2025年7月〜8月
2025-08-04.・何かを解説しないと落ち着かない病気なので、今日は『咲―Saki―』について解説する焼津です、こんばんは。
2006年に開始し、今年で連載20年目を迎えた麻雀漫画です。公式曰く「本格美少女麻雀物語(ガールズマージャンストーリー)」。スピンオフ含めて3度もアニメ化しているので「まったく知らない」という人の方が珍しいだろう。「麻雀アニメ」という括りでは過去最長のエピソード数(アカギは全26話、哲也は全20話と、アニメ自体の長さはそれほどでもない)を誇っています。ただ、「昔は読んでた」とか「GONZOの作った1期目だけ観た」とか「アニメの全国編までは観た」という感じの層が多くて、連載まで追っている人はそんなにいないのかもしれない。「えっ、まだやってるの?」と驚く人すらいるだろう。ついこないだ最新刊(26巻)も出たし、バリバリ現役連載中です。休載が多くてなかなか話が進まない、という面は確かにありますが……『咲―Saki―』は牌譜を作者の「小林立」自身が作っていて闘牌の組み立てに時間が掛かること、スピンオフがいくつもあってそちらの監修に手が掛かること、単行本を発売する際に店舗特典としていろいろ描き下ろす必要が生まれること、様々な事情が絡んで「多忙」としか言いようのない状況に陥っているんです。アニメは一番新しい『全国編』でも2014年放送でもう10年以上前、それ以降音沙汰がないから原作読まない人にとっては「まだやってるの?」という反応になってしまうのだろう。
『咲―Saki―』は前述通り2006年に“ヤングガンガン”で連載を開始し、2009年に一番最初のアニメが放送されました。ファンの間では単に「1期目」と呼ばれることが多いが、制作会社から「GONZO版」と呼ばれることもたまにある。アニメ化が発表された時点で原作は4巻までしか出ておらず、放送が始まった頃もまだ5巻が出たばかりで、ろくにストックがない状態でした。なのに2クールもあって、途中で原作に追いついてしまったため終わり頃(具体的に書くと20話〜25話)はアニメオリジナルのエピソードで埋めています。
『咲―Saki―』の世界では麻雀が世界中で大ブームを巻き起こしており、野球とサッカーを合わせたぐらいの人気がある。そのため麻雀の全国大会(インターハイ)は甲子園並みの熱狂とともに全国中継されている、という設定になっています。アニメの1期目で描かれたのはインターハイ出場の切符をかけた「県予選編」、原作だと7巻あたりで県予選は決着します。インハイは「団体戦」部門と「個人戦」部門に分かれており、漫画は団体戦――先鋒・次鋒・中堅・副将・大将と、まるで剣道みたいに5人1組で戦う部門――を主に描いている。なぜ剣道みたいな方式なのか? 理由は定かではありませんが、連載開始当時同じ雑誌に『BAMBOO BLADE』という剣道漫画があったので、ひょっとしたらそっちの影響があったのかもしれない。なんであれ、原作だと個人戦についてはほとんど触れていません。アニメスタッフはここに目をつけ、20話から25話にかけて「原作でほぼ触れていない県予選の個人戦」を映像化しています。そういう意味では稀少なのだが、逆に言うと「アニメで描かれたし、いいか」と小林立が漫画における個人戦描写を飛ばしてしまった面もあるので痛し痒しだ。
原作だと8巻からインターハイの団体戦が始まるのですが、実を言うと最新刊の26巻に至ってもまだ「インターハイの団体戦」が続いてるんです。いえ、最新刊でようやく第四回戦(決勝)の大将戦が始まりましたから、そろそろ終わりが近いっちゃ近いんですが。この大将戦が終わればインハイ編も決着し、新しいアニメが制作されるのではないか……と思っていますが、ブランクが10年以上も空いてるとなるとどうなるかよくわかりません。麻雀アニメは海外ウケが悪い(単純に麻雀を知らない国が多く、知ってる国も日本とはルールが違ったりする)から海外配信が主流のこの御時世、いろいろと厳しいのだろうし。
さておき、『咲―Saki―』はスピンオフ作品の多さでも有名である。全部紹介するとキリがなくなるので、本編との関わりが深い『阿知賀編』『シノハユ』『怜―Toki―』の3つに絞って紹介しよう。まず『阿知賀編』、日常スピンオフの『咲日和』と同じ頃に始まった最初期のスピンオフ作品で、2011年に“月刊少年ガンガン”での連載が始まった。正式タイトルは『咲―Saki―阿知賀編 episode of side-A』と結構長い。長野県の「清澄高校」をメインに描く本編に対し、こちらは奈良県の「阿知賀女子学院」を主軸に進行していく。タイトルの「episode of side-A」は「阿知賀のA」であるとともに、もう一つの意味が込められています。
インターハイは52校がふたつのブロックに分けて配置され、4校ごとに卓を囲み、もっとも成績のいい1校が勝ち上がる形式になっている。清澄が配置されたのはBブロックで、本編だとAブロックについて触れる機会はあまりない。そこで「清澄とは反対側のAブロックでどんな戦いが繰り広げられていたのか」を綴るのが阿知賀編、つまり阿知賀はAブロックに配置されている。「episode of side-A」は「AブロックのA」でもあるのだ。「全国大会の反対側」を見せるという趣旨なので本編では激闘に次ぐ激闘だった県予選は速攻で終わり、あっという間に全国への切符を手にする。スピード感の違いで混乱するかもしれませんが、アニメだと阿知賀編は全国編と表裏の関係にあるんです(1期目→阿知賀編→全国編ではなく、1期目→阿知賀編&全国編)。連載開始翌年の2012年にはもうアニメが放送されているが、これは「阿知賀編がアニメ化された」と考えるよりも「漫画とアニメの企画が同時進行していた」と捉える方が適切だろう。「とても1クールでは収まらない」という理由から、12話までTVで放送した後にネットで13話〜16話をネットで配信するという『化物語』みたいな方式を採用した。Aブロックの三回戦(準決勝)まで描かれ、決勝に進む2校(一回戦と二回戦は4校のうちトップ1校しか勝ち上がれないが、準決勝のみ各ブロック上位2校が勝ち上がる)が決まったところで終わる。いくら反対側のブロックとはいえ、アニメだと清澄側は一回戦すら映像化されていないのに「もう決勝の面子が(半分だけだけど)決まるなんて……」とファンの度肝を抜きました。漫画も6巻で準決勝まで描いて完結……かと思いきや8年後に再開し、「Bブロックの準決勝を見守る阿知賀勢」から始まる番外編めいたストーリーが幕を上げた。決勝の内容を阿知賀視点で再構成しているため本編と被るところもあるんだが、アニメで人気だったあの「小走やえ」(「ニワカは相手にならんよ」「お見せしよう、王者の打ち筋を!」)が再登場するので「アニメ見たから漫画はいいや」派の人も機会があれば読んでみて欲しいですね。あっさり負けたせいで「王者の討ち死に」と散々揶揄された小走先輩であるが、奈良県大会の個人1位でインハイ個人部門にも出場する資格を得ており、強キャラの一人ではあるんですよ。漫画版は9巻まで出ていて現在は展開が止まっているけど公式側から「完結」とのアナウンスはなく、本編に区切りが付いたらまた再開する可能性もあります。
シノハユ、正式タイトル『シノハユ the dawn of age』は2013年、阿知賀編の展開が一旦止まった頃に入れ替わる形で始まったスピンオフです。作画は阿知賀編と同じ「五十嵐あぐり」が担当している。the dawn of age(時代の夜明け)と題されている通り、本編よりも前、麻雀部の顧問やプロ雀士たちが幼き少女だった時代を描く、いわば「過去編」に当たります。公式は「旧約青春麻雀物語(バーナルマージャンストーリー)」と謳っている。主人公の「白築慕」は本編にも登場する「瑞原はやり」と同学年で、本編だと28歳のはやりが小学5年生のあたりから本格的にストーリーが始まる。つまり約17年前である。慕たちがインハイに出場して激突するまでを描く予定で、その10年後に『咲―Saki―』本編が始まるイメージとなっています。生後間もない頃から麻雀牌を握り締めるくらい麻雀好きだった白築慕、彼女が小学4年生の頃に母親「白築ナナ」は突如失踪した。「麻雀大会に出場すれば全国中継される、そしたらお母さんに見つけてもらえるかもしれない」 慕は僅かな可能性に賭けて大会への出場を目指すが……という話です。タイトルのシノハユは古語の「偲はゆ」(偲ばれる、つい思い出してしまう)と主人公の名前である「慕(しの)」を掛けたもの。咲スピンオフとしては最長の作品に当たり、最新刊は18巻。作中の時間は刻々と経過しており、慕たちも現在中学生になっています。逆に言うとまだ高校生にもなっていないので、完結はだいぶ先になりそう。ちなみに本編だと慕について直接触れている箇所はほとんどなく、僅かに匂わせる描写がある程度。このためファンは「本編時点で慕は既に故人となっている」説、「インハイ出場後にお母さんと再会して満足したので麻雀から足を洗って他業種に就いている」説、「現在プロになっているが読者を驚かせるためにあえて情報を絞っている」説と3つぐらいの派閥に分かれて議論を交わしています。
『怜―Toki―』は比較的新しいスピンオフで2016年連載開始……って、もう来年で10周年じゃないか。時が経つのは早い。インハイのAブロックに出場した大阪の強豪校「千里山女子高校」のエース「園城寺怜」を主人公にした、これも一種の過去編です。公式は「西の本格美少女麻雀物語(ウエストサイドガールズマージャンストーリー)」と謳っている。千里山3年の怜が小学5年生の頃、つまり本編の7年前からストーリーが始まっています。親友である「清水谷竜華」との馴れ初めを描きつつ、病弱で後ろ向きな性格をしている怜の成長を描いていく。「ただ ひとつ約束して」「絶対に私の『大切な人』にはならへんって」「私たちはおままごとの『お友達』」と言い出す竜華の闇を描く物語でもある。千里山は阿知賀編のアニメでも出番が多く、人気もあったけど準決勝に敗れて決勝には上がれなかったため、それ以降は活躍の機会が限られていました。特に竜華の方は設定的にかなり強いんだけど、敗退する校だから大暴れさせるわけにもいかない……という理由で魅力を引き出し切れないまま終わった。そういう意味では救済めいた側面がある作品。現時点での最新刊は12巻、怜たちも中学生になって徐々に終わりが見えてきた。シノハユと違ってインハイ前の県予選までしか描けない(それ以上描いたら阿知賀編と被ってしまう)から、こっちの方が先に完結するかも。ちなみに私は「城阪花織」という子(強豪「桜花女子中」のエース、12巻の表紙にもなっている)が可愛くて好きだけど、登場が割と遅い(単行本だと10巻)せいもあって二次創作イラストが少ない……悲しい。
「ところでアニメの全国編ってどこまでやったんだっけ?」と記憶があやふやになっていたので確認しましたが、インハイの二回戦が終わったところまででした。原作だと11巻あたり。全国編は1クール(全13話)しかないので、エピソードをそんなに消化できなかったんですよね。『咲―Saki―』本編の未アニメ化範囲は12巻〜26巻、なんと半分以上が映像化されていない! インハイ決着が近づいてきたとはいえ、丁寧にアニメ化しようとしたら4クールは掛かるボリュームだし、現実問題として難しいのかな……。
・「あかね噺」来年TVアニメ化!キャストに永瀬アンナ、江口拓也、高橋李依(コミックナタリー)
庵野秀明も推薦していた『あかね噺』が遂にアニメ化決定です。落語アニメというと過去にも『じょしらく』や『昭和元禄落語心中』、『うちの師匠はしっぽがない』などがありますけど、やはり難しい題材なのかアニメ化が決定するまでだいぶ掛かりました。最新刊は17巻、来月には18巻が出るのでアニメが始まる頃には20巻超えてるでしょうね。父の落語に魅了され、自身も噺家を目指す女子高生「桜咲朱音」を主人公にしたストーリー漫画であり、「主人公の成長を描いている」点では前述した3作のうち『うちの師匠はしっぽがない』に近いところがある。しっぽなより更に少年漫画チックというか、ややスポ根めいたノリ。噺を始めた途端に領域展開するあたりは『花は咲く、修羅の如く』に通じる部分があるかも。兄弟子などのサブキャラも熱を込めて描いており、「なんかこいつヤな奴だな」と思ったキャラさえ人間臭くてだんだん好きになってきたりする。私は10巻くらいまで読んで「この漫画、ちまちまと新刊を読むよりある程度まとまった巻数読む方が面白いな」と感じて現在積んでいるところなんですが、そろそろ崩そうかしら。ちなみに私は落語の演目だと「居残り佐平次」が好きなんですが、あれってシチュエーションは面白いのに現代だとオチがわかりにくいせいかあまり題材として選ばれることがなく、残念です。『居残り方治』という「居残り佐平次」を下敷きにした時代小説もあったけど、あれも2冊出たきりで3冊目が出なかったな……。
・三枝零一の突発新作短編「神式駆動カーニバル」、カクヨムにて掲載中
2100年、「量子神道」の普及によって「素粒子一つ一つに神が宿る、これこそが八百万の神々である」という信仰が一般常識になり、現代に蘇った陰陽師たちは狩衣を纏いながら「火之迦具土神」という名の荷電粒子砲をブッ放すようになった……という、いかにも『ウィザーズ・ブレイン』の作者らしい近未来ファンタジーです。スマホアプリで人間の可聴域を超えた祝詞を高速詠唱して神符を起動させたりなど、ハッタリの利かせ方はウィズブレというより『ブラックロッド』に近いかも。ちなみに『ブラックロッド』の日本は奈落堕ちして消滅しています。ギルティギアといい、新西暦サーガといい、近未来の日本消滅しがち問題。読み口としてはされ竜や『転生陰陽師・賀茂一樹』(シリーズの途中で魔王が復活し、自衛隊がクラスター爆弾を撃ち込む怪獣映画みたいなシーンがある。「実体弾で魔王を殺せる可能性もあるけど、その場合は魔王が怨霊化する危険性もある。怨霊には実体弾が効かない」といった具合に現代兵器と陰陽術の棲み分けがされているのが特徴)を彷彿とさせる部分もある。あくまで思いつきで書いた短編ということでシリーズ化の予定はなかったそうだが、思ったより反響が大きかったのか「これを元に設定を詰めて連載版を書こうと思います」とかで連載版を準備中の模様。ゆくゆくは書籍化&コミカライズ、そしてアニメ化まで到達できるかな……妄想するだけならタダや!
・FANZAで夏のエロゲセールが開催されていますが、オススメはやや古いソフトになりますが『CARNIVAL』、『SWANSONG』、『キラ☆キラ COMPLETE ACTs OVERDRIVE Archives No.1』、『MUSICUS!』(これだけ非18禁)の「瀬戸口廉也」シナリオ作品群です。
特に『CARNIVAL』『キラ☆キラ』『MUSICUS!』の3本は半額セールに半額クーポンが重なって、なんと価格が普段の1/4! ポイント還元もあるため、それも考慮すると3本買っても2500円くらい。『SWANSONG』は残念ながら半額クーポンの対象ではありませんが、それでも半額セールのおかげで1540円という安値。瀬戸口廉也の代表作をまとめて4本も購入して5000円もしないという、価格破壊もいいところの超セールです。ただ、『CARNIVAL』は後日談というか完結編に当たる小説版が絶版していて電子版も出ていないため、古書市場で数万円クラスに暴騰しているという大問題がありますけど……あと、『キラ☆キラ』はファンディスクの『キラ☆キラ カーテンコール』を瀬戸口廉也が抜けた後に発売しているので、カーテンコールの方に瀬戸口廉也は直接関わっていない(瀬戸口が残したプロットを元に他のライターがシナリオ書いているから、間接的には関わっている)。「瀬戸口が書いてるのは本編だけ? じゃあファンディスクの方はいいや」って方はパック版である『キラ☆キラ COMPLETE ACTs OVERDRIVE Archives No.1』ではなく『キラ☆キラ Windows10対応版』を買った方が少しオトク。つってもパック版と単品の価格差なんて300円もしない程度なんで、迷うぐらいならパック版を買った方がいいです。
他はブルゲの『鬼父』シリーズも半額&半額でシリーズ4本まとめて買っても4000円弱。ヌキゲーは好みの差が激しいからなかなか万人向けをチョイスしにくいが、シリーズ2本分が入って3000円の『催眠クラス Wパック』はオススメしやすい方かな。あ、FANZAは「催眠」がNGワードなので検索するときは「催●クラス」でどうぞ。かつては秋葉原のショップでプレミア価格が付いたこともある、「山田一(田中ロミオ)」の同僚「水無神知宏」がシナリオを手掛けた『Crescendo〜永遠だと思っていたあの頃〜Full Voice Version』が250円。「近々『人工失楽園』の開発がリスタートするかも……」と噂されている「涼崎探偵事務所ファイル」の第1弾『黒の断章 The Literary Fragment』(セガサターン版の逆移植なので濡れ場はカットされている)が700円弱、ただ対応OSが古いので最新OSだと動かない可能性もあり、注意が必要。今は亡き「塩沢兼人」が声を当てたキャラとかも出てくるので声ヲタが涎垂らすような一本ではあるのですが。『人工失楽園』開発リスタートが本当なら『黒の断章』や『Esの方程式』をまとめたパックが発売される可能性もあるので、「うちの環境じゃ動かないかも」と不安な方はそっちに賭けてみるというのも一つの手です。「究極の雰囲気ゲー」と言われた『終末の過ごし方』も600円くらい。非18禁だけど1000枚を超えるCGとアニメ演出で「大作」を超えてもはや「異常作」の『マルコと銀河竜 〜MARCO & THE GALAXY DRAGON〜』も1500円くらいで、Switch移植版を買うよりも安いです。さあ、この夏はエロゲとギャルゲでアツくなれ!
200連分に相当する聖晶石と呼符を用意したうえで1000個もの聖晶石を配布(奏章クリア条件あり)するという10周年に相応しい頭のイカれたキャンペーンが開催されています。ざっくり600連近く、ほぼ天井2回分の大盤振る舞いなので10周年記念サーヴァントであるオルガマリーは「実質配布」と囁かれている。こないだのイベントで「周年に備えて天井分の石を残しておくべきか、欲望に抗わずカッコいいインドラ様を引いてしまうか……」と悩んだ末にインドラ様を選んで石の在庫を大きく減らした私だったが、結果的には正解だったな。肝心のオルガマリーも呼符であっさり来てくれましたし。ただ、「こんなに石があるんだから……」と深追いして回し続け、2枚目はそこそこ沼った。まだ石はあるけどこれ以上は無理すまい、と撤退。何せ水着が控えていますもんね。水着リップは確実に押さえておきたいところだが、水着第2弾に関しては面子と石の残量を見て検討する所存。
他、恒常のサーヴァント6騎がモーション改修され、みんな等身が上がって見映えが格段に良くなりました。特にマタハリなんて☆1とは思えない麗しさですよ。儲かっていないゲームだったら新モーションの方を☆5マタハリとして新たに実装してもおかしくないレベル。これでもう「謎の光弾」を撃つサーヴァントはアマデウスとジルドレの残り2騎まで減りました。設定上は二人組なのに宝具以外ではメアリーしかいないアンメアも改修されてちゃんと二人になっているのが嬉しいですね。水着アンメアの方はそのまんまですが……今回のモーション改修組、宝具演出以外はほとんど☆5サーヴァントと遜色ないレベルで「儲けてるゲームは違うなぁ」とつくづく実感してしまう。既にサ終したスタリラなんて一つのモデリングを「アンコール」などと称して3回ぐらい使い回していたし、衣装が違うだけでモーションは一緒とか当たり前のようにやっていたから「人手も予算も足りないんだな……」と察して余りある状況だった。
光弾組残党(アマデウスとジルドレ)以外は剣ジル、レオニダス、ロムルス、メフィスト、ファントム、エイリークがサービス開始時に実装されていたモーション未改修勢か。レオニダスやロムルス、ダビデ、フラン、バベッジ、ジキル、パラケルスス、ナーサリー、ディルムッド、ジェロニモあたりの初期勢もまだですね。個人的にはライダーのアストルフォあたりもお願いしたいところですが、アストルフォは私服霊衣もあるから手間が掛かりそうという……モーション改修とは関係ないが、強化クエストも楽しみ。「冠位戴冠戦:Extra」はそのうちやるだろうと思っていたけど、七騎士の方を優先すると予想していたので普通に驚いている。アーキタイプ:アースがレベル120なのでとりあえず冠位にするつもりですが、もう一個の枠はどうするか迷うな……オルガマリークエストは全部クリアしてるからビーストも冠位にできるし、オルガマリーをグランドにするのもアリか? 所長、正確には「アンビースト」だけど扱いとしてはビーストと同じ枠になるはずですよね。でもドラコーも捨てがたいし、プリテンダーのテュフォン・エフェメロスも個人的にツボだし……と決め切れずにいます。
ガチャの変更点で大きいのは1日1回の単発ガチャ、いわゆる「おはガチャ」がストーリー召喚にも実装されて今日から年末まで毎日無料で最大150連くらい回せるという「無料おはガチャ」だろう。ストーリー召喚限定のサーヴァントを手に入れるチャンス。福袋は「クラス別×宝具効果別」という前にもあったような気がする組み合わせ。狙い目がどこなのかは手持ち次第ですが、これからストーリーを攻略するつもりの御新規さんは「バーサーカー全体攻撃宝具」の1か2を選べば大きくハズすことはないでしょう。私はどこを狙うかまだ検討中。何とか2択まで絞り込みましたけど……。
そして今回の目玉、デスティニーオーダー召喚はなんと「七騎士」と「エクストラ」の2種類に分かれ、それぞれ別々に回すことができるという10周年特別仕様。私がFGO始めたときはエクストラクラスなんてシールダーとルーラーとアヴェンジャーしかいなかったから、シールダー以外のエクストラだけで7クラスも揃う状況は想像できなかったな。しかしデスティニー2回+福袋を回そうとすると必要な有償聖晶石は75個、有償聖晶石の単価は約120円(購入条件によって1個あたりの値段が変動するため定まらない)だから9000円くらい掛かることになります。詳しいことは攻略wikiとかで確認してほしいが、アプリ内課金だと最小の組み合わせで「8860円」。AppleやGoogleを介さない、いわゆる「アニプレ課金」を併用すれば理論的な最安値は「8465円」になりますけど、アニプレ課金とアプリ内課金を組み合わせないといけないから購入手順がちょっと面倒臭い。アニプレ課金を使うのであれば2850円のセット×3で「8550円」払うのがもっとも楽チン。オマケの無償石を考慮するとアニプレ課金で「9500円」払って余った有償石を来年正月の福袋(あるとは確定していないが、たぶんある)購入用に残しておくのがもっとも効率的ですが、このへんは石の管理をキチンとできる自信がある人向けですね。10周年のお祝いとして財布の紐を緩めたくなるが、なかなか気軽に課金しにくい額だ。まだ期限まで少しあるし、もうちょっと検討しておきたい。
最後は何と言っても「Fate/Grand Order」10th Anniversary Movie、2分という短さながら10年分の積み重ねを感じさせる濃密な内容で一時停止と巻き戻しが止まらない。岡田以蔵と佐々木小次郎が切り結ぶシーンとか、ヘリに乗り込む高杉晋作、新撰組の出陣、円卓の騎士たちを率いるアルトリアの背中など、とにかく見所が多すぎる。2015年7月末にサービス開始して、私がプレーし始めたのは2017年1月、既に第一部が終わっていたから「自分は古参じゃない」という意識がずっと強くあったけど、もう8年半もやっている勘定になるわけで「リアルタイムで体験していない部分」よりも「リアルタイムで体験した部分」の方がずっと多くなっているんですよね……第二部終章は12月20日に開幕予定、果たして第三部が待ち構えているのか、それともFGOは完全終了して「モバマスからデレステ」や「マギレコからエクセドラ」みたいな感じでFGO2に移行するのか、はたまた「ストーリー更新は第二部で終わり、あとは散発的なイベントやコラボを開催するだけ」になるのか。以前のインタビューで「他社コラボは少なくとも第二部が終了するまでやるつもりはない」と漏らしていたので、開発側としてもコラボはやりたそうな雰囲気なんですよね。ufo繋がりで鬼滅コラボとかとうらぶコラボとか、アニプレックスは絶対にやりたいだろうしな……ケツモチがアニプレだから、本格的にコラボやり出したら凄いことになりますよ。何ならマギレコにすら関わっていなかった虚淵がFGOではシナリオ書いてるくらいだから「まどマギコラボ開催! シナリオは虚淵玄担当!」なんて無法もありえない話じゃない。もし、PANTHEONがサービス開始まで漕ぎつけられていて且つサ終せずに健在だったら「PANTHEONコラボ開催! ☆5ランサー、ラインハルト・ハイドリヒ!」とかもあったのかな……と考えて涙する夜中。
2025-07-24.・夏アニメ、気になる作品をチェックしていますが……多すぎる! と悲鳴を挙げている焼津です、こんばんは。春アニメと比べても注目作が多すぎてチェックが追いつかない。ネット配信で海外人気が高まっているせいか、現場はいろいろと限界を迎えているのに本数が減るどころか増えていく異常事態に陥っている。私ももっといろいろ観たいけど、時間と気力がとにかく足りません。
差し当たって5本くらいに絞って注目作を紹介していきます。1本目、『その着せ替え人形(ビスクドール)は恋をする Season2』。「コスプレ」をテーマにしたラブコメ。“ヤングガンガン”に連載されていたマンガが原作で、1期目は2022年の冬アニメとして放送された。なので3年半ぶりの続編に当たります。1期目はちょうど原作5巻の範囲までやって終わったので、2期は6巻からスタート。特に「これまでのあらすじ」みたいな新規向けの映像はないので、1期目から続けて観てもらうことを前提にした作りだ。とにかくキャラの細かい動きというか、芝居が丁寧で「2期放送まで時間が掛かったわけだ」と納得してしまう。『ぼっち・ざ・ろっく!』のアニメ版キャラクターデザインを担当したことで一躍有名になったアニメーター「けろりら」が作画に関わっているだけあって「マジでこれTVアニメなの?」と目を疑うシーンがちょこちょこある。調べてみるとけろりらは1期目の版権イラストを描いていたり、本編でもいくつかのカットを手掛けたりしていたみたいですね。ヒロインの「喜多川海夢」はもともと連載開始時点(2018年)で既に「一昔前のギャル」みたいな雰囲気だったけど、7年も経った今はもはや文化遺産の趣さえ漂う。限界オタクモードとモデルモードのギャップも作画の良さによってこの上なく強調されており、原作ファンはただただ満足げに頷くしかない。けど本作最大の特徴はそんな海夢を包み込む五条くんというSSR彼氏(彼氏ではない)の存在だな……文化遺産ギャルよりも更にファンタジー度が高いとファンの間で囁かれる五条くんの魅力に酔い痴れます。1巻と同程度のペースで進むなら10巻ぐらいで終了になる……はずですけど、10巻だとあまりキリの良いところで終わんないんですよね。たぶん11巻まで食い込んで終了だと思います。で、11巻の途中からクライマックスに当たる「冬コミ編」が始まり、明日発売される15巻で完結となるわけですが、アニメでは3期目をやってくれるのかなぁ。
2本目、『瑠璃の宝石』。宝石、というより「鉱物」をテーマにしたささやかなアドベンチャーコメディ。原作は“ハルタ”に連載されているマンガ。「ハルタって何?」と訊かれたら……掻い摘んで言いますと、“コミックビーム”の姉妹誌みたいなもんです。かつてビームの増刊として“Fellows!”というマンガ誌が出ていて、12年ほど前に誌名を“ハルタ”へ変更しました。「ハルタ」はインドネシア語で「宝物」を意味する言葉。以前アニメ化された『ハクメイとミコチ』の掲載誌でもある。個人的な注目作は『司書正』『本なら売るほど』『悪魔二世』あたりですね。っと、話が逸れた。『瑠璃の宝石』は2019年頃から連載が始まった作品で、主人公「谷川瑠璃」が「おじいちゃんは山で水晶を採掘していた」という話を聞いて水晶欲しさに山へ向かったところ、鉱物学に詳しい大学院生「荒砥凪」に出逢う……といった話。フィールドワークも兼ねた蘊蓄アニメという感じで、前期の『ざつ旅』や『mono』に通じる部分が若干ある、かも。制作は『無職転生』や『お兄ちゃんはおしまい!』のアニメを手掛けた「スタジオバインド」。監督がおにまいと同じ「藤井慎吾」なんで、ノリが微妙におにまいっぽい。キャラデザが「すっごい童顔&むちむち」で観るのに抵抗を覚える人もいるかもですが、雰囲気が良いので試しに1話だけでも視聴してみてほしいところです。表情が豊かになったぶん、厚顔な瑠璃の憎たらしさもマシマシになっていますけど……。
3本目、『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』。百合アニメの星です。私にとって今期イチ推し。原作は「みかみてれん」のライトノベルで、イラストは『ささやくように恋を唄う』の「竹嶋えく」が担当している。中学時代、空気が読めずに周りの不興を買うような真似をしてクラス全体からハブられ、引きこもり気味の生活を送っていた少女「甘織れな子」。彼女は「進学を機に陽キャへ生まれ変わる!」と決意して徹底的に自己改造し、何とかクラストカースト上位のグループに紛れ込むことができた。しかし、根は陰キャなのにそれを隠して陽キャとして振る舞う日々はストレスが凄まじく、ある日急に限界を迎えてしまう。そんなれな子を心配してやってきたグループの中心人物「王塚真唯」は、ひょんなことから真唯に惚れてしまって「私の恋人になってくれ」といきなり告白してきて……というガールズ・ラブコメ。OPで何となく察すると思いますが、他にもれな子に惚れる女の子が出てきて多角関係状態になります。れな子、原作では毎回誰かしらと「裸の付き合い」をしていて巻頭のカラーページにイラストが掲載されるため、ファンからは「誰とでも風呂に入る女」と呼ばれている。「百合」はジャンルとしては非常に狭い市場であり、どうしてもあまり予算と労力が割かれなかったジャンルであるが、本作は異例なほど力が入っていて驚かされる。ほぼ全編に渡って原作者の監修が入っていることもあり、尺の都合でカットされている部分はあるにせよ「解釈違い」なところがまるでありません。もはや奇跡と言って良い出来ですよ、これは。れな子の妄想によって出現する紫陽花さんの暗黒面「紫陰花(やみさい)さん」(「紫闇花さん」だったりと表記はあまり安定しない)の「は? キモ」は思わず10回ぐらいリピートしてしまった。この発言の前にれな子が放つ「ゾンビの頭を銃で撃ち抜くんだぁ、当たった瞬間に脳漿がパァンと飛び散ってね、すごく気持ちいいんだよ!」というセリフも絶妙なキモさで震えるほど好き。恐らくアニメは1クールで4巻までやって終了だろうけど、原作が結構厚い(巻によっては400ページ超える)ので尺はかなりキツいだろうな。5巻以降も面白いので、気が早いけど2期の到来を待望している。アニメはこれからどんどん「れな子が悪いんだよ」と言われる展開に入っていきますけど、百合界には『百合の間に挟まれたわたしが、勢いで二股してしまった話』の「間四葉」という大物が控えているかられな子はまだ小物なんですよね……純粋なクズ度で言ったら『今日はカノジョがいないから』が頂点かな。作者自ら「クズ百合」と謳っている作品ですから。
4本目、『まったく最近の探偵ときたら』。タイトル知っている人はビックリしたかもしれない。「えっ、今頃になってアニメ化すんの?」って。原作は“電撃マオウ”、あの『ざつ旅』が連載されている雑誌なんですが、まっ探(公式略称)の連載開始は2016年だから来年10周年。単行本も15巻まで出ており、正直もう「アニメ化しないで終わる長期連載マンガ」の枠に入ったかと思っていました。ほぼ同期の『愚かな天使は悪魔と踊る』が去年アニメ化していたし、作者の「五十嵐正邦」は『川柳少女』でアニメ化経験あるから可能性は0じゃないという雰囲気もありましたけど。ちなみに『真夜中ハートチューン』という別連載も来年アニメ化予定です。さておき、物語の主人公は私立探偵「名雲桂一郎」。かつて天才高校生探偵として名を馳せたが、それも20年近く前のこと。35歳になった今は体も頭もガタが来て、すっかり落ちぶれていた。そんな彼のもとに探偵助手を志願する女子高生「中西真白」が押しかけてくる。なし崩しで彼女とタッグを組むことになった名雲は様々な事件、様々な変人と立ち向かっていくことに……という、ギャグ色の強い探偵コメディです。原作は10年弱の蓄積があるためかなりエピソード数が多いけど、アニメは適宜細部を端折りつつオムニバス形式で綴っている。私も名雲を凌駕する年齢のオッサンゆえアニメでやっている範囲のエピソードはほとんど忘れていて新鮮に楽しめた。何なら根津の存在も忘れていたからな……回が進むにつれどんどん人間離れしていく真白、可憐なマキちゃん、そしてアニメにはまだ登場していない多彩なキャラたちが織り成すまっ探ワールドをお楽しみに。原作は巻数が多くて手を出すのに躊躇するかもしれませんが、「毎日無料」「待てば無料」系のサービスを利用すれば割と最近の巻まで読むことができます。こういうサービスをやってるサイトは複数あるので、それらを駆使すれば1日に10話くらい読むことが可能。使い分け面倒臭すぎて「単行本買った方が早い」ってなるかもですが。一応単行本もセールでポイント還元を考慮すると普段の半額くらいになってますからね。
ラスト、『クレバテス-魔獣の王と赤子と屍の勇者-』。原作は『いばらの王』や『ディメンションW』、あと『DARKER THAN BLACK』のキャラクター原案を担当した「岩原裕二」ですが、掲載が「LINEマンガ」なので読んでいる人が意外と少ない。いわゆる「ウェブトゥーン」と呼ばれる縦読み形式のマンガで、慣れていないとまどろっこしくて読みづらいんですよね。書籍版では従来の横読み形式になっています。モノクロ版とフルカラー版がありますが、フルカラー版は電子限定で紙書籍に関してはモノクロ版しかありません。紙で読みたい場合はモノクロ版で妥協、電子で読む場合は価格差もほとんどないから基本的にフルカラー版を購入すればOKです。舞台は異世界……あ、先に申し上げておくと現代日本からの転生者とかは出てきません。「エドセア」と呼ばれる大地で、人は5つの種族に分かれて犇めき合うように生きている。エドセアの外へ領土を広げようとする人類だったが、そこは魔獣の領域であり、四方それぞれに「魔獣王」と通称される強力な個体が君臨しているため進出は阻まれていた。山岳国家「ハイデン」は南の魔獣王「クレバテス」を討伐すべく伝説の剣を帯びた勇者たちを「月の山」に向かわせるが、力の差は歴然としており、あえなく全滅。クレバテスは己に歯向かった人属への報復としてハイデンを滅ぼし、その足で他の国々も灰燼に帰さしめんとするが、「子供は生まれる時と場所を選べない」と命懸けで赤子の助命を懇願した人間に説得され、「人属を生かす価値があるかどうか」見極めるために拾った赤子を育てようと気まぐれを起こす……という、「魔王みたいな存在が主人公」のファンタジー。子育ての経験がないクレバテス様は赤子の面倒を看させるために壊滅した勇者パーティの中から比較的マシだった女勇者に血を分け与えて蘇生させる。こうして「魔獣の王と赤子と屍の勇者」、奇妙な三人組の珍道中が始まった。『ベルセルク』や『ユーベルブラット』の系譜に連なるダークファンタジーであり、勇者たちがゴミのように蹴散らされていく1話目にゾクゾクした。狂気太郎の「地獄王」という、原稿用紙100枚以上を費やして丁寧にキャラ立てしてきた戦士たちがほんの数行で次々と無惨に死んでいく小説が好きなんですけど、アレを思い出しました。1話のラストで山賊たちに捕まり、人属のイヤな面を見せられながらも旅を続けようとするクレバテス様。強大な力を持っているけど、今「月の山」を留守にしていることがバレると厄介なことになるので、なるべく力を振るわないようコソコソする必要があり、そのへんの皺寄せが全部女勇者(屍)に行く。苦労人な女勇者を応援したくなるアニメです。
・『黒月のイェルクナハト』買ったら「この商品を買った人はこんな商品も買っています」欄に『廻生の血盟者』という知らないマンガが表示された(正確には1巻じゃなくて2巻の方だけど)から「とりあえずチェックしてみるか……」と1話目を試し読みしてあっさりハマり、DMMのセールで単行本を即買ってしまった。
作者名が「エターナル14歳」なんだから当然のように厨二病全開のストーリーです。『冰剣の魔術師が世界を統べる』の「御子柴奈々」が書いた『七聖剣と魔剣の姫』のコミカライズが商業デビュー作らしい。結構前からDies等のファンアートを描いている、いわゆる「爪牙」の一人みたいですが私はファンアート界隈には詳しくないのでよく知りませぬ。Pixivも確認したけど塩の柱をかけるネロス・サタナイルは昔見た覚えがあるな……程度。
今から4年くらい前に月マガの新人賞で「佳作」を獲った読切「■■■■■■■・■■■■■」(タイトルが塗り潰されていて最後に文字列が判明する……という仕掛けだったと思われるが、現在は公開されていないため読むことができない)を叩き台にして作られた初のオリジナル連載作品がこの『廻生の血盟者(リベリアル)』である。どんなマンガか? 簡単に言うと異能バトルです。主人公の能力は「死んだ瞬間に時間を巻き戻し、最大で悪魔と契約した日まで遡ることができる」という、要するに「死に戻り」です。リゼロ以降、主人公が死んで何度もリトライする「死に戻り物」は今度アニメ化する『運命の巻戻士』といい枚挙に暇がないほどフィクション界に溢れ返っており、「まーた死に戻りネタか」と思った人も少なくないはず。序盤は死に戻りで得た経験によってRTAするというよくある展開なんですが、最初の難敵「クラウディア=バトセル」が登場したあたりから雰囲気は徐々に変わっていく。なんと主人公の死に戻り能力はバレており、敵もいろいろと対策を立ててきたのだ! 死に戻り特有のアドバンテージが半ば潰されている状態で戦わねばならないという、頭脳戦要素のある死に戻り異能バトルなんです。周回前提なので敵はハチャメチャに強いし、「『死に』戻りなんだから生け捕りにした後で『死ねない』ようにしてしまえばいい」と一番嫌な対応法を熟知している。相手にもよるが、基本的に殺してくれないので勝ち目がないと判断したら即座に自決せねばならぬ。あとがきで「こいつらどうやって倒すんだよ!」と叫んでいるのには笑ってしまった。そういうところで正田崇のソウルを受け継いじゃったか……。
掲載は「MANGAバル」というKADOKAWAとピッコマが共同で運営するWebマガジン。先月に『今日からヒットマン』の新作『今日からヒットマンRISING』がスタートしたらしい。というか、『今日からヒットマン』の版権がいつの間にかKADOKAWAに移っていたことにビックリ。え? じゃあ私が大昔に全巻セットで購入したkindleのニチブンコミックス版はどうなってるの? と不安になってチェックしたところ、普通にダウンロードして読むことができた。商品情報とかは消えているけどデータ自体は残ってるんですね。話が逸れた。MANGAバル、Webマガジンっつってるけど、要は「ピッコマにオリジナル作品として載せて、KADOKAWAから単行本を出す」というスタイルです。週刊連載なので少しペースが早め、『廻生の血盟者』1巻は今年の4月発売で2巻は6月、3巻は9月刊行予定となっている。表紙が男臭いため伝わりにくいが、こういう眼帯で太腿むちむちの褐色おねえさんも出てくるマンガなのでみんな軽率に読むといいよ。
・「プライムデーのキャンペーンで無料だったからKindle Unlimitedに加入してみたけど、読みたい本を探すのが結構面倒臭いな」というそこのあなた、Kindle Unlimitedなら『グイン・サーガ』が最新刊(150巻)以外読み放題なんだぜ! ちなみに外伝の方は30冊全部が読み放題対象です。3ヶ月かけても読み切れるかどうかってレベルだな……あと外伝のコミカライズというちょっと変わり種な本もあります。
Kindle Unlimitedはほぼ恒常的に読み放題対象の作品もあれば、キャンペーンめいたもの(久々に最新刊が発売されたとか)で一時的に読み放題になっている作品もあるので、気になる本はその時点で借りた方がいいです。一度借りた本は読み放題が終了してもダウンロード可能ですから。Kindle Unlimitedで読みたい本を探すコツのひとつは、出版社名やレーベル名で検索した後に「Kindle Unlimited 読み放題」の「読み放題対象タイトル」にチェックを入れてタイトルを絞り込むこと。たとえば「芳文社」で検索してから絞り込むと「へー、アニメ化した『mono』って5巻中3巻までは読み放題なんだ」とわかったりしますし、「電撃文庫」で検索してから絞り込むと「え!? 甲田学人の『ほうかごがかり』って新作、最新刊の5巻以外は読み放題なの!?」と驚いたりできます。これを「早川書房」でやると大量のグインサーガとローダン・シリーズが引っ掛かって苦労しますけど……俗に三大奇書と呼ばれる『黒死館殺人事件』『ドグラ・マグラ』『虚無への供物』のうち黒死館とドグラは著作権が切れているからタダで読めますし、著作権が切れていない『虚無への供物』も読み放題対象、ついでに「四大奇書」として追加されがちな『匣の中の失楽』も読み放題だったりする。いい時代だな……中高生時代の私が聞いたら憤死するレベル。地方暮らしだった私が講談社文庫(全1冊)版の『虚無への供物』を入手するのにどれだけ苦労したことか。それが今やセールで500円くらいで買えるという……。
同じ作品でもバージョンによって読み放題だったり読み放題じゃなかったりする(たとえば竹本健治の『囲碁殺人事件』は2013年に出た「創元推理文庫の電子版」と2017年に出た「講談社文庫の電子版」があって、読み放題対象なのは講談社文庫版、ただ購入する場合は創元推理文庫版の方が安い、ただ創元推理文庫には「チェス殺人事件」というオマケが収録されていない……と非常にややこしい)ので注意。それと、もともと日本語で書かれた本なら複数のバージョンがあっても違いはそんなにない(モノによっては加筆修正されているケースもある)が、古典的な海外小説の場合は「訳の違い」という問題が発生してきます。『アイヴァンホー』という小説も「中野好夫」訳と「堂本秋次」訳の2種類が読み放題で、好みの違いもあるだろうが堂本訳の平易で読みやすい。あまり話題に上ることはないが、「訳の違い」って「別のコミカライズ」とか「リメイクアニメ」くらいの差があるんですよ。そこを突き詰めていくと「原書に当たる」というガチ勢になっていきますが……探すの大変ですけど読み放題対象の洋書もあるんですよね。ハリー・ポッターシリーズは原書も訳書も両方読み放題なので、読み比べてみるのも一興かもしれません。
・イラストレーターがおう氏に関する報道と関連出版物の対応について
がおう氏が何をしたかは別の報道を参考にしてもらうとして……出版界でここまで大きな対応は『アクタージュ』以来ですね。あっちは原作の不祥事だったから連載そのものが中止になりましたが、『ギルドの受付嬢ですが、残業が嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います』はイラストなので原作やコミカライズはそのまま継続、原作のイラストのみ差し替えて再発売になる模様です。コミカライズがそのまま続くことを考えるとキャラクター原案は引き継がれる可能性が高く、完全に見た目が変わるわけではない……と予想していますが、なにぶん稀なケースなので確言できることは少ないです。
このニュースを受けて各種電子書籍サイトから『ギルドの受付嬢〜』の小説版がキレイさっぱり消えている。あくまで新規販売を停止するのであって、電子版を既に購入している場合はまだダウンロードできるしダウンロードしたデータが消されるわけではない。少なくとも、今のところは。イラストを差し替えて新バージョンが出る『ギルドの受付嬢〜』はまだしも、10年以上前に発売された作品で特に売れていたわけでもないから「配信停止」の措置だけで終わる『ハレルヤ・ヴァンプ』は気の毒だな……恐らく電子版もそんなには売れてなかっただろう(売れていたら紙版を増刷して続編もやろうって話になる)けど、Kindle Unlimitedみたいなサブスクの対象に入っていたらいくらか読まれて作者にもお金が入っていただろうし。結構ライトノベルの旧作ってKindle Unlimitedの対象になってたりするんですよね。五代ゆうの『パラケルススの娘』(全10巻)とか。新規イラストを付けるとなると採算が合わないし、かと言ってイラストなしバージョンを配信しても読みたい人がグッと減るだけだろうし……ホント、「やってくれた喃」ですわ。
・冲方丁の『ばいばい、アース』全4冊合本版が70%OFF、更に高ポイント還元で1冊あたり実質100円以下の大セール中
Kindleは普段から値引きしているのでわかりにくいが……他の電子書籍店を参考にすると、『ばいばい、アース』全4冊をバラで買うと2640円、合本版(4冊を1冊にまとめたもの、カバー絵は1巻のみ表示されて2〜4巻のカバーイラストはデータの中に含まれていない)が2200円で、これの70%OFFということで660円になっています。この時点で既にクソ安いのだが、45%くらいのポイント還元が加わって差し引き360円程度、1冊あたり約90円! ブックオフの廉売コーナーよりも安い。アニメ化されたおかげで前よりは知名度が上がっていますが、冲方作品の中では比較的マイナーな方なので読んだことがない方も多いと思います。気になっているなら今がチャンスだ。
ただ……「サンプルを読む」で本文を見てもらえばすぐにわかりますが、この作品、冲方小説の中でもとりわけ読みづらい部類に属します。ひどく難解な文章というわけではなく、むしろざっくばらんに砕けていて一見調子が良さそうなのだが、いまいち意図を汲み取りづらくて「何を言っているのかよくわからない」描写が続きます。専門用語が非常に多く、いわゆる「パルスのファルシのルシがパージでコクーン」な箇所もチラホラある。たとえば「教示者(エノーラ)」という言葉、そのままだと「???」だが、神代文字での綴りが「ENOLA」だと示され「孤独(ALONE)の逆読みじゃん! えっ、じゃあエノーラって究極的には『孤独を教示する者』ってこと?」という具合に読者側が積極的に深読みしていかねばならず、設定が飲み込めていない段階で作中世界をイメージするのはかなり難しい。「なろう系のファンタジーは『設定をシェアしているのか?』と疑うくらい似たり寄ったりで区別が付かない」という声もありますが、独自路線に走ったファンタジーを読み解くのって相当カロリーが要るんですよね……良く言えば「読者が100人いれば100通りの『ばいばい、アース』世界が生まれる」くらいのオリジナリティがあるのですが、「全員どころか過半数が納得できる映像は決して形成できない」というデメリットを孕んでいる。アニメがなろう系ファンタジーの天下になったのもむべなるかな、と納得してしまう。
若干ネタバレになりますが、『ばいばい、アース』の舞台となる世界は「何者かによって作られた世界」です。当然、その細部、その配置にはひとつひとつ意味がある。教示者(エノーラ)を始めとして、登場するキャラクターにはそれぞれ大なり小なり「何者かによって与えられた役割」が存在している。その「与えられた役割」に唯々諾々と従っていいのか? という疑問を抱く者も現れます。環境そのものは非常に人工的なのだが、そこで暮らす人々にも自我とか信念があって、単に「世界の秘密」を暴けばそれで済む話というわけじゃない。世界の秘密よりも、それを知った上でどう生きていくのか? が重要な物語なのだ。とはいえ読みにくさは如何ともしがたく、今回のセールで安さに釣られて買った人の半数以上は最後まで読み通せないんじゃないかな。私も何度か挫折して、再チャレンジを重ねてようやく読み切ったクチだ。それも何年も前だから細部はスッカリ忘れている。文庫版はまだ実家にあるし、読もうとすれば読み返せるのだが、気が向いたときにkindleを立ち上げて好きなシーンを摘まみ読みできる電子版も買っちゃおうかな……という誘惑に駆られてしまう。安いのが……安いのがいけない!(ポチッ)
・「スーパーの裏でヤニ吸うふたり」がアニメ化、2026年にTBS系で放送(コミックナタリー)
人気あったし案の定って感じですね。もともとはTwitter(現X)で連載されていたWebマンガで、人気が出たことにより“月刊ビッグガンガン”での連載を開始。単行本は少し前に7巻が発売されたところです。「マンガUP!」というアプリでも読むことができる。いつも仕事帰りで疲れている社畜系サラリーマンの「佐々木」、彼にとって行きつけのスーパーでレジ係をやっている女性「山田」が日々の癒し――いわゆる「推し」だった。そんな彼を揶揄う謎の女性「田山」。今宵もふたりはスーパーの裏で煙草(ヤニ)を吸いながら言葉を交わす……という、ちょっとエモい感じの日常ストーリーです。読めばすぐわかるのでバラしますが、佐々木の推しである「山田さん」と、スーパーの裏でともにヤニを吸う「田山さん」は同一人物。ただファッションと言動、目つきが全然違うので佐々木は気づかない、というコメディみたいなシチュエーションだ。
自分はもうオッサンだから、という理由で推しである「山田さん」に対して自己アピールしたくない佐々木は「田山さん」相手に日々の感謝とか「彼女に救われた」という気持ちを打ち明けるのですが、本人だから当然筒抜けであり、表(山田さん)で対応するときの態度も徐々に変化していく。最近はもう佐々木のことをだいぶ異性として意識している雰囲気で、ラブコメ好きはニヤニヤが止まらない。「田山=山田」ということがバレたら佐々木を失望させてしまうのではないか……って恐れてなかなか踏み出せない彼女だが、佐々木は話を聞いてくれる「田山さん」にも感謝の念を抱いているんですよね。こんなのもう勝ち確だろ、と余裕の構えでふたりのもどかしい関係を見ていられる。
しかし、嫌煙の波が進んでアニメでの喫煙シーンが少なくなっていく中、ほぼ毎回煙草を吸っている作品がアニメ化されるのは珍しいというか、良い兆候だと感じます。私自身は煙草吸わないけど、喫煙キャラは結構好きですからね。異能物で炎使いがボッと自分で火を点けるシーンとか大好物です。
正直、アニメの出来がちょっと……なので1期だけで終わりと思っていたけど、2期目もやるのか。俺パリこと『俺は全てを【パリイ】する』は異世界を舞台にした、一言でまとめると「勘違い系のファンタジー」です。ちなみに「現代日本からの転生」みたいな要素はありません。「スキル」が絶対視される世界で、誰でも習得できる下級スキルしか身に付かなかったせいで「自分には冒険者としての適性がない」と思いながらも冒険者になる夢を諦め切れない27歳の男、「ノール」が主人公。彼は自分のことを落ちこぼれだと信じ込んでいますが、実は作中でも最強クラスの力を誇っている。確かに彼は下級スキルしか獲得していないが、その威力や精度は上級スキルを遥かに凌駕しており、「今のはメラゾーマではない、メラだ」状態なんです。なのに本人は「下級スキルしか使えない自分はダメダメだ」と萎縮している。そして周りは彼の自虐を謙遜と受け取っており、まさか「桁違いの強さを有しているにも関わらずその自覚がない」とは夢にも思わない。そのせいで会話がひたすらすれ違う、いわゆる「アンジャッシュのコントみたいなアレ」になっています。
迷宮から飛び出してきたミノタウロスを「ただの暴れ牛」と勘違いして「暴れ牛程度に手間取るなんて俺もまだまだだな」と凹むとか、ノリが完全にギャグなのだけど、このミノタウロスによって迷宮の門番全員が死亡していたりと生じている被害は割とシビアなんですよね。「シリアスとギャグが混ざり合った独特のムード」が魅力で、原作小説はシリアスなシーンに差し掛かると文章の質が変わって緊張感を高めてくれる。硬軟織り交ぜた展開を平易かつテンポの良い文章で紡いでおり、サクサクとスピーディに読めるのが特徴。ただ、これを映像化すると途端にテンポが悪くなってしまう。小説だと自然に感じられる諸々の説明が、アニメだといささか煩わしく不自然で没入感を阻害しているんですよね。原作は大好きだけど、アニメはしんどくなって途中で観るのやめてしまった。作画はそこまで悪くない(際立っていいわけでもない)けど、演出がどうしても……小説では「ノールの主観」として押し通せるところが他の媒体だと「無理があるやろ」の閾値を超えてしまって素直に楽しめない。
そんなわけでアニメは最後まで観てないが、たぶん原作2巻の「魔導皇国編」までやって終わったんでしょう。3巻からは「神聖ミスラ教国編」という長めのエピソードに差し掛かりますから。ミスラ編は3冊かけて5巻でやっと終わるくらいのボリュームなんで、恐らく2期は最初から最後までミスラ編だと思います。個人的にミスラ編は長すぎてダレたところがあるので、2期始まってもたぶん観ないかな……見所がまったくないわけでもないんですが。1期目ではあまり見せ場のなかったヒロイン「リーン(リンネブルグ)」が活躍するシーンもあります。個人的に好きなのはサブヒロインの「イネス」だけど。原作は6巻から「商業自治区編」という新章が始まり、こないだ出た10巻でやっと終わった(つまり5冊も掛かった)から仮に3期目が来るとしたら2クールは必要だろうな……。
・おつじ「いびってこない義母と義姉」2026年にTVアニメ化!義母・鴻蔵てる役はくじら(コミックナタリー)
いかにも悪人面な義母や義姉が実はいい人、というタイプのコメディです。身も蓋もない言い方をすると『エンジェル伝説』系のマンガ。だいぶ前に1巻だけ読んだことあるけど、もう8巻まで出てるのか、これ。もともとはTwitter(現X)に投稿された4ページマンガで、人気が出たため連作&商業化、遂にはアニメ化にまで至った。経緯としては↑に書いた『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』、あと『悪役令嬢転生おじさん』や『疑似ハーレム』に近いかな。もうこういう「SNSに趣味で載せていたマンガがバズって商業化」みたいな話は珍しくなくなりましたね。あ、そういえば『疑似ハーレム』の原作者は今『放課後、僕らは宇宙に惑う』という新連載をやっています。今年始まったばかりでまだ半年も経っていないが、これもゆくゆくはアニメ化するのかなぁ。
・FANZAの夏のセールで「お朱門ちゃん」ことシナリオライター「朱門優」の初期代表作『黒と黒と黒の祭壇〜蟲毒〜』および『めぐり、ひとひら。』がセール中です。なんと各500円、まとめて買ってもたったの1000円だ。
『黒と黒と黒の祭壇〜蟲毒〜』は今は亡きC's ware(シーズウェア)から2002年に発売されたエロゲ。ジャンルとしては「陵辱&調教モノ」です。ユディル皇国の第七皇子「グルーヴェル」は異教徒との戦いで数々の成果を挙げ、「聖地の守護者」と持て囃されていたが、義妹である皇女「ユーディット」が告げた神託により突如「反逆者」の烙印を押され投獄。弁明は聞き入れられず、誰も彼を助けようとはしなかった。ただ一人の「悪魔」を除いては……という感じで祖国に裏切られた英雄が「悪魔」に唆され、聖女となるはずだったユーディットを穢して堕とす淫猥な儀式を繰り広げる。とにかくタイトルがカッコいいですよね。かの三島由紀夫賞受賞作家であり映画化した『デンデラ』の原作者でもある「佐藤友哉」も本作に影響されてか「『世界』の終わり」の章題に「嘘と嘘と嘘の祭壇」を使っている(雑誌掲載時のみ、単行本では改稿されて消滅)。
ヒロインの陵辱がどうでもよくなるレベルで盛り上がるアツい厨二シナリオは必見であり、「絵がちょっと……」という方も騙されたと思ってプレーしてみてほしい。確か、粛清のために訪れた天使を返り討ちにしてユーディットの前で陵辱するシーンがあって、そこが結構好きだった。というか本作のメインヒロインって実はユーディットじゃなくて、主人公を唆した「チッセ・ペペモル」という悪魔の方なんですよね。トゥルーエンド後、彼女は主人公の魂を追いかけて何度も転生している――という裏設定があって、チッセの転生体が登場するゲームをファンの間で「チッセ・ペペモル・サーガ」とか「チッセ・ペペモル三部作」みたいに呼んでいます。黒黒黒がサーガの第一弾で、第二弾が『めぐり、ひとひら。』です。三部作はそれぞれ別々のブランドから発売されているため、どのヒロインがチッセの転生体か大っぴらには語られていないが、見た目と声ですぐにわかります。サーガの第三弾にして完結編が『きっと、澄みわたる朝色よりも、』。あくまで裏設定であって表としての繋がりはないため、「裏設定のことを考えるだけでご飯3杯はイケる」という重度の設定厨以外はわざわざ順番通りにプレーしなくても大丈夫だし、「きっ澄みをやるために黒黒黒とめぐりを履修しないといけない」ってこともありません。やりたい奴だけやればOK。
2025-07-18.・いろんなところで夏のセールやキャンペーンをやっていますが、今日……いや、日付としてはもう昨日か、に始まったDMMブックスのSUPER SALEがアツいので早速シェアしたい焼津です、こんばんは。
冠位研鑽戦の周回しながらネット巡回してたらkindleで謎のセールが始まって、「プライムデーも終わったのにいったい何なんだ?」と戸惑っていたところにこのニュース。DMMブックスが大型のセールを開催するからその対抗策として突発的なセールを始めたらしい。Amazonが対抗意識を燃やすだけあってこのセール、なかなか凄まじい。たとえば『魔女と傭兵』という今月7冊目が出るライトノベルがあるんですけど、90%ポイント還元対象商品なので既刊6冊をまとめて購入すると4950円の支払いに対し4050ptの還元……あ、ちなみにDMMの「〇%還元」の〇%は税込価格ではなく本体価格を基準にした率です。あとDMM JCBカードで支払いすると+3%の還元がありますけど、それ以外の支払い方法を想定して記述していきます。差し引き900円、なんと1冊あたり150円という凄まじい額。
『退魔師転生〜過酷なエロゲ世界でキツネ顔の関西弁な性悪男はどないすりゃええですか?〜』という、今年の5月に発売されたけどAmazonでの取り扱いが中止になって商品情報を消されたノクターンノベルズ作品(消された理由は公式サイトの「立ち読み」でイラストをチェックしたら察してもらえると思う)も90%ポイント還元対象商品で、1320円に対して1080pt、実質240円だ。なんてバカみたいな安さ。ただ、DMMブックスで売ってるのは一応全年齢向けの通常版で、FANZA限定版(一部イラスト規制解除&IFルート紫雲すずり敗北SS+イラスト収録)は18禁だからFANZAブックスでのみ購入可能。FANZA限定版は特にセール対象ではないので通常価格の2200円です。クーポン使えばもう少し安くなりますけど、どちらにしろDMMブックスのセールと比べたら天と地ほどの価格差がある。どうしても規制解除イラストや敗北SSが見たい、という方以外は全年齢版で妥協してOKかと。
今回あまりにもセール対象の範囲が広いので却ってオススメを絞り込むのが難しいんですが……超オススメなのは『ささやくように恋を唄う』ですね。去年のアニメは残念なことになってしまったが、現在放送中のアニメ「わたなれ」こと『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』の原作ライトノベルでイラストを担当している「竹嶋えく」の百合マンガです。一迅社20周年記念、ということで1巻と2巻は20円(本体価格、税込だと22円)なんですが、なんとこれに70%ものポイント還元が付いてくる。それぞれに14pt、つまり実質的な金額はたった8円! まぁ少し前までPrime Readingの対象でプライム会員はタダで読めたんですけど……さておき、既刊11冊が割引&70%ポイント還元によって、セールも何もない店で買ったら8635円するところを6061円で3853pt還元――実質2208円。1冊あたり200円ですよ。安すぎる! 私はkindleで半額セールやってたときに買っちゃったから関係ないんですけどね。シリーズがバラけるのもイヤだから半額対象じゃなかった11巻も結局kindleで揃えちゃった。kindleもDMMに対抗して60%以上の還元率(AmazonはDMMと違って税込価格を基準に率を弾き出しているため「Amazonの60%還元」は「DMMの66%還元」相当)になっているからそんなに損ってほどでもない。今回のセール、「kindle派でDMMブックスは利用しないしなぁ」という人も「釣られてkindleの還元率が上がる」って副作用で恩恵を被っています。
プライムデーで散財した後だから割とキツいけれど、終了予定が8月21日とかなり長期に渡るセールなのでじっくり購入商品を選ぶことにしよう。アニメの2期が放送されている『その着せ替え人形は恋をする』(60%還元)とか、こないだアニメの放送が終わった『ロックは淑女の嗜みでして』(70%還元)とか、単行本未収録作品を集めた電子オリジナルの『押切蓮介短編集』(70%還元)とか、派生作品多すぎてそろそろ把握し切れなくなってきた『終末のワルキューレ』(80%還元)とか、戦うのは男ばっかり(設定上は戦乙女がヴェルンドして一緒に戦っていることになっているけど)の『終末のワルキューレ』に対し女性限定の決闘を描く『魔女大戦』(80%還元)とか、小説作品だと『乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です』(90%還元)およびスピンオフ(アナザールート)の『あの乙女ゲーは俺たちに厳しい世界です』(90%還元)とか……とにかく目玉商品が山ほどあって書き切れない。セール対象じゃない商品を探す方が難しいレベル。『SAN値直葬!闇バイト』の3巻とか『mono』の5巻とかは対象外で逆にレアだった。しかしこれ、本当にDMMは大丈夫なのか? 以前もキャンペーンで60億円の損失を出していたけど……さすがに今回は対策しているのかな。還元されたポイントは他のDMMサービス、というかぶっちゃけFANZAでも使えるので、一般の電子書籍をドカドカ購入して還元されたポイントでエロ動画やエロ同人を買うってのもアリです。
・本編完結、『りゅうおうのおしごと!20』発売。電子限定版収録文庫付き特装版は数量限定なのでお早めに。
アニメ化もされたが藤井聡太の出現によって「現実に負けたライトノベル」と散々弄られた『りゅうおうのおしごと!』が遂に本編完結です。アニメでやったのは5巻までだからアニメ化されていない範囲の方が長いんですよね……今なら電子版がセールで安い(kindleだと本編全巻まとめて買ってもポイント還元を考慮して実質5000円くらい、付与されたポイントはショートストーリー集の「盤外編」既刊3冊にでも使うといい)ですから、「アニメの続き待ってたけど結局2期来なかったなぁ」と天を仰いでしまった方もこの機会に購入してみてはいかがだろう。しかし5巻の表紙は今見ると感慨深い(アニメでこの二人を演じた声優、「内田雄馬」と「日高里菜」が結婚した)な。あくまで「本編完結」なので『盤外編』の方はもうちょっと続くのかな?
「本編が完結したのはわかったけど、『電子限定版収録文庫付き特装版』って何?」と首を傾げた人のために解説。『りゅうおうのおしごと!』は電子書籍オリジナル作品として過去に「りゅうおうのおしごと!15.5〜髪を切った理由〜」「りゅうおうのおしごと!16.5〜あねでしのおしごと!〜」「りゅうおうのおしごと!17.5〜天ちゃんのおしごと!〜」の3冊を配信しており、これらを紙の文庫本として1冊にまとめた総集編が『りゅうおうのおしごと!電子限定版収録文庫』です。特装版は20巻とセットで、それぞれ600ページくらいあるから併せた厚みは『境界線上のホライゾン』レベル。簡易ながら紙製の収納ボックスも付いてくるのでちょっと嬉しい。「電子限定版収録文庫」単独でのバラ売りはしていないため、「知らずに通常の20巻を買っちゃった!」という方はダブりを承知で特装版を買うか、電子書籍版で妥協するかのどっちかですね。値段だけ見れば電子書籍版で妥協した方がオトク。通常の20巻が990円(税込)であるのに対し特装版は2970円(税込)だから、特典文庫(と収納ボックス)は実質1980円ということになる。電子版は3冊まとめて買っても900円しないくらいだから半額以下。基本的に「全部紙で読みたい!」という好事家向けの商品なんですよね。メルカリとかヤフオクを探せば特典文庫だけ出品している人もいるかもしれませんが、たぶんそれほど安い値では出していないでしょうし。
アニメ以降のストーリーは姉弟子(空銀子)の三段リーグ戦、八一と師匠(清滝鋼介)の対決、月夜見坂燎と供御飯万智の激突など、熱い展開目白押しなので「アニメの原作は基本読まないんだよなぁ」って方も節を曲げて読んでみてほしい。アニメでは比較的目立たなかった「もう一人のアイ」こと「夜叉神天衣」も原作ではバリバリ活躍しています。個人的に印象深いキャラは「於鬼頭曜」。12巻の冒頭は何度読んでも目が潤んでしまう。
・宮下暁の『東独にいた(1〜5)』読んだ。
2019年から2021年にかけて連載された、新しくはないが古いというほどでもない漫画。「描ける場所がないので休載中」と作者自身が語っている通り、完結はしていない。現在は『ROPPEN-六篇-』という新作を連載している。『東独にいた』の評判は連載当時から聞き及んでいたが、「お堅い歴史漫画なんだろうな」という先入観から手が伸びず放置していた。しかし某所で話題に上がっていて、「せめて1話だけでも読んでみるか」と重い腰を上げたところ「想像していたのとは違う! 面白い!」となってハマった次第。これ、もうちょっと未読者の興味を惹くタイトルだったらブレイクしてたんじゃないかな……。
1985年、東西に分断されていた頃のドイツ。東ベルリンで小さな本屋を営む日系人「ユキロウ」は、「アナベル」という女性といい雰囲気になっていた。しかしアナベルは軍人で、ユキロウの正体は反政府組織「フライハイト」のボス「フレンダー」。ユキロウはアナベルを利用するつもりで彼女に近づいたのである。しかし日に日に彼女へ心惹かれていく自分に気づき、いつまで非情に徹し切れるか自信がなくなってきたユキロウ。一方、フライハイトのテロによって養父母を殺害されたアナベルは、泣くことができない自分の非情さに戸惑う。フライハイトの下っ端を拷問して得た「フレンダーの人種はアジア系」という情報にユキロウを怪しむ声が出る中、アナベルは「もし奴がフレンダーだったらどうするんだ」と訊かれてこう返した。「きっと‥私のことだから‥」「ためらいなく殺すわ」、と――。
言うなればこの漫画、「アーニャのいないシリアス度高めな『SPY×FAMILY』」なんですよ。アナベルは人体改造によって生み出された「神躯兵器」なる強化人間で、メチャクチャ強い。どれくらい強いかと申しますと、手刀で相手の腕を切断し、ライフル弾が直撃しても無傷で、足元の土を握り固めて投げつけることでスナイパーにカウンターかますくらい。『平和の国の島崎へ』どころではないワンマンアーミーぶり。明らかに常軌を逸しており、タイトルから想起される「お堅い歴史漫画」の風情など粉微塵である。こういう超人バトル漫画ならそうと早く教えてほしかったよ……。
『SPY×FAMILY』のヒットはアーニャ人気に拠るところが大きいが、「もしお互いの正体を知ったら殺し合いに発展しかねないロイドとヨルの関係」にドキドキしながら読んでいる人も少なくないはずだ。しかし連載が長期化し、ロイドとヨルの関係が深まった今、「ヨルは殺し屋としての職業意識よりもロイドやアーニャといった家族の方を優先するのでは?」という空気が強くなってきて当初の緊張感は薄れてきた印象がある。あと、やはりアーニャがふたりの鎹として機能している(アーニャはエスパーで他人の心が読めるから、ロイドがスパイでヨルが殺し屋だということを知っている)ので安心感の方が先行しちゃうんですよね。
そこに来ると『東独にいた』はアーニャ的な存在がいない分、「殺し愛不可避」なムードが漂っていてビリビリします。未完作品ゆえ消化不良に陥っている残念な漫画ではあるが、一読の価値はあるかと。ここから「再開&アニメ化決定!」になる可能性もゼロではない。最近は本当に弾不足で「えっ、あの作品が?」ってのが急にアニメ化したりするし。『29歳独身中堅冒険者の日常』がアニメ化とか、「えっ、今頃になって?」とビックリしましたよ。
それにしても、「打ち切りで再開の予定はない」とあらかじめ知った状態で読み始めたんですが、せめて「第一部・完」みたいなキリの良いところで終わると思っていたのに「えっ、ここで?」というタイミングで幕引きになっていてビックリした。神躯兵器に匹敵する強キャラが出てきて、バトルがヒートアップしていく中でプツンと話が途切れてしまっている。つくづく惜しい一作だ。
2025-07-07.・先月最終回を迎えた『ロックは淑女の嗜みでして』のアニメ、原作ファンとしても嬉しくなる出来栄えだったけど2期はいろんな意味で難しいだろうな……と感じている焼津です、こんばんは。それはそれとして原作者によるお祝いイラストいいよね……。
最たる理由は「原作がまだそんなに進んでないから2期やれるほどのストックが貯まってない」ことである。ロックレディは連載開始が2022年で、単行本の1巻が発売されたのは翌年2023年、TVアニメ化決定のニュースが報じられたのは2024年と、トントン拍子で企画が進行したんですが、そのぶん「エピソードの消化が早くてストックの補充が間に合わない」状態に陥っているんです。アニメ化決定が報じられた時点で原作は最新刊である5巻がもうすぐ発売される、というタイミングだったんですけど、先日アニメの最終回として放送されたエピソード(バッカスとの対バン決着)が収録されてるのってその5巻なんですよね。話数で言うと30話あたり。で、現段階での最新刊(7巻)に収録されているのが49話までで、掲載誌(ヤングアニマル)で読める最新話が55話。原作の半分以上が既に消化されてしまっているわけで、アニメオリジナル展開にするのでもないかぎり「すぐに2期をやる」のは難しい状況なんです。
「でもヤンアニって隔週誌で月2冊は出るから、週刊誌ほどじゃないけどエピソードが貯まるのは早い方なんじゃない?」と思うかもしれません。しかし、アニメでやった以降のストーリーはバンドメンバーの家庭事情について掘り下げたり、フジロック出場を目指してまずは小さな目標の達成を目指したりといった、地道なエピソードの積み重ねをコツコツとやっていくので「このへんからこのへんまでが2期にちょうどいいな」って内容にはなっていないんですよ。もちろん、面白いことは面白い。新たなライバルも登場してバンド活動は白熱していく。ただ、ノーブルメイデンがどうのこうのといった学園パートが後回しになっていて、2期の範囲に突入しても「お嬢様要素がほとんど進んでない……」ってなることは明白である。長期連載を見据えてかなり長めのスパンでストーリー構成している節があるぶん、「ちょうどいい切りどころ」があんまりないのだ。
良い方に捉えれば、「アニメ化した作品にしてはまだそれほど巻数が出ていない」のでアニメから入った人でも追いつきやすい、というメリットがあります。公式サイトのヤングアニマルWebでタイマーとチケットを駆使すれば最新刊の途中までは読めますし、とりあえず一度目を通してみてはいかがでしょうか。「アニメでやった範囲から先を読みたい」というのであれば31話から読み始めればいいんですが、原作とアニメで若干違うところもあるので可能なら最初からスタートするとモアベターです。
・『北神伝綺』『木島日記』とともに三部作を成す『八雲百怪』、完全書き下ろし『八雲百怪異聞』発売
知らん間に出ていてビックリした。「柳田國男」の弟子という設定の「兵頭北神」が主人公の『北神伝綺』、「折口信夫」の知人という設定の「木島平八郎」がメインキャラを務める『木島日記』、そして「小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)」を描く『八雲百怪』……大塚英志が原作、森美夏が作画を担当する一連のシリーズは「民俗学三部作」もしくは「偽史三部作」と呼称されており、『北神伝綺』と『木島日記』はマンガ版の後にノベライズ版も出た(『北神伝綺』の方はメチャクチャ時間が掛かったけど)ものの、『八雲百怪』に関しては出る気配が全然ありませんでした。一応『くもはち 偽八雲妖怪記』という小泉八雲絡みの作品に関しては小説版が出ているから、それを『八雲百怪』のノベライズ代わりにするということかな、って捉えて深く考えていませんでした。まさか普通にノベライズ版が出るとは。これも『ばけばけ』効果か? もちろん買うけど3190円(税込)ってスゴい値段だな。8月には『八雲と屍体 ゾンビから固有信仰へ』という八雲論の本も出るみたいだが、これに関しては購入しようかどうか検討中。ぶっちゃけ256ページで3300円(税込)はちと高価い……。
そういえば『くもはち』は幻の西島大介版が今月末に出るみたいです。『くもはち』という作品、まず2003年に小説版がハードカバーで刊行され、2005年に山崎峰水(『黒鷺死体宅配便』の人)作画で漫画版が刊行、同月その漫画版に合わせて小説版を文庫化しました。で、山崎版とは別に西島大介によるコミカライズが『くもはち。』というタイトルで“メフィスト”に連載されていたのですが、これに関しては当時単行本化されなかった。20年以上の月日を経てようやく刊行される運びになったみたいです。朝ドラ効果すげぇな。
・『地獄先生ぬ〜べ〜』原作マンガ全20巻が各77円に。お待たせしましたすごいセール。「BOOK☆WALKER」といった主要電子書籍ストアにて開催(電ファミニコゲーマー)
リメイクアニメの放送が始まったので、それに合わせてのセールでしょうね。全巻まとめて購入しても1540円と既にクソ安ですが、クーポンが使えるところで買えば更に安くなります。「懐かしいな〜。でも全20巻? 思ったより巻数少なかったんだな」と思った方もおられるでしょうが、この電子書籍は文庫版が底本だから巻数が少ないだけで、恐らくほとんどの人がイメージするであろう新書サイズのジャンプコミックス版は全31巻です。タイトルの「ぬ〜べ〜」は原作の「真倉翔」が好きなマンガ『究極超人あ〜る』にあやかって当初「ぬ〜ぼ〜」(ふたつ合わせてアールヌーボー)にするつもりだったが、当時は森永製菓が「ぬ〜ぼ〜」というお菓子を販売していたため、「もし将来アニメ化が決まったときにスポンサーが森永のライバル会社だったらマズい」という理由で担当編集が変更させた……という経緯があります。読切版のタイトルは「地獄先生ぬ〜ぼ〜」のままだが、今となってはこっちの方に違和感を覚えるな。
ぬ〜べ〜の単行本は1994年に刊行が始まって1999年に最終巻が出ていますが、人気作だったこともあり続編やスピンオフがいくつか出ています。最初の続編が『地獄先生ぬ〜べ〜NEO』(2014年〜2019年、全17巻)。生徒の一人だった「稲葉郷子」が新任教師としてかつて自分たちがぬ〜べ〜とともに過ごした懐かしの教室「5-3」へやってくるところから始まる。当然児童の面子は刷新されているが、本編キャラの何人かが成長した姿で再登場する。その次が『地獄先生ぬ〜べ〜S』(2019年〜2021年、全4巻)、タイトルの「S」は掲載誌である“最強ジャンプ”から来ている。NEOの続き……というより掲載誌に合わせて低年齢層向けに作り直したNEOという感じ。そして今月単行本が出たばかりの『地獄先生ぬ〜べ〜PLUS』(2025年、全1巻)、リメイクアニメの販促も兼ねてジャンプ+に掲載されたエピソードを集めた1冊。アニメの販促なので舞台となるクラスはNEO以降の新5-3ではなく郷子や美樹がいる旧5-3です。と、こんな具合で本編に相当する単行本は53冊も出ています。あと2006年に発売されたDVD-BOXの封入特典「地獄先生ぬ〜べ〜 一夜だけの復活」も去年から電子版が配信されている。ちょい短い(30ページくらい)が、これも含めると54冊。現在は“最強ジャンプ”で『地獄先生ぬ〜べ〜怪』という新作を連載中。ぬ〜べ〜が時空を超えて活躍する話で、時系列としては無印の頃になる模様。
スピンオフは『霊媒師いずな』シリーズがある。ぬ〜べ〜では女子中学生だったイタコ少女の「葉月いずな」が女子高生になっており、本編から約3年後の地点よりスタートする。無印の『霊媒師いずな』(2008年〜2011年、全10巻)、その続編に当たる『霊媒師いずな Ascension』(2012年〜2016年、全10巻)、あと単行本未収録短編を集めた『霊媒師いずな 特別編』(2024年、全1巻)が電子版でのみ販売されている。関連作ではあるが、厳密には「本編と直接繋がるわけではないパラレルワールド」という扱い(ぬ〜べ〜には「まくらがえし」という対象者の意識をパラレルワールドに送る妖怪が存在しており、「パラレルワールドがある」ことは公式設定)です。事情があってぬ〜べ〜自身はもう戦える状態ではなくなっている。本編とスピンオフすべてを合わせると75冊、結構な大長編です。あまりにも長期に渡って展開しているため絵柄や作風がかなり変化してきており、全部読もうとすると少ししんどいかもしれません。無理にコンプリートを目指さず興味のあるエピソードだけ摘まんでいくスタイルでもOKだと思います。
ついでだからアニメについても語っておこう。ぬ〜べ〜の旧アニメは1996年から1997年にかけて全48話が放送された。まだ連載中だったこともあり原作(無印)の途中で終わっています。人気はあったが続編が決まるほどの視聴率は稼げなかった。だいたい半分くらいのエピソードを消化したのかな。ぬ〜べ〜は「怪現象が発生し、それを解決する」という展開がひたすら続くため多少エピソードの順序を入れ替えても話が成立する構造になっており、原作の順番通りに映像化されたわけではないのでよっぽどのガチ勢でもないかぎりそのへんは把握し切れない。「みんなのトラウマ」として有名な「てけてけ」など、アニメ化されなかったエピソードもありますし。今月から放送が始まった新アニメは旧アニメの続編というわけではなく、ぬ〜べ〜こと「鵺野鳴介」が童守小学校に赴任してくるところから始まるリメイク作品です。原作は「立野広」が童守小学校に転入してくる場面から始まり、ぬ〜べ〜を見て「この学校、やべー先生がいるな……」とドン引きする展開だったが、リメイク版は逆に広が最初から童守小学校に通っていてぬ〜べ〜が新たに着任し、生徒一同「やべー先生だな……」とドン引きする導入に変わっています。ヤイバも現代向けに結構アレンジしていたけど、こっちもかなりアレンジが効いてますね。生徒たちは普通にスマホ使ってるし、原作では明るい性格だった広が少し陰のある少年になっています。
1話目はぬ〜べ〜が登場するときに旧アニメの主題歌「バリバリ最強No.1」が流れるというファンにとって嬉しい演出もあった。あらすじとしては、広に「九十九の足の蟲」が成長して巨大化した姿である「衷妖」が取り憑いて感情が制御できなくなり暴力を振るってしまう……という概ね原作を踏襲した内容です。ただし尺に合わせるためストーリーが大きくなっており、乱暴な上級生をボコボコにしたり陰険なサッカー部の連中を半殺しにしたりといった「相手にも非がある」原作と違って「カッとなって父親を壺で殴り入院させてしまった」重々しい過去が描かれる。父親は暴れる広をどうにかしようと怪しげな霊能力者を雇って借金まで負っているので、広はインチキ霊能力者を彷彿とさせるぬ〜べ〜に拒否反応を示す。ほぼ一撃で終了していた原作と異なり、戦闘シーンもだいぶ盛られている。とはいえ瞬殺の部類であることに変わりはなく、このままぬ〜べ〜が鬼の手でワンパン無双する展開がしばらく続くのかな……と油断した矢先に謎の影が襲来し、ぬ〜べ〜を吹き飛ばしてしまう。なんとライバルキャラの「玉藻京介」が早くも登場! いや早すぎじゃない? 原作だと11話目、単行本の2巻から出てくるキャラですよ。そんなわけで同時配信された2話目は玉藻がメインの回となっています。気になる方はさっさと視聴すべし。本編にはまだ登場していないけど、OPには人気キャラの「ゆきめ」も出てくる。童顔でキュート系だったゆきめがクール系の美少女になっていて度肝を抜かれた。OPだからカッコつけてるだけで本編は相変わらず童顔キュート系みたいだけど。連載当時のゆきめの人気ぶりは凄まじく、彼女が初恋相手だった読者もチラホラいます。ネタバレになりますが……本来すぐに退場するゲストヒロイン枠だったにも関わらず、あまりに人気がありすぎたせいで復活し、作者がぬ〜べ〜とくっつけるつもりだったメインヒロインの律子先生を押しのけてぬ〜べ〜と結婚するエンドに辿り着いた件は今でも語り草です。連載マンガは読者の反応によって展開が左右されることがままありますが、ラブコメでもないのにヒロインが途中で変わる(しかも準レギュラー枠ですらなかったゲストキャラに)ってのはなかなか珍しい。ライトノベルだと“必殺 お捜し人”シリーズに驚いた記憶があるな……知らない人が見たら全巻の表紙に映っている少女(マギー)がヒロインだと思うでしょうが、実は一回も表紙に出てこない(口絵には出てくる)子と結ばれるんですよね。「『全巻の表紙に映っている子が負けヒロイン』なんて前代未聞だな」と、完結から四半世紀以上経った今でも印象に残っている。たまたまだけど、“必殺 お捜し人”シリーズが刊行されていたのってちょうどぬ〜べ〜の無印が連載されていた頃です。Kindle Unlimitedで全巻読めますから興味のある方は読んでみてください。
・『灰原くんの強くて青春ニューゲーム』アニメ化企画進行中!!
うおっ、灰原くんアニメ化とな。書籍版を1巻から追っているシリーズなので嬉しい。作者の「雨宮和希」は2017年に書籍デビューした小説家・シナリオライターで、最近は学マスこと『学園アイドルマスター』に関わっている(主な担当は「葛城リーリヤ」と「紫雲清夏」)。ぶっちゃけ灰原くん以前はあまりパッとせず長期化したシリーズもなかったのですが、2021年に始まった『灰原くんの強くて青春ニューゲーム』は今月出た最新刊が9巻と割合長く続いています。灰色の青春時代を送った主人公が、気付けば高校入学直前にタイムリープしていた……という、設定自体はありふれている「やり直し」系ライトノベルです。キャラクター同士の人間関係を丁寧に描写しており、青春の甘酸っぱさやほろ苦さがギュッと詰まった内容に仕上がっている。恋愛にまつわる騒動が長引くので、そこはちょっと好みの分かれるところかもしれません。
少しネタバレになってしまうが、主人公には本命の女の子がいて、その子を射止めるためにクラスカースト上位の陽キャグループに潜り込もうと自己改造します。その過程で陽キャグループのメンバーの女子に惚れられたり、主人公が「高校デビュー」したことを知っていて協力してくれている幼馴染みの少女が実に彼に想いを寄せていることが発覚したりと、多角関係じみた展開になる。でも主人公はあくまで本命の子に一途なので「モテモテで困っちゃうな〜(照れりこ照れりこ)」というノリではなく「いや……マジで困るな……どうすんのこれ……」というテンションなのがバリ面白い。感情移入しつつ高みの見物を決め込める、恋愛モノの美味しい部分を切り出したようなストーリーでありながら、恋愛以外の青春要素もキッチリと進展させていく。
ぶっちゃけ、アニメだと恋愛部分に尺を取られて主人公がバンド活動を始めるあたりとかまで描写する余裕もないだろうし、アニメそのものにはあまり期待していない。HJ原作のアニメは『夢見る男子は現実主義者』も想像以上に残念なことになってしまったしな……2年以上経つのに新刊が出ておらず、このままエタりそうな雰囲気が漂っているのがツラい。とりあえずアニメがそこそこの出来に仕上がって、原作ファンが増えればいいな、くらいの感覚でいます。
・「GATE SEASON2 自衛隊 彼の海にて、斯く戦えり」制作決定、舞台は陸から海へ(コミックナタリー)
ゲートの続編アニメ!? さすがにもう来ないと思っていたのでビックリした。『ゲート』は「地球と異世界を繋ぐ『ゲート』を通って異世界にやってきた自衛隊が活躍する」というファンタジー。Arcadia(アルカディア)、通称「理想郷」という投稿サイトで2006年から連載された小説が元になっており、2010年から書籍化を開始。前年の2009年に『ソードアート・オンライン』の書籍化が始まり、「Webで人気を稼いで書籍化し単行本を売る」という現在主流になっている形式が徐々に普及しつつあった頃でした。
本編は2012年に全5巻(文庫版は各巻を上下に分冊しているので全10巻)で一旦完結し、その後2015年まで外伝を5冊(文庫版は以下略)刊行。「本編+外伝」の10冊(文庫版だと20冊)を便宜上「SEASON1」と呼んでおり、SEASON1の副タイトルが「自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」です。2015年にアニメ版が分割2クールで放送され、SEASON1の前半3冊(接触編・炎龍編・動乱編)に当たる内容が映像化。当時はそこそこ話題になって「ロゥリィ・マーキュリー」というキャラのコスプレをする人が結構いました。このまま続きもアニメ化されるのかな……と待っていましたが続報はなく、静かに10年近くの月日が流れていったわけです。漏れ聞いたところによると、原作の版元である「アルファポリス」がアニメ効果を当て込んで文庫版を刷りまくり、出荷し過ぎたせいで返本の山になって経営を危うくさせたらしい。その影響もあったのかしら。
原作はアニメ放送後の2017年から「自衛隊 彼の海にて、斯く戦えり」という副題のSEASON2を刊行開始。今度は海上自衛隊の隊員が主人公なので「海自編」とも呼ばれています。2020年にSEASON2は全5巻(文庫版は全10巻)で完結、2021年に今度は「銀座事件」というSEASON1よりも前に起きた出来事を綴る過去編『ゲート0 -zero-』が始まり、翌年の2022年に全2巻で完結。zeroはまだ文庫化されていません。こんな感じなので、ひと口にゲートと言っても単行本にして17冊もの作品があります。タイトルからすると今回は海自編のアニメ化みたいですが、SEASON1の続きはやらないのかな……SEASON2がメチャクチャヒットすれば可能性はなくもない? なおSEASON1の監督は『ラブライブ!』で有名な「京極尚彦」でしたが、SEASON2は「高橋亨」という人になる模様。
余談。SEASON1の主人公「伊丹耀司」はオタクという設定で、特殊作戦群のメンバーに「セイバー」や「アーチャー」、「キャスター」などのコードネームを振っているんですが、元ネタはもちろんFate。伊丹自身のコードネームは「アベンジャー」。アニメ化したら伊丹の声優が「諏訪部順一」だったので「お前はアーチャーだろうが!」というツッコミが一斉に入ったとか入らなかったとか。こういうFateネタが今でも普通に通用するというの、冷静に考えると凄まじいことだな……。
・荒川弘「黄泉のツガイ」TVアニメ化決定!スクエニ×アニプレ×ボンズの布陣で始動(コミックナタリー)
これは時間の問題だと思っていたし、驚いているファンはほぼいないと思います。「ハガレン」こと『鋼の錬金術師』や『銀の匙』、エッセイ漫画の『百姓貴族』もアニメ化している「荒川弘」が現在連載している作品です。作者コメントで「アニメ化が決まったのはだいぶ前」と言っているし、連載開始と前後して企画が動き出したのだとしても不思議ではない。むしろ荒川弘の漫画でアニメ化してない作品ってあったっけ? というレベルだし。単行本が出てる作品だと『RAIDEN-18』くらいじゃないですか、アニメ化してないのは。
もうすぐ10巻が出る『黄泉のツガイ』、どういう漫画なのかひと口に表現するのは難しいが簡単に言うと「和風ファンタジー」です。山奥の小さな村で狩猟生活を送っている少年「ユル」と、双子の妹「アサ」の数奇な運命を巡る物語。「ツガイ」と呼ばれるJOJOのスタンドみたいな存在を使役して戦いますが、「番(つがい)」と呼ばれるくらいなので必ず二個一対になっているのが特徴です。描いているのが荒川弘だけあってシンプルに迫力のある戦闘シーン目白押し。ただ、勢力図というか、「誰が何のためにどういう行動をしているのか」がとても入り組んでいて複雑ゆえザッと読んだだけではあまりストーリーが理解できないかもしれません。たぶん完結した後に読み返すことで「ああ、ここはあそこと繋がっているのか」と飲み込めてくるタイプの漫画だと思います。
とりあえず1話目は公式サイトで読めますから気になる人は目を通してください。なんか私が奥歯に物が挟まったような口ぶりで紹介している理由がわかるはずです。久しぶりに読み返したけど、相変わらずクオリティがすげぇな……アニメになったらどんな感じか、既にイメージできるぐらい仕上がっている。
・定期的に発生する「チャンピオンクロス(およびヤンチャンWeb)の無料チケットが余り気味になる」問題、期限が来て消滅する前に程好く使える作品はないかな……と探して見つけたのが『きみは四葉のクローバー』だった。
少し前に4巻が発売されたくらいの分量なのでちょうどいいボリューム。「次にくるマンガ大賞2025」のコミックス部門にもノミネートしている話題作です。簡単に書くと「イジメに遭っている少年を幼馴染みの少女が救おうとする話」です。サスペンス系で、嫌な気分になるシーンもふんだんに盛り込まれているから少しだけ気合を入れて臨んだ方がいいかも、という雰囲気。ムチャクチャ胸糞が悪くなる展開は今のところない(主人公の姉がだいぶヒドいので人によってはダメかもしれない)んで、「鬱漫画」とかではないです。主人公の名字は「宇津」ですけど……。
四葉のクローバーの花言葉には「復讐」があるらしい――活動的で、友達もいっぱいいて、かつてはクラスの人気者だった少年「宇津宇一」。しかし、中学のときに起きた「ある事件」によって状況は一変。家庭は崩壊し、彼自身も凄絶なイジメのターゲットにされてしまう。それでも幼い頃に交わした約束をよすがに、辛うじて生き延びてきた宇一。でも、約束を交わした少女「よつは」も、今の宇一の姿を目にしたら失望してしまうかもしれない。「暗くてキモい」「死んじゃえ」 想像上のよつはに罵られ、心が折れそうになった宇一を救ったのは、数年ぶりに街へ戻ってきた本物のよつはだった……「宇一のこと!だーいすき!!」
イジメのせいで心がボロボロになっている少年を、明るく天真爛漫なヒロインが救済する物語……ではあるんだが、よつはの天然キャラは作り物であり、実際の彼女はかなり覚悟のキマったアヴェンジャーです。「宇一を殺す運命なんて、私が殺してやる!」って感じの。公式アカウントもよつはの二面性をわかりやすく表現したイラストを掲載している。詳しい設定は後々明らかになってくるが、1話目の時点で「納棺されている宇一の遺体」とおぼしきカットが出てくるなど、「このよつはちゃんは未来からやってきたんじゃないか?」と窺わせる要素が次々とお披露目される。宇一へのイジメを止めるためにいろいろ行動するんですけど、ことごとく「未来予測」レベルの手を打っているんですよね。となると気になるのはコレが初周なのか、それとも何度か周回を重ねているのか? という点。
明らかに「1回見たことのある場面だから」で実現できるような精度じゃないから相当「再走」してるだろうな、と感じていたけれど、そのへんの事情が明らかになるのは16話目、コミックスで言うと3巻の冒頭です。ここで物語の大枠が掴めるようになりますので、単行本を買ってまとめ読みする場合は3巻以上にした方が宜しいかと。宇一を助けるために涙ぐましい努力を重ねるよつはちゃんの奮闘劇、徐々にその片鱗を見せ始める「黒幕」、ストーリーが盛り上がってきているところなのでまさに「読み始めるなら今」って感じです。宇一の家族に関するエピソードが終わって、宇一と離れ離れになった後のよつはがどんな日々を過ごして「正規の末路」を迎えたのかが語られ、いよいよ黒幕に切り込んでいきそうな気配が漂っている。中学のときに起きた「ある事件」もまだ詳細は綴られていないが、そろそろ明らかになるか?
最後に、「次にくるマンガ大賞」って名称はたまに見聞きするけど内容に関してはよく知らんな〜、という方向けにちょっとだけ解説。今から10年以上前の2014年にニコニコと雑誌の“ダ・ヴィンチ”が共同で立ち上げた一般投票によるマンガ賞です。時期的にちょうどニコニコ(ドワンゴ)がKADOKAWAと経営統合した頃ですね。“ダ・ヴィンチ”の発行元もKADOKAWAなんで、平たく書けば「KADOKAWAが運営するマンガ賞」ってことになります。なので投票するときの規約にKADOKAWAの名前が出てくるし、ノミネート作品の試し読みもニコニコ静画にアップロードされる。紙どころか電子の単行本すら発売されていないため基本的にジャンプ+でしか読めない『限界OL霧切ギリ子』(連載版)の試し読みもニコニコで読めます。
「応募形式の新人賞ではないマンガ賞」は大きく分けて2種類あり、一般的にイメージされるのは「プロのマンガ家とかお偉いさんとかが選考委員をしている権威ある賞」だろう。「手塚治虫文化賞」とか「小学館漫画賞」とか「講談社漫画賞」ですね。これに対して「書店員や一般読者など、クリエーターでもお偉いさんでもない人たちが投票して決める草の根的な賞」、いわゆる「読者賞」的なものがいくつかあります。一番有名なのは2008年から始まった「マンガ大賞」かしら。ぶっちゃけ「次にくるマンガ大賞」はマンガ大賞の後追いめいた企画で、名称が被っているせいもあって混同されがちです。だから世間的な認知度に関しては若干微妙なところもあるが、受賞作品は実際に売れ行きが伸びるので全国の書店も積極的に乗っていく姿勢を見せている。
特徴は「紙の雑誌に掲載され単行本も出ている」コミックス部門と、「サイトやアプリなどWeb媒体での発表が主体で単行本が出ているとは限らない」Webマンガ部門、ふたつの部門に分けて投票を募っていることだ。賞を開始した時点ではまだ紙書籍の売上が多く、「Webで発表されていて紙どころか電子の単行本すら出ていない」マンガが珍しくなかったからなんですけど、今やデジタルシフトが進んでマンガは電子書籍の売上の方が大きくなった(売上の7割くらいが電子)からコミックス部門とWebマンガ部門の垣根はだんだん曖昧になってきています。いずれ部門別ではなくなるかもしれません。ともあれ、「単行本の既刊が5巻以内のシリーズ」、もしくは「連載開始から1年前後しか経っていない」作品の中から「次にくる」と思われるマンガを読者から推薦してもらう「エントリー期間」(2週間くらい)があって、数千にも及ぶエントリー作品(今集計している「次にくるマンガ大賞2025」のエントリー作品数は9432)の中から実行委員がノミネート作品を絞り、一般投票を募る「投票期間」へ移行します(今年は6月20日開始で7月7日終了、ちょうど今日の午前11時が〆切だった)。で、2ヶ月くらい集計期間を置いて9月18日(木)に結果発表予定、というスケジュール。ノミネート作品を絞る段階で実行委員の恣意が混ざる可能性も否定できないが、1万近いエントリー作品の中から投票する作品を決める形式だと投票者の負担が大きすぎるので仕方ない部分もある。絞ってなお100作ありますからね、ノミネート作品。
「次にくるって言うけど、もう来てるだろ」な作品が受賞しがちなこともあってマンガ好きの間ではあまりリスペクトされていない賞であるが、アニメ化された『メダリスト』はこの賞を獲ってから大きく売上を伸ばしているので、出版業界としては無視できない存在らしい。ただ、この賞で上位に入ったにも関わらず打ち切られてしまったマンガもあるので権威と呼べるほどではない。しかし、打ち切られるかどうかの瀬戸際に立っている作品の場合、「次にくる〜で好成績を残せば存続の芽が出る!」と僅かな可能性に賭けて投票するファンもいるわけです。今回のノミネート作品だと『超巡!超条先輩』が先月に投票開始を待たずして連載終了しており、「次のないマンガを指して『次にくる』ってどんな皮肉だよ」と思いつつ、上位に食い込めば連載再開の可能性も0ではないのでファンたちは最後の足掻きを繰り広げている。私も一票入れました。
今回のノミネートはコミックス部門が40作品、Webマンガ部門が60作品。投票開始時点で知っていた作品だと『ありす、宇宙(どこ)までも』が好きなんですが、これはもう既にマンガ大賞を獲っているから「あえて投票しない」って人もいそうだな。あとは『写らナイんです』、『描くなるうえは』、『シルバーマウンテン』、『平成敗残兵すみれちゃん』、『本なら売るほど』、『マネマネにちにち』、『魔法少女201』、『百瀬アキラの初恋破綻中。』、『傷口と包帯』、『きゃたぴランド』、『サンキューピッチ』、『都市伝説先輩』、『モノクロのふたり』あたりが好きでどれに入れようか迷いました。知らないノミネート作品をパラパラと試し読みし、気になったのは『アイドルビーバック!』、『となりの猫と恋知らず』、『魔男のイチ』あたり。
『アイドルビーバック!』はきららマンガで、アニメ化した『こみっくがーるず』の「はんざわかおり」による新作。解散してしまった地下アイドルグループの元メンバーが、「私にとってあのグループ以上のものはないし、このままアイドル引退しようかな」と思った矢先にコミュ障のボカロPと出逢い、もう一度アイドルの夢を追いかけ始める……という密かに熱いアイドル青春ストーリーで、試し読みが終わった直後に単行本をポチってしまった。『となりの猫と恋知らず』は「隣の席の女子とだんだん距離が縮まっていく何かエモい感じの青春ラブコメ」で、とにかくヒロインの「猫実」さんが可愛い。タイツの描写から作者の“癖”が伝わってくる。とりあえずマンガUPで読めるのでチマチマ読み進めています。『魔男のイチ』は『魔入りました!入間くん』の「西修」と『アクタージュ』の「宇佐崎しろ」がタッグを組んだファンタジー。「魔法」が生き物で、定められた手順で討伐することによりその魔法を習得することができる世界。魔法が使えるのは魔女だけ――のはずだったが、ひょんなことから魔法を使える男、すわなち「魔男」が生まれてしまい……という話です。常識の通じない天然気味な主人公が大暴れする『マッシュル』系のマンガで、宇佐崎しろの画力に支えられて盤石な面白さを発揮している。カッコいい魔女なのにギャグ顔が魅力的なデスカラスさんにメロメロ。正直タイトルのダサさで敬遠していたけれど、面白いわコレ。単行本も買いたくなったが、紙で揃えるか電子で揃えるか迷っています。できたら紙の手触りとともに読みたいんだけど、サイズ的に電子で買ってタブレットで読む方がベターっぽいんだよな。