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テキスト ―― 『Dies irae 〜Amantes amentes〜』のOTHER STORY(追加シナリオ)について

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リレー小説「魔法少女忌譚修」(第13話−10/12)


2026-05-02.

・私が未だに好きなエロゲ『恋する乙女と守護の楯』、DLsiteで8割引の500円、ワンコイン販売! しかもゴールデンウィーク期間に使えるクーポンで更に半額となるから250円! こんな投げ売り価格、「買う」一択でしょ、と布教活動を開始する焼津です、こんばんは。

 ただ注意点がいくつかあります。恋楯は童顔のボディガード「如月修史」が、護衛対象であるお嬢様たちをコッソリ警護するため女装して「山田妙子」という偽名で乙女の園(平たく書けば女子校)に潜入する……という面白ソフトながら、複雑な経緯を辿って来たシリーズなのでこれまでの状況を軽くまとめる必要がある。少し長くなるぞ。

 まず2007年に『恋する乙女と守護の楯』というタイトルで「AXL(アクセル)」から発売されました。他と区別するために「無印版」と呼ぶこともあります。そこそこのヒットを飛ばし、それまでワゴンセールの常連だったAXLを救った功労者とも言うべき一本であり、故に「山田妙子」は一時期AXLのマスコットキャラみたいな扱いになっていました。翌年の2008年にはPS2向けのソフトとしてCS移植され、新キャラ2名と主人公のボイスが追加。主人公である山田妙子(如月修史)を演じたのは、なんと「釘宮理恵」。しかも追加された新キャラの一人「綾小路若菜」のCVは「田村ゆかり」という、とてもマイナーゲームとは思えない超強力な声優陣(ちなみにもう一人の追加キャラの声優は「矢作紗友里」)。あまりに強力すぎてX-rated版を出す際にはせっかく収録した音声を削らないといけないという、痛し痒しな事態となってしまったが……現在だとくぎゅ版の恋楯をプレーするにはPS2版かPSP版のソフトを中古で探すしかない状況ですね。

 一時期は「アニメ化するのでは?」という噂も流れたが結局実現せず、時は流れ2016年、AXLの命運を委ねるキラータイトルとして恋楯の続編が作られることになります。それが『恋する乙女と守護の楯 〜薔薇の聖母〜』。続編と言っても前作とは任地が変わっており、「お嬢様学校に女装して潜入する」というコンセプト自体は共通しているが攻略対象のキャラクターは一新されているため、前作をプレーしている必要は特にありません。2019年にはPS4版、PSVita版、Switch版と3種類のCS移植版が発売されました。いくら前作をプレーしていなくても大丈夫とはいえ、前作の移植版がPS2とPSPでしか出ていない状況は勿体ない……ということでリブートが始まります。

 2020年、作品の権利をAXLから「戯画」に移し、無印版のリメイク作品に当たる『恋する乙女と守護の楯 Re:boot The “SHIELD-9”』が発売されます。無印版と区別するため「リブート版」と呼ぶこともある。さすがにもう10年以上前ということで古くなりつつあったCGをイチから描き直し、HDに対応した画質でワイド化。18禁で売り出すため、CS版でせっかく収録した釘宮ボイスとゆかりんボイスをお蔵入りにするという苦渋の選択をするハメになったが、ともあれ同年11月にPS4版とSwitch版が販売開始。CS機でリブート版と「薔薇の聖母」両方がプレーできるという黄金期が訪れた。翌年2021年にはリブート版にHシーンを追加した完全版『恋する乙女と守護の楯 Re:boot Plus』も発売。しかし、ここがシリーズの絶頂(ピーク)でした。

 2022年、移籍した恋楯を開発・販売する会社「エンターグラム」(旧称「TGL」)が解散を発表。2023年3月31日以降はDL版の販売も終了する、と発表したのです。ひょっとすると恋楯3作目の企画もコッソリ動いていたのかもしれないが、もはや勘繰ることさえ虚しい……シリーズの権利が戯画に移ったとはいえ、総てが移譲されたわけではなかったらしく、戯画が消滅した後もAXL版は販売を続けています。リブート版ではない、CGの古い無印版というのが難点ですが、それでも面白いし250円というのは破格なので遊んだことのない方はこのGW期間中にどうでしょう? オススメです。ちなみに2作目「薔薇の聖母」はFANZA専売なのでDLsiteでは買えません、ご注意。

 しかし、本当に勿体ないよなぁ〜。せっかく釘宮ボイスやゆかりんボイスを収録したバージョンがあるのに、使えないなんてさぁ〜。何とか権利方面をどうにかして、Steamあたりで販売してくれないかしら。私はまだPS2版持ってるけど、さすがに今の環境だと遊びにくいですし。同じようなことは移植版の『リアライズ』とか『吸血奇譚 ムーンタイズ』(『ドラクリウス』の移植版)にも感じている。

クラファン「うぶごえ」、約1093万円の新たな未入金問題が発覚。新作ビジュアルノベル『パーガトリー・ブルー』支援金が支払われず(電ファミニコゲーマー)

 「うぶごえ」って……『けれど輝く夜空のような』のクラウドファンディングやってたところじゃねぇか!? 慌ててNavelのアカウント確認しに行ったらこんなポストがあった。「プロジェクトの進行自体への影響は一切ございません」とのことでホッと胸を撫で下ろした。けれ夜な、企画としては相当古いんですけど、開発に取り掛かった矢先に社内のゴタゴタで分裂騒動が起こってNavelが出来て、でも「それ散る」の権利がBasiLに残っていたせいで続編に当たる「けれ夜な」を出せない状態に陥っていました。長年の確執がやっと解け、それ散るやけれ夜なの権利はNavelに移ったものの、けれ夜なのメインライターを担当する予定だった「あごバリア」は既に故人。新たに「森崎亮人」を抜擢し、サブにそれ散るのメインライターを努めた「王雀孫」を配置します。クラファンも好調で目標額以上を集め、いよいよ企画が本格的に動き出す……というところでコレですよ。未入金問題には巻き込まれていないからまだ被害は軽微な方ですが、「支援者がサイトで状況を確認できない」ことを考えるとホッとしてばかりもいられないですね。Navelは独自の「プロジェクト用ポータルサイト」を用意して対応するみたいですが、これにだって手間と費用が掛かっているだろうし。何のためにうぶごえに手数料を払ったんだよ! って話です。

 しかし、今回の件がプロジェクトの進捗に影響がないのなら、そろそろ発売の時期とかを教えてもらえると……けれ夜なのクラファンって何度かやってますが、最初は2022年なのでもう3年以上経っているんですよ。なのに今年中に出るのか出ないのかもハッキリしないのはちょっと告知が遅すぎやしないかい?

『双星の陰陽師』Kindle版全巻が各“100円”で購入可能なセールが開催中。全35巻買っても「3500円」(電ファミニコゲーマー)

 一週間限定(5月3日終了)ながら超アツいセールが来ました。これは買い逃せない。2013年から2024年にかけて、10年以上に渡ってジャンプSQに連載された少年漫画で、アニメ化したこともあります。アニメの出来は、その、正直言って微妙でしたが……特にアニオリ部分がなぁ。女性ウケや低年齢層ウケを狙ってか「きなこ」というマスコットをオリジナルキャラクターとして登場させたけど、原作ファンからの評判はすこぶる悪かった。作者自身は気に入ったのか原作漫画の後半に逆輸入しています。

 この二人は人類の救世主、「神子」を産み出す夫婦になる――という託宣が下ったせいで無理矢理番わされることになった陰陽師の「焔魔堂ろくろ」と「化野紅緒」。お互い最初は「ふんっ、こんな女(男)なんか……!」と反発し合っていたが、様々なイベントを経て徐々に「真の絆」が紡ぎ出されていく、という、概要自体はベッタベタの和風伝奇バトル・ファンタジーです。とにかくヒロインの紅緒ちゃんが可愛い。誤解を恐れず断言するならば、「紅緒ちゃんが可愛かったから打ち切られず最後まで完走することが出来た」作品です。

 全巻まとめて買っても3500円と、これだけでも破格の安さですがクーポンの使えるストアやポイント還元のあるストアで買えば更にオトクになります。ところによっては実質3000円を切る(たとえばDMMブックスは今だと1190ptの還元があるので実質2310円)。ちなみにこのシリーズ、サブキャラ「天若清弦」を主人公にした『天縁若虎』というスピンオフ作品があるのですが、残念ながらそちらはセール対象外です。「田中創」の書いたノベライズ作品を気に入って、原作者自らがコミカライズしたという経緯があり、コミカライズ版の方には「二色滑稽画」(モノクロ・コミック)という副題が付いています。あくまでスピンオフだから絶対に読まないといけない、というほどでもなく、とりあえずセール待ちでイイと思います。「セールがキッカケで本編は全巻読んだ! 超面白い! 『天縁若虎』も超気になる!」ってんなら別に止めるつもりはありません。思う存分食らいついてくださいませ。hontoだと40%OFFクーポンが使えてより安いですし。

【読書】500万部の大ベストセラー「特命武装検事・黒木豹介(黒豹シリーズ)」は令和に読んでも凄い

 X(旧Twitter)の「おすすめ」に挙がってきた労作。「まさか令和の世にここまで黒豹シリーズについて熱く語るとは……!」と感動したので、是非ともシェアしたい。黒豹シリーズの内容についてはリンク先で存分に語られているから省略するとして、補足的に「黒豹シリーズが出ていた頃」の時代背景を解説していこう。

 著者の「門田泰明」は戦前生まれで、1979年に小説家としてデビュー。初期は「医療」を題材にしたサスペンスを多く手掛けていたが、1983年に「荒唐無稽アクション小説」とも言うべき《黒豹》シリーズを開始。正式なシリーズ名は「特命武装検事・黒木豹介」だが、長いのでほとんどの読者は「黒豹シリーズ」と呼ぶ。「黒木豹介」の略で、作品タイトルにも「黒豹」の二文字がだいたい入っている(『帝王コブラ』だけ例外)。シリーズのほとんどは80年代に刊行されており、現時点での最終作『黒豹奪還』は2001年刊行。80年代は駅の売店「キオスク(キヨスク)」で新書や文庫の小説がよく売れられていて、スマホのなかった時代はこれで通勤時間の暇を潰すのが通例だったのですが、「あまりに荒唐無稽すぎる」「通俗的で恥ずかしい」と90年代頃から敬遠されるようになり、近接したジャンルである「伝奇バイオレンス」ともども衰退していきます。現在でも『もぐら』の矢月秀作や『傭兵代理店』の渡辺裕之などといった書き手が存在していますが、黒豹みを感じる阿木慎太郎の『闇の警視』シリーズは10年以上新刊が出てないし、鳴海章の「サクラ銃殺隊」シリーズも途絶えている(新たに『鋼鉄の女神』という新シリーズが始まったらしいが)。一時に比べれば「勢いのあるジャンル」とは言い難い状態だが、まだまだ需要はあると思うし、もっと多くの人に読まれてほしい。

『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』、予告第3弾、2人の新たな魔法少女、メインスタッフ公開

 「新たな魔法少女」は「紫丁香(し・ちょうか)」と「セルマ・テレーゼ」。紫のCVは「若山詩音」、リコリコのたきな役で有名ですね。マギレコでは「ヘルカ」役を演じていました。というかマギレコでリコリココラボがあったからたきなも魔法少女になってるんですよね。最後に魔法使って総てが「なかったこと」になり元に戻る……みたいなオチだったと思うけど、単なるコスプレではなく一応ちさたきが本当に魔法少女になるという驚きのイベントでした。セルマ・テレーゼのCVは「黒沢ともよ」、デレマスの「赤城みりあ」役や響けユーフォニアムの「黄前久美子」役で知られている声優で、確かマギレコには出ていなかったはず。しかし、一番の衝撃はメインスタッフのリストの中に「古川知宏」の名前があることですね。

 あの『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』の監督です。1981年生まれ、つまり「小学生の頃にテレビでナディアやっていて、中学生の頃にはエヴァンゲリオンやってた」世代です(このインタビュー記事で語ってる)。2011年の『輪るピングドラム』で脚本に参加したこともあってか「幾原邦彦」監督の影響を強く受けており、スタァライトを語るうえでよく『少女革命ウテナ』が引き合いに出される。絵コンテや演出をいくつかこなした後、2018年に満を持して『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』でデビュー。飛躍の大きすぎる展開で視聴者を戸惑わせたものの、コアなファンを築いて2020年に総集編映画の『少女☆歌劇 レヴュースタァライト ロンド・ロンド・ロンド』と完全新作『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』を送り出す。劇スは興行収入にして3億円と、規模的にはそこまで大きく当たった映画ではないが、とにかく熱狂したファンが多く、業界的にもかなり注目を浴びました。「『映画館で観る』という体験」を最大化するような仕掛けを随所に埋設しており、テレピモニタで観てもあの迫力や緊張感は出ない。次回作として小説家の「斜線堂有紀」が脚本を担当する「タイトル未定作品」(通称ラブコブラ)を予告していましたが、公式アカウントを見ればわかりますようにここ数年ほとんど動きがないような状態で、「ひょっとしてポシャりつつあるのでは?」とファンたちは気を揉んでいました。

 そこに来て「実はまどかマギカの新作に参加していました」だから寝耳に水ですよ。役職名は「絵コンテ/ビジュアル・コンセプトデザイン」、具体的にはRO(レイアウト)の設計などをやっていた模様です。言われて見返すと、確かに予告編の時点でスタァライトっぽい構図がちょこちょこ出て来るな……いったいどのタイミングでワル天に関わることになったのかが気になる。ラブコブラの企画を発表した後なのか? Xでは斜線堂も「伝説のアニメになってしまう ラブコブラ めちゃくちゃ面白いです」とコメントしており、ラブコブラの企画がまだ生きていることをアピールしている。ワル天の参加は青天の霹靂というか、完全に意表を衝かれたけど、それはそれとしてラブコブラがポシャってなくてホッとしましたよ。差し当たってワル天を楽しみにしていますが、ラブコブラの続報もそろそろ宜しくな。

2007年に亡くなった作家「打海文三」の単行本未収録作品集『探偵という快楽』、5月25日発売予定。書影公開。純粋な新作としては17年半ぶりの刊行。

 確か登録されたのは去年の3月か4月あたりだったかな? とにかく何度も延期を繰り返して出るそぶりのなかった『探偵という快楽』がやっっっと刊行されそうな気配です。書影も出ているし、まず確実と見ていいでしょう。よかった……本当によかった。

 『探偵という快楽』は探偵会社「アーバンリサーチ」を巡るシリーズの6冊目に当たります。「アーバンリサーチ」シリーズは刊行している出版社がバラバラで、『探偵という快楽』以外でカドカワから出ている本はシリーズ1冊目の『時には懺悔を』のみ。既刊を列挙しますと、

 01.『時には懺悔を』 (1994年9月‐角川書店 → 2001年9月‐角川文庫)
 02.『されど修羅ゆく君は』 (1996年5月‐徳間書店 → 2000年3月‐徳間文庫)
 03.『兇眼 EVIL EYE』 (1996年11月‐徳間書店 → 2005年6月‐徳間文庫)
 04.『苦い娘』 (1997年10月‐幻冬舎 → 2005年4月‐中公文庫) ※単行本刊行時のタイトルは『ピリオド』
 05.『愛と悔恨のカーニバル』 (2003年3月‐徳間書店 → 2007年9月‐徳間文庫)

 こんな具合。04の『苦い娘』(『ピリオド』)以外は電子書籍が発売されており、2026年5月2日現在だと全部アンリミで読めます。打海文三の代表作である大藪春彦賞受賞作『ハルビン・カフェ』や「応化クロニクル」と呼ばれるシリーズの『裸者と裸者』などは今でも新品が売られており、アーバンリサーチもカドカワから出ている『時には懺悔を』のみ紙書籍版を新品で買えます。徳間や中公から出ているものは全部絶版。一応、新装版が出る程度には売れていたんですけどね……作者が亡くなってもう20年近く経つし、仕方がない。

 単行本未収録作品集を出すのになんでここまで時間が掛かったのかは気になるところだが、出るだけでもありがたいので詮索すまい。打海文三は世間的にそこまで大人気だったわけでなく、メチャクチャ個性のある作家でもなかったが、「読みにくくないのに読み応えのある文章」を淡々と紡ぐ稀有な作家だった。この新刊を契機に、少しでも再評価に繋がればいいな、と思う。いくら電子書籍版が読めるとはいえ、やっぱり「紙で読みたい」って人も多いでしょうから、既刊も復刻できるといいですね。

・犬塚理人の『サンクチュアリ』を読んだ。

 作者名は「いぬづか・りひと」と読む。『人間狩り』という作品で第38回横溝正史ミステリ大賞「優秀賞」を受賞してデビューしたスリラー作家で、最新作の本書は4冊目の著書に当たる。「一色瑞穂」という女性検事を主人公に据えたノン・シリーズ長編で、恐らく過去の作品との繋がりはない。ぶっちゃけ『人間狩り』とか『眠りの神』とか、過去の作品は読んでいていまいちテンションが上がらず途中で投げ出してしまったからよく知らないのだ。昔は一人の作家をデビュー作から律儀に順番通り読むスタイルを守っていたが、最近はもう順番とか無視して面白そうなヤツだけ熟読するようになってきました。

 <サンクチュアリ>――それは全国に数万人の信者がいるとされる新興宗教。教祖の「天堂真快」を神の如く崇める、平たく言ってしまえばカルト教団だ。大学時代に付き合っていた彼氏が<サンクチュアリ>信者の子供、いわゆる「宗教二世」で、幼い頃から教団の歪んだ教義を刷り込まれて育ったため一般社会に適応できず苦しむ姿を見てきた検事「一色瑞穂」は教団に対し、苦々しい想いを抱いている。ある日、SNSで自殺願望のある女性を誘い出し、次々と殺していた男が逮捕された。当初は素直に「私がやりました」と自供していた容疑者だったが、「自分はあくまで自殺を幇助しただけで無理矢理殺したわけではない」と供述を翻し、取調官の頭を悩ませる。容疑者が殺したとされる女性は四人。しかし、彼の部屋を訪れながら何事もなく生還した「五人目の女性」がいた。なぜ彼女は殺されなかったのか? 瑞穂は事件を調査していくうち、その「五人目の女性」が<サンクチュアリ>の元信者だったことを知るが……。

 といった具合に、謎のカルト宗教<サンクチュアリ>を軸にして進むサスペンス小説です。ストーリー構成は「プロローグ・第一話〜第四話・エピローグ」で、各話ごとに異なる事件が発生し、毎回背後に<サンクチュアリ>の影がチラチラと覗く。第一話「神の領域」は上述した「自殺願望のある女性を誘い出して命を奪う」殺人鬼のエピソードで、「五人目の女性」が生還した理由は何なのか?を焦点に話が進んでいきます。ハッキリ言ってそんなにスゴく予想外な展開が仕込まれているわけじゃないが、興味の惹き方が上手くてグイグイ読ませる。第二話「アイドルは眠れない」は人気絶頂の女性アイドルが突如急死、しかもその遺体を乗せた霊柩車が何者かによって奪われる……という、第一話からは想像できないようなエピソードを繰り広げてみせ、読者を飽きさせない。とにかく、「途中で読むのをやめられないようにする」ことに特化したような話作りなんですよね。

 第三話「サクリファイス」はDV(家庭内暴力)の激しかった男が妻と娘の二人を殺した容疑で逮捕され、やっぱり途中で供述を翻して「俺はやっていない」と言い張り出す。事件には目撃者がいたためスピード逮捕に繋がったのだが、肝心の目撃者「猫塚」は絵に描いたようなクズ野郎で、なんと警察へ通報した直後に被害者のバッグから財布を引っ張り出し、中身の現金を抜いてパチンコを打っていたのだと云う。結局事件が気になって現場に戻ってきたわけだが、「通報直後に姿を消す」という怪しい振る舞いをしていることもあって弁護側に付け入る隙を与えてしまっていた。なんとか猫塚の証言で有罪を維持しようとするものの、更なる醜聞が猫塚に持ち上がり……と、「信用できない証言者」のせいで事件の前提が揺らいでいく興味深いストーリーになっています。第四話「聖域」はいよいよ<サンクチュアリ>本体の謎に迫っていく、総決算めいたエピソード。「アイドルは眠れない」や「サクリファイス」でチラッと言及されていた「連続放火事件」の被害者の中に<サンクチュアリ>を脱会した宗教二世が含まれていたことから、「この放火事件は愉快犯によるものではなく、<サンクチュアリ>絡みなのでは?」という疑惑が持ち上がっていく。胸騒ぎを覚えた瑞穂は、元カレで宗教二世の「宇佐美亮太」に連絡を取ろうとするが電話は繋がらず、アパートの自室を尋ねても生活している気配がなかった……ちょいネタバレになりますが、「アイドルは眠れない」で死亡したアイドルも<サンクチュアリ>の宗教二世だったと判明し、「連作形式の短編集と見せかけて実は連作形式の長編だった」ことが判明します。いや、タイトルがタイトルなんで言うほど「見せかけて」はいないんだけども……。

 最終的に<サンクチュアリ>がとんでもない連中だと明かされる、ほぼ予想通りというか期待通りの展開に雪崩れ込むんですが、良くも悪くも奇を衒わなかったストーリーは賛否が分かれるところかもしれない。変にサプライズ仕込もうとして無理矢理どんでん返しをしまくって話がグダグダになるよりは、こういうストロングスタイルを貫いてくれる方が個人的な好感は持てる。良く言えば「あらすじを読んで期待した通りの内容」、悪く言えば「想像の範囲内に収まるストーリー」です。ちょっと突飛な部分こそあるものの最後までキチンと楽しめたし、もっと評価されてほしい気持ちはある。刊行が去年の10月なんで、『このミステリーがすごい!2026年版』の集計期間外なんですよね……このミスは毎年12月刊行で、前年の10月から刊行年の9月が集計対象です。つまり『サンクチュアリ』も「2027年版」では集計期間に入るが、10月刊行作品はこのミスからすると「14ヶ月も前の作品=古い」というイメージが付いてしまうため、余程の傑作(例としては『禁忌の子』、10月刊行でこのミス3位)でもないと票を稼ぎにくい。衝撃作はまだしも、地味な良作は割を食いやすいんですよ。ですから『サンクチュアリ』、「胡散臭いカルト教団が案の定ろくでもないことをしていると暴露される話」が好きな人は今年のこのミス発表まで待たず是非とも読んでみてください。「予想通りだけど期待通り」な読書体験をお約束します。


2026-04-23.

・FANZAで現在「10本で9500円」や「20本で18000円」といったまとめ買いセールが開催中、Lair Softのスチームパンクシリーズを揃えるチャンス! と、なんとなく宣伝してみる焼津です、こんばんは。

 具体的な手順としては、FANZAの「PCゲーム」のトップページに「スプリングセール2026」というバナーがあるからまずここを押す。そして「まとめ買い」のリンクをクリック。「ブランド合同まとめ買い」の中から買いたい本数を選び、対象ソフトを選択するページに移行。「ブランドで絞り込む」というボタンがあるので、ここで「ら行」の「ライアーソフト」を選んで検索。そうするとLair Softの対象ソフトがズラッと出てくるから、あとは欲しいソフトの「選択する」をクリックしていって、規定本数分溜まったら「バスケットへ」を押して決済に向かうだけです。

 スチパン作品を一個も持ってない人の場合は、『蒼天のセレナリアFVR』『赫炎のインガノックFVR』『漆黒のシャルノスFVR』『白光のヴァルーシア』『紫影のソナーニル』『黄雷のガクトゥーン』『黄雷のガクトゥーン SHINING NIGHT』『Steampunk Full-voice Fandisk』の8本をチョイスすればいいです。8本なので「10本で9500円」を選ぶと2本足りないが、そこらへんはまぁ好きなので埋めて貰えれば……シリーズ外だけどライターが共通していて一応「同一の世界」ということになっている『ANGEL BULLET』とか、初期の傑作『腐り姫』、新撰組女体化エロゲ『行殺新選組ふれっしゅ』、百合エロゲとして定評がある『サフィズムの舷窓〜an epic〜』と『屋上の百合霊さん 〜フルコーラス〜』、奈須きのこも絶賛した『Forest』、後半の展開が慌ただしいのが玉に瑕だけど「冒険が終わった後の人生」をエンドロールで綴る『SEVEN-BRIDGE』、中国の「四凶」を女体化した『マスクドシャンハイ 魔都拳侠傳』などなど。自分たちを「童話の登場人物」だと思い込んでいる患者たちのための隔離病棟「楽園」を舞台にした「フェアリーテイルシリーズ」は『フェアリーテイル・アンコール』と『フェアリーテイル・シンフォニー Another Side』が対象だけど、肝心の本編『フェアリーテイル・レクイエム』が対象外なのであまりオススメしない。ライアーソフト以外だと「ALcot ハニカム」のゲームなんかもイイですね。私が好きなのは『キミのとなりで恋してる!』とそのFD(ファンディスク)『キミのとなりで恋してる!〜The respective happiness〜』です。趣味全開でいいなら「XANADU(キサナドゥ)」の『ひめしょ!』を推したいところ。さすがに時代を感じる内容だけど、ハチャメチャなノリで好きなんですよ、アレ。シリアスとギャグがごっちゃになっていて、「蜘蛛の巣が生えたデッドストックマ〇コのクセに!!」や「マグロの女」を始めとした「移植不可能だろ、これ」という下ネタの数々。田中ロミオの傑作『最果てのイマ COMPLETE』もまとめ買い対象ながら、「ザウス」作品は5本までが上限なので「3本で3000円」か「5本で5000円」のパックで買いましょう。

 あくまで「この機会にスチームパンクシリーズを揃えたい」という方向けの案内なんで、例えば『蒼天のセレナリアFVR』は絵が好みじゃないなぁ、とか、『Steampunk Full-voice Fandisk』や『黄雷のガクトゥーン SHINING NIGHT』は内容が薄いみたいだからちょっとなぁ、というのであれば外して貰っても構わないです。またいずれ同種のセールが開催されるだろうから、気が変わったらその時にまた買えばいい。『赫炎のインガノックFVR』『漆黒のシャルノスFVR』『白光のヴァルーシア』『紫影のソナーニル』『黄雷のガクトゥーン』、このスターターセットめいた5本だけでも充分楽しめるし、「5本で5000円」のセットで購入してください。ちなみにいくつかのタイトルに付いている「FVR」は「Full Voice ReBORN」の略で、要するに「フルボイス版」の意味です。通常版だとパートボイス(部分的にしか声が付いていない)なんですよね。ちなみにスチームパンクシリーズは上記の他にシリーズ第7弾の『瞬旭のティルヒア』、バッドエンド後の世界(歴代スチパン主人公が軒並み志半ばで散ったifワールド)を舞台にした小説作品『灰燼のカルシェール』、企画開始から10年経ってもまだ発売していない『緋星のバルトゥーム』があります。本来なら『緋星のバルトゥーム』の方がシリーズ第7弾になるはずだったんですよね……シナリオライターの「桜井光」がFGOに掛かり切りになっちゃって、本当に出るのかどうかもうわからなくなっています。もう諦めているファンもいるが、気長に待って行くとしましょうや。スチパンは他に『無色のウルタール』、『冥闇のケルネテル』、『深闇のセレファイス』といったモノもあるらしいが、このへんは現時点で公式サイトの類が存在しないから扱いに困る。とりあえずタイトルを表記するだけに留めておきます。

「魔女と傭兵」2027年TVアニメ化!坂泰斗、早見沙織が出演 アニメ制作はエイトビット(コミックナタリー)

 原作はライトノベルで、コミカライズ版もメッチャ人気あるから「アニメ化発表は秒読み段階に入っているだろう」と目されていた作品です。巨漢で、双刃の両手剣(ツヴァイヘンダー)を振るう傭兵「ジグ=クレイン」と、200年の時を生き延び、超常の業を振るう魔女「シアーシャ」。二人は戦場で出逢い、ジグはあと一歩のところまでシアーシャを追い詰めたが、肝心の依頼主が直前で死んでしまったため、このままシアーシャを仕留めても賞金が貰える見込みは薄い(誰も魔女の顔を知らなかったので、彼女の首を持って行ってもそれが魔女であると証明できない)……と刃を引く。情ではなく金と依頼で動くジグの合理主義を見込んで、シアーシャは彼を護衛として雇った。二人が向かうのは、発見されたばかりの新大陸。そこでなら、誰もシアーシャの過去を気にしないだろう。かくして魔女と傭兵のコンビは海を越え、遥々新大陸へと足を踏み入れたが……って感じのファンタジーです。

 要は「魔女と傭兵のふたりぐらし」です。あくまで依頼主と護衛の関係でしかないが、だんだん雰囲気が夫婦っぽくなっていくんですよね、阿吽の呼吸で通じ合っているから。生きることに飽いて、ジグに殺されかかった時もどこか諦めたような風情だったシアーシャさんながら、日に日にジグへの執着が増していくんだよなぁ。自分が殺されかかっても「おっと危ない」くらいなのに、ジグに危害が加えられるとぶちギレ金剛状態になる。シアーシャさんが本気出すと広域殲滅が可能だから、「らめぇ! 街が壊れひゃうのぉぉぉ!」な惨事が顕現します。シンプルに怖い。読者のほとんどが「敵と戦うよりシアーシャさんを怒らせる方が怖い」と口を揃えて太鼓判を押すのもむべなるかな。

 なにぶん稼業が「傭兵」なので荒事も多く、ストーリーの大半が戦闘シーンで占められていますが、「俺はこれが書きたいんだ!」とノリノリで書いてるので筆が乗りまくっています。逆に言うと、戦闘シーンにあまり興味がない人は「話が動かねぇな……」と退屈するかもしれません。コミカライズの方はバトル描写をかなり簡略化しているので、戦闘シーンをじっくり読みたい人は小説版、ざっくりでいい人は漫画版、と棲み分ければ宜しいのではないかと。問題はアニメがどっち寄りになるか、ですね……小説版の描写を再現すると作画カロリーがとんでもないことになるから、漫画寄りになるかしら?

 ファンタジーなのに「マフィアの抗争」が軸になったり、ファンの間で最強議論する際に「下剤」がTier表の上位に来たり、良くも悪くも「よくあるなろう系」からはズレた内容なのでハマるかハマらないか、人によって温度差が激しいと思います。小説版2巻の表紙を飾る褐色エルフ「イサナ」の見た目に「おっ」と惹かれるモノを感じる人にはオススメです。このイサナちゃんをボコって身ぐるみ剥ごうとしたりする。いや、結局未遂なんですけど……ともあれ九十九乱蔵的な、フィジカルの強い巨漢主人公が真っ当に活躍するフィクションいいよね……。

 ジグ役の声優は「坂泰斗」、最近だと「お隣の天使様」の主人公「藤宮周」を演じていますね。シアーシャ役の「早見沙織」は、もはや解説不明の売れっ子「はやみん」です。最近だけでも『超かぐや姫!』の「月見ヤチヨ」役とか、「逃げ釣り」のサブヒロイン「アイーダ・アメーティス」役とか、『魔術師クノンは見えている』の主人公「クノン・グリオン」とか……『黄泉のツガイ』にも、チョイ役ながら「オシラサマ」役で出演していました。ちなみに個人的なシアーシャの声優イメージは「石川由依」でしたが、はやみんで不満ということではありません。制作は「エイトビット」、過去に『IS(インフィニット・ストラトス)』や『東京レイヴンズ』などのラノベアニメ、『ワルキューレ ロマンツェ』や“グリザイア”三部作などのエロゲアニメを手掛けた有名どころです。今だと「『転生したらスライムだった件』や『ブルーロック』のスタジオ」と書いた方が通りはいいかな。監督は「江崎慎平」、Production I.G出身で『ギルティクラウン』や『進撃の巨人』にも関わっているらしいが詳しいことはわかりません。PVを見た感じだと「作画がスゴい」と言われるタイプのアニメじゃなさそうだが、大きく崩れることもないかな? 地味なストーリーを淡々と丁寧にやるタイプなので、海外でも安定した人気が狙えるかもしれない。放送が待ち遠しいです。

年の差ミステリーラブコメ「ペンと手錠と事実婚」TVアニメ化、特報PV公開(コミックナタリー)

 あ、アニメ化なんだ。内容的にドラマ化かもと思ってた。喋れない女子高生「梔子鶫(くちなし・つぐみ)」が探偵役で、刑事の主人公とコンビを組み、スケッチブックで会話するんだけど「絵が下手過ぎて推理の内容を汲み取るのに苦労する」という若干コメディ要素が混じった推理マンガです。ヒロインが喋らないからお世辞にもアニメ向きとは言い難いが、そんなこと言ったら禰豆子だってほぼ喋んないしな。恐らく息遣いだけで演技するタイプでしょう。

 事件自体は割と小粒なものが多く、路線としては金田一少年よりも名探偵コナンに近い。ヒロインは主人公(40歳で女っ気がまったくないヤモメの刑事)に惚れており、真顔でグイグイと結婚を迫ってくる。最初は突っぱねようとした主人公ですが、だんだん押し切られてマジでこのまま結婚しそうな雰囲気になっていくのが面白いです。白泉社のWebコミックサイト「ヤングアニマルWeb」に会員登録すればだいたい読めるので、気になる方は目を通してみてください。

『ビブリア古書堂の事件手帖』、2027年アニメ化

 やっとアニメ化か……実写版は別々のキャストでドラマ化および映画化しているんですけど、「どう見てもイメージと合わないだろ」って配役だったりして評判散々でした。原作人気からすると、とっくにアニメ化していてもおかしくない作品(1巻が出たのは2011年、なんと15年前)だから、ファンは驚くよりも「やっとか……」という感想に落ち着くだろう。私はずっと積んでるので内容知りません。作者の「三上延」がかつて「渡瀬草一郎」と並ぶ「幼馴染みヒロインが勝つ作家」枠だったことは知ってる。『ダーク・バイオレッツ』……『シャドウテイカー』……それ以降は読んでないな。とにかく、メチャクチャ売れてる作家なのに一度もアニメ化したことがない、という希有な立ち位置の人でした。ようやく「アニメ化作家」の仲間入りだ。ご本人曰く「かなり前からアニメ化の企画はあった」とのことで、実現までいろいろと難航したんでしょうね。倉田英之との共著『読書狂の冒険は終わらない!』が面白いので、興味がある方はご一読を。

大沢在昌の新刊『柩の狩人』、5月20日発売予定

 おっ、“狩人”シリーズの新刊か。私、このシリーズ好きなんですよね。新宿署のマル暴刑事「佐江」が毎回登場するシリーズで、当初は脇役みたいなポジションがだんだん主役として確立していくところも含めて気に入っています。1996年の『北の狩人』、2002年の『砂の狩人』、2008年の『黒の狩人』、2014年の『雨の狩人』、2020年の『冬の狩人』と、これまでずっと6年周期で出ていましたが、今回もやはりその周期から漏れることはなかった。あまりの安定感に感心してしまうことしきりだ。

 しかし、書籍の価格がドカンと一気に上がってるのが切ないですね……消費税を抜いた本体価格だけ見ると、『北の狩人』が341ページで1700円(記憶が曖昧だけど、確かこれだけ二段組だったのでページ数の割に文字量が多い)、『砂の狩人』は上巻が422ページ、下巻が397ページで各1667円、『黒の狩人』は上巻が409ージ、下巻が434ページで各1700円、『雨の狩人』は602ページで1800円、『冬の狩人』は568ページで1800円と、96年〜20年の24年間は比較的価格変化が少なかったのですが、『柩の狩人』はAmazonの情報によると644ページで過去最厚だから仕方ないとはいえ2400円と跳ね上がっています。まぁ6年に一度の新刊だから買いはしますけど、近い日に比嘉姉妹シリーズの新刊2つ(『ざんどぅまの影』『ととはり屋敷』)や『マルドゥック・アノニマス11』、メフィスト賞作品の『大江戸フューチャーズ』も出るからキツなぁ。特にマルドゥック・アノニマス、文庫で非翻訳作品なのに本体価格1300円(ボリュームは416ページ)って。さすがに悲鳴の一つも挙げていいですよね?

『超かぐや姫!』興行収入20億円+動員数100万人を突破。当初の「1週間限定&わずか19館」の上映とは何だったのか(電ファミニコゲーマー)

 遂に20億の大台に乗ったか……「TVアニメの劇場化」ではない、オリジナルのアニメ映画としてはジブリ作品、新海誠監督作品、細田守監督作品に次ぐレベルです。10億超えてる作品はまだいくつか他にもあるんですが、20億以上となると比較対象がこの3つになってしまうんですよ。しかも大抵は大規模公開でTVCMバンバン打って〜みたいな、ブランド力とコマーシャルの合わせ技で押し上げていくのに対し、「たった19館から拡大していって20億」という動きは、どちらかと言えば実写邦画のカメ止め(『カメラを止めるな!』)に近い。さすがに30億は厳しいかもしれないが、この勢いなら25億は突破できるかも。この25億というのは劇場版ヒプマイの数字です。あれも公開規模は小さかったのに熱狂的なファンの支持でロングランした作品である。

 ネットでは当初の「1週間限定」という告知が嘘すぎて未だに擦られている(「1週間限定公開、9週目――」みたいな調子で)が、今までのネトフリアニメ映画の劇場公開が惨憺たる有様だったことを考えると弱腰の展開だったことは仕方ない面もありますね。これまで最高でも2億届かなかったのに、一気に十倍以上なんだもんなぁ。監督とプロデューサーの新しいインタビュー記事も公開されており、「今回のヒットはYouTubeやSNSで気になったらすぐワンクリックで、Netflixで見られる状態で多くの人が観てくださって、そこからの口コミ。このフォーマットだからこそ実現できた。劇場上映を先にしていたらそうならなかったかもしれない」と語っている。オリジナルアニメは評価される以前に「認知される」のが難しく、もし劇場公開前提でやってたら苦戦していたでしょう。SNSで絶賛されている「パリエト」こと『パリに咲くエトワール』は興行的にかなり苦戦していて、累計3億円届くか届かないかの域で奮闘している。初動の数字を鑑みるに、もし高評価が広まらなかったら1億円前後で終わっていただろうし、これでもかなり健闘している方なんですよ。鬼滅やコナンというビッグタイトルのせいで世間の興収に対する感覚はすっかり狂ってしまったから、「たった3億?」という反応になってしまう……地域によってはもう上映終了していますが、まだ粘り強く興行を続けている劇場もあるので頑張ってほしいものだ。

『Dies irae 〜Amantes amentes〜』のOTHER STORY(追加シナリオ)について

 Dies iraeのAmantes amentesに実装された「OTHER STORY(追加シナリオ)」のプレーするタイミングについて解説した文章です。「今頃!? Aa出たの14年前だぞ!?」と驚かれてしまうかもしれません。御存知かもしれませんが、今SNSでは空前のDies iraeブームが訪れていまして……キッカケは今月7日頃、いつも通り神座シリーズのファンが「『Dies irae』の厨二パワーはすばらしいぞ」と布教活動を行っていて、私も「春だなぁ」と恒例行事を眺めるような感覚で傍観していたのですが、あれよあれよという間に拡散されて話が大きくなっていった。どうも鳥海浩輔や諏訪部順一、谷山紀章といった声優ファンの中にも『Dies irae』を知らない人が多く含まれていたみたいで、「こんな作品あったのか!」と驚きを持って迎え入れられたのです。なんだかんだ『Dies irae』も古いゲームですからね、初めてタイトルが公開されたのは2006年、もう20年前だ。それだけ経てば知らない人が多いのも当然で、今更ながら「再発見」されて若い層を中心に「流出」していってるわけです。

 少し前に『ブルーアーカイブ』で『Dies irae』を仄めかすような演出があった件で一度バズっていたから、下地はありました。恐らくこの時に界隈外の人たちも、明確に記憶できたわけではないにしろ、『Dies irae』というタイトルを下意識へ刷り込まれたのでしょう。その伏線が効いて、「いつも通り」の布教活動であるにも関わらず信じられないほどバズった。PC向けのDL版を独占しているDMMの週間ランキングでディエスと神咒とイカベイが仲良く3位・4位・5位で並ぶという目を疑うような事態に……(ちなみに1位はKeyの新作『anemoi』で2位はドルフロ2のボイスドラマ)ちょうど半額セール中だったのも追い風になったんだろう。冗談抜きでセールスの数字が伸びているし、新規の「Dies iraeの〇〇って何?」という質問に対しシュバッてきた古参ファンが嬉々として答える光景があちこちで繰り広げられている。ハッキリ言ってアニメ化した時よりも話題になっています。皮肉すぎる!

 今のSNSはコミュニティ分散型というか、「クラスタ」の概念が曖昧になっており、昔みたいに一箇所の掲示板やチャット場に集まってあれやこれやと議論を重ねる形式ではなくなった。それこそ「いつメンとの雑談」感覚で投稿したコメントがアルゴリズムの波に乗って拡散され、思いがけずバラバラに散らばっていた「かつてのファンたち」が、それこそ「すごい数の信者が集まってきている」(『DOKURO―毒狼― 』)みたいな勢いで集結し、お祭り騒ぎに発展する。私も最近、いつもの独り言のつもりで「『漆黒のシャルノス』はいいぞ」といった趣旨の呟きを投稿したら思いがけずバズってビックリしました。令和にもなってスチームパンクシリーズ関連の呟きがまさか30万View超えるとは……ちなみに私の普段のポストは2桁Viewです。Liar-soft公式アカウントのシャルノスOPムービー紹介も20万Viewくらい行ってるからマジで注目されているんだな。

 とにかく、せっかく波が来ているんだからこれはもう「空前のDies iraeブーム」に便乗するしかないな、ということで急遽OTHER STORY(追加シナリオ)の「推奨するプレーのタイミング」について解説する記事を書こうと思ったわけですが、書いているうちに細部が気になってきてAaのHD版を引っ張り出したり、「あれ? これってファーブラの時からだっけ?」と気になって実家に立ち寄った際に昔のパソコンを立ち上げてチェックしたり、ちょっと執筆に時間が掛かり過ぎて便乗するタイミングを逸してしまった気がする。とりあえず書いたので公開しときました。このDies iraeブーム、なるたけ長く続くといいですね……毎日毎日ニュービー爪牙の新鮮な悲鳴と呆然自失気味な感想が届けられてくるの、幸せ過ぎる。何なら他の神座シリーズや相州戦神館學園シリーズ、新西暦サーガや諸々のlightゲーにもブームが訪れてほしいですね。OPムービーに戦闘機しか出て来ない異常エロゲこと『群青の空を越えて』とか。どんなにバズってもlightが復活することはもうありませんが、少しでもパンテオンの再起に弾みがつけば。


2026-04-14.

・今頃『ぬきたし THE ANIMATION』を見て爆笑した焼津です、こんばんは。

 去年の夏アニメとして放送された作品。原作はエロゲーで、あんまりも際どい要素が多いため地上波での放送は無理だと思われたが、規制を掛けまくったおかげで何とか放送されたという曰く付きの一本。あまりにもピー音が多過ぎて聞き取れないセリフが大量にあるのが難点です。

 舞台は架空の島「青藍島」。「あおかんじま」ではなく「せいらんとう」です。もともと島の出身だったが本土に引っ越しして、両親の死をキッカケに島へ戻ってきた「橘淳之介」。過疎化が進む青藍島を救うためヤケクソ気味に制定された「ドスケベ条例」の影響で島中至る所で大っぴらに性行為(ドスケベセックス)が繰り広げられており、妹である「橘麻沙音」ともどもカルチャーショックでドン引きする。しかし、島民の中にもドスケベ条例を快く思わない者たちがいた。「乱交を推奨し、ただただ快楽だけを追い求める、愛のないドスケベセックスはイヤだ」と。淳之介は同志たちと反交尾勢力「NLNS(No Love No Sex)」を結成し、ドスケベのビッグウェーブに立ち向かっていくが……という、「エロゲーにしてもやり過ぎだろ!」って設定の話です。

 淳之介は巨根で「他人に局部を見られる」ことにトラウマがあり、また妹の麻沙音は同性愛者で「男女のドスケベセックスを推奨する」青藍島においては「非性産的行為」と見做され迫害の対象になり得る(ドスケベ条例、実態はどうあれもともとは「少子化対策」という名目なので……)。「汚い『車輪の国、向日葵の少女』」とも言うべきツッコミどころ満載の内容ながら、主人公とヒロインが悩みながらも己の信念を貫こうとする姿はアツく、熱血アニメ的な面白さは充分にあります。淳之介役の「柳晃平」とヒロイン「片桐奈々瀬」役の「石上静香」が放送前に結婚する、いわゆる「ぬきたし婚」と呼ばれる深夜アニメ史に残る慶事が発生したのもむべなるかな。ジョークでも何でもなく本当にアニメの収録時が初対面だったらしく、「馴れ初めはぬきたし」「紛れもなくぬきたし婚」と本人たちも認めています。

 ただ、ぬきたしのゲーム版(1作目)は2018年発売で、この当時奈々瀬の声を当てていたのは「柳ひとみ」という別の声優なんですよね。サンプルボイスを聞いてもらえるとわかるのですが、ずっちの別名義とか「生き別れの双子()」とかではなく、正真正銘本当に「別の声優」です。アニメ化の際になぜか声優が変更されている。生徒会長の「冷泉院桐香」は担当声優の「花澤さくら」が2022年に声優引退しているため已むなく「田澤茉純」に変更となっていますが、柳ひとみは別段引退しておらず、奈々瀬の声優変更に関しては「経緯不明」としか言いようがない。噂レベルならいくつかありますけどね……柳ひとみは表名義で声優事務所に所属していて、「裏名義でエロゲーに出演する」ことには目を瞑ってくれたけど、表名義でこんな際どいアニメに出演するのはダメだった――という、いわゆる「事務所NG」説が有力視されている。とにかく、石上静香はアニメ化が決まるまでぬきたしと縁がなく、淳之介もゲームでは声が付いていなかったことから「ぬきたしのアニメ化が二人を結びつけた」ことになるのだ。

 内容は徹底してふざけているのにアニメーションの質は高く、エロゲー原作アニメとしては異例なほど高クオリティの仕上がりになっています。制作は「パッショーネ」、かの『異種族レビュアーズ』や『異世界迷宮でハーレムを』を手掛けたところだ。今後は『FX戦士くるみちゃん』や『生徒会にも穴はある!』を放送する予定。さておき、ぬきたし本編において奈々瀬は「超弩級のビッチ」として恐れられていたが、シナリオの後半で「実は処女」であることが全島民に対してバレてしまう。公衆の面前で無理矢理処女を散らされそうになっている奈々瀬を救いに行く――というのが物語のクライマックスで、まぁ無事なんとか救出できるのですが、「ビッチじゃなかったことがバレたんだよね? 今後どうすんの?」と思ったらモブが「ビッチすぎてSEXの回数が多すぎた結果、数値がオーバーフローして処女に戻っただけ」と言っていて噴いた。それで納得するのかよお前ら!

『ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』TVアニメが2027年1月よりスタート!(電ファミニコゲーマー)

 えっ、蓮ノ空結局TVアニメ化するの!? 予想外でちょっと不意を打たれてしまった。『ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』はラブライブ・プロジェクトの一つで、2023年頃からスタートしています。石川県金沢市に位置する、という設定の架空の全寮制女子校「蓮ノ空女学院」を舞台に、「スクールアイドルの世代交代」をテーマに据えて展開していく。蓮ノ空は「ラブライブ!の強豪校」であり、100年以上の歴史を誇る……物凄く分かりやすく書くと「宝塚音楽学校」めいた場所です。主人公「日野下花帆」は103期生で、先輩が102期生、後輩が104期生や105期生といった感じ。これまでのラブライブ作品は「上級生・同級生・下級生」の隔たりを越えてユニットを結成することもあったわけですが、蓮ノ空は「先輩と後輩」が明確に区切られています。なぜなら、先輩たちが卒業した後も在校生たちのアイドル活動は続くからだ。

 蓮ノ空は「リアルタイムと連動して時間経過する」のも特徴の一つで、2023年に入学した花帆ちゃんたち103期生は2026年の春、遂に卒業の時を迎えます。「103期生の卒業記念」として今年5月に公開されるのが『映画 ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ Bloom Garden Party』。そう、主人公の花帆ちゃんは来月公開される劇場版で卒業しちゃうわけです。いきなりエピローグなんです。だから「結局TVアニメ化するの!?」と驚いたんですよね。てっきり、TVアニメをやる予定がないからせめて卒業の晴れ舞台だけでもアニメ化しよう、ってことなのかと早合点していました。103期生が卒業した後は新たに106期生が入ってきますが、さすがにもうリアルタイムと連動させるのはキツいのか、「第2章 106期」は2027年1月スタートという予定になっている。アニメの放送を合わせているということは、TVでやるのは106期生の話なのか? 詳しいことは続報待ちです。

 ……と、ここまで原稿を用意して、手直しした後にアップロードしようと推敲していたのですが。

『Link!Like!ラブライブ!』6月30日12:00をもってサービス終了。資金繰りの悪化で主要コンテンツ制作体制の維持が困難に(電ファミニコゲーマー)

 いきなりのサ終告知に目が点になりました。終わり? お前ら本当にこれで終わり……?? 終わり……!? 確かに蓮ノ空はメチャクチャ閉じコン化していてどんな施策を打っても新規が流入せず「アプリの収益がヤバいらしい」という噂は漏れ聞こえていましたが、まさかTVアニメの放送まで保たないとは……「志半ばでサービスを終了せざるを得ない事態となりました」と公式垢がコメントしているくらいなので本当に不本意な形でのサービス終了なのだろうけど、シナリオチームへの通達も数日前ということだからスタッフ的にも「寝耳に水」なのでしょう。聞いた話によるとアプリを運営していた3年間、赤字に次ぐ赤字で積もり積もった負債額は100億円以上に及ぶとか。

 あくまで『Link!Like!ラブライブ!』がサ終するだけで、5月公開予定のアニメ映画や来年1月に放送予定のTVアニメが中止になったりはしないとのことだから、蓮ノ空のプロジェクト自体が完全に畳まれるわけではありません。ただ、旗艦(フラグシップ)であるアプリが沈んだとなると「プロジェクトの先行きに暗雲が立ち込めている」と表現するしかない。これでラブライブ関連のアプリはすべて終了したことになりますね……主にYouTubeで展開している新規プロジェクト『イキヅライブ!』のアプリが新たに出てくる可能性もありますが、『学園アイドルマスター』が好調なアイマス・プロジェクトや、「ガルパ」が続いていて今年「アツドリ」も別枠として立ち上げるバンドリ・プロジェクトとは明暗が分かれた形になる。今の中高生からするともう、ラブライブは「なんか昔流行ったアニメ」ぐらいの感覚なのかもしれない。ロボアニメで言うとマクロスみたいな立ち位置というか。

 TVアニメ以降の展開はどうなるのか? という懸念もありますが、もっとも差し迫っているのは「第2章 106期」がどうなるのかって問題ですね。アニメが106期生の話ならまだしも、そうじゃなかったら「殻を破ることができず卵の中で息絶えていった小鳥たち」になってしまう。既に書き上がっている未発表シナリオや発注済みの素材もあるらしいし、何とかして発表できるようにしてほしいです。

『うたわれるもの ロストフラグ』、物語記録保存領域(ストーリーアーカイブス)制作決定!

 具体的な仕様はまだ不明ですが、過去に配信したストーリーを読み返せるようになる模様。「メインストーリーおよびイベントストーリーのフルボイス化、ならびに新規ストーリーの追加などを検討」とあり、本気で全シナリオに声を付けるなら容量がとんでもないことになりそう。ロスフラは基本的にボイスなしのシナリオを配信して、後から一部だけボイス付きにするというマギレコ方式でやっていましたが、本編ストーリー・イベントストーリー・キャラストーリーのうち本編と重要イベントぐらいでしたからね、声が実装されたシナリオ。

 「ストーリー版」と言い切っているということは戦闘パートや育成要素は全部削除になるのかな。既にiOSやAndroidで配信されている「うたわれ」三部作(ゲームパートをカットしてストーリー部分だけに絞ったアプリ)みたいになるのか、それとも「ゆゆゆい」みたいにコンシューマ向けの移植みたいになるのか……「新規ストーリーの追加」と謳っているから、内容次第では買ってもいいかな、という気持ち。ロスフラのシナリオは、舞台となるロスフラ世界(現実世界から切り離され、四方を霧に包まれたネオ九州)の支配者「織代」の正体を巡る第一部が終わって、織代の支配から脱した各國の皇(オロ)たちが干戈を交える群雄割拠の戦國時代に突入する第二部へ移る……はずだったが、サ終によって第二部の内容は大幅にオミットされ、「なんかよう知らんが大戦は終わった」「勝者はおらず、和睦によって決着」「世界を鎖していた霧が晴れた」と爆速でエピローグに到達して呆然。新規ストーリーではこの端折りまくった第二部の内容を補完するのか、それとも「霧が晴れた」以降の物語を綴るのか。差し当たっては続報待ちです。

『テメレア戦記9 ドラゴン同盟』刊行、20年に渡る架空戦記ファンタジー、遂に完結

 「もしこの地球にドラゴンが存在して軍に配備されていたら、ナポレオンは英国本土を侵攻していたのではないか?」というifに基づいて展開する海外版の架空戦記小説です。作者の「ナオミ・ノヴィク」はアメリカ人で、これの他に「デスゲーム版ハリー・ポッター」「アメリカ版『魁!!男塾』」とも言うべき“死のエデュケーション”3部作、数多の賞を獲った単発作品『銀をつむぐ者』などを手掛けている。かつて「ピーター・ジャクソン監督(ロード・オブ・ザ・リング撮った人)によって映画化する企画が動いている」という話もあったが、最近聞かないところをみると立ち消えになったのかな……(検索中)……2016年に著者のもとへ権利が戻ったらしい。

 ハリウッド映画、やたら「映画化決定!→全然続報が届かない→有耶無耶」というパターンが多いけれど、これは「映像化権が転売できる」というアメリカ特有の事情が絡んでいます。まずヒット作や話題作が現れると原作側と交渉して映像化権(契約によって「ドラマのみ」「映画のみ」「両方」など細かく分かれている)を買い取り、もっと人気が出るまで待って程好く高騰してから他の業者に転売する……という稼業で食っている映画関係者がいるワケだ。この結果、映像化権だけが市場で遣り取りされて実現に至らず延々と塩漬けされる作品が出てくる。あまりにも映像化されないことにキレた原作者が権利を買い戻し、「本当に映像化するつもりのところ」へ売る――という珍事も発生しています。

 具体例としては「マイクル・コナリー」のケースがある。コナリーは「ハリー(ヒエロニムス)・ボッシュ」シリーズで有名な作家で、1992年に出した1作目と1993年に出した2作目、そしてボッシュを主人公にしたオリジナル作品の映像化権を1995年にパラマウントへ売ったのですが、15年経っても全然動きがないので痺れを切らして2010年に権利を買い戻し、別のところでドラマ化されています。なおボッシュが出て来ない別の作品はちゃんと映画化されている(2002年の『ブラッド・ワーク』と2011年の『リンカーン弁護士』)。売った金額よりも買い戻した時の金額の方がずっと高かったらしいので、「よく考えず安易に映像化権を売るのはやめた方がいい」という教訓を残す結果になりました。

 こういう事情もあって、ナオミ・ノヴィクは期限付きでピーター・ジャクソンに映画化権を売って、10年経っても実現しなかったから権利が手元に戻った……という経緯のようです。やはり、向こうでも映像化権が延々と転売される状況にウンザリしている作家が少なくないんでしょうね。そんな『テメレア戦記』はかつて「ヴィレッジブックス」という出版社から翻訳版が刊行されていましたが、途中で吸収合併されて消滅したため、7巻以降はハリポタの出版社として有名な「静山社」が出しています。静山社はシリーズ全体の翻訳権を獲得したが、1〜6巻は文庫版を出すだけに留め、ハードカバー版の再販は行っていない。このためハードカバーで全巻揃えようとすると途中でブックデザインが変わるというコレクター泣かせの状態に陥っている。比較的旧バージョンに寄せたデザインだから「全然違う」というほどでもないが、巻数のローマ数字表記がアラビア数字表記になっていたりと細かい部分が異なるんですよね。まぁ、完結まで刊行されただけでも御の字ではある。なお、「完結」はあくまで「ナポレオン戦争を軸にしたストーリー」であって、「同一の世界観を使った関連作」は今後も出るかもしれないとのこと。

 ちなみに、ヴィレッジブックスという「今は存在しない出版社」も成立から消滅までの経緯が結構複雑。もともとは「ソニー・マガジンズ」というソニー・ミュージックの子会社が海外小説の翻訳本を出すときの文庫レーベルとして「ヴィレッジブックス」を作った(だいたい2000年頃)のですが、ソニー・マガジンズが2006年に書籍部門を「ウィーヴ」という出版社に売却、このとき「株式会社ヴィレッジブックス」が出来てウィーヴの子会社になります(なおソニー・マガジンズは2012年に会社統合に伴って消滅)。『テメレア戦記』の翻訳版が刊行され始めたのはちょうどこの頃。2011年に株式会社ヴィレッジブックスは親会社のウィーヴに吸収合併され、「独立した一出版社」から「ウィーヴの一部署」に格下げとなる。2019年、今度はウィーヴが親会社の「フリュー」に吸収合併され、ヴィレッジブックスは「ウィーヴの一部署」から「フリューの一部署」に変遷。このとき『テメレア戦記』は1巻だけ増刷されたので、ハードカバー版『テメレア戦記』1巻に関してはヴィレッジブックス版フリュー版の2種類があります。2巻以降が増刷されなかったのは、まぁ単純に売れなかったんでしょうね。その3年後の2022年に「事業継続が困難」という理由で出版事業からの撤退を宣言。ソニー・マガジンズからの独立後、16年に渡る歴史に幕を引きました。

・映画の『WEAPONS/ウェポンズ』を観た。

 去年(2025年)に公開されたアメリカのホラー映画です。監督および脚本は「ザック・クレッガー」、元コメディアンで2009年に『お願い!プレイメイト』というコメディ映画で監督デビューした……らしいが、この映画はよく知らない。2022年に『バーバリアン』というホラー映画も監督しており、これは観たことがあります。グロいシーンが多くてなかなか楽しかった。『WEAPONS/ウェポンズ』は3本目の監督作品に当たり、4000万ドル弱(日本円に換算すると60億円前後)というハリウッド映画にしては比較的低予算で作られた映画ながら全世界興収が2億7000万ドル弱(日本円に換算すると420億円ぐらい)のヒット作となりました。全米公開が8月で、この時点だと日本での公開予定はなかったのですが、「英語圏でヒットを飛ばしている」という情報が伝わってきたため11月に緊急公開される運びとなりました。緊急すぎて公開規模がメチャクチャ小さく、地元では上映されず……ネットで評判を漏れ聞いて「観たい!」と歯噛みしましたよ。アメリカ本国での評価も高く、アカデミー賞も受賞しています。獲ったのは「助演女優賞」。誰が獲ったのかは後述する。

 舞台はペンシルベニア州の小さな町。ある男の子がこそこそと囁く。ちょっと前にこの町でたくさんの人が死んだんだ。でも、事件は揉み消されて全部「なかったこと」になった……と、いきなり結論から明かしてきます。発端は水曜日の朝、小学校の教師「ジャスティン・ギャンディ」はいつも通り授業を行おうと受け持ちの教室に向かった。しかし、教室はもぬけの殻……いや、たった一人、「アレックス・リリー」だけが登校している。体が小さく、気弱で、よくイジメられていた繊細な少年。ねぇアレックス、他の子たちはどうしたの? ――クラスに在籍する18人の子供のうち、17人が一夜にして姿を消すという異常事態に町中が蜂の巣をつついたような大騒ぎとなった。刑事たちはジャスティンに事情を尋ねるが、彼女は途方に暮れるばかり。「子供たちはみんな示し合わせてどこかに向かったんだよな? ただの悪ふざけだよな?」とアレックスに訊いても彼は俯いて「知らない」と答えるのみ。防犯装置やカメラの映像から、子供たちが「自主的に」家を飛び出した時刻は深夜2時17分頃と判明したものの、その行方を突き止めることはできなかった。学校は捜査のため一時休校となったが、いつまでも残された子供たちを放置するわけにも行かず、1ヶ月後に再開の運びとなる。収まらないのは子供が帰ってこないことに苛立つ親たち。ふざけるな! 何があったのかいい加減説明してくれ! なぁ、ギャンディ先生、あんたは何か知ってるんだよな? 俺たちに隠していることがあるんだろう! 詰め寄る保護者たちに対し答える言葉を持たないジャスティンは、「飲まなきゃやってらんねぇ」とばかりに酒に溺れるが……。

 小学生たちの集団失踪事件をフックに、「町の醜聞」に切り込んでいくほんのりミステリ仕立てのストーリーで観ていてワクワクします。結論はあらかじめ語られているのに、なんだろう、この真相がうっすらと見えていても全容が掴めない感覚。痒いところは分かっているのに掻くことができない、良い意味で隔靴掻痒のムードに満ちた映画です。ネタバレ抜きで魅力を伝えるのは難しいし、もう公開から結構経っているのでここから先はネタバレありでどんどん語っていきます。観る気はある方はブラウザを閉じてさっさと『WEAPONS/ウェポンズ』を再生しちゃってください。

 この映画はいわゆる「群像劇」のスタイルで撮られており、ある程度話が進むと「次の視点」に移ります。最初の視点は教師のジャスティン、担当クラスが丸ごと消滅した(アレックスは失踪してないけど、さすがにマンツーマンで授業を続けるわけにもいかず他のクラスへ編入した)事態に呆然とし、学校側からも「ほとぼりが冷めるまでは大人しくしてくれ」と余計な行動をしないよう釘を刺されている。町民からは疑惑の目を向けられ、車にペンキで「WITCH(魔女)」と落書きされる始末。しかしそれで大人しく縮こまるようなキャラじゃないジャスティンは、唯一の手掛かりであるアレックスに接触しようとします。直接彼の家に行って呼び鈴を鳴らすが、誰も出て来ない。窓から家の中を覗き込もうとすると、なぜか窓という窓に新聞紙で目張りがしてあった。野次馬やマスコミへの対策にしても、なんか変じゃないか? といった具合に「アレックスの家」が物語の焦点となっていくわけです。

 第二の視点は失踪した生徒の保護者、「アーチャー・グラフ」。彼は息子の「マシュー」がどこに行ったのか知りたい一心でジャスティンに付きまとう。その一方、防犯カメラに残っていたマシューの映像を見返し、彼の向かった先を突き止める手掛かりが何かないかと目を皿にする。家を飛び出したマシューは道なりに走っていくのではなく、まるで「目的地へ真っ直ぐ向かっている」かのように躊躇なく道路を横断していた。目的地が直線方向にあるのだと仮定するなら、他の失踪生徒たちが向かった方角と突き合わせて交点を導き出せるのでは? 何かが掴めそうなアーチャー。交点を探している最中、ジャスティンの車を見掛け、「今度は何か情報を吐くまで逃さない!」と圧を掛けるが……「またしても何も知らないジャスティン」はうんざりしながらアーチャーと押し問答を繰り広げている最中、視界の端から見覚えのある誰かが走ってくるのを捉える。「あれは……マーカス?」 職場の上司である「マーカス校長」は完全に理性を失った状態で彼女に襲い掛かってきた! と予想外の方向から新展開始まります。もうこのへんまで来ると「観るのやめらんない」感じになりますね。

 で、この後「ポール」「ジェームズ」「マーカス」と視点が切り替わっていって、マーカス校長のところでようやく真打登場となる。そう、彼女こそがアカデミー賞で助演女優賞を獲った「エイミー・マディガン」演じる……誤魔化す意味もないのでハッキリ書いてしまうと、本作のラスボスである「グラディス」だ。異様に厚化粧したババアで、とにかく見た目のインパクトが強い。監督が元コメディアンということもあってか、グラディスのところだけなんか「松本人志がダウンタウンの番組で演じていた『話の通じないクソババア』にまつわるコント」のノリなんですよね。「ただ厚化粧しているだけ」なのにここまでクリーチャー感が出せるのシンプルにスゴいですよ。

 最終的にただ一人だけ教室に登校してきた男の子、「アレックス」の章が開幕し、いよいよ種明かしが始まります。マーカス校長の章で既に描かれていたが、アレックスの「叔母」を名乗るグラディスは本物のWITCH(魔女)で、平和だった彼の家庭にある日突然寄生虫の如く棲みついてしまったのだ! 対象の髪の毛や「愛用の品」を使って発動させる類感呪術タイプの魔法(ウィッチクラフト)で、「木の枝」を用いるところを見るとケルトのドルイド(女性だからドルイデス?)系かな。アレックスの母親の妹、つまり「叔母」だと言い張っているけど、どう見てもアレックスママよりずっと老けているので恐らく「そう思い込まされている」のでしょう。校長との会話から、少なくともアメリカ開拓時代には物心をついていたと推測される。グラディスの魔法によって傀儡にされたアレックスの両親、「言うこときかなかったら……わかってるよな?」とグラディスに脅され、アレックスは彼女の言いなりになってしまう。そんな中、「消えた子供たちが向かっていった先の交点」を探していたアーチャーとジャスティンはそこが「アレックスの家」だということに気付き、遂に物語はクライマックスへ。ここから先の展開はさすがにバラせないが、「最終決戦」の盛り上がりは期待通り……いや、期待以上の代物でテンションMAXになりましたよ。「うおお! そこだ! 殺れ! ブチ殺せ!」とまるでグラディエーターの試合を観戦しているような気分でしたね。監督曰く、脚本を書き始めた時点では着地点を決めていなくて「ある教室の子供たちが一斉に姿を消す」というアイデアを転がしていった結果、ああなったらしい。冷静に考えると「一斉に失踪させる必要があったのか?」という疑問は残るし、グラディスの動機も明確には描かれていないが、そこらへんは瑕疵というほどでもないです。

 想定以上のヒット作になったこともあり、既にグラディスの来歴を綴る前日譚の企画も動いているようです。要は『X エックス』に対する『Pearl パール』みたいなもん。本当は『WEAPONS/ウェポンズ』本編の中でグラディスの過去も掘り下げる予定だったらしいが、尺の都合で削らざるを得なかったらしい。削ってなお128分ありますからね、この映画。さあ、みんなも「アカデミー賞を獲ったババア」に観に行きましょう。

・拍手レス。

 陰実はすでにコミカライズの方が原作最新刊より早かったので追い抜くのほぼ確定です。一番残念なパターンは『紅』ですね。原作イラストレーターによる丁寧なコミカライズで人気も高かったのに。コミカライズが終わった後に原作新刊出たのも

 『紅』は原作の残酷描写がハード過ぎたせいかコミカライズではだいぶマイルドにしないといけなかったり、アニメは別物になったりとメディアミックス的にはかなり混乱しちゃった作品ですね。コミカライズの特典として原作寄りのOVAもちょっとだけ作られたけど、あれをもっと大々的にやってほしかった。



管理人:焼津