「暁の護衛」
   /しゃんぐりら


 まずはザッと周辺情報からおさらい。「しゃんぐりら」はあかべぇそふとつぅの姉妹ブランドで、2007年6月に『僕と極姉と海のYear!!』を発売しデビュー。『暁の護衛』はブランド2作目に当たります。原画を務める絵師は『僕と〜』に引き続きトモセシュンサクですが、ライターはあかべぇの方で『こんな娘がいたら僕はもう…!!』のシナリオを手掛けた衣笠彰梧に変更。一説によれば有葉原画の作品をあかべぇ、トモセ原画の作品をしゃんぐりら、といった形で色分けしているのだとか。つまり開発に関わるスタッフ等は両ブランドで共通しており、姉妹ブランドというより別ラインみたいな関係に近いらしい。

 ジャンルは「お嬢様お守りADV」と表記されており、平たく述べますとボディーガードものです。資産家の令嬢たちを命懸けで守るべく訓練校で厳しい指導を受けてきた主人公……と、ありふれているようでエロゲーには存外珍しい造型。ボディーガードということで去年発売された『恋する乙女と守護の楯』を連想させますが、別に主人公が女装をするわけではなく、「お嬢さま学校とボディーガード養成施設を兼ねた特殊な学園」という設定で乗り切っています。見た目上は共学ながら、「女子>男子」とあからさまなヒエラルキーが存在している。ボディーガードも一応は社会的な信用を得られる職となっていますが、令嬢たちに比べれば「卑しい身分」であると見做されており、「ボディーガードとお嬢さまの恋愛は禁止」という鉄則が物語の行く手を阻む。そういったわけでコンセプトはだいぶ恋楯と異なります。

 しかし、奇しくも……と言うべきか。『暁の護衛』は今年の1月になるまでろくに情報提供されておらず、公式ページを開設し、体験版を公開してからの僅か一、二ヶ月で急速に注目を集めました。短期間の広報でユーザーの心を掴んだ結果、小売側の予想を超える購入者が殺到して秋葉原では発売日に瞬殺現象が発生したほど。恋楯も似たような現象を引き起こしましたし、更に恋楯へ影響を及ぼしたことがほぼ確実視されている『処女はお姉さまに恋してる』も発売したときは品薄となって入手困難な状況に陥っておりました。おとぼく→恋楯→暁、女装エロゲーから女装護衛エロゲー、そして護衛エロゲーへと繋がる品薄売切御免の連鎖……何やら伝言ゲームめいた趣さえ感じ取れる。

 本作の主人公・朝霧海斗は訓練校に入る前の経歴が一切不明の謎に包まれた少年。無気力でだらしなく、すぐにふざけた態度を取って周りをおちょくる問題児であり、成績の方もどうにかギリギリで退学を免れているレベルのおちこぼれながら、本当は「能ある鷹は爪を隠す」とばかりに実力を温存して手を抜いてばかりいる。特技がピッキングで、しかも過去には大罪を犯していることを仄めかすなど、「これでもか!」というくらいに中二病真っ盛りな主人公属性を完備しています。ヘタレ主人公がやたらと多いエロゲー界にあって、ここまでいっそ清々しいほど中学生ドリームを叶えている奴は稀有だ。これもまた短期間のうちに注目を集めた理由の一つだと思います。

 彼は訓練校の厳しい教育課程を突破してようやくボディーガード候補生となり、お嬢さまの身に侍って警護を務める「実技」の段階まで達した。順調な道のりである。しかしもともとボディーガードという職業に強い思い入れがなかったためか、突然「もうやめる」と言い出して校長に退学届けを渡してしまう。晴れて自由の身になったはずが、たまたま街中で白昼堂々誘拐されんとしている少女を見かけ、成り行きで救い出すことになる。その少女はよりによって途轍もない大富豪の娘だった。「決めた。あんた、私のボディーガードになりなさい」 かくして不承不承、降りるはずだったボディーガードへの道にふたたび舞い戻る朝霧海斗。同じボディーガードを志す友人や様々なお嬢さまとともに眩しい日々を過ごすうち、次第に「護りたい」という気持ちが芽生えていく……。

 といったのが大まかなストーリー。斬新なところのない至ってベタベタな導入ですけれど、良い具合に王道を守っていて好感が抱ける出だしでもあります。格差社会が行き着くところまで行き着き、貧富の差が拡大しまくって「禁止区域」と呼ばれるゲットーまで作られ、治安がメトロシティ並みに悪化した街で「守りたい女のために望んで楯となる」――このシンプルな姿勢が実に心地好い。だが、ハッキリ書いてしまうとこの『暁の護衛』は設定の特殊さを活かし切れていないソフトでした。というより、設定が足枷になっている印象すらある。「お嬢さまとボディガードは恋愛関係に陥ってはならない」ってルールがあるせいで、話に「付き合う」という過程がないんです。互いに惹かれ合う段階が充分でないため、ラブコメになくてはならないイチャイチャ要素が抜け落ちてしまっている。妙ルートに辛うじてあった程度かな。ほとんどの場合が「想いを告げたら即セックス」と、足早どころかもはや縮地法に近い急展開を見せる。そのうえ、エロシーンを無理矢理消化するためにエンディングを「Aパート」と「Bパート」の2種類に分けてプレーヤーに選ばせるとか、本気でとんでもない構成をしています。いや、濡れ場くらいちゃんと本編に挿入しましょうよ……ラブラブイチャイチャ交じりのキャッキャウフフなエロが見たいんですよこちらは……。

 そして、恋愛要素以上に問題なのがボディーガード的な部分。主人公たちが身を挺してプリンシパル(警護対象者)を守る「如何にもボディーガード」なシーンはほとんどなく、あっても相手が雑魚で、アクションものとしての盛り上がりは皆無です。様々な経緯からボディーガード同士で拳を交える展開もあるけれど割と地味にあっさり流されるので、ド派手なバトルを期待すれば涙目となること請け合い。当方は事前にこんぼく(『こんな娘がいたら僕はもう…!!』)をプレーしていたため、ライターの性格から言って肉を撲ち血を流し鎬を削るドロドロの戦闘シーンなんか描かないだろうと睨んでいたし、デモムービーにアクション系のCGがまったく表示されないことから活劇的なスペクタクルもないだろうと予測できましたので、そのへんに関して特に落胆を覚えることはなかった。精々こんぼくと同じレベルのクオリティを保ってくれればいい、と願っていた次第です。

 が。一応は要人警護モノなのに、山場らしい山場がほとんどないというか……張るだけ張っておいて回収しない伏線がたくさんあったり、正直何がやりたいのかさっぱり分からず狙いが不明確なまま終わるルートもあったりと、シナリオのレベルに関してはこんぼくよりもダウンしているかもしれません。かつて『つよきす』というエロゲーをプレーしたとき「これほど波乱の少ない学園モノはそうそうないだろう」と思いましたが、その考えを改めざるを得ないほど起伏に乏しいシナリオ尽くめ。日常シーンが淡々と続いて、いい加減シリアス展開が来るかと思いきや、別にそんなこともなく平穏のうちに暗転してスタッフロールが流れ出す。ホップ、ステップ、と来て「あ〜、だりぃ〜。やっぱジャンプするのや〜めたっ」って感じ。以降はネタバレになってしまいますが――と警告しておいて。冒頭で起こった麗華誘拐事件の黒幕がハッキリしないままだったり、柊朱美という女教師をやけに思わせぶりで裏がありそうな雰囲気で書いていたくせに結局何事もなくただの一般的な教師として退場させたり、杏子との関係を中途半端な状態で放置したり、そもそも鏡花や雷太の登場する意義が不明だったり、禁止区域住人の強制退去・強制収容をエピローグ等でまったく触れなかったり、海斗が自分の父親について「殺した」と言っておきながら詳しい事情を語らず「実はまだ生きてるんじゃね?」という疑惑を残していたり、全体的にあやふやで有耶無耶なムードのまま幕を引いているからコンプリートした後でも据わりが悪い。このチグハグで消化不良で設定倒れな感じは『ひめしょ!』を彷彿とさせます。

 それでも個人的には結構楽しめたというか、最後までやって満足したクチなので擁護に走らせてもらいましょう。まず、話の展開にあまり脈絡がないのは衣笠の特徴ということ。前作では学園に仕掛けられた爆弾を処理した直後にライオンを捕獲するイベントが発生するなど、まったくもって異次元級なシナリオ捌きを披露したものですが、基本的に彼の世界観はギャグやコメディなので整合性だとかリアリティだとかいった細かい要素は取るに足らず、いちいち深く考える必要はないんです。何かの騒動が巻き起こっても、物語の根幹に関わるようなことでなければシーンが切り替わった途端、何事もなかったようにリセットされる。そこにあるのは起承転結ではありません。一つ一つのシーンがコントとして独立しており、それの連続によってシナリオという河が紡がれている。

 言うなればこれはボディーガードの成長・青春・恋愛ストーリーではなくて、『暁の護衛』という名のバラエティ番組なんですよ。幾つものコーナーに分かれて眼目がお笑いだったりちょっとしんみり来る友情だったり、ジャンルがバラバラになっているのだけど、通して見れば一つの番組として成立している。あくまで「物語の構築」という観点からすれば問題があり、過剰な期待を寄せていた人が「地雷」と罵るのも已むをえない。ボディーガードとしての任務云々よりも友人やお嬢さまたちと仲良く楽しくコミュニケーションすることを重視しているにも関わらず、主人公が暗い過去と底の見えない実力を持つ邪気眼野郎だったせいで「ボディーガード」の部分が一人歩きして、発売前は妙に燃え展開が熱望されていましたし。そりゃ、最強っぽい悪人面の主人公が実は路上のエセ外人に騙されて398円のタッパーを一万円で買わされるマヌケだとか、想像しようがないもんなぁ。

 ストーリー面ではいろいろとフォローしかねますが、あくまでキャラ立てやギャグに関しては秀逸。誤字脱字は多いにせよ、ネタの調理にかけては滅法巧い。アホの子の極地たる倉屋敷妙を「この頭か! この頭か!」と折檻するシーンで急にヨガヨガ言い出すのとか、ストU世代の当方は大いに噴きました。尊のセリフにあった「これ以上からかうなら、僕はもう……!」は自作パロだろうか? とにかくひたすらテンポ良く読めますので、時間を忘れてあっという間にエンディングに辿り着いちゃいますよ。いや、まあ、単純に個別ルートがそんなに長くないせいでもありますが。個別に分岐した後も共通イベントが案外と多く、二周目、三周目と進むにつれてプレー時間も短くなっていきます。何が何でもイベントを使い回してやろうという執念にはもはや感心の念さえ覚えますね。それはいいとしても、気になった最大のことは何と言ってもテキストの粗さ。最初から最後まで、徹頭徹尾、終始一貫して誤字脱字の嵐。一個見つけるたびに5セント貰っていたら今頃大金持ちです。

 こんぼくでも「愛嬌が持てる」などところどころでおかしな言い回しが目立ちましたが、今回は言葉の乱れが減るどころかいっそう激化している。エロゲーは文章量が莫大ですから、どうしてもケアレスミスを完全には防ぎきれないけど、それにしたってこれはひどい。ひょっとしてスケジュールがギリギリで、ほとんど推敲してないんじゃないでしょうか? 「信条」が「心情」、「精彩」が「精細」とかいった誤変換は序の口、比較的シリアスなところで「敵として合間見える」とか言い出して腰砕けになります。「私に面倒を煩わせないでよ」は恐らく「面倒をかける」と「手を煩わす」が混ざったもの。「小耳に挟んだが、旦那様にお出しする肉の調達に戸惑っているとか?」はたぶん「手間取っている」の間違い。「どうやら僕は、体たらくな人間を放っておけないらしい」も変だと思いましたが、これはぐぐってみるに東横インネタ? 他には「体裁」を「制裁」みたいなニュアンスで用いていたり、テキストでは「滑舌」と書いているのにボイスは「じょうぜつ」と読んでいて、しかも文意からすれば「饒舌」の方が合っているように聞こえたり、「女みたい」と言うべき場面のセリフで「男みたい」と書いているのに声優さんがちゃんと「女みたい」に直していたり、もうかなりグチャグチャ。中にはスキンヘッドの髪を掴むという笑える描写もありました。いえ、あの頃の佐竹にはまだ髪が生えていたのかもしれませんが、立ち絵はあくまで禿頭なので。「面前の前」は某ゲームにあった「夜の夜景」を思い出して懐かしくなったり。体験版で一番大きかったミス、「私のボディーガードは神崎萌様です」という薫の発言は直っていましたが、某シナリオの終盤で海斗が薫に「あいつのプリンシパルはおまえだろうが」と発言するっつー同じようなミスを繰り返していてアイタタタタ。

 閑話休題。そろそろ各シナリオ、各ヒロイン、各ボディーガードの感想に移ります。

 一番最初にクリアしたのは神崎萌ルート。古武術が得意で下手するとボディーガードをも凌ぐという腕っ節の強い黒髪ロングストレートっ娘です。CGではやや青みがかってますが。容姿はツボに入ったものの、天然すぎるのと声がボソボソしているのとでいまひとつ捉えにくいキャラだった。このルートのシナリオは率直に申して下から数えた方が早い出来というか、ぶっちゃけ最下位? 己が住んでいる地域と禁止区域との生活格差にショックを受け、「自分にできることはないか」と思案した末に「そうだ、屋台を開こう」という結論に至る。充分アレな結論ですが、ここまでなら許容範囲。以降の展開はもう「迷走」の一言に尽きます。エピローグも半裸の萌とイチャイチャして萌の祖父に怒られるというヌルラブコメチックな代物で、格差とか屋台とか何処に消えた? ボディーガードの南条薫は「外見が女みたいで揶揄られる」という美味しい設定をしており、目一杯「薫きゅん(*´Д`)ハァハァ」させてもらいました。怒った顔がでら可愛い。ちなみに萌ルートは一周すると選択肢が追加され、二周目で隠しシナリオが読めます。オマケ程度の分量ながら、なかなかに興味深い一品。

 次にクリアしたのが二階堂彩ルート。双子の妹ということもあってか、扱いはメイン級なのに少し影が薄い子。如何にもお嬢さまな髪型といい、おっとりした性格といい、ゲームがゲームなら向かうところ敵なしの人気が得られそうですけれど、悲しいけどこれ『暁の護衛』なのよね。これといって危機が迫るシーンもなく、ちょっとしたキッカケでくっついて、ボディーガード役の尊に身を引かせて終わり。もっとも無難でもっとも変哲のないシナリオ。悪くないけど印象に残りません。なまじ尊徳の拘束イベントがインパクト大きかっただけに彩の存在が霞むこと霞むこと。眠りに落ちていくさなか、「僕は本当はおまえのことが羨ましいんだ……」ってポロッと漏らすグリリバ声の尊にほんのり胸キュンしてしまった。不覚の極み。あとデモムービーで触れられていた通り、彩と主人公の間で過去にちょっとした接点があったけど、いざ打ち明けても「ああ、そうなんですか」と二秒で速攻終了だなんて味気ないにもほどがあるよ。

 それから倉屋敷妙。おバカすぎて溺愛してしまいそうになる自称「麗華のライバル」。やることなすこと空回りしてばっかりでなんとも微笑ましい。自分の胸が貧乳であることを気にしながらも「麗華よりは大きいもん」と張り合う姿にほっぺた落ちた。動物と会話できる機械を使って麗華の飼っているチーターたちとコミュるイベントは、下手すれば作品世界を崩壊させかねない代物だが、さすが衣笠彰梧、実際にチーターが喋り出しても何ともなかったぜ。そもそも妙のボディーガードたる錦織侑祈自体が誰にも見分けがつかないほど精巧なアンドロイドである――という時点でブッ飛んでますから。相思相愛になってからセックスするまでの期間が短い他ルートに比べ、「キス→互いに意識し合う→もう一度キス→想いを告げる→夜這い」と、それなりの段階を踏んで進展していくので一番「付き合っている」という感じが濃厚なシナリオです。デレデレしまくって益々アホっぷりに拍車が掛かる妙ちんがどれだけラブリィか、ここでお見せできないのがとっても残念。有里や玖羽を演じた声優・如月葵がその甘ったるい演技で以ってバカ可愛いお嬢さまを十全に表現してくれる。その可憐さ、まさしくICBM級。クライマックスは「えーっ、今時それはないでしょー」な感じでズッコケそうになりましたが、なんだかんだでキレイにオチたからヨシとすべきか?

 ここでようやく真打ち、麗華お嬢さまのルートへ。不真面目でやる気のない主人公をあえて「奇貨居くべし」とばかりにボディーガードとして迎え、「パーソナルスペース」云々ともっともらしい薀蓄をひけらかしておきながら、実は出逢ったときに一目惚れしていたことが判明しちゃうやや拍子抜けなストーリーでした。このシナリオで主人公の過去を始めとする秘密がいろいろと明かされ、だいたいのピースが埋まる仕組みとなっています。なので、攻略する際はなるたけ後回しにすること推奨。初回プレー時は「途中のイベントが抜けてるのか?」と疑う箇所もありましたが、何てことはない、どうやら金庫破りを「やる/やらない」の選択肢で「やる」を採ったら直後の必須イベントが一個抜けてしまうだけだったみたい。主人公を連れ戻すために単身で特別禁止区域に乗り込むあたりは恋楯の雪乃と同等かそれ以上に無茶だと思ったが、それこそが麗華の苛烈さか。ラストで海斗に銃が突きつけられ、ガンオーバーな見せ場が訪れるのかと思いきや、犯人が説得されて銃を下ろしてしまい、なんだか肩透かし。それと、手紙やら黒板やらの中傷もあいつがやったって結論でいいのかな? さすがに誘拐事件の黒幕ではなさそうですが……いくらなんでも危なすぎるし。

 最後はツキ。これがオーラスということもあって全ルートを統括する内容を期待したが、やっぱり他ルート同様「海斗とツキ」というミニマムな単位で物語が幕を閉じてしまった。このルートに限ったことではないが、エピローグが素っ気ないというか呆気なくて物足りない。もっと余韻に浸らせてくれ。ツキは「二階堂家のメイド」であって護衛対象の令嬢ではなく、ほとんど端役に近い位置付けなのですが、「単なる主人公の世話役」に終わらない強烈な個性を発揮してプレーヤーの目を惹きつけます。体験版でその魅力に憑かれ、思わず「ツキちゃんかわいい」と100回噛まずに呟いてしまう人が後を絶たなかった(少し誇張)。どのシナリオであろうと彼女の存在感は霞むことがありませんけども自ルートは後半の展開がシリアスなため、コメディめいた掛け合いが徐々に少なくなり「ツキっぽさ」が薄らいでしまうジレンマが。なんだかんだ言って、彼女は攻略ヒロインになるよりもサブキャラとして活躍する方が似合っているのかもしれません。

 誰もがワクテカしたであろうエロシーンは……そんなに濃くはないですね。ポチポチとクリックしているとあっという間に終わります。海斗早漏疑惑発生? けれどトモセシュンサクの原画と気合いの篭もった丹念かつ美麗な塗りが濡れ場描写の薄さを補って余りあります。普段はSだけどベッドの上ではMっ気を露呈する麗華が際立ってキュートでした。システムに関しては、起動直後の「注意事項」が飛ばせないのがうざったいことと、数箇所スクリプトミスがあって背景や立ち絵が間違っていることが気になった程度かな。全体的にちょっと動作が重い感じもしましたが、目くじらを立てるほどではない。サウンド関連だとBGMは特に問題なし。ボイスは小さい声と大きな声に差がありすぎ、聞き取りづらい場面があったかと思えばうるさい場面もあって両極端でしたが、演技そのものは各キャラに合っていて良かった。特に薫はハマリ役。ツキも特徴的で、あの声でなければ彼女の魅力は引き出せなかった。妙は安定して可愛いよ妙。

 ちょっと叩いちゃった部分もありますが、なんだかんだで横溢するコメディ成分とヒロインから滲み出る可愛らしさエキスを堪能させてもらい、勇んで購入した価値のある一本だったと満足しております。確かにグラフィックの頑張りように比べると、どうしてもシナリオの淡白さが物足りなく感じられますが、少なくとも退屈やダルさとは無縁に最後までテンポ良くプレーできたから別段躍起になって文句を垂れるほどでもない。あるシナリオで残った謎が別のシナリオで解き明かされる、みたいな趣向もあって楽しめた。主人公がフルパワーで戦うシーンはなかったし、血沸き肉躍るバトルや熱い冒険活劇、渋いハードボイルドを待望した人はご愁傷様ですが、設定とか気にしないで絵買いしたなら万々歳かと。次もこのトモセ&衣笠コンビで新作をつくっていただきたいものですが、今度はもうちょっとお互いの特徴と相性を吟味して企画の路線を絞り込めば「期待ハズレ」と溜め息をつく人も減るんじゃなかろうか。面白いゲームではありましたけど、いささか羊頭狗肉気味。でもまーFDとか続編が出たら、それはそれで買っちゃいますけどね。


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