「パティシエなにゃんこ」
   /ぱじゃまソフト


 日記の内容を抜粋。割と手抜きな構成です。


2003-09-14.

・さて、次は何を崩そうか。シリアスとサスペンスは『腐り姫』で充分味わったから、次はまたーりと味わえるものにしたいな……ということで『パティシエなにゃんこ』、通称パテにゃん。「やたら元気な実妹が出てきてにぎやか」と評判の一作。でもマジで実妹だったら攻略できません。いろんな人が困ります。いろんな人っていうか、妹を愛好する一部のプレーヤーたちが。妹スキーにとって「実妹」の刻印は決して手の届かない高嶺の花。攻略できないくらいならいっそエロシーンの寸前で「実は義理だった」という強引な血縁切断を行われる方がマシって声もあります。

 ですが敢えて言いますけど、実妹キャラってのは攻略できないからこそイイんです。非攻略キャラとギリギリのラインまで戯れるスリルはなんともたまらないものがある。最初からリミッターを外されている義妹とはワケが違います。義妹と「ドキッ!」な接近があっても「ああ、お約束だね」で流されてしまいますが、これが実妹なら「どこまで行く、どこまで行ける?」と手に汗握って眺めることは必至。エロゲーにおいて実妹は禁忌があるから燃えるのではなく、ソフ倫規定があるから燃えるのです。「見えそうで見えない」シチュエーションと同じく「喰えそうで喰えない」状況は、トイレに行くのを我慢するときに味わう「もどかしい快感」に似た独特の愉悦が内包されています。くっつけそうなのにくっつけない、その絶望的な寸止め感が非攻略キャラへの傾倒を深めていく。「このサブヒロインを攻略したい」「こいつとのエンディングがないのはおかしい」「FDで追加シナリオ希望」といった声の裏には「でも攻略できないからこそ花ってところもあるよなぁ」という醒めた見解が潜んでいます。だって、「FDで追加シナリオ決定」とかいう報を聞いたとき、一応「キタ━━(゚∀゚)━━!!」とか騒いでみる一方でなんとなく残念な気がしません? 「好きは好きだけど、敢えて一線を越えないもどかしい関係のキャラとして微妙なムードを楽しみたい」なんていう心の中の小さな呟きが、「めんどくせぇ、四の五の言わずに喰っちまおうぜ!」と叫ぶ堪え性のない欲望に押し潰されてしまうんですから。

 ま、それはそれとしてパテにゃん、またーり和むにはちょうどいい内容でしょう。のんびりプレーするとします。


2003-09-15.

『パティシエなにゃんこ』プレー開始。

 アクシデントで胸を揉むことから始まるボーイ・ミーツ・ガール。「タッチ&ゴー」という比喩に半笑い。イイ感じにベタです。始める前は自分の好みに合うかどうかちょいと不安がありましたが、しっくり肌に馴染むテキストに気分を安らげつつ楽しくプレーしています。正直言ってひよこ館、あんなに始終ドタバタしていていたらとてもお客さんも寛げないと思うんですが、まあそこは軽く流すとして。現在は冬華狙いで攻略中。やっと茉理が出てきたところです。ミオの「まちゅり」という呼び方に必要以上の熱を込めてハァハァ吐息を荒げたり荒げなかったりしていますが、ともあれすべてのヒロインに魅力を感じている時点で当方は勝ち組かと。隙が多いお嬢様キャラの冬華を弄りながらコツコツやっていきます。


2003-09-16.

『パティシエなにゃんこ』

 男キャラの激しくやる気ない立ち絵に滅入りつつプレー中。ちょっと重めのシリアス展開もあって、終始またーりするゲームではないと判明しましたが、主人公の態度が毅然としている点が好印象。鬱にならずプレーする意欲がちゃんと湧いてくる。よくあるヘタレ主人公は問題が持ち上がったとき、ただ押し黙って悲観し流されるままか、直情的に動こうとして周りから諭されるかの二つに一つの態度を取りますけど、このパテにゃんの主人公はキチンと受け答えしつつ、むしろ周りの行動を抑制するくらいの態度を見せるので変に苛々が溜まったりしない。直情的な部分がないでもないが、それでも好ましい部類に属する主人公だと思います。

 成長物語は成長の余地がなければ成立しない分、主人公が初期条件では厨とかDQNとかいった性格で、そこから徐々に良くなっていく……といったこともありますが、ことエロゲーに関しては『君が望む永遠』の孝之みたいにいつまでも同じ過ちを繰り返す「成長しない物語」も案外多く、ヘタレな主人公が一瞬だけ成長したように見えてすぐ元に戻り、以降ずっとヘタレなままって展開も珍しくない。確かに主人公が愚かさを発揮しなければ綴れないテーマもあるでしょうし、「愚者の領分」を描くことで面白みを増す話もあるでしょうからヘタレ主人公を丸きり否定する気はありませんが、それでも「主人公がヘタレ」という設定はプレーしている最中やプレーし終わった後にスッキリしない気分を残しがちです。ヘタレばかりじゃお腹は膨れない。

 だから、ちゃんと事態に干渉していく主人公はいいなぁ、と。そんな感じです。


2003-09-20.

『パティシエなにゃんこ』、冬華エンド&亜里咲エンド確認。

 ほのぼのコメディが基調で、多少のシリアス展開はあれど最初から最後まで徹頭徹尾雰囲気の良いゲームでした。「主人公が夜は猫になってしまう」という設定が、無駄ってほどじゃないけど、そんなに重要な使われ方をしていなくて「なぜパティシエとにゃんこを融合させたのだろう?」と首を傾げてしまうが、とりあえずこの疑問は自称「猫魔法使い」ミオのシナリオをクリアするまで保留しておく。

 それで冬華。ライバル店の支配人令嬢で典型的なお嬢様キャラ。ツインテールでツッコミ重視型だが、割と押しが弱くて付け込まれるときはひたすら付け込まれるタイプ。猫化した主人公を抱き上げて歌うシーンの一枚絵が好きです。主人公の幼馴染み・かなでと口論するイベントはだいぶ笑えた。見た目は修羅場っぽいのに言い合っている内容がアレではな……。

 ストーリーは王道的でお約束の展開。「父親との和解」を以って目的達成とするため、特にアクロバティックな要素はなく。手堅くまとまっている。地味と言えば地味だが。

 亜里咲エンドは冬華シナリオの途中から派生する。クリスマスの前に終わってしまう、Hなし(妄想シーンはあり)と、扱いは限りなくオマケに近い。それなりに量はあるけど、やっぱり中途半端。ただ、「はじめてつくったケーキ」の真相については予想通りでちょっと笑った。

 地味だからこそ引き立つ、根っからのサブヒロインってな感じですからこの扱いに不満はないです。……まぁ、本音を漏らせばHくらいは欲しかった、と。

 それにしてもパテにゃんやってると甘い物が食べたくなる……普段はデザート買わないけど、思わず購入してしまったり。クリーム(゚Д゚)ウマー。スポンジ(゚д゚)マズー。


2003-09-21.

『パティシエなにゃんこ』、かなでを攻略中。

 マップ選択形式で個別イベントの量が多いだけに、二周目以降も結構時間がかかります。一周するだけなら割とお手軽だけど、コンプするとなるとなかなか時間を食う。ボイスリピートがない、マップ表示時にセーブできない(訂正:マップ左下の「メニュー」をクリックすれば可能)、スキップが遅いなど、システム面での不満はいくらかあるけれど話そのものはべりぃぐっど。もろに「お約束」のノリだが失点を抑えて地味に得点を稼いでくる。初見は地味に映ったかなでも徐々に魅力を感じてきた。やはり幼馴染みは良い。やはり記憶の遡行にはこう、「現在を生きる」という流れとは違った楽しさがある。「思い出は逃げ込むための場所じゃない」とはいえ、幼き日の記憶にはどこかサンクチュアリみたいな心地良く秘密めいたムードがある。物語の好きな人間にノスタルジィが嫌いな人はいないんじゃなかろうか。


2003-09-22.

『パティシエなにゃんこ』、かなでシナリオをクリア。

 ロード・オブ・ジ・幼馴染みといった観のある王道的なシナリオでした。一部のシリアス展開に納得の行かないものを感じるものの、ほのぼのした日常は楽しい。時間をかけて地味に魅力が染み渡ってくるキャラですな。狙い澄ましたかのようなボケっぷりと、時折見せる「猖獗」としか言いようのない暴れ具合が割とスゴイ。あそこまで本気な目をして「学校に火をつければ……!」と叫ぶヒロインは初めて見た。

 クリアしたけれどCGは1枚抜けています。取りこぼしかな? でもこのゲーム、かなり選択肢が少ないから拾い損ねるイベントがあったとは思えないが……他のルートで拾えるのかもしれないし、とりあえずは先を進めよう。(追記:この取りこぼし、ノーマルエンドのCGでした)


2003-09-23.

『パティシエなにゃんこ』、みちる狙いで攻略中。

 ぶっちゃけヒロインの中では一番地味というか目立ってないんですが、魅力がないかというとそうでもない。ルックスは良いし冷淡そうに見えて押しに弱い性格も美味しい。冬華ルートでの朝食イベントなど、年上キャラの割に隙間を埋めるような形で可愛らしさを見せ付けてくるあたりが最高。茉理やミオ、冬華みたいな前衛の萌えヒロインではなく、かなでや亜里咲と同じ後衛の和みヒロインで、この両陣営の色分けがあってこそパテにゃんの絶妙なまたーりムードが醸されるのではないかと。

 最初は主人公との仲が悪く、次第に打ち解けてくるのですが、まあその過程の描き込みはちょっと浅いかな。プレーしていていまひとつ実感が湧かないうちに和解してしまい、少し置いてけ堀な気分。けど日常コメディでの遣り取りは楽しいのでキニシナイ。時に貧乏籤を引きつつも、時に美味しいところを掻っ攫っていくあたり、地味そうでいてなかなか強かだ。茉理との酔っ払いイベントは普段の地味さがイイ味付けになって一層盛り上がる。

 それにつけても茉理。あれはいい妹だ。調子良く要領良く気紛れで悪戯好きのくせしてたまに凹んで庇護欲を掻き立てるところなど、もはや妹としての完成形だ。実妹。やはりこれはイイ。ソフ倫規定の関係で義妹としかエチーできないことにより、エロゲーじゃ「実妹は保護されているッ!」とアナウンサーが絶叫するほど霞んだ存在となっていますが、どうあれ義妹と実妹の間には越えられない厚い壁が立ちはだかっている。「真の妹とは辿り着けぬモノ」。茉理と戯れているときにふと意識に浮かぶ「攻略不可」「エチーできない」という事実。それが当方を滾らせる。売り切れと聞くと途端に欲しくなる新作エロゲー、借りられている方がエロそうに見えるAVなど、気持ち的には「不可能に挑戦したくなる」という野心と同列の「ないと知ると欲しくなる」心理が欲望に火をつけるのです。茉理は言わば猛烈な山火事であり、当方の燃え上がる欲望を消火する手段は皆無。消火できない──攻略できないからこそ、萌え心が燃えっ放しとなる寸法であります。ええ、ですから「非攻略」は決して悪いことではありません。非攻略ゆえのもどかしい熱情と劣情は収める術がないだけに却って楽しい。永遠に遠足前夜が味わえるようなものです。


2003-09-24.

『パティシエなにゃんこ』、みちるクリア。

 大筋はお約束だけど、過程に微妙な意外性を仕込んでくるあたりが楽しかったです、はい。あとは残すところミオひとりのみ。


2003-09-27.

『パティシエなにゃんこ』、ミオをクリア。

 ねこスティックふぃんがーに噎せるほど笑った。たぶんあそこがパテにゃんで一番ダークな箇所だろう。

 で、これにてパテにゃんはコンプ。思ったよりも時間がかかった。1日に1〜2時間くらいで続けて、2週間要りました。累計すればザッと25時間。フルボイスだからというのもあるけれど、これだけかかったのは『デモンベイン』『てのひらを、たいように』以来です。

 ストーリーを追うよりも、日常シーンのまったりムードを味わうのがひたすら楽しかった。いえ、シナリオも悪くはないんですが、太鼓判を押せるほどスゴいわけでもなく。期待しないで読んでいく程度がちょうど良いかと。「萌え」と「和み」、それとちょっぴりの「感動」。過不足ない程度にまとまっています。毎日ちまちまプレーするには最適。傑作や名作ではなくあくまで良作の域を目指し、無駄なく目標を為し遂げた──そんな一本です。パッケージを見て何か「くる」ものを感じ、それでいて過度な期待を寄せることなく興味が持続するってな人にはオススメ。他にもいろいろ言いたいことはありますが、強いて書けば一言で集約できます。

「非攻略だけど、やっぱり茉理が好き」


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