「大ガールズバンドアニメ時代に至るまで」(2025年2月19日の記事)


 今は「大ガールズバンド時代」と謳われるくらいガールズバンドアニメが存在感を増しているので、その歴史を軽く振り返ってみよう。「アニメでバンド物の潮流が発生したのはいつ頃なのか」という記憶を辿っていくと、2004年放送の『BECK』とか、それ以前にマクロスとか『KAIKANフレーズ』とかもあるけど、やはり思い至るのは2006年に放送された『涼宮ハルヒの憂鬱』の第12話「ライブアライブ」、通称「文化祭ライブ回」だ。文化祭でライブをする予定だった軽音部に欠員が生じ、「このままだとライブができない!」ということで急遽ハルヒたちがメンバーに加わる……というエピソードなのですが、演奏・歌唱シーンの作画や演出が深夜アニメとは思えないくらい(当時はまだ深夜アニメ=低予算のイメージが強かった)非常に細かいことで話題になりました。制作は職人気質で有名な「京都アニメーション」。この反響を受けてか、ポニーキャニオンは当時それほど爆発的な人気があったわけではないきらら系の4コマ漫画『けいおん!』に目を付け、京アニによるアニメ化を実現させます。

 当時の京アニは『となりの801ちゃん』という作品をアニメ化する予定だったのですが「諸般の事情」で制作中止になり、ちょうど手が空いていたところへ滑り込む形になった。『けいおん!』の原作は2007年に連載を開始し、翌年2008年に単行本1巻が発売、同年12月にアニメ化発表、2009年2月末に2巻が出て4月にアニメ放送開始という、本来ならありえないような早さで企画が進行しています。2009年に放送が始まったアニメ版『けいおん!』に関してはもはや解説不要なレベルだろう。劇中バンド「放課後ティータイム」は当時凄まじい人気を獲得し、CDが累計で100万枚以上も売れた。「ふわふわ時間」や「Don't say "lazy"」を文化祭で演奏した学生バンドは数知れない。現在のガールズバンドアニメ・ブームの祖に当たる存在であり、深夜アニメ界全体に影響を及ぼすほどの化物じみたヒット作となった。しかし、ライブシーンの作り込みの凄さは「京アニならでは」といった要素が多く、途轍もない労力と技術力を要求されるせいで真似しようとするスタジオが出現しませんでした。そのため『けいおん!』における「ガールズバンドアニメの部分」を継承しようとする作品はなく、『けいおん!』を構成する他の要素――「萌えアニメの部分」や「日常系アニメの部分」――を模倣する作品ばかり量産される形となる。ガールズバンドアニメ・ブームの祖でありながら直接的な継嗣が存在しないという、そういう意味でも特殊なポジションを占めています。『けいおん!』があまりに孤絶した頂点であるがゆえに、むしろ「ガールズバンドアニメ」という概念がジャンルとして認識されにくくなったのだ。2010年に放送された『Angel Beats!』も劇中バンドの「ガルデモ」こと「Girls Dead Monster」の全国ライブツアーを行ったことが話題になったが、企画立ち上げのタイミングやヒロインの造型を考えると影響を与えたのは『けいおん!』ではなくハルヒの方だろう。

 『けいおん!』は2009年に1期、2010年に2期を放送し、2011年に劇場版を上映してアニメ作品としての展開は終了します(漫画作品としてはもう少し長く展開している)。2011年は『アイドルマスター』のアニメが放送された年でもあり、「ガールズバンドアニメ」よりも「アイドルアニメ」の方がジャンルとして目立つようになっていく。その傾向は2013年に放送を開始した『ラブライブ!』の特大ヒットによってより強化された印象がある。ガールズバンド物と異なり、アイドル物は「ボーカルを交替させやすい(人数分のキャラソンが出せる)」「歌だけでなくダンスなどのパフォーマンスを売りにできる」という長所もあって商業展開上の利点が大きかったのです。こうして『けいおん!』以降のガールズバンドアニメは「アイドルアニメのサブジャンル」という扱いで隅に追いやられていく。2015年に放送開始したサンリオ発の『SHOW BY ROCK!!』も主人公がガールズバンドを組むアニメなので一応「ガールズバンドアニメ」の枠には入るだろうが、ボーイズバンドがメインの回もあるし、マスコットみたいなキャラや怪物みたいなエネミーが出てくるファンタジー色の強い作風なので一般的な「ガールズバンドアニメ」のイメージを抱いて臨むと「なんだこれ」ってなるかもしれません。ライブシーンで急に二頭身のSD形態になったりする演出にも面食らうでしょう(サンリオのキャラなのでSD形態が本来の姿、六頭身は「擬人化」なのだがアニメの大部分は人間形態で進むため、ライブシーンが始まった途端に縮んだみたいに見えてしまう)。個人的には3期目に当たる『ましゅまいれっしゅ!!』(2020年放送)が好き。VRショー「キセキかもしれないレゾナンス」は無料公開されているので時間に余裕のある人は堪能してほしい。吹奏楽部を舞台にした『響け!ユーフォニアム』も2015年から京アニによってアニメ化スタート。ガールズバンド物ではないけど、近接したジャンルの作品ではあるかな。『けいおん!』の「山田尚子」監督によるスピンオフ映画『リズと青い鳥』は親友なのに気持ちがすれ違う二人の少女の悩み、痛み、悲しみ、苦しみを怖いぐらいに美しく描いていてオススメです。

 そんな具合で「ガールズバンドアニメ」がジャンルとして認識されない時代が続いたわけですが、アイドルアニメ二巨頭のアイマスとラブライブが結果的にとあるプロジェクトを生み出すキッカケとなります。言わずと知れた『BanG Dream!』(バンドリ)だ。バンドリの出発点はブシロードが『ラブライブ!』のような音楽要素のある自社IPを欲していたこと、そしてブシロの社員がアイマス声優の「愛美」がギターを弾けることに着目し「楽器の演奏ができる声優を集めて劇中と同じバンドを組んだらアニメとリアルライブの相乗効果で盛り上がるのでは?」と考えたこと、この二つである。「放課後ティータイム」の声優たちも楽器の演奏はできるが基本的にライブではアテフリだったらしいし、「CVを担当する声優たちによる生演奏」を売りにしたライブは当時ほぼなかった(今でもバンドリ以外だとあんまりない)んです。

 2017年にアニメが始まったバンドリですが、正直アニメ1期目に関しては成功と言いづらかった。バンド物に興味がある層からすると萌えアニメっぽいルックで観るのに抵抗があったし、逆に『けいおん!』的な萌えアニメ、日常系アニメを期待した層からするとややズレた内容であり、ハッキリ申し上げて不評の声が目立ったんです。天候不順でライブに間に合わない先輩バンドのため、まだギターの弾けない主人公が「きらきら星」を繰り返し何分も歌って繋ぐという序盤の展開が特に荒れました。あまりにも不評だったため、現在配信されているバージョンは放送時よりも「きらきら星」パートが短縮されている(代わりに新規のカットやセリフが追加されている)くらいです。私は放送当時の録画をまだ手元に残しているのでたまに観返しています。ネットで検索すると「放送版は6分あった」という記述が見つかりますけどそれは言い過ぎで、実際は4分半です。しかもずっと歌いっぱなしなわけではなく中断している箇所もある。修正版は該当シーンが3分弱になって先輩バンドがライブハウスに急いで向かう様子も挿入されているのですが、おかげで香澄と有咲の掛け合いは減ってしまった。放送版は「どうすんだよ、他に歌える曲ないのか?」「一緒に花女の校歌でも歌おっか?」「学校行ってねーから歌えねーよ!」みたいな遣り取りがあったんですけど、それもバッサリとカットされてる。

 バンドリは「中村航」の書いた小説がベースになっており、そちらでは「牛込りみ」が「ニンジャに憧れる、なぜかいつも裸足の少女。学校でお米を炊いておにぎりを売ることで生活費の足しにしている」という奇抜なキャラクターになっていたり、「山吹沙綾」が「母親を亡くし、幼い弟妹の面倒を看ながら店(パン屋)の手伝いもして定時制に通っている苦学生」とかなり重い設定になっていたりしたため、アニメやアプリのターゲット層に合わせてかなりマイルドな路線に変更したのですが、根底として「今現在幸福ではない者、満たされていない者が努力を重ね、音楽の力で救われる」という「星を掴みたければ精一杯手を伸ばせ」な自助努力に基づく音楽礼讃があるので、基本的に地道な練習風景を映さずスポ根要素を徹底的に排して「音楽って楽しい! みんなで音を合わせるの最高!」という快楽原則を追い求める『けいおん!』とはノリが違うというか思想が完全に別なんですよね。端的に言うと「目的があってバンドを組む」のではなく「バンドを組むのが目的」なのがバンドリなんです。だからきらきら星を乗り越えた先でもメンバー集めに苦労したり、ストレスで主人公が歌えなくなってしまったりなど、重く泥臭い展開が続く。「明るく楽しいアニメ」を求めて視聴し始めた人からするとミスマッチ感の強い内容でした。そう言うお前はどうなのかって? おたえとグリグリ(Glitter*Green、先輩バンド)の「二十騎ひなこ」が好きなので普通に楽しめました。

 ブシロ代表の「木谷高明」はアニメ版の不評を受け、「バンドリはアニメではなくアプリ(ガルパ)の方に注力する」と方針転換し、これが効を奏してガルパは成功します。バンドリは2019年に2期目、2020年に3期目を放送し、2021年にスピンオフの劇場版、2022年に本編の劇場版やスピンオフ作品を展開しました(合間に「FILM LIVE」というライブシーンのみを上映するストーリーのない映画もあった)が、基本的にアプリ版であるガルパ(ガールズバンドパーティ!)をプレーしていることが前提で、「ファンの囲い込み」に走った内容となっています。昨今言われる「大ガールズバンド時代」という用語はバンドリの2期目に出てきたフレーズであり、この「大ガールズバンド時代」が到来するまでの過程を描く企画もあった(MyGOの「要楽奈」はもともとそちらの企画に登場する予定のキャラだった)らしいが、実現しませんでした。ガルパがヒットしたおかげで盤石なファン層を築いたものの、逆に言うとガルパに触ったことがない人は入りづらいコンテンツとなっていきます。一定の成功を収めたバンドリであるが、「楽器の演奏ができる声優を集める」のがネックで展開を広げづらくする要因となっていました。ガルパに出てくるバンドのいくつかは「声優本人による演奏」を前提としておらず、アニメ業界も「やはりアイドル物に比べてバンド物は商業展開が厳しい」と改めて認識したのかガールズバンドアニメというジャンルが活況を呈することはなかった。

 バンドリ1期目と同時期に『天使の3P!』というバンドアニメもありましたが、「女子小学生によるスリーピースバンド」というニッチすぎるコンセプトのせいか人気は限定的でした。3人組を演じた声優のうち1名は引退、1名は無期限活動休止を表明しており、業界に残っているのはたった1名だけに……それが誰かと申しますと『かぐや様は告らせたい』の「四宮かぐや」役で有名な「古賀葵」です。なお引退した声優はバンドリのキャラクターも演じていたので「中の人繋がり」で盛り上がったりしたのですが、引退後は当然キャストも変更されたから今や通じないネタになってしまった。スリーピースバンドと言えば、2021年放送の「セレプロ」こと『SELECTION PROJECT』にも「GAPsCAPs」という楽器を演奏する3人ユニットが出てきましたね。ギターを担当する子が小学生なので、『天使の3P!』の因子を受け継いでいると言えなくもな……いや無理があるか? それと『天使の3P!』が放送された2017年には『DYNAMIC CHORD』という、乙女ゲーム原作の、ある意味で物凄く話題になったバンドアニメもあった。ボーイズバンド物なので説明は割愛します。

 業界の風向きが変わったのは2022年。「ぼざろ」こと『ぼっち・ざ・ろっく!』の放送が始まり、社会現象クラスの反響を招いたことでようやく「大ガールズバンド時代」という言葉が現実味を帯びてきました。劇中バンド「結束バンド」に様々なアーティストが楽曲提供し、アニメを視聴していない層にまで人気が届いて「結束バンドで興味を持ってぼざろを観始める」という逆流現象を引き起こすまでに至った。一方でコメディアニメとしても単純に面白く、「ガールズバンドとか興味ない」って人まで引きずり込むパワーもあった。それまで主流だったアイドルアニメが「あまりにも数が増え過ぎた」せいでジャンルとして飽和気味となり、食傷したアニメファンが「アイドル物とは少し違うガールズバンド物」に魅力を感じたというのもあるだろう。「青春」という要素をアピールするうえで、バンドアニメは「力を合わせる」過程を可視化しやすい利点がある。あとは視聴者が抱く親近感とか登場人物同士の距離感とか、そのへんが作用しているのかもしれない。なんであれ、ぼざろ人気でようやくガールズバンドアニメが「一つのジャンル」として認識されるようになっていった。

 たまたまだろうけど、この流れに乗る形で始まったのが2023年の『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』。TVシリーズとしては4期目に当たりますが主要キャストを刷新し、「ここからでも入れるバンドリの新作」として心機一転スタートします。スタッフの証言によるとMyGOやAve Mujicaの企画は3期目をやっていた頃から動いており、メンバーの集まり具合によってはAve Mujicaの方が先にデビューする可能性もあったそうです。既に声優バンドをいくつもプロデュースしてきたバンドリ!プロジェクトの強みを活かし、2022年に「MyGO」を覆面バンドとして先行デビューさせ、経験と実績を積ませたうえで満を持してアニメ企画を発表。実は2022年に放送されたバンドリのスピンオフアニメ『Morfonication』の背景にもMyGOのキャラがチラッと映っています。MyGO放送開始当初は「バンドリよく知らないから」と1話すら観ずに避ける視聴者も多く、注目されていたとは言いづらい(私も録画してたけど、終わってからまとめて観ようと放置していた)状況だったが、ぼざろの影響もあってか「ガールズバンド物だし、とりあえず観続けてみよう」という層もあってジワジワと評判が広まり、7話目ラストの「なんでよ……なんで春日影やったの!」の衝撃で一気に人気が跳ね上がりました。

 『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』は「CRYCHIC」というバンドリファンでも知らない謎の女子中学生バンドが喧嘩して解散するシーンから始まる、過去イチ辛気臭い内容で視聴者の度肝を抜きました。3話目でようやくCRYCHICがどんなバンドだったか明らかになるのですが、解散した理由はよくわからないまま。「なぜCRYCHICは解散したのか?」という謎を追いながら新バンド「MyGO!!!!!」結成の過程を綴る、ミステリ風の構成をした異色のバンドアニメなんです。大なり小なり仲良しな女の子が集まってバンドを組むのがガールズバンド物の常道なのですが、MyGOメンバーはだいぶギスギスしていて安易に「仲良し」とは言い切り難い。とにかく作中のキャラがぶつかってばかりでなかなかまとまらないんです。7話目でやっとライブに漕ぎつけてようやくまとまるのかな、と思った矢先に春日影騒動が起こって関係にヒビが入り、9話目で完全に破綻してしまう。膝をついて「もうやだ……バンドなんて、やりたくなかった……」と泣き出してしまう「高松燈」の姿は何度見ても心が痛む。リアルバンドが先行デビューしているし、OP映像で演奏しているから「最終的にあの5人でバンドを組む」ことはあらかじめわかっていたのですが、そうでなければどんな結末になるのかまるでわからないアニメになっていたでしょう。リアルタイムで視聴していた人たちは「あれ(OP映像)って、燈が見ている幻覚では?」と疑うレベルでした。これまでのバンドリアニメと異なるムードの作品になったのはブシロードの「根本雄貴」プロデューサーが「重めのドラマをやりたい」と望み、「柿本広大」監督がとことん振り切った方向に行こうと決めたからで、脚本チームはヒヤヒヤしながらシリアスの度合いを調節したという。口コミで評判が広まり、放送終了後にまとめて視聴する人も続出、ガルパにMyGOメンバーも実装されて「バンドリのことをよく知らなかった新規層」がアプリの方にも入ってくるという好循環が生まれました。あと、なぜか中国や台湾でも異様に人気があり、向こうだとMyGO語録だけで会話が成立するレベルになったとかならなかったとか。Youtubeで「春日影」を検索するとそよさんが『呪術廻戦』の宿儺をボコって春日影演奏させる謎の中国MADとか出てくるもんな……。

 MyGO翌年の2024年には『ラブライブ!サンシャイン!!』の「酒井和男」監督と「花田十輝」脚本による『ガールズバンドクライ』が放送開始。東映アニメーションが力を入れて送り出した深夜アニメの一作であり、サンライズから東アニに転職したばかりの「平山理志」が辞職覚悟で作った(フル3DCGなので物凄く予算が掛かる)企画です。インタビューによると2019年7月に入社して8月に企画をスタートさせたとのこと。オリジナルアニメは「まったく認知されていない」状態から始めねばならないため入念な下準備が必要となる。ガルクラも「リアルライブで楽器が演奏できる」メンバー集めに難航し、放送まで5年掛かってしまった。知名度を上げるため劇中バンド「トゲナシトゲアリ」の曲を放送開始前に配信するなどの施策を行ったが、当初は国内よりも海外の注目度が高いレベルだったという。「バンドものは、プロデューサー的な視点で見ると手間もコストも大変」と語っており、『けいおん!』がヒットしたにも関わらず雨後の筍みたいにガールズバンド物が生えてこなかった理由もわかってくる。原作もなく、プロジェクトとしてもこれが出発点という厳しい状況から始まった『ガールズバンドクライ』だったが、主人公「井芹仁菜」の強烈なキャラクターも相俟って無事にヒットしました。先にぼざろやMyGOがあったことでアニメファンもガールズバンド物を受容しやすくなっていたのかもしれない。周囲の期待に応えて見事軌道に乗ったガルクラであるが、5人いる「トゲナシトゲアリ」のメンバーのうち2人(ドラムとキーボード)が体調不良のため長期の活動休止を余儀なくされる事態に陥っており、先行きは見通せない。前後編の劇場版総集編や武道館ライブは決定していますが、2期や新規劇場版については今のところ音沙汰ナシだ。

 ガルクラと同じ2024年には『ささやくように恋を唄う』という、第6回百合漫画総選挙で1位を獲得するほど人気の漫画がアニメ化されました。これは主人公の女子高生「木野ひまり」が新入生歓迎会で演奏したバンドのボーカリスト「朝凪依」の歌に感動し、直接本人に「わたし(先輩の歌に)一目ボレしました」と伝えたところ、相手の依先輩は「後輩から愛の告白をされた」と勘違いしてしまう……という話で、ガールズバンド要素はあるけど女の子同士の百合百合な関係がメインとなっており、主人公自身がバンドに加入するわけではない。進むにつれ依以外のバンドメンバーの恋愛模様も絡んでくるため、アニメも2期3期と長期展開することを期待された作品なのですが……制作が間に合わず、10話で一旦休止。半年後、年末になってようやく残りの11話と12話が放送されるような有様となりました。私はアニメ観ていないので出来については何ともコメントできないが、評判はメチャクチャ悪く、「とても2期なんて……」と絶望視されている。制作スタジオの「クラウドハーツ」も既に倒産しており、予定していたBlu-rayの発売も中止となりました。「声優の演技は素晴らしかった」と語る人もいるので、尚更残念な話です。あと2024年は劇場アニメとして『きみの色』という『けいおん!』の「山田尚子」監督によるバンドアニメも公開されましたが、メンバーに男の子がいるのでガールズバンド物ではない模様。まだ観てないです。

 今年2025年は『BanG Dream! Ave Mujica』がいろいろな意味で話題になっています。「Ave Mujica」というバンドを巡る物語なのですが、ガールズバンド物なのにサイコ・ホラーの要素もあるというかなり変な作品だ。内容的には『It's MyGO!!!!!』の続編なので先にMyGOを観ておいた方がベター。まだ放送中なのでどういう結末に落ち着くかわからないが、キャストの一人が「鳥肌が立ちました」と語っているほどなのでワクワクが止まらない。4月からムシブギョーの「福田宏」による『ロックは淑女(レディ)の嗜みでして』も放送予定であり、大ガールズバンド時代はまだまだ終わらない。お嬢様学校を舞台に、周囲の目から隠れてロックバンドを組む話なのですが、特徴的なのは主人公たちのバンド「ロックレディ」はオフボーカルのインストゥルメンタルバンドだということ。要するに楽器の演奏だけで歌がないんです。ぼざろも最初はインストバンドとして出発して、後からボーカル(喜多ちゃん)が入ってくる展開だったが、こっちの方は今に至ってもボーカルをやってるメンバーはいません。バンドアニメは数あれど、インストロックに特化した作品なんてコレぐらいじゃないでしょうか。作中でも「歌を入れた方が観客受けはいいだろう」と説得されるのですが、主人公はあくまで自分が衝撃を受けたインストロックの可能性を信じて節を曲げない。意見のぶつかり合いが多い話ながら、マイムジに比べて熱血色が強いので男の子受けしそうな雰囲気だ。

 ほか、まだアニメ化の報せはないが「いずれアニメ化するだろう」と目されている『ふつうの軽音部』。タイトル通り、開始時点ではどこにでもありそうな「ふつうの軽音部」の生々しい人間関係としょーもない自意識を連綿と綴る漫画だったのですが、登場キャラの一人が突如として信仰に目覚め、はとっち(主人公)の歌こそ至高と唱える狂信者になったことから雲行きが怪しくなる。主人公自身はただ真面目にギターと歌の練習をして少しずつ上達していくだけなのですが、その裏で狂信者が謀略を張り巡らせて「はとっちが輝ける状況」をプロデュースしようと画策する。一方、先輩たちが卒業するタイミングを狙って部の実権を握って私物化しようと目論む部員も蠢動し……と、まるでポリティカル・サスペンスのような陰謀劇が進行します。普通の軽音部ってこんな日常的に腹の探り合いしてんの? 身内(バンドメンバー)なのに読者からラスボス扱いされるキャラが出てくるのなんて、コレとAve Mujicaくらいだろう。さておき、『ふつうの軽音部』の特徴は「関係の変化」が激しいところですね。バンドブームなのか何なのか主人公含めて45人も新入部員が軽音部にやってくるのですが、みんなガンガン辞めていくしバンド組んでも「一生、バンドやる」とは行かず欠員が生じたりメンバー間の不和が原因で解散したりと組み直しを余儀なくされる。これ読んでると、CRYCHICはだいぶ長く保った方なんだな……と思えてきます。男の部員も多いのでガールズバンド物と言い切っていいかどうか迷うところもあるが、何であれアニメ化を期待している一作だ。吹奏楽部の厄介な人間模様をドタバタ調で描くコメディ『今日も吹部は!』も好きなのでアニメ化しないかな〜と願っていますが、あれはどう拡大解釈してもガールズバンド物ではないな。野球部のエースだったのに怪我のため退部することになった主人公が、女の子に誘われて吹奏楽部に入り、新たな青春が始まる……かと思いきや人間関係がグチャグチャで、常に喧嘩していて演奏どころではない! という話。「吹奏楽部って揉めてる状態が正常なのよ。」「そんな部活はない。」 女の子も主人公のことが好きだから誘っただけで、部活自体はどうでもいいというのだから終わっている。

 まとめ。しばらくはうねりが続きそうな「大ガールズバンド時代」ですが、バンドリは長くアニメシリーズに関わっていた脚本家「綾奈ゆにこ」がAve Mujicaを最後にプロジェクトから抜けた(外された?)こと、ガルクラはメインの2人が長期の活動休止に陥っていて復帰の目処が立たないこと、ぼざろは監督を変更してこれから制作に入るので2期までだいぶ時間が掛かりそうなことなど、不安材料も多く「一過性のブーム」に終わらないかという懸念もあります。劇中バンドとリアルバンドを連動させる仕掛けが困難を伴う(結束バンドの声優陣も1年掛かりでやっと1曲披露できるレベルになった)うえ、クオリティの向上が著しい現在のアニメ界で「説得力のあるライブシーン」を描写するハードルがどんどん上がってきている、というのもある。というか、大ガールズバンド時代なんてふうに持て囃されるのも、先行していた「アイドルアニメ・ブーム」が下火になってきた(2023年放送のヒット作『【推しの子】』もアイドルアニメと言えばアイドルアニメだが内容はかなり変則的)せいで相対的にガールズバンド物が盛り上がっているように見えるって部分も大きいでしょう。そういう諸要素を鑑みると「長くは……続かない」かもしれないが、だからこそ今だけの輝きという可能性がある大ガールズバンド時代を噛み締めて味わっていこう。それはそれとしてぼざろ2期、「SIDEROS(シデロス)」というバンドが出てくるのですが、設定上結束バンドよりも格上なのでサウンド面でも説得力のあるものを作らねばならず、制作陣は早くも頭を抱えているという噂である。本当に2期のこととか全然考えないで結束バンドの楽曲制作に全力投球してたんだろうな……作者自ら煽るイラストまで描いてるのだから笑うしかない状況だ。


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