2007年8月分


・本
 『Fate/Zero Vol.03』/虚淵玄(TYPE-MOON)
 『ねくろま。』/平坂読(メディアファクトリー)
 『ドラゴンキラーあります』/海原育人(中央公論新社)
 『灰色のダイエットコカコーラ』/佐藤友哉(講談社)
 『もっけ(5〜6)』/熊倉隆敏(講談社)
 『DDD2』/奈須きのこ(講談社)
 『銀月のソルトレージュ3』/枯野瑛(富士見書房)
 『街の灯』と『玻璃の天』/北村薫(文藝春秋)

・ゲーム
 『続・殺戮のジャンゴ』(ニトロプラス)


2007-08-30.

・どうも寝違えたらしく猛烈に首が痛い焼津です、こんばんは。

 どれくらい痛いかと申せば、患部に湿布を張ったにも関らずその感覚がないほど。少しでも筋肉が伸びると「アヒイッ!」な状態に。PCの前に長時間座るのも難しくなってきましたので、Marronの『ひまわりのチャペルできみと』はちょっち中断。5、6回バッドエンドを喰らった末にようやく月乃ルートに入ることができたので、早く再開したいぜ……姿勢を工夫すれば本くらいならなんとか読めるのが不幸中の幸いか。

・北村薫の『街の灯』『玻璃の天』読了。

 上は、格天井のようになっていた。区切られた枠の中に、鳳凰や龍などの代わりに、近代的なステンドグラスの模様が見えた。そこが明るかった。夜だから、外光のせいではない。しかし、蜜色や海の青に色分けされた硝子の輝きを見ていると、その先に別の天があるように思えた。

 北村薫と言えば連作短編集『空飛ぶ馬』でデビューし、殺人や強盗といった仰々しい犯罪に頼らないミステリ、いわゆる「日常の謎」と呼ばれる分野において嚆矢となった作家であり、簡素でいて流暢な文体、小気味良くも明瞭な温度を秘めた語り口、そしてデビュー後しばらくは覆面を被っていたせいもあって女性作家と思い込んでいた人も多かったそうな。当方が読み出した頃は既に男性作家と判明していたので、別段「えええー」な驚きは味わうことなく来たものの、いっそ知らずに騙された方が面白かったかなぁ、と考えてみたりもします。

 さて、『街の灯』と『玻璃の天』、この二つはシリーズ作品でそれぞれ1冊目と2冊目に当たります。舞台となるのは昭和初期。開戦前の、平和と言えば平和ですがそれなりに不穏な影が差しつつあった時代を背景に、淡々とした少女の一人称で物語を綴っていく。ただ、どうも回想形式臭いところがありますので、現在の語り手はもう「少女」と言いがたい年齢なのでありましょう。いいとこのお嬢様である主人公のもとに、新たなお抱え運転手としてやってきたのは、当時には珍しい女性ドライバー。別宮みつ子と名乗る彼女は歳の頃二十歳前後に見えてはっきりした目鼻立ち、決して出しゃばらず常に控え目な態度で発言するものの、いざとなれば相手がどんな暴漢であろうと怯まずに立ち向かう確かな腕を持っていた。まるで小説の世界からやってきた痛快極まりないヒーローみたいな存在に、親しみを込めて「ベッキーさん」とあだ名を付ける主人公。様々な事件を経て、やがてベッキーさんの「正体」に知っていていくが……。

 「別宮」を「べっく」と読むことに気づいたのは2冊目に入ってからでしたが、それはさておき連作形式の時代ミステリです。『街の灯』には「虚栄の市」「銀座八丁」「街の灯」の3編、『玻璃の天』には「幻の橋」「想夫恋」「玻璃の天」の3編が収録されています。『街の灯』ではベッキーさんの素性が定かならぬまま進みますけれども、続く『玻璃の天』に入れば徐々にそのへんの事情が徐々に明らかになってきます。話が面白くなってくるのも『玻璃の天』からですね。正直、『街の灯』だけだと物足りない。主人公が女子学習院に通う社長令嬢とあって上流階級の華やかな暮らしぶりを見せつけ、周りの少女たちも華族や士族の子につき平然と「ごきげんよう」な挨拶を交わすわけで、読み始めた当初こそ「けっ、ブルジョワが」系の反感を抱かされたが、だんだん慣れて鼻持ちならなさも薄れていく。二人称が「あなた」じゃなくて「この方」だなんていうのは初めて知りました。「この方、この方」という呼び方にはまだ少し違和感が拭えないにしても、ちょっと新鮮。「ありがとう/すみません」の代わりに「おそれいります」で済ませてお嬢様っぽさを匂わせるところは覚えておきたいと思いました。

 内容は一話完結方式が基本ながら、「ベッキーさんの正体」を始めとしていくつか引き継がれる要素もあります。ベッキーさんにやたら関心を寄せる陸軍大尉の桐原勝久とか、その妹の桐原麗子と桐原道子、「幻の橋」で印象的な出会いを果たす陸軍少尉の若月英明など、ゆっくりと回る歯車の数々がどんな機構を動かすのか興味が膨らみます。なんでも二・二六事件が物語の終着点とのことで、最後は大きなスケールとなることを期待。で、個々の話は北村薫なんだから「日常の謎」なんだろう、と決めてかかっていたら、案外そうでもなかったです。確かに「銀座八丁」みたく、さしたる事件が起こらないエピソードもありますけれど、「自分で自分を埋葬した男」の怪を巡る「虚栄の市」や、屋上へ向かうスロープの雪上に二条の違う足跡を刻まれているにも関らず、足跡の主とおぼしき人物は天窓を突き破って墜落死した男だけで、残りの一人は屋上を探してもどこにもいない、まさか天に昇ったのか……といった謎でワクワクさせてくれる「玻璃の天」のように本格ミステリの趣がやや濃い。そのおかげか、『玻璃の天』は直木賞候補に選ばれたつつも受賞を逸してしまいました。これで五度目。まあ、「今更あげたらむしろ失礼に当たりそう」と言われるほどのベテランですから、もう直木賞とかはいいのかもしれません。

 好きな編を挙げるとすれば、「街の灯」や「幻の橋」も佳作につき迷いますが、やはり「玻璃の天」一作に絞りたい。タイトルは舞台となる邸の天窓に嵌め込まれ絢爛な彩りを添えるステンドグラスから来ており、それとはまた異なるステンドグラスについて述懐した箇所を↑に引用しましたが、「その先に別の天があるように思えた」という一文がとりわけ印象的でした。玻璃の向こうに我々が普段目にする空とはまた違った天が広がっている――ステンドグラスの帯びる神聖さとその危険性も相俟って一層深い光が胸の奥に射し込んできます。謎解きに関しては少々あっさりめで拍子抜けするにせよ、揺れる心を抑えて「――参りましょう、明日」という決意の言葉を口にするベッキーさんの凛々しさには何か打たれるものがあった。

 「公と私」の軽重を問われた時代に身を置いて周囲の世界に目を凝らし、すべてを拾うことはできないにしても、視界に飛び込む一つ一つの物事を丹念に見詰め、「答え」を練る。立て続けに読むとその馥郁たる想いがじっくり染み渡ってくる良質なシリーズです。主人公に新しい友人ができる「想夫恋」は学園モノと青春モノのいいとこ取りに成功しており、あれ一作でケリをつけるのがもったいないように感じられて、不満は残りましたが……お抱え運転手さんが軸となる以上、あんまり学園青春ミステリばっかりもやってられないのだろうけれど、チト残念。ベッキーさんがバリバリ謎を解く名探偵じゃなく、さりげないアドバイスを用意して主人公自身に推理を促すサポート役に徹するあたりは密やかな連帯感が漂っていて気に入りました。続編が楽しみだ。早く若月も再登場してくれ。

・拍手レス。

 DS「もっと英語漬け」の書取問題に「Yes,sir.」がありました、サー!
 タッチペンで「Yes,sir.」と書き綴るのは楽しゅうございました、サー!

 「ふざけるな! もっと大きな字で書け! タマ落としたか!」と書き直しを要求してきそうな問題ですね。


2007-08-28.

・近所のスーパーで数年ぶりに買ったうまい棒が税込11円だったことに軽く絶望した焼津です、こんばんは。10円玉でうまい棒すら購えないとはなんと世知辛い……。

・枯野瑛の『銀月のソルトレージュ3』読んだー。

 副題「琥珀の回廊」。とらのあなで特集を組まれたりと、それなりに注目を浴びて支持も得ているシリーズながら、いまひとつ売上が伸びないようで打ち切りのスリルと隣り合わせのまま進行中です。科学が発展したことにより魔法の存在が忘れられようとしている異世界、忘れるまでもなく200年以上前から魔法を使い続けてきた不死者(レヴナント)たちの争い。1、2巻は学園が舞台だったこともあってジャンル表記するならば「異世界学園ファンタジー」といったところでしたが、3巻は事情があって主人公リュカが登場せず、また学園も主な舞台から外れてしまったので単に「異世界ファンタジー」といった趣に変化しています。

 言ってみりゃ今回は幕間劇のようなもんですかね。主人公が不在となっている間にふたりのヒロイン、ジネットとアリスがばったりと出くわしてそれぞれの心情を晒し合う、そうした流れが読みどころとなっています。文章は相変わらずざっくばらんで、シリアスな内容の割にちょっと雰囲気砕けすぎな気がしてなりませんけれど、おかげで肩肘張らずに読める利点もある。作者固有の特徴を残しつつも「人を選ぶ」と言われそうな癖がだいぶ抜けてきてますので、普通に読みやすいと思いました。ジネットもアリスも主人公のことを憎からず思っている反面、恋愛感情にまでは達していないみたいで会話も穏やかというかあんまり修羅場らないけれど、こうして各々の胸の裡を明かすことによっていっそうキャラクターの魅力が深まってきています。まあ、正直、地味〜な魅力ですけれど。「主人公が席を外した場面でのヒロイン同士の対話」というシチュエーションが好きな方にはオススメしたい。

 これまでの不死者たちとの戦いによって大国間パワーバランスが崩れ、ストーリーが戦乱の方向へ傾きつつあるのは不安である一方、やっぱり「面白くなりそう」と期待も寄せてしまう。さすがに次の巻では主人公も本編に復帰してくれると思いますので、「あれ? リュカってどんなキャラだったっけ?」と早くも首を傾げている当方の記憶を叩き起こすような活躍を見せてほしいところ。主人公いない間にアリスが他の男とフラグ立てつつあるのが戦争以上に不安だ……。

 アルト老は今回ほとんど出番がなかった代わりに表紙イラストと本編イラストにちゃっかり登場していてなんとも要領が良いことですね。実は知らぬ間に銀ソルのマスコットになってきているのかしら? 確かに見た目はぷりちーだけども、中身は壊滅的に萌えませんよ……まさしく萎え系マスコット。

・拍手レス。

 DDDとFate/Zeroにしろあの方は某神話大系すきすぎると思いません?
 神話大系と聞くとク・リトル・リトルよりも先に『四畳半神話大系』を思い出します。

 シルフィード流れてる辺りは毎周爆笑です やりすぎ
 シルフィードと言えば『風のシルフィード』が面白かったナァ……(遠い目)。


2007-08-26.

propellerのスタッフ日誌によると、荒川工が『あやかしびと』のノベライズを手掛けるというのは誤報で、出るのはオリジナル小説なんだそうな。どっちにしろ小説デビューということに違いはないみたいで期待を寄せて上げる焼津です、こんばんは。

 お朱門ちゃんこと朱門優も何か小説を書くとかブログの方で触れていますから、これでpropllerの三ライターはすべて商業出版の舞台に立つことが決まった様子。別にエロゲーも商業出版も大した違いはないだろ、という気もしますが、よくpropllerと比較されるニトロプラスには意外なことに正式な作家デビューを果たしたライターが一人もいない(虚淵玄の『ファントム』『ヴェドゴニア』『鬼哭街』は書下しじゃなくてゲームシナリオの流用。一方書下しの『白貌の伝道師』『Fate/Zero』は同人誌に近い位置付けのため、一般書店には流通していません。デモベ小説は本編・外伝ともに元のライターじゃない人が書いており、ハロワや月カルもそのへん同様。ハナチラの奈良原一鉄は“ザ・スニーカー”で短期集中連載をしましたが、雑誌発表のみで単行本にはまとまっていません。夜刀史朗は「名義が違うだけで海法紀光とは同一人物」って説もありますけど、海法自身が「夜刀は自分の相棒であって別人」と発言しているので「正式」と見做すのは微妙。ついでに言及するとキラルの淵井鏑は咎狗の外伝本を出してますが、白貌と一緒で一般書店には流通しておらず)ことを考えると、結構異例じゃないかしら。

Marronの『ひまわりのチャペルできみと』、プレー中。

 一周目はバッドエンドでした……なんかすごく中途半端なところで打ち切られた。これまでの栗ゲーはバッドエンドがないシナリオ構造を採用しており、例えば『秋桜の空に』だとフラグが特に立たなかった場合は受け皿的なひよりルートに突入する仕組みとなっています。おかげで「どんなにテキトーな選択肢を取っても何らかのエンドには到達する」という非常にお気楽な状況でプレーして来られたわけです。しかし今回はどうやら趣が違う模様。Marronだからと好き勝手な選択肢をクリックしまくったのが仇となったようだ。うーん、ちゃんと攻略するヒロインを考えて進めていかないとな……。

 で、それはそれとしてやっぱりシステムが貧弱貧弱ゥです、このソフト。既読スキップの挙動がおかしく、冒頭のあたりはどうやってもスキップが作動しない。初の選択肢が出てきたあたりからやっと飛ばせるようになります。他に、一つのシーンにおいて変化するテキストが二、三行程度しかない箇所でも、シーン全体が「未読」と判定されて何一つ飛ばせない場合もあれば、該当する部分だけ「未読」となってそれ以外はスキップ可能って場合もある。「ボリュームが膨大」と自ら謳っているのだから、快適かつ着実なプレーを行なえるようもうちっと環境を整えてほしかったですねー。「○○する」と「○○させる」という選択肢が出てきて「○○させる」を選び、実際ヒロインに○○させたはずなのに、しばらくすると逆に主人公が○○したことになっているなど、シナリオの整合性もちょっと怪しい。「首尾」が「守備」、「耽美」が「嘆美」といった誤字も結構目に付きました。

 とはいえ感触としては悪くありません。サブキャラも含めてかなりの数の人物が登場し、始終賑やかに騒いで場を盛り上げてくれるあたり、学園コメディ好きには堪えられないものがあります。こっそり過去作と関連するネタも混ざっていて昔ながらのファンにとっては嬉しい。でも何より一番なのはイカれたギャグを機関銃の如きペースで乱射する、あの異常なテンポの良さを誇る竹井ズムが今回も健在だということ。独特すぎる口癖や執拗な天丼ネタも慣れてしまえば桃源郷です。シナリオも一見地味なようでいて「なんだってー!?」の連続で、少しトばしすぎな気もしますけど、退屈させないだけの刺激があってベネ。

 さあて、まずは月乃でも狙いを定めるかな。カナ坊互換ヒロインながら、カナ坊よりも腹黒そうで密かに不気味なトコがナイスであります。「ルナノ」という名前も「ルナティック」を連想させてヤバい雰囲気プンプンですね。あのプロペラリボンが本気を出せば人の首くらいは楽々刎ねられそう。二つ名は「ギロチン・ルナ」で決まり。

・奈須きのこの『DDD2』読んだー。

 「揺り籠」と書いて「フォウマルハウト」、「気温」と書いて「そと」と読ませるなど、いくら文脈に沿っているとはいえ無茶苦茶な振り方をしたルビの数々が目を引く伝奇シリーズの2冊目。慣れないとリズムに乗りづらいですが、こんなの秋津透や西風隆介では日常茶飯事だぜ。タイトルは「DecorationDisorderDisconnection」の略。同じ小説作品である『空の境界』とは世界設定が別みたいですが、連作形式で時系列が錯綜しているあたりは少し似ていますかな。基本的に一話完結方式ながら、途中から読むと主人公の置かれている状況や陥っている状態がどんなものかイマイチよく分かりませんので、素直に1巻から着手することをオススメいたします。

 砕け散ったはずの骨(ゆめ)が無理矢理に繋ぎ合わせられて蘇る――投手と打者の一騎打ちに特化した野球モドキ、「SVS」に殺人鬼が紛れ込んだ。その名はシンカー。人外化生の業で以って「直角に曲がる」という前代未聞のありえない変化球を駆使する悪魔憑き。文字通りの「魔球」で打者から三振を奪うと、命乞いも許さず断罪の豪速球を投射し、頭蓋やら何やらを叩き割ってゲームセット。賭けられた金でも掲げられた栄誉でもなくただ相手の「死」だけを求める亡霊であり、彼の妄念を止める方法はただ一つ、不敗の魔球をバットの芯で捉えて打ち抜くこと。かつて野球部に所属し先輩後輩の仲だった石杖所在と霧栖弥一郎は、SVSの関係者としてシンカー騒動に巻き込まれていく……「S.vs.S」

 1巻のペースでエピソードを消化していけば早くて3巻くらいで終わるかなー、と思った矢先に「S.vs.S」を読まされて「いや、これは少なくとも5冊は要るわ」と考え直すに至りました。なにせ「S.vs.S-1」と「S.vs.S-2」、前後編併せて300ページ超えていて、1巻の合計ページ数よりも多い。巻末年表に書き込まれていた作品タイトルと思しきもので未消化はまだ4つ(「Malion in day dream」「H-RED-B」「S.Peeping Beauty」「.D.D.D」)あり、今の調子で続けるならば5冊分のボリュームでもまだ心許ない。インタビューで全3巻構想・年内完結予定と語っていたそうだけど、さすがに次の1冊で終わらせるのは無理っぽくね?

 さておき、今回は野球ネタです。と言ってもチームプレー要素は皆無。ベースボールという競技にさして興味を持てない人間なので序盤は少し退屈に苛まれたものの、いざ読んでみれば「投手 対 打者」の勝負に的を絞っており、あくまで「一騎打ち」をテーマとした内容に仕上がっていてシンプルに楽しめました。ああ、そうか、ピッチャーとバッターの対決を野球と考えないで馬上槍試合とか「一瞬の交差で鎬を削る」系バトルと捉えりゃイケるんだ。少し目から鱗が剥がれました。野球音痴なこちらにも展開が理解できるようこまごまとした薀蓄を垂れ流してくれて、非常にのんびりまったりと堪能できた次第。まさかここまで延々と「ボールを投げる人」と「バットを振る人」の解説を繰り広げて一球一球の遣り取りを克明に書き連ねてくれるとは。

 見方を変えればダラダラしすぎと言えなくもないし、「もっと短く書けよ」という感想を抱いた人とて少なくはないかもしれませんが、個人的にはこうした一見どうでもよさそうな部分にまで全力投球していることに「一皮剥けたな」という感触を得ました。良くも悪くも『DDD』のセンスや雰囲気は古臭く、7、80年代に流行した伝奇バイオレンスにおいて「比較的今でも見れるところ」を復刻したムードが濃厚であり、更にそこへ新本格ミステリという90年代の要素をミックスすることでサプライズを演出しつつ物語の謎を深めるなど、いささかあざとい計算が見え隠れしていて素直に寛げない面が存在していました。言わば座り心地の悪い椅子。今回は意外性を減らす一方で『DDD』の根幹たるテーマ(と勝手に当方が思い込んでいる)「心の弱さ」は見失われず、それどころか却って泥臭いまでの直球となって紙面を横切っていく。一巻で培い築いた定型をあえて崩すことによってより広がりを見せた印象が強い。まあ、「広がり」と言えば聞こえはいいですけれど、散漫と紙一重な箇所もあって結構ギリギリな手応えではあります。

 そしてこの巻では遂に殺人鬼・日守秋星が登場。1巻で名前だけしか出ていなかった彼がどんなキャラかと申せば、陽気で凶暴そのうえテンションが高く一時も休まらない、而して常にマリオの無敵スターモードが続いているような「オレ様最高!」キャラ。思った以上に愉快でカッコ良かったです。ドラマCDとか発売されたらキャスティングされる声優は確実に谷山紀章。「S.vs.S」が予測を超える長さだったせいで相対的に短く感じられる「FOMALHAUT」は「formal hunt」の裏エピソードにして秋星大暴れの巻でした。あれだけ好き放題にやっといてまだ顔見せ程度に過ぎないあたりが恐ろしい。天性のトラブルメーカー。彼が行住坐臥テンションがバリ高な理由も一応説明されています。締め括りの「Vt.in day dream」は何書いてもネタバレになりそうだから割愛。

 考えてみれば「formal hunt」にあった回想のオチが「S.vs.S」に繋がっているんだなぁ、と気づいてしみじみ。伝奇色がだいぶ抜けてしまったのは賛否両論かもしれないけれど、むしろそうした雰囲気に頼らず進めているところが『DDD』の持つ幅を維持しているかと。ひょっとするとこのシリーズにとって「伝奇」だの「新伝綺」だのは装飾の一つに過ぎないんじゃないかしら。

・拍手レス。

 Dies irae. 公式が更新。つ、ついに形成(笑)の出番ですよ!
 ザコ臭いくせして妙に態度がビッグなあたり最高。

 シュピーネ閣下のお声に萌えた後、発売日(怒りの日)が延びていなくて安心する、そんな週末の夜
 ヴィル公とシュピたんの剣呑な遣り取りを想像して(*´Д`)ハァハァしつつ怒りの日を待つ日曜の夜。

 そもそも秋桜と同じ世界で設定違うっぽいですしさらに文庫もなんか微妙にifってる気が…
 あの人が「地獄から甦ってきた」で復帰とか……なんですかもう。


2007-08-24.

・いつの間にやら50万ヒット。こんな文字ばっかりで唯一バナーだけが眩しいサイトに足繁くに通ってくださった数多の方々に感謝を捧げたい焼津です、こんばんは。

Marronの『ひまわりのチャペルできみと』、プレー開始。

 2001年夏――デビュー作、『秋桜の空に』

 2003年夏――第2弾、『お姉ちゃんの3乗(きゅーぶ)』

 そして2007年夏、Marronにとって第3弾のソフトとなる『ひまわりのチャペルできみと』が遂に発売となったのであります。長かった……前作から4年、ドラマCDだライトノベルだと違う分野にばかり精力を注いでいた、ごく一部特定地域でのみカリスマ性を発揮するシナリオライター竹井10日の復帰作。HPに初めて情報が載ったのは2005年末なので、そこから数えても1年半以上。待ちも待ったり。その甲斐あってか「文庫本20冊以上」と大ボリュームを謳っており、最近なかなかまとまった自由時間が確保できない当方は「本当にクリアできるんだろうか……」と心配になってくるところです。

 初回版にはひまチャきのキャラと『秋桜の空に』のキャラが競演する書き下ろしライトノベル、その名もずばり『ひまわりのチャペルできみとvs秋桜の空に』が特典として付いてきますが、パッと見からして薄いうえに紙質も厚く、全体で130ページ程度しかありません。冊子形態の特典にしちゃまずまずといった塩梅ですが、本屋で売っているライトノベルような200〜300ページくらいの標準サイズを期待するとややガッカリ。ひまチャき本編のネタバレがあるということで内容は未確認ながら、口絵のところにサブヒロインなアイツまで登場している点から実にワクワクさせられるものがあります。

 で、本編の方もチラッとプレーしてみました。体験版は本編のイベントをいくつか切り抜いて並べる形式だったため、序盤は被るところが多いものの、未見の場面や新顔のキャラもあって飽きさせない。授業の際に犬を連れてくる愛犬家の教師とか、下手するとメインキャラクター以上に濃い脇役がいますよ? それとひまチャき世界は一種のifモノらしく、授業の中でザッと現代の様相を説明してくれますが、いや……これなんて邪気眼? まさか学園ラブコメに真顔で「聖騎士」とか言い出すシーンが存在するとは思わなかった。やべぇ、こっち方面で話を進めて行ったら『怒りの日にチャペルできみと』な展開に突入するやもしれん。

 テキストはいつも通り竹井節が唸っていて月光蝶である一方、不満もいくつか。声が付いてないとかCGが若干微妙なのは今更言ってもどうにもなりませんから仕方ありませんが、せめて詳細に設定をいじれるコンフィグは組み込んでほしかった。システムが貧弱すぎ。BGMを消したり音量調節したり、といったことすらできないのはさすがに不便です。それと起動のたびにディスクを要求されるのも面倒。今回はもうCD-DAじゃないんだから、ディスクレスでええやないですか。懐かしくって『秋桜の空に』の再プレーも開始したというのに、ひまチャきと並行で進めるとなるとドライブを開けちゃあディスク取り替え、また開けちゃあディスク取り替え、の繰り返しで疲れます。

 とりあえず現時点で気になるヒロインは月乃と雛梨。最低限このふたりのシナリオだけでも目を通したい。けど、結局体は竹井成分というか10日汁を求めて他のシナリオも時間削ってやっちゃうんだろうなぁ、という予感がヒシヒシ。原作読んでないにも関らず『らき☆すた殺人事件』をしっかり予約しているような家畜身ですゆえ。

・拍手レス。

 ライジングインパクトも打ち切りくさかったけど、サンデーでもまた…
 ライパクはガウェインとパーシバルがくっつかないと聞いて途中で読むのやめちゃいました。

 web拍手はコンテンツのところに付けた方がいいかも。下では目に入らないんです
 それと、「やんデレ」やりました?

 わざと目立たないようにしてましたが、たまには目立つところに動かしてみますか。「やんデレ」は様子見。


2007-08-22.

・4冊くらい積んでいた『ブリザードアクセル』の未読分を崩し、「どんどん面白くなっていくなー、このマンガ」とホクホク顔でいたら「次の11巻で完結」と寝耳に水なことを書かれて変顔かましそうになった焼津です、こんばんは。

 ……ええっ、マジっスか!? 言われてみれば、まとめに掛かっているような慌しさは確かにありましたけど。フィギュアスケートを題材に採った本作は出だしこそ振るわずスロースターター気味だったものの、ペアプログラムのあたりでラブコメ的には最高潮に達し、渡米編でいかにして話を広げ、またそこから新しい展開に繋げていくのか――メチャクチャ楽しみにしていたのに。うーん、打ち切られたのか、もともと長引かせるつもりはなかったのか。進むにつれて技の難易度がインフレを起こしてきているし、この調子で続けることが困難な面もあるにしても、多彩なキャラクター等まだまだ活かせる部分はあると思うので、実にもったいない。しかし雑誌の方では既に連載が終了しているのだから仕方ないですか。ともあれ来月刊行の11巻を読んで、終わり方次第では再開なり何なりを希望しようかと。

・終わったといえば『ラブやん』の新刊。いや『ラブやん』自体は続いてるんですけども、フラグが立った一方で別のフラグが潰えたような退路消滅感に溢れていて「ああ無常」なテイストです。シモネタとパロネタの多いギャグマンガながら、着実にリアルタイムで時を重ねていく非ドラ○もん時空が密かに採用されており、開始当初は25歳前後だったカズフサも最新刊では29歳、三十路目前の危険領域に達しつつあります。無職のプーだからカズフサ自身の日常生活は毎回大して変わらないものの、初登場時に小学生だった萌ちゃんがそろそろ女子高生へランクアップ(ロリ嗜好なカズフサ的にはダウン?)しそうだったりと、地味に痛く年月の経過を知らせてくる。時折ポロリと漏らされる素の述懐も切ない。

 あと5巻の前途洋々で光り輝いているピュアなラブやんの姿は何度読み返しても泣ける。「神は破滅させたい人間を『前途有望』と名付ける」みたいな言葉がリフレイン。なんと言いますか、そんなにすげぇ好きってマンガでもないんだけど、複数の新刊を買った場合まず真っ先にこれを読む、というタイプの気に入り方をしている作品ですね。なんとなく後回しにできない。

・明後日に発売日を控えた『ひまわりのチャペルできみと』、略称ひまチャき――Marronにとっては実に4年ぶりとなる新作であり、「ドラマCD作家」「ライトノベル作家」といささか揶揄気味に囁かれていた竹井10日がようやく本業のシナリオライターとして復帰した趣もあります。6週連続体験版もひと通りプレーして「ああ、相変わらずのノリだなぁ」と押し寄せる懐かしさとともに笑わせてもらいましたが、システム、BGM、塗り、ボイスなし、あらゆる条件が重なって正直古臭い仕上がりになっている印象は否めません。

 Marronの一作目『秋桜の空に』がリリースされたのはかれこれ6年前、新興ブランドのデビューソフトとあって発売前はまったくと言っていいほど注目を浴びなかったものの、発売後口コミで「ギャグが面白い学園エロゲー」として徐々に人気を獲得し、気づけば「栗っ子」と呼ばれる狂熱的なファン層を生み出すに至りました。無論当方もその一人。確かどっかのレビューサイトでやけにベタ誉めされていたのが気になって購入に走った、という経緯だったはず。再販前だったこともあり在庫僅少で、秋葉原中を探し回ってやっとの末に一個だけ見つけたのも今となってはいい思い出です。そんなこんなで愛着は深いけれど、現在他の人に薦められるかと申せばさすがに辛いところもある。ひまチャきは良くも悪くも秋桜当時の雰囲気をそのまま引きずっており、いまどきのエロゲーに慣れていてMarron未体験な方々には推しにくい。それどころか、ぶっちゃけ当方自身が購入を迷っていました。『CLANNAD』を攻略中だし、『Bullet Butlers』に至ってはまだ序盤もいいところなので、ここは一旦見送るのが賢明ではないか、と考えた次第。

 が、なんとなく発掘した小説版『秋桜の空に』を読み返し終わったら、即座にネット通販で予約注文しちゃった。単にノベライズが面白かったというより、読んでいてゲーム本編の内容をいろいろと思い出してしまうのですよ。ああ、そうそう、モブの反応はこんな感じだったなー、とかいったどうでもいいところまで。脳内がノスタルジーで溢れ返って死にそうになる。修羅場喫茶「どろぬま」なんてのもありました喃。きっと当方の中には絶やそうとしても絶やせぬ栗の血が流れているのだと思います。官能小説における淫乱の血とかマゾの遺伝子みたく。抗おうとしても無駄なだけなので素直に衝動に身を任せるとしましょう。しかしこのパッケージ、明らかに『秋桜の空に』のパッケを意識してるよなぁ。懐かしさが駆け巡る。そして岩舘こうの訃報を思い出して涙が滲む。

服部まゆみ、死去

 知っている作家の名前をおくやみ欄で見かけるのは何度体験しても慣れません。やっぱりショックだ……この前に『ラ・ロンド』が出たばっかりだというのに。割と寡作な方で、デビューから20年の間で出した著書は10冊だけ。夫の服部正も一冊だけ『影よ踊れ』という本を刊行していますね。それにしても『時のかたち』『シメール』はまだ文庫化してなかったのか。

 ご冥福をお祈りいたします。

・拍手レス。

 8月20日の日記は静香の部分は静かの間違いでは?
 すみません、修正しました。

 クルイザキが…
 結局絵師は誰になるんでしょう。

 沙耶の唄みたいなグロテスクと暗黒童話の無痛描写と、結局は自慰エンドじゃね? と思わせる臓器たんが
 好きです。サイトの片隅での連載を希望してみたり。

 臓器たんはナァ……構想すると自然に気分が悪くなってくるのが難点。


2007-08-20.

・「シェイクスピア」を「震槍」と訳してみたら途端に邪気眼臭くなるなぁ、とほざいてみる焼津です、こんばんは。本音を申すと沙翁の文章を引用でしか読んだことがない件に関しては内心忸怩たるものがあったり。キャラや筋立てもよく知りません。いっそライトノベルやエロゲーで翻案してくれないかな。『恋するロミオはせつなくてジュリエットの死を想うとすぐ服毒しちゃうの』とか『続・殺戮のハムレット』とか『リアおう!』とか。

 ……素直に新潮文庫あたりの福田恆存訳版でも読もうか。

・チマチマと蛞蝓の歩みで進捗させていた『CLANNAD』、やっと藤林姉妹ルートが終わりました。

 妹の方は結構簡単だったけれど、姉の方はフラグの判定が厳しくてなかなか攻略できなかったです。どうしても三角関係に陥ったままバッドエンドになってしまう。何度もやり直しして、最後はほとんど偶然でフラグを立てることができました。幸い苦労した甲斐のある内容で、鍵ゲーらしからぬ水面下の修羅場を淡々と綴って当方のハートを気持ちよく削ってくれた次第。声を荒らげたり直接的な暴力に走ったりといった描写こそないものの、「なぜこの状況で笑えるんだ」みたいな怖さが密かに漂っていて下手なヤンデレよりゾッとする。

 藤林姉妹は双子の姉妹で姉は傍若無人、妹は引っ込み思案とベタなキャラをしており、姉の扇動によって主人公は妹の方と付き合い出し、相手のことを知って好感を募らせるが「やっぱり、俺が本当に好きなのは……」と徐々に真実を悟ってもいく。その気配を察した妹(名前は椋。「むく」ではなく「りょう」です)が、フラれたくない一心で引っ込み思案な性格に似合わぬ必死さを発揮するあたりからしてもうメロメロ。占いが趣味で、主人公の恋愛について占ったところ「あんたは惰性で今の女と付き合っているけど本当は他に好きな女がいる、最終的には今の女をフッてそっちの女に走るだろう」という意味合いの結果が出たにも関らず、ニッコリ笑って「わたしたちはうまくいきます」と言い切る場面は「怪物め!」と地味に戦慄しました。実際、椋はかなり怪物化する素質があったと思います。残念ながらシナリオのラストではあっさりと身を引いてキレイな幕切れとなってしまい、修羅場モノとしては食い足りなさが残りましたけれど、彼女が胸の裡に秘めた執念の刃を研ぎ澄まして「わたし、諦めませんから」と静かに微笑むアナザーシナリオを妄想しただけでドーパミンがバンバン溢れ出してくる。藤林姉妹はまだまだ美味しく調理する余地のある素材だと愚考する所存。

 それにしても『CLANNAD』は分岐が複雑怪奇で、やるたびに新しい発見があって面白い。スタッフはフラグ管理に相当神経を磨り減らしただろうな。ただ、多すぎる分岐のせいか個々のシナリオはちょっと薄くなっている気もしてならない。前向きに捉えればスナック感覚で手軽に味わえる学園コメディ――と言えなくもないにせよ、二次展開を当てこんだような不完全燃焼ムードがさりげなくもどかしい。ともあれ、まだCGの達成率も1/3程度ですので、今後もチマチマとやっていくことにします。すんごく先が気になる、ってタイプのゲームじゃないけど、暇なときにプレーするとついついやり込んでしまいますね。

・拍手レス。

 作品別スレにて「Dies irae」延期の噂が。止めてよね。
 やめてよね、本気で延期したらファンがlightを許すはずないだろ。

 ショウケラァッ!
 「今のショウケラは無敵だあッ!」 いかん、思い出しただけで笑いが……。

 アニメ『もっけ』に『蟲師』並みのクオリチーを期待するのは無謀なことでしょうか。
 いえ、むしろ『蟲師』すら超えるとの期待を……無謀でしょうか。

 久しぶりに沃野を読み返しました。陣内さんとドヘタレ彼氏の話が気になりますー
 陣内さん……あの子だとここぞという場面で押し切れず、寸止めの嵐というか、ヌルいチキンレースみたいな恋愛描写になりそう。


2007-08-18.

・あついぜ あついぜ あつくてしぬぜ。エアコンを切るとリアルサウナと化すマイルームからこんばんは、焼津です。何せ開けられる窓がなくて密閉されていますから気を抜くと蒸し殺される。ずっと冷房のターン。やめて! うちの電気代はとっくに限界突破よ!

『灼眼のシャナXV』『狼と香辛料X』の新刊を読み終え、ようやく今月の電撃新刊を消化。既に賞味済みな『とらドラ5!』を含め、今月はいずれ劣らぬ期待作ばかりでどれから読もうか本気で迷ったものでした。

 『灼眼のシャナXV』は前巻のあとがきにあった予告通り外伝的な内容でしたが、きっとカバーイラストや帯文を見て本編のダイレクトな続きだと信じて「( ゚д゚)ポカーン」となった読者も少なくないでしょうね……「5の倍数巻は外伝という法則」や「カバーイラストのシャナは板垣恵介のマンガで表紙や扉絵だけに出てくる主人公のようなもの」と理解していないと、前巻の終わりが終わりだけに怒髪天を衝くこと間違いなし。それはそれとして、新キャラのサーレ・ハビヒツブルグが『ガン×ソード』のヴァンに見えて仕方なかった。『ガン×ソード』は一度も見たことがないというのに……ところで「夜明けのヴァン」という通り名はかごめかごめの「夜明けの晩」と掛けているんだろうか?

 顔見せの意味合いもあってかサーレ以外にもいろいろと新キャラが多く、それぞれの立ち位置がハッキリしてくるまで結構なページを要するせいもあって前半は読みにくくなかなか盛り上がらなかったものの、クライマックスは「さすが873」といった調子で二段、三段とブースターをかまして勢いに乗ってくれました。特に決め手となる一撃を放つシーンでは思わず脳裏を「Dr.SONICBOOM」がよぎったり。アメリカやハワイの歴史が絡んでくるところは面白かったので、機会があれば次もまたこうした外伝を書いてほしいけれど、そろそろ完結に向かって一直線に走り出しそうな気配もあるし望み薄かなぁ……。

 『狼と香辛料』は相変わらずロレンスとホロがイチャイチャしまくってて「お前らは稀代のバカップルだよ!」と認定したくなりますね。もう挙動の一つ一つ、受け答えの何もかもがアンマァ〜いです。とはいえ腹の探り合いや裏の読み合いが多く、読んでてちょっと疲れるところはある。まあホロの可愛さ&ふてぶてしさを前にすればそんな疲れさえもが心地良い。4巻では希釈されていた商業要素が盛り返す一方で主人公カップルの関係にもズブズブとメスが入れられて、今回はいろいろと読み応えのある内容に仕上がっていました。やはり当方はホロ単体の魅力よりも「ホロとロレンスの関係」に重きを置いてハマっているんだなぁ、と再確認させられることしきり。両者の内面を推察込みで読んみ進めていくことが楽しくてなりません。

 作中でも触れられていますけど、1巻の頃に比べてロレンスもだいぶ変わったものだ。サザエさん時空みたいな、変化も成長もなく停滞し続けるジャンルとて嫌いではないにせよ、こうした移ろいを抱き締めて歩む日々もまたいとおしい。ただ今回はちょっと中途半端なところで終わっている気が……次巻でちゃんと続きが書かれるのか、「あれから三日が経って――」な感じですっ飛ばすつもりなのか。どうでもいいが今更作者の生年が自分と同じなことに気づいてビックリ。

・来月に新刊が出るらしい、ということで『もっけ(5〜6)』を崩す。

 2冊とも去年刊行されたものです。しばらくロストしていましたが最近になって発掘。この「もっけ」は漢字で書くと「勿怪」であり、すなわち「物の怪」のこと。妖怪を視る素質がある「見鬼」の静流と、妖怪に憑かれやすい体質をしている「依坐」の瑞生――巫女の霊媒能力を分け合ったような姉妹の日常を淡々と描く連作マンガとなっています。基本的に読切で個々のストーリーは関連が薄く、どこから読んでも支障なく楽しめる。その代わり前後をブッチしていきなり幼少期のエピソードに突入したりと、時系列が錯綜しているので整理して読まないと全体を把握しにくい。まあ、よっぽどのファンでもないかぎり、わざわざ全体像を掴む必要は別にないんですけれども。妖怪に魅入られて「危うし!」となる場面はいくつかありますが、伝奇アクションに見られるゴーストバスターズ的なノリとは違い、「祓う」ことよりも「折り合う」ことを重視して遣り過ごしていくのがパターンとなっています。おかげで派手さに欠いてひたすら地味。だがそれがいい。

 5巻から6巻にかけては静流が中学を卒業して高校へ進学する際に「近場の高校を選ぶか家を離れて全寮制のところに行くか」で悩み、瑞生は姉を応援したい気持ちがある一方で「そばにいてほしい、行かないでほしい」と願う心が捨てられない、という葛藤に襲われる。彼女たちの煩悶は巫女的な体質と無縁じゃなく、目を離すとすぐに妖しいモノに憑かれてしまう瑞生のことを静流は心配し、また自身も住み慣れぬ「外の世界」で勿怪とうまく折り合っていけるのか不安に苛まれます。そうした迷いや悩みを乗り越えて、徐々に強くなっていく姿が覗けるところも本作の大きな魅力の一つです。ちょっとした場所にこっそり刻まれる成長の痕跡、その数々を読み取ることがなんともたまらなく面白い。ゲストは出てくるもののレギュラーキャラが少ないため、人間関係に動きが乏しく、恋愛要素も皆無なあたりは残念のようなホッとするような……中学に上がったばかりの妹はまだしも、高校に進んだ静流はそろそろ年頃に差し掛かっている気もします。とはいえ全寮制の女子高だから、たぶんしばらくは劇的な展開ってないでしょうね。

 ああ、そうそう、そういえばこの『もっけ』、アニメ化するという話もありましたな。すっかり忘れてました。この記事によると10月開始で翌年3月終了だとか。ほぼ2クール。確かに好きな作品ではありますが、いかんせん地味でゆっくり噛み締めるタイプなのでどんなもんだろう……しかし、最近は本当になんでもアニメ化するなぁ。『AYAKASHI』とか。

・拍手レス。

 AYAKASHIがアニメ化&漫画化されるらしいですよ?公式サイトで少しだけ見れますよ〜
 とりあえず角屋の活躍を希望。


2007-08-16.

・久々にエロゲー板女装スレをチェックし、『ツイ☆てる』の「こんな可愛いコが女の娘なわけないじゃないかADV」というジャンル表記に噴いた焼津です、こんばんは。それにしてもなんて不穏でワクワクするタイトルなんだろう。あと『幼なじみはベッドヤクザ!』にも服装倒錯の幼馴染み(性嗜好はノーマルらしい)が出てくるし、女装少年人口は着々と増えているようですが、当方のツボである「不本意なのによく似合う」タイプの女装っ子は相変わらず希少で飢えとります。くやしいのう、くやしいのう、ギギギ……。

 どうでもいいけど、『幼なじみはベッドヤクザ!』のつぐみにドロドロの嫉妬とか修羅場とか、いかにも「つくしてあげたのに!」系キモ幼馴染みと化しそうなオーラが漂っている気がするのは錯覚だろうか。「普段は大人しいが、主人公のこととなると我をわすれる一面もある」という紹介文が不穏でワクワクするぜ。

スーパーダッシュ文庫、今月の新刊『くみちょ! 〜組長は小学四年生〜』

 ある意味『瀬戸の花嫁』を超えたな。再来週発売予定の『任侠華乙女』も「ヒロインが組長」という点では一緒なものの、エロゲーである以上この年齢設定には太刀打ちできないし。にしても、なんでもかんでも題名をひらがな四文字とかカタカナ四文字にして「!」や「☆」を付ければ可愛く見えるんじゃね?の波は留まるところを知りませんねー。まったくなんて安易な風潮なのだろう。嘆かわしい。なんて書きつつ『アキカン!』の2巻目はしっかり買っているし『とらドラ!』の新刊も超楽しみにしてますけど。そういえば『Dies Irae』の売上をアップさせるためのキャッチャーなタイトル案として「ねお☆なち」を挙げてるネタをどっかで見たような……作品スレだったかしら。

・佐藤友哉の『灰色のダイエットコカコーラ』読了。

「人生の目標を成り上がりに賭けてる人って、もし挫折しちゃったらどうするの?」

 中上健次の短編「灰色のコカコーラ」をモチーフにして描く連作形式の青春小説。同人誌『タンデムローターの方法論』に掲載した表題作を初めとして、雑誌“ファウスト”で発表した「赤色のモスコミュール」「黒色のポカリスエット」「虹色のダイエットコカコーラレモン」を収録している。「虹色のダイエットコカコーラレモン」は後半部分が書き下ろし。“ファウスト”掲載分はリアルタイムで読んだせいもあり、概ね半分以上は既読の内容でしたけど、あらかた中身を忘れていたせいもあって退屈せずに目を通すことができました。

 覇王か肉のカタマリか――二者択一の人生。それは偉大な祖父と尊敬に値する親友を得て、やがて両方ともを喪った僕にとって避けようもない試練だった。生まれ育った北海道でフリーター生活に甘んじ、上京しようという意気もなく、ただダラダラと無為に過ごす日々が魂を焦燥させる。肉のカタマリにはなりたくない。普通の人間、普通の家庭、普通の人生に満足するなんて真っ平御免だ。覇王に成り上がるために、何かを為さねばならない。それは分かっている。だが、具体的に何を? 答えを見出せぬまま、十九歳、「未成年」という季節は終わりを告げようとしていた……。

 口先ではデカいことを吹聴し、周りを嘲弄して尊大な思考に耽るものの、だからと言って自分が何か特別な存在であることを明確に証明することはできない。金もなければ学もなく、才能なんてものとはまったく無縁、所詮は十把一絡の肉のカタマリ。「他者を蔑む価値もない自己」というありがちなジレンマをねちっこくも疾走感の溢れる文体で徹底的に綴った一冊です。とにかくしつこい。無根拠な自己肯定と都合の良い自己弁護を何度も何度も延々と繰り返し、「何もない自分」から目を背けるために矛先を外部に向けて「普通人=肉のカタマリ」を唾棄し、そうやってこき下ろしている本人が他でもなく「肉のカタマリ」であることを否定し切れないでいる。ぐるぐると同じ回廊を巡っているような錯覚に陥り、原稿用紙に換算すれば500枚は超えると思うのですが、驚くほどストーリーが動かない。袋小路に突っ込んでしまったドン詰まり感がひたすら続く。言わば「空転小説」の極み。過剰な装飾も含めていかにも佐藤友哉といった趣であり、あたかも自伝的作品かのように思えますけど、主人公の「僕」は全然小説家を目指しておらず、自伝というより「作家にならなかったら」というifを表現しているのではないかと見受けられます。

 ってな感じでまとめてしまうと佐藤友哉を読んだことのない方には「なんだか得体の知れない暗黒系の青春ストーリー」という印象を与えてしまいかねませんが、書き出しの一文が「bk1で注文した本がまだこない。頼んでから今日で七日目になるのに」だったりして、実は結構脱力気味。「滑稽」であること、「道化」になってしまうことを嫌忌しながらも締まらないダメな毎日を送ってしまう姿は、形を変えたコメディと言えなくもありません。やけに派手でいささか現実味を欠いているバイオレンスシーンはコミカルですらある。物語としては自己実現を目指して足掻く「僕」の現在よりも「黒色のポカリスエット」における回想シーン、「覇王=祖父」が精力的に活躍する箇所の方が圧倒的に面白く、皮肉なことにその差、大きな隔たりこそが本書の味わいを決定づけています。どんなに弾けてみても「黒色のポカリスエット」のあの場面よりは盛り上がらない。頑張ってみても、なんだか気が抜けている。残酷な「違い」が、却ってページをめくる魅力に変換されていくのです。

 過去にばかりしがみついて現在を見ず、未来なんて一ミリも思い描くことができない。輝かしいまでの虚無。無目的な怒り。流される砂。途中途中で暴走するところはあるものの、最終的には話をまとめて綺麗にオチをつけてしまうので、そこに不満を感じる読者も少なくないでしょう。が、あまりにも直截に「生と死」を叩きつけてくるクライマックスといい、個人的には三島由紀夫賞を取って話題になった『1000の小説とバックベアード』以上にインパクトをもらいました。ただ「神聖だった。神託だった。神事だった。あのすばらしい神話の日々があるかぎり、僕の血と心は虚無に取りこまれることは決してないだろう」みたいな言葉遊びじみた文体も相変わらずで、やっぱり作風に合ってない気が……。

 肥大した自意識と根本的な弱さを抱え、死に損なったままで生きる。ふとした瞬間「無為に生きている」だとか「何をやってもまったく楽しくない」、「自分が何なのかさっぱり分からない」と虚ろな気分に落ち込んだことのある人ならば少なからず共感を強制される描写があるはず。来月には『世界の終わりの終わり』も刊行される手筈となっていますし、ファンにとって今年は虹色というか薔薇色なイヤーですね。

・拍手レス。

 スクエニノベルのステレオタイプ・パワープレイがいい感じのバカ小説で楽しいです
 ああ、『戦鬼』や『ライタークロイス』の人の。近頃新しい作家はチェックするだけで手一杯、なかなか読む暇がつくれないです。


2007-08-12.

『とらドラ5!』、クライマックスで威勢のいい啖呵を切ったヒロインにクラウザーさんの姿を重ね見た焼津です、こんばんは。

 名前だけだったサブキャラの面々にも遂にイラストが付いて学園コメディ的な盛り上がりは最高潮に達し、正直ちょっと付いて行けないテンションのところも点在するものの、「いまもっとも勢いのある学園ラブコメ小説」と易々請け負える活気の良さに満ちている。今回ラブコメ方面はやや足踏みながら、地歩を固めることによってストーリーとしては前進した趣があり、向後がまことに楽しみであります。年内発売予定という6巻の到来を熱望する所存。しかし恋ヶ窪ゆり先生にまつわる描写が生々しさを増していくのはスピンオフが出る予兆ですか?

・海原育人の『ドラゴンキラーあります』読んだー。

 過去に負ったトラウマのせいで今も安眠できずにいる元軍人の男、素手で竜を殺せる怪力を持ちながらも恋愛経験は皆無のおぼこい女、そして――お漏らしをする皇女。

 概ねそういった成分で構築される本書は第3回C☆NOVELS大賞「特別賞」受賞作。第3回は大賞作品が出なかったようなので見送ろうとも思いましたが、このドラキラは2ヶ月連続刊行が決まっていて今月下旬にはもう続編が発売される手筈になっており、タイトルは『ドラゴンキラーあります2』、ではありません。ずばり『ドラゴンキラーいっぱいあります』。いっぱいって……おいおい、なんだそりゃ! マジかよ! と、この実に腰砕けなネーミングセンスにやられてホイホイと購入してしまったわけなのです。無駄にユーモラスな雰囲気というのは嫌いじゃないですよ、当方。

 戦時中、大空を舞い、いかなる銃弾や砲弾も利かず、軽々と人間の性能を凌駕する竜を見た。それだけならよかった。最悪なのは、そんな竜さえもあっさりと屠ってみせる超人を目撃してしまったことだ。ドラゴンキラー。一万人に一人の適性で出現し、文字通り万軍に匹敵する「個人にして戦略単位」の規格外ども。軍人としての矜持はそいつを前にしてあまりにも無力だった。ココは強烈な挫折感と敗北感を胸に抱いたまま、惨めに戦場から逃げ出す。忘れたくとも忘れられぬ記憶が脳を苛み、酒と煙草に溺れる日々。そうして流れ着いた北の辺境でしがない便利屋を営んでいたところ、ひょんなことから亡命皇女にまつわるゴタゴタに巻き込まれた。手元に転がり込んできた皇女アルマを、一旦はマフィアに引き渡そうと画策したが、アルマの付き人であるリリィに出会って考え直す。鮮やかな赤い髪と猫の瞳孔に似た奇妙な右目を有するリリィは何を隠そう、破天荒なパワーを備えた超人――帝国のドラゴンキラーだった。トラウマを克服するため、あえて彼女を切り札として迎え入れ、「アルマを守る」という依頼を受けるココだったが……。

 勢いはある。けれど粗い。読み終わった感想をまとめるとこんなところに落ち着くでしょうか。主人公がトラウマ持ちで、それを解消するために危険な道を選ぶというストーリーは分かるものの、どこか突き放したような視点で語っているせいか、プロローグを読んでもいまいち「ドラゴンキラーの恐ろしさ/おぞましさ」といった嫌忌感が伝わってこないところはマイナスです。過去のフラッシュバックに悩まされ、藁にも縋る気持ちで「トラウマの元凶たるドラゴンキラーに報復する」という挙に出る過程も、物語の動機付けとしていまひとつ弱い印象を受ける。「戦友を殺されたから」「家族が犠牲になったから」で復讐するならまだしも「軍人としての自信を喪失したから」では、ちょっと……言うなれば逆恨みの独り相撲ですよ。おかげでなかなか主人公に感情移入できなかった。

 しかし、舞台となる街はかなり治安が悪く、酒場のウェイトレスさえ銃を携行して物盗り相手にブッ放す殺伐さであり、ユーモラスなタイトルに反して終始容赦のない空気が漂っているあたりは良かった。主人公は基本的に情よりも利害を重く見るタイプで、必要とあれば年端もいかぬ少女を見捨てようとするし、まったく私怨のない相手であっても争いに転じれば禍根を残すことを厭ってあっさり射殺してしまう。酒場のマスターも同様。大金の匂いを嗅げば店の客でも躊躇いなく撃ち殺す。ほんの一部の例外を除けばどいつもこいつも良心回路を喪失したろくでなしばっかりなストーリーであり、「殺した奴が悪い」というより「死んだ奴がマヌケ」というクライム・ノヴェルめいた世界が繰り広げられています。たとえよく言葉を交わす知人であっても無闇に信頼しては駄目で、ちゃんと保険や予防線を張った上で交渉に臨まないと裏切られる。勧善懲悪モノを愛好する人にとってはキツい弱肉強食ワールドながら、なんだかんだでロリ皇女様を助けようと努力する運びになるわけだし、そこまでエグい内容でもない。程好いバランスの上に成り立っていて、適度な緊張感を保ったまま一気に読み通すことができました。

 文章はやっぱりちょっと粗かったかな。特に会話文。本書ではキャラの掛け合いが中心に話が進む形式になっていて、最初から最後までひたすらお喋りが続いている気さえするほどなのですが、たまに誰がどのセリフを口にしているのか分からなくなることがあります。まだ一冊目でシリーズの幕上げに過ぎないのに結構な数の人物が登場し、各々が自己主張すべく盛んに喋りまくるものの、一人一人のキャラがきちんと立っていない段階なので「お前ら落ち着け」と言いたくなります。相対的に主人公とヒロインの存在感が薄れ、どうにもストーリーの進行が勢い任せに見えてくる感触が否めませんでした。「希望をなくし、生きる目的を見失っていた男が再起の糸口を掴む」という大枠自体は悪くないのだから、動機をはじめとしてもっと丁寧に細部を詰めてほしかったところ。ヒロインたるリリィが主人公に靡く過程も御都合というか、ちょいと簡単に気を許しすぎのような。いささか不自然。むしろリリィよりも皇女の方にフラグ立ててないか、主人公は。後半ではリリィと減らず口&憎まれ口を叩き合う名コンビになっていて美味しいけれど、「互いに惹かれ合う」という段階へ辿り着くにはまだまだ遠い。莫大な腕力を持っているくせに駆け引きが苦手で危なっかしいリリィのキャラ自体は結構魅力的。

 キャラクターの布陣はだいたい終わったみたいなので、本番は2巻以降となるでしょう。ここから良くなるかポシャってしまうかは予測不能にせよ、少なくとも一定の「勢い」を感じる一冊ではありました。良くも悪くも新人らしさに溢れている。戦力が「主人公<<<<<ヒロイン」なせいもあって、そんなにすごく主人公が活躍する話じゃないんだけど、「女の陰でバトルの解説」ってとこに行き着くほどひどくもないから安心して読めます。自分の流儀を貫こうと敢えて損得勘定や冷静な判断、賢い思考を捨てて無心に銃爪を引く場面は静かに熱かった。「小綺麗にまとまっているより荒削りで勢いのある方が好き」な当方としては注目に値するシリーズ。新書サイズでお値段も少し張りますから、人に薦められるかどうかという点は微妙かな。気になっておられる方は今すぐ買いに走るよか、続編の『ドラゴンキラーいっぱいあります』が出るまで待つことをオススメしたい。当方も次で見極めるとしよう。

・次回の更新は恐らくお盆明けになると思います。


2007-08-10.

井上尚登の新刊にいろいろとツッコミどころが多すぎて何から指摘すればいいのか迷う焼津です、こんばんは。タイトルが『厨房ガール!』、料理学校の名前が「SWAT」で「伝説のスパルタ校」、ヒロインが「元警官」と、短いあらすじの中に迸るようなネタの数々が。いったいどうしたんだ井上尚登。

『狼と香辛料』、TVアニメの公式サイトオープン

 画像がホロばっかりで、「コミック情報」のところに辛うじて一枚だけ振り返ったロレンスの顔が映っている……分かりやすい冷遇ぶりに泣いた。そりゃもちろんホロは好きだけど、「ホロとロレンス」の組み合わせがツボな当方にとっては非常に物悲しい。

 ともあれ、アニメにはオリキャラが登場するとのことで、やっぱり展開も原作とは違うんでしょうね。うーん、商業要素も省かれちゃうのかなぁ。なんにしても「黒歴史」扱いされない仕上がりになることを期待したいものです。原作は原作として、アニメはアニメとして楽しめる――となるのが理想的。

ファミ通文庫の公式サイトでコラボ企画進行中

 最近チェックを疎かにしていたのでこんな企画やってたとは知らなんだ……要はファミ通文庫で本出してる作家が自作と別の人の作品とを掛け合わせた番外編を書く、というものらしい。立て続けに読んだ1巻と2巻がやたらと面白くて、今月刊行予定の3巻も楽しみにしている『バカとテストと召喚獣』『学校の階段』、そして“文学少女”とコラボ。バカテスの作者である井上堅二こそ直接参加はしておりませんが、櫂末高彰と野村美月、このふたりにコラボってもらえるとは豪華じゃのう、豪華じゃのう。しかしバカテスは好きでも『学校の階段』と“文学少女”を両方とも積んでいてまだ一冊も読んだことのないこんな当方じゃポイズン。仕方ないから保存だけしておいて後ほど読むことにします。FB Onlineはこの手のコンテンツを一定期間しか公開しませんので、気になった記事はさっさと読むか保存するが吉。目玉の一つだった「“文学少女”と今日のおやつ」も姿が見えませんが、これは特別号態勢で一時的に消えているだけなのか、はたまた既に公開が終了したのか……。

シリウスの新作『こいびとどうしですることぜんぶ』、ギャラリィ更新

 ブルマ姿の彼女とフォークダンス――萌えを突破して暑気すら吹き飛ばす妬みと憎しみの灼熱を肚で味わい、やがてそれさえも超越して玖羽たんの愛らしさに屈服し法悦境へ至りました。ヘイトとジェラシーをオーバーする者、ここに開眼。というかそもそもフォークダンスなんてやったことないですよわたしゃ。せいぜい二人三脚ぐらい。組んで走った子はそれなりに可愛かったけど、終わった後でその子に惚れていた野郎に「なに気安く肩とか触ってんだよ、ああ?」とネチネチ絡まれてウザいことこの上なかった。さておき、学園生活の嬉し恥ずかしなイベントを目一杯盛り込んでくれる気配が濃厚で、発売予定はまだまだ先(11月30日)っつうのにワクワクしてきましたよ。早よ来い秋。

小学館ガガガ文庫の10月のラインナップがpropeller祭りになっている件について

 『Bullet Butlers』のノベライズは聞き及んでおりましたけど、まさか『あやかしびと』まで来るとは。しかも著者が荒川工。じゃあ、あやかさんが、新聞部の藤枝あやかさんが再臨される可能性大ってことですか!(一応解説。『あやかしびと』のライターは東出祐一郎ですが、「神沢学園新聞」および「あやかさんとしゅうげんくん」は荒川工が書いてるっぽい) これはめりっさ楽しみ。にしてもガガガはどんどんエロゲ文庫と化していく喃……。

 ちなみにpropellerのスタッフ日誌で『はるはろ』とは別に朱門優の関与した新作が動いているらしきことが仄めかされております。相性が「お朱門ちゃん」で定着しつつある氏、今度はどんな暴走を見せてくれるのだろう。いや、propellerの性質からして「パッと見はただの萌えゲー、でも実はバリバリの伝奇ゲー」みたいな擬装は施さないだろうし、そろそろ暴走ナシでド直球の朱門ゲーが来るやもしれぬ。いつ空は回避してしまったけど、とりあえず続報を待つとしよう。

(追記) どうも更新作業中に刊行予定から10月分が消えてしまった模様。掲載されていた情報についてはこちらをご参照ください。

『CLANNAD』は藤林姉妹のルートに突入。

 あれ? いつの間にプレーしているゲームが『School Days』に変わったんだ? と思うような姉妹間ドロドロ愛憎劇の三角関係に縺れ込んでいって興奮することしきりです。いつもオドオドしていて引っ込み思案な藤林妹がだんだん積極的になっていくのとは対照的に、活発だった藤林姉が少しずつ元気をなくしていく展開は下手な濡れ場よりもそそるものがあります。姉妹同士ですれ違ったのに挨拶どころか目を合わせもせず、「喧嘩してるのか?」と聞かれても平然とした表情で「いえ、別に」と答える冷戦っぷりがたまりません。出来ておる。

 ただ、攻略法が悪いのか、どうしてもバッドエンドで中途半端な終わり方を迎えてしまう。直前の選択肢を変更しても結果は一緒になるし、だいぶ前の段階からやり直さないといけないのだろうか。このゲーム、選択肢も分岐もたくさんあるみたいで、鍵ゲーにしては攻略が結構手間取りそう。まあ、難所は迂回しつつクリアできるところからクリアして、余ったシナリオを攻略サイトでも眺めながら補遺していくとするかな。

・拍手レス。

 ベイル可愛いよベイル。声を聞くだけで頬が緩む。 ヴィルヘルムにも期待大だよ。
 ヴィル公には良い意味でのヤムチャっぽさを期待したいです。

 >魔道捜査官セルフィナ 小説:平坂夜見 挿絵:FCT とか云うエロ小説を何処ぞで見かけましたよ?
 正確には短編の予告ですが、読たんのサイトは最近覗いとりませんが……、遂に、ですかね?
 ……意外と楽しみな気もします。詳しくは http://ktcom.jp/2d/ を。

 ブログに情報が出てませんし、名義変えなのか別人なのか判断しがたい……もともと被っても不思議ではないPNですし。

 久々に「沃野」読んだら、「十二指腸潰瘍たん」とか「グリオーマたん」という、ヤンデレ臓器少女
 というのを思いついた。・・・だめだ、俺orz

 メンヘルならぬ臓ヘル。最悪ですね。


2007-08-08.

『CLANNAD』の一周目が春原エンドだった焼津です、こんばんは。いかん、テキトーにやりすぎた。次からはちゃんと誰を攻略するか考えてプレーしないと……まあ、春原の妹が可愛かったし、あのエンドもあのエンドで悪くなかったです。春原に対しての殺意ゲージがMAX超えちゃうことを除けば。仕置きつかまつりまする、芽衣たんをかかる破目に陥れた春原陽平を仕置きつかまつりまする。

・平坂読の『ねくろま。』読んだー。

 2度に渡る打ち切りを乗り越えて辿り着いた新シリーズの第1弾。著者にとっては9冊目の本に当たります。最近は自作ゲームのバージョンアップ作業が盛んで、「自作ゲームを配布しているライトノベル作家」と紹介するべきか「ライトノベルも書いてる同人ゲーム制作者」と紹介した方がいいのか、いささか迷うところではある。さておき、この『ねくろま。』は発売後すぐに重版も決まったようで、売れ行きはそこそこ良さげらしいです。9月には2巻の刊行も予定されており、今度は打ち切られないといいなぁ、と他人事ながら祈るばかり。作者blogの必死な宣伝ぶりや、「どうやら住民税と保険料で新刊の印税の大半が消し飛ぶくさい」という発言を見ると尚更に。

 幼い頃に出会った年上の少女、マシロ――名前通り真っ白で綺麗な肌を持っていた彼女は、流行り病に罹ってあっさりとこの世を去ってしまった。それから五年。ソリスは王立トリスメギストス魔法学院で「完璧超人」として嫉妬と羨望を一身に浴びる稀代の魔法少年となっていたが、過去のトラウマから「アンデッド全般が苦手」というウィークポイントを抱えていた。苦手というか、単純に幽霊やゾンビが怖いのだ。「チキン野郎」「張り子の虎」と蔑まれないため、必死に恐怖心を糊塗して過ごす日々。

 ある朝――目覚めると部屋の中に死んだはずのマシロが黙然と立っていた。

 しかし、その姿は……。

 異世界魔法学園ファンタジーラブコメ。現時点では陰謀云々といった要素が軽く匂わせる範囲に収まっており、「ヘルメスとアメツチの対立」などといった背景はそれこそ飾りに近い。「将来を誓い合った幼馴染みとの再会」なんていう、今どきちょっとそれはどうよ、とツッコミたくなるストーリーに「甦り/生き返り」の要素を絡めてツイストを利かせています。作者名の「読」は「黄泉」と掛けているとかで、こうした死者蘇生ネタには拘りがあるらしく、そもそもデビュー作の『ホーンテッド!』からして「事故死した幼馴染みが幽霊として復活」という代物でした。けど今回はすごい。どうせまた幽霊なんだろ、違う箇所は主人公がヒロインを怖がるくらいで……などと甘い見通しでページを繰っていた読者は真実を目の当たりにして度肝を抜かれるはず。「色白で全裸で無口」なる公言が嘘ではない、いや、「嘘ではなさすぎる」ことに絶句を強いられます。ありえない。なんという危険球。相変わらず作者の頭はおかしいな、と変な安心をしてしまった。

 ただ、「頭おかしい」がデフォルトの平坂作品にしては案外真っ当と申しますか、いつもより「普通のラブコメ」寄りの内容に仕上がってます。確かに「普通のラブコメ」からすれば異色作もいいところなのですが、平坂にしては毒々しさが希薄だよね、みたいな。本作の原型になった「白い恋人」(『ファントム』所収)はもっとエグくて救いのない話でしたし。反して今回は「服だけ溶かすスライム」っつーエロファンタジーのお約束まで登場させ、良くも悪くもコメディ色を濃厚に打ち出している。登場するヒロインもマシロ以外に何人かいて、主人公への好感度はほぼMAXのハーレム状態。ラブコメの観点から見れば「初期時点で好感度ほぼMAX」というのは少しつまらないけれど、主人公はマシロ一途なピュアハートの持ち主なおかげもあって、ハーレム特有の「あっちにフラフラ、こっちにフラフラ」と苛立ちを誘う八方美人性が低くて好感が持てます。言っちゃ悪いですけど、マシロ以外のヒロインはほとんど空気ですね。

 そんなこんなで「おバカなラブコメ」として堪能させてもらったものの、なんだか今回文章にやたらと体言止めが多かったな。読んでいて引っ掛かりを感じることが何度かありました。最近の冲方丁が多用している淡白でブツ切り調のテキスト作法、所謂「エルロイ文体」を意識的に取り込んだのだろうけど、はっきり言ってラブコメには合わないと思います、この文体。切り詰められた簡潔さにより素早く映像的な把握が行なえる利点のある一方、心情描写の素っ気なさに距離感を覚えて入りづらい面がある。「硬質な文体とほんわかしたラブコメとのギャップ」を狙ったのだとしても、せめてもう少し体言止めを減らしてほしかったです。と、エルロイLOVEであるところの馳星周の影響を受けて「――」を乱発するようになった人間が言ってみる。

 「アレな格好になってしまった幼馴染みを元に戻す」と明確な目的が掲げられ、そのために研究を重ねるあたりはちょっぴり『鋼の錬金術師』のエルリック兄弟を彷彿とさせる。いえ、状況設定が気持ち程度似ているってだけで、内容は似ても似つかないのですが。『ホーンテッド!』に登場した子とそっくりのヒロインがいたり、それとなく過去作を宣伝したり、ネーミングが割と節操なしだったりするところは苦笑させられるものの、「アクを漉し取りながら自分の特徴を残す」という試みに向けて邁進している様子がマカビンビンに窺い知れます。出落ちめいたインパクトが強いから2冊目以降で読者を引っ張っていくのが難しそうではあるにせよ、続編にも期待を寄せたい。ちなみに当方が好きなヒロインはマシロ。だって、他の子たちは本当に目立たない……。

・拍手レス。

 朱門優氏がプロペラに本格参戦なんですね。次回作は荒川氏のアレとして、その次あたりに期待?
 その場合組む絵師は誰になるのか、気になるところですねー。


2007-08-06.

『Bullet Butlers』がまだ終わってないのに『CLANNAD』のプレーを開始した焼津です、こんばんは。なんだか無性に学園モノがやりたくなり、「そういや『CLANNAD』が積んだままだったな」と思い出して掘り返した次第。『リトルバスターズ!』を見送ったのもひとえにコレが崩せてなかったからです。

 エロゲーをやり始めて間もない頃に『Kanon』をプレーしたこともあってコロリとkeyにハマり、所謂「鍵っ子」と呼ばれる熱烈なファンと化した時期があった(真冬に雪の積もった庭先でアイスを食べてみたり、秋子さんルートのSSを書いてみたり)んですが、『Air』から『CLANNAD』が発売されるまでの三年半で嗜好が変わり、買ったみたはいいもののいま一つ攻略に挑む気概が湧き上がらない……という状態に陥っていた罠。元より移り気な性格をしていますし、『Kanon』に熱中していた時期ですら「いつか容易く飽きる日が来るだろう」という冷めた思いが同居していました。完全に飽き抜いてしまったわけではなくて関心も残っていたけれど、今更keyの新作をプレーしても虚心で楽しむことはできないんじゃないか――と迷いつつ、処分もしかねて放置の年数を重ねて早3年。むしろこれだけ時間が経てば却ってニュートラルな気持ちで楽しめるかもしれない、と考えたりして、ようやくの開封と相成りました。

 まだ序盤だけあってヒロインたちとの絡みは大してなし。代わりに春原っつー野郎との遣り取りが多いですね。こいつとの掛け合いはなかなか面白いんですけど、男とばかり戯れているというのもなんだか切ない。思うに、keyのゲームで主人公以外の男キャラがこれだけ目立つのって初めてなんじゃないか。北川は割と空気でしたし。選択肢が結構たくさんあって攻略が手間取りそうですが、こまごまとしたものでも選択の結果がちゃんとその後の展開に反映される部分はささやかに嬉しいし、まあ焦らずチマチマとやっていこう。『Bullet Butlers』も続ける気はありますので、『CLANNAD』は「息抜き」という位置付けにしたい。

『狼と香辛料』、アニメ化決定「GF団」経由)

 前々から噂は出ていましたが、ようやく確定情報に格上げされました。ホロが有する獣耳尻尾の可愛さに頼っただけの中途半端な萌えアニメになるくらいなら、いっそNHKで『ハゲタカ』並みの経済アニメにしてくれないかなぁ、と戯けたことをぬかしてみる一ファン。ちなみに当方は経済小説というジャンルをほとんど嗜んでおりませんが、川端裕人の『リスクテイカー』が時間を忘れる出来映えだったことをふと思い出したのでオススメしてみます。ちょっと古いけど、『流星たちの宴』も面白かった。

Game-Styleの新作ガイドに『Dies Irae』追加

 いよいよ社内もマスターアップの機運が高まってきました。

 信じていいのか……期待していいのか……おおお。

 残すところは音声収録、といった気配ですので、アレとかアレみたいにパートボイス状態にならないことを祈願いたします。

・虚淵玄の『Fate/Zero Vol.3』読了。

 副題「散りゆく者たち」。ああ、立て続けにウロブチ分を補給できるとはなんたる至福よ。完結を間近に控えていることもあって遂に脱落者が続出する局面へと突入した第四次聖杯戦争――マスターとサーヴァント、それぞれが思惑を胸の裡に秘めながら、各々の大願成就を果たさんとして力の限りを尽くす……。

 流れ自体は一貫していてこれまでと変わりないのですけれど、いよいよ衛宮切嗣の外道策士っぷりが解禁モードとなって「正直、ヒくわー」な読者も現れてくることだろうと睨みます。細かい設定や文章の癖は極力奈須きのこに近似させておきながら、底を這う非情の美学は隠しても隠し切れぬウロブチ趣味が全開だわこりゃ。臣従の礼(オマージュ)を垂れるどころか逆に「おう、罷り通るぞ」とふんぞり返らんばかりです。これはただのスピンオフではない。もっとおぞましい何かだ。

 特にアクションシーン、前フリではおとなしく攻めていかにも「お約束」な雰囲気を醸しつつ、いざ本番という場面で「お約束」を反故、碁盤を引っくり返すようなまさかの番狂わせを演じてくれる。いや、この発想はなかった。良い意味で頭がおかしい。今回はいつもより薄めで100ページほど減っているのに、全編がそうしたボリュームの低下を忘れさせる怒涛の展開、嵐に次ぐ嵐で休む暇も与えません。とはいえ、平和な日常シーンも僅かながら仕込まれており、「ああウェイバーかわいいよウェイバー」と蕩けさせてくれます。もうこいつが男とかそんなことはどうでも良くなってきた。

 そして解説が驚きの田中ロミオ。記憶が正しければ奈須・虚淵・田中の三人は『腐り姫読本』所収の対談に揃って参加していたはずなので、縁があったとしてもおかしくないのですが……『Bullet Butlers』の初回特典といい、「なぜこんなところに」な顔出しが目立ちますな。「で、オクルトゥムはどうなってん?」とファンの一人として問いたい。切実に問い詰めたい。今はただあの企画が流れていないことを祈るのみ。

 さて、瓢箪から駒といった塩梅で始まったFate/Zeroも4冊目となる次回で遂に終幕を引く形となります。切嗣の外道一直線は今後も留まることを知らずに驀進していくのか? 気になるアイツの動向は? そしてまだ明らかになっていないいくつかの秘密はちゃんと陽の下に晒されるのか? 「バッドエンドが最初から定められた物語」、泣いても笑ってもラストの刻(ゼロ)は避けられない。地獄の蓋が開くのを静かに震えて待つとします。にしてもまた誤字がちょこちょこと……依然として突貫作業が続いてるのかしら。

・上で『腐り姫読本』について触れましたが、そういえばアレに付属していたCDが未開封のままだった……おいおい、何年放置してるんだ、自分は! と慌てて読本を発掘し、速やかにインストールを済ませた次第。

 目当ては無論、番外編の「帰省〜jamais vu〜」。本編開始より一年前に遡り、まだ生きている頃の樹里や義妹になったばかりの潤が登場します。プレー時間は20〜30分で、ごく短いけれど、一応夏生や青磁やきりこも出てくる。『腐り姫』本編をやってからかれこれ4年も経つせいでキャラクターの相関関係はだいぶ忘れていたけど、傍らに読本があるので別に仔細なし。短いながらも本編とリンクする箇所がそこここにあって楽しめました。ちなみに「jamais vu」はジャメヴュと読み、意味はデジャヴュの逆――つまり「見慣れているはずなのに初めて見るような気がする」という感覚を指し、「未視感」と訳すのが一般的です。『腐り姫』は記憶喪失の主人公が徐々に記憶を取り戻していく形式になっており、過去の出来事を描いた前日談的なエピソードである「帰省」も、こぼれ落ちた記憶の欠片として未視感の波間に漂っていることでしょう。回想ではない素の樹里が出てくるあたりは新鮮でした。

・拍手レス。

 「胡桃割り人形(ナッツクラッカー)」なんか言葉の響きが恐ろしい…ッ
 ぶっちゃけ、あそこだけホラー。


2007-08-04.

文庫版『ばいばい、アース』1巻の発売日が来月に延びていることをついさっき知った焼津です、こんばんは。それにしてもなぜキャッチコピーが「『シュヴァリエ』の冲方丁」なんだろう……代表作扱いされるほど『シュヴァリエ』って話題になっているのかな?

『Dies Irae』のフィギュア

 リンク先下方にある「展示物のお知らせ」参照。「現在のところ販売は未定ですが、反響の大きさによっては全13体の製作も?」って、豪儀というか、ソフト自体がまだ発売していないのにどんどんプロジェクト規模が大きくなってきてますのぅ。しかし試作品がこいつとは……つくづく愛されてますね、蟹座の人。

 あと“チャンピオンREDいちご”に『Dies Irae』のマンガが掲載されるとか。紹介記事含めて5ページというからにはごく短い予告コミックみたいですが。しかしいいのか? 「オールヒロイン15歳以下」を謳っている雑誌に「作品中に登場するキャラクターはすべて18歳以上です」なエロゲーのマンガや紹介記事を載せて……ルサルカに至っては十代ってレベルじゃねぇぞ。

R・D・ウィングフィールド、死去

 突然すぎる訃報にショック。フロスト警部シリーズの作者です。「下品でカッコ悪い中年警部が周りに煙たがられつつも得意の直感に任せて捜査する」という刑事小説で、パッと見はドーヴァー警部や大貫警部みたいなユーモア・ミステリなんですけれど、密かに「まったく、俺って奴は勘頼りで動くことしかできないのか」などと自嘲して哀愁を誘うあたりに独特の人情味を感じさせて好きでした。長編は6部作で、翻訳版が出ているのは3作目まで。95年の "Hard Frost" と99年の "Winter Frost" は今もなお未訳のまま。そして遺稿となった "Killing Frost" は来年に原書が刊行される予定だそうです。追悼の意も込めて訳出を願う一心……。

ニトロプラスの『続・殺戮のジャンゴ』、プレー完了しました。

 おもろいのう、おもろいのう。ほんに虚淵シナリオはおもろいのう。と堪能することしきりの一本でした。プレータイムは10時間に満たないながら微塵の無駄もないみっちりと詰まった内容であり、3、4本立て続けにアクション映画を見たような興奮を味わえました。『Phantom』で背筋に電流を流されて以来、「デモベはデモベ、塵骸は塵骸、ハナチラはハナチラで好きだけど……でもやっぱ虚淵ゲーとはなぁんか違うよなぁ」って具合に一応は虚淵儲としてやってきた当方ですが、さすがに今回はブランクが長かった(『沙耶の唄』から既に3年半以上が経過)こともあって「ハズレでも別に構わないよねー、いざとなったら『Fate/Zero』の方でリカバリーできるし」とナメてかかっていた部分が少なからず存在していました。

 が、正直、『Fate/Zero』のことなんてやっている最中はスッカリ頭から抜け落ちていた次第。忘我の境地でラスト一文、骨の髄までしゃぶらせていただいた。「余計なことは一切考えずに楽しむ」――劫を経たオタである自分にもそれが可能であることを証明してくれた、実に稀有なソフトとして絶賛したい所存。まさしく「玄のウチブチ」は帰ってきたのだ。ノベルゲーとしては短いので「有り余る暇を潰したい」という方には向きませんが、「時間を割いてでもやる価値のあるゲームをプレーしたい」という人には是非とも推す。ゲテモノ臭い風貌とは裏腹に、王道を踏破する筋金入りの「面白さ」が全編を支配していて飽きさせませぬ。詳しい感想は↑のリンク先に載せましたゆえ、てけとーに流し読んでください。

 でもたぶん売れないでしょうね、これ。すごく面白いんだけど、まったく売れてる気がしません。「予約本数が過去最悪レベル」っていうのもむべなるかな。

・拍手レス。

 特典テレカにこれだけ出ている以上、攻略ヒロインの座は約束されたようなもの!だといいですねえ<ルサルカ
 攻略できないなんて萎えるオチつけやがったら(ry

 そういえば6日にトリプルプレイ出るんでしたね
 連載時の評判は芳しくなかったですが、ダブルダウンが結構好きなので購入予定。

 宮部みゆきといえば「レベル7」と「龍は眠る」が飛びぬけて面白かった
 個人的に好きな宮部作品は『スナーク狩り』と『長い長い殺人』。特に『スナーク狩り』はもっと評価されてもいいと思いますだ。


2007-08-02.

・長らく積んでいた『Over Drive』をなにげなく読み出して、押し寄せてくる熱の烈しさに思わず涙腺が緩んでしまった焼津です、こんばんは。

 1巻や2巻はまだ比較的穏やかでしたが、3巻から5巻にかけて繰り広げられるロードレースにガッチリと心臓を鷲掴みされました。体温と目頭がヒートアップすることしきり。「燃え」も極まれば「泣き」に転ずるのだなぁ、と痛感した次第です。勢いに乗り、そのうち買おうと考えつつ放置していた『シャカリキ!』も全巻まとめて注文。衝動買いに近いけれど後悔はしていません。勢いのあるマンガはいい。払底しかけていた気力が湧いてきます。

light、8月の期間限定壁紙に『Dies Irae』絵

 「ルサルカがBカップ(先輩)のスタンドに見える」という意見に激しく同意。そしてさりげなくけしからんボディをしているマリィに興奮。こうして見ると案外ロリっぽくない喃。

・今月の予定。

(本)

 『狼と香辛料X』/支倉凍砂(メディアワークス)
 『楽園(上・下)』/宮部みゆき(文藝春秋)
 『DDD2』/奈須きのこ(講談社)
 『シグルイ(9)』/山口貴由(秋田書店)
 『インシテミル』/米澤穂信(文藝春秋)
 『バカとテストと召喚獣3』/井上堅二(エンターブレイン)

 いっときサイト名を「Method of Eriko」に改名するほど当方を耽溺させた小説「江利子と絶対」を収録した短編集『江利子と絶対』が文庫化します。江利子の極まりきったダメさ加減が超絶可愛いのでこれを機会にみなさんもどうぞ、と宣伝してみる。今月の文庫化作品は冲方の『ばいばい、アース』やエルロイの『アメリカン・デス・トリップ』が要注目。

 さて、マンガ化が決定してアニメ化の噂もある『狼と香辛料』、抱き枕まで発売されちゃって妙な方向に人気がヒートアップしています。おかげでなんだか痛々しい印象も与えている節とてなきにしもあらずですが、中身は至って真っ当に面白い商業ファンタジー。前回は商業要素が希薄だったので、今度は盛り返してくれることを望みます。電撃文庫は他にシャナやとらドラ!の新刊も出ますから10日前後は忙しいことになりそう。『楽園』はどうも『模倣犯』の続編らしい。まだ『理由』すら読んでない当方が取り掛かるのは随分先になりそうだけど、「宮部みゆきの現代ミステリ、しかも上下巻の重厚路線」となれば鉄板もいいところ、押さえないわけには行きますまい。

 『DDD2』は既に都心部では売られているらしい他の『刀語』や『ひぐらしのなく頃に』と違って10日発売予定。ややとっつきにくい設定ながら、ハマると一気に面白くなります。古き良き伝奇バイオレンスに加えた程良い捻りが心憎い。『シグルイ』は言わずもがな。アニメ化も果たしましたね、うちは見れませんけど。『インシテミル』は実に1年ぶりとなる久々の新刊。内容は「日常の謎」系の連作モノ? よく知りませんが楽しみ。来月には古典部の短編集も予定されているそうですし、ワクワクしますねぇ。『バカとテストと召喚獣』、個人的な略称は「バカテス」。ゲテモノ臭いタイトルに相違して意外と生真面目に頑張っているシリーズです。「勉強とギャグ」を両立させているあたりが珍しく、この調子で伸びればファミ通文庫の看板も狙える……かもしれない。

 あと挙げるとすれば『銀月のソルトレージュ3』、『ゼロの使い魔12』、『“文学少女”と慟哭の巡礼者』、『Damons(7)』、『鋼の錬金術師(17)』と『獣神演武(1)』らへん。忘れず購入しなくちゃ。

(ゲーム)

 『ひまわりのチャペルできみと』(Marron)

 「シナリオテキストは文庫本20冊以上」と大ボリュームを謳っているせいで却って怯む。体験版をやってみた感じ、システム周りを初めとして全体的に古臭い箇所が多く目立つものの、『秋桜の空に』で笑い転げた世代にとってこの懐かしい空気は抗いがたし。ネタの方向がアレすぎてもう既に流行から外れている気がするにせよ、竹井10日の切れ味は依然として鈍っておりません。というか主人公の○○を一目見て電流が走った。○○目当てで買いに走りそうな自分が怖い。初回特典は書き下ろしのライトノベル『ひまわりのチャペルできみとvs秋桜の空に』、更に同日くらいに『らき☆すた』のノベライズも刊行されるとあり、長い雌伏の時を過ごしてきた竹井ファンにとって8月末は熱い夏になることだろう。

 ……延期さえしなければ。

・拍手レス。

 もうすぐDDDと刀とひぐらし来るー
 先月買ったジャンゴや弾丸執事やF0もまだ終わってないのに……ヒー。


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