2026年5月〜6月
2026-06-30.・「ごきげんよう、一局いかが?」TVアニメ化!監督はかおり、制作はFelix Film(コミックナタリー)
今度のきらら系アニメは麻雀コメディ、来てますね……麻雀アニメの波が! これは『アカギ』を再開して『兎』とかもアニメ化するしかなし子ちゃんじゃ。原作者の「卯花つかさ」は過去に『アニマエール!』がアニメ化しています。チア部のヤツです。
Y<ハイブイ! あれが2018年放送だからもう8年近く前か……え? そんなに経ってる?
卯花さんはアニメに合わせての短期連載とはいえ『ぽんのみち』のコミカライズもやってるので『ぽんのみち』コラボはあるかもしれない。ちなみに『ぽんのみち』は『流局西入編』という本編の10年後を描いたスピンオフコミックもあったりするが、読んでる人は少ないかもしれない。私はヤンマガWebでこれ読んで『ぽんのみち』を知ったクチなんですが、面白いかどうかと言われると、うん……そもそも単行本1冊でまともな麻雀漫画を展開するのは難しいでしょ。
・「鍋に弾丸を受けながら」TVアニメ化決定!制作はJ.C.STAFF、2027年放送予定(コミックナタリー)
鍋弾アニメ化か……どちらかと言えばエッセイコミックのようなノリで、「登場人物たちが全員フィルターによって美少女化している」というところに特徴のある作品です。「治安のヤバさと飯の旨さは比例する」という独自理論をもとにグルメを求めて危険地帯へ赴く、なんだっけ、昔やってたあの番組……思い出した、『ハイパーハードボイルドグルメリポート』みたいなノリの漫画だ。
原作者の「ジュンターロ」こと「青木潤太朗」は昔スーパーダッシュ文庫で『ガリレオの魔法陣』ってラノベとか出していた人です。漫画原作をいくつも手掛けており、個人的に『SMOKE&WATER 〜マルキ・ド・サドの孫娘〜』が好きだったけど短期で終了してしまった。鍋弾は2021年からWeb連載を開始し、直後から話題になって単行本もよく売れていたみたいだが、作画を担当する「森山慎」の体調不良が原因で2024年から連載休止状態となっています。2025年7月に「再開に向けて着々と進めてはおります」と本人がコメントしているので信じて待っている状況なんですが、そろそろ1年が経過するな……アニメ化も影響して企画を止めるワケにはいかなかったのか、現在は別の人(隆原ヒロタ)が作画を行っているスピンオフ作品『鍋に弾丸を受けながら Transit』が連載中。一応、本編が再開するまでの「つなぎ」という立ち位置だが、場合によってはこっちの方が本編になっちゃうかもな……。
・「ガチャを回して仲間を増やす」TVアニメ化、来年1月放送 キャストに阪口大助ら(コミックナタリー)
ん? これって結構古い作品だよな? 検索してみたら「小説家になろう」での連載開始が2016年、GCノベルスでの書籍化開始が同年の終わり頃、最終巻(9巻)発売が2020年で、「10年以上前に開始して6年くらい前に終わったシリーズ」だった。2020年って言ったら『怪獣8号』が始まった年ですやん。『ウマ娘 シンデレラグレイ』が連載開始したのもこの年ですし、「既に連載終了しているヒット作もある」ぐらいの年月なんですよ、6年っていうのは。
まぁ『ガチャを回して仲間を増やす 最強の美少女軍団を作り上げろ』、2018年に開始したコミカライズの方はまだ続いているから現役作品っちゃ現役作品なのですが……あと知らなかったが、書籍版が完結した後もなろうでの連載は続いてるみたいなんですよね。積んでるからよく知らないけど、書籍版はオリジナルのエンディングを用意して終わらせたらしい。たぶんマンガ版準拠でのアニメ化になるんじゃないかな、と思います。
・香納諒一の『灰は灰 新宿探偵 鬼束啓一郎』読んだ。
「家庭の幸福は諸悪の本(もと)、か」
「なんだ、そりゃ?」
「太宰さ。俺は、読書家なんだよ」さる事情から刑事を辞して私立探偵になった「鬼束啓一郎」を主人公に据えたハードボイルド小説。本人が「もうじき還暦」と言っているので50代後半だろう。警察をやめた「さる事情」に関しては本書の中で触れられている。あと「コロナの時期に〜」と振り返っているから、具体的な年代はわからないがコロナ禍が明けた後を想定していると思われる。短編集であり、「娼婦が死んだ」「ころり転がる」「灰は灰」の3編を収録しています。「娼婦が死んだ」だけ雑誌“ジャーロ”に掲載された作品、あとの二つは書き下ろしです。
過去作とは出版社が違うせいでわかりにくいが鬼束はシリーズキャラであり、初登場作品は2010年刊行の『熱愛』、その後2018年に刊行された『絵里奈の消滅』(文庫化の際に『名もなき少女に墓碑銘を』と改題)に再登場、そして『灰は灰』は今年(2026年)刊行と、メチャクチャ間が空いてるので新刊情報で「鬼束啓一郎」という名前を見ても『熱愛』や『絵里奈の消滅』(『名もなき少女に墓碑銘を』)の探偵だとは思い出せなかった。話の途中で『絵里奈の消滅』とおぼしき事件に言及する箇所があってようやく「この鬼束ってもしかして……」と思い出した次第。香納作品、基本的に独立しているものが多いんですが、たまーにコッソリ繋がっている箇所があったりするんですよね。これも「新宿探偵」だから『新宿花園裏交番』のシリーズと何か関係あるのかな……と勘繰っています(持ってるけど積んでる)。
ではそろそろ各編の紹介に移ろう。
「第一話 娼婦が死んだ」 … 月村実和子。30代半ばで性風俗店に勤務していたが、家庭の事情で店を辞め、常連だった客の何人かと「個人的な関係」を続けて糊口をしのぐ――そんな生活を送っていた女性が亡くなった。非常階段からの転落死。警察は自殺と断定して捜査を早々に打ち切ったが、「客」の一人であるヤクザ「熊沢虎雄」は「彼女が自殺するとは思えない」と探偵の鬼束に調査を依頼する。ヤクザからの依頼という事で気乗りしない鬼束だったが、調べていくうち「確かにこれは自殺と思えない」という感触を得て調査にのめり込んでいく。実和子の妹とその交際相手も死体で発見され、交際相手の方には明らかな拷問の痕が残っていた。「これ以上はもういい」 調査の発端である熊沢が依頼を取り下げようと大金の入った封筒を渡してくる。いったい、「貧しい娼婦」としか思われていなかった実和子の死の背後に何が潜んでいるのか? 乗り気のしない依頼だったのにどんどん話が大きくなって依頼人よりも真相究明に躍起になってしまう、「天性の探偵」たる鬼束の矜持が光る一編。香納諒一の文章はこれといって際立った特徴がなく、ただ平易なテキストが淡々と続くだけなのだが、物凄く練られているし研ぎ澄まされている。とにかくリズムが良くて読んでいて心地良い。「こういうのが理想なハードボイルドなんだよな」と通ぶって言いたくなる。ヤクザすら身を引くレベルなので調査を進めるうちにヤバい連中が出て来て盛り上がって来ます。「公金をチューチューする」ために立ち上げられ、リベラル系の政党や政治団体とも繋がりのある偽装NPO法人《プロテクト・ウーマン》……その闇は、深い……! いや、100ページくらいの話なんでドッタンバッタン大騒ぎってほどじゃなくサクッと終わりますけどね。結びの方の「そこには、月村実和子のような存在が入り込む余地はどこにもなかった」という一文が切ない。
「第二話 ころり転がる」 … 今度の依頼人は親子連れだった。「細井和子」とその娘「修子(のぶこ)」。鬼束がゴールデン街の飲み屋で出会った男「細井遼太郎」の妻子で、なんでも鬼束と会った数日後に遼太郎が失踪したらしい。鬼束と会ったのが3月10日で、姿を消したのは同月16日。「定年の挨拶を兼ねた工場巡りをする」と言って出ていった後、帰って来なかったのだと言う。会社に確認したところ遼太郎は15日付で退職しており、「定年の挨拶」は口実に過ぎないと推測された。警察に捜索願を出しても真面目に捜してくれるとは思えないので、私立探偵である鬼束を訪ねたのだろう。既に一週間ちょっと経過している事から警察に行方不明者届を出すようアドバイスした後、早速調査に乗り出す鬼束。遼太郎は飲み屋で「定年後に声優を目指す」と話していたが、その目標は妻子に打ち明けていなかったらしい……遅咲きの声優を目指していた60前後オッサンが失踪する、というハードボイルド系ではちょっと変わった話。でもこういう「ちょっと変わった話」に人情要素が滲み出してくるのが好きなんですよね、私。ハードボイルドの定番「失踪人捜し」からどんどん予想外の方向へ話が転がっていき、思いも寄らぬ結末を招く。最後の方は説明的でちょっとバタバタした感じになっちゃったが、終わり方にしんみり。
「第三話 灰は灰」 … 季節は晩秋。刑事時代の先輩に当たる「篠原賢一」が轢き逃げに遭って死亡し、約2週間後に妻の「篤子」が鬼束のもとへ依頼に訪れた。「主人を轢いた犯人を捜して欲しい」などというものではない。事件の捜査は警察がキチンと行っている。彼女が心配していたのは、定年で退職する前に賢一が手掛けていたストーカー事案の被害者「芦田三津子」の安全だった。刑事でなくなった後も三津子の身を案じ相談に乗っていた賢一の遺志を継いで欲しい、と頼み込む篤子。鬼束の脳裏に16年前の記憶が去来する――芦田三津子、当時20歳かそこらだった彼女は、交際相手の男性をゴロツキふたりに嬲り殺しにされた過去を持っていた……という具合に「現在」と「16年前」が交錯するエピソード。とりあえず芦田三津子に接触しようとする鬼束だったが、彼女は6日前から職場を無断欠勤して行方不明になっていた。これもストーカー絡みなのか? しかし奇妙な事に、三津子は姿を消す前にストーキングの被害届を取り下げていた事実が判明する。先輩の不審な死、被害届を取り下げたストーカーの被害者、そして調査する過程で明らかになる「16年前のゴロツキたち」が野放しになっているという現実。果たして「真相」は何処にある? 複雑な展開で読み応えがあった。最後に鬼束が「警察をやめざるを得なくなった理由」も語られて幕。積んでいる『熱愛』と『絵里奈の消滅』を読みたくなった。
まとめ。還暦間際な元刑事の私立探偵が焼き尽くされて灰になった後でも熾火のような熱を懐き続ける、「もうトシのせいで少年向けのライトノベルや漫画で描かれる『輝かしい未来』が眩しすぎて読み進められない」というアナタにもオススメの1冊。老いゆく読書人をハードボイルド小説や時代小説は優しくそっと抱き締めてくれる。本にはこういう効用もある。
・拍手レス。
見たことある拍手。たぶんそれ自分ですね。小林泰三の話題が出るたびに独裁者の掟は良いぞって所々で触れ回ってるので。
リアル「私と卿は前にもこの話をしていたな」案件。
2026-06-22.・映画の『シラート』を観てきた焼津です、こんばんは。
カルトムービー寄りの作品で小規模公開だったし、どうせ地元じゃやらないだろう……と諦めていたが、拡大上映によって近場で観れる事になり、慌ててスケジュールを都合して映画館へ足を運んだ次第であります。タイトルの綴りは「SIRAT」、インドネシアの格闘技「シラット(SILAT)」を連想するが、スペルも違うし関係は全然ない。言葉の意味は映画の冒頭で解説されており、曰く「天国と地獄の間には『シラート』と呼ばれる橋が架かっている。シラートは髪の毛よりも細く、剣よりも鋭い」との事。東洋で言うところの蜘蛛の糸(カンダタ・ストリング)か?
監督はスペイン出身の「オリベル・ラシェ」で、映画の舞台はアフリカ北西部。具体的に書くとモロッコのサハラ砂漠です。撮影も実際にサハラの砂漠で行われたという。日本人にはあまり馴染みのない「奇景」の数々が見所の一つでもあります。開幕直後、砂漠のど真ん中でレイヴパーティー……要するに大音響でサウンドを鳴らしてズンチャカズンチャカ一日中踊り狂う催しが行われる。参加者は「いかにも」な風貌の連中ばかりだが、その中にポツンと場違いな人間が混ざっていた。まだ10歳かそこらだと思われる男の子を連れた、恰幅の良い中年男性。見ての通りの親子連れで、父親の方は「ルイス」、少年の方は「エステバン」と名乗る。ルイスは娘――エステバンの姉――の「マール」を捜してこのレイヴ会場までやってきたのだと語る。方々に娘の写真入り捜索書を配って聞き込みするが、反応は薄く梨の礫といったところ。「こことは別のところでもレイヴが開催される予定だから、もしかするとそっちに顔を出すのかもしれない」 根拠らしい根拠もない推測に縋って、次なる会場のモーリタニアへ向かうレイヴァーたちに付いていく二人だったが……。
一応ストーリーらしきものは用意されているが、あくまで添え物といった印象であり、「エステバンの姉」の名前とかはいちいち覚えなくてもいい。ゆったりしたテンポで進行していくため、前半で眠たくなる人も少なくないだろう。実際、私が行った映画館でも開幕0秒、まだ会社ロゴが表示されているような段階で鼾をかいてるオッサンもいた。いや、早過ぎだろ! 何しに来たんだオッサン! とにかくこの『シラート』は「物語」ではなく「体験」を売る映画であり、「劇場で鑑賞しないと意味がない」というぐらい大スクリーンと大音響のもたらす「迫力」に依存している。ハッキリ言ってコレは家のちっこいモニター、ショボい音響で視聴したら魅力は半減なんてもんじゃないでしょう。『ターミネーター2』とか『タイタニック』とかなら「ちっこいモニター、ショボい音響」で視聴してもまだそれなりに楽しめるが、『シラート』に関しては「面白さがほぼ0になる」と考えて貰っていい。
ロードムービー調の変化に乏しい景色が延々と続いて、だいたい半分を過ぎたあたりかな? 鼾かいてたオッサンが「えっ、そんな展開になるの?」と思わず目を覚ますくらい意外な方向へいきなり話が転がっていく。ネタバレ抜きで感想を述べるとなるとどう書けばいいのか迷うが、とにかく自分の心臓がドキドキと高鳴る音が聞こえそうなぐらい緊張しましたね。心臓が弱い方は見に行かない方がいいです。ちょっとやり過ぎてギャグみたいになってる部分もあるので「世紀のカルトムービー」みたいなノリを期待して観に来た人は肩透かしな内容かもしれないが、「映画館ならでは」の体験がしたい方にはオススメします。路線としては「ダニー・ボイルの映画をゆったりとさせた感じ」かな。
「トランス状態」を疑似体験させる事を狙ったような、究極の「なんだこれ」映画。冒頭のレイヴシーンは「リアリティを出すために本当にレイヴパーティーを3日間に渡って開催した」と語るだけあって生々しさ満点。レイヴと宗教儀式を重ねるため、映画の取材として何度も修道院に通ったともインタビューで打ち明けており、そういう意味では「神秘」を巡る映画とも言えるのかもしれません。ごめん、それっぽい事をテキトーに言っただけです。この映画を表すのに相応しい言葉は他にあるんですが、完全にネタバレなんで書けないんだよな……でも某映画を観た事がある人は真っ先にあのタイトルが脳裏をよぎると思います(情報量0の感想)。
・「ニセモノの錬金術師」TVアニメ化、制作はパッショーネ ティザービジュアル&PV公開(コミックナタリー)
『ニセモノの錬金術師』!? うそ、私の大好きな漫画じゃないですか、やったー! コミックスの刊行開始は2024年からなので、結構最近です。杉浦次郎がPixivで公開しているオリジナル漫画(旧タイトルは「異世界でがんばる話」)が大元で、これを商業向けに描き直したモノがアニメの原作です。そういう意味では『アルマちゃんは家族になりたい』に近いかな……あっちと違ってこっちは商業版を別の漫画家(うめ丸)が作画していますが。
奴隷の少女を買った「錬金術師」は異世界からの転生者で、実はチートスキルがあって……と書くと「まぁた異世界転生かよ」とゲンナリして続き読む気失せる人もいるだろうが、まぁ要するにチートスキルで産み出したモノを「錬金術の産物」と偽って売り捌く青年が主人公のファンタジーです。タイトルの「ニセモノ」はそこから来ています。単行本の表紙を見て貰えばわかるように画力が卓抜しており、コレだけでも既に読みたくなるわけだが、四肢を切断された「散々使用済み」の奴隷エルフも出て来て、「両眼を抉られ」「舌を抜かれ」「鼓膜も再生しない」という三猿状態なので“癖”を刺激されまくる人も出てくるかと思います。このエルフは……まぁ、強いて言えばペットとかマスコットの枠?
チートスキルの存在がバレると大変な事になるので極力知られないように振る舞うのですが、異様に品質の高い彼の「成果物」に違和感を覚え、嗅ぎつける連中も出て来て……と若干サスペンス要素もあり。あと「異世界転生を管理する神様的な存在」も登場しますが、扱いがかなり独特でインパクトあります。サブキャラの存在感もある漫画なので、アニメも超楽しみだ。制作は「パッショーネ」、ぬきたしや『魔都精兵のスレイブ』2期、『異修羅』や『片田舎のおっさん、剣聖になる』を手掛けたスタジオ。これから放送される予定の作品としては『FX戦士くるみちゃん』と『生徒会にも穴はある!』がある。仕事抱えすぎじゃない? 大丈夫なの、本当に。
・サンライズとシャフトが初タッグ!新作アニメ発表に向けたカウントダウン始動(コミックナタリー)
いろんな意味でアニメファンから「個性が強い」と見做されているスタジオ「シャフト」が「サンライズ」とタッグを組む! スゴいニュースが飛び込んできた。シャフトはあれでかなり老舗のスタジオで、虫プロ出身の人が1975年に会社組織として立ち上げた。去年は50周年展も開催している。当初は「仕上」担当の会社だったが、80年代頃からグロス請けをするようになり、「アニメの下請け会社」として50年の大半を過ごしてきた。実は『機動戦士ガンダム』のクレジットにもシャフトの社名が載っています。
やがて元請けもするようになり、『ぱにぽにだっしゅ!』や『ひだまりスケッチ』、『さよなら絶望先生』、『ef』などで名前を売っていくが、大きな転機になったのは2009年放送の『化物語』。記録的なヒットを飛ばし、一躍有名スタジオとなるが、制作体制は崩壊気味でDVDの発売延期も多かった。また、作品の演出が独特すぎたため、2010年放送の『それでも町は廻っている』では原作ファンから顰蹙を買っている。しかし2011年放送のオリジナルアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』が特大場外ホームランになった事で会社の運命は大きく変わった。2015年には有限会社から株式会社になり、2022年には静岡の方に新しいスタジオを建てている。2025年に放送された『忍者と殺し屋のふたりぐらし』はこの静岡スタジオ「AOI」のスタッフがメインメンバーだし、『ヴァージン・パンク』でもAOIがクレジットされている。
サンライズと言えばやっぱり「メカ」のイメージが強いけど、シャフトにメカ系のアニメなんて……いや、一応あったか、『アサルトリリィ Bouquet』が! つまり、概念的には『機動戦士アサルトリリィ・ガンダム』が実現するってわけだな! それ、ほぼ『境界線上のホライゾン』では?
・「地元最高!」MAPPA制作でアニメ化決定!Netflixで世界独占配信(コミックナタリー)
『地元最高!』をMAPPAがアニメ化!? 主題歌はaiko!? う…うそやろ こ…こんなことが(以下略) 『地元最高!』、絵柄はユルいけど内容はヤバいというか、「これ単にチンピラを美少女に置き換えただけでは?」って漫画なんですよね。何もオブラートに包めていない。「絶対にアニメ化しない作品」でも上位に来る内容なのに、これすらアニメ化の弾にしてしまえるのか、ネトフリくん……「世界独占配信」って謳ってるが、こんなの独占するまでもなく配信したがるのは君だけだよ。
・アニメ「BEAT&MOTION」MAPPA制作で来年Netflix独占配信 梅田修一朗、胡麻鶴彩が出演(コミックナタリー)
なんだこれ、知らんな……と思ってぐぐったら、ジャンプ+で途中まで読んだ作品だった。ああ、そうそう、作画はちょっと粗いけど光るモノがあるな、と思って読んでいたけどジャンプ+自体起動する頻度が下がったため途中から何となく読まなくなり、気が付いたら完結していた。全6巻。って、「既に完結しているさしてメジャーではない作品」もアニメ化の対象にしてしまえるのか……恐ろしいな、ネットフリックス。
つまり、ネトフリがその気になれば「ジャンプラの特にアニメ化しないまま終わってしまった漫画」、例えば『アビスレイジ』や『放課後ひみつクラブ』や『アンテン様の腹の中』や『その淑女は偶像となる』や『マジメサキュバス柊さん』や『限界煩悩活劇オサム』や『バンオウ-盤王-』や『対世界用魔法少女つばめ』や『冒険に行く服がない!』や『滅国の宦官』や『ハンサムマストダイ』もアニメ化は可能だろう……ということ! なのか? まぁ、世間的なアニメ化期待ジャンプラ連載終了作は『ファイアパンチ』と『ハイパーインフレーション』が二巨頭だろうが。ジャンプ以外だと『血と灰の女王』のファンがロビー活動を開始していそう。
・「ひぐらしのなく頃に」新作TVアニメ制作決定!キャスト続投、制作はスタジオディーン(コミックナタリー)
『ひぐらしのなく頃に』の新作TVアニメ!? 「業」と「卒」であれだけ「卒業」をアピールした後に!? う…うそやろ(以下略) うみねこが放置されている中でこれだけひぐらしが擦り倒される事になるとは、このリハクの目をもってしても読めなかった。ぶっちゃけ商業的に「売れる」見込みがあるのはアニメ化してない範囲の広いうみねこよりも、散々擦ってもまだ擦る部分があるひぐらしの方、って事なんでしょうね。まぁ、基本的に「いつメン」のストーリーなんでしょうが、個人的には過去編もやって欲しいですね。アンソロジーに収録されていた「リトルデーモン」という戦時中のエピソードとか、あのへんをやって欲しい。まだ幼女時代の梨花ママが出てきたような気がするが、よく憶えていない。漠然と面白かった記憶だけ残ってる。トシのせいかそんなんばっかりだ。
・岬鷺宮の『神懸かれ、キラーチューン。』読んだ。
『そろそろ……受け入れるしかないよ』
「受け入れる? 何を?」
『自分の傲慢さを』今月の電撃文庫の新刊。新シリーズで、来月には2巻の発売も予定されている。いわゆる「2ヶ月連続刊行」というやつだ。作者は2013年に第19回電撃小説大賞〈電撃文庫MAGAZINE賞〉受賞作『失恋探偵ももせ』でデビューした「岬鷺宮(みさき・さぎのみや)」、作家暦13年を超えるベテランです。複数の人格を持つ少女との奇妙な三角関係を描いた『三角の距離は限りないゼロ』シリーズや時間SF『あした、裸足でこい。』シリーズは読んだ事もある方が多いんじゃないでしょうか。ちなみにこれを書いている現時点で両シリーズとも全巻Kindle Unlimitedの読み放題対象になっているので「読んだ事ない」「途中まで読んでた」という方は是非チェックしてみてください。
さておき、ザッと40冊くらいの著書を出している岬鷺宮が自ら「最高傑作」と豪語しているのが本書です。「新刊出す時の、いつもによっていつもの如くな宣伝文句じゃないの? 『最新刊が常に最高傑作〜』みたいな」と半信半疑で受け取る方もおられるでしょうが、一応『失恋探偵ももせ』の頃から追いかけてる(さすがに全著作読んだわけではないが……『空の青さを知る人よ』のスピンオフ小説とかはスルーしてしまった。ちなみにこの作家、電撃文庫やメディアワークス文庫以外でも『午後4時。透明、ときどき声優』などを出しています)私が保証します。紛れもなく「岬鷺宮史上最高傑作」の看板に偽りない一冊だった、と。無駄を削ぎ落とした文体ゆえ改行が多く、パッと見では「スカスカ」と感じるかもしれない。しかし心地良く目を通せるよう文章のリズムを調整しまくっており、「小説の文章はただ無闇に書き込めばいいというものではない」という初歩的な事実を教えてくれる。読者が欲しているのは「テキスト」そのものではなく、それによって表現される「何か」、物語とか空気感ですからね。ただまぁ、ネットリと事細かに偏執的なレベルで「音楽」を描写して欲しかった人からすると物足りないかもな……とは思います。私は音楽の素養がないのでそのへんの評価は甘めになっているかも。
発売前広報にもかなり力を入れていて、『神懸かれ、キラーチューン。』の担当編集がこれを宣伝するためだけに作ったXアカウントまで用意されているくらいですが、出版社の広報展開ってだいたいいつも「仰々しい過大評価」に堕し気味だからあんまり信用できないんですよね……(←過去何度も騙されてきた人)。もともと岬鷺宮が注目の作家だったからというのもあるが、私がこの本を買った最大の決め手は「表紙の女の子がちょっとペンギンみたいで可愛かったから」です。エンドフィールドのもちもちペンギン(女性管理人)に通じるもちほっぺ感があるよね。可能ならコラボして欲しい。
あらすじで固有名詞をズラズラと並べてもいまいちストーリーが伝わらず「???」になってしまうと思うので、そのへんは省いて概略だけフワッと書いていきます。「ある有名な新進気鋭のアーティスト」がメインに据えられたバンドで、専属ギタリストを募集するオーディションが開催された。物語はこの「オーディション」を中心に進行していきます。先に書いておくと1巻の時点でオーディションは終わらず、2巻も「オーディションの続き」を綴る形になります。オーディションには今をときめく、斯界に名を轟かす、誰もが「あっ、あの人は……!」と言いたくなる有名ミュージシャンが何人も参加している。ボカロPから身を起こした後、名義を本名に変えて活動し紅白出場経験もあって現在のポップ・ミュージック界を牽引する存在という、女体化した米〇玄師みたいなキャラも出て来ます(これ、ガールズバンドの小説なので)。錚々たる面子ながら、採用されるのは勿論たった一人。導入としてはよくある「人が死なないデスゲーム」形式です。
主人公(ペンギンみたいな子)は福岡から遥々上京してきた女子高生。福岡……女子高生……『小森江ヒナは止まらない!』……? いや、関係ない作品の話はやめましょう。ペンギンちゃんは「ある有名な新進気鋭のアーティスト」とも因縁のある少女で、もう一度彼女の隣に立つために「全部ゴッ倒す!!」覚悟をキメて戦っていく事になります。ガールズバンド物ではありますが、文脈としてはバトル物に近い小説ですね。けいおんでもないしバンドリでもない、ぼざろでもガルクラでもない。「デスゲーム形式」という点では共通しているセレプロ(SELECTION PROJECT)でもアイドラトリィでもない。少年漫画っぽいテイストの『ロックは淑女の嗜みでして』よりも『テンカイチ 日本最強武芸者決定戦』の方が近い、そんな作品です。主人公は他のライバルたちとも仲良くなり、「私のギターがこの人たちみんなの命脈を絶つ事になるだなんて……残酷すぎる……!」と涙します。ご、傲慢……! 秦〇美鈴の親戚か? 主人公、もう名前書いちゃいますけど「水巻長閑」は「下手だけど才能がある」というタイプで、未熟……というよりは覚醒するキッカケを掴めず踊り場で足掻いている印象です。怠けているわけじゃないけどなかなか上手くならない。足りないのは技倆というより殺意かな? 「私の曲を聴け! そして死ね!」という、ミュージシャンが心のどこかで聴衆に対し抱いているライク・ア・辻斬りのソウルが不足している。
だから『神懸かれ、キラーチューン。』はウブな長閑ちゃんが「殺意」を充填していく物語であり、好きになった「おもしれー女」たちを次々とその手のギターで「介錯しもす!」と葬り去っていく鎮魂の巡礼譚でもある。錚々たる面子を「さようなら、黄泉路にお気をつけて」と奈落へ突き墜としていく、葬送のシックス・ストリング・JKサムライ。タイトルの「キラーチューン」は一般的に「聴いた瞬間、一発で好きになるような魅力的な曲」を指す言葉だが、デスゲーム形式のストーリーを鑑みると「相手にトドメを刺す曲」という意味も籠もっているのだろう。つまり、究極神曲(フェイタリティ)! 『モータルコンバット/ネクストラウンド』、日本での興収は悲惨な数字になっているけど、(一部界隈で)絶賛公開中です。IMAXで観れるところはまだあるのかな……あるなら行った方がいいですよ、IMAXでモォタル・コンバッ!!を浴びた事は一生の自慢になる筈です。
なんの話だ。そうだ、『神懸かれ、キラーチューン。』の話だった。長閑ちゃんの前に次々と立ちはだかるライバル、「おもしれー女」たちも先述した女体化米〇玄師を始めとして魅力的なキャラクター揃いで、こんな素敵な子たちが続々と出番を失って、弁当貰って去っていく事を考えると愉悦のあまり昂ってしまいますね。みんな「魅力的なキャラクターが退場していく残酷な展開」が好きなんですよ、だから『死のロングウォーク』も今頃になって映画化される(我が国だと今月26日公開予定)ワケです。仮にアニメ化されたら一番人気が出そうなのは「山田のえる」かな? ヨレヨレの服を着ていて「子供番組のマスコットキャラ」みたいな声をしている、ファンも多いがアンチも多いゴーイングマイウェイな銀髪おねえさん。胸盛られまくってえっちな二次創作イラストいっぱい描かれそう。あ、一応書いておくと本編にえっちな要素はあんまりないです。のえるが半裸でウロウロしている、という描写はあるけど挿絵は入ってない。そんな……男性向けでは無理矢理にでもパンチラとかのお色気イラストを九鬼流絶招 肆式名山 内の壱 “焔螺子”ばりの勢いで捻じ込んできたKADOKAWA系列のライトノベルが半裸のシーンをみすみす座視するだなんて……! あくまでエロでは売らないつもりなのか。まーでも主人公の長閑ちゃんは特に脱いだりしなくても素でエロいんですけどね。これは私が勝手に言っているわけじゃなく作中でも言及されている事なので、公式見解と思ってもらってもいい。
うん、まぁ、だから要するに。
福岡くんだりからギター一本を背負ってやってきた女子高生がいちばんエロくて、いちばん傲慢。エロスの雫とは傲慢のサガから自然と湧き出し、尽きる事無く淫らに滴り落ちるモノである。
これはそういう小説。
2巻も楽しみだよね、って事で感想おしまいです。「オメーの感想真に受けて読んでみたけどつまんなかったよ、金返せ!」って方がもしおられるのであれば、その憤りは私じゃなくて公式アカウントの方にぶつけてください。その方が今後の参考になるでしょうから……(公式垢を盾にしていくスタイル)。
・拍手レス。
『ある日、爆弾が?』は一時期プレミアついてましたね。ブックオフのせどりで有名でした。古橋作品は意外とKindle化してないのか...秋山瑞人作品はほぼ全てKindle化してるのに... グリザイアシリーズの新作...色々華のあるキャストを出してますが、運営が集金狙うハーフアニバの目玉はタナトスお姉ちゃんなのはほば確定なんですよね。ゆかり教育で育ったおじさんたちには抗えない。 「社内ワンオペ」するなら『なれるSE』と思ったけど、環境代わりすぎていて今更平成のSE残酷物語は無理があるんすよね。生成AIに投げれば新卒すぐの小僧にもソースコードが書けちまう時代
秋山瑞人作品と言えば、以前は電子版が売られていた『E.G.コンバット』、現在は販売されていないみたいなんですよね……原作者の☆よしみるさんがリブートする事になったから、その絡みもあって一旦権利引き上げみたいな状態になってるのかな?
タナトス(および一姫)はクロノスリベリオンでも結構優遇されていたっけ。ゆかり教育からは逃げられない。
『なれる!SE』はリアリティラインを高めにしたせいで時代性が強くなってしまいましたね。仮に生成AIをネタにした作品を書いても、また数年後には環境が変わってそうだから難しいジャンルだ。
2026-06-11.・最近、たまたまAmazonで古橋秀之作品を検索していて『ある日、爆弾がおちてきて』が電子化されていない事を知り、今更ながら愕然としている焼津です、こんばんは。
ウ…ウソやろ こ…こんなことが こ…こんなことが許されていいのか。「ある爆」は2005年に電撃文庫から刊行された短編集で、“電撃hp”に掲載された6つの短編に1つの書き下ろしを加えたものがベースになっています。2013年に「松坂桃李」と「黒木華」の主演で『世にも奇妙な物語』の1つとして表題作「ある日、爆弾がおちてきて」がドラマ化されており、「シリーズ物じゃないオムニバス形式の短編集は売れない」と言われるライトノベル界にしては珍しく2017年にメディアワークス文庫へ移籍して新装版が出た。「新装版」と謳っているが、書き下ろし短編が1個追加されて全7編→全8編となっており、「完全版」と表記した方が正しい。フルハシストゆえ当然両方とも買って未だに所持しているが、だからこそわざわざ検索する事もなく今の今まで電子化されていないとは知らなかった……そんなの……おのれKAD〇KAWA! 八房龍之助の「ジャック&ジュネ」シリーズや冲方丁の「カオス レギオン」シリーズを電子化していない件といい、怠慢にもほどがあるだろうが!
ちなみに電撃文庫版のイラスト描いた「緋賀ゆかり」は現在『マジカル★エクスプローラー』のコミカライズを担当中。秋にはアニメも放送されますね。また、「古橋秀之の作品集」としては『百万光年のちょっと先』が電子化されている。イラストは「矢吹健太朗」。版権をなんとかして「ある爆」も集英社で矢吹イラスト付けて復刊&電子化してくんないかな……「昔はメディアワークス文庫版の電子書籍が売ってた」という情報もあるので、フノレハシがもう版権引き上げてWiTHあたりで出す存念なのかもしれないが。
・『グリザイア』シリーズ15周年記念の新作スマホ向けゲーム『グリザイア 集結の百果』キャスト6名が一挙解禁。2026年夏に配信予定(電ファミニコゲーマー)
というわけで「自称・風見雄二の娘たち」のキャストが公開されました。なかなかに豪華なメンバーだわね。「榊由真」役は「長谷川育美」、個人的にはリメイク版月姫の「アルクェイド」役で認知しているが、一般的に有名なのは『ぼっち・ざ・ろっく』の「喜多郁代」役だろうか。ハチャメチャに歌唱力が高く、『ヴィジランテ -僕のヒーローアカデミア ILLEGALS-』で「ポップ☆ステップ」役を演じた時は「上手すぎてポップの『歌が微妙』という設定と齟齬を来している!」と話題になったものでした。まぁこれはアニメスタッフ側が「無理に『下手な歌い方』をしなくていい、自然にやって」と指示したからですが。長谷川さんとしてはもっとポップの素人臭さを強調するつもりで演技プランを見積もっていたらしい。
「周防優羽姫」役は「羊宮妃那」、最近だとFGOで「終末のアーチャー」を演じて話題になった。「ひつじみや」ではなく「ようみや」と読む。MyGOの「高松燈」役やウマ娘の「デアリングタクト」役が有名かしら。声が細く、「幸薄そうなキャラが似合う」とよく言われる。本人は声量不足になりがちな事を悩んでいたらしいが……「松嶋いちる」役は「古賀葵」、今期放送のアニメだと『カナン様はあくまでチョロい』の「高潔カナン」役を担当している。有名なのはやっぱりかぐ告の「四宮かぐや」役か。どうしても「意地っ張り」「チョロそう」というイメージが湧く。「入巣星莉菜」役は「長縄まりあ」、『小林さんちのメイドラゴン』の「カンナカムイ」役でお馴染み。グラブルだと「ワムデュス」役。わかりやすくロリキャラですね。「小嶺幸穂」役は「白砂沙帆」、正直見覚えのない名前なので検索したけど『アポカリプスホテル』の「ヤチヨ」役の人だった。「汚れなし! 水滴なし! カビなし! アメニティよし! シャンプーハットなし!」 「風見一二三」役は「遠野ひかる」、この人はやっぱりマケインの「八奈見杏菜」役で認識している人が多いだろうか。個人的には未だにましゅまいれっしゅの「ほわん」役やスタリラの「夢大路栞」役というイメージが強いのだが(古参アピール)。
さておき、「またスマホゲームか……今回も短命に終わりそう」と思いつつ一応やるつもりではいます。「どうせすぐにサ終してアーカイブ版をパッケージゲームで出すつもりなんでしょ」とは言いたくなるが。IPはサ終を重ねるたびに信頼を失っていくものだから仕方ない。
・「え、社内システム全てワンオペしている私を解雇ですか?」TVアニメ化決定(コミックナタリー)
コミカライズ版の方が有名ですが、大元の原作は「PASH!ブックス」というマイナーレーベルから刊行されている小説版です。艦これの「金剛」のコスプレをした主人公が「社内システム全てワンオペしている私を解雇ですか?」ってポカーンとしているコミカライズ冒頭の画像が有名というか半ばミーム化していますが、原作だとどんなコスプレをしていたかは特に描写されておらず、漫画版オリジナル(独自解釈)の描写になっています。果たしてアニメでは公式の許可を取れるのだろうか。
大枠としてはなろうやカクヨムの異世界ファンタジーにおいて定型化している「追放系」「ざまぁ系」を現代日本に置き換えたお仕事モノで、細かい事を気にしなければスカッと出来る内容です。細かい事を気にするタチの人が読むと、引っ掛かる箇所が多すぎて楽しめないかもしれない。SEというかプログラマをかなりファンタジー寄りで描写しているので、「凄腕エンジニア」というより「スーパーハカー」に近い。同じITエンジニア小説だと『なれる!SE』も読者層に配慮してファンタジー要素濃い目になっていたが、それでも「社内ワンオペ」に比べればかなりリアリティ高めの内容だった。そのぶん、「舞台となっている時代が古いな」「使われている機材や技術がもはや化石」と伝わってしまう悲しみを負っていますが……そのへん「社内ワンオペ」は抽象度高めなので、専門的な内容がチンプンカンプンな層からすると「なんかよくわからんが無双しててスゴい」と快感を覚えるのかもできない。
個人的にはざまぁ部分というか、主人公の価値を理解できず追い出してしまった古巣の社長だか誰だったかが逆恨みしてしつこくイヤガラセしてくる展開が不快で、「最終的に撃退してギャフンと言わせる」と分かり切っていてもあまり楽しめなかった。ギャフンと言わせる必要なんてないんですよ、主人公を放逐した古巣なんてただ勝手に幕間か何かで滅びればいい。あくまで「主人公が適した職場を得てそこで輝く」のが大事なんですから。ファンタジーで言うと『ブラック魔道具師ギルドを追放された私、王宮魔術師として拾われる』とか、ああいうのが好みです。「社内ワンオペ」は2巻以降の内容知らないし、ニコニコあたりで配信されるなら視聴してみてもいいかな。
・斎堂琴湖の『桜葬(さくらそう)』読んだ。
「あれを見て、敬虔なクリスチャンにとっては冒涜じゃないかって思った。東郷は、神を崇めてたのかな、それとも呪っていたのかな」
「わかりませんが」願うのも、呪うのも「どちらも祈りですね」一昨年の2024年に『燃える氷華』という作品でデビューした「斎堂琴湖(さいどう・ことこ)」の受賞後第一作。ネットで話題になっているのがキッカケで手に取った1冊です。その時点で『燃える氷華』の文庫版が既に発売されていたのでまずはそっちを先に買ったのですが、シリーズ作品じゃないみたいだし、やっぱり『桜葬』の方が気になる……という事で『燃える氷華』をほっぽって先にこっちを読み出してしまった。
物語は「プロローグ」「第一部」「第二部」「第三部」「エピローグ」とごく簡潔な五幕構成になっている。プロローグは2023年3月、政府が「マスク着用を個人の判断に委ねる」と決めた頃。一人の、杖を突いた男が駅のホームでバカデカいスーツケースを開けて、中に入っていたモノを線路に放り投げ始める。それはバラバラに切断された死体だった。異様な雰囲気に誰も制止できぬまま、男は着ていたジャケットに灯油を撒き、火を点けたうえで死体に向けて投げ捨てる。トドメとばかりに鞄から掴み出した札束(後に500万円だったと判明する)をバラ撒いた後、悠々とその場を立ち去った。そして、別のホームで静かに十字を切った後、電車の前へ身を投げた……。
その後の捜査によって男の名前は「東郷海斗」だと明らかになるが、「犯行」の動機は不明だった。いったい、何があって東郷はこんな理解に苦しむ「凶行」に走ったのか? 「第一部」はすべての始まりである3年前、「2020年3月」、「『浦和』とつく駅のどこかを爆破する」という犯行予告によって街に大混乱が生じた「浦和界隈駅爆破予告事件」へ遡っていく――と、こんな具合で「誰がやったのか(フーダニット)」や「どうやったのか(ハウダニット)」よりも「なぜやったのか(ホワイダニット)」を重視したストーリーが進行していきます。「第二部」以降は2023年に戻ってプロローグの続きを書いていく形になる。
本編の主人公は刑事「氷室湊」。人付き合いを極力避け、「冷たい」とも受け取れる態度の数々から「氷の氷室」の異名を取る男です。彼もまたいろいろと悲しき過去(10代の頃に母親が失踪しており、未だに見つかっていない)を負っています。自殺を禁忌とするクリスチャンでありながら、東郷は自ら命を絶った。発見された遺体の頭部は原型を留めており、どこか満足げな笑みを浮かべていた。線路に投げ込んだバラバラ死体を解体したとおぼしき部屋には大きく血で描かれた十字架が残されており、その表情が湛えるモノは背信とも殉教ともどちらとも言い切れない。
――どがん祈ってん、そん先になんも見えんかったって。
東郷は何かに絶望し、殺人や死体遺棄といった犯罪を行ったと推測されるが、家族や周囲の人間は「残虐な事件を起こせる人間じゃない」と口を揃え、「凶悪な犯罪者」というイメージを否定する。『桜葬』は不可解な事件を捜査するミステリであると同時に、東郷海斗という男の素顔に迫っていく肖像画(ポートレート)のような小説でもある。最初の100ページくらいはなかなか全体像が見えてこないが、半分くらい(全体のページ数は320ページ程度)進んだところで大まかな構図はうっすらと見えてきます。それでもまだまだ細かいピースは埋まらない。「一見無関係な事柄であるかのように鏤められていた出来事の数々が『実は関係があった』と判明して次々繋がっていく」、イベント連環型のサスペンス小説なので、そういうのが好きな人は読んでいて気持ちいいでしょう。逆に、そういうのに人工臭さを感じてしまう方は「都合良すぎじゃない?」と鼻付くかもしれません。
言うなれば「東郷海斗の物語」に幕が下りた後、彼の人生を検証番組か何かのように振り返る「後追いの足跡辿り」であり、興味深くはあるがハッキリ言ってしまうと緊張感みたいなものはあまりなく、第二部の後半あたりになるとさすがにダレて来る。このへんでページをめくるペースが鈍る人も出てくるかもしれない。が、埋設されていた「ある伏線」が発動する事によってストーリーは一転して緊迫感溢れるものへ変じ、怒濤の「第三部」へ雪崩れ込んでいく。この『桜葬』は簡潔に述べれば「弱き者たちが己の弱さと不遇を嘆き、蟻地獄の底で喘いでいる」という話なので、必然的に物語は「弱さの清算」および「弱き者が弱さを放置していた結果として行き着く当然の末路」に向かう。そういう意味では業(カルマ)を巡る物語と言えるかもしれない。
話のあちこちで象徴的なモチーフとして「桜」が出てくる事からこのタイトルが来ているものと思われる。死体解体現場の近くで大きく枝を広げ、淡い色の花を満開に咲かせていた一本桜。刑事・氷室の脳裏にこびり付いて離れない記憶の桜。そして3年前の事件を巡る写真に写り込んだ桜の木。東郷は一本桜の真下にある駐車場を借りていたが、車は所持していなかったらしく、一度も車を停めているところを見た事がない――と管理人も証言している。バラバラ死体の身許、バラ撒かれた500万円の出元、イタズラとして片づけられた爆破事件、顧みられなかった火災。事件の捜査がどれだけ進んでも、結局記憶は桜の季節に戻ってくる。何度でも。
「春で、桜が綺麗でした」
「それを見ていたら、なにも考えられなくなりました」
紆余曲折の末に事件は終結するが、刑事たちは己の無力さに憤る。理不尽を前に、ただ事態の収拾を表面的に行っただけで根本的な事は何も解決できなかった。なぜこうなる前に何もできなかったのか? もっとできる事があったのではないか。彼らの後悔をよそに、事件の終わりとともに桜は散っていく。パズル的な面白さと「この事件は未然に防げたのではないか」という刑事たちの苦い後悔が噛み合って複雑な読後感をもたらします。
氷室が東郷の存在を知った時点で彼は既に故人だったわけですが、もし生きている時に会う事が出来れば……と夢想し、東郷が訥々と懺悔するように打ち明ける苦悩へ耳を傾ける自分の姿を想像する。「そうすれば彼の犯行や死を食い止める事が可能だったかもしれない」 そんなifに縋る気持ちを捨て切れない、「氷の氷室」の異名とは正反対なウェット極まりない思考に心が和みましたね。サプライズが売り、というよりも「開始直後に死亡する」『機動警察パトレイバー the Movie』の「帆場暎一」や『シン・ゴジラ』の「牧悟郎」みたいな存在の過去を掘り下げていくストーリーそのものが売り。さあ、君たちも東郷さんの人生に思いを馳せて脳を焼かれよう!
・拍手レス。
小林泰三の作品だと独裁者の掟が一番好きです。ブラックホールのギミックあり叙述トリックありの傑作です
「ブラックホールにはブラックホールをぶつけんだよ!」な短篇ですね。最後の一行が切な……ん? この話、前にもした事あるな……(2020年12月4日の日記を見ながら)。
2026-06-03.・アニメ化したラブコメ『幼馴染とはラブコメにならない』が目を離した隙に完結していて仰天した焼津です、こんばんは。
えっ、いつの間に?(……日付を確認……)ほんの昨日か、なんというタイミング。御存知かもしれませんが「おさラブ」は登場するヒロインが全員「幼馴染」というラブコメで、七曜(月・火・水・木・金・土・日)に因んで7名の幼馴染が恋のレースを繰り広げる。言わば『幼馴染 プリティーダービー』。アニメだと4人目が出てきたあたりで終わったのかな? 途中で「もういいや」となって見るのやめちゃったから知らないんですよね……いわゆるヒロインレース系のラブコメで、各ヒロインとの距離が縮まりそうで縮まらないもどかしい関係がずっと続くタイプの漫画だったんですが、なんと途中で主人公が「俺が好きなのは……〇〇だ」と自覚し始める。
ルート確定!? と当時の読者は吃驚しましたが、自覚しながらも「幼馴染」という関係が壊れる事を恐れてウジウジし、告白を保留にしている間に他の幼馴染に心がグラつき……と、正直「引き伸ばし」としか思えない展開が続いてイライラした。これが曲がりなりにも「えーゆー」と呼ばれる男なのか? 読んでいた私が失望する中、遂に告白する覚悟を決めて……と、ここからも話が二転三転します。ネタバレにならない範囲で語るのが難しいが、一時は「マジでハーレムエンドになるのでは?」という雰囲気が流れていた。紆余曲折の末、やっと主人公が想いを告白し、ふたりは結ばれる。5人もの負けヒロインを残して……いや、1人だけ作者が扱いに困ったというか、早々にレースから脱落したヒロインがいたんで「そもそも負けてすらいない」疑惑があるんだよな、〇〇〇〇。まぁそんな感じで4人ぐらいの女の子が「豊橋行き」になりました。昔は「滑り台行き」でしたね。負けヒロインが辛そうにしながらそれでも幼馴染という関係を守ろうと健気に涙を堪えるので、そういうのが“癖”な人にはたまらんだろうけどたぶんほとんどの人にとっては気まずい展開だな。
最終的に勝ったヒロインは結構意外だったというか……いや、詳述はよそう。とにかく大団円です。正直、「俺が好きなのは……〇〇だ」以降の展開は迷走が目立ったというか、読者の顔色窺いながら描いてないか? という自信のなさが漂っていた。特に「7番目の幼馴染」は登場が遅すぎ(全204話中186話で何の伏線もなく初登場)だったから、その後の「う〜ん」なストーリー展開も含めて「テコ入れ失敗」にしか見えなかった。7番目がもっと人気出るようなキャラだったら続いてたのかな……でもこれ以上引き伸ばされてもな、って複雑極まりない心境。割合すっきり終わったが、ラブコメ漫画としては特に名作でも駄作でもなく、「凡作のちょい上」ぐらいに収まったと思う。嫌いじゃない、でもあんまり人に薦める気もしない(読むのを制止するほどでもない)、そんなところです。
・『此方より 小林泰三未収録短編集』、7月24日発売予定。驚異の704ページ!
2020年に58歳の若さで亡くなった小林泰三(こばやし・やすみ)の未収録短編集がやっとこさ出ます。あちこちで書いていたから結構な数が存在する、という話は聞いていましたけど、まさか704ページ分もあるとは。価格も1496円(税込)とインパクトのある代物になっている。というか、まず価格の方が目に入って「うお、随分と高価いな……まぁ、昨今の情勢を鑑みると仕方ないか」と諦めつつ受け入れるムードだった(3、400ページくらいのイメージだったんで)が、ページ数確認してひっくり返りましたね。こんだけ分厚けりゃ、そりゃお値段も張るわ。『AΩ』でも500ページくらいだから紛れもなく過去最厚の著書でしょう。
やすみん(ファンからの愛称)は1995年に「玩具修理者」で第2回日本ホラー小説大賞短編賞し、翌年にこれと「酔歩する男」という作品をカップリングした単行本『玩具修理者』でデビュー。私は表題作よりも「酔歩する男」の方に度肝を抜かれ、ハマった。続けて第二作品集の『人獣細工』、第三作品集の『肉食屋敷』も刊行され、すっかり病みつきに。と言っても当時の私は高校生なので単行本は買えず、文庫化されるまでじっと待っていたからリアタイ勢ではないのですが。豚の臓器を移植しまくった「継ぎ接ぎ娘(パッチワーク・ガール)」が主人公の「人獣細工」はあまりにも先進的すぎて、未だにちょくちょく話題になる。ともあれ、「ホラー短編の名手」として名を馳せることになったやすみんですが、ミステリ寄りの『密室・殺人』やSF寄りの『AΩ』も途轍もない傑作で、多方面から引っ張りだこになります。ハヤカワや創元でもよく書いてましたね。『不思議の国のアリス』を題材にした『アリス殺し』もブレイクし、「メルヘン殺し」と銘打たれたシリーズは全世界で累計50万部を突破したと云う。作者が亡くなったこともあり、2020年の第4弾『ティンカー・ベル殺し』が最終作となってしまったが……。
多種多様な作品を手掛ける作家であったが、正直「ハズレ」と感じる作品もなくはなかったです。一冊ぐらいは具体名を挙げてしまっても構わないだろう、『ネフィリム 超吸血幻想譚』です。「最強種の吸血鬼と、それに復讐したがっている吸血鬼狩り組織の男、自ら最強種になろうと吸血鬼を喰らうべく活動しているハンターの三つ巴」という、お膳立ては非常にワクワクする一品だったのだが、ストーリーにドライヴ感がなく盛り上がりに欠いたままダラダラと進んで呆気なく幕切れ。悪い意味でB級映画チックだ。噂によると長期シリーズ化する予定だったが、あまり人気が出なかったため1冊こっきりになったらしい。吸血鬼の設定がSFっぽかったりと「面白くなりそう」な要素は多々あったものの、アクション物・バイオレンス物・バトル物としては退屈すぎた。正直、やすみんは設定監修だけやって本編は倉阪鬼一郎や田中啓文、牧野修あたりが書いた方が良かったのではないかと思う。そんな感じで「全部が全部傑作」というわけではないのだが、大半が傑作であることに間違いはないので可能なかぎり読んで欲しい作家だ。やすみんの本を一冊も読んだことがないだなんて……勿体なさ過ぎる!
・『ガンダムX』『勇者警察ジェイデッカー』などで知られる脚本家・川崎ヒロユキ氏が2026年1月23日に逝去されていたと明らかに。脚本家・小山高生氏が伝える(電ファミニコゲーマー)
訃報が相次ぐのは気が滅入るな……アニメだとガンダムXやナデシコで有名で、ライトノベルだと『はっぴぃセブン』の作者として知られる川崎ヒロユキが60歳の若さで亡くなっていたとのこと。1月なので、もう結構前の話ですね。最近は家族葬が主流で大々的な葬儀は行われなくなってきているから、訃報もだんだん届きにくくなってきました。
付き合いのあるアニメ関係者やクリエイターも多かっただけに、悲しみの声があちこちから響いてくる。『はっぴぃセブン』、電子化してないしアニメ版(『はっぴぃセブン 〜ざ・テレビまんが〜』)も今は主要動画サイトで配信されていないみたいだから触れる機会は非常に少なくなっているが、イマイチどころかイマサンだった初期のスーパーダッシュ文庫をゆうきりんの『オーパーツ・ラブ』ともども支えた功労者であった。なのに今はそのどちらも電子版すら配信されていない……単純に需要が少ないからだろうが、あのSDを支えた功労者たちに対する仕打ちがコレなのか……という想いはある。ともあれ、ナデシコの監督だった佐藤竜雄ともども雲上に旅立ってしまった川崎ヒロユキを悼みたい。どうか安らかに。
・七河迦南の『刹那の夏』読んだ。
見はるかす海の真中で、
生あるものは他になく、
世界にあなたとふたりきり。鮎川哲也賞受賞者である「七河迦南(ななかわ・かなん)」が去年出した作品集。5つの中短編を収録している。長いものは90ページ以上、短いものは40ページ程度とボリュームは結構バラつきがある。いつもの如く積んでいた一冊だが、少し前に第26回本格ミステリ大賞の候補になった(受賞は逸した、ちなみに受賞作は笠井潔の「矢吹駆」シリーズ新作『夜と霧の誘拐』)ことで話題になったので何となく気が向いて読み出した次第である。
「刹那の夏」 ―― 表題作。これがもっとも長くて93ページあります。「現在」と「過去」、ふたつのストーリーラインが存在する形式となっているが、物語のメインは「過去」です。東京から母に連れられ、母の実家がある海沿いの田舎へやってきた少年「田宮一斗(たみや・いちと)」。彼はそこで、美しくも移り気で悪戯っぽい、妖精(ニンフ)のような少女「みずは」と出逢う……まるでKeyの美少女ゲーム(『Summer Pockets』とか)をプレーしているような気分に陥る甘酸っぱいボーイ・ミーツ・ガールを軸に、「過去」に隠された「想い」を「現在」の人々が掘り起こしていく。ジャンルとしてはミステリなんだろうが、読み口としてはやっぱりボーイ・ミーツ・ガールですね。プロローグやエピローグで、本来はわかるはずもない「想い」の一端を明け透けに書いてしまっているのでミステリとして読むとそこが瑕疵と映るかもしれない。だが、鍵ゲーをやって「夢の跡」とか「夏影」とかのBGMで泣いちゃう私のような感性の人間が読むと「何が瑕疵だ! これこそが我々の読みたかったものだろうが!」と思ってしまう。最近忙しくてノベルゲーとか全然やってないんだよな……『anemoi』も気になっているんだけど……と躊躇している方はこの「刹那の夏」を読んで「自分が鍵ゲーに求めるもの」を再確認してみては如何だろう。あ? 鍵ゲーはやったことないし特に思い入れもない? なら普通にエモい青春ミステリとしてお楽しみください。ディスカッション方式の「手探りで答えを求めていく」推理モノなんで、慣れてないとそのへんは煩わしく感じるかもしれませんね。
「魔法のエプロン」 ―― 37ページの短編、「刹那の夏」と比べて落差のあるボリュームなので少し戸惑うかも。「児童虐待の可能性がある」 市民からの通報に、「とりあえず状況を確認しよう」と市役所の福祉課に勤務する「谷口」は保健師の「小岩井」とともにアパート「川崎荘」に向かう。出てきたのはまだ小学生とおぼしき女の子、奥の方にはまだ未就学児であろう弟妹の姿もあった。「母は留守です、お帰り下さい」 にべもない言葉で市役所の介入を拒む少女、果たしてこの一室で本当に児童虐待が行われているのか……? 短いぶん、ほとんどワン・アイデアに等しい内容で読んだ人の大半はすぐに「真相」を察すると思われる。「真相」をごまかすような迷彩もあるが、そこはあまり本質ではない。タイトルの意味が判明するクライマックス、是非とも身構えて押し寄せる切なさというか「超無理限界ギリなのでした」な光景に胸震わせよう。
「千夜行」 ―― 60ページあるので、本書の中では「刹那の夏」の次に長い。作中の具体的な年代は書かれていないが、「今年の大ヒット曲、GReeeeNの『キセキ』」という記述から察するに設定上は2008年あたりだろう。山奥の施設で暮らしている少年「吉田理水(よしだ・まさみ)」、彼は中学生だった頃に「ある事件」と関わったあの夜を思い出す……母親が「彼氏」のために国外へ出ることになり、その間理水を親族が預かることになった。理水の祖母「南浦日向」は恋多き女であり、三人いる娘は全員父親が違うという。その上、娘(理水にとっては伯母)が産んだ娘と養子縁組して引き取るなどといったこともしており、家系図は複雑怪奇になっていた。表面上は明るく取り繕いながら、何かの影に怯えている叔母と従姉妹。そして、嵐とともにあの夜が訪れる……あまりにも複雑すぎるせいで途中に家系図が出てくるタイプのミステリ。ポオ、ボードレール、ワーグナーといった意匠が鏤められており、最低限「ニーベルングの指環」の概要を知らないとチンプンカンプンかも。私は『Dies irae』の時にニーベルングの内容は調べていたのであまり混乱しなかった。やっててよかった、『Dies irae』。濃密と言えば濃密な一編だが、他とはあまりにも毛色が違い過ぎるため好みは分かれるところでしょう。正直、「ストーリーありき」で登場人物を駒扱いしている印象がある。そういう意味では「人間が描けていない作品」だが、「人間が描けていない作品」上等! な私からすると充分に楽しめる内容だった。
「わたしとわたしの妹」 ―― 41ページの短編。小学校の教師「沢田冬美」は教え子の一人、「宮田麻里亜」が実は双子の片割れだった……と麻里亜の母親から明かされる。一卵性で、妹の方も「紀里絵」という名前が決まっていたが、残念ながら死産に終わった、と。話を聞いた冬美は自分の妹、「紗羽」について思い出す。一つ違いで、「姉よりも優れた妹」として母から溺愛されていた紗羽。しかし、彼女は不治の病に罹って息を引き取った。「妹」という存在に囚われている点で他人事とは思えない麻里亜を気に掛ける冬美だったが……読み口としてはミステリというよりホラーかな? 正直かなり無理のある展開だが、41ページという一気に読み切れるボリュームのおかげもあって勢いで押し切っている。個人的には嫌いじゃない。
「地の涯て(ランズ・エンド)」 ―― 37ページの短編。オホーツク海に面した北海道の町、「地の涯て(ランズ・エンド)」の弁当屋でバイト生活を続けている「わたし」。若い女性を狙った通り魔的な殺人事件が連続する中、アパートの隣室で暮らしている住人「永瀬麻世」に少しずつ惹かれていくが……この作品集、一個一個のエピソードは独立していて特に繋がりはないのだが、末尾に収録されたこの「地の涯て(ランズ・エンド)」だけは他の作品と何か繋がりがあるのでは? と疑ってしまうほど不明点が多く残ったまま幕を下ろす。確証はないけど、たぶん作者の他の作品のスピンオフなんじゃないです? 既刊は積んでいるからよくわかりません。「七河迦南と言えば七海学園シリーズ」だし、そっちの番外編かな。気になって検索してみたところ、どうやら七海学園シリーズの他に『空耳の森』とも関連があるらしい。これも積んでいる……実家に帰ったら書庫を漁らないとな。
まとめ。ノン・シリーズの作品集だと思ったら既刊の関連作だった、というオチながら既刊の内容を知らなくても特に問題ない感じだった。表題作の「刹那の夏」は鍵ゲーとか、CIRCUSの『水夏』が好きだった人には是非読んで欲しい。オススメ。
・拍手レス。
令パト、自分も観ました。完全にテレビというか配信前提の作りですね。コードギアス奪還のロゼもそんな感じでしたし、最近の劇場版はスポンサーの許可もらいために最悪配信に変わっても放送できるor配信版を出す前提で作ってる感じ。 「トレンドは第二小隊」...操縦席の様子がガンダムでいう無印からZに変わった感じでの刷新を抱く。特車二課ってこんな感じだよなって導入 「閑中妄あり」...ヘッドギアらしい話。ただ零式が普通に知名度高いのをみるに、これ劇場版の世界線かよ...まさか劇場版Uも関係してんの? 「ホンモノが一番」...ファンが一番嬉しい話。山津神に火器が装備されてなくて良かった。Oさんなら一斉斉射の可能性あったし。 多分、劇場が一番沸いたのらケルベロスパロの時。次回も押井守作品のパロやりそうな感じはしますね、立喰師列伝とかの
わたなれのネクストシャインを映画館で見た時の感覚に近かったですね。 「トレンドは第二小隊」、キャラ見せ的なエピソードながら個々の掘り下げを抑えてレイバーの活劇に焦点を当ててる感じ。街中だと迷惑すぎですね、暴走レイバー。「閑中妄あり」、新規が戸惑ったぶんだけ古参が寛ぎそうな話。新規に媚びる気ないのか? 「ホンモノが一番」、うん、わかった、新規に媚びる気0だ。ケルベロスパロといい、「再会した旧友とふざけた会話する」ノリでずっとやってるのがスゲェな、と感心しました。
2026-05-22.・『機動警察パトレイバー EZY File 1』観てきた。
「令和にあのパトレイバーが甦る!」って感じで始まった新シリーズです。全3章構成で、「File 1」が5月15日公開、「File 2」が8月14日公開予定、「File 3」は来年の3月予定でまだ具体的な日取りは決まっていません。押井守が監督した実写ドラマ版「TNG(THE NEXT GENERATION)」とはまた別系統の続編に当たる。そもそもパトレイバーは「HEADGEAR」という「ゆうきまさみ」「出渕裕」「高田明美」「伊藤和典」「押井守」の5人チームのメンバーが集まって「あーでもねぇ、こーでもねぇ」と言い合いながら内容を決めていく方式なので特定の「原作」がなく、発表された作品はどれも「微妙にパラレル」な関係になってるんですよね。たとえば「帆場」というキャラ、押井守が監督した劇場版では冒頭で身を投げて姿を消しているが、ゆうきまさみの漫画版では普通に生存している(そもそも事件に関わっていない)。「漫画版が原作で、それを元にアニメ化した」わけでも「アニメが先で、それをコミカライズした」わけでもなく、何が「正史」なのか判然としないためちょっとややこしい。まぁ、あまり細かいことは気にしなくても楽しめる作品ではあります。
「全3章構成」と書きましたが、「File 1」自体がオムニバス形式の3本立てストーリーになっており、「話の途中でブツッと途切れて『次回につづく』となる」わけじゃありません。「半端なところでストーリーが終わる」ことを心配している人は安心してください。収録エピソードは「トレンドは#第二小隊」「閑中妄あり」「ホンモノが一番」。ちなみにFile 2とFile 3の収録タイトルも公表されていて、ついでに書いておきますと前者は「ワインと銃弾」「あさき夢みし」「恋のサバイバル」、後者は「おもちゃの国・前編」「おもちゃの国・後編」で、File 3のみオムニバス形式ではなく1本で連続したストーリーとなっています。ハッキリ言って「映画らしい雰囲気」はなく、「これ、もともとはTVシリーズの企画だったのでは?」と勘繰ってしまう。明らかに「ここでCMが入るな」というシーンあったし。最近は波代(放送権料)も高くなっているというし、どの局もいろんな企画でギチギチになってるから枠が取れなかったとか、そんな事情かしら。
各エピソードのストーリーは良くも悪くも「しょーもない」感じなので、あらすじとかは省略します。OVAやTVシリーズを観ている人にとってはほぼ「いつものノリ」で通じると思う。劇場版しか観てない人は戸惑うかもな、「パトレイバーってこんな巫山戯た話もあるの?」って。パトレイバーは基本的に「悪ふざけ」を堂々と行う作風なんですよ。「ラストのアレ、『ケルベロス 地獄の番犬』を知らない人が観たらどんな気持ちになるか」とか、そういう配慮は一切ない。内輪ウケを狙ったようなテイストの強さは平成通り越してもはや昭和だ。今回は出渕裕がメインですが、ゆうきまさみっぽさも濃い目なのでコミック版レイバーが好きな人にはオススメです。
ちなみに、無印の『機動警察パトレイバー』はだいたい西暦1990年代後半からゼロ年代前半にかけての出来事という設定になっていますが、TNGは西暦2013年、このEZYは「パンデミックの10年後」で西暦2033年が舞台となっている。劇パト2が「2002年の冬」なんで、その30年後ですね。テクノロジーが進歩し過ぎたせいか、旧来のパトレイバー作品にあった「未来感」が薄まり、むしろレトロな雰囲気さえ漂っているのは「オッサンに優しい」仕様だけど若者には煙たがられるところかもしれない。少なくとも、このEZYをキッカケにヤングな新規が増えるイメージは湧きません。なんていうか、昔はレイバーがデッカい銃をバンバン撃つシーンに興奮していたのに、それよりも出動要請を受けて輸送車に横たわったレイバーを公道で運ぶシーンの方にワクワクしちゃっている自分に気づき、「私もトシを取ったな……」と痛感しました。レイバーが大捕り物を繰り広げる光景にリアリティは感じないが、「レイバーの輸送車が公道を走ってる」様子にはどこか現実と非現実の境目みたいなものを感じてクラクラするんですよね。模型とはいえ「実物大のイングラム」が存在するせいもある。キャラはCV.上坂すみれの「久我十和(くが・とわ)」が好戦的かつ猪突猛進なキャラでカッコいい&可愛い。ただ、イケメン俳優をレイバーの中に引きずり込んでムフフ……というシーン、男女が逆だったらコンプラ的に完全にアウトで炎上してただろうな、
・映画『コート・スティーリング』を視聴。
『レクイエム・フォー・ドリーム』、『レスラー』、『ブラック・スワン』などを手掛けた「ダーレン・アロノフスキー」監督による新作。1998年のニューヨークを舞台に、映画『エルヴィス』でエルヴィス・プレスリーを演じた「オースティン・バトラー」が主役となって血腥いドタバタ劇を繰り広げる。公式のキャッチコピはー「マフィアもネコも、バッチこい。カオスが嵐を呼ぶ!破天荒アクション・クライムムービー!」 これで「バッチリ内容が伝わってきた」という人が居るならスゴいと思う。
かつてはドラフト候補になるほど将来を嘱望された野球少年だったが、交通事故を起こした事によりその夢を断たれた「ハンク」こと「ヘンリー・トンプソン」(ハンクはヘンリーの愛称)。今はニューヨークの下町にあるバーでバーテンダーとして働きながら恋人の「イヴォンヌ」とそれなりに幸せに暮らしていた。しかし、「数日だけ面倒を診てくれ」と飼い猫を押し付けて去っていった隣人のパンクロッカー「ラス」がマフィアの連中と揉め事を起こしたらしく、「ラスの居場所を吐け!」と凄むチンピラたちによってハンクはボコボコにされてしまう。チンピラどもは「何か」を探しているようで、家主(ラス)不在の隣室を執拗に荒らして回った。「まったく、無関係な俺がなんでこんな目に遭うんだよ」 愚痴りたくなるのもやまやまなハンク。彼はある日、押し付けられた猫「バッド」の猫砂トイレから「いかにも」って感じの鍵を発見して……。
この「鍵」を巡ってストーリーが展開していくことになります。とにかく主人公が無思慮で、後先考えない軽率な行動をしてはピンチに追い込まれる、という愚挙を繰り返す。主人公に知性を求める方が鑑賞するとイライラすることしきりでしょう。マフィアにボコられたせいで腎臓の片方が破裂し、腎機能が著しく低下したため「酒は飲むな」と言われていたのにそんなことも忘れたかの如く泥酔、そして肝心の鍵を失くしてしまう……と、もうこの時点で既にどうしようもない。この映画、分類上はクライム・サスペンスではなくブラック・コメディになるらしい。
やがて「最初の死人」が出て、いよいよハンクは引き返せない泥沼に足を突っ込んでしまう……と、この段階に入ってからが本番なのですが、ここから人が死にまくる。とにかく死にまくる。溜めとかなく一瞬で呆気なく人命が散る。無常感がスゴいので、そういうのが好きな人にはオススメです。ただゴア描写は少なめなので、そっち方面を期待すると肩透かしかも。
タイトルの「コート・スティーリング」は野球用語、日本語で言うと「盗塁死」(走者が盗塁を試みて失敗しアウトになる)に当たる。「コート(Caught)」はキャッチ(Catch)の過去形で、「スティーリング(Stealing)」は盗む(スティール)のing形。慣用句としては「一発逆転を夢見て勝負に出た結果、失敗する」くらいのニュアンスです。果たして元野球少年のハンク、ドタバタ騒動の末に盗塁成功なるや否や。個人的にはハンクの働き先であるバーの店長がなかなかキャラ濃くて好きです。
・拍手レス。
さすおにの劇場版は舞台挨拶中継で観ましたが、キャストのみなさんネタバレとかそんなん必要ないくらいの時間たってるのに、内容にはほとんど触れずというか敢えて触れない感じになってるのが笑えましたね。タイトルは四葉継承編とか分かりにくいのではなく、『キモウト本懐編』とかの方が良かったんじゃないか?果たしてどこまで原作を映像化できるのか?とあるシリーズと同じく電撃の長寿作品だから気になります
「四葉継承編」の方が原作ファンにとってはわかりやすいからそうしたんでしょうが、新規を引き込むつもりなら「実妹大勝利!希望の未来へレディ・ゴーッ!!」くらい露骨にすればよかったのに。まぁ新規の取り込みはほとんど期待してないんでしょうね。とりあえず無印の範囲(高校卒業)まではやると思いますが、乱立するスピンオフや番外編に関してはどうなんだろうな……リゼロでさえ番外編のほとんどがアニメ化されていないことを考えると厳しそう。
2026-05-11.・『劇場版 魔法科高校の劣等生 四葉継承編』観てきた焼津です、こんばんは。
TVシリーズは正直来訪者編あたりでタルくなって、『魔法科高校の優等生』も「これわざわざスピンオフとしてやる必要ある?」な内容にウンザリして観るのやめてしまったけど、四葉継承編は原作でも好きなエピソードなので「劇場クオリティで鑑賞できるなら……アリか」と足を運んだ次第です。ちなみに2017年の『星を呼ぶ少女』も映画館で観ています。
さておき、短編集である『魔法科高校の劣等生SS』を除いた原作本編の16冊目「四葉継承編」を映画化したものです。この前のエピソードが「古都内乱編」。『魔法科高校の劣等生』はアニメの1期目(全26話)が原作で言うと「入学編」「九校戦編」「横浜騒乱編」で7巻までの内容、2期目(全13話)が「来訪者編」で9巻から11巻まで、TVSPの「追憶編」が原作8巻、3期目(全13話)が「ダブルセブン編」「スティープルチェース編」「古都内乱編」で12巻から15巻までの内容となっている。前の劇場版『星を呼ぶ少女』は1期目と2期目の間に公開されたのに作中の時系列では「来訪者編」の後、というややこしい仕様だった。「来訪者編」は達也たちにとって1年生時代最後のエピソードで、『星を呼ぶ少女』は2年生に進級する直前、春休みの出来事を描いている。
ハッキリ言って『魔法科高校の劣等生』の人気のピークは1期目を放送していた頃なので、「学園モノなのにバンバン人が死にまくる」「隙あらばさすおに」「深雪(ヒロイン)のブラコンぶりが可愛いを通り越して、もはやおぞましい域」みたいなことは知っているけど、2期目や3期目は観てないor内容覚えていない……って方もおられるでしょう。大丈夫です、今回は達也たちが自身らのルーツである「四葉家」(イメージ的には魔法ヤクザ)に対峙していくというファミリーヒストリーめいたエピソードであり、1期目の内容を大まかに覚えていれば充分。できれば「追憶編」ぐらいは観ておいて欲しいが、2期目や3期目を無理して観る必要はナシ。四葉家の次期当主候補として最有力視されているのが「司波深雪」、達也の妹です。当主に選ばれたのなら、責務を果たすため可及的速やかに婚約者を宛がわれ、その胎で跡継ぎを作ることになるだろう。ブラコンの深雪、遂に兄離れして婚約→結婚→妊娠→出産→子育ての人生コンボを決めなければならなくなるのか……!?
この映画の焦点は「結局、達也と深雪はヨスガるのか否か?」なので「四葉継承編」ならぬ「ヨスガ継承編」と思っていただきたい。表面上は「仕方ない、お兄様への想いを潔く諦めよう」と振る舞う深雪ですが、本心では兄と結ばれたい気持ちがいっぱいで破裂しそうになっており、内面世界でコンフリクトが発生する。本音でズケズケと「お兄様から女として愛されたい!」って叫ぶド直球正直深雪、タイミングがタイミングだけに「Yachi8000」ならぬ「Miyu9000」という言葉が浮かんで笑ってしまった。相変わらず「シリアスな笑い」が多い作品なので、劇場で噴き出さないように注意しましょう。メロドラマみたいな空気が流れているシーンの後ろでお兄様たちがドラゴンボールめいた高速バトル繰り広げてるの、完全に笑わせに来てるだろ! さすがに劇場版だけあってアクションシーンの作画はスゴかったが、やってることは完全に内輪揉めなのでバトル物として盛り上がるかというと微妙。端的に書くと「絶対に笑ってはいけない広域指定暴力団・四葉組新春内輪揉めプロレス大会」なんですよね。このプロレス大会、半端ない死人が出てるんだけど、四葉家の力を以ってすれば隠蔽できるんだよォ!(OH、テリブル四葉!)
ネタバレにならないギリギリのラインで申し上げると、「フランケンシュタインの怪物とその花嫁」みたいな話になっていますので、やや歪な「割れ鍋に綴じ蓋」系ロマンスが好きな人にはオススメです。原作知識がないと冒頭の襲撃シーンは「いったい何の何?」と戸惑うかもしれませんが……確か原作の8巻、「追憶編」の後に収録されていた短編が大元だったかな? 達也たちの叔母である「四葉真夜」が「大漢」という国の「崑崙方院」なる機関に拉致された事件が発端。公式年表の「2062年」に書かれている出来事です。映画ではボカされているが、複数の男から性的暴行も受けている。当時の真夜はアイドルみたいな存在で、攫った崑崙方院の連中もテンション上がり過ぎてヤり過ぎちゃったんでしょう。まだ中学に上がったばかりで12歳だった真夜は三日三晩体中をいじくり回され、子供を産めない体となってしまう。心に深い傷を負って精神崩壊寸前の状態に陥った彼女だが、双子の姉(達也たちの母)である「四葉深夜」は稀少な精神操作系の魔法士だったこともあり、壊れかけていた真夜の精神構造(主に「認識」に関わる部分)を改竄してしまう。これによって真夜は記憶こそ連続しているものの人格の激変した、ある意味で「転生体」とも言うべき精神的キメラに化してしまった。娘をオモチャにされてトサカに来た当主(深夜と真夜の父)は有志を募って2063年に崑崙方院へ特攻、退路を断った背水の陣により当主含む30人の決死隊は全滅するが、引き換えに大漢の中枢である崑崙方院は4000人もの重要人物を喪って崩壊。翌年2064年に大漢の名も世界地図から消滅しました。以降、四葉家は「ブチ切れたら国ごと亡ぼすやべー連中」「安易に手を出しちゃいけない一族(アンタッチャブル)」として国内からも国外からも恐れられることになる。この、原作読んだ時からずっと「映像化されねぇかな〜」と願っていた「大漢ブッ潰しRTA」を劇場の大スクリーンで観ることができたから大満足です。
・アニメ監督の佐藤竜雄氏が逝去。『機動戦艦ナデシコ』や『ねこぢる草』『モーレツ宇宙海賊』などの作品で監督を務めた(電ファミニコゲーマー)
そんな……サトタツが……!? 『飛べ!イサミ』や『機動戦艦ナデシコ』で有名なアニメ監督です。ナデシコは当時「エヴァの後釜に座れるかもしれない」と言われるほど人気のあった作品で、TVシリーズが結構半端なところで終わったり、劇場版で大幅にキャラデザが変わったうえ本編主人公の「テンカワ・アキト」が闇堕ちしたりと様々な点で話題になったが、なぜか90年代のうちにほとんどの展開が終了して続編アニメやスピンオフアニメが出る事はなかった。「何か複雑な事情がある」「監督のサトタツは続編を作りたいと思っている」と囁かれていたものの、事情がどうあれ「サトタツの手による続編」はもう幻となってしまったようだ。
個人的には『宇宙のステルヴィア』も好きでしたね。昔の皆さん、ありがとう。地球は元気です。私もなんとか元気です、今は西暦2356年……(空を仰ぎ 星よ満ちて飛び立つの 明日への brilliant road 心の蒼さ この手に抱いて go far away)。ステルヴィアもなんか複雑な事情があったらしく続き出なかったですね。サトタツ監督は小説原作のアニメもいくつかやっていて、笹本祐一の『ミニスカ宇宙海賊(パイレーツ)』をアニメ化した『モーレツ宇宙海賊』(「ミニスカ」は商標か何かに抵触するため番組名として使えなかったらしい)はタイトルの間抜けさに反してそれこそ猛烈に面白かった。声優の「みかこし」こと小松未可子の出世作でもある。2014年放送の『魔弾の王と戦姫』は未だに語り草となっている「ムオジネルダンス」など、アニメとしての出来は決して褒められたものじゃなかったが、キャラデザは結構好きだった。嗚呼、「ご冥福を」だなんて決まり文句言いたくないよ。ナデシコやステルヴィアの続編が観たかった……。
・かわいいヤンデレ悪魔との“飲みサバイバル”ゲーム『PUKEY GODDESS SHOT TRICK』ウィッシュリスト件数が20万件を突破。殺したいほど愛してくる悪魔相手に、お酒のロシアンルーレットを行う話題作(電ファミニコゲーマー)
最近やたらSNSでファンアートが流れてくる「ピンク髪の酒カス巨乳悪魔」こと「ファム・スール」の出演作。キャラデザの秀逸さもさることながら、「崩し」が上手いんですよね。『超かぐや姫!』の日常パートといい、漫画的・アニメ的な「絵の崩し方」には独特の快楽があると思います。ファム・スールを演じる声優は「ななひら」、ニコニコ動画出身の歌い手で、分類上は「同人声優」になるのかな? 17年ほど前にルイズコピペを読み上げる動画で話題になった模様。買うかどうかはわからないけど、私もとりあえずウィッシュリストに入れておきました。Steamのウィッシュリストはセールが来ると毎回メールで教えてくれるのがいいですよね。迷ってまごまごしているうちにセールが終わっちゃうのも「いつもの事」ですが。
・作家の鈴木光司さん死去 68歳、ホラー小説「リング」「らせん」(朝日新聞)
サトタツに続いて鈴木光司の訃報まで舞い込んでくるとは……言わずと知れた『リング』の原作者であり、ジャパニーズ・ホラーにおけるクリーチャーの代名詞「貞子」の生みの親です。『リング』はもともと第10回横溝正史賞(現在の横溝正史ミステリ&ホラー大賞)へ応募した作品で、完成度こそ認められたものの選考委員から「明らかに推理小説ではない」「怪奇の方向に寄り過ぎて超常現象ノベルになっている」と評価されず、受賞は逸した。最終候補止まりではあったが、「このまま埋もれさせるのは惜しい」ということで賞の結果が発表された翌年の1991年に単行本として書籍化された。ちなみに同じ回の最終候補作である吉村達也の『ゴーストライター』は1990年に新書サイズで発売されている。ハードカバーで刊行された『リング』はさほど売れず「一部のマニアから『無名の傑作』として支持されている」程度だったが、1993年に文庫化したあたりから売れ始め、1995年のテレビドラマ化を経て1998年の映画化で大ブレイク。ちなみに「テレビ画面から貞子が這い出して来る」という有名なシーンは映画版のオリジナルです。
シリーズは『リング』の後に『らせん』(1995年)と『ループ』(1998年)が出て、一旦三部作(1999年に刊行された番外編『バースデイ』も含めると四部作)として完結しますが、高まる貞子需要に応えるべく2012年に『エス』、2013年に『タイド』が新作として発売され、現在は六部作となっています。『リング』シリーズ以外にも『仄暗い水の底から』が有名ですが、そこらへんを除くと知名度は一気に下がりますね。最新作は去年(2025年)刊行された『ユビキタス』、聞いた話だと四部作にする予定で、ここからどんどんスケールが膨らんでいく……筈でした。もう続きが読めないことが悲しい。
・『シュタゲ』新作『STEINS;GATE RE:BOOT』が8月20日に発売決定!huke氏がすべてのキャラデザを一新し、新規ストーリーを追加するリメイク作。OPテーマはいとうかなこさんの「スカイクラッドの観測者」が続投に(電ファミニコゲーマー)
シュタゲ、また本編を作り直してるのか……と呆れられそうだが、結局スピンオフとか続編とか完全新作を出すよりも既存のヒット作をリブートする方が安定して稼げるんでしょうね。「MAGES.」の「科学アドベンチャーシリーズ」でそれなりにヒットしたの、『CHAOS;HEAD』と『STEINS;GATE』くらいで、『ROBOTICS;NOTES』や『CHAOS;CHILD』、『OCCULTIC;NINE』は飛び抜けて売れたわけじゃないし、最新作の『ANONYMOUS;CODE』はそもそも知名度が……っていう。Vtuberがちゃんと公式から許諾を得てプレー動画を配信していたのに関係者がそのへんの事情を確認せず勝手に「ガイドライン違反」と決めつけて動画を削除させた不手際があって、ゲーム本編よりもむしろこの一件の方が有名かもしれない。
古いゲームのリマスター版やリブート版が出るのはよくあることで、例えばニトロの『Phantom -PHANTOM OF INFERNO-』なんてPC向けに限定してもCD版、DVD-PG版、INTEGRATION、アニメ絵版と4種類くらいある(単なるパッケージ違いも含めると更に多くなる)。シュタゲは2009年にXbox版を出した後、2010年にPC版を発売、以降はこのPC版をベースにしたバージョンをCS機に移植しまくって、2018年に作中のCGをアニメーションに置き換えた『STEINS;GATE ELITE』をリリース。要はさっき書いた『Phantom』のアニメ絵版みたいなやつですね。8月に出る『STEINS;GATE RE:BOOT』はこのエリート版をベースに、原画家の「huke」がキャラデザを現代風に一新させて作中のCGを全部描き直し、BGMもリメイク、背景画像も再構築。「E-mote」を使ってキャラの立ち絵もヌルヌル動かすみたいです。というかE-mote、久々に聞いたな……エロゲ制作では一時よく使われたツールだが、最近はあまり耳にしなくなっていた。競合の「Live2D」が伸長したことで相対的に下火になった印象がある。
「シュタゲは初期バージョンの時点で充分完成度が高かっただろ! わざわざ作り直す必要ないやん!」とは思うものの、このリブート版も結局買っちゃうだろうな……オタクの悲しきサガ。PC版はパッケージがなくSteamのDL版のみ販売となる模様。比較的出費が抑えられるのが幸いか。
・映画『ボディビルダー』見た。
原題は "Magazine Dreams" 。雑誌の表紙を飾る事を夢見て日々筋トレに励む男が主人公の映画です。邦題は「ボディビルダー」だが本職ではなく志望者(ワナビー)、「ボディビルダーになりたい」と夢想しながら日々スーパーでのバイト生活を送っている。「ボディビルダー版『ジョーカー』」みたいな形容が多いけど、個人的な印象としては「ムキムキ『レクイエム・フォー・ドリーム』」だった。本作とは関係ないがR4Dの監督も新作映画を撮っており、視聴済みなので次回感想を書きます。
キリアン・マドックス――両親を早くに亡くし、アメリカの片田舎で祖父の介護をしながら日々を過ごしている黒人青年。彼の夢は、憧れのボディビルダーたちみたいに雑誌の表紙を飾る事。俺は決して無名のまま終わったりしない、みんなの記憶に残って「すごい漢だ……」と言われるような「伝説」になってやる。しかし、度重なるステロイドの濫用により心身はもうボロボロ、肝臓にも悪性でないとはいえ腫瘍があるのに「手術痕が残るのはイヤだ」とメスを入れることを拒否する始末。職場の女の子をデートに誘う事も成功したのに、興味のない話を延々とし続けたせいもあって「ちょっとトイレに……」→逃亡のコンボも決められる。もはや悲劇の連続が喜劇に見え始めた頃、うっすらと顔を覗かせた「破滅」を前にして彼の自己顕示欲と承認欲求が暴走する……。
監督・脚本は『HOT SUMMER NIGHTS/ホット・サマー・ナイツ』の「イライジャ・バイナム」。主演はMCUの「征服者カーン」や、『クリード 過去の逆襲』の「急に生えてきた兄貴分」こと「デイミアン・アンダーソン」を演じた「ジョナサン・メジャース」。2023年にDV事件を起こして逮捕され、同年に劇場公開予定だったこの『ボディビルダー』( "Magazine Dreams" )も煽りを喰らって公開延期となり、2025年にやっと上映されました。「筋肉の夢」に取り憑かれ、世間から疎外されていき「孤独感」(実際に孤独であるかどうかではない)を募らせていくマドックスを鬼気迫る演技で表現し切っている。メジャースは役作りのため必死に肉体改造を行って「ボディビルダーに憧れる青年」の説得力を発揮してみせたが、恐らく本職なのであろう他のボディビルダーたちと並ぶと明らかに見劣りするんですよね……筋肉の美しさが違う。そのへんもカメラは残酷に切り取っていきます。
マドックスの「暴走」がどんなものであるかは映画の核心でもあるので詳述しませんが、突然マドックスが「銃」にハマり始めたあたりで「あ、あかーん!」と叫び出したくなる。アメリカってあんな殺傷力の高い銃があっさり簡単に手に入るんだな、と再確認し、改めてドン引きした次第。そりゃ乱射事件とかなくならんわ。ハッキリ言ってマドックスは好きになれるタイプの主人公ではなく、ムカつく客の食べ物にこっそり唾を垂らすようなクソ野郎なのだが、それでも観ていて「怖い」というより「物悲しい」って気分になる映画だった。この「弱さ」は誰しもが裡に秘めているものだよね、と感じ入ってしんみり。
筋肉に鎧われた空虚で脆き魂の彷徨、その行く末を見届けろ。後味が良いか悪いかを書くだけで「ネタバレだ!」と感じる人もいるだろうからあまり書きたくないが、「観る前にせめてその点だけは確認しておきたい」という方もおられるでしょうし、迷ったけど言及しておきます。後味は……そんなに悪くない、といったところです(決して良いわけではない)。映画としての結論が前向きかどうかは解釈の分かれるところでしょうが、個人的には「前向きなメッセージが篭っている」と思いました。
・拍手レス。
鈴木光司逝去に驚きを隠せない…早い早すぎる。そして大半の記事のタイトルが「ホロ―作家の鈴木光司氏」に非常に違和感。いや、この人SF作家なの読書家なら周知の事実だし、なんならリングシリーズも近未来SFじゃん。
佐藤竜雄といい、鈴木光司も60代。クリエイターとしてはまだまだ若いのに本当に残念なことこの上ない。そして思い出す同じファンタジーノベル大賞受賞作家だった酒見賢一の件。酒見さんも60歳とかだったなぁ。ファンタジーノベル大賞は悪い意味で注目を集めそうです。酒見氏、鈴木氏、佐藤哲也氏、城戸光子氏、大賞や優勝賞を取られた作家は50〜60歳の若さで逝去されてるのが目立つ。嫌なジンクスです『リング』や『らせん』のイメージが強かったせいか、『ループ』以降の設定を受け付けない人が結構多いみたいですね。「『ループ』も映画化する案があったけど実現しなかった」という話もSNSで流れてきましたし。60代なんてクリエイターとしちゃまだ「若い」と言われる年齢なんだから、「これから」がなくなったことは悔やまれますね……逆に長寿でスゴい作家と言えば皆川博子さん、もう95歳を超えているというのに今月『ジンタルス RED AMBER』なる新刊も出すんだから圧倒されます。
2026-05-02.・私が未だに好きなエロゲ『恋する乙女と守護の楯』、DLsiteで8割引の500円、ワンコイン販売! しかもゴールデンウィーク期間に使えるクーポンで更に半額となるから250円! こんな投げ売り価格、「買う」一択でしょ、と布教活動を開始する焼津です、こんばんは。
ただ注意点がいくつかあります。恋楯は童顔のボディガード「如月修史」が、護衛対象であるお嬢様たちをコッソリ警護するため女装して「山田妙子」という偽名で乙女の園(平たく書けば女子校)に潜入する……という面白ソフトながら、複雑な経緯を辿って来たシリーズなのでこれまでの状況を軽くまとめる必要がある。少し長くなるぞ。
まず2007年に『恋する乙女と守護の楯』というタイトルで「AXL(アクセル)」から発売されました。他と区別するために「無印版」と呼ぶこともあります。そこそこのヒットを飛ばし、それまでワゴンセールの常連だったAXLを救った功労者とも言うべき一本であり、故に「山田妙子」は一時期AXLのマスコットキャラみたいな扱いになっていました。翌年の2008年にはPS2向けのソフトとしてCS移植され、新キャラ2名と主人公のボイスが追加。主人公である山田妙子(如月修史)を演じたのは、なんと「釘宮理恵」。しかも追加された新キャラの一人「綾小路若菜」のCVは「田村ゆかり」という、とてもマイナーゲームとは思えない超強力な声優陣(ちなみにもう一人の追加キャラの声優は「矢作紗友里」)。あまりに強力すぎてX-rated版を出す際にはせっかく収録した音声を削らないといけないという、痛し痒しな事態となってしまったが……現在だとくぎゅ版の恋楯をプレーするにはPS2版かPSP版のソフトを中古で探すしかない状況ですね。
一時期は「アニメ化するのでは?」という噂も流れたが結局実現せず、時は流れ2016年、AXLの命運を委ねるキラータイトルとして恋楯の続編が作られることになります。それが『恋する乙女と守護の楯 〜薔薇の聖母〜』。続編と言っても前作とは任地が変わっており、「お嬢様学校に女装して潜入する」というコンセプト自体は共通しているが攻略対象のキャラクターは一新されているため、前作をプレーしている必要は特にありません。2019年にはPS4版、PSVita版、Switch版と3種類のCS移植版が発売されました。いくら前作をプレーしていなくても大丈夫とはいえ、前作の移植版がPS2とPSPでしか出ていない状況は勿体ない……ということでリブートが始まります。
2020年、作品の権利をAXLから「戯画」に移し、無印版のリメイク作品に当たる『恋する乙女と守護の楯 Re:boot The “SHIELD-9”』が発売されます。無印版と区別するため「リブート版」と呼ぶこともある。さすがにもう10年以上前ということで古くなりつつあったCGをイチから描き直し、HDに対応した画質でワイド化。18禁で売り出すため、CS版でせっかく収録した釘宮ボイスとゆかりんボイスをお蔵入りにするという苦渋の選択をするハメになったが、ともあれ同年11月にPS4版とSwitch版が販売開始。CS機でリブート版と「薔薇の聖母」両方がプレーできるという黄金期が訪れた。翌年2021年にはリブート版にHシーンを追加した完全版『恋する乙女と守護の楯 Re:boot Plus』も発売。しかし、ここがシリーズの絶頂(ピーク)でした。
2022年、移籍した恋楯を開発・販売する会社「エンターグラム」(旧称「TGL」)が解散を発表。2023年3月31日以降はDL版の販売も終了する、と発表したのです。ひょっとすると恋楯3作目の企画もコッソリ動いていたのかもしれないが、もはや勘繰ることさえ虚しい……シリーズの権利が戯画に移ったとはいえ、総てが移譲されたわけではなかったらしく、戯画が消滅した後もAXL版は販売を続けています。リブート版ではない、CGの古い無印版というのが難点ですが、それでも面白いし250円というのは破格なので遊んだことのない方はこのGW期間中にどうでしょう? オススメです。ちなみに2作目「薔薇の聖母」はFANZA専売なのでDLsiteでは買えません、ご注意。
しかし、本当に勿体ないよなぁ〜。せっかく釘宮ボイスやゆかりんボイスを収録したバージョンがあるのに、使えないなんてさぁ〜。何とか権利方面をどうにかして、Steamあたりで販売してくれないかしら。私はまだPS2版持ってるけど、さすがに今の環境だと遊びにくいですし。同じようなことは移植版の『リアライズ』とか『吸血奇譚 ムーンタイズ』(『ドラクリウス』の移植版)にも感じている。
・クラファン「うぶごえ」、約1093万円の新たな未入金問題が発覚。新作ビジュアルノベル『パーガトリー・ブルー』支援金が支払われず(電ファミニコゲーマー)
「うぶごえ」って……『けれど輝く夜空のような』のクラウドファンディングやってたところじゃねぇか!? 慌ててNavelのアカウント確認しに行ったらこんなポストがあった。「プロジェクトの進行自体への影響は一切ございません」とのことでホッと胸を撫で下ろした。けれ夜な、企画としては相当古いんですけど、開発に取り掛かった矢先に社内のゴタゴタで分裂騒動が起こってNavelが出来て、でも「それ散る」の権利がBasiLに残っていたせいで続編に当たる「けれ夜な」を出せない状態に陥っていました。長年の確執がやっと解け、それ散るやけれ夜なの権利はNavelに移ったものの、けれ夜なのメインライターを担当する予定だった「あごバリア」は既に故人。新たに「森崎亮人」を抜擢し、サブにそれ散るのメインライターを努めた「王雀孫」を配置します。クラファンも好調で目標額以上を集め、いよいよ企画が本格的に動き出す……というところでコレですよ。未入金問題には巻き込まれていないからまだ被害は軽微な方ですが、「支援者がサイトで状況を確認できない」ことを考えるとホッとしてばかりもいられないですね。Navelは独自の「プロジェクト用ポータルサイト」を用意して対応するみたいですが、これにだって手間と費用が掛かっているだろうし。何のためにうぶごえに手数料を払ったんだよ! って話です。
しかし、今回の件がプロジェクトの進捗に影響がないのなら、そろそろ発売の時期とかを教えてもらえると……けれ夜なのクラファンって何度かやってますが、最初は2022年なのでもう3年以上経っているんですよ。なのに今年中に出るのか出ないのかもハッキリしないのはちょっと告知が遅すぎやしないかい?
・『双星の陰陽師』Kindle版全巻が各“100円”で購入可能なセールが開催中。全35巻買っても「3500円」(電ファミニコゲーマー)
一週間限定(5月3日終了)ながら超アツいセールが来ました。これは買い逃せない。2013年から2024年にかけて、10年以上に渡ってジャンプSQに連載された少年漫画で、アニメ化したこともあります。アニメの出来は、その、正直言って微妙でしたが……特にアニオリ部分がなぁ。女性ウケや低年齢層ウケを狙ってか「きなこ」というマスコットをオリジナルキャラクターとして登場させたけど、原作ファンからの評判はすこぶる悪かった。作者自身は気に入ったのか原作漫画の後半に逆輸入しています。
この二人は人類の救世主、「神子」を産み出す夫婦になる――という託宣が下ったせいで無理矢理番わされることになった陰陽師の「焔魔堂ろくろ」と「化野紅緒」。お互い最初は「ふんっ、こんな女(男)なんか……!」と反発し合っていたが、様々なイベントを経て徐々に「真の絆」が紡ぎ出されていく、という、概要自体はベッタベタの和風伝奇バトル・ファンタジーです。とにかくヒロインの紅緒ちゃんが可愛い。誤解を恐れず断言するならば、「紅緒ちゃんが可愛かったから打ち切られず最後まで完走することが出来た」作品です。
全巻まとめて買っても3500円と、これだけでも破格の安さですがクーポンの使えるストアやポイント還元のあるストアで買えば更にオトクになります。ところによっては実質3000円を切る(たとえばDMMブックスは今だと1190ptの還元があるので実質2310円)。ちなみにこのシリーズ、サブキャラ「天若清弦」を主人公にした『天縁若虎』というスピンオフ作品があるのですが、残念ながらそちらはセール対象外です。「田中創」の書いたノベライズ作品を気に入って、原作者自らがコミカライズしたという経緯があり、コミカライズ版の方には「二色滑稽画」(モノクロ・コミック)という副題が付いています。あくまでスピンオフだから絶対に読まないといけない、というほどでもなく、とりあえずセール待ちでイイと思います。「セールがキッカケで本編は全巻読んだ! 超面白い! 『天縁若虎』も超気になる!」ってんなら別に止めるつもりはありません。思う存分食らいついてくださいませ。hontoだと40%OFFクーポンが使えてより安いですし。
・【読書】500万部の大ベストセラー「特命武装検事・黒木豹介(黒豹シリーズ)」は令和に読んでも凄い
X(旧Twitter)の「おすすめ」に挙がってきた労作。「まさか令和の世にここまで黒豹シリーズについて熱く語るとは……!」と感動したので、是非ともシェアしたい。黒豹シリーズの内容についてはリンク先で存分に語られているから省略するとして、補足的に「黒豹シリーズが出ていた頃」の時代背景を解説していこう。
著者の「門田泰明」は戦前生まれで、1979年に小説家としてデビュー。初期は「医療」を題材にしたサスペンスを多く手掛けていたが、1983年に「荒唐無稽アクション小説」とも言うべき《黒豹》シリーズを開始。正式なシリーズ名は「特命武装検事・黒木豹介」だが、長いのでほとんどの読者は「黒豹シリーズ」と呼ぶ。「黒木豹介」の略で、作品タイトルにも「黒豹」の二文字がだいたい入っている(『帝王コブラ』だけ例外)。シリーズのほとんどは80年代に刊行されており、現時点での最終作『黒豹奪還』は2001年刊行。80年代は駅の売店「キオスク(キヨスク)」で新書や文庫の小説がよく売れられていて、スマホのなかった時代はこれで通勤時間の暇を潰すのが通例だったのですが、「あまりに荒唐無稽すぎる」「通俗的で恥ずかしい」と90年代頃から敬遠されるようになり、近接したジャンルである「伝奇バイオレンス」ともども衰退していきます。現在でも『もぐら』の矢月秀作や『傭兵代理店』の渡辺裕之などといった書き手が存在していますが、黒豹みを感じる阿木慎太郎の『闇の警視』シリーズは10年以上新刊が出てないし、鳴海章の「サクラ銃殺隊」シリーズも途絶えている(新たに『鋼鉄の女神』という新シリーズが始まったらしいが)。一時に比べれば「勢いのあるジャンル」とは言い難い状態だが、まだまだ需要はあると思うし、もっと多くの人に読まれてほしい。
・『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』、予告第3弾、2人の新たな魔法少女、メインスタッフ公開
「新たな魔法少女」は「紫丁香(し・ちょうか)」と「セルマ・テレーゼ」。紫のCVは「若山詩音」、リコリコのたきな役で有名ですね。マギレコでは「ヘルカ」役を演じていました。というかマギレコでリコリココラボがあったからたきなも魔法少女になってるんですよね。最後に魔法使って総てが「なかったこと」になり元に戻る……みたいなオチだったと思うけど、単なるコスプレではなく一応ちさたきが本当に魔法少女になるという驚きのイベントでした。セルマ・テレーゼのCVは「黒沢ともよ」、デレマスの「赤城みりあ」役や響けユーフォニアムの「黄前久美子」役で知られている声優で、確かマギレコには出ていなかったはず。しかし、一番の衝撃はメインスタッフのリストの中に「古川知宏」の名前があることですね。
あの『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』の監督です。1981年生まれ、つまり「小学生の頃にテレビでナディアやっていて、中学生の頃にはエヴァンゲリオンやってた」世代です(このインタビュー記事で語ってる)。2011年の『輪るピングドラム』で脚本に参加したこともあってか「幾原邦彦」監督の影響を強く受けており、スタァライトを語るうえでよく『少女革命ウテナ』が引き合いに出される。絵コンテや演出をいくつかこなした後、2018年に満を持して『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』でデビュー。飛躍の大きすぎる展開で視聴者を戸惑わせたものの、コアなファンを築いて2020年に総集編映画の『少女☆歌劇 レヴュースタァライト ロンド・ロンド・ロンド』と完全新作『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』を送り出す。劇スは興行収入にして3億円と、規模的にはそこまで大きく当たった映画ではないが、とにかく熱狂したファンが多く、業界的にもかなり注目を浴びました。「『映画館で観る』という体験」を最大化するような仕掛けを随所に埋設しており、テレピモニタで観てもあの迫力や緊張感は出ない。次回作として小説家の「斜線堂有紀」が脚本を担当する「タイトル未定作品」(通称ラブコブラ)を予告していましたが、公式アカウントを見ればわかりますようにここ数年ほとんど動きがないような状態で、「ひょっとしてポシャりつつあるのでは?」とファンたちは気を揉んでいました。
そこに来て「実はまどかマギカの新作に参加していました」だから寝耳に水ですよ。役職名は「絵コンテ/ビジュアル・コンセプトデザイン」、具体的にはRO(レイアウト)の設計などをやっていた模様です。言われて見返すと、確かに予告編の時点でスタァライトっぽい構図がちょこちょこ出て来るな……いったいどのタイミングでワル天に関わることになったのかが気になる。ラブコブラの企画を発表した後なのか? Xでは斜線堂も「伝説のアニメになってしまう ラブコブラ めちゃくちゃ面白いです」とコメントしており、ラブコブラの企画がまだ生きていることをアピールしている。ワル天の参加は青天の霹靂というか、完全に意表を衝かれたけど、それはそれとしてラブコブラがポシャってなくてホッとしましたよ。差し当たってワル天を楽しみにしていますが、ラブコブラの続報もそろそろ宜しくな。
・2007年に亡くなった作家「打海文三」の単行本未収録作品集『探偵という快楽』、5月25日発売予定。書影公開。純粋な新作としては17年半ぶりの刊行。
確か登録されたのは去年の3月か4月あたりだったかな? とにかく何度も延期を繰り返して出るそぶりのなかった『探偵という快楽』がやっっっと刊行されそうな気配です。書影も出ているし、まず確実と見ていいでしょう。よかった……本当によかった。
『探偵という快楽』は探偵会社「アーバンリサーチ」を巡るシリーズの6冊目に当たります。「アーバンリサーチ」シリーズは刊行している出版社がバラバラで、『探偵という快楽』以外でカドカワから出ている本はシリーズ1冊目の『時には懺悔を』のみ。既刊を列挙しますと、
01.『時には懺悔を』 (1994年9月‐角川書店 → 2001年9月‐角川文庫)
02.『されど修羅ゆく君は』 (1996年5月‐徳間書店 → 2000年3月‐徳間文庫)
03.『兇眼 EVIL EYE』 (1996年11月‐徳間書店 → 2005年6月‐徳間文庫)
04.『苦い娘』 (1997年10月‐幻冬舎 → 2005年4月‐中公文庫) ※単行本刊行時のタイトルは『ピリオド』
05.『愛と悔恨のカーニバル』 (2003年3月‐徳間書店 → 2007年9月‐徳間文庫)こんな具合。04の『苦い娘』(『ピリオド』)以外は電子書籍が発売されており、2026年5月2日現在だと全部アンリミで読めます。打海文三の代表作である大藪春彦賞受賞作『ハルビン・カフェ』や「応化クロニクル」と呼ばれるシリーズの『裸者と裸者』などは今でも新品が売られており、アーバンリサーチもカドカワから出ている『時には懺悔を』のみ紙書籍版を新品で買えます。徳間や中公から出ているものは全部絶版。一応、新装版が出る程度には売れていたんですけどね……作者が亡くなってもう20年近く経つし、仕方がない。
単行本未収録作品集を出すのになんでここまで時間が掛かったのかは気になるところだが、出るだけでもありがたいので詮索すまい。打海文三は世間的にそこまで大人気だったわけでなく、メチャクチャ個性のある作家でもなかったが、「読みにくくないのに読み応えのある文章」を淡々と紡ぐ稀有な作家だった。この新刊を契機に、少しでも再評価に繋がればいいな、と思う。いくら電子書籍版が読めるとはいえ、やっぱり「紙で読みたい」って人も多いでしょうから、既刊も復刻できるといいですね。
・犬塚理人の『サンクチュアリ』を読んだ。
作者名は「いぬづか・りひと」と読む。『人間狩り』という作品で第38回横溝正史ミステリ大賞「優秀賞」を受賞してデビューしたスリラー作家で、最新作の本書は4冊目の著書に当たる。「一色瑞穂」という女性検事を主人公に据えたノン・シリーズ長編で、恐らく過去の作品との繋がりはない。ぶっちゃけ『人間狩り』とか『眠りの神』とか、過去の作品は読んでいていまいちテンションが上がらず途中で投げ出してしまったからよく知らないのだ。昔は一人の作家をデビュー作から律儀に順番通り読むスタイルを守っていたが、最近はもう順番とか無視して面白そうなヤツだけ熟読するようになってきました。
<サンクチュアリ>――それは全国に数万人の信者がいるとされる新興宗教。教祖の「天堂真快」を神の如く崇める、平たく言ってしまえばカルト教団だ。大学時代に付き合っていた彼氏が<サンクチュアリ>信者の子供、いわゆる「宗教二世」で、幼い頃から教団の歪んだ教義を刷り込まれて育ったため一般社会に適応できず苦しむ姿を見てきた検事「一色瑞穂」は教団に対し、苦々しい想いを抱いている。ある日、SNSで自殺願望のある女性を誘い出し、次々と殺していた男が逮捕された。当初は素直に「私がやりました」と自供していた容疑者だったが、「自分はあくまで自殺を幇助しただけで無理矢理殺したわけではない」と供述を翻し、取調官の頭を悩ませる。容疑者が殺したとされる女性は四人。しかし、彼の部屋を訪れながら何事もなく生還した「五人目の女性」がいた。なぜ彼女は殺されなかったのか? 瑞穂は事件を調査していくうち、その「五人目の女性」が<サンクチュアリ>の元信者だったことを知るが……。
といった具合に、謎のカルト宗教<サンクチュアリ>を軸にして進むサスペンス小説です。ストーリー構成は「プロローグ・第一話〜第四話・エピローグ」で、各話ごとに異なる事件が発生し、毎回背後に<サンクチュアリ>の影がチラチラと覗く。第一話「神の領域」は上述した「自殺願望のある女性を誘い出して命を奪う」殺人鬼のエピソードで、「五人目の女性」が生還した理由は何なのか?を焦点に話が進んでいきます。ハッキリ言ってそんなにスゴく予想外な展開が仕込まれているわけじゃないが、興味の惹き方が上手くてグイグイ読ませる。第二話「アイドルは眠れない」は人気絶頂の女性アイドルが突如急死、しかもその遺体を乗せた霊柩車が何者かによって奪われる……という、第一話からは想像できないようなエピソードを繰り広げてみせ、読者を飽きさせない。とにかく、「途中で読むのをやめられないようにする」ことに特化したような話作りなんですよね。
第三話「サクリファイス」はDV(家庭内暴力)の激しかった男が妻と娘の二人を殺した容疑で逮捕され、やっぱり途中で供述を翻して「俺はやっていない」と言い張り出す。事件には目撃者がいたためスピード逮捕に繋がったのだが、肝心の目撃者「猫塚」は絵に描いたようなクズ野郎で、なんと警察へ通報した直後に被害者のバッグから財布を引っ張り出し、中身の現金を抜いてパチンコを打っていたのだと云う。結局事件が気になって現場に戻ってきたわけだが、「通報直後に姿を消す」という怪しい振る舞いをしていることもあって弁護側に付け入る隙を与えてしまっていた。なんとか猫塚の証言で有罪を維持しようとするものの、更なる醜聞が猫塚に持ち上がり……と、「信用できない証言者」のせいで事件の前提が揺らいでいく興味深いストーリーになっています。第四話「聖域」はいよいよ<サンクチュアリ>本体の謎に迫っていく、総決算めいたエピソード。「アイドルは眠れない」や「サクリファイス」でチラッと言及されていた「連続放火事件」の被害者の中に<サンクチュアリ>を脱会した宗教二世が含まれていたことから、「この放火事件は愉快犯によるものではなく、<サンクチュアリ>絡みなのでは?」という疑惑が持ち上がっていく。胸騒ぎを覚えた瑞穂は、元カレで宗教二世の「宇佐美亮太」に連絡を取ろうとするが電話は繋がらず、アパートの自室を尋ねても生活している気配がなかった……ちょいネタバレになりますが、「アイドルは眠れない」で死亡したアイドルも<サンクチュアリ>の宗教二世だったと判明し、「連作形式の短編集と見せかけて実は連作形式の長編だった」ことが判明します。いや、タイトルがタイトルなんで言うほど「見せかけて」はいないんだけども……。
最終的に<サンクチュアリ>がとんでもない連中だと明かされる、ほぼ予想通りというか期待通りの展開に雪崩れ込むんですが、良くも悪くも奇を衒わなかったストーリーは賛否が分かれるところかもしれない。変にサプライズ仕込もうとして無理矢理どんでん返しをしまくって話がグダグダになるよりは、こういうストロングスタイルを貫いてくれる方が個人的な好感は持てる。良く言えば「あらすじを読んで期待した通りの内容」、悪く言えば「想像の範囲内に収まるストーリー」です。ちょっと突飛な部分こそあるものの最後までキチンと楽しめたし、もっと評価されてほしい気持ちはある。刊行が去年の10月なんで、『このミステリーがすごい!2026年版』の集計期間外なんですよね……このミスは毎年12月刊行で、前年の10月から刊行年の9月が集計対象です。つまり『サンクチュアリ』も「2027年版」では集計期間に入るが、10月刊行作品はこのミスからすると「14ヶ月も前の作品=古い」というイメージが付いてしまうため、余程の傑作(例としては『禁忌の子』、10月刊行でこのミス3位)でもないと票を稼ぎにくい。衝撃作はまだしも、地味な良作は割を食いやすいんですよ。ですから『サンクチュアリ』、「胡散臭いカルト教団が案の定ろくでもないことをしていると暴露される話」が好きな人は今年のこのミス発表まで待たず是非とも読んでみてください。「予想通りだけど期待通り」な読書体験をお約束します。