感覚でキレイにまとまりました。分量も申し分なく、ペースにもよりますが十数時間は遊べるようになっている。客観的に見て良作と言える出来に仕上がっていると思われます。

 しかし、ストーリーを何を狙いしているのかが結局最後まで曖昧で、「オカルトが好きな人に」「絡み合った謎を解き明かしたい人に」「ヒロインたちとサスペンスフルな冒険を楽しみたい人に」など、具体的な形を示して薦めるのが難しい中途半端さも漂っています。うーん、的を絞り切れなかったのでしょうか。散漫という印象が否めない。

 凡作と切って捨てられるほど程度は低くないのに、傑作と認めるには突き詰めが足らない内容。置かれているハードルに充分な高さがないせいで、いくら上手に飛ばれてもハードル以上の評価ができず。とにかくもどかしい。高圧的な幼馴染みに弄られたり、無愛想な後輩がいつの間にか懐いていたりと、部分的には美味しいところが沢山あるのに……。

 良く言えば「危なげなく端整」、悪く言えば「ぬるい」。謎は残らないけど別の意味でモヤモヤした気分が残りました。どうも当方とは波長が合わなかったみたいです。いろんな点で良く出来ていることが分かるだけに、感覚的にハマれなかったのが至極残念。

・FJも無事終了したので次なるソフトに着手。ZEROの『いたいけな彼女』。FJと同日発売です。10月24日。ちなみに『アキバ系彼女』もその日。……いえ、単に「彼女」の部分が一緒というだけで、持ち出したことに深い意味はなく。滑ると分かってて書かずにはいられませんでした。どうでもいいですけど、「イタカノ」という略称は呼びやすいが「アキカノ」は微妙に語呂が悪い。

 主人公が罰ゲームで告白し、付き合い出したクラスメート──七瀬ほのか。彼女はいじめられっ子だった。おどおどした態度、消極的な性格、主体性に欠ける行動と、見る者を苛々させる彼女はクラスの女子たちにとって格好の的となっていた。どうでもいい気分でほのかとの交際を続けていく主人公は、やがて彼女に特別な興味を感じ始めて……。

 黒い感情を吐き出すのがこんなに気持ちいいだなんて、久しく実感しておりませんでした。普通の恋愛ゲーなら確実にダメっぽい選択肢を取ることで大っぴらにヒロインを蔑ろにすることのできる設定はゾクゾクもの。少しもダークな雰囲気を匂わせないCGが却って美味しい背徳感を生み出してくれます。当方が鬼畜モノを苦手としているのは、黒っぽいパッケージといかにも毒々しく攻撃的なタイトルによって鬼畜と太字でアピールし、「人道的にひどい展開がたっぷりありますよ、でも鬼畜モノなんだから当り前ですよね」と余裕ぶってる態度に萎えてしまうからです、大抵。「鬼畜モノなんだから当り前」という意識が背徳感を激しく削ぐ。

 そこのところ、『いたいけな彼女』はパッケージからして鬼畜臭が薄い。タイトルはちょっと微妙ですが、絵を見ただけなら普通の和姦モノのように映る。いざゲームを始めてみれば、サウンドもグラフィックも変に暗いムードは漂っておらず、僅かに物憂げで不安めいているくらい。このまま純愛展開に雪崩れ込んで行ったところで違和感はまったくない。だから、いつ、どう裏切られるかも読めない。こっちがのんびりほのかたんに萌えているところへ、「あ、ごめんごめ〜ん、手が滑っちゃった☆」程度の気軽さで地獄を見せに来るかもしれず、常に嫌な汗が出るハラハラ感を楽しむことができます。『カイジ』を読んでいるときの気分と遜色ない黒さ。個人的に鬼畜モノは「いかにキャラをひどい目に遭わせるか」ではなく、「いかに読み手の甘っちょろい気持ちを裏切るか」という視点に立ったものが好きです。

 なんだか怖いくらいに波長が合うことからして、どうやら現在のバイオリズムは「物語をまったり楽しむ」タイプにではなく「黒い感情を弄ぶ」タイプに適合する様子ですね。当方はそのときどきの気分によって嗜好が変化しますから、FJは時期が悪く、イタカノは逆に時期がドンピシャだった、と。やはり主観的な評価となると「その時の気分」って要素はどうしても絡んできますね……こればかりはさすがに関数化させにくいですけど。


2003-10-27.

・C†Cの美希ぽんが合わせ鏡を見ながら必死で伸びてきた後ろ髪を切っている光景を想像して至福を感じる焼津です、こんばんは。いや、さりげなく霧を騙して散髪させている可能性もありますが。それもそれで光景的に至福。

『FOLKLORE JAM』、プレー中。

 結構進みました。ひなたに次いで古都、碧衣のエンドも確認。現在維月ルート攻略中。コンプリートも近い気がします。

 で、やればやるほど「微妙」といった感想が強くなっていきます。プレーの進捗に合わせて徐々に物語の全体像が掴めてくるタイプのゲームで、いわゆる『痕』みたいなマルチラインの構成になっており、シナリオの作り込みに関しては「巧い」の一言に尽きます。やってて引っ掛かった箇所はちゃんと伏線になっているし、ルートを終えてから残る謎についてもしっかり回収されそうな手応えがあります。全体を考え、細部を意識したうえでの構造になっているため話がよく整理されていて、プレー中に変な不安や混乱を覚えることもなく、実に安定した気分で読み進められます。

 ただ、エンターテインメントとしては良くも悪くも「薄味」。胃にもたれることがない分、長く舌に残ることもない。オカルト、サスペンス、謎解き、萌えと燃え、笑いなど、エンタメのあらゆる要素を押さえている代わり、そのどれもが単独で「売り」となるほどの濃さはない。一点特化系ではなくトータル・バランスの優れたストーリー。それゆえに薦めるのが少しばかり難しいです。レベルは高いのに、印象がどうにも地味。「器用貧乏」といった観があります。

 まだコンプしてませんから確言はしかねますが、現時点での感触で言えばライターが「まとめきれなかったよ! うわああああん!」と話を投げ出すことがない代わり、読み手の予想を遥かに凌ぐどんでん返しもなさそうな気配です。「だいたいこんな風に収まりそうだな」という予測がうっすらあって、たぶんそれに従う形でキレイに収束するものと思われます。意外性、衝撃性を求めるには不向き。総合的に良く出来ているので、プレーして損はないっちゃないんですが……必ず得する、とまでは保証できず。もどかしい。

・首藤瓜於の『脳男』読了。

 少女爆弾(*´Д`)ハァハァ

 感想はこの一言(?)に尽きます。ちなみに第46回江戸川乱歩賞受賞作。


2003-10-26.

ラバの影響か、久々に柿ピーを購入してしまった。ちなみに当方は直接袋から口へ柿の種とピーナッツを流し込んで頬張りボリボリ貪るタイプです。皿で出されたときは大人しく柿の種だけ取って食べますが。いや、ピーナッツを食べたくないとかそういった意識以前に指先が自動で柿の種だけを掴んでしまいます。好き嫌いとは別の次元の問題です。皿で出されるとピーナッツを認識することすらできない。それが当方の群青色。

『FOLKLORE JAM』、初周クリア。

 ひなたエンド。1話あたり1時間強で、最終話だけ倍近くの分量。全6話ですから1周するのに7、8時間といったところでしょうか。とりあえず現時点での感想ですが……あー、微妙です。1周しただけではストーリー全体の枠がチラッと見える程度で、どうも数周は回らないと読めてこない模様。それにしてもこの展開は……うーむ。

 話の構成自体は端整です。視点の切り換えが頻繁なせいで混乱しがちですけれど、上手に伏線を張って回収すべきときに回収し、キレイにまとめ上げる。少なくとも当方のザルな目からすれば特に指摘したくなる問題点はありません。ただ、素材選びと言いますか、物語を構成する要素の選択やその用途など、もっと根本的なところでイマイチ感を醸している気がします。あらゆる要件をソツなくこなしている割に盛り上がりが薄くて、仕上がりも地味。グラフィック、サウンド、シナリオといった各種の出来が良いだけあって余計惜しい。

 面白いか否かで言えば面白い方。しかし人に薦めるとなると薦め方が難しい。今のところそんな感触です。ひなたは萌えましたし、他のキャラの前でさりげなくイチャつく痒さが心地良くもありましたが、かと言って「萌え」だけで薦めるのは難しい。「燃え」ともなると尚更むづい。どう書けば良いのやら迷う。

 もう少し続けないと掴めそうにないです。今のところもやもやした感覚が漂うばかりで評価が定まりません。せいぜい言えるのは、オカルト・ホラーとしての面はあまり期待しない方がいいかもしれない、ってことくらいでしょうか。予感がするだけで、確信には至ってませんけど。

・橋本紡の『半分の月がのぼる空』読了。

 200ページ強と薄く、また改行も多いこともあってか1時間と掛からず読み終えました。犬属性の主人公が病弱娘と出会って恋をするごく普通の青春恋愛ストーリー。病弱とはいえヒロインの性格は乱暴かつ我儘であり、超肉のイラストが良い具合にそのギャップを萌えへと昇華させております。

 『リバーズ・エンド』は巻が進むごとにだんだん面白くなくなっていく──と感じたためあまり好きではないのですが、単発作品の『毛布おばけと金曜日の階段』は物凄くツボで、「こういった路線はうまいんだなぁ」と唸らされました。「こういった路線」であるところの『半分の月がのぼる空』もうまく仕上がっています。程好くライトで、緩急つけて締めるべきところは締める。このあたりのバランスが、SF設定のストーリー以上に平凡な日常物語の中でこそ活きてくる。同じ作家の手によるものでも、作品やシリーズによって結構好悪は分かれてくるものですね。

 それで話を戻して半月。メールマガジンで「新シリーズ第一弾」と謳っているところからして、続編も出るみたいです。割とキレイな形で終わっているから、このまま幕を下ろしてしまっても良い気がしますけど……うーん、期待すべきか心配すべきか。たぶん出たら買っちゃうでしょうね。


2003-10-25.

・卵がうまく割れない日もあるさ──と嘯いてみる焼津です、こんばんは。白身の中から殻を掬い出すときのなんとも言えない虚しさ。

・今月は『CROSS†CHANNEL』しか購入していなくて、他に購入意欲の湧くソフトがあってもやれDVD化だやれコンシューマー移植だ、といったニュースがもたらされて買い逃す……なんてことが繰り返されました。その反動が出たのか、「1本だけ」と思いつつも昨日はついつい買い込んでしまいました。『FOLKLORE JAM』『いたいけな彼女』、それに『学校のきゃあ』の3本。『いたいけな彼女』は低価格、『学校のきゃあ』は中古ですから値段的には新品2本分といったところ。『FOLKLORE JAM』はここ最近になって気になり出した一本。体験版は微妙な感触でしたが、ままよとばかりに。『いたいけな彼女』はほぼ絵買い。ZEROブランドですけどそんなに評判も悪くないみたいなので手を伸ばしました。ちょっと特殊な嗜好(具体的には寝取られ)を持つ人向けとの話。当方もそのケはなきにしもあらず。『学校のきゃあ』はオカルト研究会の出てくる『FOLKLORE JAM』で連想してついでに購入。明日明後日でやり尽くすのはムリポだけど、極力積まない心掛けで取り組みます。

・まずは『FOLKLORE JAM』から手をつけてみた。気弱でちょっとヘタレっぽい主人公が一つ上の幼馴染みに振り回され、気がつけばオカルト研究会に入っていた……という、特に何の変哲もないストーリー。「フォークロア」というタイトルに刺激されて興味を惹かれましたが、オカルト要素はおまけに近そうな雰囲気です。

 幼馴染みの女、八乙女維月……こいつがまたデカイ! いえ、胸じゃなくて身長が。169cmあります。『水月』の雪さん(171cm)には負けますけど、それでも他のヒロインと一緒に立ち絵が表示されるとなかなかの迫力。「トーテムポール」と揶揄されるのもむべなるかな。特に150切ってるひなたと並ぶと高低の落差が激しすぎて変に萌えます。維月に萌え〜、とか、ひなたに萌え〜、なのではなく。両者の身長差に萌え〜、です。当方は部分や関係に執着するタチですから、萌えるときは服の皺や髪の靡き方や姉妹の相似点・相違点そのものにさえ萌えます。肝心のヒロイン放っぽいて。我ながらパラノイアック。

 そんなことはともかく、今のところ普通に面白いです、FJ。現在3話目の途中。聞き込みに回る捜査パートなんかもあって、ひと昔前のAVGを彷彿とさせます。『ヴェドゴニア』みたくOPやEDを挟んで物語を分断しているあたり、やはりアニメやドラマを意識したつくりですね。基本的にノリはベタで奇抜なところはないものの、話の構成にソツがなく、安定して読めます。ちょっとキャラ間の会話がモッサリしているというか、あまりテンポ良くないのが難なくらい。まだ全体像はうっすらとしか見えませんから、評価はまだ先延ばしにします。期待と不安は半々。

 ところでこのゲーム、さりげなく……いや露骨に茂蔵さんが熱い。体験版(第1話)の不法就労者とおぼしきアラブ人と会話するシーンを始め、本筋とたぶんまるで関係ないであろうドラマを仕込む手口に生温い笑いが漏れる。ここのところ、ヒロインよりもやけに男キャラの目立つゲームをやってるような気がしますけれど、FJもこの調子では維月やひなた以上に茂蔵熱が加速してしまいそうです。7割くらいの本気率で。

『沙耶の唄』、始動。

 もうそろそろ専用ページもできそうな気配。それにしても、見れば見るほど猫耳としか思えなくなっていく。


2003-10-24.

・今度はカップラーメンのスープをぶちまけてしまいました。当方は汁に呪われているのか。

・ハガレンこと『鋼の錬金術師』の最新刊(6巻)、初回限定版の売れ行きがスゴイ。通常版が山積みされている横でほとんど終了しかけていました。ギリギリで間に合い確保。やはり冊子関連の特典は強いみたいですね。

 ついでに『蟲師』の4巻も買いました。創作妖怪譚。「蟲」という最小単位の設定からオリジナルの伝承や妖怪を紡ぎ出す手腕に惚れました。メチャメチャにハマってます。同じアフタヌーン系の『もっけ』もかなり好き。

・朱川湊人の『都市伝説セピア』を読了。

 オール讀物推理小説新人賞と日本ホラー小説大賞短編賞を受賞している作家の初短編集。オール讀物〜を取った「フクロウ男」含む5編を収録。ホラー賞受賞の「白い部屋で月の歌を」は来月に角川ホラー文庫から刊行される予定。

 別段『FOLKLORE JAM』を意識したわけではないが、なんとなく都市伝説繋がりとなってしまった。しかし5編中、都市伝説っぽい話は「フクロウ男」しかない罠。

 ホラーですが、どの編もあまり怖くありません。「氷漬けにされた河童の死体」とか、「茶色のコートをまとってフクロウの鳴き真似をする怪人」とかいった怪奇要素はちらばめられている割に、語り口がとても淡々としていて粘っこさがない。「セピア」の言葉で表されるように懐かしさと切なさと薄気味悪さが重なり合って、「怖くない、けれど哀しい怪奇譚」という奇妙な味わいを醸し出している。

 ただ、インパクトが弱い観は否めず、なんとなく地味な一冊です。「昨日公園」は全編中もっとも切なさの強い一編だけど、突き抜けるほどの勢いがなく、また賞を取った「フクロウ男」にしても「もっと面白くできたのではないか」と惜しむ気持ちが残る。どれもレベルは安定していて凡作以上の出来ではありますが、心に作者名が刻み込まれるほどの面白さはあるかというと……微妙です。あまり怖くない、控え目のホラーが読みたい人にはオススメかもしれない。

 余談ですが当方の好きな都市伝説は「明かりを点けなくて良かったな」。今まで聞いた中ではあれが一番ゾクゾクしました。個人的には「ベッドの下に……」よりもずっと怖い。ちなみにこの「明かりを点けなくて〜」の話、法月綸太郎の短編集『法月綸太郎の功績』に収録されている「都市伝説パズル」でメインのネタにされています。

 あと、タイトルだけ見知っているものの肝心の中身を知らない怪談がひとつあって、もう何年も「どんな話なんだよ……!」と悶えていたり。確か「薄い少女」とか、そんな題名だったはずです。何が薄いんだ。どう薄いんだ。薄くてどこが怖いんだ。未だに気になっています。


2003-10-23.

・丼を受け取る手がうっかり滑ってラーメン、大ブレイク。もう少しで全身汁まみれになるところでした。こんなぶっかけはイヤだ。

『十六夜れんか』、PS2に移植決定

 DVD化が発表されたせいで魔法少女アイは買う機会が延びてしまった。なら、気にはなっていたけどなんとなく買い逃していた『十六夜れんか』でも……と思った矢先にこの情報。またもや紙一重。なんだか立て続けに購入が阻まれており、危険が回避できたとはいえあんまり嬉しくないような。

 ところでこの『十六夜れんか』、主人公は「怪が視える青年画家」という設定になっていて、先月発売された『めぐり、ひとひら。』がかなりのニアピンをしております。めぐり〜にハマった人は比べプレーをしてみるのも一興かもしれず。体験版をやった感じではそんなに似てませんけどね、雰囲気とか。友人キャラが密かにツボでした。

『FOLKLORE JAM』体験版をプレー

 前に一度だけ見たことがあったものの、タイトルもブランドも思い出せなくて「あれはなんだったっけなぁ」と引っ掛かっていたソフトです。やっと探り当てることができて喉から小骨が取れた気分。

 タイトルに「フォークロア」と冠しているだけあって都市伝説がメインのストーリー。それも既存のモノではなく創作したネタで勝負をかけてくる。第1話はオカルト要素をはぐらかす形で終わってしまったため、今後の伝奇展開については気になるところ。あくまでオカルト要素はスパイス程度の位置付けなのか、それともちゃんと作品のコアになってくるのか。バリバリの怪奇探偵団を期待している当方としては後者が望ましい。

 キャラもなかなか魅力的。原画はBeFにて活躍した厘京太郎であり、少し見飽きた感じもするけど危なげなくキレイです。すらりと長身で横暴系の幼馴染み・八乙女維月は『Dクラッカーズ』の梓と千絵スケを足して割ったようなヒロインだからDクラ好きの当方にはたまらない。ちっちゃくて無愛想な下級生・木乃内ひなたもイイ。あたかも性転換した物部景といった趣あり、つい先日新しいものに目覚めかけた当方はひたすらハァハァするのみ。このふたりは個々に出てくるよりも、並んで「長身」「ちっちゃい」と比較されることで余計に胸キュン。「チビとノッポ」って相互補完作用がありますね、やっぱり。

 アイもれんかも「紙一重」の障壁によって買い逃してしまったし、こうなったらFJに突っ込んでみるかな。手応えから言って、軽く凡作の水準は越えられそうな感じだし。……いや、それともオカルト研究会と聞いて連想的に思い出す、前々から気になっていたんだけどなんとなく手が伸びなかった『学校のきゃあ』に今こそ走り寄るべきか。悩む。

・テッド・チャンの『あなたの人生の物語』読了。

 SF短編集。SOW(センス・オブ・ワンダー)をSOF(ソルジャー・オブ・フォーチュン)と読み間違えてしまったことのある当方も無心で楽しめました。一編一編の仕上がりが尋常でなく、「ここまでやれるものなのか」とひたすら驚く次第。端整な設定の中に奇抜な発想が織り込まれており、ほとんど抵抗を感じることなく滑らかにストーリーを受け容れることができる。たとえ細部に知識が追いつかなくても、全体の形は明確なので筋を見失わずに済む。話題になるのも頷ける一冊でした。

 表題作の「あなたの人生の物語」も唸るほど見事な構成で魅せますが、当方が惹かれたのは「七十二文字」「地獄は神の不在なり」「顔の美醜について」の3編。どれも方向はバラバラながら完成度は高く、途轍もないインパクトを有している。作品世界のつくり込みの詳細さにはため息が漏れます。これらが現実に1冊の本としてまとまるなんて、SFは凄いジャンルだな。


2003-10-22.

・卵の白身を取り除いて黄身だけを二個も三個もご飯にかけるというブルジョワ・ライクな食習慣を見せていた従兄も無事結婚とのこと。ちなみに幼児期の当方は目玉焼きの白身部分しか食べない子供だったと聞いています。

『Ricotte』、おまけコンテンツ更新

 というかこのようなコンテンツがあったとは露知らず。笑かしてもらいました。ところで安全ヘルメットは略すと安ヘルになり、KOFのアンヘルを連想してしまう罠。

『Fate/stay night』、2004年1月30日発売予定

 うーん、結局年内発売は無理でしたか。そんな気もしていましたけど。

 あの『月姫』を制作したTYPE-MOONの商業ソフト第1弾で、しかも内容は伝奇系バトルロイヤルとだけあって期待はかなり大。まず確実に購入する予定です。とりあえずセイバーとイリヤに興味の目を向けてみたり。

 それにしても武内崇の絵、随分と見映えするようになったものだ。最初に雑誌で『月姫』の画面写真を見たときは目が泳ぎましたけど、今では逆に吸い寄せられる有り様。条件付けられた犬のような気分です。奈須きのこの文章変化・洗練については今のところ未知数ですが、体験版の配布が近々行われる様子なのでそっちの方が参考になるかもしれず。が、本番を楽しみにしているので当方はあえてスルーするつもりでいます。

『魔法少女アイ DVD 壱 plus 弐』、12月26日発売予定

 つい先日、勢いで『魔法少女アイ+』『魔法少女アイ2』をまとめ買いしそうになりましたが……危なかった。続きモノなのでそのうち総集編のDVDが出るんじゃないかと勘繰っていましたけど、実際その通りだったようで。紙一重のタイミングで知ることができてひと安心。

 しかし12月26日って、『沙耶の唄』の発売予定日やん……アイはリニューアル、沙耶は小規模ゲーという特性からしてまず延期しないだろうから、かぶることはほぼ確実と見られ。様子見とはいえ『Realize』もあるし、今から年末が大変になりそうな予感に震えております。


2003-10-21.

・コンビニ弁当を食べていると『OUT』を思い出す焼津です、こんばんは。弁当づくりのシーンがやけに鮮烈で、代わりに肝心の事件とかはだいぶ忘れていますけど。

FLOWERSの霧と美希(眠りの園)

 DAIさん帝国経由で発見。このふたり、人気投票でもぶっちぎりの大差で一位二位の座を占有していましたね。やはり若さは力か……いえ、若いのに上位に食い込めなかった子もいますがそっちには触れない方針で。触れないというかリンクしてますが。まあ、あれだけ扱いの差があったらしょうがない。

・新堂冬樹の『炎と氷』読了。

 発売日に即買いしながらも積読していた一冊。確かこれが著者にとって11冊目の本になるはずです。好きな作家の新作ということもあって安心して積んでいたのですが、帰宅後に何となくページを開いてパラパラと読み出したところ、そのまま止まらなくなって一気に読破。食事を摂る時間すら惜しくなるほど濃密な面白さが篭もっており、前作の『忘れ雪』で感じた物足りなさも払拭され、当方としてはひたすら満足しました。

 闇金融を営むふたりの男──世羅と若瀬を『ブラック・ダリア』のリーランド・ブランチャードとドワイト・ブライチャートみたく「炎と氷」に見立て、かつては盟友として将来を誓い合ったふたりが、些細な事故を発端として決裂し、争い合うまでの一部始終を描いたハード・ロマン小説。協力し合えば無敵なのに、互いの頑なな信念が衝突してどうしても和解できないというシチュエーションが息苦しくも熱い。

 物語の大筋が過去作品でやっていることと大差なく、新鮮味に欠けるきらいはあるけれども、そういったことは圧倒的なリーダビリティのおかげでほとんど意識せず本書を楽しむことができた。これだけ読んでもまだ読み足らなさを覚えるくらいだ。

 新堂冬樹をまだ読んだことのない人にはこれか『無間地獄』『悪の華』あたりを最初にオススメしたいところです。ニトロ作品の好きな人なら『闇の貴族』あたりが面白いかも、ある意味。


2003-10-20.

・休日はごろごろしながら積んでいるものを消化しているうちに終わりました。傍から見ればまんま無駄な過ごし方ですが、疲れもだいぶ取れたし本人としては悔むところなし。

・『沙耶の唄』は12月26日に4800円で発売する予定とのこと。値段からして話のサイズは『鬼哭街』並みですか。当方は未プレーですが、聞くところによれば『鬼哭街』の分量はだいたい文庫1冊分に相当する程度みたいですから……『沙耶の唄』もそのくらいになるのかな。実験作としての様相が濃いらしく、不安といえば不安、期待といえば期待。比率にすると五分五分ってとこです。

 それにしても、12月26日といったら『Realize』も予定されていますね。こっちの方もこっちの方でいまひとつ感触が掴めませんけど、とりあえず『沙耶の唄』に突っ込んで、『Realize』は評価待ちっていう姿勢を取ろうかと勘案中。しかし、気づけばいつの間にかニトロプラスがデフォ買いのメーカーになっているなぁ……昔はリーフだったけど、最近は関心が薄れてきたし。他にデフォ買いっぽいメーカーはKeyとかMarronがありますけど、このふたつは発売ペースがひたすら遅いから当方自身デフォで買っているつもりなのかどうかよく分からない。あと、『末期、少女病』が発売されていれば公爵もデフォ買い指定のメーカーになっていたかもしれない──・゚・(つД`)・゚・

・あざの耕平の『Dクラッカーズ・ショート2』読了。

 この胸の高鳴りはなんだろうか。久々に名状し難い感情を味わった。

 一言で書けば萌え、で収まるのかもしれない。

 だが本当にそれだけか? ひと目見た瞬間にページを繰る手が止まり、視線が釘付けになったのは単なる「萌え」だったのか? しばらくそのままじっと静止してしまったのも「萌え」のなせる業か?

 考えても答えは出ない。ただ、ある挿絵に当方が衝撃を受け、じっくりと穴が開くほどの熱心さで凝視してしまったという事実があるのみ。

 199ページ。

 景たん(*´Д`)ハァハァ

 何か新しいものに目覚めてしまいそうな予感があります。

 ってなことはさておき、いよいよ最終巻が近いとあって積み残していたシリーズの隙間課題を手際良くこなしている作品集。400ページあって書き下ろしが9割以上。執筆期間は2ヶ月程度とのことですが、手抜かりなくキッチリ面白い内容に仕上げられていて当方も満悦。「悪魔狩り」のウィザードとDDの甲斐氷太との邂逅及び第一戦も描かれており、これで作者も読者も心置きなく最終巻へ向かうことができそう。ちなみに「相棒−accomplice−」に出てきたキメリエス(表紙の人でもある)は結構好みのキャラでした。

 それで、Dクラの最終巻はいったいいつ出るのか……と思っていたら、どうも12月に刊行予定があるみたいです。『Dクラッカーズ7-1 王国−the limited world−』。『7』ではなく『7-1』となっているところを見ると分冊する様子。なんにしろ買います。ライトノベルではもっとも先が気になるシリーズのひとつですから。


2003-10-19.

・京極夏彦の『続巷説百物語』をようやく読了。見た目のぶ厚さに違わず充実した内容でしたが、それでも著者の初期作に比べるとパワー不足の観は否めず。内容そのものではなく「京極節」というテイストを楽しんでいる時点で、実のところ当方の評価は落ちていたのかもしれない。陰摩羅鬼はしばらく積んでおくとします。

虚淵玄&中央東口の新作『沙耶の唄』

 「医科大学を舞台に展開する男女4人の恋物語」──あのふたりが手掛ける新作にしては一切バイオレンスの香りが漂わない惹句。メインヒロインとおぼしき沙耶については「ある日突然、主人公の家に転がり込んでくる謎の少女」という文句が辛うじて読み取れる程度。「非アクションと見せかけてアクション」というのは既にハロワでやっている分、今回は本気で非アクションっぽい?

 とはいえ舞台=医科大学。サージャンの大群が『白い巨塔』ばりに足並み揃えて行進したりするはずです。たとえバイオレンスはなくともオペで相当な量の血飛沫を撒き散らすに違いない。それと4人が医療過誤の犠牲者の両親によって遺体安置所に閉じ込められ、「あの手術は本当に事故だったのか?」なんて議論する『そして扉は閉ざされた』みたいな展開もあったら閉鎖状況スキーとしては見逃せない。

 ……これで主人公たちが外科医志望ではなく薬剤師を目指していたら「 ど う す れ ば い い ん だ 」ですが。

 まあ、「新境地」と謳っていることからして何の変哲もない恋物語を直球で仕掛けてくるんだと思いますが、果たしてセールス的に大丈夫だろうか、と余計な心配をしたり。当方は買う気満々ですけれども、この見た目では何か飛び道具でも仕込まない限りインパクトを与えるのは難しいように思われます。「ニトロプラスの最新作が何の変哲もない恋物語」ってのもそれはそれでインパクトあるんですが。

第4回ホラーサスペンス大賞、受賞作決定

 「日本ホラー小説大賞の二番煎じ」とか言われることもあるけれど、個人的に結構注目している新人賞。第1回の『そして粛清の扉を』と第3回の『邪光』の二作が好きです。あと、受賞作の『リカ』はあまり好みじゃないけど、第2回の五十嵐貴久は現在お気に入りの作家。あ、ところで『リカ』は文庫化の際に終章が付け加えられています。読んでみたところ評価が翻るほどの追加要素ではありませんでしたが、余韻を残すやり方よりもきっちりオチをつける方が好みって方は文庫版をオススメします。

 で、受賞作が決定と言ってもあらすじが載せられているわけではなく、今のところ作品名と作家名が分かるのみ。このふたつだけでは判断材料として乏しすぎる。新人賞を受賞した作品のタイトルは良かれ悪しかれあまり参考にならないし、作家名にしても「あ、○○賞で最終候補に残ってた人だ」と分かることがたまにあるくらいで、だからと言って特に意味があるものでもなく。ザッと流し読みしてウィンドウを閉じかけましたが……不意に「誉田哲也」の四文字に目が止まった。

 この名前、どっかで見たような、と数秒考え込んだ末に思い出しました。『ダークサイド・エンジェル紅鈴』の作家名と一緒だ。本人なのか、同姓同名の別人なのかは分かりませんが。仮に同じ人とすれば期待していいのかどうか微妙。紅鈴、いわゆる伝奇バイオレンスで、悪くはないけれど素材を活かし切れていない憾みがあり、当方の評価は「凡作以上良作未満」。「誉田哲也」という名前を見てすぐに思い浮かばなかった通り、印象もちょっと薄い。化けるということもありますから一概に「期待できない」とも言えませんけど……うーん。とりあえず出たら読んでみることにします。


2003-10-18.

・ブックオフは100円コーナーしか覗かない焼津です、こんばんは。いつの間にか「書店の新刊か、ブックオフの100円か」という二者択一がスタンダードになっており、半額コーナーは面倒臭くてチェックもしていない有り様。買う冊数自体も減っているせいで、1000円ごとに50円という例のサービス券もだいぶん目にしていない。ちなみに当方の使っているカードは初期型の白い紙製の奴なんですが、年を重ねたせいかもうかなりボロボロ。四隅のあたりとかひどいです。

・『天上天下』の最新刊(10巻)を読了。又佐燃え〜、と敵方に感情移入していたら素顔が晒されちゃって少しガッカリ。覆面キャラは美形だろうと醜形だろうと、とにかく顔が出ちゃったら魅力は削がれてしまいます。はあガッカリ……とひと通り肩を落とした後で読み進め、しばらくするとまた又佐燃え〜、という気分になっている自分がいました。素顔が出たなら出たで新しい魅力をつくればいいだけの話だな、うん。

 それにしても相変わらず展開が遅い。だんだん本筋を見失いそうになります。ここのところ最新刊を読む前に既巻を引っ張り出して再読するなんてこともしなくなってきましたから、より一層話の把握が難しい。それでも楽しんでいるところを見ると、全体の話よりも絵と短期的エピソードが目当てで読んでいるような気が。

・C†Cのためにアンインストした『うさみみデリバリーズ!!』を入れ直して再プレー……するつもりでしたが、いまいち気が進まず。他にもいろいろと崩したいソフトはありますけど、感覚的に「これだ!」と鷲掴んで開封したくなるモノがありません。どれにしようかと迷い、迷ってるうちに面倒になって検討をやめてしまう。んー、積みゲーは多くなれば多くなるほど却ってプレー意欲を減退させるものかもしれない。積んでること自体に満足してしまって、「さあやるぞ! 貪り尽くすぞ! コンプするぞ!」とハングリーな欲求が湧いて来ないというか。


2003-10-17.

・スライスチーズと間違えてとろけるチーズを生で食べてしまった朝。なんかぼそぼそしてると思ったら……。

・ひょっとするとデモンベインを現代モノにしたら『CROW†CHANNEL』になるんだろうか、などと夢想。

「こちら大十字九郎探偵事務所」

「生きている人、いますか?」

「つーか腹減って俺が死にそうなんだよぉぉぉぉぉ!!」

 例のシスコンを食料調達部に、狂気の大天才をらばーに据えれば三馬鹿の収まりはいい。ハラキリ丸を超時空から召喚するサムライガールはティトゥスが、メガネ巨乳部長はライカが、罵倒青髪踵落とし少女はエセルドレーダ、ベジータその兄はマスターテリオン、浜硫黄煮っぽい子はエルザ、ほとんど背後霊化しているくのいちガールはアル、自転車特攻少女はカリグラが務める方向で。かなりあぶれる面子が出てくるのが難と言えば難だが、ちょっとこれで想像してみる。

「友情は見返りを、」
「求めないのである!」(ギュイーン)

「ティトゥス、お前が寡黙属性付き孤高侍なのは認める」
「……相変わらず言っていることの意味が分からぬ」

「エセルドレーダ、お前のマスターは薄汚いレイプ猿だ」
「それが何か?」

「エルぽん、そのネーミングはヤバイんじゃ……」
「エルぽんロボっ。エルザがSD化するからLSD、何もヤバくなんてないロボ」

「バカップル反対」
「あ?」
「我が主よ、妾もそう思う。うむ、バカップルは良くない」
「アル、キスしよっか」
「九郎……!」(ガッ)
「自分にも適用しろよっ……!」(ギリギリギリ)

「あっ! チラッと! 今チラッと覆面の下が!」
「フフ、サービスなのサ、クろう」

 案外ネタにし辛かった。

『永遠のアセリア』、体験版をダウンロードしてプレー。

 が、死ぬほど重くてまともにやってません。スキップをかけてようやく文章が読めるかというほど。あれこれいじって試してみるも、うまくいかず。もう少し調べてみますが、それでもこの調子だったら製品版は回避することになりそうです。「ずっと楽しみにしていた」とまでは行きませんが、結構気にかかっていたゲームなので、気持ちがどんどん残念方向に下降中。

・電撃hp読んだら『我が家のお稲荷さま』のあらすじが割とふつうにハートウォーミングっぽくて少しションボリ。当り前と言えば当り前の結果なんだけれど、やはり心のどこかでカンフーファイターばりの痛烈ギャグを期待していたのかもしれない。狐面を付けた主人公が「それは我が家のお稲荷さまだ」とか口走るようなのを。でも巫女さんが出てくるという予想は当たったので個人的にヨシとする。


2003-10-16.

・本もゲームも気になる新作が特になくて、まったりしたムードのここ最近。ところでアニメ化した『鋼の錬金術師』は原作が凄い勢いで売れているらしい。当方は見ていませんが、アニメの出来が相当に良かったそうです。番宣で聞いたアルフォンスの声がだいぶイメージと違うせいか、それほど見たい気がしませんけど……一度くらいは見た方がいいかな、と気持ちがゆれてきています。

・富士見の新人4人の受賞作を読了。以下読んだ順。

 『少女は巨人と踊る』/雨木シュウスケ
 『開演!仙娘とネコのプレリュード』/秋穂有輝
 『ISON−イソン−』/一乃勢まや
 『天華無敵!』/ひびき遊

 んー、「キタ━━(゚∀゚)━━!!」と快哉を叫ぶ掘り出し物はなかったですね、残念ながら。ジャンルがB級アクションの『ISON』と、ごくライトに安定したクオリティを見せる『天華無敵!』は個人的にそこそこ楽しめましたが、脳内作家辞書に刻みつけようというほど鮮烈な印象があるでもなく。とにかくインパクトが弱いです。『天華無敵!』はイラストとの兼ね合いで良い雰囲気を出しているけれど、話の筋にウネリが乏しくて盛り上がりに欠く。精霊と科学が混在する世界も「雰囲気」の点だけ取れば良いものの、設定として活かせているかまでは疑問。『ISON』も変に生温い「雰囲気」は良いが、ストーリーはどうにもこうにも。

 当方は新人に「新人らしさ」──荒削りでも必死に自分のカラーを出そうと努力しているのがよく分かる感触──を求めていますので、どうも今回の面子は「新人らしさ」を消そうと小さくまとまる方向に行ってしまったように見え不満。どのカラーもムラがない代わりに鮮やかさもない。ファンタジア長編小説大賞は少年向けライトノベルの新人賞としては最長の回数を誇りますから、受賞作の点数は多いですけれど、全体を通して強く印象に残る回ってのがありません。『リュカオーン』の縄手秀幸、『翡翠の魔変身』のまみやかつき、『杖術師夢幻帳』の昆飛雄、『カレイドスコープの少女』の内藤渉など、気になった受賞作家も一作きりで消えてしまうケースが多いですし。なんと言いますか……痒い賞ですね。

『CROSS†CHANNEL』の「†」は「ダガー」を変換すると出てくるという豆知識を某スレにて入手。実は今までずっとコピペで済ませていました。

 先月の26日に発売されたソフトは好評を得ているものが多く、今年の中でも特に豊作の日だったとか。当方は『Ricotte』『CROSS†CHANNEL』しかプレーしていませんが、この2つだけでも大した面白さですしね。『月は東に日は西に』『めぐり、ひとひら。』も体験版をやった感じでは悪くなかった。賛否両論の『天使のいない12月』にしても聞き及んだ限りでは当方好みのゲームである可能性も低くなし。もう少し積みゲーを崩してからこのへんにも手を伸ばそうかと思案しております。


2003-10-15.

・C†Cが終わったので暇な時間をゲームから本に充てる方へ移行しつつある今日この頃。『続巷説百物語』を読むだに、自分がどれだけ京極節に飢えていたのかよく分かります。「だんだん面白さが目減りしていってるよなぁ」とか思ったりもしますけれど、やはり当方は京極夏彦が大好きです。「大好き」という割にアバウトで完全に無視しているのは単なる記載漏れ。実はアバウトに載ってる作家名とか作品名は思いつくままテキトーに挙げただけで、しかも「あんまり多く書いてもゴチャゴチャするだけだから」と少なめに絞ってあります。忠実に当方の嗜好を余さず網羅しようとするならば、リストの量は三、四倍になってしまうのではないかと。要するに当方が相当無節操な趣味をしているということですが。

・垣根涼介の『ヒートアイランド』読了。

 サントリミステリー大賞は「悪くないけれどパッとしない」という印象があって、垣根涼介という作家も名前は覚えていてもなかなか作品を読む気になれない作家のひとりでした。ひょんなことから受賞作の『午前三時のルースター』を読んだところ、これが当方のツボに大ハマリ。9月19日付の日記でかなりベタ誉めし、一気に当方内部での注目度が高まりました。『ヒートアイランド』は一昨年に刊行された受賞後第一作。もちろん、期待して読み出しました。

 バッグの中に詰まっていた札束は三千万を越えていた──翌日の新聞に紛失届が出された報せがないことから、こいつは確実にヤバい金だと踏んだ。武闘派ストリートギャングを傘下に収め、各グループのリーダーを集め“雅”という上部組織を構成し、地下バーで秘密ファイトの興行を主宰しているアキは、ひょんなことから転がり込んだ大金をどう扱うかについて頭を悩ませた。その金を巡ってアキたちに近づく勢力は複数あり、どれかを立てても話が良い方向に進まない。やがて、彼らが下した決断とは……。

 チーマー、強盗集団、ヤクザ。三千万のホットマネーの行方をサスペンスフルに綴るジェットコースター式クライム・ノヴェル。前作の出来からして中身に不安はなかったが、いざ読み出してみればあっという間に引き込まれ、そのまんまの勢いで読了してしまった。緩急を心得た構成で、爽快感はかなりのもの。文章にクセはなく、ごく端整でとても読み易い。あまり動きのない場面でもすいすいと楽しく読めた。もちろん、山場に差し掛かれば派手に盛り上がります。まったりムードの強かった前作に対して殺伐ムードが高く、タランティーノばりにあっさりと酷薄な展開を見せる。

 もともとそんなに意外性を狙っている話ではないので、物凄いどんでん返しとかは存在しない。読んでて薄々抱く予想が大筋において的中する、良くも悪くも「お約束」で王道的な作品です。ただ、薄味だけど嫌味がなくて好感の持てる人物造型や、サラリと滑らかな割に粘り強くてペースが乱れない文章など、出来に関しては一驚に値するレベル。とても新人の長編とは思えない安定ぶりです。クライム・ノヴェルが苦手な人でなければ是非オススメしたい一作。「垣根涼介」の名前は当方内部でより一層株を上げました。第3長編の『ワイルド・ソウル』も近いうちに読みます。

・先月刊行された第15回ファンタジア大賞の受賞作も崩し中。青田買いが趣味というくらい新人スキーの当方、好きな作家の新作を積んでも新人のチェックは怠らない。ちょっと歪んだ性癖です。


2003-10-14.

・先週のうたわれに続き、今週はクロチャで休日が潰れました。充実しているので良いことは良いのですが、終わった後は発作的に紙と活字が恋しくなります。同じ文字からなる物語とはいえ、やはり本とノベルゲームは感覚的に違いますね。というわけで京極夏彦の『続巷説百物語』を読み出したところ、あっという間に引き込まれて気づけば軽く100ページは繰っている有り様。紙葉に飢えていたというのもありますが、相変わらず京極のストーリーテリングは凄いなぁ、と感心するままに連休が閉じていきました。

・で、『CROSS†CHANNEL』、コンプリート。

 「FLOWERS」というのがやけに引っ掛かる……と思ったら、クロチャと同日に『フラワーズ』というゲームが発売されているからでした。思い至ってスッキリ。聞いた話によればこの『フラワーズ』、『うそ×モテ』ネタとおぼしきギャグが仕込まれていたとかで、たぶんそれが記憶にこびり付いていたんでしょう。

 だいたいの感想は昨日と一昨日に書いた分で足りていて付け加えたいこともあまりないんですが……ネタバレ込みで少しだけ書きたいことがあるので背景色でライティング。

 ループ構造の物語は過程がパラレルってる分、結末までマルチ方式を採択してしまうと収拾がつかなくなりますから、どうしても一本道の大団円って仕組みになりがちです。このC†Cも例に漏れず、個別エンドに似たものはあってもハッキリ個別エンドと太字で書けるものはありません。個々のキャラクターに魅力を感じた人にとっては不満を感じるところではないでしょうか。

 主人公はプレーヤーの欲望を映す鏡としては不完全です。「そこだ、そこで怒涛のエロに走れ!」と多くのプレーヤーが望むであろう場面に身を置いても実行率は半分程度、「このヒロインと添い遂げたい」という想いも一切考慮せず、彼なりの思惑でサクサクと送還してしまう。とにかく操作が利かない。勝手に暴走するし、勝手に自制する。気分屋で、終始彼のペースで話は進んでいく。行動原理や信念信条に関してはほぼ固まっているから、プレーヤーが重要な決断を下す場はそんなになくて、ただ「どっちのジュースを買おうか」程度の、「その時々の気分」に介入できるくらい。駒としての主人公ではなく、主人公としての主人公であって、物語の支配権はプレーヤーにではなく黒須太一の方にあり、「主人公としての主人公」という性格を有する黒須太一はマルチ・エンドを拒否している。「その時々の気分」があるせいで物語は幅を持ち、多少のパラレル性を許されていますが、最終的に太一が目指す目標はあくまで「孤立」であってそれに関しては変更不可能。彼に殺戮や諦念といったトライ・アンド・エラーはあっても、宗旨変えだけは起こりえない仕様になっている。もっと太一が無色で透明なキャラクターだったら、曜子ちゃんや冬子やミキミキと退廃的で爛熟した閉鎖生活が送れたかもしれず、それはそれで残念ですけれど、あまりにも我を貫く太一が愛しい当方としてはこの構成を肯定していく方針です。

 正直に書くと最後まで太一には感情移入し損ねた観があります。C†Cは理屈に拠らず感情だけで描く部分や、逆に感情に拠らず理屈だけで書く部分が多く、ひどく不安定でいびつな印象を受けますが、これはやはり太一のモノの見方が相当アレな具合として設定されているからでしょう。あくまで太一の主観的な世界を読む限りでは濃厚な不安と乾いた黒い笑いばかりが目立ちますが、「他のキャラにとって太一という人間はどう見えるのか」と考えながらやっていくと、却ってクリアーに映る場面が結構あります。感情移入する楽しみとは別に、あえて対象化して感情移入しない楽しみってのもこのソフトにはあると思います。太一を壊れ物として見るか怪物として見るか珍獣として見るか人間として見るか太一として見るかは人それぞれにしても。

 結論としては「主人公が愛らしい物語」。満足いく面白さでした。余談ですが、「ハラキリ冬子」や「ハラキリ丸」が「桐原」をもじったジョークというだけでなく、裏に隠された意味があると分かったときはあまりの黒さに仰け反りました。さすがに笑えない。

 あと「群青色」って表現はツボに入りました。そんなこんなで半ば衝動買いだったC†Cもアタリで良かったです。


2003-10-13.

・月曜も休日とあって、かなりくつろいで過ごしました。いや、クロチャやって本読んでクロチャやって外の空気吸ってきて本読んでそれからまたクロチャやっただけなんですが。

・ともあれ『CROSS†CHANNEL』、割と進んできました。いま送還している最中。もう少しで終わりそうな気がするのですが、さてはて。

 このソフト、人間を「壊れ物」として捉えたり、強力無比の「怪物」をほぼ無条件に設定したり……などといった無造作な感覚に抵抗を覚える人には恐らく合わないかと思われます。具体的に指せば上遠野浩平や舞城王太郎や佐藤友哉や西尾維新やうえお久光あたり。狂気と倦怠、強靭と脆弱が入り混じるストーリーは当方にはとても面白い。「お約束」を認識してメタ的に「お約束」を外しに来る小技も心憎い。逸脱という行為は要するにパロディと似たようなものなので、従来の学園青春エロゲーに馴染んでいれば馴染んでいるほどこのソフトがいかにズレているか明確に分かり、普通の学園青春エロゲーが好きだからこそ、結果としては逸脱三昧のクロチャが楽しめる。「好きだけどイジメたい」「好きだからイジメたい」という感情と同じく、様式美に固まった単純な学園青春エロゲーが好きだけど、好きだから、こうも「普通」をボロボロにいてこますクロチャが面白い。

 主人公を含め、あらゆるキャラは既存の感覚で言えば魅力的と言いかねる部分が多く、あまり萌えない。けれどとても愛らしい。多岐的かつ多面的に描き込まれていく彼、彼女らはそれでも厚みを増すことがなくて、むしろ詳細が描かれ情報を増えるごとに薄っぺらく空疎な存在に映ってくる。最初は主人公の性格に馴染めず「感情移入できない」と思っていた当方ですが、プレーを重ねていくにつれだんだんモノの見方が主人公の方へ寄っていくのを実感して肌寒くなりました。そういった構成があまりにも巧妙で、もはや罠と形容したくなる。主人公の目を通したキャラたちの姿は薄くて遠くて隔たっていて手の届かないモノに見える。ごくふつうに魅力を感じることはできない。従来ならば「お約束」として透明に近い存在であるべきの主人公が、曖昧とはいえ確実に何かの色を持っているせいで有色不透明のフィルターがかかり、一種の萌え阻害装置として機能してしまっている。クロチャに出てくるキャラは人間性よりも「壊れ物」としての性格が強い。「どうにかすれば壊れてしまう物」特有の愛らしさが、不思議な感情を芽生えさせます。繊細な飴細工とか、ピラミッド状に組み立てられたトランプとか、梱包材に入ってるビニールのぷちぷちとか、あんなの。壊したくて壊したくないジレンマです。壊さなかったときの安心感と壊したときの愉悦感を等分に味わえるという点で、クロチャはなにげに欲望充足能力が高い。

 まー、そんな表現しにくい感覚的なところは置いといて、個人的に当方は「曜子たん(*´Д`)ハァハァ」+「冬子たん(*´Д`)ハァハァ」です。体験版やったときはミキプ○ーンにハマりそうな予感を得ていましたが、やってみると意外にこのふたりがスマッシュヒット。是非このふたりには深夜の校舎で曜子=姉様、冬子=鷹弘という具合の『アトラク=ナクア』ごっこをしてほしい。実のところ当方は太一と曜子に「こんな初音姉さまは嫌だ!」スレにおける奏子と姉様のイメージを重ねつつプレーしています。支配権が姉様から奏子に移った後の感じで。

 最後はどう締めてくれるのか、と期待しながら終わりに向けてガンガンやってこうと思います。

・デモベのノベライズを読了。んー、やはり詰め込み過ぎかな。


2003-10-12.

・ボウルいっぱいにフルーツヨーグルトをつくってしまった土曜日の夜。もうヨーグルトは当分いい……。

『CROSS†CHANNEL』、黙々とプレー中。

 「お約束」を愛し、「お約束」を憎む、すべての人々へ……

 「王道」という言葉があります。歩き易い道。「少年と少女が出会って恋に落ちる」とか、「悪は正義によって滅ぼされる」とか、「熱血と根性があれば問題はどうにかなる」とか、誰が最初に築き、誰が確立させたか、ハッキリとは分からなくとも数多くの創作者によって踏襲され研鑚され効率化した物語の黄金パターンです。

 王道は安直にして鉄板。パターンを踏むだけという安易さでありながら、キチンと踏んでいれば外すことはありません。ある意味では完成されたスタイルを指す言葉でもありますが、かと言ってマイナスの意味が込められていないかというとそうでもない。「学問に王道なし」なんて言うくらいで、「受験生のための模範解答」みたいな扱いをされることもしばしばです。

 でも、王道は廃れない。少年漫画雑誌を開けばインクと紙の匂いに混じって王道の香りが濃厚に漂い出します。王道は滅びない。王道を王道たらしめ、強固に守り抜いている要素の数々を、たとえば「お約束」と呼びます。

 「お約束」は単純明快な代物で、物語を簡潔に細分化したり統合したりする。法則性、規則性。「こうなったら、こうなる」という掟。格闘技における型と同じです。物事に対する取り組みや対処がある程度決まっている。特に「主人公が記憶喪失」という「お約束」。あまりにも使い勝手が良いせいで、あらゆるジャンルにおいて使用されています。エロゲーだけでも記憶喪失の主人公が何人いるのか、いちいち数えられません。他にも、「朝、幼馴染みの少女が起こしに来るが、なかなか起きない」「転入生はなぜか直前に主人公と出会っていて、『あー、さっきの!』と叫んでいるうちに隣の席へやられる」「ハードボイルドの探偵は後頭部を殴られて気絶する」「『まだ生まれたばかりなんだ』と前線で仲間に自分の子供の写真を見せる兵士は死ぬ」「実行前に詳細を説明された作戦は高確率で失敗する」「事件の証言者はどうでもいいようなことを覚えていて、実はそれが伏線だったりする」「ホラー映画の警官は殺されるために出てくる」「超科学古代文明の遺跡があって、謎を解いて隠し部屋に入ると、古代人の遺したメッセージがホログラフィで再生される」など、枚挙に暇がない。

 「お約束」はそれが「お約束」として認識されているのがポイントである。「一回もリロードしてないのに弾撃ちすぎだよ!」とツッコミの余地があるところも「まあ、そんなの『お約束』だし」と流せる強靭さがある。定着してしまえば、言葉の誤用が正しい意味として認められてしまうように、誰かが「なんでどいつもこいつもエロゲーの主人公は前髪で顔隠れてんだよ!」と疑問の声を挙げたところで様々な論議の末、「お約束」に帰着する。「お約束」の無難さはちょっと攻撃されてくらいでは揺らがない。

 「お約束」がもたらす効果は一言で書けば「安心」。軍事行動の才能はあっても人付き合いにちょっと難のある筋肉質野郎がバツイチで仕事に燃えているタフな女性と車が爆発したり無数の銃弾が飛び交ったりテロリストに囚われたりアメリカの危機を救ったりする冒険の末に抱き合ってブチュゥゥゥ、なハリウッド・アクションは「またかよ」と思いつつもビールを飲みながらリラックスして楽しめる。多少セリフを聞き流してもトイレ行ってる間にシーンが変わっても、「お約束」を汲み取るだけでその穴を埋めることができるから、大して集中力が要りません。「先が読めない」ことを重視する人にとって「お約束」は忌むべきものですが、「ハッピーエンドじゃなきゃ見たくない」という人にとっては「お約束」が何よりも心強い味方となります。

 逆に「お約束」の弊害は「退屈」。集中力が要らないせいで、なまじ集中していると先が読め過ぎて退屈になってしまう。王道とは行き慣れた通学路・通勤路みたいなもので、「お約束」はその中途にある各種のポイントに相当します。横断歩道、ガソリンスタンド、書店、マクドナルド、公園、知り合いの住むアパート、なんかよくわからん看板。見慣れているから、覚えていても特に意識もしません。初めて行く道のような緊張感や不安もなく、目的地へ辿り着くことができる。迷うことはありえない。けれど、風景を楽しむ気持ちも起こらない。注意してよく見れば、行き慣れた道でも新鮮な発見が……というような文句もありますけど、そもそも行き慣れた道なんて「注意してよく見」ようとする気自体が湧きません。人とお喋りをしたり、つらつら考え事をしたりでもしなければ暇が潰せない。どんなにぼんやりしていても気づけば会社に到着している自動性はある種の安心感の表れである一方、ぼんやりとかでもしなければ道を歩く気もしないという退屈感情の表れでもあるのではないかと。そんなことをつらつら考えながら帰り道を辿った午後。

 行き慣れた道にある入ったことのない路地へ気紛れで足を踏み入れる「ちょっとした冒険」がひどく新鮮に感じられるみたいに、「こうきたから、こうくるだろうなぁ」という予想をスカされるのもまた新鮮な体験です。「朝、幼馴染みが主人公を永眠させようとチェーンソーをぶち込むが、主人公はなかなか死なない」とか。言うなれば「お約束」外し。あえて「お約束」を逸脱することで面白味を誘おうとする試みです。ライトノベル板のイヤ展スレ(「こんな設定(展開)はイヤだ!」スレ)はその種のネタの宝庫。最近は行ってませんけど。現行はpart18ですか。上に書いた「なかなか死なない」みたく、ただ単に「お約束」を逸脱しただけでは「うわぁ、こんなんイヤだ!」と拒否反応が起こってしまいますが、その逸脱具合が絶妙だったときは大ウケが狙えます。イヤ展スレも大部分のネタは普通にイヤなのばっかりですが、たまに「お約束」をぶち破っていながらも激しく読みたくなるネタが出てきます。しかし、そういうネタを意識して出すのはかなり難しい。「お約束」を絶妙に逸脱するためには前提として「お約束」を知り、それをなんとかして迂回しなければならない。このあたりは技術と、何よりもセンスが重要になってきます。

 長々と無駄話を書いてしまいましたが、『CROSS†CHANNEL』は「お約束」を踏襲し王道を渡っていく安心感をプレーヤーに与える面と、その王道から脇に逸れていくことで先の読めない不安感をプレーヤーに与える面があり、そのへんのバランスがとても巧妙でえも言われぬ心地良い刺激を生み出しています。バランスがいいというのではありません。むしろアンバランスです。けど、そのアンバランスさがイイ。「お約束」のもたらす安心と退屈が眠気を喚び、「お約束」外しのもたらす不安と刺激が眠気を吹き飛ばす。不規則なマッチポンプが「早く先を知りたい」という衝動を昂ぶらせ、ひたすらのめり込んでしまいました。テキストが肌に合わないとか、主人公に感情移入しにくいとか、ほとんどのキャラに魅力を感じないとか、そんな諸々のことがどうでもよくなっていく。当方がプレーを通じてストーリーをコントロールしているのではなく、ストーリーがプレーを通じて当方をコントロールしているような錯覚に駆られました。

 「お約束」外しは、受け手が「お約束」の何たるかを知っていて初めて機能する。『CROSS†CHANNEL』が「お約束」と肩を組んだり突き放したりしているのを見て喜ぶのはひとえに当方が「お約束」を愛し、憎んでいるからです。「お約束」ゆえの安心と退屈へ愛憎を抱いているからこそ「お約束」を守り、「お約束」を殺すクロチャに魅せられる。イヤ展スレがバカ一スレ(「バカの一つ覚えな展開」スレ)とは表裏一体で、ときたまネタが交差することもあるように、「お約束」と「お約束」外しは排反事象ではない。「お約束」を逸脱すること自体がひとつの「お約束」になっている、というパラドックスもあるくらいですから。

 クロチャ、まだコンプには遠い地点だと思います。物語も全体像が見えてこない。それでも「お約束」を愛し、「お約束」を憎む、すべての人々へオススメしたいという気持ちは強い。誰がやっても面白いってゲームじゃないけれど、「お約束」への愛憎を自ら意識している人には「 や ら な い か ? 」とジッパーを下ろしシュリンクを破りたくなる心境。

・しかしイヤ展スレ、久々に覗いてびっくりしたのは当方の書いたネタが1に掲載されていたことでした。「あなたの子よ!」と迫られるくらいにインパクトがありました。いや、そんな経験ないですけど。

GA Graphicで灰村キヨタカの壁紙公開。

 3枚目。壁紙連作はこれで最後です。3枚の中で当方が一番好きなのは1枚目。実際に壁紙として使っている時間帯もあります。灰村氏の絵を見て「ああ、寛いでるなぁ」と実感するひととき。


2003-10-11.

・昨日の日記を訂正。

 ×「深骨」
 ○「深骨」

 変換ミスでしたが、「堀」と「掘」は手書きのときもたまに間違えそうになります。それにしても『アマチャ・ズルチャ』、やはり「闇鍋奉行」あたりの発想が面白い。「江戸の昔、幕府の下に四奉行あり、これ即ち寺社奉行、勘定奉行、町奉行、鍋奉行である」なんてサラリと書く冒頭に惚れた。タイトルと設定のインパクトが強すぎて肝心の中身が付いて行っていない観もあるけれど。

『CROSS†CHANNEL』、プレー開始。

 体験版の範囲をザーッと読み飛ばして、そのちょっと先までプレーしました。んー、今のところ感触としてはイイ感じ。漫才のセンスに関しては相変わらず微妙だけど、話は面白くなっていく。細かいところで「お約束」のレールから足を踏み外しており、先が読みないムード濃厚。見た目がアレ似のミキミキも良いですが、順調に冬子の方へ転んでいます。当方、実に展開に流され易い。プレーヤーと言いつつ、なんだか話の方が当方を操作しているように思えてならない。制作者の狙い通りに反応している予感がして悪寒。

 とりあえず「体験版→製品版」と順番を踏んだ当方の現段階における感想としては、体験版の範囲を超えてからが面白い──といったところです。例の「生きている人、いますか?」までは非常にかったるいと申しますか、いまいち主人公のテンポが肌に合わなくて退屈でしたけれど、それ以降はだんだん状況が分かってきたおかげで主人公のテンポや対人距離感について飲み込めてくる。まだ今のところは主人公が感情移入の対象というより観察対象の珍獣といった存在に近く、こいつに対してどういった見方を適用すべきか決めかねています。森博嗣のキャラみたいにただ眺めて楽しむというのも一興ですが、さてはて。

 物語はまだまだ枠すら見えてこないから、楽しみといえば楽しみ、不安といえば不安。一応期待しながら進めるとします。明日からは集中的にやれそうなので、ガンガンやるつもりです。

・トーストにジャム塗って食べてたら2枚で小壜をひとつ空けてしまいました。塗りすぎ。いや、ここまで来ると「塗る」というより「載せる」「積む」の次元かも。「積み」の魔力はここまで侵蝕していたのか……慄然としながらシナモンの風味を楽しむアップルジャム。


2003-10-10.

・「エンジニアとエンジバラって何か響きに通ずるものがあるよな」「ねぇよ、だいたいエジンバラだろ」 一蹴されたうえツッコミまで入れられてマイナスムードの昼休憩。

『CROSS†CHANNEL』はまだ開封すら済まず。体験版である程度やっているせいか、「さあ、やるぞ」ってな意気込み混じりのワクワク感が喚起されなくて、いまいちプレーする踏ん切りがつかない。

 んー、気が進まないことはひたすら後回しという性格の当方ゆえ、下手すると今月は封を開けることさえせず来月まで積み越してしまうかも。おそらく土・日・月の3日間が山場ですな。「買って3日以内に手をつけないものは高確率で『積み』と化す」という経験則がありますから、そこを逃すと来月逝きとなる可能性大。「衝動買い→積み」のコンボにもそろそろうんざりしてきましたので、これを機に買ったものはなるべく早く消化する習慣をつけてしまいたいです。

・深掘骨の『アマチャ・ズルチャ』を読了。

 「くだらなさ」と「奇想」が横溢する短編集。これがハヤカワSFシリーズ・Jコレクションとして刊行されているのはちょっと不思議ですが、SFマガジンに載っていた「隠密行動」と、「ことのはの海、カタシロノ庭」だったかな? あれに出ていたショートショートがツボに入ったせいで、深堀骨は当方的にかなり気になる作家となっていました。

 この作家が紡ぎ出すテイストを説明するのは難しいです。筒井康隆に似てないこともないが、泥臭い割に爽やかな作風であり、やはり筒井とは違う。筒井から粘着度をやや落とした感じかな。土橋とし子のイラストとも相乗して雑然とした雰囲気を醸しており、そうですね……強いて言えば「ズレ」の一言に集約されます。呼吸も角度もズレまくり。思いつきで世界がズレ、勢いで話がズレ、進めば進むほどズレにズレていき、半ば物語としての態を放棄しつつも最後はどっかの隙間に収まって終わる。センス・オブ・ワンダーって言葉、こういうときに使っていいんですっけ?

 40ページから41ページ、マスターが法事に行った際のエピソードや、90ページの

剛「いおり」
無我「ただすけ」

 を繰り返すだけの大岡越前、125ページの「糞虫。糞達磨。糞海苔茶漬」から始まる一連の糞三段活用など、部分部分を指摘するのは容易いのですが、全編に渡ってこれと同じ程度かこれ以上にはっちゃけたネタが仕込まれており、総体として捉えるのが甚だ困難です。また必ずしもウケが取れる狙い澄まし研ぎ澄まされたネタばかりでなく、ときたま考えなしと言えるほど無造作に放たれ見事に滑ってしまうギャグも多く、「寒い」と思うこととてしばしば。完成度が高いとは保証しかねるし、手放しでは絶賛しにくい。ノリが肌に合わない人は苦痛さえ覚えるかもしれない。

 だけど、雑多なネタが狭い尺の中でゴミゴミとひしめき合っている様は一種圧巻。くだらないはくだらないでも並大抵の「くだらなさ」じゃなくて、もうここまで来ると正否判定の壁を突き抜けて「面白いとか面白くないとか、そんなのはどうでもいい」と妙に清々しい気分にさせられる。熱気の感じられるナンセンスという、なんとも名状し難いノリ。ベクトルは違えども、うすた京介や野中英次と同質の情熱を感じます。穴埋めマンガにも似た奔放さと、マニア向け前衛ギャグの老獪さ、そしてエンターテインメント全般の節操なさを余す所なく詰め込んだ1冊です。

 詳しいことは知りませんが、どうも巷ではあまり話題になっていないような気がします。もうちょっと知られて読まれてもいいんじゃないか……と強く思う次第。


2003-10-09.

・ドライカレーにカレーをかけるというクドい食べ方に挑戦し、耐えかねた焼津です、こんばんは。これからは変な気は起こさずドライカレーはドライカレーとして食べよう。

『CROSS†CHANNEL』、なんとなく足を踏み入れた店で売られているのを見かけ、脊髄反射的に購入。体験版ではキャラの漫才が肌に合わなかったものの、チラリと覗いていたシリアス部分には結構気になっていました。各所で評判になっている様子ゆえ、ほとんど買う気にまで傾いていましたが、最後のひと押しは「勢い」。ちょうど新堂冬樹の新刊『炎と氷』を買った直後で気分が良くて、パッケージを見かけた途端、一瞬の迷いもなく引っ掴んでレジへ持って行ってしまいました。ひと言で書けばまんま「衝動買い」ですね。

 とりあえず『うさみみデリバリーズ!!』を中断して黒茶(CROSS†CHANNEL)のプレーに移行するとします。当方のツボにハマるといいんですが……。

・本はなかなか読み終わらず。当方は複数の本を並行して読み進めるやり方が定着しているせいで、1冊も読み終わらない日もあれば、2、3冊読了する日もあるというバラけぶりになっています。今は4冊ほど手をつけていますが、どれもそこそこの厚さがある海外小説ばかりでして、恐らく週末あたりまではひたすら地味に読み続けることとなりそうです。


2003-10-08.

・梅干は好きじゃないのに、たまに食べたくなる罠。食べるたびに「やっぱり好きじゃないなぁ」と実感しながらも、またしばらく経ったら食べたくなる。好きなものばかりが食べたいものとは限らないってことですかね。

・書店で電撃文庫の新刊と講談社ノベルスの新刊を購入。川上稔の『終わりのクロニクル2(上)』とか、浦賀和宏の『透明人間』とか。終わクロは現在『1(上)』しか読んでないので先に『1(下)』を崩さなければなりませんが、『1(上)』が予想を超えて面白かったので安心してしまい、強いて崩す気がしません。当方が「崩さねば」と焦燥感に駆られるのは「つまらないかもしれない」という疑惑のある本であって、それは読まないままうっかり続編とか買ってしまって後悔しないようにするためです。「面白いに決まってる」と安心させられる本は安心しすぎて心置きなく積んでしまう。崩す優先順位が低くなり、結果として好きなシリーズは読んでる本よりも積んでる本の方が多いといった珍現象もときたま発生します。例えば、うえお久光の『悪魔のミカタ』は5巻まで読了し、6巻以降は読んでません。読み:5冊、積み:5冊と拮抗しています。でも中には西尾維新みたいに積読冊数がゼロの作家もいますし、必ずしも面白いからといって積むわけでもありません。

 積読・積ゲーに関してはいろいろ書きたいことがありますけど、一旦書き出すとキリがなくなるのでやめておきます。ただ、敢えて書くならこの一言。「一度積み出すと、癖になって止まらない」。

・スーザン・プライスの『500年のトンネル』読了。

「あなたたちはたったいま、二十一世紀に宣戦布告したのよ」

 21世紀、とある企業が時空を超えるトンネルを開発した。「チューブ」と呼ばれるそのトンネルを抜けた先に広がるのは16世紀のイングランド−スコットランド辺境地帯。「スターカーム」なる騎馬民族が我が物顔で駆け回り、他部族との戦いに明け暮れていた。21世紀からやってきた人間たちは「エルフ」を名乗り、16世紀の天然資源を目当てにスターカームと盟約を結ぼうとするが、価値観の違いによって話し合いは平行線を辿る。やがてエルフのアンドリアとスターカームのピーアは500年の時を隔てた恋に落ちるが……。

 タイムトラベル・ファンタジー。タイムトラベルといっても歴史改変モノではない。こうした話にはタイムパラドックスが付き物だけど、本作品においては21世紀と16世紀のふたつの陣営がそれぞれ別々の時間軸に存在しているため、「自分の祖先を殺してしまって自分も消滅?」などといったタイムパラドックスは発生しない。だから、タイムトラベルというより一種のパラレルワールド譚と見た方がいいかな。エロゲーでいうと『ぱちもそ』あたりの設定。

 エルフを名乗る21世紀の侵略者と、「ここはわれわれの土地だ!」と高らかに叫ぶ好戦的な先住民。両者の主張がすれ違い、分かり合えぬゆえに勃発する闘争。構図としては少し前に読んだ福井晴敏の『月に繭 地には果実』(小説版『ターンAガンダム』)とよく似ていて興味深かった。

 上巻の中ほど、「エルフの国」に来てしまったピーアの戸惑いと恐慌を描くあたりからストーリーは加速していく。『月に繭 地には果実』も全面戦争へ至るまでの過程が「なんだかなぁ」ではあったが、こっちもこっちで「なんだかなぁ」。両陣営の良し悪しがそれなりに公平に書かれているため、どちらに感情移入するかは読者次第。でも、作者はどちらにも感情移入させないよう狙っているのかもしれない。なかなか興趣をそそるシチュエーションではあるけれど、思ったより派手派手しい展開にならなくて肩透かし。結末もちょっと中途半端。続編も出ているらしいから、たぶん話はまだ終わってないはず。

 上下で670ページほど。出だしがいまひとつなのと、終盤がありきたりでちょっと盛り上がりに欠けるのを除けば長さを気にすることなく楽しめた。同じ作者の手による「キリスト教対異教の凄絶なせめぎ合い」を描いた『エルフギフト』も読んでみたくなりました。


2003-10-07.

・「コーラを飲んだらゲップが出るのと同じくらい確実じゃ!」

 炭酸が抜けていたらそうとも限らない。しかし炭酸が入ってないコーラはコーラと言えるのか。もし言えないとするなら「コーラ味」というのはなんなのか。疑問は尽きない。

『うたわれるもの』、既にコンプしてアンインストールも済ませたのですが、ふとした瞬間に「もっかい最初から再プレーしたい」という欲望に駆られることがしばしば。「物足りない」といった主旨の文句を書きましたけど、その微妙な物足りなさが終わった後もえらく尾を引きます。半ば本気でうたわれ再インストを思案しているくらいで、どうやら当方は自覚している以上に気に入ってしまっているみたいです。まったくの一本道で分岐ゼロとはいえ、「最初からやり直す」という考えがやたら魅力的に思えてしまう。

 うたわれの面白さは完成度の高さから来る満足によって生み出されるものではなく、たくさんある要素のいくらかが未完成なことから来る飢えによって滲み出てくるものにこそあるんじゃないか、って気がしてきました。コンプしてもすっきりしないから、内容が変わらないとはいえ再度頭からプレーしたくなり、大して必要性がないにも関わらず自発的に2周目へ繰り出してしまう。そこにうたわれの本領があるのでは……と思いつつ、再インストを思い留まって別のゲームをインストール。

 なんとなく、このままうたわれを入れ直したらやばい具合にハマりそうな予感しますから。熱を冷ます意味で他のゲームをやるとします。

・ということで積みゲーの山から引き抜いたのは『うさみみデリバリーズ!!』。すたじおみりすが今年2月に出したエロゲーですが、少し前にマウスを新調するため秋葉原に寄った際、特価品として出ていたのを購入しました。だから積み期間はそんなに長くないです。

 宅配屋というと『ゲッチューまごころ便』くらいしか思い浮かばない当方、「何がなんでも確実に荷物をお届けします」ってノリにそれほど興味は湧かなかったのですが、笑いとストーリーの配分がちょうどいいコメディとは聞いていたので気になっていました。まだ始めたばかりで大して進んでませんが、とりあえずべるのに注目中。結局ロリか自分。


2003-10-06.

・最近SSはさっぱり書いてなくて、ただの読書日記及びエロゲープレー日記と化している当サイト。特に目的意識も持たず、「千籐氏犬江氏を見守りつつ、あとは興味のある事柄をダラダラ書いていこうかなぁ」と実にテキトーな気分で始めただけあって最近は順調に迷走気味ですが、何はともあれ3万ヒットを祝ってくださる方々が存在する事実に感謝しつつ。いつも通り頑張ったり頑張らなかったりします。

『うたわれるもの』、コンプリート。

 土日潰してやりこんじゃいました。一気にガッと立て続けに戦闘を行った後、だら〜りと平和な日常が流れ、しばらくしてまたキナ臭い雰囲気が……と緩急のついた展開のおかげで飽きが来なかったです。何度か際どい戦局はあったものの、一応負けなしでクリア。『ヴェドゴニア』でウピエルに負けまくった当方にしちゃ上出来と言えます。

 人名や地名など、用語が独特でとにかく覚えにくく、文字列をひとつの絵と捉えて漠然と記憶し、判別することはできましたけど、こうして書こうとすると正確な語がうまく思い出せない。実のところ主人公のハクオロもしばらくハクロオと間違えていたくらいでして。ベナウィをベナリィとか。ルビ振りの機能があったおかげで読んでて混乱することはなかったですけど、ホント、“星界”シリーズといい勝負。

 細かいことを抜きにして言えば、物語も面白くて充分に楽しめました。で、細かいことを言いますと、当方は中盤までの戦國ムードが好きでしたので、ああいう方向に突き進んでいったクライマックスについては、予想していたし納得も行きますけど、少々残念な思いも。あとまるっきりの一本道ってのは攻略が楽で「土日のうちに終わらせたい」と願った身にはすごくありがたいですけど、言い換えればチマチマとやり込む要素もあまりないということで。贅沢というか、ワガママなんですが、もうひと押し「何か」が欲しかった。クリアすると「戦闘訓練」に十数対十数の本格的なステージとか、ボスキャラ勢ぞろいのステージとかが加わるなど、クリア後の興奮をクールダウンさせるオマケがあればなぁ、と。ムービーが変わるだけでは火照った身体を冷ますに足らず。

 SRPGは普段──というより今までのゲーム人生を通じてもあまりやったことがなかったので、詳しくどうこうは言えませんけど、ヌルい当方にも無事やり通せるくらいの難易度で良かった。チップキャラの動きも見ていて面白かった。「連撃」は割とあっさり飽きてしまったけど、それでもやっぱり最後まで決まると気持ちいい。

 気に入ったキャラはエルルゥ、ドリィ、グラァ、トウカの4人。エルルゥは素朴で明るく可愛く世話焼きでやきもち焼きと実に「ふつう」なヒロインでしたが、その「ふつう」が良くて安心できる。ただ話の進行とともに出番が減り、「ふつう」でないキャラたちの影に隠れ、どんどん存在感が薄くなっていくのは悲しかった……ドリィとグラァについては昨日の分にも書きましたが、オボロを主として敬っている一方で少し遊んでいるあたりが好感触。最初は見分けつかなかったですが、やってるうちにちょっとだけ違いが分かったり。微妙にドリィの方が好きです。トウカはいささか過剰なそそっかしさが鼻に付く場面もありましたけど、当方が見て、笑いと萌えの総合力を考えればうたわれ一のキャラ。人形イベントとかカルラ相談イベントとか、日常イベントでのインパクトが大。あのギャグ顔には激しく胸キュン。

 敵にもいろいろと濃いぃ男キャラが混じっているのが嬉しい。名前は覚え切れていないのでいちいち書き連ねることはできないものの、見た目がアレな連中も含めて嫌いなキャラはおらず、押し並べて好きです。特に気になるのは、名前だけ出てきて結局出番なしのあいつ。そもそも生死自体が不明ですが。

 伏線や設定など、風呂敷を広げる段でも広げ切らず、畳む段でも畳み切れなかった……という印象を受けます。「もっと熱く、もっと盛り上がることはできなかったのか」と惜しい気分は残る。けど、見方を変えればバランス良く要素群を組み立て、プレーヤーをラストまで大過なく誘導できるように考えられた、端整な構成とも言える。恐らくほとんどの人に対して一定の「面白さ」を供給することが可能である、最大公約数みたいな出来。サウンド面、グラフィック面にしてもクオリティが高いのは瞭然。ハマった。けれど、ハマってハマってハマり抜くことはできなかった。満足とともに、どこか歯痒さも感じる一作でした。

・さて、次は何を崩そうか……と思案していますが、ここのところ集中的にゲームばかりにかまけていたので、しばらくは読書の方に重点を移そうかと考えています。なので、ガーッと一気にやり込まなくても、チマチマと楽しめるようなのがいいかな。候補を漁ってみるとします。


2003-10-05.

・近所のスーパーで牛豚合挽肉がグラム50円。つい買い込んでしまいました。ハンバーグ捏ねまくりです。個人的に牛100パーよりも合挽の方が好き。

『うたわれるもの』プレー開始。

 試しとばかりにやり出したところ、なかなか中断できない面白さにつき、一気にかなり進みました。ごはんを食べるために中座する時間も惜しいくらい。よし、週末はこれで決まり。

 食指をそそるダークサスペンスがなかったので、代わりに手をつけてみた一本。発売後間もなく購入して以来積みっきりでしたから、およそ1年半かな。直前にプレーしたのが『Ricotte〜アルペンブルの歌姫〜』だから「うた」繋がり。なんちて。

 古代日本を意識したと思われる架空の世界──様々な国の様々な思惑が絡まり合う戦乱ファンタジー。主人公が記憶喪失というのはもう「お約束」だと考えて軽く流すとしましょう。平気で獣人とか出てきますが、これについての説明は為されるんだかどうだか……。

 当方、国取り物語が好きなものですから序盤の展開には大満足。周りの大国が反応する流れもたまらない。なんか、えらくあっさりとハマってしまいました。どのくらいの分量があるのか分かりませんが、この勢いだと日曜日を潰してクリアに向け、プレーに励みまくってしまうかも。

 戦闘はよくあるクォータヴュー形式で、難易度もヌルゲーマーの当方にはちょうどいいくらいです。こういうシミュレーションRPGをやったの、エロゲーじゃ『キャッスル・ファンタジア』以来かな……『聖魔大戦』はいろいろ忙しくなって途中で投げたままだったような。

 キャラクターも魅力的ですね。とりあえずエルルゥにハァハァしていましたが、話が進むにつれどんどん男キャラも増えていく。なんだか当方、最近はエロゲーでも主人公以外の男キャラが出てくるのを楽しみにしている節があり。さすがに『デモンベイン』ほどの男臭さ&漢濃さではないけど、男性キャラ比率はなかなかのもの。やはり男臭い空気が漂う中に女性キャラが混ざっている、というシチュエーションがあれこれとロマン回路を高速回転させるんだろうなぁ。

 うたわれキャラでとりわけ気に入ったのはドリィとグラァの双子。もともと双子キャラは好きですが、「双子で弓兵」という設定がやたらとツボを突きまくり。スナイパー属性のある当方は弓兵にもちょっとドキドキです。しかしプレーを進めていくうちにある事実が暴露されます。

 ふたりとも男

 そうきたか……!

 さすがに最初はショックでしたが、すぐに「むしろ そ れ が い い 」と回復。結果としてますますこの双子への傾倒が深まっていった次第。単純にロングレンジの攻撃が使いやすいというのもありますが。

 あとはアルルゥもツボ。単純な萌えでいえばエルルゥの方が好みですが、見るからに非戦闘員で特殊技能もないこの子がどうやって戦闘に参加するのか──いやそもそもしないのか、と頭を悩ませていたところにあの始末。これもこれで「そうきたか……!」。当方のいろいろとアレな嗜好をフォローしまくりでホント嬉しいですね。

 それとどうでもいいことだけど、ヌワンギがゴクドーくんに見えて仕方なかった。

GA Graphicで灰村キヨタカの壁紙公開。

 2枚目です。ここは新しいのを公開するたび前の奴がなくなる(サンプルは残りますが壁紙のデータは公開終了となる)のでお早めに。


2003-10-04.

・どうもミスして昨日の日記は更新し損ねていた様子。すみませぬ。やたらミスの多い管理人です。そういえばもう3万ヒット行きましたっけ? 最近はカウンターもろくに見ていません。

『Ricotte』、コンプリート。

 やっと両ルートとも制覇。長かった……プレーした人の中には「1日で終わった」って人もいるみたいですが、当方はたっぷり一週間も味わい楽しみました。「9月はこれ一本」と的を絞って購入しましたけど、無事アタリでひと安心。少女と時には穏やかに睦み合い、時には激しく弄り合う日々。己の業の深さを思い知り、益々退路が絶たれて行くのを実感しました。ともかく『Ricotte』、面白かったですよ? そっち方面の方には強くオススメします。詳しい紹介と感想はこちら。1010LUV。

・次は何を崩そうかな。候補はあれこれありますが、「ほのぼの」と「まったり」をたっぷり味わった後なので殺伐ダークサスペンス路線を思案中。ただ、鬼畜モノが微妙に苦手なせいもあって、ソレ系のはあまり積んでなかったり。正味な話、鬼畜っぽい話は好きなんですけれど、仰々しく「鬼畜」と謳っているものには興味をそそられないんですよね……当方自身不思議なんですが。『永遠となった留守番』も感性に訴えるものはあったが、手は伸びず。結局のところ熱湯よりも微温湯が好きなのかもしれない。


2003-10-03.

『Ricotte』

 律儀に声聞いて文章読みながらやってるせいか、なかなか終わりません。雰囲気からしてだいぶ終盤っぽいですが。Allegro編は話に弛みがなくて退屈しない代わり、どうもエピソードを継ぎ接ぎしたような印象があり、全体のまとまりはいまひとつといった観があります。なんと言うか、少年マンガで主人公がそこそこ強い敵を倒したら「そんなのブチのめしたくらいでイイ気になるなよ」「ひゃはは、まったくだぜ」と新しい敵がぞろぞろ出てくるみたいな、連載で読むと毎回飽きが来ないで面白いけど単行本だと間延びしている印象を受ける、そんな展開。

 テーマがひとつに集約されていくLargoに対し、Allegroは逆に拡大していくような雰囲気ですね。そこが楽しくもあり、散漫でもあります。んー、LargoはLargoで「前半が退屈」という欠点がありましたけど、AllegroはAllegroで「盛り上がりが場当たり的」といった難点が……悪く言えばどっちのルートも一長一短の出来。良く言えば足りないところを互いに補い合っている構成。

 ともあれ、そろそろフィナーレ。最後はどうまとめるのやら。


2003-10-02.

『Ricotte』、まだまだAllegro編。

 なんとなくだけど、Allegro編はLargo編よりも長くなる気がする。

 設定が設定だけに、世界の雰囲気を壊すような激しいネタはなく、折角の千籐節も威力が半減してしまうのでは……と不安を覚えていた頃が遙か昔のように思えます。まったりした空気と粘り強いストーリー展開で、長時間プレーでも飽きさせない。最初は期待と不安の葛藤からちょっと及び腰でやっていましたが、今ではふつうにハマっています。脇役の存在感がちょうどいい。あまりゴテゴテとエピソードを付け加えず、主人公たちとの遣り取りのみを通じてそれなりの個性を立てていくあたり、目立ち過ぎず、かと言って希薄にもならない良い加減。

 あと2、3日で終わりそうな気配です。そろそろ次でも考えておくかな。

・今月の予定。

 本は
 平野耕太の『進め!聖学電脳研究部』(角川書店)
 谷川流の『涼宮ハルヒの溜息』(角川書店)
 浦賀和宏の『透明人間』(講談社)
 冨樫義博の『HUNTER×HUNTER(18)』(集英社)
 川上稔の『終わりのクロニクル2(上)』(メディアワークス)
 舞城王太郎の『山ん中の獅見朋成雄』(講談社)
 新堂冬樹の『炎と氷』(祥伝社)
 沙藤一樹の『不思議じゃない国のアリス』(講談社)
 荒川弘の『鋼の錬金術師(6)』 (スクウェア・エニックス)
 漆原友紀の『蟲師(4)』(講談社)
 原作:冲方丁、マンガ:伊藤真美の『ピルグリム・イェーガー(3)』(少年画報社)
 福島聡の『少年少女(3)』(エンターブレイン)
 あたりを予定しており、『進め!聖学電脳研究部』『涼宮ハルヒの溜息』の2冊は購入済み。どれも満遍なく期待しています。言い方を変えれば、際立って突出した期待作はこれといってないですね。ラインナップがショボイわけではなく、むしろ粒揃いに見えるからこそ期待のレベルが似たり寄ったりになっているといった具合。

 ゲームに関しては購入予定ゼロです。9月から延期した『カラフルBOX』『天ツ澪』の注目は続けていますが、まだどちらも購入の意志を固めるには至っていません。この調子では何も買わず、積ゲー消化期間になってしまうかも。結局9月は『Ricotte』1本でしたけれど、同日発売の『CROSS†CHANNEL』が評判イイみたいなので気になっています。でも、まあ、しばらくは様子見しつつ積ゲー崩しに熱を入れるということで。


2003-10-01.

・「座頭市」でも観にいこうかなー、と情報を漁っていたところ「山猫は眠らない2」を探り当てる。あ、続編が出るんですか……全然知らなかったのでびっくりしました。当方、張ってるアンテナがかなり低いです。

『Ricotte』、「Allegro」を攻略中。

 いやーもー面白くてしょうがない。夢中になって読み進めています。思えば盛り上がるまで実に時間のかかる、まったくもってスロースターターなソフトだった……けれど、とにかく今はひとしきりの満足感とともにプレーしています。

 この『Ricotte』は「Largo」と「Allegro」の2パートがあり、ふたつの違いについては昨日の日記で伏せ書きしましたが、タイトルが象徴する通り「Largo」編はゆったりとした展開でテンポも遅く、やっていてついつい退屈を覚えてしまうことが何度かあった。多少コメディの要素も盛られているとはいえ、全般的に刺激の乏しいストーリーであり、後半に差し掛かってからやっと面白くなる。正直、こっちだけクリアしたときは「悪くないけど、ちょっと期待しすぎていたかな」と失望感が湧くのを禁じ得なかった。

 だが、「Allegro」編を進めるうちに沈みかけていた希望が再浮上し、「期待ハズレ」の感触が消えていくのを実感しました。詳しい説明は省きますが、こっちはやっていてとても楽しいんです。「Largo」編でキャラたちに愛着が湧いていたってのもありますけど、「Largo」編の鬱屈を晴らさんばかりに展開される小気味良くもドタバタしたストーリーに、ひたすら心は躍りました。それでもなお「まったり」なムードがなくなってないところが嬉しい。「Largo」編ではチラッとだけ見せていた要素を「Allegro」編で追及していく構成もまた美味しい。

 当方は「Largo」→「Allegro」の順でやりましたけど、たぶんこの逆のプレーも可能なのでしょう。どっちを先にやるのがいいかは、んー、ひと口に言えない感じです。当方としては自分が踏んだ「Largo」→「Allegro」を推奨したい。でも、こっちだと始めてからの数時間がダルいんですよね……かと言って「Allegro」→「Largo」も良いのかどうか微妙。

 まあ、なんであれ、当方が『Ricotte』への傾倒を深めていっていることは確か。リコッテの魅力を主柱として据えたゲームとはいえ、単に「リコッテたん(*´Д`)ハァハァ」のみに終始することなく、周辺の人間関係を交え、ストーリーの中でそれこそ音楽のように各々を響き合わせていくことにより、一層リコッテの存在や位置が明瞭となって更に「リコッテたん(*´Д`)ハァハァ」の度合いが倍加する寸法となっている。「ロリキャラってリコッテだけかよ……」なんて不満は次第に薄れていきます。やっていけばやっていくほどリコッテの出番が減ることを恐れ、しまいには「他のロリなぞ要らん」という気持ちにさえなってくる始末。

 とにかく今は先に進めてコンプするとしましょう。まだまだ結論を出すのは早い。

・サイモン・カーニックの『殺す警官』読了。

 警察官でありながら副業として殺し屋を営んでいるロンドン市警のデニス・ミルン巡査部長。一応「殺すのは人間の屑だけ」と決めており、密かにスイーパーを気取っていた彼だったが、どんな手違いがあったのか、ある夜に銃殺した3人の男たちはただの一般市民だったと判明する。殺しを依頼したレイモンドに喰ってかかるものの、答えをはぐらかされるばかり。良心の呵責に苛まれつつ、娼婦殺害事件の捜査に熱を入れるが……。

 とにかくタイトルと設定の持つインパクトが勝利した一作。殺人者が探偵行動するミステリはこれ以前にも絶無ではないし、話自体はペーパーバック・サスペンス的に「普通」の出来だけど、バリバリの悪徳警官が主人公なのではなく、シニカルな物の見方をしながらも悪を憎む心を持ち、殺人犯を本気で追うそこそこマジメな警官ってシュールさが美味い。『ハサミ男』あたりとはまったく違うノリ。殺伐とし過ぎないヌルく乾いた空気がロンドンの街の陰鬱にしてユーモラスなムードとよく絡む。粗さはいくらか目立ちますが、テンポ良く読めました。

・それにしても、もう10月ですか……毎月恒例の「今月の予定」は明日書きます。用意を忘れていましたので……今から調べて書くのも面倒ですし。


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