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リレー小説「魔法少女忌譚修」(第13話−10/12)


2026-03-11.

・普段野球はあまり見ないけど、『サンキューピッチ』面白いし『超かぐや姫!』のためにネットフリックス入ったし、ついでだからWBC観戦しとくかぁ……と軽い気持ちで眺めていたらメチャクチャ白熱する試合続きで興奮した焼津です、こんばんは。

 『サンキューピッチ』を「へ〜」と感心しながら読むレベルなので別に詳しいわけじゃないんですが、念のため解説しておきますとWBCというのは「ワールドベースボールクラシック」の略で、ちょうど20年前に始まった国際野球大会です。毎年開催されるわけではなく、数年おきの開催(本来はオリンピックよろしく4年周期にするつもりだったが、2005年に開催する予定だった第1回が調整に手間取って翌年へズレ込んだり、コロナ禍の時期は中止だったりでもうグチャグチャ)であり、今大会で第6回となる。野球の大会としては比較的歴史が浅く、世界における認知度もやや微妙なところですが、「各国のエースたちが球団の垣根を越えてドリームチームを結成する」ことに浪漫を感じる人も多くて年々注目度が上がってきています。日本のチーム、いわゆる「侍ジャパン」は第1回、第2回、第5回と過去3度に渡って優勝しており、優勝していない第3回と第4回も3位になっているのでWBCの中では「強豪チーム」という位置付け。今回も優勝候補のひとつに数えられている模様。

 WBCは20の参加国を4つのプールに分け、各プール5チームに総当たりで試合をやらせ、勝ち星の数に応じて各プールの上位2チームを決定。ベスト8を選出し、そこから準々決勝→準決勝→決勝とトーナメント方式で優勝を争います。日本が振り分けられたのは「プールC」、開催地は「東京ドーム」。他の面子は「韓国・台湾・オーストラリア・チェコ」。ホームとも言うべき球場での試合であり、日程的にも余裕があってかなり有利と目され、「よほどの不運に見舞われないかぎり高確率で1次ラウンドは突破できるだろう」と楽観する野球ファンが大半でした。

 日本の初戦は3月6日、相手は「チャイニーズ・タイペイ」……要するに台湾のことです。「台湾を独立国とは認めていない某国」に配慮して、世界的な大会ではこの名義を使うことになっているそうな。エロゲー声優が表の仕事をするときに別名義を用いるような感覚かな? ともあれ、台湾戦では大谷翔平がグランドスラム(満塁ホームラン)をキメるなど侍ジャパンの打線が大暴れ、相手チームには1点も入れさせず「13-0」で7回コールド勝ちとなった。このとき、周囲が歓喜に沸く中で誰かがボソッとコメントしてたんですよね。「このまま勝ち進めば問題ないが、もし縺れて2位争いになった場合、少ない回(イニング)で勝ったことがアダになる」と。私は「縺れる」がどんな状況かわからなかったので「ふーん」と聞き流していました。

 日本の第2戦は3月7日、相手は韓国。1回表でいきなり韓国に3点も先制されるという暗雲の立ち込める開幕だったが、1回裏で鈴木誠也が2ラン、3回裏で大谷翔平がソロホームランを打って素早く追いついた。このときの大谷の「はい同点〜!」連呼は小学生みたいで笑った。同じ3回裏で鈴木と吉田正尚もソロホームランを飛ばし、「5-3」に逆転。しかし韓国も4回表で「キム・ヘソン」が2ランホームランを打って「5-5」の同点に戻し、乱打戦の様相を見せ始める。激しい打ち合いの末、「8-6」で日本が勝利。結構な接戦で見ていて面白かったです。

 3月8日は日中に韓国vs台湾戦で、夜に日本vsオーストラリア戦というスケジュール。韓台戦は結果次第で日本の1次ラウンド通過が確定する(台湾はこの時点で1勝2敗、韓国は1勝1敗、もし台湾が勝てば韓国の3勝コースは消えるので、両チームに勝っている日本は自動的に2位以上となる)大切な試合だったこともあり、最初は「ながら見しようか」とテレビつけたまま他の作業してましたが、互いに点を取ったり取られたり、激しいシーソーゲームを繰り広げているものだからつい作業をやめて見入ってしまった。最終的に「5-4」で台湾が競り勝つという劇的な結果を迎え、日本は最低でも2位で通過することが確定。台湾の野球チームが韓国に勝つのは初めてということで、台湾が大騒ぎになる中、「台湾=確実に勝てる相手」と見做して勝ち星を拾いに行くつもりだった韓国サイドは愕然としていました。日韓戦で活躍したヘソンが泣き崩れる様は痛々しかったですね。「どちらかと言えば韓国が有利」と見られていた試合なので、番狂わせというほどではないにしろ、うっすらと想定していた状況から徐々にズレ始めた印象を抱いた野球ファンもいたようだ。

 この時点の状況を整理しますと、プールCの5チームのうち「チェコ」は既に3連敗しており、1次ラウンド敗退が確定。上述した通り、日本は最低でも2位での通過が確定した。未確定なのはオーストラリア、韓国、台湾の3つ。複雑な三つ巴の様相を呈し始めたのです。8日の日豪戦でオーストラリア(既に2勝している)が勝利すれば、オーストラリアは9日の韓国戦を待たずして1位通過が確定。日本が2位となり、韓国と台湾の可能性は消滅します。しかし日本が勝てば「日本の1位通過」が確定する代わり、2位がどこになるか簡単にはわからない混沌とした状況になってしまう。9日の豪韓戦次第で韓国や台湾が2位通過する可能性もある。こうした事情から、皮肉なことに、日本に負けた台湾と韓国が揃って「頼むからオーストラリアに勝ってくれ!」と懇願する不思議な現象が発生しました。

 天覧試合ということもあって厳重な警備の中で行われた日豪戦、「4-3」となかなか際どいスコアで日本が勝利し、いよいよ熾烈な2位争いが始まった。9日の豪韓戦でオーストラリアが勝てば3勝で2位通過決定。しかし負ければ豪・韓・台の3チームすべてが2勝2敗になり、三者間での「失点率」を巡る戦いになる。韓国はただ勝つだけではダメで、最低でも「5-0」のスコアで勝たないと2位通過できない。仮に「4-0」のスコアで勝った場合、失点率の差からオーストラリアが2位通過となります。5点差なら「6-1」や「7-2」のスコアでも韓国は2位になれる。ただし、「8-3」から先に行くと失点の重なりによって台湾が2位に浮上してしまう。「大量に点を取りつつ失点を2点までに抑えなければならない」というミッションインポッシブルじみた非常に厳しい条件が課せられていたわけです。しかも点を取り過ぎてコールド勝ちした場合、「失点を2点までに抑え」たにも関わらず「イニングが少なくなった」影響で失点率が上がって3位に転落しかねない……日台戦のときに誰かが呟いた「少ないイニングで勝ったことがアダになる」という伏線が回収されて、思わずゾクゾクしましたね。

 韓国が2位通過するために許されるスコアは「5-0」か「6-1以下」か「7-2以下」、コールド勝ちした場合はまた計算が違ってくるので8点以上取るのは危険……観戦しているこちらも詳しい人の計算結果を参照しながらでないとよくわからないほど複雑怪奇な勝利条件を、野球しながら満たさねばならない。棚ぼた狙いの台湾は韓国に「8点以上取って勝て!」と応援しつつ、同時にオーストラリアへ「3点奪え!」と要求する異常な試合。韓国は5回表までの積み重ねで「5-0」という奇跡的なスコアを実現し、2位通過の可能性を示すが、「たとえ試合に負けても1次ラウンドは通過してみせる」という気迫を見せたオーストラリアが5回裏で1点取って「5-1」。すかさず6回表で韓国が取り返して「6-1」。しばらくそのままスコアが動かなくなったが、8回裏でオーストラリアが1点入れたことにより「6-2」、またしても天秤の傾きが入れ替わった。しかし韓国も執念を見せ、9回表で点を入れて「7-2」……あと1点取ったら台湾も候補になるというスゴい試合展開になった。しかしそれ以上の点は入らず(取る意味がないというのもあるが)、台湾の可能性はほぼ消滅。韓国に台湾をアシストする理由がないので、もともと「うっかり点を取り過ぎてしまう」ケース以外での勝ち筋はなかったのだ。あとは韓国がこのスコアを守り切れるかどうかという争いになった。1点でも奪われたら、試合に勝てても1次ラウンド敗退が決まる――薄氷を踏んで歩くような、針の穴に糸を通すような、そんな限界ギリギリのシチュエーションで見事3アウトをキメて、「試合に勝利しつつ準々決勝への進出も確定させる」ミラクルを達成。台湾戦の敗北で泣き崩れていた韓国の選手が今度は嬉し泣きでしゃがみ込むという「地獄の底から生還した」ような光景に、高みの見物を決め込んでいたこちらも思わず興奮しました。

 ぶっちゃけゲームとしては日本の絡んだ4戦よりも韓台戦と豪韓戦の方が面白かったですね。日豪戦は「できれば1位通過したい」という思惑からある程度の緊張感は漂っていましたが、ハラハラ感はそこまでなかった。10日のチェコ戦は完全に消化試合でしたし。サトリア選手の「速くはないがコントロールの良い」投球が光る渋い投手戦ではあったけれども。自国チームでもないのにこれだけエキサイトできたんだから、韓国・台湾・オーストラリアの野球ファンはテンションがヤバかったでしょうね。「あかん、心臓ドキドキし過ぎて見てられへん!」みたいな。それはさておき、準々決勝は13日から始まって、15日から準決勝、そして17日に決勝という段取りになっています。まずは2次ラウンド、ベスト4に入れるかどうかの戦いか……ワクワクしますね。

 そんな感じでプールCは全日程終了しましたが、まだ終わってないグループで面白いことになっているのがプールB。なんと優勝候補の一つだったアメリカが敗退の危機に瀕しています。「2勝が並んで2位争いになった」プールCと異なり、プールBは下位2チーム(イギリスとブラジル)の敗退が早々に決まったものの、1位から3位が未だに流動的で未確定な三つ巴状態となっている。明日12日の「メキシコvsイタリア」戦でイタリアが勝てば「イタリア全勝、アメリカ3勝1敗、メキシコ2勝2敗」ですんなり順位が決まりますけど、もしメキシコが勝った場合、3チームすべてが3勝1敗で並び失点率の計算で順位を決めることになります。メキシコが取った得点次第でアメリカが3位になり得る。

 3勝もしてるのに進出できない、というのも何だか奇妙な話ですが、これは最下位のブラジルが全敗、4位のイギリスが1勝3敗――つまりブラジル以外には全部負けているということで、3勝のうち「ブラジルとイギリスに対する勝ち星2つ」は3チーム全部持ってるから進出を巡る条件には関係してこない……っていうごく単純な理屈です。しかしアメリカの監督は何を勘違いしたのか、11日のイタリア戦の前に「もう準々決勝進出は決まっているけど」といった趣旨のコメントを漏らしてしまった。つまり、「できれば勝ちたいけど進出条件は既に満たしているから負けても別に構わない」、そこまで言わなくても「必死になって勝たなくてもいい」と錯誤して戦力を「温存」した疑惑があるのです。アメリカの野球ファンは大荒れで、監督に罵詈雑言を浴びせまくっている。一応、アメリカにも乏しいとはいえ勝ち上がりの可能性はまだほんのりと残っていますが、「厳しい条件を満たせば自力で2位になって進出できる」状況だった韓国と違い、完全に「他力」でイタリアの勝利orメキシコが最低でも5点取って勝つことを祈るしかない。生殺与奪の権をイタリアとメキシコの両国に握られている状態なのです。

 イタリアとメキシコが明確に「密約」を交わすまでもなく、阿吽の呼吸で「お互い本気を出さない」ことに合意すればアメリカの道は鎖される。準々決勝が控えているので、イタリアにしろメキシコにしろ「死に物狂いで勝ちに行くのはアド損」と判断し、余力を残そうとするだろう。あまり露骨にやれば「八百長」「無気力試合」と非難されるだろうが、「温存も戦略のうち」というのであれば外野(アメリカ)はとやかく言えない。イタリアとメキシコも「戦力を『温存』しているアメリカをトーナメントに進ませて決勝でもう一度当たるケースを考慮すれば、このままコイツと一緒に上がった方がいい」と損得勘定するでしょう。アメリカはただ指を咥えて両国が準々決勝進出への切符をシェアする様子を見守るしかないのだ。まるで『ONE OUTS』だな。「こんな戦略が通る穴だらけのルールを決めたMLBが悪い」と言われたらそれはそう。

 決勝トーナメントはヒューストンとマイアミで行われるのに、アメリカの球団はどこにも存在しない……そんな椿事が発生する可能性が高まっており、「よもやよもやだ」と言うより他にない。これまで2次ラウンドでの敗退とかはあったみたいですが、最低でもベスト8には滑り込んでいた国が1次ラウンドで早くも消える……かもしれない。大波乱の兆しに目が離せません。入ってよかった、ネットフリックス。試合のみならず盤外戦まで面白いなんてな。ちなみにプールAはプエルトリコが2位以上で進出確定、明日12日の「カナダvsキューバ」戦でもう1チーム、勝った方が次に進めます。プールDはベネズエラとドミニカ共和国がそもぞれ3勝で勝ち抜け確定していますが、明日12日の直接対決で順位が決定する。勝った方が韓国の準々決勝、負けた方が日本の準々決勝の相手になります。ベネズエラもドミニカも死に物狂いで戦う理由はない(というか準々決勝に向けて余力を残さないとヤバい)から消化試合になるかな? この2国が「日本と当たりたくない」と思っているなら「ちょっと本気出す」モードかもしれませんが。

【公式】『エヴァンゲリオン放送30周年記念特別興行』

 2月に開催された「EVANGELION:30+;」(30周年記念フェス)で公開された短編アニメーションです。ふざけた内容とはいえ15分程度とそこそこのボリュームがあって見応え充分。「惣流・アスカ・ラングレー」と「式波・アスカ・ラングレー」、つまり旧アスカと新アスカのコンビ「ダブルアスカ」が漫才するという、「本当に公式の動画か?」と目を疑う一本です。この直球すぎるほどの内輪ノリ、まさに90年代の亡霊といった趣である。クリームパンダ役でお馴染み「長沢美樹」が伊吹マヤ役として未だに引っ張り出されているのが味わい深い。

 「まるで昔出していたドラマCDのようなトンチキさ」と懐かしさを感じている古参も多かったが、私はパラレルな存在である旧アスカと新アスカが会話する中で「世界線」という用語が飛び出したことに軽い驚きを覚えました。以前はパラレルワールド物の場合、「別の世界」を表現する際に「時間軸」とか「並行宇宙」とか「可能世界」とか「異なるチャート」とか、様々な言い方をしていて統一されてなかったんです。世界線という言葉もなくはなかったが、そんなにメジャーな用語として普及していたわけではなかった。オタク方面のフィクションで世界線という言葉を定着させたのは皆さんご存知『STEINS;GATE』です。シュタゲが発祥ではないけど、シュタゲの影響で広まったことから「世界線≒シュタゲ用語」として認識されています。

 ただ、シュタゲ知ってる人にはわざわざ解説する必要もありませんが、シュタゲのストーリー内で扱われている「世界線」とオタク方面のフィクションでよく使われる「世界線」って実は別物なんですよ。いくつものパラレルワールドが、まるで細長い無数の串みたいに乱立している――というのが現在よく使われる「世界線」のイメージだと思います。要するに「パラレルワールドの一つ」を指す言葉として用いられるケースがほとんど。ダブルアスカの漫才でも概ねこの意味で使われている。しかし、シュタゲにおける「世界線」のイメージは「無数の串」ではなく、むしろ「たった一本の串」なんです。いくつものパラレルワールドが過去から未来までずーっと存在しているわけじゃなく、その揺らぎを解消し「様々な可能性をたった一つに絞り込む」ことで主人公が望む世界を「正史」として確定しようとする。「ああ、いろんな串があるんだなぁ」という話ではなくて、たった一本しかない串で何を刺すのか……気の抜ける喩え方をすると、「おでんの具を決める」物語なわけだ。

 シュタゲのストーリーの根幹にも関わってくる言葉だけど、ハッキリ言ってオタク用語としては使いづらいので、わざとなのか誤解に基づくものなのかは不明だが、本来とは異なる意味の用語として定着したのです。こういう現象は割とよくあることで、同じオタク用語だと「ツンデレ」も当初の意味とはだいぶ違う形で定着していった。本来は特定の誰か(概ね主人公)に対し取り付く島もないほどツンケンしていた子が、時間経過や関係の変化に伴って見る影もないほどデレデレに惚れ込んでしまう……というギャップを強調する言葉だったのに、わかりやすく説明するために「べ、別にあなたのためにやったんじゃないんだからねっ!」というテンプレ台詞を添えた結果、「ツンケンしているように振る舞っているけど好意がバレバレな様」を指す言葉に変質していった。「べ、別に(以下略)」はツン期からデレ期に移行しつつある端境期、いわゆる「デレかけ」の状態を表現するテンプレ台詞だったのだが、テレビの番組で「デレかけ=ツンデレ」と粗雑に解釈された結果、そっちの方で広まってしまった。今や本来の意味で使う方が変な環境になっているので、もう訂正とかは諦めて受け容れています。

 「本来の意味からズレた用途で定着してしまったフィクション由来の言葉」、もっとも有名なのは「黒歴史」だろうか。今や「元はガンダム用語」ということを知らない人まで使っているところを見掛ける。90年代末に放送された『ターンAガンダム』の劇中に登場する言葉で、「記録が残っておらず完全に空白となった過去の歴史」を指す。いろいろあって主人公たちは失われた歴史が保存されている遺跡に辿り着き、そこで驚愕すべき黒歴史の中身を知ることになるわけですが、現在は単に「忘れたい過去のイタい言動や不行跡」という意味で使用されることがほとんどです。「塗り潰されて見通すことがまったく出来ない」「知の拒絶」という深刻な意味だった「黒」が、「後ろ暗い」「直視したくない」「否定したい」ぐらいのニュアンスに緩和されている。2010年に『あるいは現在進行形の黒歴史』というライトノベルが発売されており、もう十数年前から異なる意味で定着していたことになる。去年は『転生悪女の黒歴史』もアニメ化されたし、むしろ「本来の意味」の方がマイナーになってきています。

 オタク用語とはちょっと違うけど、「インメルマン・ターン」もちょっと複雑ですね。これは航空機のマニューバ(操縦・機動)の一つで、第一次世界大戦のときの撃墜王「マックス・インメルマン」に因んで名付けられています。インメルマンの得意技だったからインメルマン・ターン……と素直に受け取っている人が多いのだが、実は現在インメルマン・ターンと呼ばれているマニューバはインメルマンが使った技とは別のものなんです。そもそも第一次世界大戦の頃に使われたのは「レシプロ機」で、それに比べて遥かに高速な「ジェット機」と同様のマニューバなんか出来るわけがない。レシプロ機でうまく立ち回るための工夫としてインメルマンは独自のマニューバを生み出したが、第二次世界大戦以降、航空機の技術がどんどん進化して「レシプロ機で使っていた工夫」をわざわざ駆使する必要がなくなり、「(主に機体性能の関係で)インメルマンには不可能だったマニューバ」が新たに普及していった。なので正確に表現すれば「スーパー・インメルマン・ターン」と呼称するべきなのだが、撃墜王に敬意を払ったのか、「単に『インメルマン・ターン』の方がカッコいい」と思ったのか、経緯は不明だが「インメルマンが使ったことのないインメルマン・ターン」が用語として残り続けている。まぁ「有名人に因んでネーミングされたけど、当の有名人とは何の関係もなかった」なんてのはよくあることですね。ポケモンアニメの「ポリゴンショック」だって別にポリゴンが原因だったわけじゃないのに事件名として定着しちゃってるし……。

 話が逸れまくった。EVAは庵野が主導する本編こそ完結したものの、「これだけのヒット作を終わらせるのは惜しい」と判断したのか、また新たなシリーズを開始しようと企画が動いているそうです。「エヴァンゲリオン完全新作シリーズ」としか書かれておらずタイトルはまだ不明ながら、シリーズ構成・脚本に「ヨコオタロウ」が抜擢されていることから「ヨコオEVA」と仮称されています。ヨコオタロウは『ドラッグオンドラグーン』や『ニーア オートマタ』を手掛けたクリエイターであり、『真説ゲームクリエイター伝』という漫画でも取り上げられているけど、あまりにもキャラとエピソードが濃すぎるせいでいくら書いても終わらず、全5巻中4巻以上がヨコオの話で埋まっているという凄まじさです。何ならこっちをアニメ化した方がいいんじゃない? ヨコオEVAが好評だったら他のクリエイターのEVAも制作されたりするのかな。虚淵EVAとか。いやそれ『Phantom』じゃん。

「カナチョロ」こと『カナン様はあくまでチョロい』、メインPV公開。TV放送は4月から。

 あ、カナン様のCVは古賀ちゃんなのか。なんとなく「大久保瑠美」だと思い込んでいました。古賀ちゃん、正確に書くと「古賀葵」は『かぐや様は告らせたい』の「四宮かぐや」役で有名な声優ですが、キャリアの初期に『天使の3P!』というガールズバンドアニメでローテンションな女子小学生「金城そら」を演じており、両方の作品を知っている人はイメージの違いにビックリする。ちなみにそらちゃんはドラマーで、古賀葵は別の役でオーディションを受けていたけど「ドラムが叩ける」という理由で起用された、という経緯があります(参照:かぐや様放送直前のインタビュー記事)。佐賀市出身で「佐賀弁が使える」ことから『ゾンビランド・サガ』に「天吹万梨阿」というサブキャラで出演したりしている。

 しかし、PVに出てくるのは初期のキャラばかりで、恐らく中期以降に登場したキャラは2期が来ないかぎり出番がないんだろうな……と寂しくなる。私は生徒会書記の「先走菖蒲」や写真部の「隠音鳥」が好きなんですが、主人公の「供犠羊司」がカナン先輩一筋で他のヒロインには靡かないから、勢いサブキャラは目立つ機会がほとんどないんですよね。チラッと映ったりはするものの、スポットライトが当たることは稀。PVに「益荒男撫子」というスゴい名前の幼馴染キャラが出てきて、「この子とカナン様が恋の鞘当てを繰り広げるのか?」と想像した方もおられるでしょうが……ネタバレすると、この子は供犠くんに「異性愛」という意味での好意は寄せていないし、供犠くんも彼女を異性として意識しているわけじゃないのでラブコメチックな雰囲気は一切漂わない。割と大変なことになって、そのままフェードアウトした(たまにひょっこり出てくる程度になった)ので撫子ファンは泣いてるかもしれない。

 単行本は先月の新刊で12巻と、結構な冊数に及んでいます。電子書籍での一括購入を検討している方は何かセールが始まるまで待った方がいいかも。講談社は割と頻繁にセールやりますからね。一気読みではなくポツポツと読む程度で良いなら「マガポケ」の利用をオススメします。昔はチケットが使えなかったんですが、確か一昨年あたりから急に使えるようになった。マガポケで読める単話版は単行本描き下ろしがない反面、カラー原稿が見られる(単行本は電子版でもモノクロのままだ)から併用が望ましい。アニメは恐らく単行本6巻あたりまで、7巻の表紙になっている生徒会長「神龍寺鉄花」が本格的に活躍するのは2期以降だろう……あるかどうか、現状ではよくわからんが。

大武政夫「J⇔M ジェイエム」TVアニメ化!孤高の殺し屋と女子小学生の入れ替わりコメディ(コミックナタリー)

 えっ、もうアニメ化すんの!? 1巻が出たのは2023年10月だからまだ2年半も経ってないのに……早いな。原作者「大武政夫」は一般的に「『ヒナまつり』を描いた人」として有名だが、かのタフシリーズの作者「猿渡哲也」の元アシスタントであり、タフ語録を公然と使う漫画家としても有名です。『J⇔M ジェイエム』は殺し屋の「J」といじめられっ子の女子小学生「恵」、ふたりの精神がひょんなことから入れ替わってしまい、仕方なくJは女子小学生の体で殺し屋としての仕事をすることに……というアクション系コメディ。人体破壊(ゴア)表現を抑えているためグロくはないが、ふざけたシチュエーションで人を殺すシーンもあり、ややブラックなノリ。

 元孤児のJは暗殺能力だけで成り上がり、誰も手が出せないアンタッチャブルな存在として裏社会に君臨しているが、偏執的なほど「ハードボイルドな振る舞い」にこだわる変人でもあった。ハードボイルドに振る舞えば振る舞うほど、強者としてのオーラが出る――そんなジンクスを重んじているJだったが、うっかり恵ちゃんと頭をごっつんこした結果、漫画みたいな入れ替わりが発生した! 畜生、これじゃどんなに「ハードボイルドな振る舞い」をしても様にならない……! シチュエーション的にはだいぶコメディだし、「有名私立中学に入れなければゴブリン」という謎の張り紙をする恵の母など、いかにも『ヒナまつり』の作者らしいセンスが炸裂している。だが、アクション描写そのものはガチであり、「猿先生の元アシ」の面目躍如といったところ。肉体が「いじめられっ子の女子小学生」になったわけだから当然弱体化しており、真っ向から戦えばねじ伏せられる。いかに相手を油断させ、手早く仕留めるか。アサシンっぽさが存分に発揮されている。中身はオッサンとはいえ女子小学生がガンガン人を殺しまくるため、倫理的な問題からアニメ化は難しいのではないか? と考えられていたが、杞憂だった模様だ。「門限までに帰らないといけないから」と暗殺RTAを始める回は不謹慎で笑った。

 まだ制作スタジオもスタッフもキャストも何もわかっていないが、『ヒナまつり』のアニメの出来が良かったことを思うとつい期待してしまうな。というか『ヒナまつり』、結局2期は来なかったな……ちょうど『ウマ娘』の1期目をやっていた頃(ヒナまつりのアニメとウマ娘のTVシリーズは同じ「及川啓」監督作品)だからもう8年前か。遠い目をしそうになるがそれは置いといて、『J⇔M ジェイエム』の魅力は「女子小学生の体に入ってしまった殺し屋」だけでなく、「殺し屋(オッサン)の体に入ってしまった女子小学生」の方も面白いってことですね。恵ちゃんは当然ながら殺しの技術とか一切有していないド素人なんですが、Jよりも遥かに頭が良く、演技力も高い。なのでJの理想とする「ハードボイルドな殺し屋」として振る舞うことができる。このへんのテンポの良さ・ノリの楽しさはやはり『ヒナまつり』で磨いた経験が活きている感じだ。Jは入れ替わったときの状況、「頭ごっつんこ」を再現して元に戻ろうと恵に提案するが、「家では毒親気味な母にイビられ、学校ではクソガキどもにいじめられる、そんな小学生ライフに戻りたくない」と拒否される。力ずくで強引に従わせようとするも、肉体的なパワーは向こうの方が上なのでどうにもならない……とにかく、「これはひたすら面白くなっていく漫画だな」という確信を抱かせてくれる。Jは「学校にろくすっぽ通っていない無学な殺し屋」なので、情操面は割と恵に近いんですよね。そのへんちょっと『レオン』っぽさがある。

 『ヒナまつり』は面白かったが、どうしても「読んでない/見てない人に面白さが伝わりにくい」面があり、ブレイクし切らなかった憾みがある。『J⇔M ジェイエム』はシチュの面白さがストレートに伝わる題材なので、アニメの出来次第では大きく跳ねるかもしれない。これで大武政夫、ひいては猿先生が世界的に評価されてハリウッドがタフシリーズの映画化に向けて動き出すかもしれない……夢は大きく持っておきましょう。

法月綸太郎の最新刊『法月綸太郎の不覚』、4月22日発売予定

 おっ、久々の新刊だ。エラリイ・クイーンに倣って自分のPNと同じ名前の探偵を出演させている「法月綸太郎」の“法月綸太郎”シリーズ、えーと、これで確か15冊目だっけ?(既刊からのセレクション『名探偵傑作短篇集 法月綸太郎篇』は除く) 前作が2019年だったから7年ぶりか。法月シリーズの短編集としては『法月綸太郎の冒険』『法月綸太郎の新冒険』『法月綸太郎の功績』『犯罪ホロスコープT 六人の女王の問題』『犯罪ホロスコープU 三人の女神の問題』『法月綸太郎の消息』に続く7冊目。法月シリーズ、昔は新書サイズで売られていたんですが、最近はもうハードカバーが主流になっちゃいましたね……256ページで2090円(税込)というのは正直「高い」と感じるが、ギリ耐えられる値段。これが3000円とかだったらもう迷った末で断念していたかもしれない。

 最近はホンマに本が高いですね……去年や一昨年もそう感じていたけど、更にギアが一段上がった印象です。たとえばジェフリー・ディーヴァーの短編集、『サプライズ・エンディングス 罠』『サプライズ・エンディングス 嘘』、合わせて672ページの文庫本が3531円(税込)ですよ。第2短編集の『ポーカー・レッスン』は670ページくらいで1000円札出したらお釣りが返ってきた(当時は消費税が5%で今の半額だった)というのに。体感的には3.5倍ですよ。もう海外翻訳小説市場は覚悟をキメた修羅しか残っていない状態だ。そういう私も税込で3000円超えた『テメレア戦記』の8巻以降はもう買ってなかったりするが……。

・拍手レス。

 ロスフラとうとう終わっちゃいますね… 自分は調伏戦が面倒だったのとメイン系のストーリーの更新が遅いせいで長らくプレイするのをやめていたのを6周年で復帰したクチなのでこのタイミングか…って感じです。 菅さんのシナリオは本当に好きだったので2部始まりそうな予兆を見せておいて終わるのはとても残念です。何らかの形で続きが見たいものです。

 調伏戦は本当に面倒臭かったですね……オートで流して他の作業やってましたけど、それでも結構時間掛かったし。菅さん、「書きたい小ネタ」はあっても「書きたい大ネタ」はなさそうな感じだったので、ロスフラでやった内容で概ね満足しちゃったような雰囲気がある。トゥスクルさんの現役時代とか、ロスフラのおかげで拝めた要素もあるのでありがたいことはありがたかったですが……。


2026-03-05.

・ふと百合アニメの系譜を独断と偏見でまとめたくなったので語ってみる焼津です、こんばんは。軽く触れるつもりだったのにいつもの如くクソ長くなってしまったから別ファイルに隔離します→「百合アニメを振り返る」

 「軽く触れるつもり」で61KB(400字詰原稿用紙換算で約76枚)はバカの所業なんよ……ついでだし、過去に書き殴ったテキストを振り返りやすくするためいくつか別ファイルを作っておきました。「大ガールズバンドアニメ時代に至るまで」「『Gun Blaze Vengeance』放送に備えて『魔法少女リリカルなのは』の復習」「漫画やアニメに出てくる『戦うメイド』の系譜」「『咲―Saki―』アニメ派は原作を何巻から読めばいいのか問題(理想は1巻からだけど、それはそれとして)」「三大奇書? 四大奇書? 五大奇書? いったい何大あるんだい!/〇大奇書論」。自分で書いたテキストを読み返そうとしたとき、いちいち探さなくちゃいけないことにイライラしてたし、もっと早くやっておけばよかったな。

『超かぐや姫!』異例の大ヒットで全国100館以上拡大 入場者特典第2弾配布&劇中曲「Reply」MV解禁

 うおお! やっと待ちに待った全国拡大公開が来た! たった8館だけだった前回と違い、今回は100館以上の追加です。うちの地元の劇場も無事リストに入ってました、いえい。「山梨県」と「高知県」は上映予定がないので、「ほぼ全国」であって厳密に書くと「全国」ではないのですが……どうもこの2県にはシネコンが東宝傘下の「TOHOシネマズ」しかなく、TOHOシネマズは『超かぐや姫!』を上映するつもりがないようなので結果的にハブられる形となってしまった模様。4月に東宝の配給であるコナンの新作が公開されるし、今のタイミングで余計な新作を入れたくないんだろう。何せコナンのためにハコを空けようと鬼滅の興行も「終映、迫る」と煽って畳もうとしているぐらいだしな。東宝は去年から国宝、鬼滅、チェンソーマンの3作がロングランしていて、それ自体はありがたいことなんだろうが、これらが「新作を展開するうえで足枷になる」ことに頭を悩ませているようだ。自社配給作品でもそんな状態だから、他社配給作品に関しては言うまでもない。近場のシネコンがTOHOシネマズしかない超かぐファンは嘆くより他なし。

 現時点の興行収入が約7億円、この勢いなら10億超えは確実でしょう。拡大でどこまで伸ばせるかが見物ですね。小規模公開からの拡大で大成功したパターンと言えば『カメラを止めるな!』が有名ですが、カメ止めの最終は31.2億円。基本的に「小規模公開からの拡大」はそこまで数字が伸びない傾向にある(話題になるタイミングが地域ごとに分散してしまい、ムーブメントが起こりにくい)けど、果たしてどうなることやら。

『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』『BanG Dream! Ave Mujica』続編TVアニメ 2027年1月より日本テレビ系全国30局ネットにて放送決定

 今のところ正式なタイトルが告知されていないため「マイゴムジカ」と仮称しているが、放送時期は決定しました。来年の1月、つまり冬アニメですね。Ave Mujica最終回直後、「早くて来年(※2026年)の秋頃、順当なら再来年(※2027年)の春頃」と予想していたがちょうどその中間に落ち着いた。「なんだ、今年じゃなくて来年かよ」と落胆した人もおられるやもしれませんが、バンドリは『ゆめ∞みた』が夏放送、Ave Mujicaの劇場版『BanG Dream! Ave Mujica prima aurora』が秋公開なので予定が詰まっているんですよね。さておきマイゴムジカ、マイムジ関連のアニメとしては通算3期目になりますが、バンドリ全体のTVシリーズとしては間に『ゆめ∞みた』を挟むこともあって通算7期目に該当します。いや、アワーノーツというマイムジを前面に押し出した新作アプリにはゆめみた(夢限大みゅーたいぷ)の面々も登場するから、『ゆめ∞みた』がマイムジ関連じゃないのかどうかは現時点だとよくわからないんですよね。ただまぁ、新規の取り込みが狙いだと思われるので「マイムジとはまた別のラインのアニメ」だろうと判断しています。

 マイゴムジカ、内容に関しては現時点だと明かされている情報が少なくて語りようもない(とはいえ真初華、立希の姉の「真希」、燈ちゃんの幼馴染み「みおちゃん」、放置されてるsumimiのまなちゃん、アツドリで追加されるmillsageや一家Dumb Rock!の扱い等々気になる要素は山盛り)ですが、注目すべきポイントは「日本テレビ系全国30局ネットにて放送決定」というところです。It's MyGO!!!!!Ave Mujicaのオンエア情報を見ればわかりますが、バンドリのBSやCSを除いた地上波放送って10局前後だったんですよ。それが一気に倍以上になっている。最近は配信が主流だしピンと来ない人も多いかもしれません(私もAve MujicaはABEMAで観た)けど、キー局全国ネットで放送というのは同じ深夜アニメでも注目度が段違いです。正直、It's MyGO!!!!!の頃にはバンドリの注目度もだいぶ下がっていてヒッソリと放送が始まった感じだったんですけど、3年ちょっとでここまで昇り詰めるとはな……。

 具体的な放送時間帯についてはまだ判明していないが、ひょっとするとフラアニ枠かもしれない。フラアニというのは2023年10月、ちょうどIt's MyGO!!!!!の放送が終わった頃に出来た枠で、金曜夜11時という比較的浅い時間帯に日テレ30局全国ネットで放送している。正式名称は「FRIDAY ANIME NIGHT」。第1弾が『葬送のフリーレン』(1期目)であり、今やってる2期目もこのフラアニ枠です。これまで放送された作品は『転生したらスライムだった件』(3期目)、『株式会社マジルミエ』(1期目)、『薬屋のひとりごと』(2期目)、『桃源暗鬼』。フラアニは30分枠として作られましたが、今年の4月からもう30分追加して1時間枠になる予定です。厳密に言えば11時からの枠が「フラアニ2300」で11時半からの枠が「フラアニ2330」。2300の枠はフリーレンの2期が終わった後、転スラの4期目が2クールで入る予定です。で、10月からの予定はまだ公表されていませんが、薬屋の3期が「2026年10月」と告知されているのでたぶんここに入ると思います。分割2クール予定なので、第2クールは恐らく2027年4月開始。となると2027年1月からの枠が空くことになりますが……転スラの4期は「分割5クール」の予定なので、1月から第3クール、4月に薬屋3期の第2クール、7月から12月にかけて第4クールと第5クール、というスケジュールかもしれない。そうすると空いてるのは2330の方ってことになりますね。2330は4月が『スノウボールアース』、7月が『これ描いて死ね』の予定で、10月以降は今のところ不明。可能性はなくもない感じか。続報を待とう。

KADOKAWA、アニプレックスの共同出資による映画配給会社アニメック設立のお知らせ

 アニメオタクなら当然のように知っているアニメ製作会社「アニプレックス」と大手出版社「KADOKAWA」が、新たに映画配給会社「アニメック」を設立した……! このニュースに「アニメック? 昔あったアニメ雑誌?」と反応した人は結構なイイ歳であろう。アニメックの公式サイトでも「※ アニメックは1980年代まで刊行され人気を博したアニメ雑誌の名前でもあります。」と言及している。雑誌“アニメック”編集長で『アニメックの頃…―編集長(ま)奮闘記』という回想記も出している「小牧雅伸」は2022年に67歳の若さで急逝しているため、代わりに副編集長だった(ただし途中で“月刊ニュータイプ”に移った)「井上伸一郎」に報告したとのこと。井上伸一郎は少し前に『メディアミックスの悪魔 井上伸一郎のおたく文化史』という回想録を出してましたね。『メディアミックスの悪魔』に推薦文を寄せている「永野護」の担当編集だった頃の思い出を綴った『マモルマニア』って本も出しているが、これは30年以上前でもう絶版しており入手困難です。

 このニュースとは直接関係ないが、KADOKAWAは「Studio One Base」という巨大アニメ制作拠点を池袋・サンシャインシティに新設するとのこと。約1400坪に「複数のアニメ制作スタジオを物理的に集約する」そうだ。入居が決まっているスタジオは「ENGI、Studio KADAN、レイジングブル、ベルノックスフィルムズ、チップチューン」といったKADOKAWAグループの面々で就業人数は400人に及ぶとか。ENGIは『メダリスト』のところ、Studio KADANは3DCG制作を強みにしており『すずめの戸締まり』にも関わっている模様。レイジングブルはエウレカセブンの監督「京田知己」が取締役らしいが、2023年に出来たばかりらしく何作ってるのかはよくわからない。ベルノックスフィルムズも2024年新設だけど『ダーウィン事変』を元請けとして手掛けてますね。チップチューンは撮影や背景、彩色などといったこまごまとした作業を請け負うスタジオで、2012年設立だが去年創業者が亡くなったことでKADOKAWAグループ入りしたらしい。「ナット」という関連会社(『幼女戦記』の制作したところ)もあったが、こちらは「ツインエンジン」(『超かぐや姫!』の製作をしたところ)の傘下に入ったというニュースが先日あった。ぶっちゃけアニメファンからしてもENGI以外はあまりピンと来ない面子であるが、「『メダリスト』で躍進しているENGIが更に躍進することになりそう」ぐらいに捉えておけばいいのかしら。そう、ENGIといえば「モブせか」こと『乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です』の2期目を作ることも決まっているスタジオ……1期目は原作の面白さで低予算ぶりをどうにかカバーしているような風情だったが、2期目はクオリティに期待できそうだ。

 アニプレックスは「ソニー・ミュージックエンタテインメント」の子会社なので、つまり言い換えれば「ソニーグループとKADOKAWAグループが手を組んで映画配給に乗り出す」ってことだ。「全国での大規模公開からTVアニメの特別上映まで、最適な公開戦略のもと作品の価値や魅力を十分に引き出し」という文言が踊っており、今以上に各地の映画館でアニメ映画の公開やイベント的な先行上映が盛んになる……のかもしれません。ぶっちゃけ「配給」の業務って観客側からすると見えづらく、この「アニメック」の出現によって業界がどう変わるのか、と訊かれても「ようわからん」としか答えようがない。確実に言えるのは、ただでさえ斜陽気味な「映画館における洋画興行」がますます衰退するだろうな……ってことです。ただでさえ洋画ファンの高齢化が深刻で、「もう映画館まで行って長時間座席に腰掛けて90〜150分くらいある洋画を集中して観る気力がない、自宅で楽な姿勢で鑑賞できていつでも一時停止でトイレに行ったり休憩したりすることができるサブスク視聴の方が良い」という状況ですからね。洋画興行を盛り上げるには「高齢化しつつある従来の洋画ファンをどうにかして映画館に呼び込む」か「現在あまり洋画にない興味がない若い層に『洋画っていいな、映画館で観たいな』と思ってもらう」か、ほぼこの二択なわけですけど、どっちも道筋が見えないというのが正直なところ。

伊藤計劃「虐殺器官」実写映画化、今も企画中 パク・チャヌク監督認める「概要は執筆済み」(シマネトゥデイ)

 とか言ってたらこんなニュースが。「アジア映画は『洋画』に入るか否か」みたいな議論もあると思いますけど、それは置いといて。パク・チャヌクと言えば日本の漫画である『オールド・ボーイ』を映画化した監督ですね。私はいわゆる「韓流」が流行り出した頃に散々宣伝やってたので釣られて観た『JSA』があんまり面白くなかったな……という記憶があってそこまで注目してないんですけども、日本では明日公開される『しあわせな選択』という新作が結構話題になっているみたいです。邦題はなんだか気が抜けるタイトルだけど、英題は「No Other Choice」、「他に選択肢がない」という切羽詰まったニュアンスになっている。原作はドナルド・E・ウェストレイクの小説『斧』で、「再就職するためライバルになりそうな同業者を先回りして殺す」というブラック・コメディ。「愛しの家族を守るためなら何でも出来る」という気持ちの負の側面を描いた一作です。

 日本の作品が韓国で映画化されることはちょくちょくあり、ミリタリー寄りのフィクションだと『人狼』がある。押井守原作の『犬狼伝説』をメインに据えたサーガ“ケルベロス・サーガ”に属する作品の一つで、日本では1999年に『人狼 JIN-ROH』という題名でアニメ映画が上映されています。「ドイツが第二次世界大戦に勝った」というパラレルな世界を舞台に、敗戦国としてドイツに支配された日本がようやくその占領統治から抜け出して独立を図ろうとしていた頃、国の方針を巡って自衛隊に次ぐ武装を有した「首都警」の実働部隊「特機隊」と、左翼の過激派集団「セクト」が日々闘争を繰り広げていた……という感じの話。韓国版では「近未来、南北朝鮮を強引に統一しようとする政府の警察組織『首都警』と、早計な統一に反対する過激派集団『セクト』との争い」に置き換えられているが、「プロテクトギア」のデザインや童話の「赤ずきん」がモチーフになっている点など『人狼 JIN-ROH』との共通点も残っている。

 今回「まだ企画は生きている」とパク・チャヌク監督が明言した『虐殺器官』は既に故人である日本のSF作家「伊藤計劃」のデビュー作で、2007年に「ハヤカワSFシリーズ Jコレクション」の1冊として単行本が刊行され、2017年にアニメ映画が公開されている。監督は『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』シリーズの「村瀬修功」。「虐殺の文法」を駆使することで人間に備わる「虐殺器官」を刺激し、意図的に虐殺を引き起こすことができる謎のアメリカ人「ジョン・ポール」をアメリカの軍人「クラヴィス・シェパード」が追う、という一風変わったスリラーだ。「第7回小松左京賞」に応募して最終候補まで残ったものの、小松左京からは「虐殺行為を引き起こしている男の動機や主人公のラストの行動などにおいて説得力、テーマ性に欠けていた」と評され落選した。一応、文章力と「虐殺の文法」のアイデアに関しては褒められている。ちなみに、同じ回に応募して同じく最終候補まで残った末に落選した作家として、後に芥川賞を獲る「円城塔」がいます。大御所からはあまり評価されなかったものの、SFファンからの人気は高く『ベストSF2007』国内篇で1位を獲得しており、ゼロ年代(2000年〜2009年)の10年間で刊行された国内SFとしては一、二を争うレベルで名作扱いされている。人気のポイントはディテールの細かさ、ガジェットの一つ一つに詳細な設定が作り込まれており、アニメ→原作の順で読むと「こんなところまで設定しているのかよ」と舌を巻くかもしれません。アニメだと良くも悪くも「主人公のナイーブな精神」の表現が緩和されており、原作とはイメージはかなり違うんですよね。

 「パク・チャヌクが『虐殺器官』のメガホンを執る」という話はかなり前からあって、調べた限りで一番古いのは2016年頃の記事だ。まだアニメ版すら公開されていない。10年経ってもまだ実現しないので「ポシャッたのかな?」と思っていたファンも多いようだが、とりあえず「概要(トリートメント)を書く」段階までは進んでいるらしい。具体的な脚本作業には入ってないから、早くてもあと数年は掛かるだろう(監督も「次回作ではない」と言っている)けど……韓国の映画業界もいろいろと厳しいらしいので不安はあるが、とにかく待つしかない。

・下村敦史の『そして誰かがいなくなる』と小松立人の『そして誰もいなくなるのか』読んだ。

 先に書いておきますとこの2冊、タイトルが似ているだけで内容的な繋がりは一切ありません。もちろん、両作ともに元ネタはアガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』。孤島を舞台に、一人、また一人と登場人物が消えていき……最後はタイトル通りになります。非常に特徴的でインパクトのある題名だけに、パロディやパスティーシュの類は山ほどある。有名どころは夏樹静子の『そして誰かいなくなった』や今邑彩の『そして誰もいなくなる』あたりかしら。タイトルがそっくりなせいもあって列挙するとどれがどれだか区別が付かず混乱しますが、私のオススメ今邑彩の『そして誰もいなくなる』です。

 先に『そして誰かがいなくなる』の方から紹介しよう。作者の「下村敦史」は江戸川乱歩賞作家、2014年にデビューし、これまで30冊くらいの著書を世に送り出している。基本的にシリーズ物は書かず、ほとんどの本が一冊完結方式です。強いて言えば『逆転正義』『暴走正義』が“正義”シリーズと言えなくもないが、いわゆる「名探偵〇〇」みたいなシリーズ物は今のところ出していない。『そして誰かがいなくなる』は確か25冊目くらいの著書だったかな? 刊行は2年前で、うかうかしているうちに文庫版の発売が今月に決まってしまった。悔しいので文庫版が発売される前に読んでやろうと思い立ち、ついでにタイトルが似ている『そして誰もいなくなるのか』も読んだ、という流れです。

 ミステリ界の大御所「御津島麿朱李(みつしま・ましゅり)」は山奥の辺鄙な場所に雰囲気たっぷりな洋館を建て、そこで新作を執筆しながら暮らしている……ある日、御津島の名とともに届いた招待状。覆面作家ゆえ業界関係者のほとんどがご尊顔を拝したことがない御津島に対面できると、胸をときめかせてやってきた客人たちは、やがて恐るべき事件に直面する……という、大雑把に言えば「クローズド・サークル」系のミステリです。客たちからスマホを取り上げる過程があったりと、デジタルデバイスの発達によっていろいろ小手先を工夫しなければならなくて涙ぐましい。でも、本気になれば館の外に出て助けを求められなくもないんですよ。本作の絶妙なところは、「何か変なことが起こっている」ことは確かなのに明確な死体が発見されたりしないままストーリーが進行していく「あやふやさ」があるところです。これが死体でも転がっていれば何が何でも外部に連絡を取ろうとするが、「そこまでしなくてもよいのではないか……?」と正常バイアスが働いて行動に移せない。物凄く悪趣味であるが、御津島が仕掛けた何かの遊戯である可能性も否めないし……と、「事件」なのか「事件に見せかけたゲーム」なのかハッキリしないままページが費やされる。当然、「どんでん返し」もありますので「作者に翻弄されてぇ〜」という方にはオススメの一冊です。

 ちなみに、ページのところどころに「館の内装」を切り取った写真が出てきますが、なんとこれ、全部作者の自宅です。そう、下村敦史は「ミステリの作中に出てくる『偏屈な大御所作家が山奥に建てた怪しげな洋館』」を実際に建ててしまったので、そこを舞台にミステリを書いてみました……という究極の内輪ネタ小説なのだ。もし実写化することになったら自宅で撮影を行うのかな……本当に建てた館をモデルにしているので、建築会社と打ち合わせする件はとてもリアリティーに溢れている。「そこのリアリティーは必要なのか?」と訊かれると返答に窮しますが……何であれ、「自宅ミステリ」という新境地を拓いた珍作なので興味のある方はご一読ください。

 ついでに読んだ『そして誰もいなくなるのか』は第33回鮎川哲也賞「優秀賞」受賞作。『禁忌の子』の前なんで、これも2年くらい前の本ですね。作者の「小松立人」にとってこれがデビュー作、3月には『そして物語のおわりに』という新作(受賞後第一作)を刊行する予定。一応クローズド・サークルだった『そして誰かがいなくなる』と違い、こっちは「山奥の屋敷」とか「孤島の洋館」が舞台というわけではない。いわゆる「特殊設定ミステリ」、故・西澤保彦がよく書いていたようなノリの小説です。超常的な存在によって「死に戻り」させられた主人公たち。世にも奇妙なデスゲームの幕が上がる。

 突然の地震によって崖が崩落、巻き込まれた「小松立人」(作者と同名の作中人物)たちは車ごと川に転落し、間もなく死亡した。そのはずだった。しかし、「神」なのか「死神」なのか、条理を超越した存在は「全人類の総寿命時間を調整するため」と称して小松たちを生き返らせてくれた。それも事故の直後ではなく、死の一週間前に。前回と同じ「小松たちが死亡した時間」になれば、どこで何をしていようと必ず死ぬ、不可避の運命を押し付けて。ただし、このルールには一つだけ抜け穴がある。死に戻りしたメンバーが他のメンバーに殺されたとき、「本来もっとあるはずだった寿命」が殺した者に加算される。死に戻り直後に一人殺せば一週間、二人殺せば二週間長く生き延びられる。

 かくして壮絶なデスゲームが始ま……らなかった。小松たちにはお互いを殺してまで命を存えるだけの強い動機がなかったのだ。誰も彼もが粛々と「運命の日」を迎える。そのはずだったのに。なぜかメンバーが「寿命」を残したまま、次々と死に始める。いったいなぜだ? 誰がそこまで生に執着しているんだ? ミステリ作家志望の小松は、一連の顛末を書き残し「遺作」とするため必死に頭を振り絞って推理するが……という、かなり毛色の変わったミステリです。特殊設定モノだけど、なんというか地味なんですよね……地味なのに凝ってる。そこが何とも言えぬ味わいを生み出しています。鮎川哲也賞作品というよりメフィスト賞作品みたいなノリだ。大賞ではなく「優秀賞」だった(ちなみに同じ回の大賞作品は『帆船軍艦の殺人』)ことから察せられるように「完成度」や「インパクト」という点では少々見劣りする一冊であるが、「オリジナリティ」に関してはなかなかイイ線行ってると思います。刺さるかどうかは人によりけりだが、「小粒だけど変な味わいがある特殊設定ミステリ」を求めている人にはイチ推しです。そんなピンポイントな作品を所望する人がいるかどうかはさておき。ややネタバレになりますが、解決編は悲劇を通り越してもはや滑稽劇(ファルス)なので笑うしかない。

・拍手レス。

 うたわれ新作出るんですね。知らんかった。羊殺しの巫女たちはまだ読めてないので楽しみです。杉井光氏は良い小説書きますよね。世界でいちばん透きとおった物語はトリックが素晴らしく芸術的ですらありました。世界2はトリックは普通でしたが、物語が面白く前作より楽しめました。特に最近一番面白かったのが、天嬢天華生徒会プリフェイズで、一見普通のラノベに見えて意外なトリックが仕込まれていて、読み終えた時とても感動しました。

 『白への道標』は前作『モノクロームメビウス』の販売が不振だったから「モノメビの続編だけどそこは意識させないようにしつつ、うたわれのシリーズ最終作として盛り上げたい」という無茶な思惑から宣伝方針が撚れて、そもそも話題にならなくなっている印象。ロスフラの方には「ティセリリ」というルルティエの娘や高齢のハク、通称「オジハク」がチラッと出てきたので、二白以降の構想もあったのでは……という気もしますが。杉井光は例の騒動もあって取り扱いに悩む作家ですが、文章や内容自体は好きですね。『天嬢天華生徒会プリフェイズ』はイマイチどんな内容か伝わらなくてパスしちゃいましたが、チェックしてみます。


2026-02-28.

・延期していた『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』、公開日が8月28日に決まって「やっとか……」と嘆息する焼津です、おはようございます(今日の更新分の推敲に時間が掛かり過ぎて朝になっちゃった)。もう延期だけはせんでくださいよ! ホンマ、勘弁してほしいわ。

 延期に次ぐ延期の末、やっと具体的な日程が明らかになりました。シャフト、信じていいんだよな……? この発表で「半年も延期する」と捉える人がいる一方、「半年程度で済むのか?」とまだ懐疑的な人もいて、このへんに新旧シャフトファンの信頼度の差が表れていると思います。古いオタクは総監督「新房昭之」の「マスターテープ放送5分前納品」という伝説を覚えているというか忘れられませんからね。昔のシャフトは制作スケジュールがボロボロで、本放送でヒドかった作画をDVDやBD発売時に修正するのが常だったんですけど、その修正も間に合わなくて頻繁にDVDやBDを延期していました。具体的なタイトルを挙げると『化物語』とか『夏のあらし!』、『ダンス イン ザ ヴァンパイアバンド』です。劇場公開作品だった『傷物語』も、当初は「2012年公開予定」だったのが延びに延びて、結局2016年に第1部と第2部が封切り。翌2017年に第3部が公開されてようやく完結しました。なので、スケジュールの進行が遅れまくっていると「俺たちのシャフトが帰ってきた!」と皮肉を言いたくなる気持ちも湧いてきます。仕方ない。

 公開日を決めた以上、さすがに映画本編はもう完成しているものだと思いたい。いえ、シャフトなら「まだ〇割未完成」とか全然ありえますが……この体たらくなので「初日鑑賞は避ける」って人が出てきてもしゃーないと思います。私は最悪『ガンドレス』みたいなのが出てくるかもしれない、と覚悟をキメて初日に観に行くつもりです。

『うたわれるもの ロストフラグ』、4月23日にサービス終了。約6年半の歴史に幕を引く。

 遂にこの日が来たか……という感じ。サービス開始日(2019年11月26日)からやっていて、「キャラが魅力的」「ストーリーが面白い」「デイリーミッションが軽くて3分もあれば終わる」から続けていたけど、ひたすらインフレしていくゲーム部分は本当につまらなかった。エンジョイ勢の私はエンドコンテンツから目を背けてテキトーに流していたけど、課金も辞さず真面目にガチろうとする人ほど失望して去っていく感じでした。

 『うたわれるもの』という2002年にエロゲーとして発売されたソフトを皮切りにして始まったシリーズのソシャゲで、「四方が謎の霧によって閉ざされた土地」(バラしてしまうと正史の世界から消滅して異次元に飛ばされた九州地方)を舞台に、様々なうたわれキャラが時空を超えて集結するという……有体に言ってしまえば「FGOライクな話をプリコネっぽいオートバトルでやったゲーム」です。キャラは多彩だけどバトルがあっさりインフレし、「とにかく最新のキャラを編成しておけば何とかなる、昔のキャラは周年限定のユニットだろうと一部を除き使い物にならない」という、よくあるダメなソシャゲになってしまった。あと人気キャラが偏っているので、イケメンか巨乳かロリの衣装違いばかりが実装される。ゲンジマルみたいな渋いキャラはノーマル版のみで衣装違いは存在しない。個人的に好きなロスフラオリジナルキャラは「ナトリイトリ」と「スズリ」で、両方とも全種類のユニットを引けていたおかげでモチベを保てたけど、ガチャは普通にシブいから怒ってやめる人が後を絶たなかった。ガチャの当たり演出がどんどん増える謎のゲームでもあったな……ブルアカは当たり演出が地味すぎるのでこういうところはロスフラを見習ってほしいな、と思ったりするほど凝っていました。

 メインストーリーは面白いけど遅々として進まないせいで焦れた人も多い。去年の4月にやっと第一部が完結しましたけど、サービス開始から5年半近く経っていたので感動というより「やっと終わったか」という虚脱感の方が強かった。そう考えるとサービス開始から1年半程度で第一部を終わらせたFGOは優秀だったな(なお第二部開幕から完結までに要した時間は約8年)。「第一部完結」と謳っておきながら第二部がいつまで経っても始まらないので、この時点でもう「そう長くないな」と察していましたが……去年の6周年イベント「見えるは夜明けの兆し」がこう、いかにも「第二部ではこんな話をやる予定でした」ってムードがぷんぷん漂うダイジェスト感溢れるシナリオで……「ああ、このままサ終に向かうんだろうな」と覚悟するしかありませんでした。

 サ終後は使い切れなかった有償石の払戻しが始まります。4月23日(木)午後2時から、7月13日(月)午後2時までの12週間。払戻し申請をするためにはアプリから手続きする必要がありますので、アプリを削除しないよう注意する必要がある。私も何年か前に課金したな……と確認してみたら、あったあった。使い切れなかった余りが。240円分です。うーん、この額なら申請する手間を考えると使い切っちゃった方がいいかな。ファンの中には「オフライン版を出してくれ」と要望する人もいますが、『メギド72』の時のバタバタを見ればわかるようにオフライン版を出すのも結構手間が掛かるので、サ終告知時点でオフライン対応に関する言及がない場合は望み薄と思った方が良いかな。下川社長は「できる限り前向きに検討していきたい」と語っていますが……とりあえず、期限までに溜まっているキャラストを読み切らないとな。

 いろいろ投げっぱなしになってしまった要素もあるが、そのへんは諦めるしかない。私にとって一番大きな心残りは「悪漢ラクシャイン」の真相が陽の目を見ないまま終わりそう、ってことですね……ラクシャインとは一番最初の『うたわれるもの』に名前だけ出てきたキャラで、「悪漢ラクシャイン!」と罵られているけど本当に悪い事をしたのかどうかは不明な野郎です。ロスフラで初めてビジュアルが公開され、ストーリーにもチラッと出てきましたが、ユニットとしては実装されなかった。何かしら彼について掘り下げるようなイベントが来るのではないか、と期待していたが、結局端役のままで真に「悪漢」だったのかどうか明らかにならず、モヤモヤした気分でサ終の日を迎えることになる。菅宗光(む〜む〜)、せめて設定だけでも教えてくれ……ラクシャインはいったいどんな奴だったんだ?

 シリーズ第2作『うたわれるもの 偽りの仮面』(2015年発売)の時に「ゲームをスマホからとりもどす。」と挑発的な広告を打ってから10年以上の月日が流れた。取り戻すどころか自らスマホゲーに与して呆れられ、そのスマホゲーすらも不振でサ終の刻を迎えようとしているのだから時代の変化に遠い目を禁じえない。なお『うたわれるもの』シリーズ自体は今年5月発売予定の最新作『うたわれるもの 白への道標』で完結するとのことです。少なくとも菅宗光(む〜む〜)がシナリオを書くのは『白への道標』が最後になりそう。詳しいことはこちらのインタビュー記事をお読みください。下川社長が「水面下で動いている『うたわれるもの』関連のプロジェクトはありません」と言い切っている。

 「遂に完結か〜、でもうたわれって昔やってたアニメしか知らないんだよな」という人向けに軽く解説しますと、2006年にやっていたアニメはPS移植版『うたわれるもの 散りゆく者への子守唄』をベースにしたもので、剥がすことのできない白い仮面を付けた記憶喪失の男「ハクオロ」が主人公を務めていました。シリーズ第2作『偽りの仮面』は1作目の十数年後、ハクオロたちが作った國「トゥスクル」とは別の國「ヤマト」を主な舞台にして、仮面を付けていない記憶喪失の男「ハク」が旅の薬師「クオン」と冒険を繰り広げる。ネタバレですがうたわれの世界は旧人類(オンヴィタイカヤン)が滅んだ後の地球でして、地理的にトゥスクルは山形県のあたり、ヤマトはロシア東部に位置します。名前のせいで混乱するけど『偽りの仮面』以降の舞台はだいたいロシアなんですよね。あと辻褄合わせが面倒なのか作中に具体的な年表が出て来ないので正確な時間経過がわかりにくい。「無印の十数年後」とわかるのも、クオンがハクオロの娘だからです。エロゲー版ではいろんなヒロインに種を撒いていたハクオロさんながら、彼の子供として確認されている存在はクオンともう一人「ヒミカ」のみ。ヒミカはハクオロさんの最初の妻「ミコト」が産んだ娘で、トゥスクル婆さんやエルルゥ・アルルゥ姉妹の遠い祖先に当たります。つまりトゥスクル婆さんやエルルゥ・アルルゥ姉妹にも、かなり薄くなったとはいえハクオロさんの血が流れているわけで……「遠い子孫とはいえ、さすがに直系の娘がハクオロさんの子を産むのはマズい」という理由でエルルゥはメインヒロインなのにハクオロさんの子を産んだかどうかに関してはボカされている。

 あ、「直系」の部分について一応補足しますと、うたわれの新人類(デコイ)は子供が必ず母方の形質を受け継ぐので、民族的には男子よりも女子が優先される。たとえばゲンジマルという超強い戦士がいまして、彼はメチャクチャ強い戦士ばかり生まれる「エヴェンクルガ族」に属するんですが、ここで伴侶もエヴェンクルガの女性を選ばないと「エヴェンクルガ族特有の『猛烈な強さ』という形質」は継承されません。しかしゲンジマルは「シャクコポル族」という「見た目は美しいけど肉体的には物凄く弱いせいで愛玩奴隷にされたりと被差別的な扱いを受けている民族」の女性を愛した結果、敵に寝返るような真似までしている。その女性とは添い遂げて、ヒエンとサクヤっていう孫の兄妹がいるんですけど、妻がシャクコポル族だったためエヴェンクルガ族の形質は一切受け継がれず、二人ともひ弱。戦う能力がないせいもあってサクヤは割と悲惨な目に遭っています。ロスフラではそのへんをフォローするシナリオもあった。

 シリーズ3作目『二人の白皇』は『偽りの仮面』の続きで、作中の時系列だけ見ればこれがシリーズの完結編と見做して構わないでしょう。ロスフラでは『二人の白皇』の後日談に当たるエピソードもチラホラあったが、本格的に「『二人の白皇』の続き」をやろうとする気配はない。『うたわれるもの斬』や『ドカポンUP! 夢幻のルーレット』、『義賊探偵ノスリ』(これはDL販売限定でパッケージ版が出てないから意外と知らない人が多い)といったスピンオフ作品やソシャゲのロスフラを除いた、「本編」とも言うべきうたわれCSゲームの第4弾が『モノクロームメビウス 刻ノ代贖』で、シリーズ最終作『白への道標』はこの続編に当たります。

 モノメビはタイトルに「うたわれるもの」が入ってないせいでファン以外は混乱しますが、れっきとした正統シリーズ作品である。『偽りの仮面』に登場したキャラ「オシュトル」が主人公で、彼の若き日を綴る――平たく言えば過去編です。妹であるネコネの年頃からして数年前、多くてもせいぜい10年前かな? 無印よりは後の話です。ムネチカやミカヅチも登場するが、まだ「ヤマト八柱将」に選ばれる前。ライコウとかヴライは既に八柱将になっています。先代の八柱将も出てくるのでヤマト好きには嬉しいが、言い換えるとトゥスクル好きにとっては見所が少ない。ストーリーが『偽りの仮面』に繋がる前に終わったので『白への道標』はその続きを描き、物語が『偽りの仮面』と連結したところで終わる。ぶっちゃけモノメビが「ヤマト/Zero(前編)」で『白への道標』が「ヤマト/Zero(後編)」って感じです。もう「うたわれるもの」に「古いIP」というイメージが染みついてしまったので、新しいプレーヤー層を引き込むためタイトルを変えて心機一転、起死回生の仕切り直しを図ったのですが……ハッキリ言って売れませんでした。過去最高額の開発費を投じ、宣伝も兼ねて『二人の白皇』のアニメ版も放送する背水の陣を敷いていたのに。これが2022年11月のこと、ロスフラは3周年を迎えていた頃です。このあたりからうたわれ全体が手仕舞いの方向へ舵を切ることになったんでしょうね。モノメビはこれまでのイメージを刷新すべく甘露樹でもみつみ美里でもない第三の原画家を起用しましたが、これも旧来のファンには不評だった。「甘露もみつみもいないモノメビは本編じゃなくてスピンオフ」と主張する過激派もいます。こういった事情も関係して、『白への道標』をシリーズ最終作として受け入れられない古参も結構いる。そういう古参たちの気持ちを慰撫する場の一つがロスフラだっただけに、サ終の喪失感がいっそう深まるわけだ。

 さよなら、ロスフラ。オフライン版も出るといいね。でも「ゆゆゆい」みたいにCS移植で全部合わせて8万円とかだったらさすがに購入を躊躇うよ。差し当たってシリーズ最終作という触れ込みの『白への道標』は買うつもりです。

図書館お仕事コメディ「税金で買った本」ドラマ化&TVアニメ化、ドラマは今夏NHK総合で(コミックナタリー)

 私がヤンマガWebを利用するキッカケになった漫画です。今月出た最新刊が18巻なのでストックはだいぶある。「題材的にアニメよりもドラマ向きかな〜」と思っていたけど、まさか両方とは。ヤンキーながら本好きで好奇心旺盛の少年「石平紀一」が、図書館でバイトしながら「図書館にまつわるアレコレ」を追及していく。たまにちょっと長めのエピソードもあるけど、基本的に一話完結方式でサクッと読めるのが嬉しい。概ね「図書館あるある」みたいなノリなので気軽に堪能できます。図書館のシステム面についてとか、今抱えている課題など、社会派めいたエピソードがある一方で「たまに訪れるクソ利用者にどう対応すべきか」というある意味でバトル物みたいな展開があってワクワクする。だいぶ長くやってるからクソ利用者だけでTier表が作れそうなんだよな……キャラクターの豊富さも魅力の一つなので、読めば読むほどハマっていきます。私が好きなのは「早瀬丸小夜香」と「朝野亜沙子」、「小池芹菜」と「卯木小春」あたり。話の性質上、登場が一回こっきりの図書館利用者も多いからそこまで語り出すとキリがない。「図書館」、ひいては「本」に興味のある方にオススメしたい。置き場に困って紙の単行本は途中で買うのやめたけど、そろそろ再開しようか、電子に移行しようか迷う。私も最近は電子書籍がメインになってるけど、「やっぱりこれは紙で読みたいな」って本も沢山あるんですよね……。

『グリザイア 集結の百果』制作決定!

 終わるゲームあれば始まるゲームあり……って、グリザイア、またソシャゲやんの!? 懲りないというか何というか。

 グリザイアは今年で15周年、記念特番でこれまでの歩みを振り返っているので時間がある方は見て貰いたいが、「1時間半もある動画はちょっと……」という方に掻い摘んで説明します。“グリザイア”シリーズはフロントウィング設立10周年企画として2010年に発表され、翌年2011年にシリーズ第1弾となる『グリザイアの果実』がリリースされました。訳アリの少年少女たちが集う特殊な学園を舞台にした、まるでアクション映画のような話です。2014年に放送されたTVアニメの方で記憶に残っている方が多いのかもしれない。第2弾『グリザイアの迷宮』および第3弾『グリザイアの楽園』、この3部作は「風見雄二」という少年を主人公にした物語であり、『楽園』で一旦話を区切りました。

 2017年、新たなプロジェクト『グリザイア:ファントムトリガー』がスタート。舞台は前作と同じ「美浜学園」だが、数年の月日が経過しており、学園もいろいろと様変わりしている。こちらは去年(2025年)にアニメが放送されていましたね。ゲームは分割形式の9部作で、2022年に完結。2020年にソシャゲ企画として『グリザイア クロノスリベリオン』が始まっていましたが、あまりにも時代遅れな出来だったため、1年も経たずサービス終了に追い込まれた。未完に終わったストーリーはパッケージ版で畳まれています。クロノスリベリオンは時系列的にファントムトリガーの途中。PTのキャラも出てくる。そして、『楽園』以降消息不明だった初期3部作のキャラたちが実はコールドスリープしていました! という強引な設定で当時の姿のまま再登場する。今回の新作『集結の百果』ではコールドスリープ設定がなかったことになるのか、それとも引き継ぐことになるのか?

 PVでは「風見雄二の娘」と名乗るヒロインが次々と登場する。「榊 由真」「周防 優羽姫」「松嶋 いちる」「入巣 星莉菜」「小嶺 幸穂」「風見 一二三」……いや、ヒロイン全員と子供作ったんかい! サラッと実の姉が混ざってるんですけど!? スルーされるJBの気持ちも考えろ! とツッコミを入れたくなりますが、グリザイアの世界は微妙に科学技術が進歩しているから雄二とヒロインズの遺伝子を勝手に掛け合わせた試験管ベイビーの可能性もあります。子供を急速成長させる技術も確立してるんで、見た目の割に全員ひと桁年齢だったりするかもしれない。まぁだとしても風見一二三に関しては超インブリードなわけですが……あらすじによると「自称・風見雄二の娘」たちは20年後の未来からやってきたと主張し、天音たちを「母」と呼ぶ。産んだ覚えのないクソデカい「娘」に戸惑う面々だったが……みたいなストーリーの模様。初期3部作の時点ではまだ存在しなかった「SORD」(雄二は「CIRS」という秘匿組織に所属していたが『楽園』での大騒ぎの末、組織の存在が世界中に露見したため刷新。新たに「SORD」という組織が発足した、という流れ)があるらしく、やっぱりコールドスリープ設定が引き継がれるのか?

 DMM GAMESでやってた『グリザイア 戦場のバルカローレ』もあっさりサ終してしまった(確かこちらも1年保たなかった)し、「今度は長続きするといいですね」って感じです。それにしても「ヒース・オスロ」と名乗る人物が登場するようでウンザリしました。ヒースは風見雄二を過酷な世界に突き落とした男であり、初期三部作ではラスボスに当たる存在だった。「海上油田基地爆発事件」で死亡し、もう二度と出て来ない……はずなのに、クロノスリベリオンではシミュレーターによって再現され、『集結の百果』では復活? するみたいで「どんだけ擦り倒すねん」と言いたくなる。姿は風見雄二そっくりらしいので、ヒースの記憶を移植された雄二のクローンか何かですかね。

作家のダン・シモンズ、死去

 好きな作家だけにショックだ。SFやスリラーを得意とする作家で、日本だと『ハイペリオン』4部作(『ハイペリオン』→『ハイペリオンの没落』→『エンディミオン』→『エンディミオンの覚醒』)が有名。遙か未来の火星で「神々」がトロイ戦争を再現すべくアキレウスやヘクトルなどの英雄を蘇らせる、というギリシャ神話SF『イリアム』(および続編にして完結編の『オリュンポス』)は「アキレウスが神々の叛旗を翻し、ヘクトルと共闘する」アツい展開を見せるのでオススメ。ぶっちゃけFGOの第二部第五章をやったときはコレを思い出しましたね。

 SF以外だと『殺戮のチェス・ゲーム』という「血の代わりに精神を啜るマインド・ヴァンパイア」が人間を操って殺し合わせる大長編ホラーがあり、出たのがもう30年以上前なので今見ると価格の安さにビックリする。この当時は円高(1ドル100円前後)だったとはいえ、560ページくらいある海外翻訳の文庫本が本体価格700円弱で売られていたんだよな……今や300ページ弱のローダン・シリーズ新刊が本体価格1520円ですよ。今この厚さの本を買おうとしたら2000円超えるのは当たり前、下手すると3000円近いというか去年出た同じくらいの厚さの本が本体価格2500円ですよ。ハードカバーの本と間違えたかと思ったわ。「ダン・シモンズって大長編作品が多くて尻込みしてしまう」という人にオススメなのが『鋼』。刑務所帰りの元私立探偵「ジョー・クルツ」が激しいアクションを繰り広げるスリラーで、『雪嵐』という続編も出ています。俗っぽすぎてあまり売れなかったのか両作とも文庫化していませんが、今は電子版が安く売られているので買いやすい。原書だと3作目として "Hard as Nails " というのも出ているが、未翻訳です。正直、マニア人気は高いけど日本で売れるタイプの作家ではなく、翻訳されていない作品も結構あります。そのうち再評価の波が来るかな、と期待していましたが、まさか訃報の方が先に届くとは……R.I.P。

アニメ映画『超かぐや姫!』1週間限定上映を撤廃。連日即売・満席の大反響を受け、期間延長と劇場拡大が決定。2週目より『ray』MVを同時上映(ファミ通.com)

 「着席率96%」というイカれた数字を叩き出し、連日満席にして動員ランキングの5位まで食い込んだ(公開館数30館以下の映画を対象にしたミニシアターランキングでは1位になってる)んだから、これで上映期間が延長されなければ非難囂々だっただろう。『超かぐや姫!』はネットフリックスが全部お金を出して作ったアニメなのでネトフリ側が「うん」と頷かなければ本当に一週間で終わっていたかもしれないが、「繰り返し視聴したくなるような作品」なので劇場で観る人が増えても問題はない、と判断したのかな。ファンからすれば「判断が遅い!」と頬を張り飛ばしたくなるかもしれないし、「最初から全国300館くらいの規模で公開しろよ」と愚痴りたくなるかもしれない(正直私も「さっさと地元の映画館でやってくれよ」とぶーたれている)。世間では「着席率は高ければ高いほどスゴい」という風潮があり、確かにスゴいっちゃスゴいんだけど、だいたい50%を超えると混雑が甚だしくなってチケットの購入を諦める人が出てくる(「地方の映画館=空いているのが常態」ゆえ都市部だと平均化した数字以上の混み具合になる)からプロデューサー的にはともかくプロモーター的には「公開規模を見誤った」ということで、どちらかと言えば不手際の類です。が、そもそもこの作品は「キャリアはあってもネームバリューがない監督のオリジナルアニメ映画」で、上映時間が142分もあるんです。これをハナっから300館公開は無理があるっつーかバクチが過ぎます。

 比較的ネームバリューがあると考えられていた「細田守」監督は『竜とそばかすの姫』の121分、興収100億超えを三連続で達成したレジェンド「新海誠」監督でも『すずめの戸締まり』の122分が最長で、130分を超えるアニメ映画なんてジブリや鬼滅クラスでなきゃそうそう大規模公開なんて出来ません。上映時間が長ければ長いほど「1回の上映でシアターを占有する割合」が大きくなるため、劇場が嫌がるんです。あれだけ人気が安定しているコナン映画でも120分以上の作品なんてありません。日本最高の興収を誇る鬼滅の無限列車編も、公開前はそこまで期待されていなかった(事前に興収400億超えを期待する人がいたら「頭おかしい」と思われる)から117分と2時間未満に収めていました。しかし、400億以上という「前代未聞の実績」を叩き出したことで劇場も文句を言えなくなり、無限城編の第一章は155分、2時間半を超える大規模公開映画としては異例のボリュームに膨らんだ。アニメじゃないが『国宝』も174分と3時間近くで、映画館サイドとしてはあまり歓迎しておらず「まぁ文化事業の一環として受け入れましょう」くらいの態度だったけど、途轍もないロングランヒットで200億円以上という実写邦画史上最高の興収を打ち出したため「長尺映画もアリだよね」と掌を返した。とにかく、何らかの実績がないと「142分のオリジナルアニメ映画」を大規模公開するだなんて土台無理なんです。以前も書いたが、ネトフリの作品は『バブル』の大規模公開でコケたという「負の実績」がありますから尚更。

 『超かぐや姫!』がネトフリで配信される前に受けた監督のインタビューという貴重な記事があるので是非読んでもらいたいのですが、この中で監督は当初プロデューサーから「90分でエンディング込みにして」と要請されて、コンテの段階では「まあ見てろって」と90分以内に収めるつもりだったが、花火のシーンを描いてるあたりで「ああ、無理ですね」となって142分まで増やしてもらえるように上と掛け合った――と語っています。これが普通の企画なら「ふざけるな」と一蹴されて終わり(私見ながら、細田監督の『果てしなきスカーレット』は上映時間が111分で、「もっと時間を増やしてほしい」と上に掛け合ったけれど断られたんだと推測している)ですが、ネトフリ単独出資だから融通が利いたのか、交渉は成功しました。「長いと怒られることもありました(笑)」とコメントしているから、快諾されたって雰囲気でもないですが。そりゃ90分が142分になったら、単純に考えても制作費は1.5倍以上になるだろうしな……劇場公開路線を捨てたからこそあの長さが実現でき、「あの長さ」ゆえに『超かぐや姫!』を好きになった視聴者たちが捨てられたはずの劇場公開路線を復活させるという奇跡が起こった。

 美談ではあるが、右往左往するハメになった配給や劇場の関係者からすれば「こんなん事前に予測できるか!」というのが本音でしょう。ネットフリックスは「劇場公開って面倒臭いな……」と思っている節があり、広報にもあまり力を入れていない。Netflix JapanのXアカウントの投稿でも『超かぐや姫!』劇場公開に関してまったく触れておらず公式告知のリポストすらしていない、「ネトフリはマーケティングの一環としてあえて小規模公開を選んだ」と分析している人もいますが、それならもっと宣伝しているはずだし単に興味がないんだろう。今回特に頑張っているのは配給の「ツインエンジン」だと思います。前回書いた通り、ツインエンジンの代表はかつてフジテレビのアニメプロデューサーだった「山本幸治」。『超かぐや姫!』の企画自体、山下監督が「こういうアニメやりたいんですよね〜」みたいな希望を山本社長に話して「オリジナルをやってみますか」とオファーされたことから出発しています。「開発中に『ONE PIECE FILM RED』が公開されたり、『NEEDY GIRL OVERDOSE』が話題になったりして、これらの作品に影響を受けた部分もありました」とインタビューで言及されているから、最低でも2021年にはもう企画に取り掛かっていたようですね。

 期限を撤廃しているので、上映がいつまで続くかは観客の入り具合&劇場側の事情によります。ただ、用意が間に合わないのか入場者特典は復活しません。追加された劇場は8つ、ほとんど「Tジョイ」とか「イオシネマ」の系列。映画館は、たとえば東宝だと「TOHOシネマズ」、松竹だと「MOVIX」や「ピカデリー」があって、Tジョイは東映の陣営に属します(Tは東映のT)。系列劇場とて別に他の会社の映画を上映しないわけではないが、当然ながら自社および親会社が配給する作品を優先するので、TOHOシネマズやMOVIXなどは既にスケジュールがギチギチに詰まっている。だから急に話題作が生えてきても対応しづらい。一方、イオンシネマを運営する「イオンエンターテイメント」は頭を押さえる映画会社が存在しないから身軽に動けるという利点がある。歴史的な経緯を辿っていくとワーナーがある(旧名が「ワーナー・マイカル」)のですが、ワーナーはもう劇場配給から撤退するし無視していいでしょう。Tジョイも東映の子会社ながら自身も小規模の配給業務を行うことがあり、他の系列劇場に比べれば独立性が高い。去年「わたなれ」のネクストシャインを配給したのもTジョイです。だからこういう、「ネットで話題になっている小規模公開映画」は小回りの利くTジョイとかイオンシネマの系列で公開されることが多いわけだ。2月27日にはドラえもんの新作、3月6日にはウィキッドの続編、そして4月10日にはコナンの新作が来るので、入れられるとしたら3月の中旬か下旬くらいしかもうタイミングがないんですよね。とりわけ4月になると各劇場はコナン・シフトを敷くことで手一杯になりますゆえ。地方民としてはただただ歯噛みしながら地元での公開を祈るしかない。たった2館でのスタートだった『カメラを止めるな!』や『侍タイムスリッパー』も拡大公開の際に地元でやってくれたんだ、きっとかぐやも来てくれるはず。

 なお、2018年公開の『カメラを止めるな!』は最終的に31.2億円、2024年公開の『侍タイムスリッパー』は最終的な興収こそ不明だが10億円を突破していることは公式が喧伝しているので確実。アニメで「公開規模は小さかったけど興行収入がスゴかった映画」として特記されているのは『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』、通称「ヒプマイの映画」です。2025年2月21日に全国85館で公開され、4月に10億円、10月に25億円を突破し、「100館以下の公開館数で25億円を突破した日本初の作品」となった(カメ止めは拡大公開で全国200館以上になったのでこの定義に該当しない)。観客がスマホで投票し、多数決で勝利チームが選ばれてエンディングも変わるという「ただ観るだけではなく参加する双方向(インタラクティブ)映画」で、周回が前提のかなり特殊な作品であったが、快挙であることに変わりはない。興行収入を語るうえで「公開規模」というファクターは外せず、どんなにネットで話題になっていたり熱狂的なファンが付いていても公開規模が小さければ数字は伸びません。私が「地元でやってないから」という理由で隣県まで遠征した(しかも2回も)アニメ映画『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』も興行収入は3億円超。しかもこれ、2021年6月4日に公開して、何度かリバイバル上映を挟んだ2022年12月9日にやっと到達した数字です。公開当時はコロナ禍の真っ最中で、上映館数を増やすのも難しい時期でしたからね……正確な上映館数は忘れてしまったが、100館行ってなかったと思う。同日公開の『映画大好きポンポさん』も59館という小規模公開(後に100館以上へ拡大)で、ネット上で話題になった割に興行収入は1.7億円程度でした。細田守の名前が売れるキッカケになった『時をかける少女』(2006年)も僅か6館の公開から100館以上に拡大したシンデレラ映画ながら、最終的な興収は2.6億円で3億にも届かなかった。10億を超えたのは次回作『サマーウォーズ』です。

 脳を焼かれたファンが劇中のセリフを真似て「こんな素敵な映画ないよ!」と叫んで布教した『トラペジウム』は上映館数200以上となかなかの規模だったが、週末映画動員ランキング初登場10位で、ヒットの規模が小さいため正確な数字もわからず興行収入は1億前後と予想されています。正直コケているんですよね……根強い人気があるせいでたまにリバイバルされてますが。アニメ映画は大きくわけて「1.オリジナル」「2.小説や漫画、ゲームなどの原作付きで非TVシリーズ」「3.TVシリーズからの劇場化」の3種類あり、トラペは2.に該当します。原作の知名度によりけりですが、興味持った人を映画館まで導くのが難しく、なかなかデカいアタリは出ない。ヒット作が多いのはTVシリーズを先に放送しておくことで劇場への動線を築く3.です。コナンや鬼滅など、100億以上を狙える層はほとんどここに属する。1.は、ジブリとかディズニーとかピクサーとかの超有名スタジオ、あるいは細田守や新海誠など「準ジブリ級」と言われるぐらい有名監督が手掛けた作品でもなきゃそうそう当たることはない。『AKIRA』で有名な大友克洋の『スチームボーイ』は10億超えてるが、制作が遅延しまくった影響もあって費用が嵩んであり、20億円以上の製作費が掛かっているため普通に赤字でした。海外のマニアが高く評価する今敏監督作品も興収はそこまで多くなく、2006年公開の『パプリカ』が8週かけてやっと1億円突破、海外の興収を合わせても3億前後に留まる。

 超有名スタジオが制作したわけでも「準ジブリ級」の知名度を有する監督が手掛けたわけでも膨大な信者を抱える宗教法人が作ったわけでもないオリジナルアニメ映画で、日本国内の興行のみで10億円突破した作品は先述した『スチームボーイ』以外だと今のところ『心が叫びたがってるんだ。』(最終11億)と『プロメア』(最終15億)だけです。「ここさけ」は『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』を手掛けた「超平和バスターズ」(長井龍雪・岡田麿里・田中将賀のトリオ)のオリジナル作品で、「あの花」の劇場版が10億円突破していたこともあり、事前の期待が高かった。そのため上映館数も多く大台に乗ることができたが、超平和バスターズの人気はここがピークで次回作『空の青さを知る人よ』は最終6億ちょっととほぼ半減しました。『プロメア』はグレンラガンやキルラキルを制作した「TRIGGER」のオリジナルアニメ映画で、元「ガイナックス」の今石洋之が監督をしている。マニアたちの注目度は高かったが一般層における知名度は低く、興行的に苦戦するかと思 われたが口コミで伸び続けていった。ちなみにトリガー制作のアニメ映画は、オリジナルではないけど『グリッドマン ユニバース』が7億くらい行ってます。

 こうして見ると、『君の名は。』で大規模公開デビューしていきなり250億円という記録を叩き出した新海誠監督がいかに異常だったかわかってもらえると思います。2016年に『君の名は。』が公開されて以降、二匹目のドジョウを狙って「『君の名は。』っぽいプロモーションを実施したアニメ映画」が雨後の筍の如く矢継ぎ早に公開されたが、比較的ヒットしたと言えるのは岩井俊二の同題実写作品をアニメ化した『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』(最終15.9億)くらいで、他は軒並みパッとしなかった。ベストセラー小説を原作にした『君の膵臓を食べたい』のアニメ版も5億円程度、35億超えた実写版に比べたら正直見劣りする。というか『君の名は。』以降、『きみの声を届けたい』とか『きみと、波にのれたら』とかやたらタイトルに「君」ないし「きみ」というワードを入れた映画が散見されるようになったんですよね。中でも「ヤバい」と語り草なのは2020年公開の『君は彼方』。

 この映画、「瀬名快伸」というクリエイターが中心になって制作されており、監督・原作・脚本・製作すべてが瀬名快伸――最近で言うと『銀河特急ミルキー☆サブウェイ』みたいな作品なんです。瀬名は『君は彼方』を制作・公開するために「2億円弱くらい借りました」とインタビューで語っており、崖っぷちの環境にありながらその自信満々な振る舞いに「最低でも興行収入5億は行かないと完済できないじゃん……」って戸惑いと畏怖の念を抱いたのも束の間、いざ蓋を開けると着席率は5%前後、全国89館というそこそこの公開規模ながら動員ランキングはTOP10圏外。鬼滅の無限列車編が公開された翌月で、業界の話題が鬼滅一色だったこともあって「時期が悪かった」というのもあるが、それを加味してもこれは……そもそも「2億円弱」って、全部が純粋な制作費として使えたわけじゃないだろうから、劇場用アニメ映画としてはかなりギリギリの予算である。今敏の『パーフェクトブルー』は「制作費が9000万円だった」という「伝説」が残っているものの、『君の名は。』以降のアニメ映画の「製作費」に関しては5〜10億円が相場だと言われています。動員がミニマムなため細かく推計するのも困難であり、興行収入は恐らく1000〜2000万円の間と思われる。仮に2000万円だったとしても劇場の取り分が半分で、残った1000万円のうち配給が10〜20%持って行くので多く見積もったとしても入金額は900万円……2億円弱の借金がほぼそのまま残るという恐ろしい事態になった。その後監督は消息不明に陥っており、今どこで何をしているのか、杳として知れません。いえ、原作を手掛けた漫画が去年公開されたりしてるんで、別に亡くなったとかじゃなくただ単に目立つところへ出て来なくなったってだけなんですけども。たぶん借金返済で忙しいんじゃないでしょうか。

 なんか筆が滑って最後はホラーになっちゃったが、そんなわけでネームバリューのない監督が手掛けたオリジナルアニメ映画、それもミニシアターランキングに載るような規模で公開された作品としては異例のヒット作となっているわけです、『超かぐや姫!』。そもそも「ミニシアターランキングに載るような規模」だと数字出ないことがほとんど。全国400館弱の規模で公開した『果てしなきスカーレット』が公開4日間で2.7億だったのに対し2.9億だから、上映規模が全然違うのに果てスカを凌駕したことになる。いえ、『超かぐや姫!』は特別興行扱いで劇場側の値引きがペア割以外適用されず、ほとんどの観客が2200円で鑑賞したという事情があるから客単価も上がっていて、純粋な動員数で言えば果てスカの方が上なんですよ。果てスカの公開4日間の動員数が約17万人であるのに対し、超かぐは約15万人。公開規模に20倍以上の差があることに目を瞑れば「接戦を繰り広げている」といっていい。果てスカは2025年11月21日公開、超かぐは2026年2月20日公開と3ヶ月程度しか空いておらず時期的には近い作品同士だから、映画関係者、特にプロモーターはこの2つの興行を真剣かつ徹底的に比較・分析することになるでしょう。

 ちなみに27日以降の公開分では現在Youtubeで公開されている「ray」のPVが本編終了後に上映されるとのこと。あのPVは実質的なエピローグに相当するんで、本編視聴後に観ることをオススメします。公開から時間が経って過密状態も少しずつ解消されつつあるようですし。現在の興収累計は5億円超といったところ。普通なら上映規模が全国100館くらいの作品でも「健闘している」と言われる数字だ。今年公開される映画はいろんな意味で『超かぐや姫!』と比較されることになるだろうから、広報担当は大変だな……いや、むしろチャンスなのか? 逆境にこそ好機は廻る、の精神でGOだ。

映画『魔法使いの夜』2026年に公開決定。ufotableプロモーションリールにて明らかに。4月に『テイルズ オブ』シリーズ30周年関連の情報公開(ファミ通.com)

 うおお! まほよの映画、今年公開! いきなりビッグニュースが舞い込んできて興奮を隠せない。『魔法使いの夜』は奈須きのこが『空の境界』の前に書いた小説が大元で、TYPE-MOONの社内には製本化した状態で置かれているから「関係者にしか読めない幻の作品」とかつて言われていました。しかし、ゲーム化が決まって2012年にPC版として発売……えっ、もう14年前なの? 時が経つの早過ぎない? 山の上の洋館には、魔女が棲んでいる――そんな噂が囁かれている「久遠寺邸」を舞台に、3人の男女が共同生活を送るストーリーです。Fakeの1話でモヒカンのにーちゃんがチラッと言っていた「キッツィーランド」も出てくる。テキストはほぼ全面的に書き直しただけあって、らっきょの頃にあった硬さもなく、かなり読みやすい。月姫やFateに比べると規模はやや小さく、サクッと終わるが当時のノベルゲーの限界に挑んだような演出の数々には圧倒されました。あの演出を手掛けていたスクリプターが「つくりものじ」、現在は消息不明のスタッフです。退社したという話は聞かないが、在籍しているならTYPE-MOON作品のスタッフロールで確認できるはずなのに、まほよ以降は名前を見つけられない……「改名した」という説もありますが、まほよのフルボイス移植版が出るまで10年かかったのはつくりものじがオリジナルツールで打ったスクリプトを変換するのに手間が掛かったため、とも考えられており、結局「消息不明」としか言いようがありません。

 さておき、まほよは三部作の第一部で、まだ公開されていない第二部と第三部がある――ということはかなり前から公表されていました。「つくりものじがいなくなったから第二部と第三部を出せなくなったのでは?」という噂も囁かれたけど、単に奈須の仕事が忙しくて手が回らず、制作する余裕がないだけらしい。何せまほよが出た3年後にはもうFGOがサービス開始してますからね。昔の日記読み返したけど、2014年7月に「テレビでUnlimited Blade Worksやって劇場でHeaven's Feelやるよ! 『Fate/strange Fake』を公式化してコミカライズもやるよ! 過去最大規模のボリュームを誇るスマホゲー始めるよ!」ととんでもない量のニュースが襲い掛かってきて処理落ちしてるの我が事ながら笑った。そりゃufo版UBWやHFの監修しながらFakeの打ち合わせもやってFGOの作業を進めつつ月姫リメイクの仕事してたらまほよやDDD書く暇なんてないわ。まほよの翌年の2013年は『未来福音』の劇場版公開で、特典の『終末録音』書いてたりしてたしな……いやなんであの忙しさの中で『終末録音』書いてたんだよ。

 今やすっかり「『鬼滅の刃』のスタジオ」というイメージが定着したufotableだが、スタジオとして躍進するうえで重要だった作品の一つが『空の境界』であり、ufoにとってTYPE-MOON、特に奈須きのこはVIPとして厚遇されています。ufoの社内には奈須が来訪したときに備えて専用の椅子を用意している、という話があるほどだ。まほよはFateほどの大長編ではないとはいえ「長編」と言っていい長さゆえ、さすがに映画1本分ではストーリーがまとめられないだろう。恐らく二部作になると予想しています。

 まほよと言えば、FGOでもコラボイベントやってましたね。映画に合わせて復刻イベントやったりするのかな? シナリオ書いたのが奈須本人だけにかなり踏み込んだ内容というか、長年型月ファンやってる古参でも知らないような情報がザクザク出てくるヤバいイベントでした。コラボ第2弾もいずれやってくれそう。ワクワクが止まらない。

 プロモーションリールの方では他のプロジェクトにも言及していて、タイトルを表示して「忘れてないよ」とアピールするだけの『活撃刀剣乱舞』には「もうちょっと情報よこせよ」とファンたちからの不満が募った(『活撃刀剣乱舞』で剣戟描写を磨いたことが『鬼滅の刃』にも活きているので、ufoにとっても大切なタイトルのはずではある)が、まったく触れられなかった某タイトルに比べればずっとマシである。そう、みなさんご存知『ガールズワーク』です。

 2008年4月、“TYPE-MOONエース”や今はなき“TECH GIAN”でTYPE-MOONの三大新作の一つとして発表されたタイトルです。ちなみに残りの二つはまほよ(PC版)と月姫リメイク。当初は「星空めてお」がシナリオを手掛けるPC向けゲームとして告知された。「白昼夢」によって複層的なレイヤーが展開する“新宿”を舞台にした物語という、わかるようなわからないような内容で続報を心待ちにしていたが、めておの筆が遅いせいかなかなか続報は来ず。2年以上経った2010年末、急に「『ガールズワーク』はゲームで出そうと、つい去年まで思っていました。ですが……やめました」「やめたのか」「ええ、やめました!」とアニメ化を発表する。ゲーム企画として告知されたタイトルがアニメ企画に変貌するのはなかなか前代未聞でめておファンは困惑しました。時期的にちょうどらっきょの劇場公開が終わって、翌年に『Fate/Zero』の放送を控えていた頃。TYPE-MOONとの関係を深めたいufoが提案したのではないかと推測されます。もうこの時点で「企画の迷走」を感じて「ポシャりそう」と思っためておファンも少なくないのですが、案の定、15年以上経過した今も続報はありません。

 星空めておはセンスこそあるもののペース配分が苦手なライターで、プロローグや第一章のあたりは物凄く丁寧なシナリオをお出しするのに、クライマックスからエピローグにかけては慌ただしく駆け足で雑なまとめ方になってしまう、というのが通例です。FGOだと「禁忌降臨庭園セイレム」を手掛けたのがたぶんめておだろう。ノアの設定を作ったのもめておなので、去年やった「ノア・ゾーハル」の冠位戴冠戦に絡んだイベント「失われた創世 (ヴァニッシュド・ビギニング)  未来からの方舟」も十中八九めておシナリオだと思います。例によって終盤が駆け足でしたし。Fate関連の小説作品として『Fate/Requiem』というのを担当していますが、2巻が出たのは2020年で既に5年半の月日が経過しています。なので今更ガルワの続報が来なくてもイチイチ動じないし、「プロジェクトは凍結です」と言われても「だろうな」の一言で済ませられる。むしろ、「なんでガルワのHPをまだ消してないんだ?」と不思議がっているレベルです。プロモーションリールには「and more」の表記があるので、ガルワもここに含まれるんだよ! と主張するファンもいますが、生暖かい目で見守ってあげてください。

・杉井光の『羊殺しの巫女たち』読んだ。

 去年書き下ろしで発刊されたホラー小説。「我が王スティーヴンに」という献辞が綴られており、スティーヴン・キングにリスペクトを捧げた作品ということで、大まかな内容は察していただけると思う。ああ、ドラマの『トリック』とか横溝正史系ではなく『呪われた町』とか、ああいうタイプの作品なんだな、と……。

 早蕨部村――山の奥深い土地に位置する集落は、「鶲沼」「漆原」「千木良」の御三家に牛耳られ、もう平成の世だというのにまるで江戸時代のような家父長制が罷り通る閉鎖的な社会が温存されていた。しかし、村の本当の支配者は御三家のいずれでもない。御三家でも楯突くことのできない、真の支配者(ロード)。それは「ひつじ」と呼ばれている。12年に一度、未年に人里へ降りてきて、富と豊穣をもたらす山の神々。人々はその恩恵を被るべく、未年に生まれた満年齢12歳の少女たちを巫女にして、舞と祝詞を奉納する。「未年に生まれた女は苦労する」 そんな噂も囁かれ、出生率が下がらないように鶲沼は「子供を産んだ家に金を配る」真似までする始末だった。未年に生まれた女は、ひつじ様に奉仕する巫女となる。では、未年に生まれた男は――? 1991年、巫女に選ばれた少女たち6人は12年後にもう一度この村に集まろう、と約束する。ひつじたちと、彼女たちとの戦いを終わらせるために……。

 「ひつじ」という得体の知れない存在を巡って展開するサスペンス・ホラーです。この「ひつじ」とは何なのか? ホラー映画に出てくるような化物なのか? それともいわゆる「山の民」的な存在が神格化されたモノなのか? 開始時点ではどちらとも判断し切れず、不安を抱えながら読み進めることになると思います。しかし、本書は「ホラーの帝王」スティーヴン・キングに臣下の礼を執っているわけで、民俗学でどうのこうの、みたいな話はそこまで深く掘り下げられない。ハッキリ書きましょう。本書における「ひつじ」は超常的な存在として描かれています。12年前、かつて巫女であった子たちはひつじを肉眼で目撃しているが、一様に「どんな姿だったか思い出せない」と語る。全能とか万能ではないが、少なくとも精神に作用して認識をジャミングするぐらい常識外れな代物ってわけだ。でも無敵ではないし、刃物で斬りつければ血を流す。「血が出るなら殺せるはずだ」と巫女たちは勇を鼓して立ち向かっていきます。

 物語は「2003年」と「1991年」、ふたつの未年を行ったり来たりする構成になっている。下手な作家がこういう複雑なストーリー構成にすると読んでいて混乱してしまうが、本書の作者は「杉井光」、活動歴の長い作家だけあって文章に弛みはないし、混乱を来さぬよう筋立てはしっかりと整理されている。とはいえ400ページ近いボリュームなので、さすがにちょっとダレる部分はなくもないです。巫女が6人というの、正直ちょっと多いもんな……2003年の方で登場する「新しい巫女たち」は3人だけで、サブキャラみたいな扱いだからどうにかなっていますが、たまに「あれ? 誰と誰と誰だったっけ?」となるんで目次の後くらいにキャラクター表を載せておいて欲しかったです。

 「二度読み必至」とか「あなたは、真実に気づくことができるのか」とか仰々しい惹句が帯に踊っており、読み始める前から「何か仕掛けのあるタイプだな」とわかるパッケージになっていて、実際に「違和感のある描写」から途中で仕掛けに気づいてしまう人も多いだろう。むしろ、気付かずにラストまで行ければ勝ち、ってくらい露骨にコーナーを攻めている。途中でわかった人よりも、最後までわからなかった人の方が自慢できます。それこそ「二度読みを楽しむ特権」が得られるわけですから……私は10代の頃から浴びるほど叙述トリックの本を読んできたのでわかりました。わかったらわかったで、「うお、なかなか際どい書き方してるな〜」という別の楽しみ方もできます。

 税込みで2000円近くするからさすがに躊躇う方も少なくないでしょうが、KADOKAWAは定期的に電子版のセールを行うので、「紙じゃなくて電子書籍でもいい」というのであれば何ヶ月か待てば半額ぐらいで買うこともできます。甚だしいときは7割引だったり、「値段を半額にして、更に半額分のポイントをバック(実質25%)」なんてこともある。私も本の置き場に困るから最近はAmazonのほしいものリストに放り込んでおいて、セールが始まったらまとめて買う……みたいな感じになっています。あまりにもセールに慣れ過ぎて、「定価で買うのは業腹だな」という気持ちまで抱き始めているのが困りものである。というか、定価で買った翌日に半額セールとか始めるストアも悪いだろ! さておき『羊殺しの巫女たち』、「怖い」要素もあるけど「切ない」要素も強いので、「心に残る物語」を求めているならオススメである。ただ、異能バトルみたいな展開を期待すると肩透かしかな……ポン刀振り回したりとかサイキック・パワーで火花や雷光を散らしたりとか、そういう映像向きのアクションシーンはないので。少女たちが鳥籠を壊し、「終わらせてあげる」とばかりにひつじたちへ引導を渡す。その決意の輝きに目を焼かれる物語です。

・拍手レス。

 超かぐや姫は劇場で観てきましたが、満足度の高い作品でした。ライブシーンがある作品は劇場がよいですねー

 羨ましい……これだけヒットしてるんだからもっと拡大公開して地元の映画館でやってほしいです。

 ワン・バトル・アフター・アナザーは公開時に観に行きましたが、鬼滅&国宝という邦画バブルの結果、大作なのに公開期間も劇場数も減っており、実際客もスカスカで洋画好きからしたら、こんなに宣伝期間長かったのに辛ぇわ...とショックでした。ディカプリオは今作で賞を大量にとって更に一皮剥けた感じ。レヴェナントの超人親父と比べると、最初から最後までなんかダメな感じだけど、一生懸命あがいてるオッサンって感じでリアリティがありましたね。爆弾技術以外は、格闘も潜入も狙撃も全てダメなヤク中アクション主人公は珍しい。

 劇場で観ようかどうか迷っているうちに公開が終わってビックリしました。うちの地元だと2、3週間しかやってなかった気がする。正直、ディカプリオはブラッド・ピットとかマット・デイモンに比べてオーラの足りない俳優だと感じていて、唯一好きな出演作が『ザ・ビーチ』という状態だったんですけど『ワン・バトル・アフター・アナザー』でだいぶ見直しました。屋根の上を移動するシーンで落ちちゃうのはさすがに笑いましたね。



管理人:焼津