2013年3月分


2013-03-31.

殊能将之の訃報に絶句した焼津です。

 いや、マジで、「ええっ……!?」と、目の前の文字列が理解できなかった……1999年に『ハサミ男』で氏がデビューして以来、ずっと著作を追ってきた程度には好きな作家でした。『どんがらがん』も殊能のセレクトだから、という理由で読んだ。2004年の『キマイラの新しい城』までだいたい「年に1冊」のペースを保っていましたが、以降パッタリと刊行が途絶えてしまいましたね。2009年発売のリレー小説集『9の扉』に掲載された短編「キラキラコウモリ」が、結果として最後の作品となるみたいです。「キラキラコウモリ」は20ページくらいの短い作品ながら文章にキレのある好編で、「物語を忘却すればするほど、主人公に深く共感することができる」指摘にハッとなったものだった。本格的な復活を心待ちにしていましたが、叶えられることはなく、今は呆然とするしかない。気持ちに整理が付かず、千々に乱れて冥福を祈ることもできません。畜生、本当にこの人の新作が読みたかったんだ。仕方がないので旧作を読み返して餓えを癒すことにします。殊能に関してただ「懐かしむ」ことしかできないことが口惜しい。発表当時に賛否両論を呼んだ『黒い仏』、あれを読んだ頃は中核を成すネタに対して造詣が浅かったせいで心底ポカーンとなったものだったな……いっそ忌まわしいぐらいに懐かしくて胸が詰まる。49歳だなんて、まだ若いじゃないですか。飯野賢治や今邑彩といい、今年は早くからショックなお悔やみが立て続けで、もう放心するしかない。

ヤマモト・ヨーコ完結・・・蓬莱学園の思い出ある奴とかいる?(ぶく速)

 リンク先のスレに出てくる『星くず英雄伝』の作者はつい先日までアニメやってた『GJ部』の新木伸です。9巻まで刊行されたところで中断していますが、作者によると10巻分の原稿は既に書き上がっているとのこと。電撃文庫版は絶版状態ですので、復刊するか、あるいは別の出版社で新装版を出して再開する可能性が僅かにあります。どちらにしろGJ部にもうちょっと目処がついてからの話でしょうね。本編はもう終わりましたが中等部編が継続中。キマイラは「途中で脱落したけど、玄造さんの昔話ってまだ続いてるの?」と気になっている方もおられるでしょうが、玄造さんの話は一応終わりました。「まだ話していないこともあるけど、それに関して今明かすつもりはない」と若干含みを残す形でしたけどね。比較的新しいところでは『ウィザーズ・ブレイン』の新刊がなかなか出なくて気を揉んでいる。ウィズブレは1巻から3巻までは1冊完結、4巻と5巻はそれぞれ上下2冊で完結、6巻以降は上中下3冊で完結――という形式になっていて、8巻の中まで出ているんですよ(発売は2011年2月)。つまり15冊目で刊行が止まっている。もともと刊行ペースが遅く、「年に1、2冊」が標準でしたからファンはそんなに焦ってなかったんですが、さすがに2年以上の沈黙は初めてなので「何かあったのでは……」とやや心配だったり。ツイッターを見ると、リアルでいろいろあって原稿が進んでないんだとか。今年1月のつぶやき「原稿が上がるまで2012年が終わらない。むしろ、2011年も終わってない。今日は2011年25月3日」に笑った。いや笑えない。ライトノベルは書き下ろしが基本なので、連載メインの漫画と違って進捗状況があまり伝わってこないところがもどかしいなぁ。正直、ハルヒあたりもちゃんと完結するのか怪しいところですね。あと『踊る星降るレネシクル』の続きが一向に出ない(アレももう2年経つのか……)は単に俺修羅が売れ過ぎているせいだろうか。売れない作家は打ち切られるけど、売れたら売れたで何だかんだと立て込んでしまうジレンマ。その点東野圭吾はすごいな。売れてからもほとんどスピードが落ちないド安定ぶり。

『のうりん』アニメ化決定!!(ひまねっと)

 『らじかるエレメンツ』から5年、遂に白鳥士郎作品がアニメ化だ。最近のGA文庫は調子がいいな、絶好調である。白鳥はらじエレといい『蒼海ガールズ!』といい、「作風が器用で面白いんだけどイマイチ万人ウケしない作家」って印象でしたが、『のうりん』は上手い具合に万人ウケするところを突いてきたシリーズで、見事ヒットを成し遂げましたね。「ウケ狙いが行きすぎてあざとい」との声もありますが、なら前作の『蒼海ガールズ!』でも読めばいいよ。ライトノベルにおいては異色の海洋冒険ストーリーです。当方はこれがキッカケで“ホーンブロワー”シリーズをまとめ買いしました。

『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語』、2013年秋公開

 噂は聞き及んでいたけれど、やっと本決まりか。今年の秋は他にもタイバニのThe Risingやらっきょの未来福音、『劇場版 SPEC 結』(2部作)が予定されていますね。EVAの新劇は……たぶんないだろうな。まどかは本編でキッチリと話が終わっていたことだし、新編に関しては「蛇足にならないこと」を祈るばかりである。それにしても『傷物語』の制作は現在どうなっているのかしら。あと『楽園追放』も続報を聞かないので気になっている。ついでに書くと今年は『300(スリー・ハンドレッド)』の続編が公開されるって話もありますが、さて。

・拍手レス。

 さくFESマスターアップ、今回は随分早かったな、と思った自分の感覚は麻痺してしまっているのでしょうか・・・?
 ハイクオソフトは来年で10周年を迎えるけど、そのうち1/3は延期に費やした気がする。『ひとなつの』とか、ちゃんと制作されているんだろうか。未だに公式の発売日が「2012年予定」のままになってる……。


2013-03-28.

・「熊が出てくる」という情報に釣られて吉村龍一の『光る牙』を読んだ焼津です、こんばんは。

 作者の吉村龍一は去年に第6回小説現代長編新人賞受賞作『焔火』を刊行してデビュー、『光る牙』は2作目、つまり受賞後第一作って奴です。『焔火』は過酷な生い立ちの少年が怒り任せに人を殺し、追われる身になるというハードな小説で、重たい話ながらもグイグイ読ませる一品だった。個人的には同時受賞作である『赤刃』の方が好みだったけど、あれの作者はまだ新作出していない……どうしているんだろう。さておき、『光る牙』は『羆嵐』『ウエンカムイの爪』『シャトゥーン』『デンデラ』などといった「クマ小説」の系譜に連なる一作です。熊が実際に姿を現すまで結構かかるので、「クマ小説である」ことを知らずに読んでもらった方がより恐怖を味わえてベターですけれど、別に熊が出ると知っていてもそこまで面白さが減じる本ではない。筋立てはシンプルながら、丹念かつ簡潔な描写で、「新米森林保護官」という主人公の視点にすんなりと馴染ませていく。この「すんなり」具合が心地良い。変な評し方かもしれませんが、この小説は危機に危機が重なる後半のスリリングな場面より、比較的動きの少ない前半部の方が息詰まる緊迫感に満ちている。焦って筋を追うことなく、じっくりと作品世界に耽るのが良い愉しみ方かと。ストーリーをなぞることばかりに専念してしまうと、主人公が危機に陥った際の「おうちかえりたい!」という切実な心の叫びが響いてきません。ぶっちゃけこれはクマ小説というよりも「おうちかえりたい小説」です。子供の頃の、ワケも分からぬまま見知らぬ場所に連れて来られて、不安と退屈で居ても立ってもいられず「おうちかえるぅ〜」と駄々を捏ねた、あの切なく甘酸っぱく吐き気がするほど居たたまれない「気持ちの置き所のなさ」を想起させながら読むべし。

 クマと言えば、ちょうど同じタイミングで読んだ『アヴァール戦記』2巻のラストがクマ話で少し運命を感じた。『アヴァール戦記』はファンタジー(ないし歴史ストーリー)を連想させるタイトルですけれど、中身はエッセイ漫画です。「アヴァール(ケチ)に徹して効率良く原稿料を稼ぐ」ことがテーマ、気合の入った表紙イラストも当然釣り。「凝った作画にすると、アシスタント代が嵩んで原稿料は赤字になる。単行本の印税でなんとかプラスになるが、1〜2万部程度だとカツカツ、3万部超えたあたりから徐々にゆとりが出来る」というシビアな現状をサラッと描いていたりする。その一方でクマの話が出てきたりもします。中村珍は年下の漫画家ですけども、再放送の『銀牙―流れ星 銀―』を幼少期に観ていたとかで、やはり「赤カブト」の存在感が強いらしい。アニメの敵動物というとガンバのノロイが怖かったと語る人も多いですが、当方は赤カブトの方により恐ろしい印象を持ってますね。ああいう「絶対に勝てそうにない、というか対峙したら小便とクソ漏らしそうなボスキャラ」はなかなか忘れられません。

TVアニメ『蒼穹のファフナー EXODUS』全26話制作進行中! (萌えオタニュース速報)

 前作もそうだったからだいたい予想済でしたけど、これで2クール確定か。果たして冲方の体力が持つのであろうか……あの人他にもいろいろ仕事抱えてるしな。水面下で動いている企画もあるだろうし、冗談抜きでいきなり「冲方ガンダム始動」とか言い出す可能性とてなくもない。ノーウェア・ガンダムとナウヒア・ガンダムの死闘。

劇場版『魔法少女リリカルなのは』第三弾制作決定!(萌えオタニュース速報)

 またしてもなのはアニメを劇場クオリティで鑑賞することができるのか……感謝。しかも完全オリジナル作品ということで期待は弥増すばかりだ。公開は来年か再来年あたりでしょうかね。なのはのアニメ1作目は2004年放送だから、来年だとすれば10周年に当たる。「とらハのスピンオフで魔法少女アニメやるってよ」と聞いたときは「へー」という感想でした(つまり、あまり興味がなかった)けど、まさか10年を余裕で超える壮大な展開になろうとは。完全にとらハ本体よりも有名になってしまっている。『天』に対する『アカギ』どころではない。とらハこと『とらいあんぐるハート』は本編3本とファンディスク2本から成るエロゲーで、最初の無印が1998年、最後のファンディスク(リリカルおもちゃ箱)が2001年発売、翌年2002年にシリーズ全作をまとめたDVDがリリースされ、「エロゲーとしてのとらハ」はこれで展開終了となりました。が、2003年のOVA『とらいあんぐるハート 〜Sweet Songs Forever〜』で後日談が綴られ、そこから更に『魔法少女リリカルなのは』が派生。なのは第1期の監督が新房昭之であることは有名ですが、とらハOVAの監督も新房です(とらハのOVAは2をベースにした『さざなみ女子寮』もあるが、こちらは18禁で監督も別)。新房監督は2001年にあることをやらかしてアニメ業界から干された、という噂があり、どうもその間は名義を変えてアダルト方面で糊口を凌いでいたらしい。OVA『Sweet Songs Forever』自体は18禁じゃないけど、原作がエロゲーで前作も18禁だったから、その流れで請けた仕事ではないかと睨まれている。もし新房が「干されて」いなかったら、なのはシリーズもこの世に存在していなかったかもしれない……歴史にifはないにせよ、そう考えると不思議な縁を感じます。なのはがなければ、当然まどかもなかったでしょう。なのはもまどかもいないアニメ界では、いったい如何なる潮流が生じるのかしら。

『さくらさくらFESTIVAL!』無事にマスターアップキタ━━(゚∀゚)━━!!! 発売日は4/26。体験版も公開準備中とのこと(家宝は2次元)

 まだ発売してなかったのかよ、さくFES……エロいサンプルCGをローカル保存してるけど、日付見たら2010年の11月じゃないですか。日記読み返したら「虚淵玄×蒼樹うめのオリジナルアニメ『魔法少女まどか★マギカ』、公式サイトオープン」「light、『PARADISE LOST』新装版の発売日と価格を決定(2011年1月28日、税込6090円)」「神ゲー 『俺たちに翼はない』 がアニメ化決定 キタ━━━(゚∀゚)━━━!!」とか、そんな時期。「ジャンプの『PSYREN』がそろそろ完結しそう」って頃です。

西尾維新『暦物語』5月下旬発売決定!(萌えオタニュース速報)

 本当に唐突でビックリした。1年12ヶ月を「12作の短編?」で綴る番外編。作者自ら「サイドストーリーとは言いにくい」と語っているところを見ると、ガッツリ本編に絡む内容なのかしら。西尾は基本的に依頼がないかぎり勝手に小説を書くことはない(唯一の例外が「ひたぎクラプ」、と『ザレゴトディクショナル』に書いてあった)んですが、これは告知がなかったところからして珍しく「急に捻じ込んだ」タイプの話になるのかしら。“物語”シリーズに限らず、割と行き当たりばったりな執筆をしている作家ですので、そういう意味では驚くに値しないかもしれない。そもそも“物語”シリーズ自体、こんなに長く続く予定じゃなかったはずですからね。『偽物語(下)』『傾物語』も、予告とは全然別の内容になっていたし。「いい加減引き延ばしすぎ!」という声もありますが、そんなことは『偽物語』の時点で感じていたし、今更であります。いっそ限界まで引き延ばしてくれ。忍野メメを主人公にした『爻物語』とかも書いてくれ。

・あ、そういえば実に4年ぶりとなる『苺ましまろ』の新刊が発売中です。ロリ好きの方はお買い忘れなきよう。

・拍手レス。

 そういえばもうすぐニンジャスレイヤー書籍版第四巻が発売されますが、ニコニコ動画でバカテスとニンジャスレイヤーの面白いコラボCMがありました。http://www.nicovideo.jp/watch/sm20399082 ニンジャスレイヤーのストーリーに対してのヨシイ=サンのツッコミが面白すぎて笑ってしまいました。
 バカテスナンデ?と思ったが版元繋がりですか。ヒメジ=サンの動じなさがすごい。これヒメジ=サンに変装した飛鳥じゃないのか。

 エロゲの「ボイス無しがいい台詞」って大抵は小説の流儀で書かれてる気がします。例えば沙耶の唄のラストとか。いや、むしろボイス前提だからこそ「地の文を自分で読む」という地味な演出効果が切り札になるのやも…
 エロゲーは「セリフを全部聞き終える前に読み終わっている」ことが多く、更に「自分好みのタイミングでテキストを送れる」ため、かったるいときや先が気になるときはセリフを最後まで再生しないでクリックしちゃう人が出てくるんですよね。演出の意図する「間」が壊れやすい。


2013-03-22.

AXLがもうすぐ『恋する乙女と守護の楯』のリニューアルパッケージ版を発売する、という情報を遅まきながらキャッチし、「なぜ今更……? ハッ、よもや噂段階で立ち消えになったアニメ化の企画がいよいよ形に……」と勘繰ってみたけど、調べてみた感じどうもただの廉価版っぽくて少しテンション低まった焼津です、こんばんは。

 特設ページすら置かれていないところを見ると追加要素とか一切ゼロで、せいぜい対応OSが変わるくらいのようですね。『ひだまり』やキミ声のリニューアルパッケージと同じ寸法。6年近く前のソフトだから今やるとさすがに古びたところはある(主に演出面)だろうけれど、3000円ちょっとで遊べるなら充分「安い」と思えるはずです。女装潜入護衛エロゲーという、非常にニッチなジャンルに属していて、「童顔だけど精悍なボディガードたる本来の主人公」と「刺客の目を欺くため乙女のように振る舞う主人公」のギャップが美味しい。「壁を砕く威力の麻酔銃」などツッコミどころもいろいろ多かったものの「単純明快に面白い」って請け合える一本です。細かいこと抜きにして愉しみたい御仁にはオススメしておきたい。ただ、恋楯は移植版(PS2版PSP版の2種類)も作られていて、こっちは「主人公ボイス(釘宮理恵)追加」「新キャラ2名追加」「それに伴ってシナリオとCGも追加(シナリオの加筆は約50パーセント、つまり全体のボリュームが従来の1.5倍となる)」と、かなり追加要素が多い。「エロシーンは別にいらない」というのであれば、やはり移植版の方が宜しいでしょう。でも有里のHシーンはかなりエロかったから、アレ見ずに済ませるのはちょっともったいないかな……「とことん楽しみたい」という方はリニューアルパッケージ版を買って、それから移植版もやりましょう。

【エロゲ】音声切ってプレイする派(家宝は二次元)

 以前は「エロゲーにボイスは必要か否か」で議論になったものだけど、今は「不要なら音声切れ」で終了ですね。フルボイスがすっかり標準になってしまったし、「特定のキャラクターのみボイスOFFにする」ことが可能になるなどシステム面の便利さも増した。ここのところうちはエロゲーに関する昔話ばかり垂れ流すサイトとなってきましたが、構わず今回も懐古に耽るとしよう。さて、エロゲーの歴史を遡るとFD時代からボイスを付けようとする試みはあったそうですが、如何せん音声データは容量を喰うので本格化し始めたのはCD-ROMが普及した90年代後半からです。このあたりから徐々に「声付きエロゲー」が目立つようになるわけですが、声付きにするとなると声優に払うギャラが上乗せされるため開発費が嵩む。当時の弱小メーカーはまだ「声の採用」に踏ん切りがつかなかった。ボイス実装に踏み切ったメーカーも、パートボイス(主要な場面のみ声が付く、ライアーソフトのゲームが長らくこの形式だった)程度に留まったり、攻略可能なヒロインだけフルボイスだったりで、「男キャラも含め全セリフをパーフェクトにボイス化する」ところまでなかなか行きませんでした。開発費以外にも理由があります。エロゲーは18禁、つまりポルノなこともあって初期は「キチンと演技のできる声優」を連れてくるノウハウが育っておらず、「愚息もションボリ」なレベルに陥ってしまう危惧があった。中には「そのへんの素人を捕まえてきたのか?」と疑うモノまでありましたよ、本気で。特に男性キャラクターの声は「明らかにこれスタッフだろう」という代物が……そこから「ジョニー」と呼ばれる都市伝説(ヒロインがフェラチオ時に立てるチュパチュパした水音、通称「チュパ音」は嫌がる声優をサポートすべく男性スタッフが必死に唾液を攪拌して代わりに奏でていた、という噂。現在では声優ごとにフェラ演技の差が確認されているため、この手の都市伝説はもう囁かれていない)が生まれたりもした。総じてレベルが低かった分野なので、「投資に見合わないんじゃないか」と敬遠されていた気がしないでもない。そしてもう一つの理由として、「そもそもエロゲーに音声って必要なの?」という素朴な疑問もあった。前回の更新でも書きましたが、セリフ全部にボイスが付いているとプレータイムが嵩み、クリアするまで結構な時間を費やすことになります。単純に言えば、「ダレる」危険性が高かった。確かにエッチシーンでヒロインがアンアン喘いでくれれば臨場感も増すだろうけれど、反面で「それ以外のシーン」がかったるくなる恐れもある。声が付くか付かないかでシナリオの書き方も変わってくる(地の文とセリフをどう配分するか、それぞれで適切な比率が異なる)し、ライターにとっては大きな問題になります。「物凄くトロい喋り方をするキャラ」がいて、原作の漫画で見たときはそれほどイライラしなかったけど、アニメで本当にセリフをトロトロと発音する様子は観ていてイラッと来てしまった……こんな経験は誰にでもあるでしょう。一部のキャラクターは、声が付かない方がより上手く個性を発揮できるケースもあるのです。

 そんなこんなで、エロゲーマーの間でもちょくちょく議題として持ち上がりました。「エロゲーにボイスは必要派」と「エロゲーにボイスは不要派」、後者は「シナリオ重視派」とも同一視されることがあった。シナリオの良さを引き出そうと考えるなら、むしろ中途半端なボイスは要らない、無音(テキストのみ)でプレーヤーの想像力を刺激する方がベターだと。わざわざ言う必要ないかもしれませんが、当方は後者の派閥へ属していました。だいたい2000年前後だったかな。とにかく全体のレベルが低かった。それに尽きます。たとえばファンタジーや伝奇モノで化け物と戦うシーン、「裂帛の気合を込めて」と添えられているにも関わらず気の抜けるような声で「やあー!」「たあー!」って叫ばれたら、どうでしょうか。「鬼神をも哭かしむる戦姫」という肩書きは一挙に説得力を失います。「歴戦の猛者」と称される将軍が棒読みのダミ声で血沸き肉躍るでしょうか。正直、「ない方がマシ」と言いたくなる代物に幾度も遭遇しました。例外は『Rumble 〜バンカラ夜叉姫〜』くらいでしたな。あれは絵もテキストも好みで、パロや小ネタのセンスも素晴らしく、キャラの魅力も充分なうえに声の演技もバッチリだったけれど、ただ一点システムが腐っていた。システムだけ改善して再発売してほしい、と願う思い出の一本。転機が訪れたのは2002年、ほんの一ヶ月間に立て続けで『君が望む永遠』『それは舞い散る桜のように』(リンク先は完全版)をプレーしてしまったため、「エロゲーにボイスは要らない」と言い切る自信がグラついてしまった。この2本において声優の演技は紛うことなくドラマを盛り上げ、キャラクターの魅力を倍増しにしていた。というか「アイエエエエ!ミ○リカワ!?ミド○カワナンデ!?」と混乱した。いつの間にか、表世界(アニメ)の有名声優たちが裏名義を使ってエロゲーに出演する流れが出来上がっていたんですよね。「エロゲー? ポルノはちょっと……」と敬遠されていたはずなのに。

 当方は声オタではないからそのへんの詳しい経緯がよく分かってないんですけれど、エロゲー出演は声優の間において「手っ取り早く金になる」ことで人気があるらしい。アニメは出ればステータスになる、というかアニメに出たくて声優になったような人も多いから一つの「目標達成」にはなるけど、基本的に週1回しか仕事がないし、一回あたりのギャラも安いので儲からない。大部分は食っていけない。でも、ゲームだったら1日か2日で集中的にボイスを収録してまとまったギャラを受け取ることができるから、とにかく割が良い。ゲームは大抵「別録り」といって、声優たちが一堂に会さず一人一人順々に収録していく形式だからスケジュールの都合もつきやすい。加えて、アニメの場合だと主人公やヒロインといった重要な役どころは一部の売れっ子にしか回ってこないけど、需要が膨らみつつあったエロゲーにおいては比較的キャリアの浅い声優や、脇役しか経験のなかった声優でも要所に抜擢される可能性があるので、いわゆる「遣り甲斐」を感じられる仕事もあるそうな。実感として、君望以降からエロゲー声優の演技力は加速度的に上昇していった記憶があります。「で、でも、『秋桜の空に』みたく個性の強いソフトに声のイメージを合わせるのは無理だろ」と言い張った当方のささやかな抵抗も、2003年に発売されたドラマCDで砕け散った。口癖とか、極めて特徴が強いキャラばかりなのに、声優さんたちはすごく頑張って「楽しいムード」を見事維持してました。さすがに考えを改めるべきか、となっていった。その後も素敵なボイスに何度も出逢いましたね。中でもインパクトが強かったのは、何と言っても『てのひらを、たいように』の、あの人。「脳が蕩けるボイス」で有名なまきいづみです。「うわっ、ヘッタだなぁ〜」という感想がだんだん「いや、味のある声だな……」に変わっていき、終いには「ビューティフォー……おお、ビューティフォー……」と呟く次元へ突入した。あのときに溶けた脳がまだ戻っていない、そんな気がします。

 今ではエロゲーがアニメ化して表舞台に流出することも珍しくなくなったので、「アニメから入ってきた層=声が付いていることが前提の層」も一定の勢力を有するようになったでしょう。声不要派は肩身が狭く、自己主張も控え気味になっているはずだ。当方ももともと『To Heart』のアニメが原因でエロゲー界に来てしまった(遡る形で『To Heart』以前のゲームをプレーしていき、ボイスの低レベルさに失望した)から、よく考えるとそんなに変わらないはずなんですけどね、今の世代とも。でも、音声に恵まれなかった時代を知っているからこそ、一定以上の演技をしている声優さんのボイスは、もったいなくて切れない。おかげで積ゲー崩しが遅々として進まない。そういう意味では今の世代よりも貧乏性かもしれません。

ガイナックス『蒼きウル』が20年ぶり再始動!劇場アニメ化! 監督・脚本:山賀博之 キャラクターデザイン:貞本義行(ひまねっと)

 岡田斗司夫の本(確か『遺言』)でチラッと触れられていた奴、という程度しか知らないけど、20年も凍結されていた企画が今更動き出すとは……貞本義行のキャラ設定画とか、素材はいくらか出来上がっていたんですよね。それで『蒼きウル 凍結資料集』とかいうのを出していたはず。一応オネアミスの続編ってことになってるけど、それは設定だけで、かっきり独立したストーリーになる予定だったとか何とか。しかし20年って、エロゲーで喩えたら「今更『同級生3』の開発再開が発表される」っつーレベルですよ。「『人工失楽園』が発売される」でもいいけど。『末期、少女病』どころではない……って、あれもなかなか発売されませんね。どうも開発を巡ってトラブルが発生しているらしいけど、とにかく無事に発売されることを祈るのみ。

『放課後のプレアデス』映画化キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!(ひまねっと)

 TVアニメ抜きでいきなり劇場化ですか。映画業界の構造が変わって劇場アニメが参入しやすくなった、という噂は本当なのかもしれない。うちの地方にある映画館、アニメ(特にコア層向け)は弱いから劇場で観れるという望みは薄い。来月のAURAもやんないみたいだし。『放課後のプレアデス』は魔法少女というか変身ヒロイン物で、何のために変身して魔法使うのかピンと来なかったけど、今度の映画はyoutubeで公開している分の続きになるんだろうか? それとも「あれはあれ、これはこれ」方式でオリジナル展開になるのか。劇場で鑑賞は諦めるにしても、せめてBDの発売は迅速にしてほしいところだ。ゴティックメードのBDは未だに発売される雰囲気がない……ぐぐってみたら、どうもアレは「4K」という超高解像度で制作されているため、現状のBD規格では対応できない、とのこと。年々目が悪くなっていく当方からすると解像度の向上にそこまで感激する気持ちは湧かないが、今後は劇場アニメも4Kが主流になっていくのかしら。そしてそれを家庭で見るためには専用のプレーヤーとモニターを用意しないといけないわけか。オーディオに果てはない。

・拍手レス。

 アバンストラッシュとブラッディースクライドは鉄板でしたねぇ。傘でチャンバラは小学生から中学生にかけて必ず通る道のような気がします。……傘で流れ星をやってた小学生とか居ないかしら。
 最近の小学生も似たようなことしてるんでしょうか。去年道を歩いていたらランドセルを背負った小学生3人(男子1人女子2人)が「なーなー、なんでダルビッシュはサエコと別れたん?」「それはなー、サエコが……」とワイドショー的な会話を交わしていて世代の差を感じました。

 ストライク・ザ・ブラッドha,
 ……失敬。ストライク・ザ・ブラッドは、三雲らしく失速して終わる事がないよう願っています

 三雲のシリーズ作品はピークを過ぎると一気に熱を失う傾向がありますね。あの人は人間模様の錯綜や「ここでこう来るか!」と唸らせるストーリーの跳躍には力を惜しまないけど、物語の着地点に関してはあまり興味がない印象を受けます。「いちいち終わらせなくてもいいよね」みたいな。


2013-03-18.

・ネットで注文した『〈狂気〉と〈無意識〉のモダニズム』が届き、「随分と大きな帯だな」と訝りつつ手に取った焼津に電流走る。こ、こはデカ帯にあらず……通常、本体下部に付けるべき帯が本体上部、反転した位置に巻かれている! そのため、帯が掛かっていない部分(表紙)を逆に「大きな帯」だと錯覚したのだ!

 割とマジで驚いた焼津です、こんばんは。帯は別名「腰巻」とも言いますが、これじゃ腰巻じゃなくて「鉢巻」ですよ。リンク先を参照してもらえると分かりやすいのですが、「〈狂気〉と〈無意識〉のモダニズム」っていうタイトルが書かれているところ(黒地に青いモヤモヤとした波が走っているデザイン)が一見帯のように見えます。けど、よくよく見てみると、惹句の書かれている部分(白地に黒字)こそが帯なのです。「帯は本体の下部に巻くもの」という通念のせいで「無意識」にもたらされた錯誤。気づいたときの狼狽や動転が一瞬の「狂気」を体感させる。なかなか心憎い仕掛けじゃないですか。中身はまだ読んでないけど、ひとまずこれで「買ってよかった」と思ってしまった。

至道流星の来月の新刊『世界征服』はデビュー作『雷撃☆SSガール』の改稿版

 てっきり書き下ろしの完全新作だと思ってました……そうか、『雷撃☆SSガール』の文庫版か。あれはタイトルのせいで損していた(無駄にナチスっぽいイメージを与えていた)印象があるから、改題するのはイイ案かもしれません。ちなみに「SS」は「世界征服」の略。というわけで『雷撃☆SSガール』を既に持っている方は注意しましょう。好きな作品だから、当方はどのみち買うつもりでいますけど。

フルプライスエロゲの平均プレイ時間は1本あたり20時間「独り言以外の何か」経由)

 通常、コンシューマーやアーケードなどのゲームのプレー時間は「上手いか下手か」「慣れているか否か」「攻略情報を持っているかどうか」に左右されることが多い。そのため、より効率的なプレーを競ってタイムアタックしたりするのですが、エロゲーは基本的に「ただ文章を読み進めていく(ついでにボイスも聴く)だけ」の形式がほとんどなので上手か下手かといった違いはまず出ません。単にテキストを読み進めるのが速いか遅いか、ボイスをちゃんと最後まで聴くかどうかでプレー時間の多寡が決まってきます。テキストを読む速さが同程度でも、声聴くのと飛ばすのとでは倍くらいの差が出てくる。アニメや映画は途中で早送りやスロー再生でも使わないかぎり「誰が観ても視聴時間は一緒」だけど、エロゲーはむしろプレー時間を全ユーザーで統一する方が難しい。オート機能(クリックしなくても自動的にテキストが送られる機能)を使えばペースを一定に保つことはできますが、だいたいのソフトはページ更新のタイミングを細かく調節できるようになっているため、やはり読むのが速い人と遅い人で差が出てくる。だから、「プレー時間は○時間」と書いてあっても、大まかな目安にしかなりません。プレーした人が「ちなみに『Fate/stay night』はコンプリートまで○時間掛かった」と書いてくれれば、Fateクリア済の閲覧者のみ己のプレー時間と照らし合わせて補正することもできますけどね。ちなみに当方は50時間くらい掛かりました。

 あと、意外に見落とされがちですけど、プレー時間を厳密に計測するのって結構面倒臭いんですよね。Fateみたいに累計プレー時間が記録されるシステムならまだしも、自力で計るとなると短期間に集中してやり込むか、細かくメモして計算していくかしないといけない。当方もいっとき計っていたことがあるものの、だんだん面倒になってやめてしまいました。2005年から2007年にかけては記録が残っています。『SEVEN BRIDGE』、12時間。『パルフェ』(Re-orderではない)、25時間。『プリンセスうぃっちぃず』、33時間半。『あやかしびと』、体験版が5時間と製品版が42時間で合計47時間……といった具合にズラズラと。2005年は15本クリアして、うち7本が30時間以上(『あやかしびと』が最長、その次が『ひめしょ!』で35時間)、うち3本が20時間以上30時間未満、残り5本が20時間未満でした。『刃鳴散らす』は本編6時間なのでコレだけ見れば最短ですけども、オマケで付いてきた『戒厳の野望』に5時間くらい掛かって都合11時間に。2005年は、リンク先にもある通りシナリオの長大化が顕著だった時期で、20時間どころか30時間オーバーのソフトがゴロゴロしていました。これは前年に発売された「公称プレー時間が60時間」な『Fate/stay night』の影響……と見做すのは早計で、大作ゲームは制作に2、3年掛かるのが普通だからFateの後に企画立ててもたぶん間に合いません。ただ単に大作が重なった年だった、ということでしょう。でも、「なぜ大作が重なったのか?」については当方なりの見方があります。2、3年掛かるということは、2、3年前に遡ればいい。2002年や2003年は、エロゲーにとって如何なる年であったか? 前にも書きましたが、この時期がエロゲー販売高のピークなんです。「まだまだ伸び盛りのジャンルなんだ」という期待があった。しかも、業界トップクラスのブランドであるkeyは2000年の『AIR』を最後に新作を出しておらず、『To Heart』で「学園物エロゲー」のフォーマットを完成させたLeafもいろいろあって存在感を弱めていた。後にアニメ化されるくらい人気が出た『うたわれるもの』も、タイトル発表当時はビックリするほど期待されていませんでした。イメージ的には依然として葉鍵(Leafとkey)が業界の象徴であるけれど、実質的には空位状態。アリスソフトの如き別格大手老舗を除けば、何処がトップに躍り出ても不思議ではない……そういう、夢と希望と野心と性欲に満ち溢れた時代だった(八月ことAUGUSTもまだまだ新興ブランドで、独特なシナリオ展開も「ワールド」と揶揄されていた)のです。「エロゲーは荒野だ! 唯一野望を実行に移す者のみがこの業界を制することが出来るのだ!」ってなノリで、テッペン目指した大作企画が相次いだのではないかなー、と妄想に近い私見を抱いている。

 作品レベルで見ると『AIR』、それにageの『君が望む永遠』『マブラヴ』が与えた影響も大きいかもしれない。『AIR』は単に長かっただけでなく、プレーヤーの予想を裏切る「連作形式」でもあった。「DREAM」→「SUMMER」と来て更に真打の「AIR」が待ち構えている怒涛の3部構成に「まだ終わらないのか!」と驚きの声が相次ぎました。「壮大なストーリー」が発売前の時点では紹介されず、プレーするうちに判明していく点がサプライズとなっていたわけです。『君が望む永遠』は第一章が丸ごと遊べる(そして猛烈に続きが気になるところで終わる)体験版で話題になり、何十時間にも渡ってウジウジし続ける主人公(鳴海孝之)が多数のプレーヤーにとって良くも悪くも忘れられないキャラクターとなった。『マブラヴ』はプレー時間が長いことに加えて、「完結していない」ことが衆目を集める事態となった。言ってみれば前編後編の「前編」に当たる内容で、「後編」の『マブラヴ オルタネイティヴ』は開発中……発売前ではなく発売後に明かされたことから賛否を巡って騒ぎとなりましたが、なんだかんだで続きを待ち望む声が多かった。かつてエロゲーはゲーム界におけるアンダーグラウンドであり、「チープだけど面白い」と感じさせる熱意がそこかしこでスパークしながらも、頻繁に現れる「駄作・手抜き・ボッタクリ」の雷撃で数多のユーザーを焦がす魔空間であった。しかし「脱チープ」のうねりが勃然と湧き上がり、「壮大なストーリー」「読み応えのあるシナリオ」を歓呼して迎えるユーザーが既に少数派ではなくなっていた(実のところラウド・マイノリティであった可能性も否定できないが)。シナリオ量・プレー時間の長さが良作か否かを測る尺度となり、進むにつれ「壮大」「読み応え」といった冠もいつしか消えて「楽しければダラダラした日常が続くだけでもOK」となっていった。1本で物足りないならもう1本似たようなソフトをやればいいだけの話なのに、「1本ですべて」を求めるようになった。あのへんからエロゲーの重厚長大路線が決定付けられたような気がしないでもない。あと当方は未だに開封すらしていませんが、『"Hello,world."』も滅茶苦茶シナリオが長かったと聞きますね。なんでも100時間を超えるとか。あれも影響を及ぼしているのかしらん。逆に、『Quartett!』が「面白いけどプレー時間が短すぎる」と非難を浴びたりもしましたね。あれはFFDという、膨大なCGを駆使して躍動感のあるシナリオを魅せる画期的な演出を試みたソフトでしたが、あまりにも手間が掛かりすぎて長大なストーリーを編むことができなかった。素晴らしい要素は確かにいくつもあったけれど、「思ったより短くて残念」という感想を押し返すには至らなかった。あの時点でもう大鑑巨砲主義に突き進む流れから引き返せなくなっていたんだなぁ。さっき誤変換で「大姦巨砲主義」と出たけど、まさにエロゲーのタイトルみたいだ。

 媒体がFDからCD、CDからDVDへと変わって搭載可能な容量がどんどん増えていった(そしてフルボイスも標準になっていった)経緯から「ボリュームの拡大・膨張」は避けられない結末だったんでしょう。「尺の制限」がなくなることで、エロゲーのシナリオは次第に終わりの見えないマラソンと化していった。「長いこと」はもはや前提であり、エロゲーというジャンルを解説する際に挙げられる特徴となった。小規模・中規模のソフトは話題に昇らない。大規模ゲーだけがひたすら取り沙汰される。ユーザーの要望もタイトになっていき、制約がキツくなる。あまり自由にはつくれない。そして誰かが言いました。「エロゲーはもうアングラではない」と。この趨勢をもたらした一つの要因として、「どれも価格がほぼ一定だったこと」が挙げられるかもしれない。本だったら厚くなれば比例して価格も高くなるし、複数の巻に跨れば冊数分だけ読者の出費が嵩む。でもエロゲーは「フルプライス」と呼ばれる価格設定(税抜8800円)が基準となっており、CD1枚だろうとDVD2枚組だろうと、基本的には似たような売値で店頭に並ぶ。そりゃ、同じ値段だったら「ボリュームたっぷり」の方がオトクじゃないですか。ユーザーは自然と「量を増やせ」と言い募るようになる。ボリュームが増えても価格の変化がないというのは、インフレじゃなくてデフレなんですよ。以前は数万円払って複数のソフトを購入することでようやく得られたような満足感を、今や外しさえしなければ(地雷さえ掴まなければ)1本きりでチャージすることができる。「少ない本数で満足できる」のですから当然一人あたりの購入本数は減ります。メーカーの開発費は嵩む一方なのに、売上は伸びない。エロゲーに起こっているのは「シナリオのインフレ」というより、「コストパフォーマンスを向上させてほしい」というユーザーの願いによる「見えにくいデフレ」ではないのか。このへんに関してはリンク先のリンク先であれこれ語られているのでそちらをご参考にしてください。

お前らが心底かっこいいと思った技名(ひまねっと)

 吉野御流合戦礼法“迅雷”が崩し、電磁抜刀(レールガン)――“禍(マガツ)”。字にすると長ったらしいけど、口にすると気持ちいい技名です。Diesのエイヴィヒカイト名(形成はほとんど発音されないので創造か流出)や神咒の太極名も口にすると気持ちいいけど、太極の方は技名というよりも境地に近いのでごっこ遊びには不向きかな。見た目(字面)の良さ、意味と内容、発音したときの快感、すべてが合わさったときに「かっこいい」と思うわけですが、中には「よくわからんけどなんかかっこいい」という詳細不明の技名もありますよね。「神形正宗・最終正義顕現」とか、作中で解説がなかったから具体的にどんな原理の技なのかよくわからないんだけど、その「わからなさ」がむしろ痺れる。

 あと男の子は長物が好きだから、傘とか箒を持つとついつい何かしら技名を叫んじゃうわけですが、何を叫ぶかで世代が知れます。逆手に持って「アバーンストラッシュ!」は30代、腰のヒネリにこだわって「牙突零式!」は20代後半、「虎眼流が太刀をかついだら用心せい」と呟きつつ「流れ」を繰り出すのは20代前半、10代はよく知らない。「スターバースト・ストリーム!」は二刀流のうえ動きが疲れそう(十六連撃だっけ?)なのでそれほど流行ってない気はする。「簡略化して再現できる必殺技」でないとごっこ遊びには不向きだ。「魔剣・昼の月」などは形だけ真似ることさえできない。「できないけど、できそう」と思わせるところがポイントかもしれません。『ごっこ遊びの系譜』みたいな本、あったら売れるかもしれないな。ちょっと読んでみたい。

『ストライク・ザ・ブラッド』&『ゴールデンタイム』のアニメ化が決定!(萌えオタニュース速報)

 これに関しては「やっぱりな」という感想が多いでしょう。売上や人気の度合いからしてアニメ化は間違いなかろうと思われていた。『ストライク・ザ・ブラッド』の三雲岳斗は『アスラクライン』の、『ゴールデンタイム』の竹宮ゆゆこは『とらドラ!』の作者です。どちらもアニメ化してますね。ただ、2005年デビューの竹宮に対し1999年の三雲は不遇だった時代が長く、「やっと目立つようなポジションになってきたな」という感じではある。2005年開始の『アスラクライン』まで、一個もアニメ化されてなかった(アスクラの後は『ダンタリアンの書架』がアニメ化された、Gユウスケの面影が見出せないくらいガラッとキャラデザ変わってましたけど)ですし。『ランブルフィッシュ』とか、結構イケそうな気がしてたのに……『ストライク・ザ・ブラッド』は「ブラッド」ってタイトルから察せられる通り、吸血鬼を題材にしたバトル系ライトノベルです。ネーミングはいかにも厨二病臭いけど、やってることはどちらかと言えば古い伝奇アクションのノリに近い。主人公が最強クラスという設定なので、俺TUEEEEE需要にもバッチシ、のはず。まだ1巻しか読んでないので、詳しいことはあんま分かってません。三雲らしい手堅いつくりなので、恐らく巻数が増えてキャラが追加されるごとにどんどん面白くなっていくタイプでしょう。『ゴールデンタイム』は1巻を読んでいる途中でどこかに紛失してしまった。もう内容覚えてないので一から読み直さないといけない。最近は集中力が落ちる一方で、一冊の本を通読することが難しくなっています。常に複数の本をザッピング形式でつまみ食いしてる状況。もっと精読したいところだけど、まずは膨大な積読を片していかないと……。

ミステリー作家の今邑彩さん死去、57歳 代表作に「蛇神」「ルームメイト」など(ぶく速)

 「いまむら・あや」と読みます。東京創元社の企画「鮎川哲也と十三の謎」によってデビューした作家です。「鮎川哲也と十三の謎」は鮎川哲也監修の書き下ろしミステリ叢書で、13番目に当たる作品を「十三番目の椅子」と称して一般から公募しました。今邑彩はこれに『卍の殺人』(卍の形をした屋敷で起こる殺人事件を描く)を応募し、見事にその座を射止めたわけです。「十三番目の椅子」がキッカケとなって翌年から鮎川哲也賞が始まったので、彼女を「第0回鮎川哲也賞受賞者」と呼んだりする。余談ながら、「鮎川哲也と十三の謎」は鮎川哲也自身が書く予定だった12番目の作品『白樺荘事件』が健康面の理由もあって完成せず、結果として12冊でフィニッシュする形となりました。

 最近になって『ルームメイト』がプチブレイクしたりと再評価の機運が徐々に高まっていましたが、90年代はあまり目立たない存在でした。新本格寄りの作風ではあるものの、ホラーやサスペンスの味付けが独特で、「新本格から半歩ずれた位置」に立っているような、若干語りにくいところがありました。作品は個性的で面白かったんですけど、微妙に薦めにくかったんですよね。面白さを伝えにくいと申しますか。『そして誰もいなくなる』は数多く出版された『そして誰もいなくなった』本歌取り作品の中でも出色の出来なのに、いまひとつパッとしないタイトルのせいか薦めてもあまり関心を示す人がいなかった。確かにタイトルで言えば夏樹静子の『そして誰かいなくなった』の方が興味を惹かれる。2000年代になってからめっきり作品数が減ってしまい、「もう作家活動はやめてしまったのかな」と心配した矢先に『いつもの朝に』なる大作(文庫版だと800ページ近い)を物したりなど、健在ぶりを見せ付けてくれた。先述した通り『ルームメイト』が数年前に書店員か誰かのプッシュで売れ始め、過去の作品もどんどん復刊されていったので、体調が悪いという話もあるにせよ、作家として再始動してくれるやもという期待があったのですが……57歳だなんて、若すぎるじゃないですか。しかも記事によると1ヶ月くらい発見されないままだったみたいだし、なんとも遣り切れない気持ちになる。“警視庁捜査一課・貴島柊志”シリーズはサラッと読めるミステリなので、シリーズ作品をまとめて読みたい人にはオススメ。単発は『ブラディ・ローズ』が好きだった。そして『金雀枝荘の殺人』はもうちょっと注目されていい「館モノ」だと思います。どうかご冥福を。

・拍手レス。

 黄雷のガクトゥーン・ノベルアンソロジー読んでます。舞台とか登場人物とかこの世界観が確立してるからネタはつきないんじゃなかろうか。なにか焼津さんならこの設定をつかってセンスのいいSS書いてくれそうな気がする。というか期待してます。
 ノベルアンソロジー出たのは知ってたけど、普段使うショップで取り扱いがないからまだ購入してない……それと最近(ここ数年)は書く方よりも読む方の欲求が強くて、SS書いてた頃が遠い昔のように感じられます。


2013-03-15.

『君は淫らな僕の女王』を読んで「ヒロインがここまで堂々とオナニー狂いな非成年向け漫画は珍しかろう」という趣旨の発言をしましたが、『教えてっ!真夢子おね〜さん』によって前言を撤回しなければならなくなった焼津です、こんばんは。

 『神罰』等により「手塚パロ絵でシモネタギャグ」という作風を確立した田中圭一のレポート漫画。毎回4ページの枠内で様々なトピックを紹介する、「漫画形式の雑誌記事」って感じの作品なんですが、司会進行役の真夢子おね〜さんがとにかく最初から最後までオナニーしっ放し。股間が乾く暇なぞありゃしねぇ。値段はちょっと高いですけれども、ページ数が多くて読み応えたっぷりなので損した気はまったくしませんでした。あとがきで「6年以上の長期連載」と語っている通り、一冊にまとまるまで随分と掛かったみたいです。「熱心に連載を追ってきたファン」に比べれば感慨は浅いかもしれませんが、「これが6年分の果実か……」と思うにつけ遙々とした気持ちになります。6年の歳月を越えてオナニーし続けたのだな、真夢子おね〜さんは……垂れ流し続ければ愛液も大河となる。この壮大なマムコ・サーガを、あなたにも是非ご賞味いただきたい。同時期発売の『イかれポンチ』は作者本来の絵柄ですので、「手塚タッチでシモネタはちょっと……」という方はこちらをどうぞ。たまに手塚っぽくなってるし、シモネタの乱打であることには変わりないですけどね。

 関係ないが最近読んだ漫画は『NOT LIVES』の3巻が面白かった。対戦編からイベントバトル編に突入。「時が止まった世界でアバター同士を戦わせる」ゲームが題材となっていますが、『NOT LIVES』における「アバター」は生身の人間であり、ゲームオーバーになれば死んでしまう。操るプレーヤーは死にませんが、「アバターを失ったプレーヤーは『新たなアバター』として補充される」ルールのため、一度参加したら抜けられないデスゲームと化しています。まだジワジワと人気が広がっている段階でブレイクには至っていない模様ですが、これは結構伸びるかもしれない。3巻は新キャラの有馬紅香が魅力的でテンション上がります。ビジュアルで申せば『放課後プレイ』の彼女とか『黄昏乙女×アムネジア』の夕子さんとか、ああいった路線(を更に姫カットっぽくした感じ)なんですけど、実は胸がすんごくペッタンコ。「ひょっとして男か?」と勘繰ってしまうほど平たい。キャラ紹介に「彼女」とありますから野郎ではないでしょうが、「だが男だ」と言われたら信じちゃう領域に立っています。そんなんですけど、こう、ね。目つきや表情、仕草がめっさエロいんですよ……なんていうか、その、下品なんですが、フフ……勃起……しちゃいましてね。もともと続きが楽しみな漫画ではあったが、紅音のおかげでいよいよ読み落とすわけにはいかない作品となってきました。

『とある魔術の禁書目録』この作品発売された時何か今までのラノベと違うものがあったの?この作品読んでる人はどこに魅力を感じたの?(主にライトノベルを読むよ^0^/)

 発売当時の感想にある通り、当方は冒頭1ページ目で「これは面白い」と確信し、ある程度ヒットするだろうとは予想していました(ドヤ顔)。しかし10年近く経った今でもまだ続いているだなんて、そこまでは予想し切れなかった。読み返して思い出したけど、当時は「ライトノベル」と「エロゲー(ないしギャルゲー)」の垣根が低くなりつつあった時期なんですよね。エロゲーは2003年前後に販売額のピークを迎えているので、『とある〜』はちょうどその転換期に現れた形となります。前年に発売された『涼宮ハルヒの憂鬱』が話題になって、ライトノベルがブームとして徐々に加熱し始めた頃でもありました。当時の感想に書いてある「あのキャラ」とは無論御坂美琴のことですが、カラーイラストに描かれているくらいなのに本編の出番がほとんどなくてビックリしたなぁ。実は1巻のときから妙に人気があって、「早くビリビリを出せ!」との要望が相次いだものでした。ツッコミどころが多いせいもあって最初の頃は賛否両論というか「否」の意見が目立ち、かなり叩かれていた記憶があります。「禁書の設定はフレキシブルに変化する」という旨のコメントから「フレキシブル」がスレ内で流行ったこともあったっけ。七天七刀(2メートル以上の刀)とか、どうやって抜いているのか気になってしょうがなかった。

 シリーズとして見ると、2巻でちょっと評価が落ちて、3巻で盛り返し、4巻でまたちょっと落ちて、5巻あたりから安定し出したような気がします。ぶっちゃけ4巻で一度読むのをやめようかどうか迷いました。強いて言うなら、可愛くていかにも人気出そうなキャラデザの美琴をあえて出し渋ったり、3巻で撃破されてしばらく登場しないだろうと思われた一方通行が5巻であっさり再登場したり、メインヒロインであるインデックスを大胆にもサブキャラ同然の扱いにしていったりと、読者を適度に焦らしつつ驚かせる手際に「今までのラノベと違うもの」を感じただろうか。いや、冗談抜きで。普通だったら美琴みたく人気伸びそうなキャラの出番はもっと増やすし、一方通行みたいなキャラはもっと勿体ぶってからカムバックさせるし、インデックスを「一応メインヒロインなんだから……」と無理にでも本筋に絡ませようとする。こういう常道、セオリーに流されず、長いスパンで考えてシリーズを組み立てながら各巻ごとにサプライズ仕込んでキチンと読者を楽しませたことが成功の秘訣かと。シリーズ全体で行くと禁書は若干「詰め込みすぎ」という印象がありますけど、巻ごとに見ていくと切るべき要素はバッサリ切っていて程好い盛り込み具合になっている。一言でまとめると「場面に合わせての取捨選択センスが抜群」ってなところです。かまちーは比較的しょーもないネタであっても、それなりにササッと詰め合わせちゃう器用さがあるんですよね。晩御飯の残りで自然なお弁当を作れるタイプというか、翌日のお弁当を考えて夕食の献立を組むタイプ。

・拍手レス。

 PSPのホライゾン、また伸びとる……。
 結局5月31日になった模様。

 冲方さんはマルドゥックがSF大賞に選ばれて出世したというイメージがあったんですが、マイナーなのかなSF大賞
 マルスクはカオレギの後ですね。2003年は著作が重なった時期で、カオレギ→ストブリ→マルスクの刊行順でした。


2013-03-11.

(『Garden』の)代替補填タイトルに関するお知らせでトノイケが「人を選ぶ要素は(一般的とは言い難い性的嗜好が反映されるような場面以外は)あまりない」と書いていてなんだか無性に安心した焼津です、こんばんは。

 もちろん「人を選ぶ要素はあまりない」という箇所ではなく、「一般的とは言い難い性的嗜好が反映されるような場面」にです。たとえ針の筵みたいな状況だろうとダイちゃんのbrand nyou heartを遮ることはできないんだな……夜尿症を信じて君に送るテレパシー。

萌えと方言(ぶく速)

 『三月、七日。』のヒロインは広島弁で可愛かった。あれはヒロイン視点もあって、心理描写がしっかりしていたから殊更に「可愛い」と感じていた部分もあるが。関西弁は少々やかましい印象があるものの、『あずまんが大王』の大阪(春日歩)みたいな天然キャラだとイイ具合にやかましさが中和されて可愛くなる。ライトノベルにも『消閑の挑戦者』主人公・鈴藤小槙みたいな大阪(春日歩)系のヒロインが若干ながら存在します。『To Heart』の保科智子も、心を開いてからはすごかった。あの子は神戸弁ですけどね。ツンケンしていた時期は方言のせいもあってかなりキツいイメージがあったけど、仲良くなってからは急反転、「裏返ったァ!」と烈海王顔で叫びたくなるほどの可愛らしさを見せ付ける。「ツンデレ」という言葉がまだ存在しなかった時代のキャラクターですけれど、今紹介することになったら必ず「ツンデレ」の言葉が用いられることであろう。ちなみに『あずまんが大王』の作者・あずまきよひこは保科智子のファンとして知られており、彼女をモデルに水原暦(よみ)が生まれたという噂もあったりなかったり。

マジでラノベのコミカライズってどうにかならないの?(ぶく速)

 要約すると「どうにか」してほしい点はふたつ、「単純にクオリティが低すぎる」ことと「コミカライズはそうそう最後までいけん」こと。コミカライズの仕事はあまり経験のない新人に回ってくるパターンと、話題作りも兼ねてそこそこキャリアのある作家に回すパターンがあるわけですが、前者だと質の懸念が大きくなってくるし、後者は諸事情から中途半端な終わり方を迎える事態がしばしば起こる。漫画版『皇国の守護者』終了は返す返すも残念だった。原作が1冊か2冊、長くても3冊くらいでないとコミカライズでの完走は難しいですね。特に月刊連載だと、時間が掛かりすぎてほとんどライフワークみたいになってしまう。「つづきは原作で!」と言われて、すんなり原作に移れるかというと……そういえば、コミカライズがキッカケで原作読み出したライトノベルって何かあったかな? コミカライズ作品はほとんど読まない(本編のストーリーをそのままなぞるタイプは特に)こともあり、思い当たらない。好きなライトノベルのコミカライズが始まっても、「イメージが違う……」と困惑するのが嫌なんでやや避け気味になります。ただ、そうした中で改めてつくづく素晴らしかったと思うのは、『灼眼のシャナ] Eternal song―遥かなる歌―』『灼眼のシャナ』原作第10巻を漫画化したもので、ゆえに「]」です。「先代の炎髪灼眼」を主人公に据えた外伝だから、ある意味1冊完結に近い内容。で、原作は1冊こっきりで終わっている話であるにも関わらず、なんと漫画版は3年以上の歳月をかけ、5冊に渡って丹念かつ濃密に描き切りました。原作は「大戦(おおいくさ)」という決戦に至るまでの経緯を「これまでのあらすじ」と言わんばかりにダイジェストっぽく語っていましたが、コミック版は「これまでのあらすじ」に当たるパートを少しだけ描いていますので、逆順に読むと「え? あいつ原作だと出番端折られてるの?」って驚くこと請け合い。絵が細かすぎて目がチカチカするページもあるけれど、「抱いていたイメージと違う」などということは全然なく、むしろ10巻のイメージがいつの間にかのいぢ絵から木谷絵に切り換わっていたくらいだった。10巻は敵も味方も傍観者もみんなステキ極まりない個性の持ち主ばかりで、シャナ知らない人でも読んでほしいくらいだけど、設定がゴチャゴチャしているからいきなり読み出すのはキツいかしら……言い直しましょう、「10巻とEternal songを存分に堪能するため1巻から9巻まで読み通せ」。本当にそこまでやってもお釣りが来るレベルの出来です。当方は未だにEternal songが劇場映画化される未来を祈っている。

『グリザイアの果実』アニメ化決定!(萌えオタニュース速報)

 アニメ化を見据えた企画だ、というのは発売前から言っていたけど、ようやく本決まりになったのか。これで遂に藤崎竜太の書いたイカレ台詞が公共の電波に乗ってしまう……面白い奴は大部分がコードに引っ掛かって規制されそうですけど。エロゲーライターとしてのキャリアは長い(1997年デビューだから今年で16年)割に知名度が低く、「エロゲーライター論」みたいな場においてもほぼ黙殺される存在であり、『ドラクリウス』(移植版は改題して『ムーンタイズ』)を最後に「もうメインでの仕事はやらない、サブに回る」と宣言した藤崎竜太。仮にグリザイアのアニメがヒットしたとしても彼にスポットライトが向けられることはたぶんないでしょうが、蒔菜が飛ばすキれた台詞の数々にクるものがあった人は是非過去作を漁ってみてください。個人的なオススメは『ひめしょ!』。「私が剥けと言ったのは里芋です!! 妹じゃありません!!」「芋も妹も似たようなもんだろが!! 面倒クセェ!! 姉も剥いちまえ!!」とか、今見てもつくづくワケのわからない迫力に満ちている。サブキャラのポチも異様に存在感があった。オタクなら声を聞けば「おっ、あの人が演ってるんか」と誰でも思い当たる有名人がポチのCVを担当していますが、当方はむしろ「あの人」の声を聞くと逆にポチを連想します。

【画像】おまえら本棚晒そうぜwww(ひまねっと)

 他人の本棚見るのってなんでこんなにワクワクするんだろう……意外な物が混じっていることを発見したときの喜びは相当である。自己顕示欲旺盛な当方も是非晒したいところであるが、カメラ類は持っていない。このカオスをお見せできないことが残念である。既に何度か貼ったけど、本棚の話題となると外せないのがニトロプラスのライター陣の本棚(リンク先真ん中あたり)。6年くらい前のものだけど、今はどうなっているんだろう。虚淵の棚には神林長平の本が何冊か並んでますが、後日『神林長平トリビュート』にも寄稿しています。それと『カオス レギオン』を差しているのも心憎い。冲方読んだことない人はカオレギから入るといいですよ、実質的な出世作です。

小鳥遊 柊←これ読めるのはアニヲタという風潮(ひまねっと)

 「柊」は『赤かぶ検事』の本名が「柊茂」なので、たぶんそれで覚えた。『赤かぶ検事』は「読むのが難しい名前」を話題にしたエピソードがあったっけな。「一二三四郎」と表記したら『1・2の三四郎』を連想されそうだけど、こう書いて「うたたね・しろう」と読む。「殺人鬼の名前が実在の人と被ったら不快な思いをする読者が現れるかもしれない→でも一人だけ変な名前にすると犯人バレバレだ……→じゃあ登場人物全員を奇抜ネームにしてしまおう」と考えて実行したミステリ作家もいます。朱華(はねず)や木賊(とくさ)なんて、ルビが振られていてもなかなか覚えられなかった。漫画と違って「ビジュアル面で常にアピールする」ことが難しいライトノベルも、自然と文中で頻出することになる主人公の名前を特徴付けようとして気張ったネーミングする作家がいますね。未だに忘れられないのが『ストレンジ・ロジック』の「界識灼(かいしき・あらた)」です。あらすじに「ごく平凡な高校生・界識灼」って書いてあるけど、もう名前の時点で平凡じゃねーよ。あいつのせいで鷺森灼の名前を見るたびにストロジ思い出してしまう。「小鳥遊」はどちらかと言えば『黒猫の三角』を始めとする“V”シリーズに出てくる小鳥遊錬無(たかなし・ねりな)を連想するが、そういえばあいつも女装趣味があったな。でも最終的な決定打は「よるよる」こと小鳥遊夜々(たかなし・やや)に尽きる。

・拍手レス。

 ドラゴンボールもすごかったなあ、作画もそうだが話の引き延ばし具合がネタのレベル
 「一触即発の空気でいつまでも睨み合う両者」や「常人には視認不可能なスピードのバトル」を延々と繰り広げる回はさすがに「こんなんありか」と慄いた。

 480頁の特典に加え、ホライゾン6上が五月発売ですよ! 氏はともかく、やっさんが死ぬんじゃ……
 いつの間にか挿絵が氏の直筆に替わっていたりして。

 エロゲがかつての栄光を取り戻しなおかつ気軽さに楽しめるものになるルートを何でもアリで考えるなら、例えば、そう――意識フルダイブ型ゲームが一般化され社会現象になって接続しっぱなしで衰弱死する事件が起きたりして最終的に法規制によって『一日のプレイ可能時間』がシステム上で厳密に定められた後――とかどうでしょう。…や、これはこれですでにエロゲではない何か別の文化になってる気もしますが。
 そして規制を掻い潜ってプレー時間無限な淫欲の海に耽るエロゲーマーたちが『アプラクサスの夢』のゴー・バッド・マンよろしく利用されるハメになるわけですね。

 両親たちがスワッピング その見方は無かった
 途中から視聴したのでよく分からないまま観てましたが、両親たちの過去の写真が……という展開でやっと設定に気づきました。


2013-03-04.

・「餓弄伝」→田中ロミオ→「世相を斬らない!」→PC Angelの流れで「そういやP天には倉田英之のコラムがあったな」と記憶が甦り、なんとなくamazonで「倉田英之」を検索したら『倉本 倉田の蔵出し』が見つかってべっくらこいた焼津です、こんばんは。

 こんなん出てたなんて知らんかった! 無論、即ポチですよ。倉田英之はアニメの脚本家として有名で、他に漫画原作や小説も手掛けていますが、個人的には野放図極まりない筆致のコラムが一番好きです。『倉本』はあちこちで書いたコラムをまとめた雑文集で、当然P天連載のコラム群も収録されている。ただ、抜粋形式なので完全収録ではありません。仕方ないとはいえ残念。連載時は読者応募のハガキに対するコメントもあったしなぁ……完璧に再現するとなったら大型本にでもしないとダメでしょうね。松田優作について語る回は10年以上前のだけど結構覚えていて懐かしかった。それにしても、留まるところを知らない浪費生活を明かしているあたりが清々しい。倉田英之は「稼いだ金を惜しみなく注ぎ込むオタク」であり、300万円のボーナスがあってもすぐに使い切ってしまう。累計で1億円は趣味に費やしてきたと豪語するのだから筋金入りである。「精神を昂揚させるためのマンガ、ビデオ、CD、覚醒剤」を「シャブ」と形容するなど、強烈で癖のある文章は激しく好悪の分かれるところでしょうが、飲み干せば病み付きになること間違いナシ。「頭がおかしい」すら誉め言葉となる倉田汁をまとめて大量摂取することが可能な『倉本』、今更ですけれどオススメの一冊です。

『東京闇虫』が実写映画化と聞いて驚いた。

 「え? あれって今月7巻で完結するんじゃないの?」と思ったら『東京闇虫 パンドラ』に題名を変えて第2部スタートか。『ナポレオン 獅子の時代』『ナポレオン 覇道進撃』になるパターンと似た感じかしら。「7巻にて完結」という報で「せっかく面白くなってきたのに打ち切りかよ……」と肩を落としていた当方には朗報であります。闇虫とは全然関係ないけど最近読んだ漫画の中では『補助隊モズクス』がさりげなく面白かった。オムニバス形式の短編集『野ばら』で気に入った高田築の新作ってことで買ってみた一冊。普通のサラリーマンだった主人公がひょんなことから人間に取り憑く化け物たちと戦うヒーローになる話です。正直、1話目を読んだ時点では向かう先が見えず「ちょっと……うーん」な印象でしたが、2話目からだんだん輪郭がクッキリしてきて見通しが立つようになってくる。サラリとした絵柄の割にガンガンと死人が続出する容赦ないストーリーで、格好良さなど小指の先程度しかない煤けぶりにむしろ居心地の良さを覚えます。これだけ無惨でありながら雰囲気が重たくならないあたり、作風の勝利といったところか。あまり長く続くタイプの作品ではなさそうだけど、続刊も楽しみにしています。「ヒーローがカッコイイなんて誰が決めた?」 そんな漫画が読みたいアナタは是非。多少カッコ悪くてもヒーローはヒーローだろ。

ママレード・ボーイ続編『ママレード・ボーイ little』新連載 13年後の光希と遊の妹・弟が主人公 (萌えオタニュース速報)

 だっけっどっ気にっなるっ。まさかの続編です。「13年後」とあるから今度は主人公たちの子供がメインになるのかと思ったが、「妹と弟」かよ。両親たちがスワッピングするところから始まるという、今から考えるとトンデモない設定のラブコメでした。隣同士で息子と娘を交換するエロゲー『恋愛0キロメートル』が健全に見えてくるレベルです。ちなみにママボはアニメ版しか観ていません。結構飛び飛びに視聴していたので、ストーリーもほとんど記憶に残ってない。物凄く長かった、って印象はある。調べてみると全76話、約6クールですか。あの頃はアニメの放送期間が長くて当たり前の時代だったな……1クールアニメなんて、短すぎてなかなか観る気になれないものでした。でも1話あたりのクオリティは現在の方が明らかに巣晴らしい。再放送とかで当時のアニメを観ると、いかに己が記憶を美化しているか、果てしなく痛感させられる。でもクオリティが低くても、慣れるとやっぱり面白かったりしますね、当時のアニメって。幼児期の記憶にガッチリ絡み付いていますからな。

料理を主眼に置いたラノベが最近ポツポツと出るようになった(ぶく速)

 ライトノベルで料理ネタと言えば『食前絶後!!』。味覚表現が非常に独特であり、細部は忘れてしまったが、確か「地引き網のような」という形容があって深い衝撃を受けた。あれは今読んでも面白いと思うので、是非復刊してほしいところ。「食」を題材にしたライトノベルは他にも『食べごろ斬魔行』ってのがありましたね。当方は読んでませんが……あと最近『吼える魔竜の捕喰作法』というシリーズがちょっと気になっていたりする。

『境界線上のホライゾンII』BD7巻特典小説は480P!試し読みは今回42Pで2週に分けての公開&テーマ曲ベストアルバムジャケ絵公開! (萌えオタニュース速報)

 「特典」を理解出来ぬ川上の本性が剥き出しになっていたのだ。500の大台には乗らなかったけど、480ページって……ライトノベルなら普通に出しても分冊(上下巻とかに)される厚さですよ。本当にアニメがヒットして良かった。でなきゃこんな極厚特典、実現していたわけがありませんからね。ホニメ3期も待ち遠しいところだが、この勢いで終わクロとか都市シリーズの映像化も期待したい。でも巴里とか、アニメでどう表現するんだって話ですが。

単なる一消費者のわがままとして「独り言以外の何か」経由)

 エロゲーに限らず創作物を無心で愉しんでいるときの感覚を一言で申すなら、「潜る」がもっとも近い。「没頭する」という言い回しの方が伝わりやすいでしょうが、よりイメージを固めてもらうために「潜る」を使います。本の冒頭を数ページだけ読んでもなかなか熱が入らないのは、まだその段階だと浅瀬でチャプチャプしている程度だからで、精神を集中させて10ページ、20ページと読み進めるにつれだんだんと深いところに心が沈んでいく。エロゲーの場合だと「沈む」ところに行くまで最低でも1時間くらいは掛かるので、まとまった時間がないとなかなか堪能できません。他に比べて潜り辛いジャンルだと思います。余暇が1時間くらいしかないときだと、「ようやく潜れたかな」ってところで五感を引き揚げないといけない。そして逆に休日とかで時間がたっぷりあるときにプレーすると、潜りっぱなしの状態に心身が慣れてしまって精神を水底から浮上させることが難しくなります。リンク先で「力のある長い作品って、ほんとに生活根こそぎ持ってかれるだけのエネルギーがある」「単に長くてクリアするのに時間がかかる以上に、あの「頭が支配される」というレベルでの没入が重い」と書かれていますが、まさにその通りで、『俺たちに翼はない』『装甲悪鬼村正』『Dies irae 〜Acta est Fabula〜』をやってた時期(2009年)は心の半分ぐらいが作品世界に持ってかれた状態で日々を過ごしていました。特に『Dies irae 〜Acta est Fabula〜』はヤバかった。半分どころか8割くらい喰われていた気がします。出演した声優のかわしまりのも同じようなこと語ってたっけ。寝ても覚めてもファーブラ、という有様でした。挙句に100KB超の感想文まで書いちゃうイカれぶりです。去年も『天牌』まとめ読みでそれに近いところまで行きましたが、あまり頻繁に潜り過ぎると「潜ること」ではなく「浮上すること」に対して息苦しさを覚えるようになってしまいます。潜ること以上に、どこかで見切りをつけて適度に浮き上がらないといけないことがしんどい。だから浅瀬で遊ぶ程度の体験版に「もうこれでいいか」と妥協しちゃってなかなか製品版まで到達しません。新書くらいの感覚でサッと気軽に潜れるようなエロゲーがあれば理想的ですけれど、実際にどうやればいいのかアイデアまでは持っていない。新書のマーケティングをそのまんまパクってみるか。「社会に役立つ礼儀作法を学びながら妹を孕ませることができる!」みたいな謳い文句の『いまさら人には聞けない/なおさら人には言えない作法がグングン理解(わか)るシスターH傾倒(エチケット)』とか。誰が買うんだ。

萌え画像の最終形、“乳袋”ってなんだ? (萌えオタニュース速報)

 「不自然な巨乳描写」としてネタ扱いされることはたびたびあったけど、「乳袋」なる用語が定着してきたのはここ数年になってからですね。当方が聞き及んだのは2010年頃だったかな。ちょうど『恋する鬼門のプロトコル』がすさまじい乳袋っぷりを見せ付けていた時期なので印象に残っている。おっぱいじゃないけど、かつて『イリヤの空、UFOの夏』もスカートの描写が不自然だ(尻の形がクッキリ出すぎている)と一部で話題になってましたな。こういうのは乳袋に対して何と言えばいいんだろう、ケツ布か? 駒都えーじは他にも「スカートの皺を足のラインに合わせる」(3巻参照)といったエロ小テクニックを駆使しています。この小技は『妖狐×僕SS』の表紙でも密かに使われている。太腿の端に繋がる恥ずかしいライン、という意味で「ハジノ線」と名付けて見た。しかし流行る可能性はゼロでしょう、そもそもテクニックじゃなくてただの偶然かもしれないし。

・拍手レス。

 エロゲ業界の不景気な記事が目に付きますが、やっぱり衰退してるんですかね。このままだとコスパの悪いシナリオゲーは大手が忘れた頃に出すみたいなことになるんですかね。
 素人目に見ても最近のエロゲーは手間掛けすぎだよなぁ、って思いますもんね。ただ、衰退は進んでも滅ぶのはまだまだ先だろうと楽観しています。手間と費用を下げる形で落ち着くんじゃないでしょうか。

 そういえば、朝霧の巫女最終巻の発売日が4/30にようやく決まったようです
 2月発売予定だと聞いていたのにいつの間にか延期していてビックリしました。4月の新刊は『彼氏ってどこに行ったら買えますの!?』を期待している。


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