「サバト鍋」
   /ニトロプラス


 日記の内容を抜粋。


2006-09-30.

ニトロプラスの『サバト鍋』、プレー開始。

 危うく存在そのものを忘却しかかっていましたが、ふと「そういえばまだやってなかったっけ」と思い出して着手。ニトロのソフトでは他に『"Hello, world."』が積み状態。あ、『鬼哭街』のドラマCDもまだ聞いてなかった……が、それはさておき。『サバト鍋』は今年の2月に一般発売されたアミューズメントディスク。いわゆるファンディスク(FD)と呼ばれる類のものです。ニトロってサントラCDなんかはじゃかすかと出してる割に、こうしたFD系のソフトはつくった試しがなかった。なのでFD自体はファン待望と言えなくもないんですけれど、内容が直球ではなく明らかに変化球なのでニトロファンのすべてが喜んだかと言えば微妙。収録しているのが「竜†恋」という鋼屋ジン&津路参汰のオリジナルADV、「戒厳聖都」というある意味で『刃鳴散らす』の続編みたいなRPG、そしてニトロソフトのオールキャストが参戦するSTG「ニトロウォーズ」の3本。虚淵玄シナリオ作品の番外編だとか、デモベ関連のゲームとか、『塵骸魔京』で削られたシナリオの補完とか、メーカーファンが期待するようなものを見事に迂回したラインナップ。ぶっちゃけ出る前からあんまり売れそうにないオーラを放ってました。最近のニトロは商業主義に走っているのかいないのかよう分からんです。

 さて、まずはオリジナルADVの「竜†恋」から始めました。街をブッ壊す巨大で凶悪なドラゴンが可愛いおにゃのこになって、「死ね」が口癖な主人公の日常を引っ掻き回す。ライトノベルによくあるドタバタ現代青春ファンタジーのノリですが、CGやサウンドを駆使した演出のもたらすテンポの良さとエロ方面解禁によるシモさを止め処なく発揮することで、紙媒体かつ18禁的表現のためらわれるライトノベルには不可能な楽しさを生み出していてグッド。ヒロインの爬虫類っぽい瞳に(*´Д`)ハァハァします。あとおっぱい。

 非常にテキストが絞り込まれていて読みやすく、デモベではなんとなく滑っているところのあったギャグやコメディも巧い具合に摩擦が利いてる。普通に笑いました。なかなか最高な軽妙さだ。ノリとしては鋼屋シナリオ作品の中で一番好きかも。夢中になるあまり一時間くらい経ってからキャラたちが喋っていない――つまりボイスレスゲーなのだという事実に気づくほどで、声なしという点に関しては別段瑕疵とも思わなかったです。まだ終わってないけれど、少なくともこの「竜†恋」だけで2000円分くらいは元が取れてるかな。とセコい発言をしてみる。ヒロインもさることながら、イカレたちびママこと主人公の母親がステキですね。誤った方向に息子を溺愛していて、なるほど、これなら主人公の性格が歪むのも無理はなかろうと納得。


2006-10-02.

ニトロプラスの『サバト鍋』、プレー中。

 「竜†恋」を中断して「戒厳聖都」に取り掛かった。累計7時間くらいを要してコンプリート。

 RPG風のマップ移動形式ゲームです。敵とエンカウントして戦闘になったり、経験値を稼いでレベルアップしたり、獲得した武器や防具を装備したり、特定のフラグを立てることでストーリーが進行していったりする。はい、見た目上は確かにRPGなんですが、RPGとして面白いのかどうかというと……難しいところ。まずマップ移動からして面倒臭い。一歩一歩「北」だの「東」だのを選択して進むのはダンジョン探索みたいなノリだけど、非常にとろとろと超低速でしか移動できないため、やってるうちにだんだん苛々してきます。ステージのクリア条件が分からなくてマップの隅々まで駆けずり回り、途中で無駄足だと気づいてえっちらおっちら引き返すときの虚しさと言ったら。通路もくねくねと嫌らしく曲がりくねってますし。おまけにステージクリアを果たしてもオートで出口に向かってくれるわけじゃなく、いちいち自力で脱出しなくちゃならない。他にも、装備を変えたり道具を使ったりとステータスをいじる際もあれこれクリックしなけれずならず、とても煩雑。はっきり書いてしまえば操作性は最悪です。

 レベルアップは常に経験値が100溜まるごと。しかしレベルが上がれば上がるほど敵から得られる経験値は下がっていき、相対的な強さから敵がクソ雑魚に転落すると経験値も0になる……というシステムは、獲得する経験値の量で彼我の差を明確に計れる点では面白かった。ただ、レベルがたった1つ違うだけで段違いの強さになってしまうあたりはゲームバランスとしてどうなのかなぁ、と疑問だったり。逆に言えばステージごとに「ここはレベル○以上ないとほぼ攻略不可能」って状態で、レベル上げがほとんど強制的になっています。正にファミコン・スーファミ時代の感覚。

 そして戦闘。こちらと敵それぞれ互いに三つの攻撃手段があり、便宜上A・B・Cと呼ぶならば、A>B>C>A――とジャンケンをやるみたいな要領になってます。相手が何を出してくるか、モンスターによってある程度傾向は決まってますが、基本的にランダム。なので無傷のままストレート勝ちすることもあれば、一矢だに報いることができずストレート負けすることも。こう書くとプレーしていてハラハラできる戦闘システムって気がしますが、よく考えてください。ジャンケンばっかり何時間もやっていたら飽きてくる……という単純な事実を。途中からは傾向を読むだけの作業になってきます。下手打つと即死しかねないのでこまめなセーブ&ロードも必須。レベルアップに応じて必殺技も習得できますが、これもいざ使うとなると操作に手間が掛かって面倒臭い。通常技だけで充分やってけるし、そうした方が却って楽でした。

 というわけでゲーム部分については不満タラタラでしたけど、シナリオに関してはさほど文句なし。東京がゾンビの徘徊する死都に変貌した、というB級映画じみた背景でなおも『刃鳴散らす』の続演をやろうとする試みはグッド。適度にオマケっぽい感じとシリアスなムードが混ざり合っていて楽しかった。最終決戦もしっかり盛り上がったし。なにげに分岐があり、選択次第でラストの展開がちょっとだけ変わってきますが、両ルートとも好み。クライマックスでは安藤直次並みに「ホォオ」と感嘆致しました。これで前回同様に剣術薀蓄が満載だったら言うことなしだったんですが……ともあれ赤音と伊烏、そして戒厳にとって相応しい、血の熱く滾る決着だったかと。個人的には畢竟さん(*´Д`)ハァハァ。

 本当、もう少しばかり操作性が良ければ……なんて愚痴を垂れてもしょうがないので、「竜†恋」の方をちゃっちゃか再開するとしますね。


2006-10-04.

ニトロプラスの『サバト鍋』、プレー中。

 中断していた「竜†恋」を再開……って短っ! ストレイト・クーガーばりの直進によって速攻で終わりました。いくら声なしとはいえ全体で2時間もないとは。話そのものは面白かったというかすげぇツボでしたけど、正直物足りなさが残ります。とほー。中身は凝縮されているから、通しでクリアしてればさほど気にならなかったかも……下手に中断したのが祟りました。

 遥かなる神話の時代から夢(ロマン)の体現者としてやってきたドラゴンがなぜか可愛い女の子(ただし爬虫類系の瞳)になって罵倒癖のあるヒネクレ少年とボーイ・ミーツ・ガール。日常を引っ掻き回し、ドタバタと「恋っぽいこと」を満喫した先に待ち受けるふたりの運命は……という筋立てで、そのままアニメにしても不自然じゃない。『フリクリ』みたいになるかな。とにかく分かりやすくてノリが良く、勢いもあります。ガーッと奔流の如く言葉とイメージが押し寄せ、単純にプレーしていて楽しい。人外巨乳のヒロインはヒトの話を聞かず常にマイペースでヤりたいことをヤりまくる。その我道精神横溢ぶりはいっそ見ていて清々しいほどでした。一人称が「己(オレ)」というのもキャラに合っていて不自然じゃない。主人公は頻繁に、それこそ何かの語尾みたく「死ね」と言い放つツッコミ体質ながら、どこか皮肉屋になりきれない甘さを残留させているところが微笑ましいっスね。いわゆる男ツンデレという奴? ちょっぴりDクラの景ちゃんを思い出したり。そして脇役ながら強烈な存在感を発散する主人公の母親、無茶苦茶な言動と無駄に豊かな表情変化はデモベの西博士(ドクターウェスト)を無理矢理ちびママに変換したような恐ろしさがある。母子相姦願望ダダ漏れで、口を開くたびに息子を精神的にレイプする、マザーファッカーならぬファッキンマザー。見た目がロリな割に、プレーしていて一度たりとも幼女臭を漂わせることがなかったのは逆に凄いと思いました。

 ストーリーが「竜殺しの英雄譚」の見立てになっていて、少しメタっぽくなっているものの、変に小難しくしないでちっきり真っ当に決着を付けてくれたおかげで非常に気持ちの良い話に落ち着いている。冗長さが一切なくてあっという間に吸い込まれて夢中になれました。ボイスが全然付いてないけれど、途中までそれに気づかなかったほどだから個人的に不満はなし。テーマ曲「とある竜の恋の歌」は最高すぎて耳にこびりつきますな。

 しかし、やっぱりどうにも「まだまだ続きが読みたかった」という本音は隠せそうにない。うーん、ザスニか何かに「竜†恋」の短編が載ったという話は聞いたけど、それ以上「竜†恋」関連での動きが今後あるとも考えにくいし、期待を懸けるとしたら鋼屋ジンの次なる新作の方かなぁ。

 『サバト鍋』最後の一つ、「ニトロウォーズ」も戯れにプレーしてみましたが……無敵モードがなけりゃクリアできないヌルシューターの当方には攻略なんて無理です。キーボードでやること自体がつらい。仕方ないから封印しておきます。ということで、『サバト鍋』は一応これにて終了とさせていただきます。「竜†恋」は短いながら濃縮された熱があって美味、「戒厳聖都」は操作性最悪ながら後半の盛り上がりがよし。二つだけでも充分に値段分は楽しめたと思います。にしてもこの組み合わせ、鋼屋が好きでハナチラも好きという当方にはまさしくうってつけでした。


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