「パルフェ」
   /戯画


 日記の内容を抜粋。


2005-03-31.

『パルフェ』、はじめました。(リンク先、声が出るので注意)

 『ショコラ』の続編というか姉妹編というか、話そのもののダイレクトな繋がりはなさげなんですけれど、世界設定は共通しているし、時系列上でも『ショコラ』の後に位置している。『ショコラ』をしといた方がいっそう楽しめるけれど、していなくても別に問題はないといった仕様です。やはり、「単価が高い」&「開発に時間が掛かる」エロゲーでストレートな続編モノはやりにくいのか。

 シナリオが丸戸史明なので「安牌」と踏んで購入しました。この人が書く一つ一つのシーン、一つ一つの遣り取り、それらをひっくるめて構成されるシチュエーションはあくまで理詰めで無駄がなく、非常にスマートな印象があって好きです。とはいえ理詰め過ぎてベタベタなわざとらしさが鼻に付く部分もありますし、基本的に地味な作風なので、儲化するまでには至っておりませぬ。当方はトータル・バランス型よりも一点突破型、端整よりも荒削りに入れ込む習性ゆえ。

 失敗に終わった喫茶店「ファミーユ」の経営を、もう一度やり直そう──と仲間を集めて奮起する王道的な協力共闘ストーリー。序盤は戦力が不十分だったりして、歯痒い気持ちをプレーヤーに抱かせつつも先を期待させることで中断する機会も与えずクリックさせ続ける。なんというか、普通に面白いですよ。ひとりひとりのキャラがはっきりとした輪郭を有していて捉えやすいし、あざとさ、わざとらしさを感じさせることがあっても、訳の分からなさ、退屈さを味わわせることは一切ない。地味ながらとても手堅いです。

 差し当たってカトレアこと花鳥玲愛に狙いを絞ってプレーしていこうかと。自負心が強く好戦的でありながらおせっかい焼きのツンデレ有望少女。やべぇ、当方の嗜好から言ってほぼ完璧だ。あと、プレーするまでノーチェックだったかすりさんも意外に魅力的。かすりさん以上に姉の紬さんがバリバリ魅力的ですが。かすりルートでは主人公の義姉・恵麻と紬さんとの間で「姑戦争」を勃発させてほしいものだ。扱い的にメインヒロインっぽい由飛も気になるところ。容姿とか性格以上に、その握撃が。


2005-04-02.

『パルフェ』、順調にプレー中。

 システム面を振り返ると、前作よりも遥かにやり易くなっているなぁ。方式をマップ移動のみに絞り、イベント中の選択肢を削った単純な構成のおかげで話に集中できるようにもなっている。なかなか快適。

 既に何人かクリアしましたが、シナリオ……というかストーリー展開そのものはさしてヒネリが利いたものではなく、派手にテンションが盛り上がったりするところも少ない。居心地の良い空気をまったり楽しむタイプのゲームなんで、変に波乱万丈の展開をする必要はないと個人的には思いますが、もしそうした方面に期待した人がいれば肩透かしかな、と。

 そしてやはり、当方はカトレアの威力には抗えませんでしたな。「他人に厳しく自分にも厳しい」、更に重ねて「素直じゃない」という性格を併せ持つ金髪双尾のツンデレ少女。狙い澄ました造型と、それを活かそうと余念のないテキストによって怪物級の魅力を実現させていますね。実に恐ろしい。プレーしていて顔面を崩壊させずにはいられなかったです、はい。ただ、くっついてからのイベントとか、微笑ましい修羅場とか、そういった引っ張る場面がなかったのは残念。とても残念。虎は傷ついてからが本物であるように、ツンデレっ娘はくっついてからが本物だろう……! というか、あの端折りっぷりはなんぼなんでもあんまりなので、ひょっとするとあれとは別のルートがあるのかもしれず。もう少し調べてみます。

 えーと、ついでに言えば里伽子にも敗北しました。クリスマスのイベントにすっかり轟沈。「里伽子の味がする…」 ああ、クサい、なんてクサい、お前らはいったい十何年前のラブ・ロマンスなんだよ。見ているこちらの方がいろんな意味で恥ずかしくて転がりたくなる。丸戸のシナリオはことロマンスに関してはベタを通り越してレトロの領域に差し掛かっていますが、その時代錯誤ぶりが「古臭さ」として雰囲気をぶち壊しにすることはなく、まるで年を経た古鉄のように硬く一本の筋金として通っているのだからたまらない。あざといと分かっていながらも、昔風ロマンス大好きっコのひとりとして強靭な昭和的ノスタルジィに打ち据えられざるをえませぬ。


2005-04-10.

・満を持して『パルフェ』再開。明日香トゥルーエンド。

 どうやら当方はこれまでノーマルエンドしかクリアしてなかったようで。そりゃ物足りなくもなるわな……。『パルフェ』ってマップ移動形式だから攻略は簡単そうに見えるんですが、特定のキャラばかり狙って選び続けた場合、ノーマルエンドには簡単に行けるもののトゥルーエンドは少し難しい。別のキャラとも関係を進めておかないとフラグが立たないこともあるんです。幸い、周回するたびにヒント機能が発動して「どれが何のフラグになっているのか/フラグの発生条件」が分かる仕組みになっており、手間が掛かることはあっても詰まる心配はゼロ。なにげに攻略が面倒臭かった『ショコラ』と比べると天と地ほどの開きがある。ホント、システムは良くなった。

 で、明日香。本編の文章から察するに、主人公の四つ下に当たる後輩ヒロイン。見た目は「けなげ」系統のようでいて、結構いい性格をしています。天然オバカ気味の由飛と被らないためにか言動は理性的で、かと言って里伽子と被るほど理性派でもなく感情的な面も目立つ。ある意味中途半端で、それゆえに美味しいキャラ。「てんちょ」「せんせ」という舌っ足らずな喋りも微妙で、ムズムズと形容し難い気持ちを提供します。未熟な小悪魔。なんと美味しい位置づけか。

 ストーリーは再三言った通り何の変哲もない代物で、これだけを取り出したなら特に語ることもないのですが、そのストーリーに肉付けをし、「シナリオ」として有効になるまで漕ぎ着けさせた努力はグッド。奇を衒わず、正統派的な展開を面倒がらず、きっちり仕事をしている感じで好印象。丹念に描き込まれ、それと気づかないほどさりげなく敷かれていた伏線を活かすことで、ほとんど脇役に近かった明日香が、一躍ヒロインに抜擢されたかのように思えてくる。これだからマルチシナリオ形式のエロゲー(ギャルゲー)は面白い。なんだかんだで未だに卒業できないのもむべなるかな。

 こうやってプロットの内容を詰めていくことのできるライターがシナリオを組んでいると、細かいところで共通点が鮮やかに活きてくるので余計にマルチシナリオの面白みが増すなぁ。幹がしっかり通っていてこそ枝葉の違いが楽しめる。なかなかの佳品を引き当てた、と存分に堪能しております。


2005-04-12.

『パルフェ』、恵麻トゥルーエンドと里伽子トゥルーエンドに到達。

 当方は恵麻→里伽子の順でやりましたが、逆だったら大変なことになっていたかもしれない。それはもう精神的な激痛とか覚えて。しかしこの順番もこの順番で、痛みが減る代わりに衝撃そのものは威力を増してしまうという面を持つ。どっちから攻めても所詮は罠の中といった仕様。

 シチュエーションの持って行き方が強引というか、理詰めで組んだせいで却ってわざとらしく見えるところはあります。「狙ってる」感が濃厚。そのため何度か冷めそうになる局面もあったが、そこでギリギリ冷めさせないあたりが『パルフェ』の本領。丸戸節が唸り、小技を積み重ねていくことで危ういバランスながらも大技を成立させ炸裂させる。「あざとい」と分かっていながら引き込まれてしまうのはひとえに当方が王道的展開を嫌っていないからでしょう。「安易な」という意味での王道は好みませんが、「努力の結果としてそこを通る」ものとしての王道は別。軌跡すらいとおしくなる。

 それにしてもこのゲーム、あるルートでのイベントが別のルートにおけるイベントと関連して繋がっているあたりは面白い。最初見たときはなんてことなかった些細な部分も、各キャラのトゥルーをクリアした後で改めて見直してみると思わぬ発見があったりする。再プレーが楽しいゲームってのはなかなか貴重。


2005-04-18.

『パルフェ』、かすりルートクリア。

 杉澤恵麻と涼波紬、ふたりの姉(一人は義姉だが)による「姑戦争」勃発。堪能しました。

 一応正ヒロイン扱いで看板娘の由飛、高機動ツンデレでライバルの玲愛、甘やかし天国で精神的主柱の恵麻、棘持ちロリで功労者の明日香と、他のヒロインに比べてゲーム的にも店的にも中途半端な立場にある、ムードメーカーでマルチプレイヤーのかすり。なかなかいいキャラクターをしている割に微妙感が拭えなかった彼女もいざ自身のルートに入れば本領発揮。ファミーユと絡んでキチッと盛り上がる。捨てキャラがいない構成とは、実に驚き。ただ、ラストの展開は少し駆け足だったかな、と。シナリオとしては残念。

 それと彼女に限ったことではないんですが、別ルートでは「他人の色恋沙汰」として的確にアシストかましていたキャラがいざ「自分の色恋沙汰」になるとてんで空回りするのは皮肉というか、むしろ当たり前すぎて逆に面白い。ノーマルエンドの、くっついたままずるずるとダメっぽくなっていく雰囲気も微笑ましくて良かった。トレ・ボン。トゥルーエンドに至っては山場がとってもオバカで「微笑ましい」の次元を超えて激笑ましいが、とっても前向きで爽快だ。トレ・トレ・ボン。

 修羅場スキーとしてはもっと痴情がもつれて欲しかったものの、これはこれでイイや。残すヒロインもあとふたりとなりましたし、もう少しでコンプできそうな気配。楽しみだけど、同時に惜しむ気持ちも湧いてきたり。


2005-04-20.

『パルフェ』、由飛ルートクリア。

 天才め!

 というか天才の域を通り越して怪物じみた執念を見せる告白シーンはなんなんですか。シチョエーションがやや無理臭いものの、あまりに常軌を逸した行動が一切のツッコミを無力化。一応この子が表向きとはいえ正ヒロインなんですよね……? どこか路地を一本間違えたような気分に陥るほどでした。ボタンの掛け違えというより、着る服を間違えやがってんじゃないの、こいつら。いろんな意味で愉快でした。

 ノーマルエンドはいかにもノーマルらしい、進展も解決もないまま平和に幕といったパターンでしたが、トゥルーはしっかり波乱混じり。さるヒロインを交えたラブコメ的三角関係が非常においしゅうございました。ガチではないにしろ、プチ修羅場もイイことはイイ。お互いの手札を切ってゆるゆると勝負を賭けて行く緊張感がまたよろし。

 そしてヌルめの修羅場が過ぎ、シナリオが着地点を求めて飛び立つ後半。いやはや、あのシーンの由飛の顔は素で怖かった。見た瞬間「ヒィィ!」ですよ。ついでに言えばラストのエロシーンもこの手の恋愛モノに相応しからぬ連荘ぶりで「ヒェェ!」。丸戸はツンデレの扱いのみならず、天然系統の娘さんを捌くのも得手ですな。主人公とのバカップル化によってダメさ加減が極まっていく由飛のヘタレっぷりが妙に微笑ましい。

 さて、残すは一つ、花鳥玲愛のトゥルーエンドのみ。とっておきのシナリオをぶちかまされに行って参ります。


2005-04-22.

『パルフェ』、玲愛トゥルーエンド確認。コンプリート。

 カトレア、まじ、すごい。

 花鳥玲愛、いわゆるゴッデス。彼女には荒ぶる鬼女神「ブチキ玲愛」の称号を与えたい。与えた一秒後に罵られて破棄されたい。

 金髪碧眼ツインテール……「ツンデレ」の響きを知る者ならば胸を高鳴らせずにはいられない容姿を持つヒロインにして期待以上の魅力を放つ彼女の振る舞いは、もはや破壊活動の領域に達している。脳内において「萌え」を認識する部分を徹底蹂躙。この身を「萌えすぎると死ぬ世界」に置いていれば骨まで残さず滅びていたに違いないでしょう。ありがたや、ありがたや。最初に玲愛のノーマルエンドをクリアし、トゥルーに至るまで他のすべてのルートを巡り、それぞれ異なる魅力に触れて『パルフェ』の味を楽しみましたが、やはり収束すべきポイントは彼女に定められていた。当方のパルフェ・ウォークはこの地に始まり、そしてこの地こそが終わりなのだ。

 「素直じゃないゆえの素直さ」、「他人に厳しく自分に厳しくけれど恋愛方面には甘く」。鋼と真綿の如きツンデレ。要素を反芻し、改めて振り返ってみても素晴らしい。2回目の濡れ場であまりにもストレートな献身ぶりに「ここではいったい何が起こっているんだ」と愕然とする主人公に同調したのも束の間、行為後のヤクザキックで更に愕然。面白いからいいんですが、このゲームをCS化するとなると色々ステキなシーンをカットしなきゃいけないことを戯画はちゃんと理解しているのか。移植の事情も知らぬげに18禁ならではの表現をエロシーン以外にも平気で盛り込み、エロシーンそのものも有機的に物語と密着させてしまうライターの神経は多分ぶっとい。

 終わりあたりに『ショコラ』の舞台であるキュリア本店へ訪れるシーンがあり、主人公と玲愛が足を踏み入れた途端、スッと記憶が遡行して1年前の『ショコラ』をやっていた頃に戻ったような柔らかい既視感が湧き上がるとともに、ふたりの存在を『ショコラ』の延長線上にあるものとして捉えられたのは面白かった。それまでメインキャラクターであったはずのカップルが、まるで舞台に姿を現したばかりのニューカマーとさえ錯覚されてくるのだ。ミッシング・リンクであるところの「キュリオ本店時代の玲愛」が妄想喚起によって一瞬で補填され、「あの玲愛が男を連れてきた!」というキュリオの面々が驚く様に共感できるようになるのは、やはりひとえに『ショコラ』でキュリオのイメージを強く植えつけられていたせいだろう。意外な形で思い出が活きてくるものだなぁ。

 正直、「大きくハズすことはだろう」程度の予測で安牌と見做しており、前作『ショコラ』をやっている以上はいろいろマンネリ感を覚えるんじゃないかとか思って期待の度合いを下げていたんですが、そんなセコい計算を笑って台無しにできる収穫でしたわ。キャラ配置は『ショコラ』と似ているというかまんまだけれど、『ショコラ』『パルフェ』の両方が「繰り返しやっても面白い」と言えるソフトなだけに、マンネリ云々を指摘するのも虚しい。

 『ショコラ』には『ショコラ』の、『パルフェ』には『パルフェ』の良さがあって甲乙つけがたいが、「システムが良好」「捨てキャラがいない」というアドバンテージ二点から『パルフェ』の方がオススメしやすい雰囲気はある。一部の絵が微妙とかシナリオの組み立てが理詰めすぎるとかはあるにせよ、全体的に見れば頭のてっぺんから尻尾の先に至るまでたっぷり餡の詰まった鯛焼きみたいな充実感に優れている。まさしく面白い。「まだまだこの世界からは足抜けできない」と実感するに足る一本でした。いや、それは『パルフェ』の出来がどうこうより単に当方が首まで浸かったオタであるというだけの話かもしれませんが、業の深さを測る物差しとして『パルフェ』が最適だったのは確か。

 ちなみに当方の好きなキャラは……って、上で散々書いたからいいか。察するまでもなく花鳥玲愛です、はい。というより、全体的に個性と関係のバランスがひどく心地よいので、好きと言えば全員好きなんですけども。卵マニアの主人公も、だだ甘の恵麻も、茶目ってるかすりさんも、若干気だるい喋りの明日香も、無駄に元気がいい由飛も、声が微妙だけど板に付かない「つれなさ」が可愛い里伽子も、絶妙なタイミングで居合わせる瑞菜も、六感剥奪しそうなひかりも、一番まともそうな芳美も、「実は『切れ者』って感じ?」とわざわざ自分で口に出してしまう板橋店長も、はんなりとした紬さんも、一回しか出番のなかった源一郎も、両親不在がデフォのエロゲーでありながらしっかり登場した高村夫婦も、抜け駆けの早い美鈴も、ちょい役ながらここぞという場面で出てくる翠とバラさんも。さすがに故人で生前の姿がまったく出ない一人とかは例外ですが。ねこにゃん原画は「萌え」成分が薄まって個人的には少し不満でしたものの、印象的なシーンのイベントCGは素晴らしかったのでトントン。さりげない演出も小憎らしいくらい利いていたし、このゲーム、全体の失点を抑えつつ部分部分で地道に点を稼いでいる。

 それにしても里伽子を見ていると、ある言葉が浮かんできます。何度も何度も頻繁に。けど二重ネタバレ(『パルフェ』はもちろん、別の作品のネタバレにもなってしまう)なので書けません。辛い。そのうえマイナーだから書いたとしても細かく解説しないとまず伝わらない。ああ、誰かネタの通じる人と語り合いたい衝動。


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