2008年3月分


・本
 『稀刊ツエルブ』/海藍(メディアワークス)
 『トリコロ MW-1056(1)特装版』/海藍(メディアワークス)
 『アキハバラ無法街』/杉村麦太(秋田書店)
 『武打星』/今野敏(毎日新聞社)
 『犯罪ホロスコープ1』/法月綸太郎(光文社)
 『侵略!イカ娘(1)』/安部真弘(秋田書店)
 『零崎曲識の人間人間』/西尾維新(講談社)
 『淫牝』/ヒヂリレイ(コアマガジン)
 『お兄ちゃんクチュクチュしすぎだよっ』/ゴージャス宝田(ヒット出版社)
 『眼鏡なカノジョ』/TOBI(ソフトバンククリエイティブ)
 『狼と香辛料(1)』/小梅けいと(メディアワークス)

・ゲーム
 『おたく☆まっしぐら』(銀時計)
 『つくして!?Myシスターズ』(すもも)
 『こんな娘がいたら僕はもう…!!』(あかべぇそふとつぅ)
 『車輪の国、向日葵の少女』(あかべぇそふとつぅ)
 『車輪の国、悠久の少年少女』(あかべぇそふとつぅ)
 『暁の護衛』(しゃんぐりら)


2008-03-30.

・原作:支倉凍砂、作画:小梅けいとの『狼と香辛料(1)』読んだー。

 アニメも好評のうちに最終回を迎え、原作は新展開に突入しつつある『狼と香辛料』のマンガ版です。作画を担当する小梅けいとはライアーソフトでの原画(『サフィズムの舷窓』『CANNON BALL』など)や成年コミックで有名な人。確かな技量を有した絵師ではありますが、絵柄の個性がかなり強く、作風に合わないんじゃないか? と危惧する向きもありました。実際、カラーイラストが公開されてたときは賛否両論となりましたし。どちらかと申せば当方も「否」寄りで、「小梅けいとの絵は好きだけど、この取り合わせはどうだろう」と長らく疑問視しておりました。

 が、百見は一読に如かず――とでも言うべきでしょうか。表紙を開くまではまだ心のどこかに残る違和感を拭えないでいたものの、いざ本編を読み出してしまえばたちまちのうちに引きずり込まれて「全然ありじゃん!!!」と叫びたくなった次第。あ、ここの叫び顔のイメージは板垣恵介絵で。原作で挿絵を手掛けている文倉十とは似ても似つかない絵柄だけど、ヒロインたるホロのエッセンスを十二分に抽出した作画で読者を魅せること已む無し。主人公のロレンスとホロの掛け合い描写は非常に細かく、表現媒体を変えるうえでネックになりそうな部分だというのに、マンガ家としてのテクニックを遺憾なく発揮して原作に勝るとも劣らないイチャイチャパラダイスを実現させています。ホロが可愛い仕草を見せ、ロレンスはそれを演技と察しながらも思わずドキリとしてしまう……といった遣り取りも絵で丁寧に表現されれば、その威力たるや顔面神経が破断する勢い。散々「ホロかわいいよホロ」と口にしてきただけに、言わば「ホロ耐性」とでも呼ぶべき抗力を築いたと自負していましたが、甘かった。ホロの可愛さを侮るなど身一つでヨハネスブルグを歩くようなもの、半分も読み進まないうちに胸の奥のハートを雑巾絞りにされました。こんなに絞られたらもう一滴だって「ホロかわいいよホロ」成分は出ないよ……再読したらあっさり溢れ出しそうだけど。

 原作で言うと1巻のだいたい半分くらい? 羊飼いのノーラは巻末のおまけページにちょろっと出てきたくらいですが、それでも一応登場したからには2巻以降のコミカライズもするよ、って意味だと受け取って宜しいのかしら。ともあれ「小梅けいとの絵柄で『狼と香辛料』を描くなんて……」という失礼な先入観を完膚なく打ち砕いてくれる実にステキな一冊でした。しかし、最近のコミカライズは随分とクオリティが高いなぁ。特に電撃文庫関連、『わたしたちの田村くん』『とらドラ!』『とある科学の超電磁砲』など、メディアミックスに興味がないというかむしろ忌避感を抱いている当方でも涎を垂らさずにはいられない良作が目白押し。未読ですけど『我が家のお稲荷さま。』も結構良さそうだ。

 そういえばふと思い出しましたけど、文倉十も『ANGEL BULLET』でエロゲー原画やってましたね。なにげにライアー繋がり?

しゃんぐりらの『暁の護衛』コンプ。感想はこちら(ネタバレあり)。賛否両論というか「期待ハズレ」の声が高いみたいですが、個人的にはアタリの部類でした。ヒロイン全員可愛いよヒロイン。

・拍手レス。

 「暁の護衛(笑)」←護衛してない。登場人物の扱いが酷い。鏡花とか鏡花とか鏡花とか。あと女教師(仮)
 面白かったけど思わせぶりなまま終わった箇所が多く、どうにも不完全燃焼ですね。続編でも出す気なのかしら。

 「lain」や「灰羽同盟」と似たような作品で「テクノライズ」というのがあるのですが、如何でしょう→
 地下に落とされた人間達がテクノライズという義肢を付け、必死に生き足掻く姿を鮮明に描いています→
 昨今のアニメにはないリアル路線の、美しく素敵な作品です。好きになっていただければ幸いです。

 ああ、そうえばテクノライズも安倍吉俊の関与したアニメでしたね。機会があればいずれ見ようかと。


2008-03-27.

・本日は待ちに待った『暁の護衛』の発売日。車輪も大回転で終了させてどうにか間に合った焼津です、こんばんは。

 じゃあそういうことでコンプするまで更新を休みたいんですが構いませんねッ!

AXLの『PrincessFrontier』カウントダウンTOP絵第5弾

 これがPF最後(たぶん)の嘘粗筋となりますが、よりによって「涎小麦」と来たか! 動揺のあまり「粗筋」を「裏筋」と打ちかけましたよ。確かにアニメ化はしてますが……なんだか今回アルエの出番がことごとくろくでもないことになっている気がすんのは目の錯覚でしょうか。言われて気づきましたけど指もちゃんと6本ありますし。

 あ、そうそう、昨日のネタは「ひらがな四文字でおかわりが用意されている三姉妹アニメ」でした。妙子様も友情出演。ちなみにここの『チュートリアルサマー』もなにげに三姉妹モノだったりします。

カトウハルアキの『ヒャッコ』、ついにアニメ化

 いや「ついに」も何も、来月ようやく3巻が出るんじゃ……アニメ業界の原作乱獲ぶりは依然として凄まじいものがありますね。

あかべぇそふとつぅの『車輪の国、悠久の少年少女』、コンプリート。

 各ヒロインのアフターシナリオ、南雲えりシナリオ、番外編とひと通りクリアしてコンプ。とっつぁんシナリオがメインで他はオマケかと思ったが、アフターも結構盛りがありました。1個につき2、3時間で4本入りだから、合計して10時間。南雲えりのシナリオは実際にオマケで30分程度しかなく、番外編に至っては10分少々のスナック感覚な代物でしたが、『悠久の少年少女』全体で十数時間も遊べたわけですから「ボリュームが足りない」ということはなかった。FDなんて、最小の労力でファンから利益を吸い上げる定番のボッタクリ商品――という認識が当たり前だった頃のエロゲーを知っている身としては、これで量的な不満を覚えるってのは贅沢としか言いようがない。

 量的には、と申しましたが内容的にはちっと微妙だったかもしれません。確かにとっつぁんの過去編は気合いが篭もった一品で熱中できましたし、サブキャラとして登場した樋口三郎もかなりイイ味を出していましたが、アフターの4本はプレーする人によって肩透かしとなる可能性は否めない。あまり詳しく書くとネタバレになるのでなるべく抽象的に述べますが、本編で持ち上がった問題がひと通り解決して平和を取り戻した町が舞台となっており、義務だの何だのといった厄介な要素は「ああ、そんなこともあったよね」くらいの割合でしか語られない、非常にのどかな話ばかりとなっています。とにかく全編に渡ってひたすら穏やかな空気が流れる、とことん平和なストーリーであり、ともすればこれが「車輪の国」であることも忘れてしまいそうになる。良くも悪くもぬるま湯エピソードの詰め合わせ。本当に「よくある普通の学園モノ」みたいな調子で小ネタを寄せ集めています。

 当方自身はこういう光景が見たかったので問題ありませんが、日本とは異なる法律で動くパラレルな「車輪の国」に魅了されたクチの人は著しい緊張感の欠如に裏切られた想いを抱いて幻滅するやもしれませぬ。張り詰めたムードが一切なく、心底ビックリするくらいゆるゆるなのですよ、これが。終始雰囲気が甘ったるしい。主人公がかつて特別高等人を目指していただなんて、まるで嘘のように思えてくる。熱が抜け、ヒューマンドラマとしての温度は確実に下がってますね。その代わりにヒロインたちとのラブラブイチャイチャバカップルっぷりは胸焼けがするほどたっぷり堪能できるって寸法。特に夏咲は本編の「鬱咲」状態が幻だったと錯覚するまでに天真爛漫な元気っ娘ぶりを見せ付けます。でも、個人的に一番楽しかったのはさちでも灯花でも夏咲でもない、あの人のアフター。中の人の凄絶な演技も相乗して、物凄い存在感を発揮します。ネタのキレもこのシナリオがもっとも際立っていた。ところで夏咲アフターで「カレーはひと晩寝かせないと食べない」って嗜好を「絶対」と言ってまで強調していた夏咲が灯花アフターだと出来立てのカレーを事も無げに食っている件はギャグだろうか?

 総じて見るに、「お遊び」の様相が濃厚なFDでした。あくまでおちゃらけ抜きのシナリオ重視、というタイプのプレーヤーだったら法月ビフォー以外は不満を覚えるかもしれない。ヒロインズのアフターシナリオにまったくシリアスを混入させない遣り口は、大多数のファンが出した要望を叶えるために必要な処方だったのでしょうし、FDの理念からすれば決して間違っていないと思います。ま、深く考え込まないで楽しみましょうや、ってことで一つ。番外編に『こんな娘がいたら僕はもう…!!』ネタがほんのりと混ぜられているのには笑った。難航しているらしい『G線上の魔王』に期待を寄せつつ、次は『A Profile』あたりでも崩すべぇか……ここ最近るーす尽くめなんで、ちょっと休憩入れてから取り掛かることにします。『暁の護衛』もありますし。

・拍手レス。

 …えっと、アフターストーリーはあんまり期待しないほうがいいよ?
 悪くはないけど、期待するとちょっと……ですね。


2008-03-25.

AXL、『PrincessFrontier』のカウントダウンTOP絵更新継続中

 昨日は意表を衝いて『郵便処刑執行人』『シゴフミ』ネタでしたが、今日は大方の予想通り獣耳獣尻尾廓言葉なアレが来ています。最後のコマに違うのも混ざってますが……それにしても、狼娘化したレキが可愛くて仕方ねぇ。嘘予告も残すところあと2回。次は何が出るかな。

・TOBIの『眼鏡なカノジョ』読んだー。

 「眼鏡」をテーマに一話完結で送るオムニバス形式のコミック。「かけず嫌い」から「曇ぬくもり」まで、全部で8話あります。もともとはYahoo!コミックで無料配信されていた作品であり、現在も1話目だけ掲載されている。どちらかと申せば眼鏡っ子が苦手な当方ですが、某所(ぶっちゃけてしまうとDAIさん帝国)で話題にされていたことから気になり、公開されていた「かけず嫌い」を物は試しと読んでみて見事に撃沈。眼鏡が好きとか嫌いとか無関係に、ラブコメ愛好者のハートを貫通する良いマンガです。それゆえに、眼鏡好きの人よりも当方みたく「眼鏡っ子が苦手」と公言して憚らない人にこそオススメしたい。なぜかって、眼鏡っ子属性持ちなら推すまでもなく買うでしょうこの本。

 あくまで一話完結ですから複数のエピソードに跨って登場するキャラクターはいません。だいたい一話につき一カップルで淡かったり甘かったりする恋愛模様をゆるりと紡ぐ。中には「叔父と姪の交流」という変則的なものもありますが、基本はラブコメです。個人的には「かけず嫌い」「透き通る心」「曇ぬくもり」の3つがお気に入り。「眼鏡を外すと実は美少女」という古めかしいパターンに鉄槌を下すべく「眼鏡をなるたけ外さない」ってポリシーを守り、同時に「眼鏡を掛けること」を物語上重要なファクターとして描く姿勢に自然と襟を正してしまいます。「眼鏡は顔の一部!」と言い放ったエロゲーがかつてありましたが、そういう暑苦しさとはまた違った仄かなアプローチで篭絡してくる。細かいところにまで心を砕いています。ほんの一コマ、されど一コマ。百万言を費やすよりもただ、そっと眼鏡の蔓に触れる指先で魅せる。なんともまあ――素敵ですこと。

 「お前の感想はピンと来ねぇよ、ピント合ってねぇよ」と文句言ってる暇があったらさっさと専用ページに赴いて1話目を舐めるように味わってきてください。ラブコメ中枢に直撃弾を喰らって即時陥落するであろうこと請け合いです。「レンズの向こう側にある瞳」とか何とか腑抜けたことをヌカしてないでフレームごと包む気持ちでヒロインたちを注視すべし。

 勢いに任せてプッシュしてみましたが、「眼鏡っ子が苦手」な自分がなぜこれはイケたのだろう? と冷静になって考えたら、やはり一つは「各話の主人公たちが決して『眼鏡っ子好き』ではないこと」が挙げられるかと。むしろ眼鏡をマイナス要素として捉えている奴すらいる。眼鏡っ子をウリにした作品の場合、主人公にまで強烈な眼鏡っ子属性を植え付けてしまうと価値観が独特になりすぎ、属性を帯びぬ身にはかなり入りづらい雰囲気が醸されてしまう。そこに来ると『眼鏡なカノジョ』は扱いがフラットというか、淡白に「眼鏡は眼鏡」と割り切ったスタンスで描かれているため、当方みたいな人間でも怖じることなく入っていけます。大雑把なストーリー紹介はここが詳しいので是非とも参照されたし。

あかべぇそふとつぅの『車輪の国、悠久の少年少女』、プレー開始。

 ひとまず阿久津将臣シナリオ、つまりとっつぁん視点の過去編を完了。やべえ、限度を越えてとっつぁんが格好良すぎるものだから新手のバグかと思った。『車輪の国、悠久の少年少女』はあかべぇにおいて累計6本目となるソフトであり、『車輪の国、向日葵の少女』のFD(ファンディスク)。FDなのにメーカー希望小売価格が7140円(税込)とやや高めですが、初回生産分には2枚組のサントラCDが特典として同梱されていたこともあり、別段ボッタクリというほどでもない。ただ、「値段高めなのだからボリュームもたっぷりだろう」と期待したファンがいざ蓋を開けてみるとそれほどでもなく落胆した、という報告を小耳に挟み、「分量は短い」と思い込んでいた次第。とっつぁんの昔語りも2時間くらいで中途半端に終わるんとちゃうかな、って半信半疑のままプレーしました。

 結論から言えば、思っていたよりはずっと多かった。正確な時間は計っていませんが、一本道ながら4、5時間は要する長さで短編じゃなく中編程度の読み応えがあります。内容はもちろん回想形式のストーリーで、舞台は『向日葵の少女』と同じ町ですが、場面がほとんど固定されていることもあって町中を歩き回るような「広がり」はありません。あの町は内乱で軍の介入があって一度荒廃し、それから復興して現在に至る――という事情があるだけに、「復興後」の背景CGを使い回すわけにも行かず、キャラたちの行動半径を狭くしたのも已むなきことではあります。ともあれ、そういったわけで「町を移動する」感覚が乏しかったものの、とっつぁん、それに今回初の顔見せとなる樋口三郎、加えてみぃなやアリィといった新キャラたちと、興味深い面々が揃うおかげもあって楽しく没頭できました。思っていたよりも長かったせいで途中コンセントレーションが切れてダレる箇所もあった(具体的にはHシーンの挿入されるあたり)にせよ、その後の盛り上がりで易々と挽回してくれたから万事遺漏なし。前日譚の性格上、どうしても話の展開や結末が読めてしまう難点はあるものの、だからと言って半端に投げ出すことなくキッチリと捻りの利いたエンターテインメント作品に仕上げてくれたことには惜しまず拍手を送りたい。とっつぁんの内面が随分と明確になって、益々好きになってしまった。でも、最高潮の場面で「Fin」と幕が下りてしまうエピローグはちょい勿体なかった気もする。蛇足でもいいからあの続きが見たかった、と如何にもファンらしいワガママを言ってみる。

 しかし、あれか。車輪の国じゃ「法月」の姓は悪役を任ずるという掟でもあるのか。新キャラのひとり、法月アリィは中の人(折笠愛)に相応しい見事な悪々しさを見せつける。ちなみに三郎がアリィのことを何度も「てんてぇ」と呼ぶのでつい「天帝」が頭に浮かんでしまった。「くらい、くらぁぁぁい……天帝様がお怒りだぁ」 あるいは古野まほろ。最近厚さに負けて“天帝”三部作をまとめて衝動買いしちゃいました。ともあれ、『向日葵の少女』で腑に落ちなかった点はあらかた決着し、あとは心置きなくアフターストーリーを堪能するばかり。ほんじゃ早速賞味してきますわー。

・拍手レス。

 2〜4章最後の賢一の空振りと救済する立場の逆転が、5章の緊張感とカタルシスに繋がる構造に痺れました
 賢一の意識が変容していく過程を綴る上でも章立て構成がうまく機能していますね。

 A Profile完全版は主人公が衛宮士郎ばりに抱えた歪みに各ルート固有のアプローチをする点で無駄な
 話などないと思います。追加されたというルートはさしずめ桜ルートといった風情で、それを許容できるなら。

 とりあえず同人版をやってみて、「これじゃ足らない」と感じるようなら完全版にも手を出そうかと。

 こういうタイトルこそ「純文風」ってやつじゃないですかね。確かにエロゲに合わない分野ではありますが。
 個人的にはむしろ「絵」に違和感を感じてスルーしていたり…。

 もうちょっとタイトルに周りの興味を引っ掛けるフックがあればいいのに、と思います。

 AXLのアレですが個人的にはジョジョかえの素がそろそろ来てもおかしくないかと。
 そういえば「瀬之本」と「えの素」は響きが似てますね。


2008-03-23.

・いつの間にか60万ヒットを突破していて素で驚きの焼津です、こんばんは。一遍リセットしたりで、あんまり正確な数字じゃなかったりしますが、何にせよめでたいめでたい。

AXL、『PrincessFrontier』のカウントダウン開始

 遂にはじまりました! AXL恒例、瀬之本久史の持てる技術を無駄に注ぎ込んだ嘘粗筋イラスト! 今日が「5日前」だから、残りはあと4回ですね。さすがに当日はまともなTOP絵で「好評発売中」となりますから。

 今日のネタは「降格警備隊」と題しているくらいなので言わずもがなのアレ。スーツメイルがどうしても『鉄球姫エミリー』の大甲冑を想起させるぜ。嘘粗筋はだいたいアニメネタであり、あと4回のうちに何が来るか予想してみるのも一興。今のところ『狼と香辛料』あたりが鉄板視されてます。当方はあえて『少女革命ウテナ』が来ると見た。

・ゴージャス宝田の『お兄ちゃんクチュクチュしすぎだよっ』読んだー。

 昨日に続きまたエロマンガか! という感じですけど、いやー、他に読んでる本で特に感想書きたいのがなくて。ゴージャス宝田8冊目となる本書は、タイトルの「お兄ちゃん」に偽りなし。収録されている12編中10編が妹モノです。もともと妹スキーで有名なエロマンガ家ですが、ここまでやられるとさすがに感心。終わりの3編「のんびりオバケ」「壁から先生」「個室夫婦。」は発表時期が古いせいか絵柄も昔のゴージャスになっていますね。他と比べて若干違和感があり、少し員数合わせっぽい印象を受けるものの、全体的なクオリティは充分な水準に保たれている。

 とにかく、ネームからしてキレが違う。迸るセリフに篭もった熱い欲望と濃い情念は、FBIお抱えのサイコメトラーを呼び出すまでもなく「こりゃゴージャス宝田だ……」と容易にページから汲み取れるほど。これに作画のインパクトが加わり、「話としての面白さ」まで付与されるんだからもう最強。ヌけるヌけないじゃなく、面白いか否かで語り明かせるエロマンガです。「OUT」の嫉妬した妹が兄に近寄る女を罵倒する件、僅か2ページながらインパクトは並みならぬ。あそこは妹の噛みつき具合もさることながら、妙に冷めた目で傍観している妹の友人たちが怖い。怖いと言えば「おにづめ弁当」、「お弁当に使用済みのコンドームが入っていた」という驚愕の導入ながら、ラスト1ページはその衝撃をあっさり越える。「スイッチ。」や「アナル合格!」はラブコメ描写が秀逸で、裸になっているシーンよりも服を着ているシーンの方が可愛くて胸も高鳴るという倒錯を生み出しています。「太陽を…っ」は分類の難しい一作ですが、『絶体絶命教室』所収の「アンジー」や「ハートメイカー」に迫る勢いがあり、要チェック。

 『絶体絶命教室』や『キャノン先生トばしすぎ』をも上回る――とまで行かないにしても、「最近ゴージャス宝田が気になっている」という人に推す本としては順当な一冊でした。「代表作」的な地位は築けないかもしれないが、ファンならとりあえず読んどけ、みたいな形で後々まで語り継がれそうな気配を帯びています。と、偉そうなこと書いてますが、当方も「生粋のファン」と名乗れるほどはゴージャス作品を読み込んでいない有り様だったり。どうかご寛恕を。まー何にせよ、こうやって定期的に彼の新刊を読める今は実にイイ時世だと思います。

あかべぇそふとつぅの『車輪の国、向日葵の少女』、コンプリート。

 最近の当方にしては珍しく、物凄い勢いで完了させました。発売が2005年の11月、プレー開始が翌2006年の元旦でしたから、実に2年以上も要してようやく終わらせた――ってことになる。といっても2006年と2007年の間に進めた分量はせいぜい4、5時間程度で、大部分は再開後の一週間で踏破。いやあ、結構ストレスの溜まる箇所もあってクリックする指が遅くなったりしましたが、一旦ブレイクスルーを成せば後はむしろ止める方が難しかったですね。休日丸々潰してプレーした日もありますよ。こんな傑作をみすみすHDDに眠らせていた自分はホントに馬鹿だと思い知らされました。

 本作は章立て構成になっていて、第1章から第5章まで、どんな選択肢を採っても概ね同じ展開を見せます。つまり、ほとんど一本道。特定のヒロインとフラグを立てることによってちょっとしたイベントが発生したり、エンディングが分岐したりしますけれど、いわゆる「個別シナリオ」的な役割は各章に振り分けられ、それぞれの中で賄われる仕組みになっている。そのため、何のフラグも立てないままエンディングを迎えると、俗に言う「ハーレムエンド」に到達する羽目となります。それもウハウハな女肉天国じゃなくて、誰ともHせぬままヒロインたちに言い寄られては逃げ回る童貞地獄変。平和と言えば平和なエピローグですけれど、初回で見たエンドがこれだったときは思わず腰砕けでした。18禁ゲームなのに、濡れ場らしい濡れ場を見ないでクリアしちゃったよ……と。エロゲーマーとして不覚の極みです。

 途中でいくつかトラップが仕掛けられており、バッドエンドも用意されている(BEスキーなので無論すべてチェックしました)けれど、良くも悪くも一本道なので一度クリアしてしまえばもう詰まることもありません。ただ、個別エンドを見る上で欠かせない「各ヒロインとのフラグ」を立てるのが少し厄介。というか面倒臭い。フラグそのものは誰がどう見たって「これフラグじゃん」と口走る明白な代物であり、分からないってことはまずありえないのですけれど……肝心のフラグが1章の時点から用意されていて、コンプしようともなればまた最初からやり直す必要が出てきます。立てたフラグによって少々文章が変わるとはいえ、展開自体は一緒だから、だんだん退屈してきます。スキップ中、テキストがだらーっと流れていく様子を眺めるのもダルかった。終いには本を読みながらプレーしていました(ちなみに伊坂幸太郎の『砂漠』)。

 それでも「根気があれば確実にコンプできる」っつー程度の難易度ゆえ、攻略するのが激ムズい昔のゲームとは比べ物になりません。けど、すっかりユーザーフレンドリーになった最近のヌルいゲームを基準にすれば面倒臭い方。話が面白くキャラ全員に魅力があったからこそ意地になって最後までやり抜きましたが、そうじゃなきゃ目当ての娘のエンディングだけ見て投げていたかもしれません。何せ当方は『Rumble〜バンカラ夜叉姫〜』のエンディングを凛奈と盾子しか見ていない男ですから。いや、あれはろくにセーブもできないシステムのひどさにコンプを断念しただけで、シナリオやキャラは良かったんですけどね……閑話休題。攻略は面倒でしたが、マルチシナリオじゃなくて章立て構成にしたこと自体は良かったと思います。物語を平行的に広げるのではなく、垂直に積み重ねる。そうすることで感動が分断されず、重層的な読み応えを味わうことができました。

 ともあれ、「何が何でもコンプしてやる」と駆り立ててくれるくらいには充実感の詰まったソフトでした。あくまで個々のドラマが中心であり、国家や体制といった背景設定は添え物で本編中においてそれほど詳しく描かれていないのに、深すぎず浅すぎず、丁度良い掘り下げで効果的に物語を盛り上げてくれるのが嬉しかった。クライマックスの白熱ぶりに対してエンディングがあっさりめなのは、やや残念でしたが。とっつぁんの行動もいまひとつ一貫性に欠くような……ま、そのへんの腑に落ちない点はFD『車輪の国、悠久の少年少女』で清算されることを期待しよう。「溜めが長い」などといった若干の不満に目を瞑れば、義務だの特別高等人だの、更には内乱や異民、南方紛争など、一見奇を衒って風呂敷を広げているようでいて、ちゃんと要点を押さえてまとめ上げるストーリーテリングの滑らかさにゾクゾクと背筋を震わせながら燃えることができた。トリッキイなところとベタなところがうまく同居して、乖離せず馴染んでいることには賞賛を送りたい。ライターはこのシナリオを僅か四ヶ月で書き上げたと豪語しており、ほんまかいな――と思いつつも素直に驚くとする。なるほど、道理でみんな『G線上の魔王』を熱望するわけだ。かく言う当方も「G線? あれだね、発売しても一旦様子見して、他の人たちの感想を吟味してから決めるよ」などといったコスい考えを捨て、スワスチカ上等で特攻する覚悟を決めました。腹を括った以上、もう延期などには怯むまい。

 時間は掛かってしまいましたが、どうにかコンプリートへ漕ぎ着けることができ、タイトル画面が全クリ仕様になった瞬間、様々なものが脳裏を去来しました。るーすぼーいがシナリオを手掛けたゲームはこれが初クリアとなりますけれど、実は同人時代の『A Profile』から注目していたんですよ……と、さりげなく「昔からのファン」であることをアピールしようと試みましたが、そうだ、『A Profile』積んでたんだった。言うまでもなく『夏の燈火』も。魔王が発売するまでにこれらも崩すべきか。しかし『A Profile』には『その横顔を見つめてしまう』という完全版があって、そっちに書き下ろしの新規シナリオが付いてるから『その横』を買い直した方がいいのだろうか? ただ、リメイクverはあんまり評判芳しくないみたいで「同人版で充分」との意見もありますし、うーん、迷うところだ。

 余談。『車輪の国、向日葵の少女』というタイトルには発表当初「……微妙じゃね?」という反応を示しちゃいましたが、いざプレーしてみるとマクロなものを「車輪」、ミクロなものを「向日葵」に見立て、その二つを融合させるセンスに痺れた次第。題名の第一印象でちょっと損している気がしないでもないので、「正直、タイトルからして惹かれない」とおっしゃるそこな御仁も堪えてせめて体験版だけでもプレーしてやってくれないかい? と推してみる。体験版は2章、さちシナリオがすべて収録されているらしいのでかなりオススメ。ぶっちゃけこのソフト最大の見せ場だもんなぁ、2章のラスト。3章のラストもですけど。4章は「繋ぎ」だからいま一歩ですが、5章もなかなか……って、つまりほとんどのラストが良いってことで、わざわざ強調する必要もないか。個人的に好きなキャラは法月将臣――要するにとっつぁんです、結局のところ。何度見てもつい「のりづき」と読みそうになりますが、声優の存在感も相俟ってヒロインたちが霞むこと霞むこと。「豚のひがみというのだ!」のインパクトは最強です。あとはまなも好き。いえ、ロリコンじゃありません。断じて。メインの3人では夏咲かな。4章ラストの真情吐露は見事な演出も相俟って神懸かった威力を放つ。「夏だねっ? お外はきっとあっついねっ。雨も降るかなっ? 田んぼは青々しいよーっ? 風が吹くと気持ちいいよね?」は幼少期のセリフや鬱咲時代のセリフが重なって一層厚みを増している。それから南雲えりも気になってたけど、あの人は出番が……っと、これ以上喋るとネタバレに抵触しかねないので以降割愛。当方は深刻なネタバレを受けた後でプレーして、別にどうということもなく楽しみました(事前にネタバレされているとそれはそれで楽しい部分もある)が、やはり知らない方が得かと。まあ、うっかり食らってしまっても気にしないでください。その程度で面白さが減ったりはしませんから。

・拍手レス。

 デジャブりながらもディエスサントラを買っちまいそうな今日この頃。にしても正田さん、壮健だった…のか?
 スタッフ日記での声明が待たれます。


2008-03-22.

『暁の護衛』までもう日がないし、急ピッチで車輪を回す作業に従事する焼津です、こんばんは。ちなみに当方は『車輪の下』を読んだことありません。小説好きなのに、文学作品とは吃驚するほど無縁であります。

・ヒヂリレイの『淫牝(エロスケ)』読んだー。

 別名義で一般向けの漫画も描いている著者の久々となる成年コミック。前は「ひぢりれい」だったけど、表記が変わったのかな? ショタがエロいお姉さんに喰われる、言わば「年上属性」が主でロリ系は今回ほとんどなかったです。「空蝉」という一度読んだら忘れられないような鬼畜ロリものを描いた著者ですけど、最近はもうロリとかやらないのだろうか。一個だけ「天使が魔界に投棄される」という変わったのがあって、ちょっと肉体破壊入ったグロい描写があったものの、こんな感じでファンタジー漫画描いても結構イケそうだな……と感心した次第。翼をもがれるシーンは『灰羽連盟』の翼が生えるシーンと双璧を成すインパクトです。ちなみに収録されている中で一番古いみたい。なんでも初出は98年だとか。

 いわゆる「萌え」重視のタイプと違い、陰毛や性器などの描き込みがしっかりと生々しく、迫力のある作画がページ全体を占めている。発表した時期がバラバラなせいもあって多少作風が安定しないようにも見えるけど、丹念でエロティックなこだわりは一貫しています。収録されている作品のどれもがストーリーらしいストーリーは皆無に等しくて、最初から最後までひたすらセックルセックルと肉々しくも汁々しいものばかり。好みが合わない人でもこの淫密度には圧倒されることでしょう。多人数プレーも豊富。ただし基本的に和姦系で陵辱路線は上記の天使モノだけだから、「輪姦」というより「乱交」のノリですね。

 残念ながらツボに嵌まるキャラやシチュがなかったため、実用度の面では評価しかねるが、それでも手元に残しておこうと思うほどのクオリティ。エロマンガには詳しくありませんが、こういった粘着質な執念を持っている作家がまだまだ伏在しているかと考えるとワクワクします。

『Dies Irae』のサントラに正田崇書き下ろしのドラマパートを収録

 この報に再び獣の鬣が集いつつあります。告知ページには「夏に発表に向け、「Dies irae」関連企画進行中!」と気になる一文も。

「夏が来て、暑くなって、正田が帰ってきて、lightは白々しくて、風が吹くとスワスチカの匂いがして、『Garden』みたいな同類がいて……何にも変わらないけど、それでもいいんだよ」

 という心地になってまいりました、だんだん。

あかべぇそふとつぅの『車輪の国、向日葵の少女』、プレー中。

 4章をクリア。4章は待ちに待った夏咲のシナリオであり、主人公の過去もいろいろ絡んでくるんですが……諸事情につきこの章ではストーリーが完結せず、「5章につづく」な曖昧さを漂わせたまま幕引きとなります。言わば4章が前編で、5章が後編みたいな構成。あまり書くとネタバレの恐れがありますからこれ以上の説明は避けますけど、とにかくそんなわけで4章に関しては2章や3章と違い、独立した感想を書くことが難しい。過去と現在を交錯させる手際は鮮やかで、エロゲーによくある「離れ離れになって随分経ってから久々に再会したというのに、一途に主人公を想い続けていた少女」というタイプのヒロイン造型を逆手に取って魅せてくれる。

 序盤はなかなか夏咲が正常な受け答えしてくれず、さっぱりコミュニケーションが取れないので苛々が募ります。どの章もまず前半でこれでもかとばかりにプレーヤーへストレスを与え、後半でおもむろに解消していくというのが車輪〜の大まかなスタイルとなっていますが……基本的な会話さえ拒否されるストレスは生半なもんじゃありません。「掛け合いが面白いことの大切さ」を逆説的に痛感させられた仕儀。進むにつれてだんだん会話が成立するようになりますから、後半は比較にならないくらいほど寛ぎ、サクサクと楽しんでプレーすることができました。夏咲の負った義務は「恋愛禁止」で、具体的に言えば「異性と肉体的接触をした場合、双方が罰せられる」ってものです。事故ならまだしも、故意に触れたり触れられたりすれば即ゲームオーバー。まるでファミコン時代のアクションゲーム並みにシビアな仕様だ。マリオでBダッシュして速攻クリボーにタックル死する奴とかいたな……ともあれ、恋愛ゲーにおいてもっとも難儀な義務です。「誰にも恋愛感情を抱かないと証明する」ことでしか義務を解く術はないのに、誰も愛せないんじゃ義務を解消する意味がない。『殺×愛』の「相思相愛でしか殺せない」を彷彿さとせる強烈なジレンマであり、なんともまぁもどかしい。それだけに終盤、桎梏から解き放たれた夏咲の顔を見たときは快哉を叫びたくなりました。

 2章以降のシナリオはあくまで個々の人間ドラマが軸になっており、それぞれが過ごす学園生活は物語上些細な要素でしかないので、極端な話「『車輪の国、向日葵の少女』は学園モノじゃない」と言い切ってしまってもそれはそれで妥当に思える。が、しかし、義務ゆえに友達との関わり合いを避ける夏咲の姿を見るにつけ、一切の屈託なく学園で友人たちと楽しく毎日笑い合っている光景を眺めたいものだなぁ……と願わされることを考えれば、車輪〜はこの上もなく純粋な学園モノであると思います。歳を食うと、特別何ということもなかった教室での出来事が無性に懐かしく胸に甦ってくるものだから困る。さ、早く5章に取り掛かるとしよう。辿り着いた先にハッピーエンドが待ち受けていることを祈りつつ。

・拍手レス。

 喝采せよ!正田首領がご帰還なされる!
 完全版までにアレですかね。延期組がスワスチカになれば完璧…?

 ファンの期待を粉砕し、玉砕へと追いやった末の喝采。狙ってやってるなら恐ろしくなる、本当に。

 庭、たくみん、東鳩ADなどのスワスチカを捧げた甲斐があったのか
 サントラ付属のドラマCDで我らが正田崇首領が不完全ながら帰還されるそうです。

 ようやくお帰りあそばすか……どこの冥府で魂を喰らってきたものやら。

 恋する乙女VS守護の楯はラブ米的な意味でのVSを想像しました。こう、アプローチによって女装が
 ばれたりしなようにしているのに、ヒロインのほうがばらそうとしたりとカ

 恋楯は「攻略ヒロインだけに女装がバレる→周囲は妙子を女と思ったまま屈託なく接するため、ヒロインが嫉妬」みたいなイベントさえあればもう完璧だったのに。

 徹底したヘタレっぷりを拝ませてくれた孝之。 しかし、他にはない魅力を持った主人公でもありました。
 あそこまで行けばもはや一つの到達点。


2008-03-21.

しゃんぐりらの新作『暁の護衛』、初回版ロットアップ。通常版は4月4日発売予定。

 発売後に「店頭の在庫のみとなります」みたいなアナウンスはよく見かけるけれど、発売前にOHPでロットアップ告知とは……よっぽど発注数が多かったのでしょうか。通常版は定価が安くなりますし、無理して今から初回版の確保に走るよりも一週間空けて充分に評判をリサーチしてから悠々と通常版を購入しに行く方が、昨今の情勢からすれば得策かもしれません。当方は一刻も早くプレーしたいので関係ねえよ! カァンケイねェェんだよォォォ!!ですが。

 ともあれ発売まで一週間を切ったし、大急ぎで『車輪の国』を走破しないと……。

「おっ」と思った小説の冒頭をあげるスレ「独り言以外の何か」経由)

 消すべき過去が、そこにあった。

 本が手元にないから記憶頼りになってしまいますが、確かこんな書き出しだったはず。物覚えが悪いので「おっ」と思っても冒頭の書き出しなんてすぐに忘れてしまいます。加えて当方は作品世界に意識を溶け込ませるタイプなので文章を文章として記憶するのが難しいって言いますか……どうも文章を脳内で映像や音、匂いや雰囲気に変換してしまうんですよね。それで頭に残りにくい。あと、経験則から言って冒頭の面白さが必ずしも作品全体の面白さを保証するとは限りませんし。冒頭は眠気を誘うくせして本編は滅法おもろい、という条件で当て嵌まる本は沢山あります。その逆も然り。ただ、店頭で買おうかどうか迷ったとき、冒頭を判断基準に用いることはよくあります。最近の例では

 選択肢は三つに絞られた。
 飼育、解放、密殺。

 にやられて『ニッポニアニッポン』を購入しました。小説以外で冒頭に「おっ」と唸らされたのは、何と言っても『トレインスポッティング』。近所のレンタルビデオ屋で激安レンタルを実施していて、なんとなく借りたものの返却する当日まで見れなかったから「あー、時間ヤバいし、もう見ないで返そう」と思いつつ「いや、ちょっとだけ……冒頭だけでも見るか」と貧乏性発揮してデッキに突っ込み、冒頭1秒で即座に引き込まれた。結局そのまま見惚れて時間ギリギリになって慌てて返しに行きましたよ。エロゲーに関しては『CANDY TOYS』が辛うじて該当するかな。主人公が大金持ちのハッカーで、借金のカタに買った箱入り娘というか「箱詰め娘」が自宅に配送されてくるっつー物凄い鬼畜臭溢れる導入ながら、厭味のない筆致で紡がれているせいか、不思議と爽やかにプレーできた。あれは体験版がなかったらスルーしていたこと間違いなし。

あかべぇそふとつぅの『車輪の国、向日葵の少女』、プレー中。

 3章、灯花のシナリオをクリア。一回バッドエンドに行ってしまい、以降は慎重にプレーしてどうにかワンミスでフィニッシュしました。車輪って気を抜くと一気にバッドへ落ちる、昔かたぎのスリリングなADVですな……おかげで適度な緊張感を保って話を読み進められますが。このハラハラするムードと先の気になる展開が波状攻撃を仕掛けくるもんだから、ついつい睡眠時間を削ってやり込んでしまう。もうちょっと掛かるかと思いましたが、割と足早にこのキャプチャーを終えられました。

 3章のヒロイン・大音灯花は言ってしまえばツンデレ系で、初対面のうちはキツく当たるが、仲の進展に比例して蕩けた部分を覗かせるようになります。優柔不断な性格で、決断力がなく、そこに付け込まれると弱い――ってことを会って早々の段階で主人公に見抜かれてましたが、彼女のシナリオはずばり「決断」がテーマになります。さちシナリオも決断がテーマと言えなくもありませんけれど、そんなもの、灯花シナリオの非ではない。逡巡・懊悩・葛藤が章の全域を覆い尽くしている。「どうしよう……」が口癖で、ひたすら迷い、思考がループし、同じセリフを何度も執拗に繰り返す様はダメ主人公スレで「皇帝」と称される鳴海孝之を彷彿とさせる。それはもう、ありありと。ヒロイン化した孝之を見たい者は車輪3章をプレーするがいい、女帝(エンプレス)はここにいる。

 というわけで、2章でさちが垂れ流した愚痴と言い訳に匹敵する灯花の煮え切らない発言の数々にストレスが溜まったものの、「『大人になれない義務』を負った意志薄弱な子」が中心となる以上、徹底して眠たいことばかり言っているのは仕方ないことです。最終的にはすべて決着がついてこちらの気持ちも浄化される仕組みとなっていますし、足を止めず駆け抜けるようにクリックし続けることが肝要。個人的な好みで言ったら2章の方が面白かったけれど、3章は3章で読み応えのあるシナリオだと思います。こちらの注意を話の中へ引き込むパワーに関しては何ら劣るところがない。ベタっちゃベタですし、「超絶技巧」と褒め称える領域にまでは達さないとしても、読み物として充分感激しうる出来映えとなっています。

 しかし、こんぼくの方を先にやっていたせいか、どうしても渚を連想して違和感覚えちまうのには参った。あくまで「ぶっ殺(こぉ)すぞ」のオリジナルはこちらですし、「ぶっ殺(こぉ)せ」みたいな活用形の存在を耳で確認できたのも収穫でしたけど、あの微妙に似ているんだけどやっぱり違うキャラデザインが幾度も脳裏をよぎって複雑な心地に……気を抜いたら灯花のことを「渚」と呼んでしまいそうだ。

 さて、残る義務もあと二つ。一つは夏咲の「恋愛禁止」として、もう一つは誰で、どんな義務なんだろうか……とっくにネタバレ食らってますからだいたいの予想は付くんですけども、それを無視してとりあえず現時点で判明していることは「極刑」ということのみ。極刑……なんだかワクワクする響きですね。「きょっ」とジャンプして「けい」と足刀を放つ、キレの良い飛び蹴りみたいな発音がもたらすニュアンスに胸ときめきまする。

・拍手レス。

 悪夢じゃーこれは夢なんじゃよー、現実でした。俺たちに翼はない延期。
 翼もないのに大飛翔とはこれ如何に。

 小説版学園黙示録はなんか微妙に漫画版と設定が変更されてますよ
 ちゃんと完結するんだったら設定の一つや二つ……。

 それ散るのBasilが復活です
 今のところ予定はそれ散るのサントラだけですね。

 「と」を「vs]に変えてみる<ウォルvsディズニーとか。とりあえずウォルさんに勝ち目はなさそうですね
 『団地VSもお』だったら伯仲している気がしないでもない。

 『ぶぎーぽっぷ・りたーんず〜いまじねーたーと!』…くらいしかネタが思い浮かばない俺は読書量不足。
 VSイマジネーターはブギポで二番目くらいに好きだなぁ。一番は「パンドラ」。

 イカ娘単行本出たんで僕、嬉々として「やらなイカ」ってやろうとしたら二番煎じもいい所でした。
 誠に遺憾。

 焼津さんにお聞きしたいのですが、ミステリーのオチ(探偵が犯人とか読者が犯人とかいうトリック?)を
 まとめたサイトか書籍をご存知ではないですか?下手な日本語でごめんなさい

 相当古いですが乱歩の「類別トリック集成」。所収は『続・幻影城』だったはず。


2008-03-19.

「〜と〜」の「と」を「VS」に変えて一番見たい作品にしたやつが優勝「GF団」経由)

 『嘘つきみーくんVS壊れたまーちゃん』
 『乳VS卵』
 『恋する乙女VS守護の楯』
 『カーリー 〜黄金の尖塔の国VSあひるVS小公女〜』
 『猫泥棒VS木曜日のキッチン』
 『江利子VS絶対』
 『沈め屋VS引揚げ屋』
 『チグリスVSユーフラテス』
 『ハリー・ポッターVS不死鳥の騎士団』

 柔らかいタイトルがいきなり険を帯びるのが楽しい。逆に「VS」を「と」に直すパターンでは『毒蟲と溝鼠』あたりか。……あんまり柔らかくならないな。

・安部真弘の『侵略!イカ娘(1)』読んだー。

 海の底からやってきたイカ娘がヒロインを務める、チャンピオンで連載中のホームコメディ。家は家でも海の家なわけですが。最初の1話目だけ尺が長くて16ページありますが、2話目以降は8ページで収まる定型的な読切ショートギャグマンガとなる。語尾が「ゲソ」とか「イカ」で、「見せてもらおうじゃなイカ!」「もういいでゲソ!」などと間の抜けたセリフを吐き、場の空気を程好く緩ませます。「海を汚す人間は悪!→ならば自分が人類を支配して海を綺麗にする!」という野望自体は支持を得られんでもないだろうが、傲岸不遜で後先考えず、叱られて涙目で謝るような展開がパターン化しているため、「アホな子」という印象しか残りません。総じて良い意味でバカバカしく、適度に気の抜ける可愛い絵柄でほのぼのと読めます。「気の抜ける」とは書きましたが決して手抜きではなくて、いくつか「ほほう……」と唸る箇所もありましたよ? でも基本的に難しいことは何も考えなくていいマンガだと思います。

 このユルさがマーベラス。タイトルや表紙をパッと見た感じでは「今にも打ち切られそうな作品」ってイメージが濃厚ながら、実際に読んでみると安定感のあるマンガで驚かされました。しばらくはこの調子で進んでいって、徐々に盛り上げてってほしい。今のところイカ娘以外にこれといったインパクトのある登場人物がいないけど、2巻以降で対抗馬みたいな奴も出てくるんだろうかしら。

・西尾維新の『零崎曲識の人間人間』も読みました。

 オマケに付いてくるトレーディングカードを「読みにくい、邪魔だ!」と発作的に毟り取りたくなる人間シリーズ第3弾。でも毟り取ると紛失しそうなので付けたままにします。戯言シリーズは2年ほど前に完結しましたが、スピンオフに位置するこっちの方はまだ続いている。とはいえ、こちらもあと一冊で閉幕となるみたいですが。今回の主人公は「少女趣味(ボルトキープ)」の二つ名を持つ殺人鬼・零崎曲識。名前そのものはこれまで何度も出ていましたが、実態に関しては不明なところが多く、半ば隠しキャラに近い属性の存在でした。その正体は“音使い”――っと、これ以上解説を重ねるとネタバレになりかねないのでオミットします。

 書き下ろし含む4つのエピソードを収録しており、それぞれ時系列がバラバラで相互に繋がり合う要素はあまりないものの、戯言シリーズや人間シリーズで「謎の空白」として残っていた隙間部分を埋めてくれる話ばかりでファンには見所目白押しの内容かと。前作の『零崎軋識の人間ノック』は踏み込み方が中途半端で正直いまひとつに思いましたが、今回は文句なく楽しめた。下手に踏み込もうとしない慎重な造りに好感が持てたのかもしれない。相変わらずバトル描写に関してはコメントに迷いますけど、バトルがまったくない回もあって、しかもその回は挿絵ともども○○(一応伏せる)の魅力が横溢していて顔が綻びました。○○かわいいよ○○。あのエピソードだけで購入金額の半分は元が取れた心地です。

 幕切れも非常に綺麗だったし、それこそ本当に「悪くない」読後感だった。次こそいよいよ零崎の秘蔵っ子、人識が中心に据えられ、人間シリーズの物語も終わりの時を迎える。やはりタイトルは『零崎人識の人間失格』か? それだとヒネリがないかな……と思って調べてみたら、『ザレゴトディクショナル』で既に『零崎人識の人間関係』とタイトルを予告しているとのこと。04年→06年→08年と来ているから、発売は再来年あたりと見た。

・拍手レス。

 悠久の少年少女は早めにやった方がいいです。むしろあっちが本編じゃねえかと思います。
 じゃあ向日葵が終わり次第即座に取り掛かります。

 『ミスマルカ興国物語』、積本のある焼津さんにオススメしようか迷っていたんですが早速出鼻を挫かれたw
 ルナス姫は私もツボに入り、是非ともヒロイン級どころか
 ヒロインになってほしいです。それと日記&読書でお忙しいとは思いますが『ミスマルカ興国物語』の感想など
 書かれないのでしょうか?

 感想を書くとしても2巻か3巻以降になりそう。1巻はあまり話が動かないものでしたから。

 車輪の国を途中で積む勿体無いどころか実にスリリング
 そういえばネタバレ食らって意気阻喪したことも積んだ理由の一つでした。


2008-03-17.

『PrincessFrontier』の体験版をチョロっとやってみた焼津です、こんばんは。異世界ファンタジーというエロゲーにとってやや鬼門のジャンルながら、肩が凝らない気軽さと手堅い面白さの兼ね合わせでなかなかの塩梅。アルエ姫の声優がゆのは姫と同じで、少し懐かしくなったりしました。ただ月末は『暁の護衛』(予約済)が控えてますから、一旦様子見させてもらいます。とりあえず、毎回恒例の嘘予告だけでも楽しむとしよう。

 ああそうそう、姫風呂とはまったく関係ありませんが、最近読んだ『ミスマルカ興国物語』に登場するルナス姫が直球でツボに入りました。三つ編みの金髪+軍服+大剣というビジュアルの凄まじさもさることながら、豪胆で物怖じしない性格もベリグ。彼女がメイン級のヒロインになるんなら2巻以降も是非購入しなきゃ。

あかべぇそふとつぅの『車輪の国、向日葵の少女』、プレー中。

 こんぼくが終わったことだし、途中で投げ出していたこちらもそろそろ再開するべきだろう――と久々の起動に踏み切りました。車輪の国〜はあかべぇがフルプライスでリリースした2本目のソフトであり、まだ新規ブランドとしてあまり認知されていなかったあかべぇの名前を飛躍的に高めた転機の一作でもあります。発売から既に2年以上が経過しており、多くのプレーヤーにとってはもはや胸の奥で燻る思い出となりつつあるみたい。予約して発売日に買ったというのに、未だにコンプしてない自分にはひたすら呆れるばかり。『車輪の国、悠久の少年少女』というファンディスクもとっくの1年前に出てるし、遅れるにもほどがありますね。

 「日本」という国が小説の中にしか存在しない、そんな世界。一日の半分しか活動を許されない、恋愛をしてはならない、親の言うことを厳守しなくてはならない……量刑の域を超え、それぞれの罪状に見合った詳細な義務が課せられる世界。「特別高等人」と呼ばれるエリート職に就こうと努力を重ねる主人公は、最終試験――義務を負った「罪人」の少女たちを監督するテストに臨む。そんな彼と彼女らによる、互いの交流と衝突から生まれてくる人間ドラマを主眼にして描くシナリオ重視型のエロゲーです。原画は「あかべぇならこの人」と決まっている有葉(どうも「あるふぁ」と読むらしい。そういえば最初は蒼月しのぶが車輪の国〜の原画家を務めるという話もありましたが、いつの間にか立ち消えになっていた)、そしてシナリオはこれが商業初となるるーすぼーい。同人で2本ほどシナリオを手掛けたゲームがあり、そのうちの一本である『A Profile』は後年『その横顔を見つめてしまう』とタイトルを変更して商業化されています。プロのライターとして関与しているソフトは前述した『車輪の国、向日葵の少女』、『その横顔を見つめてしまう』、『車輪の国、悠久の少年少女』に加えて現在開発中の『G線上の魔王』の4本……つまり、本作以降の完成品ではリメイクとFDしか手掛けておらず、ほとんど車輪の国〜だけで名声を確立したに等しい状況です。肌に合うかどうかはあくまで人によりけりですけど、大まかな嗜好さえ合致するなら、当然悪い感想を抱く出来ではない。テキストもボイスも軽妙で目と耳に心地良く、ギャグはちょっといまひとつだけど、理詰めでいて先の読めない展開に呑まれる。多少のツッコミどころはあるにせよ、有無を言わせぬ勢いがあります。当方も早いうちから惚れました。

 なのに、なぜ半端なところで投げ出していたのか? 答えは単純、ちょうど2章(さちシナリオ)の後半、さちがグダグダと愚痴や言い訳を垂れ流し始めるところで中断してしまったからです。「眠くなってきたし、今日はもうそろそろ寝るか……」ってな具合に深く考えずポチッとセーブしちゃった。あれは失策だった……おかげで長らく放置する羽目になった。ひどい時期は丸一年くらい起動していなかった気がする。やってもせいぜい数分。何せデータをロードして始めた途端、さちが責任転嫁オーラ全開の口上をこれでもかとまくし立てるため、「なんかもう今日は、どうでもいいや」と『ゆるめいつ』気分に陥って先に進める意欲が湧かなくなった次第。いやはや、終わってしまえばただの通過点ですが、現在進行ともなれば覿面に萎えますよあの場面。そこを越えさえすれば後は怒涛となりて押し寄せる白熱の展開に心を掻っ攫われ、一気にラストまで進めますので未プレーの方はさちがウザいこと言い出してもプレーを中断せずどうぞ駆け足で切り抜けてください。ホント、終盤は面白かったです。なぜこんぼくでやたらとシナリオを叩く意見が多いのか、だんだん分かってきました。あかべぇのソフトを買う人にとって、「良いシナリオ」の基準はこれなんですね。そりゃ爆弾騒ぎやライオン捕獲で嘆くはずだ。いや、あそこらへんのイベントは車輪とまったく無関係に、ただの単なる問題点として嘆くべきところではありますが……。

 こんぼくに結構時間が掛かったし、魔王が出るまでにクリアできるかどうか不安だったものの、幸か不幸か見事に延期しちゃったから、ゆっくりしていっても間に合いそうです。でもまー悠久もあることだし、サクサクやっていこうと思う。今のところ、好きなキャラは法月のとっつぁん。だって存在感が強すぎだもの。裂帛の気合いが篭もった恫喝を聞くにつけ、他のヒロインたちの影もどんどん薄れていくわ……。

・法月綸太郎の『犯罪ホロスコープ1』読了。

 副題「六人の女王の問題」。遅筆家として知られる法月綸太郎の新刊。探偵・法月綸太郎シリーズの最新作でもあり、単行本派にとってはおよそ3年半ぶりの帰還となります。この『犯罪ホロスコープ』は、十二ヶ月それぞれの月に起こる事件を描いたエラリイ・クイーンの『犯罪カレンダー』という短編集にあやかって構想された連作ミステリで、1冊目となる今回は6つの短編を収録しています。全体が12編ですから、言わば前編か。ホロスコープ(占星術で使う天体配置図)というだけあって、テーマは「黄道十二宮」――牡羊座、牡牛座、双子座、蟹座、獅子座、乙女座が1巻の収録範囲となっています。近頃『狼と香辛料』にぞっこんなせいでタイトルの「ホロ」という部分に敏感かつ過剰な反応を示してしまいますが、それはこの際どうでもいい。

 法月綸太郎はどちらかと言えば長編よりも短編集の方が評価されている作家で、『法月綸太郎の冒険』『法月綸太郎の新冒険』『法月綸太郎の功績』の3冊が人気高め。特に「死刑囚パズル」(『冒険』所収)と「都市伝説パズル」(『功績』所収)の二大パズルは新本格ミステリの歴史に銘記すべき傑作と睨んでいる。パズルと言えば『パズル崩壊』なる短編集もありますが、こちらは熱心なのりりんファン向けであって初めての読者にはオススメしがたい。さておき、久々の短編集――それもこのミス1位獲得の栄誉に輝いた『生首に聞いてみろ』以降の作品群とあってファンの期待は弥増すばかりでしょうが、ハッキリ書いてしまうと今回はガッチガチの本格ミステリじゃありません。中にはキチンと仕上げたフーダニット(犯人当て)小説もあるけれど、総合的に判断すれば「スナック感覚で摘めるソフト本格」ってところ。

 ホームレスを殺した犯人がゴールデン・フリースのジャケットを盗んでいった理由は何か、を巡る「【牡羊座】ギリシャ棺の秘密」など、個々の謎はなかなか魅惑的です。終始淡々としたテンポで進み、起伏に乏しく地味な語り口ながら、「とりあえず最後まで読んでみよう」と思わせるだけの牽引力はある。しかし、読み終わってみると若干肩透かしというか、呆気ない結末を迎えることが多い。派手で爽快感のあるサプライズを求める向きには合わないかもしれません。当方は法月に関しては「まあまあ好き」という程度でしたのでさほど身を乗り出すこともなく読み、失望を覚えることもなくそこそこ楽しめました。「ヒュドラ第十の首」が比較的ロジカルな展開でワクワクした。プロセルピナ(ペルセフォネ)を中心に据えた「【乙女座】冥府に囚われた娘」はもうちょっと構成に凝れば良かった気がするものの、「都市伝説」と「神話」を融合させた興味深い一編に仕上がっています。

 星座そのものが事件にあんまり関係していないというか、如何にもこじつけ臭い――という根本的な問題があるにせよ、そこを呑めば各宮の薀蓄に耳を傾けながら「さて、この星座をどう料理してくれるんだろう?」とのんびり寛いで読むことができる。まあ、黄道十二宮の全部を揃えようと試みたらこじつけ臭くなるのは致し方ないことでしょう。後編に当たる2巻も発売を待ち望むとします。遅くとも来年には出るといいなぁ……。


2008-03-15.

『学園黙示録〜HIGHSCHOOL OF THE DEAD〜』の新刊が良かったので『ふたりぼっち伝説』を連鎖的に購入したら、これがまた予想以上に面白く、あっさりハマった焼津です、こんばんは。

 なんかパッとしないタイトルだし、どんな内容かさっぱり分からなかったため、なかなか手が伸びずにいましたが……どうしてどうして、実に密度の濃い傑作じゃあないですか。基本は1話8ページのショートギャグです。トレジャーハンターのマルチナが行く先々で同じような骸骨に出くわし、毎度毎度秘宝を入手する寸前で邪魔される――と枠に嵌まった展開の繰り返しながら、決してマンネリに陥らない奔放かつ無尽のネタに痺れます。出し惜しみ一切なし、最初からスペシウム光線を放つが如きテンションに興奮することしきりです。2巻が出たら是非「全米が噴いた!」みたいな腰砕けの帯を巻いてほしい。というか、2巻出るんかなぁ……このマンガ、もともと他の作家が原稿を落としたときの穴埋め要員、いわゆる「代原(だいげん)」として不定期連載されていた経緯があり、1巻が出ただけでも充分奇跡で驚異的なんですよね。『学園黙示録』の影響か当方が購入した分は去年増刷されたばかりの奴でしたし、売上面で見れば必ずしも「2巻の発売は絶望的」ってわけじゃなさそうですが……。

あかべぇそふとつぅの『こんな娘がいたら僕はもう…!!』、コンプリート。

 なんだかんだで一ヶ月以上掛かってしまいましたが、ともあれオールクリア。沙希ルートの後に控えている渚ルートがちょっと蛇足だったかなー、とは思うものの、あくまでオマケと割り切ればそんなに悪くなかった。ハーレムエンドは本当にオマケで、ラブコメに付き物の「主人公を巡る女同士の小競り合い」がちょっとだけ見れたことに関しちゃ得した気分。特にあすかと志乃の絡みが良かった。けど、渚エンドにしろハーレムエンドにしろ、終わった直後にスタッフロールも流れぬままタイトル画面へ戻されるから、なんだか尻切れトンボな印象は拭えない。沙希ルートが実質的な意味合いでの『こんぼく』グランド・フィナーレですね。主人公が過去を清算し、すべての問題は片付けられ、いざ雪融けのシーズンへ。周囲の反応がそれこそ掌返すようなリバースっぷりで少々辟易したけれど、全シナリオを統括するに充分な熱量を持った展開ではありました。

 最後までやってみて、それでも一番好きなヒロインは綾菜ですね。小さい頃はイジメっ子気質バリバリだったのに、気づけば関係が逆転して弄られる側になっているという倒錯が美味しい。それを抜きにしても、正統派幼馴染みとして普通に評価できる。ちょっとふっくらした体型で顔つきにも愛嬌が溢れており、穏やかでのんびりとした性格も相俟ってポイント高い。透にはベタ惚れ状態なのに、芳宏相手だと素で暴言を吐けるあたり昔の面影を偲ばせる。掛け合いに混ぜても場を面白くするキャラクター。次に好きなのは志乃かな。ロリ担当キャラ。微妙に黒い天然っ娘で、専用ルートでの凄まじい変容はいろいろとアレだけど、主人公に対する気持ちは一貫していたこともあって格を落とすには至らなかった。「きっと心の中で自己嫌悪や劣等感が蟠っていたんだろうなぁ」と類推するのが楽しい。ロリと言えばあすかも捨てがたい。あすかは一言で表すとあれです、雪村小町。やかましくて暴言紛いのセリフが多いけど心根は優しい。

 以上がヒロインのベスト3といった塩梅ですが、残る真帆と沙希も嫌いではないです。ただ、真帆は「喧嘩友達」ってポジションに馴染みすぎて、こう、フラフラと寄っていきたくなる魅惑の要素があんまりない。真帆シナリオ自体は面白いし、「見た目や性格の割に世話焼きで料理もうまい」と攻略ヒロインとしての資質もバッチリなのに、他のルートで主人公と言い争っている姿がどうにも活き活きとしているため「名脇役」の看板を掲げたくなります。沙希は……うーん、「姉っぽさ」がいまひとつ引き出されていなかった憾みがある。「ああ見えてファンシー好き」というあざとい設定が嵌まっていて、可愛いことは可愛いんですけども。絆の深さを窺わせる過去エピソードがもっと欲しかったところか。

 シナリオ面では若干の物足りなさが残るにせよ、「キャラゲー」という意識で購入した身にはまずまずの収穫でした。男キャラたちもさりげに存在感をアピールしていますし。なかんずくススムの愛らしさは群を抜いており、燦然と「最萌えキャラ」の座に君臨している。あのゆるキャラめいた絶妙なデザインがたまんねぇ。声とのギャップもプラス方向に働いて「良い意味でムカつく神猫」に仕上がっています。もし逆に媚びっ媚びのボイスで、しかも変な語尾が付いてたら悪い意味でムカついていたかもしれません。ススムはこんぼくのマスコットというか、もはや象徴やね。しかし、冒頭で出てきたススムと同じような猫(頭部に葉っぱ有)はいったい何だったんでしょう? 伏線かと思いきや、丸っきり放置して最後まで省みられないんだもんなぁ……。

 結論を一言で述べると「素朴かつ堅実な学園エロゲー」。斬新さは欠くにしても、留め切れぬ作り手の遊び心や茶目っ気がすこぶる伝わってくる(隠し選択肢にアッーな淫夢が用意されていたり、ススムが死亡するバッドエンドあったり)。なんだか無性に懐かしくて、エロゲーにハマったばかりの頃の記憶が甦ってくるほどです。そうそう、昔はこんな感じで笑いながらダラダラとプレーしていたよなー、と。ザッと読んだだけでも視界にかなりの誤字が引っ掛かりますゆえ、テキスト関連にうるさい人の口には合わないかもしれませんけれど、多少の誤字に目を瞑れる人なら大丈夫。是非ともキャラたちの繰り広げる軽妙な脱力漫才に没頭すべし。にしても、益々『暁の護衛』に懸ける期待が高まってきました。ライター的にも絵師的にもバトル描写は希薄になりそうだけど、コメディやクライマックスの熱さは鉄板な予感。


2008-03-12.

しゃんぐりら新作『暁の護衛』は無事マスターアップ

 まずはホッとひと安心。もう予約済ませましたから、あとは届く日を待つのみ。

あかべぇそふとつぅの『こんな娘がいたら僕はもう…!!』、そろそろクリアしそう。

 綾菜シナリオの途中がアレで激しく不安を抱いたが、他のシナリオはそんなに超展開もなくて胸を撫で下ろした。野球部に入る真帆シナリオがストレートにスポ根してて王道的な面白さ。あすかシナリオは、悪くないけど……あすかというキャラの魅力に比べて地味というか、小さくまとまっちゃった印象が拭えない。志乃シナリオは噴いた。超展開スレスレのストーリーながら、意外とありそうでなかった好打路線にも思える。筋立て自体は至ってベタベタだが。とりあえず言えることは、エロゲーにしちゃ主人公とヒロインの役割が逆だな、ということ。読み手によって好悪が分かれそうな話です。ちなみに当方は一貫して「志乃かわいいよ志乃」派。でも一番の萌えキャラはススムだよな。

 現在は沙希ルート攻略中で、これが終わったら後は渚ルートとハーレムシナリオだけか。沙希は他のシナリオだとキツい面ばかりが強調されてあまり好感を持てないけれど、専用ルートに入ると可愛い面も見えてきて楽しいな。このライター、文法やストーリーの組み方については「?」な部分があるものの、キャラクターたちの個性を引き出して並べる腕は卓越している。攻略可能なヒロインが全員気になる子ばかりで、集合シルエットを目にするだけでワクワクと胸が躍ります。一番好きなキャラは誰か、と聞かれたら迷った末に「綾菜」と答えるところ(幼少期に発揮した暴帝ぶりと現在見せるぽややんぶりとのギャップがツボ)ですけれど、正直言って他の連中もみんな捨てがたい。FDが麻雀じゃなけりゃ絶対買うところだったんですが……。

・今野敏の『武打星』読了。

 「ぶだせい」と読む。ハードカバー時は「アジア・ノワール」と銘打たれた叢書の一冊として出版されたアクション小説です。もともとキャリアのある作家ながら、吉川英治文学新人賞を受賞した『隠蔽捜査』とその続編『果断』で一気に評価が高まり、今や飛ぶ鳥墜とす勢いの今野敏。先日文庫化した『隠蔽捜査』は初版部数も多かっただろうに、もう増刷が掛かっています。『武打星』は刊行から6年近くのに未だ新書止まりですけれど、この流れに乗ってそろそろ文庫化するんじゃないかと睨んでいる。

 「アジア・ノワール」は馳星周のヒットによるノワール・ブームを当て込んで(かどうかはよく知らないけど)毎日新聞社が立ち上げた書き下ろし企画であり、20人を超える作家が参戦する予定だったみたいですが、実際は13冊まで行ったところで有耶無耶になり立ち消えしたっぽい。ハッキリ言ってしまえばあの企画、「ノワール」の定義が曖昧なまま始まって右往左往しているうちに終わった気がします。佐々木譲や馳星周、黒川博行に藤田宜永、そして宮部みゆきといったリストに連なる豪華な面々が実際に投入されていたらまた違った展開もあったかもしれませんが、それはそれとして本書のタイトルである『武打星』の意味は「カンフー映画のアクションスター」。ブルース・リーに憧れて空手をやり続けた主人公が、「香港でアクション俳優になりたい」と大望を抱いて海に渡る――という実にストレートな筋立ての物語に仕上がっています。

 ノワール云々を期待すると肩透かしどころか盛大にズッコケそうな話ですけれど、『虎の道 龍の門』で今野敏の格闘小説に惚れた身としては期待通りの内容であり無問題。夢中になって読み耽り、2時間くらいでページが尽きてしまった。一冊こっきりで綺麗に終わっているからそんなに不満はないけれど、なんだか物足りなさが残りますね。面白さゆえの物足りなさ、みたいな。『隠蔽捜査』や『虎の道 龍の門』にもそういう「満足すると同時に渇きを覚える」ところがあるんですよね。だから今野敏にハマるとついつい既刊をあれこれ買い込みたくなる。彼の作風は至ってシンプルでケレン味がなく、派手なシーンも少ないけれど、話の雰囲気をジワジワと巧みに盛り上げていく確かな腕があって飽きさせません。20年以上の年季は伊達じゃあない。「隠れたベテラン」とでも呼ぶべき存在です。

 初めてのアクション映画撮影で緊張する場面や、黒社会の影に不安を募らせていく場面、周りに進められて散打大会に出場する場面など、ポイントを押さえたつくりで楽しく読めました。オチに関しては、ちょっとどうかなー、と思わなくもありませんがまあ無問題。細かいことや難しいことは考えず、サクッとテンポ良く読んじゃいましょう。強く心に焼きつくとか、そういうタイプの本じゃないとしても、「ちょっと時間空いたし、気分転換に面白い本を読みたいな」程度の感覚で手を伸ばすにはちょうどいい出来です。ちなみに『武打星』というマンガを見掛けて、てっきりこれのコミカライズかと思い込み、さっきぐぐってみたら……どうやらタイトルが一緒なだけで全く別作品の模様。

・拍手レス。

 スーパーダッシュ文庫の発刊予定に醜悪祭(下)がっ
 中巻じゃなくて下巻ですね……1冊でまとめられるのかしら。

 この調子だと、おれつば本編の発売が最後のスワスチカで首領(ディエス完全版)帰還になりそうですな。
 おれつばが炸裂したら規模的に最後の大隊(ラストバタリオン)さえ生まれそう。

 「学園黙示録」ノベライズといっても絵師と原作者はそのままなのね
 作者が作者だけに、果たして完結するかどうか……。


2008-03-10.

『俺たちに翼はない』の延期が公式サイトで告知されたり、『G線上の魔王』がまたもや延期かましている、そんな世の中だけど焼津は元気です、こんばんは。

 それにしたって、ゆっくりしすぎですよ……Navelもあかべぇも……両社まとめてスロウガでも掛けられたのか?

「月道」に「転帰予報」の天野姉妹絵

 誤字ではなくこういうタイトルのSSがあるんです。詳細? ぐぐりゃ一発ですよ。でも念のためリンクも張っとく。丹念かつ綿密な文体が特徴です。キモアネとキモウトの挟撃による粘着質な愛憎劇を網膜の奥まで叩き込まれて痴れ狂うがいい。まだ完結していませんが、次回の投下を気長に待っています。ちなみに当方に姉派か妹派かを訊くのは無駄な質問です。だって、どっちか一人だけなんて選べないもの……それが嫉妬愛好者たるの資質。

 関係ねえよ!! カァンケイねェェんだよォォォ!! 何が晴香派だ、何が雨音派だ!! オレら修羅場スキーなんざ、どちらか一人選んでも一○○回ブチ殺されんだよォおおおおおッ!!

すももの『つくして!?Myシスターズ』、プレーしました。

赤沢「普通オマエぐらいの年頃の男は、ドブの底にたまったヘドロを見ても『チ○コ入れたら気持ちいいかも!?』とか考えるはずだ!」
ハルト「考えねぇよっ!!」
 というか、そっちの方が明らかに精神に異常を来たしているじゃないか!
赤沢「あ‥ちなみにな? 本当にドブにチ○コ入れるのはやめろよ? 雑菌でとんでもないことになるし、俺は死ぬかと思った」

 オーウ、狂ッテール……サイコキラーもかくやとばかりのイカレたテキストを紡ぐは藤崎竜太。よく似た名前の漫画家としょっちゅう間違われますが、あくまで「太」が付きます。エロゲライターとしては既に10年以上の年季を誇る古株ながら、頭角を現したのはここ5年くらいです。ヤマグチノボルとふたりで分担して書いた『ゆきうた』が出世作として見るに妥当なソフトでしょう。セールス的には失敗だったと言われる『ひめしょ!』で固定ファン層を築くも「ピンの仕事はこの先金輪際やらねぇ」と嘯くはぐれライター暴走編であり、先月末に発売された『残暑お見舞い申し上げます。』でもサポートライター(二番目にクレジットされているのでたぶん)という役柄でありながら「本来の作風やキャラ設定」という制約に縛られない自由奔放なエグゾースト・ノートを吐き出して「ああ、藤崎はどこまで行っても藤崎か……」と周りを納得させています。さながら生まれついてのアンチェイン。臍の緒もきっと手ずから毟って千切り取ったはず。

 特徴は、容赦ないシモネタの数々を軽快に並べ立て、エロシーンでもつい笑ってしまうほどの高威力を出力するギャグセンス。一見してどうでも良さそうな細部にまで拘り、設定マニアを唸らせる粘着質な執念。そして口の悪い主人公と性格の悪いヒロインが衝突し合いつつ絆を深めていく過程をサラリと自然に描ける……といったところ。これらがうまく噛み合えば途轍もない傑作が産声を上げそうですけれど、すべてが万全に揃って整然と配置されるところまで行かないのもまた藤崎竜太の特徴であります。この『つくして!?Myシスターズ』は低価格ソフトとしてリリースされた、ゾーニング上は半ば同人に近い扱いのエロゲー。ほんの3時間程度で終わるごく短いものなれど、一度プレーしたらなかなか忘れられないインパクトを残していく。常日頃より髪フェチを自認している当方ですが、妹の髪を「3色の誤差拡散グラデーションの綺麗な髪」と表現するエロゲーは初めて見た。しかも妹の頭部に付いているネコミミっぽい奴は「大気圏内の高速移動時に整流効果を発揮し、ツインテール上部のフラッターを抑制する猫耳風ディフューザー」だそうで。どこの特甲児童ですか? いちいちツッコミを入れていたらキリがないくらい、全編に渡ってデタラメな要素が散りばめられています。

 たとえば姉の一人称視点でメロウな官能小説風に進むパート、「ある夜、情動を抑え切れなくなった弟が襲い掛かってくる」という想像上のシーンで「私の体勢が崩れている隙に立ちアッパーをボディに入れ、バックモーションをキャンセルしながら飛び道具を放ち、最後に裏拳を叩き込んでくる‥」といきなり格ゲー描写に移行する件が仕込まれており、唐突すぎて本気で噴いた。それでもなんとか持ち直して途中までは辛うじて官能小説テイストを維持していましたけれど、挿入開始のあたりでもう忍耐が切れたのか、結局いつも通りの藤崎節満載な「艶笑」を突き抜けた遣り取りが鮮やかに繰り広げられます。以降もずっとそんな調子。「高校球児が最後のマウンドで放つ剛速球のように、渾身の力をこめてチ○コを押し込む!」とか、ありえへん。そんな形容ありえへんわ。ヒロインもヒロインで「嬉しくて‥マン汁が出ちゃう‥」なノリだから誰もこの暴虐を留め得ず。「雨が降ると4WDの車がその性能の本領を発揮するのと同じように」というテキストを「異様なまでにベジョベジョに濡れてこそ、メグミのマ○コの性能は発揮される」と繋げるライターはどれだけ狂気が深いんだ。とにかく「一言にて汝の腹筋を屠る!」と吼え猛らんばかりの、どう考えても間違った方向に発揮されている気迫がビンビン伝わってきます。ああ、虎は猫になれぬものなんですね……。

 優柔なくせに果断極まりない行動力を持つ主人公の姿は清々しく、後退のネジが壊れた妹はこう……生温かい感じに可愛らしく、お堅いようで天然な姉はそのどこかヌケている様が微笑ましい。「実妹や実妹と我武者羅にまぐわう」というただそれだけの内容で、分岐もエンディング直前にちょろっとある程度に過ぎないけれど、値段(定価は税込で2100円)を考えると適量かな。ストーリーはあってなきが如しだけど、エロシーンから次のエロシーンに移るまでの「繋ぎ」めいた日常がちゃんと面白くて退屈しなかった。ただ、文章面が狂い放題な割にはHのシチュとか話のオチは結構普通で、最終的には無難な形で幕を下ろした雰囲気が漂う。キャラデザインが嗜好から外れるためヌキ目的には使えませんでしたが、個人的にはテキストだけで元が取れた。そしてそろそろ『ドラクリウス』も買おうと思いました。

・拍手レス。

 六年とかリアルな数字を出されるとかなり驚く。計算してみると確かに経ってる。
 西尾維新だってもうデビュー6周年を過ぎてますもんねぇ……光陰矢の如し。陰茎槍の(ry

 本格的にG線がスワスチカ
 螢「私も、今デジャヴを感じた。……なるほど、これが副首領閣下の方術なのね。恐ろしくなる、本当に」


2008-03-08.

『俺たちに翼はない』の挙動があからさまに怪しくなっている今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。厭な予感を全力で見逃そうとしている焼津です、こんばんは。なまじ6年前のそれ散ると発売日を合わせていただけに、ここに来て半年近い延期をかまされると急速にテンションが下がってしまう。とりあえず「Prelude」とやら(「特報」のところ参照)は様子見で。

・森奈津子のお嬢さまシリーズが近々復刊されるらしい。お嬢さまシリーズ――今はなき学研レモン文庫から刊行されていた全10巻の少女小説。そっち方面に詳しくない当方でもさすがにタイトルくらいは知っています。前々から気になっていたし、これを機会に手ぇ出してみるか……とぐぐってみた。なんですかこの価格。1冊2520円!? 複数のエピソードを収録するとはいえ、全巻(4冊)揃えたら万札飛ぶのかよ! 復刊モノが高くなるのは当たり前のことながら、少し予想を超えていました。つい先日やっと読み終わった『餓狼伝 the Bound』(14巻分を4冊にまとめた総集編。税込で計7350円)すらもあっさり凌駕するとは。もう『西の善き魔女』の愛蔵版並み。

 いくら10冊あった底本を4冊に圧縮し、それぞれに書き下ろし短編付けるからってこの価格は……既に絶版して入手困難という事情もありますし、熱心なファンからしてみれば「別に仔細なし」かもしれませんけれど、ちょっと興味が湧いた程度の一見野郎としては敷居の高さに躊躇うより他ない。高額ぶりから察せられるように発行は小部数とのことで、これを逃せばまた入手困難になるかも……って恐れがあります。「今は、蛮勇こそが真の勇気だ」か? あるいは「退くのも勇気」? ポチるべきかポチざるべきか。それが問題です。

銀時計の『おたく☆まっしぐら』、コンプリート。

 やっと……やぁぁっと終わりました。変換プログラム「最果てへ☆まっしぐら」を用いて余計な手間を省いてすら3週間もの日数を要するなんて、これは予想以上のボリュームでした。シナリオが一部足りない、ボイスが多々抜けている、目を覆いたくなる頻度の誤字と、確かにファンが嘆くのも頷ける杜撰な仕上がりですが、一旦覚悟を決めて掛かればどうということもなかったです。「怒りの庭」コンボ経験者としてはむしろ、「これだけ出来てりゃ充分じゃん」とすら思ってしまう。

 雑多な要素を詰め込んだ騒々しいオモチャ箱系コメディでありながら、底流を成す一本のシナリオも組まれていて最終的にはそれなりのオチがつくという、割としっかりした造りで充足することしきり。コスプレ、同人誌、フィギュア、ゲーセン、MMORPG、サバゲー、オカルトと多岐に渡るジャンルを網羅しており、同人誌とMMOはシナリオないせいで掘り下げが浅くなっているものの「秋葉原」と「オタク文化」がちゃんとテーマとして活きているから巨視的には問題なし。ヒロイン一人一人が魅力的で、エロシーンがちゃんとエロかったのも評価を高めるポイントになっています。エロ:コメディ:シリアスの比率は3:6:1といった塩梅。山田一時代も含めてロミオゲーの中ではもっとも気軽にリラックスして楽しめる配分と言えるかもしれません。ギャグは気の抜けるダジャレ(「UFO→うふぉー」とか)も多かったけど、「まさかここでこのネタが!」って虚を衝くパロも混じっていて最後まで飽きずに笑えました。

 強いて不満を挙げるなら、一つ一つのイベントに登場するヒロインの数が限られている、つまり全員集合するようなイベントがないってことでしょうか。ヒロイン間の横の繋がりが皆無に等しいんですよね。なので当然三角関係や修羅場といった人間関係の縺れもほとんど描かれずマンツーマン方式に陥り、賑やかなイメージに反していささか単調なフローに見えてしまった。結局、この子とこの子は会話ゼロのまま終わっちゃったな……という組み合わせがいくつか。ゲームの仕様も絡んでいるし、仕方ないことかもしれませんが。

 個人的に好きなヒロインは朝美、麗南、美月の三人。朝美は初期のツンツンが反転して「デレデレ」すらブッチギるゾーンに傾斜していく恐ろしさに快感を覚えた。単純に当方が黒髪ロングストレート好きというのもありますけど、テキストの端々から「コスプレを愛している」というオーラが伝わってくるのも良かったです。「ぶどうジュースー!」が可愛いやね。麗南は金髪ロール&CV.青山ゆかりなお嬢さまの時点で勝ち組は確定か? 「お嬢さまは原型師」というギャップを余すところなく活用し切っている。エロシーンで明かされる真相にも驚愕しました。普段えちシーンはスキップするという人もあそこだけは読め。美月はキャラもアレだし声の演技もアレで、「幼馴染みキャラとしてどーよ」って苦言を呈したくなりましたが……いつしか慣れ始め、気づけば中毒状態に。もう美月はあの声以外にゃ考えられねぇ。登場するヒロインの中で唯一非オタのポジションながら、「抱き枕に嫉妬」という美味しい役どころを得て自分のルート外でも存在を主張する。しかし腰の回転十字架はいったいなんだったんだろう。あれ奪ったら美月をマリオネットみたいに操作できたりするんじゃないか。

 ヒロインランキングを脇に置いて、シナリオそのもので問えば操ルートが一番気に入りました。頭に「ヌル」が付くとはいえゲーマーだった経験のある身に「ゲーセンではじまる恋」という素材は甘美すぎる。途中のMMORPG編がまるっと抜けているのは無念の極地だけど、その苦杯を呑んで「イチ押し」と宣言したい気分。綺羅ルートは……キチンと完成さえしてれば、あるいは操ルートすら上回ったかもしれませんが、ないものを語ることはできない。現実は厳しい。というか、最新パッチで補完するどころかルートごと抹消した銀時計は鬼か? サブキャラでは木暮ざくろと羽鳥さんがイイ味出していました。下手するとメインヒロインより惚れたかも。もしこの二人がメインを務めるおたまFDとか発売されたら、「スワスチカ上等!」と叫びつつ予約して吶喊しちゃいそう。

 結論。まったく後悔のない、良い買い物ができました。「最果て」完成以前ならいざしらず、イマとなってはもう購入を躊躇う必要が一ミクロンも見出されない、それほどの出来映えです。会社の対応は水準以下というか下の下なれど、ソフトが有するポテンシャルは一人前。呪うべきは生まれの不遇であり、ソフトそのものに関して嘲弄の的にする必要はないと存じます。今後もポツポツと再プレーするであろうことはほぼ確実です。核家族のイベントとか、重ねて見るとこう……ジワジワと来るものがありますわ。

・拍手レス。

 番外編を熱烈に希望します!!!
 何のですか?

 家族計画にファントム。 あの頃は若かったなあ…。
 軽く6年くらい経過していてビビる。


2008-03-06.

・現在プレーしている『おたく☆まっしぐら』のライター・田中ロミオはかつて山田一という名義で活動していたことが有力視されている(公式的に認めてはいない)のですが、山田一時代の代表作に『家族計画』というものがあります。血縁も何もない男女が寄り集まって擬似家族を形成するホームコメディでして、コンドームみたいなタイトルが災いしてか、発売前はそれほど騒がれていなかった記憶がうっすらと残っている。山田一には『加奈〜いもうと〜』の実績が既にありましたが、あれからもう2年も経過していたため「今更期待していいのやら」と戸惑っている人をチラホラ見かけました。で、『家族計画』は発売後に『C†C』同様、ジワジワと人気が伸びていく「口コミ感染拡大」型のソフトとなります。今もなお、名作と強く推す向きがあるくらい。

 高評価を小耳に挟んだ当方は一ヶ月ほど経ってようやく購入する決心を固め、いざエロゲショップへと赴いたのです。そして会計の際、店員さんがそっ……と二つの小冊子を袋に入れてくれました。一冊は『家族計画』のパンフレット。ソフト本体を買ったんだから要らない気もしますが、未だに捨てられず残っています。そしてもう一冊が……『ジサツのための101の方法』のプレストーリーでした。

 今は亡きブランド「公爵(デューク)」のデビュー作にして唯一のソフト、それが『ジサツのための101の方法』です。ライターは山田おろち(表の名義は金月龍之介)、原画は貴森裕友。今より遡ること6年以上……『家族計画』の一ヶ月ほど前に発売されました。まったく新規のブランド、奇抜なタイトル、電波じみたストーリー、癖の強い絵柄。カルトと言いようがないほど極まっており、あからさますぎて「地雷」と呼ぶことも躊躇われる内容でした。いざ発売されてみると「意外にテキストは良い」と評判になり、気にはなっていたのですが、何せ当時はまだ体験版というものが常識化していなかった(『家族計画』も体験版は出ていません。出てたらやっていたはず)ので、購入する踏ん切りが付かなかった。そこに来てプレ・ストーリーを収録した小冊子は渡りに舟。帰宅後、『家族計画』のことも忘れていそいそと表紙を開きました。

 まだページが残ってますから、興味のある方はこちらをお読みください。少しぎこちない箇所もありますけど、「私と同じく、彼もまた滅ぶだろう。/戻ってくるのだ。/すべては戻ってくる。」「神様はいない。/福音はない。/奇跡はない。/けれども救いが必要だ。」等、短い文章の中に印象的なフレーズがちりばめられています。なので、すごく、すごく――自分好みの代物であると、分かってしまいました。分かった以上、行動せねばなりませんでした。購入→プレー→コンプ→頭の中で反芻→もう一度プレーと、丹念に味わって骨の髄までおちろテキストの虜となりました。ストーリーは、ハッキリ書いてしまえばそれほどでもない。7人の学生と教師が「自殺波動」の脅威から逃れるため籠城生活を送るパート、病室の中で「教授」や「ナタネ」と会話を交わすパート、どちらが夢でどちらが現実か曖昧なまま進行していきますが、ほぼ一本道で攻略するヒロインが変わっても展開はだいたい一緒。クライマックスも大味ですし、筋だけ取り出して評価できるタイプの物語ではありません。しかし、「これがただの畳針だと思うなよ! これはテスラ式処置によって電流を流した特製の次元毒針だ! 物理的ダメージを越えて存在そのものにダメージを与えるからお前みたいな宇宙人にも効果てきめんだ!! 思い知ったか!! 思い知ったかあああああああ!!!」を頂点として矢継ぎ早に繰り出される名ゼリフ・名テキストは引用し出すと枚挙に暇がなく、思い出しただけでも軽く脳が痺れます。「俺的に、すげえつらい」もインパクト抜群で忘れられない。

 そんなこんなで大いに期待で胸を膨らませた第2作――『マンハッタン計画』改め『末期、少女病』の発売日をまだかまだかと一日千秋の思いで待ち望んでいた2003年、発売の無期延期が告知され、当方の林檎に勝る紅顔もたちまち『八つ墓村』ばりの屍蝋と化して朽ち落ちました。5年前のこと。はじめてのスワスチカが開いた日のこと、そんな冬の日のこと。不意に思い出話を始めたりなんかして、こりゃ本格的に年寄りになりつつあるな、気をつけねば。戦々兢々とする焼津です、こんばんは。

銀時計の『おたく☆まっしぐら』、高透涼香ルートを終えて景山瑛ルートへ。

 どうしても名前から「だぞっっっっっっっ!!」なお姉ちゃんを連想してしまうガンオタ娘のシナリオも無事クリア。正直に書いてしまえば、序盤の普通にサバゲーやっていたあたりが一番面白かったかなー。途中から「オタク狩り」との抗争が本格化してしまい、どうも話の方向がズレてしまった感が否めない。「両親と祖父がモノホンの兵士だった影響からガンオタのエリートに」という設定からしてややキツい印象はありました。抗争に迫真性を持たせるためとはいえ、ホモレイプありなのにもヒいた。涼香自体は魅力のあるヒロインなんで、もうちょっと違う流れでガンオタライフを楽しみたかったな、というのが個人的な感想。目標は「サバゲー大会の優勝」とか、そんな程度のヌルいものでも良かったです。

 瑛シナリオは「ミステリーハンター」、掻い摘んで言ってしまえば「オカルトオタク」のシナリオみたい。ロミオ自身が魔術書を買い込むほどのオカ好きらしいので、造詣には事欠かないでしょうけれども……っぃ脳裏を「霊長流離」の四文字や「オクルトゥム」の六文字がよぎっていって涙。あえて拭わず、悠長に泣きながら進めるとします。

 ところで「パトロン」が「バトロン」だったり、「だぞ」が「だび」だったりと、どうも誤字の癖からしてかな入力っぽい。やっぱライターはタイピング速度を上げるためにかな入力派が多かったりするのかな?

・杉村麦太の『アキハバラ無法街』読んだ。

 一言でまとめると「メイド服着た主人公(♂)が吊るされながら股間を弄られ、バッキバキに勃起したまま大見得を切ったりするガンアクション・コメディ」。……嘘は言ってないけど、これで内容を即座に理解できる人がいたら凄いと思う。

 スラム化した近未来の秋葉原、少年ながらメイド喫茶で働いているくるり――彼の正体は極秘開発されたサイボーグ、「複合強化猟兵」だった。股間に埋設された人工バイオ兵器がひとたび唸りを上げれば、常軌を逸したスピードとパワーが発揮される。そこが弱点だからか、単にいぢめてオーラを撒き散らしているからか、やたらと股座を蹴られたり撃たれたり掃除機で吸われたり、散々な目に遭いながらもくるりは秋葉原を襲う敵どもを屠ってゆく……。

 主人公がM系の女装少年。しかも舞台が秋葉原ということもあってかいろいろとオタクネタが絡んできてカオスな様相を見せる、実にチャンピエンREDらしい一作です。チェチェンから訪れた兵隊くずれのサイボーグが文字通りの「メイド狩り」を実行し、細菌テロによって死の街となり隔離された渋谷からミュータント・コギャルが攻め込み、精巧な等身大フィギュアの軍勢が手に手に武器を持って立ちはだかる。「REDの辞書に『やりすぎ』はない」「いつでも核実験日和」と言わんばかりの無茶苦茶な設定&展開の連打。もうここまで来るとギャグなのかどうかすら判然としませんね。『キリエ』の作者だけあってガンアクションを始めとしたバトル描写は拘りすぎるほど拘っており、そのせいで更にバランスが悪くなっていますが……誰も止めなかったのでしょう、最後までそのまま突っ切っています。

 囚われの貧乳ヒロインが拷問で強制豊胸薬を注入されて巨乳キャラに改造されてしまったり、抗争が始まると通行人がバタバタ死んでいったり……アホっぽい雰囲気の割には結構ハードな内容でした。それでいて銃剣付けたライフル二挺を両手に持って振り回すメイド等、全体的に趣味出しまくり。ブレーキとか全然利いてませんし、ギャグとシリアスの配分比も完全に適正範囲を越えています。『ドスペラード』とか、ああいうのとはまた違った意味で壊れている。ギャグもシリアスもアクションもヲタネタも、何もかもやろうと欲張って詰め込み、パンク寸前のところまで達しちゃった――という印象。エレベーターに載せたらブザーが鳴ること請け合い。

 多彩ではありますが、まとまりに欠きます。笑うに笑えない箇所も多い。引き算よりも足し算を基本とするタイプの話であり、整合と調和を旨とする方にはオススメしづらい出来ですね。渾沌! 恐ろしいほどに渾沌! リンク先は無関係ですけれど、ともあれ清濁併せ呑む雑食マインドの持ち主には「とりあえず読んどけー」と推しておきたい。秋葉原やオタクといった要素よりもバトルの方が前面に出ています。あと主人公の下半身に加えられる虐待。毎回これだけ執拗に股間を責められたらうっかり被虐萌えに開眼しちゃいそうだ。レズっているコギャルよりも、掃除機のノズルを「接続」されて喘いでいる主人公の方がよっぽどエロい。

 余談。実は作中で言っているほど「萌え」を狙っていない勢い重視のマンガながら、「デカくて不気味な妹」属性の中国産アンドロイド・すだまは普通に可愛くて参りました。すだまたんたまらないよすだまたん。すだまの登場するエピソードだけは既に何度も読み返しています。こう、ねっとりと舐めるような視線で。できればメインヒロインに昇格してほしかったところだけど、いろいろピーキーすぎて無理か。

・拍手レス。

 七姫物語がでることが一番驚いた。なんか普段出ないのが一気にきた感じがしますね。
 それでも依然として「○○マダー?」なシリーズが大量に残っているのが電撃の恐ろしいところ。

 『おたく☆まっしぐら』の銃器描写は微妙な間違いばっかなんだぜ…
 実は『Phantom』とかもかなりツッコまれてますよね……銃器には詳しくないから気になりませんけども。

 秋山瑞人の新刊、嬉々としてページみたら完全新作って何だコレ
 ミナミノミナミノの続きはどうなったw

 ミナミノは何かの間違いで表出した没ネタと割り切るしかない。

 秋山スレの乾きっぷりに涙しました。本当によく訓練された瑞っこ達です
 秋山と言えば秋山完はソノラマなき今どうしているのか……。


2008-03-04.

・緊箍児(きんこじ=孫悟空が頭に嵌めてる輪っか)と言おうとして胡錦濤(こ・きんとう=中国の国家主席)と口走ってしまった焼津です、こんばんは。

 しまった、どうせなら金斗雲と間違えるべきだった。てなわけで『電撃テンジカーズ』読んでますけど、やはり古賀のネタはまったりとピーキーで面白さ無双ですな。天竺へ向かう旅路でマイレージポイントが貯まるとか、どうでもいい設定も含めて楽しいこと尽くめ。「いや待てよ そういえば天竺ってここじゃね!? たしか保健体育で習った気がする」と眼鏡をクイッ上げしながらスカートめくる三蔵太郎は紛れもなくパクマンと音速丸の血筋に連なるシモネタ功徳の体現者です。てっきり悟空がそういう位置付けのキャラになるかと思っていたけど、まさか「三蔵法師を二人出す」という手法で切り抜けるとはな。ネタの可笑しさもさることながら、繰り出すテンポや間が絶妙であり、これから古賀亮二のことは「タイミングの魔術師」と呼びたい。

電撃文庫、5月は『狼と香辛料』や『ダブルブリッド』、秋山瑞人の新刊など

 今こそ祝杯のとき。『ダブルブリッド』の作者スレは住人たちの理性がブッ壊れてえらいことになってますな。まさしく歓喜と狂喜の坩堝。前巻から4年以上も待たされたのだからこうなるのも当然っちゃ当然です。

銀時計の『おたく☆まっしぐら』、現在高透涼香ルート。

 操ルートはクリア。あー、確かに途中シナリオが抜けている箇所があって未完成気味でしたが、「最果て」だと本編で使われていないCGをスライドショー形式で表示してくれるので、経過を想像で埋めることができ、そんなにガックリもしなかった。綺羅ルートに比べればまだまだイイ方でしょう。あれは心底キンクリだったけど、こっちはせいぜいソードマスターヤマト。にしても操、このゲームに登場するキャラクターの中では最強クラスのダメ人間ですね。普通ならNG扱いされそうだけど、「ぜんいん☆ビョーキ!!」がコンセプトの本作じゃマイマイでプラ、負のオーラを推進力に変換して魅せてくれる。ユーアヒューマンだっ…!

 涼香はガンオタヒロイン。ガンシューとサバゲーが大好きで、一度ガン薀蓄の蛇口を捻れば言葉が瀑布となって迸り、止まることがない。そして何やら謎のバイトに従事している模様。これまでのルートは研鑽や共闘、決闘をテーマにしてきたけど、今回は「殺し愛」だろうか? 作中の表記では「殺試合」ですけど。なんであれ魅せてくれ、ガンオタの業深さ。

・海藍の『トリコロ MW-1056(1)特装版』読んだー。

 前回の更新では「しばらく寝かせてもいいかな」などとほざいてみましたが、そういう考え方が積読を増やすのだバカモノ! 迷うな、読め! 清算(チョンサン)せよ! と己を叱咤して崩しに掛かりました。解説は前回書いたことを参考にしていただくとして、ザッと一言でまとめれば「1巻でありながら3冊目に当たる『トリコロ』のコミックス」です。母親と2人暮らしをしていた七瀬八重の家に、同い年の少女2名が下宿することになって……という「一つ屋根の下」なシチュエーションで展開するホームコメディ四コマであり、途中からクラスメイトの「にわちゃん」こと潦景子(にわたずみ・けいこ)が加わり、更にこの「MW-1056」1巻でにわちゃんの母親がレギュラーに登録され、4人の少女と2人のおば……ゲフンゲフン……妙齢の女性、計6名を軸にして話が展開されていきます。『あずまんが大王』と同じく男性キャラがほとんど出てこない(っていうか、木村先生みたいな存在もいないから『あずまんが』よりも徹底している)タイプ。日常のイベントを面白おかしく綴る点ではごくごく平凡な内容ながら、キレの良いテンポで紡ぎ出されるネタが実に快い。最初は「んー、評判ほどでは……」という印象でも、気が付けばジワジワと熱が上がってきてハマってしまう、そんなノリです。

 久々に1巻(芳文社時代の)を引っ張り出して読み返してみましたが、初期と今とでは「……別人?」って見紛うほど絵柄が違いますね。目の大きさなんかはあまり変わってないんですけど、こう、野暮ったさが抜けてきてとてもイイ具合に。ただ、もともとクセのある絵がより一層クセを強くした雰囲気でもありますので、抵抗感を覚える人がいても不思議ではないです。個人的には線のスッキリした描写とか、小物や背景の凝り様、視点カメラの移動を画面端の蝶々で表現したりする芸の細かさに舌を巻き、クセの強さは大して気にならないです。基本は掛け合い漫才で、ポンポンとリズミカルに言葉が飛び交う光景を微笑ましく眺められる寸法になっている傍ら、回ごとに通底するストーリー(風邪の看病とか、見つからない衣類を探すとか、それ自体は他愛もないけれど)が用意されていて、話が終わるたび「ああ、ここのネタが伏線になっていたのか」と鮮やかな読み口を味わわせてくれる。だいたいが一日の出来事を切り取った内容ですから、時間経過が非常にゆったりとしていて寛げます。「面白おかしく、それでいて緩やかな日常」が『トリコロ』の魅力かもしれない。そう考えると、形式の違いはあれ『あずまんが大王』よりも『よつばと!』の一貫した暢気さに近いものがあるかな。

 待ちに待ち、忍びに忍んだファンの想いもようやく報われた、といったところ。セリフがズレて吹き出しの外に飛び出していたり、にわちゃんと多汰美のセリフが逆になっていたり……といった単純なミスが目立つのは痛いですが、そういう部分を除けば4年ぶりの新刊として充分な仕上がりを見せてくれました。時間が空いてしまったことは悔やまれるにしても、クオリティには更なる磨きが掛かってますので、以前『トリコロ』が好きだった人は「えー。今頃、なぁ……」なんてボヤく必要はありません。迷わず手に取るべき。あくまでシリーズ3冊目ですから、『トリコロ』知らないという人は「芳文社時代の1巻と2巻→これ」の順で読むのがベスト。うーむ、久々に海藍独壇ショーを堪能させていただきました。さりげなく年増・若作り・ポッチャリ・ピチパツといったマニアックな華を伝道する心憎さにも拍手を送りたい。個人的に好きなのは言うまでもなくにわちゃんで、「にわ&八重」のコンビが気に入っているものの、今回だと実は、「にわと真紀子」っつー普段何かと衝突している(主としてニワータが「デブでも食ってろピザ」的暴言を吐き、ガチムチのマッキンリーに〆られる)ふたりが意外な絆を結び関係を深めるエピソードが一番ツボに嵌まってたり。

・拍手レス。

 焼津さんが本を作らないのは一種の不条理だと思う。
 自費出版にハマった祖父は親戚一同から生温かい視線を向けられているしなぁ……。


2008-03-02.

・今朝、自分の悲鳴で目を覚ました焼津です、こんばんは。「ヒィッオ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙――!」と、我ながら途轍もなくキモい咆吼でした。まだ耳に残っています。

 ああいうのってドラマやマンガだけのことだと思ってましたが、本当にあるんですね。厭な夢を見ちゃいました。他人の夢話なんて退屈極まりないと重々承知したうえで掻い摘んで書きますと、夢の中の主人公「私」には戯曲家の母がいて、かつて「ガラスの悲鳴」というヒット作を物している。この頃「私」はまだ子供で、演じられた劇の内容自体はよく知らない。ただ、周りから聞いた話だと、劇に悲鳴が上がるシーンなどなく、タイトルが何を意味しているのか観客の誰もが理解せず、執筆した母も説明しようとしない――という奇妙な謎があるらしい。

 ある日、母の所属していた劇団のメンバー3人(すべて女性)が「私」を訪ねてくる。3人は和やかなムードでの会話を試みようとするが、どうもぎこちなくて「ただ単に顔を見に来た」のではないことがバレバレ。やがて、今は亡き劇団の経理に不審な点が今更見つかったと述べ、その疑惑に「私」の母が関与していると睨んだ彼女たちは、「私」が詳しいことを知っているのではないか、説明してほしいと詰め寄ってくる。「私」は苛々しながら「そんなことは何も知らない」と突っ撥ねる。次第に声高となる糾弾。しかし、ヒステリックになっているのは女性たちのふたりだけで、残りのひとりは比較的冷静さを保っている。それで「私」に対しやけに馴れ馴れしく接してきており、仲間割れの口論を始めたふたりを「よしなよ」と諫めた上で「この人に醜い女の争いを見せるんじゃないよ」と茶化すような口振りで言いながら椅子に座っている「私」の背後からそっと目隠しをする。いわゆる「だーれだ」式のまがくし。

 すると、「私」の様子が急変。全身をガクガクと激しく震わせ、顔中から汗を噴出させて如何にも「トラウマが発動しました」と言わんばかりの状態になる。さすがに口論をやめて「私」のところに駆け寄るふたり。「どうしての? 大丈夫?」と話掛けながら、「ねえ、これって……」と思い当たりがあるような会話を交わす。劇には、タイトル以外でもう一つ謎があった。それは、登場人物の一人である少年が他人に顔を触られることを極端に嫌うこと。少年は母親に虐待を受けている節があり、顔を触られたがらないのもそれに絡んでのことだと思われるが、結局最後まで詳述されないまま幕が下りる。3人は少年のモデルが幼き日の「私」であることは薄々察していた。そして突如発した強烈な反応から、彼もまた母親に虐待を受けていたことを直感する。しかし、顔を触られることに恐怖する虐待とはいったい何なのか? ふと、ひとりが「私」の目を覗き込んで気づく。とても小さな一本の傷が、瞳を照らす光をおかしなふうに歪めていることに。それを見て反射的に言葉を漏らす。

「もしかして……爪?」

 聞いた瞬間、「私」のトラウマ――がっしりと瞼を押さえつけられ、徐々に眼球へ迫ってくる母の親指、その先端――が全開になって喉の奥から悲鳴が迸る。とまあ、そんなストーリーでした。長いくせに中身のない筋立てで、不正経理はどこに行ったんだよ、とツッコミたくなる。夢を見ている間は結構冷静で、「私」の役をやりながらラストシーン付近で「ああ、ここでガラスが砕け散るような悲鳴を上げるわけね」と他人事みたいに思ったくらい。しかし、まさか現実で悲鳴が上がるとは想定外であり、素でビビリました。ちょっ、なにマジに叫んでんだよ自分!みたいな。まあ、おかげで今後は「悲鳴とともに目を覚ます」というシーンを見ても陳腐と決め込まずに受け容れることができそうです。

propellerの新作『クロノベルト』、情報公開スタート

 久しぶりに目にする双七くんと刀子先輩の姿――溢れる涙が止まらない。「これで『あやかしびと』の展開は終了」と明言した過去がある以上、この『クロノベルト』の企画もあるいは不本意なものだったのかもしれませんが、それでも一ファンとして果つることなき喜びがあることは確か。収録タイトルの一つ「復讐するは神になし」は新約聖書の「復讐するは我にあり」をもじったものでしょうね(我=神なので)。表題作の「クロノベルト」はストーリーに「繰り返し」というフレーズがあるところを見るにループものかしら? 良い意味でデタラメな作品になっていただきたいものです。デタラメと言えばスタッフ日記の「黒のベルト」に噴いた。

銀時計の『おたく☆まっしぐら』、陽藤麗南ルートが終わって現在佐々木操ルート。

 幾ばくかの謎は残りましたが麗南ルートも良い仕上がりにございました。朝美ルートや美月ルートに比べてシリアス成分が低く、のほほんとコメディチックな部分を享受しやすくなっているあたりがポイントかもしれない。造型方面にはまったくと申して差し支えないほど関心のない人間ですが、このシナリオを読んでちょっぴり手を伸ばしてみたくなった。危ないなぁ。でも、イイ感じに脳を刺激して空想や妄想を掻き立ててくれることは確か。「もしこれが現実の事象として発生していたら……」と仮定して心を遊ばせ、少しばかり童心に返った気分さえ味わえました。

 童心と言えば、今やっている佐々木操ルート。これもイイ。すごくイイ。ゲーセン(アミューズメントセンターなんて言い方認めねぇ)を舞台に対戦プレーも協力プレーも可能なアクションゲームを通じて互いの仲を深めていくストーリーで、ゲーム狂いだった過去を持つ身としては一行一行の醸し出す臨場感がたまらない。「ゲーセンで育む恋」というシチュエーションにやたら懐旧感と既視感を覚えるなぁ……と思っていたら、何てことはない、我が小学生時代のお気に入りコミック『ブレイクエイジ』じゃないですか。あれもヒロインが年上でしたね。貫禄の差か、ビースティで制御至難な明を上手に操縦してくる操。今までヒロインを猛烈に振り回す立場だった主人公がヒロインに振り回され弄ばれるって逆転現象がややおもろいです。しかし、やればやるほどB-A思い出してああああノスタル汁がドバドバ溢れひゃうぅぅぅ。当方の姉さん女房属性は高原彩理で芽生えた、これ定説。

 けど忘れてはなりません、操ルートはどうやら未完成らしいのです。持ち上げて突き落とす、垂直パワーボムのパターン。また綺羅ルートの如くキンクリ発動するか? ここぞってシーンで縮地法使ってエンディングまでひとっ飛びか? おたまは素で無拍子を極めているから困る。

・海藍の『トリコロ MW-1056(1)特装版』の付属冊子『稀刊ツエルブ』読んだー。

 この特装版とは何か? を語る前にまず海藍とは誰か? について説明致しましょう。

 名前の読み方は「はいらん」。広島県出身の4コママンガ家で、2000年に雑誌デビュー。2002年に代表作である『特ダネ三面キャプターズ』『トリコロ』の連載を開始。翌年2003年に初単行本である『トリコロ(1)』が発売され、連載当時から人気が高かったこともあり、あっという間にブレイク。先に始まったのは特ダネ〜の方ですけど、こっちは単行本にまとまるまで4年も掛かりましたので、『トリコロ』に比べて知名度は若干劣る結果に。

 で、ここからはWikipediaあたりを参考にした方が詳しいんですが――『トリコロ』があっちこっちに掲載されたり休載したり再開したりと目まぐるしい状況になります。追っかけるファンも大変な状況。作者が体調を崩したこともあり、『トリコロ』の単行本は2004年の2巻が最後となり、3巻の目処は立たなくなりました。2006年に先述した『特ダネ三面キャプターズ』の1巻が発売され、海藍成分に飢えていた単行本派は無事空腹を凌ぎましたが、特ダネ〜もまた休載によって2巻以降の刊行が不透明な雰囲気に陥ります。もともと四コママンガは充分な原稿量をまとめるまで時間が掛かり、年一冊か二冊のペースを保てば上々といったところであって気を長く持つのが常識ながら、2007年をまるっきりNO新刊でフィニッシュされたファンの目は死んだ魚の濁り具合と一緒でした。

 特ダネ1巻から数えて丸2年、トリコロ2巻からだと実に4年ぶりとなる新刊がこれ、『トリコロ MW-1056(1)』なのであります。出版社が芳文社からメディアワークスに移ったせいで新たに1からカウントし直されていますけども、実質的には『トリコロ』の3巻目ですね。芳文社時代のものとメディアワークス時代のもの、両方を収録しています。

 さて、ここまでが前フリ。ここからが本題。先月末に発売された「特装版」には、その名に相応しく特典の小冊子が付属していました。即ち『稀刊ツエルブ』。タイトルやデザインは雑誌風といえども、れっきとしたA5判サイズのコミックスであり、カバーも付いて162ページの大ボリュームを誇っている。ぶっちゃけ、本体である『トリコロ MW-1056(1)』よりも厚い。厚いのだ。おいおい、どこが“小”冊子なんですか。むしろこっちが本体なんじゃないですか。実際、目次では『トリコロ MW-1056(1)』の方を「特別付録」扱いしてますよ。出す方も分かっててやってますな、こりゃ。

 内容は単行本未収録の『トリコロ』(作者の意向で一部のネタは削除されたらしい)が30ページ弱、単行本が出なかったせいで『特ダネ三面キャプターズ』よりもマイナーではあるがファンの間で根強い人気を誇っている「ママはトラブル標準装備!」が70ページ弱、あとの60ページは単発作品諸々。最近はエロゲーのみならずマンガでも特典商法が横行しており、「こんなもの目当てに買うのはよっぽど熱心な儲だけだろ」という代物も少なくないですが……こと『稀刊ツエルブ』に関しては掛け値なしにファン必須のアイテムであり、「熱心な儲」ならば「ころしてでもうばいとる」と気炎を吐くべき一冊に仕上がっています。特装版が1260円(税込)、通常版が819円(税込)なので、ツエルブの価格は差し引き441円。コストパフォーマンスも良心的な範囲と言えましょう。

 かなり初期の作品も収録されていて、絵柄や作風が今とだいぶ異なっていることに驚かされる。スタイルを確立するまでの試行錯誤が窺える点では非常に興味深い反面、個々の作品として読めば、正直「ネタが弱い」「描き込みが甘い」「ネームにキレがない」と述べざるをえないものがいくらか混ざっています。個人的に「お世辞抜きで面白い、人にも薦められる」と請け合えるのは『トリコロ』単行本未収録分を除けば「そら色レシピ」と「ママはトラブル標準装備!」くらい。キャラクターでツボった「みそじのさあやはいきおくれ」もギリギリか。「ゲンキのクスリあります」は境界線上。合わせれば全体の2/3は超えてますから、悪い意味での「寄せ集め」にはなっていない。「ママトラ!」は時間経過を取り入れて人間関係を徐々に変化させていくタイプの四コマで、盛り上がり最高潮のところで打ち切られてしまったことがなんとも悔しいですが……「そら色レシピ」や「みそじのさあやはいきおくれ」もあそこから更に膨らませて欲しかった。あと、余ったページを各作品のヒロインを用いた描き下ろし(だと思う)イラストで埋めており、沙綾たんの蠱惑漂うムッチリバディには生唾が湧く。これが三十路ならではの色香か……ゴクリ。

 ツエルブ一冊で満足してしまい、危うく本体の『トリコロ MW-1056(1)』を失念するところでしたが、まあ、海藍のパゥワーはじゅーぶん補給できたことですし、しばらく寝かせてもいいかなって気分。ここでガツガツと貪り読んでしまうのは勿体ない。小冊子だけでもテラテラツヤツヤと光沢を帯びたエビス顔になれてしまう極上の新刊でございました。手違いでうっかり2冊購入してしまったときは凹みましたけど、その痛手からはもうすっかり立ち直りましたわ(嬢)。

・なにはともあれ今月の予定。

(本)

 『君の望む死に方』/石持浅海(祥伝社)
 『眼鏡なカノジョ(1)』/TOBI(ソフトバンククリエイティブ)
 『お兄ちゃんクチュクチュしすぎだよっ』/ゴージャス宝田(ヒット出版社)
 『天体の回転について』/小林泰三(早川書房)
 『ステーシーズ 少女ゾンビ再殺全談』/大槻ケンヂ(角川書店)

 文庫化情報ー。注目は森見登美彦の『四畳半神話大系』。4冊目の著書『夜は短し恋せよ乙女』でブレイクした森見ですが、2冊目の本書は版元がマイナーなこともあってかほぼ黙殺された不遇な過去を持つ。内容的には1冊目である『太陽の塔』の発展形ながら、エロゲーマーなら思わず「おっ」と声を漏らすような工夫を凝らしている。「森見って名前は知っているが、読んだことは……」という方にまず手に取って貰いたい一冊です。それからジェフリー・フォードの『シャルビューク夫人の肖像』。前に翻訳された『白い果実』が面白かったのでそのうち買おうと注目していましたが、買わないうちに文庫化してしまった。せっかく買ったのに読まないでいるうちに文庫化してしまった、というパターンよりはマシか。……いくつか心当たりがあるけど。

 今月は「そこそこ楽しみ」という新刊が多い反面、際立って「すっげー楽しみ」という本は少ないですね。石持浅海の『君の望む死に方』のタイトルに惹かれて。この人、いい作品を書くし評価もされているけど、如何せん地味でブレイクし切らない。いっときの東野圭吾を見る感じ。機会があれば一気に化けるはずです。『眼鏡なカノジョ』はWEB連載されていたコミック。眼鏡属性を持たぬ当方ですが、掲載されていた立ち読み版に目を通して不覚にもときめいてしまった。個人の嗜好をも超越する、これこそが真の武であり誠の眼鏡。眼鏡属性不所持とはいえ、別に眼鏡っ子が嫌いなわけじゃないんですよ。ただ経験則からして打率が低いだけ。『お兄ちゃん〜』は『キャノン先生トばしすぎ』で一躍人気作家へと成り上がったゴージャス宝田の新刊。もともと予定が組まれていたのか、人気沸騰に際して急遽立案されたのか……まあ、どちらでもいい。そういや、ひぢりれいも久々にエロマンガの新刊を出すそうな。『淫牝』――と書いて「エロスケ」と読ませるらしい。

 『天体の回転について』はSF短編集。先月の『モザイク事件帳』に続いてヤスミンの新刊が買えるとは、心底嬉しい喃。だがしかし既刊のほとんどを積んでいてすぐには取り掛かれそうにない罠。読んだ本より読んでない本の方が多い。『ステーシーズ』は番外編を収録した『ステーシー』の完全版だそう。『ステーシー』は「ニアデスハピネス」とか「再殺部隊」とか、『武装錬金』で使われた用語の元ネタです。一種のゾンビもの。虚淵も大真面目に「ゾンビとの恋愛モノ」を考え、人に話したら『ステーシー』渡されて打ちのめされたことがあったとか。ろすくりの大槻涼樹も昔ゾンビでハッピークリスマスなショートショート書いてます。などと偉そうに解説している当方自身は長田ノオトの漫画版しか読んでなかったり。ちゃんと原作も押さえておこう、とチェックした次第であります。しかし、今回収録される番外編って『ゴスロリ幻想劇場』に載っていた奴かな? あれならもう読んでるけど……。

(ゲーム)

 『暁の護衛』(しゃんぐりら)

 『マスクドシャンハイ』『Princess Frontier』『とらい☆すたーず』と、他にも気になる新作はありますが、果敢に挑みかかる気力が諸事情につき欠乏しているため『暁』一択。『暁』にしても期待しすぎると痛い目を見そうだけど、逆に言えば期待を抑えてプレーすれば少なくとも「こんぼく」と同じくらいは楽しめるはず。残りの3本は発売後の評判を吟味して去就を決したい。

・拍手レス。

 <キャラクター紹介で真っ先に会長をクリックした。 時間が経っても身体が覚えている…あの萌えを。
 臓器にも記憶は宿る。筋肉とてキャラを愛すのだ。

 今年最強最悪のスワスチカが開いたようです(苦笑)<『私は私のまま、誰にでも変われる』(匠)
 あとToHeart2 AnotherDaysの出来にも焦った感が・・・(汗
 正直上記のやつは笑えませんが(ゲームできずHP繋がらないとかで)もう驚きというよりまたかって感じで
 もうある意味で祭りですねこれはwそういいつつ横に転がる未開封のパッケージ(leaf

 わたわたは不具合多いみたいですけと遊べないことはない模様。ADはユーザー数が半端ないせいで騒ぎが膨らんでいるみたいですね。

 propellerがなんか素敵に暴走してるんですが。クロスオーバーだってよ。どうするよ。
 BBまだ一周もしてないのがネック……積ゲー覚悟で買うとします。


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