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リレー小説「魔法少女忌譚修」(第13話−10/12)


2016-11-20.

角川ホラー文庫から「バチカン奇跡調査官」がアニメ化決定!(まとレーベル@ラノベ新刊情報サイト)

 藤木稟か……高校生の頃、『陀吉尼の紡ぐ糸』から始まる“朱雀十五”シリーズを熱心に読んでました。シリーズの3作目と4冊目に当たる『黄泉津比良坂、血祭りの館』『黄泉津比良坂、暗夜行路』が好きだったなぁ。当時(最近に関しては読んでないからよく知らない)は伝奇と薀蓄をベースにする衒学的な作風だったため「京極夏彦の後追い」と見做されていた節がありましたね。ひどい人は「劣化京極」と呼んでいた。『上海幻夜』あたりから刊行ペースが落ちて熱も冷め、惰性で読んだ『夢魔の棲まう処』がつまらなかったから追うのをギブアップしてしまいましたが、その後も朱雀十五のシリーズは続いていたみたいです。『暗闇神事 猿神の舞い』、そして現時点でのシリーズ最新作『化身』。『上海幻夜』以降はファンの間でも評判が振るわず、そのせいもあってか角川ホラー文庫の新装版は『大年神が彷徨う島』(シリーズ5冊目)までしか刊行されておりません。実際、私も純粋に楽しんでいたのは大年神までだったな……そういえば『鬼を斬る』という小説に「朱雀十二」という名前のキャラが出てきたが、あれが十五の曽祖父だったんだっけ? じゃあ父親が十四で祖父が十三なのかしら。調べたところによると朱雀十八という十五の孫が登場するシリーズもあるらしい。そのうち朱雀九十九が宇宙僻村で事件を解決するSFも来るかもしれない。

 ジョークはさておき、今回アニメ化される『バチカン奇跡調査官』、現時点で本編に当たる長編が11冊、短編集が2冊の計13冊から成る伝奇ミステリで、なんと朱雀十五シリーズの冊数をとっくに超えちゃっている。今やこっちの方が藤木稟の代表作なんだな。文庫版の刊行は2010年からですが、もともとは単行本で2007年に出ていたのでスタートからそろそろ10年近く経つことになります。単行本で出ていたときはそんなに売れている気配もなかったし、あまり評判が良くなかったうえ柄刀一の『奇蹟審問官アーサー』と混同している人までいたが、文庫主体に切り替えた2011年あたりから徐々に人気が上がってちょくちょく平台で見かけるようになりました。アニメ化するほどとは思っていなかったのでビックリしましたが、いざ放送が始まったらTHORES柴本の絵を見て『トリニティ・ブラッド』を想起する人と想起しない人に分かれて「時代が変わった……」としんみりすることになりそう。便乗して『奇蹟審問官アーサー』のシリーズも復活しないかな。

【先出し週刊ファミ通】『かまいたちの夜』なのに“影”じゃない!? 挑戦的な新作『かまいたちの夜 輪廻彩声』を独占スクープ(2016年11月17日発売号)(ファミ通.com)

 誰の絵かと思ったら有葉(あるふぁ)じゃねーか。ゲーム原画は『ぼくの一人戦争』以来? 同人方面でも有名な描き手ですが、商業化したあかべぇの初期を支えた原画家でもあります。「あかべぇそふとつぅ」の「2(つぅ)」は同人サークル「AKABEi SOFT」が前身にあるからで、この同人時代から有葉は中心的な存在だった。ちなみに「あかべぇそふとつぅ」と「あかべぇそふとすりぃ」のふたつは混同されがちだが、「有葉が原画に加わっているかどうか」で区別することができます。つぅの方にはすべて関わっていて、すりぃの方は一個も関わっていない。ただ、今となっては知る人も少なくなってきただろうが、『車輪の国、向日葵の少女』の原画は当初蒼月しのぶが担当する予定だったので「つぅ=有葉ありきのブランド」というのは別に既定路線でも何でもなかった。気付けばそうなっていたという次第。有葉がゲーム原画の仕事をあまり手掛けないようになったため、自然とつぅは休止ブランド化していきました。

 久々に有葉原画のゲームやりたいなー、とは思っていたけれど、これは……うーん。SFC版のかまいたちは周回プレーが苦痛になるシステム(何せ選択肢でのセーブ&ロードはおろか、スキップ機能すらない。フローチャート? 何それ美味しいの?)だったからリメイク自体は歓迎すべきだけど、もう過去に何べんもリメイクされているソフトですからなんというか「過去のリメイクとの違いを出すために」苦し紛れで無理矢理特徴を作ろうとしている感じがありありと。「タイトルは聞いたことあるけど一度もやったことはない」って新規層にはちょうどいいのかもしれませんが……『あなただけのかまいたちの夜』なんてアンソロジー小説を買うほどハマった時期もあるし、竜騎士07の追加部分も気になるっちゃ気になるけど、今回はパス。これが有葉と衣笠コンビの新作ラブコメエロゲとかだったら一も二もなく飛びついていただろうな。

 余談。原作シナリオを手掛けた我孫子武丸は『Another』の綾辻行人や『一の悲劇』の法月綸太郎と同時期にデビューした作家で、90年代に流行した「新本格ミステリ」の書き手でもあった。ついこないだ「法廷画」をテーマにした『裁く眼』という新作も出したし、多作ではないにしろ現役バリバリである。小説作品は『殺戮にいたる病』が有名で、確かに傑作ではあるものの内容的にちょっとエグい。初めて読む方は『探偵映画』あたりから入るのをオススメします。映画の完成前に監督が失踪しちゃったので、残されたスタッフたちが結末をどうしようかと議論する話。『愚者のエンドロール』の元ネタに当たる作品でもある。シリーズ物がご希望であれば『人形はこたつで推理する』の“鞠小路鞠夫”シリーズかな。腹話術師とその人形が様々な事件を解き明かす、比較的ほのぼの系の話。個人的に一番好きなのは“速水三兄妹”シリーズ2作目の『0の殺人』。逆にイマイチだったのが『腐蝕の街』、近未来を舞台にしたハードボイルドというかクライムサスペンス。三部作で、完結編『禁忌の街』も雑誌連載していたが終了から何年経っても単行本化されていない事実でお察しいただきたい。人によっては最高傑作らしいんですけど、個人的には雰囲気づくりの時点から失敗している印象で全然合わなかった。でも『ディプロトドンティア・マクロプス』よりはマシかな……あれは本当に期待を裏切られた。同じシリーズの『狩人は都を駆ける』は面白かったので、「我孫子武丸は振れ幅の大きい作家」というのが結論です。新刊買うたびバクチ気分。

サブロウタの姉妹百合「citrus」アニメ化企画進行中(コミックナタリー)

 あっ、これ去年の拍手コメント(9月)で存在を知って買ったけどまだ読んでない奴だ。『捏造トラップ』もアニメ化だそうだし、いよいよ百合姫の時代が来る? 百合姫じゃないけど同じ一迅社の『大上さんとケルベロスゥ!』もアニメ化来ないかな。『やがて君になる』も日に日にアニメ化されそうなオーラが強くなっていくし、冗談抜きで大百合時代の幕開けかもしれない。伊藤ハチやマウンテンプクイチの絵がテレビで見られる日もそう遠くないだろう。そして『総合タワーリシチ』が奇跡の復活を遂げたり……しないか。気持ちを落ち着け、買い忘れていた『制服のヴァンピレスロード(2)』を購入してくる。

・青野海鳥の『夜伽の国の月光姫(1〜4)』読んだ。

 「小説家になろう」連載作品。通称「おっさん姫」。現代日本で暮らしていた主人公はヒキコモリの末、不摂生が祟って38歳のときに死亡。異世界で銀髪の姫君として転生する……という大枠自体は「よくある異世界転生モノ」である。「見た目は美少女、中身はオッサン」というギャップが特徴の一つだけど、それ以上に本書が他と一線を画している点は「ひたすらアンジャッシュ状態が続く」ところですね。つまり、主人公は「豊かなおっぱいに顔を埋めたい」とか煩悩まみれで私利私欲のために動いているのに、周りがその意図をいちいち勘違いして「母の愛に飢えているのね……なんて不憫な子!」やら「ああ、なんと高潔な魂を持った姫君なのだろう」やらと勝手に感動しながら救国の姫君として祭り上げていく。連鎖する勘違いが事態の拡大を招き、どんどん主人公が有名人になっていく(その自覚もあまりない)っていうコメディ調のファンタジーです。「勘違い」が無理矢理な部分もあって「このへん苦しいのではないか?」と感じさせるところもあるが、ここまで徹底しているとなれば立派な強みである。アンジャッシュのコントみたく両者の思惑が全然噛み合っていないのにトントン拍子で話が進んでいくあたりに愉快なおかしみと愛嬌があり、「細かいトコには目を瞑ってもいいかな」って思えてしまいます。

 舞台となるのはエルフや竜が存在して「魔力」という概念もあるけど、ビーム兵器じみた派手な魔法の撃ち合いは一切存在しない、やや地味目のファンタジー世界。おっさん時代の記憶を引きずり幼い頃から奇行を繰り返していたせいで母親に疎まれ、屋敷の一室に幽閉されてしまった主人公・セレネ(8歳、中身は+38歳)。前世でもヒキコモリだったことから幽閉生活をあまり気にしない彼女(彼?)だったが、さすがに毎日押し込められていては息が詰まるからと、夜中にこっそり抜け出しては自由行動する穏やかな日々を満喫していた。しかし、ある夜に大国のイケメン王子と遭遇したことからセレネの生活は大きく様変わりすることに……。

 せっかくのヒキコモリライフを堪能していたにも関わらず、「まだ幼い子供をこんなところに幽閉するだなんて!」と至極真っ当に義憤を燃やしたイケメン王子がプリズンをブレイクさせ、主人公は半ば強制的に外の世界へ連れ出されてしまう。一時的にせよ愛する姉とも引き離され、慣れぬ土地での生活を強いられた主人公は「何もかも王子が悪い!」と睨み付けて敵視するものの、周囲はそれを「籠の中から救い出してくれた異国のカッコイイ王子様に熱い視線を送っている」と勘違いして……ってな具合でおっさん姫の空回りと思い違いがドミノ倒ししていくわけです。主人公が一切成長しないまま成り上がっていく反ビルドゥングスロマンっぷりに惚れ惚れとする。ハッタリとか口八丁とかすらなく、ただただ話のすれ違いだけでストーリーを転がしていくのは一見して楽そうに見えるが、ホントに一切成長する要素ナシで立身出世譚を書こうとすると却って難しくなるんだな……と実感しました。むしろ「成長した」とか「逞しくなった」ってことにした方が作者としては楽なんですよね。そういうことにしておけば、主人公の精神はガッチリした土台の上に立つことができる。でも勘違いだけで周囲を感化させていく遣り方は、主人公の精神に何の変容も齎さず、アンバランスでどんどんジェンガ並みに不安定な展開となっていってしまう。ちょっと突いただけで崩れ去ってしまいそうな感じと言いますか。すべて勘違いなのだから、「これまでいろいろなものを積み重ねてきた」ってことにならないんですよね。経験値が溜まらず、レベルも上がらない。RPGで言うところの「縛りプレー」に近い。アンジャッシュ状態だけで物語を組み立てるのは案外至難の技なんだなぁ。どうしても無理矢理な箇所は出てきてしまうが、主人公のキャラでうまく押し切ってくれます。中身が頭の固くなりつつあったおっさんだからか、「異世界の言葉をうまく学習することができなかった」という設定になっており、セレネのセリフはすべてカタコトになっています。チャイカよりはマシかな、という程度。カタコトだから真意がうまく伝わらない、という形でアンジャッシュ状態を補強している点もさることながら、カタコト喋りが「単純に可愛い」のと「おっさんが無理して幼女を演じている感じがしない」のと二重の効果を生み出していて「巧いな」と唸りました。どうしても転生モノだと主人公が「自分のキャラを作っている感じ」になってしまいがちなんですが、この作品に関してはわざとらしさを消去して自然とキャラが立つ仕組みが出来上がっています。この時点で既に「勝ち」だと判定しても差し支えない。

 ストーリー構成は1巻から3巻までが第1部。4巻は番外編で、本編の合間にあった出来事や第1部の後日談がちょこっと盛り込まれている。SAOの2巻みたいな塩梅ですね。第1部だけでも物語は充分まとまっていると申しますか、どうもあとがきを読んだ感じだと書籍化が始まった時点では『夜伽の国の月光姫』って「既に完結済の作品」という扱いだったみたい。「小説家になろう」で第2部がスタートしたのは今年の8月になってからで、書籍版の4巻が発売された後。つまり「書籍版が好評で続編決定した」ってパターンなのかも。来月刊行予定の5巻から書籍版も第2部に入る(というか、5巻が完結編?)みたいで、今から楽しみ。

 結論。「アンジャッシュ状態を基調にしたコメディ系のファンタジーである」ってことを了解したうえで読むなら傑作と呼べるシリーズです。ちょっとだけとはいえ普通に死人が出るので「誰も死なないホンワカほのぼのストーリー」を求める人には不向きですが、そうでなければ1冊くらいは試しに読んでほしいところ。主人公が「いい子」でない方がやっぱりキャラは立つんだなぁ、と感じ入りました。いや、俺はあくまで「いい子」が主人公のファタンジー読みたい! って人には『マッドネス グラート王国戦記』をオススメしておこう。主人公が狂的なまでに「いい子」です。全2冊でサクッと終わるから、物足りない人には『ご主人様は山猫姫(全13巻)』あたりも推しておきます。ずっと食わず嫌いしていたが、いざ読んでみたらすごく面白かった。あとがきで書いていた「50年後を舞台にした続編」ってまだ来ないのかな……。

・拍手レス。

 アメリカでパージ法が制定されれば、真っ先に殺されるのはトランプ本人だと思うんですけどね・・・マスコミの背後にいる連中はトランプが邪魔でしょうがないみたいですから
 押し寄せる刺客にトランプが「ウェルカム・トゥ・ザ・ホワイトハウス!」とメタルウルフで撃って出てレッツパーリィする流れ。


2016-11-14.

・ドナルド・トランプが次期大統領になったと聞いて「パージ法の制定も近いか……」と思った焼津です、こんばんは。

 パージ法というのは映画『パージ』および続編『パージ:アナーキー』に出てくる架空の法律で、一年に一度、12時間だけ「あらゆる犯罪が容認される」というもの。窃盗や傷害はもちろん、殺人ですら処罰を免れる。国民の不満をガス抜きする意味と、自分の身を護ることができない弱者を淘汰して社会保障費を減らす意味があり、これによって作中のアメリカは失業率を大幅に引き下げたという。ツッコミどころ満載で細かい疑問点を挙げればキリがなく、観たときは「ムチャクチャだなぁ」「ありえへんやろこんなの」「あ、銃火器の売上が飛躍的に伸びるところだけはマジでありそう」と笑っていたけど、今再視聴したら真顔になるかも。本国では3作目も既に公開されているらしいが、日本ではいつ観られるんだろうな……あとこの機会に乗じて『メタルウルフカオス』が映画化されて欲しい。

『結城友奈は勇者部所属』劇場アニメ化決定!(電撃G's magazine.com)

 『鈴がうたう日』から17年半、併映(5分か10分くらい?)とはいえ遂に娘太丸作品がアニメ化か……って感慨深そうに書いてみたけど、実はそんなによく知らないんですよね。すずうたの時点では原画家の名前まで覚えてなくて、『PIZZICATO POLKA』に至ってようやく認識した感じ。読みも「こたまる」が正しいのに、ずっと「にゃんたまる」だと思い込んでいた。エロゲーの原画家としてより、SD担当で人気があったという印象です。過去に関わった作品では『プリズム・アーク』がアニメ化してるみたい。『こどもすまいる!』『うさかめコンボ!』ときらら系の4コマ漫画も手掛けているものの、どちらも2冊で完結。絵は賑やかで可愛らしい反面、ネタにあまり特徴がなかったですからね……個人的に好きな作風なので漫画作品は全部買っているけど、コマあたりの情報量が多いため読み慣れない人からすると「画面がゴチャゴチャして見辛い」って感想になるかもしれない。『結城友奈は勇者部所属』は『結城友奈は勇者である』のスピンオフ漫画で、こないだ出た3巻が最終巻らしいけどアニメ化に合わせて続編をやったりするのだろうか? ここのところコミカライズ続きだから、そろそろオリジナル作品も欲しい気分ではある。

【画像】エロゲヒロイン「んッ!うぶっ…く、くさいぃ…!」 浮浪者「そりゃ何年も風呂入ってねえからなぁw」(2次元に捉われない)

 陵辱系のエロゲーやエロ漫画でたまに見かけるシチュだけど、珍しいところでは『瀬里奈』(アトリエかぐや)に「数日間監禁されて汚れが溜まった主人公」のアレをしゃぶる、というシーンがあったな。汚ッサン以外というのはなかなかないパターンなので記憶に残っている。スレの24に出ている画像は『ひめしょ!』ですね。私にとっては名作ですが、一般的な知名度は低い。グリザイアとかでまた名前が徐々に売れてきている藤崎竜太がシナリオを担当したSFコメディ。隕石が降り注いだせいで地球の形が変わってしまった未来の世界を舞台に、女装主人公が女学園に紛れ込んであれやこれや。メインキャラ全員が主人公の女装を知っているので女装ゲーとしてプレーするのはあまりオススメしないけど、「メイド=侍」理論など頭おかしい要素満載で楽しいです。コメントでも指摘されていますが、関西弁でまくしたてている「ポチ」は真ん中のピンク髪ではなく右側の犬耳っぽい髪の子(この画像だとわかりにくいけど)です。公式のキャラ紹介参照のこと。世代によっては「えっ? この人が?」と驚く方が声優をやっています。ちなみに名前が「ポチ」になっているのは人間ではない(遺伝子操作か何かで生み出された亜人というか獣人、人権も与えられていない)からで、正式名称は「朝霞七式」。七式は型番であり、「朝霞基地所属の備品」という501機関の義体みたいな扱いだったはず。センゴクの王族であるナナミが気に入ってメイドとして取り立てた、みたいな経緯でしたね確か。元は「カーシー」と称する特殊K-9(軍用犬)部隊にいましたが、獣人兵は高い身体能力を発揮する代わりオツムが弱く、遺伝子操作の負荷も影響して運用から数年で頭がパーになってしまう。つまり長持ちしない。ポチもポンコツ化して処分される間際だったような気がする。同僚はもうみんな死んでるんだっけ……『ひめしょ!』は基本的に明るい話なんですが、背景設定は結構暗かったり血腥かったりします。あとムエタイ選手が攻撃喰らって笑うのは痛そうな顔すると判定のときに減点されて不利になるから、って夢枕獏が言ってた。

・保利亮太の『ウォルテニア戦記(1〜4)』と井戸正善の『呼び出された殺戮者(1〜5)』読んだ。

 「小説家になろう」連載作品。巻数は似たようなものながら、ウォルテニアの連載開始が2009年、殺戮者の方が2014年からなのでスタート時期は5年くらいの開きがあります。7周年を迎えてもまだ連載が続いるウォルテニア、実は5年くらい前に「フェザー文庫」というレーベルで一度書籍化されたことがある。様々な事情から刊行中止になってしまい、その後縁あってHJの方で刊行し直すことになりました。前々から気になっていた作品ではあったが、この「刊行中止」のせいでどうしてもネガティブなイメージが拭えず、最近になるまで食指が動かなかったんです。「また途中で刊行が止まったりしたら……」という懸念、それが晴れるまで1年近く掛かった。今月に5巻が発売予定ということで、そろそろ打ち切りの心配もなくなっただろうとまとめ買いに至ったわけです。『呼び出された殺戮者』の方はもともと積んであったのをこのタイミングで崩しただけ。どちらも「現代日本の高校生が剣と魔法の異世界に召喚される」部分に関してはごくありふれたファンタジー小説ですが、「もし召喚されたのが勇者ではなくサイコパス気質の人物だったら……?」という点で類似作品と一線を画しています。『ウォルテニア戦記』の主人公「御子柴亮真」は聖マッスルな肉体と老け顔のせいで実年齢よりも若く見られることがないが、なんとまだ16歳。『呼び出された殺戮者』の「遠野一二三」は18歳で、こっちもイラストだと若干老け顔ですね。まだ10代のふたりが殺して殺して殺しまくる。

 『ウォルテニア戦記』と『呼び出された殺戮者』の共通点は「異世界側の都合で勝手に召喚されたことを主人公が激怒する」ってところです。御子柴亮真(以下、御子柴さん)は周囲を取り囲む兵士をブチ殺したうえで逃走する。遠野一二三(以下、一二三さん)は王様の首を刎ね飛ばした上で「殺れるもんなら殺ってみろ」と開き直る。ふたりとも、まるで現代日本じゃなくて大藪春彦の小説から召喚されたような容赦のなさです。殺すだけでなく、必要とあらば拷問までする。こんな連中がもしアニメ化されて地上波で流れたらBPOが憤死しそうだが、オルフェンズの三日月さんが日5で堂々とヤクザ並みの凶行を繰り返している現状を考えれば案外平気だったりする……? 「すげえよ、ミコは」とか「すげえよ、フミは」とか言い合っている世界線をつい想像してしまう。

 さておきこの二作品。違いを言うなら、御子柴さんは「暗いサイコパス」で、一二三さんは「明るいサイコパス」ってところかな。御子柴さんの行動原理はすごく単純で、まず「自分が生き延びること」、これが最優先です。自身の命を守ったうえで「身内」と認めた人間だけを救う。身内以外には徹底して厳しく当たる。これだけなら「サイコパス」というほどでもないのだが、見極めの早さと思い切りの良さが超高校生級で、本能的に「ヤバい」と感じたら迷わず相手をブッ殺してしまう。戦争に対する忌避感も薄く、乱乱乱世な異世界にあっさり適応しちゃいます。アレっぷりの最たるところはひたすら根に持つところというかトコトン恨み抜く性格ですね。御子柴さんは自分を陥れた相手に噴出させる憎しみの念が途轍もなく深く、偏執的なまでの復讐心を滾らせる様子がとても気持ち悪くて素晴らしい。正直、1巻目を読んだ時点では「ハズレを引いてしまった」と思った(文章も「今、彼の前に中世ヨーロッパ風の町並みが広がる」とかですし……)が、御子柴さんが良い意味で気持ち悪くなってくるにつれ、どんどん引き込まれていった。ヒロインが気を許すまでの過程をすっ飛ばしていたり、2巻でいきなり御子柴さんが交渉術の天才という扱いになったり、いろいろと強引な点が多く「異世界ファンタジー戦記」を期待して読むとガッカリな部分もあるが、ファンタジーなんてただの飾り、これはあくまで「御子柴さん傳説」なんだ! と割り切って読めば癖になる面白さが詰まっています。タイトルにもなっている「ウォルテニア」が何なのか分かるのは4巻ラストになってからで、そこまでは長大なプロローグに過ぎなかったと表現しても過言ではないはず。

 『呼び出された殺戮者』はなろうだともう連載が終了していて、現在は『よみがえる殺戮者』という続編をやっているところです。主人公が戦闘訓練を積んでいて人を殺すことに躊躇いがない、ってところは御子柴さんと一緒ですが、単に「降りかかる火の粉は払う」主義を掲げている御子柴さんと違って、一二三さんの方はなんというか「火の粉を降りかからせるためにわざわざ放火しにいく」ようなノリ。日本にいた頃から抑え難い殺人衝動を抱えていて、人権意識の低い異世界に来ることができてラッキー、でも俺を召喚して利用しようとした身勝手な野郎どもは殺す! と終始一貫して自己中心主義を発揮する。殺し合いが好きで好きでしょうがなくて、嬉々として乱世を招こうとします。とにかく一二三さんは好き放題やっていて楽しそうと言いますが、異世界殺伐ライフをエンジョイ&エキサイティングしてるんですよね。手負いの敵を回復させてわざと逃し「よーっしゃ! 久しぶりに走り込みだな!」と追いかけるシーンとか、ブラックジョークが行き過ぎてコワイを通り越しほのぼのとしてしまう。恨みがましさが一切なく溌剌と殺しまくるので、読んでいて爽やかささえ感じます。他の連中が「やべえよ、やべえよ……皆殺しだよ……」となっている中で一二三さんのみウッキウキだったりとか、和むわ〜。いきなり神様が出てくるなど手抜きに見えてしょうがない展開も一部存在するし、最新刊である5巻の展開はかなり強引だと感じたが、吹き荒れる殺戮の嵐でそのへんの「う〜ん」な気分もさっさと帳消しにしてくれる。一二三さんに心酔し過ぎてもはや一二三さんよりも頭がおかしく見えるヒロイン「オリガ」も可愛いです。

 まとめて消化したのはたまたまでしたが「もし御子柴さんと一二三さんが同じ異世界に召喚されたらどうなってしまうんだろうなぁ」と美味しい妄想が膨らむ読み合わせで至極満足しました。でも、買っていたのが1巻だけだったらどっちも2巻には手を伸ばしてなかっただろうな。ウォルテニアは御子柴さんの逃亡生活が本格化するあたりで終わりだし、殺戮者は話の途中でブツッと切れてるし。まとめて読んで正解だった。

・拍手レス。

 バトル・オブ・ザ・ネイションズを偶に見てた人間としてはヘヴィファイトが題材とされるのはちょっと嬉しかったりします
 ヘヴィファイトがジャンルとして定着するくらい盛り上がってほしいですね。


2016-11-07.

・絵柄が好みで注目していた『お嬢様の半分は恋愛で出来ています!』が女装潜入ゲーだったことに驚く焼津です、こんばんは。

 主人公は「巨大な裏組織のエージェント」で、ボスから「お嬢様学園に潜入し、至高の淑女の称号を獲得せよ」と命じられる……って設定が『恋する乙女と守護の楯』、特に2作目の『薔薇の聖母』ともろに被っているが、お嬢様の半分〜の方はあらすじ読んだだけだと「裏組織」が具体的に何を生業にしているところで、どんな思惑があってこんな任務を課したのかがまったくわからないな。全体的にすごくふわっとしている。シナリオに期待したらアカン奴なのか? とりあえず体験版待ちかな。

「少女騎士団×ナイトテイル」単行本1巻でました!(ジンガイマキョウ)

 甲冑を身に纏って激しくバトる騎士道競技「ヘヴィファイト」、迫りくる重圧の向こう側にあるものを掴み取ろうと足掻く少女たちのガチンコな青春を描いた漫画。半年ほど前に連載が始まった、全犬江ファン待望のオリジナル作品です。無論私も即買いました。好きな子はウメちゃんです。源平コンビもいいけどな……とにかく皆様も奮ってご購入せよ。まだ設定面では不明点も多いが篭もった面白さは今更私があーだこーだ書くまでもなく盤石であり、ついさっき知ったばかりという方には「さっさと買って読め」と述べるより他ない。正直、秘めたポテンシャルは「いずれアニメ化されるかも……?」とかいうレベルじゃないですからね。仮にアニメ化が決まったとしても私の感覚からすると「まだそこは通過点だな」ってところです。『ローラーガールズ・ダイアリー』よろしくハリウッド映画化の可能性も見据えている、なんて書くと大袈裟すぎて冗談にしか聞こえないかもしれません。そのへんは話半分に聞いていただいても結構ですから、まずは読んでもらいたい。成年向けで有名になったとはいえ、タッチや嗜好の原点に存在するのは少年漫画、熱い血潮の流れがあります。ただ冒頭で「えっちなおじさん」が出てきて痴漢を働いたりしているので、『ガールズ&パンツァー』とかに比べるとお色気の度合いは高めですね。さすがに『ワルキューレロマンツェ』ほどではないですが……1巻時点では馬上槍試合で言うところの一騎打ち(ジョスト)がメイン(大会も剣道みたいな形式の団体戦らしい)ながら、今後の展開によっては乱戦(メレー)というかサバゲーみたいな大規模戦闘もあるかもしれない。古城の周辺に全世界から数万の騎士が集まって戦旗乱立する『ゲーム・オブ・スローンズ』並みの騎士道大戦勃発! とかやったら面白そうだけど、ライトノベルならともかく漫画やアニメでそれをやったらスタッフから死人が出そう。ちなみに騎士道物語と言えば『ティラン・ロ・ブラン』(全4巻)の文庫化が始まったのでみんなこっちも買おう。他では『アイヴァンホー』もオススメしたいところだけれど如何せん訳が古くて読みづらい……青い鳥文庫の翻訳版が比較的新しいものの、こちらは抄訳だし。求む新完訳版。

【雑誌情報】てぃ〜ぐる新作「隣の少女(仮)」詳細。原画:トモセシュンサク、シナリオ:衣笠彰悟 で2017年発売予定(つでぱふ!)

 リンク先タイトルはママ(正しくは衣笠彰「梧」)。それにしても『隣の家の少女』を彷彿とさせるタイトルでビクッとしてしまう。あらすじからすると『暁の護衛』よりこんぼくに近い路線? 暁以降ずっと衣笠トモセコンビで来ているけど、久々に有葉原画の作品も見たいな。

・鷹山誠一の『魔王殺しの竜騎士(1〜2)』読んだ。

 竜に跨り空を翔ぶドラゴンライダーの活躍を描いた小説。竜騎士モノは海外だと『パーンの竜騎士』が有名だし、『ヒックとドラゴン』『エラゴン』など映像化している作品もありますが、ジャンルとしてはややマイナーか。『百錬の覇王と聖約の戦乙女』の作者が「小説家になろう」で連載していた作品を書籍化したものです。巻数表記は「1・2」となっていますが、完結済なので「上・下」とした方が適切かも。1巻の本編は「強敵現る!」ってところで終わっているし、一冊ずつではなくまとめて一気に読むことをオススメします。

 一言で書けば「いかにもライトノベル的な異世界ファンタジー」だが、いくつか特徴があるので順々に説明していこう。人類軍と魔王軍との戦争が果てしなく続いていて云々という「よくある設定」を背景にしつつ、なんと魔王との戦いはプロローグの数ページだけで終わってしまう。倒しているからソードマスターより、ずっとはやい!! 本書は「魔王との戦いが終わって人の世に平和が訪れた後の時代」が舞台になっており、途中で魔王が復活したりとかはしません。一応、「別の大陸にはまだ魔族勢力が残存している」ということになっていて、関連作によって話を広げていくことも不可能ではないが、少なくともこの作品に限れば魔族との戦いは「過去にあったこと」、つまり歴史の一部であり現在進行形ではないってことです。戦争終結から38年が経過し、「魔王の脅威を知らない世代」が活躍する頃になって、とうに戦死したと思われた「魔王殺し」の勇者が再臨する――そんな「新たな伝説のはじまり」を綴る物語となっている。

 主人公は「ランス・スカイウォーカー」と名乗っていますが、これは偽名であり、本名は「ランスロット・オークニー」。38年前に魔王を討ち取った救世の英雄です。魔王は首を刎ね飛ばされながらも最後の力を振り絞って、どっか異次元みたいな場所へ繋がるワープゲートにランスロットを呑み込ませました。咄嗟に魔剣アロンダイトでワープゲートを切り裂いたランスロットは異次元行きこそ免れたものの、元の時代には戻れず未来世界でプチ浦島状態になってしまう。英雄たる業績を一旦リセットされた彼が「第二の冒険」として繰り出した先、それは「ドラゴンレーシング」という貴族たちの威信と平民たちの射幸心が絡み合う公営ギャンブルだったのです。

 このドラゴンレーシングは競馬の馬を竜に置き換えたようなもので、言えなれば「競竜」です。戦時中は竜に騎乗する兵士として活躍した主人公が、今度は競争の世界で天辺目指そうと無双街道を驀進していきます。『装甲悪鬼村正』をやったことがある人には「第三編 逆襲騎」みたいなノリだ、と言えば分かりやすいかな。戦争中は並ぶ者なき至高の竜騎士とされた主人公も、ただひたすらスピードを競うドラゴンレーシングは勝手の違うフィールドであり、「果たして強敵たちを凌ぐことができるのか?」というスリルが生まれます。基本的なノリはスポーツ小説のそれであり、多少の妨害工作こそあるものの「真性のゲス」とか「吐き気を催す邪悪」とかは出てこず、全体として爽やかな空気が保たれています。なんと言いますかこう、メチャクチャ続きが気になるって話じゃないんですが、心地良く読めるせいでやめ時がなかなか見つからず、つい最後まで読んでしまうってタイプの一品だ。ラブロマンスの面もメインヒロインほぼ一人に絞った構成となっていてダラダラ感がなく、微笑ましい。派手さや奇抜さこそないが「サラッと読めるファンタジー」のお手本と言い切りたくなります。

 長年魔族の奴隷としてその支配に苦しめられてきた人類が、竜を手懐けることによって遂には魔王すら打倒するに至った、という美味しい歴史設定があるだけに「もっと話を膨らませてほしかったな」という気持ちも正直ある。巻末の番外編でほんの少しだけ補完されているが、うーん、やっぱこれだけで終わるのはちょっともったいないよなぁ。なろうの方には同一世界を舞台にした「空に憧れ38年、転生したので竜騎士を志した。」って作品もあるが、ここ10ヶ月くらい更新されていなくて完結するのかどうか怪しい気配……ちなみにこれ、作品世界が一緒どころか「ハッキリ名前は書いてないけど、これって明らかにあの人だよね」というキャラが何人か出てきます。ただタイトルで知れる通り主人公が転生キャラ(「パイロットになりたい」という夢が破れてサラリーマンになるも、38歳で事故死、気づけば異世界の5歳児)になっているので、『魔王殺しの竜騎士』のイメージで読み出すと「何か違う」「コレジャナイ」って表情を強張らせることになるかも。内容も、つまらないと言うほどではないにしろ淡々としすぎで盛り上がりに欠け、一段落ちる出来だ。仮に書籍化するとしても相当手を入れないとアカン奴じゃないかしら。

 結論。多少物足りない部分もあるにせよ、「竜を駆ってレーシング」というロマンのある題材をソフトカバー2冊の分量にキチンと落とし込んでいて好感が持てる作品だった。続編は難しいだろうけど、同一世界の関連作はどんどんやってほしい。「空に憧れ38年、転生したので竜騎士を志した。」は書籍化の際に転生要素を抜いてもいいかも。そうなると今度は別の売りや特徴を付加しないといけなくなるかな? 学園要素と、あとはヒロイン二人の三角関係を強調していけばあるいは……差し当たっては『百錬の覇王と聖約の戦乙女』の方に注力して欲しい、ってのも本音ですけどね。あっちも今かなり面白くなってきているところですから。あと本書でドラゴンライダー物に関心を持った人には『テメレア戦記』という海外ファンタジーもオススメ。「ナポレオン戦争の頃にもし航空戦力として竜が両軍に存在していたら?」というifを描く。ピーター・ジャクソン(『ブレインデッド』『ロード・オブ・ザ・リング』の監督)が映画化するって話もあったけど、今のところ実現しそうな雰囲気はないな……。



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