「A profile」
   /AKABEiSOFT×mixed up


 日記の内容を抜粋。


2008-04-07.

・AKABEiSOFT×mixed upの『A profile』、プレー開始。

 「あかべぇそふとつぅ」という商業ブランドが立ち上がる前、つまりAKABEiがまだ同人サークルだった頃にリリースされた18禁ゲーム。後に『その横顔を見つめてしまう〜A Profile 完全版〜』と改題されて再発売される。『その横』はCGを一新し、ボイスも追加、おまけに新規シナリオとして美桜ルートまで書き下ろされた、まさしく「完全版」と謳うに相応しいほどのリメイクっぷりでしたが、不思議と「同人版の方が良かった」という声が絶えない。そんなわけで完全版を買い直そうかどうか迷ったものの、「とりあえず手元にあるのをやってみよう」ってことで同人版からプレーしてみることにしました。当方はこれの体験版でるーすぼーいの文体が気に入って『車輪の国、向日葵の少女』を予約買いしたくらいで、注目していた期間こそ長いもののつい先日まで『車輪』を積んでいたほど怠惰な監視体制だから「るーす儲」と自称するのも憚られる。「るーす儲みたいなもの」程度に濁しておくとします。

 さて、『A profile』は学園モノです。義母や義妹と三人暮らしを送っている主人公がクラスメイトの少女に惹かれていって……という、概要だけ取り出せば何の変哲もない。バカな会話を交わす悪友がいて、気楽に接することのできる幼馴染みもいる、そのうえ義妹は甘えん坊。実に他愛ないギャルゲー的配置であり、現時点でアピールするポイントはほとんどない。けれど、徐々に忍び寄ってくる不安なムードからこの先にとんでもない展開が待ち受けているだろうことは容易に察せられる。てなわけで肝を冷やす準備しながらプレー中。

 今のところ気になっているキャラは快音か。悪友キャラで、「かいおん」ではなく「かいね」と読むらしい。名前と立ち絵を見るたび思わず脳裏に『快感フレーズ』がよぎることをバラせば歳もバレるか。ってかこいつ、野郎のくせにビジュアル面では一番可愛くね? ヒロインたちとコミュニケーションを取る場面よりもこいつとじゃれるシーンの方がずっとムラムラします。あとは莉子ママン。ガイジン並みに曲解した大和魂を息子と娘に押し付ける超銃後の母であり、言葉遣いがなってないと激怒して主人公たちに正座を強要し、洗脳的話術で以って和の精神をオルグするイベントには噴いた。

 まだ始めたばかりですが、あまり長くないらしいので次回か次々回には完了させられそうな予感。サクサクやります。


2008-04-09.

・AKABEiSOFT×mixed upの『A profile』、プレー中。

 莉寿エンドクリア。未来狙いでやったのに……一周目は固定なのか? 日付変更時に出てくる「Goto Happy Tomorrow!」から「Happy」が抜けて「Goto Tomorrow!」になったらシリアス展開に入った徴、という演出はささやかながら巧いと膝を打った。『車輪の国〜』のシナリオを書いたるーいぼーいだけにヌルい流れはないだろう、と睨んでいたがそれでもなお目玉がスポーンッと飛び出るようなフックが顎に来ましたよ。いやはやもう脳が揺れることしきり。でもその後はスススッと軽やかな話運びで決着がついて、程好い感じに終わったのは良かったけれど、若干物足りなさは残ったかな。もっとこの世界の空気をがっつり堪能したかったです。

 一応ヒロインが義妹ということで「兄と妹の関係」がひとつの軸となっており、態度をどう貫くべきが迷っている主人公を叱咤し、発破をかける義母の存在感が下手するとヒロイン以上に際立っていました。るーすのシナリオはドラマ性重視なせいかセリフがやや説教臭くなってしまうきらいがありますけど、それが良い方向に作用して胸に響く一撃となっています。むしろ主人公はママンと結婚すべきじゃね? そして莉寿を妹としてではなく娘として世話していく父性愛ルート完成。冗談はさておき(まあ半分くらい本気ですが……)、過去と現在が錯綜する構成もあって「主人公が莉寿に向ける想い」が捉えにくく、プレーしているこちらとしては「莉寿を妹としてではなく異性として意識してしまう」ことにどうしてもピンと来なかった。一体いつ恋の罠に陥落(お)ちたんだろう? と首を傾げる次第。過去から現在にかけ、ふたりの距離が縮まっていく流れもいまひとつ納得しかねる。ただ、快音や美桜といったサブキャラの処遇は妥当でしょうし、ルートとして見ればなかなかの仕上がりだと請け合えます。もう一人のヒロインであるべき未来はカンペキに空気と化していましたけども……あまりの出番なさに驚いたというか気の毒になった。

 そしてその同情心を解消すべく再プレーし、未来ルート目指して進めている現在。一周目では見掛けなかった選択肢が出てきたところからして、やはり攻略制限が掛かっていたのかな。ルートが二つしかないせいで選択肢が極端に少なく、攻略に詰まることはなさそう。実にユーザーフレンドリー。未来ルートも莉寿ルートの同程度の分量と仮定すれば、次回の更新時にはまず確実に完了していると予測されます。うん、結構丁度いい長さ(短さ?)かも。


2008-04-11.

・AKABEiSOFT×mixed upの『A profile』、コンプリート。

 未来エンドクリア。同人版は2ルートしかないので、これでコンプリートです。完全版には美桜ルートと、いくつか別パターンのエンドが加わるらしい。が、美桜に関してはもういいかな……というのが偽らざる感想。外見的には一番可愛いけどダークフォース満載な裏面があって、「普通」と言われたら激昂するサブキャラ、それが美桜ってことでいいじゃないか。何もわざわざ攻略しなくったって。結論が出た以上、完全版たる『その横顔を見つめてしまう』はスルーすることに致します。

 で、小野未来ルート。当然莉寿ルートとは異なるアプローチをするんだろうと思いながら進めていたところ、アプローチどころか「これ違うゲーム?」と疑うほど路線が切り替わってて少しポルナレフりました。企みの篭もったシナリオで、クライマックスは「そうか、そういうことだったのか……!」と呻く仕組みになっています。ただ、似たような構成の話を以前に見たことがあるため、ちょっと感想に困りました。パクリと言いたいわけじゃないのですが、こう、素直に感激することができなくて悔しい。そういうモヤモヤと縺れている部分を脇に措けば、爽快感溢れる読み応え充分なシナリオになっていたと思います。コンパクトな尺の中で迷い、決断し、走り出す過程がキチンと綴られている。多少の屈折はあれど青春モノとしての要件を満たした、心温まる物語になっています。

 察していたとはいえ、コンプリートしてみるとやはりボリュームが薄く、至ってスケールの小さいゲームです。短いなりにまとまっており、また無駄な箇所が極力省かれているおかげで最後まで退屈せずに読めたことは賞賛したいのですが、『車輪の国』を心に焼きつけられた後では「パンチ力不足」と言わざるをえない。好みの問題もありますし、シンプルで構成もシャープなこちらの方がイイ、って意見も頷けなくはありません。でも個人的には少々シンプルすぎる気がしないでもなかった。ドロドロした内容のくせに幕切れがやけにキレイというか、途中の展開が強引で経緯に納得しにくい。どうにもサプライズ任せな部分が目立つ。ひっくるめて言えば「シンプルにまとまっているが厚みに欠く」ってところでしょうか。

 スナック感覚でるーすシナリオが楽しめる、という点では『G線上の魔王』を待つまでの埋め草にもってこいであり、新規層に対する勧誘・布教用としてはうってつけの一本であります。ミドルプライスで発売された完全版も今は中古市場でお手頃価格になっているみたいですし、あかべぇ未体験な人に割と薦めやすいソフトかもしれません。イベント絵はやや微妙でしたけど、立ち絵がすごく端整で嗜好に合致し、プレー中はひたすら寛げました。正直、完全版よりも同人版のグラフィックの方がツボです。気に入ったキャラは美桜と快音と莉子。なんとヒロイン以外の立ち絵があるサブキャラ全員、という未曾有の結果になりました。恐ろしい。なんだかるーすの指定した檻に誘い込まれた心地がします。

 やらないとは宣言したものの、体験版くらいはプレーしてみようかな……その横。もし感触が良ければ、また改めて完全版の購入を検討致したい。


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