2016年5月〜6月


2016-06-27.

・絶宣こと『絶対の宣伝』(全4巻)の復刊が始まっていることを今更知って慌てて注文した焼津です、こんばんは。

 1巻が復刊されたのって約1年前じゃないか……なぜ見落としていたのか。ナチスのプロパガンダについて研究した大著で、元の出版は1978年から1979年にかけて。長らく絶版していたため、古本で買おうとしても一冊あたり五千円から一万円くらいはする代物となっていました。それが新品で三、四千円も出せば買えるのだから、こりゃ今のうちに押さえとくしかないでしょう。だいたい半年ごとの復刊ペースなので、最終巻となる『文化の利用』は12月前後じゃないかと予想されます。著者の草森紳一は相当なビブリオマニアとしても知られており、『随筆 本が崩れる』なんてものまで書いている。「とつぜん、崩れる。地震で崩れる。何万冊もの蔵書が、凶器となって、ふりかかる。これは読書の快楽への罰なのか」 実際に亡くなったときも本の山に埋もれていて発見が何日も遅れたというから真性です。遺品となった三万冊の蔵書が整理されていく過程を綴ったブログ「崩れた本の山の中から」まで存在しており、破格と言うより他ない。あ、草森さんとは関係ないけど復刊で思い出した。『百合男子 完全版』が上中下巻の三分冊で7月に出ます。『百合男子』は『俺の嫁なんていねぇ!』とタイトルを変えて再出発したが、「単行本が売れなかった」という理由で打ち切られてしまった。俺嫁の未収録分があるとしたら、この完全版に収録されるのだろうか? 安元洋貴版「ゆりゆららららゆるゆり大事件」も元々は『百合男子』のキャラソン(カバー曲)だったし、うまく波に乗ればもっと人気出たであろう作品だったな。

バカテス作者が衝撃のコメント「随分昔にバカテス実写化のオファーが来たことがある」(まとレーベル@ラノベ新刊情報サイト)

 『鴨川ホルモー』みたいにするつもりだったんだろうか。『ぐらんぶる』は未成年(大学1年生)が頻繁に酒盛りしていて男キャラのほとんどが全裸祭というポイントを除けばバカテスより実写向きだと思うが、「なら観たいの?」って訊かれると……結局、有名漫画作品が最近やたら実写化されるのは「どんなに面白かろうと実写じゃなきゃ観ない」って層が意外と厚いからであって原作ファンは所詮オマケに過ぎず、どんなに嫌がろうと「もともと原作ファンなんてターゲットじゃない」って無視される運命にある。それが分かっているから実写化作品は基本的にスルーって姿勢になっちゃうんですよね。ただ、絶対にありえないだろうけど、もしDiesや村正が「実写映画化!」なんてことになったら劇場で泡吹いて失神する未来を幻視しながらも前売券買っちゃうだろうな。「背筋を走る悪寒と戦慄に、トリファは後退しかけるが踏み止まった」みたいな感じで。大丈夫、07年版よりは衝撃が軽いはずだ。

アニメ「この素晴らしい世界に祝福を!」2期は2017年1月から放送開始! また放送に先駆け一挙放送も決定(まとレーベル@ラノベ新刊情報サイト)

 思ったより早かった。2015年1月に放送開始した『冴えない彼女の育てかた』の第2期が2017年4月からなので、放送終了からまだ3ヶ月しか経っていないこのすばは早くて来年の秋頃かな、とか考えていました。冴えカノに比べて座組みしやすいのかな? 前のインタビューで「アニメ化についての連絡をもらったのが2015年の1月くらい」と言っていたし、実はこのすばのスケジュールって深夜アニメにしてはかなり強行軍なんですよね。低予算も影響しているのでしょうが、結果としてはこのスピード感が功を奏した。巧遅よりも拙速を尊ぶ。「面白けりゃいいんだよ!」って態度が前面に出ていて喜ばしかったです。しかし、この速さだとまた全10話+OVAって構成かな……1期目はちょうど原作2巻終了時点で幕となりましたから、2期目はたぶん3巻冒頭からスタートのはず。10話だと4巻終了までがせいぜい。あれも割と気になるところで終わるからアニメ勢は生殺しだろうな。3期目は2期の盛り上がり次第でしょうけど、最近の傾向からするとスピンオフ(『この素晴らしい世界に爆焔を!』『この仮面の悪魔に相談を!』)の方がアニメ化する流れになるかもしれない。とにかく来年1月が待ち遠しい。

「武装少女マキャヴェリズム」アニメ化、帯刀女子vs無刀男子の学園バトル(コミックナタリー)

 1巻発売当時「2巻までは出せるが、3巻が出るかどうかはわからない」と言われていた漫画がよくぞアニメ化まで漕ぎ着けたものだ。『武装少女マキャヴェリズム』は物凄くストーリーを単純化すると「武装した女子が非武装の男子を抑圧する監獄みたいな学園があって、そこに放り込まれた主人公がとりあえず外出許可を得るために戦う」、もっと要約すると「女の子だらけの学園バトル物」です。『君主論』とか知らなくても特に問題はない。パッと見は「よくあるハーレム系」だが、主人公とヒロインたちとの対立は割とガチでアクション部分にもっとも気合が入っています。本気で殺すつもりじゃないかと疑うくらいの勢いで襲い掛かってくる女子たちを撃退し、外出許可証に必要な判子をゲットしていく。判子は学園長、それに「天下五剣」と呼ばれる5人の少女たちが持っています。OVAなのかTVアニメなのかいまいちハッキリしないが、もしTVアニメ化だとしても「俺の戦いはこれからだ!」エンドになりそうな予感。どうせ『ブラッドラッド』『ビッグオーダー』と同じKADOKAWAお得意の全10話+OVAって構成でしょうし。展開をアニメオリジナルにするとしても、2話ごとに天下五剣を倒していってオシマイ、というのが関の山。若干ネタバレだが、天下五剣はあくまで「傑出した強さを持つ五人の少女たち」であって、実は五剣を上回る戦力の子もいます。公式サイトのキャラクター紹介にでっかく映っているので名前言わなくても「あ、こいつか」って分かると思います。その子、下手すると存在ごと削られかねんな……。

 原作の黒神遊夜と作画の神崎かるなはマキャヴェ以前にも『しなこいっ』(続編として『竹刀短し恋せよ乙女』がある)という剣道マンガでコンビを組んでいました。豪華キャストのドラマCDが出るくらいは人気があったんですけれど、じっくり描きすぎて展開が遅くなっている点や、読者サービス的なシーンの欠如が災いしてか、涙ながらの打ち切りになってしまいました。「もう二度と打ち切りはイヤだ! 今度こそアニメ化を目指す!」という気迫を込めて取り組んだ企画がこの『武装少女マキャヴェリズム』であり、ややぎこちないながらもサービスカットがふんだんに盛り込まれていて、展開も軽快でサクサク進む。“月刊少年エース”の弾不足は近年深刻ですから「アニメ化してもそんなにおかしくはないな」と理性で考えていたものの、実際に発表が来るとやはりビックリしてしまう。何せアニメ化以前に打ち切りにならないかどうかずっと心配していた作品ですから。アニメの出来そのものにはあまり期待できないが、「やっべー、主人公の名前がフドウ(不道、いくつかのサイトでは『不動』と誤記されている)なのに動いちゃうのかー」とムズムズする心は抑え切れません。しかし、この調子で行くと『高機動無職ニーテンベルグ』もいずれアニメ化しかねんな……あれも打ち切りになりゃしないかとハラハラしながら買ってる感じだったんだが。

新訳・京子さんとモリナガさん 『ダイレクトマーケティング戦略室 2』(魔殺商会広報部電子版別冊)

 『戦闘城塞マスラヲ』は提案された条件が悪すぎるという理由で一度アニメ化の話を蹴った経緯があるけど、やっぱりトモアキもアニメ化自体はしてほしかったんだな……ライトノベルの完結済シリーズがアニメ化される可能性は非常に低いが、もしされたら「俺たちの戦いは(以下略)」を避けられるというメリットがある。マスラヲはトモアキ作品きっての人気キャラ「川村ヒデオ」が初登場するシリーズであり、前作知識がなくても比較的楽しめる構成になっています。うまくアニメ化されれば相当な愛され存在となるはず。後日談として『レイセン』があるけど、こちらは『お・り・が・み』を読んでからの方がより楽しめる(マスラヲ以上にお・り・が・みとの関連が深い)シリーズです。個人的には『お・り・が・み』のアニメが観たい。動いて喋るVZ様を想像するだけで震える。でも、仮にこのへんのシリーズがアニメ化されるとして、キャラデザはどうすんだろうな……上田夢人タッチで統一するのかしら。でも『お・り・が・み』は2C=がろあ〜じゃないと違和感があるよな。伊織貴瀬はあの神崎貴広っぽい感じがいいんですよ! ……獲らぬ狸の皮算用すぎて虚しくなってきました。でもホントにスニーカーはもうトモアキ作品ぐらいしか弾がないですからね。他に何かあったっけ……最近話題になってるのだと『終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?』か? あれがアニメ化したら驚愕のあまり心臓止まりそう。

ラノベ「R.O.D」12巻は今年8月に発売予定! また最終巻となる13巻は2017年に刊行予定(まとレーベル@ラノベ新刊情報サイト)

 12巻じゃなくて13巻で完結か……それくらいは想定内だった。今既刊をチマチマと読み直しているところですけれど、やっぱり面白いですね。まだ「ライトノベル」の呼称が定着していなかった時期だから「ティーンズ向けのジュヴナイル小説」や「ジュニアノベル界」といった言い回しが出てきてちょっと時代を感じてしまうけど、無駄なくサッパリした文章は今読んでも全然悪くない。イケるイケる。むしろ当時より面白くなってないか? 発酵現象なのか錯覚なのか。何であれ完結を待ち構える気満々です。今度こそちゃんと幕を引いてくださいよ。

・拍手レス。

 奈良原氏、本当にどうしちゃったんでしょうね。なんの音沙汰もないのでなにがあったか気になる反面、プライベートな事情かも知れないので過剰に知りたがるのは良くないかとも思ったり。
 宙ぶらりんの状態で期待し続けることに疲れてきている反面、「もう二度とは……」みたいな情報は聞きたくない気持ちもあり、板挟み。


2016-06-19.

電撃の新作ラノベにFateのセイバーにそっくりなキャラがいる件wwww(まとレーベル@ラノベ新刊情報サイト)

 もろにこやま塗りって感じだし、正直最初見たときは「プロトセイバー?」と思ってしまった。けど、そんなことより作者名が「一条景明」って……『装甲悪鬼村正』かよっていう。あ、そうそう村正で思い出しました。

『装甲悪鬼村正 ―贖罪編―』、7月29日 遂に公開!

 長かった……ホント長かった。記憶が曖昧になるくらいの時間が流れてしまったので、ここで一旦経緯を振り返ろう。発端は2010年から2011年まで3ヶ月掛けて行われた第2回人気投票まで遡る。通常の人気投票と並行して開催されたのが「貴方の邪念を叶えますコンテスト」、ユーザーから二次創作SSを募集して「大賞獲ったら制作スタッフがノベルゲーム化」と謳った企画です。村正の人気投票は各キャラへの応援の意味も込めて第1回の頃から二次創作SSや二次創作画像を受け付けておりましたが、2回目はより豪華なものにしようってことになったわけだ。そして『装甲悪鬼村正 ―贖罪編―』が見事大賞を射止め、ノベルゲーム化が決まった……しかし、リンク先を見てもらえればわかりますが、贖罪編は二次創作ながら結構な大作だったりします。あくまで人気投票の余禄ですから商業的に売り出す予定もなく、作業は後回しにされてしまったようで、1年、2年、3年……とひたすら月日が流れていくばかりでした。さすがに5年経って「もう出ないんじゃないか?」と危ぶまれましたが、やっと公開の段取りが整ったようです。本編の発売が2009年なので、当時のプレーヤーで大学生だった人もそろそろ三十路近く……コミカライズや立体化以外では目立った展開もなかった(昨年『宇宙編』という小説版が出たけど、あまり話題にならなかった)から、「ああ、そんなのもあったっけ」と遠い目をしてしまうかもしれません。

 無料での公開ですから、ボイスはなし。18禁要素もありません。ただしなまにくATKによる新規CGが投入されるとあって逸りを抑え切れぬファンもいる模様。本編ではビジュアル化されていなかった菊池家の家宰「牧村楓」も立ち絵が実装されるみたいですね、牧村さん、本編でCGがなかっただけでスタッフの雑記帳には出てきたりもしていた。この人は戦時中に従軍看護婦として働いていましたが、あるとき手榴弾だったか地雷だったかの被害を受けそうになって、その際「菊池明堯」という人が彼女を庇い大怪我を負ってしまう。その負傷がもとで明堯は「役立たず」の烙印を押され、婿入りした家から追い出されることに。恩義と申し訳なさを感じたのか、牧村さんは菊池家で明堯の世話をするようになった……と、そんな背景があります。本編でも数える程度しか出番(と言ってもいいものかどうか)がなかったキャラだけに、こうしてビジュアル化されるのはなんだか感慨深い。ノベルゲームを楽しみたいがゆえにあえて贖罪編を読まずにいた私の忍耐がようやく報われる。しかし、それ以上に気になるのは、原作村正のシナリオを手掛けた奈良原一鉄の消息……「ニトロを退社した」という説や「別名義で活動している」説など様々な噂が囁かれているが、真偽は定かならず。村正未プレーの方は贖罪編と同日に発売されるWindows10対応版が現在販売されている通常版よりも少しだけ(3000円くらい?)安いので、そちらをお求めになられては如何だろう。そして我らと同じ奈良原の新作を渇望する亡者集団の一員と成り果てるがいい。

 あらすじ紹介が軽くネタバレっぽい(「セイバーの正体は○○」程度のもので、「アーチャーの正体は○○」ほど致命的ではないが、それでも予備知識Zeroの方が新鮮に楽しめるでしょう)から興味がある方はなるべくあらすじを読まずにプレーしていただきたい。『贖罪編』は本編の内容を踏まえたものみたいですし、製品版→贖罪編の順でやる方がベターなはずです。

・望公太の『最強喰いのダークヒーロー』読んだ。

 「最強喰い」と書いて「ジャイアントキリング」と読ませる。アニメ化した『異能バトルは日常系のなかで』で知られる望公太(のぞみ・こうた)の新シリーズです。あとがきによると「今までの作品とは違い、僕が作者として表現したいものではなく、僕が読者として読みたいものを全力で書いた感じ」だそうで、かなりエンターテインメント性を前面に押し出した雰囲気となっている。特徴は何と言っても「主人公が悪役(それも小悪党)にしか見えない」ってところですね。美形なんだけどガリガリの体型で厭らしい笑みを浮かべている姿は「アニメの3、4話目あたりでやられるチュートリアル系雑魚敵」と述べるしかない。卑劣な策で主人公を追い詰めるものの、ギリギリのタイミングで覚醒され「な、なにィ!? ○○を××しただとォ!?」と驚愕した挙句あっさりヤラれる……みたいな。本編でもだいたいそのイメージ通りの振る舞いをします。

 祓魔祭(カーニバル)――それは言うなれば攻魔騎士たちのインターハイ。50年前、日付変更線から湧き出でる「時の悪魔」との戦争が終結して用済みになった攻魔騎士たちが生きる場所を確保するために興行として始めたバトルエンターテインメント「ソードウォウ」の一つであり、「十代しか参加できない」という縛りからプロリーグに匹敵する人気すらあって、今や全世界で「夏の定番」とされている。かつて人類の天敵たる悪魔どもを滅ぼした技と術を見世物に貶め、「目に見える青春」として売り出す背景には教育機関や企業の経済的な思惑も横たわっていた。才能に恵まれず、人望も低く、見た目も不気味な私立聖海学園3年生・阿木双士郎。痩身と白髪が印象に残る彼は攻魔騎士としての資質が最低ランクであり、カテゴリは「E」。出力が低すぎるため魔力タイプさえ判別できないという落ちこぼれであった。1年次および2年次は公式・非公式含めて試合の記録が一切ない。3年になって祓魔祭出場選手を決める校内選抜戦に突如参加したのは単なる「思い出作り」だろうと周囲から笑われていた……じきにその笑いは止み、困惑と混乱が聖海学園を席巻する。あろうことか、彼は天才と謳われるカテゴリAの生徒を予選で打ち負かしてしまったのだ。実は途轍もない力を秘めていたとか、そういう切り札めいた要素があったわけでもない。あまり強そうに見えないにも関わらず、なぜか勝ってしまったのである。ただのまぐれか? いや、すべては計算尽く。虚飾に満ちたヒーローたちの喉笛に牙を突き立てて噛み破る、彼の最強喰い(ジャイアントキリング)がいよいよ始まった……。

 「アギ」でどうしても鴉木メイゼル(『円環少女』)を連想してしまうが、意識しているのは『アカギ』だろうな。あとがきでも「ぶっちゃければラノベ版アカギ」と書いています。笑い声が「クカカカカカカッ、ククク……」の時点でどうしようもなく安い悪役な主人公(作者が『鉄鍋のジャン』ファンなのでそのへんはたぶん秋山醤がモデル)だが、実際に戦い方も汚い。反則スレスレどころか、普通に反則をかますことさえあります。「勝ちゃあいいんだよ、勝ちゃあよぉ!」みたいなことを平然とほざくし、出だしはアカギというより市川ですね。「君はせいぜい上手な麻雀を打つがいい。わしは下手でいい。ただ勝つ」という。だんだん勝利への執念が狂気の域に達していることがわかってきて、そこから面白くなってきます。特殊な武装による異能バトル、甲子園みたいな大会、最弱扱いの主人公が最強と呼ばれる存在に勝つ。要素だけ並べると完全に「最近の(ちょっと前の?)トレンドに乗っかった作品」だし、前半は「既存のシリーズと被り過ぎだろ」って正直辟易するところもあった。主人公の性格を除けば、ほとんど『落第騎士の英雄譚』まんまである。しかし、言ってみればこっちは主人公を一輝から桐原くんに変更したような話ですからね。読み口はまったく異なってくる。桐原くんのように便利な能力はないが、そこは胆力でカバーしています。性格の悪さはどっこいどっこいか。

 「スペックの低さ」を逆用して戦う路線だが、本当に主人公は能力面で見るとショボい。魔力解放(フレア)という軽いトランザムみたいな状態があって、出来の悪い生徒でも最低10分、天才クラスなら1時間は悠々と維持できるんですが、彼はたった30秒しか展開することができない。ゆえに「早漏騎士」と嘲られています。しかも一度使うと6時間はインターバルが必要で、一刀修羅ほどじゃないが計画的に使わないと厳しい。あからさまな劣勢・不利を強いられるなか「才能と勝負は別」と嘯いて試合に赴く様子は痛々しくもあり、「『ワーストワン!』と同じ調子で『早漏騎士!』と言われ続けたらそりゃ性格の歪みにブーストも掛かるわ」と少し同情もしてしまう。「性格の悪さ」と「同情したくなる環境」が釣り合っていて、結果的に「ほどほど肩入れしたくなる主人公」像が出来上がっています。主人公の凝らす策自体はシンプルだし、伏線を丁寧に張り過ぎて先の展開が見え見えになっているが、平仄は合っているしよく組み立てられているので瑕疵というほどではありません。

 主人公のことばかり書いている時点でお察しいただけと思いますが、ハッキリ言って本書はヒロインの存在感が薄いです。出番は多いんだけど、どうしても主人公に喰われてしまうと申しましょうか。ヒロインのリザ・クロスフィールドは簡単にまとめると「強気だけど単純な金髪サイドポニー」で、手堅く可愛い反面ヒロインとしての特色が乏しい。「肉付きが良くて巨乳」という設定も却って個性を薄めている気がします。なんというか、イラストだと貧乳顔なのにボディは巨乳になっていて、ギャップじゃなくミスマッチなんですよね……このへんは好みによるところも大きいでしょうが、少なくとも私は表紙イラストでヒロインを見て「買いたい」って気持ちにはならなかった。作者が望公太じゃなきゃスルーしていたでしょう。やっぱり本書の魅力は何と言っても阿木双士郎。王道的なマンガやアニメに飽きた中高生が「もっと主人公がワルというかクズというかカスな奴がいい」と言い出す流行り病のような期間がありますけど、そういう「いい子ちゃん」に飽きた年代にうってつけの野郎であります。やってることは汚いが目的に対して純粋で、ヒロインにこっそり欲情するようなスケベな一面を見せたりもしない。「性欲を持て余していない」かっこよさは中高生にとって理想でしょう。私が中学生の頃にこれを読んでいたらもっと夢中になっていた自信がある。現在も割と夢中なんですがね……読み終わって「くっそー、なんで1巻しか出てないんだよ、早く2巻読みたいのに」と愚痴りたくなったのがその証拠。スペックは大したことないけど眼力と策略で相手を翻弄する、というあたりは『ONE OUTS』の渡久地を彷彿とさせる。あれも「野球版アカギ」ですが。

 ここから先はちょっとネタバレも含んでいるので、未読の方は注意。祓魔祭(カーニバル)は個人戦と団体戦(4人1組)があって、双士郎は両方に出場して優勝するつもりでいます。詳しい説明はないが、「個人戦だけじゃなく団体戦でも一敗したら退学」という条件から察するに個人戦と団体戦は並行して開催されるのだろうか? 予選で双士郎に敗北したリザとルイは個人戦に出場する芽がなくなったので団体戦にかけるしかなくなったわけだが、チームを組むにはあと1人足りませんね……本編では解説しかしていないのになぜかカラーページにイラストが載っている序列6位「神峰弓(かみね・ゆん)」がたぶん最後の1人なんだろうな、と予想していますが。弓は2巻のメインキャラを務めるみたいなので、きっと表紙にも来るでしょう。破かれる、絶対に衣服を破かれる!(黄金バットのナレーション風)と期待したのにブログにアップされているイラスト見たら破かれてないじゃないですかやだー。それはそれとして、双士郎は最強喰い(ジャイアントキリング)の動機を「復讐」と語っていますが、読み進めるにつれ「本当に復讐のためだけにそこまでやっているのか?」という疑問が生じてきますね。彼は別の目的もあって戦っている気がします。それこそ「時の悪魔」が再来することを予感して、「このままじゃお前ら全員死ぬぞ、目を覚ませ!」と訴えかけているような。本当の悪に滅ぼされぬよう、「ワクチンとしての悪」を買って出ている予感。

 まとめ。タイトルの「ダークヒーロー」で机龍之助や伊達邦彦の如く平気で人を殺める非情極まりない悪漢というイメージを持たれた方もおられるかもしれませんが、そこまで激ワルな奴ではない。露悪的な振る舞いをして、平気で卑怯な手段を使うだけ。あくまで「学園バトル物における通常レベルの悪党」です。あまりえぐい内容を期待するとアレですが、愛と正義を信じる心根のまっすぐなヒーローに食傷している方は読んで損のない一冊だと思います。打ち切りを回避するためか、1巻目だというのにこれでもかとばかりにいろんな要素をブチ込んでおり、読み応えは充分。後半でいきなりテロリストが襲撃してくることもないので「テロリストはもういいよ!」って人にもオススメしたい。アカギや斑目獏ほどの凄味はまだないが、今後の成長(の余地はないから、深化?)が楽しみ。2巻目も8月に刊行予定とのことで期待したい。というか、『異界神姫との再契約』は全然情報がないけど3巻どうなってるの? もう2巻発売から1年が経つ……異世界召喚モノで、主人公が十二神姫と再契約するためにあれこれ頑張る話ですが、1巻ごとに一柱ずつ再契約というペースなので進行が遅い。なのに刊行ペースまで遅いなんて……GAは数年空けて新刊来るパターンがままあるからまだ諦めていませんが、さすがにそろそろ情報が欲しいです。

・拍手レス。

  >2巻の価格を見ただけで察してしまうレベル 打ち切りなのは知っていたから、てっきり2巻+3巻ぶん相当の大ページでお値段アップなんだろうと思ったら。。。スゴい。。。
 電撃文庫も税込で700円超えてるのに特別分厚いわけでもない奴(目安としては400ページ未満)は基本ヤバいですね。『セブンサーガ』とか。価格が判明した時点で「あっ」となって購入を取りやめてしまうこともしばしば(セブンサーガは結局買っちゃいましたが……)。

 ヒメアノール凄まじかったですね…森田剛の圧倒的存在感と殺人描写のエグさに打ちのめされっぱなしでした。原作から変更したというラストもあまりにも哀しく、漫画原作の邦画だって捨てたものではないと思わせてくれましたね。
 ヒメアノ〜ル以外にもあぶデカやアイアムアヒーローなど、今年は邦画のアタリがちょこちょこ出ていますね。『貞子vs伽椰子』は……うん。階段でザ・ワールドを喰らうところとか怖いシーンもちよこちょこあった。


2016-06-15.

・来月から『死幣』というドラマが始まると聞き、てっきり「死に金」みたいな意味かと思ったら「手にしたものは必ず死ぬ」呪われた一万円札って設定みたいで『金蚕蠱』を思い出した焼津です、こんばんは。

 『金蚕蠱』は“カナリア・ファイル”という少女向けライトノベルシリーズの1冊目にして毛利志生子のデビュー作でもある。ジャンルとしては「退魔系のオカルト」だが、主人公が陰陽師ではなく呪禁師だというのが特徴です。リンク先はコバルト文庫の新装版だから2006年刊だけど、初版はスーパーファンタジー文庫で1997年刊。そこそこ人気があって2001年の『罔象女』まで計13冊が刊行されました。しかしコバルトでは支持を得られなかったのか『猫鬼』を最後に復刊は止まった。

 この『猫鬼』、コバルトの新装版では3冊目ですが、スーパーファンタジー時代では10冊目に当たる。“カナリア・ファイル”は主人公・有王と秘密組織「綾瀬」との因縁を軸にしたシリーズながら、綾瀬編は9冊目の『魔来迎』で完結し、以降は番外編という位置付けになります。シリーズのナンバリングも『魔来迎』で終わり、『猫鬼』以降は通巻表記がなくなってシリーズ何冊目なのかがわかりにくくなった。「金蚕蠱」は蠱毒の一種で、蚕のような虫を使って相手を呪い殺し、その富を奪うというえげつない代物。うまく使わないと術者本人が呪いに蝕まれて死ぬ。金蚕蠱を捨てる際は呪術で得た金銀財宝と一緒にまとめて放り出さないといけない。それを拾った者はもちろん金蚕蠱に取り憑かれる……って寸法です。たぶん『死幣』も「これは中国の呪術『金蚕蠱』に由来するもので云々」って展開になるんじゃないでしょうか。

川上稔の『Obstacle Overture』のムック『OO-FORMATION GUIDE BOOK Obstacle Overture』

 ふわあ! ずっと待っていた本の告知が実にあっさりと舞い込んできて失禁しかけた。

 解説しよう! 『Obstacle Overture』は川上稔作品を構成する6つの時代(時代というか、段階?)の一つ、「OBSTACLE(オブスタクル)」に焦点を当てた企画である。発端は“電撃hp”に連載されたイラストノベルであり、初出がVolume28だからもう12年も前になります。書籍にまとまるのを待っていたから私はあまり読んでなかったが、小説というより職業紹介コラムのような雰囲気だった。川上稔の作品世界は「FORTH」「AHEAD」「EDGE」「GENESIS」「OBSTACLE」「CITY」と6つの段階に分かれていて、「FORTH」はまだ人類のほとんどが異世界の技術と関わりを持たなかった、言わば「普通の現実世界」に当たる。該当作品は『連射王』。「AHEAD」は人類が異世界の技術や概念を受け入れ始めた黎明の時代であり、『終わりのクロニクル』がその始まりを描いている。ホームページで公開されている「翼」もここ。「EDGE」はまだ該当作品がないけれど、技術の進歩によって人類その他が宇宙への進出を果たした大航宙時代。やがてすごく規模の大きな戦争が起こって人類その他はボロボロになり、地球に出戻ってくる。で、もう一度歴史をやり直そうと再建に努めた時代が「GENESIS」であり、アニメ化した『境界線上のホライゾン』がここに位置する。なんだかんだあって、結局世界は滅びてしまう。その後、世界が作り直されては壊れ、作り直されては壊れ……を繰り返す試行錯誤の時代、「OBSTACLE」が来るわけです。オブスタクルは「障害」を意味し、「大障壁時代」などとも呼ばれている。もういい加減滅びない世界にしようぜ、ってことで生まれた最終段階が「CITY」――初期の代表作群“都市シリーズ”です。つまりOBSTACLEは『境界線上のホライゾン』と“都市シリーズ”を繋ぐミッシングリンクじみた時代なのだ。

 『Obstacle Overture』くらいでしか触れられなかった「OBSTACLE」だが、最近は「Obstacle Overture mobile」というカードゲームアプリ(元はケータイゲー)が出たり、『激突のヘクセンナハト』という新シリーズが始まったりなど、俄かに動きが活発になってきています。まさかOBSTACLE絡みでアニメ企画が進行しているのでは……と邪推したり。ともあれ、ファンたちが軽く10年は待っていた『Obstacle Overture』、選択肢は「買い」のみであります。書籍ではなくグッズ扱いなので、一般書店で置かれることはまずないと思う。アニメイトあたりだったら取り扱うかも。確実に入手したいのであれば予約がベター。amazonだと発送は9月10日になるみたいだが、電撃屋だと8月下旬に発送してくれるみたいなので、「少しでも早く手に入れたい!」という方はこちらをどうぞ。ああ、あとamazonは書籍以外の送料が「2000円未満なら有料」というルールに変わったので、OO単体で頼もうとすると送料が掛かってしまいます。他の何かと一緒に注文すれば送料を浮かせることができますので、買い合わせも検討するが吉。

フィリップ・カーの新刊『死者は語らずとも(仮)』、9月9日発売予定

 おー、邦訳版“ベルンハルト・グンター”シリーズの最新刊! 出るかどうか気を揉んでいただけに嬉しい。既に何度か解説しているので簡単に書く程度に留めますが、“ベルンハルト・グンター”シリーズはフィリップ・カーのデビュー作『偽りの街』(原書は1989年、邦訳は1992年)から始まるシリーズで、主人公のグンターは一応私立探偵なんですけれど、舞台がナチス政権下のベルリンだけに立場も不安定で警察の使い走りみたいな真似をやらされる(元刑事という経歴も関係している)ケースがあったりして、「ハードボイルド」のイメージからは若干ズレる。権力に阿らないことがハードボイルドの条件ですが、いくら何でも全盛期のナチス相手にそれは難しいですからね……さておき、グンターシリーズは3冊目の『ベルリン・レクイエム』(敗戦後の1947年が舞台)で一旦完結しましたけれど、人気が高かったのか15年くらい間を空けて再開しました。再開前の3部作はベルリンに焦点を当てて時系列順に進行していきましたが、再開後のシリーズは戦後のエピソードを綴ったかと思えばまだナチス政権下だった頃の話が出てきたり、舞台もミュンヘンだったりブエノス・アイレスだったりとバラバラ。

 今回翻訳されるシリーズ6冊目『死者は語らずとも(仮)』は原題が "If the Dead Rise Not" で、オリンピック開催にまつわる陰謀劇を描くものらしいから、『偽りの街』(ベルリン・オリンピック開催直前の1936年が舞台)よりも前のエピソードを含んでいます。CWA(英国推理作家協会)のエリス・ピーターズ・ヒストリカル・ダガー賞という割と新しめの賞(1999年新設、当初は単に「ヒストリカル・ダガー賞」でその名の通り歴史ミステリに与えられる賞)を受賞している。賞名に冠されている「エリス・ピーターズ」は“修道士カドフェル”シリーズで有名な作家。なにぶん「ヒストリカル」の名とは裏腹に歴史の浅い部門で、受賞作にしろノミネート作品にしろ翻訳されている作品が少ないから知名度は低いですが、日本で比較的知られる作品『荊の城』もこれを受賞している。『ダンテ・クラブ』はノミネート作品。フィリップ・カーは『変わらざるもの』『静かなる炎』でもノミネートされており、三度目の正直という趣であった。グンターシリーズは原書で11冊目まで刊行されていて、12冊目も来年発売予定です。そう、残念ながら翻訳が遅れているんです。海外ミステリは冷え込みの激しい市場ですから、「続いているだけでも御の字」ですが……それにしても予価が1500円とはすげぇな。分厚いせいもあるんでしょうけど、とてもエンタメの文庫本とは思えない値段。もちろん私は躊躇わず買います。ただ、また7冊目が出るかどうかでハラハラすることになりそう……なんとしても8冊目の "Prague Fatale" まで辿り着いてほしい。1941年のプラハが舞台で、ラインハルト・ハイドリヒも出てくるらしい。9冊目は「カチンの森」絡みのエピソードみたいで、こちらも読みたい。ぶっちゃけ全部読みたいので突然グンターブームが来て新刊バカ売れしないかなぁ。

・拍手レス。

 林トモアキ作品は作者が一度断ってるからどうでしょうねー。どの作品でも2クールぐらいないと中途半端でしょうし
 条件が悪いから断っただけで、アニメ化そのものはイヤじゃないみたいですし、そろそろ分割2クールで何か来そうな気配がしないでもない。

 ここ近年のファミ通文庫は、文学少女シリーズ、バカテス、犬とハサミは使いようが終わってしまったために、持ち弾がなくなってしまった感が否めないですね。そんな中、この恋と、その未来を未完のまま打ちきりにして本当に良かったのかよと思いました。あと一巻で完結だったのだから、刊行してやれよと思うのですが……。それだけファミ通文庫も切羽つまってるということなんでしょうけれども……。今後ファミ通文庫は、テイルズシリーズのノベライズをやってた頃みたいに、モンハンやグラブルのノベライズで細々やっていくつもりなのだろうか………。
 この恋はまだいい方で、『月虹戦記アリエル』とか『ブサイクですけど何か?』は2巻の価格を見ただけで察してしまうレベル。今はノベライズ以外だと『賢者の孫』『奪う者 奪われる者』が調子イイみたいですね。どっちもなろう系。

 かわいいゴブリンというと、ブルーフォレストのゴブリナさんを思い出しますね
 「かわいいゴブリン」の流れに乗って『ゴブリンブリーダー』とか出てこないかな、18禁で。


2016-06-04.

『ヒメアノ〜ル』観てきた焼津です、こんばんは。

 原作は古谷実の漫画。本屋で表紙を見かけたことがあるくらいで、読んだことはありません。映画も、予告編を眺めたかぎりではあまり面白くなさそうだったしパスするつもりだったのですが、「評判が高い」と聞き及んで気になりつい観ちゃった。こないだ観た『アイアムアヒーロー』もアタリだったし、邦画の流れが来ているのでは……と自分を説得して劇場に足を運んだ次第。

 正直、前半は面白くないのを通り越して苦痛だった。「ユカ」という女の子を巡って3人の男の思惑が交錯するのですが、一言で述べれば「爽快感のない気の抜けたラブコメ」。予告編でだいたいの展開を知っていたこともあって、退屈の念は禁じ得なかった。観る予定のある人は予告編をチェックしないで直接映画館に向かった方がいいです。あと、この感想文もネタバレ込みで書くつもりですから以降は読まない方がいいです。まだ迷っている、という人は続きをどうぞ。

 さて、「この調子が最後まで続くんならキツいな」と思ったのも束の間、「HIMEANOLE」のタイトルコールが入ってムードは激変する。あの瞬間、ゾクッとしました。一気に雰囲気が引き締まってほとんど別の映画みたいになります。タイトルの『ヒメアノ〜ル』は最初『ヒメノア〜ル』と勘違いしていましたが、公式サイトの解説によると「アノール」はトカゲの一種で、「ヒメアノール=ヒメトカゲ」。小型の爬虫類、つまり「強者の餌となるしかない弱者」を指す造語だそうです。主体性がなくこれといった望みも持っていない主人公「岡田」が、なぜかユカという可愛い女の子に惚れられ、ユカに付きまとっていたストーカーの「森田」(岡田とは高校時代の同級生でもある)が狂気を秘めて忍び寄ってくる……というのが映画の大筋。とにかくこの森田が怖い。何が怖いって、別に腕っ節は強くないところがですよ。パチンコで大勝した後、チンピラにカツアゲされるシーンがあるのですが、ここで森田は大した抵抗もできずあっさりボコボコにされてしまう。サスペンス映画ではしばしば超人的な運動能力を持った殺人鬼が登場しますが、森田は武力的に言うと並程度かそれ以下です。他人へ危害を加えることに対して一切躊躇がなく、罪悪感なんて欠片も感じない(感じる部分が壊れてしまっている)森田は、弱さゆえにその恐ろしさが際立つ。顔色一つ変えない窮鼠とでも表現すべきか。『邪神ちゃんドロップキック』の花園ゆりねをシリアスに描くとこうなるかな、って感じ。この映画はほぼ森田の存在感だけで持っている。あと股間を撃ち抜かれたときの安藤先輩の演技。撃ち抜かれる直前のへなちょこシャドーもツボです。

 ユカが岡田に惹かれていく過程がまったく描かれないこともあって「この女、いったい何を企んでやがるんだ?」と最初は勘繰ったりもしましたが、結局ユカの考えに関しては明示されないまま終わりました。タイトルに「ヒメ」を冠しているくらいだからサークラというか魔性の女めいた役回りかと思いきや、別段そんなこともなく、単に巻き込まれただけのようなポジション。森田のストーカー行為に怯えて急場の彼氏を欲しがった、という可能性とてなくもないが、夜中に平然と一人で歩いているシーンもあり、そこまで切羽詰まっている印象もない。森田という存在を不気味には感じたかもしれないが、殺人鬼レベルのヤバさを嗅ぎ取っていたとは読み取りにくい。「肉の壁」にするつもりだったら黒のフランコよろしくもっとガタイのイイ男を選んでいたでしょうし。ユカは進むにつれて物語の後景と化していき、最終的には岡田と森田の対決構図に落ち着きます。ハッキリしない言動ばかりだった岡田がユカと付き合いだした途端に行動力が伴うようになってくるのも面白い。ヒメに徴兵されたオスが騎士としての役割を果たしていく、成長物語要素がさりげなく盛り込まれているあたりも本作の妙味と言えましょう。ストーリー構造的には「岡田がユカの盾になった」のではなく、むしろ「岡田がひと皮剥けるためのステップとしてユカが出てきた」ふうになっている。

 その岡田に試練を与えるべく宿命を背負って現れた森田は異常極まりなく、精神が既に終着してしまっていて共感という境地からは程遠いけれど、その荒廃ぶりが悲しくもある。彼の良心回路が壊れてしまった原因は高校時代の苛烈なイジメにあるが、イジメの主犯はとっくの昔に殺しているので、恨みの感情は残っていない。しかし恨みが晴れたところで元通りに復するわけでもなく、ヒビだらけの心を抱えたまま日々過ごすことを余儀なくされる。せめて彼自身に壊れている自覚があったならそこから抜け出す望みもほんの僅かにあっただろうが……通報を受けてやってきた警官が殺されたにも関わらずその死体が発見されるまで時間が掛かる、というふうに不自然な展開も多少あったものの、総じて「邦画でここまでやれるのか!」と感激する出来でした。『アイアムアヒーロー』ともども今年必見の邦画です。原作にも興味が湧いてきました。

「ハイスコアガール」7月より連載再開!最新6巻&リニューアル版の単行本も(コミックナタリー)

 復ッ活! 『ハイスコアガール』復ッ活!! まことに喜ばしい。念のため解説から入ろう。『ハイスコアガール』とは押切蓮介による漫画作品で、2010年から始まった。勉強はからっきしだけどゲームが得意で、「ゲームのうまさ」だけをプライドの拠り所としている少年が、自分よりもゲームのうまい少女と出会ってプライドを粉々にされる……という青春ストーリー。要するに「ボーイ・ミーツ・ガール」形式です。90年代頃のゲームソフトが次々と実名で登場することから話題になり、「ノスタルジックな要素を孕んだラブコメ」としてヒット、既刊5冊で累計110万部にまで達した。「権利関係でアニメは難しいのでは?」という声をよそに、2013年12月にはアニメ化決定と報じられました。しかし2014年、SNKプレイモアが「許諾を得ないまま勝手にうちのゲームキャラクターを使用した」としてスクウェア・エニックスを刑事告訴、問題がこじれて連載は中断に追い込まれる。紆余曲折を経て2015年にSNKとスクエニは和解、再開に向けて動き出したが、具体的な日程は不明なまま年を越すことになりました。そして今ようやく再開の時期が決まった、というわけです。

 『ハイスコアガール』は、というか押切蓮介の漫画は、ハッキリ言って初見の人からすると「絵が下手」って印象が強いでしょう。荒々しいタッチで、背景もザックリした感じ。「表紙だけで読む気が削がれる」と敬遠する層も一定数存在するはずです。私もかつてそうでした。多作家でやたら単行本を出しているので、どこから手を出せばいいのかわからない、というのもあった。けれどギャグ要素の少ない(てか、ほぼない)『ミスミソウ』を機に読み出して、あっという間にハマってしまった。勢いのある展開、独特なセンスを匂わせるセリフ回し、ボケてるのかマジなのかイイ意味で判断に迷う絶妙なネタの数々。多少のアタリハズレはあるものの、基本的に中毒性の高い作風です。長らくホラー路線をメインとして描きまくっていた押切は、『ハイスコアガール』が当たったことをキッカケに方針変更します。常時4、5本の連載を抱える量産体制から『ハイスコアガール』中心の体制へ徐々に移行。アニメ放送に向けて万全の姿勢に入った……ところで例の騒動が起こってしまった。間が悪いの何のって。アニメ化が決まった頃は復刊作品も含めて年に12冊くらい、ほぼ毎月のように新刊を出していたが、2015年はたった2冊。そのうち一つは『サユリ 完全版』なので、純粋な新刊は実に1冊だけだった。これ以上再開が遅れると生活面での不安も出てくるのではないか、と余計な心配をしていた矢先にこのニュース。めでたいです。新装版の『ハイスコアガール CONTINUE』は書き下ろしもアリとのことなので、買い直す気満々だ。このままアニメ化の話も再開するといいな。

性同一性障害をテーマにしたラノベ『この恋と、その未来。』が打ち切りに… そして作者「森橋ビンゴ」さんはラノベ作家の引退を発表(まとレーベル@ラノベ新刊情報サイト)

 内容はともかく売上的には2巻目で打ち切られてもおかしくなかった、という噂のあるシリーズですからね……遂にその時が来てしまったか、と。売れないシリーズを出し続けるのは出版社にとって損失を垂れ流すことと同意であり、仕方ない面はある。ただ、それ以上に「売れない作品を書き続ける」ことは職業作家にとって途轍もなくキツい。経済的にも精神的にも。『刀京始末網 ヒツジノウタ』から14年、さすがに著作を全部買っていたわけじゃないが、折に触れてちょくちょくチェックしてきた作家がいよいよ本格的に引退しそうだと聞いて寂しさは拭えない。まあ森橋ビンゴは『ラビオリ・ウエスタン』の頃に引退を仄めかしつつも作家活動を続けてきた経緯があるので、あまり深刻に受け止めていないファンもいるみたいだが。

 作家歴は長いものの、恐らくほとんどの人にとっては「誰?」って感じなのであろう森橋ビンゴ。打ち切りとはいえ『この恋と、その未来。』は彼の作品にしちゃ長く続いた方で、これまでのシリーズはだいたい2、3冊程度で終わっています。コミカライズされた『ナナヲ・チートイツ』にしたって原作は1冊だけ。漫画版は『花鳥風月』ってスピンオフも出ているし、続編の『ナナヲ・チートイツ 紅龍』まで始まったくらいなのに。この人の小説は典型的な「読まないと面白さがわからない」細かな機微で心を突き刺す作風なので、読んでいない人に魅力を伝達するのはなかなか難しい。ぶっちゃけアタリハズレもちょっとある。やっぱりもっと明白な「掴み」となる何かが必要だったんだろうな……個人的なオススメは『三月、七日。』。広島弁のヒロインが可愛い。続編として『三月、七日。〜その後のハナシ〜』もあるが、『三月、七日。』だけで話はまとまっているし、蛇足に感じる人もいるだろうから読むかどうかはお好み次第で。気に入ったらそのまま『この恋と、その未来。』に直行しましょう。最終巻に当たる内容は何らかの方法で公表する予定とのことですし、事態は好転するだろうと前向きに捉えておきます。こういう例もありますし。

【朗報】 名作ラノベ『R.O.D』の新刊がついに発売か!?  『R.O.D』らしき初稿をDX文庫が公開(まとレーベル@ラノベ新刊情報サイト)

 実は『R.O.D』ってまだ新品が購入可能なんですよね……16年前の作品だってのに。さすがにもう全然知らないって年代の人もいるだろうから、丹念に解説しています。『R.O.D』(「リード・オア・ダイ」の略)はアニメ脚本家として知られる倉田英之が手掛けたオリジナルの、つまりノベライズ企画とかではないライトノベルシリーズです。これ以前にも『TRAIN+TRAIN』というオリジナル作品があって、そちらも未完状態のまま絶賛放置中なのだが説明は割愛する。『R.O.D』の主人公「読子・リードマン」は紙使い(ザ・ペーパー)の二つ名を持つ読書狂(ビブリオマニア)にして凄腕のエージェントであり、世界各地で発生する出版物絡みのトラブルを解決して回る、というのが大まかな筋立てです。1巻でヒロイン(?)「菫川ねねね」との出会いを描いたり、2巻で巨大書店を舞台にダイハード的な活劇を描いたりと、初期は各巻ごとの読切形式で進行していました。しかし、4巻からその名を聞くとファンが物憂げな顔をする「グーテンベルク・ペーパー編」に突入。以降、『R.O.D』はたまに番外編っぽい内容(7巻と10巻)を挟みつつも原則としてひたすらグーテンベルク・ペーパーにまつわる騒動を綴り続けるようになり、いつまで経っても終わりが見えない状態に陥っていく。さながら『アカギ』の鷲巣麻雀みたいに。そして2006年発売の11巻を最後に、刊行は途絶えました。その後、何度か「○年ぶりに12巻が発売される」という話は持ち上がった(確か2013年頃には予定表にも載っていた)ものの、お察しの通り立ち消えに次ぐ立ち消えで影さえ踏めず。完全に諦めムードだったところにこの報せで、ファンは喜ぶよりも「また延期するんじゃねぇの?」と懐疑的です。

 『R.O.D』は集英社スーパーダッシュ文庫の創刊ラインナップであり、レーベルの初期を支えたシリーズでもある。当然の如くメディアミックスも盛んに行われた。2001年から2002年にかけてOVAが発売、2003年にTVアニメが放送され、ここで一挙に知名度が高まります。ただしアニメ版と小説版はストーリーが異なり、小説版で女子高生作家だったねねねがアニメ版では既に成人している。時系列的には小説→OVA→TVアニメって具合だろうか。「そもそも小説とアニメは繋がっていない」という話もあるが、未視聴なのでよくわからない。コミカライズも3つのバージョンが出ているけれど、一番新しい『REHABILITATION』は「電子書籍の擡頭によって紙書籍が死滅した未来」の物語であり、「読子」ならぬ「読魅子」が主役を務めるので小説版やアニメ版とはほとんど別の世界と受け取った方がいい。ちなみにタイトルは「書けなくなった倉田英之が『R.O.D』に再挑戦するためのリハビリ」という意味が込められているんだとか。長年に渡るリハビリが遂に実を結んだのか? まだまだ気を抜けないというか糠喜びをしたくないという気持ちが強いけれど、12巻が出るなら久々に読み返してみようかな。正直グーテンベルク・ペーパー編の内容なんて忘れかけていますよ。万全の態勢を整えていざ迎えた12巻がグーテンベルク・ペーパーとまったく関係ない番外編だったら……笑ってしまう。ファンはきっと叫ぶでしょう。「W.O.D(書かずに死ぬな)!」

・拍手レス。

 >最近のゴブリンが可愛すぎるんだが… そんな貴方に『ゴブリンスレイヤー』
 ゴブレイは積んでるなぁ。そろそろ崩さないと。


2016-05-22.

Lump of Sugar新作「タユタマ2 -you’re the only one-」が発売延期。5月27日から9月23日発売予定に(つでぱふ!)

 なかなかマスターアップ報告が来ないから覚悟はしていた。型通りの「クオリティアップのため〜」ではなく「制作に悔いを残さないためにも」と私情を覗かせる言い回しが出てくるのは面白い。ヴェドゴニアを延期したときの虚淵玄の声明文を思い出しました。

未アニメ化のオリコン一万部越えレーベル別ライトノベル作品一覧 なろう小説ばっかりなんだけど・・・(まとレーベル@ラノベ新刊情報サイト)

 電撃文庫とヒーロー文庫以外の文庫系レーベルはスカスカですね……『ゲーマーズ!』は本来ならアニメ化とかせずに程良い巻数でサクッと終わりそうなシリーズだけど、他に弾もないしアニメ化コース入っている気配が漂う。でもあれって30分枠に押し込むの難しい気もしますからね。「一冊にいろんなネタが詰まっていて、一見ハチャメチャなんだけど通して読むと意外にまとまっている」スタイルなだけに、30分で区切っていくと「ただ乱雑でまとまりのない回」が生まれてしまいそう。路線は異なるが、構成の難儀さで言えば『異能バトルは日常系の中で』に通じるものがある。「細かい遣り取りをバッサリ削って大筋のストーリーだけ残す」、一般的な方式でアニメ化すると微妙な出来になってしまいそう。シリーズ構成の人が辣腕家だったらうまく行くかもしれない。

 しかし、『ガンゲイル・オンライン』『Fate/strange Fake』ってこんなに売れていたのか。どちらも有名作家によるスピンオフ作品。SAOのスピンオフ小説はまだガンゲイル・オンラインだけ(渡瀬草一郎の『クローバーズ・リグレット』も連載中ながら単行本にはまとまっていない)だが、Fateは山ほどスピンオフ作品が出ていることもあってアニメしか見ていない人だとstrange Fakeはどういう位置づけなのか分からなくて混乱するかもしれない。単行本としての刊行は去年からだけど、始まったのは2008年4月だ(この時点では成田良悟個人によるエイプリルフールネタだった)から、実はスピンオフ作品の中でも割と古参です。物語としては第五次聖杯戦争(Fate/stay night)の数年後、つまり後日談に当たる。時系列順に並べるとZero→stay night→strange Fake。タイトルに「Fake」と入っているくらいだから行われるのは「偽物の聖杯戦争」なんですが、ZeroやSNのキャラも出てきたり出てこなかったり。というか表紙になっているのでバラしてしまうけど、ギルがサーヴァントとして登場します。ギルを除けば主要面子は刷新されており、Zero以上に外伝っぽいストーリーに仕上がっている。いずれアニメ化するでしょうが、Fate作品は話の性質上、「完結してからでないと企画を動かしにくい」ので当分先になるはず。

 MF文庫Jの『ようこそ実力至上主義の教室へ』『暁の護衛』コンビ(衣笠彰梧&トモセシュンサク)による学園モノで、今MFが猛烈にプッシュしているから「アニメ化決定!」みたいな発表が来てもみんな「うん、知ってた」って感じになるでしょう。衣笠トモセのファンは、「それより『暁の護衛』をアニメ化してほしかった……」と反応するかも。確かに動く海斗はちょっと観てみたい。でも声のイメージがないから本当にアニメ化したら個人的には微妙な感想になってしまうかも……あ、でもドラマCDがあったか。そういや買ったまま聴いていなかったな。調べると海斗役は木内秀信が担当していた模様。DTBの黒を演った人か。最近だとテラフォの小町小吉。

 オーバーラップ文庫は新興レーベルにしちゃ調子がいい。『IS』は移籍作品だからカウントしていいものかどうか迷うところだが、それを除いてもアニメ化作品として『灰と幻想のグリムガル』があるし、創刊から僅か3年の新規レーベルにしては認知されている方だろう。なろう系を引き入れることでシリーズ作品の頭数もキッチリ揃えている。目玉になるかと思った『Occultic;Nine』があまり巻数伸びていないのはアレだが……スニーカーはそろそろ林トモアキ作品に手を付けそうでヤバい雰囲気。このすばが予想外のヒットを飛ばして「低予算でも結構イケるじゃん! やっぱアニメの製作費は削ってナンボだよ!」と悪い方向に突き進みそうな予感と申しますか。スニーカーは話数まで絞ってくるからイヤなんですよね。

 あとはダッシュエックス文庫、公式発表だと『英雄教室』が累計20万部突破で調子イイみたいだが、他がパッとしない。『文句の付けようがないラブコメ』も5冊で累計10万部くらい。中堅レベルがちょこっとある程度で、看板レベルがなかなか育っていません。6年ぶりの新刊で話題になった『紅 〜歪空の姫〜』も、案の定1年経っても続き出ないし。せめてもう少し刊行ペースが良ければ『紅』再アニメ化の可能性もなくはないだろうが……解説しておきますと、『紅』は2008年に一度TVアニメ化していますが、キャラデザもストーリーも何もかも原作から乖離した内容になっており原作を知らない視聴者にはそこそこ好評ながら原作ファンにとっては「黒歴史」「TVアニメなどなかった、いいね?」となっている。原作は死体がゴロゴロ転がったりなど凄惨なシーンも含まれているし、胸糞悪い要素も盛り込まれているのでそのままアニメ化するのは難しい(比較的原作に近かったコミカライズ版も表現や展開はかなりソフトなものに変わっている)、とファンも理解はしていますが……コミックの特典としてOVAも制作され、そちらは山本ヤマトのタッチに近づけたキャラデザとなっていますが、収録エピソード自体は各10分程度のショートストーリーだったみたい。「原作に近い内容での本格的な再アニメ化」を期待する人が未だに存在するものの、それよりも何よりも原作の本格的な再始動が切に望まれます。

ラノベ作家「『新人/新作だから買う』という読者様がペーペーを支えてくれていたけど、昨今は新作や新作こそ苦戦を強いられる時代になってしまった」(まとレーベル@ラノベ新刊情報サイト)

 「新人/新シリーズだから、1冊くらいは買ってあげよう」と今でも時折財布の紐を緩めていますが、新人/新シリーズが増え過ぎて買う以前にチェックし切れない感じはあります。2010年くらいまでは頑張ってデビューしてきた新人を把握しようとしたけど、2011年くらいから「もう全部は無理」と諦めてしまった。あらすじやイラストで興味を惹かれない新作は、正直読み出すのもしんどい。ほとんどの新人はすぐに消えてしまうし、生き残っても手掛けたシリーズの大半は打ち切りアンド打ち切りで、読む側にも徒労感が募る。ある程度巻数が溜まって「よし、打ち切られずに最後まで行けそうだな」と確信してからでないとなかなか購入に踏み出せません。出版社側も買い手の意欲が萎え気味なのを察しているのか、新シリーズ立ち上げの際は「○冊同時刊行」とか「○ヶ月連続刊行」とかで「すぐに終わらせるつもりはありませんよ」とアピールしてきますね。結論を言うと、前よりも新人や新シリーズを買わなくなった理由は「チェックし切れない」のと「『また打ち切りか……』と落胆することに疲れた」、このふたつです。それはそれとして最近の新人で注目しているのは『ランオーバー』の稲庭淳。デビューからそろそろ1年が経つけど、新作はいつだろう……。

最近のゴブリンが可愛すぎるんだが…(まとレーベル@ラノベ新刊情報サイト)

 「可愛いゴブリンを見たい!」 そんなアナタにオススメなのがこちら、『天空の扉』。隙あらば登場するキュートなミニゴブリンたちの存在感は圧倒的です。なお真に受けて読み出しても当方は一切責任を取る気ありません、あしからず。

【雑誌情報】ASa Project最新作「スキとスキとでサンカク恋愛」詳細。"ないものねだり"をコンセプトに描く、イチャラブ満載のラブストーリー(つでぱふ!)

 『プラマイウォーズ』から1年、遂にアサプロの新作情報が来ました! アサプロことASa projectは一風変わった恋愛エロゲーを作ることで定評のあるブランドです。商業デビューが2007年だから、来年でいよいよ10周年を迎える。ファンの間では「やや寡作気味なところ」としても知られており、実際に前作『プラマイウォーズ』は丸2年ぶりとなる新作ソフトでした。商業化1作目の『めいくるッ!』(メイドが来る、程度の意味)や2作目『HimeのちHoney』(高嶺の花=姫が恋人=ハニーに、程度の意味)の時点ではかなりマイナーなブランドだったけれど、3作目『アッチむいて恋』から評価と注目度が上昇していきましたね。ちなみにアチ恋は主人公が「手違いで女子寮に住むことになった」という、それ自体はごくありがちな設定なんですが、「普段は男子生徒として過ごし、寮にいる間だけ女装して暮らす」という二重生活が作品のアクセントになっています。ヒロインたちは「普段の主人公」と「女装した主人公」を別人物だと思い込んでいるので、友達に接する感覚で明け透けな気持ちを打ち明けたりする。こういうちょっとヒネリを加えた設定が特徴になって、固定ファン層を築くに至った。

 代表作は何と言っても4作目の『恋愛0キロメートル』。異様なまでに胸を強調するラバースーツめいた制服のおかげで「乳袋」の代名詞になりました。ヒロインの一人、乃来亜が到底ヒロインにあるまじき百面相を繰り広げたため、「顔芸」の代名詞にもなった。お隣同士の家庭で「子供を一人だけ取り替えっこする」という狂気の協定が結ばれ、いきなり血の繋がらない姉と妹ができてしまう……と、かなり突飛な設定ではあったがアサブロの作品としてはもっとも話題を喚びました。ここからアサプロのファンになった人も多いのではなかろうか。今回雑誌に記事が載った『スキとスキとでサンカク恋愛』は7作目のソフトに当たり、実妹と義妹、幼なじみの少女と出会ったばかりの先輩、二つの三角関係が交錯する話になる模様。「二つの三角関係」というと『さくらさくら』を思い出すな……あちらはダブル主人公制だったが、こっちはシングル主人公みたい。アサプロもなんだかんだで生き残って、徐々に古参ブランドと化しつつある事態に静かな驚愕の念を禁じ得ない。『めいくるッ!』らへんの、いろいろと足りてないしズレてるところもあるけれど全力で取り組んでいる姿勢は伝わってくる「密かに応援したくなるメーカー」だったアサプロがここまで立派になるとは……ちなみに『恋愛0キロメートル』と並ぶ乳袋の代名詞『カミカゼ☆エクスプローラー!』を発売したクロシェットも近々(予定では今冬)新作を出す予定。タイトルは『はるるみなもに!』。しんたろー原画だし、『かみぱに!』『あまつみそらに!』を意識している?

・拍手レス。

 刀語がアニメ化されたんだから、戯言シリーズもアニメ化されるだろうなと思ってたのですが、やっとアニメ化決定の情報が来たかと感じました。忘却探偵シリーズのドラマも出来が良かったし、ここ最近は少女不十分や伝説シリーズのマンガ化されているから、良いタイミングだと思います。しかし、ならばこそ終物語・下の放映日を発表してほしいなと感じますね。ただでさえ、傷物語の映画も完結していないのに……。まぁ、ここ最近のシャフトは三月のライオンのアニメ製作も控えていますから、なかなか制作が進まないのはわかってはいるのですが……。
 『少女不十分』の漫画版は原作より面白そうな雰囲気があって買おうかどうか迷ってたり。『傷物語』の映画版、出来は悪くない(いや、いい!)んだけど、短すぎて「そこで終わりかよ!」と叫びたくなる。シャフトもだんだん「じっくり時間を掛けて制作」路線に移ってきましたね。『化物語』の初期のような、大きな画面で観るのが辛いくらい粗いシーンがなくなるのはいいことだけど……来月出る『暦物語』で飢えを凌ぐかな。

 DiesIraeの文章が凄く読み応えあって面白かったです。
 Diesと言えばイカベイがなかなか進められない……早く時間作らないと。

 発売されなかったエロゲといえば、自分の中ではやっぱり精剣血風録ですね。未完成商法を解決する答えの一つとかライターさん言ってたのに。やたらとテキスト量多かったのは、周囲の会話もすべて書いているからだと予想してました。
 井上啓二がシナリオ書いた奴ですね。17.3MBの大ボリューム(ただし納品時に一部を削った模様)。『アルテミスブルー』で9年ぶりに復活したものの、最近また名前をあまり見かけなくなりました。『空色イノセント』も企画原案だけでシナリオは書いてないみたいですし……。


2016-05-16.

・「あれ? 『ローゼンメイデン』のヒロイン、名前なんて言ったっけ?」と度忘れして思い出すのに30分も掛かった焼津です、こんばんは。

 名前に「紅」が入っていたことは覚えていたものの、全体が浮かばなくて四苦八苦。水銀燈や翠星石のように三文字じゃなかったっけ、と勘違いしたせいもあって迷走に拍車が掛かった。紅茶が好きだったし「紅茶石」? いやさすがにそれはないか。紅天蛾……は『シドニアの騎士』だな。紅天狗はキノコだし。紅花? 紅丸? 小紅? もしかすると「べに」じゃなくて「こう」だったか? ヒロインの名前が「紅衛石」だったら中国じゃ放送できないな。思い出せないので諦めてアニメ観ていたら「うーん、そういえばコードギアスの放送時に何かのネタにされていた気がするな」と記憶の底に引っ掛かるものが。えーと、ほらアレ、あのナイトメア……そう紅蓮弐式! あれと関係していた気がする。紅蓮……紅蓮……そうだ、真紅だ! とギリギリ自力で記憶を甦らせることができました。歳取ると固有名詞はボロボロ忘れていきますね、ホント。よくオッサンが横文字のバンド名とかを口にできなくてトンチンカンな発言しちゃう、みたいなネタあるけど、自分もマジでああなっていくんだな……と痛感した次第。余談だが、雪華綺晶(きらきしょう)と薔薇水晶(ばらすいしょう)もごっちゃになっていて「雪華水晶」と言っちゃった。この調子じゃ仮に「金糸雀(カナリア)」の名前を「金雀枝(エニシダ)」と表記されていても気づかずにスルーしていただろうな。

西尾維新の『戯言シリーズ』がアニメ化決定!(まとレーベル@ラノベ新刊情報サイト)

 『化物語』のアニメが大ヒットした頃から「いつか来るかも」と予感していたけど、遂に……“戯言”シリーズは2002年に開始し、2005年に完結したシリーズで、1作目の『クビキリサイクル』は西尾維新のデビュー作でもある。第23回メフィスト賞受賞作。西尾維新はメフィスト賞に何度も応募しては(確か10回くらい)授賞を見送られてきた名物投稿者で、メフィスト賞好きの間では「京都の19歳」という通称で親しまれていました。シリーズ名でもある“戯言”の由来は、主人公「いーちゃん」の二つ名が「戯言遣い」だから。ことあるごとに「戯言だけどね」と口にする彼のキャラクターを受け入れられるかどうかでシリーズを楽しめるか否かが決まってくる。正直、『クビキリサイクル』の時点では賛否両論というより、叩く向きの方が目立った。下手すると佐藤友哉の『フリッカー式』以上に酷評されていたかもしれない。なにせヒロイン・玖渚友の口癖は「うにー」で、一人称は「僕様ちゃん」ですからね……「どこのあゆだよ」「ちゃん様かよ」と呆れるミステリ読者もチラホラと。評価が上向いてきたのは2作目『クビシメロマンチスト』からで、クビキリをあまり評価しなかった私もクビシメに関しては文句なく面白いと思いました。架空の孤島を舞台にしたせいもあって書割感がどうしようもなく濃厚に漂っていた前作に対し、クビシメは京都で起こる事件を臨場感たっぷりに、それでいてどこか現実離れした独特なムードで描き切っている。ミステリとしては“戯言”シリーズ随一の傑作です。

 しかし、3作目の『クビツリハイスクール』あたりから超人バトル要素が強くなり、周囲の扱いも「ミステリ作品」から「ライトノベル作品」に切り換わっていく。売れ行きが加速したのもこのへんからで、クビシメの頃はまだ新刊コーナーにだけ積まれている感じだったが、クビツリを機にしてだんだん「西尾維新コーナー」が組まれるようになってきます。ちなみに、クビキリやクビシメは新書で400ページ近い分量があったのに、クビツリはページ数がぐっと減ってほんの200ページちょっとになっていますが、これには訳があります。当時講談社ノベルスではメフィスト賞受賞者による「密室本」と呼ばれる「密室」をテーマにした書き下ろし競作が行われており、価格を800円程度に抑えるため全部200ページ前後のボリュームに統一されていました。クビツリも「密室本」の企画に参加する形で書き下ろされたので、“戯言”シリーズにしては異例の薄さとなった次第です。この巻で初登場した「策師」萩原子荻は私のお気に入り。

 この調子で解説していくとキリがないので以降は端折るが、“戯言”シリーズは『クビキリサイクル』『クビシメロマンチスト』『クビツリハイスクール』の“クビ”3部作と『サイコロジカル(上・下)』『ヒトクイマジカル』『ネコソギラジカル(上・中・下)』の“ジカル”3部作、計9冊から成ります。特徴の一つは、キャラクターと設定の膨大さ。“物語”シリーズも長期化するにつれてどんどんキャラが増えていきましたが、“戯言”シリーズは始まった時点から既にキャラが多いし、進めば進むほど凄いことになっていく。出番がある奴だけに絞っても50人以上、設定だけのキャラも含めると倍になるんじゃないかしら。特殊組織や特殊集団も一つや二つではなく、十個や二十個は平気で出てくる。この過剰とも言える設定の厚塗りは、清涼院流水の“JDC”シリーズの影響によるところが大きい……かも。風呂敷の広げっぷりは同時代で言うと奈須きのこに匹敵するものがある。“戯言”シリーズがずっとアニメ化されなかった理由を考えるうえで、「キャラ・設定の多さ」は外せないポイントだ。「ストーリー上重要な人物」と「ストーリー上そんなに重要ではない人物」が混在していて、「重要かと思ったらそうじゃなかった」あるいはその逆という巧みなフェイントを織り交ぜた展開がシリーズの魅力になっているんですけれど、これをそのままアニメで再現しようとすると情報過多になって視聴者が混乱しかねない。ハッキリ言って『迷家‐マヨイガ‐』どころではないレベル。だから不安も大きいのだが、いーちゃんにまた会えるのかと思うと胸が熱くなる気持ちも実際あるわけで……ひとまず続報を楽しみに待ちたい。

 余談。“戯言”シリーズは既に完結していますが、同一世界を舞台にしたスピンオフというか関連作はその後もちょこちょこ出ています。「殺し名」という殺人者集団に名を連ねる「零崎一賊」のメンバーたちを主体とする、“戯言”シリーズ以上に異能バトル要素の濃い“人間”シリーズ。作中で「最強」というポジションに付いているキャラ「哀川潤」をメインに据えた“最強”シリーズ。“最強”の関連作だが、未だに単行本にまとまっていない『哀川潤の失敗』って作品もあります。“戯言”シリーズはまだ20代前半だった頃の西尾維新だからこそ書けたであろう、若々しいというよりも荒々しい雰囲気の残る作風で、だからこそ変に続きを書いてもらいたくないと申しますか、「アニメ化に合わせて再開するつもりなのでは?」と危惧するファンもいる(無論私だ)。「いーちゃんにまた会える」のは楽しみだけど、別に続きが読みたいわけでは……でも出たら買っちゃうだろうな、きっと。

カクヨム小説「The video game with no name」が斬新で面白いとネットで話題に(まとレーベル@ラノベ新刊情報サイト)

 未来のゲームレビューサイトが、不当なまでに評価の低いレトロゲーム(我々にとっては「まだ発売されていないソフト」)について語る、といった体裁のSF小説。最初は「架空のクソゲーレビュー」みたいな感覚で楽しんでいたが、進むにつれてSF要素が自然に織り込まれていき、どことなくレトロフューチャー的なテイストも混ざっていって白熱する。歴史の闇に埋もれていったモノたちへの愛が輝く、そう、つまりこれはゲーム版『栄光なき天才たち』だ。大槻涼樹の「北の国から」や田中ロミオの「世相を斬らない」みたいなネタコラムが好きな人には是非ともオススメしたい。

勝手にまとめた、いつ発売されるかわからない or 発売中止になったエロゲ集(つでぱふ!)

 未発売ゲームの確認はさながら賽の河原の石積みにも似た不毛と苦痛まみれの作業だが、ある意味で「発売されたゲーム」以上にノスタルジーを掻き立てる。クサい言い回しになるが、それは遠き日に交わされつつも果たされなかった、朽ちて古びた約束のようなものです。いくつかピックアップして語ろう。

 『ЗАРЯ(ザーリャ)』は「夜明け」や「曙光」を意味するロシア語から来ているタイトルですが、「ザーリャ」は英語読みで「ザリャー」の方がロシアでの発音に近いらしい。舞台はソ連、そして「宇宙開発」をテーマとするSFエロゲーになるはずだったらしいが、ろくに情報も出ないまま凍結されてしまった。原画を担当するはずだった松本規之は今だと漫画やイラストのイメージが強いか。シナリオのfocaは現在「砂阿久雁」という名義で活動している。

 「けれ夜」こと『けれど輝く夜空のような』は『それは舞い散る桜のように』の8年後を描く続編として企画された。いろいろあってBasiLからスタッフがごっそり抜けたため、頓挫。メインライターを務める予定だった「あごバリア」も泉下の人となり、実現の芽は潰えました。王雀孫が後を引き取って書く可能性もほんの僅かにありますが……。

 『末期、少女病』は「ある廃墟」に寄り集まった少年少女たちが世間から「新興宗教」として迫害され、「ならば見てろよ」と世界に報復する?ような感じの話。企画時のタイトルが「マンハッタン計画」だったことを考えると、原爆でも作るストーリーだったのか。一度開発を停止した後、数年経って再開まで漕ぎ着けたものの、そこでまたトラブルがあって座礁……一応、形としてはビジュアルアーツが巻き取ったことになっていますが、再停止から3年経った今も音沙汰まったくなし。シナリオの山田おろちも撤退宣言を出してしまったし、発売の実現性は日に日に萎んでいきます。おろちと言えば、最近は別名義(金月龍之介)もあまり見かけないな。アニメ関連だと『精霊使いの剣舞』で脚本を書いていたのが最後か?

 『Mio Cid(ミオ・スィ)』は驚くことにまだ開発が継続されているらしい。ホントかよ。BGMが与猶啓至とのことで、変更がないならやってみたいソフトではある。

 『陰と影』は個人的にケロQ一の名作だと思っている『二重影』のリメイク的なアレ。『二重影』は「物心をついたときから二つの影がある」という呪いに掛かった主人公が、呪いを解く手がかりを求めて無数の鳥居に埋め尽くされた「淡炎島」に渡る……という伝奇色の強い剣戟ゲー。この淡炎島を「那月島」に変えて、『二重影』よりも更に凄惨なストーリーを紡ぐはずだったのが「開発無期限停止」なのだから無惨極まりない。『サクラノ詩』が出たくらいだし、こっちも開発再開される可能性はゼロじゃない……といいな。SCA-自は現在『サクラノ詩』の続編『サクラノ刻』の制作に取り掛かっているが、違う世界観の物語も書いてるそうな。ひょっとすると『陰と影』かもしれない。私はそう信じることにする。ちなみに淡炎島が無数の鳥居で囲まれているのは、この島じゃ子供が必ず双子として生まれてくるけど、片方を間引くのでその弔いとして鳥居を立てているわけです。あと『二重影』には『二重箱』というFDもあるが、収録されている番外編はヒロインのエピソードだけで二つ影双厳(主人公)の話はありません。「どっとはらい」という外伝小説にはちょこっと登場する。

 そして『霊長流離オクルトゥム(仮)』、通称「オクル」。オクルトゥムは「オカルト」の語源か何かのラテン語。ヒロインの名前(黒羊歯)から同人企画として進行させていた『レヴィアタン』と関係があるのではないか、と睨まれています。Will系列で発売予定だったものの、「開発に億単位の資金が必要」と目されペンディング。ロミオ曰く「主人公の置かれた状況をハードを超えたインフェルノモードに設定した」とのことで、M気質を有するロミオ儲たちはゾクゾクしながら放置プレイに耐えて(愉しんで?)いる。私もこれをプレーするまでは死ねない気持ちでいる。ひょっとして不死身ってことなのか……? あとはニトロプラスの『ドグラQ』ですかね。旧企画名『クルイザキ』。鋼屋ジン曰く「書く気はある(笑)」そうだが、ニトロ自体がエロゲーから離れつつあるので厳しいか。『太陽の子』は……一応進んでいるらしいけど、諦めかけている人も多いな。発表から6年半か。さすがにそろそろ続報が欲しい。『永遠(仮)』は『Garden』のシナリオを結局完成させることができなかったお詫びとして制作が告知された補填タイトル。もう3年経つのにアナウンスなし。『Garden』が発売された2008年1月から数えると既に8年経過である。せめて何らかの説明はしろよ、とCUFFSに言いたい。『あやかしびと異伝』は東出祐一郎が何かの企画で書いていた部分だけをPDFで公開、ってだけで「ゲームとして開発する」みたいな話はなかったと思う。アグリーメントの購入特典として配布されたのだが、私が気づいた頃にはダウンロード期間が終了していた……当然ガールズパッチもDLし損ねました。いずれ再配布されないかなぁ。

Lass新作「Liber_7 永劫の終わりを待つ君へ」が発売延期。5月27日から10月28日発売予定に(つでぱふ!)

 ろくに情報出てないから飛ぶだろうな、と予想していた。それにしても5ヶ月先とは、飛び過ぎ。何か根本的な問題があるのか? と告知文を読んだら、どうも外注会社絡みでトラブルがあったみたいですね。普通なら「外注会社がトラブルの尻拭いをさせられる」ってパターンなのに、今回は逆か。とりあえず、今月の予定はだいたい決まった。あとは『タユタマ2』のマスターアップ報告を待つばかり……。

 松智洋氏の訃報は本当にショックでした。迷い猫オーバーランは、諸々の事情でイラストレーターが途中の巻から交代になってしまい、松氏も不本意だったろうなと感じていました。もっと書きたいものがあっただろうにと思うと、残念でなりません。しかし、ここ近年は松来未佑女史といい、前田健氏といい、松智洋氏といい、自分の知っている方々の急逝のニュースが目立ってかなり凹みます……。
 水面下で動いていた企画もあったんだろうな……と思うと切なくなる。

 遂に西尾維新の戯言がアニメ化すると聞いてリアルに吹き出してしまいました。西尾ファンは化物語以降と以前で分かれる感じがするので戯言のノリがというかいーちゃんや最強さんが受け入れられるかに懸かってますかね?殺し名七家呪い名六家十三階段と言う名称にときめいてた十余年前が懐かしいです。
 玖渚チームの二つ名に心をときめかせていたなぁ……「裁く罪人」害悪細菌(グリーングリーングリーン)とかの。今はああいうの並べられても覚えられる自信がない。

 ぱいこきafter・・・いったい、ナニをするつもりだったのでしょうかね
 そりゃもちろん本当にパパになった祐太が思う存分嫁にパイコキしてもら……真面目に考えると子育て編でしょうかね。


2016-05-03.

・よくあるヌキゲーだろ、と思いつつチェックした『瑠璃の檻』がどうもクトゥルー物らしいと気づいて俄然興味が湧いてきた焼津です、こんばんは。

 タイトルも「ルリノオリ」と読むのではなく「ルリ・ノ・イエ」……どうもルルイエをもじっている様子です。メイドの須磨璃々はショゴスの鳴き声っぽい(須磨はインスマス?)し、「多湖浦(たごうら)」や「灰堂(はいどう)」という苗字も明らかに……だし。極めつけは、主人公とヒロインの苗字。「旺辺」と「摩州」――「オーベッド・マーシュ」。駄洒落っぽいけど手は込んでいる。舞台は「碧き海に眠る神」が坐す太平洋の孤島「波手乃島」。島民たち(当然のようにインスマス面)を自由に操る権能を得た主人公が支配者として好き勝手に振る舞う、という点では「よくある陵辱モノ」ながら、権能を得る代償としてヒロインの誰かを島の男たちに生け贄として投げ与えなければならない、ってあたりが少し変わっているか。ヒロインを犠牲にすることで別のヒロインを手に入れる、この取捨選択がゲームを構成する要素になっているみたい。

 シナリオライターとして名前が挙がっている「弘森魚」を検索してみたら、過去の担当作に『朝の来ない夜に抱かれて』があるじゃないですか。デモベほどの知名度はないけれど「クトゥルーネタのエロゲー」という話題では確実に触れられる一本。メーカーのSkyFishも各種神話ネタを取り入れた“ソレイユ”シリーズで有名なところだし、よくよく考えると面子的にはさほど意外じゃないが、いまどきここまで直球のクトゥルー物エロゲーを出そうとするのは珍しいし、その心意気は買いたい。ただ、このゲーム、当初は2月発売予定だったのが延期して5月予定になったみたいなんですよね……大型延期を繰り出すソフトはやっぱり不安なので、差し当たって様子見するつもり。

ハイクオソフト新作「面影レイルバック」が発売延期。5月27日発売予定から9月30日発売予定へ(つでぱふ!)

 やっぱりな……予約しないで正解だった。何せ『さくらさくら』で著しい延期実績を積み上げてきたブランドである。最初から5月はないと睨んでいた。ハイクオもこんだけ延期しまくっておいてよく潰れないものだな、ホント。正直9月も怪しいくらいなので、これに関しては発売してから購入を検討する。

『パパのいうことを聞きなさい!』や『はてな☆イリュージョン』などの著者、松智洋氏逝去(ラノベニュースオンライン)

 嘘でしょう……近々『パパのいうことを聞きなさい!after』というパパ聞きの後日談を出す予定と聞いて、「おいおい、まだ続けるのかよー」と呆れ気味に笑っていたところだってのに。もう「信じられない」と述べるより他ないです。松智洋(まつ・ともひろ)はもともとゲームシナリオ方面で活動していましたが、2008年10月にライトノベルデビューを果たし、スーパーダッシュ文庫の後半を支える作家の一人となりました。代表作はアニメ化もされた『迷い猫オーバーラン!』『パパのいうことを聞きなさい!』。迷い猫はアニメで「毎回監督が代わる」奇抜な試みを仕出かしたり、「んでっ! んでっ! んでっ!」などトチ狂った歌詞まみれの電波主題歌「はっぴぃ にゅう にゃあ」が一部で流行したり、あと矢吹健太朗によるコミカライズが素晴らしいと話題になったりしました。完結間近のタイミングでトラブルが発生してイラストレーター降板、ラスト3冊は毎巻キャラデザとイラストレーターが変更になるという前代未聞の椿事も起きたなぁ……もはや懐かしい。アニメがいろんな意味で目立っちゃって原作の影が薄いけれど、累計部数は200万部を突破していたそうだ。紛れもなくスーパーダッシュ史に残るベストセラーシリーズです(ちなみにカンピオーネが130万部くらい、SDで他に100万部以上行ってるのは紅とテイルズシリーズとパパ聞きぐらいか?)。

 デビュー翌年に6冊も本を出すハイペースぶりに「大丈夫なのかしら」と一抹の不安が過らないでもなかったが、西尾維新や鎌池和馬など彼を凌駕する勢いの作家が他にもいたせいであまり真剣に心配したことはなかった。2012年に受けたインタビューで「やりすぎです。死にそうです(笑)」と多忙ぶりについて語っていたが、よもや冗談事じゃなくなるとは。それにしても43歳だなんて、若い、若すぎる。繰り返しになるが、信じられない。『パパのいうことを聞きなさい!after』に備えて積んでいた既刊を崩すべぇかな、とか考えたりしてたのがつい何日か前。「カバーデザインを統一するためか、afterはダッシュエックス文庫じゃなくてスーパーダッシュ文庫として出す予定。つまりスーパーダッシュ文庫はまだ終わってなかったんや!」みたいなことを書くつもりだったのに……。

 パパ聞きこと『パパのいうことを聞きなさい!』は2009年12月にスタートし、当時は同人活動が主体で商業方面には進出する気の薄かった「なかじまゆか」を口説き落としてイラストレーターに迎え、発売当初から話題になったシリーズです。これがなければ『甘城ブリリアントパーク』になかじまゆかが起用されることもなかったかもしれない。非常に売れ行き好調だったため早い段階から「アニメ化はほぼ確実」と見做されていましたが、実際にアニメ化決定のニュースが報じられたのは2011年8月。開始から2年も経っていない頃ながら、当時の最新刊は7巻。執筆がハイペースだったこともあり、既にだいぶストックが溜まっていたのです。

 そして2012年1月、遂に冬アニメとして放送開始。1クールで一体どこまで進むのか、と思ったら、なんとアニメは「八王子編」だけで終わってしまった。簡単に解説しますと、パパ聞きのストーリーは「多摩の大学(モデルは中央大学)に通う主人公が、両親を失った三人姉妹(姪に当たる)を周りの反対押し切って(どこも経済的な理由で1人ずつしか受け入れることできなかったので、姉妹をバラバラにしないために)まとめて引き取る」といったもので、引き取ってすぐの頃は主人公が住んでいる八王子のアパートで四人暮らしを送るんですが、さすがに手狭なので親戚から許しも得て池袋の一軒家に移ります。この「池袋編」こそがパパ聞きのメインストーリーである。なにせ八王子編は1巻で終了、2巻から池袋編に入るんですからね……アニメでやった箇所はほんの導入部に過ぎない。まさか1クールかけて2巻まで進まないとは予想だにしなかった。一応補足しておきますと、短編集である7巻に八王子時代のエピソードが収録されていて、アニメはそれも消化していますから厳密には「1巻だけしかアニメ化しなかった」わけではありません。とはいえ池袋編をやらなかった事実に変わりはない。「アニメはきっと大ヒットするだろう」と見込んで、ストックを残すために牛歩戦術を仕掛けたのか。今となってはわかりません。言えるのはただ、「2期などなかった(OVAはちょこっとある)」ということ。

 パパ聞きはサザエさん時空ではなく、ちゃんと時間が経過していく世界なので、登場した頃は大学1年生だった主人公もやがて社会人に成長します。2015年3月に発売された最終巻のOVA付限定版にはスーツ姿の主人公が。終盤はかなりの駆け足で時間が飛びまくった(最初は10冊かけて1年進むペースだったのに、終わり頃は1冊で1年ペースになった)こともあって不評だったけれど、それでも5年以上を費やして綴られたストーリーなのだから完結に感無量というファンもいたことだろう。残念ながら私は途中から積んでしまって、エンディングをまだこの目で確認していないのですが……最終巻(通常版)の表紙を見ればどんな終わり方だったかは想像がつくな、と。そのまま崩す機会もなく積み続けそうだったところに来たのがafter刊行の報せ。『パパのいうことを聞きなさい!after』はまだタイトルぐらいしか告知されていないから、どんな内容になるのかは不明でした。単なる後日談なのか、新しい展開を盛り込んでいるのか。今や内容どころか刊行されるかどうかも怪しい。まさかこんなことになるとは……パパ聞きはSD史上2番目に巻数が多い(『カンピオーネ!』は18巻からDXに移籍したため、この記録が破られることは決してない)タイトルであり、あと7冊番外編が出れば『オーパーツ・ラブ』(全24冊)を超越するSD最長のシリーズとして君臨するはずでした。君臨してどうなるということもないが、そんなどうでもいいことでワイワイ騒いでいたかった。合掌。

・拍手レス。

 第2話は『キャラに緊張感が足りない』と賛否両論みたいですが、いずれガチで追い詰められて『どうせみんないなくなる』と壁に書き殴るような精神状態になる前フリだったりして、と黒い期待をしたりしなかったり>ハイスクール・フリート
 ストーリー面は怪しい雰囲気になってきましたが、「女の子が艦に乗る『ザ・松田』」と割り切って積極的に楽しんでいきたい。

 松智洋…
 数えてみたら著書は41冊。デビューから約7年半、毎年5冊以上は書いてたんだな……。


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