「『Gun Blaze Vengeance』放送に備えて『魔法少女リリカルなのは』の復習」(2025年4月19日の記事)
まず「魔法少女リリカルなのはって何? タイトルくらいは聞いたことがあるんだけど実は全然知らないんだよね」という人向けにシリーズの発端から解説します。すべての発端は1998年に発売された成年向けゲーム、いわゆる「エロゲー」の『とらいあんぐるハート』である。略称は「とらハ」。「三角関係を題材にした学園青春ラブコメ」……と見せかけて忍者や吸血鬼が出てくるという、かなり何でもありなソフトです。バッドエンドがえげつないことでも有名。ヒットしたため『とらいあんぐるハート2』、『とらいあんぐるハート3』と続編も発売されたが、すべて同一の街(海鳴市)を舞台にしているだけで主人公やヒロインの面子は入れ替わっている。2000年に発売されたとらハ3の主人公が「高町恭也」。で、2003年に本編終了から4年後の未来を描くOVAシリーズ『とらいあんぐるハート〜Sweet Songs Forever〜』が始まった。エロゲーの後日談OVAながらエッチよりもアクション要素を主眼に据えている。このとき監督を担当したのが後に『化物語』や『魔法少女まどか☆マギカ』を手掛ける「新房昭之」。今となっては覚えている人も少なくなったが、この頃の新房は『The Soul Taker〜魂狩〜』(2001年放送)というTVアニメで「5分前納品」なる放送事故スレスレの伝説的な不祥事を起こし、業界から干されていました。そのため変名を使って18禁OVAとかを作っていたんです。とらハ3のOVAは18禁じゃないから変名ではなく新房昭之名義でクレジットされており、このOVAが好評だったため続編ないしスピンオフをTVシリーズでやろうという話になって、引き続き新房昭之が登用されることになります。
TVシリーズの主人公として抜擢されたのが恭也の妹である「高町なのは」。なのはちゃんはいわゆる「妹キャラ」なのだが、ファンディスク『とらいあんぐるハート3 リリカルおもちゃ箱』に「魔法少女リリカルなのは」という番外編シナリオが収録されていました。これをTVアニメ向けに作り直したのが2004年に放送された『魔法少女リリカルなのは』、ファンの間で「無印」や「1期目」と呼ばれる作品です。サブキャラとして恭也も登場するが、もはや「一部の設定が共通しているだけのパラレルワールド」になっており、とらハとの直接的な繋がりはなくなっています。『リリカルおもちゃ箱』に収録された方の「魔法少女リリカルなのは」も、原作というよりはプロトタイプみたいな位置づけだ。こうしてアニメのリリカルなのはは「とらハから始まった企画ではあるが、パラレルワールドなのでとらハからは独立しているプロジェクト」になっていきます。「魔法少女アニメだけど演出とバトル描写はガチ」ということもあって大ヒット。翌年2005年に続編『魔法少女リリカルなのはA's』が放送され、人気はますます加熱していくが、2007年に放送された3作目『魔法少女リリカルなのはStrikerS』あたりからシリーズが複雑化し始める。
無印(1期目)とA'sでは小学3年生だったなのはがStrikerSでは19歳に成長しており、世代交代を意識してか後輩キャラが多数登場するようになっている。なのはさん少女時代(10歳〜18歳)の出来事を大胆にすっ飛ばしてしまったことにより、「過程が見たかったのに」と嘆くファンで溢れ返るハメに。「というか19歳で魔法『少女』って……」というツッコミも当時山ほどありました。そんなStrikerSは作画も荒れ気味だった(連続2クールで制作が厳しかったという事情もある)せいで賛否が割れる結果になってしまう。StrikerSの2年後、2009年にはシリーズ4作目となる『魔法戦記リリカルなのはForce』が漫画作品として連載開始。なのはさんは25歳になっており、さすがにもう厳しいからかタイトルに「少女」の二文字はない。Forceは途中で休載し、今や掲載誌も廃刊になってしまったため再開の目処が立たず、「未完作品」という扱いになっていてアニメ化もされていません。Forceと同時期に連載が始まったシリーズ5作目『魔法少女リリカルなのはViVid』は無事に完結しており、全20巻というなかなかの大長編で関連作も含めて2度TVアニメ化しているが、正直アニメはあまりヒットしなかったので扱いが難しい作品となっています。5作目であるが時系列的にはForceの2年前、StrikerSで登場した「ヴィヴィオ」をなのはが養女として引き取っており、ViVidはこの「高町ヴィヴィオ」を中心に進行していく。スポーツ感覚で大会に出場して戦う内容になっていて、魔法少女モノというよりはスポ根格闘モノに近いノリです。
連載開始から6年近く経過した2015年に『魔法少女リリカルなのはViVid』というタイトルでアニメ化。TVシリーズとしては8年ぶり、通算4期目に当たりますが、タイトルにも入っている「なのは」がサブキャラであること、エピソードが1クール分しかなく半端なところで終わってしまうことも相俟ってあまり話題にならなかった。「分割2クールの予定だったのに、諸事情で2クール目が作られなかった」という噂もあります。そういう事情も絡んでか、BD発売までやけに時間が掛かったのも印象に残っている。翌年2016年にスピンオフアニメ『ViVid Strike!』が放送。TVシリーズとしては通算5期目で、時間軸はViVidの1年後に当たる。「フーカ・レヴェントン」と「リンネ・ベルリネッタ」という新キャラをメインにしたアニメで、ヴィヴィオはサブキャラとして登場するが、なのはは存在を仄めかされる程度で直接は登場しなかった。なので現状TVシリーズの中で唯一「リリカルなのは」を冠していない作品になります。本当はViVidアニメの2クール目ラストにフーカとリンネを登場させて「『ViVid Strike!』につづく」みたいな形でフックを作りたかったのではないか……などと勘繰っている。あと、過去回想シーンでいじめられていたリンネちゃんがいじめっ子たちにやり返すシーンがあるのだが、腕をへし折ったり顔面を蹴り飛ばしたりストンピングで追撃したりと容赦のない描写で半殺しにしていて話題になりました。ここまでの作中の時系列をまとめますと「無印→(半年後)A's→(10年後)StrikerS→(4年後)ViVid→(1年後)ViVid Strike→(1年後)Force」という感じになります。
『ViVid Strike!』放送翌年の2017年に漫画『魔法少女リリカルなのはViVid』の連載が終了。ここで「StrikerS以降を描くなのは関連タイトル」は停止することになります。同じ2017年の夏、劇場版作品『魔法少女リリカルなのは Reflection』が公開された。1期目の総集編+αの『魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st』、2期目の総集編+αの『魔法少女リリカルなのは The MOVIE 2nd A's』に続く3本目の劇場作品であり、初の完全オリジナル映画でもある。A'sの2年後、小学5年生になったなのはたちが遭遇する事件を描いており、アニメ作品としては初めて「A'sより後、StrikerSより前」の時間軸に触れた内容となっている(StrikerSの回想シーン除く)。Reflectionは前後編の前編に当たり、後編に当たる『魔法少女リリカルなのは Detonation』は翌年2018年に公開されました。ReflectionとDetonationはリリカルなのはの格ゲー『THE BATTLE OF ACES』(BOA)や『THE GEARS OF DESTINY』(GOD)の設定がベースになっているらしいが、私はそこまでカバーしていないので説明は割愛する。Detonationのラスト、成層圏で敵の自爆技によって右手が吹っ飛び体のあちこちが炭化するほど重傷を負ったなのはちゃんはギリギリのところで生還し、物語が終わる。『魔法少女リリカルなのはEXCEEDS』はその2年後、中学生になったなのはたちの活躍を描く。要するにファン待望の「中学生編」がようやく始まる模様だ。長かったな……A'sから20年、まさかこんなに掛かるとは思わなかった。ちなみにA'sの最終話にも中学生になったなのはたちが出てくるが、あれは「6年後の春」なので中学3年生、EXCEEDSの2年後に当たる。
ところで、なのはの年齢を考証するうえで厄介なのは「誕生日を跨ぐか跨がないかで変わってくる」という問題。とらハ3だとなのはの誕生日は「3月15日」に設定されており、その日にお祝いするファンも多いが、早生まれだと無印やA'sの時点では8歳ということになる(A'sは12月の出来事で、無印はその半年前だ)から公式の「9歳」という説明とは矛盾してしまう。このへん、単純に「綿密な日付考証は行っていないから満年齢に関してはやや曖昧」と受け取った方がいいでしょう。
まとめると、現実の時系列は公式サイトの年表通りですが、作中の時系列的には「無印→(半年後)A's→(2年後)Reflection・Detonation→(2年後)EXCEEDS」なので、これからなのはワールドに入ってくる人は「StrikerS以降のなのは関連タイトル(StrikerS、Force、ViVid、ViVid Strike!)」を履修する必要はありません。興味があるなら別に観てもいいけど……という感じ。どうも設定を一部変更したみたいだから、EXCEEDSとStrikerS以降は話が繋がらないというかパラレルみたいな関係になりそうなんですよね。StrikerSで「なのはが11歳(小学5年生)のときに大怪我をした」というエピソードが出てくるのですが、その詳細がDetonationとはだいぶ異なる。EXCEEDSがDetonationの「成層圏での臨死体験」というエピソードを引き継ぐ以上、今後StrikerSに繋がることはない。なるべく短時間で「これまでのあらすじ」を知りたいのであれば、「The MOVIE 1st」「The MOVIE 2nd A's」「Reflection」「Detonation」と劇場作品4本を視聴するだけでいい。時間にして500分足らず、8時間ちょっとで追いつけます。さあ君も「モビルスーツ並みの戦闘を繰り広げる魔法少女たち」の世界に飛び込もう!
漫画新作『魔法少女リリカルなのはEXCEEDS』は13歳になった高町なのはが国連調査機関「エクシーズ」の調査員として機械信奉国家「ダルナヴ」に潜入し、15年前まで内戦状態だったこの国で起こる「ロボット暴走事件」を調査する――と、ひと欠片も魔法少女要素のないあらすじで笑ってしまう。しかし通算6期目に当たる新作TVシリーズのタイトル、EXCEEDSの後ろに「Gun Blaze Vengeance」と付いているってことは、恐らく漫画の内容そのままをアニメにするわけじゃないんですよね。コミカライズはアニメの前日譚に当たるのか? 放送時期さえ不明なのでまだ何とも言えないぜ……。(2026年3月5日付記:放送時期は「2026年7月」に決まりました)