2014年11月〜12月分


2014-12-30.

・カタケンこと片山憲太郎6年ぶりの新刊『紅〜歪空の姫〜』が手元に届き、まず発した第一声が「薄っ!」だった焼津です、こんばんは。

 いや、誤解のないように申し上げておきますと、「メチャクチャ薄い」というほどじゃないんですよ。あとがき入れて225ページ、250ページ前後が標準になっているライトノベルとしては「やや薄め」の部類に属するってだけの話です。極端にペラいわけではない。しかし、このページ数ってだいたい『醜悪祭(上)』と同じくらいなんですよね……2008年の悪夢が脳裏をよぎってしまった。開いてみるとほとんど改行なしの文字がみっちり詰まっているから読み応えに関しては問題ないです。文章も、ザッと目を通した感じ「ここ6年で際立って腕が落ちた」ということはない。多少の違和感はあるけれどブランクを考えれば「まぁ、こんなものか」程度です。

 で、本来ならもうとっくに読み終わっている頃合なんですが、自分でもよくわからないほど『ランス01』にハマり、CG・回想をコンプした勢いに乗って『ランス02』まで手を伸ばしてしまった。『紅』のみならず他の新刊も手付かずのまま積読状態となっています。

 『ランス01 光をもとめて』は前々回の更新でも紹介したアリスソフトのエロゲーです。発売は去年ですが、大元になったソフトは25年も前の奴。「見る」とか「話す」とかコマンド選択形式でイベントを進めていくあたりがいささか古めかしいが、シナリオもシステムもグラフィックもすべて一新されているので「悪い意味での古さ」はまったくないです。プレーしていてストレスを感じる機会は驚くくらい少なかった。まあ何度か攻略に行き詰って唸りましたけど……「失踪した少女を捜す」というメインクエスト自体はさほど難しくないのですが、そこから派生するサブクエストのフラグを立てていくのに手こずりました。特に武器屋のミリーちゃんは時限イベントがふたつも絡んでいるので攻略しにくいったらなかった。結局セーブデータの流用ができなくてもっぺん最初からやり直しましたからね。私はハッキリ言ってヌルゲーマーですんで、一周目はあらゆる場所で死にまくって四苦八苦しました。「あれを再度繰り返すのか……」と憂鬱になりかけたが、一周目で要領がつかめていたから二周目は拍子抜けするくらいサクサク進められました。既読イベントを軒並みCtrlキーで飛ばしていったら、ほんの3時間くらいで最終決戦まで持っていくことができましたよ。半端にセーブデータを流用しようとするより、攻略情報をキチンと整理したうえで最初からやり直すのが一番効率的かもしれません。

 ところで。主人公のランスは旅館に泊まる際、手持ちがなかったことから「ランスソード」なる所持品を担保に差し出して「1日につき10G」という契約を交わします。「ひょっとしてクリアした後に経過日数×10Gを旅館から請求されるのでは? もしお金が足りなくてゲームオーバーになったらどうしよう」とビクビクしていましたが、特にそういうことはなくてホッとした。旅館の女将を攻略すると、「清算を済ませたらランスが去ってしまうかもしれない」と危惧した女将が「10万G」と無茶な金額を吹っかけて「お金のことは気にしなくていい」と言ってくる微笑ましい遣り取りもあるのですが、実際に10万G溜めても特に新たなイベントは起こりませんでした。それはそれとして、奈美(女将)とミリーの後日談パートはちょっとしんみりする感じで好きです。人気投票では酒場の巨乳看板娘・パルプテンクスちゃんが一位だったそうですけど、個人的に一番気に入ったヒロインは旅館の女将・堀川奈美(人気投票では三位)ですね。特に意味もなく「奈美と寝る」を選びまくってホッコリしました。スタッフの「あの旅館、ランス以外に客いるのかな…」という呟きには笑った。

 『ランス02 反逆の少女たち』は1990年に出たソフトのリメイク作品。01と違って単品発売ではなく、合同ファンディスク『アリス2010』の1コンテンツとして収録されました。2010だけど実際の発売は2009年、つまり01の4年くらい前です。グラフィックやサウンド、プログラムは刷新されているものの、シナリオ自体は当時のものを使っているため01に比べると「悪い意味での古さ」を感じてしまう場面が多々あります。特に濡れ場のあっさり具合が……01もそんなにもねちっこくはないけど、より味気ないテイストになっています。ゲーム面も01が程好い仕上がりだった分、ちょっとガッカリしてしまった。とにかく操作が煩雑。敵の攻撃が比較的弱いから死亡することは滅多になかったけど、回復にチマチマと手間取りました。攻略に詰まりかけた箇所もいくつかありましたね。ピラミッドとか臓物ダンジョンとか。レベル上げが簡単なあたりは救い。あとボスもそんなに強くなかった。むしろ途中で稀にエンカウントする死神ちゃん(正式名称忘れた)の方に苦労しました。私にとってはあの子がラスボスです。

 01はなんだかんだで20時間くらいやったけど、02は6時間掛けてエンディングに辿り着いたら「もういいや、2周目は勘弁」となった次第。クリアした後に「改」の存在に気づいたが、最初からやり直す気力は湧かない。01もそんなにやり込み要素はないのでガチなゲーマーからすれば不満の残る出来かもしれませんが、私にはあれくらいがちょうど良かったです。おかげでランスシリーズに対する興味がもりもり湧き上がってきましたよ。ランス01と02のストーリーを要約していきますと、まず主人公を務める鬼畜戦士「ランス」は出自が曖昧で名字すらハッキリしません(設定上の本名はあるらしいが、作中で使われていない)。公式サイトの説明を読むと記憶喪失で幼い頃のことを覚えていないんだとか。田舎暮らしに耐え切れず村を出奔した(と本人は語っているが、実際は女に関するトラブルで追放された)ランスは「アイスの街」を拠点にして冒険者ギルド「キースギルド」に所属する。そしてギルドを通しての依頼で「リーザス王国」に出向き、失踪した少女・ヒカリの捜索に当たる。その顛末が01で描かれています。で、無事に依頼を達成したはいいものの見境なしな女癖の悪さが祟ってリーザスに留まることのできなくなったランスは「自由都市カスタム」を目指す。ここはある日突然街全体が地下に沈んでしまったという、まさに驚天動地な場所。なんでも「四人の魔女」の仕業とかで、ランスはダンジョンに潜む彼女たちを一人一人攻略(性的な意味で)していくことに……というのが02の大まかなストーリー。未だに人気が高いキャラ、魔想志津香が初登場するエピソードとなっています。とはいえ魔想さんの出番自体は少なく、終わりの方にちょこっとある程度。てっきりメイン級の扱いになっているとばかり思っていただけに意外だった。ランスシリーズはゲームの内容こそ毎回変わるもののストーリーは一貫しており、「年表」や「正史」が存在する世界となっています。「正史」から逸脱したのが『鬼畜王ランス』で、これは「外伝」という扱いになっている。もしもランスがリーザスで王様になったら……というifを基点にしており、正史には含まれないもののランスシリーズの舞台となる世界が一望できることもあってファン人気は高い。他のランスシリーズはやったことないけど鬼畜王だけはやり込んだ、というユーザーも結構いるとか。

 来年(2015年)には03のリメイクが予定されており、更には再来年(2016年)の最新作『ランス10』でシリーズが完結する運びとなっています。89年開始だから、リアルタイムで付き合ってきたユーザーはもう40代や50代になっている勘定だ。「父親が遊んだかもしれないエロゲー」というキャッチコピーは伊達じゃない。01はつい先日に18禁OVAも発売されたので、興味がある人はこちらから入ってみてもいいかも。アニメは当然フルボイスですが、原作ゲームには音声が付いておりませんゆえ注意されたし。

light、『相州戦神館學園 万仙陣』の発売予定日を「2015年4月24日」と公表。予約受付も開始。

 まあ1、2回くらいは延期するだろうけど来年中には間に合わせるんだろうな、という気持ちで佇んでいる。果たして発売までに私は八命陣をやり終えているのだろうか……乙女理論どころか1作目のつり乙すらインストールせぬままつり乙2の発売を迎えてしまったことを考えると望み薄だろうな。あえて見苦しい言い訳をさせてもらうと、完全にエロゲー熱が冷めたわけではないのですよ。ランス以外にもコミュとかドラクリオットとか恋愛0キロメートルとか、昔買ったソフトをちまちまと超低速で進めたりはしているんです。しかし、なかなか一本に絞って集中的にやり込もうって気分が整わない。どうしても1時間足らずでコンセントレーションが途切れてしまう。小説や漫画、アニメや映画など、他にも興味の対象がいろいろとあって意識が散らばりがちなんです。仮にうまい具合に集中力が整っても、時計を見遣って「あ、もう寝なきゃ」となる罠。すごく単純にまとめてしまうと「スケジュールが崩壊している」の一言に尽きます。やりたい気持ちがあるときに、やり込めるだけの時間がない。嘆いても仕方ないので、崩壊しているスケジュールを少しずつ修繕しつつチマチマエロゲーライフを続けていこうと考えています。迷宮や楽園のアニメ化も発表されたグリザイア三部作も、まず果実から崩していかないと……この前やっと開封してインストールを済ませました。

2010年以前に発売されたエロゲはオールドソフト(それなんてえrg`・ω・´))

 私がエロゲーをやり始めたのはちょうど2000年で、その頃の感覚を思い出すと99年や98年のソフト(具体的には『ONE〜輝く季節へ〜』や『Kanon』、『加奈〜いもうと〜』など)は「最近」だけど97年あたり(『To Heart』など)は「ちょっと古い」気分がして、96年の『雫』や『痕』は明らかに「古い」と捉えていましたね。95年以前のソフトはほとんどやった記憶がありません。そういう意味では「妥当だな」と言えなくもないけど、MicrosoftのOS「Windows95」発売が1995年11月で、1996年というのはちょうどエロゲーがDOSから切り換わる端境期だった。ここ数年はOSレベルの断絶がないぶん、当時ほどの隔世感は生じにくい部分があるのかもしれない。古いゲーム買うと動かなかったりしますが、DL販売が充実して現行OSにもだいぶ対応が進んできているし「オールド」のニュアンスがちょっと違うのかも。これでエロゲー界がスマホとかに移住していくようだったらまた新たな断絶となり得るでしょうが、もう大半のエロゲーメーカーはPCと一蓮托生っつーか心中していく形になりそうな予感が……。

『GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』TVアニメ化決定!(萌えオタニュース速報)

 文庫版の売れ行きが好調らしいから「来るかもなー」とは思ってました。版元が違うところだったらもっと早くアニメ化していたでしょうね。『ゲート』はもともとネット連載されていた小説です。最近有名になっている「小説家になろう」ではなく「Arcadia」、通称「理想郷」に投稿されていました。Wikipediaによると連載は2006年から2009年にかけての約3年間。書籍化が始まったのは2010年、版元は「アルファポリス」です。ファンタジーみたいな世界で自衛隊が戦う、というあらすじで『戦国自衛隊』を連想される方も多いでしょうが、「異世界に繋がるゲートができた」という設定なので『アウトブレイク・カンパニー』の方が近い。刊行順はアウブレの方が後なんだけど、先にアニメ化を果たしているので「アウブレを殺伐とさせた話」みたいな言い方をすると通じやすいかもしれません。ホント、ゲートの版元が講談社だったら去年か一昨年くらいには映像化してたと思いますよ。

 2012年から始まった文庫化で人気に火がつき、一躍話題作となりました。正直、文章面はちょっと……な部分がなくもないが、やはり設定からして面白いのでグッと堪えて読み続ければ惹き込まれていくのではないかと。ミリタリー物で人気のある竿尾悟が手掛けたコミカライズ版もイイ出来だと評判です。こちらから入門した方がスムーズに行くかもしれない。ちなみにアルファポリスでは『ルーントルーパーズ 自衛隊漂流戦記』という似た趣向の作品も出しているが、あちらは「いきなり艦隊ごと異世界に飛ばされる」という『戦国自衛隊』や『ジパング』みたいなシチュエーションだからまた違った面白みがあるのではないでしょうか(←1巻を買ったままずっと積んでる)。自衛隊じゃないけど、佐藤大輔久々の新刊『エルフと戦車と僕の毎日』も「ミリタリー×異世界」なファンタジー小説みたいです。もし『ゲート』のアニメが当たったら『覇壊の宴』あたりが再評価される機運も高まるかな。『A君(17)の戦争』は再評価されたところで続きなんか出ないだろうけど。

名作『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』がフルリメイク決定!(萌えオタニュース速報)

 「せめてWIN版のYU-NOを単品発売してくれないかな」とか言っていたら、まさかのフルリメイクが。『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』、長いから単にYU-NOと表記されることが多いこのゲーム、発売は1996年12月なのでもう18年前のソフトです。ほぼ同時期に『鬼畜王ランス』も発売されており、96年末というのはエロゲー史的に見てもかなり凄いタイミングが重なった頃であった。YU-NOはPC-98用のゲームとして発売されたが、メディアがCD-ROMへ完全移行する前の端境期だったこともあってCD版とは別にFD版(15枚組!)も発売されていたそうです。内容に関しましては、私自身は未プレー(SS版持ってるけど、起動したこともない)なので割愛させてもらいます。たった8ヶ月という限られた制作期間の中で複雑なゲームデザインを構築しつつ文庫本10冊相当のシナリオを書き下ろした剣乃ゆきひろ(独立後のPNは菅野ひろゆき)は化け物じみているぜ、と評判でした。奈須きのこは『月姫』(原稿用紙5000枚相当)を約4ヶ月で書き上げているそうですから単に執筆速度だけを比べるならあちらに軍配が上がるものの、こちらはシステム設計も一人でやっているわけなので容易には比較できません。

 プロデューサーへのインタビュー記事を要約すると、「エルフから版権を譲渡してもらった」「根本的なシステムを廃することはないが、現代のユーザーにも遊びやすいよう補完したい」「シナリオは基本的にいじらない方針だが、倫理的な配慮は必要」「不自然な語尾や古い表現は修正するが世界観は変更しない(現代化してケータイやスマホを出したりはしない)」「今回エルフは監修しない」「グラフィックはキャラデザを含め全面的に直す、デザインを担当するのは凪良」「音声はフルボイス、SS版声優の起用はスケジュール面などで厳しい(シナリオが膨大なので収録に時間が掛かる)から新しくキャスティングを行う」「来年が終わる前に出せたらいいな」ってな感じ。フルリメイクと言っても、原作にいたキャラを消して新キャラを追加とか、完全新規のオリジナルシナリオを導入とか、そういう大幅な梃入れはしないみたい。どちらかと言えば演出やUIを現代風に作り変える路線の模様。

 ゲームデザインが独特なため、後世のソフトに影響を及ぼしつつもフォロワーを生み出すには至らなかった……とされるYU-NOですが、実は今から遡ること10年前、YU-NOにオマージュを捧げたソフトがひっそりと発売されているのです。タイトルは『蒼色輪廻』。現実と異世界を絶えず往還しつつ、主人公が死亡しても人生を巻き戻し、「鍵」を手に入れることによってストーリー分岐する、「YU-NOに影響を受けたこと」を隠そうともしないエロゲーであります。主人公・堂浦のダメ人間っぷりが強烈(自殺を試みるシーンから始まるのだが、確か「カップルに激突して巻き添え死させたい」みたいな理由で飛び降りを選択する)で、異世界に転移して姿格好が変わってもダメ人間としての本質が一向に変わらない。「クズの心性」から目を背けないシナリオ、「終わりなき輪廻」を取り込んだシステム、このふたつが重なって攻略の面倒臭さに対する不満が一瞬で吹っ飛ぶ面白さに仕上がっています。「YU-NOの二番煎じ」みたいな評も少なくないけれど、とにかく「もっと話題になっていい一本だな」と当時思いましたね。あまりにも扱いがマイナー過ぎるというか……本当に面白いのに。今はDL版も出ているので、リメイクYU-NOが発売されるまでの肩慣らしとしてプレーしてみては如何でしょう。堂浦くんの名前が忘れられなくなること請け合いです。

・拍手レス。

 最近は意外な作品のアニメ化も多いのでレイセンはありえそうですね。「隠斬り」は虎徹の逸話や某メイドっぽい人など印象に残る話でした。仮にアニメ化するとしてまず不安が一つ、睡蓮がおりがみ準拠の普通の巫女服なのか、レイセン準拠の脇巫女服なのか、です…!
 普通の巫女服から脇巫女服に変身するバンクを作れば万事解決。それにしてもスニーカー原作のアニメって去年の脳内選択肢が最後で、今年は一個もなかったんですね……来年はとりあえず新妹魔王があるか。

 件のゲス祭り回以降、なんかテコ入れが行われていないらしく劣化が著しいですね・・・今年最終の12話も設定出したというより「ブン投げた」という方が正確な展開でした。中盤がタルむのは仕方が無いんですが、もう少ししっかりやって欲しい気がしますね>クロスアンジュbr>  とはいえ、今期は当たりが多いので録画を消化するのに忙しいですが。UBWのクォリティの高さと、GレコやBFの意外な健闘が嬉しいですけどね。結局今期は都合14本切らずに視聴してますわ。
 私が今季最後まで観れた(観れそう)なのは天メソ、甘ブリ、俺ツイ、白箱、Gレコ、クロアン、Fate、魔弾、チャイカ、BFT、異能バトル、蟲師続章、ゆゆゆの13本かな。グリザイアは「セカイ樹の種」から観てない(録画は続けてる)。SAOもマザーズ・ロザリオ編だけは観ました。週10本以上は大変だけど、レンタル屋で借りないと観たいアニメが観れなかった時代に比べれば天国です。

 おるごぅるさんが妹メインじゃないだと!?と驚愕したもんですが、三つ子の魂百まで。やっぱりおるごぅるさんはおるごぅるさんだった・・・。
 おるごぅるは滅びぬ、何度でも甦るさ。


2014-12-18.

P・D・ジェイムズ氏死去(ハヤカワ・オンライン)

 結構前に出ていた記事ですが、ずっと見落としていたので今更驚いています。英国ミステリ界を代表する重鎮の一人であり、日本では『女には向かない職業』が有名であった。女探偵コーデリア・グレイは『名探偵コナン』に出てくる「灰原哀」の元ネタの一つでもある(もう一つはV・I・ウォーショースキー)。ミルキィホームズのコーデリア・グラウカも同様。ただ、コーデリア・グレイは登場機会が少なく、シリーズと呼べるほどの作品数はない。『女には向かない職業』以外の出演作は『皮膚の下の頭蓋骨』のみ。P・D・ジェイムズのメインは“アダム・ダルグリッシュ警視”シリーズであり、こちらは10作を超えています。私は観たことないけどドラマにもなっているらしい。余談だがレジナルド・ヒルという同じイギリスの作家が書いたシリーズに“アンドルー・ダルジール警視”シリーズというのがあって、微妙に似ているせいで恥ずかしながら混同していた時期があります。キャラは全然違いますけどね。P・D・ジェイムズは重厚かつ悠長な作風が特徴であり、娯楽作品好きの人がここから英国ミステリに入門するのは若干辛いところですけれど、アガサ・クリスティやドロシー・L・セイヤーズ、クリスチアナ・ブランドなどを経由して英国モノに興味を持ってから挑むとドップリ浸れる……かもしれません。正直、私が好きだった作家ではなく私の母が好きだった作家ですね。ちなみにP・D・ジェイムズ本人はセイヤーズが好きだったみたいです。

林トモアキがブログ「魔殺商会広報部電子版別冊」を開設

 デビューから13年以上も経ってまさかのブログ開設。「え? 今になって?」と首を傾げたファンは私だけじゃないはずです。こういう作家ブログって駆け出しのうちに始めて、知名度を稼ぐために頑張っていろいろと発信するものの売れてくるとだんだん更新速度が鈍ってきて長期停滞に突入し、気がつけば消えている……みたいなパターンがほとんどですが、林トモアキは既にベテランだしスニーカーの中でも売れている部類なので「なぜこのタイミングで?」という疑問が素直に湧いてくる。考えられるパターンは「A.作品のアニメ化企画が進行していて今後いろいろと告知する内容が多くなるから」「B.遂にスニーカー以外のレーベルで仕事をすることになったので前もって宣伝する必要が出てきたから」「C.なんとなく。特に深い意味はない」ってなところだろうか。割と行き当たりバッタリな性格をしている林トモアキならCでも全然おかしくないが、普通に考えるとAかBの可能性が高いですね。林トモアキはキャリア13年を誇るベテランながら、今まで手掛けた作品がアニメ化したことはなかったのでライトノベル好き以外にはあまり知られていない(コミカライズはしているので漫画好きなら多少知っている人はいるかも)ややマイナーな存在です。スニーカーでは売れている方だから、過去にアニメ化の打診はあったそうですけれど、ブログ名でもある「魔殺商会」をストーリーから削除してコンパクトにまとめましょう、みたいな話だったから蹴ってしまったらしい。よほどの好条件じゃないとアニメ化の話は飲まないだろうから、そう考えると難しい線かな。Bは……ありうる。最近のラノベレーベルはどこも目玉となる作品が不足していて、有望な作家の引き抜きに力を入れているところもあちこちにあります。これまで13年間スニーカー専属状態だった彼が新天地を目指して旅立っても一向に不思議ではない状況だ。ただ、スニーカーにとっては貴重な「メディアミックス抜きでも地力だけで売れる作家」なので、担当編集は必死で引き止めにかかるはず。あとがきにもそのようなことが書いてあった。それを考えると可能性は低いかな。

 正直、ファンとしてはスニーカーで書こうが他所で書こうが大差ないので、既存シリーズが中途半端な形で投げ出されないかぎりは「どっちでもいい」と言えます。だからここはあえてA案を検討していこう。アニメ化しそうなトモアキ作品……とりあえず総当りで見て行くか。

 01.『ばいおれんす☆まじかる!』 … デビューシリーズ。ヤクザの娘がステッキを拾って魔法少女に変身するという、頭おかしい発想だがトモアキ作品としては大人しい部類。3冊目で打ち切られたし、まさかこれがアニメ化することはないだろう。【可能性:かなり低め】

 02.『お・り・が・み』 … 非情な打ち切りから2年、満を持しての復帰作。全7巻。林トモアキの名を世に知らしめた出世作だが、ほとんどメディアミックスしなかったため知名度は少し低い。内容は間違いなく面白いし、トモアキワールドの基底を成す重要シリーズでもある。しかし、初見の視聴者を惹き付ける要素が乏しいか。ジワジワと盛り上がっていくタイプですからね。ちなみに私はVZ(ヴィゼータ)が好き。【可能性:やや低め】

 03.『戦闘城塞マスラヲ』 … 林トモアキを代表するシリーズであり、ファン人気にかけては一、二を争うレベル。全5巻。ストーリーは『お・り・が・み』の続きだが、繋がり等の細かいことを抜きにしても楽しめる。実は「アニメ化の話が来たけど蹴った」ってのはコレのこと。「自殺志願のヘタレニートがハッタリを武器に勝ち上がっていく」という面白みに加え、ウィル子など主人公以外のキャラもバリバリに立っている。主人公・川村ヒデオはトモアキ作品屈指の人気キャラだから、「映像化してほしい」というファンも多いだろう。【可能性:やや高め】

 04.『ミスマルカ興国物語』 … なぜか1巻を発売した当初から売れ行き好調で、トモアキ作品のみならずスニーカー文庫全体で見てもトップクラスの売上を誇るらしいシリーズ。既刊11冊(+外伝1冊)。ルックは異世界ファンタジーだが、ぶっちゃけ『お・り・が・み』や『戦闘城塞マスラヲ』の遥か未来に位置する。「トモアキ作品はどれもだいたい繋がっている」ことを知らないと分かりにくい部分もあり、そこがネックか。ただしストックは潤沢だし、まだ完結していないシリーズだから可能性としては低くない。けど一応は戦記モノで派手なシーンも多いから、角川レベルでアニメ化できるの? と訊かれるとうーん……。【可能性:やや高め】

 05.『レイセン』 … 『戦闘城塞マスラヲ』の続編。川村ヒデオの「その後」を描く、ファンディスクめいたシリーズ。既刊7冊(来年3月頃に8巻発売予定)。なにぶん続編なのでキャラ紹介も最低限しか為されず、ここから読み始めると「誰が誰だか」となって混乱に陥ってしまうが、なぜかマスラヲよりも売上が好調という謎。タイトルは無印なのに実際の内容は2に近かった『アイドルマスター』という例もあるし、マスラヲ抜きでいきなり映像化してもそこまで不思議ではない。ヒデオのダメな愛らしさがギュッと濃縮されたファンにはたまらないシリーズであり、現状だと最有力候補か。【可能性:高め】

 06.『現役プロ美少女ライトノベル作家が教える! ライトノベルを読むのは楽しいけど、書いてみるともっと楽しいかもよ!?』 … タイトル通りの内容。全1巻。もともとはニコニコ動画で東方Projectの二次創作としてやるつもりだったネタをオリジナルキャラに差し替えたもの。ヒロインの肩書きが「ライトノベル妖怪」となっているあたりにその名残りが見える。小説形式の創作ハウツー本で、「もっと気軽にライトノベルを書いてみてはどうだろうか」と語りかけます。さすがに30分枠では保たないだろうが、5分枠や15分枠なら程好い埋め草になるかも。つっても単行本化されているから挙げてみただけで、本音を言えば大穴もイイところである。強いて好材料を探すなら、イラストの春日歩か。現在放送中の『俺、ツインテールになります。』(作画については触れてくれるな)やアニメ化が決まった『城下町のダンデライオン』、そしてアニメ化しそうな雰囲気がちょっと漂っている『最弱無敗の神装機竜』など、若干「流れ」が来ている……かも。【可能性:低め】

 こうして眺めると、『レイセン』が辛うじて「ありうる」って言える感じだろうか。『お・り・が・み』の続編である『戦闘城塞マスラヲ』の更に続編だから、相当な初見キラーになりそうだけど、ヒデオの魅力でギリギリ凌げる可能性がなくもない。個人的には「隠斬り」の映像版が観たい。原作だと2巻に収録されている番外編で、サブキャラの長谷部翔香をメインにしたエピソード。確かヒデオは出てこなかったけど、単体エピソードとしての面白さはなかなか。翔香は『お・り・が・み』の頃から登場しているキャラなので、もし映像版の出来が良かったら良かったで「『お・り・が・み』から順次アニメ化していってくれ!」と熱望しちゃうんだろうな。林トモアキはそんなに筆が速い方じゃないから、アニメ化が決まったら作業も増えて刊行ペースは確実に落ちるだろうし、このままアニメ企画に関わらないでマイペースを貫いてくれるのがファンにとっては一番かもしれません。

サンカクヘッド「干物妹!うまるちゃん」アニメ化、家では干物の妹描く(コミックナタリー)

 おお、好きな漫画だから嬉しい。外面は完璧だけど家じゃ超絶だらしない干物妹(ひもうと)のうまるちゃんをヒロインにしたコメディであり、路線としては『こもりちゃんはヤる気を出せ』『働かないふたり』あたりのゾーンに分類されるだろうか。「内と外で全然キャラが違う」というギャップも話を駆動させる材料の一つになっているが、力点はうまるちゃんのだらしなさ=幼子じみた欲望への忠実さと、「それを他人に見せたくない気持ち」にこそある。自己愛というより、「築かれた自己像への愛」を微笑ましく描いています。

 絵に惹かれて買った『ぽんてら』がまったく合わなくて、読み進めることも苦痛だったから同じ作者の『干物妹!うまるちゃん』を最初は買おうかどうか迷ったものです。そして、うまるちゃんの可愛さに負けた。結論としては負けて大勝利!でした。1巻はまだコンセプトが曖昧で迷走している部分がなきにしもあらずですが、2巻から指針が固まって「ここが読ませどころだ」ってポイントもハッキリしてくる。うまるちゃんの可愛さもさることながら、彼女の友人・海老名ちゃんがたまらなくたまらんのですよ。基本はギャグだけど、ラブコメ要素もうまくスパイスとして使っている。5分枠程度のショートアニメかもしれないが、今から動く海老名ちゃんを想像して胸をときめかせている。

・拍手レス。

 相変わらず面白いんですが、年末でクソ忙しい時期なのに、やれ「名作だ」やれ「良作だ」などと、頭の悪いステマ書き込みがまとめサイトに不自然に増加してますね。00とかヴヴヴとかバディコンとかそれで失敗したのに懲りない人たちです。>クロスアンジュ
 クロスアンジュは名作というより「おいしい駄菓子」みたいな感覚ですね。チープなんだけど、どこか懐かしくて楽しい。

 空気姫の「いてもいなくてもいい」感は異常w>Gレコ
 Gレコはオッサンどもの方が主要陣になってきた気がする。

 枝篇刃鳴散らすの乗ってるスニーカーはamazonで中古ですけど多分買えますよ。機会があればバイです。参考まで一話目は青春モノ、二話目は復讐モノ、三話目はギャグです。全て独立してます。書籍化しないのは権利関係の問題なのか、奈良原の意向なのか。もったいないなと思ってます。
 amazonのマケプラは高騰していたので断念しました。書籍化しないのは単に『刃鳴散らす』が売れなかったから、ってだけかも。

 ドクラQは鋼屋がツイッターで楽しそうに他の仕事報告してるの見るたびに、「早く書けよ……」ってなりますね。まあ、開発費とか色々ニトロにも考えがあるんでしょうが……なんだかなぁと思ってしまいます。
 ニトロプラスはもうアニメ関連の仕事がメインなんかなって感じますね。実際、現状で大作エロゲーを作っても費用を回収することができるほど売れるのかどうか懐疑的ではある。

 同級生3の発表から赤ちゃんがエロゲーを出来るぐらいの時間がたちましたがまだまだ待ってます(笑)。確か前世紀末に電撃姫で ここまで出来ていますという特集記事が出てすごくわくわくしたんですが…。今のエルフにはそんな環境や体力もないんだろうなー。
 私は葉鍵あたりでエロゲー界に入ったクチですから同級生とかの時代とはズレますが、それでも今のエルフには侘しさを感じますね。もうスタッフもほとんど残ってみたいみたいだけど、せめてWIN版のYU-NOを単品発売してくれないかな……。


2014-12-14.

・時間空いたし『キミのとなりで恋してる!』やり込もうか……と思った矢先、買ったまま積んでいた『ランス01 光をもとめて』が視界に入って「やる気はないけど、とりあえずインストールしとこう」と手を伸ばしたら、まんまとハマって気がつけば日がとっぷり暮れていた焼津です、こんばんは。

 『ランス01 光をもとめて』は1989年に発売された『ランス−光を求めて−』のリメイク作品で、去年(2013年)に発売されました。元が25年前のソフトだから、グラフィックもシナリオもサウンドもシステムもすべて刷新されています。「ヒカリ(行方不明になった少女)を捜す」という大筋のストーリーだけが共通している。媒体がCDどころかFDだった時代なので、オリジナル版のゲーム画面を観るとさすがに隔世の感がありますね。内容そのままのWindows移植版も制作されており、こちらは「配布フリー宣言」対象のソフトなので探せばどこかでダウンロードできるはずです。私もやったことがあるけど、「これを今になってプレーするのはちょっとキツいな」とすぐに投げ出してしまった。それでも気になってはいたから、「最新の技術で作り直す」という試みはまさしく渡りに舟であった。リアルタイムで遊んでいた40代のエロゲーマーにとっては思い入れの深い作品とあり、リメイクに当たる本作もよくあるキャラメル箱(上下に開け口があり、スライドして外箱と内箱に分離するタイプ)やワンピース箱(外箱と内箱が一体化していて横から開くタイプ、サイドオープンとも言う)ではなくFD時代のプラケースを再現したパッケージになっています。外観だけで「懐かしい」と感じる方も多いでしょう。アラサーの私からすると「ああ、中古屋で何度か見かけたな」程度であり、むしろネオジオの方を連想するんですが。

 “ランス”シリーズは「ランス」という、そこそこ強くてイケメンだけど基本的に女とヤることしか考えていない煩悩まみれの冒険者を主人公にしたファンタジー系ゲームです。ランスが着用している緑色の服は当時流行っていた『ロードス島戦記』の主人公パーンを意識したものと思われる……なんてわざわざ解説しないといけない気分がするあたり、時代は変わったものだ。作を重ねるごとに作中世界を構築する設定が加速度的に増えていき、現在はもはや制作スタッフですら全てを把握し切れていない(スタッフに聞くより熱心なファンに聞いた方が確実とさえ言われる)状況にあるが、さすがに1作目のリメイクだけあって『ランス01』のシナリオはさほど複雑じゃない。むしろ、ひどくシンプルだ。貴族のお嬢様である「ヒカリ」を捜すメインクエストの傍らで、多数存在する女の子たちに隙あらば襲い掛かるというサブクエストもこなす。ただそれだけである。しかし、数時間やってもシィルとパルプテンクスのHシーンしか拝めない……モタモタと攻略に手間取っている私の下手糞ぶりが原因ですが、序盤からサービス的なエロが次々と押し寄せてくるのではないかと期待していただけに愚息もションボリです。それにこのソフト、声も付いてないんですよね。最近のエロゲーに慣れていると女の子が喋らない仕様は少し寂しい。反面、サクサクとテンポ良く進められる利点もある。寂しさを覚えていたのも最初の2、3時間で、以降は気にならなくなりました。

 『ランス01 光をもとめて』はひと口に言うと「システムを簡略化したRPG風のADV」です。マップを自由に動き回れるわけではなく、限定された選択肢の中で行動していく形になる。戦闘も独特で、普通のRPGなら所持品が武器・防具・アイテムなどで分かれているところを、全部ゴチャ混ぜにして「チップ」という概念で持ち歩くことになっています。仮にチップの枠が5つだとしたら、武器チップと防具チップに1つずつ割いてしまうと残り3つ、回復系のアイテムチップは3個が限度ってふうになる。薬草をいっぱい買い込んで長旅に臨む、みたいなことはできない。私みたいな下手糞プレーヤーだと何度も死んだり、頻繁に街へ引き返したりすることになると思います。そろそろ滞在20日目なのに、やっと通行手形を手に入れたあたり。己の要領の悪さに天を仰ぎたくなるが、こういう「ゲームらしいエロゲー」は久々にやるのでついつい熱中しちゃう部分もある。キミとなのこともうっかり忘れてしまった。そろそろオンラインアンケートも始まりそうだから、いい加減ケリをつけたいところではあるのだが……。

 ちなみに。さっき書いたパルプテンクスというサブヒロインのエピソード、読切ながら公式コミカライズされているそうです(参照:アリスソフトBlog)。プレー直後なのに「えーと、ほら、あのパルプンテみたいな名前の……」とうろ覚えで検索するのに手間取った子が、まさか漫画化されていたとは。素でビックリしました。人気投票でも一位だったそうだし、みんなあのだらしないオッパイが好きなんですね。

1998円のFullHDエロゲ「彼女のセイイキ」がマスターアップきたあああああああああああああ!!!!(ニュー速VIPブログ(`・ω・´))

 まさかのノー延期。かなりギリギリまで引っ張った(19日発売なのにマスターアップ報告が9日)からfengのファンもヒヤヒヤしたみたいだが、どうにか間に合った模様です。喜びの声よりも「え?」とか「マジで?」とか戸惑いの声が目立つあたり、実にfengというブランドを象徴している。なんせfengのソフトで延期なしに発売されるのなんて、これが初めてですもの。今まで平均して3回くらいは延期するのが普通でした。一番ひどかったのが「ほしかか」こと『星空へ架かる橋』、確か10回近く小刻みに延期しまくったはず(調べたら9回だった)。『さくらさくら』(こちらは8回延期)の衣鉢を継ぐエロゲーだと揶揄されていた記憶があります。

 正直、私も半信半疑だったので他の19日発売ソフトとは別個に予約していたんですよね……無駄な手間を掛けてしまった。つり乙2こと『月に寄りそう乙女の作法2』や新興ブランド「ウグイスカズラ」(ヨナキウグイスの後継?)による『紙の上の魔法使い』、ビジュアルブック付きのFD『ハロー・レディ! -New Division-』(ゲーム単品はダウンロード販売のみ)などのほか、「ハイデフ痴漢」を謳う『痴漢専用車両2 HDリマスター』、そして待ちに待った『戦国ランス』『超昂閃忍ハルカ』『闘神都市3』の廉価版も出ます。今年の冬もエロゲーが熱い。

発売中止になった/いつ発売されるかわからないエロゲ集【2014年末調査版】(つでぱふ!)

 苦笑いと胸の痛みが込み上げてくるリストですね……いくつか解説すると、BasiLの『けれど輝く夜空のような』は『それは舞い散る桜のように』の続編として企画されていたものです。前作から何年か経った桜坂市を舞台に、『それ散る』の子供組(和人、瑛、瑞音、郁奈、椿、桜香)をメインにしてストーリー展開する予定だったそうな。大人になったかぐらが登場する構想もあったらしいが、実現しなかった。『それ散る』ファンの中には未だに『けれ夜』の実現を待ち望んでいる人もいるとか。ちなみに『けれ夜』は王雀孫ではなくあごバリアがメインライターになる予定だったので、開発中止と王の遅筆に関係はない……はず。『末期、少女病』は解説するまでもない、私の、そして我々の悲願。今は亡きブランド「公爵(デューク)」の2本目となる予定だったソフトで、当初の企画名は「マンハッタン計画」。カルト教団が核爆弾を作ってどうこう、みたいな話だったのではないかと予想される。3年くらい前に開発再開の報が流れたものの、いろいろトラブルがあって再びお蔵入りになりそうな雰囲気が漂っている。一応、ビジュアルアーツ系列で開発継続という形になってはいるが、完成して発売まで漕ぎ着けられる可能性は非常に希薄と言わざるを得ない。『陰と影』は『二重影』のリメイク? というか、『終ノ空』に対する『素晴らしき日々』みたいなソフトになる予定だったのではないかと予想されます。ほとんど情報が明かされないまま開発が凍結されたので不明点ばかりですが、大量のキャラクターが出てきてその大半が死ぬとか、そういう凄惨な剣戟ストーリーだったのではないでしょうか。『霊長流離オクルトゥム(仮)』……これは涙なしには眺められない。通称「オクル」。田中ロミオ畢生の大作、となるはずだった企画です。「黒羊歯」というキーワードから『Leviathan』(レヴィアタン、田中ロミオが参加する予定だったのではないかと噂されている同人ゲーム企画。中心人物だった堀部秀郎が2006年に急逝したため開発凍結となった)との関連も考えられる。あまりにもシナリオの規模が大きくて開発に億単位の費用が掛かると見られ、単純に資金の捻出が難しいことから制作を棚上げされているそうです。ポシャったわけではない、ということだけがロミオファンにとっての救い。ニトロプラスの『ドグラQ』は当初『クルイザキ』というタイトルで予定されていたソフト。「探偵VS怪人in帝都」みたいな乱歩調伝奇浪漫らしいが、ここのところ音沙汰がない。シナリオライターの鋼屋ジン曰く「書く気はある(笑)」。ホンマか? ホンマなのかオイ。『太陽の子』はるーすぼーいが音頭を取って丸戸史明、タカヒロという有名ライターを引っ張ってきた合作企画です。こういう有名所を集めた大規模な合作モノって大抵難航するよね、という周囲の読み通りに開発はどんどん遅延し、2012年を最後に「開発日誌」も更新されなくなった。それでもまだ企画としては生きていて、あかべぇ的には「現在鋭意製作中」らしい。ホンマか? ホンマなのかオイ。『永遠(仮)』はなんだかんだで結局未完成になってしまった『Garden』の瑠璃シナリオ代替補填タイトルとして告知された無料ソフト。規模はだいたい『ワンコとリリー』相当にするつもりだったらしい。2013年の1月と3月にトノイケダイスケからアナウンスされたが、以降丸きり続報ナシ。トノイケの時間感覚は常人とは異なるので仕方ない、と思うしかない。振り返れば、2008年1月に(未完成ながら)発売された『Garden』のタイトルが初めてスタッフ日誌に載ったのは2005年10月なんですよね。エロゲーは情報公開から半年以内、長くとも一年以内に出すのが通常ですから、この時点で既にトノイケファンは相当な気長さを要求されていたわけだ。

 私も加齢に伴って長編エロゲーをやるエネルギーがなくなってきたから大半の未発売ソフトに関しては徐々に諦めがついてきていますけど、それでも、それでもオクルだけは諦め切れません。オクルは祈り。オクルこそが明日への願い。オクルがカムバックする日までエロゲー情報漁りは止められない。

・拍手レス。

 個人サイト・奈良原一鉄で思い出しましたが、ブレイドシティが二話で止まってしまっていたのが残念でなりません。これから面白くなりそうなところだったんですけどねえ…。
 奈良原と言えば「枝篇 刃鳴散らす」が書籍化されず終いで未だに読めないまま……あのときザスニ買っておけばよかった。

 『いつまでも…』(というかイージーオーの作品全般)ておるごぅる氏の作品だったと知って驚いた自分がいる。 昔は今ほどエロゲーライターにスポットがあたる事はなかったし、気にしたこともほとんどなかったので。 『いつまでも…』は自分もプレイしてかなり楽しめました。犬にまでEDがあったのには笑いましたが。 それだけにリメイクの開発中止にはがっかりしたものです。
 あのヤケクソみたいなマルチEDはすごかったですね。エロゲーのリメイクというと、超低速進行の『月姫』はともかく、『らくえん』のPREMIUMBOXが実現しなかったことが悔やまれます。


2014-12-05.

・ALcotハニカムの新作『キミのとなりで恋してる!』をちょろっとプレーした焼津です、こんばんは。

 ALcotハニカムは「ALcot」の姉妹ブランドで、ミドルプライス(5000円から7000円程度)の中規模ソフトをメインとしています。ミドプラ専門というわけでもなくて、たまにフルプライスの奴を出したりもしますが、ちょっと実験的だったり毛色の変わったストーリーだったりするところに特徴があります。『キミのとなりで恋してる!』は謎の新人ライター、おぅんごぅるがシナリオを手掛けており……いや、白々しいことを書くのはやめよう。キャリア10年を誇る古参ライター「おるごぅる」の別名義です。これ変えた意味あるの? 単に検索し辛くなっただけじゃないの? と言いたくなるほど些細な違いでしかないが、実は2010年頃、まだおるごぅる名義だったときに一度引退宣言しちゃってるんですよね。確か体調不良(リウマチか何か?)が原因だったかな。それでしばらく音信が途絶えてファンたちが気を揉んでいたところ、今年になってようやくおぅんごぅる名義でブログが再開され、『キミのとなりで恋してる!』が晴れて復帰作となったわけです。

 おるごぅるはライター歴こそ長いものの超有名というほどではなく、知る人ぞ知る、みたいな……なんというか「手掛けた作品のタイトルは知られていても本人の名前はあまり知られていない」タイプの書き手でした。具体的に言うと、アニメ化した『ましろ色シンフォニー』にも関わっているのですが、ましろ色〜のタイトルを聞いて咄嗟におるごぅるを連想する人は少ないでしょう。彼が担当したのは天羽みうルートで、異常に人気の高いサブキャラ「乾紗凪」が失恋する様子を描いています。この展開はアニメ版にも受け継がれ、いわゆる「滑り台」を生み出す原因となった。負け組ヒロインたちが公園の滑り台周辺に集まるシーンはアニメオリジナルですが、大元がみうルートだけに「おるごぅるが悪いよ、おるごぅるが」と野次る向きとてなきにしもあらず。これだけ書くと紗凪ファンから奈落より深く恨まれていそうなイメージが湧くものの、PSP移植版で追加シナリオとして紗凪ルートを執筆しているため既に和解は成立済だったりする。18禁への逆移植こそが悲願なのですが、まぁその件は置いとこう。

 個人サイトで小説を書いていた彼のエロゲーライターとしてのデビュー作は2000年に発売された『いつまでも… 〜神長さん家の春夏秋冬〜』。パッと見は美少女姉妹と同居しながら明るく楽しい学園生活を送るっていう「よくあるエロゲー」なんですが、話が進むにつれ本当は「NTR(寝取られ)ゲー」であることが明らかになっていく。十数年も前だから記憶が曖昧ですけど、長女は家族の生活費を稼ぐために売春していて、歳の近い次女は主人公のために主人公の友人へ処女を捧げて、妹の三女はイジメの末にレイプされて、想いを寄せている同級生は教師に陵辱されていて、不良っぽい少女は兄と近親相姦の関係にあって……と、ちょっとやりすぎなくらい「主人公以外とのセックス」が盛り込まれている。当時はまだ「寝取られ」が属性として市民権を得られていなかったことに加え、カオスな内容のゲームが次から次へとリリースされていた時期(『さよならを教えて』はこの翌年2001年に発売)だったことからそこまで大きな話題にはならなかった。話題になったのは2003年の「うちいも」こと『うちの妹のばあい』である。未だにNTRの話題で頻繁にタイルトが挙げられる伝説の一本だ。しかし、「鬱寄りな話」ばかり書いてきたわけでもなくて、『幼なじみな彼女』やうちいもの純愛版など正統派に近い路線もキチンと歩んでいる。本数的にはそちらの方がメインと断じても差し支えない。方々で評価は高い。なのに知名度は低い。「なんで? 普通、兄って妹で童貞を捨てるものじゃないの?」という名セリフ(迷セリフ?)で有名な『死神の接吻は別離の味』のシナリオがおるごぅるであることを、いったいどれくらいの人々が認識しているだろうか。同じ藤沢周平好きのライターでも「隣の席で模造刀を振り回す」ことでお馴染み奈良原一鉄と比べ、名前が上がることは少ない。シナリオライターをスター扱いする風潮自体がおかしい、という考え方もあるので、業績の割にマイナーであることを本人はさほど気に掛けていない可能性も高いが……。

 さておき、『キミのとなりで恋してる!』。メーカー希望小売価格7344円(税込)、お手頃というより中途半端な値段の一本ですが、やってみて思ったのは「すげー丁度いいテンポで、プレーしていて気持ちイイ」ってことですね。さすが10年のキャリアは伊達じゃない。ブランクの長さをまったく感じさせないキレがあります。私はここのところ集中力がなくなってきて、エロゲーの体験版とかをひと通りプレーすることすら「ダルい」と感じる(なかなか面白い箇所に差し掛からなくて焦れてくる)んですが、キミとなに関してはちっともダルさを覚えず「時間があればもっとやり込むのに……!」と歯噛みしました。「ああ、あと10分したら出ないといけない……」って時計をチラチラ見ながら遊ぶ、そんな歯痒い事態を久々に味わいました。ストーリーは今回そんなに込み入ったものでも奇抜なものでもない。幼い頃に両親を病気で喪って祖母と妹と三人で暮らしている主人公が、祖母から「早く嫁の顔を見せろ」とせがまれ、せめて彼女のフリをしてくれる子だけでも探そうと動き出す。発端はこの程度です。ヒロインは三人に絞られている。幼なじみで、気心は通じているものの距離が近すぎて互いにあまり異性として意識していない莉奈。同じく幼なじみだけど、ちょっとした出来事がキッカケで疎遠になってしまったなぎさ。そして主人公が一目惚れする涼花。三者の立ち位置を丁寧にテンポ良く整理してストーリー展開します、あ、それと妹キャラも出てきますがサブキャラ扱いだそうです。でもお風呂一緒に入って乳首見せる程度のサービスシーンは用意されている。OP観ると結構重要そうなポジションだが……?

 もうね、やってて単純に「楽しい」。これに尽きます。気負わず気軽に気楽に肩の力を抜いてひたすらマウスをカチカチする、その至福たるや。数年ぶりに「エロゲーならではの楽しさ」を実感することができました。「難しい話は抜きだ、とにかくリラックスして楽しんでくれたまえ」というスタッフのメッセージが画面を通じて伝わってくる。私みたいに歳を取って大規模なゲームをプレーするのがキツくなった老頭児プレーヤーには是非オススメしたい一本です。最近はロープライスやミドルプライスのソフトにも勝負球を仕込んでくるメーカーが多いので、そのへんを重点的にチェックしていくってのも一つの手ですね。

 ……って、さっき検索して始めて知ったけど、キミとな発売直後から品薄で現在は入手困難なのか。予約して購入したから知らなかった。初回版は発売前から「メーカー在庫なし」となっていた模様ですが、今月19日に通常版(初回版との違いはパッケージのみ)が発売されるそうなので、興味がある方はクソ高い中古に手ぇ出さずそちらをお求めください。

・すえばしけんの『スクランブル・ウィザード(1〜7)』読んだ。

 著者のデビューシリーズで、2008年から2010までの2年間に渡って展開したライトノベルです。「魔法士」が存在する社会を舞台にした現代ファンタジー。言うなれば「現代日本版オーフェン」。最近の作品で喩えると、『魔法科高校の劣等生』の設定をもっと簡略化した感じです。ライトノベルにしては珍しく主人公が20代の成人男性で、ヒロインは小学生――ひと回り近い歳の差カップルとなっています。ただ、小学生と言っても6年生で、12歳相当だからそこまでロリロリしくはない。やや気弱で内向的にせよ受け答えもしっかりしているし、挿絵を見せて「中学生だ」と言い張っても通じそうなレベル。ロリコンは残念がるかもしれないが、ロリコンじゃない人も拒否感は覚えにくいかと。

 国が魔法士を管理し、才能ある者には魔法教育を受ける義務が課せられる(その後、適性に応じて魔法とは関係のない職に就くこともある)パラレルな世界。日本では「内閣府特別対策局」が精鋭中の精鋭を集め、凶悪事件や大災害、そして極秘任務に備えた体制作りを入念に行っていた。天与の才能には恵まれなかったものの、血を吐くような努力の積み重ねの末に「特級特殊執行官」という立場を得るに至った青年・椎葉十郎は、魔法士の育成校で才能の塊とも言うべき少女と出会う。「特殊執行官」は公式認定された魔法士、簡単に言えば「公務員としての魔法士」に与えられる肩書きで、それぞれ能力に応じて級数が存在する。「特級」はSランクであり、有能であるがゆえに機密性の高い任務を振られることもあります。姉の一花が特級特殊執行官であったため、彼女に憧れていた十郎は死に物狂いで同じ「特級」の称号を掴んだわけですが、いろいろあって本編開始時点ではすっかりやさぐれていて勤労意欲の低い状態に陥っている。魔法士育成校に赴任してきたのも、仕事で重大なヘマをしたのが原因。モチベーションが尽きかけていたところにヒロインとの邂逅があって、彼女との衝突や和解を経て少しずつ再起していく。「教師と教え子」と書くとなんだか禁断っぽいムードが漂って卑猥だが、ラブコメ色は比較的希薄だから犯罪臭も少ない。巻を重ねるごとに増大していく月子ちゃん(ヒロイン)の「先生好き好きオーラ」が可愛くてついニヤニヤしてしまうが。

「私が心配なら、ずっとずっと傍にいて! 私の先生でいて! 誰かのものにならないといけないなら、先生のものにして!」

 月子ちゃんは可愛いものの、ストーリーは意外と殺伐としていて毎回死体がゴロゴロと転がる。反魔法士グループがテロ活動に励む、というベタベタな場面も用意されています。読んでいて「治安悪すぎ!」「テロリスト多すぎ!」とツッコミを入れたくなる人もいるでしょう。とはいえ「魔法という超常の力を持った人々」という題材には真摯に向き合っていて、主人公たちの成長や人間関係の変化といった部分は読み応え充分。特に3巻から4巻にかけての盛り上がりはスゴいですね、まるで暗黒のジェットコースターです。ページを繰る手が止まらなかった。逆に言うと、そこがシリーズのピークになっちゃってるんですが……最終巻付近も面白いことは面白い(月子ちゃんが「自分の心が折れる音」をはっきりと聞くシーンにはゾクゾクした)が、3巻〜4巻のヒートアップを凌駕するほどではなかった。けど、手堅くキチンとまとめているし、最後まで読んで損のないシリーズではある。とりあえず1巻だけ読んでみて、肌に合うようだったら4巻までまとめて購入しちゃってください。「ライトノベルの主人公はもっと年齢を上げてほしいんだよなぁ」と嘆く方にもオススメ。魔法戦描写はシンプルながらも情景が目に浮かぶようで、なかなか白熱します。すえばしけんは現在『ラエティティア覇竜戦記』『祓魔科教官の補習授業』といった新シリーズを手掛けており、どちらも面白いので併せて読みたいところです。

・拍手レス。

 ダッシュエックス文庫と言えば、紅の新刊が12月刊行予定とされてますね。醜悪祭までは新装版として同時発売するみたいです。新刊は勿論気になりますが、醜悪祭が1冊にまとまってるのが嬉しいです。
 醜悪祭は「祭りの後」も入るのかな……6年ぶりの再開だというのにあまり実感がなく、ボンヤリとしています。ブランクが心配というのもあるし、ちゃんと続きが出るのかどうか疑わしいってのもあるし。待つしかないんですが。

 この前本屋行ったら富士見L文庫でマルタサギーが復活してて驚きました。続編では無く加筆修正版みたいですが。……これはSHI-NO期待しても良いんですかね!?(いまだに文庫未収録短編が諦めきれない)
 富士見L文庫、“エクスプローラー”シリーズの北山大詩が復活していたりして富士見ミステリー文庫のサクセサー的な側面がなくもないですが、どうもターゲット層が「大人の女性」みたいだからSHI-NOは厳しいかな……と。しかし、SHI-NOも刊行途絶から既に5年が経ちましたか。

 姫が更生してて悲しい。俺たちのゲス姫ならヒルダをげしげし足蹴にしてたろうに・・・>クロスアンジュ8話
 このまま正統派ヒロインに転向していきそうな雰囲気を感じますね……最終回で悪霊(G・G・スレイマン)化している可能性もまだゼロではないですが。

 兄がゲスなのは知っていたが妹もゲスとは・・・おまけに顔芸連荘とか、今回の脚本有能過ぎwおまけにモモカもゲス黒の可能性出てきて、個人的に大歓喜www>クロスアンジュ9話
 でも、なんでしょうかね・・・アンジュがああいう目に遭っても痛くも痒くも無いのに、ヒルダの境遇には涙が出ました。
 ちょっときになって調べてみたんですが、今回の脚本家はテツブレやゼーガの人でしたね。納得のいい仕事です。>アンジュ9話

 うちの地域はBSしか観れないので9話は未視聴ですが、相当なゲス祭りだったと方々で話題になってますね。視聴者の緊張も緩んでくる頃合だし、ちょうどいいタイミングではあるかと。


2014-11-24.

・溜まっていた『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』の積読をそろそろ解消しようかな、なに、ゆっくり読んでも半月くらいあれば崩し切るだろう……と軽い気持ちで着手した結果、ほんの5日そこらで全部読み切ってしまった焼津です、こんばんは。

 ここのところ集中力が落ちてきているせいもあり、普段は複数のシリーズを並行してチョビチョビ読み進めているわけですが、俺ガイルは読んでも読んでも飽きが来なかった。久しぶりに誇張抜きでずっぷりハマってしまい、寝る間も惜しむ……というより「俺ガイルの続きを読む」って一念から朝も布団の中でグズグズせずスッと起き上がれるようになるほど。他の作品に目移りしたい気分は日に日に減じていった。なんなら俺ガイル以外は何も読みたくないまである。中毒性の高さがちょっとヤバい領域にまで達している。売り飛ばしてしまった1巻を買い直し、もう一度最初から読み直すくらいのハマりようです。実は1巻目、発売直後に平坂読の推薦文に釣られて購入し即読了したんですけど、その時点ではそんなにハマっていなかったせいであっさり手放しちゃったんですよね……金銭的な問題より「置き場がない!」というスペース面での問題が大きかった。実際、今回も途中までは「崩し終えたら処分しよう」と考えていました。具体的に言うと5巻あたりまではこのシリーズに対し、さして執着心を抱いていなかった。6巻、文化祭のイベントを描くエピソードで一気に確変が来ましたね。アニメ1期は視聴済だから大まかな話の流れこそ知っていたものの、原作読者はご存知の通り、アニメ版って削られている箇所が相当多くて受ける印象も全然違ってきます。川なんとかさんこと「川崎沙希」なんて出番ごっそり削られてファン涙目。文化祭の後も体育祭の運営を巡って四苦八苦する6.5巻などがあり、少し前に『なれる!SE』をまとめ読みしていた私はつい八幡に工兵の姿を重ね合わせてしまったり。8巻を本棚から引き抜いたあたりで「よし、1巻を買い戻そう」という気分に陥っていた。読んだ本を買い直すのは無駄ないし手間な行為だと思われるかもしれないが、置き場のことを考えると「読んだら即処分、読み返したくなったらもう一度買う」がもっとも効率的なんですよ……蔵書が万単位に及んでしまった書痴の場合は。

 通読し、パロネタの多さ――というより無節操さにちょっと閉口してしまったが、とりあえず「わぁい俺翼、わたり俺翼大好き!」ってことはヒシヒシと伝わってきました。とにかく、6巻以前と以降の盛り上がり方は桁違いと評しても過言ではないです。1巻から5巻までは「いつ打ち切りが決まっても対応できる」、そんな雰囲気がどことなく残っていたけど、6巻からどっしり腰を据えて「最後まで書く! 最後まで書かせてもらえる!」と決意や自信に満ちた構えへ切り換わっていく。スクールカースト等、学校内の人間関係にこれだけ力を割いて綴るライトノベルは珍しいし、シリーズ通して「関係の変化」を追っていく点だけでも充分に面白い。あれだけ卑屈で捻くれた思考および言動を兼ね揃えた主人公に「可愛げ」という要素をキチンと持たせる手腕もさすがである。俄然、来春予定のアニメ2期に対する期待も高まった。原作はそろそろ完結が近い(あと数冊で完結する)みたいだが、アニメ2期も完結までやり切るんでしょうかね? 1期は原作1巻から6巻までの内容を大部分削りつつも消化したわけですが、2期に回せるストックは6.5巻、7巻、7.5巻、8巻〜10巻と現状だけでも6冊分ある。しかもこの6冊分は1期で消化した6冊分とはまた意味合いが違う。何が違うって、単純にページ数が違うんですよ。1巻〜6巻までの合計がざっと1700ページくらいなのに対し、6.5巻〜10巻は軽く2000ページを超えている。完結させるとなったら、これに残りの数冊分が加わるわけで……1期と同じく1クール枠なら、前回を上回る勢いでエピソードを端折らないといけません。「そこ削っちゃうの〜!?」とファンの悲鳴が響き渡ることでしょう。かと言って2クールもやるとなると、1期のテンポに慣れたアニメ組の視聴者が「2期はなんか間延びしてないか?」と不満を抱く恐れがある。難しいところだ。削るとしたら、まず6.5巻をバッサリ行くだろうな。6.5巻は1期の13話目として放送された番外編「だから、彼らの祭りは終わらない。」の裏側を描く趣旨のモノで、6巻と対を成す内容になっている。1期ラストで散々な扱いだったあの人が名誉挽回するエピソードになっているが、別にあの人が名誉挽回しなくてもストーリーに支障は来さない。なので2期はいきなり7巻、修学旅行編から始まる可能性が高いと見ます。いや、7.5巻を前倒しで持ってくるという手も……うーん、どうなるんだろ。期待と不安が半々って心情です。

『六花の勇者』TVアニメ化決定!(萌えオタニュース速報)

 スーパーダッシュ時代の作品としてはこれが最後のアニメ化になりそうです。『六花の勇者』は2011年に始まったシリーズで、タイトルは「りっか」ではなく「ろっか」と読む。「六花」は雪の結晶を指して言う場合もある(そういえば『六花の舞う頃に』って作品もあった)が、このシリーズに関しては普通に「六つの花弁を持った花」を意味する。作者は『戦う司書』シリーズの山形石雄。凶悪な魔神が甦ろうとしていて、復活を阻止するために6人の勇者が集結する予定だったんだけど、気が付くと7人いて……という『11人いる!』みたいな設定のサスペンス系ファンタジー。「7人目は誰なのか?」を巡って疑心暗鬼に陥っていく勇者たちの腹の探り合いが見所なんですが、発売する前から「面白そうだけど一発ネタじゃないのか、これ」と不安視していた人の気持ちはみなさんもよく分かると思います。なのにシリーズ化しましたからね。未読の方々は「えっ、この設定で続くの? ひょっとして『7人目』が判明しないまま2巻に行くの? それとも『7人目』が分かった状態を前提にしたストーリーになるの?」と疑問を抱くことでしょう。なんだかんだで読むのが遅れた私もそう思って首を傾げた。ネタバレになっちゃうから詳しいことは書けないが、「そう来たか!」の連続でエキサイトします。ある程度ネタが割れていても面白いことは確かですが、やっぱり予備知識を最低限に抑えた方がよりワクワクできるでしょう。なるべく2巻以降のあらすじには目を通さず着手してください。

【悲報】石川妹、このラノ5位の本のタイトルを言えない「野球のやつ! 野球のやつ!」(石川博品のおしゃべりブログ)

 言っちゃ何だけど『後宮楽園球場』ってタイトルは覚え辛いから仕方ない気もする。『ハ・リーグ』くらいの短さならパッと出てきそう。ともあれ評価は高いのに売上がパッとせず、「誉められど誉められどなお我が暮らし楽にならざり」という乖離に悩まされている作家、石川博品が遂に無重版(ゼロ・リプリント)の闇から脱出する。ファンは万歳万歳万々歳とみな喝采している模様です。ああ、この感覚、佐藤友哉のときと同じだ……デジャヴること頻り。「重版童貞」ってもともと佐藤友哉が担当編集者から付けられたあだ名だったんですよね。その担当編集者というのが「太田が悪い」でお馴染みの太田克史です。

 「カバーのデザインがダッシュエックス文庫仕様に変更されていますのでご注意ください」とあるが、SD時代の作品であっても増刷されればDX文庫扱いになってしまうのか。もう「スーパーダッシュ」というレーベル名は消滅に向かっているわけですね……アニメ化が決まった『六花の勇者』の既刊も、恐らくこの次の増刷でDXに完全移籍しちゃうんでしょう。SD時代の作品は、いったいどれだけDXに移行できるのか。『つくも神は青春をもてなさんと欲す』あたりのマイナー良作シリーズは是非生き残ってほしい。それにしてもR.O.Dの最終巻はいつになったら出るんだよ。

・拍手レス。

 マキャベリズムは私も店頭で見つけて買いました。内容は記事に書いてある通り、しなこいをよりテンポよくした感じでしたね。内容と後書きから、作者、原作者両名の「打ち切りは嫌だ」という想いが伝わってきますね。2巻までは出ますよとか不安なことしか書いてあるありませんし。これは、もう頑張って買い支えるしかありませんな。真面目に五剣帝と女帝全員倒すまで、出来ればその後も続いてほしいですよね。
 『しなこいっ』は独特の魅力があって面白かったけど「こいつらなんで戦ってるの?」という根本的な疑問がなかなか明かされないなど、幅広い読者を引っ掛ける工夫が欠けていましたね。今回はややベタながら入り込みやすい仕様になっており、前よりは人気を得られるのではないかと期待していますが……ただ現段階だと必殺技のカッコ良さが『しなこいっ』に及ばないあたり懸念点の一つ。あの腰を「カチッ」とやる描写はちょっと笑ってしまう。ベッドの上で使うところを想像してしまって。


2014-11-16.

『しなこいっ』のコンビによる新作『武装少女マキャヴェリズム(1)』が期待通り面白くて悦ってる焼津です、こんばんは。

 『しなこいっ』はかつて存在していたマイナー誌“月刊コミックラッシュ”に連載されていた剣道アクション漫画で、コミックラッシュが紙媒体からWEBへ移行する際に休載し、『竹刀短し恋せよ乙女』とタイトルを変更して“月刊少年エース”に移籍した。題名は変わったがリメイクというわけじゃなく、ストーリーそのものは『しなこいっ』の続きとなっている(ただし旧コミックは雑誌掲載エピソードのいくつかが未収録になっているので、単行本派の人がそのまま読むと「?」になるかも。未収録エピソードは完全版にまとめられている)。私は『しなこいっ』時代だけ読んでいて、『竹刀〜』の方は積んでいます。巻数が溜まったらまとめて読もう、と思ったのに3巻で終わっちゃったんですよね……たぶん打ち切りだろうな、と察して崩す気力がなくなりました。マキャヴェリズムのあとがきにもハッキリ「打ち切り」と書かれており、どうにも切なくなった次第。マキャヴェリズムも売上によっては2、3巻で終了の可能性があるとのこと。世知辛い。

 さておき、『武装少女マキャヴェリズム』の紹介。タイトルから『よいこの君主論』『クラウゼウィッチーズ』みたいなもしドラパロディ路線を想像していたが、マキャヴェリの言葉を引用する箇所がいくつかあるだけで、女子高生が『君主論』を読んで部活に励むとか、そういった話にはなっていなかった。女子のすべてが武装しており、男子の地位が著しく低い『つよきす』的というか『ミルク*クラウン』的な学校が舞台。各地から集められた問題児=男子どもは矯正を通り越して精神的に去勢されており、生意気な振る舞いを放棄してオカマ同然の言動を振り撒くところまで追い込まれている。そんな学園に転入するハメとなった少年・納村不道は初日早々、鬼面を着用する少女に刃を突きつけられて……と開幕直後の展開は割合ベタである。これが普通のアクションラブコメだったら『インフィニット・ストラトス』ばりに敵視・対立のフェーズをさっさと終わらせてハーレムモードに切り換えるところでしょうが、そこは『しなこいっ』のコンビ、少年少女のぶつかり合いをガチで描く。と言っても血腥くならない程度に留めているし、御褒美めいたサービスショットも忘れていない。「もう打ち切りはイヤだ!」という気迫がビンビン伝わってくる。

 少女たちの使う剣技も格ゲーじみた超能力ではなく、「鹿島神傳直心影流」など実在の流派をモチーフにしています。奈良原一鉄ばりの細かい術理解説は幕間の空きページだけに留めているが、打ち切りの心配がなくなったらこのままどんどん本編に食い込ませていってほしい。ヒロインたちがグリザイアの榊由美子以上に殺す気満々で斬り掛かってくる(一応、刃引きはしているが)あたりに「殺人容疑で捕まることが怖くないのか?」と首を傾げたくなるものの、主人公が己の力を認めさせるべく奮闘する筋立てはまっすぐで目に心地良い。彼の目的は学園にハーレムを作り上げること……ではなく、外出許可証を手に入れること。男子どもはさながら囚人の境遇に置かれており、自由な外出はおろか物資の入手さえ女子を買収することでしか実現しえない。未だかつて発行された試しがないという、外出許可証――その入手方法は、「天下五剣」と称される5人の女生徒の判子と学園長印を揃えること。天下五剣は要するに「○○四天王」系のトップ五人衆です。学園には天下五剣より強いと噂される「女帝」も存在しており、みんな基本的に性格や人格のヤバい子ばかりでワクワクします。普通に金的狙われたりちんちん切り取る宣言されてますからね、主人公。終わる頃には性別が変わって百合漫画になってやしないかと心配だが、どのみち剣戟バトルは最後まで残るだろう。アニメ化を目指している(?)みたいなので応援していこう。けどその前にまず打ち切られないで済むよう、お祈りを捧げたい。ハーレム漫画じゃないのに結果としてハーレムみたいなものが築き上げられるまでの巻数、続いて欲しい。

 ちなみに。『しなこいっ』の掲載誌だったコミックラッシュはどうなったかと申しますと、今年に入ってから遂にWEB版が一旦休止となりました。最後の方は連載作が2つしか残ってなかったそうです。創刊が2004年だから、マイナー誌とはいえ何気に10年以上の歴史があったんだな……現在は「まんが王倶楽部」のデジタル書籍部門、“デジタルまんが王”の一角を間借りする形で復活しています。と言っても連載作品は『ヘタレ姉。』のみで、これが完結したら本当に終了でしょう。スクエニに移籍した『学園革命伝ミツルギ』もとっくにラストを迎えてますし、「コミックラッシュ」の響きもじきに「懐かしい」の一言で括られるようになってしまうのだろうか。それ以前に「何それ?」「知らない」という声の方が多そうで泣けるが。

朝日新聞出版が新レーベル「朝日エアロ文庫」を11月20日に創刊(わなびニュース)

 2007年1月に休刊した「ソノラマ文庫」の後継レーベル……と言えなくもないが、既に8年近く経っているし、ブランクが長すぎてサクセサーとしての機能はあまり期待できない。朝日文庫の方に行った“吸血鬼ハンター”が戻ってくる可能性は低いし、“キマイラ”シリーズも文庫版はKADOKAWAが出してますからね。間を繋いでいた新書レーベル「朝日ノベルズ」が非常にひっそりとした活動だったことを考えると、エアロ文庫もそよ風のようにひっそりとしたレーベルになりそうです。『ARIEL SS』を別にすると女性向けがメインとなるようで、あまりチェックしようという関心は湧かない。岩本隆雄とか秋山完が書き下ろし新作を引っ提げてカムバックしてきたら涎を垂らして擦り寄る気満々ですけどね。しかしホント次から次へと新レーベルが出来て刊行点数も増える一方、置き場を考えないといけない本屋は大変でしょうな。

 ついでだから朝日ノベルズ作品の隠れた佳作を紹介。『無責任艦長タイラー』で有名な吉岡平の『エンブレムは葵!』、現代(本が発売された当時だから2009年)まで徳川幕府が続いているというパラレルな日本を舞台に、町娘のヒロインが御三卿「田安家」の次男に見初められる。言わば「身分違いの恋」を描いたラブコメだが、タイラーの作者だけにトボけた味わいのある作品に仕上がっています。ロックバンドが倒幕ソングを歌ったりしていて笑える。『銀魂』をちょっと緩くしたノリ。「俺も歳を取った、最近のラノベのノリには付いていけない……」と悲哀を感じている方にもオススメの一冊です。続編として『歴女VS.葵ブラザーズ』もあり。

【衝撃】sprite『蒼の彼方のフォーリズム』発売前なのにアニメ化決定!!(2次元に捉われない)

 「ブランドがsprite」って点でどうしても『恋と選挙とチョコレート』を思い出してしまうな……『蒼の彼方のフォーリズム』、当初の予定では9月26日に発売されるはずだったんですけど、制作の遅れから今月へ延期になった経緯があるんですよね。なので「発売前にアニメ化発表」というのは本意じゃなかったかもしれません。で、どんなゲームかと申しますと、平たく言えば今回も学園モノです。ボーイ・ミーツ・ガールなスポ根青春ストーリー。「フライングサーカス」なる架空の競技を巡って話が進行していく。詳しい解説はこちらをご覧いただきたいが、要は反重力飛行デバイスで空を翔け回るアクロバティックな姿が見所となるわけだ。きっとこの世界では反重力関連の兵器が戦場に出回ってるんだろうな……鉄雄くんのSOL落としみたいな光景も日常茶飯時なのでしょう。つかこの技術を応用すれば、自重を支えてバランス取ることが困難な二足歩行巨大人型ロボの実用化も不可能ではない……? などと妄想がパンケーキのように膨らみます。

 企画とメインシナリオを手掛けた「木緒なち」によると、このゲームは約2年掛かりのプロジェクトだったらしい。メインの木緒以外にも「ファッキン」の口癖でお馴染み「渡辺僚一」がスタッフとして加わっており、「絵だけゲー」にならないで済むのでは……と期待を寄せられています。アニメ化に関するコメントで営業・プロモーション担当の「吉川」が「今回の作品は売り上げ本数など、数字だけでは語れない確かな可能性を秘めており」と言っているところを見るに、予約本数はそこまで目覚しく入っているわけではないみたいだが……「昨今、数多くのアニメ作品はありますが、PCゲームのアニメ化は年々厳しくなって来ているのが実情です」「全体的に業界が縮小傾向にあるのが起因だとは思います」という言葉でなんだかしんみりしてしまう。エロゲー原作のアニメは観てガッカリすることが多く、概ねスルーしてきたため個人的に「PCゲームのアニメ化は年々厳しくなって来ている」ということ自体はさして気にならないが、「業界が縮小傾向にある」と業界人にハッキリ言われてしまうとやっぱり寂しさの念を拭えなくなりますな。たとえ復活して新たな最盛期を迎えたとしても、かつてほどのエロゲーに対する情熱が私の中に甦ってくることはたぶんないでしょうけれど。せめてこの熾火のような妄念が残した余熱だけは失わずに業界を末永く見守っていきたい。と、そんなことより12月に『戦国ランス』と『超昂閃忍ハルカ』と『闘神都市3』の廉価版が出るので、「気になっていたけどまだ買ってない」という人はこの機会にどうぞ。

 ちなみに『蒼の彼方のフォーリズム』、公式略称は「あおかな」だがURL等で「aokana」と表記されるとどうしても青姦を連想してしまう……果たしてHシーンに空中浮遊プレイや大空飛行プレイは実装されているのだろうか。ヒロインの尻を追いかけて「これが本当のドッグファイトだ!」と叫びながら空中ドッキングされたらどうしよう。アクロバットおやじもビックリな曲芸交尾が見たいような見たくないような。

・砂義出雲の『天網炎上カグツチ』読んだ。

 作者名は「すなぎ・いずも」と読む。ガガガ生え抜きの作家で、田中ロミオ大好きっ子としても知られている。ガガガはロミオの他にも東出祐一郎やJ・さいろー、荒川工などエロゲーシナリオライターの手掛けた作品が多数ラインナップに加えられており、その関係もあってかエロゲー愛を剥き出しにしている作家が少なくない。現在アニメ放送中の『俺、ツインテールになります。』も頻繁にエロゲーネタが出てくる(作品はすべて架空だがシュリンクを破る描写が妙に細かかったりしてガチだ)し、アニメ2期の放送を控えている『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』の作者・渡航もロミオや王雀孫から影響を受けたと公言しています。今は消息不明となっている相磯巴の『Wandervogel 』にも俺翼ネタがさりげなく混ぜ込まれていた。そういう意味で行けば砂義のロミオ愛も際立って珍しいというほどではない。砂義がデビューシリーズである『寄生彼女サナ』を完結させて一年以上も経ってから送り出した本書、内容を要約すると「ネットで炎上すればするほど強くなる強化外骨格(パワードスーツ)を纏ってテロリストと戦うヒーロー物」ってふうになります。

 なんだそれ? と眉を顰めたくなる人の気持ちもわかる。もう少し我慢して説明を聞いて欲しい。「インフレーム」と名付けられたパワードスーツにはインターネットへ接続する機能が搭載されており、スーツを纏う装着者(ユーザー)のSNSアカウントと同期し「ネット越しに伝わる人々の感情」をエネルギー源にして動作する。理屈を述べられても「???」だが、作中におけるリアリティの設定が脳筋アメコミレベルなのでそこはもう「そういうもの」として飲み込んでくれ。別に「炎上」じゃなくても共感や賞賛といった正のエネルギーによってもインフレームは動くのだが、無名の高校生でしかない主人公が手っ取り早くネット中の感情を掻き集めるのに一番適した方法が「炎上」なのである。言うなれば、「何らかの代償を支払うことで超常的なパワーを得るヒーロー」という類型を変則的に踏襲しているわけですよ。パワーを使えば使うほど体がボロボロになっていく、やら、どんどん記憶が欠け落ちて最終的には廃人と化してしまう、やらのバリエーションとして「誹謗中傷や罵詈雑言が殺到してメンタルが深く傷つく」ヒーローになっているんです。『リアルアカウント』をデスゲーム物からヒーロー物に作り変えるとこんなふうになるのかも。1巻は主人公がインフレームと出会って半ば強制的に装着&出撃させられることになる「セット・オン・ファイア」、主人公以外の装着者も出てきてひと通りレギュラー陣が出揃う「フレイム・フォー・ジャスティス」の2話から成ります。ダラダラとエピソードを引っ張らず各話形式で区切ったおかげで怠さを覚えずに読み進めることができました。

 炎上によって力を得る、という発想はなかなか面白いし、正義感が強い割に豆腐メンタルなヒロインも可愛い。その点では2巻以降が楽しみなシリーズと言えますが、難点もいくつか。まず、「エネルギーを稼ぐ炎上パート」と「エネルギーを放出して戦うバトルパート」がいまいち噛み合わないこと。これが例えばバルドフォースみたいなダイブ系の電脳アクションだったらネットの反応がじかに伝わってエネルギーと化すのも感覚的にわかるし、「ファイアウォールを炎上エネルギーによって燃やし尽くす」みたいな言葉遊びもできるけど、現実世界で『アイアンマン』みたいな戦いを繰り広げられても正直ちょっとピンと来ない。「民衆に罵倒されながら民衆を救うヒーロー」というダークナイトめいた皮肉は面白いものの、物語における「炎上」の位置付け――ギミックとしての収まりどころ――がいまひとつハッキリしない据わりの悪さも同時に感じた。1巻の時点だと主人公が状況に流されている感じで、「悪を憎む」気持ちが薄いのもヒーロー物として盛り上がりに欠ける要因の一つである。辛うじて「男の子の意地」が読み所になっています。

 それから、敵キャラの魅力が乏しいあたりも勿体無い。インターネット廃絶を目標に掲げる「WWR(ワールドワイドレクイエム)」という組織が悪役(ヴィラン)を務めるわけですが、彼らは「ネットって怖い」「やっぱネットは規制すべき」「ネットなんてなくした方がいいんじゃない?」というインターネットそのものへのヘイトを溜め込むために自作自演じみたテロ行為を各地で繰り返している。出来心でふざけた書き込みをして人生が狂った奴を唆してシージャックさせたりと、バカバカしい組織のくせしてやってることはかなり凶悪。「社会を荒らす」行為を正当化する思考は冗談抜きでまんまテロリストである。無力化したヒロインがもうちょっとで犯されそうになったりなど、未遂にせよ胸糞悪い場面もあるのでそういうのが苦手な人は嫌悪感を募らせてしまうかもしれません。私は当該シーンで普通に興奮しましたが、お茶目さを感じないし、もうちょっと脳天気なバカ組織だった方がバランスは取れたかも。ペンギン帝国やアルティメギルみたいな。

 最後の難点は、「炎上パートそのものが面白みに欠ける」ことですね。主人公は「炎上体質」(こちらの感想における「クソリプホイホイ」という表現がより適切)で、何を書き込んでも、それこそ「今日天気いいなー」と呟くだけで「うちんとこは雨なんだよボケ!」と罵られていつの間にか燃え上げってしまう。空気が読めないなんて次元を軽く突破した超不幸体質であり、これも「そういうもの」として受け容れるしかないんですけど、おかげで駆け引きめいた要素がまったくない。何を書き込んでも炎上するので、知恵を振り絞って炎上ネタを探す……みたいな頭脳戦要素が入り込めなくなっている。一応、主人公も状況に即した炎上ネタを探すくらいのことはするんですが、必ず燃えることがわかっているだけに緊張感も乏しい。やはり「天気を呟いただけで炎上する」というのはやりすぎだったのではないか? 敵を倒すために通報されるギリギリの行為で顰蹙を買ったり、絶妙な言葉選びで他人の神経を逆撫でにしたり、そうした振る舞いを強いられる自分の立場に疑問を抱いたり……といった読み所はやはり欲しかった。主人公を読者から嫌われないようにするための配慮かもしれないが、理不尽体質抜きでもうちょっと性格にクセやアクを付けた方が炎上パートもヒートアップしたかもしんない。今は比企谷八幡なんていう主人公も受け容れられているわけだし。

 アイデアは間違いなく面白いけれど、調理方法が定まらなくて迷走する一歩手前のところに留まっている印象。非常に危ういが、それだけに今後の展開が読めないハラハラしたムードが楽しくもある。ダイヤルアップ接続時代を絶対視し、現在の常時接続時代――「いつでも繋がっている地獄」を唾棄するWWRの首魁はちょっと興味深いキャラ造型で、「ネット文化の潮流を背景にする」試みも期待が持てます。「ネチケット」なんて文字列、すげぇ久々に目にした気がする。安全地帯に胡坐をかき、高みから好き勝手に批判する「ありふれた肖像」の醜さを根拠とする力。常に悪堕ちの可能性と背中合わせな主人公。ネットに渦巻く「形のない悪意」へどんな形を持たせるのか、シリーズを通して見守っていきたい。見失われた正義を取り戻す希望の英雄譚となるのか、群衆に紛れれば紛れるほど希釈されて拡散されて玩弄されて消えていく正義という概念への鎮魂歌となるのか。一方、実際にあった炎上騒動を扱うのは時事ネタだけに風化が心配である。「『この新作アニメが売れなかったら監督引退する』って言ったのに引退しなかったアニメ監督」って、うーん、ちょっと古いな……ゴーストライターとか非実在細胞とか奇声彼氏ノムとか、そういうのを入れても来年にはもう「古い」と言われそうですが。あとアニメは炎上ネタがいろいろと多い(例:作画崩壊)けど、ライトノベルとも近い業界だし下手な取り扱いをするとこの作品自体が火種になってしまうかも。かと言ってあまり日和ってもつまらないし、ギリギリのチキンレースが要求されるでしょうね。

・拍手レス。

 よく考えてみると、メイドを金で買うという行為そのものはかなりゲスい事だと今更ながらに気が付いた・・・大丈夫、俺たちはまだ戦えるッ>クロスアンジュ6話
 あれでアンジュ様の銭ゲバルトが始まるのか……と思ったが、むしろアンジュ様なら「どうです、明るくなったでしょう」か。

 サリアさん、常識人だと思ってたのに、実は一番ダメな人だった・・・>クロスアンジュ7話
 「次回予告が本編の余韻をブチ壊しだ!」と以前は思っていたのに、だんだん本編が次回予告のノリとシンクロしてきたような……。


2014-11-10.

・アニメがキッカケで崩し始めた『俺、ツインテールになります。』、3巻までは「そこそこ」くらいの面白さだと思ったけど4巻の後半あたりからメキメキ面白くなり、節目となる5巻は「劇場版」と形容しても差し支えない大盤振る舞いで相当ヒートした焼津です、こんばんは。

 俺ツイは「ツインテール属性」や「ブルマ属性」など、ある種のフェチズムに通ずる嗜好が「属性力」と呼ばれるエネルギーとして存在し、これを奪うべく侵攻する怪物たちと人類(と言っても主人公のチームはせいぜい数人程度だが)との闘争を描く、熱血アクション風でギャグコメディ路線のライトノベルです。アニメをご覧になった方々には言うまでもないが、非常にバカバカしいノリです。正直、1冊目を読んだだけでは出オチ感が拭えません。2冊、3冊と巻を重ねるごとに面白さが累積していくタイプのシリーズですね。「何を言っているんだ、お前ら」と半ば白目を剥きながら読み進めていた私も、4巻のクライマックスに至る頃には毒が裏返って瞳孔を全開にしつつ感動してしまいましたよ、不覚にも。口絵イラストにも添えられている「俺のツインテールは――――絆だ!!」というバカっぽいセリフすら妙に染み渡るものがある。これはアレだ。夜刀様の「俺の女神に捧ぐ愛だ」宣言と同じで、そこだけ切り取るとちょっと変梃なんだけど、ちゃんと本編の流れに従って読めば心に共鳴するものがあるという。その連想からついうっかり「ツインテールを結んだ夜刀様」とか想像しちゃったよ。両手にヒヒイロカネとスルーズ・ワルキューレを握って「俺のツインテールは――――絆(レギオン)だ!!」と叫ぶその姿。ヤバイほどに違和感がなくて滾る。

 まぁ他作品ネタはその程度にして。俺ツイ、見た目も内容も斜め上の作品ではありますが、意外としっかり特撮愛が篭もった仕上がりになっていて「熱血風」ながらキチンと燃えることができます。アニメのキャラデザだとテイルレッドの「可愛さ」を前面に押し出す形となっていますが、原作は1巻の表紙を見れば分かるように「カッコ良さ」を重視したデザインになっているんですよ。アニメもたまに「カッコ良さ」寄りのデザインになっている場面がありますね。キワモノ扱いされるのは仕方がない(実際キワモノではある)けれど、おちゃらけ系ギャグの耐性を持っている人がこのシリーズを読まず嫌いするのは勿体無いと思います。恐らくアニメは原作4巻あたりまでを消化してオシマイになるでしょう。5巻以降に関しては、あるかどうかも分からない2期を期待するしかない。私が昼食をキャンセルまでして読み耽った5巻、あれの映像化される見込みが薄いという事実はとても残念で打ちのめされるが、活字だけでも読む価値は充分にあります。さあ未読の貴方たちも原作まとめ読みして「5巻を映画化希望」と意地汚く口から願望垂れ流す亡者に成り果てるがいい。

1,998円の神エロゲ「彼女のセイイキ」の公式オープンきたああああああああああ!!!fengの本気お見せしますwwwwwww(ニュー速VIPブログ(`・ω・´))

 当初は秋発売予定だったソフトですね。fengだからどうせ間に合わないだろう、と睨んでいたのでそれは予想通りだったんですが、年内に来るとは思ってなかったのでビックリした。いや……fengだからな。まだまだ安心はできない。ここはズルズル延期を重ねて半年後にようやく発売――みたいなことが常態化しており、延期したらファンが怒るどころか「やっぱりな」と逆にホッとする、そんなブランドです。マスターアップするまでは気が抜けない。キャッチコピーがいつの間にか「fengの延期お見せします」になっていても誰も驚かないだろう。

 ちなみにブランド名の「feng」は「フォン」と読む。風牌(フォンパイ)のフォンですね。知っててもあえて「ふぇんぐ」と読む人が後を絶ちませんが。それにしても「低価格ソフト第1弾」ということは、第2、第3の本気が訪れる可能性も……?

・拍手レス。

 痴漢専用車両2の美優は歴代で最もお世話になったエロゲキャラかもしれない。生意気な態度とダイナマイトボディのおかげで堕としがいが最高にあった。あと、あのゲーム、主人公がやたらストイックでカッコいいんですよねw厨二痴漢こと最終痴漢電車3の鷹取迅と人気を二分する存在ではないでしょうか。
 トーマスといい、なぜ痴漢ゲーの主人公はあんなにキャラが立ってしまうのか……もうメーカーの垣根を越えて『痴漢ロワイヤル』みたいなのを作ってもらうしかない。

 Fateのクォリティが高いのは結構なんですが、あれ原画が死にますよね・・・
 Fateのアニメーターは監督に令呪でも使われているというぐらい酷使されてますね……。

 Gレコ、クソアニメだと思ってたら、意外にじわじわ来ますね。今期は本当に当たりが多いと思う。
 夢中にはなれないんだけど観てて楽しい部分もあって複雑な気持ち。今期は確かに当たり多いですね、時間的な制約でいくつか削らざるを得ないのがまことに残念。

 ・・・なんか、男が出来てゲス姫が丸くなっちゃってるよ
 「アンジュ様が丸くなった……そんなふうに思っていた時期が、俺にもありました」になるかも。

 タスク君、キラじゃなくてシンだったよ・・・つか、リトでイチカだよorz
 5話はラブコメみたいな展開でしたね。しかしタイトルの「喪失」は処女じゃなくて童貞?

 姫はゲスでなくなり侍女も黒くなかったのは残念だが、普通にロボアニメとして悪くないので視聴は継続してます>クロスアンジュ
 姫様にはもっと辛酸を舐めてほしいところだけど、今は溜めの流れなのか、普通に上向いて来てるのか。


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