2007年2月分


・本
 『魔女は夜ささやく(上・下)』/ロバート・R・マキャモン(文藝春秋)
 『SCAPE−GOD』/高遠るい(メディアワークス)
 『君に届け(3)』/椎名軽穂(集英社)
 『ひぐらしのなく頃に 宵越し編(1)』/竜騎士07、みもり(スクウェアエニックス)
 『オイレンシュピーゲル壱』『スプライトシュピーゲルT』/冲方丁(角川書店、富士見書房)
 『DIVE!!(上・下)』/森絵都(角川書店)
 『灼眼のシャナXIV』/高橋弥七郎(メディアワークス)
 『シリウスの道』/藤原伊織(文藝春秋)
 『烏丸学園ガンスモーキーズ(SideA・SideB)』/たもりただぢ(エンターブレイン)
 『10ドルだって大金だ』/ジャック・リッチー(河出書房新社)
 『ゴスロリ幻想劇場』/大槻ケンヂ(インデックス・コミュニケーションズ)
 『よつばと!(1)』/あずまきよひこ(メディアワークス)

・ゲーム
 『ひぐらしのなく頃に礼』(07th Expansion)
 『Dies Irae』体験版(light)


2007-02-28.

・ゆっくり読むつもりではいましたが欲求には抗えず、結局『よつばと!』全巻を読み切ってしまった焼津です、こんばんは。あー面白かった。こういうときだけは積読のありがたみを感じる次第。カバーを外した下にもちょっとした仕掛けが施されていて楽しかったです。さて、次は何を読もう。ワシの積読マンガは108冊まであるぞ(やや二度ネタ)。

・といった感じで少し迷ってから手近なところに置いてあった『のだめカンタービレ』に着手。ハチクロを買い始めた時期に併せて購入したのですが、最初の数冊に目を通して「うーん。別に、それほどでも……なぁ」と言葉を濁して中断しちゃいました。いざ再開してみると、なんかこう徐々に面白くなっていくのが実感できて、どうしてどうしてなかなか面白いではありませんか。音楽の話とか正直分からないところも多いのですが、詰まるところ演奏するのも鑑賞するのも、最終的には「楽しい」という一点で重なり合うことを了解すれば何も問題はない。という気がします。極限の「楽しい」を求めていく過程が既に楽しいんですよ。のだめのキャラはいろいろ紙一重ですが。

・あとこのスレを参考にしていろいろと面白そうなマンガの情報を漁ってみたり。最近はアンテナが低くなる一方で困っていましたから、こういうスレは実にありがたい。ほとんど知らない作品ばっかりなものの、中には「えっ、これって別にマイナーじゃないよね? マイナーじゃないよね?」と二回聞きたくなるタイトルも混じっていて、何を基準に「メジャーとマイナー」を区別するべきかいろいろと考えさせられました。しかし一個だけとはいえコメント欄にJUDALの名が上がっているのを見て無性に懐かしくなった。個人的に『吸血遊戯(ヴァンパイアゲーム)』が結構好きでしたよ。

 当方が「マイナーだけど面白い漫画」を挙げるとすれば、『BREAK-AGE』。通信対戦型のロボットアクションゲームを題材にした、「ゲーマーはゲーセンに集まる」という発想が普通であり常識だった時代のマンガ。最初はただゲームをプレーして楽しんでいた主人公が、少しずつ「作り手」の側へと進んでいく。ゲーム好きの少年には思いっきりストライクな内容でしたねー。若干ながらラブコメ要素もあったためか、「年上ヒロイン」というと未だに高原彩理を思い出してしまう。そしてよく考えれば当方が「女装主人公」という奇妙な属性を芽生えさせたのもこれと『突撃!パッパラ隊』のせいだった気がします。

 他にも野獣めいた刑事が少女暗殺者を追う『キリコ』とかネゴシエイターものの『犯罪交渉人 峰岸英太郎』なんかがオススメのマイナー漫画。

・拍手レス。

 『10ドルだって大金だ』読みますた。面白ス。自力で作家開拓する余裕がないのでレビュー重宝してます。
 面白い作品は読んで楽しく人に薦めても楽しいので一石二鳥です。

 曹長どの! これからは「サー」ではなく「曹長どの」のようであります →『老人と宇宙』(ハヤカワSF)
 フルメタルジャケットの洗礼を受けた世代としては受け容れがたいです、サー!


2007-02-26.

『狼と香辛料』の新刊を読んで相変わらずニマニマした焼津です、こんばんは。

 くそう、こいつら冒頭からイチャイチャしやがって、もう完全に究極バカップル化してやがる。あまり露骨なお色気イベントはありませんが、聞いててむず痒くなるような、馴れ合った者同士特有の会話が全編に渡って横溢しているのでラブ度は高い。今回は話が動き出すまでが長く、商取引の要素も少なかったし、いざという時でさえ「絶体絶命のピンチ!」という雰囲気が希薄だったのでなんだか淡々と読み終わってしまったものの、たまにはこういうヌルめの展開も悪くないと思います。今までがドキドキハラハラしすぎ、っていうのもありますし。それにしても1巻の発売から早一年、「遅筆なんじゃないか」と危惧した時期もあったことを回想すると、こうして順調に巻を重ねてくれている事実がやたらとありがたい。続きが楽しみです。そしてやっぱりホロかわいいよホロ。

XUSEの『聖なるかな ―The Spirit of Eternity Sword 2―』、SPECIAL PACKAGE版は13,440円(税込)

 同梱内容が「Windows版 『永遠のアセリア ―この大地の果てで―』」って、要するところセット商品に近いノリなのでしょうか。Black Cycの『まるごとMinDeaD BlooD』みたく。ぱじゃまソフトもプリっちの豪華初回版に『パティシエなにゃんこ』を同梱したり、『プリズム・アーク』豪華初回版に『プリズム・ハート』を同梱したり、ってやっていましたね。もっと昔の例で言うと、今は亡きLIBIDOが何かセット販売臭いことをやっていた気が(記憶曖昧)。

 んー、「今なら過去作も付いてくる!」という売り方は続編モノを新規のプレーヤーにも気兼ねなく買わせる点でちょうどいいのかもしれませんが、やはり1万円超えとなると「特典」というよりも「セット」の感覚が強くなってきますねー。『しまいま。』の無料DL化や『鬼畜王ランス』の配布フリー化を断行したアリスソフトは大手ならでは、って感じで他はなかなか真似できないのかもしれませんが、地味なところでinspireも『エーデルヴァイス』の前作『famme fatale』を無料配布していますし……今後はセット商法とネット配布、どちらを基調として「続編モノ」に対する関心を煽る風潮になっていくのかしら。

・あずまきよひこの『よつばと!(1)』読んだー。

 「ん? なんで今ごろ1巻?」と言われそうですが答えは単純、積んでました。『あずまんが大王』のファンだったから発売日に購入したものの、今回は4コママンガじゃないみたいだなー、しばらく後回しにしてもいっかー、という感じで積み続けて……気が付けば6巻まで溜まっていた仕儀。さすがにもうそろそろ崩した方がいいように思えて着手いたしました。

 よつばというちっちゃい女の子が父親とふたりで引っ越してきて、隣家の少女たちと仲良くなってあれやこれや、といった感じのマンガ。特にこれといってストーリーもなく、淡々とエピソードを積み重ねていく調子で、オチらしいオチが付かないこともままある。元気のいいよつばがツッコミどころ満載の猪突猛進な言動を繰り広げて読者を和ませる、という点ではコメディに属する作品かもしれないけれど、とても「日常感」が強くて、笑いの要素はあっても大きく日常を逸脱するシーンは皆無。ごくありふれた町を舞台に、なんだかちょっとだけおかしな遣り取りを交わして楽しく日々を過ごす。その日常、その楽しさ。比類なき安定をこそ「最強」と呼ぶあたりに作者のスタンスというか、自負――マンガに懸ける想いの強烈さが滲み出ています。

 いや、ホント、一話目からぐわっと引き込まれましたわ。キャラが良いとか雰囲気が良いとか、「良かった探し」を始めるとキリがないくらいの出来栄え。全編から漂ってくる夏の空気に擬似的な暑さと涼しさを感じてしまう。惚れた。積んでいた自分の不甲斐なさを責めるとともに、「このまま立て続けに2巻以降が読める」という事実に笑み崩れた次第。「いいとこだらけ」のくせして不思議と「ここだ!」って一点集中的にアピールする箇所が見つけづらく、ともすれば「いいんだって、とにかくいいんだって!」と説明を放棄してオススメしたくなるのは困ったものです。おとなしいナリして魔性のマンガだこれ。

 一切構えずに軽い気持ちでサーッと読めます。ノスタルジーがどうのこうの、昔の思い出が云々、懐かしい記憶を呼び覚ますとか何とか、そんなかったるい口上を抜きにしてひたすらに居心地の良さとテンポの良さを堪能させてくれる。『あずまんが大王』同様、ツボに入る方と入らない方とで大きく評価が分かれるだろう作品ではありますが、この「普通すぎるくらいに普通」な感覚を噛み砕いてすり潰し、勢いのある鮮やかな景色に練り直す作風は個人的に大ヒット。入道雲に彩られた青空へぐんぐんと白球が飲み込まれていく――そんな光景をぼんやりと見守っているような気分が湧き上がってくることしきりです。


2007-02-24.

『SHUFFLE!』のことを一部で「にっふる」と呼ぶ向きがあることは知っていましたが、どこをどういじって「シャッフル」から「にっふる」という言葉が生まれたのかサッパリ分からず、長らく疑問になっていた焼津です、こんばんは。

 由来を調べたところ、どうもこのスレが震源だった模様。「シャッフル→しゃふつ→煮沸→にふる→にっふる」、これでようやく喉に刺さっていた小骨が取れました。というかこのスレ、前に読んでいたような記憶が……由来を知らなかったのではなく、単に忘れただけだったりするのか、ひょっとして。

ぼとむれすの『おまかせ!とらぶる天使』、体験版の配布を開始

 予定では23日、つまり昨日に開始するはずだったから一日遅れになりますが、待ち望んでいた人にとっては出ただけでも御の字ってところでしょうか。これで少しでもおま天の発売が近づいたなら宜しいのですけれども。

・大槻ケンヂの『ゴスロリ幻想劇場』読んだー。

 小説やエッセイなど多数の著作を出版しているオーケンですが、調べてみると短編集はほとんどありません。本書は94年の『くるぐる使い』に続く二番目の短編集。いや、掌編集と書いた方がいいのかな。どれも10ページ前後と非常に短い。もともとはゴスロリ専門誌に連載されていたらしく、それに書き下ろしを加えて1冊にまとめたとのこと。短いながらキレのある(というかキレてる)文章で綴るストーリーはスピード感抜群でテンションも高い。率直に申せば「書き殴り」という印象を与える箇所もいくつかあるが、それによっていささかも勢いを減じさせることがないあたりはセンスと力量の賜物でしょうか。

 上空20メートル。身の丈80センチほどでゴスロリ衣装をまとって滞空する有翼の妖精たちは、手に洋弓を携えていた。ケラケラと笑う奴ばらは何の宣告もなしに矢を放ち、次々とうら若き乙女たちを射殺す。突如として始まった惨殺の光景。為す術もなく、ただ泣き喚いて逃げ惑っていただろう――彼女たちが弓道部でなかったならば。「部長の仇を!」 復讐心と闘争本能が生存欲を燃やし尽くす。少女たちは和弓を手に絶滅戦へ突入した。存分に振るわれる日置流印西派の弓術。矢と矢が交錯し、血飛沫が舞い、哄笑と悲鳴が混在する地獄を、弓道部の面々は無事サバイブできるのか……「妖精対弓道部」。

 全部で15編を収録。やや血腥いものをピックアップしましたが、中には「二度寝姫とモカ」といった温もりに満ちたほのぼの系の話もあったりして、割とごった煮の様相を呈しています。タイトルだけ挙げても「戦国バレンタインデー」「決戦ドレスは紅茶の後で」「爆殺少女人形舞壱号」などなど、いかにもなセンスが迸っている。センス云々を別にすれば、込み入った作品はないしサッと読めるので、オーケン小説未体験の方でも比較的手を付けやすい仕上がりになっているかと。一方で『縫製人間ヌイグルマー』のサイドストーリー「ゴンスケ綿状生命体」や、『ロッキン・ホース・バレリーナ』の前日譚「ゴスロリ専門風俗店の「七曲町子」」、『ステーシー』の番外編「ステーシー異聞・再殺部隊隊長の回想」といったラインナップが取り揃えられており、ファンにも嬉しい構成。「ニアデス・ハピネス」というと今では蝶最高の人を先に連想しますが、そういえば『ステーシー』が元ネタだったんだなぁ、と懐かしくなった。

 終始メチャクチャやってるから、筒井康隆みたいなグロテスクさの混じったドタバタコメディとか不条理ギャグとかいった路線に見えることは否定できないけれど、「笑い」でコーティングされた物語の底に沈んでいる密かな熱が大槻ケンヂらしさを主張する一冊です。たとえば「ギター泥棒」。普通に語ればしんみりしてしまうだけのストーリーを軽快な筆致と感性で「熱い」とさえ言える内容に底上げしている。ただ「泣ける」のではない。「熱い涙」の感触を味わわせてくれます。作中人物が自ら「説教臭い」と認めるくらいですから説教臭いことは説教臭いものの、「恋人の死」という生々しい絶望に反してマヌケな「ギター泥棒」という呼び名が生み出すギャップは胸に確かな温度として響いてくる。

 長田ノオト作画の『ステーシー』と出会い、次いで『新興宗教オモイデ教』『雫』の元ネタということで読み出してから「小説家としてのオーケン」のファンとなった当方ですが、ここ最近は三番目の短編集『ロコ!思うままに』や長編『縫製人間ヌイグルマー』が出たりしてなかなか幸いな状況にあります。本書は知らない出版社から出ていたせいもあってほんの数日前まで存在すら知らなかったけれど、おかげでより幸いな気分になれました。それにしても……「東京ドズニーランド」はネタ的にヤバすぎるような……なぜか千葉ではなく埼玉になっているところはせめてもの配慮なのか。

・拍手レス。

 ルナリアにやられました、はい。
 月カルもそろそろ再開しなきゃ……とりあえずチャンピオンREDのクリアファイルに(*´Д`)ハァハァ。


2007-02-22.

『もっけ』がアニメ化

 原作は「妖怪のいる景色」を日常と地続きの感覚で描いているあたりが好きでした。知っている作品がどんどんアニメ化していくのは嬉しくもあるけれど、なんだか巣立ちみたいでちょっと寂しくもある心境。

・ジャック・リッチーの『10ドルだって大金だ』読了。

 「贅肉のない文章」とは正にこのことでしょう。剃刀のような鋭い切れ味を見せつける邦訳第二短編集。「短篇の巧手」と絶賛されながらも生前は一冊しか著書を出すことができず、翻訳された作品は多けれど長くに渡って本にまとめられることのなかったジャック・リッチーですが、日本オリジナルの第一短編集『クライム・マシン』がこのミス海外編1位を獲得して話題になりました。かくして表題作含む14編を収録した本書も、出版社は違いますけど(『クライム・マシン』は晶文社、こっちは河出書房新社)、リッチー短編集第二弾として刊行される運びとなったわけです。平均して20ページ前後、長くとも40ページ以下、短くとも10ページ以上といった配分で、極端に長かったり短かったりする話はありません。どれも程好くサクッと終わる。物足りなさ、余韻といったものとは無縁で、解説にある「読んでいるあいだはひたすら愉しく面白く、読み終えた後には見事に何も残らない」という評が実にぴったり。

 ケレンめいた要素は乏しく、ただただ「文章の軽快さ」「ネタの面白さ」「オチのひねり」だけで引き込むストレートな作風は読んでいて惚れ惚れとしますよ。冒頭からしてすごい。「ほんの数ページで読者の目を惹き付ける」とか、そんな領域には留まらなくて、ほんの数行でがっしりと心を掴んできます。時には一行で充分だったりする始末。

 結婚して三か月、そろそろ、妻を殺す頃合だ。

 巻頭一発目の「妻を殺さば」からしてコレです。くどくどしい説明なし。簡潔に絞った一文で主人公の状況と彼の冷血さを伝えてくる。痺れた。この話、「妻殺し」の前段階として立ち塞がる障害の数々を捌いていく展開が実にリズミカルです。そいつに魅せられてあっという間に読み切っちゃう。まるで出来の良いコントを見ているかのよう。万事がこの調子なんですから、一編読み終わったらまた一編、それも読み終わったら次の一編……と結局最後まで読んでしまうしか術がない。「短篇の巧手」は伊達じゃありません。

「あなたたち」ミス・ウィッカーは命じた。「青酸カリをどこに隠したか、刑事さんに言いなさい」
 ロニーとガートルードは、しかし、わたしに向かって微笑んだだけで、何も言わなかった。
 わたしは、親指と人さし指で、青酸カリの小さな丸薬を持っていた。それは濁った白色で、直径はおよそ三センチだった。「こういうやつだよ。でもキャンディーじゃないんだ。絶対にキャンディーなんかじゃないし、食べるものでもないんだよ」

 もう一個引用。二番目に収録されている「毒薬であそぼう」の冒頭です。タイトルの時点で既に溜息が出そう。青酸カリをオモチャか何かと思い込んだ子供たちがあちらこちらに隠してしまって、それを知った刑事たちが血眼になって家中を探し回る。ガキども、いえ、子供たちのふてぶてしさが短い文章の中でキチッと表現されていてドキドキハラハラすること請け合いです。「わたしはこれまで、少年十字軍は悲劇だと考えてきた。しかしいまでは、それがほんとうに悲劇だったのかどうかわからなくなっていた」という、プッツンする寸前に陥った刑事の心情を婉曲表現したこの件は特に噴いた。

 あと、『クライム・マシン』に登場したシリーズキャラクターが出てくる話もあります。カーデュラ、それにターンバックル。カーデュラものは一編だけですが、ターンバックルものは五編もあり、満足行くまでその迷推理ぶりを堪能できる。ミステリの名探偵を露骨に皮肉った編がある一方で、「推理してもほとんど外れるくせして、なぜか最終的にはつつがなく事件を解決してしまう」という彼の特性(?)を活かした編もあり、なかんずく末尾を飾る「第五の墓」は「墓を移動させるために掘り返したら、死体も棺も何もない墓と死体はあるのに棺のない墓が見つかった」という謎で読者を魅惑しつつ、ターンバックルならではのアイロニーでしんみりと幕を下ろす。ジャック・リッチーの短編芸、ここに極まれり、といった感があります。他にも傑作が色とりどり揃えられておりますが、一つ一つ紹介していてはキリがないし興趣を削ぐことにもなるので割愛。一つだけ、個人的にもっとも気に入った編を挙げるとすれば「誰が貴婦人を手に入れたか」ですね。『貴婦人像』という高級な絵画を巡る短編で、「美術品の真贋」を焦点とするところではよくある話だけど、このひねりは巧いと思った。「真贋、如何に?」といったタイプのストーリーは興味がシンプルな分だけあって、作家の持ち味が如実に滲み出るものなのかもしれません。イアン・ランキンの「動いているハーバート」も、同じく「美術品の真贋」を焦点とした短編で、ランキン特有の個性がよく出ていたものでした。

 作家志望者が読んだら舌を巻くどころか舌を噛み千切ってしまうのではないかと危惧するほど研ぎ澄まされたショート・ストーリーズ。というのはさすがに大袈裟かもですが、実際この鮮やかさはハッキリ言って異常だ。普通に目を通せば「ああ、読みやすいなぁ」って感じで特段気にならないものの、じっくり丹念に観察すると唸る場面がいくつもある。「呆気ない」と「無駄が無い」の違いをまざまざと思い知らせてくれる。リッチー未体験の方は是非『クライム・マシン』と合わせてご賞味あれ。先月読んだ『絞首人の一ダース』といい、業師の短編集ってのはこう、絶妙な味わいを醸し出すもんなんですねぇ。

・拍手レス。

 >SideBの扉絵、生徒会長が無明逆流れをする手前のポーズみたいに見えて
 どうしてくれるんですか!そうしか見えなくなってきたじゃないですかw

 もはや明らかに昔日の幼馴染みではない。

 清水マリコは赤背表紙の新書版で書いてた頃しか知りません…
 むしろその頃を知らない読者がここにひとり。初見の『嘘つき〜』でハマったもので。


2007-02-20.

・ワシの積読は百八冊まであるぞ。嘘。こんばんは、どう数えても百八冊では足りない焼津です。本気でもうどう消化すればいいのやら分かりません。

 それはさておき、ひっそりと根強い、つまりマニアックな人気を持つライトノベル作家・清水マリコの新刊が来月出るそうですよ。タイトルは『日曜日のアイスクリームが溶けるまで』。「一般文芸第1弾」とありますから第2弾があるのかもしれない。ハードカバーなので値段は1470円とちょいお高め。しかし「第2弾」の可能性を芽吹かせるためにもファンには避けて通れぬ道か……。ちなみに個人的に好きなマリコ作品は『ネペンテス』。タイトルは食虫植物のウツボカズラを意味する。表紙イラストのほどけたネクタイがなんともエロティック。清水ワールド全開のオムニバス短編集です。

Black Cycの新作は一人称視点ガンカタナアクション『GUN-KATANA(銃刀)-Non Human Killer-』

 「ガン=カタ」とか「ガン×ソード」とか「GUN道」とか、いろんな言葉が脳裏によぎっていく……それにしてもエロゲーでFPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム)って、すんごいバクチだなぁ。ライターの丸木文華もこれまでの仕事は乙女ゲーやBLゲーといった分野で、美少女ゲーは初めての模様だからいろいろと未知数。購買意欲をそそられるかどうかでは微妙だけど、ひとまず興味はそそられました。注目注目っと。

匠の『私は私のまま、誰にでも変われる』

 こ、これは『銃刀』とは違う意味ですごそうな……「純エロ・ギャグ&ナゾだらけ修学旅行ADV」というジャンル表記からして既に危うい雰囲気を放っておりますが、「他人の性格と声と記憶を、自分にコピーできちゃう」ヒロインだの、「鬼の滴」という名称の媚薬だの、「“@のないメアド”“朱雀門の鬼”“1時間早く鳴る鐘”“さまよう誘拐犯”“赤い血、青い血”などなど。/いちずな純愛&大爆笑の日常を楽しみながら、すべての裏でうごめく大いなる謎にチャレンジしよう!」だの……いやはやストーリー紹介を読んだだけでここまで肌にビリビリ来るエロゲーは久しく見た覚えがありません。「いやっふー! レッツ、お股おっぴろげーしょん♪」というセリフ一つを取っても筆舌に尽くしがたいものがあります。「変心」の解説が妙に細かいあたりを含め、どうも全体的に力の入れ方が斜め上です。とんでもない奇作になりそう……これも注目っと。

・たもりただぢの『烏丸学園ガンスモーキーズ(SideA・SideB)』読んだー。

 「とりまる」ではなく「からすま」です、あしからず。某所の、というかぶっちゃけGF団のレビューを読んで興味を持った作品。テックジャイアンの巻末に連載されていたそうですが、お色気シーンはパンチラと胸強調くらいしかなく、大部分がアクション描写で埋まってます。SideAの帯に載っている言葉を見ると、どうやら内藤泰弘のアシスタントだったらしい。「お…俺より分かり易いアクション……」という呟きはほとんど絶賛ではなかろうか。2冊完結で表紙イラストは上巻(SideA)がヒロイン、下巻(SideB)が主人公となっており、「主人公の方が上巻だろ」と早とちりした当方は危うく下巻から読み出すところでした。危ない危ない。

 烏丸学園の生徒会に所属していた主人公(眼鏡)が、学園で「何でも屋」を営んでいるサバイバルゲーム同好会に「生徒会の横暴を止めてほしい」と依頼したところ、交換条件として彼(眼鏡)が生徒会を抜けてサバゲー同好会に移ることになった。かくしてイケイケの生徒会に、所属たった二名のサバゲー同好会が真剣勝負を挑む。主人公とは幼馴染みの関係にありながら敵に回ってしまった生徒会長(眼鏡)。襲い来る生徒会長の猛者たち(一部眼鏡)。味方は同好会の先輩(眼鏡)、たった一人。エアガンを手に、幼馴染みの暴走を食い止めようと全力を尽くす主人公だったが……というストーリー。

 なにこのヘルシングばりの眼鏡率は。閑話休題。お互いのことを「大切な幼馴染み」、いやそれ以上に想い合っているのに対立し、争い合わねばならない関係に陥った主人公とヒロイン。言わば「殺し愛」みたいなシチュエーションですが、基本的にゲーム形式で対戦していく学園アクション漫画なのでそこまで深刻にキルラブするわけでもありません。むしろラブコメ度が結構強い。バトルの現場を離れて二人っきりになると「ちゃん」付けで呼んだりしますし。ヒロインも普段は生徒会長としての鉄面皮をかぶっておきながら、自宅の道場で誰も聞いてないと思ってあらぬことを叫んだ途端、偶然そこに来た主人公に聞かれてしまってかぁぁっと赤面――なんていう微笑ましい場面を見せてくれたりする。このへんの呼吸は全編に渡って心得まくりで、もうアクションなしでも充分やれるんじゃね? とか思ってしまったり。

 とはいえ当然アクションも捨てたものじゃありません。内藤泰弘が「俺より分かり易い」と書くだけあって、スピード感、テンポ、イメージ喚起力、どれを取っても抜かりがない。ザーッと読むだけで脳内に高速バトル劇場が展開されます。「エアガンと竹刀で戦う」と言うとなんかトンチキな印象を与えてしまいますが、実際読んでみると良い意味でB級アクションのテイストを醸していて「うひょー、かっこえー」と自動的に知能指数が低下します。男はエロばかりではなくアクションでも興奮する→ならエロゲー雑誌に掲載してもOKじゃん、という流れで連載に至ったのではないか、とボンクラならではの勘繰りがしたくなるほど。千川姉弟が後衛の弓矢と前衛の格闘で波状攻撃を仕掛けてくる奴を個人的なベストバウトに認定。いやあ、弓矢はいいですねえ。もっと学園モノで弓術を使う子が増えてくれないかしら。流鏑馬ヒロインとか、狙い目だと思いますけど。

 ただ、ストーリーに関しては強引。ペースが早いせいもあり、「なんか盛り上がってるなぁ」と感じつつもそのノリに付いていけないシーンがいくつかあって、ちょっと残念でした。特に下巻(SideB)、完璧に「バトルしながら議論に熱中」というパターンに嵌まっていて、それ自体はベタであれ構いませんけど、議論が長引きすぎてだんだん盛り下がってくる。テーマを強く意識したがために却っておざなりになってしまったようで、なんだか歯痒い。うーん、前半の勢いが続けば楽しかったんですが……。

 非殺傷系アクションとしては単純にカッチョ良くて爽快感あり。ラブコメの描き方も巧いし、烏丸学園の日常とバトルをもっとダラダラと綴ってほしかったところです。眼鏡っ子が比較的苦手な当方も、幼馴染みの前で仮面を脱いで素直になる生徒会長には(*´Д`)ハァハァしました。それにしてもSideBの扉絵、生徒会長が無明逆流れをする手前のポーズみたいに見えてドキリとします。よって虎眼流と化した生徒会をすかさず連想。「無双生徒会は エアガンに対し いかに処するか?」「やってくれた喃 春介!」「学園という器は ひとたび ひとたび ひびが入れば 二度とは 二度とは」


2007-02-18.

美少女が、俺を、蹴ってくれました

 こ れ は 新 し い 、かもしれない。ギャグではなくコメディとして主人公がMっていうラブコメはあんまりなかった気がしますし。とりあえず絵が好みなので注目しておこう。

・藤原伊織の『シリウスの道』読了。

「もうこの話はいいんじゃないですか。おれ自身、最良の結果になったと満足してんだから」
「自己満足かもしれない」
「満足に自己満足以外の満足があるんですか」

 著者の最新長編。先月『ダナエ』という新刊が出ましたが、あれは短編集だから「最新の長編」ということに違いはありません。もう既に文庫化(二分冊)されているとはいえ、「最新」は「最新」です。……というか文庫化するの早すぎ。2005年6月にハードカバーが出たのに2006年12月にもう文庫版が刊行されるなんて、いったいどういう事情があったんだろう。ドラマ化とか映画化ってわけでもないのに。

 高々と聳えるビルを見上げれば、切り取られた空にぽつんとひと際強く光るシリウス――冬の星に見守られながら、年の瀬真っ只中の時期に辰村祐介はビッグプロジェクトに関ることとなった。大手の広告代理店として有名な東邦広告に勤める彼は、大東電機が新規参入を目論むネット証券ビジネスの広告事業を請け負う競合に勝つためのチームに抜擢されたのだ。予算は十八億。しかし、敵は競合相手ばかりではなかった。同じ会社の社員でも、営業局が違えば見方とは限らない。競合を外された局との間に軋轢が生まれ溝が深まっていく中で、プロジェクト空中分解の危機を幾度となく乗り越える辰村。一方、彼の過去にまつわる「事件」が二十五年の時を経て浮上してくるが……。

 不思議な読後感を抱かせる企業ハードボイルド。「企業」の二文字が付くとなんだか間抜けに見えますが、これは紛れもなく企業に生きる人々のハードボイルド――「やせがまん」を描いた小説でしょう。内容からすると「苦難を乗り越えてプロジェクトを成功に導く」っていう定型のサクセス・ストーリーにも思えますが、いざ迎える結末は決して「やったーバンザーイ」と諸手を挙げて熱狂する代物ではありません。夜、頭上で眩しく輝いているシリウスを意識しながらも見上げようとはせず、ただ孤独に歩を進めるラストシーンは悲しいような、いやそうでもなくて力強いような、ひと口には言い切れない感慨を湧き立たせる。「著者自身が広告業界に身を置いていた」という話から、経験に頼っただけの一発ネタになるのではないかとの危惧もありましたが、杞憂もいいところでした。ハードボイルド臭い遣り取りが若干わざとらしくて鼻に付く部分もあったにせよ、経験を消化/昇華し、切れ味鋭い文体を駆使して一つの境地に達している感があります。特に主人公の視点を通して描かれる部下・戸塚の成長が心地良く微笑ましかった。戸塚自身の視点ではないからこそ、彼の成長ぶりに嫌味がなく素直に受け取れる。

 主人公の過去が回想形式で語られて次第に掘り起こされていく展開も、最初は無理矢理なキャラ立てというか枚数稼ぎみたいに見えて「邪魔だなー、プロジェクトの方にだけ専念してくれよ」と思ったりもしたけれど、次第に全体のストーリーとして馴染ませてキチンと象徴的なエピソードに仕上げてくれる。巧いと思いました。とはいえ枚数稼ぎであることに違いはないし、プロジェクト一本槍に絞っても良かった気はします。なんと言いますか、『テロリストのパラソル』と同様のノスタルジーを埋め込もうとした雰囲気が露骨に漂っている。それがちょっとクサいかなぁ、と。テロパラと言えば、この作品が同一の世界観を共有していて、しかもキャラクターまでゲスト出演していることには驚かされました。ひょっとして藤原伊織の作品って全部が繋がっているのかな? まだこれとテロパラしか読んでいないので分かりません。「ゲスト出演」ながらファンサービスには終わらず、一つの要素として話の中に溶け込ませているあたりは舌を巻きました。

 企業を舞台とした上質なビジネス小説兼ハードボイルド。ただし、トボけた(半ばふざけた)性格してる主人公のキャラクターが好きになれない人もいるでしょう。全編に漂ういおりん特有のクサいダンディズムも肌に合わないにはトコトン合わないはず。文章は巧いし評価も高いけど、なにげに好みの分かれる作風だと思います。そういう点を考慮してなお「傑作」と推したくなる一冊でした。春めいてきた夜更けに言い知れぬ読後感をどうぞ。とりあえず事前に『テロリストのパラソル』は読み終えておいた方がベターですが。

・拍手レス。

 『DIVE!!(上・下)』素晴しかったです。これからログ読んで過去の焼津さんのオススメ漁ってきま。
 いいですよねー『DIVE!!』。長年に渡って森絵都をスルーしてきた不明を羞じたいくらいの面白さ。


2007-02-16.

俺の名前を言ってみろぉ!

 やっぱり今見てもインパクトありますね、このメット。にしても157,500円……高いなぁ。それでも買うつもりの人がいるあたり、北斗人気は衰えないってことでしょうか。

ぼとむれすの『おまかせ!とらぶる天使(エンジェル)』、02/23→発売日未定に

 もはや何も言うまい。

・高橋弥七郎の『灼眼のシャナXIV』読んだー。

 本編としては14巻目ですが、番外編として「0」と「S」があるので通算16冊目となるシリーズ最新刊。ちなみに「本編」と言えど、厳密には5巻と10巻が外伝になっているから「坂井悠二を主人公とした本編」はこれが12番目となるわけです。ややこしい。

 アニメ化だのコミック化だのでメディアミックス的には隆盛を極めているシャナ、率直に申せば原作は8巻あたりから異様に展開が遅くなって「引き伸ばしか?」と疑うほどのペースに入っており、あまりの進まなさに少々ダレが来ているところです。本編の構成は5の倍数巻を区切りにして「起(1巻〜4巻)承(6巻〜9巻)転(11巻〜14巻)結(16巻〜19巻?)」って具合になってますが、8巻〜9巻はインターバルと言いますか11巻〜14巻で繰り広げられるストーリーの前フリみたいなところがあって、つまり10巻を除くここ6冊は丸ごと一つの部にまとめても差支えがないのでは、とさえ思える。キャラクターたちの心情や人間関係を丹念に描き込んでくれるところは抜かりがなくてありがたいものの、一方で「こりゃもうリアルタイムで読むのはやめて、ある程度巻数が溜まるまで積む方針に切り替えた方がいいかな」と迷いが生じてきたのも確かなことでした。

 が、あとがきで「(起承転結の)転の最終編」と綴るだけあってようやくこの巻で本編もひと区切りと言いますか、いよいよ新展開を迎えそうな気配が濃厚に漂っております。以前から「引きがエグい」と評判の作者だけあって、すんごいところで「つづく」となる。鬼か、あんたは。展開が遅いこと自体は変わってないけれど、惰性が減って久々に続きが楽しみになってまいりました。今回も例によって派手な戦闘が発生するけれど、むしろそこに至るまでの頭脳戦というか腹の探り合いが面白くてハラハラしました。成長したおかげで直接的な戦闘にも関与するようになってきた主人公の、従来通りとも言えるタイプの活躍になんだかホッとした次第。次は「5巻ごとに外伝が来る」という法則に従ってまたもや本編から離れた内容になるみたいですが、ともすれば「ひょっとして本編よりも外伝の方が面白いんじゃないか」と失礼なことを言いそうになるシリーズですから本編再開までお預けを食らうとしても不満はありません。15巻および16巻に期待。

・拍手レス。

 ペルラいいですよねぇ、、、、なんでルートないんだよー!!
 せめてファンディスクで救済措置を……ってニトロだから期待薄か。

 アゲハだけでご飯三杯いけます
 アゲハを見てるだけで口内に唾が湧いてきます。

 アゲハたんは確かに(*´Д`)/ヽァ/ヽァ
 やっぱアゲハ人気は高いみたいですねー。

 やっぱりスクライドはいいなあ・・・。(←ニコニコ動画)
 バリバリの熱血アニメ、最近だと武装錬金くらいかな。


2007-02-14.

・今日は78年前にアル・カポネの虐殺が起こった日ですね。だからどうと言うつもりもない焼津です、こんばんは。

中国の緑化運動

 だめだこいつ……早くなんとかしないと……。クオリティ高すぎ。前にも芝生か何かで似たのを見かけた覚えありますけど、山まで毒牙に掛けるとは。「ペンキオリンピック」を始めとして様々なツッコミが入ってますが、そのうちの一つ「緑壁の戦い」に笑った。

・森絵都の『DIVE!!(上・下)』読了。

「だってメロスはさ、早めに出発してふつうに走ってれば、余裕で間に合って、らくらく友達を助けられたわけじゃない。でも、妹の結婚パーティーを楽しんだり、のんきに眠ったり、鼻歌を歌いながら歩いたりするもんだから、最後にあわてることになったんでしょ。あれは絶対、作戦だと思うんだよね」
「作戦?」
「うん。余裕じゃきっとダメなんだ。もっとぎりぎりの、間一髪の、もう絶体絶命ってくらいになんなきゃ、メロスは燃えないんだよ」

 もともとはジュヴナイル方面で多数の賞を取って活躍していましたが、大人向け一般小説の分野に転じてからも『永遠の出口』で本屋大賞第4位、『いつかパラソルの下で』で直木賞候補、『風に舞うビニールシート』で直木賞受賞と破竹の進撃を続け、いま人気と評判の絶頂にある著者の代表作。ソフトカバーで刊行された時は全4巻でしたけれど、文庫化に際して上下2冊にまとめられました。1巻と2巻の内容が上巻、3巻と4巻の内容が下巻に収録されています。前々から読みたいとは思っていましたので、このオトクな仕様を知って素直に喜びました。乙一の『GOTH』を分冊されたことは未だ根に持っていますが、カドカワもたまには粋なことをする。

 高さ十メートルからの飛翔、時速六十キロの急降下、わずか一・四秒の空中演技――水泳における「飛込み」は一瞬の競技だが、訓練は年中無休で絶え間なく続けねばならない。厳しいカロリー制限と運動量と拘束時間。友達が好き勝手に食べて遊んで恋もして青春を謳歌しているのを尻目に、ひたすら黙々と水面に向かってダイブする日々。高所の恐怖とミスした際に打ちつける全身の痛みから脱落者が絶えない苛酷なジャンルのくせして日本での注目度は低いから、競泳などに比べれば華々しさとは縁遠い。しかし、その省みられることの少ない一・四秒の世界に、己の持てるものすべてを懸ける少年たちがいた。MDC(ミズキダイビングクラブ)に通う知季、陵、レイジ、要一、飛沫。彼らはコーチたちとともに、コスト削減のために取り潰される恐れのあるMDCを救おうと必死になるが……。

 「青春を犠牲にしてスポーツに打ち込む」という形での青春。何もかも捧げたとして必ず報われるとは限らない、そんなシビアなルールの大海原へ飛込んでいく少年たちの姿を四部構成で綴ったスポーツ小説。マンガに対して小説では希少なスポーツもの、というだけで読む価値はありそうなものですが、「希少なジャンル」に甘んずることなく細部まで徹底的に描き切ることで純度と完成度の高い青春小説にも仕上がっています。とにかく面白かった。一ページ目から引き込まれ、夢中になって読み耽りました。軽やかで鋭いキレのある文体が目に心地良く、読み出したら止まらないです。飛込みの魅力に魂を奪われながらも、幾度となく「もうやめたい」という思いに囚われる主人公たちの心情が簡潔にしかし綿密に書き込まれており、「苦しさをおしてなおダイブし続ける意味とは何か?」という疑問を通して、勝ち負けを超えた領域での目標に迫っていく展開はしきりに胸が熱くなった。「勝ち負けを超えた」とは言っても勝負そのものを否定するわけじゃないし、精神論にも終始しないので、スポーツ観戦的な楽しさも充分に味わえます。

 部ごとに主人公が変わるというのも良かった。他の部では分からなかったその人物の内面を掘り下げ、また他の部で主人公を務めていた人物を違う視点で見ていくことによって二重三重にキャラクターの深みと厚みが増します。たとえば要一という高校生は中学生の知季からすれば「大人」に近いし、クールで飄々とした言動や揺るがぬスタイルを保持しているあたりはいかにも「叶わないなぁ」と大きな隔たりを感じさせるが、彼が主人公になるパートに入ると決して「クールで飄々」が常態なんじゃないってことが分かってくる。もう一人の高校生、飛沫(しぶき)も同様。主要キャラ一人一人を丹念に書くことで、全員がスポ根にありがちな「ただ主人公を成長させるために存在するライバルキャラ」ではなく、ちゃんと「互いにライバルとして成長していくキャラ」になっています。「ライバル」はいても、「ライバルキャラ」はいない。そこに本作の魅力というか魔力があると思います。

 やたらと名ゼリフ、名シーンが多くて、あれもこれもと引用したくなる欲求を抑えるのに苦労しました。

「でも、俺の肩にはMDCに通う三十人の未来がかかっている」
「三十人の未来は、三十人それぞれの肩にかかっているのよ。だれも代わりに背負うことなんてできない。たとえMDCが閉鎖に追いやられても、本当に情熱のある子はどこかで続けるわ」

 とか、悲壮さや逆境に頼らず、スポーツをやるのは楽しいから――とりもなおさず、ダイブするのは自分のためなのだ、という個人の決断に重きをおいて描かれているあたりなんか実にたまらない。これだけのテンションと熱を保って書くのは大変だろうと思いましたが、案の定解説者によれば、作者は夏休みに向かったヨーロッパ旅行の帰りの便で「この飛行機、落ちたらいいのに。そうしたら、もう続きを書かないで済む」という考えがよぎるほど追い込まれていたそうな。作者の苦労と苦悩を養分にして育った果実を、一切の躊躇も遠慮もなく貪って堪能できる「読者」という立場にいることを、ありがたいようなもったいないような気分にさせてくれるエピソードですね。しかし、既に書き上がっている以上は美味しくいただくより他に手はない。ごちそうさま。

 チームプレーではなく個人プレー……「協力」ではなく「競争」を原理とした世界で己を貫くことの爽やかさ、清々しさが溢れんばかりに詰め込まれています。いわゆる「熱血」と呼ばれる路線とは違うけれど、これほど血が滾る作品はそうない。全力でオススメ。

・カルネはいまだに一周もしておりません。長い……。


2007-02-12.

・控え目に言っても「廃人」と呼べるくらいニコニコ動画にハマっている焼津です、こんばんは。やばい、連休はカルネを徹底的にやり込むつもりだったのに、ほとんどの時間をニコニコを費やしてしまった。擬似実況感覚が楽しくて、同じ動画でも繰り返し繰り返し見てしまうんですよね……どうせすぐに飽きる、とタカをくくってましたけど、飽きるとしてもそれまでの間に廃人度がひどいことになってそうだ。

 とりあえず面白かった分をいくつかリンク。

 涼宮ハルヒの憂鬱 「最強○×計画」
 言葉にできない more than words can say
 「ボブの絵画教室」ダイジェスト
 コードギアス 秘密結社 黒の爪(字幕付き)
 THE END OF CHOCO RANG TANG ISLAND - Trailer 1 Spoo/スプー
 何やってんだあのヤロウ
 tUNAK M@ster
 GALAXY ANGEL ジャンケン十三奥義

lightの『Dies Irae』、WEB体験版をプレー。

 ちょっとだけのつもりだったけど、気が付いたら最後までやっていた罠。期待に違わぬ面白さでした。

 本作は『PARADISE LOST』の正田崇がシナリオを手掛ける長編ADV。パラロスが出たのは『Fate/stay night』と同時期だったから、実に3年以上も経過してることになります。その間に正田は『Dear My Friend』の一部シナリオを担当したりしていますが、メインを張るのはこれが2回目。パラロスは出だしがぎこちないとか、ラストが尻すぼみとか、いろいろと粗いところもあったけど燃える見所も豊富だっただけに、正田がふたたびピンで書くとなればワクワクしないわけがない。ナチス絡みのネタ(アインザッツグルッペン、ディルレワンガー、アーネンエルベ、レーベンスボルンetc...)を始めとして、フランス革命の時にロベスピエールが使用したという曰くつきの断頭台(ギロチン)が出てきたり、串刺し公(カズィクル・ベイ)と呼ばれているキャラやルサルカ(水妖)という名前のキャラもいたりと、かなり無節操に手を広げていて「これいつの時代の伝奇バイオレンス?」と聞きたくなること請け合い。設定の段階で読み手を辟易させるような歪んだ情熱が至るところに篭もっており、「明らかに中二病、だがそれがいい」と、イタがるのも通り越して快感を覚え始めている人も多数存在する模様です。無論当方もその一人。やるとなったら徹底的にやってくれるのが好ましい。

 さて、設定面ではコテコテの伝奇バイオレンスですが、主人公は普通のエロゲーにでも出てきそうな無気力っぽい学生くん。退屈ながらも予定調和な日常の繰り返しを愛していた彼は親友との大喧嘩をキッカケにしてどんどんと身辺の日常が壊れていって、どうにも歯止めが利かなくなってきた状況に強い不安を感じます。体験版では「平穏な日常オワタ\(^o^)/」な第二章までプレー可能。主人公は無気力ながらそれなりに主体性があって、ぐじぐじ悩むこともなく、やっててイライラさせられる局面がなかったあたりは好印象です。

 腐れ縁の幼馴染み、少しエキセントリックな先輩、その先輩の保護者である巨乳眼鏡のお姉さんに加え、夢に出てくる謎の金髪っ娘、現時点では敵か味方かも分からない連中の「見た目ロリ実年齢ババア」な赤毛や同年代っぽい黒髪少女と、ひとまずヒロイン格の女性キャラも六人ほど登場。このうち攻略できるのは三、四人かな? 今回はパラロスと違って一本道じゃなく、選んだヒロインによってルートの展開が大幅に変わるという情報を小耳に挟みましたが、真偽の程は不明。どうあれ血飛沫が嵐の如く吹き荒れる戦場へと身を投じていくこと自体は一緒みたいですが。死体もゴロゴロ転がりそう。キャラの一人がその気になれば「街を地図から消す」ことも可能らしいので、戦闘がどこまで激化してインフレ起こすかは定かじゃありません。ベルリン陥落の際も「その気」さえあれば赤軍五十万を滅ぼせたとまで豪語するから驚きです。

 真意の掴めない思わせぶりな会話が多くていささか退屈させられる場面があったり、ちょっと大仰すぎないかって表現が頻出して鼻に付いたりするところもありましたが、予想していたよりはおとなしかったので全然問題なし。ただうちのマシンだとムービーのロードに若干時間が掛かるのが難か。数秒固まるのでフリーズしたのかと心配になることしばしば。テキストもだいぶこなれてきた印象があります。日常シーンはごく順当に楽しいし、体験版のシナリオにも一応収録されている戦闘シーンも、まだまだ本領発揮とは行かないもののテンポが良くて引き込まれました。カズィクル・ベイ中尉ことヴィルヘルム・エーレンブルグのヴィルたん(*´Д`)ハァハァ。彼ってば今んところ主人公がどうやっても歯の立たない強さを誇ってるんですが、いずれすぐに「なにィッ、こ、この俺様がァッ!?」と叫ぶようになったり、新しく登場したキャラにサクッとやられて「あのヴィルヘルムが一撃で……!」と言われたりしそうな噛ませ犬臭を濃厚に漂わせているのが愛しくてたまらない。ヒロインではもちろんルサルカに魅了されています。やっぱり人外ロリ最高。

 ところでこの作品、誰が敵で誰が味方なのか……というより、そもそもこれはどういう種類の「戦争」で、何のために、何と戦っているのか、何を敵と見定めるべきなのか、結局何を倒して何を手に入れれば勝利と言えるのか、分かりやすい説明がまだなく、最終目標がぼんやりしていて先の展開を読むことができません。ドキドキハラハラする面もあれば「何が何だか?」と混乱する面もあります。ああ、続きを早くプレーしたい。良い意味で驚愕と衝撃のストーリーを紡いでほしいなー、と願う次第。とりあえずはドラマCDを聴いて体の火照りを冷ましましょう。

・冲方丁の『オイレンシュピーゲル1』『スプライトシュピーゲル1』読んだー。

 シュピーゲル共闘戦線と銘打たれた二誌同時連載企画の小説がやっと本になりました。平たく言えば、同じ時代の同じ都市を舞台にした小説だけど、それぞれで主要人物が異なる……ってな感じです。一部の脇役は両方のストーリーに登場するし、一方で発生する事件が他方でもチラッと触れられていたりしますが、メインキャラはまだ越境せず、ダイレクトに話が繋がる部分もない。しばらくは独立した物語として進めて、やがてクロスオーバーさせるんじゃないかなーという空気を漂わせています。

 舞台となるのは2016年頃、つまり近未来。オーストリアの、かつてウィーンと呼ばれていた都市「ミリオポリス」が主戦場となります。三人一組の少女たちは猛火を掻い潜って街中を駆け回る/翔け回る。今回も『ヴェロシティ』の時と同様(と言っても連載が始まったのは『ヴェロシティ』以前だけど)に独特の文体をしています。「――」「/」「+」「=」、それに体言止めの連発。情報を圧縮してスピーディに読めるように……という配慮とのことですが、慣れないと読みにくい面はあるし、人によってはどう見ても手抜きとしか映らないでしょう。そこを越せば「ああ、キャラ萌えに走っているように見せかけてやっぱり冲方だなぁ」と浸れること請け合い。身体障害を理由に機械化された少女たちが、超少子高齢社会で都市の治安を維持するためにテロリストどもと戦うっていう、なんだか立場を変えた『GUNSLINGER GIRL』みたいな設定で相も変わらず「戦う少女」というテーマを追い続けています。ライトノベルである=読者の年齢層が若いことは一応意識しているのか、擬音表現を始めとしてやや砕けたニュアンスの文章にしているものの、「テロリストを殺さずに撃退/逮捕」なんていう生温い措置はなし。歌いながらバラバラに切断したり/機銃の弾を六秒間で三万発掃射したり/と、「粉砕」や「殲滅」って言葉が似合う派手かつ容赦ないアクション展開てんこ盛りです。冲方は戯れの出来ぬ男よ。

 オイレンは地上戦を得意とする遊撃部隊ケルベロス(犬が三つと書く)、スプライトは空中戦が可能な要撃部隊フォイエル・スプライト(スプライトは妖精、フォイエルは火が三つと書く)の活躍を描いていて、テロリストの背後に「プリンチップ社」という謎の組織が存在することは共通しているから、展開はほぼ似た感じになっています。どちらも一巻だけにキャラ紹介も兼ねているのか、ストーリーの進行に合わせる形で一人一人隊員の生い立ちを綴っていく構成も一緒。しかし、チームにおける人間関係はもちろん違うし、オイレンは陽気だけどやや乾いた雰囲気で、シュピーゲルは重いけど明るい調子を保っていて、読み比べてみると「やっぱ別のシリーズだな」と納得させられます。個人的には灰村キヨタカの絵が好きなせいもあってか、スプライトの方が気に入りました。話の流れが完全にテンプレ化されているのだけど、「定型ゆえの安心感」があり、またそれが許されるだけの安定した実力も発揮されているので楽しく読めます。キャラクターもイイ。リーダーを務める鳳(アゲハ)はお嬢様口調&お姉ちゃん的性格&左目に海賊傷&豊乳&機銃乱射癖と、ビジュアルも含めて相当強烈にキャラが立ってます。乱射する時のセリフ「ご奉仕させて頂きますわー!」のルビが「ダダダダダダダダダダダダダダダ」になってるのも笑える。末妹的な位置づけの雛(ヒビキ)は常時ヘッドフォンで音楽を流して自己閉鎖し、毎回ポーズでも何でもなく本気で怯えている=警戒しているのが面白かった。真ん中の乙(ツバメ)は……正直ちょっと浮いてるかな……キャラ立ちも中途半端だし。絵的には好きなんですが。

 スプライトの方が好みとはいえ、オイレンもオイレンで悪くない。『ヴェロシティ』の拳骨魔、ジョーイを連想させる鉄拳主義の小隊長・涼月に、冷静沈着でなにげに惚れっぽい狙撃手・陽炎、ひと昔前のアイドルみたいに明るく天然気味な殺戮ミキサー・夕霧と、面子自体はかなり濃かったりする。どっちから読んでもOKだし、今のところは両方読まなきゃ内容が汲み取れないってこともありませんが、シュピーゲルの世界を堪能するには個別に着手するよりも揃えて一気に読む方がベターでしょう。

 まだどっちも「シリーズの幕開けを示す序章」という程度で本格的に動き出してはいませんが、ひとまず「両方続きが読みたい」と願うくらいには引き込まれました。近未来とはいえマルドゥック・シリーズや『微睡みのセフィロト』のノリ――強いて言えばハリウッドのSF映画っぽい――とは異なり、アニメやマンガを想起させるテイストに仕上がっている。文体の特殊さで新規読者の参入を阻みかねないところがあるものの、何はともあれ――

 豊乳のアゲハタン(*´Д`)ハァハァ。


2007-02-09.

第27回横溝正史ミステリ大賞受賞作決定

 『LOST CHILD』……どうしてもあれを連想してしまう。

lightの『Dies Irae』、WEB体験版配布開始

 キタ! この日をどれだけ待っていたことか。声だけ聞いても誰が誰だか区別付かない気がして積んでいたドラマCDもようやく聞ける。カルネの合間を縫ってプレー致したく存じます。

ニトロプラスの『月光のカルネヴァーレ』、プレー中。

 ペルラかわいいよペルラ。外見の時点で既にツボでしたが、ドSでありながら微妙にMっ気を感じさせる百合メイドロボって何だよ、死角ナシじゃないかよ。無表情であんまり感情とかなさそうな、昔だと綾波レイ、最近の例で言うと長門有希っぽい素振りをしているからこそ、この乏しくも抑制の利いた感情表現が活きてくるのだと思います。

「ということは、お姉様と、ふたりきりですか?」
「ええと、おねえさまではないですけど、そうです」
「……ふたりきり」
「……ふたりきりです」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………時間よ止まれ」

 ザ・ワールド! 無表情キャラがボソッと呟く本音は世界の歯車を停止させる破壊力を有すると判断しました。アンドロイド系は苦手というかあまり好きじゃない(中学生のときに読んだ『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』のショックを引きずっているのかもしれない)当方ですが、彼女に関してはセリオや8号さん以来のストライク。あと発売前に注目していたチェス指し人形のコルナリーナは声の演技が思ったよりオバサン臭くてガッカリしましたが、キャラとしての位置づけは予想以上に面白かったので収支トントンってところかな。

 一周するのにも20時間くらい掛かるって噂もあるだけに「うわ、こんだけやったのに話が進まねー、まだまだ長そー」と痛感させられることしきりな本作、やっと序盤のダルい部分を抜けてきて楽しくなってきた感触を得られた次第。とにかく最初の5時間はまだまだプロローグの範疇と捉えた方が良さげ。話が熱を帯び始めるのは7、8時間目からです。ゆっくりたっぷりじっくりと仕込みを済ませて、これで盛り上がらなかったら洒落にもなりません。ときたま登場するペルラさんを視線で犯し愛でつつストーリーを進行させていきたいと思います。

・拍手レス。

 うつろあくたさんはシナリオよりもPRINCESS BRAVE! などの作詞のイメージが強いです
 『ネコっかわいがり!』の「dote up a cat」の作詞もそうですね。ED曲は元長柾木ですが。

 ソウルアンダーテイカーの第2巻が未刊であることを知りました。絶望した!
 作者が病気療養中とのことで、回復を気長に待ちたいと思います。未刊でも未完じゃないと信じたい。


2007-02-06.

・来月にトマス・ハリスの新作が出ることを今更知った焼津です、こんばんは。タイトルは『ハンニバル・ライジング』。レクター博士の若き日を描く過去編の模様です。彼はいかにして普通の青年から一級の猟奇殺人者へと変貌したのか。トマハリ作品はそこそこ好きなのでチェックしておきます。

・新刊マンガ(と言っても発売はどれも先月だけど)をまとめ読み。高遠るいの『SCAPE-GOD』、椎名軽穂の『君に届け(3)』、原作:竜騎士07、作画:みもりの『ひぐらしのなく頃に 宵越し編(1)』

 『SCAPE-GOD』は今はなき“電撃帝王”に連載されていた作品で一冊完結。「特異」と呼ばれる化け物が無尽蔵に発生する世界で、主人公(女子高生・レズビアン)はひょんなことから不死の神「ひつじさん」と出会う。意識的に「セカイ系」の様式を取り入れたつくりとなっており、化け物が自然発生したりアルファにしてオメガな存在がいるところはなんとなく『殺×愛』を連想させる。話と話の合間に作品解説が挟まれているが、ほとんどは随所に仕込まれたパロネタの説明。「続く入浴シーンでの「しずかちゃんか」というセリフは、言うまでもないが『ドラえもん』のしずかちゃんである」とか「パクリだインスパイヤだ、というのは、当時巻き起こっていた「のまネコ問題」に絡めた時事ネタ」とか恐ろしくどうでもいいことを、ファンサイトならいざ知らず発信元たる本の中でわざわざ言及するスタイルには呆れるのを通り越して感心しました。和月伸宏の自己解説以上にざっくばらん。内容に目を転じれば、ハナっからインフレを起こしているし、主人公は女性キャラを食っちゃう(性的な意味で)し、それどころかオナニーしてるとこの描写まであって、もはや好き放題。とはいえギャグ一辺倒ではなく、「セカイ系」であることを踏まえてシリアス要素も咀嚼しています。このゴタ混ぜ感は『CYNTHIA THE MISSION』でも見られるポイントですね。パッと見は伝奇アクションですが、爽快さとは無縁のほろ苦い読後感を残していきます。打ち切り臭い強引な展開が却って魅力に映るヘンテコな一作。タイトルは「スケープゴート」と掛けているのでしょうが、読み出すまで「SCOPE-DOG」だと勘違いしていた人間がここに。

 『君に届け(3)』は少女マンガをあまり嗜まない当方も熱中している作品。3巻の表紙絵は野郎二人ですが出番はむしろ女性キャラの方がずっと多い。見た目は陰気だけど性格はポジティブで、別に根暗というわけじゃない主人公・爽子(あだ名は貞子)が、これまで恵まれなかった「友達」を得たことにいちいち感激する、「ささやかで大切な日常の積み重ね」を基調とした内容がすごく和む。読んでるとついニヤけてしまうので人がいるところでは読めません。1巻や2巻で存在をほのめかされていたふわふわ髪の女の子がやっと舞台の前面に登場し、ここから修羅場展開に行くのか? 行くのかー!? とワクワクすることしきり。ただ『君に届け』は雰囲気の良さが味わい深いマンガだから、こう、あんまりドロドロのきっつい三角関係には発展しないでほしいなー、というのが正直なところ。当方は修羅場スキーですが、何も過激な内容が必須と申すわけじゃありません。中途半端で有耶無耶にしてほしくないってくらいで、刃物だの精神的に追い込むだのはあってもなくてもOK。

 『ひぐらしのなく頃に 宵越し編(1)』はゲームになかったオリジナルのシナリオを描く作品。昭和58年ではなく平成の世が舞台、という点で他のシナリオとは一線を画していますが、面白いのはシチュエーション。怪奇スポットと化した雛見沢村にやってきた五人の男女が雨宿りのために集会場へ上がり込んだところ、殺人事件に巻き込まれる。「犯人はこの中にいる……!」な雰囲気のまま以下続刊。クローズド・サークル状況のフーダニット・ミステリといった趣に加え、雛見沢村に「やってきた」のではなく「帰ってきた」ある人物の目的が何なのか、という興味もあります。同じオリジナル作品でも、「鬼を曝す」というだけあってサイコ・スリラーの様相が強かった『ひぐらしのなく頃に 鬼曝し編』とはまた違った路線ですね。ホラー要素は若干弱いものの、補うように謎解き要素が盛り込まれていて続きが気になるところです。

ニトロプラスの『月光のカルネヴァーレ』、プレー開始。

 先月末に発売されたニトロの新作。フルプライスの本格的な長編作品としては『塵骸魔京』以来で、約一年半ぶりとなります。原画は『刃鳴散らす』の大崎シンヤ。にしーよりもクセのない絵柄ですが、やっぱりニトロの塗りとは合わないところもあるな、と思ったり。ライターは今回が初となる下倉バイオです。誰かが名義を変えて書いているのでなければまったくの新人ということになり、なんかもう最近のニトロプラスは「本格的な長編作品」をつくろうとするたびに新しいライターを見繕わなきゃダメなのかと勘繰りたくなる状況だ。さて、「ゴシックノワールADV」と謳っている本作はタイトルの「カルネヴァーレ(謝肉祭)」が覚えにくいせいもあって、さんざっぱら「カルボナーラ」と言われまくり、遂にはスタッフさえもがネタにする域まで達しましたが……ぶっちゃけ何が売りよ? と訊ねられたら実に答えを出しにくい一本であります。

 満月の夜になると狼に変わってしまう主人公がゴミ捨て場で記憶喪失の自動機械人形(オートマタ)を拾ってしまい、なんとなく共同生活が始まって、主人公のロメオはタクシードライバーを、人形のアンナは工房の手伝いをして生活費を稼いでいたが、彼らに様々な魔の手が伸びて……というのが大まかなストーリー。イタリアの街を舞台にして、満月の夜に娼婦を殺すシリアルキラー「怪物(イル・モストロ)」、人狼たちを統べる犯罪組織「赤い足跡(オルマ・ロッサ)」、人狼たちを屠る特殊部隊「鳥兜(ルパーリヤ)」などが暗躍するっぽい。また主要陣すらも出揃っていませんから、今後どういうふうに展開して抗争とかにもつれ込むのかまだまだ分からない。ゆったりとした歩調でなかなかストーリーが進まなくて、長いとは聞いてましたがこれは本当に長くなりそうだなぁ。

 テキストは悪くないです。字が小さくて読みづらいこともありますが、書いてる内容自体はとても平易でよく目に馴染む。相当にアクが強かったデモンベインの出だしと比べれば非常に緩やかと言えます。反面、特徴らしい特徴のない文体であり、動きの少ない場面ではちょっと眠たくなることも。拒否反応が出にくい代わりに惚れ込むところも少ないというごく無難なタイプですね。キャラの遣り取りは楽しいので、もうちょっと面子が増えたら雰囲気も盛り上がってくるだろうか。シナリオに関しては……んー、現時点では微妙。「ゴシックノワール」と言われてもどこがゴシックでどのへんがノワールなのかさっぱり不明で、他の人に対して説明しづらい。プレーする前から何が「売り」なのか見えないソフトでしたが、いざプレーし始めてもセールスポイントとなる要素がなっかなか見えてきません。殺人鬼だの人狼だのオートマタだのは派手なようでいて案外地味な扱いだし。「ここだ! ここが月カルのツボ!」と指摘して耳目を集めさせるような箇所の見極めが難しい。こりゃ長期戦になるかもですね……。

 キャラクターは今のところアンナが気に入ってます。あのバカ声を最初に聞いたときはガクーッとなりましたが、今やすっかり慣れて「これがいい」と確信し切っている始末。男キャラではカルメロ(どうしてもついカリメロと言いそうになる)が素晴らしくチンピラめいていてナイスです。中の人が『あやかしびと』で双七を演っていた声優さんですけれど、ホント悪役と化したらノリノリだわこの人。で、ストーリーはまだこれからなので特に感想ありませんが、一つ気になるのは「人狼に効くのは銀」って理屈で人狼VS人狼戦の時にお互い銀武装をすること。攻撃されるのはダメでも装備するのはオッケーなんでしょうか? 何か説明を読み落としたかもしれません。

 かなりの長丁場が予想されますので、更新が滞った場合は「ああ、今頃必死で月カルやってんだろうな」と思ってくださいませ。読書時間を削って当て込むつもりですから、本の感想とかもほとんど書けなくなるでしょうし。


2007-02-04.

Lost Scriptの新作『長靴をはいたデコ』、劇中劇に星矢パロの「ホスト☆聖夜」

 Lump of Sugarの『いつか、届く、あの空に。』lightの『Dies Irae』を見て「今年はエロゲー界で黄道十二宮ブームが来るかも」とテキトーなことをぬかしていた当方ですが、ロスクリまで星矢パロをやり出して案外冗談でもない気がしてきました。しかしこの三つのブレンド、どこも「L」から始まってるんですよね……なんか妙な符号を感じたり。

 で、「ホスト聖夜」。星矢のみならず北斗パロも少し混じっているような見るからにアホっぽいネタなのに、原画はメインのvaniillaとは別にかの吉澤友章をわざわざ呼び入れたそうで。まさしく「無駄に豪華」です。言うまでもなく大槻涼樹とは縁のある人だから人選に違和感はありませんが、もうちょっとこう、使い道というかなんというか……。

 またサブライターにうつろあくたを起用とのこと。聞き覚えがあるなー、と思って調べたら13cmのライターですね。あまりピンでは仕事してないらしく、名前知ってても特にイメージらしいものが浮かんでこない。いろんな意味でコメントしにくい雰囲気を発している『長靴をはいたデコ』ですが、ひとまず注目しておきます。

07th Expansionの『ひぐらしのなく頃に礼』、コンプリート。

 ちょいと暇を見つけて集中的にプレーしたらサクッと終了しました。全体で3時間くらい。「暇潰し編」よりも少ないシナリオ量なので、物足りないというか、ちょっと寂しいかな……FDとしてはまずまずの仕上がりだと思いましたが。

 本編の後日談に当たる「賽殺し編」は、抽象的な言い方をすると「ウビ ペデース、イビ パトリア(立っているここが祖国だ)」な話。望郷の念と「住めば都」な感覚に両腕を引っ張られながら「自分の居場所はどこなのか」を考え、迷って悩んだ末に立ち位置を選び出す。んー、ネタバレ抜きで語るのは難しいですねー。割とストレートな内容で、本編の補足という位置づけにあり、「『ひぐらし』やったなら絶対に読まなきゃダメ」というほどマストな代物ではありませんが、少なくとも蛇足とはなっていない。ある面で『ひぐらし』の病根とも言える「魔女」を償却するうえで必要なシナリオだったと思います。が、さすがに駆け足だったかな。真相の一部を曖昧にしたまま終わるリドルストーリー形式は内容とハマっていて良かったけれど、テーマ性が前面に出すぎて話運びがいささか御都合的かつ強引な印象もある。シナリオを最低限まで切り詰めちゃってあまり余裕が感じられないと申しますか。あと梨花ちゃま視点なので梨花本人の立ち絵が出てこず、梨花スキーの当方にはディ・モールト残念な仕様。まあ後日談として見ればいかにも『ひぐらし』らしい出来で、多少の不満はあれどキッチリ楽しませてもらったことは確かです。しかしこれ、冒頭は「ちょwwww」な感じで度肝抜かれましたよ……。

 「昼壊し編」はタイトル通り『ひぐらしデイブレイク』の世界観を背景にした番外編。古手神社の至宝「フワラズの勾玉」を巡ってドタバタする、「賽殺し編」とは打って変わってのスラップスティック・コメディです。惨劇の方は終わったのか、そもそも惨劇が起こったのかどうかも疑問な状況の中で話が進みます。いわゆる御都合処理を施された話なのでいちいちツッコむのも野暮ってもんでしょう。ひデブはやってませんが、問題なく堪能できました。はっちゃけたノリに「くっだらねー」と笑いながらプレーした次第。これも短いシナリオなので、同じボリュームの奴があと2、3本欲しかったところだなー……というのは贅沢な注文か。『礼』の製作期間って4ヶ月くらいしかなかったはずですし。そしてオマケシナリオの「罰恋し編」は十数分で終わる本当に「オマケ」なシナリオでした。「昼壊し編」以上にくだらない。ここまで行くと笑えるのを通り越して呆れます。

 次回作の『うみねこのなく頃に(仮)』についてもチラッと触れていますが、プロットもこれから取り掛かるという段階らしくハッキリとした情報は得られず。『ひぐらし』に関しては今後も番外編か何かをつくっていく模様。最初は『礼』で完結する予定だったものの、書いてるうちにまだまだ続けられる、続けたいと願うようになったんだとか。いつになるか分かりませんが『礼』みたいなのがまた発売される日をのんびり期待して待つとします。

・ロバート・R・マキャモンの『魔女は夜ささやく(上・下)』読了。

「わたしはいまも……あの女はおまえの夜の鳥だと……おまえを闇のなかへ送りこもうとしているのだと思っている。しかし、男はみんな夜の鳥の声を聞く……姿形はさまざまだが。その声と……闘って乗り越えるのだ……声は男の魂を……つくりあげるか、滅ぼすかだ」

 原題 "Speaks the Nightbird" 。「夜に啼く鳥の声に魅せられ、昼の仕事を投げ出し、ずっと夜中じゅう起きてその声に耳を澄ますようになった男がいた」という作中のエピソードから来ています。本書はスティーヴン・キングやディーン・R・クーンツと並ぶモダン・ホラーの作家として話題になりながらもしばらく休筆していた時期があったせいで日本での知名度が若干低い作家ロバート・R・マキャモンが10年ぶりに刊行した新作です。見た目はあまり厚くないけれど、二段組で紙質も薄く、実はかなりのボリュームがある長編。普通ならちょっと怯むくらいあります。なのにいざ手を付けると、マキャモンの筆力のおかげで夢中になって読み耽ってしまい、さして「長かった」という感じがしない罠が仕掛けられている。夜に読み出したらまさしくこの本自体が「夜に啼く鳥の声」に負けないほどの魅力を発揮します。

 1699年、カロライナ地方。雨の中、判事であるウッドワードと書記のマシューはファウント・ロイヤルへ向かっていた。まだ開墾されて間もないこの植民地では疫病が蔓延り、作物が枯れ、原因不明の火事が頻発し、逃げ出す人々も多く、街そのものが死に瀕しているかのよう。すべては、魔女のせいだ――かのセーラムで執り行われた魔女裁判に習うかの如く、一人の女性が訴えられていた。褐色の肌と漆黒の髪を持つ美しい未亡人レイチェルには、司祭を殺し、自らの夫も殺し、地獄のサタンと姦通して街に滅びをもたらした容疑が掛かっている。法の精神に則り、正しく彼女を処罰すべく、証人の訊問を開始するウッドワード。レイチェルが魔女であることを疑いもせず、人々は「有罪だ」と主張して己の体験談を話す。しかし、彼らの証言を書き留めるマシューは、「何かおかしい」と気づいた。証言の中に混ざった齟齬や曖昧さ。これはいったい何を意味するのか? 次第にレイチェルが魔女であることに疑問を抱き出したマシューは「魔女に誑かされた」と侮蔑されながらも、ただ真実を求めて街の秘密を暴きに掛かるが……。

 魔女裁判。咄嗟に思い浮かぶイメージは中世ヨーロッパですが、新大陸たるアメリカにもセイラム魔女裁判という歴史的に有名なケースが残されています。あまりにも有名でエロゲーの題材にまで採られたほど(タイトルは『セイレムの魔女たち』)。そのセイラム(作中ではセーラム)の事件から7年後が舞台となるだけに、登場人物たちの記憶もまだ風化していない。「ひょっとすると魔女とかサタンって実在するんじゃないか」という、現代では「迷信」の一言で片付けられそうな発想が辛うじて生き長らえている。というわけで、「魔女」の無罪を証明しようとするマシューはいきおい苦境に追いやられます。処刑を食い止めて命を救うだなんて、どう考えても絶望的な事態にいかにして立ち向かっていくべきか。本来なら何よりの味方となってくれるはずの判事が「裁判は法の精神に則って厳正たるべき」という態度を崩さないので、マシュー君は一人で全貌を明かさなくちゃならない。タイトルや藤田新策のカバーイラストが与えるおどろおどろしいホラーな印象を裏切って、「観察力と推理力だけが武器」という青年が手に汗握る孤軍奮闘を繰り広げる熱いストーリーとなっております。『ミステリーウォーク』のイメージが強い(というよりマキャモン作品はこれしか読んでない)ので、存外にミステリの様相が濃かったことには驚きました。とはいえ、こちらの関心を話の中に引きずり込むパワーは相変わらずにつき、その点ではひと安心。

 さて、「魔女」です。本書における苦境というのはマシュー君が権力も何もないただの書記官ということや、観察力や推理力は優れているのに如才なく立ち回ることができなくて周辺を嗅ぎ回るたびにいちいち煙たがられてしまうこと、事件の特徴がスーパーナチュラル色を帯びているせいで真相を看破しにくいこと、等々もありますが……とにかく「魔女」の一言で言動を阻まれてしまうのが最たるものでしょう。ワレの証言、おかしいやんけ、辻褄合わへんぞ、とツッコミを入れても「そういうところもあるだろう。が、相手は魔女だからしょうがない。妖しげな術でこちらの認識を狂わせたのかもしれない」とか言って平然と躱したり、拝聴するに足る言い分を彼女が述べたとしても「魔女の言葉は疑ってかかれ」と全く取り合わなかったり、そもそも彼女が本当に魔女ならおとなしく牢屋に放り込まれているはずもないだろ、と指摘しても「魔女だから何考えてるのか分かったもんじゃない」的なことをほざく。ほとんど思考停止に陥っている状態で、もう結論ありきとというか、「レイチェル=魔女」の図式に当てはまる都合の良い解釈しか受け容れられない格好になっているんですよ。だからマシュー君がどんなに努力して疑いを晴らそうとしても「やれやれ、こいつ魔女に誑かされやがった」で切って捨てられちゃう。当事者たちが聞く耳を持たないというのがどんなに最悪なことか。読んで考えるだに暗澹とします。

 話の通じない相手に話を通じさせなくてはならない。決め手となるのは、「レイチェル=魔女」という固定観念を破壊するほどの歴然たる証拠です。持ち前のしつこさで真相にはなんとか肉薄していくマシュー。「だが、証拠がなくては、法律という家の前に立った乞食だ、これではパンのひとかけらさえ恵んでもらえないだろう」と嘆きながらも、刻々と迫るタイムリミットに向けてどんな打開策が残されているかを模索する。「真相はだいたい分かっているのに、証明することができない」――言わば、絵柄は概ね分かるんだけど、あと数ピース足らなくて完成しないパズルのようなもどかしさ。それがデッドリミット付きの状況と合わさって、切羽詰った雰囲気が如実に伝わってきます。誇りのために、女のために、ただ足掻く。足掻き続ける。諦めない――不器用なまでに青臭い。不屈の闘志と真実を希求する心が、街を蹂躙する謎の悪魔との対決を望む。やはり、熱いストーリーです、これ。

 少しばかりクライマックスが呆気ない気はしましたが、それでも夜を徹しそうになるほど読み応えのある作品。「主人公の成長」という要素を盛り込み、どういう題材であれ一つの青春小説としての香気を漂わせてしまうあたりがマキャモン固有の作風といったところでしょうか。続編は出ないだろうけど、後日談を勝手に想像するとこう、いろいろ胸が躍る部分はありますね。新作を期待しつつ過去作を漁るとします。


2007-02-02.

優曇華の写真を見ていたら錯視を起こした焼津です、こんばんは。なんかこう、ゆっくり遠ざかっていくように見えるんですよね……。

07th Expansionの『ひぐらしのなく頃に礼』、プレー開始。

 そろそろコンシューマー移植版の発売も近づいてきた『ひぐらしのなく頃に』のファンディスク。同人ソフトということもあり、予約購入するのが億劫で「どうせいつでも買えるからいいだろう」と怠惰に放置していた結果、こんなに着手が遅れてしまいました。己は本当にひぐらしファンなのか。

 収録内容はと申しますと、後日談的な「賽殺し編」、番外編的な「昼壊し編」、「目明し編」にだけ収録されていた幻のオマケシナリオ「罰恋し編」の三つ。まだ「賽殺し編」を始めたばかりですが、ジャケット絵の通り梨花ちゃまが主人公で、なかなか面白そうな展開につきワクテカしています。……というか、後日談の性質上、多大にネタバレを含むので今のところ「面白そう」くらいしか書けませぬ。具体的な感想は全部やり終わってからアップするとしましょうか。

・今月の予定。

(本)

 『オイレンシュピーゲル壱』&『スプライトシュピーゲルT』/冲方丁(角川書店、富士見書房)
 『狼と香辛料4』/支倉凍砂(メディアワークス)
 『少女ファイト(2)』/日本橋ヨヲコ(講談社)
 『蟲師(8)』/漆原友紀(講談社)
 『超妹大戦シスマゲドン2』/古橋秀之(エンターブレイン)

 今月は少ない……先月がちょっと買いすぎだった(調子こいてシリーズものを大人買いした)ので、ちょうどいいかな、とは思いますが。今月はなるべく出費を抑えて貯蓄に回すよう努力します。『オイレンシュピーゲル』と『スプライトシュピーゲル』はスニーカーとドラマガに連載されているシリーズ。出てくるキャラは違うけど世界観がおんなじなんだっけ? すみません、企画内容をあんまり理解してません。既に購入済でオイレン〜から読み出してますが、文章は例によって「――」と「/」と「=」と体言止めの連発。『狼と香辛料』は去年のライトノベル系新人の中で個人的に一番の収穫だったシリーズ。経済ファンタジーという珍しいジャンルをとことん突き進んで欲しい。今月の電撃はシャナとか針山さんとか、悪魔のミカタ(2年半ぶりの復活)の新刊とか、新人賞の作品がどっと出ますね。新人全員をチェックするのはキツイから、『ミミズクと夜の王』だけ買ってみます。あとは評判次第かな。『少女ファイト』は待ちに待ったスポ根群像青春マンガ。日本橋ヨヲコにしてはマイルドだけど面白さはまったく変わらなくて好きです。『蟲師』は昔から安定して好きなアフタヌーンマンガ。どうでもいいけど主人公の「ギンコ」という名前だけ聞いてヒロインと勘違いしている人っていないかしら。『超妹大戦シスマゲドン』は2巻で完結とのことで、非常に打ち切り臭いけど、もう出てくれればそれでいいや……前回は延期したの知らなくて本屋で必死になって探しましたよ。

(ゲーム)

 なし

 ざっと発売カレンダーに目を通してみましたけど、特に興味を惹くものはなし。違う意味で興味があるのはぼとむれすの『おまかせ!とらぶる天使(エンジェル)』です。このソフト、05年5月27日が当初の発売予定で、メーカースレによれば以来18回の延期を繰り返しているのだとか。ここ一ヶ月に限ってさえも「1月26日に決定→2月2日に変更→2月23日に変更」と怒涛の三連コンボ。「声優が豪華」ということで一回チェックした覚えもありますが、あまり注目してなかったので「まだ出てなかったのか……」と素で驚くばかり。「おまかせ!」がだんだん「おまたせ!」に見えてくるのは仕様みたいです。また延期しないのか。本当に発売されるのか。「底なし」の二つ名をほしいままとするぼとむれすが年貢を納めるかどうか、非当事者ながら固唾を呑んで見守りたい。


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