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リレー小説「魔法少女忌譚修」(第13話−10/12)


2026-02-20.

ガガガ文庫の刊行予定に4月分が出ていたのでチェック、「『1/nのワトソン』の2巻出るのか、買わなきゃ。女師匠の7巻が出るのも嬉しい、コミカライズも順調だしそろそろアニメ化報告来たりして。で、『勃紀』ってなんだよ、ふざけたタイトルだな!」と笑った直後に『されど罪人は竜と踊る0.6』が目に入って笑いが引っ込んだ焼津です、こんばんは。

 マジか、され竜の新刊出るんだ……され竜こと『されど罪人は竜と踊る』は2003年に「角川スニーカー文庫」で刊行開始したライトノベルのシリーズです。「第7回スニーカー大賞」の「奨励賞」受賞作。ちなみにこの次の第8回スニーカー大賞「大賞」受賞作品こそが何を隠そう『涼宮ハルヒの憂鬱』です。され竜の4ヶ月後くらいにハルヒが出てるから、応募した回は異なれど「ハルヒとほぼ同期のシリーズ」と言ってもさほど間違いではないだろう。作者の執筆ペースが早く、コミカライズ(『応天の門』の「灰原薬」が描いていた)も決まったりしてシリーズの進展は順調だった。しかし作者がスニーカーの編集部と揉めたことでシリーズは中断、小学館のガガガ文庫に移籍して2008年から再スタートします。途中、イラストレーターの変更を挟んだり、アニメ化(2018年)したりしながら26冊目に当たる24巻(冊数とナンバリングがズレているのは前日譚に当たる0.5巻と公式アンソロジーのオルケストラがあるため)を出して「第二部・完」な雰囲気で終わりました。ちなみに第一部の最終巻は12巻、13巻は第一部と第二部の繋ぎ――言わば「1.5部」で、14巻から第二部スタートです。

 24巻発売が2023年2月だからもう丸3年、あとがきやSNSの投稿から察するに持病の問題があって執筆が難しいらしく、これが実質的な最終巻になるかも……と悲観しかけていたところにこのニュースが舞い込んでビックリしたってわけです。タイトルが「0.6」ということは1巻よりも前、つまり前日譚(プリクエル)って意味でしょう。確かアニメの円盤特典で本編前の出来事を綴った外伝書いてたから、あれをまとめるのかな? と思って調べたが、アニメの特典は「0.91」「0.92」「0.93」だったからたぶん違う。ということは、ま、まさかファンがずっと待望していた「0.5」の続きという意味での「0.6」なのか……!?

 『されど罪人は竜と踊る0.5』、スニーカー文庫時代のタイトルは『されど罪人は竜と踊る Assault』で、平たく書けば「ガユスとギギナの過去編」です。スニーカー版も450ページ程度とそこそこ厚かったが、ガガガ版は660ページとメチャ厚くなっている。され竜の主人公コンビ、ギギナとガユスはそれぞれの名字を採って「アシュレイ・ブフ&ソレル咒式士事務所」を立ち上げたのですが、独立前は「ジオルグ・ダラハイド咒式士事務所」というところに所属していました。そのジオルグ事務所時代を綴ったのが0.5です。当時ガユスは「クエロ」という同僚の女性と付き合っていて、所長であり師匠でもあるジオルグを表面上は煙たがりつつ尊敬していたものの、クエロの裏切りによってジオルグが死亡し、事務所は崩壊。ガユスの青春は苦味とともに終焉します。「クエロの裏切り」に関しては本編で仄めかしており、いよいよその詳細が明らかになるのか……と思いきや、彼女が裏切る前のところで話に幕が引かれており、従って「ジオルグ事務所崩壊」に至るまでの経緯は詳述されず、「クエロにも何か事情がある」ことだけを匂わせて終わっている。そのためファンの間でも「早く続きを読みたい」と熱望する声が挙がる不完全燃焼気味なエピソードでした。Assault から数えると20年(!)、0.5から数えても14年近く、待たされ過ぎてさすがに細部が曖昧だ。また読み直すしかないか……。

『新劇場版 銀魂 -吉原大炎上-』オープニング(金土日3日間)の興行収入が4億円と聞いて「まずまずの数字だけど、初週のランキングで1位獲れなかったのか……」と少し残念がっている。1位との差は200万円程度なので、僅差っちゃ僅差ですけど。

 『銀魂』も完結してから日が経っているので一応解説しておきましょう。『銀魂(ぎんたま)』とは2003年から2019年にかけて、16年近くジャンプで連載された少年マンガです(奇しくも↑で触れた『されど罪人は竜と踊る』と同じ年のスタート)。当初は“週刊少年ジャンプ”で連載されていたのですが、作者である「空知英秋」がなかなか話を畳めないため“週刊少年ジャンプ”から追い出され(『銀魂』が終わった後すぐに別のマンガ家の新連載を始める手筈でスケジュール組んでいたから誌面に空きがなくなった)、季刊の“少年ジャンプGIGA”に移籍。それでも終われなくて「銀魂公式アプリ」でネット連載を続けてやっと完結に至りました。単行本は全77巻、『BLEACH』(全74巻)や『NARUTO』(全72巻)よりも長い。比較的短いギャグエピソードと複数の巻に跨るシリアスエピソードを使い分け、ネタ切れを起こさないようにしながら何とか最後まで走り切った作品です。

 『銀魂』は「天人(あまんと)」と呼ばれる異星人によって支配された架空の江戸時代が舞台になっており、天人たちの支配を振り払うべく武士たちの起こした「攘夷戦争」、その生き残りが主人公「坂田銀時」という設定です。攘夷が失敗に終わった後、江戸は天人のもたらした技術によって異様なほどテクノロジーが進歩しており、時代劇のようでいて現代劇のようでもあり、たまにSFチックなところもある。何せ77巻も続いた(終わらせられなかった)マンガだけに当時の人気は高く、TVアニメは2006年開始の第1期『銀魂』から2017年開始の第4期『銀魂.』まで実に360話以上も放送された。しかし、先述した通り原作のストーリーを予定した期間内に畳めず、遅延の煽りを喰らってアニメの制作スケジュールも崩壊。最終章「銀ノ魂篇」の途中で放送が終了する事態となり、アニメ本編で「銀魂終わる終わる詐欺裁判」が開廷する始末だった。描き切れなかった不足エピソードに関しては劇場版で補填されることになりますが、そのへんは後述。

 人気作品だけに映画版も複数作られています。2017年と2018年に上映された実写版の『銀魂』および『銀魂2』は私観てないからスルーするとして、アニメ版の劇場作品に関して振り返っていきます。劇場アニメの『銀魂』は4つあって、一番最初の作品が2010年の『劇場版 銀魂 新訳紅桜篇』。原作エピソードの一つ「紅桜篇」(紅桜と呼ばれる妖刀を巡る長編ストーリー)を劇場向けに作り直した、簡単に言うと新規カット有りの総集編です。手を入れている部分が多いため、「総集編」ではなく「新訳」と銘打っているわけだ。原作で言うと11〜12巻あたり、アニメの58〜61話を再構成しています。半ば総集編に近い1本のため公開規模は100館未満と小さかったが、全国のファンが劇場に詰め寄せたため拡大公開し、最終的な興行収入は10.7億円。最近は興収がインフレしているせいで「えっ、『全国のファンが劇場に詰め寄せた』のに10億円ちょっと?」と驚くかもしれませんが、「完全な新作ではない」ことを考慮すると充分な数字でした。

 2013年に公開された、唯一の劇場完全オリジナル作品が『劇場版 銀魂 完結篇 万事屋よ永遠なれ』。これとは別に『銀魂 THE FINAL』(後述)があり、ファンじゃない人は混同しがちですけど銀魂の「完結篇」と「THE FINAL」はまっっったく別の作品です。注意しましょう。原作にないエピソードを描いたオリジナル作品ではあるが、空知英秋がこの映画のために305ページものネームを描き下ろしたことを考えると一応「空知作品」としてカウントしても構わないと思う。タイムマシンによって5年後の世界に飛ばされた銀時、なんと江戸の町は『北斗の拳』もかくやというほど荒廃しており、しかも「坂田銀時は既に故人」と告げられ己の墓を目撃するハメに。いったい何があって町はこんなメチャクチャになったのか? そして自分(銀時)が死んだ経緯とは? 5年経ってすっかり大人びた「新八」や「神楽」とともに真相を探るが……という、「有り得たかもしれない世界」を描くパラレル・ストーリーです。原作と繋がらない「if」を描いた作品ながらファン人気は高く、観客動員数も100万人を突破。最終的な興行収入は17億円にまで達した。私も観に行きましたが、とにかくギャグが面白くて館内の観客が過去イチ笑ってましたね。長編エピソードはどうしてもシリアスになってしまいがちですが、劇場アニメとしてはギャグとシリアスの配分がちょうど良かった。「原作は読んだけどアニメは観てない」という人も、この完結篇だけは視聴してほしいです。

 2021年に公開されたのが「真の完結篇」とも言われる『銀魂 THE FINAL』。制作体制が崩壊したためTVシリーズでは放送できなかった最終章「銀ノ魂篇」のクライマックスを映像化しています。「TVシリーズでは放送できなかった」部分が多過ぎて映画の尺(104分)には収まらなかったこもとあり、『THE FINAL』に至るまでの過程をアニメ化した『銀魂 THE SEMI-FINAL』も配信されました。『THE SEMI-FINAL』は全2話で合計48分、『THE FINAL』と合わせると152分もある。それでもなお尺が足りなくてカットした箇所もあるという……「これまでのあらすじ」を8分近くかけてドラゴンボールパロディとともに流すなど好き勝手やってるが、さすがに物語も大詰めなのでギャグ要素は少なめ。ひたすら派手なアクションシーンが最後まで続く。「本当に本当の完結編」ということでファンからの期待も高く、公開3日間で4.4億円を叩き出し、当時「12週連続TOP」で動員ランキングを独走していた『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』のV13を阻んでランキング1位となった。鬼滅人気にあやかって「鬼魂(きんたま)の刃」というふざけた特典を配っていたこともあり、原作者直々に週末動員1位に対するお礼とお詫びのコメントを寄せて一層話題となりました。興行収入も完結篇以上に伸びたが、最終19億円と惜しくも20億の大台には届かず。意外かもしれませんが、実写版の『銀魂』は38.4億円に達しており、興収だけ見るとアニメ版>実写版なんですよ。実写版は2も37億稼いでいるので、両方合わせると75億円……アニメ版の映画4本全部を合わせた額よりも多い。不思議。

 そして今年公開となった5年ぶりの劇場版が『新劇場版 銀魂 -吉原大炎上-』。またしても終わる終わる詐欺で話を続けるつもりなのか……というと答えはNO。割と初期のエピソード(原作だと25〜26巻あたり)である「吉原炎上篇」を再構成した、要は『新訳紅桜篇』に近いタイプの映画なんです。と言っても放送時期が近かった「紅桜篇」と違い、今回は時間が経ち過ぎているので作画については「全面的に描き直し」となっている。絵的には『THE FINAL』もかなりリッチだったが、アレ以上に気合が入っている。オープニングは4億円で、4.4億だった前作より1割近く下がっているから、20億の大台を狙うのは無理だろうけど10億はとりあえず越えられる……はず。内容的に新規を呼び込みにくく、初動型になりそうだから15億までは行かないかな。仮に行ったとしても「アニメ映画全部合わせたよりも実写版の方が稼いでいる」状況は変わりませんが。

 気になるのは今後もこういう「過去エピソードをリメイクして劇場化」みたいなのを恒例化するのか、ってことですよね。今はアニメ業界全体が人手不足なんで、公式が乗り気だとしても次は5年後とかになりそうですけど……やってほしいかどうかで言えば、やってほしい。あれも、これも。『銀魂』の長編エピソード一覧は公式が掲載しているので参考にどうぞ。私は吉原よりも更に初期の「柳生篇」が好きです。より正確に書くと柳生篇で出てくる「柳生九兵衛」が再登場したときのミニスカ着物verが好き。フィギュア買おうかどうか真剣に悩んだほどです。あと、公式がどう言うか知らないけど私の中では銀さんと九ちゃんがくっついて夫婦になってますから(銀九過激派)。

『スナックバス江』が全巻100円セール、更にAmazonの週末限定50%ポイント還元セールが重なって実質50円!

 いや、これは即買い一択でしょう。アニメは残念なことになってしまったが、原作は紛れもなく傑作ですので。

除霊エロコメディ「うしろの正面カムイさん」TVアニメ化、今夏放送開始(コミックナタリー)

 ええっ、これも!? 確かに単行本は今月の新刊で12巻に達するし、分量的にも人気的にもアニメ化の視野に入っておかしくない作品ではありますが……公式で公開されている第1話を読んだだけで私の驚いた理由は察してもらえると思います。数多の悪霊や怪異を祓ってきた凄腕の霊能力者「カムイ」、彼は生きた人間には一切興味を抱かず、悪霊や怪異にしか欲情できない超特異嗜好の持ち主だった……! というお色気ホラーコメディです。性交によって「生」のエネルギーを叩き込むことであらゆる悪霊は「逝くうぅ〜」と絶叫して成仏する。このノリが延々と続きます。探せばあるのかもしれませんが、「カムイさんが脱がない回ってあったっけ?」と咄嗟に思い出せないレベルでクロスアウッ!しまくる。「男の悪霊とかどうすんだよ」と疑問に思うかもしれませんが、カムイさんは生者でなければ「男もいけるしな(ヌッ)」な人です。ただ、読者に配慮してか、悪霊や怪異はカムイさんに捕捉されるとだいたい美女化・美少女化します。アレがカムイさんの能力なのか漫画上の都合なのか、どこかで説明されたような気もするが覚えていない。

 「こんな展開ひたすら続けていたら飽きるのでは?」と危惧するやもしれませんが、「原作」と「作画」に分かれているだけあってエピソードごとに様々な工夫を凝らしており、飽きさせない。一部長めのエピソードもありますが基本は短いエピソードの詰め合わせで、「ちょっと1話だけ」のつもりが気付くとどんどん読んじゃってる。時間を吸われたくない人は興味本位で読まない方がいいかもしれません。あと、制作スタジオとかスタッフに関しては今のところ告知されていない。それどころかOHPもなく、現状Xの公式アカウントのみ。もうあと5ヶ月もすれば放送が始まるというのに、まだホームページもないのか……既に「ホームページ」なるものがそこまで必要とされない時代になってきたのか? 私もすっかりオッサンなので時代の変化についていけないぜ。

「天は赤い河のほとり」TVアニメ化、今夏放送 篠原千絵の描き下ろしイラスト公開(コミックナタリー)

 問題作のアニメ化が次々と決まる一方、こちらといい『百鬼夜行抄』のショートアニメ化といい「年季の入った作品のアニメ化」も進んでいます。というか『百鬼夜行抄』、もう30巻超えてるのか……私が知ってるのは10巻が出たあたりまでで、「朝日ソノラマ」時代。2007年に朝日ソノラマがなくなって親会社の「朝日新聞社」に移って以降は全然チェックしていなかった。Kindle Unlimitedで約半分の16巻までは読めるし、また一から読み直そうかな。

 話を戻して『天は赤い河のほとり』。1995年から2002年にかけて連載された少女マンガです。全28巻で、「メチャクチャ長い」というほどではないが「歴史」をテーマにした少女マンガとしては充分長い部類に属する。中学卒業を間近に控えた少女がひょんなことから古代オリエントの「ヒッタイト帝国」にタイムスリップしてしまう、今で言う「異世界転移」に近いノリの作品です。「ヒッタイト」と言われても「あの鉄器で成り上がった国の……」と教科書レベルの知識しか出て来ないゾーンを題材にしており、未だに終わらない『王家の紋章』との類似性もよく指摘されたものでした(取り上げている時代や地域が比較的接近しているため)。西暦で表すと紀元前14世紀あたりが舞台で、『ヒストリエ』の1000年程度前ですね。ギリシャ方面ではミケーネ文明が栄えていた頃、ひょっとしたらトロイア戦争もこの時代の前後で発生していたかも……くらいの感覚。中国だと『封神演義』の時代が紀元前11世紀ぐらいなのでそれよりも古い。ヒッタイト帝国は現在の地理だとトルコのあたりに位置し、周辺国としてエジプトが存在する。FGOプレイヤーには「オジマンディアス」の名でお馴染み「ラムセス2世」の祖父に当たる「ラムセス(1世)」も重要キャラとして登場。ちなみにクライマックスで描かれる「ヒッタイトとエジプトの一大決戦」を史実に残る「カデシュの戦い」と混同している人もいますが、あれは描写するうえでカデシュの戦いを参考にしている(カデシュ以前の戦争の記録が残ってないため)だけでカデシュの戦いそのものではありません。何せカデシュの戦いは何十年も時代が離れており、もうラムセス2世の治世になっていてラムセス(1世)はとっくに亡くなっていますから……検索した感じ、そもそもラムセス(1世)とラムセス2世がごっちゃになってる読者が予想外に多い印象です。名前が一緒だから仕方ない面もありますが。

 制作スタジオは「タツノコプロ」、老舗ですね。60年以上の歴史があり、古くは『マッハGoGoGo』や『ハクション大魔王』、『科学忍者隊ガッチャマン』、平成以降だと『プリパラ』などのプリティーシリーズ、最近だと「戦国ボーリング」こと『Turkey!』に関わっています。個人的には「新房昭之」監督の『The Soul Taker 〜魂狩〜』で印象に残っている。制作体制が崩壊し、「放送の5分前にTV局にマスターテープが届く」という伝説的な「やらかし」も発生した。そんなボロボロの状況でグロス請け(下請け)のスタジオ「シャフト」が辛抱強く付き合ってくれた(ギャグではない)こともあり、新房監督はシャフトのことを深く信頼している。いわゆる「シャフト演出」のいくつかもこの時に使った「乏しいリソースで効果的な演出を施す」苦肉の策が元になっているとか。「5分前事件」のせいで新房監督は業界から干されて一般向けに復帰するまで3年くらい掛かったが、『The Soul Taker 〜魂狩〜』自体はぼちぼちヒットし、サブキャラの「中原小麦」をメインに据えたスピンオフ『ナースウィッチ小麦ちゃんマジカルて』というOVAが作られ、続編として『ナースウィッチ小麦ちゃんマジカルてZ』や『ナースウィッチ小麦ちゃんR』(主人公が中原小麦から「吉田小麦」に変更となっているし、ほとんど別物だけど)も制作されたため「本編より長いスピンオフ作品」になった。監督は「小林浩輔」、演出としてあちこちのアニメに参加しているが、監督作品は少な……えっ? 『百錬の覇王と聖約の戦乙女』? あの「スマホの力を過信したな」でお馴染みの? な、なんか急に不安になってきたな……。

『超かぐや姫!』いよいよ劇場公開が“1週間限定”でスタート。初日の金曜日から全国規模でほぼ“満席”という異例の事態に(電ファミニコゲーマー)

 いよいよ今日から劇場公開ですが、チケットの争奪戦は想像を絶する域に突入しており、SNSでは阿鼻叫喚が渦巻いている。開始数分で満席になった劇場もあれば、サーバーが不安定になって決済が完了するまで1時間掛かった劇場もあり、もはや「『超かぐや姫!』って今話題になってるアニメだっけ? 近くの映画館でやってんなら寄ってみようかな」くらいの感覚で出かける人が観れるような代物ではなくなっています。さすがに火曜以降は人の波が緩むと思うので、狙うならそこですね。

 この混雑ぶり、わたなれのネクストシャインを思い出しますが、規模に関してはあの時以上でしょう。「単なる先行上映だし、一部の熱心なファンしか来ないだろう」とタカを括って1日1回とか2回の上映にした結果シアターがパンクした、というのがわたなれの惨事だったんですが、『超かぐや姫!』は事前に人気が伝わっていたこともあり1日10回という準コナン級のシフトを組んで対応に当たった劇場も多かった。ハコも100人や200人程度しか収容できないシアターではなく、500人を収容できるようないわゆる「大ハコ」を回した。2月に予定していたまどマギの新作が延期したこともあり、6日に公開した『ほどなく、お別れです』や13日公開の『新劇場版 銀魂 -吉原大炎上-』を除けばこれといって大作や注目作のない月になってしまったので、スケジュールの都合が付きやすかったんでしょう。が、それでもなお足りなかった……全国で19館というのは、いくら何でも少なかったと思います。

 今回の配給は「ツインエンジン」という、フジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」の立ち上げに携わったプロデューサー「山本幸治」が代表取締役を務める会社で、言うまでもなく「東宝」や「東映」に比べるとかなり小規模。過去に配給した作品は『雨を告げる漂流団地』『クラユカバ』『クラメルカガリ』『好きでも嫌いなあまのじゃく』『劇場版モノノ怪』など、ハッキリ言ってマイナー路線です。比較的ヒットしている『劇場版モノノ怪』3部作(最後の3作目は5月公開予定)も全国230館前後の公開規模で1億円を上回る程度の興収に落ち着いている。今回の『超かぐや姫!』はネトフリで配信中だし、映画館で観たがるファンもいるだろうけど「殺到」というほどではないだろう……と過小評価したのではないだろうか。ネトフリは以前『バブル』という自サイトで配信中のオリジナルアニメを全国300館以上のスケールで宣伝費ガンガン使ってアピールしたうえで公開したけど、蓋を開けてみればオープニング(金土日3日間)で6600万円弱、最終的な興収も2億円に届かなかった。当時の映画系ニュースサイトでも「劇場公開前の先行配信という今回の手法、注目すべき試みではあると思うのだが、限定的な劇場公開ではなく日本全国で拡大公開をする上で一体どこに勝算があったのか? 頭の中に浮かぶのは「?」ばかりだ」と辛辣な意見が書かれている。

 ネトフリはオリジナル映画を賞レースに参加させる(ほとんどの国において「配信専用の映画」は映画賞の対象にならない)ためアリバイ作りのような感覚でごく小規模に劇場で限定公開することを習わしとしてきたのだが、なぜか『バブル』の時は妙に力を入れて全国拡大公開に踏み切り、そして盛大にコケた。このときの経験がトラウマになって、「『超かぐや姫!』を全国拡大公開する」という選択肢は採れなかったのだろう。ネトフリとは関係ないけど『バブル』よりも前に公開された、今では「名作」という扱いを受けている『アイの歌声を聴かせて』も興行面ではだいぶ苦しんで、動員ランキングだと初登場12位。金額にして2000〜3000万円くらいだったと思われる。その後口コミで伸びていきますが、スタートダッシュに失敗したこともあって2億円を上回るのがやっとでした。斯様にオリジナルアニメは「当てる」のが難しく、慎重になってしまう気持ちもわからなくはない。でもやっぱり、『超かぐや姫!』に関しては『バブル』のリベンジとばかりに全国300館以上で拡大公開すべきでしたね。全国19館は過小評価というものだ。が、それでも恐らく来週発表される動員ランキングではTOP10へ食い込むでしょう。座席数の限界があるからさすがに1位は無理でしょうけど、同日公開作品に強力な対抗馬がいないから10位以内はほぼ確実と見ていい。ガラガラ過ぎて恨まれた果てスカとは逆に、「この作品はもっと力入れて配給するべきだったろ!」と全国の劇場から恨まれることになりそうだ。

『ワン・バトル・アフター・アナザー』観た。

 U-NEXTポイントが期限切れになる前に、と駆け込みで鑑賞した映画。原題はそのまま "One Battle After Another" 。「一戦終わったらまた一戦」というような意味で、戦いが絶え間なく続くことを匂わせている。主演はレオナルド・ディカプリオ、1億ドル以上の製作費を投じた大作(このうちディカプリオの出演料が2000万ドル)で、ちょっと書き切れないくらい数多の映画賞を受賞しており、アメリカでは「2025年に公開された映画としてはベスト級」という扱いを受けています。米アカデミー賞では12部門13ノミネート中、同年公開の『罪人たち』(16部門ノミネート)には負けるが凄まじい評価だ。しかし日本での興行はパッとせず、ほとんどの映画館で1ヶ月くらいしか上映されなかった。「162分」という3時間近い上映時間が敬遠されたというのもあるだろうが、ぶっちゃけ「翻訳を通してしまうと魅力が下がる」タイプの作品だな……と思いました。

 映画のベースになっているのはトマス・ピンチョンの小説『ヴァインランド』。監督(ポール・トーマス・アンダーソン)は以前に『LAヴァイス』をもとに『インヒアレント・ヴァイス』という映画を撮ってるし、ピンチョン好きなんでしょうね。小説では80年代が舞台になっている(原書の発刊は1990年)けど、映画は舞台を現代に置き換えられており、スマホとかも出てくる。ピンチョンは比較的難解な文学路線の作家なんですが、この『ヴァインランド』はかなりエンターテインメント色が強く、映画向きと言えば映画向きです。しかし原作はメチャクチャ長いから、そのまま映像化したら162分でも全然尺が足らなくなる。『ワン・バトル・アフター・アナザー』は脚色……というより、もうほとんど「翻案」に近い。エンターテインメント色が強いとはいえピンチョン作品なので慣れない人が読み通そうとすると結構ガッツが要る『ヴァインランド』を、うまい具合に娯楽映画へ仕立て上げている。翻案してなお残る「ピンチョンみ」が映画の隠し味として効いており、そのへんが字数制限のある字幕を通して鑑賞すると相当減衰してしまう。英語聴き取り能力がザコな私でも「えっ、このセリフをそう訳すの? 意味合いとしてはそうなんだろうけど……」とモニョるシーンがいくつもあり、「英語の言い回しが面白さに繋がっている」映画なので日本国内でのウケがイマイチなのも納得でした。

 あらすじ。レオナルド・ディカプリオ演じる主人公……いや、わかりやすくするため主人公のことは「ディカプリオ」と呼びます。ディカプリオは若い頃、活動家として「世界を変える」理念に熱く燃え、爆破テロなど過激な手段に訴えることも辞さない革命闘士だった。同じ活動家で、スリリングな状況に性的な興奮を覚える黒人女性「ペルフィディア・ビバリーヒルズ」と懇ろな仲になり、やがてペルフィディアは女児を出産する。「娘」が産まれたことでディカプリオの意識は変わり、「もう革命なんて夢を見るのはやめて子育てに専念しよう」とペルフィディアを説得するが、「母親」という役割を押し付けられることを嫌った彼女はムキになって活動に没頭する。苛立ちから銀行強盗の最中に警備員を射殺してしまったペルフィディアはあえなく逮捕された。このまま長期に渡る懲役刑(ナガムシ)を喰らうことを恐れ、司法取引に応じて仲間を売ってしまう。母親が「裏切り者」であることを告げられぬまま、男手一つで娘を育て上げたディカプリオ。しかし、謎の勢力の魔の手が娘に伸びてきて、もう一度戦いの渦中へ身を投じることになる……。

 「昔は凄腕のテロリストだったけど酒とドラッグに溺れたせいで落ちぶれたディカプリオが、娘を救い出すために奮起する」という、大筋だけ取り出せばよくあるスリラー映画です。『96時間』あたりを連想する人もいるだろう。しかし、「謎の人身売買組織に娘を攫われた」という程度のわかりやすいストーリーではなく、また思ったよりディカプリオの活躍シーンが少ないため、「ディカプリオがリーアム・ニーソンやトム・クルーズばりに大暴れする」無双映画を期待すると肩透かしでしょう。むしろ情けないシーンの方が多い。娘のため久しぶりに地下組織へ連絡するのだが、時間が経ち過ぎているせいもあって肝心の符丁を思い出せない。「オレだよ、オレ! わかってんだろ! いいから教えてくれよ!」「本人確認のためにもちゃんと符丁を言ってくれないと……」と、地下組織の電話番相手に押し問答するシーンが延々と続く。こういう面白シーンの積み重ねで独特の味わいを生み出している映画なので、あらすじだけ読んでも「つまらなさそう」と感じてしまう。ディカプリオの娘が「ニンジャスクール」で「カラテ」を習っているという設定で、カラテマスターの師匠を「センセイ!」と呼ぶのは日本人にとっては面白ポイントかもしれない。うっかり靴を履いたまま畳の上に上がってしまったディカプリオを「畳踏むな!」と叱るセンセイが可愛い。ニンジャ道場に掲げられた「尊厳 Respect」という絶妙に誤訳ってる額とか、謎のハングル、変なお辞儀、テコンドーっぽい動きで「カラテの組手」をするシーンなど、わざとやってるのか雑なだけなのか判断に苦しむシーンの数々は『ニンジャスレイヤー』好きには刺さるかもしれない。

 本作の魅力の一つは悪役を演じる「ショーン・ペン」が放つ存在感。悪役のことも以下「ペン」と呼びます。設定上は軍人らしいが字幕だと「警部」になってるし捜査活動もしているようなので、所属とか指揮系統がどうなってるのかいまいちよくわからない。「まあ、細かいことはいいよ」の精神で流しましょう。ペンはペルフィディア・ビバリーヒルズが放つ危険な匂いに惹かれ、アブないシチュエーションに興奮するペルフィディアも抵抗し切れず、ペンと関係を持ってしまう。ペンは白人至上主義の秘密クラブ「クリスマスの冒険者(Christmas Adventurers)」に入会しようとする際、「そういえば昔黒人女とヤッたことがあったな……あいつ、子供を出産していたけど、まさか……?」と思い出し、「黒人女性との間に混血児(ミックス)がいる(かもしれない)」という醜聞を消すためにディカプリオの「娘」を狙う。「娘」から「シャツがピチピチで気持ち悪い」と言われて「俺はゲイじゃない!」と怒るペンが見所です。たぶん、ネイティブの人にとってペンは「日本人から見た禪院直哉」くらい面白い存在なんだろう。

 だだっ広い田舎の道路をひた走る、「カーチェイス」と呼ぶにはあまりにも長閑な(けれど緊迫感に満ちた)追いかけっこなど、あえて既存のアクション映画の「お約束」を外したような内容がいかにも「洋画マニア向け」といった感じです。映像的にも凝ったカットが多く、見応えはスゴいんだけど……やっぱり、日本人にはウケないよな、コレ。というのが率直な感想。監督が『マグノリア』や『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』のPTA(ポール・トーマス・アンダーソン)なんで、どっちか観てる人は「見応えはスゴいんだけど……」の質感が伝わると思う。凱旋上映するらしいし、アカデミー賞を獲りまくったら日本でも再評価されるかしら。日本公開時の興行収入、オープニング(初日含む3日間)が1.3億円で、累計でも4億円くらいだったそうだから、あの『果てしなきスカーレット』(6.5億円)よりも低い。たとえ凱旋上映で同額稼いでも累計10億に届かないんですよね……製作費1億ドル超えの大作にしてはやや寂しい数字だ。面白いことは確かなので、アマプラとかネトフリの見放題に来たら視聴してみることをオススメします。サブスクのいいところは長尺映画を何回かに分けて観れるところ。トイレの心配をせずにお菓子つまんでジュースやお茶を飲みながら堪能できる。

・拍手レス。

 楽しいし始まったばかりにしては異様にコンテンツがあるのでお勧めですよエンドフィールド。これを機に楽しいし始まったばかりにしては異様にコンテンツがあるのでお勧めですよエンドフィールド。Ave Mujicaコラボも来るので本家も是非

 さすがに手が回らないのでDLしていませんが、みんなが楽しそうにプレーしている様子をSNSで眺めて「友達がゲームやってるのを後ろで眺めてる感覚」でエンジョイしてます。あと本家アクナイのMujicaコラボでバンドリアニメ観始める人が増えて新鮮な初見感想いっぱい読めるの嬉しい。


2026-02-10.

・ゲーム本体はやってないけど『アークナイツ:エンドフィールド』とか『ゼンレスゾーンゼロ』とかの動画がSNSで延々と流れてくるので「ロッシちゃん可愛いなぁ……」「タンタンちゃん可愛いなぁ……」「千夏ちゃん可愛いなぁ……」と時間を奪われ続けている焼津です、こんばんは。いえ、全然ロリコンじゃありませんよ?

 とにかくやってないゲームでもムービーの出来が良くて見惚れてしまうんですよね。ロッシちゃんがクンクンと鼻を動かして匂いを嗅ぐシーンとか、千夏ちゃんが待機モーションで踊る動画をずーっと見てしまう。正気に戻って積みアニメ、積み映画、積みゲー、積読の消化に取り組むのですが、脳内では延々と千夏ちゃんが踊り続けている。もはや電子ドラッグだ。

 積みゲーで思い出したけど、『パラノマサイト』が新作出すということで前作『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』がニンテンドーストアでセール中です。1980円が75%OFFで495円、なんとワンコインだ。新作『パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語』が19日発売ということから、発売前日の18日までセールをやっています。要は低価格のホラー系ADVで、「死人を蘇らせる秘術」を巡って9人の男女の物語が交錯する。基本は文章を読み進めていくオーソドックスなADVだが、360°ぐるっと周囲を見渡して気になるものを発見する「探索パート」が要所要所に盛り込まれており、「能動的にプレーしている」感覚が恐怖を増幅させます。タイトルは「超常現象」を意味する「パラノーマル」と「パノラマ」を掛けているわけだ。私もセールに釣られて買ってまだちょろっとしかプレーしていませんが、なかなか面白い。『世にも奇妙な物語』めいたノリが好きな人なら刺さると思いますので、値段を理由に軽率に購入しちゃってOK。さあ君もレッツ・パラノマ!

『超かぐや姫!』、2月20日(金)より1週間限定で劇場公開決定!

 ファン待望の劇場公開が決定です、やったー。ただし全国19館という、想像以上に小さい規模……当然、うちの地元は入っていません。これは何としても拡大上映してもらわねば……うちの地元の映画館、ネトフリ映画の『バブル』はやったんですけど、あまりにも客が入らなかったせいか『雨を告げる漂流団地』や『好きでも嫌いなあまのじゃく』はやらなかったんですよね。やっぱり、かなり力を入れて広報していた『バブル』がコケたのが痛かった。『バブル』の反省点を踏まえて新しい手法で送り出したのが『超かぐや姫!』なんですが、まだまだネトフリ映画に対する劇場側の信頼感が薄いのだろう。公開される19館に足を運べる人たちは是非ともシアターを満員にする勢いで詰め寄せてほしい。そうすれば私の地元でも観れるようになるはず。

 『超かぐや姫!』というアニメ映画、正直「粗」と感じる部分はいくつかあるのですが、それを押し切るだけのパワーがある作品なのであと数年も経てば「『超かぐや姫!』がキッカケでアニメ業界を目指したくなりました」という若者たちが出現する。誇張抜きでそれぐらい影響力の強いタイトルです。ネトフリ入ってなくてまだ観てない、という方は映画館へGOだ。アレを映画館で浴びれる人は羨ましい……。

 公開館の中に「立川シネマシティ」が入ってるのはちょっと笑っちゃいましたね。『超かぐや姫!』の主なロケ地は立川市で、「サンサンロード」というところが「聖地」の一つになっている。シネマシティはこのサンサンロードに面しており、劇中でもチラッと映っています(かぐやが彩葉たちを尾行して木に隠れるシーン)。「1週間限定」と謳っていますが、「ご好評につき期間延長!」となる可能性はゼロじゃありません。もしかしたら「聖地」化して今年中ずっと上映、なんてこともありえなくはない。

 映画の後日談に当たるMVも公開されており、続編やスピンオフも熱望されている『超かぐや姫!』ですが、物凄く手の込んだ作品だけにそう簡単に続編の類が生えてくることはないと思います。個人的にはかぐや姫(竹取物語)以外の物語を題材にして、相互で緩く繋がっている「お伽噺ユニバース」にしてほしいかな。浦島太郎をベースにした『超乙姫!』もしくは『超竜宮城!』とか、『超鉢かづき姫!』、『超一寸法師!』、『超赤ずきん!』、『超シンデレラ!』……そこまでやるとただの『月光条例』だな。

「チー付与」TVアニメ化!制作はP.A.WORKS ティザービジュアル&PV公開(コミックナタリー)

 最近とんでもない作品のアニメ化ニュースがやたら舞い込むな……『追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。 〜俺は武器だけじゃなく、あらゆるものに『強化ポイント』を付与できるし、俺の意思でいつでも効果を解除できるけど、残った人たち大丈夫?〜』、タイトル長すぎるので「チート付与」ないし「チー付与」と略されることが多い本作、もともとは「六志麻あさ」が「小説家になろう」に連載していたなろう小説です。2022年に書籍化し、書籍版は2巻まで刊行されたが、売れ行きが芳しくなかったのか2巻発売から3年以上経った今も3巻は発売されていません。

 小説の書籍版が発売する前年、2021年から連載スタートしたのが「業務用餅」による漫画版で、絵柄(主人公の髪がボサボサ、かんたん作画の犬)から察するにアニメはこの漫画版の方がベースになると思われます。というのも本作、小説版と漫画版の違いが大きい……ってより、ほとんど「別物」といっていいほど乖離しています。小説版は「なろう系によく出てくる中世ヨーロッパ風の世界」、いわゆる「ナーロッパ」めいた場所を舞台にしたオーソドックスな異世界ファンタジーであるのに対し、漫画版は自動車や機関銃など「ナーロッパ」で押し切るには無理のあるアイテムがドコドコ出てくる。また、登場キャラクターに関しても「名前は一緒だけど性格がまったく違う」現象が頻繁に発生します。普通なら原作ファンが大激怒する所業ですが、チー付与、小説版はそんなにファンがいないため炎上しませんでした。むしろ「いいぞ、もっとやれ!」と喝采を浴び、どんどん独自路線を突き進んで確固たるファン層を築き上げていく。最新刊は19巻、とても「2冊で打ち切られた小説のコミカライズ作品」とは思えない巻数だ。

 チー付与の魔改造っぷりを詳しく解説するとネタバレになるので、「新鮮な気持ちで楽しみたい」未読の方はこの段を飛ばしてほしいのですが……漫画版の第5話で『王獣の牙』(主人公を追放したギルド)副ギルドマスターの女性が登場し、僅か2ページほどで殺し屋の少女「ミラベル」に屠られ退場する、というシーンがあります。あまりにも呆気ないので読者のほとんどは存在を忘れてしまったのですが、漫画版7巻から始まる「半グレ編」でこの女性を慕う人物が暗躍し、王国を相手に壮大な復讐劇を開始する。そのスケールの大きさとアクションの絶妙なバランス感覚に読者の多くが舌を巻いたのですが、原作だとそもそも「『王獣の牙』副ギルドマスター」は殺されていません。主人公「レイン」を追放した後、『王獣の牙』は急速に瓦解していき、3人いる副ギルドマスター(グレンダ、コーネリアス、ゲイル)は見切りをつけて他のギルドに移籍しようとするもみんな疫病神扱いされてどこも受け入れてくれない……と路頭に迷うところで終わっている。要するに「ざまぁ」された後で猿空間ならぬ「あさ空間」に送られて消息不明となっています。それぐらいどうでもいいキャラなんです。当然、「半グレ編」なんてストーリーも原作には存在しない。あまりにも改変・捏造・オリジナル要素が多く、漫画版しか追ってない読者は「原作にはない要素」が出てくる瞬間よりも「原作にもある要素」が漫画版に出てきたときの方が驚くぐらいだ。

 初期は純粋に絵柄が雑なせいもあって読みにくさを感じるが、だんだん技術が向上していき、絵的にもストーリー的にも円熟していく。『呪術廻戦』が『HUNTER×HUNTER』の影響を受けていることは周知の事実ですが、こと「ハンター要素」に関しては漫画版チー付与の方が濃厚と言っていいでしょう。最近の巻は「キメラアント編と王位継承編を同時並行でやってる」と評されるくらい濃密な内容で、本気でアニメ化するつもりなら最低でも4クールは欲しい代物なのだ。とにかく業務用餅のセンスの凄まじさ、原型を留めないほど弄くられても「漫画で面白い部分は、だいたい原作にない箇所ですw」と笑って許す六志麻あさの寛大さが光る。あまりにも鷹揚たる態度ゆえ、チー付与ファンからは「原作者陛下」と崇められています。過去には原作者が怒ったせいで連載打ち切りになった作品もありますからね……忘れもしない、漫画版『皇国の守護者』……。

 制作は「P.A.WORKS」、アニメファンからは「お仕事アニメ」が得意なところとして認識されている。一番有名なのはアニメ制作そのものを題材にした『SHIROBAKO』かな? あれももう10年以上前なんですが……最近だと日常系アニメの『日々は過ぎれど飯うまし』が好評を博している。監督やシリーズ構成に関してはまだ公開されていない。漫画版をそのまんまアニメ化するとさすがに間延びするだろうし、うまくアニメに変換できる人がやってくれるといいですね。

・山口未桜の『禁忌の子』読んだ。

 第34回鮎川哲也賞受賞作。個人的に鮎川賞は信頼している賞なので、「きっとこれも面白い」と思っていましたが、おどろおどろしいタイトルに食指が動かず放置していました。しかし受賞後第一作に当たる続編も刊行されたし、いい加減崩さないとな……って一念発起して読み出した次第です。そしたら冒頭数ページで引き込まれ、あっという間に読み切ってしまった。この本に関してはあらすじ等、なるべく予備知識を入れないで読む方が面白いのでこれから読むつもりの方は私の感想を読まずにさっさとチャレンジした方がいいです。まだ決めかねる、という方はもう少しお付き合いいただきたい。

 「兵庫市民病院」の救急科に所属する医師「武田航」。2023年、まだコロナ禍が明け切らぬ頃、午後8時15分に救急からの着電があった。沖の海面に浮かんでいた30代くらいの男を引き受けてほしいとのこと、断る理由もなかったので承諾する。間もなく心肺停止した患者が運び込まれてきた。状況的に死亡から相当な時間が経過していると見られ、蘇生は無理そうだと思ったが、念のため看護師たちに指示を飛ばし処置を行う。予想通り、患者を蘇生させることはできなかった。ある意味、救急科の日常風景である。「予想外」で「非日常」だったのは、運び込まれた男が自分(航)と瓜二つの顔をしていたことだった……。

 航は一人っ子で、「生き別れの双子の兄(もしくは弟)」がいるなんて話は聞いたことがない。念のため役所に行って戸籍謄本を取り寄せたが、やはり兄弟に関する記述などなかった。亡くなった男は頭部に打撲の痕があったが、かなりの量の酒を飲んでおり、誰かに殴られた後で海に捨てられたのか、酔っ払って足を滑らせどこかに頭をぶつけながら海に落ちたのか、判然としない状況である。できれば男の正体を突き止め、「自分や身重の妻に恐ろしい危険が迫っていないかどうか」を確認したい。航が頼ったのは中学から付き合いのある医師「城崎響介(きのさき・きょうすけ)」だった……。

 城崎響介は感情が希薄で、あらゆるものに対して執着を持たない。いっそ非人間的なほどズバッと論理の刃を冷徹に振りかざす探偵役として設定されています。いかにもドラマ向けの「旬のイケメンが演じる探偵役」といった印象ですが、感情の機微に疎い「非人間性」のせいでヘマをするシーンもあるので、必ずしも設定倒れになっていない。「主人公と瓜二つの死体」という謎、「イケメンかつ冷徹な探偵」というキャラ立ちで最初の100ページぐらいはグイグイと勢いよく読ませてくれます。

 この「瓜二つの死体」が「第一の事件」だと解釈すれば、100ページ過ぎたあたりで「第二の事件」が発生します。簡単に言うと「密室状況で自殺としか思えない死体が発見される」というものです。鮎川賞作品なら密室状況のミステリなんて別に珍しくないわけですが、正直この作品はかなりメロドラマ要素が強いので、「密室」という要素がかなり浮いちゃっている。この密室事件のあたりから一気にトーンダウンし、ストーリーが盛り下がってしまう。そこを耐えながら200ページあたりまで進むといよいよ「出生の秘密」が明かされ始め、盛り上がってきます。ただ、この面白さってぶっちゃけ鮎川哲也的な面白さというより横溝正史的な面白さなんですよね……なんで作者は「横溝正史ミステリ&ホラー大賞」の方に送らなかったんだろう? 横溝賞なら賞金300万円が出るけど、鮎川賞は印税しか貰えず特別な賞金が出ないのに……だから賞金目当ての「あざとい」投稿がなく、信頼できる作品が多いという面もあるが。

 圧巻なのはラスト50ページ、畳み掛けるような勢いで謎を回収して一気に結末まで持って行く。ここで100〜200ページあたりのダレ具合はチャラになりました。明かされる真相に「なるほど!」となるか「えぇ〜!? そんなんアリ〜!?」となるかで評価が真っ二つになるでしょう。というか、ネタバレなしでこのへんについて掘り下げることはできないので詳細については口を噤むしかない。気になる方は実際に読んでみてください。「私はドラマ化に際して『旬のイケメン俳優』を安易に宛がわれるような小説は書きたくないんじゃ! 『うう、これは山口未桜ならではや……』と呻かれるような作品を書きたいんじゃ!」という気迫が伝わってくる。

 既に城崎響介が探偵役を務める続編『白魔の檻』も刊行中であり、読むのが楽しみ。できれば1年に1冊くらいのペースで安定して出してくれるとありがたいですね……。


2026-02-02.

「ヤニねこ」TVアニメ化 にゃんにゃんファクトリーが描くクズ獣人の日常(コミックナタリー)

 アニメ化……と思わせてアニキ化! なんて巫山戯た真似をしていましたが、アレはフェイントで本当にアニメ化すんのかい。絶えず煙草(ヤニ)を喫んでいるニコチン依存症気味なネコ(獣人)を主人公に据えた日常ナンセンス・コメディで、下ネタというかお下劣なネタが多く、しょっちゅう画面にモザイクが入る。「絵柄の可愛いどおくまん」「令和に適応した徳弘正也」といった評もあります。作者の「にゃんにゃんファクトリー」は合同ペンネームで、4人の漫画家が手分けして描いている。おかげで「汚いCLAMP」と呼ばれ、CLAMPに風評被害が及んでいる始末。

 主役に抜擢されたのは「夏吉ゆうこ」、少し前に『笑顔のたえない職場です。』で主演した声優です。最近だと『超かぐや姫!』の「かぐや」役で話題になっています。過去の作品だと『SHOW BY ROCK!! ましゅまいれっしゅ!!』「マシマヒメコ」役、『アサルトリリィ BOUQUET』「白井夢結」役、『シャインポスト』「聖舞理王」あたりで印象に残っている人が多いのではなかろうか。ちなみにウマ娘では「シュヴァルグラン」、グラブルでは「サブリナ」、ブルアカでは「杏山カズサ」を演じているのでソシャゲやってる人なら心当たりがあるかも。

 制作は「バイブリーアニメーションスタジオ」、きんモザやグリザイアのアニメでお馴染み「天衝」が設立した会社です。代表作は『君のことが大大大大大好きな100人の彼女』、あと『ウィッチウォッチ』もココでしたね。『ブラック★★ロックシューター DAWN FALL』とか『プリマドール』とか『魔法少女マジカルデストロイヤーズ』とか、「なんか変なアニメ作るところ」でもあり、『ヤニねこ』は明らかに「なんか変なアニメ」の系譜に連なる作品である。監督は「木村拓」、「マッドハウス」出身で現在は「スタジオ・レモン」というアニメ会社に所属している模様。仮にアニメ化するとしても簡単作画の紙芝居ショートアニメと思っていたんで、やけに手の込んだ作画のティザームービーにビビる。コンプライアンスに中指を突き立てるような作品ゆえBPOに苦情が殺到しそうな気もするが、果たして最終回まで放送できるのだろうか?

「凶乱令嬢ニア・リストン」TVアニメ化 武人が転生した病弱な令嬢役に井上ほの花(コミックナタリー)

 このニュース、喜んでいるファンは多くても驚いているファンは少ないと思います。「ようやくか」って感じ。『凶乱令嬢ニア・リストン』、なろう掲載時は「狂乱令嬢ニア・リストン」でしたが、「狂乱」だと正気を失っているようなイメージを与えるためか商業版では「凶乱」となっています。「ニア・リストン」という病弱な令嬢が亡くなった直後、強さを求めて戦い続けた最凶の武人「???」の魂がその体に入り込み、息を吹き返した。前世の記憶があやふやで、自分の名前も思い出せない???はニア・リストンとして第二の人生を歩み出す。一度目の人生と同じか、それ以上に血塗られた暴力の道を。魂は、己の銘を忘れても、血が滲む想いで修めた業の数々を憶えていた……という「ぅゎょぅι゛ょっょぃ」系転生ファンタジーです。

 今、こういう「ムチャクチャ強かった武人とか騎士とかが貴族令嬢やお姫様、村娘や孤児などのロリ系ヒロインに生まれ変わるTS系転生譚」が一部ですっごく流行ってるんですよ。『幼女戦記』の系統とも言えなくはないが、アレは癖が強すぎるので直接的なジャンルの火付け役はこの『凶乱令嬢ニア・リストン』だと思います。『英雄王、武を極めるため転生す』の影響もちょっとある気がするけど、アレはロリの期間がすぐ終わっちゃうからな……『無双ゲーに転生したと思ったら、どうやらここはハードな鬱ゲーだったらしい』『修羅幼女の英雄譚』『前世は冷酷皇帝、今世は幼女』『皇女転生』『令嬢アリスの英雄譚』など、商業作品だけ数えても結構ある。

 主人公のニア・リストンが最凶&無双で、匹敵するような強キャラが全然出て来ないからストーリー展開は割と淡々としているというか、ハッキリ言って単調です。「幼女が無双する」ギャップにグッと来ない人からすると「何が面白いのかわからない」という評価に落ち着くでしょう。逆に言えば、「幼女無双」というシチュエーションにトキメキを感じる人なら楽しくてたまらないハズだ。コミカライズ版の出来がイイというか、ぶっちゃけ原作小説よりもマンガ版の方が人気あるのでは? コミカライズはあんまり読まない私でもアレだけは夢中になって読んでしまう。原作者「南野海風」は「やたら濃いメイドキャラを登場させる」癖があり、この作品でも主人に対する愛がやや変態チックなメイドが二人も出てくる。コミカライズだと「幼女無双」と「変態メイド」がマリアージュ効果を発揮して「そりゃアニメ化するわ」って面白さになっています。ただ、ノリが「エロシーンを抜いた平成のエロゲー」みたいな感じゆえ、そのへんに付いて行けるかどうかで評価が変わってくるシリーズです。

 「かつて神殺しをも成し遂げた大英雄」と仰々しい設定ながら、少なくともアニメでやるだろう範囲では「神」に相当するような存在と戦う展開はありません。私も最近の巻はあまりチェックしていないので今どういう展開になっているかよく知りませんが、あらすじを読んだかぎりではせいぜい隣国で戦争を起こす程度のようである。魔物とかも出てくる世界観だけど、ぶっちゃけ魔物の存在感は薄いかな……やっぱ人間ボコってナンボだよね、とばかりに裏社会の連中をぼてくり回す。「なんなんだ……なんなんだよ、あの幼女ッ!」って恐慌を来す強面どもにゾクゾクせよ。

 ニア・リストン役の声優は「井上ほの花」、最近だとFGOの「フローラ」を演じていますね。「17歳教の教祖」として有名な声優「井上喜久子」の娘で、10年ほど前にプロデビュー。デビューしたときはまだ10代だったので、現在も20代という若手です。『赤毛のアン』のリメイク『アン・シャーリー』で「アン・シャーリー」役、『薫る花は凛と咲く』でヒロイン「和栗薫子」役を担当するなど、ここ最近は母親の名前抜きで売れ始めている。ちなみにアイマスでは「浅利七海」役、ウマ娘では「アストンマーチャン」を演じています。制作は「KONAMI animation」、あのゲーム会社「コナミ」が擁するスタジオで、ほんの2年前に設立されたばかりなのでアニメ好きでも知らない人の方が多いだろう。ゲームのPV制作やグロス請けがほとんどで、元請けは今年放送予定の『幻想水滸伝』くらい……だったが、『凶乱令嬢ニア・リストン』も元請けで作るみたいです。コナミがケツモチだから資金力はあると思うが、スタジオとしては新興なので蓋を開けてみないとどんな出来になるか読めないな。とりあえず期待しときます。

『ボーイ・キルズ・ワールド 爆拳壊界流転掌列伝』観た。

 80年代や90年代のビデオゲームに出てくる「荒廃した街でひたすら敵が湧いてくるベルトスクロール・アクション」みたいな世界を再現した映画です。『死霊のはらわた』でお馴染み「サム・ライミ」が製作、監督は「ゲーマー」と自負する「モーリッツ・モール」。エンドロールには『AKIRA』のポスター(俯瞰で金田がバイクに向かっていくアレ)を意識したカットも出てくる。ハッキリ言って変な映画だ。面白いかどうかで言えばそんなに面白くはない。日本では去年公開されたけど、ほとんど話題にならなかった。「もうすぐU-NEXTのポイントの有効期限が切れそう」という消極的な事情から気になっていたコレをレンタルして視聴したわけですが、「観て損した」という気分でもなく、「面白くはないけど、妙に印象に残る」って感触を得ました。

 舞台となるのは文明崩壊後の世界。『北斗の拳』とか『マッドマックス』とか、ああいう感じを連想してもらえればだいたい合っているけど、私兵とはいえ軍隊が機能していたり、テレビ放送が続いていたりと崩壊度はそこまで高くない。主人公「ボーイ」は人里離れた山奥で謎の男「シャーマン」に殺人兵器として育てられた少年。街は独裁者「ヒルダ・ヴァンデルコイ」によって支配され、彼女に歯向かう者は裁判ナシで公開処刑されるメチャクチャな状態に陥っていた(ヒルダによると25年前は無法者たちが跋扈する、それこそ北斗みたいな状態だったらしいからこれでもマシになった方らしい)。民を省みぬ圧制者と化したヒルダを討つべく、山から降りたボーイ。しかし一般常識も何もない彼は具体的にどう行動すればいいのか、何の計画も抱いておらず、とりあえず行き当たりばったりで横暴な振る舞いをするヒルダの私兵どもをブチのめすが……。

 役割としては「テロリスト」や「アサシン」の部類なんだけど、プランも何もないからノリで暴れているだけっていう、頭空っぽの「ボーイ」を面白いと思えるかどうかで楽しみ方が変わってくる作品。ボーイには「ミナ」という妹がいて、幼い頃に彼女と夢中でビデオゲームをした思い出もあるのですが、ミナはヒルダの手で無惨に殺されてしまった。妹を救えなかった悔恨からか、はたまたシャーマンの薬物すら用いた厳しすぎる修行のストレスからか、彼はイマジナリーシスターとも言うべき「ミナの幻影」を視るようになってしまう。この「ミナの幻影」がボーイの良心とか理性の象徴として機能します。ボーイは幸運に恵まれたこともあって快進撃を繰り広げるが、そんな彼の前にフルフェイスのヘルメットを被った刺客「JUNE27」(6月27日)が立ちはだかる。ヘルメットを剥いだ下から現れた顔は、死んだはずの妹「ミナ」の面影をくっきりと残していた……!

 ストーリー目当てでこの映画を観る人はそんなにいないと思うからバラしてしまうと「JUNE27=ミナ」です。ちなみに演じている女優は「ジェシカ・ローテ」、『ハッピー・デス・デイ』の主演だったあの人。死んだはずの妹が生きていて、しかも敵の手先になっている! というベタベタなシチュエーション、まさに80年代や90年代のビデオゲームみたいなノリだ。ある程度設定を明かした方が興味を引けるだろうし、思いっきりネタバレしてしまうけど、主人公「ボーイ」は独裁者「ヒルダ」の息子です。幼い頃にシャーマンに攫われ、クスリ漬けにされて「ヒルダは母親ではない、本当の母親と妹はヒルダに殺された」という嘘を吹き込まれ、洗脳されてしまったのだ。後半でその真実が明らかとなり、母親と「感動の対面」を果たすが「彼女がクソみたいな独裁者である」こと自体は変わらない。シャーマンがボーイを攫ったのも、「ボーイが母親の命令でシャーマンの家族を撃ち殺したから(その後パニック状態になって銃を乱射し、その混乱に乗じてシャーマンが逃亡した)」で、ぶっちゃけ割と因果応報なのである。

 最終的には師匠であるシャーマンがラスボスとして出てきます。かつてシャーマンは家族の仇であるボーイを怒りに任せて縊り殺そうとしたが、「母親の操り人形」でしかない無力な少年をどうしても殺すことができなかった。そこで復讐の道具にするべく殺人兵器として鍛え上げた。誰よりも強く、誰よりもタフな男に。今はもう「無力な少年」ではない、だから……殺せる! 師匠(シャーマン)視点でストーリーを再構築することによってようやく完成する映画なので、漫然と眺めていると何が何だかよくわからなくなります。師匠にとってボーイは「憎き仇」なんだけど、長年修行に付き合った「愛弟子」でもあるから、当然情が湧いている。この愛憎半ばする最終決戦が本作最大の見どころであり、逆に言えばそこへ至るまでの過程に関しては「半分くらい寝ていてもいいかな」と思わなくもない。繰り返しますが「面白いかどうかで言えばそんなに面白くはない」映画なんですよ。でもやたら印象に残る。

 病んだ独裁者の母(ヒルダ)は主人公にとってそこまで重要ではなく、良い思い出の残っている妹(ミナ)の方が大事なんですよね。ボーイがシャーマンの道具として育てられたように、ミナもヒルダの道具として育ち、「JUNE27」というコードネームのソルジャーとして治安維持の鎮圧部隊で汚れ仕事に従事している。「大人に搾取される子供」という映し鏡の存在。そんなミナを守るために、ボーイは師匠(シャーマン)へ拳を向ける。「文明崩壊後の世界」の描写があまりにもコミック的でリアリズムの欠片もなくディストピアSFとしてはかなりお粗末な出来だし、アクションの幅を作るためとはいえ主人公が銃を使うシーンも多いから「男なら拳ひとつで勝負せんかい!!」と不満を述べたくなるところもあるけど、何と言うか「嫌いになれない映画」だ。

 良く言えば「芯の部分はしっかりしている」、悪く言えば「芯の部分以外はユルユルにもほどがある」、そんな一本です。もしサブスクの見放題に来たら物は試しと観てほしい。盛り上がってくるまでが長いから前半はながら見でもOKです。好きなのはやっぱりフルフェイスマスクを着用しているときの「JUNE27」だな……バイザー部分が電光掲示板みたいになっていて、そこにセリフが表示される演出も面白かった。あとバキバキに割れた腹筋。



管理人:焼津