2005年7月分


・本
 『雪月夜』/馳星周(双葉社)
 『とある魔術の禁書目録6』/鎌池和馬(メディアワークス)
 『空ノ鐘の響く惑星で7』/渡瀬草一郎(メディアワークス)
 『死神の精度』/伊坂幸太郎(文藝春秋)
 『CARNIVAL』/瀬戸口廉也(キルタイムコミュニケーション)

・ゲーム
 『塵骸魔京』(ニトロプラス)
 『あやかしびと』(propeller)
 『CARNIVAL』(S.M.L)


2005-07-31.

『アヤカシ』とか『つよきす』とか、気になるソフトの体験版が仕掛ける誘惑に打ち勝って『SWAN SONG』に着手した焼津です、こんばんは。どうしてこう一度にまとめて注目作が押し寄せて来るかなぁ。

・で、プレー開始いたしました『SWAN SONG』

 クリスマス・イヴ、もうすぐ日付が25日へ変わろうとしている深夜に発生した大地震。強烈な揺れによって街の建造物はあらかた破壊し尽くされた。折りしも雪の降りが強く、自宅から必要な物資を鞄に詰めて指定避難場所へ向かっていた尼子司は、一夜を凌ぐために途中で見つけたまだ崩れていない廃教会に入り込む。瓦礫に押し潰されて死を間近にした女性から託された、自閉症の少女・あろえ。事態の割に明るい調子を崩さない不思議な男、田能村。揃って同じ大学に通っていたという三人の男女、柚香・雲雀・拓馬。彼ら五人とともに、壊滅的な状況に陥った街で生き抜こうとするが……。

 はじまってしばらくは淡々とした調子で進行し、テキスト量も多いので正直言って少しだるい。「、」や「。」など句読点で文章が一瞬止まる方式も馴染みがないせいで気持悪かったです。そのだるさや気持ち悪さが抜けてくるのは1時間ちょい後あたり。以降、次第に話へと引き込まれていくことを自覚しました。雰囲気はなんとなくですが映画に近い。テキスト量が多い割に描写や動作が淡々としていてクセがないため、頭の中に映る情景が鮮明でかなり映像的です。『CARNIVAL』とはまた違ったノリですけれど、面白くなってまいりました。

 あらすじからして『ドラゴンヘッド』『死都日本』みたいなパニック・サスペンスを連想するものの、サスペンス要素は主眼となっていません。主人公の司がやや無感動というか、一見しておとなしいように見えてどうも特殊なところのある人物になっているせいで、語り口にもあまり緊迫感を覚えない。理解を超える災害に手こまねき、一応はそれなりの均衡と平和を保っているコミュニティで力を合わせて生活する──ただそれだけの話といえます。今のところ。

 視点がミクロであり、国家的なレベルで災害の規模を見ていく気配がないのは喩えで出した二作でいうと『ドラゴンヘッド』のノリ。あれもあれで好きですが、マクロ視点の『死都日本』とか『復活の地』が好物の当方としては「俯瞰的に見た『SWAN SONG』の世界」みたいな展開も期待したいところだけど……どうやら群像劇としてのストーリーに力点を置く気配があるため、それは叶えられそうにない。残念。差し当たって「その時、人は絶望に試される」というキャッチコピーが虚仮威しではないことを一心に祈って続けるとします。


2005-07-29.

・10月に古橋秀之初の短編集が出るとの報せに欣喜雀躍している焼津です、こんばんは。『ブラッドジャケット』『ブライトライツ・ホーリーランド』は今や枕頭の書。ちなみに『ブラックロッド』は面白いけどなぜかあまり思い入れがない。

『CARNIVAL』、終わった直後は平穏な余韻が漂いましたが、終わってしばらくしてからジワジワと利いてきました。ふと時間があるときにポツポツ本編をやり直してみたり、小説版を読み返してみたり。時間差で衝撃が染み渡ってくる感じです。コンプ直後は「ボリューム不足」と思ったものの、テーマをブレさせないためにはあれくらいのサイズがちょうど良かったのかも、と思い直す次第。ゲームの方で主人公が最後に放った一文、あの意志が小説版でも貫かれていることにようやく気づきましたし。なんだかこの作品、妙に引きずるなぁ。

・そして『SWAN SONG』、無事届いたのでプレー開始……しようと思ってたけど、うっかりやり始めた『グリーングリーン3』の体験版が面白くて、まだインストールすらしていなかったことに今気づきました。それにしても双葉ってこんな声だったかなぁ。発売が4年前で、当方がプレーしたのは2年前だから記憶も曖昧。三バカは一発で同定できましたけどね。冒頭から狂った展開が炸裂していてよござんす。三バカのバカっぷりは相変わらずだ。ただ、本編そのものはラブコメ要素がいまひとつ煮え切らない印象も。うーん。

 とりあえずスワソンはインストだけ済ませておきます。本格的なプレーは明日以降に。

・む。propellerのサイトで『あやかしびと』の人気投票が開始してる。早速行かねば。


2005-07-27.

・「ご主人」と打とうして「五囚人」と出してしまった焼津です、こんばんは。どっかの最凶ヘタレ死刑囚か。

エドワード・バンカー、死去

 エド・マクベイン、A・J・クィネルと、今月は知っている海外ミステリ作家の訃報が相次いで、なんだか切ない気分に陥ります。こういうのって続くときは不思議と続くもんですね……。

・瀬戸口廉也の『CARNIVAL』読了。

 『CARNIVAL』のノベライズであり、後日談。本編ではあまり出番のなかった「ある人物」を主人公に据え、事件から7年後の世界を綴っていく。原作を手掛けたシナリオライターがノベライズも担当するというのはままあることですが、それでもノベライズ業界全体で見ると希少種。更に後日談ともなれば正統の「続編」としても読めるわけで、ゲーム本編に惚れた当方としては見逃す手は皆無。

 驚くことに、というか何というか、元のゲームをやっていれば想像はつくことですけど、18禁ゲームのノベライズ作品のくせしてエロ要素はほとんどない。もっと言えば、まともな濡れ場なんて一つもありません。「まともな濡れ場」の定義をするのは面倒なのでしませんが、とりあえず射精シーンがこっそりオナニーしたときだけという本作に当てはまらないのは確かかと。あくまで原作の雰囲気そのまんま、暗いけれど変に爽やかなノリで送る青春文学めいたストーリーがキモとなっている。本編の内容を再検証する形式ですから未プレーの人でもそれなりに楽しめるでしょうけれど、やはりあの終わり方に満足し切れずモヤモヤした気分の残留する原作ファンが読んでナンボの話。主人公は交代しているものの、主要キャラは軒並み出てきますのでいろいろと楽しいです。

 表面的なところでは「ぬきぬき毛沢東」というネタに激しく笑ったりしつつ、どうにも気になっていた「あれからのこと」を目撃し、わだかまっていたモヤモヤ感が晴れていくのを覚えました。「幸せと苦しみ」という、かなり普遍的なテーマをいささか捻りを利かせた変化球で投げつけていますが、最終的にはごく真っ当な青春ストーリーに仕上がっています。良くも悪くも、重たい18禁ゲーの後日談とは思えない清々しい読後感。言い方は陳腐にせよ、まさしく「真のエンディング」といった趣です。尺が短いせいか少し御都合的なところもありましたが、それでも原作に惚れた身としては「読んで良かった」と率直に思える一冊でした。

・ところでそんな瀬戸口廉也と川原誠がふたたびタッグを組んだ『SWAN SONG』、カウントダウンボイスに続き、テックジャイアンに付いた特別編をHTMLに直したショートストーリーを公開するなど発売前の運動を頑張っています。気のせいかあまり話題になっている様子はありませんが。SSはプレストーリーとして堪能できたのでこのまま本編にも期待。


2005-07-25.

・そろそろ『あやかしびと』のSSも出始めているだろう、と当て込んで意気揚々「あやかしびと SS」でぐぐってみたらTOPにうちが引っ掛かる不思議。こんばんは、焼津です。アクセス解析を見ると他に検索して訪れている方もおられるので、恐らくガッカリされたと思われます。「刀子さん(*´Д`)ハァハァ、トーちん(*´Д`)ハァハァ」と昂ぶっていた当方自身もガッカリ。一応、その後でSSは発見できましたからヨシとしますけど。

S.M.Lの『CARNIVAL』、コンプリート。

 あらら、思ったよりあっさり終わっちゃった。これ、企画としては失敗作なんじゃないかなぁ。凄く面白かったソフトだけど、正直言って「出てくる必要がないんじゃ?」とさえ思えるほど絡め方の弱いキャラがいるし、それなりに筋へ絡んでくるキャラの扱いにしても中途半端な印象を受ける。主人公とメインヒロインの関係を掘り下げ丹念に描いている点は申し分ないにしても、その他のキャラクターの魅力についてはかなりダメっぽい。あくまで物語重視の路線を選んでいるシナリオなんで、極論すれば主人公とメインヒロイン以外のグラフィックやボイスはなくても良かったくらい。

 また、物語重視とは言ってもサスペンスやミステリみたいなサプライズの要素は重視されておらず、俗に「カタルシス」と形容される類の意匠も施されていないから、ガツンとハンマーで殴られるみたいな衝撃も味わえない。冗長性に満ちた世界の中であるべきものがあるべきところへ向かうという納得のいく「流れ」が用意されており、その「流れ」の緩やかで滑らかな肌触りを堪能するのが本作の醍醐味であって、「読んでビックリ」的な面白さとは対角の存在となっています。尖った雰囲気なのは表面だけ。3部構成になっている割に視点が変わるだけで物語の大まかな「流れ」は変わらないものの、読み進めるごとに『CARNIVAL』の世界──登場人物の内面に抱えられている世界観が展開されていき、最初はうまく飲み込むことのできなかったところが次第に咀嚼できるようになる気持ちよさはあります。それにしてもエロゲーをやっていて『永遠の仔』『疾走』を彷彿するとは思わなかったなぁ。テーマが重い。

 どうしても話に謎を求めてしまいがちな当方ですが、視点人物が変わるごとに新しい色が上塗りされていくような感覚が鮮やかで、やっててだんだん謎とかそういうのはどうでも良くなってきました。作劇法の観点すらすれば多視点構造を活かしたシナリオとも言えず、出てくるだけ出てきて大して見せ場のなかったサブヒロインに関しては疑問に思うし、結局小さなスケールでまとまってしまってボリューム不足になっていることも意に染まない。けれど、やり始めた当初はあまり好感の持てなかった主人公と、掴み所が乏しくて魅力を感じなかったヒロインに、ゆっくりとした足取りでしかし確かな手応えを与えていくテキストには惚れた。お互いが惹かれ合っていくことをここまで実感できたエロゲーは稀有かもしれない。グラフィックやサウンドも、適切な雰囲気を醸成する役をキチンと担っている。ボイスは、まあ、少し演技力の不足を嘆かされるトコがありましたが。

 うん、これならノベライズ版の方も確保しておいて正解だったかな。後日談ということで、まだちょっとモヤモヤした気分が残っている当方にはうってつけのようです。発売の迫る『SWAN SONG』にも期待が持ててきました。ただ今度はもっとボリュームがあるといいんですけどね。

 ちなみに──このゲーム、シナリオ3が終わった後にシナリオ1をやり直すと、終盤付近でちょっとした隠しシナリオが明かされる仕組みになっています。量は大したことないですが、ようやくこれで本編が「閉じた」と思える内容なので必見。


2005-07-22.

・一旦更新した後で気づきましたが、ニトロプラスのOHPに新作『刃鳴散らす』の特設ページができてます。コラムと予告ムービー。コラムは掌編と雑記を併せており、新ライターの雰囲気を大まかに伝えるものとなっています。今年に入ってなんとなくファンからの期待と評価が低調化してきたニトロですが、個人的には相変わらず肌に合うブランドなので9月を楽しみに待っております。

S.M.Lの『CARNIVAL』、シナリオ2終了。

 ……なるほど、こう来るのか。章タイトル「MONTE-CRISTO」(巌窟王)が表示された時点でゾクッと肌が粟立ちました。やばい、この一瞬で『CARNIVAL』というソフトに惚れてしまったのかもしれない。正直言って1話目は「いいところもあるけれど」な内容でなんとも評価に困りましたが、いやはや俄然面白くなってまいりましたよ、ってな具合に盛り上げつつシナリオ1の空白を埋めて、さあこれから物語はどうなるのか、とシナリオ3へ移行したところ──更に惚れ直しました。

 少しネタバレになりますがこのゲーム、多視点構造になっていてシナリオごとに視点人物が変わる仕組みなんです。シナリオ1ではよく分からないままに逮捕され、成り行きで脱走して逃亡者となった少年が「そもそも自分が捕まった事件は何だったのか」を探ることになります。大まかな謎に関しては一応このシナリオ内で明かされて決着しますが、いくつか不可解な空白が残るので、それを埋めていくように次のシナリオ、そのまた次のシナリオをプレーしていく塩梅。

 今のところ、そんなにサプライズ要素はなく、別視点に移行することで事件に秘められた真相が見えてくるといったことはない。そもそも事件自体が浅いので、掘り下げるものがこれといってありません。事件に至るまでの経緯、少年や少女を取り巻く環境といった「事件の要因」を描くのが主眼であり、事件そのものを解きほぐすミステリ的な楽しみは欠く。真相を暴くというよりもむしろ、補完を重ねることで物語に厚みを与えるという狙いで新しいシナリオが展開していきます。つまり本編はシナリオ1の時点で完結しており、シナリオ2以降はその続きじゃなくて、外伝・番外編・補足に当たるわけです。『CARNIVAL』の本編そのものが、あらかじめ外伝によって補完されることを前提としてつくられている。必要なことを一気に語り尽くそうとせず、語るべきことを分散させることで少しずつ読み手に『CARNIVAL』の世界を馴染ませていく。ケレン味こそないものの構成としては過不足がなく、優れています。

 厚みが増していくおかげでシナリオ1よりもシナリオ2、シナリオ2よりもシナリオ3の方が面白く感じられます。当たり前といえば当たり前。しかし、シナリオが進むごとに作風もアクが抜けてサラリとした読み口になり、素直に楽しめる味わいが深まっていくので、「最初からこの面白さで攻めてくれればなぁ」と思わないでもない。改めて読み返してみると話の取っ掛かりとなるシナリオ1が、なんとも取っ付きにくい。もうちょっと間口を広くしても良かったのでは。

 とまれかくまれ、このライター(瀬戸口廉也)のテキストセンスには首ったけ。ノベライズ版の『CARNIVAL』も近所の書店で発見済ですから、今度寄った際に確保しておこうと思います。

・伊坂幸太郎の『死神の精度』読了。

 表題作含む6編を収録した連作短編集。改めて著書のリストを見ると、『グラスホッパー』以来、ほぼ1年ぶりの新刊なんですよね。そんなに筆の遅くない印象がありましたので、結構久々だったのだなと少し驚いたり。内容は人間の姿に擬装した死神が、調査対象となる人間に接触しながら淡々と日々を過ごす様を描いたもの。調査の期間は一週間。調査といっても主人公はさして積極的な行動を取らず、対象といくらか言葉を交わした後、一週間のどこかで「可」ないし「見送り」の報告を送るだけ。「可」を出された人間は8日目に突発的な出来事によって死亡する。それを近くで見届ければ、仕事は終了──といった流れ。

 見守る、見届ける、看取る。死神モノのお約束というのは恐怖の象徴である「死神」を心優しかったり気さくだったり気分屋だったり分析家だったりと妙に人間臭く書いてみる、あるいは天使との対称性を見せるようにイノセンスを強調してみるなど、とにかくありきたりな「残酷で無慈悲」といった像から遠ざかろうとすることです。残酷で無慈悲な死神なんて、わざわざキャラクターにせずともただ単に「死の影」として描けばそれで済む話なんですから。

 さて、この本に出てくる死神はどうかと言えば、人間臭くもなく、イノセンスたっぷりでもなく、かといって残酷で無慈悲なわけでもない。会社員的に「仕事は仕事」と割り切っている。冒頭で「床屋は切った髪を気にしない」ことを語って比喩している通り、人間の死に対して無関心です。なら「可」とか「見送り」の判断は何を基準に下すのかと言えば、「原則的に『可』を下す」という意識が主人公のみならず死神全体に行き届いているので、基準はあってないようなものだったりする。そんな、ベルトコンベアーを流れる弁当箱へ具材を詰めるように関わった人間の死を決めていく主人公のストーリーなんて面白いのかと疑問も抱きたくなりますが、実は案外面白い。

 帯のどこにも「ミステリ」とは書いてありませんけれどミステリに近い意匠を持った作品で、一つ一つに趣向が凝らされています。本来ならもっとショッキングに書いていいようなことでも、人の死には無関心な死神が語れば途端に素っ気なくなり、生み出されたギャップでコミカルな雰囲気すら漂う……その妙もさることながら、淡々と事態にメスを入れていくことで過度に盛り上がったり緊迫したりすることなく話を展開するスタイルが謎解きを志向するミステリの姿勢とマッチする不思議。飄々とした語り口が心地良い。元よりオフビートの小説を得意とする作者がいっそう力を抜いたことで、ある種一つの境地に達した観があります。読めば読むほど、力の抜き具合が磨き上げられていく。変な誉め方ですが、実際そんな感じ。

 にしても、「帯に『ミステリ』と書くと売れなくなる」というジンクスが出版界に流行っているって噂は本当なのかなぁ。隅々まで眺めてもちっとも書いてませんよ、これ。一応表題作は日本推理作家協会賞を受賞しているのに、そのことすら堂々と謳っていない。この調子だと伊坂幸太郎も連城三紀彦みたいにミステリ作家であることを認められないような流れになるのではないかと不安。まあそれはともかく、人情話の道筋からコースアウトすることで逆説的に人情を描いているこの死神シリーズ、できれば続編も読みたいところです。


2005-07-20.

・発売時期どころかブランドさえ未定ながら、Will系列で田中ロミオ&松竜の『CROSS†CHANNEL』コンビによる新作が出る──という報せに喜んでいる焼津です、こんばんは。テックジャイアン9月号の紹介にちょっと出てます。仮タイトルは『霊長流離オクルトゥム』とのこと。「オクルトゥム」をググってもワインばっかり出てくるのでロミオスレに行ったら「ラテン語で神秘、オカルトの語源」らしい。なんか少し前のアニメみたいなタイトルだなぁ。今風にすれば『流離のオクルトゥム』か。どちらにしろ言いにくい。ともあれ松竜の絵にも磨きが掛かり、且つ塗りも好みだから前情報なしだろうと注目していたに違いない。楽しみだ。

『さくらむすび』、発売延期(7/29→8/5)

 うえー、ほぼ購入確定だったのに……公式はまだだけど、通販サイト回ってみると一部で日付が変わっているので本当っぽいですね。

 今月はもう『SWAN SONG』一本に絞ろうかな。『はじめてどうし』は評判見てからでないと踏み切れそうにないし、『少女魔法学リトルウィッチロマネスク』は体験版やった感じでは良さそうな塩梅でしたけど、初回特典のフィギュアが要らないので通常版出るまでは様子見するつもり。

(追記) 22時頃、公式での延期告知が出ました。

S.M.Lの『CARNIVAL』、シナリオ1終了。

 まあ、順当な落としどころか。にしてもなんだろう、この切迫している割にほのぼのとした雰囲気。作中で主人公も述懐していることだが、サスペンスのくせしてまことに緊張感がない。人死にが出たり陵辱したりとそれなりに凄惨な要素はあるのに、結構あっさり流しているし。うーん、見た目は殺伐、中身は爽やか。桑島由一が監修したというのも頷けるケイオティックでバッドテイストな味わいでした。

 このエピソード1を単体で見れば「なんでこのキャラ出てきたの?」みたいなトコが多々見受けられる。冗長性ありすぎ。捌き切れなかったネタに関してはシナリオ2以降で回収するのか。さてはて。ともあれ瀬戸口の饒舌な文体は大したものだ。何が本筋だったか見失うくらいの勢いに溢れたテキストの奔流で、どうにも破綻しているとしか思えないストーリーを押し流していく。水洗便所並みの力技。力技すぎてキャラクターに魅力をあまり感じなかったのが難と言えば難。いえ、渡会さんはツボでしたが。喋りといい容姿といい性格といい。こう、強引にえぐりこまれるような感じでググッと来ました。特にあのエンド、オチらしいオチこそなかったものの、幸福とも不幸とも言い切れない空虚な絆が胸に響いてきたり。現時点で一番楽しめたのはアレですね。


2005-07-19.

・海の日は一歩も外へ出ずに半ば寝て過ごした焼津です、こんばんは。睡眠の尊さを知りました。

S.M.Lの『CARNIVAL』、プレー開始。

 『SWAN SONG』の発売も近づいてきたことだし、瀬戸口廉也&川原誠のコンビが手掛けたこっちの方もそろそろ崩し頃かと悟って着手。ストーリーとか前情報は特に仕入れてませんが、どうもサスペンスっぽい雰囲気。文体は、あー、あれです。饒舌。改行ナシでみっちり三、四行表示することなんてザラ。画面が字で埋め尽くされてしまうので、デフォルトのメッセージスピードだと目が追いきれない。仕方なくスピードを一段階下げてちょうど良くなりました。メッセージスピードを上げることはあっても下げることは滅多にない当方としても、さすがにアレは読みにくい。

 んー、まだそんなに進んでいませんのであれこれ語ることもないですが、とりあえず町田康とか佐藤友哉あたりの作品が楽しめる人ならグッと来るだろうなー、とつらつら思わされるノリ。思春期の虚無感がむんむん漂っていたり。さりげない言い回しにも負のセンスが発揮されていて愉快だ。饒舌なれど冗長という印象は受けていません、今のところ。うん、この語り口は好きかも。

テキスト『塵骸魔京』『あやかしびと』の感想アップ。日記のコピペじゃない感想は久々に書いたせいもあってなんかグダグダになっている気もしますが。


2005-07-17.

第三十六回 星雲賞受賞作発表(モノグラフ)

 『復活の地』は次点かぁ……。短編部門で『象られた力』が受賞したのはファンとして素直に嬉しい。それで『空の園丁』はまd(以下略)。

2chライトノベル板大賞2005上半期、結果発表

 うわー、1位が圧倒的な獲票。上位20冊は半分くらいしか読んでませんね。そろそろ崩し頃の本もあるし、いくつか手をつけてみようかな。

『あやかしびと』、コンプリート。

 やっぱり寝不足だぁぁぁ。

 ここのところガチで睡眠時間削ってる。いやそんなことはともかく『あやかしびと』、隅々までしゃぶり尽くし味わい切りました。終わってみれば、ちょっと掴みどころないかなー、と思っていたタイトルにもちょうどいい余韻が感じられる。「あばたもえくぼ期」、略してあぼ期に入りつつあるのか。

 最終ルートは前半というか話が動き出すまでの日常シーンが他のルートと比べても非常にまったりとしており、割と静かなムードに包まれています。そこから二転三転、激しくストーリーが変遷していく様は実に目まぐるしく、やっていて翻弄されました。リーダビリティが優れているからこそ可能となる構成。意外なキャラに意外な見せ場が与えられていたり、刀子先輩が自分のルート以上に活躍していたり、トーニャはあんまり出てこないので裏方に徹しているのかと思ったら予想の斜め上を突っ切るようなことをやらかしたりと、話を面白くするための出し惜しみが皆無な展開に熱中することしきり、でした。

 でもライターが多大な自信を持って送る最終決戦のシーンは、あー、うん、正直言ってちょっとヒいたかなぁ。やりすぎ感が強すぎて。悪かないけど、クライマックスに至るまでの流れが少し端折られているせいもあって唐突という印象は拭えず、ノリに馴染めませんでした。とはいえ、ここぞという瞬間に主題歌が鳴り響くところは最高。「伝奇なのにロックなんで合ってない」と言われていたし、その意見には賛同していたけれど、耳にした途端に一切が吹き飛んだ。『あやかしびと』の演出ではあれが一番ハマっていると思います。

 最後までやり通してみて、不満も多少は残りました。しかし、当初期待していた「面白さ」を凌駕する「凄い面白さ」で迎え撃ってくれたことを考えると感謝せずにはいられない。青春要素・伝奇要素、二つが完全に融合していたわけではないが充分以上の水準に達しています。テキストは「読み応え」がいまひとつ足りなかったにせよ、読みやすかったし、読んでいて苦にもならなかった。ストーリー展開に関しては「執念」や「情熱」という言葉が似合うほど執拗で粘りが利いていてたまらぬ。よくぞ面倒臭がらずここまで書き込んでくれた。金嶺学園絡みがいささか放置気味なのは残念だったが、位置付け的に本来なら雑魚キャラとして使い捨てられる光念兄弟の持ち味をすべてのルートで軒並み発揮させたりするトコは美味しかったです。というか輝義と一兵衛のふたりがここまで印象的な連中になるとは思わなかった。ぶっちゃけ当方内部では虎太郎先生の存在感すら食っちゃっています。恐るべしガンスリンガー&破壊僧。死に方に生き方が見えてくる野郎はイイな。名前をいちいち挙げるのは省きますが、男性キャラも女性キャラも、みんな脇役に至るまで輝いていた。おまけに無機物さえ萌えるのだから反則。「しんよーしろ」の一言にV-Sw(ヴィズィ)とG-Sp(ガスプ)を思い出したり。

 そんな中一番気に入ったキャラは刀子ですね。最初にプレーしたルートだけあって印象深いってのもありますが、黒長髪という当方の急所を押さえた容姿に付け加え、「しっかりしているようで……」という性格的ギャップがトラップのように仕掛けられていて、あっさり陥落いたしました。刀子可愛いよ刀子。剛力かつ嫉妬深いところなんか修羅場スキーにとって震えが走る。恐怖と恍惚で。トーニャ、すず、薫といった他のヒロイン(というか全員)にもこの「嫉妬」属性がさりげなく付与されているのもよろしい。修羅場は一方が嫉妬すればいいってもんじゃないですから。やはり干戈を交えねば。

 とまれ、エンターテインメント性についてはガチの一本でした。さて、ハガキを送って是非ともお返しCD「あやかしばん」を貰わなきゃ。収録コンテンツはどんなのかしらん。もし追加シナリオがあったりしたら、生徒会メンバー+αで一つの事件に当たるみたいなのを希望したく。いえ、なんか、思ったほど「全員出動!」みたいなチームプレーイベントがなかったのでそこらへんを補完してほしいかな、と。できれば放置ぽかった金嶺学園絡みで。


2005-07-15.

・会計のたびに「次回ご利用になれるサービス券」を配る古本屋が隣町にあるんですが、100円の本を買った客に100円のサービス券を配るあそこは「もうすぐ潰れますよ」というシグナルを発していますか? 思わず危惧する焼津です、こんばんは。

第133回芥川賞・直木賞、受賞作決定

 このふたりはいつかそのうち取るだろう、と思っていましたが、意外に早く受賞したので素直に驚き。作品自体はどっちも読んでないのでなんとも言えませんけど。ちなみに「土の中の子供」というタイトルで連想するのは『暗闇の中で子供』よりも『石の中の蜘蛛』

誉めちぎる 誉めちぎれ 誉めちぎるとき

 「糞ゲー・地雷ゲーをあえて誉めちぎるスレ」の紹介FLASH。無駄にカッコイイ。思わず立て続けに眺め入ってしまうほど。

・渡瀬草一郎の『空ノ鐘の響く惑星で7』読了。

 少し間が空いた新刊ですが、時間を掛けただけあってシリーズでも一、二を争う仕上がりになっています。局地戦に焦点を当てたせいでストーリーの進行が遅くなっているところは難にせよ、見事に惹き込まれました。助けに駆けつけたにも関わらず「お前来ると事態が悪化するんじゃないの('A`)」とヒロインに思われてしまう某サブキャラの不憫さで笑わせといて、そいつの個性に合った活躍を描くことで「やるじゃないか」と見直させる流れがツボ。あそこは今回における屈指の名シーンです。

 スラスラと詰まることなく読める文章はやはり巧い。目立ちにくい巧さではありますが、それだけに一度気に入るとやめられないものがあります。スケールが大きい物語の割にここのところ展開がスローペースになっているので、今後は品質を保ちながら適度に話を進めて欲しい。なんにせよ、ここまで来たからには最後まで打ち切りなしで駆け抜けてください。いやホントに「第一部・完」とか除外の方向で頼みますよ。

『あやかしびと』、薫エンド到達。

 あー、また寝不足。

 で、薫シナリオ。ヒロインがドミニオン側なだけに、話もドミニオン方面に向かっていきました。けれど単純に進行していくわけではなく、いろいろと当方の嗜好をくすぐる展開が目白押しで嬉しかったです。すずはできておる喃……。今まで存在を忘れられがちだった虎太郎先生にもようやく見せ場が回ってきたことにも歓喜。まあ、正直、あまりにも強すぎてヒいたところはありますが。一方で意外な奴が面白キャラと化して愉しませてくれたりと、これまで通り執念すら窺えるエンターテインメント精神は健在でした。読み手の予想をちょいと外してみせる手つきも鮮やか。

 また、現時点においてバトルシーンの印象がもっとも強かったシナリオでもあります。怒濤の如く戦いまくり。互いの戦力が拮抗し合っている雰囲気もあって、見ていて白熱する内容でした。インパクト重視、ハッタリ重視の少年マンガ的バトルが多いものの、書き手の熱気がこちらまで伝わってくる代物ゆえ実に美味であり、たらふく喰らわされて満腹満腹。ただ、シリアスモードに入ってからもちょくちょくギャグが入るノリは人を選ぶかもしれず。『ハーメルンのバイオリン弾き』みたいな。

 ところで某キャラによる精神攻撃のシーン。結構えぐいというかキツい光景の数々だった割にあんまり違和感がなかったのはどういうわけか。ギャップを覚えるどころか「状況次第では本当にありうる」と納得させられる始末。そういう意味ではプレーヤーへの精神攻撃にはなってなかったなぁ。

 さて、これであとは「おいしいものは後回し」とばかりに取っていたすずルートで終了かな? ゴールはもうすぐそこだと思いますが、集中力を緩めず存分に愉しむ気概で行きましょうか。


2005-07-13.

・虫の羽音に安眠妨害された焼津です、こんばんは。いよいよ虫に悩まされる季節が到来ですか……はふぅ。

・鎌池和馬の『とある魔術の禁書目録6』読了。

 1巻から5巻までは丸々夏休みに費やされ、6巻目からようやく新学期が始まるというのもなかなかすごい話ではある。さておき、今回でようやく「偶数巻はイマイチ」というジンクスが破壊された気配。相変わらず文章の粗さが目につくものの、テンションの良さは奇数巻に負けず劣らずです。物語が本格的に動き出すまでの前半、つまり導入部の面白さがかなり向上してきている。「好きかどうかで言えば……好きな方?」と半疑問形で言葉を濁していたシリーズではありますが、そろそろ普通に「好き」と請け合えそう。

 後半が勢い任せの根性勝負で、盛り上がりが性急というか慌しい印象を受けるのが少し残念。だんだん巧くなってきていることは確かだし、キャラの魅力も蓄積されて既に一つの武器になっているし、この6巻あたりからシリーズ全体の枠組みも見えてきたし、今後が素直に楽しみ。能力バトルものとして見ても白井黒子や御坂美琴の能力の使い方に小技が利いていてイイ具合です。

『あやかしびと』、トーニャエンド到達。

 ごめん、ウラジミール。前回は「壊れギャグ系統のキャラとしては実に半端な壊れ方」とか心ないことを書いてしまったけど、佳境に差し掛かってからのあんたは輝いていた。画面に立ち絵が出るたび「待ってました!」とばかりに嬉しくなる始末。イイ味出しすぎです。

 さて、トーニャシナリオ。ロシアっ娘だけに大方の予想通りロシアーンな展開になりました。「チェルノボグ」という単語の響きから巨大ロボットが投入されるのだと勘違いしてしまったのは当方だけでいい。『人狼』『スズメバチ』が好きな当方としては勘違いだったおかげでより一層熱くなれました。

 伝奇バイオレンスの風味が濃厚だった刀子シナリオに比べて伝奇要素が下がり、代わりに冒険小説要素が跳ね上がっている。「カラシニコフ」や「ドラグノフ」という単語に胸がときめく人ならばワクワクできる仕上がりでしょう。なんであれ、展開がちゃんと段取りを踏んで進んでいくおかげで違和感はないし、興奮のボルテージも程好く上がりました。刀子の方でもキャラの配置が絶妙だと思いましたが、その点に関しては変わらない。ただ、バトルシーンが多いので相対的にCGの枚数が少なく感じることと、画面演出がもうひとつ盛り上がりに欠くのは不満か。

 あくまで好みで言えば刀子ルートの方が良かったものの、これはこれで面白い。伏線の張り方はキッチリしているし、「ま、このへんでやめとくか」みたいな手加減はない。ADVの場合、「○○に関しては当該シナリオで」みたいに棲み分けが進むせいでキャラが特定のルート以外では活躍しないことがままあります。もちろん、『あやかしびと』にもそうした棲み分けはある。けれど、たとえ活躍はしないにしてもそのキャラが話に与える影響を加味した上で「活かす」ことは熟考されており、「こういう場面ではこういう役割を振る」みたいな意識が徹底されていてストーリーの味がグッと引き締まっています。徹底したおかげでむしろ「くどい」と感じる人もいそうなくらい。粘り強いストーリーが好物な当方としては「ここまで引っ張ってくれるか……感謝!」といった次第ですが。

 執念があって妥協はない。つくり手の側が「面白い物語」というものを愛しているのがビンビンに伝わってきます。よし、次は薫さんのルートにでも行ってみようか。


2005-07-11.

・昨日は自分で19万ヒットを踏んだ焼津です、こんばんは。切ない気分を抱えたままメールチェックしたら「納豆を潤滑油」だの「半熟卵挿入」だのといった言葉が踊るエロスパムが届いていてより切なくなりました。『夜勤病棟』はもうよかとです。

・ふと思い立って新明解で「あやかし」を引いてみました。

 航海中の船に取りついて、難破させたり動かなくさせたりする、原因不明のもの。(怪物とも、コバンザメのせいともいう)

 更にgooの国語辞書で検索してみるとこんな結果。妖物全般を指すのが第一義と思い込んでいましたが、基本的には海の怪異を呼ばうものなんですかね。

・ともあれ『あやかしびと』、プレー中。

 刀子ルートのイベントは一通り見終わったと思うのでトーニャ狙いで続行。後半で激しい展開のあるゲームは、一旦クリアして前半に戻るとなんとも言えないギャップを覚え、平穏な日常でも不思議と落ち着きを感じない。なんというか、シェルショック? ……すみません、さすがに喩えでも言いすぎでした。

 さて、トーニャ・アントーノヴナ・ニキーチナ。ロシアっ娘という、マニアックというかマニア的には王道すぎて却って位置付けが微妙なヒロイン。我々が普遍的に抱くロシア像、つまりウォッカとボルシチとピロシキをしっかり押さえつつ、今後は「ハラショー」とか「ダスビダーニャ」とか「(゚∀゚)スパシーバ」とかお約束のロシア語を喋ってほしいような、別にナシでもいいような。とりあえずエロシーンで上着を床に叩きつけるように脱ぎ捨て「ダヴァイ!」と叫んでくれたらオールグリーン。いえ嘘。そんな双七が「誰がパンツはいていいッつッた」とほざいてラウンド3に突入しそうな濡れ場はイヤだ。

 話の方は裏にこっそりと陰謀の匂いを漂わせつつ、表面上はオバカな学園ラブコメとして進行しています。トーニャはいっそ不自然に思えるくらいキャラが立っているので何をしても美味しいなぁ。ケンカしようと、睨み合おうと、舌戦を繰り広げようと、修羅場に入ろうと。つか、終始すずと鎬を削っている印象が強いです、このルート。このまま進めばむしろ双七じゃなくすずがツンデレの対象となるんじゃ? 視える、トーニャに掌を返すように猫可愛がり(狐可愛がり?)されて困惑しながらも満更ではない表情のすずが幻視えるぞ。当方のダメ絶対幻視は単なる妄想の温床であり、当たることは滅多にありませんが。

 ちなみにウラジミール。壊れギャグ系統のキャラとしては実に半端な壊れ方なので、普段はあまり笑えない代わり、ここぞというときに意表を衝いて気管責めしますね。あのシャツ着たままシリアスぶるのはやめろと。最後まで立ち絵変更せずにあのどことなく既視感を誘うプリントシャツを着用してクライマックスに突っ込んで行ったら彼はもはやネ申になるしかないと思います。


2005-07-09.

エド・マクベイン、死去

 87分署シリーズの作者。うちの母の好きな作家でした。エヴァン・ハンター名義の著書も集めていたくらい。黒澤明の『天国と地獄』もこの人の『キングの身代金』が原作でしたね。当方はまだ一冊も読んでませんが、『警官嫌い』から読み始めてみようと思います。

 ご冥福を。

『あやかしびと』、刀子エンド到達。

 見事にガッツリと睡眠時間を削られた……ただでさえ少ないのに。ねむー。非常にねむー。

 日中も目がショボショボするくらいにやり込んでやっと一周達成。なんか、当方のプレー速度って結構遅いですね。自覚はありましたけど。他の人の日記では割とあっさりエンディングに辿り着いている印象があったのに、ボイスをしっかり聞いて地の文もたまに読み返したりしてじっくり読んでいたせいか終わらないのなんのって。なかなかのボリューム。これが退屈ならさっさと寝るんですが、やたら腰の据わった粘り強い展開を見せて惹き付けてくれるものだから枕が全然恋しくない始末。ほとんど執念のようなストーリーテリングの業にめろめろです。

 サウンドとグラフィックの兼ね合い、カットインや効果音を使った演出、物語の基礎となるテキストの数々。一つ一つの構成要素を見ていけば洗練されているとは言いにくく、なんとも微妙な泥臭さがあります。流行が過ぎ去り、技術面で分析すると粗く拙いところが目立つ、かつての名作マンガを読み返すときみたいな。しかしそうしたものの常として、垢抜けなさを補って余りある熱が芯まで篭もっており、興味と関心を釘付けにされてしまうわけです。「ここらへんでクライマックスか」という予想があっさりスカされ、こちらの期待を軽々と上回る道筋を驀進し始めたあたりは呆けましたね。

 このシナリオ、「話を面白くするためなら一切手加減をしない」という勢い余って自壊寸前の情念を感じます。あくまでエンターテインメントを意識し、決して自壊しないよう踏み止まる掣肘力は大したもの。しかし、踏み止まってバランスを保ったせいで物語が王道に復帰してしまうと、どうにも物足りなさを覚えてしまうのは我ながら贅沢な悩みか。途中の盛り上がりが良かっただけに、最後の最後で更なる盛り上がりを見せてくれないと満足できない心境に至ってしまう。一度過剰を経験すると、「そこそこ」に戻っても不満を隠せなくなるアレです。ハッピーエンドも好きですが、一方で行くトコまで行って何もかも捨てて狂ってほしかったという欲もあり。複雑というか、むしろ実に分かりやすいジレンマ。

 まずは様子見程度に、くらいの軽い気持ちで刀子に着手しましたけど、良くも悪くもというか「よくも、よくも、こんな面白い話を読ませやがって。おかげで睡眠が……」な代物を出されて却って悔しい気分すら湧いてきます。精緻というほど細かくはなく、荒削りと呼ぶほど粗くもない。なのにひどく魅了される。間合いの読めない面白さ。

 ついつい興奮しちゃってますけど、まだ一つのルートを決着させたに過ぎないんですよね。本当の百鬼夜行は、これからだ……と、いいなぁ。一周目が不調でも不安に陥るけど、一周目が好調だとそれはそれで「今後もちゃんと熱くなれるのか?」と不安になる。まったくもって期待とは不自由なものだ。

『SWAN SONG』マスターアップ

 体験版も公開中。あやかしが終わり次第着手します。


2005-07-07.

・七夕? 言われなきゃ気づかなかった焼津です、こんばんは。短冊があれば「もっと睡眠時間を」と書く気満々。

『あやかしびと』、プレー中。

「えー、双七クンが送り狼になると怖いからやだなー。金属バットでー、後頭部殴られてー、廃人になるまで犯され捲くりそうだしー」
 しなを作りながら上杉先輩がそんな台詞を言った。

 ちょっ、待っ、刑二郎。そんな面白顔でイカレ台詞言われたら、コーヒー噴いちまって当然でないの。明らかに気管に詰まったじゃないか。お願いですから自重してくれ。

 と、無造作に破壊的なギャグでニアデスとなりながらも進めております。どうも気配からして刀子ルートに入ったらしく。あまりにも初々しい、嬉し恥ずかしなラヴいムードが腎臓あたりを苛みます。なにこの思わずニヤニヤと冷やかしたくなる雰囲気。青春というよりむしろ「思春期」の響きがよく似合う。ああ痒い。痒い喃。心地良さすら感じる痛痒感にひたすら悶える。お前ら、ちんちんかもかもしやがって。当方に砂を吐けと申すのか。

 伝奇とかそういった話題もさることながら、学園ラブコメとしての内容も充実していて非常によろしい。わいわいがやがやした喧騒の匂いが楽しいこと楽しいこと。笑いあり熱血あり恋あり友情あり波乱あり。およそ学園モノに求める要件を軒並み満たしている。ネタ的に微妙なところも少しあって人を選ぶけれど、その立ち振る舞い、骨の髄までエンターテインメント。改めて「学園モノっていいなぁ」と再確認している最中です。単純な馬力はともかく、小技の利かせ方がすこぶる美味しい。イイ意味で書き手の趣味が出ている気がします。自分の好きなものには容赦しない、みたいな。妥協のない面白さが清々しいです。ビバラ修羅場。

 一方で、なかなか本筋となる部分が動き出さず、とてもまったりした状況になっているのはいいのかしらん、と心配になってみたり。今までのところは丁寧なストーリーテリングで紡いでいますから、たぶん大丈夫とは思いますが……無理な急展開で物語のテンポを崩さないでくれるとありがたい。

 でも正直、不安要素よりも期待要素が多いというのが実情。ワクワクするんですよ、以降の展開を考えただけで。極めて幸せ。キャラに関してはルートがルートだけに刀子への好感度が増し増し。それでいてトーニャの魅力にも転びそうです。トーニャ、脇役として出てきているだけでもこれだけよろめかされているのに、いざ本ルートに入ってしまえばどうなってしまうやら。想像しただけで滾りますね。


2005-07-05.

・「ラン ランララ 螺螺螺 螺旋!」 『風の谷のハララ』という白日夢を見た焼津です、こんばんは。その者、白き衣をまといて腸の野に降り立つべし。

『あやかしびと』、プレー開始。

 よっしゃ、思う存分あやかしたれぇ!

 とインストールの間に初回特典の「あやかしぼん」に目を通して吼えつつ、着手。『塵骸魔京』と同日発売で、塵骸に負けず劣らず期待していたソフトだけにもっと早くから開封したかったわけですが、思ったよりも塵骸が長引いたおかげで月を跨いでしまいました。誤算なり。いえ、まあ、嬉しい誤算だったから別に良いのですけれど。

 「人妖」と呼ばれる、人ならざる異能の力を持った少年少女が、隔離都市に建てられた学園へ通ってスクールライフを謳歌しつつ、人妖狩りの組織と激しくバトる……ことになるらしい。体験版の範囲をスキップしてやり始めましたが、まだ最初の3時間ほどなのでまったりと面白おかしい学園生活を満喫している段階に留まっています。読み応えのあるテキスト、とは言いにくい面もありますが楽しい雰囲気と魅力的なキャラクターのおかげで大して気にすることなく進行中。キャラが多い割に書き分けが巧みで混乱はなく、また配分も適正で「なぜか目立たないキャラ」みたいなのもゼロであり、本格的に物語が動き出していない状況にも関わらずこちらの興味を引き込んでくれる。小ネタに「デスレイン」が出てくるあたりなど、ネタの狙いが微妙に狭い気はしますが。ともあれ今後に期待できそう。

 ヒロインは刀子先輩の株価が上昇中。おっとりしているようで、突発的な事態に対処し切れずわたわたする姿が、その、むしゃぶりつきたくなるほど可愛らしげ。たまらぬ。ええい、乱心せい、もっともっと乱心せぬかっ。などと見ている当方が既に乱心の有り様という罠。それとは無関係に、刑二郎も好感触です。会長・愁厳の匂い立つ色気もさることながら、刑二郎は喋れば喋るほどキャラ立ちして主人公の地位を脅かしてくる。憎めない狂言回しといったところ。いずれ彼にも焦点が当たってほしいものだ。

 それで──やはり発売日が一緒で内容的にも伝奇で被っているし、当方としても『塵骸魔京』と比較してみようとする意識があったんですが、いざやってみると作風云々、テーマ云々、コンセプト云々以前の問題として根本的に雰囲気からしてまったく異なるので、比べてもあんまり意味ないかなぁ、と痛感していたりします。伝奇は伝奇でも、塵骸の伝奇とあやかしの伝奇とではまるきり違った印象。てなわけで無理に「伝奇だから」と括るのはやめにして、塵骸は塵骸、あやかしはあやかしと割り切って楽しむ方向で行きます。しかしまあ、どのみち、面白いことには変わりなく。

・馳星周の『雪月夜』読了。

「おまえに信念なんかあるのか?」
「あるに決まってるじゃねえか」裕司は歯を剥いて笑った。「おれの邪魔をするやつは許さねえ──それがおれの信念よ」
 おれにも信念はあった。口には出さなかった。信念など、人に語るものではない。おれだけがそれに殉じていればそれがよかった。

 お互いを嫌い抜いているにも関わらず、他につるむ人間がいなかったせいで腐れ縁の青春を送った内林幸司と山口裕司。東京の右翼団体から足を洗い、故郷である根室へ逃げ帰った幸司は「これで裕司と縁が切れた」と思った。間違いだった。悪霊のごとく執拗に付きまとってくる裕司。東京でヤクザの盃をもらった彼は、敬二──女と一緒に組の金を持ち出して逃げた弟分を追っていた。腐れ縁を嫌悪しながらも、二億という金の匂いに鼻を引かれ、裕司の行動に加担する幸司だったが……。

 暗黒版『トムとジェリー』。劇画オバQみたいに劇画トムジェリを描いたとしたらこんな話になるのかもしれない、というのは単なる口から出任せだけど、「憎み合っているのに縁を切れない」という仲の悪い漫才コンビのような二人の関係が寒々しいのを超えて「微笑ましい」の領域に差し掛かっている。ボケ役がふざけたことを言い、ツッコミ役がパシーンと叩く。幸司が虚仮にして、裕司がぶん殴る。とても明快で分かりやすい。だが、明快すぎてこの構図が安易に感じられる場面も多々あった。なかなか難しいところだ。

 内容はいつもの馳と言いますか、同工異曲。とはいえストーリーテリングは堂に入っています。舞台が北海道だけに、頻繁に文章へ「寒さ」の描写──顔の皮膚が引き攣るとか、爪先が痺れてチクチクしてくるとか、そういった細かい全身感覚を挟むことで徐々に作中の雰囲気に引き込んでくるところが心地良かった。短いセンテンスを積み重ねる文章も絶妙なリズムを刻んでいる。そして、腕力ではなく口先だけで事態に対処しようとする主人公も馳作品らしい。相変わらず金に汚く、臆病で、すこぶるつきの不運。自分が自分以外の何者にもなれないことを希望ではなく絶望と受け取るあたりもお約束か。

 タイトルがタイトルだけに、「それにつけても金の欲しさよ」な主人公の思考が一層面白かった。センチメンタリズムを盛り上げてからリアリズムに突き落とす、馳の芸風も今回はギャグすれすれのムードである。


2005-07-03.

「ジンガイマキョウ」の7月1日付に『塵骸魔京』のイグニス絵が。イグ姐たまんねぇ。視線で殺されたい、物理的に。こうなったらいっそニトロプラスの姐さんキャラ(クロウディアとかリズィとか朱笑嫣とかナイアとか)を勢揃いさせた『姐、ちゃんとやろうよ!』を制作してくれないものか。油断すると即死につき犯りまくりというより殺られまくりの内容。

・で、その「ジンガイマキョウ」の犬江さんからゲームバトンが回ってきました。この「バトン」についてあれこれ言われていることは小耳に挟んでますが、サイト付き合いの浅さゆえに「ボク、いらない子……?」と上目遣いになりそうなほど傍観態勢に入っていた経緯もあるので、竿をへし折る勢いであっさり食いついてみます。

Q1.コンピュータに入ってるゲームファイルの容量
 30GB。体験版だけで5GBあります。いい加減掃除しよう……。

Q2.今進行中のテレビゲーム
 ちょうど『塵骸魔京』が終わって『あやかしびと』に移行する端境期。

Q3.最後に買ったテレビゲーム
 上記した『塵骸魔京』と『あやかしびと』。

Q4.よくプレイする、または特別な思い入れのある5つのゲーム
・『コナミワイワイワールド』
 当方がゲーム好きになったキッカケの最たる一本。マリオよりもハマった。パスワードも数年間は暗記していました。もう忘れたけど。

・『THE KING OF FIGHTERS'94』
 格ゲーに耽溺した時期、友達との対戦で一番盛り上がった。椎拳崇(赤)が出てくると「金田ァ!」「『さん』を付けろよデコ助野郎!」と叫び合うのがローカル・ルール。

・『To Heart(PS版)』
 ギャルゲーひいてはエロゲーの世界へ引き込まれた原因。今でも芹香先輩は忘れじのキャラ。SSを百単位で読み漁ったこともあり、当方が「SS」という概念に馴染んだ理由もこれ。

・『月姫』
 荒削りな傑作。『ヘルシング』読み始めと同時期だったので威力倍増。某ルートの影響により修羅場スキーとなる。ちなみに青本こと『月姫読本』は人生で初めて買った同人誌でした。

・『PHANTOM PHANTOM OF INFERNO』
 スティーヴン・ハンター、福井晴敏、馳星周で冒険小説に熱中していた頃に遭遇。結果は言うまでもなく。

 最後は『PHANTOM』か『デモンベイン』かで迷いましたが、個人的な感覚で言うとデモベはファントムの延長線上にあるので割愛。で、バトンはここで止めます。思うところは別として現実問題、当方が回したつもりでも相手方に気づかれないケースがありますので。

『塵骸魔京』、コンプリート。

 最後までやり尽くしてみれば「ああ、やっぱりニトロプラスだな」と得心する、そんな一本でした。もっと端的に書けば「面白かった」の一言。他方で、「煮詰めればもっと面白くなったのではないか」という感想も残ることは残る。もっと上を目指せたのではないか、と。高望みは承知の上。

 一周目がそれほど時間掛からなかったので全体のシナリオが短いのだろうと思い込んでしまいましたが、それは錯覚で、実のところ結構長かった。かなり早い段階でルート分岐が起こり、分岐して以降はほとんど文章の重複箇所がない。実質、「共通パート」というものが存在しない仕組みになっています。ただ、序盤はどのシナリオも発生する事件とその推移がだいたい一緒で、「展開の多様性」という要素を勘案して分析すれば「話にボリュームがある」とは請け合いかねる。切り口は違っていても大筋でテーマは共通しており、良くも悪くも「脱線」がない。書き手の冒険が少ない反面、手堅く律儀な構成と言えるでしょう。

 ルートは3つあります。デモの扱いから推察できる通り、イグニス、風のうしろを歩むもの、管理人さん、それぞれに対応したルートです。イグニスルートが伝奇バイオレンス、風のうしろを歩むものルートが少年マンガ的アドヴェンチャー、管理人さんルートがサスペンス&ホラーと雰囲気も異なっている。イグニスルートと管理人さんルートの配分がほぼ一緒で、風のうしろを歩むものルートだけちょっと増量されています。明らかな優遇です。ノリも王道というか良き正統派で、内実ともに風のうしろを歩むものルートこそが『塵骸魔京』の真骨頂。代わりに他二つのルートは粗さが目立ちます。特にイグニスルートは時間がなかったのかと疑いたくなるほどバタバタしています。品質が一定していません。そこが惜しい。ただ、即死選択肢が多いのはバッドエンド好きとして嬉しかった。

 心臓のない主人公が徐々に心情を理解していく過程に、人知れることなく闇に住まう化生「人外」たちとの決して平和的ではない交流を挟み、ニトロらしい愛憎入り乱れのバトルを織り込んだ血と信念のタペストリー。拾い損ねた伏線、消化し忘れた要素、設定の食い違い、フラグ管理の不備、曖昧な歴史観、狭い世界観など突っ込む余地もいくつかあります。辻褄は合っているようで合っていない。克綺の主張も全面肯定しがたい。だが、行き着く感想はやはり「面白かった」。尖ってはいなくて奇抜でもなくて、地味とか古臭いといった印象を受けるくらい、懐かしい「楽しさ」で満ちています。友情もいい。熱血もいい。恋もいい。悲劇もいいし惨劇もいい。ベタでも構わない。シナリオのやりたいことを補佐し、あるべき魅力を遺憾なく発揮するグラフィックとサウンドもいい。目によし耳によし。最終的にはしんみりと胸に染み渡ってきます。

 ま、そんなこんなで、途中でやる気が挫けそうになったこともあったけど、キチンと閉幕まで付き合って正解でした。ええ、風のうしろを歩むものの尻は何度見ても素晴らしい。イグニスの常に何かがブチギレている表情もたまらない。んー、どちらかと言えば雰囲気ゲーに近いかも。なんにしろ、良いゲームを選んだという喜びを噛み締めております。お気にのキャラは風のうしろを歩むもの。彼女がいてこその塵骸だと思う次第。容赦を知らぬげなイグニスさんも大変魅力的ではあるもの、何分シナリオが不遇……。サブキャラでは田中さんとヒューマンフレア、それに峰雪と牧本さんがイイ味出してました。峰雪以外はあまり目立てなかったので、彼・彼女らにももっと見せ場が欲しかったな。


2005-07-01.

『わたしたちの田村くん』、2巻は9月刊行とのこと。歓喜に猿叫する焼津です、こんばんは。

『塵骸魔京』、風のうしろを歩むものルートクリア。

 長い名前であるにも関わらず、本編では一切略称で呼ぶことなくあくまで「風のうしろを歩むもの」で貫き通したことに敬意を払い、当方も略すのをやめました。それはさておき彼女のシナリオは良かった。イグニスシナリオに不満を抱いた分、反動的により多くの感動を覚えてしまったのかもしれませんが、ともあれ当方が最初の段階で『塵骸魔京』というソフトへ寄せていた期待に概ね応えてくれる出来となっていました。あくまでニトロファンが要求するレベルに達しているとは言い切れないにせよ、当方個人については妥協以上の気分で肯定するつもりになっています。

 あんまり細かいところを挙げてイグニスルートと風のうしろを歩むものルートの相違点を書いていくとネタバレになってしまうので割愛しますが、まず単純な分量から言っても「イグニスルート<風のうしろを歩むものルート」という具合。風のうしろを歩むものルートのプレー時間は、イグニスルートを1.5倍したくらい。イグニスルートも決して短くはありませんが、ストーリー展開の濃やかさ、尺に見合った各要素の活用などの観点から見ても両者の差は埋めがたい。なぜこれほど差が出てしまったのか首を傾げたくなる。単に当方がイグニス→風のうしろを歩むものの順にやり、塵骸の作風に馴染んでいったことを「後のシナリオの方が面白かった」と錯覚した可能性もありますが、それにしたって……うーん。

 文化圏が根本的に違う、という設定の割にあっさり日本語が通じたりするところとか、多少御都合主義な部分はあれども「異文化交流」というテーマを最低限果たすに足るだけの描写はあり、主人公・克綺と風のうしろを歩むもの、二人の遣り取りが、こう、染み入るように楽しかった。造型の印象を裏切って思ったほど露骨な萌え言動がなかった風のうしろを歩むものではあるが、彼女と一緒に過ごすシーンは日常にしろバトルにしろ活き活きと動的で、じんわり魅力が浸透してきた次第。にしー絵の威力はもちろん無視できないが、そろそろライターの仕事ぶりも誉めていい気がした。なかなかにナイス。あのシーンにおける「いじめっ子」発言はヤバいくらいにキましたね。

 事態の推移、戦闘の趨勢に一本の理屈を通して話を進めていくスタイルは見ていて小気味良い。『魔人』あたりのノリが好きな人なら楽しめるでしょう。ド派手なスペクタクル、華々しいアクションといった「見映え」重視ではなく、どういう策を使ったから窮地を切り抜けることができたのか、理解と納得を促す「感触」重視のサスペンス。個人的な評価もだいぶ持ち直してきたことだし、先が楽しみです。

・7月の予定をズバッと。

(本)

 『まどろむように君と』/浅井ラボ(角川書店)
 『武装錬金(8)』/和月伸宏(集英社)
 『デスノート(7)』/小畑健、大場つぐみ(集英社)
 『魔人探偵脳噛ネウロ(1)』/松井優征(集英社)
 『HUNTER×HUNTER(22)』/冨樫義博(集英社)
 『終わりのクロニクル5(下)』/川上稔(メディアワークス)
 『とある魔術の禁書目録6』/鎌池和馬(メディアワークス)
 『空ノ鐘の響く惑星で7』/渡瀬草一郎(メディアワークス)
 『星界の断章T』/森岡浩之(早川書房)
 『Black Blood Brothers(s)1』/あざの耕平(富士見書房)
 『電波的な彼女 幸福ゲーム』/片山憲太郎(集英社)
 『ハルビン・カフェ』/打海文三(角川書店)
 『ゼロの使い魔5』/ヤマグチノボル(メディアファクトリー)
 『疾走!千マイル急行(上)』/小川一水(朝日ソノラマ)

 そこそこの数。『まどろむように君と』は“されど罪人は竜と踊る”シリーズの最新刊。前回に引き続き短編集なので少し残念。でも楽しみではある。武装錬金、もはや何も言うまい。デスノートは最近評判聞かないけどどうなってるんだろう。ネウロは例の「ドーピングコンソメスープ」とかのネタ元らしく、結構面白いという話なので読んでみようかと。HHはなんだかんだでデフォ買い。電撃の新刊は続刊モノばかりで手堅め。終わクロは上下一気に読むつもり。とある〜は「偶数巻がハズレ」というジンクスをそろそろ打ち破ってほしい。空鐘は多くを望まないからとりあえず打ち切りに遭わずに完結してください……。

 星界、再始動したのかしてないのか曖昧な雰囲気が漂ってますね。ひとまず惰性に任せて確保します。BBBSはやっと出る短編集。既刊もいい加減崩し頃だろうか。電波的な彼女、3冊目となる新刊は副タイトルの「幸福」という字が逆に不安をそそります。このシリーズ、文章はサクサクと読み心地がイイくせに内容はえげつないからなぁ。ハルビン・カフェは大藪春彦賞受賞作の文庫落ち。評判も良かったので読んでみようかと。ゼロの使い魔は今回は短編集らしい。千マイル急行は『第六大陸』と『復活の地』で大いに躍進した小川一水の新作。初期作には割とハズレ作品が混ざっていたりするので安定性に優れた作家とは言い切れませんが、やはり期待せずにはいられない。

(ゲーム)

 『SWAN SONG』(Le.Chocolat)
 『少女魔法学リトルウィッチロマネスク』(Littlewitch)
 『さくらむすび』(Cuffs)
 『はじめてどうし』(ZERO)

 確定らしい確定が特にない月。『SWAN SONG』、CGとストーリーがツボだし、業界四方山話を読む限り、どうやらシナリオも当方の好みっぽい。全体的な雰囲気が地味なせいもあり加点要素こそ少ないものの減点要素はこれといってなく、消去法で考えていけば鉄板。『少女魔法学』は大槍絵という個人的にはビッグな加点がありますが、一方で「育成ゲー」というシステムに不安を感じさせる部分が期待点を差っ引き、結果トントン。体験版で感触を掴めるかどうか判断するまで保留します。

 『さくらむすび』はトノイケダイスケ&☆画野朗のコンビゆえに注目してますが、裏を返せばこのコンビじゃなけりゃスルーしていた一本。頭では「イケるだろう」と判断しつつも食指の動きが鈍い。『はじめてどうし』はブランドが「ZERO」という時点で足踏みする理由になります。スタッフが全然固定されていない匿名ブランドなので期待しようがなく。だが、当方は『いたいけな彼女』という大アタリを幸か不幸か引いてしまっており、「ひょっとしたら、あるいは」と願う気持ちを消すことができません。なんというか、大穴狙いの心境です。ちなみに、タイトルはアレですが同じZERO作品の『はじめてのおるすばん』『はじめてのおいしゃさん』とは関係がないということで大方の見解は一致しています。


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