2004年1月分


・本
 『楽園の知恵』/牧野修(早川書房)
 『火星ダーク・バラード』/上田早夕里(角川春樹事務所)
 『ボストン、沈黙の街』/ウィリアム・ランデイ(早川書房)
 『トキオ』/東野圭介(講談社)
 『福音の少年』/加地尚武(ぺんぎん書房)
 『ミステリー・ウォーク(上・下)』/ロバート・R・マキャモン(東京創元社)
 『導きの星1』/小川一水(角川春樹事務所)
 『武装錬金(1)』/和月伸宏(集英社)
 『ラブロマ(1)』/とよ田みのる(講談社)
 『太陽の塔』/森見登美彦(新潮社)
 『オーデュボンの祈り』/伊坂幸太郎(新潮社)
 『ポリスマン』/永瀬隼介(幻冬舎)
 『SFマガジン 2004年2月号』(早川書房)
 『導きの星2』/小川一水(角川春樹事務所)
 『Little Birds Fly』/円山夢久(メディアワークス)
 『深紅』/野沢尚(講談社)
 『七姫物語 第二章』/高野和(メディアワークス)
 『黄金色の祈り』/西澤保彦(文藝春秋)

・ゲーム
 『PARADISE LOST』(light)
 『Fate/stay night』(TYPE-MOON)

・ビデオ
 『ボーン・アイデンティティー』
 『シカゴ』
 『アイ』


2004-01-31.

・なぜか「エレクトリカル・パレード!」という叫び声が脳にこびり付いて離れない焼津です、こんばんは。なんかもう必殺技のように聞こえてきました。

・「聖杯」と聞けば『猫目狩り』や『頭蓋骨のホーリーグレイル』を連想する電撃系の当方ですが、何はともあれ『Fate/stay night』、無事にゲット成功。早速プレーを開始。

 とりあえずサクサクとプロローグをクリア。既に体験版にてプレー済ではあったが、「体験版は一部のテキストが削られている」ということだったので、既視感に耐えつつ再プレーした次第。すると、確かに読んだ覚えのないテキストがチラホラと。なるほど、コレを秘匿していたのか……と納得。パッと見だと別段隠すコトでもないように思えますが、たぶん発売前にあれこれと予測を立てられてユーザーが先入観バリバリになってしまうのを恐れたのではないでしょうか。

 プロローグを終え、現在は士郎視点の本編をプレー中。暫定的に狙いはセイバーへ定めるとします。甲冑少女属性が疼いて仕方ないので。ストーリーに関しては今のところ特にこれといったことはなく、フツーに面白い。んー、日常シーンは多いんですけど、不思議と弛みを感じませんね。戦闘シーンは体験版の時と同様で、やっぱりフツーに面白い。萌え描写よりも燃え描写を見るにつけ、思い切りニヤけてしまう当方はいよいよ重症。

 まだ始めたばっかりですが、なんだかこれは本気で長引きそうな予感がします。文章も絵も量はたっぷり。たぶん、一周するのに10時間は軽く超えるでしょう。システムが若干重い(感覚的に『パティシエなにゃんこ』くらい)のは難だけど、まだまだ先の展開は不透明ですし、楽しみ。


2004-01-30.

・言わずもがなの日となりました。こんばんは、焼津です。『Fate/stay night』、なんだかんだ書きつつもしっかり期待していますよ?

・西澤保彦の『黄金色の祈り』読了。

 SFとミステリを融合したり、人間心理をパズラーに利用するのが得意な著者の第16長編。最近はそうでもないですが、西澤保彦、以前はノベルスを主戦場として活躍していてハードカバー作品はあまり出してませんでした。この『黄金色〜』は『猟死の果て』に続く2冊目のハードカバー。単発読切。

 吹奏楽部に所属していた中高生時代。あの頃を象徴するのは、黄金色に輝く管楽器の数々──。廃屋と化した旧校舎の屋根裏で、かつての友達が白骨死体となって発見された。傍らには紛失していたアルト・サックス。彼の死は、あの「楽器盗難事件」と関係があるのか? ずっと逃げてばかりの人生を送ってきた主人公が、痛みの向こうに見出した真相とは……。

 かなりビターな味わいの青春ミステリです。若き日の主人公はDQNで少しもカッコ良くなく、それを自省するような形で回顧していくため、微笑ましくも痛々しい「懐かしさ」が醸される。ノスタルジックはノスタルジックなものの、まったくもってネガティヴ系。選択肢間違えまくってバッドルートを突き進んでいるかの如く、悪い方へ悪い方へと話が曲がっていく。ヒロインっぽい子が出てきても全然フラグが立たないあたりはある種のリアリティで、読んでいるとなかなかイイ感じに鬱になれます。

 アメリカへ入学とか、女子校の講師とか、作家デビューとか、著者自身をモデルにしていると思しき部分も多く、冷や冷やしてしまった。愚かさを悔いる自虐的な書きっぷりが却って面白い。明るく爽やかな学園モノも好きだけど、こういう苦い青春ストーリーにもたまには浸りたい。夢中になって読みました。ラストシーンはひどく鮮烈。


2004-01-29.

・辛いネギよりも炒めて甘くなったネギの方が好きな焼津です、こんばんは。というか最近ネギ食いすぎってほど食いまくってます。

『インストール』ってマンガ化されていたのか。知らなかった。

 マンガといえば『ねこきっさ』が気になっていたり。見かけたら購入するとします。

・高野和の『七姫物語 第二章』読了。

 11ヶ月も経ってようやく続編の刊行まで漕ぎ付いた、なんともファン泣かせなシリーズ。日本と中国を折衷したような、うっすらとしたオリエンタル・ムードが漂っています。印象としてはやや地味なものの、宮崎アニメ系のイラストともマッチする涼しくて透明感のある話で、電撃としては……というより、ライトノベル全体で見ても珍しい雰囲気の一作かもしれない。ファンタジーはファンタジーですが、ライトノベルというよりはジュヴナイルのノリ。派手な要素はなく、素朴な材料で勝負してきます。

 内容は一種の国盗り物。偶像として祭り上げられ、姫となった幼き少女が主人公。「七姫」のタイトル通り、他にも対抗馬たりうる六人の姫たちが出てくる寸法だ。萌え要素はそれほど目立っておらず、スルメを噛むように辛抱強く読んでいきない限りは(*´Д`)ハァハァしにくいでしょう。

 改行が結構多いんですけど、不思議と手抜きって感じはしない。一節一節が引き締まっていて、非常に贅肉の少ない文体だと思います。展開はスローペースな割にスケールはそこそこ大きめで、物語としてはかなりもどかしいけれども、ちまちま読んでいて楽しくなれる本といった面もあり。電撃の中にもこういうシリーズがあったっていいよなぁ、としみじみ味わいました。

 キャラクターで言えばクロハが好み。琥珀姫も捨てがたいが。どっちにしても空澄姫以外のキャラってあんまり出番ないんですけど……彼女が「世界」をどう見て、何を目指していくのかが焦点となっている分。さて、それはともかく、次巻は今年中に出ると嬉しいなぁ。


2004-01-28.

・王室時間協会(内的時間=生活速度を測定することで身分等級を決める機関)によれば当方は平民よりもやや下レベル。つまり、ゲームのプレー速度は人よりも若干遅めです。ろくじゅうじかんという数字を耐久することができるかどうか。

・野沢尚の『深紅』読了。

 第22回吉川英治文学新人賞受賞作。選考委員だった高橋克彦が解説で激賞しています。当方、こういう「選考委員激賞」タイプの解説に弱いです。ハードカバー時は興味を覚えつつスルーしていた『Twelve Y.O.』も、解説で大沢在昌が熱く絶賛しているのを読んで買ってしまいました。別に大沢在昌や高橋克彦が好きというわけではないのだけれど、作品を読んだことのある作家が諸手を挙げて誉めそやしている様を見ると関心が疼いてしょうがないです。本作は「被害者の娘と加害者の娘が邂逅する」という筋立てにも興味を惹かれていたし、ままよとばかりに購入。

 修学旅行の夜、眠ったふりをする奏子のもとに担任の教師がやってきた。「すぐに帰る支度をしなさい」と言って、用意が済むと一緒にタクシーに乗り込んだ。膨れ上がっていく不吉な予感。病院で降ろされた彼女は、白い布を掛けられ物言わぬ姿となった家族を見る。一家惨殺事件。家にいなかった奏子だけが助かった。捕まった犯人はおとなしく自供し、事件から8年後、死刑判決が下される。20歳になった奏子は、昔知り合った雑誌記者の伝手を辿り、家族みんなを殺した男の娘──未歩と対面した。立場は違えど、互いに重い意識を抱えて生きてきた者同士。奏子の内に芽生えるのは共感か、復讐か。

 小学生の少女が悲劇の匂いに怯えつつ過ごした4時間、それを綴った冒頭は滑らかな質感を有しており、圧迫されるような気分を覚えた。幼い身の丈の主人公が持ち前の鋭い観察力を働かせ、「わたし、みんなの迷惑にならないようにしますから」、「この顔をよく見ておかねば」など、健気に立ち向かっていく様が不憫。憐憫性でいえば一章の威力は並々ならぬものがあります。

 それをあっさり引っくり返す二章もさることながら、8年という月日が経過した三章も印象深かった。「血は一色じゃないんです」という件は特に鮮烈。このあたりがタイトルともっとも密接な関係を帯びるシーンですね。ただ、時系列を錯綜させた構成は正直言って読み難かった。一章から二章へ流れる際のインパクトを創出するためには、やむをえなかったのかもしれませんが。

 未歩との関係を描く四章が本書の要ではありますが、ここについては賛否両論の模様。主に「迫力不足」という点で。個人的には一章や二章の迫力を要求していたわけじゃありませんが、不満は拭えない。犯罪の要素を絡めたことで「過去」と「現在」が分かり易く対比されてしまい、それが却ってテーマをボヤけさせてしまった気がする。勝手な意見を書けば、もっと地味になってもいいから奏子と未歩の関係を深く掘り下げてほしかった。奏子の創り込みに対し、未歩は造型が中途半端で、ふたりの関係がいまいち弱く感じられる。そのせいか、読み終わってもしこりが残りました。

 著者の代表作(と個人的に思っている)『リミット』とは違って派手な展開がなく、目指す方向も異なっていますけど、読み応えがあるということで言えば充分匹敵しうるかと。エンターテインメント性も低くありません。シンプルな題名と装丁が逆に生々しく、力強い。


2004-01-27.

・そういえばバリツを主眼においたホームズ・パスティーシュがあったなぁ。確か『シャーロック・ホームズの決闘』ってやつ。読んだことないので内容は知りませんが。

・昨日のアビバは微妙に好評。でもやっぱりアナゴさんっていつかマスオさんを裏切りそうに見えちゃいますね、声聞いてると。

沙耶TOP絵(Half Pixels Carving)

 美麗。妖しい空間と怪しい手つきがたまらない。

『PARADISE LOST』のAS、「焼点」をアップロード。

 ハマったのでつくってみました。最初は単なるSSにするつもりでしたが、どうせなら……ということでAS(アナザーストーリー)にしてしまった罠。肩慣らしのギャグなんで簡単にできるかと思いましたが、結構てこずって疲れた。

 ASというのは要するにソフトがあればCGやBGMのデータを利用してユーザー側でも実際にプレーできる話をつくってしまえる、言わば公式的なDNMLです。……すみません、ちょっと喩えが古かったかもしれません。こういった方面はあまり詳しくありませんので。

 逆に言えば、ソフト本体がない人はプレーできないことになります。「scenario.txt」を開けば単なるSSとして読めないこともないけど、今回当方の書いた分は内容的にも本編を知らないと意味不明です。うちのサイトにどれくらいパラロスプレーヤーが来ているのか分からず、反響が望めないのは心細い限りですが、「まあいいや」と軽率なノリで行くとします。

 中身は完全にギャグです。「私立ソドム学園」よりもバカなASを書こう、というコンセプトで突っ走ったせいもあり、元ネタであるパラロスの雰囲気は壊滅的に失われています。あと、ネタバレも含んでいるため、まだ本編を終えていない人は読まない方が吉。

 しかし、lightのことは『White Angel』の頃から知っていし、ASのシステムも聞き及んでいたけれど、よもや自分で書くことになろうとは……。あと、次に何か書くかどうかは未定。時期的にもアレが迫っていますし。


2004-01-26.

・「サザエさん」を見ていてふと思い出したのですが、昔、「若本規夫声のアナゴさんはいつ本性を現して壮絶な殺陣を繰り広げるんだろう」と間違った思いを馳せてしまったことがある焼津です、こんばんは。

 馳せるだけに飽き足らず、こんなネタまで書いてたし。なんじゃこりゃ。

「PARADISE LOST用語集(暫定版)」

 暫定版とはいえ重要なポイントはしっかり押さえられており、プレー中には気づかなかった小ネタや知らなかった知識も容易に入手できる。ありがたい。

・円山夢久の『Little Birds Fly』読了。

 前作『リビスの翼』が面白かったので新作にも期待していましたが、気がつけば2年も待っていました……異世界ファンタジー方面を得意にしていた著者にしては珍しく、今回は現代モノです。少女マンガを彷彿とさせるイラストといい、かなり雰囲気が変わってますね。

 心霊現象が現実に起こりうるモノとして認められるに至った世界が舞台であり、かと言って霊を一方的に敵視して祓う退魔系ではなく、迷える死者の魂を鎮める、要は鎮魂系統のストーリー。ただ、鎮める方法が祈祷や呪文、呪具を使った儀式など、よくある形式とは違って「歌と踊り」になっているところが特徴です。未練を残して現世に留まる霊的な存在を、ダンス&ソングで感動させて成仏させるわけで、なんだかそのままミュージカルに転用できそうなシナリオとなっています。

 二十歳前後の少年少女が、死者を鎮めるバード(吟遊詩人)になるべくトレーニング・スクールで奮闘するあたりが焦点になっているせいか、本作は青春色がかなり強い。主人公が密かに想っている少女はどうやら他の奴が好きのようで胸を痛めたりとか、訓練生にして現役アイドルの美男子を巡って少女たちの間に緊張状態が築かれたりとか、実にアドゥレセンス。そのへんはイラストともマッチしています。

 短かったけれど丁寧な書きっぷりでしたし、それなりに満足。ただ、2年も待った甲斐があるかと言えば微妙かな。触れられていない部分も多いので、その気になればあと何冊でも使って掘り下げられるでしょうが、「歌と踊りで鎮魂する」という設定は面白くとも地味なので、これ以上やって盛り上がるかどうかは読めません。この作家に関しては、単発作品を中心に頑張って欲しいというのが当方の望みですし。


2004-01-25.

・今回は『アイ』を視聴。2歳のときに失明した女性が角膜の移植手術を受け、光を取り戻す。日を追うごとに少しずつ回復していく視力。だが、彼女の捉える景色には、本来見えるはずのないものが……といったサスペンス・ホラー。適度に緊張感のある導入は巧かったけれど、本編自体は定番の筋立て。序盤はセリフよりも絵に頼った静寂が続く。ただ、映像の演出や音響効果に工夫が凝らされているため、静かな作品の割にはかなり盛り上がりました。

 移植された角膜が原因なのか? それとも、ヒロインに根本的な原因があるのか? 揺さぶりを仕掛けてくる場面が少ないせいか、謎解きとしては目を瞠るものがなく、ちょっと地味に映る。怖さや恐ろしさを巧みに醸しつつ、悲しさや切なさも付随させるあたり大した手腕だと思うのですが、インパクトに欠くきらいは否めない。

 とはいえ、面白かったことは確か。退屈せず、時間いっぱい楽しむことができました。「怖さ」を犠牲にしないで「切なさ」を活かすのって、結構凄いことかも。以前どこかで書いた気がしますが、当方は「見てはいけない」と言われるモノを見てしまうホラーよりもずっと、「ああ、あれを見てしまったのかい……」と哀れむような声で言われるホラーに弱いです。あまり派手な要素を期待すると肩透かしになるだろうけど、この手の「怖くて切ない」ホラーが好物って方には是非推したい。

1月23日付に鋼造&ウィンフィールド絵(ジンガイマキョウ)

 たまンないねぇ……漢は。

『姉、ちゃんとしようよっ!2』情報公開

 ……あ。(「前作の姉しょを少しだけプレーして放置、そのままHDDの肥やしにしていた事実にようやく気がついた罠」発動)

 どうしよう。今更思い出してもモチベーションは回復しないし……。

 うーん、もう少し『2』の発売が差し迫ってくるまで保留にしときます。

・小川一水の『導きの星2』読了。

 人類が地球外の惑星に住む知性生命体の文明を影ながら保護し、導いていく──というのが主題になっているシリーズ、その2冊目。今回は宗教の起こりと科学の発展が焦点です。

 主人公・辻本司が「オセアノ(大洋)」と名づけた星にはスワリスとヒキュリジ、どちらもリスに似た外見を持つ知的種族が繁栄しているのですが、古来からの争いがいつまで経っても終わらず、今巻に入って一層戦いが激化していく。本の副題が「争いの地平」となるくらい。そこで司は争いの芽を摘み、健やかな科学の発展を導こうとするものの、話はそう簡単に進まない。もともと好戦的な性格の二種族はなかなか平和的な解決策を執ろうとせず、血で血を洗い、憎しみで憎しみを濯ぐような泥沼の戦争が続いてしまう。

 オセアノにおいては一応、神に近い位置付けにある(というか、古来からの伝承によって神格化されている)司が、あくまで平凡な青年として頭を悩ませ、手をこまねく様がもどかしくも面白い。司の仕事は文明のオブザーバーであり「不接触」が原則なので、そう易々と「俺が神様だ!」と権威を見せつけて好き勝手にスワリス/ヒキュリジの世界をいじるわけにもいかない。ごく自然な流れで彼らの文明が成長するよう、迂遠な手段で「保護」をしながら見守らねばならず、そこが本シリーズ最大の注目点と言えます。

 「渡りに舟」ではなく「枝渡りの蔓」と表現し、行動のまだるっこしい相手を「尻尾ひきずり」と呼ばうなど、スワリス/ヒキュリジ特有の感覚を取り入れた文章もさることながら、文明にまつわる多種多様な知識を埋め込んでいるあたりも読んでいて楽しい。人類にあらず、それでいて人類と同じような歴史を歩んでいくオセアノの知性体たち、その行く末は……といった感じで、続きも滅法期待中。


2004-01-24.

・本日は『シカゴ』を視聴。ミュージカル・シーン入りまくりのショー・ビジネス映画。結構ダーティな内容で意表を突かれました。もっと底抜けに明るくて爽やかなサクセス・ストーリーだとばかり思い込んでいたもので……全体の話はいまひとつでしたが、部分部分の要素が素晴らしい。「記者会見with操り人形」や「絞首台の消失マジック」あたりでは画面に釘付け。「有罪か? 無罪か?」の揺さぶりにも小技が利いていましたし、「魅せる」ことに関しては徹底している。バカバカしくて悪趣味で不謹慎で、後味も「パーフェクト!」とは言い難い。しかし明るいことは確かだから「まあ、ええやん?」みたいな。軽妙なノリと鮮烈なインパクトの勝利ですかね。

『らくえん。』体験版をプレー。

 思わせぶりな導入に心を奪われたのも束の間、双子ヒロインズのしゃべくり空間へ突入。声の違いはあれど、ふたりともよく喋ること喋ること。テンポも軽快で、ここを聞いてるだけでもあっさり楽しい気分になります。直前にパラロスやってたせいで杏の声は流菜よりもリルを連想させた。

 量で言えばそれほど長くもない。選択肢は出てこないし、導入を除いた本編では双子姉妹が喋り散らして他のキャラを紹介するだけなので、実際に登場するキャラは少ないです。計ってませんが、20分そこらで終わるくらいかと。

 が、そうした短い分量でありながらもキチンと注目すべきシーンが盛り込まれているのは心憎い。シチュ的に無理があるというか、さすがに強引だろってな流れを見せるのですが、「おバカ」をさらけ出したノリで軽やかに突っ切る。バカだバカだ、と笑いつつ堪能している当方も充分バカだと思います、はい。

 演出が凝ってるところや声優さん喋りまくりなところは『しすたぁエンジェル』と同様ですが、今回はふんだんにディフォルメCGを組み入れている点が個人的に嬉しい。ディフォルメ、好きなんですよ。正直に書けば、しすエンやこの『らくえん。』系統の絵柄は苦手気味なのだけれど、こうやってディフォルメ絵がときたま表示されることでイイ具合に苦手意識が中和されていくと言いますか……馴染む契機を得ることができて良い。

 発売は3月ですか……さりげなく延びてますね。とりあえず視野に入れておくとします。


2004-01-23.

・レンタルで『ボーン・アイデンティティー』を視聴。「主人公が記憶喪失」というバカ一なサスペンス・アクションですが、正体が○○という設定は面白かった。内容も、思ったよりは込み入ってなくて非常に単純明快だったし。怒濤の如きアクション・シーンに見惚れることができたので、それなりに満足。ヒロインの存在が取って付けた臭い点、結末がいまいちスッキリしない点が不満と言えば不満か。

ミニスカアルクェイド「DAIさん帝国」経由)

 ギリギリの裾と太腿が叩き出すパーカッション。赤瞳や白い息もいいアクセントになっており、なんだか久々に『月姫』がやりたくなった。

『機神咆哮デモンベイン』デモムービー

 マスターテリオンのギリギリっぷりが凄い。いいんだろうか、あんなにチャック下ろして。

 初聞きだった「SHADOW IN THE DARK」も良い感じでしたが、新規CGや3DアニメもキレイでGood。グリグリ動く感じがたまらない。こっそりバラしてしまえば『機神咆哮〜』の方はちょっと購入に迷っていたのですが、見ているうちにだんだん「買い」路線へ心が傾いてきた罠。

『Fate/stay night』フルアニメデモムービー

 動きは少ないけどキレイ。もっと更に曲と同期した激しい内容だったら最高だったのですが、さすがにそれは高望みしすぎ? それにしても「イリヤ in ブリザード」の絵はイイなぁ。これだと本当に「イリヤの冬(ry

 ともあれ、あと一週間。やり込む時間の準備はどうにか済ませましたが、不測の事態がないことを祈るばかり。


2004-01-22.

・ジューダス・ストライフLUV。こんばんは、焼津です。しかし完全一致検索するとヒット数ゼロにつき鬱。

 ちなみに『PARADISE LOST』のキャラです。サンプルCGにちょこっと出てくる金髪のにーちゃん。OHPでの扱いは軽いのに、本編ではなんかメチャクチャ優遇されていてヒロインたちよりも存在感あります。美味しいところ取り過ぎ。

19万ヒット絵(ジンガイマキョウ)

 ミキミキ+ちびアル。「クロチャ」フォルダと「デモベ」フォルダのどちらに保存すべきか迷う絵だ……ともあれ、19万ヒットおめでとうございます。この調子でいざ征き征きて20万ヒットの座へ駆け上ってください。

 えーと、うちのサイトがいつの間にか5万ヒット超えていた件については静かにスルー。すっかりカウンターの存在を忘れていた。

『PARADISE LOST』、コンプリート。

 累計してざっと20時間強。大作とはいきませんが、中規模の分量ですね。簡潔に書けば面白かったです、はい。新年早々にアタリを引くことができて幸福。詳しい感想はこちらを参照していただきたく。

 アナザーストーリーの「私立ソドム学園」もプレーしました。お察しの通りギャグギャグしい番外編です。本編のネタバレを含んでいるため、コンプ後に手をつけた方が無難。日常シーンが少なかったのでそれほど意識しなかったですけど、これを読む限り正田崇(パラロスのシナリオライター)はコメディもイケるみたい。しょーもない話ではあるが、キャラの遣り取りがテンポ良くて楽しかった。


2004-01-21.

・眠いと頭痛がしてくる焼津です、こんばんは。布団のぬくもりをください。

『PARADISE LOST』、プレー中。

 やっぱり長い、このゲーム。長さが苦痛にならないのは幸いですが、予想以上に粘られてまだコンプできていません。それにしてもヒロインたちの活躍が熱い話だこと。一つのパターンを見たら他のパターンも見たくなってしまい、なかなかやめられない。時間さえあれば一気にやり抜いてしまうところですが……。

 とか言ってる間にOHPでアナザーストーリーが公開されてますね。「私立ソドム学園」──うわあ、なんかワクワクするなぁ。いかにも番外編って感じで。本編は日常イベントが少ないですから、こうした補完要素は望むところ。さて、とにかくまずはコンプしないと。

1月20日付にアルトルージュ絵(上座蔵)

 そういえば当方も「アルトルージュ=ゴスロリ」の固定観念が形成されている罠。ともあれ、公式的にはデザインされていないアルトルージュの絵を密かに収集している当方にとって久々のfish on。ゴスロリさえあれば不足する睡眠時間さえどうにかなりそうに思えます。思えるだけであり、はっきり言ってどうしようもないんですが。


2004-01-20.

・久しぶりに目にした「世界まる見えテレビ特捜部」が「最速の乗り物」「少林拳」「未来銃」と興味深いものばかりで見入っていた焼津です、こんばんは。

 言ってはいけないことかもしれませんが、カメラがスタジオに戻るところは毎度の如く退屈。

『PARADISE LOST』、プレー中。

 コンプリートも間近に迫りました。ネタバレになりますが、最終話は2パターンありますがひとつはライル視点、もうひとつはノウ視点となっています。つまり、分岐しても実質的にストーリーそのものは一本道ということなので、「なぁんだ」と落胆する気持ちがあったのですが、いざプレーしてみると……異なる視点から成る両シナリオを補完的に紡ぐといった単純な手法が効を奏し、存外に面白かったです

 ネタバレなしでなるべく迂遠に書けば、このパラロス、すべてのキャラがいろんな意味で戦っているシナリオです。それぞれがそれぞれなりに事態へ立ち向かっていく姿勢が熱く、引き込まれる。最初は難として感じていたテキストが終わりに向かうにつれてこなれていったせいもあり、読むのが苦痛ではなくなって、僅かに引っ掛かる文体の癖にしても「味」ってことで許せるようになった。テキスト単位では「巧い」とは言い切れませんが、話が進めば進むほどテキストの巧拙は気にならなくなっていく。「弱さこそ悪徳」というアクの強いノリが物語の基底になっている面もあるため、誰にでも薦められるモノではないけれど、当方自身はハマり込みました。主要キャラのほとんどが良かれ悪しかれ確固たる印象を残します。前後が繋がってないように思える矛盾まで、不思議と好意的に受け止めることができた。

 アンバランスと精緻が同居した作風はまだまだ成長途中といった危うい感触を与えますけれど、参ったことに部分部分で当方の関心に刻み付けられる要素があって目が離せません。どうも偏愛が湧いてきたみたいです。あばたもえくぼ状態と言いますか……欠点も感じられるんですが、「まあ、ええやん」と軽く流してしまいたい気分。

 具体的な総評はコンプしてから考えるとします。現在はまだ感想がうまくまとまっていない。


2004-01-19.

『PARADISE LOST』、プレー中。

 現在最終話。そろそろ一周しそうです。ストーリー重視のゲームとはいえ、結構長かった。主要キャラにのみ声が付く方式のパートボイスなんで、セリフ量だけで嵩んでいるというわけではなく、単純にイベントが多くて長引きます。しかし、要所を押さえてダラダラとしないよう展開するから退屈せずに読み進めることができた。

 やはり終盤近くになってくると派手なシーンも加速度的に増えてきます。いやぁ、実に楽しい。呪文の詠唱もテキストだけだと味気ないですが、声が付くとたとえ意味が分からなくとも盛り上がるものですね。ただ、OPムービーでは少しばかりとはいえ絵が動いていたので、本編もちょっとはアニメーションするかと思っていたら……そうでもなかったゆえ残念至極。演出がなおざりになっている点は寂しい限りです。

 ともあれ、プレーすればするほど当方内部での熱が高まっていきます。ぶっちゃけインフレが激しい話だから人によって好みは分かれるでしょうけど、インフレが起きるまでの過程がキチンと組み込まれており、少なくとも雑ではない。進行のテンポは良く、描写面で安定を欠くきらいはあれど、ストーリーテリングに関しては優れている。「話を盛り上げる」のが巧いと思います、このシナリオライター。

 スタッフロールまであとひと息。己を焦らしつつ心待ちにしています。


2004-01-18.

・よりによって急用が入り、パラロスをやり込む時間がグリッと減ってしまいました。しょんぼり。

・ともあれ『PARADISE LOST』、プレー中。

 第2話が終わり、幕間を経て現在は第3話。ストーリーを楽しむにはちょうどいいくらいの歩調です。テキストに多少の荒さは見られるものの、話運び自体は悪くない。序盤で張られまくった伏線も着実に消化されてきていますし、このペースのまま終盤まで向かっていけば「良作」のゾーンに収まりそうです。

 ただし、演出面では特に目新しいこともやっていないし、地味と言えば地味かな。ストーリーがぐいぐいと興味を引っ張ってくれるので、当方自身はあまり気にならなかったのですが。ところどころで悪趣味な展開をするあたりなんか、たまりませんね。とにかく無闇矢鱈に人が死ぬ。関係ない人間も巻き添えを食って死ぬ。CGそのものはグロ色を抑えていますけど、テキストでは血と臓物のオンパレード。エログロヴァイオレンスというほどキツくはないのですが、かと言って到底ヌルくもない。適度に暗い熱が保たれていて楽しいです、はい。

 それから、最初はあまりどうとも思っていなかった女医に、だんだん愛着が深まっている。脇役かと思っていましたが、案外扱いは丁寧で、先月の『沙耶の唄』で萌芽した「女医(*´Д`)ハァハァ」の属性が再燃。冷たいようで熱く、熱いようでヌルい女医さんに気づけば最萌え。天使系のヒロインにしてはやけに口が悪いリルも可愛いのですが、ちょっとずつ出番が少なくなっていっているので印象は薄れる一方。

 男キャラに関してはジューダス一択ですが。ルネサンス山田の演技が実にイイ味を出している。ふつう、キザっぽいキャラが高笑いを上げるとどうにもわざとらしさが鼻を付くものですが、彼がやると自然に聞こえるものだから不思議です。歌うように「レスト・イン・ピース」と口ずさむ件では不覚にも胸キュン。

 近未来の荒廃都市ヴァイオレンス譚を黙示録風に調理した物語は必ずしも直線的に進行せず、多視点であれこれと語られて、伏線や謎が積もっていきます。いくつかは既に消化されましたが、最後までにすべてを使い切れるかどうかは不明ですね。期待はしていますけど。

 それにしても、某キャラの棒読み口調は実に微妙。だんだん慣れてきましたが、聞く度になんだか気が抜けてしまいます。


2004-01-17.

・ファインディング二毛作。「ただ思いついただけ」という浅薄さが透けて見える書き出しでこんばんは、焼津です。

・今日は『朝霧の巫女(4)』と、さりげに期待していた『PARADISE LOST』を購入。lightの新作です。ブランドの信頼性はあまり高くないのですが、「燃え」のテイストを前面に押し出してバイオレンスの匂いが薫りまくっている部分に惹かれ、注目していました。体験版をプレーした感じではそこそこイケてましたし、フツーに面白いだろうと、さほど不安もなく買いましたが……。

 ぶっちゃけ蝶サイコー。詩的私的素適という奴です。

 現在第2話の途中。体験版の範囲が第1話だと思っていましたが、あれはまだ話の途中で、それから更に1時間も続くんですからビックリ。第2話に入ると予想通り主人公が変わるんですが、そっちのストーリーが1話目以上に当方の好みに直撃するような代物で二重にビックリ。

 第1話も、「そこそこ」という程度には面白かった。魔界都市的な設定群も斬新ではないにしろ外していなかったし、戦闘描写も熱く盛り上がっていた。しかし、根本的な問題として主人公が強すぎた。バリバリに最強です。「自分の中にもうひとり別の人格がいる」という風に一つしかない身体の主導権を二つの人格が奪い合っているっつー難儀な事情を抱えてはいるのですが、それでも「向かうところ敵なし」と言わんばかりの戦闘力で危機感がない。読んでいてハラハラしないんです。そういう意味で言えば1話目の流れは少し退屈だった。それともう一つ、主要キャラにゲス野郎が出てこないこと。主人公にしろ敵キャラのジューダスにしろ、他人を巻き添えに殺しても平然としているアレな連中ですが、ツラは美形なうえ性格も分かり易く、あんまり極悪さや凶悪さがない。当方、この手のハード・バイオレンス話には見た目が醜かったり魁偉だったりするゲス野郎が出てこないと不満になります。「ギャハーッ」とか、いかにも下品な笑い声を立てる奴がいないとムードが出ない。ゲスな雑魚キャラはいても、立ち絵はないしあっさり殺られるしで歯応えがなくてイマイチでした。

 そこのところ来るとこの2話目は実にイイ。ピラミッドの頂上から最下層に移行し、一気に主人公が弱くなってしまう。非力で状況は最悪で「本当に明日はあるのか」と心配になるほど生命力が低そう。そんな彼がズタボロになりながら懸命に頑張る姿がいじらしく、次第に次第に引き込まれていった。ゲス野郎も出てきます。まだ途中だから最終的にどれくらいゲスっぷりを晒すのか不明ですが、ともあれ今後の活躍には期待できそうだ。主人公を取り巻くシチュエーションも凝っており、話が進むにつれてハラハラ感やワクワク感も増大。先が気になる。

 そんなこんなで予想以上にパラロスが楽しくて嬉々としています。いやぁ、期待はしていたけれど、ここまで当方好みとは。正直言ってパッケージは絵柄がショボく、なんとも不安なキナ臭さを発していて、店頭で目にしたとき「ど、どんなもんだろう?」と躊躇する心が湧いた。でも、怯えが鳴らす警報を無視して正解でした。コンプしないと傑作かどうかは断言できませんが、当方はこの時点でこれだけ楽しませてくれた分でも満足。よほど前半の盛り上がりがぶち壊しになるようなラストでなければ、最低でも「凡作」以上の評価はしたいところ。

 プレーしているといろんな作品名や作家名が頭をよぎっていきますが、なんであれ、現時点で当方がかなり面白がっていることは確か。土日はこのパラロスで潰す所存。

犬江さんのページ経由でじゃんまげ発売記念ネタを読んでみた。

 先生、心が激痛を訴えているので早退させてください。

 当方自身『腐り姫』のSSを練っていた時期があるだけにダメージ倍増。

 「何年前から考えていた、というのはオタクの方がよく使う常套句ですね。負け犬っぽいですけど、その前向きな考えは、いつか人を幸せにすると思います」という件を読んでふと高校生の頃に「童女みたいな容姿の父親と息子である主人公がラブコメする」っつー話を書いていたことを思い出しました。

 第一部はフツーにラブコメってました(外では容姿に似合わぬ厳しい性格で恐れられている父親が、家では高校生の息子を過剰に甘やかし、時には厳しく叱って諭すものの、またすぐに甘やかすという……一種のツンデレ?)が、第二部で父親の青春編に入って「実はアイヌの末裔」とか「高校卒業後は蛇頭の一員に」とか凄い割にあまり意味のない設定を付け足し、密入国者を運ぶ途中に嵐で転覆した船から投げ出された父親は孤島に流れ着いて、そこに建っていた異形の洋館に住む忌まわしい一族の連続密室殺人事件を解き明かし、犯人だった車椅子の盲目少女を敢えて見逃し三年後に再会して結婚、そして主人公が生まれた……とメチャクチャな展開をした挙句、第三部で時間が現代に戻り、主人公の母親(車椅子の盲目少女)を無惨な遣り口で殺した秘密結社と全面戦争に突入。満身創痍になりながら二刀流で結社のボスを膾にした父親が血溜まりの中に倒れ、泣きながら血腥い父親を抱き締めた主人公は「俺たちはもう、母さんと違って天国には行けないだろうね。けど、父さん。それでも俺は……あなたを愛する。地獄の底まで追いかけて愛し抜くよ」と今思い出しても顔が噴火しそうな愛の告白をし、果てには血の味がするキスを交わす始末。つーか、そもそもオカンも殺人犯だから地獄行き決定やん。もう設定を忘れていたのだろうか? 第五部はアルツハイマー編。「第五部」と謳ったものの量的にはエピローグ。ボケた父親を甲斐甲斐しく主人公が世話をし、臨終の間際まで愛を囁き続けるという、当時の自分を「正気か?」と問い詰めたくなる幕切れでした。

 だいたい全部で400枚弱だったと思います。夏休みをフルに活用して仕上げた記憶が残っており、内容はどうあれ、それだけの情熱があった当時を羨ましく省みてしまいます。そんなわけで、存在は知っているものの読んだことはない「葵DESTRUCTION!」が早くコミックスにならないかなぁ、と待ち望んでいたり。

 なんだか「自分が昔描いた原稿を見返して悶え苦しむスレッド」みたいなカミングアウトになってしまいましたが、羞恥とノスタルジィのおかげでなんとか心の激痛は治まりました。

・追加更新。「まいじゃー推進委員会!」のTOP絵がデモベネタです。


2004-01-16.

・「今日のアビバ」と「遠野秋葉」が似ていると、一瞬でも思ってしまった当方はルーザー確定。

 それはともかく、こちらの秋葉がステキ。

・マリみて第2話は抜かりなく録画。前回は見逃したので、当方としては今回がアニメ版初体験。やはり上級生を「ロサ・キネンシス」とか「ロサ・ギガンティア」とか素で呼んでいるのを直接耳にすると不思議な感触がありますね……なんか、女子校というより秘密結社の薫りといいますか。どう聞いても尋常の響きではない。

 内容の方に関しては、祥子さまの凛々しい立ち姿に(*´Д`)ハァハァ。声も概ねイメージ通り。映像が付くと祥子さまの弄り癖や祐巳の百面相が際立って面白いですな。キャラたちの身長差を絶えず意識させられるというのも新鮮。アニメとしては動きが少ないきらいもありますが、退屈するほどでもなく。適度に力を抜いて見れるテンポ。この分なら続きも楽しみです。

直木賞・芥川賞決定

 特に波乱もなく順当に決まったみたいです。

・『SFマガジン 2004年2月号』を読みました。飛浩隆と冲方丁の新作が載っているとあっては普段エスマガを購読していない当方とて無視できません。

 飛浩隆の新作「ラギッド・ガール」は「数値海岸」モノ。一昨年の『グラン・ヴァカンス』と同じシリーズですが時は遡り「数値海岸」が完成する前のところから始まります。開発秘話という奴ですね。原稿用紙にして100枚となかなか分量。今までの作品は「数値海岸」そのものの説明を幾分かボカしていただけあって、こうして開発の経緯が分かっただけでも面白い。分量が多いだけでなく濃度も強いです。内容・レイアウトともに凝っていて楽しめました。やはり飛浩隆はイイ。それにしても“廃園の天使”第2部の『空の園丁』はいつになるのやら。

 冲方丁の「マルドゥック・スクランブル“−200”」は去年の7月号に掲載された「マルドゥック・スクランブル“104”」と同じくシリーズの番外編。本編は読んでいないので詳しくは知りませんが、ウフコックとボイルドが組んで活動しており、本編よりも過去の話に当たる模様。冷静沈着で一切表情を変えずに皮肉を飛ばす病弱少女がヒロインにつき、萌え。ツンデレというにはデレ要素が弱いものの、相変らず丹念な筆運びであっさり引き込まれました。セリフ回しも凝っている。実に好みの文章です。早いところ本編の方も崩してしまわねば。

戯言絵(「イズミヤ」)

 主要キャラが一斉に登場。素晴らしい。


2004-01-15.

・どうやら風邪をひいた模様。発熱はしてませんが唾を飲み込むたび喉が痛くなります。悪化しないうちになんとか治してしまいたいものです。

 で、薬を飲む際に「弾(カプセル)をこめろ、魔法使い(ウィザード)!」とDクラごっこを演じて満遍なく大人気なさを晒してみました。実は一度やってみたかったんです。はい。

・永瀬隼介の『ポリスマン』読了。

 タイトルから刑事小説を予想していましたが、あにはからんや、プロレスをメインにした格闘技小説です。『マッチメイク』と同じく「番人」が物語の焦点となる。

 一見するとただの地味な中堅レスラー・深見甚次郎──しかし彼は「亜細亜プロレス」のポリスマンだった。道場破りの応対など、たとえ雑事であっても団体の威信に懸けて負けるわけにはいかないファイトをこなす、言わば番人。華はなく、あくまで純粋な強さだけを求められる役割だったが、深見は嫌がる素振りもなく日々黙々とハードなトレーニングに勤しむ。そんな彼に憧れ、「自分も強くなりたい」と願う浮谷。一方、深見は雑誌記者から「セルゲイ・クルチェンコが日本に来ている」と聞かされ驚愕する。セルゲイ・クルチェンコ──かつて地上最強と謳われた男。13年前、モスクワで遭遇した悪夢が再開しようとしていた……。

 暗くて煤けた雰囲気を描き出すことにかけては確かな腕を持っている著者だけあって、今回も相変らず暗い。しごきが挨拶代わりのプロレス道場と、設定からして陰湿な舞台を読んでいて気が滅入るような文章で綴っていく。しかし、気が滅入りつつも興味はぐいぐいと引かれっ放し。闘争の予感が高まるにつれ、ページを繰る手はいよいよ止まらなくなっていく。

 プロレスの試合はもちろんのこと、ロシアンマフィア同士のステゴロなんかも盛り込まれており、とにかく格闘シーンが多い。怪我人や死人もごろごろ転がる。陰惨といえば陰惨だが、シンプルに暴力を表現する展開の数々は魅力的。セルゲイ・クルチェンコが絶対の悪役として君臨する一方、深見や浮谷といったレスラーや格闘技家たちが鎬を削り合う並行性は『グラップラー刃牙』と『バキ』を混ぜ合わせたような面白さがあります。

 とはいえ、ソ連云々といったセルゲイのパートが大きな割合を占めている分、浮谷というキャラの比重が低くなってしまったきらいがあり、そこは少し残念。浮谷、最初は主人公だと思っていたんですが、話が進むにつれ単なる解説役・驚き役になってしまいますし……短期間でメキメキ強くなっていく、というのも取って付けたような安易さを感じる。

 単純明快なストーリーと豊富な格闘シーン。熱く燃える良質なエンターテインメントかと思われます。「単純」とはいえ手抜きではなく、工夫を凝らしつつも「明快」にしようといった努力がはっきりと分かる。ただ一部のキャラが活躍し切れていない点は惜しく、もっと分量が欲しかった。それとタイトルについても、もっとしっかりプロレス色を出した方が良かった気もします。タイトルを見て勘違いしたのは当方ばかりではないはず。もしかして刑事小説と錯覚させるのが狙いだったのかな。

 それはそれとして260ページ。

 こんもりとした樹木の葉っぱの間から射し込む木漏れ日がいやに眩しかった。手屁をし、顔を顰めた。

 手屁って。文脈からしてたぶん「手庇」の誤植なんでしょうが……。


2004-01-14.

・昨夜の「海老食いたい」衝動が目を覚ましてからも続いたので昼食は海老チリ。しかし尾っぽまで噛んでたら連れに変人を見る目で観察されてしまった。いや、ふつう海老の尾は食べますよね? バリボリと。

ファウストvol.2の内容「Mystery Laboratory」経由)

 乙一と滝本竜彦が加わるのは興味深いですが、舞城は新作じゃなくて翻訳ですか。舞城節バリバリの超訳だったりしたらどうしよう。そこはかとなく楽しみになってしまいます。

期間限定壁紙(digital bs tuners)

 18日までとのこと。慌てず騒がず静かに大急ぎでゲット推奨。

lightの新作『PARADISE LOST』、予告ムービー公開

 デモムービーに続きオープニングムービー、更に予告ムービー……ムービー多すぎですな。それだけ力を入れているってことかもしれませんが。

 あまり関係ないけど、ここの『Magistr Temple』の4コママンガがイイ。ネタそのものは本編やってないせいでよく分からんのもありますが、このディフォルメ加減がなんとも愛らしくてステキ。


2004-01-13.

・最近牛肉を口にしていないことに気づいた焼津です、こんばんは。しかしそんなことはどうでもよく、今は無性に魚介類が食べたくて仕方ありません。確認してみたところ冷蔵庫のストックに「カテゴリ:魚介類」はゼロ。妥協案として、ツナ缶と炒めた葱で猛る食欲を満たそうとしましたが、果たせず。訳が分からないくらい海老が食べたい深夜です。

セイバー絵「Crazy Clover Club」)

 ページ中ほどの「雑記」にて15禁イラスト。甲冑の冷たさを想像するとより生々しくなって(*´Д`)ハァハァ

・伊坂幸太郎の『オーデュボンの祈り』読了。

 第5回新潮ミステリー倶楽部賞受賞作。著者のデビュー作です。

 不意に見知らぬ部屋で意識を取り戻した主人公。戸惑っているところに知らない男が入ってきて、「ここは荻島だ」と告げた。男によれば、今自分たちがいるのは150年前からずっと本土との行き来が途絶えた、「忘れ去られた島」なのだという。俄かには信じがたい主人公。だが、それ以上に目を疑うような代物を見せられる。人語を解する案山子──スピーカーか何かが仕掛けられているわけでもないのに、そいつは平然と言葉を発して人間と会話していた。案山子は「優午」という名前で呼ばれており、なんと未来を予知することができると宣言。あまりにも度外れた話だったが、優午と言葉を交わすうち、次第に信じる気持ちが湧いてきた。しかしそれも束の間、翌日、優午はバラバラになって発見された。殺案山子事件。齢150年近くの案山子をいったい誰が破壊したのか? そして当の被害者は、予言者でもあったのに、なぜ自分の死を予見しなかったのか? なおも事件は続く……。

 未だに鎖国が続いていながら不思議と閉鎖的な雰囲気の薄い孤島、人語を解して未来を予言する案山子──その他、ひと癖もふた癖もある住人たちが入り乱れる。設定の段階からして変テコですが、読み終わってから抱く感想も、一言で書けば「変な小説だなぁ」といった種類のモノに落ち着く。何が何でもとりあえず「変」、とにかく「変」、ひたすら「変」と言いたくなるような、そんな一冊です。

 150年という時間的スケールを脇におくとして、「孤島や山奥の閉鎖的社会」を舞台にしたミステリはそれほど珍しくもなく、ポツポツと世に出てはいます。少し古めだと栗本薫の『鬼面の研究』、割と最近のであれば麻耶雄嵩の『鴉』など。しかし、いくらなんでも「予言者の案山子」を出すなんてのはブッ飛んでいる。京極や西澤、清涼院といった新本格の面々があれこれ革新的な真似をやっているとはいえ、あまりにもバカバカしく、それでいて非常に魅力的な設定で、当方のみならず多くの人々が「バカミス」のテイストを大いに期待したはずです。

 だからといって本書がバカミスかと申せば、実のところそうでもない。確かにいろいろズレている部分はありますが、そもそもそれほどミステリのルールを忠実に履行しようとしていないんです。伏線が張られて、意外な情報が繋がり合うといったミステリ的趣向はあれども、論理的に「謎解き」を行うことを至上目的としているわけではない。読む人の感覚にもよるでしょうけれど、本書において知覚されるミステリ性は高低を別にして、物語を構成する要素の一つに過ぎない。「名探偵」の存在をメタ的に把握している箇所みたいに。大まかな流れで言えば、むしろファンタジーですね。秘境っぽくない秘境で奇妙な冒険を経験するといった感じの。

 詰まるところ、バカの一つ覚えになってしまいますが、なんであれ「変な小説」です、はい。文章力は少しもたつきを感じてしまいますが、物語を紡ぐセンスはあると思います。この作品の時点では「新しい才能が登場した!」と絶賛したくなるほど確かな輝きは見えません。が、「これなら芽は出るかもしれない」と期待させるモノはあちらこちらでうっすらと光を放っています。

 ちなみに当方は桜たん萌え。恐ろしいぐらいに予定調和的です。出てきた時点で「ああ、このキャラには後々惚れてしまいそうだな」と感じましたが、やはりというか、抗えませんでした。


2004-01-12.

・ところでゴッドファーザーを「ゴッファー」と略すのって当方だけですか? なんか今日えらく笑われたのですけれど……。

lightの新作『PARADISE LOST』、体験版を公開

 デモやOPムービーを見て少し気になっていた一本です。近未来荒廃都市アクションといった趣で、惹かれる要素と退きたくなる要素が相半ば。発売まで一週間を切っておりますし、早めに決断しようと手を伸ばしてみました。

 一つの身体に二つの精神を宿した男──デスサイズ。普段表に出ている「ライル」は比較的まともな性格をしていたが、時たま夜に顔を出す「ナハト」は誰にも手が追えぬほどの殺戮狂だった。巨大な戦争がもたらした惨禍によって荒廃し、「外」から見捨てられた街で、ひたすらに闘争を愛し、狂い続ける……。

 主人公が二重人格で人格間の鬩ぎ合いがあったりとか、クリスタルに閉じ込められていた少女は背中に翼があって空を飛べたりとか、彼らの行く手に悪の組織が立ち塞がったりとか、ごくごくストレートに「お約束」を守ったストーリー。舞台の設定は菊地秀行の『魔界都市 <新宿> 』みたいな系統で、実のところ当方があまり興味を持ってない分野です。でも野郎絵がカコイイので注目を外せなかった。

 体験版は序盤だけプレー可能。主人公以外の主要キャラには声が付いていますが、脇役はボイスレス。当方のプレー速度で2時間弱かかりました。具体的な話の方向は見えてきませんが、戦闘シーンは入ってますし、だいたいの「感じ」を掴むことはできます。

 テキストは危惧していた通り、勿体ぶった言い回しが多かったですけれど、案外読み難くはなかった。日常シーンの遣り取りはサクサクと割合軽めのノリで悪くない。ヒロインの性格が微妙に「お約束」からズレているところも味の一つ。「プチ修羅場」といった趣のシーンもあって当方は満足です。

 肝心の戦闘描写については、思ったよりもCGが表示されなくて残念。ザコキャラは立ち絵もイベント絵も出ません。テキストはそこそこ熱いのですが、もうちょっとザコあたりの扱いも考えて欲しかった。一方で、ジューダスとのバトルは割と燃えた。既存の戦闘特化系ブランド(あそことかあそことかあそことか)と比べれば少し徹底が足りないきらいはあるものの、一応燃えゲーとしての要件は満たしているし、この分なら普通に期待できそう。

・にしてもパラロス、OPムービーを見た感じだと主人公がもうひとり用意されているような気がするんですが……明らかにライル/ナハトとは接点なさそうなヒロインも出てますし。

 まあ、ともあれ、当方はジューダス・ストライフに(*´Д`)ハァハァ


2004-01-11.

・「やめなはれカンダハル」という寝言の意味が知りたいような、知りたくないような、どっちつかずの焼津です。こんばんは。

・森見登美彦の『太陽の塔』読了。

 崩壊しかけた四畳半の真ん中にでんと腰を据えて、私はこの手記を書く。内容は私の日常である。「おまえの日常なんぞに興味はない」と言う方は読まない方が賢明であろう。(中略)しかし、敢えてこの手記を読む人は、貴重な経験をするだろう。もちろん愉快な経験とは言えまい。良薬とは常に苦いのだ。
 ただし、苦いからと言って良薬であるという保証はどこにもない。
 毒薬もまた苦いのだ。

 滝本竜彦や佐藤友哉の、いわゆる「ダメ人間小説」を彷彿とさせる一冊。第15回日本ファンタジーノベル大賞において「大賞」を受賞した作品ですが、いったいどこらへんがファンタジーなのやら理解に苦しむ内容となっています。溢れんばかりの野郎スメルと、裏づけのない無根拠な自信と、ポジティヴなのかネガティヴなのか判然としない鬱屈した思考。分量自体短いこともあり、ストーリーはこれといって大したこともなく、しょーもないと言えば実にしょーもない話だ。

 「我々の日常の九○パーセントは、頭の中で起こっている」──主人公の友人が嘯いたセリフの通り、彼らは常日頃から妄想に弄び、特に目的もなく群れてはだらだらと過ごしている。「女性を必要としない、あるいは女性に必要とされない男たち」は禁欲を装って緊張がなく居心地の良い生活に溺れ、ふと素になって省みて後悔するも見なかったことにしてまたダメ人間ライフに逆戻り。時系列が錯綜し、時間軸は一直線でなく、説明は前後する。が、主な舞台となる時期は12月下旬、即ちクリスマスシーズン。「クリスマスファシズム」と呼び、世のカップルどもに怨嗟の視線を飛ばす彼らの姿が不思議と愛らしい。「みんなが不幸になれば、僕は相対的に幸せになる」 思わず乾いた笑いが漏れた。

 比喩表現が面白く、それでいてサラッと読み易い文章にはセンスを感じます。冷静を保ちながら狂った文句を吐く姿勢は、終始真顔で冗談をかますような面白さがある。影山徹の美麗な装画が与える「愛と勇気と感動のファンタジー」という印象をあっさり裏切りながら、空気の抜けた心安い楽しさを味わせてくれた。なんか好きです、この本。「邪眼」の植村嬢が妙に存在感を発していますね。


2004-01-10.

・アクセス解析を変えてみました。なんか、前の奴が繋がらなかったので。そしたらなかなか使い勝手が良かったので、結局こっちに乗り換え。

・今更ですが、たまたま発見したので購入してしまいました。「ハバネロ」。辛いものが割合苦手な、けれどもそれでいて不思議と好きな当方、胸を高鳴らせながら恐る恐る食べてみましたが……一言で書けば「暴君味」。旨味のある辛さですが、やはり舌が弱いせいか悶絶。水をガブ飲みしても収まらず、牛乳を1/3リットルほど空けてようやく落ち着きました。苦手なのに美味しいとは因果なものです。

『武装錬金(1)』購入。ついでに『ラブロマ(1)』も。

 『武装錬金』、まひろが妹キャラっぽくないところは逆にイイ。本編に関してはバトルあり、青春ありとまずまずの内容。肩が触れ合ったくらいで赤面する、そんな奥ゆかしさにニヤニヤと笑いが漏れます。まだ始まったばかりですからなんとも言えない部分が多いですけど、とりあえず、続きに期待。

 『ラブロマ』、評判は聞いていたけれど今まで機会がなく、未着手でした。こっちもこっちで青春路線を一直線に突っ走ってます。主人公がバカ正直というか、「バカで正直」。ヒロインもヒロインで変に真っ直ぐな性格をしていて微笑ましい。なんというか……平和だなぁ。何の問題ごともなく、ほのぼのとストーリーが進行していくのだけど、キャラがみんな可愛くて引き込まれます。この雰囲気、好きです。物凄くシンプルで、しつこいところもなく、実に清々しい作品。

おねきゅーこと『お姉ちゃんの3乗』ドラマCD化

 当方、声優ネタには疎いんですが、それでも「・鎌倉タケル : 堀江由衣」がいかに狂ったキャスティングかは理解できます。「かつてないシモネタ暴走機関」と恐れられたタケルに堀江由衣……ついさっき掘削工を演じていたブルース・ウィリスにインテリ弁護士の役をやらせるようなものじゃないですか。

 楽しみです、はい。


2004-01-09.

・そういえば、マリみてのアニメ見逃しました。まあいいや、と嘯いてはみるけれど少し悔しい。

ライアーソフトの新作『Forest』

 なんだか『腐り姫』ばりのサスペンス・ストーリーって感じでワクワクしますね。あっちは田舎が舞台でこっちは都市が舞台。孤軍奮闘譚に対して結束共闘譚。嘘屋ファンは内容そのものよりもバグの多寡を心配している模様です。「有無」ではなく「多寡」を心配されるあたりがライアー的。

 発売予定日は2月13日。来月ですか。他に注目しているソフトのない月ですから、ほぼ確実に突っ込む運びとなりそう。

第130回芥川賞・直木賞、候補作発表

 芥川賞の方はほとんど読んでいないのでよく分かりませんが、直木賞の方はなんというか……ぶっちゃけ、決め手に欠くラインナップですね。作家としては江国香織、京極夏彦、馳星周あたりがそろそろ取ってもいい気はしますが、作品的にはどれもレベルに差が感じられず、接戦しているかと。

 でも朱川湊人の『都市伝説セピア』が入っているとは意外な気がします。「せつなさ」を基調にした端整なホラー短編集とはいえ、何せデビュー作ですから。んー、でも何が来るか読めない。

・小川一水の『導きの星1』読了。

 第1部を読んで「人外ロリ(*´Д`)ハァハァ」という気分になった当方はもう手遅れです。人間の形をしていなくても余裕で萌えてしまいました。いや、チチュワたん可愛いですよ? ホントに。

 「文明の発展」がテーマとなっており、宇宙に進出した地球人類が他星に棲む知的生命体の社会がうまく育っていくよう影ながら支援する未来が舞台となっています。民たちに技術を与え、知識を授ける主人公はまさしく「神」の位置付けとなっていますが、露骨に信仰される対象となるわけではなく、あくまで「神話」よりも「惑星史」の方がメイン。火を獲得し、製鉄を始め、大航海へと繰り出す流れは人類の歴史と同じですが、様々な文化・技術についてのネタがふんだんに盛り込まれていて飽きが来ない。

 また、古来からの血の流れを追っていき、第1部に出てきたキャラの子孫が2部3部に登場するサーガ的な面白みもあります。箱庭づくりの楽しさが味わえる一方で物語としても盛り上がるといった寸法。オトクです。

 設定自体が面白かったですけど、著者にもそれを余す所なく活かすだけの力があった。『第六大陸』『強救戦艦メデューシン』と、一作ごとに趣向が変わるものの、面白さの度合いは常に変わらない。そろそろ惚れてきましたよ、小川一水。


2004-01-08.

・ニトロプラスの次回作はヘッジファンド魔法少女

 という夢を見ました。

 マネーではなく有形無形の魔力が流通している裏社会が舞台。投機の対象は陰陽市場とかブードゥー市場とかグノーシス市場とか様々。借金ならぬ借魔漬けで呪われまくって瀕死に陥り魂まで差し押さえが掛かっている主人公が「投機姫」と名高い魔法少女に拾われ仕込まれ才能を開花させて相場という相場でリスクをヘッジして荒稼ぎ。「魔法使いを殺すのに刃物も銃器もいらない。ただ根こそぎ奪ってやればいい」。レバレッジ魔法陣とか狂ったフレーズも出てきて喜んでいたところに目が覚めてションボリ。

・ロバート・R・マキャモンの『ミステリー・ウォーク』読了。

 マキャモン初体験。割と最近に復刊された初期作です。

 ビリー・クリークモアの母はアメリカ先住民チョクトー族の血を引く娘で、死者と会話し、彼らを然るべき世界へ送る力を持っていた。僅か10歳にして母から受け継いだ力が目覚めたビリー。しかし、周囲の目は冷たく、「魔女の息子」として忌み嫌われる日々が続く。そんな彼はある日、町にやってきた伝道師の息子・ウェインを見て奇妙な引力を感じた。熱狂する人々を詰め込んだ巨大なテントの中で向き合ったビリーとウェイン。ふたりの運命が“神秘の道(ミステリー・ウォーク)”を歩み出す。

 「ダーク・ファンタジー」とは謳われていますが、ストーリーにおどろおどろしいところはあまりなく、ホラー的な要素ともなればほとんどない。死者たちは己の死を受け入れることができず迷い、現世にも未練を残して嘆き悲しみ、あるいは怒り狂う。けれど、ビリーはそんな彼らと共感し、痛みを引き受け、進まねばならない道を示してみせる。最初のうちは恐れも多いのですが、「恐れてはならない」と真っ向から立ち向かっていく姿勢が基本なので、「凍えません!」と注意書きを付したくなるノリです。燃えるかどうかは少し微妙だけど、死者たちと対峙するシーンの迫力はなかなかのもの。

 ホラーやファンタジーというより、青春小説ないし成長小説ですね。迷いも恐れもある前途多難な人生を、「それでもお前は歩むべき道を歩んでいきなさい」と母に励まされ、紆余曲折を経ながら育っていきます。地味にすら映る着実さですが、これが実に効を奏する描きぶりで、当方も物語に引き込まれ、主人公のビリーに感情移入を余儀なくされました。

 設定面で言えば地味です。死者と会話し、彼らと接触することで「お逝きなさい」とばかりに導くわけですが、それ以外は特に何か超能力が使えるでもない。もうひとりの主人公と言えるウェインにしても、「癒し」の能力を活かしきっておらず、サイキック・スリラーの視点で読めば歯痒さを覚えてしまいます。上下に分かれていて分量も結構ありますが、それでもまだ足りていない。「死者との接触は負担が大きいので、何か創造的な作業に心身を費やしてストレスを解消しなければならない」という設定もやや中途半端な扱いになっていますし。惜しい。

 とはいえ、設定面の弱さを有していながらリーダビリティが減じないあたり、マキャモンに作家としての並々ならぬパワーがあることを感じさせられる。今までなんとなく手を伸ばさずにいましたが、他の作品も視野に入れておきたくなりました。理由付きでどうこうというわけではなく、単純に面白かったです。


2004-01-07.

・そういえば小笠原慧の『DZ』に沙耶って少女が出てきたなぁ、となんとなく思い出す。遺伝子工学ネタをふんだんに盛り込んだバイオ・ミステリなので、微妙に『沙耶の唄』とも繋がりを感じる。涼子って名前の女医も出てきますし……さんずいですけど。

『Fate/stay night』がマスターアップ(TYPE-MOON)

 さて、これで今月末が決戦と確定したわけですが、当方は川のせせらぎにも似た透明な覚悟で当日を迎えるつもりであり、要するに予約は入れていません。たぶん大丈夫だと思いますが、もし月末の更新がパッタリ停止していたら討ち死にしたものと受け取ってください。

 それはそれとして、凛。彼女に関しては士郎よりもアーチャーとくっついて欲しい気がします。体験版でプレーした感じだとかなり良いコンビですし、揃って映るイベントCGを見ても実にお似合いのふたりかと。

・加地尚武の『福音の少年』読了。

 魔法や錬金術が実在するパラレルな現代を舞台にした長編ファンタジー。「原型はあるアニメのファンフィクション」ということですが、少し読んだだけで「ああ、あれだな」と思い当たるほど手掛かりは沢山。タイトルを見た瞬間にピンと来る人もいるはずです。

 御厨恵、中学生。父が錬金術師で母が中級魔女の彼は、特に勉強ができるでもなく運動が得意でもなく異性にモテるでもなく、ごく普通に地味な少年だった。友達らしい友達もなく、父のつくった体長15センチのホムンクルス少女・アナが唯一の心の拠り所という有り様。そんな彼の家にドイツから一人の少女がホームステイをしにやって来た。大場エリカ、上級魔女。恵と同い年でありながら、既に飛び級で魔法アカデミーを卒業した正真正銘の天才少女。新しく家族の一員として加わったものの、彼女はぼんくら少年の恵を嫌悪する。だが、クリスマスの夜、実体化したアナが「ある物」を恵に手渡したことがきっかけとなり、運命は加速していく……。

 優柔不断で引っ込み思案の少年。鼻っ柱が強くプライドの高い少女。バリバリに既視感漂う組み合わせですが、魔法や世界の設定は独自のものであり、ストーリーそのものはさすがに別物となっています。キャラ配置といくつかのフレーズが原型となった作品を偲ばせる程度。元ネタを知っている必要は特にありません。

 パッと見ではよく分からなかったけれど、分量はだいぶあります。ライトノベルに換算すると3冊分くらい。なので話も中途半端なところでは終わらず、たっぷりとあれこれ展開した上でキリのいいところに来て「完」。思わせぶりなヒキを見せて「To be continued」なんて表示が出てこないっていう意味では気持ちいい1冊です。まとめて読める、ちゃんと完結している――それがどれだけ喜ばしいことか、不定期連載のマンガ家や遅筆小説家のファンになってしまったことがある身ならば嫌というほど承知しています。

 文章は平易で読みやすく、また興趣をそそる展開を心得ており、一個のファンタジーとしてはなかなか楽しかった。ただ、迫力や緊迫感を出すには少し文圧が足りていないし、ドカドカといろんな要素・設定をぶち込んだ結果消化不良を起こしている部分もあり、必ずしも完成度が高いとは言えない。特に前半の展開に比べて後半の展開は駆け足気味で、もうちょっとペース配分を考慮して欲しかったかな。

 幾分バランスは悪いですが、根底に物語を紡ごうとする情熱が篭もっている。多少の瑕疵など「(゚ε゚)キニシナイ!」と突き進むだけのパワーは充分。基本的に主人公がぼんくらで、周囲の流れに翻弄されまくる感じが面白い。1500円という値段も「ライトノベル3冊分のボリューム」を念頭におけば、さほど割高でもなく。軽めの和製現代ファンタジーを楽しみたい方に推したい。もっとも、『されど罪人は竜と踊る』『空の境界』といった自壊寸前の狂ったような激しさはありませんので、カルト的作品を求める向きにはオススメできない。

 ちなみに著者のHP、「The House of the Stories」にて外伝が公開中。「オリジナル小説」という項目のところです。


2004-01-06.

・蜜柑が尽きました。指が黄色くなる前に食い切ったのは勝ちか、あるいは負けか。そんな焼津です、こんばんは。

沙耶TOP絵(「端末異常」)

 クリックも忘れずに。

「鏡姉妹の飛ぶ教室」、最終回。

 遂に完結。「人間試験」の例もありますし、しばらくすれば公開終了となる公算は高いです。興味のある方はお早めに確保を。

「萌の杜」で見つけた黒髪ロングストレート少女絵。

 これこれこれが最高。当方の属性において「黒髪ロングストレート」は一番強力かもしれない。神秘・妖艶・殺伐といった色彩を帯びればもはや超絶無比。千砂姉さんや初音姉様、秋葉、ナナミ様クラスには無条件降伏です。


2004-01-05.

・西尾維新の『零崎双識の人間試験』は2月発売との噂。紙媒体で読み直したいので購入する予定です。

・『沙耶の唄』SS、「アップル・オブ・ソドム」公開。

 「できるだけシンプルに」と心掛けて書いてみました。なので短めです。けどネタバレしまくりなので注意。

 主人公の郁紀が「単に状況に流されてるだけじゃないの?」という節がうっすら感じられることもあり、彼の「覚悟」を織り込んでみようかとチャレンジしましたが……うーん。

・東野圭吾の『トキオ』読了。

 20年以上前、まだ生まれる前の息子と出会った――『バック・トゥ・ザ・フューチャー』みたくタイム・スリップをネタにした小説。あらかじめ未来を知っているキャラクターが事態に干渉していくという手垢のついた筋立てに、「若気の至り」を具現したような主人公、確執の深い家族関係、そしてガールフレンドを取り巻くキナ臭い陰謀といった要素を盛り込み、ベタであらながらもしっかり「読ませる」内容に仕上がっています。

 「体育会系」と言われるだけあってアツくてクサいノリが横溢している一方、細かいところにまで小ネタが利いており、いかにも東野小説といった丁寧な作品。「あるべき未来」を望みつつ、ままならない「過去」を奔走するトキオの姿がいじらしい。『秘密』に比べシチュエーションも仕掛けもシンプルですが、ストレートな面白さを有しています。初期作あたりと比べれば、「カッコ悪さ」を物語に活かすのが巧くなっている。それでいてリリシズムは相変らず。

 「お約束」の塊みたいな一作ですが、それでもこれだけ「読ませる」力量は大したものだと思います。東野LUV。


2004-01-04.

・ぶっちゃけ餅に飽きました。煎餅状にして凌いでいる今日この頃。

・ウィリアム・ランデイの『ボストン、沈黙の街』読了。

 メイン州の架空の町とボストン市の架空の地区を舞台にした刑事小説。

 ベンジャミン・トールマンは24歳にしてメイン州ヴァーセイルズの署長だった。銃殺された地方検事補の死体を発見・通報し、駆けつけてきた刑事たちに「田舎署長」と疎まれながらも必死になって捜査陣に食い込んだ。最大の容疑者と目されたのはハロルド・ブラクストン――ボストン市ミッション・フラッツを牛耳るギャング団MP(ミッショッン・ポッツ)のボス。かつて学生時代を過ごした街で戸惑いながらも、経験豊富な先達刑事ジョン・ケリーの教えを受けて捜査のノウハウを飲み込んでいく。迷走し、混迷を深めていく事件。その背後には、20年前の別の事件が……。

 最初から捕まえるべき犯人は指定されており、込み入った謎もなく、単純明快に進んでいく――かと思いきや、どこからどこまでが本当なのか分からなくなり五里霧中に陥る。突破口を開くには過去の事件を調べ直す必要がある。主人公ベンを待ち構えるのは事件であり、恋であり、罠であり、裏切りであり、銃弾であり。端的に言ってしまえば、従来の刑事小説における「お約束」がこれでもかとばかりに押し寄せるストーリーです。

 文庫とはいえ結構厚く、試しに秤に乗せてみたら350グラムありました。記憶によれば『ブギーポップは笑わない』が200グラムでしたから、どれくらいのものかお分かりに……いえ、分かりにくいですね。すみません。ともあれ、読んでも読んでも先があるのでダレてきました。決してつまらなくはないけれど、これだけ引っ張るほどの「目玉」がないのはさすがに退屈。

 「疾走する新世代ミステリ登場」と謳っている割に王道的な刑事小説で、「新世代小説」という惹句が何を指し示そうとしているのかいまいち分かりませんが、不屈の姿勢を貫く主人公は好感が持てる。読み心地はそこそこ。個人的には長さを除けばなかなか楽しめる内容でした。


2004-01-03.

・初夢には黴の生えた死体とサイコメトラーEIJIと高校時代の友人が出てきました。電車に乗り遅れたり電車に轢かれそうになったり、殺人犯を追い詰めたりゾンビに追い詰められたり。まったくもってめでたさゼロ。

・現在『ボストン、沈黙の街』を読み進めていますが、途中、「発泡事件」という誤植を見かけてコーヒー噴きそうになりました。ボストンの下町で刑事たちも真っ青になるくらいの泡立ちが起こるのかと想像すると変な笑いが止まらず。「発泡だ発泡だ発泡だ発泡だ発泡だ!」

・上田早夕里の『火星ダーク・バラード』読了。

 第4回小松左京賞受賞作。小松左京賞は新人賞なのでこれがデビュー作ということになります。

 惑星の環境を一部だけ変えるパラテラフォーミング──大きな「蓋」を被せた峡谷の内部に都市を建造し、人類は火星への進出を果たした。地球の意向で軍を保有することを許されなかった火星社会は、代わりに治安管理局という名の警察機構を持つに到った。その治安管理局に勤務するPD──所謂「刑事」──の水島烈は、逮捕した連続殺人犯ジョエルを護送する列車内で不可解な事態に遭遇した。突然列車が止まり、扉を破って襲い掛かってきた恐竜ども。必死に銃で応戦するが、押し倒されて意識を失った。気を取り戻したとき、彼はそれが完全に幻覚であったことを悟るが、相棒の神月璃奈は殺害され、ジョエルは逃亡していた。回復した彼に璃奈を殺し、ジョエルの逃亡を幇助した疑いが寄せられる。「幻覚の中で恐竜を撃ったと君は言うが──それは本当に恐竜だったのかね?」 自身でも捨てきれぬ疑念。捜査陣から外されてからも独自の捜査を続けようとする彼に圧力が掛かる。いったいこの事件の裏には何があるのか。やがて自らを“プログレッシヴ”と名乗る少女アデリーンと出会い、水島は真相の一端を知るが……。

 30過ぎの熱血刑事と15歳の少女が出会って様々な陰謀劇が繰り広げられるポリス・アクション小説。冤罪やら逃避行やらの要素が物語を盛り上げる一方、舞台が未来の火星ということもあり、「遺伝子の改造」「環境への適応」「進化」などといったネタも絡んできます。大筋で言えば従来のSFエンターテインメントとかけ離れた部分はなく、オーソドックスな内容となっている。

 字が小さくて結構みっちりと詰まっていますがストーリーは面白いから勢いには容易に乗れますし、そこそこの分量も苦にならない。しかしこれと言って斬新な要素がない分、何か目新しいものを期待して読むと退屈するかもしれない。オーソドックスということが必ずしも悪くはないのですけれど、「ここが本書の特徴」と指差すことのできるポイントが少ないことは確かです。

 主人公とヒロインの関係はベタベタと熱くなりすぎはしないものの、到底クールとはいえない。一方がかなり偏愛しているうえ、ふたりとも互いのために大暴れしますから。「萌え」か「燃え」かで言えば後者のノリ。味方にしろ敵にしろ、ほとんどのキャラクターは自分の信念に従って行動していて、そういう意味ではゴチャゴチャ複雑なものがない分スッキリと読める。いくらか安易な箇所も認められないことはないが、そう気になるほどでもなく。

 テーマ性を追及したというよりも、「絵になる」ことを重視したタイプの作品に見えます。クライマックスあたりはアニメ化するとちょうどいい感じですし。冤罪という逆境においてもグジグジ悩まずポジティヴに行動する水島の熱さ、それと、特殊な環境下で育ってきたアデリーンが水島との交流で劇的に変容していく様が読んでいて楽しかった。「恋」のために年齢差15歳のカップルが大暴走する、ハタ迷惑でいて爽快な展開。個人的には好きです、こういうの。


2004-01-02.

・帰省は日帰り。こんばんは、焼津です。餅と蜜柑が食事のほとんどを占めている気がしてなりません。

ポン刀着物アル(「ジンガイマキョウ」)

 当方の視線がどこへ向かったかについてはわざわざ書くまでもなく。

・一応恒例になっている今月の予定。

[本]
 『武装錬金(1)』/和月伸宏(集英社)
 『彩紋家事件(上)』/清涼院流水(講談社)
 『ウィザーズ・ブレイン4(下)』/三枝零一(メディアワークス)
 『Dクラッカーズ7-2』/あざの耕平(富士見書房)
 『朝霧の巫女(4)』/宇河弘樹(少年画報社)
 『無限の住人(15)』/沙村広明(講談社)
 『銀盤カレイドスコープ vol.3』/海原零(集英社)
 『幻夜』/東野圭吾(集英社)

 ようやく話に聞いていた武装錬金が読める。その他、待ちに待っていた続編が矢継早に出され新年早々演技が良い。いえ、一冊だけかなり微妙なのが混じってますけど……。

[ゲーム]
 『PARADISE LOST』(light)
 『Fate/stay night』(TYPE-MOON)
 『SHUFFLE!』(Navel)
 『黒の断章』(アボガドパワーズ)

 やはりド本命はFate。体験版は面白かったし、特に不安は抱いておらず。あとの3本は気分次第かな。『PARADISE LOST』はデモを見た感じだとCGは良さげで、テキストが少し気に掛かる。『SHUFFLE!』は王雀孫がメインライターということはないようなのでひとまず様子見。『黒の断章』は前々から興味があったものの手を出す機会がなかった一本。時期的にはちょうどいいものの、『人工失楽園』に関しては霧の遙か向こうといったムードでいまいち食指をそそられず。

・牧野修の『楽園の知恵』読了。

 短編集。怪奇幻想・珍奇妄想に横溢した作品13編を収録しています。

 内的時間──つまり主観的に感じる時間──の「速さ」を追い求め、身分階級の尺度にまで適応した「時の王国」についてやや錯綜した構成で綴る「バロック あるいはシアワセの国」が設定面では良かった。「神の速度」を弾き出そうとする試みや、王室時間協会、純粋思索派、調時師、静寂教団など様々な立場があるあたりなど、いっそこのネタで長編を1冊書いて欲しかったくらい魅力的。

 しかし、作中もっともインパクトが巨大だった話は何と言っても「演歌の黙示録」。「演歌と神秘主義は密接な関係があった」というトンデモ過ぎる設定に拠って繰り出されるストーリーは爆笑必至。

 幌州夫人が捲屋に取り入る直前、演歌の超新星、荒下黒瓜が金プロ(註:「黄金の暁プロダクション」のこと)からデビューしていた。曲は『恋の法の書横丁』。間奏後にエノク語の台詞が入るこれは大ヒットを飛ばした。表向きは関西の老舗料亭の娘と板前の悲恋物語なのだが、ピュタゴラスの数秘術によって厳密に定められた音階に、象徴的にタロットが配された歌詞を乗せることによって、これを一万回歌うものは自然と生命の樹を上昇していく構造になっている。これにエノク語の祈祷が加わり、荒下の人気が急上昇することは神秘学的に保証されていたわけである。

 オチもオチでかなりアレです。エロ言霊を題材にした「インキュバス言語」も強烈でしたけど、「演歌」と「神秘主義」のギャップを活かした「エンカ・アポカリプス」の方がより痺れました。


2004-01-01.

・あけましてオーメン

 新年早々マイナス197度のネタにつき最悪。

 『バンド・オブ・ジプシーズ』を聞きながら『誰か』を読んでいるうちに年が明けていました。だいたい「魔法の馬の帰還」あたりで03年と04年のボーダーを越境。『誰か』、途中までは盛り上がりが薄かったけれど、終盤はなかなか面白かった。宮部みゆきの数ある代表作と比べれば見劣りするものの、BGMの効果もあって結構熱くなりました。

・昨日の続き。

[ゲーム]

 第一位 『斬魔大聖デモンベイン』
 第二位 『うたわれるもの』
 第三位 『CROSS†CHANNEL』
 第四位 『鬼哭街』
 第五位 『Clover Heart's』
 第六位 『アトラク=ナクア』
 第七位 『腐り姫』
 第八位 『てのひらを、たいように』
 第九位 『黒と黒と黒の祭壇』
 第十位 『いたいけな彼女』

 一般ゲーはさっぱりやっていないのでエロゲーばかりです。今年は20本強プレーしましたが、そのうち年内に出た新作は半分ほど。あとの半分は積ゲーでした。なのでランキングの方も新作・旧作が入り混じっています。

 『デモンベイン』はいろいろと瑕疵も多かったですけれど、なんだかんだ言って今年一番楽しんだ一本。SSもいくつか書いたくらいですから大したハマり様です。『うたわれるもの』はエロを除けば総合的なバランスが優れていた一本。やり出すと止まらなくなりました。『CROSS†CHANNEL』は出だしが魅力的ではなかったものの、中盤に入ってから一気に面白くなった。革新的という印象は受けませんでしたけど、プレーし終わって満たされるような感覚があり、充足。『鬼哭街』は今年最燃のソフト。選択肢が一つもない構成を逆手に取り、中断する暇を与えてくれなかった。プレー後、金庸の小説が読みたくなって慌てて本棚を漁ったものです。『Clover Heart's』は翻って今年最萌のソフト。「対視点」がシナリオに活きていない憾みはあるが、ニヤけすぎて頬の肉が攣るくらい幸福な面白さでした。

 『アトラク=ナクア』は初音姉様(*´Д`)ハァハァの一本。コストパフォーマンスも優秀で、話運びも巧い。ラストバトルの盛り上がりには震えが来るほど。『腐り姫』は「ループ」の概念を根底から引っくり返す物語構成にヤラレました。とにかく先が気になって仕方がなかった。残念ながらオチがあまり好みではなかったため、上位には食い込めず。『てのひらを、たいように』はまきいづみ声の永久に骨を抜かれまくり。最初は「下手かも」と思っていたのに、気づけば脳が溶けて耳からこぼれ出すくらい萌えている始末。物語構成に不満が残ること、気に入ったキャラの見せ場が少なかったことが減点ポイント。まりあシナリオがあれば神作になれたかもしれない。『黒と黒と黒の祭壇』はダークな調教ゲーと見せかけて実は……な一本。チッセたんに萌え、狂ったセリフが頻発する戦闘に燃え、なんとも美味しかった。『いたいけな彼女』はダークホース。発売前日まで存在を知らなかったのに絵で惹かれて購入したら大あたり。メインヒロインのみに焦点を当て、鬼畜・純愛両ルートを用意した構成が完全にツボだった。

 次点として挙げたいのは『MELTY BLOOD』『モエかん』『吸血殲鬼ヴェドゴニア』『グリーングリーン』『パティシエなにゃんこ』『浄火の紋章』『Ricotte』『銀の蛇 黒の月』『沙耶の唄』『白詰草話』の10本。どれを取ってもベスト10入りしておかしくないソフトばかりですが、相手が悪かったということで。

 今年プレーしたラインナップを見るにつけ思うことは、当方の嗜好がどんどん萌えゲーから燃えゲーに移っていきつつある、ということです。『デモンベイン』や『うたわれるもの』、『アトラク=ナクア』、『黒と黒と黒の祭壇』、『モエかん』、『吸血殲鬼ヴェドゴニア』あたりは萌え要素を含有しているにも関わらずむしろ燃え要素の方に対して当方は強く反応していますし、『鬼哭街』、『浄火の紋章』、『銀の蛇 黒の月』など、萌えのみならずエロまで蔑ろにしたゲームすら「燃えるからよし!」と満足している有り様。1月の新作については『PARADISE LOST』『Fate/stay night』へ熱い視線を注いでいる状況。

 それともうひとつはコメディ系の不作。去年は『それは舞い散る桜のように』と『Lien』と『うそ×モテ』、一昨年は『秋桜の空に』と『sense off』と『ぱちもそ』で笑い転げましたが……んー、今年は『CROSS†CHANNEL』と『グリーングリーン』あたりですか、強いて言えば。しかし当方、C†Cはシリアス展開に魅せられたのであってギャグにはそれほど感銘を受けていませんし、『グリーングリーン』も野郎どもの会話がすごく楽しかった代わり、ヒロイン勢の印象が希薄。他には『パティシエなにゃんこ』も割と優秀なコメディでしたが、まったりと寛ぎながら笑うムードが濃くて、「笑い転げる」といったタイプではなかった。

 ついでにヒロイン・ランキングもやろうかと思いましたが、気が変わりました。漢ランキングをやります。

 第一位 ウィンフィールド(斬魔大聖デモンベイン)
 第二位 飯島克巳(モエかん)
 第三位 ギーラッハ(吸血殲鬼ヴェドゴニア)
 第四位 孔濤羅(鬼哭街)
 第五位 グルーヴェル(黒と黒と黒の祭壇)
 第六位 荒山鳥人(白詰草話)
 第七位 バッチグー(グリーングリーン)
 第八位 ウェスパシアヌス(斬魔大聖デモンベイン)
 第九位 カイ(銀の蛇 黒の月)
 第十位 ヴァランセ(Ricotte)

 画像も一緒に並べたらさぞ壮観でしょうね。濃すぎてエロゲーの話題とは思えなくなること請け合い。

 ウィンフィールドは眼鏡拳闘執事。途中まで戦闘力の多寡が伏されており、「ざっとこんなもんです」と開示される瞬間が最高に気持ち良かった。脇役に近いものの、デモベの中では一番好きですね。飯島克巳はノベライズで初めて下の名前が判明したキャラ。敵方で、かなり脇役っぽい。でも微妙に美味しい。厳つい顔の割になんか可愛いんですよ、これが。ギーラッハはヴェドゴニアではそこそこ目立っているキャラ。「騎士道は根にして茎」の名言が印象深い。話ズレますけど、リァノーンはギーラッハの回想時に出てくる自信満々でヤリヤリの雰囲気漂う御姿が(*´Д`)ハァハァ。孔濤羅は暗い凶相・黒のロングコート・ポン刀と道具立てが素晴らしい。うすら笑顔で瑞麗(ロリ)の身体を拭くシーンは性犯罪者にしか見えないが、戦闘シーンのカッコ良さは異常なくらい。グルーヴェルは「殺戮の皇子」と呼ばれてノリノリな将軍。物凄くあっさりと宗教&祖国を捨てて鬼畜となり、闘争のみを愛する姿勢が刹那的で胸キュン。

 荒山鳥人は厳つい顔をしたオッサン。「正義はあるさ。ここにな」と平気でのたまう自信家でもあります。よく考えれば彼は一対多の戦闘をしてばっかりだったが……乱戦好き? バッチグーはランキングの中で異彩を放ってますね。彼は「燃え」ではなく「笑い」でランクイン。存在自体が面白い。グリグリプレー中は「ヒロインの出番はいい。バッチグーを出すんだ」と本気で思っていた。ウェスパシアヌスは荒山鳥人と同じオッサンキャラ。怪しい容貌のみならず、「二回言うな」とツッコミたくなるクドい口調もGood。カイは凄腕の殺し屋だけど情緒不安定でナイーヴ。そのギャップがよし。外見だけなら『ヴェドゴニア』のフリッツとも似ている。フリッツもフリッツで好きな漢ですが、ラストでアレがあったからなぁ……ネタとしては面白いものの株が下がり、ランク外へ。ヴァランセは正真正銘の脇役。『Ricotte』やった人でも忘れているかもしれない。後半のアルペンブルでちょこっと出てくる自信家のピアニストです。Largo編だと少しセリフもある。いや、実際大して見せ場はないのですが、「あまりにも自信がありすぎて、主人公に嫌味すら言わない」という尊大さに惚れた。彼のエピソードは何らかの形で読みたかったものです。

 結果として10人中4人がニトロプラスのキャラ。さすがエロゲー界で「もっとも漢臭いメーカー」と認知されているだけのことはありますね。それにしても当方、自分がここまで「漢燃え」に走るとは予期していなかった。おにゃのこのエロかったりエロくなかったりする絵を見るためにエロゲーしていたはずなのに、気づけば漢の方にばかり目が行っている罠。「末期、漢病」か。

 ちなみに今年のエロゲー関連で一番悲しかったニュースは『末期、少女病』が実質上の発売中止になったこと。期待はかなり高かっただけに足場が崩れたかと錯覚するくらいショック。差し障りのある言い方ですが、あくまで期待の大きさで言えば『デモンベイン』をも凌ぐほどのソフトでしたのに。本当に残念……。

「狂気太郎」にて「殺人鬼探偵II」が掲載。

 黒贄さん再び。元旦はこれを読み耽ることになりそうです。前作は第四話の「千五百二十七円」が好きでした。


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