「おたく☆まっしぐら」
   /銀時計


 日記の内容を抜粋。


2008-02-14.

銀時計の『おたく☆まっしぐら』、プレー開始。

 こう書くと意外かもしれませんが、現時点で唯一タイトルに「おたく」を冠しているエロゲーです。主人公がオタクだったり舞台が秋葉原だったりと、オタ文化を主要テーマに据えたエロゲーなら他にもいくつか類例があるけれど、「おたく」で検索して引っ掛かるのは今のところこれのみだ。体験版の出来があまりにもヤクいので華麗にスルーしていた思い出の一本。当時は「体験版を判断基準にすれば大丈夫」という甘い考えがまだ通用していた時期でした……今はもう体験版が良くても信用できない。死んでいてもプロの殺し屋には近寄りたくない心境と一緒。さて、この「おたま」あるいは「おたぐら」を略称とする『おたく☆まっしぐら』、地方から出てきたオタクの主人公が秋葉原近辺で日常生活を送り、様々なヒロインと出会うっていうストーリーのエロゲーです。パロディやコメディを基調としているためジャンル的にはギャグものに属しますが、例によって後半でシリアス展開があるみたい。

 何をトチ狂ったのかADV方式ではなくSLG方式の妙に凝った仕様で発売しようとして、ろくにフラグ管理もできず、ボイスやシナリオにも欠けがありましたが、修正パッチで補うどころか「修正パッチを適用→既存の内容が削られる」とむしろ後退。ガーデニング商法の魁みたいな真似をやらかしたことにより、単なるバグゲーとしてではなく「メーカーの対応が最悪なソフト」としてエロゲー史に名を残す結果となりました。しかし、これはまだ前半戦。本当の伝説は2ch作品別スレにて幕開けしました。有志による、可能なかぎりのADV化――吉里吉里コンバートツール「最果てへ☆まっしぐら」の制作。バグが多く、一部の環境ではまともにプレーできなかったことから有志制作の互換システムが配布された『秋桜の空に』を彷彿とさせるエピソードですね。製品版に収録されているシナリオはこれでだいたい読めるようになったらしい。七面倒臭いSLGパートを攻略するのも嫌ですから、インストール後早速使用いたしました。

 繰り広げられる冒頭の遣り取りはまだうっすらと記憶が残っていて、しきりに懐かしくなった次第。「○った」がひときわノスタルジーのツボを押す。かぶるの言動も今見ると『人類は衰退しました』の妖精さんを連想させる。推奨順に従って朝美ルートから進捗させていますが、メイド喫茶のイベント一つを取っても「視姦されることが業務」「良い意味で淫売だな」「麾下の緑メイド二機と合流」などふざけたテキストの乱打でいとをかし、です。C†Cやイマもギャグやネタは結構多かったけど、ここまで徹底したものはロミオ初であり、未完成だろうが放置するには勿体ないと改めて痛感しました。執拗に紡がれる夢枕文体も、ちょうど『餓狼伝』読んでいるところなので笑ってしまう。ロミオもいずれ格闘とか剣戟とか、アクション主体の話を書いてくれないものか。イマで描かれたインチキチャンバラ(マリオット盲点に潜り込む、とか)は案外と好みです。「投射弾道学」も本編で詳しく掘り下げてほしかった。けど、人衰で当ててしまった今、そうした方面へ向かう可能性は低いかな。

 オクル……? いや、その名前は挙げないでください。無闇に期待を掻き立てるだけで、希望がひと欠片も見出せませんから。


2008-02-16.

銀時計の『おたく☆まっしぐら』、プレー中。奥井朝美ルート。

 未完成未完成と言われているからサクッと終わるんじゃないかって気軽に構えていましたが、案外長い。投げ売り価格の中古品でゲットしたため、想定した以上の量が詰まっている&今のところ質も一定に保たれているのは嬉しい誤算と言いますか、これだけ地力のあるゲームが叩き売られていた事実にむしろ悲しくなったり。並行プレーしている『こんな娘がいたら僕はもう…!!』は同時期どころか同日に発売されたソフトで、特典攻勢の反動で中古屋に在庫がダブついた際一旦値崩れを起こしたものの、以降は持ち直して「これなら新品で買った方がいいかな」と思わせる程度には安定しています。市場がすべて、とは申しませんが……どちらも楽しく笑えるゲームだから開きまくった差を見るにつけ、つい慨嘆を抑え切れなくなります。

 朝美とはまだくっつくところまで行っていませんが、主人公に対して敵愾心と不遜さを示すばかりだった態度が徐々に軟化し、ほんのり匂うくらいとはいえデレ要素を焚き始める様子に思わず脂下がる。なんというか、見た目の印象に反して防御力が低く脇も甘くて卑語を言わせたくなる庇護欲をそそる子ですね。付き合い出してデレ臭をムンムンと立ち篭もらせたら、どうなっちまうんだろう。想像してワクワクせざるを得ない。一夜やざくろといったサブキャラクターズも良い味を醸しています。あと、シモネタが多いのも個人的にかなり宜しい。

「……それはそれは……またやおい穴の小さいことで……」
「やおい穴って尻穴のことなのか?」
「……シリませんよ」

 など、いやはや絶妙にくだらない。エロゲーなんだから、コメディものやギャグものにはもっと際どいネタを仕込むべき――という当方の理想に合致している。ただ、藤崎竜太クラスまで行くと「笑い」のゲージが超必打てるほど高まってしまい下半身が著しく萎えますので、是非ともシモとエロの配分には気をつけていただきたいところ。シモいのとエロいのとは異なります。塩と砂糖くらい違うのです。ちなみに、現時点でもっともシモエロの均衡が保たれているソフトは『プリンセスうぃっちぃず』だと思っている。だから『ティンクルくるせいだーす』には夥しく期待。……えっと、話が逸れてしまいましたが、そんなわけでおたぐらはシモネタの撃鉄を起こし、それでいてエロの実包を忘れずに込めて撃ち放っていただきたい。


2008-02-19.

銀時計の『おたく☆まっしぐら』、奥井朝美エンド確認。

 すみません。奥井朝美はツンデレキャラだという偏見を抱いてましたが、いざ付き合い出したらデレどころじゃなかったです。なんというかもう、ビースト? 明必殺のアイアンクローを以ってしても引き剥がせないほどの勢いで食らいついて唾液を流し込むなんて、デレの次元を突破している。デレというよりデンジャーですね、ツンデンジャー。実に恐ろしい子でありました。それにツンデレっつったら主人公の方がよっぽどツンデレだ。

(俺は超亭主関白! 命令しまくりだ!)
 今日もまた、明の鬼彼氏ぶりが冴え渡る。
「荷物貸せ。おまえのような未熟者には預けてられん」
「はぁい」
 ふたりの私物が入った鞄を、明が持つ。

 男ツンデレめ!

 「一般的にツンデレと呼ばれるものは、精神的な幼さに裏打ちされている」ことを熟知し抜いた手つきでシナリオを捌いており、クライマックスの展開にはいささか顎が抜けそうになりましたが、総合で判断すれば模範的な仕上がりになっています。ただ「最果て」を使っていると朝美イベントばっかり見ちゃって他のヒロインがまったく登場しないことや、時間経過が分かりにくいことが難点と言えば難点か。しかし、起承転結はしっかりしている。警戒していたキングクリムゾン展開もなかったし、一本のルートとして満足ゆくまで楽しめました。終盤の〆もロミオらしくて乙です。支払った金額からすれば、これだけで充分元が取れた気がする。以降がどうなろうと、もう「買って損した」という気持ちにはならないでしょう、きっと。ぶっちゃけ恋楯ドラマCDよりも安かったくらいだし。まあ、こういう割り切った評価が出来るのもDiesやGardenのショックを経由したからこそだと自己分析。どこまでが「期待」でどこからが「高望み」なのか、弁えるようになりました。

 次の推奨順は通常イベントや特殊イベント、地域の日常をこなしてから綺羅ルート……噂に名高い未完成ルートか。いったいどんなもんなのやら、この目で確かめてみんとす。


2008-02-21.

銀時計の『おたく☆まっしぐら』、櫛田綺羅エンドに速攻で到達。

 同人作家で男性恐怖症の眼鏡っ子。地味の極地であり、キャラデザからして好みじゃなかったので、別にこの娘がクリアできなくても……などと軽んじていたのも最初のうち、「オタクなんかじゃありませんよ、一般人ですからー」と言い張る彼女の痛々しさに愛が芽生え、次第に盛り上がっていく。まずい、このルートは未完成なんだぞ、ときめくな我が心! と叱咤したのも束の間、「綺羅かわいいよ綺羅」という呟きが知らぬ間に漏れました。

 そして次の瞬間、キングクリムゾン発動。脈絡が吹っ飛ぶ。話がいきなり『闇金ウシジマくん』に切り替わります。「ドージンくん」編か? エンディングはなんとか綺麗にまとまるが、過程が抜けすぎていてコメントしづらい。Hシーンすら実装されていないし。聞くところによれば、最新のパッチではルートごと抹消されているらしく、不人気がさだめの歴代ロミオ眼鏡ヒロインズでも右に出る者がいないほど最悪な扱いを受けています。もう笛子どころじゃない。

 シナリオの出来がさほどでもなければ簡単に諦めがつくのですが、なまじ面白く仕上がっていて綺羅への愛着が募るだけにキツい。「生殺し」と評して差し支えないクオリティ。これに関してはロミオの腕とセンスが仇になりました。おたまに完全版を求める人々の気持ちをイマや心底まで理解させられた仕儀。確かにこれはないわー。見直しも満足に行ってないのか、あっちゃこっちゃとケアレスな誤字が散らばっているのも萎える。立ち絵もうまく統一されていないのか、表情差分を表示する際に若干ズレることがあって、なんだかなーです。落胆街道一直線。けど明の「ふらぁぁ、来いよぉぉぉぉ、かかって来いよぉぉぉぉぉ!!」の威嚇はちょっぴり胸キュンした。

 さて、順路に沿えば次は美月か……今度は完結しているとのことですし、期待させていただきます。


2008-02-27.

銀時計の『おたく☆まっしぐら』、福山美月ルートが終わって現在陽藤麗南ルート。

麗南「こんなレベルで世に戻ろうだなんて少し虫が良すぎるのではなくって!!!」
麗南「……ふぅ」
 自分の剣幕に気絶した。

 蚤の心臓にもほどがある。と言いますか、新ジャンルじゃないですか。「自分の剣幕に気絶」。臆病属性の極北でありましょう。と、そんなこんなで、お嬢様にして原型師の陽藤麗南。むしろお付きのメイドである羽鳥が態度最悪すぎて逆に萌えますけど、麗南も麗南で「ゆかり教育の体現者」たるブルーマウンテンさんがCV当ててるおかげもあって手堅いシャルムを発揮しています。彼女のルートは「オタク文化を消費する側」ではなく「オタク文化を生産する側」として参与していく流れが特徴的。生産と言えば同人作家の綺羅も一応含まれますけど、あの人はルートが未完成だったので……。

 書き忘れていたからついでに美月ルートにも触れておきますと、なんつーか美月は「萌える」とか「可愛い」よりも「面白い」が印象として先立つタイプのヒロインでしたね。勢いがあり、ノリが良く、主人公との掛け合いも息が合っている。どれだけ主人公にアプローチを重ねても努力が実らない不遇者ながら、うまくフラグが立って付き合い出すと照れや恥ずかしさから却って消極的になる逆弁慶ぶりは微笑ましかった。シナリオは途中の展開でちょい疑問を感じたものの、最終的にはそれなりにまとまります。朝美ルートとは違った側面が見えて興味深かった。ただ、A女ネタはもっと濃度を上げて欲しかったところ。「在アキハバラであるにも関わらずお嬢様学園」という設定を使い捨てだなんて豪儀にも程がある。

 で、麗南ルートもそれらと異なる趣のシナリオ展開で魅せてくれています。フィギュアに生きフィギュアに死す。いやぁ、おたまって本当に面白くて、それだけに惜しいゲームなんですねぇ。まだコンプしてませんが、「未完成」という不名誉な名とともに捨て置かれるのが勿体ない出来だと現段階でも請け合えます。空いた時間を潰すためと言いますか、気分転換用にとサプリメント感覚で購入したコメディ分摂取ゲーでしたのに、最近はすっかり夢中になってしまってこれをプレーしたいがために他の予定を延べているほど。おたま☆まっしぐら。


2008-03-02.

銀時計の『おたく☆まっしぐら』、陽藤麗南ルートが終わって現在佐々木操ルート。

 幾ばくかの謎は残りましたが麗南ルートも良い仕上がりにございました。朝美ルートや美月ルートに比べてシリアス成分が低く、のほほんとコメディチックな部分を享受しやすくなっているあたりがポイントかもしれない。造型方面にはまったくと申して差し支えないほど関心のない人間ですが、このシナリオを読んでちょっぴり手を伸ばしてみたくなった。危ないなぁ。でも、イイ感じに脳を刺激して空想や妄想を掻き立ててくれることは確か。「もしこれが現実の事象として発生していたら……」と仮定して心を遊ばせ、少しばかり童心に返った気分さえ味わえました。

 童心と言えば、今やっている佐々木操ルート。これもイイ。すごくイイ。ゲーセン(アミューズメントセンターなんて言い方認めねぇ)を舞台に対戦プレーも協力プレーも可能なアクションゲームを通じて互いの仲を深めていくストーリーで、ゲーム狂いだった過去を持つ身としては一行一行の醸し出す臨場感がたまらない。「ゲーセンで育む恋」というシチュエーションにやたら懐旧感と既視感を覚えるなぁ……と思っていたら、何てことはない、我が小学生時代のお気に入りコミック『ブレイクエイジ』じゃないですか。あれもヒロインが年上でしたね。貫禄の差か、ビースティで制御至難な明を上手に操縦してくる操。今までヒロインを猛烈に振り回す立場だった主人公がヒロインに振り回され弄ばれるって逆転現象がややおもろいです。しかし、やればやるほどB-A思い出してああああノスタル汁がドバドバ溢れひゃうぅぅぅ。当方の姉さん女房属性は高原彩理で芽生えた、これ定説。

 けど忘れてはなりません、操ルートはどうやら未完成らしいのです。持ち上げて突き落とす、垂直パワーボムのパターン。また綺羅ルートの如くキンクリ発動するか? ここぞってシーンで縮地法使ってエンディングまでひとっ飛びか? おたまは素で無拍子を極めているから困る。


2008-03-04.

銀時計の『おたく☆まっしぐら』、現在高透涼香ルート。

 操ルートはクリア。あー、確かに途中シナリオが抜けている箇所があって未完成気味でしたが、「最果て」だと本編で使われていないCGをスライドショー形式で表示してくれるので、経過を想像で埋めることができ、そんなにガックリもしなかった。綺羅ルートに比べればまだまだイイ方でしょう。あれは心底キンクリだったけど、こっちはせいぜいソードマスターヤマト。にしても操、このゲームに登場するキャラクターの中では最強クラスのダメ人間ですね。普通ならNG扱いされそうだけど、「ぜんいん☆ビョーキ!!」がコンセプトの本作じゃマイマイでプラ、負のオーラを推進力に変換して魅せてくれる。ユーアヒューマンだっ…!

 涼香はガンオタヒロイン。ガンシューとサバゲーが大好きで、一度ガン薀蓄の蛇口を捻れば言葉が瀑布となって迸り、止まることがない。そして何やら謎のバイトに従事している模様。これまでのルートは研鑽や共闘、決闘をテーマにしてきたけど、今回は「殺し愛」だろうか? 作中の表記では「殺試合」ですけど。なんであれ魅せてくれ、ガンオタの業深さ。


2008-03-06.

銀時計の『おたく☆まっしぐら』、高透涼香ルートを終えて景山瑛ルートへ。

 どうしても名前から「だぞっっっっっっっ!!」なお姉ちゃんを連想してしまうガンオタ娘のシナリオも無事クリア。正直に書いてしまえば、序盤の普通にサバゲーやっていたあたりが一番面白かったかなー。途中から「オタク狩り」との抗争が本格化してしまい、どうも話の方向がズレてしまった感が否めない。「両親と祖父がモノホンの兵士だった影響からガンオタのエリートに」という設定からしてややキツい印象はありました。抗争に迫真性を持たせるためとはいえ、ホモレイプありなのにもヒいた。涼香自体は魅力のあるヒロインなんで、もうちょっと違う流れでガンオタライフを楽しみたかったな、というのが個人的な感想。目標は「サバゲー大会の優勝」とか、そんな程度のヌルいものでも良かったです。

 瑛シナリオは「ミステリーハンター」、掻い摘んで言ってしまえば「オカルトオタク」のシナリオみたい。ロミオ自身が魔術書を買い込むほどのオカ好きらしいので、造詣には事欠かないでしょうけれども……っぃ脳裏を「霊長流離」の四文字や「オクルトゥム」の六文字がよぎっていって涙。あえて拭わず、悠長に泣きながら進めるとします。

 ところで「パトロン」が「バトロン」だったり、「だぞ」が「だび」だったりと、どうも誤字の癖からしてかな入力っぽい。やっぱライターはタイピング速度を上げるためにかな入力派が多かったりするのかな?


2008-03-08.

銀時計の『おたく☆まっしぐら』、コンプリート。

 やっと……やぁぁっと終わりました。変換プログラム「最果てへ☆まっしぐら」を用いて余計な手間を省いてすら3週間もの日数を要するなんて、これは予想以上のボリュームでした。シナリオが一部足りない、ボイスが多々抜けている、目を覆いたくなる頻度の誤字と、確かにファンが嘆くのも頷ける杜撰な仕上がりですが、一旦覚悟を決めて掛かればどうということもなかったです。「怒りの庭」コンボ経験者としてはむしろ、「これだけ出来てりゃ充分じゃん」とすら思ってしまう。

 雑多な要素を詰め込んだ騒々しいオモチャ箱系コメディでありながら、底流を成す一本のシナリオも組まれていて最終的にはそれなりのオチがつくという、割としっかりした造りで充足することしきり。コスプレ、同人誌、フィギュア、ゲーセン、MMORPG、サバゲー、オカルトと多岐に渡るジャンルを網羅しており、同人誌とMMOはシナリオないせいで掘り下げが浅くなっているものの「秋葉原」と「オタク文化」がちゃんとテーマとして活きているから巨視的には問題なし。ヒロイン一人一人が魅力的で、エロシーンがちゃんとエロかったのも評価を高めるポイントになっています。エロ:コメディ:シリアスの比率は3:6:1といった塩梅。山田一時代も含めてロミオゲーの中ではもっとも気軽にリラックスして楽しめる配分と言えるかもしれません。ギャグは気の抜けるダジャレ(「UFO→うふぉー」とか)も多かったけど、「まさかここでこのネタが!」って虚を衝くパロも混じっていて最後まで飽きずに笑えました。

 強いて不満を挙げるなら、一つ一つのイベントに登場するヒロインの数が限られている、つまり全員集合するようなイベントがないってことでしょうか。ヒロイン間の横の繋がりが皆無に等しいんですよね。なので当然三角関係や修羅場といった人間関係の縺れもほとんど描かれずマンツーマン方式に陥り、賑やかなイメージに反していささか単調なフローに見えてしまった。結局、この子とこの子は会話ゼロのまま終わっちゃったな……という組み合わせがいくつか。ゲームの仕様も絡んでいるし、仕方ないことかもしれませんが。

 個人的に好きなヒロインは朝美、麗南、美月の三人。朝美は初期のツンツンが反転して「デレデレ」すらブッチギるゾーンに傾斜していく恐ろしさに快感を覚えた。単純に当方が黒髪ロングストレート好きというのもありますけど、テキストの端々から「コスプレを愛している」というオーラが伝わってくるのも良かったです。「ぶどうジュースー!」が可愛いやね。麗南は金髪ロール&CV.青山ゆかりなお嬢さまの時点で勝ち組は確定か? 「お嬢さまは原型師」というギャップを余すところなく活用し切っている。エロシーンで明かされる真相にも驚愕しました。普段えちシーンはスキップするという人もあそこだけは読め。美月はキャラもアレだし声の演技もアレで、「幼馴染みキャラとしてどーよ」って苦言を呈したくなりましたが……いつしか慣れ始め、気づけば中毒状態に。もう美月はあの声以外にゃ考えられねぇ。登場するヒロインの中で唯一非オタのポジションながら、「抱き枕に嫉妬」という美味しい役どころを得て自分のルート外でも存在を主張する。しかし腰の回転十字架はいったいなんだったんだろう。あれ奪ったら美月をマリオネットみたいに操作できたりするんじゃないか。

 ヒロインランキングを脇に置いて、シナリオそのもので問えば操ルートが一番気に入りました。頭に「ヌル」が付くとはいえゲーマーだった経験のある身に「ゲーセンではじまる恋」という素材は甘美すぎる。途中のMMORPG編がまるっと抜けているのは無念の極地だけど、その苦杯を呑んで「イチ押し」と宣言したい気分。綺羅ルートは……キチンと完成さえしてれば、あるいは操ルートすら上回ったかもしれませんが、ないものを語ることはできない。現実は厳しい。というか、最新パッチで補完するどころかルートごと抹消した銀時計は鬼か? サブキャラでは木暮ざくろと羽鳥さんがイイ味出していました。下手するとメインヒロインより惚れたかも。もしこの二人がメインを務めるおたまFDとか発売されたら、「スワスチカ上等!」と叫びつつ予約して吶喊しちゃいそう。

 結論。まったく後悔のない、良い買い物ができました。「最果て」完成以前ならいざしらず、イマとなってはもう購入を躊躇う必要が一ミクロンも見出されない、それほどの出来映えです。会社の対応は水準以下というか下の下なれど、ソフトが有するポテンシャルは一人前。呪うべきは生まれの不遇であり、ソフトそのものに関して嘲弄の的にする必要はないと存じます。今後もポツポツと再プレーするであろうことはほぼ確実です。核家族のイベントとか、重ねて見るとこう……ジワジワと来るものがありますわ。


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