「こんな娘がいたら僕はもう…!!」
   /あかべぇそふとつぅ


 日記の内容を抜粋。


2008-02-07.

あかべぇそふとつぅの『こんな娘がいたら僕はもう…!!』、体験版をプレー。

 姉妹ブランドの新作『暁の護衛』の体験版をやってみたところ思ったより面白かったので、ライターの衣笠彰梧をチェックしようと着手した。どうもこのソフトがエロゲーデビュー作だったらしい。略称「こんぼく」。発売された頃にもタイトルを見かけましたが、如何にもヌキゲーっぽい題名だったためスルーしていました。ヌキゲーもヌキゲーで嫌いじゃないですけど、少なくとも「僕はもう…!!」じゃちょっと嗜好に合わない。ただ、発売後チラホラ聞こえる評判も悪くなかったし、最前の『暁』も良かったし、まあ、体験版くらいなら……と気を変えた次第。

 過去の経緯から、二人の友人を除いて全校的にハブられるようになった主人公。彼はある日、頭の天辺に草を生やした変な猫と出会う。自ら「神」と名乗るそいつは、断っても断っても主人公に付きまとってきて……と、概要だけ書けばいい加減としか思えないノリで進行していく学園モノです。神猫たるススムは「愛」を原動力にして奇跡を起こすのだが、現在どうもそれが不足気味らしい。足りない愛を補うべく、主人公が様々な少女たちと出逢いを果たし付き合い始めるよう誘導する。なんともご都合主義にまみれた展開ながら、いざプレーしてみると「おや?」と首を傾げる内容でした。まず、主人公が周囲の状況に流されるタイプのヘタレではないこと。普通こういう設定のエロゲーだと自分の意志に関係なくあれよあれよという間に桃色シチュエーションに突っ込んでいくものですけれど、ちゃんと己の意志に沿って進むせいもあって、あんまり「神さまが奇跡を起こしている」感じがしない。ススム(神の名前)はドタバタラブコメにおけるベタベタなお約束っぷりへのエクスキューズというか、単なる揶揄に過ぎない気もする。あと、設定の割にハーレムめいた雰囲気も希薄なんですよね。いや、一応ハーレムルートも用意されているとのことですけど、主人公の性格からして「どの娘も可愛くて僕はもう…!!」みたいなムカつく迷い箸(迷い竿?)はしそうにない。

 タイトルからして「良い意味で頭の悪い、明るくエロエロな和姦ゲー」かと思いきや、存外に暗い陰を滲ませるシナリオで、こりゃどう考えても不一致じゃないでしょうか? なんでこんなタイトルになったのか、少なくとも体験版をやったかぎりじゃ皆目検討がつかない。まるで分からん、アルデバラン。あるいはタイトルが先に決まってて、企画内容の方が途中から変わってしまったとか? 謎だ。ともあれ、会話の遣り取りは軽妙でコメディゲームとしては心地良く、キャラの個性もなかなかイイ具合に活きておりました。が、やっぱしもっと突き抜けて脳天気なストーリーにしても良かったんじゃないかな……と願う気持ちもあり。喉に小骨が刺さったような違和感が残ります。自社製品のみならず他社製品まで彷彿とさせるネタを使っているのも若干引っ掛かりましたが、俎上に乗せるのは面倒だから流します。

 そもそも主人公の一人称って「僕」じゃなくて「オレ」じゃねーか――などと野暮なツッコミを抑え切れない当方はある意味術中に嵌まっているのかもしれない。ガーッと一気にやり込みたくなるタイプではなくて、時間を見つけてちょこちょこ啄ばむように賞味したい感じのゲームですね。コメディの書き手として充分な素質を持っていることは確かめられたので、『暁の護衛』に対する期待がより高まりました。唯一の不安はレビュー等で「プレー時間がちょっと短い」という声が目立つことかな。ヒロインが6人もいるせいで個別ルートが若干薄くなってる模様。暁〜は4、5人だから、こんぼくに比べれば一人あたりのシナリオは厚くなっているかも……まあ、皮算用が危険なことは「怒りの庭」を経てしっかりと体に叩き込まれましたが。とにかく、どこのメーカーであろうと、もうスティグマを疼かせないでほしいものです。

 余談。わざとか素なのか、『暁の護衛』が2chの某スレでやたらとタイトルを間違われ、『暁の守護者』と呼ばれていたのに笑った。字面はともかく語呂に関しては「護衛」より「守護者」の方が良さげですね。


2008-02-09.

・「今月は新作買う予定ないからいいよな」と自分に言い訳しつつ『こんぼく』をポチってしまった僕はもう……!

 こんばんは、最近めっきり欲望に弱くなった焼津です。終わった直後はそんな「すごく欲しい」というほどでもなかったけど、時間が経つにつれ全身にジワジワと回ってくる奇妙な成分(仮称:コンボキウム)があり、いつしか抗えない心地に。思えば『明日の君と逢うために』も同じパターンで買っていました。そしてまだクリアしていなかったりする。


2008-02-12.

あかべぇそふとつぅの『こんな娘がいたら僕はもう…!!』、プレー中。綾菜狙い。

 えっと、あの、当方はこのソフトを「明るく楽しくちょっぴりエッチで時にシリアスな学園コメディ」だと、そう信じてポチポチやっていたわけですが……「学園に爆弾が仕掛けられた」とか「サーカス団のライオンが逃げ出した」とか、なんなんですこの超展開の連続。そんな、まるでありふれた日常のひとコマみたく立て続けに語られても対応に困りますよ。「俺たちで爆弾探そうぜ!」やら「ライオン捕獲の有志を募っている」やら、シリアスともギャグともつかない微妙な空気に言い知れぬ火薬臭さを嗅ぎ取った次第です。スワスチカが開くレベルではないにしても、もうちょっとネタは選べなかったのかと疑問が残る。せめて爆弾→放火、ライオン→野良犬くらいで。しかし、仮令そうなったとしてもライターの性格から察するに「うわっ、火炎瓶投げやがった!」だの「あれ? あの犬、水を怖がってるよ」「ハイドロフォビア……狂犬病だ!」だのは平気で書きそう。今後もこんなイベントばかりだったら僕はもう…!!

 あ、ちなみにキャラは綾菜以外だとあすかと志乃が気に入っています。ロリコンと言わば言え。それから渚の「ぶっ殺すぞ」は「ぶっこぉすぞ」にしか聞こえなくてなんだか無性にデジャヴるんだけど、これって永劫回帰?


2008-02-21.

あかべぇそふとつぅの『こんな娘がいたら僕はもう…!!』、プレー中。

 なんだかんだでオタクにとって学園コメディ系のエロゲーはやり飽きない、言わば日本人にとっての白米みたいなものであり、変わり映えのしない日常をダラダラ過ごして目先のイベントに取り掛かる様が実に心地良い。しかし、多くのエロゲーマーが駆られる想いでしょうが……自分が中高生だった頃のあまりにも何事もなかった青春の日々を思い出して軽く凹みます。こんぼくはまだいいですが『こいびとどうしですることぜんぶ』に含有される「ありもしないノスタルジア」は優に致死量イッてる。学園モノだけに細かい部分で記憶が刺激されて当時の手触りとか匂いが脳裏に甦ってくるんだけど、冷静になれば「どう考えてもこんな嬉し恥ずかしな出来事は俺の人生に存在しなかった」とQEDせざるを得ない――そんな架空の懐古心が胸を締め付けます。

 高校生時代においてまだハッキリと頭に浮かべることができる学校の思い出なんて、教室の窓際で江戸川乱歩全集を読み耽っていたことくらいですよ。乱歩なぞ過去の遺物と決め込んでいました(先に少年探偵団シリーズを読み「なにこの海外古典から引っ張ってきた借用トリックの嵐」と鼻白んでいたせいもある)けど、「二銭銅貨」や「一枚の切符」といった初期短編に触れて目から鱗が滝の如くザラザラ流れ落ちた次第。ようやくまことの探偵小説にめぐり会い申した……ってな調子でひどく感銘を受けたのですが、脱線の方がもっとひどくなってきたのでそろそろ本筋に戻します。

 初対面では「なにこいつ。うざ」としか思わなかった猫型ゴッドのススムもその言動がだんだん愛らしく感じられるようになってきました。見るたびに癒される。爆弾解除や獅子捕獲といった超展開も鳴りを潜め、以降のストーリーはごく普通の学園モノとして堪能できます。現在攻略中の綾菜は正統派幼馴染みキャラで、飛び抜けて魅力的というほどではないにせよ、安定した可愛らしさとエロさを供給してくれる。表情もコミカルで、特に滝涙を流す立ち絵はヘタウマ。ストーリーやギャグはさほどでもないけれど、キャラ立てとセリフの応酬はキッチリ雰囲気に嵌まっていて楽しくプレーできる。「良い意味でベタなもの」を書けるタイプだと思います、このライター。


2008-03-12.

あかべぇそふとつぅの『こんな娘がいたら僕はもう…!!』、そろそろクリアしそう。

 綾菜シナリオの途中がアレで激しく不安を抱いたが、他のシナリオはそんなに超展開もなくて胸を撫で下ろした。野球部に入る真帆シナリオがストレートにスポ根してて王道的な面白さ。あすかシナリオは、悪くないけど……あすかというキャラの魅力に比べて地味というか、小さくまとまっちゃった印象が拭えない。志乃シナリオは噴いた。超展開スレスレのストーリーながら、意外とありそうでなかった好打路線にも思える。筋立て自体は至ってベタベタだが。とりあえず言えることは、エロゲーにしちゃ主人公とヒロインの役割が逆だな、ということ。読み手によって好悪が分かれそうな話です。ちなみに当方は一貫して「志乃かわいいよ志乃」派。でも一番の萌えキャラはススムだよな。

 現在は沙希ルート攻略中で、これが終わったら後は渚ルートとハーレムシナリオだけか。沙希は他のシナリオだとキツい面ばかりが強調されてあまり好感を持てないけれど、専用ルートに入ると可愛い面も見えてきて楽しいな。このライター、文法やストーリーの組み方については「?」な部分があるものの、キャラクターたちの個性を引き出して並べる腕は卓越している。攻略可能なヒロインが全員気になる子ばかりで、集合シルエットを目にするだけでワクワクと胸が躍ります。一番好きなキャラは誰か、と聞かれたら迷った末に「綾菜」と答えるところ(幼少期に発揮した暴帝ぶりと現在見せるぽややんぶりとのギャップがツボ)ですけれど、正直言って他の連中もみんな捨てがたい。FDが麻雀じゃなけりゃ絶対買うところだったんですが……。


2008-03-15.

あかべぇそふとつぅの『こんな娘がいたら僕はもう…!!』、コンプリート。

 なんだかんだで一ヶ月以上掛かってしまいましたが、ともあれオールクリア。沙希ルートの後に控えている渚ルートがちょっと蛇足だったかなー、とは思うものの、あくまでオマケと割り切ればそんなに悪くなかった。ハーレムエンドは本当にオマケで、ラブコメに付き物の「主人公を巡る女同士の小競り合い」がちょっとだけ見れたことに関しちゃ得した気分。特にあすかと志乃の絡みが良かった。けど、渚エンドにしろハーレムエンドにしろ、終わった直後にスタッフロールも流れぬままタイトル画面へ戻されるから、なんだか尻切れトンボな印象は拭えない。沙希ルートが実質的な意味合いでの『こんぼく』グランド・フィナーレですね。主人公が過去を清算し、すべての問題は片付けられ、いざ雪融けのシーズンへ。周囲の反応がそれこそ掌返すようなリバースっぷりで少々辟易したけれど、全シナリオを統括するに充分な熱量を持った展開ではありました。

 最後までやってみて、それでも一番好きなヒロインは綾菜ですね。小さい頃はイジメっ子気質バリバリだったのに、気づけば関係が逆転して弄られる側になっているという倒錯が美味しい。それを抜きにしても、正統派幼馴染みとして普通に評価できる。ちょっとふっくらした体型で顔つきにも愛嬌が溢れており、穏やかでのんびりとした性格も相俟ってポイント高い。透にはベタ惚れ状態なのに、芳宏相手だと素で暴言を吐けるあたり昔の面影を偲ばせる。掛け合いに混ぜても場を面白くするキャラクター。次に好きなのは志乃かな。ロリ担当キャラ。微妙に黒い天然っ娘で、専用ルートでの凄まじい変容はいろいろとアレだけど、主人公に対する気持ちは一貫していたこともあって格を落とすには至らなかった。「きっと心の中で自己嫌悪や劣等感が蟠っていたんだろうなぁ」と類推するのが楽しい。ロリと言えばあすかも捨てがたい。あすかは一言で表すとあれです、雪村小町。やかましくて暴言紛いのセリフが多いけど心根は優しい。

 以上がヒロインのベスト3といった塩梅ですが、残る真帆と沙希も嫌いではないです。ただ、真帆は「喧嘩友達」ってポジションに馴染みすぎて、こう、フラフラと寄っていきたくなる魅惑の要素があんまりない。真帆シナリオ自体は面白いし、「見た目や性格の割に世話焼きで料理もうまい」と攻略ヒロインとしての資質もバッチリなのに、他のルートで主人公と言い争っている姿がどうにも活き活きとしているため「名脇役」の看板を掲げたくなります。沙希は……うーん、「姉っぽさ」がいまひとつ引き出されていなかった憾みがある。「ああ見えてファンシー好き」というあざとい設定が嵌まっていて、可愛いことは可愛いんですけども。絆の深さを窺わせる過去エピソードがもっと欲しかったところか。

 シナリオ面では若干の物足りなさが残るにせよ、「キャラゲー」という意識で購入した身にはまずまずの収穫でした。男キャラたちもさりげに存在感をアピールしていますし。なかんずくススムの愛らしさは群を抜いており、燦然と「最萌えキャラ」の座に君臨している。あのゆるキャラめいた絶妙なデザインがたまんねぇ。声とのギャップもプラス方向に働いて「良い意味でムカつく神猫」に仕上がっています。もし逆に媚びっ媚びのボイスで、しかも変な語尾が付いてたら悪い意味でムカついていたかもしれません。ススムはこんぼくのマスコットというか、もはや象徴やね。しかし、冒頭で出てきたススムと同じような猫(頭部に葉っぱ有)はいったい何だったんでしょう? 伏線かと思いきや、丸っきり放置して最後まで省みられないんだもんなぁ……。

 結論を一言で述べると「素朴かつ堅実な学園エロゲー」。斬新さは欠くにしても、留め切れぬ作り手の遊び心や茶目っ気がすこぶる伝わってくる(隠し選択肢にアッーな淫夢が用意されていたり、ススムが死亡するバッドエンドあったり)。なんだか無性に懐かしくて、エロゲーにハマったばかりの頃の記憶が甦ってくるほどです。そうそう、昔はこんな感じで笑いながらダラダラとプレーしていたよなー、と。ザッと読んだだけでも視界にかなりの誤字が引っ掛かりますゆえ、テキスト関連にうるさい人の口には合わないかもしれませんけれど、多少の誤字に目を瞑れる人なら大丈夫。是非ともキャラたちの繰り広げる軽妙な脱力漫才に没頭すべし。にしても、益々『暁の護衛』に懸ける期待が高まってきました。ライター的にも絵師的にもバトル描写は希薄になりそうだけど、コメディやクライマックスの熱さは鉄板な予感。


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