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・テキスト ―― 『Dies irae 〜Amantes amentes〜』のOTHER STORY(追加シナリオ)について
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リレー小説「魔法少女忌譚修」(第13話−10/12)
2026-05-22.・『機動警察パトレイバー EZY File 1』観てきた。
「令和にあのパトレイバーが甦る!」って感じで始まった新シリーズです。全3章構成で、「File 1」が5月15日公開、「File 2」が8月14日公開予定、「File 3」は来年の3月予定でまだ具体的な日取りは決まっていません。押井守が監督した実写ドラマ版「TNG(THE NEXT GENERATION)」とはまた別系統の続編に当たる。そもそもパトレイバーは「HEADGEAR」という「ゆうきまさみ」「出渕裕」「高田明美」「伊藤和典」「押井守」の5人チームのメンバーが集まって「あーでもねぇ、こーでもねぇ」と言い合いながら内容を決めていく方式なので特定の「原作」がなく、発表された作品はどれも「微妙にパラレル」な関係になってるんですよね。たとえば「帆場」というキャラ、押井守が監督した劇場版では冒頭で身を投げて姿を消しているが、ゆうきまさみの漫画版では普通に生存している(そもそも事件に関わっていない)。「漫画版が原作で、それを元にアニメ化した」わけでも「アニメが先で、それをコミカライズした」わけでもなく、何が「正史」なのか判然としないためちょっとややこしい。まぁ、あまり細かいことは気にしなくても楽しめる作品ではあります。
「全3章構成」と書きましたが、「File 1」自体がオムニバス形式の3本立てストーリーになっており、「話の途中でブツッと途切れて『次回につづく』となる」わけじゃありません。「半端なところでストーリーが終わる」ことを心配している人は安心してください。収録エピソードは「トレンドは#第二小隊」「閑中妄あり」「ホンモノが一番」。ちなみにFile 2とFile 3の収録タイトルも公表されていて、ついでに書いておきますと前者は「ワインと銃弾」「あさき夢みし」「恋のサバイバル」、後者は「おもちゃの国・前編」「おもちゃの国・後編」で、File 3のみオムニバス形式ではなく1本で連続したストーリーとなっています。ハッキリ言って「映画らしい雰囲気」はなく、「これ、もともとはTVシリーズの企画だったのでは?」と勘繰ってしまう。明らかに「ここでCMが入るな」というシーンあったし。最近は波代(放送権料)も高くなっているというし、どの局もいろんな企画でギチギチになってるから枠が取れなかったとか、そんな事情かしら。
各エピソードのストーリーは良くも悪くも「しょーもない」感じなので、あらすじとかは省略します。OVAやTVシリーズを観ている人にとってはほぼ「いつものノリ」で通じると思う。劇場版しか観てない人は戸惑うかもな、「パトレイバーってこんな巫山戯た話もあるの?」って。パトレイバーは基本的に「悪ふざけ」を堂々と行う作風なんですよ。「ラストのアレ、『ケルベロス 地獄の番犬』を知らない人が観たらどんな気持ちになるか」とか、そういう配慮は一切ない。内輪ウケを狙ったようなテイストの強さは平成通り越してもはや昭和だ。今回は出渕裕がメインですが、ゆうきまさみっぽさも濃い目なのでコミック版レイバーが好きな人にはオススメです。
ちなみに、無印の『機動警察パトレイバー』はだいたい西暦1990年代後半からゼロ年代前半にかけての出来事という設定になっていますが、TNGは西暦2013年、このEZYは「パンデミックの10年後」で西暦2033年が舞台となっている。劇パト2が「2002年の冬」なんで、その30年後ですね。テクノロジーが進歩し過ぎたせいか、旧来のパトレイバー作品にあった「未来感」が薄まり、むしろレトロな雰囲気さえ漂っているのは「オッサンに優しい」仕様だけど若者には煙たがられるところかもしれない。少なくとも、このEZYをキッカケにヤングな新規が増えるイメージは湧きません。なんていうか、昔はレイバーがデッカい銃をバンバン撃つシーンに興奮していたのに、それよりも出動要請を受けて輸送車に横たわったレイバーを公道で運ぶシーンの方にワクワクしちゃっている自分に気づき、「私もトシを取ったな……」と痛感しました。レイバーが大捕り物を繰り広げる光景にリアリティは感じないが、「レイバーの輸送車が公道を走ってる」様子にはどこか現実と非現実の境目みたいなものを感じてクラクラするんですよね。模型とはいえ「実物大のイングラム」が存在するせいもある。キャラはCV.上坂すみれの「久我十和(くが・とわ)」が好戦的かつ猪突猛進なキャラでカッコいい&可愛い。ただ、イケメン俳優をレイバーの中に引きずり込んでムフフ……というシーン、男女が逆だったらコンプラ的に完全にアウトで炎上してただろうな、
・映画『コート・スティーリング』を視聴。
『レクイエム・フォー・ドリーム』、『レスラー』、『ブラック・スワン』などを手掛けた「ダーレン・アロノフスキー」監督による新作。1998年のニューヨークを舞台に、映画『エルヴィス』でエルヴィス・プレスリーを演じた「オースティン・バトラー」が主役となって血腥いドタバタ劇を繰り広げる。公式のキャッチコピはー「マフィアもネコも、バッチこい。カオスが嵐を呼ぶ!破天荒アクション・クライムムービー!」 これで「バッチリ内容が伝わってきた」という人が居るならスゴいと思う。
かつてはドラフト候補になるほど将来を嘱望された野球少年だったが、交通事故を起こした事によりその夢を断たれた「ハンク」こと「ヘンリー・トンプソン」(ハンクはヘンリーの愛称)。今はニューヨークの下町にあるバーでバーテンダーとして働きながら恋人の「イヴォンヌ」とそれなりに幸せに暮らしていた。しかし、「数日だけ面倒を診てくれ」と飼い猫を押し付けて去っていった隣人のパンクロッカー「ラス」がマフィアの連中と揉め事を起こしたらしく、「ラスの居場所を吐け!」と凄むチンピラたちによってハンクはボコボコにされてしまう。チンピラどもは「何か」を探しているようで、家主(ラス)不在の隣室を執拗に荒らして回った。「まったく、無関係な俺がなんでこんな目に遭うんだよ」 愚痴りたくなるのもやまやまなハンク。彼はある日、押し付けられた猫「バッド」の猫砂トイレから「いかにも」って感じの鍵を発見して……。
この「鍵」を巡ってストーリーが展開していくことになります。とにかく主人公が無思慮で、後先考えない軽率な行動をしてはピンチに追い込まれる、という愚挙を繰り返す。主人公に知性を求める方が鑑賞するとイライラすることしきりでしょう。マフィアにボコられたせいで腎臓の片方が破裂し、腎機能が著しく低下したため「酒は飲むな」と言われていたのにそんなことも忘れたかの如く泥酔、そして肝心の鍵を失くしてしまう……と、もうこの時点で既にどうしようもない。この映画、分類上はクライム・サスペンスではなくブラック・コメディになるらしい。
やがて「最初の死人」が出て、いよいよハンクは引き返せない泥沼に足を突っ込んでしまう……と、この段階に入ってからが本番なのですが、ここから人が死にまくる。とにかく死にまくる。溜めとかなく一瞬で呆気なく人命が散る。無常感がスゴいので、そういうのが好きな人にはオススメです。ただゴア描写は少なめなので、そっち方面を期待すると肩透かしかも。
タイトルの「コート・スティーリング」は野球用語、日本語で言うと「盗塁死」(走者が盗塁を試みて失敗しアウトになる)に当たる。「コート(Caught)」はキャッチ(Catch)の過去形で、「スティーリング(Stealing)」は盗む(スティール)のing形。慣用句としては「一発逆転を夢見て勝負に出た結果、失敗する」くらいのニュアンスです。果たして元野球少年のハンク、ドタバタ騒動の末に盗塁成功なるや否や。個人的にはハンクの働き先であるバーの店長がなかなかキャラ濃くて好きです。
・拍手レス。
さすおにの劇場版は舞台挨拶中継で観ましたが、キャストのみなさんネタバレとかそんなん必要ないくらいの時間たってるのに、内容にはほとんど触れずというか敢えて触れない感じになってるのが笑えましたね。タイトルは四葉継承編とか分かりにくいのではなく、『キモウト本懐編』とかの方が良かったんじゃないか?果たしてどこまで原作を映像化できるのか?とあるシリーズと同じく電撃の長寿作品だから気になります
「四葉継承編」の方が原作ファンにとってはわかりやすいからそうしたんでしょうが、新規を引き込むつもりなら「実妹大勝利!希望の未来へレディ・ゴーッ!!」くらい露骨にすればよかったのに。まぁ新規の取り込みはほとんど期待してないんでしょうね。とりあえず無印の範囲(高校卒業)まではやると思いますが、乱立するスピンオフや番外編に関してはどうなんだろうな……リゼロでさえ番外編のほとんどがアニメ化されていないことを考えると厳しそう。
2026-05-11.・『劇場版 魔法科高校の劣等生 四葉継承編』観てきた焼津です、こんばんは。
TVシリーズは正直来訪者編あたりでタルくなって、『魔法科高校の優等生』も「これわざわざスピンオフとしてやる必要ある?」な内容にウンザリして観るのやめてしまったけど、四葉継承編は原作でも好きなエピソードなので「劇場クオリティで鑑賞できるなら……アリか」と足を運んだ次第です。ちなみに2017年の『星を呼ぶ少女』も映画館で観ています。
さておき、短編集である『魔法科高校の劣等生SS』を除いた原作本編の16冊目「四葉継承編」を映画化したものです。この前のエピソードが「古都内乱編」。『魔法科高校の劣等生』はアニメの1期目(全26話)が原作で言うと「入学編」「九校戦編」「横浜騒乱編」で7巻までの内容、2期目(全13話)が「来訪者編」で9巻から11巻まで、TVSPの「追憶編」が原作8巻、3期目(全13話)が「ダブルセブン編」「スティープルチェース編」「古都内乱編」で12巻から15巻までの内容となっている。前の劇場版『星を呼ぶ少女』は1期目と2期目の間に公開されたのに作中の時系列では「来訪者編」の後、というややこしい仕様だった。「来訪者編」は達也たちにとって1年生時代最後のエピソードで、『星を呼ぶ少女』は2年生に進級する直前、春休みの出来事を描いている。
ハッキリ言って『魔法科高校の劣等生』の人気のピークは1期目を放送していた頃なので、「学園モノなのにバンバン人が死にまくる」「隙あらばさすおに」「深雪(ヒロイン)のブラコンぶりが可愛いを通り越して、もはやおぞましい域」みたいなことは知っているけど、2期目や3期目は観てないor内容覚えていない……って方もおられるでしょう。大丈夫です、今回は達也たちが自身らのルーツである「四葉家」(イメージ的には魔法ヤクザ)に対峙していくというファミリーヒストリーめいたエピソードであり、1期目の内容を大まかに覚えていれば充分。できれば「追憶編」ぐらいは観ておいて欲しいが、2期目や3期目を無理して観る必要はナシ。四葉家の次期当主候補として最有力視されているのが「司波深雪」、達也の妹です。当主に選ばれたのなら、責務を果たすため可及的速やかに婚約者を宛がわれ、その胎で跡継ぎを作ることになるだろう。ブラコンの深雪、遂に兄離れして婚約→結婚→妊娠→出産→子育ての人生コンボを決めなければならなくなるのか……!?
この映画の焦点は「結局、達也と深雪はヨスガるのか否か?」なので「四葉継承編」ならぬ「ヨスガ継承編」と思っていただきたい。表面上は「仕方ない、お兄様への想いを潔く諦めよう」と振る舞う深雪ですが、本心では兄と結ばれたい気持ちがいっぱいで破裂しそうになっており、内面世界でコンフリクトが発生する。本音でズケズケと「お兄様から女として愛されたい!」って叫ぶド直球正直深雪、タイミングがタイミングだけに「Yachi8000」ならぬ「Miyu9000」という言葉が浮かんで笑ってしまった。相変わらず「シリアスな笑い」が多い作品なので、劇場で噴き出さないように注意しましょう。メロドラマみたいな空気が流れているシーンの後ろでお兄様たちがドラゴンボールめいた高速バトル繰り広げてるの、完全に笑わせに来てるだろ! さすがに劇場版だけあってアクションシーンの作画はスゴかったが、やってることは完全に内輪揉めなのでバトル物として盛り上がるかというと微妙。端的に書くと「絶対に笑ってはいけない広域指定暴力団・四葉組新春内輪揉めプロレス大会」なんですよね。このプロレス大会、半端ない死人が出てるんだけど、四葉家の力を以ってすれば隠蔽できるんだよォ!(OH、テリブル四葉!)
ネタバレにならないギリギリのラインで申し上げると、「フランケンシュタインの怪物とその花嫁」みたいな話になっていますので、やや歪な「割れ鍋に綴じ蓋」系ロマンスが好きな人にはオススメです。原作知識がないと冒頭の襲撃シーンは「いったい何の何?」と戸惑うかもしれませんが……確か原作の8巻、「追憶編」の後に収録されていた短編が大元だったかな? 達也たちの叔母である「四葉真夜」が「大漢」という国の「崑崙方院」なる機関に拉致された事件が発端。公式年表の「2062年」に書かれている出来事です。映画ではボカされているが、複数の男から性的暴行も受けている。当時の真夜はアイドルみたいな存在で、攫った崑崙方院の連中もテンション上がり過ぎてヤり過ぎちゃったんでしょう。まだ中学に上がったばかりで12歳だった真夜は三日三晩体中をいじくり回され、子供を産めない体となってしまう。心に深い傷を負って精神崩壊寸前の状態に陥った彼女だが、双子の姉(達也たちの母)である「四葉深夜」は稀少な精神操作系の魔法士だったこともあり、壊れかけていた真夜の精神構造(主に「認識」に関わる部分)を改竄してしまう。これによって真夜は記憶こそ連続しているものの人格の激変した、ある意味で「転生体」とも言うべき精神的キメラに化してしまった。娘をオモチャにされてトサカに来た当主(深夜と真夜の父)は有志を募って2063年に崑崙方院へ特攻、退路を断った背水の陣により当主含む30人の決死隊は全滅するが、引き換えに大漢の中枢である崑崙方院は4000人もの重要人物を喪って崩壊。翌年2064年に大漢の名も世界地図から消滅しました。以降、四葉家は「ブチ切れたら国ごと亡ぼすやべー連中」「安易に手を出しちゃいけない一族(アンタッチャブル)」として国内からも国外からも恐れられることになる。この、原作読んだ時からずっと「映像化されねぇかな〜」と願っていた「大漢ブッ潰しRTA」を劇場の大スクリーンで観ることができたから大満足です。
・アニメ監督の佐藤竜雄氏が逝去。『機動戦艦ナデシコ』や『ねこぢる草』『モーレツ宇宙海賊』などの作品で監督を務めた(電ファミニコゲーマー)
そんな……サトタツが……!? 『飛べ!イサミ』や『機動戦艦ナデシコ』で有名なアニメ監督です。ナデシコは当時「エヴァの後釜に座れるかもしれない」と言われるほど人気のあった作品で、TVシリーズが結構半端なところで終わったり、劇場版で大幅にキャラデザが変わったうえ本編主人公の「テンカワ・アキト」が闇堕ちしたりと様々な点で話題になったが、なぜか90年代のうちにほとんどの展開が終了して続編アニメやスピンオフアニメが出る事はなかった。「何か複雑な事情がある」「監督のサトタツは続編を作りたいと思っている」と囁かれていたものの、事情がどうあれ「サトタツの手による続編」はもう幻となってしまったようだ。
個人的には『宇宙のステルヴィア』も好きでしたね。昔の皆さん、ありがとう。地球は元気です。私もなんとか元気です、今は西暦2356年……(空を仰ぎ 星よ満ちて飛び立つの 明日への brilliant road 心の蒼さ この手に抱いて go far away)。ステルヴィアもなんか複雑な事情があったらしく続き出なかったですね。サトタツ監督は小説原作のアニメもいくつかやっていて、笹本祐一の『ミニスカ宇宙海賊(パイレーツ)』をアニメ化した『モーレツ宇宙海賊』(「ミニスカ」は商標か何かに抵触するため番組名として使えなかったらしい)はタイトルの間抜けさに反してそれこそ猛烈に面白かった。声優の「みかこし」こと小松未可子の出世作でもある。2014年放送の『魔弾の王と戦姫』は未だに語り草となっている「ムオジネルダンス」など、アニメとしての出来は決して褒められたものじゃなかったが、キャラデザは結構好きだった。嗚呼、「ご冥福を」だなんて決まり文句言いたくないよ。ナデシコやステルヴィアの続編が観たかった……。
・かわいいヤンデレ悪魔との“飲みサバイバル”ゲーム『PUKEY GODDESS SHOT TRICK』ウィッシュリスト件数が20万件を突破。殺したいほど愛してくる悪魔相手に、お酒のロシアンルーレットを行う話題作(電ファミニコゲーマー)
最近やたらSNSでファンアートが流れてくる「ピンク髪の酒カス巨乳悪魔」こと「ファム・スール」の出演作。キャラデザの秀逸さもさることながら、「崩し」が上手いんですよね。『超かぐや姫!』の日常パートといい、漫画的・アニメ的な「絵の崩し方」には独特の快楽があると思います。ファム・スールを演じる声優は「ななひら」、ニコニコ動画出身の歌い手で、分類上は「同人声優」になるのかな? 17年ほど前にルイズコピペを読み上げる動画で話題になった模様。買うかどうかはわからないけど、私もとりあえずウィッシュリストに入れておきました。Steamのウィッシュリストはセールが来ると毎回メールで教えてくれるのがいいですよね。迷ってまごまごしているうちにセールが終わっちゃうのも「いつもの事」ですが。
・作家の鈴木光司さん死去 68歳、ホラー小説「リング」「らせん」(朝日新聞)
サトタツに続いて鈴木光司の訃報まで舞い込んでくるとは……言わずと知れた『リング』の原作者であり、ジャパニーズ・ホラーにおけるクリーチャーの代名詞「貞子」の生みの親です。『リング』はもともと第10回横溝正史賞(現在の横溝正史ミステリ&ホラー大賞)へ応募した作品で、完成度こそ認められたものの選考委員から「明らかに推理小説ではない」「怪奇の方向に寄り過ぎて超常現象ノベルになっている」と評価されず、受賞は逸した。最終候補止まりではあったが、「このまま埋もれさせるのは惜しい」ということで賞の結果が発表された翌年の1991年に単行本として書籍化された。ちなみに同じ回の最終候補作である吉村達也の『ゴーストライター』は1990年に新書サイズで発売されている。ハードカバーで刊行された『リング』はさほど売れず「一部のマニアから『無名の傑作』として支持されている」程度だったが、1993年に文庫化したあたりから売れ始め、1995年のテレビドラマ化を経て1998年の映画化で大ブレイク。ちなみに「テレビ画面から貞子が這い出して来る」という有名なシーンは映画版のオリジナルです。
シリーズは『リング』の後に『らせん』(1995年)と『ループ』(1998年)が出て、一旦三部作(1999年に刊行された番外編『バースデイ』も含めると四部作)として完結しますが、高まる貞子需要に応えるべく2012年に『エス』、2013年に『タイド』が新作として発売され、現在は六部作となっています。『リング』シリーズ以外にも『仄暗い水の底から』が有名ですが、そこらへんを除くと知名度は一気に下がりますね。最新作は去年(2025年)刊行された『ユビキタス』、聞いた話だと四部作にする予定で、ここからどんどんスケールが膨らんでいく……筈でした。もう続きが読めないことが悲しい。
・『シュタゲ』新作『STEINS;GATE RE:BOOT』が8月20日に発売決定!huke氏がすべてのキャラデザを一新し、新規ストーリーを追加するリメイク作。OPテーマはいとうかなこさんの「スカイクラッドの観測者」が続投に(電ファミニコゲーマー)
シュタゲ、また本編を作り直してるのか……と呆れられそうだが、結局スピンオフとか続編とか完全新作を出すよりも既存のヒット作をリブートする方が安定して稼げるんでしょうね。「MAGES.」の「科学アドベンチャーシリーズ」でそれなりにヒットしたの、『CHAOS;HEAD』と『STEINS;GATE』くらいで、『ROBOTICS;NOTES』や『CHAOS;CHILD』、『OCCULTIC;NINE』は飛び抜けて売れたわけじゃないし、最新作の『ANONYMOUS;CODE』はそもそも知名度が……っていう。Vtuberがちゃんと公式から許諾を得てプレー動画を配信していたのに関係者がそのへんの事情を確認せず勝手に「ガイドライン違反」と決めつけて動画を削除させた不手際があって、ゲーム本編よりもむしろこの一件の方が有名かもしれない。
古いゲームのリマスター版やリブート版が出るのはよくあることで、例えばニトロの『Phantom -PHANTOM OF INFERNO-』なんてPC向けに限定してもCD版、DVD-PG版、INTEGRATION、アニメ絵版と4種類くらいある(単なるパッケージ違いも含めると更に多くなる)。シュタゲは2009年にXbox版を出した後、2010年にPC版を発売、以降はこのPC版をベースにしたバージョンをCS機に移植しまくって、2018年に作中のCGをアニメーションに置き換えた『STEINS;GATE ELITE』をリリース。要はさっき書いた『Phantom』のアニメ絵版みたいなやつですね。8月に出る『STEINS;GATE RE:BOOT』はこのエリート版をベースに、原画家の「huke」がキャラデザを現代風に一新させて作中のCGを全部描き直し、BGMもリメイク、背景画像も再構築。「E-mote」を使ってキャラの立ち絵もヌルヌル動かすみたいです。というかE-mote、久々に聞いたな……エロゲ制作では一時よく使われたツールだが、最近はあまり耳にしなくなっていた。競合の「Live2D」が伸長したことで相対的に下火になった印象がある。
「シュタゲは初期バージョンの時点で充分完成度が高かっただろ! わざわざ作り直す必要ないやん!」とは思うものの、このリブート版も結局買っちゃうだろうな……オタクの悲しきサガ。PC版はパッケージがなくSteamのDL版のみ販売となる模様。比較的出費が抑えられるのが幸いか。
・映画『ボディビルダー』見た。
原題は "Magazine Dreams" 。雑誌の表紙を飾る事を夢見て日々筋トレに励む男が主人公の映画です。邦題は「ボディビルダー」だが本職ではなく志望者(ワナビー)、「ボディビルダーになりたい」と夢想しながら日々スーパーでのバイト生活を送っている。「ボディビルダー版『ジョーカー』」みたいな形容が多いけど、個人的な印象としては「ムキムキ『レクイエム・フォー・ドリーム』」だった。本作とは関係ないがR4Dの監督も新作映画を撮っており、視聴済みなので次回感想を書きます。
キリアン・マドックス――両親を早くに亡くし、アメリカの片田舎で祖父の介護をしながら日々を過ごしている黒人青年。彼の夢は、憧れのボディビルダーたちみたいに雑誌の表紙を飾る事。俺は決して無名のまま終わったりしない、みんなの記憶に残って「すごい漢だ……」と言われるような「伝説」になってやる。しかし、度重なるステロイドの濫用により心身はもうボロボロ、肝臓にも悪性でないとはいえ腫瘍があるのに「手術痕が残るのはイヤだ」とメスを入れることを拒否する始末。職場の女の子をデートに誘う事も成功したのに、興味のない話を延々とし続けたせいもあって「ちょっとトイレに……」→逃亡のコンボも決められる。もはや悲劇の連続が喜劇に見え始めた頃、うっすらと顔を覗かせた「破滅」を前にして彼の自己顕示欲と承認欲求が暴走する……。
監督・脚本は『HOT SUMMER NIGHTS/ホット・サマー・ナイツ』の「イライジャ・バイナム」。主演はMCUの「征服者カーン」や、『クリード 過去の逆襲』の「急に生えてきた兄貴分」こと「デイミアン・アンダーソン」を演じた「ジョナサン・メジャース」。2023年にDV事件を起こして逮捕され、同年に劇場公開予定だったこの『ボディビルダー』( "Magazine Dreams" )も煽りを喰らって公開延期となり、2025年にやっと上映されました。「筋肉の夢」に取り憑かれ、世間から疎外されていき「孤独感」(実際に孤独であるかどうかではない)を募らせていくマドックスを鬼気迫る演技で表現し切っている。メジャースは役作りのため必死に肉体改造を行って「ボディビルダーに憧れる青年」の説得力を発揮してみせたが、恐らく本職なのであろう他のボディビルダーたちと並ぶと明らかに見劣りするんですよね……筋肉の美しさが違う。そのへんもカメラは残酷に切り取っていきます。
マドックスの「暴走」がどんなものであるかは映画の核心でもあるので詳述しませんが、突然マドックスが「銃」にハマり始めたあたりで「あ、あかーん!」と叫び出したくなる。アメリカってあんな殺傷力の高い銃があっさり簡単に手に入るんだな、と再確認し、改めてドン引きした次第。そりゃ乱射事件とかなくならんわ。ハッキリ言ってマドックスは好きになれるタイプの主人公ではなく、ムカつく客の食べ物にこっそり唾を垂らすようなクソ野郎なのだが、それでも観ていて「怖い」というより「物悲しい」って気分になる映画だった。この「弱さ」は誰しもが裡に秘めているものだよね、と感じ入ってしんみり。
筋肉に鎧われた空虚で脆き魂の彷徨、その行く末を見届けろ。後味が良いか悪いかを書くだけで「ネタバレだ!」と感じる人もいるだろうからあまり書きたくないが、「観る前にせめてその点だけは確認しておきたい」という方もおられるでしょうし、迷ったけど言及しておきます。後味は……そんなに悪くない、といったところです(決して良いわけではない)。映画としての結論が前向きかどうかは解釈の分かれるところでしょうが、個人的には「前向きなメッセージが篭っている」と思いました。
・拍手レス。
鈴木光司逝去に驚きを隠せない…早い早すぎる。そして大半の記事のタイトルが「ホロ―作家の鈴木光司氏」に非常に違和感。いや、この人SF作家なの読書家なら周知の事実だし、なんならリングシリーズも近未来SFじゃん。
佐藤竜雄といい、鈴木光司も60代。クリエイターとしてはまだまだ若いのに本当に残念なことこの上ない。そして思い出す同じファンタジーノベル大賞受賞作家だった酒見賢一の件。酒見さんも60歳とかだったなぁ。ファンタジーノベル大賞は悪い意味で注目を集めそうです。酒見氏、鈴木氏、佐藤哲也氏、城戸光子氏、大賞や優勝賞を取られた作家は50〜60歳の若さで逝去されてるのが目立つ。嫌なジンクスです『リング』や『らせん』のイメージが強かったせいか、『ループ』以降の設定を受け付けない人が結構多いみたいですね。「『ループ』も映画化する案があったけど実現しなかった」という話もSNSで流れてきましたし。60代なんてクリエイターとしちゃまだ「若い」と言われる年齢なんだから、「これから」がなくなったことは悔やまれますね……逆に長寿でスゴい作家と言えば皆川博子さん、もう95歳を超えているというのに今月『ジンタルス RED AMBER』なる新刊も出すんだから圧倒されます。
2026-05-02.・私が未だに好きなエロゲ『恋する乙女と守護の楯』、DLsiteで8割引の500円、ワンコイン販売! しかもゴールデンウィーク期間に使えるクーポンで更に半額となるから250円! こんな投げ売り価格、「買う」一択でしょ、と布教活動を開始する焼津です、こんばんは。
ただ注意点がいくつかあります。恋楯は童顔のボディガード「如月修史」が、護衛対象であるお嬢様たちをコッソリ警護するため女装して「山田妙子」という偽名で乙女の園(平たく書けば女子校)に潜入する……という面白ソフトながら、複雑な経緯を辿って来たシリーズなのでこれまでの状況を軽くまとめる必要がある。少し長くなるぞ。
まず2007年に『恋する乙女と守護の楯』というタイトルで「AXL(アクセル)」から発売されました。他と区別するために「無印版」と呼ぶこともあります。そこそこのヒットを飛ばし、それまでワゴンセールの常連だったAXLを救った功労者とも言うべき一本であり、故に「山田妙子」は一時期AXLのマスコットキャラみたいな扱いになっていました。翌年の2008年にはPS2向けのソフトとしてCS移植され、新キャラ2名と主人公のボイスが追加。主人公である山田妙子(如月修史)を演じたのは、なんと「釘宮理恵」。しかも追加された新キャラの一人「綾小路若菜」のCVは「田村ゆかり」という、とてもマイナーゲームとは思えない超強力な声優陣(ちなみにもう一人の追加キャラの声優は「矢作紗友里」)。あまりに強力すぎてX-rated版を出す際にはせっかく収録した音声を削らないといけないという、痛し痒しな事態となってしまったが……現在だとくぎゅ版の恋楯をプレーするにはPS2版かPSP版のソフトを中古で探すしかない状況ですね。
一時期は「アニメ化するのでは?」という噂も流れたが結局実現せず、時は流れ2016年、AXLの命運を委ねるキラータイトルとして恋楯の続編が作られることになります。それが『恋する乙女と守護の楯 〜薔薇の聖母〜』。続編と言っても前作とは任地が変わっており、「お嬢様学校に女装して潜入する」というコンセプト自体は共通しているが攻略対象のキャラクターは一新されているため、前作をプレーしている必要は特にありません。2019年にはPS4版、PSVita版、Switch版と3種類のCS移植版が発売されました。いくら前作をプレーしていなくても大丈夫とはいえ、前作の移植版がPS2とPSPでしか出ていない状況は勿体ない……ということでリブートが始まります。
2020年、作品の権利をAXLから「戯画」に移し、無印版のリメイク作品に当たる『恋する乙女と守護の楯 Re:boot The “SHIELD-9”』が発売されます。無印版と区別するため「リブート版」と呼ぶこともある。さすがにもう10年以上前ということで古くなりつつあったCGをイチから描き直し、HDに対応した画質でワイド化。18禁で売り出すため、CS版でせっかく収録した釘宮ボイスとゆかりんボイスをお蔵入りにするという苦渋の選択をするハメになったが、ともあれ同年11月にPS4版とSwitch版が販売開始。CS機でリブート版と「薔薇の聖母」両方がプレーできるという黄金期が訪れた。翌年2021年にはリブート版にHシーンを追加した完全版『恋する乙女と守護の楯 Re:boot Plus』も発売。しかし、ここがシリーズの絶頂(ピーク)でした。
2022年、移籍した恋楯を開発・販売する会社「エンターグラム」(旧称「TGL」)が解散を発表。2023年3月31日以降はDL版の販売も終了する、と発表したのです。ひょっとすると恋楯3作目の企画もコッソリ動いていたのかもしれないが、もはや勘繰ることさえ虚しい……シリーズの権利が戯画に移ったとはいえ、総てが移譲されたわけではなかったらしく、戯画が消滅した後もAXL版は販売を続けています。リブート版ではない、CGの古い無印版というのが難点ですが、それでも面白いし250円というのは破格なので遊んだことのない方はこのGW期間中にどうでしょう? オススメです。ちなみに2作目「薔薇の聖母」はFANZA専売なのでDLsiteでは買えません、ご注意。
しかし、本当に勿体ないよなぁ〜。せっかく釘宮ボイスやゆかりんボイスを収録したバージョンがあるのに、使えないなんてさぁ〜。何とか権利方面をどうにかして、Steamあたりで販売してくれないかしら。私はまだPS2版持ってるけど、さすがに今の環境だと遊びにくいですし。同じようなことは移植版の『リアライズ』とか『吸血奇譚 ムーンタイズ』(『ドラクリウス』の移植版)にも感じている。
・クラファン「うぶごえ」、約1093万円の新たな未入金問題が発覚。新作ビジュアルノベル『パーガトリー・ブルー』支援金が支払われず(電ファミニコゲーマー)
「うぶごえ」って……『けれど輝く夜空のような』のクラウドファンディングやってたところじゃねぇか!? 慌ててNavelのアカウント確認しに行ったらこんなポストがあった。「プロジェクトの進行自体への影響は一切ございません」とのことでホッと胸を撫で下ろした。けれ夜な、企画としては相当古いんですけど、開発に取り掛かった矢先に社内のゴタゴタで分裂騒動が起こってNavelが出来て、でも「それ散る」の権利がBasiLに残っていたせいで続編に当たる「けれ夜な」を出せない状態に陥っていました。長年の確執がやっと解け、それ散るやけれ夜なの権利はNavelに移ったものの、けれ夜なのメインライターを担当する予定だった「あごバリア」は既に故人。新たに「森崎亮人」を抜擢し、サブにそれ散るのメインライターを努めた「王雀孫」を配置します。クラファンも好調で目標額以上を集め、いよいよ企画が本格的に動き出す……というところでコレですよ。未入金問題には巻き込まれていないからまだ被害は軽微な方ですが、「支援者がサイトで状況を確認できない」ことを考えるとホッとしてばかりもいられないですね。Navelは独自の「プロジェクト用ポータルサイト」を用意して対応するみたいですが、これにだって手間と費用が掛かっているだろうし。何のためにうぶごえに手数料を払ったんだよ! って話です。
しかし、今回の件がプロジェクトの進捗に影響がないのなら、そろそろ発売の時期とかを教えてもらえると……けれ夜なのクラファンって何度かやってますが、最初は2022年なのでもう3年以上経っているんですよ。なのに今年中に出るのか出ないのかもハッキリしないのはちょっと告知が遅すぎやしないかい?
・『双星の陰陽師』Kindle版全巻が各“100円”で購入可能なセールが開催中。全35巻買っても「3500円」(電ファミニコゲーマー)
一週間限定(5月3日終了)ながら超アツいセールが来ました。これは買い逃せない。2013年から2024年にかけて、10年以上に渡ってジャンプSQに連載された少年漫画で、アニメ化したこともあります。アニメの出来は、その、正直言って微妙でしたが……特にアニオリ部分がなぁ。女性ウケや低年齢層ウケを狙ってか「きなこ」というマスコットをオリジナルキャラクターとして登場させたけど、原作ファンからの評判はすこぶる悪かった。作者自身は気に入ったのか原作漫画の後半に逆輸入しています。
この二人は人類の救世主、「神子」を産み出す夫婦になる――という託宣が下ったせいで無理矢理番わされることになった陰陽師の「焔魔堂ろくろ」と「化野紅緒」。お互い最初は「ふんっ、こんな女(男)なんか……!」と反発し合っていたが、様々なイベントを経て徐々に「真の絆」が紡ぎ出されていく、という、概要自体はベッタベタの和風伝奇バトル・ファンタジーです。とにかくヒロインの紅緒ちゃんが可愛い。誤解を恐れず断言するならば、「紅緒ちゃんが可愛かったから打ち切られず最後まで完走することが出来た」作品です。
全巻まとめて買っても3500円と、これだけでも破格の安さですがクーポンの使えるストアやポイント還元のあるストアで買えば更にオトクになります。ところによっては実質3000円を切る(たとえばDMMブックスは今だと1190ptの還元があるので実質2310円)。ちなみにこのシリーズ、サブキャラ「天若清弦」を主人公にした『天縁若虎』というスピンオフ作品があるのですが、残念ながらそちらはセール対象外です。「田中創」の書いたノベライズ作品を気に入って、原作者自らがコミカライズしたという経緯があり、コミカライズ版の方には「二色滑稽画」(モノクロ・コミック)という副題が付いています。あくまでスピンオフだから絶対に読まないといけない、というほどでもなく、とりあえずセール待ちでイイと思います。「セールがキッカケで本編は全巻読んだ! 超面白い! 『天縁若虎』も超気になる!」ってんなら別に止めるつもりはありません。思う存分食らいついてくださいませ。hontoだと40%OFFクーポンが使えてより安いですし。
・【読書】500万部の大ベストセラー「特命武装検事・黒木豹介(黒豹シリーズ)」は令和に読んでも凄い
X(旧Twitter)の「おすすめ」に挙がってきた労作。「まさか令和の世にここまで黒豹シリーズについて熱く語るとは……!」と感動したので、是非ともシェアしたい。黒豹シリーズの内容についてはリンク先で存分に語られているから省略するとして、補足的に「黒豹シリーズが出ていた頃」の時代背景を解説していこう。
著者の「門田泰明」は戦前生まれで、1979年に小説家としてデビュー。初期は「医療」を題材にしたサスペンスを多く手掛けていたが、1983年に「荒唐無稽アクション小説」とも言うべき《黒豹》シリーズを開始。正式なシリーズ名は「特命武装検事・黒木豹介」だが、長いのでほとんどの読者は「黒豹シリーズ」と呼ぶ。「黒木豹介」の略で、作品タイトルにも「黒豹」の二文字がだいたい入っている(『帝王コブラ』だけ例外)。シリーズのほとんどは80年代に刊行されており、現時点での最終作『黒豹奪還』は2001年刊行。80年代は駅の売店「キオスク(キヨスク)」で新書や文庫の小説がよく売れられていて、スマホのなかった時代はこれで通勤時間の暇を潰すのが通例だったのですが、「あまりに荒唐無稽すぎる」「通俗的で恥ずかしい」と90年代頃から敬遠されるようになり、近接したジャンルである「伝奇バイオレンス」ともども衰退していきます。現在でも『もぐら』の矢月秀作や『傭兵代理店』の渡辺裕之などといった書き手が存在していますが、黒豹みを感じる阿木慎太郎の『闇の警視』シリーズは10年以上新刊が出てないし、鳴海章の「サクラ銃殺隊」シリーズも途絶えている(新たに『鋼鉄の女神』という新シリーズが始まったらしいが)。一時に比べれば「勢いのあるジャンル」とは言い難い状態だが、まだまだ需要はあると思うし、もっと多くの人に読まれてほしい。
・『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』、予告第3弾、2人の新たな魔法少女、メインスタッフ公開
「新たな魔法少女」は「紫丁香(し・ちょうか)」と「セルマ・テレーゼ」。紫のCVは「若山詩音」、リコリコのたきな役で有名ですね。マギレコでは「ヘルカ」役を演じていました。というかマギレコでリコリココラボがあったからたきなも魔法少女になってるんですよね。最後に魔法使って総てが「なかったこと」になり元に戻る……みたいなオチだったと思うけど、単なるコスプレではなく一応ちさたきが本当に魔法少女になるという驚きのイベントでした。セルマ・テレーゼのCVは「黒沢ともよ」、デレマスの「赤城みりあ」役や響けユーフォニアムの「黄前久美子」役で知られている声優で、確かマギレコには出ていなかったはず。しかし、一番の衝撃はメインスタッフのリストの中に「古川知宏」の名前があることですね。
あの『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』の監督です。1981年生まれ、つまり「小学生の頃にテレビでナディアやっていて、中学生の頃にはエヴァンゲリオンやってた」世代です(このインタビュー記事で語ってる)。2011年の『輪るピングドラム』で脚本に参加したこともあってか「幾原邦彦」監督の影響を強く受けており、スタァライトを語るうえでよく『少女革命ウテナ』が引き合いに出される。絵コンテや演出をいくつかこなした後、2018年に満を持して『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』でデビュー。飛躍の大きすぎる展開で視聴者を戸惑わせたものの、コアなファンを築いて2020年に総集編映画の『少女☆歌劇 レヴュースタァライト ロンド・ロンド・ロンド』と完全新作『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』を送り出す。劇スは興行収入にして3億円と、規模的にはそこまで大きく当たった映画ではないが、とにかく熱狂したファンが多く、業界的にもかなり注目を浴びました。「『映画館で観る』という体験」を最大化するような仕掛けを随所に埋設しており、テレピモニタで観てもあの迫力や緊張感は出ない。次回作として小説家の「斜線堂有紀」が脚本を担当する「タイトル未定作品」(通称ラブコブラ)を予告していましたが、公式アカウントを見ればわかりますようにここ数年ほとんど動きがないような状態で、「ひょっとしてポシャりつつあるのでは?」とファンたちは気を揉んでいました。
そこに来て「実はまどかマギカの新作に参加していました」だから寝耳に水ですよ。役職名は「絵コンテ/ビジュアル・コンセプトデザイン」、具体的にはRO(レイアウト)の設計などをやっていた模様です。言われて見返すと、確かに予告編の時点でスタァライトっぽい構図がちょこちょこ出て来るな……いったいどのタイミングでワル天に関わることになったのかが気になる。ラブコブラの企画を発表した後なのか? Xでは斜線堂も「伝説のアニメになってしまう ラブコブラ めちゃくちゃ面白いです」とコメントしており、ラブコブラの企画がまだ生きていることをアピールしている。ワル天の参加は青天の霹靂というか、完全に意表を衝かれたけど、それはそれとしてラブコブラがポシャってなくてホッとしましたよ。差し当たってワル天を楽しみにしていますが、ラブコブラの続報もそろそろ宜しくな。
・2007年に亡くなった作家「打海文三」の単行本未収録作品集『探偵という快楽』、5月25日発売予定。書影公開。純粋な新作としては17年半ぶりの刊行。
確か登録されたのは去年の3月か4月あたりだったかな? とにかく何度も延期を繰り返して出るそぶりのなかった『探偵という快楽』がやっっっと刊行されそうな気配です。書影も出ているし、まず確実と見ていいでしょう。よかった……本当によかった。
『探偵という快楽』は探偵会社「アーバンリサーチ」を巡るシリーズの6冊目に当たります。「アーバンリサーチ」シリーズは刊行している出版社がバラバラで、『探偵という快楽』以外でカドカワから出ている本はシリーズ1冊目の『時には懺悔を』のみ。既刊を列挙しますと、
01.『時には懺悔を』 (1994年9月‐角川書店 → 2001年9月‐角川文庫)
02.『されど修羅ゆく君は』 (1996年5月‐徳間書店 → 2000年3月‐徳間文庫)
03.『兇眼 EVIL EYE』 (1996年11月‐徳間書店 → 2005年6月‐徳間文庫)
04.『苦い娘』 (1997年10月‐幻冬舎 → 2005年4月‐中公文庫) ※単行本刊行時のタイトルは『ピリオド』
05.『愛と悔恨のカーニバル』 (2003年3月‐徳間書店 → 2007年9月‐徳間文庫)こんな具合。04の『苦い娘』(『ピリオド』)以外は電子書籍が発売されており、2026年5月2日現在だと全部アンリミで読めます。打海文三の代表作である大藪春彦賞受賞作『ハルビン・カフェ』や「応化クロニクル」と呼ばれるシリーズの『裸者と裸者』などは今でも新品が売られており、アーバンリサーチもカドカワから出ている『時には懺悔を』のみ紙書籍版を新品で買えます。徳間や中公から出ているものは全部絶版。一応、新装版が出る程度には売れていたんですけどね……作者が亡くなってもう20年近く経つし、仕方がない。
単行本未収録作品集を出すのになんでここまで時間が掛かったのかは気になるところだが、出るだけでもありがたいので詮索すまい。打海文三は世間的にそこまで大人気だったわけでなく、メチャクチャ個性のある作家でもなかったが、「読みにくくないのに読み応えのある文章」を淡々と紡ぐ稀有な作家だった。この新刊を契機に、少しでも再評価に繋がればいいな、と思う。いくら電子書籍版が読めるとはいえ、やっぱり「紙で読みたい」って人も多いでしょうから、既刊も復刻できるといいですね。
・犬塚理人の『サンクチュアリ』を読んだ。
作者名は「いぬづか・りひと」と読む。『人間狩り』という作品で第38回横溝正史ミステリ大賞「優秀賞」を受賞してデビューしたスリラー作家で、最新作の本書は4冊目の著書に当たる。「一色瑞穂」という女性検事を主人公に据えたノン・シリーズ長編で、恐らく過去の作品との繋がりはない。ぶっちゃけ『人間狩り』とか『眠りの神』とか、過去の作品は読んでいていまいちテンションが上がらず途中で投げ出してしまったからよく知らないのだ。昔は一人の作家をデビュー作から律儀に順番通り読むスタイルを守っていたが、最近はもう順番とか無視して面白そうなヤツだけ熟読するようになってきました。
<サンクチュアリ>――それは全国に数万人の信者がいるとされる新興宗教。教祖の「天堂真快」を神の如く崇める、平たく言ってしまえばカルト教団だ。大学時代に付き合っていた彼氏が<サンクチュアリ>信者の子供、いわゆる「宗教二世」で、幼い頃から教団の歪んだ教義を刷り込まれて育ったため一般社会に適応できず苦しむ姿を見てきた検事「一色瑞穂」は教団に対し、苦々しい想いを抱いている。ある日、SNSで自殺願望のある女性を誘い出し、次々と殺していた男が逮捕された。当初は素直に「私がやりました」と自供していた容疑者だったが、「自分はあくまで自殺を幇助しただけで無理矢理殺したわけではない」と供述を翻し、取調官の頭を悩ませる。容疑者が殺したとされる女性は四人。しかし、彼の部屋を訪れながら何事もなく生還した「五人目の女性」がいた。なぜ彼女は殺されなかったのか? 瑞穂は事件を調査していくうち、その「五人目の女性」が<サンクチュアリ>の元信者だったことを知るが……。
といった具合に、謎のカルト宗教<サンクチュアリ>を軸にして進むサスペンス小説です。ストーリー構成は「プロローグ・第一話〜第四話・エピローグ」で、各話ごとに異なる事件が発生し、毎回背後に<サンクチュアリ>の影がチラチラと覗く。第一話「神の領域」は上述した「自殺願望のある女性を誘い出して命を奪う」殺人鬼のエピソードで、「五人目の女性」が生還した理由は何なのか?を焦点に話が進んでいきます。ハッキリ言ってそんなにスゴく予想外な展開が仕込まれているわけじゃないが、興味の惹き方が上手くてグイグイ読ませる。第二話「アイドルは眠れない」は人気絶頂の女性アイドルが突如急死、しかもその遺体を乗せた霊柩車が何者かによって奪われる……という、第一話からは想像できないようなエピソードを繰り広げてみせ、読者を飽きさせない。とにかく、「途中で読むのをやめられないようにする」ことに特化したような話作りなんですよね。
第三話「サクリファイス」はDV(家庭内暴力)の激しかった男が妻と娘の二人を殺した容疑で逮捕され、やっぱり途中で供述を翻して「俺はやっていない」と言い張り出す。事件には目撃者がいたためスピード逮捕に繋がったのだが、肝心の目撃者「猫塚」は絵に描いたようなクズ野郎で、なんと警察へ通報した直後に被害者のバッグから財布を引っ張り出し、中身の現金を抜いてパチンコを打っていたのだと云う。結局事件が気になって現場に戻ってきたわけだが、「通報直後に姿を消す」という怪しい振る舞いをしていることもあって弁護側に付け入る隙を与えてしまっていた。なんとか猫塚の証言で有罪を維持しようとするものの、更なる醜聞が猫塚に持ち上がり……と、「信用できない証言者」のせいで事件の前提が揺らいでいく興味深いストーリーになっています。第四話「聖域」はいよいよ<サンクチュアリ>本体の謎に迫っていく、総決算めいたエピソード。「アイドルは眠れない」や「サクリファイス」でチラッと言及されていた「連続放火事件」の被害者の中に<サンクチュアリ>を脱会した宗教二世が含まれていたことから、「この放火事件は愉快犯によるものではなく、<サンクチュアリ>絡みなのでは?」という疑惑が持ち上がっていく。胸騒ぎを覚えた瑞穂は、元カレで宗教二世の「宇佐美亮太」に連絡を取ろうとするが電話は繋がらず、アパートの自室を尋ねても生活している気配がなかった……ちょいネタバレになりますが、「アイドルは眠れない」で死亡したアイドルも<サンクチュアリ>の宗教二世だったと判明し、「連作形式の短編集と見せかけて実は連作形式の長編だった」ことが判明します。いや、タイトルがタイトルなんで言うほど「見せかけて」はいないんだけども……。
最終的に<サンクチュアリ>がとんでもない連中だと明かされる、ほぼ予想通りというか期待通りの展開に雪崩れ込むんですが、良くも悪くも奇を衒わなかったストーリーは賛否が分かれるところかもしれない。変にサプライズ仕込もうとして無理矢理どんでん返しをしまくって話がグダグダになるよりは、こういうストロングスタイルを貫いてくれる方が個人的な好感は持てる。良く言えば「あらすじを読んで期待した通りの内容」、悪く言えば「想像の範囲内に収まるストーリー」です。ちょっと突飛な部分こそあるものの最後までキチンと楽しめたし、もっと評価されてほしい気持ちはある。刊行が去年の10月なんで、『このミステリーがすごい!2026年版』の集計期間外なんですよね……このミスは毎年12月刊行で、前年の10月から刊行年の9月が集計対象です。つまり『サンクチュアリ』も「2027年版」では集計期間に入るが、10月刊行作品はこのミスからすると「14ヶ月も前の作品=古い」というイメージが付いてしまうため、余程の傑作(例としては『禁忌の子』、10月刊行でこのミス3位)でもないと票を稼ぎにくい。衝撃作はまだしも、地味な良作は割を食いやすいんですよ。ですから『サンクチュアリ』、「胡散臭いカルト教団が案の定ろくでもないことをしていると暴露される話」が好きな人は今年のこのミス発表まで待たず是非とも読んでみてください。「予想通りだけど期待通り」な読書体験をお約束します。
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管理人:焼津