「雛見沢怪奇ナビゲーター 罪穢」
   /焼肉万歳


 日記の内容を抜粋。


2006-11-08.

焼肉万歳の『雛見沢怪奇ナビゲーター 罪穢』、プレー開始。

 買ったことをすっかり忘れそうになっていました。このソフトは同人ゲームである『ひぐらしのなく頃に』を原作とした同人ゲーム。公式との繋がりはなく、純然たる二次創作となっています。舞台となるのはもちろん雛見沢村、ただし「村の一部にダムがつくられた」という少し原作とは違った状況で話が進んでいく。前原圭一たち部活メンバーが登場する昭和パートと、「わたし」がコックリさんの焼き直しじみた流行り遊び「オヤシロさま」を通じて時空を越え、その昭和パートに没入する平成パート、この二つから成ります。まだ始めて一時間ちょっとなので詳しい内容が分かってませんが、かなり演出に力を入れてるソフトですね……結構「ヒィィッ!」となるシーンが多かったです。ただ、現段階では演出の凝り具合に頼った「鬼面人を驚かす」的な印象が強く、じわじわと利いてくるような怖さなり面白さなりが待ち構えているかどうか、予測し切れない。ビクビクしながらもプレーを続行しようかと思います。

 ちなみに。日常シーンは淡々としているっていうか、良くも悪くも原作ほどはっちゃけたノリではなく、そこそこに楽しい塩梅。あとやっぱり原作を意識したつくりになっているので、オリジナルの方を先にやっておくとよろしげ。


2006-12-06.

焼肉万歳の『雛見沢怪奇ナビゲーター 罪穢』、プレー中。

 すっかり報告を怠っていましたが、チマチマと進めております。まだ全体で2時間程度かな。大して進行しておりません。

 だって……怖いんですもの……原作と違って「平和な日常」や「謎の分析」あたりの比率が低く、ほとんどのシーンがサスペンスやホラーに割かれているのでせいぜい10分くらい、頑張っても30分が限度です。「来るよ来るよ、ほーら来た」と脳内実況して恐怖を低減させるビビりプレーを駆使してなお辛いものがあります。効果音やBGMのタイミングが絶妙すぎ。あの神経を苛むようなひぐらしの鳴き声はホントもう勘弁して……と弱音吐きはこのくらいして、肝心のストーリーですが、似非コックリさんの「オヤシロさま」を通じて昭和58年の雛見沢にアクセスする、という構造のおかげでたびたび「現在」に復帰して話が途切れる仕様になっています。そのため「断片的なエピソードを積み上げた連作形式の物語」っていうテイストが濃厚。エピソード同士の関係やそもそもエピソード自体に矛盾を孕んでいるところがあり、わだかまる謎が合理的に解明されるかどうかは不明。あくまでホラーとサスペンスで押し切るつもりなのか。ガクブルしつつも続ける所存。とりあえず『ひぐらし』初期エピソード群の「怖さ」が恋しいという方にはオススメしたい一本です。つまり「いいから君もプレーして怖がれ!」と言いたいわけで。


2006-12-19.

焼肉万歳の『雛見沢怪奇ナビゲーター 罪穢』、コンプリート。

 初売りが今年の夏コミですから原作の『祭囃し編』が出たのと同時期ですね。『ひぐらしのなく頃に』を原作とする、あくまで公式ではない同人の二次創作ゲーム。ひぐらしネタの小説やコミックはアンソロ本もガンガン出まくってるくらいでたくさんありますが、ゲーム形式のものとなると少ないどころか数えるほどしかありません。そして直球のノベルゲーム作品として仕上げられたものとなれば本作くらいしかないと思います。いや、最近ハマり出したのでひぐらし周辺のことはよく知らないんですが。

 平成の現代に暮らす「私」が主人公。「私」はある日、コックリさんによく似た「オヤシロさま」というゲームが流行っているのを知って、ついつい興味本位から手を出してしまう。用意するものは五十音と「はい/いいえ」と鳥居を書いた紙、それに十円玉。硬貨に指を置いて「オヤシロサマ、オヤシロサマ、おいでくださいませ」と唱えて質問すれば、紙の上を勝手に動き回ってメッセージをつくる。この「オヤシロさま」によって雛見沢村という場所の存在を知り、昭和58年にそこで何が起こったのか、断片的な情報を「前原圭一」という少年の視点を通じて獲得する「私」。惨劇。祟り。全容を掴みたくてのめりこんでいった「私」が目にしたものとは……。

 「雛見沢村にダムができてしまった」というパラレルな世界を舞台に広げられる怪奇ストーリー。もちろん惨劇の現場もダムのあたりになるわけです。プレー時間は3〜4時間程度。一応選択肢っぽいものもありますが、基本的に本家『ひぐらし』と同じ一本道のノベルゲームと考えてOK。攻略に詰まることはありません。内容としては平成の「私」と昭和の「前原圭一」、両者を往復することで「あの雛見沢村で何が起こったのか」、真相を突き止めていくことになります。平和なシーンはほんのひと握り、大部分が不安を誘う段階と恐ろしい場面とで占められている。ノイズ、水音、足音、打撲音等の効果音を多用することで神経的な恐怖感を煽るタイプのホラーゲームで、ちょっとやりすぎなところもあり、人によっては不快なだけでまったく怖くないかもしれませんが、個人的にはかなり苦手です。心の中でヒィヒィと悲鳴を挙げたものでした。あまりにもビビってしまったせいで連続してプレーすることができず、結局コンプするまで原作『ひぐらし』の無印と『解』を含めた全話をやり通すのに要した日数の倍も掛かるハメとなった仕儀。神経に訴えてくるようなホラーってホント、心臓に悪くてなかなか進められません。ああ、あの頭が割れそうなまでに響くひぐらしの斉唱が……。

 やればやるほどにどんどん辻褄が合わなくなっていく物語にも最終的にはオチがつくのですが、「謎→解明」の流れに期待しすぎると肩透かしを食うかもしれません。まとまってはいるんですが、ちょっと強引で腑に落ちないところもある。『語咄し編』もあることだし、「これも一つの『ひぐらし』」ではあるのでしょうが、この設定ならこういう方向で話を組んだ方が……とかいろいろ思うところも。怖がらせようという目的ありきで話が紡がれており、実際「怖がらせる」という点では成功しているものの、終わった後までずーっと尾を曳くような怖さかと言えばそうでもなく。うーん、単なる「ビックリさせてビビらせるだけのゲーム」ではないんですけれど……『ひぐらし』ファンならやるべき、って推すに足るかどうかは微妙。とりあえず出題編の頃の「怖い『ひぐらし』」が好きだという方にはオススメしておきたい反面、「個々のキャラクターが好きで、激しい思い入れがある」って方にはオススメしかねます。内容が内容とはいえ、どいつもこいつも負の面ばっかり晒してイイトコなしですから。あと原作知らないと内容が把握できないので最低限「罪滅し編」までやっている必要あり。


>>back