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リレー小説「魔法少女忌譚修」(第13話−10/12)


2026-02-10.

・ゲーム本体はやってないけど『アークナイツ:エンドフィールド』とか『ゼンレスゾーンゼロ』とかの動画がSNSで延々と流れてくるので「ロッシちゃん可愛いなぁ……」「タンタンちゃん可愛いなぁ……」「千夏ちゃん可愛いなぁ……」と時間を奪われ続けている焼津です、こんばんは。いえ、全然ロリコンじゃありませんよ?

 とにかくやってないゲームでもムービーの出来が良くて見惚れてしまうんですよね。ロッシちゃんがクンクンと鼻を動かして匂いを嗅ぐシーンとか、千夏ちゃんが待機モーションで踊る動画をずーっと見てしまう。正気に戻って積みアニメ、積み映画、積みゲー、積読の消化に取り組むのですが、脳内では延々と千夏ちゃんが踊り続けている。もはや電子ドラッグだ。

 積みゲーで思い出したけど、『パラノマサイト』が新作出すということで前作『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』がニンテンドーストアでセール中です。1980円が75%OFFで495円、なんとワンコインだ。新作『パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語』が19日発売ということから、発売前日の18日までセールをやっています。要は低価格のホラー系ADVで、「死人を蘇らせる秘術」を巡って9人の男女の物語が交錯する。基本は文章を読み進めていくオーソドックスなADVだが、360°ぐるっと周囲を見渡して気になるものを発見する「探索パート」が要所要所に盛り込まれており、「能動的にプレーしている」感覚が恐怖を増幅させます。タイトルは「超常現象」を意味する「パラノーマル」と「パノラマ」を掛けているわけだ。私もセールに釣られて買ってまだちょろっとしかプレーしていませんが、なかなか面白い。『世にも奇妙な物語』めいたノリが好きな人なら刺さると思いますので、値段を理由に軽率に購入しちゃってOK。さあ君もレッツ・パラノマ!

『超かぐや姫!』、2月20日(金)より1週間限定で劇場公開決定!

 ファン待望の劇場公開が決定です、やったー。ただし全国19館という、想像以上に小さい規模……当然、うちの地元は入っていません。これは何としても拡大上映してもらわねば……うちの地元の映画館、ネトフリ映画の『バブル』はやったんですけど、あまりにも客が入らなかったせいか『雨を告げる漂流団地』や『好きでも嫌いなあまのじゃく』はやらなかったんですよね。やっぱり、かなり力を入れて広報していた『バブル』がコケたのが痛かった。『バブル』の反省点を踏まえて新しい手法で送り出したのが『超かぐや姫!』なんですが、まだまだネトフリ映画に対する劇場側の信頼感が薄いのだろう。公開される19館に足を運べる人たちは是非ともシアターを満員にする勢いで詰め寄せてほしい。そうすれば私の地元でも観れるようになるはず。

 『超かぐや姫!』というアニメ映画、正直「粗」と感じる部分はいくつかあるのですが、それを押し切るだけのパワーがある作品なのであと数年も経てば「『超かぐや姫!』がキッカケでアニメ業界を目指したくなりました」という若者たちが出現する。誇張抜きでそれぐらい影響力の強いタイトルです。ネトフリ入ってなくてまだ観てない、という方は映画館へGOだ。アレを映画館で浴びれる人は羨ましい……。

 公開館の中に「立川シネマシティ」が入ってるのはちょっと笑っちゃいましたね。『超かぐや姫!』の主なロケ地は立川市で、「サンサンロード」というところが「聖地」の一つになっている。シネマシティはこのサンサンロードに面しており、劇中でもチラッと映っています(かぐやが彩葉たちを尾行して木に隠れるシーン)。「1週間限定」と謳っていますが、「ご好評につき期間延長!」となる可能性はゼロじゃありません。もしかしたら「聖地」化して今年中ずっと上映、なんてこともありえなくはない。

 映画の後日談に当たるMVも公開されており、続編やスピンオフも熱望されている『超かぐや姫!』ですが、物凄く手の込んだ作品だけにそう簡単に続編の類が生えてくることはないと思います。個人的にはかぐや姫(竹取物語)以外の物語を題材にして、相互で緩く繋がっている「お伽噺ユニバース」にしてほしいかな。浦島太郎をベースにした『超乙姫!』もしくは『超竜宮城!』とか、『超鉢かづき姫!』、『超一寸法師!』、『超赤ずきん!』、『超シンデレラ!』……そこまでやるとただの『月光条例』だな。

「チー付与」TVアニメ化!制作はP.A.WORKS ティザービジュアル&PV公開(コミックナタリー)

 最近とんでもない作品のアニメ化ニュースがやたら舞い込むな……『追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。 〜俺は武器だけじゃなく、あらゆるものに『強化ポイント』を付与できるし、俺の意思でいつでも効果を解除できるけど、残った人たち大丈夫?〜』、タイトル長すぎるので「チート付与」ないし「チー付与」と略されることが多い本作、もともとは「六志麻あさ」が「小説家になろう」に連載していたなろう小説です。2022年に書籍化し、書籍版は2巻まで刊行されたが、売れ行きが芳しくなかったのか2巻発売から3年以上経った今も3巻は発売されていません。

 小説の書籍版が発売する前年、2021年から連載スタートしたのが「業務用餅」による漫画版で、絵柄(主人公の髪がボサボサ、かんたん作画の犬)から察するにアニメはこの漫画版の方がベースになると思われます。というのも本作、小説版と漫画版の違いが大きい……ってより、ほとんど「別物」といっていいほど乖離しています。小説版は「なろう系によく出てくる中世ヨーロッパ風の世界」、いわゆる「ナーロッパ」めいた場所を舞台にしたオーソドックスな異世界ファンタジーであるのに対し、漫画版は自動車や機関銃など「ナーロッパ」で押し切るには無理のあるアイテムがドコドコ出てくる。また、登場キャラクターに関しても「名前は一緒だけど性格がまったく違う」現象が頻繁に発生します。普通なら原作ファンが大激怒する所業ですが、チー付与、小説版はそんなにファンがいないため炎上しませんでした。むしろ「いいぞ、もっとやれ!」と喝采を浴び、どんどん独自路線を突き進んで確固たるファン層を築き上げていく。最新刊は19巻、とても「2冊で打ち切られた小説のコミカライズ作品」とは思えない巻数だ。

 チー付与の魔改造っぷりを詳しく解説するとネタバレになるので、「新鮮な気持ちで楽しみたい」未読の方はこの段を飛ばしてほしいのですが……漫画版の第5話で『王獣の牙』(主人公を追放したギルド)副ギルドマスターの女性が登場し、僅か2ページほどで殺し屋の少女「ミラベル」に屠られ退場する、というシーンがあります。あまりにも呆気ないので読者のほとんどは存在を忘れてしまったのですが、漫画版7巻から始まる「半グレ編」でこの女性を慕う人物が暗躍し、王国を相手に壮大な復讐劇を開始する。そのスケールの大きさとアクションの絶妙なバランス感覚に読者の多くが舌を巻いたのですが、原作だとそもそも「『王獣の牙』副ギルドマスター」は殺されていません。主人公「レイン」を追放した後、『王獣の牙』は急速に瓦解していき、3人いる副ギルドマスター(グレンダ、コーネリアス、ゲイル)は見切りをつけて他のギルドに移籍しようとするもみんな疫病神扱いされてどこも受け入れてくれない……と路頭に迷うところで終わっている。要するに「ざまぁ」された後で猿空間ならぬ「あさ空間」に送られて消息不明となっています。それぐらいどうでもいいキャラなんです。当然、「半グレ編」なんてストーリーも原作には存在しない。あまりにも改変・捏造・オリジナル要素が多く、漫画版しか追ってない読者は「原作にはない要素」が出てくる瞬間よりも「原作にもある要素」が漫画版に出てきたときの方が驚くぐらいだ。

 初期は純粋に絵柄が雑なせいもあって読みにくさを感じるが、だんだん技術が向上していき、絵的にもストーリー的にも円熟していく。『呪術廻戦』が『HUNTER×HUNTER』の影響を受けていることは周知の事実ですが、こと「ハンター要素」に関しては漫画版チー付与の方が濃厚と言っていいでしょう。最近の巻は「キメラアント編と王位継承編を同時並行でやってる」と評されるくらい濃密な内容で、本気でアニメ化するつもりなら最低でも4クールは欲しい代物なのだ。とにかく業務用餅のセンスの凄まじさ、原型を留めないほど弄くられても「漫画で面白い部分は、だいたい原作にない箇所ですw」と笑って許す六志麻あさの寛大さが光る。あまりにも鷹揚たる態度ゆえ、チー付与ファンからは「原作者陛下」と崇められています。過去には原作者が怒ったせいで連載打ち切りになった作品もありますからね……忘れもしない、漫画版『皇国の守護者』……。

 制作は「P.A.WORKS」、アニメファンからは「お仕事アニメ」が得意なところとして認識されている。一番有名なのはアニメ制作そのものを題材にした『SHIROBAKO』かな? あれももう10年以上前なんですが……最近だと日常系アニメの『日々は過ぎれど飯うまし』が好評を博している。監督やシリーズ構成に関してはまだ公開されていない。漫画版をそのまんまアニメ化するとさすがに間延びするだろうし、うまくアニメに変換できる人がやってくれるといいですね。

・山口未桜の『禁忌の子』読んだ。

 第34回鮎川哲也賞受賞作。個人的に鮎川賞は信頼している賞なので、「きっとこれも面白い」と思っていましたが、おどろおどろしいタイトルに食指が動かず放置していました。しかし受賞後第一作に当たる続編も刊行されたし、いい加減崩さないとな……って一念発起して読み出した次第です。そしたら冒頭数ページで引き込まれ、あっという間に読み切ってしまった。この本に関してはあらすじ等、なるべく予備知識を入れないで読む方が面白いのでこれから読むつもりの方は私の感想を読まずにさっさとチャレンジした方がいいです。まだ決めかねる、という方はもう少しお付き合いいただきたい。

 「兵庫市民病院」の救急科に所属する医師「武田航」。2023年、まだコロナ禍が明け切らぬ頃、午後8時15分に救急からの着電があった。沖の海面に浮かんでいた30代くらいの男を引き受けてほしいとのこと、断る理由もなかったので承諾する。間もなく心肺停止した患者が運び込まれてきた。状況的に死亡から相当な時間が経過していると見られ、蘇生は無理そうだと思ったが、念のため看護師たちに指示を飛ばし処置を行う。予想通り、患者を蘇生させることはできなかった。ある意味、救急科の日常風景である。「予想外」で「非日常」だったのは、運び込まれた男が自分(航)と瓜二つの顔をしていたことだった……。

 航は一人っ子で、「生き別れの双子の兄(もしくは弟)」がいるなんて話は聞いたことがない。念のため役所に行って戸籍謄本を取り寄せたが、やはり兄弟に関する記述などなかった。亡くなった男は頭部に打撲の痕があったが、かなりの量の酒を飲んでおり、誰かに殴られた後で海に捨てられたのか、酔っ払って足を滑らせどこかに頭をぶつけながら海に落ちたのか、判然としない状況である。できれば男の正体を突き止め、「自分や身重の妻に恐ろしい危険が迫っていないかどうか」を確認したい。航が頼ったのは中学から付き合いのある医師「城崎響介(きのさき・きょうすけ)」だった……。

 城崎響介は感情が希薄で、あらゆるものに対して執着を持たない。いっそ非人間的なほどズバッと論理の刃を冷徹に振りかざす探偵役として設定されています。いかにもドラマ向けの「旬のイケメンが演じる探偵役」といった印象ですが、感情の機微に疎い「非人間性」のせいでヘマをするシーンもあるので、必ずしも設定倒れになっていない。「主人公と瓜二つの死体」という謎、「イケメンかつ冷徹な探偵」というキャラ立ちで最初の100ページぐらいはグイグイと勢いよく読ませてくれます。

 この「瓜二つの死体」が「第一の事件」だと解釈すれば、100ページ過ぎたあたりで「第二の事件」が発生します。簡単に言うと「密室状況で自殺としか思えない死体が発見される」というものです。鮎川賞作品なら密室状況のミステリなんて別に珍しくないわけですが、正直この作品はかなりメロドラマ要素が強いので、「密室」という要素がかなり浮いちゃっている。この密室事件のあたりから一気にトーンダウンし、ストーリーが盛り下がってしまう。そこを耐えながら200ページあたりまで進むといよいよ「出生の秘密」が明かされ始め、盛り上がってきます。ただ、この面白さってぶっちゃけ鮎川哲也的な面白さというより横溝正史的な面白さなんですよね……なんで作者は「横溝正史ミステリ&ホラー大賞」の方に送らなかったんだろう? 横溝賞なら賞金300万円が出るけど、鮎川賞は印税しか貰えず特別な賞金が出ないのに……だから賞金目当ての投稿がなく、信頼できる作品が多いという面もあるが。

 圧巻なのはラスト50ページ、畳み掛けるような勢いで謎を回収して一気に結末まで持って行く。ここで100〜200ページあたりのダレ具合はチャラになりました。明かされる真相に「なるほど!」となるか「えぇ〜!? そんなんアリ〜!?」となるかで評価が真っ二つになるでしょう。というか、ネタバレなしでこのへんについて掘り下げることはできないので詳細については口を噤むしかない。気になる方は実際に読んでみてください。「私はドラマ化に際して『旬のイケメン俳優』を安易に宛がわれるような小説は書きたくないんじゃ! 『うう、これは山口未桜ならではや……』と呻かれるような作品を書きたいんじゃ!」という気迫が伝わってくる。

 既に城崎響介が探偵役を務める続編『白魔の檻』も刊行中であり、読むのが楽しみ。できれば1年に1冊くらいのペースで安定して出してくれるとありがたいですね……。


2026-02-02.

「ヤニねこ」TVアニメ化 にゃんにゃんファクトリーが描くクズ獣人の日常(コミックナタリー)

 アニメ化……と思わせてアニキ化! なんて巫山戯た真似をしていましたが、アレはフェイントで本当にアニメ化すんのかい。絶えず煙草(ヤニ)を喫んでいるニコチン依存症気味なネコ(獣人)を主人公に据えた日常ナンセンス・コメディで、下ネタというかお下劣なネタが多く、しょっちゅう画面にモザイクが入る。「絵柄の可愛いどおくまん」「令和に適応した徳弘正也」といった評もあります。作者の「にゃんにゃんファクトリー」は合同ペンネームで、4人の漫画家が手分けして描いている。おかげで「汚いCLAMP」と呼ばれ、CLAMPに風評被害が及んでいる始末。

 主役に抜擢されたのは「夏吉ゆうこ」、少し前に『笑顔のたえない職場です。』で主演した声優です。最近だと『超かぐや姫!』の「かぐや」役で話題になっています。過去の作品だと『SHOW BY ROCK!! ましゅまいれっしゅ!!』「マシマヒメコ」役、『アサルトリリィ BOUQUET』「白井夢結」役、『シャインポスト』「聖舞理王」あたりで印象に残っている人が多いのではなかろうか。ちなみにウマ娘では「シュヴァルグラン」、グラブルでは「サブリナ」、ブルアカでは「杏山カズサ」を演じているのでソシャゲやってる人なら心当たりがあるかも。

 制作は「バイブリーアニメーションスタジオ」、きんモザやグリザイアのアニメでお馴染み「天衝」が設立した会社です。代表作は『君のことが大大大大大好きな100人の彼女』、あと『ウィッチウォッチ』もココでしたね。『ブラック★★ロックシューター DAWN FALL』とか『プリマドール』とか『魔法少女マジカルデストロイヤーズ』とか、「なんか変なアニメ作るところ」でもあり、『ヤニねこ』は明らかに「なんか変なアニメ」の系譜に連なる作品である。監督は「木村拓」、「マッドハウス」出身で現在は「スタジオ・レモン」というアニメ会社に所属している模様。仮にアニメ化するとしても簡単作画の紙芝居ショートアニメと思っていたんで、やけに手の込んだ作画のティザームービーにビビる。コンプライアンスに中指を突き立てるような作品ゆえBPOに苦情が殺到しそうな気もするが、果たして最終回まで放送できるのだろうか?

「凶乱令嬢ニア・リストン」TVアニメ化 武人が転生した病弱な令嬢役に井上ほの花(コミックナタリー)

 このニュース、喜んでいるファンは多くても驚いているファンは少ないと思います。「ようやくか」って感じ。『凶乱令嬢ニア・リストン』、なろう掲載時は「狂乱令嬢ニア・リストン」でしたが、「狂乱」だと正気を失っているようなイメージを与えるためか商業版では「凶乱」となっています。「ニア・リストン」という病弱な令嬢が亡くなった直後、強さを求めて戦い続けた最凶の武人「???」の魂がその体に入り込み、息を吹き返した。前世の記憶があやふやで、自分の名前も思い出せない???はニア・リストンとして第二の人生を歩み出す。一度目の人生と同じか、それ以上に血塗られた暴力の道を。魂は、己の銘を忘れても、血が滲む想いで修めた業の数々を憶えていた……という「ぅゎょぅι゛ょっょぃ」系転生ファンタジーです。

 今、こういう「ムチャクチャ強かった武人とか騎士とかが貴族令嬢やお姫様、村娘や孤児などのロリ系ヒロインに生まれ変わるTS系転生譚」が一部ですっごく流行ってるんですよ。『幼女戦記』の系統とも言えなくはないが、アレは癖が強すぎるので直接的なジャンルの火付け役はこの『凶乱令嬢ニア・リストン』だと思います。『英雄王、武を極めるため転生す』の影響もちょっとある気がするけど、アレはロリの期間がすぐ終わっちゃうからな……『無双ゲーに転生したと思ったら、どうやらここはハードな鬱ゲーだったらしい』『修羅幼女の英雄譚』『前世は冷酷皇帝、今世は幼女』『皇女転生』『令嬢アリスの英雄譚』など、商業作品だけ数えても結構ある。

 主人公のニア・リストンが最凶&無双で、匹敵するような強キャラが全然出て来ないからストーリー展開は割と淡々としているというか、ハッキリ言って単調です。「幼女が無双する」ギャップにグッと来ない人からすると「何が面白いのかわからない」という評価に落ち着くでしょう。逆に言えば、「幼女無双」というシチュエーションにトキメキを感じる人なら楽しくてたまらないハズだ。コミカライズ版の出来がイイというか、ぶっちゃけ原作小説よりもマンガ版の方が人気あるのでは? コミカライズはあんまり読まない私でもアレだけは夢中になって読んでしまう。原作者「南野海風」は「やたら濃いメイドキャラを登場させる」癖があり、この作品でも主人に対する愛がやや変態チックなメイドが二人も出てくる。コミカライズだと「幼女無双」と「変態メイド」がマリアージュ効果を発揮して「そりゃアニメ化するわ」って面白さになっています。ただ、ノリが「エロシーンを抜いた平成のエロゲー」みたいな感じゆえ、そのへんに付いて行けるかどうかで評価が変わってくるシリーズです。

 「かつて神殺しをも成し遂げた大英雄」と仰々しい設定ながら、少なくともアニメでやるだろう範囲では「神」に相当するような存在と戦う展開はありません。私も最近の巻はあまりチェックしていないので今どういう展開になっているかよく知りませんが、あらすじを読んだかぎりではせいぜい隣国で戦争を起こす程度のようである。魔物とかも出てくる世界観だけど、ぶっちゃけ魔物の存在感は薄いかな……やっぱ人間ボコってナンボだよね、とばかりに裏社会の連中をぼてくり回す。「なんなんだ……なんなんだよ、あの幼女ッ!」って恐慌を来す強面どもにゾクゾクせよ。

 ニア・リストン役の声優は「井上ほの花」、最近だとFGOの「フローラ」を演じていますね。「17歳教の教祖」として有名な声優「井上喜久子」の娘で、10年ほど前にプロデビュー。デビューしたときはまだ10代だったので、現在も20代という若手です。『赤毛のアン』のリメイク『アン・シャーリー』で「アン・シャーリー」役、『薫る花は凛と咲く』でヒロイン「和栗薫子」役を担当するなど、ここ最近は母親の名前抜きで売れ始めている。ちなみにアイマスでは「浅利七海」役、ウマ娘では「アストンマーチャン」を演じています。制作は「KONAMI animation」、あのゲーム会社「コナミ」が擁するスタジオで、ほんの2年前に設立されたばかりなのでアニメ好きでも知らない人の方が多いだろう。ゲームのPV制作やグロス請けがほとんどで、元請けは今年放送予定の『幻想水滸伝』くらい……だったが、『凶乱令嬢ニア・リストン』も元請けで作るみたいです。コナミがケツモチだから資金力はあると思うが、スタジオとしては新興なので蓋を開けてみないとどんな出来になるか読めないな。とりあえず期待しときます。

『ボーイ・キルズ・ワールド 爆拳壊界流転掌列伝』観た。

 80年代や90年代のビデオゲームに出てくる「荒廃した街でひたすら敵が湧いてくるベルトスクロール・アクション」みたいな世界を再現した映画です。『死霊のはらわた』でお馴染み「サム・ライミ」が製作、監督は「ゲーマー」と自負する「モーリッツ・モール」。エンドロールには『AKIRA』のポスター(俯瞰で金田がバイクに向かっていくアレ)を意識したカットも出てくる。ハッキリ言って変な映画だ。面白いかどうかで言えばそんなに面白くはない。日本では去年公開されたけど、ほとんど話題にならなかった。「もうすぐU-NEXTのポイントの有効期限が切れそう」という消極的な事情から気になっていたコレをレンタルして視聴したわけですが、「観て損した」という気分でもなく、「面白くはないけど、妙に印象に残る」って感触を得ました。

 舞台となるのは文明崩壊後の世界。『北斗の拳』とか『マッドマックス』とか、ああいう感じを連想してもらえればだいたい合っているけど、私兵とはいえ軍隊が機能していたり、テレビ放送が続いていたりと崩壊度はそこまで高くない。主人公「ボーイ」は人里離れた山奥で謎の男「シャーマン」に殺人兵器として育てられた少年。街は独裁者「ヒルダ・ヴァンデルコイ」によって支配され、彼女に歯向かう者は裁判ナシで公開処刑されるメチャクチャな状態に陥っていた(ヒルダによると25年前は無法者たちが跋扈する、それこそ北斗みたいな状態だったらしいからこれでもマシになった方らしい)。民を省みぬ圧制者と化したヒルダを討つべく、山から降りたボーイ。しかし一般常識も何もない彼は具体的にどう行動すればいいのか、何の計画も抱いておらず、とりあえず行き当たりばったりで横暴な振る舞いをするヒルダの私兵どもをブチのめすが……。

 役割としては「テロリスト」や「アサシン」の部類なんだけど、プランも何もないからノリで暴れているだけっていう、頭空っぽの「ボーイ」を面白いと思えるかどうかで楽しみ方が変わってくる作品。ボーイには「ミナ」という妹がいて、幼い頃に彼女と夢中でビデオゲームをした思い出もあるのですが、ミナはヒルダの手で無惨に殺されてしまった。妹を救えなかった悔恨からか、はたまたシャーマンの薬物すら用いた厳しすぎる修行のストレスからか、彼はイマジナリーシスターとも言うべき「ミナの幻影」を視るようになってしまう。この「ミナの幻影」がボーイの良心とか理性の象徴として機能します。ボーイは幸運に恵まれたこともあって快進撃を繰り広げるが、そんな彼の前にフルフェイスのヘルメットを被った刺客「JUNE27」(6月27日)が立ちはだかる。ヘルメットを剥いだ下から現れた顔は、死んだはずの妹「ミナ」の面影をくっきりと残していた……!

 ストーリー目当てでこの映画を観る人はそんなにいないと思うからバラしてしまうと「JUNE27=ミナ」です。ちなみに演じている女優は「ジェシカ・ローテ」、『ハッピー・デス・デイ』の主演だったあの人。死んだはずの妹が生きていて、しかも敵の手先になっている! というベタベタなシチュエーション、まさに80年代や90年代のビデオゲームみたいなノリだ。ある程度設定を明かした方が興味を引けるだろうし、思いっきりネタバレしてしまうけど、主人公「ボーイ」は独裁者「ヒルダ」の息子です。幼い頃にシャーマンに攫われ、クスリ漬けにされて「ヒルダは母親ではない、本当の母親と妹はヒルダに殺された」という嘘を吹き込まれ、洗脳されてしまったのだ。後半でその真実が明らかとなり、母親と「感動の対面」を果たすが「彼女がクソみたいな独裁者である」こと自体は変わらない。シャーマンがボーイを攫ったのも、「ボーイが母親の命令でシャーマンの家族を撃ち殺したから(その後パニック状態になって銃を乱射し、その混乱に乗じてシャーマンが逃亡した)」で、ぶっちゃけ割と因果応報なのである。

 最終的には師匠であるシャーマンがラスボスとして出てきます。かつてシャーマンは家族の仇であるボーイを怒りに任せて縊り殺そうとしたが、「母親の操り人形」でしかない無力な少年をどうしても殺すことができなかった。そこで復讐の道具にするべく殺人兵器として鍛え上げた。誰よりも強く、誰よりもタフな男に。今はもう「無力な少年」ではない、だから……殺せる! 師匠(シャーマン)視点でストーリーを再構築することによってようやく完成する映画なので、漫然と眺めていると何が何だかよくわからなくなります。師匠にとってボーイは「憎き仇」なんだけど、長年修行に付き合った「愛弟子」でもあるから、当然情が湧いている。この愛憎半ばする最終決戦が本作最大の見どころであり、逆に言えばそこへ至るまでの過程に関しては「半分くらい寝ていてもいいかな」と思わなくもない。繰り返しますが「面白いかどうかで言えばそんなに面白くはない」映画なんですよ。でもやたら印象に残る。

 病んだ独裁者の母(ヒルダ)は主人公にとってそこまで重要ではなく、良い思い出の残っている妹(ミナ)の方が大事なんですよね。ボーイがシャーマンの道具として育てられたように、ミナもヒルダの道具として育ち、「JUNE27」というコードネームのソルジャーとして治安維持の鎮圧部隊で汚れ仕事に従事している。「大人に搾取される子供」という映し鏡の存在。そんなミナを守るために、ボーイは師匠(シャーマン)へ拳を向ける。「文明崩壊後の世界」の描写があまりにもコミック的でリアリズムの欠片もなくディストピアSFとしてはかなりお粗末な出来だし、アクションの幅を作るためとはいえ主人公が銃を使うシーンも多いから「男なら拳ひとつで勝負せんかい!!」と不満を述べたくなるところもあるけど、何と言うか「嫌いになれない映画」だ。

 良く言えば「芯の部分はしっかりしている」、悪く言えば「芯の部分以外はユルユルにもほどがある」、そんな一本です。もしサブスクの見放題に来たら物は試しと観てほしい。盛り上がってくるまでが長いから前半はながら見でもOKです。好きなのはやっぱりフルフェイスマスクを着用しているときの「JUNE27」だな……バイザー部分が電光掲示板みたいになっていて、そこにセリフが表示される演出も面白かった。あとバキバキに割れた腹筋。


2026-01-28.

『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』公開延期のお知らせ

 「2月公開予定」なのに1月下旬になっても具体的な公開日が明らかにならない時点で察していたファンがほとんどだと思います。ワル天が延期するのはこれで3度目。当初は「2024年冬」だったのが「2025年冬」になり、そこから「2026年2月」にジャンプ、で、今回というわけです。本来ならもう本編が出来上がってTVCMとかバンバン流さないといけない時期なのに、この様子じゃまだフィルムが完成すらしてないっぽいですね。

 まず、脚本自体はとっくに上がっています。「虚淵玄」が「『仮面ライダー鎧武』を終えた後、『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』に取り掛かる直前に脱稿した」とコメントしているので、2015年か2016年くらいには提出していたはず。制作発表が行われたのは2021年、TV放送10周年の記念も兼ねていました。脚本脱稿から10年、制作発表から5年近く、それでもまだ完成しないってどれだけの大作なんだ? 間にマギレコ(『マギア・レコード』)のアニメがあるから、そっちの方にリソース割いていた可能性もありますけど……このズルズルと延期する感じ、2007年版の『Dies irae』とかを思い出して古傷が疼く。

 場合によっては公開が来年まで延びる可能性もありますが、とにかく次はもう延期しないでほしいです。

『ブルーアーカイブ』、PC版のサービス開始

 やっとブルアカのPC版が来ました。一応Steamではグローバル版の『Blue Archive』が配信されていたんですが、日本語に対応しておらず、日本語版とも互換性がないため引き継ぎ(元々使っていた端末からの引っ越し)ができなかったんです。今回始まったPC版でようやくスマホやタブレットの小さい画面からPC用の大きなディスプレイに移行することができるようになりました。PCのスペックにもよるが、ほとんどの人にとって「描画がモバイルの時よりも滑らかになった!」と感動すること間違いナシです。ここまで画像を拡大することを想定していなかったのか、一部ジャギー(ギザギザ)が生じていたりしますけど……生徒によって立ち絵の解像度が結構変わるのも気になります。

 まだ本格的なサービス開始ではないため、「青輝石」(ガチャを回す時とかに使うアイテム)などの販売、いわゆる「課金」はPC版で行うことはできません。いずれ対応予定ということですので、「課金してガチでやり込みたい」という方はモバイルとPC版の両方でプレーし続けた方が良さそうです。同時ログインはできませんが、片方ずつならログイン可能です。私はそこまでガチ勢じゃない(というか数ヶ月ログインすらしていなかったカムバック勢だ)からPC版だけでいいかな……容量キツキツだしタブレットに入れている方は消そうと考えている。具体的な時期は不明だけど、いずれアツドリ(『BanG Dream! Our Notes』)のサービスも始まりますし。

 今でこそこういう「モバイル版とPC版の両方でサービスを提供しているソシャゲ」は珍しくありませんが、ひと昔前は「モバイル版だけ」「PC版だけ」というソシャゲがほとんどでした。なぜなのか? 原因は複合的なのでひと口で「これ」と指摘することはできませんが、大きな要因として挙げられるのは「課金に関する縛り」です。iPhoneやiPadなどのApple製品でソシャゲをプレーする場合、ほとんどのケースでアプリを「App Store」からダウンロードします(ブラウザゲー等、一部例外はあります)。Android端末の場合は「Google Play」。AmazonのFire HDとかだと「Amazonアプリストア」というのがありますが、品揃えが物凄く悪くてほとんどのソシャゲが遊べないからここでは無視します。で、ダウンロードしたソシャゲに課金しようとする場合、App StoreやGoogle Playを経由してクレカなり電子マネーなりオンライン決済なりで支払っていました。この際、AppleやGoogleに消費税として約1割、ショバ代として約3割、概ね4割程度は持って行かれる仕組みになっています。例えば10000円課金した場合、約4000円はプラットフォームに差っ引かれ、ゲーム会社には6000円程度しか渡らない。Youtubeのスパチャ(投げ銭)も似たような問題があり、App StoreからDLしたYoutubeのアプリ経由だとAppleに上前をハネられます。ブラウザ経由だと10000円相当のスパチャが、iOSアプリ版経由だとAppleの取り分が上乗せされて、なんと視聴者の支払う金額は「15800円」に跳ね上がる。だからよく配信者が「スパチャするならブラウザからやって!」と頼むわけです。

 そこで抜け道として「ゲーム会社がプレーヤーを外部サイトに誘導し、そこで課金させる」というグレーな手法が編み出されました。これならプラットフォームの取り分が必要なくなり、消費税に当たる約1割分だけをゲーム会社が負担すればいい。今まで10000円で売っていた課金アイテムを「外部サイトなら9000円にディスカウント!」とかやっても充分に元が取れるわけです。「Epic Games」という会社が『フォートナイト』というゲームでこれに近いことをやって、Appleが激怒し、App Storeから『フォートナイト』を削除(新規DLができなくなっただけで、既にインストールしている場合はそのまま遊べた)。「横暴だ!」とEpic Gamesが裁判を起こす事態に発展しました。裁判してまで争いたくない他社はこのグレーな手法を採択できず、「モバイル版とPC版で課金石の種類を別にする」という苦肉の策を採ったり、「そもそもPC版を出さない」といった選択をすることになります。具体的なタイトルを挙げると、前者に該当するのが『プリンセスコネクト!Re:Dive』。モバイル版とPC版で連携させた場合、ゲームの進行状況は両方とも一緒になりますが、引き継がれるのは無償石のみで、課金して購入した有償石に関しては反映されない。たとえばスマホで課金して有償石を購入した場合、その有償石はスマホでしか使えないし、PCで買った有償石もPCでしか使えない。連携させるとAppleがアプリを消す恐れがあったからです。FGOこと『Fate/Grand Order』はそもそもPC版を出そうという素振りを見せたこともない。サービス開始当初は雑誌付録として添付した特典コードを打ち込むための「シリアルコード入力」という欄がオプションに設けられていたのですが、Appleを恐れてかいつの間にか消えてしまった。

 2021年、アメリカの裁判所はEpic GamesにAppleへ適正な手数料を支払うことを命じつつ、Apple側へ外部決済システムを認めるよう命令。Appleがこれを受け入れたことで、グレーだった「外部サイトでの決済」がようやく合法となります。恐らく「一定の手数料を払えば外部決済を導入しても構わない」というルールになったのだろう。この影響でここ数年、様々な外部決済手段が発達しました。大きなところだとサイゲの「Cygames WebStore」やバンナムの「アソビストア」ですね。FGOも「アニプレックスオンライン」経由で聖晶石がアプリ内ストアよりも5%安く買えるようになっています。外部決済システムが普及したことでアプリストアのセールスランキング、いわゆる「セルラン」の価値も下がってしまった(外部サイトでの売上はストアに反映されないため)。今後、ビッグタイトルはどんどんPC版との連携が当たり前になっていくでしょうね。ガッツリやり込む時は自宅のPC版で、出先の隙間時間に軽く遊ぶ時はスマホ版で、みたいな。未だにブラウザでのプレーが基本で、iOS版のアプリが配信されていない『艦これ』という異色の古豪も存在しますが……パズドラが2012年、モンストやチェンクロが2013年、グラブルが2014年、FGOが2015年サービス開始で、艦これは2013年サービス開始ですから時期的にはモンスト・チェンクロと同期です。2009年開始で未だに続いている『怪盗ロワイヤル』もよく特異点扱いされるが、あれはソシャゲの開発費や運営費が高騰する前のタイトルなのでギリギリ維持できているのかな。2009年はスマホこそ登場していたものの、まだガラケー主体ゆえ複雑なシステムが実装できず「ポチポチゲー」と揶揄されてた頃ですね。2011年に『アイドルマスター シンデレラガールズ』がサービス開始したとき、「アイマスがポチポチゲーになった!」と騒がれたものです。『マンガで分かる!Fate/Grand Order』にも「ポチポチするだけで先に進むようにしてください」と当時の名残りみたいなものを感じさせるセリフがある。

 特に悪意なく使っていた人もいるけど、どちらかと言えば蔑称に近く、12年前に書かれた「“ポチポチゲー”に終止符」という記事の題名からゲーム界における地位が窺い知れます。しかし、今では「古色蒼然としたブラウザゲー」扱いになっているグラブルが2013年の頃は「新境地」と呼ばれていたの、なかなか感慨深いですね。

『アンジェントルメン』観た。

 うちの母が名前を覚えられないせいで「マドンナの元旦那」と呼ぶ「ガイ・リッチー」の新作。ガイ・リッチーとは誰か? 過去に「ジェイソン・ステイサム」と「ブラッド・ピット」が共演した『スナッチ』、「ロバート・ダウニー・Jr」と「ジュード・ロウ」のコンビによる『シャーロック・ホームズ』、「マシュー・マコノヒー」主演の『ジェントルメン』など数多くの傑作・良作を手掛けた映画監督です。珍作好きには「全6部構想の超大作だったのにヒドいコケっぷりで1作しか出せなかった」『キング・アーサー』が印象に残っているだろう。「スラムのガキから王になれ!」 円卓の騎士、カンフー・ジョージ! 消えたサブタイトル、「聖剣無双」の謎! KOEIに怒られたのか!?

 さておき『アンジェントルメン』は日本だと2025年4月に公開された映画です。アメリカだと2024年4月公開なんで、丸1年遅れ。あのガイ・リッチーの新作でも丸1年遅れるのかよ!? と昨今の洋画の冷遇ぶりに愕然とする。公開規模も小さかったですし……上映館数は全国で100館くらい、この規模だとやってない地域も多くて存在すら知らなかった人もいると思います。邦題は明らかにそこそこヒットした『ジェントルメン』を意識したモノであるが、別に『ジェントルメン』の関連作というわけではない。第二次世界大戦の頃のイギリスが舞台で、一応「史実をベースにした映画」ということになっている。原題は "The Ministry of Ungentlemanly Warfare" 、直訳すると「非紳士的な戦争省」。戦時中に実在した秘密部隊「特殊作戦執行部(SOE)」のいくつかある俗称の一つです。正規の軍人として認められていない、ほとんどならず者に近い奴らが命懸けの極秘任務に従事する、ちょっと『荒野の七人』みたいなノリのアクション映画だ。

 時は1942年――イギリスはナチスドイツとの戦争において、Uボート(潜水艦)による通商破壊で大いに苦しめられていた。「もうアメリカの参戦まで待てない、早くドイツに降伏した方が良いのではないか」 国内に諦めムードが広がる中、首相のチャーチルは密かに人員を集め、極秘作戦の遂行を命令する。構成員のほとんどがスネにキズ持つ連中であり、「紳士(ジェントルメン)」には程遠く、ほとんど愚連隊に等しい。上官の命令に従わない札付きのワルたる少佐「ガス・マーチ=フィリップス」をリーダーに戴いた彼らは、「ナチス死すべし」という憎悪の念で結束する。イギリスにUボートを撃滅するような戦力はない。だが、Uボートとて資源がなければ活動できない。「Uボートが消費する資源を運ぶ船」を狙い撃ちし、兵站(ロジスティクス)を破壊することが作戦の要諦である。作戦名は「オペレーション・ポストマスター」。漁師になりすまし、漁船に乗って目的地「フェルナンド・ポー」へ向かう一行。現地協力者も獲得し、「これなら作戦もうまく行くだろう」と意気込むが、想定外の事態が発生して……。

 既存のガイ・リッチー作品で言うと、背景となる時代が比較的近いこともあって、冷戦期のドイツを舞台にした『コードネーム U.N.C.L.E.』と若干雰囲気が似通っているかな。出てくるナチスドイツの兵士を次から次へと血祭りに上げていくこともあり、タランティーノ映画の『イングロリアス・バスターズ』を連想する人もいるかもしれない。さすがにアレと比べたら味付けはやや薄めですが、こっちもこっちでなかなか曲者揃い。特にインパクトがあるのは「デンマークの怪力男」こと「アンダース・ラッセン」ですね。凄まじい威力の矢で数百メートル先のナチス兵を射貫いてしまう。ラッセン含めモデルとなった実在の人物がたくさんいる映画だけに、リアリティライン高めに設定しているのかと思ったら、ラッセンの魔弾じみた弓矢であっさりとこちらの想定していたリアリティをブッ壊されて笑ってしまった。一人目を貫通して二人目を縫い止める威力の矢って何なんだよ! 破壊工作班の中に「鎮西八郎」源為朝が混ざっている感じです。アニメで言うと『REVENGER』くらいのリアリティラインなんですよね、この映画。

 アクション映画特有の「敵の弾が主人公に当たらない」現象が多発するなど、「史実ベースの渋い戦争映画」を期待した人にとってはガッカリする内容かもしれないが、エンターテインメント極振りを期待していた層からするとこれぐらいがちょうどいいだろう。途中まで割と順調に進んでいた作戦が「前提の反故」によって脆くも崩れ去り、途方に暮れる一行。極秘任務の存在を嗅ぎつけたお偉いさんが「こんな作戦、即刻中止しろ! やめないと全員裁判行きだぞ!」と脅す中、「上官の命令に従わない」ことで定評のあるガスはイチかバチかで起死回生の大バクチに打って出ます。登場人物の一人として「イアン・フレミング」という海軍情報将校が出てきますが、この人、言わずと知れた“007”シリーズの原作者です。“007”はガスをモデルにして書いた、という説もあるらしく、主人公は言わば「ジェームズ・ボンド」のプロトタイプである。ちなみにガイ・リッチーの父親も海軍将校だったらしく、そのへんの影響もあってこういう題材を選んだのかもしれません。

 タイトルが似ているからと『ジェントルメン』みたいな凝ったストーリー展開を期待すると肩透かしであろうが、「ナチスぶっ殺し映画」としては期待通りの内容だった。やっぱり私、ガイ・リッチーの映画は好きだなぁ。やたら肌に合う。次は地元の映画館で公開されるぐらいの規模だといいな……『ジェントルメン』は映画館で観たけど、こっちは近所の映画館で上映されていなかったんですよ。とにかく最近はファミリー向け大作映画以外の洋画の扱いが悪すぎる!

・それとネトフリで『超かぐや姫!』も観た。

 Netflixの潤沢な予算で作られたオリジナルアニメ映画。あくまで予想ですが、制作費は10〜20億円くらい掛かっていると思う。今のところ配信オンリーで、劇場公開されておりません(プレミア公開のイベントはあったみたいだけど)。概算で10億円以上掛けてるのに映画館で上映しないの!? とビックリしますが、ネトフリは過去にアニメ映画で配信と劇場公開を連動させようとして散々な目に遭っていますので……『進撃の巨人』の「荒木哲郎」監督のもと、脚本の「虚淵玄」、キャラデザ原案の「小畑健」、音楽の「澤野弘之」と、錚々たるクリエイター陣を集め、葬送たる興行収入(2億円にも届かないレベル)を叩き出した『バブル』(2022)が有名です。『バブル』の後も『雨を告げる漂流団地』(2022)、『好きでも嫌いなあまのじゃく』(2024)で配信と劇場上映を連動させましたが、いずれも興行的にはパッとしない結果に終わった。公開規模が小さすぎたせいもあり、この二つに関しては測定不能なんです。恐らく両方とも1000万円行かなかったんじゃないかと思われる。一個でもヒットしている作品があれば、この『超かぐや姫!』も映画館で観ることができただろうな……そのことが惜しまれて已まない面白さでした。

 女子高生「酒寄彩葉(さかより・いろは)」は幼い頃に父を亡くし、母との折り合いが悪いため親元を離れて一人暮らしをしている。母への反発心から仕送りは受け取らず、学費も生活費もバイトで稼いでいた。自腹で学費を払っている以上、学業も疎かにしない。バイト、勉強、バイト、勉強、バイト、勉強……ひたすらストレスが溜まる日々。彩葉にとっての気晴らしはVR空間「ツクヨミ」でのゲームと、AIライバー「月見ヤチヨ(るなみ・やちよ)」の推し活くらいだった。そんな彼女はある日、七色にゲーミング発光する電柱を見掛ける。怪しいし放置して立ち去ろうとするが、運命の強制力によってか、電柱の中から出てきた赤ちゃんを保護するハメに。赤ちゃんはみるみるうちに成長し、やがて彩葉と同い年くらいの少女になる。「まるでかぐや姫だな」ってことで少女に「かぐや」という名前を付け、なし崩しで二人暮らしすることになるが、ツクヨミでヤチヨのライブを鑑賞したかぐやはいたく感激し、「あたしもライバーになる!」と宣言して……。

 舞台設定は2030年の日本、ちょっぴり未来のSFコメディです。「結局ゲーミング電柱は何だったんだよ!」等、細かいツッコミどころは多いがそのへんは勢いで押し切ってくれる。とにかくノリがイイんですよね。キャラに個性があって、掛け合いのテンポが良くて、目まぐるしく変わる表情が非常に活き活きしている。快楽中枢を刺激する、まるで「観る麻薬」みたいなアニメだ。本当、ビックリするぐらいにグリグリと絵が動いて気持ちイイんですよ。去年やってた(今でもまだ上映してるとこ多いけど)チェンソーマンのレゼ篇に匹敵する気持ち良さ。これが劇場公開ナシだなんて勿体ない! と叫びたくなります。あと実在のボカロ曲をいろいろ使用していてそのへんも聴きどころらしいが、私はボカロに詳しくないので漠然と「イイ曲だな」としか思いませんでした。

 再生時間は142分で結構長い。何なら「高畑勲」監督の『かぐや姫の物語』(137分)より長い。前述した『バブル』がだいたい100分くらいの映画なんで1.4倍、まぁ確かにこの長さのオリジナルアニメを劇場公開するのはちょい厳しいものがあるかな……という気はします。ヒットするかどうか読みづらいオリジナルアニメ映画の場合、90〜100分ぐらいがちょうどいいサイズと見做されますからね。もし劇場公開前提ならもっと時間を縮められていたかもしれず、結果的にはコレで良かったのかもしれない。「月から来たかぐや姫は、いずれ月に帰らなくてはならない」という「かぐや姫」(「竹取物語」)のルールに則って展開する後半、かなりツイストの利いたストーリーになっているので好みが分かれるところでしょう。私もちょっとスケールの大きさにヒいてしまった部分がある。しかし、時間を費やして丁寧に描いてくれたおかげもあって受け容れることができました。それでもやっぱりラストは少し駆け足気味だったかな? あれ以上やるとさすがにクドいと感じる人も出てくるだろうし、難しいところか。

 とにかく、「芸術ぶるよりも先にまずアニメは気持ち良くなくちゃいけない」というコンセプトのもとに作られた超・娯楽映画であり、未視聴の方は四の五の言わずにさっさと堪能し(キメ)てほしい。これだけのためにネトフリに加入してもお釣りが出ます。「でも一度加入したら退会とか面倒臭そうだし……サブスクって退会し忘れると永続的に金を引き落とされるから……」って不安な方はコンビニでネトフリのプリペイドカードを買うといいです。金額分使い切ったら自動でアカウントが止まります。

 最後に、キャラに関して。ヒロインである「かぐや」の魅力もさることながら、個人的に一番気に入ったのは「駒沢乃依」ですね。「男のアバターで女装する」のが趣味というサブキャラ、ほとんどの人は初見で女の子と思ったかもしれませんが、私は骨格と所作を目にした瞬間「あっ、こいつ男だ」とすぐに気付きました。フリルで誤魔化してるけど肩幅が広くて意外とガッシリしてる。案の定、喋り出したら「松岡禎丞」の声が聞こえてきてガッツポーズ。あくまで「女装や可愛いポーズが好き」なだけで「女の子のフリをしている」わけではなく、声も低め。弓使い(サブウェポンで巨大チャクラムみたいなのも使う)で、いつも気だるげにしているけど決めるところはしっきり決めるスナイパーぶりがカッコいい。SNSをチェックしたところ、百合目的で視聴し始めて乃依に脳を焼かれるオタクが続出してるのは笑ってしまった。

・拍手レス。

 焼津さんは直哉好きだろうなぁ。と思ってたらやっぱりハマってましたね。『どうせ世界は終わるけど』は伊坂幸太郎の『終末のフール』や健速の『そして明日の世界より』あたりを想定して読むとちょっと読後感違いましたね。終末モノは結局は作者のクセや思想信条が表に出過ぎてしまう

 普段は舐め腐った論外なドブカスのくせに「オマエは!! 甚爾君やない!!」と心の柔らかいところが急に剥き出しになるシーンがあるの好きです。『終末のフール』! 懐かしい、読んだのだいぶ前なんで忘れてました。終末モノは要点を絞らないとどうしても漠然とした思考実験みたいな雰囲気になっちゃうから難しいですね。



管理人:焼津