2016年9月〜10月


2016-10-30.

FrontWing新作は「グリザイア:ファントムトリガー」。原画:渡辺明夫、シナリオ:藤崎竜太 で第1弾・第2弾は2017年春発売予定(つでぱふ!)

 ストーリーに「美浜学園」の文字列があるくらいだから既存のグリザイアシリーズとも繋がりはあるみたいだが、主要キャラ一新で話としては独立している感じですね。「18禁要素なし」「分売方式」の2つに萎えたものの、「シナリオが藤崎竜太ピン」「渡辺明夫単独原画」「内田真礼など著名な声優陣」の3点で結局「買うしかない」という結論。しかし、藤崎竜太がピンでシナリオ書くのなんていつ以来ですっけ……この人、基本的に複数ライター制のソフトばっかり手掛けてますし。厳密に考えれば2008年の『つくして!? Myシスターズ』が最後だけど、ドラクリウスの移植版に当たる『吸血奇譚ムーンタイズ』はおまけのサブルート除いて本編のほとんどを藤崎が執筆しているはずなので、実質これが最後だったと言えるかもしれない。発売時期ほぼ一緒だし、どっちにしても8年以上経ってますな。「ドラクリウス(およびムーンタイズ)でやりたいことはだいたいやったから、以降はメインを張らずサブに回る」と語ってファンを寂しがらせた藤崎が名実ともに遂にピンライターとして復帰か。名前を認識したのが2002年の『魔女のお茶会』からで、2003年の『ゆきうた』をキッカケに注目し始め、2005年の『ひめしょ!』でハマったファンとしては実に感慨深い。キャストから察するにアニメ化含みの企画? 「分売方式」という点に不安が募るものの、詳報に期待しよう。

 さて。「なんだかんだで結局グリザイア頼りかよ、情けない」という冷めた意見をお持ちの方もおられるでしょうが……ぶっちゃけ、私はフロントウィングが新作発表を仄めかしていた頃からずっと「グリザイア関連の新作来てくれ!」と願っておりました。これで18禁フルプライス作品だったら手放しで欣喜雀躍していたところです。せめて分売方式じゃなければなぁ……ともあれ、面白ければ許します。

・年中麦茶太郎の『剣士を目指して入学したのに魔法適性9999なんですけど!?』読んだ。

「前衛はいいぞ」

 書き出しの一文がコレなので「ふざけてるの?」と問い質したくなったが、グッと堪えて読み続けるとだんだん面白くなっていった。本書は「小説家になろう」連載作品を書籍化したものです。6月に連載を開始し、7月に書籍化が決まって、10月にはもう刊行されているというハイスピードぶり。人気次第では来年あたり「アニメ化決定!」の報が流れていてもおかしくはない。そう感じさせるだけのポテンシャルは覗かせています。ツッコミどころや粗も多く、「主人公が最強すぎて単調」という感想も出てくるだろうが、個人的には「是非とも続きが読みたい、早く早く!」と急かしたくなる魅力が詰まっていました。なんだかんだで私、こういうのは嫌いじゃないです。

 さて、ぶっちゃけると本書はウルトラスーパー特別な主人公が隔絶した強さを見せつける、俗に言う「無双系」のファンタジーです。無双系は「俺TUEEEE!系」とも呼ばれるが、本書の主人公は幼女(9歳)なので「俺」のイメージからはだいぶ離れている。剣士の父と槍使いの母、ゴリゴリの前衛職ふたりを両親に持ち、物心をつく前から「前衛はいいぞ」と囁かれ続けた結果、「剣士以外のジョブは考えられない」状態に仕上がりつつあるローラ・エドモンズはしかし、有史以来最強クラスの魔法適性「9999」を有する極めつけのド天才だった――というヒッジョーにわっかりやすい設定でお送りします。あ、この世界では才能を数値化する装置がなぜかあって、たとえば「剣の適性」が50以上あればそれなりの剣士としてやっていける、みたいな判断の指標の一つとして利用されています。適性値はあくまで「才能を数値化したもの」に過ぎず、慢心したり訓練を怠ったりすれば上位の適性値を持った者が下位の適性値しかない者に凌駕されることもありえます。しかし、それは数値がある程度近い場合であって、あまりにもかけ離れていると下克上を果たすのは難しくなる。ほとんどの生徒は適性値が二桁で、三桁が出ることも稀です。だというのに主人公は四桁……しかも「9999」は装置の測定上限値であって、実際は五桁以上に達している可能性が濃厚だという。もはやバカバカしいまでの底知れなさです。

 ただ、「主人公の能力が最強クラス」という設定自体はライトノベルだとそんなに珍しくはないです。本書の面白いところは、前衛職である剣士を熱望している主人公がその才能ゆえに魔法学科へ回されてしまう「不本意な展開」ですね。主人公は魔法の才能がズバ抜けているけど、剣の適性が「107」、槍の適性が「99」で、前衛としても充分に天才クラスではあるんです。しかし魔法の才に比べると1/100程度なのであって、前衛としては「なんだ、ただの天才か」という域に留まる。当然の如く周囲は「もったいない!」と魔法学科を勧めてくる。「戦いたくない、穏やかに過ごしたいのに、才能があるせいで魔法を習うことに……」みたいなよくある不本意パターンと異なり、戦うこと自体はまったく厭っていない。むしろやる気満々と言っていい。魔法嫌いの父親に育てられたせいで忌避感が拭えず、イヤイヤながら魔法学科に向かっていく、このままならなさが本書に程良い喜劇の風味を与えています。展開が早いのも本書が持つ特徴の一つで、主人公の「魔法嫌い」は割とあっさり克服され、すぐに年上の生徒たちとキャッキャウフフな日常をエンジョイする百合百合しい展開に入っていきます。いえ百合と言ってもそんなにガチなアレじゃないです。なにぶん主人公の年齢が9歳なので、全編通してラブロマンス的な雰囲気は一切ありません。超越的な才能を持ちつつも根は努力家で、友達とも仲良くしたいと思っている健気な子ですから、仲睦まじく日々を過ごす様子に頬が緩みます。

 学園内イベントやお出かけイベントを消化してから後半の目玉となる「校内トーナメント」が始まりますが、メインキャラを絞っているせいもあって進行が異様なほどスピーディであり、なんとたった60ページくらいで終わってしまう。かったるさがないのは良いことだけど、さすがにもうちょっとじっくり読ませてほしかったかな……前半もややダイジェスト気味ではありましたが、後半の端折りっぷりは尋常じゃない。基本部分が面白いだけに「読み足りなさ」が残るのはやっぱり不満かな。一段組ソフトカバー260ページのボリュームで1200円(税抜)、という価格設定が本書最大の問題点と言えるかもしれない。通販で買いましたけど、届いたとき真っ先に口をついて出た言葉が「薄っ!」でしたからね。こないだの即死チートが同額で380ページもあったことを考えると割高感は否めない。読んで楽しめたから「まあいいか」ではありますが、人に薦めるのは少し躊躇われる。いや、いいか。「コスパなんて気にしねえぜ!」って断言できる豪儀なアナタにだけオススメしておきましょう。

 物凄い魔法の才能を秘めた少女が存分にそれを開花させていく、という点では『スクランブル・ウィザード』と重なる部分もある。あれは「教師(主人公)との仄かなロマンス」をスパイスにしていたから読み口はまったく異なるが、いかに「無双」の存在といえどもただ一人でその場所に立っているわけではない、何かしら支えてくれる人たちがいる――そうしたところに繋がりというか通じるものを感じます。下手すると世界すら滅ぼしかねない(気がする)能力を持った主人公が、大過なく9歳まで育つことができたのは「魔法嫌いの父」という重石によって「魔法の濫用や暴走」が防がれていたからだ、なんて見方をすることも可能ですし。まぁ適性9999の子が冒険者学園に入学するまで誰からも注目されず野に潜んでいた、って設定は無理がある気もしますが……いんだけよ細けえことは! そんなこと言い出したら「9歳の女の子が首を斬り落とす勢いで迫って来る大剣を魔法も使わずいともあっさり防御する」シーンなんかも大概ムチャクチャですし。ツッコミどころは果敢に見過ごしていくべき。主人公の最強ぶりが「主人公自身も困惑する域」に達しているなど、有り余る無双感がコメディ要因として駆動している箇所も含めて愛敬のある話だな、と思いました。ホントにそのうちアニメ化しそう。発売直後に重版決定したくらいだから少なくとも当分打ち切りはないはずです。

・拍手レス。

 即死チート、普通に狙撃とかで暗殺されそうなんだが。
 相手の殺意を探知すればたとえ視界外でも就寝中でも発動可能ゆえスナイパー系は撃つ前に即死するという究極のチート。


2016-10-23.

生徒会の一存などで知られる作者のラノベ「ゲーマーズ」のアニメ化が決定!(まとレーベル@ラノベ新刊情報サイト)

 来ると思ってました。『ゲーマーズ!』はゲームをこよなく愛好する少年少女の青春を半ば群像劇に近い手法で描く学園ラブコメです。マスコットのでじこ(デ・ジ・キャラット)が有名なショップ「ゲーマーズ」とは関係ない。作者の葵せきなは『生徒会の一存』を手掛けたことで知られるが、一存の前に『マテリアルゴースト』という幽霊モノを、一存の後に『ぼくのゆうしゃ』という異世界転生ファンタジーをやっていたので、『ゲーマーズ!』は4番目のシリーズということになります。刊行当初(2015年3月)から評判が良く、口コミで人気が広まっていった。「ファンタジアは弾不足だし、これもアニメ化有力候補だろう」と囁かれていたから、今回のニュースで驚いているファンは少ないかもしれません。既刊だけで5冊、来月に6巻目が発売予定で1クールなら余裕、2クールでも何とか……というストックがあります。

 軽く解説。『ゲーマーズ!』の舞台となるのは「音吹高校」、碧陽学園の近くに存在するという設定だから『生徒会の一存』世界とも繋がっているが、一存の方を読んでいないと人間関係がわかりにくい、なんてことは一切ない。あくまで小ネタレベルに留まっている。前述した通りゲーム好きの少年少女がたくさん登場するものの、『ハイスコアガール』みたいに実在のゲーム名が次々と出てくるわけではなく、それっぽい架空のゲーム名で凌ぐタイプの話になっています、つまり、ゲームそのものについて書くことが目的なのではない。「ゲームに夢中になっている人たちの嗜好や価値観の違い」そして「人間関係のもつれ」を紡ぐことが本シリーズの狙いと言える。この手のゲーム物(コンピューターゲームに限らず、スポーツ類も含めて)でありがちな「無駄を排除して攻略に真剣に取り組んでいるガチ勢の方が偉い、『楽しければ下手でも非効率でもいい』みたいな向上心に欠けるエンジョイ勢はヌルい」っていう「勝ち・オア・ダイ」なガチ勢至上主義めいた考えに違和感を覚える人だったら楽しめると思います。少年漫画的な価値観を良い意味で脱臼させていく。複数のカップルの恋愛事情が錯綜するあたりは少年漫画というより少女漫画のノリかな。たぶん、ほとんどの人が「あれ? 読む前に抱いていたイメージと違う!」ってふうに驚くでしょう。

 しかし、『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』、『ゲーマーズ!』、そして『グランクレスト戦記』までアニメ化が決まったとなると再来年あたり富士見の弾不足はいよいよ深刻になりそう……残りはもう『いずれ神話の放課後戦争』くらいか? 『アサシンズプライド』『非オタの彼女が俺の持ってるエロゲに興味津々なんだが……』など、新作勢がもうちょっと伸長すればあるいは、ってところ。新鋭や中堅はあれども看板級が少ない、それが富士見。文庫系としては五指に入るレーベルとはいえ、そろそろキラータイトルとなるようなシリーズが現れないと先行き不安である。

ラノベ作家「とある講義で『ラノベと名のつくものは絶対に書きたくない』という男の子に「じゃあどんなのが理想なの」と聞いたら『君の名は。』だと答えられた」(まとレーベル@ラノベ新刊情報サイト)

 この話の面白いところは、新海誠本人がインタビュー『小説 君の名は』について「意図的に変え、ライトノベルのレーベルのつもりで書きました」と語っているところ。新海誠の持つ「ライトノベルのイメージ」が、彼の新しいファン層が持つ「ライトノベルのイメージ」と乖離してきている、という点では興味深い現象と言えます。

・藤孝剛志の『即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。1』読んだ。

 長文系タイトルが流行る前だったら『直死の魔王』みたいな題名だったろうな、と思ってしまう一品。正直、「タイトル見ただけで読む気なくすわ」とおっしゃる方もおられるでしょう。ワシもじゃ、ワシもじゃみんな! 作者が『姉ちゃんは中二病』の藤孝剛志でなければガンスルーしていたこと間違いなしです。私、姉中が大好きなんですが、あれについて語っていると長くなってしまって本題を言及するのがダルくなってしまうから割愛します。『即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。』、長すぎるから以降は「即死チート」と略しますが、タイトルでお分かりの通り異世界を舞台にしたファンタジー小説となっている。主人公は男子高校生で、「賢者」と名乗る存在によって日本から異世界に召喚された――と、このへんの設定に関しては何の新味もないので聞いていても「ふーん」って感じでしょう。召喚されたのは主人公だけではなく修学旅行のバスごと、つまりひとクラス丸々召喚された――というのもそんなに珍しくはないので「へえ」って受け流されるかもしれません。本書が独自性を発揮するのはその先。異世界に着いて早々、『バトルロワイアル』並みに人が死にまくるのです。

 まずベースとなる設定をちょこっと解説しておこう。主人公たちを呼び出した「賢者」、これも元を辿ると日本人です。異世界において日本人は時折物凄い才能を開花させる(当然のように個人差はある)民族として知られていて、その中でも特に際立った存在を賢者と呼んでいる。際立った存在なので絶対数はそんなに多くなく、欠員が出た場合に備えて「賢者候補生」を常に補充しておかないといけない。そんな理由で主人公たちは元日本人たる賢者によって召喚されたわけですが、どうも召喚魔法は割と簡単に使えるらしく、「ダメだったらまた別の連中を召喚すればいいや」程度の感覚で接してくる。引率の教師や運転手は用無しとばかりに速攻でブチ殺すし、スキルに目覚める高校生たちも従わないのであれば無力化して家畜にしても構わないとすら割り切っています。そんな非常に殺伐とした状況下で戦詩(バトルソング)という異能発揮システムを強制的にインストールされた高校生たちは、異世界召喚お約束の特殊スキルを発動させられるようになりますが、中にはシステムのインストールに失敗して「無能力者」となってしまう者もいる。主人公の高遠夜霧とヒロインの壇ノ浦知千佳は無能力者としてあっさり切り捨てられ、さあこれからどうなってしまうのか……という場面より物語は始まるわけです。

 バトルソングをインストールされると好戦的になって殺戮の忌避感が麻痺してしまう、っていう一応のエクスキューズはありますが、それにしたって普通の高校生だったはずの奴らがあっさり異世界に順応しすぎだろ! みたいな気持ちが湧き起こることは防げない。とにかく殺したり殺されたりで、ひたすら人が死にまくる。世紀末も真っ青な人心荒廃ぶり。上で『バトルロワイアル』を喩えに挙げましたが、あれは孤島が舞台だったから被害はごくごく限られたものでしたけど、こっちは街とかも出てきますからね……半端ない数の死体が転がります。菊地秀行の伝奇バイオレンス級にモブが惨死を遂げていく。他のクラスメイトたちは身に付いたスキルを活用しながらどうにか生き延びていきますが、主人公とヒロインは無能力者なので危機に晒されれば成す術もなく絶体絶命に……なるかと思いきや、ここで一つの事実が明らかになる。そう、もうだいたいお察しかもしれませんが、主人公は異世界に来る前の時点で既に「殺したい相手を即死させることができる」呪いじみた未知のパワーを所持していたのです。バトルソングのシステムとは無関係に成立しているスキルのため、これをステータスの分析等で知ったり、アンチスキルで対抗したりすることは不可能。「死ね」と命じられたら、一切抵抗の手段はなく、対象は死なねばならない。無機物だろうと現象だろうと、それが動いていて「生きている」と主人公が感じるものなら殺してしまえる。絶対的な生殺与奪権、正真正銘のチート能力です。

 身も蓋もない言い切り方をすると「ラノベ版『ワンパンマン』」。たとえ相手が賢者であってもあっという間に即死する。バトルの妙味もクソもなく、いきなりポックリ逝きます。殺される相手は「クラスの女子を奴隷にして慰み者にしようとしたゲス」とか「強力なパワーに酔って面白半分で一般人を虐殺するクズ」とか、「そりゃ殺されたって仕方ねーわな」と同情の余地なしな連中が多いものの、主人公があまりにも躊躇なく能力を行使するので、その点を「酷薄」と見るか「見極めが早い」と見做すかで評価が分かれそう。「近づくな」と告げて、相手が近づいてきたら二度目の警告なしで即座に殺害、みたいな調子が最後まで続きますから。能力が能力だけに「殺すか/殺さないか」、主人公が取れる選択肢は0と1しかない。身体を部分的に殺すことで絶命を回避させることも可能っちゃ可能だが、能力を制御しようとすると余分に疲れるため結局「殺した方が手っ取り早い」という結論になる。凶悪なまでの最強さながら「加減が難しい、というかほぼ無理」って欠点は拭い去りようがなく、主人公は屍の山を積み上げてしまってどんどん恐れられるようになっていきます。自分とヒロインの身を護ることが彼にとっての最優先事項であり、「殺そうとする奴は殺し返されても文句言えないだろ」が基本スタンスなんですが、中には「ただ操られているだけの人」もいるんですよね。そういう相手であっても殺意を向けられたら迷わずキルしちゃうため、付いていけないものを感じる人も少なくないはずです。「クソッ……人殺しなんて……でも……!」みたいな主人公の葛藤がいつまでもダラダラと続くタイプにイライラする人は「話が早い!」とむしろ喜ぶかもしれませんが。章分けがとても細かく短いと一つにつき6ページ、長くても十数ページしかないので、実際話はすごく早いです。藤孝の作風を知らない人が読むと「ヤケクソなのか?」って疑うほど爆速で雪だるま式に話が膨らみ、そして雪崩式で一気に話が広がっていく。良くも悪くも無茶苦茶な勢いに満ちた作品です。

 藤孝剛志の文章は淡白かつ簡素で、書き込みも最小限に抑えているからスピード感は抜群ですが、代償として生活感や臨場感は根こそぎ失われている。異世界で暮らしている人々がただの書割に見えてしょうがない。「感情移入」や「共感」を軸にして読む人は取っ掛かりのなさに驚くを通り越して呆れ返るでしょう。少なくとも、「異世界召喚モノはほとんど読んだことがない」って方にはオススメしかねますね。異世界召喚モノの常道を踏み台にして話を組み上げている部分もあり、「ありきたりの召喚モノには飽きてしまった」という人向け。ゲテモノとまでは言いませんが、こりゃ相当な珍味です。即死チート、1巻は「主人公の能力が知られていないためチョーシこいた連中が突っかかってきて無駄な争いが起こり、一瞬で強制終了させられる」の繰り返しがパターンとなっていましたが、2巻以降はその能力が知れ渡った後の異世界を描くそうで、本番はここからとのこと。真っ向からぶつかっても勝ち目なさそうだから、敵側も搦め手に切り換えていくのかな? 何はともあれ楽しみ。

・拍手レス。

 サンファン公式サイトの赤髪キャラは西川貴教氏がモデルの人形だそうでw もしご本人がCVを務めるとしたら……(察し)
 大量のアニキ萌えが発生してしまう……?

 Thunderbolt Fantasy面白かったですよね、アクションもさることながら殤不患を始めとしたキャラクターの見得の切り方が台詞と相まってすごくかっこよかったと思います。
 >公式サイトに表示される赤髪のキャラが新ヒロインか アレは西川貴教モチーフの人形なのだ…女ですらないのだ…

 見得の切り方には最初引っ掛かるものがあったけど、次第に慣れて終わる頃には癖になっていました。しかし西川貴教モチーフの人形だったとは……歌声だけで雑魚敵を爆発させそう。

 魔法少女育成計画は見てますか?このラノ文庫の柱というか看板というか唯一の弾というかで、まどマギにみせかけた山風忍法帳だとか言われてますが
 宝島社はソフトカバーを主力にする方針みたいで、文庫の方は実質まほいく専門レーベルと化しましたね。原作から先に読むかアニメから入るか迷っているところです。とりあえず1話の前半くらいまでは観ましたが……。


2016-10-16.

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』全13話を一気観した焼津です、こんばんは。

 面白かった! 虚淵玄は好きだし武侠モノにも興味があったけれど、布袋戯(台湾の人形劇)という馴染みのない形式に一抹の不安があったことも確かだった。しかし、いざ観てみると違和感はすぐに消し飛んだ。戦闘シーンの動きとエフェクトが激しすぎて「何が起こってるのかよくわからない」と戸惑う部分こそあったものの、まったく退屈することなく全13話、まとめて5時間ほどの内容を貪るように視聴しました。「一週間ごとに観ていたらこのへんでダレていたかもな」って部分もあり、一気観して正解だったなと。観る前は5時間も集中力が続くかどうか不安だったけれど、観終わってみるとむしろ「5時間じゃ短い!」って気持ちになりましたね。アニメよりドラマに近い感覚。1話あたり45分は欲しかったな、というのが偽りなき心境です。

 王道的な熱血冒険アクション路線かと思いきや、結構クセのある連中揃いで後半のストーリーがどう転がるかハラハラしながら臨むことができた。殺無生の剣鬼ぶり、丹翡ちゃんの可憐さは特に心へ響く。「玄鬼宗いくら何でも弱すぎ」問題を除けばあまり不満らしい不満もない。玄鬼宗というか獵魅ちゃん(戸松遥がCVやってた子)だな……OPで期待していたらあの体たらくという。最終話は駆け足気味と言えば駆け足気味だが、あれくらいサクッと終わってくれると気持ちいいですね。まだまだ話は続けられそうだし、この勢いを保ったまま2期なり何なりに繋げてほしい。公式サイトに表示される赤髪のキャラが新ヒロインか?

黒川博行の最新刊『喧嘩』、12月9日発売予定

 なんやて!? 予想外の速さに魂消た。この『喧嘩』、黒川ファンには「“疫病神”シリーズの新作」だけで通じるでしょうが、「黒川? ああ、『後妻業の女』の原作書いた人か」くらいの認識しか持っていない方はピンと来ないかもしれません。直木賞を獲った、今度映画化される『破門』の続編、と書いた方がいっそわかりやすいだろうか。『破門』自体が“疫病神”シリーズの5作目なので、『喧嘩』はシリーズ6作目に当たりますね。“疫病神”シリーズは経営コンサルタントの二宮とヤクザの桑原が毎度毎度騒動に巻き込まれる凸凹コンビ物。1997年刊行の『疫病神』から始まりました。二宮本人はカタギですが父親が有名な極道だったため、桑原みたいなロクデナシとつるむ運命に放り込まれる。切っても切れない腐れ縁で、互いを互いに疫病神と認識していることからこのタイトルが来ている。その後、2001年の『国境』、2005年の『暗礁』、2009年の『螻蛄』と来て2014年の『破門』に繋がるわけですが、並べてみりゃ一目瞭然、だいたい4年に一度の周期で新作が刊行されているんです。だから6作目は早くても2017年に入ってからだろう、と考えていましたが、まさか年内に間に合うとはな。前作からの間は2年10ヶ月、過去最短です。直木賞&映画化で加速装置が付いたのかしら。ともあれ喜ばしいことには間違いない。基本的に一話完結のシリーズなのでどこから読み始めてもOKですが、やはり順番通り『疫病神』から読み出すか、あるいは「北朝鮮に密入国したふたりがあれやこれやの末に国境破りに挑む」異色作の『国境』あたりから挑んでほしいものです。『暗礁』(ふたりが沖縄に行く話)を一発目として読むのは微妙ですし……そういえば風の噂によると疫病神コンビは一部の腐女子にも人気があるのだとか。思わず「儲け話と見込んでBL界に分け入っていく二宮と桑原」を想像してしまった。タイトルは無論『菊門』。

Lass新作「Liber_7 永劫の終わりを待つ君へ」が発売延期。10月28日から12月22日発売予定に(つでぱふ!)

 恐らくこうなるだろうと思って予約は入れておきませんでした。ハイクオやfengほどではないにしろ、Lassも結構な延期界の猛者ですからね。おさおさ怠りなく構えていました。仮に買うとしても発売後だろうな……。

feng新作「学校のセイイキ」が発売延期。10月28日から11月25日発売予定に(つでぱふ!)

 恐らくこうなるだろうと(以下略)。fengにとってはこの程度ジャブみたいなもんですわ。いちいち驚いていたら身が持たない。むしろ延期しなかった『彼女のセイイキ』こそ驚愕に値したと断じても過言ではない。ホント、浜の真砂は尽きるとも世に延期の種は尽きまじ。

・佐藤ケイの『剣と炎のディアスフェルド』読んだ。

 「佐藤ケイだって? 久々にその名前を見たわ」とさりげなく驚く方もおられるだろう。「萌え系のお約束」を逆手に取った『天国に涙はいらない』でデビューしたのが2001年、月日は流れ今年で15周年を迎えたぶっちゃけややマイナーな作家・佐藤ケイ。その代表作は単発読切作品『LAST KISS』および最長のシリーズ作品『私立!三十三間堂学院』とされていたが、ここに新たな記念碑として『剣と炎のディアスフェルド』が加わることになるかもしれません。平たく書けば、異世界を舞台にしたハイ・ファンタジーです。これがもう問答無用の面白さですので、できれば以下の紹介文を読まずにさっさと書店へ駆け込んで欲しい。「うーん、そう言われてもまだ食指が動かないな」って人だけ読み進めてください。

 まずこの世界に大陸がありまして、タイトルにもなっている「ディアスフェルド」は大陸西部を指す地名となっています。西側を大海に、東側を峻険な山々に守られて大陸中央からの侵入を防ぎ、独自の文化を築きながら60個くらいの小国が犇めき合っている。そんな群雄割拠の地域。しかし大陸中央のアルキラン共和国――全大陸の三分の一を占める超大国が天然資源目当てで遂に攻め込んできた! 連中は髑髏を模した兜とか被っていて恐ろしく悪そう! 国境を接するイアンマッド王国は真っ先に攻め込まれ、お隣のハイアッド王国と協力しながら立ち向かっていったものの、国土の半分以上を奪われてしまいボロボロの惨状。しかし彼らが善戦したためアルキラン側の将が予想以上に戦死し、国内で厭戦気分が高まってアルキラン議会は「休戦すべし」の結論を出した。共和国が突き付けた停戦の条件は主に二つ。「ぶんどった土地はワイらのモンや! 絶対に返さへんで!」そして「ハイアッドの王子フィーリを人質として寄越せ!」 さすがに隣国の王子を勝手に人質にするわけにはいかないと判断し、イアンマッドの第一王子ルスタットが身代わりとして大陸中央へ赴くことになる。かくして残された第二王子レオームは兄の不在分を何が何でも埋め合わせようと決意するが、彼が想像するよりも遥かに急速にイアンマッドの威信は失われつつあった……。

 「二人の王子」という序章が60ページほど続いた後、物語はレオーム編とも言うべき第一部「レオーム王の即位」とルスタット編に相当する第二部「ルスタット王子の冒険」に枝分かれします。時系列的にはほぼ同時進行ながら、雰囲気がガラッと変わる。全体が400ページ弱ありますし、それこそ薄めのライトノベル2冊を一気に読破するような恍惚感がある。レオーム編は次代のイアンマッド王と目されていたルスタット王子がいなくなってしまったせいでグラつき始めているイアンマッドの不安定な様子を粛々と描いており、だいぶ切り詰められてはいるもののレオームの日常がチラッと覗いたりします。程好い緊張と弛緩。しかし、100ページくらい進んだところでストーリーは猛烈に転がり出し、ロードス島の水野良(帯に推薦文を書いています)もぶったまげるような展開を迎える。内容的にはまったく正反対だけど、『マッドネス』のタイトルはこちらの方が相応しいんじゃないかと思ってしまう。一方のルスタット編は清々しい騎士道英雄譚といった趣で、ややダイジェスト気味ながら「ディアスフェルドとアルキナンの文化的な違い」を掘り下げることで本全体の読み応えを底上げしています。「ディアスフェルドからの客将」という扱いで遇されたルスタットが各地でどんどんトラブルを解決していく展開が痛快です。血塗られた覇道を踏みしだく弟と、高潔なる騎士道を歩みゆく兄。ふたりの物語はまだ交叉せず混じり合わないが、それぞれ面白く、「ひと粒で二度美味しい」を地で行っている。

 ルスタットは刃物で切り付けられても平気な不死身の体を持っている、などやや超常的な要素が入っているという意味での「ファンタジー」作品ですが、軽い神話・伝承クラスのレベルに留まっていて、たとえば「剣を振るうだけで真空波が生じ、遠くの敵の首が飛ぶ」みたいなのはさすがにありません。あくまで雰囲気を損なわない程度の超常要素であり、厨二要素薄めのクラシック・スタイルが基調となっています。で、本書はムード的に戦記モノですがなにぶん序章の時点で休戦協定が結ばれているため、本格的な「大軍同士のぶつかり合い」は序章以降にはありません。まだまだ仕込みの段階。たぶん次からはもっとどんどん戦記モノっぽくなっていくんじゃないかな。休戦ったって、明らかにアルキランは侵攻を諦める気ゼロですからね。他方、ディアスフェルド側はアルキランを恐れて戦いに参加ししようとしない国が多く、そういう連中をどうにか説得しておかないと再侵攻されたときに打つ手がない。たとえどんな手段を使ってでも、周囲の国々を戦列に加えねばならない――レオームの苦難に満ちた覇道の行く末や如何に。

 「話はここで再び、ディアスフェルドのレオームに戻る」の一文で締め括られていますので、2巻目の刊行はほぼ内定していると見て間違いないでしょう。よっぽど売上が悪かったとかでもないかぎり、きっと出るはずです。「佐藤ケイが本格ファンタジーねぇ……とりあえず買ってみるか」程度のノリで購入しましたが、よもやここまで興奮できる一品だとは想像しておらず不意を衝かれました。サラリとしていてグサリと来る。これからいったいどうなっていくのか。言いたいことはただ一つ。「打ち切りだけは勘弁してくれ!」

・拍手レス。

 スースクの感想への返信ありがとうございます。聲の形が好評な現状を見るに、昨今の観客は脚本の線としての繋がりより、キャラという点が立っていることを重視しているのかもしれません。ちなみに、最近観た映画で脚本が素晴らしいと思ったのは、ハドソン川の奇跡ですかね。
 聲の形はもっと「惜しい」みたいな評価になるかと思いきや、予想以上に絶賛されて驚きました。ハドソン川の奇跡は構成もさることながら、主人公が心を押し潰されそうになりながらグッと耐える姿をセリフだけに頼らず景色や演技で表現する様子が凄まじくて舌を巻きました。「あなたも155人の中のひとりだったのよ」には胸を衝かれたし、是非ともハドソン川の事故を知らない(この映画で知ることになる)後世の人たちのために長く残ってほしい一本です。

 中嶋あかねです。コメント返しありがとうございます。「Forest」お値段見て、一瞬固まってしまいましたが原価版があってよかったです(苦笑)あと「FLOWERS」。対アリの(移植版)HPと一緒に見てました。ミッション系の女子高はあるのに仏教系がないのが不思議ですよね。…怒られるんでしょうかね?
 「Forest」を出してるライアーソフトのゲームは癖が強いため好みが分かれますが、他にない魅力があるぶん一度ハマると底なし沼行きになるのでご注意を……ミッション系に比べて仏教系のフィクションが少ないのは感じますね。漫画だと『ぶっせん』、ライトノベルだと『仏教学校へようこそ』みたいな作品はありますが、「仏教系の女子校」は既存のイメージが薄いだけに一から世界観を構築しなければならなくて、賭けの要素が大きそう。

 修羅場SS『九十九の想い』が『小説家になろう』で改訂&完結して公開されたみたいですね……続きが気になりながらも諦めていたので望外の喜びでした
 九尾珠さんですね。私もこないだ何の気なしに「血塗れ竜と食人姫」で検索して見つけて驚きました。人気次第では書籍化されて紙媒体で読めるようになる、なんてことも夢ではない……?


2016-10-09.

・前回の更新が済んだ直後、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』の第2期がもう始まっていたことに気づいて蒼褪めた焼津です、こんばんは。

 た、確かに番組表で見かけたけど、てっきり再放送の分かと……なぜか翌週開始と思い込んでいました。でもまーMBSの無料見逃し配信があるからストーリーは追えます。録画しての再視聴ができないというだけ。しかし放送日を間違えるとは迂闊だった。オルフェンズなら第2期もきっと再放送されるだろうし、そのとき改めて録画すればいいだけだが、もうちょっとチェック態勢をしっかりしないと。

サト(GA文庫編集)「そういう系のネタだったら、「異世界」付けた方が、「似たものを好む読者層」は安心して買えますものね」(ツイートの一部を抜粋)

 つまり、最近頓に多くなった『異世界で○○』みたいな題名はタイトルというよりタグのようなものか。推理小説の『○○殺人事件』と理屈は一緒ですね、こう書いてあればいちいちあらすじを確認しなくても題名が目に入った時点で「そういう系統」の本だということがわかる。逆に言えば「現代日本人が異世界に行く話はもういいよ」って向きの読者が避けることも可能なわけだ。少し前に流行った長文系タイトルが、完全ではないにしろ徐々に廃れてきている中、次のトレンドは作品構成要素を列挙したタグ系タイトルになるのかもしれません。タグ系は「検索しやすさ」を向上させますからね。「戦記ファンタジーが読みたい」という人向けに『(ちょっと長めのカタカナ)戦記』みたいなのを出していたのと同じ感じで、作品のテーマ云々よりも「読者が探し求めているもの=検索される頻度の高い単語を含んだもの」を重視したパッケージングになるのでしょう、たぶん。

第23回電撃大賞受賞者発表!

 この季節がやってきたか。ライトノベルの新人賞としてはもっとも知名度が高いと思われる(実態としてはどんぐりの背比べだろうが)電撃小説大賞は毎年4月に応募を締め切り、約半年間選考を行って10月上旬、つまり今くらいの時期に発表となります。昔はこれが楽しみで、折込チラシに綴られている選考過程をいちいち熟読していたが、さすがに今はそこまでチェックするほどの熱心さはない……それでも発表となると「おっ」と気分が浮き立つものを感じますね。今回の応募総数は4878(うち長編3410)、ここのところ減少傾向で前回が4580でしたが、やっと下げ止まったか。数としては『はたらく魔王さま!』が出た第17回(4842)並みの水準。今回は大賞から選考委員奨励賞まで8作品が選ばれました。ここのところ受賞作が8個や9個に及ぶ状況が常態化していますね。普段ラノベ読まない人からすると「賞多すぎてわけわからん」って肩を竦めるかもしれません。

 よっしゃ、解説や! 今回は5つの賞が列挙されていますが、実はもう一つ「電撃文庫MAGAZINE賞」というのもあるから全体で6つです。一回限りの「20回記念特別賞」や選考委員奨励賞の前身に当たる「選考委員特別賞」などもありましたけど、現存はしていない。これらのうち「大賞」「金賞」「銀賞」が主要三賞であり、かつての電撃小説大賞(当時は「電撃ゲーム小説大賞」という名前だった)は大・金・銀の3つしかランクが存在しませんでした。ゆえに昔から電撃文庫を読み続けているオッサ……古参のファンが重要視するのはあくまでこれら三賞のみ、第7回から設けられた「選考委員奨励賞」くらいはともかく、第15、16回に新設された「電撃文庫MAGAZINE賞」および「メディアワークス文庫賞」はチェックの対象外と見做す人も少なくない。

 まず「大賞」、これが賞の頂点であり応募者の誰もが目指すところ。第1回の時点では賞金100万円だったが、第20回から増額されて300万円。応募総数が第20回だけ突出して多いのは投稿者の間でこの増額が話題になったためかもしれません。かつては二年に一度の割合でしか大賞が出ず「電撃は賞金をケチってる」なんて言われたりもしたが、第8回以降は毎年必ず大賞作品が出るようになりました。正直「この回は『大賞なし』でもよかったのでは……」という年がないでもない。第4回の『ブギーポップは笑わない』を世に送り出しただけでも価値があると考えていますが、ぶっちゃけブギポ以外は目立つ作品がありませんね。『アクセル・ワールド』はアニメ化まで漕ぎ着けたものの、世間的には「川原礫=SAO」でしょうし。第10回の有川浩はハードカバー路線に転じて大成しますが、受賞作の『塩の街』自体はそんなに話題にならなかった。「電撃は大賞を獲らない方が成功しやすい」というジンクスまで囁かれている。「金賞」は大賞に次ぐランクの賞で、賞金100万円。受賞作ではないが『タイム・リープ』の高畑京一郎(第1回)や『境界線上のホライゾン』の川上稔(第3回)、『半分の月がのぼる空』の橋本紡(第4回)、『デュラララ!!』の成田良悟(第9回)、最近だと『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』の聴猫芝居(第18回)を輩出しており、「期待の割にあまりパッとしない大賞」に対し「安定して中堅を生産する金賞」といった趣がある。高畑京一郎は現在も電撃小説大賞の最終選考委員を務めているが、ここ10年以上まったく新作を刊行していないので肩書の「作家」が「作……家……?」な感じです。おう、早く『Hyper Hybrid Organization』の続き出せよ。

 第16回に新設された「メディアワークス文庫賞」は賞金100万円で、ランクとしては金賞と同格。この賞を獲ると自動的にメディアワークス文庫行きになるので「電撃文庫の賞」とは言い辛いかもしれない。野崎まどや浅葉なつなど、そこそこ売れてる人もいますが存在感はやや薄いか。最近だと『ちょっと今から仕事やめてくる』(第21回)が50万部を超えるヒット作になって、映画化も決定しました。ちなみに「メディアワークス文庫賞を獲った作品は自動的にメディアワークス文庫行きになる」けれど、それ以外の作品が必ずも電撃文庫行きになるのではなくて、たとえば大賞や金賞を獲った作品でも作風によってはメディアワークス文庫へ振り分けられることもあります。なので「メディアワークス文庫が確実に取る枠を一つ置いている」以上の意味がなく、箔付けとしては弱い。そろそろ電撃小説大賞からメディアワークス文庫賞が分離独立する時期が近づいてきているのではないかと睨んでいます。「銀賞」はかつての末端賞で、賞金も50万円(昔は30万円)と微妙なライン。しかし尖った才能が集まりやすく、新しもの好きであればチェックは欠かせないとされてきた。受賞作は制作会社の倒産でアニメ化の話が流れるなど不遇だったが『ストライク・ザ・ブラッド』のヒットで注目を集めている三雲岳斗(第5回)、『狼と香辛料』の支倉凍砂(第12回)、『ロウきゅーぶ!』の蒼山サグ(第15回)、『はたらく魔王さま!』の和ヶ原聡司(第17回)など金賞に劣らぬ中堅輩出ぶりである。余談だが第7回銀賞受賞作『ウィザーズ・ブレイン』は開始から15年経った今でも続いている、知る人ぞ知る影の長期シリーズだ。凄まじい遅筆なので「続いている」というよりは「終わっていない」と表現した方が適切ですが……最新刊に当たる第9部『破滅の星(上)』からそろそろ2年経つ。第8部『落日の都(中)』から『落日の都(下)』まで3年も待たされた古参ファンどもは「まだあわてるような時間じゃない」と余裕の態度を崩さないが、この調子だと「祝20周年! 『ウィザーズ・ブレイン』はまだまだ終わりません!」とか普通にあり得るぞ。

 「選考委員奨励賞」は現在の末端賞、賞金10万円と実にささやかですが、以前は5万円だったのでこれでも増額されている。応募総数が増えてきた割に大賞ランクの作品がなかなか出なかったため第7回から増設されました。第5回の「選考委員特別賞」はこれの前身。第20回の「20回記念特別賞」も賞金10万円なので実質的には「選考委員奨励賞の名前を変えただけ」ですね。毎回出るわけではなくあったりなかったりで、受賞者がなくても特に話題にならない、率直に言って注目度の低いランクです。大化けしたのも『灼眼のシャナ』の高橋弥七郎(第6回)くらいか。『なれる!SE』『ガーリー・エアフォース』の夏海公司(第14回)、“花鳥風月”シリーズの綾崎隼(第16回)、そして『僕が愛したすべての君へ』でやっとブレイクを果たした乙野四方字(第18回)などもいて、目立たないにせよ変わり種が好きな人には評価されている。ネタ的な意味で話題になったのは『天剣王器』の海羽超史郎か。癖のある独特な文章で、「読みにくさは芸術の域」とまで謳われた。受賞後第一作の『ラスト・ビジョン』も相変わらず読みにくいが、じっくり読み込めば楽しめる内容であり、隠れた傑作。私がヤスダスズヒトに注目するようになったのもこれがキッカケだったな。ラスト、「電撃文庫MAGAZINE賞」は雑誌“電撃文庫MAGAZINE”に掲載することを前提とした賞だが、最近全然読んでいないので本当に掲載されているかどうかは知らない。“電撃文庫MAGAZINE”の前身に当たる“電撃hp”にかつてあった「電撃hp短編小説賞」の後継みたいな賞で、オマケ枠みたいな名前の割に賞金30万円と選考委員奨励賞よりも上のランク。言うなれば準銀賞。雑誌掲載を前提としている関係上、短編や連作形式が好まれる傾向にあるが、長編であっても序章だけ掲載するなどの対応が取られている。代表作は……特にないか。強いて言えば電撃hp時代に選考落ちした『撲殺天使ドクロちゃん』が有名。

 と、ざっくり解説してこんな感じです。落選して何の賞も貰えなかったけど編集者に注目されてデビューまで漕ぎ着けた、いわゆる「拾い上げ」の作家も多く、鎌池和馬や三上延は無冠のベストセラー作家として番付に君臨している。現在最終選考委員を務めている時雨沢恵一も、実は最終候補止まりで賞は獲っていません。電撃文庫は「本を出すほどでもないかな」という新人の作品を試験的に雑誌(“電撃hp”)へ全文掲載していた時期があって、『月と貴女に花束を』『キノの旅』といった選考ではあまり高く評価されなかった作品が読者から熱い支持を得るなど、予想外の反響があったことから枠の増加や拾い上げを推し進め、「取りこぼし」を出すまいと努めてきた経緯があります。第23回は最終選考まで残った小説が11作品あって、うち8作品が受賞、残り3作品は無冠でフィニッシュとなりましたが、たぶんそのうちのいくつかは拾い上げされるでしょう。

 あらすじしか分からないが、最後に第23回受賞作のラインナップも見ていこう。大賞の『86−エイティシックス−』は無人「ということになっている」兵器に乗り込んで戦い、命を散らしていく少年少女の物語。鬱系やダーク系と呼ばれる路線の流れを汲む感じかな。『君は月夜に光り輝く』は罹患すると体が光り出し、死期が近づくにつれ光が強くなっていく「発光病」の少女と、大切な人の死に傷ついて投げやりになっていた少年が出会うボーイ・ミーツ・ガール。これはメディアワークス文庫行きになるかもしれません。アニメ化はしないだろうけど、ヒットの規模次第では実写映画化するかも。そうなったら絶対に「薄幸の美少女ならぬ発光の美少女」って言われるだろうな。『賭博師は祈らない』は18世紀末のロンドンを舞台に賭博師の青年が、喉を焼かれて声を失った奴隷少女を成り行きで買ってしまう話。ラノベ版『奴隷との生活 -Teaching Feeling- 』か。一冊完結っぽいけどシリーズ化される可能性もありますね。『キネマ探偵カレイドミステリー』は自宅に引きこもって映画ばかり観ている天才児が現場に行かないで映画知識のみを頼りに事件解決する安楽椅子探偵モノ。十数年前だったらメフィスト賞に応募されていそうな設定だ。『キラプリおじさんと幼女先輩』は「あっ、これまとめサイトやツイッターで拡散されて叩かれる奴だ」と思ったが、「おじさん」の割に主人公は高校生らしい。高校生と小学生の年の差ラブコメ……蒼山サグに並ぶロリベ作家となるのかしら。『明治怪異新聞』は明治時代の人情譚みたいだが、ライトノベルで時代物は鬼門だけに大丈夫だろうかと不安になる。『オリンポスの郵便ポスト』は火星が舞台で、オリンポス山に向けて8635kmの旅路を行くロードノベル。シベリア鉄道の全長が9297kmだから、それよりは短いか。なんとなく『ポストガール』を思い出すな。『ひきこもりの弟だった』はタイトルで「自宅に引きこもった弟を巡るドタバタコメディかな」と想像したが、「“ひきこもり”の兄」って書いてあるから主人公は弟の方なのか。兄が「ひきこもり」と呼ばれるようになって人生がメチャクチャになってしまった、という話みたいだが、あらすじだけではよくわからない。何か仕掛けがあるタイプのストーリーかな? 結論。とりあえず全部買ってみて、余裕があれば読んでいくつもりですが、なければいつも通り積むことにします。

・拍手レス。

 スースクは予告編を観て今年一番楽しみにしていた映画だっただけに心底ガッカリでした。一言で言うなら劣化版ガーディアンズ・オブギャラクシー。あちらはワル達がヒーローになることが胆の映画だし、その過程がしっかりしていましたが、ヴィランをそんな扱いにしてどうすんだと・・・おまけに脚本も穴だらけで、楽しむよりもツッコミのほうが先に来てしまいました。MoSやBvSもそうでしたが、DCはマーベルに映画で先を行かれている焦りからか、とりあえずキャラを詰め込んでは破綻させている気がしますねえ。今年公開のシビル・ウォーが素晴らしかっただけに余計に感じます。
 隣にいた20代くらいの女性や同じ列の10代とおぼしき子たちは「やばい、メッチャ面白かった」「もっかい見たい!」と口々に言っていたし、DC的には「グチャグチャうっさいアメコミおじさんは全部切り捨ててフレッシュな若者狙いでいくぜ!」って方針なのかもしれませんね……アメコミに全然詳しくないおっさんですけど、今年に関しては断然シビル・ウォー一択。他だとデップーも悪くなかったけど回想が長すぎてちょっと。

 コメント書き込みお邪魔します。中嶋(なかじま)あかねと申します。「大正×対称アリス」(以下、対アリ)から同じテーマを扱っているゲームを探していたら「俺つば」へ辿りつき、このHPへやってきました。焼津さんの感想も拝読させていただきました。「俺つば」…カケルくんがヒロインみたいに見えてvv明日香さんがヒロインなんですけどね(裏ヒロインは小鳩ちゃんでしょうけど)「俺つば」まだまだ楽しみたいと思います。焼津さんに「対アリ」を布教してみます。恋愛色が強めなのはEP1だけですし、文章のノリはギャルゲ寄りだしEP2はスカートの中に手は突っ込まれるし…(苦笑)…長々と失礼しました。ではまたお邪魔させいていただきます。世界が平和でありますように!
 これはこれはどうもご丁寧に。『大正×対称アリス』、乙女ゲー方面は疎いので初めて見ましたが、こういうタイトルもあるんですね。アリスモチーフのゲームというと『Forest』を思い出しますが、あれは冒頭が投げ出したくなるくらい苦痛なのに後半へ入る頃には病みつきになっていて「よっしゃ、もう一度冒頭からやり直そう!」って心変わりしちゃう不思議なソフトだったなぁ。『Forest』はちょっと癖の強いシナリオですが、去年Liar-soft Selection(要するに廉価版)も出たので布教し返しておきます。最近『FLOWERS』崩し始めたので、こっちがひと息ついたら対アリチェックしてみますね。


2016-10-03.

・賭けのつもりで買った『マッドネス グラート王国戦記(1〜2)』が割と面白くて「やったぜ!」な気分の焼津です、こんばんは。

 タイトルのせいで読む前は『ベルセルク』の黒犬騎士団みたいな連中が好き勝手に暴れ回ってエンジョイ&エキサイティングするヒャッハー系ファンタジーだと思っていたが、意外とオーソドックスな戦記ファンタジーで、その点は少し拍子抜けしました。主人公の純朴さがほとんど狂気の域に達している、という意味での「マッドネス」ながら、それをわかりやすく伝えるエピソードがないのでややピントの外れた題名になってしまった感がある。大陸から離れた島国で第三王子が王太子を弑殺し、第二王子と王太孫(王太子の長男)も始末して玉座を得ようとする……という叛乱に立ち向かっていく金髪の美丈夫「姫獅子」レオンハルトと彼に狂信する青年・レグルス=ゼントの活躍を描く。文章が非常に淡白で味気ないと言えば味気ないが、「戦記ファンタジー特有の仰々しい言い回しが苦手」という方にはむしろ読みやすいかも。魔法使いやモンスターが存在しない設定ではあるものの、「加護」という素早さや回避力・攻撃力等をエンチャントする半ば魔法じみた力は存在しています。平易なストーリー構成でとにかくわかりやすく、また普通のライトノベルだったら何冊も掛かりそうな量のイベントを圧縮して詰め込んでおり、たった2冊ではあるが濃密な読書体験を味わうことができます。

 山出しの平民だった主人公が戦続きの混乱の中でトントン拍子に成り上がっていく立身出世物語としての面白さもさることながら、自身は飛び抜けた才能を持っていないレグルスが「頭おかしいのか?」ってくらい曇りのない志で周りを惹きつけていくあたりが楽しくて胸がすきますね。有能な味方たちに臆面もなく頼み込んで協力を取り付ける人蕩しめいた手腕と、「弱き民草を守る」目的のためなら主君にすら逆らう(正確に書けば、主君の言葉そのものよりも主君が掲げる理想の方を絶対視する)芯の強さが「マッドネス」の片鱗を窺わせる。が、惜しいことに完全覚醒するところまでは行かなかった。内容自体は圧縮効果のおかげでサクサクと進みます。投げっぱなしにしたり有耶無耶にしたりすることもなく、ちゃんと決着まで綴っている。仮に打ち切りだとしても、「ここまでやってくれたからいいか」と諦めがつく終わり方です。でもやっぱり、続きが読みたかったな……BOOK☆WALKERに「完結」という記載があるし、3巻以降に関しては望み薄であるけれど、奇跡的にバカ売れして急遽3巻の発売が決まったりしないだろうか。うーん、さっき「諦めがつく」と書いたけどやっぱり諦めきれない。キャラが増えてどんどん面白くなってきたところだし、レグルスがかざす狂気の果ても見たい。さあ、みなさんも是非購入して「続き出せよコラ」とKADOKAWAに圧力を掛けてくださいませ。

Navelの新作(?)『月に寄りそう乙女の作法2 アペンドディスク』、11月25日に発売

 アペンドディスクと言えば聞こえがいいけど、これ要するに有料ボイスパッチなんじゃ……「おのれ、阿漕な真似をッ!」と憤るべきところかもしれないが、「ああ、いつものNavelだな」という気持ちしか湧かず、淡々とポチる私なのであった。Navelの犬です、ワン。

 うちの閲覧者でつり乙(『月に寄りそう乙女の作法』の略称)やNavelのことをあまりよく知らないという方も百人中一人くらいはいるかもしれないので念のため説明。Navelは2003年に設立されたエロゲーブランドで、Limeという姉妹ブランドもあったが現在そちらは稼働していない。もともとBasiLというブランドから独立(というか離脱?)するような形で興ったメーカーのため、ゲーム作りに関しては設立した当初から危なげのない水準に達していた。最大のヒット作はデビュー作でもある『SHUFFLE!』。Navelは「ヒットした作品の関連商品で延々と稼ぐ」、エロゲーメーカーとしては至ってオーソドックスなスタイルを基調としているものの、行き当たりばったりとしか思えないような商品展開で「ほんのちょっとしか違わないソフトを何度もファンに売りつける」、あまり行儀の良くない遣り口が恒例化しています。前述した最大のヒット作『SHUFFLE!』は無印本編だけでも「Limited Edition」「Normal Edition」「Standard Edition」「Anniversary Edition」と4つもある(内容は全部一緒で、特典やパッケージのみ異なる)が、更にここへFDの『Tick! Tack!』や『Really? Really!』や『SHUFFLE! Love Rainbow』、コンシューマ移植版の内容を反映させた完全版『SHUFFLE! Essence+』などが加わる。これだけで「えげつない」と感じた人もいるだろうけれど、こんなのはまだマシな方であった。俺翼の話をすると長くなりますから、飛ばして一気につり乙の話題へジャンプします。

 『月に寄りそう乙女の作法』は2012年にスタートしたシリーズであり、今のNavelの主力タイトルです。現在Navelはこのシリーズだけで食い繋いでいる状態である。内容について語るとこれまた長くなるので割愛しますが、とりあえず「主人公が女装してお嬢様学園に通う」ストーリーである、という点だけは触れておきます(伏線)。さて、つり乙はNavelがNavelらしさを存分に発揮したため派生タイトルがやたらと多く、新規の方は「どこから手を付ければいいかわからない」と困惑するかもしれません。先に書いておくと、これから始める人はまず『月に寄りそう乙女の作法 -FullVoice Edition-』を買いましょう。先日出たばかりなので容易に新品入手が可能です。「え? FullVoice Editionってことは、以前はフルボイスじゃなかったの?」と疑問に感じる方もおられるでしょう。これから説明いたします。

 さて、エロゲーで「フルボイス」と表記されてあっても、実のところ状況はまちまちです。「攻略可能なヒロインだけ全員声が付いている」状態を指すこともあれば、「一回しか出番のない名もなきオッサンまで声が付いている」ソフトだって存在する。フルボイスの「フル」は、予算や容量の都合で部分的にしか声を付けることができなかった「パートボイス」(昔のライアーソフトのゲームや『斬魔大聖デモンベイン』がこれ)に対しての「フル」であって、「全員に声が付いている」という意味ではないんです。混乱を避けるため「女性のみフルボイス」などと表記しているところもありますが、そのあたりについて明確なルールは存在していません。ただ最近はよっぽど低予算なソフトを除けば大概サブキャラに至るまで声が付いているから、名前のあるキャラに声が付いていないと却って目立ってしまいますね。いつ頃こういう流れになったのか、私も記憶が定かではない。

 しかし、出番が多いにも関わらず、声が付いていなくても特に問題視されない台風の目のようなキャラクターがいます。そうです、「主人公」です。エロゲーはほとんどが一人称視点で描かれる(「立ち絵」というシステムからして既に一人称的である)ため、感情移入を目的にしてプレーする人も少なくなく、「主人公にハッキリした容姿や声があると感情移入しにくい」とする考えが昔から根強い。「エッチシーンで男の喘ぎ声とか聞きたくねえ」ってのもあるでしょう。なので大抵のエロゲーは主人公のボイスがありません。開発側にとっては「主人公に声を付けるのと付けないのとでは予算がまるで違ってくる」という事情も絡んできます。エロゲーでもっともセリフ量が多いのは主人公であり、主人公の声まで収録するとなると予算も制作スケジュールもタイトになってしまいがちである。物語性を重視するいくつかのメーカーは主人公にもちゃんとボイスを与えていますが、やはりある程度軌道に乗っているところでないと難しい。ファーブラやアマアメから入ってきた人はご存じないでしょう、『Dies irae』って最初は藤井蓮の声が付いてなかったんですよ。「時よ止まれ――」とか一、二箇所だけ演出で入れているところはありましたが、リメイク版に当たるクンフトの売上が良好だったこともあってかファーブラでやっと蓮が全編通して喋るようになりました。注意深くプレーすると、前半は蓮のセリフが地の文に埋め込まれてしまって発音されなかったりと、ボイスが付くことを前提としていないシナリオの書き方になっていることに気づくはずです。

 話をそろそろつり乙に戻そう。『月に寄りそう乙女の作法』シリーズも、原則として主人公に声は付いておりません。しかし、↑で伏線として書いたようにつり乙は女装モノです。ゆえに主人公は「感情移入の対象」であると同時に「プレーヤー自身が愛でる対象」でもある。おとボクこと『処女(おとめ)はお姉さま(ボク)に恋してる』(2005年)がこの図式を決定的なものとして固定化してしまった。よほど要望が多かったのか、発売の翌年(2006年)にはもうおとボクのフルボイス版がリリースされていました。つり乙でも主人公「小倉朝日(偽名、本名は大蔵遊星)」の声が聴きたい、と熱望するファンが後を絶たず、解決策としてFDに当たる『乙女理論とその周辺』の初回限定版につり乙の小倉朝日をフルボイス化するアペンドディスクが特典として同梱されました。ややこしいことに、フルボイス化されるのは『月に寄りそう乙女の作法』本編のみであって、『乙女理論とその周辺』そのものは依然として朝日がボイスレスのままなんです。『乙女理論とその周辺』をフルボイスで楽しむためにはシリーズ第4弾『乙女理論とその後の周辺』初回限定特典のアペンドディスクが必要になる。そう、つり乙シリーズとは即ちNavel信者が落ちるアペンドディスク地獄なのです。

 『乙女理論とその周辺』の初回限定版を買い逃した人への救済策としてアペンドディスクを単体発売したこともありますが、わたしゃ内容が特典と一緒とは知らずうっかり買いそうになっちゃいましたよ。発注直前に気づいて事なきを得た。来月に出る『月に寄りそう乙女の作法2 アペンドディスク』も何かの特典として付いてきたものの単体発売じゃないかと警戒してチェックしましたが、今回はそうじゃなくて単に『月に寄りそう乙女の作法2 -FullVoice Edition-』の差分として発売するみたいですね。フルボイスじゃないバージョンを買ったユーザーがもう一度買い直さなくて済むように、ってことでしょう。かつて『るいは智を呼ぶ』が無印ユーザー向けにボイス追加パッチを無料配布したことを思い出すと「Navelめ、セコい真似をしやがって」という気が湧き上がらないでもないが、どちらかと言うと暁WORKSが太っ腹だったんだな。ともあれ、初プレーの方は『月に寄りそう乙女の作法 -FullVoice Edition-』を購入して、気に入ったら『月に寄りそう乙女の作法2 -FullVoice Edition-』『乙女理論とその周辺 ~Ecole de Paris~ -Standard Edition-』『乙女理論とその後の周辺 -Belle Epoque- Limited Edition』を買えばいいです。『月に寄りそう乙女の作法2 アペンドディスク』はあくまで既存ユーザー向きなので無視してOK。予定としては『月に寄りそう乙女の作法2』の後日談(通算シリーズ5作目)がそろそろ来るはずなんですが……まあNavelだからな。諦めかけた頃には出るだろう。

【ゼロ書】 「電撃文庫 秋の祭典2016」にてラノベ『ゼロから始める魔法の書』アニメ化が発表! 制作会社はリゼロを手掛けた「WHITE FOX」(まとレーベル@ラノベ新刊情報サイト)

 原作は第20回電撃小説大賞「大賞」受賞作。イラストが「しずまよしのり」ということもあって「『ゼ』ロ『か』ら始める『魔』法の『書』で『ぜかまし』だ」と揶揄されたアレですね。ファンの間では「ゼロ書」の方が普及しているかな。タイトルが微妙に『Re:ゼロから始める異世界生活』と被っていますが、応募時にはリゼロの書籍版もまだ出てなかったのでリゼロを意識したとかそういうアレではないと思います。ゼロ書、刊行当時から公式がプッシュしまくっていたので「アニメ化コースだな」と予想してはいました。ここのところ「小説家になろう」の台頭で存在感が薄くなってきた電撃小説大賞の復権も狙っているのかもしれません。『ブギーポップは笑わない』を世に送り出した電撃小説大賞(旧名「電撃ゲーム小説大賞」)はかつてラノベ好きなら見過ごせない新人賞でしたが、ここのところは目立つ作家があまりおらず、「気が向いたらチェックすればいいよ」程度の状態でしたからね。特にアニメ絡みとなると、ブギポ自体がオリジナルの変則的な内容であまり一般ウケしなかったし……そういえば大賞獲ってアニメ化まで漕ぎ着けた作品って、ブギポと今回のゼロ書を除くともう『アクセル・ワールド』くらいしかないな。『はたらく魔王さま!』『ロウきゅーぶ!』『狼と香辛料』は銀賞で、『バッカーノ!』でも金賞。『キノの旅』なんて最終候補止まりで何の賞も獲ってないですからね。昔から「大賞を獲らない方が大成しやすい」と言われていました。そうしたイメージを一掃して新しい風を吹き込ませるためにも、ゼロ書のアニメは成功してほしいところ。TVアニメ化が決定した『天使の3P』ともども、続報に期待。

・拍手レス。

 オモシロイ
 ありがとございます。


2016-09-24.

『君の名は。』が遂に興収100億円を突破したことを伝える記事に絶句する焼津です、こんばんは。

 何がすごいって、100億が到達点じゃなくてただの通過点になってるってことですよ……未だに衰えぬ勢いからして『スターウォーズ /フォースの覚醒』の打ち立てた記録(115億円超)を抜くことはほぼ確実な情勢となりました。『風立ちぬ』の120億円も超えそうですね。今後の推移がどうなるか、未知の領域すぎて予想することすら難しい。公開前に「今年の新海作品は興収100億以上行ってスターウォーズもブチ抜くぜ!」と叫んでいる人がいたら「物狂いか……」の一言で片づけられていたことはまず間違いないのに。なんでこんなに急に超絶大ブレイクしてしまったのか? ファンも関係者も一様に首を傾げているはずです。東宝のプロデューサーは「前売り券の捌け具合がすごく良かったので大ヒットは確実だと思っていた」というようなことを語っていたが、それにしてもここまで度外れたムーヴメントは予期してなかったはず。今回の100億突破を知らせるニュースでますます話題が過熱していくことでしょうな。来年になってもお正月映画として普通に興行を続けているかもしれません。

土方歳三主役に描く新撰組ストーリー「ちるらん」がテレビアニメ化(コミックナタリー)

 いずれするだろうと予想していたので意外な感じはしない。『ちるらん』は一言でまとめると「『新選組血風録』をヤンキー漫画調に翻案したような作品」である。「土方歳三の孫とおぼしき女性が永倉新八のもとに訪れて『鬼の副長とよばれた土方歳三の真実』を聞き出そうとする」形式で描かれているが、明らかに新八の知る由もない出来事が含まれており、「新八の語り」はただの体裁と受け取った方がいいです。元となる新撰組を知っていると「トシさんが現代風のイケメンになってやがる……」とゲンナリするかもしれませんが、トシさんくらいはまだ可愛い方で、島田魁はドレッドヘアのマッチョな黒人になっているし、芹沢鴨は『レオン』のときのジャン・レノみたいなグラサン掛けてるし、山崎烝はガスマスク付けてダースベーダーみたいな呼吸音させてるし、原田左之助に至っては死神のような大鎌を振り回している。言うなれば『幕末BASARA』の世界です。「イケてる壬生狼」ではなく「イカレてる壬生狼」。指や首がポロリとしちゃう人体損壊描写も多く、イケメン目当てで読むとヒくかもしれません。

 実はこれの前に「坂本龍馬は暗殺されずに生き延びていた!」という設定の『天翔の龍馬』って漫画がありましたが、諸事情から連載中止になっちゃったんですよね。そこで『天翔の龍馬』にサブキャラとして出てくる新撰組の隊士たちをメインに据えたスピンオフ作品をやろう、ってことになって始まったのが『ちるらん』なんです。だから『天』に対する『アカギ』みたいなポジションですね。「京をシメている」なんて言い回しも平然と出てくるのでヤンキー漫画耐性がないと少々辛いかもしれませんが、最近『HiGH&LOW』にハマった人とかにはオススメです。

なろう原作ラノベ「ナイツ&マジック」のアニメ化が決定!(まとレーベル@ラノベ新刊情報サイト)

 『異世界食堂』に続いてナイツマまでもが。1巻の途中までしか読んでないので詳しく解説できませんが、異世界転生ファンタジーにしては珍しく巨大ロボット主体で、喩えが古いけれど『聖戦士ダンバイン』みたいな……ちょっと違うか? ファンタジー系ロボは個人的に『天空のエスカフローネ』のガイメレフが大好きです。デザインもさることながら、動きがめっさカッチョいいんですよね……古いアニメなので食指が動かないって方もおられるでしょうが、「あんな手描きロボ、今の時代じゃ手間も費用も掛かり過ぎて無理!」ってくらい凄いので、機会があれば一度観てほしいです。それはそれとしてナイツマそろそろ再開させなきゃ。一応最新刊まで積んでいる。

・拍手レス。

 聲の形は個人的には読み切り版がストーリーがまとまっていて良かったなと思っています。連載版は話が長くなったことで、読み切り版以上に胸くそ悪い描写が増えたので、正直見るのが辛かったです。
 そういえば読切版ってまだ読んでなかったな……『聲の形 公式ファンブック』に載ってるのか。連載版、私は完結後に積んでいた単行本数冊をまとめて一気に崩したから胸糞悪い描写があっても勢いでどうにか押し切ることができました。でも読み返すのは若干抵抗がありますね……下手すると再読の機会は得られないかも。


2016-09-19.

・映画観るのに忙しくて更新が疎かになっていた焼津です、こんばんは。

 しかも急に『聖剣使いの禁呪詠唱』を観返したくなって改めて1話から鑑賞し直したりしてましたのでね……ワルブレ、原作知ってるとアニメ版は「わぁぁぁっ! こんなんありかよぁ〜!」と頭掻き毟りたくなる出来で初見時は強めに拒否反応が出てしまったが、落ち着いて観るとこれはこれで悪くないかも。サクサク進んでダルさを感じさせない、ってところは長所ですし。ただやっぱ戦闘シーンがショボすぎるな……リテイクされているはずのDVDでも粗さが目立つ。ある程度は演技でカバーできているし、「最悪」とまで行かないことが救いか。まだまだ積極的に肯定する気にはなれないが、そろそろ態度を軟化させてもいいかもしれない。

 映画はいろいろ観たので短文感想でザックリ書いていく。『13時間 ベンガジの秘密の兵士』はパッケージに釣られて借りたら「監督:マイケル・ベイ」で咄嗟に「ゲーッ」となった。正直このベイはあまり好きじゃない。しかし借りちゃったもんは仕方ないし、と諦めて観始めたら意外とアタリだった。実話のベンガジ事件をもとにしたアクション映画で、訳の分からないうちに襲撃が始まってあっという間に泥沼化していく混沌ぶりは圧巻。米国側に味方するリビア人もいるのですが、見た目が敵とほぼ一緒なので「こいつは敵なのか? 味方なのか?」と見極めがつかなくて焦るあたりは怖かったな、と。ベイ監督作品としては『ザ・ロック』以来久々に面白いと思いました。

 『スーサイド・スクワッド』は予告でハーレイ・クインに一目惚れ、初日に劇場へ駆け込んだ。ハーレイは可愛かったし、ぷりぷりのケツを大スクリーンで拝むことができて、その点は満足。しかしハーレイ以外の部分はいろいろと惜しい映画だった。予告編ほどはっちゃけた雰囲気ではなく、全体的になんか暗くて爽快感に欠ける。特別な盛り上がりどころや緩急もなく淡々と平坦な展開が続く。ハーレイも基本的にバットを振り回すばかりで、バトルシーンにおいてはどんどん存在感が薄くなっていく。悪党(ヴィラン)どもが「良識なんてクソくらえ」とばかりに大暴れする様子を観客たちは期待していたはずなのに、肝心のヴィランどもが妙に仲間思いな感じになっちゃって結局「子供にも見せられるヒーロー映画」の枠を飛び出すことができなかった。残念。

 『キング・オブ・エジプト』はアメリカ本国で大コケしてイギリスでの公開も中止になったという曰く付きの映画で、どれだけヒドいのかと怖いもの見たさで足を運んだが、案外悪くなかった。「エジプトが舞台なのにキャストのほとんどが白人って……」というツッコミどころにさえ目を瞑れば充分楽しめる。神話モチーフ作品としては『タイタンの戦い』『インモータルズ』よりも良い出来だと思う。観客のレベルを十歳児くらいに設定しているのか、非常にわかりやすいストーリーとなっている。そのため大人が観ると「一本調子だな」って感じる部分は確かにありますが、神獣形態に変化して戦うバトルシーンが本作の売りの一つであるゆえ、細かいことを気にせず特撮映画を鑑賞するような感覚で臨めばグッドだろう。ところどころに「発想の安易さ」や「捻りのない演出」が滲み出ることは否定しがたいものの、神と人の間に絆が芽生える友情ストーリー、そして若く傲慢だったホルスが苦難の末に神として立派になっていく成長ストーリーをキチンと描いたことは評価したい。ジョジョ第3部程度のエジプト知識があればOK、暇潰しにはちょうどいいと思うので機会があればどうぞ。

 レンタルで借りた『ヒットマン』『ヒットマン:エージェント47』。両方ともゲームの『ヒットマン』を原作とする映画だが、相互に話の繋がりはない。監督もキャストもそれぞれ別々の人が担っている。組織の指令を受けて暗殺に勤しむ凄腕のエージェント「47」が陰謀劇に巻き込まれつつもスタイリッシュなアクションの数々で逆境を切り抜ける、という要素は両作とも共通しています。しかし監督が違うせいか、雰囲気はだいぶ異なりますね。『ヒットマン』(以下無印)は非常に殺伐としたテンションで、過剰なくらい血飛沫が舞う。47は酷薄さの中にどこか愛敬を湛えたルックになっていて、感覚としては漫画の『ブラック・ジョーク』に近い。これに対し『エージェント47』の方は若干血腥いながらも淡々と仕事をこなすタイプで、より「感情なき殺人マシーン」な超然とした風情が出ている。個人的には無印の方が好きだな。というか『エージェント47』は癖がなくなって、「よくあるアクション映画」になってしまっている。無印のようなアクの強さを期待したぶん、ちょっとガッカリ。「よくあるアクション映画」の尺度からすれば『エージェント47』も良作だとは思いますが……やっぱ無印の監督とキャストで続編作ってほしかった、というのが本音。

 あとは『映画 聲の形』か……映像面はハイクオリティだったが、シナリオに関してはもろにブツ切りのダイジェストって感じでした。「えっ? こっからそこに繋ぐの?」みたいな、ホップもステップもなしにいきなりジャンプするようなシーンがチラホラ。何の予備知識もなく臨めば「終始忙しない映画だな」という感想を得ることでしょう。尺が縮まったせいで「自主制作の映画をつくる」という軸もなくなり、硝子偏重というか「ヒロインの美少女ぶりをひたすら強調する映画」に化してしまった気もする。観る前か観た後すぐに原作漫画(全7巻)を読むのがベターですね。未読の人はだいぶ印象が変わると思います。たとえば原作で「○○はクズ」と嫌われることもあった某キャラ、映画は行動の脈絡が見えずもうクズ通り越して「不可解」の領域に達している。細部を端折ったぶん、お祭りのあたりも唐突さが際立ってしまった。原作にそこまで思い入れのない私でも「う〜ん……」だったので、熱心な原作ファンがこれを観たらどうなるんだろうかと心配に。入場者特典として配布された描き下ろし16ページ漫画はこれまた映画で大幅にオミットされた西宮母のサイドストーリーで程好く本編の空隙を埋める内容に仕上がっており、ファン的には「こっちの方で元が取れた」って感想になるのかもしれない。絵柄の再現度は高く、声優もキャラにマッチしているので「せめて前後編で4時間くらいあったらな……」と願わずにはいられなかった。

・トム・クルーズ主演映画『アウトロー』の続編が『ジャック・リーチャー Never Go Back』というタイトルに決まった。

 続きが作られたこと自体は喜ばしいけど、この邦題じゃ『アウトロー』観た人でも続編と気づかないでスルーするんじゃないかと心配。まずは解説から。『アウトロー』および『ジャック・リーチャー Never Go Back』の原作はリー・チャイルドの小説“ジャック・リーチャー”シリーズです。元軍人の主人公ジャック・リーチャーがトラブルに巻き込まれては解決するというアクション小説で、『アウトロー』は実のところシリーズ1作目ではなく、なんと9作目である。ちなみに『Never Go Back』は18作目。9の倍数ごとに映像化するつもりなのか? イギリスでは人気のあるシリーズなんですが日本じゃそれほど知られておらず、翻訳も飛び飛び。1作目から3作目までは順番通り訳されたものの、以降は8作目、9作目、14作目、17作目とスキップしまくりである。4年近く翻訳が止まっていた時期もあるので、出るだけマシっちゃマシなんですけどね……さて、映画化されたこともあって日本じゃ一番有名な“ジャック・リーチャー”シリーズの作品となった『アウトロー』。実はこれ日本語版のタイトルで、原書のタイトルは "One Shot" 、映画版の原題は "Jack Reacher" なんです。ハリウッド映画は「安定して客が呼べるシリーズ物」が年々少なくなってきており、ジェームズ・ボンドやイーサン・ハント、ジェイソン・ボーンやロバート・ラングドンに匹敵するニューヒーローを生み出そうと躍起になっている。『エージェント:ライアン』『PARKER/パーカー』も主人公の名前をタイトルに入れているあたりシリーズ化を見込んだものと思われるが、どちらも期待したほどの興収を上げることができず、続編には結びつかなかった模様。『アウトロー』はそれらに比べて比較的ヒットした方であるが、メチャクチャ当たった、というほどでもないので続きが作られるかどうかは不透明なところだった。しかし、トムもジャック・リーチャーが気に入っていたみたいで、どうにか続編に漕ぎつくことができました。もし前作が日本で大ヒットを飛ばしていたら題名も『アウトロー2』になっていたかもしれません。が、そこまで当たらなかったので仕切り直すように原題通りのタイトルで行くことにしたようだ。映画も楽しみだが、これで原作の翻訳も勢いづいてくれると嬉しいな。とりあえず未訳の4作目から7作目をどうにかしてくれ。

【速報】ラノベ「異世界食堂」のアニメ化企画が進行中!(まとレーベル@ラノベ新刊情報サイト)

 一編一編が短い話だし、ショートアニメかな? 『異世界食堂』は「小説家になろう」に連載されている(ただし最近はかなり更新頻度が落ちてきている)ファンタジーで、一編あたり文庫にして十数ページ程度の分量でサクサクと読める。タイトルで勘違いしそうになりますが、「幸平創真みたいな料理少年が異世界に召喚されて食堂を開く話」ではありません。食堂そのものは現代日本に存在していて、ワープゲート的な扉から異世界の客が訪れるという設定。つまり「異世界食堂」というのは「向こう」からやってくる客にとっては「異世界に存在する食堂」、って意味です。いわゆる亜人のような種族も登場するため「味覚がだいぶ異なるのでは……?」みたいな疑問が湧かなくもないが、細けェことはいいからとにかく料理に舌鼓を打てよ! っつーノリでひたすら押し通している。「何だ、この料理は?」と恐る恐る口にしたものがえも言われぬ美味しさだった、という単純な喜びを素朴な文章で描写しており、細切れに読んでも楽しめるので「最近めっきり気力や集中力が落ちてきて、ストーリー物を読み通すのは辛くなってきた」っていう元気欠乏気味な方も安心してご購入いただけます。

 しかし、何気にこれがヒーロー文庫初のアニメ化作品か。あそこの作品は結構売れてるけどメディアミックス展開がほとんどなく、アニメ化どころかコミカライズさえも創刊から4年近く経ってようやく始まった『ナイツ&マジック』の漫画版が初というような状態ですからね。『ネクストライフ』『理想のヒモ生活』もコミカライズ決定したらしいし、今後どんどん増えていくのかもしれませんが。ナイツマも近々重大発表があるとのことで、ここからヒーロー文庫の快進撃が幕を上げる、のか? とりあえず『異世界食堂』原作の最新刊(3巻)は今月末発売予定です。

【よう実】 ラノベ『ようこそ実力至上主義の教室へ』全巻重版が決定!(まとレーベル@ラノベ新刊情報サイト)

 売れ行き好調みたいで、本当にそろそろアニメ化の話が持ち上がりそうだな……よう実、1巻は発売直後に読んだと思うけど2巻以降はずっと積んでいて、最近になって崩したところです。読んでみて感じたのは、「衣笠版『車輪の国、向日葵の少女』を書こうとしているのかな」ってこと。1巻の時点では不鮮明極まりなかった主人公のキャラクター像が、2巻、3巻と進むにつれてだんだんハッキリしてくる。表面的には『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』(優秀だけど友達がいない美少女ヒロイン、教室を覆う微妙な人間関係)や『バカとテストと召喚獣』(クラス間の競争を煽るシステム)の後追い企画に見えるけど、やっぱり目指す先は車輪の国って気がするんですよね。物語としては1巻から3巻までが長大なプロローグといったところで、もしエロゲーだったら3巻の終わりにOPムービーが流れて体験版終了って具合になると思います。4巻からが本番。今月出る最新刊は4.5巻、番外編みたいなタイトルだけど伏線も張ってあって本編の一部という位置付けらしい。ヒロインはおっぱいの大きい佐倉愛里が好みですが、男キャラに関してはすぐに不平不満を垂れて手の平クルクルさせる凡人・池寛治が俗物すぎて逆にいとおしくなってきた。男連中のダメっぷりが妙に魅力的なのが衣笠の特徴なんですよね。

 あと、よう実が好きな人にオススメしたいのが『Fランクの暴君』。よう実と同じく巨大学園を舞台にしたシリーズで、実力至上主義を通り越して弱肉強食主義と言ってもいいレベルに達している。本来なら上位ランクに属するポテンシャルを有した主人公が「味方だった人間」に裏切られたことで最底辺のFランクに転落、ふたたび上位に返り咲くため画策する……といった話。よう実はクラス単位でランクが決まっているから個人レベルで頑張ってもしょうがない、って設定だが『Fランクの暴君』は個人単位でランクが決まるため、より競争が激しく殺伐としている。七つの大罪になぞらえた派閥が存在するなど、厨二臭いながら非常に凝った設定を用意していたが、販売不振だったのか2巻までしか発売されていません。作者自身も続きを書きたい気持ちはあったらしいが、実現は難しい情勢。未完とはいえ充分な面白さを備えているので、是非読んでみてください。そして「3巻出せやオラァ!」と電撃文庫に圧力かけていきましょう。差し当たって作者の最新作『僕らはどこにも開かない -There are no facts, only interpretations.-』(デビュー作を一から書き直したもの)を地道に買い支えていく方針。ちなみに私がF暴と並んで3巻の発売を待ち望み続けている『リア王!』の作者も『異世界創造の絶対神1』という新刊を出す模様です。ここ1年くらい本を出していなかったから、作家業から足を洗ってしまったのではないかとヒヤヒヤしていた。

ジュリアン・ムーアと渡辺謙、ベストセラー小説「ベル・カント」映画化で共演(映画.com)

 え? 『ベル・カント』映画化すんの? 日本では13年くらい前に翻訳されたけど、あまり売れなかったのか、それとも権利の関係だったのか、文庫化されないまま絶版しちゃったんですよね。読んだ当時割と真面目な感想文を書いているので気になる方はそちらも目を通してみてください。作者のアン・パチェットはアメリカじゃ有名な小説家の一人ですが、『ベル・カント』があっさり絶版しちゃったように日本ではあまり知られていない存在である。一昨年に『密林の夢』も翻訳されたが、コア層の評価はともかく世間で大きな話題になることはなかった。風向きが変わるか? とりあえず日本公開に合わせて今度こそ文庫版が出るかもしれません。

・拍手レス。

 アルティーナの延期は絵師さんの体調不良だったはずなので、復調なさったんですね。あまり見ないタイプの絵描きさんなので絵師変更とかにならなくて一安心です……。
 一方、同じhimesuzが挿絵を担当している『異世界魔法は遅れてる!』の最新刊(確か最初は6月発売予定だった)は未定のまま……「『異世界魔法は遅れてる!』が遅れてる!」というファンの嘆きがやむまでもう少し掛かりそう。

 『君の名は。』ラストシーンは『秒速』を見てたせいか余計感慨深かったです。ああ、今度はしっかりと振り向けたんだな、と。
 「いいんだよ新海……ああいうのはもういいんだよ!」と念じながら観ていました、ラストシーン。


2016-09-06.

公式ノベライズ『Dies irae 〜Wolfsrudel〜』、今月29日頃に発売

 執筆は森瀬繚、フリーライターで過去に『図解 第三帝国』などを手掛けている。小説関係だと『うちのメイドは不定形』に関わっていますね。最近は漫画の原作やアニメの脚本もやってる模様。タイトルの「Wolfsrudel」は「狼の群れ」を意味するドイツ語です。ちなみに「空の魔王」の異名を取るチート級ドイツ軍人ハンス・ウルリッヒ・ルーデルも綴りは「Rudel」だ。まさかルーデル卿がDies世界に……? こちらの記事の下の方にGユウスケ描き下ろしの表紙イラストが載っていますが、どうも司狼と恵梨依がメインになるっぽい。そういえば正田崇が「森瀬さんが書くDiesのノベルは司狼が主人公というかたちで今のところ進んでいる……感じです」と前にツイートしていたな。正直あまり期待感は湧き上がらないけれど、とりあえず読んでみよう。関係ないがノベライズ版Diesと同じタイミングで『覇剣の皇姫アルティーナ11』が発売される。イイ感じに盛り上がってきたところであるにも関わらず、何かトラブルがあったのか発売延期になっちゃって前巻から9ヶ月も間が空いてしまった。ファンタジー系の戦記物で、ヤン・ウェンリー型の「戦が好きなわけではないが軍師としての才能を持っている」主人公が、大剣を軽々と持ち上げるお姫様に振り回される話。今アニメやってる『天鏡のアルデラミン』ほどではないが、多少血腥い要素があります。1巻と2巻をリライトして合本した『アルティーナ』というソフトカバーも用意されていますが、こちらは現状続刊の有無が不明なので、シリーズ全部を読みたい人は素直に文庫版を買った方が吉です。「とりあえずキリのイイところまで」とお試し感覚で挑むならソフトカバー版もアリ。

こち亀:40年の長寿連載に幕 コミックス200巻で完結(まんたんウェブ)

 もうすぐ200巻というのは知っていたけど、まさか連載終了とは……私が生まれる前からやっていた漫画だけに、終わるときのことなんてまったく考えてなかったな。何せ40年ですからね。「こち亀が載っていないジャンプなんてジャンプじゃない!」と言いたくなる人の気持ちもわかります。ただ、秋本治の口ぶりからすると完全に終わるわけでもなさそうで、不定期的に番外編をやる可能性はありそう。驚いたのは「次の作品の構想もあります」ってところか。ずっと読切主体でやってきたし、反動として長編ストーリー物を始めたりするのだろうか?

咲-Saki-実写化プロジェクト始動!深夜ドラマ&劇場映画化!(近代麻雀漫画生活)

 まっ! さっ! かっ! のっ! 咲! と伯方の塩っぽく驚いてしまった。麻雀漫画は基本的に「雀卓さえ用意すれば実写化できる」というジャンルゆえVシネマを中心にいろいろな作品の実写版が出ており、流れとしてはそんなにおかしくないわけですが……『咲-Saki-』は実写化するには「コスチュームが奇抜」ってキャラが何人もいますからね。国広一の私服とか、『処刑教室』のパッツィ(リサ・ラングロワ)が清楚に見えてくるレベルです。まあ私服がヤバいんならずっと制服でやればいいだけの話だけど、結局「何をポイントにして実写化するのか?」という話に行き着く。あくまで『咲-Saki-』の闘牌部分を実写で魅せたいのか? それともキャラをコスプレレベルで再現することに注力したいのか? あるいは「魔王」とも称される主人公・宮永咲の存在感を実写ならではの演出(「Who will know」流しながら「もいっこカン!」とか)でリンシャン・ゴジラとして世に示したいのか? そこらへんがまったく見えないから不安になってしまう。『凍牌』みたいにある程度原作を再現しつつ、原作知らなくても楽しめる出来になっていることが理想なんですが……咲もそろそろ新規層を取り込まないとアニメ続編等の大規模なプロジェクトはやりにくい状況になってきているし、実写版が「入口」として機能する出来になることを願っています。

『シン・ゴジラ』興収60億円突破!公開から38日間で(シネマトゥデイ)

 『君の名は。』の驚異的な推移(公開10日間で38億円!)ばかりに気を取られていたが、こっちも結構すごいことになってる。金額ではゴジラ映画史上最高レベル、動員数(412万人)は歴代9位にランクインする。8位が420万人で7位が421万人だから、これらも突破して7位に着くことは確実でしょう。そこから先は500万人の壁があるのでさすがに難しいか。ちなみに初代の動員数は961万人なので倍以上、歴代トップの『キングコング対ゴジラ』に至っては1255万人で三倍近くです(Wikipediaより)。もう公開から1ヶ月以上が経過して現在7周目へ突入しているにも関わらず、依然として勢いが衰えていなくて週末動員ランキングの2位に返り咲いた(1位はもちろん『君の名は。』)というニュースまであるのだから絶句ものだ。『君の名は。』が連日満席続きでパンク状態なうえ、シンゴジもなかなか新作と入れ替えるタイミングが掴めず、スケジュールの組み立てに苦労している映画館もあるという噂。このまま行けばシンゴジは今年の邦画興収トップである『名探偵コナン 純黒の悪夢』(63.1億円)を追い抜いて暫定1位に君臨し、すかさず『君の名は。』に追い落とされる三日天下な未来が待ち受けているだろう。ふたつとも最終的な興収がどこまで伸びるか読めない。夏休み映画なのにシルバーウィークになってもまだまだ稼いでいそうな雰囲気があるからな……シンゴジは洋画含めて総合2位の『ズートピア』(約77億円)と、『君の名は。』は総合1位の『スターウォーズ/フォースの覚醒』(約116億円、公開は去年だが興行としては「お正月映画」に属するから興収ランキング上だと今年の作品扱い)と競い合う展開に入るかもしれません。カイロ・レンと切り結ぶ新海誠の雑コラが作られる日もそう遠くない。

・拍手レス。

 まさか突然閉鎖してしまったのかと思い慌てましたw ありがとうございますー!!
 仮に閉鎖するとしてもいきなり全削除ではなく、まず「やめゆ!」な記事を投稿して「何があったんですか!?」と聞いてもらおうとする構ってちゃんなパターンから入ると思います。


2016-09-03.

・ちょっと業務連絡的なアレを。

 9月1日から2日にかけてうちのトップページが404になっていたみたいです。拍手レスで気づいて慌てて確認したところ、indexファイルだけまるっと消えていました。更新が深夜に及び、すごく眠たかったせいで操作を誤ってindexファイルを消しちゃったのかもしれません。まことに申し訳ない。別に予告ナシの閉鎖とかそういうわけではありませんので、今後もダラダラと不定期的にやっていく方針です。

・それにしても『君の名は。』が公開から6日でもう21億円か。新海……おぬしはやはり、物が違う……。

・あと『君の名は。』の情報を漁っている途中で日経MJの『シン・ゴジラ』記事の見出し、「弊社も御社も木っ端みじん」が目に入ってあまりの語呂の良さに笑った。

落第騎士の英雄譚っていう今世紀最高の神アニメ(まとレーベル@ラノベ新刊情報サイト)

 倉敷蔵人が一番気に入った男キャラなだけにアニメ版の「剣士殺し」編は少し不満の残る出来だったけれど、総じて素晴らしい仕上がりだったとは思う。ぶっちゃけ始まるまで全然期待していなかったな……そもそも放送前の時点で原作をあまり読んでなかった(確か3巻の途中あたりで止まっていた)から、注目度も低めでした。なのに1話目から面白くて、放送期間中に慌てて積んでいた既刊を崩しましたよ。アニメ化された範囲は原作の1巻〜3巻+α(番外編のエピソードを一部だけ消化している)ですが、このへんはまだ打ち切りの可能性があったせいで埋蔵されている伏線の量も少なく、シリーズとして本格的に盛り上がってくるのは4巻以降なんですよね。七星剣武祭というインターハイみたいな全国大会が描かれ、バトル面は大いにヒートアップ。ついでに一輝とステラの恋愛も……なので、未だに2期の到来を諦めきれず切望しています。セールス的にはやや厳しい印象だったが、OVAでならまだ可能性が残っているか?

 ちなみに作者の海空りくは落第騎士と並行して『アルティメット・アンチヒーロー』(アンチヒ)と『超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです!』(超余裕)、都合三つのシリーズを掛け持ちしていましたが、アンチヒの方は3ヶ月ほど前に完結しました。3巻から1年近く間が空いたので完結しないまま打ち切りかと気を揉んだ時期もありましたよ。欲を言えばもうちょっと続けてほしかったが、終わらせてくれただけでも充分である。超余裕は売れ行きも評判も好調のようで、落第2期よりもこっちの方のアニメ化が現実味を帯びているかな……GA文庫はダンまちブレイク以降伸長の著しいレーベルゆえアニメ化というパイの奪い合いはどんどん熾烈になってきており、まだ予断を許されないところではある。

・拍手レス。

 移転先(と今更言うのも語弊がありますが)にアクセスできなくなってしまいましたけども…!
 すみません、たぶん1日の深夜に更新するつもりで誤ってトップページを消しちゃったんだと思います。


2016-09-01.

新海誠『君の名は。』空前の大ヒットスタート!12億円突破で初登場1位【映画週末興行成績】

 み、3日で12おくえん……新海ファンが軒並み気絶したほどの数字ですが、興収に興味のない方だといま一つピンと来ないかもしれません。金・土・日の3日間で12.7億円(動員約96万人)、これがどれだけ凄いかと言いますとね、『アナと雪の女王』(公開3日間で9.8億円、動員約79万人)や『ファインディング・ドリー』(公開3日間で11.7億、動員約92万人)の初動すら上回っているんですよ! 『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(公開3日間で16.2億円、動員約104万人)には負けていますが、そもそもSWが比較対象として持ち出されること自体がおかしい。あっちは全国1000スクリーン近くに対し、こっちは300くらい。公開規模としては1/3程度です。私をはじめとする新海愛好者のほとんどは「300って多すぎるだろ……ガラガラになるんじゃないか?」と不安がっていたんだから、見当違いも甚だしいと申しますか完全に舐めていましたね。地域差はあるものの中には連日満席の映画館もあって、300でも全然足りていない。評判も良く、口コミで更に客層が広がっているうえリピーターもどんどん出てきている状況です。「ファンこそが新海誠のポテンシャルを見縊っていた」という皮肉な事実が明らかになったわけですが、そりゃ『星を追う子ども』とか観た後だとどうしても……ひょっとしてアレも再評価される流れ?

「鬼平犯科帳」テレビアニメ化!「美しい、どこにもない世界を目指します」(コミックナタリー)

 まさかの鬼平。これは予想外もいいところだ。池波正太郎の『鬼平犯科帳』は連作形式で綴られた時代小説です。火付盗賊改方の長谷川平蔵(実在の人物)、人呼んで「鬼の平蔵」が江戸の街に巣食う悪党どもを取り締まる。役職名の「火付盗賊改方」は「火付・盗賊」「改方」と分解した方が分かりやすい。「火付」は放火犯のことですが、江戸時代は十両(現在の貨幣価値に換算すると100万円〜200万円)以上盗むと問答無用で死罪になる、大変刑罰が重い時代だった。「生き証人を残すリスク」が非常に高かったため、押し入った先の住人を皆殺しにしてダメ押しに(証拠隠滅も兼ねて)火を付けて逃げていく凶悪な盗人が後を絶たなかったと云う。つまり「火付」と「盗賊」は複合しやすく、こうした凶悪犯を取り締まるための部署(改方)が作られたわけです。鬼平は小説版よりもテレビドラマ版のイメージが一般的には強いでしょう。ドラマ版は視聴者の目を気にしてか残虐描写が控え目で「鬼」っぽさはあまりないものの、原作だとかなりエグい拷問シーンが出てくる。史実の平蔵は拷問を好まなかった、という話もありますがよく知らない。アニメ版もたぶん拷問シーンは端折られるんじゃないでしょうか。端折らない方針で行くなら是非『鬼平VS勇午』みたいな企画やってほしい。

・拍手レス。

 R.O.Dは個人的にウルジャンの漫画の印象が一番強いです。あと、倉田英之はいまだに自分の中ではPCエンジェルの人。マジ偏ってる俺。
 私にとっても「P天のコラム書いてた人」ってイメージが強い。『倉本』で一部読めるけど、投稿ハガキ含めて完全収録版出してほしい。1万円までなら出せる。

 老ヴォールの作品は皆名作ぞろいですが特にギャルナフカの迷宮が好きすぎて何度も読み返しています。ラノベ出身だけあってsfギミックと人間ドラマを混ぜるのが非常に上手い。sfといえばcgとか華がある画に注目しがちですが、ツカサの心理描写とかそこらを上手く表現できればアニメもいい作品になると思います。
 導きのアニメは「いかにもSF」ってビジュアルで敬遠する人も出てくるのではないかと心配。「SF=よくわからない、難しい」のイメージがすっかり定着していますけど、「あっ、SFってこういうのもアリなんだ!」と初見の人のジャンルに対する興味を刺激するような物になっているといいな。

 『君の名は。』は新海誠らしさと大衆受けがいい感じにバランスとれてていい作品ですよね…初期作は抑えて売れてから本性出すのが多い中逆のパターンは初めて見た感じがします。
 「客を楽しませることを楽しむ」段階にやっと進んだ気がしますね。素直に感動して興奮気味に語っている新規ファンと深刻にショックを受けて動揺している古参ファンの対比が面白い。

 Thunderbolt Fantasyで鬼鳥殿が口を開くたびに、水銀が頭をちらついて仕方ありません。面白いんだけど、すべて彼の掌の上っぽい感じも含めて、そんな気に。
 鳥海さんがゆったりとした喋りをするたび、どうしてもメルの顔が脳裏をよぎる。深刻な水銀汚染問題。

 「君の名は。」は今までの新海作品と比べても段違いに面白かったように感じました。主演の神木くんと上白石さんはかなり役に嵌っており好演だったのではないかと思いました。あと、自分はご助言どおり事前情報なしで観に行ったので、後半の展開が全く読めずにかなり楽しめました。ありがとうございました。
 うらやましい……私も予告編観ないで行きたかったですよ。これまでの新海作品も好き(星を追う子どもは……うん)なんですが、人にはちょっと薦めにくかった。今回はプッシュするのがメッチャ楽ですね。


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