2006年8月分


・本
 『紅〜ギロチン〜』/片山憲太郎(集英社)
 『電詞都市 DT(上・下)』/川上稔(メディアワークス)
 『未来日記(1)』/えすのサカエ(角川書店)
 『斬魔大聖デモンベイン 軍神強襲』/古橋秀之(角川書店)
 『ドージンワーク(2)』/ヒロユキ(芳文社)
 『全宗』/火坂雅志(小学館)
 『あなたに不利な証拠として』/ローリー・リン・ドラモンド(早川書房)
 『覇商の門(上・下)』/火坂雅志(祥伝社)
 『Character material』(TYPE-MOON)
 『ひぐらしのなく頃に 鬼曝し編』/原作:竜騎士07、作画:鬼頭えん(角川書店)


2006-08-30.

『邪魅の雫』、9月26日に発売予定

 あのゴタゴタから一年、やっと目処が立ったみたいですな。陰摩羅鬼は読み応えに少し不満があったけれど、久々に京極堂節が拝めるかと思うと楽しみだ。

『ひぐらしのなく頃に解』、プレー中。「目明し編」が終了して「罪滅し編」に突入。

 目明し編は舞台裏を探るシナリオだけあって、前回書いた通り「怖さ」が薄くなっているところも目立ちますけれど、いろいろと切なくて胸に迫るものはあり。愚かさゆえに破滅の道を辿り、引き返すこともできずにただ転げ落ちていく犯人が虚しくてなかなか痛い。犯人の心情に共感できるかと言われればあんまりできないんだけど、細かいポイントでいろいろと腑に落ちるところもあって大いに楽しめました。あくまでホラーのテイストを希求する向きには問題編の方が期待に添っていますが、『解』は『解』でまた違った魅力があって侮れません。後半の畳み掛けには呑まれるものがありました。

 そして「罪滅し編」。久々に前原圭一が主人公に復帰して、いろいろと安心できる内容になっていますね。日常シーンのコメディまみれな遣り取りとか、こういうバカっぽさもあってこその「ひぐらし」って感じです。やたらと懐かしくて、余計に笑えました。ネタが若干アレだったりするのも些細な問題。

・拍手レス。

 師匠ォォォ! 鬼頭「え」んっすよォォォ!!   ……大好きな作家さんなんで、なんとなく失礼しますた
 すみません、直しておきました。


2006-08-28.

・ここのところすっかりひぐらし漬けで、他に書くことが思いつかない焼津です、こんばんは。言ってみればそう、ひぐらし狂い。略してヒグルイ。……なんだか江戸っ子の発音みたいで心底微妙。

『ひぐらしのなく頃に解』、プレー開始。現在「目明し編」。

 BGMを始めとして、出題編(第1話〜第4話)とはだいぶ雰囲気が違いますね。「目明し編」は「暇潰し編」同様、前原圭一が主人公ではなく、外伝的な内容が続いているようにも見受けられます。まだ途中ですが、最初の1時間くらいは大して目新しい展開がないことと、ペースがやけにゆったりとしていることから、少し眠くなったり。しばらく進むと眠気の覚める場面がやってきますので、ひとまずは寝ないでそこまで進めてみるのが「目明し編」の肝要かと。

 しかし、具体的な感想を書こうとするとどうしてもネタバレに抵触しちゃうところがあるし、なかなかプレー日記の綴りにくい作品ですこと。どうでもいい話なんですけれど、タイトルの『解』を見るたびに『幽霊の国・解』を思い出す。今となってはどんな内容だったか記憶があやふやですけれど。ルビの振り方が物凄かった、というくらいしか覚えてません。

 さて、本気でどうでもいい話でごまかしてみましたが、ひぐらし〜はだんだん話が進むにつれホラーゲームの様相が薄くなってきていると言いますか、どうしても謎を解く方向に歩いていくと「怖さ」がなくなってしまう寂しさがあります。そう、寂しい。謎が解けていくこと自体は面白いものの、恐怖が和らいでくることにホッとするよりもまず寂寥が募ってしまう。まだ多くの謎が解かれぬまま残っているにしても、今後解き明かされていくだろうことは間違いない――という確かな手応えを得るごとに、むしろ残念な心地さえしてきます。出題編から間を置かずに解答編へ手をつけてしまった後悔の最たる形が、このなんとも言えぬ寂しさなんでしょうか。まあ今更中断するわけにもいきませんし、あんまり気にせずガツガツやってくつもりではあります。

・原作:竜騎士07、作画:鬼頭えんの『ひぐらしのなく頃に 鬼曝し編(1)』読了。

 これと「宵越し編」は漫画オリジナルのストーリーみたいなので、他の原作エピソードを後回しにして着手してみました。内容としては「祟殺し編」の番外編、って感じです。厳密にはちょっと違いますが。本編の舞台である雛見沢村を離れ、とある町に住む公由一家(雛見沢村長の分家筋)が惨劇に巻き込まれるまでの一部始終を綴る。主人公(♀)が、雛見沢にとっては「街」の象徴である興宮を「田舎」呼ばわりすることに微妙なカルチャーショックを覚えつつ、ざっと一気読み。本編と共通して出てくる奴は大石と赤坂の二人くらいで、ほとんどが新規のキャラクターとなっています。おかげで別作品を読んでるような心地があって、「オヤシロさま」云々といった『ひぐらし』要素が出てくると却って違和感を催したり。

 尺の関係もあるので本編に比べるとやっぱり展開が早い。ちゃっちゃか進んでいってダルさがない点では嬉しいし、大雑把にしか語られていなかった「雛見沢の外」について詳細が描かれる点でも興味深いんですが、反面、主人公を含む登場人物にあまり感情移入できないところも多い。以前住んでいた場所の付近で災害が発生し、親戚も罹災した割には反応が「ふーん」「へー」程度で淡白すぎると言いますか、彼女自身はまだ「日常」がそのまま続いているつもりになっているあたり、変化していく家族よりも不気味に思える。両想いの少年もなんだか腹の内を見せない雰囲気でモヤモヤします。日常が崩壊していくサスペンスもさることながら、この終始付きまとう気味の悪い違和感も次巻で解体されるんだろうか。1巻だけではなんとも感想が書きにくい。

 「あ、このページをめくったら……来るな」という予想がビシバシ当たる部分など、ホラーコミックにおける怖がらせ方の定石をキチンと守っている作品であり、そうした「ヒヤリ」感を味わうには支障のない出来ではありました。が、「ヒヤリ」とは来るものの、「怖い!」と鳥肌が立つところまではいかなかった。得体の知れない恐怖が迫ってくる、みたいな感触が薄いからでしょうか。友達だった子が無造作に「雛見沢出身者」への差別の念を露わにするとか、ある種の生々しい怖さは結構ありましたけど。うーん、巻き込まれ系のホラーにしては何か物足りない。差し当たって2巻を待ちます。


2006-08-26.

 時代ものなら半村良の『慶長太平記』黄金三部作もオススメかもです
 半村良の作品は未だにどれも読んでいない体たらく……今度何か漁ってこようと思います。

 修羅場スレ住人としては鬼隠しのドラマCDをお勧めしておきますよ。後半はどう聞いても修羅場ですから。
 なるほどドラマCDですか。ひぐらしは関連商品が多くてチェックするのもひと苦労ですね……

・最近書き出しが思い浮かばないので拍手レスでごまかそうとする焼津です、こんばんは。というか前にも同じことやった気が。

『ひぐらしのなく頃に』、「暇潰し編」終了。

 外伝的な内容だけあって他のシナリオに比べれば短かったです。だいたい半分程度? ともあれ、これを読んで『ひぐらしのなく頃に』の仕組みが分かってきた気がします。こまごまとした謎の数々についてはまだハッキリとした答えを出さないでいるけれど、個人的には『解』の受け容れ準備は万端といったところ。ソフト自体は通販で注文してとっくに届いていましたが、これでやっと封を解いてインストールできますわ。やっとシリーズの後半へ到達できる――というワクワク感がある一方で、いささか駆け足気味に前半部(第1話「鬼隠し編」〜第4話「暇潰し編」)を終わらせてしまった寂しさもあり、複雑な心境。

 んー、2004年に出た『ひぐらしのなく頃に』は問題編であってシリーズは完結していない、という旨の情報をキャッチしたときに「じゃあ完結するまで積んどこう」と安易に決めてしまいましたが、完結してなかろうと構わずプレーし出すだけの勇気があれば、今日までの2年間をたっぷり楽しむことができたのではないか……なんて考えるといささか悔やまれます。「暇潰し編」の〆は比較的後味も悪くないし、ここで止めても身悶えするほど苦しむことはなかったでしょうなー。

 とはいえ、最初から最後まで一気にやり通せる環境が整っているのもそれはそれで贅沢な話であり、大袈裟に悩むほどではないか。どうせなら短期間でトコトン濃密に楽しんでやろう。これからまだやってなかったミニゲームをちまちま遊ぶとして、明日は『解』の方に取り掛かる算段。今までひぐらしネタを理解できず蚊帳の外に置かれがちだった恨みを一気に晴らしに行きます。

・TYPE-MOONの『Character material』読了。

 お蔵入りしそうになっている設定群を無理矢理引きずり出してまとめたような、ノリとしては設定資料集に近い一冊。濃度や密度はそんなに凄く高いわけでもありませんが、その気になって読み込めば2時間くらいは潰せる内容です。画集とか、この手のA4サイズ本を買ったことはあまりないんで、ショップ価格1300円というのが高いか安いか妥当かはいまいちよく分かりません。ジャンル的にもFateより月姫寄りだから、そこそこディープな方じゃないと退屈するかも。あとTYPE-MOONに興味のない人が読むと「ボクのかんがえたオリジナルちょうじん」にしか見えないこと確実。

 若青子や若橙子、旧Fateのセイバーとマスターが拝めたりするのは個人的にとても嬉しかった。というかなに、この『ネクラ少女は黒魔法で恋をする』を地で行く黒髪黒スト眼鏡の女の子。眼鏡の力で呪い殺しそうなチャーミーぶりに胸が高鳴り。「the dark six」関連のネタも多く、ド貴族少女のさりげないデコに(*´Д`)ハァハァしたり。絵で見て解説を読んで、「このキャラすげえ気になる」と思った次のページに書き下ろしのショートストーリーが来る、この構成は実に心憎い。SS自体はそんなに長いものではなく、あくまでこれ目当てに読むとすれば物足りないところですが、設定で興味の湧いたキャラが短いとはいえ実作の中で動いてくれるのはちょっとした感動。

 他人の脳みその片隅を覗き見るような秘密めいた心地良さがギュッと凝縮されています。メレムソロモンの四肢悪魔を全部目にすることができたのも眼福でした。メレム本人もかなりツボ。もうこいつを主人公にして『バベル二世』というか『ソロモン二世』みたいなタイトルでアニメ化してはいかがか。『月姫読本』あたりと併せて何度もパラパラ読み返すのが楽しい冊子です。


2006-08-24.

保護されたタカを動物園で公開

 ハチクマの単語で咄嗟に「はちみつくまさん」を連想しましたがそれはともかく、「人懐っこい猛きん類」という言い回しに激しい違和感を覚えますね。タカのくせにガチョウに怯えるとは……猛禽でも怪我をすると気弱になっちゃうんでしょうか。

『Dies Irae』広報ムービー公開

 lightはそこそこキャッチャーでお気楽な作品と非常にニッチで濃いい作品を交互にリリースする変なメーカーですけれど、今回の『Dies Irae』は「濃いい」方。紹介ページを見るだけで充分に独特の雰囲気というか瘴気が伝わってきますが、ムービーもムービーで正田節が唸っていて辛抱たまりません。一見キャッチャーな伝奇アクションのようでいてナチスドイツを題材に採るなど、古めかしさすら漂うセンスはやっぱり売れなそう。個人的にはこういうゴチゴチの伝奇モノに飢えているので大いに期待したいところ。

『ひぐらしのなく頃に』、プレー中。「祟殺し編」が終了して「暇潰し編」に突入。

 祟殺し編、北条沙都子を「愛い奴め!」と愛でていたのも最初のうち、あれよあれよという間に状況が悪化していき、後半はいろんな意味で凄まじい展開に。凄まじすぎてもう無茶苦茶です。どんどん具を放り込んでったせいで溢れ返って吹きこぼれている満杯鍋状態。こんなのアリか。まあ、滅法面白かったのでアリってことでよろしいかと。

 もはや推理もクソもない有り様となってきましたが、一応なんとか解けそうな謎も転がっていることだし、めげずにチマチマと考えてやっていこうと思います。大枠を決めておいてから手を変え品を変え、様々な要素と展開を見せてくれるサービス精神には敬服しますし、なんだかんだでここまで夢中になれるノベルゲームって最近ありませんでしたから。うんうん唸りつつ骨の髄まで味わいたく。

 暇潰し編は、これまでの流れから若干離れるストーリーになっており、一種の番外編ですね。本編よりもテキストがやや硬めでコメディ要素も少なく、ちょっと退屈しましたが……麻雀対決には笑った。あそこでガラッと空気を入れ替えてうまい具合にこちらの興味を引きずり込んでくれた感じ。番外編っぽい内容だけに他のシナリオと比べてあまり長くなさそうですが、切り口もだいぶ違うみたいだし、まったりと楽しみつつ続けよう。


2006-08-22.

『ひぐらしのなく頃に』、プレー中。「綿流し編」が終了して「祟殺し編」に突入。

 やっぱり怖ええ。「綿流し」の意味は薄々感づくものがあったけれど、それでもあの状況で解説されるとクるなぁ。前半の面白おかしい雰囲気が半ばで崩れてきて、後半は畳み掛けるようなサスペンスとスリルとショックの波状ホラーになるって点では「鬼隠し編」と同じ構成でしたけど、展開がまるっきり変わっているおかげで新鮮にガクブルできました。感覚としてはライアーの『腐り姫』に近いものがあるかも。アレの一周あたりの尺を非常に長くした感じと言いますか。同一期間の話を繰り返している割に被っている要素が少なく、飽きたりダレたりといったことがありませぬ。メインとなるヒロインを毎回変更していくことで、選択肢は皆無ながら一種のマルチシナリオを味わっている気持ちにさせられます。

 「祟殺し編」は沙都子がメインヒロインみたいですね。見た目からして生意気そうで、「〜でございますわー!」「をーほっほっほっ!」という口調がなんとも鼻に付き、正直苦手な子ではありました。「鬼隠し編」でも「綿流し編」でも、主要キャラの割にはこれといった見せ場がなく、どちらかと言えばサブキャラに近い位置づけだっただけに、最初は「この子がメインか……」と難色を示していましたが――いざ始まってみると、なにこれ。めっさ可愛いやないの(*´Д`)ハァハァ。新規描き下ろしの立ち絵とも相俟って名状しがたいほどにこちらを魅了してきてやまない。胸がときめくことしきり。ああ生意気なのに世話焼きで小言が多くてそのくせしおらしい少女テラカワイス。ぶっちゃけ「梨花にくっついてるオマケ」としか見てなかった当方でしたが、あっさり陥落しました。ひぐらし、ホラーADVとして出色のデキであることは疑いなきことなれど、キャラ立てに関してもなにげに凶悪な腕前を持っております。登場人物たちが魅力的だからこそ惨劇の恐怖や凄愴さが増そうというもの。

 なんと言いますか、やっていて「ずっとこのまま平和な日常シーンが続いて行ってもええんやないか?」って和む気持ちと「それで惨劇の方はまだですかな?」とワクテカする気持ちの板挟みに苛まれますな。いずれ惨劇が訪れるからこそ「平和な日常シーン」に掛け替えのないものを感じられるという面もあり、これでひぐらしがホラーサスペンスじゃなくてただのド田舎青春ラブコメだったら途中で退屈してしまわないかという疑いは捨てきれない。複雑な心境。とりあえず進めてみますね。

・火坂雅志の『覇商の門(上・下)』読了。

 親から継いだものではなく、自らの力によって無一物から富を築き上げた商人・今井宗久を主人公に据えた戦国小説。徒手空拳の若者が成り上がる、一種のサクセス・ストーリーです。千宗易(利休)らと並ぶ茶人でもあり、山田芳裕の『へうげもの』にもちょっとだけ出番がありました。正直、あまり印象的な役どころではなかったですが……。元は雑誌に連載されていた小説で、ハードカバーでの刊行時は全一冊でしたが、分量が多いせいもあって文庫化の際に分冊された次第。上巻には「戦国立志編」、下巻には「天下士商編」という副題が付いており、合わせて900ページほど。改行を多用してテンポ良く綴っているせいもあって量の割にはサクサクと読めますが、これほどにもなると充分な読み応えがあることは揺るぎません。

 野辺に転がる骸から鎧や具足を剥ぎ取り、修繕して新たに売りつける商いを二十四歳の若さで始めた彦八郎――後に「今井宗久」と名乗る彼は港町として栄える堺に住み、裸一貫で商人の頂点へ登り詰めようと大望を抱く。才能を認められた茶の湯も、彼にとっては数寄の道ではなく取引の道具。新規参入に厳しい排他的な商社会の仕組みに風穴を空けんとして目に付けたのは、南蛮伝来の技術を元とする火縄銃「種子島」だった。麻の如く乱れた戦国の世に、士としての魂を持って武将たちや権力と戦う宗久は、いつか天上の雲を掴めるか……。

 「医」で天下を取った全宗、「建」で天下を渡った高虎、そして今回は「商」で天下を左右した宗久。戦国時代を舞台とする小説に、合戦や人間ドラマ以外の要素を取り入れて興趣を盛り立てる火坂作品も当方にとってこれで三作目です。さすがに作風が慣れてきてパターンが読めるようになったこともあり、だんだんと新鮮さを覚えなくなってきた寂しさはありますが、それでも一度読み出したら最後までぐいぐいと引っ張っていって読み切らせてしまう吸引力は「さすが」の一言に尽きます。冒頭でいきなり奪衣婆さながらに死体の武装を剥ぎ取る件は単純にインパクトに溢れています。身寄りのない堺で虎視眈々と商機を探り、徐々に力を溜め込んでいく展開もワクワクとする。種子島、そして織田信長に感じ入るもののあった宗久が、それこそ身代を傾けて一世一代の大博打を張る中盤も、歴史のことゆえどう転がるか分かりきっていてなお手に汗握る熱さあり。

 ただ、終盤に差し掛かるとおもむろにテンションが低くなっていき、『全宗』の際に感じた不満そのままに尻すぼみとなるのは残念でした。やはり史実に基づくとなると物語の推移が制限され、着地が地味にならざるをえないのだろうか。それと“風の者”といった恒例の伝奇要素が混じっていて、面白くはあるけど使い方がちょっとご都合っぽくて中途半端な気も。あと、あまり目立たないせいもあってか今回はサブキャラにこれといった魅力を感じませんでした。「驕慢な女」の割にあっさりオトされる妻にしても、都合の良さが鼻に付いてしまった。

 前半の緊張感が最後まで続けばなー、と思わなくもありませんが、総じて「読み応えのある小説」であることには変わりありません。将軍を弑殺した松永久秀、天下の覇王になろうとした織田信長――ふたりの梟雄と共感し、下克上を筆頭とする「義よりも利」の判断を良しとする貪欲な商人ならではの野心が平易な文章の中にふつふつと滾っておりました。順調に火坂雅志にハマってきています。


2006-08-19.

『冬の巨人』の刊行予定がまた出ましたけどそう安易に信じはせん、信じはせんぞ! な焼津です、こんばんは。それでも購入予定メモにせこせこと記入してしまう悲しきファンの性。

ライアー新作『妖刀事件』情報正式公開開始

 渋谷を舞台にしたマルチビュー(視点切り替えシステムがあるってことかな?)ノベル。「ノベル」と言い切っているからにはゲーム要素がないのかしらん。「妖刀」「切り裂き魔」「多視点」でなんとなく『デュラララ!!×2』を連想しましたが、ともあれまだ雰囲気が掴み切れない。体験版をひとまず待つとします。

『ひぐらしのなく頃に』、プレー中。「鬼隠し編」が終了して「綿流し編」に突入。

 あまりにも久々なので忘れていましたが……当方はホラーゲームがかーなり苦手なんでした!

 ひぃぃ、こ、怯(こ)え〜。とガクブルしながらやり終えた「鬼隠し編」。ある程度ストーリーが進行した以降は和やかな日常シーンも白々しく映って肌寒いものを覚えますな。全体にとってプロローグみたいな位置づけとあっていろいろ謎や不明点が残ったまま幕となりますが、声なしのノベルで4、5時間程度と結構な分量があるし、見所となるシーンも多かったです。後半は正直胃が痛くなりました。なにげに細かいところまで凝っていて異様な迫力が醸されるのは何ともかんとも。

 その余韻が消えなかったせいか「綿流し編」を始めてすぐはほのぼのした日常シーンに乖離感を覚えてなかなか入っていけなかったけれど、一晩おいて頭の切り替えができるようになってから再開してどうにか続行させることに成功。ひぐらしがなぜこうも騒がれ持て囃されてきたか、ようように理解が染み入ってまいりました。ちょっと舐めていたかも。

・拍手レス。

 月光のカルネヴァーレ同じく虚淵さんかと思ったらがっくりorz でも第一印象では買いの方向で。
 略称は「月カル」あたりで落ち着くのかな。「月蝕カルマ水」と混同しそうだけど。

 おお、凄まじくダーク…!実家からですが、読みました。いやはや凄えー。@竹雪子
 良さげな反応につきホッとしました。リクエストネタは結構プレッシャーが掛かるものだなあ。

 支倉凍砂って男だったんですね。勝手に女だと思い込んでいたので少しショーック。
 当方が「女性と思ったら男性」で一番ビックリした作家は北村薫ですねー。


2006-08-17.

・やっとこさ完結、ということで『ひぐらしのなく頃に解』を注文し、ついでに今まで積んでいた『ひぐらしのなく頃に』のキャラメル包装を解いてプレー開始した焼津です、こんばんは。まだ「鬼隠し編」も終わってないくらいですが、イイですね、こういうホラー風味のサスペンス・ミステリ。最近はこの手のホラー系ノベルがめっきり減ったせいもあって、懐かしいのに目新しい感触がしてワクワクします。ハンドメイド感溢れる絵柄や日常シーンに漂うほんわかしたムードとは正反対の、結構悪趣味な要素が随所に盛り込まれている雰囲気がたまりません。当方、悪趣味が大好きです。悪趣味も趣味のうち。

 ただ、プレーするまでにあちこちでひぐらし絵を目にしたせいか、オリジナルを見ると却って違和感が湧いてきてしまう罠。まあ、やってるうちに認識が洗い直されていきますから、あともうしばらくすれば慣れると思います。全体的にごくシンプルなノベルものながら、演出との兼ね合いが巧みで「ここぞ」という場面にガツンとインパクトが来ますね。これはなかなか先が楽しみ。ストーリーは長いらしいですが、テキストはダレたところがなくて読みやすいので一気呵成に進攻いたしたく。

 ちなみにダム云々というのを読んで咄嗟に連想したのが『湖底のまつり』だったり。個人的に泡坂初期長編は『11枚のとらんぷ』『乱れからくり』の方が好きですけれど、イメージの鮮烈さではあれが一番印象に残った次第。

・アクセス解析で見ると最近多い検索ワードは「我妻由乃」(『未来日記』)。あのキモ可愛い純情ストーカーぶりが話題を呼んでいるのかしら。あと間違われやすいみたいなので念のため書いておきますが、読みは「がさい・ゆの」です。それから、中には「エロい 戦国小説」なんてのもありました。よもや戦国小説にエロスを求めている方がいるとは……読者層の関係もあるのか大抵の戦国モノにはサービスシーンがありますけど、「とりわけエロい」という印象が残っている小説はありませんねえ。『駿女』はタイトルが妙にエロいと思いましたけど直接的な描写は確か一切なかったし、そもそもよく考えたらあれは戦国モノじゃなかった。

・ローリー・リン・ドラモンドの『あなたに不利な証拠として』読了。

 実際にバトンルージュ市警で女性警官を務めていた著者が、退職後、12年かけて書き上げた短編集。全部で10編が収録されており、「中心人物となるキャラクターが誰か」によって5つの部に分けられている。タイトルは「あなたには黙秘する権利がある〜」云々という、アメリカの刑事ドラマで犯人逮捕シーンに必ずといっていいほど出てくるあの有名な「ミランダ警告」の一節から来たもの。MWA賞を取っているくらいだから本国での評判も良く、また日本でも刊行時から多くの書評家に絶賛されていました。いかにも「批評家好みの内容」って印象があったのでしばらく物怖じしていましたが、なんとなく興味が出たので着手してみた次第。

 全体が300ページで、短いものは4ページ、長いものは90ページ近くと、結構まちまち。ただ必ず女性警官が話の中心人物として登場することや、「バトンルージュ市警」という点で各エピソードが微妙にリンクしていることなど、ある種の一貫性はあります。冒頭一発目の「完全」は、キャサリンという警官が逃亡中の犯罪者を射殺した――という話。彼女の射殺はあくまで決められた手続きに則ったものであり、犯人が凶器を所持していたこと、警告を無視したことを鑑みても「完全に」公正な射殺であった。しかしキャサリンは「完全とはいったい何だろう」と割り切れぬものを抱えている……といった感じ。それ以上の展開はなく、本当に「それだけ」で終わってしまいます。普通のミステリなら最後に「意外な真相」が発覚して、実は公正な射殺ではなかった――と判明してオチがつくところですけれど、そんな要素は皆無。一切、サプライズがありません。

 レーベルが「ハヤカワ・ミステリ」とはいえ、この本にミステリで「お約束」とされる謎解き要素や意外な真相といったものはほとんど用意されていない。徹底したリアリズム志向というか、敢えて明確なオチを付けないことでいっそうの生々しさを演出する方向に走っています。MWA賞受賞作であり他と比べてミステリ要素が濃い「傷痕」にしても、事件そのものの決着はつかないまま終わる。一般的なイメージとして存在する「警察小説」を期待すると、間違いなく戸惑うでしょう。けど、それを補うように――というより、むしろエンターテインメントの要素をわざわざ犠牲にすることによって生まれた特異な臨場感が全編を包み込んでいます。たとえば上で挙げた「完全」でも、警官が逃げる犯人を追いかけるとき、走ることでホルスターや無線機や懐中電灯、何より防弾チョッキが体に擦れて痛いことだとか、他にも「生きている死者」で、女性警官はトイレで用を足す際いちいちガンベルトを外さないとズボンが脱げなくて時間が掛かるだとかいった、目にする以前に考慮したこともないようなディティールが満載で、警察小説や刑事ドラマに関心があればあるほど目から鱗となるはずです。サプライズやアクションを強調するのではなく、ひたすらに警官が生身の人間であることや職務がどこまで行っても「日常」の一部であることを淡々と描くノリは、ミステリではないにしろ、「ミステリの陰画」であるように感じられる。

 また、時間を掛けたというだけあって文章も非常に緊密で丁寧。あっという間に作品の世界へと引きずり込まれます。五感に訴えることを狙った「味、感触、視覚、音、匂い」はまず死臭のすさまじさを説明し、「他のどの匂いとも似ていない」「(死体を)たとえられるものは一つもない」と言い切った後、死体現象として皮膚がはじけ体液が溢れ出すことについて「そのときの匂いは、味になる」「死の味が舌や喉や肺をびっしり覆ってしまう」などと描写するものですから、下手に想像すると悪夢を見そうです。それから特徴の一つとして、警官たちの内面に踏み込んでいく部分も上げられます。プロだからといって何も抱えないわけではなく、反対にプロだからこそ多くのものを抱え込まざるをえない――という気持ちが痛いほどに伝わってくる。「警官」は職業ではなく生き方だ、というような表現を何かで見ましたが、それを実に強く意識させられました。

 割と文学寄りの内容もあって、批評家ウケがいいことに納得。文体が緊密すぎて少し疲れるところもありますが、一部を除いてページ数は控え目になっているおかげもあり、適度に休憩を挟めばサクサクと読めます。警察小説としての定型を外した作品だけに、警察小説が好きな人にも、苦手な人にも構わず推したくなる。「謎」だの「秘密」だの「真相」だの、そういう売り文句が一切似合わない異色のポケミス作品です。横山秀夫が「男臭い燻し銀」とすれば、ローリー・リン・ドラモンドは「女臭い燻し銀」。個人的に気に入ったのは「キャサリン」の章。全体で60ページ程度ながら、密度が濃い。逆に「サラ」の章は間延びしちゃってるかなー、と思わなくもないです。


2006-08-15.

・出ると言われつつ延期を重ねてきた第34回メフィスト賞受賞作『天帝のはしたなき果実』、やっと9月に発売が決定した……かと思いきや、ほんの一日で公式ページから書名がデリートされていて「なにそれ?」な気分の焼津です、こんばんは。1890円という法外な価格からしてさぞ破格な作品だろう、とワクテカしていただけに期待をスカされました。とほほ。この速さからすると、新刊情報に載ったのがむしろ手違いだったのかも。

 それにしても1890円は高いですな。新書というよりハードカバーの値段。過去には1000ページ超えで1995円の『カーニバル・デイ』という先例があるし、ないこともない価格設定ではありますが。それから『邪魅の雫』もまだ発売日が決定してないし、奈津川サーガの第三弾も音沙汰なし(そもそも舞城王太郎の純粋な新刊がここ2年ほど出てない)だし、ネコソギで戯言シリーズを完結させたとはいえ講談社ノベルスの宿題はいまだ山積みのムードが濃厚。

・図々しくも二度に渡って竹雪子さんに短編のリクエストをした件に関し、さすがに厚顔無恥な当方も「アレかな」と思ってせめての罪滅ぼしに逆リクエストを所望。つまり竹雪子さんが出したお題で何か書いてみる、ってことにチャレンジしてみたわけです。お題は「人外化生」。それも「ほりほね的な」。

 ほりほねさいぞうは特殊な存在であるだけに、名前は聞き及んだことがありますけど作品は読んだことがなく、根本的に間違える危険性を孕みながらも「まあ人外化生が割とどん底ライフでけっこうタフに笑ってるような」という竹雪子さんの言葉を頼りに書いてみたのがこちら。割合サクサクと仕上がりましたがちょっと違う気がしてなりません。まあいいか(超テキトー)。タイトルの元ネタはウォーレン・マーフィー。あと横文字名前を付けるのが苦手なので書き出してからまずそこに悩んだものの、以前のメッセでハヤカワSFの話題が出たことを思い出して新刊から取ってみました。カズム→『カズムシティ』、シンギ→『シンギュラリティ・スカイ』、イリア→『イリアム』。もちろんどれもまだ読んでおりませぬ。絶賛積読中。ああ当方の宿題も山積みだ……夏休みなんてものとは無縁の歳なのに……。


2006-08-13.

・休日になるとむしろローテンションになりがちな焼津です、こんばんは。日頃の疲れがドッと出たせいか、今日はやけにダルかった……。

ニトロプラス、新作情報公開

 「遂に虚淵が!」と思ってページを開き、「……新人さんですか」とおとなしくなった方もおられるかと予測。当方もそのクチ。原画はハナチラの人ですね。個人的にハナチラは好きだし、絵の方面での心配はないけど、シナリオは至って未知数。まだ判断材料に乏しいので様子見。

propellerの新作『はるはろ!』、発売日決定

 WEB参加企画は半ば忘却しています(どきどき日誌のみマメに投票)が、荒川工シナリオの新作として期待していることは確かな一本。あと、みなさんに注意していただきたいのは――「発売の時期的には『あきはろ!』だろ」とか指摘することはなりません、ということ。それで律儀に「I can do! I can do!」とばかりに延期されて来年の春あたりに帳尻を合わされたら全国の荒川儲が緩やかに怨霊と化しますゆえ。ところで今「もうけ」が「喪受け」というおぞましい誤変換を起こしましたが見なかったことにいたしたく。

・火坂雅志の『全宗』読了。

 時代小説家である著者の出世作。吉川英治文学新人賞の候補に選ばれたりで話題になったそうな。評判に釣られて読んでみた最近の作品『虎の城』が面白かったのでこれにも興味を持ちました。主人公は施薬院全宗。前述した『虎の城』にもチラッと出番がありましたが、戦国時代に実在した医師であり、太閤殿下・秀吉の侍医でもあります。参謀として秀吉の政策に関っていた人物ゆえ、戦国時代において「医者でありながら天下を左右した男」という面白い位置に立っている。

 甲賀の忍の息子――家から飛び出したはずが、何の因果か忍者に拾われて激しい特訓を受けた若き日の全宗。彼には、「このままで終わりたくない」という燃えるような野望があった。かくして京に入って成り上がろうと目論見を立て、師のもとを逃げ出したまでは良かったが、追っ手として掛けられた仲間を殺害したことにより命を狙われる身になった。追及を躱そうと彼が身を寄せた先は比叡山延暦寺。聖域たるお山には甲賀の忍も手を出せまい、と安心していたが――時は乱世、織田信長の常軌を逸した焼き討ちにより、山を降りざるを得なくなった。比叡山の薬樹院で薬の知識を磨いた全宗は、頼る相手として木下藤吉郎、後の秀吉を選んだが……。

 「天下人の側近」というそそる題材の中で、更に「侍医」という物珍しい着眼点を得た一作。無論それだけに終わらず、医師のストーリーであるのに「実は忍者だった」なんてことから書き出すなど、エンターテインメントとしての工夫は万事抜かりなし。信長はほぼ名前だけですが、秀吉や竹中半兵衛、明智光秀、武田信玄といった有名どころも登場して戦国小説としても豪華な一方、全宗が曲無瀬道三の啓廸院に入門し、実力と権謀術数の二枚重ねで着実に医者としての地位を確立していって、「医学で天下を取る」という宣伝に劣らぬ躍進を見せるサクセスストーリーとして読んでも熱中できる。勢力を増す伴天連(キリスト教)への脅威に心配を募らせ、追放令の発布を誘導する件など、興趣も多方面に渡っています。

 ただ、全宗のキャラクターはアクが強く、ときにその遣り口が悪辣で鼻に付くところもあり、「感情移入できる主人公」かと申せば必ずしもそうではない。また展開も後半に進むにつれ若干取り留めがなくなっていく。そもそも「秀吉の陰の参謀」という設定なんだからてっきり秀吉が天下を取ってからの内容が大部分を占めるかと思いきや、むしろ秀吉が天下を取るまでの過程の方が長く描かれています。そのせいもあってか、本来メインとなるはずであろう後半が却ってオマケに映るという本末転倒が感じられたり。あと単純に量的な問題として、大長編である『虎の城』と比べるとやっぱりどうしても読み応えの面で物足りなさを覚えてしまうところがある。できればこっちを先に読みたかったです。

 とはいえ竹中半兵衛との会話や、唯一心を許せた友である心空との交流など、見所も多くて総合的にはかなり楽しめた本です。特に心空とは以下の会話、

「見ていてくれ、全宗。わしはおのが身命を投げ出しても、行満を成し遂げてみせる。回峰の途中、もし歩けなくなるようなことがあれば、降魔の剣で首を切って果てる覚悟はできている」
「恐ろしいほどの金剛心じゃな」
「おうさ。地を這い、泥水を嘗めるほどの金剛心なくば、いかなる物ごとも成し遂げることはできまい」

 が印象的。全宗とはまったく正反対の性質をしたキャラクターだけに、『心空』とかいった作品があったら併せて読みたいところでした。火坂雅志は著作が多い作家だけにアタリハズレの差も割とあるらしいんですが、次は『覇商の門』あたりに手を伸ばそうかな。


2006-08-10.

・忙しくて更新の滞りがちな焼津です、こんばんは。盆が明ける頃には元の隔日更新に戻れると思いますが……さてはて。

『ドージンワーク(2)』、前巻が個人的にいまひとつだったので一旦は見送ったものの、周りの評判が良くてついつい購入。焼津は流されやすき男にございます。ともあれ、期待せずに読んでみたら今回はハマった。新キャラの二道かねるがうまい具合にヒットした次第。そうそう、こういうライバルキャラ……とはちょっと違うが、主人公と同じ「売れない同人作家」が今までいなかったから物足りなかったんです。どんぐりの背比べし合う展開も面白くてイイ。基本がコメディだから「どっちが多く売れるかで勝負!」みたいな対決になっても、熱くならずのほほんと楽しめる。しかし、一桁台で鎬を削るっつーのもそれはそれで凄い話だ。かねるのキャラクター(自滅型)も魅力的で気に入りました。この子とソーラとジャスティスが共存する空間は何とも言えぬ萌え瘴気に包まれておりますな。反面、主人公と露理は若干影が薄くなったような。出番は結構あるのに……。

・拍手レス。

 DTの主役格は名前がオンラインゲーム由来らしいっす。優緒=UO=ウルティマオンラインとか。
 川上稔大全見に行きましたけど、ゲームネタが大量ですねー。

 ら 笑えるゲームスレ辺りで話題になってて尾之上咲太になってたと知る始末で
 同一人物だっていう確定情報はありませんけど、『ですめた』あたりのノリはそれっぽかったです。

 ディエス・イレの公式HP、L∴D∴Oの団員のところをクリックしたら、キャラ紹介出てきますねー
 あーっと、気づきませんでした。情報ありがとうございます。うむ、なかなかステキな面子。


2006-08-07.

・とりあえずライアーソフトの新作が気になっている焼津です、こんばんは。良くも悪くも雰囲気が把握し切れない。ワクワク。

『Dies Irae(ディエス・イレ)』、公式ページオープン

 伝奇アクション臭が濃厚に香ってきてたまらないなぁ。プレストーリーを読んだだけでワクワクするものがあります。まだ発売時期も詳しく決まってないのでのんびりと待ち姿勢を構えるつもりですが、現時点でも一、二を争うほど楽しみにしているソフト。ライバルキャラ・遊佐司狼のセリフ「女の陰でバトルの解説なんかしてる男は、死んでいいだろ」がやけに印象的です。

・古橋秀之の『斬魔大聖デモンベイン 軍神強襲』読了。

 フルハシデモベの第2弾。前作の『機神胎動』からちょうど2年ぶり。軍神強襲→マーズアタックということから「火星人が襲来する」というストーリーの時点でぶったまげたわけですが、店頭で手に取ってみてまず驚いたのはその薄さ。今回は本全体で250ページくらいしかありません。まさか前作より減るとは思わなかったのでビックリした。あと表紙がエロいというか性犯罪者の危険を警告するポスターみたいな絵になっていて何とも言えない。

 前作に引き続き鋼造やアル・アジフやエイダ、それに加えて覇道家の御曹司・兼定、新たなるマスター・オブ・ネクロノミコンとしてエドガーが主要キャラとして参戦します。他にも『機神胎動』に出てきたモノが意外な形になって登場したり。口絵を見た感じでは兼定とエドガーの関係が今回の力点になっているかのように映りますが……うーん、なんと言いますか。今回はスケールが大きい反面、ちょっと大味な印象を受けてしまいました。サクサクとスピーディに進んでダレるところがないのはイイけれど、シナリオ消化の速度がほとんどダイジェストに近くなっていて、もっと食いでが欲しかったというのが正直な感想。「兼定とエドガー」にしても、心理描写が薄めだったりしていろいろともったいない気がします。「坊ちゃんとチンピラ」って感じでなかなかオイシイ組み合わせではあるんですが……。

 ただ、後半は怒涛の古橋イズムとデモベ特有の荒唐無稽さが相俟って、絶妙な「無茶苦茶」感が炸裂し放題になっているのは嬉しかったです。ハッタリにハッタリを重ねて「なんだかわからんがとにかくよし!」の超迫力を産み落としていますね。オチの持っていき方もうまく、ラストに残る余韻は味わい深い。ある意味、前半の物足りなさを帳消しにする構成となっています。シャープに短くまとめたからこそこのオチや余韻が利く――ってことを考えると、最前の「もうちょっと量が欲しかった」という願いは妥当とも言えず、なんとも板挟み。前作で期待していた「破天荒ぶり」は叶えられたことだし、それなりに堪能はいたしました。けどやっぱりなんかモヤモヤしますねぇ。


2006-08-04.

・都市シリーズ攻略戦、遂に最新の『電詞都市 DT』を征して全冊完了。興味が他のものに移ってしまったせいで時間を食ってしまった。これであとは強いて書けばゲーム版『奏(騒)楽都市 OSAKA』を残すのみだが、まだ着手する覚悟は決まってないので一旦終了ということで。DT(デトロイト)はいかにも「工業都市」、ってイメージを抱いていましたが、むしろ中世ファンタジーっぽい長閑な世界の都市。ただ電詞化されているせいもあって、時間が外界の百倍に加圧(ブースト)されているなど、都市シリーズ的な設定も多くあんまりファンタジーな感触はありません。ノリとしてはオンラインRPG小説ってムード。今までパソコンに触れたこともない武骨男が訳有ってMMOに参加しなくちゃならなくなるような、そんな感じの一風変わったノリで楽しめた。ヒロインがエルフ耳で若干緩い性格しているのも可愛い。内容は上巻の方に目新しい情報が偏り、下巻は似た展開の連続でちょっと飽きかけましたが、全体としてはAHEADみたく「前進の意志」を打ち出した、一見異色のようでいて都市シリーズの中でも特にオーソドックスな仕上がりを見せる一品になっており、なかなかの味わいがありました。

 さて、川上稔の書籍著作に関してはもはや新作を待つばかりの身となりました。次は都市の新作か、AHEADの新作か、それとも何か他の奴なのか。なんであれ楽しみだ。

・えすのサカエの『未来日記(1)』読了。

 ヒロインのあまりにもあまりな超ストーカーぶりに連載中から話題になっていたマンガ。高校生で、友達も生きる目的もない主人公は空しさと寂しさを紛らわすために妄想でつくりあげた「神様」と脳内で戯れる毎日を送っていた。が、彼の妄想が「神」をつくり出したのではなく、「神」が彼の頭の中に住み着き妄想のフリをしていたのだと発覚。「神」は彼に「未来日記」の綴られた携帯電話を渡す。そこには主人公が見ることになるはずの出来事が90日分も打ち込まれていた。かくして「未来日記」を巡るサバイバルゲームが始まり……。

 設定を要約すると、主観的な情報が書かれた「未来日記」入りの携帯を受け取った12人のキャラクターたちが、「神」の後継となるべく互いの命を狙って殺し合っていく。「未来日記」の内容は可変で、ゲームの参加者たちの行動次第で書き換わっていく。暫定的な未来情報をいかにして活用し、生き残るか。それが焦点となってくるみたいです。

 と、これだけなら単に設定の凝った青春サバイバルゲームコミックなんですが、本作の特徴はなんといっても我妻由乃(あがつま・よしの、ではなく、がさい・ゆの)。ヒロインなんですけれど最近流行りのツンデレ(いやさすがに廃れてきたか?)とかではなくて、バリバリの純情熱愛ストーカー娘。いきなりキスするし、ユッキー(主人公)のためなら邪魔者に対しても平気で「殺す」発言かます。そもそも彼女の未来日記はユッキーの行動を10分刻みに追ったストーカー日記。誰が見てもヤバいとしか言いようがない。しかし、生き残りが懸かっている以上は敵に回すわけにもいかず、主人公は「僕を守ってくれ」と篭絡するわけで。由乃は真っ赤になって忠犬と化すわけで。地雷フラグが立った状態でさあどうなるユッキー。

 「凄春」とかいうキャッチコピーが付いていた割にはグロ描写もないし、サバイバルとしてはちょっとヌルい気もしますが、由乃かわいいよ由乃な感じで2巻が楽しみです。

・拍手レス。

 PS版大阪は如何ですか? 小説の2年後、東京と同時期。内容は新聞作り。一見の価値はあります
 どこかの店頭で見かければ、縁があったということで買ってみようかと思っています。

 はじめまして。いつも地味にみにきてますー
 ところで西尾さんのデスノートとかってどうなんでしょうか?
 値段とページ数からみて手をだしにくい感じなんですが……

 そういや出たみたいですね。実物は見てませんが、ちらっと小耳に挟んだところでは割合評判いいみたいです。

 うそモテ面白いようそモテ面白いよって言い続けてましたら
 ら? どうなったんでしょう。


2006-08-02.

・ずわーごわーべじゃーどぎゃーな『ヘルシング(8)』を読み終わった焼津です、こんばんは。正直一回読んだだけでは細かいところが分からないのでもっかい読み返すつもり。展開が遅いと思っていたこのマンガも気づけば思いっきり加速してきてますな。アーカードとアンデルセンという『ヘルシング』全体を代表する二大凶笑家がとんでもない状況で激突して、てんやわんやの世界。ひとコマひとコマの迫力に漲ってくるものがあります。見えるようで見えなかったストーリーの目的が徐々に見えてきたおかげで興味も再燃。続きが楽しみだ。あと十三課(イスカリオテ)の番外編もまた読みたいところ。

・片山憲太郎の『紅〜ギロチン〜』読了。

 自分は三流の揉め事処理屋だ。
 ならば、三流の意地を見せてやる。

 タイトルのインパクトが割合強烈な、『紅』シリーズ第2弾。パソコンがクラッシュしてデータが飛んだとかで3ヶ月くらい延期してました。『電波的な彼女』の方にも一人出ている斬島家の人間が今回の新キャラです。二重三重の意味でギョッとすること請け合い。さて、前回のストーリーで無事なんとか7歳の少女・紫を助け出した紅真九郎(くれない・しんくろう)なんですが、現役高校生にして揉め事処理屋を営んでいる彼はぶっちゃけ儲かってません。蓄えもなく、仕事の稼ぎは学費や生活費に消えていく。将来のビジョンもなくて、十年来の幼馴染みに「数年後には路頭に迷う」と分析されるほどノーフューチャー。そこで寄らば大樹の陰ですよー、とばかりに裏世界で有名な大組織がスカウトを掛けてくる。心の揺れる真九郎が迷った末に出した答えは……。

 「人を殺せ」と命令されて従えなかった主人公は口封じに殺されかけますが、ギリギリで救済されて「殺し屋ができないなら殺し屋の襲撃を止めてみろ」と対決宣言を叩きつけられる。直前まで味方になりそうだった気配の連中が一瞬にして敵に回り、奴らの侵攻を食い止めなければならんことになる展開は単純明快でスピーディ。シチュエーションとしても面白い。周りには主人公より強そうな人もいるけれど、頼るわけにはいかんよなぁ、三流とはいえ揉め事処理屋としてのプライドがあるし、何よりみんなを巻き込みたくないし……ってな具合で青臭い行動原理に従って戦う真九郎くんが憎めない。精神的に弱っちいからこそ、支持したくなる。

 シリアスなシーンよりほのぼのとした日常シーンが大半を占めていた前回に比べると、今回はシリアスとコメディの割合が半々ってところでしょうか。やっぱりそれなりに日常シーン多いけど、「これから先どうするか」を悩み始めた真九郎は様々な試練を食らわされズタボロになります。改行が少ないみっちり詰まった文体で懊悩描写をやられるとなかなか濃厚な迫力がありますね。この徹底的に主人公を追い込んでいく構成は片山憲太郎の得意とするところだ。読んでいて主人公がいたぶられる過程にゾクゾクしてきてしまう当方はMなのかSなのか。どっちにしろ最後はスカッとするので関係ありませんが。

 コメディとシリアス、両方をしっかり味わえる優良なシリーズとして順調に成長してきている兆しあり。まーアクションは重点じゃなくて、ちょっとコンパクトにしすぎたせいでギャグというかブラックジョークっぽくなってるところもありますが、死ぬときはあっさり死ぬ冷淡さが味をちょうどよく引き締めていてくれてます。主人公の成長物語としてはもちろん、幼女やツンデレやキモ姉を相手にしたラブコメとしても充分に楽しめる一品。個人的に夕乃さんのキモ姉ぶりがパワーアップしているのは嬉しいかぎりですよ。彼女がメインのエピソードはまだですか?

・今月の予定。

(本)

 『斬魔大聖デモンベイン 軍神強襲』/古橋秀之(角川書店)
 『デュラララ!!×3』/成田良悟(メディアワークス)
 『センゴク(10)』/宮下英樹(集英社)
 『へうげもの(3)』/山田芳裕(集英社)
 『戦線スパイクヒルズ(4)』/原作:原田宗典、井田ヒロト(スクウェア・エニックス)

 軍神強襲、戦争の神様と言えば火星(マーズ)。というわけで、デモンベインの世界でマーズアタックをやるという遠慮のなさはさすが古橋御大だと思います。公開されている表紙イラストもワイルドでなかなかのインパクト。デュラララ3巻、池袋を舞台にした騒がしい現代群像劇。著書のシリーズの中でも好きな奴です。前回の終わりからしてこれが最終巻かと思いきや、一つのエピソードが完結するだけでシリーズ自体はまだまだ続くそうな。センゴクは時代小説にハマって戦国時代に興味が湧く前から読んでましたが、おかげで最近は面白さが従来の二倍三倍に感じられる次第。そういやこれ読み出したの竹雪子さんが話題にしてたからだった。それより前は3巻表紙の秀吉がアレだったんで変なノリのマンガと思ってました。へうげものも、「物欲マンガ」と聞いて気になってましたが、いざ読んでみると戦国時代モノとしても出色のデキ。2巻ラストには唖然としました。戦線スパイクヒルズは『平成トム・ソーヤー』のコミカライズ。シャープでいてなにげに凶悪なツラのキャラたち、青臭い疾走感、場面場面の緊迫感、ヤることヤってる展開のどれもが気持ちよくてスカっと来る。んー、今月はあまり買う予定がないな。小川一水や米澤穂信の新刊も出ますが思案中。

(ゲーム)

 『あやかしびと−幻妖異聞録−』(dimple)

 これだけ。一本あるだけでもいい方かな、最近の調子では。忘れないよう、これから通販の予約入れるつもりです。


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