2013年11月分


2013-11-26.

フィリップ・カーの新作『静かなる炎(仮)』、来年1月10日発売予定

 “ベルンハルト・グンター”シリーズの新作です。ベルンハルト・グンターとは私立探偵の名前で、ドイツ人。ちなみに作者のフィリップ・カーはスコットランド人です。「ナチス政権下のハードボイルド」という珍しい題材でマニアックな人気を博したシリーズであり、1作目に当たる『偽りの街』はベルリンオリンピックを目前にした1936年、2作目『砕かれた夜』は水晶の夜(クリスタルナハト)の1938年、3作目『ベルリン・レクイエム』は敗戦後の1947年を描いていました。これらは原書だと89年から91年にかけて毎年刊行され、日本語版も92年から95年にかけて割と良いペースで翻訳されていましたが、ここでグンターのシリーズは三部作として一旦完結してしまいました。2006年、心境の変化でもあったのかフィリップ・カーはシリーズを再開。以降1、2年に1冊のペースで巻数を重ね、原書は今年で9作目に達した。日本語版は2011年から再開、現在4作目『変わらざるもの』(1949年のミュンヘンが舞台)のみ入手可能。『静かなる炎(仮)』(原題 "A Quiet Flame" )はシリーズ5作目に該当する。なかなか刊行予定の報せが来ないから、「『変わらざるもの』の売上がイマイチで継続できなかったのかな……」と暗い気持ちになりかけていましたが、やっと情報が来てひと安心。1950年のアルゼンチンが舞台ということで、ドイツからはえらく離れてしまったが、アルゼンチンは逃亡ナチスを匿ったことで知られるし、やっぱりナチス絡みのエピソードなんだろうな。

 ちなみに6作目の "If the Dead Rise Not" は1934年の章と1954年の章で構成され、7作目 "Field Grey" も1954年と過去のエピソードが交錯するが、ここで時間の針を進めるのをやめたのか8作目 "Prague Fatale" は1941年に遡ってプラハで起こった事件をグンターが解く話になる。ラインハルト・ハイドリヒも登場する模様。9作目 "A Man Without Breath" は1943年のエピソード、あらすじにSmolensk(スモレンスク)云々とあるところを見るに、いわゆる「カティンの森事件」を題材にしているんだろうか。個人的には8作目と9作目がすごく読みたいので、この調子でどんどんグンターシリーズの翻訳が進んでいきますように……と願っています。

Navel10周年を記念して新ブランド 『Navel honeybell』設立。詳細は11/30発売の電撃姫2014年1月号で公開(家宝は二次元)

 Navelが10周年……だと……? ぶっちゃけ俺翼が出るまではあまり注目してなかった(チェックしつつも俺翼以前のソフトは買っていなかった)ブランドなので感慨深さはさしてないが、10年という数字に気が遠くなる。というか来年の1月で俺翼発売から5年って事実を悟って昏倒しかけた。そんなに経っていたのか……まぁ、それ散るから俺翼まで6年半掛かったことを考えると全然大したことはない、うん、たぶん。しかし来年の6月でそれ散る発売から12年、ふたたび午年の夏が巡ってくることに気づいて卒倒しかけた。秋桜とか君望にはちゃんと「ひと昔前のエロゲー」という認識があるけど、それ散るに関しては不思議と「そこまで昔のソフトではない」って印象があるんだよな……でも、「若いエロゲーマーにとってのそれ散る」って、当方が「若いエロゲーマー」だった頃の感覚に直すと「ランスやドラゴンナイト並みに古いゲーム」ってことになっちゃう。なんだか信じられない気分だ。

 ついでに書いておくと、2014年はFate10周年の年であり、更に言うと正田崇や瀬戸なんとかさんもデビュー10周年に当たります。なんだかんだでみんな生き残ることは生き残ってるな。ちなみに虚淵玄は『白貌の伝道師』を年末に出したくらいであまり目立った活動のない時期だった。

HJ文庫 2014年01月(12/28)の新刊予定(ラノまと)

 『リア王!』、なかなか3巻が出なくて気を揉んでいたところ、作者が新シリーズ開始……恐れていた「2巻で打ち切り」という事態が来てしまったか。『リア王!』のストーリーを要約すると「ある日妹の作った『リア充チェックシート』をやってみたところ、なんと驚きの0点。衝撃を受けた主人公は『俺はリア充に……いや、リア充すらも超越したリア王になる!』と宣言し、王には優秀な側近が必要だからと、三国志に倣ってまず『五虎将』を召集せんと画策する」ってなもので、平たく言うと仲間探しのライトノベルです。主人公が無駄に尊大な自信家で、読み始めた当初はちょっとウザったく感じられたものの、進むにつれ「あっ、こいつ結構イイ奴じゃん」と見直していった。側近たち(美少女ばかり)とのじゃれ合いが微笑ましくて好きだっただけに、「2冊で打ち切りなんてあんまりだよ」と嘆く気持ちを拭い去ることができない。五虎将のうちまだ3人しか揃ってなかったのに……「5人集まったらそこで終了しそうだな、このシリーズ」と考えていたが、まさか5人揃わないうちに未完となってしまうだなんて。よっぽど売れてなかったんだろうか……世知辛い。

・内堀優一の『グラウスタンディア皇国物語1』読んだ。

 『悪に堕ちたら美少女まみれで大勝利!!』とか、見ていて頭痛がしてくるようなタイトルも珍しくないHJ文庫において逆に目を引く王道直球路線の題名を付けた新シリーズ。作者名(内堀優一)でピンと来る人はあまりいないかもしれないが、デビューして既に3年半、本書で10冊目のライトノベルという、そろそろ新人から中堅に移行しそうなポジションに佇んでいる作家です。HJにしては硬派なタイトルが話題となったのか、シリーズ開始からまだ1ヶ月程度なのに早くも売上好調とのこと。『ミスマルカ興国物語』といい、国家間レベルの壮大なストーリーを想起させる作品が求められる、そんな時代が訪れつつあるのかもしれない。あと話のツマとして持ち出した悪堕ちこと『悪に堕ちたら美少女まみれで大勝利!!』、タイトルはさておき中身は面白いですよ。面白いけど、何度見てもタイトルには頭痛が治まらない。

 ええと、話を戻しまして『グラウスタンディア皇国物語』。帯は「超王道カタルシスで刻むファンタジー戦記」と謳っており、出版社も「戦記モノ」として売り出したいみたいなんですが、ガッツリした戦記ファンタジーを期待して読むと正直ガッカリする人続出かもしれません。まず、全体的に文章が軽い。ミスマルカほどではないにしろ、肩の力が抜けたような文章で、あれこれ言い募る皇女に向かって「そーですね」「そーですね」といいとものアレみたいな投げやりの受け答えをする、コミカルなのかパロディなのか判断に迷う箇所まであったりする。「勇猛にして華麗、気宇壮大な戦争譚!」と雄々しく美々しいノリを望めばションボリでしょう。それに、舞台となるネイレシア大陸には神とか精霊とか魔法とかが存在する中世ファンタジーっぽい世界なんですが、「どの程度ファンタジーなのか」が読んでいていまひとつハッキリしない。たとえば魔法は実在するけど、少なくともグラウスタンディア皇国には「魔術師」とかいった職業はないようだし、軍も「魔術兵」なんかを抱えたりはしていない。未知のテクノロジーといった扱いで、『アルスラーン戦記』の妖術並みに実態がハッキリしていないくせして、主人公があっさり使ってしまう。また、ネイレシア大陸で争い合う国々はそれぞれ別の宗教、別の神を奉じており、「確実な姿形を持った神々」というよりは「信仰対象としての概念」との印象を抱かせるけど、主人公は「山神様」なる存在とこれまたあっさり言葉を交わしている。「この世界は神々が支配している」「しかし神々は何もできない」という、山神様との思わせぶりな会話についての詳しい解説は1巻の時点だと入らない。現時点では「文章軽めの戦記っぽいファンタジー」であり、戦記として盛り上がれるかどうかは今後次第といったところ。まだガチ勢にはオススメできない。

 しかし、反面で「あまり肩が凝らないライトなファンタジー小説を読みたい」という人にはうってつけ。軍師でありながら双剣使い、おまけに魔法まで繰り出せるというチートな性能を有した主人公が「5年前の大きな戦役を終結させた」実績から厚遇され、振りかかる危難を柳に風とばかりに受け流す。「こいつなら何とかしてくれる」という巨大な安心感があるぶん、ドキドキハラハラはしないが、寛いで「新たな戦乱の予感に震える大陸」のムードに浸れる。なんでも各国に伝わるすべての神話において「ネイレシア大陸を統一すれば、神々が荒ぶる外海を鎮めてくれる。人々は『大陸の外』を目指せるようになる」といった趣旨の一節が盛り込まれているそうで、絶えず大陸の平和が脅かされ戦乱の種火が消えぬのはこのためだという。ネイレシアとは「越えられない外海」に囲まれ孤立した閉鎖大陸であり、人々は外海の向こうにあるはずの「新大陸」に救いを求めている。まるでその先に広がっているのが極楽浄土だとでも言うかのように……「人気がなくて打ち切り」「作者が書けなくなって中断」みたいなことにならないと仮定したうえで考えると、恐らくこのシリーズは「大陸の統一」が差し当たっての目標になっているのでしょう。今のペースで進めば10巻〜20巻くらいで統一まで進められるかも。そしてその後の、外海の向こう側を描く「新大陸編」が始まる可能性もゼロじゃない。ワクワクするではないか。

 ただ、このシリーズはあくまで「歴史書には紡がれぬ、主人公と皇女ふたりの真実の姿を語り残すために綴られた書物」という体裁になっており、主人公の子や孫に世代交代するようなドデカいスケールの物語にはならないはずだ。あくまで一代限りの冒険譚に終始するのではないかと思われる。主人公が複数の女性に好意を抱かれている、という点では「ハーレム」と言えなくもないが、イラストに関しては下着姿や半裸、全裸といったサービスカットが驚きのゼロ枚! しかも後半の絵はほとんど男ばかり! 「これホントにHJか?」と目を疑いたくなる。本格的な戦記モノを求めて手を伸ばせばしょっぱい気持ちに陥るでしょうが、「戦記っぽい話で充分」という人には安心して推せる。肩の力を抜いてページをめくろう。これは戦記である以上にネイレシアという架空の大陸をどう調理してやろうかと包丁片手に俎板の上で構想を転がしている、野心に満ちたレシピの1冊目なのだ。

・拍手レス。

 しばらく更新してなかったと思いますが、再開されたようですね
 途中送信してしまいました。私はかなり前に沃野を読んでいたものです。素晴らしい作品だったのを今でも覚えています。特に、心が花として見えるのがよかった。幼馴染の子が感情を爆発させたときの、赤い花の化け物の場面は鳥肌が立つほど素晴らしいものでした。終わり方もすっきりしていてよかったです。突然ですが、小説はもう書かれないんですか。2chなどではなく、小説投稿サイトがあります。すばらしい嫉妬を書かれる方は少ないので、焼津さんの新しい作品が読めたらうれしいです。

 「沃野」とはまた懐かしい……基本的に書くより読む方が好きなので、よほど「書きたい」という気持ちを刺激する題材が現れないかぎり今後創作に手を染めることはないかなぁ、と思います。


2013-11-19.

【速報】『ご注文はうさぎですか?』TVアニメ化キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!(ひまねっと)

 これは来ると思っていた。絵が綺麗で女の子が可愛い、ストロングスタイルの萌え4コマ漫画です。おじいちゃんがアレだったりとか、一部謎の設定がありますけど、基本的にキャラを愛でてウットリするうちに時間の流れを忘れてしまうタイプの作品。ただ、この宝刀を抜いてしまうときらら系はもうこれといったタマがなくなる心配が……残念お嬢様が可愛い『彼氏ってどこに行ったら買えますの!?』や食事シーンが美味しそうな『幸腹グラフィティ』、ゆるくて楽しい部活モノの『LSD〜ろんぐすろーでぃすたんす〜』、このへんは個人的に注目しているけど「アニメ化までイケるか?」という目で見ればちょっと弱い。『すいまさんといっしょ』は将来的に伸びる可能性もあるけどまだ単行本出たばっかりだしなー。『総合タワーリシチ』は「“つぼみ”消滅に伴い強制終了」という事態さえなければアニメ化してブレイクするのも夢ではないと思っていたが、完結巻が発売された今となっては夢のまた夢。ネタが濃密な『しかくいシカク』はちょっとアニメに向かないか。逆に『はるみねーしょん』はあっさりアニメ化できそうだ、鷹の爪みたいな5分枠のFlashアニメになりそうだけど……。

『人生』アニメ化決定(ひまねっと)

 待ち侘びたぜ。スレタイだけ読むと「?」でしょうが、要するに人生相談をテーマにした川岸殴魚のライトノベル『人生』がこの度アニメ化される、ってことです。川岸殴魚――それは『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』の作者、渡航(わたりわたる)が嫉妬した才能。たまに勘違いされますが、渡航は『やはり俺の〜』が初シリーズというわけではない。アレの1巻は渡航にとって5冊目の著書に当たります。デビュー作は『あやかしがたり』という時代伝奇ライトノベル、これで第3回小学館ライトノベル大賞「ガガガ大賞」を受賞しました。対する川岸殴魚は『やむなく覚醒!!邪神大沼』(応募時のタイトルは単に『邪神大沼』)で第3回小学館ライトノベル大賞「審査員特別賞」を受賞してデビュー。つまり、このふたり同期なんです。小学館ライトノベル大賞には4つのランクがあり、上から「ガガガ大賞」「ガガガ賞」「優秀賞」「審査員特別賞」という順番になっています。渡航が獲ったのは「ガガガ大賞」だから最高ランク、賞金200万円だ。川岸殴魚の掴んだ「審査員特別賞」は一番下で、賞金も30万円。6倍以上の格差である。ちなみにこの時のゲスト審査員(ガガガの新人賞は第3回以降、毎年入れ替わり形式で各界から有名人を臨時審査員として呼ぶ制度になっている。たとえば現在審査中の第8回はアニメ監督として知られる新房昭之が担当)は田中ロミオでした。

 「ロミオが推した男」として世に出た川岸殴魚はたちまちのうちに話題となり、『邪神大沼』自体はそこまでベストセラーにならなかったものの、「知る人ぞ知る作品」的なポジションに収まっていく。それに比べて『あやかしがたり』は売れなかったし話題にもならなかった。作者自身がジョークにするほど惨憺たる売上で、全7巻くらいの構想を全4巻に縮めるしかなく……本来なら4巻も出せないほどヒドい数字だったらしいが、「大賞作品が打ち切りでは格好がつかないから」と面子重視の温情措置があったおかげで最終巻まで漕ぎ着けることができたという。邪神大沼の方はなんだかんだで8巻も続いた。何かの集いがあるたび、渡航は「第3回小学館ライトノベル大賞の大賞受賞者です」と自己紹介して「ああ、邪神大沼の……」と返される屈辱を味わったそうです。苦杯を浴び、嫉妬しながらも、新刊が出れば「やっぱり邪神大沼は面白え」と認めざるをえなかった渡航の胸中は如何ばかりか。心機一転してスタートさせた俺ガイルがブレイクし、アニメ化やこのラノ作品部門1位(あと男性キャラ部門の1位が比企谷八幡)を達成して無事に「大賞作家らしさ」をアピールすることのできた渡航、今や名実ともにガガガの新たな看板作家となりつつある彼がもっとも意識した「同期のライバル」こそ川岸殴魚なのです。本を売るためなら土下座することも厭わないその気迫と執念が遂に実った。ガガガにまた新しい看板作家が生まれるのかもしれない。「レーベルの盛衰は新人に懸かっている」「新人には頑張ってレーベルの柱になっていただきたい」という話題で、「我らが殴魚たんがいるだろ」「渡航さんがおるやろ」と軽口を叩き合っていたガガガファンたちが白目を剥いて喜ぶ未来が訪れる日も近い。

 余談だが第3回小学館ライトノベル大賞の受賞者は『今日もオカリナを吹く予定はない』で「優秀賞」を獲った原田源五郎が個人的に好きです。今日もオカリナ〜はシリーズ化を前提にしていなかったのか、2巻から加速度的にグダグダになっていった作品だけど、迸るセンスとヒロイン・井波の可愛さで充分に元が取れた。川岸殴魚が『今日もオカリナを吹く予定はない』のキャラを使って書いたコラボ短編もあるので興味のある方はどうぞ。

・田代裕彦の『魔王殺しと偽りの勇者1』読んだ。

 今は亡き、富士ミスこと「富士見ミステリー文庫」出身の作家・田代裕彦が放つ新刊。出自も影響してか、彼の作品はミステリ色の濃いものが多く、本書も「魔王」云々というくらいだから分類上はファンタジーに当たるけれど、ストーリーからすれば「ミステリである」と断じても構わない一品となっています。要するに、これは形を変えたフーダニット(誰が殺したのか?)物ですよ。

 魔族を率い、人々を恐怖のどん底に叩き落した大魔王タラニスは、アルブリオ建国の王でもある勇者アルフの手によって打ち倒された。しかし、大魔王は今際の際に「我は幾たび斃されようとも、百年に一度蘇る」と言い残す。やがて300年の時が流れ、大魔王タラニスが3度目の復活を遂げた! でも死んだ! 忌まわしき命は断たれるべくして断たれたのである。しかし、誰が……? 「魔王、殺さる」の報こそ流れたものの、それを成し遂げた英雄の名に関しては情報が錯綜していた。ある者は「高潔なる騎士」が斃したと告げ、ある者は「清廉なる乙女」が息の根を止めたと言い、ある者は「老練なる魔術師」が誅したと囁き、ある者は「猛烈なる戦士」がトドメを刺したと説く。決して、その4人が徒党(パーティ)を組んで魔王を殺害したわけではない。「我こそが聖務を果たした勇者である」とめいめいに主張しているのだ。言うなれば、単独犯。食い違う4つの主張に頭を悩まされ、王様でさえ「誰が勇者なのか」判然としない有様だった。困った末、一人の女戦士(イメージとしては「女騎士」に近いけど、「女性は騎士になれない」という設定)エレインへ「英雄探し」の任務を与える。彼女は「真の勇者」を突き止めるべく、王宮から旅立った……魔族側の事情に通じている、「勇者アルフの血を引く魔族」ユーサーをお供に引き連れて。

 騎士、聖女、魔術師、傭兵――「容疑者」は4人。いったい誰が魔王を殺したのか? という、「殺魔王事件」みたいなシチュエーションのミステリアスファンタジー。かどちんの『殺竜事件』を連想する人もいるかもしれないが、あっちのシリーズに比べると諸設定は地味目である。モノホンの竜とか出てこないし、そもそもこの世界ってガチで魔法があるわけないわけどっちなの? と首を傾げたくなります。「魔族」と呼ばれる連中も、社会構造こそ違うが人間とあまり変わらない暮らしを送っているみたいだし……なぜ「異民族」ではなく「異種族」という扱いを受けているのか、ってのが本書を読むうえでの大きな謎となる。いろいろほのめかしはするものの、そこらへんの謎は1巻だとまだ明かされません。ともあれ、平たく述べると「犯人当て」趣向の小説です。被害者がいて、容疑者がいて、探偵役がいる。ただし殺したのが「魔王」だから、責め詰られる罪科ではなく誉めそやされる手柄になるわけで、「私がやりました」「いいや、俺がやった!」「違う違う、僕が……」とまるで大金の落とし主を名乗り出るが如く次々に言い募ってきやがる。そういう意味では逆趣向と言えるかもしれませんが、基本的にはそれぞれの話を聞いて、「異議あり!」な私見を挟みながらちょっとずつ真相に迫る、至ってオーソドックスな段取りとなっています。「選ばれた勇者は6人、けれど集まったのは7人」という『11人いる!』みたいなシチュの『六花の勇者』や、作者の前作に当たる「5人の婚約者は、原則としてお前を殺したいほど憎んでいる。しかし1人だけお前を深く愛している美少女がいる。さあ、シュラバンルーレットだ! たったひとつのアタリを引け!」な『修羅場な俺と乙女禁猟区』に比べれば、サスペンス要素が足りない作品ではある。既に事件は終わっていて、主人公コンビにも差し迫った危険があるわけじゃなく、切った張ったの大立ち回りもない。そのぶんじっくり落ち着いて読めるんですけれど、もう少し何か緊張感を醸し出す要素あれば良かったのでは……という気がしなくもない。実際、250ページを過ぎたあたりで刺激不足に陥ってフッツリと注意力の糸が切れてしまった。弛緩した気持ちのまま惰性で残りの60ページを読み流した次第である。

 ぶっちゃけ、この巻で「犯人」が誰かは判明しません。4人いる容疑者のうち、2名分の「取調べ=証言集め」を行ったところで終わってしまう。あとの2名については名前が上がるだけで実際の出番はありません。言ってみれば本書は上巻であり、12月に出る予定の続編が下巻に当たる内容。作者もあとがきで「次巻で《大魔王を倒した勇者》が判明します」と断言している。そこで一応の決着は付くけど、更に話が続くかどうかは未確定。恐らく3巻以降に関しては売上次第といったところでしょう。でもこれ、そんなに売れてるって話は聞かないし、微妙なセンだな……来年の1月でデビュー丸10年を迎えるベテラン作家であり、ミステリ系の味付けを得意としてきただけあって文章や構成は堂に入っています。読みやすく、丁寧で、非常に整理されている。反面、派手な要素に欠けるため地味で、「これだ!」と強烈に推せる売りもない。読者が抱くであろう「魔族が魔族っぽくない」という最大の違和感・疑問点も次巻に持ち越しとなってしまうため、これだけ読んでもスッキリしないというのが本音であります。しかし、2巻が読みたいかどうかと聞かれたら、もちろん読みたい。伏線とおぼしき箇所が複数あるので、今から回収される日が楽しみですよ。そして叶うことなら、どうか3巻以降も陽の目を見てほしい。エレインとユーサーのコンビは掛け合いが愉快で面白いから、「魔王殺し」以外の事件や謎にもいろいろ迫ってくれるといい。それこそかどちんの事件シリーズみたいに。あ、そういえば『無傷姫事件』は2014年刊行予定だそうですね。残酷号以来だから5年ぶり?


2013-11-13.

ゲームの裏、没データでワクワクした、ゾッとしたもの挙げてけ(ひまねっと)

 リンク先にも出ているけど、とらハ1の「壁に咲く薔薇」は強烈だった。なのはやDOG DAYSのおかげで今の都築真紀には明るいイメージが定着しているけど、とらハは結構刺激的な要素があるというかキツいバッドエンドが盛り込まれていたりするんですよね。「壁に咲く薔薇」は没シナリオですが、ゲーム本編にも「主人公が銃を突きつけられ、脅しに屈して瀕死のヒロインをレイプする」なんて展開があった。射精した瞬間にヒロインが死亡するのでギリギリ死姦ではない。が、手当てもせずに犯すというのはトドメを刺したも同然の振る舞いであり、未だにトラウマとして脳裏に焼きついている。ソフ倫に「死姦はNG」って規定があるから、それも影響してああいう具合になったんだろうが、つくづく昔のエロゲーはカオスだった。イージーオーの『いつまでも…〜神長さん家の春夏秋冬〜』は四姉妹をメインヒロインとするアットホームで爽やかなハートウォーミング青春ストーリー……に見せかけてヒロインほぼすべてが主人公以外と性交するカオスの極みなソフトだった。エンディングの直前に「気になる相手」を手動で打ち込むことによって結末が変わるシステムになっており、うまく行けば本当にそれで終わりですけど、フラグが立っていない状態でクリアしようとするとヒロインが電車に轢かれて死亡したり、男の名前を入れるとホモエンドに突入したりと、今やったら盛大に叩かれそうな無軌道ぶり。

 話を戻すと、没シナリオで思い出されるのはニトロプラスの『塵骸魔京』ですね。あれは3つのルートに分岐するゲームなんですが、割と早いタイミングで分岐してしまうせいかシナリオの重複が少なく、一つ一つのルートが長い構成になっていた。そのため制作期間が膨らみ、当初予定されていたルートをいくつか削るハメになったと聞きます。噂では6つのルートが予定されていて、うち半数の3つは削らざるをえなくなったらしい。削られたのは牧本美佐絵ルートと九門恵(主人公の妹)ルート、そして奇綿津見玄比賣命(わだつみの民の女王)ルート。牧本美佐絵ルートは小説版の『塵骸魔京〜ファンタスティカ・オブ・ナイン〜』および『塵骸魔京〜ライダーズ・オブ・ダークネス〜』で消化されたが、妹と女王に関しては一切補完されていない。そもそも女王の方は「奇綿津見玄比賣命」という名前さえ本編では触れられず、単に「スタッフロールに載っているだけ」であった。妹の方はシナリオ解析すると没になったテキストの一部が見つかるそうです。主人公である九門克綺に「心臓がない」のは妹に「喰われた」からだ――と示唆する内容で、本編の謎を解くうえでかなり重要なルートになるはずだった雰囲気なのだが……世の中にはルートどころかソフトそのものが没になってお蔵入りしてしまうケースもあるのだから、ゲーム制作ってのもつくづく大変だなぁ、としみじみ思います。

【画像】ミクダヨーさんの圧倒的な存在感 これは立ち止まってしまうわ…(ひまねっと)

 明らかに「出逢い」ではなく「出遭い」。街中でクマに遭遇してしまったかのようなインパクトを感じる。ミクダヨーの威圧感はマジ異常なり。

むらさきゆきや「最後の1Pまで、依の年齢は一桁のままです」(ラノまと)

 ならばよし。

・鷹山誠一の『百錬の覇王と聖約の戦乙女(1〜2)』読んだ。

 まだ始まったばかりのシリーズながら速攻で増刷を重ね、早くもHJ文庫の新たな代表作となりつつある「侍らせ系」ライトノベル。表紙の構図が似ているせいで『リア王!』と混同していた時期もあった。『リア王!』が面白かったので、なんとなく流れでこっちにも手を出したわけです。正直、あらすじを読んだ時点ではあまり惹かれるものがなかった。平凡な少年が異世界に迷い込み、そこで現代の知識を駆使して成り上がって、複数の美少女を侍らせつつ連戦連勝を重ねていく……という、強烈に既知感がデジャヴるような代物だったからである。最近のラノベって「現代から異世界に召喚される、あるいは転生する」ネタ多すぎ。「飽きたわー、俺もうこういうの山ほど読んで超飽きたわー」とミサワっぽい素振りをしながら(実際はそんなに飽きてるわけでもない)読み始めました。

 満月の夜に合わせ鏡でご神体の鏡を覗きこむと別の世界に誘われる――そんな伝説のある神社で、スマホのカメラを使ってご神体ごと自撮りしようとした瞬間、はたと「ああ、そういえば、これも一種の合わせ鏡と言えなくもないのか?」と気づいた中学二年生の男子、周防勇斗。が、時既に遅し。怪しげな呪文が辺りに響き渡り、不思議な力の宿る鏡を介して彼は「異世界」へと連れ去られてしまう。そこは「日本」などという国の概念が存在しない、言葉も一切通じない場所。中二の男子が生きていくにはあまりにも苛酷な環境。しかし、いろいろとあった激動の季節を潜り抜け、2年後……現代であれば高校一年生に相当する歳となった勇斗は、数多の部族が覇権を巡って仁義なき争いを繰り広げる異世界「ユグドラシル」で《狼》と呼ばれる部族を率いる長、すなわち「宗主(パトリアーク)」の座にまで昇り詰めていたのであった!

 プロローグ明けたらもうパトリアーク。あっという間に2年が経過していて主人公は英雄と化しており、まさしく気分はポルナレフであった。むしろキングクリムゾンを喰らったブチャラティか。前述した通り、現代の少年少女が異世界に召喚されて(転生して)「現代人の英知」を駆使して活躍するタイプのストーリーは巷間に溢れている。ありふれているのを通り越して、ベッタベタとさえ言っていい。少々胸ヤケがする。けれどそういう物語の大半は「異世界の人々と打ち解けるまで」、つまりこちらのことを怪しみながらもひけらかされる知識や技術に驚いて見直す、「再評価の過程」こそが読み所となっており、「成り上がってから」よりも「成り上がるまで」が重要視される傾向にある。さすがに2年間の出来事をバッサリ省略するのは、「珍しい」というほどではないにしろ大胆な振る舞いだ。メイン級のヒロインも約3名ほど、攻略するまでもなく既に陥落(お)ちている。大胆すぎて少々萎えてしまったきらいがないでもない。「チーレム(チート+ハーレム)すぎてつまらん」と。「こんな奴認めない!」と険しい表情で睨みつけていた戦乙女(ヴァルキュリア)が、トロトロに蕩けて「いつでもこの身命を捧げます!」と完璧洗脳され切ったメス顔で言い放つ、その変貌の経緯こそ読者は(というか当方は)知りたい。プロローグで殺意を滲ませていた娘が、「2年後にはアヘ顔ダブルピースでヨダレ垂らして『んほぉぉぉっ、だいしゅきぃぃぃっ(はぁと)』余裕」といきなり言われてもなぁ……。

 ただ、読んでいるうちにだんだん、「この作者は『成り上がるまで』よりも『成り上がってから』が書きたいんだな」と分かってくるので、豪快すぎるすっ飛ばしぶりも許容できるようにはなっていきます。あとがきによると、百錬の企画は急遽作者がやりたくなったせいでスタートしたらしく、HJの方針とか編集者の指示とかは絡んでいない。そのため、続きが出るかどうかも売上次第であり、1巻の売り行きが判明するまで2巻を執筆する作業に取り掛かれなかったという。こうして2巻が出た以上、一定の結果は出せた(というか将来的にはアニメ化してもおかしくないほどの勢いを叩き出した)わけですが、1巻のみで打ち切られる事態も無論想定していたでしょう。となると悠長に主人公が異世界に馴染むまでの過程なんか懇切丁寧に書いてられない。その場合だと、やや駆け足に進めても1巻のラストで《狼》の宗主に選ばれるまでを描くのが限界だったはずだ。宗主として他部族間との戦争をこなしたり、内政に頭を悩ませたりといった範囲までは筆が及ばない。そう考えると、チート色が強まるデメリットはあるにせよ、「2年飛ばし」は英断だった。細かいことを抜きにして、さっさと作者の書きたいことを書きまくるための素地が出来上がっている。作中で主人公がくどいくらい述べるように「チート」だし、ヒロインの一人が揶揄って言う通りに「ハーレム」だけど、結局のところ英知が備わっているだけで人望が付いてくることはない。どれだけ肚を据えられるかが肝心であり、また主人公を支える背骨(バックボーン)がクッキリと見えているかどうかが重要である。くだくだしい説明をせずにサッと流しているせいで「主人公のすごさ」がやや伝わりにくい部分はあるが、「チーレム」の一言で片付けるには勿体無いポテンシャルを感じる。「周りを防るために勇ましく斗う」――名を体現せんとする少年の、これは大望の物語なのだ。

 星の位置を頼りに「ここは純粋な異世界ではなく『地球上のどこか』である」と看破するなど、「世界の謎」に迫っていく面白さもあります。ユグドラシルを始め、出てくる単語がひたすら北欧神話由来であることを主人公も充分に意識している。「現代」へ戻る手掛かりを探りながら振りかかる火の粉を払い、順調に版図を広げ、ハーレム要員もどんどん増えていく。「安っぽい」「駄菓子のよう」と言われたら言い返せないところもあるが、これはなかなか病みつきになる「安っぽい駄菓子」ですよ。2巻の終わり方からして3巻は過去編なのかな? 打ち切り回避のためとはいえ、2年間丸々端折ってしまったことを作者も気にしているはずだし、そろそろ補完作業に入るのではないかと予想される。ハーレム部分に関しては主人公の身持ちが固すぎ(現代に残してきた幼なじみ一筋)でちょっとつまんないんだけど、戦争パートは簡略でいて中二心をワクワクとさせる仕掛けがキッチリ盛り込まれています。特に2巻のクライマックスは熱かった。敵がちゃんと「強そう」なのがイイ。チート系は主人公サイドが強すぎるせいで危なげなくてハラハラしなかったり、弱い者イジメしているように見えたりするのが難点なんですが、百錬の主人公は現代知識以外だと「肚が据わっている」程度の強みしかなく、作戦立案・指針決定の係で直接戦闘には加わらないんですよね。シャナの初期悠二ポジション。だから「女の陰でバトルの解説」が嫌いな人には薦められないが、「ホントにこれ勝てるのか? ひょっとして負けるんじゃね? 主人公とヒロインが全員捕虜になって奴隷市場行きになる展開もありえへん?」と結構ドキドキさせられる。そういうスリルがちゃんと生まれています。

 まったくもって続きが楽しみなシリーズだ。度合いで言ったら『リア王!』と同じくらい楽しみ。というか『リア王!』、なかなか3巻が出ませんね……ま、まさか打ち切りじゃないよな……? あっちはすっ飛ばしナシで「成り上がる過程」を描いているからちょっと展開が遅いんですよね……今は側近集めの段階だけど、この刊行ペースじゃ側近集めだけで終わりそう。

・拍手レス。

 ラノベの名前は本当に流行りに左右されてますね、俺妹みたいなのも沢山ありますし、むしろ流行りに乗ったから駄目に成ったタイトルもありそうな感じですね…俺ガイルなんかは損してると思いましたし
 俺ガイルは前作との落差がすごすぎてつい買っちゃったな……作者が「僕は売り上げが少ない」「商業的には一度死んだ身」「ぼく、媚とケンカを売るのは得意なんですけど、本を売るのが苦手なので許してください」と自虐するくらい販売不振だった前作とは比べ物にならない売れ行きを考えると、少なくとも「損してる」ってことはないと思います。このラの1位に選ばれてインタビューまで受けてるみたいですし。

 サザエさん時空じゃないので仕方ないと言えば仕方ないのですが、バカテスは巻を追うごとに、肩の力を抜いて気軽に読めるラノベ感が薄れていった気がします。
 バカテスの次はもうちょっとシンプルというかお気楽な路線に進むかな。というか次回作書くんだろうか。ラノベはシリーズ物を一発当てたらそれで業界から去る人も少なくないし……。


2013-11-09.

『スマガ』のNitro The Bestが先月に発売されていたことを今更知って今更買った焼津です、こんぱんは。

 Nitro The Bestは平たく言うと廉価版のことです。スマガが「Nitro The Best vol.6」、つまり第6弾に当たる。これまでに『Phantom INTEGRATION』『沙耶の唄』『斬魔大聖デモンベイン』『CHAOS;HEAD』『STEINS;GATE』と5つのBest盤がリリースされてきました。Best化される基準はイマイチ不明だが、なんであれ通常版の発売から既に5年が経過したので頃合だと判断したのだろう。来年あたりには村正のBest盤が出るかもしれません。

 で、なぜわざわざそんな購入報告をしたのかと申しますと、ニトロやろうぜ!キャンペーンという「期間中にニトロプラスの対象商品を購入すると記念小冊子が付いてくる」キャンペーンが開催中で、スマガのBest盤と一緒にオマケの小冊子をゲットしたわけです。最初はショップ側が入れたチラシ類かと勘違いして危うくゴミ箱に捨てかけた。サイズはDVDのトールケースと同じくらい、20ページ弱の分量に3本の対談が収録されている。目玉は冒頭の「虚淵玄×下倉バイオ」だろうが、残念ながら「まどかマギカとスマガでループ要素が丸被り」の件についてはまったく触れられていなかった。聞いた話ではたまたま被っちゃってお互い頭を抱えたらしいけど、「ループの趣旨が違うし、まあいいか」ってなったらしいですね。ほとんど『君と彼女と彼女の恋。』に関する話題で、あとは虚淵がゲームではなくゲーム以外の分野に進んでいったことへの言及とか。「ゲーム作りをしたかった過去の自分からすると、今の虚淵玄は堕落しているね」なんて言葉がサラリと出ている。だが、虚淵と下倉の対談以上に興味深かったのは鋼屋ジンとニトロくんの対談。『ギルティクラウン ロストクリスマス』が「アニメのパッケージ1巻よりも販売数が多かった」と明かしている。ギルクラのパッケージ(DVDとブルーレイ)1巻の売上はだいたい12800本らしいから、それ以上ってことはPCゲーム的には充分ヒット作でしょう。鋼屋が「え!?『ロストクリスマス』ってそんなに売れたの? もっと少ないかと思ってた(笑)」と驚くのも御愛敬である。売上と言えば、『装甲悪鬼村正』が4年間で累計5万本を超えたそうな。贖罪編も少しずつ進行させているらしい。で、鋼屋と言えばやっぱり気になるのは『クルイザキ』改め『ドグラQ』。まさかスルーするつもりではないよな、とジリジリしながら対談を読み進めていくと「――『ドグラQ』はどんな按配でしょうか?」とストレートな質問が!

「鋼屋:書く気はある(笑)」

 (笑)が不安だけど、まだ凍結とかポシャったとかではないらしい。ガイナの『蒼きウル』みたいに20年経ってから再始動、みたいなのは勘弁な。『蒼きウル』が凍結されたのは当時のガイナの資金繰りが苦しかったことが大きな要因だったらしいので、「資金繰りが苦しい」という話は聞かないニトロならそういう心配もないはずだけど……今頃になって90年代あたりのガイナを題材にした本をいくつか読んでいるんですが、「アニメ制作とゲーム制作の両輪」で動いていた過去のガイナと今のニトロ、この二社が微妙にダブって見えます。あと、対談中に奈良原一鉄の名前がチラッと出てきたけど、彼が現在どうしているかは依然として謎のままである。あまりにも音沙汰がないので退社説すら囁かれている奈良原、その動向が気に掛かるところだ。

劇場版『まどか☆マギカ 叛逆の物語』興収10億円突破!深夜アニメ最速での達成(萌えオタニュース速報)

 もう10億突破か、早いな……深夜アニメの映画化で興収が10億円を超えた作品はこれ以外だとけいおんとあの花しかないので比較検討しにくいが、けいおんが公開から21日目くらいで、あの花が公開から56日目で突破したことを考えると「公開から13日目で到達」というのはかなり早いペースである。ただ、観客動員数で見ると、けいおんは10億突破した時点で77万人超だったのに対し、叛逆は72万人超だから実に5万人もの差がある。つまり叛逆は客単価が高い=コア層が多い。現在までの推移は『映画 けいおん!』を凌駕する勢いながら、恐らく今後は鈍化していくだろうことを考えに含めると、けいおんの最終興収である19億に到達できるかどうかは「十分射程圏内」とはいえやや怪しいところだ。けいおんの劇場版はすごいロングラン作品でしたからね……まあ、たとえ届かなかったとしても「けいおんに並ぶ」ことは間違いない。けいおんも、アニメ化が発表された時点ではあんなにヒットするなんて予想していなかった(発表があった時点で当方は既に原作を読んでいたが、「アニメ化するの早すぎだろ……」と呆れてあまり期待していなかった)けれど、まどかも初期のサイト(蒼樹うめのキャラ原案イラストを掲載、ほむらがなぜか弓を持っていた)を眺めたときは正直「人知れず始まってヒッソリと終わりそうだな」と思ったものでした。「テレビの前の皆様が暖かく幸せな気持ちで一杯になってもらえるよう、精一杯頑張ります!」という虚淵玄の真っ当なメッセージをごく僅かとはいえ信じそうになっていた過去の自分が懐かしい。ホント、今は何が当たるかまったくわからない五里霧中で暗中模索の大誰彼時代だ。

イシイジロウ氏ら第一線で活躍するクリエイターがアドベンチャーゲームを語り尽くす!――「弟切草」「かまいたちの夜」から始まった僕らのアドベンチャーゲーム開発史(前編)(4Gamer_net)

 ニトロプラスのライター・下倉バイオが参加しているとのことで読んだ。「『かまいたちの夜』って実はフラグをあまり使っていない」など、興味深い話題がてんこ盛り。確かに、かまいたちって「ある部屋には鍵が掛かっていて、あらかじめ鍵を拾っていれば扉を開けられるが、なければ探す必要がある(そうしないと先に進めない)」みたいなプレイヤーの行動を制限するフラグってあんまりなかったんですよね。基本的に自由というか、選択肢の許すかぎり好きな行動を取ることができた。けど、自由すぎてどう行動すればいいのか分からず、初回は高確率でバッドエンド行きになる。失敗を繰り返して情報を蓄積していくと、徐々にバッドエンドを自然と回避できるような「行動の指針」が定まってくる……という仕組みでした。つまり、かまいたちの本質はサスペンスがどうこう、トリックがどうこう、フーダニットがどうこうという部分よりも、「徹底的なプレイヤー放任主義」にあったわけだ。

 おそらく,みなさんにも経験があると思うんですけど,アドベンチャーゲームを作ってると,絶対に時間物に行き着くじゃないですか。なぜかというと,「プレイしていて死んで,シーンが戻りました」ってなったとき,“プレイヤーは先のことを知っているのに,劇中の人物は知らない”という状況/矛盾が生まれるからです。アドベンチャーゲームを作っていると,どうしてもこの構造にぶち当たる。

 ゲームは同じソフトを短期間で繰り返し遊ぶ「周回プレー」が基本なので、学習を活かせるループ物(同じ時間やシチュエーションを繰り返す話)やタイムトラベル物(歴史や過去の出来事を改変したり修正したりする話)との親和性が高い。かまいたちのようなサスペンス物でもトライ&エラーの妙味を実感させることは可能だけど、「プレイヤーの感覚とシナリオを一致させる」には時間要素がどうしても外せなくなる。しかし、トライ&エラーの反復はともすれば「結局総当りで試すしかない」とかいった作業ゲーじみた苦痛に堕す可能性も大きく、かと言って作業要素を廃し「ゲームならではのスリリングな面白さ(たとえば制限時間付きの謎解き、あるいは一度決定すると選び直せない限定選択肢)」を盛り込もうすればそっちに気が行って「物語への集中」を阻害することになりかねない。シュタゲがいかに「作業感を減らしつつもゲームとして面白く、且つ物語に集中できるソフトとして成立しているか」を構造的に解説してくれます。実はシュタゲ、まだクリアしてないのでピンと来ないところもありますが、フローチャートを「横並び」と捉えるか「縦並び」と捉えるか、という視点には感心させられた。やっぱり作り手はいろいろなことを考えて制作しているわけですね、って当たり前かそりゃ。

最近のラノベのタイトルの流行wwwwwwwwwwwwwwwwww(暇人\(^o^)/速報)

 2004年にスタートした『とある魔術の禁書目録(インデックス)』が元凶みたいな扱いを受けているけど、こういう「○○の××(カタカナで無茶なルビ)」式タイトルがライトノベルで目立ち出したのって実はここ2、3年くらいなんですよね。2007年に『聖剣の刀鍛冶(ブラックスミス)』とか、2008年に『彼女は戦争妖精(ウォークライ)』とか『放課後の魔術師(メイガス)』とか、それ以前のも探せば見つかるけど「ちょこちょこと点在している」程度でしかなかった。2010年を境に、この手のタイトルが一気に増える。『おれと天使の世界創生(ユグドラシル)』『はぐれ勇者の鬼畜美学(エカテティカ)』『神と奴隷の誕生構文(シンタックス)』『星刻の竜騎士(ドラグナー)』『精霊使いの剣舞(ブレイドダンス)』『白衣の元繰術士と黒銀の枢機都市(ハーモニカ)』『千の魔剣(サウザンド)と盾の乙女(イージス)』……この中で言うとはぐれ勇者、星刻あたりの中ヒットが後続に影響を与えたのかもしれない。

 以降、「表紙にルビが記載されている」「文庫レーベルのみ対象にする」という基準で、戦乙女(ヴァルキュリア)や黙示録(アポカリプス)などの比較的無茶度が低いルビを除けば、電撃だと数秘術師(アルケニスト)青炎剣(アウローラ)放課後の魔法戦争(アフタースクール・ブラックアーツ)蟲ノ荒園(アルマス・ギヴル)背教者(ミトラルカ)、ファンタジアだと冠絶の姫王(エクセルシア)天翔虎(カルーディア)剣使徒(デュエリスト)幻想楽園(ディストピア)女難創世記(ハーレムロード)新世の学園戦区(ネクスト・ヘイヴン)、スニーカーだと契約者(テスタメント)竜魔杖(ドラグケイン)神盟騎士団(アルデバラン)家出猫(ストレイ・キャット)天災姫(レベリオン)、ファミ通だと言想遊戯(ロゴスゲーム)魔紋修復士(ヒエラ・グリフィコス)雷姫(レディ・トール)転生術(カルマ)、MFだと戦姫(ヴァナディース)創楽譜(フルスコア)継承者(サクシード)魔法契約(テスタメント)森羅万象(オムニア)鎧姫(ブリガンディ)救世機(ゼストマーグ)装甲戦姫(ブリュンヒルデ)銃剣姫(ガンソーディア)聖謡譚(ファンタジア)召喚魔王(ヴァシレウス)戦機乙女(ヴァルキュリア)神域封剣(レグナーレ)火薬の儀式(パウダーキス)、GAだと禁呪詠唱(ワールドブレイク)魔術史学(マギストリ)英雄譚(キャバルリィ)神装機竜(バハムート)超越者(トランセンダー)、一迅だと迷宮塔(ラビリントス)天星姫(ツインクル)魔符詠姫(タロットソーサレス)天魔穹(サジタリアス)銀乙女(ユングフラウ)迷宮建造師(メイズメーカー)神なる御手(ヘカトンケイル)闘婚儀(エンゲージ)精霊姫(キーニング)、HJだと絶対領域(パンドラボックス)捕喰作法(バルバクア)精霊操者(エヴォルター)侵奪魔術師(ドメインテイカー)召喚契約(アドヴェント・ゲート)神滅者(ディスビルシャナ)魔戦従姫(サーヴァント)魔神隷従(レメゲトン)一撃無双(ワンターンキル)ってな具合。スーパーダッシュはザッと見た感じではそういうの無かった。ガガガは魔改上書(オーバーライト)くらい? 講ラも結魂者(リンカ)程度か。たまに存在ごと忘れそうになるこのライトノベルがすごい!文庫にも権能者(エクスシア)があった。オーバーラップは創刊して間もないけど、魔札使(マージ)が立派な無茶ルビだ。紅女神騎士団(スカーレット・ナイツ)は微妙なところかな……個人的には外していいと思う。未発売の異能魔導小隊(チートフォース)はちょっと笑ってしまった。ヒーロー文庫は今のところナシ。ざっくりチェックしただけなので漏れはあるだろうが、だいたい2011年に7作、2012年に18作、2013年に37作という分布になった。倍々のペースで増加していってるから、来年は70作くらい出てくるかもしれませんね、というのは冗談だけど「今年になって無茶ルビタイトルが爆発的に増えた」って事実には留意していただきたい。禁書の影響と見るにはいささか遅すぎるのだ。

 結論としては、MFが圧倒的に多い。けどGAの伸びも驚異的だ。5作品すべてがここ1年くらいに出たものばかり(『神託学園の超越者(トランセンダー)』は未発売だが今月の新刊だからもうすぐ出る)。一迅とHJはジワジワと数を増やしていった印象だが他に漏れず今年からペース上がってる感じ。電撃やファンタジア、スニーカー、ファミ通辺りだと「あることはある」もののあまり目立っていませんね。うーん、調べてみるとやっぱり禁書目録(インデックス)の影響というより、MFとHJと一迅が無茶ルビ乱発作戦を仕掛け、GAがそれに全力で釣られていてる――ってような構図がほんのり浮かび上がってきました。らきすたやけいおんのアニメ化で加速した「ひらがな四文字タイトル」、ハルヒのメガブレイクによる「ヒロイン名タイトル」、俺妹やはがないといった大ヒット作品に起因する「文章系タイトル」と違って、この無茶ルビ系タイトルは「傍流から湧き上がったブーム」といった様相が濃い。とある〜が遠因となっている可能性もありますけど、今のところメインストリームにはあまり絡まない流れだと見受けられます。もちろん、ここから大きなヒット作が生まれることで主流へと転じる可能性もありますが……ぶっちゃけ、タイトルのルビって読者のほとんどはさして気にしていない(自然に無視している)と思います。当方も普段「剣舞」は「けんぶ」って読んでいますし、「禁書目録」も「きんしょもくろく」と読むか「インデックス」と読むかは割と気分次第なところがある。今回調べて初めてルビが分かった作品も多い。たぶん、熱心なファン以外はみんな漢字のイメージで漠然とタイトルを記憶しているってレベルですよ。必ずしも一致させているわけではなく、無理に一致させようとしなくてもいい。仮に『ブギーポップは笑わない』が『不気味な泡(ブギーポップ)は笑わない』と表記されても、「若干くどいかな」と感じる程度で大差はないでしょう? まあ、そういうのが短期間で重なりまくってるから、新刊コーナーの平台を眺めると「くどすぎる!」って胃にもたれるんですけどね……。

・拍手レス。

 僕の周りではバカテスを10巻で読むのを辞めちゃったという人が多いですね。伏線は7巻あたりで張ってあったとはいえ、三学年の高城の乱入は僕も読んでて不満に思いました。11巻も読んだのですけど、やっぱり湊かなえの「高校入試」の登場人物である村井祐志みたいに「これだけ教師が揃っているのに、誰一人、生徒のことなど考えていない」「たったの数日。それでその後の一、二年間、いや、人生が決まるんだ。それをあなたたちは分かっているんですか!痴話げんかで揉めてる場合じゃないし、ましてや、いち生徒の高城の個人的提案に乗って、二学年AクラスとFクラスの試召戦争を無効にするなんて絶対に許されることじゃない」と言ってくれるキャラがいてほしかったなぁと。個人的には三角関係にケリを付けて、高城、根本、小山、常夏コンビ、そして学園長の6人にきっちりお灸をすえてほしいです…。
 当方は8巻の途中までですね。その後も買うことは買っているけど、ずっと積んでいます。1巻の非常に濃密なストーリー展開とテンポの良い文章に惹かれて読み出したシリーズですが、進むごとにだんだん密度が薄くなってきて、つまらないわけじゃないけど「急いで読まなくてもいいかな」という気分になってしまった。飽きっぽい性格なので、一度読むのが億劫になっちゃうと再開することが難しい。最終巻は記念の意味も込めて購入するつもりですが、読むのはいつになるだろうか……。

 ジャンプでも時代劇は敬遠されているという話はよく聞いた記憶はある。その過程でるろうに剣心が時代劇と紹介時は違和感を感じた記憶もある。
 少年向けだと新撰組関連でたまに当たる程度ですね……今はドラマ等で時代劇に触れる機会が少ないぶん、少年漫画でやるには厳しいジャンルだと思う。競合相手が少ない点では狙い目だろうけど。

 何のマンガ誌か忘れたけど内臓擬人化マンガがあったような。講談社系の新人賞だったような。ここがネタ元だろうと勝手に思ってました。
 掘骨砕三がこういう漫画描いてそうだな、と妄想したのがキッカケ。


2013-11-06.

・開始前は期待していたけど、何とも言えない感じで始まって何とも言えない形で進んでいった『革命機ヴァルヴレイヴ』。2期スタートまで間が空いたせいもあって正直関心が薄れつつあったものの、第16話の「マリエ解放」がドストライクで胸に突き刺さるものを覚えた焼津です、こんばんは。ニコニコのタグにあった「テッカマンヴレイヴ」や「カミーユ」でだいたいの展開は察せられるであろう。

 弱いんですよ、こういう「記憶がボロボロと崩れていく中で戦う」みたいなエピソード……過去の例だと、ファフナーの甲洋で泣いてしまった。「戦う意味」をリアルタイムで見失いながら足掻き続ける姿に心を掻き毟られる。マリエの記憶喪失云々といった設定は2期目に入って唐突に明かされるので、なんだか急拵えなシチュエーションに見えて仕方ないけれど、こちらのウィークポイントを的確に衝いてくれました。もしこれが劇場版とかのラストになっていたら、涙を堪えられたかどうか自信が持てません。ヴヴヴ、ピンポイントで見ればいくつか良い要素が散見されるけど、全体枠や話の流れがちょっと物足りない。もう少し構成が緊密だったら良かったのになぁ。未だにうまくピントを絞れていない印象で残念だ。

大和田秀樹の『ガンダムを創った男たち(上・下)』、2014年1月22日発売予定

 これって、つまり『ガンダム創世』の総集編? 『ガンダム創世』というのは『機動戦士ガンダムさん』の5巻から9巻にかけて小分けに収録された連作シリーズです。富野ヨシユキを主人公に、『機動戦士ガンダム』のアニメ企画が始まるまで・放送開始・ガンプラブーム・劇場化に至る経緯、といったイベントの数々をかなりの脚色(たぶん)とともに描く。安彦ヨシカズが放送の途中で倒れたことや板野イチローが作画に独自のこだわりをみせたことなど、有名エピソードが盛り沢山、あくまで「事実を元にしたフィクション」だけどドキュメンタリィの一種としても楽しめる。内容は熱い。単純に熱い。ただただ熱い。「いずれ『ガンダム創世』のパートだけを選り抜いた単行本が出るだろう」と睨んでいましたが、予想は的中したようだ。断固としてオススメであり、当方も改めて買い直す気満々である。この調子でガンガン『ヤマトを創った男たち』『マクロスを創った男たち』『エヴァを創った男たち』とシリーズ化していってくれへんかなー。『まどかを創った男たち』で虚淵御大がマフィア並みの凶相になっている様子がありありと思い浮かぶ。

富士見が【新時代小説文庫】ってレーベル始めるらしいね(ラノまと)

 時代小説もあれで競争が激しいジャンルだから、生き残れるかどうか心配だ。「時代」が付くレーベルは既に4つある(コスミック時代文庫、二見時代小説文庫、幻冬舎時代小説文庫、ハルキ文庫の時代小説文庫)し、後発は認知されることすら難しいだろう。まずは有名作家を連れてくるところから始めないとな。『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』でブレイクした渡航はどうだろう。あの人のデビュー作は『あやかしがたり』という江戸時代を舞台にした伝奇小説だった。ひどく売上が乏しかったとかで、本人にとっては苦い記憶もあるそうですけれど……あとは『幕末魔法士』の田名部宗司とか、市川丈夫のようにかたやま和華、時海結以、昆飛雄あたりの富士見デビュー組を呼び戻すとか……17年近く新刊を出していない(受賞作1冊こっきりだった)昆飛雄はさすがにもう無理か。『杖術師夢幻帳』は面白かったんだけどな。

 うーん、柳蒼二郎の“非の王”4部作らへんを文庫化してくれるなら大喜びで応援に回るが、ひとまずは様子見を決め込むことにする。

ガガガ文庫に連れてきてほしい作家(ラノまと)

 最近どうしているかよくわからないけど、高瀬彼方あたりを引っ張ってきてほしい。ガガガならあのちょっと重い作風もイケるはず。あとはやっぱり最近何をしているかよくわからない桜坂洋らへんも引き込んで欲しいところ。集英社と小学館は同系列(一ツ橋グループ)だし、ハナシをつけられないこともないはず。まあ、それよりもまずは生え抜きの作家をしっかり育てていってほしいが……『人形遣い』の賽目和七の新作、来年は出るといいなぁ。

バカテスってどんな売れ方したんだろ? 覚えてる人いる?(ラノまと)

 具体的な数字は知らないけど、売上が急激に伸びたのは3.5巻あたりだったように記憶している。表紙が秀吉で、「性別:秀吉」ネタと絡めて話題になったはず。3巻が出た頃は「ちょっとプッシュされ始めた」という程度だったのに、3.5巻が発売される頃には各地で大きく扱われるようになっていました。当時の日記(2008年2月5日付)にも「バカテスの最新刊が地殻変動起こしたのかというくらい売れまくっている」「ここ十日間に発売されたライトノベルの中でほぼトップに位置する売れ行き」と書いてある。3巻がちょうど気になる終わり方をしたところだったせいもあり、「なかなか4巻が出ねぇ!」とやきもきしていた時期ですね。作者も「まず間違いなく皆様の応援がなければ途中で打ち切られていたことでしょう」とあとがきで語っていたし、結構際どいタイミングでのブレイクだった。そんなバカテスも今月末に出る12巻で完結です。番外編とかでまだしばらく続くかもしれませんが、本編はもうこれで終わりでしょう。1巻は2007年1月刊行だから、かれこれ約7年。読み始めた当初は予想だにしなかったくらいの長期シリーズとなりました。しかし、レーベル最大の看板作品にまで育ったバカテスを下ろすとなると、ファミ通文庫は果たして今後やっていけるのかどうか心配になるな……ここはノベライズの売上が堅調らしいから、すぐにどうこうってことはないだろうれど、「バカテスと文学少女を出していた黄金時代」がイイ意味で懐かしくなるような新しい看板作品が現れることを願う。

浅野いにおが「完璧」と絶賛!まどか☆マギカの魅力とは(コミックナタリー)

 まさか浅野いにおが語るとは……アニメはほとんど観ないが『けいおん!』は好き、というのは『ソラニン』もあるし何となく理解できる気がするけど、『おやすみプンプン』の作者が蒼樹うめや虚淵玄の名前を上げて淡々と解説している様子は少し異次元めいた感覚がある。「浅野いにおだったらまどかやほむらよりもさやかが好きだろうな」とボンヤリ思いながら読み進めていたら本当に「実はさやかがキャラクターとして一番いいなと思っていて……」「一番人間らしいというか、弱い部分があるっていうのが好きなんですよね(笑)」と言っていて笑ってしまった。このインタビューは叛逆公開前に収録されたみたいなので、新編への反応も気になるところだ。

第86回アカデミー賞長編アニメーション部門の1次候補に「まどか☆マギカ 叛逆の物語」「風立ちぬ」「ももへの手紙」がエントリー(萌えオタニュース速報)

 「ノミネート」ではなく「エントリー」なので注意。単に「応募があった」というだけの状態です。出品してレギュレーションさえ満たせば、ノミネート(最終候補)の選考対象として扱われるんだとか。スクウェアを傾けたあの映画版『ファイナルファンタジー』すら一応「アカデミー賞エントリー作品(ノミネートはしなかった)」です。Wikipediaの記述を引用しますと、アカデミー賞の対象範囲となる基準は「ロサンゼルス郡内の映画館で連続7日以上の期間、有料で公開された40分以上の長さの作品で、劇場公開以前にテレビ放送、ネット配信、ビデオ発売などで公開されている作品を除く」ってなもので、更に長編アニメ部門は「主要キャラクターがアニメーションで描かれていること」「上映時間の75%以上をアニメーションが占めること」も条件に加わってくる。前編・後編は総集編だからかこのレギュレーションをクリアできる見込みがなかったらしいけど、新編は完全新作だったこともあって応募に踏み切ったんじゃないだろうか。本当にそれだけの話であり、ノミネート作品を選考する(エントリーした十数本のアニメ映画の中から3〜5本の最終候補作を選ぶ)段階に入ったら十中八九速攻で弾かれるだろうと予想します。日本で過去アカデミー賞の長編アニメ部門を獲ったのは『千と千尋の神隠し』だけ、ノミネートまで行ったのは千尋以外だと『ハウルの動く城』くらいで、あとは全部エントリー止まりの作品ぱかり。割と最近に出来た部門(2001年の第74回から設立)なので歴史は浅いが、受賞作一覧を眺めても、シュレックとかファインディング・ニモとかMr.インクレディブルとかカールじいさんの空飛ぶ家とかトイ・ストーリー3とか、「大人も子供も楽しめる」っていうかハッキリと子供をターゲットにした作品が選ばれる傾向にあります。「前後編を観てないとストーリーが分かりづらい」という点を措いてなお、叛逆がノミネートする可能性は薄い。『風立ちぬ』も子供向けとは言い難いので厳しいでしょう。順当に考えるなら今回はモンスターズ・ユニバーシティと怪盗グルーの一騎打ちになるんじゃないかしら。アメリカはもう完全にCGアニメへ移行しちゃってそれがスタンダードになってきてるし、日本のアニメが食い込むのはかなり難しいでしょうね。

・拍手レス。

 臓器たん書いてた人、あなた時代に掠ってますよ>単眼萌え漫画出現に際して
 「臓器たん」のスピンオフとして「人工臓器たん」を妄想したがただのロボ娘だった。

 木多康昭は週刊ジャンプで連載していた「幕張」で「こんなの描いてられっか!!」と作品自体を丸投げして終わらせたり、「泣くようぐいす」で後半のエピソードをほとんど夢オチで終わらせたりと、かなり破天荒な人ですからね。正直、喧嘩商売を一部・完としたのは、幕張と同じように「もうこんなの描いてられるか!」と作品を投げて、漫画家業を辞めるつもりでいたんじゃないかと感じます。編集部の方々には「頼むから手綱はしっかりと握ってくれ!」と言いたい。幕張みたいに「作者が描くのがめんどくさくなって、主人公はガモウひろしだったなんていうしょうもないオチで無理やり連載終了となった」なんていう悲しい終わり方を読むのはもう勘弁です。あの最終回を見た時、「夢中で読んでた漫画がこんな終わり方をするなんて…」と、心に初めて風穴が空きましたから……。
 『幕張』や『泣くようぐいす』は前半こそ面白かったものの、作者のやる気がなくなっていくのが明瞭にわかって途中で読むのやめちゃったな。『喧嘩商売』も再開と言いつつくだらないオチを付けて即座に終わらせてしまうのではないか、と恐れているファンも多いようだけど、今度こそ木多康昭が頑張ると信じたい。これでダメだったら本当にどうしようもない。

 まどか☆マギカ叛逆の物語、ようやく見れました。一言で語るなら『この愛に殉ずる』ですかね。アニメ本編でまどかが概念化した結末にモヤッとしてた自分的には、歪んだ道でだと分かりつつもほむらの愛を応援したくなる。斎藤千和さんの演技もゾクゾクして素晴らしかった。もう一回は見に行きたいです。そして、さやかが完全にまどかの軍勢変生になってたでござる。
 まるきり円環の爪牙になってましたね。まどかが「涙を流して、この円環の理(ロゴス・マドカ)を称えるがいい!」な性格だったら、ほむらは尻尾振ってレギオンに加わってただろうな……彼女はDiesのキャラで言うとメルクリウスにも蓮にも螢にもトリファにも相当しうるので、Dies Magicaネタはどの路線で妄想するか毎度迷う。新編観た後だと歪んだ聖道を歩み続ける暁美トリファがしっくり来るか。「たとえ何者であろうとも、この歩み止めることなど許さない」。「Lohengrin」も似合う。

 いやー、虚淵の本領発揮でしたね、まどマギ新編。賛否両論なのは間違いないでしょうが、私と共に鑑賞した友人は圧倒的に賛派。エヴァQでは否でしたが、あれとの最大の違いは、話の練込と壊し方の見事さ。友人は日本刀で見事に真っ二つにされた気分で爽快感すらあったとのこと。
 新編は解釈の差が出るくらいで、前提となる情報はだいたい出揃ってますからね。1回目では消化し切れなかったけど、3回観てやっと「自分にとっては大傑作」だと確信が持てました。

 まどマギのレビュー凄いっすね。ほむほむの病みっぷりが見てらんねえと言いつつガン見しました!さやかがかっこよかっただけでもう自分は満足なんや……。
 「こんなにカッコいいさやかはさやかじゃねぇよ!」と失礼なことを考えながら観たけど、最終的にやっぱりさやかはさやかのポジションだな、と納得・安心した。


2013-11-01.

木多康昭「喧嘩商売」12月より連載再開!新作読切も増刊に(コミックナタリー)

 やっと再開か……2010年9月以来というのだから、実に3年以上も掛かったことになる。『喧嘩商売』は2005年に始まった格闘漫画で、喧嘩に勝つためならどんなに汚い方法でも構わず実行する高校生・佐藤十兵衛を主人公に、ギャグとバイオレンスが混沌と渦巻く迂回路まみれのストーリーを展開していく。始めの方は「あれ? これって何の漫画だったっけ?」とジャンルを忘れそうになるハチャメチャぶりですが、途中からバトルに次ぐバトルで息が詰まるほどのヒートアップを見せる。単行本24巻まで出したところで「第一部・完」となってしまい、ファンはずっとお預けを喰らっていました。それもですね、メチャクチャ強そうな連中を一箇所に集めて「誰が最強なのか」を決定するトーナメントがもうすぐ開かれる、というところで終わってたんですよ、確か。読んだのは2年以上も前だからうろ覚えになってきているが、出場権のなかった十兵衛が参加者の一人を闇討ちして枠を奪い取ろうとするところで幕切れとなっていたはず。「ここからが面白いんだろうに!」と大いに嘆いたものです。今まで連載が止まっていたのはスランプだったのか単なる怠業だったのかよくわかりませんが、どうにかこの勢いで完結まで漕ぎ付けてほしいものです。せめてトーナメント戦だけでも終わらせてほしい。巻数的にも内容的にも木多康昭の代表作であり、「最高傑作」と謳われても可笑しくないクオリティなのだから、中途半端なところで放り出す事態だけは勘弁してくれ。

魔法少女まどか☆マギカ : 劇場版アニメ第3弾が土日2日間でトップ 興収4億突破(MANTANWEB)

 4億……? 数字が大きくて把握し辛いが、『映画 けいおん!』(3億超)よりも上です。まどかマギカの方は午前0時からの最速上映が多かったのでその影響もあるんでしょうが、にしてもまさか『けいおん!』を超えるとは。あれの劇場版が公開されたのは2011年、つまりまどかマギカのTV版が放送された年でもあるんですよね。うちの地元劇場でも『映画 けいおん!』はヒットしていて年の暮れが近い館内は大層混み合っていた。その頃にはもう「まどかマギカの劇場版をやる」という情報は流れていたけど、「さすがにこんなに混雑することはないだろうな……」とか思っていました。というより地元で公開されるのかどうかすら危ぶんでいた。当時を振り返ると、何だか信じられない気持ちになる。4億円というのは、深夜発のアニメ映画としては過去最高の土日2日間興収に当たるらしい。内容が相当アグレッシブなので今後が伸びるかどうかは不透明だけど、興行的には好調と見て差し支えないでしょう。「映画がヒットした」という事実はファンにとって嬉しくもあるが、商業的に大成功を収めたがために止め処を失ってしまう(ダラダラと続編やスピンオフが制作され続けてしまう)のではないかという一抹の不安もあります。話にまだ続ける余地がありますけど、続けた方がいいのかどうかは……うーん。個人的にここで終わった方がイイって気がします。でも続編が来たら来たでいそいそと観に行っちゃうだろうな。ちなみに、アニメ映画の土日2日間興収はエヴァQが11億超風立ちぬが9億超。このへんはもはや次元が違いますね。

【画像あり】「ディードリット&セイバー」ロードス島戦記とFateが夢のコラボ!(ひまねっと)

 ディードリットには見えないけど、これはこれで。

・漫画:楠本哲、監修:玄秀盛の『恨まれ屋(1〜4)』読んだ。

 「恨み」に取り憑かれた人間は… 恨む側も恨まれる側も同じレベルでクズなんだよっ……!!

 誰かに恨まれている、あるいはまだ恨まれていないけど現在抱えている問題を解決しようと行動すれば恨みを買うことになりそう、もしくは自分が恨みの感情に囚われている……という「恨み」にまつわるトラブルで悩んでいる依頼人に代わって「恨み」を引き受ける「恨まれ屋」、一種のトラブルシューターをメインに据えたお仕事マンガです。完全な闇稼業ではないが、一部裏社会に繋がっているところもある。主人公の桐谷純(23)は「お客様相談室(クレーム対応係)」に配属された会社員だったが、上司の心ない発言に怒って殴り飛ばしたためクビになり、無職の身で街を彷徨っている最中に怪しい男からスカウトされる。妖気漂う導き手によってアウトサイドめいた場所に誘われる、というストーリー形式は『シマウマ』『東京闇虫』などに通ずるものがあります。「恨み(怨み)」を主眼としている点では『怨み屋本舗』と近似しているが、こちらはあくまで「恨まれ屋」であり、「恨みを晴らす」ことよりも「恨みを買う」ことに重きを置いています。必殺仕事人っぽいストレートな復讐代行はほとんど描かれない。もっと詳しく説明すれば、恨みの矛先を逸らしたり、恨みの念そのものを有耶無耶にしたり、恨みを受け容れさせたりと、「恨み」そのものに向き合って対処するマンガなんです。恨みという感情を全肯定することもなく全否定することもなく、ただ理解を示し、尊重して敬う。その結果として恨みが晴れたり消えたりなし崩しになったりするわけだ。極端な例だと、少年殺人犯への「恨み」を引き受けるために「自分が真犯人だ」と罪を被るような真似までする。そこまで行かなくても、例えばAとB、ふたつのサイドが対立していて泥沼に陥っていた場合、自分が第三者Cとして両者を脅かす。すると、普段はいがみ合っているAとBも新たな脅威に立ち向かうため、日頃の恨みを忘れて結託する。恨まれ屋というのは、この「共通の敵を持つことで連帯が強まる」って理論をベースに、「怒りの矛先を逸らす」テクニックや「煙に巻く」奇策をミックスした職業なのではないかと思います。

 ただ、あとがきで作者が認めている通り、かなり試行錯誤を重ねた感じの話作りで、一読しただけでパッと「恨まれ屋」の実相が頭に入ってくる内容ではありません。むしろ読めば読むほど「恨まれ屋って結局何なんだ?」と混乱する。これじゃ普通の揉め事処理と変わらないような……って展開も何度かあった。当方も、一応上記の結論を出したけどまだしっくり来ない部分があります。しかし、お人好しな性格のせいで嘘を吐くことも心苦しく思い、非合法な手段を取ることを好まない主人公・桐谷純の「話せば分かる、誠意は伝わる」という対話主義と、「『恨まれ屋(オレたち)』の仕事は真実を暴き報告することじゃねぇ… 『恨み』が消えりゃそれでいいんだよ!!」と嘯いてどんなに汚い手を使ってでも目的を完遂するパートナー・巳神との正反対な在り方は読んでいて興味深く面白い。というかこのマンガは半分以上、巳神の存在で成り立っている。率直に言ってしまえば「巳神が主人公だったらもっと良かったのに」って気持ちも強いんだけれど、あいつが本当に主人公を務めたら雰囲気が殺伐としすぎて長く続けられないかもな。強引な遣り口で依頼された「恨み」を消し、新たな「恨み」を発生させたりもするし。お人好しな桐谷がストーリーを読みやすくマイルドにしてくれる。「単に法律や道徳に則って問題を解決しても恨みは消えない」という立場は、日本人のメンタリティが「裁判とか示談とかじゃなくて、ただ謝ってほしいだけ」だと看破するコメディ映画『謝罪の王様』とも重なる。是非これも実写化させて連続ドラマか何かにしてほしいものだ。

・拍手レス。

 単眼萌えについては、度々アリスソフトの音氏が呟いたりしていますね。
 アリスで何か出したりするのかな、『タンガンロンパ』とか。

 まどかは終わった後OO劇場版やエヴァQのような雰囲気で…ほむらの色紙が呪いのカードに見えましたわ
 明かりが点いたとき、みな席から立ち上がるのを躊躇うような独特の雰囲気が館内に流れました。

 単眼っ娘萌えというジャンルはpixivでも何件か見かけたことがあるのですが、まさか商業コンテンツになるとは思わなんだ…。きっとこれから単眼だけでなく、多腕とか多脚などなど、色々な人外萌えが商業コンテンツに乗っかっていくのではないかと感じています。(それはそれで複雑な気分になりますが…)
 キメラ系は人気でもう何作も出ているし人外ネタが流行ることに格別驚きはない。そのうち逆転して「両眼っ娘萌え」とか「五体ちゃんハァハァ」とか言う奴らが異端視される時代が来たりして。

 まどマギは面白かったというより凄かった、ですね。もちろん面白かったんですけど。予想は裏切るけど期待は裏切らない展開でさすが虚淵さんだと思いました。
 「これは本気で観客を潰しに来てるな……」と肌が粟立った次第。唐突だと感じた部分や腑に落ちない箇所もあったけど、そこは映像の圧力で押し切ってくれた。

 コップクラフトもハードボイルドと紹介されるときありますよ。この手の定義論は広がるのが常ですが
 うちの母が「警察モノや刑事モノはハードボイルドと認めない」派なので、当方もその定義を引きずっている部分があります。


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