「FOLKLORE JAM」
   /HERMIT


 日記の内容を抜粋。


2003-10-23.

『FOLKLORE JAM』体験版をプレー

 前に一度だけ見たことがあったものの、タイトルもブランドも思い出せなくて「あれはなんだったっけなぁ」と引っ掛かっていたソフトです。やっと探り当てることができて喉から小骨が取れた気分。

 タイトルに「フォークロア」と冠しているだけあって都市伝説がメインのストーリー。それも既存のモノではなく創作したネタで勝負をかけてくる。第1話はオカルト要素をはぐらかす形で終わってしまったため、今後の伝奇展開については気になるところ。あくまでオカルト要素はスパイス程度の位置付けなのか、それともちゃんと作品のコアになってくるのか。バリバリの怪奇探偵団を期待している当方としては後者が望ましい。

 キャラもなかなか魅力的。原画はBeFにて活躍した厘京太郎であり、少し見飽きた感じもするけど危なげなくキレイです。すらりと長身で横暴系の幼馴染み・八乙女維月は『Dクラッカーズ』の梓と千絵スケを足して割ったようなヒロインだからDクラ好きの当方にはたまらない。ちっちゃくて無愛想な下級生・木乃内ひなたもイイ。あたかも性転換した物部景といった趣あり、つい先日新しいものに目覚めかけた当方はひたすらハァハァするのみ。このふたりは個々に出てくるよりも、並んで「長身」「ちっちゃい」と比較されることで余計に胸キュン。「チビとノッポ」って相互補完作用がありますね、やっぱり。

 アイもれんかも「紙一重」の障壁によって買い逃してしまったし、こうなったらFJに突っ込んでみるかな。手応えから言って、軽く凡作の水準は越えられそうな感じだし。……いや、それともオカルト研究会と聞いて連想的に思い出す、前々から気になっていたんだけどなんとなく手が伸びなかった『学校のきゃあ』に今こそ走り寄るべきか。悩む。


2003-10-25.

・まずは『FOLKLORE JAM』から手をつけてみた。気弱でちょっとヘタレっぽい主人公が一つ上の幼馴染みに振り回され、気がつけばオカルト研究会に入っていた……という、特に何の変哲もないストーリー。「フォークロア」というタイトルに刺激されて興味を惹かれましたが、オカルト要素はおまけに近そうな雰囲気です。

 幼馴染みの女、八乙女維月……こいつがまたデカイ! いえ、胸じゃなくて身長が。169cmあります。『水月』の雪さん(172cm)には負けますけど、それでも他のヒロインと一緒に立ち絵が表示されるとなかなかの迫力。「トーテムポール」と揶揄されるのもむべなるかな。特に150切ってるひなたと並ぶと高低の落差が激しすぎて変に萌えます。維月に萌え〜、とか、ひなたに萌え〜、なのではなく。両者の身長差に萌え〜、です。当方は部分や関係に執着するタチですから、萌えるときは服の皺や髪の靡き方や姉妹の相似点・相違点そのものにさえ萌えます。肝心のヒロイン放っぽいて。我ながらパラノイアック。

 そんなことはともかく、今のところ普通に面白いです、FJ。現在3話目の途中。聞き込みに回る捜査パートなんかもあって、ひと昔前のAVGを彷彿とさせます。『ヴェドゴニア』みたくOPやEDを挟んで物語を分断しているあたり、やはりアニメやドラマを意識したつくりですね。基本的にノリはベタで奇抜なところはないものの、話の構成にソツがなく、安定して読めます。ちょっとキャラ間の会話がモッサリしているというか、あまりテンポ良くないのが難なくらい。まだ全体像はうっすらとしか見えませんから、評価はまだ先延ばしにします。期待と不安は半々。

 ところでこのゲーム、さりげなく……いや露骨に茂蔵さんが熱い。体験版(第1話)の不法就労者とおぼしきアラブ人と会話するシーンを始め、本筋とたぶんまるで関係ないであろうドラマを仕込む手口に生温い笑いが漏れる。ここのところ、ヒロインよりもやけに男キャラの目立つゲームをやってるような気がしますけれど、FJもこの調子では維月やひなた以上に茂蔵熱が加速してしまいそうです。7割くらいの本気率で。


2003-10-26.

『FOLKLORE JAM』、初周クリア。

 ひなたエンド。1話あたり1時間強で、最終話だけ倍近くの分量。全6話ですから1周するのに7、8時間といったところでしょうか。とりあえず現時点での感想ですが……あー、微妙です。1周しただけではストーリー全体の枠がチラッと見える程度で、どうも数周は回らないと読めてこない模様。それにしてもこの展開は……うーむ。

 話の構成自体は端整です。視点の切り換えが頻繁なせいで混乱しがちですけれど、上手に伏線を張って回収すべきときに回収し、キレイにまとめ上げる。少なくとも当方のザルな目からすれば特に指摘したくなる問題点はありません。ただ、素材選びと言いますか、物語を構成する要素の選択やその用途など、もっと根本的なところでイマイチ感を醸している気がします。あらゆる要件をソツなくこなしている割に盛り上がりが薄くて、仕上がりも地味。グラフィック、サウンド、シナリオといった各種の出来が良いだけあって余計惜しい。

 面白いか否かで言えば面白い方。しかし人に薦めるとなると薦め方が難しい。今のところそんな感触です。ひなたは萌えましたし、他のキャラの前でさりげなくイチャつく痒さが心地良くもありましたが、かと言って「萌え」だけで薦めるのは難しい。「燃え」ともなると尚更むづい。どう書けば良いのやら迷う。

 もう少し続けないと掴めそうにないです。今のところもやもやした感覚が漂うばかりで評価が定まりません。せいぜい言えるのは、オカルト・ホラーとしての面はあまり期待しない方がいいかもしれない、ってことくらいでしょうか。予感がするだけで、確信には至ってませんけど。


2003-10-27.

『FOLKLORE JAM』、プレー中。

 結構進みました。ひなたに次いで古都、碧衣のエンドも確認。現在維月ルート攻略中。コンプリートも近い気がします。

 で、やればやるほど「微妙」といった感想が強くなっていきます。プレーの進捗に合わせて徐々に物語の全体像が掴めてくるタイプのゲームで、いわゆる『痕』みたいなマルチラインの構成になっており、シナリオの作り込みに関しては「巧い」の一言に尽きます。やってて引っ掛かった箇所はちゃんと伏線になっているし、ルートを終えてから残る謎についてもしっかり回収されそうな手応えがあります。全体を考え、細部を意識したうえでの構造になっているため話がよく整理されていて、プレー中に変な不安や混乱を覚えることもなく、実に安定した気分で読み進められます。

 ただ、エンターテインメントとしては良くも悪くも「薄味」。胃にもたれることがない分、長く舌に残ることもない。オカルト、サスペンス、謎解き、萌えと燃え、笑いなど、エンタメのあらゆる要素を押さえている代わり、そのどれもが単独で「売り」となるほどの濃さはない。一点特化系ではなくトータル・バランスの優れたストーリー。それゆえに薦めるのが少しばかり難しいです。レベルは高いのに、印象がどうにも地味。「器用貧乏」といった観があります。

 まだコンプしてませんから確言はしかねますが、現時点での感触で言えばライターが「まとめきれなかったよ! うわああああん!」と話を投げ出すことがない代わり、読み手の予想を遥かに凌ぐどんでも返しもなさそうな気配です。「だいたいこんな風に収まりそうだな」という予測がうっすらあって、たぶんそれに従う形でキレイに収束するものと思われます。意外性、衝撃性を求めるには不向き。総合的に良く出来ているので、プレーして損はないっちゃないんですが……必ず得する、とまでは保証できず。もどかしい。


2003-10-28.

『FOLKLORE JAM』、コンプリート。

 予想通り、パズルのピースがすべてあるべきところにぴったり収まるような感覚でキレイにまとまりました。分量も申し分なく、ペースにもよりますが十数時間は遊べるようになっている。客観的に見て良作と言える出来に仕上がっていると思われます。

 しかし、ストーリーを何を狙いしているのかが結局最後まで曖昧で、「オカルトが好きな人に」「絡み合った謎を解き明かしたい人に」「ヒロインたちとサスペンスフルな冒険を楽しみたい人に」など、具体的な形を示して薦めるのが難しい中途半端さも漂っています。うーん、的を絞り切れなかったのでしょうか。散漫という印象が否めない。

 凡作と切って捨てられるほど程度は低くないのに、傑作と認めるには突き詰めが足らない内容。置かれているハードルに充分な高さがないせいで、いくら上手に飛ばれてもハードル以上の評価ができず。とにかくもどかしい。高圧的な幼馴染みに弄られたり、無愛想な後輩がいつの間にか懐いていたりと、部分的には美味しいところが沢山あるのに……。

 良く言えば「危なげなく端整」、悪く言えば「ぬるい」。謎は残らないけど別の意味でモヤモヤした気分が残りました。どうも当方とは波長が合わなかったみたいです。いろんな点で良く出来ていることが分かるだけに、感覚的にハマれなかったのが至極残念。


>>back