2007年12月分


・本
 『江豆町』/小田扉(太田出版)
 『紅〜醜悪祭(上)〜』/片山憲太郎(集英社)
 『風の払暁』『事変の夜』/船戸与一(新潮社)
 『さらば甘き口づけ』/ジェイムズ・クラムリー(早川書房)
 『酔いどれの誇り』/ジェイムズ・クラムリー(早川書房)
 『ダンシング・ベア』/ジェイムズ・クラムリー(早川書房)
 『友よ、戦いの果てに』/ジェイムズ・クラムリー(早川書房)
 『明日なき二人』/ジェイムズ・クラムリー(早川書房)
 『ファイナル・カントリー』/ジェイムズ・クラムリー(早川書房)
 『正当なる狂気』/ジェイムズ・クラムリー(早川書房)

・ゲーム
 『さくらシュトラッセ』体験版(ぱれっと)
 『Dies irae』(light)

・特集
 2007年振り返り(その1)
 2007年振り返り(その2)


2007-12-31.

・年の瀬とはいえまだ仕事は残ってますが何か? 睡眠時間が確保できるだけでもありがたい心境の焼津です、こんばんは。

・年末振り返り企画第2弾、サクサクと行きましょう。

[小説]

 去年みたくいくつもジャンル分けしていると書き上げるのに異様なほど時間が掛かりますので、大まかに「一般文芸」と「ライトノベル」に分けて簡単にまとめることにします。基準は曖昧っつーかテキトーですので深く考えないでください。

(一般文芸)

第一位 『DIVE!!(上・下)』
第二位 『泣き虫弱虫諸葛孔明(第壱部〜第弐部)』
第三位 『絞首人の一ダース』
第四位 『ブラック・ハート(上・下)』
第五位 『虎の道 龍の門(上・中・下)』
第六位 『いっしん虎徹』
第七位 『虐殺器官』
第八位 『クドリャフカの順番』
第九位 『ファイナル・カントリー』
第十位 『苦悩のオレンジ、狂気のブルー』

 『DIVE!!』は「飛込み」という、知名度の割に日本ではあまり注目されていない競技を題材に選んだ青春小説。漫画化もされています。著者が直木賞を取ったことで注目がヒートアップし、当方自身そうした流れで手に取ったのですが、冒頭一行目から引き込まれてあっという間に一気読みしてしまいました。誰かのためにではなく、自分のために頑張ること。人はそれぞれ自分の荷物を自分で背負っているのだという、至って当たり前なことを単に「当たり前」と片付けずに真摯な筆致で切々と綴っている。もともとが児童向け文学だったことは瑣末な話、作者が「ああ、今乗ってる飛行機が落ちれば続きを書かなくて済むのに……」と思うほど追い詰められた、ってのも頷ける出来です。『泣き虫弱虫諸葛孔明』は三国志の常識を徹底的に蹂躙する抱腹絶倒の一大奇書。エッセイに近いざっくばらんな文章で与太話とも考察ともつかないエピソードを大量投入し、三国志をろくに知らない読者でも一切関係なく面白がらせてしまう。劉備の精神を「ニヤニヤ笑いを浮かべながらピンポンダッシュを繰り返す近所のガキ」に喩えたり、関羽を「後宮の女官並みにジメジメした内面を持つ陰湿な男」と評したり、三国志ファンが読んだら激怒しかねない内容で、しかもなぜか急に「残酷な天使のテーゼ」パロが始まったりするんだから野放図極まりない。それでいて好き勝手書いた話特有のなんとも言えぬ清々しさがあるシリーズです。『絞首人の一ダース』は今年読んだ分では『10ドルだって大金だ』ともども最高の水準を保っている短編集。「後味なんて何一つ残さない」という読み捨て感覚を徹底した『10ドルだって大金だ』とは対照的に、深く重い余韻を漂わせる一冊です。特に、酒を断ったことにより禁断症状で苦しんでいる浮浪者の男が目の前で起こる悪事を見て見ぬフリでやり過ごせなくて、苛酷な運命に巻き込まれる「蛇どもがやってくる」は落涙必至。

 『ブラック・ハート』は刑事ハリー・ボッシュのシリーズ第3弾。ボッシュが左遷される理由となった「ドールメーカー事件」――ボッシュの不手際を問う遺族の民事訴訟が進行する一方、その事件と同じ手口で殺された死体が発見される。しかし、検死官の所見によれば、この死体はドールメーカー事件で犯人と目されてボッシュに射殺された男よりも後に死亡しているという。まさか、殺人鬼「ドールメーカー」は他にいる……? といった調子で裁判と新たな事件が同時進行し、シリーズ1作目や2作目をも上回るサスペンスを生み出すことに成功している。「おれが殺した男は本当に犯人だったのか?」と猜疑に苦しむ主人公の姿から目が離せない。刑事小説と法廷小説のハイブリッドです。『虎の道 龍の門』は格闘小説。「プロレスと琉球空手、どっちが強い?」という感じで二人の主人公を用意し、それぞれ別個に己の道を進ませながら、最終的には同じ土俵に立たせる。どちらかと言えばリアリティ重視で、バイオレンス描写も夢枕獏とかに比べておとなしめだが、格闘技に関する好奇心をこれでもかとばかりに刺激する内容でついつい舌なめずりしちゃう。同作者の『孤拳伝』も是非読みたい。『いっしん虎徹』は有名な刀匠・虎徹を主人公に据えて終始一貫ひたすら刀を打ちまくる鍛冶小説です。掴みからして巧い。あくまで刀づくりが眼目なのでストーリー面のうねりは若干乏しいものの、舞い上がる火の粉とトロトロに溶けた鉄の夕焼け色がありありと瞼の裏に浮かんでくる丹念な筆致に酔い痴れればそれで充分。刀剣の魅力とそれを打つ難しさ、改めて認識させられます。

 『虐殺器官』は「コジマニア」を自称するほど小島秀夫作品に耽溺している作者の『メタル・ギア・ソリッド』リスペクトなSF長編。発展途上国を渡り歩き、意図的に虐殺を引き起こしている謎のアメリカ人を隠密裡に処分せよ――蛇喰らい(スネークイーター)と呼ばれる特殊部隊に所属する主人公がそうした命令を受け、ハイテクな兵器をあれこれ駆使して活躍する。程好く力が抜けた筆致でB級スパイアクションの妙味、それに悪趣味なSFの味わいを堪能させてくれます。少し悪ふざけが過ぎるところもあるし、直截的なタイトルがちょっと合ってない気もしますが、押さえた方がベターな新人でありオススメ。『クドリャフカの順番』は題名からいろんな意味で鬱展開を想像して暗澹たる心地に陥りそうですがご安心を、シリアスな箇所はあっても鬱というほどではなく、基本的に楽しさ全開の青春ミステリです。主人公たちが発注ミスにより刷りすぎてしまった部誌を文化祭で売り捌くため奔走する傍ら、「十文字」と名乗る怪盗があっちこっちに出没し、取るに足らないチンケなものを盗んでいく。ミステリは往々にして探偵役が事件に噛む必然性が弱く、いささか強引に参加させることも多いんですが、これは巧い具合に「探偵役が事件に関与する理由」をつくり、有機的なストーリーに仕上げています。古典部シリーズの3作目なので、先に『氷菓』『愚者のエンドロール』を読むこと推奨。『ファイナル・カントリー』はテキサスを舞台にしたハードボイルド。60歳の探偵がパワフルに動き回り、複雑に入り組んだ事件を解きほぐしていく。ミロ・ミロドラゴヴィッチシリーズの4作目なので、いきなりここから読み出すのは辛いが、シリーズ通して読めば深い達成感が得られることは確実。『苦悩のオレンジ、狂気のブルー』は映画『ランボー』の原作者による短編集。ホラーを中心に色とりどりの作品を収録していますが、やはり圧巻は作者が愛する息子を喪った後で書いたラスト3編。特に「墓から伸びる美しい髪」が見せる哀切の凄まじさにはただただ呑まれるばかりだ。

 ランク外の作品では特異な色彩感覚を持つ少年が原色の海・アフリカへ飛ぶ『13』、立て篭もり犯のところへSATを突入させるべきか否かの判断を迫られる『果断』、最高の詐欺師となるべく仕込まれた少年が壮絶な陰謀劇に巻き込まれる『ロック・ラモーラの優雅なたくらみ』、神々と英雄との戦争が幕開けするまでを描く『イリアム』、百物語のように連作形式で進みながらいつしか一つのストーリーが編まれていることに気づく『煌夜祭』、奇妙な風習に支配された「地図に載らない町」で罪を犯した少年が逃亡する『雷の季節の終わりに』、歩みを遅くすれば殺される最悪のウォーキングを綴った『死のロングウォーク』、剣技が意味を成さなくなる幕末において敢えて剣技を窮めんとする『私の庭(浅草篇・蝦夷地編)』、電通社員だった作者がその体験をフル活用して広告業界の内幕を暴く『シリウスの道』、ドイツ30年戦争の泥沼を活写してうっとりするほどの分厚さを獲得した『聖餐城』、高村薫作品の中では存在感が薄いが「朦朧とした意識の流れ」を拾う巧みさに戦慄させられる『照柿(上・下)』、多少ご都合主義が入ってるとはいえ走ることの楽しさ・苦しさ・美しさを過不足なく謳った『風が強く吹いている』、おっとりと天然気味だけど内心Sのお嬢と終始殺気立っている割に結構ツンデレな剣道一直線娘、二人の少女が竹刀を通じて特別な絆を切り結ぶ『武士道シックスティーン』も面白かったです。

(ライトノベル)

第一位 『Fate/Zero(Vol.1〜Vol.3)』
第二位 『化物語(上・下)』
第三位 『連射王(上・下)』
第四位 『DDD(1〜2)』
第五位 『刀語(第一話〜第十二話)』
第六位 『護樹騎士団物語(U〜Y)』
第七位 『狼と香辛料(W〜X)』
第八位 『オイレンシュピーゲル(壱〜参)』
第九位 『バカとテストと召喚獣(1〜3)』
第十位 『キマイラ青龍変』

 『Fate/Zero』の4巻、今日が一般発売の日ですけれど、地方民の当方はもちろん入手しておりません。くやしいのうwwwくやしいのうwww。とはいえ、3巻まででも充分1位に推すに足る出来映えゆえ迷いはありませぬ。衛宮切嗣と言峰綺礼が激突し、「征服王イスカンダル」なるステキなサーヴァントまで参戦した第四次聖杯戦争を、ニトロプラスの看板ライター・虚淵玄が熱筆――およそ信じがたい企画が発表されてから既に一年以上、1冊きりで終わるのかと思いきや全4冊という「なんやってんスか虚淵さん! 本業、本業は!」とファンも訴えたくなる大ボリュームが予定され、夏コミで終わるはずだったのが冬コミまで延びましたが、ともあれ無事に完結となりました。奈須が築いた伝奇の世界を虚淵の硬質な鑿で削り出す、まさに夢見心地のストーリー。TYPE-MOONも虚淵も共に愛好している身にはたまらない。『化物語』、発売は去年ですね。上巻が講談社BOXの創刊ラインナップに連なっており、「なぜ普通の新書で出さなかったんだ」と不服に感じたせいで購入するのが遅れましたが、困ったことにいざ読んでみれば価格の高さなど気にならない面白さ。「続編マダー?」と待望する儲になってしまった。妖怪に憑かれた女の子たちと出会い、その悩みを解消していく主人公の日々を連作形式で綴っていて、設定的にはライト京極堂といった趣。しかし肝心なのは時に本筋さえもうっちゃって暴走するギャグやコントであり、下ネタやや多め、サドっ気たっぷりな会話の遣り取りにたちまち骨抜きにされました。とにかく「読みやすいこと」を徹底している。コメディ系のマンガ、ライトノベル、ギャルゲー、あらゆるもののエッセンスを凝縮した「皮を突き破るほどアンコ満載」な二冊です。『連射王』はゲームセンターに置かれたシュティングゲームを通じて「自分は本気になれる人間なのか」を試していく青春小説。勉学でも部活でも恋でもなく、ゲームにすべてを懸ける。それも、極めて求道の要素が強いシューティングゲームに。所詮ゲーム、などという逃げは決して打ちません。「本気になる」ことの価値を、自機を操って敵機を撃ち落とす爆砕の空間に見出していく、掛け値なしのまっすぐな成長ストーリーとなっています。ゲーム好きはもちろん、「青い」小説に心惹かれるなら尚更チェックしない手はない。

 『DDD』は「Decoration Disorder Disconnection」の略。『月姫』や『Fate』で有名なゲームライターの現代伝奇バイオレンスです。作者の奈須きのこは熱烈なファンを生み出す一方で「悪文」と評されることもあるアクの強い筆致が特徴であり、冒頭時点から既に読み手に選別を強いますが、これでも『空の境界』に比べればかなり読みやすくなっている。「悪魔憑き」という、字面からすると如何にも古臭そうなネタを巧い具合にアレンジし、退屈しない話にしようとあれこれ工夫を凝らしています。登場人物がどいつもこいつもやたらとキャラ立ちしていて、一旦嵌まれば抜け出せなくなる重力場を発揮。たっぷり詰まってるので価格面での不満はありませんが、フォントはどうにかしてほしかった。『刀語』は丸一年に渡って一ヶ月に一冊ずつ、12ヶ月連続刊行――っていう狂気の産物めいた企画を無事達成したシリーズ。著者初の時代モノですが、これを時代劇と呼ぶのは憚られる。あんまり過剰な期待を寄せると盛大にズッコケる内容ながら、軽ーい読み物を求めて着手する分にはうってつけ。毎回あの手この手で読み手をおちょくろうと仕掛けを施し手ぐすね引いて待っていますので、肩の力を抜き、作者にツッコミ入れながら崩していくのがベターです。もうちょっとコストパフォーマンスが良ければ、なおのこと宜しかったんですが……。『護樹騎士団物語』はすみません、最新刊が読めてません。異世界を舞台にロボットバトルを繰り広げるファンタジーで、大まかな設定は「どこかのアニメやマンガにありそう」の一言で終わってしまいますが、一度読み始めたら到底一冊でやめることなんてできない、厄介なまでのスピード感が病みつきになるシリーズ。いつもいつも内容詰め込みまくりで終わり近くが駆け足になってしまうけれど、読んでいる間はまさに「手に汗握る」ほどスリリングです。文章が荒いとか、展開が遅すぎるとか、難点もありますが惚れてしまえばアバタもエクボ。異世界ファンタジーやロボットアクションに興味のない人(当方も割とそうです)を易々と引き入れる魅力を備えています。

 『狼と香辛料』……あ、これもまだ最新刊積んでいたんだった。ごめんなさい、ごめんなさい。狼の化身である老獪でいてお茶目なヒロインと、抜け目ない行商の主人公が知力とウィットを振り絞って互いの腹を探り合う問答を繰り返し、息詰まる緊張感を描きつつも、傍から見れば単なるバカップルのイチャつきにしか見えない! ふしぎ! な新感覚経済ライトノベルです。酸いも甘いも噛み分けたヒロインの手強い可愛さもさることながら、「商取引」をメインに据えて剣や魔法が飛び出さないファンタジーという独自の路線を貫いている点で稀有と言える。結構地味なので人によっては「ふーん」程度に留まりハマるところまで行かないかもですが、デビュー1年そこそこでアニメ化が決定するハイスピードぶりから人気のほどは窺えるかと。主人公が清廉潔白ではなく、たまに「悪事」と呼んで差し支えない行為に加担することがあるのも一種のスパイスになっている。『オイレンシュピーゲル』は別レーベルから刊行されている『スプライトシュピーゲル』と合わせて一つのプロジェクトを構成するシリーズ。近未来のウィーンを舞台に、人手不足を原因にして借り出された「特甲児童」の少女たちが街の治安を脅かすテロリストどもを鎮圧する『GUNSLINGER GIRL』『攻殻機動隊』なアクション小説です。クランチ文体なるブツ切りのテキストがいささか読みにくいが、これはやがて慣れます。可愛くて個性に溢れた少女たちが容赦なくテロリストを殺すハードな内容で、作者が冲方丁だけに、手加減する素振りは一切ない。ハリウッド映画のようなテンポの良さとキャラクター小説の強みを両立し、普段ライトノベルを買わない層すら取り込んでいますが、そういう人々からすると「表紙イラストが……ぶっちゃけ買いにくい」のだそうな。しかし羞恥に耐える価値はありますので是非。どうにも我慢できないならば通販で。『バカとテストと召喚獣』はかつてタイトルで敬遠していた自分をどやしつけたい、そう願うほど、こちらの予想に反してクリーンヒットを打ったシリーズです。「テストの点数が召喚獣の強さに反映される」という設定でおバカな主人公たちが勉強に励むモチベーションを得る点からして面白かったし、単純にコメディとしても軽妙かつ愉快で、召喚獣とまったく関係ない日常シーンも大ウケすることしきりでした。ちょうど先が気になるところで終わっているのに、次に来るのは短編集、本編再開までしばしお預け――っつー極悪な生殺しモード発動中です。言わばレイニー止め。さあ、あなたも今読んで続きが出るまで苦しみ続けるがいい。それにしても秀吉(見た目は♀、中身は♂)の愛い奴っぷりは異常。

 『キマイラ青龍変』は夢枕獏のライフワークである『キマイラ』シリーズの外伝。本編ではどちらかと言えば脇役に近い存在の龍王院弘が主人公を務めています。龍王院が出てくる話と言えば『崑崙の王』がありますが、本編の間に位置するあれと違って過去に遡るストーリーとなっている。かつての師、宇名月典善との出会いを綴っており、龍王院ファン・典善ファンともども必携の書。伝奇色が濃厚な本編とは異なり、終始徹底して肉体と肉体をぶつけ合う格闘描写が眼目になっていて、キマイラシリーズを読んでいなくとも割と楽しめる(逆に言えば、これを読まずにキマイラシリーズに挑んでも差し支えない)。失礼なことかもしれませんが、個人的には本編よりこの『青龍変』が好きです。むしろこれを読むために本編を読み出したようなものだ。リンク先には「新版」とありますけれど、これは旧版を発行していた朝日ソノラマ社が店仕舞いして朝日新聞社に出版事業を譲ったからで、デザインや中身は一緒だろうと思います。ランク外では『とある魔術の禁書目録(12〜14、SS)』『灼眼のシャナ(XIV〜XVI)』『とらドラ(4〜6)!』が安定して面白かったですね。『紅〜醜悪祭(上)〜』も久々の新刊で嬉しかった。下巻が出ていれば10位以内に食い込んでいたかも。出てないんだから意味のない仮定ですが。あと、『銀月のソルトレージュ(1〜3)』『ねくろま。(1〜2)』『ドラゴンキラーあります』も収穫に数えたい。みな万人ウケするとは言いがたいシリーズですが、「まずは1冊お試しあれ」と薦めてみたい出来。

・拍手レス。

 焼津さんにディエスのASを書いてもらいてえ・・・!
 ネタは少し考えてましたけど、気持ちが萎えたこともあって結実しそうにありませぬ。

 でも、これだけ裏切られても、正田なら…正田ならなんとかして(略)という希望を捨てきれない俺が居ます。
 なんだかDVに耐える薄幸妻みたいだ……。

 あとアレだ。漫画なら「エスペリダス・オード」(堤抄子・著)はガチ。マジお勧め。
 ヒロインのモコモコ髪が可愛いですよね。

 完全版より某所の「でぃえす☆いれ」に期待している始末です
 もうASに望みを託すしかないのかなぁ。

 あー、優って素でヒロインって認識なんですね、イヤ、凄く納得いく結論だと思いますが…
 あんな可愛いチャイナっ子がヒロインじゃないわけがない。

・ではよいお年を。


2007-12-29.

・やまざき貴子の『っポイ!(25)』読んだー。

 かれこれ15年以上続いている少女マンガ。編集者との人間関係がこじれたらしく、掲載誌が変わったりとあれこれゴタゴタし、前巻から3年半もブランクが空いたこともあり、危うく存在を忘却しかけていました。大まかな説明をすると、三人兄弟の真ん中(兄と妹に挟まれている)で、背が低くて妹よりも女顔のためしょっちゅう性別を間違われる主人公が、お隣の幼馴染み・日下万里(♂)と戯れたり、クラスメートの女子・一ノ瀬雛姫に片想いしたり……といった青春を延々と綴っている、笑いありシリアスありの学園コメディです。

 開始時点で中学三年生、そろそろ高校受験のことも考えないといけないなぁ、という雰囲気の中、ときに明るくときにヘヴィな調子で進んでいくのですけれど、驚くことにいつまで経っても卒業しない。メチャクチャ進行が遅いんですわ。ひとえにキャラクター数が膨大で、次から次へと新キャラが登場し、またことあるごとに時系列を遡って過去のエピソードを流したりする良くも悪くも冗漫な展開が「中学生活最後の一年間」を異常なほど引き延ばしてきました。なにせ、主人公の両親が出会った頃のエピソードどころか、戦前までバックして祖父母の分までやったんですよ。長期化するとサブキャラの番外編的な話を頻繁に織り込むようになる、というのは少女マンガで結構ありがちらしいものの、ここまで激しいのはそうないと思う。

 最新刊である25巻ではようやく受験シーズンに突入し、卒業するまであと一歩、という地点に差し掛かっています。中学校を卒業したらその時点でこのマンガは終わるんじゃないか、と危惧していた時期もありましたが、雰囲気からするとこのまま続くのかな? 相変わらずゴチャゴチャと描き込みが多く、慣れないと非常に読みづらい画面なれど、気に入っているサブキャラがチラッとひとコマでも出てくるとやけに嬉しくなる。このへんは長期連載の強みを活かしている感じ。恋愛面でも進歩がありましたが、あくまでこのマンガの尺度における「進歩」であって、まあつまりは亀の歩みにも似ています。「好き」と告白したサガミへの返事をようやく済ませましたけど、サガミが告白したのっていつ頃だったっけ……ぐぐってみたら14巻っぽい。8年前か。

 番外編では小学生だったサトル(雛姫の弟)が高校生になっています。要は未来編ですね。過去編はたくさんやってるけどこれは珍しいパターン。雛姫が自宅に彼氏を連れてくる描写もあって食いつかざるを得ないが、足しか見えないので誰だか不明。勿体ぶる喃。久々の新刊とはいえストーリーの低速ぶりは健在、まだまだ引っ張るつもりらしい。余談ですが、読み始めた頃は雛姫派だった当方もいつの間にかサガミに気持ちが傾いており、10年もすれば好みなんて変わるもんだなぁ、と痛感しました。サガミのポジションはあれだ、ハチクロの山田あゆみに近い。キャラの魅力に反して報われないムード濃厚。だけどそれが余計にそそる。それとこのマンガ、頻繁に主人公の女装シーンが出てきますので、当方の趣味嗜好にかなり影響を及ぼしている気がしないでもない。

・じゃあ年末恒例ということで、個人的に2007年を振り返ってみましょうか。

[映画]

 今年は確か、『300(スリー・ハンドレッド)』『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』『キングダム/見えざる敵』の3本を劇場まで見に行きました。あとはCATVで『ジャーヘッド』とか『トム・ヤン・クン』を見た程度。どれも面白かったですね。

 『300』は狂気のガチムチスパルタ軍団が「陵辱」と表現しても差し支えない勢いでペルシャ軍を蹂躙する、アクションというよりバイオレンスの雰囲気が濃い血みどろ首チョンパ映画でした。全体的にテンションが高かったせいでクライマックスがやや地味げに映ったのは惜しいところか。男の剥き出し上半身に興奮させられる、「半裸祭り」な一本。

 『ヱヴァンゲリヲン』は今更感漂うリメイク、しかも四部作ということで最初は見る気がしなかったけど、あまりに評判良くて釣られて劇場に足を運んでしまい、見終わったら「ああ、釣られて良かった」と思えた次第。TV版のダイジェストなところもあって展開が急(トウジが突然登場して「転校生、わしはお前を殴らなあかん」と言い出したり)ではあったが、ラストで描かれるヤシマ作戦はあらゆるマイナスを帳消しにする迫力に満ちていた。映像の凄まじさに加え、損傷した機体で這いずってポジトロンライフルに取り縋り泣きながらも任務を貫徹せんとするシンジに心打たれました。当然、次の「破」にも期待。

 『キングダム』は少し知名度が低いかもしれないアクション映画です。舞台はサウジアラビア。外国人居留区を襲撃したアルカイダ系テロリスト集団「アブ・ハムザ」にFBIの捜査官たちが立ち向かう、という如何にもアメリカ的なストーリーではあるけれど、銃弾一発一発の手応えが感じられる映像と音響で陶然とさせられた。スクリーンの大画面で見れて良かったとつくづく思う。

 『ジャーヘッド』は湾岸戦争時代の海兵隊を題材に選んだ一作。海兵隊員の綴ったノンフィクションが原作だけに、ストーリー性こそ希薄なものの細部に生々しい感触が行き渡っている。海兵隊お得意の罵詈雑言や下品でふざけた日常が満載されており、「敵のいない戦場」という状況も相俟ってある種の青春映画っぽい独特なムードを醸します。クライマックスの黙示録めいた画は必見。

 『トム・ヤン・クン』はタイのノンストップ体当たりアクション映画。とにかくアクションシーンが大量かつ派手で、ストーリーはグチャグチャなんですが、それをツッコむ暇がないほど目まぐるしく展開して魅惑する。敵として登場するカポエラ使いが異様にカッコ良く、正直出てきた意味はあんまりないけれど、あのシーンが堪能できただけでも価値のある一本でした。変幻自在の足技、実に妙なるかな。

[漫画]

第一位 『よつばと!(1〜7)』
第二位 『シャカリキ!(1〜7)』
第三位 『BAMBOO BLADE(1〜6)』
第四位 『覚悟のススメ(1〜5)』
第五位 『俺たちのフィールド(1〜18)』
第六位 『Over Drive(1〜13)』
第七位 『P2!(1〜4)』
第八位 『邪眼は月輪に飛ぶ』
第九位 『Damons(1〜9)』
第十位 『それでも町は廻っている(1〜3)』

 今年から読み始めたもの限定。通年で読んでいる作品では『ヘルシング(9)』『シグルイ(8〜9)』『棺担ぎのクロ。(2)』がビッシビシ心に刺さる傑作でしたね。クライマックスを目前に控えて狂熱の度合いを増す『ヘルシング』は一年に一冊というスローペースでもまったく気にならないクオリティであり、一コマ一コマに惚れ惚れとします。しかし外伝はいつ纏まるんだろう。『シグルイ』はまだ「無明逆流れ」の回想編が続いておりますが、藤木と伊良子の一度目の決闘が肝を潰す迫力につき、揶揄することもできない。山口貴由はどこまで昇る……。『棺担ぎのクロ。』は四コマ形式をうまく利用してストーリーを紡ぐメルヘン・ファンタジー。シリアスな話に四コマは向かないんじゃないか、というこちらの先入観を粉と砕いてくれるほど絶妙な手際です。絵の完成度も高く、一度ハマったら病みつきになって抜け出せなくなる世界であり、「心を奪われる」という体験に危機感や忌避感を覚える人にはオススメできない。来月には作者もう一つのシリーズ『GA 芸術科アートデザインクラス』の2巻が刊行されますゆえ、きゆづきファンは歓喜が昂じて失禁せぬよう各々尿道を締めて掛かられたし。

 『よつばと!』はいちいち解説する必要も感じないけど『あずまんが大王』のあずまきよひこが作者。あずまんがとはまた違った路線ながら、「他の作家には描けない/他の作家は描かない」ものをこれでもか、と詰め込み、日常の中に宿る不思議なおかしさと静かな幸福感がドッと記憶の襞から溢れ出してノスタルジーが止まらなくなる。ノスタりすぎ。が、漫画としての素晴らしさはノスタルジー云々とはまた別のところにあって、二度美味しい仕上がりになっています。一冊読み終えるごとに「ああ、読んでしまった」と嘆きながらホクホク顔を浮かべてしまうこと請け合い。『シャカリキ!』は後述する『Over Drive』がキッカケで読み出したロードレース漫画。初期の絵柄はコロコロコミックみたいで子供向けの印象が強いけれど、寡黙でいて全身にガッツを溜め込んだヒルクライマー(上り坂を得意とする選手)の主人公が見せるひたむきさに打たれるや、ページを繰る手が止まらなくなる。ああ、なんという熱量。おかげで当方自身、坂道を自転車で上がる際に「こんなん、坂のうちに入らへん!」と心の中で呟くようになってしまった。『BAMBOO BLADE』はアニメ化で飛躍的に注目度が跳ね上がった女子剣道コミック。コミカルな日常シーンと勢いのある試合描写、二つのバランスがうまく取れていて読み飽きません。「放課後の戦乙女(バルキュリア)たち」というキャッチコピーは少し引っ掛け臭いものの、お色気や恋愛要素で勝負せずにこれだけ盛り上げてくれる手腕には喝采を送りたい。まだ読んでませんが、7巻ではタマちゃんに匹敵するクラスの「巨星」が登場するとのことで、ワクテカ感を抑えるのに難儀します。くっ……鎮まれっ……!

 『覚悟のススメ』は高校時代に途中まで読んでいたので厳密に言えば「今年から読み始めたもの」ではないんですが、内容だいぶ忘れてたし、愛蔵版も出たことなので敢えてカウントしました。言わずと知れた山口貴由の代表作であり、『シグルイ』とは異なる方面で不朽の面白さを屹立させている。主人公が幾度となくピンチに陥り、毎回それを機転と気合で打破していくバトル漫画のツボを押さえた展開もさることながら、「言霊だけで構成されている」と書いても過言ではないネームの強烈さに肌が痺れます。「怒りを胸に沈めてはならぬ 怒りは両足に込めて 己を支える礎とせよ」「何だか知らんが とにかくよし!」「天国で 割腹!」「見損なうな! 策などない!」……これはもう、古橋秀之にとっての『ブライトライツ・ホーリーランド』みたいな、一つの極北です。『俺たちのフィールド』はなぜリアルタイムで読まなかったと己に問いたい、心から問い詰めたいサッカー漫画です。村枝賢一のスタイルは既にこの作品で完成されており、軸のブレというものがまったくありません。日本人高校生の主人公がいきなり南米へ渡ったりと、大胆な展開を躊躇わない果断さに打ちのめされる。陳腐な言い方ですが「魂の篭もった漫画」であり、サッカーへの愛情と、ひたすら物語を面白くしようとする熱意が漲っています。最後の試合は読んでいて体温が狂い出すほどリアルにアツい。『Over Drive』はいじめられっ子の少年が「自分を変えたい」と願い、片想いの少女に誘われて自転車部に入るところから始まる。何の衒いもなくベタベタな調子で進行するし、絵柄もちょっと荒いんですけれど、ロードレースの始まる3巻以降は涙なしには読めない。最近はちょっと展開が遅くてダレがちですが、勢い自体は衰えていません。

 『P2!』はジャンプで連載していた卓球マンガ。残念ながら本誌ではもう打ち切られたそうです。シャープでスッキリした絵柄、無駄を省いたシンプルな説明、ケレン味に欠ける代わり堅実で胸の躍るストーリー展開と、年寄り読者が求める少年マンガの要諦をほとんどカバーしている。が、如何せん印象が地味でパッと読者を惹き付ける華がないのが敗因だったんだろうか。何らかの救済を期待したいところであります。『邪眼は月輪に飛ぶ』は「視線が合っただけで死ぬ」という恐怖の梟を撃つため、老いたマタギが山から下りてくる。全編これジュビロ節だらけな単発コミック。カバーデザインからしてキマッており、たとえジュビロのことを知らなくても衝動買いしていたことでしょう。もう一個の新作『黒博物館 スプリンガルド』も良い意味でジュビロの趣味嗜好がダダ漏れになっている佳編です。『Damons』は手塚治虫の「鉄の旋律」が原作ということになっているものの、設定を借用しているだけで中身はほとんどヨネコーオリジナル。寄ってたかって自分を嬲り、妻子を殺したかつての友人たち5人に復讐するため、鋼鉄の義手とそれを操る謎の力「ゼスモス」を体得した主人公が執拗な追跡行を繰り返す。言わば少年漫画版『鬼哭街』。B級アクション系のセンスを遺憾なく発揮し、鬼気迫る良質なバイオレンスを実現させている。ここのところ引き延ばしが目立って伸び悩んでいる(あと、個性の強いキャラクターたちを制御しきれていない)印象もありますが、最後まで付き合いたい漫画です。『それでも町は廻っている』はどこかの制作会社が目をつけて「アニメ化決定→原作レイプ→黒歴史」のコンボを叩き込まないかとビクビクしているが、まあそんなことはないだろう、とも楽観しているフリーダムにユルい日常コメディ漫画。作画技術が高い反面、回ごとにころころとテーマが変わるし、全体通してどういったものを描こうとしているのか理解するまで時間が掛かる。だが、慣れると極上に愉快で気持ちいい。メイド喫茶で働いているヒロインがまったく萌えないというのも新境地ですね。個人的には先輩が好き。

 面白かった漫画はまだまだ沢山ありまして、いちいち紹介していくとキリがない。ザッと羅列しますと『チェーザレ 破壊の創造者』『さよなら絶望先生』『ブロッケンブラッドU』『キングダム』『大奥』『絶対可憐チルドレン』『学園黙示録』『フルセット!』『大東京トイボックス』『惑星のさみだれ』『海獣の子供』『ライアーゲーム』『日常』『嘘喰い』『逆境ナイン』『ヒストリエ』『岳』『ふおんコネクト!』など。

[ゲーム]

 『恋する乙女と守護の楯』
 『続・殺戮のジャンゴ』
 『Dies Irae』

 今年の新作、十数本も買った割にコンプしたのはこれだけ(『みにきす』や『ひぐらしのなく頃に礼』といったファンディスクは除外)。別に他はつまらなくて投げてしまったわけでなく、単にまとまった時間が取れなくて終わってないだけで、今もちまちまと進めております。あと、3本きりだと順位付けるのもアホらしいのでただプレーした順番にのっけました。

 『恋する乙女と守護の楯』はAXLのリリースしたソフト第3弾。AXLのソフトはそれまで体験版もやったことなかったし、原画の瀬之本もちょっと画風が苦手だったのだが、「女顔のエージェントが女装して女子校に潜入し、密かに対象を護衛する」という設定がツボに入ってしまい、買わざるを得なくなりました。「嫌々させられた女装がやけに似合っている主人公」って大好きなんですよ、当方。もちろん『ブロッケンブラッド』は垂涎の書です。シナリオ面ではツッコミどころが多すぎてアクションを期待するとガックリなこと請け合いでしたが、女装主人公モノのお約束をキチンと踏襲してこちらの欲求を満たしてくれた点では無上の一本と言える。好きな女もろくに守れないヘタレ主人公が横行する中でハッキリ「君を護る!」と堂々宣言して実行する姿も心地良かった。凄腕と言われている割にあんまり強くなく、あくまで防衛特化型の主人公は却って燃える&萌える。誤算だったのはヒロインがメインの3人(雪乃、蓮、鞠奈)よりもサブの3人(有里、設子、優)の方が魅力的だったこと。そんなこと言ったら妙子(主人公)に一番(*´Д`)ハァハァなわけですが。主人公ボイスなしなのが悔やまれる。まあ、そのへんは来年発売されるドラマCDで補完することに致しましょう。なんと妙子に釘宮が声を当てています。

 『続・殺戮のジャンゴ』はニトロの新作であり、久々に虚淵玄がペンを執ったマカロニ・ウェスタンSF。アウトローというよりクリーチャーな異星人どもがズギューンバキューンとひと昔前の安っぽい銃声を鳴らして撃ち合い、タンブルウィードが足元を転がっていくベッタベタな西部劇ながら、アホな冗談で終わらせずちゃんとお話として面白い内容に仕上げる虚淵の才能はホンモノだなぁ。と思いつつ、もっとその才能を有効活用しろよ、とも思ったり。面白いことは面白いのだが、こりゃ豪勢な才能の無駄遣いですわ。プレー時間は短く、どんなにゆっくりやっても10時間あれば余裕で終わる。それでも不思議と不服を覚えなかったのは当方が虚淵儲ということもありますが、密度を高めてキッチリと映画3、4本分のネタを詰め込んでくれたから、むしろ満足度ハイ。実に良く出来た一本です。その割にまったく売れなくて、「限定生産7564本」と謳った皆殺しパックがamazonで投げ売りされちゃいましたが。企画からしてタイトルからしてまったく売る気、売ってやろうという姿勢が見られないので、仕方ないと言えば仕方ない。当方も虚淵の新作じゃなけりゃ決して買いませんでした。

 『Dies Irae』は……ほんの少し前にブチ撒けたばかりなので割愛させていただきます。いろいろ書きたい恨みつらみもありますが、ミロドラゴヴィッチさんも「忘れっちまえよ、な?」とおっしゃているので自重。惜しい、実に惜しいゲームでした。

・小説に関してはまた次回に。

・拍手レス。

 個人的には嬉しいですね。どのような出来になろうとちゃんと終わってくれることで「納得」ができます
 どうでしょう。延期してこんな有り様のlightが、果たしてちゃんと終わらせられるかどうか……。

 なんというか、待って損したというのが非常に同感です>『Dies irae』
 高すぎた期待が、双方にとって不利益な結果を齎す仕儀となりましたね。

 DiesはもうルサルカBADだけで満足することにしています
 サウンドモードでBGM流して心を宥めることにしています。


2007-12-27.

・未だに例のショックを引きずっていてキーボードを打つ気力があまりない焼津です、こんばんは。

 現実を受け容れまいとして「違う! こんなの『Dies irae』じゃない! 否、断じて否!」と撥ねつける否認の嵐は過ぎ去り、徐々に夢から覚めた心地となってまいりました。それでも時折心の手綱を緩めたら「ちがう(ナイン)、ちがう(ナイン)、ちがう(ナイン)、ちがう(ナイン)!」と頑是ない子供のように頭を振ってしまう罠。いろいろとボロボロなので精神的な傷が癒えるまで更新は控えようとも考えましたが、無視するわけにはいかないニュースが飛び込んだので己に笞打って報告いたします。

light、『Dies irae』続編の制作を発表

 開設当初からあまり良くない評判の多いブランドだけに、今回の件もガン無視を決め込んで黒歴史扱いするものかと思っておりましたが、発売から一週間経たずして続編(と表現するのも微妙だが、FDとは呼びがたい)の情報を公開するとは予想外。素で驚きました。事情が分からないので憶測だらけとなりますが、ディレクター兼ライターの正田崇を呼び戻すのは難しそうなので、また別のライターを動員することになるかと。故にシナリオの出来は期待致しかねますが、本編で使われなかったCG(螢と背中合わせで手を繋ぐ奴とか)はお蔵出しするであろうし、少なくともGユウスケファンにとっての救いとはなりそう。

 遣り口が『マブラヴ オルタネイティヴ』と大差ない感じであるし、オルタよろしく発売まで小刻みな延期を挿んで3年くらい掛かりそうな気もしますが、最低限の救済措置は得られたわけでホッとしていいのか怒ればいいのか。なんであれ、この次は「期待」という感情を抱いて臨むことが難しくなりそうです。しっかし、あのlightがこうも早く新しい展開を告知するとは……それに見合うだけの売上はあった、ということなんでしょうか。去年の時点で既に「制作がズレ込んでいる」と漏らされるほどスローペースで進んでいただけに、開発資金を喰いまくる鬼子と見做されて疎まれているのではないかと危惧しましたけど、まだここで手放すつもりはない様子です。放逐されなかったことを喜ぶべきか、「搾り取らせてもらおうぜぇ、まだ始まったばかりじゃねぇか」と囁くlightの気配を感じ取って憂鬱になるべきか。とりあえず、個人的には「カッコイイ音楽と素晴らしいボイスの付いたGユウスケCG集」と割り切ってエクステンションパッケージとやらを購入するつもり。ああ、飼われてるなぁ……。

 にしても、こんな段階で「今発売しているのは未完成版です、そのうち完全版出します」みたいな告知を出したら小売側は溜まったもんじゃないだろうな。まず確実に恨まれる。明日にトークイベントを控えているので火消しのために公表したと見做す線もありますが、ショップからすればあと一、二ヶ月は粘って欲しかったところでしょう。

・拍手レス。

 ルサルカは最高でしたよ。某所では小者だと不満の声があがっていますが私的には
 >>小者でビッチで俗物だからこそルサルカなんだと思っています

 小者で生き汚いのは構わないんですが、バッドルートで覗かせた望んでいたもの(ツァラトゥストラ)を得てもすぐに冷めてしまう屈折した性分――「渇きが癒えない」という心の在り様は、望んだものを得られない運命にあるベイと対になっている気がしますので、そのへん掘り下げて欲しかった。黒円卓ってのはもっとこう、「渇望の騎士団」であるべ(長くなってきたので割愛)。

 ザミエルとシュライバーがザコすぎたので、香純ルートの方が好きな自分がいたりします。
 いや、敵役はヴィルヘルムとトリファだけいれば良いのですよ、きっとたぶん。

 トリファさんは「ローエングリン」のBGMとマッチしていて良かったですね。

 泣けた。かえる○ょぱにょーんとかSe○ in 青とか思い出してもっと泣けた。
 アリ○ソフトにもそういう時代がありましたね……。

 奴ならっ、奴なら俺を二次元に縛り付けてくれると思ったのにぃぃぃぃ! ハァ…
 僕らが空(デモ)に夢見た理想は この翼(ソフト)では届かない

 Dies iraeで絶望して、AXLの壁紙で癒されたそんなクリスマス。
 しかし男がブランドの顔って……いやサンタだからいいのか。

 Dies irae. 完全版商法キター!    ふざっけんなlight☆
 発売から6日……絶妙な焦らし期間だなぁ。

 lightのサイトにお詫びが掲載…この展開は見たことが(ry
 ゲットーを抜けてもlightはまだまだ切るカードを用意しているみたいです。


2007-12-25.

・皆さんお察しの事情につき、クリスマス・ファシズムにレジストする気力も消し飛んだ焼津です、こんばんは。もう関係ねえよ、世の恋人たちが一夜でどれだけ腰振り競争に励んだのかとか、そんなことは……。

lightの『Dies irae』、コンプリート。

 この感覚は経験したことがある――たとえばそう、「1が面白かったんだから2も面白いに違いない」と単純な確信に基づいて劇場へ足を運び、どうしようもない続編映画を見てしまったときのあれ。あるいは、掲載誌が変わってからしばらくして作者がゴーストと入れ替わっていた某マンガ。もっと端的に書けばコレジャナイロボ

 一周しただけでCGアルバムや回想モードのほぼ半分が埋まり、スタッフロールの「シナリオ」の項にはずらずらと複数のライター名が並んでいる……香純エンドを迎えた時点で悟りました。ああ、これは本当に無理矢理な形で発売されたソフトなんだな、と。作中「死者を蘇生させることの是非」を問う箇所もありますが、この『Dies irae』自体がまるでフランケンシュタイン博士の怪物みたく継ぎ接ぎ骸に反魂の儀式を施しているかのようで、「死者を復活させようと願ってはいけない!」と主張する登場人物に同調してしまい、なんとも切ない気分を味わいました。

 一年半、いえ、タイトル不明でただ「学園伝奇バトルオペラ」と仄めかされていた頃も含めれば二年半、ずっと期待し続けていたソフトということもあって、可能なかぎり擁護をしようと心を尽くしてみましたが、どうにもうまく行きません。頭が混乱しています。ポリアンナがポルナレフに転生しそうです。確かに、香純ルート後半のシナリオは概ねアレですが、部分的には良いシーンもいくつかあったのですよ。明らかにキャラの性格が変わっているとか、テキストから正田節が消え失せていてライター目当てで買った自分涙目とか、練炭がバカスミ以上に頭悪い子になっていてどれだけ進んでもまったく成長しない(むしろ悪化する)とか、バトル描写は燃えるどころかダラダラと長いだけで「勘弁してください、もういっそ『赫炎のインガノック』みたいに10クリック程度で瞬殺してください」と泣きを入れたくなるとか、暗澹とする要素は大銀河に等しく到底数え切れなかったけど、たまに眠気が覚める場面とてなくもなかった。練炭が覚醒して“創造”の領域に達するシーンとか、重要キャラの散り際とか、ラスボスのテーマミュージックが掛かるところとか、あのへんは割と振るっていた。しかし、前半部分は一行一行舐めるように読んでいた当方が、個別ルートに突入したあたりから『Theガッツ!』をプレーしているかのと錯覚するぐらいクリック連打したことからお察しください、としか……。

 2chでよくやっているネタスレ、「こんな○○はイヤだ!」を地で行くかの如きノリであり、もし仮にlightが渾身のクリスマス・ジョークとして放ったのだとすれば大成功ってところです。これほどまで鮮烈極まりなく失望の威力を叩きつけてきたゲームは、過去10年間を通じて他に知りません。なまじ共通ルートの部分が面白い(悔しいことに、気持ちが冷めた後でも2章や3章をプレーすると心が震える)だけに落差は凶悪です。幹部である三騎士の登場もあってかマリィルートが香純ルートよりも面白かったことは救いでしたが、それでも物足りなさは依然として残る。三騎士の死に様は呆気ないし、蓮は発言を一つ重ねるごとに疎ましさが募るし、敵の総大将ラインハルトが放つ傲慢なセリフもいささか安っぽく、どうにか畳んでいるが全体的に矮小化した感は否めない。エンディングは割合綺麗だったので不満はないけれど、「結局デモムービーに出てきたあのCGはなんだったんだよ……」ってのが幾つかあって釈然としません。鎖で拘束されたマリィは特典冊子によればOP用の描き下ろしらしいんですが、先輩が夕暮れの展望台?から街を見下ろす奴とか、蓮と螢が背中合わせになってる奴とか、司狼とエリーが一緒に銃構えている奴とか、夜の屋上に香純と先輩が佇んでる奴とか、螢が制服姿でヒヒイロカネ振り回している奴(軍服姿は本編にあり)とか……他にもOHPのキャラ紹介で引用されているセリフも使われてないのありますし。あの「女の陰でバトルの解説なんかしてる男は、死んでいいだろ」もドラマCDで喋ったのみ。

 全体のボリュームは20〜30時間くらい。不完全なシナリオを除けば総じてクオリティが高く、また不完全とはいえストーリーもある程度はまとまっており、少なくとも「凡作」の域は越えています。だからこそ未練が断ち切れない。結論としては、ユーザーの期待が肥大化しすぎたゆえに迎えた悲劇ってところでしょうか。スタッフたちが抱いた志も初期段階では稀有壮大だったみたいですけれど、然るべく現実の壁にブチ当たった模様。正田崇が他のライターたちに「今より私の代理として、成すべきことを成し給え――」と嘯く様子さえ容易に想像できますが、あまり笑えません。詳しい事情なんか知りませんが、後から加わった(と推測される)六人のライターたちも大変だったろうとは思います。こんだけややこしくてグチャグチャと設定や小ネタの多い「ザ・俺ワールド」な物語を理解し、それに沿った内容のシナリオを書き上げる労苦は並みならず涙ぐましいものがあったでしょう。しかし、ハッキリ申し上げますと――こんな歌劇(オペラ)じゃ酔えない。CGや音楽を含め素材が悪くないことは確かですし、なるたけ美味しくしようと心を砕いた作り手の努力も認めますが、出来上がったのがワインではなくブドウジュースとあっては痴れることも難しい。ワインを試飲させてジュースを買わせるこの方式が何商法と呼ばれるようになるのか、ぼんやりと眺めておくことにします。

 最後に。酷評したかもしれませんが、実のところ、当方はそんなに怒り狂ってはおりません。最初こそ絶句し、やがて「かは、くはははははは!」とベイじみた変な笑いを漏らしてしまいましたが、今以って胸奥から激怒が込み上げてくることはなく、ただただ斯様な事態に至った『Dies irae』を哀しみ悼む気持ちで一杯です。レスト・イン・ピース。あとルサルカの拷問シーンは結構好き。

・拍手レス。

 light公式Pの求人情報でディレクターとライターが募集されてます。つまり正田は……!
 今はもうない。

 ルサルカの足○●があっただけよしと、明鏡止水の心意気を持つべきなのでしょうかね……<怒り
 ルサルカはもうちょっと過去とか明かされるかと思ってたのになぁ。

 慧ルートが…。期待してた分寂しいですね。  後は『うみねこ』と『ゼロ』に賭けるしかない。
 いつだって期待は失望を二乗する。……言ってて俺翼が不安になってきました。

 多分、ルサルカBADだけは最後まで正田が書いたんじゃないですかね。メインルートさしおいて
 うーん、足コキだけな気がしますね。少なくとも日常シーンは会話のノリからして違うような。

 ストーリーやその他は満足だっただけにルートが削除されたことがあまりにも悔やまれる……
 ヒロインの中にはまったく救われていない子もいますからね……。


2007-12-23.

lightの『Dies irae』、プレー中。現在11章。たぶん香純ルート。

シュピーネ
「これは失礼。ですがレオンハルト、彼は我々全員の花嫁だ。
あまり仲睦まじくされていると、嫉妬してしまいますよ」

 未完成発売疑惑とともに蓮たん総受疑惑を醸している『Dies irae』、このセリフ聞いてヒラヒラのウェディング・ドレスを着せられた練炭が拘束状態のまま「汚い聖遺物だなぁ」「お前初めてか形成は、力抜けよ」「時よ止まれだぁ? てめえが美しいんだよ!」と一斉にアッー!な陵辱を受けて「今宵、ツァラトゥストラの没落により菊座(ゲットー)は破壊された!」となるバッドエンドを想像し青褪めましたが、幸いにもそんなことはなく至って正常に進んでおります。とりあえず形成(笑)は(笑)に羞じぬ活躍ぶりを見せて安心させてくれました。こういう奴がいないと伝奇モノは盛り上がらない。というか、Before Storyで覗かせたヴィルヘルムへの上から目線はいったい何だったんだ。明らかにベイやんよりもダメじゃないかお前。

 体験版1をプレーしたのがだいぶ前だったのでもう一度頭からやり直しましたが、結構覚えているもので「このシーンは見たことがある」「このセリフは聞いたことがある」とバリバリに既知感が発動し、初回プレーの時ほど熱中できなかったせいもあって「同じことの繰り返しに飽き飽きする」という水星さんのボヤキに少し共感してしまった。しかし、3章はついこないだやったばかりだというのに繰り返しプレーを重ねてもなお鳥肌立つような震えが来て、僅かに湧き上がっていた眠気も吹っ飛んだ次第。3章のラストはガチで名シーンだと思うのですよ。色褪せない何かがあそこにあります。

 巷では前述した未完成発売疑惑――「メインのはずなのに攻略できないヒロインがいる」ということから騒ぎが巻き起こっており、作品スレの勢いも凄まじいものがあって正に「怒りの日」と呼ぶに相応しい惨状を呈しています。ディレクター兼ライターの正田崇が今年の8月以降スタッフ日記に書き込んでいないこともあり、そのあたりで逃げ出したんじゃないか、という噂も。今やってる香純ルートのテキストも、気のせいかだんだん正田っぽくなくなっているような……なんかこう、厨臭さや邪気眼色が抜けて単調になってきてるんですよね。共通ルートを過ぎたあたりから展開に強引さが目立ってきているし、それをフォローする説明も苦しく、辻褄が合わなくなりつつある。マリィが空気化したりと、大勢のキャラクターを徐々に捌き切れなくなってきている感じもします。Gユウスケのイラストと与猶啓至の音楽と各声優の演技でどうにか土俵際を凌いでますけど、なんともヤクい雰囲気がビンビン。とにかく、コンプするまでは望みを捨てないことにしますが、もう心は他の本やゲームに移りかけている塩梅。

 ちなみに、取扱説明書には「初回起動時には、製品付属のユーザーIDカード記載の「ID」と「PASSWORD」を入力する必要があります」と書いてあったので、いつ入力するのだろうと思いつつ手元にカードを置いて待ち構えていましたが、どうやら間違いだったみたいで製品版のプレーにIDとパスワードは必要ない模様です。発売日当日に配布された修正パッチといい、あれだけ延期したのに依然として突貫作業の印象が拭えませんね。

・ジェイムズ・クラムリーの『正当なる狂気』読了。

 前にホイットに言われたように、私は探偵稼業の人間にしては人を見る目がなさすぎる。だが、探して見つけられなかったやつは一人もいない。それは才能なのか、呪いなのか。どちらともまだ決めようがない。

 原題 "The Right Madness" 。第8長編であり、シュグルーシリーズの3作目。ミロとの競演作『明日なき二人』を含めれば4作目になります。現時点での最新刊であり、病み上がりの作者が相当な苦労の末に物した事情と、既に70近い高齢である現実を鑑みれば「最後の長編」になりかねない一冊でもある。もちろんファンはそうなることを望んでおらず、ミロシリーズともどもまだまだ続けて欲しい気持ちで一杯です。

 ある訴訟にまつわる証人を探し出した一件から友人になった精神科医マックが、シュグルーに寄せた依頼――彼のオフィスから診療記録を盗んだ泥棒を突き止めてくれ、というものだった。犯人はそいつを恐喝の材料にして患者たちを強請る恐れがある、精神科に掛かる人々はただでさえ不安定なのだ、事が荒立つ前になんとかしてほしい。50も過ぎてそろそろ探偵稼業から手を引きたくなっていたシュグルーは気乗りせず、難色を示したが、遂には押し切られて渋々仕事に取り掛かる。そして、狂気の幕が上がった。「容疑者」――マックのオフィスに通う、他ならぬ患者たち自身の身辺を洗っている最中、次々と異常な死を目撃するシュグルー。ベトナム戦争に従軍した経験があり、ろくでなしどもとドンパチを繰り広げたことも一度や二度じゃないタフな私立探偵の精神を、理解不能な惨劇の数々が鑢となって削り取る。蝕まれる正気。逸脱の果てに彼を待ち受けるものとは……。

 今回はハードボイルド色と冒険小説要素がめっきりと減って、代わりにサイコ・スリラーじみた様相が濃くなっております。実際、いきなり惨劇が起こるもんだから「ギャー」な気分になりますよ。とにかくショッキングなシーンの多い話でした。もともとクラムリーの小説は暴力が満載されていて、それほど悪趣味な雰囲気がない割にゴロゴロと死体が転がり、主人公もしょっちゅうコテンパンに叩きのめされて疲労困憊し、アルコールやドラッグの力を借りながら意志を奮い立たせて限界突破していく、いろんな意味でギリギリ崖っぷちなノリなんです。以前、ミロと比較して「シュグルーの方がより狂気が深い」という感想を漏らしましたけど、更なる深淵を目指して降下するシュグルーの不退転ぶりには慄くしかない。

 『ダンシング・ベア』からこっち、良くも悪くもスケールが膨らみがちで最終的には大きな組織が黒幕として登場する展開がパターンとなっていただけに、ごく単純なサスペンスで引っ張っていく今回は方向転換と言いますか若干新境地に達した感触があります。「無関係そうな事柄が裏では密接な繋がりを持っていた」と暴く展開は相変わらずですし、依然謎解きに関しては唐突な印象が否めないけれども、まあそのへんは「やっぱクラムリー」って具合で、シリーズ通して読んできたファンにとっては逆に安心できる作風だったり。ちょっとポルナレフ出動するくらいがちょうどいいんですよ。

 せっかく結婚したホイットニーとの仲がうまく行ってなくて、だんだん離婚の危機が迫ってくるというのに捜査に没頭したまま過程を省みようとしないシュグルーはミロ同様根っからの探偵野郎なんだな、としみじみ痛感した。彼らは決して文字通りの「タフ」ではなく、繊細さや卑怯さ、臆病な神経や脆い心を抱えて事件に立ち向かっていくちっぽけな存在であり、読んでいて「もういい、休めよ、さっさとケツまくっちまえよ」と制止したくてたまらなくなる瞬間が幾度も訪れます。ここまでボロボロになって意地を通し、矜持を貫かねばならない不器用な生き方が繰り返し繰り返し胸を抉る。彼らの真価を見極める、その価値がお前にあるのかと、逆に問いを返す激しさが全編に漲っています。「のどに突き立ったナイフの刃のような約束だ」など、武骨にして鮮明な描写の積み重ねがハードボイルド嫌いすらも取り込んでしまう。寡作でなかなか新刊出さないのにカルト的な人気を誇っている、というのも「さもありなん」と頷くばかり。

 邦題がちょっとダサくて、表紙も妙にケバケバしいからアレなんですけれど、これを読んだことで今までミロほどの愛着が持てなかったシュグルーにも少し気持ちが傾いた次第。クラムリー作品はことあるごとに話をシャッフルシャフルと掻き混ぜるせいで訓練されたファンじゃないと読みづらく(当方自身も未だ慣れない部分が残っている)、初読ではまず確実に「誰が誰だか分からない症候群」に罹患してしまうこと請け合いなものの、根性決めて挑めばどうということもありません。それに、役得も一つあります。他の作家の本がメチャクチャ読みやすく感じられるのですよ。男は度胸、なんでもためしてみるのさ。

 おまけ。あたしはテコンドーの黒帯だったのさ、と言い放つ女に対してシュグルーの取った行動は以下の通り。

「じゃあ、おれはさしずめ“銃(ガン)”ドーかな」そう言って、ショットガンの銃尾を彼女の額に打ちつけた。

 ガッダイ! テッジョウ! どうやら彼はタクアン和尚の末裔みたいです。

・拍手レス。

 先輩と慧ルートが抹消されたとか怒りの日だろう常識的に考えて
 あーあーあー、きーこーえーなーいー。(耳に押し当てた掌を震わせて逆ビブラートかけつつ)

 G線上が延期…ああ、これが既知感か。
 まさかギアスの第2期に合わせて……。

 教授のお友達はみんな好きです
 教授が復活したときの嬉しさは異常。

 BLOODLINK新作ですって?そんな餌に釣られクマーッ べ、別に期待なんてしてないんだからねっ!
 ついでに『RUN RUN RUN』みたいな単発も読みたいところ。

 螢が攻略できないなんて本気で泣きそうです軍曹閣下……この世に神はいないのかッッッ!?
 『Dies irae〜Wille zur Macht〜』『Dies irae〜Al di la del Bene e del Male〜』といった調子で補完ディスクが開発されることを祈りましょう。

 そういえばAXL新作発表しましたねー。女装物じゃないからスルーでしょうか?w
 うーん……差し当たって体験版待ちです。

 新たな「怒りの日」を迎えて、新年を迎えるとは…。
 不可避の運命だったんでしょうね。


2007-12-21.

『足洗邸の住人たち。』のキャラではエアリアルが一番好きな焼津です、こんばんは。

 ああ可愛い妖精さんを踊り食いしたいなぁ。とかなんとか書きつつ今日は『Dies Irae』の発売日です。彼の日こそ怒りの日なり。まさか当初の発売予定から丸一年もお預け喰らわされるとは思いませんでしたが、待ちに待っただけに感無量。今朝はグランツーリスモのCMが流れた瞬間に過敏な反応を示したりしました。

 大方の予想通り「発売日当日に修正パッチ配布」となりましたので、OHPの確認はお忘れなく。そしてパッチを当てたら即起動。後はひたすら他の作業をうっちゃってやり込むことにします。下手すると次の更新は来年になるかもしれませんが、別に構いませんよね。さあグランギニョールを始めますよー。どこかで聞こえる阿鼻叫喚は意識的にオミット。

・さりげに『G線上の魔王』が延期してるけどめでたい日なので気にしないことにしておく。

山下卓の『BLOODLINK5(仮)』、2月の新刊に浮上せり

 やべえ、危うく公式サイトに向かって「ハッハッハ、ご冗談を」とツッコむところだった。前作『天使の幻影』から3年半近くが経過し、さすがにもうポシャっただろうと8割方諦めかけていましたが、まさかの復活です。1巻が出たのはもう6年半前であり、今のライトノベル読者が存在を認識しているかどうかも怪しいBLOODLINK、「日常から外れること」「人を殺し続けること」を有耶無耶にせず生々しいほど丹念な筆致で描くことから暗い・重い・鬱臭いの三拍子が揃っている一方で、ロリなヒロインの可愛さや、爽やか過ぎてむしろ逆に首を吊りたくなるほど清々しい青春の風景を織り込む見事な手際に惚れるファンも多いシリーズでした。

 過去形なのは、今以って新刊が出るとは信じられないからです。『BLOODLINK5(仮)』は以前から何度も刊行予定リストに上がってはいつの間にか消える、という挙動不審を繰り返したタイトルなので、待望の新刊というよりもはや亡霊の類。そりゃ出るんなら買いますけど、まだ(仮)も取れてないうちから期待を寄せるのは無謀もいいところだぜ……とほざきつつ体温がうなぎ上りする我が身を自覚せずにはいられない冬の宵であった。

・ジェイムズ・クラムリーの『ファイナル・カントリー』読了。

「おまえたち白人が来る前、おれの同胞はこの土地をラ・ティエラ・デ・カラベラスと呼んでいた」彼は答えた。「頭蓋骨の土地という意味だ」

 つまりテキサスはゴルゴタ(キリスト処刑の地、「髑髏」という意味を持つ)だったんだよ! とMMRも腰を抜かしそうな真実が本筋とは関係のないところでトリビア的に明かされる第7長編、原題は "The Final Country" なのでそのまんま。探偵ミロ・ミロドラゴヴィッチシリーズの第3弾です。前作『明日なき二人』はクラムリー作品もう一人のシリーズ探偵C・W・シュグルーとの競演だったのでミロシリーズと言い切る自信はなくて省きましたが、あえてそれを含めるならば第4弾ってことになります。テキサスとは真反対のモンタナを出身地としながらも、テキサスの女を好きになってしまったことから「この土地も愛そう」と四苦八苦するミロ。もう60くらいになるというのに、彼はまたまた反省の色もなく危険な事件の深みへずぶずぶ嵌まっていきます。さすがトラブルに巻き込まれる天才、今回もハードラックな窮地に立たされる。鉄火犇く熾烈な銃撃戦はもちろん、ハードボイルドのお約束「運命の女(ファム・ファタール)」も出てきて大盤振る舞いの一冊です。

 テキサスに移り住んではや5年の月日が過ぎた――密輸山賊「ボーダースネイク」との死闘を経て無事に父親の遺産を取り戻したミロドラゴヴィッチは、それでもまだテキサスという土地にすっかり馴染むことはできなかった。メキシコの熱い風が吹き渡り、男たちはどいつもカウボーイ気取りで、女連中までもが銃を携行している、砂漠と石油と暴力の国(カントリー)。大金を手にしてなお探偵稼業から足抜けできないミロが例によって「人捜し」の仕事を遂行している最中、ひとりの黒人と遭遇する。大柄で鋼鉄の如く引き締まった肉体、被甲(ジャケット)された銃弾さながらに銅色の光沢を放つスキンヘッド、おまけに黒いサングラス――あたかもB級映画から抜け出してきたような、出所したばかりの前科者イーノス・ウォーカー。成り行きから彼を追うことになった。

 更にその傍らで「妹を異常者に惨殺された」という女の依頼も受ける。「異常者」は若い少女を暴行のうえ殺害した挙句、首を切り落として持ち帰った。依頼人自らの発案で囮捜査を進め、彼女に接触してきた男を取り押さえようとしたが、男はミロの存在をあらかじめ知っていたとしか思えない挙動で反撃し、明らかな殺意を篭めて襲い掛かってくる。そして揉み合いの末に相手の銃が暴発。命を奪う結果となった。ふと周りを見渡し、女が姿を消したことから「こいつは罠だ」と気づいても遅かった。逮捕されたミロは、やがて知ることになる。死んだ男がそこらの殺し屋ではなく、よりによって現職の警官であったことを……。

 事件なんかさっさと放り出して、ありったけの遺産を鞄に詰め込んでブラジルあたりに逃げ延びて楽隠居すりゃいいのに、根っから探偵野郎のミロは己が死ぬその日まで決して止まろうとはしない。これだけ歳を食ってしまうと他の生き方なんて選べやしないみたいです。いやしかし、ミロも徐々に老けてきたよなぁ。この本は刊行された当時から「爺の見せる矜持が熱い」と聞いていたが、まさか「爺」がミロ本人のことを指しているとは読み出すまで気づかなかった。てっきりゲストか誰かのことを言ってるのかと思い込んでただけに、地味にショック。60……遂に還暦迎えちゃったか。しんみり。それでも相変わらずヒロインの同時攻略とコカインの吸引を欠かしていないあたり元気なものだ。殺人現場に残されたコカインをこっそり盗むのが恒例行事となっている私立探偵なんてミロぐらいでしょう、たぶん。ハードボイルドの探偵特集でミロを扱う機会があったら特技の欄には「コカインをパクること」と書かねばなるまい。

 イーノス・ウォーカーの捜索とミロを嵌めた運命の女(ファム・ファタール)、一見関係なさそうに映る二つのストーリーラインが実は密接に絡まり合っているなんてこと、これまでの作品を読んできた人ならお見通しであって別に珍しくもないのだけれど、いつも以上にミロがハードラックな試練を強いられているせいもあったか、分量の割に長さを感じず最後までドキハラしながら読み通せました。「ファイナル・カントリー」にどん詰まりの場所、一度赴けば引き返せない終局の国、骨と灰を埋める終の棲処など、あらゆる意味を含ませ、年老いた(というのも失礼か、まだ60だし)探偵の血肉が軋む凄絶な活躍に「神話の終焉・敗北」を重ね合わせていく手際には鬼気迫るものを覚える。全体的に俗っぽくなり、文学性よりもエンターテインメント性を高めようと志向した形跡があって、薄汚れた雰囲気の中に芳醇で瑞々しい舌触りがあった過去の代表作『酔いどれの誇り』『さらば甘き口づけ』と比べれば格調が低く、「普通のミステリ」「ありふれたハードボイルド小説」に漸近した印象はありますけれど、そうした零落とも言える変化を加味してなお衰えることを知らない不屈の語り口が素晴らしい。したたかな熱が宿っており、ミロシリーズ、ひいてはクラムリー作品においても随一と叫ぶに足る面白さでした。

 非常に多彩な、むしろ多彩すぎるキャラクターを次々ドカドカと登場させ、サッと目を通しただけでは把握しかねるほど入り組んだプロットに基づいてストーリーを紡いでいくのは恒例の遣り口であり、それでこそクラムリーの流儀というものだが、今回はより一層複雑で歯応えのある構成となっておりまして、ミステリ好きが読めば興奮のあまりウレションしそうなくらいの出来映えです。ただクラムリーの作風に慣れていて、且つこれまでのミロシリーズを押さえていないと理解しにくい部分が多く、ファン以外に薦めることは躊躇われる。「せっかくだから俺はこれから読み始めるぜ!」と自信満々に本書を掴んでみせる方がもしいるならば、当方は視線にリスペクトとジェラシーを篭めざるを得ません。

 かつて「頭蓋骨の土地」と称されたテキサスの中央部丘陵地帯、ヒル・カントリー(丘の国)――アメリカ版「ゴルゴタの丘」を主な舞台として繰り広げられる物語は粗暴で血腥く、「金で解決」な部分もあって必ずしも後味が良いとは保証できませんが、主人公ミロの精神的放浪が精神的彷徨へと形を変えていく過程を綴った力作であり、これ目当てにクラムリーの既刊を読み出しても充分ペイするくらいの威力はあります。続編も期待。というのは単なる定型句じゃなく、訳者あとがきによると作者が体調を崩して危険な時期もあったということだから、切実に希うばかり。

・拍手レス。

 いまさらかもしれないんですが、Diesのギャラリー見たら、ルサルカの足●キがっ。これはルートがあると
 信じていいのでしょうか。ああ、実質残り1日が待ち遠しい。

 推測の時間は終わりました。本日、己が目で存分に確認するのみ。

 軍曹殿!Diesプレイしましたが一部ヒロインが攻略できませぬ!(号泣)
 一度プレーして攻略できねば十度プレーすればいい、十度プレーして(以下略)


2007-12-19.

桜庭一樹の『赤×ピンク』が角川文庫で再刊

 イラストに高橋しんを起用し、一般文芸方面でのウケを狙って展開して、そこそこ話題になったけど、ブレイクまでには至らなかった一冊。今の桜庭の雛形みたいな感じであり、少しパンチは弱いけれどオススメです。しかしこの調子だと『荒野の恋』もレーベルを変えて一から出し直すのかなぁ。

紀伊國屋書店80周年記念企画、文庫復刊フェア「気が向いたらのライトノベル週報」経由)

 ジョゼ・ジョバンニの諸作を復刊してくれたら涙を出して喜ぶのに……早川さん、はよう「ジョゼ・ジョバンニ全集」を企画してつかぁさい。

・ジェイムズ・クラムリーの『明日なき二人』読了。

「あそこに住んでるのはボーダースネイクどもです」
「どういう連中だ?」
「どうと言っても」間をおいて、ガイドは答えた。「彼らが何者か、誰も知りません。それに、まとめな人間なら、連中とかかりあおうとはしませんよ」

 クラムリーの第6長編であり、彼の作品を代表するシリーズキャラクター「C・W・シュグルー(愛称はサニー)」と「ミルトン・チェスター・ミロドラゴヴィッチ三世(愛称はミロ)」の二人が旧交を温めつつタッグを組んで謎の組織「ボーダースネイク」に立ち向かう、正に「夢の競演」と呼ぶべき一作です。『友よ、戦いの果てに』のラストで「シュグルーの昔の相棒=ミロ」という事実は既に明かされましたが、お互い本格的に協力し合う話は今のところこれが唯一。そんな本書の原題は "Bordersnakes" 、要するにアメリカとメキシコの国境付近を縄張りにしたマフィアとかギャング(実は両者の違いが未だによく分からない)みたいなもので、ちょっとだけ前作の内容を引きずっている部分があります。

 久しぶりに顔を合わせてみたら、なんとシュグルーは結婚していた――あの、四十を過ぎて一度も結婚したことのなかったシュグルーが、だ。たまたま入ったバーでチカノ(メキシコ系アメリカ人)の若造に腹を撃たれて死に掛けたことがよほど堪えたらしく、妻のホイットニーと一緒にワイノーナ(『友よ〜』に出てきた子持ちのメイド)の息子「レスター坊や」を引き取ってピックアップ・トラックでの暮らしをのんびりと送っていたシュグルーだったが、「おれを撃った奴は誰かに命令されていた、黒幕を突き止めてケリをつけなくちゃならない」と言い、ミロの旅路に付き合うことになる。ミロはミロでせっかく下ろせるようになった三百万ドルの遺産がクソッタレな銀行員に持ち逃げされて怒り心頭に達しており、「そいつを見つけたらおまえは押さえつけていてくれ、おれが斧で細切れにするから」と息巻いていた。しかし、二人の追跡行の先には「ボーダースネイク」が待ち構えていて、更なる危難がこれでもかと降りかかる……。

 シュグルーとミロ、交互に視点を切り替えて「命を狙われたシュグルー」と「持ち逃げされた三百万ドル」、二つの謎が同一線上に存在することを徐々に明らかにしていく。出版社の紹介風に書けばファンには嬉しい一冊、って感じだ。しかしこの本、分類するときにシュグルーシリーズへ置くべきかミロシリーズのところに分けるべきか、頭を悩ませるばかりです。さて、仰々しい名前と生い立ち、派手な離婚歴を持っているミロと、今まで一度も結婚したことのなかったシュグルー……こう書けばいかにも凸凹コンビめいて映る二人ですが、ぶっちゃけ私情に飽かしてメチャクチャな行動を取るあたり、すぐアルコールやドラッグに溺れる自堕落なあたりなど、性格面ではそれほど激しい違いがなく、「ぶっちゃけひとりに統一してもいいんじゃないか?」と思うこともしばしばでした。今回は二人並べて書くことで各々の差を明確にする試みもあったそうな。一言で述べればミロの方がより女にだらしない、シュグルーの方がより狂気が深い、って印象。ミロは「エロゲーの主人公か」とツッコミたくなるほど行く先々でフラグを立てることに余念がない。シュグルー視点での文章は湿っぽい箇所が少なく、妻や息子への愛を滲ませる部分すらどこか乾いた雰囲気を発しています。

 この手の「夢の競演」は二つのシリーズを交差させる関係上、それぞれに配慮して少しパラレルっぽくなったり読者サービスを念頭に置いたお祭りファンディスク的な、どことなくヌルい出来になったりしがちですけれど、元来寡作(なにせ3年ぶりに刊行された新作すら「クラムリーにしては早い」と言われる始末)な著者ゆえかそういう回り道めいた遊び事は施さない。徹底して「本筋」であり続ける気迫が漲っています。やっぱり途中でダラダラと寄り道して脱線臭い遣り取りが重ねられ、ゴチャゴチャといろんなキャラクターが登場するから覚えるのもひと苦労、ややこしくてなかなか全体が把握できないしストーリーも進まない、それでいて進むとなったらターボエンジンでも掛けたように一気に進む……という極端さは健在で、タイトルにもなっているくせにボーダースネイク云々といった要素は書き込み不足の感が否めません。個人的な事情が絡んでいるにも関わらず、探偵ふたりともがところどころで捜査のモチベーションを切らしかけて、「おれの方はもういいや、おまえの方を手伝うよ」「おれも同じ気分だ」とだんだんなし崩しの調子になってくるから笑える。到底ミステリらしからぬだらけっぷりが生々しくて、シリーズ通して読んでいる身としてはこいつらにむしろ益々愛着が湧いてくるから困ったものです。

 割とえぐい拷問シーンがあるうえ、銃を厭っているミロが鉄火を握らざるを得ない窮地に追い込まれるシーンがいくつかあって、「夢の競演」という言葉とは程遠い凄惨な描写もふんだんに盛り込まれています。それでもグロテスクな雰囲気が漂わないで終始カラッと明るい空気を保つのはクラムリー節の本領発揮といったところでしょうか。チ○コに××するなんて、下手に書いたらトラウマものだってのに、えらくあっさりと綴っているんだもんなぁ。

 どちらかと言えばミロの活躍が目立っていて、シュグルーは脇役って位置付けかな。ミロのアンラッキーぶりはほとんどスラップスティックに等しい。しかし、シュグルーシリーズにとっても重要な内容が篭められていますので、クラムリー作品を攻略していくうえではどうしたって避けられない一冊ではあります。ちなみに、海外ミステリは大抵邦題よりも原題の方がカッコ良かったりするのですが、本書に関しては原題よりも邦題の方がピシッと嵌まっている気がする。

・拍手レス。

 最近は「バカとテストと召喚獣」の秀吉に悶えまくってます。 性別? なにそれ食えんの?
 秀吉の性別は男でも女でもなく、そう……「秀吉」というしかないんですよ。

  ようやく真の発売日にめぐり会い申した 延期の月日 今は悔ゆるのみ…
 今宵はめでたき日にござる… めでたき日にござる… 気がつけば発売の2日前にいた


2007-12-17.

・昨日はゴージャス宝田の『キャノン先生トばしすぎ(初回限定版)』を地元で入手すべく奮闘した焼津です、こんばんは。方々を巡らねばならず、苦労しましたけど最終的にはゲットできた次第。通常版は値段が安くなるので別にそっちを待つのもいいかな、と思ってましたが、あっちこっち探し回った末に見つけるとやっぱり嬉しいものですね。

『Dies Irae』、発売4日前にしてカウントダウン開始

 他に比べて少し遅い気がしないでもないが、そんなこたぁ瑣末事に過ぎないことであり、いよいよ「本当に発売されるんだ……」という実感が湧き上がり、四六時中『Dies Irae』のことばっかり考えては昂ぶってしまう今日この頃なのでございます。カウントダウンと言えばLittlewitchの『ピリオド』も愉快な塩梅ですな。既にもう流れましたが、5日前(昨日)のは意表を衝くシモネタで盛大に噴きました。あれ(「お●ん●んいやァ…っ!」)を考えたスタッフは頭がマリネラ並みに常春なのかしら。

・ジェイムズ・クラムリーの『友よ、戦いの果てに』読了。

「このカネをどうやって手に入れたか、お上になんと説明すればいい?」
「ウソをつくんだな」私はこたえた。「どうせお上も、平気でおまえにウソをつくんだから」

 15年ぶりとなる『さらば甘き口づけ』の続編。原題は "The Mexican Tree Duck" 、メキシコからテキサスにかけて棲息し、木の洞に巣を構えることもあるカモだから「メキシカン・ツリー・ダック」と呼ぶみたいです。和名では「アカハシリュウキュウガモ」。以前の訳では「スルー」と表記されていた主人公が、本書で「砂糖(シュガー)のシュグに悔やむ(ルー)のルーでシュグルー(Sughrue)だ」と懇切丁寧に発音方法を説明してくれたため表記が改まった模様。クラムリーがスランプから抜け出して久々に発表した復活的長編小説であり、1994年の第3回ダシール・ハメット賞を受賞している。ハメット賞は日本だと比較的マイナーな賞と申しますか、ぶっちゃけ当方もよく知りません。受賞作で読んだことがあるのは本書以外だとマーガレット・アトウッドの『昏き目の暗殺者』くらいかな。

 さて、C・W・シュグルー、私立探偵の仕事から足を洗ったのか、なし崩し気味にバーテンダーをこなしていたものの、面倒事が立て続けに起こった末、ジュークボックスをメンテナンスする業者がシュグルーお気に入りのハンク・スノウのレコードをクスクス笑いながら別のレコードと替えたことにキレてしまい、電車が通りかかるタイミングに合わせてジュークボックスを線路に叩き落して轢砕。しょっぱなからムチャクチャなことをやる主人公だ。で、その後、揉め事処理の依頼を受け、札付きのバイカー(イメージとしては『龍虎の拳』に出てくるジャック・ターナー)から熱帯魚を取り戻すために空冷式五〇口径機関銃をブッ放す。「五百グレイン弾を秒速二千九百フィートで発射する」のだそうで、恐らく連射しているとき彼の頭の中ではGo Tight!をBGMに「気持ちいい!」の大絶叫が鳴り響いていたはずだ。もうハードボイルドというよりB級アクション映画の世界ではないですかこれ? と尋ねたくなるほど今回はド派手なシーンが多く、アクションシーンが続きすぎて終盤あたりに来ると少しダレてきます。ちょっと加減してほしかったかな。

 今回もスタート地点はやっぱり「人捜し」です。熱帯魚の件で無事に話がついて、今度は不良バイカーから「生き別れの母親を捜し出してほしい」と頼まる。お前が「お願い、ママを捜して!」って面かよ、と内心胡散臭いものを覚えつつ捜査に乗り出したシュグルーは、その過程で子持ちのメイドと邂逅し、彼女に魅了されていくにつれ事件から足抜けできなくなっていく。『ダンシング・ベア』同様「敵」の規模が大きいストーリーで、なかなか全容が掴めないもどかしさに反して「全容なんかどうだっていいじゃん」とばかりに悠揚迫らぬ筆致で脱線めいた描写をつらつら連ねるノリは、クラムリー自身の性格が表れている気がしないでもない。

 タイトルに付いている「友よ」はシュグルーが従軍したベトナム戦争の戦友たちが多く登場するからで、老体に鞭を打ってドンパチを繰り広げながら「もうあのときの俺たちじゃない」「若さはなくなった」と痛感せざるを得ず、更に戦場で散々経験した「人を殺す」ということをふたたび目の前に突きつけられることで内なる懊悩はより深まっていく。激しい銃撃戦の描写よりも、待ち受ける「戦いの果て」――つまり事件の決着と後日談にこそ味わいのある一冊です。

 悪役がしょぼすぎて燃えない、という重大な問題点はあるにせよ、年寄りの冷や水(と言ってもまだ四十代だが)を地で行くシュグルーの活躍をシニカルかつウェットに綴ってしみじみと痛快に読ませる。「突き進むしかない男」の哀愁をじっくりと煮込んだスープ。しかし、彼もミロ同様にアルコールよりもコカインの摂取が目立ってきたな……この調子で薬物中毒が悪化しないといいけど。

・拍手レス。

 『最果てのイマ ラフ画集』にロミオのSSがついてくるそうな
 これはイマのノベライズを出すフラグ……と思いたい。

 冬コミが近くなってきて思い出す、SS書かないんですか?
 予定はないですね。積読と積ゲーの消化を優先中。


2007-12-15.

・武田日向の『異国迷路のクロワーゼ』が評判いいから買ってみようかなぁ、と考えている焼津です、こんばんは。『GOSICK』のイラスト描いている人のマンガです。絵柄は好きなんですけれど、だいぶ前に読んだ『やえかのカルテ』がどうも合わないと申しますか、苦手なノリだったので発売後すぐは手を出しあぐねておりました。クロワーゼ次第で短編集の購入も検討するとします。

・ジェイムズ・クラムリーの『ダンシング・ベア』読了。

「なんてひどい人なの」そういったがキャロリンは声を立てて笑った。「とにかく、今夜は楽しかったわ。今度話すときは、もっとまじめにしてね」
「きょうのおれは、通常の三倍はまじめだがね……」

 今度のミロドラゴヴィッチはシャア専用! でもたぶん赤いのは塗装じゃなくて酒焼けのせいだ! とまあそんなこんなの第4長編であり、『酔いどれの誇り』の続編。ミロシリーズとしては2作目に当たります。前作から6、7年が経過して、ミロも47歳になった。父親の遺産は信託制で、彼が53歳に達してからでないと使うことができないため、ご大層な名前に似合わず依然としてチマチマ働いています。しかも家賃を滞納したという理由で、本来所有物であるはずのミロドラゴヴィッチ・ビルから追い出されてしまい、事務所を失って探偵をやめちゃっている。本編が始まった時点では警備会社に務めていて、しかも開始早々から不機嫌で無礼な郵便配達夫相手に「その態度はなんだ!」「文句あるのか、ああん!?」と取っ組み合いの喧嘩を繰り広げるんだから、ミロさんマジで大人気ない。離婚歴も増えて「5人目の妻だった女は〜」とか言い出すし、酒浸りの生活から抜け出した代わりにコカインのジャンキーになってるしで、相変わらずフリーダムすぎるぜ、クラムリーの主人公はよ。

 さて、今回のネタは「人捜し」ではありません。タイトルの「ダンシング・ベア」(原題も "Dancing Bear" なのでそのまんま)はインディアン(ネイティブ・アメリカン)の民話から来ています。実在してるのかどうか分かりませんが、その内容をザッと書きますと「熊どもが蜂の巣ぶっ壊して根こそぎハチミツ取ってくもんだからたまったもんじゃない、奴らは加減ってものを知らねぇ、このままだと蜂も人間も困ってしまう……そこで勇気ある若者が熊の一匹を屠り、丁寧に毛皮を剥ぎ取った。そいつを被って熊に成りきるや、他の熊公どもを一箇所に集めてひたすらダンス・ダンス・ダンスと踊り狂って疲れて眠っちゃうように仕向けた。そして人間たちは熊どもが眠っている隙にハチミツをいただいた」って感じ。大まかに言えば自然との協和を謳うもので、最後は白人批判で締め括る。ミロの祖父が先住民からはした金で奪った広大な自然林こそ「ベアダンス」の行われた場所であり、ミロは近々この土地を処分しようと考えている。

 が、そんなこととは関係なく、彼は警備会社の上司から「ある女を監視してくれ」と依頼されたり、かつて父の愛人だった裕福な老婦人から「公園で密会を繰り返す不審なカップルがいる、彼らの正体と目的を突き止めてほしい」といういかにも金持ちの暇潰し臭い仕事を任されます。どっちも危険度の低い、楽な仕事だ……と思ったのも束の間、予想だにしなかった事件へ足を突っ込むことになる。さすがミロ、厄介事に巻き込まれる天才です。本当にこの事件、予想が難しく、発生した時点で目が点になること請け合い。「あれ? なに今の。何か読み間違えたのかしら?」と、咄嗟に己の誤読を疑ってしまうほどでした。この事件はヤクすぎる、ひとりで取り掛かるのはヤベェ、半端なくヤベェ――と察したミロさん、仲間として「戦争でイカれてしまった酔っ払い」を引き入れ、成り行きで仲良くなった偏屈爺さんまで協力させて「訳の分からない事件」の全容を見極めるべく奮闘する。一見関係がないように見えた事柄が繋がり合って一つの絵が見えてくる、といったミステリにおいて王道というよりお約束そのものの展開で読者を引き込みますが、比較的ゆっくりした展開である前半に対し後半は駆け足気味で、「黒幕判明→最終決戦→決着→後日談」の流れが僅か50ページに凝縮されているんだから仰天。おいおい、どれだけ詰めてんですかクラムリーさん。おかげでラストは畳み掛けるような迫力で以って強いインパクトを残してくれますが、やはりバランスが悪いって印象は否めません。「踊る熊(ダンシング・ベア)」を一種の見立てにも使っているものの、少し手際が強引に映る。クラムリーはこの作品の後でスランプに陥って長期間の休筆を行ったそうですが、そう聞くと本書にもあちこち苦労の色が滲んでいるような……。

 銃を使って人を殺すことに吐き気を催すほどの恐怖心と嫌悪感を覚え、それでも保身を一義としたい臆病さから火器を手放すことができないミロはアクション映画で賞賛されるタフガイとは遠く隔たったところに位置している。ことあるごとに「もう銃は捨てよう、もう人を撃たないで済むようにしよう」と思考するあたりは、実行を伴っていないので口先だけのムードを感じるけれど、相手を撃ち殺すことに躊躇いを覚えない連中よりかは気持ちが分かるように思えて不思議と肩入れしてしまう。「こいつは戦争よりも狂ってる」とこぼす銃撃戦の派手派手しさから今回はハードボイルドよりも冒険小説の様相が濃く、「目的など知らず、ただ惑い行くのみ」な精神的放浪探偵ミロの堕落まみれでいてしぶとい、狡猾な喰らい下がりっぷりが胸を空きます。もっと練り込めば前2作をも上回る傑作になったかもしれない。なんであれ、これだけ大胆な展開を見せてくれたからにゃあ次作への期待は弥が上にも増すばかりだ。

 ちなみにこれも初版は600円(税込、と言っても3パーセントの頃だから税抜価格は583円)で、今だと730円(税込)です。やっぱり値上がりしてますね……まあ、値下げするわけはないと分かってはおりますが。

・拍手レス。

 群青はやるべき。だども本性がグリペン萌えゲーなのであしからず
 航空ロマンは好きなジャンルの一つなので、いつかは崩そうと画策しておりまする。


2007-12-13.

訃報ドットコム

 へえ、こんなサイトがあったのか、と眺めていたら天城一の訃報を見つけて目玉ひん剥きました。え? 亡くなってらしたのですか? せ、先月に? まったく知らなかった……他にもいくつか見覚えのある名前を見つけ、呆然としたり。ただ、載っていない名前も結構多いですね。クィネルやウィングフィールド、バンカーで検索しても引っ掛からないし、服部まゆみも見当たりません。自動収集ということで精度はそれほど高くないのかな。

『群青の空を越えて』ノベル版、早狩武士がじきじきに書き下ろし

 情報自体は少し前からキャッチしておりましたが、内容が本編のダイジェストなのかオリジナルなのかよく分からなかったので、購入するかどうかの判断を一旦保留にしていた次第。「過去の話を完全書き下ろし」とのことで、どうやら買って損はないようだとようやく踏ん切りが付きました。既にamazonを始めとしたネット書店のあちこちで予約も始まっていますし、ポチってくるとします。ただ、問題は本編をクリアするどころかまだ封すら切っていないということで……。

・ジェイムズ・クラムリーの『酔いどれの誇り』読了。

「おれの名前は、ミルトン・チェスター・ミロドラゴヴィッチ三世。職業は酔っぱらい。神様だって公認さ」

 原題 "The Wrong Case" 。第2長編にして私立探偵ミロのシリーズ第1弾です。前回紹介した『さらば甘き口づけ』よりも前の作品であり、『さらば〜』と並ぶクラムリーの代表作。引用部分は主人公のセリフで、なんとも仰々しい名前ながら、冗談でも何でもなく彼の本名です。あまりにも長いせいで、単に「ミロ」と呼ぶことの方が多い。桐野夏生のシリーズ作品に登場する女性探偵・村野ミロのネーミングは彼にあやかっているそうな。私立探偵で、しかも浴びるほど酒を飲む酔っ払い……『さらば〜』の主人公であるC・W・スルー(シュグルー)と大差ない造型であり、時間を置いて読んでいたら同一人物と思い込んだやもしれません。舞台は相変わらず架空の街メリウェザー、麻薬とヒッピーと路上犯罪が横行し、いかにもアメリカ的、いかにもハードボイルド的な剣呑さに満ちている。そしてやっぱり、主人公はそんな「卑しき街」を行く「孤高の騎士」ではなくて、無様にみっともなく足掻いているのです。

 ミロは少々荒っぽい手段も平気で用い、易々と法の網目を潜っていくつもの離婚を成立させてきた敏腕の「別れさせ屋」だった――州が離婚法を簡単お手軽なものに挿げ替えるまでは。「性格の不一致」という条件さえ整えればそれだけですぐ別れられるようになり、物の見事にお払い箱となったミロ。西部の無法者ダルトン・キンブローを殴り殺して成り上がった曾祖父が築いた巨万の富は、代ごとの没落に耐えて広大な山地、それに見晴らしのいいビルとなって未だ残っていたが、二度の離婚により妻への慰謝料と子供の養育費を支払う義務が課せられた彼は財政的にさほど恵まれていなかった。明日からどうやって暮らしていこうか、漠然と思い悩むミロの前にひとりの依頼人が現れる。ピンクの服を纏い、赤毛とそばかすの対比が妙にそそる女。彼女は「三週間前に姿を消した弟を捜し出してほしい」と訴えるが……。

 ってなわけでまたまた「人捜し」から始まる飲んだくれハードボイルドです。本当、私立探偵モノのストーリーってそればっかりだなぁ、と呆れを越えて感心を抱きながら読み進めると、なんと主人公の野郎、「金は要らない、代わりにあなたの夜をくれ」と依頼人を口説き出しやがった。しかもあっさり断られて「じゃ、勝手にしやがれ(ファック・イット)」と捨てゼリフを吐き、それを聞いた依頼人は大人しく去っていく。なんか『ドラえもん ギガゾンビの逆襲』を思い出してしまった。ドラえもんの「みんなを助けに一緒に来てくれないか?」という必死な依頼に「いいえ」と答え続けるとゲームオーバーになるあれ。しょっぱなから悪印象を振り撒くミロですが、彼も「ただ明日を嘆いて酔い痴れるだけの自分から脱したい」と祈る再起願望があり、そのために奮起する材料として依頼人の「夜」を欲したわけで、彼なりに切実だったりします。

 ベトナム戦争に従軍したシュグルーと違ってミロは朝鮮戦争の帰還兵ですけども、戦争でトラウマを負ったことは一緒みたい。帰還後に保安官を務めた時期もあったが、多発する凶悪な犯罪と悲惨な事故の数々に嫌気が差して「別れさせ屋」に転向、離婚法の改正に従って今後は普通の私立探偵としてやっていく模様です。従軍時代も真面目に任務を行わず、保安官時代に至っては堂々と賄賂を受け取る悪徳保安官ぶりだったそうで、シュグルー同様彼に高潔さを求めるのは無駄。あくまで私情に衝き動かされて右往左往するのがミロの流儀であり、物別れに終わったにも関らず、一人で勝手に「失踪人の捜索」を始める姿は孤独なヒーローってよりも我儘な中年オヤジといった風情だ。しかし、まあ、ハードボイルドは骨の部分から我儘な人間でないとやっていけないジャンルである気はします。法も、正義も、他人の事情も、探偵個人の感覚と感性と感情の前では「ファック・イット」の一言で切って捨てられる。事件に携わっている時点でもはや当事者だというのに、あくまで傍観者気分の上から目線であれこれ嘴を突っ込む、「カッコイイけど友達にはなりたくない名探偵」の存在に慣れているミステリ世代からすれば、ミロやシュグルーの傍観者として事件に関わるつもりが一切ないひたすら私的で前のめりな捜査態度は異様にすら映る。己に探偵としての素養も才能もないことをミロ自身が明け透けに語っており、あっちへ行ってこっちで聞き込みして……と目まぐるしい移動を伴った推理活動は「支離滅裂」と受け取ってもそう的外れではないと思います。

 で、ミロがせっかくやる気を出したというのに、失踪人を見つけ出す前に当の少年が死体となって発見されてしまう。その報せをミロは依頼人である女性本人から聞かされるのだから、何とも締まりません。「弟の死」に惑乱し、不安定な挙動を晒し続ける女性を描いたシーンは非常に生々しく、こういった細かな描写の積み重ねがクラムリー特有の世界を支える土台となっている印象を受けました。捜すべき当人が亡くなったのだから捜査は打ち切りかと思いきや、女性は「警察は弟の死を自殺と看做しているが、納得できない。真相を探ってほしい」と依頼内容を切り換え、ミロの「出撃」は依然として続行。合間合間に燃料代わりとして酒を胃に注入するせいで捜査は遅々として進まず、事件もなかなか進展を見せない。ハッキリ申せば本書、「謎解き」の面で見ると驚くくらい平凡で、なかなか真相に気づかないミロの酔探偵ぶりにはちょっと閉口してしまう。とはいえ解決に際してはありきたりの、手垢にまみれた「お約束的結末」を避け、ナックルボールじみた変化球を見せて飽きさせない。「本国ではミステリではなく純文学扱い」とあって通俗エンターテインメントを期待する分には向きませんが、情けない男の魂にこびりついた剥がれかけのカスみたいな「誇り」が侘しくも力強い読後感を残し、すぐさま「ミロのその後が知りたい」という欲求を掻き立ててくれる。

 『さらば甘き口づけ』の解説で「『酔いどれの誇り』は甘ったるくて、ハードボイルドじゃない」といった旨の文章が綴られていたが、その「甘ったるさ」も含めて、弱々しくもしぶとく尾を引く類の輝きを放つ一冊であります。徐々にハマってまいりました。そういえば前回の感想で「『酔いどれの誇り』も今は924円(税込)だけど初版は660円(税抜)」と書きましたが、あれは間違い、660円(税込)でした。ただし3パーセント時代の。

・拍手レス。

 確かに翻訳本の高さには泣きが入りますな。未だにジャック・ヨービルの3冊購入に二の足を踏んでしまいます
 続き 最近は高架下の古本屋で買った日本現代文学全集が心の友です。太宰とか久しぶりに読むとキマス
 ついでにヴィルとビルを間違えた俺を吊りてー

 今の状況では新規の読者を取り込むのが難しいと思うほど高いですね。そして太宰とかあのへんはさすが「時の洗礼」を受けているだけあってひと味違う、と感じることもあり。


2007-12-11.

「ジンガイマキョウ」にて冬コミオイレン本の表紙絵(予定)のTOP絵公開

 なんという全頭出撃……これは期待に顔をテカらせざるを得ない。「多めに刷って余ったら書店売り」とのことですので、必ず、かの犬犬犬(ケルベロス)の新刊を買わなければならぬと決意した。焼津には同人誌がわからぬ。焼津は、地方の住人である。ネットに繋ぎ、通販サイトを眺めて暮らしてきた。けれどもシュピーゲルに対しては、人一倍に敏感であった。

 委託先が決定されましたら紹介したいと思います。逃さず確保できるよう自分の注文を済ませてからですがね!(まさに外道)

『ドラゴンキラーあります』の特集ページ

 1巻にしろ2巻にしろ、個人的には後半で勢いがなくなって盛り上がりに欠いてしまう印象があるけれど、語り口が良くてすいすい読めることから結構気に入っているドラキラシリーズ、遂に特集ページを組まれるほどになったか……作者は執筆ページが早いみたいだし、来年もガンガン出すんだろうな、と眺めていたらFlash画像に「完結」の二文字が。ま、まじぇ?(動揺した際に用いる「まじ」と「なぜ」の混合形式) 新シリーズの開幕、と見ていいんだろうかしら。

エロゲの名キャッチコピー「独り言以外の何か」経由)

 今は亡きブランドproject-μの最終作『銀の蛇 黒の月』にあった「生ある限り 全てが試練だ」がやけに印象に残っています。元ネタはニーチェですが(That Which Does Not Kill Us Makes Us Stronger)。他に『CARNIVAL』の「生きていくって、苦しいよね」や『SWAN SONG』の「そのとき、人は絶望に試される」が浮かぶ当方は紛うことなき瀬戸口儲。もう少しメジャーなところでは『水月』の「だから、僕はその手を離した」も秀逸かと。これだけ読んでもどういう状況なのか理解できませんが、想像力を刺激されてついいろいろと考えてしまう。逆に肩透かしだったのは『それは舞い散る桜のように』の「はい、恋の魔法はおしまい」、恐らくあれがそれ散るの主眼となるはずの言葉だったろうに……。

CUFFSの『Garden』、音声付体験版を公開

 既にダウンロードしてプレーしました。音声なし版をプレー済だったのでザッと流す程度に。大きくイメージからズレるキャラはなく、概ね声は合っていると思います。シナリオに関しては導入の部分が長引くせいもあって徐々に眠くなってきますが、ひと通り面子が出揃った頃合でかったるさも抜けてきて程好く楽しめるようになった次第。トノイケのテキストはきめ細かくて慣れればかなり心地良い反面、慣れないと「なにこの自意識過剰な文体」と思いかねないくどさがあり、オススメする上でハードルを感じる部分はなくもないです。今回は自由に伸び伸びと書いている雰囲気が強く、「トノイケ節」が炸裂しまくっている印象。会話文を主体にした軽快な掛け合いとか、そういうのも書けるライターではありますけどね。

 音声付になってシステムも改善され、「これなら問題ない」と胸を撫で下ろしましたが、数箇所でボイスの再生されないバグ?が見受けられ、大丈夫かな……と新たな不安が芽生えてくる面も。決して華々しい魅力があるわけではないにせよ、プレーすればするほどジワジワと味が染み出してくる内容であり、依然として1月への期待は高い。この『Garden』に『さくらシュトラッセ』、それに『G線上の魔王』――できれば1〜2本に絞りたいところですけど、さてはて。

・ジェイムズ・クラムリーの『さらば甘き口づけ』読了。

「そのことじゃないの、彼の片脚、どうしたのと訊いてるの」
「昔の戦争の怪我さ」
「どの戦争?」
「どれでも好きなのにしとけよ。みんな同じだ」

 原題 "The Last Good Kiss" 。著者の第3長編で、いわゆる「本邦初訳」の一冊です。ハードカバーで刊行されたのは1980年1月ですから既に28年近くが経っていますけど、クラムリーが寡作なのか、翻訳は本書を含めて9冊しか出ておりません。そんなに少ないというのにクラムリー人気はやけに高く、ハードボイルドの話題ではことあるごとに名前が持ち上がる。中高生の頃にハードボイルドを食わず嫌いしてもっぱら本格方面に傾倒していた身ゆえ、名前くらいは知っていても当然の如く一冊とて読んでこなかったわけですが、ちょっと前に久々の新作『正当なる狂気』が発売されたことだし、これを機会に取り組んでみるのもいいのではないか、ってことで「ジェイムズ・クラムリー強化月間」と称し手持ちのクラムリー作品を全部読み切ることにいたしました。要するに、単なる気紛れです。

 『さらば甘き口づけ』は前述しましたがクラムリーにとって3冊目の長編小説に当たり、私立探偵C・W・スルー(後に訳が変わってシュグルー)のシリーズ第1弾でもあります。金持ちの婦人に雇われて、あっちこっちのバーを渡り歩いて家に寄り付かない旦那を捜索することになったシュグルー(文中では「スルー」ですが、後の訳を考えてこう表記します)は、苦労の末に彼のいるバーを見つけ出し、そこに足を踏み入れる……というシーンから幕が上がる、実に典型的な「人捜し」のハードボイルドです。いえ、ただのハードボイルドっていうより、「飲んだくれハードボイルド」と書いた方がいいかもしれない。それくらいひたすらにアルコールを摂取しまくる。主人公のシュグルーは「ベトナムに従軍した経験から心に深い傷(トラウマ)を負っている」という今となってはお約束めいた設定を有していて、その影響か、はたまた生来の性格ゆえか、平気でヤクもやれば娼婦も買い飲酒運転も日常茶飯事で行う、至ってフリーダムな探偵野郎です。「卑しき街を行く孤高の騎士」みたいな高潔さとはまるで無縁だ。孤独なことは確かだけれど、他人の隠し事に好んで鼻を突っ込み掻き回す探偵業の「卑しさ」は自覚しており、「きっと、私は生まれながらに卑しい気質を持っているのだろう」とすら述懐する。捜査法に関しても自分の感情を優先するため一貫性に欠けること甚だしく、どこまでが仕事でどこからが仕事じゃないのか、ちっともハッキリしません。皮肉屋なのは私立探偵だからまあ仕方ないにしても、結構激し易くて忍耐力に乏しい感じ。「ハードボイルド」と聞いて咄嗟に思い浮かぶカッコいいヒーロー像を見事に裏切る造型の主人公であり、「人間味がある」「親しみを持てる」という域さえ越えている気がします。

 さて、捜していた人物が見つかるところから始まるので、本題はどうなるのかが読者の興味を惹くところですが……なんと酔っ払いの旦那をやっとこさ見つけて回収したところ、そのバーにいたマダムがシュグルーを探偵と知るや「失踪した娘を捜してほしい」と依頼してくる。なんでも彼女の娘は十年前に姿を消したっきり、行方も生死も不明とのこと。つまり、人捜しが終わった途端にまた人捜しが始まるわけで、秋せつらもビックリなマン・サーチャーぶり。「十年前って……おいおい、見つかるわけないだろ。金と時間の無駄だ」と言って説き伏せようとするもののマダムは引き下がらないので、渋々引き受けてまた聞き込みに出るシュグルーは、予想に反して消えた少女「ベティ・スー」の痕跡をあっさりと見つけ、彼女が辿った過去を明らかにしていく。

 捜索しているうちに、彼は一度も会ったことがない、ただ一枚の写真と関係者の証言でしか知らない「少女」に過剰な思い入れを抱くようになります。遠く長く隔たった「十年前」という時間に引き裂かれた叶わぬ恋の火を胸に灯し、追跡の果てに待ち受けるものがどういったものか薄々察しながらもやめることができない。ハードボイルドとは日本語で言えば「痩せ我慢」のことだ、みたいな言葉がありますけど、シュグルーの場合は痩せ我慢をしているというより、分かっていてあえて愚かな道を選ぶ「利口さ、賢明さの放棄」ではなかろうか。武士道にせよ騎士道にせよ、「道」と付くような精神の在り方にはどこか「利口さ、賢明さの放棄」が付き纏う気がしてなりません。女優志望だったはずの彼女が見る影もないほどぶくぶくに太った体を晒している低級なポルノ映画のフィルムを目にしてしまった時点で彼は降りることもできた。なのに、捜し続けた。ハードボイル道とは即ち、誤謬と陥穽を直感しながらもまっすぐ突き進む愚かな覚悟の心を指すんじゃないか、といった印象を受けました。

 まだこれ一冊で「強烈にハマった」と申すほど魅了されたわけではありませんが、随所に窺える不撓不屈の「クラムリー節」的な筆致が楽しかったことは揺るぎなく、立て続けに他の作品も読んでいくつもりであります。今は『酔いどれの誇り』を読み出したところで、まだ始まったばかりだから何とも言えないにしても、ひょっとすると『さらば甘き口づけ』以上に気に入ってしまうんじゃないか……と思ってワクワクしている。

 余談。amazonで価格を確認して驚きました。『さらば甘き口づけ』、今だと966円(税込)なんですか……当方が所有している分は確か中学生のときに買ったものだと思いますけど初版で580円(税抜)、税抜価格で比較するとここ20年くらいで340円も値上がりしている。というかむしろ、20年前の海外ミステリの安さに仰天しちゃいますよ。『酔いどれの誇り』も今は924円(税込)だけど初版は660円(税抜)……って、あれ? 昔と今とで高さが逆転してるじゃないですか! たまげたなぁ。


2007-12-09.

『とらドラ6!』が「※このたび冒頭の口絵に不適切なイラストがありましたことを深くお詫び致します」な状態になっていてもう、溢れ出した瞬間に沸騰して蒸発する灼熱の涙で靄々と視界を曇らせた焼津です、こんばんは。総員、年齢と服装に着目せよ。そのふたつの現実の間に生じる真空(ポカーン)状態の圧倒的破壊違和感はまさに歯車的三十路の小宇宙。ブロンディに匹敵する名無しと化した彼女が切なすぎて胸が張り裂け、ただひたすらに泣ける。これが悲しみだ。悲愴(トラーギシュ)というものだ。

 一方、小ネタの加速は留まるところを知らず、もはやライトノベルを読んでいるのかvip板のスレを眺めているのか分からない境地までやってきました。タラスパ宮ゆゆぽは戯れのできぬ力士よ!

今野敏の新作『TOKAGE 特殊遊撃捜査隊』が来年1月に発売

 紹介文の「警察小説の第一人者による、吉川英治文学新人賞受賞後初の警察小説(シリーズものはのぞく)。」という表記に噴いた。カッコ付きで「シリーズものはのぞく」て。律儀なのか何なのか。ともあれ『隠蔽捜査』とその続編『果断』で注目を集め、遅咲きのブレイクを達成しようとしている著者の最新作とあっては注目しなくてはなりますまい。『隠蔽捜査』も1月には文庫化するそうですので、未読の方も是非これを機会に挑んでみられては。個人的には『孤拳伝』あたりをそろそろ文庫で出してほしいものですが……。

ぱれっとの『さくらシュトラッセ』、体験版をプレー。

 どちらかと言えばマイナーなブランドだったものの前々作『もしも明日が晴れならば』がちょっとしたヒットを飛ばし、知名度が向上したぱれっと――その『もしらば』スタッフによる新作が、この『さくらシュトラッセ』なのであります。原画はくすくす、ライターはNYAON。このふたりは『もしらば』以前にもlightの『Dear My Friend』を手掛けており、「あれ? lightの社員じゃなかったの?」と首を傾げたユーザーも多いのですが、移籍したのか何なのかはよく分かりません。ともあれ、『さくらシュトラッセ』は箒に乗って空を飛ぶ魔女がヒロインのエロゲーで、彼女が使い魔の黒猫と一緒に、主人公の働くレストラン「かもめ亭」に転がり込む……といったストーリーが進行していきます。平たく言ってしまえば「レストランもの」+「魔女っ子」なんですが、もっと端的にウリを示すとすれば「主人公涙目www」+「男ツンデレ」になるでしょう。

 ブッチギリで領空侵犯かまして日本にやってきた魔女マリー・ルーデルは空自の追跡を躱そうとするあまり、戦闘機を撃ち墜としてしまう。パイロットはベイルアウトして難を逃れたが、公道に墜落した機はちょうどバイクで通り掛かっていた青年を巻き込んで爆発・炎上。青年(もちろんこいつが主人公)は即死こそ免れたものの、腸は飛び出しているわ右腕はもげているわ瀕死の重体で、放っておけばすぐに命尽きること間違いなし。やむを得ずマリーは治癒魔法を使って主人公を生き長らえさせるが、以降も定期的に魔法を掛け続けないと保つかどうか怪しい状態になり、こっそりストーキングして主人公のヤサ=「かもめ亭」を特定。そしてなんだかんだあってマリーはそこで働くことになる。

 主人公は実家であるレストランを継ぐために学園を中退し、料理人の修業を重ねてきた、っていう確固たる目的意識を持ったキャラクターになっており、エロゲーの主人公にしてはやや珍しい。血の繋がりはないが育ての親として慕っていた母が過労のあまり倒れてしまって「かもめ亭」存続の危機、だが俺は店を閉めたない! と奮起するあたり、ちょっと古めの青年マンガみたいなノリだ。いや「古め」とはいえ、こうした素直に頑張る主人公は好感が持てるし、応援もしたくなる。しかしなにぶん経験が浅く、一人で回せるほどの力が彼にはない。常連客に「このままだと評判を落とす、一時休業にした方がいい」と諭され、それでも諦め切れずに起死回生の一策として連れてきた人物こそ誰あろう、ドイツからやってきた金髪も麗しい魔女っ子だった……え、それなんてエロゲ? いや、これは本当にエロゲーでした。

 ここまでならプレーしていてだいたい読める範囲であり、意外性はないのですけれど、ここからが面白い。パッと見ドジっ娘っぽい雰囲気のヒロインながら作り出す料理は絶品、その味にすっかり魅了されてしまった主人公の幼馴染みの少女・かりんが「みーくん(主人公)のは食べたくない! マリーちゃんのごはんが食べたい!」とまで叫び出す。このかりんってば、主人公と同い年なのに幼い気質が抜け切らない食いしん坊キャラで、マリーが来る前は「みーくんのごはん! ごはん!」と無邪気に喜んでいた子なんですよ? それが「食べたくない」と言い出しちゃ主人公の立場がないと申しますか、「みーくん涙目www」以外に適切な表現が思い浮かびません。鍵ゲーとかとはまた違った意味合いでの泣きゲーっぷり。

 で、その件も絡んでいろいろと反目の材料が重なり、主人公はマリーに対して「早く出て行け」と冷たく接し始めます。狭量と言いますか、アスホールの小さい野郎だな、といった感想を抱かれても仕方ないところながら、「いろいろ」の内容を考えるとあながち主人公の気持ちも分からなくないので、このへんはプレーヤーとしても複雑な心境に陥る箇所です。でもこの「みーくん」という奴は根がお人よしなのか、ついつい反射的に相手を気遣ってしまう癖が抜けず、ところどころで「ああ、ここは非情に徹するべきなのに」と煩悶する。やがてわだかまりが溶け、和解する流れに差し掛かるんですけども、このへんに関してはもう「男の方がツンデレ」と断言していいでしょう。主人公に肩入れし、プレーヤー自らが「ツンデレする側」の感情変化を味わうというのもなかなか楽しい体験ではあります。

 くすくす絵は好きなのに『Dear My Friend』や『もしも明日が晴れならば』はなんだか肌に合わなくて途中でやめたり体験版しかしてなかったり、といった塩梅なんですけれど、今回の『さくらシュトラッセ』は特にそういったこともなくプレーできました。明るさの中にどこか暗い翳りがあるDMFやもしらばと違って、さくラッセは「実は主人公が瀕死で半ゾンビ状態」という事情を除けば基本的に明るいこと尽くめで気軽にラブコメを堪能できる――ってのが大きいのかもしれません。「恐怖の姉」といった役どころである優佳なんか、まったく萌えないのに弟をちゃんと思い遣っている面があって素直に「いいキャラだ」って感じましたし。1月は予定が若干厳しいので買えるかどうか分かりませんが、ひとまず注目しておきたい。なにせこのソフト、「おにんにんランドが開園するんじゃないか」という疑惑まで持たれてますからね……これが男の子だって言ったら、あなた、信じます?

・拍手レス。

 ギャーッ!!ついに怒りの日が!!しかし、「ピリオド」も同時とは
 あとTOPのルサルカ様に踏まれ隊(苦笑 やーめでたき日ですね

 「迷った時こそ二正面作戦」という我が家代々の言葉に従って『ピリオド』一緒に注文した次第。あと、当方は「ルサルカに踏まれながら必死に首を捻ってパンツ覗き隊」。

 蓮とマリィの笑顔が素晴らしすぎワロスwwwwwww
 桜が舞っているところを見ると時期は春なんでしょうね。

 Dies Iraeついに延期のゲットーを抜けましたね。今夜はいい夢見れそうだ……
 わしはうれしい、おぬしらが笑っている。我らは怒子、共に汗を流しゲットーを砕く同胞ぞ。

 ソフトを運ぶトラックが横転しないかぎり発売されるようで安心、これ以上延期したらどうしてくれよう。
 『Dies Irae』を乗せたトラックはエイヴィヒカイトを使わないかぎり横転させられない、と信じることにします。

 ここの紹介見てキラ☆キラやったんですが…このライターさんおっかねぇなぁ
 キラ☆キラ、明るい青春モノなのに主人公が思いっきり後ろ向きで「ああ、瀬戸口だなぁ」と。

 やったよおおおおお焼津さああああん! マスターアップぅぅううう?(ちょい疑心)
 『わんことくらそう』みたいにマスターアップ後更に延期したケースもありますので、努々兜の緒は緩めぬよう。


2007-12-07.

・今日はみなさんに悲しいお知らせがあります。ずばり、延期しました。……白倉由美の『やっぱりおおきくなりません』が。(07年12月→08年2月)

 失意に打ち拉がれる焼津です、こんばんは。『やっぱり〜』が出るって聞いたから、買い揃えるつもりでわざわざデュアル文庫版の『おおきくなりません』買ったっていうのにぃぃぃ。

・で、『Dies Irae』の方は無事にマスターアップしたみたいです。きゃっほーい。

・船戸与一の『風の払暁』『事変の夜』読了。

「ドイツ参謀本部の前身は戦時に編成される兵站部だった。メッケルも兵站の重要性についての講義を繰りかえした。しかし、帝国陸軍の軍人たちは兵站にはほとんど興味を示さず、関心をもっぱら謀略に向けたんだよ。(中略)とにかく、帝国陸軍参謀本部は徹底して謀略の研究に走った。日露戦争でもそれは大いに功を奏した。つまり、謀略にかけちゃ帝国陸軍は一流中の一流なんだよ。満州国建国のためにそれを使わない手はない」

 複数の巻に跨って展開する一大クロニクル“満州国演義”、その1冊目と2冊目です。今年の4月に同時発売されました。1巻『風の払暁』は戊辰戦争の一幕を描く短いプロローグを経て1928年の夏頃からスタートし、「張作霖爆殺」をメインに据えて展開、1930年の春まで続く。2巻『事変の夜』はタイトルを見て分かる通り、「満州事変」が主たる内容となっています。12月発売予定の3巻『群狼の舞』は1932年、満州国が建国されるところから幕開けとなる模様。2冊掛けてようやく「満州国」に辿り着けるくらいのスローペースなので、あと1冊や2冊じゃ到底終わらないでしょう。下手すると全10巻構想だったりするかもしれません。船戸与一と言えば日本の冒険小説界において重鎮的存在であり、別名義でゴルゴ13の原作をやった時期があったり、『ブラックラグーン』の帯に推薦文を書いたりと微妙にマンガ方面とも繋がりがある人です。代表作『山猫の夏』は今読んでもまったく劣化の色が窺えない素晴らしい出来。最近の作品はどうも熱が篭もっておらず、勢いが衰えた印象は否めなかったけど、“満州国演義”は久々に全力投球で挑んでくれるみたいで期待しました。

 麻布・霊南坂の名家で育った敷島四兄弟――如何なる運命の導きか、示し合わせたわけでもないのに四人はそれぞれ日本から飛び出し、広大な中国大陸へと渡った。長男・太郎は外交官として、次男・次郎は馬賊として、三男・三郎は軍人として、四男・四郎は学生としてみなバラバラの生き方を志す。しかし、豊饒の地・満州は彼らを呑み込み、あるがままの姿でいることなど許そうともしなかった。大陸に支配の指先を伸ばし、アジアの王者として世界に覇を唱える狂暴な夢に取り憑かれたかつての日本。兄弟の絆はただ時代に翻弄されるために築かれたのか、それとも……。

 あらかじめ書いておきますが当方、「満州国」というものが存在していたことくらいは知っていましたが、それに関する知識はとんと持ち合わせておりませんでした。あってもせいぜい溥儀のこととか、「『ペトロフ事件』の舞台が満州だったよなぁ」という程度。親戚には満州から命からがら逃げてきた(死体の下に隠れてソ連兵をやり過ごしたとか)人もいますが、詳しい話は聞いたことない。そんなこんなで新鮮と言えば新鮮な気分で読み進められる物語ではありましたが、なにぶん知らないことだらけだったものでスラスラ目を通していくことは叶いませんでした。とにかく、人名の洪水。誰が実在で誰が架空なのか、区別不可能なまでの連打。ページのあちらこちらで「誰だったっけ、この人、さっき読んだんだけど……」な名前が乱舞してジルバを踊りつつ、当時の満州を取り巻く政治的状況が延々と連綿とねちっこく綴られてゆく。頭パンクして活字の群れが単なる風景に見えたことも一度や二度じゃなかったです。焼津、歴史書の読めぬ男よ……!

 と、非常に恥ずかしい体たらくでしたが、そこらへんを苦労しいしい乗り越えていけばやはり新鮮な世界が広がっていました。悪く言えばこの“満州国演義”、説明の垂れ流しといった箇所が多く、小説的な面白さを含んだ部分は少ないです。「青龍」なる通称で名の知れ渡った次郎は「人生なんて風に舞う柳絮のようなものだ」と嘯き、手下の馬賊たちとともに荒野を渡り歩いて金次第でどんな仕事でも引き受ける「緑林の徒」であり、そのアウトローな姿勢はいかにも冒険小説向き、実際に彼のパートは派手な展開がなくても分かり易くて読みやすかった。外交官である太郎や軍人である三郎のパートはどうしても政治や国家のしがらみが付いて回るので煩瑣だし窮屈でもあるが、あれやこれやと予備知識を詰め込まれることで作品内における「お約束」を察知できるようになっていき、互いの道が分かれていく流れも実感を持てるようになります。国を想う軍人として兄に銃を向ける三郎、弟に銃口を突きつけられ動揺しながらも外交官として「脅しには屈さない」と強く自分を保つ太郎。まだまだ兄弟の決裂は本格化していませんが、予断を許さないムードが持続してハラハラさせられます。四郎は……うーん、彼も彼で面白くなりそうな雰囲気を秘めているけど、まだ立場や役どころがハッキリせず、安定を得られていません。安定しないこと、絶えず揺れ続け、どこにも落ち着かないこと、が彼のキャラクターなのかもしれませんが。

 冒険小説の割に派手派手しい場面が少なく、戦闘描写も終始淡々としていて抑制が利いています。今回はエンターテインメントの方面で勝負するつもりがあまりないのかもしれない。当方みたく満州のことをろくに知らない方が読み出せば苦労を強いられることは必死ですが、耐え抜けばマゾい心境とはまた別の読み応えが徐々に湧いてくる2冊です。同じ大陸にいるとはいえ、あまり接点を有していない四兄弟とところどころで遭遇し、彼らに情報と助言を与え、時に弱味を握って耳元で囁き巧みに操ろうとする人物こそが関東軍特務機関所属の間垣徳蔵――誰も階級を知らない、という謎めいた存在感が不気味でもあり美味しくもある。張作霖爆殺の瞬間を三郎に目撃させたり、天津事件に次郎を加担させたりと、言ってみれば間垣は帝国陸軍のミニチュアにして権化。「敷島家に憑いた悪霊」である彼の暗躍が満州にどんな果実を結ばせるのか。大いに興味をそそられます。

・拍手レス。

 ピリオドは相変わらずの「大槍先生の大槍(性的な意味で)」に期待したいです
 そう……そのまま飲みこんで。僕のグングニル……


2007-12-04.

・欲望に負けて『明日の君に逢うために』を購入した焼津です、こんばんは。先月の新作を何一つ終わらせていないというのに、なんと浅ましい……危うく勢いに乗って『世界でいちばんNGな恋』も注文しそうになりましたが、それはなんとかグッと堪えました。

 ともあれ、明日君はシナリオがどうこう、設定がどうこうというより、単純にプレーしていて楽しい「模範的な学園エロゲー」であります。立ち絵のフェードイン、フェードアウトを始めとして、細かな画面演出にまでしっかりと気が遣われており、ひたすらまったり寛げる。キャラの掛け合いも軽快で楽しく、冗長とならないうちにサッと切り上げるからサクサク進められますね。絵は若干好みが分かれるところで、当方も最初は「ちょっと合わないな……」と食わず嫌いしていましたが、評判の良さに釣られて手を伸ばし、あっさり「これはこれで!」と評価を覆してしまった次第。何より、声優の演技力が素晴らしい。ほんの一言や二言で、たとえそれが至ってヒネリのないセリフだったとしても、巧妙に感情表現して各々のキャラクター性を掴ませてくれる。無駄に凝るよりもここぞという場面で強烈なストレートを繰り出した方が効果的だ、と言わんばかり。ああ、大量の脱走兵が出たとはいえ、やはり11月は良作揃いの激戦区だったんだなぁ。

『Fate/Zero』の最終巻、年末に発売決定

 ちょっ……TYPE-MOONの公式サイトで告知してなかったから気づくのが遅れたじゃないですか! やれやれですよ。何にせよこれがラスト。1巻が出たのが遙か昔に思えますが、ちょうど丸一年。遂に幕が降りるというならば、大晦日に読む本はこれしかねぇ、って感じです。うむ、必ず年内に入手できるよう手配しなければ。

・片山憲太郎の『紅〜醜悪祭(上)〜』読んだー。

 さて、まずはカタケンについて「これまでのあらすじ」形式で語っておきましょう。

 2004年9月、第3回スーパーダッシュ小説新人賞に『電波日和』が佳作として選ばれた。作者である片山憲太郎はこのとき30歳。出版に際しタイトルが変更されることになり、作者かあるいは編集が『猟奇的な彼女』でも好きだったのか、『電波的な彼女』という二番煎じ臭い題名で世に出ることとなる。『電波的な彼女』は前髪で目を隠した電波少女・堕花雨が「前世からの絆」を訴えて主人公・柔沢ジュウにまとわりつきつつその身を守ったりする奇妙な青春学園恋愛ストーリー。「ヒロインよりもパツキン根暗不良の主人公に胸キュン」と意外な反響を呼び、ヘタレすぎて可愛ささえ催す彼の姿に「ジュウ様」の呼称が一部で広まっていく。翌年2005年は『愚か者の選択』『幸福ゲーム』と巻を重ね、ライトノベルにしてはやや遅めのペースながら順調に人気を高め、年の瀬も迫った頃、遂に新シリーズ『紅』が開幕。ヒロインの年齢をティーンから一気に7歳にまで引き下げた本作は「あざといのに抗えない」と多くのロリコンを撃墜し、明けて2006年、『SHI-NO』『円環少女』とともに高く高く天上へ昇り、輝ける幼女の星となって「ロリの大三角形」を築くに至る。まさしくカタケン絶頂期であった。

 が、続編『紅〜ギロチン〜』の刊行も間近という頃になって不可解な動きが出始める。新刊リストに載っていた『紅2(仮)』が、消えた。そして、そのまま復活しない……不安を持て余すファンたちに、絵師である山本ヤマトが個人のHPにて「作者のパソコンが吹っ飛び、原稿データが消失した」と伝えた。「まぁ、PCのデータが飛びました!とかわざわざ公式で発表する訳にもいかないだろうからな。(ラ板片山第5スレ456より引用)」という大方の予想を裏切り、公式サイトで「作者のPCがクラッシュした」旨を認める異例の謝罪が掲載されるなど、違う意味で話題騒然と化す。『紅〜ギロチン〜』は7月に発売されたが、これを境にしてカタケンは長い沈黙に入る。「スランプに陥った」「本業が忙しい」「編集と喧嘩している」「あまりにもペド過ぎてソフ倫の規制に触れた」と諸説紛々さんざめき、「おまえそれは『さくらむすび』のことだろ」な最後の一説を除いてどれも肯定も否定もされないまま時がすぎ、季節は秋になり、冬が来て、春が訪れ、そろそろ夏に差し掛かろうかという頃に一つの情報がリークされた。「『紅』、アニメ化」――まさかのメディアミックスである。

 原作が2冊しかなく、マンガ化すらされていない作品をアニメという檜舞台に立たせることは、普通に考えて暴挙に等しい。集英社は帳尻を合わせるかの如く矢継ぎ早に「マンガ化決定!」「ドラマCD化決定!」と告知、慌しく『紅』プッシュの素地をつくり、諦められかけていた3巻の刊行もやっと現実味を帯び始めた。年内に間に合うかどうかも危惧されるなか、11月、年末商戦を目前に控えて遂に発売される日がやってきた。シリーズにとっても、カタケンにとっても、1年を余裕で超える久々の新刊。「待望」という名の枷から解き放たれたファンたちはいっときの喜びに耽った。しかし、タイトルは『紅〜醜悪祭(上)〜』。上巻なのである。ストーリーは完結していない。12月2日現在、中巻ないし下巻の予定は、公式サイトのどこにも載っていない。なんて見切り発車なんだろう……内心呟く僕に向かって丸宝行晴編集長はにっこりと笑いつつこう言っている気がする。

「すごい焦らしプレイでしょう。でも、それがスーパーダッシュなんだよね」

 いいから早く続き出せ! 心から、そう思った。

 とにかくそんなこんなで16ヶ月に渡って待ち呆けを食らわされたシリーズの新刊なわけです。個人的には『紅』よりも『電波的な彼女』の方が好きなんですけれど、だからといって続きが気にならないかと申せば、当然そんなことはない。高校生にして揉め事処理屋を営む主人公と世界的な権威を誇る大財閥の令嬢、九つ違いの歳の差カップルに熱い視線を注いでいる点は『紅』派と一緒。『紅』はヒロイン数がやたらと多く、3巻の時点で既に10人近いこともあり、ひとりひとりの扱いが必然的に薄くなってしまうデメリットはあるにせよ、充分な賑やかさを発揮して寛がせてくれます。メインヒロイン以外のところでは「貰われた先の家の長女」崩月夕乃が気になっている。上品でお淑やかなお姉ちゃんキャラのくせして拗ね癖があり、主人公に寄せる愛情量と他のヒロインに向ける嫉妬心の激しさは随一、「お姉ちゃん」と呼ぶより「キモ姉」と呼ぶ方がしっくり来ます。夕乃さんキモいよ夕乃さん。演技とはいえ主人公のことを平然と「ダーリン」呼ばわりするんですよ。最高じゃないですか。

 今回は薄い(約220ページ)し、まだ上巻なので、シリーズの進展はあまりないです。タイトルの「醜悪祭」も恐らくこんな感じだろうな、といった大体の予測はつくけれど詳しい内容は明らかにされておらず、強いて感想を述べるとしても日常イベントのあれこれについてくっちゃべるだけになりそうだ。なにせ「失踪人の捜索」という定番ストーリーであるにも関らず、依頼人が登場するのは半分を過ぎたあたりですから。当方はカタケンの文章や作風が好き(やたらと体言止めが多いのは引っ掛かるが、細かい描写は地味に巧い)なので、歩みの遅さに反比例して密度が濃い文章をゆっくりダラダラと楽しめて満足したものの、物語重視で読んでる人は展開のトロさにイラついたかもしれません。作者スレでは「戯言シリーズのパクリだ」と主張して非難する人と作者を擁護する人との間で平行線の議論が繰り広げられた経緯から半ば「西尾維新」の名前が禁句となっていますが、あえて戯言シリーズを持ち出して言うならば『ヒトクイマジカル』の前半部分、あそこらへんのノリに相通ずるものがあると思います。

 休止期間が長かったせいか、山本ヤマトの絵柄がすごく変化していた(この変遷を見よ)のが一番のサプライズでした。これ、徐々にじゃなくて一気に変わってるから違和感拭いにくいんですよね。それと、例によってカタケン特有の「本筋とは大して関係ないけど聞いてて胸糞が悪くなる事件」が端々で報じられていて気分がダウンします。「不妊に悩む夫婦を100組も騙して体外受精に全部自分の精子使っていた医者」とか「赤ちゃんばかりを狙い、口をクリップで厳重に塞いで泣き声が漏れないようにしてからサンドバッグにして遊んでいた中学生グループ」とか。カタケンの小説では悪質な事件が頻発しているややパラレル気味な(完全にパラレル、とは言い切れないのがな……)日本が舞台で、「悪の方が強い世界」という認識が重要なテーマに据えられている。主人公が情けなく、後ろ向きで、要領も悪く、浅井ラボとはまた異なるアンニュイなダークさを常時漂わせているから「万人にオススメ」とは言いがたいところです。たぶん、アニメ版やマンガ版では原作のそうした暗い部分は大方オミットされるでしょう。オミットされなかったら伝説になっちゃう。今回は上巻だからまだまだヌルいけれど、きっと中巻ないし下巻では目を覆いたくなるようなエグい展開を連発するはず。続きが出るのが楽しみなようでもあり、怖いようでもあり……。

 そういえば、スーパーファンタジー文庫時代は二部作の表記が『〜(前編)』『〜(後編)』でしたけど、スーパーダッシュだと普通に(上・下)なんですね。他にも上下巻の本はあったのに、今まで全然気が付かなかった。なんにせよ、中巻ないし下巻の発売は早くとも来年の2月。アニメに合わせるつもりかもしれませんが、肝心の放映時期がよく分からない。春頃だとは聞くが……不安だなぁ。

「月道」に「第三の泥棒にゃんこ」出現(12月4日付)

 既に麻耶が存在するうえで更にロリっ子(しかもボクっ子)を重ねてくる毒めぐさんの本能はホンモノだわ……さりげなくニーソというのも心憎いです。

・拍手レス。

 しかし、いまだにマスターアップ報告のない恐怖。残り……3週間弱
 もうゴールしてください……。


2007-12-02.

・唐突にFF7ネタですみませんが、「神羅(しんら)カンパニー」を「新羅(しらぎ)カンパニー」だと思っていた時期のある焼津です、こんばんは。そして矯正がうまく行かず、いまだに「しらぎカンパニーが〜」と言ってしまう。もういいじゃん、しらぎで。戦場ヶ原しらぎ。

SCOREの新作『ご主人様だ〜いすき』、ストーリー紹介がトばしている件について

 「やれやれ、また例によってK.バッジョのフェラゲーなんだろ……」と表面上は溜息をつきながら『先生だ〜いすき』の西園寺姉妹に搾り尽くされた過去を持つ人間としてそれなりにワクテカしつつクリックしてみたところ……これなんてバトルロワイアル? ヒロインの名前が「空・スピットファイア」だったり、龍王院弘ならぬ「獅子王院姫」だったりと、随所に無駄なセンスを発揮しすぎだ。眼鏡メイドが「依真(エマ)」という小ネタも吹っ飛ぶ勢いです。いかん、無性に気になってきました。

「月道」にて「合鍵」の藍子絵(12月2日付)

 ふと思いましたが、「あいかぎ」だから「あいこ」なんでしょうかね? 「ゆうじゅう」だから「ゆうくん」というのはほぼ確実だと睨んでいますけども。

・小田扉の『江豆町』読んだ。

 少し時間が空いたから暇潰しに、と軽い気持ちで引っ張り出した1冊。小田扉はシュールと表現するしかない独特のセンスを有したマンガ家で、一度ハマるとやめられない病的な魅力を発揮します。当方はかつて店頭に並べられていた『そっと好かれる』のやけに勢い溢れる表紙と妙に気を引くタイトルに釣られて立ち読みし、そこはかとなく虜にされました。代表作が既刊10冊の『団地ともお』であることは衆目の一致するところですが、個人的にともおはあまり好きではなく、従って小田扉のファンを名乗ることに躊躇いを覚えつつ「ともお以外の作品出ねぇかなぁ」と新刊情報を漁っている昨今にございます。かしこ。

 で、『江豆町』。副題は「ブリトビラロマンSF」、帯には「不条理SFギャグ」の謳い文句が躍っている。とりあえず「江豆町(えずまち)」という恐らく架空の町であろう場所が舞台なのだ、ということは容易に察せられますが、肝心の内容はさっぱり推し測ることができません。なのでまずは読むしかない。小田の絵柄や作風は他のマンガ家を引き合いに出すと黒田硫黄とか、ああいう系統で、パッと見巧い印象は受けないしストーリーらしいストーリーも窺えない。しかし読み手であるこちらの呼吸に合わせ、時にのんべんだらりとした調子で、時にスリリングな手つきで物語を繰り出すレスポンスの良さは実に気持ちいい。「表現力は見かけの巧拙に拠らない」ってことを強く意識させる。『江豆町』は細かいネタが多く、ほとんどは意味不明だったり無意味だったりするが、丹念に目を通せばあっちこっちで話が繋がっている箇所に気づくことができ、知らず知らずのうちに没頭してしまいます。特に主人公が存在せず、エピソードによって視点人物や主要陣が大幅に入れ替わるオムニバス形式で、一旦終わったように見せかけて後々になって活きてくる伏線が張られている濃やかさには思わず笑みが漏れる。

 ギャグというにはローテンションすぎるし、ヒューマンドラマにしちゃいささか気が抜けている。良くも悪くも脱力を極めた一つの境地。空想科学的な要素はないけれどセンス・オブ・ワンダーが炸裂し、ミッシング・リンクを埋める快感も備えた本書はアンテナさえ合えばSFスキーでもミステリスキーでも問題なく満遍なく堪能できるはず。暇潰しのつもりだった当方がすっかり夢中になって読み耽ってしまったことは言うまでもありません。

・今月の予定。

(本)

 『狼と香辛料Y』/支倉凍砂(メディアワークス)
 『キャノン先生トばしすぎ』/ゴージャス宝田(オークス)
 『銀河北極』/アレステア・レナルズ(早川書房)
 『護樹騎士団物語[』/水月郁見(徳間書店)
 『Dクラッカーズ+』/あざの耕平(富士見書房)

 年末商戦が絡んでいるせいか、各社が本気を出して攻勢に出ています。電撃文庫の新刊、来年にアニメが放映される『狼と香辛料』はイチャイチャラブラブな賢狼ホロと行商人ロレンス――通称ホロレンスのバカップルがクリスマスよりも早い刺客となって我らの傷だらけハートにトドメを刺しに来ること請け合い。同時発売の暴走気味学園ラブコメ『とらドラ6!』は蘇生薬となるか、それとも傷口に塗る塩と化すか。キャノン先生は先月の『絶体絶命教室』に引き続きゴージャス宝田の単行本。連載してる時点で既に伝説となったエロマンガです。概要は一流のエロマンガ家を志す青年が淫乱なロリっ娘とどうたら、っていう18禁版『まんが道』『愛…しりそめし頃に…』らしい。作者の狂気と妄念が、ロリへの鬼畜な愛溢れる初期作『おりこうパンツ』『おりこうチャンネル』すらもブッ千切る勢いで迸り、一読すればたちまち『G戦場ヘヴンズドア』にも等しい血の滾りを体感させるとか。初回限定版には特典の小冊子(RIKIが表紙イラストを務める)が付き、お値段1365円(税込)。初回版がなくなり次第1155円(税込)の通常版に切り替わるそうなので、「特典とかいらないや」な人は少し待つといいかも。今月のマンガは花とゆめから3年半ぶりに『っポイ!』、チャンピオンから『Damons』と『フルセット!』、ヤンジャンから『ライアーゲーム』『キングダム』『ハチワンダイバー』『嘘喰い』など、怒涛の如く注目作が押し寄せてきます。よしながふみの『大奥』やアニメやってる『BAMBOO BLADE』の新刊も忘れないようにしないと。

 『銀河北極』はレナルズの連作短編集“レヴェレーション・スペース”の2冊目にして完結編。著者のデビュー作のタイトルも『啓示空間(レヴェレーション・スペース)』だが、読んでないので繋がりはよく分からない。邦訳して1000ページ超える大長編を分冊せず無理矢理一冊に纏めた経緯から「極厚本」のイメージが強いレナルズながら、「ひょっとしてクソなげぇ長編より中短編の方がうまいんじゃね?」と言われるくらいで、“レヴェレーション・スペース”第1弾『火星の長城』は『啓示空間』や『カズムシティ』が合わなかった人でも結構誉めています。なのでズルズル買ってしまっている現況。同日刊行されるチャールズ・ストロスの『残虐行為記録保管所』にも注目していて、ハードカバーなので少し迷いましたが、やはり以前“S-Fマガジン”で読んだ“アッチェレランド”シリーズが面白かったのでポチリと予約。しかし“アッチェレランド”はいつ出るの? 『護樹騎士団物語[』は副題「白銀の闘う姫(下)」で、要するに7巻の続きです。2ヶ月連続刊行と聞いてワクワクしていたのに、いざ届いた7巻の現物がやたらと薄くて落胆いたしましたが、スリルとサスペンスに満ちた内容は相変わらずのようで、評判も宜しい。8巻が到着したら一気に読む予定です。『Dクラッカーズ+』はまさかの後日談。本編が完結して4年近く、新シリーズBBBも好調なあざの耕平がふたたびDクラを書いてくれるなんて、なんと嬉しいサプライズだ。同じファンタジアから発刊される『銀月のソルトレージュ4』も、派手さはないながら味わいのある異世界ファンタジーの新作で、実際に手に取る日が楽しみ。

(ゲーム)

 『Dies irae』(light)

 今年の締め括りはこれ一択。

 たくさんの(悲憤と慨歎に満ちた)思い出がある、他には何も要らないぐらい。
 瞳を閉じれば、すぐあの既視感(ゲットー)の匂い。
 また夏が……来るな!

 さすがにこの土壇場で延期かましたら洒落にならん。誰よりも遠くに行ったら笑うどころか泣きますよ。今やっておられる残酷延期劇(グランギニョル)を即刻やめてもらいたい(ピカッ)。もう違う意味での「怒りの日」には飽き飽きしました。まあ、無事に発売されるかどうか、ファンの贔屓目で見てさえ五分五分といったところですけども……なので、Littlewitchの新作『ピリオド』を12.21危機に備える後詰めとします。大槍絵スキーだし、体験版の出来も案外良かったので。

・拍手レス。

 ヤマヤミ久々更新キター TOP絵がなんかエロイ
 まだ時間掛かりそうですね、ヤマヤミ。


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