「AYAKASHI−アヤカシ−」
   /クロスネット


 日記の内容を抜粋。


2005-11-07.

『AYAKASHI−アヤカシ−』、プレー開始。

 第一話は体験版の範囲なのですっ飛ばし、第二話からスタート。現在第三話の途中。

 「アヤカシはアヤカシ使いだけに見える」「アヤカシはアヤカシでしか倒せない」という設定から容易に察せられる通り、JOJOにおけるスタンドみたいな謎存在「アヤカシ」を巡って壮絶なバトルを繰り広げる少年漫画ライク・アクションです。単に宿主の益を為すのではなく、代償として精神や肉体を食い潰されていくあたりはJOJOというより『ムシウタ』のノリかな。さすが18禁だけあって「人体真っ二つ」みたいな情け容赦ない残酷描写がチラホラ入っています。エロも陵辱が基調。というかサイ娘ゴスロリ逆レイプ。「犯った後は雌蟷螂の如く殺っちゃうよ」みたいな。いい感じの切れ具合だ。

 豊富なグラフィックを駆使した演出は、最近やった『Fate/hollow ataraxia』と比べてアニメ系統の色調が強い。塗りの感触はもちろん、構図の一つをとってもADVというよりOVAってムード。制作期間が2年に及ぶという触れ込みも伊達じゃなく、かなり凝っています。正直言ってシナリオにはあまり期待しておらず、この演出に惹かれて購入したようなものです。なので今のところは満足。クリーチャーデザインには微妙にうるさい当方としてもアヤカシたちの風貌はなかなか良さげ。妖怪っぽさこそほとんどないものの、有機と無機の狭間にある何とも形容しがたい得体の知れなさがひどく心をくすぐる。

 さて、「期待していない」と書いただけあってシナリオの実情にも失望はしておりません。まだ判断するのは早計でしょうし……ただ、物事を提示する手順にいまひとつスムーズな流れを欠いており、ストーリーテリングの面からすると厳しい予感。接合が不自然なせいで、日常と非日常の温度差がスリリングなものとしてではなく違和感の残るものとして意識される。コメディとシリアスの配分が中途半端でどっちつかずかなぁ、と。長期的に見れば慣れの効果でどうにかなるところですかね。

 あと、肝心のアヤカシバトルにしても「知力を尽くす」みたいな頭脳戦じゃなくて単純な力勝負になっているところも不満であり不安。この調子だとひたすらアヤカシの力がインフレしていくだけになりかねない。対人規模から建築物を一撃で破壊する規模、一瞬で街を崩壊させる規模、国を滅ぼす規模、星を砕く規模、ビッグバンを起こす規模へと……わざと誇張してみましたが、デモからして街規模までは行くんじゃないでしょうか。そこまで派手だといっそ気持ちよくなる。そういうことで、インフレーションの度合いについては表面上顔を顰めつつ密かに期待する項目だったりします。

 現時点で気になってるヒロインは性格破綻者のパムですが、それはさておき何気に男キャラが濃いですねこのゲーム。容姿も性格も。まあ濃いとはいえ、男前とか漢の鑑と呼ぶに足る人物は未登場。平馬が辛うじて有望株か。今後に注目したい。


2005-11-09.

『AYAKASHI−アヤカシ−』、プレー中。

 おお、三話目の半ばから突然グンと面白くなった。徐々に忍び寄る怪異、少しずつ見えてくる敵の能力、そして夜の校舎を舞台にしたバトル。この手の学園伝奇アクションに求められる要件をひと通りこなしてくれて一気に熱くなった次第です。いやあ、これこれ、こういうのが見たかったんだなぁ。やっぱ主人公は薄暗い廊下で敵に追い詰められてくれないと。日常を侵蝕していく非日常の不協和音が絶妙でした。幕切れ付近はゴリ押し臭くてちょっぴり残念だったりもしましたが。

 とにかくこのソフトは「絵で魅せる」という演出法を徹底しており、映像での情報を重視させるせいかテキストは詳細を削ぎ落とされてかなりシンプルな代物になっています。ウィンドウでも最大3行までしか表示されない。くどいところがほとんどない分、読みやすいことは確か。当方は濃厚でねちっこい語り口の文章が好みであるため、あっさりしすぎてるように感じて物足らなくはあります。しかし反面、プレー時の神経が文字ではなくCGに向かうことから、物語の放つイメージをダイレクトに受けて没頭してしまう効果もある。その点では見事としか言いようがない。

 視覚に頼る、というやり口は一見安易なようでも、徹底するとなればおいそれと遂行できるものではありません。やはり低いラインで妥協したくなるのが人情。どことなく垢抜けない雰囲気のせいで「カッコイイ」というより「ダサカッコイイ」と呼びたくなるシーンもありましたが、妥協なしで立て続けにダイナミックな展開が繰り広げられ、凝った演出の目白押しとなれば揶揄する暇もなくのめり込んでしまう。高みを目指せるかどうかは知らないが少なくとも低いところに留まりたくなかった、と言わんばかりの熱意に圧倒されました。

 あくまでシナリオ単体で見れば全面的に擁護できる内容とは請け合いかねるものの、慣れてしまえば「シナリオがどうの」「テキストがどうの」といった枠を超えて夢中になれる力場が発生していて、つまりどのへんでプレーを中断してセーブするか迷う場面も増えてきました。「今日はちょっとだけ」と思ってもついうっかり睡眠時間を削ってやっちゃいます。もうアヤカシがたまりませんよ。具体的には天狗とか。イワナとか。


2005-11-11.

『AYAKASHI−アヤカシ−』、プレー中。

 やべえ、角屋という比較的どうでもいい位置付けというかいつの間にか消えていて現在生死不明のサブキャラが妙にツボになってきた。容姿の印象は「なんかパッとしない変身前のライダー」ってところなんですけれど、能力を使うのとは別に関係なさそうな変梃ポージングを決め、登場時のセリフが「テメーのことは殺してもいいって言われてるんだよォ」系のすごくザコっぽい内容、自信満々に叫んで呼び出すアヤカシがしょうけらと、ひたすらダサカッコいい。シナリオの面白さ、キャラクターの魅力に関してはまだ多少の難を感じるものの、迫力ある演出と已むことなきダサカッコ良さに関しては他のソフトに負ける気がしません。誉めるようで誉めてない、ってニュアンスで使う「ダサカッコいい」という言葉を、この『アヤカシ』へは肯定的な意味合いで掲げたくなります。以上。

 というか……時間が取れないせいでなかなか進みません。新刊読んでたりしたせいもありますが、現在やっと第5話に入ったところ。異能アクションとしてはお約束の展開が目白押しで、ベタなネタが嫌いじゃない当方は大いに楽しんでいます。やっぱり野郎キャラの存在感がいいなぁ。この話で登場する新キャラは敵ながら絵に描いたような俗物ぶりで、そのくせ結構粘ってくれる。使っているアヤカシもテラカワイス(*´Д`)ハァハァ。


2005-11-13.

『AYAKASHI−アヤカシ−』、プレー中。

 パムの株が急上昇中でございます。

 軟派男たちに鬱陶しく絡まれる → 主人公が駆け寄ってくると「悠!」と嬉しそうに抱きつく → が、主人公が他の女の名前を出したので不機嫌になり「あっちいけ!」と言い出す → 宥めようとする主人公の前に、形勢変化を見て取った軟派男たちが調子こいてカットイン → 「あっちいけっつってんだろ」と自信満々に突き飛ばす軟派男たち → 「悠になにすんの!」とブチギレ

 ラブコメ、特にバカップルものを嗜好する当方にとってこういうイベントは美味しすぎる。しつこいナンパから救った直後に痴話喧嘩ですよ。自分が遠ざけようとしたのに、他人がその意志を掬ったらカッとなるんですよ。おいおい、こいつは極上のバカップルだぜ、ってもんですよ。

 単なる学園ラブコメと化した『Ayakashi Colors』を思わず想像してしまいましたけど、ともあれ話のノリに目と耳が馴染んできたせいか、当初の頃に感じていた違和や粗はほとんど気にならなくなっている現状であります。頭が『アヤカシ』の世界に最適化しつつあると言いますか。慣れの力とは大したものです。この調子なら余計な気を回してあれこれ考えないでも普通に身を委ねて楽しめそうだ。


2005-11-15.

『AYAKASHI−アヤカシ−』、とりあえず一周。

 シナリオチャートの情報によれば迎えたのはパムトゥルーエンドの模様。全体で12時間くらいかかったでしょうか。長いといえば長いですが、思っていたほどでもなく。んー、いろいろと謎が山積みのままですし、もうちょっと粘ってくれるかと見てましたが。それは他のルートに期待ってところかな。

 とにかく演出の妙が光るストーリーでした。もちろん素材の使い回しは多いけど、ここぞという場面では使い回し不可能なCGさえ惜しげもなくバンバンと挟んでテンションを上げてくれる。イメージを刺激するパワーは下手なアニメよりも瑞々しく漲っている。話運びや主人公の言動には強引さ、幼稚さを拭い切れない箇所が多々あって所々でトーンダウンするものの、「見せる力」があったおかげで最後まで放り出すことなくプレーできた気がします。いろいろツッコミを入れつつも終盤は夢中になってやり込んでしまいました。

 とにかく、ひたすらに「分かりやすい」というのが本作の売りでしょう。テキストをじっくり読むまでもなく、だらーっと読み流しながら画面の動きを追っていくことで何が起こっていてどうなっていくのか、筋を見失うことはまずありません。異能系のアクションは長々と設定を垂れ流し、それを理解しないと展開が把握できないことがままありますけれど、この『アヤカシ』は良くも悪くも単純明快。絵的なインパクト、イメージの喚起力を主とした仕上がりになっていますから、「小難しい能力バトルは苦手」という人にも安心と言える。が、あくまで「きめ細かいから分かりやすい」のではなく「大雑把だから分かりやすい」ため、深く考えるとあれこれ引っ掛かります。アヤカシのパワーバランスからしていまいちはっきりしませんし。ノリと勢いが重視されている次第。

 ある意味、時代を逆行した内容です。マニアックであることの否定。細分化されているニーズのどれかに狭く深く訴えることよりも、あらゆるニーズの一部分に広く浅く掠っていくことを目的としているような造り。プレーヤーを特に選ばない、という形で逆説的にある種の貪欲さを発揮しているソフトと言えます。驚かせるのではなく、分からせる。予定調和だろうとお構いなし。ベタとか馬鹿一とかいった域を既に超え、アンチ・サプライズ精神を樹立するまでに至っているのではないかと予感させられます。差し当たってプレーを続行したい。


2005-11-21.

『AYAKASHI−アヤカシ−』、前川シナリオをクリア。

「今のショウケラは無敵だあッ!」

 ちょっ、あんまり笑わせるなよ角屋。お前は存在自体が面白すぎるんだからな。というわけでショウケラやケバタケといった特定部分の能力は卓越している割にどこかショボい感が拭えないアヤカシたちが活躍する前川シナリオ。本編補完の意味合いも強く、サイドストーリーとかが好きな当方にはなかなか面白かった。デカい力とデカい力がぶつかり合うパワー・インフレも見ていて迫力があるから楽しいですけど、「一見ショボい力を有効利用して戦う」というシチュもまた燃えるわけでして。角屋のヘタレっぷりが美味しゅうございました。あと伊賀路さんのブチキレた目も素敵。

 しかしこの調子だと今月の新作が届くまで全然終わりそうにないな、『アヤカシ』。読書にかまけてちょっとプレーをサボりすぎました。いずれ集中的にやり込んでコンプしてしまいたい。


2005-11-23.

『AYAKASHI−アヤカシ−』、織江ルートに進行。

 このゲーム、やっていてJOJOとかスクライドとか『Dクラッカーズ』とか『ムシウタ』とかいろんなのを連想したけど、結局のところ既存作品で一番イメージに符合するのは『タマラセ』かなぁ。『タマラセ』自体もオーソドックスな能力バトルを礎にした話ではあるものの、一応伝奇的な背景があったり、能力が能力者にしか見えなかったり、破滅的な運命が匂わされていたり、タイトルがカタカナ4文字だったり、共通点がいくつか見られる。あくまで要素的なものであってそんなに「似てる」ってほどじゃないですが、『アヤカシ』は展開が王道すぎるゆえに却って捉え所がない作品なので、誤解を承知で「エロゲー版『タマラセ』」という印象を暫定回答としておきます。

 明後日にはもう新作が届くし、明日を最後に一旦凍結するかな……せっかく織江に愛着らしきものを覚えてきたので、せめてこのルートだけでも最後までやれるといいんですが。


2005-11-27.

『AYAKASHI−アヤカシ−』、エイムルート以外をクリア。

 よし、あとひと息。この世界は基本的に気合と根性と激情があれば勝てるみたいで、いろいろと突っ込みどころの多いシナリオだけど、ルートごとに展開が大きく変わって多面的に話が広がっていく点、登場するキャラを全員きちんと活かしている点については評価したい。とにかく、終始徹底して分かりやすい話です。良くも悪くも。テキストをくどくどと大量に垂れ流さないで短く絞って綴るスタイルはシャープに映ることもあれば、言葉足らずで拙く見えることもある。シナリオ重視、というより、テキスト重視の人にはちょっとキツいかもしれない。アニメともマンガとも似て非なる、エロゲー特有の「間」の感覚がストーリーテリングの要になっています。ことテンポの刻み方に関しては巧い。不気味な予兆を漂わせるシーンやふとした瞬間に緊張が走るシーンなどで起伏をつくっている。「読む」「観る」「聴く」を総合し、「やる」の次元に踏み込んだ雰囲気。もう少し踏み込みが深ければ革新的な領域に辿り着いたでしょう。さすがにそこまでは及びません。

 余談ですが今のところ、メインシナリオよりもサブシナリオの方が面白いです。サブはあくまで本筋を補完する意味合いのシナリオばかりで、核心に切り込んでる手応えはありませんけど、うまい具合に隙間が埋められていく感じで心地良い。メインあってこそのサブとはいえ、これがなければシナリオの評価はかなり微妙なものになっていたかもしれない。

 さて、次にプレーするのは『アヤカシ』のオーラス的な位置を占めるとおぼしきエイムルート。なかなか派手な展開になりそうで期待しております。デモムービーに出てきた、家を踏み潰しながら街を闊歩するアヤカシ(サイズからしてダイダラポッチか?)との大決戦を想像してワクワク。


2005-11-29.

『AYAKASHI−アヤカシ−』、やっとこさコンプリート。

 エイムルート、掛け値なしの壮絶な執念に打ちのめされた。ただ素直に一言「すげぇ」という感想になってない感想を書くに留めておきたいところですが、無駄口を叩くのは当方の性、あれこれ言わせてもらいます。ぶっちゃけ気合の入り方が他のルートとは段違いだろう、と。他の話で見られたノリに馴染んでいた身に、あのインフレに次ぐインフレなバトルは熱湯級のショック。ひたすら勢い任せで混沌極まりない戦闘の数々が単純に凄い。はっきり言ってこの展開を手抜きなしで実行したスタッフは少々頭がおかしいと思う。正気ならもう少し手を緩めて綺麗にまとめるはずだ。グチャグチャに掻き乱れて汚くなることも構わず情念の絵具を塗りつけ、敢えて荒々しく仕上げることを良しとした、その蛮行に敬服したい。そして願わくば、すべてのルートでこれに匹敵する執念を発揮してくれていたら……と、贅沢な悩みというか、スタッフに「過労で死ね」と言うにも等しい率直すぎる気持ちが湧いてくる。ともあれ、このルートを最初にやらないでおいて良かった。これを真っ先に攻略していたら、まず間違いなく『アヤカシ』を減点方式で語ることになっていたでしょう。ホント、順番って大切ですね。

 というわけで、総じて見ればやはりシナリオに関する不満がごろごろとあり、絶賛しがたい出来ではあります。全体のトーンが「情けない男の子と格好いい女の子がボロボロになりながら戦う伝奇アクション」で貫かれているので、ベタベタなボーイ・ミーツ・ガールを嗜好するならともかく、精妙な筆致と堅牢な設定に彩られた燃えバトルを期待すれば肩透かし。感動を演出しようとする場面もあざとさ、露骨さが目立ち、「なんか、どこかで見たようなシーンだな」と希薄な印象を与えてしまう。掘り下げも浅い範囲に留まっていてすこぶる惜しく、「人に寄生し、力を与える代わりに破滅を齎す存在」というアヤカシの設定に対してテーマを追求しきれていない憾みがある。ストーリーへの期待があまり高くなかった当方でも、やっていて残念でした。

 しかし、つまらなかったかと訊かれれば、そうではないと答える所存です。確かに掘り下げは浅いし、各シナリオが「それぞれの可能性を模索した」というより単に「試行錯誤した結果、路線がデタラメになった」って感じで統一性低いし、完成度の点では誉めにくいものの、「やってやるぜ!」的情熱──物語に懸ける執念が凄まじく、気が付けば呑まれていてすっかり楽しんでいた。主人公の久坂悠は最後まで好感が持てなかったけど、彼の視点では語られなかった出来事を他の人物によって開示するサイドストーリーが本編の穴を埋める役割を果たしており、端役に至るまでの脇キャラにはそれなりの愛着を抱いた次第。サブの連中にしても情けない奴が多く、「状況に接して全力で足掻く」ことが力点になっていて、一種の主人公気質を持っているから感情移入もできたのだと思います。でも冷静に見れば「本編よりサイドストーリーが面白い」のではなく、「本編+サイドストーリーが面白い」んですよね。結構な数がいるキャラをなんとか捌いて語り漏らしがなくなるよう、両サイドに渡って気配りがなされている。広げた風呂敷をちゃんと畳むだけの努力は払っています。

 何より、特筆すべきなのは演出面についてでしょう。神経質というかフェティッシュなまでの凝り様を見せる画面エフェクト・サウンドエフェクトは問答無用であり、インパクト抜群。「見て驚け」との意気込みが肌に伝わってきます。極力説明を削ぎ落としたテキストの効果もあって画面への没入はひどく容易い。皮肉かどうか分かりませんが、不満の残るシナリオに関してもそのシンプルな仕上がりが合って、演出との相性が良くなっている。過去何度も書いた通り、このゲーム最大の売りは「分かりやすさ」なんです。プレーヤーの想像力に凭れかかることなく、かと言って想像力を侮ることもなく、絶妙なテンポとタイミングで華やかな世界を繰り広げてみせる。変に捻ったところのない率直さ、読み手を置いてけぼりにしない丁寧なストーリーテリングが骨となって話を支えています。ただ、局所的に見ると主人公の感情変化がまったくの他人みたいに感じられる場面がいくつかあって、こちらの移入を阻害してしまう難点が。テキスト自体が少ないので、何かあっても主人公が激昂するまでの過程は一瞬で済んでしまい、なんだか「怒りに燃える主人公」というより「即ギレ少年」にしか見えない。設定の都合とはいえ、あまりにもイヤボーン展開が多いのはマイナスでした。

 それからコメディ要素に関してはやや微妙。ギャグがワンパターンだったり笑わせ方が強引だったりで「ありがち」の域を出ません。慣れてくるとそれなりに笑える箇所もありましたが。ただ、配分の比率はちょうど良かった。無駄にダラダラとおちゃらけた日常シーンが続くこともなく、逆に日常シーンの不足から展開が慌しくなることもなく、バランスの取れた話運びになっていると思います。

 話がバックしてしまうけど、やはりエイムルートで見せてくれた執念が当方の評価姿勢を安定させてくれた。他のルートをやってる限りでは微妙感が絶えず付きまとってきたのに、あれをやった途端、迷いのようなものがスッキリと消えてしまった。少年マンガっぽい気合と根性と激情のインフレバトルもあそこまで行くと素晴らしい。典型的な綾波キャラに見えたエイムもいつの間にか一、二を争うほど魅力のあるヒロインに見えてきてびっくりした。寡黙な性格と不屈の精神が織り成す格好良さもさることながら、「剛胆な鬼を従えた華奢な少女」という構図がロマンを刺激してやまない。五話目における「すべてが終わった後……」の発言にも痺れた。わがままではあるが「我を通す」ことに意地を見せるパム、味のあるオッサンとして活躍する前川、ネタキャラ臭いがあまりのヘタレっぷりに愛すら覚える角屋など、他の面子もいい。野郎では特に平馬がツボ。

 総プレー時間はだいたい30〜35時間ってところかな。「能力バトル」ではなく、「デザイン萌えなクリーチャーどもがギッコンバッタン入り乱れるスペクタクル」の観点で眺めればなかなか夢中になれる一作でした。共通ルートの第三話とエイムルートの第六話がアヤカシという存在の不気味さや恐怖をサスペンス色いっぱいに描いていて、やってるこちらにも熱が入った。悪路王、アテルイ、天狗、イワナ、デイダラボッチあたりのアヤカシが好きです。罪もない一般人が無惨な最期を遂げたりと、さりげに容赦ない悪趣味展開がふんだんに盛り込まれているのもポイント高い。なんだかんだで元は取れた気がします。悪路王(*´Д`)ハァハァ。


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