2022年9月〜12月


2022-12-25.

『アストロキング』のコミカライズ版がいつの間にか発売されていてビックリした焼津です、メリークリスマス!

 作者自ら「メイドパンパンファンタジー」と謳い上げるほどひたすらメイドたちとヤりまくるだけの異世界転移モノであり、「セックスしてないページがほとんどない」レベルで最初から最後まで主人公の性剣が暴れ回る原作は頭の悪さが振り切れていて結構好きでした。全1巻で発売からもうだいぶ経ってるし、これ以上新しい展開はないだろうと諦めて漫画版の有無などは全然チェックしていなかったです。他のエロい漫画を調べているときに「この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています」で表示されて「えっ!?」となった次第。今はホントになんでもコミカライズされるんだなぁ。原作小説が書籍化されないまま漫画版だけ展開されているパターンまでありますし。『シャングリラ・フロンティア』とか『美龍艶笑譚』とか。シャンフロなんてアニメ化も決まっているのに未だに小説版が刊行されていない。大袈裟に言って時代の変化を感じてしまう。

【TVCM告知】なかよし部の3人が登場する新CM「年末年始もプリコネ!」篇 本日から全国でCM放送開始!

 このタイミングでCMに登場するなかよし部……まさか、新年イベントはなかよし部絡みのエピソード!? なかよし部絡みのイベントは過去3度に渡って開催されてきたが、最後のイベント「鋼の聖女と聖なる学舎の異端児」は2021年4月に終了しているからここ1年半くらいは音沙汰がない状態でした。その間本編のストーリーに登場しているし、プリコネはキャラの多いゲームだから1年半ぐらい大きな出番がないなんてこともさほど珍しくないけれど、あらゆる事情を超越して「シナリオが王雀孫だから」という理由が何よりも説得力を持って響いてくる。古くからのファンにとっては骨身に沁みるほど痛感している事実だが、彼は凄まじい領域の遅筆家なのだ。プリコネでも体操服ユニこと「ユニ(聖学祭)」のキャラクターストーリーの実装が遅れたというか、なんと今に至っても2話以降が実装されていないんだもんな……普通だったらクビになってもおかしくないレベルだが、熱心な固定ファンの付いているライターでもあり、最近配信された第二部最終決戦イベント「終炎のエリュシオン」のなかよし部パートも結構な大ボリュームで大好評だった。いやこんなボリュームのシナリオ書いてる暇があったらユニ聖のキャラストをどうにかしろよとも思ったけど、読んでて笑っちゃうほどの面白さなんで悔しいけど嬉しかった。なお第二部のストーリーはちょっとしか見てないのでミロクとかいう鳥海ボイスのラスボスっぽい人が出てきても「このメルクリウスみたいな喋り方する人、誰?」という反応しかできなかった。Diesも一応クリスマスに最終決戦の時を迎えるゲームなんで微妙にシンクロしてる。

 そういえば王で思い出したけどそれ散るリバース、どうなってるのか久々に調べたら来年4月に発売が決まったんですね。令和になっても例のくいだおれ制服は続投する模様。それ散るの続編企画『けれど輝く夜空のような』のクラウドファンディングも無事目標額を達成して終了した……って、え!? いつの間にけれ夜のクラファンなんてやってたの!? BasiLが握っていたそれ散る関連の権利をNavelが取得できたことによって20年ぶりにプロジェクトを解凍することが可能になったらしく、どうも10月はじめから11月末まで約2ヶ月に渡ってCFが行われた(9月の時点で事前説明をしていた)みたいですね……いや、全然知らんかった。知らんうちに始まって知らんうちに終わっとった。けれ夜のメインシナリオは王ではなく「森崎亮人」が担当する(サブは従来の予定通り王)らしい。確かに王にメインまで任せたら冗談抜きで10年は掛かりそうだもんな。レーティングはX指定(18禁)、つまりエロゲとして制作されるが今回のクラファンに関しては未成年者でも支援できるタイプのため、返礼品として送られるソフトは全年齢対象版になります。全年齢版はCF限定として制作され、一般販売されることはない。「一般発売等は行われません」という注意書きだけ読んで「けれ夜はクラファンで支援しないと入手できない!」と勘違いしている人もチラホラいますが、あくまで「全年齢版がCF限定」なのであって後日発売される18禁版は一般流通に乗ります。まだ制作に取り掛かっていないので具体的なスケジュールは固まっていないものの、ざっくり「来年1月頃から制作開始→初夏ぐらいに全年齢版を完成させて返礼品として支援者たちに送る→その4〜6ヶ月後、冬ぐらいに18禁版を完成させて一般発売」といった段取りになっている。

 攻略対象となるヒロインはそれ散るの時点で登場していた瑛、郁奈、瑞音、椿の4人に加え、メインヒロインに当たる「桜井夜空」(自称「和人さんを救う為に未来から来た桜井舞人の娘」、それ散るのエンディングで誰を選んだのかを冒頭で選択することによって髪の色が変わるシステムになるらしい)、そして設定こそ用意されていたもののそれ散る本編には登場しなかった幻の没キャラ「谷河なすの」の計6名です。いや谷河なすのとか言われても「谷河って保健室の先生だっけ……そういえば妹いるって設定があったような……なかったような……」って感じでスッとは思い出せなかったぞ。ぐぐったら妄想だけで谷河なすのの同人誌を作った人がいてビビったわ。気になるのはかぐらの名前が挙がっていないことか。それ散るのヒロイン「森青葉」の友人として登場したサブキャラ「芹沢かぐら」はけれ夜で年上ヒロインとして登場する……みたいな噂があったけど結局ただの噂だったのかな。ひょっとしてリバースで攻略対象に昇格したのかも、とうっすら期待したけど夜空の「選べる髪色」が5色しかないことを考えると望み薄? いや、情報を伏せているだけという可能性も僅かに……「かぐら? 完全版(笑)で攻略できたじゃん」は禁句なので口にしないよう心掛けお願いします。

 あと攻略対象ではないが小町などのそれ散るキャラが登場することも確定しています。けれ夜のクラファンは「ストレッチゴール」を設け目標金額を達成した後も支援の総額に応じて特典が増えていく形式にしていたようで、1000万円の支援が集まればゲームの制作が正式に決定(ただしメインルート+1キャラルートというほぼ最低限の内容)し、その後だいたい100万円ごとにボリュームアップして攻略対象が増えたりしていく仕組みとなっていました。ストレッチゴールの上限は2650万円、ここまで行けばスタッフが理想とする完全な『けれど輝く夜空のような』を制作することが可能になる。結果は……3900万円! なんと上限を1000万円以上も上回りました。「エロゲ冬の時代」と囁かれる現代においてクラファンでこれだけの金額を集めるのは並大抵のことじゃないですよ。それ散る発売から20年、これほどけれ夜を待ち望んでいた人々がいることに胸が熱くなる。クラファンやってたことすら知らなかった私はファン失格だ……200万円の石油王コースに応募した人までいるみたいなの、ガチすぎて震えてしまう。もしオクルトゥムのCFが始まったら絶対に支援したいのでそのときはWEB拍手なりツイッターなりで教えてくださいませ。あれは「億単位の資金が必要になる」という理由で頓挫した企画だからこの倍以上は集めないと厳しいだろうな……。

・鳴沢明人の『災悪のアヴァロン1』読んだ。

 副題もあるけどクソ長いので引用しません。興味のある方はリンク先でご確認ください。「やり込んでいたVRMMOゲームの世界に転移する」タイプのファンタジーです。それも「ブタオ」と嘲られる肥満体の悪役少年に転生(ないし憑依)する形で……なので、「悪役転生モノ」の一種とも言える。ただしファンタジーはファンタジーでも中世ヨーロッパ風ではなく「国内にダンジョンが発生し、資源採取のため冒険者たちが攻略に励んでいるパラレルワールドの日本」みたいな設定だ。『黄泉ヲ裂ク華』とか、ああいう感じ。要するに『マジカル★エクスプローラー』と同じジャンルのライトノベルながら、プロローグ時点で主人公が魔王か何かの如き容姿に変わり果てており、ヒロインとおぼしき少女に討たれる「えっ、バッドエンドじゃん」な光景が繰り広げられています。なぜこんなことになってしまったのか――と追想する形で事の発端に遡っていく構成なんですが、「愛すべき人達がいたときの温もりの記憶」とか綴られているところからして家族や友人はほぼ全滅してるっぽいな……「ゲーム知識を駆使して無双する」タイプの話ではなく何かを間違えて破滅に向かっていくタイトル通り「災悪」の物語らしい。帯には「破滅フラグ回避」って書いてるけどホントに回避できんのかコレ?

 丸々と肥え太った見た目から「ブタオ」の異名を取る「鳴海颯太」――学生時代から始めて社会人になった後も続けているVRMMO『ダンジョンエクスプローラークロニクル』の世界へせっかく転移することができたというのに、自分がなってしまったキャラはよりによってソイツだった。恋愛要素もあるダンエクにおいてヒロインの一人に数えられる「早瀬カヲル」の婚約者であり、特に強くはないもののひたすら不快感を煽る言動に終始してプレーヤーたちからヘイトを集めた嫌われ役。最後は主人公の手で成敗されて冒険者高校から退学するしょーもない存在である。なんでこんなヤツに……と嘆きつつもダンエクの世界を楽しんでやろうとヘビーゲーマーならではの攻略知識をフル活用して最速レベルアップを目指していく。本当にゲーム通りの世界なのかいまひとつハッキリしないけど、もしそうなら破滅フラグを回避して冒険者ライフを満喫することも夢じゃないのでは、と浮かれていた矢先にある「異変」を察知して……。

 ゲームの世界に転移! やり込み勢ならではの最速レベルアップ! 同級生たちに差をつけろ! という俺TUEEE系のライトノベルであるが特筆すべきは色っぽいシーンの少なさ。少ないというよりほぼ皆無です。前述したブタオの婚約者「早瀬カヲル」などスタイルの良い美少女は何人か登場しますが、「下手に関わると厄介事に巻き込まれるかもしれないから」という理由で距離を置き、黙々とハクスラに熱を入れる描写が続く。一応ヒロイン視点の章も用意されているのだけど、不意に距離が詰まってドキッ! みたいなイベントは全然ない。下着姿を見てしまったりうっかり体に触れてしまったりといったラッキースケベ展開もゼロです。あまりにも艶がないせいか、カラー口絵で「水着姿のヒロインたちを妄想するシーン(まざまざと描写しているわけではなく、本編だと一瞬で通り過ぎる箇所)」を描くという涙ぐましさ。1巻時点でもっとも距離が近い子は妹の「華乃(かの)」なんでカヲルよりも華乃の方が人気出そうまである。あとがきの口振りからすると書籍化を狙って連載していたわけではないようなので、良くも悪くも「いかにもネット小説」って雰囲気の淡々とした文章が紡がれている。ゲーム実況をダラダラと眺めているような感覚ですね。

 「面倒事を避ける」方針でゲーム知識を活用しているせいで自己主張する場面が少なく、なろう小説にしては無双感が希薄な部類である。ずっとこの平坦な展開が続くようだったらさすがに眠くなるな……と瞼が下りだしたところで「おっ」と目が覚める刺激が来ます。少しネタバレになってしまうが、ゲームイベントとの齟齬から「自分以外にもこの世界に転移してきたプレーヤーがいて、シナリオに介入している」という確信を得るのだ。そいつは目立たないように振る舞っているみたいだが、明らかに悪意を持って行動している……身近に危険な存在が潜んでいながら対処する方法が現状ないという不安。読者から見て「明らかに怪しい」と感じる人物はいるもののまだ狙いがよくわからない。このままだと後手後手に回り、プロローグで綴られたようなバッドエンドは避けられなくなりそうだってハラハラします。ジョブに関することなどプレーヤーにとっては常識の情報が秘匿されている(国家機密に指定されている?)など世界にまつわる謎もいくつかあって今から真相解明が楽しみだ。

 よくあるゲーム転生モノに一捻り加えることで独自の味付けにしようと試みている意欲的な一作。しかしさすがに1巻だけでは大して話が動かないので、2巻が出る頃まで様子見するってのも一つの手かもしれません。2巻は来月発売予定。1巻はKindle Unlimited対象作品ゆえ会員の方は来月あたり着手してみては如何だろうか。電子版には特典として妹とフリーマーケットに行くSSが収録されています。それにしても主人公、表紙ではメッチャ痩せてるけど本編でこの姿になるのビックリするぐらい後半なんだよな。ちなみに表紙の右にいるツインテールの子(ピンク髪っぽく見えるけど他のイラストを見るに茶髪っぽい)が妹の華乃です。左の青髪ポニーテール(サイドテール?)の子が婚約者のカヲルちゃん。まるで3人でパーティーを組んでるような構図だが、カヲルちゃんとは距離を置いてるので一緒に戦うシーンは今のところありません。あくまで今後の展開も含めたイメージってことなんだろうけど、読んだ後に見るとだいぶ表紙詐欺だな、コレ。

・年の瀬も近くなってまいりましたが、『黒白のアヴェスター』4巻とか『陰の実力者になりたくて!』5巻とか『斬魔大戰デモンベイン』とか『Fate:Lost Einherjar 極光のアスラウグ』1巻とかロード・エルメロイの新刊とかFGOマテリアルの新刊とか『ゆるゆり』と『大室家』の新刊(当然両方とも特装版)とか三嶋与夢怒濤の新刊4冊(乙モブ11巻、マリエルート1巻、星間国家の悪徳領主6巻、星間国家の英雄騎士1巻)とかリゼロの新刊2冊とか『水上悟志のまんが左道』とか欲しい本が多すぎて大変です。買おうかどうか迷っていた「みちきんぐ」の新刊『シオンコネクト』(フルカラーコミックなのでちょっとお高い)は延期したみたいだからとりあえず決断を先延ばしにできたけど……必要な金額もさることながら読むための時間を捻出するのも大変。そうこうするうちに「Lostbelt No.7 黄金樹海紀行 ナウイ・ミクトラン 惑星を統べるもの」の開幕も目前に迫っているし、「日曜日が100時間くらいあればなぁ!」という思いは強まる一方です。


2022-12-18.

“戯言”シリーズ最新作『キドナプキディング 青色サヴァンと戯言遣いの娘』、2023年2月8日講談社ノベルスから発売&書影解禁!

 西尾維新のデビュー作でありアニメ化もされた『クビキリサイクル』から始まる“戯言”シリーズ、遂に新作のお出ましです。“戯言”シリーズは「戯言遣い」と称される青年「いーちゃん」を主人公にした各話完結方式のミステリで、「玖渚機関」「四神一鏡」「殺し名七名」「呪い名六名」「チーム」「七愚人」など大量の設定を撒き散らしつつそのほとんどをフレーバー扱いにしたまま終了した一連の作品群を指します。本編は『クビキリサイクル』『クビシメロマンチスト』『クビツリハイスクール』『サイコロジカル(上・下)』『ヒトクイマジカル』『ネコソギラジカル(上・中・下)』の9冊で2005年に完結したが、スピンオフの“零崎一賊”シリーズ(公式名称は“人間”シリーズ)や“人類最強”シリーズも含めたら割と最近まで稼働していた勘定になる。しかし、「純然たる本編の続き」という意味では実に17年ぶりとなるわけで西尾維新の古参ファンもそりゃあザワザワするわけです。シリーズの特徴は何と言っても登場キャラクターと設定の多さ、「事件の関係者・容疑者」ではないただのご近所さんが何人も顔を見せ、ほとんど仄めかしで終わる「世界設定の開陳」により事件とは関係ないところで異様なほど賑やかなムードを醸し出す「意図された過剰さ・混沌ぶり」が当時刺さる人には刺さりまくったのである。若気が至りまくっている“戯言”シリーズに比べれば“物語”シリーズはかなり整理されている方です。

 今回の主役は副題にもある通り、青色サヴァン「玖渚友」と戯言遣い「いーちゃん」の娘「玖渚盾(じゅん)」。子供が生まれていることは既にスピンオフの方で言及されていたらしい(私はまだ読んでない)。尊敬する哀川潤にあやかって「じゅん」という名前を付けたとのこと。「じゅん=盾というのは引っ掛けで、後から本物じゅんが出てくる」と予想する向きもあるが、私は「な、なんだってー!?」と驚きたいので深く考えず「じゅん=盾」と素直に受け取りたいと思います。あとは「盾→イージス」の連想で「あだ名が『イーちゃん』になる」という予想もあって笑った。イーちゃん、イイじゃん。余談だが、『クビキリサイクル』はメフィスト賞に投稿された作品で、応募時のタイトルは『並んで歩く』。初投稿ではなく確か10回目くらいだったか、当時大学生だった西尾維新は何度原稿を送っても落とされるため「作家は諦めて就職しようか」と迷い始めていたらしい。デビュー後はヒット街道を突き進んでいるけど、デビューするまでが結構長かったんですよね。メフィスト賞と言えば来年3月に第64回の受賞作『ゴリラ裁判の日』が発売されるそうです。あまり話題にならなくなったけれど、今でも年に1冊か2冊くらいは受賞作を出していて、それなりにヒットしているのもある(NHKでドラマ化された『閻魔堂沙羅の推理奇譚』、映画が公開された『線は、僕を描く』、映画化が決まった『法廷遊戯』など)。私も10代や20代前半の頃はメフィスト賞マニアで受賞作は全部読んでいたし座談会(メフィスト賞は編集者たちが集まって座談会形式で選考を行うのが通例となっており、その様子を雑誌に載せていた)にも欠かさず目を通していたほどだが、30回を超えたあたりで関心が薄れてほとんど読まなくなってしまった。買ったまま積んでる受賞作もいくつかあるし、懐かしくなったこのタイミングに合わせて崩してしまおうかしら。その前にまず『キドナプキディング』に備えて未読の“人類最強”シリーズに手を付けなきゃだけども。

訃報 聖悠紀先生 ご逝去

 『超人ロック』も遂に未完の大作となってしまったか……「『ベルセルク』よりも前に始まった、『ベルセルク』以上に完結のイメージが湧かない作品」ゆえにある意味で当然の帰結なのかもしれない。肉体が衰えるたびに若返り、星々の狭間で遥か悠久の時を生きてきた超能力者(エスパー)「ロック」を巡る壮大極まりない物語。同人から出発して50年以上、いくつもの雑誌を渡り歩いてきた流浪のSF漫画であり、作品そのものがさながら「永遠の旅人」のようであった。絵柄の古さとエピソード数の多さから敬遠している人も多いだろうが、初期の代表作『炎の虎』はKindle Unlimitedで読めるからこの機会にチャレンジしてみては如何だろう。偉そうに書いてみたが、私はこの『炎の虎』しか読んでないから『超人ロック』の内容に関してはほとんど語れません。むしろオススメのエピソードがあったら聞きたいくらいです。

・高葉瑞穂の『悪役転生者の生存戦略』読んだ。

 「また悪役転生ラノベ!?」って言われそうですが、そう、「また」なんです。悪役令嬢モノほどではないが、最近は悪役の男に転生するファンタジーも多くなってきた。副題「ゲームキャラに転生したら死亡フラグ(ヒロイン)に囲まれていました」、元は「小説家になろう」で連載していた作品です。なろうにおいては幼年編の第一部と学園編の第二部に分かれており、両方とも既に完結済。第三部は去年の時点で途中まで書いていたらしいが発表はされていない。本巻は第一部「ギャルゲーの悪役に転生してしまったので、主人公とヒロインの邪魔にならないように生きていこうとしているだけなのに……頼むから構わないでくれ、俺はまだ死にたくないんだ」を書籍化したもので、ゲームの舞台となる学園へ通い出す前に終わる。身も蓋もない書き方をするとはめフラの1巻みたいな構成だ。あとがきによるとこの後も2巻、3巻と続けたいみたいだが、実際に続けられるかどうかは「売り上げ次第」だそうです。

 ギャルゲーとローグライクRPGの要素を組み合わせた『グランドフィナーレの向こう側』――不幸の連鎖によって命を落としてしまった俺は、そのゲームに登場する悪役「オーランド=グリフィア」の幼少期に転生してしまった! 名門貴族の御曹司という恵まれた環境にありながら果てしなく性根の腐ったオーランドは主人公に散々嫌がらせを繰り返し、最終的には断罪される役割となっている。基本的には「悪行の報い」として裁かれるわけだが、特に悪いことをしていなかったとしてもグリフィア家の隠された真実――オーランドは死産となった長子の身代わりに選ばれた身元不明の赤ん坊で、グリフィアの血を引いていない――が暴かれることによって処刑の憂き目に遭う。つまり前世の記憶に基づいて行動を改めたところでもはやどうにもならないという、「詰んだ」状況。頭を抱えるしかなかったが、一応「真実が暴かれる前に国外逃亡して家に頼らず冒険者として独りで生きていく」というか細い生存の道筋は残っていた。処刑されるデッドリミットは最長で18歳、「成人の儀」が執り行われるときまで。何とかそれまでに独力で生活できるようになろうと努める俺だったが、「心を入れ替えたオーランド」に引き寄せられるかの如く次々と死亡フラグ(ヒロイン)たちが集まってくる。しかも気のせいか、彼女たち、何か本編より重たい感じがするのだが……!?

 貴族か王族のフリして数多の令嬢を孕ませた後、正体がバレる前にメイドと逃亡した男の話が銀英伝にあったな……ってふと記憶を喚起された一作です。悪役転生+不本意ハーレム物といった塩梅で、新鮮味はまったくないが370ページという結構なボリュームで「行きつけの店で食べる大盛り定食」並みに安定感のある内容を楽しめる。これこれ、こういうのでいいんだよ、変に奇を衒わなくていいの、と満足しました。先月に『悪徳貴族の生存戦略』というよく似たタイトルの小説を読んでいるせいもあって最初はパスしようかとも思ったのですが、割とダークな雰囲気が漂っているあちらと違ってこちらはほのぼのした雰囲気の中で「改心した悪役をヒロインたちが取り合う」ラブコメ的な読み口となっており、また違った味わいを堪能することができた。

 主人公が転生した『グランドフィナーレの向こう側』に登場するヒロインは5人+シークレットで計6名。1人目は表紙の後ろで「ゴゴゴゴ」な威圧オーラを放つ「フェリシア=リンドヴルム」、オーランドの婚約者である。常におっとりとした微笑みを絶やさない糸目キャラで、本気を出すときに開眼するタイプ。ラブコメ的に言えば「正妻」のポジションであり、現状彼女に逆らえる存在はいない。ゲーム本編ではニコニコしながらオーランドに寄り添っていたが、あくまで家と国のために献身していたのであり、悪事が明らかになって断罪される場面に至ると「一度たりともテメーのことを好きになったことはねぇ! 視界に入るだけで苦痛だったわ!」みたいなセリフを吐き捨てる。なので主人公は「この子、ずっとニコニコしてるけど内心では嫌悪感の嵐なんだろうな」と勘違いし、本気で好意を寄せていることに気づかないというお約束の鈍感ぶりを見せつけます。想いが高まりすぎて一日に何通も手紙を送るもんだから逆に「嫌がらせか!?」と辟易されるわけですが、返事を書いている最中にもう次の手紙が届くの普通に怖いな。裏表紙のハートマークを浮かべながらお手紙カキカキしてるイラストは可愛いけど。2人目は「ケルシー=アトワラス」、グリフィアと同格の貴族である黒髪の令嬢。なろう小説ではよくあるが「黒髪=不吉の象徴」という設定になっており、ゲーム本編では家族以外から冷遇されてきたため心を閉ざし気味だった。しかし主人公に優しくされたことで、人恋しさも相俟ってストーカー令嬢に……他のヒロインに本気の殺意を向けるシーンがあるなど、現状もっとも悲しみの向こうへと辿り着きそうな子。3人目は「マリア=カラドリア」、その気になれば国家を転覆させることさえ可能な大商会トップの孫娘。おほほ笑いを振り撒きながら何でも金で解決しようとする、コテコテのお嬢様キャラなんだけどラブコメだと「絶対負けるヒロイン」って造型なんだよな……主人公がねだれば何でも買ってくれそうだが、そもそも主人公が高位貴族の子息で親にねだれば大抵の物は買ってもらえるから現状だと微妙な立ち位置である。4人目は「アイリーン=ラタトシア」、遠く離れた王国から学園にやってきたお姫様。ゲームだとオーランドとの接点はほとんどないみたい。一応後半に登場するけど、イラストもないくらいなので「2巻での活躍に期待」としか言いようがない。5人目は「リリアナ=フレスヴェルグ」、平民の冒険者ながら没落貴族の末裔でもある。非常に攻撃的な性格のため主人公は苦手意識を抱いており、メインのうち唯一ゲーム上のシナリオを攻略していない。ゆえに彼女のルートでオーランドがどんな運命を辿るのかも知らない(WEB版では作者が裏設定として「リリアナルートにおけるオーランドの末路」を明かしている)。前世でも苦手だったので絶対に近づきたくないと思っているが、ひょんなことから拾い上げて専属側仕えにした平民の子「リリィ」がリリアナと同一人物であることに彼が気づくのはいったいいつになるのであろうか。赤い髪、直情的かつ攻撃的な性格、やたらと叫ぶ、これらの特徴から『無職転生』を読んだことのある人は高確率でエリスを連想するでしょう。さすがにエリスほど凶暴ではありませんが……最後、6人目となるシークレット枠。これに関して主人公は「誰なのか知らない」の一点張りですが、引っ掛けとかでもなければどう考えても「シャーロット=ラーガル」王女だろう。何せ表紙で一番デカく映ってる子だぞ、これでヒロインじゃなかったらビックリ過ぎる。帯の紹介文には「腹黒王女様」とあるが、1巻の時点ではあまり腹黒要素はない(他のヒロインを罵る場面はあるが)ですね。彼女も「2巻での活躍に期待」かしら。

 転生して愛の重いヒロインたちに言い寄られる、「言い寄られている自覚のない鈍感な少年」を主人公にしたラブコメ要素の強いファンタジー。「魔力が強い、剣の才能はあまりない」という設定になっているがバトル要素はほとんどなく、ダンジョン攻略でちょっとずつ強くなっていくようなストーリーが好きな人には向かないが、「うおおおお! 不本意ハーレム最高!」な人にはオススメしておきたい。ある意味でヒロインたちがオーランド以上に悪役化していく(彼のためならたとえ世界を敵に回しても構わない的なアレ)のが本書の魅力の一つだ。「ダンジョン攻略でちょっとずつ強くなっていくようなストーリー」を好む人には次回紹介予定の『災悪のアヴァロン』を先行してオススメしておこう。

 ちなみに。あとがきによると、もし続巻が出る事になったら2巻からは「小説家になろう」へ掲載したのとは「全く違う物語」を展開する予定――要するに全面リライトして「なろうで投稿している『第二部』とは似ても似つかない全く違う話」にするつもりらしいんで、WEB版のファンもアナザーストーリーを楽しむために書籍版を購入して応援してみてはどうだろう。WEB版の第二部は一気に時間が飛んで9歳だったオーランドがいきなり15歳になってるから、書籍版はもうちょっと「15歳になるまでの過程」を丁寧に描きつつ学園編に移行するのかなー、と想像していたりします。なろう小説は基本的に書籍版だけ読んでWEB版まではいちいちチェックしないタイプの私ですが、丸々書き直すのであればWEB版に目を通しちゃってもいいんじゃないか、と主義を枉げて早速第二部読んでみました。いよいよ登場した「ゲームの主人公(超イケメン)」に死亡フラグ(ヒロイン)を押し付けようと画策するオーランド、しかしオーランドにベッタリなヒロインたちは「ゲームの主人公(超イケメン)」にまったく関心を示さず空回りしてしまう……という定番の展開を描きつつ、「死亡フラグ(ヒロイン)から無様に逃げ回るのではなく、勇気を振り絞って死亡フラグ(ヒロイン)に立ち向かい、運命の仕掛ける罠を食い破ろうと足掻く」感じのストーリーになります。もう少し具体的に書くと各ヒロインを「攻略」することによって死亡フラグを不活化させ、無害(あるいは有益)な存在に変える、という前向きな方針で進んでいく。コンセプトそのものは悪くないのだが、正直なところ実際の内容が伴わずグダっちゃってますね……もともとヒロインたちの好感度はMAXに近いので「攻略」もクソもなく盛り上がりに欠ける、にも関わらず強引に盛り上げようとしてかなり無理筋な話となっています。オーランドに夢中な状態を説明するコミカルなシーンとはいえ食堂の利用法がわからず困っているゲームの主人公(超イケメン)に食べ残しのパンを投げつけるなど、ナチュラルにヒロインの魅力を下げるような描写が入っているのもマイナス。確かにこれは全面的に書き直した方がいいだろうな……と納得しました。というわけで書籍版の続きが読みたいのでみなさんも『悪役転生者の生存戦略』を買ってください、お願いします。


2022-12-09.

・最近使ってる漫画アプリ「コミックDAYS」のラインナップのひとつで、来月に1巻発売予定の『断罪六区』。原作が「小林靖子」ということで興味本位に読み始めたが、いきなり「たのしいじごく」をお出しされて笑ってしまった焼津です、こんばんは。

 厳罰化が進んだ末、死刑囚が1万人を突破した未来の日本――もはや建物の一つや二つでは管理し切れないからと、広大な「刑務街」が作られるにまで至っている。事故であれ殺人であれ「自殺に追い込んだ」であれ、何らかの形で人を死に至らしめた者は情状酌量の余地など一切なく問答無用で死刑囚の烙印を押され刑務街の「六区」へ送り込まれる手筈となっていた。街である以上、たとえ死刑囚だろうと人々には生活があり、経済活動も行われている。ただしこの街の通貨は日本円でも米ドルでもなく「時間」、つまり「死刑執行までの猶予期間」を遣り取りしているのだった……という、寿命が通貨になっている映画『TIME/タイム』を彷彿とさせるサスペンスだ。このシステムだとうまく立ち回っていつまで経っても死刑が執行されない奴も出てくるから、被害者遺族などに雇われた殺し屋が六区に入り込んで強制的に死刑を執行する「必殺仕掛人」みたいな「復讐代行業者による仇討ち」的要素もあります。死刑囚たちもむざむざ殺されまいと、マフィアじみた互助会を結成しており……といった具合に「悪徳の都」を成立させるべくいろんなネタがブチ込まれて「靖子にゃん特製の暗黒寄せ鍋」といった趣がある。基本的にストーリーは六区内で進行するが、「笛吹男(パイドパイパー)」と呼ばれる口入屋がヤバい仕事を斡旋するため死刑囚たちを引き連れて塀の向こうに出る六区外エピソードもあり、いくらでも話の広げようがある。なおバトロワの首輪みたいなシステムで囚人たちを管理してるんで、外に出れたからってこれ幸いとばかりに逃亡すればどれだけ猶予期間が残ってようが問答無用で死刑執行、南無三!である。このへんの設定はちょっと『スーサイド・スクワッド』っぽいかな。六区で生まれた子供は外に出ることができない(両親とも死んだ場合のみ役所が養育する)など、闇深案件は底が見えない。既に充分ぢごくの様相を呈しているが、小林靖子原作であることを考慮すればまだまだ入り口に過ぎないかもしれないので震えます。「最近ちょっと心の中に地獄が足りてないんだよな〜」って方にオススメしたい一作だ。

『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』『ブラックアダム』、「ブラック」繋がりのアメコミ原作映画を観てきた焼津です、こんばんは。

 『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』は2018年に公開されたマーベル映画『ブラックパンサー』の続編……なのだが、前作で主役を演じた俳優「チャドウィック・ボーズマン」が病気によって亡くなってしまったため、「前作の主役不在でストーリーが進行する」という異例の内容になっている。チャドウィック・ボーズマンの出番は前作の映像を使った回想シーンのみ。しかしロゴの段階で彼の存在をアピールするなど、追悼作品的な側面を持っています。映画の中でもブラックパンサー(ティ・チャラ)は病没しており、彼の妹であるワカンダの王女「シュリ」が主人公に近いポジションで物語を牽引していく。当初のブロットでは「サノスの指パッチンによって5年もの空白期間を抱え込むハメになったティ・チャラが周囲との温度差などいろいろなことで苦しむ」内容にするはずだったらしい。シリーズの象徴たるブラックパンサーが不在のまま幕が上がるというキツい条件の中で残された人々が足掻き、希望を見出していく様は感動的であるが、やっぱりスクリーン狭しと暴れ回るティ・チャラの姿が見たかったな……という気持ちは拭い去れなかった。出来はいいのに満足できない、複雑な気持ちがモヤモヤと漂う一本でした。

 『ブラックアダム』はドウェイン・ジョンソンが主役を張るDC映画。タイトルにもなっている「ブラックアダム」は本来『シャザム!』の原作に登場する悪役(ヴィラン)なのだが、「ドウェイン・ジョンソンは単独で客を呼べる俳優だから」という理由により『シャザム!』から独立して一本の映画として製作されることになった。古代から甦った超人「テト・アダム」、彼はヒーローなのか、それともヴィランなのか……ってな具合にどちらともハッキリしないままストーリーが進行していく。そういう趣旨の映画だから仕方ないと言えば仕方ないが、前半は軸が定まらず観客側もどういう態度で臨めばよいのか困惑してしまいます。プロローグからして「古代国家『カーンダック』の王『アクトン』は『サバックの王冠』を手に入れるため『エタニウム』の採掘を奴隷たちに強要し……」と固有名詞を並べ立ててくるので「あっ、これ尺キツキツでゆとりのない映画なんやな」と察してしまう。ニコリともしないドウェイン・ジョンソンが少年やその母親と交流する展開も『ターミネーター2』ほど丁寧ではないのでイマイチ乗り切れない。途中からJSA(ジャスティス・ソサエティ・オブ・アメリカ)というヒーローチームが登場してアダムと対立するのもなんだか唐突で、どっちを応援すればいいのかわからなくなる人も出てくるでしょう。「どうせ共通の敵が現れて『対立はやめて手を組もう』とか言うんだろうな」と冷めた視線を送ってしまう人も少なくないはず。お金払っていなかったら席を立っていたかもしれないぐらい前半は盛り上がらないのだが、後半で一気に挽回して面白くなります。そのため「終わり良ければすべて良し」で傑作だったように感じてしまうものの、「千鳥足でフラフラ歩いていた奴が急にシャッキリして直線ダッシュをかます」ような構成だから冷静に眺めるとかなり不格好な映画だ。「マーベル映画に比べてDC映画は垢抜けない」と言われる所以が随所に詰め込まれている。しかし、JSAの「ドクター・フェイト」がメチャクチャ格好イイのでそのへんの問題も軒並み帳消しになっちゃうんだよな。「イケオジ」という概念を煮出して調理したようなヒーローで、キンキラキンのフルフェイス・ヘルメットの輝きも相俟って観ているだけでテンションが上がる。あのヘルメット、目のところに穴が空いてないから「バケツを被ったように真っ暗だった」とピアース・ブロスナンがコメントしており愉快です。2016年版の『スーサイド・スクワッド』同様「言うほど兇悪じゃない」「アンチヒーロー映画のふりをした普通のヒーロー映画になってる」という難点があり「悪のカリスマ降臨」みたいなノリを期待するとガッカリだが、ドウェイン・ジョンソンのムキムキぶりとドクター・フェイトの痺れるカッコ良さでゴリ押ししてくれた結果それなりの満足感が残る不思議な一本。

「即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。」TVアニメ化(コミックナタリー)

 主人公が敵を即死させるせいで延々と出オチが続くあのラノベ版『ワンパンマン』と呼ぶべき異世界ファンタジーがアニメ化とな。個人的には好きだけど万人ウケしない内容だし、原作もそろそろ完結が近いので映像化は望み薄だと思ってました。修学旅行のバスが丸ごと異世界に召喚されてしまう、いわゆる「クラス転移モノ」に当たるストーリー。とにかく人が死にまくる。人命とか尊厳がケツ拭く紙より軽くて薄い。異世界召喚のお約束としてチート能力者もわんさか出てきますが、主人公「高遠夜霧」の「対象を即死させる力」が強すぎてみんな瞬殺されてしまう。夜霧くんの力は生命体どころか無生物、果ては現象そのものまで殺してしまえるので対抗手段がありません。「最強」ではあるんだけど手加減できず、「話して分かり合う」展開になかなか持っていけないのがネックである。

 原作者の「藤孝剛志」は出版されている作品数こそ多いものの長く続いてるシリーズは少ないというかハッキリ言って即死チートのみだ。『姉ちゃんは中二病』が好きだっただけに続き出ないのは残念。ちなみに『姉ちゃんは中二病』、藤孝剛志の書籍デビュー作であると同時に即死チートのヒロイン「壇ノ浦知千佳」の姉「壇ノ浦千春」が登場する(ただし脇役なので出番は少ない)関連作でもあるので、興味がある方は併せて読んでみてください。関連作ではないが『二の打ち要らずの神滅聖女』もシンプルなTUEEE系で結構続きを楽しみにしていたけど2年待っても3巻が出る気配ないしコミカライズも打ち切りエンドなので諦めました。

水月〜すいげつ〜 Grand Package 公式ページ公開!

 先月のニュースだけど今頃になって知ったので。Grand Packageなどと大袈裟な商品名だけど要するに解像度を上げて音声を追加してUIやシステム面を刷新しただけ、リメイクというより復刻版に近いです。大元のオリジナルはボイスレスだが、CSに移植する際フルボイス化しており、その音声データを流用するのかな……と思ったがキャストを見るに別バージョン、どうも2008年に発売されたDVDPG版がベースっぽい。画面に関してはCGをトリミングしただけの貧乏ビスタだが、一応「全体表示」を選べば上下を切っていないオリジナルのCGも見れるみたい。気になっていたけど一度もやったことないor久々に再プレーしたい、って人向けかしら。ライターのトノイケダイスケが帰還して新規シナリオ追加とかだったら慌てふためくところだけど、残念ながらそんな奇跡は起きていません。というかF&Cが形だけとはいえまだ生きていたことにビックリだ。

 『水月』は『遠野物語』をモチーフにしたペダンティックな伝奇ADVで、パッケージにはヒロインの後ろ姿が描かれていて顔が見えない――という異色の売り方をしたエロゲーだ。異色すぎて発売から3ヶ月後と経たずワゴン行きになったが、ネットの感想で「メイドの雪さんが可愛い」と話題になり人気急上昇、見事ワゴンからの脱出を果たした。今だと「メイドの雪さん」で『君は冥土様。』を連想する人も多いだろうが、2000年代当時の琴乃宮雪人気は凄まじく、フィギュアがいくつも造られたものでした。原画の「☆画野朗」とライターの「トノイケダイスケ」コンビで『Aria』という新作をF&Cから出す話もありましたが、結局実現せず終い。数年後に☆画野朗もトノイケも関わらない『水月 弐』がリリースされたものの、タイトルだけでストーリーや設定上の繋がりはありませんでした。F&Cがまだ元気だったら今頃『水月 玖』か『水月 拾』の制作発表でもしていたのかな……。

・北川ニキタの『ダンジョンに潜むヤンデレな彼女に俺は何度も殺される1』読んだ。

 読む気をなくすタイトルで最初はスルーするつもりだったが、イラストが好みだったのと「ダンジョンを舞台にした死に戻りモノ」が嫌いじゃなかったことから「せめて試し読みだけでも」と冒頭をチェック。なんというか非常に淡泊な文章で小説というよりゲーム攻略記を読んでる気分になってくるが、真面目に「死んで覚える」をやってる主人公に好感が湧いてきて素直に「続きが読みたい」と思ってしまった。試し読みの範囲ではヒロインが出てこない(100ページくらい経ってやっと1人目が出てくる)という大胆な構成もなろう小説にしては珍しくて興味を惹かれたというのもある。

 生まれつき銀髪だったせいで「忌まわしい」と村中から差別されて育った青年「キスカ」。彼に唯一優しくしてくれた幼馴染みの少女「ナミア」は「こんな村から出て一緒に暮らそう」と駆け落ちを提案してくる。誘いに乗って村から逃げ出すつもりのキスカだったが、運悪く決行の夜に村長のドラ息子がナミア宅へ押しかけ、駆け落ち計画が発覚。ナミアの婚約者でもあったドラ息子は激昂し、取り巻きとともにキスカを袋叩きにした後でナミアを殺害する。その罪を着せられたキスカは村にあるダンジョンの奥深くへと人間を飛ばす一方通行の転移陣に放り込まれる。事実上の処刑であった。冒険者でも何でもないキスカはすぐに魔物によって殺される……はずだったが、何者かが「セーブ&リセット」という特殊なスキルを与えたことで死に戻りができるようになり……。

 ただの村人だった主人公が何百回も死んではやり直し、死んではやり直し……の繰り返しでダンジョンからの脱出を目指す異世界ファンタジーです。終始一貫淡々とした筆致で文章が紡がれており「作中の世界にドップリ浸れる」とかそういった読み応えは全然ないのですが、「定型から外れる」ことで好き放題やってるのが楽しく一気に読み切ってしまった。端的に書くと「変な話」です、これ。タイトルではわかりやすく「ヤンデレ」と表現してるけど、まだヒロインの正体がハッキリしない現時点ではあまり適切なカテゴライズとは言えない。なのでヤンデレ好きの人が読むと「想像していたのと違う」ってガッカリするのを通り越して困惑するかもしれません。プロローグ時点で死亡しているナミアを除けば、本書に登場するヒロインは3名。異世界からの転生者である「ツバキ・アゲハ」、とある理由でダンジョンから出られなくなっている真祖の吸血鬼「ユーディト」、そしてネタバレになるから解説できない「????」、彼女たちはそれぞれ少なくとも1回以上主人公を手に掛けているのでタイトルの「何度も殺される」は間違いじゃないんですが、主人公の死因は「魔物に襲われて」や「トラップに引っ掛かって」というのが圧倒的に多いからちょっとズレた印象を与える題名になっています。ヒロインたちに殺された回数が二桁レベルであるのに対し、魔物やトラップは三桁レベル。タイトルから「扱いをちょっと間違えただけですぐヘラって殺しにくるヒロインのご機嫌をうまく取ってダンジョンから生還する!」みたいなコメディっぽいイメージを感じたとしたらそれは誤りです。

 じゃあどんな話なのか、ネタバレせずに説明するのは難しいので若干バラしながら書くとします。主人公が死に戻りするためのスキル「セーブ&リセット」は本来ツバキ・アゲハが所有しているスキルで、ワケ有ってダンジョンの奥に封印されている彼女が自身の封印を解いてもらうため譲渡したのである。つまり真の持ち主がアゲハであるため、「死に戻りしている主人公しか知り得ないはずの情報」が何らかの形でアゲハに筒抜けとなっている可能性がある。ゆえにアゲハ関連で選択をミスったからリセットしてセーブポイントからやり直し……みたいな行動を取ろうとしても、ただ時間が巻き戻るだけで「選択をミスった」という事実そのものは消えず、肝心なところを「なかったこと」にすることができない。通常の死に戻りモノで想定されるような攻略チャートがいきなり崩壊してしまうのです。じゃあ考え方を変えてこうすればいいんじゃないか、と別のルートを経由して攻略に勤しもうとしてもリセットしたはずの「過去の選択」が石の下からミミズの如く這い上がってきて行く道を阻む。「死に戻りモノなのにいくつかリセットできない要素がある」というシビアさがダンジョン攻略をより一層困難なものにしているわけだ。

 ストーリーそのものはシンプルで、特段複雑な箇所はない。にも関わらず変な組み立て方をしているせいで「どうしてこうなるんだ?」と混乱させられる。一個一個のパーツは平凡なのに、とにかくバランスが奇天烈なんですよね、この小説。「1」とナンバリングしてるくらいだからよほど売上が悪くないかぎり2巻も出るでしょう。恐らく1巻全体はチュートリアルに過ぎず、2巻からがようやくシリーズの本番ってふうになる……はず。果たしてこの奇天烈なバランスを取り続けることができるのだろうか。


2022-12-02.

「戯画」ブランド 開発・販売終了のお知らせ

 遂に戯画の歴史に幕が下りるか……最後に買ったのは『BALDR BRINGER』で、ここ5年はろくにチェックもしていなかったからぶっちゃけショックみたいなものはあまり感じません。終了予定日は来年3月末。1993年の『V.G.〜ヴァリアブル・ジオ〜』がブランドデビュー作だから、ちょうど30年の節目にジ・エンドとなります。戯画を代表するシリーズと言えばやはり“BALDR(バルド)”シリーズ、1999年の『BALDRHEAD〜武装金融外伝〜』から2017年の『BALDR BRINGER』まで18年、バルブリのアペンドディスクとかも含めるともう1年延びて19年――赤ん坊がエロゲーをプレーできる歳になるほどの年月をかけて展開したメカアクション・エロゲーだ。シリーズといってもストーリーや設定の繋がりはあったりなかったり、「すべてをプレーしないと全体像が掴めない長大なサーガ」ではなく「SFっぽい世界観でプレーヤー自身が人型ロボットを操縦して敵と戦う」要素さえあればバルドだと言い切れる感じでした。なので新規が途中から入りやすいって利点がありましたね。サイバーパンク風のテイストでシリーズのイメージを刷新した4作目『BALDR FORCE』から一気に知名度が上がり、2部構成で販売された大作『BALDR SKY』はその年のナンバーワンソフトに推す人も多かったくらいである。ただ、バルスカをピークに評価も注目度もどんどん下がっていって、シリーズ最終作『BALDR BRINGER』はあまり話題にならなかったように記憶しています。

 他にも丸戸史明がメインシナリオに携わった『ショコラ』『パルフェ』『この青空に約束を―』などがヒットを飛ばしました。「こんにゃく」こと『この青空に約束を―』はTVアニメ化したほどです。アニメの出来に関しては「丸戸脚本じゃない」時点でお察しいただきたい。作品としての反響がもっとも大きかったのは『パルフェ』だけど、こちらは映像化していません。え? 実写ドラマ版があっただろ、目を背けるな! って? あんなん直視できるファンの方が稀有でしょう。名作と呼ばれるソフトをいくつかリリースした一方で「期待して買ったのにガッカリ」と嘆かれる作品が多いのも戯画の特徴であり、エロゲマニア間では「見え見えの巨大な地雷」という意味で「戯画マイン」なる用語が定着していた時期もあった。ここ10年くらいは“キス”シリーズというイチャラブゲーをメインに活動していたらしいが、一本も買ってないので語れることはない。開発のみならず販売も停止するということなので、DL派の方は今のうちに気になるソフトを購入しておいた方が宜しいでしょう。V.G.、バルド、丸戸作品などと比べるとややマイナー気味であるが異世界召喚ファンタジーの『DUEL SAVIOR』も結構好きでした。ござる口調で緑髪のニンジャガールという、一見ネタキャラのように映るヒロイン「カエデ」が可愛かったな……割と背が高いあたりも好き。シナリオは確か愕然とするようなオチ(ギャグ的な意味で)だった気がするけどもうだいぶ記憶も朧げになってきている。戯画を偲んで久々に起動するかな……。

 あと、戯画と言えばPB(パートナーブランド)制度も有名ですね。同人ソフトを出していたサークルが商業デビューする際に様々な援助を行う見返りとして売上から報酬を貰う仕組みで、「上納金」と揶揄されることもあったけど資金も伝手もノウハウもない小規模集団がいろんなハードルを乗り越えられるとあって利用する会社は少なくなかった。一番有名なPBは「八月」こと「オーガスト」、あとは「みなとそふと」とか「ASa Project」とか「まどそふと」とか、もうなくなったけど「feng」とか。汎用のゲームエンジンを提供しているのでコンフィグを開いたときに「あっ、このブランド戯画のPBか」とわかることもありました。終了するのはあくまで「戯画」ブランドであってPB制度そのものは残るっぽい? ある程度軌道に乗るとPBから抜けるところもあるので現在はどうなってるのかよくわからんのだよな。軌道に乗る以前に一作こっきりで消えたりデビュー作を出す前に空中分解するところもあった。minoriがサルベージした『ANGEL TYPE』も元々は戯画のPBが出す予定だったんだっけ。

・田中一行の『ジャンケットバンク(1〜9)』読んだ。

 ギャンブル漫画。「秘密裡に賭場を開帳している銀行で行員たちが担当のギャンブラーを使ってポケモンバトルみたいなことをする話」です。物凄く乱暴に言ってしまえば「暴の要素を抑え目にした『嘘喰い』」って感じ。単行本が出た頃から気になっていたもののいまいち食指が伸びず様子見していました。期間限定で2巻まで無料で読めるキャンペーンやってたから「タダなら読んでみるか」と軽い気持ちで着手したところ、思った以上に好みな味付けの作品だったので続きを即買いしてしまった次第。出版社の撒いた餌にあっさり釣られる男、それが焼津だ。

 タイトルになっている「ジャンケット」という言葉は語源的には「ピクニック」とか「宴会」などを意味するが、カジノに雇われて太客を世話する業者を指すスラングでもある。ジャンケットは気前良く金を落とすVIPを連れてくる見返りとしてカジノから報酬を貰い、また送迎や宿泊先の手配を済ませたり急場の資金を融通したりしてVIPの方からも報酬を貰う、不動産業界で言うところの「両手仲介」みたいな真似をしているわけだ。マカオやラスベガスではこのジャンケット行為で食っている連中が相当な数存在するという話を随分前に聞いた。コロナ禍で大打撃を受けたらしいから今はどうなってるのか知らないですけど。タイトルの『ジャンケットバンク』は「太客の小間使いをする銀行」という意味であり、当然そんな銀行は違法の極みである。単に賭博罪を犯しているだけではなく、時として死人が出るような危険すぎるギャンブルも取り仕切ってますからね……命と大金を賭けて戦うギャンブラーたちを仮面舞踏会みたいな恰好して食事とともに観戦する下劣悪趣味な金持ちども――というデスゲーム物で腐るほど見てきた光景をお出しされてついつい笑ってしまった。

 経常利益日本第3位の市銀「カラス銀行」の中央支店に勤める24歳の銀行員「御手洗暉(ミタライ・アキラ)」は日々変わり映えのしない業務に退屈していた。どんな大金を扱おうが所詮は他人の金、自分と関係のない数字をいじくり回す行為は賽の河原における石積みにも似て充実感など欠片も抱けなかった。そんなある日、彼は「特四」と呼ばれる謎の部署に配属されることになる。銀行の地下、違法に運営されているカジノでギャンブラーたちの高額勝負を取り仕切る「審査役」。期待の新人として送り込まれた御手洗はそこで「真経津晨(マフツ・シン)」と名乗る男に出会う。底の見えない真経津に魅了された御手洗は彼の担当になりたいと願い、「真面目な銀行員」として歩むはずだった人生のレールから外れてゆく……。

 『嘘喰い』における斑目貘と梶隆臣の組み合わせを彷彿とさせる御手洗&真経津だが、御手洗の真の望みは「破竹の快進撃を続ける真経津を間近で見守る」ことではなく「彼が決定的な敗北を迎えた瞬間にどんな顔を見せるのか知りたい」ということ、つまり「底の見えない男の底が晒されたときに見えるモノ」に深い深い興味を抱いているのだ。ソレを目撃するためなら己の安泰な人生さえもベットしてしまう。ある意味で破滅型のプラトニックBLを描いている作品です。帝愛と賭郎を足して割ってドブを混ぜたような「カラス銀行」のろくでもなさも読み所の一つ。苛烈な競争社会を戯画化した組織とはいえ、平然と人を殺傷する連中が闊歩してるのはブラック企業という域を通り越してるんよ。


2022-11-22.

冲方丁「ばいばい、アース」アニメ化、WOWOWなど3社共同のアニメ企画第1弾(コミックナタリー)

 アニメ化の妄想を幾度となく重ねたせいもあって最初このニュースを見たときは目の錯覚を疑ってしまったが、なんと現実のようである。というわけで冲方丁の第2作であり、「あまりにも売れなかったせいで角川から干された」という噂すら囁かれた曰く付きの大作SF『ばいばい、アース』が発売から20年以上も経ってアニメ化されます。やっと動く飢餓同盟(タルトタタン)が観れるんだな……まだ20代前半だった頃のうぶちんが気合入れまくって書いた初期作だけに、「 <剣の国(シュベルトラント)> こそは、 <剣(シュベルト)> と <花(シュベルテル)> の咲きみだれる国(シュベルトストライヒ)――」「剣楽とは、剣士たちがその剣撃(シュベルトストライヒ)をもって世界に己の存在を問い、世界を穿孔する行為(デュルヒ・ブレッヒェン)をいう。自分がそこに存在する証しを立てることで、世界はその存在の影に穿たれる。それこそ真に花が咲くということ(デュルヒ・ブレッヒェン)であり、それがこの国の神を第一に楽しませるのだ」などといった調子でお世辞にも読みやすい小説とは言えないが、一つの「世界」を造り込もうとする熱意が滾っていて他では味わえない魅力を宿している。私は図書館で借りて読んだけど、一回挫折して数年後の再チャレンジでようやく全編を読み切ったものでした。文庫版の発売が絶望視されるほどの売上だったらしいが、うぶちん自体の評価が高まったおかげで無事文庫化され、「これでいつでも読み返せる!」と私も嬉々として購入したものです。文庫化(あれ)からもう15年か……気が遠くなるな。

 分類としては「ファンタジーに近いSF」です。「ユリ科の大剣」を担いだ少女が活躍するストーリーはアニメ向きかもしれないが、とにかく設定が込み入っているので「ちゃんと映像化できるのだろうか?」と不安になってしまう。一応コミカライズ版も出ているが、全4巻という微妙なボリュームで終わってるんですよね。コミックスには原作者書き下ろしの短編小説が付いているということで少し気になっていたものの、「そのうち短編集が出るかもしれないから」とスルーしていました。最終巻にも書き下ろし短編が付いてくるらしいし、今からでも読むべきか。うーん、でもやっぱりアニメに合わせて短編集や新装版が出る可能性もあるしな……円盤特典も今から警戒しておかないと。

 「今回のプロジェクトでは(中略)日本および世界中で楽しめるTVアニメシリーズの企画開発・製作を共同で展開」と記事に書いてあるので劇場版とかOVAではなくTVアニメとして作られるみたいです。WOWOWが参加してるからWOWOWで放送&WOWOWオンデマンドで配信かな? 尺に関してはどうなるんだろう。いろいろカットすれば1クールに押し込めないこともないけど、密度の高い作品なので普通にやったら2クールあってもキツい。ビジュアルも文庫イラスト準拠なのか漫画版準拠なのかそれともオリジナルなのか。気になる。意表を衝いて原点に立ち戻り天野喜孝絵準拠のキャラデザで来たらインパクトは絶大だ。個人的に剣盗人のアドニスが好きなので彼に関してはメチャクチャ格好良く描いてほしいですね。

値上がり続く文庫本 平均価格800円超 20年で25%値上がり 千円台も続々 ハードカバーより高価買い取りのケースも(まいどなニュース)

 昔は本体価格が500円台だった文庫ライトノベルも今や600円超えるのが普通、物によってはさほどの厚さでもないのに700円ぐらいしますからね。昔は700円超えて厚みが普通のライトノベルは打ち切りライン到達って印象でしたが、今はそのまま続くパターンもあるので打ち切りのラインも読みづらくなってきた。また、一般文芸の方でも警察小説や時代小説を中心に「文庫書き下ろし」を売りにしている作品が増え、原稿料が生じないせいか価格設定もやや高めになっている。文庫落ち作品も、西尾維新の『悲鳴伝』『悲痛伝』が新書版とまったく同じ金額になるという現象が生じています。海外の翻訳文庫に至っては、1000円を超えるどころか1500円超えも珍しくなくなってきました。じわじわと値上がりしている実感があり、筋金入りの積読家たる私の積読量も徐々に減ってきている。随分前に買ったまま埋もれていたKindle端末の埃を払い、セールのときに購入した電子書籍やアンリミ対象作品を読む機会も増えた。「紙の本が一番好き」ってことに変わりはないけど、背に腹は代えられぬ。

 文庫ではないが漫画の単行本もどんどん値上げが進んでおり、私が子供だった頃は400円を切っていた本体価格が500円前後にまで高騰している。子供のお小遣い的には大ピンチだろう。本の価格が上がっているのは「紙の価格自体が高騰し、原材料費を抑えられない→値段が上がったせいで販売部数が減る→利益を確保するために一部あたりの価格を上げるしかない→値段が上がったせいで……以下略」という負のスパイラルに突入しているからであり、出口の見えないジリ貧状態に陥っている。しかし文庫や単行本の市場はまだマシな方で、もっと悲惨なのが紙媒体の雑誌だ。全体の売上が低迷し、紙の雑誌で連載していた漫画がWebマガジンに移籍する、いわゆる「Web送り」という現象が多発・常態化しています。一時は「ネットvs紙の本」みたいな図式で語られることも珍しくなかった業界であるが、もはやネットなくして紙書籍市場は維持できないところまで来つつある。文芸の新刊情報を覗くと大半はなろうやカクヨム等投稿サイト連載の書籍化で、投稿サイト関連を除外すると半減……いや半減で済むか? ってくらい一般文芸の四六判市場が弱っています。総数の減少もさることながら、書店への配本も恐ろしく減っており「欲しかった新刊が店頭に置いてないので家に帰ってネット書店で注文する」ことなど日常茶飯事だ。入荷していても1、2冊程度なのでタイミングによっては買い逃すんですよね。ベストセラーというほどでもない「並程度の新刊」が地方の書店で平然と10冊くらい積まれていた時代もあったなど、今の世代には信じられないだろう。昔は今より配送に時間が掛かって「新刊1週間遅れ」なんてこともあったから、何もかも「昔は良かった」的な懐古で済ませられないところもありますが……。

 話がだいぶ逸れてしまった。「20年で25%値上がり」とあるので20年前のデータを引っ張り出して比較したいところだが、そのへんの私的な記録はPCのデータクラッシュで消えちゃったからギリギリ記録が残っている2004年のデータを持ち出そう。消費税が5%だった頃で、少年ジャンプの単行本は本体価格が390円でした。『GUNSLINGER GIRL』や『KiNG of BANDIT JiNG』など、今新刊で発売されたら税込700円は超えるであろう品が600円もしないで買えた。コバルト文庫のマリみて新刊は500円でお釣りが出るレベル、500ページ近くある終わクロの新刊も800円弱で購入可能。海外文庫は本体価格が800〜900円で、厚めじゃなければ1000円はなかなか超えなかったですね。この調子で進んでいったらいずれ電子書籍の方が主流になり、どうしても紙の本が欲しい人はオンデマンド印刷で……ってふうになっていくのかなぁ。

・福郎の『無能の中の無能王子』読んだ。

 副題は「スキル【無能】を授かりましたが、周りの女性は【傾国】【傾城】【奸婦】【毒婦】【悪婦】【妖婦】とかです」。なろうとカクヨムの両方で連載しているネット小説を書籍化したものであり、一定年齢に達したとき発現する「スキル」が重要視されているタイプの異世界ファンタジーです。転生要素はありません。イラストを手掛けているのは「菊池政治」、店頭で表紙を見かけて「なるほど、エッチそうな本じゃん」と衝動買いした一冊です。残念ながらエッチなシーンはなかったが、表紙通りのハーレム物に仕上がっている。「なろうだし、『無能』と言いつつなんだかんだで主人公が大活躍するんでしょ?」と疑いの眼差しを向ける方もおられるでしょうけど、少なくともこの巻において主人公は活躍らしい活躍を見せない。それでも物語として成立しているのだから個人的に興味深く読めた。

 神々がいた時代も遠のき、人が人を統治するようになった時代――舞台は「サンストーン王国」。好色な王が使用人に手を付けたことで生まれてきた第三王子「ジェイク」は神から授かった(とこの世界では解釈されている)スキルがよりによって【無能】だったことから父にも兄たちにも疎まれ侮られ、冷遇の極みにあった。目障りだからと王宮から追い出された彼は無能ゆえの根拠なき楽観によって絶望せず、割と前向きに生きていく。そんな彼のもとに、使い方次第では容易に国々を滅ぼす厄災級のチートスキルを持った女たちが何かに導かれたかの如く次々と押し寄せてくる。動乱の幕開けを前にして、彼と彼女たちが望むのはありふれた平穏と幸福だったが、時代がそれを許す気配はなかった……。

 「無能」とバカにされて追放された主人公がトンデモポテンシャルを秘めたヒロインたちに囲まれてモテモテ最強モードに突入していく、シチュエーション自体は結構よくあるチーレム(チート+ハーレム)系ファンタジーだ。1巻の前半だけで6人ものヒロインが集まって早速ハーレムが形成されるわけだが、「平均して20ページにひとり」のペースでハーレム要員が増えていくから良く言えばサクサク、悪く言えばダイジェストじみた強引な展開である。普通、こういうハーレム系のストーリーは「ハーレムを構築するまでの過程が一番盛り上がる」はずなんだが、本書に限って言えば足早すぎる高速建造で忙しない印象を与え、なんというか「あらすじだけ読まされている気分」に陥ります。ハーレムが出来上がるまでの過程がこんなに面白くない作品ってのも珍しいな……と少し感心してしまった。本書は「ハーレムが出来上がってからが本番」という構成になっているため、読み所が後半に集中していて前半は「単なる手続き」みたいな塩梅となっており、「試し読みの範囲では魅力が伝わりにくい」ややもったいない仕様と化しています。文章も前半はぎこちない部分や飛ばし気味な箇所が目立つ。ヒロインがいきなり6人も出てくるせいで個々の掘り下げが浅くなっているのも女の子目当てで読み出した人にとってはマイナス評価だろう。6人中1人だけビジュアルのないヒロインがいる(何かのミスなのか、本来ならイザベラが描かれるべき場面でなぜかエヴリンが描かれており、結果としてイザベラのイラストが一枚もない状態になっている)し。

 と、難点をあらかじめ並べ立てたうえで本書の魅力についてお伝えしていきたい。まず物語の核となる主人公の【無能】スキルですが、こいつスキルのくせして自我があり喋ることもできます。ガイドとかナビが付いてくる異世界ファンタジーはよくあるが、「スキルそのものに意志がある」のは類例が絶無ではないにせよちょっと珍しいかな。主人公以外には知覚することができないので、感覚的には「容姿を持たないイマジナリフレンド」とか「脳内にインプラントされたAIデバイス」みたいなノリです。で、この【無能】スキルが一見役立たずのゴミスキルのようでいて実はとんでもないチートスキルって判明するお約束の展開が待ち受けている。ほんの十数ページくらいのところで。ハーレムの構築もちょっぱやだがネタばらしも早い。ラノベに限らず漫画や映画などで、「有能」とか「賢い」って設定されているはずの敵が主人公の前に出てきた途端マヌケな失策をかます展開ってよくあるじゃないですか。わかりやすく書けば【無能】はそれをスキル化したもの、つまり「相手を無能にする」スキルなんです。しかも「相対した敵」なんて生ぬるい範囲じゃなく、恐らく全世界規模で検閲網を張り巡らせており主人公に対して害意を抱く者の判断を悉く誤らせる。端的に申せば「極大範囲知性デバフ」なのだ。主人公だけ弾が当たらない、いつもギリギリのタイミングで窮地を脱する、極めて危険な作戦が奇跡的に成功する、などといったいわゆる「主人公補正」と呼ばれるフィクションに付きものな現象を説明しようとする試みは遡れば「異能生存体」などがあり、ライトノベルでもマイナー作品ながら『シー・マスト・ダイ』が「特殊能力の一つ」として話に組み込んでいました。「幸運値」として処理する例もあるが、話が逸れるから切り上げるとしましょう。とにかく主人公の与り知らぬところで生じた破滅フラグを事前に消し去ってくれるのが【無能】スキルであり、この恐ろしい正体に気づいてしまった者もスキル効果でアホにされ「いや、そんなことある筈がない」と己の閃きを笑い飛ばして瞬時に忘れ去る。【無能】スキルがある限り、主人公の敵対者は必ず愚かになることが確定しているのだ。

 しかし、先述した通り【無能】には自我があるのでひたすら機械的に主人公への脅威を取り払うわけではなく、自己の判断で「躓きの石となりかねないもの」をあえて残す場合もあります。それがヒロインたち【傾国】【傾城】【奸婦】【毒婦】【悪婦】【妖婦】だ。ただ存在するだけで周囲を狂わせるファム・ファタール、主人公の生存を第一に考えるなら超級の厄介者である彼女たちにわざわざ接触させようとはしないだろうが、【無能】スキルが防ぐのはあくまで「主人公の与り知らぬところで生じた破滅フラグ」であり、「主人公の行動によって生じた結果」には干渉せずお手並み拝見とばかりに座視を決め込む。たとえばもし彼が魔性の女性と出逢い色香に狂って破滅への道を辿ったとしても「それは自業自得だから」と何もしない。ゆえに本書であっという間にハーレムが形成されるのも【無能】が何かしたからではなくただ主人公が行動し、いくつかの偶然が重なり合った結果に過ぎないのだ。その気になれば国を傾けるどころか世界滅亡すら引き起こしかねない「ヒトの形をした災禍たち」とどう向き合っていくか。無能王子と蔑まれた彼の器量が試される。ヒロインたちのスキルは強力だけど、過剰すぎて使いどころが難しかったりするんですよね。下手に動けば牛刀で鶏を裂く感じになってしまいかねない。そうとも知らず、主人公は綱渡りの日々を送っていくことに。【無能】は加護と同時に試練を与える存在でもあるわけで、つまりそれって……。

 本書の主人公はそこそこ努力家なのですが、無能ゆえ努力は基本的に実らない。「剣の稽古をしている」という設定を忘れそうになるほど、武力面で強くなる兆しもない。一応王子らしい振る舞いをする場面もあるので「完全無欠にして冠絶無窮の無能王子」とまでは行かないが、何のプランもない単なる思いつきで生計を立てようと真面目に考えているシーンもあり、ラノベでありがちな無能を装っているだけの「なんちゃって無能」ではなく割とちょくちょく深刻な無能ぶりを晒す。王のUTSUWAはあるんだけどUTSUWAのみで中身が伴ってないというか。徳だけでゴリ押ししてるようなもんなので、作者もあとがきで「一人では何もできません」と明言しています。破れ鍋たる彼を助ける綴じ蓋こそが6人の妻(予定)たち。「王位継承者候補である兄たちがまだ結婚していない状況で廃嫡寸前の自分が結婚するわけにはいかないから」という理由で籍はまだ入れていないしヤることもヤってないが、既に全員と相思相愛の関係にあり18禁ゲームで言うと「ここからエロシーンのラッシュだな」って状態まで来ています。惚れた弱みで尽くしてくれる恋女房たちが切り拓く新時代、神輿として担がれるジェイクは果たして後世どのように語られる存在となっていくのか。「動乱の時代が、遂に始まる――!」というところで1巻が終わってるからASAP(なるはや)で2巻を出してほしいものです。


2022-11-16.

・艦これの新アニメ『「艦これ」いつかあの海で』の放送が始まったので視聴したけど思った以上に暗い雰囲気でビックリした焼津です、こんばんは。

 艦これはDMMのブラウザゲームが原作で、アニメ化されるのはこれで3度目。2015年にTVシリーズ『艦隊これくしょん -艦これ-』が1クール放送され、翌年その続編として映画『劇場版 艦これ』が公開された。『いつかあの海で』は更にその続き……と言えなくもないが、制作会社も監督も異なるし互いにパラレルな位置付けにあると受け取った方がいい。そもそも艦これ原作にはシナリオが付いておらず、明確なストーリーも存在しないし世界観や時代設定に関しても相当ボカされている(我々にとって過去なのか、現在なのか、未来なのかすら不明である)ためメディアミックス作品間に繋がりがあるかどうかはかなり曖昧になっている。ただ、二次創作を含め艦これの派生作品にはいくつかのタイプがあり、「深海棲艦」と呼ばれる敵との戦いをほとんどオミットして艦娘たちの賑やかな日々をほんわかと、時にギャグも交えて描く「日常系」、太平洋戦争時の艦船がモデルとなっている艦娘たちを実際の戦史に沿って描く「史実系」、史実を棚上げして深海棲艦たちとの激闘を独自解釈で描く「バトル系」、由来となっている史実を解説したり史実と食い違ってる箇所にツッコミを入れたりする「メタ系」、「実際の戦史ではありえなかった組み合わせ」「あったかもしれないif」等を積極的に取り入れて描く「オリジナル系」などがあります。なお名称は私が今テキトーに付けたものなので一般的な分類とかではないです。

 2015年のアニメ1期がどちらかと言えば「日常系」寄りである(但しバトルもある)のに対し、『いつかあの海で』は「史実系」に寄った内容。タイトルロゴに「1944」という年号も入っており、いわゆる「レイテ沖海戦」をモチーフにしていることが窺える。武蔵を始めとして多数の艦船が沈んだ戦いであり、暗くなるのも当然と言えば当然なんですが……史実準拠のため、ストーリー開始時点で艦娘の幾人かが帰らぬ船となっており、アニメ1期に登場していた元気いっぱいなあの子や笑顔の似合うあの子が『いつかあの海で』ではまったく姿を見せないのが地味にキツい。1期目の主人公だった吹雪もこの頃にはもう……1話丸々使ってカレーを作っていた第六駆逐隊も、響以外は全滅したせいで既に解隊となっています。響は史実でレイテ沖海戦に参加していないため本編の出番は今のところありませんが、EDですやすやと眠るカットが挟まれている。この響を指して「ぼっち・ざ・六駆」呼ばわりする声があるの、残酷すぎでは? それはそれとして『ぼっち・ざ・ろっく!』のアニメは期待以上の仕上がりで満足しています。閑話休題、史実寄りとはいえ史実通りの展開になるとはまだ決まっていませんし、ここから架空戦記的な大逆転に転じる可能性もゼロじゃない。ハラハラしながら次回を待つ毎週となりそうだ。あとEDの途中で次回予告が入る演出は好きです。

 原作付きアニメは『不徳のギルド』もイイ感じですね。ひたむきちゃん可愛い。キッくん(主人公)のツッコミもテンポ良くて安心して観れる一本になっています。『陰の実力者になりたくて!』『うちの師匠はしっぽがない』もまずまず。陰実はアニメ化するうえで削らないといけない情報が多すぎて原作読者的には不満の残る部分もあるにせよ、キャラデザと声優陣の豪華さで埋め合わせできている。しっぽなは落語部分が解説ナシだとわかりにくい、という難点があるものの主要キャラが増えてくるにつれ賑やかで楽しい雰囲気になってきた。問題は本格的に盛り上がってくるのがアニメ終了後のあたりだということか……ほか、最新話が沈鬱すぎて「モルグ回」扱いされている『機動戦士ガンダム 水星の魔女』、4話までが総集編で5話から新規エピソードが始まる『ヤマノススメ Next Summit』、昭和のヤクザ映画をベースにいろんなものを混ぜてしまった怪作『アキバ冥途戦争』、内容の暗さでは『いつかあの海で』と並ぶ『アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】』あたりも楽しみにしている。アーミヤちゃん可愛い。

・トルトネンの『濁る瞳で何を願う(1〜2)』を読んだ。

 副題は「ハイセルク戦記」。「小説家になろう」連載作品を書籍化したもので、現代日本の住人だった主人公が死亡後、剣と魔法の異世界に転生して……というファンタジー小説です。大半の人は「またそれか」と思うでしょう。私も1巻刊行直後はあまり興味が持てず、一旦手に取ってみたけどレジまで向かう気持ちが湧かなくて棚に戻してしまいました。タイトルと表紙のカラーからして「暗そうな話」という印象が強かったし、転生モノでもどういうタイプの転生モノなのかあらすじだけではあまり伝わってこなかったせいもある。ただ、なんとなく気にはなっていて、あるとき検索したらKindle Unlimitedの対象だった(現在は対象外になっているみたいですが)からとりあえずダウンロード、冒頭数ページだけパラパラと読んだ後で放置してしまった。「ハイセルク帝国」というところに農家の三男として転生した主人公は徴兵され、戦場で闘争能力を開花させていく――みたいなストーリーだということはわかったが、どう考えても単なる英雄譚じゃないよね……と今後の展開に重たいムードを感じて気が進まなくなってしまったのである。

 それから少し経った頃、別の本買いに書店を覗いたら、たまたまお目当ての本の近くに『濁る瞳で何を願う』の2巻が置かれていた。ふと視界に入った帯にはこう書かれている。「帝国滅亡――。」 えっ、もう2巻目で転生先が滅亡するの!? 壮絶な負け戦やんけ!! ここまで堂々とネタバレしてきたことに清々しさを覚え、まだ1巻も読み切っていないのに2巻の物理書籍を購入し、帰宅後すぐ再開。ハッキリ言っちゃうと1巻の範囲ではそこまで話が盛り上がらず、他に読みたい本もあったせいで目を通すのに数日掛かってしまったが、2巻に突入する頃となると先が気になって仕方なく、あっという間に読み切ってしまった。主人公とは別にチートスキル持ちの高校生たちが現代日本から転移してきており、彼らが敵軍に所属しているため厄介な存在として立ちはだかってくるが、「転移者のチート能力」など半ばどうでも良くなるような試練に満ちた展開が待ち受けている。詳しい説明は避けるが、1巻の時点で既に多かったバトル描写が2巻で更に激増します。ジェットコースターじみた勢いでひたすら血腥い殺戮が連綿と綴られる。私は小説の文章を映像に置き換えて「観るように読む」タイプの人間だからスプラッター映画数本分をまとめて味わったような心地がした。

 帯にデカデカと書いてあるから濁さないが、主人公第二の祖国となったハイセルク帝国は2巻でキッチリ滅亡します。国が滅んでもそこに所属していた人々が全員死ぬということはまずなく、おめおめと生き延びた主人公も敗残の身を晒すことになる。なろうだと2巻までが「第一章」に当たり、言わば亡国編に当たる第二章からが『濁る瞳で何を願う』の本番に該当するわけだ。戦う理由を失ったかに見える主人公、果たして彼が「それでも」と立ち上がる日は来るのだろうか……ちなみに女性キャラは何人か登場しますが、恋愛要素は今のところゼロです。明らかにそんなことしてる場合じゃない。というか一番存在感のある女性って主人公とあまり接点がないサブキャラの「デボラ」なんだよな。簡単に言うと『ARMS』の母ちゃんに筋肉を足した感じというか、ラピュタのドーラをもう何歳か若くしたみたいな風格というか。ロマンス? それより暴力だ! という作風なのでハーレム系のラノベに食傷気味な方にはちょうどいいかもしれない。私は反動でベタ甘なラブコメが読みたくなりました。


2022-11-02.

『精霊使い―些の塵滓―』という新刊が出たから超久々に『精霊使い(エレメンタラー)』を電子版で読み返したけどビックリするほど内容を覚えていなくて困惑体験味わった焼津です、こんばんは。

 何せ二十数年ぶりだから記憶が曖昧になるのも当然と言えば当然なんですが……いや、「曖昧」なんてもんじゃなかったですよ。記憶の中にある『精霊使い』と実際の『精霊使い』があまりにも隔たり過ぎていてもはや違う作品としか思えない。絵柄も、キャラの名前も、設定も、ストーリーも、何一つ頭の片隅に残っていた「『精霊使い』のイメージ」と一致しない! 覚羅(かぐら)とか秋桜久(しおひさ)なんて特徴的な名前、思春期に目にしたらまず忘れるハズないのに。『ストレンジ・ロジック』とか、特に好きな作品でもないのにあらすじに書かれた「ごく平凡な高校生・界識灼(かいしきあらた)」のインパクトで未だに主人公の名前がすぐに出てくるし。一番衝撃的だったのは「理想郷(ジョキャニーナ)」という単語、てっきり自分は『速攻生徒会』で覚えたものだと思っていたが読んだ順番的には『精霊使い』の方が先だったことになる。マジで別の作品と混同していたのでは? という疑惑すら湧いてくるが、中学生のときに単行本を持っていたのは確かだし、「岡崎武士」という作者名もしっかり覚えている。まるで部分的記憶喪失か、あるいは異なる世界線に迷い込んでしまったかのような不条理を感じてしまったが、おかげで「懐かしい」ではなく「すごく新鮮」な気持ちで楽しむことができたから結果オーライだ。バトルの最中にしょーもないギャグを挟んでくるノリは好き。んん? そういえばこの「しょーもないギャグ」にうっすらと見覚えがあるような、ないような……ちなみに新刊『些の塵滓』(ちとのじんし、と読む)は大判サイズのコミックだからリアル書店で探すときは売り場を間違えないよう注意されたし。

“スキル強奪系”ダークファンタジー、一色一凛「暴食のベルセルク」アニメ化決定(コミックナタリー)

 現代日本からの転生、とかではない現地人による異世界ファンタジー。主人公の性格はどちらかと言えば善人寄りだが倫理観はやや欠如しており、恨みのある相手を躊躇いなく殺してしまえるタイプです。「レベル」という概念が存在する世界、ずっとレベル1のまま一向に上がらないせいで周りからバカにされている主人公「フェイト」がユニークスキル「暴食」の力で「レベル1のままどんどん強くなっていく」という話。「暴食」は相手のスキルやパラメーターを奪って自分の物にしてしまうスキルであり、理論上は青天井でどこまでも強くなれるのだが無視できないデメリットも存在している。厳密に言えば「強くなれる」のではなく「強くならなければ餓えに苦しむ」のであって、たとえ嫌気が差してもフェイトくんは修羅の道を進み続ける必要があるのだ。「自分よりずっと弱い相手はいくら倒しても経験値が入らない」ようなシステムになっているから常に難敵へ挑み続けるマインドも保持せねばならず、俺TUEEEE系ながらも割と過酷な設定になっています。

 原作はこないだ8巻が出たばかりで「第一部・完」らしいけど、アニメ化されるってことはちゃんと第二部も始まるのだろう、たぶん。ソフトカバー作品ながら文庫版も出ているので、気になる方は安価なそちらを集めるというのも一つ手です。

「悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。」来年7月にTVアニメ化(コミックナタリー)

 略称「ラス為」。最近アニメの方でも目立つようになってきた「悪役令嬢モノ」の転生(もしくは憑依)ファンタジーだ。身も蓋もない書き方をしてしまうと「はめフラみたいな話」なのだが、あっちに比べるとコメディ色が薄くシリアス要素強めである。「心を入れ替える」前のヒロインはカタリナが可愛く見えるレベル、平松伸二の漫画に出てくるようなとんでもない外道であり、「そりゃ攻略対象も殺意を抱くわ」と納得してしまう。しかもゲームの都合上「ラスボスに相応しい最強ぶり」を備えているので、誰かに守られる必要もなくアンチェインな存在として好きに暴れ回ることができる。そう、実は「戦闘」が結構なウェイトを占めているシリーズなのだ。「これ悪役令嬢モノの皮をかぶった俺TUEEEE系やんけ!」と叫びたくなること請け合い。

 今や百花繚乱状態にある悪役令嬢モノの主流は「婚約破棄される場面から始まる」パターンと「幼少期に前世の記憶を取り戻す」パターンの2つであり、ラス為は後者に当たる。「やがて来る破滅を回避する」という目標がはめフラと重なるためアニメが放送されたら何かと比較されることになるだろうが、「自己保身」という行動原理をコメディの殻で包んでいるはめフラに対し、ラス為は「自己犠牲」に近いレベルの献身を描いていくので受ける印象はだいぶ変わってくる。うたわれで言うと「記憶を失っていないハクオロ」みたいな主人公です。なろう連載版は既に第一部が完結して第二部をやっているところみたいだが、書籍版はまだ第一部が終わってもいないあたり。来月出る6巻を入れてさえ第一部の半分も終わったかどうか……というくらいの進捗である。アニメで第一部を全部やろうとしたら4クールは掛かるんじゃないだろうかな。うーん、先は長そう。


2022-10-22.

・1巻だけ読んで放置していた『ブルーロック』、アニメも始まったことだし……と着手して、気づけば最新刊に追いついていた焼津です、こんばんは。

 「監獄みたいな施設に集められたサッカーの強化選手たちが様々な試練を与えられ篩に掛けられていく」というサッカー漫画にデスゲーム物の要素を混ぜた異色作。1巻の時点では設定の強引さが鼻に付いてしまうが、2巻、3巻と進むにつれて慣れるとともに盛り上がってきます。私が「面白い!」と夢中になり始めたのは6巻あたりから。「デスゲーム物の要素」と言っても本当に死ぬわけではなく、脱落して施設から去っていくとか、去らないけどしばらく出番がなくなるとか、その程度です。この漫画の面白いところは「正式なチーム」が編成されず、その場その場で「暫定的なチーム」が組んではバラされ、組んではバラされ……って目まぐるしい展開が延々と続くため「以前は敵だった奴が味方になる」状況が日常茶飯事になってくるところだ。もちろん、その逆も然り。あんなに心強かったチームメイトも敵に回るとこんなに厄介なのか! って何度も思い知らされる。「仲間だから」という甘えは通じない。「使えない」と判断されれば置き去りにされて顧みられることもない、だから積極的に己の価値を証明していく必要がある。主人公たちは弛まず研鑽を重ね、競争に次ぐ競争の中でエゴイストとしての才能を開花させていく。「絆」よりも「我」の強さによって連帯感が生まれる一風変わった作品だ。

 真っ当なサッカー漫画を求める人からすると「邪道が過ぎる」と眉を顰めてしまうかもしれないが、「サッカー漫画」に偏見を持っている人が読めば「こういうのもアリなのか!」って喝采を叫ぶかもしれません。必殺技みたいなノリで繰り出されるテクニックとシュートの数々も見所。17巻で第一部終了となるから「区切りのいいところまで読みたい」という方はとりあえずそこらへんまでまとめ買いすれば宜しいかと。個人的に好きなキャラは千切豹馬、スピードタイプは絵に躍動感も生まれるし見ていて楽しい。帝襟アンリも見た目は好みなんだけどストーリーに深く絡んでこないため最近は正直かなり影が薄い。ほとんどのシーンが「監獄みたいな施設」で進行するせいでビックリするぐらい女っ気が少ないんですよね、この漫画。恋愛要素0でも成立させる自信があるのか、主人公と同年代のネームド少女さえいません。もしサッカー部分で今ほどの人気が出ていなかったらアンリの出番や露出度が増えていたのかな……と考えると少し残念な気もするがそれはそれとして次の新刊が楽しみだ。

・映画は『RRR』『劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 冥き夕闇のスケルツォ』観てきた。

 『RRR』は「ルルル」ではなく「アールアールアール」と読む。インド映画で、『バーフバリ』の「S・S・ラージャマウリ」監督がメガホンを取っている。1920年、植民地時代のインドを舞台に二人の英雄が激突する様を描くアクション映画だ。「二人の英雄」は実在したインド独立運動の立役者たちがモデルになっているらしいが、脚色部分が多いというか史実ではこの二人、そもそも顔を合わせたことすらない可能性が高いという。「同時代の人物だから」という理由で柳生十兵衛とダルタニャンを共演させた『友を選ばば柳生十兵衛』みたいなノリですね。3時間という長尺作品ゆえ尻が痛くなってくるものの、観客を飽きさせないよう見所盛りまくりであり最初から最後まで退屈しない。一応ジャンルとしては「時代物」に分類されるのだろうが、予告編でも使われている両手にたいまつ持って虎や鹿と一緒に飛び出すシーンなど、映像の演出が常軌を逸していて「神話の光景か?」と頭がクラクラします。総督の妻が「血が見たいわ!」と叫ぶコテコテの悪役に仕上がっているのは笑ってしまうが、倒木をぶつけられてオープンカーから投げ出されながら空中でエイムして前方の車を撃ち抜く総督は意外とガッツがあって感心してしまった。「大英帝国相手にバーフバリする映画」をイメージしてもらえればだいたい合ってると思う。

 『劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 冥き夕闇のスケルツォ』は“プログレッシブ”シリーズの2作目。当初の公開予定は先月だったがコロナ禍の影響で延期になっていました。「SAOには詳しくないのでプログレッシブ云々と言われてもようわからん」という方向けに解説すると、まず前提としてSAOは「ソードアート・オンライン」というゲームを遊んでいたプレーヤーたちが「ゲームをクリアするまでログアウトできない、ゲームの中で死ねば現実世界の肉体も死亡する」というデスゲームに強制参加させられるところから始まる話です。で、実を云うとデスゲーム自体は割とすぐに終わります。アニメから入った方は大抵ビックリするんですが、原作だと「このデスゲームを生き抜いて現実世界に帰還してやるぜ!」と主人公が決意した直後、一気に2年くらい話が飛ぶ。それから1ヶ月ほど経った頃にゲームクリアとなり、SAOに囚われていたプレーヤーたちは現実世界に帰還する。「巻数いっぱいあるし、攻略終了までもっと長く掛かるかと思っていたから戸惑った」という類の感想もよく見かけました。飛ばした2年間の出来事を綴った番外編がいくつかあり、アニメ版はそういう番外編を時系列に沿って並べることで「話が急に飛ぶ」印象を抑えようと試みたものの、なにぶん番外編ゆえ本筋から若干逸れた内容が多く「ストーリーが飛び飛び」という状況そのものは解消できなかった。デスゲーム開始から終了までの2年間にまつわる物語は俗に「アインクラッド編」と呼ばれている(「ソードアート・オンライン」の舞台が天空に浮かぶ百層の城「アインクラッド」なため)のだが、「アインクラッド攻略に至るまでの経緯をもっと詳しく知りたい」という読者の要望に応えるべくして立ち上がった企画が“プログレッシブ”。要するに「アインクラッド編の補完」という性格が強いストーリーになっています。ガンダムで「一年戦争の頃の出来事」がどんどん後付けで増えていった感じに似ているかもしれない。

 劇場アニメ企画としてのプログレッシブは「アインクラッド編の補完」というより「アインクラッド編の再構成(リビルド)」だ。原作には登場しなかったキャラ(ミト)が新規で追加されているなど「原作やアニメをまったく知らない人でもここから入っていけるように」作られています。だから特に予習とかしなくてOK、いきなりアニメ版プログレッシブから観始めても大丈夫です。むしろ半端に予習すると面白みが減るかも。重複する箇所があるし、「このギルドはこれからああなってしまうんだな……」とわかって辛かったりしますし。第一層攻略をクライマックスに据えた前作「星なき夜のアリア」に対し、「冥き夕闇のスケルツォ」のメインは第五層攻略。さすがに小説版のプログレッシブみたく一層ずつ丁寧に映像化していったら制作に数十年掛かってしまうからそのへんは割り切ったみたいですね。TVアニメではほんのちょっとしか出番がなかったにも関わらず関智一の演技も相俟って強烈なインパクトを残し、公式からも半ばネタキャラ扱いされた「キバオウ」はんが今回は真っ当な役どころで出演しています。正直TVアニメ版だと「ザ・小物」という印象しかなかったが、今回は「上に立つ者としての苦労」が感じられて少し同情してしまったな……キバオウはんは原作だとゲームクリア後にどうなったのか言及されていないキャラの一人だから、アニメ版プログレッシブでどういう扱いになっていくか気になるところだ。ミトがいる時点でアニメ版プログレッシブは「パラレルストーリーです」と宣言してるようなもんだし、本編と違ってキバオウはんが獅子奮迅の活躍を見せつける展開に突入する可能性も否定できないんだよな。アスナがマザーズ・ロザリオ使うときみたいに必殺技「牙刃皇剣」を繰り出すシーンでディアベルはんの幻影が出現する演出あったらうっかり感動してしまうかもしれない。キバオウについて語り過ぎてしまったが、他のキャラだと情報屋のアルゴが良かった。CVのせいでどうしてもナナチを連想してしまって「んなぁ」という幻聴が聞こえてきちゃったけど。


2022-10-06.

・来月単行本が出る『ざーこざこざこざこ先生』、タイトルで気になって検索かけたら公式サイトで全話読めるみたいだったので早速読む……なんだ? この強烈なデジャヴは……あっ、これ「先生のことが大嫌いなJC達」を膨らませて漫画化したヤツか! 既視感の原因がわかってスッキリした焼津です、こんばんは。

 大人に対して挑発的な罵倒を繰り返す生意気な少女、いわゆる「メスガキ」をテーマにしたイラストや漫画をよく手掛けている人の作品。以前「ごちうさを一秒も観たことない俺がネットの知識だけで描くごちうさ漫画」も話題になっていました。発表している作品は艦これの二次創作漫画が多く、ほんわかしたギャグもある一方で四肢欠損とか精神崩壊とか死亡エンドとか読者の精神を掻き毟るような闇の深いネタもちょくちょくかますけど、「ざこ先生」は商業なのでだいぶマイルドな仕上がりとなっている。公式サイトで全話読めるけど単行本には描き下ろし多数収録とのことなので気に入った人は来月出る1巻を買いましょう。しかし元ネタにいた3人よりも後から生えてきた白井さんの方が人気あるんじゃないか、この漫画。

プリティーシリーズ:11年半のテレビアニメ連続放送が一旦終了 ゲーム「ワッチャプリマジ!」は継続(まんたんウェブ)

 プリマジの2期があるのかないのか現段階ではまだわからないが、10月9日放送の51話でとりあえず「一時終了」となってプリティーシリーズの番組枠が途切れることになるみたいだ。レインボーライブからプリパラへ移行する期間を『プリティーリズム・オールスターセレクション』という傑作選方式の番組で繋いだことがあった(このためプリパラの1期目は枠が削られて短くなっている)し、プリマジの前にも『プリティーオールフレンズセレクション』という同趣向の番組を放送しているけど、この書きぶりからするとセレクション的なものもやらないみたいですね。あくまで「一旦」途切れるだけなのか、それともまさか完全にプリティーシリーズのアニメ展開が終了してしまうのか……ちょっと不安になるが、プリマジの2期は来ると信じて待つとします。

【訃報】津原泰水さん逝去のお知らせ

 「最近は過去作の再刊ばかりで新作が出ないな」と思っていた(2016年の『エスカルゴ兄弟』が最新刊、ちなみに文庫版のタイトルは『歌うエスカルゴ』)けど、闘病中だったとは……呆然としてしまった。58歳だなんて若すぎる。先々月に訃報が出た光原百合も58歳だったが、このくらいの年齢の方に関しては全然身構えとかができていないので深甚なショックを受けてしまいます。

 津原泰水(つはら・やすみ)はもともと「津原やすみ」という名義でティーンズハートを中心に活躍した少女小説家で、旧ペンネームだけでも30冊以上の本を出している。が、正直この時期についてはよく知りません。昔古本屋で『あたしのエイリアン』シリーズを大量に見かけたな……というぐらい。この時期に書かれていた作品は電子化されていないこともあって今から読むのは難しいものの、辛うじて『ルピナス探偵団』シリーズが改稿のうえで再刊されている

 1997年、心機一転とばかりに筆名を「津原泰水」に変更し『妖都』という長編で一般小説デビューを果たす。その文庫版を刊行直後に手に取った瞬間から私とヤスミンの蜜月は始まった。芳醇で濃密な文章に酔い痴れ、「泰水名義の本は全部集めよう」と決意した。今から20年以上前のことです。寡作というほどではないが多作ということもなく、名義変更してからの20年で刊行した本の冊数は30を切る程度であり熱心なファンなら余裕で追いかけられる程度だった。初期のイメージから「ホラー作家」という印象が強いけど、一般的には『ブラバン』の作者として認識されていたらしい。あとは漫画化された『五色の舟』も割と知名度が高いか。もとは『NOVA 2』というSFアンソロジーのために書き下ろされた短編で、その後『11 eleven』という短編集に収録され、現在は公式が全文無料公開している。津原泰水は長編の出来も素晴らしいが短編の切れ味も鋭く、個人的には『綺譚集』が一番気に入っています。現実と幻想が泥のように混じり合う様を鮮烈な筆致で描き取っている。ハードカバー版では既に廃止されて久しい著者検印(出版社が部数を誤魔化す――たとえば本当は5000部刷っているのに「3000部しか刷っていません」と言い張って著者への報酬を減らしたり、著者の了解を得ず黙って勝手に増刷したりする――ことを防ぐため本の著者が捺していた判子)をわざわざ復活させるという酔狂な真似もしていました。シリーズとして好きなのは『蘆屋家の崩壊』から始まる“幽明志怪”シリーズ――単に「伯爵と猿渡のシリーズ」と書いた方がピンと来る人も多いのかもしれない。「執筆依頼のたび、いつも今回が最後かもと思って、書きたい放題に詰め込んでいた」とインタビューで語っている通り密度の濃い短編群です。「エルビスさんの帽子」という高校時代の猿渡を書いた2019年の短編が単行本未収録となっているが、今後何かに収録されるだろうか。

 遺作となった長編『夢分けの船』もちゃんと書籍化されるのか現時点では名言されておらず、気を揉んでしまう。積んでる本もあるからすぐさまヤスミンロスが始まるわけではないが、もう新刊チェックのときにヤスミンの名前を見つけて嬉しくなるような機会はそんなにない(『夢分けの船』や未収録短編集が出るときくらいだ)と思うと無性に悲しくなります。とりあえず『蘆屋家の崩壊』読み返すか……。

・拍手レス。

 アイゼンフリューゲルが15年前のラノベってマジ?
 まどかやZeroのアニメが放送される前で、虚淵玄の名前がそこまでメジャーじゃなかった頃……。

 そういえばウィザーズ・ブレインの新刊出るらしいっすよ
 マジで? ……マジだった。1巻の表紙はさすがに時代を感じるなぁ。


2022-09-29.

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』のプロローグが放送され、「とりあえず観ておくか」くらいのノリで臨んだら「僅か4歳にして故郷を焼かれ、意味もわからないままガンダムを操作して敵MSを撃墜し、命の灯が消滅する爆裂を目の当たりにして『きれい!』と無邪気にはしゃぐヒロイン」をお出しされて速やかに打ちのめされた焼津です、こんばんは。

 「とりあえず視聴者の心をへし折っとくか」くらいのノリで脚本を紡いでくる大河内一楼に戦慄を禁じ得ない。次回から主人公が偽名でMSのパイロットを育成する学園に通う展開になるようだけど、そこの学園長は主人公の故郷を焼き彼女の父親を死に追いやった男で、「学園長の娘」がもう一人の主人公になるっぽい。「シャアとガルマかよ」「ガンダム風花雪月じゃん」と早くも不穏な未来を予測する声でいっぱいだ。「魔女」と言うからには主人公が何かとんでもないことをしでかすのだろうが、今度の大河内はどこまでやるのかって話だよな……日5だろうと構わん、どうぞ徹底的にやってくれ。

【期間限定】「ぶっちぎり茶の湯バトル ぐだぐだ新邪馬台国 地獄から帰ってきた男」開幕!

 配布が「壱与」で目玉の☆5が「千利休」という予想は当たっていたが、まさか利休と「駒姫」が一体になっているとは予想できなかった。いやこのタイトルで利休と駒姫がニコイチで登場するって見抜ける人なんかいる? 本編はシリアスだったが後日談はいつも通りのぐだぐだで、駒姫ちゃんがいいキャラしていて楽しかったです。欲望に負けて利休引いといて良かった。今回はイベント☆5礼装がメチャクチャ出たというか☆4は凸れないくらいなのに☆5は余裕で凸れるほど排出が偏りました(☆3はクエスト報酬とフレポガチャでギリギリ凸れた)。三成やクコチヒコなどにも見せ場が用意されていたし、シュシャも一枚絵の威力が卑怯なほど高かったし、ホントぐだイベのリソース割かれ具合は半端ねぇな。「ぐだぐだ本能寺」の頃の呆気なさが嘘みたいだ。復刻されたのがだいぶ前だからプレーしていない人も多くなってきましたが、「ぐだぐだ本能寺」は少ないリソースでどうにかイベントを成立させようと涙ぐましい努力を払った痕跡が窺える代物となっており、近年のぐだイベに慣れた人がプレーするとビックリしてしまうでしょう。沖田さんとノッブ以外にイベント用の素材がなく、後は全部既存サーヴァントによる武将の代役で済ませていました。上杉アルトリアとか島津セタンタとか豊臣ギル吉とか。あの頃に比べて随分と豪華になった。リソースが増えたおかげでNPCも増えて実装待機列が伸びるという痛し痒しな現象も生じているけど。

 それにしても壱与ちゃんは可愛いですね……この見た目で声帯が「小澤亜李」で配布(つまり宝具レベル5確定)ってマジ? 迷わずスキルレベルをMAXにして正式加入直後に聖杯を入れてレベル90まで上げました。かなり大胆に足技を使うので見ていて楽しいし耳に心地良い。小澤亜李のボイスってかなり特徴があるので聴いていて癖になるんだよな……それにしても長いこと小澤亜「季」だと勘違いしていたけど亜李(あり)だったのか。聖杯ブッ込んだおかげもあってBBちゃんのところのフリクエも安定して回れています。あそこはほぼ確定で灰(忘れじの灰)がドロップするから重周回するしかないのだ。利休のスキル上げで大量に消費するし、壱与ちゃんのアペンドにも使うし、いずれ☆4サーヴァント配布で貰うつもりのクリームヒルトの再臨やスキル上げにも必要なんです。

『Fate/strange Fake -Whispers of Dawn-』、年末特番で放送決定

 おお、遂にFakeのアニメ企画が始動だ! ロードエルメロイみたいにまず年末特番でスペシャルエピソードをやってから本格的にTVアニメ化、って流れかな? 公開されているキャストが4人だけなのは「それくらい小規模な内容ですよ」ということなのか、まだこれから追加でキャストを発表するつもりなのか。Fakeは未だに原作が完結しておらず、どのように決着がつくのかまだわかっていないのでアニメ化されるのは当分先だと思っていたけど、「アニメ最終回前後に合わせて原作の最終巻を刊行」みたいなケースもありえるかもしれないな……2クールでも収まらない量なので分割4クールも普通に視野に入ってくる。音楽を担当するのは「澤野弘之」とのことで、こちらも楽しみだ。エイプリルフールのネタとして成田良悟が個人HPで発表したTRPG風の小説がここまで大きくなってるの、古参としてついつい遠い目をしてしまう。

 ちなみに本作のセイバーは男なんですが、武内崇が「女の子にしない?」と成田にしつこく提案したというエピソードもあります。イスカンダル(ライダー)は奈須の構想だと女性だったけど虚淵が男として書いてきたので男性になった、という話をちょっと思い出したり。

『アイゼンフリューゲル』、劇場アニメ化決定

 えっ、あの劇場アニメ企画として考案されたもののいろいろあってポシャってしまい仕方なく小説としてサルベージすることになった『アイゼンフリューゲル』が劇場アニメ化!?(説明口調) いやマジでビックリした。なにげにコミカライズされた作品だけど、漫画版が完結した後も特に動きがなかったので商業展開は終了したものとばかり……小説版の刊行は2009年、もう13年くらい前の作品です。虚淵のコメントによると「20年近い時を経て」、でじたろう曰く「19年前、ニトロプラス初のオリジナルアニメ「アイゼンフリューゲル」を企画」ということなので、発端となる企画は2003年くらいに立ち上がった模様である。『沙耶の唄』とかあのへんの時期だ。「出資者の要望から仕様が二転三転し最終的には企画が頓挫」とある。これ自体は割とよくある話なんだが、そこから20年近くの時を費やしてスクリーンに返り咲くアニメってのはそんなに多くない。素直に「すごい」と感心します。アイフリュの企画がポシャったせいであの時期の虚淵は沙耶唄以外これといって目立った仕事がなく「一線を退いた」「後進を育成する立場になった」「これからは『虚淵御大』って呼ばなきゃ!」って弄られるハメになったんだよな、確か(10年以上前なのでだいぶうろ覚え)。

 内容は簡単に言うと「竜よりも速く飛ぶ航空機を作り出す」浪漫に取りつかれた男たちの姿を描いた虚淵版プロジェクトXです。タイトルは「鉄の翼」を意味するドイツ語。ヴェドゴニアにおけるデスモドゥスとかZeroにおけるモータードキュイラッシェとか、あのあたりを膨らませた感じだ。ジャンルとしては異世界ファンタジーなんだけど虚淵の趣味全開であり、悲しいほどヒロインの存在感が薄い。「メチャクチャ面白いけど元アニメ企画でこのヒロインの扱いはどうなの?」と思うレベル。商業で出した小説としては初のオリジナル(『白貌の伝道師』は同人流通)作品で、さすがに年数が経っているから紙の書籍は手に入りにくくなっているだろうが、劇場公開される頃には再版なり新装版なりが出ているはずなので焦る必要はありません。Kindle Unlimitedの対象だから加入して電子版を読むのも一つの手だ。

 劇場版のキャラクター原案は中央東口ではなく「武内崇」となっており、これもビックリ。まさか社長が出てくるとは……Zero以来の組み合わせか? このぶんなら「『鬼哭街』劇場アニメ化」という私が毎日「Supersonic Showdown」や「Fullmetal Kung=fu」聴きながら涵養している妄想の実現する日も遠くないのかもしれない。妄想しすぎて劇場オリジナルの続編まで幻視している域です。パワードスーツを纏って戦う『鬼哭鎧』、対決と言いつつ結局は共闘する『鬼哭鎧VS装甲悪鬼』、巨大ロボに搭乗する『反魂剣機キコクガイン』、樟賈寶(ジャン・ジャボウ)が黒社会をのし上がっていく前日譚『ジャボウ伝』などがある。

『るろうに剣心』、2023年にノイタミナほかにて放送予定

 今連載してる北海道編じゃなくて「原作を第1話から再構築」とのこと。全身タイツ鵜堂刃衛や原作準拠雷十太、マーベルから訴えられそうな八ツ目、グロ規制されていない宇水さんが観れるのか? いや、『BASTARD!!』のアニメでグロいシーンがカットされていたことを考えるとやっぱり宇水さんはシュールな吹っ飛び方をしてしまうのかな。というか、尺を考えると雷十太あたりは削られそうな気がする。「北海道編で雷十太が再登場するかもしれないから」という理由でカットなしと予想する人もいるが、もし北海道編で再登場しても北海道編がアニメ化されたときに回想方式で「存在しないアニメ版の記憶」を捻じ込めばいいだけの話だ。

 CVは剣心役が「斉藤壮馬」、薫役が「高橋李依」となっている。斉藤壮馬はちょっと前に『天才王子の赤字国家再生術』のウェイン王子役、今期だと『Engage Kiss』の主人公(シュウくん)を演じている。個人的には「よく聞くけどあまり特定作品のイメージがない声優」ですね。剣心って以前は女性が声を当てていたので今回もなんとなく女性声優が抜擢されるようなイメージがあったけど、違ったか。実写版の佐藤健で男性的なイメージが強くなったことも影響しているのかしら。高橋李依はFGOのマシュ役やこのすばのめぐみん役で有名、今期だと『最近雇ったメイドが怪しい』のメイド役をやってますね。アニメの制作会社は「ライデンフィルム」、2012年設立の割と新しいスタジオだ。東リベみたいなヒット作も手掛けているけど、リストを眺めて「う〜ん……」ってなっちゃう作品の多いところである。期待できるかどうかは微妙なところだが、望みは捨てずにおこう。諦めるのは一番最後にできることだ。


2022-09-21.

・「もう5年以上積んでるけど、映画も公開されたしそろそろ崩さなきゃな」ってことで深町秋生の『地獄の犬たち』をようやく読み切った焼津です、こんばんは。積んでる間に文庫本が発売される、これ積読家の日常なり。

 実写映画の題名が『ヘルドッグス』なので文庫版は『ヘルドッグス 地獄の犬たち』と、かつてのメインタイトルがサブタイトルに降格しています。コミカライズ版も出ており、そちらも『ヘルドッグス 地獄の犬たち』になっている。なのに2作目『煉獄の獅子たち』はそのままの題名で文庫化されていて「さすがに『パーガトリーライオンズ』じゃ意味が通じにくいから諦めたのかな」と邪推してしまったり。シリーズ最終作『天国の修羅たち』はそもそも文庫書き下ろしで単行本が発売されていない。できればハードカバーで揃えたかったから文庫版しか出ていないのは個人的に残念だ。ちなみに原作の電子書籍版には書き下ろし短編「那覇での夕食――追跡の合間に」が収録されていますが、文庫で10ページもないほどの短編……というより掌編サイズの小説なので、これだけを目当てに電子書籍版を購入することはオススメしません(←これだけを目当てに紙書籍版読んだ後で電子書籍版買った人)。内容は本編開始より前、「せっかく沖縄に来たんだからうまいもん食おうぜ」な日常のワンシーンを切り取っている。本編開始時点で「沖縄に着いてから2週間後」、短編の方は「5日後」なので約10日前のエピソードということになります。

 さておき『地獄の犬たち』がどんな話かと申しますと、一言で書けば「潜入捜査官(アンダーカバーコップ)モノ」です。警官でありながら偽造した身分でヤクザ組織に潜り込んだ「兼高昭吾」(本名「出月梧郎」)はヤクザでも嫌がる汚れ仕事を積極的に引き受け、短期間で異例の出世を遂げて「若頭補佐」にまで成り上がった。正体がバレれば徹底的に嬲られて消される立場であるだけに緊張の途絶える日はない。冷徹な殺し屋(キラー)として組の中で恐れられる兼高だったが、罪の意識から「仕事」を終えた後に幾度も嘔吐を繰り返している。このままでは極道の思考に染まって、元に戻れなくなるのではないか……かつて凶悪犯罪を憎み刑事の道を志した彼自身が「悪」と堕してしまうかもしれない、という拭い去りがたい懸念。平然と犯罪行為を繰り広げるクズどもではあるものの、身内に対しては胸襟を開くヤクザたちに絆されつつある兼高。威信を保つためならなりふり構わずでっち上げも揉み消しもする警察と、暴力団の違いなんてそんなにないのではないか? 揺れ動く彼の心を尻目に、組全体を巻き込む大規模な抗争が勃発する……という具合に、主人公の煩悶をメインに据えつつだいぶ血腥いノリで死体がゴロゴロと転がります。作者が深町秋生の時点で血腥い内容になることはほぼ確定しているのだけど、過去の代表作、たとえば『ダブル』あたりと比べるとアクションやバイオレンスの要素は抑え目になっている。スカッとするB級バイオレンスではなく、どちらかと言えば胸焼けのするような後味の悪い重さがズゥンと胃の腑に残るような小説だ。でも胸糞度に関しては『果てしなき渇き』(役所広司が主演した『渇き。』の原作)よりも低いから「深町作品はあまり(あるいはまったく)読んでない」人でも割と手を伸ばしやすい一冊だと思う。血と裏切りで舗装された任務の末、兼高の心に宿るものとはいったい何なのか。気の重い内容だったせいか前半はテンションが上がらず数日掛かってしまったが、後半はノンストップで一気に読み切りました。レッツGO奈落! って暗黒感の漂うジェットコースターみたいなストーリーゆえヒリヒリハラハラするスリルを求める方にオススメ。

 勢いに乗って映画の方も観に行った。監督は「原田眞人」。物凄い早口でセリフをまくし立てる情報量の多い一本となっており、原作読んでなかったらスピードに付いていけなかったかもしれない。いろいろと設定を変えたり細部を端折ったりしつつも前半部分に関しては概ね原作通りに進むが、後半はほとんどオリジナルとなっています。観ていて「このペースで原作通りの展開にしようとしたらどう考えても尺が足りなくなるな」と感じたので、しょうがないっちゃしょうがない。設定変更の結果、主人公の性格がだいぶ変わっており「殺しの後で良心の呵責に苛まれて嘔吐する」ようなナイーブさは最初から存在しなくなっている。開始時点で後戻りできない地点に立っているので懊悩や煩悶の描写も必要がなくなりバッサリとカットされています。映画としてまとめることを考えると数々の設定変更はやむをえない処置だったのだろう(文庫で560ページもある小説を138分で映像化しようとすることが土台無茶だ)が、原作の面白さをかなり損なってしまったな……というのが率直な感想です。上司である阿内さんの狂気に満ちたエピソードが削られてしまったのは残念とはいえ仕方ないと割り切れるが、「主人公の顔が昔と一緒」ってことにしちゃったのはさすがにどうかと。原作だと「親が見てもわからない」ほど整形手術で顔の造作を変えているのだが、映画では昔の知り合いに見られて即座に思い出されるくらい人相が変わっていない。いくら何でもそこの設定をいじっちゃうのは潜入モノとしてあんまりなんじゃないかしら、と呑み込めなかった。設定変更と言えば原作では杖をついている土岐さんが元気にスッスと歩行していているから少し混乱してしまった。土岐さん、原作では割と格好良いポジションだったのに映画ではアレな感じになっちゃって格が下がったな。原作でもあまり出番がなかったオリバーくんは名前だけの存在と化して直接登場せず「ただ日本に来て遊んで帰ったアメリカ人」になってるのは笑っちゃった。チ○コ刻まれて泣き叫んでいた原作のオリバーくんに比べて恵まれ過ぎだろ。原作読者にとっては「ここを広げたのか」とか「そこはアレンジしたのか」とか、こまごました相違点が見所となっている映画です。一方で原作の文章をそのまま引っ張ってきたセリフも多く、「あっ、これ進研ゼミでやったところだ!」状態になるので小説版を読了した直後に鑑賞すると楽しいですよ。

 今はシリーズ第2弾の『煉獄の獅子たち』を読んでいます。『地獄の犬たち』よりも前の出来事を綴る過去編だ。『地獄の犬たち』で「5年前に死んだ」と書かれている人物が危篤状態に陥っているから約5年前の物語ということになる。誰が死んで誰が生き残るのかは『地獄の犬たち』を読んでいればわかってしまうので、そのへんを踏まえると『煉獄の獅子たち』を先に読んだ方が良かったのかな……とも思うが「前作読者がビックリするような要素」が仕込まれている可能性もあるのでまだ何とも言えないですね。完結編の『天国の修羅たち』は最後に読んだ方が良さそうな雰囲気を放っているけど。

『乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です』、11月30日に「マリエルート1」を発売予定(同日に本編11巻も発売予定)

 ニュース自体は3ヶ月前に出ていましたが、やっとマリエルートの書籍版が発売されます。待ち侘びたぜ。「マリエルートって何?」な方にざっくり解説。「モブせか」こと『乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です』はアニメ化まで果たした「小説家になろう」人気作品であり、本編はなろうに行けば無料で読めますが、書籍版購入特典として書き下ろし番外編「マリエルート」が執筆されました。モブせかの問題児として登場し、徐々に苦労人ポジションへ移行していったサブヒロイン「マリエ」をメイン級に抜擢した、本編と繋がらないパラレルストーリーである。「ああ、特典小説ってアレか? なろうの書籍化作品によく付いてくる初版限定の折込チラシみたいなヤツ」と早合点した方もおられるかもしれませんが、マリエルートはあまりにも分量が多く紙媒体に印刷するとコストが嵩むため「単行本の帯のQRコードを読み込んでアンケートに答えると特設サイトに飛んで読むことができる」仕組みになっています。ネットで公開した小説の物理書籍を買ってネットに公開されている特典小説を読む、若干倒錯的な状況に陥っていたわけだ。「これだけ量が多かったらいずれマリエルートの方も書籍化されるでしょ」と予想していた私はあえて読まず静観を貫いた次第である。「超大幅加筆」と謳っているし、ファンはほぼ全員買うだろうな。マリエルートは本編と異なる「もしも」の世界を描いた公式スピンオフゆえ「ifストーリーに興味はない」って人は飛ばしてもいいし興味がある人も読むだけならアンケに答えて特設サイトまで行けばいい。「原作読んでないけどアニメ観てマリエが一番好きなキャラになった」って人は逆にこのマリエルートからいきなり買い始めてもOKだと思います。人気次第では2期の代わりにマリエルートアニメ化!なんてことになっちゃうかもしれないな。「マリエ」でなんとなく思い出したけど『その着せ替え人形は恋をする』の続編が制作決定とのことでめでたい(あっちのヒロインは「まりん」)。

・拍手レス。

 まさか今頃になって悲鳴伝が文庫化されるとは・・・。ノベルスの方で最終2巻の帯それぞれ送ると全巻収納ボックス抽選で貰えたんですけど、2回とも送ったら2個来たんで送った人少なかったんだろうか・・・とか思った物です
 時間が経ちすぎて物価も変わり、ノベルス版と文庫版の値段が一緒になっちゃいましたね……全巻収納ボックス、数が多かったから「ほぼ全プレ状態だろうな」と思いつつ送って案の定私もあっさり貰えました。未だに棚の上に飾ってあります。


2022-09-11.

ストーリー原案・アサウラが明かす『リコリス・リコイル』の始まりと変遷@(Febri)

 アサウラの初期案がダークでシリアスでヘビーな感じだったというのは以前のインタビューでも匂わせていたが「クライマックスで、主人公たちが六本木のど真ん中で逃げ惑う一般人もろとも敵を血の池地獄に沈めるというオチ」だったのは想像以上だぞアサウラァ! 「すべてを犠牲にしてもいちばん守りたいものだけは絶対に……という感じ」だったらしいが、それはもうOVAじゃないと無理なんじゃないかな。OVAだったら『新ゲッターロボ』とかもあるしたぶんイケる。コンプライアンス方面が厳しく、深夜枠だろうとTVアニメには結構な倫理観が要求される時代になってきたのはクリエイター側からすると息苦しいだろうな。そして「六本木血の池地獄がダメなら今度文庫化される『悲鳴伝』は絶対にTVアニメ化できない」ことを改めて確認した。詳しい解説は避けるけど「殺戮幼稚園」なシーンがあり、ハナから映像化の期待を投げ捨てているシリーズだ。

『リコリス・リコイル』スピンオフ小説が二度目の発売前重版で10万部を達成!(電撃オンライン)

 禁断の発売前重版“二度打ち”。いくらアニメ放送中とはいえ10万部はスゴいな。重版分は遅れて届くみたいで一部の書店ではだいぶ品薄になっているらしいが、週明け頃には解消する見込みとのこと。ちなみに私の地元は田舎なので電撃文庫の新刊自体がまだ店頭に並んでいません。あとリコリコとは関係ないアサウラの新刊『小説が書けないアイツに書かせる方法』も同時発売中。勃起不全に悩む現役高校生の新人作家が謎の女子大生と出会い、「身バレしたくなければ言う通りの小説を書け」と脅されるライトノベル版『ミザリー』です。監禁されているわけじゃないからミザリー度はかなり低いけど。冒頭を試し読みしたら『デスニードラウンド』がソシャゲになっていて笑った。

【予告】期間限定イベント「ぶっちぎり茶の湯バトル ぐだぐだ新邪馬台国 地獄から帰ってきた男」開幕決定!

 約1年ぶりにぐだイベ開催だ。「ぐだイベ」とは「Fate/ぐだぐだオーダー」の作者「経験値」がシナリオやキャラ設定に深く関わっているイベント群のことであり、「ぐだぐだ本能寺」(2015年11月)、「ぐだぐだ明治維新」(2017年4月)、「ぐだぐだ帝都聖杯奇譚」(2018年6月)、「オール信長総進撃 ぐだぐだファイナル本能寺2019」(2019年7月)、「超古代新選組列伝 ぐだぐだ邪馬台国2020」(2020年10月)、「昭和キ神計画 ぐだぐだ龍馬危機一髪! 消えたノッブヘッドの謎」(2021年11月)とほぼ毎年のように開催されてきておりコレで7回目となる。2016年に開催されていないのは第1部完結に向けて忙しかったことも影響しているのだろう。こうして並べてみて気づいたが、前回から1年以内に開催されるぐだイベって今回が初になるんだな。「昭和キ神計画」の復刻をやっていないのでそのぶん早まったのだろう。

 さて、今回のイベントタイトル。「ぶっちぎり茶の湯バトル」「ぐだぐだ新邪馬台国」「地獄から帰ってきた男」と大きく三つに分かれているが、わ、わからん……情報量が多いせいで却って内容が伝わってこない。まず「茶の湯バトル」が何なのかわからない。千利休がマイク片手にライムを刻みながら茶を点てる光景を想像してしまった。「ぶっちぎり」が付いてる時点で『へうげもの』みたいな数寄バトル路線はないだろうしな。FGOのイベントだということを考慮すると「聖杯が七つの茶器に分かれてしまったので特異点の各地を巡って回収する」みたいないつものアレかな。「ぐだぐだ本能寺」で曜変天目や平蜘蛛を集めていたのをちょっと思い出す。アレは単なるドロップアイテムだったけど。「ぐだぐだ新邪馬台国」の部分も卑弥呼が再登場するであろうこと以外は何もわからない。「新」と付いているけどマップは前回と同じなのか、はたまたまったく違うマップになっているのか。極めつけが「地獄から帰ってきた男」、ぐだイベだけに限っても地獄から帰ってきそうな男は心当たりが何人もいるんだよな……結果としてイメージが全然固まらねぇ。これまで予想通りの内容だったことが一度もないので予想するだけ無駄感はある。

 ティザーPVも公開されていて気になるワードがチラホラ。「境界の商人」「滅びの巫女」「卑弥呼茶屋」「彷徨える魂」「ニライカナイ」「獣の剣」――これまでのぐだイベは配布サーヴァントありだった(厳密に書けば「ぐだぐだ邪馬台国」にクリア報酬サーヴァントはいないのだが、期間限定でフレポに追加された織田信勝が実質的な配布サーヴァントだった)から今回も恐らく1騎誰かが来るはずで、更にガチャの方に☆5が誰かと☆4あるいは☆3の誰か、計3騎の新規サーヴァントが実装されることになるでしょう。「茶の湯」だけに茶人の「千利休」「今井宗久」「津田宗及」「古田織部」「織田有楽斎」「蒲生氏郷」「細川忠興」「荒木村重」などがまず連想されるところだ。「境界の商人」は「堺の商人」から来ているのでは、という気がするから千利休、今井宗久、津田宗及あたりの線が濃厚か。「PVに石田三成の旗印が映っている」との指摘もあり、秀吉や三成の登場を予想する向きもあります。確かに三成も茶のエピソードで有名だったな。「新邪馬台国」から壱与、「地獄から帰ってきた男」から明智光秀や芹沢鴨をイメージするが、立ち絵のみかユニット化かの判別は付かない。「ニライカナイ」は沖縄の言葉で「遥か彼方」を意味する一種の常世なのだが、背景には蓬莱信仰が関わっているとも云う。まさか徐福ちゃんが絡んでくるわけじゃないよな?

 考えがまとまらないけど、とりあえず配布の☆4が「壱与」(プリテンダー)、目玉の限定☆5が「千利休」(アサシン)、限定☆3が「芹沢鴨」(セイバー)、NPCラスボス枠が「石田三成」とテキトーに予想しておこう。仮に千利休が来るとして、美少女化しているのか、イケメンとなって現れるのか、それとも大抵の人が利休と聞いて想像するあの恰好の老人として登場するのか? 最後の可能性は昔のFGOだったらまずありえなかったが、今のFGOだと爺サーヴァントでも結構ガチャが回るからありえなくもない。それより戦闘モーションがどうなるかだ。お茶をぶっかける? 熱々の茶瓶をパスする? 茶筅を高速で掻き回す? 柄杓をフルスイングする? 茶杓を暗器みたいに投げる? 「茶室に刀を持ち込むことはできない」というルールをスキル化させて相手の攻撃を無効化しそうなイメージも湧いてくる。宝具は辞世の偈を読み上げそう。最期が切腹だったこともあって意外と荒々しいんですよね。キャプテンサワダばりに噴き出る血で攻撃するシーンも想像してしまったが完全にギャグだからそれはないでしょう、たぶん。

・拍手レス。

 最近熱い漫画といえばラグナクリムゾンがお勧めです。読んでらっしゃいましたっけ?
 小林大樹は『スカイブルー』の頃から好きなので読んでます。ようやく打ち切られなくなったどころかアニメ化まで決まるとは素晴らしい。


2022-09-07.

・去年からずっと気になっていたけど観る機会を逸していた映画『コンティニュー』をようやく観た焼津です、こんばんは。

 原題は "Boss Level" 、『スモーキン・エース』『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』の「ジョー・カーナハン」監督作品です。映画自体は2020年に完成していたみたいですが、コロナ禍の影響もあって日本で公開されたのは2021年の夏頃。公開規模が小さかったせいもあってあまり目立たず、B級マイナー作品という印象を受けるが製作費は約50億円、ハリウッド的には中規模だが日本の感覚からすると充分大作映画の範疇である。あえて予告編をチェックしなかったし、観る前はもっと低予算の映画だと思っていたのでビックリした。Wikipediaによるとこの作品はもともと "Continue" というタイトルで10年くらい前に企画されたものの凍結状態に陥ってしまい、5年ほど前に "Boss Level" と改題してどうにか再スタートした模様。なので邦題の『コンティニュー』は何の脈絡もなく湧いてきたオリジナルタイトルというわけではなく、むしろ企画の原初まで立ち返った題名と言える。

 映画の内容を一言で要約すると「死にゲーと化した現実を何度もやり直してクリアしようとする話」です。『ハッピー・デス・デイ』のジャンルをホラーからアクションに変えた感じ。80年代や90年代のビデオゲームを意識した内容になっており、ピコピコした電子音、ドット風のロゴ、対戦格闘ゲームのキャラクター選択画面っぽい演出の冒頭が観客をお出迎えする。原題の "Boss Level" はゲームでボスのところまで辿り着いたときに行われる決戦、いわゆる「ボス戦」や「ボスステージ」のこと。とにかくゲーム世代を狙い撃ちにした映画だ。作中でもeゲーム大会のシーンがあり、背景の画面にストUが映ります。「必殺技『アルゲン』って何だ?」と首を傾げていたら「ハドゥーケン!」のことで笑った。

 主人公は特殊部隊所属のエリートソルジャー……だったが、今は退役し妻とも別れ一夜限りの美女をとっかえひっかえするダメ男。ある日、自分が「死ぬと朝まで時間が戻る」――「コンティニューしてステージ冒頭からやり直し」状態に突入していることに気づく。映画開始時点で既に100回以上死に戻りしていてスッカリ「死に慣れ」している主人公だったが、怪現象が発生している原因は不明、総勢10名くらいの殺し屋に命を狙われている理由すらわからない。どんなに逃げても殺し屋どもは執拗に追ってきて、一日を終えるどころか午後1時を迎える前には死亡してしまう。つらつらと考えるうちに、もはや随分と昔のことのように感じられる「昨日」、元妻と会ったときの出来事が怪現象に関係しているのではないかと疑い始め……。

 間断なく押し寄せてくる殺し屋どもの猛攻を躱しつつ「真相」に迫る、SFテイストのアクション映画です。若干グロいシーンはあるものの全体的なノリは明るいというか軽めで、凡ミスで死んでやり直しになることもちょくちょくある。『レイダース 失われたアーク』撮影時にハリソン・フォードが下痢していたというどうでもいいトリビアまで飛び出し、脱力すること必至だ。怪現象の原因や黒幕については半分を過ぎたあたりで判明するが、肝心の目標は果たせず絶望する主人公。しかし、物凄く細い希望の糸が見えた瞬間、「最強ハッピーエンドに向けてのRTA」が幕を上げる。ああ、このルートがあったのか! とまさにゲームの攻略動画を鑑賞するような感覚で楽しめました。どうしても倒せない強敵を攻略するヒントが序盤の雑談にあったりなど、小技も利いている。「制限時間内にクリアしないと世界滅亡の危機!」という設定まで絡めたのはさすがにやり過ぎという気がしないでもないが、まぁタイムリミットは必要ですからね。残機∞のトライ&デス、特に革新的な要素はないがキッチリ100分でうまくまとめているので「あまり長くない映画をサクッと堪能したい」ときなんかにオススメです。

『結城友奈は勇者である』のソシャゲ『結城友奈は勇者である 花結いのきらめき』、10月28日16時にサービス終了の予定

 ゆゆゆい、終わるのか……大満開を放送していた頃にちょっとやってたっけ。サービス開始は2017年6月、私がFGOにハマってソシャゲに興味を持ち始めていた時期なんで結構印象に残っています。ただ当時は乃木若葉などの外伝作品を嗜んでいなかったためプレー意欲が湧かなかった。「ゆゆゆ」も最初のアニメ放送開始からそろそろ8年、知らない人も増えてきただろうからざっくり解説しておきます。

 ゆゆゆこと『結城友奈は勇者である』は「勇者部」なる謎の部に所属する少女「結城友奈」の日常を綴るほのぼのテイストの学園モノ――と見せかけて割とハードな展開が目白押しの「終末世界における過酷系戦闘少女譚」です。パッと見では変身して戦うニチアサ的魔法少女アニメなんだが、負傷が深刻で下半身不随の車椅子少女がいたりベッドから起き上がれない子もいる。血はドバドバ出るし、殉職者も一人や二人ではない。墓参りのシーンでは見渡す限りの「勇者たちの墓標」が連なっている。原案は『アカメが斬る!』の「タカヒロ」だと書けば一部の人には伝わるだろうか。2014年の1期目を皮切りに、3期目に当たる「大満開の章」まで7年に渡ってアニメが放送されたが、作中において約300年間の出来事を切り取って構成しているだけにアニメだけではカバーできない部分も多い。そのへんの隙間を埋めているのが小説版(およびそのコミカライズ)とソーシャルゲーム「花結いのきらめき」である。

 ゆゆゆの世界では西暦2015年に空から「バーテックス」という謎の敵が襲来し、地上の神々がこれを迎撃に向かうも敗北。出撃しなかった居残りの神々が寄り集まってできた「神樹」によって人類の生存圏は辛うじて確保される。人類は神々や妖物との適合性が高い思春期の少女たちを「勇者」という名の戦士に仕立て上げてバーテックス討伐のお役目を課すが、まったく勝ち目はない。仕方なく白旗を掲げ、「武力(勇者)放棄しますのでどうか赦してください」と必死の命乞い(この儀式で6人の巫女が生け贄となった)をし、バーテックスの慈悲を一時的にせよ獲得した。しかし神樹も寿命があるので、それまでに反撃の準備を整えておかなければ滅亡待ったナシ。人類はバーテックスサイドにバレないようこっそりと「勇者を生み出す仕組み」を温存し続けた。西暦2019年を元年とする新暦「神世紀」に移行して約300年、代々に渡って密かに研ぎ澄ませていた牙「勇者システム」の存在が遂にバーテックス側に露見し、「約束と違うやんけ!」と長きの停戦は終結。人類とバーテックスの最終決戦が幕を上げた……。

 背景となるストーリーはこんな感じ。物語は大まかに「西暦2015年〜2019年(神世紀元年)」「神世紀298年」「神世紀300年」という3つの区分の中で展開していきます。アニメの1期目(他と区別するために「結城友奈の章」と呼ばれることもある)は「神世紀300年」に該当するから、西暦時代や神世紀298年のイベントはアニメ視聴者からすると前日譚(プリクエル)に位置するわけだ。アニメ2期目は「鷲尾須美の章」と「勇者の章」から成っており、「鷲尾須美の章」が神世紀298年の戦いを描く過去編で、「勇者の章」が「結城友奈の章」の後日談、つまり神世紀300年の続きを描いている。ここまでは比較的わかりやすいのだが、3期目に当たる「大満開の章」は構成が複雑でシリーズの知識がない人が観ると少々混乱します。時代区分で言うと神世紀300年なんだけど、1期目(「結城友奈の章」)よりは後で2期目(「勇者の章」)よりは前――数字にすると「1.5期」みたいなところからスタートする。1話目は結城友奈たち勇者部の面々がメインで「ゆゆゆの日常編」といった趣ながら、2話目からゆゆゆの外伝『楠芽吹は勇者である』の主人公「楠芽吹」を中心に据えたストーリー「防人編」に切り換わっていく。防人編は神世紀298年から始まるがメインは本編と同じく神世紀300年、「勇者の章」の裏側で起こっていた「もう一つの戦い」を綴る趣向だ。要は『ボーン・レガシー』みたいなスピンオフ要素の強い話である。防人編の後は蔵から発掘された古文書を読み「西暦時代における勇者たちの活躍」を紐解く「西暦勇者編」に入っていくが、上下2冊から成る小説『乃木若葉は勇者である』をたった4話で消化しているため端折られている箇所がかなり多い。最後に「勇者の章」の補完エピソードを紡いで勇者たちの300年以上に渡る物語は完結と相成るが、アニメしか追っていない人だと「わかりにくい」「スッキリしない」という感想になってしまいかねない。小説などの外伝作品を把握していないと、たとえば農業王「白鳥歌野」の遺品(鍬)が出てくるシーンにどうリアクションすればいいのか戸惑ってしまうでしょう。

 ソシャゲ『結城友奈は勇者である 花結いのきらめき』はTVアニメに付きまとう「尺の問題」から解放されていることもあり、外伝の要素をふんだんに取り込んだストーリーとなっていて「とりあえずアニメ本編観た後にゆゆゆいをやればOK」という状態を作り出していました。ゆゆゆいは神樹の内部で問題が発生し、それを解決するため勇者部一同が神樹内部に召喚される――「神々の内側」なので特別な空間になっており、故人だろうと誰だろうと時系列を無視してあらゆる時代の勇者が出現できるようになっている、という『うたわれるもの』にとっての「ロストフラグ」みたいなポジションのオールスター系ゲーム。もっと端的に書けば「スーパーゆゆゆ大戦」である。メインストーリーの第一部に当たる「花結いの章」(全31話)が2019年3月に完結し、同年10月から第二部「きらめきの章」が開始。きらめきの章はまだ完結していないが、9月下旬に最終話を配信する予定とのこと。メインストーリーである「花結いの章」と「きらめきの章」に参戦する勇者たちの背景を紹介するため原作のシナリオを再現した章も用意されているらしいが「神樹内部に召喚されるまで」しか言及されないので「彼女たちが正史においてどんな最期を迎えたのか」までは分からない仕組みになっているそうだ。あとは幕間的な「石紡ぎの章」、季節系のイベントシナリオ、各キャラの誕生日にまつわるハピバシナリオなどがある。

 ゲームとしては「タワーディフェンス型」に分類されるタイプで、ソシャゲの例に漏れずガチャが主体となっているがメインストーリーを読むだけならさほど支障は来さない。確か「花結いの章」の方はゲームパートをまったく攻略しなくてもアーカイブから閲覧できる仕様になっていた。ただ、環境にもよるのだろうが、ゆゆゆいって動作がかなり不安定なんですよね。私はDMMのブラウザ版でやってたけど、あまりにも重たいから「また今度暇なときにやろう」と後回しにしまくってそのうちログインすらしなくなってしまった。サブのタブレットに入れようかとも思ったが、フルボイスだから仕方ないとはいえ容量もかなり大きく、気軽にインストールしにくい。サービス終了まで2ヶ月弱、オフライン版が出るかどうかもわからないことだし念のためメインストーリーだけでも何とかクリアしておくべきか……。

 サービス終了と言えばアニメのときにCMで散々見せられた『無職転生〜ゲームになっても本気だす〜』もつい先日そっと息を引き取った。ゲーム版の売りだったオリジナルストーリー「パウロ外伝」はテキストのみながら公式サイトに掲載されているので興味がある方は是非ご一読を。同じくアニメでCMを散々見せられた『Deep Insanity ASYLUM』も10月にサービス終了。「覚えきれないほどたくさんのキャラが出てくる」アニメ版で話題になった『ラピスリライツ』も10月で幕。どれもプレーしていないアプリではあるが、「そのうち私のやってるアレやアレも……」と考えてヒヤリとしたり。

・拍手レス。

 やりなおし貴族読み終えました。ネット小説特有のさくさく進む展開が心地よかったです。個人的MBPはお婆ちゃん。割りとテンプレですけど気持ちいいキャラクターで読んでて一番好きになりました。
 お婆ちゃんとの遣り取りで主人公にも可愛げが滲み出てくるのがいいですね。ネット小説の書籍化で最近面白かったのは『狂戦士なモブ、無自覚に本編を破壊する』(敵対する奴や怪しい奴を躊躇なく殺害するモブ転生ファンタジー)ですけど、アレは1巻の時点であまり話が進まないから人にはオススメしにくい……。


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