2008年12月分


・本
 『聖女の救済』/東野圭吾(文藝春秋)
 『ヒトリシズカ』/誉田哲也(双葉社)
 『イチ・らぶ・キュウ(1)』/遠山えま(アスキー・メディアワークス)
 『草祭』/恒川光太郎(新潮社)
 『やってきたよ、ドルイドさん』/志瑞祐(メディアファクトリー)
 『ぴにおん!』/樋口司(メディアファクトリー)
 『余の名はズシオ(1〜4)』/木村太彦(角川書店)
 『あげくの果て』/曽根圭介(角川書店)
 『超人間・岩村』/滝川廉治(集英社)
 『黒百合』/多島斗志之(東京創元社)
 『駅から5分(1〜2)』/くらもちふさこ(集英社)
 『ギャンブルッ!(1〜7)』/鹿賀ミツル(小学館)

・ゲーム
 『時間封鎖』体験版(ALL-TiME)

・特集
 2008年振り返り(その1)
 2008年振り返り(その2)


2008-12-31.

『GAMBLE FISH』『嘘喰い』など、博打を題材にしたコミックが最近面白いな、と思い、その流れに沿って『ギャンブルッ!』既刊7冊を一気読みした焼津です、こんばんは。先ほど「一揆読み」という誤変換が出て、慌てて直したら「一騎読み」になりました。カッコいい気はするけど使いどころがないな……。

 さて、『ギャンブルッ!』。すべての賭博行為が年齢制限ナシで解禁され、『ブラック・ジョーク』のネオン島みたいにカジノや賭場が隆盛を極めている近未来の日本が舞台になっています(ちなみに『ブラック・ジョーク』は主人公コンビがカジノ近辺で発生するトラブルを鎮圧・制圧するというバイオレンス漫画であり、ギャンブル要素はゼロ)。だんだんと技術は向上していきますが、初期段階の絵はかなり物足りなく、また上記した『GAMBLE FISH』や『嘘喰い』よりもハッタリの利かせ方が断然弱くて、読み始めはさほど盛り上がりませんでした。しかし6巻の途中、それまでの展開と比べて明らかに異質な「ロシアンルーレット編」がスタートし、このあたりから一挙にバーンナップする。そして7巻目を迎え、ようやく心の底から「続きが読みたい!」と願うようになりました。たぶん、まとめ買いしてなかったらハマらなかったでしょうね。これは。

 ギャンブル漫画は軌道に乗り始めたあたりで「これ博打とかそういうレベルか?」という話に差し掛かるのが常であり、たとえば『嘘喰い』でも革命を目論むテロリストが出てきましたし、『GAMBLE FISH』に至ってはグリーンベレーを交えたサバイバルゲームすら始めました。『ギャンブルッ!』の「ロシアンルーレット編」とそれに続く「○○編」も「ギャンブル……?」と少し首を傾げたくなるものの、ページをめくらせる力は確かに篭もっている。個人的にロシアンルーレットは好きなネタなので尚更嬉しかったです。『ライアーゲーム』でもやってましたけど、あれは「ごっこ」ですし。ロシルーネタで一番印象に残っているのは『ホーンテッド!』の描写かな。ラブコメでガチのロシアンルーレットかましたライトノベルはアレくらいのもんでしょう。あと、自分でも「レザボア・キャッツ」とかいうの書いてたっけ……(チラッと薄目を開けて読んでみる)あばば(即閉じ)。過去に書いたSSって何でこう、どれもこれもが一発で逝ける威力なのか。で、話を『ギャンブルッ!』に戻しますと、生きるの死ぬのと極端な展開を見せつつも、主人公がキチンと「ギャンブルの怖さ」を認識して勝負しているあたりが妙味となっている。闇雲な自負心を持たず、「あんな相手チョロイだろ」と訊かれて「チョロクないよ! 誰が相手だって」と言い切るところに他とは違う新鮮さを感じました。来月の8巻が楽しみだ。

センスの良さに感動したキャッチコピー教えて(カナ速)

 最近だと『仮想儀礼』「俺は詐欺師だ。もう勘弁してくれ、目を覚ましてくれ――」。あまり好みでない題材(新興宗教ビジネス)を扱っているだけに当初はスルーするつもりだったが、「詐欺師の方が泣きを入れる」っつー倒錯に惹かれて結局買っちゃいました。

「ニトロプラス10年の集大成」 奈良原一鉄シナリオの『村正(仮)』

 キャラクター数が凄すぎ。3、40人はいるんじゃないかこれ……「シナリオライターの奈良原一鉄氏の作業もひと段落」とのことですからシナリオによる遅延はなさそうで、とりあえずホッとしています。前作『刃鳴散らす』のおかげで剣戟・殺陣の面白さに気づいた身としては期待せざるを得ない。にしても、来年でニトロ設立10周年か……時の流れはいと早し。

犬江しんすけさんの冬コミ新刊『ひめたるユメに応うる神は。』、とらのあなで予約開始

 まだ「予約受付中」か……「在庫あり」になり次第、早速注文せねば。

・2008年振り返りランキングの続き。

[小説]

 「一般文芸」「ライトノベル」、それとは別に「短編」という括りでランキングをつくってみます

(一般文芸)

第一位 『赤朽葉家の伝説』
第二位 『インシテミル』
第三位 『ラジオ・キラー』
第四位 『壬生義士伝(上・下)』
第五位 『エア』
第六位 『少女七竈と七人の可愛そうな大人』
第七位 『告白』
第八位 『遠まわりする雛』
第九位 『道化の町』
第十位 『フロスト日和』

 選出に当たって内面で感情が大荒れとか、そういったことは一切なく、すんなり静かにこの10作が決まりました。『赤朽葉家の伝説』の桜庭一樹の出世作にして代表作。地元の作家ということもあって若干応援補正が掛かってますが、補正抜きでも1位の座は揺らがなかったはず。まだ若手ですから粗い部分も多いにせよ、濃密濃厚な物語世界にずっぷり浸らせてくれたことを思えば瑕疵の量など一向に気になりません。ただ一ページ一ページと、紙をめくって読んでいく地味な作業が無上に楽しかった。まさに忘我の喜びという奴です。『インシテミル』は地下施設に閉じ込められた人々たちの間で連続殺人が発生し、疑心暗鬼の中で推理することを余儀なくされるクローズド・サークル・ミステリ。デスゲーム小説の一種でありますが、血腥い箇所は少なく、あくまで本格ミステリの嗜好と趣向に淫しています。原稿用紙1000枚というボリュームにリーダビリティの高い文体が相俟って、これまたページをめくるたびに尽きぬ歓びを覚える逸品となっていました。なんだかんだで、稚気と魂胆のあるミステリは好きです。『ラジオ・キラー』は物語がノンストップで爆走するネゴシエイト・サスペンス。アル中の交渉人が、ラジオ局に立て篭もったテロリストと対峙する。襲い掛かる禁断症状、人質の命を賞金にして開催されるラジオ・ゲーム、突入の支持を待つ特殊部隊。マンガでいうなら『デスノート』、アニメでいうなら『コードギアス』。あのへんに通じる緊迫感とともに一気読みすること確実です。

 『壬生義士伝』は浅田次郎が初めて物した時代小説。幕末を背景に、新撰組の隊士・吉村貫一郎を主人公として「時代に翻弄されながらも道を全うせんとした男」の姿を連綿と綴る。「泣ける」ということに関しては定評のある一作で、卑怯なほど情感へ訴えかける描写が随所に施されており、読む人によっては「クサい」と鼻を摘むかもしれない。当方は摘むどころか鼻水が出てきて勝手に塞がりました。初の時代小説ってこともあってか、かなり気合が入ってます。意外とアタリハズレが大きい浅田作品においても、格段のアタリであると断言しえます。それと、同じ新撰組を扱った浅田作品に『輪違屋糸里』がありますけど、あちらは芹沢鴨が中心なので『壬生義士伝』よりも前の話ですね。先に『輪違屋糸里』を読んだとき、周囲の評価が思ったより低くて訝りましたが、なるほど『壬生義士伝』を基準にしていたわけか。評価する目が厳しくなってしまうのもむべなるかな。『エア』はそれこそ「空気の中にネットが存在する」という、全人類の意識が「接続」される直前の世界をユーラシア大陸の僻村から描くSF。脳内ネット「エア」のシステムに欠陥があり、まるで亡霊に憑依されているかのような混乱状態にある主人公が、自分の住む村が「接続」の脅威に立ち向かえるようパワフルに尽力する。とにかくエネルギッシュな主婦たる主人公が見所。序盤は少しかったるくて、そこを切り抜けられるかどうかが一つ目の難関。二つ目の難関は、理解を超える行動力を発揮する主人公に付いていけるかどうか、という点。『人間以上』を彷彿とさせるラストといい、読み応えそのものは抜群です。『少女七竈と七人の可愛そうな大人』は美しきかんばせと麗しき黒髪を持つ、男嫌いで鉄道好きの少女、川村七竈を中心に据えた連作集。ベビプリを知っている人なら即座にを連想されることでしょう。当方は逆に麗を見るたび七竈を思い出すのですが……これといって大した事件が起こらずヌルいと言えばヌルい内容であるものの、七竈の存在が非常に際立っているため、そんなことは屁でもありません。刊行時期から察して来年には文庫化されるでしょうし、気になる方は角川文庫の動向を要チェック。

 『告白』は未だに町田康の同題作品と混同しそうになりますが、これは湊かなえの方。デビュー作にして10万部突破、このミス4位、文ミス1位と高評価を獲得している。雑誌の新人賞に応募した短編を膨らませて一冊の本にした経緯もあり、当然の如く後付臭さはありますが、多視点形式の使い方が巧妙で、曰く言いがたい生々しさを発露させている。来月には新作を刊行予定とのこと。題名は『少女』。また実にシンプルというか、ひょっとしてタイトルを付けるのが苦手なのかこの作者……。『遠まわりする雛』は米澤穂信の代表シリーズ「古典部」の4冊目にして初の短編集。モノによってミステリ色が濃かったり青春要素が強かったりと、変化に富んでいて飽きません。「九マイルは遠すぎる」リスペクツの「心あたりのある者は」がお気に入り。表題作の「遠まわりする雛」も、主人公とヒロインの想いが微かに通じ合う場面があって好きです。『道化の町』は異才にして鬼才のジェイムズ・パウエルが存分に筆を揮った短編集。出だしは大人しめながら、後ろに進むにつれて大胆さが増す構成となっている。「このネタをこの量で処理できるのか!」と唸るほどに凝縮されています。一読すれば横溢する奇想に打ちのめされること間違いナシ。『フロスト日和』は今年めでたく新刊が翻訳されたフロスト警部の2冊目。今その『フロスト気質』を読んでますが、年内に終わりそうにない。下品でいい加減な性格をしているくせに、こと刑事業に関してはワーカホリック、寝る間も惜しんで事件の捜査に当たる。毎回のこととはいえ、不眠不休で仕事をこなすフロストさん、すこぶるパネェっス。複数の事件が同時並列的に進行し、あっちこっちでリンクしているのも楽しい。創元さんは残るフロスト警部シリーズの翻訳・発売を急ぐべき。ついでにヴァランダー元警部やマロリー巡査部長のシリーズもお願いします。

 ランク外では、今頃まとめ読みしてハマった『餓狼伝 the Bound(Volume1〜4)』、その流れも影響してたまらず購入した『東天の獅子(第一巻〜第四巻)』、3作目ってことでそろそろマンネリ感が漂い始めるがそれでも読むのをやめられない『夜のフロスト』、「第一部・完」といった塩梅でシリーズ再開が待たれる『雨に祈りを』、卑弥呼が未来から遣わされた戦士とともに謎の戦闘マシーンと闘う、バカっぽい設定を感動的にまとめた『時砂の王』、オマヌケな紳士と狡猾なほど有能な執事のコンビで最強無比の笑いを創出する『よしきた、ジーヴス』、詐欺師が擬似家族めいた集団を抱えて大仕事を打つユーモラスなコン・ゲーム小説『カラスの親指』。小説ではないけれど水村美苗の『日本語が亡びるとき』と町田康の『テースト・オブ・苦虫(1〜6)』も興味深く読んだ。

(ライトノベル)

第一位 『境界線上のホライゾンT(上・下)』
第二位 『Fate/Zero Vol.4』
第三位 『スプライトシュピーゲルW』
第四位 『オイレンシュピーゲル肆』
第五位 『されど罪人は竜と踊る(1〜4)』
第六位 『偽物語(上)』
第七位 『護樹騎士団物語(Z〜\)』
第八位 『人類は衰退しました(2〜4)』
第九位 『ブラック・ラグーン シェイターネ・バーディ』
第十位 『円環少女(1〜4)』

 こっちもごくごくすんなりと決定。『境界線上のホライゾン』は“GENESIS”という川上稔の既刊で語られたことのない世界を初めて語る新シリーズ。1話目なのに最終話みたいな盛り上がりを見せる、実に反則臭い面白さ。設定がゴチャゴチャと込み入っているうえ、文体も独特、そしてキャラクター数もかなり多いので慣れる前にギブアップする人も少なくなさそうですが、考え方によってはそこで素直にギブアップした方が宜しいかもしれません。うっかりハマってしまうと川上稔特有のテイスト、いわゆる「カワカミン」に餓えて全作読破するようになったり、虚ろな目つきで「新刊はまだか」と呟いたり、急に「ブルータス、またお前か!」を思い出して噴き出したりするハメになりかねませんので。儲がウザがられるだけの存在感はあり、中毒性の高さも折り紙付きです。さあ、君も湯ATARISHOCK! 『Fate/Zero』の4巻は本来、去年末に読み終えれば収まりが良かったんですけれど、そこはホラ、地方在住者ですから……正月になんないと手に入らなかった。ドラマCDも好調みたいで、今更語ることもあまりないのですが、Fateと虚淵が両方好きな自分はつくづく果報者だなぁ。『スプライトシュピーゲル』と『オイレンシュピーゲル』は冲方丁が展開するシュピーゲル・シリーズの両輪。相互にリンクする箇所も増えてきて、読み応えは増す一方。ハードなアクションとキャラクターの魅力、その二つのみならずTRPG形式の世界統一ゲーム「リヴァイアサン」みたいなスパイスを利かせ、二重三重に読者を楽しませてくれる。来年に最終章を開始する予定とのことで、これはもうワクワクせざるをえまい。

 『されど罪人は竜と踊る』は角川スニーカー文庫の同題シリーズが小学館ガガガ文庫に移籍したもの。「新章」ならぬ「真章」を謳っており、1巻と2巻はスニーカー文庫版の全面改稿で、3巻と4巻は完全新作。改稿版も加筆パートが山盛りで要注目ながら、やはりファンの目は当然完全新作に向く。3巻と4巻、併せて1250ページ弱と、『境界線上のホライゾン』に次ぐモンスター級の分厚さでゲップが出るほど堪能させてくれた。正直、勢いはスニーカー版よりも落ちている気がするけれど、それでも再開したことが嬉しいし、あれだけ味わった後でさえ「続きをもっと読ませろ」と思うことは確か。ちなみに、され竜未読者にはとりあえずガガガ版を先に薦める当方ですが、本音を申せば「既刊は全部読め」。そして自分自身には「雑誌掲載分も全部読め」と言いたいところ。『偽物語』は今度アニメ化される『化物語』の続編。上下連続刊行という噂もありましたが、下巻は来年の3月予定とのことです。『化物語』読んでいる人には今更薦めるまでもありませんが、相変わらず本筋をうっちゃって脇道に血道を上げる西尾維新半端ネェ。ビースティなまでの誘いっぷりを示す千石ナナミ撫子に蕩けた。上巻っつってもエピソード自体は完結しており、「揃えてから読まないとモヤモヤするんでしょ?」みたいな心配は不要、さっさと読んじゃって構いません。どっちにしろ次の下巻であぼぱ木さんシリーズは完結するので、大切に読みましょう。『護樹騎士団物語』はローマ字表記だと分かりにくいですが、4冊読みました。「3冊」の間違いではありません、Zが上下に分かれているので「合計4冊」で合っています。「ミルソーティア」なる中世ヨーロッパ風の異世界を舞台に、ガイメレフとかモーターヘッドとか機甲兵とか、ああいう路線の甲冑めいた騎士型ロボット「守護騎」を駆って様々な敵を退けながら成長していく(あんまり成長してない気もするが)少年の姿を描くSFチックなファンタジー。文章は若干粗いけど読みやすく、展開は若干どころか途轍もなく遅いけれどダイハードな見せ場が目白押しで、文句を垂れつつも新刊が発売したら尻尾振って買いに行ってしまう。少し前に「現代の世界に守護騎が登場する」という姉妹編も開幕して、今後がより一層楽しみだ。

 『人類は衰退しました』は田中ロミオの小説デビュー作をシリーズ化したもの。2巻は去年末の発売で、3巻と4巻が今年の刊行。あと『AURA〜魔竜院光牙最後の闘い〜』という単発作品も出している。本業はどうなっているんだろうかと思うが、さておき『人類は衰退しました』は新人類「妖精」が好き勝手やらかし、迂闊でヘタレで顔見知り激しいインドア志向の主人公(♀)が巻き込まれる脱力系ほのぼのファンタジー。2巻で伸びて3巻でやや下がり、4巻で安定。エピソードごとに異なる試みをしているせいもあり、個々の評価を巡って意見が散らばると申しますか、読み手によって「これを面白いと思えるか否か」の温度差が生じがち。来年に新展開があるとのことですが、はて、なんだろう? 『ブラック・ラグーン シェイターネ・バーディ』は虚淵玄と広江礼威、奇跡のコラボレート。オリジナルストーリーで両者のファンを持て成してくれるのはもちろんのこと、シャドーファルコンという「甲賀デスシャドー流30段」のグレイトなニンジャが出てきて誰彼構わず爆笑させてくれます。アフガンツィのスタンとか、本編も本編で印象深いけれど、シャドファルの存在感が強すぎ。虚淵御大にはいつかもっとちゃんとした忍者モノも書いてほしいものだ。『円環少女』はサドっ気たっぷりの女子小学生(正体は異世界からやってきた魔導師)がヒロインを務める現代ファンタジー。ロリコン御用達と評判なれど、ストーリーは至ってハード。文章が硬くて若干読みにくいことと、各種魔法の定義や概念が分かりにくいことが難点ですが、ヒロインの鴉木メイゼルがしっかりキャラ立っているからある意味安泰なり。まだ読んだ冊数より積んでる冊数の方が多いので、来年も頑張って崩して行きたい。

 他、序盤は少しかったるいが、途中から百合で殺し愛な芳醇極まりないテイストが醸し出される『天になき星々の群れ』、衝撃の展開と臨場感溢れる戦闘描写で血が沸き立つ『花園のエミリー』および『戦場のエミリー』、前日譚という事情もあってレギュラー陣のほとんどが登場しないのは寂しいけども、ちゃんとストーリーの隙間を埋めてくれてホッとした『傷物語』、垢抜けないが正々堂々と熱血路線を突っ走ってくれるのが清々しい『超人間・岩村』、端の端まで血が通い神経が行き届いた文章に惚れ惚れとしつつも「で、続きはいつ?」と猛烈に訊ねたくなる中華風ファンタジー『DRAGONBUSTER 01』、ドロドロした部分とスッキリ爽やかな場所の落差が激しいが、そこにもまた魅力を覚える『レヴィアタンの恋人(U〜V)』など。違う意味で忘れがたいのは、何と言っても『紅〜醜悪祭(下)〜』。「怒りの庭」の傷も癒えぬ身にあの仕打ちはなかなか酷でした……。

(短編)

第一位 「道化の町」/ジェイムズ・パウエル(『道化の町』所収)
第二位 「心あたりのある者は」/米澤穂信(『遠まわりする雛』所収)
第三位 「鼻」/曽根圭介(『鼻』所収)
第四位 「アルトドルフ症候群」/ジェイムズ・パウエル(『道化の町』所収)
第五位 「最後の言い訳」/曽根圭介(『あげくの果て』所収)

 短編集は頑張って30冊くらい崩しましたが、年間通して記憶に残る短編ってそんなにないものですね。読んでいる間は面白くても本を閉じた途端にあやふやになって、後でタイトルだけ読んでも筋立てがどうだったか、オチがどうついたのか、考え込んでも思い出せない奴があったりします。「短編集」という括りで見るなら上記した本以外にも『ジョーカー・ゲーム』『生還』を挙げたいところだけど、あくまで「短編」という縛りならこの5つ。

 「道化の町」は住人たちのほぼ全員が道化師、つまりピエロで、「ピエロの美学」に則って日常生活を送っている奇怪な設定の短編。いわゆる「奇妙な味」という奴です。ピエロ・シティというと何だかコミカルな印象を受けますが、予想に反して結構うらぶれており、切ないほどに煤けたムードを放っている。「可笑しさと哀しさの二律背反」はオチに至るまで徹底されていて、もう泣けばよいのやら笑えばよいのやら。何とも複雑な読後感を残していきます。「心あたりのある者は」はごく限られた情報だけで推理し結論を導く、ストイックな形式の短編ミステリ。放課後、突然流れ出した校内放送の言葉を巡って二人の少年少女が議論を交わす。元ネタはハリイ・ケメルマンの「九マイルは遠すぎる」ですね。日本推理作家協会賞にノミネートされ、惜しくも受賞は逃しています。「九マイルは遠すぎる」の発展形であって、進化形ではない――と見做された様子。しかし「九マイルは遠すぎる」が今でも頻繁に読まれているのか、という素朴な疑問があり、九マイル精神を語り継ぐためにも「心あたりのある者は」はもっと評価されてほしい作品だと思う。「鼻」は日本ホラー小説大賞の短編部門受賞作。「テング」と「ブタ」、ふたつの人種が存在する異様な世界で、鼻にまつわるおぞましいストーリーが進行する。本編では説明が省かれているためオチが少し分かりにくいですが、そのへんは大森望が解説で丁寧にネタバレしてくれる。読んで意味がよく分からなかった人は巻末解説へ直行すべし。「アルトドルフ症候群」はある謎が解けないせいで200年以上死ねずに彷徨っている男が「謎を解かないと殺す」と要求してくる「奇妙な味」の短編、というよりホラー。無茶苦茶な状況のくせに謎解きは凝っていて、ミステリ読者も納得の行く結末だ。「最後の言い訳」は、ぶっちゃけるとゾンビ系のホラー短編。死んだ後に蘇る人間が出てきて社会問題化する、というあたりは『ステーシー』じみているが、こっちは「蘇生者」に理性が残っているため事態がより錯綜する。実はゾンビものの良さがそんなに分からない当方だけど、これに限ってはなかなかの収穫だと思いました。個人的に好きなゾンビ小説はダン・シモンズの「最後のクラス写真」と大槻涼樹の「死者達の聖誕前夜」。後者はぐぐったって一件も引っ掛からないのが悲しい。

 ランク外においては、オチがわざと曖昧になっていて想像を膨らませてくれるリドルストーリー「宵待草」とハイになった江戸川乱歩が書いたような短編「夜だ! 青春だ! パリだ! 見ろ、月も出てる!」(ジョン・コリアの『ナツメグの味』所収)、のっけから爆笑させてくれる水戸黄門パロディ「逆水戸」(町田康の『権現の踊り子』所収)、本格ミステリへの愛というか偏愛がヒシヒシと感じ取れる「曲がった犯罪」(山口雅也の『キッド・ピストルズの冒涜』所収)、「きさま! 入っているなッ!」と叫び出さんばかりの熾烈な攻防を公衆トイレで繰り広げる「使用中」(法月綸太郎の『しらみつぶしの時計』所収)、未来と過去を行ったり来たりして思わずニヤリとするような話を構築するタイムスリップ小説「青ざめた逍遥」(クリストファー・プリーストの『限りなき夏』所収)あたりも割と良かったです。

・拍手レス。

 ろくでもない思い出集Ver,2008の中の物にどれも自分には縁がなかったのは、運が良いと言えるのだろうか…。いや、怒りの日は体験しましたが。
 なぜだか、怒りの日が遠く見える。

 舐めた口利きで申し訳ないですが、ハチワンダイバーは麻雀マンガではねー気がしますよ?
 将棋だった……orz 該当箇所を訂正しました。

 来年?頃に、怒りの日完全版で、正田首領閣下がご帰還なされるという噂が…
 また既視感(ゲットー)が来る、銀色に光る水面に映す、スワスチカの影。

・では良いお年を。


2008-12-28.

・迫る年の瀬。そろそろ2008年をざっと振り返ってみたい焼津です、こんばんは。

 なんと申しましょうか、とにかく、ろくでもない思い出がわんさか残る年でした。1月『Dies Irae』ショックが抜け切らない中で発売した『Garden』が同じ惨状を呈していて阿鼻叫喚。「怒りの庭」や「ガーデニング」という用語が生まれるに至りました。今でもふと「いらっしゃい、アイの庭」が脳裏をよぎってあの頃の潰れるような思いに引き戻されることがあります。なまじ面白い部分があるだけ余計にキツい。追加データの開発は遅々として進まず、完成したのは竜胆愛シナリオのみ。姫宮瑠璃シナリオは2009年7月末日予定だそうな。明くる2月、「たくみん」こと荒川工がpropellerを退社し、同氏がシナリオを手掛けていた『はるはろ!』も無期延期状態に陥る。そして「瀬戸なんとかさん」こと瀬戸口廉也が引退宣言。別名義で小説デビューした――という噂もありますが、こちらは傍証だけで確定事項じゃありません。3月は比較的平穏のうちに過ぎ、次の4月、177ページという驚異の薄さが「それでも水増しした結果だった」と知らされる『紅〜醜悪祭(下)〜』カムイン。翌月の公式ファンブックともども片山ファンのハートを粉と砕いてくれました。4月と言えば、永劫回帰発動の『つよきす二学期』もあったか……体験版しかやってないのでコメントは控えます。5月『Clover Point』体験版でよるよる(小鳥遊夜々)の魅力にノックアウトされた矢先にMeteorが解散。現在はCometという新ブランドが立ち上がってますが、よるよるFD的なものが出るかどうかは不明。6月、秋葉原の事件。あのニュースを見た瞬間、絶句しました。他ではRUNEから野々原幹や赤丸といった主要スタッフ陣がごっそり抜けて驚かされましたが、翌月にはもうたぬきそふとを結成し、既に第1弾も発売されているという迅速さ。二重の驚愕でした。7月ぼとむれすのおま天(おまかせ!とらぶる天使)が流通から手を引かれてほぼ発売中止確定となるものの、もはやリアクションを取るのも億劫になってくる。8月を辛くも凌いで辿り着いた9月、HDDがクラッシュするわ『俺たちに翼はない』が延期するわで踏んだり蹴ったり。そして好きなハードボイルド作家、ジェイムズ・クラムリーが死去。もっとミロやシュグルーの活躍が見たかったのに……10月飛んで11月『恋する乙女と守護の楯』がアニメ化という報が舞い込むもすぐに誤報と発覚して落胆。しかしCS移植の出来は良かったらしくホッとしました。12月AcaciaSoftが活動停止、木之本みけは「絶賛ニート中」に。ファンが4年もの月日を掛けて待望した『魔法少女アイ参』ごらんの有様だよ。「いらっしゃい、アイの庭」に始まり「おかえり、アイの庭」に終わる。つくづく「アイの庭」というフレーズが暗示的な一年でした。

 とはいえ無論、良いニュースだって沢山ありました。TYPE-MOONが『魔法使いの夜』『Girls' Work』リメイク版『月姫』と一挙に3作の制作を告知。浅井ラボがガガガ文庫で『されど罪人は竜と踊る』シリーズを再開。『ダブルブリッド』が遂に完結したうえ短編集も発売。みなとそふとが大作スメル香る『真剣で私に恋しなさい!』の情報公開を開始。“氷と炎の歌”第4部『乱鴉の饗宴』やフロスト警部シリーズの新刊『フロスト気質(上・下)』、舞城王太郎久々の新作『ディスコ探偵(上・下)』や町田康の『宿屋めぐり』と、豪華なラインナップが短期間に押し寄せてきて嬉しい悲鳴が止まらず。『アイスウィンド・サーガ』の復刊も再開し、最終巻たる第3部『冥界の門』までもが発売決定。随喜の涙に濡れました。アイスウィンド〜の続編に当たる『ドロウの遺産』も刊行開始してまこと喜ばしい限り。『Dies Irae』は、ゲーム本編に関してはまったく動きがないにせよ、ドラマCDの2枚目『Die Morgendammerung』が解き放たれ、ファンとしては買うより他なかった。同じ夏には『空の境界 未来福音』も竹箒から同人誌として刊行さる。長らく沈黙していた川上稔の新シリーズ『境界線上のホライゾン』が満を持してスタート、まだ1話目なのにいきなり1000ページオーバーして度肝を抜いてくれる。同じ頃、古川日出夫畢生の大著『聖家族』が全国の書店にて堂々たる威容を晒す。まだ1ページも読んでいませんが、原稿用紙2000枚分収容の貫禄を外から眺めるだけでも息が荒くなる次第。厚い本と言えば、『ソリッドファイター[完全版]』。諸事情あって1巻だけで打ち切られていたが、未公開のまま秘蔵となっていた2巻3巻の原稿をまとめ、書籍ではなくグッズ扱い(当然ISBNがなく、一般書店では手に入らない)ながらも何とか世に出る。イベント会場やアニメイトでの販売もあったそうですが、地方民なので結局通販に頼って入手しました。やっと梱包を解いた段階で、封は今もなお切っておりません。そして最後のポジティブ・サプライズは夜麻みゆきの復活。小学生からファンをやっていたこともあって、感に堪えない。

 エロゲーだと、事前では大して期待を寄せてなかったのにいざプレーすれば「これ、当方のためにあるソフトじゃないか!」と感激して叫ぶような奴が『るいは智を呼ぶ』『とっぱら』『漆黒のシャルノス』、3本もあって、もう笑うしかなかった。未完成だ何だと謗られた『暁の護衛』も個人的には面白かったし、遊んだエロゲーについては結構充実していました。ライターの衣笠彰梧繋がりで手を伸ばした『こんな娘がいたら僕はもう…!!』が意外な掘り出し物だったり、『車輪の国』にハマって『G線上の魔王』を発売日買いしたり、『コンチェルトノート』の体験版でかわしま声の莉都に魅了され、まだ開封してないけど既に購入済だったり……なにげに今年はあかべぇ系列と縁のある年でしたね。んで、そのあかべぇ、発売したソフトの評判は上々だったのに通販でやらかしちゃった罠。他は『おたく☆まっしぐら』、誰もが認める地雷ながら、覚悟完了して挑みかかれば意外と「傑作の資質」を有している一本だった。主人公がやたらとアツくて爽快だし、男ツンデレだし、「オタクのヒロイン」という設定もちゃんと活きてるし(一部ビミョーだけど)。「ぜんいん☆ビョーキ!!」というキャッチコピーが実に相応しく、実に中毒性の高い世界。なんだかんだで今年もっとも熱中して楽しんだゲームかもしれない。つくりのチャチさで敬遠していた『吸血奇譚ドラクリウス』も、腰を据えてじっくり取り掛かればハマる内容でした。まあ、クリア寸前まで進めたらHDD吹っ飛んでデータが消失しましたけど。まさに涙目。暇を見つけて再インスト・再攻略しないと……アニメは『コードギアスR2』『ブラスレイター』くらいしか見なかったけれど両方とも夢中になれる代物だったから別に仔細なし。ギアスは毎回毎回よくもまあこれだけ強烈にあざといヒキをつくれるものだなぁ、と呆れるを通り越して感心しました。ブラスはヘルマンの「ゲルトォォォォォォォ!」が耳の奥にまでこびりつき、例のズボンアニメに出てきた妹想いキャラ(ゲルトルート・バルクホルン)をCGサイトなんかで見かけるたび反射的に「ゲルト! ゲルトォォォォォォォ!」と叫ぶ奇癖が染み付いた。映画はクリスチャン・ベール主演の『ダークナイト』が観たかったけど……上映する映画館が地元になくて泣きました。結局、年末に『WALL・E/ウォーリー』を観に行ったくらいか。周りが子供ばかりで居辛かったです。フロンティア・スピリッツ剥き出しのストーリーはいまひとつ好きになれなかったけれど、作り込まれた映像美には目を瞠った。イーヴァ(イヴ)よりもウォーリーの履帯痕を拭きまくる清掃ロボが可愛くて好き。

[漫画]

 今年はかなり読みました。総冊数がどれくらいか、当方自身にも見当がつきません。んで、全部ごっちゃにすると愛着補正とかいろいろな夾雑物が混入するかもしれず、そういったものを少しでも漉し取るため「今年読み始めたマンガ」と「以前から読み続けているマンガ」、それと「一冊で完結しているマンガ」の3つに分けてまとめてみます。

(今年読み始めたマンガ)

第一位 『医龍(1〜19)』
第二位 『ヴィンランド・サガ(1〜6)』
第三位 『GIANT KILLING(1〜8)』
第四位 『ちはやふる(1〜3)』
第五位 『孤高の人(1〜4)』
第六位 『ノノノノ(1〜4)』
第七位 『HR〜ほーむるーむ〜(1〜2)』
第八位 『銀と金(1〜11)』
第九位 『ベル☆スタア強盗団(1〜3)』
第十位 『クロサギ(1〜20)』

 この3倍は枠がないと今年は語り切れないな……とにかく「豊作」の一言に尽きる年でした。まとめて買ってまとめて読んだ作品が多い分、極端なものになると20冊くらい計上することになりますね。一位を取った『医龍』も、ぶっちゃけ巻数の勝利といったところでしょう。最近は展開遅くなってきてややダレ気味ながら、1巻から手をつけると寝食忘れて読み耽るほどの面白さが詰まっています。選んだ当方自身ちょっと意外な感もありますが、「1、2冊読むだけ」のつもりで本棚から取り出して、気が付くと全巻読破していた……という記憶を掘り返してみるに、ごく順当な結果か。『ヴィンランド・サガ』は同作者の『プラネテス』がいまひとつ気に入らなかったことと、「SF描いてた作家がいきなり歴史モノに鞍替え」に不安を覚えたこと、そして移籍問題もあってあまり良い印象を持っていなかったことからずっと食わず嫌いしていました。それでも評判がイイので騙されたつもりで読んでみたらチクショウ、本当に面白いじゃないか! と憤慨しつつ熱中した次第。骨太でいてハッタリの利いた作風が心地良く、「一つの作品を読んだだけで作家のすべてを見た気になるのはいかんな」と反省致しました。『GIANT KILLING』はサッカーマンガにして「監督が中心」という異色の内容。勝ち負けよりも、「試合を作る」ことに精力を傾けるあたりが新鮮で面白い。スポーツにはさして興味のない人間ながら、こればかりは続きが気になって仕方ありません。タイトルに「KILL」が入っているのはなんだか物騒ですが、意味合いとしては「(弱い奴らが)強い連中を倒す」みたいな感じ。和訳すると『大金星』か。黒田硫黄の短編集だな、そりゃ。

 『ちはやふる』は「百人一首かるた」を題材にした「少女マンガ」、なんつー表面的な説明ではとても伝えきれない熱量を秘めた「男子も刮目して読むべし」な一品。少女マンガってんで「キラッ」「ドキッ」な展開を想像するやもしれませんが、そんな分かりやすいロマンチックガジェットは全くおまへん。今のところ友情が主体となっており、雰囲気を端的に申せば「かるた>>>>>色恋沙汰」。島本和彦がギャグ抜きで少女マンガを描いたようなものだと考えてください。舐めて掛かれば、いつの間にか沸々と滾り始めている己が血液に戸惑うこと必至です。『孤高の人』はチームを組まず、自分一人だけを恃み、単独での山登りに生涯を懸けた男の青春記。新田次郎の同題小説が原作とはいえ、舞台を現代に移すなどリメイク箇所が目立ち、ほぼオリジナルの作品に近い。他の何かを犠牲にしてでも理想を闇雲に追い求める姿の、力強さと空虚さ。それが全編に篭められています。可憐なムードのあったヒロインが、面影など跡形もない、弩が付くほどのビッチに変貌するところにも注目だ。『ノノノノ』はスキージャンプという、割合地味なネタをしっかり盛り上がるよう調理しているスポーツマンガ。「『エルフェンリート』の作者」ということで少し身構えつつ読んだが、1巻も読み切らぬうちにあっさりと魅了され、たやすく骨抜き状態に。チャンピオンのマンガかと目を疑うほど沢山の人格破綻者がいて、下手なバトルものよりもずっと鬼気迫っています。出し惜しみというものがまるでない、全編ノーガードで特攻するような危険と愉悦に満ちた作品。

 『HR〜ほーむるーむ〜』は既に完結済の4コママンガ。3人の女子中学生をメインに、明るく元気良く、適度な騒がしさで日常のあれこれを綴る。非常にテンポが良く、また絵柄も綺麗で、「学園4コマの理想形」と表現しても差し支えありません。2巻だけで終わってしまったことが悔やまれるほど。ちなみにこの作品自体は全年齢対象ですが、同作者の18禁コミックスと一緒の学校が舞台となっており、中にはリンクしているコマも……両方に目を通すと「おい、これ精液洗い流してるトコじゃないか!?」みたいな発見があって、ひとしきり興奮。『銀と金』は福本伸行の代表作。金を巡ってコン・ゲームしたり、時には殺し合いが始まったりと、なかなか先の展開が予想できない。常にストーリーに緊張感があり、かつ短い巻数で話を終える濃密さがステキ。未完のまま幕を引いているのでいつか再開を希望したいが、近頃のカイジを見るに、異様な引き伸ばしに陥るのではないか……と不安になったりもする。『ベル☆スタア強盗団』は実在の女性アウトローをモデルとしたヒロイン、ベル・スタアが壮絶なガンアクションを繰り広げる西部劇コミック。「西部劇」と聞いて思い浮かぶありきたりのイメージを軒並み覆してみせる派手なシーンの連続で、ラストを飾る3巻は特に圧巻。山場、山場、山場と次から次へクライマックスに差し掛かり、危機一髪の叩き売り、もはやウェスタン百裂拳です。『クロサギ』はドラマ化・映画化して話題を呼んだゴンベン(詐欺師)コミック。「シロサギ(普通の詐欺師)を喰う詐欺師、ゆえにクロサギ」と、設定の時点で既に勝っている。ミステリで言ったら「殺人犯のみを殺す殺人鬼」みたいなものか(実際にそういうキャラはいる)。詐欺ネタだけに話のほとんどはコン・ゲーム描写に費やされ、「如何に相手を騙すか」が眼目となります。「あんたの流儀であんたを騙してみせる」(『T.R.Y.』のキャッチコピー)な因果応報譚に特化していることもあり、話の展開は『ミナミの帝王』以上にパターン化しているのがやや難か。そして何より、個々のエピソードを重視しすぎるせいか全体のストーリー進行がとても遅い。今月になって既刊20冊まとめて読んだ当方でも不満が残るほど。しかし様々な時事ネタを織り込んで「詐欺の手口展覧会」といった趣を醸すところは悪くない。いや、良い。1巻あたり2、3個のエピソードを盛り込み、露骨なヒキをつくって巻と巻とを跨るような話は決して仕込まないあたりも良心的。キリの良いところで終わってて次巻から『新クロサギ』が始まることだし、今後もチマチマと読んでいきたい。

 上記以外のマンガにも、痺れるような面白さを喰らったものは山ほどあります。一度読んで挫折したけれど、『ノノノノ』の影響で再チャレンジしたら見事にハマった『エルフェンリート(1〜12)』、ややストーリーが散漫になっている部分もあるが、迫力漲るB級アクションとして心置きなく興奮できる『ウルフガイ−狼の紋章−(1〜4)』、基本は代原(代理原稿。他の作家が原稿を落としたときだけに雑誌掲載される)であるからして「単行本が出たことが奇跡」と言われるが、読んでみたら奇跡でも何でもない、単行本化したのはごく順当な結果だと納得できる『ふたりぼっち伝説(1)』、ハチクロの作家が将棋マンガを描く……ということで心配したが、杞憂もいいところで明暗のバランスがハチクロ以上に優れている『3月のライオン(1〜2)』、ヘンテコなタイトルなのに一話一話がスリリングで密度も濃く、黒田硫黄作品において今のところ一番好きな『セクシーボイスアンドロボ(1〜2)』、超絶ラッキーマインな少女とその幸脈を奪わんとする貧乏神との相克、巨乳と貧乳のいがみ合いを人情要素も交えてコミカルに演出する『貧乏神が!(1)』、最初に絵で惚れて、次に些細な日常描写で心惹かれ、最後に予想外の展開で胸に熱いものが込み上げてきた『ソラニン(1〜2)』、特異なネタと勢いの良さで押し切る爽快な4コマ『男爵校長(1〜2)』とその続編『男爵校長DS(1)』、タイトルの割になかなか野球が始まらないけれど、無駄に迫力溢れる作画でワクワクさせてくれる『白球少女(1〜2)』、健全なのか不健全なのか、シモネタは多いのにお色気描写がなきに等しい『生徒会役員共(1)』、最近は吹雪の森に天狗が跳梁したりギアスみたいな眼力が炸裂したりする、もはやギャンブルとは懸け離れた内容なのに、それでも妙な勢いがあって呑まれる『GAMBLE FISH(1〜9)』、レヴィアタンを「レヴィアたん」と読み替えてまぐわう頭の悪さながら、生命の力強さを通して朗々と人間讃歌およびSEX万歳を謳い上げる破格の成年コミック『海神』『海贄』『海宴』の3部作、ドラ○もんをモデルにしたメイド「ドラエさん」が主人公に基礎的な体術を逐一仕込みつつ、メンタル面でもケアを行い、ストリートファイターとして成長させていく『ツマヌダ格闘街(1〜4)』、今年で完結したけど、サナギさんとフユちゃんの友情は永久不変に続けと願う『サナギさん(1〜6)』、コガラシの問答無用な押し付けご奉仕もさることながら、進めば進むほどヘタレていくフブキさんが美味しい『仮面のメイドガイ(1〜8)』、明るくキュートでほのぼのと楽しくヤバいほど和んで寛げる妖怪マンガ『怪異いかさま博覧亭(1〜3)』、“週刊少年ジャンプ”の良心として急上昇中のトラブルシューティング学園コメディ『SKET DANCE(1〜5)』、タイトルが『HR〜ほーむるーむ〜』と被るせいでややこしいが、サムくなるギリギリのラインでネタを捌くタイトロープダンサーな心意気が粋な『HR(1〜2)』、チュンソフトの『街』みたく錯綜する人間関係をザッピング感覚で追う連作構成に歯応えのある『駅から5分(1〜2)』と、まだまだあるけど逐一挙げていったらキリがない。日が暮れるどころか日が昇る。なのでこれより先は泣く泣くオミットさせていただきます。

(以前から読み続けているマンガ)

第一位 『GA(2)』
第二位 『トリコロ MW-1056(1)』
第三位 『惑星のさみだれ(5〜6)』
第四位 『ゾンビ屋れい子(4〜11)』
第五位 『ふおんコネクト!(2)』
第六位 『少女ファイト(4)』
第七位 『ユーベルブラット(7〜8)』
第八位 『とある科学の超電磁砲(2)』
第九位 『宙のまにまに(4〜5)』
第十位 『っポイ!(26)』

 以前から読み続けている、ということは原則「今年出た新刊しか読まない」わけで、この部門は自然と冊数が少なくなります。が、中には「積んでいた分をまとめて消化した」という作品もあり、必ずしも少冊数とは限らない。そんなムラの多い条件を突破して一位に輝いたのが『GA(2)』。副タイトル「芸術科アートデザインクラス」。個性的なキャラクターたちが和気藹々と漫才を繰り広げる様子も充分に楽しいが、「アートデザイン」という主題が毎回キチンとネタに絡んでいて、読むたび「ウメェ!」と唸ること確実です。2巻では遂に先輩たちが登場。突然キャラが増えるため最初は混乱を来たしますが、慣れてしまえばこちらのものであり、あーさんとぶちさんの年季入った夫婦チックな遣り取りがマジたまんない。今度アニメ化するそうですが、そんなこととは無関係にとにかく大プッシュしたいマンガだわ。『トリコロ MW-1056』は芳文社からメディアワークス(アスキー・メディアワークス)に移籍してきた4コママンガ。旧版が2冊刊行されており、内容の重複もないので、巻数は「1」だけど中身は実質3巻。ブランクが空いたせいもありますが、巻数の割に随分と長期間続いているシリーズで、絵柄の変化もかなり激しい。しかしネタの巧さは相変わらず絶品であり、待った甲斐があると頷ける出来です。現在出回っているのは通常版ですが、単行本未収録の作品を寄せ集めた豪華な冊子『稀刊ツエルブ』が付いてくる「特装版」がもし入手可能であれば、そっちを買うこと推奨。『惑星のさみだれ』は地球を滅ぼそうとする魔法使いにヒロイン・さみだれ含む一行が挑むけれど、実はさみだれってば単なるお姫様じゃなくて、「魔法使いではなく自らの手でじきじきに地球を破壊する」ことを最終目標とする魔王だった……というトンデモない設定で綴られる終末バトルロイヤル。奇を衒いすぎ、と思うかもしれませんが、先が読めず退屈しないストーリーであることは確かです。何より、物語を紡ぐ作者の技量が生半ではなく、ほんの数ページで読み手の心を掴んでしまう。最新刊はちょいと泣きそうになりました。

 『ゾンビ屋れい子』は「少女向けであるにも関わらず、JOJOのスタンドバトルをやってしまった」という心底やっちゃった感が濃厚なホラーマンガ。でも面白いんだから問題ナッスィング。主人公・れい子の宿敵が「義務教育を受けていないせいで簡単な英単語も読めないおバカさん」であることが判明したりなど、結構ギャグ色も強いが、それ以上に転がる死体の数と噴き上がる血飛沫の量が凄まじい。怪しげなキャラが新たに登場したかと思えばもう次の瞬間には殺されていたりとか、ほとんどのネタが一回きりで使い捨てられています。もう勿体無いくらいに展開が早い。豪華と言えば豪華、とにかくハイテンションです。それにしても、巻が進むごとにヒロインたちの乳がどんどん大きくなっていくのはHellsing病の一種だろうか。『ふおんコネクト!』は超高密度4コママンガ。人間関係が妙に入り組んでいて、「三姉妹だけど、養子だったり連れ子だったりで血縁関係は一切ない」とかいった具合に、なかなかややこしい。あと、1つ1つのコマにネタを詰め込みすぎで、終始ゴチャゴチャしたムードが抜けません。癖が強くて慣れるまで少し掛かるものの、一旦馴染んでしまえば後は文字通り「読むたびに新しい発見がある」という桃源郷を堪能するのみ。ハマる人とハマらない人との差が甚大なのでオススメするタイミングを見つけるのに苦労しますが、これに関しては是非とも苦労を重ねて布教していきたい。『少女ファイト』は女子バレーマンガ。一応はスポ根の要素もあるけれど、群像劇の色合いが特に濃い。女子バレー部のみならず男子バレー部、更には部員の家族まで話に絡んでくることもあり、登場キャラクター数が何気に膨大となっています。それでもキッチリと描き分けて混乱を起こさないよう配慮している作者に拍手。セリフ回しにしろコマ割りにしろパースの付け方にしろ、ひたすら「滑らか」の極地を行くため読んでいて非常に寛げます。3巻で落とした勢いも4巻で難なく取り戻した。来月出る予定の5巻が今から無性に楽しみ。

 『ユーベルブラット』は「英雄への復讐」をテーマとするダークファンタジー。タイトルの「ユーベル」が英語で「Evil」なのは共通見解ですが、「ブラット」が「leaf」か「blade」かで意見が分かれています。「刀匠(ブラットマイスター)」という用語が出てくることから察するに後者で、「邪悪な刃」、微邪気眼風に訳せば「悪に染まりし刃」ではないかと睨んでいますが……「Evil Leaf = 悪の華」と見做す向きもあってこれも捨てがたいけど、ぐぐってみたらボードレールの『悪の華』独題は「Die Blumen des Bösen」みたいですし。ともあれ、整った画力で復讐譚という美味しい題材を扱っており、標的が「英雄」だけに国家レベルのスケールで攻防が繰り広げられてグイグイと引き込まれる。スケールが壮大すぎてストーリーの進みが遅くなっていることは残念にせよ、今ヤンガンでもっとも続きが気になるシリーズです。『とある科学の超電磁砲』は『とある魔術の禁書目録』のスピンアウト。原作ライトノベルには存在しない独自エピソードを編んでいる。原作と同等か、あるいはそれ以上の出来かもしんない。メディアミックスのため間に合わせで粗製乱造されることが多いコミカライズ作品の中、これだけのクオリティを保っているのはちょっとした奇跡じゃないかしら。原作知らなくても充分楽しめる仕様につき、禁書目録未読者・未視聴者にも推しておきたい。『宙のまにまに』は天文学部の活動をのんびりと描く部活マンガ。掲載誌がアフタヌーンと聞けば「いかにも、らしい」と思う至って地味な内容です。噛めば噛むほど味わいが増し、天文学に対する興味が薄い当方でも入れ込んでしまう罠。というか、天然ウェーブ髪の姫ちゃんが実にかあいいわぁ……報われない恋を頑張り続ける彼女の姿に、ハチクロの山田さんがほんのり重なります。『っポイ!』はかれこれ17年以上続いている少女マンガ。サザエさん時空ではないものの進行速度が途轍もなく遅く、中学3年生として登場した主人公たちがこの巻でやっと卒業を果たす。長かった……ホント長かった。長すぎて好きなヒロインも一ノ瀬から相模に変わってしまったくらいだ。久々の新刊という嬉しさから半ばご祝儀票めいた部分もあるが、何せ10年以上に渡って読み続けている少女マンガなんてこれだけなので、愛着も並大抵ではない。

 ランク外は、『ユーベルブラット』と同じ人が描いているとは信じがたいはっちゃけぶりを炸裂させる女装魔法少女コメディ『ブロッケンブラッドV』(華々しい表紙してるだろ、♂なんだぜ……そいつら……)、揺るぎなき安定感でゆるゆるゆったりと不滅の日常を謳う『よつばと!(8)』、メチャクチャな不定期連載であっても面白ければ許されるという好例(悪例?)『HUNTER×HUNTER(25〜26)』、「文科系部活動マンガ」という観点で読めば『宙のまにまに』よりエキサイティングな『とめはねっ!(3〜4)』、女子校という閉鎖環境の中、「妖怪が視える」という体質のせいで始終厄介事に巻き込まれ、己の心を巣食わんとする人間不信に抗し続ける静流の健闘がいじらしく、読者のSっ気を密かに刺激する『もっけ(8)』、将棋マンガなのに生々しい暴力に晒されたりとか、違う意味で問答無用な『ハチワンダイバー(6〜9)』、ほとんどのネタが「日本人よりも日本人らしい金髪碧眼ロリっ娘」という定型で固められているのに不思議と飽きないほのぼの4コマ『うぃずりず(2〜3)』、他いろいろです。

(一冊で完結しているマンガ)

第一位 『キャノン先生トばしすぎ』
第二位 『FLIP-FLAP』
第三位 『おませで御免!』
第四位 『稀刊ツエルブ』
第五位 『ブラッドハーレーの馬車』
第六位 『絶体絶命教室』
第七位 『孤独のグルメ【新装版】』
第八位 『眼鏡なカノジョ』
第九位 『羽衣ミシン』
第十位 『ムダヅモ無き改革』

 単巻モノはこのように落ち着きました。あまり落ち着きのないラインナップですが。『キャノン先生トばしすぎ』、発売は去年ながら読んだのは今年。内容は言わずと知れた、むしろ痴れた、熱血ロリエロまんが道G戦場ヘヴンズドア。血が熱く、魂の密度も厚い。エロマンガの作家たちを主要陣に据えて展開する物語がなぜこんなにも燃え上がるのか。不覚の涙で泣き濡れること請け合いです。ちなみにリンク先は通常版ながら、当方が読んだのは限定版。限定版には小冊子が付いてきますが、通常版は通常版でボーナストラックが収録されているらしいので、これから読む人には通常版の方をオススメ。『FLIP-FLAP』はピンボールに全身全霊を傾ける少年少女の姿を切り取った異端の青春コミック。思春期の絶頂においてまさかのピンボール耽溺! 話だけ聞いたら「バカバカしい」と一笑に付すかもしれませんが、実際に読めばたまらず部屋から飛び出して「ピンボール台はこの町のどこにあるんだッッッ!!!?」と狂奔するレベルに達しています。波線みたいな口といい、なんや変な娘やナァ……と思っていたヒロインにだんだん惚れていってしまう巧妙さも心憎い。『おませで御免!』は成年コミック。つまり18禁です。けど登場する女の子は到底18歳以上には見えな……ゲフンゲフン。とにかく幼女(ロリ)童女(ペド)に対する執着は深甚至極であり、妄念の強さにおいては『キャノン先生トばしすぎ』のゴージャス宝田とも比肩しうる。「ロリ」そのものよりも、ロリに対してパラノイアックな猛愛を注ぐ「ロリコン」の青白い炎、自らも焼き尽くし何れ塵となりかねぬ盲進ぶりが好きなのだ――と改めて感じさせてくれた。と邪気眼的言辞で誤魔化そうとしても誤魔化せないので、「末尾に『うじょ』と付く♀(少女、幼女、童女。老女は……ごめん、やっぱナシで)が好きなんだよ! 悪いか!」てって素直に認めてみます。

 『稀刊ツエルブ』は非売品。というか『トリコロMW-1056(1)特装版』の特典として付いてくる冊子です。いえ小冊子ではありません、本体のマンガよりも厚い160ページ超の「分売しろよ」と言いたくなる一品であり、むしろ大冊子。単行本未収録の雑多な作品を寄せ集めたファン垂涎の内容となっており、正直クオリティ面で申せば玉石混交の感覚が強いけど、未完の傑作「ママはトラブル標準装備!」が拝めるだけで充分お釣りが来る。海藍好きなら逃しちゃいけないマストアイテムだ。特装版は限定生産というわけじゃなく、ちょいちょい重版が掛かっているので、根気強く探せばまだどこかに置いてある……かも。『ブラッドハーレーの馬車』は連作形式の少女無残歴史コミック。歌劇団の一員となる夢を胸に抱いて馬車へ乗り込んだ孤児院の少女たち、彼女らの行く末は……ってな話で、ハッキリ言ってメチャ暗いしえげつない。イヤだイヤだと顔をしかめつつも、卓越した画力と巧みなストーリーテリングのおかげで最後までスルスルと読めてしまう。この本にとって読者の心臓など、豆腐も同然。掌に載せてたやすく1cm角に切り刻みます。『絶体絶命教室』は『キャノン先生トばしすぎ』と同じゴージャス宝田の著書。なので当然成年コミックです。閉鎖空間内、極限状況下で女子生徒たちとセックルしまくる教師のネイキッドなサバイバル「クラッシュ!」を柱に、至宝と名高い読切短編「アンジー」および「ハートメイカー」も収録。本の題名が垢抜けない印象を与えますが、密度の濃さは『キャノン先生トばしすぎ』に勝るとも劣らないゆえ、是非チャレンジしてみてください。『キャントば』が発売されたことにより相乗効果で話題になるかと思いきや、『キャントば』ばかり注目され、却って影が薄くなった不遇の一冊です。

 『孤独のグルメ【新装版】』は以前からあっちこっちでネタにされていたこともあり、前々から読みたかったけどワイド判はとうに絶版、文庫版は入手可能ながら絵が小さくなるから嫌――と迷っていたところにワイド判の復刻たる【新装版】がアナウンスされ、まさしく渡りに舟といった心地で買いに走りました。1200円とやや高めの値段設定ではあるものの、淡々と「一人の飯」を堪能する、五郎節とでも呼ぶべき独特な雰囲気が大きなサイズで味わえることを思えばまったく損はない。ネタにされるのもむべなるかな、という出来です。『眼鏡なカノジョ』は眼鏡属性がない(むしろ眼鏡っ子が苦手)当方でもあっさり引き込む、魔性のオムニバス眼鏡コミックス。筋立てはどれも他愛ないが、眼鏡を重要な小道具としつつも決して「眼鏡萌え〜」な嗜好に淫しない、堅実な恋愛ストーリーを成立させる腕前に惚れる。手練手管を尽くしながらも嫌味がない、ほぼ理想の一冊。『羽衣ミシン』は「夕鶴」……ってか、「鶴の恩返し」を現代で実行した少女マンガ。発想自体はありふれているが、「切ない恋」を丁寧に描き「ありふれてたってイイものはイイ」と感じさせます。線のくっきりとしたタッチに馴染みにくさを覚えるかもしれませんけど、なぁに、すぐ免疫がつく。小玉ユキは比較的、男性読者でも親しみやすい作風をしていますね。『ムダヅモ無き改革』は一国の首相たる小泉ジュンイチローが命を削って麻雀を打つ、荒唐無稽の極みに達した阿鼻叫喚の熱血マンガ。賭けのレートを巡って「戦闘機」が出てくる麻雀マンガなど、日本広しと言ってもこれぐらいでしょう。北の将軍様が「一族全員粛清すっぞコラァ!」と恫喝したり、麻生タローがニヒルな顔つきで狙撃銃をブッ放したり、プーチン大統領に暗殺者時代があったと明記したりなど、やりたい放題。世が世なら発禁されかねない。場所が場所なら焚書モノです。とある麻雀の焚書目録。

 他、ゴージャス宝田の狂気と妄執が程好く抽出されているエロ短編集『お兄ちゃんクチュクチュしすぎだよっ』、「人魚のいる世界」を静かな筆致で鮮やかに紡ぎ出す『光の海』、サイコメトラーでサイコダイバーな男の活躍を迫力ある絵柄で描いており、未完であることがひたすら惜しまれる『クリオの男』、イチャイチャとエロエロのハイブリッド「イチャエロ」のど真ん中を疾走する『年刊中年チャンプ』、ちょっとヌルいくらいのゲーマーが一番良く楽しめる『電子遊戯黙示録』、詰め込みすぎでまとまりは欠くにせよ熱意を誉めたい(そして不気味妹キャラのすだまが可愛い)『アキハバラ無法街』も今年の収穫でした。

・次回は小説本のランキングを予定しております。

Navelの新作『俺たちに翼はない』、遂にマスターアップせり。

 まさに年貢の納め時。散々延期かましたことは今でも恨んでいるが、ギリギリまで粘らずこうして一ヶ月前にマスターアップしてくれたことには感謝する。おかげで予定が組みやすくなりました。新たなスワスチカの幕開けじゃないのか……とか、そういう後ろ向きなことは考えない方針でGO。

・拍手レス。

 >どうも『アトラク=ナクア』のデータは入ってないっぽい?
 一応自分が追加しておいたんですがね。間が悪かったかw

 更に3回やってようやく出た……2回目でルーシー(にゅう)がヒットしたときは反応に困りました。マリコ派なので。


2008-12-25.

・去年のこの時期に「久々の新刊だ!」と喜び勇んで買ったまでは良かったものの、うっかり積読の腐海に放置してしまって姿が見えなくなっていた『朝霧の巫女(5)』をようやく掘り当て、一年越しに読了と相成った焼津です、こんばんは。この巻の内容が「神隠し」というのも何かの符合みたいですね。

 宇河弘樹の本で一番好きなのが『妖の寄る家』で、一番好きなキャラクターがこまという人間にとって5巻の過去編は途轍もなく威力が高ェ。鋭すぎる切なさに目が潤むことしきりでした。あまりにも間が空くものだからそろそろ処分しようかと迷っていたコミックスですが、もう少し継続してみようと考え直した次第。来年には6巻が読めることを祈ります。

すごいサイト見つけたw(暇人\(^o^)/暇人/(^o^)\暇人\(^o^)/(グロ注意))

 初音姉様のつもりで答えていたら秋葉が来ました。当たらずとも遠からず、か。初音姉様は実の兄がいて、一応妹キャラですから、微妙に秋葉と属性が被ってるんですよね。何回か繰り返しチャレンジしてみましたが、立て続けにハズレ。どうも『アトラク=ナクア』のデータは入ってないっぽい? 残念。

「おかえり、哀の庭」 CUFFSの『Garden』、姫宮瑠璃追加パッチが大幅延期、2009年7月予定に

 そんなに掛かるんだったらもういっそ『Lapis Lazuli』みたいなタイトルを付けて新作ソフトとして発売してくれ……。

・くらもちふさこの『駅から5分(1〜2)』読んだー。

 豊島区に位置する架空の土地「花染町」を舞台に繰り広げられる連作クロスオーバー・ストーリー。端的に述べればチュンソフトの『街』を少女マンガのフィールドでやったような作品です。作者のくらもちふさこは30年以上のキャリアがあり、知名度や人気も高いらしいけど、縁がなくて今まで一冊も著書を読んだことがなかった。コントラストが強く、細かいようでザックリとしている独特の絵柄に目が馴染むまでしばらく掛かったが、一度慣れると構成の面白さも相乗してのめり込みます。正直、1話目ではそんなに惹かれる要素がない。しかし、2巻目まで通して読めば、「何が何でも次の巻を買わなくちゃ」と強烈に思わせる魔力が励起致します。

 ストーリーは基本的にオムニバス形式で進行し、視点人物も回ごとに変わります(一回だけ同じキャラクターが続きましたが)。過去と未来を頻繁に行き来するため、「現在」がどこなのかいまひとつ胡乱。整理して読まないと筋を見失いそうになるので注意です。エピソードとエピソードの繋がるポイントを示すためか、頻繁に重複するイベントもあり、そこをチェックしてちゃんと押さえておけば物語の順序も分かってきます。あるエピソードの人物が何気なく取った行動も、別のエピソードでは「オチ」に相当する部分となったり、あるエピソードでは結果しか提示されなかった事柄が、別のエピソードにて経緯を詳しく伝えられる。特に意味がないように思えた描写も、後々になって「ああ、そういうことだったのか」と納得できる……そんな仕組みになっています。「ちょっとした伏線」が2年越しになって解消されるとか、ホント気の長いマンガですね。

 ほんの短い時期を、繰り返し繰り返し何度も何度も上塗りして厚みを持たせていく、まさしく「駅から5分のところにある町」そのものを描こうとしているマンガ。読めば読むほど、「時間の流れ」よりもコマの外に広がる「空間としての花染町」が意識されていくのが心憎い。だんだんと、少しずつ、けれど確実にハマっていくこと請け合いです。個人的には「プリンセス」こと水野楼良のエピソードが好き。そもそもこの『駅から5分』を買ったキッカケって、「弓道部が出てくる」という噂をキャッチしたからなんですよね。まさか2巻の表紙を飾っているすンごい髪型した女の子が直接関わってくるとは、予想だにしていなかったが……巻末の相関図を見るに、今後語り手として選ばれそうなキャラは「タミー」「赤松の妹」「冬柴佐和」「ジャラ」あたりかな? 構成の特異さから言って、そんなに長く続く話でもないだろうから3、4巻くらいで完結だろうか。いや、ひょっとすると第2シーズン突入という線も……ちなみに、これより少し前に『駅から5分』というまったく同じタイトルのコミックが出ていますので、購入する際は混同することなきよう。間違えてそちらを買いそうになってハッと直前で気づいた人間からの忠告です。

・拍手レス。

 スチームパンクが魂のジャンルなのでセレナリア、インガノック、シャルノスときてうれしい限りです
 スチームパンクか……もし例のストパンがスチパンだったら蒸気さん大活躍だったでしょうね。

 宇宙にブルース・ウィレス送ればいい たまらなく噴きました
 ハリウッドは既に動き出しているかもしんない。

 初恋の相手が同じ誕生日だった私が通りますんよ。ちなみに、病院も同じだった。
 その状況、ひと昔前の少女マンガなら確実に「引き離された双子の兄妹」っていう展開が来ますね。

 めりくりことよろです。
 至ってメリーじゃないクリスリスでしたが来年も宜しくお願いします。


2008-12-22.

・amazonのオススメ機能で表示され、表紙絵に釣られて買った『お嬢様はお嫁様。』既刊4冊を読み終えた焼津です、こんばんは。実際に購入したのはamazonじゃないんですが……。

 「極楽院家の女は18歳の誕生日に、同日同刻に生まれた18歳の男と結婚する」という無茶苦茶なしきたりに従って主人公たる少女とイケメンの少年がくっつくラブコメです。いえ、『セキレイ』の作者は関係ありません。最初は反撥し合っていた二人だけど、次第に気持ちが通じ合って……みたいなベタベタの展開ながら、イチャイチャ甘々のシチュエーションも抜け目なく用意している。普段は「男向けラブコメ」を読むことが多い分、こうした「女向けラブコメ」は微妙なノリの違いが明確に意識されて結構新鮮でした。ヒロインの永遠子も充分可愛いけれど、それ以上に夫の悠河が魅力的に描かれているあたり、如何にも少女マンガだなぁ――って得心したり。基本はドタバタギャグで、深いこと考えたり細かいところツッコんだりするとキリがありませんが、たまにはこういうのも悪くないと思いましたわ。

【宇宙ヤバイ】2012年、地球の磁気シールドが破れ、世界中に太陽嵐が吹き荒れる!(ニュース超速報!)

 『太陽の盾』建造フラグ来た?

唐辺葉介の『犬憑きさん』、第3話「反魂」公開

 しばらくチェックを怠っていたせいで更新していたことに気づかなかった。てか、前話公開からもう一ヶ月経ったのか……早いな。まだ読んでませんが、大晦日までには目を通しておきたいものだ。

いい加減エロゲーでやめてほしいこと(日刊スレッドガイド)

 夢の中、ゆったりしたBGMとともに過去の情景がセピア調で流れる → 画面が暗転し、妹キャラの「起きてよー、お兄ちゃんー」 or 幼馴染みキャラの「○○! おい、起っきろー!」という声で目を覚ます。学園モノはこのパターンが異様に多い気がする。「お約束」とて嫌いではありませんが、せめて書き出しくらいは興味をそそる代物にしてくれないかしら。あと、「前半コメディ後半シリアス」っつー従来のシナリオ形式に拘らないで「全編コメディ」に徹した平和ボケっぽいラブコメがもっと増えてほしい。

「三大○○エロゲ」(日刊スレッドガイド)

 「三大剣戟エロゲー」
 ●『二重影』
 ●『鬼哭街』
 ●『刃鳴散らす』

 『Fate』はさすがに剣戟という域を超えすぎているため除外。エロゲーでチャンバラってこと自体がそもそも何か間違っていますが……三大からは漏れましたが故・project-μの『銀の蛇 黒の月』も「鞭みたいに撓る剣」を躍動溢れるFFDチックな演出で存分に見せてくれます。シナリオが尻切れトンボだったことがひたすら悔やまれる。『終末少女幻想アリスマチック』はバーチャルな果し合いという設定のせいか、あまり緊張感がなくて惜しい雰囲気。そういえば『メイドさんと大きな剣』ってソフトもありましたが、あれはプレーしてないからよく分かりませぬ。

・多島斗志之の『黒百合』読了。

 かつて『症例A』という長編でブレイクを果たした著者の最新作。全体で250ページ足らずと、割合薄い。投票が締め切られるギリギリの時期に刊行されたにも関わらず、『このミステリーがすごい!2009年度版』で7位を獲得するなど、既に高い評価を得ています。タイトルを見ただけではどんな話かよく分からず、あらすじを読んでもいまひとつピンと来ない。作者の腕と評判、両方を見込んで購入する決意を固めたようなもので、単に「多島斗志之の新作」というだけか、あるいは「よく知らん作家だけど、このミスにランクインしたらしい」ってな感じだったら迷った末にパスしていたかもしれません。なんというか、いまひとつ掴み所というか捉え所がないんですよね、この作品。ボワァ〜ッと霞掛かっている印象。

 1952年の夏、東京から六甲の避暑地にやってきた少年・寺元進は、父の友人の息子である浅木一彦と知り合い、そしてヒョウタン池の淵で初恋の少女――倉沢香と出会った。明るく朗らかで、まるで屈託というものがない香の笑顔に惹かれていく進と一彦。ふたりはまだ、倉沢家のあちこちに横たわる複雑な事情に、少しも気づいていなかった。今はもう思い出となってしまったあの季節。掛け替えのない美しき夏はいくつかの事件とともに、ただ過ぎ去っていくばかりだった……。

 要するに、ノスタルジーの色調が強い青春小説。ただし、そればかりに終始するのでもなく、ちょいとミステリの味付けが施されている。舞台となる夏は1952年、つまり戦後なんですけれど、合間合間に戦前や戦時中のエピソードが挿入される構成となっています。主人公たちは14歳の少年少女なので、戦時中はまだしも昭和十年(1935年)の章ではまだ生まれてすらいません。本編から見て「過去」に当たる章では一応、主人公たちの家族や親戚が登場するので、まったく関係がないわけでもないのですが……何のためにこんな断章が入るんだ? と、初読の際は面食らうことでしょう。そもそも本編からして普通の思い出話というか、「少年時代の懐かしい記憶」を並べ立てることに腐心しており、「事件」と呼べるような話題に触れられることがほとんどありませぬ。旅行先で殺人事件が発生し、現地で知り合った少年や少女とともに謎を解明していく――そんなジュヴナイルめいたスリルとサスペンスたっぷりの冒険譚を期待すれば、ひどい肩透かしとなります。香という少女を巡って密かにふたりの少年が張り合う「三角関係小説」としては地味に読み応えがあるものの、「男と男の嫉妬合戦なんて見たくねーよ」とボヤく方もおられるでしょうし……まあ、嫉妬とか修羅場とかいうほどドロドロした展開もなく、ごくごく爽やかに進行しますので、そこらへんが苦手でも別に読めないことはないと思います。

 あんまり誉めてないけど、最後まで読めば「なぜ短期間で多くの票を集めることができたか」という疑問がすっかり氷解する見事な仕上がり。しかし、ネタバレを避けようとするとその点については詳述できない罠。とりあえず、エピソード間の繋がりがどうだとか、そういったことは一切考えずにまずはいっぺん通して読んでみてください。二周目に突入すれば、自然と諸々の繋がりや作者の狙いは見えてきますので。薄いから読み終わっても物足りない気分に陥るんじゃないかと危惧していましたが、とんでもない。題名の意味が分かってからが本番であり、閉じたページを頭から開き直すことでトゥルールートおよびトゥルーエンドへ赴ける仕掛けとなっているのです。「中坊どもの恋模様なんざかったるいわー」と嘯くアナタも、やがて「なんぞこれー!」と叫び出すこと必至。どうぞ気軽に足を踏み入れたし。

・拍手レス。

 今なら、スワスチカも笑って許せます byアイ参予約購入組
 ホントこの業界は底が抜けること夥しい。

 シャルノスやるなら、セレナリアとインガノックも合わせて買いませう。ネタ繋がってるので。
 でも今年のベストかわしまりのはコンチェルトノートだったな…。G線は(ry

 セレナリアは待っていたらDL販売が来るかしら。コンチェルトノート、実はもう注文済。さっき発送メールが届きました。

 手遅れかも知れないけどシャルノスやるならパッチ当てることを激しくお勧めしておきます。読後感が違ってくるので
 パッチ、適用しました。進行はまだバスカヴィルとかあのへんですけど。

 残  念 だ っ た な ! なは流行語大賞といっても過言ではないくらい身内では流行った
 那覇流行語大賞……? 咄嗟にニライカナイなシャルノスを連想。「残念(ざんにん)やたんな!」


2008-12-19.

・年明けまで待てなかった。評判に釣られ、『漆黒のシャルノス』を手に取る仔猫(キティ)と化した焼津です、こんばんは。いや評判に釣られるよりもメアリ(CV:かわしまりの)の度外れた可愛さに負けた。あとモラン大佐の忠臣ぶりも利いた。それにしても、第3幕に入った途端ボイスがほとんどなくなるとか、相変わらずの嘘屋クオリティですね。最近は評判も上向いてきたように思っていたけれど、未だにフルボイスでやれるだけの開発費が賄えないのか……。

 シナリオはまだ大して進めないないので、ゲームパートについて。体験版ではあそこをすっ飛ばしてプレーしましたから、攻略するのは製品版が初めてとなります。パッと見でユニットを動かすだけの単純なゲームかと思っていたら、案外とめんどい。こちらのユニットには攻撃力とか一切ないんで直接敵ユニットを倒すことができず、ただ捕まらないよう迂回したり敵ユニットを罠に誘い込んだり、要するに「逃げ」の一手しか選ぶことがません。爽快感がなく、フラストレーションが溜まります。一幕に前半戦と後半戦が用意されており、後半戦は特定されたゴールを目指すだけなので比較的楽(敵ユニットを一定数罠に掛けないとボーナスCGが見れないけど)ながら、前半戦はマップに隠された「クリア条件となるマス目」を「あと○歩」というヒントだけで探し出さないといけない。しかもその踏まないといけないマス目は4つもあって、敵ユニットの動きを気にしながら探すなんてヌルゲーマーにはお手上げです。苦労して3つ踏んであと1個もほとんど場所が分かったのに、うっかり囲まれて退路を塞がれたときの絶望感と言ったら、まさに「 残  念 だ っ た な ! 」。サポートユニットでも出てきてくれれば少しは息がつけるのですが……。

 20世紀初頭のロンドンをベースにした世界設定といい、ヒロインをホームズとではなくモリアーティとカップリングさせる意外性といい、金髪の麗しさを十二分に伝えてくれるグラフィックといい、ソフトの雰囲気に関してはばっちりツボに入るというかめり込んでます。ライアーソフトのエロゲーは決まって癖が強いので反りが合わないこともままあるけれど、今回は久々の収穫となりそうな気配だわ。示されるトーンは物憂げでいて、しかし「諦めない」ことが主柱となっているあたり、実に当方好み。追い詰められて震えながらも怯えながらも抗うメアリの姿にゾクゾクする、と書いたらSっぽいでしょうか。まだ幕間にしか出てこないけれどバロン・ミュンヒハウゼンも気になるキャラ。ミュンヒハウゼン男爵と言ったらやっぱり『ほらふき男爵の冒険』を想起するわけで、期待が湧く。顔に付けた仮面はバリ島の聖獣「バロン」を模してるとか。当方がバロンと聞いて思い出すのは『バロン・ゴング・バトル』ですけど、発行年数を見るにアレってもう十年前の漫画なんですね。時の流れを感じずにはいられません。

宮崎駿「・・・次の作品はガンダムにしよう」(VIPPERな俺)

 火の七日間で巨神兵は総人口の半分を死に至らしめた。人々は自らの行為に恐怖した。

 驚くほど馴染みますね、宮崎駿作品とガンダム。こういうコラボパロは個々のネタの良し悪しも絡みますが、相性だけでほぼすべてが決まると申しても過言ではない。その点で言ったらバッチリです。

「ごらんの有様だよ!!!」 『魔法少女アイ参』、「怒りの庭」をも易々と超越する凄惨さ。

 前情報からしてろくな結果にならないと予感していたものの、まさか、これほどまでとは……せいぜいが「二学期」「それ散る完全版」程度と踏んでいました。colorsスレにあった「エロCGがないから恥ずかしくないもん!」というネタに苦笑。追加パッチ予告が消えたり現れたり、まるで魔球のように点滅するあたりも新機軸です。ちょうど『クロサギ』を崩しているところなので「アダルトゲーム詐欺」みたいなエピソードを想像してしまいました。もう黒崎に喰われた後だったりするんだろうか。なお今回生まれた迷フレーズ「ごらんの有様だよ」は「Nice boat.」級の流行速度を見せており、既に反応しているサークルもあるくらいです。

パスタwww作ったwwwお前www(VIPワイドガイド)

 『るいは智を呼ぶ』の影響で未だにプッタネスカ(娼婦風スパゲッティ)が食いたくて仕方がない。そういえばJOJOでトニオがつくって億泰が食べたのも確かこれだったっけ。

どんなバトル漫画でもひらがな!にするとゆるゆるライフ漫画になる(めでたしめでたし)

 『ちぇーざれ!』

 副タイトルは「はかいの☆そうぞうしゃ」で。

死ぬまでに見ておくべきオススメの映画を教えて(働くモノニュース : 人生VIP職人ブログwww)

 まず『CUBE』、これがなければ当方は洋画に熱中してレンタルビデオ店に入り浸ることなどなかったと思う。監督のヴィンチェンゾ・ナタリが絶賛した、という理由で借りたのが『オープン・ユア・アイズ』『バニラ・スカイ』のリメイク元)でした。でも個人的に一番好きな監督はガイ・リッチー(悲しいことにマドンナの元旦那、と書いた方が通りはいい)であり、『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』『スナッチ』は必見。ストーリーがモザイクのように掻き乱れていてちょっと分かりにくいけれど、分かり始めてからが滅法面白い。あと、ドラマ版の『ロック、ストック』シリーズも押さえておいて損はありません。個人的には「ロック、ストック&トゥー・ハンドレッド・スモーキング・カラシニコフ」が好き。スナイパー映画なら『山猫は眠らない』は外せない。狙撃シーンにおける息詰まるほどの迫力は無論のこと、深いジャングルの中へゆっくりと踏み込んでいく緊張感もたまりません。

 『ロック・ユー!』はタイトルのせいで勘違いしている人がいるかもしれませんが、中世イギリスを舞台にしたスポーツ映画。「馬上槍試合」なる日本人にはあまり馴染みのない競技が題材に取り上げられている。見る前はそんな競技が存在することすら知らなかった当方もあっさりハマった。「一瞬の交差」における攻防を眼目とし、ある種の剣豪モノにも似た風情が漂っています。氷と炎の歌の作者ジョージ・R・R・マーティンも制作に携わったらしい。というか『ロック・ユー!』は「放浪の騎士」の筋立てを変更して映画化したものだ、と言われたら信じてしまいそうです。サスペンスだったら『ユージュアル・サスペクツ』を推したい。パッと見は安っぽい映画なんですけど、ジワジワ利いてくるものがある。最初はテレビの深夜番組で流れていて、途中から見始めたこともあり「なんだか話がよく分からないや」としばらく経ったところでテレビを消して中断してしまいました。が、それでもカイザーソゼにまつわるエピソードのインパクトは強烈で数年間忘れられなかった。呪縛に悩まされ続けた結果、遂に根負けしてビデオ屋で借り、頭から再視聴して「なるほどこういう話だったのか!」とスッキリした次第です。

 B級色の濃いガンアクションとしてオススメなのが『処刑人』『リベリオン』。『処刑人』は留置所で天啓を受けた兄弟が神意に従って悪党どもをバンバン制裁する、それだけなら「ただのバカ映画」で終わりながら、やたら派手な銃撃戦と現場の痕跡から犯行状況を綿密に推理するFBI捜査官のおかげで「ただならぬバカ映画」に仕上がっている。『リベリオン』はもう解説不要でしょう。虚淵玄も中央東口と組んで『浄火の紋章』なる二次創作ヴィジュアルノベルをつくったほど。ガンアクションに殺陣を導入するという奇想が実現した「ガン=カタ」、是非とも酔い痴れるべし。香港映画は『インファナル・アフェア』が印象深い。横文字だといまひとつイメージが湧かないが、原題の「無間道」を見ればピタッと嵌まる。「二重の潜入」がもたらすシチュエーションの美味しさはまさしく絶妙。何より、あの煤けた雰囲気がいい。

 と、全部アバウトに載せた奴ばっかりだけど、どうせあんなページ見る人もいないしバレへんやろ、と高を括って書いてみました。

・滝川廉治の『超人間・岩村』読んだー。

「……『絶望とはなんですか、姉さん』」
 何の事だろうと訝しく思いつつ、青木は岩村の顔を見上げる。
 岩村は、珍しく暗い顔をして、どこか遠くを見ている目つきになっていた。
 独り言の続きを、呟く。
「……『人が生きている間に、一度も使わなくていい言葉の一つだよ』」

 第7回スーパーダッシュ小説新人賞「佳作」受賞作。マイナーな割にときたまドデカいアタリが来る(『銀盤カレイドスコープ』『電波的な彼女』『鉄球姫エミリー』など)ことで認知しているスパダシュ賞、今年は大賞がナシで佳作が3つという、不作のような豊作のような判断しにくい結果になりました。3作の中でもっとも自分の好みに合いそうだと目をつけていたのがこの『超人間・岩村』であり、実際読んでみたらなかなか面白かった。「今年のライトノベル系新人ベスト3」に名前を連ねて然るべき収穫。「ベスト3」といっても、もちろん当方が読んだ範囲内で、です。あしからず。

 所属がたった3名のアメコミ同好会――しかし、どいつも一筋縄じゃいかない連中ばかりで、妙見宮高校の生徒たちからは「アメコミ三銃士」と畏怖を篭めて囁かれている。ベネズエラからやってきた、冗談の如き巨体を誇る日系人、紳一郎・マルカーノ。痩せぎすで、すぐ病気や怪我に遭う体質をした多村豪。そして、「無理」や「不可能」といったネガティブな言葉を聞くや否や即座に燃え上がって「ふざけるな! 諦めるな!」と暑苦しく行動を開始する岩村陽春。血の代わりにガソリンが流れているような「超人間・岩村」が仲間たちとともに獅子奮迅の活躍を見せるおかげで、アメコミ同好会は本来の趣味活動以上に「助っ人部」としての側面が強調されている。乱立する有象無象の部や同好会を「粛清」せんとする生徒会の矛先が廃部寸前の演劇部に向けられたとき、岩村の熱き魂はここぞとばかりスパークし始めた……。

 異様に存在感があって全生徒から注目を帯びている生徒会長だの、地域社会にまで影響を及ぼすマスコミ力を有した新聞部だの、現役高校生でありながらオリコンランキングの上位に食い込むアーティストだの……誇張が過ぎるというか、「劇画調学園モノ」みたいなノリでいささか古臭い雰囲気が漂うものの、最初から最後まで徹底して良い意味で熱血しまくっている好編です。物語の中心となる少年、岩村陽春はもうホント暑苦しくて、「語れ! 語るんだ! キミの純粋なその志を!」やら「俺はもう、悔しくて、悔しくて……! 同時に、心から感動もしているんだ!」やら……それこそ松岡修造の青春時代かと錯覚しそうになるほど常に前のめりで全力疾走している。筋立てを要約してしまえば「廃絶の危機に瀕した部を救う」、これだけの極々ありふれた代物であり、超能力や魔法といった飛び道具は一切絡んでこない。一応のキスシーンはあるにせよ、全体としてラブコメチックなムードも希薄。ライトノベルとしてはかなり地味な部類に入る内容となっています。タイトルが「超人間」だからてっきりアメコミのヒーローみたいなパゥワーを持った奴らが出てくるかと思ったのに、全然そんなことなかった。若干の誇張はあるにしても、あくまで現実的な範囲に収まっています。

 文章は至って読みやすい。軽く砕けた言い回しも出てきますが、派手に崩れることはなくて終始安定している。また、基本となるノリは熱血ながら「根性で解決!」といった安易なゴリ押し精神論を用いることもなく、理詰めで進め、読んでいる側も納得の行く結末に収束させます。逆に言うなら島本和彦や山口貴由みたいな、血液が沸騰して血管まで破裂させかねない我武者羅な滾りはありません。しかし「熱血のはらわた」とも呼ぶべき急所はキッチリ押さえている。「あらゆる服従は無価値だが、この世には唯一、価値のある服従がある。それは自分の心に従う事だ」など、肝を掴んだ揺るぎない手つきで静かに淡々とテキストを紡ぐ。「この先お前は、一つも無理せずに生きていくつもりなのか?」という言葉がとりわけ響いた。作者が惜しみなく注ぐ力強い眼差し、それが文章の谷間を飛び越えて読み手のハートへじかに伝わってくるかのようです。ただ、岩村の過去を明かすタイミングは半端というか、「大事なエピソードなのに効果的な使われ方をしていない」と不満を覚えます。続刊があればそのへんはカバーされるのかもしれませんけどね。

 堂々たる足取りで王道を歩む、姿勢の良い学園青春小説。絶対的な悪役は存在しないし、「超人間」とて必ずしも万能ではない。そこがヌルいと述べればヌルく、極端な造形のキャラクターが愛される傾向の強いライトノベルにおいては「迫力不足」の印象は否めない。登場人物たちの魅力だけで読める、という域には達しておらず、文章力と「静かな熱血」でどうにか補っている気配が濃厚です。最後まで読めば「面白い」と頷ける仕上がりだけに、あとワンポイントかツーポイント何か目を惹くフックがあればな……と残念になる。もっと注目されてもいい作品、と書けば何だか泣き言めいて映るため却ってマイナスかもしれませんが、熱血要素がやや供給不足に陥っている昨今、こうした「清々しいまでの古臭さ」がもうちょっと持て囃されたってバチは当たらないのに。古臭いと申しても、古びたところはない。恐らく、あと数年経ったとしても読むに耐える一冊でしょう。それにしても、シチュエーションがいくつかの部分で『SKET DANCE』と微妙に被っているくせして雰囲気がまったく似ていないのには笑う。まあ、ボッスンの性格が修造化したら多少は似るかもしれない。そんな暑苦しい『SKET DANCE』は読みたくありませんが……。

・粛々と拍手レス。

 ズシオとはまた懐かしい…笑いながら読んでましたけど、ズシオと汁婆しか思い出せません。
 当方はイイ性格してる姉上が好きです。汁婆と言えば『しるバ.』も終わっちゃったな……もう少し続いて欲しかった。


2008-12-16.

・積んでいた『余の名はズシオ』をなんとなく読み始めて抱腹絶倒した焼津です、こんばんは。

 これ、本当に『瀬戸の花嫁』と同じ作者なのか!? 確かに「人魚」とか「広島弁」とか部分的に被る箇所もあるけれど、ラブコメもクソもない強烈に不条理なノリのドタバタナンセンスギャグでひたすら腹が捩れます。頭にめり込んでいた砲弾を抜いたら脳みそがくっついて出てくるとか、ギャグながらも結構グロい描写多いし。正直ちょっとナメて掛かりましたが、ジュース飲めながらページめくったことをすぐに後悔するハメとなりました。とにかくテンションが高くて暴走しまくり、次にどんなコマが来るのかまるで予想がつきません。「お約束」の外し方も巧妙至極であり、危険なネタの数々とも相俟って「大丈夫なのかこのマンガ」と危惧する場面は数え切れないほどでした。

 とはいえ面白さは2巻がピークで、3巻あたりから徐々に勢いが衰えてきます……つまらなくなる、というわけではなく、キャラクターの位置づけが固定されたせいかはっちゃけぶりが大人しくなって、普通のギャグマンガ並みに安定した雰囲気が漂っちゃうんですよね。なきに等しかったストーリー性が若干濃くなりますし、「トコトコトコトコオトコノコ、ヅカヅカヅカヅカタカラヅカ」みたいなネタが定番化してくる。4巻で打ち切りを喰らって5巻が出ないまま放置されていますが、下手に続きを書かれて完結させられるよりはこのまま宙ぶらりんにしておかれた方がズシオらしくて却っていいのかもな、と思ったり。ズシオに限らず、賑やかに騒ぎ回る楽しいギャグマンガっつうのは、明確な形で完結されるとすごく寂しいですから。『ハイスクール!奇面組』の最終回は未だに忘れられない。

正直ミステリーもののネタってもう出尽くしてるよね(【2ch】ニュー速クオリティ)

 我々が生まれる前からとっくに「出尽くしている」と言われ続けていますが、古い奴は読まれなくなってみんな忘れていくので大して問題ないんじゃないかな。それに、大きな発明はさすがにもう出そうにない代わり、細かな変奏で魅せてくれる作品ならまだまだ現れそうですし。『遠海事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか?』も、メチャクチャ独創的というわけじゃないものの「こう来るか!」な感じでワクワクしました。トリック自体が飽和状態であっても、「動機」や「シチュエーション」を絡めていけばまだまだ読者の興味は引っ張れる。ホワイダニットものは「なぜ人を殺すのか」「なぜ人を殺してはいけないのか」という根源的な問いがある限り、不滅でしょう。

 あと、パイオニアである北村薫が偉大すぎるせいか相応しい後継が出て来ない「日常の謎」もまだまだ開拓の余地があるはず。通常のミステリにありがちな凶悪犯罪を極力絡めず、日常的な生活の中に転がる不思議を紐解いていく――というジャンルで、マンガで言うと『Q.E.D』あたりのノリに近い。殺伐としたムードや血腥さがない分、支持する読者も多いのに、センセーショナルな要素に欠けるせいか担い手がなかなか現れません。有望なのは加納朋子や光原百合、最近だと米澤穂信くらいか。

 何より結局のところ、ミステリ(特に本格)って「派手なトリックはないけれど、丹念に読み込んで情報を整理していけば犯人が誰であるか自ずと知れる」という、地味であってもスタンダードなタイプのフーダニットが好まれるのだと思います。ただ、そのへんを突き詰めすぎるとミステリというより単なる論理パズルになってしまいますけども……。

・曽根圭介の『あげくの果て』読了。

 江戸川乱歩賞と日本ホラー小説大賞のダブルホルダーが物す第2短編集。表題作含む3編を収録している。忌憚のない意見を申せば本書、カバーイラストが相当に気色悪い。小さな子供が目にしたら後々「表紙見てからトラウマ余裕でした」と語りかねないレベルにまで達しています。なので最初は「読み終わったらさっさと処分しよう」と考えていた次第。しかし、一編、また一編と読み進めるうちに様子見機運が高まり、遂に最後の一編を読み切ったところで「やはり残しておこう」と思い直しました。第1短編集の『鼻』も面白かったけれど、今回はそれ以上の出来を誇っている。設定の悪趣味加減と構成の巧妙さにますます磨きが掛かり、「曽根ワールド」とも言うべき、胸糞悪いんだけどページをめくらずにはいられない圧倒的な時空間が築かれています。

 冒頭一発目の「熱帯夜」はふたりの男女、二視点を交互に切り替えて綴るサスペンス。両者に直接的な人間関係はないんですが、あるイベントがクッションになり「縁」が生じる仕組みとなっている。60ページ程度の短い作品であり、曽根作品としては比較的地味な部類に属しますが、舐めて掛かるとここでスパンッと投げられて一本取られます。読者の重心を崩す技術が卓越していて、実に危なげがない。喩えるなら、「志村ー! 後ろ、後ろー!」と叫んでいる人の背後にこそ得体の知れないものが忍び寄っている、そんな話。2編目にして表題作「あげくの果て」は一種の近未来モノ。高齢化社会および格差社会が行き着くところまで行き着いた様子をブラックジョーク満載の設定で活写します。「敬老主義」と「排老主義」の対立は序の口、「連合銀軍」だの「青い旅団」だの「高齢者徴兵制度」だの、やりたい放題でもう笑うしかないディストピア。太平洋戦争時代と全共闘時代をコラージュしたような雰囲気の中、高齢者が自爆テロ引き起こしたり、テロ事件の処理として「死体拾い」のバイトをワーキングプアな若者たちが行ったり……といった具合で、ひたすら荒唐無稽なのに、なんだか生々しくて嫌になる。筒井康隆の高齢者バトルロワイアル小説『銀齢の果て』よりも格段に後味が悪く、救いの要素はゼロ。帯裏でも紹介された高齢者戦闘スーツ「難局二号」がただの一発ネタだったのはガッカリながら、腹腔に氷塊を押し込まれるような重たい読後感が壮絶でした。

 ラストを飾る「最後の言い訳」は話があっちこっちに飛んで、なかなか焦点が掴めない。市役所の職員である主人公が「近所のゴミ屋敷をどうにかしてくれ」という苦情に対処する――はずだったのが、いつの間にか「蘇生者(要はゾンビ)の暴動」という回想に移っていて「???」と首を傾げることしきり。もちろん読み進めていけば繋がりが見えてくるのですけれど、そこまでが長くてなかなかもどかしい。補助線的な解説をしますと、犯罪を起こした容疑者たちの言い訳めいた供述や、食品偽装事件を巡って関係者が苦し紛れに漏らす言い訳会見などを、気弱な性格でやたらと言い訳する癖がある主人公とダブらせるのが一つの狙いとなっています。特に「送られてきたパンダがゾンビだった」という騒動で中国が発した「我が国を出たときは普通のパンダだった。責任はあくまで日本側にある」というコメントには苦笑すること請け合い。作者の意図が判明してからの展開は圧巻の一言に尽き、これはもう今年のホラー小説における大きな収穫と見做しても宜しいでしょう。

 醜悪な魅力がギュッと圧縮された一冊。少なくとも個人的には一つとしてハズレがありませんでした。全弾的中。しかしどれ一つとして気持ちのいい話、気分が爽快になる話はありませんゆえ、「グロテスク上等」「ホラーなんざ暗くてナンボや」「最悪=最高」という気構えのない方にはあえてオススメしません。「単に拙いだけの文章」とは違う「要点を絞ったうえでわざと低俗な空気に淫している文章」も非常に滑らかで、B級大好きっ子なら必読であると断じさせていただきます。

・拍手レス。

 イグドラジル買いました。作品変われど、作者の本質は変わらず。レイニー止めにも程がある。次はいつ出るんだか。楽しみも増えたけど、待つ苦痛が倍になった。
 あらすじを読んで「これが中盤までの流れかな」と思っていたら、ほぼ全編の要約だった罠。面白いんだけど、ホントに進行が遅いですね。


2008-12-13.

・本を片付けているときにふと見つけ、読み終わったらさっさと処分する気満々でページを開いた『ベル☆スタア強盗団』の最終巻が予想を覆す面白さで「誰だ、このマンガを処分するとかヌカした奴は!」と自分に噛み付いてしまった焼津です、こんばんは。

 1巻と2巻を読んだのが高校生、いやまだ中学生だったかな? の頃で、10年以上間を空けて読んだからさすがにストーリー忘却して何が何だか分からなかった(ジョウンとジョスリンがサムの妹たちだということも覚えていなかった)けれど、日に焼けて狐色となった紙面から伝わってくる迫力に呑まれ「なんだかわからんがとにかくよし」の心境で最後まで突っ切った次第。しかしやはりこまごまとした部分が気になるので1巻と2巻を掘り返し、頭から読み直してようやく得心が行った。そして処分は取り下げにしました。

 要はガンアクション満載の西部劇。組み上げられた物語が非常に濃密かつ疾走感に溢れていて、かったるさというものが全くない。様々な要素が細かいところまで繋がっており、読み返すのが苦にならないどころか読み返すことで面白さが増します。初期の絵柄はまだちょっと物足りないところが残るにせよ、3巻の列車襲撃シーンはベルの些細な仕草にまで神経が行き届いていて思わず見惚れること請け合い。「ああ、この作者は本当にガンアクションが好きなんだなぁ」としみじみ痛感する。10年前は淫奔ガールなジョスリンが好きだったけど、今は涙目で懸命に駆け抜けるベルの方に強く魅力を覚えます。時間が経つとヒロインの好みも変わるものですね。でもジョウンが空気ということは変わらない。ちょうど今年になって新装版も発売されましたので、未読の方はこちらをどうぞ。

「メジャーWiiパーフェクトクローザー」が“ヤバすぎる”とネットで話題に(痛いニュース(ノ∀`))

 これは、紐鏡からの飛猿横流れ狙い――まず間違いなく虎眼流のバッターです。

「パンツ」を越えろ! DS&PS2『ストライクウィッチーズ』サブタイ募集(日刊スレッドガイド)

 じゃあ『ストライクウィッチーズ 〜High Altitude Low Leg〜』と『ストライクウィッチーズ 〜ゆきゆきて、上皇(オーヴァーロード)〜』で。

・ライトノベルの新人についてスッカリ疎くなってしまった昨今、少しは漁ってみた方がよかろうと、志瑞祐の『やってきたよ、ドルイドさん!』および樋口司の『ぴにおん!』を読む。

 志瑞祐は10月にデビュー。アイルランドからやってきたドルイドの少女を主人公とした『やってきたよ、ドルイドさん!』は分類すればドタバタ学園コメディ(やや百合)ってなところで、漫画版『とらドラ!』の作画担当である絶叫がイラストを手掛けている。始終バタバタとおちゃらけたノリで、シリアス展開はほぼない。あると感じても「いや、気のせいだった」と後で思い直す程度。全体的にパロネタが多く、VIPあたりのスレを読んでいるような気分に陥ります。アニメ・マンガ・ゲーム関連は無論のこと、転校生繋がりで『六番目の小夜子』を引き合いに出したり、「ファッキンジャップくらいわかるよ馬鹿野郎」と『BROTHER』ネタをかましたりと、なかなか無節操で楽しい。文章のテンポも軽快で目に心地良く、今年チェックした新人の中では一番肌に合うノリだった。しかしインパクトが足りないと申しますか、読み終わったら「うむ、おもろかった」くらいの感想しか湧かず、心に銘記されるようなものはなかったです。クライマックスでちょっと盛り上がったけど、まだ弱いっつー感覚は拭えない。そこらへんがやや残念か。シリーズ化すれば伸びそうな気がする一方、すぐにパターン化しちゃいそうな不安も濃い。とりあえず、次の新刊は買ってみるつもりでいます。

 樋口司は11月デビュー。『ぴにおん!』は人を食ったような一人称といい、ヒロインの傲岸不遜ぶり(表紙のポージングを見よ)といい、次から次へと個性的な面子が湧いてくる展開といい、ハルヒとの類似を指摘されそうな部分がいくつか見受けられたが、よくよく読めばそんなに内容が被っているわけでもありません。主人公はショボい発火能力を持った少年で、「超能力者の性別はほとんど♀であり、♂は稀少」という理由から様々な少女たちに絡まれるハメとなります。文章も人を食っているがストーリー展開も読者をおちょくり回して笑い飛ばすような代物であり、片手で腹をボリボリ掻きながらキーボード叩いてる作者の姿が目に浮かぶ。良くも悪くも「新人らしさ」が出まくっている一作です。「フレッシュな作風」と見做すこともできる一方、「粗が目立つ」という意見も否定できない。メインヒロインの二葉はまだしも、天使の微笑と悪魔の嘲笑を使い分けるスイッチヒッター少女・ナナは性格の切り替えが頻繁すぎて、いまいちキャラが立たず雰囲気を掴み切れません。「つまらない」というよりは「惜しい」。更に練り込めばもう少し上を狙えたんじゃないか、って臍を噛む仕上がり。学園モノ・青春モノとしての爽やかさは結構なものがあり、決してポテンシャルは低くない。お色気とか、そういうあざとい餌を抜きにしてなおニヤッとさせてくれる清々しい楽しさがそこはかとなく詰まっています。

 結論としては2冊とも悪くない出来で、割合満足のいく収穫でした。数年前まで「辺境レーベル」というイメージが強かったMF文庫Jも、ラブコメ重視路線に切り替えてからこっち、めきめきと存在感を強めていますね。今年は7人も新人をデビューさせているので粗製濫造に陥っているのではないか、って危惧もあったけれど、この調子なら別に悲観する必要もないかな。

・拍手レス。

 スワスチカもいい思い出です。なんだかんだ言いつつもヴィルヘルムを超える萌えキャラは存在しなかったし。個人的に、2008年度No1はDiesIraeかなあ。
 いい思い出、とはまだ割り切れそうにありませんが、ヴィルヘルムが忘れがたい男キャラであることには同意。


2008-12-10.

・“護樹騎士団物語”最新刊『夏休みの戦い』が最高潮の盛り上がりを見せたところで「次巻につづく」となってしまい憤死寸前の焼津です、こんばんは。読むのが遅れたせいもありますが、季節外れにもほどがある題名だな。

 それにしても相変わらず話の切り方が極悪じゃぜ……ふんまにもう。ネタバレになりますが、やっとシュエット様の出番が来たと思ったのにシュエット様が登場しないまま終了って、ど〜いうことなのよォ、あンたァ〜。次巻タイトルがなまじ素晴らしいだけに一層憤懣遣る方ない。ちなみに今まで860円だったのが900円になっていて、さりげなく値上がりしてますね。あらゆる本の価格がぐんぐんインフレかましており、なんとも書痴に辛い時代となったものだ。先月集計した書籍購入費も、薄目を開けてチラッと覗き見ただけで「ぐげらぼあ!」と悲鳴を漏らす額に昇りました。欲望赴くままに買い漁った末路の一端が、そこに転がっていた次第。

赤ちゃんの名前ランキング…男の子1位は「大翔(ひろと)」、女の子1位は「葵(あおい)」(痛いニュース(ノ∀`))

 男の子の2位を見てスワスチカが開きそうになった。あれからもう一年か……。

『幻影城の時代 完全版』

 6090円(税込)というミドルプライスのエロゲー並みの価格設定もすごいけど、書き下ろしがまた豪華ですごいわ。特に連城三紀彦。「〈花葬〉シリーズ」って……マジ? 解説しますと、〈花葬〉シリーズとは各種の花をモチーフにした連作短編ミステリです。連作と申しても作品間の繋がりはなく、ただ「花」という接点に基づいて銘打っているだけの、言わばブランドですね。全10編構想ながら、これまで発表されたのは8編(ハルキ文庫版の『戻り川心中』にすべて収録されている。講談社文庫版と光文社文庫版のうち5編のみ収録)。9編目となる予定だった「桜の舞」は「能師の妻」とタイトルが変更になり、表向き「〈花葬〉シリーズには含まない」という形で世に出る経緯となったらしい。この「能師の妻」をほぼイコール「桜の舞」と見做してカウントするとしても、残り1作が足りない。連城三紀彦自身は寡作家ではなく、旺盛に執筆活動を続け、沢山の著書を刊行していますが、ずっと〈花葬〉シリーズのことが心に引っ掛かっていたファンも少なくなかったはず。これで長年の懸念も晴れることでしょう。しかし、「夜の自画像」って……〈花葬〉シリーズなのに、花どころか植物に因んだタイトルですらないですね。

・恒川光太郎の『草祭』読了。

 「美奥」という架空の土地を舞台に据えた連作小説集。一部のキャラクターがエピソードの垣根を越えてくることや、ある話で謎として残った部分が別の話で解明されることもあるけれど、「全部読まなきゃダメ」ってほど密接な繋がりはなく、一つ一つ独立した作品として読んでも充分楽しめます。というか、丹念に読み込めばある程度の繋がりは見えてくるものの、隙間が多いと申しますか……組み立てに必要なパーツがごっそり抜け落ちており、本書に収録されている分だけじゃ「美奥」の全体像はさっぱり掴めない。掴めるのはせいぜい雰囲気くらいです。だから「美奥のすべてを理解しよう」などと気張らず、「ちょいとこの世界に触れてみようか」程度の軽い気持ちでパラパラ読むが吉。

 少年少女が語り手を務める話がほとんどのせいか、ノスタルジックな色彩が基調となっています。美奥のどこかにあるとされる忌み地に辿り着いて、徐々に人ならざるモノへ変化してゆく友との淡々たる交流を綴った「けものはら」。尾根崎地区の土地神として諸問題に介入してくる少年との出会いを描く「屋根猩猩」。「美奥縁起」と呼ぶに相応しいささやかな歴史を紐解く「くさのゆめがたり」。廃線に添って歩くうちに行き着いた民家で「クトキ」の「天化」なる儀式めいたゲームをすることになる「天化の宿」。美奥の外から美奥について語り、最終的に語り手が美奥に赴く「朝の朧町」。「けものはら」「屋根猩猩」「クトキ」「天化」など、地方特有ないし固有の用語や言い回しがイイ具合にローカル臭を醸して雰囲気を盛り上げてくれます。恒川光太郎の造語は「異質なのに自然な舌触り」みたいな感覚があって好きです。『雷の季節の終わりに』の「風わいわい」が個人的にベスト。

 思い出をほじくられるような濃やかさのある描写、あるいは予想を超えるサプライズに満ちた展開が魅力の恒川作品ながら、今回はややおとなしめだったか。特にオチらしいオチがつかない――いや、むしろ積極的に「オチ」という概念を拒否している作品もあり、最後まで読んでも美奥という土地は得体が知れないまま。空白だらけの地図を渡されるかのようであり、少し途方に暮れますが、「まだまだ埋める箇所がある」という事実がフワッフワの空想を掻き立てる面とてなきにしもあらず。なんか、懐かしくて切なくて、けれども不思議とワクワクしちゃう楽しさがあるんですよね。伝奇やホラー路線の小説として読んだら道具立てが若干ズレているにせよ、外している感じはなくて、逆にそのズレが奇妙なほど胸に残る。随所に見られる「ズラし」の巧妙さこそが、作者の本領であり真髄なのかもしれない。

 結構血腥いエピソードも含まれているくせに、読んでいて「怖い」と思うことはありませんでした。強いて書くなら「寂しい」という気持ちの方が読後感と似ているかな。濃密に凝縮された「くさのゆめがたり」――あの発端の物語が「美奥」という世界を形作る種となって、様々なエピソードを芽吹かせ、そして未だ語られざるストーリーを生み出し続けている……と考えるにつけ、心騒ぐような気分になります。カッキリとした構図や明瞭明白な大団円を好む方が読めば「なんだか消化不良でスッキリしない」ってモヤモヤ感を得るかもしれませんけれど、あえて緩やかなムードを味わうつもりで取り掛かれば恒川的な「嵌まり切らない、ズレた物語」を心置きなく堪能できることでしょう。

・拍手レス。

 ファントムが再度アニメ化ですか。しかも真下ってw まあ、梶浦が来てくれると多少安心できるかも
 珍曲をBGMに無数の銃弾をオサレ避けするアインとツヴァイの姿がありありと目に浮かびます。

 『ようこそ女たちの王国へ』とは正反対ですな。こちらでは男は大事にされすぎて財産扱いですし。
 そういや確かEVAも「男子の出生率が低い」って設定だったような……劇中では触れられませんが。

 監督を見ると「どうみてもノワールです、本当に(略)」になりそうで怖い>ファントム
 NOIRはもう「コッペリアの柩」しか記憶に残ってないなぁ……というか、「コッペリア」と聞くたびあの歌が耳の奥に甦ってしまう。


2008-12-07.

・「なぜ?」という言葉を聞くと反射的に「なぜならば、冬がやってくるからだ!」と叫び返してしまう焼津です、こんばんは。氷と炎の歌ネタですが、まず通じないであろうと重々承知の上で書きました。住んでいるところでは雪が降ったり気温が氷点下に達したりでえらく寒いです。あまりの寒さで靴下が冷たくなり、ちょっと触ってみても濡れているのか乾いているのかの判別がつきません。暑さ寒さで言えば寒さの方が耐えやすい体質ながら、手がかじかんで本のページもうまくめくれないこの季節はまこと難儀します。コタツ神の抱擁に身を任せる日々です。

【漫画】 「このマンガがすごい!2009」 ランキング発表(痛いニュース(ノ∀`))

 どうせ知らない作品ばっかりだろう……と思った「オンナ編」に見覚えのあるタイトルがズラッと並んでいて喫驚。知らないマンガは3つだけでした。1位を取った小玉ユキは『羽衣ミシン』が短くキレイにまとまっていて好きです。3位の『ちはやふる』は全盛期の少年漫画にも劣らぬ熱量を秘めているので男性読者にもオススメしたい。一方、「オトコ偏」は「なんでこれが入ってないんだ!」という作品が多いため却って語りにくい……。

 そうそう、年末ということでこのミステリーがすごい!などの各種年間ミステリランキングも出揃いましたが、どれも割と順当なラインナップで今年はなんだかアタリ年っぽいですね。まったく知らない作品がランキングに食い込んで「しまった、見逃していた!」と頭を抱えるようなこともなく、これでのんびりと年の瀬を迎えられそうです。

あなたの好きなニセホームズを教えてください(アルファルファモザイク)

 『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』かな。直木賞の候補作にもなっているのに不思議と存在感が薄いですね、あれ。ホームズはパロディ(ヘルロック・ショルメスみたいなのも含む)やパスティーシュ(真面目に書いたSSみたいなのがメイン)がもっとも多い探偵であり、あの山田風太郎でさえ「黄色い下宿人」という贋作を物しているほどです。一般でも頻繁にネタにされるため、ゴチゴチのシャーロキアンすら全貌を把握することはまず不可能でしょう。最近もエロゲーに出演しました

 そういえばこの前、古い蔵書を整理していたら四谷シモーヌの『世紀末探偵倶楽部』が出てきたな……いくらミスヲタだったからってこんなものまで買っていたのか、と自分で自分に驚きました。で、現在は上述したエロゲーの件もあり、ホームズよりもモリアーティを主役に扱った贋作が読みたい。と思って探せば『千里眼を持つ男』とか、それなりに該当作も見つかるのがホームズものの凄いところだ。

・遠山えまの『イチ・らぶ・キュウ(1)』読んだー。

 『ココにいるよ!』の作者による4コママンガ。正式なタイトル表記は「1(ハートマーク)9」です。要は「109(イチマルキュウ)」のもじり。男女比が「1対9」という極端な偏りを見せ、完全に女尊男卑社会と化した近未来の東京――地方の島からやってきた少年・宮部タクマはほとんど女子校に近い学園の中、戸惑いながらも徐々に「犬以下の生活」に順応していく……というアンチ・ハーレム系ギャグコメディであり、「ハートフル・ドM4コマ」と謳っています。なんというウラミズモだ、と恐れおののきながら読み進めましたが、さすがに萌え4コマだけあって『家畜人ヤプー』『夢幻廻廊』よりは断然ヌルく、庭の犬小屋で寝泊りしたり自転車置場ならぬ男置場があったりする程度。セッチン族にされたり生ゴミ食わされたり「くつしたおいしい、かおるこさまだいすき」と言わされたりはしません。なぜ男女比の偏りが生じたのか? という部分も「よくわからない」と濁されており、パプアニューギニアの話みたいな凄愴さはなく、辛うじて笑える範囲に収まっています。とはいえ、かとる(家畜)同然の扱いを受けるノリが許容できない読者もおられるでしょうし、また逆に「ドM」要素を期待して読めば少々物足りないかもしれない。ショタ好きのヒロインとは結構フツーにラブコメしてますからね。

 正直、「男女比1:9」というアマゾネスチックな設定がそれほど活かされているようには見えない(シチュエーションが極端かつ大雑把すぎて笑いに結びつかないし、ラブコメともいまひとつ融和性が薄い)けれど、「凄まじいまでの女尊男卑シティだからこそ、日常生活において女装するメリットがある」という理屈で女装少年の存在を裏打ちするあたりは個人的に面白かった。しかし「女と偽って入学したら懲役20年」って、それイキガミの偽造よりも刑が重くね?

 個々のネタは「思わず唸る」ってほど凝ってるわけじゃないけれど、全体的に勢いがあってドドドッと一気に読めます。『ココにいるよ!』も良かったけど、この人の絵って案外4コマに向いてるんだなぁ、と新発見した気分。ツインテール女の口癖が「みふ」(たぶん「踏み」の逆読み)だとか、巻末に収録されている番外編のヒロイン名が「平成ゆとり」だとか、しょーもないセンスも含めて嫌いじゃありません。デフォルメ絵に関しては、嫌いじゃないどころか積極的に好きです。メインヒロインのひよ子はベタベタなくらいのツンデレキャラで始終エラそうな態度しているのに、SD顔が可愛くてちっとも憎めねぇ。

・今度は『ファントム』テレビアニメ化するとか……OVAの件は忘れるとしても、なんだか不安だわ。関係ないけど、その下にある『けいおん!』アニメ化の報にもギョッとしました。あれってまだ1巻しか出てないんじゃ……内容は「物凄く面白い」って息巻くほどじゃないにせよ、良い塩梅のユルさでそこそこ好きです。

・拍手レス。

 屋敷内を処女とおいかけっこして人並みにでかいアレを猟銃で破散させられたり網でバラバラにされたり包丁でさされたりするマゾゲです
 なんとなく平野耕太の「鍛え抜いたアレにショットガン云々」を思い出しました。

 「一周まわって来年の桜の時期に発売だよw」などと冗談飛ばしてたのが、現実味をおびてきましたな……。
 スタッフの言い訳すらなくなって、もう何がどうなってるのやら。来年の春に間に合うかどうかさえ半信半疑。


2008-12-04.

・誰もが一度ならず二度三度と妄想を重ねたことがあるに違いない特殊シチュ「周りの時間を止めて己だけ自由に動き回る」を題材に取ったALL-TiMEのエロゲー『時間封鎖』――その体験版をプレーし終えた焼津です、こんばんは。

 陵辱ゲーはエロシーン以外のテキストを読むのがかったるくて普段あまり手を出さないけど、原画「さだお」とシナリオ「なるみおかず」のコンビが取り組むソフトはいつも特殊シチュエーションに凝っていることもあり、毎回密かに注目しています。「時間がループするので何度でもヒロインの処女を奪うことが出来る破瓜螺旋ゲーム」だの「次から次へと他人の体に憑依して際限なくヒロインを犯し続ける強姦耐久生霊リレー」だの、もはや特殊シチュというより異常シチュですが……それらに比べたら「時間を止めてあれこれイタズラする」っつー今回のコンセプトはちょっと新味に欠けるかな。似たようなエロゲーも既にあり、ネタの奇抜さや強烈さが薄い。来年には『絶対凌域!〜時を止めるレイプ魔〜』とかいうのも出るそうですし。

 ただ、「時間を止める能力=時間封鎖」を、「全封鎖/全解除」「部分封鎖/部分解除」といった具合に細かく分類して使い分けているあたりはライトノベルの能力者バトルみたいでちょっと面白かった。全封鎖、つまり周囲の時の流れを完全に止めてしまうと当然ヒロインからの反応もなくなるので、そのままヤると陵辱シーンがピグマリオン趣味というかダッチワイフ相手にせっせと頑張っているような代物になってしまう。「生きた人間をそのまま性人形にする」ってシチュに興奮を覚える御仁もおられるでしょうが、そういうニーズに応えるなら時間封鎖能力云々は一切合財除去しちゃってタイトルを『超マグロ女』に変えた方が話は早い。なので「部分解除」と称される小技で周囲の時間を凍結したままヒロインだけ解凍し、声優さんがちゃんとエロシーンを演じられるように気配りされています。封鎖したり解除したり、の繰り返しで自分の優位を守るシーンもキチンと収録されている。設定を活かした描写で、真面目にレイプしてるなぁ、と感心しました。「真面目にレイプ」ってのも変な表現だけど、ヌキゲーをプレーしているときでさえ恐ろしくやる気のない濡れ場テキストに出くわすことは結構ありますので。しかし、この「部分封鎖/部分解除」は主人公の体が接触している範囲だけに使用可能で、部分解除している最中に逃げられたら追いかけて捕まえるか、あるいは一旦「全解除」してから再びザ・ワールドしないと相手を停止させられない。ライトノベルだったらここらへんの脆弱性を突かれて倒されること請け合いですね。

 噂によれば後半で主人公が精神的な成長を遂げるシナリオもあるらしく、そうした「陰中の陽」が実際にどう作用するか、想像して不安に駆られなくもない。「陵辱ゲーにおける純愛展開」は萎えるモノの典型と言われますが、世の中には『いたいけな彼女』なる例外もありますし、やりもしないで「ダメ。ゼッタイ」と断定する真似は控えておこうと思います。

 ちなみに。これが発売する少し前にまったく同名のSF小説が刊行されています。あっちは原題が「SPIN」だから、本来なら被るはずなかったのに……邦題を考えた人は今頃頭を抱えているかもしれません。

ドイツ語って何であんな無駄にカッコイイの?(日刊スレッドガイド)

 さりげなくヘルマンが混ざっていて笑った。中二病というか邪気眼でも必ず「英語カッコイイ」から「独語カッコイイ」に移行する時期が存在しますね。ドイツ語を多用しているライトノベルは最近だとシュピーゲルが真っ先に思い浮かぶところか。舞台はウィーンですけど。あと古いけど『閉鎖都市 巴里』も独逸軍占領下のパリを描くだけあってドイツ語多かったですね。「重騎」が英語だと「ヘビィ・バレル」、仏語だと「ルール・デ・マリオネッタ」、独語だと「グレーセ・パンツァー」。「重騎師」も英語だと「ナイト・ストライカー」、仏語だと「ルール・デ・エクリヴァン」、独語だと「パンツァー・カバリエ」。「詞認筆」は英語だと「サイン」、仏語だと「シーニャ」、独語だと「レルネン」。カッコイイというか、記憶に残っているのはどれもドイツ語バージョンだわ。

 カッコイイ反面、馴染みのない響きが多いせいで覚えにくい・発音しにくいのが難点。一度頭に入ったはずの「秩序警察」が「オルドヌングス・ポリツァイ」だったか「オルドルングス・ポリツァイ」だったか、今となってはあやふや。単語にルビ振られてもなかなか読めません。同じ感じで、スペイン語もカッコイイのにすごく覚えにくい……『ジャガーになった男』を読んだときは苦労しました。

ハイクオソフトの『さくらさくら』が発売されるまであと千億の夜(12/19→01/30)

 もはや延期界のエリート。すなわち延貴。

・誉田哲也の『ヒトリシズカ』読了。

 伝奇小説でデビューし、サスペンスものを中心に書いていた初期――ハッキリ言って鳴かず飛ばずでしたが、警察小説に転向するや一挙に人気と注目を集め、いまブレイクを果たしつつある誉田哲也の最新刊。姫川玲子シリーズの第1弾『ストロベリーナイト』は売上20万部を突破したそう(先月の新聞広告に載ってた)で、公称であることを差し引いてもなかなか凄い数字です。姫川玲子シリーズは更に第2弾の『ソウルケイジ』、第3弾にして短編集『シンメトリー』へと続いていく。これとは別に『ジウ』という、2人の女性刑事をメインに据えた全3巻のシリーズがあります。一見すると単発モノに映る『国境事変』も、実は『ジウ』のスピンアウト作品。つまり誉田哲也の警察小説には姫川玲子シリーズとジウシリーズ、2つの流れが存在するんですけれど、『ヒトリシズカ』はそのどちらにも属さない。正真正銘の単発作品となっております。

 連作形式で、物語は6つの短編によって構成されています。各話のタイトルはというと、「闇一重」「蛍蜘蛛」「腐死蝶」「罪時雨」「死舞盃」「独静加」。なんだか……ネーミングセンスが大沢在昌の『新宿鮫』シリーズと同じ匂いを発しているというか……好意的に述べても「ダサカッコいい」止まりの代物ですね。しかしそのダサカッコよさに惹かれて買ってしまった人間もいるわけで、決して悪いことじゃないとは思います。購入すべきか否か迷ったときは店頭で目次を確認してみてください。たった一瞬で生理的な判断を下せること請け合いです。

 東京各地で発生する5つの殺人事件。すべてが独立しており、繋がりなどなかった――背後に見え隠れする、一人の女を除いては。艶やかな黒い髪と日本人形のように整った容貌。あらゆる偽名を用いて刑事や探偵による捜査の手をすり抜けてきた「幻の女」。彼女はいったい何のために犯罪と関わり続けるのか。そして、彼女の行く末にはいったい何が待ち受けているのか。やがて刑事たちは一つの「結果」を知ることになるが……。

 木を見て森を見ず――。細部に注意しすぎ、肝心の全体を見失うことのたとえで、事件捜査において、最も避けなければならないことである。この小説に登場する刑事は皆、これを徹底し犯人を逮捕していく。だが、彼らは気づかなかった。その森が想像以上に大きく深いということに……。

 帯の裏に書かれているこの文章が物語の狙いを分かりやすく伝えてくれます。冒頭に収録されている、言わばプロローグに相当する短編「闇一重」は至ってありふれた警察小説という印象で、誉田哲也らしい生活感溢れる刑事が見所だったりするものの、そんなに物凄そうなストーリーが始まるって気配は漂ってきません。実のところ単純なスケールで論じれば、最後まで読んでも話はさして大きくならない。しかし、「闇一重」のラスト、解決するかと思った事件が奇妙な余韻を残したまま終結し、2話目以降に尾を引きずっていく。発揮される巧みなヒキの技術が、「続きを読みたい、というか最後まで読みたい」というモチベーションを高めてくれます。1話、また1話と進むにつれ、読者はどんどん「深い森」の奥へ奥へと誘われる。「心の闇」とか「闇のつながり」とか、そういった陳腐なものは見えないし見せないけれど、「闇すらろくに窺えない」という逆説的な迂遠さで以って『ヒトリシズカ』の世界をそっと提示し、「ああ、きっとまだ語られていないエピソードもあるのだろうな……」なんて少し寂しさの混じった錯覚を惹起させたりする。終わっているようで終わっていない。いや決して「未完」という意味じゃなく、行間に散らばる「埋められるべきピース」を想像して補う余地があえて残された、そういう「緩やかな隙間」のある作品です。

 各話の毒々しい漢字題名よりも、表紙を飾るスッキリした片仮名タイトルの方がしっくり来る、そんな一冊。地味と言えば地味だし、呆気ない結末と言われれば否定できないにせよ、湧き上がる「続きの読みたさ」で語るなら文句ナシの勢いを持っています。連載マンガなんかを読んでいてたびたび感じることですが、「面白い作品」と「続きを読みたい作品」って根本的に種類が違うんですよね。極論すると、面白いのに途中で読むのやめてしまう作品があったり、あるいは長年ずっと追っている作品なのに評価としては並程度だったりする。本書は後者のタイプに近いかな。「面白さ」ってポイントだとやや弱くて、代わりに先が知りたくてページをめくらせるような力は強い。フックがしっかりしている、とでも表現すればいいのでしょうか。ただ、どちらかと申せば既存のファン向けって内容。この人の本はまだ読んだことがない、という方には本書より『武士道シックスティーン』を薦めておきたい。

・拍手レス。

 鹿鼎記は武術より主人公の成り上がりモノとして楽しむものかと。
 主人公は善人じゃないですけどイイキャラしてますよー。

 なるほど。それにつけてもタイトルの読み方(ろくていき)がなかなか覚えられません……。

 いまじゃてにはいらないかもだけど アレながおじさん オススメ。ぐぐると上のほうにでるレビュー読んだら足がエロゲ屋さんに…
 屋敷内を逃げ回る女の子たちを捕まえて……とかいうエロゲーですっけ。雑誌の記事で見た記憶がありますけど、頭の中では『怪奇!ドリル男の恐怖』と混ざって『アレドリルおじさん』みたいなイメージになっている惨状。


2008-12-01.

・東野圭吾の新作長編『聖女の救済』を読み終えた焼津です、こんばんは。同時発売された短編集『ガリレオの苦悩』は割と早めに賞味できたものの、こちらは後回しになってしまっていました。

 で、『聖女の救済』。「今度のガリレオの敵は、女!」だの「これは完全犯罪だ」だの、未曾有の大作とでも言いたげな売り方をしているが、いざ読み切ってみると実にシンプルな代物だった。いっそ驚くくらい、図抜けたシンプルさ。状況からして自殺ではなく殺人と見られるが、毒を盛った方法が分からないという言わば「毒殺トリック」を巡るストーリーです。毒殺モノというと、個人的には有栖川有栖の「ロシア紅茶の謎」が印象に残っています。『聖女〜』の方は単純にトリックだけを取り出して論じればトンデモというかバカミスの類かもしれませんし、実際真相が判明したときは唖然としたものですが、これを長編規模の物語に添うよう細かく詰めて構築してみせた作者の意欲に関しては賞賛したいところです。良い意味で開き直っている。タイトルの由来が暴露されるシーンには「おおっ」となった。幕切れが少し呆気ない感じもしましたが、ガリレオシリーズは短編よりも長編の方が好みに適いますわ。

・3巻あたりで話が散漫になってきたから続きを買おうかどうか迷いつつ結局購入した漫画版『ウルフガイ』の新刊、あまり期待せずにページをめくっていたら途中で衝撃と興奮の展開に突入し、つい夢中になって貪り読み耽った。やはり、バイオレンス・コミックはやりすぎるくらいでちょうどいい。それもチャンピオンのマンガなら尚更だ。最近読んだ『ブラック・ジョーク』もなかなかのアタリだったし、ホント秋田書店ってB級テイストの補給地としては申し分ありませんわ。『範馬刃牙』はどんどんアレな感じになっていきますが……『GAMBLE FISH』も割と迷走しがちだけど、あっちはアビーの異形な存在感もあってか不思議とダレません。にしても最新刊のアレは――ツッコミ入れたい気持ちを抑えるのが難しく、読んでいて往生しました。「それなんてギ○ス?」、あるいは「あんたどこの○○ーシュ?」と。狙ってやっているならスゴい。スゴいというかヒドい。

『刀語』がアニメ化するとか何とか。

 もう完結してるんでメディアミックスには使いやすい材料なのかもしれないけど……うーん。ぶっちゃけ不安。だが、評判によっては『刃語』、『忍語』、『認語』と新シーズンがどんどん開幕するかもわからんね。

『アイスウィンド・サーガ 冥界の門』(最終巻)、刊行決定

 良かった良かった、これでやっと『アイスウィンド・サーガ』が全巻揃う。刊行予定時期は来年の春から夏にかけてとのこと。楽しみに待つとします。

・今年最後の購買予定報告。

(本)

 『百合星人ナオコサン(2)』/kashmir(アスキー・メディアワークス)
 『眼鏡とメイドの不文律』/TOBI(ソフトバンククリエイティブ)
 『イグドラジル−界梯樹−』/水月郁見(ソフトバンククリエイティブ)
 『人類は衰退しました4』/田中ロミオ(小学館)
 『ハーモニー』/伊藤計劃(早川書房)
 『トリフィルファンタジア(1)』/夜麻みゆき(スクウェア・エニックス)

 文庫化情報。金庸の『鹿鼎記』が文庫化開始します。全8巻だから、来年の7月に完結か。主人公が「武侠小説史上最低」と謳われるせいもあってか、金庸最後の大長編にしては評判がイマイチで、出費も考えると躊躇するところですが……もう金庸小説の大半は購入済ですし、コンプするつもりでドーンと買ってしまおう。あとは『天龍八部』全8巻と中編集『越女剣』が文庫落ちすれば本当にコンプリートできますね。あとは佐々木譲の『制服捜査』とか津原泰水の『綺譚集』とか古処誠二の『アンフィニッシュト』(『未完成』改題)とか。逢坂剛のライフワークたるイベリアシリーズ第4弾『暗い国境線』も上下巻で出ます。そして森見登美彦の『夜は短し歩けよ乙女』が早くも登場……ってか、あれまだ読んでないのに……矢作俊彦の『悲劇週間』も同じく読まないまま文庫化を果たしそうな気配です。

 『百合星人ナオコサン』はkashmir久々の新刊。1巻の冒頭を読んだときは「なんじゃこのノリ、わけ分からん」だったのに気がつけばすっかりハマってしまって、『デイドリームネイション』以来丸一年もkashmir臭に飢えていたのですから「待望」の二文字をおいて他に心境を表す単語はありません。予価が高いところ見るとまた初回限定特典でも付けるのかな……冊子系でもないかぎりわざわざ特典が欲しいとは思わないけれど、通常版が出るまで待つのは無理っぽいから肚を据えるしかない。『眼鏡とメイドの不文律』は『眼鏡なカノジョ』で一躍メガネっ子愛好界に名を馳せたTOBIの新刊。詳しいことは何も分かりませんが、タイトル見ればもう充分だ。これで勝つる。『イグドラジル−界梯樹−』は水月郁見の新シリーズで、“護樹騎士団物語”とも繋がりがあるらしい。とはいえこっちは現代モノで、“護樹騎士団物語”とは異世界の話。共通項は「螺旋の騎士」や「守護騎」といった要素のみ。『夏休みの戦い』とこれ、二ヶ月連続で新刊が読めるなんて贅沢極まりないが、これで『たたかう!ニュースキャスター』再開からまた一歩遠ざかったかと思うと、こう、目尻から透明な汁がダラダラと……。

 『人類は衰退しました4』は田中ロミオの新刊であり、多くの儲にとってクリスマスプレゼントとなる一冊でしょう。しかし当方は執念深いので未だオクルトゥムを忘れておらず、クリスマスムードに浸ることはインポッシブルです。『ハーモニー』は伊藤計劃3冊目の著書。オリジナルストーリーとしてはこれが2冊目です。シリーズファンじゃないせいもあってかMGSのノベライズはいまひとつ楽しみ切れなかったが、今度は計劃節てんこ盛りになるだろうことを予想というか熱望する。大いにブチかましてくれ。『トリフィルファンタジア』……夜麻みゆき復ッ活! 夜麻みゆき復ッ活! 夜麻みゆき復ッ活! 『レヴァリ アース』と『幻想大陸』と『刻の大地』、いわゆる“オッツ・キイム”3部作でコアな人気を有するマンガ家の、実に6年ぶりとなる新刊です。この報せを目にしたときは某賢狼AAみたく「マジでっ!?」と口を菱形にしました。ドラクエの4コママンガ劇場に載ってた頃からファンだった(当時小学生)身としては熱いモノが込み上げてくることをどうにもできませぬ。

(ゲーム)

 『暁の護衛〜プリンシパルたちの休日〜』(しゃんぐりら)

 良かった……今月はこれ以外に食指の動くソフトがない。本はともかくゲームに関しては出費を抑えられそうです。


>>back