2014年3月分


2014-03-27.

【速報】きんいろモザイク続編きたあああああああああああああああ(ひまねっと)

 生きる希望が弥増した。ヴァナヘイム――ゴルデネ・モザイク・コンニチハ!! 問題はストックがあまり溜まっていないってことですね。TVシリーズだと主人公たちが進級したあたり(クラスが別々になってしまうところ)で終わってましたが、あれって原作で言うと3巻の途中ですよ、確か。現時点での最新刊が4巻、連載分を考慮してもせいぜい2冊分程度しか溜まっておりません。1クールも保つかどうかギリギリですね。そうなると、映画化ってことはない(もしそうだったら最初から大々的に喧伝しているはず)だろうし、OVAの公算が強いか。しかし、原悠衣先生が頑張ってなもり先生並みに生産速度を上げてくれる可能性はゼロじゃないのでTVシリーズ第2期の望みを捨てる段階ではまだない。いや、なもり先生は言い過ぎた。あの例外的存在を他の漫画家に当てはめてはいけない。4コマ漫画は特に量産しにくいジャンルですからね。でも原作には非4コマのエピソードもちょくちょく含まれているし、増産の目があることはあります。何であれ震えて待つことにしよう。逢いたくて逢いたくて小刻みに震える。電動こけし。

 さて、せっかくだからこの機会に「きらら系アニメ」の歴史を振り返ってみよう。

 そもそも「きらら系」とは何か? 芳文社の発行する4コマ漫画雑誌“まんがタイム”から派生する形で生まれた姉妹誌“まんがタイムきらら”に端を発する潮流である。本家“まんがタイム”は植田まさしの漫画など、やや高めの年齢層をターゲットにした……平たく書けば「オッサン向けの4コマ」に誌風が固まりつつあったため、もっと年齢層の低い若手読者を対象に絞り込んだ……わかりやすく書けば「オタク向けの萌え4コマ」を主軸とする“まんがタイムきらら”が産声を上げました。時に2002年。萌え4コマの嚆矢が何であるかについては諸説紛々だが、少なくとも『あずまんが大王』(1999年連載開始)までは遡れるから創刊した時点で最低3年間の蓄積がオタ界にはあったわけだ。創刊の経緯についてはこちらのインタビュー記事(2007年)に詳しいことが載っている。きららはどんどんと人気が伸びて拡張路線に移り、きらら(本誌)の他に

 “まんがタイムきららキャラット”(2003年〜)
 “まんがタイムきららMAX”(2004年〜)
 “まんがタイムきららフォワード”(2006年〜)
 “まんがタイムきららミラク”(2011年〜)

 の4誌が加わり、更にアンソロジー扱いの季刊“まんがタイムきららカリノ”(現在は休止状態)や『魔法少女まどか☆マギカ』専門誌“まんがタイムきらら☆マギカ”(キャラットの増刊というポジションで原則隔月刊だが、映画『叛逆の物語』を上映中の2013年10月から12月にかけては毎月刊行された)、「まんがタイムKRコミックス GLシリーズ」と銘打たれた“つぼみ”(「百合」や「GL」をテーマに据えたアンソロジー、2012年に休刊しWebサイトも2013年に閉鎖された)も含めれば「きらら系」は合計で8誌ということになる。やたらと関連誌の多い“まんがタイム”においても「きらら系」は別格として遇されており、“まんがホーム”、“まんがタイム”、“まんがタイムジャンボ”、“まんがタイムファミリー”、“まんがタイムスペシャル”、“まんがタイムオリジナル”の6誌を「まんがタイムWed」で取り扱っているのに対し、きらら系は専用サイトとして「まんがタイムきららWeb」が用意されている。言わば独自の「きらら勢力圏」を築き上げているわけです。ただ、単行本派からすると各誌の違いはあまりわからない(判型が異なる&ストーリー漫画主体のフォワードはさすがにわかるが)。『レーカン!』『大家さんは思春期』『どろんきゅー』あたりはきらら系に載っていても違和感ないけど、きらら系に非ず。アニメ化した『恋愛ラボ』も掲載誌は“まんがタイムスペシャル”であり、ノットきらら系だ。きららか否かは単行本の値段で判別できる(フォワード以外のきらら系は税抜819円、まんがタイム系は税抜619円)けれど、内容面ではほとんど区別が付かなかったりする。ちなみにきらら系の単行本は「まんがタイムKRコミックス」と表記され、「KR=きららの略称」ということになっているが、本当に略称として使っている人はファンでも見かけないな……講談社の「KC」みたいなものか? あくまで「きらら」で通っています。

 “まんがタイムきらら”創刊時点では「萌え」の意識もあまり明確ではなく、やや路線が曖昧だった。『スーパーメイドちるみさん』とか『ぽけっとジャーニー』とか、現在共有されている「きらら系」のイメージとは少し異なる感じ。創刊ラインナップを列挙しても今の世代にはピンと来ないでしょう。海藍の『トリコロ』は現代にも通ずる「日常モノ」で、かつて「『あずまんが大王』の次はこれだ!」とか言われていたほどの作品だったんですけどね……細かい箇所にまで気を払って一個一個のネタを調理しつつ、回ごとの内容に統一感を持たせてキチンとまとめてみせる巧みさ。続いていれば(休載にならなければ)確実にアニメ化していたでしょう。今回は「きらら系アニメ」に話題を絞りたいので、きららそのものの変遷については以後割愛します。

 「きらら系」初のアニメ化作品は2004年連載開始の『ひだまりスケッチ』です。作者は蒼樹うめ、ねこねこソフトのファンにとってはOHP週刊連載の4コマ「諸葛謹」でお馴染みだった人。アニメが放送開始したのは2007年冬(1月〜3月)、その後人気の高まりとともに第2期(2008年夏)、第3期(2010年冬)、第4期(2012年秋)と制作が続行し、2013年には特別編として『沙英・ヒロ卒業編』が放送された。紛れもなく「きらら系」最長のアニメです。その次にアニメ化されたのがヒロユキの『ドージンワーク』(2007年夏)ですが、正直「ああ、そんなのもあったな……」って感じ。2009年春の『けいおん!』(第1期)の存在が大きすぎるせいで霞んでしまいます。言わずと知れたきらら系の代表作である『けいおん!』、原作は「アニメ化前の『ひだまりスケッチ』と比べてもまだマイナーな方」という程度(部数も2万部くらい)だったのに、アニメ化した途端にメガブレイク。アニメ界に「日常系」あるいは「空気系」の波をもたらすに至ります。ひだまりはまだ従来の4コマを下敷きにした「起承転結」の構成意識が強く、キチンキチンとオチをつけるタイプの漫画だったのに対し、けいおんはかなり「オチ」の意識が弱い。後世もっとすごい「オチなし4コマ」がどんどん出てくるせいで目立たなくなっていますが、オチ弱っぷりがむしろ良い方向に作用して「緊張感のない視聴体験」や「心地良い脱力感」を生み出すことに成功した(単にオチが弱いせいでネタを繋ぎやすかったというのもある)アニメで、それゆえ「日常系」やら「空気系」やらといった評に落ち着くこととなった。以後、「日常系」という言葉は「きらら系アニメ」を象徴するフレーズになります。

 けいおんと同じ2009年に放送された『かなめも』『GA 芸術科アートデザインクラス』(平和出版のたった3号で終わった萌え4コマ誌“COMICぎゅっと!”から移籍した作品、同じ境遇の漫画としてなかま亜咲の『火星ロボ大決戦!』が挙げられる)も広く捉えれば日常系だ。『かなめも』は去年出た第6巻で完結しましたが、『GA』は原作がまだ続いており「2期はよこい」と念じ続ける日々である。先にバラしちゃいますけど、『けいおん!』以降のきらら系アニメでTVシリーズの2期目が来た作品は今のところゼロ(きんモザの新作アニメがTVシリーズ2期と確定すればやっと1個)です。完結した『ドージンワーク』や『かなめも』に関してはさすがにファンも諦めていますが、それ以外の作品は「2期を、2期を」と切望する声が四方に響いて已むことなし。

 2010年はひだまり3期とけいおん2期をやっていた頃で、新作のアニメ化はなかった。2011年は『夢喰いメリー』『Aチャンネル』の2本が新たにアニメ化。『夢喰いメリー』はフォワードの連載作で4コマ漫画ではなく、また日常系でもありません。芳文社にとっては勝負球の一つだったらしいけれど、同じクールでやっていたまどかマギカに話題を喰われてほとんど目立たなかった。まどかマギカはきららとの関連も深く、専門誌まで作られているがメディアミックス作品なので「きらら系アニメ」に分類していいかどうか迷うところだ。『Aチャンネル』は「美術」や「軽音楽」、「同人誌」や「新聞配達」など、それまでのきらら系(日常系)アニメにおいて何かしら配置されていたアクセントが遂に消失してしまった「純粋にして純血な日常系アニメ」。個々のキャラクターは立っているんですけど、とにかくストーリーの特徴が何もない。「コミカルな掛け合い」と「手狭な人間関係」だけが存在していて、説明に困る仕上がりとなっている。「ゆるい学園モノ」としか言いようがない。そういう意味では『あずまんが大王』の流れをもっとも忠実に汲んでいる作品かもしれません。取っ掛かりを得るのがちょっと難しいけど、観ているうちにじわじわハマってしまうタイプである。OVAが制作されたくらいだから箸にも棒にも引っ掛からないセールスではなかったはずだが、2期決定の報は未だなく。そろそろストックも溜まったはずですが……。

 2012年はいろんな意味で話題になった『キルミーベイベー』と、いかなる意味でも話題にならなかった『あっちこっち』が登場。キルミーは犯罪組織に所属する殺し屋でありながら普通に学校へ通っている少女と、彼女が殺し屋であると知りつつ平気でちょっかいかけてくる命知らずの「やすな」が繰り広げるドタバタ漫才を描きますが、まるで密室劇のように舞台変化が乏しく、ソーニャとやすなと、あとは「あぎり」と「没キャラ」くらいしか主要キャラクターがいない。「シンプルすぎる人間関係」も重なって、「拷問」とも「修行」とも呼ばれる時間感覚が無限遠点まで引き伸ばされるような視聴体験を提供してくれる。端的に「クソアニメ」の一言で切り捨てられることもあるが、電波ソング全開のOP等によってチャクラを開かれた一部の視聴者が「キルミーこそ至高、クンダリニーを上昇させろ!」とグルグル眼で言い募った(嘘)ところ、OVA付属のCDやBD-BOXが発売される結果となった。奇妙な人気が草の根で続いており、このまま行くと本当に2期が来るのでは……とキルミーのアポカリプスを畏れる羊たちが荒野を彷徨っている。『あっちこっち』は……本当に話題にならなかったな。当方はアニメ版に関しちゃ「つみきが可愛かった」程度の記憶しかない。きらら系アニメとしては珍しい「男主人公モノ」で、キルミーに比べて突き抜けるところがなく、あらゆる面において「ほどほど」の範囲に留まっており、存在感が薄い。主人公「音無伊御」の朴念仁っぷりがあまり好かれなかったことも大きいかも。

 2013年は、個人的にきらら系アニメの当たり年だった。『ゆゆ式』『きんいろモザイク』の2本がアニメ化されました。『ゆゆ式』は主人公たち3人の少女が「情報処理部」に属している、という一応の枠組みが与えられていますけど、やってることはせいぜい「パソコンで情報を検索する」ことと「調べた内容をホワイトボードにまとめる」くらいで、同じ学校の文化系クラブ、あるいは他校の同じような部との付き合いはなく、「活動実績」と呼べるものは何ら持ち合わせていない。有名無実でほとんど形骸化しており、『ゆるゆり』の「ごらく部」みたいな「女の子たちが集まってワイワイと遊んだり駄弁ったりするための口実」としてのみ機能しています。そのため観始めた当初は「このアニメは何を目指しているの?」と大いに戸惑うでしょうが、お母さん先生の胸や尻に気を取られるうちにいつしか悟りを開いて解脱を果たしていることでしょう。「『ゆゆ式』には何もない……ゆえにこそすべてが詰まっている」と。空即是色です。それにしてもお母さん先生こと「松本頼子」の醸し出すエロさは尋常じゃねぇ。まことにたまらぬ。さておき、『ゆゆ式』は大きく分けて日常生活や学園生活における些細な出来事を緩いテイストで描く「生活パート」と、情報処理部でお題を決めてそれについて調べたり話し合ったりする「検索パート」の2種類ある。だが、アニメ化に際して「検索パート」の遣り取りはかなり削られた。たとえばクジラをお題にした回で、原作だと主人公たちはクジラに関するネタをあれこれ多数飛ばすが、アニメだと採用されたのはそのうちいくつかだけ……ってふうになった。こういう遣り方だとネタの転用が利かない(まさかもう一度クジラをお題にするわけにもいかない)のでエピソードの可食部が小さくなってしまう。『ゆゆ式』原作は5月に6巻を発売する予定で、普通の4コマだったら1クールに対しての原作消化は2巻〜3巻程度だから「ストック充分じゃん、余裕でしょ」と思われそうですが、さにあらず。大幅なネタのカットが響いており、実はアニメのエピソード消化は5巻目にまで及んでいます。アニメは原作通りに進んでいくわけじゃなく、原作のネタを摘み食いするようにあれこれ繋ぎ合せて構成しているせいで分かりづらくなっていますが、4巻あたりまではほぼ使い切っていて、あとは5巻の大半と6巻、つまり約2冊分のストックしか残っていません。このへんについては「ゆゆ式のアニメで使われた原作の話を調べてみた」という詳しいまとめが他所にあるのでそちらをご参考にどうぞ。そういった分量的な事情から2期をやるのは難しい、と放送中の時点で原作ファンにはわかっていましたから最終回のもたらす虚脱感は半端なかった。

 『ゆゆ式』アニメの終幕によって空けられた心の穴を埋めてくれたのがアニメ版『きんいろモザイク』であり、個人的にはこれが「きらら系アニメ」のハイエンドだと認識している。『きんいろモザイク』の主人公「大宮忍」は外国(と金髪)に憧れる黒髪おかっぱの少女(余談だが最初期案の一つでは「忍が実は男の子だった」と編集者がインタビューで語っている。アリスが忍関連で異様に嫉妬深いのもこの設定の名残りかもしれない)で、将来は通訳になりたいと思っているが英語の成績はダメダメ。彼女はイギリスの家にホームステイしたとき、たった一つの英単語……即ち「ハロー」だけですべてを押し通した。これで通訳など論外である。しかし、その拙い「ハロー」は海をも越えて谺する挨拶だった。ホームステイ先であったイギリスの家から忍大好き金髪碧眼少女「アリス・カータレット」が来日! 更にアリスを追う形で「九条カレン」という金髪少女もやってくる。このふたりと忍、それと日本における忍の友人「猪熊陽子」と「小路綾」も加えた5人がきんモザのメインキャラとなります。5人の掛け合いが主な見所の「日常系」であり、「異文化交流」というテーマは用意されているものの、あくまで味付け程度であって「異なる文化圏の付き合い」を掘り下げていくアニメにはなっていません。個性の立ったキャラ、可愛いルックス、優しげな雰囲気、ちょっぴりスパイスの効いたギャグ(視聴者から忍に「鬼畜こけし」なる愛称が与えられたことからお察しいただきたい)。萌え4コマに求められる要件がひと通りハイクオリティなレベルで揃っています。それだけに最終回を迎えたときの悲憤と慷慨は甚だしかった。飢餓感に悩まされる一部のファンはきんモザと入れ替わる形で始まった『のんのんびより』のアニメに流れていきますが、あれはきらら系じゃない(そもそも出版社が違う)ので今回は触れません。何にせよ、「『きんいろモザイク』の2期はまだか」と渇望するファンは後を絶たなかった。そこに来てこのニュース、まさしく干天の慈雨である。これがOVAの類でなく2期とするならば、ようやく『けいおん!』以来の2期目が到来したことになります。他のきらら系アニメファンも活気付くだろう。

 最後に今年のきらら系アニメ、つまり現況についても触れておこう。現在放送中の『桜Trick』、これは「ほぼ毎回女の子同士のキスシーンが入る」アニメとして話題を喚んでいます。『ゆるゆり』と対比して「ガチ百合」と称する向きもある。恋愛要素が強く絡んでくるため「日常系」と分類していいものかどうか迷いますが、今は亡き“つぼみ”の魂を継ぐ作品として温かく見守っていきたい。観たかったなァ、『総合タワーリシチ』のアニメ……まだ放送は開始していないが、『ご注文はうさぎですか?』『ハナヤマタ』のアニメ化も決定しています。『ご注文はうさぎですか?』(略称「ごちうさ」)は喫茶店を舞台にした4コマ。人語を解する謎のマスコットキャラ(中身はヒロインの祖父だという、まるで『ビビッドレッド・オペレーション』)が出てきたりするが、基本的なノリは「日常系」のソレです。喫茶店に住み込みで働くことになった主人公「保登心愛(ココア)」が、オーナーの孫娘でマスターの娘でもある「香風智乃(チノ)」と打ち解けようとするも、馴れ馴れしさが反発を招くのかなかなか心を開いてもらえない。そこにバイト店員の「リゼ」や他店の従業員も絡んできて、和やかな微百合空間が形成される。ココアとチノの関係は『けいおん!』における唯と梓、いわゆる「ゆいあず」を連想させますが、全体のトーンとしては『けいおん!』より『きんいろモザイク』に近いか。革新的な要素はないが、あらゆるパラメータが高い域でまとまっており、放送前から多方面の期待を浴びまくっています。ヒットするかどうかは分かりませんが、たぶん大きく外すことはないと思います。4月、つまりもうすぐ放送開始ですね。一番早い地域だと4月10日に始まるみたいです。『ハナヤマタ』は『空色スクエア。』の双による青春漫画。「双」では識別性が低すぎたためか、PNが「浜弓場双」に変わっています。女子中学生たちが「よさこい部」を作って「踊り」に励む話らしい。当方は1巻の冒頭をチラッと読んだ程度でよく知らないから、コメントは控えておきます。

 こうして振り返ると『ひだまりスケッチ』や『けいおん!』の存在がやっぱり大きいですね。日常系が隆盛を誇る一方で『夢喰いメリー』みたいな非日常系がパッとしなかったのは悲しいところだ。非日常コメディの分野だと『まじん☆プラナ』とか、あのへんに結構期待を寄せていたんだけどな。まどかマギカみたいな非日常系のヒット作もあったけど、純粋なきらら系作品ではないせいか潮流に対する影響は比較的少ないですね。『がっこうぐらし!』あたりがアニメ化されたらさすがに「影響アリ」と見做さざるをえませんが……。

 さて、締め括りとしてこの手の記事ではお約束の「今後アニメ化されそうなきらら系作品」も挙げておこう。率直に述べて、きらら系の漫画は巻数と無関係にさっくりアニメ化してしまう(『けいおん!』なんて第1巻の発売が2008年4月でアニメ化の発表が同年12月。まだ2巻も出ていなかった)ケースもあるので予想は難しい。極端な話、今月出たばかりの『いちごの入ったソーダ水』『ホームメイドヒーローズ』が年末には「アニメ化決定!」と叫ばれているかもしれないのだ。ただ、きらら系は通常2、3巻程度で完結を迎える作品が多いので、ある程度は絞り込めると思います。まず「結構巻数が溜まっていてストックは充分、2期だってバッチコイだ!」という、既刊が4冊以上のシリーズ。これは数が少ないので列挙しましょう。『三者三葉(1〜10)』『落花流水(1〜8)』『となりの柏木さん(1〜7)』『○本の住人(1〜5)』『棺担ぎのクロ。 〜懐中旅話〜(1〜4)』『はるみねーしょん(1〜4)』、全部で6つ。『天然あるみにゅーむ!』も4巻まで出ているが休止中なので除外。

 『三者三葉』は現時点における「きらら系」最古参、『ひだまりスケッチ』よりも連載期間が長い。原稿が溜まりにくい4コマで10巻超えというのは、きらら系において未曾有である(あ、でも『スーパーメイドちるみさん』が12巻まで行っていたか……うーん、あれは途中で移籍してきらら系じゃなくなったから扱いに迷うところだ)。作者は『未確認で進行形』の荒井チェリー。元気溌剌大食漢な主人公と、外面如菩薩内心如夜叉の委員長、落ちぶれて袖に涙のふりかかる元お嬢様、3人の少女の交流を軸としています。『未確認で進行形』が予想以上に好評なので、この流れに乗って『三者三葉』も……とファンは期待している模様。当方は1巻しか読んでいませんが、なかなか素朴な味わいで「昔懐かしいきらら」といったテイスト。同作者の他作品とも頻繁にクロスオーバーするらしく、「荒井チェリーの代表作」というよりは「荒井チェリーの旗艦」か。荒ベンジャーズ。『落花流水』は弓道部を舞台にした漫画で、若干百合色が強いため制作会社から敬遠されてアニメ化は難しいのではないか……というところに『ゆるゆり』のヒットが来て「ひょっとしたらひょっとするかも」な雰囲気が漂ってきた。アニメ化したら絶対に「弓の持ち方が〜」ってなるだろうな。『となりの柏木さん』は『夢喰いメリー』と並ぶフォワードの長期連載作。オタクであることを周りに明かしている少年と、オタクを嫌悪している(実は自分自身がオタクである)「柏木さん」との関係を綴るラブコメらしいが読んだことはない。「お絵描きSNSをきっかけして始まる恋」なんだとか。ピクシヴならぬピクラヴか。4コマじゃないぶん巻数が溜まりやすく、6作の中でもっとも新しいシリーズでもあります。『○本の住人』は刊行ペースが遅いけれど、始まったのは『落花流水』よりも前(単行本第1巻の刊行は『落花流水』の方が先)。kashmirらしい奔放なネタが炸裂するウルティマシュールな4コマで、これが「日常系」なら『日常』だって日常系になってしまうだろう。アニメ化するならキルミー以上の苦難に満ちた冒険となる。『棺担ぎのクロ。』は1巻がきゆづきさとこ初の単行本ともなったシリーズ。休止期間があったけど再開された。棺を背負って旅をする、チャイカみたいな主人公だが、ノリとしてはファンタジーというより童話。「実は怖い」と言われる系統の。手抜きナシの高クオリティでオーパーツ扱いされていた時期もあった作品だが、やはりアニメ化を経ていないせいで知名度はイマイチ低い。非日常路線の4コマとしては頂点的な存在だと、個人的には確信しています。これを読まないというのは勿体無い。『はるみねーしょん』は最近の作品だと思っていたけど、もう5年も経つのか……常に滞空している、宇宙からやってきた転校生「細野はるみ」と友人たちの遣り取りを淡々と描く、脱力系シュール日常漫画。パッと見手抜きような味わいのある描線とダジャレを多用するネタが特徴。30分アニメにしちゃうと間が持たないので、5分アニメが応分だろう。Flashで充分という気もしてくる。

 「一応、1クールぐらいなら維持できる」程度の巻数、2〜3巻程度の作品は多いので列挙するのはめんどい。当方が注目している奴だけピックアップしよう。女の子たちが美味しくご飯を食べる様子にこちらもお腹も空いてくる『幸腹グラフィティ(1〜3)』、チャイカのコミカライズを担当している茶菓山しん太の園芸コメディ『チェリーブロッサム!(1〜3)』、「カメラ好きの女子高生」を主人公に高密度なネタを詰め込んで「もはやアニメ化は無理だろう、これぞ4コマならではの漫画だ」と前向きに諦念されている『しかくいシカク(1〜2)』、ヒロインは例の黒いアレ(G)という禁断の擬人化マンガ『ごきチャ(1〜2)』、強いて言えばこのへんが有望である。そして「1巻しか出てないから来るかどうかはもう完全に勘頼り」なのが『コドクの中のワタシ』(人外ばかりのクラスに平凡な少女が放り込まれるパラノーマルコメディ、4月に2巻が予定されている)、『すいまさんといっしょ』(擬人化の発達により「睡魔」までもが美少女化する次元へ達した。言祝げよ、これこそが進化だ。緩い雰囲気なのに格好はエロくてドキドキします)、『あまゆる。』(あらゆる萌え4コマの平均値を取ったような「特徴がないのが特徴」という一作、何にでも似ているがどれとも違う。「無貌の美少女」みたいな存在)、『ソラミちゃんの唄』(宅録を生き甲斐にしているヒキコモリの浪人生「ソラミ」を主人公にした青春漫画、己が焦げつきを照射する)らへん。まどかマギカのスピンオフだと『みたきはら幼稚園まほう組』が来ると当方は嬉しい。しかし、期待していた『三種のジンギ』はアニメ化どころか単行本が出た直後に打ち切られて2巻も出ない有様であり、ハッキリ言って当方は「市場がよく見えている」とは言いがたい人間である。下手な鉄砲でも数撃ちゃ当たる、とばかりに挙げてみたが、これでも外れるようだったらいよいよホンモノだろう。

『月刊少女野崎くん』TVアニメ化決定! 野崎くん役:中村悠一(ひまねっと)

 攻性朴念仁の野崎くんを主人公にしたラブコメですが、どんどん登場人物が増えて群像劇みたいになっていきます。好意の矢印がどっちを向いているか、割とハッキリしているからカップリング好きはニヤニヤしながら楽しめるでしょう。ただ恋愛面の進展は4冊かけても蟻の歩み程度ゆえ、「ラブ」の部分に期待するとダレるかもしれない。実際に当方も2巻で「話が変わり映えしなくなってきたな……」と一旦離脱しかけたが、そこを抜けて3巻あたりに達すると「これはこれで」と受け容れられるようになった。主人公の野崎くんこと「野崎梅太郎」は現役男子高校生にして少女漫画家という周りにはあまり知られていない側面を持っており、「好きです!」と告白してきたヒロインを「自分の漫画の愛読者」と勘違いしてアシスタントに引っ張り込んでしまう。少女漫画家のくせして自身の色恋をまったく省みず、己に好意を寄せるヒロインさえも漫画執筆に役立てることしか考えていない。これは男子高校生に非ず、もはや「野崎くん」という名のミュータントである。

 最近読んだ『〈辞書屋〉列伝』にヘブライ語の辞書を作った「ベン・イェフダー(エリエゼル・パールマン)」を紹介する章があったんですが、この人すごいですよ。30歳の頃にパリへ留学して結核に罹り、余命幾許もない身体になって、残りの人生をパレスチナで過ごすことを決意する。彼は相思相愛の幼馴染みデボラに「金もない、余命もない、君を妻にしたくてもする資格がない」と暗に別れを切り出した手紙を送ります。しかし二人の愛はその程度じゃ挫けなかった。デボラは反対する両親を説得し、理想を追い求める彼のそばで暮らすべく旅立つ。が、ベン・イェフダーよりも先にデボラの方が亡くなっちゃうんですよ……結核伝染されて。彼女は「自分が死んだらポーラと結婚してほしい」と言い遺します。このポーラ(ヘブライ名だとヘムダ)ってのはなんと彼女の妹、つまりベン・イェフダーの義妹に当たる。歳は14も違う。デボラは夫を尊敬していて、「妹ならきっと『彼を支える』という私の遺志を全うしてくれるはずだ」と確信していたらしい。事実、ポーラは辞書出版の資金集めや援助の取り付けといったサポート面で大いに貢献します。彼女のおかげでベン・イェフダーは本来の仕事に専念することができた。紆余曲折を経ながら彼は死ぬまで辞書を制作し続け、死後は妻や子供たちが専門家の手を借りつつ引き継いで完成まで漕ぎ着けた。これだけでもすごいけど、更にベン・イェフダーは生前、日常言語として使われていないヘブライ語を現代に復活させるため自分の子供に「ヘブライ語だけ教える(つまりよその子供とは一切交流させない)」という荒業極まりない純粋培養を敢行しています。彼の長男は「約2000年ぶりにヘブライ語を母語として喋る人間」となった。「ああ、世の中には野崎くんよりも徹底した人間が存在していたんだ……」と畏怖しました。

・拍手レス。

 やっぱ自分男なんでチンコ出ないと気分が乗らないんですよね
 昔レズ物のAVを観たとき、「いったいどこでヌけばいいんだ?」と途方に暮れました。

 自分はもう戦神館クリアしたくちですが、ネタバレにならぬよう内容には触れません。晶ルートに入ったということは、甘粕のテーマことPARAISOはもう聴かれましたかね。あれを初めとして今作の音楽のクオリティは過去一かもしれません。与猶さん気合入りすぎ。
 曲名はまだ知らないのですが、第四層(ギルガル)突破イベントのときに流れる曲が脳内ループするほど好き。戦神館のBGMは最初そんなにガツンと来ないというか、切れ味が鋭すぎて痛みも何もなくスッと自然に耳の奥へ這入ってくる。でもゲームを終了した後も与猶サウンドが止まらない、ヤバイ。

 実質的なハーレム空間の維持が主人公の目的になってしまうと、作品として行き詰まることを意味しますね。最近だとはがない辺りがその苦しみに嵌ってる気がします。
 少年向けはハーレムが巨大化するとそれ自体が足枷になってしまいますね。少女向けは、逆ハーレム系もあるにせよ、ひと組の恋愛過程を丹念に描いて「結婚」や「その後」についても書いてくれるあたりが好ましい。ただ、これはこれで停滞気味になりやすい(ふたりの想いがすれ違ってなかなか進展しなかったり、途中から脇カップルに話が逸れたり)し、ハーレム路線で行くにしろ恋愛路線で行くにしろどのみち工夫は必要になってきますね。


2014-03-20.

・明日は休日だ。久々に『相州戦神館學園 八命陣』を再開できる、と静かな興奮に包まれている焼津です、こんばんは。

 プレーしていると「これに関すること以外何もやりたくない」って気分に陥るほど中毒性が高いので、まとまった時間が取れるときでないと恐ろしくてなかなか起動できぬ。ここ数日の封印期間、聖じゅすへる女学園を舞台に「ごきげんうらうらのーべす」と挨拶代わりの歪んだオラショが谺する全員女体化悪夢『マリア観音がみてる』を妄想することで糊口を凌いできました。幽雫くんの違和感のなさはもはや言うまでもないが、意外と女体化した栄光が一番イケるかもしれないことに気づく。

 しかし最近買った本が『カクレキリシタン オラショ――魂の通奏低音』『神々の明治維新  神仏分離と廃仏毀釈』で、今までずっと積んでいた『甘粕正彦 乱心の曠野』を読み出しているあたりつくづく当方はわかりやすい奴だな。

ハーレムラノベあるある そのまえにハーレムラノベの定義を教えろ(主ラノ^0^/ ライトノベル専門情報サイト)

 ラノベじゃなくてエロゲーの話だが、「個別ルート」が充実する一方で「ハーレムルート」という、ヒロイン全員とイイ仲になってしまうシナリオは概ねオマケみたいな扱いを受けることが多い。複数人のヒロインとセックスする展開になる以上、どうしても個々のプレイは薄くなってしまう(濃くするとダレてしまう)し、そもそも「複数の異性と肉体関係を維持し続け、時に乱交する」状況はギャグにしか見えない。下手すればそれまでに築き上げたヒロインたちのキャラクターをぶち壊しにしてしまいかねない危うさもある。こうした理由からハーレムルートにはどこか「パラレルワールドみたいなもの」という逃げ口上が存在する余地を許してしまう部分があります。以前から、エロゲーやラノベの「ハーレム物」を読んで感じていたことがあります。「ハーレムは築き上げるまでが面白いし楽しい、でも完成した後は発展性がなくなるので退屈」ってことです。ラノベ以外でも、たとえば大藪春彦の小説なんかで金に飽かして世界中の美女を集める、みたいな「シモ方向における男の浪漫」を描く作品は多々あるけど、決まって面白いのはその前段階であって後段階ではありません。ハーレムというのはある意味、「究極の停滞」なんですよ。ゴールじゃないけど、スタートラインでもない。だから「ハーレムが出来上がった後」のことを想像すると、だいたいつまらないことになります。ヒロイン全員が子供産んだりすると、それはもう「極小のカルト宗教」が描き出す世界としか思えなくなる。

 だから逆説的に、ハーレム物は「ハーレム的状況」そのものを目的とせず、「違う目的」を掲げた方が面白くなるんですよ。「ハーレム王に俺はなる!」って話の方がエロゲーは作りやすいでしょうけれど、ユーザー側にとっては「魔王の暴虐によって家族を喪った主人公、力を持たぬ彼は魔族の女どもを篭絡して『もう一人の魔王』に成り上がり、復讐を遂げんとする!」みたいな話の方が面白い。無論、個人差はあります。「単純でスケベなバカが頑張る方が好ましい」って人もいるでしょう。でも、直向きにハーレム王を目指しているようなキャラでさえ、実はハーレム以外の何かを志向していたりするんですよ、意外と。ハーレムは「目的」ではなく「手段」、あるいは「付帯的状況」に留めておいた時こそ面白みが増す。これは他にも応用が利く理屈であり、ジャンルの面白さを引き出そうとするときは「あえて目的をズラす」意識が大切になります。バトル物だからと言って、バトルそのものを目的にする必要はない。恋愛物でさえ、恋愛そのものが目的となっていない局面はいくらでもある。なんか話がズレてきたけど、結論としては「ハーレム物は別にハーレムの維持を目指さなくていい」ってところか。ハーレムのためのハーレムになってしまうと、面白くないですからね。

2000年のエロゲ雑誌が出てきたけど(2次元に捉われない)

 クッソ懐かしい。『アトラク=ナクア』(97年にリリースされた『ALICEの館4・5・6』が初出だけど単品発売されたのは2000年になってから)、『いつまでも… 神長さん家の春夏秋冬』、『AIR』、『ELYSION』、『行殺・新撰組』、『銀色』、『書淫、或いは失われた夢の物語。』、『sense off』、『月姫』、『二重影』、『Bible Black』、『果てしなく青い、この空の下で…。』、『Parallel Harmony』、『Hallo Again』、『BE-YOND』(96年に発売された『ビ・ヨンド〜黒大将に見られてる〜』のリメイク版。ライターが同じなので『うたわれるもの』とも設定が共通しているのではないか、と囁かれている)、『Pantom』、『螺旋回廊』、『Rumble』、『Lien』(五十音順)と、なかなかすごい面子が揃った年である。「エロゲー界におけるカンブリア爆発」とも形容される所以だ。ランキングやレビューページに出てくる『Aries』は「曲芸商法」で有名になってしまったブランド、Circus(サーカス)のデビュー作です。当方も捨てるに捨てられないP天を何十冊か溜め込んでいますけど、ホント今見返すと「よく当時はこれでヌけたな……」としみじみしちゃいますね。もう時効だろうから告白しますけど、当方は『Kanon』の記事で何度かヌいたことがあります。そう、『ONE』や『Kanon』は純粋にいたる絵が好きで買いました。『AIR』あたりから微妙に絵柄が変わって好みから外れていきましたが……。

Innocent Greyが百合?でも誰か死ぬんでしょ?死なないの? 新作『FLOWERS』について杉菜水姫に聞いてみた(おたぽる)

 イノグレことInnocent Greyの新作『FLOWERS』は「百合」をテーマにした全年齢対象PCゲーム(18禁要素がなく、つまり「エロゲー」ではない)として密かな話題を呼んでいます。PCゲームは、ほとんど同じような内容でも「エロがあるのとないのとでは売れ行きが全然違う」事情があり、それゆえ無理矢理にでも18禁要素を突っ込んできた(結果として「ほんのちょっとでもエロがあれば後は何をしてもいい」ムードも醸成され、ニトロプラスみたいな異端のブランドが台頭する要因にもなった)経緯がある。これは「僅かでもエロ要素があれば売れる」というよりも、「エロがないと『エロゲー』の分野に包含されないため、売れる以前の問題としてそもそも話題になりにくい」ことが大きい。一種のカテゴリエラーになっちゃって、エロゲーマーたちのチェックの目から漏れてしまうんですよ。内容はエロゲーに近接しているけど、18禁要素がない――そういうゲームを指し示す言葉自体が存在しません。「エロゲー」の対義語として「一般向け」ってのがありますが、そういうのは『信長の野望』とか、あるいはMMORPGとかも含んじゃいますからね。「ギャルゲー」が「エロゲーのエロ抜き」に近いニュアンスを持っているものの、普通ギャルゲーと言った場合はPS等のコンシューマ向けソフトを指すことが多い。「PCゲームとして発売される、エロゲーに近い形式の非18禁ソフト」を一言でピンポイントに表現するワードってのがないんですよ。だから「CLANNADは人生」みたいなコピペが誕生する余地も出てくる(『CLANNAD』はよくエロゲーと勘違いされるが18禁要素を含んだX-ratedなバージョンは存在しない。「じゃあ何なの?」と訊かれても適切な用語がないため返答に窮する)。「(どんな形であれ)必ずエロが入っている」のはジャンルに線を引く要因たりうるけど、「エロが入っていない」のは普通すぎてジャンルそのものが成立し辛い。よほどの有名ブランドでないかぎり(あるいは有名ブランドであってさえ)出してもほとんど認知されない、というのが現状です。

 更に、百合。マリみて以降のブームで「波が来ている」ように思われていますが、まだまだマイナーで商業的に成功が見込みやすい分野とは言いにくい。過去にも『サフィズムの舷窓』や『処女宮』、『その花びらにくちづけを』、『カタハネ』、『屋上の百合霊さん』などで試みられてきたし、ずっと延期しているが『ひとりのクオリア』と『ふたりのクオリア』なんてのも予定されている。『処女はお姉さまに恋してる』や『恋する乙女と守護の楯』のような女装モノを「擬似百合」と見做せば更に枠を広げることもできますが、「百合エロゲー」がジャンルとして定着しているかと申せば正直「否」でしょう。根本的に「百合とエロの相性に関する問題」ってのもある。百合好きの間でも、どこまでOKなのか(プラトニックのみ、スキンシップまで、キスまで、ペッティングまで、挿入あり、「iPS細胞というので同性の間でも子供ができるらしいです」)は嗜好によって分かれるところだ。しかしエロゲーとなると、最低互いに愛撫するくらいの描写は必要になる。そうなったら自然に「プラトニックのみ」とか「キスまで」の層は切り捨てられてしまう。また、百合に興味のない層がエロ目当てで買うにしても、「少女同士のセックス」はいまいち訴求力が弱い。長年2chのエロゲー板界隈を覗いてきましたが、エロゲーユーザーは「裸の女の子」を欲求する一方で「男根! 恐ろしいほどに男根!」を欲している人が多数派なんじゃないかと思います。「可愛い女の子を傷つけ穢し尽くす」もしくは「少女からオンナへと変貌させるための秘蹟を施す」ことによって欲望を満たし、悦びと興奮を生み出している。だからフライングチンコ(女の子がよく見えるよう濡れ場における男の体を消去してチンコだけ残した結果、「チンコが空中に浮いている」ように見える現象)やトランスペアレントチンコ(チンコを透明ないし半透明に描くことで膣内を見せるテクニック)は大抵ウケが悪かった。最近は規制がキツくなってきているからアレですが、エロ漫画でもチンコはある程度デフォルメしつつ「存在感のある男根」として描こうとする流れがあるわけじゃないですか。やっぱり、「女の子が脱ぐ」だけで「チンコが出てこない」ソフトは大多数のエロゲーマーにとって物足りないんじゃないか、って気がします。

 イノグレが『FLOWERS』で「百合エロゲー」ではなく単なる「百合ゲー」を目指したのは、エロゲーになると切り捨てられてしまう「プラトニックのみ」や「キスまで」の百合好き層にとっては朗報でしょう。しかし、そういった層が今までずっと切り捨てられてきたのは、「そういった層をターゲットにしても商売が成り立たない」懸念が強かったからに他なりません。「残酷にして美麗」の猟奇系で名を売ってきたイノグレにとって、今回の企画は大きなバクチになる。『カルタグラ』の体験版をプレーして以来、ずっとイノグレ作品をスルーしてきた当方だが、応援の意味も込めて『FLOWERS』を買ってみることにする。安いし、シナリオも1MB(人にもよるが総プレー時間の目安は「10時間前後」だろう)とそんなにすごく長いわけでもない。こういうサイズの、エロがあったりなかったりするソフトたちが活況を呈してくれたら、それはとても嬉しいことです。重厚長大路線に傾き過ぎたエロゲー界が良い意味で「身の丈に合ったシナリオ」に目指していったら、ほんの少しでも滅亡の時を先延ばしにすることができるかもしれません。当方もかつて重厚長大路線を支持した人間であるし、エロゲーの現状にユーザーの一人としてちょっぴり責任を感じなくもない。最近はプレーする本数もめっきり減った(というかほぼゼロになった)が、せめて応援するマインドだけでも残していきたい。

・拍手レス。

 家族計画声付きの話。青葉役の北都南はこれ以上ないってくらいはまってましたねー。全く違和感ありませんでした。
 あのへんで当方も「エロゲーに声は要らないよ派」から「エロゲー声優スゲェと思うよ派」に鞍替えしましたね。ぺー姉さんもさることながら、現在やってる戦神館のキーラ役・海原エレナもスゲェ。最初にキャスト聞いたときは「エレナ姉さんか……ベテランではあるけどな」と難色を示していた当方も、今となってはあの人以外の配役が思いつかない。

  八命陣の公式推奨攻略順は晶→歩美→鈴子→水希です
 テキトーに選択肢を取っていったら自然に晶ルートへ流れていきました。まさかこの○○が神野の正体じゃねぇだろうな……と邪推しつつ楽しんでいます。

 戦神館、超鈍足でプレー中です。管理人さんより遅いくらい。よく電脳紙芝居と揶揄されることもあるけどこの媒体でなければできない作品もあるんだなとつくづく思う。こんな作品が年一作でいいから出続けてくれたらなあ。
 作品世界で溺れそうになるくらいの没入感が味わえますね、戦神館。プレーしていると「戦神館以外やりたくない」という気持ちになってしまって他の予定が進まなくなる危うさもあり、時間の取れるときだけ進めています。


2014-03-14.

・合間を縫って『相州戦神館學園 八命陣』プレー中。

 「第二話 悪夢襲来」が終わってやっとこ「第三話 朝に誓う」へ入った段階。つまりやっと体験版第1弾の範囲を抜けたわけだ。そろそろコンプした人が増えてきて本格的にソフトの評価が固まりつつある中でこの体たらくとは我ながら情けないが、スケジュールの調整に失敗した事実は素直に認めるしかない。しかしそれにしても、第二話の後半からメチャクチャな勢いでヒートアップしていきますね、戦神館。ぶっちゃけ第四層(ガルギル)に到達するまでは「面白いけど、Diesほど夢中にはなれないな」とやや醒めた気持ちでプレーしていた部分があります。それがどうですか、あの怒涛の展開を目の当たりにして丸きりテンションが変わってしまいましたよ。「どういうこと……まだ第二話なのに、もうクライマックスじゃねぇか!」と内心叫んでしまった。風邪でもひいたのかと疑うくらい体温がヤバいことになった。なまじ体験版を封印していたせいで乗り遅れてしまったが、ようよう当方も戦神館フィーバーという狂熱の末端末席に就くことが叶いました。これぞまさしく「熱に魘されて見る夢(フィーヴァードリーム)」。先の展開が気になりすぎる一方で、どっと体力を消費した実感もある。これは相当エネルギーを蓄えて挑まないと保たないソフトだな……。

 「第八等廃神」みたいな細かい言い回しがイチイチ厨二心をくすぐる。年甲斐もなく熱中せざるをえない。現段階で判断するのは早計だが、この調子で進んでいくならDiesと同じか、あるいはそれ以上の興奮を味わうことができるのかもしれません。戦神館に期待しつつも「なんだかんだでDiesは絶対に超えられないだろうな」と半ば神格化するような想いで確信していた当方、徐々にその自信が崩れ去りつつあります。これはアレや、境ホラに期待しつつも「せやかて終わクロを凌駕することはできんやろうなぁ」と諦め気味に嘆いていたかつての自分が雲散霧消したときと一緒や。「凌駕」の基準が非常に曖昧だから可能になったって側面とてなきにしもあらずだが、そう雖も期待を上回られるとやっぱり嬉しいもんです。正直、これを徹夜してやり込める若い連中が嫉ましくも羨ましくて仕方ない。「あと10年、いやせめて5年遅く生まれていれば……」と変な悔やみ方をしている真っ最中である。もし本当にそうだったら「怒りの庭」も直撃せず、古老みたいなlightユーザーから「Diesの原画は最初GユウスケじゃなくてHide18だったんじゃ、2005年頃のスタッフ日記で没CGも公開されておったのぅ」などという昔話を聞かされる立場になっていたんだろうか。

プレミアムアーカイブス 山田一(Getchu.com)

 『山田一BOX』の上位互換か。ここ10年ですっかり「生ける屍」の装いが板に付いたD.O.、去年末にリメイク作の『家族計画 Re:紡ぐ糸』を出したばかりだというのにまた山田一(田中ロミオ)頼りの商品を出すとは……というか今のD.O.って内部がどうなってるのかホントよくわからないな。若いエロゲーマーはそもそも「ディーオーって何?」って感じでしょうが、老舗ブランドの一つであり、かつて(90年代頃)はエロゲーマーなら知らぬ者のいない有名所でした。ソフ倫こと「コンピュータソフトウェア倫理機構」の筆頭的存在でもある。田中ロミオは90年代の終わりにここへ入社し、『キミにSteady』という『同級生』の二番煎じみたいなソフトの開発に携わった。ライターとしての本格的なデビュー作は99年の『加奈〜いもうと〜』。今回の「プレミアムアーカイブス」に収録されるのはオリジナルの方じゃなくて2004年に発売されたリメイクの『おかえり!!』みたいですね。原画が米倉けんごから綾風柳晶に変更され、音声もフルボイスになりましたけど、シナリオの追加はなかったはず。『星空☆ぷらねっと』はロミオが本命企画である『魔術大戦』を通すために用意したダミー企画が出発点となっているソフトで、経緯を知るファン(そして魔術大戦≒オクルを待望しているファン)にとっては複雑な気持ちを掻き立てられる。『夢箱』は『家族計画』の人気に当て込んで制作されたリメイク版、フルボイス化および原画の刷新でYuyi(当時の名義は雨衣ユイ)が全面的に描き直した。ちなみに無印版の原画は成年コミック方面で有名な師走の翁。今となってはこっちの方がレア?

 『家族計画』は山田一(田中ロミオ)の人気を不動にしたソフトであり、「エロゲー名作○選」とかやったら高い確率でノミネートされる一本ですけど、実を言うと発売前はほとんど期待されていなかった。『星空☆ぷらねっと』の評価がやや微妙だったこともあり、「山田一は『加奈』だけの一発屋なんじゃないか」みたいな声があったんですよね。しかし蓋を開けてみれば良い仕上がりで、口コミによってどんどん人気が広まっていった。ちなみに『家族計画』は当初ボイスレスで、2002年の『絆箱』によって音声が追加された。「ぶるぁぁぁ!」の人がエロゲーに出演したのは確かコレが初めてだったはず。「まさかの声優!」と話題になった記憶があります。『絆箱』はいろんなグッズを詰め込んだファン向けというか御布施強要なボックスで、メチャクチャでかくて持って帰るのに苦労したなぁ……『家族計画 〜そしてまた家族計画を〜』は2004年に発売されたFD。ブランド名がD.O.ではなく「高屋敷開発」になっていた。この頃にはもう『CROSS†CHANNEL』が世に出ていて「田中ロミオ=山田一」説が囁かれていたから、「FDに参加している山田一は本物なのか偽物なのか」を巡って議論が巻き起こった。「山田一」の名義に関する権利はD.O.が押さえているため、たとえ田中ロミオが一切関わっていなくても「山田一が新たに書き下ろしました」とD.O.サイドが言い張って押し通さんとする雰囲気はないでもなかった。結果としてファンたちは「この山田一は本物(田中ロミオが新規シナリオを執筆している)」という判断を下しますが、あまりにも短いボリュームと強気な価格設定(税抜6800円)が災いして「ボッタクリ」扱いされることに。『家族計画』はこの後『家族計画〜心の絆〜』(PS2移植版、PSPの移植版もあるがそちらは副題が付かず単に『家族計画』)、『家族計画〜追憶〜』(絆箱の廉価版、要するにグッズの付かないPCフルボイス版)、『家族計画 Re:紡ぐ糸』(原画をさめだ小判に変更したPCリメイク版)の3バージョンを出している。大きく変わったのは『Re:紡ぐ糸』だが、出したばっかりだからさすがに収録しなかったか。『Re:紡ぐ糸』は原画もシナリオ構成も声優も全部変わっているので、旧式に思い入れのある当方みたいなユーザーからすると『家族計画〜追憶〜』をオススメしたいところだが、古いゲームだけに今の感覚からするとシステム周りが貧弱極まりないんですよね……確かフルスクリーンにも対応してない(画面サイズが640*480で固定されている)んだっけ? 当時を知っている人間でさえ、昔のエロゲーをやるとあまりの不便さに苛立つことが多々あります。人間は便利さに慣れてしまう生き物なのだ。慣れてしまうと元には戻れない。ひとたびひびが入れば、二度とは……二度とは……さておき、プレミアムアーカイブスの収録内容として挙げられている『家族計画』は無印版(声ナシ)ではなくフルボイス版みたいです。公式サイトなのか何なのかよく分からないが検索したら出てきたサイトの表記では『家族計画〜絆箱〜』となっているが、あの膨大なグッズが付かないことを考慮すると単に「『家族計画〜追憶〜』だ」って言った方がより正確か。絆箱はクソデカいパッケージとセットで初めて絆箱だと言える。

 残りの『黒の図書館』と『ドーターメーカー』はシナリオの「監修」やら「原案」やらといった立場で直接タッチはしていない。山田一が「監修」したエロゲーは他に『ドーターメーカー2』と『ピアノ〜紅楼館の隷嬢達〜』があるけど、このふたつはスルー? 結論を述べると、「オリジナルとリメイクの両方をカバーしていない」「監修作すべてを収めているわけではない」っつー点でファンアイテムとしてはイマイチ、「今やるとシステム周りがちょっと……」という点で初心者へ薦めるにもイマイチなどっち付かずのボックスです。どれもこれも既にDL販売されているし、「全部やりたい」「パッケージとして手元に残しておきたい」というのでなければ初心者の方や「久々にアレをやりたい」という方は個々のソフトをDL購入すれば宜しいかと思います。パッケージ封入特典の「MOOK本」も、サンプル画像を見るかぎりでは『山田一BOX』に付いていたブックレットの使い回しみたいだし。とはいえ、古いゲームをパッケージ版として復刻する流れそのものは歓迎したい。是非この調子で『剣乃ゆきひろアーカイブス』(悦楽の学園/DESIRE/XENON/EVE burst error/YU-NO)も発売していただきたい。『菅野ひろゆき メモリアル』だけではやっぱり片手落ちだ。

【コラム・ネタ・お知らせ 】 「異能バトルは日常系のなかで」 TRIGGER制作でアニメ化!(アキバBlog)

 マジかよヒャッホウ。するんじゃないかと薄々予想していたが、マジでアニメ化するとは嬉しい。制作は今『キルラキル』でアツいTRIGGER。「主人公が中二病を患っている異能バトル物」としては『トラウマ量子結晶』と並ぶくらい好き。アレ終わっちゃって残念だった。望公太(太公望の逆読み)は刊行ペースが速くて追うのにちょっと苦労するが、最近イイ感じで安定してきています。『黒き英雄の一撃無双』も、無双主人公の開き直った活躍が清々しい。もともと熱心なファンの付いてる作家だったが、アニメ化でより一層軌道に乗るかも。

【オリコン】くりぃむ有田絶賛の小説が急上昇 発売10年で本格ブレイク

 ちょっと前に重版予約してたのを見て「なんで今更?」と不思議がったけど、これが原因だったのか。『イニシエーション・ラブ』の作者である乾くるみは第4回メフィスト賞を受賞してデビューした作家、6冊目の著書に当たるイニラブがヒットして一気に名前が売れた。イニラブは定期的に話題に上る作品ですが、あまり語るとネタバレになってしまうのでなかなか紹介しにくい一冊である。差し当たって当時の感想をリンクしておこう。「必ず2度読みたくなる」ことや「衝撃の真相」が存在することも明かすまいとして相当歯切れの悪い文章になっています。そういう評判もすっかり定着し、今は「仕掛けがあるってことくらいはバラしてもいいよね」という空気が醸成されているので、もうちょっと踏み込んで語りますと「仕掛けがあるってこと」を知らないで読むと若干の退屈を強いられる小説です。モテない青年の初恋を描くストーリーながら、恋愛小説的な面白さはハッキリ言って乏しい。読んでいてドキドキするような、甘酸っぱい初恋の感触が描けていれば最強だったと思うんですけど、「仕掛け」のせいで恋愛要素が犠牲になっちゃってるんですよね……イニラブの評価が分かれるのは「仕掛け」そのものの是非よりも、「恋愛要素やキャラクター的な魅力の薄さ」といった部分に掛かっている。「記憶を保持したまま過去に遡って人生をやり直す」という設定を根幹に据えた『リピート』もキャラ部分に関してはやや不満が残る出来だった。しかし思考実験めいた面白さが濃厚だったので、初乾って方にはむしろこちらをオススメしたい。リピートもリピートで定期的に話題となる作品ですが、発表時期が近かった(イニラブが2004年4月でリピートが同年10月)せいかどうしてもイニラブの影に隠れてしまいがちという不憫な長編です。

・拍手レス。

 「プレミアムアーカイブス 山田 一」という商品がディーオーさんから、発売との事
 「山田一(田中ロミオ)ゲームタイトル集」とハッキリ明記してあってビックリしました。D.O.は「山田一=田中ロミオ」を意地でも認めないと思っていたのに……遂に折れたのか?


2014-03-11.

『相州戦神館學園 八命陣』は超低速プレー中でまだ第二話が終わらない焼津です、こんばんは。

 あの後いろいろ読みたい本ができて『ダイヤのA』すら滞っているし、もう完全に当方のスケジュールはグダグダでズタズタだ……既に生死不明じみたところがあるチラシの裏サイトだからわざわざ閉鎖宣言とか出したりしないけど、そろそろ本格的に更新が遅くなってくるかもしれません。最低でも月に一回ペースぐらいは守っていきたいところだがさてはて。

 最近出た本だと『エロの「デザインの現場」』『メキシコ麻薬戦争』あたりを興味深く読んでいるが、まだどちらも全然途中であり今月中に読み切れるかどうか怪しいところ。ノンフィクションやドキュメンタリーなど、長年チェックをサボってきた分野が近頃滅法面白く、あたかも宝の山であるかのように感じられる。わけいってもわけいっても積読の山。

【悲報】あかべぇそふとすりぃ『暁の護衛 トリニティコンプリートエディション』にループバグが発生・・・(2次元に捉われない)

 そういえばC†Cも最初期版にループバグがあったらしい。当方はひと月遅れで買ったからパッチ当てて護身完成させましたけど、発売日にゲットした人はバグとわからず仕様と勘違いして延々プレーし続けたという……モノがループ物だけに抜け出せないバグは深刻だった。『暁の護衛』はループ物じゃないからバグとすぐに分かるだろうけど、それにしてもコンプリートエディションなんて出ていたのか。それ自体を知らなかった。いや、よく考えると聞いた気もするけど、全部バラで持ってるからあまり興味湧かなかったのかもしれない。内容としてはPC版3作に移植版『暁の護衛 トリニティ』の追加要素(公式の説明によるとグラフィックの追加が主の模様、シナリオの追加はナシ?)を混ぜたもので、「ワイド対応」と言いつつ単に画面の上下を切っただけっていうしょっぱい対応も見られるが、バラで買ったら2万円超える(メーカー希望小売価格は税抜で合計21400円)ソフトを10800円(税抜)と約半額で提供しているのだから、「『暁の護衛』? やったことないわ」という方には充分オススメできる一本かと。件のバグも修正パッチが配布されて解決した(「エンディングを迎えタイトルに行き、ゲームを終了せずに再度「暁の護衛」を最初から開始した場合、前回のフラグが継続してしまい、同じルート、もしくは特定のルートにしか入れなくなってしまう」現象が発生していた)みたいですし。かく言う当方は一本目の無印版『暁の護衛』と二本目の『暁の護衛〜プリンシパルたちの休日〜』しかコンプしてなくて、三本目の『暁の護衛〜罪深き終末論〜』を途中で投げ出していますけどね……。

 少しネタバレ込みで解説しますと、『暁の護衛』は治安が悪化した近未来の日本が舞台になっていて、いわゆるセレブな人々は子息や令嬢を警備の行き届いた学園へ通わせるようにしています。作品の主な舞台となる「憐桜学園」は「資産家の令嬢と年少のボディーガードの教育を並行して行う」という一風変わった方針を打ち立てている。生徒である令嬢すべてに専属のボディーガード(こいつらも全員生徒)が付くシステムになっており、「『ハヤテのごとく!』の執事をボディガードに置き換えたような感じ」と捉えれば大きく間違っていないはず。最近のハヤテはあんまり学園モノの要素がないし、『暁の護衛』も平気で荷物持ちをさせたりしてボディーガードというより雑用みたいになってる部分があるけど……(本職のボディーガードやSPは緊急事態でも即座に動けるよう決して余計な荷物を持たない)。作中では護衛対象である令嬢たちを「プリンシパル」と呼び、「ボディーガード」たる男子生徒たちとは明確に身分の違う存在となっていますが、主人公である朝霧海斗が傍若無人な性格のせいで時折「身分の差」という設定を忘れそうになる。実のところこのゲーム、シナリオ上は「護衛」よりも「身分の差」が重大な要素に据えられている……んですが、進むルートによっては障害もクソもなくあっさりヒロインと結ばれてしまったりする。来歴を隠しているものの、「禁止区域」という一種のスラムみたいな場所で生まれ育った主人公は本来セレブの令嬢であるヒロインたちとは結ばれることを許されない被差別的な立場に置かれている。主人公の父親もかつては将来有望なボディーガードだったが、護衛対象である令嬢と道ならぬ恋に落ち、逃避行の末に禁止区域へ入り込むことになった――という経緯があります。禁止区域云々は一作目の段階だとそれほど話に絡んできませんけれど、二作目の過去編から徐々にストーリーが膨らみ、三作目の『罪深き終末論』で遂に「禁止区域強制退去法案執行」という浄化作戦が発動する。マルチシナリオだから一作目のエンディングすべてが『罪深き終末論』に直結しているわけではなく、ヒロインの一人である「神崎萌」の派生ルートであるオマケシナリオ「南条薫」のエンディングが『罪深き終末論』への入り口、ということになっています。このへんは未プレーの人にはわかりにくい。なのでバラ売りのときは「一作目をやってください」で済ませたが、コンプリートエディションが出ている以上、もう少し踏み込んだ解説にした方がいいかしら。以下、がっつりネタバレで行きます。

 一作目のエンディングは大きく分けて6つ。「二階堂麗華」「二階堂彩」「倉屋敷妙」「ツキ」「神崎萌」「南条薫」。二階堂姉妹はコンプリートエディションのパッケージを飾っていることからも窺える通り公式の扱いはメイン級ですが、シナリオ上の扱いはやや軽い。麗華ルートでは主人公の父親にまつわる因縁が明かされるものの、彩ルートはヒロインとの遣り取りよりもライバルである尊徳との仄かな友情の方が印象に残る。妙はキャラ的な可愛さで言ったら上位クラスだが、シナリオの内容は「ボディーガードである侑祈(ロボット)が機能停止してしまった、彼をいつか必ず直すと誓う」ってな具合であり、主人公の出自はだいぶどうでも良くなっている。ツキは同じ禁止区域の出身ということもあり、主人公の過去を知る存在として独特の地位をキープする。麗華ルートとツキルートをやれば主人公の輪郭はだいたい掴めるだろう。

 で、ここからが本題。神崎萌は古武術を嗜む格闘令嬢。ボディーガードを必要としないくらい腕っ節が立つものの、やや世間知らず。禁止区域のことをほとんど知らずに育った彼女は「まさにスラム」といった生活実態を目の当たりにしてカルチャーショックを受けます。「何か自分にできることはないか」と迷った末に「屋台を開く」というちょっとアレな結論に辿り着く。ただ、すったもんだの末に屋台は結局完成せず、格差だの何だのをうっちゃってひたすらイチャイチャするだけで彼女のルートは終わる。キャラとしての魅力はさておき、全ルート中「もっとも腰砕けなシナリオ」となりました。細部はだいぶ忘れていますけど、流れとしてはこんな感じだったように記憶している。お好み焼きの屋台を見た萌が「自分もああやって屋台で食べ物を作って禁止区域の子供たちに無償配布したい」と思い立つ → 主人公や萌のボディーガードである薫はその望みを叶えるため、資金調達にバイトをしたり屋台をDIYしたりする → 文化祭準備のような作業を通じ、彼らとの一体感に心地良さを覚えた萌は当初の「禁止区域の子たちに食べ物を配りたい」という願いを忘れてしまう → 海斗との関係を継続させたいあまり薫の制止を振り切って完成した屋台を手ずから破壊……と、確かここでルートが分岐点を迎える。逃亡した萌を追って見つけてホテルにインすれば萌ルートへ(1周目はこれで固定)、2周目から追加される薫寄りの選択肢を取れば薫レートへ転轍する。薫ルートで明かされる真実。麗しの美少年といった趣のある薫は、家庭の事情で男のフリをして学園へやってきた「男装しなければ正統派の美少女」な子だったのだ……! 今のユーザーなら「それなんて『東京レイヴンズ』?」と言い出すかも。海斗は顔を合わせた初日から薫の性別には気づいていて、彼女の意志を汲んであえて黙っていたわけです。屋台破壊事件を通じ、海斗へ芽生えた想いやら何やらでボディーガードとしてやっていく自信を喪失した薫は実家に出戻り、おとなしく婿を取ることにします。南条家は地元の名家とかそんなんで、立候補を募ればそれに応える男たちは枚挙に暇がない。婿選びの最強トーナメントが執り行われることを知った海斗は単身薫の実家に乗り込む……というのが一作目における「萌ルート派生の薫エンド」であり、『罪深き終末論』においてはその続きとして用意された「婿選びの最強トーナメント」が序盤の目玉イベントとなります。しかし、期待した割にこのトーナメント戦は盛り上がらないというか、正直面白くなかった……それで放り出してしまったんですよね。語っているうちに何か懐かしくなってきたし、久々に起動してみようかな。うざったいアクティベーション(ネット認証、コレのため起動が何秒か遅れていた)の解除パッチもいつ間にやら配布されているみたいですし。

 ライターの衣笠は「一貫性のあるカッチリとしたシナリオ」を構築するのが苦手なタイプ(もっと端的に述べれば「設計図を引けないタイプ」)なのか概ね脈絡のないストーリーを書く傾向にありますけど、型破りな思いつきとテンポの良い掛け合い描写に関しては卓越したセンスを誇っており、いずれきっと化けるだろう……と思いながらなかなかブレイクし切らずに現在へ至っている。『暁の護衛』も、面白そうな設定があまり使いこなせていない、それどころか設定が邪魔になっている部分すらあって少々誉めにくい。だが、プレーしていて妙に落ち着く雰囲気があることも確かである。絶賛はできない、でも「これを味わわずにスルーするのは勿体無い」という気持ちも歴然として存在する。薦め方に迷うゲームであります。

集英社、新ライトノベルレーベル設立か。ダッシュエックス文庫を商標登録(わなびニュース)

 ダッシュエックス文庫……略称は「DX文庫」? スーパーファンタジー文庫からスーパーダッシュ文庫に移行したときのように、しばらく両レーベルを並行させてから旧い方を閉じる、みたいな遣り方を繰り返すつもりなのかな。スーパーファンタジー文庫は1991年3月創刊で、2001年4月の『ハルマゲドンバスターズSS』を最後に休刊しましたが、SD文庫の創刊が2000年7月だったから新旧レーベルが10ヶ月間に渡って両立していた勘定になります。ただ、スーパーファンタジーは純粋な少年向けレーベルではなかった(若木未生や前田珠子なども書いていた)せいもあって、SFからSDに移行できたシリーズって『サイケデリック・レスキュー』だけだったんですよね……なぜかタイトルが『D/dレスキュー』に変更され、挿絵も変わってしまいましたが。コバルト文庫の方で新装版が出たスーパーファンタジー文庫の作品も何個かあったけど、移籍して継続したシリーズがあったかどうかコバルトに疎い当方はよく知らん。知る限りだと、ほとんどのシリーズは『ハイランディア』みたいにレーベル終焉に伴って強制終了喰らったはず。現在のSD文庫を支えるメインシリーズに目を向けると、まず『ベン・トー』が先月に完結しました。『カンピオーネ!』は遂に最終章へ突入、移籍ナシでこのまま終わりそう。パパ聞きはドラマCD付の限定版を6月に出すくらいだからまだまだ終わりそうにない。移籍してでも続けるでしょう。『六花の勇者』は……どうなんでしょう? 少なくとも打ち切られることはないと思いますが……移籍か残留か。「ダッシュエックス文庫」がどういう思惑で創刊される、どういう性質のレーベルなのかまったく分からない以上、憶測もあまり捗らない。SD文庫の後釜的なレーベルになるのだったら、マイナーシリーズのほとんどは移籍ナシの打ち切りを覚悟しなければならないかも。2chのSDスレによると、ダッシュエックス文庫の創刊ラインナップとして王雀孫が予定されている、みたいな噂もありますが真偽不明。しばらくは情報待ちですね。これで「創刊ラインナップに片山憲太郎の名前があった! 『電波的な彼女』と『紅』がシリーズ再開! そして再アニメ化!」とか報じられたら狂喜乱舞する自信はありますけど、そんなのは夢のまた夢か……。

<物語>シリーズ最新作『終物語(下)』、4月3日発売予定

 <物語>シリーズの通算17冊目。サードシーズンに入ってからは5冊目となる。<物語>シリーズは2005年に短編「ひたぎクラブ」が雑誌掲載されてスタートした、現時点で西尾維新最大の有名作です。2006年にシリーズ1冊目となる『化物語(上)』が刊行され、以降アニメ化を交えながら7年以上に渡って続いている。<物語>シリーズには大きく分けて3つのシーズンがあり、『化物語(上・下)』『傷物語』『偽物語(上・下)』『猫物語(黒)』の6冊から成るファーストシーズン、『猫物語(白)』『傾物語』『花物語』『囮物語』『鬼物語』『恋物語』の6冊から成るセカンドシーズン、そして『憑物語』『暦物語』『終物語(上・中)』と現在4冊出ているサードシーズン。サードシーズンで完結する予定だから「ファイナルシーズン」とも呼ばれていますが、これまでも何度か終了予告を出しながら平然と続けてきたシリーズなので、「本当に完結するのか?」と半信半疑な部分もあり、差し当たって当方はファイナルシーズンと呼ばずにサードシーズンと表記することにしています。以前に「忍野メメの青春時代を題材に取った番外編が書きたい」みたいなことを語っていた気もしますし。一シーズンにつき6冊、という周期がサードシーズンでも貫かれるのならぱ『終物語(下)』の後に『続終物語』が来て綺麗に完結するんでしょうけれど、そもそも『暦物語』が予告ナシで急遽追加された本だったし、『終物語』も最初は1冊で収まるはずだったのに「1冊じゃ無理だから上下巻にするわ」と言い出して、更に「上下巻でも厳しいから中巻を追加するわ」と菊地のエイリアン魔神国みたいなことをやり出した経緯もある。『続終物語』の後に『続々終物語』とか『続々終物語 完結篇1』とかやり出しても不思議ではありません。

 <物語>シリーズは本編以外の関連書籍も多いからザッと解説していこう。まず先に申し上げておきますと、アニメ化して空前のヒットを飛ばした作品なのにコミカライズ版が出ておりません。小説読むのがダルい、という方は大人しくアニメ版を観ましょう。2009年の『アニメ化物語オフィシャルガイドブック』、アニメ放送直前に発売された一冊で、50ページ足らずと薄いがサイズはなんとA3判。縦42cm、横30cmくらいですよ。デカい。同じく2009年の『佰物語』、これはアニメ化に際して制作されたドラマCDであり、厳密に言えば「関連書籍」とは呼べないかもしれませんが、脚本をすべて起こした「シナリオブック」が付いてくるのでギリギリ「書籍」と言い逃れできなくもない。この時点で忍野忍のキャストは平野綾が予定されていた。いろいろと事情があったのか、『偽物語』以降のアニメ本編だと綾は綾でも坂本真綾が演じることになりました。2010年の『化物語アニメコンプリートガイドブック』、アニメ放送終了後に発売されたガイドブック。税抜3000円と高価だが、エピソードごとに冊子を分けており、5冊入って3000円、1冊あたり600円と考えたら安い……かも。書き下ろしの短々編が読み所というか、この短々編読まないと八九寺が阿良々木宅にリュックを忘れていったイベントが掴みにくい。2012年の『アニメ『化物語』副音声副読本(上・下)』、アニメ『化物語』BD・DVDの副音声(オーディオコメンタリー)として作者自らが書き下ろされたシナリオを収録したもの。普通、アニメのオーコメは主役やヒロインを演じた声優がダラダラとくっちゃべるように解説する(なぜか本編の内容に触れずオーデションの思い出話ばかりに花が咲くパターンも多い)ものだけど、『化物語』では声優たちが副音声でもキャラクターに成り切って本編の内容に突っ込みを入れたり解説を加えたりするキャラクターコメンタリー、いわゆる「キャラコメ」方式を採用していました。ファンにとっては二度美味しい夢の方式だが、脚本を書くライターも演技する声優も大変(会話の進行を本編のタイムラインに合わせないといけない)だから採用しているアニメは少ない。他だと境ホラがやってたっけ。西尾も感覚を掴むのに苦労し、あらかじめ用意していた原稿がそのまま使えず、現場で微調整を繰り返してやっと使用に耐える状態になったという。現場で削った箇所も多く、この「読本」は「現場で微調整を繰り返」す前の「あらかじめ用意していた原稿」をベースにしたディレクターズカット版として仕上がっているとのこと。同じく2012年の『偽物語アニメコンプリートガイドブック』はやっぱりアニメ『偽物語』の放送が終わってから発売されたガイドブック。これにも短々編が付いてくる。2013年の『化物語 入門編』はコンビニ向けの廉価版。『化物語』収録の「ひたぎクラブ」と『暦物語』収録の「こよみフラワー」に書き下ろしの「ひたぎコイン」、計3編が詰め込まれている。カバーの付かない簡易装丁で、要するに「箱のない講談社BOX」。ファンはほんの数ページの短々編を読むために各地のコンビニを訪ねたという。短々編と言えば『「化物語」PremiumアイテムBOX』(ひたぎのねんどろいどや缶バッジが入っている)にも付いてたっけ、さすがに買わなかったが。『化物語PRODUCTION NOTE -characters-』『化物語 KEY ANIMATION NOTE 上巻』はコミケで販売された後に一般販売が始まった本。PRODUCTION NOTEが設定資料集でKEY ANIMATION NOTEが原画集、と書いても「どう違うの?」と首を傾げる方もおられるでしょうが、平たく書けばKEY ANIMATION NOTEの方が分厚い。上巻だけで1100ページ超えてる(3分冊だから1冊あたり370ページ弱)。下巻の発売がいつになるかは不明。去年から始まった『アニメ<物語>シリーズヒロイン本』は何と表現すればいいのかな……『化物語』のヒロインひとりひとりに焦点を当てたコンセプトブック、とか? たとえば「其ノ壹 羽川翼」はファッション誌風、「其ノ貮 八九寺真宵」は絵本風といった感じ。ヒロインそれぞれのキャラに合わせて臨機応変にブックデザインを切り換えています。コスパ的にあまり手頃とは言えないが、「同人誌みたいなもの」と割り切って買うならアリかも。4月に『終物語(下)』と合わせて「其ノ伍 戦場ヶ原ひたぎ」が出る予定。結局駿河は6人のメインヒロインの中で一番最後に回されたか……『花物語』のアニメまだやってないし、仕方ないっちゃ仕方ないが。


2014-03-05.

『相州戦神館學園 八命陣』はDVD3枚組なのでインストールに結構時間が掛かる。ボンヤリ画面を見ていても暇なので、何か漫画でも読みながら待とうか……と軽い気持ちで手に取った『ダイヤのA』にどっぷりハマってしまって肝心の戦神館が進まなくなってしまった焼津です、こんばんは。絵に描いたような本末転倒ぶり。

 『ダイヤのA』、実は何年か前に十数冊まとめ買いしましたが、試しに読んでみた1巻が期待していたほど面白くなくてずっと放置していました。しかし2巻に入ったあたりからメキメキと面白くなり、地方大会が始まるところ(8巻)に差し掛かるともう読むのがやめられなくなってしまった。ある程度主人公(ピッチャー)の活躍する場面に絞ってストーリー構成が行われており、間はやや端折り気味になっていますけど、それでも主人公以外のキャラクターがキチンと魅力を発揮するような見せ場を要所要所ちゃんと配置しているあたりが心憎い。所持している巻数を読み切ったらとっとと処分するつもりでしたけれど、気がつけば最新刊たる39巻までバベルの塔の如く床積み(本棚の空きがないためうちでは基本的に新刊はすべて床積みです)される事態に……当然、今月発売予定の40巻も買うつもりだ。熱中しすぎて栄純の掛け声「おいしょおおおおお!」が日常生活でも口から出そうになっています。栄純といい雷市といい、本当に「気持ちいいバカの出てくる漫画」です、『ダイヤのA』。でも一番胸がときめくのは春市だったり。あと、普段は鬼のように厳しい監督が窓の外で輝く月を眺めながら「ラッキーな勝ち方でも‥ 泥臭い勝利でも何でもいい‥‥」「俺はアイツらを甲子園に連れていってやりたい――‥」と本心を漏らすシーンにホロリと来てしまった。歳を食ったせいか、最近少年漫画を読んでいると主人公たちよりも彼らをサポートする大人キャラの方に感情移入というか肩入れをしてしまう。戦神館はダイヤ全巻読み切ったら再開します。

『CROSS†CHANNEL 〜For all people〜』、2014年6月26日にPS3とVitaで発売

 田中ロミオが今の名義でシナリオを手掛けた一番最初のエロゲー。一般ゲーを含む場合は『夏夢夜話』が最初となります。懐かしいな、かれこれ10年半も前のソフトだ。体験版が衝撃的な幕切れを迎えることで話題になり、発売後もジワジワと口コミで人気が広がっていきました。当方は確か発売の翌月に買ったんだと思う。体験版範囲のギャグがあまり肌に合わなくて敬遠していたんですよね。当時の日記に「あくまで太一(主人公)の主観的な世界を読む限りでは濃厚な不安と乾いた黒い笑いばかりが目立ちますが、『他のキャラにとって太一という人間はどう見えるのか』と考えながらやっていくと、却ってクリアーに映る場面が結構あります」と書いている通り、「主人公に感情移入する」ことよりも「主人公を客観視する」ことで掴めてくるものがある、エロゲーにしてはちょっと変わった手触りの一本です。2003年に無印(PC版)がリリース、翌年2004年「To all people」としてPS2に移植(後にPSP版も発売)され、それから7年も経った後「In memory of all people」(Xbox 360移植版)が世に送り出された。「To all people」は期間の短さもあってあまり大幅なシナリオの追加はなかったらしいけれど、「In memory of all people」はなんとシナリオ量が1.5倍になるくらい書き足され、「完全版」と呼ぶに相応しいボリュームになったと聞きます。無印C†Cのシナリオは1.3MB程度だから、約2MBか……前回もこの話題(エロゲーのシナリオをMB換算する奴)やったけど、あれに追加すると『Kanon』が0.9MB、『AIR』が1.3MB、『君が望む永遠』『月姫』『斬魔大聖デモンベイン』あたりが3MB前後です。2002年当時はボリューム面において金字塔的存在だった『“Hello, world.”』が約7MB。『Kanon』以前の大作として知られる『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』でも4MB行かない域なんだから、つくづく異常というか異形の分量である。ただ、YU-NOって制作期間がすごく短かったらしいんですよ。噂によるとたった8ヶ月でゲームのすべてを完成させたんだとか。時間がなくて最後は一本道になっちゃった。故・剣乃ゆきひろ(菅野ひろゆき)はつくづく凄いライターだった……いや、話がまたしても逸れてしまったな。

 まだ詳しい情報がないのではきとは言えませんが、PS3およびVita移植版となる「For all people」はたぶん「In memory of all people」をベースにして作るんじゃないでしょうか。多少の書き直しや追加要素は当然あるでしょうけれど、これ以上の大幅な書き足しはない気がします。「もうC†Cはいいじゃねぇか、それよりイマのcategory3とcategory4を……」「それより何よりオクルを……」と亡者の呻き声が響き渡ってくる。幻聴であろうか。ロミオと松竜の組み合わせはオクルトゥムを想起させてやまない。そういえば、続報ないけどみなとそふとの『少女たちは荒野を目指す』もロミ松企画だったな……これは果たして順調にオクルが近づいてきている証なのか? ちなみに「CROSS」と「CHANNEL」の間にある記号は「短剣符」と呼ぶ。おおむね「ダガー」で変換できます。お試しあれ。

『魔弾の王と戦姫』原作イラストレーター交代のお知らせ(MF文庫J編集部ブログ)

 体調不良で6巻のイラストが間に合わなくて表紙以外の新規絵がゼロになり、編集部が「お詫び」の記事を書くことになった経緯もあったので「やっぱりか……」という気はしました。5巻も本文イラストは柳井伸彦(コミカライズ担当の人)が描いてましたし、作業量の面で限界が来たのかもしれません。アニメを目前に控えてイラスト変更というと『人類は衰退しました』を思い出しちゃうな……あっちは変更に合わせて新装版を出したけど、こっちはどうするんだろう? MF文庫Jでもイラストレーターが交代することは何度かあって、たとえば『イコノクラスト!』は当初のイラストレーターがOKAMAだったけど、3巻からkyoになった。その際に1巻と2巻の新装版を出しましたが、同じように途中でイラストレーターが代わった『あそびにいくヨ!』は新装版を出すことなく今に至っている。あそいくは15巻からと、かなり遅い段階で切り換わった(しかもアニメの放送がとっくに終わっていた)せいもあるでしょう。魔弾は現在8冊、新装版を出すかどうかちょっと微妙な巻数だ。ちなみに人衰のときは6巻まで出ていました。これからアニメが開始することを考えるとなるべくイラストのタッチを統一しておきたいところなんでしょうが……片桐ならイケるか?

 新イラストレーターの片桐雛太は『恋姫†無双』で有名なエロゲー原画家。2000年代前半のエロゲーにハマっていた当方みたいな層からすると『ONE2』や『先生だ〜いすき』、『屍姫と羊と嗤う月』あたりの印象が強い。先だいは今だともう頭身的な意味でアウトかもな……屍姫は体験版の終わり方が衝撃的で話題になったものでした。

・拍手レス。

 シャイターネ・バーディのメインのストーリーラインは、一人のロシア兵の栄光と転落、英雄パブロヴナ大尉が悪徳の魔王バラライカへと変じたその背景、そして地獄の釜の底での両者の誇りの激突という、非常にハードな物語のはずなのだが……たぶん映画化したとしても、感想を百人に聞けば、百人ともが第一声に「アイエエエッ!? ニンジャ!? ニンジャナンデ!?」になるんだろうなぁ。シャドー・ファルコンの存在感が圧倒的過ぎる。そりゃニンジャ・リアリティ・ショックも起こすさ。漫画にも登場してほしいが、出てきた瞬間その場の全てを持っていくことは間違いないから、扱いが難しそうだ。
 飛び立つ黒いチューリップ(遺体搬送機)や行き場のない英雄の魂というアフガンツィ(アフガン帰還兵)的な情景と情念を織り込んだあたりも好きですけど、アニメとして観たい部分はやっぱりシャドーファルコンさん。何なら『シャドーファルコン 忍法十番勝負』と最初から彼推しの企画で行ってくれても当方は一向に構わない。

 戦神館のせいで寝不足続きです。まだ1ルート終えただけですが、甘粕大尉のオーラに早くも胸を射抜かれつつあります。そういや自分、Diesで一番好きなキャラは獣殿だったし、ああいう泰然と構えるキャラが好きみたいです。
 戦神館は……とりあえず鈴子が出てくるところまで進めました。この普通の学園モノっぽい雰囲気から「奸賊これくしょん」に移行する様を想像するとワクワクしますが道のりは遠そう……。


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