「斬魔大聖デモンベイン」
   /ニトロプラス


 白状すると、巨大ロボットものはあまり好きではない。だから、この"D"の企画が発表されたとき、あまり食指をそそられなかった。

 子供の頃はそれなりに巨大ロボをカッコイイとか思ってはいたが、だんだん歳を取るにつれて興味が失せていってしまった。なぜだかよく分からないが、巨大ロボが活躍するようなアニメやマンガを見ても、ほとんどワクワクしない。ガンダムという別格を除けば、EVAの初号機やリヴァイアスのヴァイタル・ガーダーなど、メカメカしい感じのしない生物的な感じの奴にしか、魅力を覚えなくなっていた。どうも、ずんぐりとした体型の、カラーリングからして機械機械したようなロボは受け付けないみたいだった。

 そういったわけで、「荒唐無稽ロボット・アクション」を謳ったこのデモンベイン、個人的には買うかどうかがすごく微妙なところであった。『Phantom』に惚れたおかげで、今までニトロプラスのゲームはひと通り揃えていた(『Phantom』以外は積んでいるが)ものの、「そろそろブランド買いも控えないとなぁ」なんて思っていた頃なんで、つい「とりあえず買う予定で、他の人の報告次第によっては回避」という姿勢を取ってしまった。

 結果、あまり芳しくない話を次々と耳にした。「パート・ボイスで、声はあったりなかったり。というか、ほとんどない」「テキストがクドい。死ねるほどクドい」など。元より巨大ロボに惹かれていない自分としては、ブランドがニトロプラスである以外、人外ロリが出てくるくらいしか特に動機もなかったので、「じゃあ、ここは回避ってことで手を打とうか」なんて、あっさり決断したとしたそのとき。

 うっかり、メタトロンとサンダルフォンを目にしてしまった。

 「え? こういうのも出てくるの?」と食い付いたが運の尽き。速攻で購入に踏み切ってしまった。いや、巨大ロボは好きじゃないけど、強化装甲服系統はメチャクチャ好きという、実に偏った嗜好を持っているものでして……。『人狼』はケルベロスの強化装甲服だけで個人的名作に上げてしまっている。

 まあ、それはそれとしてこのデモンベイン、ストーリーは若き探偵が金持ちの令嬢に魔導書探しを依頼され、街をほっつき歩いていたところ、秘密組織に追われていた魔導書(人の姿をしている)を成り行きで助けてしまい、気がつけば巨大ロボットに搭乗して悪と戦うハメに……といった、類型を探そうと思えばいくらでも掘り当てることができるであろう、王道的なノリで、少年漫画やライトノベルがいまだに好きな自分なら充分楽しめるかと思いきや……これがなかなか楽しくならない。最初の数話はドクター・ウェストという、敵だけど憎めないキャラ、ってな奴が出張ってくるせいでどうにも話に緊張感が出ず、戦闘シーンに入っても盛り上がらないといった有り様だった。

 アルやエルザは魅力的だなぁ、と思いつつも話自体はハズレか、と落胆した。……のも束の間、6話目あたりを境にして話は急展開、死人が一人も出ないような生温いノリから一転、山のように死体が積み重ねられる殺伐としたムードに包まれていく。「それは舞い散る血飛沫のように」。

 テキストがクドいクドいと批判されており、確かに泡立つほど濃厚ではあったが、それ自体はすぐに慣れた。そして、一旦慣れると文章のリズムが意外に良いことに気づく。「端整」ではなく「荒削り」、『Phantom』の虚淵玄とはまったく逆の作風だが、これもこれで面白い。「ラスト、最終決戦の展開がダラダラし過ぎ」とも言われるが、個人的にこれはとても良かった。「まだ続くのかよ!」といった粘り強さに満ちたストーリーは好み。中井拓志とか。

 敵味方を含め何十人といるキャラクターを、どれも使い捨てにせず、それぞれの見せ場を用意しながら見事捌き切ってみせた、という点については素直に賞賛を送りたい。けれどその分、ボイスがほとんど付いてないのは本当に惜しいことに思える。これがフル・ボイスで、逆十字どものセリフにまで声が付いていたら、ほとんど最強に近い出来だったろうな。

 最初は難色を示してしまったけど、最後までやったら非常に楽しいゲームだと言い切れるようになった。SSまで書くぐらいなのだから、相当気に入ったんでしょうね、と他人事のように言及してみたり。

 気に入ったキャラはアル・アジフとウェスパシアヌス、メタトロン(中の人ではない)かな。人外ロリ、胡散臭いエセ紳士、強化外骨格な人──歪んだ嗜好が透けて見えますな、いやはや。


>>back