2022年5月〜8月


2022-08-20.

・予告編でちょっと興味湧いたけど最近のワンピは全然追ってないから、観るとしても配信が始まってからかな……とボンヤリ考えていたのに周りの評価が高すぎて発作的に『ONE PIECE FILM RED』のチケットを購入した焼津です、こんばんは。

 久々に(『ソー:ラブ&サンダー』以来だから1ヶ月以上経ってる)映画館へ足を運んだけど、感染拡大の影響か席は結構空いてました。公開から2週間で興収80億円を突破し、100億超えはほぼ確実の見込みだから映画自体はかなりヒットしています。「ウタは桜族」「I beg youの似合う女」「異聞帯の王」など本気か与太か判断に迷う感想の数々が気になって「自分の目で確かみてみよう」となったわけですが、結論から述べると桜族ではなかった。確かに黒桜の姿がチラつくシーンもあったが、やってることはFateシリーズで言うと天草やキリシュタリアの方に近く、また行動原理を考慮するといずれとも異なる。ウタを一言でまとめると「他者の想いを言われるがまま真面目に受け止めて溜め込んでしまう『器』のような女」であり、無理矢理Fateに当てはめるなら「歪んだ聖杯」そのものですよ。間桐桜とか天草四郎とかいうより「顧客が本当に必要だったもの」案件。脳内で「創造位階だ……」「茅場ウタ彦だ……」「おお、炸裂よ(エクスプロード)だ……」「盧生だ……」と呟きながら観ていました。

 さておき、ワンピの映画を観るのは『STRONG WORLD』以来、原作もだいぶ読んでないから付いていけるのか不安だったが、知らないキャラが何人かいる程度で特に支障なく楽しめました。主役を務める「ウタ」はルフィの幼馴染みでシャンクスの娘という設定だけど、映画の企画が動き出すまでは原作に登場していない「無から生えてきた幼馴染み」なんで原作知識が乏しい人でも大丈夫です。尾田栄一郎が「伝説のジジイを描くのはもう飽きた」と漏らしたことから今回は若い女性キャラクターをメインに据えた映画となったそうだ。

 これまで電伝虫経由でしか活動してこなかった歌姫「ウタ」が初めて会場でライブを行い生歌披露するとあって普段はほぼ無人の島「エレジア」に大勢の観客が押しかけてくる。その中には「麦わらの一味」の姿もあった。満を持して開催されるライブ。しかし、ウタが「赤髪のシャンクス」の娘であることを知った海賊どもが彼女を攫おうとステージに乱入してきた。助けに入ろうとするルフィたちを尻目に、迫りくる暴漢どもを難なく撃退してみせるウタ。彼女もまた悪魔の実「ウタウタの実」を口にした能力者だったのだ。演奏の合間にルフィたちのもとに赴いたウタは「もう海賊なんてやめなよ、ここでずっと平和に暮らそう?」と説得を始めるが、当然ルフィたちはこの提案を拒否する。するとウタは何かを覚悟したような表情で「海賊狩り」に乗り出し……という、「ヒロインがラスボス」系のストーリーです。私はみんなを愛している。だからみんなを破壊する。涙を流して、この新時代を称えるがいい!

 ウタがルフィと対立するであろうことはTLに流れてくる感想群から察していたが、思った以上に本性を明かすのが早かった。ウタがボス化するのに30分も掛かってませんからね。すっごいスピーディな展開。海軍や五老星の思惑も交錯するが、あくまで軸は「ウタとその周辺」である。「救世主になる方法」がわかってしまった――幼き日に見た夢が叶えられると知ってしまったことでメサイアとしての道のりを歩み出す……なれるのなら、ならなければならない、という悲痛な強迫観念に基づく使命感が彼女の背中を押している。「殺人は『殺したい動機』によって生まれるのではない、『殺せる機会』によって生まれるのだ」という話を思い出すような物語です。シリアス要素多めでワンピの映画にしてはだいぶコメディ要素が少ない作品に仕上がっているけど、勝負に負けて悔しがるルフィに「出た! 負け惜しみぃ!」と幼馴染み特有の距離感で揶揄ってくる描写といい、「ウタちゃんは……いた? 無から生えてきたのではない?」と錯覚させられるだけのエネルギーが篭もっていて不覚にもホッコリさせられた。事前に調べていなかったからエンドロールで驚いたが、監督はなんと「谷口悟朗」だ。評判に釣られてなければ悟朗映画を観逃すところだったのか……ってゾッとしました。谷口悟朗は監督デビュー作が『ONE PIECE 倒せ!海賊ギャンザック』だからワンピとの接点は元からあるわけだが、まさか24年も経って再来するとは。インタビューによると谷口悟朗のところに「ワンピース映画の監督をやらないか」というオファーが来たのはコレが3回目だそうで、1回目は「私が『ONE PIECE』をやる理由が見つからなかった」という理由で断り、2回目は「制作内の調整がうまくいかなかったようで、話が流れた」、『RED』が3度目の正直となり実現に至ったわけだ。

 原作ファンはもうとっくに観に行っていると思うからわざわざオススメしないが、「ワンピって昔は読んでたけどここ10年くらいの内容はよく知らないんだよな〜。評判良いみたいだけどさすがにこの状態で観に行ったら置いてけ堀になっちゃうかしら」と不安がっている人は劇場でやってるうちにさっさと向かった方がいいです。「歌唱」が映画を構成する重要なパーツになっているんで、音響設備のグッドな空間で鑑賞しておかないといずれ後悔するハメになる。待っていれば配信や地上波でも流れると思いますが、迫力は恐らく半減どころじゃないでしょう。ワンピに関して原作もアニメもまったく触れたことがない人については……う〜ん、さすがにそれは、って感じなのでせめて原作1話目だけでも読んでおいた方がいいです。公式サイト等で1話丸ごと試し読みできますし、今ならデジタル限定のカラー版もありますよ。あと時間があれば過去の映画を1本か2本くらい事前に観ておいた方がいいかも。確かアマプラでほとんど視聴できたはず。かなり初期の作品だけど『ねじまき島の冒険』あたりは1時間もしないで終わるから割と手軽ではある。あとはやっぱり『STRONG WORLD』かな。私もREDの余熱で『Z』や『GOLD』、『STAMPEDE』を観るつもりになっています。

 ちなみに『RED』の連動エピソードとしてTVシリーズの方でもウタとルフィの出会いを綴る番外編やっています。第1029話「淡い記憶 ルフィと赤髪の娘ウタ」がそれ。これもアマプラとかネトフリで配信されているから映画を観る前か観た後に視聴するべし。続きに当たる第1030話「新時代の誓い!ルフィとウタ」は最速の局だと明日21日に放送される予定。アマプラやネトフリは更新が遅い(毎週木曜日に最新話を配信)ので、いち早く視聴したい人はオンタイムで観るなり録画するなりTVerを利用するなりしましょう。

ぱれっと、『ましろ色シンフォニー -Love is pure white- Remake for FHD』および『ましろ色シンフォニー SANA EDITION』を2023年に発売予定

 ん? 紗凪ルートを追加したリメイク版を出すんじゃなくて「紗凪ルートの入っていないリメイク版」と「紗凪ルートしか入っていないSANA EDITION」の2つを発売するってこと? 「おのれ分割とはアコギな真似を!」と反射的に憤激しそうになったが、よくよく考えると私がやりたいのは「Hシーンの付いた紗凪ルート」であって他のルートのリメイク版はそんなに求めていないからバラ売りしてくれるならむしろ好都合だった。「乾紗凪」は『ましろ色シンフォニー』に登場する赤髪のシャンクスの娘女の子で、当初は主人公のことを「クズムシ」と呼んで毛嫌いするのだけどストーリーが進行するにつれ徐々に態度が軟化して好意を覗かせるようになる。でも攻略対象ヒロインではないのでどのルートでも主人公とくっつくことはない。そういう非攻略対象のサブヒロインです。人気が出た(発売後の人気投票で1位を獲得した、発売前の投票では下から数えた方が早いくらいだったのに)ことからCS移植版で専用ルートが実装され攻略可能になるも、当然Hシーンはナシ。来年発売の紗凪エディションにて待望のX-rated紗凪ルートがようやくお出ましとなります。

 『Remake for FHD』は「内容は"そのまま"にリメイク」という方針なのでシナリオや音声には手を加えず、CGをフルHD対応(アス比が4:3から16:9に変更される)、一部のHシーンをアニメーション化、UIをブラッシュアップするとのこと。フルHD対応と言っても画面の上下を切って無理矢理アス比を合わせる「残念HD」(アニメ界や映画界でいう「貧乏ビスタ」みたいなもの)ではなく、ちゃんと左右を足してるのが見所か。実際に描き足したのか、もともとあったけどオリジナル版では切っていた左右を復活させたのかはわからん。一方、紗凪エディションはCS移植版の紗凪ルートがベースになっているが「保住圭による新規書き下ろしシナリオ」と「Hシーン(一部アニメーション)」を追加し、紗凪エディション専用のUIを搭載する予定だそうな。つまり今回ボイスを新たに収録する声優は紗凪役の人だけか。ひょっとすると書き下ろし部分に他のキャラが登場しているかもしれないが。なおCS版で追加されたもう一人のヒロイン「小野宮結月」に関しては「今回のゲーム内では登場する機会が作れなかった」そうで完全に出番ナシ。紗凪はルートがないだけでオリジナル版にもサブキャラとして出演していたけど、結月の方はCS版(とアニメ)にしか姿を現さないキャラだもんな……リメイク版と紗凪エディションがメチャクチャ売れたら結月エディションが制作される可能性もゼロではありません。きっと。恐らく。たぶん。

 『ましろ色シンフォニー』のオリジナル版は2009年10月30日、要するに『装甲悪鬼村正』と同じ日に発売されたソフト。なのでもう13年くらい前の作品です。ゲーム版よりも2011年の秋アニメとして放送された『ましろ色シンフォニー -The color of lovers-』(ゲーム版とアニメ版は副題が違う)の方で記憶している人が多いのかもしれない。あっちも11年近く前だが……時間経つの早すぎない? あらすじは「少子化の影響で主人公の通う学園(共学)が名門女子校『結姫女子学園』と統合されることになった。しかし、いきなり大量の男子が入ってきても免疫のない女子たちは混乱するだろうから、という理由で主人公のみ試験的に通うことになった」という「女の園に男がひとり」系のラブコメです。統合に反対するヒロインとかも出てくるけど、全体的なテイストは明るめであまり難しいことを考えずに楽しめるアニメに仕上がっていた……んですが、『ましろ色シンフォニー』のアニメ版は最終的に主人公と付き合うヒロインがハッキリと決まる、ラブコメアニメでありがちな「フラグは立つけど主人公が誰も選ばずに有耶無耶な雰囲気で終わって2期制作への未練を窺わせる作品」とは一線を画する展開を迎えます。結果、何名ものヒロインがあぶれて夜の雪降る公園で傷を舐め合うシーンが挿入され、「物凄く寒そうな中で滑り台の上に昇っているヒロインたち」の絵面がもたらすインパクトから「滑り台=負けヒロインを指す隠語」になったほどだ。ちなみに『Fate/Zero』のアニメが放送されていた時期でもあったので決着が付くまで「正妻戦争」という言い回しもよく使われていました。あの頃はエロゲ原作のアニメもそれなりに需要があったものだけど、今や「エロゲアニメ」という概念自体が忘れ去られつつあるな……さておき、紗凪エディションの発売を指折り数えて待つとします。来年さん、来年さん、早く紗凪ちゃんに会わせてくれ。

・はぐれメタボの『ブチ切れ令嬢は報復を誓いました。1』読んだ。

 副題は「魔導書の力で祖国を叩き潰します」。元は「小説家になろう」連載作品で、HJ小説大賞2021前期「小説家になろう」部門を受賞して書籍化された。コミカライズも連載中ということであり、タイトルで検索すると漫画版の方が先に出てくる。発売当時は興味が湧かずスルーしてしまったが来月2巻が出るということで少し気になってチェックしたら幸いKindle Unlimited対象作品、早速読み出した。内容は端的に書けば「ざまぁ系悪役令嬢」。例によって例の如くバカ王子に婚約破棄を言い渡される場面から始まり、「あんな王子を野放しにしているこの国はクソだ! みんな死ねばいい!」と心底愛想を尽かした主人公が休戦中の敵国に亡命します。一介の令嬢でありながら密かに政治の中枢を担っていた主人公が消えたことで軋み始める王国。そして隣国で力を蓄えた主人公は、血の繋がった家族すら自分をろくに顧みなかったファッキン祖国への報復(ヴェンデッタ)を開始する。大まかなあらすじはこんな感じで、率直に申し上げて「よくあるアレ」なんですが……表紙が明るいテイストだから「どうせ『なんちゃって報復』で、バカすぎる王子どもが勝手に自滅していくんでしょ」と舐めて読み始めたら予想外に血腥い内容で驚いた。「手には魔導書、斃すは全国民……魔都ハルドリアに報仇雪恨のざまぁが哭く!」ってムードでかなり修羅っている。

 導入は完全に「百回くらい見た悪役令嬢モノのテンプレ」(このいきなり婚約破棄宣言されるところから始まるのって『公爵令嬢の嗜み』が大元だっけ)なんですけれど、報復内容が割とガチで死体がゴロゴロ転がりまくります。令嬢は令嬢でも「野盗は人間じゃない、害獣と同じだから見かけたら一匹残さず殺せ」と眉一つ動かさず斬り捨てる肚の据わったタフ令嬢であり、首は刎ねるし胴体を真っ二つにするし片方の手首斬り落として「ほら返すわよ」と投げつけ相手が咄嗟に受け取ろうと動かした残りの手も無情に斬り飛ばす。本来ならもっと暗色系のおどろおどろしい表紙になっているはずの物語です。なろうでたまに「品性下劣な勇者パーティーに家族や仲間を惨殺された主人公がチート能力を駆使して復讐する」ストーリーがあるじゃないですか、ああいうノリですよ。報復対象の尊厳とメンタルを粉々に砕いたうえで血祭りに上げる結構陰湿なざまぁ系なのでスカッとせずにドン引きする人も出てくるかもしれない。何せ主人公の最終目標は祖国を地図から消すことなので、報復対象のみならずその関係者までも容赦なく巻き込んで死に追いやっていく。やってることが『ブライトライツ・ホーリーランド』のスレイマン並みであり、「これは魔女扱いされるのもむべなるかな」と頷いてしまう。亡命先で商会を立ち上げて地歩を固めていく前半は少し退屈な部分もあるが、後半の紛争編から一気にスピードアップしてサクサクと進行していきます。「むーざんむーざんな血の雨が降る倫理観のネジを外したざまぁ系が読みたい」というアナタにうってつけの一冊だ。

 ちなみに主人公の保有するチート能力は副題にもある通り「魔導書」。作中世界では魔法の属性が各人固定されていて○○属性の使い手は××属性の魔法が使えないことになっているんですけど、主人公は「暴食の魔導書」という他人の魔法をラーニングして行使することのできる神器(リズム、ではなく魔力を物質化したもの、Diesで言うと聖遺物を「形成」した状態)を経由すればあらゆる属性の魔法が使い放題になる。ネーミングで気づいたかもしれませんが、主人公の形成する神器は七つの大罪がモチーフになっており、正確な能力名は「七つの魔導書」――1個だけでも充分チートな魔導書があと6種類もあるのだ。うち1つは物資を収納するアイテムボックス系の魔導書というやや地味なものだったりするけど……それ1つで行軍に伴う輜重の負担を大幅に減らせるのだから無論とんでもない能力ではある。あまりにも主人公を強くしすぎると緊張感がなくなるから一応、各魔導書には制限や代償が設けられています。ただ現状そこまで深刻な制限や代償は出てきてないから枷として機能しておらず、基本的には主人公無双で突き進んでいく。「未来で綴られる文献からの引用」や「未来で行われる歴史の講義」で祖国が滅亡することは既に確定しており、後はただその落日を見守るばかりといったところだが、祖国でも亡命先でもない謎の第三勢力が介入している節があるなど物語を牽引する謎はいくつかあります。バカ王子を誑かした毒婦(男爵令嬢)に関する記述が不自然なほど少ないので、そっちの方も何かありそうだし。なろうでの連載が完結していない(書籍化作業で忙しいのか更新が滞っている)こともあって何巻まで出るのか不明だが、内容的に5巻以上は掛かりそうかな。

・拍手レス。

 そろそろアニメ化するアークナイツとかどうですか? 尋常じゃないテキスト量で病と迫害と世界情勢をじっとりと書いているところが焼津さんにおすすめです
 アクナイは気になってるけどこれ以上掛け持ちのソシャゲを増やすのはちょっと……なので差し当たってアニメ待ちです。アニメが超面白かったらアプリをインストールするかも。


2022-08-13.

・漫画の新刊チェックしていたら“ちゃお”連載(正確にはWeb漫画サイト「ちゃおコミ」連載)のデスゲーム漫画を見かけて目が点になった焼津です、こんばんは。

 調べてみるとちゃおにはホラーレーベルもあるみたいだし、その文脈からするとさほど異色作ではないのかもしれないが、「ちゃお」と「デスゲーム」のイメージがあまりにも結び付かなくて……カップル単位で参加し、お互い協力すれば乗り越えられるがゲームを拒否したりミッションが達成できなかったりすると死ぬという理不尽なデスゲを巡るストーリーで「デスゲーム物だけど恋愛漫画の様相が濃い」あたりは少年向けと毛色が違っていて面白いですね。ホラーと言えば『カヤちゃんはコワくない』という新刊が気になっている。あらすじ紹介からすると『見える子ちゃん』系をベースに「ぅゎょぅι゛ょっょぃ」的な調子で送るホラーコメディみたいなんだが……。

「転生王女と天才令嬢の魔法革命」2023年にTVアニメ化、千本木彩花&石見舞菜香が共演(コミックナタリー)

 1巻だけ読んだことあって2巻以降は積んでるシリーズだ。かつては「2、3巻で打ち切られないだろうか……」とヒヤヒヤしながら買っていたシリーズなのにまさかのアニメ化決定とはな。タイトルに「転生」と入ってることから察せられる通り、異世界転生ファンタジーです。いわゆる「悪役令嬢モノ」の変種であり、先天的に魔法を使えないが魔道具を作成することで埋め合わせしているマッドサイエンティスト系の主人公(転生王女)が王子(主人公の弟)から婚約破棄を告げられた天才令嬢とコンビを組んで様々なトラブルに立ち向かっていく。公式直々に「王宮百合ファンタジー」と銘打っているので百合モノとして読んでもOKでしょう。

 主人公の「アニスフィア」役を演じる声優は「千本木彩花」、『帰宅部活動記録』で「九重クレア」を担当した人である。って、あれももう9年前のアニメだし知らない人も多くなってきたか……最近で言うと『かげきしょうじょ!!』のさらさ役とか『天才王子の赤字国家再生術』のフラーニャ役が比較的有名、えっ、フラーニャ千本木さんだったの!? 全然気づかなかった……言われてみれば確かに、という気もするが。ヒロインポジションに位置する天才令嬢「ユフィリア」役の声優は「石見舞菜香」、リメイク版『フルーツバスケット』で「本田透」役を演じたりマギレコの「環うい」(いろはちゃんの妹)役を演ったりしている人だけど一番有名なのは『ウマ娘』の「ライスシャワー」役かな。最近だと『神クズ☆アイドル』の脇役(しぐたろ)で名前を見かけた。シリーズ構成は「渡航」、最近はライトノベルの仕事よりもアニメ関係の仕事の方が多くなってきました。ん? 千本木彩花と渡航……この組み合わせ、どこかで……?

『アイドルマスター シンデレラガールズ』が2023年3月30日にサービス終了へ。『アイマス』初のモバイルゲームとして10年以上展開(ファミ通.com)

 スマホゲーのデレステではなくケータイで遊ぶ方のデレマス、いわゆる「モバマス」の歴史に幕が下ります。私はプレーしていなかったけど、サービス開始当初から話題になっていたし課金実録みたいな同人誌は読んでいたから「遂に……」と遠い目をしている。配信開始は2011年、確か『Fate/Zero』のアニメやってた頃だから秋だったかな。「登場アイドル100名以上!」という凄まじい物量でアイマスファンの度肝を抜いたものでした。初期は765プロのアイドルたちで既存のファンを誘導していたものの、だんだん「デレマスオリジナルのアイドル」が中心になってそれまでのアイマスとはまた違った界隈が誕生するに至ります。同い年なのに身長差がすごい「双葉杏」と「諸星きらり」の組み合わせ、「あんきら」の人気はそれはそれは途轍もない代物だったのじゃ……いや今でもPixivとかにはあんきらイラストが投稿され続けているし、完全に昔話と化したわけじゃないんですけどね。一方、「コンプガチャ問題」で新聞沙汰になった件は運営にとって風化させたい昔話であろう。もう10年以上前の話だから当時を知らない人も増えてきているでしょうが、コンプガチャというのはFGOで喩えると「☆3サーヴァントと☆4サーヴァントが合わせて5騎ピックアップされていて、全部引いたら限定の☆5サーヴァントをプレゼントしてもらえる」ようなガチャです。モバマスのコンプガチャでは明らかに出現率を低く抑えられているアイドルがいて、「あと1枚で揃うのに、リーチ掛かってるのに!」とプレーヤーを苦しめることから俗に「門番」と称されたものでした。どれだけエグいガチャなのか興味(と時間)のある方はニコニコ動画で「【モバマス】春香コンプガチャを揃うまで回す」と検索してみてください。2012年に消費者庁がこれを問題視したことによりモバマス含むいくつかのソシャゲはコンプガチャ廃止を余儀なくされ、以降はコンプリート報酬だったカードを普通にガチャの排出対象とするわけですが、あまりにも確率を絞ったせいで「コンプガチャ時代よりもヒドい!」と更なる悲鳴が湧き上がるハメに。苛酷すぎて記憶をなくしたPもいるわ。

 何年か前から「更新内容を縮小する」旨の告知を出していたからサービス終了の気配を嗅ぎ取っていたPも多く、実際にニュースが流れたときにショックを受けた人は少なかったように思う。後継ではないが同じシンデレラガールズの系譜に連なるデレステが健在だからというのもあるだろう。とはいえ「デレステに馴染めずモバマスを続けていた」人も結構いるみたいだから、そういう人たちはどうするんだろうな……って気になったりします。モバマスに比べれば新しい方とはいえデレステもサービス開始から早7年(ジャンルが違うから比較されることは滅多にないけどFGOの少し後に配信開始したのでソシャゲとしてはほぼ「FGOの同期」である)、あと5年もすれば「モバマスが配信されていた期間」よりも「デレステが配信されている期間」の方が長くなる勘定だ。「次のデレマス」が動き出さないかぎり、デレステはこのまま5年どころか10年先でも健在な気がする。その頃にもスマホってまだ通信機器として現役なのか? という疑問もあるけど。それはそれとしてモバマスよりも古い『怪盗ロワイヤル』や『探検ドリランド』がまだサービス継続している現実に震撼せざるを得ない。ドリランドの方は途中で大幅なリニューアルが入ってほとんど別のゲームになったらしいが、そのリニューアルから数えても既に10年以上経っており、『神撃のバハムート』よりも配信期間が長い。FGOもどこかで大幅なリニューアルが来たりするんだろうかな。

【期間限定】「アークティック・サマーワールド! 〜カルデア真夏の魔園観光〜」開幕!

 予告されていた通り、FGO今年の水着イベントの舞台は「北極圏」です。配布はワルキューレ……なんですが、配布サーヴァントは霊基再臨してもビジュアルが変わらないのがお約束。なので「性能は一緒だけど見た目が違うワルキューレたち3騎」の中から1種類を選ぶという、「これが人間のやることかよぉぉぉぉぉ!」形式です。発表された瞬間ワルキューレ推しマスターの目が死に、トレンドに「人でなし」というワードが急上昇しました。更に3騎それぞれに個別の霊衣が用意されていて、「リンド」「エルルーン」「ゲイルスケグル」がスキンのみとはいえ専用ボイスとともに新たに実装されるという複雑な状況。金の力で解決できないぶん、ワルキューレ推しマスターの苦悩は深まるばかりである。というか配布サーヴァント用に6つもビジュアルとボイスを準備するとか社長の趣味が迸り過ぎていて笑ってしまう。今回のイベントが復刻されれば選ばなかった2騎のうちもう1騎は手に入れることができるけど、最後の3騎目に関してはいずれ入手できるようになるのかどうかわからんな。そもそも雑誌のインタビューだと今後復刻イベントは控え目にしていくような口ぶりで、実際に去年の水着イベントは復刻されなかった。確実に復刻されるとは限らない、という前提でチョイスしないといけないのだから大変だ。既存の3騎だとスルーズが好きなんですが、新たな3騎はエルルーンとゲイルスケグルの2人が好みなんだよなぁ。果たしてイベント終了までに決断できるのだろうか。

 今回のイベントで眼目となる騒動を引き起こした首謀者はスカディです。カルデアから抜け出して北極圏へ向かった彼女は何を血迷ったのか現地で獲得した聖杯を使って巨大テーマパークを建設。各エリアの運営をサーヴァントに任せ、自らは氷の城に立て籠もった。スカディの振る舞いに困惑しワルキューレたちは協力を拒否、「ならば」とスカディは新たなワルキューレたちを召喚します。それが前述した「リンド」「エルルーン」「ゲイルスケグル」の3騎。特に害のない微小特異点みたいだし放っといてもいいんじゃないか、と当初は事態を軽視するカルデアだったが「放置した場合、この特異点は自然消滅せず永続する」との演算結果が弾き出されたため仕方なく対応に乗り出す。同行するサーヴァントはワルキューレ3騎(オルトリンデ、ヒルド、スルーズ)に加え水着霊基のガレス、水着霊衣のアスクレピオスと燕青、そして露骨に不気味な雰囲気を漂わせる蘆屋道満! ……あまりにも怪しく、ドーマンが最後に裏切ってラスボスになる展開しか予測できないが、ここまで怪しすぎると逆に裏切らないパターンか? 本人も「善い満」と申告しているしな……(誰が信じるんだ?)あとレイシフトしてないのになぜか普通に出てきたゴルドルフの謎はちゃんと解明されるのか、「夏だから」で流されるのか。

 第一エリア「フラワーパーク」を担当するLAことレディ・アヴァロン、エリアの問題解決後は胡散臭さを撒き散らしつつカルデアに同行します。プロローグの感じからすると巻き込まれたような立ち位置だが、あまりにも胡散臭いので「実は黒幕」という線も捨て切れない……ドーマンとLAが怪しすぎてスカディ様のボスオーラが霞んでしまっている。もはや異聞帯を攻略していた頃の「カリスマ溢れる氷の女王神」というイメージは遠く、今や「アイスを食べながらメイヴとイチャチャしている世間知らずの女神様」像が定着してしまっているからな。それにつけても水着霊基のワルキューレたちが可愛い。このうち1/3しか入手できないなんて嘘だろ……と改めて運営を呪いたくなる。2日目のエリゼランドはエリちが夏を満喫していてホッコリ。しれっと神父が激辛料理食いに来てるのは笑った。

 そして期待と恐怖と欲望が渦巻く期間限定ガチャ。今回はFGOにしては珍しく事前にスケジュールを公開しています。10日から31日までレディ・アヴァロンと水着ガレス、および道満と燕青とアスクレピオスのピックアップ。14日から31日まで水着伊吹と水着エリセ、17日から31日まで水着スカディと水着武則天がピックアップされる予定だ。「サプライズとかいいから早めに告知出してほしい」と言い募られてきたFGOがようやくプレーヤーに歩み寄りの姿勢を見せ始めたぞ……情報盛り沢山すぎて生放送が予定時間をオーバーし、「生放送の最中にイベントが始まってしまう」という珍事も発生してしまったが。ワルキューレが配布である以上スカディはほぼ確実に来ると睨んでいましたが、伊吹、エリセ、武則天の3騎は意外というか全然予想してなかった。というか事前人気ナンバーワンで生放送の最中にもトレンドに上がっていたエレシュキガルの立場は……これが人間のや(以下略) 水着伊吹は全体バーサーカーっぽいことで性能に注目が集まっているけど、宝具がバスターかアーツかによって運用法がだいぶ変わってくるだろうな。なんとなくアーツっぽい印象。水着スカディは新規のクイックサポーターとして期待されているが、そもそもサポーターなのかアタッカーなのかも現状だとハッキリしませぬ。性能重視の方は水着スカディのPUが始まる17日まで待って、個々の特徴を吟味したうえでどのガチャを回すか決めた方が宜しいでしょう。

 私はどうしたかって? 当然、初日にレディ・アヴァロン狙いで全ツッパしました。ユニットとしては「アーツサポート版のマーリン」といった趣でキャストリアとの相性が良いタイプ。周年配布のおかげもあって天井分の石は手元にある。「出ない」という未来はなくただ「天井の前に出るか天井で出るか」の二つに一つ。もし早い段階で出れば再度天井を狙えるだけの余力が残るから水着伊吹か水着スカディ、どちらかの確定入手も視野に入ってくる。全体バーサーカーは間に合っているし、スカディの方が良いかしらん、成長してるふーやーちゃんも気になるし……などと皮算用していましたが、いざ回し出すとあっという間に200連を突破して「あっこれもう温存とか無理」と悟らざるをえなかった。結局天井スレスレのところでようやく来ましたよ。アルクが楽勝だったぶんもろに反動が出た感じだ。こりゃもう伊吹とスカディは諦め、来年の正月ガチャあたりに照準を合わせてふたたび天井分まで石を貯め直す方が得策だな……水着ガレスはちょうど宝具5になったし、アルクガチャのときにゲットできなかった徐福ちゃんも出たので収穫は充分ありました。これから頑張って誘惑に勝利していきたいと思います。思うだけで、来週になったら石がスッカラカンになってる可能性も否定できない。

『プリンセスコネクト!Re:Dive』、アプリアイコン設定機能追加

 あ、これ地味だけど嬉しい機能だ。スマホやタブレットのホーム画面などに表示されるプリコネのアイコンを任意のキャラに変更できるという機能です。デフォルトだとペコリーヌなんですが、たとえばコッコロちゃんが好きな人はコッコロちゃんに変えてご尊顔をタップできるようになる。私はユニちゃんが好きなので早速ユニちゃんにしました。FGOのアイコンをアルトリアから別のキャラにチェンジするようなものであり、ぶっちゃけFGOにも欲しいな、この機能。

 今のところiOS版のみ対応でAndroid版やDMM版では使えないが、いずれ対応する予定なのかしら。ちなみにリゼロやデレマスなどのコラボキャラは版権の関係もあってか対象外。そうか、アイコンとなると版権も絡んでくるのか……アプリの顔だもんな。仮にFGOに同じ機能を実装するとなった場合、式やイリヤが難しくなる可能性もあるわけで大変だ。

・八華の『やりなおし貴族の聖人化レベルアップ』読んだ。

 書店の新刊コーナーで見かけてなんとなく気になり衝動買いした一冊。元はネット小説ですがなろうではなく「カクヨム」掲載作品です。作者にとって初長編であり、ネット上では去年のうちに完結済み。よくある「ステータスやスキルなどが存在するゲームっぽい異世界を舞台にした剣と魔法のファンタジー」ながら、主人公は現代日本からの転生者ではなく現地人。簡単にまとめると「大罪を犯した末に死に戻りした悪役貴族が『やりなおし』で世界を救う話」、もっと簡潔に要約すると「悪役逆行モノ」です。

 同年代で自分よりも優れている王女や平民の勇者に嫉妬し、悪魔に魂を売り渡して王国が滅亡するほどの災厄を齎した大罪人の貴族「セリム・ベルクマン」――勇者に斃されてから魂だけが残り、身動き一つできぬ闇の牢獄に囚われていたはずの彼は気が付けば3年前、14歳の自分の体に戻っていた。戸惑いつつ、世界のシステムが自分に「やりなおし」の機会を与えた事実をセリムは受け入れる。すぐさま心を入れ替えたというわけではないが、差し当たって「一周目」の振る舞いを反省し、祈りを捧げ一日一善を為せば固定の経験値が入手できるシステム「デイリーミッション」に従ってコツコツと求道者の道のりを歩み出すセリム。一周目のときには持ち合わせていなかった治癒スキルも獲得し、「かませ悪役」と形容されたかつての自分から脱却する彼のもとに少しずつ仲間も集まってくる。王女や勇者より強くなったわけではないが、ふたりを味方に引き込むことができるのならかつて膝を屈した悪魔どもから国を守ることもできるのかもしれない。国を滅ぼした埋め合わせに、今度こそ国を救えとシステムは求めているのか? わからないなりに最善の道を選ぼうと考える彼は次第に「聖人」として崇められていく……。

 「魔人」に堕した男が何の因果かシステムの手先になって正反対の「聖人」を目指す、「徳の高さでバトル!」系ファンタジーである。帯とあらすじを読めばだいたいの内容がわかるタイプなのであらすじ読んで興味を惹かれないのであればそのままスルーしても大丈夫です。特に大きなサプライズとか革新的な要素とかはない地味な良作だ。悪役時代の描写が少ないぶん、「逆行によるギャップ」もいまひとつ少ない。ぶっちゃけアニメ化するほど大ヒットするタイプの作品ではないでしょう。が、面白いと感じた点はいくつかあります。まず一つ、「一日一善で毎日経験値を溜めてレベルアップ!」という肝の部分がしょーもないチート要素に見えて案外シビアなこと。主人公は前世が現代日本のゲーマーとかではないんで「ゲーム知識を使って無双」な展開は用意されておらず、そもそも舞台となる世界にステータスやスキルといった概念はない。ただ死に戻った際にシステムから通知を受けて「実はこの世界にはステータスというものが存在する」ことを知り、ナビゲートも何もないまま手探りで「恐らくこういうことだろう」と学習しながら進んでいくことになります。たとえば一日一善たって何が善行として判断されるのか? という基準がハッキリしない。試しに教会に金貨を寄付してみるが、これは善行と判定されなかった。むしろ「血税を無駄にした」という理由でマイナス査定を受け経験値が下がってしまう。教会は腐敗が著しいから、そんな組織に寄付しても善行と見做されないどころか「悪しき振る舞い」と咎められてしまうのか……といった具合にいちいち実行して推量を重ね、システムを検証していかねばならない。こういうところは現在アニメ放送中の『異世界迷宮でハーレムを』とノリが似ているかな。あっちの原作ほど検証パートがずっと続くわけではなく、主人公が学園に入学したあたりからだいぶざっくりした調子になるけど。マイナス査定の基準も結構厳しく、他人に指示してささやかな悪事を働かせた場合も教唆扱いで減点を喰らう。それどころか内心まで検閲されて「邪なことを考えた」という理由で経験値が減らされたりする。殺生も悪行なのでなるべく魔物すら殺さないよう気を付ける必要があります。書いてないけどさすがに虫や微生物はノーカンかな……とにかく主人公は可能なかぎり悪だくみを控えて徳を積まねばならない。「心を入れ替えないまま聖人化していく」アーキテクチャが組まれているのは面白いな、と思いました。周囲からのプレッシャーに押し潰され焦って余裕をなくしていた「一周目」に比べて少し慎重になり物事を俯瞰して見れるようになっただけで根本的な部分はあんまり改心してないんですよね、この主人公。「なかったこと」にされたとはいえ国を滅ぼすにまで至った己の行為に対する罪悪感は薄く、「俺は悪くねぇっ!」まで行かないにしても「あのときはどうかしていた」と黒歴史を振り返る程度にしか受け止めていない。

 面白かった点、他には「主人公が転生者ではなく『死に戻りした現地の貴族』だからメンタリティーが基本的に貴族のまま」なところですね。普通に坊ちゃま育ちなので世間知らずなところがあり、「こんなことも知らないのか」と平民たちに呆れられる。身分を隠して平民のフリができていてるつもりになってるが貴族であることはバレバレで、向こうも気づかないフリをしてくれている――というコミカルな状況が生まれます。主人公に可愛げが感じられるというか、相良宗介の学園生活を眺めるときのような愉快ムードが漂う。さすがにあっちほど無茶苦茶なことはしないんだけど……あと、少なくともこの巻に限っては恋愛要素が希薄で、ラブコメ的な寄り道もほとんどないです。番外編でヒロインの一人とちょっとフラグが立ってる程度。ハーレム展開を期待する人にとっては残念かもしれませんが、男性読者人気を当て込んだようなサービスシーンがないぶんストーリーの進行もスムーズになっていて読みやすい。主人公以外の視点で主人公を持ち上げる描写が何回も入るのはちょっとくどい気もしますが、「派閥のリーダーとしてそれなりに権威ある振る舞いをしないといけない」など貴族的な面倒臭さというか気苦労の溜まる部分もちょこちょこ書いてるので不快になるほどではなかった。能力が割と控え目だから個の力で対応できる局面は限られており、群れの力で対処しなければどうにもならない物語である。まだ話の途中だからよほど売上が悪くなければ続刊も出るはず。ネット版は完結してるし、書き下ろしでボリュームが増えるとしてもあと1、2冊で終わりのはずだ。個人的に恋愛要素はもっと強めでもいいので次巻は恋の三角関係もあるといいかな、って。ないとしても妄想するのは自由であろう。

・拍手レス。

 鯖もマスター霊装も固定になるのが難点ですが、オルジュナシステムが汎用性高すぎて変えられそうにありません。邪道ですがアパシーはyoutubeの実況で知りました。確かに面白かったですね
 私も考えるのが面倒なときはオルジュナを引っ張り出しますね。バスクリも強いから変則クエストに対応しやすいし。アパシーは分岐が多いみたいだから「自分はなぜこの選択肢を採ったのか」実況しながらプレーすれば配信ならではの面白みが出せそうではある。

 そういえばtwitterでAIニルヴァーナがever17越えたと評判を聞いたのでAIソムニウム始めました。楽しみ。
 知らなかったので検索しましたが、2019年に出た『AI: ソムニウム ファイル』の続編『AI: ソムニウム ファイル ニルヴァーナ イニシアチブ』が少し前に発売されたんですね。軽い気持ちで覗いたらダウンロード版がセールでメチャクチャ安くなっていたから衝動的に買ってしまいました。


2022-08-05.

・実装から1日と経たないうちに「アルクモルモル黒聖杯」だの「黒のモリュンスタッド」だのいう周回システムが開発されていて思わず笑った焼津です、こんばんは。

 いきなり実装された興奮で性能面に関して言及することをすっかり忘れていましたが、アーキタイプ:アースはムーンキャンサーというアヴェンジャーとバーサーカー以外には有利を取れない特殊クラスのためほとんどの局面において等倍殴りが前提(宝具が混沌特攻なので敵属性によってまた威力が変わってくるが)になっており、その不便さを埋めるべく第二スキル「星の息吹」(NPを最大100チャージする)が備わっています。つまり黒聖杯運用がしやすい。宝具を撃つとフィールド効果が発生し、この効果が持続しているターン内に第三スキル「ファニー・ヴァンプ」を使用すると味方に最大30のNPを配れる(自身はチャージしない)。随伴する味方が「アペンド含めて自前でNP70獲得できる」(「今を生きる人類」ならアルクが宝具を撃つたびNP貰えるのでもっと少なくてOK)のであればマスター礼装も概念礼装も問わず宝具を撃てるようになるから、「黒聖杯3枚積み」という雑に火力が出る運用も可能なわけだ。モルガンはクリティカルが強いので多少討ち漏らしても追撃で何とかなります。難点は強いて言えばスキルのポチ数が多いこと、wave切り替え時に被ダメージ演出が入ること、モルガンの片方がフレ頼りになることか。周回ガチ勢は「黒聖杯じゃなく幻想の姫の方がいい」とのことなので試しにサポートのモルガンに未凸幻想姫持たせています。あとは「オダチェンして自前のエジソンか水着オルタ(ライダー)か阿国を呼び出す」か「アトラス院制服を装備する」ことが必要になるがW光コヤン編成でアルクの宝具を3連射することができる。性能とは関係ないけど7周年アプデで「高品質」モードが追加され、倍速でもヌルヌル動く姫君を眺めるのが気持ちいい。

 ただ、アルクをメインアタッカーとして起用する場合どうしても火力がネックになるので「宝具レベルを上げるor聖杯を入れる」ことが要求されてきます。そのせいもあってか「アルク宝具2」がトレンドに入っていて戦慄しました。石いっぱい配られたから宝具レベル1では満足できず回し続けた人も多かったんだろうな……FGOの天井が「ピックアップ☆5を1枚引くと消滅する」形式ではなく「それまでの内容に関係なく330連目でピックアップ☆5が確定する」形式だったら私も水着イベを捨てて回し続けていたかもしれない。配信直後のトレンドが「石いっぱい」だったのに、しばらく目を離した隙に「残りの石」に変わっている恐怖。いったいどれだけのマスターが百単位の石を即日で溶かしたのだろうか。宝具レベル5を目指す人もチラホラ見かけたというか、生放送で「完凸するまで眠れまへん」とチャレンジした結果メチャクチャ沼って1000連超えたマフィア梶田が同接4万超えしていました。アーカイブを倍速で確認したところ「配信開始前にも課金した」と述べているので正確な額は不明ですが、配信中だけに絞っても15諭吉ブッ込んでやがる。あれを見た後だとアルク重ねたい気持ちは淡雪のように消えていく。うん、私は宝具レベル上げを狙わず聖杯5個(レベル100)でどうにか運用していきたいと思います。差し当たって極級宝物庫のwave1担当として空想具現化しまくってもらっている。

 あと福袋の結果について。「ライダー2」を回して☆5が「司馬懿(ライネス)」、☆4が「水着カーミラ」でした。ライネスも好きなキャラだがそれでもやっぱり馬琴が欲しかった……とりあえず脳内でライネスに馬琴(というかお路ちゃん)コスをさせておこう。コスと言えば新規マスター礼装の「総耶高校学生服」を着たぐだ子のグラフィックが好きです。悪そうな顔で舌をペロッと出していて「序盤に出てくるライバルマスター(途中で仲間になる)」の風情が漂っており趣深い。意外と押しに弱そう。

サークル“竹箒”がコミケ100で頒布する同人誌3冊の情報を公開。第2部 第6章のプロット本には初期案も収録(ファミ通.com)

 3冊中雑多イラスト本の『Kaleido works』だけは会場限定で、ラフやゲストイラストを集めた『型月稿本』と2部6章の内部資料や初期案をまとめたプロット本『Avalon le Fae Synopsys』は「とらのあな」と「メロンブックス」に委託されるとのこと。4日予約開始だったのでとらとメロブの両方でチャレンジした結果、とらはカートに入れるところまで何とか進めたもののそこから先に行けなくなり、メロブはサイト自体になかなか繋がらなかったがカートまで進めば後はさして苦労することなく予約することができました。在庫がなくなっても追加生産する予定と竹箒側がアナウンスしており、急いでゲットしたいのでなければ落ち着くまで待った方が得策かもしれません。

 竹箒とは関係ないんですが、メロンブックスでいつの間にか『サクラ姫ネリマ証券』の取り扱いが始まっていて驚きました。金融商品を題材にしたオリジナル漫画であり、昔はZINくらいでしか買えなかったけど今はメロブでも売ってるんだ……なぜか6巻以降しかなくて、1〜5巻は相変わらずZINを利用しないといけないみたいだけど。調べてみると2020年頃からメロブでの取り扱いが始まった模様。ZINの通販はもう滅多に使わなくなったからネリマ証券も途中で購入が途切れていたんだけど、メロブに置いてるなら渡りに舟だと未購入の巻をまとめてポチった。今年5月に出た12巻で完結ということもあり、タイミング的にちょうど良かったです。1巻の発行が2012年だからぴったり10年か。作者は書籍化を目指したいらしく、しばらく経ったらどこかの出版社で単行本が出てるかもしれません。品切の巻もあるため今から全部新品で揃えるのは難しいし、気になる人はどこかにタイトルだけメモしといて待ちの一手というのもアリかな、と。

【FGO】表紙はWマーリンの描き下ろしイラスト。7周年を記念した48ページ特集の内容を詳しく紹介【先出し週刊ファミ通】(ファミ通.com)

 “週刊ファミ通”の2022年8月18・25日合併号はFGO特集号で8月4日に発売されました。私は地方民だから普通なら1、2日遅れてようやく店頭に並んだものを買える(どころか最近はファミ通を取り扱ってない書店もある)わけだが、amazonのKindle Unlimited対象商品だから発売当日に追加料金ナシですぐに読むことができました。「3ヶ月で99円キャンペーン」に釣られていたおかげである。加入したはいいもののほとんど利用していなかったKindle Unlimited、このファミ通だけで充分元が取れたな。インタビュー記事を読むかぎり来年どころか再来年になってもFGOを終わらせるつもりはないみたいで、いよいよ「第3部開幕」が現実味を帯びてきました。少なくとも第2部 第7章が終わったらすぐに完結というわけではなく、第1部の冠位時間神殿に相当する終章はあるみたいだ。「7.5章はあるのか?」という問いに対しては言葉を濁していましたが、ハッキリ否定しなかったところを察するにあるっぽい? 奈須のコメントでもっとも反響が大きかったのは「今年の水着サーヴァントは☆5が3騎」という箇所。7周年で配った大量の石を回収するどころか更なる課金を促す気満々の布陣でもう笑うしかない。1騎は「レディ・アヴァロン」で確定していますが、もう2騎は誰なのか……「つぎに水着霊基になるのは誰だと思う?」というアンケートでぶっちぎり1位だったエレシュキガルが本命視されていますが、エレちゃんは予想外しの大家だからな。来年か再来年に回されていても驚かない。とりあえず私は「水着パッションリップ」を予想しておきます。やはりソシャゲの水着にデカくて長い乳は欠かせない。というか最初期(CCCの頃)のパッションリップを見返すと今やさほど爆乳とは思えなくなってきているのだからソシャゲむちむちおっぱいキングダムの侵略による感覚の麻痺は恐ろしい。

 しかし「読み放題だから」と調子に乗ってファミ通をパラパラめくっていたら「おっ、こんなゲーム出るのか、知らなかった」と気になる新作を見つけてついポチ(衝動買い)ってしまいました。『アパシー 鳴神学園七不思議』という、簡単に言えば昔スーファミで出ていた『学校であった怖い話』のリメイクみたいなソフトです。内容だいぶ変わってるしリブートと書いた方が適切かしら。学校新聞で「学園の七不思議」を特集するため「怖い話」の語り部を集めたら、7人いるはずなのになぜか6人しか来ていない……という出だしのシチュエーションはほぼ一緒ながら、「語り部の紡ぐ『怖い話』内に登場する人物は100人以上」「物語の結末は500以上」「総字数300万字超え(『学校であった怖い話』が100万字ほどなので約3倍)」と途轍もないボリュームアップが実現している。学怖や『晦(つきこもり)』など過去ソフトのシナリオも収録している(一部はリライト)らしいが、新規書き下ろし分だけでも100万字――つまり学怖1本分に相当するシナリオを追加してるんだとか。基本的にただシナリオを読むだけ、ときたま表示される選択肢のどれを採るかでストーリーが分岐していく形式となっており、テキトーにプレーするぶんにはまったく難しくないのだが任意の結末に辿り着こうとすると攻略本が必要になるタイプのゲームです。限定版には攻略本が付属していますからガチでやり込みたい人はそちらの購入を検討されてみては如何だろう。限定版のメーカー希望小売価格、「16,478円(税込)」ですけど。夏はホラーの季節、久しぶりにホラゲで背筋を凍らせてみるのも悪くない。

『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』レヴューアルバム「アルカナ・アルカディア」、9月21日に発売予定

 待ちかねていたCDがようやく……確認したら先月告知があったみたいで我ながら今更なレスポンスであるが、すかさず予約を入れましたとも。「アルカナ・アルカディア」とは『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』のソシャゲ、『少女☆歌劇 レヴュースタァライト -Re LIVE-』(略称はスタリラ)の中核を成すメインシナリオ第3章であり、劇中劇のタイトルでもある。2020年10月配信のメインストーリー#12「形なき戯曲、未知なる主役」から2022年4〜5月配信の#18「アルカナ・アルカディア」まで、1年半以上に渡って展開された非常に長大なストーリーだ。スタリラは季節系イベントの整合が怪しかったりなど時系列に関してはあやふやな部分も多く、「アルカナ・アルカディア」が時期的にいつ頃のエピソードなのかハッキリしませんけど少なくとも劇場版よりは前です。アニメ版のシリーズ構成を担当した「樋口達人」が脚本を手掛けており、スタリラ独自のキャラが活躍するためアニメ版しか履修していない人だと混乱するかもしれませんが、TVシリーズを補完する部分や劇場版までの間隙を埋める要素もあり、読み応え充分で引き込まれる内容に仕上がっている。そして何よりの目玉はレヴュー曲、なんと「アルカナ・アルカディア」のためだけに6つもの新曲が作られているのです。「信じる者に門は開かれる」「命尽きても尽き果てず」「罪がないのならばそれが罪だ」「闇を照らすもの」「永遠ハ死シテ生キル」「星の少女、月に少女」――これらはアプリ内でも聴くことができますが、50秒前後の超ショート版のみ。フルに関しては配信すらされていない(はず、これで私が情報を見落としているだけだったら恥ずかしいが)。ようやくレヴュー曲のフルを好きなだけCDで聴けるわけで感無量だ。

 どの曲も好きなんで「試しにどれか聴いてみたい」という方に一曲だけ薦めるのはすごく迷うんですが、強いて挙げるなら「命尽きても尽き果てず」かな。Youtubeに試聴動画があるので興味があればどうぞ。左端に映っているのは「運命の輪」衣裳の華恋で、その隣は「力」の双葉です。「アルカナ・アルカディア」はタロットカードのアルカナに準えたキャストが登場する劇であり、衣裳もそれぞれ用意されている。右の金髪ふたりはアニメに出てこなかったスタリラオリジナルキャラです。右端の「戦車」ちゃん、気の強そうな顔をしているけど中の子は割とおとなしい性格をしていて役とのギャップがある……ようでいて、芯が強情かつワガママなところは案外共通している。「……私は『戦車』」「あの約束の舞台に向かって……全てをなぎ倒して突き進む、鉄の塊!」というセリフを戦車役としてではなく本人の意志として吼えるシーンが好き。トリを飾る「星の少女、月に少女」は劇場アニメのエンドロールで流れるタイプの主題歌なんで是非ともシナリオとセットで楽しんでほしいところではある。歌い出しの「アルカディア〜、アルカディア〜」のせいで個人的には「アルカディア高校校歌」と呼んでおり、実は曲名を見てもピンと来ないのは秘密だ。


2022-08-01.

・暑くて外出する気力も湧かないので土日はテレビでFGO Fesの中継を垂れ流しにしながらまったり過ごした焼津です、こんばんは。第2部 第6章の朗読劇『FGO THE DRAMALOGUE-アヴァロン・ル・フェ-』、想像以上に良かったですね……トネリコ時代の石川さんの演技、うまく川澄さんに寄せていてビックリしました。円盤が出たら勢いで買っちゃうかもしれない。

 さておきFGOも7周年、私がやり始めたのは2017年1月からなので5年半程度だが、もう古参と名乗ってもいいのかもしれない。いや倍速がなかった時代(最初のネロ祭あたりまでは等速のみだった)や最低保証も付かず10連全部が概念礼装という悲惨なガチャがあった時代(配信開始から1ヶ月くらい経ってようやく「☆3以上のサーヴァントが1騎確定」になった)、10連回すのに石40個必要だった時代(1周年記念のときに40個から30個へ変更された)を直接知らない人間が古参を名乗るのは違和感があるな……やっぱナシってことで。恒例の福袋をはじめとして様々なキャンペーン(カレスコ含む任意の☆5概念礼装確定入手など)が打たれていますが、とにかく配っている石の量が物凄い。遅れて配布される10万RT達成報酬(石100個)も含めて最大1135個もの聖晶石がプレゼントされます。「1135個」はあくまで最大値であり、すべてのサーヴァントを所持&最終再臨させてクエストもほぼ全部攻略し終えていることが前提となる。しかし1135個も貰える人はいったいその何倍の石を溶かしてきたんだろうか……ともあれ水着イベに備えてほんのり貯石していた私も大量配布のおかげで天井分を超える量が集まり、余裕の構えで「周年記念のサーヴァントは誰かな? あんま興味ないのだったらレディ・アヴァロンという名のプーリンに備えて石を温存しとこ」と発表を待ったわけです。

 7周年記念として実装されるサーヴァントは2騎。まずは☆3アルターエゴの「徐福」、待望の徐福ちゃん実装でTLが湧き立ちました。☆4どころか☆3という優しいレアリティ、しかも恒常なのでピックアップが終わった後も出てくるしフレポから引けるかもしれない。遅いか早いかだけの違いで、これはもうゲットしたも同然でしょ(慢心)。目玉の☆5は、ムーンキャンサー「アーキタイプ:アース」――はい、姫アルクです、どうもありがとうございました。霊基再臨で通常アルクも出てきます。アルクェイドはサーヴァントとして召喚される際「ファニー・ヴァンプ」という特殊クラスになるって設定もあったが、その場合だと召喚できるマスターが限られてくるからFGOでは別クラスになる可能性も考えられていました(なおファニー・ヴァンプはスキル名として残っている)。しかしムンキャとは……「月を蝕む癌」というより「月由来の癌」みたいなイメージか?

 『月姫』まったく知らん人向けに大雑把に解説すると、地球(ガイア)さんが「なんか最近ワイの表面に人類とかいう種がのさばってきてんのぅ……このままほっといてええもんか」と考えているところに「じゃあ人類が暴走しないよう私をモデルに統率者を作ってみたらどうです?」と売り込んできた奴がいて、「ええやん!」と乗り気になった地球さんが「人類を統率する、受肉した精霊」として作ったモノが「真祖」です。しかしモデルになった奴(朱い月)に問題があったため吸血衝動というバグが発生し、真祖は持てる力の大半を吸血衝動の抑え込みに使わなくてはならなくなり本来の性能を発揮できなくなってしまった。結果として人類の統率者になれず、吸血衝動のせいで「死徒」なるものまで生み出してしまう。朱い月はかつてあった月文明唯一の生き残りであり、自分の後継者を作るためなりふり構わず地球さんを利用しようとしたって事情があります。真祖のすべてに朱い月の因子が潜んでおり、後継者としてもっとも有望と目されるアルクェイドの中に眠る朱い月因子が表面化した、普段のアーパー吸血鬼ぶりとはまったく異なる荘厳な雰囲気を醸している状態のことを俗に「姫アルク」と称する。「アーキタイプ:アース」の名はメルブラの何かで出たはず。厳密に言うと姫アルクとは違うみたいなんだが私もメルブラは一番最初の奴しかやり込んでないのでよくわからん。「タイプ:アース」とは巨視的すぎるため個々の人間をうまく認識することができない地球さんの代弁者たる存在――つまり「真祖が本来の性能を発揮した姿」なのだが、型月関連の作品を見渡しても結局「タイプ:アースが完成した」という話は出てこないし、もっとも完成形に近いアルクでさえアーキタイプ(雛型)止まりなんだろう。「へ〜、『月姫』って思ったよりスケールが大きくてややこしい話なんだな」と未プレーの方は思ったかもしれませんが、この説明のほとんどは裏設定に属しゲーム本編ではほんの少し触れられる程度です。断片的な情報しかないからずーっと20年以上に渡って考察や議論が繰り広げられているのですよ……情報に飢えていたところへ新しい燃料が追加されたわけだからそりゃ盛り上がるわけだ。

 こんなもの見せられて「レディ・アヴァロンまで石を温存しとこ」と思えるはずもなく、当然天井覚悟でガチャりました。回し始めて早々に虹回転が来て「勝ったッ! 超楽勝ッ!」と内心ガッツポーズを決めたものの、表示されたクラスはライダー。「は???」と間抜け顔を晒す私の前に降臨したのは「オデュッセウス」でした。ああ、そういえばゲームさんぽのオデュッセウス回をまだ観てなかったわ。はよ観ろって圧を掛けに来たのか。他のソシャゲで経験ありますが、序盤でこういうすり抜けが発生するパターンってだいたい天井コースなんだよなあ……気が抜けたというか放心してボーっとしていたところに通常回転からムンキャのカードがヒョッコリ出たもんだからつい反応が遅れてしまった。「へ???」と再度間抜け顔を晒す私の眼前に姫君大降臨。片方がすり抜けとはいえ11連で☆5を2枚抜きしたんだから大勝利と申しても過言ではないでしょう。アルクをゲットしたうえ水着ガチャ開始まで潤沢な石とともにのんびり待ち構えることができる、こんなに嬉しいことはない……ありがとう、ラセングル。ちなみに徐福ちゃんは1枚も出ませんでした。ピックアップ☆3サーヴァントってなにげに排出率が結構低い(実はたった4%しかない)から出ないときは全然出ないんですよね。徐福ちゃん欲しいしアルクも重ねたいしもうちょっとだけ回したい、と指が疼いたけど既に述べた通り徐福ちゃんは恒常なのでここで無理して追う必要もない。ターンエンドとしました。

 今年の福袋はクラス別で20種類。正直バトルや育成に対する熱はだいぶ冷めてきているので今回はパスしようかな〜、とFes前に迷ったりもしたのですが朗読劇やアルクの実装告知で楽しませてもらったしお布施感覚で課金したろ! と購入を決意しました。20種類もあるとチェックするだけでも大変で、「福袋買うのは初めて」という新規プレーヤーはどれを選ぶべきか大いに悩むだろう。特に推しというか狙いたいキャラがいないのであれば「バーサーカー2」がオススメです。水着武蔵、モルガン、アルジュナ・オルタの3択で全部アタリ(全体宝具の☆5バーサーカー、運用するには援護が必要だけど初心者なら重宝するユニット)というぶっ壊れ枠だ。今なら最強概念礼装の一角「カレイドスコープ」がリセマラなしで交換できるから始め時ではある。私は全員所持しているしジュナオに至っては宝具レベル5なので選択肢から外しています。うーん、馬琴欲しいし「ライダー2」にチャレンジしようかな。まずはコンビニ行かないと。


2022-07-19.

・プライムデーの「4ヶ月無料」に釣られて「Amazon Music Unlimited」に加入した焼津です、こんばんは。

 アニソンやゲームミュージックが充実していて嬉しいが、充実し過ぎているあまり「聴きたい曲」を探し出すとキリがないという罠。ちなみに真っ先に漁ったのはニトロゲーの曲でした。Diesとかの正田崇ゲーはサントラ買ってるけど、ニトロゲーのサントラは意外と購入していなかった(しようと思いつつ億劫がって機会を逃していた)ので助かる。「Supersonic Showdown」(『鬼哭街』のBGM)とか20年経っても相変わらずイイ曲だなぁ……プレイリストを編成できるから、本来別々のサントラに入ってる「BLADE ARTS(T〜W)」(『刃鳴散らす』と『装甲悪鬼村正』のBGM)を並べることもできて便利です。個人的にはやっぱりVが好き。

 シンフォギア関連のキャラソンが少ないのはガッカリです(「スフォルツァンドの残響」聴きたかった)が、4ヶ月聴き放題でタダなら贅沢は言えないな。Unlimitedに入らないとろくなラインナップがない、と言われがちなAmazon Musicだけどワタナベカズヒロのアルバム『GRACIAS!』があるのはアンリミ入る前に確認したので「プライム会員だけどアマミュは使ったことないな」という方にはここぞとばかりにオススメしたい。私が一番好きなのは「創痕」、『サバト鍋』に収録されたミニゲーム「戒厳聖都」のクライマックスで掛かる曲です。当時はこの曲が流れる直前のところでセーブデータ作って何度もロードしちゃあ聞き惚れていたっけ、懐かしい。数え切れないほど耳で味わった一曲ながら、未だに曲名の読みが「そうこん」なのか「きずあと」なのかわからない。検索すると「ソウコン」って出てくる、でも公式情報じゃないみたいなので確信が持てぬ。わからなくても別に問題はないが気になります。

・期待していないけどとりあえず1話だけでも観ておくか、くらいの気持ちで臨んだ『神クズ☆アイドル』が思ったより面白くて完走するかもしれない気配が漂ってまいりました。

 ゼロサム(一迅社の漫画雑誌)に連載されている漫画が原作、最新刊は今月出る6巻。顔はいいのに愛想がなく、ただ「楽して稼げると思ったから」アイドルになった世の中舐め腐り系イケメン仁淀ユウヤ。ライブに駆けつけて応援してくれる熱心なファンたちにレスを返さないなど、いつまで経っても心を入れ替えない彼の塩対応ぶりに業を煮やした事務所は遂にクビを匂わせ始めた。そんな崖っぷちでも特にやる気を発揮しないユウヤの前に現れたのは、最上アサヒという名前のアイドル。アイドル業界にまったく興味のない彼は知らなかったが、彼女こそ誰もが知ってる超有名な神アイドル……だった(過去形)。交通事故によって亡くなったアサヒは死してなおアイドルへの未練を忘れられず、現世に留まってしまっているのだという。魂の篭もっていない現役アイドルと魂しか残っていない元アイドル、ふたりの邂逅が「神クズ☆アイドル」を生み出す……! といった具合で「憑依」を軸に進行していくゴースト・アイドル・ストーリーです。アイドルの幽霊が出てくる時点でアイプラ思い出しちゃったのは仕方ないだろう。私は悪くない。脳裏を「song for you」が流れていって、「あんなにやる気のなかった仁淀が『誰より眩しいヒカリになる』って誓うなんてな……」と幻覚を観て目が潤むのもフツー、超フツー。

 歌や踊り、ファンサなど「アイドルっぽい活動」を全部アサヒちゃんに丸投げしてアガリだけ持っていこうと目論むクズなユウヤだったが、さすがにずっとアサヒが憑依した状態でレッスンし続けるのもアレだからと2話目では無憑依状態でレッスンするシーンも出てきます。そこで「相変わらず愛想はないけどダンスに関してはアサヒより上手い」と判明する(反復練習したくないので一発で振り付けを覚えられるよう超絶的な集中力を発揮している)などバランスの取り方が秀逸なアニメだな、と感じました。あまりアサヒにおんぶだっこな描写が続くとユウヤへのヘイトがヤバい域に達してしまうもんな。ちゃんと彼の有能なところをアピールすることも忘れない。アサヒ演じる東山奈央のコミカルな演技もハマっているし、アイドル云々とは別になおぼう目当てで観ても損のないクオリティです。眠る必要がないからと夜中もずっと起きてるのは“マルドゥック”シリーズのボイルドみがあってほんのりホラーテイストであるが。しかし死んだことによって「トイレに行かない」という昭和時代のアイドル像を体現できるようになったのも皮肉な話だな。ギャグシーンも多いが締めるところはちゃんと締めてるので、冗談抜きに最終回はユウヤが「誰より眩しいヒカリになるから」とPRIDEを胸に絶唱しそうな雰囲気を感じないでもない。

・あと『異世界おじさん』『Engage Kiss』も視聴。

 『異世界おじさん』は漫画原作。分厚い同人誌を出すことで有名な「殆ど死んでいる」(名前っぽくないけどこれがペンネーム、「ほとん」と略されることもある)のオリジナル作品で、交通事故に遭って17年間昏睡していた叔父が目を覚まし、「やっと異世界から日本に帰って来られた」と言い出すコメディです。事故のせいで頭がおかしくなったのかと思いきや、本当に異世界帰りで魔法が使える「おじさん」(後にフルネームも判明するがこの作品のファンで本名を呼ぶ人はほとんどいない)を見て「これなら配信者として稼げる!」と甥っ子の「たかふみ」が一緒に暮らすことを決意する。話は日本を舞台にした「現在編」と異世界での思い出を語る「過去編」の二つが柱になっており、ノリはかなり緩めだがおじさん自体は異世界で結構ハードな目に遭っています。心が耐えられないときは記憶を消す魔法を使っていたというんだから辛さは推して知るべし。セガ信者なのでメガドライブやサターンに対する愛情は深く、第2話のタイトルが「1位『ガーディアンヒーローズ』だろぉおおお!」だったりと正におじさんホイホイ。七瀬楓(『エイリアンソルジャー』というゲームのキャラクター、本編では既に死亡しており彼女の生体パーツと機械を混ぜ合わせて造られたサイボーグ「セブンフォース楓」が登場する)の話題がこんなに出てくるアニメなんてコレだけだろう。楽しくて時が過ぎるのが早く、エンディングに差し掛かるたび「えっ、もう終わり!?」となってしまう。なお一昨年に開催された『チェインクロニクル3』のコラボイベントのときは「石田彰」がCVを担当していた(当時のPV)が、アニメ版では「子安武人」に変更された。というかコラボのときの声優、一人も続投していません。キャスト総取っ替えになっている。つまりあのコラボ、「いずれ始まるアニメの宣伝も兼ねて」とかではなくただ本当に「おじさんがセガ信者だから」実現した企画なんだな……。

 『Engage Kiss』は「丸戸史明」がシリーズ構成・脚本を担当するということで注目していた一本。単なるオリジナルアニメかと思ったが、調べてみると「Project Engage」というアニプレックスによるメディアミックス企画の一環らしい。アニメと漫画とスマホゲー、3つの媒体を軸に展開していく模様。道理でザコ敵がポコポコと湧いてくる演出がスマホゲーっぽかったわけだ。「悪魔」と呼ばれる存在が人々の生活を脅かすようになった世界、悪魔を倒して金を稼ぐ企業が乱立するようになった。主人公「シュウ」は大手の会社に所属していたが、思うところあって退社、現在は個人で悪魔退治の事務所を立ち上げている。だが悪魔なんてそう頻繁に発生するものではないし、シュウ自身の経済観念もいろいろと怪しいせいで生活は常に困窮。今カノ(ではない)キサラと元カノのアヤノにお金を出してもらうことでどうにか各種支払を済ませている、絵に描いたようなダメ人間と化していた……! 丸戸だけあってキャラの掛け合いは活き活きしているが、戦闘シーンに入るといまひとつ盛り上がらない感じになってしまう。シュウとキサラとアヤノの三角関係がアニメの見所となっていて、そこはとても私好みなんだが敵と戦っている最中に口喧嘩が始まったりなど全体的に緊張感が乏しい。作画も悪くないし、一個一個の要素は美味しいのに綜合するとあまりマリアージュしてないのが残念というか。この感じ、20年近く前にやった『FOLKLORE JAM』を思い出す。主人公に未練タラタラな元カノが出てくるあたり同期の『継母の連れ子が元カノだった』とシンクロしていて笑っちゃうが、とりあえずヤンデレ気味のキサラが可愛いので当分観続けるつもりです。

・サブのタブレットを入手したので、せっかくだからと『ラストオリジン』をインストールしてみました。

 次に生まれてくるときは、私を狼にしてください。
 群れの仲間を決して見捨てず、最後まで守り通せるような、牙と爪を私にください。
 そのときはくまなく大地を駆けて、獲物の血であなたを讃えます。

 かの『アズールレーン』すら上回るドスケベむちむちパラダイスのソシャゲです。「顔よりデカい乳」や「腰よりぶっとい太腿」が当たり前のようなツラしてそこら中を練り歩いている。もともとは韓国のゲームで、日本語版が配信されたときに虚淵玄がツイッターで勝手に宣伝を始めて二次創作SSまで書いたという珍事も発生している。私がラスオリに注目したのもこの一件からで、別にドスケベむちむち軍団がお目当てでプレーしたくなったわけでは……うおっ、このノームって銀髪巨乳っ娘のウェディングドレススキンめっちゃエロいな……交換っと(ポチリ) で、なんでしたっけ? そうそう、虚淵玄の話でした。彼は趣味が高じて遂に公式コラボイベントのシナリオを担当するまでに至ったのです。それが6月15日より開催されている期間限定イベント「怒りの狼牙」だ。終了が7月27日なのでもうちょっとありますけど、やろうかどうか迷っている方はそろそろ取り掛かった方が宜しいかと。ノーマルステージでも敵が結構強いんで「イベントシナリオ読むだけなら数時間で事足りるだろ」と舐めて掛かったら愕然とするハメになります。

 そもそもラスオリってどんなゲームなの? という点についてザックリ解説します。まずストーリー、主人公(性別♂)は記憶喪失の状態で発見される。顔を覗き込んでくる美女と美少女は人間じゃなく、ヒトを模して造られた「バイオロイド」であった。彼女たちの話によると人類は大きな戦争を引き起こした末に絶滅も同然の状態に陥り、今はその被造物であるバイオロイドらが世界に取り残されて「鉄虫」なる謎の敵と戦っている。とっくに滅んだはずの「人間様」が生き残っていたことを喜ぶバイオロイドたち。いったいなぜそこまで喜ぶのか? 答えは簡単、彼女たちは「ヒトを産む」機構を備えていながら、これまで肝心の「種」がなかったのである。新時代のアダムとして期待を寄せられる主人公――そう、彼こそがライトオリジン(最後の原種)であり、同時にラストオチンチンでもあったのだ……!

 書き方によっては途轍もなく暗く湿っぽい淫靡な物語になりそうだが、基本的なノリは軽いというか明るめでそこまで張り詰めたムードではない。移動中に鉄虫との戦いで力尽きたバイオロイドの遺体を目の当たりにしても激しく取り乱したりはしないし、6章でちょっとグロいシーンが出てくるけど割合早くショックから立ち直っている。死に関してはある程度割り切っているみたいです。遺品の回収を要請するミニクエストもあり、バイオロイドたちが自身を完全にモノと見做しているわけでもありませんが……脳筋系のキャラも多いし、どちらかと言えば淡々とした、ドライな雰囲気が基調になっています。「人類が滅亡に瀕する前、人権のないバイオロイドたちに殺し合いをさせて見世物にする番組もあった」など陰惨な設定もあるが、時代的にだいぶ前だし少なくとも本編ストーリー内でそのへんを掘り下げる展開はない。プロローグから第2章にかけては翻訳の際に生じたと思われるニュアンスのズレが深刻で正直読んでいて引っ掛かるところがあるものの、3章あたりからだんだんこなれてきて引っ掛かる部分も少なくなってきます。6章が一つの区切りなので、ラスオリのストーリーに興味がある方はとりあえずそこまで頑張って攻略してみてください。あっ、7章ではかの有名な「子宮ドラミングロイヤルア(ーセ)ナル姉さん」を見ることができるのでもうちょっと攻略するのもオススメです。

 次にゲーム部分。系統としては『艦これ』に連なるタイプで、いわゆる「結婚」に当たるシステムも搭載されている。戦闘はRPG風となっており一度に最大5名のバイオロイドを3×3のマスに編成し、ターン制で攻撃し合う。ガチャではなくドロップや製造によって仲間をゲットする形式ゆえ、反復的な周回と資材集めが重要になってくる。「ツナ缶」というゲーム内通貨を使用することでアイテムを入手したり、バイオロイドたちにスケベ極まりない衣裳(スキン)を着せたりすることができます。ツナ缶の購入が課金要素となるわけですが、無課金でもツナ缶はそこそこの量を集めることが可能。しかし実装されているスキンは膨大な量に及ぶため、「そこそこ」程度では全然追っつかない。あれもこれも欲しければ財布の紐を緩めるしかないのだ。逆に言えばドスケベスキンにそこまで興味がなく、やり込みガチ勢になるつもりもゼロ、ただシナリオだけ読めればOK! というのであれば無課金でも余裕のよっちゃんです。FGOとかと比べればシナリオ量はそんなに多くないし、フルボイスでもないからサクサク進む。現在8章まで配信されていますが、チュートリアル入れても合計シナリオ量はFGOで喩えると「特異点1個分か2個分」くらいです。実測じゃなくあくまで感覚的に、であるが……根性フルバーストすれば半日くらいで最新シナリオに追いつける勘定。当然ながらステージが進めば進むほど敵も強くなっていくから実際はもっと掛かるだろう。そのへん攻略wikiを利用することで時間はだいぶ短縮できます。

 ラスオリのシナリオは本編に当たる「メインストーリー」(メインクエストに組み込まれているのでこれを読まないと先に進めない、興味がなければスキップ可)、本編の合間を埋める「サブストーリー」(サブクエストなので読んでも読まなくてもOK)、FGOで言うところの「幕間の物語」に相当する「外伝ストーリー」(該当するキャラの好感度が一定以上など開放条件がある)、基本的に期間限定で開催される「イベントストーリー」(古いイベントに関しては常設されている、つっても現状2つだけ)の4種類があります。一応「変化の聖所」という階層踏破型コンテンツ(百重塔みたいなヤツ)にもシナリオは付いてるけどこれは無視していいかな。メインストーリーを優先で進めて、余裕があるときや暇なときに他のストーリーを読めばいい感じです。イベントはこれまで日本版だと12個、韓国版だと20個くらい開催されている。日本版の12イベント中、復刻済は4つ。このうち2つが常設化しているので、残り2つもそう遠くないうちに常設化しそう。ラスオリのイベント期間は非常に長く、ほとんどが1ヶ月以上に渡って開催されるためよっぽどやる気の湧かないとき以外はメインでやり込まなくてもちゃんとクリアできるはず。むしろクリアした後の周回がメインみたいなところがある。

 さておき「怒りの狼牙」のシナリオは虚淵曰く「※八章よりは後」「※ブラックリリス外伝ストーリーよりは前」の時系列だそうです。日本のプレーヤーからすると「最新のストーリーまで読んでいること前提」のイベントだが、翻訳の手間があるぶん日本版は韓国版よりも展開が遅れているため、韓国のプレーヤーからすると感覚的に「過去へ遡ったエピソード」となっている。シナリオは全3部からなっており、第1部が前編、第2部が後編、第3部がオマケの番外編(「怒りの狼牙」とは関係ないシモネタ寄りのコメディ)といった構成だ。当初の予定だと第2部で終わるはずだったらしいが、虚淵がシナリオのリテイクに備えて予定を空けておいたところリテイクなしの一発OKで通ってしまったため、空いたスケジュールで急遽第3部を書き足したそうな。

 ラスオリに登場するキャラは「メーカー名」「シリーズ名(開発コンセプト、これを元に分隊が組まれている)」「モデル名」の3つで分類することが可能となっている。かつてバイオロイドを生産していた企業はいくつかあって、そのうちの一つである「ブラックリバー」(PMCが前身なので軍事色が強い)製の「アンガー・オブ・ホード」シリーズ(機動力と火力が売りで、ヒット&アウェイ戦法を得意とするシリーズ)に属する機体「迅速のカーン」の掘り下げを主眼に据えている。モデル名は「C-2 カーン」で同型機が複数生産されたもののプロトタイプに当たる「迅速のカーン」以外は死亡しているため、単にカーンと言った場合は基本的に彼女一人のことを指す。設定では「1機しかいない」キャラなのにゲームシステム上では複数の機体がドロップしちゃうの、気にしない方がいいんだろうな。カーンは「T-4 ケシク」という機体を改装して造られた経緯があるが、元となったケシクモデルはもはや現存していない……と思われていたのに休眠していた生き残りが発見された、ってところからストーリーの幕が上がる。好戦的で勇猛果敢、単騎で先陣を切って突っ走るカーンとは似ても似つかない穏やかな性格をした後方支援タイプ(兵站管理が主な業務)のケシク。カーンは己の「原型」を前に何を想うのか……といった具合に「もう一つのラストオリジン」を描くシリアス寄りのエピソードです。まどマギで喩えるとクールほむらが契約前の眼鏡ほむらと顔を合わせてしまったような状態だ。仲間を守るため誰よりも強い狼になりたいと願い、仲間を看取る苦悩から解き放たれるべく誰よりも一番早く危険な戦場へ飛び込んでいったカーンは、皮肉なことに誰よりも生き残ることに長けた異能生存体じみた強者になった。強くなればなるほど最重視すべき貴重な戦力と見做され「カーンを絶対に死なせてはならない!」と仲間たちが奮起し、命懸けで彼女を支援し守り抜こうとする皮肉。「ケシク(かつての自分)の願い」に背き多くの仲間を死なせてきたことから合わせる顔がないカーンと、そんなカーンに希望を見出して追いかけるケシク――両者の贖罪と祈願が交錯するエピソードだ。なおケシクちゃんのCVは「水橋かおり」です。「みんな死ぬしかないじゃない!」とかは言いません。

 虚淵作品で言うと『アイゼンフリューゲル』くらいのシリアスさ。ホード隊の掛け合いはハリウッド映画に出てくるビッチ風っつーか軽く『続・殺戮のジャンゴ』が入ってる。神に祈る心を持ちながら神の被造物ではない「ヒトに造られた生命の悲哀」という虚淵の趣味がかなり出まくって独自解釈ズンドコ開陳路線でやっているからラスオリ本来のカラッとしたテイストとは異なる部分が多々あり、旧来のファンからは否定的な意見もチラホラ漏れ聞こえてくる。しかし制作スタッフはかなり気合を入れて臨んだみたいで、イベント専用のスチルや特殊演出までちょこちょこ仕込んでいます。個人的には「苦労して攻略した甲斐はあった」と思える面白さでした。ぶっちゃけ虚淵シナリオに釣られていなかったら本編3章あたりで脱落していた気がするな……そのへんからだんだん敵が強くなってくるし。「怒りの狼牙」も初心者向けとは言いにくい難易度で、2章をクリアしたあたりで「そろそろイケるのでは?」と試しに入場してみたら一番最初のステージでも歯が立たず撤退を強いられました。結局攻略wikiの「初心者はこうやってイベントを突破しろ」という指南に従ってどうにかクリアしましたよ。イベントアイテムで交換できるレアリティSS(正確に書くとレアリティではなく「ランク」、ラスオリのランクは「SS」「S」「A」「B」の4段階あり、一部のキャラは条件を揃えれば「昇級」システムによってランクアップが可能となっている)の「エタニティ」が滅法強くて、この子さえ育てればイベントクエストはだいたい何とかなる感じです。いやらしいことにEV3-4でダメージが1しか通らないクッソ硬いエネミーが出てきて詰まりましたが、これもイベント交換対象の「ダフネ」や「サラマンダー」で固定ダメージや火炎ダメージを与えれば瞬殺できる。メインクエストもほとんどのステージはエタニティゴリ押し戦法でクリアしました。6-8のボス「エクスキューショナー」はゴリ押しできなかったけど、ペロという猫耳の子を編成したらなんか行けた(ギミック理解できてない顔)。8章はさすがに難易度が上がってきて工夫しないと倒せない敵も出てくる……というか未だに8-8を抜けられないでいるが、それでも「エタニティ強ぇ」という感想は揺るがなかったです。

 「主人公のアレはトウモロコシ並み」という根も葉もない噂が駆け巡る、第1部と第2部のシリアスムードが嘘だったかのような第3部には笑った。「トウモロコシサイズなんて無理!」と恐懼する子もいれば「アソコがぶっ壊れようと構うものか!」と熱血アニメみたいなテンションで猛る子もいる。ショタコン疑惑のある某バイオロイドは「トウモロコシなわけなかろうが!」とブチギレする。そうか、これがバイオロイドの多様性か……しかしこんなしょーもないギャグエピソードのためにわざわざ特殊演出を用意する運営もホンモノだな。虚淵はまだまだ書きたいみたいなので、時間は掛かるだろうがコラボ第2弾、第3弾と続く可能性もあります。虚淵シナリオ目当てで始めただけにイベントが終わったら触る機会も減るでしょうが、次の展開を楽しみにしている。差し当たってするべきことは8-8を攻略するためのレベリングと「ロイヤル・アーセナル」ドロップ目当ての7-8周回か。オートモードで放置して周回するタイプのゲームだから充電を切らさないように気を付けるくらいで、後はただ勝手にレベルアップしたりドロップしたりするのを待つのみ。なんかスーファミで連射パッド使ってレベル上げしてたの思い出すな……。

・拍手レス。

 女の子のスナイパーバディものって、『ノワール』を思い出すおじさん世代。
 コッペリアのひ・つ・ぎ、流れる涙はもう涸ぁれ果て〜♪ という歌い出しがやたら耳に残る主題歌でしたね。


2022-07-11.

・今月の下旬にアマプラ見放題で『ハロウィン KILLS』が配信されるから、という理由で“ハロウィン”シリーズを崩しに掛かっている焼津です、こんばんは。なんか情報が混ざっていたせいかブギーマンを偽マフティーみたいなパンプキンヘッドの殺人鬼だと思い込んでいたけど全然違った。

 典型的な「タイトルは知ってるけど1作も観たことないシリーズ」なんでちょうど良かろうと乗り出したわけですが、すべての始まりであるジョン・カーペンター監督版の『ハロウィン』を配信しているところが見つからなくて困惑。そもそもこのシリーズ、ただ単に『ハロウィン』というタイトルになっている作品(つまり無印)が3つもあるのでややこしいことこの上ない。加えて映画業界特有の「タイトルが共通しているからシリーズ物だと思ったがまったく無関係な便乗作品だった」パターンもあるから尚更困惑する。ハロウィンはごく一般的なイベントだし、作中に登場する殺人鬼の異名「ブギーマン」も有名な伝承がベースになっているから「たまたま被った」という言い訳が通っちゃうんですよね。とにかく配信で観るのを諦めDVDかBDを借りてこようと決意。近場のレンタルショップには置いてなかったので少し遠出して借りてきました。差し当たってシリーズの概要をサッとおさらいしましょう。

 “ハロウィン”シリーズは1978年に公開されたジョン・カーペンター監督版『ハロウィン』がスタート地点です。僅か30万ドルという低予算で作られたホラー映画ながら全世界でヒットを飛ばし、「スラッシャー映画」(殺戮を主体にしたホラージャンル)ブームの火付け役になります。ブームを巻き起こした作品だから続編もしこたま作られたわけですが、ジョン・カーペンターがメガホンを取ったのは1作目だけ。2作目の『ハロウィンU』(公開時の邦題は『ブギーマン』、最近のDVDやBDはこっちの題名で出ている)でも脚本を担当しているが監督は別の人物になった。だから1作目を他と区別する場合には「1978年版」とか「ハロウィン(1978)」とか「ジョン・カーペンター監督版」とか「オリジナル版」とか言ったりする。

 最新作の『ハロウィン KILLS』は12作目に当たるが、シリーズのストーリーがずっと一貫していたわけではなく、何度かリセットされています。『ハロウィン(1978)』の大まかなあらすじは「親の目を盗んで彼氏と乳繰り合っていた少女が殺害される。犯人はなんと6歳の弟マイケルだった! 年齢が年齢なので逮捕することもできず精神病院送りになるマイケル、彼はずっと大人しくしていたが15年後に脱走し、かつて住んでいた生家に向かう」といった感じで、たまたまマイケルの家の近くにいた少女「ローリー」が標的に選ばれて付け狙われるハメになる。ハロウィンの前日に脱走しハロウィン当日に凶行に及ぶので、作中の経過時間は結構短い。いわゆる「一夜の悪夢」ってノリです。現代の感覚からするとひたすら説明の少ない映画であり、マイケルの動機は最後までハッキリしない。姉に対して強い執着を抱いているようだが、「喋らない殺人鬼」ゆえ心中に関してはただ推し量るしかありません。動機不明という恐怖、そして因縁も何もなく「ただ近くにいた」というだけで執拗に追い回される理不尽なストーカー被害を描いた映画でもある。獲物の少女に逆襲されて刺され、駆けつけてきた精神科医「ルーミス」にしこたま銃弾をブチ込まれて「さすがに死んだだろう」と思わせておきながら少し目を離した隙に姿を消し、不気味な呼吸音とともに終わる。超自然現象こそ起こらないものの「殺人鬼というより受肉した悪霊のような男」「理解不能な災厄」として禍々しい存在感を発揮する。低予算映画なので今からすると映像的にショボい箇所も多いけれど、驚くのは「スラッシャー映画ブームを巻き起こした火種とは思えないほどの上品さ」である。おっぱい丸出しの女の子が出てくるなど低俗な場面もあるにせよ、殺害シーンのゴア表現はかなり控え目で血飛沫の量も少なく、非常に抑制が利いている。随所で掛かる程良くチープなBGMも緊張感をジリジリと高めていく。「グロが売りではないのに怖くて面白い」わけで、未だに名作として扱われる理由もよくわかります。ちなみに1978年の『ハロウィン』は「劇場公開版」(大元のオリジナル、91分)、「テレビ放送版」(残虐シーンとエッチなところをカットして代わりの場面を追加している、96分)、「Extended Edition」(カットしたシーンを復活させて追加場面も収録している、101分)といった具合に3つのバージョンが存在します。私が観たのは劇場公開版だが、VHSはテレビ放送版だったらしく乳首とかは映ってなかったみたいですね。

 『ハロウィンU』(『ブギーマン』)は1978年版の続編で、行方不明になっていたマイケルが殺人鬼「ブギーマン」として再び登場する。で、ドタバタした末に死ぬのだが、その後何度も復活するので王大人の「死亡確認」程度に受け取った方がいいです。『ハロウィンV』は「マイケルが大暴れするばっかりじゃマンネリになっちゃうから」と設定を完全にリセットして1978年版や『ハロウィンU』と繋がりのない、独立したホラー映画として作られました。サイコ・ホラーを基調とする1作目や2作目に比べてオカルト色が強くなっており、「これはこれで」という声もあるが興行的には振るわなかった。シリーズの顔とも言えるマイケルが出てこないことに不満を漏らす観客も多く、これ以降の作品には必ずマイケルが登場するようになる。1作目で「ブギーマンは不死身なんだよ」と言われていましたが本当に何度死んでも甦る不滅のムービースターになってしまった。

 『ハロウィン4 ブギーマン復活』『ハロウィン5 ブギーマン逆襲』『ハロウィン6 最後の戦い』(4〜6作目)は『ハロウィンU』の続編に位置付けられる3部作。1作目や2作目のヒロインである「ローリー」の娘「ジェイミー」をメインに据えており、副題通り6で一旦終了となります。毎回監督が変わるせいもあってかストーリーがしっちゃかめっちゃかになってきており、だんだん収拾が付かない事態に陥ってしまった模様。ローリーは既に死んだことになっているためローリー役の女優(ジェイミー・リー・カーティス)は出演しない。1998年に20周年を記念して制作された『ハロウィンH20』(7作目)は4〜6の話をリセット――平たく書けばジェイミーを「いなかったこと」に――し、再び『ハロウィンU』の続きという形でストーリーを分岐させていく。娘の代わりに「ジョン」という息子が生えてきます。ローリー役のジェイミー・リー・カーティスが17年ぶりにシリーズ復帰した作品でもある。2002年の『ハロウィン レザレクション』(8作目)はH20の続編。マイケルの生家(1作目で売りに出されていたが買い手が現れなかったのか廃屋になっている)に不法侵入して肝試し企画をやろうとしていた愚かな連中が次々と殺されていく。殺人の様子がライブ中継されるなど、固定電話で連絡を取り合っていた1作目からは隔世の感がある内容。2007年にロブ・ゾンビ監督による『ハロウィン』(9作目)が公開されますが、これは1978年版のリメイクであり既存の作品との繋がりは一切ない。大まかな展開は共通している(幼い頃に殺人を犯して精神病院送りになったマイケルが脱走してヒロインのローリーを執拗に付け狙う)が、オリジナルでは6歳だった犯行時の年齢が10歳になっている、幼少時の殺人は姉だけだったのが他にも何人か殺していることになっているなど設定がちょこちょこ変わっています。マイケルの家庭環境が変更されたことにより「崩壊気味の荒れた家で育ったんだから彼がおかしくなるのもある程度は仕方のないことだった」という感じになっており、理不尽さが減って「心の闇」的な方向へ舵を切った映画に仕上がっている。オリジナルの『ハロウィン』は良くも悪くも「マイケルの動機が不明瞭」だったので、「殺人鬼になった経緯をもうちょっとハッキリさせてほしい」という人にはこちらの方が向いているかもしれない。オリジナル版ではサラッと流されていた精神病院からの脱走シーンを丹念に描写している(平然と鎖を引きちぎるマイケルのフィジカルパワーに笑ってしまう)のが見所。1978年版と区別するために「2007年版」とか「ハロウィン(2007)」とか「ロブ・ゾンビ監督版」とか「リメイク版」とか呼ばれることもある。事情をよく知らない人が1978年版と間違えて借りていくこともちょくちょくあるんだとか。2年後に作られた続編のタイトルも『ハロウィンU』(10作目)とややこしい。古い方の『ハロウィンU』を『ブギーマン』のタイトルで出すようになってきたのも恐らく混同を避けるためだろう。ただブギーマンはブギーマンで同じタイトルの映画がいくつかあるからややこしいことに変わりはないんだよな……。

 アマプラ見放題に来る予定の『ハロウィン KILLS』は先述した通り12作目に当たり、去年劇場公開されました。2018年に公開された3つ目の無印版『ハロウィン』(40周年記念作品、シリーズ全体では11作目)の続編です。リメイクとかリブートっぽく見えるけどロブ・ゾンビ監督版とは異なり、1978年版の直接的な後日談で「事件の40年後」を描いている。マイケルに襲われたショックからパラノイア気味になってしまい、己のみならず娘まで厳しく鍛え上げ「次にヤツが来たら返り討ちにしてやる!」と息巻くサラ・コナーばりの変貌を遂げたローリーさんが見所の一本です。“ハロウィン”シリーズに関わることを長らく嫌がっていたジョン・カーペンターが久々に製作総指揮で参加した作品でもある。例によって他と区別するため「2018年版」とか「ハロウィン(2018)」とか「デヴィッド・ゴードン・グリーン監督版」とか「一番ヒットした奴」とか言われてます。そう、2018年版の『ハロウィン』ってメチャクチャ評判が良くてこれまでとは桁違いの興行成績を上げてるんですよ。確認できる範囲でもっとも金額の大きかった2007年版でも8000万ドルだった世界興収が一気に2.5億ドル以上まで伸びており、スラッシャー映画としては史上最高額になっている。時代によって貨幣価値が異なるから単純比較はできないが、とっくにブームが終了したと囁かれているジャンルでこれだけ稼ぐのは超異例ってことに変わりはない。1978年版を置いてない近所のレンタルショップでも2018年版だけは何本も並んでいます。アマプラの見放題にあるから視聴するのも楽チンだ。一応1978年版の続編ではあるものの、ストーリーに関しては「マイケルという殺人鬼が40年前に何人も殺した、ローリーという女性が生き残った、ルーミスという精神科医はマイケルのことをずっと危険視していた」程度の予備知識で済む内容だから1978年版を観るのが難しい場合は迂回しちゃってもさほど支障はありません。デヴィッド・ゴードン・グリーン監督版は新3部作として構想されており、今年の10月に公開予定の "Halloween Ends" でひとまず完結する予定となっている。でも何年かしたらマイケルはまた復活するんだろうな、と思ってしまっても仕方のないことでしょう。次の節目は50周年を迎える2028年か。

 まとめ。1978年版の『ハロウィン』(ジョン・カーペンター監督作品)は基本中の基本なのでシリーズを楽しむうえでなるべく押さえておきたいところであるが「映画は配信で観る派」からすると現在の環境的にとても辿り着きにくいため、飛ばしていきなりデヴィッド・ゴードン・グリーン監督版(2018年以降の新3部作)に進んでもOK。1978年版を観れた人はそのまま『ハロウィンU』(『ブギーマン』)に行くなり、2007年版や2018年版に行くなり好きにしていい。4〜6、H20やレザレクションといった少し古めのシリーズを楽しみたい場合は必ず『ハロウィンU』(『ブギーマン』)を押さえるべし。『ハロウィンV』はマイケルが出てこないどころか「ハロウィンの日に惨劇が起こる」以外で他のシリーズ作品とまったく接点がない一本だから観るかどうかはお好み次第で。UとVは見放題じゃないけどアマプラにもあるので比較的アクセスしやすい。4〜6とH20、レザレクションは古めの作品で今現在配信してるところもないっぽい(検索すると昔やってたところは見つかるがもうサービス終了している)から観るのがちょっと難しいかも。特に6はなぜかVHSとブルーレイしか発売されておらずDVD版が出ていないんで、レンタル屋でもなかなか見つからないんじゃないかしら。セル版のブルーレイもずっと再販されていないせいかかなり高騰しているし、再販やBOX化、各種動画サービスでの配信が待たれるところだ。

・夏アニメ始まりましたね。差し当たって『リコリス・リコイル』『てっぺんっ!!!!!!!!!!!!!!!』を視聴。

 『リコリス・リコイル』はライトノベル作家「アサウラ」がストーリー原案を担当しているオリジナルアニメ。女の子が主人公のほのぼの日常アニメ……と見せかけて社会に害為すテロリストや犯罪者どもを人知れず始末するダブルオーでスイーパーでファントムトリガーなガン・アクション・アニメだ。分類上は「バディ物」に該当するかな? 明るく元気で問題児な「千束(ちさと)」と口数少なく物静かで問題児な「たきな」のコンビが様々なミッションに挑む。アサウラと言えば『ベン・トー』が有名ですが、実はガンマニアで銃がいっぱい出てくる小説もいくつか書いています。借金返済のために女子高生が傭兵になる『デスニードラウンド』とか、タイトル通りサバゲを題材にした『サバゲにGO!』とか。インタビューによるとA-1 Picturesの代表取締役が『デスニードラウンド』を読んでアサウラに声をかけ「女の子と銃で何かをやってくれ」って感じで企画がスタートしたそうな。当初はダーク色が強かったらしいけどだんだん明るくなっていって現在の「パッと見日常系」なノリに落ち着いたという。最初からガン・アクション・アニメと喧伝したら銃に興味がない層を振るい落としてしまいそうなので日常モノっぽい雰囲気のアピールをしていたと語っているが、題名に「リコイル(反動)」と入っている時点で察していた人も多いだろう。作中で処刑人の隠語として使われる「リコリス」は花の名前で、日本語だと「彼岸花」や「曼珠沙華」と呼ばれている毒花です。スペインカンゾウという甘草の一種も英語で「リコリス」と呼ばれているけど、綴りが違う。アサウラはヒロインのネーミングを花関係にする傾向があるので本作も花をモチーフにしている箇所が多いです。女の子と女の子が銃と暴力で絆を深めるタイプの百合なのでとっても私好み。「いみぎむる」のキャラデザもイイし最後まで完走できそうだ。

 「!多すぎやろ」と言いたくなる『てっぺんっ!!!!!!!!!!!!!!!』はブシロードのアニメ。一応漫画版が原案ということになっているが実態としてはメディアミックス企画に近い。全国の高校生が集うお笑い選手権「てっぺんグランプリ」の優勝を目指す女子高生トリオが主人公で、漫画版は「地方予選の突破」を目標にストーリーが進行していくがアニメでは既に地方予選を突破し終えて本選に向けての準備が進んでいます。漫画版では「!!!」と3つしかなかったエクスクラメーションマークがメチャクチャ増えているのは、「漫画版だと3人しかいなかったメインキャラがアニメ版で一気に増量されているから」だ。「てっぺんグランプリのトリオ部門」に参加する5組の女子高生トリオがアニメ版のメインキャラなので、3×5で「!」の数は15個です。覚えていちいち手打ちするよりコピペした方が早いんだけども。漫画版は読んでないがアニメ版に関しては「お笑い選手権に出場する」という最低限のストーリーだけこなせば後は好きにやってええんやな、というスタッフの呟きが漏れ聞こえてきそうな自由度の高さでつい笑ってしまった。なんやかんやで最後まで楽しく観れそうや。ただ、第2話「キャトルの章」は「大統領暗殺計画を阻止しようとする」というストーリーだったせいか放送取りやめになっちゃったとか……このまま欠番になってしまうのか、それとも円盤特典か何かで復活するのかしら。


2022-07-04.

『BASTARD!!』の新アニメが配信されたのでNETFLIXと契約した焼津です、こんばんは。

 ネトフリは月額が高いので1ヶ月したら退会し、次のクールが配信されたときにまた入会するつもり。バスタード1クール分だけじゃ1ヶ月も保たないからスプリガンとバキとタイバニ2と、あとついでに「ネトフリ入ったら観るリスト」に登録していた作品をいくつか視聴しようかな。夏アニメ始まるしアマプラの『ターミナル・リスト』も観たいからあんまり消化できなさそうではある。

 とりあえず『BASTARD!!』の冒頭3話を視聴してみたが、時代を感じるキャラデザでさすがに懐かしくなってしまう。ヒロインたちよりダーク・シュナイダーの作画の方が気合入ってるのも笑った。バスタードのアニメはとにかくDSをカッコ良く描きさえすれば成立する、と勘所を弁えている模様。初期のエピソードはコミカルというかノリが軽くてモブがどんどこ死ぬ割には雰囲気が明るい。まだまだストーリーが動き出す前なんで初見の人からすればやや退屈な内容と映るかもしれないけど、4話目から「服だけ溶かすスライム」などエロティックな描写が増えてきて盛り上がる……はずなので「差し当たって3話まで付き合ったけどこれ以上観るのは気乗りしない」って方ももう少しだけ踏ん張ってほしい。というか原作読んだときはあまり気にしていなかったけどシーラの露出度が出だしからエゲツなくてビックリした。アニメはフルカラーなので剥き出しの乳がメッチャ目立つんですよね。「お姫様の格好じゃない……」って思いがずっと頭から離れなかった。更に先の方で確かもっとエゲツない格好をするはずだけど記憶がかなり曖昧になってきているので私の妄想かもしれない。バスタードは進むにつれシリアス要素がどんどん濃くなっていき、必然的に陰惨さも増していくのだが、シリアスばかりだと作者も息が詰まるからか同時にギャグ要素も加速度的に強化されていく。そのため途中からは脳天気というより「混沌とした雰囲気」って印象が強くなります。混沌に突入してからがこの作品の本番ゆえ、2クールと言わず4クールでも10クールでもアニメを作り続けてほしいものだ。最後はアニメオリジナルの展開で構わないからちゃんとストーリーが完結するところまで行ってくれ。ちなみにOPは12巻の表紙を再現しているカットが好きです。

・石口十の『勇者小隊(1〜3)』読んだ。

 副題は「寡黙勇者は流されない」。マンガアプリ“マガジンポケット”に連載されている漫画です。現代日本から異世界に召喚され、勇者に祭り上げられた主人公が魔王討伐のために旅立ち、無事任務を達成したところから始まる。「お前はもう用済みだ、死ねェェェ!」とムチャクチャなノリで襲われたりすることもなく、あっさり元の世界へ送還される手筈が整った。しかし魔法陣にお姫様が飛び込んできて、一緒に転送されるハメに。寡黙で落ち着いた態度の勇者に一目惚れし、ずっと慕っていたのだという。だが彼が寡黙なのは肝が太いからとかではなく、ただただ表情筋を動かす手間を惜しむほどの超絶面倒臭がりだったからである。内心「面倒くせー」と思いつつ、断っても面倒臭いことになるのは明白だったので「ああ」と同行を了承してしまった勇者。彼ら二人が辿り着いたのはファンタジーと縁のない現代日本……ではなく巨大人型ロボットがふたつの陣営に分かれて戦うSFアニメみたいな世界だった!

 というわけで「魔王は倒したけど別の舞台で新たな戦いが始まる」パターンの異世界転移モノです。ファンタジーな世界からSFな世界へ移ってしまったけど、表面上は大きく戸惑うことなく淡々と適応して戦乱に身を投じていく。内心はもちろん「面倒臭い」「とっとと現代日本に戻したい」の嵐である。主人公は「構造調律」という既存の道具に手を触れて改造する固有スキルがあり、これを援用して自機を改造、敵機を分解して無双します。敵機から剥ぎ取ったアームパーツを自機へくっつけてサブアームにするなど、戦うたびにどんどんキメラ化していく展開が漫画というビジュアル重視の媒体に合っていて面白かった。巨大人型ロボットをチューンして強化するのっていくつになってもワクワクする鉄板の流れだよな……『BREAK-AGE』が好きだったせいか少し懐かしくなってしまった。

 人類が滅亡の間際まで追い込まれていて見た目10歳くらいの女の子たちがパイロットとして投入されているというかなり末期的な世界が舞台ですが、同行している姫様が脳天気なキャラのせいかあまり悲壮感は漂わない。姫様、面倒臭がりで必要に迫られないかぎり能動的に戦おうとしない主人公を追い込んで戦わせる役割なので、最初の方は正直ちょっとウザい。ヒロイン的な魅力もあまりなく「このままで大丈夫なのか?」と少し心配になったりもしたが、3巻でようやく固有スキルが判明して主人公の強力なサポーターになる。やっぱりバトルものでは一緒に戦えるタイプのヒロインじゃないと厳しいですもんね。読者サービスめいたお色気シーンもほんのり用意されていますが、メインはあくまでロボバトル、「ロボットぶっ倒してパーツを鹵獲しまくる漫画が読みてぇ」というアナタにオススメのシリーズです。4巻はもうすぐ発売予定

・拍手レス。

 「南溟弓張八犬伝」ちょいやりましたが 霊基ポッドとやらが どうも某軍師の宝具に思え ダヴィンチに作戦指導する絵が勝手に見えた
 個人的に霊基ポッドは『ヴァルキュリアの機甲』の「クレイドル」を思い出したり。アレがカルデアの標準装備になったらイベント後も遠征システムを組めそうだけど第2部の終わりも近いし今更かな。

 『るいは智を呼ぶ』思い出深い作品ですね 八犬伝をモチーフだったとあの時は思いませんでした やり直すと絶対面白い時間が過ごせそう
 るい智はほぼすべてのキャラが初対面でゼロから人間関係を構築していくのが面白かったですね。そのぶん周回するたびに仲間たちの絆がリセットされてまたイチからやり直しになっちゃうのが辛かったけど……。


2022-06-24.

・壱百満天原サロメ経由でVtuberに対する関心が高まり切り抜き動画やらアーカイブやらをいろいろ貪った末、無事「周央サンゴ」にハマった焼津です、こんばんは。

 志摩スペイン村について語った切り抜きで話題になっていたことは存じていましたが、当時は「知らないライバーだから」とスルーしてしまった。興味という名の燃料が注ぎ込まれたことで「配信を観てみよう」という気持ちになりチャンネルへ足を運び、気づく。この子、配信してる間ほぼずっと喋り通しだな……圧倒されてしまった。比較的おとなしかったデビュー配信ですら自己紹介を脇に措いてポチッャコ(サンリオキャラ)の布教を開始する件があり、立て板に水とばかりにポチッャコ推しトークを領域展開してくる。やかま進藤とか雪村小町みたいなマシンガントークが大好きなのであっさり沼に落ちた次第。荒れ狂った後で急に冷静になる直角曲がり芸も良い。

 2年くらい活動しているからアーカイブの量が多く、まだ一部しか聞けていないが他の作業してる最中にちょこちょこ流しています。初期の配信「【雑談】マシュマロたべるよ【周央サンゴ】」とか聞くと「この頃はまだ落ち着いた雰囲気の可愛い系Vtuberキャラでやろうとしてたんだな……」と古参でもないのに感慨深くなる。1時間と9分くらいのところでセクハラマロを投げてる奴のHNが「納村不道」『武装少女マキャヴェリズム』への熱い風評被害が発生しているのは噴いた。こんな初々しい受け答えをしていた子が今やライブ感溢れる取り乱し配信をかますようになるのだから世の中わからないものだ。今夜の3Dモデルお披露目配信、果たして無事に済むのかどうか心配でもあり楽しみでもあります。

『悪役令嬢(ところてん式)』のコミカライズ連載が開始 効率廚ゲーマーと元悪役令嬢の入れ替わりファンタジー(ラノベニュースオンライン)

 『悪役令嬢(ところてん式)』、設定が気に入って原作小説を購入したけど2年近く経った現在も2巻が発売されないままなので「なかったこと」にされつつあるシリーズなのではないかと不安になっていたが、コミカライズ始めるってことは2巻を出すつもりもある……のか? 大枠としては「よくある悪役令嬢モノ」で、ゲーマー女子大生が気づくと乙女ゲーの悪役令嬢になっていた――という話です。この手の物語で気になってしまう「本来の悪役令嬢の精神ないし魂はどうなってるの?」という疑問に対するエクスキューズとして「ところてん式に押し出されて乙女ゲー主人公の中に入ってしまった」なる設定を採用しています。つまり「プレーヤーの分身であるべき乙女ゲー主人公の中身が悪役令嬢」という状況でストーリーが進行していく。ゲーム知識というチートもないままお嬢様からド庶民の体になってしまった悪役令嬢は、「本来の自分」を破滅させるわけにも行かず一蓮托生の身としてトラブルへ立ち向かうことに……そんな具合で転生(憑依)&入れ替わりというミックス作品になっており、面白そうだと衝動買いしてしまったのだが上記のようにいつまで経っても2巻発売告知すら出ない有様でした。表紙にしっかり「1」とナンバリングしているにも関わらず、である。続き物って判明しているのに続きが出そうにないから崩す意欲が湧かず、ずっと放置していました。興味も再燃してきたしいい加減着手すべきか? いや、せめて2巻の発売予定がアナウンスされてからでないと……迷いつつ続報を待つ。

【予告】期間限定イベント「南溟弓張八犬伝」開催決定!

 「6月下旬」とボカしているけどカルデア放送局 ライト版が29日配信だからどう考えても「この後すぐ!」のパターンじゃないか。遅れて翌日になる可能性も僅かにあるけど、それ以上ズレると7月になってしまうからな。さておき次のイベントはタイトルからして和サーヴァントがメインみたいです。トラオムに登場した立ち絵のみでバトルグラがなかった勢、いよいよ本格参戦なるか。

 「八犬伝」と言えば曲亭馬琴の小説『南総里見八犬伝』、葛飾北斎が挿絵を描いた作品でもあるので北斎ちゃんのメイン入りは確定している。特攻サーヴァントとして公表されているのはフォーリナーのみだけど、水着(セイバー)の方は出てこないのかな? 「南溟」の「溟」は「暗い海」を意味する語で、浅瀬ではなくある程度の深さを持った海原のことを指すが単に「南の海」くらいに受け取っても構わないだろう。個人的には『裂けて海峡』のラストを想起する単語だ。「弓張」は八犬伝と同じく馬琴と北斎コンビの『椿説弓張月』から来ているはず。トラオムにも登場した「鎮西八郎」こと「源為朝」を主人公に据えた物語であり、『保元物語』などの史実とされる要素をベースにしたパートと「為朝は生き延びて琉球に辿り着いた」という伝承を膨らませたパートから成っている。『椿説弓張月』は徐福伝説について触れている箇所もあるということで、徐福ちゃんの実装が期待されています。☆5アーチャー為朝、☆4キャスター徐福、☆3アーチャー「トラオムのスナイパー坊さん」ってラインナップかしら。馬琴が来る可能性もあるけど、コラボ系でも「実質本編」でもないイベントで4人もサーヴァントを実装するとは考えにくいから出るとしても立ち絵のみだと予想しています。

 余談。実はエロゲーにも八犬伝をモチーフにしたソフトが存在します。タイトルは『るいは智を呼ぶ』(リンク先は移植版)、生まれつき特殊な呪いと力を背負った「痣持ち」の少女たちがまるで運命に招き寄せられるかのように集まってくる伝奇系のストーリーです。八犬士も「体のどこかに痣がある」から明らかに八犬伝を意識した設定であるが、作中では関連を明言していない。通う学園もバラバラ(通ってない子もいる)でまったく不揃いなメンバーが一堂に会して呪いに立ち向かっていく話であり、いろんな制服のヒロインたちを眺められるのも長所の一つ。そして最大のウリは「主人公が女装している少年である」ことです。本来の性別がバレてはならない、という呪いを負っているせいで本人の嗜好を無視して性別を偽り続けなければならない。周りの子たちと心が通えば通うほど心苦しくなっていく、その懊悩が美味しいのでもうだいぶ古いゲーム(2008年発売だからもう14年前)だけどオススメしておきます。テキストにかなり癖があるので慣れるの大変ですが……私は10時間以上プレーしてやっと慣れ始めたっけ。

・原作:紅葉煉瓦、漫画:大生月の『美少女になってちやほやされて人生イージーモードで生きたい!(1)』読んだ。

 「ハーメルン」と「小説家になろう」の両方で連載されている(なろうは特殊タグ使えないので演出に凝ったバージョンが読みたい場合はハーメルンの方へ行くべし)同名小説のコミカライズです。なお原作は書籍化されていない。書店の平台で見かけて一目惚れし、購入。総合的に判断すれば「面白かった、続きも読みたい」となる漫画ながら、短所も露骨に出ていて評価に迷うところである。

 掻い摘んで説明すると「美少女なのにコミュ障で友達ゼロな主人公がコミュ障を克服してちやほやイージーライフを送るためにVtuberとしてデビューする」という話です。既存の作品で喩えると『ぼっち・ざ・ろっく!』の後藤ひとりを美少女にしてロックからVtuberに題材変更した感じと申しますか……コミュ力が乏しく、すーぐ調子に乗ってはプチ炎上するクソザコメンタルのイキリ新人が少しずつ成長していく様子を「女の子同士の交流」を軸に描いていくので、百合モノとして読めなくもない(ただし男性Vtuberとかも登場する)。短所というか引っ掛かる部分は非常にハッキリしています。読者の興味を惹くフックとして「主人公には平凡かつ孤独な男だった前世の記憶がある」という生まれ変わり設定が用意されており、このTS転生要素がノイズになってしまって私はなかなか虚心に楽しめなかった。

 まず単純に状況がわかりにくい。「転生」と明言しているが、交通事故に遭って……とか通り魔に刺されて……ではなく「夢にサンタさんが出てきたから『美少女になってちやほやされて人生イージーモードで生きたい!』って願ってみた」ところ美少女に生まれ変わっていたという、「最近の転生モノは転生の経緯が雑なの多いけどさすがにこれは雑すぎるだろ!」って代物です。「転生した」と言ってるけど死んだ記憶はないっぽいので、主人公の前世は途中でふっつり途切れてしまっているんですよね。「元の世界の方はどうなってるの?」とか気になるけど本筋とはまったく関係ない事項だから触れる機会もないだろう。で、雑に「転生した」というから仮にそれが2020年のクリスマスだったとして「2020年12月24日に生まれた女の子」にTS転生し、その子が16歳になった頃――2037年頃が舞台になるのかと思いきやさにあらず。転生した主人公(黒音小宵ちゃん)が高校入学したあたりで「バーチャルユーチューバーに流行の兆し」というニュース記事が出てきて作中の時期が2018年前後だと判明する。そう、厳密に言うとこの作品はTS転生モノに時間遡行要素が加わった「逆行TS転生」なのだ。ただし世界線が異なっていて、前世では「某にじさんじ」(隠す気あんのかこの表記)がVtuber事務所の大手として名を知られていたが、転生後の世界においてそのような事務所は存在せず別の事務所が大手として君臨しつつある。冗長になるからかコミカライズ版では削られているけど、原作の記述によると「ライダーはいても戦隊はいないしFFはあるのにDQがない、何ならマジで信長は女で信姫と呼ばれていた世界」らしく完全なパラレルワールドとなっている。なので前世の知識を利用して無双する展開もない。むしろ「孤独な男として生きた前世の経験」が足枷になってコミュ障をこじられる結果となってしまっています。前世がデバフとして働くちょっと珍しいタイプの作品だ。これ、主人公が転生しなければ小宵ちゃんは普通に同性からも異性からもちやほやされるハッピー美少女となれていた可能性もあるのでは……? 台頭しているVtuberも知らない子ばかりなんで「些細なことで炎上して引退に追い込まれた推しVを救うため、未来知識を駆使して炎上を未然に防いだり即座に鎮火したりする」とか、そういうやり直しモノ特有の展開は今後もずっとマジでなさそうなのである。正直、1巻の時点では主人公を取り巻く環境が無駄に複雑になるだけの設定で「元は男だった云々の設定要らなかったんじゃない? 単にコミュ障の美少女を主人公にすれば良かったのでは?」と思わずにいられない。性自認に関しても男だった頃の感覚をだいぶ引きずっているみたいだがそのへんの細かい掘り下げもなく、「このままだと身も心も女の子になってしまうんではないか」って不安についてあまり深く考え込みたくないようだ。「美少女になりたい」と願ってなったのだから「想像していたのと違った!」みたいな戸惑いやドキドキ、自己の性をどう捉えるかに関してもっと追及してほしいところである。TS漫画としての旨味は今んところほとんどない。

 と、不満点は先に吐き出しておいたので以降は本作品の長所について述べていこう。「TS漫画としての旨味は今んところほとんどない」と書いたが、裏を返せば「あまり活きていないTS設定」のおかげでラブコメ要素も不活性状態に陥っており、「Vtuber漫画としてフラットな感覚で楽しめる」んですよね、コレ。主人公は肉体的には女性だけど精神的には「異性愛者(ヘテロ)の男性」だった頃の感覚を引きずっているため、男に対して強く恋愛感情を抱くことはない。おかげでどんなイケメンが登場しようがラブコメチックなムードはまったく漂わず、Vtuber活動の部分に意識を集中させられる。恋愛要素は物語において読者のテンションを上げる起爆剤となりうる反面、「恋愛をメインに持ってくるとそれ以外の要素が目立たなくなってしまう」劇薬めいた性質も併せ持つ。ラブコメ的な邪念を封じたぶん、少なくともこの1巻については「Vtuber以外の要素に気を取られることはない」つくりとなっています。

 あとシンプルに「Vtuberとリスナーの掛け合いが自然で面白い」のが長所の一つです。ストーリーの都合に合わせている部分は多少あるにせよ、リアクションが大仰すぎないため全体的に不自然さがなく、「本当にありそう」と思えるようなキレの良いセリフやコメントの数々で楽しませてくれる。「実際にこんなVtuberがいたら……」というシミュレートが盤石で「Vtuberモノの大本命」という帯の惹句もあながち誇張表現ではありません。ぎこちなくないし「パロディみたい」という感触もない。ツイッターで集団幻覚を見る連中が現れても不思議じゃないくらいの実在感がある。事故って予定の途中で逃亡した初配信をやり直そうと翌日に枠を取り直し、しれっと「はじめましてにゃ☆」つったら「はじめまして(2回目)」という容赦ないコメントが返ってくるところは笑った。その後の「さすがにごまかせないか…」と呟いてから謝罪するコマの「いったんごまかそうとすな」ってコメントが好きです。

 せっかく美少女に生まれ変わったのにポン(コツ)全開のイキリVtuberとして出発するハメになった小宵ちゃんの明日はどっちだ! ってな具合で現実世界ではスタイル抜群の美少女なのに、RP(ロールプレイング)が半端だったせいで「自分をばいんばいんの美少女だと思い込んでいる哀れなツルペタ猫耳ロリ」を演じてしまう倒錯まみれの諧謔も相俟って他にはない魅力を発揮しています。煽られてカッとなりスリーサイズを公表しちゃうシーン、恐らく本人のリアルな数値なんだろうがキャラのせいで誰も信じてくれないんだろうな……と想像してフフッとなる。煽り耐性ゼロなところが可愛い。ちなみに漫画版の公式略称は「ちやイジ」で、原作小説の方は「美っち生イき!」だそうです(原作者談)。

・拍手レス。

 為朝を初めて知ったのは『屍姫』でアンデッドとして登場した時でした 後に史実の姿を知って『フィクション抜きでも相当だな!?』と驚嘆したのもいい思い出
 史実とされている部分だけでも相当ブッ飛んでるのでフィクションに登場させる場合リアリティラインをどこらへんに設定するか悩むタイプの歴史人物ですね。


2022-06-19.

・思ったよりずっと長くて時間掛かっちゃったけど、やっとこ第2部 第6.5章「死想顕現界域 トラオム 或る幻想の生と死」を終わらせた焼津です、こんばんは。13、4節くらいかと思ったら20節以上あるんですもの、ボリューミーにも程がある。

 3つの界域(軍勢のようなもの)が聖杯を巡って争うという文字通りの「聖杯戦争」であり、大半が幻霊レベルとはいえ万単位のサーヴァントがぶつかり合う「アニメ化ほぼ不可能」なエピソードです。CMはアニメパートが短くてガッカリしたが、本編はガッツリ読み応えがあって満腹になりました。テキストの雰囲気がちょくちょく変化するところを見ると複数のライターが執筆しているのかしら。一番好きになったキャラは復讐界域のクリームヒルト、狂おしいほどの想いと冷徹な計算が両立するあたり我がツボに突き刺さって「今からギャグ堕ちが楽しみですねぇ!」となった。「明けぬ喪に服し続ける」陰鬱なビジュアルが好き。宝具演出の、本来なら扱えるはずのない魔剣(バルムンク)をズリズリと引きずりながら歩く姿も痛々しくてお可愛らしい。ガチャ回しても来なかったけど、いつかすり抜けや☆4配布でうちのカルデアに来てほしいものです。ほか、一枚絵まで用意されていたサロメは無論のこと、ぐだを救出するために散っていったモブたちの勇姿も記憶に残る章だった。死を恐れながら宝具を発動するシチリアのライダーさん……モブと言えば滅亡が決まった復権界域に殉じて最後の一兵まで後悔なく戦い続けたサーヴァントたちの件も好きで何度も読み返したり。全体としては正直「長くて少しダレた」という感想になるが、ところどころ「おっ」となる見せ場があって良かったです。特に終盤は先が気になってタップする指が止まらなくなった。

 立ち絵だけでバトルグラフィックが実装されなかった非モブサーヴァントも何騎かいましたね。スナイパーの坊さんは出番少な過ぎなことと真名がハッキリしなかったことを考えるとまた何かで登場しそうな雰囲気が漂っている。スナイパーで坊さんというと信長暗殺に失敗した「杉谷善住坊」を連想するが、それだとレアリティは☆3が限界という気がする。というかセイバーウォーズ2にチラッと出てきた謎の赤髪ガンマンちゃんも音沙汰ナシだし、このまま年単位で放置される可能性もあるな。女教皇ヨハンナはあまりにも戦闘向きではないのでマックスウェルと同じく立ち絵のみになりそう。なんとなく思い出したけど、スタリラで星見純那がタロットカードをモチーフにした劇「アルカナ・アルカディア」で「実際は存在しないはずの『女教皇』をどう演じればいいのだろう」と悩むシナリオがあったっけ。あとは何と言っても超絶カッコイイ狙撃マシーンこと「鎮西八郎為朝」、好きな歴史人物だけにテンション上がりました。源頼朝や義経の叔父に当たり、身の丈七尺(2メートル以上)の大男。手の付けられない乱暴者だったため「西で頭を冷やして来い」と九州まで飛ばされ、源氏の威光が届かない場所で大人しくするかと思いきや全然そんなことはなく、地元のワルどもとつるんであっちこっちをシメて回った(当時まだ十代)という「ヤンキー漫画の祖先か?」って奴です。「九州はだいたい制覇した」という意味で勝手に「鎮西八郎」と名乗るなどひたすら好き放題かました。その名残として九州の至る所に為朝伝説が残っている。保元の乱において清盛や兄である義朝(頼朝や義経の父)と敵対することになり、敗北して伊豆大島に流されるがそこでも大暴れしてまた伝説を築いている。「矢で船を沈めた」という逸話もあり、トラオムでミサイル並みの描写になっていたのもあながち誇張表現ではないという恐ろしさ。鎌倉武士の強さを語るときに「鎮西八郎をも上回る」だとか「鎮西八郎に匹敵する」とかいった言い回しが出てくるほどの「強さの指標」と化しており「もはや単位」と申しても過言ではない。「こいつは0.3為朝だな」とか(戯言)。彼を主人公にした『朝嵐』という小説も面白いのでオススメ。

 トラオムの最後は「えっ、そこで終わるの!? 解決してなくない!?」というスゴい切り方するので途方に暮れてしまうが、きのこなら……きのこなら何とかしてくれる! と信じて7章「黄金樹海紀行 ナウイ・ミクトラン」を待つことにします。全然知らないので調べたら「ナウイ」はアステカの言葉で「4」を意味し、「ミクトラン」はアステカ神話における「冥府」を指す言葉とのこと。アステカ神話において世界は滅んだり甦ったりのサイクルを繰り返していることになっており、それぞれの太陽(時代)を「ナウイ・○○」と呼んでいる。その規則に従うと「ナウイ・ミクトラン」は「4の冥府」なる名前の時代を表していることになるが、アステカ神話の中にそんな太陽(時代)は存在しない。つまり「あるはずのない時代」に突入した南米を綴る異聞帯というわけだ。「黄金樹海」が地表で、そこから「冥府」に潜っていくような話になるのか? トラオムでカドックがデイビットについて語っていたが、相変わらず謎の多い人物と言った印象でぶっちゃけ何もわからなかった。時として言語そのものが通じていないように感じることもあった、ということはデイビットって何かの器みたいなもので場面場面によって「中身」が違う存在だったりするんだろうか。「人間と宇宙的存在が合体したものなので表出する割合によって言葉が通じたり通じなかったりする」という考察もあり、「要するにウルトラマン」なる結論を出していて噴いた。

 現在は聖杯戦線イベント『ムーンサルト・オペレーション』開催中。ジナコがボスといった体裁で始まったけど、どう考えてもボスキャラを務められる器じゃないので結局BBが真のボスとして出てくる「うん、知ってた」な展開。ラスボス系後輩と自分で言ってるし当然の帰結と言えよう。聖杯戦線はバトルメインで割と時間が掛かるから面倒という方も多いでしょうが、うちの“山の翁”が大活躍するイベントなので私は好きです。単騎運用が基本なのでB3枚持ちは強い、バスターゴリラ大正義。場合によっては不利属性のキャスターすら殴り殺せることもある。今回から仕様が少し変わって「チーム全体の行動値」ではなく「個々の行動値」が割り振られるようになり、一騎が突出して相手マスターを殴りに行くという戦法は取りにくくなった。特にマスターの行動力がとても低くなっていて、「マスターでマスターを殴りに行く」という毎度お馴染みの珍風景は拝むのが困難になっている。勝つこと自体はそこまで難しくないが、宝箱を全部回収しようとするとエネミーを倒し切らないよう調節しないといけなくて厄介。

大塚英志の小説版『木島日記』新刊『木島日記 うつろ舟』、7月28日に星海社より発売予定

 新刊予定を眺めていたら急に『木島日記』が生えてきて驚いた。『木島日記 もどき開口』以来5年ぶり、小説版としては4冊目に当たります。「5年ぶり」というのは通常のシリーズものであれば充分「久々」の範疇に入る長さであるが、木島日記の場合は2冊目の『乞丐相』から3冊目の『もどき開口』まで16年掛かっているので「思ったより早かったな」という感想になる。そもそも『木島日記』とは何か? 軽く解説いたしますと、原作:大塚英志、作画:森美夏による昭和初期を舞台にした伝奇漫画が大元で、1998年から2003年まで5年に渡って連載された。最初はA5判サイズで全4巻の単行本が刊行され、後にB6判サイズの新装版が上・中・下の全3巻で出し直されている。漫画をノベライズした小説版は2000年から刊行を開始した。7月に刊行される『うつろ舟』は漫画版第11話(最終話ですごく長い、新装版の下巻が丸々これに費やされた)「天地に宣(の)る。」をベースにしたエピソードであり、実は20年ほど前“KADOKAWAミステリ”という雑誌に連載されていた。だが、途中でカドミスが休刊したことに伴い未完となったのである。小説版木島日記が長らく宙ぶらりんになってしまった原因の一つはこの「カドミス休刊」にあるのだろう。

 『うつろ舟』は「天地に宣る。」のノベライズであるが「まんが版の続き部分の展開が含まれています」とのこと。出版社が角川から星海社に変わっているのは時間が経ちすぎてもう角川に大塚の小説担当者が残っていないからで、“メフィスト”時代の担当が星海社にいるからそっちで出すことになったみたいです。部数がだいぶ少ない(角川時代の1/4)とコメントしているから確実に入手したい方は予約しておいた方がベターでしょう。同じ星海社から8月に小説版『北神伝綺』、9月に『北神伝綺 石神問答』が発売されると告知されていて「まさかの3ヶ月連続刊行!?」って愕然としています。『北神伝綺』も原作:大塚英志、作画:森美夏の伝奇漫画が大元。連載や刊行は『木島日記』よりも古く「偽史三部作」(あるいは「民俗三部作」)の第1部に位置付けられている。『木島日記』が第2部で、『八雲百怪』が第3部。『八雲百怪』の小説版は出ていないけど『くもはち』が一応関連作ということになるだろうか。『北神伝綺』は『MADARA 転生編』や『摩陀羅 天使篇』の登場人物である「兵頭沙門」の養父「兵頭北神」をメインに据えた物語だったから、MADARAの流れで入ってきた読者も多いというかMADARAのファンを誘導するためにそういう設定にしたんだろう。なお『天使篇』はあと数章で『転生編』にマトリョーシカのように呑み込まれる――という構想で2016年に角川に企画書を提出しており、「角川の誰かがやるといえば再開できる」状態らしい。『魍魎戦記MADARA』の開始は1987年、最終章という触れ込みでスタートした天使篇すら1994年に1巻が発売されているのでEVAよりも古いシリーズなんです。私は激烈に熱心なファンというわけじゃないが、小中学生の頃にハマっていた作品ではあるのでいい加減そろそろケリをつけてほしい気持ちはある。転生編は『僕は天使の羽根を踏まない』という『MADARA MILLENNIUM 転生編』を改題増補した小説で決着したことになっているが、「終わらない昭和」(昭和74年――1999年)を巡る天使篇は1997年に出た3巻以降まったく動きがない……角川の誰かが急にやる気を出してプロジェクト再開する奇跡に賭けるしかないのか。

 話がマダラ方面に逸れてしまった。小説版『北神伝綺』は雑誌“メフィスト”に連載され、単行本も出すという話が何年か……いや十何年か前にあったけど結局出なかったんですよね。“ザ・スニーカー”で連載されたバージョン(ノベライズではなくオリジナルストーリー)もあり、そちらを『北神伝綺 石神問答』として刊行する様子。どれも10年以上経ってのお蔵出しなのでホントにビックリです。待てば英志の日和ありだな。

・催眠電波の『『趣味改変アプリ』で女の子にエロい趣味を持たせたら一体全体どうなるの? という実験をしてみた話(1〜2)』読んだ。

 「フランス書院eブックス」という電子書籍専門レーベルから出ているラノベっぽいノリのポルノ小説です。元はノクターンノベルズ(なろうの18禁版)で連載されていた作品。イラストは表紙だけで挿絵まったく付いていないから注意です。エロ漫画やエロ小説は物理書籍だと置き場に困るので昔から電子書籍の需要が根強いジャンルでありますが、フランス書院eブックスは2016年に創刊した比較的新しめのレーベルで、初期はオッサン向けというかあまりラノベっぽくない「普通のフランス書院」なムードだった。2020年頃からライトノベル調の表紙をあしらったジュヴナイル・ポルノ系作品が増えてきて最近はかなり「美少女文庫」っぽくなってきている。かつて物理書籍で1冊だけ出た小説版『搾精病棟』も現在はこっちに移っています。

 趣味改変アプリ〜はネット連載の開始が2021年1月、電子書籍版の刊行開始が2022年3月からという若いシリーズでまだ完結していません。謎のアプリで義妹にエロい趣味を植え付ける――という短編を膨らませて長編化したもので、活報によると連載版と書籍版でだいぶ構成を変えているらしい。アイドルちゃん(1巻の表紙を飾っている子)がメインの構成に変えた結果、ヒロインの一人である金髪お嬢様の出番がメチャクチャ少なくなっている。『夢見る男子は現実主義者』のクロマティこと「東雲・クロディーヌ・茉莉花」並みに存在感が薄い。抜き取った金髪お嬢様のエピソードは3巻で全部回収予定ということだから次はお嬢様が表紙かな。

 ストーリーは「スマホに変なアプリが入っていて自分以外の人間の趣味を編集できるようになった」という、一種の催眠モノです。あくまで趣味を編集する(既にある趣味を消す、または新しい趣味を加える)だけで即座に人を操ったり認識をズラしたり記憶を奪ったりすることはできない。そういう意味では万能性が低く他の催眠系能力と比べたら不便かもしれない。主人公はこのアプリを使ってタイトル通りに周りの女の子たちにエロい趣味を植え付けていくわけですが、特徴は「主人公にとってエロ<実験であり、アプリの性能を確かめて極めることが一番重要、SEXは単なる結果でしかない」点だ。過去サキュバスのような女性に童貞を奪われたこと、実の母親が男をとっかえひっかえするタイプの女だったことから肉体関係に幻想を抱いておらず、性欲があって快楽も普通に感じるけど「アプリの効果を検証する」ことは最中であっても決して忘れない。こういう催眠モノって通常は「可愛い子にエロいことをする」のが最大目標であって「女の子を操る能力やアプリ」はただの手段でしかないから、「エッチなことをしたくてアプリを悪用する」のではなく「地味な趣味だとアプリの効果を検証しにくいのでもっともわかりやすい『性欲』にフォーカスを当てた趣味に改変する」主人公は相当珍しい。性欲を満たすためにヒロインたちを玩具にするタイプの催眠モノは手軽に興奮できる反面、「何でもできてしまってつまらない」「ある程度プレイがエスカレートした後は迷走してしまいがち」という難点があります。そこに来るとこの主人公は顕微鏡でプレパラートを覗き込むようにヒロインらの痴態を観察し、「自分たちはどこへ辿り着くのか」客観的に眺め下ろしていくのでエロさと興味深さがうまいこと両立する。実験の過程で自身に「妹」という概念へ執着があることを発見するなど、主人公にも未熟な部分があって冷徹になり切れない不完全さを抱えているあたりも読み所。

 ポルノ小説なので濡れ場の描写はふんだんに用意されていますが、本シリーズにおける「エロさの本質」は本番シーンそのものよりも「ヒロインの内面描写がしっかりと綴られている」部分にある。趣味改変アプリによって感情の根本が書き変えられ「愛」を強制的に芽生えさせられる様子が数ページにも渡って丹念に丹念にじっくりと説明される。その丁寧さが「魂の蹂躙」といった趣を呈し、待ちに待ったエッチシーンの淫猥さを何倍にも増幅してくれる。「主人公を想ってオナニーする」、たったそれだけの趣味を追加されただけであっという間に「かつての己」が崩壊していくヒロインたちの姿、さながら愛という名の麻薬を致死量限界まで打たれたかのようだ。「男の人が苦手」「匂いが生理的に無理」だった義妹ちゃん(2巻表紙の子)が「主人公の匂いを嗅ぐ」という趣味をアペンドされた結果、風呂場でトランクス盗んでスーハースーハークンカクンカするようになっちゃうの、行動だけ見ればギャグ(ちゃんとすり替え用の新品を準備している周到さも爆笑もの)なんですが、「お兄ちゃんの匂い」によって理性が融解していく義妹ちゃん視点の文章を読むとストレートな陵辱ポルノよりもゾクゾクする。主人公は特定の誰かと付き合うつもりがないので告白されたら断るようにしており、嗜好を狂わせるだけ狂わせておいて責任取るつもりがさらさらないあたりに並々ならぬ酷薄さを感じる。1巻のメインであるアイドルちゃん(厳密に書くと元アイドルで現在は女優)が「セフレでもいい!」と懇願して何とか彼を自分に対して夢中にさせようと全力で媚びるようになっちゃうの、体ではなく尊厳そのものを犯しているような気分になり、とってもボーノです。

 最終的にはハーレムエンドに落ち着くのかもしれませんが、現時点でヒロインたちは「何とか彼の一番になろう」と奮起している状態であり、修羅場ってはいないのだけどまだまだ油断を許さない。そういう意味では「ヤることヤッちゃってる系ラブコメ」として楽しめなくもない……か? 主人公の性格からすると「全員が負けヒロイン」になりそうっつーか、現状でもみんな負けヒロイン臭がスゴい。最終章でいきなり登場したポッと出の新ヒロインとくっついて「責任取らず他の連中すべてヤリ捨てエンド」を迎える可能性もこの主人公だと絶無とは言い切れない。ヒロインが5人いるから、各巻ごとにそれぞれ表紙を担当すると仮定したら5巻で終了かしら。売上次第でもあるだろうから正直よくわからん。余談ですが、1巻と2巻それぞれのボリュームは文庫本に換算すると260ページと285ページです(公式発表による)。巻末に「もしアプリの適用範囲を学校全体に広げたら」という『雫』のBADエンドみたいな番外編が収録されているので、それを除くと本編はもっと少ない。電子書籍は物理書籍に比べてボリュームを把握し辛いのが難点であり、フランス書院eブックスの中には税込みで800円くらいするのに100ページちょっとしかない中編サイズの作品も含まれているため、気になる奴を見つけても必ず確認するように心がけておきましょう。ポルノ小説は広告を出せる場所が限られているから宣伝しにくく、売上が大きく伸びることもあまりないのでどうしても割高になりがちなのだ。


2022-06-11.

『ベルセルク』24日発売号より連載再開へ 構想メモなど見つかり親友の森恒二氏が監修(ORICON NEWS)

 最後まで三浦建太郎が描き続ける――という、もはや叶わなくなった理想と異なる形とはいえ『ベルセルク』の完結を拝める可能性が出てきたことはひとまず喜びたい。『ホーリーランド』『自殺島』の作者である「森恒二」は三浦建太郎の高校時代の同級生。昔から親交があり、「もしベルセルクを再開するとしたら」という話題で最有力候補として名前が挙がる存在でした。が、『創世のタイガ』『無法島』、二つの連載を抱えている状態で作画カロリーの高い『ベルセルク』を手掛けるのはさすがに無理だろう……と消沈していたわけです。「監修」という立場で加わり、主な作業は漫画制作スタジオの「スタジオ我画」が担当することになるらしい。スタジオ我画は三浦建太郎が設立した会社であり、彼のアシスタントを中心に構成されている。去年にスタジオ我画名義で『ドゥルアンキ』という漫画も刊行しています。

 三浦建太郎は生前森恒二に最終回までのストーリーを語っていたとのことで、その「語ってくれた内容」をもとに中断していたベルセルクの続きを紡ぐことになる。語られていないこと、つまり森恒二やスタッフの創意による肉付けは一切行わず、記憶がハッキリしない部分もカットするとのことで、ひょっとするとダイジェストに近い形式になるのでは……という不安も漂う。しかし、「ここで終わりにしたくない」という関係者たちの強い意志によって物語が再び動き出す嬉しさに比べれば瑣末事。ガッツたちの旅が続くことをひとまず寿ごう。「あそこで終わっていた方がガッツたちにとって幸せだったかも」というハードな展開が待ち受けているやもしれませんが……冨樫義博が突如ツイッターを始めて『HUNTER×HUNTER』が再開されそうなムードも醸されているし、今年の漫画界もいろいろと話題は絶えないな。

・塗田一帆の『鈴波アミを待っています』読んだ。

 作者名は「ぬるた・いっぽ」で略すと「ぬるぽ」になる。本書がデビュー作の新人で、早川書房から刊行されているのでハヤカワ系のルートで世に出てきたのかと思いきや「ジャンプ小説新人賞」由来である。ジャンプ小説新人賞は定金伸治、村山由佳、小川一水、乙一などを輩出した「ジャンプ小説・ノンフィクション大賞」を前身とする新人賞で、名称が変わったりと何度かのリニューアルを経ながら現在も続いています。今はジャンルを問わない「ジャンプ小説新人賞」、ホラーに特化した「ジャンプホラー小説大賞」、恋愛に特化した「ジャンプ恋愛小説大賞」の3つから成っている。アニメ化するほどヒットした受賞作がないので前身時代も含めて30年以上の歴史を誇る賞ながら一般的にはマイナーな存在でありましょう。『怪談彼女』みたいに結構続いたシリーズもあるんですが……さておき、塗田一帆は2020年に「ジャンプ小説新人賞2020」のテーマ部門「この帯に合う小説」(2020年一番泣ける物語――最後の一行で涙が止まらない!)で金賞を獲りました。ジャンプ小説新人賞は金賞・銀賞・銅賞・特別賞の4段階なので、ランクとしては最上です。受賞作「鈴波アミを待っています」は短編でそれを元にしたコミカライズ作品も描かれており、ジャンプ+で読むことができる。本書『鈴波アミを待っています』はその受賞作を膨らませて長編小説にしたサイズアップ系リメイクであり、コミカライズと読み比べてみると大まかなあらすじはあまり変わらないのだが、細部が詰め込まれたことにより流れる「空気」というか作品の質感が大幅に向上している。時間がない人はコミカライズで済ませてもいいけど、「Vtuberをテーマにした小説」をじっくり腰据えて読みたい方は長編版の方が断然オススメです。

 ある日、推しのVtuberが失踪した――何の前触れもなく。2020年2月24日の23時。推しのVtuber「鈴波アミ」がデビュー一周年を迎える日で、豪華な記念配信が予定されていた。しかし動画は待機状態のまま一向に切り換わらず、その日を境に彼女は音信不通となってしまう。ネット上で付き合いのあった他のVtuberたちも彼女の行方を知らず、手掛かりも何もないまま日々が過ぎていく。喪失感を埋めるため、鈴波アミのファンたちはチャットスペースに集まり一年前のアーカイブを夜ごと再生して「あたかも今配信されているかの如く」振る舞いながら過ぎ去った思い出の数々を語り合った。まるで傷を舐め合う動物のように。一人、また一人と待機所に集まるファンが減っていき、外野から「推しVに捨てられた哀れな連中が集団幻覚を見ている」と揶揄されながらも、諦め切れずに鈴波アミの影を求め続ける。そして遂に主人公は手掛かりを発見するが……。

 令和の忠犬ハチ公物語です。Vtuberを題材にしたフィクションはいくつかあり、来月にも『VTuberはママならない!』のコミックが出版される運びとなっている。2021年から書籍化を開始したライトノベルの『VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた』は順調に巻を重ねており、「このままアニメ化するのでは?」という勢いさえ感じさせる。商業出版物の範囲で「Vtuberもの」の歴史を辿っていくと最古の作品として『VTuberを始めた学級委員長(清楚)がエロすぎて困る』(2018年)に行き当たるが、これはVtuber小説というより某清楚さんパロディエロギャグ小説なんで今となってはもう語られる機会もあまりない。ちなみに伊藤ヒロも2018年頃に「クソザコ ムカデ委員長」という企画を提出していたらしいが実現しなかったようだ。なろうやカクヨムあたりでVtuberを題材にした小説が投稿されるようになったのも2018年あたりからである。

 出版物ではないけど2019年にアニメ……というよりバラエティ番組に近い『バーチャルさんはみている』が放送&ネット配信され、評価はともかく「Vtuber」の概念がより広く世間へ浸透していくことになる。この時期だと『【自己紹介】はじめまして、バーチャルCTuber真銀アヤです。』『仮想美少女シンギュラリティ』がVtuberものに該当するか。2020年には『妹の好きなVtuberが実は俺だなんて言えない』というラブコメ小説も出ているが、これに関してはまったく記憶に残っていない。2021年には先述した『VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた』や『推しVが教え子で私がママで!?』の単行本が発売されて「Vtuber+百合」の流れも観測できるようになる。2022年、つまり今年には『Vtuberってめんどくせえ!』というデビュー直後からアンチまみれの男性Vtuberが炎上騒ぎに巻き込まれて事態の鎮静化に奔走するライトノベルも出ており、どちらかと言えばVtuberの可能性を信じた前向きな作品が多かった中で「V界隈の面倒臭さ」(「てぇてぇが見たい」と欲望を押し付けてくるファン、無制限に暴言と誹謗中傷を繰り返すアンチなど)を題材にするなどステージがまた一歩進んだ印象があります。フリーでやってる「個人勢」と事務所に所属する「企業勢」との違いにも触れており、「お仕事もの」としての側面も厚くなってきている。

 話を『鈴波アミを待っています』に戻そう。受賞作である短編を長編小説として書き直した作品であるが、長編と言ってもソフトカバーで200ページくらいなので分量的にはそこまで多くなく、一気読みしようと思えば容易に可能なボリュームである。「元は短かった話」を長くするとどうしても「引き延ばした感じになってしまうのでは?」と不安になるが、本書に関してその心配は杞憂と申しますか、むしろ最初から長編として書く方が適切だったのでは? という気がしてくるほど収まりの良い自然な内容に仕上がっています。たぶんプロトタイプとなった短編(以前は作者が公開していたみたいだがリメイクに伴って消した模様)を今から読んだら「ダイジェストかコレ?」って思ってしまうでしょう。鈴波アミは物語の中心に位置しているが、あくまで主人公にとっての執着対象であり、「読者にとってのアイドル」とはならない。小説として掲げる真のメインは「心に空洞を抱えた者のあてなき彷徨」である。ファンアートを描いたり曲を作ったりライブ配信を切り抜き編集したりなどといった器用さなく、鈴波アミのイラスト等を投稿するクリエイティブなファンたちの活動に嫉妬する様子(曰く「玉ねぎの皮を剥がしていくように俺の自尊心を削いでいった」)も描写されていて、お世辞にもカッコイイとは言いかねる青年が主人公である。正直「主人公が気持ち悪い」と感じ途中で読むのをやめてしまい、2ヶ月以上も放置した末ちょっとしたキッカケで再開してやっと読み切った。推しの失踪とコロナ禍、閉塞感のダブルパンチで滅入っていく「持たざる者」がそれでも足掻くように星を掴む物語であり、肯定的に書けば「良く出来た映画のような感動が待ち受けているストーリー」、否定的に書けば「ラストの感動ありきでどうにも強引さが拭えないストーリー」である。終わり良ければすべて良し、くらいの考えでページをめくる吉です。Vtuberなんて所詮ガワを纏った配信者でしかない、という見方もある。だが、そこには「ガワを纏うことで誰かが誰かになれる」という僅かな希望も同時に含まれている。

 淡々とした筆致で主人公の自意識を浮き彫りにしていく過程といい、ストーリーよりもテキストで読ませるタイプなのでまずは冒頭を試し読みするところから入ってほしい。ハッキリ言って主人公の性格は粘着質で気持ち悪いが、自己分析ができているタイプであり反省もするので不快感は限定的。最後の一行で素直に感動しました。空虚な生活に蝕まれていた主人公の送る心の旅がひと区切り付いたのだと実感させてくれるからこそ、胸の奥底まで染み渡るモノがあります。気持ち悪いけど読後感は爽やか、不思議な体験ができる一冊です。


2022-06-05.

・FGOの6.5章が配信されたけど、唐突に壱百満天原サロメにハマったせいでまだ冒頭部分しかプレーしていない焼津です、こんばんは。感染力の強いキャラだから油断するとお嬢様口調で文章を紡ぎそうになる。

 Vtuberはあんまり詳しくない(何年か前に月ノ美兎のまとめをいくつか視聴したことがある程度)のですけれど、『VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた』とか『Vtuberってめんどくせえ!』とか『鈴波アミを待っています』とかVtuberを題材にした小説は何冊か読んでいるので興味自体はそこそこありました。「絵に描いたようなゲーミングお嬢様のVtuber」ということで興味本位に観始めたらあっという間に引き込まれてしまったという。まだデビューして間もない新人なので比較的追いやすかったというのもある。正直トークに関してはまだまだこれからといった拙さを感じるが、「成長する余地がある」という点で応援したくなるんですよね。未熟だからこそ今後が楽しみというか。いろいろと「大丈夫か?」って危うさを漂わせている部分もあるにせよ、しばらくは注目していきたい。

 それはそれとしてトラオムも進めないと。超久々にカドックが目を覚ましてシナリオに関わってくるということでワクワク感がすごく、「気力と体力が万全のときに読みたい」という気持ちもあってプレーをずるずる先送りにしてしまった。クリームヒルトさん可愛いし、早く二次創作イラストが飛び交うようになるといいな。

『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』を観てきました。

 ガンダム好きには解説不要の一本だろうが、一応ガンダムよく知らない人向けに説明するとアムロやシャアが出てくる70年代に放送された一番最初のガンダム、『機動戦士ガンダム』(一番最初なのでファンの間では「ファーストガンダム」と呼ばれている)の15話「ククルス・ドアンの島」を劇場版サイズにボリュームアップしたアニメです。元は30分足らずのエピソードを100分以上に膨らませているのだから、作品としてはほとんど別物と言っていい。正直に申し上げて面白いとかつまらないとかではなく「俺は何を見せられているんだ……? 変なクスリをキメちゃったか……?」と困惑する映画でした。いや、ククルス・ドアンの島ってこんな壮大なエピソードじゃなかったでしょ! とツッコミを入れたくなる。前述した通り「作品としては」基本的に別物なんだが、微妙に原型が残っていて戸惑うんですよね。あまり本筋とは関わらないエピソードのため劇場版三部作からはカットされた(ついでに書くと漫画の『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』でも触れられていない)回であり、TVシリーズを視聴したことがなく伝聞形式でしか「ククルス・ドアンの島」を知らない人がもっとも楽しめるのではないかと思う。多少回想シーンで補っているとはいえ話の途中から始まる仕様だし、ファーストガンダムの知識まったくない方がいきなり観に行くとキャラ多すぎで付いていけないものを感じるかもしれません。

 さておき、TV版「ククルス・ドアンの島」は一話完結エピソードなので筋立ては割と単純でした。ジオンの脱走兵である青年ククルス・ドアン(オッサンに見えるけど設定年齢は19歳、さすがに無理があるので劇場版では「30代半ばぐらい」に変更されている……というか、監督の安彦良和が設定年齢を忘れていたのでは?)が戦災孤児とともに暮らしている島へアムロ操るコアファイターが到着し、ひと悶着あった末に撃墜される。目を覚ましたアムロはホワイトベースに帰還すべくコアファイターを探すが、見つからない。そうこうするうちにジオンの追っ手であるザクが島に上陸。抜け忍の始末でもあるまいに脱走兵一人にわざわざ戦力を割くとはジオンも暇だな。同じくザクに搭乗して立ち向かうドアン、コアファイターを返してもらったアムロは一旦ホワイトベースに戻ってからガンダムとともに引き返してくるが、手出し無用と言われ横で観戦する。ドアンザクが正拳突き一発で撃退(殴った箇所ではなくその背後が爆発しているので鎧通し的な技と予想される)後、「下手にザクを残しているから追跡者が絶えないんだ」と主張するアムロはドアンのザクをえいやっと海に投棄してしんみりした雰囲気のBGMとともに敬礼する……こんな感じですが、細かいところが気になる方はアマプラとかでも視聴できるので直接観よう。「ククルス・ドアンの島」は当時の基準からしてもあまり作画が芳しくない回として有名であり、画像検索するといびつな顔をしたガンダムや妙に間延びしたザクの絵が引っ掛かる。監督の安彦良和も「見るに堪えない」とコメントしており、映画の制作が決まるまで観返さなかったほどだそうな。劇場版『ククルス・ドアンの島』でも「妙に間延びしたザク」は再現されているが、「あれは作画の問題じゃなくドアンが補修を繰り返したせいで異形と化してしまったんだ!」と言い張って「ドアン専用ザク」ということにしています。特にカトキハジメのこだわりが強く、監督も押し切られてしまった模様。とにかく変な方向に頑張っている映画なのでどう評価していいのか物差し片手に茫然としてしまうところがありますね。

 まず規模が元と全然違う。ドアンと暮らしている孤児はTV版だと4人しかいなかったのですが、映画だと大幅にアップして20人になっている。山羊を飼って乳搾りとかしているし、もはやスケール的に「ドアン孤児院」だ。食事も豪華で「あの島でここまで自給自足が可能なのか? 塩を作っている様子もなかったし、もともと島に物資があったのか? あるいは通過する連邦やジオンからカツアゲしているのか? それともドアンがたまに遠出して調達しているのか?」とか、トイレ周りがどうなってるのかとか、細かいところが気になってしまう。そしてTV版だと連邦側で島に上がるのはアムロだけ(厳密に言うと迎えに来たリュウ・ホセイが最後にちょっといる)でしたが、劇場版ではアムロを救出するためカイ・シデンやスレッガー中尉、セイラさんなど多数のキャラが島に向かいます。TV版の時系列だとスレッガーが登場するのはもっと後(確か30話あたり)なんでTV版のイメージが強いファンほど混乱する展開でしょう。対するジオン軍も5人の精鋭、人呼んで「褐色のサザンクロス」をホバー移動する高機動ザクとともに島へ差し向ける。その裏ではマ・クベが何やら糸を引いていて……と、後付け設定の嵐がビュービュー吹き荒れる。「ク、ククルス・ドアンの島を無理矢理映画っぽいストーリーに仕立て上げてやがる! なんて真似するんだ! こ、こんなことが許されていいのか!?」って惑乱し情緒が無茶苦茶になるレベルの魔改造ぶり。私は覚えていなかったが、島の位置もTV版と劇場版でかなり違うらしい。確かに「ククルス・ドアンの島」は作画こそアレながら「連邦だろうがジオンだろうが子供を守るためならどんな敵とも戦う覚悟の男がいる」という印象的なストーリーで心に残るエピソードではありましたが、無駄な装飾なくシンプルにまとめているからこそ趣深いのであって、ここまでゴテゴテといろんな要素を足されると蛇足に見えてくる面も否定し切れなくなる。客観的に見てそこまで悪い映画ではない、むしろロボアニメとしては複雑な設定抜きで観れるちょうどいいサイズ感の一本かもしれません。でも……うーん……TV版に思い入れがある人ほど割り切れない心境に陥る代物です。誰かがツイッターで呟いていた『クソデカ・ドアンの島』という言葉がこの映画の奇怪な輪郭を適切に指し示している。みんな真面目に作ってるんだろうけど、どうしても「ガノタの与太話が実現してしまった」みたいな気の抜ける感触が付きまとう。

 「ドアンザクと言えば石投げ!」というスタッフのこだわりなど、ホント「変な方向に頑張っている」としか言いようがない。でも「今の技術でファーストガンダムを作るとこういう画になるんだなぁ」って感動があったことも確かで、つくづく評価に迷う。なにぶんTV版は40年以上前に制作されたモノなので、今観るとクオリティにしろテンポにしろいろいろとキツいんですよ。私が観た20年前でさえ「ガンプラやゲームで予備知識があるから付いていけるけど、ぶっちゃけキツいなぁ」と眉を寄せたくらいですもの。「制作陣がウッキウキでやり放題やったことが伝わってくる」という意味でお祭り映画じみたノリがあるし、深いことを考えずにダイブして新生ファーストの世界を楽しむが吉かもしれません。個人的に後半のガンダム出撃シーンが完全にホラー映画のソレだったところが好き。嫌いじゃないんだが、ひたすら「珍妙な体験をした」という気持ちが強くて今は冷静にジャッジできないです。


2022-05-26.

【東出祐一郎】ネット黎明期の活動から名作タイトルの初出しエピソードまで、ファンなら絶対に聴き逃がせない昔話をしちゃいました【鋼屋ジン】

 ホームページやってた時代から知ってる二人がゲスト出演すると聞いて楽しみにしていた、マフィア梶田配信動画のアーカイブです。酔ってるせいもあってなかなか言葉が出てこず「あの〜」を連発する鋼屋ジンなどグダグダな部分も多いが、聞きどころも多いのでゼロ年代をエロゲとともに駆け抜けた人たちは必聴だ。視聴者もりーふ図書館時代から付いてきたような面子がたくさん混じっていてコメント欄から老人会じみた趣が漂い楽しかったです。「虚淵玄はホームページ経由で鋼屋ジンをスカウトした、なぜ東出を選ばなかったかと言うと彼はホームページで就職報告をしていたから(東出が定職に就いていなかったらニトロプラスのシナリオライターになっていた可能性がある)」「東出・鋼屋・奈良原の三人で同人ゲームを作ろうとしていた時期があり、東出はまだ『月姫』を制作していた頃のTYPE-MOONをライバル視していた」「エロゲと言えばショップ特典のテレカ、だいたい制作大詰めの時期に絵柄指定などが来るのでクソ面倒臭かった、特にソ○マップは指定が細かいうえ『ウチを優遇しろ』という圧が強くて怨嗟の念を抱いていた」「フルプライスのエロゲは今の時代厳しいけど、FANZAとかDLsiteで販売されるエゴイズムを全開にした個人制作ソフトは生き延びるんじゃないか」などなど。好きな作品に対する質問で東出が『マルドゥック・ヴェロシティ』やシュピーゲルシリーズを挙げており、影響されてクランチ文体を真似したことがあると告白している。あの時期はマジで「影響受けただろ」って作家が多かった。平坂読も『ねくろま。』の頃にクランチ文体っぽい文章を書いていました。不評だったのかすぐに戻したけど。

 今はなきエロゲ雑誌『PUSH!!』に連載されたリレー小説に関する思い出も語っているが、古いうえに書籍化もしてないので調べてもほとんど情報が出てこないな……「おまかせ!PUSH!!学園生徒会」という2003年頃に始まったリレー企画で、王雀孫や田中ロミオ、荒川工など様々なライターが参加したみたいだが鋼屋や東出が書いた時期については全然わからない。「東出がライターデビューした2005年以降だろう」程度。鋼屋の2回前に書いたライターが「山田おろち」(金月龍之介の別名義)で、鋼屋がバトンを渡したライターが竹井10日、最終回が東出という感じだったらしい。今更書籍化は無理だろうけど、せめて第1回から最終回までそれぞれ誰が担当したのか、執筆陣に関する情報だけでも知りたいです。

 一番驚いたのは終わり間際(アーカイブの2時間55分以降)、鋼屋ジンが『ドグラQ』の件と向き合っていることですね。「ごめんなさい」「完成しなかったのは俺のせい」「ニトロには迷惑かけ続けた」と謝罪会見の様相を示していて真顔になってしまった。テキストはそれなりに書いていたらしいが結局作品として成立するところまで行かず、鋼屋自身「もったいない」と思うし本当に申し訳ない、と赤裸々な言葉で懺悔しています。現在準備している書籍(『斬魔大戦デモンベイン』)は例によって作品というより予告編集みたいなノリらしいが、その一部として『ドグラQ』のネタを流用しているとのこと。「『ドグラQ』はお蔵入り」と言っちゃったも同然であるが、ずっと有耶無耶にされ続けるよりは良かったな、と思います。ぶっちゃけ『クルイザキ』が『ドグラQ』になった時点で完成しないコースへ入ってしまった予感はしていたんですよね。さておき、私もこれでようやく購入予定リストから『ドグラQ』の行を消す決心がつきました。ついでに『太陽の子』も消そう。消すに消せないタイトルはあと3つ、『霊長流離オクルトゥム』と『末期、少女病』と『陰と影』だ……。

・拍手レス。

 ポリフォニカ好きだったんですけど本筋の紅が終わる前後から他シリーズも失速し始めて(黒は致し方ない事情ですが)同時期から榊一郎もあんま主要レーベルで見なくなりましたね。ラノベ以外は割と出してたみたいですけど。キネマティックの方でしか読めない短編なども気にはなったのですが流れ自体は文庫と同じなのと、値段がネックになって結局手が伸びませんでした・・・
 ポリフォニカ紅と言えば終わってから表紙イラスト以外に追加要素のない割高な判型違い新装版が出たのは謎だったな……黒は事情が事情だけに残念でしたが、その縁もあって『ゾアハンター』が再開&完結できたことは嬉しく思っている(ゾアハンター再販の話自体はポリ黒を手掛ける前からあったらしいが、ポリ黒を経たことで打ち切られることなく無事に完結まで漕ぎ着けられたのだと考えています)。


2022-05-20.

・突如流れてきた樹川さとみの訃報に驚き沈んでいる焼津です、こんばんは。

 知らなかったけど『入院してみた』という闘病エッセイも書いていたみたいで……ここ数年書店で名前を見かけないな〜くらいにしか思ってませんでした。1988年、新書館の漫画雑誌“ウィングス”(『百姓貴族』の掲載誌)の姉妹誌に当たる“小説ウィングス”へ第1回ウィングス小説大賞受賞作「環」を掲載されて作家デビュー。書籍デビューはその4年後、1992年です。主にファンタジー小説の書き手として多くの作品を手掛け、特に1996年から2004年にかけて21冊も続いた『楽園の魔女たち』が有名である。なお私は全巻積んでいます。ファンタジー以外の小説もいくつかあり、私が読んだ範囲だと『ブラインド・エスケープ』がスピード感のあるサスペンスでオススメ……なのだが、電子化してないんだなアレ。というか『楽園の魔女たち』以外で電子化している樹川作品って『時の竜と水の指環』だけなのか。樹川さとみクラスでもその扱いとは世知辛い。とりあえず十数年に渡って積み続けている(完結からちょっとしたぐらいのタイミングでまとめ買いした)『楽園の魔女たち』をいい加減崩しにかかろう。『グランドマスター!』も全巻積んでるはずだがコレに関しては置き場所がどこなのか思い出せない……探せば見つかると思うが、積読の発掘作業はそれ自体が楽しすぎて無限に時間が消えていくから危険なんですよね。

Key新作キネティックノベル『終のステラ』2022年9月30日発売予定、シナリオは田中ロミオ

 2019年の『和香様の座する世界』以来となるロミオゲーです。keyで出すのは『Rewrite Harvest festa!』以来だから10年ぶりか。厳密には『Rewrite+』の加筆部分とかアニメ円盤特典の「Cradles Tale」とかがあるけど、純粋な新作としては超久々だ。シンギュラリティの発生によって人類が機械から逐われる身となったポストアポカリプス的な世界が舞台となっているSFであり、今期放送されている『ブラック★★ロックシューター DAWN FALL』をちょっと想起したりする。シンギュラリティの影響を受けない少女型アンドロイドの輸送任務を受けた運び屋が主人公となるロードムービー系ストーリーのようで、物理特典が付かないダウンロード版の価格が1980円(税込)であることを考えるとシナリオもそこまで長くないだろう。「長時間ノベルゲーをプレーするのはダルくなった」という方でも無事完走できるのではないだろうか。ロミオファンは書き下ろしアフターストーリーブックが付いてくる豪華限定版(一万円以上する)を買わないといけないから大変だな……。

 しかし「キネティックノベル」というジャンル名、もはや懐かしささえ感じるな。2004年に発売された『planetarian 〜ちいさなほしのゆめ〜』から使われ始めた言い回しで、直訳すると「動く小説」になる。keyの専売特許ではなくビジュアルアーツ全体で使われているが「ダウンロード販売が主体であること」「18禁要素がなくすべて全年齢向けであること」の2つがネックになってあまり浸透しなかった。『神曲奏界ポリフォニカ』も元々はキネティックノベルとして始まったけど、多メディア展開した結果アニメと小説が主力になったせいもあって「ポリフォニカ=キネティックノベル」のイメージはすぐに薄れてしまった。「キネティックノベルと言われてもplanetarianしか思い出せない」という人も多いだろう。10年くらいでほぼ展開は途絶えたものの、最近になってkeyが「改めて短編ノベルの可能性に挑戦したい」とまたポツポツと使い始めたのである。去年『LOOPERS』と『planetarian -雪圏球-』と『LUNARiA』の3本を出し、今年はこの『終のステラ』と『聖女様はイケメンよりもアンデッドがお好き?!〜死霊術師として忌み嫌われていた男、英雄の娘に転生して癒しの聖女″となる〜』が発売される予定。「なんで急になろう小説みたいな作品が?」と訝る方もおられるでしょうが、「みたいな」ではなく実際になろう小説です。「小説家になろう」もキネティックノベル大賞の「ノベル&シナリオ部門」開催に加わっているので、今年からどんどんなろう小説がキネティックノベル化していくことになるであろう。

 それはそれとして、オクルマダー?


2022-05-16.

『シン・ウルトラマン』観てきた焼津です、こんばんは。

 率直に言って『シン・ゴジラ』の時ほどの衝撃はなかったが、シンゴジはあまり期待せず観に行った影響があること、作風というか基本的なノリが一緒であることを差し引かないといけないかもしれません。本来なら3部作としてやるべき内容を圧縮に圧縮を重ねて一本にまとめたミッチミチの超高密度ムービーであり、良く言えば「展開が早くて飽きない」、悪く言えば「ダイジェストを観ている気分になる」だが、個人的には満足の行く面白さでした。シンゴジ以上に庵野や樋口の趣味が全開で出まくっていて、外星人同士が居酒屋で会話し「割り勘でいいか? ウルトラマン」という庶民じみたシュールなセリフも飛び出す。「スゴい映画」というよりビックリ箱のマトリョーシカみたいな「ワクワクする映画」に仕上がっている。あまりにもインパクトが強すぎて大河(鎌倉殿の13人)観てると「平安時代から地球に来ていたのか……」と錯覚しそうになる山本メフィラス耕史やクライマックスの終末兵器と化したクソデカゼットンだけでも元が取れる(どころかお釣りが来る)レベルなので、迷っている人は今すぐチケットの手配をしよう。『シン・仮面ライダー』も楽しみだ。

・あと『バブル』も観ました。

 メチャクチャ単純に話を要約すると「人魚姫にモチーフを変更した『沙耶の唄』」です。たとえその身が泡沫と成り果てても、歌声は響き続ける――謎の泡による災害で巨大な廃墟と化した東京、重力が壊れたかつての首都へ集う少年たちは空中すら駆け抜ける超次元的なパルクールレース「バトルクール」に心血を注いでいた。常にヘッドホンを被って周りと協調せず心を閉ざし気味にしていた少年「ヒビキ」は事故で溺れているところを奇妙な少女に助けられる。言葉もろくに喋れない少女に「ウタ」という名前を与えるヒビキ、ふたりは互いに惹かれ合っていくが……人魚姫モチーフというだけでだいたいの展開は察せられてしまうだろうからこれ以上の説明は不要だろう。ぶっちゃけストーリーだけ人づてに聞いても全然面白くない映画である。空間全体を利用するような、『進撃の巨人』の立体機動をより一段と派手にしたような縦横無尽アクションこそが本作最大の見所だ。喩えは古いがプレイステーションで『ジャンピングフラッシュ!』をプレーしたときのような、ニンテンドウ64で『スーパーマリオ64』をプレーしたときのような、「世界を気ままに跳ね回る」感動が脳髄に甦ってくる。「跳ぶ」瞬間も気持ちいいが、最大の快楽は「着地する」瞬間に発生するんだよなぁ。Netflixで先行公開していたからそっちで観ようかどうかちょっと迷ったが結論としては「我慢して正解」だった。映画館の音響抜きで視聴すると迫力がだいぶ落ちてしまう、そういうタイプの作品だ。体の奥まで響いてくるサウンドも含めて評価すべきなのである。ただサウンドが良いぶん声の演技がちょっと……な部分はあった。ウタが「ヒビキー!」と叫ぶシーンは音圧が足りなくてちょっとズッコケそうになりました。

 キービジュアルとかに描かれているウタちゃんは正直あまり可愛いと思わなかったのだが、実際にアニメとして動いているところを観ると「あっ、この子、物凄く可愛いな……!」って感激。この映画は筋立て以上にキャラの感情とか躍動に対する脈絡(アップダウン)を重要視しており、予告編などでブツ切りに名シーンを見せられてもあまり盛り上がらないのだが、キチンと流れを踏襲したうえで――つまり、溜めて、溜めて、はいドーン!という正式な形で提供されると凄まじくテンションがブチ上がる。そういう意味では魅力が伝わりにくく勿体ない映画だな、と思いました。ネトフリ先行公開の影響もあるのか、私が行ったときは劇場ガラガラだったし……いっそ「空いてるから自室感覚で寛いで鑑賞できるよ!」「この調子だとロングランしそうにないから早めに観に行った方がいいよ!」みたいな薦め方をするべきか。俺たちに翼はない、だからって高く跳べないわけじゃない。弾けるように全身で謳い上げる肉体の讃歌だ。

『うたわれるもの ロストフラグ』2.5周年記念イベント「夢想の果てに」開催中

 

 

 まだ足が動く頃のサクヤと心が壊れてしまったクーヤ、時間軸の異なる主従がロスフラ世界で再開するという原作ファンの情緒をシェイクしてやまないイベントストーリーは必見です。「成長したサクヤが来るんなら当然クーヤも成長したバージョンが来る(ロスフラ世界には幼女版のふたりもいる)だろう……」と身構えていたけど、まさか幼児退行した状態でやってくるとは思わなかったよ! なんやかんやあって精神が修復し、バトルにも参加できる状態でガチャ実装されましたが、「さくーさくー」のまま戦場に立たせるつもりなのではないかとハラハラしました。このゲーム、病弱な方のユズハ病弱じゃない方のユズハが一緒にいたりするからありえなくもないんだよな。

 さておき「夢想の果てに」はサクヤとクーヤのみならずゲンジマルとヒエン(こいつだけ時間軸が本編よりずっと後)も登場するので実質的なクンネカムン補足イベントである。ただしハウエンクアに関しては名前すら出てこない。本編で投げっぱなしになってしまったクーヤのその後をif世界で、ではあるもののキチンと描いており、「これこそ原作ファンがロスフラに求めるもの」と感じ入りました。ちなみにサクヤの声優は水橋かおりのままですが、クーヤは富坂晶が引退したため植田佳奈にキャスト変更となっている。つってもイベントシナリオに声は付いてないのでストーリーを読むだけならあまり気になることもないだろう。20年越しに救済されたクーヤの姿が見たい人は今すぐロスフラをやるべし。


2022-05-12.

『まちカドまぞく』の原作漫画が積みっ放しになっていることを憂慮し、「なんとかせねば……そうだ、アニメを流しながら読めば捗るのでは?」とアニメ視聴並行読書に踏み切った焼津です、こんばんは。

 その結果、アニメが想像以上に原作に忠実な内容であることに気づいてビックリしました。配置や構図が変わっていたり、ネタの順番が入れ替えられていたり、セリフの細部に手を加えられていたりと少々の変更点はあるものの、大きく削られている箇所はありません。描き下ろしマンガのネタや四コマタイトルのネタまでちゃんと拾っているし、ちょっとした擬音表現も取り入れているし、リリス(ごせんぞ)がこたつにコーラをこぼしてシミになっている描写もカットしていないし、仕事の丁寧さがすごい。「基本的に足すことはあっても削ることはない」がアニメ版の方針になってるんですよね。足されている部分で目立つのは小倉さん(眼鏡の子)と良子ちゃん(シャミ子の妹)か。小倉しおんは原作だと出番が割と遅いキャラ(モブとしては単行本1巻の27ページにチラッと映っているがネームドキャラとして登場するのは90ページ、アニメで言うと1期5話後半のなみなみと水の入ったバケツを持って現れるところ)なんですが、アニメでは最初からいる。アニメ1期5話でシャミ子のセリフが「あっ、杏里ちゃんの友達でC組の小倉さん」と妙に解説口調だったのも本来はあそこが初会話シーンだったからなんだな。良ちゃんは原作でも最初から登場していますが驚くほど出番が少なく、アニメ版でだいぶシーンが増量されている。あと何の脈絡もなく教室で糸電話を始める生徒たちなど謎の追加要素もあるが、アレはまぁ監督が桜井弘明だから(ミュークルドリーミーにも糸電話で会話するシーンがある)。

 アニメに比べると原作の方はちょっと絵柄が安定していないところがあるけれど、キメのシーンに関しては段違いに印象的で「やっぱり原作も読んで良かった」って気持ちになります。「みんなが!! 仲良く!! なりますようにー!!」のところが好き。シャミ子の本名が「優子」であることを証明するようなコマだ。現在放送中のアニメ2期は一つの節目である原作3巻ラストに差し掛かっていますが、インタビューによると作者の伊藤いづもはあのへんで『まちカドまぞく』を完結させて新作企画に取り組もうとしていたらしい。しかしアニメ化が決定したことで連載継続となり、長期展開ルートへ突入した。新作の構想は既に練り始めているとのことで、『まちカドまぞく』も徐々に「完結」の二文字が近づいてきている。そう思うと寂しいが、それはそれとしてアニメも最後までやってほしいな……このペースだと4期目あたりが最終シーズンになりそう?

マンガ原作者・来賀友志が死去、代表作に「天牌」など(コミックナタリー)

 「くが・ともし」と読みます。主に麻雀漫画の原作を手掛けてきた人で、記事タイトルにもある通り『天牌』が代表作。『天牌』は『ONE PIECE』より後に連載が始まったにも関わらずワンピよりも巻数が多いという非常に長大な麻雀漫画である。最新刊は6月に出る予定の115巻。更に外伝や列伝といった番外編も含めると全体で150冊を超えています。あまりに膨大なため未読の方に解説するのもひと苦労な作品だ。良ければ10年くらい前に書いた解説記事を参考にしてほしい。「100巻超えたから次は200巻目指そうぜ!」って無邪気にあと20年は続くような気持ちを抱いていましたが、まさかの訃報で動揺が鎮まらない。65歳なんて若すぎる。『天牌』は来賀さんが原作を手掛けたところまでで未完になるのか、それとも原作者変更で続行するのか……現時点ではまだ何もわからない。版元である日本文芸社は「「天牌」の今後については追って本誌にてお知らせ致します」とコメントしている。とにかくショックとしか言いようがありません。差し当たって一番好きなエピソードである「赤坂決戦」(単行本14巻〜18巻)を読み返すか……。


2022-05-03.

ハヤカワ・ミステリ文庫の新刊、価格が税込で1800円超えていてさすがにビビる焼津です、こんにちは。ハードカバー並みの価格設定じゃん。

 “刑事〈ショーン・ダフィ〉シリーズ”の最新刊(6冊目)で、これの前の当たる5冊目『レイン・ドッグズ』も税込1600円超えとなかなかの値段だったが……ページ数が増えてるのかと思ったら、むしろ減ってる(624ページ→608ページ)し。このまま行くと7冊目は2000円超えるんじゃないかな。文庫なのに上下巻で3000円超える作品とかもあり、ますます海外ミステリはマニアしか読まない領域に突入していく。数百円で新刊を購入できた時代が幻のようだ。当時は消費税があまり高くなかったというのもあるが……。

スカートをめくって世界を救え! めくるめく布バトル! 『腕撃のパンツァー』5月末まで全話無料配信、単行本1巻は6月22日発売予定!

 タイトルはバトル系コミックの趣だけど作者が「牛乳のみお」(代表作は30歳の童貞が女子小学生になるTSコミック『女子小学生はじめました P!』だが、ガイドラインに抵触したためかamazonでは既刊のほとんどが登録抹消されている……のに、なぜか最終巻だけは取り扱いがある)なんで、「絶対にこれ『ぱんつぁープリンセス』的な意味のパンツァーだろう」と思ったら案の定だった。子供の頃からスカートをめくり続けて30年、「人類最強」と呼ばれた捲り魔は遂に逮捕された(当たり前)。拘置所にブチ込まれ、「スカートがめくれない」状況から禁断症状に苦しめられていた彼のもとへスカートをまとった一人の少女が現れる。「めくってもいいですよ」「ただし」「わたしのスカートをめくるということは――」悪魔と契約すること。もちろん一切躊躇わずにめくった! そして……気が付けば、彼の魂は少女「猫子」の身体の中に這入っていた……!

 というわけでまたしてもTSモノです。基本的なノリは能力バトルのソレですけれど、能力の源がパンツにあるため「スカートをめくってパンツを脱がす」というふざけた戦闘スタイルがひたすら続く。要はお色気ギャグだ。私の年代だと『エルフを狩るモノたち』とかを連想してしまうな……あっちは仕方なく衣服を剥ぎ取っていたけど、こっちはスカートめくってないと禁断症状が出るヴィラン寄りの設定ゆえ「スカートをめくるついでに世界を救う」より一層イカレたストーリーになっています。最近目にしたイカレ漫画というと『俺の股間は美少女だったのか』なんてものある(これも6月に単行本が出る)が、アレとはまた違った方向に突き抜けてるな。ちなみにタイトルの「腕撃」は「わんげき」ではなく「かいげき」と読ませる。腕(かいな)から来る造語だろう。

 敵の名前が「メスガキー」だったりと序盤の展開は脱力必至だが、異世界から襲撃してきた「魔法少女」たちにとってパンツは単なる装備品ではなくそれぞれの家で代々受け継がれてきた「一子相伝のパンツ」(おさがりじゃん……)でありFateにおける魔術刻印のようなものであると判明する5話から徐々にシリアス味も生じてくる。パンツを奪われるのは「もうっ、○○のうっかりさん☆」程度で済まされる出来事ではなく、魔道不覚悟として死を強要されるレベルの失態である。なので主人公にパンツを脱がされた魔法少女は「このままだと自分も殺されるから」と味方を裏切って主人公に協力するわけです。魔法の使い方がわからない主人公にレクチャーするためパンツ下ろして股間をクチュクチュするなど、「これアニメ化したら絶対BPOに怒りの投書が殺到するな」って描写の数々に笑ってしまう。必殺技が有名作品のパロディになっているあたりは相変わらず脱力モノながら、興奮してくるとおっさん時代の口調に戻るところはTSモノの妙味が滲み出ていて好きです。バカバカしい作品であることに間違いはない。そこに異論を挟む人はおらんでしょう。しかし、短い分量の中で「これがどういう作品であるか」アピールするポイントをキチンと用意してシンプルにうまくまとめており、間抜けな見た目に反して意外と出来が良い。好みの問題もあるので万人には薦めがたいが、興味のある人は試し読みしてみてはいかがだろう。気に入ったら6月に出る単行本も買おう。いずれはアニメ化してほしい。『腕撃のパンツァー』や『淫獄団地』といった作品が公共の電波に乗って堂々と放送される未来、それこそが平和というものじゃないか?

 余談ですが、この『腕撃のパンツァー』はもともとツイッターに掲載されたWebコミックであり、同じタイミングでジャンプルーキーにも投稿されたが、やっぱりガイドラインに抵触したらしく削除されてしまった模様。現在Web版はニコニコ静画で観れます。Web版と連載版、内容は概ね一緒ですが下書きに近いWeb版に対し連載版の方はちゃんとペン入れされている。あと5話のラストがそれぞれで異なり、連載版の6話以降はWeb版のアナザーといった位置付けになります。雑誌連載が決まったことでWeb版の方は5話を最後に止まっちゃったから、正確に書くとWeb版の方が連載版のアナザーってところかな……時系列に沿って解説すると「2020年8月にツイッターへ第1話を掲載、同時にジャンプルーキーにも投稿される → 同年9月にジャンプルーキーの投稿が削除される → 2021年4月にニコニコ静画へ投稿して再開、同月中に第3話まで更新する → 同年5月に第4話を配信 → 同年6月に第5話を配信(Web版はここまで) → 同年11月に商業連載の決定を告知 → 同年12月に掲載誌“月刊コミックアライブ2月号”が発売される(なんと表紙を飾っている) → 2022年6月に単行本1巻を発売する予定」です。

・BD買ったまま積んでた『グリザイア:ファントムトリガー THE ANIMATION 03「スターゲイザー」』を今頃になって視聴し「うひょ〜カッコE」と痺れている。

 「スターゲイザー」は美浜学園のスナイパー「獅子ヶ谷桐花(トーカ)」と聖エール外国人学校のスナイパー「九真城恵(グミ)」を中心とするエピソード。スナイパーであること以外はこれといって関係のない二人に見えるが、実は共通の知人がいて――というふうに話が転がっていく。スコープの先で撃ち抜かれた傭兵がゆっくり倒れ込む狙撃描写が好き。聖エールのシスター服をまとった生徒たちが突撃するシーンも良いですねぇ。真ん中にいるベルベットを守るために左右の生徒が防弾ケープを広げるところは実に絵になる。グリクロ(グリザイア クロノスリベリオン)にアニメ連動イベント「スターゲイザーEp._#00」というトーカが聖エールにいた頃を描いた前日譚風のシナリオがあって、久々に読み返したくなったがもうグリクロはサービス終了していてアプリを起動することすらできなくなってるんだよな……悲しい。

 60分弱で、劇場アニメとして考えたら短い方だが、OVAと捉えれば見応えのある内容だった。続きはTVアニメ化も決定しているので楽しみだ。


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