2005年11月分


・本
 『バジリスク』/原作:山田風太郎、漫画:せがわまさき(講談社)
 『終わりのクロニクル6(上・下)』/川上稔(メディアワークス)
 『戻り川心中』/連城三紀彦(講談社)
 『容疑者Xの献身』/東野圭吾(文藝春秋)
 『夜市』/恒川光太郎(角川書店)
 『Hyper Hybrid Organization 00-03』/高畑京一郎(メディアワークス)
 『九月が永遠に続けば』/沼田まほかる(新潮社)
 『シンシア・ザ・ミッション(2)』/高遠るい(一迅社)
 『ユーベルブラット(2)』/塩野干支郎次(スクウェア・エニックス)

・ゲーム
 『Fate/hollow ataraxia』(TYPE-MOON)
 『AYAKASHI−アヤカシ−』(クロスネット)


2005-11-29.

・文庫版が発売日を迎えた『本格小説』、内容をさっぱり想像させないタイトルながら中身に関してはすこぶる付きの傑作ですよ。と触れてみる焼津です、こんばんは。2年ちょっと前に当方の書いた感想文はこちら。本棚から取り出して久しぶりに読み返してみたら、当時の記憶が眩暈のように甦ってきました。本題に入るまでが長いので、のんびり構えて読むのが吉であります。

・高遠るいの『シンシア・ザ・ミッション(2)』と塩野干支郎次の『ユーベルブラット(2)』読了。

 TYPE-MOONや板垣マンガ、その他諸々へのリスペクトを礎としつつ、独自の領域を展開しているシンシア・ザ・ミッション、今回はサイコキラー少女と喧嘩番長のタイマンが熱かった。キャラのほとんどが女の子で絵柄もサッパリしていて随所にギャグがちりばめられているくせに、ことアクションに関してはガチです。いろんな要素がぶち込まれているせいかひどくまとまりのない世界なんですけど、その混濁ぶりを力技で貫き通すスタイルは清々しい。翻ってユーベル〜はこれまでの0巻や1巻に比べて見所の少ない内容でした。なんだかストーリーの進行が遅くなってるような……焦らずじっくり描きこもうと構えている風情にはある種の安心感を覚えますし、続きが楽しみであることは変わらないにせよ、ちょっと残念。

『AYAKASHI−アヤカシ−』、やっとこさコンプリート。

 エイムルート、掛け値なしの壮絶な執念に打ちのめされた。ただ素直に一言「すげぇ」という感想になってない感想を書くに留めておきたいところですが、無駄口を叩くのは当方の性、あれこれ言わせてもらいます。ぶっちゃけ気合の入り方が他のルートとは段違いだろう、と。他の話で見られたノリに馴染んでいた身に、あのインフレに次ぐインフレなバトルは熱湯級のショック。ひたすら勢い任せで混沌極まりない戦闘の数々が単純に凄い。はっきり言ってこの展開を手抜きなしで実行したスタッフは少々頭がおかしいと思う。正気ならもう少し手を緩めて綺麗にまとめるはずだ。グチャグチャに掻き乱れて汚くなることも構わず情念の絵具を塗りつけ、敢えて荒々しく仕上げることを良しとした、その蛮行に敬服したい。そして願わくば、すべてのルートでこれに匹敵する執念を発揮してくれていたら……と、贅沢な悩みというか、スタッフに「過労で死ね」と言うにも等しい率直すぎる気持ちが湧いてくる。ともあれ、このルートを最初にやらないでおいて良かった。これを真っ先に攻略していたら、まず間違いなく『アヤカシ』を減点方式で語ることになっていたでしょう。ホント、順番って大切ですね。

 というわけで、総じて見ればやはりシナリオに関する不満がごろごろとあり、絶賛しがたい出来ではあります。全体のトーンが「情けない男の子と格好いい女の子がボロボロになりながら戦う伝奇アクション」で貫かれているので、ベタベタなボーイ・ミーツ・ガールを嗜好するならともかく、精妙な筆致と堅牢な設定に彩られた燃えバトルを期待すれば肩透かし。感動を演出しようとする場面もあざとさ、露骨さが目立ち、「なんか、どこかで見たようなシーンだな」と希薄な印象を与えてしまう。掘り下げも浅い範囲に留まっていてすこぶる惜しく、「人に寄生し、力を与える代わりに破滅を齎す存在」というアヤカシの設定に対してテーマを追求しきれていない憾みがある。ストーリーへの期待があまり高くなかった当方でも、やっていて残念でした。

 しかし、つまらなかったかと訊かれれば、そうではないと答える所存です。確かに掘り下げは浅いし、各シナリオが「それぞれの可能性を模索した」というより単に「試行錯誤した結果、路線がデタラメになった」って感じで統一性低いし、完成度の点では誉めにくいものの、「やってやるぜ!」的情熱──物語に懸ける執念が凄まじく、気が付けば呑まれていてすっかり楽しんでいた。主人公の久坂悠は最後まで好感が持てなかったけど、彼の視点では語られなかった出来事を他の人物によって開示するサイドストーリーが本編の穴を埋める役割を果たしており、端役に至るまでの脇キャラにはそれなりの愛着を抱いた次第。サブの連中にしても情けない奴が多く、「状況に接して全力で足掻く」ことが力点になっていて、一種の主人公気質を持っているから感情移入もできたのだと思います。でも冷静に見れば「本編よりサイドストーリーが面白い」のではなく、「本編+サイドストーリーが面白い」んですよね。結構な数がいるキャラをなんとか捌いて語り漏らしがなくなるよう、両サイドに渡って気配りがなされている。広げた風呂敷をちゃんと畳むだけの努力は払っています。

 何より、特筆すべきなのは演出面についてでしょう。神経質というかフェティッシュなまでの凝り様を見せる画面エフェクト・サウンドエフェクトは問答無用であり、インパクト抜群。「見て驚け」との意気込みが肌に伝わってきます。極力説明を削ぎ落としたテキストの効果もあって画面への没入はひどく容易い。皮肉かどうか分かりませんが、不満の残るシナリオに関してもそのシンプルな仕上がりが合って、演出との相性が良くなっている。過去何度も書いた通り、このゲーム最大の売りは「分かりやすさ」なんです。プレーヤーの想像力に凭れかかることなく、かと言って想像力を侮ることもなく、絶妙なテンポとタイミングで華やかな世界を繰り広げてみせる。変に捻ったところのない率直さ、読み手を置いてけぼりにしない丁寧なストーリーテリングが骨となって話を支えています。ただ、局所的に見ると主人公の感情変化がまったくの他人みたいに感じられる場面がいくつかあって、こちらの移入を阻害してしまう難点が。テキスト自体が少ないので、何かあっても主人公が激昂するまでの過程は一瞬で済んでしまい、なんだか「怒りに燃える主人公」というより「即ギレ少年」にしか見えない。設定の都合とはいえ、あまりにもイヤボーン展開が多いのはマイナスでした。

 それからコメディ要素に関してはやや微妙。ギャグがワンパターンだったり笑わせ方が強引だったりで「ありがち」の域を出ません。慣れてくるとそれなりに笑える箇所もありましたが。ただ、配分の比率はちょうど良かった。無駄にダラダラとおちゃらけた日常シーンが続くこともなく、逆に日常シーンの不足から展開が慌しくなることもなく、バランスの取れた話運びになっていると思います。

 話がバックしてしまうけど、やはりエイムルートで見せてくれた執念が当方の評価姿勢を安定させてくれた。他のルートをやってる限りでは微妙感が絶えず付きまとってきたのに、あれをやった途端、迷いのようなものがスッキリと消えてしまった。少年マンガっぽい気合と根性と激情のインフレバトルもあそこまで行くと素晴らしい。典型的な綾波キャラに見えたエイムもいつの間にか一、二を争うほど魅力のあるヒロインに見えてきてびっくりした。寡黙な性格と不屈の精神が織り成す格好良さもさることながら、「剛胆な鬼を従えた華奢な少女」という構図がロマンを刺激してやまない。五話目における「すべてが終わった後……」の発言にも痺れた。わがままではあるが「我を通す」ことに意地を見せるパム、味のあるオッサンとして活躍する前川、ネタキャラ臭いがあまりのヘタレっぷりに愛すら覚える角屋など、他の面子もいい。野郎では特に平馬がツボ。

 総プレー時間はだいたい30〜35時間ってところかな。「能力バトル」ではなく、「デザイン萌えなクリーチャーどもがギッコンバッタン入り乱れるスペクタクル」の観点で眺めればなかなか夢中になれる一作でした。共通ルートの第三話とエイムルートの第六話がアヤカシという存在の不気味さや恐怖をサスペンス色いっぱいに描いていて、やってるこちらにも熱が入った。悪路王、アテルイ、天狗、イワナ、デイダラボッチあたりのアヤカシが好きです。罪もない一般人が無惨な最期を遂げたりと、さりげに容赦ない悪趣味展開がふんだんに盛り込まれているのもポイント高い。なんだかんだで元は取れた気がします。悪路王(*´Д`)ハァハァ。


2005-11-27.

・早朝なのにメイド服を着た人が黙々と店の前を掃除していて、「つくづくシュールな街だ」と痛感した秋葉原が懐かしい焼津です、こんばんは。しかし秋葉原以上に東京中の本屋と古本屋が懐かしい当方はつくづく書痴だ。

『AYAKASHI−アヤカシ−』、エイムルート以外をクリア。

 よし、あとひと息。この世界は基本的に気合と根性と激情があれば勝てるみたいで、いろいろと突っ込みどころの多いシナリオだけど、ルートごとに展開が大きく変わって多面的に話が広がっていく点、登場するキャラを全員きちんと活かしている点については評価したい。とにかく、終始徹底して分かりやすい話です。良くも悪くも。テキストをくどくどと大量に垂れ流さないで短く絞って綴るスタイルはシャープに映ることもあれば、言葉足らずで拙く見えることもある。シナリオ重視、というより、テキスト重視の人にはちょっとキツいかもしれない。アニメともマンガとも似て非なる、エロゲー特有の「間」の感覚がストーリーテリングの要になっています。ことテンポの刻み方に関しては巧い。不気味な予兆を漂わせるシーンやふとした瞬間に緊張が走るシーンなどで起伏をつくっている。「読む」「観る」「聴く」を総合し、「やる」の次元に踏み込んだ雰囲気。もう少し踏み込みが深ければ革新的な領域に辿り着いたでしょう。さすがにそこまでは及びません。

 余談ですが今のところ、メインシナリオよりもサブシナリオの方が面白いです。サブはあくまで本筋を補完する意味合いのシナリオばかりで、核心に切り込んでる手応えはありませんけど、うまい具合に隙間が埋められていく感じで心地良い。メインあってこそのサブとはいえ、これがなければシナリオの評価はかなり微妙なものになっていたかもしれない。

 さて、次にプレーするのは『アヤカシ』のオーラス的な位置を占めるとおぼしきエイムルート。なかなか派手な展開になりそうで期待しております。デモムービーに出てきた、家を踏み潰しながら街を闊歩するアヤカシ(サイズからしてダイダラポッチか?)との大決戦を想像してワクワク。

・沼田まほかるの『九月が永遠に続けば』読了。

 文彦という名の私の息子は、(中略)蓋の開かない瓶詰めを手渡すと一捻りで開けて鼻で笑い、下等な生物を哀れむような目つきで母親を見る。

 夜、水沢佐知子は同級生の少女を送って帰ってきた息子についでのゴミ出しを頼んだ。ぶちぶちと文句を言いながらもゴミ袋を引っ掴んでふたたび外へ出て行った文彦。彼はそのまま帰ってこなかった。サンダル履きの軽装で、財布も持たずに出た少年が失踪した理由とは何なのか。気を揉む佐知子の目に、彼女と肉体関係を持っていた青年が電車に轢かれて死亡したという記事が飛び込んだ。やがてその事件にかつての夫が再婚した女性の連れ子・冬子が関わっていると知って……。

 絡み合う人間関係、深まる謎。「ゴミを出しに行った息子が行方不明になる」という、感覚的には日常と地続きな非日常を母親視点の一人称で描くサスペンス。経過に合わせて焦燥感が絶望感へ塗り変わっていくあたりは不安を煽る文体で迫力込めて綴られており、読んでいるうちいつしか主人公の精神に取り込まれる錯覚すら得てしまう。筆力に関しては新人離れ。ただし、センスの古い言い回しが多く、特に会話文でそれが目立っていた。地の文に口語調が混じっている一方で会話文がなぜか文語調だったりと、文章力はあるのに配分がおかしくなっているところもあってちょっと不安定。

 ストーリー自体はさほど見るべき箇所もなく、クライマックスで明かされる真相にしても「300ページ引っ張ってこのオチか」と少し脱力させられましたが、場面場面に篭もった異常な熱気と異常な冷気は意味の汲み取りにくい不可思議なタイトルと噛み合ってこちらの心を激しく揺さぶり、ゆっくりと引き潮になって暗い鼓動の余韻を残していく。部分部分の主張が強くて、なんだか、端整に見えて結構いびつな作品でした。いびつであるがゆえにサスペンスとしての適性を持っている気が。


2005-11-25.

・やはりここで投げ出すと二度と起動しない気がするので、考え直して『アヤカシ』を続行することにした焼津です、こんばんは。どうにか今月中に終わらせて新作にも取り掛かりたい。関係ないですが昨夜放映された『SHUFFLE!』のアニメが修羅場スキーには堪らぬ展開となっていたそうで。見たかったなぁ。

『ロストチャイルド』の発売予定日が決定(2006年3月24日)

 2005年には間に合わなかったものの、年度中に駆け込ませる戦法の模様。これで無事に出たとしても、情報公開から3年近く経っての発売というのは過去の有名延期作『SNOW』『LOVERS』に迫る勢いだ。同時期からずっと並走している『マブラヴ オルタネイティヴ』との延期レースもそろそろ終局を迎えるのだろうか……と書きつつまだ半信半疑です。オルタもロスチャもすっかり負のカリスマ。

・高畑京一郎の『Hyper Hybrid Organization 00-03』読了。

 「萌え0%」って。「高畑京一郎が描く熱き男たちのドラマ!!」はいいとしても、この「萌え0%」というキャッチコピーはいかがなものだろう。確かに渋くて燻し銀で密やかに熱くて表面的には地味な仮面ライダーリスペクトのシリーズでありますが、何もそんなインパクト勝負の宣伝に走らなくても。まあ店頭で見かけた瞬間「うん、そうだね」と思わず頷いてしまった当方としてはあまり強く主張できませんが。

 本編は2年前に出た3巻で止まっていて、外伝たる「00」も雑誌掲載時は不定期極まりない連載で、「高畑がH2O00の原稿落とし、穴埋めに『ドクロちゃん』が載った」という経緯から「おかゆまさき=高畑京一郎」の珍説まで呼び込むほど遅筆で寡作な作者の新刊。前巻から1年ぶりです。本編では既に成立している秘密組織「ユニコーン」が結成されるまでのあらましを綴っており、副題の如く「組織誕生」した時点で〆となります。動的なシーンもいくつか挟まれてますが、昨今のライトノベルにおけるアクション描写と比較すればおとなしめ。むしろ見所は様々な思惑を持って噛み合い絡み合っていく人間模様。それぞれのキャラが自分の立ち位置を把握したうえで己が行く道を決めるあたりは群像劇の面白さが遺憾なく発揮されている。ただ、藤岡の扱いが本編同様に曖昧なのはちょっと残念。帯とかでは「外伝シリーズ完結編」と謳われているけど、一旦終了しただけでいずれ外伝的内容のストーリーは描かれるらしいし、ミッシングリンクの補完に期待しよう。

 分量が少なく調子も淡々としている一方、極めて絞り込まれた文体に仕上がっているので、短いながらにも満足が行きました。流行からは外れているテイストだと思いますが、こうした昔懐かしい正統派のようでいてどこか鵺的なノリの話もちゃんと続いていってほしい。薄くても、刊行速度がもうちょっとスピーディだったら文句ないです。あとがきで来年は3冊出すと公約しているから信じたいところ。でも実績からすると安易には信じがたく。悩ましい。

 ところで出すと宣言している3冊のうち、2冊はH2Oの「01」で、残り1冊は単巻モノだとか。高畑の単巻作品は『ダブル・キャスト』以来だし、もし本当に刊行されたら7年ぶりってことになります。既存の作品と何か関係のある話なのか。それともまったく新しい企画か。分量も気になる。もしや今の時流に乗って厚いハードカバーで出したりするんじゃ……と、皮算用が膨らみます。


2005-11-23.

・休日を有意義に過ごさない心意気。怠惰に生きる焼津です、こんばんは。本も3冊しか読めず、しかも『武装錬金(9)』の打ち切りを前提とした超急展開に哀しくなりました。

『AYAKASHI−アヤカシ−』、織江ルートに進行。

 このゲーム、やっていてJOJOとかスクライドとか『Dクラッカーズ』とか『ムシウタ』とかいろんなのを連想したけど、結局のところ既存作品で一番イメージに符合するのは『タマラセ』かなぁ。『タマラセ』自体もオーソドックスな能力バトルを礎にした話ではあるものの、一応伝奇的な背景があったり、能力が能力者にしか見えなかったり、破滅的な運命が匂わされていたり、タイトルがカタカナ4文字だったり、共通点がいくつか見られる。あくまで要素的なものであってそんなに「似てる」ってほどじゃないですが、『アヤカシ』は展開が王道すぎるゆえに却って捉え所がない作品なので、誤解を承知で「エロゲー版『タマラセ』」という印象を暫定回答としておきます。

 明後日にはもう新作が届くし、明日を最後に一旦凍結するかな……せっかく織江に愛着らしきものを覚えてきたので、せめてこのルートだけでも最後までやれるといいんですが。

・恒川光太郎の『夜市』読了。

 第12回日本ホラー小説大賞受賞作。表題作の他に書き下ろし「風の古道」を収録している。ホラーとはいえあまり怖いムードはなく、淡々としたリズムの中に叙情味を感じさせる作風です。言わば切ない怪異譚。それでいてちょっとした仕掛けも施されていて退屈しない内容。スリムで綺麗な装丁も素晴らしい。

 夜の森で市が開かれる──人ならぬモノが店を出し、妖しげな品を売るこの場所で手に入らない物など一つとしてない。望めば何だって手に入る。ただし、相応の対価は必要。彼女を連れて夜市に入った青年が求めるものとは……。願望成就、というテーマはあまりにも広範すぎて規定するのも難しいですが、短編程度の尺だと「願いを叶える代わりに何かを犠牲にしてしまった」というパターンの話に絞って見て行くことができる。当然、「夜市」にもそのフレームは適応されます。夜市では冷やかし厳禁。夜市に入った者は対価を支払って何かを買わなければ外に出ることができない。「取引」こそが夜市の要となっているわけです。

 で、この「夜市」。あらすじを聞いただけでだいたいの展開を把握できたと思い込んでしまいそうになるんですが、間違いです。引っくり返ります。まさかそんな方向へ、ってな具合に。すごいのはそうしたサプライズが強引な力技じゃなく、「夜市」という世界が孕む雰囲気にきっちり収まるように仕上がっているところ。冒頭部分の牽引力が低いのは難点ですけれど、半ばに差し掛かって以降の展開は本領発揮の感があります。文章のあちこちに素人臭さが滲み、構成も粗い印象があって諸手を挙げての賞賛はしかねるにしろ、「無難」となることを嫌った志は評価したい。まさしく「夜市朝駆」の観あり。

 そして併録されている「風の古道」。こっちも異界探訪系のストーリーなので、「夜市」と似通っている箇所がある(というかこっそりリンクを窺わせる部分も)ものの、個人的には「夜市」よりツボでした。舗装もされていない、ポストも電柱も街灯もない、脇に民家はあるのにどこも戸口を向けていない、それが延々と続く──不思議極まりない道、「古道」。幼い頃に迷い込んだ記憶のある少年は十二歳の夏、友達を連れてその道に再び足を踏み入れるが……。古道、鬼道、死者の道、霊道、樹影の道、神わたりの道。幾多もの名で呼ばれ、特殊な能力を持つ血筋の者しか渡れない道には昼も夜も異形が闊歩し、特定の地点以外からは外へ脱出できない。「夜市」から幻想味を少し抜き、日常と並行して存在する怪奇を描いているようなところに惚れた。作品として見ればこちらの方がオーソドックスか。ややトントン拍子に話が進みすぎるきらいもあるが、作者の紡ぐテンポともハマっていて読み心地が良い。不必要に盛り上げようとせず、適した範囲内で物語を収束させているバランス感覚もグッド。一読するや「古道無常」の念が染み渡り、確かな手応えを得ました。

 全編に漂う仄暗い感触を、八房龍之助あたりに掴んでもらって漫画化してほしい和風怪異譚。いざ読めば期待していた表題作よりも併録作の方が好みに合致していたという、当方にとっての『玩具修理者』みたいな本。怖いホラーをお求めの人には薦めません。乙一や朱川湊人とかのしっとりした作風でいてヒネリの利いた味わいを忘れない作家が好きな人には推します。割と収穫でした。

・拍手レス。いつだってそうなのだ。いつだって拍手レス──

 学ラン悪路王はぜひやってくれという感じですが、天狗がセーラーってw女性ですかいw
 ほら、あのヒラヒラとした感じがチラリズムに通ずる気が。

 きみがーすーきー    orz
 ぷぷぺぽー    orz

 個人的には『物語』の体験版云々が気になります。……出るの?
 出ると信じたい晩秋の夜。

 「先生!続きはまだですか?」と作者の背後で正座して訊く編集者な気分
 はて、続きとな?

 もらったぁーー!と叫びながら飛び出し、カウンターを叩き込まれるところもポイント高いですよね
 あと口にホースとか変な玉とか突っ込まれて目がイッてるあたりも。

 角屋も悪い奴じゃないんですよねぇ、ヘタレなだけで。前川がいろいろと良い味出してるのが大きいですよね
 前川ってどんなキャラと絡んでも味が引き出せる、ある意味オールラウンダーなキャラだと思います。

 私も「ユーキャット」だと思ってましたw
 同志(タワーリシチ)よ。

 終わりのクロニクル、UCATを自分はずっと「ウキャット」って読んでました。字にすると間抜けすぎ。
 頭に「快傑」と付けたくなる読み方ですな。


2005-11-21.

『終わりのクロニクル』ラジオドラマで判明したこと。「UCAT」は「ユーシーエーティー」と読むらしい。ずっと「ユーキャット」だとばかり思っていた焼津です、こんばんは。だって語呂がいいですし……なのでちょっとショック。既に意識に染み付いてるから今更矯正するのも無理っぽい。今後も構わず「ユーキャット」と読むことにします。

『AYAKASHI−アヤカシ−』、前川シナリオをクリア。

「今のショウケラは無敵だあッ!」

 ちょっ、あんまり笑わせるなよ角屋。お前は存在自体が面白すぎるんだからな。というわけでショウケラやケバタケといった特定部分の能力は卓越している割にどこかショボい感が拭えないアヤカシたちが活躍する前川シナリオ。本編補完の意味合いも強く、サイドストーリーとかが好きな当方にはなかなか面白かった。デカい力とデカい力がぶつかり合うパワー・インフレも見ていて迫力があるから楽しいですけど、「一見ショボい力を有効利用して戦う」というシチュもまた燃えるわけでして。角屋のヘタレっぷりが美味しゅうございました。あと伊賀路さんのブチキレた目も素敵。

 しかしこの調子だと今月の新作が届くまで全然終わりそうにないな、『アヤカシ』。読書にかまけてちょっとプレーをサボりすぎました。いずれ集中的にやり込んでコンプしてしまいたい。

・東野圭吾の新作『容疑者Xの献身』読了。

 このミス、本ミス、文春──ミステリにおける主要年間ランキングを総なめするのではないかと下馬評で有力視されている一冊。ところでこの本、増刷に合わせてカバーの材質が変更されています。サラサラとした心地良い手触りです。古い方のはなんだかツルツルとした感じで、触るたびにベタベタ指紋が残るため「油取り紙」とまで形容されるくらいのアレな代物であり、巷では大変不評でした。そうした事情を踏まえ、発売直後に「この表紙、やだなぁ」と思いつつ初版を買ってしまった当方の慟哭を聞け。

 ともあれ、位置付けとしては『探偵ガリレオ』『予知夢』に続くガリレオシリーズの3冊目に当たります。東野圭吾は『秘密』でブレイクして以来すっかり著名になった作家ですし、無名期の作品を含めれば結構な冊数の本を書いてますが、意外とシリーズものは少ないし割とマイナーだったりする。一番有名なのは刑事・加賀恭一郎のシリーズだろうか。あとは天下一大五郎とか。『怪笑小説』を始めとした一連の「小説」短編集や、『白夜行』『幻夜』の関係をシリーズとして捉えるかも関わってきますが、なんにしろ、シリーズものはノンシリーズの作品群に比べると存在感がいまいち薄い。というか、いちいち意識しなくても楽しめる。当方がガリレオシリーズを読むのはこれが初めてになりますけど、何ら支障を感じる場面はなかったです。

 大まかな内容は、離婚した旦那があまりにもしつこく付きまとってくるので衝動的に殺してしまった母娘が、自首しようかどうかで迷っていたところ、隣室に住む数学教師が「手伝ってあげましょう」と持ちかけてくる……といったもの。冷静で思考もよく回る数学教師・石神は母娘のために事後的な犯罪隠蔽工作を行っていくものの、やはり警察はふたりを嗅ぎつけて捜査の手を伸ばしてくる。一種の倒叙要素を孕んだストーリーです。淡々とした筆致の中にひっそりと緊迫したムードを混ぜ込み、読者の興味と関心を引きずっていくテンポはいかにも書き慣れた作家ならではの手つきが窺える。露骨にセンセーショナルな路線を狙わないで話を盛り上がらせているあたりに好感を持った。徐々に進行していくガリレオの推理、不安な気持ちの中で計画に沿って行動する犯人たち、そして暴かれる真相。とても鮮やかで鋭いスマッシュ・ヒットでした。『白夜行』とはまた違った意味で原点回帰めいたところがある一方、東野の新たな資質が顔を覗かせた印象もあります。描写を重ねず、単にシチュエーションを研ぎ澄ませることでキャラを立てるあたりなど、改めて見るに凄い。特に「探偵」である物理学者と、「容疑者」である数学者との旧き友情を交えた対決は胸に熱かった。

 本格ミステリを愛する人も、そうでない人も、是非一読してここへ築かれた境地に驚倒してほしい。ぶっちゃけた言い方をすれば当方の受けた衝撃をみなさんも喰らってみてほしい。なんかもうこっちの練っていた推理はとんだ見当違いで再追試レベルでしたよ……。


2005-11-19.

・今日は『シグルイ(5)』の発売日……いかん、すっかり忘れてた!

 明日こそは、と誓いを新たにする焼津です、こんばんは。

・連城三紀彦の『戻り川心中』読了。

 本棚に本を詰めるということは当たり前の行為であって何も珍しくありませんが、所有する書籍の冊数が増えてくるとこれが途端に面倒臭いものとなります。最初は作者別とかレーベル別とかシリーズ別とか意味のある配列を心がけていても、本が増えるにつれトコロテン方式で入れ替えていくのが億劫になって遂には維持をやめてしまい、買った順にぶち込む、空いてるところに入れる、そもそも本棚に詰めるのがタルくて床に置くなど、不精の性をほしいままとする塩梅でして。この『戻り川心中』も中学生か高校生のときに最寄りの駅から一つ離れた駅のアーケード街にあった古本屋、今は潰れてしまって空のテナントだけが寒々しく残っているところで購入し、上京の際にもなんとなく荷物に紛れさせて運んできたものの結局読まずに放置してそのまま実家に持って帰ることとなり、いい加減古い本だし背表紙も色褪せページも焦茶に焼けて見映えも落ちたから本棚に飾るスペースを割くこともなかろう、と本棚の隙間──本を取り出す際に必要となる上部空間へ突っ込んでしまいました。この置き方、当方は「横置き」と言ってますが、収納法の中では最悪の部類に位置し、見た目もダメなら効率性もNG(他の本が取り出しにくくなる)、到底誉められたものではありません。しかし正規スペースに余裕のない書痴が横置きか床積みの方向へ走ってしまうのはもはや運命であり、くらやみ団並みに逃れられないのです。

 と、どうでもいい前置きがすっかり長くなってしまいましたが……そんなわけで不精な仕舞い方をしていたこの本、正しい収納をしていなかったがために逆に目立って、棚の整理をしているときついつい手に取ってみちゃいました。作者の連城三紀彦は『恋文』で直木賞を受賞したせいか恋愛小説家として認知されている面が濃く、実際『恋文』以外にもいくつも恋愛小説を書いていますが、根はミステリ系統の人です。デビュー作「変調二人羽織」も、『幻影城』という今はないのに今でも一部有名なミステリ雑誌で新人賞を獲ったことがキッカケで世に出る結果となりました。昭和の本格を語るうえでは欠かせない作家であり、『人間動物園』『流れ星と遊んだころ』と、最近の作品にも『このミステリーがすごい』のランキングへ食い込むものがあるほど。ただ、ジャンルで分ければ氏の手掛けた作品はミステリよりも恋愛小説の方が売れているから、あんまりミステリ作家扱いはされていません。帯や粗筋で大上段に「ミステリ」と謳っている著作も少なく、推理小説にハマっていた中高生時代に古本屋の棚を漁って「こっちの連城作品はミステリ? あっちは非ミステリ?」と峻別に頭を悩まされた記憶があります。いささか懐かしい。

 初期作でも特に有名な一冊だけあって、ちゃんとミステリ区分に入れられている本書は短編集。昭和や大正の昔が舞台ゆえに時代ミステリめいた香気も漂っております。「藤の香」、「桔梗の宿」、「桐の柩」、「白蓮の寺」、「戻り川心中」……収録作5編は揃って「花」をモチーフにしており、連城作品の中では「花葬シリーズ」と呼ばれている。回想形式の話が多く、もったいぶった仄めかしが得体の知れぬ過去の肌触りを生々しく伝えてくる。ミステリで文章の巧さを論じるうえではたびたび例として引き合いに出されるくらいの作家なんですから、初期作とはいえ弛みのない筆致で編まれています。なるほど、確かに巧い。悪い意味で古びたところが一切なく、発表時から25年くらい経過した現在もなお耐久している。するすると目が自然に引き込まれていきました。

 これだけの筆力があれば何の仕掛けもない小説を書いたところで面白いだろうし、恋愛小説へシフトして大成するのも頷けますが、やはり一介のミステリ好きとしては謎が謎として存在し、確かな手つきによって解き明かされる過程はとても楽しい。紡ぎ出されるえも言われぬ妖しさをひたすらに驚き喜び貪る幸福。まさしく絶好でしょう。表題作の「戻り川心中」にしても、冒頭部でゆるりと掲げられる謎の香りがたまらなかった。にしてもこれ、日本推理作家協会賞を受賞しているだけではなく、直木賞の候補にもなっていたとは。解説読んで初めて知りました。

 傑作揃いですが、一つ挙げるとすれば「桐の柩」。大枠はありきたりの類型ストーリーに見えて、いざ読んでみると白熱した静寂感に打ちのめされる。「どうだ、俺の手にならんか」と右手の四指──小指以外すべてを失ったやくざ・貫田に拾われた主人公が、詳しい事情も知らぬままに一人の人間を殺す羽目になった顛末。真相やトリックといったミステリ意匠のみを抜き出せばそれほど複雑な短編ではありません。全体の流れも緩やかで、疾走感は薄い。なのにこれほどまでの鬼気迫るムードが醸し出せるのはなぜか。一つ一つのシーン、中でも主人公が殺人を遂行する山場など、印象的すぎてほとんど眩暈がする。タイトルの付け方もなかなか凄い。象徴を掴む目が卓越しています。

 ちなみに、連城の花葬シリーズは全10編構想でありながら8編までしか書かれていません。解説で触れられている「桜の舞」はタイトルだけ公表され、執筆されることはついぞなかったという幻の作品。ハルキ文庫から出た『戻り川心中』は8編すべてを収録してますが、講談社文庫版は5編のみ。残り3編は『夕萩心中』の方に入っているみたいです。たぶん買ったはずだし探しておこうっと。


2005-11-17.

『アヤカシ』の影響か不意に京極が読みたくなり、唯一積んでいた『百器徒然袋−風』を崩すも、妖怪要素が希薄で不完全燃焼。仕方なく『塗仏の宴 宴の支度』を再読している焼津です、こんばんは。しかし、「これが読み終わったら『百鬼夜行−陰』にも目を通そうか」という気分になっており、発端たる『アヤカシ』は放置の憂き目に……。

Pine soft『クローズアップ』のデモムービーが、少し聴覚魔境気味な件について。

 うわぁ……耳の奥……すごくあたたかいナリ。

 歌詞が狂っている電波ソングは数あれど、これほど単純に物凄く曲と歌が微妙な奴は直近の例では思いつかない。繰り返しエンドレスで再生していると、深く静かに鼓膜を穿孔される感覚が湧き上がる。ああ、これは聴いてはいけないものだ……なのに聴き続けてしまう己。懐かしくも末世的な、音楽のディストピアです。

ケロQ『陰と影』ページ更新

 前回更新が先々月。2ヶ月経って紹介キャラが一人増えただけとは、なんだか冗談みたいな更新速度だけど、この調子で来年中に発売へ漕ぎ着けてもらえるのかしら。それとも当方は新たなるオルタ(「超長期延期作」を指す隠語)のエンブリオを見守っちゃっているのだろうか。

・拍手レス、拍手レスってなんだ、振り返らないことさ。

 角屋がダサカッコいい……確かにな!
 あそこまで徹底的にいいとこなしだと逆にいとおしくなります。

 ルートは織江、陽愛、パム、最後にエイムと寄り道しながら行くのがお勧めですよ。
 了解。ではエイムを後回しで。アキノさんも攻略できるといいなぁ。

 それでそいつを、プリキュアの枠で放映するんだねっ!ねっ!>刺美
 「ナイフ刺されてもたっくん無茶苦茶タフだし」「お互い修羅場に差し掛かるたび〜、凄く!ヤバく!なるね〜」と朝から元気なOPが垂れ流しに。

 結局針山さん買っちゃったジャマイカ!・・・うむ、美味なり。・・・あれ、これ初めて買った電撃だ!
 成田良悟で電撃入りならもう怖いものは何もないですね。Good Luck!

 Ayakashi Colors、だと……!凄え見てみたい、やってみたいなんですがw
 人数足りないんでなぜか学ランまとった悪路王やセーラー服着た天狗が混じっていたり。


2005-11-15.

・半ドンの休暇が終わクロで潰れた焼津です、こんばんは。sfさんがカラーで出まくりなのがテラ嬉しい。

『AYAKASHI−アヤカシ−』、とりあえず一周。

 シナリオチャートの情報によれば迎えたのはパムトゥルーエンドの模様。全体で12時間くらいかかったでしょうか。長いといえば長いですが、思っていたほどでもなく。んー、いろいろと謎が山積みのままですし、もうちょっと粘ってくれるかと見てましたが。それは他のルートに期待ってところかな。

 とにかく演出の妙が光るストーリーでした。もちろん素材の使い回しは多いけど、ここぞという場面では使い回し不可能なCGさえ惜しげもなくバンバンと挟んでテンションを上げてくれる。イメージを刺激するパワーは下手なアニメよりも瑞々しく漲っている。話運びや主人公の言動には強引さ、幼稚さを拭い切れない箇所が多々あって所々でトーンダウンするものの、「見せる力」があったおかげで最後まで放り出すことなくプレーできた気がします。いろいろツッコミを入れつつも終盤は夢中になってやり込んでしまいました。

 とにかく、ひたすらに「分かりやすい」というのが本作の売りでしょう。テキストをじっくり読むまでもなく、だらーっと読み流しながら画面の動きを追っていくことで何が起こっていてどうなっていくのか、筋を見失うことはまずありません。異能系のアクションは長々と設定を垂れ流し、それを理解しないと展開が把握できないことがままありますけれど、この『アヤカシ』は良くも悪くも単純明快。絵的なインパクト、イメージの喚起力を主とした仕上がりになっていますから、「小難しい能力バトルは苦手」という人にも安心と言える。が、あくまで「きめ細かいから分かりやすい」のではなく「大雑把だから分かりやすい」ため、深く考えるとあれこれ引っ掛かります。アヤカシのパワーバランスからしていまいちはっきりしませんし。ノリと勢いが重視されている次第。

 ある意味、時代を逆行した内容です。マニアックであることの否定。細分化されているニーズのどれかに狭く深く訴えることよりも、あらゆるニーズの一部分に広く浅く掠っていくことを目的としているような造り。プレーヤーを特に選ばない、という形で逆説的にある種の貪欲さを発揮しているソフトと言えます。驚かせるのではなく、分からせる。予定調和だろうとお構いなし。ベタとか馬鹿一とかいった域を既に超え、アンチ・サプライズ精神を樹立するまでに至っているのではないかと予感させられます。差し当たってプレーを続行したい。

・川上稔の『終わりのクロニクル6(上・下)』

 2冊併せて1200ページ弱。ライトノベル的に見てどんどんと未曾有の厚ゾーンへ踏み込んでいっているシリーズの最新刊ズです。その比、同月刊行されたシャナの5倍。バリバリの差にもいい加減慣れてきたせいで違和感を覚えなくなりつつあることが怖くもあります。

 さて、内容に関しては「踊る会議」といったところでしょうか。いささか踊りすぎな気もしますが。これまでのシリーズに登場してきた主要キャラが一堂に会し、言葉と思いをぶつけ合わせる。その進行にシリアスとギャグが混在、というよりも「よくもここまで変態ばかり集めたな」と感心したくなる一種阿鼻叫喚の構図が描かれていて終わクロの本領発揮。もちろん会議ばかりでなく、派手なバトルシーンも上下に渡ってふんだんに盛り込まれていて、1000ページを超える分量でありながらいざ読み出してみるとほとんど長さを体感させません。本当にあっという間に面白おかしくイカレ楽しく時間が過ぎていったという印象。特に下巻の新宿戦、やりすぎにもほどがあるでしょう。作者の頭には火薬めいた奇想がぎゅうぎゅうに詰まっているに違いない。いつ吹っ飛んでも変じゃないな。

 2003年の6月に『1(上)』が出てから2年半。当時は400ページ足らずに収まっていたことが懐かしい。来月に出る7巻で“AHEAD”シリーズの第1弾である終わクロは完結となるわけですが、この調子で第2弾が来たらどうなるか、想像すると楽しくもあり恐ろしくもあり。いっそ『砂のクロニクル』みたいに三段組ハードカバーで出した方がいいんじゃないかなぁ、次回作。

 あ、それから久々に「剣神」熱田さんの見せ場があったことは素で嬉しかったです。今までは肝心なときにいなかったり、出てきてもレイパー呼ばわりされたりで散々な扱いの人でしたから。


2005-11-13.

『とある魔術の禁書目録7』を読むにこのシリーズは良くも悪くもマンネリ化の坂を駆け上がっているというか転げ落ちている気がしますが、質自体は割と高いラインで安定してきているので「もう別にいいや」と思っている焼津です、こんばんは。変化ばかりを求めぬ男がここに。

原潜さんマンガ

 なんか不思議なくらい馴染んでいる擬人化だ……。

『AYAKASHI−アヤカシ−』、プレー中。

 パムの株が急上昇中でございます。

 軟派男たちに鬱陶しく絡まれる → 主人公が駆け寄ってくると「悠!」と嬉しそうに抱きつく → が、主人公が他の女の名前を出したので不機嫌になり「あっちいけ!」と言い出す → 宥めようとする主人公の前に、形勢変化を見て取った軟派男たちが調子こいてカットイン → 「あっちいけっつってんだろ」と自信満々に突き飛ばす軟派男たち → 「悠になにすんの!」とブチギレ

 ラブコメ、特にバカップルものを嗜好する当方にとってこういうイベントは美味しすぎる。しつこいナンパから救った直後に痴話喧嘩ですよ。自分が遠ざけようとしたのに、他人がその意志を掬ったらカッとなるんですよ。おいおい、こいつは極上のバカップルだぜ、ってもんですよ。

 単なる学園ラブコメと化した『Ayakashi Colors』を思わず想像してしまいましたけど、ともあれ話のノリに目と耳が馴染んできたせいか、当初の頃に感じていた違和や粗はほとんど気にならなくなっている現状であります。頭が『アヤカシ』の世界に最適化しつつあると言いますか。慣れの力とは大したものです。この調子なら余計な気を回してあれこれ考えないでも普通に身を委ねて楽しめそうだ。


2005-11-11.

・シャナの新刊は話の切り方が極悪すぎ。こんばんは、電撃文庫の新刊を読み耽っている焼津です。

 『灼眼のシャナ』は2巻以降が外伝を除いて「2冊でワンセット」という構成になっているため、3巻、6巻、8巻、そして新刊の11巻に関しては「引き」をつくって終わる仕様になっています。その引きのどれもがマリみてで言う「レイニー止め」並みの威力を有している、と書けば高橋弥七郎の仕掛ける凶悪な焦らしぶりが伝わるでしょうか。もはや「引きの弥七郎」と称しても過言ではない。巧いっちゃ巧いですけど発揮されるのもなかなか困る悩ましい才能だ。

『AYAKASHI−アヤカシ−』、プレー中。

 やべえ、角屋という比較的どうでもいい位置付けというかいつの間にか消えていて現在生死不明のサブキャラが妙にツボになってきた。容姿の印象は「なんかパッとしない変身前のライダー」ってところなんですけれど、能力を使うのとは別に関係なさそうな変梃ポージングを決め、登場時のセリフが「テメーのことは殺してもいいって言われてるんだよォ」系のすごくザコっぽい内容、自信満々に叫んで呼び出すアヤカシがしょうけらと、ひたすらダサカッコいい。シナリオの面白さ、キャラクターの魅力に関してはまだ多少の難を感じるものの、迫力ある演出と已むことなきダサカッコ良さに関しては他のソフトに負ける気がしません。誉めるようで誉めてない、ってニュアンスで使う「ダサカッコいい」という言葉を、この『アヤカシ』へは肯定的な意味合いで掲げたくなります。以上。

 というか……時間が取れないせいでなかなか進みません。新刊読んでたりしたせいもありますが、現在やっと第5話に入ったところ。異能アクションとしてはお約束の展開が目白押しで、ベタなネタが嫌いじゃない当方は大いに楽しんでいます。やっぱり野郎キャラの存在感がいいなぁ。この話で登場する新キャラは敵ながら絵に描いたような俗物ぶりで、そのくせ結構粘ってくれる。使っているアヤカシもテラカワイス(*´Д`)ハァハァ。

・遅延気味の拍手レス。

 ランラン、ギルギル、アチャ男のつりキチバトルは最高です。
 TYPE-MOONの次回作には作中映画として「釣り三バカ日誌」が公開と予想。

 いつもデモンベイン小説楽しく読ませて貰ってます♪これからも頑張ってください♪
 ありがとうございます、今後も是非頑張ったり頑張らなかったりします。

 「嫉妬の力で変身するヤキモチ魔法少女」すばらしい。是非作品化を望むね。
 タイトルは『まじかるジェラシー刺美 〜たっくん殺してあたしも死ぬッ〜』とかで。第一話「早すぎた埋葬」。PTAをも恐れぬ鉄の精神を持った制作委員会が登場することを期待。


2005-11-09.

・早いところでも電撃文庫新刊の入荷は明日以降。それが地方都市クオリティ。せっかく寄る機会のできた隣町で終わクロ等の新刊を捕獲できず無念を噛み締める焼津です、こんばんは。『ネコソギラジカル(下)』はなんとか売ってるところを見つけて即買い。

『AYAKASHI−アヤカシ−』、プレー中。

 おお、三話目の半ばから突然グンと面白くなった。徐々に忍び寄る怪異、少しずつ見えてくる敵の能力、そして夜の校舎を舞台にしたバトル。この手の学園伝奇アクションに求められる要件をひと通りこなしてくれて一気に熱くなった次第です。いやあ、これこれ、こういうのが見たかったんだなぁ。やっぱ主人公は薄暗い廊下で敵に追い詰められてくれないと。日常を侵蝕していく非日常の不協和音が絶妙でした。幕切れ付近はゴリ押し臭くてちょっぴり残念だったりもしましたが。

 とにかくこのソフトは「絵で魅せる」という演出法を徹底しており、映像での情報を重視させるせいかテキストは詳細を削ぎ落とされてかなりシンプルな代物になっています。ウィンドウでも最大3行までしか表示されない。くどいところがほとんどない分、読みやすいことは確か。当方は濃厚でねちっこい語り口の文章が好みであるため、あっさりしすぎてるように感じて物足らなくはあります。しかし反面、プレー時の神経が文字ではなくCGに向かうことから、物語の放つイメージをダイレクトに受けて没頭してしまう効果もある。その点では見事としか言いようがない。

 視覚に頼る、というやり口は一見安易なようでも、徹底するとなればおいそれと遂行できるものではありません。やはり低いラインで妥協したくなるのが人情。どことなく垢抜けない雰囲気のせいで「カッコイイ」というより「ダサカッコイイ」と呼びたくなるシーンもありましたが、妥協なしで立て続けにダイナミックな展開が繰り広げられ、凝った演出の目白押しとなれば揶揄する暇もなくのめり込んでしまう。高みを目指せるかどうかは知らないが少なくとも低いところに留まりたくなかった、と言わんばかりの熱意に圧倒されました。

 あくまでシナリオ単体で見れば全面的に擁護できる内容とは請け合いかねるものの、慣れてしまえば「シナリオがどうの」「テキストがどうの」といった枠を超えて夢中になれる力場が発生していて、つまりどのへんでプレーを中断してセーブするか迷う場面も増えてきました。「今日はちょっとだけ」と思ってもついうっかり睡眠時間を削ってやっちゃいます。もうアヤカシがたまりませんよ。具体的には天狗とか。イワナとか。

・でも明日は『アヤカシ』を一時中断してネコソギを読み耽る予定。徐々に他の読書も再開していきたい。


2005-11-07.

・エロゲーに夢中ですっかり読書の滞っている焼津です、こんばんは。日曜は古本屋で廉売されていた『アーサー王宮廷のコネチカット・ヤンキー』を購入。つい買ってしまった理由は言わずもがな。

『AYAKASHI−アヤカシ−』、プレー開始。

 第一話は体験版の範囲なのですっ飛ばし、第二話からスタート。現在第三話の途中。

 「アヤカシはアヤカシ使いだけに見える」「アヤカシはアヤカシでしか倒せない」という設定から容易に察せられる通り、JOJOにおけるスタンドみたいな謎存在「アヤカシ」を巡って壮絶なバトルを繰り広げる少年漫画ライク・アクションです。単に宿主の益を為すのではなく、代償として精神や肉体を食い潰されていくあたりはJOJOというより『ムシウタ』のノリかな。さすが18禁だけあって「人体真っ二つ」みたいな情け容赦ない残酷描写がチラホラ入っています。エロも陵辱が基調。というかサイ娘ゴスロリ逆レイプ。「犯った後は雌蟷螂の如く殺っちゃうよ」みたいな。いい感じの切れ具合だ。

 豊富なグラフィックを駆使した演出は、最近やった『Fate/hollow ataraxia』と比べてアニメ系統の色調が強い。塗りの感触はもちろん、構図の一つをとってもADVというよりOVAってムード。制作期間が2年に及ぶという触れ込みも伊達じゃなく、かなり凝っています。正直言ってシナリオにはあまり期待しておらず、この演出に惹かれて購入したようなものです。なので今のところは満足。クリーチャーデザインには微妙にうるさい当方としてもアヤカシたちの風貌はなかなか良さげ。妖怪っぽさこそほとんどないものの、有機と無機の狭間にある何とも形容しがたい得体の知れなさがひどく心をくすぐる。

 さて、「期待していない」と書いただけあってシナリオの実情にも失望はしておりません。まだ判断するのは早計でしょうし……ただ、物事を提示する手順にいまひとつスムーズな流れを欠いており、ストーリーテリングの面からすると厳しい予感。接合が不自然なせいで、日常と非日常の温度差がスリリングなものとしてではなく違和感の残るものとして意識される。コメディとシリアスの配分が中途半端でどっちつかずかなぁ、と。長期的に見れば慣れの効果でどうにかなるところですかね。

 あと、肝心のアヤカシバトルにしても「知力を尽くす」みたいな頭脳戦じゃなくて単純な力勝負になっているところも不満であり不安。この調子だとひたすらアヤカシの力がインフレしていくだけになりかねない。対人規模から建築物を一撃で破壊する規模、一瞬で街を崩壊させる規模、国を滅ぼす規模、星を砕く規模、ビッグバンを起こす規模へと……わざと誇張してみましたが、デモからして街規模までは行くんじゃないでしょうか。そこまで派手だといっそ気持ちよくなる。そういうことで、インフレーションの度合いについては表面上顔を顰めつつ密かに期待する項目だったりします。

 現時点で気になってるヒロインは性格破綻者のパムですが、それはさておき何気に男キャラが濃いですねこのゲーム。容姿も性格も。まあ濃いとはいえ、男前とか漢の鑑と呼ぶに足る人物は未登場。平馬が辛うじて有望株か。今後に注目したい。

『Y十M』も出たことだしと、長らく放置していた『バジリスク』全5巻を一気読み。

 愛する者よ、死に候え。

 いきなり爺と婆の殺し愛で大ウケしました。

 せがわまさきの描く妖しい画と風太郎の奇想が合致した疾走感溢れるアクション。序盤から終盤まで駆け足気味の展開で、原作を読んでいない当方は情報を把握しかねてたまにあるキャラを別の奴と間違ったりもしました。大人数がワッと出てきて殺し合い、仮借なくバンバンと死ぬ構成は爽快ながら、ちと混乱させられることもしばしば。何度かページバックして読み返すことでやっと話が頭に入ってきた次第。想い合う甲賀の男と伊賀の娘、というシチュエーションから最初は弦之介と朧の殺し愛を期待したけれど、読み進めるうちにいつしかそっと弦之介を慕う陽炎の方に注意が逸れていった。陽炎(*´Д`)ハァハァ。ファム・ファタールと見せかけて報われぬ美女、その薄幸ぶりがえも言われぬエロスを漂わせています。尺はもっと長くても良かった気がしますが、変にダレるよりはこれくらいにまとまっていた方がいいのかも。

 壮絶な忍法戦もさることながら、恋の仇花が咲き乱れては散り狂う殺伐たるロマンスが華やかで乙。もう一度全体像をしっかり掴むためにも原作は読んでおこうと思います。そして『Y十M』が更に楽しみになってきました。


2005-11-05.

・「嫉妬の力で変身するヤキモチ魔法少女」というネタをなんとなく思いつく。ヒロイン・刺美の魔力を覚醒させるため「仕方なく」他の子と仲良くしてわざとらしくイチャついてみせる主人公。フェアリー謹製マジカル出刃包丁を逆手持ちし、「泥棒猫がァッッッ! あたしのたっくんに近づくんじぇねェェッッ!!」と叫びつつ天辺まで高まった嫉妬のマグマで悪魔を一撃粉砕する刺美。アクションシーンを3秒で終わらせ、話の大部分を刃傷沙汰込みの修羅場で埋め尽くし、少しずつ壊れていくヒロインとその般若性を余すところなく活写する朝のアニメは大きなお友達の心胆を寒からしめるとともに小さな子たちへ昼メロ的属性を刷り込むことでしょう。益体もない妄想が大好きな焼津です、こんばんは。

『Fate/hollow ataraxia』、コンプリート。

 お祭り騒ぎのような一本でした。賑やかで楽しくて、終わった後が寂しくなることすら見越してそれでもなお騒いでいる。タイトルとなっている「hollow ataraxia」の他にも楽しめる番外編があったりと、ファンディスクとしては一種理想の形態でしょう。ただ全体的にごちゃ混ぜ感が強く、また奈須きのこ以外のライターが加わったことも影響してか雰囲気が二次創作っぽくなってる面もあり、純粋に「Fateの続編」を期待すれば肩透かしな部分もあるかもしれない。「いるのがおかしいキャラ」が平然と出てくる仕様といい、敵対していた者同士が馴れ合っている関係といい。そこさえ抵抗を覚えなけりゃ後は楽しむ一方って寸法。

 シナリオの方は充分堪能して満悦しましたが、収録されているミニゲームのうち花札はヤバかったです。いろんな意味で。当方は今回初めて花札のルールを知ったド素人であり、しかもこの手のゲームは感覚に頼ってプレーする癖があるからなかなか勝てず、ムキになってやり込んでいたら5時間も経過していたという恐ろしい体験をしてしまった仕儀。熱くなりすぎました。花札って結構中毒性が高い代物だったんですね。札の違いがはっきり分かってくる頃になると中断するタイミングの難しさに悩まされました。プレー時間は累計すると既に10時間近く。まだノーマルモードでクリアできてないキャラがいますけど、この調子じゃ下手すると本編以上に時間を費やしてしまいかねないので封印することにします。

 花札にオマケで付いているストーリーは肩の力が抜けた若干緩めのギャグ調で、しかし微妙に燃えるところもあったりする。前作では人気投票10位以内に食い込むほどの人気を見せたランサーが、例の二人に弄ばれてすっかりいじられキャラになってる姿は笑った。出番が少なく人気もいまいち不振で、「ワカメ」という呼称がしっくり馴染んでしまう慎二は男のくせにパンチラ方面へ走って色物ザコ属性が強まっている。壊れるとこまで壊れてしまったせいで逆に親しみを覚えるくらいだ。桜戦での幕間劇を見た瞬間、「あれ、Fateって実はこいつが主人公になっても結構面白くないか?」という気の迷いまで生じてきました。

 ともあれコストパフォーマンスの高さに満足。基本的な構成は『歌月十夜』の「黄昏草月」(平和な日々+コア・シナリオ)と「夢十夜」(サブキャラ等の番外編詰め合わせ)を適度に混ぜ合わした感じで、本来なら本編と分けて語られるはずのサーヴァント過去エピソードが本編の中に潜んでいるあたりは個人的にツボでした。何せ「こんなところでこのエピソードが読めるのか」と嬉しいサプライズが味わえますから。話の面白さには切り出し方の巧拙も関わってくると思います。本編自体は『Fate/stay night』のシナリオと比べてやや見劣りするところがあるものの、「前作の補完」という視点では文句がなかった。コメディムード濃厚になったせいでキャラクターが満遍なく面白さん化しており、殺伐とした雰囲気は薄め。けれど盛り上がるところはちゃんと押さえてるって印象です。

 この調子でFateシリーズを引き続き出してほしい気もしますが、これからまた1年以上待たされるかと思うと心中やや複雑。そろそろ新しい切り口を見たい欲もあります。今後のTYPE-MOONはあくまでFateを中心とした奈須ワールド一本槍で行くのか、それとも新規採用のライターを使って複数ラインを敷きまったく違う冒険に踏み出してみるのか。予想を試みるだけでドキワクします。


2005-11-03.

・11月になりましたが、下旬刊行予定だった『BLOODLINK5』(山下卓)が嫌な予想通り延期して心境「('A`)」状態の焼津です、こんばんは。4巻と外伝2巻が短いスパンで出たからやっと復調してきたかと思えばやはりぐだぐだモードへ戻っていきましたか。『流行り神』のアンソロジーに載っていたブラリン外伝を読んで一時は渇きが凌げましたけど、もうそろそろ我慢が。

『Fate/hollow ataraxia』、プレー中。

 ファンディスクとはいえ本編の半分にまで達するシナリオ量は伊達じゃなく、まだ終わりません。主筋だけを選んでいけばもっと早く終わっているんでしょうけれど、あちこちに転がっている脇エピソードについふらふらと興味を惹かれてなかなか進まない。はっきり言ってしまうと一つ一つのエピソードは他愛もないものが多く、一部の強烈なネタを除けばさして記憶に残りませんし、個々の繋がりが弱いせいで実際覚え留めておくのが難しい。イベントが自由に選択できる分、ストーリーとしては一貫していないんです。だから時間をかけてやり込んでも、振り返ってみると頭の中に残留している事柄は思ったよりも少なかったりします。

 必ずしもそれが悪いわけではなく、むしろ個人的には肯定したいポイントです。ほとんど物量作戦といっていい態勢ですが、雑多なエピソードが入り混じっているおかげで「どこがどう繋がっていて何から何が飛び出すのか分からない」といった迷路感覚というかダンジョンでミミックに襲われるようなスリルとサスペンスが味わえる。そう、要は闇鍋とかそっち系のノリです、これ。混濁すればするほどえも言われぬ魅力が増していく世界。正にカオス・イズ・ビューティフル。記憶に残るものばかりが素晴らしいとは限りません。

 とにかく予想外のイベント、本編では挿入する余地もなかったエピソードが巧妙に仕掛けられていて、それとは知らぬうちについつい引き込まれてしまう。ギャグとシリアスがたまにシームレス化しているあたりはおふざけが過ぎると思う一方、「いいぞ、もっとやれ」と野次を飛ばしたくなる気持ちもあり。前作は至って王道路線でしたけど、今回のホロウでは素敵なくらい「頭がおかしい」と確信できる場面が多々あって素面ではいられませぬ。そろそろシナリオの攻略率も9割超えてきたみたいだし、次回更新時にはコンプできるかな。

・今月の主な購買予定は以下の通り。

(本)

 『武装錬金(9)』/和月伸宏(集英社)
 『魔人探偵脳噛ネウロ(3)』/松井優征(集英社)
 『スティール・ボール・ラン(6)』/荒木飛呂彦(集英社)
 『タカヤ−閃武学園激闘伝−(1)』/坂本裕次郎(集英社)
 『ネコソギラジカル(下)』/西尾維新(講談社)
 『餓狼伝(17)』/板垣恵介、夢枕獏(講談社)
 『灼眼のシャナXI』/高橋弥七郎(メディアワークス)
 『とある魔術の禁書目録7』/鎌池和馬(メディアワークス)
 『Hyper Hybrid Organization 00-03』/高畑京一郎(メディアワークス)
 『終わりのクロニクル6(上・下)』/川上稔(メディアワークス)
 『シグルイ(5)』/山口貴由(秋田書店)
 『マグナ・スペクトラ』/秋田みやび(富士見書房)
 『殺×愛1』/風見周(富士見書房)
 『BLACK BLOOD BROTHERS 4』/あざの耕平(富士見書房)
 『ユーベルブラット(2)』/塩野干支郎次(スクウェア・エニックス)
 『ゼロの使い魔6』/ヤマグチノボル(メディアファクトリー)
 『CYNTHIA THE MISSION(2)』/高遠るい(一迅社)
 『博士の愛した数式』/小川洋子(新潮文庫)
 『4TEEN』/石田衣良(新潮文庫)
 『七月の暗殺者(上・下)』/ゴードン・スティーヴンズ(東京創元社)

 もはや圧倒的にライトノベルばっかり。ハードカバー本の1/3程度の価格で買えるのはやはり手軽に思える。ジャンプコミックスは先月に欲しいのなかった反動か4冊も。武装、ネウロ、STBは安定株。タカヤは例の「あててんのよ」で話題になってたから試しに読んでみようかと。ネコソギは遂に出る最終巻。当初の予定から1年もずれてしまったせいか若干熱は冷めましたが期待作は期待作。餓狼伝は実のところ最近になって読み出しました。輝ちゃん(*´Д`)ハァハァ。電撃の新刊はやはり終わクロの存在感が並みじゃないですね。シャナはようやく本編再開。翻ってH2Oは2年経過した今も本編が止まったまま。泣ける。禁書目録は前巻で「偶数巻はハズレ」のジンクスを破ったし、低空飛行状態から脱してきたかな。シグルイは今年中に5巻が拝めるとは思ってなかった分、大感激。また虎眼先生に会える。

 ファンタジアの新刊は久々に買うものが多い。マグナ〜は連載時の評判が良かったからチェック。きるらぶはこの前に呼んだ0巻が期待を煽るものだったので迷わず買います。BBB、なんとか2巻まで読み進めましたが、このペースじゃ4巻は積読でしょうね。ユーベルはダーク色の入った復讐ファンタジー。青年誌的な雰囲気もミックスされていて好み。ゼロの使い魔、キャラで読ませるタイプのファンタジーとしては好印象。ところでMFの新刊ラインナップに入ってた『神様家族7』は延期っぽい? 桑島は最近出してないですね。待ちに待った第2巻であるシンシア・ザ・ミッション、婦女子の活躍する格闘ものとしては相当ガチなので楽しみなあまり変な汁出そう。

 博士と4TEENはベストセラーの文庫化、内容に興味があるので押さえとこうかと。新潮の新刊は他に『模倣犯』や『本格小説』の文庫版があり。『本格小説』は『嵐が丘』を下敷きにした恋愛小説ですが、一切色気を抜いたタイトルに相応しい力作なので未読の方には是非ともオススメしたいです。最後に『七月の暗殺者』、作者は当サイトのURL名である『カーラのゲーム』を書いた人。邦訳はカーラ以外だと『テロルの嵐』しか出ていませんが、全部の著作を読みたくてたまらない冒険作家です。

(ゲーム)

 『智代アフター』(KEY)
 『車輪の国、向日葵の少女』(あかべえそふとつぅ)
 『ひめしょ!』(XANADU)

 期待作であった『ユメミルクスリ』が延期したおかげで良くも悪くもすんなり決まったこの3本。『CLANNAD』『Planetarian』もまだやってないので自分が本当に鍵好きなのかどうかもよく分からなくなってきた今日この頃ですが、新作は捕捉しておきたいなぁ、という気持ちが漠然と湧きますので『智代アフター』は確保。『車輪の国〜』、前作を巡る経緯からブランドとしてのあかべぇへの信頼が持てないものの、ライターである「るーすぼーい」の紡ぐテキストが凄く好みなため、回避できません。前のめりに行きます。ひめしょ!は体験版が思ったよりも面白かったせいで期待が膨らんでしまった。アクが強いのにキレが良い作風、ツボすぎる。

 他にも『でふこん☆わん』『Nursery Rhyme』『School Festa』と体験版が好感触だったソフトは多く、保険は充実。どう転んでも何本か買う月になるでしょう。全部逃げたらアレですが。いっそ笑うしかありませんが。


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