2023年1月〜4月


2023-04-24.

・続々と放送される春アニメ、個人的に楽しんでいるのは『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』『機動戦士ガンダム 水星の魔女 Season2』『ワールドダイスター』『この素晴らしい世界に爆焔を!』『江戸前エルフ』『ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP』(これは春アニメに分類していいかどうか迷うが)、『神無き世界のカミサマ活動』『アリス・ギア・アイギス Expansion』あたりなんですが、面白いと思いつつ「時間ないから」と後回しにしたまま全話視聴していない冬アニメがいくつかあってマジで「余暇が足りねぇ〜」となっている焼津です、こんばんは。なんなら『バンドリ!』とか『刀使ノ巫女』みたいに未だ途中で放置しちゃっている作品がいくつもあるし、『まちカドまぞく』や『プリンセス・プリンシパル』など定期的に観返したくなる作品も山ほどあるので寿命がいくらあっても追い付かない無間アニメ天国だ。

 話を春アニメに戻そう。水星2期とかU149、爆焔やRTTTは元から注目度が高かったので割と「期待通り」という感触なのですが、『江戸前エルフ』と『神無き世界のカミサマ活動』と『アリス・ギア・アイギス Expansion』はぶっちゃけそんなに期待してなかったので「思わぬ大アタリだ!」と喜んでいます。『江戸前エルフ』は“少年マガジンエッジ”で2019年から連載されている同題コミックが原作、先月発売された7巻が最新刊です。東京都中央区月島に在する「高耳神社」で祀られている神様は異世界から召喚された長命種族、即ちエルフだった――というファンタジー要素の混じった日常モノ。齢600を越すエルフの「エルダ」は引きこもり気質で本殿から出ることはあまりなく、少なくともアニメで放送された範囲においては際立った冒険や活劇の描写は一切ありません。原作の漫画は1話につき3本立てのエピソードを掲載するサ〇エさん形式で、若干食い足らなさはあるもののサクサク読めるスナックみたいな軽い食感の作品だ。アニメ化前にコミックDAYSで一挙無料公開されていた時期があり、そのときに存在を知って読んでみたんですけど……正直あまりピンと来なくて途中で脱落してしまった。そのせいもあってアニメにはあまり期待していなかったのだが、アニメの出来が良かったおかげで「原作読み直したい!」と180°態度が変わっちゃいました。やっぱりエルダのCVを担当している小清水亜美の演技がデカいですね。小清水さんって纏流子とか紅月カレンとか麦野沈利みたいな声がハッキリしている(というかちょっとドスの利いている)キャラのイメージが強かったけど、こういうヘロヘロ声もできるんだ……って驚きがあった。ドスの利いてない小清水キャラと言えばFateのカレンとかそうなんですけど、アレともまたちょっと違う感じです。これで最終回付近になっていきなりバトル展開が始まり、キリッとした顔のエルダさんが「―――会いました(ズドン)」とかやってくれたらギャップで惚れそう。そもそもバトル展開なんてなさそうな雰囲気だけど。単純に作画が安定しているおかげで観ていて自然と寛げるし、きらら系アニメが不足しがちな昨今において貴重なオアシスとなりそうな一本です。

 『神無き世界のカミサマ活動』は異世界転生モノ(転移モノ?)なので雑に「なろう系」と括る向きもあるが原作はコミックであり、「小説家になろう」とは何の関係もない。新興宗教「神地崇教」の教祖を父に持つ主人公「卜部征人(うらべ・ゆきと)」は、「産霊の儀」と称して樽に詰め込まれ海に放り投げられた。絵に描いたような絶体絶命のシチュエーション。このまま短い生涯を終えることになるのか……と諦めそうになったが、気づけば「異世界」としか言いようがない場所に佇んでいた。死んで転生したのか、死ぬ前に転移したのか、事情はよく知らないがとりあえず生きているからと自由を謳歌する征人。この世界に「神」という概念はなく、宗教も存在しないと知って驚くが、家族が新興宗教にゾッコンだったせいで辛い青春を送ってきた征人にとっては理想的な環境と言える……はずだった。宗教が存在しない代わり「上からの命令」を何の疑問も持たずに遵守する、それこそ「死ねと言われたら死ぬ」ほど徹底したシステムが敷かれているディストピアだと知るまでは。征人がシステムの牙に噛み砕かれようとした正にその瞬間、異世界にまで付いてきた自称カミサマの「ミタマ」がその神力を発揮し……と、1話目からかなり詰め込んだ内容になっています。そもそも宗教とは何か? と申しますとそれは一つの精神的なフレームであり、建物の中にいる人たちが「建物の外観」を認識できないようにフレームの内側にいる人は「宗教というフレームそのもの」を決して把握することはできません。つまり宗教とはその外側にいる人が認識し定義することで初めて存在するものであり、神がいるとかいないとか一神教であるか多神教であるか教義が定まっているか否かは本質的な要件じゃない。「宗教がない世界」というのは言い換えれば「外側がない世界」、その地に住まうすべての人々が同一の精神フレームに収まっている状況を指すのです。天動説がない世界においては地動説すら「地動説」として認識されないことと一緒だ。卜部征人という「外側」が導入されたことで「宗教のない世界」は既に破綻し始めている。ここからどうなっていくのか、原作は読んでないのでワクワクしながら続きを待っています。

 なおスピンオフとして今のところアニメの方には登場していない主人公の姉「卜部千夜丸」をメインに据えた『神無き世界のおねーちゃん活動』も単行本発売中。というか、このスピンオフの「構成」を担当しているのが『アラクニド』や『キリングバイツ』の「村田真哉」だったんでそっから遡る形で『神無き世界のカミサマ活動』に興味を持ったんですよね。超絶ブラコンの千夜丸はチート級のフィジカルを有しており、彼女が征人のそばにいたらあらゆる問題が筋肉で解決してしまって試練にならないので儀式のことは聞かされていなかったが、ブラコン相手に隠し切れるはずもなく。やがて彼女も弟を追いかけるべく異世界へ向かう……っていう姉版「転生ごときで逃げられるとでも?」な話です。村田真哉と速水時貞のコンビだから当然だけど、ノリが完全に『蝶撫の忍』『ブラトデア』で笑ってしまう。本編がある程度進んでからの話みたいなのでアニメが終わった後に読んだ方がいいかもしれません。

 『アリス・ギア・アイギス Expansion』は2018年から配信しているスマホゲー『アリス・ギア・アイギス』を原作にしたアニメ。Expansion(拡張)とあるように本編ストーリーをそのままアニメ化するのではなくどちらかと言えば番外編みたいなノリで進行していく。誰かが言った「『ギャラクシーエンジェル』みたいなアニメ」という評がしっくり馴染む。絵を見ればすぐにピンと来るだろうが、「島田フミカネ」がキャラクターデザイン原案として参加しています。フミカネアニメはスカイガールズ、ストライクウィッチーズ(ブレイブやルミナスなどの関連作含む)、ガールズ&パンツァー、フレームアームズ・ガールに続いてコレで5つ目になるか。人類は宇宙から飛来した謎の敵「ヴァイス」と交戦状態に陥り、劣勢のため母星たる地球を捨てて新天地へ向け逃げ出した。月を原料にして製造された多層コロニー型宇宙船「シャード」で航宙する人類は追いすがるヴァイスとの戦いを今も続けている……とバックストーリーは割合シリアスなムードが漂っているけど、ヴァイスとの戦いやシャードでの生活に慣れてきた人類が一定の平和を享受している時代ゆえにアニメの雰囲気はとことん緩い。母星を捨てて逃げてきた者たちの末裔という悲壮感はなく、ほとんどギャグとかコメディみたいなテイストで話が進んでいく。金に目がくらんでひと騒動引き起こす→しっぺ返しを喰らって借金背負うハメに、と両津勘吉みたいなムーヴをかます子までいる。噂によるとゲーム本編のシナリオはだいぶ地獄めいた様相になってきているらしいが、恐らくアニメで描かれることはないでしょう。特にキャラ紹介もなく次々といろんな子たちが出てくるからまだ名前と顔が一致しないけど、軽快なテンポで進んでいく話が心地良いので気にならない。今のところ褐色肌のシタラちゃんが可愛いな、と思いながら観ています。主人公っぽいポジションの「高幡のどか」はアニメオリジナルキャラらしい。最終回を迎える頃には彼女も立派なアクトレスになっているのだろうか……生暖かい目で見守りたいところだ。

【予告】「Fate/Grand Order Arcade×Fate/Grand Orderコラボレーションイベント」開幕決定!

 アーケード版FGOとのコラボイベントが遂に開催されます。予定は今月26日から。カルデア放送局SPの配信も同日に行われる。伏せていてもほとんどのプレーヤーが「例によって『この後すぐ!』パターンだろう」と予想することは目に見えているからか、開催予定日を隠さなくなりましたね。予想外だったのは告知されていたティアマトの実装がイベント開催当日ではなく一週間前だったことですが……ゴールデンウィーク前に開幕直前キャンペーンをやるのは割と恒例行事になっていますけど、そこに期間限定の新規サーヴァントを放り込んでくるのはコレが初めてですよ。大抵は実装済みサーヴァントの復刻ピックアップである。

 さておき、昔からFGOをやってる古参の方々にとっては釈迦に説法であろうが、最近はじめた人がいることを想定して一応解説しておきましょう。FGOこと『Fate/Grand Order』は4月から5月にかけての大型連休、いわゆるGW(ゴールデンウィーク)に合わせて規模の大きいコラボイベントを開催することが習わしとなっています。最初に開催されたコラボイベは2016年の『Fate/Zero』コラボ「Fate/Accel Zero Order」、それから2017年の『Fate/EXTRA CCC』コラボ「深海電脳楽土 SE.RA.PH」、2018年の『Fate/Apocrypha』コラボ「Apocrypha/Inheritance of Glory」、2019年の『ロード・エルメロイU世の事件簿』コラボ「レディ・ライネスの事件簿」、2020年はコロナ禍の影響で1ヶ月遅れになった『Fate/Requiem』コラボ「『Fate/Requiem』盤上遊戯黙示録」、2021年の『Fate/Grand Order Waltz in the MOONLIGHT』コラボ「輝け! グレイルライブ!! 〜鶴のアイドル恩返し〜」、2022年の『マンガで分かる!Fate/Grand Order』コラボ「連続活劇神話 ミシシッピ・ミササイザーズ」といった具合にかれこれ7つものコラボイベがお披露目されてきました。後はもう蒼銀のフラグメンツかプロトタイプかFakeかLost Einherjar(去年始まったシリーズで、stay nightではなくApocryphaの世界線を背景にしている)ぐらいしか残ってないな、ってところで「アーケードとコラボするよ」と発表されたのが今年のことです。

 これまでのパターンから察するに今年も「配布サーヴァントがある」のはほぼ確実だと思われます。厳密に言うと去年のマン分かコラボに「クエスト報酬サーヴァント」という意味での配布サーヴァントはいなかったのだが、期間限定でフレポガチャから出現した☆1ランサー「メアリー・アニング」が実質的な配布キャラという位置づけになる。他のゲームなら低レアの配布なんてガッカリされるところだろうけど、FGOの場合は低レアに「編成コストが安い」という明確なメリットがあるため結構喜ばれました。それ以外の配布を列挙していくと、『Fate/Zero』コラボではアイリスフィール、『Fate/EXTRA CCC』コラボではBBちゃん、『Fate/Apocrypha』コラボではジークくん、『ロード・エルメロイU世の事件簿』コラボではグレイ、『Fate/Requiem』コラボではエリセ、『Fate/Grand Order Waltz in the MOONLIGHT』コラボでは謎のアイドルX〔オルタ〕。この中で言うとBBちゃんはムーンキャンサーという当時唯一無二の特殊クラスだったことも相俟って「本当に配布でいいのか?」と驚かれましたね。育ち切れば普通にボスサーヴァント戦で大活躍する性能ですもの。現在CCCコラボイベントの「深海電脳楽土 SE.RA.PH」はメイン・インタールードとして恒常化しており、最近始めた人でもBBちゃんをゲットすることが可能になっています。

 パターンに従うなら今度のアケコラボでも配布はあるはずで、可能性が高いと考えられているキャラは「セタンタ」と「ドラコー」の2騎いずれか。セタンタはクー・フーリンの幼名であり、FGOでも彼の師匠に当たるスカサハがたびたびその名で呼んでいる。クー・フーリンをそのまま幼くしたような見た目なので「クー・フーリン〔リリィ〕」といった風情が漂う。一応プロトタイプではなくstay nightの方の過去ということになっています。アケ版FGOにおける配布キャラの一人であり、アケ版はサンタ衣装以外の配布がほとんどないことを考えると本命視されるのもむべなるかな、といったところ。もう片方の「ドラコー」はアケ版のネタバレを多く含むので詳細は書かないでおこう。CVが「丹下桜」という時点で「あっ」となる人がほとんどでしょうが。このドラコーも配布キャラであり、条件を満たせば入手できる。本家FGOには存在しない「配布☆5サーヴァント」で、もしレアリティがそのままで配布されるなら「本家FGOにとって初の配布☆5サーヴァント」ってことになります。もしティアマトが開幕直前ピックアップでの実装じゃなく開催と同時のピックアップならドラコーの可能性もあると睨んでいましたが、このぶんだと期間限定ピックアップで実装される線が濃厚かな……無論、ドラコーを配布にしてそれ以上にプレーヤーがビックリするような新規の☆5サーヴァントをガチャにブッ込んでくる可能性も捨て切れない。その場合はセタンタがピックアップ☆4になるかな。ピックアップ☆4の出現率が改善された(以前は1.5%だったのが現在は2.1%)とはいえ「重ねたい」「鯖コインほしい」って人も多いだろうからセタンタ狙いで阿鼻叫喚は充分ありえる。ともあれ、カルデア放送局SPに丹下桜がゲスト出演するんだからガチャにしろ配布にしろドラコーの実装はもう秒読み段階に入ったと見るべきです。

 ティアマトのピックアップは5月10日まで続きますから、充分な理性のある方ならばガチャを我慢してイベント開催まで待ち、ピックアップの確認を済ませてから回すか否か決める、というスマートな選択をすることが可能でしょう。生憎と私に歯止めを利かす理性なるものは微塵も残ってないので更新直後にガチャって引きました。比較的軽傷で済んだのが幸いだけど26日当日も我慢できる自信ないし、周年記念まで石を残せるかどうかだいぶ怪しくなってきたな……。


2023-04-18.

・周りの評判が良くて観に行った『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』、予想以上に盛り盛り沢山な内容で「そこまでやるか!」と叫びそうになるくらい面白かったが「セクシーパラディン」ことゼンク・エンダーが脚本段階では「ドリッズト・ドゥアーデン」だったと聞いて驚きつつも納得した焼津です、こんばんは。だからアンダーダークが出てきたのか……。

 D&D(ダンジョンズ&ドラゴンズ)は70年代に生まれたTRPGであり、『ロードス島戦記』が元々はD&Dのリプレイ(ゲームのプレー記録をまとめたもの、プレイヤーがキャラクターになりきって遊ぶものが人気)だったことはあまりにも有名。2000年代にも映画化されているが当時の日本ではなぜか「S」が省略されて『ダンジョン&ドラゴン』という微妙にパチモン臭いタイトルになっています。ガンダムに宇宙世紀物やアナザー物がいろいろあるようにD&Dもいくつかのパラレルな世界設定が用意されていて、『アウトローたちの誇り』はそのうちの一つ「フォーゴトン・レルム(忘れられた領域)」という世界設定を背景にした話だ。私もD&Dに関してはそこまで詳しくないからWikipediaの記述を確認しながらになるけど、惑星「アビア・トーリル」にある大陸「フェイルーン」が主な舞台で、様々なモンスターや多様な種族の人々が登場する。そして「神々」が高次の生命体として君臨しており、ひとたび「神の死」が発生すると人々の暮らす物質界も環境が大きく変わる。伝説と神話が交じり合い、英雄と悪党が絶えず交錯する「剣と魔法のファンタジー」な世界観だ。フォーゴトン・レルム物は『ムーンシェイ・サーガ』を皮切りに30年以上前から何点もの小説作品が翻訳されてきており、日本でもそこそこ馴染みのある人が存在する分野です。

 そんなフォーゴトン・レルム物の一つ、R・A・サルバトーレの『アイスウィンド・サーガ』3部作で主人公を務めたキャラがドロウ(ダークエルフ、訳によってはドラウ)の「ドリッズト・ドゥアーデン」である。サルバトーレ曰く実際の発音は「ドリスト」らしいが日本語版は最初の訳でイメージがすっかり定着しているため、概ね「ドリッズト」表記で統一されています。暗黒が支配する地下世界「アンダーダーク」の都市「メンゾベランザン」出身、偃月刀(シミター)の二刀流で戦いつつ魔法も使える、ラベンダーの如き紫の瞳と優雅に靡く銀の髪を持った中二心くすぐる非常にカッコいいキャラです。冷たい風が吹き荒ぶフェイルーン北西部の土地「アイスウィンド・デイル」(『アウトローたちの誇り』冒頭の監獄があったところ)を舞台にした『アイスウィンド・サーガ』の後、矢継ぎ早にドリッズトの生い立ちを綴る前日譚『ダークエルフ物語』3部作が開幕しました。更に物語は『ドロウの遺産』4部作、 "Paths of Darkness" 4部作、 "The Hunter's Blades" 3部作、 "Transitions" 3部作、 "Neverwinter Saga" 4部作、 "The Companions" 、 "Companions Codex" 3部作、 "Homecoming" 3部作、 "Generations" 3部作、 "The Way of the Drow" 3部作へと続く。他に短編集 " The Collected Stories: The Legend of Drizzt" や、ドリッズトの敵である「アルテミス・エントレリ」と「ヤーラクスル」をメインに据えた関連作 "The Sellswords" 3部作(ただし第一部が "Paths of Darkness" の第三部と重複している)、ドロウが信奉する蜘蛛の女神「ロルス」(訳によっては「ルロス」)を巡る "War of the Spider Queen" 6部作などがある。なんとドリッズトの娘を主人公にしたウェブトゥーン企画もあるらしい。ああ、ドリッズトももうそんな歳か……と一瞬思いそうになったがよく考えるまでもなく彼ってダークエルフだから見た目以上に歳を取ってるんですよね。アイスウィンドの時点で50代、最新作だとそろそろ200歳近い。なお娘の母親は人間なのでとうに死に別れており、シリーズの途中から違う女性と付き合っているそうだ。なんとまあ途轍もないロングスパンの物語であろうか。実時間で数えても今年で35周年を迎えるまことに冊数豊富な長期シリーズなのだが、日本語版が刊行されているのは『ドロウの遺産』4部作まで。原作者であるサルバトーレが直接書いた( "War of the Spider Queen" は監修ポジションで、各部を担当した作家が別にいる)ものだけに限っても10/40、実に30冊もの本が未訳のまま10年以上放置されているのです。ファンの嘆きは深い。同じフォーゴトン・レルム物である『クレリック・サーガ』も5部作なのに邦訳版は第2部で刊行が止まっているし。

 作品のほとんどが翻訳されていないため日本での知名度はそんなに高くないが英語圏での人気は絶大であり、20年前の時点で既に世界部数は2000万部を超えています。彼がメインの『レジェンド・オブ・ドリッズト』というボードゲームまで作られている。屈指の人気を誇るキャラだけに映画へ出演させてD&Dファンの気を引こうとスタッフも画策したみたいで、やや唐突な印象だった「兜はアンダーダークに隠した」という展開もゼンクの前身がドリッズトだったことを考えると納得がいく。が、いろいろ事情があってドリッズト出演案は没になり代替として「聖騎士ゼンク」が生まれたとのこと。冗談や皮肉を解さない堅物パラディン(なのにセクシー)のゼンクも良いキャラしてるから「これはこれで」なのですが、やっぱり映画で獅子奮迅の活躍をするドリッズトやグエンワイヴァー(相棒の黒豹)も見たかったな……いや、アメリカでは『アウトローたちの誇り』がメッチャすごい勢いでヒットしてるらしいから、きっとドリッズトを主役にした映画も作ってくれるはず。それが日本でもヒットすれば滞っていたドリッズトシリーズの翻訳も大いに捗るはず……! そう期待しています。

 ドリッズトシリーズを読んだことがない人は、刊行順に沿って『アイスウィンド・サーガ』から読むのもいいですが時系列に沿って『ダークエルフ物語』から読み出すことをオススメします。故郷であるメンゾベランザン→メンゾベランザンの外に広がるアンダーダーク→ドロウ(ダークエルフ)への差別と偏見が蔓延る地上世界フォーゴトン・レルムと段階を踏んで作品世界の雰囲気を伝えてくれるし、何より単純に物語として面白く、予備知識がなくてもすんなりと入り込める。現在は紙書籍版がやや入手困難であり、電子書籍もなぜか少し前から取り扱いが停止していて「どうやって新規の人に薦めればいいんだ」と頭を抱える状況ですが。ホント、この記事を書き出した頃には『【合本版】ダークエルフ物語 全12巻』という邦訳されている小説シリーズすべてをまとめた2万円くらいのセット商品まであったのに、アップロードした直後に消えていることに気づいて慌てて書き直しましたよ。コミックシーモアには「販売終了」「本作品は諸般の事情により「2023年4月17日23時59分」をもちまして販売終了させていただくこととなりました」という表示が出ており、どうも今日(18日)各種電子書籍サイトからいっせいに引き上げたみたい(amazonではもっと前から取り扱いがなくなっていたが)ですね。『ダークエルフ物語』はコミカライズ版も存在していてそっちはまだ取り扱いがあり、いったい何が起こっているのか皆目見当がつかず困惑している。権利の移転か何かかしら。むしろこれは「ダークエルフ物語」シリーズ再開の兆しと前向きに見るべきか? というか、海外ではシリーズ名を「レジェンド・オブ・ドリッズト」としているのに対し日本ではシリーズの一部である「ダークエルフ物語」をそのままシリーズ名に流用しているのでちょっとややこしいな。かつて販売されていた「全12巻」のうち1〜3巻が『ダークエルフ物語』3部作、4〜8巻が『アイスウィンド・サーガ』3部作、9〜12巻が『ドロウの遺産』4部作という構成になっていました。「なんで『アイスウィンド・サーガ』は3部作なのに5冊あるの?」と疑問に感じた方もおられるでしょうが、そのへんの事情について語り出すと長くなるので次の段落にまとめよう。

 『アイスウィンド・サーガ』はひと口に3部作と言っても1冊1冊が結構長いので冊数そのまま日本語版を出すとなると1冊あたり文庫本で600ページくらいの分量になります。それじゃ分厚過ぎて気軽に手に取ってもらえないから、と富士見ドラゴン・ノベルズから刊行された一番最初のバージョンは各部を2冊に分けて全6巻にしました。これが1991年から1993年にかけてのことです。それから10年ほど経過して絶版により入手が困難になった頃、ハリポタブームの影響で海外ファンタジー需要が鰻登りになり「読者人気の高い『アイスウィンド・サーガ』を復刊しよう」という機運が高まります。この際、「ハリポタや『デルトラ・クエスト』が好きな低年齢層を狙うぜ!」って判断が下されました(邪推ではなく本当に帯に「『ハリー・ポッター』『デルトラ・クエスト』ファンにもおすすめ」と書かれていた)。これが後の混乱に繋がっていく。新バージョンの『アイスウィンド・サーガ』は富士見版の翻訳も手掛けた風見潤が子供向けに平易な文章へ改訳し、一冊あたりのページ数も少なくするため原作第一部の内容(富士見版の1巻と2巻に相当する)を細かく3冊に分けた。これが2004年から2005年にかけてのこと。出版社の思惑としてはこのまま第二部と第三部も分割して全9巻にするつもりだった(訳者まえがきにそう書いてある)んですが、残念ながら改訳版の『アイスウィンド・サーガ』に子供たちはあまり関心を示さず、売上が芳しくなかったため計画は頓挫。しばらく放置された末、「やっぱり大人のD&Dファン向けに売ろう」と方針転換して富士見版の3巻と4巻に相当する原作第二部を『暗黒竜の冥宮』、5巻と6巻に相当する第三部を『冥界の門』と題しそれぞれ1冊にまとめて出版しました。2008年から2009年にかけてのことだ。これらも改訳版なんですが、「既刊の『アイスウィンド・サーガ』よりも大人向けの文体」にしたことをわざわざアピールしているところから察するに子供向けバージョンはよっぽど評判が悪かったんだろうな……富士見版および改訳版の1〜3巻を担当した訳者の風見潤はコバルト文庫で山ほど出していた“幽霊事件”シリーズの作者でもあるが2000年代後半あたりから連絡がつかなくなり、今に至っても「生死不明」という扱いになっている人です。恐らく既に亡くなっているのであろうが、身寄りの人がいないらしく著作権者が誰なのかも現状だとハッキリしない。なので子供向けとして改訳された1〜3巻を勝手に直すわけにもいかず、富士見版は原書のバージョンが古いせいでドリッズトのモノローグ(『ダークエルフ物語』の内容を反映させるため後で付け加えられた)がないし「地下数マイルで二百年ものあいだ暮らした」という明らかに辻褄の合わない記述が出てくる(現在販売されている原書の電子版で該当箇所を確認すると「half a century of living many miles below ground」になっているので『ダークエルフ物語』を書いた後に改訂したものと思われる)からそのまま使うわけにもいかず、「原作は三部作なのに全5巻、文体が子供向けだったり大人向けだったり安定しない」という奇妙な仕様に落ち着く結果となりました。

 訳文に関しては事情が事情だから受け入れるとしても、コレクター的にはせめて装丁を原書準拠で統一してほしかったです。『暗黒竜の冥宮』以前に刊行された作品はサイズやデザインの統一感がまったくなく、バラバラすぎて本棚に並べても気持ち良くならない。『暗黒竜の冥宮』以降のフォーマットに揃えて再刊してくれるなら買い直してもいいと思うぐらいこのシリーズのことが好きなのだが、それが可能なほど売れていないという現実も見えている。12年待っても日本語版の新刊が出ない(コミックはいくつか出たけど……)んだから思い知るしかないですよ。いっそ原書の電子版買おうかしら……機械翻訳を駆使すれば最低限のストーリーは追えるはず、という誘惑に襲われます。でもやっぱり日本語版の紙で読みたい。マジでドリッズト主役の映画かドラマが日本で大ヒットしてほしいわ。

A・E・W・メイスンの『オパールの囚人』、5月10日に論創社より発売予定

 あの『オパールの囚人』が!? とリアクションを取れるほど詳しくはないのだが、とりあえずビックリしたニュースである。作者の「A・E・W・メイスン」は略さずに書くと「アルフレッド・エドワード・ウッドリー・メイスン」、訳によって「ウッドリー」が「ウッドリィ」だったり「メイスン」が「メースン」だったり多少の表記揺れあり。主に第二次世界大戦前に活躍した、いわゆる「黄金期」とか「黄金時代」って呼ばれる時代区分のミステリ作家だ。「ガブリエル・アノー」というパリ警視庁の警部を探偵役に据えたシリーズが有名で、『オパールの囚人』はシリーズの長編3作目に当たる。アノーシリーズの長編は全部で6つ(短編は1つ)あり、一番よく読まれているのは2作目の『矢の家』だろう。というか、文庫版が出ているのは『矢の家』だけなんです。マニア人気は高いものの一般的な知名度はだいぶ低く、シリーズ4作目と5作目は未だに翻訳されていないくらいだ。シリーズ最終作『ロードシップ・レーンの館』は1950年代にポケミス(ハヤカワ・ポケット・ミステリ)から『ロードシップ・レインの家』というタイトルで刊行を予告されていたものの実現せず、2018年にやっと論創社が邦訳版を出してくれた。ぶっちゃけアノーシリーズで評判が良いのは3作目までで、4作目以降に関してはあまり芳しい評価を聞かないし、『ロードシップ・レーンの館』も「長らく刊行が見送られていた理由がよくわかるな……」という出来です。

 『オパールの囚人』は原題の直訳で、戦前にも同じタイトルで刊行されている。「人囚のルーパオ」と右から左へ横書きされている表紙に時代を感じます。他に『木乃伊の穴』という題名でも出ているが、どちらにしろ原書の一部を削った抄訳バージョンらしく完全な形で堪能することが難しかったのです。1928年に原書の刊行された『オパールの囚人』が、ようやく完訳される――ということでビックリしたわけだ。この勢いに乗って未訳の4作目と5作目も出るといいな……評判が良くないと知っていてもそれはそれ、やはりマニアとしてはシリーズ全作を蒐集したいのである。あとシリーズ1作目の『薔薇荘にて』もそろそろ創元推理文庫あたりに収録してほしい。ハードカバー版は持ってるけど『矢の家』の隣に並べたいので。

 それにしても、3960円(税込)か……ちょっとしたブルーレイを買う感覚だな。これが私のもっともミステリに耽溺していた時代である高校生の頃に発売されていたら「とても手が出ない!」と悲鳴を上げ、新刊コーナーに鎮座まします様子を指を咥えて眺めていたことだろう……だが、今は違う!(ギュッ) さすがに論創海外ミステリを余さず購入できるほどの経済力はない(置き場もない)が、たまになら買えるのだ。

・拍手レス。

 『それは舞い散る桜のように-Re:BIRTH-』、発売延期 そこまで昔の業界の雰囲気を再現しなくてもいいでしょうに

 業界全体が衰退する理由もよくわかってしまいますね……マブラヴのインテグレートとかレゾネイティヴも続報聞かないけど、どうなってるのかな。


2023-04-08.

『鉄コミュニケイション』の小説版が電子化していたので驚きの声をあげつつポチった焼津です、こんばんは。

 『E.G.コンバット』が電子化されたときに「それはそれとして『鉄コミュニケイション』の電子化はいつになるのやら」とコメントしたけど、まさかこんなに早く実現するとは予想していなかった。マジで秋山瑞人関連の新しい動きが始まりつつある……?

 一応解説しておきますと『鉄コミュニケイション』は90年代にいくつもあったメディアミックス作品の一つ、漫画版とアニメ版のふたつを主軸として展開した。秋山瑞人によるノベライズ版はオマケみたいな扱いで、漫画やアニメのストーリーに合わせることなく割と好き勝手に書いており、仕上がりとしては「タイトルと設定が共通しているだけの別作品」みたいな趣である。プロジェクトの中でもっとも異色の位置づけにあった小説版が20年以上の時を越えて電子化されたの、漫画版の電子書籍が出ていないことやアニメ版を配信しているサブスクがないことを考えるとスゴい話だ。

 私はアニメ版観てなくて漫画版を途中まで読んだが、たくま朋正ということで『TRAIN+TRAIN』のようなノリを期待していたせいもあって正直あまり好みに合わなかった……それで小説版にも期待を寄せておらず「秋山瑞人の作品だからとりあえず読んでみるか」と手を伸ばしたところ、あまりの面白さに折に触れて反芻するぐらいの一作になってしまったのです。先述した通り漫画版やアニメ版からは独立した内容なので小説版だけ読んでもOK。『E.G.コンバット』と違って2冊でキッチリ完結しているから素直にオススメしやすい。「存在を知らなかった」人や「存在は知っていたけどなんやかんやで読む機会を得られなかった」人、今こそチャレンジしてみてはどうだろう。

『それは舞い散る桜のように-Re:BIRTH-』、発売延期。5月26日から9月29日へ。

 Navelにとってこれくらいはジャブみたいなもんですよ。「5月26日は王雀孫の誕生日で二重にメモリアル!」みたいなこと言ってたのは何なんだ、って話ですが。この調子だと当然のようにけれ夜の方も遅れるだろうな……とりあえずそれ散るに関しては今年中に出れば御の字ってところだ。

東野圭吾さん、書籍の国内発行部数が1億突破 著作100冊目を発表(毎日新聞)

 私が東野圭吾の名前を認知したのは『名探偵の掟』よりは後で『秘密』よりも前、つまり1997年だった。初めて読んだ本は『変身』。EVA旧劇の上映開始時間まで暇を潰すために映画館へ持って行ったのだが、「シト新生」の方だったか「Air/まごころを、君に」の方だったかもうよく覚えていない。当時の東野圭吾は『名探偵の掟』で注目されつつあったが「年季の割にはややマイナー」といった扱いであり、デビューから干支もひと回りしてそろそろ新人から中堅へ移行しても良い頃合だったんだけど、本好きに東野圭吾の話題を振っても「知らない」「読んだことない」で会話が続かなかった悲しい記憶がある。「こんなに面白いのになぜブレイクしないんだろう……」と不思議だったが、そんな東野圭吾も遂に1億部作家の仲間入りか。ちなみに西村京太郎が2億部超えで、赤川次郎が2015年の時点で3億3000万部超え。但しこのふたりに比べると著作数が少ないので、平均部数は東野の方が上だったりする。平均100万部というのは小説家としてはスゴい数字だ。なお海外だとJ・K・ローリングが全世界で6億部超え、彼女はもっと著作数が少ないから平均数千万部というもはや次元の違う存在である。

 東野圭吾は『秘密』あたりから注目を浴びるようになっていったが、大きな転機はやっぱりドラマの『ガリレオ』。原作は割と地味な内容だったけれど、ドラマ特有の味付けで探偵役「湯川学」のキャラを立てまくって大ヒット。既に売れっ子ではあったけど、『ガリレオ』以前と以後では新作の注目度がだいぶ変わった印象があります。今や毎年のように東野原作映画やドラマが制作されるようになり、「小説はあまり読まないけど東野圭吾の本は読んだことある」って人も増えてきました。ほんの25年ほど前は本好きの間でもそんなに読まれていなかっただなんて嘘みたいな状況だ。うちの母もガリレオ以前はどんなに薦めても東野作品を読もうとしなかったのに、ガリレオにハマるや否や「あんたの持ってる東野圭吾の本全部貸して」つって本当に全部読みましたからね……「東野圭吾に興味はあるんだけど100冊もあるとどれから手を付ければいいのか途方に暮れてしまう」という方にオススメしたいのが初期の短編集『天使の耳』、交通事故をテーマにした連作ミステリで一個一個のエピソードがそんなに長くないから気合を入れて取り組まなくても余裕で読み通せます。ただ、今検索して初めて知ったのだが……東野作品ってほとんど電子化されていないみたいで、『天使の耳』も紙書籍版しかないんですよね。現時点で日本語版の電子書籍が販売されているのは『白夜行』『容疑者Xの献身』『ナミヤ雑貨店の奇蹟』『流星の絆』『プラチナデータ』『ダイイング・アイ』『疾風ロンド』の7冊だけ。「電子を含まない紙の書籍のみの部数」と記事に書かれているけど、そもそも電子版が7/100しか出ていないというオチ。東野圭吾は著作を紙で読んでほしいから原則として電子版の販売は許可していないそうだが、2020年のときコロナ禍でステイホームが推奨されたことから「各出版社1冊だけ」という条件で7社7冊の著作を特別に解禁したとのこと。コロナ禍でも7冊しか解禁しなかったんなら世界滅亡級のクライシスでも発生しないかぎり全著作の電子化はないんじゃないかな。

高橋克彦の新刊『噴怨鬼』、5月25日に刊行予定

 へー、弓削是雄シリーズの新刊が出るんだ……弓削是雄シリーズの新刊!? いったい何年ぶりだよ、軽く見積もっても20年は経ってるだろ……愕然としてしまった。弓削是雄シリーズは「髑髏鬼」という短編から始まる、実在の陰陽師「弓削是雄」を主人公に据えた伝奇小説群である。タイトルがすべて「〇鬼」あるいは「〇〇鬼」で統一されているため「鬼シリーズ」と呼ぶ向きもあるが、厳密に書くと鬼シリーズには弓削是雄が出演しない作品も含まれている(たとえば最初の短編集『鬼』に収録されている5編のうち弓削是雄が登場するのは「髑髏鬼」と「絞鬼」のみ)ので「鬼シリーズという集合の中に弓削是雄シリーズが含まれている」と表現するのが正しい。出版社がバラバラで熱心なファン以外は追いかけることが難しいシリーズだったが、2005年に弓削是雄シリーズを全部まとめた『弓削是雄全集 鬼』が刊行されたことで通覧しやすくなりました。税込で5000円近くという高価な本だったからなかなか手を出しにくかったんですけども、2013年に鬼シリーズを5冊にまとめた新装版が日経文芸文庫より発売されてグッと買い求めやすくなった。その新装版も今は絶版状態であり、電子書籍で妥協しようにもシリーズの半分くらいは電子化されていないせいで気軽に薦めづらい雰囲気が漂っている。もう「図書館で『弓削是雄全集 鬼』を借りてきてください」と言うしかない。

 しかし、出版社のキャッチコピーが「あの弓削是雄シリーズが遂に復活!」みたいなんじゃなくて「安倍晴明をしのぐ陰陽師が登場!」になっちゃってるの、「シリーズとして認知されていない」って残酷な事実がストレートに伝わってきて悲しくなるな……朝松健の一休シリーズの新刊(『一休どくろ譚・異聞』)が出たのに匹敵するぐらいビックリしたニュースなのに世間では大した騒ぎになっておらず、「伝奇復権の道のりは遠いな」と思わざるを得ない。

「夢見る男子は現実主義者」は夏放送、新たなPVと女子キャラ集合したビジュアルが公開(コミックナタリー)

 夢男、夏アニメってことはあと3ヶ月もすれば放送されるのか……って、え? みんなアニメ化が既定事項みたいな雰囲気で話してるけどいつの間に決まったの?? 私はつい先日最新刊(8巻)の帯を見て初めて知ったんですが??? はてなマークいっぱいで頭が弾けそうになりながら調べたところ、去年の11月、漫画版の3巻が出た頃に発表されたみたいですね。漫画版はチェックしてないから気づかなかった。

 原作はなろう連載のラブコメ小説です。一人の女の子に惚れ込んで毎日猛アタックを仕掛けていた主人公が些細なキッカケで我に返り、「こんなに猛アタックするのは常識が欠けているよな……彼女にも迷惑だしもうやめよう」と自らの恋心にスパッと見切りを付けるところから始まります。相手の女の子、「夏川愛華」は主人公のうざったいアプローチが突然やんだことに面食らい、なんだか調子が狂ってしまう。露骨に距離を置こうとする彼の姿に寂しさを覚えて今度は彼女の方から距離を詰めようとするのだが、「夏川を諦めた=フリーになった」主人公の周りに次々と可愛い子が現れて……という感じで、一応ストーリーはあるんだけど主人公のほのぼのと賑やかで甘酸っぱい、それでいてたまに事件も起こる日常をシームレスに描いているのが魅力であり、「永遠に終わらないといいなぁ」って願ってしまうタイプのラブコメです。主人公のことを憎からず思っている女の子がたくさん出てくるから「ハーレム系」と言えなくもないのだが、主人公は一貫して夏川さんのことが好き好き大好き、あくまで「脈がない」という理由で距離を置こうとするだけで気持ち自体はまったく薄らいでいない。つまりこのシリーズ、完全に夏川さん一強体制なんですよ。ヒロインと呼べるのは夏川さんだけで、他の子はみんな「サブキャラ」です。だからと言って蔑ろにされているわけではなく、巻によっては夏川さん以上に掘り下げられている子もいる。ラブコメとしては寄り道が多いシリーズであり、その「寄り道」もまた読みどころであるから「永遠に終わらないといいなぁ」と切に願っちゃうわけだ。

 悪く言えばとりとめがない、良く言えばライブ感を重視したシリーズなので合わない人にはまったく合わないけど合う人が読めばガッツリとハマる。とにかくサブキャラの多い作品で、多すぎてイラストの供給が追い付いていないからアニメでたっぷり映像が拝めるのは原作ファンとしてとても嬉しい。私は好きなんだけどセルフツッコミを多用する主人公の語り口がクドくて苦手という読者もいますから、そのへんをうまく処理できればアニメで一気にファン層が広がるかもしれませんね。マジで期待しています。


2023-03-29.

「魔王2099」アニメ化決定!未来都市・新宿市に伝説の魔王が再臨する(コミックナタリー)

 2巻が出たのって2年くらい前だし、作者は去年別の新作出してたからてっきり打ち切られたのかと思ってたけど、まさかアニメ化決定とはビックリ。いやビックリ度で言ったら『ヤキトリ』アニメ化の方が上ではあるんだが。アレの最新刊(2巻)が出たのって2年前どころか5年近く前ですよ。さておき、『魔王2099』は第33回ファンタジア大賞「大賞」受賞作で、応募時のタイトルは『剣と魔王のサイバーパンク』。科学文明の地球と魔法文明の地球、本来なら「異世界」として次元の壁に隔たれそれぞれ別個に存在していたはずのふたつの地球が融合する災害が発生し、いろいろあってなんかサイバーパンクみたいな世界が生まれてしまった! そんなパラダイムシフトが起きているとも知らず500年ぶりに復活しちゃった伝説の魔王はさながら浦島太郎めいた状態に……ってな具合に「時代遅れの魔王様」がサイバーで末世な未来をサバイブする話です。ちなみに冬アニメの『スパイ教室』は第32回ファンタジア大賞「大賞」受賞作なので『魔王2099』の1年前から刊行を開始しているのだが、本編9巻・短編集4巻の計13巻、2巻までしか発売されていない『魔王2099』とは既刊の冊数が全然違う。3巻目の予定がなかなか決まらない『魔王2099』をアニメ化候補と睨んでいた人はあんまりいなかったんじゃないかな。

 というか、そもそもここ数年のファンタジア大賞関連で『スパイ教室』以外に伸びてるシリーズ作品ってないんですよね。『スパイ教室』以前のヒット作となると『通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?』まで遡らないといけなくなるし、ぶっちゃけファンタジア大賞はアニメ化の予想から外される枠ですらあった。アニメ化云々以前に続刊さえ覚束ない。昨年出た『火群大戦』なんてタイトルに「01」とナンバリングしているくせしていつまで経っても02が出る気配ないし……個人的に『魔王2099』の後の第34回ファンタジア大賞「大賞」受賞作『純白令嬢の諜報員』(既刊2冊、凄腕のスパイがハマっていた小説の世界に転生し推しキャラ令嬢の悲惨な末路を阻止して彼女が幸福になれるよう物語を改変していく話)が大好きで是非とも3巻を出してほしいんだけど、到底売れている感じしないから望み薄である。いや、2巻までしか刊行されていない『魔王2099』がアニメ化するなら『純白令嬢の諜報員』もあるいは……?

 そんなこんなのファンタジア大賞受賞作、最近のだと美少女型スマホとの掛け合いが楽しい『もしもし?わたしスマホですがなにか?』とか、伝説的な騎士が女の子に転生(というより憑依?)する『僕は、騎士学院のモニカ。』とか、面白い作品がいくつか上梓されていますので私が続きを読むためにも気が向いたら購入してみてください。あと「99」繋がりというわけでもないが、『悪役令嬢レベル99』もアニメ化するようだ。ゲームでラスボスを倒した後に挑める裏ボス、要はドラクエXのエスタークみたいな存在に転生しちゃう話です。刊行速度がゆっくり目でほぼ年1冊のペースだから打ち切りにならないかハラハラしながら買って(積んで)いたが、アニメ化するんならしばらくその心配も不要になるかな……いや、アニメ化したのに放送終了後1冊も小説版の新刊が出ていない『骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中』とかアニメ化をキッカケに原作が再開するかと期待したら特にそんなことはなかった『最果てのパラディン』とかやっと魔王の正体が判明して盛り上がってきたのに1年近く続刊がない『現実主義勇者の王国再建記』とかいった例があるからまだ安心できない……ってこれ全部オーバーラップじゃないか! オーバーラップめぇ……と怨嗟の声で〆ようかとも考えたが、1巻こっきりになるかもと覚悟していた『貞操逆転世界の童貞辺境領主騎士』の2巻を出してくれたことがありがたかったのですべて水に流そう。ギャグみたいなタイトルで実際下品なところもあるんだけど芯の部分は結構まともなヒロイック・ファンタジーで読み応え充分だぞ。個人的に注目しているオーバーラップの新シリーズは『凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ』。タイトルの「たのしい」を額面通りに受け取り、のほほんとした気持ちでページをめくったらいきなり主人公がラスボス化していて「どう見てもバッドエンドじゃねぇか!」ってなったのでオススメです。


2023-03-18.

『シン・仮面ライダー』観てきた焼津です、こんばんは。だいぶヴェドゴニアみの強い映画だった。あるいは報仇雪恨の剣が哭かない鬼哭街。TLでは『覚悟のススメ』や『エグゾスカル零』を引き合いに出している人もいて納得してしまった。

 過去編に当たるコミック『真の安らぎはこの世になく』を先に読んでおけば若干展開を呑み込みやすいけど、コミックの方はまだ完結してないし後回しでも別に構わないです。なんというか、石ノ森章太郎の原作や昭和ライダーに敬意を払いつつやりたい放題好き勝手やってる……ように見えて「仮面ライダー」というタイトルにかなり真摯に向き合っている部分もあり、「真面目な部分と『ふざけてるのか?』って部分の温度差がすごい」作品。いや、たぶん庵野は一貫して大真面目に撮ってるんだろうな……「庵野の大真面目」が傍から見るととんでもない悪ふざけのように映るってだけで。ある意味でシンゴジやシンウル以上に純度の高い一本だしライダーファンへのサービスも濃厚なんだけど「やりたくないことはやっぱりやりたくねぇ〜」という偏屈な叫びも籠もってるので突き詰めると「バランスのおかしい映画」って結論になる。どちらかと申せば怪作の部類でしょう。映像的な面では「今回も予算は厳しかったんだな……おのれ東映!」と感じるところも多い一方、画面の絵作りが「庵野! あまりにも庵野!」なので筋を追わずに流し見してもそれなりに楽しめる。ハチオーグの羽根を広げるところはすごく好きです。たぶん子供の頃に観ていたらあのシーンだけ何十回もリピートしていただろうな。あとは何と言ってもライダーキック、ここまで殺意の高い直翅目蹴撃は『アラクニド』くらいでしか見たことありませんよ。

「100カノ」TVアニメ化!2023年放送、キャストに加藤渉・本渡楓・富田美憂(コミックナタリー)

 「100カノ」こと『君のことが大大大大大好きな100人の彼女』がアニメ化とな。「運命の相手」が100人いる少年を主人公に据えた、ハーレムラブコメの極北とも言うべき作品です。超過駆動じみたハイテンションかつハイスピードな展開がウリで、常軌逸脱著しい「運命の出逢い」乱れ打ちな錯乱ストーリーを剛腕による力技で成立させている。1巻の頃には3人しかいなかったヒロインズが最近の巻では「えっ、これ何人?」というくらい増えまくっているせいで知らない人が表紙見たら最終巻かと誤解しそうなレベルです。「そうか あれは作者のミスじゃなかったのか…」や「これはもうしばらく休載するしか…」などといったメタネタも多く、作中でストーリー展開や設定のおかしさにセルフ突っ込みを入れることもしばしば。脳天気すぎるノリのせいでまとめて読むと疲れてしまうところもあるが、「ここ最近暗い話や重い話ばかり摂取しすぎて気持ちが滅入っている」という方にはちょうど良い解毒剤になるかもしれません。ちなみに私は6巻から登場する隠れ目ヒロインの「華暮愛々(かくれ・めめ)」が好きです。この漫画、ヒロインの名前はだいたい地口なので『古見さんは、コミュ症です。』『ひとりぼっちの○○生活』並みに名が体を表している。

 「気になるけど、巻数が10巻超えてる作品に今から手を出すのはな……時間的にも経済的にも」と躊躇してしまう方に朗報なんですが、ジャンプ+やヤンジャン!などの漫画アプリを使えば最新話以外は無料で読めます。「初回無料」のエピソードが多くて一度読んだらポイント使わないと読み返せないのが難点ですが、空いた時間にちょこちょこ読んで暇潰しする分にはもってこいである。一応ストーリー漫画ではあるものの、ヒロインごとのエピソードが概ね独立しているため感覚的にはオムニバス形式のラブコメを読んでいる気分になるって寸法です。ぶっちゃけ「あまり好みじゃないな」ってヒロインの話は飛ばしてしまってもそんなに支障がない。かなり頭のおかしい漫画ではある(些細なことがキッカケで地球が滅びそうになる回もある)のだけど、さりげなく「カジュアルに楽しめる工夫」を凝らしているので意外とテクニカルな構成してるんですよね。キャラが増えてくるにつれ「主人公とヒロインの絡み」のみならず「ヒロインとヒロインの絡み」も増えて面白味が何倍にも跳ね上がる。ソシャゲ並みにキャラが増えていく究極の物量ラブコメたる100カノ、このまま「100カノ声優」という分類が出来上がるくらいアニメの方も長く続いてほしいものだ。

 100カノとは関係ないけど最近のラブコメ漫画で注目している作品は『幼馴染とはラブコメにならない』です。第1話の露骨なパンチラ描写に「う〜ん」となってしまって一旦離れたが、その後だんだん無理矢理なお色気描写は減っていったと聞いて復帰。お互いフラグが立っているにも関わらず意地を張って「幼馴染以上」に進展できないでいる主人公とヒロインたちのもどかしい関係を綴る、骨子としてはごく王道的なラブコメだ。たまにちょっと長めのエピソードもあるが基本的に1話1エピソードで畳む形式となっており、1話あたりの満足度が高い。これも「アニメ化決定!」のニュースがいずれ流れるんじゃないかな、と期待している。私が好きなヒロインは年下の幼馴染である「るなこ」(3巻の表紙を飾っている子)。普段はゆるキャラみたいな顔してるけど、ここぞという場面でドキッとする表情を見せます。Twitter上で公開したショートコミックをまとめた『ツイ幼まとめ』は無料なので本編ファンはもちろんのこと雰囲気を掴みたい本編未読の人にもオススメ。

『激怒 RAGEAHOLIC』観た。

 昨年公開された日本映画。『悪魔が憐れむ歌 暗黒映画入門』『高橋ヨシキのシネマストリップ』などの著書がある映画ライター「高橋ヨシキ」の初監督作品です。名前の印象が似ているけど『クローズ』や『WORST』の「高橋ヒロシ」とは特に関係ない。一度怒り出すと歯止めが利かなくなる性格のせいでたびたび問題行動を起こしてきた刑事「深間」は、「街から暴力団を一掃した功労者」であるがゆえに目こぼしされていたが、ある事件で遂に死者を出すにまで至り、警察も庇い切れなくなってしまう。暴力の代償として更生プログラムを受けるため海外の施設に送り込まれ、監禁に等しい扱いを受けながらも3年に渡る治療の末に日本へ帰ってきた深間。出迎える街はすっかり変わり果てていた。「不道徳・不健全」と見做されたものは徹底的に排除され、自警団(ヴィジランテ)化した町内会のメンバーが公然と私刑を繰り広げても警察は見て見ぬフリをする、「臭い物に蓋」を極めた「安心・安全なまち」富士見町。この結果を招いたのは、他ならぬ深間自身だと町長は語るが……。

 『ダーティハリー』みたいなはぐれ刑事が凶悪犯どもを法律無視でブチのめすタイプのバイオレンス映画かと思いきや、どちらかと言えば『時計じかけのオレンジ』的なディストピアに紛れ込んでしまった浦島太郎の話だった。何がどうなっているのか、詳しい説明もないまま進行していくためそこはかとなく不条理映画の風味が漂っている。これはアレだ、エヴァQでシンジくんに誰もまともな説明を一切しなかった放置感に似ています。困惑しながらも変わってしまった社会を飲み込もうとする深間だったが、否応なしに怒りのボルテージは上がっていき、やがて爆発する。「なんでわざわざ深間を呼び戻したんだ?」とか「あんなに目立つコミュニティが今まで発見されてなかったのはおかしくないか?」とか、疑問点はいろいろあるのだがそういう細かいところはうっちゃって観るべき一本なのだろう。ハッキリ言って「予算がなかったんだな……」と窺わせる箇所が多く、「狂った日本の近未来」を描こうとして描き切れなかった雰囲気が濃厚である。突き抜けているところもないし、面白いかどうかで言ったら、そんなに面白くはない。だが、「変な映画を観たな〜」という奇妙な満足感が得られる作品でもあり、個人的にはそんなに嫌いではなかった。怒りのゲージが高まっていく様子を音響で表現しているあたりは好き。ゴア描写にインパクトがある反面、もはやギャグの領域に差し掛かっていて(餅搗きの勢いで凹んでいく顔面!)つい笑ってしまいそうになるのが困りどころです。

 ゴア描写と言えばド直球スラッシャー映画の『X エックス』もなかなか良かったのでオススメ。続編『Pearl』はアメリカ本国では既に公開済みだが、日本での公開予定日はまだ決まっておらずやきもきさせられる。なお『X エックス』は3部作構想であり、完結編に当たる『MaXXXine』は現在製作中とのこと。


2023-03-10.

『コードギアス』シリーズのキャラデザイン担当のアニメーター・木村貴宏さん、死去 アミロイドーシス闘病を公表(ORICON NEWS)

 キムタカが亡くなった!? あまりのニュースに呆然とするより他ない。キムタカこと「木村貴宏」は非常に有名なアニメーターであり、『ヴァリアブル・ジオ』の原画を手掛けるなどエロゲー方面でも名が売れているレジェンド的存在です。細くて手足の長さが目立つシュッとした独特のタッチと特徴的な目の描き方で、見た瞬間「あっ、キムタカだ」と即座にわかる絵をいくつも生み出してきました。『コードギアス』では「CLAMP」のキャラクターデザイン原案をアニメ向きに上手く落とし込み、大ヒットへ繋がる一因となった。他にもガオガイガーやガンソ等があるけど個人的にはやっぱりV.G.のインパクトが強く、今見てもトキメキを感じる。アニメーターの名前に詳しくない私でもすぐパッと思い浮かぶクラスの人だけにショックが抜けない。まだまだまだ活躍してほしかった……どうか安らかに。

『【愛蔵版】多重人格探偵サイコ COLLECTION BOX』、8月より発売開始

 FGOでポカニキこと「テスカトリポカ」のキャラデザを担当した漫画家「田島昭宇」の代表作であり、「最初は夢中で読んでいたけど途中から話がよくわからなくなって挫折してしまった」と語る人も少なくない『多重人格探偵サイコ』の愛蔵版が出ます。特設ページがゴチャゴチャしていてわかりにくかったが、ポイントをまとめると「コミックス2冊分を1冊にまとめた合本形式で本編12冊、それとイラスト集4冊で計16冊」「サイズはB6判変形からA5判にアップする」「4つのBOXに分けて売る(1つのBOXにつき本編3冊とイラスト集1冊の計4冊を収録)、『〇巻だけ』といったバラ売りはしない」ってな具合になります。全部揃えると15840円(税込)と結構な金額だが、かつての単行本も全巻購入するとそれぐらいの金額になるのでメチャクチャ高いってほどではないです。ファンなら充分検討できる範囲。「知らなかったけどポカニキ絡みで興味が湧いてきた」という方には薦めていいかどうか正直迷うところだな……謎が謎を呼びまくった結果、収拾がつかなくなってしまったタイプの漫画ですので。「最後にすべての伏線を回収してスッキリ解決!」みたいなのを期待すると厳しい。

 原作の大塚英志は「漫画版では描かれなかった事件の真相について小説版で追及する」なんて真似を平然としていますからね。そのくせ「小説版は一種のパラレルワールドであり、漫画版と完全に整合するわけではない」とか言い出して平気で設定を変える。かつてWOWOWでドラマ版も放送されましたが、ほとんどの人は知らないか既に忘却の彼方であろう。ドラマ版をベースにした『多重人格探偵サイコ・フェイク』や『多重人格探偵サイコ REAL』では「昭和74年」という大塚英志が好んで使っていたモチーフ「終わらない昭和」まで甦ってくる。もはや平成すら終わったのだから今見ると古色蒼然としています。果てにはタローマンのような捏造によってあたかも実在するかのように語った架空の人物「ルーシー・モノストーン」の伝記を「三木・モトユキ・エリクソン」なる変名で出すなど、やりたい放題でした。内容よりも話題作りに力を入れてしまった印象が強く、私は10巻くらいで一旦熱が冷めちゃったな。そのあたりから刊行ペースが遅くなったことも影響している。もう完結して一気に読めるわけだから、ポカニキ経由で知った人とかだとまた感想が変わってくるかもしれないが。とりあえず、ショッキングなシーンが多い作品なのでグロ耐性のない人は注意した方がいいですよ、とだけ。


2023-03-01.

「ヨハンナさんと未確認の愛 ぶっ壊せ☆らぶらぶはぁと大石像」、FGOのバレンタインイベントらしい気の抜ける内容で堪能した焼津です、こんばんは。

 この手のバレイベはチョコをもらったりあげたりしたときの個別シナリオの方がメインでイベントシナリオそのものはオマケに近い扱いとなる傾向があり、毎年あまり込み入った内容にはならないのである。そして復刻されるのは基本的にピックアップだけで過去のイベント自体は復刻されない。例外は一番最初のバレイベである「チョコレート・レディの空騒ぎ」だけ(2006年開催で2007年に復刻)。あれはプロローグとエピローグを除くとたって四節しかないという短さで、比較すると最近のバレイベは長くなった方だな……としみじみしてしまう。

 「祝福ロックオンチョコ」は誰にあげようか迷ったが、せっかく引けたし周回に使いたかったのでとりあえずヨハンナさんに投入。輝きし栄光の玉座に何度も坐しまくってもらっています。フレから若森(ヤング・モリアーティ)を借りて冤罪キメるのがなかなか楽しいが、サポートに若森出してる人少ないため何度も更新しないといけないのがツラいところ。更新して捜す手間と時間を考えると普通にWキャストリア編成でやった方が効率いいな、って結論に落ち着く。なおヨハンナさんのチョコシナリオは完全にイベントの後日談であり、ネタバレとかは特にないのだがイベント本編をまだ読んでない方は先にそっちクリアしといた方がベターです。

『それは舞い散る桜のように-Re:BIRTH-』、5月26日発売予定

 あれ? 去年は4月予定とか言ってなかったか? と首を傾げたら12月の時点で延期について触れていた。アンテナ低すぎないか、私。てか5月26日は王雀孫の誕生日らしい。すげーじゃん雀孫、バースデー雀孫じゃん。タイトルが「Re:BIRTH」なのでそこと掛けたかったのかしら。もう後には引けないというかこれでまた延期したらカッコがつかないけど、せっかく発売予定日をそれ散る(6月28日発売)と合わせて7ヶ月前からカウントダウン開始したにも関わらず半年以上の大幅延期をかました俺翼(1月30日発売)って前科があるからな……まだ気は抜けませぬ。キャストも公開されているが、さすがに20年以上も経つと結構変わっちゃうなぁ。エロゲなのに主人公の友人ポジションである山彦のCVを真っ先に確認してしまったが変わってなくてホッとした。男キャラの声優陣はあんまり変わってないけど、谷河になぜか新たなキャストが追加されている(オリジナルでは中の人が浅間と兼ね役していた)……いったいどこに力入れてるんだこのゲーム。ヒロインは小町以外総取っ替えとなってしまって残念。いや、冷静に考えると20年経っても同じヒロインに抜擢される九条さんスゴすぎるな? どこで予約するか決めてないが、発売日まで余裕あるしゆっくり考えよう。

 発売日と言えば『ましろ色シンフォニー』のFHD版とSANA EDITIONも発売予定日が告知されてたみたいですね。今頃気づいた私、やっぱりアンテナ低すぎない?

西尾維新書き下ろし・短々編『緊急対談!戯言遣い×阿良々木暦』|西尾維新デビュー20周年記念×西尾維新アニメプロジェクト コラボ企画

 『混物語』的なクロスオーバー・ショートストーリーを暦役の「神谷浩史」といーちゃん役の「梶裕貴」が掛け合い形式で朗読している動画です。新作『キドナプキディング』の宣伝も兼ねているが、作中の時期としては『ネコソギラジカル』の頃でいーちゃんもまだ若い。こうして対比されると暦が常軌を逸したお人好しなぶんいーちゃんの皮肉屋めいたトゲトゲしさが際立つというか、「暦よりいーちゃんの方がヤバい奴って印象あるな……より頭おかしいのは暦の方だけど」って感想を得た。しかし西尾維新もデビューからもう20年とは。今の10代にとっては「自分が生まれる前に世に出た作家」という認識なんだな、という事実で震えてしまう。つっても私だって島田荘司とか笠井潔とか竹本健治とか連城三紀彦は「自分が生まれる前に世に出た作家」という認識だったけど普通にハマったし、別にそれが読まない理由にはならないよな、と気づいて震えが止まりました。

『ウィザーズ・ブレインIX 破滅の星〈下〉』、5月10日発売予定。そして最終巻(])も執筆完了

 中巻が4月に出るのは聞いていたけど、5月にもう下巻が発売されるの!? まさかの連続刊行……! 両方合わせると1000ページくらいあるし、実質的に新刊3冊分が一気に供給されることになります。何年も新刊に飢えていたウィズブレファンは今頃「こんなにいっぺんに来るだなんて!」と嬉しい悲鳴を挙げてるでしょう。ツイッターの方では最終巻(今度発売されるIXの下巻ではなく原稿が書き上がってこれから書籍化作業に入る])の報告も来ているし、吉報が多すぎて感情の整理が追い付かない。というか私、本当に出るとは信じ切れなかったせいで積んでる既刊まだ崩してないんだよな……そろそろ取り掛からないと、せっかく完結するのにすぐには読めないという間抜けな事態に陥ってしまう。

 しかし、遂にウィズブレも終幕の時が近づいてきたか……シリーズ開始は2001年、実に20年以上の年月に渡って展開してきたサーガであり、1巻を購入した頃の私は当時まだ高校生でしたよ。それ散るより前だし、西尾維新だってデビューする前の時期だ。電撃ゲーム小説大賞(今は名称を改めて電撃小説大賞)の受賞作がまとめて刊行されたところで、一緒に『陰陽ノ京』と『天国に涙はいらない』も買ったんだよな。買った本屋はもうなくなっているので少し切なくなる。『天国に涙はいらない』はいっとき刊行が途切れて完結を危ぶまれたりもしたシリーズだが、無事に最終巻が発売されて大団円を迎えました。2011年のことだからそれももう10年以上前の話である。なお『陰陽ノ京』の表紙イラストはFGOでテスカトリポカのキャラデザを手掛けた「田島昭宇」だったが、2巻以降は別の人になっている。最近は少なくなったが当時の電撃文庫は「1巻だけ有名なイラストレーターに依頼して2巻以降は変える(場合によっては1巻も表紙だけで中身の挿絵は別の人だったりする)」ことがちょくちょくありました。表紙買い派が警戒するレーベルだったのである。

 閑話休題。『ウィザーズ・ブレイン』はイラストだけ見ると「異世界ファンタジー物」の印象を受けますが、内容としてはSFに近い。舞台は22世紀の地球、第三次世界大戦によって人口の98%が死亡した人類は環境の悪化も重なって絶滅の危機に瀕していた。世界各地に点在する独立型閉鎖都市「シティ」に引きこもることで人々は辛うじて生存可能という有様だったが、実はシティには隠された秘密があって……といった感じで「隠された秘密」を巡り「魔法士」と呼ばれる超常的な力を持った連中が激しい闘争を繰り広げる。「一定以上の速度で演算を行えば現実の事象を書き換えることができる」という情報制御の理論に基づき、超高速演算機能を有する生体コンピュータ「i-ブレイン」を大脳新皮質に埋め込んだ魔法士たちが脳内で臨界させた情報を現実世界に侵蝕させ物理法則すら捻じ曲げてバトる描写が非常にカッコ良く、私も夢中になって貪り読んだものでした。1巻の主人公は「天樹錬」という少年だったが、2巻の主人公は「ヘイズ」という青年、3巻の主人公は「ディー」という少年……ってな具合に「巻ごとに主人公やヒロインが切り替わる」っつー今だと売上に響きそうで企画が通るかどうかさえわからない群像劇めいた仕様になっています。4巻に当たる『世界樹の街(上・下)』からそれまでのキャラがクロスオーバーし始める壮大な展開に突入していくわけだが、もともとそんなに刊行ペースが速くないシリーズ(年2冊が最大記録である)ゆえ気の長い読者しか付いていけない「電撃の裏名物」でした。アニメ化どころか漫画化もしていないシリーズが20年以上に渡って打ち切られることもなく完結の時を迎えられるというの、率直に申し上げて奇跡なのでは? 頼む、どうか『剣と炎のディアスフェルド』(完結までの初稿は書き上がっているが売上の関係か途中で刊行が止まっているシリーズ、メチャ面白い)でも奇跡を起こしてくれ……。

『ウマ娘 プリティーダービー Season3』、2023年放送開始

 待ちに待った3期の到来です、やったー。PVで大写しになっている出走前キタちゃんの凛々しい顔に惚れ惚れとする。1期が2018年の春アニメ、2期が2021年の冬アニメだったことを考えると秋くらいの放送かな? 2期にも登場していたキタサト(キタサンブラックとサトノダイヤモンド)コンビがメインとなるみたいで、ほぼファンの期待通りの展開となっています。意表を衝いてアニメにも姿を現わしていなかった新規のウマ娘が主人公になる可能性もなくはなかったが、やはりサイゲとしてもそこまでの冒険に踏み切るだけの動機はなかったか。ウマ娘はいろんな時代の競走馬をモデルにしたキャラクターが登場するぶん、時系列や時間経過の概念が非常に曖昧となっており、2期では小さかったキタサトのふたりが3期では大きく成長しているが「2期から何年後なのか」はだいぶボカして語られるはずだ。そのへん真面目に踏み込むと「シンボリルドルフは生徒会長を何年やってるんだ」問題とかに突き当っちゃうからな……スタッフもなるべく整合性は取りたいところなんだろうが、あくまで「ウマ娘たちの繰り広げるドラマ」が主眼なので辻褄合わせに汲々とするようなつくりにはしたくないんだろう。「多少辻褄が合わなくても気にしない」の精神でGOだ。キタサトの作画カロリークソ重勝負服を動かすだけでもう手一杯だろうしな。

 一方、YouTubeなどで観ることのできる配信アニメ『ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP』は4月16日開始。話数や分数など細かい仕様に関しては不明でありどの程度のボリュームになるのか読めないが、配信で済ませる以上そこまで長い作品にはならないだろうという気がします。感覚的にはOVAに近い感じとなるかと。BOX特典として制作された「BNWの誓い」が3話構成で確か60分ちょっとだったからRTTTもそれに準じた規模になるんじゃないかしら。今やってるショートアニメの『うまゆる』も1話あたりは3分と短いが、既に20話配信してるから合計時間で言えば60分に達しています。アプリの方はもう真面目にやっていない(ツインターボが実装されたから少し復帰するつもりではいる)が、アニメの方はどんどん追っかけていきたいですね。

・拍手レス。

 FGO7章面白かったですよね…ジュラシック月姫には驚きました

 ORTのゲージが削れたときは「テペウさんが極彩と散らしたのかな」と思ったり。


2023-02-20.

第2部 第7章「Lostbelt No.7 黄金樹海紀行 ナウイ・ミクトラン 惑星を統べるもの」(後編)開幕!

 なかなか時間が取れなかったせいでバレンタインイベントが始まるギリギリのタイミングでやっとクリアしました。確かにきのこの言う通り妖精國と比べれば割と王道的な冒険ストーリーになっていて単純にワクワクしながらプレーできた。スキルを使うと面倒臭いことになるカマソッソ戦はちょっと苦労したが、「とにかくシナリオの続きが読みたいんだよ!」な私は躊躇なく霊脈石をバンバカ砕いて強引に突破。しかしカマソッソ、出てきたときはてっきり噛ませだと勘違いしてしまったが、最後までやると掛け値なしに偉大な勇者王だとわかる仕掛けになっていて敬服しましたね……いや、だって「カマソッソ」ってラスバレに出てくる雑魚ヒュージの名前だし、よもや単身でORTのアレをアレするような存在とは想像できるわけないでしょうよ。まさかのボイス付きなのもビックリした。CVは「檜山修之」、Fateシリーズだとダーニック役として知られている。そういえばApoコラボのときにダーニックがサーヴァント化するのでは、なんて噂も立ったっけ。懐かしい。

 クエストそのものはそこまで難しくないのだが何度倒しても終わりが見えないORT戦は「強いとか弱いとかではなくとにかく敵に回したくない」という思いが強く深まった。ようやく本体を破壊した……とひと息つきかけた矢先に起こるあのシーンは悪い夢でも見せられているような気分に陥りましたね。なおORTの最終戦はもうちょっとというところでメインアタッカー(景清)が落ちてしまい、最後に残った孔明先生が粘ってギリギリのギリで勝つという「昔のFGOでよく見た光景」を再現してしまい我ながらおかしくて少し笑った。ホント孔明先生は宝具のスタンが刺さる相手にはメッチャ粘ってくれるんですよね。あまりシステム向きではないせいか最近はサポートでも見かける機会が減ったけど、やっぱり私にとってのグランドキャスターは孔明先生なんだなって。

 ミクトラン全体のシナリオを通してもっとも好きになったキャラは「トラロック」です。見た目の可愛さで既に惹かれていたというのもあるが、一枚絵の出てくるメヒコシティ防衛戦の件が熱くて涙腺に来ちゃった。勝ち目のない戦いに臨んでしまったことを後悔しそうになりながらも魂を振り絞って奮起する彼女の「未練」から目が離せない。こんなん見せられたら聖杯ブッ込んじゃうの当然では? 是非とも平和なイベントでコメディ的なやり取りに興じるトラロックちゃんの姿を拝みたいものだ。「ここがあの女のシティです……ね」

 そして7章が終わり、物語は「奏章」と題された新章「オーディール・コール」へ突入。本来汎人類史には存在しないはずのエクストラクラスを濫用した結果、汎人類史から弾かれてしまったノウム・カルデアの面々が禊の旅に出る。まだ具体的な章構成などは判明していないが、少なくとも3つ以上のパートに分かれて展開するものと予想されます。ノリとしては1.5章「Epic of Remnant」に近いものを感じさせる。「7つのクラスでチームを組ませることが前提(7つのクラスがバトルロイヤルを繰り広げる『聖杯戦争』や7つのクラス同士がぶつかり合う『聖杯大戦』は本来の目的から外れた運用)とされる『英霊召喚』になぜそれ以外のクラスが用意されているのか?」というFateシリーズにおけるそもそもの疑問に立ち戻っていくみたいですごく楽しみです。

 stay nightでは冬木の第3次聖杯戦争が始まる前にアインツベルンが大聖杯を解析して隠されたEXクラス「アヴェンジャー」を発見し、メッチャ強いんじゃないかと期待して召喚したらビックリするほど弱くてガッカリ、しかもその特殊な霊基が回収されたせいで大聖杯が汚染されてしまう……という経緯が説明されたけど、「なんでアヴェンジャーという関係者の誰も知らなかったような謎のクラスが隠されていたのか?」という根本的な疑問については解き明かされなかった。ネットゲームとして企画された(その企画がポシャったため小説としてリビルドされた)Apocryphaでは「アインツベルンが発見したEXクラスはアヴェンジャーだけじゃなくて、もう一つ『ルーラー』なるものがあった」と明かされる。もし、第3次聖杯戦争のときにアヴェンジャーではなくルーラーを召喚していたら……というifをベースにApocryphaのストーリーは進行していきます。ルーラーはある種の審判みたいな役割を持ち、自身の願いを聖杯で叶えることはできない代わり「真名看破」など特別な権限を有するクラスである。「審判役が必要なくらい拗れた事態が発生したときのためのクラスなのかな」と、アヴェンジャーに比べればまだ想像の及ぶ領域ではあるが、これに関しても「わざわざ隠されていた理由」はハッキリ説明されなかった。

 Fateの歴史はEXクラスの歴史でもあり、実のところ奈須きのこが学生時代に書いた原型Fate(未完)におけるラスボスがEXクラスの「セイヴァー」だったという。単純に「セイバーVSセイヴァー」って図式にしたかったのであろう。このセイヴァークラスの設定は後にEXTRAでサルベージされている。一方、原型Fateの設定を整理し直した『Fate/Prototype』ではラスボスのクラスが「ビースト」に変更されています。つまり、FateシリーズにおいてEXクラスは「ラスボスのために用意された特殊なクラス」という性質が少なからず存在しているわけだが、stay nightのサブキャラとして「シールダー」が構想された(結局没になり、設定の一部がマシュに流用された)こともあるなど必ずしも「EXクラス=ラスボス」というわけではなかった。その後、関連作品が増えるたびにEXクラスもどんどん追加され「アルターエゴ」「ムーンキャンサー」「ガンナー」「ウォッチャー」「ファニーヴァンプ」「フェイカー」「フォーリナー」「プリテンダー」などなど……名称だけ言及されて実際に登場していないクラスも含めれば、もはや基本7クラスよりもEXクラスの方が倍以上多い状態となっています。中には名称すら明かされていないクラスもある。奈須きのこはstay night執筆当時、第4次聖杯戦争を直接作品化するつもりこそなかったもののある程度の設定は構想していて、その中で「征服王イスカンダル」を指揮官系のEXクラス(コマンダーとか?)に据えるつもりだったらしい。なお奈須版イスカンダルは女性だったらしく、もし作品化していたらフェイカー(FGOではプリテンダー)の「ヘファイスティオン」みたいになっていたかもしれない。

 あと、冬木の聖杯戦争にのみ適用されるマイナーなルールなのであまり知られていないが「EXクラスを召喚すると4クラス(ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカー)いずれかの枠が削られる」ことになっています。実際にアヴェンジャーを召喚した第3次聖杯戦争ではバーサーカーが召喚されなかった。奈須版イスカンダルの召喚される第4次もキャスターかアサシンかバーサーカーが削られるはずだった(ライダーはセイバーが未遠川でエクスカリバーをぶっ放した相手として出てくる)し、シールダーが登場する企画ではアサシン(小次郎)がいなくなる予定だった。あくまで冬木の聖杯戦争では「7つのクラス」という枠が堅持されるのだ。故に汎人類史におけるEXクラスも「本来は4クラスの代替」という面が追及されるのではないだろうか。「バーサーカーだけ召喚する手順が確立している」ことも何か関係がありそうなんだよな……ひょっとしてバーサーカーって意図的に召喚された場合を除いてEXクラスの召喚によって真っ先に削られる枠なのでは?

・原作:相野仁、作画:小田童馬の『転生皇子が原作知識で世界最強』読んだ。

 コミックDAYSで最新話以外無料(17話と18話は今ならマガポケのサイトで読めます)だったから軽い気持ちでクリックしてみたけど、予想以上に面白くて単行本も買いたくなってしまった。ジャンルとしてはもはや陳腐化している気配さえ漂う「悪役転生モノ」ながら、原作の内容を豪快にアレンジしまくった大胆なコミカライズ作品に仕上がっています。原作小説は今のところ書籍化していませんが、作者の「相野仁」は『ネクストライフ』を手掛けた人であり新人というわけではない。なろうとカクヨムの両サイトで並行連載されているがなぜかなろうの方の更新は止まっており、最新話を追いたい方はカクヨムの方へ行かないといけない状態だ。作画の「小田童馬」はこれが書籍デビュー作、未書籍化作品のいくつかはジャンプルーキーとかで読めます。

 バクだらけのRPG『ディスティニースレイヤー』の世界に転生してしまった日本人ゲーマー「たもつ」。よりによって転生した先の体が序盤の敵として主人公に負けて処刑される帝国の第四皇子「ラスター」だった! ラスターには「ジーナ」という獣人の少女が忠臣として仕えており、彼が死んだ後に必ず後を追って自害する仕様となっている。ジーナが推しのたもつは彼女のためにも何とか破滅の運命から逃れようと原作知識を振り絞って努力するが……という、大枠は100回以上見たことがあるような気がする「生前プレーしていたゲームとそっくりな異世界の悪役に転生したゲーマーが原作知識を駆使して無双」系のストーリーです。正直「またこれか」という思いが湧かないでもない。ヒロインであるジーナちゃんの可愛さがモチベになって辛うじて読み進められたが、ジーナちゃんが好みじゃなかったら1話目の途中で読むのやめてた自信があります。

 本書の特徴は「ギャグに振り切ったところ」ですね。原作はシリアス……というより特に癖のない淡々とした調子で1話1話を短く区切って進行していく「良くも悪くも『いかにもWEB小説』といった感じ」なのだが、コミカライズ版は随所にギャグとお色気シーンを挿入して「良くも悪くも『いかにもマガジン』といった感じ」に変貌させています。その匙加減が気に入るかどうかですね。1話目から兄の第三皇子「ロイド」が朝食の席に登場し、食事しながら落ちこぼれのラスターに対しネチネチと嫌味を言うシーンがあるのですが、主人公は嫌味を言われたことよりもジーナが作ってくれた料理を勝手に食いやがったことの方に内心キレるなど、原作よりも「ジーナ推し」の要素が強調されています。なおロイドは原作にも登場するキャラでネチネチと嫌味を言うシーンも実際にある(地の文として処理されているので具体的な描写はない)のだが、原作だと第二皇子「アローガ」の方が先に出てくるくらいで、主人公の前に姿を現すのはもっと後のシーンである。正直割と印象の薄いキャラであり、コミック版と違って食後に魔法でラスターの居城に火を放つなどという無茶苦茶な行動も取らない。頻繁にブチ込まれるお色気や下ネタといい、原作通りにそのまま描くと非常に淡白な漫画になってしまうため意図的に過激なシーンを増やしているのだろうけど、「バグ技を利用して窮地を切り抜ける」展開も原作にはほとんどない(ちょっとだけならある)から読み比べると「ノリが全然違うッ」と驚くハメになります。

 そもそも本来『ディスティニースレイヤー』は「痒いところに手が届かない」ゲームというだけで別にバグだらけではないんですよ。バグ技が絡むシーンや主人公が鼻血を噴くようなシーンはだいたい漫画版オリジナルだと受け取って構いません。小説版ではショイサ洞窟のクエストでいきなり危ない目に遭ったりしないし、股間が露出した矢先ノーパンのジーナに股がられて「このままではジーナの洞窟に挿入(はい)ってしまう……!!」という別の意味でアブない展開に突入したりもしない。2巻から始まる「ヌルヌル回廊編」は変化がもっと顕著で、漫画だと正体不明の「謎のおじさん」が登場し、複数のキャラの思惑が交錯するちょっとした山場として描かれるが原作だとラスターとジーナのふたりが延々とスライム狩っているだけで回廊内に他のキャラは一切登場せず「全部生やしたというの、無から!?」と驚愕してしまった。2巻の表紙を飾っている女騎士「カレン」は一応原作にも存在するキャラクターだがあんな対魔忍みたいな恰好ではなく普通に「銀色の鎧」を着用しているし「強者に屈したい」というマゾヒスティックな願望も抱いていない。突然ウージーがドロップしたりしないぶんチート付与魔術師に比べればまだ正気度は高い方だけどこっちの改変ぶりも大概ですよ。

 まとめると、「白身魚の如くあっさりした口当たりの原作にたっぷり油と香辛料をまぶしてガツンと来る味つけに変えたコッテリ風味の悪役転生コミック」です。タイトルで受ける印象以上にバカバカしくて楽しい漫画なので無料公開されている今のうちにチャレンジしてみてはいかがでしょう。特に「謎のおじさん」が降臨する11話以降はおじさんの正体が気になり過ぎて読むのやめられなくなるぞ。

・拍手レス。

 EGFマダー と叫ぶためには購入せざる得なかった 読み直してもやっぱり面白い 3巻の「死にません 私が殺しません そんな処理(プロセス)は私が許さない」が好きですね 本当にF出ないかな読み直すたびに思ってしまいます

 他に読みたい本もあるからガッツリ再読するつもりはなかったのに、「ちょっと冒頭だけ確認……」と読みだしたら止まらなくなってしまった。企画・原作のよしみる☆もFinalを実現させたがっているみたいですけど、何せ秋山瑞人だもんな……まだまだ「EGFマダー」と叫び続ける必要がありそうです。

 ブラックロッド大好きです 綺麗に終わった作品ですし不満はないのですが 古橋先生もドロドロもタップリ溜まったでしょうし書いてくれないですかね

 「若い頃だからああいうのが書けた」と述べるのも納得する内容ですが、それはそれとして東方編を待ち続けてしまうのがファンのSa-Gaですね。


2023-02-12.

・20年以上の時を経てようやく電子化した『E.G.コンバット』既刊3冊を早速ポチった焼津です、こんばんは。2巻は今読んでも相変わらず泣けるな……。

 リンク先の「(全3冊)」という表記に「Finalがまだ出てないでしょうが!」と激昂したくなるファンもおられるでしょうが、kindleの全〇冊という表示は単に「電子化されている既刊は〇冊だけ」程度の意味(たとえば紙版では21巻が既に出ている『賭博堕天録カイジ 24億脱出編』kindleだと「全20巻」という扱いになっている、福本伸行の作品は電子版だけ各出版社ではなく「フクモトプロ」が管理しているからか電子化するタイミングが独特)であり、シリーズとして完結しているかどうかは特に関係ないので気にしなくてOKです。E.G.コンバットは紙版がまだ実家にあるから別にわざわざ電子版を買い直す必要もなかったのだが、さすがにもうボロくなってきたから気軽に読み返せる分として電子版を欲していました。もしFinalに合わせて再販なり新装版の発売なりされたら更に買い直すつもりです。安いもんだ、それでデストロイの季節が到来してくれるんなら。それはそれとして『鉄コミュニケイション』の電子化はいつになるのやら。

 秋山瑞人の名前を見ると連鎖的に古橋秀之を連想する(こいつ、まだ龍盤七朝のことを……)のですけれど、そういえばブラックロッド復刊プロジェクトは無事目標の5倍近くの金額を集めて終了したみたいですね。復刊される『ブラックロッド[全]』は一般流通に乗らないもののアニメイト等で取り扱いされるのでクラファンに参加していない人でも購入可能ですよ。

・ヤンマガWEBで読んでる『白地図のライゼンデ』の1巻が発売されたからオススメしておきます。

 メチャクチャ簡単に言うと「ハードさやダークさを軽減した『メイドインアビス』」って感じの冒険ファンタジーです。地図の作られていない「未測定領域」にのみ魔物が発生する異世界で、一級の開拓者を目指す主人公が図抜けた測量技術を持つ獣人少女と出会う。ある程度正確な地図が作られると不思議なことに未測定領域はあっさり消滅してしまうのだが、災害などで大きく地形が変わるとまた未測定領域に戻ってしまう……といった具合で人の通わぬ辺境はイタチごっこに陥っているのだが、他とは一線を画する能力を持ったヒロインであれば不可能として放置されている廃都の測量もできるかもしれない、と主人公は己の人生を賭けてみることにするのです。

 ヒロインといったが今のところラブコメ的な要素はなく、真面目に冒険に取り組んでいます。衝撃展開や派手なエピソードもなく、ストーリー進行も昨今のマンガとしてはやや遅い部類に属するのだが、一歩一歩地道に地歩を固めてフロンティアの開拓に挑もうとする姿勢が内容ともマッチしていて先が楽しみな作品である。壮大な物語を構想していることがヒシヒシと伝わってくるので、あえなく打ち切りとなってしまわないかってことだけが心配だ。興味のある方は単行本を手に取ってみてください。あと講談社のマンガと言えば『ウィッチクラフトワークス EXTRA(1)』(去年完結した『ウィッチクラフトワークス』の後日談的な番外編)も出ているので「そんなんあるとは知らなかった」って方もお買い逃がしなきよう。

小説「異修羅」TVアニメ化決定!ソウジロウ役は梶裕貴&ユノ役は上田麗奈(コミックナタリー)

 遂に珪素さんがアニメ化作家に……『異修羅』は書籍化される前から注目していて楽しみすぎて積んでしまい未だに1冊も読んでないが、いい加減そろそろ崩すべきか。それにしてもあの各方面で話題になったFGO実況からもう6年も経っている事実に気絶しそうになるぜ。

・それはそうと『かぐや様は告らせたい−ファーストキッスは終わらない−』やっと観てきました。

 「去年のクリスマス映画をなぜ今頃になって?」「というかまだ上映してるところあったんだ」って驚かれそうですが、地方だと公開が1ヶ月以上遅れるのとかザラなんですよ。さておき『かぐや様は告らせたい』、漫画が原作でそこからアニメ化や実写化を果たしたラブコメですが、今回の映画は実写版ではなくアニメ版です。かぐや様〜のTVアニメは第1期に当たる『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』(2019年放送)、第2期に当たる『かぐや様は告らせたい?〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』(2020年放送)、第3期に当たる『かぐや様は告らせたい-ウルトラロマンティック-』(2022年放送)の3つがある(コミックスに同梱されたOVA版もあるがTVアニメではないから除外)。『ファーストキッスは終わらない』は第3期『ウルトラロマンティック』の続きであり、主人公ふたりの関係が大きく進展したエピソードとして印象深い「二つの告白」(文化祭編のクライマックス)の後日談みたいな位置づけにある。言わば実質的な4期目です。「二つの告白」が本誌に掲載されたのって2019年で、ちょうどアニメの1期目が放送されていた頃だったからリアルタイムで追っていた読者からすると「ようやくここまで来たか」と感慨深くなるポイントなわけです。コミックスで言うと14巻あたり、かぐや様〜本編は全28巻なのでちょうど折り返しのあたりに位置する。そう、実はここから完結までが結構長いんですよ。

 クリスマス映画として制作された経緯もあり、作中の時期もちょうどクリスマスシーズンを迎えている。文化祭で直接的な言葉を用いずに「四宮かぐや」へ想いを伝える作戦、名付けて「ウルトラロマンティック作戦」を無事に成功させ、晴れて両想いとなりキスも済ませた「白銀御行」。普通のラブコメなら「めでたしめでたし」と幕を下ろしそうなステージにまで進んだふたりだったが、耳年増なかぐやがよりによってファーストキッスで舌をねじ込みエゲツないほど濃厚な粘膜接触をかますという異常事態が発生したことにより状況は混迷を極めてしまう。予想外にドギツいディープキスをキメられた御行は動揺、「初キスで舌を挿入するのはやり過ぎ」「ド淫乱の性欲魔人と思われている可能性が高い」と客観的な意見をぶつけられたかぐやも自分がやらかしてしまったことに気づく。おかげでカップル成立となるどころか、むしろキスする前よりもギクシャクとしてしまうふたり。揺れる乙女心に翻弄され不可解な態度を取り続けるかぐやに困惑する御行だったが、彼女の願いは至ってシンプル。「文化祭のときは私からキスしたのだから、今度は会長(御行)から私にキスしてほしい」 想いがすれ違うふたりを尻目にいよいよ恋人たちにとっての天王山、クリスマス・イブという名の試練に満ちた聖夜が到来するのであった……。

 もう両想いであることは確定的に明らかなのにウダウダやってる状況が続くという、「これTVアニメで1話ずつ区切って放送されたらメッチャイライラしていただろうから映画として一気にやったのは正解だったな」と思う内容です。原作の第138話「かぐや様は教えたい」から第151話「ファーストキッスは終わらない」まで、それと第159・160話の「かぐや様は(前編・後編)」を一本にまとめている。エピソードの合間にアイキャッチ的な素材として単行本描き下ろしイラストをベースにしたカットが挟まれる構成など、作りそのものは完全にTVアニメの延長だ。感覚としては「劇場版を観ている感じ」というより「(実際には存在しない)4期の総集編を観ている感じ」ですね。御行とかぐやの関係に内容を絞っており、他のキャラも登場するけど今回はみんなサブキャラとして脇を固めている感じだ。原作もこのへんは寄り道が少なかったあたりで、映画化するエピソードとして切り出すにはうってつけだったと言えます。

 『ファーストキッスは終わらない』はふたりの駆け引きよりもかぐやの脳内裁判に代表される「それぞれの内心の葛藤」がメインとなってきます。両想いにはなれたものの、「相手に好かれたい」――見方次第によっては邪とも言える感情を背景に「偽りの自分」を演じている自覚のあるふたりが「仮面を脱ぎ捨てたありのままの自分を好きになってほしい」という本音を前にもがき苦しむ。そして、多少事故の要素が混ざっていたファーストキッスをやり直すことでもう一度ともに未来へ進むことを決意する。「総集編みたいな映画」と書いた後で申すのもアレですが、タイトルの意味が判明するシーンで最大の感動が発生する仕組みになっているなど、ちゃんと「一本の映画」として機能する仕上がりになっています。90分ちょっと、TVアニメに換算すると4話分くらいのボリュームだから長すぎず短すぎず、程好い尺に収まっています。キスの経験で早坂にマウントを取り続けるかぐやの姿は今回端折られているが、そのへんは第4期か何で映像化してくれるのかな。最後に「NEW GAME START」と続編(てか「NEW GAME編」)を匂わせる表示が出てくるから、映像化の波はまだ途切れないはずです。続きをTVアニメでやるとしたら『ファーストキッスは終わらない』を再編集して4期冒頭に充てる形になるのかしら。最近は青ブタ(青春ブタ野郎)シリーズみたいに映画で展開を続けるパターンも定着しつつあるから劇場版第2弾や第3弾が発表される可能性もあります。

 ただ、今回は公開規模が小さかった(調べてみると51館スタート)せいもあって興行収入そこまで伸びていない雰囲気なんですよね……そもそも「3期の続きを映画でやってる」ってことを熱心なファン以外あまり把握していないのでは? という疑惑すら漂う。把握していても「配信まで待てばいいや」と座視してる人も多そう。正直私も配信まで待とうかどうかちょっと悩んだんですが、これで展開が止まっちゃうのもイヤなんで一念発起し映画館へ足を運ぶことにしました。その甲斐はあったと満足できる内容だったので「近くでまだ上映してるけど迷っている」という方がもしいるのであればそっと背中を押してあげたい。但し、原作読んでる人なら察しているかもだけどしょっぱなから「セックス」連呼する(2期7話で「セックス」を言い淀んでいた初心なかぐやがハッキリ口にできるようになったという進展を表す場面なのである意味重要なシーンではある)映画ゆえ同行者のチョイスによっては気まずい雰囲気が流れるかもしれず、そこは注意した方が宜しいです。


2023-01-30.

・暖かい室内から雪降る屋外に出た直後、音もなく眼鏡のフレームが砕けてレンズが落下した焼津です、こんばんは。あまりの寒さにフレームの奴も耐え切れなかったか……。

 いや一瞬何が起こったのか全然わかんなかったわ。吹雪を浴びながら真っ白な雪の上に落ちた透明なレンズを、しかも視力デバフ喰らった状態で必死に探すという罰ゲームみたいな苦行を課された私の身にもなってほしい。引き返して確認したらレンズを支える樹脂製フレームの下部が完璧に割れていました。とりあえずセロテープで補修して無理矢理レンズを嵌め込みどうにかしたものの、砕けて一部が欠けている状態なのでもう完全にお釈迦です。雪がやんでから眼鏡屋に足を運び、フロントの交換で対応してもらったが予定外の出費は痛かった。原因が温度差なのかどうかは不明ですが、今後は室内用と外出用で眼鏡を使い分けることにしようかな……。

Frontwingの新作『グリザイア クロノスリベリオン』、公式サイトリニューアルオープン。4月28日に発売予定。

 “グリザイア”シリーズに連なる一作であり、初期三部作やファントムトリガーのキャラも登場するためクロスオーバー的な要素もある。もともとはスマホゲーとして2020年11月に配信をスタートしたが、ゲーム部分があまりにもしょっぱかった(単純に楽しくないうえ育成がメチャクチャ面倒臭い)せいもあって8ヶ月くらいでサービス終了が決定してしまった。この度のパッケージ版はゲーム部分を削除し、シナリオパートのみに内容を絞った普通のノベルゲーとして提供される。最初からそうしとけば良かったのでは? 配信版はメインストーリーの途中(確か4章くらい)で終わっていて尻切れトンボだったが、パッケージ版ではちゃんと未公開新規シナリオも収録されてストーリーが完結するみたいです。シナリオ量は「2MB」(文庫本に換算すると6冊程度)とのことで結構なボリュームだ。

 クロノスリベリオンは時代的にファントムトリガーとほぼ一緒で、ファントムトリガーのキャラはそのまま出せるけど時代の異なる初期三部作のメンバーはそのまま出せない……という問題点を「そうだ、みんなコールドスリープしてたことにしよう!」という超荒業で解決してファンの度肝を抜きました。わざわざコールドスリープしてまで未来にやってきたS組のみんながどうなったのか、サービス終了で宙ぶらりんになっていたけどそのへんの埋め合わせもするみたいです。シナリオライターは「紺野アスタ/かづや/鳴海瑛二/桑島由一」の4人、配信版では「かづや」がディレクターを兼任していました。『グリザイアの果実』では「小嶺幸」のシナリオを担当していた人です。雄二の過去など“グリザイア”シリーズの根幹部分を作った「藤崎竜太」は「原作アドバイザー」なる役職名でクレジットされており、要するに直接シナリオは書いてないけど監修みたいな作業はやったってことだろうか? 「監修」というのもユーザーからするとあまりよくわからない役職ではあるんだが……ザッと原稿チェックしてOKを出すだけのケースもあれば、「なんだこれは……ひどすぎる……」と頭を抱えてほとんど丸々書き直したってケースもあり、まちまちなんですよね。あ、ちなみに全年齢向けなのでエロシーンはありません。ヒロインの一人「セリカ」が好きなのでちょっと残念ではある。

 さておき、配信版をプレーしていた元ハンドラーとして気になるのは「本編以外のイベントシナリオは収録されるのか?」ってことですね。トーカが聖エール外国人学校に在籍していた頃のエピソードを綴る『スターゲイザーEp._#00』など、期間限定で配信していたシナリオがいくつかあったのだけどサービス終了に伴ってどれも読み返すことができなくなっていました。「高性能なシミュレーター」によって過去のデータを再現する、というエクスキューズによって「クロノスリベリオンの時点で既に亡くなっている故人や消息不明なキャラを当時の格好のまま登場させる」という抜け道も駆使していたから割とやりたい放題だったんですよね。よりによって「坂下啓二」(「エンジェリックハウル」の坂下部長のパパ、猟銃を持って美浜学園に立てこもった眼鏡と帽子のオッサン)がエネミーとして出てきたときは笑っちゃいました。イベントシナリオに関しては今のところ「収録する」とも「収録しない」とも明言していないので「不明」としか言いようがないが、するんならもっと大々的にアピールするだろうし、たぶんしないんじゃないかな。グリザイアは現在『グリザイア 戦場のバルカローレ』(公式略称「グリバル」)という「雄二がリハビリの一環としてフルダイブ型のVRMMOを始めたら巨大な陰謀に巻き込まれ……」というソシャゲを配信中だが、グリクロのサ終を喰らった後だけにプレーする意欲が湧かず放置しています。これもしばらく経ったらパッケージ版出しそうな気がするし。

 最後に注意点。パケ版のファントムトリガーを買ったことがある人なら御存知だろうからわざわざ申し上げる必要もなかろうが、そうじゃない方を念頭に置いて説明しますと、この『グリザイア クロノスリベリオン』、パッケージ版と言っても箱の中にDVDなどのメディアは含まれていません。「DLカード」が封入されており、インターネット経由でデータをダウンロードする仕様になっています。つまり、箱を眺めてウットリするような趣味がある方以外はダウンロード販売が始まるまで待った方がベターである。確かファントムトリガーのときは1ヶ月遅れくらいでDL販売が始まったように記憶してるから、グリクロもそんなに待たされることはないと思います。抱き枕カバーなどの特典類が欲しいって方はパケ版を買いましょう。今なら予約特典として複製色紙(一姫&雄二)も付いてくる。特装版に含まれるタペストリーとビジュアルブックはそれぞれ単体販売もされるから「コレだけ欲しい」って方は狙いを絞って単体購入するという手もあります。しかし、それにしてもサ終から1年半以上とは結構掛かったな……『結城友奈は勇者である 花結いのきらめき』のCS移植版もどれだけ待たされることになるやら。

・任務(クエスト)の攻略が面倒で放置していた『ブルーアーカイブ』がいつの間にか(調べてみると去年の11月頃から)任務をクリアしなくてもストーリーが読めるようになっていたのでしばらくぶりに復帰してみました。

 ちょうど復帰しようとしたタイミングで「ミカ」という人気キャラが実装されたらしく、メチャクチャ重くなってログイン直後に動かなくなってしまい、出鼻を挫かれる形に。ミカという子がどんなキャラなのか全然知らなかった(たまにツイッターで二次創作イラストが流れてくるので「見たことはあるな」ってくらいだ)が、見た目可愛いしCV東山奈央だしで特に迷いもせずガチャガチャしてゲット。途中すり抜けで「ワカモ」というCV斎藤千和の仮面少女を引き当てたけど、「確か去年の水着イベントで見かけたような……」とうっすら覚えている程度(来たのは水着じゃない方だけど)で、本編で見かけた記憶は全然なく。確認するとプロローグの時点で登場していてビックリしました。一応サービス開始して間もない頃にアカウント作ってるから定義によっては古参に該当する身分ながら、まるでピカピカの新参みたいな気分で臨んでいます。「CMよく見かけるしSNSとかで話題になってるから興味はあるけど、新しいソシャゲを増やすのはちょっとなぁ……」と躊躇ってるそこの君! ストーリー読むだけならゲーム部分はほとんどやらなくてもいいから気軽にキヴォトスへ足を運んでみよう。6GBを超えるくらいのボリュームがあるから容量的にはあまり気軽にインストールできるゲームではないのだが……。

ゲームアプリ「ブルーアーカイブ」がTVアニメ化、ティザービジュアルにアロナの姿(コミックナタリー)

 話が前後してしまったが、元を糺せばTVアニメ化のニュースがキッカケでブルアカに復帰しようという気になったんですよね。サービス開始から2年、そろそろそういう話が出てきてもおかしくない頃合ではあったがそれでも少しビックリした。ブルアカはこれまでもちょくちょくオリジナルアニメを作ってはYoutubeで無料公開していたから今後もTVアニメみたいな形式にこだわらず不定期ネット配信で飛び飛びにアニメを流していく方針なのかな、って何となく考えていたこともある。こういうソシャゲ原作のアニメは「キャラ多すぎて誰が誰だか顔も名前も覚えられない」問題が発生しがちであり、元のゲームをやっていない視聴者は大抵1話でギブアップするか1話も観ないでスルーして、原作ファンだけが「あっ、今チラッと推しが映った!」と盛り上がって終了する傾向が強く、なかなか2期や3期に繋がらないものです。果たしてブルアカは2期、3期と続く長寿シリーズになり得るのか。透き通る世界で期待と不安が相半ばする。とりあえず派手に動くアルちゃんは観たい。

第2部 第7章「Lostbelt No.7 黄金樹海紀行 ナウイ・ミクトラン 惑星を統べるもの」(後編)の情報を一部公開!

 「またきのこが無茶振りしたせいで開発状況が阿鼻叫喚の地獄になっているのでは……」と噂の7章後半、1月31日というギリギリ「1月下旬」の範囲に収まる日程での公開となったが開幕キャンペーンが延長されているあたりやカルデア放送局の開幕直前SPが生配信ではなく事前収録になっているあたりなど「本当は25日くらいに開始する予定だったのに開発が遅れて予定もずれ込んでいるんじゃないか」と疑われる要素がチラホラ。この調子だと妖精國みたく後編の後に「完結編」とかが来てもおかしくない雰囲気だ。きのこは菊地っ子だから『エイリアン魔神国』(当初は上下2冊で終わる予定だったが1冊足して上中下巻にしても終わらず、「完結編」と称して3冊追加しやっとフィナーレを迎えた伝説的大長編)へのリスペクトを欠かさないのだ。

 これ以上延びると毎年恒例のバレンタインキャンペーンにも差し支える、という事情で強行されたことが窺える後編配信。まだ本編にも登場していないのに何の前触れもなくいきなり実装されてプレーヤーたちの度肝を抜いたニトクリス〔オルタ〕以外にも実装を控えているサーヴァントが多く、バレンタイン含めてしばらくガチャラッシュが続きそうな雰囲気です。巨大ゴーストの時点で「少なくとも当面の実装はない」と判断できる「カマソッソ」を除くと、7章メンバーでこれからピックアップされそうな面子は「トラロック」「テスカトリポカ」「ククルカン」あたりか。「イスカリ」はNPCっぽさが濃厚だけど、これからテスカトリポカになる可能性があるので「サーヴァントのテスカにはイスカリの要素が混入している」パターンなどもありそう。くくるんは霊衣の可能性も捨て切れないし、後編にまだ隠し玉的なサーヴァントが控えている可能性もあるが……私はMADARA以来の田島ファンなので田島絵スメルが濃厚なテスカのピックアップは是非ともチャレンジしたいところだが、まだ石を貯めている最中で現状だと天井分には届かないことを考えると再PUまで待った方が良く、悩ましいところだ。以前のFGOは復刻PUまで時間が掛かることも多かったけど、最近は割と短い間隔で復刻されるケースが増えてきたもんな。「イベントそのものは復刻せずPUだけ復刻する」ことによってガチャで再登場する機会が増加しているように感じます。後編配信が終わったらバレンタイン関連のアレコレも待ち構えているし、ここ最近の暇なムードから一転して忙しくなりそうだ。


2023-01-19.

・虚淵玄が関わっているということで注目していた今期の新作オリジナルアニメ『REVENGER』、わかりやすい必殺仕掛人系のストーリーであり「あ、私好みのやつだ」と素で楽しめた焼津です、こんばんは。好きな仕掛人系の漫画は『闇狩人』です。

 謀略の餌食になって全てを失い抜け殻となった薩摩藩士「繰馬雷蔵」が、法で裁けぬ悪党どもを闇に紛れて始末する復讐代行業者「利便事屋」の仲間入りを果たす――という、のっけから暗黒街道まっしぐらな時代物です。パラレルワールドの日本を舞台に魔都と化した長崎で暴れ回る男たちの「今日も今日とて裏稼業」な日々を描く、単純明快スカッと血飛沫!な活劇だ。とにかく雰囲気が暗いので大ヒットする予感は特にしないのだが、伊烏義阿みたいな主人公が大音声の猿叫を発しつつワープじみた飛び込みでターゲットを真っ二つに斬り裂く「新手の妖怪か何かか?」って動きが最高なので昔のニトロプラスが好きな御仁なら観ておいて損はない一作だ。ムチャクチャ雑に書くと「ライダー要素を抜いて吸血鬼も出てこなくなったプレーンの『ヴェドゴニア』」です、これ。金箔を顔に貼り付けて窒息死させるのはさすがにギャグとしか思えない絵面だが、為朝ばりの豪弓でスナイプする「叢上徹破」(CVは武内駿輔)やみんな大好き糸使いの「鳰」(CVは金元寿子)など脇を固める面々もなかなか魅力的。ほか、今期のアニメは原作付きだと『転生王女と天才令嬢の魔法革命』、続きモノだと『D4DJ All Mix』あたりを毎週楽しみにしています。『NieR:Automata Ver1.1a』は原作やってないからあまりよくわからずに観ているが、雰囲気に惹かれるものがある。ずっと積んでるヨルハエデションをいい加減に崩すべきか……(ずっと積んでる転天やお隣の天使様、スパイ教室の既刊を横目で見ながら)(それはそれとしてつい買ってしまった『陽キャになった俺の青春至上主義』を手に取る)。

スタァライトのコンソールゲーム発売決定!

 スタァライトのビジュアルノベルをフロントウイングが開発!? ちょうどはつみら(『果つることなき未来ヨリ』)崩し始めた矢先なのでタイミングの良さにビックリしました。シナリオを手掛けるのは本編や劇場版の脚本を担当した「樋口達人」、プラットフォームはSwitchとSteam……ってことぐらいしか今のところ発表されておらず、内容に関してはよくわからない。樋口さんはソシャゲのスタリラでもちょくちょくシナリオを書いているが、告知画像に映っているのが九九組のメンバーだけってことを考えるとスタリラに出てくる他校キャラは今回のゲームには登場しないのかな? 外伝っぽいストーリーになるのか、それとも単純にTVシリーズのストーリーをゲーム化したものになるのか……スタァライトは主人公が「聖翔音楽学園」という3年制の演劇系高校に通う話で、アニメは主人公が2年生になったところから始まり、劇場版で3年生になって卒業し「次の舞台」へ向かう様子を描いている。1年生のときの出来事はいくつかの回想および前日譚(プリクエル)に当たるコミカライズ作品『オーバーチュア』でしか触れられていないため、「1年生編」みたいな内容になる可能性もありますね。ただ、1年生のときって「オーディション」が始まる前だから例の不思議空間における「レヴュー」もないはずで、「過去が書き換わっている!?」というストーリーにでもしないかぎり地味な仕上がりになりそうではある。ちなみにスタリラは時系列で言うとTVシリーズよりも後の話を扱っていますが、主人公たち九九組(99期生)が現在2年生なのか3年生なのかほとんどのエピソードで曖昧になっており、具体的な時期はよくわからない。いっそパラレルな世界と受け取った方がいいのでは……という見方すらあります。

 樋口達人、うちを閲覧している層には「あのクロスアンジュのシリーズ構成をした人だぞ」でだいたい通じるだろう。そういえばクロスアンジュもVITAでゲーム出してたっけ。やってないからよく知らないが、ゲーム版はアンジュじゃないキャラが主人公になっていたみたいですね。もしかするとスタァライトのコンソールゲームも愛城華恋ではなくゲームオリジナルのキャラ、「あなた」ちゃん的な子を操作する百合ゲーになる可能性もあるか? というかスタリラも実はプレーヤーが舞台創造科(B組)の一員という体裁で、初期の絆台詞などでは登場キャラから「あなた」ちゃん扱いされることもあったんだけど、最近はそういう要素がだいぶ薄くなったせいもあってときどき設定を忘れそうになる。まだ何もわからないからどう期待すれば良いのかいまいち掴めないが、とりあえずメチャクチャ面白くて大ヒットしてスタァライトの格ゲーが制作されるくらいの盛り上がりになったらいいな。コラボでアサルトリリィのキャラが参戦してくれたらなお嬉しい。かつてコラボしに行った刀使ノ巫女のキャラが逆にやってくる展開とかあったらアツいな。

・西条陽の『わたし、二番目の彼女でいいから。』読んだ。

 現在5巻目まで刊行されているラブコメの1冊目。ずっと積んでたけどこのまま買い続けるべきかどうか判断するためやっとこさ崩し始めました。作者名の「西条陽」は「西条・陽」ではなく「西・条陽」で「にし・じょうよう」と読む。電撃小説大賞出身で5年ほど前にデビュー、これが2つ目のシリーズとなります。タイトル通り、「本命の子」がいる主人公に「わたし、二番目の彼女でいいから」な女の子が現れて妥協気味に付き合い始めた矢先、「本命の子」が急接近してきて……といった感じで三角関係が展開する、ややアンモラルな雰囲気の青春恋愛モノだ。根底にあるノリは昔講談社ノベルスあたりから出ていたビタースイート系青春ミステリのソレなんだけど、肝心のヒロインがふたりともポンコツなせいでところどころギャグっぽいムードが漂ってしまい、思ったほどドロドロしたストーリーにはならなかった。かと言って明るいラブコメかと訊かれればそうでもなく、率直に書けば「変な小説」である。「いや、そうはならんやろ……」とツッコミを入れつつ修羅場へと墜ちていく流れにワクワクしました。

 「本命を諦めて手近なところで妥協しよう」という低い志から付き合い始めるラブコメというと『主人公にはなれない僕らの妥協から始める恋人生活』を思い出すが、人間関係が割とシンプルだったあちらに対しこっちはちょっと複雑です。まず、主人公には「本命の子」がいて、それとは別に「二番目くらいに好きな子」がいる。その「二番目くらいに好きな子」にも主人公とは別に「本命の人」が存在しているのだが、主人公のことは「二番目くらいに好き」である。「お互い本命ではない」と知りつつ肌の触れ合いで寂しさを埋めるような爛れた関係(本番までは行っていない)を築いているわけです。そして急接近してきた「本命の子」の抱えている事情が明らかになり、ただでさえ道徳的に正しいと言い切れない青春を送っている主人公は「逃げれば一つ、進めば破滅」な岐路へと立たされる。リアリティよりもファンタジーを重視したタイプゆえ前述したような「いや、そうはならんやろ……」と言いたくなる要素が多いのだが、「お互い本命ではないからこそ明け透けなことを言い合える」関係だったふたりがだんだん「相手に嫌われたくない」臆病な感情と「相手を支配したい」抗えぬ欲望、相反するふたつの想いに苛まれ自縄自縛に陥っていく様子が滑稽でいて哀しく、引き込まれました。「二番目同士」という絆はかつてふたりを見果てぬ空へひっそりと羽ばたかせる自由の翼だったのに、今や見るも無残なほど重力に負けて地面へ向かって真っ逆さま。終いには「君は二番目の恋人にしていい女の子じゃなかった」と謝り出す始末で、恋愛実験としては完全に失敗である。そしてこの物語は、失敗を認めてからが本番なのだ。

 「恋の駆け引きはやがて、嫉妬の奈落へ」という惹句が躍る2巻の帯を見てなお進みたい者だけが進むが良い。この道の果てにどんな花が咲くか、見届けようではないか。ちなみにあとがきによるとこのシリーズは結末を決めずに書き始めたということで、彼・彼女たちがどんな答えを得て終わるかは今のところ神のみぞ知る。ぶっちゃけ主人公に魅力を感じる類の話ではないので、「さざ波程度の運命に翻弄されるか弱き者ども」を傍観者的に眺め下ろすくらいの態度で臨んだ方がちょうどいいかもです。

・拍手レス。

 とうとう黒白のアヴェスター最終巻が発売されましたね!小説媒体でいけるのかと不安感はありましたが終わってみればとても面白かった…男達が注目されがちな作者ですけど女キャラもいいですよね…特に面倒くさいタイプの

 小説版が無事に終わったので次はゲーム版が楽しみ。少しずつとはいえパンテオン復活が近づいている気もするので嬉しい。正田さんはああ見えて作品の男女比についてはかなり慎重に配分している人だから、意外と「男ばかり目立つ」のは少ないですね。モブはともかくネームドキャラは一人も使い捨ての「噛ませ」にしたくない、という想いが良い方向に作用していると感じます。


2023-01-10.

・未だにOSが8.1のノートパソコンを使っていたけどサポートも終了するしいい加減買い替えるか、と一念発起してPCを新調した焼津です、こんばんは。今新しいPCでこの文章を打っていますがやっぱりまだ慣れなくて戸惑っている。

 前のPC、いつ買ったのか記憶もおぼろげになるくらい昔でスッとは思い出せなかったけど、「確か八命陣が発売された後で万仙陣が出るよりは前だったはず」という正田信者特有の覚え方でだいたいの時期を特定し、日記を読み返すことで「2014年6月」と判明。8年以上も前かよ。厳密に言うと買ってすぐに乗り換えたわけではなく、ダラダラと古いPCを使い続けて遂に限界の訪れた年明け、「2015年1月」くらいにようやく移行した模様だ。それでも変わらず8年は使ったことになる。前の前のPCは「2009年12月」に買った奴(ファーブラの直前だからよく覚えている)なんで、この13年間で3回しかPCを買っていないわけだ。昔に比べるとPCの買い替えってあんまりしなくなりましたね。今回もOSのサポート終了がなければまだ使っていただろうし、以前よりも壊れにくくなった印象があります。

 ただ、「壊れていない」というだけでスペック的にいろいろと限界だったし、そろそろ買い替えるべき時期には達していました。メモリが倍増し、フルHDだった画面も4Kになって、「サクサク動くし画面も綺麗!!」と感動しています。特に前のPCではギリギリ動いている感じだったウマ娘が物凄く軽快に動作すると申しますか、「早送りなのか?」と疑うレベルの速度になっていて違和感が拭えない。ギリギリで動いているウマ娘ってまるで水中のようにゆっくりとキャラがポーズを変えるので、彼女たちの仕草をスローモーションでじっくり観れるという利点があったのだ。これが本来のスピードなんだな、とストUの速度に慣れた人間がターボに接したときのような驚きとともにヌルヌル動くウマ娘たちを堪能している。で、それはいいんだけど、横向きになったときの画面が……メチャクチャ小さい! PC版のウマ娘はフリーソフト使わないとフルスクリーンとかにできないのでそのへんの設定がちょっと面倒臭いんですよね。今更ガチでやり込むつもりもないのでとりあえず放置だ。しかし、まさかフルHDサイズが小さく見える時代が来るなんて……隔世の感に慄くばかりです。

・そして冬アニメの始まる時期がやってまいりました。個人的な注目作は『お兄ちゃんはおしまい!』です。

 略称「おにまい」。もともとは作者である「ねことうふ」の同人誌として始まった漫画シリーズであるが、途中から商業版も刊行されるようになってアニメ化まで漕ぎつけた一作です。ニートのヒキコモリだった主人公「緒山まひろ」(♂)は業を煮やした妹「みはり」の策略によって怪しいクスリを飲まされ、ある日気づくと体が女の子に変わっていた! もう「お兄ちゃん」はおしまい、これからは新米の「お姉ちゃん」として生きていくしかない……! というTSコメディです。まどかマギカの二次創作でいろいろと闇の深い嗜好を覗かせていたねことうふの一次創作とあって私も同人時代から追っていました。あ、ちなみに初商業作品の『つかえて!コハル』も刊行時に買っていましたが、作者名覚えていなかったので同一人物と気づくのにだいぶ時間が掛かった。今は追加要素のある新装版がKindle Unlimitedで読めるので興味のある方はそちらをどうぞ。

 内容的には割とよくある「軽めのTSフィクション」といった趣で特段難しいことを考えず気楽にエンジョイできる。男時代のエピソードがほとんど描かれていないため「自分を元男だと思い込んでいる異常少女」みたいなノリ。1話目だからか、作画も予想以上に凝っています。動きを見ているだけでテンション上がる。原作はドイツ語翻訳版も刊行されており、かの地でなぜか凄まじい人気を誇っていることでも有名だ。ドイツ語版のタイトルは「Ab sofort Schwester!」=「これからはお姉ちゃん!」、日本とはややニュアンスの異なる意味になっている。日本語タイトルの「おしまい」は「姉妹」とも掛けているので、そこを汲み取ったのかもしれない。1話は(元)兄と妹の掛け合いだけで終わったが、ここからどんどんキャラが増えて賑やかになるはず。お楽しみはこれからだ。

・拍手レス。

 あけましておめでとうございます 言峰あっさり引けました アルクで沼り村正を撤退し 福袋はギルを引き損ね 言峰は、行くだけ行くと思ったらあっさり30連で3体 逆に拍子抜けしました 性能は、言峰らしい個性があり満足です 最終再臨バトグラは、もっと殴ってほしかった 物語的には、ラスボスとして最後に使うために 一旦敵役退場させたんですかね 最後まで味方でシナリオを回したら 原作にしかできない作品になると 思わせる言峰綺礼

 あけましておめでとうございます。30連で3体はすごいですね! ガッツスキルがあって全体攻撃できるアルターエゴ、という点で同僚のリンボと共通しているところは笑いました。言峰は一番嫌なタイミングで敵に戻りそう……という負の信頼が凄まじいけど、サプライズが好きなきのこのことだから完全な味方になる可能性も捨て切れない。「でもやっぱ言峰のツラをぶん殴ってやりてぇよ!」ってプレーヤーが多そうだが。


2023-01-02.

FGOの福袋は「曲亭馬琴」狙いで全体ライダーを選択し、ピンポイントで馬琴さんを引き当てることに成功した焼津です、あけましておめでとうございます。今年は幸先がいいぞ。

 馬琴さんは八犬伝イベントで実装された当時からメチャ欲しかったサーヴァントなんですけれど、4日遅れで開催された為朝のピックアップに石を搾り取られ余力がなくなり泣く泣く見送った経緯があります。前回の福袋も馬琴目当てでライダーを回したんだけどゲットすることは叶わなかった。実装から約半年、やっと入手できて感無量。ともあれ、そろそろ第2部のクライマックスが近い(もうすぐ終わるというわけではなくてあとちょっと掛かりそうではある)ということから「たびたび話題になって気になっていたFGOを始めてみようかな」って人も出てくる時期だと思います。私も6年前のお正月に開始したクチですし。えっ、あれからもう6年経ってるのか……自分で打ち込んでおきながら愕然としました。私自身の驚愕はともかく「福袋の種類がいっぱいあってわかんないよ〜」と困惑している新規マスター向けに軽く案内しておきましょう。

 そもそもFGOの福袋とは何か? 普段ガチャにおいて滅多に出現しない(確率で言うとたったの1%!)☆5サーヴァントが少なくとも1騎、確定で入手できるという非常に稀少な有償ガチャなことです。有償なので課金しないと回せません。金額はだいたい2000円くらい。最安で済ませようとする場合は480円の「有償石4個」を4回買う「1920円コース」になりますが、480円と1600円を買う「2080円コース」の人も結構います。石を使い切らない強い意志を持っている人の場合、「2080円コース」を選べば有償石が2個残るので次回は1600円だけで済む。

 さて、福袋の種類に関しては毎回変わるんですが、今回(2023年正月)は「クラス&宝具効果別」で全20種類となっています。ズラッと表示されても多すぎて、はじめたばかりの人だとワケがわからないでしょう。一個一個解説していくと長くなってしまうので結論だけ申し上げますと、一番無難なのは「バーサーカー全体攻撃宝具」だ。年末のFate特番でやってた『藤丸立香はわからない』の「とりあえずバーサーカー」みたく、クラス混成の面倒臭いエネミーは全体バーサーカーで吹き飛ばすのがもっともラクなのである。昔より環境が良くなったとはいえ、初心者のうちはそう何騎も並行して育てる余裕がないから「汎用性の高いアタッカー」を求めるとなるとどうしても全体バーサーカーに行き着く。それ以外は、強いて言えば「全体アサシン」も狙いどころではあるかな。アサシンクラスは強力な全体攻撃のできるユニットが少ないため、最初のうちは戦力を欠きやすいポジションである。早い段階で☆5アサシンをゲットしておけばワイバーンがポコジャカ出てくるオルレアンで大活躍してくれるでしょう。昔は☆5アサシンという概念自体がなかった(初の☆5アサシンであるジャックちゃんが実装されたのはサービス開始から数ヶ月経った頃だった)せいもあって☆1アサシンの「佐々木小次郎」で頑張るマスターが多く、小次郎が「ドラゴンスレイヤー」と呼ばれていた時代もあるほどです。つっても今は「霊脈石」というコンティニューアイテムがあるし、サポートで強いサーヴァントを気前良く貸してくれる歴戦マスターも沢山いますから戦力目当てでガチャ引かなくても割とどうにかなる環境になってきており、純粋に「このサーヴァントが欲しい!」ってところを回してもイイと思いますよ。効率や最適解などを無視して強引に推しのサーヴァントを活躍させてやるってのもFGOの醍醐味の一つですからね。

 また「どの福袋を選ぶかではなく、福袋を購入するかどうかの段階で迷っている」新規プレーヤーもおられるでしょう。私も最初は課金に対する抵抗が強く、プレー開始時に販売されていた福袋をスルーしたぐらいなので気持ちはよくわかります。当時は福袋の値段が高かった(今の倍に当たる「有償石30個」が必要だったので、最安値でも3500円した)こともあり、踏ん切りがつかなかったのですよ。その後どっぷりハマった結果「しまった、あのとき福袋買っときゃよかった!」と後悔するハメになりましたが。福袋は年二回、お正月とアニバーサリー期間(8月の初め)しか販売されないので今を逃すと半年ぐらい悶々とすることになります。「ポリシーがあってどうしても課金したくない」って人や「途中で飽きるかもしれない」と心配な人、「年末年始といろいろ物入りだったから手元不如意で……」な人以外はここで思い切って買っておいた方がアドいかと。FGOは期間限定のサーヴァントが多く、一度ピックアップを逃すと年単位で入手する機会が回ってこないことも珍しくないゲームゆえ「期間限定の☆5サーヴァントが最低1騎手に入る」福袋ガチャだけは課金するって人も少なくないです。期間限定の最高レアが90以上も存在するの、正直「ろくでもねぇゲームだな」って思わなくもないが……ハマってくるとただ入手するだけに留まらず同じサーヴァントを再びゲットして「重ねる」(宝具レベルを上げる)ためにガチャを回す人も出てきます(今回の福袋でも「重ねる」前提で選んだ人をチラホラ見かける)が、そこまで行くと沼だから気を付けましょう。

 そして「ニューイヤー2023ピックアップ」で実装された新規サーヴァントはアルターエゴ「グレゴリー・ラスプーチン」って、いやどう見ても言峰綺礼だろ! 新規マスターの方々は綺礼が平然とした顔でガチャに入っていることに驚くかもしれませんが、FGOには「擬似サーヴァント」という概念がありまして「ガワはTYPE-MOONのオリキャラだけど英霊や神霊の能力を保有している奴」が何人もいます。本当にガワだけで中身は英霊本人というパターンもありますが、ラスプーチンに関しては「能力を譲り渡して退場した」ことになっているので記憶・メンタリティともにほぼまんま言峰綺礼です。宝具でアンリマユを召喚(?)してるの、ホンマ「どのツラ下げて」って感じですよ。本編シナリオに登場したのは結構前で、確か2017年末だったか……もう5年前になる。「綺礼よりも綺礼を殴りたい奴の方がどんどん実装される」と言われるぐらいプレイアブル化が遅かったけど、ようやく出ましたね。彼は最新章であるナウイ・ミクトランにも姿を見せているが、実は私、前編の途中までしかまだやってない。やり始めると面白くて時間吸われるから「余裕があるときにやろう」と後回しにしてしまっている。後編の配信が今月下旬と発表されたから早めに再開したい気持ちはある。それにしてもこのメチャクチャ田島昭宇っぽいタッチの金髪、いったい何者なんだ……?

イブニング休刊のお知らせ - 講談社

 あの“イブニング”が休刊だって!? と驚いてはみたものの、単行本派で雑誌は一度も買ったことないから連載ラインナップよく知らないんだよな……アフタヌーンは特徴があるからわかるけど、モーニングとイブニングは私の中でごっちゃになっていて区別がつかない。公式の「連載中作品一覧」で確認すると、単行本買ってる作品は『銃夢火星戦記』『少女ファイト』『創世のタイガ』くらいか。過去の連載作で熱心に追っていたのは『勇午』『軍鶏』『もやしもん』『オールラウンダー廻』『レッド』あたり。連載中の作品のいくつかは漫画アプリ「コミックDAYS」に移籍するらしいが、このまま終了になってしまう作品もあるんだろうな。やはり20年も続いた講談社の漫画雑誌が休刊するというのはインパクトが大きくて各所で話題になったが、「まだ比較的新しめの雑誌だと思っていた」的なコメントをする人がチラホラいて「確かに2000年代創刊ならそこまで古株という印象はしないな……」と感じてしまい、自分含めて紙媒体の漫画を読む層の高齢化現象を直視したような気持ちになりました。

・漫画:はとぼし、原作:来栖もよもよの『シシリアとジューシーな侯爵さま(1)』読んだ。

 女性向けのWEBコミックレーベル「コミックブリーゼ」で連載されている異世界転生漫画です。なろうで連載されている小説のコミカライズ作品ですが、原作の方はまだ書籍化していない。子爵家の令嬢であったが天候不順による領地の不作や両親の事故死によって没落してしまった主人公「シシリア」は侯爵さまの姪っ子「サラ」の子守をするメイドとして再出発することになった。「病弱」という事前に聞いたプロフィールから線の細い女の子を想像していたシシリアだったが、実物はまるでゆるキャラのようにムッチリしたフォルムの肥満児……病弱って、これ生活習慣病じゃないの! さすがに健康上の問題があるからと雇い主に直訴して運動や食事に至るまでの管理を任されたシシリアは、前世の知識を総動員させてお嬢様のダイエット&シェイプアップに挑む!

 と、ほぼそれだけに終始するシンプルな内容の漫画です。ここからひと波乱やふた波乱あるのかもしれませんが、少なくとも1巻の時点では「太り過ぎて常時SD状態の7歳児を健康的なレベルまで痩せさせる」ことにのみ専心する。前世設定に意味があるのか? と問われると今のところあんまりない気もするが、姪っ子の問題が片付いたらタイトル通り「シシリアとジューシーな侯爵さま」のラブコメ展開に入っていくみたいなのでそっちで前世設定が活きてくる……かもしれません。何であれ1巻の読み所はぷくぷくし過ぎてゆるキャラみたいになってるサラちゃんの可愛さですね。ぶっちゃけ表紙のサラちゃんに一目惚れして買いましたからね、「なんだこの生き物は」って。デフォルメ絵自体が好きなんですが、「普通の絵柄の中に一人だけデフォルメキャラが混じっている」のが私のツボなんだよな……『あおざくら』の合コン回に出てきたガ○ャピンみたいな子(加納ちゃん)も好きだった。かっこいいと思った子に「すっげ〜デブ!」と笑われた悔しさ&悲しさをバネに一念発起して痩せようとするサラちゃんを応援したい気持ちがある一方、「痩せたら単なる美少女になってしまうのでは?」という懸念もあって複雑な心境だ。とりあえずサラちゃんがデフォルメされている間は買い続けるつもりです。

・拍手レス。

 3900万ってすごいんですけfど、オバドラのMUSICS! が特典製作工場の水没とかのトラブルが原因で、結局CFで集めた1億よりも費用がかかったのを考えると、ちょい不安ですね。あんな地獄みたいなトラブルはないと思いたいですが……
 とりあえず、それ散るリバースの売れ行きと関係なくけれ夜の制作を進められることに対する安心感はありますね。「けれ夜が出るんならそれ散るのリメイクも買おうか」って人も出てくるでしょうし。ただあくまで早めにゴーサインが出るというだけで、必ずしもスムーズな完成に直結するわけではないし、たぶんスケジュール通りに事が運ばなくて見積もりよりも費用が嵩むだろうな……という予感はしますが。


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