2005年6月分


・本
 『穢れしものに祝福を』/デニス・レヘイン(角川書店)
 『八の弓、死鳥の矢』/花田一三六(角川書店)
 『すもももももも(1)』/大高忍(スクウェア・エニックス)
 『ネコソギラジカル(中)』/西尾維新(講談社)
 『塊根の花』/八房龍之助(メディアワークス)
 『わたしたちの田村くん』/竹宮ゆゆこ(メディアワークス)
 『スラムオンライン』/桜坂洋(早川書房)
 『ゴーディーサンディー』/照下土竜(徳間書店)
 『神狩り』/山田正紀(早川書房)

・ゲーム
 『プリンセスうぃっちぃず』(ぱじゃまソフト)
 『ぱいめが』体験版(smart)
 『すぱっちゅ!』体験版(Studio Ring)


2005-06-30.

『塵骸魔京』、プレー中。たぶん風歩ルート。

 あ、こっちは面白いや。

 イグニスルートがどうにも不調でシナリオに関しての評価は半ば諦めかけていたものの、少しずつ上方修正が掛かってきています。まだ途中だから予想というか見込みになりますけど、要素詰め込みすぎ&展開駆け足すぎで消化不良を起こしていたあっちのルートと違ってこっちのルートは程好いペースを保って進んでいるゆえに、当方の抱いていた不満はあらかた解消されることになりそう。ほのぼのと楽しい日常が、一瞬ではなく徐々に時間をかけて「異常」に蝕まれていくあたりが実に好み。「異文化交流」というテーマも果たされていて『塵骸魔京』の面目躍如といったところ。

 この調子なら無理に「良かった探し」をすることもなく満足できるかもです。まだ気は抜けませんが。話は変わってこのゲーム、しっとりと落ち着いた雰囲気で激しい壊れギャグとかはないだろうと事前予測してましたが、意外と笑えるネタが多い。頻度はそんなに多くないものの、ときたま暗黒絵師・ヨダのイラストが挟まれて絶妙にツボを刺激。やばい。ヨダ絵の克綺、ハマりすぎ。まるでヨダによって描かれるために生み出されたキャラのよう。加えてヨダとは関係ないところでも細かく笑いを誘う。特に峰雪がイイ具合に弾けている。

 意気も盛り返してきたところだし、「中断して『あやかしびと』に移行しようかなぁ……」という弱気の策も却下してプレーに邁進するとします。それにつけても風歩の可愛らしさよ。ロリっぽさより少年っぽさを意識させる場面の方に胸がキュンと縮むのは何か計り知れない業を感じます。


2005-06-28.

『ラブやん(5)』における在りし日のラブやん→現状の落差にいろんな意味で涙する焼津です、こんばんは。空を仰ぎ地を踏み締めまっすぐ道を歩んでいたはずの天使がいつの間にか童貞ロリ・オタ・プーの押入で似非ドラ○もん生活に耽っているという堕落ぶりは面白おかしく、虚しい。事態は膠着しているのに時間ばかりが流れていく内容は正にノーフューチャー。

アニメ版『灼眼のシャナ』公式ページ、プレオープン「モノグラフ」経由)

 『A/Bエクストリーム』の頃は同期の鈴木鈴による『吸血鬼のおしごと』の影に隠れていた感のある高橋弥七郎でしたが、いつの間にか電撃の中堅作家にまで上り詰めていたのだから世の中分からないものです。シャナは設定がごちゃごちゃした話で、1巻目で投げ出す人も珍しくない分、巧くアニメに昇華することができるのかなぁ、とファン的な不安もありますが。とりあえずこれで勢いに乗ってA/Bエクストリームの新作も出していただきたく。アプラクサスからもう一年以上が経ちましたよ……。

『塵骸魔京』、イグニスルートクリア。

 当方もイグニスさんの前にひれ伏したいとは思ったわけですが……。

 うーん、正直に言って期待の度合いには及ばなかったか。細かい部分で「おおっ」と感心するところは多々あったけれど、総合的に見てシナリオの詰めが甘く、盛り上がり切らない印象を受けた。豪華な素材をふんだんに使っている割に、その持ち味を出し尽くすことなく消耗しているように見えて勿体ない。サウンドやグラフィックは素晴らしく、演出法も巧みなので引き込まれたし、大いに魅せられた反面、設定をそのまま文章に乗せて垂れ流してしまっている部分や、説明が足りず中途半端になっている部分、ストーリーの目的が最後の最後まで見えてこなかったせいで終盤が急展開に思える部分なども目についた。別段叩きたくなるほど悪くはなかったし「地雷」とまでは言いませんが、もう少し眠くならない物語を希望したかったところ。

 と、いささかネガティヴな書き出しをしつつも良かった探しをすると、「絵になる」シーンが多かったことです。CGとBGMがピタリと融合する瞬間の見事さはシナリオの不満をカバーして余りある。まるで白黒の世界が鮮やかに色を帯びて輝き出すかのよう。カットインを多用した画面構成も巧い。それと「詰めが甘い」とは書いたものの、下手に奇を衒わず手堅く攻めているおかげでゲームに漂う雰囲気も損なわれてはいません。妥協できる範囲。とりあえず、ラスト間近のあの場面は思わず息を呑みました。そして当方のデスクトップにおける壁紙も現在はイグニスさんに。そのかんばせから放つ「イグニス、容赦せん」と言わんばかりの苛烈さには遺伝子レベルで降伏の儀式。

 さて、あらかたバッドエンドは回収したことだし、次は風のうしろを歩むもののルート……長いので風歩ルートと略しますが、そっちに移行しようと思います。「異文化コミュニケーション」というテーマにおいてはイグニスルートよりも本題となっているんじゃないか、なんてふうに予想してみたり。


2005-06-26.

・休日は外出。本屋に寄って目ぼしい本を漁り、帰って積む。読まない、というか読む暇がない。こんばんは、至って不健全な積みサイクルから解脱できないでいる焼津です。書痴の煩悩は度し難い喃。

『塵骸魔京』、プレー開始。

 気の赴くままプレーしていたらいきなり即死エンド。このゲーム、選択肢間違えるとあっさり死ぬのな。適度な緊迫感が得られるし、当方は単純にバッドエンドスキーなんでそこそこ心地良い。ただ、バッドエンドそのものは淡白というか非常に味気ない代物なんで、BEスキーとして満足がいくかと言われたらそうでもないんですけれど。

 人外化生の民は人間たちのすぐそばで暮らしている──至ってオーソドックスな設定の伝奇ストーリーである本作。感情を読み取ることが不得手で、『オズの魔法使い』のブリキの木樵に見立てて「僕には心臓(ハート)がない」と語る主人公が少し特徴的です。感情をベースに敷くことなく、あくまで理屈だけで思考するのでやたらズレている。周りの人間のみならず、プレーヤーまで「おいおい」とツッコミたくなる言動がバンバンと頻出。感情移入しにくいと言えばこれ以上にないくらいのキャラクターですが、「あくまで理屈だけで思考する」からキチンと道筋立てて説明が行われ、言動自体は至極理解しやすい。特殊な思考で奇抜な行動に出る変人キャラと違うのはそのあたりでしょう。フルメタの相良宗介と似ているところはあってもあそこまで極端ではないし、終わクロの佐山・御言と通じる部分はあってもああまで無茶苦茶ではない。濃すぎない、納得のしやすいボケキャラとして成立していると思います。絵的には濃いけど。オッドアイだし。

 話の方も、「街で連続殺人事件が起こり、主人公が成り行きで巻き込まれることに……」とこれまたベタ。ベタと王道は似て非なるものであり、ベタなノリがひたすら続くとだんだん退屈してくるものです。少なくとも本作に関してはそのへんを心得てか緩急のある展開に仕上がっており、退屈させられることなくストーリーに引き込まれる。あまり派手なところはなく、どっちかと言えば地味なものの、地味もまた退屈とは似て非なるもの。無理にテンションを上げようとせず、作風の持つテンポに合わせた歩調でテキストを紡ぎ、設定を徐々に明かしていく。物凄い名作をやっているという感覚はないにしろ、ごく順当な面白さ。

 出だしの印象は悪くない。平穏な日常を送ってきた少年が人外化生のモノどもと接触し変化を遂げていく「異文化コミュニケーション」の要素も、まだ不明な点は多いにしても、それなりに興味をそそられる。しかし、体験版のときに感じていた「物語の大きな目的が見当たらない」という据わりの悪さが製品版を進めている今もなお続いているのが不安と言えば不安。先が気になる一方で、どことなく曖昧というかいまいち散漫な雰囲気があり。まだまだ本番はこれから、だといいなぁ。

 今現在、気になっているキャラは風のうしろを歩むもの……なんですが、どうもイグニスルートに差し掛かっているみたいなんですよね。彼女も彼女で好きですが。こう、強すぎないところとか。

・山田正紀の『神狩り』読了。

 『神狩り2』の美麗なカバーに惹かれ、「これを読みたい」という欲に衝き動かされて着手。記憶では中学生の頃に買ったまま積んでいたはずだったが、書庫を漁ってみると出てきたのは『神々の埋葬』。記憶違いだった模様。そこで早速古本屋を駆け回り、同じく「神」をテーマにした『弥勒戦争』はなんとか発見したものの、肝心の『神狩り』がどこにも置いてなかった。頭を抱えたい心境のまま新刊書店に赴くと、至って当たり前の風情で平台に陳列されているではないか。どうやら『神狩り2』の影響で増刷されていたらしく。「古い作品だから入手しにくい」と思い込んでいた当方の負けです。

 人類のいかなる論理で以ってしても解読できない言語──島津圭助が「古代文字」と名付けたそれを巡って、いくつかの組織が対立していた。論理で捉えることも適わず、しかし、「文字である」と直観できるもの。人間の上位に位置する論理──神の言葉。姿もなく、声もなく、ただ言葉の痕跡だけで「神の実在」を信じる羽目となった島津は、「神は人間に悪意を持っている」と考える集団に協力して「神狩り」を行うことになるが……。

 余剰のない、切り詰められた展開。処女作には作家のすべてが篭められる、いや、すべてのエッセンスを封じ込めるくらいの気迫がなければ世に出ることはできない──という一説を思い出した。テーマの壮大さに比べるとかなりの低ボリュームであり、物語の冗長化が進む昨今では却って新鮮に映る。そして「狩る」という、本来下等であったり下位であったりするモノに対して使う言葉をあえて「神」相手に当て嵌める感覚は、今読んでもなかなか刺激的だ。「神の実在」を持ち出し、その陰謀を読み取っていくストーリーはSFより伝奇に近いノリを漂わせるが、苛烈を窮める劇的なバトルなどはなく、ただ乾いた地を歩き続けるような足取りだけが記されている。砂漠の熱気に喘ぎ全身を布で覆い隠しながら太陽を憎む、栓もない旅人の面持ちが脳裏を過ぎった。

 はっきり言ってこの話、未完です。徐々にスケールアップし、「神」の不気味さを伝えたところで「本当の戦いはこれからだ」的というか、「オレはようやくのぼりはじめたばかりだからな。このはてしなく遠い神狩坂をよ…」みたいな余韻を残してエンドになっている。多作の割に未完作品が多い山田正紀らしいというか。これでは熱心な山田ファンの田中啓文が続編コールを叫んだという気持ちも分かろうというもの。幸い、続編も今年発売されましたから当方はこのまま2へ入っていくこともできますが、折角だから『弥勒戦争』『神々の埋葬』あたりの初期作も予習として読んでおこうかと。

 それにしても、せっかく増刷するなら版を改めるなりして文字をもっと大きく見易くしてほしかったなぁ。たまに印刷が掠れているところもあって読みにくかった。100ページくらい読み進めると内容に熱中して気にならなくなりましたけども。


2005-06-24.

・通販で頼んだ『塵骸魔京』『あやかしびと』が到着せり。両作とも負けず劣らずの期待作、どちらを先に着手したものかまことに迷いまする。

「申せ わしは 塵骸 あやかし いずれが面白いゲームかと 尋ねておる」
 ブク ブク ブク
「互角か 互角と 申すのだな」

 心象風景はかくの如くにて。

・で、迷った末にどちらも選ばず、代わりにsmartの『ぱいめが』体験版プレー。

「『眼鏡は』……?」
「か……『顔の一部です』……」

 バカゲーとは聞いていましたが、実に見事なバカゲーです。眼鏡フェチというポイントを徹底化し、ひたすらネタに昇華させている。部室にメ○ネドラッグのモモちゃんがいたりするのは序の口として、相手を罵る言葉が「その眼鏡は伊達かっ! 伊達なのかっ!?」、反駁が「度入りですよ! 偏光してます!!」。まるで眼鏡原理主義、「はじめに眼鏡があった。眼鏡は神とともにあった。眼鏡は神であった」と言いかねない勢いが感じられます。テキストはちょっとギャグがクドいところもありますが、演出等をひっくるめて総合的に見るとノリは良い。

 志をともにする先輩と一緒に「眼鏡同好会」の活動に勤しんでいた主人公。しかし、思想の違いから袂を分かち、同好会を離れることになった。そして彼は新たに「巨乳眼鏡同好会」を設立しようと目論む。悲願は、学園祭で選ばれるミス白鷺──美少女コンテストの優勝者を己の同好会から輩出すること。未だかつて一度たりとも眼鏡っ子が栄冠に輝いたことのない賞に革命を起こすため、マイノリティの奮闘が幕を上げる……。

 バカゲーに加え、ちょいとスポ根のテイストも入っています。本来同志であるはずの先輩との決裂、眼鏡っ子を美少女として認めない学園。絶望的とまで行かないにしても、まず勝ち目がない状況から僅かな希望を糧に這い上がっていこうとする主人公は、正に弱小チームを鍛え上げていく熱血コーチのマインド。眼鏡属性がなく、バカゲーもあまり好きでない当方すら少し引き込まれるものがあったりしました。逆境から始まる逆転劇。たとえバカゲーだろうと熱いものは熱い。まあ、そういう「面白くなりそう」というところで体験版はあっさり終わってしまうので、製品版もちゃんと熱いかどうかは分かりませんが。

 しかし……どちらかと言えば当方の嗜好、主人公よりも先輩の方に近いんだよなぁ。眼鏡っ子の中でも特に巨乳眼鏡っ子は苦手で、スレンダー眼鏡っ子は割合OKだったりしますんで。当然、気になるヒロインは玲。あと華子とみずれも気になりますが、このふたりはサブキャラっぽい。

・更にStudio Ringの『すぱっちゅ!』体験版もプレー。

 これもまたバカゲー。ただ、正確に書けば「バカであることを免罪符にしたエロゲー」です。常識的な過程を踏むことなく高速でエロへ踏み込んでいくには鬼畜になるかバカになるかの二択であり、後者を採択したために楽しく手早く手軽にえちぃシーンを見ることのできる仕組みになっています。

 ブルマーか、スパッツか。究極の二者択一に懊悩する主人公。「どちらも好き」という素直な答えを出したいところだが、それでは志のない無節操な人間になってしまう。アイデンティティを確立するために、「自分が本当に好きなのはどっちか」という真実を見極めねばならなかった。深まる苦悩。やがて結論が出る。「考えていても仕方ない、実地で確かめよう!」 かくして彼は幼馴染みの女の子にブルマorスパッツを「穿いてくれッッ!」と頼み込むことに……。

 で、この後でしまぱんの少女とか黒ストの人とかが出てくるので、このゲームはブルマフェチ、スパッツフェチというより穿き物フェチ、下半身フェチ向けのソフトになっているのではなかろうか。フェチとはいえ単に暑苦しく好みを語るだけではなく、「しまぱんは穿いていても見せられない→公然と見せたら痴女になる」「スパッツやブルマは穿いているのを見られても構わない→痴女にはならない」などと一応理屈に基づいて論説するあたり、小技が利いていて面白い。

 若干システムが重くてプレーしづらいところはあったが、明るく気軽なエロゲーとしてはそこそこ良さそうな気配。当方個人の嗜好で言えばスパッツやブルマよりもやはり黒ストですが。黒須先輩も、黒ストを脇に措いても好みのキャラだし。黒ストが加われば魅力二乗。

・……と、華麗に脇へ逸れてみましたが、結局『塵骸魔京』を先に崩すことにしてインストール。翌日から本格的にプレー開始といきます。

・それはそれとしてpropellerのOHPにある「神沢学園新聞」最新号にはやはり笑った。「好きな芸能人は加藤保憲♪」が特に。新聞部部長のあやかさんってドーマンセーマンを染め抜いた手袋をはめている気が。『あやかしびと』は神沢を愛し神沢を憎むすべての人々へ贈られているのでしょう。


2005-06-22.

・体調を崩して休養していた焼津です、こんばんは。ここ3日、粥とスポーツドリンクくらいしか口にしておらず、体力がごそっと抜け落ち中。それでも身体に鞭打って『シグルイ(4)』を買いに出かけるあたりが当方らしいと言うか。テンション低い状態で読んでも面白い。もう少し回復したら再読するとしよう。

・前回書いた『邪魅の雫』の情報、リンク先が消えていることもあるし、どうも延期する気配が……情報が錯綜しているので詳しいことは分かりませんけど、9〜10月くらいになりそうとか。

『蟲師』アニメ化発表

 おお。好きなマンガだけに期待と不安が半々。あの幻想と郷愁の入り混じったムードを動画で再現できたならかなりの威力になるでしょう。それはそうと、6巻本体も確保しなきゃ。

Q-X新作『姫さま凛々しく!』紹介ページ公開

 略称「ひめりり」。いや『姫騎士リリア』ではなく。

 前作はオンラインものということで心惹かれながらもスルーしましたが、今回はストライクゾーン内角高めの感じなので注目。キャラデザも好みです。というかメインヒロインの「最美千名希」が当方の心に深く突き刺さるグレート・ギャッツビーなおにゃのこであるがゆえに無視はできない。続報を待とうではないか。

・あと最近はこの眼帯巫女が気になっていたり。


2005-06-19.

・京極夏彦の『邪魅の雫』が7月に出るそうな。今からワクワクしている焼津です、こんばんは。

・プリっちも終わったので「ガールズ・ドント・クライ」第七話公開。

 遅くてすみません……これでやっと前半戦が終了し、次回から後半戦に入る運びとなります。もう少し仕込みは続きますが、基本的に好き勝手やることになるかなぁ、と。

 ちなみに第六話と第七話は続き話なので(上・下)にするつもりでしたが、カタカナタイトルでそれをやると微妙に見映えが悪くなるので結局やめました。言わなきゃ誰も気づかない変更とは思いますけど、一応。

・照下土竜の『ゴーディーサンディー』読了。

 少女爆弾。

 少女で、且つ、爆弾なのである。

 たまらぬ冒頭だった。

 近未来、監視システムの強化によって従来型の犯罪が激減した社会。取って代わるように現れた新型の犯罪は、臓器に擬装し生体内で爆弾や毒物といった凶器を生成する「擬態内臓」のバイオテロリズムだった。機動隊の爆発物処理班に所属する心経初は、「摘出=死」であることを承知しながら淡々とメスを振るって擬態内臓を取り出し続ける。擬態内臓にバイタルサインの変化を気取られぬよう生きたまま解体され、やがて絶命する対象者たち。耐爆スーツの中で顔色一つ変えない心経。いつもと同じまま、騒がしい日曜日(ゴーディーサンディー)が過ぎていく……。

 監視社会、擬態内臓という二つのポイント以外はSFらしいところもあまりなく、サスペンス小説とか捜査小説の延長として読むことも可能です。緊迫感や殺伐としたムードはないので、サスペンスとも言い切れないんですけど。んー、まったりした日常シーンの合間に無造作な手つきで生体解剖作業のシーンを織り込むところはある種のギャップを生み出していて面白いにせよ、ストーリーそのものは起伏に乏しいので少し物足りなかったか。クライマックスは盛り上がるんですけどね。どうやら作者はこれを恋愛小説のつもりで書いたらしい。読者の方がそう捉えるのは少し曲解が必要に思える。道具立ては『人狼』と似てないこともない、かな。ともあれ救いのない話が嫌いな人にはお薦めしかねる。……そもそも、このストーリーやこの表紙を見てなおハッピーエンドを期待する人がいるのかどうかも疑問だが。

 おまけで収録されている「仏師」はプレ・ストーリー。中央監視システム「千手観音」が開発されるまでの経緯を、一人の男の視点から追ったもの。こちらもやっぱり、雰囲気通りの内容で、救いは求めない方が賢明。


2005-06-17.

・ツンドラ、何度読んでも(・∀・)イイ!! 『わたしたちの田村くん』を繰り返し読み直している焼津です、こんばんは。思った以上に深みに嵌まっている様子。ちなみにどっちのヒロインが好きかと聞かれても選べません。選ぶ気がありません。何せ当方が望んでいるのは修羅場ですから。

『プリンセスうぃっちぃず』、コンプリート。

 Σ(;゚Д゚)メイヴィスさんが3ターンで斃れた!

 攻略法が分かるとこんなに容易く勝てるものなのか。

 ほとんど一本道なので割とあっさり完クリ。スキップが遅いので、選択肢が出るごとにセーブしておいて万事遺漏はなく。先に結論を申しますと、最後までプレーすれば「面白かった、やって良かった」と思える出来でした。あ、これ前にも書いたか。

 もちろん不満もあります。途中からシリアスを基調とした展開に移行し、笑いの要素をそこそこ残しつつも濡れ場がバッサリなくなってしまう点。時に中だるみが激しくなる点。ハーレムかと思わせて完全個別攻略の仕組みになっている点。そのくせストーリーが大部分で共通してしまっている点。一部のキャラをフォローし切れずおまけシナリオでどうにか補っている点。とにかく、シナリオの構成が不恰好です。全体を大まかに三つの部に分けて進行するのは、シナリオを重視する目的ではいいんですけれど、キャラクターを重視する目的で言えば微妙。例えば林檎は第二部以降、ヒロインというより脇役に近い位置付けになってしまうし、彼女の個別エンドは大団円とは言いがたく本筋から浮いているように見えます。キャラの魅力は充分に引き出されていますが、その魅力がシナリオの犠牲になってしまっている面は否定し切れない。

 と、ぶち撒けてはみましたが、不満をだらだら述べてみたのも実際はプリっちのことを概ね気に入っているからですね。ハイ・テンションな遣り取りと情け容赦ない下ネタの嵐には抱腹絶倒。その狭間において発揮されるヒロインたちのエロ可愛さ。前半部におけるコメディとエロスでがっつり作品世界に惹き込まれ、勢いに乗ることができたからこそ後半も凌げたわけです。目パチを始めとして「動き」の演出を多数取り込んだ立ち絵、絶妙なタイミングで挟まれ思わず気持ち良くなる効果音、吹き出しとしてのバラエティに富んだメッセージ・ウィンドウ、声優さんたちの些細な演技の積み重ね、惜しみなく披露される小ネタと、あらゆる部分にプレーヤーを楽しませようとする気配りが感じられます。実に芸コマ。一回しか使われなかった「放課後休みはうきうきウィッチズ♪」という某お昼番組のパクリソングもツボに入った。あと、「気にしないで。私は平気」は是非とも次世代に伝えたい一言。

 そして扱いは不遇だったけれど、やっぱり「素直になれない幼馴染み」の雀宮林檎がイイ。「馬鹿ペニス」という前代未聞の罵声も恍惚と受け入れられる当方には至高のキャラでした。さすが禁断の果実を名に戴くだけのことはある。ゲスト出演する妹も美味しい。次点でかれん。中の人が中の人(北都南)だけに、そのエロ可愛さは激しく無敵。かれんシナリオの展開もブッ飛んでおり、気を抜いてプレーしていた当方は『三億を護れ!』のナッキーを目撃したかのように魂がもげてダッチワイフ・フェイスと化しました。使い魔のベルナルドも憎まれ口に似合わぬ可愛らしい声や、かれんの横でふわふわ漂っているキュートな姿に心打たれてメロメロです。

 カードバトルも結構面白かった。最初は簡単に勝てるので「余裕、余裕」と甘く見ていましたが、すべてのルールが判明する頃合には程好い難易度が生まれてきて俄然熱中。チェーンを繋げていく感覚が、格ゲーのコンボ、パズルゲーの連鎖にも似ていて心地良い。しかし1時間近く掛かって倒した敵が、次は3分で勝てるのは、さすがに諸行無常の観。

 期待していた方向(学園エロコメ現代ファンタジー)とは違った路線に走ってしまったことはつくづく惜しく、そのことに関して延々言い募りたい気持ちはありますが省略。素材が良いだけに調理法の善し悪しを問うこともなく一定の面白さはある。だから、満足と言えば満足。不平を垂れている当方も、三部すべてをクリアして世界を救い、「完」の一文字を目にしたときに晴れ晴れとした達成感を覚えたことは確かなのですから。ビバラ魔女っ娘委員会。おもしろおかしい青春ここにあり。

・桜坂洋の『スラムオンライン』読了。

 ゲーム小説。と言ってもゲームが原作のノベライズ作品という意味ではなく、ゲームそのものを題材にしているオリジナル小説。個人的に思い出すラインナップは、高畑京一郎の『クリス・クロス』、大塚ギチの『東京ヘッド』、古橋秀之の『ソリッドファイター』、それと原作はマンガですが『ブレイク−エイジ』あたり。あと、川上稔がWEB公開している「翼」もありましたか。つまり、何が書きたいのかと申しますと、当方の感覚はいささか古い。リネージュとかウルティマオンラインとかラグナロクとかの所謂オンラインRPGを一度としてプレーしたことがなく、MMOという言葉も初めて知った。マルチメディア展開している『.hack』や、篠房六郎の『空談師』『ナツノクモ』などにもいまいち馴染みにくさを感じてしまう。同一の体験を経ていないせいで共感を覚えることができないんです。「オンラインゲーム」よりも「ヴァーチャルリアリティ」という言葉の方がしっくり来る人間なんです。だからオンラインものは当方にとって鬼門であり、この作品もタイトルがタイトルなだけに、作者に興味がなければ読むこともなかったと思います。

 で、結論を言うと、この作品はあまり「オンラインもの」っぽくない。まず基調となるゲームがRPGではなく格闘ゲームだし、仮想世界の「社会」といったポイントが割と淡白になっている。あくまで勝つか負けるかが主目的であり、会話や交流も否定されていないけれど決してメインにはならない。町は生活感を排され、ただの空間として広がるのみ。至ってオールドな雰囲気です。感覚が古い人間としてはいろいろ懐かしさを叩き込まれる部分もあって堪能しました。が、最近のオンラインものに馴染んでいる人には物足りないのではないか、と思う面もあります。オンライン重視ではなく、オフラインでの日常にもそれなりの紙幅が割かれている。交互に切り替えて綴っていくことで両サイドを関連させ結び付けていく。ごくシンプルな構成です。

 シンプルなのはいいんですが……この小説、恐ろしいくらいに「何も起こらない」。もちろん、起承転結はあって、物語としての形式はちゃんと保っている。けれどフィクションにおけるスパイスが一切混ぜられておらず、辛くも甘くもない。生の素材をそのまま噛んでいるような青臭さ、苦味、酸味が感じられるだけです。凝った仕掛けとか、斬新なテーマとか、そういったものを期待すると盛大な肩透かしを味わうことになるでしょう。だから、『All You Need Is Kill』で桜坂にハマった人に本作を薦められるかといえば、微妙。比較するまでもなく地味地味です。底で通じている部分はあるから、「イケるかも」とは推測できますが。

 とはいえ、個人的にはかなりグッと来た一冊です。薄いから密度もそんなに高くないだろうと侮っていましたけど、これは密度なんて関係ない。狂ったように格ゲーに耽り、徹夜したことも珍しくない人間にはビシビシと心の奥に突き刺さってくるものがある。そういう意味では青春小説としての要素も色濃い。「オンラインもの」ではなく、あくまで「ゲーム小説」のか細い系譜に連なる作品。ああ、『ソリッドファイター2』、今更でもいいから出ないかな……。


2005-06-15.

・喪服……そうか、喪服という手があったか。『喪服妻』という言葉の響きに新たな属性の目醒めをちょこっと感じていたりする焼津です、こんばんは。

『プリンセスうぃっちぃず』、英雄編終了。

 むしろこっちが「真実編」ではないのか。とツッコミを入れたくなったものの、ストーリー面はきっちり挽回を図って盛り上がってくれた。佳境に差し掛かってなお下ネタを忘れないその心意気に敬礼。クライマックスの展開はちょっとクサいというか、引っ掛かりを覚えてノり切れなかったところもあるにせよ、最低限度やってくれるべきことはやってくれたのでヨシ。カードバトルも雰囲気を過熱させる役割を果たしている。

 ネタバレはなるべく避けたいので詳しいことは書けませんが、やはり主人公が苔の一念で「英雄になるんだ」という誓いを果たしたことを思うと、エンディングの瞬間には胸に迫るものがあり。オバカでいろいろ足らないところもあるけれど、貫き徹した信念がすべてを報いる──そんな御伽話には確かな手応えを持った救いが感じられて爽快。途中(特に真実編)で結構あれこれと微妙な部分もありましたが、ここまで来るとプレーして良かったっていう思いが素直に湧いてきます。

 それにつけてもメイヴィスさんが硬かった……硬すぎた。負けはしなかったけど、勝つのに1時間くらい掛かりました。ラスボス戦よりも遙かに苦しく、悪夢のようでしたよ。ヒロインを一人クリアしただけなのでまだプレーするところは残っておりますけど、やった感触ではどうも一本道の様子だし、二周目に入るモチベーションが出にくい。それでもとりあえず、続けてみます。

・竹宮ゆゆこの『わたしたちの田村くん』読了。

 しまった。ドツボだ。

 普通の女の子と少女暗殺者がガール・ミーツ・ガールする微百合エロゲー『Noel』のライターである竹宮ゆゆこ、どういう伝手を辿ったのか、“電撃hp”の増刊号で「うさぎホームシック」を掲載。更に本誌で続編の「氷点下エクソダス」を短期集中連載。そして両編をまとめ、書き下ろしのショートも加えて今月にこの単行本を発売。大まかな経緯は以上の如くですが、「うさぎ〜」も「氷点下〜」も掲載時から評判は良かったです。特にツンデレスキー界隈で。不思議電波な小巻とツンドラ女王の広香、ダブルヒロインが織り成すツンからデレへの移行が素晴らしいと。

 内容はよくある青春恋愛ストーリー。男子中学生(後に高校へ進学)である主人公が、ヒロインたちと交流してあれやこれや。筋だけ書き出してみると別に何の変哲もない。いきなり超能力や魔法や異世界や陰謀が立ち現れて超展開することもなく、平々凡々とした少年らしい少年の日々が過ぎていくだけ。アピールしにくいっちゃしにくいです。

 成績優秀な兄、スポーツ万能な弟に挟まれてひたすら地味で非モテの主人公が勢い任せに元気良くストーリーを展開していくわけですが、なんというか筆致が少年向けレーベルよりも少女向けレーベル、コバルトとかに近い気がします。だもんで最初は少し馴染みにくい部分があったけれど、しばらくしてあっさり慣れました。コメディ系少女マンガの軽快なテンポをそのまま文字に落とし込んだかのようなノリは、見方次第で上質とも判断可能。優柔不断で八方美人な主人公がなし崩しで美少女たちに囲まれる安易ハーレムものとの線引きを行い、持てるものの少ない主人公が自分なりの努力で立ち位置を掴み取っていく過程は読んでいて目に心地良い。熱中しました。

 地味と言えば地味。けれど、青春小説とかラブコメが好きな方には是非ともオススメしたい一品。……てな具合に努めて冷静に書いてはみましたが、読んでる最中の当方は凄まじかったです。明らかに理性をなくしていました。無意識の独り言を「ぶつぶつ」どころか「フォォォォォォォ!」くらいのレベルで漏らしていた気もしますし。紛うことなく時間を忘れて没頭(気づけば深夜)し、読了するや熱の冷めぬまま即座に書いた感想文は今読み返すと、その、メチャ見苦しい。とても公開できません。巷の評価を参考に「ぼちぼち面白けりゃいいかな」となにげなく購入してみましたが、こんなにも虚心で楽しめるとは完全に予想外だったなぁ。2巻の刊行もほぼ決定みたいで今からワクワクドキドキが疾走して止まらない。次回は本格的に三角関係へもつれ込んでいきそうな気配で、修羅場大好きの当方はどうやって滾りを鎮めれば良いのやら。もし「2巻発売中止、シリーズ打ち切り」と言われたら鎮まるどころか体温が一気に氷点下ロストパラダイス。

 とりあえず、あれですね。名字にくん付けというのはさりげない青春というか、そこはかとないロマンというか、名前を呼び捨てにされるよりもグッと来るものがあります。


2005-06-13.

・ンフハハハハハハハ!!

 『あやかしびと』のマスターアップ報告が嬉しくて副大統領笑いを漏らしてしまった焼津です、こんばんは。よし、『塵骸魔京』ともども急いで通販予約だ。

・西尾維新の『ネコソギラジカル(中)』読了。

 中巻というのは文字通り中途半端な存在です。始まるわけでもないし終わるわけでもない。本屋で作品を見かけたとき、三分冊だとあらかじめ知っていなければ「上・下」と中巻が欠けた状態でも買ってしまいかねない。内容的にも中だるみを感じてくる部分があり、上巻や下巻に比べて不遇と言える。

 こと『ネコソギラジカル』に関しては三ヶ月連続刊行の予定が御破算になって、今現在だいたい四ヶ月ごとに1冊刊行というスローペースに切り替わってしまった経緯もあります。読者の渇望もいささか癒しがたくなってきている。さて、そんなこんなの環境の中で送り出されたんですけれど、なんと申しますかこの巻、迷走しまくりです。いっそ気持ちいいくらいに右往左往して五里霧中。ドキドキハラハラの緊張を強いられるサスペンスとはまったく逆の方向へ突き進み、のんびりまったりと予測不可能だ。こんなに面白い中だるみも珍しい。

 上巻に引き続き、「待たされた甲斐はあった」と満足感を覚えた次第。気持ちが満ち足りた分、下巻が出るまでの期間も泰然と待ち姿勢で臨むことができそうです。

・八房龍之助の『塊根の花』も読了。

 古本屋の大判コミック・コーナーで見かけ、なんとなく立ち読みし、冒頭一話目で「やべえ、ツボだ」とハマって即座に購入したは良かったが、使った金が本来昼食費に当てるはずのものだったせいでその日は晩まで空きっ腹を抱えるハメになった……そんな、特段美しくもない思い出のある『仙木の果実』。5年ぶりの、「待望」と呼ぶに相応しい続編なわけですが、気づけば2年くらい放置してました。腐れ積読家にはよく見られる現象です。

 サッパリと線の綺麗な絵柄に反してつくづく根性の悪い黒さを見せ付けるノリは相変わらず──と言いたいところだけど、前作を読んだのが何年も前だからぶっちゃけあまり覚えてないや。巻末の紹介を見れば随分と画風が変わっていらっしゃる。ともあれ、連載時に読んでみた数話がいまいち肌に合わなくて長い間スルーしていた『宵闇眩燈草紙』と似通うノリの場面は多々あれど、底意地のエグさやエゲツないふざけぶりに関してはこっちのシリーズに軍配が上がると思います。動きが少なく、ひたすら落ち着いた雰囲気の漂うせいで余計に悪趣味に映る寸法。やはりジャックとジュヌヴィエーヴのコンビを見ていると心が安らぐ。これだけ救いのない内容だと感覚が麻痺して逆に癒されますね。モルヒネ的。

 あ、そういえばこれを2年も積んでいた理由、ジャック&ジュネが宵闇の方にもゲスト出演しているって聞いたからでした。なら先に宵闇読まないと、と考えながらもズルズル先延ばしにしていたせいで半ば忘れかけていた次第。最近宵闇の新刊が出たおかげで連鎖的に思い出して発掘と相成りました。

 なんか全然内容に触れていませんが、八房作品は「感想殺し」とでも言うべき代物なんで語ろうにも語りづらい。読者が言いたいことのほとんどを先取りしちゃってるんだもんなぁ。


2005-06-11.

light新作『群青の空を越えて』、ページリニューアル

 速報から詳細へ。まだ先ですが期待は膨らむ一途。

Littlewitch新作『少女魔法学リトルウィッチロマネスク』、発売日決定

 7月29日。どうせ延びるこちらも楽しみです。

・「面白い」という評判に釣られて『すもももももも(1)』購入、そして読了。

 一言でまとめれば「アホっぽいラブコメ」。日本を二分する格闘家たちの戦争、みたいにスケールのでかい背景があったりもしますが、アクションものとして見ればあまり真面目にやっていない。至って不真面目です。押しかけ女房としてやってきたちんまいヒロイン・もも子が毎話「セックスしてください」と頼み込んでくる構成からしてもそれは明らか。

 この手の押しかけ女房モノは主人公が没個性的だったり、優柔不断だったり、意思薄弱だったり、将来の夢がなかったりするのがお約束。けど『すも(略)』の主人公は割合キャラが立っています。暴力恐怖症で、武道家の息子でありながら武術を嗜まず、代わりに法律に堪能で検事を目指している。もも子に「セックスしてください」と頼まれてもドギマギせず「フン断る」と言下に切り捨てるだけの意志もある。だからこそ余計に巻き込まれたときのアホらしさが際立って美味しい。

 掲載誌は違えど同じガンガンの『瀬戸の花嫁』を彷彿とさせる、アホっぽいラブコメとしては今後が楽しみな一作。予告を見る限り、次巻は三角関係とか波乱のある展開になりそう。

『プリンセスうぃっちぃず』、真実編終了。

 一周目では仄めかし程度に留まっていた真実がようやく開陳──というか、仄めかしから読み取れる内容そのまんまの「真実」で特に目新しいところがなかったというのが正直なところ。うーん、学園編は軽快なエロコメディのおかげでハイテンションに盛り上がれたけれど、やはり魔女界に入ってからの展開がトーンダウン気味。徐々に世界の秘密を明かしていってスケールアップするタイプの物語なのに、舞台や登場キャラが狭くて限定されているおかげであまり広がりを感じられない。むしろ、学園編の序盤の方が新鮮な出来事の目白押しで楽しかったような。

 しかし悪趣味で血腥いシーンに突入してからは俄然盛り上がりますし、これはこれで美味しい気もします。「学園編の方が面白い」というのは確かですが、魔女界でのストーリーも悪くはなく。そういう意味では少なくとも当方にとっての地雷ソフトではない。ただ、ごちゃごちゃした設定とあまりに主観的な持論の展開によって煙に巻かれているような印象を受けることもあり、褒めにくいんですよね……去年の『DUEL SAVIOR』を思い出します。

 あくまで個人的に言えばこういう「英雄たるの代価」ってな感じのテーマは好みだから、微妙と思いつつもプレーは続行する予定。


2005-06-09.

『神狩り2』も出たことだしそろそろ『神狩り』読み始めようか……と書庫を漁っても見つからず。必死になって探したら、見つかりました。『神々の埋葬』が。

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 どうやらこれと『神狩り』を混同していたらしい。今度ちゃんと買っておかないと。あ、そういえば『弥勒戦争』も未入手だったっけ……『神狩り2』を読むのはだいぶ先になりそうです。

『プリンセスうぃっちぃず』、正義編終了。

 すべての魔女っ娘は道を譲れ!!!!!!

 とでも叫びそうなクライマックスの果てにようやく一周達成。いや、話には聞いていたけど、こうまでアレとは。前半のコメディを覆す悪趣味な展開の連打、個人的には非常に好みでヒートしましたけど、さすがに賛否分かれるだろうな、と。アレっぽい展開で画面が暗転し、グチャッとかベチャッな効果音でごまかして詳細CGを出さないところを「ヌルい」と感じる人もいるでしょうが、当方の場合は現状のスタイルの方がいろいろと想像や妄想を刺激されて楽しめました。

 まだ謎もいろいろ残っているからはっきりした感想は述べられませんが、やはり「憎しみに克つものは──」という系統のストーリーになるのかしらん。「正義編」を第一部とすれば今後は第二部、第三部に当たる新章が待ち受けているわけで、期待と不安の混濁でドキドキします。発売前は『パティシエなにゃんこ』の後継であるかのような宣伝をしていたけれど、今はむしろ『パンドラの夢』『PIZZICATO POLKA』の流れに位置する作品であると意識されてきた。

 スタッフはかなり自覚的にこの「超展開」と謗られかねない真似をしでかしているのだろう。正義編のエピローグからもそうしたニュアンスが受け取れる。狙いが成功へ導かれているかどうかは、差し当たって保留。プレーを続行します。

・花田一三六の『八の弓、死鳥の矢』読了。

 男がいた。
 名は残されていない。
 文字に盲く、当然、学もなかった。狩りと百まで数えることだけが、男の全能力だった。
 特に、狩りは天与の才があったという。
 弓が得意だった。
 強弓である。一般に使用されている弓を、「二」という。「二人がかりで弦を張りました」といった意味である。弓兵のものは三から四。伝説に名高い、勇将サヴァールの愛用した弓が五。
 男は八である。
 すさまじい膂力であった。この弓を引き絞り、岩のごとき熊も一撃でしとめた。

 古本屋の廉売コーナーで見かけ、なんとなく気になってパラリと読み出した冒頭。惚れました。即買い。表題作含む5編を収録しており、どれも同一の架空世界を舞台にしたファンタジー。ただ年代にバラつきがあって、エピソード間の繋がりは弱い。一つ一つの完結度が高いから、あまり気になりませんが。

 名もなき狩人、豪胆な将軍、歴戦の老兵、執念を持った伝令兵、盲目の策士とバラエティに富んだ面子もさることながら、夢枕獏を思わせる歯切れの良い文体も魅力的でした。書き出しで読み手の興味を掴むのも巧く、あれよあれよという間に読み耽ってしまった次第。正に「できておる喃」といった感想です。

 派手な設定やシーンがあるでもなく、基本的な雰囲気は地味。どの話も構成は至ってシンプルです。語り口の良さが映えているものの、アピールポイントが少ないのは惜しいところか。共通の世界を扱った「士伝記」と呼ばれるシリーズの作品も他にいくつかあるようで、機会があればそっちも漁ってみたい。


2005-06-07.

『せんせいがおしえてあげる』のサブキャラ、CVがまきいづみ。猫耳+早口で微妙に新境地か。サンプルボイス聞いてみたところ、5番目が最高です。繰り返し聞いてしまう。たまらず保存。しかしここまでいいキャラなのになぜサブ……つくづく惜しい、つくづく惜しいと呟く焼津です、こんばんは。

ソフトキャラハウス新作『ダンシング・クレイジーズ』、発売は9月9日予定

 との告知。まだ先ですけど一応チェック、と。

『プリンセスうぃっちぃず』、舞台は魔女界へ。

 ドタバタエロラブコメの鳴りが潜み、ストーリーは徐々にしんみりした方向へ。さすがにパテにゃんスタッフならこういった流れにおける雰囲気づくりはお手の物なのか、一転したムードにも関わらずスムースに展開していく。エロ騒がしい前半部も充分に楽しんだ当方だけど、テンポが落ち着いてきたおかげで気力を搾り取られるような疲労感もなくなって、まったりプレーすることができました。

 さて魔女界。発売前のムービーから既に魔女界へ舞台が移っていくことは分かっていましたけど、なんというか、シリアスな雰囲気が支配的。このまま進んでいくとエロい展開は本気でなさそう。うーん、それどころかコメディすらなくなっていくかも。

 それなりに楽しんではいますが、さてはて。

・デニス・レヘインの『穢れしものに祝福を』読了。

「そいつを消すか、殺すか、息の根を止めてやってくれ」

 私立探偵パット&アンジーのシリーズ第3弾。家の周辺にうろつき回るウィーブル(ちびすけ)とラーチ(疫病神)。用件を聞き出そうと接触したところ、麻酔薬を打たれて攫われてしまった。無理矢理ふたりを連れてきたウィーブル&ラーチ、その雇い主はトレヴァー・ストーン。隠然たる力を持ちながら、死期を悟った富豪だった。彼は失踪した一人娘デジレーの捜索を依頼する。パットの師匠である探偵ジェイ・ベッカーが前任者として行方を追っていたにも関わらず、デジレーどころか当のジェイまでもが音信不通となっている案件。ふたりはジェイの足取りを辿り、新興宗教紛いのセミナー「絶望の癒しの会」へと乗り込むが……。

 失踪人捜しという点ではシリーズ一作目の『スコッチに涙を託して』と同じですが、ストーリーテリングが向上しているせいもあってスピード感のある内容になっています。私立探偵モノではバカ一どころか既に「お約束」に等しいネタである「失踪人捜し」に、いくつかのヒネリを加えて先読みしにくい構成に仕上げている。こちらの予想を躱して二転三転する物語。作を重ねるごとにどんどんこなれていっている印象があります。

 10年以上に渡って凶行を繰り返している連続殺人鬼との対決を描いた前作に比べれば地味かな。「絵になる」アクションシーンもあることはありましたが、今回はサッと読めてサッと楽しめるシンプルな作品に思えます。シンプルと言っても単調ではなく、この作家らしい軽やかでインパクトのある味付けをしているあたりが特徴的。後半の展開は特に惹き込まれました。動的な場面こそ少ないものの、緊迫感は高い。一作目ではまだ甘さのあったパットが、「情け容赦ない」と評されるまでに変化するのは見物。順調にハマってきています、レヘイン。


2005-06-05.

・ロバート・A・排卵。

 咄嗟に思いついたギャグでこんばんは、焼津です。ハイラインは『輪廻の蛇』のみ読んだことがあり。

・古橋秀之の『ブラックロッド』を再読。以前に読んだのはもう7、8年も昔だから細部はほとんど忘れており、期待通り清新な気分で楽しめました。当時はそんなに面白くないと思ったのに、今読むと凄くツボに入る。自分の趣味もだいぶ変わったものだなぁ、と改めて確認させられた一冊でした。造語のセンスがトレ・ボン。

『プリンセスうぃっちぃず』、プレー中。

 洒落っ気抜きで当方はこんなゲームを待ち望んでいたのかもしれない。

 個々のキャラクターの魅力もさることながら、ヒロイン間の掛け合いが豊富で、「魔女っ娘委員会」に所属している人間関係そのものにも大きな魅力を感じます。記号的というか、キャラクターを構成する材料は非常に類型的なれど、複数のキャラが絡み合うことで生まれてくる「関係」の固さはガチガチで鉄板。特にこのプリっちは個別攻略の性質を持ちながら、ある程度ハーレム属性も有しているため、「関係」の強さはいろんな場面で活きてきます。ヒロインたちが嫉妬心から鞘当てを繰り返すところは「ヤキモチ」の範囲であるにせよ、修羅場スキーにはたまらない。ジャブとは言っても連打されれば結構効いてくるもんです。

 そしてもう一つは「エロとコメディの融合」。学園コメディはエロゲーの中じゃ割と大きなジャンルになっていますが、なぜか「エロゲー」であることを活用したソフトが少なく、コンシューマーにも容易に移植されうるギャルゲー的な様式で制作されているものが目立つ。言わば「エロイッカイズツ」、シナリオの最後に申し訳程度の濡れ場を付け加えるタイプ。面白かったら別にそれでもいいとは思うんですが、やっぱり18禁という地形を有効利用した作品もあっていいのでは? と疑問に感じておりました。最近は萌えとエロをミックスした所謂「萌エロ」も浸透し、軽快な学園コメディで且つエロいソフトも増えてきた。しかしエロはエロ、コメディはコメディとシーンごとに区分化されている古い様式も根強く、「融合」とまで言いにくかった。

 プリっちに関しても完璧に「融合」が果たされているとは断言しがたい。エロシーンへ突入する段階で普段のコメディパートとの温度差や違和感を覚えることもあります。しかし、これだけ日常とエロとが結びつき、平然と下ネタが飛び出す環境は学園エロコメを求める当方にはパラダイソに他ならず。エロゲーらしいエロゲー、明るく楽しくチョーH。ストーリーに関しては依然何とも言えませんが、既にプリっちという世界に充分な満足度を得た当方は時間をこじ空けてガンガンとプレーいたしたく。

 それにつけてもかれんのエロさよ。委員長のムッツリスケベぶりも美味ですが、寡黙銀髪っ子の放つ北都イズムに溢れた艶技には全面降伏。学園祭では意外なキャラも出てきて驚くやら嬉しいやら。


2005-06-02.

『塵骸魔京』マスターアップ

 あとは『あやかしびと』がマスターアップしてくれたら安心して通販予約することができます。

『プリンセスうぃっちぃず』、プレー中。回収騒ぎは気にしない方向で。

 プリっち、エロいエロいと言いつつ本当はそんなにエロくないよ……

 という風評を真に受けていた当方は必敗。なにこの日常的に根付いているエロス。下ネタも随分多いと思ったけど、濡れ場も負けず劣らずで毎話毎話に用意されている。それらの趣向が「コメディとエロの混合」を見事に果たしており、油断していたのでたまらず前傾姿勢を余儀なくされた。「『パテにゃん』スタッフに萌エロ技はない──そんなふうに思っていた時期が、俺にもありました」。2年というブランクの中で密かにシャドー・スキルを身に付けていたようです。

 前々月にクリアした『パルフェ』も「これはコンシューマー移植を視野に入れてないのか」と疑うようなところがありましたが、プリっちに関してはそれどころじゃない。さすがにエロ特化のヌキゲーと比べれば刺激も劣るにせよ、コミカルな雰囲気を崩さぬまま「エロゲー」以外の何ものでもないノリで縦横無尽にあばれはっちゃく。「馬鹿ペニス」「則男が夢精」など、PS2とかではありえない応酬の連続です。もし移植となったらいろんな部分をつくり変えて、ほとんど別モノになっちゃうんじゃないかしら。

 話の繋ぎ方とか導入とか、展開がいささか強引で無理っぽさを感じる場面も多々あります。おいおい、その流れでこうくるのかよ、みたいな。しかし基底を成すノリが「エロゲーっぽいエロゲー」、つまりエロそのものを至上として余計な目的を求めない一種のナンセンスな代物であって、やってるうちに勢いに呑まれてしまう。特に北都南がCVを務める春日かれん、中の人が中の人なだけに一旦スイッチが入るとそれはもう大変なことに。「かれん殿、ご乱心!」「校内でござる! ここは校内でござるぞ、かれん殿!」 ──素晴らしい淫夢だー。

 戦闘システムも、作業になるほどつまらなくはなく、攻略に詰まるほど難易度が高くもないのでちょっとしたパズル感覚でプレーできて良好。全体的にスピードがあるから楽しくプレーしてます。物凄い傑作、とまで行かないにしても期待に見合うくらいは達してくれそう。

・6月の予定。今月は半端に抑えられないほど多くて懊悩。

(本)

 『アンダカの怪造学』/日日日(角川書店)
 『狂乱家族日記 壱さつめ』/日日日(エンターブレイン)
 『終わりのクロニクル5(上)』/川上稔(メディアワークス)
 『灼眼のシャナ0』/高橋弥七郎(メディアワークス)
 『ヴぁんぷ!U』/成田良悟(メディアワークス)
 『平井骸惚此中ニ有リ 其四』/田代裕彦(富士見書房)
 『ネコソギラジカル(中)』/西尾維新(講談社)
 『宵闇眩燈草紙(6)』/八房龍之助(メディアワークス)
 『スラムオンライン』/桜坂洋(早川書房)
 『School Rumble(9)』/小林尽(講談社)
 『天切り松 闇がたり3』/浅田次郎(集英社)
 『シグルイ(4)』/山口貴由(秋田書店)
 『殺×愛−/0−』/風見周(富士見書房)
 『GOTH(夜の章・僕の章)』/乙一(角川書店)
 『妖幻の血(5)』/赤美潤一郎(スクウェア・エニックス)
 『無限の住人(18)』/沙村広明(講談社)
 『蟲師(6)』/漆原友紀(講談社)
 『蟲と眼球とテディベア』/日日日(メディアワークス)

 20冊弱。これでもかなり削りました。削らなかったら簡単に倍を超えます。欲しい本が一気に出すぎ。日日日の3冊、ちーちゃんは個人的にイマイチでしたが、いっそ皿まで食い尽くす心境で挑んでみます。各シリーズの続刊については読んでから購入継続か否かを決めるつもり。電撃の新刊は手堅い3冊を選択。新人たちにも興味があるんですが、さすがに手が回らない。平井骸惚は地味だけど堅実なので。ネコソギ、待たされたけれど期待は依然続いてます。宵闇眩燈草紙は最近読み出したばかり。八房節が目に心地良い。スラムオンラインは作者買い。タイトルからしてネット関係? その手の話はあまり良作に出会った経験がないせいかちょい不安。

 スクランは最近惰性がかってきたかな。サバゲー編にはノれないし。天切り松は今から4巻の文庫落ちを心待ちにしつつ。シグルイ、これを買わなかったら他に買う本はない。今、一番再読を重ねている本。殺×愛は「きるらぶ」と読むらしい。風見周は沈黙の期間が長いせいもあって知名度は低いだろうけど、ファンタジアでは注目している作家。GOTHは文庫落ち。分冊形式が気に食わないけど。妖幻、雰囲気だけで買い続けている。無限の住人、なんか最近は迷走と混沌でギャグ漫画みたいになってますが、吐さんが作中で言う通り「蛆が湧いてからが喰い時」。蟲師は創作妖怪ながら、妖怪モノとしては一番好き。

 と、以上の如く数が多いから気分次第で予定は可変。『火刑都市』の続編らしい『天に還る舟』とかも気になってますし。買いすぎたら積むだけなんで、なんとか自重したい。

(ゲーム)

 『塵骸魔京』(ニトロプラス)
 『あやかしびと』(propeller)

 体験版をやるまでは気持ちがグラついていましたが、今や両ソフトとも不動の確定。『塵骸魔京』は上記した通りマスターアップ済なので、『あやかしびと』さえ延期しなければ安泰。


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