2023年5月〜8月


2023-08-28.

・久々にエロゲーの新作をチェックするか〜とあれこれ見て回った結果『八剱伝』が気になった焼津です、こんばんは。皮肉なことにエロゲーの新作本数がだいぶ少なくなっているから以前よりもチェックするのが断然楽になってるんですよね……昔は毎月膨大な本数が出るので本当に大変でした。

 ブランドは「IRODORI」、2017年に逆転裁判風の推理エロゲー『桜花裁き』でデビューしたところであり、『八剱伝』は2作目――つまり6年ぶりの新作ということになる。間に『桜花裁き』の移植版『桜花裁き斬』を出しているとはいえ、よくブランドが保ったな……ぶっちゃけ存在さえ知らなかったが、評判良いし面白そうだしちょうどFANZAでセールやってたし勢いで『桜花裁き』DL版をポチってしまった。それはともかく『八剱伝』、タイトルの通り8人のメインキャラクターが登場する時代劇であるが、特徴は「男女2人のカップル×4組のストーリーがザッピング形式で同時進行する群像劇」ということですね。古いゲーマーには「『街』みたいなの」と表現した方が通じやすいかもしれない。要は一般的なエロゲーにおける「1人の主人公(男)が複数のヒロインの中からHする相手を選ぶことでシナリオが分岐する」方式に逆らっています。こういう「複数の主人公が出てくるエロゲー」は昔から存在します(『フォークソング』や『銀色』や『水夏』、『てのひらを、たいように』や『Clover Heart's』など)が、「主人公に自身を投影するタイプのプレーヤーは没入しにくい」という理由もあってか業界的に「群像劇はなかなか当たらない」ってジンクスがあり、長い間「ヒットを狙うならなるべく避けた方がいい」形式と見做されていたらしいです。私も群像劇系のエロゲーで熱烈にハマったの、パッと思い出せるのは『俺たちに翼はない』くらいかな……アレもかなり特殊な作品だから厳密な意味で群像劇と呼べるのか微妙ですが。期待していた『太陽の子』は空中分解してしまって未発売。あとは強いて言えば『神咒神威神楽』か?

 紅葉が散らなくなった異形の戦国時代を舞台に繰り広げられる物語はタイトル通り曲亭馬琴の『南総里見八犬伝』をモチーフにしているようだけど、八犬伝そのものをベースにしたストーリーではないようなので元ネタに関する予備知識は不要と思われる。ネームドキャラが40名以上も登場する豪華な仕様になっており、『桜花裁き』から6年も掛かったのは単純に製作期間が長かったからでは? という気がする。スタッフ日記を漁ってみると2019年4月1日に「新作ティザーサイト公開しました!」という記事を投稿しているし、少なく見積もっても着手から4年以上は掛かっています。『桜花裁き』が「桜」のイメージだったから『八剱伝』は「紅葉」のイメージで固めてみた、ということですが、「桜が散らなくなった異形の戦国時代」だと「戦国ダカーポ」と言われるのが目に見えているから……というのもあるやもしれぬ。ダカーポと言えばCIRCUSは『D.C.5 Future Link 〜ダ・カーポ5〜 フューチャーリンク』というファンディスクを来年1月に発売する予定のようだ。初代(2002年発売)から数えると21年、『アルキメデスのわすれもの』(2001年発売、『D.C.』の先行ストーリーを収録していた)まで遡ると22年近くの月日が経過したことになるが、未だにナンバリングタイトルとして健在な現状を見ると戦慄を禁じ得ない。その初代『D.C.』と同じ日に発売された『それは舞い散る桜のように』もリメイクされるし、『D.C.』より古い『ONE』もリファインと称して『ONE.』を出すんだもんな……若者たちに「どれも自分が生まれる前のゲームなんですけど!」と言われてダメージを受ける古参エロゲヲタたちの姿が目に浮かぶようだ。

『マギアレコード』、8月22日16:00より「期間限定 悪魔ほむら ピックアップガチャ」開催中

 回してみたところ比較的出が良かったので完凸チャレンジし、調整屋コイン交換込みの290連で無事達成。概ね確率通りに収まった。惜しむらくは期間限定の☆4メモリア「たどり着いた答え」が完凸できなかったことか。完凸できていれば「アビリティのみで2ターン目と3ターン目にドッペル発動」というロマン溢れる編成もできたのに。しかしマギレコの☆4メモリアはダブルピックアップで各排出率はキッチリ1%、実は魔法少女を完凸させる以上の沼だったりするので追いかける気にはなれない。仕方ないので「スキル使って2ターン目と3ターン目にドッペル発動」編成にしています。リソースだいぶ余ったから1枚だけ引いて様子見していたヒスやち(ヒストリアやちよ)の方も「真の天井」(200連)まで回して、ちょうど完凸しました。合わせても500連足らず。結果だけ見ると「1000連以上(もう少し正確に書けば1200連くらい)もの石とガチャチケを貯めていたのはさすがに備えすぎだったな……」ということになるが、まさか実装直前で排出率が倍になるとは予想していなかったんだし、やむをえまい。ピックアップよりもすり抜けの方が多いのには辟易したが「提供割合2倍」が具体的に実感できる頻度で☆4魔法少女を引くことができたのは確か。確率変更前のマギレコは「100連目の確定枠でやっと☆4魔法少女が出る」みたいなのが珍しくなかったけれど、今回「99連続けて☆4魔法少女ナシ」というのは一度もなかったです。沼ることもあるので確定枠はあるに越したことはないが、やはり以前よりもありがたみが薄れてしまった印象がありますね。

 さておき、あとは「選べるピックアップ」の毎日10連無料を忘れずに回すだけだ。マギレコの無料10連は回し忘れた日があっても翌日以降に持ち越しできる優しい仕様になっているが、ピックアップそのものが終わると持ち越した分も全部消滅するから貯めておいて最終日に回し忘れると悲惨である。ストーリーを進めているうちに「佐鳥かごめ」が可愛く見えてきたこともあり、1枚でいいから彼女をゲットしておきたいな……とか思っていたところ6日目(60連目)に2枚抜きし、「提供割合2倍」の効果を噛み締めることになりました。いざとなれば自前で60連追加し、調整屋コインを使って交換するつもりだっただけに嬉しい。9月4日からピックアップ対象を期間限定の魔法少女に切り替えた無料10連の第2弾が始まるんで、できればそっちの方にリソースを傾けたかったんですよね。期間限定の方は最大190連が無料で回せるからどんなに引きが悪かろうとほんの10連追加するだけで誰でも交換可能になるわけだ。欲しかったけど見送ってしまった「瀬奈みこと」や「ウワサの鶴乃 アニメver.」、「ホーリーマミ アニメver.」、「八雲みたま 常闇ver.」をゲットするチャンスに昂っておりまする。とはいえ「愛生まばゆ」も長きに渡る沈黙を破ってそろそろ姿を現しそうな気配だし、500連分くらいは温存しておきたいかな。

・赤石赫々の『堕天使設定のV系ヴォーカリスト、召喚された異世界で救世主となる』読んだ。

 副題は「1st 黒き翼の序曲」、明らかに続刊を意識したモノだが今のところ具体的な刊行予定はなく、2巻以降が出るかどうかは売れ行き次第といったところだろうか。作者にとってこれが5番目のシリーズに当たるが、前作『サベージファングお嬢様』は結局打ち切り? コミカライズの方も終わっちゃったみたいだし……ともあれ、本作は異世界転移モノです。異世界「パルサージュ」の国「グランハルト」では30年に一度、王座に就く者を決める儀式が行われていた。参加資格があるのは王家の血を継ぐ者、つまり開国の始祖に連なる直系王族のみ。彼・彼女らは異世界から勇者を召喚し、バディを組んで試練に挑む。それゆえに「双翼の儀式」と称されていた。現王の実子でありながら「母親の身分が卑しい」として蔑まれてきた少女「リーゼ」はある日、怒りに任せて事前の許可なく勝手に異世界の勇者を召喚してしまう。彼女の喚び声に応えた者、それは現代日本で堕天使キャラを作って活動しているV系バンドのヴォーカリスト「ゼノ」だった……って話です。

 平たく言うとFateの「英霊召喚」や「聖杯戦争」を変形させたようなファンタジーです。「双翼の儀式」の具体的な手順は「まず事前に現王へ願い出て勇者召喚の許可を貰う(事後承諾が通らないわけではないが、儀式の進行を考えると先に許可を取っておくことが望ましい)→異世界から勇者を召喚し、事情を説明して協力してもらう(令呪的なものはないので拒否されると詰む)→準備が整ったら王城を出発、全体で6つあるチェックポイントのいずれかに向かう→各チェックポイントには『守護者』と呼ばれるボスキャラが配置されており、これを倒すと『印』が手に入る→『印』が6つ揃ったらゴールに赴く、一番最初に到着したコンビが優勝」、物凄く短く言ってしまえば「早い者勝ちのスタンプラリー」だ。別に王族同士で戦う必要はないのだが、なぜか直接戦闘が禁止されていないので毎回王族と王族、勇者と勇者のバトルが発生する仕組みになっている。なぜこんな回りくどいバトルロイヤルじみた手順で次の王を決めるのか……という「世界の謎」についてはハッキリ明かされず、次巻以降に持ち越し。面白いかどうかと聞かれたら「まだ何とも言えない」と答えるしかないです。

 本書の特徴は何と言っても主人公のキャラ。あらすじ読んだときは何となく『デトロイト・メタル・シティ』みたいな、「本当は堕天使設定とかイヤなんだけど仕方なく演じている」主人公が異世界で本当に堕天使みたいな異能を獲得してしまい、引くに引けなくなってキャラを作り続ける……ってなノリのコメディかと思ったけど、勘違いでした。主人公は真面目にミュージシャンとして活動しており、「自分の音楽を広く届けるためにキャラを作り込む必要がある」と考えて前向きに堕天使設定を取り入れている。あくまで設定と割り切っているものの聴衆の幻想(ユメ)を壊さないために行住坐臥、徹底して演じ切っています。異世界に来てもそのへんは変わらず、「本物の異能を手に入れてもやること自体は一緒だ」と泰然たる態度を崩さない。大物ぶった言動をする割に腰は低いため、召喚したリーゼちゃんもやや困惑気味です。「変なキャラ」と言ってしまえばそれまでだが、音楽の才能が隔絶し過ぎているせいで他のバンドメンバーたちが「付いていけない」と音を上げてしまい、不本意ながらバンドを解散することになった――という悲哀に満ちたプロローグから始まることもあって自然とゼノ様の肩を持ちたくなる小説になってるんですよね。つい「異世界に行ったゼノ様が楽しそうで何より」という目線で読んでしまう。

 「絶対なんか裏があるだろ、この儀式」って疑惑がバリバリに湧き上がってくる内容であり、どうも奥歯に物が挟まったようなスッキリしない雰囲気で物語が進行していくため、1巻の時点で単純に盛り上がるかというとイマイチ盛り上がらない。『サベージファングお嬢様』のときも感じたが、「キャラの感情」と「話の状況」が噛み合わないままクライマックスに向かっていくせいで前半と比べて後半が尻すぼみになっちゃっています。「主人公(ゼノ)のキャラが立っている」点は評価したいが、全体的に「主人公(ゼノ)の感情を揺さぶる要素が弱い」ため危機的なシチュエーションへ差し掛かっても読者のハートがあまり燃え上がらない。そこが惜しいな、と思いました。

 まとめますと、「手放しで褒められる内容ではないが2巻以降も読みたい」が結論になります。ゼノ様のキャラ立ちで成り立っている作品だけど、ゼノ様の魅力を最大限に引き出すような構成にはなっていない……というあたりが歯痒さの根源なのかも。そこを踏まえて私の一番言いたいことを要約すると「ゼノ様をもっと讃えよ」ってことになる。作品の評価云々とは別に主人公の信者になりそう、という意味では稀有な一本かもしれない。


2023-08-22.

『アイドルマスター ミリオンライブ!第1幕』観てきました。

 10月から放送開始するTVアニメの先行上映バージョンで、第1幕は1話〜4話に相当する。総集編みたいに「TVアニメを劇場版っぽく仕立てた」わけではなく本当にそのままTVアニメの内容を繋いでいるので、「あ、ここでAパート終了だな」ってアイキャッチが入ったり、話を跨ぐと同じ遣り取りがもう一度繰り返されたりする。ただし毎回OPやEDが流れるわけではなく、事情をよく知らないで観に来た人が「変な映画だな……?」と訝る程度に留まっています。

 さて、アニメの感想を書く前に概要をザッと解説しよう。『アイドルマスター ミリオンライブ!』は“アイドルマスター”の一部を構成するプロジェクトの名称であり、2013年にソシャゲとして配信を開始しました。配信元が「GREE」であったため当初は「グリマス」と呼ばれていましたが、プロジェクトの拡大に伴い「ミリマス」もしくは「ミリオン」と呼ばれることの方が多くなりました。なおプロジェクトの基幹であったソシャゲは2018年、つまり5年も前にサービス終了しており、現在は『アイドルマスター ミリオンライブ!シアターデイズ』(ミリシタ)という2017年から始まった音ゲーが新たな基幹となっています。『アイドルマスター シンデレラガールズ』より後発ということもあり、プロジェクトそのものの知名度はデレマスよりやや下かもしれない。というか、アイマスに疎い人だと「このアイドルはミリマスかデレマスか」の区別が付かないと思う。ぶっちゃけ私も「横山奈緒」をデレマスのアイドルだと勘違いしていたことにやっと気づいた(存在はサンキューユッキで知った)。ミリマスの特徴は「アニメ版『アイドルマスター』と地続きであること」、カードのイラストはアニメ制作会社「A-1 Pictures」が手掛けているし、アイドルたちが所属するプロダクションはお馴染みの「765プロ」で春香や伊織なども出てきます。実はデレマスも初期に765プロのアイドルたちを出していたが、だんだんフェードアウトしていったため「舞台となる世界は共通しているが所属する事務所は別」というのが暗黙の了解になっている。2014年公開の劇場版『輝きの向こう側へ』でミリマスのアイドルたち7名がバックダンサーとして登場し、ここからすぐにミリマスのアニメ本編に繋がっていく……かと思われたが、なんと9年も掛かりました。時代の変化もあって3Dアニメになっており、『輝きの向こう側へ』と同じ2Dアニメでのミリマスをずっとイメージしてきたファンは気持ちの整理がつかないところかもしれません。ちなみに私はゲーム本編は触ったことがなく、ゲッサンのコミカライズは読んだけど内容ほとんど覚えてない……という層なので3Dアニメ化にはそこまで抵抗がなく、「最近の2Dルック3Dアニメはすげぇなぁ〜」と普通に感心しました。ちなみにミリマスのコミカライズは『Blooming Clover』というタイトルが現在も連載中であり、一時期コラ素材として猛威を振るった「わかってくれないりっくん」が出てくるのはこちらの方。

 で、アニメの感想。ハッキリ言って予告編があまり面白くなさそうだったので事前の期待は盛り上がらなかったが、蓋を開けたら「面白いやん!」と素で感激してしまった。単に予告編の出来が良くなかっただけだ、これ。様々な部活の助っ人としてあちこちに顔を出して充実した青春を送っているものの「一番やりたいこと」が見つからず微かなモヤモヤを抱えている少女「春日未来」は、たまたまチケットを貰った765プロのライブを鑑賞しに行って「私の一番やりたいことは……アイドルだ!」と確信する。ライブのときに隣の席だった少女「最上静香」とも仲良くなり、彼女もアイドル志望だったことから一緒にレッスンに励むが……といった感じで、1話目が「アイドルとの出会い」、2話目が「オーディションへの挑戦」になっています。ネタバレというほどでもないだろうから書いちゃうけどオーディションには合格します。緊張のあまり実力が発揮できずボロボロになってしまう静香を支えて限界突破し領域展開(ではない)するシーンは感動的でしたね。私はあそこで脳内に「至高天・黄金冠す第五宇宙」の詠唱が流れましたよ。プロデビューこそまだだけどアイドル候補生として765プロ入りを果たした3話目、ここから一気にアイドルの登場数が増える。ミリマス知らない人たちが混乱し出すところでしょう。私も混乱した。特に「望月杏奈」(髪が青紫の子)はスイッチが入ると性格変わるみたいで普段と様子が全然違うから「別のキャラか?」って錯覚しそうになりました。

 ミリマスには『アイドルマスター』から登場している13人のアイドル(765PRO ALLSTARS)と39名の新人アイドル(MILLIONSTARS)、計52名ものアイドルが存在している。第1幕(1〜4話)の時点で52名全員が登場するわけではないにせよ、まったく予備知識のない人が劇場へ足を運ぶと圧倒されるかもしれません。写真は画面に映るので、39名全員がアニメに登場する手筈となっている……と思います。白石紬や桜守歌織といった私でも知っているキャラの本格的な活躍は第2幕以降になるのかな。信号機トリオ(主役級の3人)を除くと第1幕で目立っていたのは個人的な印象だと「周防桃子」「徳川まつり」「七尾百合子」「野々原茜」「馬場このみ」「横山奈緒」「ロコ」あたりかな(50音順)。特にロコちゃんは毎回「ロコ(ROCO HANDA)」と表記されるので「だからハンダってなんだよ!」ってなります(本名が「伴田路子」らしい)。劇場版で顔見せしたメンバーはそれこそ「劇場版で活躍したから」か抑え目になっていたが、最上静香を指して「ちょっと志保ちゃんに似てない?」と言われ心外そうな顔をする志保が映るなど「しずしほ」の予感がほんのり漂っている。今回のアニメで一番印象が変わったキャラは「伊吹翼」かな。もともと「小悪魔っぽい言動」をするという設定だったが、ゲッサンのコミカライズなどではキレイ系というよりカワイイ系の描写だったためセクシーというより「愛嬌があって憎めない」みたいなイメージだった。しかし3Dモデリングの影響か、今回のアニメではスタイルの良さが異様に目立つ。「脚なっげぇ……」と思わず溜息をつきたくなるほど。これで14歳ってマジ? とプロフィールを確認しに行っちゃった。デレマスの「大石泉」よりも年下なのに泉ちゃんよりバストが大きく、泉ちゃんよりウェストが細いという反則じみた体型を有している。翼とデートの約束をしているPに対し静香が犯罪者に向けるような眼差しをするシーンがあるのですが、あのへん割と洒落にならない雰囲気なんだよな……色気だけではなく才能も抜群で、「天才はいる。悔しいが」というフレーズが脳裏をよぎります(中の人ネタ)。冗談抜きに「場の空気を変えるキャラ」と化しており、このアニメがキッカケで翼ちゃんに魅了される人が急増することは論を俟たないであろう。

 まとめ。「予告編より本編の方が圧倒的に出来がいい」という珍しいタイプの作品。予告編で切り出された「いまいちに見えるシーン」も、本編の流れを踏まえて見ると「いいじゃん」ってなるのだから不思議だ。2Dアニメである『アイドルマスター』への思い入れが深い人ほど3Dアニメな本作に対する抵抗感も強いのだろうけど、とりあえず翼ちゃんの脚目当てに映画館へ行ってみてもいいんじゃないかなって誘惑してみます。9月の第2幕と第3幕も当然観に行くつもりですが、第2幕が上映される9月8日はSEEDの特別編(3部作の2作目)と劇場版シティーハンターが重なっているから大変。昔みたいに一日で映画を2本も3本もまとめて観れるだけの気力はないし、他にやりたいこともあれこれあるので都合つけるのに四苦八苦です。

『マギアレコード』6周年&『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語』10周年、8月22日より新魔法少女「悪魔ほむら」ピックアップガチャ開始

 1周年で「アルティメットまどか」が実装されてから5年、周年期間に差し掛かるたび「次は来る」「次こそ来る」「きっと次は……」と囁かれ続けてきた悪魔ほむら(デビほむ)がようやくプレイアブル化を果たします。「そもそもデビほむってマギレコにおいてどんな位置づけになってるの?」と未プレーの方は疑問に思うかもしれませんが、安心してください、古参プレーヤーでも「ぜんぜんわからない 俺たちは雰囲気でデビほむを待ってる」と返答するしかない状況、要するにほぼ「無」です。マギレコの世界ではデビほむどころかまどマギ本編の眼鏡を掛けていないほむら、いわゆる「クールほむら(クーほむ)」すら存在していませんからね……完全に「別世界の可能性」という扱い。「晴着ほむら」という「眼鏡ほむら(メガほむ)の肉体にクーほむの記憶と精神が宿った特殊なほむら」もいますが、彼女も一時的なものであってマギレコ世界にずっと留まっているわけではない。第一部でワルプルを撃退したこともあり、第二部以降は見滝原勢がほとんどストーリーに絡まなくなるため、何ならメガほむさえ最近は存在を忘れそうになるレベルだったりする。ほむらはワルプル戦の途中から時間停止が使えなくなる(ほむらの魔法の核となっているのは砂時計であり、砂を遮断することで時間を止める。砂が落ち切ると時間停止ができなくなる。落ち切った砂時計をひっくり返すことで時間遡行して最初からやり直す)設定もどう処理されているかよくわからず、「密かにデビほむが干渉してワルプル後も時間停止できるようになっているのでは?」みたいな予想をする人もいた。斯様にデビほむはマギレコにおける辻褄の合わない部分や謎が残るところに対する棚上げ役、デウス・エクス・マキナならぬデビル・エクス・マキナとして機能する面があり、ことあるごとに「この奇妙な箇所はデビほむが干渉したからでは?」と疑惑が持ち上がることもあった(たとえばまどマギの世界ではマギレコの主人公である「環いろは」は魔法少女になっていないのに、マギレコの世界では「たまたま足元の小石を蹴ったせいで運命が変わって魔法少女になった」と説明されており、その分岐が単なる偶然ではなくアルまどの宇宙に亀裂を入れるためデビほむが仕組んだ計略だと深読みする向きもあった)ものの、デビほむの関与を決定づける明確な描写は終ぞ出てきませんでした。今後もデビほむが本編やイベントのストーリーに絡んでくるかどうかは依然として不明な状況です。

 公式パロディ漫画『マギアレポート』を担当している「PAPA」のデザインによるデフォルメ版「悪魔ほむらちゃん」は去年既に実装されており「本家よりもパロディが先行する」という異例の形にはなったが、何にせよこれでアルまどとデビほむを編成することが可能になります。マギレコには「インフィニットいろは」というまどかとは異なる「円環の理」が存在しており、更には最近「ヒストリアやちよ」という「歴代魔法少女たちの希望を束ね『魔法少女の歴史そのもの』と化した七海やちよ」(やちよは他の魔法少女の希望を受け継ぐ特性があり、このため本来なら加齢とともに衰える魔法少女としての力が持続する、つまり『未来を信じるみんなの希望』を背負い続けることで理論上は無限に強くなれる何気にぶっ壊れた存在)も実装されており、アルまど・∞いろは・ヒスやち・デビほむ揃い踏みという物凄い絵面を再現することもできるようになるワケダ。別に概念でも何でもない、アニメ放送に連動して実装された魔法少女である「黒江」ちゃんがゲーム上はその面子と並んでも遜色ないレベルの強さだったりするのがアレですが……百禍チャレンジクエスト(超高難易度クエスト)もだいぶ黒江ちゃん頼りで強引に突破している。

 そして6周年でガチャに大きな梃入れが入りました。「☆4魔法少女(最高レアリティ)提供割合2倍」です。現在開催中のヒスやちPUも「提供割合2倍」ですが、特別なフェスガチャだからとかではなく今後もこれが恒常化する模様だ。マギレコの☆4魔法少女出現率はFGOの☆5サーヴァントと同じく1%であり、ソシャゲとしてはエゲツない部類に属します。なので過去何度かに渡って救済策が施されてきました。一つ目が「100連以内に☆4魔法少女1人確定」、サービス開始から5ヶ月経った2018年1月に「美樹さやか」実装とともに引きが悪い人への最低保証、いわゆる「天井」が設けられました(当時の様子を伝えるマギレポ)。これは99連以内に☆4魔法少女が引けなかった場合、必ず100連目が☆4魔法少女となるシステムです。☆4魔法少女を引いた時点でリセットされますから、1連目だろうが99連目だろうが「アタリが出たらまた最初から」だ。ピックアップごとにカウントされるのでバラバラな回し方をすると意味がありませんけど、「同一のPUを回し続けるかぎり☆4魔法少女の出現率は1%を切ることがない」という、何の保証もなかった昔と比べたら画期的な仕様になりました。ただし確定するのはあくまで☆4魔法少女であり、「ピックアップ対象が引ける」という保証まではしてくれない。マギレコにおけるPU☆4魔法少女の出現率は0.6%、「天井」における出現率は60%なので結構すり抜けが多い。「FGOよりも最高レアリティが出やすい反面、FGOよりもすり抜けやすい」と言われる所以です。

 二つ目の救済策が「調整屋コイン」、2019年10月から実装されたアイテムです。ガチャ1回ごとに1枚獲得することができ、一定数集めると任意のアイテムと交換できる仕組み。グラブルやってる人なら「蒼光の御印みたいなの」で通じるだろう。「任意のアイテム」の中にピックアップ魔法少女が含まれており、ようやくこの時から「何連でお目当ての魔法少女を確実に入手できるか」という目処が立つようになりました。なので調整屋コインによる交換を「真の天井」と呼ぶ向きもある。当初は☆4魔法少女を交換するのにコインが300枚必要だった=「真の天井」は300連だったが、翌年12月から緩和され200枚で交換可能になった。コインは複数の種類があり、Aというピックアップガチャからは赤いコインが、Bというピックアップガチャからは青いコインが貰える……とあらかじめ決まっていて、交換対象も当然それぞれ違うのでちゃんと確認しないと「青いコインで交換できる☆4魔法少女が欲しかったのに間違えてAガチャを200連分回してしまった」なんて事故が起こりかねない。また有効期限があり、過ぎると消滅しますから持ち越しも不可です。調整屋コインは100連以内の確定枠と違ってガチャ結果に左右されず確実に溜まり続けるため、たとえば1回すり抜けて199連目でようやくピックアップ☆4魔法少女を引いた……という場合でもあと1回ガチャればコインで交換して凸れます。マギレコは凸数によって魔法少女の使用感が大きく異なる(FGOで喩えると未凸の子は概念礼装を1枚しか装備できないが完凸した子は4枚装備できる、なので未凸の高レアより完凸の低レアの方が強いケースもある)から「消滅しない天井」のありがたみが他のゲームとは違う。逆に言うと「凸前提の仕様がエグい」わけだが。あと三つ目の救済策として「デスティニークリスタル」というのもあるが、あれは無記名霊基みたいなものでほとんどのプレーヤーには縁がないから詳述は省きます。有償石限定の「ステップアップガチャ」なる優遇策も、無課金勢や微課金勢には縁がないので割愛。

 さて、話を戻して「☆4魔法少女提供割合2倍」の件です。これにより☆4魔法少女の出現率は2%、ピックアップ☆4魔法少女の出現率は1.2%に上昇する。10連を回したときに発生する「☆3以上確定枠」での出現率は2.4%、これまでは「10連ガチャを回したときにピックアップ☆4魔法少女が引ける確率」は1割を切っていたが今後は1割を超える計算になります。ただし出現率が倍になっても天井の仕様は据え置き、相変わらず確定枠は100連以内のまま。50連以内で確定にしてほしかった、と求めるのは強欲だろうか。先述したがマギレコは凸数が重要なゲームゆえ、ホーム画面に置く観賞用とかならともかく高難易度クエストで普段使いすることを考えるとガチ勢ならずとも「なるべく完凸を目指したい」という結論に落ち着くのです。完凸に必要な枚数は、☆4魔法少女の場合だと4枚――FGOで言うところの「宝具4」を狙わなくてはならない。「真の天井」も交換は1回までなので、「最大800連で完凸」とはならない(コインの交換対象として復活するのを辛抱強く待ち続けられるのであれば、年単位の時間は掛かるかもしれないが800連以内で完凸できる)。実装直後に完凸を目指すと際限なしの沼が広がっている、それがマギレコのガチャなのである。見方を変えると「完凸しなきゃ戦力的には微妙だし、パスでいいかな……」ってなるピックアップも多く、ある程度戦力が揃ってくると新章やら新規イベントやらが始まっても全然ガチャを回さなくなるから石やガチャチケは案外貯めやすいゲームなんですよね、マギレコ。私もデビほむに備えてここ2、3年はガチャを控え目にしており、ログインも途切れがちであまり熱心にプレーしてこなかったもののそれでも軽く1000連分を超えるリソースがあります。控え目といってもちょくちょく回していたし、本気で節制に励んでいたガチ勢ならこの数倍は貯めていてもおかしくない。とりあえず200連回して、行けそうだったら完凸チャレンジする、無理そうだったら復刻でまたコインの交換対象になるまで待つ、ってな方針で臨みたい。

 しかし悪魔ほむら実装といい、確率2倍といい、毎日レアガチャ1回無料(FGOで言うとストーリー召喚でおはガチャが無料になる感じ)といい、最大660連ガチャ無料といい、大盤振る舞いすぎて「そろそろサ終が近いのか?」と心配する人も出てきている模様。毎年この時期は大盤振る舞いしていてそのたびサ終疑惑が持ち上がるから恒例行事ではある。スケネオーことScene0も未だに開催されていないから、少なくともすぐすぐには終わらないはずですが……2年以上も続報が途絶えているスケネオー、6周年記念トークイベント「Magia Day 2023」に「下倉バイオ」が登壇し、新情報も報じられる予定となっている。遂に「愛生まばゆ」のCVも明らかになるのか? 気になるのは「シークレットゲスト」の存在、いったい誰なんだ。まさか、虚淵御大……?

【追記・更新】【期間限定】「サーヴァント・サマー・フェスティバル2023!」開幕!

 雨の森の魔女スタイルのミコケルというかバーヴァン・シー、いいよね……としみじみ噛み締めるサバフェス2023。キャラデザを担当した望月けいのイラストを見るとよくわかるが結構胸デカいんだよなトリ子は。めろん22のイラストはさすがに盛りすぎですが……めろん22と言えば起き抜けにUDKとはうってかわってのメイド服姿を見せつけるバゲ子が衝撃的でした。「UDK」は「うお、デッカ……」の略だというネタを信じそうになる迫力だ。第7節からハワトリアの西部編に入り、はぐれて以降出番のなかった鈴鹿とガウェインが久々に登場し、食っちゃ寝していたらしいメリュ子もようやく顔を見せます。マスター大好き勢の代表となりつつある水妃モルガンもお出ましとなるが、メリュ子といい彼女といい「できること」の規模が大きいサーヴァントはやることなすこと派手で「これに付き合えるぐだが一番の大物だな」という思いが深まっていきます。巨大化したクロエに渡すイリヤたちの同人誌が『KALMIA ARCHIVE』(ひろやまひろしが出したFate同人誌の総集編)だったり牛若丸と景清の組み合わせで執拗に『源平討魔伝』の話を持ち出そうとする巴さんがいたりスーパードクターAというギリギリのラインを攻めたりと小ネタの数々も面白いし、満足度の高いイベントシナリオに仕上がっていました。各サークルのワチャワチャした感じも楽しかったです。「この円卓勢にベディも混ざっていれば……」みたいな具合にシナリオへ絡んで欲しかったサーヴァントがもっと何人もいるけど、現状でも結構なボリュームであることを考えるとさすがに望みすぎであろうか。

 そしてお待ちかねの「サーヴァント・サマー・フェスティバル2023! メリュジーヌ(ルーラー)ピックアップ召喚」も到来、ピックアップサーヴァントはすべて水着の妖精騎士というアヴァロン・ル・フェ好きには垂涎のたまらない代物だ。「ペース配分間違えてバサトリアPU回し過ぎて石も残り少ないが――別に、11連で全員を当ててしまっても構わんのだろう?」と心の中でアーチャー(stay night)ごっこしながらガチャったところ、さすがに全員は無理だったが一発で水着メリュジーヌを引き当てるというラッキーに恵まれました。その次の11連でミコケルも引けて、残すところはバゲ子のみに。しかし良かったのはここまでです。バゲ子を追い続けるか改めてクロを狙うか決め切れず、画面フリックしてPU1を回したりPU2を回したりとフラフラした末、どっちも引けずに石が尽きました。最後の単発でPU2から金カードが出現し、望みを託すもプリテンダーで「ああ、ミコケル宝具レベル2か……やっぱり☆4のダブルピックアップはなぜか片方に偏るなぁ」と思ったら恒常の「ヘファイスティオン」だったときは笑うしかなかった。

 観念して翌日コンビニに行き、林檎のカードを投入してどうにかバゲ子とクロエを入手しましたけど、クロエが来る前にバサトリアが宝具レベル5になるという「こんなこと本当にあるんだ……」って光景を目の当たりにして呆然としました。鈴鹿が宝具4止まりなので、今回の水着ガチャで唯一宝具マしたのがバサトリアだったという。ちなみにメリュ子は宝具2でミコケルは宝具3です。PU☆5サーヴァントの出現率が0.8%であるのに対しダブルPU☆4サーヴァントの出現率はそれぞれ1.2%なので、実はそんなに大差がないんですよね。クロエを宝具5にするまでにバサトリアを宝具7にしたひろやまひろしバゲ子を宝具5にしようとしてメリュ子が宝具7になっためろん22みたいなケースがあちこちで観測されています。見かけた中で一番ひどいのはミコケルを宝具5にしようとしてメリュ子が宝具11になった人。ミコケル1枚引いた時点で既にメリュ子の宝具レベルは7、そこから更にメリュ子4枚引いたけど結局ミコケルは宝具4止まりで撤退したという。マジでFGOは☆4サーヴァント狙いのプレーヤーに対する救済策も急いでほしい。それはそれとして、バサトリアに関してはせっかくなのでこのままレベル120を目指そうと考えています。狙って宝具5を達成したわけではないにせよ、今回実装された8騎(周年のトネリコと配布のノクナレア含む)の中でもっとも欲しかったのが彼女だったんですからね。「聖剣、抜刀」のシーンはやっぱり大好きですし宝具演出を見るとテンションぶち上がる。単純に強いおかげで90++も楽々周回できています。これから立ち塞がるボスどもをどんどん屠っていこうな……。

・拍手レス。

 バサトリア入手おめでとうございます!自分はまだ引けてないので追いたいところですがPU2の妖精騎士が控えてるので迷ってるところです。星4の単体PUって今はやってないんですね。(天井システム絡みでしょうか…?)やはりダブルPUは悪い文明…

 ありがとうございます。天井実装の関係か星4の日替わりPUがなくなったのは痛いですね……せめて11連回すごとに専用コインを1枚配って、10枚集めたらPU星4と交換できるみたいなシステムにしてほしいっス。ダブルPUでコレなんだからトリプルPUのうえ単独PUがなかった初代水着イベントのガチャ(日替わりになったのは復刻時)の闇の深さは半端じゃない。

 彷徨える艦隊好きだったなあ。田中芳樹っぽいロマンあふれるSFで。

 再開の芽が出てきたことは喜ばしい。この調子でジェネシス2〜3と外伝4も出してほしいな。


2023-08-14.

・遅まきながら『ノーゲーム・ノーライフ』の12巻をやっと読み終えたので十六種族(イクシード)の記事を更新した焼津です、こんばんは。

 ここまで遅れたことに何か深い事情があるのかと申せば実のところ何もなく、ただ単に積んでることを忘れていたというか数日前に「あっ、そういえばノゲラの新刊買ってたんだっけ」と思い出して読み始めた……ってだけのことです。12巻は言うなれば「魔王編」の前編であり、あまりキリの良いところで終わらず「次巻につづく」となりますので「魔王編」をまとめて読みたい方は13巻が出るまで積んでおいた方が良いかも。13巻、巻末予告で「夏頃に出せるといいなぁ……」とありますが今のところ9月までの予定には入っておらず、最短でも10月刊行って塩梅ですが。

水上悟志「戦国妖狐」アニメ化!全3クールで放送、斉藤壮馬・高田憂希ら出演(コミックナタリー)

 原作は2016年に完結済ということもあって、3クールかけて最後までやるとのこと。同じ水上悟志原作アニメ『惑星のさみだれ』は後で観ようと視聴をサボっているうちに芳しからぬ評判が聞こえてきて原作イメージが壊れるのを恐れるあまり「一旦封印」という扱いにしていたが、いい加減に向き合うべき時か。好きな作品のアニメ化って「放送開始しても事前の期待が高すぎるせいでつい視聴を後回しにしてしまう→評判が良いとその時点で満足してしまうし、評判が悪いと観るのが怖くなる→どっちにしろ観ないまま終わる」というパターンが多いんですよね。今期も七つの魔剣とか夢見る男子はまだ観ていない。あまり期待していない作品の方が構えず気楽に観れるから「放送前にチェックしていたアニメをスルーして未チェックだった作品にハマる」という現象が起こってしまいがちである。『江戸前エルフ』が完全にそのパターンだった。

 さておき、『戦国妖狐』は全10巻のさみだれよりも長い全17巻のコミックです。全17巻を3クールで終わらせるのはややキツめであるが、ギリギリ押し込めないこともないボリュームかな。細部を端折りまくって3クールに収めた『うしおのとら』の原作が全33巻(外伝も入れると34巻)だったことを思えば尺的に恵まれている方ではある。不安がっている人を多く見かけるけど、PVを観た感じでは結構期待できるんじゃないかな……って気が個人的にはします。アニメ化に合わせて原作も新装版を全6巻で刊行予定とのこと。そういえば『惑星のさみだれ』は再版だけで結局新装版出なかったっけ。完全版みたいなの、出ると予想してたんだけどな……。

「歴史に残る悪女になるぞ」TVアニメ化決定 ちょっとズレた悪役令嬢転生記(コミックナタリー)

 あ、これ1巻だけ読んだことあるやつだ。まさかアニメ化まで行くとは……もはやブームを通り越してジャンルとして定着しつつある「悪役令嬢モノ」の一種です。乙女ゲームの悪役令嬢に憧れていた主人公が当の悪役令嬢「ウィリアムズ・アリシア」(この手のラノベにしては珍しいが名・姓ではなく姓・名表記)に転生し、タイトル通り「歴史に残る悪女」を目指すというややコメディ寄りの一作。主人公はちょっとズレているので、悪女ムーブしているつもりがどんどん周りの評価を上げていく……という裏腹な展開になっています。ぶっちゃけ主人公の抱く「悪女」像、メチャクチャふんわりしてるんですよね。アグリッピナとか妲己とかイザボーとかルクレツィアとか、ああいうガチ系の悪女ではなくて「周りから嫌われようと言いたいことをズバズバ言う芯の強い女性」くらいのイメージしかない。己を貫いた結果として非難されようともお構いなしで泰然としている、そういう存在になりたくてことあるごとに「我悪女ぞ?」とアピールすることが彼女のアイデンティティになっているが、そこに「悪女」という二文字から想起される悪辣さ、酷薄さ、凄惨さは籠もっていません。なので「それって別に悪女ではないのでは?」とか「歴史に残る悪女になることが本当にやりたいことなの?」というツッコミ要素が絶えず付きまとうし、「悪女なら身体的にも強くないとね」って剣術を習い出すなど出発点からして既に間違っている雰囲気がプンプン漂う。どっちかと言うと「ハリウッド映画に出てくる気の強いヒロイン(腕っぷしも強い)」が彼女の理想に近いのではないかと。悪役志願の主人公がなんやかんやで持て囃されていく、みたいな話は類例として『俺は星間国家の悪徳領主!』がありますけど、あれは「前世でいい人を貫いた結果悲惨な最期を迎えた主人公がその反省として生前とは正反対の悪徳領主を志すけど価値観の相違もあって全然悪役になれない」という構図が面白さのエッセンスになっていました。『歴史に残る悪女になるぞ』の主人公は過去に何かがあって「チヤホヤなどいらぬ」とサウザー系女子になったわけではなく、ただ「綺麗事しか言わない頭がお花畑のいい子ちゃんなんて大嫌い!」という感情を根拠に「いい子ちゃん」のアンチである「悪女」を理想として掲げていく。そこらへんがズレの源泉になっているため滑稽譚というよりも「なんだこれ」って感じの「変な物語」に仕上がっているわけだ。「いい子ちゃんが大嫌いな主人公」というと『天になき星々の群れ フリーダの世界』を思い出すな……「あなたみたいなのが百万人いたって、犬死にした死体が百万体並ぶだけよ!」は強烈だった。

 努力家で行動力があり、懶惰とは無縁の生活を送ってしまう主人公アリシアちゃん。「自分さえ良ければそれでいい」と嘯きつつ弱者が虐げられる光景に心を痛める。自分勝手に振る舞おうとしても情の深さが隠し切れない。明らかに悪女の才能がないので根本的に目標設定を見直した方がいいのだが、あくまで頑なに「悪女の星」を見上げて手を伸ばし続ける、そういう変なところがこのシリーズの味にもなっているので「突き進んでもらうしかないか、その道を」という結論になります。読んでないけど3巻のキャッチコピーが「やったわ、念願の国外追放よ――!!」という時点で「ああ、カタリナとかプライドとは違うタイプなんだな」ってことは伝わるだろう。アリシアちゃんは心優しい人に接しても翻意しない、いや微妙にするんだけど「今世は悪女を貫くけど来世はああいう人になろう」とあくまで今世の方針そのものは譲らないなど、『ナルミ』並みの決め打ち思考がだんだん怖くなってくる。なんというか「おもしれー女」を眺める作品というより「正義の味方を目指す衛宮士郎」を見守っているときのような感情に陥る作品なんですよ。さぁ理想を抱いて溺愛されろ。悪役令嬢と言えば10月に『私の推しは悪役令嬢。』が放送されますね。悪役令嬢モノながら主人公自身が悪役令嬢に転生するわけではなく、「乙女ゲーの主人公」に転生して「推しの悪役令嬢と仲良くなりたい!」という一念のみで行動する変わり種です。コミカライズの出来が良いので気になる人はまず1巻だけでも読んでみてはいかがだろうか。それと最近『華麗なる悪女になりたいわ!』というライトノベルが出て内容気になっているけどまだ読んでない。

ジャック・キャンベルの『彷徨える艦隊12 特使船バウンドレス』、10月18日に発売予定

 『彷徨える艦隊』本編の新刊!? いったい何年ぶりだよ、と調べたら『彷徨える艦隊11 巡航戦艦レビヤタン』が2016年10月刊行だったのでちょうど7年ぶりだった。そんなに経っていたのか……『彷徨える艦隊』は「仲間を助けるために死んだ」と思われていた主人公「ギアリー大佐」(殉職扱いだったため昇進している)がコールドスリープから100年ぶりに目覚め「伝説の軍神」として活躍する、ガワだけ見ればなろう小説にもありそうなSFだけど戦い以前の段階でボロボロになってる組織を立て直すため苦労するなど割と世知辛い要素もある。艦隊戦を重視したスペオペということで根強い人気を誇ったシリーズですが、なにぶん本編の続きが7年も出ていなかったからここ最近は存在を忘れ気味でした。構成としては1〜6巻が第一部、7〜11巻が第二部、12巻からが第三部です。原書でも第二部終了から第三部開始まで6年掛かっているので、7年も間が空いたのは別にハヤカワが翻訳をサボっていたからではない……と言いたいところだが、本編の数百年前を舞台にした番外編『彷徨える艦隊 ジェネシス』3部作(どうもこっちを書くために本編が止まっていたらしい)は最初の1冊しか翻訳されていないからやっぱりサボっていたのでは? 原書では外伝の4巻も出ているけど邦訳版は3巻で止まっているし。ともあれKindle Unlimitedなら本編11巻までと外伝の1〜3とジェネシス、計15冊がすべてタダで読めるから時間のある方はこの機会にチャレンジするのもアリかもしれません。ちなみに原書の最新刊は14巻、つまり12巻の売れ行きさえよほど悪くなければ来年や再来年にも翻訳の新刊が出るはずです。

 余談。1巻が出たのはハヤカワ文庫がトールサイズに移行する前で、ちょうど2巻からトールサイズ化が始まったので既刊を並べると1巻だけ浮くという悲しい仕様がありました。二版以降からトールサイズになってるかもしれないけどそれだけのためにわざわざ買い直す気もしないので放置しています。あと10月に出る12巻は1540円(税込)となかなかの金額ですが、ボリュームは「704ページ」と過去最厚になる(これまでの最厚は外伝2で「624ページ」)から待ちわびていたファンはむしろ喜ぶのではなかろうか。

【期間限定】「サーヴァント・サマー・フェスティバル2023!」開幕!

 開幕前日まで伏せられていた配布は☆4フォーリナーの「ノクナレア」、確かに2部6章キャラではあるけど水着でオリジナルキャラ実装という無法は予想していなかった。基本的に水着サーヴァントは「既に実装されているサーヴァントが水着霊基に変化したもの」ですからね。去年水着霊基という名目で「レディ・アヴァロン」がやってきた時点でもう「ルール? 何それ?」という状態に陥っていましたけども。竹箒日記(2023/8/11)によると社長(武内崇)がノクナレアを欲しがったことが今回のイベントの発端だという。てか奈須きのこの証言が脚色とかでないのなら、周年のトネリコ(水妃モルガン)も水着キャストリアも社長発案ってことじゃないか。そんなノリで決めておきながらしっかりプレーヤーから石を搾り取るイベントを成立させる経営感覚、まさに社長の為せる業といった趣である。

 開始早々からストーリーがおかしな方向に転がり始めているサバフェス2023のシナリオも期待通り面白く、「やっぱきのこがギャグ方面に振り切れたときのドライブ感はいいな、『歌月十夜』の頃から根本的なところは変わっていない」とカラダもココロもアツくなります。日記の方では喘息のせいで今年の前半ずっと体調が絶不調だったと書かれていて心配になったけど、ひとまずは安定してきたみたいで良かった良かった。これで心置きなくテンション上げられる。当然アルトリア・キャスター(バーサーカー)ピックアップ召喚もテンション任せでメンテ明け直後に飛び込みましたとも。バサトリアはもちろん引きたいがクロエも鈴鹿も欲しい、トネリコで苦戦したから天井分の石はもうないけど、いざとなれば課金という手もある。とにかく回してみるぜ!

 で、回した結果、呼符で水着鈴鹿が来て石ガチャでバサトリア2枚抜きしてあまりの引きの良さに調子こいてしまい「うおおっ、この流れに乗って水着クロエもゲットだ!」と深追いした末、クロが来ないままバサトリアの宝具レベルが4になった。石はまだ残っているものの妖精騎士勢揃いのピックアップ2も控えているし、ここらが潮時か……と無念ながら撤退しました。なるほど、これが限定☆4サーヴァントで沼るって現象なのね。恐ろしくなる、本当に。「いざとなれば課金」とは申し上げましたが、一応の天井が設けられている☆5サーヴァントならともかく☆4サーヴァントに関しては救済策が一切存在しないので踏み込めませぬ。私のイメージしていた課金ルートは「鈴鹿とクロエは出たけどバサトリアが出ない……仕方ねぇ、コンビニ行くか」みたいな感じでしたので。水着クロエが欲しいという煩悩自体は消え去っていないので、もしPU2を回した後で余力が残るようなら(とても残るとは思えない程度の石しか手元にないけど)未練がましくPU1を追い続けたい。ちなみにバサトリアはスキル上げで鬼のように「赦免の小鐘」を消費するからトネリコの育成がまだ終わってない人は小鐘の配分に注意だ。

 話をイベントに戻すと、新魔術礼装「サマー・ストリート」が貰えるのがありがたかった。所持しているマスター礼装はもう全部レベルMAXになってるんで礼装ポイントが勿体なかったんですよね。あの涼しげな装いで夏を満喫するぐだ子の姿を想像して笑みがこぼれてしまう。あとは小鐘がドロップするフリークエストを置いといてくれたら言うことないな……交換券の枚数じゃ焼け石に水です。差し入れをモーさん陣営にしまくったことは言うまでもない。


2023-08-07.

・8月になりましたが、今月から『アイドルマスター ミリオンライブ!』のアニメ『機動戦士ガンダムSEED スペシャルエディション』が劇場公開を開始するので時間のやりくりが大変だな、とスケジュールを調整する焼津です、こんばんは。

 ミリマスは10月から秋アニメとして放送される予定のTVシリーズを劇場で先行公開するというもので、全3幕――8月に第1幕、9月に第2幕と第3幕が公開される予定となっている。SEEDの方はHDリマスターの総集編を隔週公開するというもので、SEEDが3部作、SEED DESTINYが4部作。つまりミリマスとSEED関連だけで10回は映画館に行かないといけないわけだ。うまくすれば1日に2本観れる可能性もあるが、たぶん上映回数少ないだろうしスケジュールが合うかどうか現時点では不透明だ。他にも『MEG ザ・モンスターズ2』とか『ジョン・ウィック:コンセクエンス』とか『オペレーション・フォーチュン』とか『マーベルズ』とか『青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない』とか劇場版はめフラとか、年内公開予定の観に行きたい映画がたくさんあるので大変です。『君たちはどう生きるか』も気になっているけどまだ観に行けてないし……ちなみに『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』は観ました。重要な「あるもの」を巡って様々な陣営の思惑が交錯する「巻物争奪戦」系のストーリーで、前後編ながら割とキリの良いところで終わる。PART TWOは物語類型で言うところの「聖杯探索」系ストーリー(定まったゴール地点に向けて旅立つ話)になるんじゃないかな、と思います。ストの影響で撮影に遅延が生じて予定通り来年中に公開できるかどうか怪しくなってきており、気を揉むところではある。

【期間限定】「Fate/Grand Order 〜8th Anniversary〜」開催!

 8周年を迎えたFGO、目玉のピックアップサーヴァントはトネリコでした。本編(というか第二部第六章)をやってない人だと「トネリコ?? 誰それ???」となること請け合いですが、第二部第六章踏破済みのプレーヤーからすると「そう来たかッッ」ってなるチョイスです。知らない人に対して解説するのは難しいというか、詳しく書けば普通にネタバレになっちゃうから扱いに困るんだよな……見た目とCVである程度察しがついてしまうところもあるが、詳細が知りたい人はちゃんと本編をクリアしましょう。

 私は当然我慢のがの字もなく即座にガチャガチャしました。あわや水着イベント前に石が尽きるかと思われたが、100連くらいでなんとか1枚ゲット。再臨ごとに外見と性格が大きく変わる仕様になっており、再臨セリフでアヴァロン・ル・フェ(第二部第六章)の内容を追想させるせいもあって涙腺を刺激される。スキル上げに216個もの小鐘を要求されるのは別の意味で泣けますけども。第3スキルが開幕時点ですぐに使えずチャージ5から始まるなど若干クセの強いスキル構成をしており、まだ使いこなせてはいないがスキルマしたら周回要員として重宝しそう。宝具レベル1で火力が低いから、というのもあるが単純に容姿が好きなので聖杯入れてレベル100にしました。なにげにレベル100のキャスターは作ってなかったからタイミングとしてはちょうど良かった。「せめて宝具レベル2に……」という気持ちがなくもないが、水着イベントも近いしグッと堪えています。

 その水着イベントの情報もちょっとだけ来ています。「サーヴァント・サマー・フェスティバル2023!」――2018年に開催された水着イベント「サーヴァント・サマー・フェスティバル!」以来実に5年ぶりとなるサバフェス開催だ。サバフェスは「サーヴァントたちによるコミケのような催し」で、賑やかなイベント内容のおかげもあって歴代水着イベントの中でも特に人気が高く、プレーヤーたちからずっと続編を期待されていました。水着イベントは配布も含めて7騎以上の新サーヴァントが実装されるだけにシナリオの規模も大きめで読み応えあるんですよね。今回はメインシナリオを奈須きのこが直々に執筆するというんだから期待は弥増すばかりだ。配布が誰なのか現時点では不明だ(水着ハベにゃん、水着コヤン、水着ウッドワス&水着ボガードなどの予想はある)が、目玉となる☆5の1騎は「キャスター・アルトリア」だと判明しています。キャスター・アルトリアだけどクラスはキャスターじゃないらしく、ちょっとややこしい。宝具演出がアヴァロン・ル・フェのクライマックスを意識したものになっており、「これサバフェス2であるとともにアヴァロン・ル・フェのアフターストーリーでもあるのでは?」という疑惑が高まっています。☆4の水着クロエと水着鈴鹿の画像も公開されていますが、残す3騎はシルエットのみ。どう見ても妖精騎士たちだろ、というフォルムであり、周年サーヴァントのトネリコ含めて5騎(配布次第では6騎)ものアヴァロン・ル・フェ関連キャラが新規実装されるという前代未聞のイベントになります。バランスも何もあったものではないが、正直楽しみで仕方ない。あと水着霊衣は立ち絵だけ公開されていた円卓勢に加えてオベロンも実装される手筈となっており、つまりオベロンもがっつりシナリオに関わってくる……ってコト? いったいどんな話になるのやら。「BBちゃんの逆襲/電子の海で会いましょう!」と告知していたのに蓋を開けたら「深海電脳楽土 SE.RA.PH」だった2017年のGWイベントが脳裏をよぎる。そういえば鈴鹿御前はあのイベントがFGO初登場だったんだよな……さすがに実装はないだろうけど残りのサクラファイブが立ち絵のみ登場するぐらいのことはあるかもしれない。

 そしてお待ちかねの福袋召喚、今回はなんと「デスティニーオーダー召喚」という有償石限定のガチャが新たに加わっています。有償石30個と、福袋の倍に相当する石が必要になるが「選んだ9騎の中から必ず1騎が排出される」という「自分でラインナップを決められる福袋」です。福袋よりは高いが「望まないサーヴァントが当たる確率」はかなり低減する。高いので少し悩んだ(福袋も併せて買う場合、ざっくり5000円以上掛かる)けど水着イベントへの期待もあるし購入しました。結論を述べると私が当たったのはコン陛下こと「コンスタンティノス11世」、パッと見サポート系ライダーのようでいて実はクリアタッカーとしての性格が強いローマ最後の皇帝。やったぜ、これでヨハンナさんの横に並べられる。ちなみにデスティニーオーダー、確定枠以外からは選択した9騎以外の☆5サーヴァントが出る可能性もあるので、2枚抜きや3枚抜きの場合は「選んでないのにナンデ??」というキャラが召喚されることもあるそう。私はコン陛下以外来なかったので「ふーん、そういうこともあるのか」って聞き流して終わりでしたが。通常の福袋は「5周年以降 男女×リリース順12分割」という一回見ただけでは把握し切れない内容。下調べの段階では「呼延灼ちゃん欲しいから女性の2022.7.30〜A引こう」と考えていたのに、ついうっかり姫様に目を奪われて隣の女性の2022.7.30〜@を回してしまった……ボタン押した後で「あっ、こっちじゃなかった」と気づくも既に召喚陣は回り始めており、結果として水着スカディが来ました。もう持ってるけど宝具レベル1だったし、重なったことでサポーターとしてだけではなくアタッカーとしても起用できるようになったからまぁいいかな、と自分を納得させた次第。水着イベントに備えて「8周年記念限定サーヴァント日替りピックアップ召喚」はスルー、とりあえずAP半減期間中に宝物庫周回しまくってQP貯めておかないと。

「大室家」映画化!中編アニメーション全2作品が来年公開 特報やキャスト一挙に解禁(コミックナタリー)

 えっ、あのニコニコ静画で配信された時期もある『大室家』がアニメ化だって? 『ゆるゆり』のサブキャラである「大室櫻子」とその姉妹たちをメインに据えたスピンオフ作品、それが『大室家』です。櫻子ちゃんはサブキャラにしては『ゆるゆり』本編でそこそこ出番のある子ですが、さすがにその姉や妹にスポットを当てるのは脱線しすぎだから……と、本編ではなかなか掘り下げられなかった部分をしっかり追及しており、スピンオフといえども『ゆるゆり』の作者である「なもり」自身が描いているのでファン必読の一作に仕上がっています。『ゆるゆり』の刊行速度を落とすわけにもいかない、って事情があるからか『大室家』の展開は非常にゆっくりしていて、「いつかアニメ化するかもしれないけど気が遠くなりそうなほど先だろうな」と思ってました。1巻の発売が2013年なので10年経ってようやく……といった塩梅である。掲載媒体がなくなったせいで休止していた時期があり、2巻と3巻の間が5年も空くというトンデモない事態に陥ったこともありましたが、そこを除けばなにげに1年1冊のペースで新刊を出していて意外と安定しているんですよね。最近はもう「『ゆるゆり』のスピンオフ」としてではなく「1個の独立した漫画」として扱われるようになってきており、「『ゆるゆり』知らないんだよなー」って人でも気軽に読み出していい雰囲気だ。

 映画化と書かれているが「中編アニメーション」ということは実質OVAみたいなものだろう。恐らく両方合わせても1時間半程度じゃなかろうか。近場の映画館でやるなら観に行くけど「最寄りの上映館が隣県」とかだったら配信待ちかな。ちなみに、『ゆるゆり』には『大室家』とは別に『東西南北!』というスピンオフ漫画がありますが、こちらは2話で止まっており、現状だと単行本化の見込みはない。電子化されてるので「それでも読みたい!」って方は購入されたし。私は読んでない(確かセールのときに買った記憶があるから読もうとすれば読めるはずだが)から「教師陣の青春時代」という概要しか知りません。

『少女☆歌劇 レヴュースタァライト 舞台奏像劇 遥かなるエルドラド』初の家庭用ゲーム作品タイトルが正式決定【ブシロードゲームズ発表会】(ファミ通.com)

 例のフロントウィングが制作するっていうスタァライトのコンソールゲームか。リンク先にも書かれているが「遥かなるエルドラド」は劇場版レヴュースタァライトに登場した戯曲、つまり劇中劇のタイトルでもある。「なぜ行ってしまうのだ、友よ」というセリフを親友であるひかりに去られてしまった自身の境遇と重ね合わせて華恋が涙する稽古シーンは心に突き刺さった人も多いだろう。だが「遥かなるエルドラド」という戯曲自体は劇場版においてそこまで大きな存在ではないというか、ぶっちゃけ映画を観た人でもこの30秒の動画程度の情報しか得ていない。一応、脚本を書いた樋口は内容を作り込んでいるらしく、「殺された父の探していた黄金郷(エルドラド)を目指し、愛も友情も踏み台にして仇を討ち船出する――復讐と黄金に取り憑かれた裏切りのダークヒーロー『サルバトーレ』の物語」という概要は明かされています。稽古していたわけだから恐らく九九組のみんなで「遥かなるエルドラド」を上演する予定だったんだろうけど、劇場版はその後バタバタして結局有耶無耶になっていました。それをまさか家庭用ゲーム作品で回収することになるとはな。演目が演目だけに劇場版スタァライトと密接にリンクした内容になる可能性が高いです。つまり、3年生編になるのではないかと。スタァライトはTVシリーズが2年生編、劇場版が3年生編となっているが、劇場版は3年生編のごく一部(と卒業後の進路)しか描いていないので大半はまだ手つかずなんですよね。なおアプリ版に当たるスタリラは華恋たちが今2年生なのか3年生なのかもハッキリしない謎時空に突入しており、もはやパラレルワールドと受け取った方がいい状態である。

 作品全体のタイトルになっている「スタァライト」自体が劇中劇であり、二人の少女の悲しい別れによって幕が引かれる内容に舞台少女たちの境遇を重ね合わせていく手法が採られたから、『舞台奏像劇 遥かなるエルドラド』もきっと華恋が自身の境遇を重ねていく形式になるのだろう。復讐を成し遂げ黄金の地へ辿り着くためにあらゆるものを裏切ってあらゆる場所を通り過ぎていく「終着にしか意味を見出せない男」サルバトーレに華恋はいったい何を視るのか。それはそれとして舞台版もそろそろ観ないとな……。

[EVO2023]「餓狼伝説」シリーズ最新作のタイトルは「餓狼伝説 City of the Wolves」に。ティザートレイラーの公開も(4Gamer.net)

 新作を作っているという情報は去年あたりから出ていたけど、遂にタイトルが公表されました。「FATAL FURY」は餓狼伝説の海外版タイトルで、ロックマンに対する「MEGA MAN」みたいなものです。餓狼伝説は1991年に稼働開始したアーケードゲーム『餓狼伝説 宿命の闘い』に端を発する対戦格闘ゲームのシリーズであり、単純に言えば30年以上の歴史がある。ゲーセンで1をやってた記憶がある私にとってストUとはまた違う思い入れの籠もったシリーズです。レバー入力の判定がシビアで、ストUよりも必殺技を出しにくかったため「餓狼伝説=難しい、ややマニア向け」という印象を持たれていたな。1992年に『餓狼伝説2 新たなる闘い』が稼働を開始、90年代の格ゲー界において不動の人気を誇った女性キャラ「不知火舞」が初登場した。当時は「なんてエッチな格好なんだ」「巨乳すぎる」と多くの青少年に衝撃を与えたが、今見るとそこまで際立って露出度の高い服装には見えないし「巨乳すぎる」というほどでもなくむしろやや控え目に映る(二次創作で盛られまくったせいもある)からお色気方面のインフレぶりはスゴいな。ラスボスである「ヴォルフガング・クラウザー」のステージではBGMとして怒りの日(モーツァルト版)が流れるため、未だに怒りの日を「クラウザーステージの曲」と認識している人間は少なくない。

 そして1993年にリリースされた「ガロスペ」こと『餓狼伝説SPECIAL』がシリーズのマスターピースであり、全国でもっとも遊ばれた餓狼伝説なのではなかろうか。翌年に出たKOF94のブームが凄まじすぎたせいでやや霞んだ感はあるが……ストーリーの整合性を無視して制作されたお祭りソフトであり、未だに公式大会が開催されているというのだから驚きだ。1995年に久々のナンバリングタイトル『餓狼伝説3 遥かなる闘い』がお目見えとなるが、ゲームシステムや話の雰囲気をガラッと変えたうえにゲーム自体の調整不足も相俟って否定的な意見が目立ったっけ。個人的にはボスキャラのひとり「山崎竜二」が好きだったな……中学生だった私は真似して片手をポケットに突っ込む癖が出来てしまったほどである。秦兄弟は外見を目にすれば「ああ、いたいた」となるけど正直名前は全然覚えていなかった。3の不評ぶりに慌てたのか、SNKは同じ1995年に早くも新作『リアルバウト餓狼伝説』を投入する。ここから餓狼伝説内における一つの流れ、「リアルバウトシリーズ」が生まれるわけだけど当時の私は短期間での新作開発ぶりが「濫造」のように見えてしまい、急速に熱が冷めてしまった。ちょうど格ゲーそのものに飽き始めた(ミステリに興味が移った)時期でもあり、『リアルバウト餓狼伝説』から先の作品はほとんど遊んでいません。1997年に『リアルバウト餓狼伝説スペシャル』、1998年に『リアルバウト餓狼伝説2 THE NEWCOMERS』、1999年に『餓狼伝説 WILD AMBITION』(シリーズ唯一の3D、通称「ポリガロ」)と『餓狼 MARK OF THE WOLVES』(MOW)を発表した後、開発会社であるSNKそのものがアレなことになって倒産してしまったため、餓狼伝説のシリーズ展開は一旦終了となってしまった。再開の目途が立たなかったせいで長らくMOWがシリーズ最終作と見做されていましたが、ようやくその不本意な看板が下ろせるようになった模様だ。

 開発者インタビューの内容からすると『餓狼伝説 City of the Wolves』のリリースは来年以降になりそうなので、つまり四半世紀ぶりの新作になります。シリーズとしては10作目、1998年にコンシューマ機で発売された『リアルバウト餓狼伝説スペシャル DOMINATED MIND』も含めれば11作目です。CSありだと熱闘(キャラをSD化したシリーズ)も入れるのかどうかって議論になるので少し面倒臭いんですが……さておき今回の主人公はMOWに引き続き「ロック・ハワード」、テリーに育てられたギースの遺児である。もともとMOWは続編を意識した作りでストーリーも完結していなかった(らしい、詳しいことはよく知らぬ)が、倒産のせいでMOW2を世に問うことはできなかった。2018年のインタビューによると「エンディングまでシナリオがあるはず」「シナリオは知らないんですけど、ゲームの中身は作ってた」「キャラクターは完成していたんですよね。新キャラクターも含めて」「開発途中で旧SNKがなくなってしまった」とのことです。このインタビュー、「MOW2は途中まで出来ていた」ことよりも「『風雲黙示録』の世界観は、『ブレードランナー』に影響を受けていた」って証言の方が衝撃的である。あのゲームやったことがある人は「どこが!?」とリアクションすること請け合いだ。『餓狼伝説 City of the Wolves』、タイトルからしてMOWの続編みたいな内容になると思われる(なおMOWが『餓狼伝説』ではなく『餓狼』だったのは稼働開始時点で作中の時代が近未来だったため、今はもうMOWの時代が結構な過去になってしまったのでCOWは『餓狼伝説』に戻した)が、さすがに24年も経っているから設定やストーリーが一部仕切り直しで変更されているかもしれないな。多少の不整合や矛盾があっても大らかな気持ちで見守るつもりです。

 ちなみに『餓狼伝説』の関連作として『龍虎の拳』というシリーズがあり、時代設定としては「『餓狼伝説』よりも過去の話」ということになっている。『龍虎の拳2』のラスボスが若き日のギースだったことからもそれは明らか。ガロスペやKOFでは時代設定の違いを無視していたため、ガロスペやKOFから入ったプレーヤーが混乱するポイントの一つである。トレーラーで確認できる「覇王翔吼拳!」のボイス、恐らく『龍虎の拳』の主人公「リョウ・サカザキ」の弟子でありMOWの登場キャラでもある「マルコ・ロドリゲス」のものであろうが、サプライズでリョウ本人が参戦する可能性も捨て切れない。時代設定は大雑把に言うと1〜リアルバウト2が90年代で、MOWはその10年後だから2000年代、『龍虎の拳』は『餓狼伝説』よりも十数年前なので70年代後半に当たる。ロックの見た目から察するにCOWはMOWからそんなに時間が経ってないと考えられるからリョウが出てくるとしたら50前後の姿になっているだろうか。調べたところによると老けたリョウは『餓狼伝説 WILD AMBITION』や『ネオジオバトルコロシアム』にて「Mr.KARATE」名義で出ているらしいが、ポリガロとかバトコロはまったくやったことないのでそのへん全然わからない……ともあれ、懐かしさもあるしCOWはちょっと遊んでみたい気分だ。

・大林林太郎の『ギルド受付職員兼パートタイム冒険者な僕のえっちな日常』読んだ。

 「18禁になろう」ことノクターンノベルズで連載されている、タイトル通り「えっち」な異世界ファンタジーです。副題の「前世の記憶とチートスキルで成り上がりたく候」でわかると思いますが、転生モノの一種でもある。ただ、少し珍しいのは「現地の住人である主人公の体に現代日本から転生したオタクの魂が入り込んでいるが、主人公の人格はそのままで体の主導権も奪われていない」という「頭の中に居候がいる」状態、『メギド72』で言うところの「シャミハザ」に近い格好となっています。類例がないわけではなく、むしろちょくちょく見かけるタイプではあるが、こういうエロ重視の作品ではノイズになりかねないので「少し珍しい」と感じました。

 貧農の出だからと周囲に蔑まれているギルド受付職員「カナタ」の中には、「ニッポン」なる国から転生してきたと主張する自称「エリートニート」の「タナカ」がいる――物心つく頃からタナカと一緒で、彼の助言によって読み書きを覚え知識を蓄え都会のギルド受付職員になることができたカナタ。彼にとってタナカは「厄介な居候」ではなく、ある意味で家族以上に親しい恩人であった。5の倍数の歳に一定確率で固有スキルを獲得できるこの世界において30歳になるまでお預けを食らったカナタであるが、やっと念願のスキルをゲットした……それも、タナカと一緒に。そう、スキルは魂ごとに付与されるため「二つの魂」を持つカナタは「二つの固有スキル」を取得する超絶特異存在であったのだ。カナタが授かったスキルのランクはB級だったが、タナカが得たスキルはS級――「A級までしか存在しない」とされてきた過去の分類概念をぶっ壊す特大のチートスキル「欲望の匣」。内容は「前世タナカがプレーしたエロゲーのアイテムや食べ物などをランダムで排出する」、言わばガチャであった……!

 という経緯で前世の記憶と知識を持つ同居人「タナカ」の恩恵を得たカナタくんがエロエロな日々を送る、「いかにもノクターンノベルズ」といった趣の異世界ファンタジーだ。タナカのスキルから排出されるアイテムは、レアリティの低いものだと「単なるハンバーガー」程度だが、レアリティの高いものだと「舐めるだけでえっちなフラグが立つキャンディ」だったりする。要は「異世界を舞台にしたえっちでファンタジーな『ド〇えもん』」ってわけだ。エロい『ド〇えもん』って、それほぼ『ぱちもそ』だな……2001年に発売された、「未来からやってきた犬型ロボットに便利アイテムを出してもらってヒロインたちにヤりたい放題するエロゲー」です。当初は『エロえもん』というタイトルで告知されていましたが、あまりにもヤバすぎるからか発売前に急遽『ぱちもそ』へ変更されたという曰くつきの一品。タナカのスキルは一種のガチャだからド〇えもんと違って任意のアイテムを出すことはできないうえ、アイテムを生み出すために経験値とMPを消費する必要があり、「便利だしぶっ壊れだけどそれなりに制約のあるスキル」となっています。

 こういう明るくバカバカしくてえっちな話が好きだから試し読みで気に入って即座に購入しましたけど、試し読みの範囲を過ぎたあたりから想像を超えて野放図な展開に突入していく。森の中でうっかり媚薬を開栓してしまったせいで発情した雌オークに(性的な意味で)襲われて童貞喪失、その後油断した雌オークの首を掻っ切って脱出します。初体験の相手を自ら手にかけるという重い展開……いや重いかこれ? タナカ的には「なかったこと」にしたい忌まわしき記憶なのにカナタ自身は「気持ちよかったしそこまで無理して『なかったこと』にしなくてもいいじゃん」とあっけらかんとしているなど、二心同体でありながら感覚の違いが出る描写もあって面白い。なお、タナカはカナタの体を動かすことはできないが感覚は共有しているという設定なのでカナタが気持ちよくなるとタナカも気持ちよくなる寸法であり、積極的にエロ方面の助言をしていく形となります。「強い牡の子種以外に興味ないの」とメスガキ風合法ロリババアエルフにフられたカナタは「高レベルの冒険者になって見返したい」と奮起し、以降はレベル上げ展開に差し掛かっていくわけだが、その途中途中でえっちなイベントが発生する。その中でも特にヤバいのは「レ〇プ願望のある女を探し出す眼鏡」か。まるでスカウターのように「該当の女性をレ〇プしたときのリスク」を判定するアイテムで、強姦しても訴える可能性の低いターゲットを街単位で検索することも可能という全力でポリコレを投げ捨てた設定がアツい。レ〇プ云々を脇に措いても「相手のスキルや経歴、性嗜好、これまでの経験人数などもわかる」というなかなかチートな鑑定効果があるのだからトンデモない。レ〇プ眼鏡を手に入れる前と後とではほとんど別の作品です。

 一人の女に縛られたくない、いろんな娘とえっちしたい――そんな欲望を全開にして成り上がろうとするストロングスタイルのエロファンタジーだ。身も蓋もない言い方をすれば「ゆるめのランス」である。今のところはレベルを上げながら順次ヤれる子とヤっていく段階であり、あまりハーレム感はないがソロで冒険を続けるのも限界があるだろうし、次巻あたりからパーティメンバーを集めるような展開になるのかも、と予想している。「レ〇プしても黙っている子なら容赦なく犯しに掛かる」という若干の鬼畜要素もあるので「和姦オンリーじゃないとちょっと……」って方には薦めづらいが、「主人公(の片割れ)がエロゲヲタで欲望剥き出しのデッカいアドヴェンチャーに繰り出す」という設定にワクワクする方には是非読んでもらいたい一冊だ。売れないと続き出ないだろうしな……一迅社ノベルス、今のところ5巻以上続いている作品は『ふつつかな悪女ではございますが』だけというマイナーレーベルである。応援してないと目を離した隙に消滅してそうで怖い。

・拍手レス。

 >ユア・フォルマ 以前のPVでは主役コンビが花澤香菜さん&小野賢章さんの夫婦ペアでしたが、アニメではどうなるのか……

 これですね。テレビCMでも同じペアだったからたぶん続投じゃないかという気がしますが、まだアニメ公式サイトではキャストに触れていないので変更の可能性も捨て切れない……。


2023-07-27.

・『機動戦士ガンダム 水星の魔女』で決闘を承認する際に発するキメ台詞、「Alea jacta est.(賽は投げられた)」って音はあまり聞き覚えないのに字面だけ妙に既視感を覚えるな……ってずっと引っ掛かっていましたけど、実家の書庫を掃除していたときに見つけた『Dies irae Alea iacta est』で「あっ、これかあっ!」とようやく得心した焼津です、こんばんは。

 Dies iraeアニメ化プロジェクトのクラウドファンディングで支援した人に対する返礼品として配られた小冊子である。全64ページ。これ、いつ来た奴だっけかな……何もかも昔過ぎて記憶がボンヤリしている。奥付に「平成27年7月9日 初版発行」とあるから2015年の7月か8月くらいに届いたのかしら。関係者のアニメ化記念コメントやイラストの他、外伝的な書下ろし小説が3編収録されている。第二次世界大戦中のプラハを舞台に本格覚醒前のハイドリヒと水銀の会話を綴る「Operation Anthropoid」(直訳すると「類人猿作戦」――ハイドリヒ暗殺計画のコードネーム)、聖遺物を手にしたベアトリスが水銀から魔名を贈られながら過去を振り返る「Walkure」、ベトナム戦争時における櫻井鈴とヴィルヘルムの邂逅を描く「Abyssus abyssum invocat」(ラテン語の格言で「地獄は地獄を呼ぶ」の意――Diesとは関係ないけど『幼女戦記5』の副題もこれだった)。アニメがアレな具合になってパンテオンも開発中止になってlightを運営していたグリーンウッドも解散しちゃったからこの小説たちも他の本に再録されることなく放置されているなぁ、と読み返しながらしんみりしてしまった。

・電撃文庫系のアニメ関連ニュースが相次いでいて把握し切れないから整理する意味も込めて逐一書いていこう。

 まず『魔法科高校の劣等生』新シリーズ『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』第2期、これらは単純に新シーズンだから驚きは少ないかな。魔法科高校〜の新作は本編3期目に当たり、2024年放送予定ということで2020年の「来訪者編」(本編2期目)から約4年ぶりとなる。ただ、『魔法科高校の優等生』(スピンオフ)や「追憶編」(TVスペシャル、過去編に当たる)が2021年に放送されているんでそこから数えると2年ちょっとの計算になるかな。「来訪者編」の続きということは「ダブルセブン編」? お兄様こと「司波達也」たちが2年生に進級し、新キャラもバンバン出てくるエピソードだ。ガンゲイル・オンラインの1期目は2018年放送なのでもう5年経っており、「ぶっちゃけ2期目はもう来ないんじゃ……」とうっすら心配になりかけていました。そしたら主演の「楠木ともり」も同じようなコメントしていて笑った。彼女にとっては芸歴初期の主演作なので思い入れも深いのだろう。

 で、ここからが新作情報。『ユア・フォルマ』TVアニメ化、第27回電撃小説大賞「大賞」受賞作のバディ物SFです。脳に埋め込まれる糸状の情報端末「ユア・フォルマ」が普及した未来、感情まで刻み込まれたユア・フォルマの「機憶」を読み取って事件の糸口を探る「電索官」が主人公。感覚としてはサイコメトラーとかサイコダイバーに近い。ハッキリ言って流行りの内容ではなく、あまり売れている印象もなかったがアニメ化まで漕ぎつけるとは、電撃小説大賞のパワーってまだ結構残ってるんだなぁ、と感心しちゃった。『ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います』もアニメ化、これも『ユア・フォルマ』同様第27回電撃小説大賞の受賞作で「金賞」を獲っています。見ての通り長文タイトル系でコミカルな内容。本当は物凄く強いけど実力を隠してギルドの受付嬢やってるヒロインがいろいろ隠し切れずに厄介事へ巻き込まれていく。こっちはだいぶ売れている印象があった(地方の書店にも山積みになっている)からアニメ化に対する驚きはないかな。気楽に観れそうなので割と期待している。

 『恋は双子で割り切れない』TVアニメ化、顔はそっくりだけど「アクティブな姉と引きこもりがちな妹」ってな具合に性格は正反対なヒロインたちが幼馴染の少年である主人公と三角関係を繰り広げるラブコメ。三角関係ということで気になっていたけど、双子姉妹物に食傷していたため手は伸ばしていなかった。今ならセールで安くなってるし買っちゃおうかな……『勇者刑に処す』アニメ化企画進行中、これは電撃文庫じゃなくてソフトカバーで刊行しているレーベル「電撃の新文芸」の作品ですね。刑罰として絶望的な戦線に送り込まれる「勇者刑」に処された大罪人たちを描く、要は「ファンタジー版スーサイド・スクワッド」なのだが「死んでも蘇生して戦い続ける」という設定なのである意味スースクよりも過酷。「1」とナンバリングされていたにも関わらず2巻が出なかった『勇者のクズ』の「ロケット商会」が作者です。つい先日『魔王都市』という新作も出したばかりだ。『男女の友情は成立する?(いや、しないっ!!)』TVアニメ化、これは去年アニメ化企画が進行中と報じられていたから続報というか詳報ですね。公式略称は「だんじょる」、私は知らなかったせいでダンまち(ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)のマイナー略称かと勘違いしそうになりました。タイトルはオスカー・ワイルドの言葉「男女の間では友情は不可能だ。情熱と敵意と崇拝と愛はあるが、友情はない」を彷彿とさせるっつーか、それを引用したエロゲー『Dear My Friend』を思い出すんだよな……全巻積んでるんだけどそろそろ崩そうかしら。

ベストセラー作家の森村誠一さん死去、90歳…「人間の証明」「悪魔の飽食」(読売新聞オンライン)

 サラリーマン向けのエッセイやコントなどを発表しながら小説家を志し、ホテルマンとしての経歴を活かして書いた『高層の死角』で乱歩賞を獲って以降、数多くのミステリを手掛けた作家です。初期は謎解き主体の本格寄り作品も多かったが、だんだん社会派の色合いが濃くなっていったタイプでもある。とはいえ娯楽主体の小説もたくさんありました。とにかく作品数が多いので簡単に「こういう作風だった」と括れないんですよね。映画化した『人間の証明』や『野性の証明』、それと『悪魔の飽食』あたりが森村誠一を語るうえで真っ先に挙がるタイトルだけど、『高層の死角』以前に書いた『むごく静かに殺せ』あたりはバリバリのエンタメ作品に仕上がっている。今はもう忘れ去られた一冊となりつつあるが、角川文庫に収録された当時は100万部を超すベストセラーになったそうだ。50年近く経ってから『涼やかに静かに殺せ』という続編が出たときはビックリしたな……。

 「名探偵の能力と行動範囲に作品世界が限定されるのが狭苦しかったから」という理由で頑なにシリーズキャラクターを作らなかった森村誠一であるが、『人間の証明』に登場して以降サブキャラ的にちょこちょこ出演していた刑事「棟居弘一良」を主役に抜擢した『棟居刑事の復讐』からシリーズ作品も精力的に手掛けるようになる。棟居刑事シリーズは何度もドラマ化されているので、小説を読まない人にとっては「森村誠一=棟居刑事シリーズ」という印象が強いかもしれない。私もいっとき棟居刑事シリーズの原作を集めていたが、複数の出版社に跨っているせいもあってどれが出演作なのか非常にわかりにくく、面倒になって途中で収集を諦めてしまった。全体で60冊くらいはある模様。ドラマ化作品としては棟居刑事シリーズと並ぶ人気だった刑事「牛尾正直」のシリーズ(終着駅シリーズとも呼ばれる)も、きっちりとリスト化されていないせいでだいぶ経ってから「え? あれも牛尾シリーズだったの?」と気づくことがあった。牛尾刑事は棟居刑事と共演することも多く、一部重複する形になるがざっと30冊くらいの出演作が書かれていたらしい。結論を述べると、シリーズ物を刊行順に追いたい嗜好の読者にはあまり優しくない作家であった。

 90年代頃から時代小説や歴史小説の分野でも活動するようになっていったが、そっちの方は全然読んでないので知らないんですよね。『悪道』シリーズは一応全部買ったんだけど一冊も読まずに積んでいます。認知症の影響もあってここ数年は小説の新刊を出していなかったが、生涯で400冊以上もの著書を手掛けたというのだから「すごい」の一言に尽きる。私はそこまで熱心に追っていたわけじゃないけど、物量が物量ゆえ否応なく視界に入ってくる存在ではあった。紙で読むならやはり初期の代表作『腐蝕の構造』がオススメ。大学生の頃は登山が趣味だったこともあり、『密閉山脈』や『未踏峰』、『エンドレス・ピーク』などといった山岳小説も多数存在するから山好きの人はそちらから入るルートもあります。


2023-07-12.

・Amazonのプライムデーセールで「安くなったら買おう」と前からリストに入れていた電子書籍を5冊ほどポチって、あと3冊購入すれば「Kindle本8点まとめて買うと さらに15%ポイント還元」の対象になるな、何かちょうどいいのはないかしら……とマンガの新刊をチェックしたらまるで誂えたかのように『もっと!ふたりエスケープ』(その1〜その3)を発見した焼津です、こんばんは。

 こんなん出てるなんて知らんかった……田口囁一の『ふたりエスケープ』(全4巻)の関連作で、“コミック百合姫”での連載を終えた後にコミティアで頒布した同人誌『これまでとこれからのふたりエスケープ』を3つに分割したものだそうです。しょっちゅう〆切に追われている漫画家の「後輩」と顔がいい無職の「先輩」がひたすら現実逃避して日常を彩ることに精魂を傾ける『ふたりエスケープ』は『二人エスケープ』というタイトルで発行された同人誌がベースになっており、連載のパイロット版に当たる過去の同人誌2冊(金沢編と福井編)を再録して新規描き下ろしの長崎編を追加したものが『これまでとこれからのふたりエスケープ』である。つまり『もっと!ふたりエスケープ』のその1とその2は金沢編と福井編……連載前に描かれたエピソードで、まったく一緒ではないにしろ連載版にほぼ同内容の回が収録されており、その3だけが連載後の新作である長崎編となります。現在は消えているみたいですがパイロット版は『二人エスケープ1+2』というタイトルで配信されたことがあり、Kindle Unlimitedの対象でもあったみたいだから読んだことがある人もおられるやもしれません。一応、その2(福井編)の方には商業版1巻発売時にショップ特典として描き下ろされた4Pリーフレット「幻の軽井沢編」も併録されているんで独自の読みどころはあるっちゃあります。しかし「1巻に収録されている6話目とほとんど同じ内容(読み比べると細かな違いがあることに気づくけど大まかな流れは一緒)」ですんで、購入するときはそのへんに注意してポチりましょう。私は買った後で結局「やっぱ紙で手元に置いときたいな……」となって『これまでとこれからのふたりエスケープ』を改めて注文するバカなムーブをかましてしまった。『もっと!ふたりエスケープ』はその4以降も出す予定らしいので、シリーズを揃えたい嗜好の強い私にとってはまるきり無駄な行為というわけじゃないんだが……。

・もうだいぶ経ったけど2日に放送された『Fate/strange Fake -Whispers of Dawn-』は期待以上の出来で興奮しました。ただ、その後にやっていた謎丸セレクションの録画を忘れていて少し凹んだり……てっきり同じ枠での放送だと思っていたのに別番組扱いになっていたという。よく確認しなかった私が悪い。「謎丸ってようつべで全話公開してるじゃん」と言われそうですけど、それはそれとしてテレビ放送バージョンも録画したかったんですよ。

 閑話休題。『Fate/strange Fake -Whispers of Dawn-』はFateプロジェクトの一つに当たる小説シリーズ『Fate/strange Fake』、その1巻目に当たる内容を要約して1時間程度にまとめたTVSPアニメです。「Whispers of Dawn」などと小洒落た副題が付いてるせいでわかりにくくなってるが、要するに『Fate/strange Fake -プロローグ-』みたいな感じ。『Fate/Zero』の1話が一時間SPだったのと同じようなノリだ。

 『Fate/strange Fake』は2015年から電撃文庫で刊行開始されたシリーズであるが、その大元はもっと古い。2008年に成田良悟が個人ページでエイプリルフールネタとして4月1日限定で公開したPDFがすべての始まりでした。セイバーを除く6騎のサーヴァントが召喚される偽りの聖杯戦争、6つの陣営を紹介し終えた後、スノーフィールドにプレイヤーたる「あなた」が到着してさぁこれから物語の幕が上がる――というところで「つづく(つづかない)」となっていたんです。実はあのとき三田誠も協力していたという裏話があったり。あくまでエイプリルフールのネタ、ってことで続きが書かれる気配はなかったものの、翌年2009年には雑誌“TYPE-MOONエース”の付録冊子として物理書籍化しています。「TYPE-MOON公式作品として展開する」という告知が出たのは2014年の7月頃、確かFGOの配信決定と同時に発表されたんじゃなかったっけ。電撃文庫で刊行を開始したのが上述の通り2015年、それから8年以上が経過しましたが、現在の最新刊は8巻。成田良悟の病気発覚に伴い停止していた期間が存在することもあり、まだ完結には至っていません。巻数としてはロード・エルメロイU世の方が多いけれど、あちらは基本的に1冊か2冊でエピソードが完結するのに対しFakeは一貫して「偽りの聖杯戦争」を追い続けており、「ひとつの物語」という意味ではFate関連小説で最長の作品となっている。

 「Whispers of Dawn」は細かい説明を端折って「映像で魅せる」ことに注力しており、活き活きしたフラットや全力でぶつかり合うギルガメッシュとエルキドゥのド迫力バトルに圧倒される。キャスターのまくし立てるようなセリフとそれに淡々と応じるマスターのあたりは「掛け合いの調子が完全に成田アニメだ」といった雰囲気で嬉しくなります。ただ、ライダーのマスターである「繰丘椿」周りはさすがに映像だけで情報を伝達するのは無理というか、原作読んでないと何が何だかわからないでしょう。両親が椿の魔術回路を増幅させるために魔術的な改良を施した細菌を用い、「魔術回路の増幅」そのものは成功したけど細菌の暴走によって椿は昏睡状態に陥ってしまった……1年以上も目を覚まさない椿に対し、両親が気にかけていることは「生殖能力が残っているか」ということ。たとえ椿が今後死ぬまで目を覚まさないとしても「子供を産ませることができるならそれでいい」と割り切っている。両親からほとんど見捨てられてしまったそんな彼女の手に令呪が宿り、マスターになった自覚がないまま「偽りの聖杯戦争」へ参加していくことになる。彼女のサーヴァントとなったライダーがどんな存在であるかについて原作ではちゃんと触れているが、「Whispers of Dawn」ではナレーションを廃していることもあり具体的な解説は一切ありません。椿はライダーの真名云々以前に聖杯戦争やサーヴァントにまつわる知識が欠けており、彼女の口から説明させることもできない。虐待されながらも必死に両親の愛を得ようと苦しんでいた椿にそっと寄り添うライダー。現実世界では身じろぎ一つできない代わりに夢の中で「幼子の幸せ」を享受する、「切なさ」と「ホラー」の微妙なバランスが映像だとホラーに大きく傾いてしまった。アサシン陣営もだいぶ設定がわかりにくい(サーヴァント:白い髑髏面を付けていない=ハサンの候補者ではあったが百貌が選ばれたためハサンを襲名することはできなかった、過去18人の長が使ったザバーニーヤをすべて再現できる/マスター:魔術師を装っていたが正体は吸血鬼というか死徒、ライフは残機制でアサシンの宝具により一つ潰された)けど、マスターもサーヴァントもどっちもヤバいことは映像だけで充分匂ってくるでしょう。「まだこのへんはプロローグだからあまり尺を割くわけにはいかない」という制作側の事情もあるのだろうが、ライダー陣営が一番割を食った印象がありました。

 しかし、やっぱり、2008年のあのエイプリルフールのときにリアルタイムで読んでめっちゃワクワクしたネタが15年も経ってから高クオリティのアニメとして鑑賞できちゃったこと、素直に「感動」の二文字に尽きるんだよなぁ。今となってはFGOで馴染み深いエルキドゥだが、当時は断片的な設定しかなくて「キャラクターとして登場する」ことが二次創作でもないと難しい状況だったことを考えると余計にクるものがある。あと、私が更新サボりすぎて既に期間を過ぎちゃったけど、アニメ放送記念キャンペーンで開放されていたギルガメッシュとエルキドゥの「幕間の物語」、エルキドゥの方は成田良悟が書き下ろした大ボリュームのシナリオなので「幕間の物語なんてどうせオマケみたいな内容でしょ」とタカを括らずに機会があれば是非プレーしてみてほしい。「実質7.5章」との呼び声も高く、私が読んだ幕間の物語たちの中でも上位に入る出来の名編だ。ハッキリ言って幕間の物語として配信するような代物じゃないですよ。何ならメインインタールードに入れてもいいぐらいでは? ってレベル。

 「Whispers of Dawn」の続きは『Fate/strange Fake』のTVシリーズとして放送される予定になっていますが、原作が未完結であることを考慮すると1stシーズンはたぶん途中で終わるのだろう。2ndシーズンか3rdシーズンをやる頃には原作も完結しているかも。3rdシーズンと言えば『ゆるキャン△』の3期目、制作会社変更に伴ってキャラデザも変わるみたいで少し不安だけど楽しみにしています。

異世界スーサイド・スクワッド:「スーサイド・スクワッド」が日本でアニメ化 ハーレイ・クインやジョーカーが異世界に WIT STUDIO制作(まんたんウェブ)

 キービジュアル、天野明が描いているからかハーレイが「グレた常守朱」に見えて仕方ないな……なんであれ、スースクが今度はアニメになります。「スースクが異世界に行って大暴れ!」という設定でバットマンたちが戦国時代の日本にタイムスリップする『ニンジャバットマン』を思い出した人も多いでしょう。あっちにもジョーカーとハーレイ出てくるしな。スースクは「全員が死刑か終身刑のヴィラン」によって構成されるチームで、「任務を達成すれば無罪放免、逃げ出そうとしたら即座に処刑」という「実質ワグネルでは?」な背景とともに生還率0パーセントのミッションへ放り込まれる……ってな設定で毎度お送りするアメリカの闇を煮詰めたような作品であり、異世界に行くぐらいは平常運転と感じられてしまうのだ。名前が付いたチームってだいたいメンバーが固定されているものだけど、スースクはポンポン死人が出るためメンバーの固定は不可能であり、顔ぶれは出演作品ごとに異なる。その中でも「ハーレイ・クイン」(本名ハーリーン・クインゼル)はスースクの看板に当たる存在で、彼女だけに関しては固定メンバーと言えなくもない。ハーレイのいないスースクなんてパテの入ってないハンバーガーみたいなものだよ。

 監督が「どのキャラクターかは言えませんが、私の参加させたいと思っていたヴィランもスーサイドの仲間入りしています」とコメントしており、ハーレイとジョーカーとアマンダ(スースクの司令官)という「いつもの面子」以外の登場キャラクターは伏せられている。いったいどんなヴィランが参上するのか、不安よりもワクワクの念が強い。ぶっちゃけスースクは一番最初の映画がガッカリするような出来だったので「どんな新作が来てもあれを下回ることはないだろう」という謎の信頼があり、皮肉なことに「心配する必要」というものがなくなっています。強いて心配するなら公開規模に関して、か。「TVアニメ」とは言ってないからたぶん劇場アニメなんだろうが、その場合だと小規模公開になりそうで、結局配信待ちになるかもしれない。とにかく続報が出るまでは待機の姿勢だ。

「リビルドワールド」アニメ化!謎の美女と少年のハンター稼業を描くSF(コミックナタリー)

 『リビルドワールド』は「電撃の新文芸」というソフトカバーレーベルで展開しているシリーズだが、もともとは「小説になろう」に連載されている作品です。ナンバリングが「T〈上〉」「T〈下〉」と分冊だったり「W」「X」と単巻だったりバラバラな方式なのでわかりにくいけど、近日発売予定の最新刊『リビルドワールドVIII〈上〉 第3奥部』が12冊目に当たる。なろう作品ということで「じゃあWebで読もうかな」と考える方もいらっしゃるでしょうが、Kindle Unlimitedで「Y〈下〉」(10冊目)まで読めるからアンリミ会員はそっちで読んだ方がベター。

 文明崩壊後の世界で「遺跡」に侵入し旧文明の遺産を回収して売り捌く盗掘稼業、通称「ハンター」に身を投じた少年が主人公の、若干古めかしいノリのSFです。具体的に言うと90年代頃の漫画やライトノベルみたいなテイストで、おっさんにとっては懐かしさを覚えるだろう。「遺跡」は危険地帯なので主人公は早速死にかけるが、彼にしか見えない謎の美女「アルファ」の導きによって窮地を脱する。そこから遺跡を巡る壮大なストーリーが始まる……という、ハッキリ言って今の流行りからは外れたシリーズだ。アニメ化によって大ブレイクするかと問われれば「たぶん、しない」と答えるしかないが、流行りに乗っかった作品に食傷している人からすれば「こういうのでいいんだよ、こういうので」と頷きながらハマることになるのかもしれない。メチャクチャ好きってわけじゃないんだけども、『リビルドワールド』がアニメ化に漕ぎつけられるんなら他のアレとかソレにも希望が持てるかな、って心境になります。原作完結に合わせて『ウィザーズ・ブレイン』アニメ化とか……さすがにないか? というかウィズブレ、シリーズ継続中とはいえ既刊の物理書籍がまだ新品で売ってるのか……1巻なんて22年前の本ですよ、すげぇ話だ。とまれ、最終巻となる『ウィザーズ・ブレイン] 光の空』は9月8日に発売予定。もう出るのか、ってビックリする。8年ぶりにシリーズが再開したことも驚きだったが、新刊が年に3冊も出るのなんて初めてだ(これまでは年2冊がせいぜいだった)からチビりそうなぐらい震えている。22年半の歴史に終止符を打つ最後の1巻はきっと境ホラ並みの1000ページ超え極厚本なんだろうな……(推測ではなく願望)。

「ザ・ファブル」TVアニメ化!南勝久「またひとつ夢に手が届いた」 監督は高橋良輔(コミックナタリー)

 あのやたら「――」を多用することで知られる殺さない殺し屋・ファブルの物語がアニメ化とな。既に2回も実写映画やってるから「えっ、今頃?」という気がしないでもないが……監督は高橋良輔、ダグラムやボトムズで有名な人だけどガサラキ以降の作品で話題になっているところはあまり見かけないですね。個人的には『今、そこにいる僕』の次回予告テキストを担当したことで印象に残っている。全話じゃないけど、ほとんどが悪役「ハムド」の狂った独白というピーキーすぎる仕様が衝撃的だった。「進め進めヘリウッド! 阻む者があれば踏み潰せ! 逆らう者があれば射ち殺せ! ほら、死体の山の向こうに、血の川の向こうに、輝かしい未来が見えるじゃないか!」 こんなのが毎回流れるんだから観てるこっちも気がおかしくなりそうでしたよ。

 『ザ・ファブル』は2014年からヤンマガで連載を開始した漫画で、つまり来年に10周年を迎える。このアニメ化も10周年記念の一環なのかもしれない。2019年に第一部が完結し、少し間を置いて2021年に第二部『ザ・ファブル The second contact』が開幕した。単行本は第一部が全22巻、第二部の最新刊が8巻(8月発売予定)、番外編を収録した『ざ・ふぁぶる』が全1冊で、つまり現在は約30冊といったところだ。『ざ・ふぁぶる』は作者の前作『ナニワトモアレ』(およびその第二部『なにわ友あれ』)のエピソードも収録されているので、ファブルしか興味がない人は注意されたし。殺し屋として派手に仕事しまくった主人公「ファブル」はほとぼりが冷めるまで大人しくするよう命じられる。一般人のフリして過ごす彼だったが、次々と周囲でトラブルが発生して……という感じのストーリーで、第一部の最後で町を離れて第二部から「全国行脚編」が始まる――はずだったが、コロナ禍が発生したため「漫画とはいえこの状況で全国行脚する展開は現実に即していない」とまた元の町に戻ってきてしまう。第二部が終わったら第三部として全国行脚編を仕切り直すのかもしれませんが、今のところよくわからない。何ならアニメオリジナルで全国行脚編をやっちゃうのもアリかも。そこまで辿り着くのに何クール掛かるのかはわかりませんが……。

・古野まほろの『ロジカ・ドラマチカ』読んだ。

 表紙イラストの女子高生に釣られて読んだ一冊。40歳のオッサンと17歳の女子高生が織り成す、会話を主体にした論理的対局(ロジカ・ドラマチカ)……と書かれてもサッパリ意味がわからないだろうからもう少し噛み砕いて説明すると、要するに『九マイルは遠すぎる』オマージュです。この本の表題作はふと耳にした「九マイルもの道を歩くのは容易ではない。ましてや雨の中となるとなおさらだ」という言葉をもとに「隠された真意」を暴き立てるストーリーになっており、短いセンテンスに対して論理を積み重ねていくシンプルでいて奥深い構成に魅了された後世の作家たちが幾度もオマージュを捧げている。有栖川有栖の「四分間では短すぎる」(『江神二郎の洞察』)とか、松尾由美の「九ヶ月では遅すぎる」(『バルーン・タウンの手毬唄』所収)とか、青崎有吾の「十円玉が少なすぎる」(『ノッキンオン・ロックドドア』所収)とか。比較的有名なのは米澤穂信の“古典部”シリーズに属する短編「心あたりのある者は」(『遠まわりする雛』所収、アニメ『氷菓』の19話目)だろうか。分類上では「安楽椅子探偵(アームチェア・ディティクティブ)モノ」に当たります。聞き込みや事情聴取、現場検証や科学捜査などを行わずに手元の資料とディスカッションのみで「真相」を詰めていく形式のミステリだ。やり方を間違えると「ただの妄想にしか見えない」ので、模倣するのが簡単なようでなかなか一筋縄ではいかないジャンルである。

 作者の「古野まほろ」はメフィスト賞を受賞してデビューした人。アクの強い作風で好悪が分かれるだろう(40過ぎのオッサンが「あっは」と笑ったり「はふう」と溜息ついたり「泣いちゃう、ぐすんぴえん」と言い出したりなど、純粋にキツいシーンもある)けど、「謎」に対する真摯な情熱は感じられる。ぶっちゃけ「名前は知ってるけどほとんど読んだことがない作家」なので語れることは少ないです。元警察官という経歴の持ち主で、『残念な警察官』『警察手帳』など「警察」そのものについて語った新書も多い。パラレルな歴史を持つ「日本帝国」が舞台の『天帝のはしたなき果実』や終末を迎えた世界で「少女ばかりが流れ着く孤島」を舞台にした『終末少女』など、ファンタジーめいたやや突飛な設定の作品もありますが、本書『ロジカ・ドラマチカ』に関しては特にそういった特殊設定を用いておらず、古野まほろの著書としては平易というかストレートな仕上がりになっています。アク自体が抜けたわけじゃないけど、「古野まほろが気になっていて、試しに一冊読んでみたい」って方にはちょうどいいんじゃないかしら。

 「九マイルは遠すぎる」方式は長編だとダレてしまうので、本書も「春の章」「夏の章」「秋の章」「冬の章」、計4つから成る連作短編集として紡がれている。英語をマスターし、第二外国語としてフランス語の習得を目指す少女「結子」と、臨時の家庭教師として仏語を指南することになった「司馬」。ふたりは「神は細部に宿る(デュウスカッシュダンレデタイユ)」を合言葉に、論理的な遊技を繰り広げる。街角や喫茶店などで耳に入った「日常会話の一部」を徹底的に検証・議論してその言葉の向こうにある「真相」を探り当てようとする姿勢はまんま「九マイルは遠すぎる」であり、それだけで本格ミステリファンの一部は嬉ションを漏らしかねないのだが、本当にそれだけだと大半の読者は退屈してしまうので盤外戦めいた要素もいくつか仕掛けられています。やはり特徴的なのは冒頭第一編の「春の章」か。本書がどんな小説であるか読者に「わからせる」ため、入念に伏線を敷いたうえで畳みかけてくる。ハッキリ申し上げて「春の章」がダメだったら以降の章もずっとダメだと思います。そういう意味ではリトマス試験紙めいているな。「今かけ直そうか届けようか」「でも残りは小銭だけだから、もう郵便局に駆け込むしかないのか」 雑踏の中、若い男がスマホで誰かに向けて話していた言葉に潜む「戦慄」とは? 先手・後手と将棋のように推論を指し合いながら徐々に結論へ近づいていく様子は「迂遠」「冗長」とも感じられるでろあろうが、「地道な頭脳戦」が好きな人にとっては「いいぞ、もっとやれ」ってなること請け合いです。

 平たく書けば『ロジカ・ドラマチカ』は“古典部”シリーズの「折木奉太郎」を「40過ぎのオッサン」に置換したような作品であると同時に、なんと『かぐや様は告らせたい』みたいな恋愛頭脳戦が繰り広げられる作品でもあるのです。「女子高生が20歳以上も離れているオッサンと恋愛頭脳戦(隠語)するだなんて……」と反射的に嫌悪感が顔を覗かせてしまう方は最初から読まない方が精神衛生的に吉です。主人公は結子ちゃんが抱く「好意」の質に薄々勘づきつつも歳の差が歳の差だから気づかないフリして躱そうとするのですが、どんどん外堀を埋められていって逃げ場がなくなっていきます。帯の「死闘論理バトル」というのもホラ、負けたら「人生の墓場」行きということで。掉尾を飾る「冬の章」は結子ちゃん視点で綴られており、彼女が無事オッサンのハートを射止めるのか、それともクピドの矢が届かず泥棒猫に横から掻っ攫われるのか、是非ともその目で結末を見届けてほしい。どちらであれ「ああっ、結子ちゃんの脳が破壊されてしまう!」と叫びたくなる描写が読みどころです。

 負けたらロリコン認定不可避の社会的生命が懸かった恋愛頭脳戦はさておき、「高校生の頃、休み時間に都筑道夫の『退職刑事』シリーズを読み耽っていたなぁ……」と懐かしくなるほど安楽椅子探偵に淫した一冊でした。フランス語絡みでニザンの『アデン、アラビア』ネタがちょこっと出てくるのは個人的に嬉しかったり。ヒロインである結子ちゃんの即ギレ芸も可愛いので表紙に惹かれた人は試しに手に取ってみては如何?

・拍手レス。

 分厚い本 翻訳物やなんかで わざわざ分冊にされるのが 悲しいです お財布的にも本としても  出版社のお財布も悲しいのでしょうが

 マイクル・コナリーの新刊とか「これぐらいなら1冊にできるだろ……」と思いつつ購入しちゃいます。最近は文庫本も高くなってきましたよね……馳星周の『不夜城』(文庫版)が今は新品だと税込で1000円超えると知ったときは目を剥きました。記憶が曖昧だけど、私が高校生の頃に買ったときは700円前後だったような……。


2023-07-01.

読み応えも重さもヘビー級の「分厚い本」文庫は京極夏彦が1408ページでトップ 漫画では巨匠が描いた1005ページの名作といえば?(Real Sound)

 分厚い本スキーなので興味を持ってクリックした記事だが、「ちなみに、ライトノベルでは『とある魔術の禁書目録 外典書庫(1)』(KADOKAWA)がトップで、980ページのボリュームだ」って……ど、どうしてこんなに自信満々に間違った情報を発信できるんです? 2005年に川上稔が『終わりのクロニクル7』で初の1000ページ超えを達成して以来、1000ページ超えのライトノベル(「それもうヘビーノベルでは?」という疑問はさておき)は『境界線上のホライゾン』で何冊か出しているというのに。最厚は確か境ホラの最終巻で1160ページ。川上稔作品は禁止カード級の存在だから、という理由で除外するとしたら確かに外典書庫の1巻がトップかもしれないが、そもそも川上稔を知らないような口ぶりなんだよな……。

 基本的にライトノベルは600ページ以上の製本を想定しておらず、とりわけ700ページオーバーの商品ともなると極端に数が少なくなります。700ページ台のライトノベル、パッと思いつくのは『されど罪人は竜と踊る12』あたりかな。マイナーなところでは『砂上の剣』という作品もある。800ページ台は『WORLD END ECONOMiCA』があり、『STEINS;GATE 円環連鎖のウロボロス2』なんかはほとんど900ページ近い。あまり分厚いと糊が剥がれやすくなったり背に折れが付きやすくなるなど強度的な問題も発生するため、特別な事情がないかぎり普通は分冊という選択肢を採ります。初の1000ページ超えである『終わりのクロニクル7』はいつもの製本会社では製本できなくて別の製本会社に依頼した――という逸話も残っている。終わクロ最終巻があんなに分厚くなった理由は川上稔のコラム「1000ページ越えの到達と普遍化」で触れられています。最終巻の原稿が1400ページくらいだったら分冊して上下同時刊行にするプランだったが、実際に出来上がったのは1200ページ。「1100ならギリ1冊に収められる」ということで100ページくらい削ってああなったという。ちなみに削った100ページくらいの没原稿は日常パートであり、ドラマCDの特典『終わりのクロニクルDC 間章「いつものこと」』でサルベージされています。「DC」はディレクターズカットの略だ。同じく文庫本の厚さに関するコラムとして「『都市シリーズ全体』何故分厚くなった?」もあり、「文庫の場合、700ページ超えると一回ストップ掛かる」「書店に納品する”質量”が倍になって、書店の倉庫を圧迫するから嫌がられる」、境ホラ最終巻以上に厚い本が出ない理由についても「印刷所の機械でカバーを巻ける限界ページだから」「印刷としてはもっと上に行けるんだけど、製本工程”カバー巻きの自動化”の制限」と言及しており、非常に興味深い。カバー巻き等の工程を手作業にすればもっと分厚い本も出せるんだろうが、そうなるとコストが一気に跳ね上がるので商業出版的にはアレが限界というわけか。文庫じゃなくてハードカバーだけど、京極堂シリーズの愛蔵版(最近やっと『絡新婦の理』が出た)も1冊ごとに印刷を行っているとかでトンデモない価格になってるもんなぁ……。

 ちなみに同人だとスレイヤーズ18禁二次創作小説『誓いのコトバ』が『文庫版 絡新婦の理』をも凌駕する驚異の1508ページで恐らく日本最厚の文庫本と思われる。最初の頒布価格は3500円だったらしいが新装版だと更に価格が上がっており、ショップの委託販売では税込7000円を超えた伝説級の一冊です。

「狼と香辛料」新作アニメは2024年放送!ロレンス役の福山潤&ホロ役の小清水亜美が続投(コミックナタリー)

 「再アニメ化」ということでトレンドに上がっていたけど、みんな『封神演義』の話ばっかりしてるから肝心の『狼と香辛料』になかなか辿り着くことができなくて困った。『狼と香辛料』は「支倉凍砂(はせくら・いすな)」のデビュー作であり2006年に「第12回電撃小説大賞 <銀賞> 受賞作」として刊行されました。もう17年も前になる。第12回電撃小説大賞の受賞作はひと月にまとめて4冊も刊行されたが、アニメ化されるほど人気が出たのはコレだけである。『火目の巫女』の「杉井光」は最新作の『世界でいちばん透きとおった物語』が売れまくっているらしいし、支倉凍砂しか生き残らなかったわけではないが……でも正直『哀しみキメラ』とか『お留守バンシー』は「そんなのもあったな」って感じで完全に忘れていました。さておき『狼と香辛料』、中世ヨーロッパ風のファンタジーであるが行商人を主人公にした「剣も魔法も活躍しない」一風変わったシリーズとして話題になりました。物語の肝となるのは「経済」、どうやって行商人が儲けて生計を立てていくのか細かく描いており、「生活感のあるファンタジー」というありそうであまりなかった分野を切り開いていった。結果的に10年近く続いたコミカライズや2期に渡ったTVアニメも好評を博し、2000年代の電撃文庫を代表するシリーズの一つとなります。狼耳とふさふさ尻尾のヒロイン「ホロ」のビジュアルも印象的で、電撃絡みのイベント等あっちこっちに顔を出していましたね。

 2011年、17冊目に当たる『狼と香辛料XVII Epilogue』でシリーズは一旦完結を迎えました(「Epilogue」自体が後日談のようなものだし「本編は16冊目でフィナーレ」とする向きもある)が、2016年に18冊目の『狼と香辛料XVIII Spring Log』を刊行してシリーズ再開。行商人と賢狼の「その後」が拝めるとあってファンは欣喜雀躍しました。再開した18冊目以降は「Spring Log」としてナンバリングされており、基本的に雑誌掲載した短編や中編に書下ろしを加えたものとなっているが、最新刊の『狼と香辛料XXIV Spring LogVII』(通算24冊目)は1冊丸ごと書下ろし長編でした。また「Spring Log」刊行開始と同時に『狼と香辛料』の主人公とヒロインの娘「ミューリ」がメインを張る新シリーズ『新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙』も開幕しており、こちらはもうすぐ最新刊である9巻が発売される予定です。つまり『狼と香辛料』は本編が17冊で一旦完結し、続編の「Spring Log」が7冊まで出ていて現在継続中、ネクストジェネレーションな『狼と羊皮紙』の9巻が刊行間近といった塩梅で、今から全部読むとなると33冊も目を通す必要が出てくるわけだ。休止期間があるとはいえ17年もやってるシリーズなんだから、そりゃあね。支倉凍砂の別シリーズ『マグダラで眠れ』およびそのスピンオフ『少女は書架の海で眠る』も舞台となる世界は『狼と香辛料』と共通しているらしい(積んでるのでよく知らない)が、こっちは『狼と香辛料』の再開(プラス『狼と羊皮紙』スタート)と入れ替わる形で続刊が出なくなってしまった。これから『狼と香辛料』のアニメ関連で忙しくなるだろうし再開するとしてもいつになるのかわからないので、支倉ワールドを極めたい人以外はとりあえず後回しにしてもいいでしょう。Kindle Unlimited会員なら「Spring Log」の3巻、シリーズ20冊目までタダで読めるから「気になってるけど未読」という方はまずそちらに手を付けるが吉。いや冷静に考えると「20冊がタダ」ってスゴいな……こうして過去の名作へ手軽にアクセスできるわけだから新作ラノベが売上的に苦戦するのも当然だな。

 前置きが長くなってしまったが、『狼と香辛料』は2008年に1期目、2009年に2期目のアニメが放送されています。2期目に当たる『狼と香辛料U』で原作5巻まで消化(ただし4巻のテレオ村編はカット)したのでその続きをやるとしたら原作6巻からなのですが、今回は「完全新作アニメプロジェクト」ということで3期目ではなくもう一度最初からアニメ化し直す模様。主人公「ロレンス」役とヒロイン「ホロ」役はそれぞれ福山潤と小清水亜美、旧来のキャストが続投しており、福山のコメントに「台本をもらうまでは、続編だと思っていた」とあるので続編じゃないことは確定している。新たなアニメのタイトルは『狼と香辛料 merchant meets the wise wolf』、原作小説の英題である「Merchant meets spicy wolf.」を意識したものになっている。ちなみにアニメの英題は「Spice and Wolf」、英語圏ではこちらに合わせて翻訳しており、結果的に「Merchant meets spicy wolf.」は「日本語圏にしか馴染みのない英題」という奇妙なポジションに落ち着いている。ファンとしては今度こそ最後までストーリーを完走して『狼と羊皮紙』のアニメ化まで繋げてほしいものだが、一つの区切りである16巻までやるとしても何クール掛かるのか計算しただけで気が遠くなります。オーフェンのリメイク版みたいに期間を置いて飛び飛びでやっていくつもりなんだろうか? 余談だがAA化もしたホロの有名なひとコマ「マジでっ!?」は公式コミカライズではなく同人漫画のカット、要するに二次創作である。描いたのは『ざっちゃん』の「くろがねぎん」だ。最近だと艦これ同人のイメージが強いかしら。


2023-06-26.

「奏章T 虚数羅針内界 ペーパームーン」の攻略が遅々として進まないせいで奏章にドゥルガーが登場することをピックアップのお知らせで初めて知った焼津です、こんばんは。

 ビーマやドゥリーヨダナが新規実装された時点で「カーリーやドゥルガーも来るかもな」ってチラッと思いましたけど本当にお出ましになるとは。確かパッションリップが「ブリュンヒルデとパールヴァティーとドゥルガー、三女神のエッセンスを合成したハイ・サーヴァント」という設定だったっけ……CCC発売から10年以上もかけてようやくその三女神が揃うことになったわけだ。ビーマとドゥリーヨダナがスト限であるのに対しドゥルガーは期間限定、ここで引かないと次はいつPUが来るのかわかりません。うーん、このおっぱいには抗えない! とガチャガチャしてわし様ともどもゲットしたが、三臨はペーパームーンをクリアしないと(あるいは7/2以降にならないと)見ることができないのか。読みたい本優先で後回しにしてたけど、いい加減そろそろ本腰入れて攻略しないとな。今ライダーのマスターが出てきたあたり、先はなかなか長そうだ。

作家コーマック・マッカーシー逝去のお知らせ

 映画『ノー・カントリー』の原作『血と暴力の国』を書いた小説家です。少し前に出版社を変えて『ノー・カントリー・フォー・オールド・メン』と改題した(というか原題そのままにした)新装版も出ました。他に『ザ・ロード』『チャイルド・オブ・ゴッド』なども映画化されており、『悪の法則』という映画の脚本も書き下ろしている。『ノー・カントリー』で有名になったおかげか“国境三部作”以前の初期作もポツポツ翻訳されるようになってきたところだというのに、新刊の告知ではなく訃報が聞こえてくるとは……去年原書が出た『The Passenger』と『Stella Maris』の翻訳版は近刊予定とわかったことがせめてもの救いか。マッカーシーの小説は「動作」と「映像」に関する描写が細かく、それこそ「まるで映画を観ているような気分になる」作風ゆえ、読むときに頭の中でじっくりと映像イメージを構築せずただ文字を拾って筋を追うことに専念する速読タイプの人にとっては「冗長」「読みづらい」と感じるかもしれない。ピュリッツァー賞を受賞した『ザ・ロード』はだいぶ読みやすい部類なのでコーマック・マッカーシー初挑戦の人にもオススメですが、やる気が漲っているのであればやはり『ノー・カントリー・フォー・オールド・メン』にチャレンジしてほしい。400ページちょっとの文庫で1500円(税抜)と、最近海外小説を買ってない人からするとぶったまげるような金額だけど……税込で4000円を超える『影の王』とかに比べればぶったまげ度は少ない方だ。もう結構前になるが6000円超える『七つの殺人に関する簡潔な記録』はさすがに気が遠くなったよね。

 7月12日まで「早川書房 夏のKindle大セール」でマッカーシー作品も軒並み半額になっているから、電子書籍でも構わない方はそちらを購入するというのも一つの手です。今回のセール、マッカーシー作品以外で私がオススメしたいのはヴァシーム・カーンの『帝国の亡霊、そして殺人』。共和国化を目前に控えたインドの都市ボンベイ(今はムンバイ)で起こった殺人事件を巡るミステリ。作者はロンドン生まれだが両親はパキスタン人、自身もムンバイで10年以上暮らしている経験を活かして執筆しています。作中の時期は1950年、『RRR』が1920年の話だからその30年後に当たる。主人公はインド初の女性刑事、インドというとヒンドゥー教のイメージが強いが主人公一家はパールシー(ゾロアスター教徒)。他にシク教徒の人物も登場し、「多宗教国家としてのインド」が感じられる物語となっている。「パキスタン分離独立に伴う混乱」が軸の一つになっており、この本読むとインドとパキスタンの関係がメチャクチャ険悪なのもむべなるかな……って気持ちが押し寄せてきます。原書の刊行は2021年で既にシリーズの3冊目まで出版済みというから、翻訳もそこまで進むことを期待したい。インド舞台のミステリというと『カルカッタの殺人』から始まる“ウィンダム警部&バネルジー部長刑事”シリーズ3冊も半額セールの対象だ。こっちのシリーズは1919年、悪名高き「ローラット法」(インド人を「目つきが反抗的だ」程度の理由に基づき令状なしで逮捕したり裁判抜きで投獄することを可能にした弾圧法)が制定された直後からスタートするので『RRR』とほぼ同時代。(第一次)世界大戦に従軍し、負傷して帰還の途に就こうとしたら出征前に結婚したばかりの妻がインフルエンザに罹患して亡くなったことを告げられ抜け殻のようになってしまったイギリス人「ウィンダム警部」が、赴任先のカルカッタで「インドはイギリスから独立すべき」という理想に燃えている若きインド人「バネルジー部長刑事」と出会う。他にも探せばインド舞台のミステリはいろいろあって結構な沼ジャンルだったりします。

『Fate/サムライレムナント』9月28日に発売。主人公は宮本伊織、舞台は江戸【Nintendo Direct】(ファミ通.con)

 9月か……あんまり情報出ないし年内ギリギリかと予想していたけど思ったより早かった。慶安4年、西暦で言うと1651年頃を舞台に宮本武蔵の息子(養子)にして弟子の「宮本伊織」が「セイバー」と名乗る性別不明のサーヴァントと出逢い、「盈月の儀」と称された聖杯戦争に巻き込まれていく……というストーリーらしい。盈月(えいげつ)は「満ちる月」という意味で新月から満月に向かって少しずつ大きくなっていく月を指す。逆に満月から新月に向かって少しずつ小さくなっていく月を「欠ける月」という意味で「虧月(きげつ)」と呼ぶ。宮本伊織は実在の人物であり、彼を主人公に据えた『宮本伊織』というそのまんまな小説もある。『修羅の刻』にも出演していたからそっちで記憶に残っている人もいるかもしれない。ぶっちゃけ武蔵に比べると少々マイナーで、あまり固定的なイメージがないぶんクリエイターとしては自由にやれる題材ではある。史実ベースなら伊織は1612年生まれ、慶応4年ならもう数えで40歳になっているはずだが、それにしちゃだいぶ見た目が若いな……あと島原の乱に参陣し侍大将として手柄を立てたことで出世したはずなんだけど、浅草で浪人になっているってことはこっちの世界だとだいぶ辿ってきた道が違う? よくわかんないな。

 「亜種特異点V 屍山血河舞台 下総国 英霊剣豪七番勝負」が1639年の出来事だったので、世界線は違えどそれから12年後ってことになります。「慶安4年」で連想するのは三代将軍・徳川家光の死と由比正雪の乱、いわゆる「慶安太平記」だが、その由比正雪は公式サイトによるとライダー陣営で登場しキャラ紹介に「幕府に思うところがあるようだが、“盈月の儀”を前に仕官を決める」とある。よもやサムレム世界の由比ちゃんは乱を起こさないのだろうか? 森宗意軒も暗躍してなさそう。ちなみに柳生十兵衛は慶安3年に没しているからサーヴァント化していたり「実は生きていた」という設定だったり「並行世界です」と言い張ったりしないかぎりは出てこないはず。

 主人公・伊織のサーヴァントは「セイバー」としか表記されておらず真名は不明。服装からすると「ヤマトタケル」っぽい(女装した逸話もあるので性別不明なところもよりそれっぽい)が、わざわざ真名を隠しているところからして引っ掛けの可能性も否定できない。どっちにしろこのゲームで初めてFateに触れた子は性癖が壊れそうだな。セイバーのCVは「山村響」、知らないからぐぐったけどうたわれのシスとかしっぽなの文狐師匠を演った声優か……あ、戦神館の世良水希もこの人か。

 アーチャー陣営のマスターは「鄭成功」、近松門左衛門の浄瑠璃「国性爺合戦」のモデルになった人物らしいが正直名前くらいしか知らない。由比正雪と同時代の人物ということで司馬遼太郎の『大盗禅師』に正雪ともども出演しているとのこと。サーヴァントのアーチャーに関してはシルエットのみ、ポニテで女性的な印象を受けるがセイバーがアレだけにこちらも確たることは言えない。和系なら「那須与一」、中華系だとしたら「李広」あたりかな、とボンヤリ予想しています。

 ランサー陣営のマスターは「地右衛門」、島原の乱の生き残りという包帯グルグル巻きの男。原城に立て篭もって生き延びた「山田右衛門作」の変名では、と予想する向きもあります。ランサーはどう見てもジャンヌ・オルタ(CVが坂本真綾だし)なのだが、「ランサー」としか表記されていないので「ジャンヌ・オルタによく似た別人」という線もある。まぁ普通にジャンヌ・オルタだと思いますけど……FGOのあれこれでちゃっかり座に登録されたのかもしれない。

 ライダーのマスターは前述の通り由比正雪、単に中性的な顔立ちなのか男装しているのかは不明。CVは「田村睦心」、JOJOのエルメェスをやってる声優らしい。Wikipediaを見ると「〇〇(男性キャラクター)の幼少期」みたいな少年役が多いな。サーヴァントのライダーは真名不明ながら黒い甲冑の大太刀遣い、Fateでこの見た目だと「源氏か?」って思ってしまう。ベルトが武田氏の家紋「割菱」に似ているので「甲斐源氏の流れを汲む武田信玄では?」という説も。「黒雲」って愛馬が有名だからライダークラスであることに違和感はない。

 キャスター陣営はマスターもサーヴァントも不明、わかるのは服装とシルエットのみ。パッと見の印象だと中華系? サーヴァントのシルエットも道士服っぽい。アサシン陣営はマスターが「ドロテア・コイエット」で時計塔所属の魔術師、実在したスウェーデン貴族「フレデリック・コイエット」の娘という設定。聖杯戦争に参加する時計塔の魔術師って、正直噛ませ犬の印象が強いんだよな……序盤でいなくなりそう。シルエットのみのアサシンはすごくゴテゴテした感じ、この時代のヨーロッパは三十年戦争が終結して間もない頃だから三十年戦争絡みかも。「アルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタイン」(ボヘミア出身の傭兵隊長、スウェーデン王のグスタフ・アドルフを戦死させた)か、「フェルディナント2世」(ハプスブルク家出身の神聖ローマ帝国皇帝、ヴァレンシュタインを暗殺させた)か。バーサーカー陣営のマスター「高尾太夫」は実在した吉原の遊女、襲名制だが時代を考慮すると初代高尾か? CVは「小清水亜美」、カレン・オルテンシア役の声優だ。最近だと『江戸前エルフ』でエルダ役を好演している。バーサーカーは「宮本武蔵」、FGOでは水着の武蔵がこのクラスだったのであまり違和感はない。伊織の父親にして師匠に当たる存在だが、どうもサムレム世界の武蔵は男みたいなので伊織側の面識はない模様。既に亡くなっている頃なので男武蔵と顔合わせする展開はないだろう。

 やはりFate作品は発表された直後の真名予想が楽しいな……数百年前の話なので歴史上の人物をサーヴァントだけでなくマスターとして登場させられる、つまりFGOとコラボしたら「マスターをサーヴァント化することも容易」というのが企画として強い。ジャンヌ・オルタ以外の13人は新規サーヴァント候補となり得るわけで、また待機列が長くなりそうです。いろいろ気になるけど一番の関心事はやっぱり「セイバーの性別どっちなの?」だ。女の子なら伊織との恋愛妄想が捗るし、男の子なら男の子で女装させられるわけだから個人的にどっちもアリです。

「悪役令嬢」なぜ人気? 小説の出版、10年で0→108点に急増(朝日新聞デジタル)

 この悪役令嬢というジャンルは主に女性向け小説で流行ったものだが、最近は男性向けの方にも「悪役転生モノ」という形でブームの波が来ています。「悪役転生モノ」はゲームやアニメの世界におけるサブキャラやモブキャラに転生する「モブ転生」の一種であり、大抵は主人公の前に立ち塞がって薙ぎ倒されるザッコい敵役に生まれ変わる。悪役令嬢モノに比べて「序盤で退場するタイプの悪役」が多いというのが特徴。中にはラスボスや裏ボスに転生するってケースもありますが、やっぱり「周りから見下されるようなゲスいザコ」という最低の地点から出発して最強や無双の座へ昇り詰めていく……っつー方がギャップも活かせますもんね。

 比較的古い作品だと『豚公爵に転生したから、今度は君に好きと言いたい』、主人公が「豚」と揶揄される肥満児で、いろいろ事情があって愚者を演じていたんだけど、原作アニメでは悲しい末路を迎えてしまう。アニメの猛烈なファンだった男の精神が転生(ないし憑依)したことで「今度こそ後悔しないような未来に向かおう」と奮闘する。文章がかなり粗い反面、設定の作り込みが偏執的で結構好きだったし書籍版も10巻とそれなりに長く続いてくれたんだけど、残念ながら打ち切りに近い形で終了となってしまった(カクヨムでの連載は続いている)。悪役転生ブームが来る前の作品だったから少し「早すぎた」印象はあります。ちょうど豚公爵と入れ替わる形で書籍化が始まった『俺だけレベルが上がる世界で悪徳領主になっていた』あたりから徐々にこの手のジャンルに勢いが出てきた気がする。『エロゲ転生』もその翌年に書籍化が開始してるな。最近読んだ中で個人的に好きなのは『災悪のアヴァロン』『チュートリアルが始まる前に』『男子禁制ゲーム世界で俺がやるべき唯一のこと』あたりだ。

 『災悪のアヴァロン』は現在3巻まで刊行中。クラスの連中から「ブタオ」と蔑まれる嫌われ者のキャラに転生した主人公は極力目立たないように振る舞いながらコツコツとダンジョンでレベルを上げていく。この「レベル上げ」の部分に紙幅の大半を割いており、ぶっちゃけ悪役転生モノというより「ハクスラ体験記」といった趣が強い。そのためストーリーの展開も遅く、今のペースじゃ10巻あっても折り返し地点に辿り着けるかどうかさえ怪しい。しかし、主人公が強くなっていく過程をじっくり描いてくれているシリーズなので、「焦らずこの調子で続けてほしい」って気持ちになるし待つのも苦ではない。主人公以外にも転生者が複数存在し、何かしらシナリオに介入しようとしている不気味なムードが漂うのも良い。プロローグが不穏すぎる(恐らく主人公の親しい人たちはほとんど鬼籍に入っていて主人公が魔王のような存在と化している)せいで平和なシーンを見かけると却ってハラハラするぜ。4巻も今年中に発売する予定とのことなんで楽しみにしている。

 『チュートリアルが始まる前に』は少し前に2巻が出たところ。イラストレーターが「3巻の原稿読ませてもらった」とツイートしているので3巻もそう遠くないうちに刊行されるはず。ダンジョン探索型RPG『精霊大戦ダンジョンマギア』のチュートリアルで死ぬザコ敵「清水凶一郎」――口癖が「ヒャッハー」の時点で性格はもうお察しである。そんなお察し野郎に転生してしまった主人公は、特大の死亡フラグである「チュートリアル」が始まる前に可能なかぎり攻略を進めておこうとゲーム知識をフル活用してダンジョンに挑むが……っていう話。チュートリアルが始まるのは3年後、それまでに諸問題を解決しておかねばなりません。一人ですべて何とかできるほどの隔絶した性能もないから味方を集めてパーティを組むことにしますが、自分含めてみんな3年後の本編では死んでいたりアレなことになっているキャラばかり。正史? んなもんクソくらえ、とばかりにシナリオを改変していく様子が心地良い。これは逸史であり叛史なのだ。あと何と言ってもヒロインが可愛い。天真爛漫なのに敵を斬り刻むのが大好きという可愛いサイコパス。主人公が「ヒャッハー!」と叫ぶのに合わせて「ひゃっはー☆」してくれるの可愛すぎない? もうみんなが楽しく冒険してるところをずっと見てたいですね。

 『男子禁制ゲーム世界で俺がやるべき唯一のこと』はつい先日2巻が出たばかりの新シリーズ。副題は「百合の間に挟まる男として転生してしまいました」、この時点で作中のシチュエーションをほぼすべて説明し終えている。キスを交わすことで女同士でも子供が作れる、そんな極まった設定の百合ゲー『Everything for the Score』――通称「エスコ」。気が付けばエスコ界最大のお邪魔虫である「三条燈色」に転生していた主人公は「この世界に俺など不要」と断じつつ、せめて己の命を「百合を守るため」に使い尽くそうと決心する。出てくるヒロインがどいつもこいつも鬼のようなチョロさで主人公に好意を持ってしまい、全然百合百合しくならない(むしろ男を巡って修羅場る)という強火百合ヲタの主人公にとって嘆きの止まらない状況が笑えます。基本的にコメディというかギャグのノリなんだが、唐突にシリアス展開も挟まるなど作者のやりたいことを全部やろうとしている感じで非常に混沌としている。420歳の師匠とイチャイチャする件とか、パロネタの多さとか、話を盛り上げるためというより「ただ書きたかったから」ではないかと思わせる要素が随所にありますよ。まるでエロゲみたいなてんこ盛り感。というかテキストの雰囲気が完全に2000年代のエロゲなんですよね。特にメイドとの遣り取り、「作者は『暁の護衛』のツキとか、ああいうタイプが好きなのでは?」と勘繰ってしまうくらい懐かしいテンポで畳みかけてくる。「ゲーム知識を駆使してヒロインたちを悲劇的な運命から救出する」っていう鉄板展開を挟みつつ、脈絡なく缶乃作品の布教を始めるような脱線を平然と繰り返す自由さに惚れ惚れとします。2巻には「絶対百合壊すウーマン」「クズの一等星」と形容される魔人「アルスハリヤ」も参上してより混沌としてくるぞ。表紙でヒロインみたいなツラしてるけど「相手を弄んで嬲り殺しにするのが好き」「嫐(女と女の間に男を挟ませる行為)に愉悦を覚える」という救いようのないキャラで、主人公も躊躇わずに殺しにいくほどである。挨拶している最中に「死ね〜(^o^)(ドスドスドス)」と胸へ刃物を抉り込むシーンはさすがに笑った。

『英国古典推理小説集』読んだ。

 今年の4月に岩波文庫より刊行された推理小説アンソロジー。タイトル通りイギリスの古典作品を収録している。一番古い作品は1841年発表、一番新しい作品でも1929年発表。ジョン・ディクスン・カーのデビューが1930年だから、大雑把に言えば「カー以前の推理小説たち」である。カーはアメリカの作家だから『英国古典推理小説集』に対する表現としては少し不適切かもしれませんが……ちなみに1930年はコナン・ドイルが亡くなった年でもあります。冒頭2編を除けばドイルが生まれた後の作品ばかりなので、「概ねコナン・ドイルが存命だった時代のイギリスで発表された推理小説」と書けばちょっとは雰囲気が伝わるかもしれない。収録作品は8編、大トリを飾る「ノッティング・ヒルの謎」以外は発表順に掲載されており、「推理小説」というジャンルがだんだん読み手の間に定着していく様子が窺い知れる。

 「『バーナビー・ラッジ』第一章より」/チャールズ・ディケンズ(1841年) … イギリスの文豪ディケンズの小説『バーナビー・ラッジ』の第一章を掲載。ほんの9ページなのですぐに読み通せる。『バーナビー・ラッジ』は『荒涼館』ほどではないが結構長く、全文掲載しようとしたらこの本よりも分厚くなってしまうレベルなので一部抜粋に留まるのは仕方ないことだ。ソロモン・デイジーという男が20年以上前に起こったルーベン・ヘアデイルの殺人事件について語る。ただそれだけの内容となっています。この後に付記された「エドガー・アラン・ポーによる書評」がメインというか、ポーの書評の要点を理解してもらうために抜粋した感じだ。なんせポーの書評は22ページ(連載中だった頃の書評と連載終了後の書評、2種類を収録している)と、抜粋した箇所よりも長いのだから。「モルグ街の殺人」もほぼ同時期に発表されていることを考えると興味深い書評であるが、逆に言うとディケンズやポーに興味のない人からすると退屈かも。何ならこのへん飛ばして先に「有罪か無罪か」以降を読み出しても構わないと思います。

 「有罪か無罪か」/ウォーターズ(1849年) … 警察官がある殺人事件について回想する、という形式の短編。26ページだからそんなに長くはない。ある資産家の屋敷に勤めていた召使が殺され、資産家の甥が最重要容疑者として捜査線上に浮かび上がる。しかし容疑者である甥に接触した「私」は「こいつ、どう見ても犯人じゃないな」と感じ始めて……「私の職務は罪ある者を暴き出すことにあったが、罪なき者の名誉を守ることも同等に重要な職務だった」と語るくらい正義感の強い警察官が主人公で、これが現代のドラマだったら十中八九「犯人じゃない」と信じた奴に裏切られる展開だな、と思うが現代ではないので普通に無実を証明してスカッと終わる。警察官なのに「真犯人を捕まえる」ことよりも「嵌められそうになっている無実の男を助ける」ことを重視して動くってのはちょい珍しいかな。解決法が割と乱暴なあたりに時代を感じます。

 「七番の謎」/ヘンリー・ウッド夫人(1877年) … 「ジョニー・ラドロー」という主人公が10代の頃の思い出を回想するシリーズの一つ。シリーズすべてが推理小説というわけではないらしい。「シーボード・テラス」という七軒の家が並ぶ集合住宅の七番、つまり角地の家で起こった事件を巡ってドタバタする。主人不在のままメイドふたりが暮らしている七番で、メイドのひとりが亡くなる。状況的に殺人だと思われたが、七番の近くにいた「私」は怪しい人間が出入りするところは見ていなかった……ずっと注視していたわけではないので「視線の密室」は成立せず、「不可能犯罪」というより「不可解犯罪」といった趣のシチュエーションだが、この内容で82ページもあるのは推理小説としちゃ少しクドいかもしれない。てか、この小説は推理どうこう真相どうこうといった部分よりもそれ以外のところが面白い。「東京ディズニーランドへ行くために東京駅で下りたのに、『あそこの最寄り駅は舞浜ですよ』と言われて憤慨した。だったら何で舞浜ディズニーランドと言わないんだ!」のイギリス版みたいなトラブルが冒頭で発生していて既に笑えた。地方でもありますよね、〇〇っていうから〇〇駅で下りたのに実際は別の駅の方が近いって現象。死体発見の流れも「あれ? 鍵が開かない(ガチャガチャ)」から始まるひと悶着でバタバタし、キャラクターたちが生き生きと動いているのが伝わってくる。是非他のジョニー・ラドロー物も読んでみたいが、そもそもヘンリー・ウッド夫人の作品ってほとんど翻訳されていないみたいですね。この本がキッカケになって注目されるといいんだが……。

 「誰がゼビディーを殺したか」/ウィルキー・コリンズ(1880年) … 『月長石』で無類の知名度を誇るウィルキー・コリンズの短編。余命僅かな「私」が若き日の過ちとして語る、ロンドンの下宿屋で起こった殺人事件の顛末とは。36ページで過不足なくまとめているが、肝心の殺人事件は計画的なものではなく衝動的なものだし、被害者の妻が「私が夢遊病で殺したのかもしれない」と取り乱すところもいまいち迷彩として機能しておらず、ミステリ的なインパクトは弱めだ。主人公の言う「若き日の過ち」とは何か? という部分が力点になっており、推理小説的興味よりも「信じたくない真相に気づいてしまったとき、人は如何に処するべきなのか」という懊悩こそが読みどころとなっています。

 「引き抜かれた短剣」/キャサリン・ルイーザ・パーキス(1893年) … 女性探偵「ラヴデイ・ブルック」を主人公にしたシリーズの一編。ダイヤー氏が受け取った封筒の中には、恐らく短剣と思われるものが描かれた絵だけが入っていた。こんなもの貰うような心当たりはない、誰かが自分に脅しをかけているのか? 不安がるダイヤー氏の家ではネックレス紛失騒動も起こっていたが、奇妙なことに消えたとされるネックレスをそもそも誰も見たことがないらしい……タイトルの「引き抜かれた」は原題だと「Drawn」であり、「絵に描かれた」とのダブルミーニングになっている。これも36ページで過不足なくまとまっています。他の作品と違って人死にが絡んでこない爽やかな一作であり、読後感の良さは本書の中でも随一。名探偵らしい名探偵が出てくる、という点でもっとも推理小説らしい出来に仕上がっている。ラヴデイ・ブルックの活躍をまとめた短編集が読みたくなったけど、この「引き抜かれた短剣」以外は翻訳されていないみたいですね。残念。

 「イズリアル・ガウの名誉」/G・K・チェスタトン(1911年) … 初出時のタイトルは「奇妙な正義」だったというが、そっちの方で記憶している人はほとんどいないであろう“ブラウン神父”シリーズの短編。シリーズの1冊目に入っているエピソードだから読んだことある人も多いのではないだろうか。個人的には創元推理文庫版の「イズレイル・ガウの誉れ」が馴染み深いが、ブラウン神父の翻訳は創元の他にもハヤカワ・ミステリ文庫版やちくま文庫版などがあり、そのへんは人によって違う部分かもしれない。風変わりなグレンガイル城で暮らす召使の男、イズリアル・ガウ――グレンガイル伯爵の生死を確認しにきた一行は、城のあちこちで散見される意味不明な異常に慄き、真相の一端を知るであろうガウに疑いの眼差しを向けるが……28ページなのでサクッと終わる。なかなか真相に辿り着けず戸惑い錯乱気味の発言を漏らすブラウン神父の姿にホッコリ。私はホームズよりブラウン神父が好きなタイプの中学生だったから久々に読んで懐かしくなりました。米澤穂信の『儚い羊たちの祝宴』に収録された「玉野五十鈴の誉れ」がこの作品に対するオマージュなので併せて読むのもオススメです。

 「オターモゥル氏の手」/トマス・バーク(1929年) … 江戸川乱歩が編纂した『世界推理短編傑作集』の第4巻にも収録されている名編。そっちのタイトル(「「オッターモール氏の手」」)で馴染んでいる方も多いだろう。霧に烟るロンドンで続発する、姿なき悪鬼による無差別殺人。中国人の老人「クォン・リー」はあくまで仮説と念押ししつつ、その正体について語り始めるが……名探偵の推理で犯人とトリックを暴き、一件落着! という推理小説のフォーマットから離れ、「こうして殺人鬼は野放しになりましたとさ」な雰囲気を湛えて終わる、どちらかと言えばホラー寄りの、一度読んだら忘れられないくらい印象深い作品。33ページだが密度濃くてもっと長く感じる。読んだの20年以上前だけど余裕で内容覚えてました。覚えているから味気ない読書体験になるかと思いきや、むしろ「オチがわかっているからこそ読み取れる箇所」が多くて初読時よりも更に面白く感じられたな。ちなみに、この作品自体はメチャクチャ有名ながらトマス・バークの翻訳は日本だとあまりされておらず、アンソロジーにいくつか収録されているだけで単著としてまとめて読むことはできません。クォン・リーの話は "The Pleasantries of Old Quong" という短編集にまとめられているらしいが、ぐぐっても詳しい情報が出てこないのでよくわからないです。

 「ノッティング・ヒルの謎」/チャールズ・フィーリクス(1863年) … 本書の目玉。なんと200ページを超える分量があり、これだけで薄めの本が一冊出せる。生命保険会社の依頼を受け、保険金目当ての犯罪がないかどうか調査するヘンダソン。彼は膨大な資料をもとにノッティング・ヒルで起きた「ある疑惑」に対する私見を述べるが……全編が手紙や文書、証言などの記録(ログ)によって成り立っているという『白衣の女』形式の中編。日本だと『招かれざる客』の前半や『十二人の手紙』がこれに該当するかな。個人的に思い出すのは『閉鎖都市・巴里』ですが。ちなみにこういう手紙などの書類を模した文章で進行するタイプの小説を「書簡体小説」と呼ぶ。「ノッティング・ヒルの謎」は保険金殺人の疑惑が漂う事件を発端にストーリーを展開させていくが、いきなり事件の26年前に遡って因果の開始点を探り始める遠大さも相俟って読み出した当初は混乱する読者も少なくないだろう。保険金云々は一旦頭の片隅に置いといて、「数奇な運命に翻弄される双子姉妹の物語」を辿ることに専念しよう。本書最長とはいえ200ページちょっとのボリュームなんだから、腰を据えて読めばそこまで苦でもなく「あー、なるほどそういうことなのね」と呑み込める仕様になっています。肝心な部分がオカルトじみているせいもあってヘンダソンの推理は決め手に欠けるというか、「小職も確信が持てないので判断は貴台に委ねたい」と丸投げ気味に終わる。彼の推理通りなら相当に胸糞の悪い事件であり、犯人に正義の鉄槌が降り降ろされないことにイライラしてしまうが、こういうもどかしさもまた推理小説の一面だと思えば悪くはない。ただ元が連載小説だったせいか、同じような文章が繰り返し出てくる難点はある。また辻褄の合わない部分に訳者が注釈を入れており、文書に対して「作者が入れた注釈」と「訳者が入れた注釈」の2つが混ざっていることを理解しないと首を捻ることになるので注意しましょう。

 「古典=高尚だけど退屈でつまらない」というイメージもあってなかなか読み出せなかったが、いざ読み始めると「身構える必要はなかった」と瞬時に気づいてあっという間に読み切ってしまった。個人的に好きなのは「七番の謎」と「引き抜かれた短剣」と「オターモゥル氏の手」の三つ。収録作だけで満足できず他の作品も読みたくなったが、ろくに翻訳されていないという悲しみを知るばかりだった。ヘンリー・ウッド夫人やキャサリン・ルイーザ・パーキス、トマス・バークの単著が出たらいいな……期待するだけならタダだ。

・拍手レス。

 『泡沫に神は微睡む』
 面白いですね!続きを我慢できずになろうで更新分まで読んでしまいました。
 最近読んだドロドロ系の漫画だと、『このゴミをなんとよぶ』が面白かったので良かったら読んでみて下さい。ヒロインがかなりダメヒロインで可愛いです。
 https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_EB01203103010000_68/
 和風伝奇小説だとハーメルンの『和風ファンタジーな鬱エロゲーの名無し戦闘員に転生したんだが周囲の女がヤベー奴ばかりで嫌な予感しかしない件』がイチオシです。
 タイトルで感じた印象とは真逆の作風で、『泡沫に神は微睡む』に近い印象を受けました。

 『泡沫に神は微睡む』、私もなろうで続きを読もうかどうか迷いましたけど「初見を紙で味わうのが一番気持ちいい」と思ってグッと堪えました。『このゴミをなんとよぶ』は主人公もヒロインもダメダメなのがいいっスね……「これ男女逆にするとヤバさ倍増しだな」と脊髄反射で思ったけど具体的に想像すると「男女逆にしたらエロマンガでよく見るやつだコレ」ってなったり。『和風ファンタジーな鬱エロゲー(以下略)』は私好みのモブ転生モノっぽいのでちょっと読んでみます。


2023-06-14.

コミックDAYSのアプリでポイントが貰えるタイプの新作はだいたい読んでいますが、最近のオススメは矢寺圭太の『ずっと青春ぽいですよ』な焼津です、こんばんは。

 部員たった一人のワンマン状態から新入部員2名(両方♂)を迎え、どうにか部としての様相を辛うじて保っている「アイドル研究部」。野球部が甲子園を目指すみたいに、自分たちもアイドルをプロデュースするような青春に情熱を燃やしたい……部長の切なる願いは「女顔の新入部員に女装させる」という明後日の方向へ突っ走っていった! 「何かが変わる予感がした…!!」「か……変わりたくないよぉ……」ってな具合で不本意女装好きの私のために描かれたような一本です。まだ始まったばかりなのでどういう話になるのかよくわからないが、タイトルからして『ラブライブ!』みたいな感じにはならずダラダラウダウダ部室で貴重な思春期を浪費する「青春垂れ流し」系統のコメディになるんじゃないかと。バナーイラストからすると、冒頭でプロデュースを拒否したギャルっぽい女子たちも合流して5人でガチャガチャするんかな。ラブコメになるかもしれない。ならないかもしれない。どっちに転んでも面白そうなのでのんびり追いかけることにしよう。

『マクロス』新作アニメ制作決定 制作はサンライズ「新作『マクロス』アニメーション企画始動」(オリコン)

 「マクロス新作」というトレンドを見たときは「へぇー」ぐらいのテンションだったけど、「制作はサンライズ」で「!?」となりましたわ。サンライズがマクロスを作るなんて、そんな時代が訪れるとは考えたこともなかった……これが令和か。今のサンライズはガンダムみたいなロボアニメだけではなく『ラブライブ!』というアイドルアニメの実績もあるから、先入観を外して見ればそこまでおかしなチョイスではないんですよね。サンライズには境ホラの3期をやってほしい気持ちが未だに蟠ってるけど、それはそれとしてマクロスの新作も楽しみです。マクロスのTVシリーズはだいたい途中で挫折していて完走した経験が一度もない(劇場版だけで満足してしまう)んだけども、今度こそ最後まで付き合えるといいな。

 ロボアニメと言えば『蒼穹のファフナー THE BEYOND』が7月からTVシリーズとして放送されるらしい。もともとはOVAで、小規模ながら劇場公開もされた。『蒼穹のファフナー』は作中の時系列で並べると「RIGHT OF LEFT(TV特番)」→「無印(TVシリーズ1期目)」→「HEAVEN AND EARTH(劇場版)」→「BEHIND THE LINE(OVA)」→「EXODUS(TVシリーズ2期目)」→「THE BEYOND(OVA・TVシリーズ3期目になる予定)」ってな具合で、大きく分けて6つの作品があります(詳しくは公式サイトを参照のこと)。THE BEYONDは一番最後の作品なので、ここから観始めると情報量が多すぎてワケが分からなくなります。「じゃあRIGHT OF LEFTから順に観ていけばいいの?」と聞かれると返答に困るところで、実はROFや無印から観始めても情報量が多すぎてワケが分からないアニメなんです。設定をひと通り呑み込んでから臨まないとなかなか情報が読み取れないため、「ファフナーは2周目が本番」という声もあるほど。私も本放送時は数話で脱落し、十年以上経ってからニコニコ動画の一挙配信をコメント付きで観てようやくハマったぐらいだ。1期目の前半はマジで隣に解説してくれる人でもいないと辛い内容である。謎が多くてスッキリしない内容に加え、エピソードの区切りごとに入るポエムじみたモノローグが辛さを倍増させる。そこらへんを乗り切れるかどうかが鍵だ。ファフナーは「世代交代」の要素があるロボアニメで、1期目は新米パイロットとして危なっかしい戦いを繰り広げていた連中が劇場版では歴戦の猛者になって後輩たちを指導しており、2期目では後輩たちにも後輩ができて……と、時間の流れをハッキリ感じられる構成になっているぶん一度ハマり出すと底なしに面白く感じられる。どこから観ても情報の洪水で混乱を強いられるアニメなのだから、いっそ好きなところからテキトーに観始めればいいんじゃないかと思います。

・安田のらの『泡沫に神は微睡む(1〜2)』読んだ。

 「小説家になろう」で連載中の和風伝奇ストーリー。あくまで「和風」であって舞台は異世界、極東に浮かぶ島「高天原」で「実在する神々」とともに暮らす人々が怪異や化生に苦しめられながら日々を送っています。1巻目の副題が「追放された少年は火神の剣をとる」だからすぐにわかるでしょうけれど追放モノの一種です。本当は物凄く稀少で特別な存在なのに「貴重すぎて文書に残すわけにもいかず、ごく一部の重要人物にのみ口伝で教えることが許されてきた」ためどこかで申し送りに不備が発生し、それに関する事柄が失伝してしまったせいで幼い頃から冷遇されてきた主人公は生家を追い出され、別の土地で本来の資質を開花させていく――と、大まかな流れは追放モノの王道を踏襲している。1巻が出た時点では「また追放モノか……」と食傷して手を伸ばす気になれなかったが、2巻が発売されたつい先日「最近は追放モノあんまり読んでないし、たまにはいいかな」という気分になって2冊まとめて読んでみることにしました。テンプレみたいな内容でも2巻分のボリュームがあれば充分に堪能できるだろうと楽観していたが、すぐ「あっ、これ追放モノのフォーマットを利用してやりたいことをやってるやつだ」と気づいてズブズブとハマっていってしまった。そしてお約束通り「なんで3巻がまだ発売されてないんだ! これからは毎月新刊を出してほしい!」と悶え苦しむハメに。

 神々が実在する世界で、五柱の神によって治められた五洲の島国「高天原」――過去の経緯から数百年に渡って鎖国している(長崎みたいな出島は一応ある)閉ざされた神秘の土地。中央に位置する「央洲」とその東西南北を固める四洲から成っており、三宮によって統べられている央洲以外はそれぞれ「四院」と呼ばれる太守たち(苗字が〇〇院で統一されている)が洲(くに)を運営していた。その四院を支える華族が各洲に二家ずつあり、ひっくるめて「八家」と呼ばれている。八家序列一位、「最強の武を誇る」とされる雨月家に生まれた「晶」はこの世界の住人であれば誰でも生まれつき宿しているはずの精霊を持っていなかったことから「出来損ない」「人間擬き」と侮蔑され、「恥ずかしくて表に出せない」として偽名を与えられ、雨月に近しい一握りの者しか知らない秘匿された子供として育った。10歳の頃、彼の弟である「颯馬」がもう充分大きくなったからと、遂に不要な存在として故郷たる北部の土地から追放されてしまった。既に故人だが生前は晶を気にかけていろいろと世話を焼いてくれた祖母の伝手を辿り、まだ幼い少年は汽車に乗って(鎖国しているけど文明開化後なのでテクノロジーは明治時代並み)南部の洲へ向かう。だが、彼は知らなかった。自分が精霊を宿していないのは「精霊を宿す必要がないほど高位の存在であるから」だと……。

 「目障りな奴が消えてせいせいしたわ!」と喜んだのは雨月家とそのおこぼれに与かる配下の家だけで、その主家たる義王院は「そろそろ晶さんをお迎えするか……あれ? いない?」と遅まきながら事情を察して真っ青になる、コントみたいな状況で笑わせてくれます。いわゆる「アンジャッシュ状態」なんですよね。雨月家は晶に精霊が宿っていないことを必死で隠そうとしているのだが、義王院は最初からそれを知っているというか「むしろ精霊が宿ってないからこそありがたい」と思っており、両者の齟齬が正されないまま破局に向かっていく。作中の世界では自然発生した精霊が時間経過とともに成長していって階位を高め、精霊から神霊(みたま)、神霊から土地神へとランクアップする仕組みになっています。人間が宿せるのは神霊が限界で、「神霊を宿している」というのは周りが大騒ぎするほどスゴいこと(晶の弟である颯馬が神霊遣いに該当し、雨月家当主が晶をより一層疎んじる要因となっている)なのだが、逆に言えば人間に宿ってしまうと神霊以上の存在にはなれません。生まれつき精霊を宿していない主人公はやがて「神格に匹敵するモノ」に至るブッ壊れSSR確定ガチャチケットみたいなものであり、本来なら「追放する」などという選択肢が生まれるはずもない。神話並みの奇跡をドブに捨てるような特大級の失態をやらかしてしまっているのに「主家の手を煩わさずに愚物を処分した我々はなんて忠義者なんだろう」と悦に入っている雨月家サイドと「ま、まずい……この洲終わったかも……」と卒倒寸前な義王院サイドのギャップが本当に面白い。主人公のような存在は「およそ百年に一度」「何処かの八家で」しか発生せず、神々が目の色を変えて己の元に引き込もうとする「生きた奇跡」であるから下手に扱えば彼の処遇を巡って神と神の間で戦争が起こりかねない。言うなれば「傾国の御坐」なのである。主人公がチート能力で好き勝手するなろう小説ではなく「チートすぎてほとほと扱いに困る」主人公に頭を悩ませるお偉方の反応が読みどころの一つとなっているタイプの小説です。

 バトル物としては、主人公が自身の有り余る力を使いこなせていないせいであまり無双感がなく、テキスト自体あっさりしているからそっち目当てで読むと少し物足りないかもしれません。武器の名前や必殺技の名称が和風伝奇バリバリなテイストで、大いに中二心はくすぐられるんですが。ヒロインが持っている薙刀の銘が「焼尽雛(しょうじんびな)」で即座に「好き……」ってなった。必殺技もただ単発でぶっ放すわけではなく、ある技から別の技に繋げる連技(つらねわざ)――要するにコンボ――の概念があるあたりも格ゲーっぽくて私好みだ。荒咬みから八錆、みたいな。ヒロインの一人が早くも側室候補になっているなど今後はハーレム展開に入っていくようだが、お色気描写はほとんどないのでエロ目的の人だとやきもきするでしょう。ぶっちゃけヒロインよりも、ほとんど出番のない「くろさま」の方に胸がキュンキュンするんだよな……四千年に渡って相手に恵まれなかったところへ主人公が誕生して、欣喜雀躍し目に入れても痛くないほど可愛がっていたというのに気合を入れて愛の巣の改修に励んでいる間に肝心の相手が追放されちゃって生死不明になってるの「可哀想」以外の表現が見つからない。不憫かわいい。「晶は何処じゃ?」「何処にも居らぬ」と惑乱するくろさまのことなど知らず、当の晶はよその洲で他の神とイチャついてるという……これ、生きていること知ってもくろさま脳を破壊されて再起不能なのでは? 「齢数千年の見た目童女な穏やかで優しい女神さまが、生まれた頃から目を付け手塩にかけて若紫していた子を掻っ攫われて周章狼狽する」展開からしか摂取できないレア栄養分はあります。

 神が理性を失って荒神化しかねないほど執着する代物なので当然手厚く保護しなければならない対象であるが、公にすると大混乱が生じかねないため最小限の範囲で情報を共有するしかなく、権力でゴリ押ししようとしてもいろいろ障害が発生して「ままならないな……」となるのがむしろ面白い。大陸では一神教と別の一神教が争っていて高天原も巻き込まれそうな雰囲気が漂っているなど、これからどんどんスケール大きくなっていきそうでマジなる早で新刊出してほしいシリーズです。コミカライズも既に始まっているということであり、出版社も期待をかけているはず。後は売上さえ安定すれば……といったところだろうか。1巻はKindle Unlimitedの対象になっているので、アンリミ会員で時間のある方は試しに読んでみては如何でしょう。「10代前半の少年が付け髭して老人のフリするのはいくら何でも無理があるだろ!」といったツッコミどころもあるけどそこは御愛嬌だ。

 この作品と同時期に『転生陰陽師・賀茂一樹』『現代陰陽師は転生リードで無双する』といった伝奇ラノベを読んでいたこともあり、私の中にちょっとした和風伝奇ブームが訪れている。『転生陰陽師・賀茂一樹』は手違いで地獄に落とされた主人公が埋め合わせとして転生ボーナスをもらい、地獄で溜め込んだ穢れを祓うために陰陽師としてバリバリ活躍する話。非常に淡々とした筆致というか、良く言えば落ち着きのある、悪く言えば終始盛り上がりに欠ける文体で紡がれており、山場でも割とあっさり流していく。蘊蓄的な説明が多いのも好みが分かれるところかな。コッテリした味付けのラノベが苦手な人が読めば「こういうのでいいんだよ、こういうので」ってなるかもしれません。『現代陰陽師は転生リードで無双する』は赤ちゃん時代から丁寧に書いてるぶん、展開は遅いがじっくりと楽しめるタイプ。主人公がメッチャ俗物で、幼馴染の女の子が好みの容姿じゃないから「あまりフラグを立てないでおこう」と距離を置き、将来有望な可愛い子と仲良くなるべく積極的に動いていくなど「ここまで自身の欲求に素直だと却って清々しいな」ってなる。俗物なだけであって根は善良というか、「人の役に立てる存在になりたい」という気持ちが強いから憎めないんですよね。「人の役に立つついでに大金と幸せな家庭をゲットしたいぜ!」な聖くんの活躍から今後も目が離せない。


2023-06-01.

・本屋の平台で見かけ、表紙に惹かれて手に取った『ABURA』。「へー、油小路の変を題材にした漫画か……油小路の変だけを題材にした漫画!?」と少しビックリした焼津です、こんばんは。

 ぐぐれば詳細はいくらでも出てくるので油小路の変そのものの解説は割愛しますが、新撰組に興味のある人だったらほぼ全員が知っている史実です。『ちるらん』などの新撰組漫画でもちょくちょく取り上げられるし、『るろうに剣心』の北海道編でも回想形式で触れられています。しかし、凄惨な粛清劇ということもあって「いくつかある新撰組エピソードの一つ」という扱いを受けることが多く、小説だとせいぜい短編相当、漫画でもそんなに長く筆を割かれるような逸話ではない。「出来らあっ!」「え!!油小路の変だけで連載漫画を!?」という光景が目に浮かぶほど思い切った選択なのです。しかも御陵衛士の成立過程から長々と描いて時間稼ぎするわけではなく、いきなり伊東甲子太郎が殺される場面から始まる(その後少し回想入るけど)ので「本当に油小路の変だけに話を絞り込んだバトル漫画」となっています。ニッチというかピンポイントすぎるだろ……「よかった、今ちょうど油小路切らしてたんだわ」って喜ぶ読者が全国にどれくらいいるんだ? こういう出逢いがあるから本屋通いはやめられないな。

・本屋で見かけたと言えば古泉迦十の『火蛾』、ノベルス版を持っているから文庫版はスルーするつもりだったが、「ひょっとしたら解説とかに『崑崙奴』の情報が載ってるかもしれないし……」という未練に抗えず棚にあったラスト一冊を購入し、帰宅してビニールを破いたらマジで「星海社より次回作『崑崙奴』出版予定」とあって快哉を叫んでしまった。

 『崑崙奴』というのは受賞後第一作として刊行する予定だった、『火蛾』以上に幻度の高い長編小説です。結局出版に至らなかったのは作者がスランプに陥って書けなくなったのか、出版社と揉めたのか、『火蛾』のセールスがあまりにも良くなかったか……だいたいそんなところだろうと予想していました。解説によるとやっぱり評価の割にセールスがいまいちだったらしく、ノベルス版は初刷と二刷を合わせて2万部に達さない程度だったとのこと。現在の感覚からするとそこまで悪い数字とも思えないが、23年前である当時の基準からすれば「文庫化するほどではない」という結論を出すしかなかったのだろう。二作目として予定していた『崑崙奴』が出なかった理由について言明することを避けているが、「単に『火蛾』が売れなかったから」と考えて良さそうです。講談社からではなく星海社からってことは、恐らく少部数・高価格での販売になるんだろうな。「出るだけありがたい」という心境なので、多少お高くても買いますとも。ちなみに『崑崙奴』は「こんろんど」と読み、「遠い異国からやってきた奴隷」を意味する中国語で、少なくとも唐の時代からある言葉です。唐代の中国を舞台に神仙思想を交えて展開するシリーズの1作目として構想された……というのが既知の情報であり、内容が変わってないのであれば2作目、3作目が矢継ぎ早に刊行される可能性もありやなしや。あと『少女は踊る暗い腹の中踊る』の岡崎隼人が新作長編小説を執筆してるという話もあり、もし今年中に刊行されるのであれば17年ぶりとなります。『少女は踊る〜』も文庫化される可能性が出てきたな……。

『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』、イベント「ピュエラ・ヒストリア チベットのラクシャーシー編」開催終了

 開催期間過ぎたイベントの感想を書くのもアレだが、「ピュエラ・ヒストリア」は期間限定イベントながらも本編ストーリーに組み込まれているので開催終了後もシナリオを読むことは可能だし……と言い訳して少し言及することにしました。イベント限定クエストがプレーできなかったりドロップアイテムでの素材交換ができなかったりするだけで、話を楽しむだけなら無理して期間中に攻略する必要はないんですよね。おかげでのんびりしてしまってイベストを読み終わるのがだいたい終了間際だったり終了後だったりするんだけども。いくら終了後にストーリーが読めるからって後回しにし続けると未読シナリオが溜まり過ぎて崩すの億劫になってくるから、なるべく期間中に目を通すようにしています。

 さておき「チベットのラクシャーシー編」は13世紀、大陸でモンゴル帝国が猛威を振るっていた時期のチベットを舞台にしています。「というか、マギレコは一応アニメで知ってるけど『ピュエラ・ヒストリア』って何?」って方に向けて軽く解説すると、アニメでやったあたりは本編の第1部「幸福の魔女編」に相当し、アニメオリジナルの展開で結構な数の魔法少女が犠牲になって完結したが、アプリの方ではほとんど犠牲が出ずにそのまま第2部へ続いていく。「ピュエラ・ヒストリア」はその第2部「集結の百禍編」が閉幕した後に始まるストーリーで、第3部というより「2.5部」という位置づけのシナリオ群です。感覚的に言うとFGOの1.5部「Epic of Remnant」のようなもんだ。魔法少女を巡る過去の歴史に異常が生じており、正しい記録(レコード)へ修復するため各時代に介入する――と、やってることはまんまFGOの特異点修正である。修正することで特異点が消滅するあちらと違い、こちらはそのまま未来に繋がっていくため「見守る」要素が強く「介入は最小限に抑えること、でなければ歴史が歪んでしまう」というタイムパトロールめいた役割が強調されています。魔法少女の迎える結末は変えようがないので、バッドエンドとまで言わなくてもビターエンドな終わり方をすることが多い。これまで日本の戦国時代を舞台にした「神浜の戦神子編」、滅亡間際のプトレマイオス朝エジプトを描く「アレクサンドリアの蜃気楼編」、ヴァイキングが斜陽を迎える頃のヨーロッパでヴィンランド・サガする「ヴィークのワルキューレ編」、そして今回の「チベットのラクシャーシー編」と、計4つの時代と魔法少女たちの運命を綴ってきました。「6つの時代」と最初に明言しているので、後2つのエピソードが公開を待っている状態です。次は古代日本というか邪馬台国が舞台らしく、「ヒミコ様のこーけーしゃ」がメインヒロインの模様。つまり台与(もしくは壱与)か? ヒミコはほとんどの文書が「ヒミコ」で統一しているけど、台与(壱与)は「トヤ」だったり「トヨ」だったり「イヨ」だったりとバラつきが多いのでマギレコがどれを採用するのか現時点ではよくわからないです。

 「ピュエラ・ヒストリア」はまどマギ最終話に出てきた「様々な時代の名もなき魔法少女たち」をベースにしているとおぼしき部分があり、「チベットのラクシャーシー編」のメインヒロイン「ヘルカ・ラマ」もまどマギ最終話にチラッと出てきたチベット風の民族衣装を纏った子、通称「チベットちゃん」が元になっている可能性が高い。キャラデザは刷新されているが髪の色も共通している。ただしヘルカ=チベットちゃんではなく、チベットちゃんはチベットちゃんで女神まどかのドッペルに顔を出すから設定的には「地域が共通しているだけの別魔法少女」という扱いだろう。ガチャ実装する以上、ソシャゲ向けにキャラデザをリファインする必要がある……という身も蓋もない事情が絡んでいるのかもしれない。ちょうど「郭侃」というモンゴル帝国に臣従した漢人武将を主人公に据えた田中芳樹の小説『残照』を読んだ直後だったので個人的にうってつけの題材であり、興味深く臨むことができた。ヘルカはモンゴル帝国の侵略によって故郷を焼かれ、両親も殺され、幼馴染の少女「ドルマ」とともに尼僧院で暮らしている。周りの人々も似たような境遇であり「モンゴルに復讐を!」と猛っているが、憎しみの念に囚われていないヘルカは「大帝国相手にそんなの無理でしょ」と冷めた目で見遣っていた。しかし周囲は優秀で落ち着き払った様子のヘルカをラクシャーシー(救世主)と見做し、「どうか我々をシャンバラにお導きください」と懇願する。本人の意思を置き去りにして、ただただ状況に流され続ける日々。かくして彼女の前に「ジャータカ様」と呼ばれる白い謎の生き物が姿を現し……と、そんな感じで「救世主に祭り上げられた少女の奮闘と末路」を描いています。概要だけ書くと悲惨なエピソードのように思えますが、幼馴染の少女・ドルマとの関係やお互いの心情を丁寧に紡いでいるおかげもあって、ただ悲惨なだけの話ではない心揺さぶられる物語に仕上がっている。

 てっきりヘルカはタルト(ジャンヌ・ダルク)みたいな衆生のために己の身を捧げることも厭わない「善良すぎるほど善良」なタイプのヒロインかと思っていたが、意外とネガティブな性格をしていて「モンゴル相手に戦って勝てるわけないじゃない、抵抗したって無駄無駄」と判断しているし、生活態度もだらしなく、初登場シーンが「寝坊して大遅刻」という締まらなさである。でも本気出すと頭の回転が一気に加速する感じ。可愛い顔してるけどヤン・ウェンリー型というか「非凡かつ有能ゆえ不承不承活躍することになる」タイプのおもしれー女なのだ。戦いのない平和な世界だったら単に「弁の立つぐうたらな女の子」として埋没していられたのかもしれない。「救世主なんてどう考えたって私のガラじゃないんだよな、嫌だなぁ」と内心うんざりしつつ、最愛のドルマちゃんだけはどうあっても助けたい、たとえ他のみんなを救えなかったとしてもドルマちゃんだけは幸せになってほしい……と願って破滅に通じる羅刹女(ラクシャーシー)の道を粛々と歩み出す。この感じはアレだ、『CARNIVAL』(瀬戸口廉也がシナリオを手掛けたエロゲ)のラストだ。正確な文章は忘れたが「彼女のためなら僕は神様にだってなってやろう」と決意するシーンです。魂魄を焼き尽くすほどの献身が哀しくも眩しい。

 ヘルカのことを大切に想いながらも心の弱さからヘルカを「救世主様」と仰いで縋らずにはいられないドルマ、そんな彼女のためにガラでもない救世主の役を演じようとして徹し切れず、最後の最後でふたりっきりになって「ド、ドルマちゃん…私、怖いみたい」と震えながら本当の気持ちを漏らすヘルカ。「普通の子になりたかった」ヘルカが、目前に迫った永の別れに心底怯えていることを自覚して「これじゃあ、私…なんだか普通の子みたいだね…あはは…」と力なく笑う、美しいまでの残酷な終着よ。「ヴィークのワルキューレ編」で自分のために魔法少女となってその果てに絶望した妹(ガンヒルト)をヴァルハラへ連れていくためにワルキューレとなることを決意してキュゥべえと契約するオルガも大概だったが、末路を思い描きながら人を捨てラクシャーシーと成り果てる覚悟を決めるヘルカも相当である。お互い大好きで、「彼女の役に立ちたい、彼女を守りたい」と両方が願うことによって二人とも苦しまずにはいられない皮肉が何とも切ない。マギレコは基本的にシナリオを読むだけでガチャは極力回さないようにしているが、今回は「ホーム画面で幸せそうに笑っているヘルカが見たい」という欲望に抗えず出るまで回してしまった。シナリオで殴られると弱い、もうこれはソシャゲプレーヤーに付きまとうセキュリティホールのようなもんだな。ちなみにヘルカのCVは「若山詩音」、リコリコのたきな役で知られる声優です。千束役の「安済知佳」もオルガ役をやっているし、久野美咲(クルミ役)や小清水亜美(ミズキ役)や河瀬茉希(フキ役)が声当ててる魔法少女も既にいるからなにげにリコリコごっこができるのだ、マギレコは。過去に物語シリーズやなのはとコラボした実績もあるから今後リコリココラボが開催される可能性もゼロではないです。

雑に旅する「ざつ旅」アニメ化企画進行中!「何か」が決まる特別アンケートも開催(コミックナタリー)

 あっ、掲載誌(電撃マオウ)がKindle Unlimitedの対象だからアンリミ加入期間中は最新話まで追ってた漫画だ。もう退会したから最近のエピソードは未チェックだったけど、最新号確認したら表紙でめっちゃデカデカとアピールしておる。『ざつ旅-That's Journey-』は旅漫画の一種であり、SNS上のアンケートで大雑把に「北の方」とか「南の方」とか投票を募って、もっとも票数の多かったところへ事前調査も何もなく「行きながら考えよう」とノープランな旅に出る……という読んで字の如く「ざつ」な「旅」の数々を描いています。身も蓋もない説明をすると「水どう(水曜どうでしょう)のサイコロの旅を超・簡略化した漫画」。作中でも水どうとおぼしき番組が出てくる。作者を投影した新人漫画家「鈴ヶ森ちか」が主人公になっており、実際にアカウントも存在していて投票期間中であればアンケートに答えることも可能。つまり読者参加型の企画漫画みたいな面もあるのだ。あくまでフィクションであり作中のキャラクターは架空の人物であるが、実在の人物をモデルにしたキャラもいます。水上悟志をモデルにした「ふゆねぇ」こと糀谷冬音とか。作者の石坂ケンタは水上悟志の元アシスタントであり、ふゆねぇもちかの「師匠」というポジションで登場する。『ざつ旅』はそんなでもないけど前作の『てんしちゃんとあくまくん』はモロに水上悟志の影響受けてるな……という作風でした。『ざつ旅』自体も初期と最近とを比べたら絵柄が結構変わってきており、最近の絵柄に慣れてから初期のエピソード読み直すとキャラの顔がだいぶロリっぽくて驚かされる。初期ハッスー(蓮沼暦)の「C〇MIC L〇に出てきそう」感はマジ半端ねぇ。

 実在する男性を女性に変換して描いているので『ハンバーガーちゃん絵日記』的な側面もなくはない。物凄く拡大解釈すれば「女体化」ジャンルに入れることも可能であろう。が、モデルとなる人物を知らなくても魅力が損なわれることはないので、単なる「旅漫画」として読んでも別に構いません。読み口としては「『ゆるキャン△』のキャンプ抜き」って感じですね。あっちこっち旅する点は一緒。宿泊施設を利用するのでキャンプ要素はほぼないのだが、まったりと「普段とは違う日常」を送る様子に共通する何かがあるような、ないような……水どう好きなところも似てるし……といった塩梅です。下準備をほとんどせずに出かけるからいざ観光名所に着いたら「この期間はお休みで入場できなかった」みたいなトラブルがしょっちゅう発生し、ぐだぐだな展開に陥るのが一つの「お約束」となっている。この脱力感が癖になります。でもぶっちゃけ1巻、2巻あたりでは「何が面白いのかよくわからない」と戸惑う読者も少なくないでしょう。現に私がそうだった。「無料期間中だからこの機会に読んでみるか」と軽い気持ちで読み始めるも、次第に「ひょっとすると私向きじゃないのか? 無理に読み進めないで中断すべき……?」と迷い出したのです。しかし、惰性でダラダラと読み続けるうちに体がノリに慣れてきてあっという間に全話読み切り、気づけば「今月のブラガモリはそろそろかしら」と掲載誌の発売が楽しみになっていました。

 一応、「駆け出しの漫画家が旅を通じて少しずつ成長していく」という旅情&青春なストーリーも用意されているのだけど、行き当たりばったりな「ざつ旅」をゆるゆると楽しむ作品なんで難しいことは特に考えなくてイイです。繰り返し読んでるうちにハマってくるタイプだから、最初は流し読みでOK。「マニアックな要素がない」ため深く刺さりにくいのが難点ではあるが、逆に言えば広く浅く伝播するような魅力があるためアニメ化によって大きく化ける可能性はあります。環境音楽みたいな雰囲気でつけっぱなしにして流す環境アニメになりそうな予感。いや、私は電気代がもったいないからテレビはつけっぱなしにせず、集中してアニメや映画を観るときだけ電源入れるタイプなんですけども……ああ、でも実家に帰ったときは30インチくらいの小さいテレビで『スローループ』つけっぱにしてたっけ。恋ちゃん役の声優さんが廃業した件はいまだにショックを引きずっている。というか、自分の中で「30インチくらい」がいつの間にか「小さいテレビ」という認識になってることに驚いた。大学生の頃は十数インチのブラウン管テレビで深夜アニメ観てたというのになぁ。パソコンの近くに置いて実況しながら観る分にはちょうどいいサイズだった。家電店で1万円くらいだったのを衝動的に購入し、3、40分かけて下宿先まで徒歩で運んだっけ。十数インチとはいえブラウン管テレビだから糞重かったな……旅じゃないがアレも相当「ざつ」な買い物でした。

・拍手レス。

 紹介していただいた俺の男魂サクリファイス、面白かったです!最近始まった漫画だと恋文と13歳の女優とNEEDY GIRL OVER DOSE RUN WITH MY SICKがいい感じにドロドロしてて面白いのでおすすめです

 男魂、単行本が出たら買うつもりです。そして耳寄りな情報あざっす。『恋文と13歳の女優』は14歳差カップルの話で、もう2巻まで出てるみたいですね。NEEDY GIRL〜はいわゆる「超てんちゃん」が出てくる例のゲームのコミカライズで、単行本はまだ出てないけど『吸血鬼すぐ死ぬ』の盆ノ木至が原作を手掛けている、と。これ絶対「超てんちゃんすぐ死ぬ」ってネタにされるヤツだろ、って検索したら公式が真っ先にネタにしていた


2023-05-25.

ヤンマガWEBの新連載『俺の男魂サクリファイス』がイイ感じにヒドくて続きが楽しみな焼津です、こんばんは。

 女顔の主人公が女装してお嬢様系の女子校に通う……というベタベタな設定を前にして「こんな餌に釣られ……うめぇじゃねぇか!」と速攻喰いついた私ですが、「良くも悪くもヤンマガ」といったノリで人を選びそうな一作につき慎重に紹介していきたい心地となっています。まず本作の特徴を一つ挙げると「主人公以外にも女装している奴が結構いる」ってことですね。主人公含む生徒会メンバー4人全員が♂です。気の狂った嗜好を有する金持ち老人が「女の園に紛れ込んだ女装少年たちが繰り広げるラブコメを見たい」と願い、それだけのために建てられた学園が舞台というヤンマガらしい無茶苦茶な設定だ。ゆえに生徒会メンバーは伝統的にすべて♂という倒錯した独裁制が敷かれている。「女を演じすぎると心まで染まってしまう」という理由から生徒会室の中ではオス全開の態度で振る舞うなどバカバカしさの裏にジェンダーロールの意識を忍び込ませる無駄に細かい仕組みも心憎い。

 1話のラストでいきなり男バレする(!)スピード感といい、「これは全力疾走して短期終了するかドカンと大ブレイクするか……どちらにしろほそぼそと地味に長く続くような漫画にはならないだろうな」という手触りがあります。不本意女装シチュ(主人公がノリノリではなくイヤイヤ女装して似合ってしまうシチュエーション)が大好きなので私個人はトコトンまで付き合いたい新作ですね……あっ、不本意女装シチュがツボ中のツボというだけで「主人公がノリノリで女装する作品」もそれはそれで好きです、念のため。漫画じゃなくてライトノベルだけど『星美くんのプロデュース』とか『世界で一番『可愛い』雨宮さん、二番目は俺。』とかもイイよな……。

【期間限定】「風雲からくりイリヤ城 〜果心居士のささやかな野望〜」開幕!

 なんか急に与太イベント始まったんじゃが? オーディールコール開幕まで特に何もないかと思っていただけにビックリした。元ネタの風雲たけし城が復活したからそれに合わせて蘇らせたのかしら。FGOしかやってない人は「なんでこんなに界隈がザワついてるんだ?」と訝ったかもしれないので軽く解説しておくと、2005年10月発売の『Fate/hollow ataraxia』に収録されていた風雲たけし城パロディのミニゲーム「風雲イリヤ城〜とつげきアインツベルン〜」、コイツが17年もの時を超えて再び姿を現したので古参どもはザワつきを隠せなかったのである。PC版のホロウはボイスなしだがカニファンこと『カーニバル・ファンタズム』の映像特典として「音声付 風雲イリヤ城」が制作されており、そっちの方で印象に残っているファンも少なくないであろう。「日本人はみんなロリコンなのよ! くらえ年増ぁっ!!」というセリフのインパクトがすごい。ただ、「型月ファンならカニファン観てて当然」みたいな思い込みをつい抱いてしまいそうになるが、私の買ったComplete Editionすら2015年4月発売で、FGOのサービス開始前なんですよね……懐かしくなって久々にパッケージを手に取ったらFGOの事前登録チラシが出てきて遠い目をしてしまった。

 イベントピックアップ召喚で追加された新規サーヴァントは☆5アサシンの「果心居士」。マテリアルに何と書かれていようが、男じゃないことに今更驚くFGOプレーヤーは少ないだろう。果心居士、一応歴史上の人物ではあるが実在したかどうかは怪しいだけに忍法帖とかの伝奇作品でたまに見かけるくらいで、普通の歴史小説だとまるきり無視されるか数行程度の言及に留まるような男です。FGOでは初代風魔小太郎とともに段蔵ちゃんを造った設定になっている。少女型からくり人形の制作者自らが少女型からくり人形となって登場するサプライズ、ミイラ取りがミイラになってしまった感もあります。果たしてガラテアとは話が合うのか合わないのか。「先行登場恒常サーヴァント」と明記されている通り限定ではなく恒常の☆5アサシンとして今後もすり抜けてくる可能性がある。☆5アサシンが恒常で追加されるの超久々だな……2017年のハロウィンで新登場した「刑部姫」以来だから5年半も経ってる。というか恒常☆5アサシンって果心居士と刑部姫以外はジャックちゃんしかいません。李書文はスト限だし、それ以外は全部期間限定だ。恒常と言っても「すり抜けてくる可能性はゼロじゃない」というだけで、確率は恐ろしく低いから欲しいのならピックアップ期間中にガチャを回すのがもっとも手っ取り早い。ペトルーシュカ(『鬼哭街』)のアレに興奮するタイプである私も邪念を混ぜつつ少し回してみたが、イベント礼装ばかりで☆4サーヴァントすら出なかった。一番欲しい☆4イベ礼装は引けたからひとまず撤退したものの、追加で回すかどうかは現在保留中。当面はおとなしく周回に励むか。ここのところBOXイベは最低限の周回しかしてなかったから秘石が不足しがち。なんとか余裕が持てるくらい貯めておきたい。

ドラゴンマガジン2023年7月号に『フルメタル・パニック!』新刊情報掲載、冒頭の公開も

 フルメタが……フルメタが帰って来る! 「てか甘ブリとコップクラフトはどーなってんだよガトー」と問い詰めたくなるが、それはそれとしてフルメタの新刊は寿ぎたい。フルメタこと「フルメタル・パニック!」は1998年の『戦うボーイ・ミーツ・ガール』から始まるミリタリー系のSFアクション小説シリーズです。長編12冊と短編集9冊と番外編2冊、計23冊で一旦完結した後に「アナザー」と題した別作者による続編もスタートしました。そのアナザーが完結したのは2016年、そこから数えても7年ぶりの新刊となります。長編シリーズの最終巻からカウントすると約13年――「今の小学生はフルメタが完結した後に生まれた」という恐ろしい事実が立ち上ってくる。それはともかくフルメタは何度かアニメ化もされており、4期目に相当する『フルメタル・パニック! Invisible Victory』は2018年に放送されました。割と最近である。話の途中で終わっているんでここから5期、6期へ繋がっていくものかと思いきや、特にそんなこともなく今に至っています。

 新刊は「感動のクライマックスから約20年後――」ということで、フルメタの作中年代が90年代後半だったことを考慮すると舞台はほぼ現代になる模様だ。賀東招二の雑記によると新刊は連作短編で、ふもっふ(アニメ2期目)ほどドタバタではないがややコメディ寄りの内容になるそう。巻数に関しては今のところ決まっていない模様。反響と賀東のやる気次第といったところか。フルメタの後に甘ブリも再開する予定で、コップクラフトは更にその後になりそうな気配が漂っている。一方、フルメタとも甘ブリともコップクラフトとも関係ない「全くの新作」を準備中だと云う。「数ヶ月中には発表できるだろう」とのことだが、いったい何なのか……まさかの賀東ガンダムか? いや蓋を開けたら「TYPE-MOON BOOKSで賀東Fateはじめます!」という可能性も……? とにかく続報を心待ちにしたい。

・拍手レス。

 20周年おめでとうございます 自分は、装甲悪鬼村正のレビューからたどり着き「「沃野」のどろどろ感に惹かれ
 日記のレビューが面白く読ませていただいてました
 これからも面白い文章をよろしくお願いします

 ありがとうございます。装甲悪鬼村正と言えばスピンオフ企画が動いてるって話はどうなったんだろうかな……全然続報がなくて戸惑っている。「沃野」は趣味全開で書いた割に読んでくれる人が多くて嬉しかったです。今後も文字だらけのサイトを頑張ったり頑張らなかったりしながら維持していこうと思います。

 20周年おめでとうございます。正確には覚えていませんが、たしか12,3年前から見ています。今後もマイペースに更新を続けて下さい。

 ありがとうございます。12、3年前というと2010年か2011年頃ですか。まどマギが放送してるかしてないかのあたりですね。はい、今後も自分のペースでのんびり続けていこうと思いまする。


2023-05-16.

・そろそろサイト開設20周年を迎えることに気づいて愕然としている焼津です、こんばんは。こんな文字だらけのアレなサイトを20年も運営してきたのか、私は……文章を書くのが苦手で推敲に異様なほど手間が掛かることもあり、この20年間でどれだけの時間がサイト更新作業に吸われていったのやら、考えただけで気が遠くなる。ま、楽しいからいいんですけどね。

 古いデータは消えていてもう残ってないし記憶の方もだいぶ曖昧になってきているけど当サイト「Method of Entry」は2003年5月20日頃に開設しました。曖昧とか言ってる割に結構具体的だな、とツッコまれそうですが「だいたいデモベ(斬魔大聖デモンベイン)発売の1ヶ月後ぐらい」と覚えているため、「デモべ20周年!」というニュースで「あー、じゃあうちのサイトもそろそろじゃん」と連鎖的に思い至るわけです。ぶっちゃけデモベという目印がなかったら記憶の彼方にスッ飛んでるわ。日記代わりに使っているチラシの裏みたいな場所といった趣だが、チラシも積もれば束になる。「未来の自分が読み返して懐かしんだり面白がったりできるようなやつ」を目標に好き勝手やっていきたい。

【追記・更新】【期間限定】Fate/Grand Order Arcade×Fate/Grand Orderコラボレーションイベント「螺旋証明世界 リリムハーロット 〜喝采なき薔薇〜」開幕!

 『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE』に備えて過去の『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズのBDを一気観することになり、イベント期間中ほとんどFGOに触ることができなかった(辛うじてログインだけは切らさなかった)せいでセタンタの正式加入すら危ぶまれたが、どうにかギリギリ終了直前のタイミングで駆け込むことができてホッとしました。まだミッションいくつかと高難易度は残ってるけど、林檎かじって令呪全角消費でゴリ押しすれば今日中に何とかなるでしょう、たぶん。

 ストーリーに関する感想はみなさんと同じく「これアーケード版コラボに見せかけたEXTRAコラボやんけ!」の一言に尽きます。岸波白野(デフォルトネーム)まで出すのは反則じゃないですかね……? 私、EXTRAはネロルートだけクリアしていて生前の末路、誰にも看取られることなく自害するシーンが悲しくてあそこ読むたび目が潤んでしまうんですよ。そんな人間には威力倍増なシナリオでした。今回のイベントシナリオを担当したのは「鋼屋ジン」、デモンベインで有名なライターです。Fate関係で言うと「坂田金時」のサーヴァント設定を作った人でもある。金時は当初ネトゲとして企画されていた『Fate/Apocrypha』に出演する予定だったのですが、出番どうこう以前に企画そのものが流れてしまった。Apocryphaを小説作品としてサルベージすることが決まった後も「あまりに快男児すぎて主人公の存在を喰ってしまう」という理由で降板の憂き目に。FGOがなければ陽の目を見ることがなかったであろうキャラなんです。小説版Apocryphaの作者でありFGOにも深く関わっている「東出祐一郎」とはプロデビューする前から親交があり、「FGOにもそのうち参戦するのではないか」とサービス開始前から囁かれていましたね。まさか8年近く掛かるとはさすがに予想していなかったけど。ツイッターのコメントによるとニトロを退社してフリーランスになった後で初めて請けた仕事だそうです。そうか、今のニトロには奈良原も鋼屋もいないのか……デモベと村正に脳を灼かれた身ゆえちょっとしんみりしてしまうな。

 ガチャはイベント開始当日に回して割とあっさりドラコーが引けた。虹回転がすり抜け確定になってしまう特殊演出もさることながら、基本7クラスに対して優位が取れるという性能には唖然としましたね。強い、とにかく強い。これからFGOを始める新規プレーヤーのうち運良くドラコーを召喚できた人はほとんどのクエストで彼女に頼り切りになるでしょう。ちなみに☆4アサシンの「ロクスタ」は引けませんでした。シナリオ担当が鋼屋なのと表情がアレなせいでついデモベのドクターウェストを連想してしまったが、役どころがシリアスなせいもあって西博士よりはだいぶ正気度高めに感じたな。限定☆4サーヴァントは入手機会がほとんどないし、ひょっとしたらドラコーが重なるかもしれないので深追いしたい気持ちも若干あったが、そろそろ8周年のアニバーサリーが近くなってきたからグッと我慢。オーディールコールの予告に登場する悪魔っぽい子も気になっているのでなるべく石は温存しときたいところなんだけども、果たして今年の水着サーヴァントを前にして我が理性は耐えられるのであろうか。


2023-05-04.

・原作1巻だけ読んだことのある『【推しの子】』、アニメの1話目が長い(原作1巻の内容を丸ごと消化しているため82分もある)せいでなかなか視聴する踏ん切りがつかなくて放置しているが、巷で流行しているゲッターロボとのMAD動画「君は完璧で究極のゲッター」や「最強で無敵のゲッター」が好きで繰り返し再生している焼津です、こんばんは。あ、YOASOBIの「アイドル」MVと公式のノンクレジットOPもつべでちゃんと観ましたよ。

 ゲッターの主題歌で一番好きなのが「STORM」なんで一過性のものとはいえ流行ってるのは素直に嬉しいんですよね。MAD動画をキッカケにゲッターへ興味を持つ新規の人も増えているみたいでニッコリしてしまう。ゲッターロボの歴史を解説するとメチャクチャ長くなるので大半は省略してピンポイントで語ると、「君は完璧で究極のゲッター」などで使われているOP映像の元ネタは2000年に発売された『真ゲッターロボ対ネオゲッターロボ』というOVAです。コレの前に『真(チェンジ!!)ゲッターロボ 世界最後の日』というOVAもあり、「真ゲ」と略したらどっちのことかわからなくなる(というか漫画版にも『真ゲッターロボ』がある)から「ネオゲ」という略称が一般的になっている。『世界最後の日』の方は「チェンゲ」。ゲッターロボのアニメはたくさんあるがほぼ毎回ストーリーがリセットされるため相互的な繋がりはほとんどなく、従ってネオゲも何かの続編というわけではなくて「ゲッターシリーズの設定をベースに据えつつ独立している作品の一つ」という位置づけだ。感覚的に言えば『X-MEN』の映画シリーズみたいなものか。チャールズ・エグゼビアの足が不自由になる時期が作品によって違ったり死ぬ時期が全然異なるアレです。そういう意味ではMAD動画等で関心を抱いた人がネオゲから観始めても特に支障のない作りである。ただネオゲはたった4話しかなく、キャラや設定に関して説明する尺がまったく足りていない。ゲッターロボの大まかな設定というか共通認識を持っていない人がいきなり観ると「いろんなキャラやロボがダーッと出てきてよくわからないうちに終わった」となるかもしれません。「タイトルの割に真ゲッターロボとネオゲッターロボが対決するシーンなんて本編に存在しないじゃん!」とツッコミを入れたくもなるだろう。考えずに感じるが吉。

 「ゲッターのこと何も知らん」という方にオススメしたいのは石川賢による漫画版の『ゲッターロボ』か、もしくは2004年のOVA『新ゲッターロボ』です。ゲッターロボは今でいうメディアミックス作品であり、まずアニメ企画ありきでそれに付随する形で石川賢の漫画版が連載を開始しました。なのでゲッターロボそのものは「石川賢の漫画が原作」というわけではありません(後述するアークに関してはそう言ってもいいと思うけど)。「石川賢による漫画版の『ゲッターロボ』」と書いた場合、通常は“週刊少年サンデー”連載版を指すが、同時期に“小学一年生”や“小学四年生”などの学年誌で連載された比較的短めのバージョンも存在するから混同しないよう注意しよう。何せ70年代の連載作品、ほぼ半世紀前なのでさすがに絵柄やノリに古臭さを感じてしまうけれど、迫力とスピード感に満ちた内容であっという間に読み切ることができる。今から物理書籍で読む場合は小学館クリエイティブの『オリジナル版 ゲッターロボ(全2巻)』を手に取るのが最適であるが、値段はちょっとお高い。Amazonや楽天ブックスでの取り扱いはないもののeBookJapanやコミックシーモアには電子書籍版も販売されており、内容は少し違うのだが価格的にはそちらを選んだ方が安上がりである。「ゲッターロボは作品ごとに毎回ストーリーがリセットされる」ようなことを書きましたが、石川賢の漫画版だけは例外。辻褄を合わせるために後から描き足された部分や修正された箇所も含めれば作品を超えてストーリーが継続していく仕様となっています。ゆえに石川賢の漫画版シリーズを「ゲッターロボ・サーガ」と呼んだりもする。サーガはゲッターロボ→ゲッターロボG→ゲッターロボ號→真ゲッターロボ→ゲッターロボ アーク(ただし作中の時系列では號と真が逆になる)ってな具合に5作目まで続いたが、掲載誌休刊や石川賢の急逝といった事情が重なってアークの途中で未完のまま幕となりました。一昨年に放送されたアニメ版の『ゲッターロボ アーク』は当然サーガの内容を踏まえており、且つ原作が未完のため投げっぱなしに等しいエンディングを迎える。初心者にはあまり優しくないけど「意味はわからなかったがハートは通じたぜ!」となる可能性もあるので、何かに惹かれたならばそのまま挑んでみても宜しいかと。主人公・拓馬の境遇が微妙に『【推しの子】』と重なるっていう奇妙なリンクも発生していますし。現在なら電子書籍でサーガ全15冊をすべて読むこともできる(先述したように購入できるサイトは限られていますが)わけで、設定が気になったらそっちに向かえばいい。

 『新ゲッターロボ』は戦う相手が「恐竜帝国」や「百鬼帝国」ではなく単なる「鬼」になっていたり、3号機パイロットの名前が「巴武蔵」や「車弁慶」ではなく「武蔵坊弁慶」になっていたりなど根本的な設定からして変わっているが、アーク以外のアニメ作品の中ではもっとも石川賢のテイストに寄せた内容になっています。主人公「流竜馬」がゲッターに乗る経緯を綴るところから始まっており、「開始時点で既に竜馬がゲッターパイロットになっている」他のOVA作品よりも初心者が入っていきやすい内容だ。実際に私もここからゲッターワールドに飛び込んだ(子供の頃に號のアニメは観ていたけど内容まったく覚えていなかった)。全体的に作画が安定しているし、容赦なく死体が転がる凄惨なストーリーも素晴らしくていともあっさり心を掴まれてしまいましたね。「こんな街中で戦えば一般人が巻き添えになってしまう……でも戦わなければもっと多くの犠牲が出る」という苦悩を抱きながら破壊兵器をブッ放し、避難が間に合わずたまたまそこにいた人々を殺戮する市街戦の描写はTVシリーズじゃまず不可能だろう。敵がなぜ鬼なのかもストーリーが進行していくとわかる仕組みになっていますが、クライマックスで何の前触れもなく突然スケールが跳ね上がるブッ飛び具合に度肝を抜かれました。現在は各種配信サイトでも観れるものの概ねSD画質なのは残念。『マジンカイザーSKL』の頃にBD版も出てたんだけど、迷った末に購入を見送ってしまったんだよなぁ。この俄かなゲッターブームに合わせて廉価版BD-BOXでも出ないかしら……ゲッターロボ・サーガの紙書籍版も現在はだいぶ入手困難になっているので、併せてそろそろ復刊してほしい。

・拍手レス。

 やっとPS5買えた・・・転売屋死ね

 まさか供給が正常化するまで2年以上も掛かろうとは……私もようやく買ってPS4の『エルデンリング』をアップグレードさせたりしていますが、差し当たっての使い道はUHD BDの再生かな。


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