2013年4月分


2013-04-30.

・「ニンジャ殺すべし」を「ニンジャ殺すべからず」にするとなんか生類憐みの令っぽいな、とつらつら考えた焼津です、こんばんは。忍類憐みの令。

 時はツナヨシ=サンの頃、ということはつまり松の廊下でアサノ=サンがキラ=サンに斬りかかってハイクを詠んだ頃でもあるのか。逢いに征く義士軍団「AKO47」と額傷がトレードマークのニンジャ衆「KILLER」の戦いを捏造してみるのも一興。しかし半神(デミゴッド)的存在であるニンジャをわざわざ憐れまなきゃいけない理由とか、いちいちでっち上げるのが面倒臭そうだな。さておき、本当に綱吉の頃を描いた夢枕獏の『大江戸釣客伝』が来月文庫化されます。吉良上野介の娘婿・津軽采女が主人公。この采女は綱吉にも小姓として仕えていたんですよね。関連作というわけではないが『鮎師』も併せて読むといいかもしれません。

propellerの新作『願いの欠片と白銀の契約者(アグリーメント)』、発売延期(6月28日→7月26日)

 今更過ぎる反応だけど、propellerの新作が出るのか! 発売延期のニュースで初めて知りました。ふむふむ、ライターは例によって東出祐一郎かな。え? 違う? なになに、山下卓……ですと……? いったいどういう経緯で彼が起用されたんでしょう。ツイッターでは「女の子版『BLOODLINK』っぽい話になりました」と語っている。というか「『BLOODLINK』シリーズを完全版として、某出版社さんのご厚意により、まとめさせていただくことになりました」と驚愕の話が。マジで完全版出ちゃうんだブラリン。10月頃に第1巻が出る予定とのことだが、こっちも何やらの事情で遅延が生じていて当初の予定よりズレ込んでいるらしい。ちなみに『願いの欠片と白銀の契約者』はpropellerの前作と同様「15才以上推奨上ソフト」で、エロはありません。だから声優も花澤香菜やら小倉唯やらと豪華。何はともあれ、これは購入確定だな。ブラリン完全版にも備えないと。

 ご存知ない方もおられるでしょうし、念のため山下卓の解説もしておこう。山下卓(やました・たかし)は1996年に『メルティランサー』のノベライズでデビューした作家です。「花村萬月先生や浅田次郎先生、馳星周先生が大好き」と語ることからその作風はお察しいただけるかと思う。1998年に『果南の地』というオリジナルのライトノベルを発刊、3年後の2001年に『果南の地』の関連作である『BLOODLINK』を上梓し、そのハードな内容によって当時のライトノベル界へちょっとした衝撃をもたらしました。2chライトノベル板大賞、通称「ラ板大賞」の2001年上半期において1作目『獣と神と人』が2位に、2作目『赤い誓約』が1位に選ばれるなど、高い評価を受けています。メディアミックスが行われなかったせいもあってメジャー化するところまでは達しませんでしたが、「何年掛かろうと続きを待つ」という熱心なファンが築かれる程度には人気があった。実際、ブラリンは2004年あたりを境に突然沈黙してしまう。2008年の完結編『雪花』が発売されるまで「まだか、まだか」とファンを焦らし続けた。『BLOODLINK』に脇役として登場するオカルト雑誌のライター・八神亮介は『果南の地』において主人公を務めており、「両作ともちょっとは関係があるのだろう」と思われていたが、『雪花』に至って「ちょっと」どころではない密接な関係があると発覚し、『果南の地』も読んでいないとよく分からない結末になってしまった。そのため作者は『果南の地』の再開ないしリメイクを宣言しましたが、以来何年も詳しいアナウンスは行われないままだった。さすがに諦めかかっていたファンも多かったでしょう、それだけに「BLOODLINK完全版」の報せは干天の慈雨であります。ファミ通文庫から発売された『BLOODLINK』は本編が6冊と番外編2冊の計8冊で、他にイラストレーターのHPにも短編が2つ掲載されています。『流行り神』の小説アンソロジーにも「虚儀式」という八神亮介を主人公にした長めの外伝が収録されている。恐らくこれらをすべて取り入れた形になるでしょうけれど、気になるのは書き下ろし部分ですね。ほんのちょっと、気持ち程度の追加なのか、あるいは「え? こんなに!?」と驚愕するボリュームなのか。不安と期待が交互に膨らみます。『雪花』を「完結編」と書きましたが、正確には「第一部・完」な終わり方ですから「気持ち程度の追加」ではファンの渇望が癒される可能性は低い。

 話題がブラリンに偏り過ぎたので他のことも書いておこう。山下卓はライトノベルレーベルでの活動を中心としていた作家ですが、2006年の『RUN RUN RUN』から一般文芸書も出すようになります(2006年には桂望実も『Run!Run!Run!』という良く似たタイトルの小説を刊行しており、たまに混同されることがあるので注意)。2009年に『ノーサイドじゃ終わらない』、2010年に『神歌』、2011年に『ぼくらが旅に出る理由』が発売されていますが、当方が読んだのは『RUN RUN RUN』だけで他は全部積んでいるため詳しく解説することはできないです、すみません。『RUN RUN RUN』は文庫化もされているので安価かつ現在でも新品を入手しやすいです、オススメ。作家の深見真は山下卓の後輩に当たる存在で、彼が徳間で『ヤングガン・カルナバル』を書くようになったのも山下卓の紹介があったからでした。「ライトノベルへのこだわりがあっ」て、「少年少女のために書きたいと思っていた」ため「一般文芸には乗り気じゃな」かった深見真をそそのか、いえ説得して徳間に行かせたそうです。山下卓は深見真を高く買っており、「僕が知る限り、この世で最も狂った作家だ。作家にならなかったら、間違いなく犯罪者になっていたと思う」とコメントしつつも「俺が年下で感動したのは乙一と深見だけ」と誉めている。『ヤングガン・カルナバル』2巻の帯で「そろそろヤバイ。まだ誰も彼がどれだけ危険な作家かに気づいていない。誰かコイツを逮捕してくれ!!」と激賞したところ、「そろそろヤバいのは、あなたの方じゃないでしょうか、いつになったら出るんでしょうか」と読者からのメールで指摘されたエピソードは今読み返しても笑えます。「ずっとライフワークとして書いてきた」という自伝的SF、「書けなくなった作家の元に未来から娘がやってくるっていう、すごくイタくて軽くて重い話」についてもインタビューで触れていたが、あれは今どうなっているんだろう。立ち消えになってないといいが。ここ最近は大塚ギチの『THE END OF ARCADIA』の巻末鼎談に参加してましたね。ちなみに1999年に『横井小楠』という小説が「山下卓」名義で刊行されていますが、調べてみるとあれは自費出版物みたく、著者も熊本の医師ということですから、たぶん同姓同名の別人ではないかと思われます。

Aチャンネル作者の黒田bb先生の新作が電撃大王8月号より連載開始!(萌えオタニュース速報)

 新作とはこれまた楽しみな。黒田bbの絵は加速度的に魅力を増していって已むことなし、です。ああ女の子可愛い。髪の「重そうなんだけどふわっとした感じ」が好き。当方は単行本派だから読むのは当分先になりそうだけど、心を強く持って待ち望むとしよう。

電撃コミックスEX 『一撃殺虫!!ホイホイさんLEGACY 1 オリジナルアニメーションDVD付き特装版』 刊行中止に関するお詫び

 というわけでホイレガ発売中止です。ど、どうせこんなことになるだろうと予想していたから、全然ショックじゃないし。当方マジ平気だし。手とか震えたりしてないし。

「神父さま……」「泣かないで」 泣いてなど、いない!

 つうかコレ、特装版だけ発売中止なのか通常版ごと中止なのか、いまひとつよく分かんないですね。作者が田中久仁彦であることを考えると通常版も普通に中止かな……いや、きっと出るだろう。特装版は出なくても通常版は発売されるであろう。美しき虹が架かるだろう。旭日も昇天するだろう。クニヒコの勇気が世界を救うだろう。そう信じるしか道はない。

【速報】『ガールズ&パンツァー』完全新作の劇場版キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!(ひまねっと)

 このニュースを目にして瞬時にテンションが暴騰し、『神咒神威神楽 曙之光』のOP曲が脳内に掛かった。そしてリンク先の「劇場版紹介します!来たか」という書き込みに笑った。どこのシト新生だよそれは。アンツィオ戦のOVAもかなり嬉しいです。これでようやくチョビが報われる。

・映画『藁の楯』観てきた。

 原作は木内一裕の同題小説。木内一裕は『BE-BOP-HIGHSCHOOL』を描いた作者「きうちかずひろ」の別名義、というか単に漢字変換しただけです。『藁の楯』が小説デビュー作で、他にも5冊くらい小説作品を出しています。刊行当時はあまり話題にならなかった(正直言って、評価も低かった)から映画化すると聞いたときはビックリしました。でも、「愛する孫娘を暴行・殺害された余命幾許もない大富豪が、犯人に10億円の賞金を懸けた。警察は組織の威信を守るため、犯人(正確に書けば容疑者)にSPを付けて本庁まで護送しようとする。だが、次々と容疑者の命を狙う刺客が現れる。公務とはいえ、『人間のクズ』を命懸けで守り抜かねばならないSPたちは次第に煩悶を深めていく。本当にこいつは、『死なせてはいけない人間』なのか? 仲間を犠牲にしてでも守り抜く価値があるのか?」というあらすじは確かに映画向きだし、当方もかねがね「『藁の楯』は映像化したら面白そうだな、設定が『S.W.A.T.』と少し被るけど」と思っていたものです。

 とにかく、犯人(容疑者)である清丸国秀の役を演じた藤原竜也がすごかったです。映画の登場人物で、ここまで「殴りたい、ああ殴りたい」と怒りに満ちた嫌悪感を掻き立てる奴はそうそういない。しょっぱなからパンチを二、三発ブチ込みたくなるような憎々しいツラを見せつける。もともと藤原竜也はこういう演技が抜群に上手い俳優だけど、この域まで達した作品はなかったはず。映画版『藁の楯』を鑑賞した人々はストーリーがどうこうという部分よりも、きっと「俺ならあそこで清丸を殺していたな」「私はあそこで清丸を見殺しにしていたと思う」「僕だったらあのへんで職務放棄していたわ」って具合にそれぞれの「我慢の限界」について熱心に語り合うこととなるでしょう。ほとんどの観客は「肉体的な面は措くとしても、精神的な意味で自分にSPは務まらないな」とつくづく実感するに違いない。なにせ清丸は富豪の孫娘(7歳)を殺したのが初犯じゃないですからね。以前にも幼女を暴行・殺害していて、仮釈放の最中に犯行を重ねた、という経緯である。「こいつが死刑にならなかったらまた檻の外に出てきて罪を重ねるぞ!」みたいなことを作中人物も言い出すくらいだ。終いには殴るのも虚しくなってくるほど、陋劣極まりない人格を剥き出しにする。「これで終盤『清丸って実は心根の優しい奴でした』みたいな展開になったら萎えるな」と思いながら観てたけど、まったくの杞憂でした。清々しいまでに改心の余地ゼロです。

 役者たちのアップでやたらと目が血走っていたのも印象的。ここまで爽快感に欠いた、徹底的に胸糞の悪い映画が全国規模で公開されるというのは、冗談抜きで素晴らしいことだと思います。もっとこういう「救いのないことが救い」みたいな煤けた映画、バンバン作りましょうよ。観に行きますから。『脳男』にすらあった「主人公とヒロインの仄かなロマンス」さえ完璧に排除してしまっているあたり、実に潔い。筋立ての強引さなどで叩かれるかもしれませんが、個人的には充分面白い映画で満足しました。

・あ、そうそう、ちょっと前にツイッターのアカウント作りました。「清島焼津」で検索すると出てくると思います。時代の波なんかに負けない(キリッ)と強がっていた当方ですけれど、時代の波には……勝てなかったよ……未だに使い方がよく分かってなくてたどたどしい感じですが、漫画の感想や新刊情報など比較的短い文章は主にこっちへ投下していくつもりです。

・拍手レス。

 AXLで恒例の嘘粗筋やってましたけど、まさかのジョジョネタで神砂嵐が酷いことになってましたねー。 流石瀬ノ本先生、俺達に出来ないことを平然とやってのける!
 発売前日はヒロインがヒドい目に遭うのも恒例になってますね。バキとかシグルイとか進撃の巨人とか。

 虫から推測、でJOJO3部のハエを思い出しました。創作媒体だと結構重要なヒントになりそうですが、現実だと異常気象とか環境破壊とかで思いも寄らないところに発生したりするから中々難しそうかなぁ……とか思ったり。
 『昆虫巡査』は実話を元にしている(佐々木茂美という警察官が遺体の死亡時期を昆虫から割り出した)くらいですから現実でも結構有効だそうな。

 この手の専門家ミステリーというのはネタ切れになりそうで怖いです。それを考えればCSIというのはいい題材を選んだという気がします。
 ネタ切れを起こす前に読者に飽きられるかも、という不安が付きまとうのも専門家ミステリの宿命。まだ読んでないけど、「失恋の理由解明」を専門にする電撃の新刊『失恋探偵ももせ』はシリーズ化が難しそうだと思いました。


2013-04-25.

・ボーンズやCSIなど海外ドラマでお馴染みの「法医昆虫学」(遺体に付着した虫を元に死因や死亡時刻等を割り出す学問)をテーマにした川瀬七緒の『シンクロニシティ』が発売されました。『147ヘルツの警鐘』の続編です。遂に日本でも法医昆虫学の波が……と言いたいところですが、実は20年以上も前に法医昆虫学を扱ったミステリが存在していた! それが『昆虫巡査』です、と何だか本の宣伝みたいな書き出しになってしまったけど全然気にしてない焼津です、こんばんは。

 いやあ、懐かしいですね、『昆虫巡査』。探せば他にも同趣向の作品があるかもしれませんが、当方が真っ先に思い浮かべるのはアレです。「虫で捜査とは画期的だな」と感心したものの、あまり注目されずにひっそりと消えてしまった。一応文庫化もされているけれど、シリーズは全部で5冊あるのに3冊目までしか文庫収録されませんでした。ドラマ化されたこともあるみたい(2時間枠のサスペンスドラマとして)なのに、なんだか不遇。検索するとインタビュー記事が出てきて、6冊目を出す意欲もあったようなんですが……川瀬七緒の作品が連続ドラマ化・映画化されてガリレオ並みにヒット飛ばして、その流れに釣られる形で再評価されたりしないかなぁ、とそれこそ虫のいい期待を寄せている。具体的には創元推理文庫あたりでの復刊。中町信も創元での復刊が効いて再評価の波が来ているそうじゃないですか。『ベクター・ケースファイル』『昆虫鑑識官ファーブル』もセットで再評価を希望する。『オサムシ教授の事件簿』『昆虫探偵ヨシダヨシミ』というのもあるらしいがこれに関してはよく知らない。ちなみに鳥飼否宇の『昆虫探偵』は「昆虫が探偵」ですので注意。『テラフォーマーズ』『アラクニド』だってあるんだ、そう遠くないうちに虫ブームがきっと来るはず。

【訃報】ヤングガンガン「キャタピラー」作画・匣咲いすか先生(27)が急逝(ひまねっと)

 そんな……『キャタピラー』は「華蟷螂」という新キャラ(2巻表紙の左)も出てきてますます面白くなってきたところだったのに……無念でならない。またしても言葉が出ない。27歳だなんて、いくら何でも若すぎるでしょう。当方よりも年下じゃないですか。ショックはショックなんですけれど、本当に突然すぎて、全然実感が湧いてきません。「もう『キャタピラー』の続きは(少なくとも匣咲いすかの絵では)読めない」と言われても「そんなの嘘だろ!」と叫び返したくなってしまう。連載も差し当たって中止になるみたいです。今年は何と言うかもう、ひどい年ですね。

馬場社長『末期、少女病』の開発状況について「作品の開発は体制を整え、いずれ継続する予定ですが、その中にブラヘ氏はおられないと思います」(家宝は2次元)

 「いずれ継続」か……制作中止とハッキリ宣告されなかった分まだマシだけど、形になるまでいったいどれくらい掛かることか。希望は捨てたくない。待ち続けるしかない。

・榊涼介の『ガンパレード・マーチ 5121小隊の日常』を読んだ。

 榊版GPMの1冊目で、短編集。2001年12月刊行、ちょうど前作(広崎版)から1年後の発売であります。1999年3月28日から4月のはじめ頃まで、約一週間程度の出来事をいろんな視点で寄せ集め式に描いている。キャラクターそれぞれの出番も増え、広崎版GPMではたったの4名だったキャラ紹介枠が一気に20名(うち猫1匹)へ拡大されています。要するに、非常に賑やかになっていて、個々の掛け合いも執筆者が「ストーリーをまとめないといけない」というプレッシャーから解放されているおかげか、とても活き活きとしています。本筋に関係しない部分をひたすら削ぎ落としていた前作に比べ、「無駄と言えば無駄だけど、読んでいて楽しい要素」をてんこ盛りにした本書は読んでいて窮屈さをまったく感じさせない。「個々の状況が描かれるだけで、全体にハッキリとしたストーリーがない」形式に馴染めない方は戸惑うかもしれませんが、ある程度GPMの知識を得た後なら染み入るような面白さが伝わってくる。柱となるエピソードは「絢爛舞踏――幾千万のわたしとあなたで」「突撃準備よろし」「豪剣一閃!」の3つ。これに原素子の日記「原日記」やサブエピソード「附・イ号作戦秘話」、オマケエピソードの「楽しいピクニック」が付いてくる。

 「絢爛舞踏――幾千万のわたしとあなたで」は3月28日(土)から4月4日(土)までの一週間(多少ズレはあるかもしれない)、士魂号パイロットの速水厚志と壬生屋未央を中心に、幻獣との戦闘および小隊の日常を綴る。士魂号はロボット(作中用語では「人型戦車」)で、単座式と複座式があり、速水は複座で芝村舞と同乗、未央は単座に搭乗。幻獣への憎しみ、そして士魂号という「からくり」を内心軽んじている未央は無謀な突撃を繰り返し、幾度となく機体に損傷を負わせ、整備班との間に軋轢を生じさせてきた。そして遂には機体を大破させてしまう。ただでさえ物資や部品が不足している中で、士魂号丸々一体を失う事態は手痛い……さすがに自分の戦法がマズかったと反省する未央だったが、速水は「今のままでいい」と説き、彼女の突撃力を活かすための方法を考案する。流れとしては、一番機(未央の士魂号)、損傷により左腕を喪失→整備班の懸命な作業によって左腕は修復されるものの、次の戦闘により大破、機体そのものを喪失→「イ号作戦」によって新たな士魂号を調達し、大破した旧一番機の残骸を部品取り用に回収へ向かう、ってなところ。戦闘メインで書くとパイロット視点ばかりになりがちなところを、「エスカレートする機体の損傷」によってうまく整備班と絡める形で話作りしています。そつなくまとまっている。原と善行の過去を匂わせる遣り取りが興味深い。それにしても、士魂号の部品には人間の脳が含まれていて、「その製造過程はおぞましくて考える気にもなれない」って、サラリとエグいな。エグいと言えばヒトウバンの解説もエグい。「切り取った人の頭を前面に貼りつけて飛ぶ小型幻獣。頭は生きており、「殺して」と叫ぶ」

 「突撃準備よろし」はツッパリ少女の田代香織が主人公。中学時代のライバルだった他校生・鉄夫が「敵前逃亡の罪」で追われていることを知った香織は、彼の逃亡を手引きしようと画策するが……。ビジュアル的に当方が一番好きなキャラ、石津萌が登場するエピソードです。陰気美少女こそ未来のためのマーチ。ああ萌に刺されたい。本筋にあまり影響しない脇道ストーリーながら、「GPMってなんでもアリだなぁ」と思わせてくれる好編である。

 「豪剣一閃!」は壬生屋未央が操縦する一番機のメインウェポン「超硬度大太刀」が戦闘中に破損してしまい、代替品を調達しようとする話。大太刀は非常にレアな武装で、使っているパイロットは未央以外におらず、どの社でも既に生産中止となっていた。ずっと剣術を恃みに戦ってきた未央のこと、今更武装を銃火器に変えることなどできない。困り果てていたところ、オペレーターである瀬戸口の知り合いに特殊金属加工を生業にしている人物がいると聞いて……。広崎版では速水が未央に対してほのかな想いを寄せている、という設定になっていたが、榊版ではそのような描写がなく、「未央と瀬戸口」のカップリングで進んでいく模様である。未央は、「胴着に朱袴」という巫女装束のような落ち着いたコスチュームに反して直情径行な性格と申しますか、ぶっちゃけ苦手なタイプのヒロインだったんですけれど、このエピソードを通じてだんだん好感が持てるようになってきた。肥後もっこすの職人とやりあって最高の大太刀を鍛えてもらう、という展開にゃ素直にワクワクさせられた。3編ともバラバラの内容だけど、群像劇を意識して細かく(それでいて自然に)視点切り換えを行っているおかげで読んでいて引っ掛かりを覚えることはなかった。視点切り換えのうまさは、こういう群像劇を書いていくうえでかなり重要なものになってきます。なお本書の解説は原作GPMの開発に携わった芝村裕吏。例の「無名世界観」に深く関わった人物ということで、彼をめぐってはユーザーの間でも好悪の差が激しい。ネット上では彼を嫌う声もよく見かけます。当方は『マージナル・オペレーション』がキッカケになって小説版GPMを読み始めたようなところがあるので、彼には感謝しているんですが……でもこの解説に関しては特筆すべきところはないかな。設定関係の記述で細かい指導があったようだ、というくらい。

・拍手レス。

 『リンカーン』を観ながら「いつ斧を取り出してクルクル回すんだろう」と、ちょっと邪道な楽しみかたをしてましたw
 『リンカーンvsワシントン』みたいな無茶続編が出てきたりしないかしら。

 リンダルートは嬉しいけど、これ単体でDL販売とかしてほしかった…
 いっそ18禁逆移植まで待ってみるのも手か。

 キャタピラーの作者が逝ってしまわれた。無念…。
 「あのニュースは何かの間違いだったんじゃないか?」と疑う→確認する→落ち込む、のルーチンを何度か繰り返しました。

 どうにかPSPホライゾンが来る前にFate/EXTRA CCCを一通りクリア……。やり込み系の発売日が重なるときついですね。これで発売日同じままだったらどうなったことやら。発売日延期はかえって助かったかもしれない……。まぁ、EXTRA/CCCが当初の発売日に出てたらもっと余裕有ったわけですが。しかし当方はスルーでしたがダンジョントラベラーズも買った人は大変そうだなぁ。
 なんでもいっぺんに重なるのはキツいですね。最近は電撃文庫も一月あたりの刊行冊数が増えに増え、読み終わらないうちに次の新刊がドサッと出る無間地獄に……。


2013-04-20.

『相州戦神館學園 八命陣』……遂に正田崇&Gユウスケ&与猶啓至の新作情報が来たぜよヒャッホォォォォォォォォオゲェェェ!!!

 興奮しすぎてちょっと吐きそうになった焼津です、こんばんは。ちょうど晩飯食べた直後に情報が来たもので、胃が驚いてしまった。正田・G・与猶のトリコロールは矢張り美しい。見惚れて時を忘れそうになる。発売は早くて年内、順当に行けば来年か? 続報を心待ちにしよう。あとDiesとか神咒とか、過去の作品と今回の新作は関連がないらしいので、「lightのゲームはやったことないんだよな」という方も注視されてみては如何。

PS3『俺たちに翼はない』リンダこと林田美咲の攻略√が追加されるぞおおおおおお(家宝は2次元)

 そういえばPS3に移植するんだったっけ……忘れていました。林田美咲は「攻略できないけど存在感のあるサブヒロイン」で、本編だと「女生徒A」な扱いに留まっているが、彼女を主人公にしたドラマCDもある。というか「第1章」の題名から察せられる通り、なぜかこれがドラマCDの中で真っ先に発売された。プレリュードには彼女がメインの番外編も収録されており、「カウントダウンのたびにプレリュードを薦める林田美咲」を見ることで「ああ、新作が発売されるんだな」と実感したものでした。隠れキャラに近い位置付けで、とにかく出番が少ないから彼女の痕跡を発見するたびファンは喜んだものです。第3章のヒロイン・鳳鳴はマンション住まいですけど、ひょっとして美咲も同じマンションに住んでいるのでは……みたいな小ネタを探すのが楽しかった。俺翼はそういうゲームでもあるんです。しかしバージョン違いを出すごとに攻略ヒロインが増える商法はなんというか辛い。俺翼は関連商品が多く、ゲームやらドラマCDやら散々買わされてきましたからね……もういい加減疲れたよパトラッシュ、な気分になる。王雀孫本人が手掛けたシナリオかどうか、本人でなくても王並みのクオリティに達しているかどうか、発売後に各所で確認してから購入を検討することにします。しかし、おれつば振興会(ラジオCD)はどうなってるんだろう。あと1巻で全部収録できるはずなのに……最近Navel関連の情報はキャッチしてないのでよく分かりません。

いろとりどりのセカイ+ヒカリコンプセット『いろとりどりのセカイ WORLD'S END COMPLETE』7/26発売予定。封入特典にはヒカリ後日談を描いたオリジナルラノベ「いろとりどりのミライ」同梱(家宝は2次元)

 メモリアの事例を踏まえて「夏あたりにいろどりのコンプリートボックスが出るだろうな」と予想していましたが、当たった。しかもライトノベル1冊分のオマケ付き。待っていた甲斐がありました。9月には『ものべの HAPPY END』もあるし、今年はプレーするエロゲーに困ることはなさそうだ。

・80年代後半、バブル期を主な背景として描く麻雀コミック『むこうぶち』今月発売された35巻で遂に300話へ到達しました。当サイトではこれを記念して、個人的にメモしていた『むこうぶち(1〜35)』全話リストをアップロードします。恐らく需要はないだろうけれど……しかし『むこうぶち』、最新刊では「満州瓦解の頃」のエピソードとか出てきて、もう本格的に「バブル期? 何それ?」モードへ突入です。

 『むこうぶち』も連載開始から14年、立派な長寿コミックとなりつつあります。巻数に倍近い開きがあるせいで見落とされがちですが、『天牌』と同時期のスタートです。あっちは来月の最新刊で68巻に到達、外伝の25巻も少し遅れて出るので、そちらも合計すると既に90冊を超えている。でも勘違いしてはいけません、むこうぶちの刊行ペースが遅いんじゃなくて、天牌の刊行ペースが速過ぎるんです。去年(2012年)一年間で本編・外伝併せて7冊も新刊出してるんですよ。塩野干支郎次が去年6冊だったことを考えると異常な速度だ。ちなみに兎が96年開始で約17年(最新刊14巻)、アカギが92年開始で約21年(最新刊26巻)だから、むこうぶちも天牌もまだまだ麻雀漫画の古参とはなっていない。ただ巻数で言ったらどっちも上回っているので、何か混乱しちゃいますが……アニメで有名な『咲―Saki―』は2006年開始だからまだ7年ほど、『むこうぶち』や『天牌』の半分くらいです。もうすぐ出る新刊は本編11巻と外伝5巻、決して「速い」とは言いかねるペース(ただし外伝は1年ちょっとで5巻ですから、メチャ速い)ですが、それでもじっくりと腰を据えて付き合っていきたい。

・映画の『リンカーン』観てきた。

 スティーヴン・スピルバーグ監督の大作伝記映画。タイトル通り、アメリカ合衆国第16代大統領エイブラハム・リンカーンを主人公として描いている。最近は彼絡みの映画が多く、『声をかくす人』はリンカーン暗殺事件に関与したと見做されて処刑された実在女性の裁判を巡る作品だったし、『リンカーン / 秘密の書』なんていう伝記映画ならぬ伝奇映画まであった。スピルバーグの『リンカーン』はドリス・カーンズ・グッドウィンの『リンカーン』を原作として制作されています。米大統領として伝説的に有名なエイブラハム・リンカーン、彼の生涯を2時間半に渡って上映する壮大な人生ドラマ――といった内容を想像して足を運んだが、予想とは違っていた。原作の評伝ではリンカーンの生い立ちから綴っていますが、映画は1865年の1月から4月までの4ヶ月間、特に合衆国憲法修正第13条を下院で通すまでの28日間に焦点を当てていく。派手な戦争シーンは冒頭だけ(しかも白兵戦のみ)で、あとはずっと政治的な闘争が延々と続きますから、「銃! 爆発! 金髪巨乳の気が強いねーちゃん! カーチェイス! ねーちゃんのオッパイ揉みながらキス! そしてまた爆発!」式ハリウッド大作を期待すると退屈するかもしれません。実際後ろの席からはぐおお〜っと盛大な鼾が聞こえてきた。他ならぬ当方も途中でちょっとうつらうつらしました。

 権謀術数を凝らし裏工作に励むロビイスト、野次を飛ばす政治家たち、ヒステリーを起こすリンカーンの妻、怒鳴り返すリンカーン……と、描き方自体もあまりヒロイックではなく「人間らしい苦悩」を軸にして等身大で表現していくので、当方みたく「単純明快に感動したい」浅薄な層には向かないでしょう。映画評論家の町山智浩が言及しているように、「奴隷解放宣言」「ゲティスバーグ演説」「リンカーン暗殺」といった有名イベントの数々も作中でチラッと触れられる程度、直接は描写されません。先にリンカーンの伝記読んどいた方がよかったかな、と少々悔やんだ。しかし、この映画を起点として『リンカーン / 秘密の書』や『声をかくす人』がより一層楽しめることを考えれば、充分元は取れた……はず。現在はリンカーン暗殺犯をテーマにしたノンフィクション『マンハント』を読んでいるところです。実はこれ、発売直後(もう6年半前か)に着手したんですけれど、そのときは挫折しちゃったんですよね。今回は映画のおかげで予備知識が得られ、嘘みたいに捗る捗る。「ちょっとうつらうつら」したとはいえ観てきた甲斐があった。ちなみに『マンハント』、「ハリソン・フォード主演映画化」とありますが、検索してもそれらしい映画が出てこない(主演が決まった、みたいな記事は出てくる)ことを考えると、実現しなかったのかな。残念、実現していれば「リンカーン4連発」になっていたかもしれないのに。

・拍手レス。

 桜庭さんといえば角川ビーンズ版のゴシックはいつでるんだろうか?
 あ、調べてみたら9冊目で刊行が止まってる。あと4冊が未刊なのですか。クロワーゼの3巻もずっと出てないし、武田日向に何かあったのかしら。

 正田・Gコンビ最新作のディザーサイトが公開されてますが…与猶さん、いきなり本気だしすぎぃ!!これで公式サイト公開まで2か月とか、生殺しにもほどがある
 与猶の本気で当方の血圧がマッハ。もうちょっと高齢だったらこれが原因でポックリ逝っていたかもしれません。


2013-04-17.

・小池定路の『魔法少女チキチキ 新装版』、上下巻が出揃ったのでそろそろ買い時ですよ、と薦めてみる焼津です、こんばんは。

 3年ほど前に別の出版社から刊行されていた作品の出し直しです。前回は1巻こっきりで放置されていたけど、今回はこれでキッチリ完結した……はず。届いたけどまだ読んでないです。血中定路分の濃度が下がってきたら手を伸ばすつもり。ジョーク抜きで血中○○分と言いたくなる作家っていますよね。ざらとかもそんな感じで、『しかくいシカク』をすげーゆっくり読んでじっくり消化していたけどつい先日読み切ってしまった……でもまだ『わがままDIY』が残ってるので食い繋げる。

30前後のおっさんが反応するエロゲ関連の単語(家宝は2次元)

 沙織事件をリアルタイムで知ってるエロゲーマーは40前後じゃないでしょうか。あれ22年前の事件ですよ。当方も「そういう事件があった」とネットを介して知ったクチです。年齢を28歳〜33歳程度に絞ると、だいたい10〜15年前の単語に反応するはずですよね。1998年から2003年に掛けてか……やはり葉鍵の影響が強かった時期だわ。葉鍵以外のネタだと「『クリスマスプレゼント』と書かれたポリバケツ」とか「忠介の陰毛」とか「超絶対御都合主義的恋愛妹アーカイブノベル」とか「五頭身規制」とか。いや規制はもうちょっと後だったかな? 2003年にサイトを開設している当方は無論このゾーンに該当します。まさか10年経っても『ひとつ飛ばし恋愛』が届く日を指折り待っている有様とは。そしてまさか10年経っても『末期、少女病』が発売していないとは……。

数学、算数を題材にした本(ぶく速)

 『殺人方程式』は基本。ノンフィクション系だと『完全なる証明』が面白かった。ポアンカレ予想を解いたグレゴリ―・ペレルマンについての本。ポアンカレ予想そのものについてはあまり深く踏み入っていないので、あくまで数学興味で読むならもっと専門的な書籍に目を通した方が良いかもしれませんが。あと永井義男の『算学奇人伝』も面白そうだと思って買ったまでは良かったものの、まだ読んでいない。算数や数学はミステリと相性がイイけど、SFでも結構見かけるそうですね。グレッグ・イーガンの作品にも数学SFがあるって聞くし(イーガンは短編1個だけ読んだけど全然理解できず、以降ずっと敬遠している……そろそろ再チャレンジの時かしら)。

神林長平のSF小説「戦闘妖精・雪風」がハリウッド映画化へ 主演はトム・クルーズ(萌えオタニュース速報)

 またしてもトムなのか。『アウトロー』『オブリビオン』、そして来年公開予定の『All You Need Is Kill』。更に雪風と来た。トム・クルーズの猛攻が止まりません。この分だと映画化交渉が行われているという噂の『時砂の王』のメッセンジャー・Oまでトムになりそうな勢いだ。トムってもう50を越えてるのに元気なことですな。一度何かで荒木飛呂彦と共演してほしい。西洋ヴァンパイアのトムと東洋吸血鬼の荒木が一騎打ちするようなホラー映画で。トムは確か20年くらい前にレスタト役を演ってましたよね。

バレー漫画のアニメ化が決まった模様 「ハイキュー!!」?「少女ファイト」?何が来るか(萌えオタニュース速報)

 ここでまさかの『フルセット!』とか。『ハイキュー!!』はアニメ化してもおかしくないぐらいの人気が既にありますけど、巻数がまだちょっと少ないんですよね。現在の最新刊は5巻で、来月に6巻が発売されるって状況。『少女ファイト』は巻数的に問題ない(9巻まで出ている)し、ありえそうな気配ではある。

海外文庫『アイス・ハント(下)』をご購入いただきました皆様への重要なお知らせ(扶桑社ミステリー通信)

 一章分が丸々抜け落ちるだなんて、そんなこともあるんだなぁ。『アイス・ハント』の上巻は第9章までの収録で、落丁してしまった第10章は本来下巻の冒頭に当たるはずの部分だったみたいです。amazonの表記から察するに、今送ったとして交換用の新しい本が届くのは5月になってからかな? 上巻のアタマをちょろっとだけ読んで積んでいた当方にはさしたる被害もないけれど、まさにこれから下巻を読み始めるところだった、という方にとっては痛手でしょうね。

・広崎悠意の『高機動幻想ガンパレード・マーチ』を読んだ。

 2013年現在、ライトノベルのレーベルとしてもっとも有名な「電撃文庫」にはゲームのノベライズ作品を中心とする「電撃ゲーム文庫」という姉妹レーベルが存在します。電撃文庫が1993年創刊であるのに対し、電撃ゲーム文庫は翌年1994年の創刊。当初はクリスタニア、央華封神等のTRPGに関する書籍(リプレイ小説、ルールブック)がメインでしたが、だんだんノベライズ作品が増え、「ゲームノベル専門レーベル」の様相が濃くなっていった。2000年代に入り、勢力をますます強めていく電撃文庫に対し、ゲーム文庫は枠の狭さゆえか衰退の一途を辿っていきます。ゲーム文庫は月あたりの刊行点数が1冊か2冊と少なく、刊行自体がない月もあるため、レーベルの存在感が薄くなることはどうにも避けられませんでした。2007年頃になると『ガンパレード・マーチ』関連の作品を除けば年に1冊か2冊、極端な年ではガンパレしか刊行物がない状態に陥り、「これでは電撃ゲーム文庫ならぬ電撃ガンパレ文庫だ」と揶揄されるようになる。たとえば2012年には6冊の新刊が発売されましたが、うちガンパレが4冊でそれ以外は2冊。2011年は5冊と1冊、2010年も5冊と1冊、2009年はガンパレしか刊行物がない年で3冊でした。ガンパレのおかげで保っているレーベルというより、もはや「ガンパレのせいで潰せないレーベル」だと申し上げた方が早い。誇張抜きでGPMの存在感が凄まじいのです。続編『ガンパレード・オーケストラ』を含めた現時点での合計冊数は、なんと40冊にも昇る。あまりにも長大すぎて「途中から入りにくいシリーズ」という印象を新規の読者に与えてしまう。当方自身、小説版GPMに対しそういう印象を抱いていた一人でした。

 さて、「小説版」と銘打つからには小説でないバージョンも当然ながら存在いたします。GPMの大元は2000年9月に発売されたプレイステーション用ソフト『高機動幻想ガンパレード・マーチ』であり、ウィキベディアの記述によるとこのソフトは売れる見込みがないから「生産数は少量で宣伝費が0円」という冷や飯食いにも似た扱いを受けることになったそうです。確かに、発売前はほとんど話題にならなかったし、地方住まいだったせいもあって発売月にゲームショップでパッケージを見かけることもなかった。しかし、口コミで話題になっていき、年末になってようやく地方のゲームショップの棚にも並ぶようになりました。ショップに寄るたびSLGコーナーの「か行」を確認していたから、見つけたときの喜びは相当なものだったと記憶している。で、それを購入したのですが、未だに開封すらしておりません。ともあれ、高い人気と評価を獲得したGPMは小説化、漫画化を経て2003年にTVアニメ化。『ガンパレード・マーチ〜新たなる行軍歌〜』のタイトルで全12話に渡って放送されました。なにぶん1クールなので壮大なストーリーを紡ぐことができず、後半はラブコメ重視の展開になったため、原作ファンの間では賛否両論渦巻く仕上がりになった模様です。

 周辺情報はこのくらいにして、そろそろ『ガンパレード・マーチ』のストーリー紹介に移る。GPMの物語は大雑把に書けば「非人類侵略者に軍用兵器で立ち向かう」という、ミリタリー色の強いSFです。1945年、第二次世界大戦末期、「黒い月」とともに現れた謎の化け物たちは連合国・枢軸国の区別なく次々と人類を殺戮した。やむなく戦争を中止し、世界各国は共同戦線を張って人類の天敵「幻獣」に抗うべく総力戦を開始。50年の年月が流れても戦闘は終わらず、次第に人類軍は劣勢に立たされていった。1997年に「中国での焦土作戦」が失敗してユーラシア大陸から撤退した人類の生存圏は、「アフリカの南部と、南北アメリカ大陸、そして日本」のみとなり、残る日本も九州西岸から上陸してくる幻獣軍に消耗戦を強いられ疲弊の極みに達する。いよいよ進退窮まったところで、日本国首脳部は1999年「14歳から17歳までの少年兵の強制招集」に踏み切った。単なる時間稼ぎ、本土防衛を目的とした捨て石「学兵」の誕生である。主人公・速水厚志はまだ14歳の若さで5121小隊に配属され、そこで様々な仲間たちと出会う……こういった具合で、物語は1999年3月からスタートします。プレーしたことはないけど、ゲーム版『ガンパレード・マーチ』は自由度の高さが売りとかで、プレーヤーは主人公を「士魂号」と呼ばれるロボットのパイロットにすることもできるし整備士にすることもできる、戦いに明け暮れてもいいし、恋愛に耽ってもいい(主人公とヒロインが仲良くなるだけでなく、サブキャラ同士の恋路を応援することもできるらしい)。シナリオを担当した矢上総一郎自身「ストーリー性がまるでない」と語るほど、「何をやってもいい」ゲームとしてつくられている。無論小説では再現できない要素であり、小説版における速水厚志は士魂号のパイロットで固定されています。余談ながら、ゲーム版では複数の女性キャラと恋愛関係を進めると修羅場イベントが発生し「刺されて死ぬ」こともあるとか。聞いただけでワクワクする。

 小説版GPM通し番号第1番、『高機動幻想ガンパレード・マーチ』は記念すべき初ノベライズ作品です。奥付では「2001年1月5日 初版発行」となっていますが、実際の発売は2000年12月だった模様。ゲーム版リリースから約1年後ですね。小説版GPMはほとんどが榊涼介の手によるものですが、この1冊目だけは広崎悠意が担当しています。広崎悠意(ひろさき・ゆうい)はエロゲーの原画家およびシナリオライターとして知られる。今は亡きD.O.の“妖獣戦記”シリーズにおいて原画とシナリオを手掛けたことで有名。“妖獣戦記”シリーズは核戦争後の荒廃した世界が舞台で、人々は「妖獣」と呼ばれる化け物に対抗すべく人工生命体「バイオソルジャー」を投入し、3部作通して拠点防衛や拠点攻撃など「人類と妖獣との存亡をかけた戦い」が繰り広げられる……という、割とガンパレに通じる内容でした。当方が買った古本は2002年12月、発売から約2年後に刷られたもので、「14版発行」とあるから当時は結構売れたみたいだ。広崎本人もブログで「しばらく食べられるくらい売れたのでありがたいです」と述懐している。物語は1999年3月、幻獣との実戦を想定した模擬訓練が行われるところから始まり、「ストーリー性がまるでない」GPMにおいても特筆すべき重要イベント「熊本城攻防戦」まで描かれています。

 端的に申せば、ダイジェスト小説です。ゲーム一周分に相当する内容を一冊こっきりにまとめようとするのだから、どうやっても細部が端折り気味になることは避けられない。主人公が所属する5121小隊の学兵は主人公含めて22人も存在しますけど、200ページそこそこのノベライズでそんなに描き切れるわけありません。士魂号のパイロット4名に焦点を絞り、他のキャラは脇役と割り切ったうえで綴っている。またオリジナル要素はほとんどないとのことで、「まるでゲーム版のリプレイみたい」「目新しいところがない」とファンからは不評だったそうな。全体的に淡々とした筆致でしたためられていることもあり、ゲーム版未プレーの身からすると前半はあまり引き込まれなかった。仕方ないこととはいえ、個々のキャラの掘り下げが浅く、なかなか愛着が持てない。武装や幻獣に関するデータも少なく、戦いに臨場感が伴わない。100ページ過ぎたところで、やっと「面白いかな」と感じ始めた。後半は畳み掛けるような展開でスピーディに進み、割合あっさりとした幕切れを迎えるが、その「あっさり」加減も個人的には悪くないと思いました。

 とはいえ、やっぱりダイジェストであることに変わりはないので、これ単体で楽しむのは正直キツい。あくまでメディアミックスの一環としてガンパレの世界観・雰囲気を肌で感じさせる域に留まっている。「ガンパレについてはまったく知らないので、とりあえず粗筋だけでも知りたい」って方にはうってつけですが、じっくりどっぷり腰を据えて楽しみたい方はこれを飛ばして榊涼介版から読み出しても構わないでしょう。広崎版と榊版は通し番号上こそ連続しているもののストーリー面での繋がりはなく、それぞれが「GPMを元にした別個の作品」となっている。なお巻末解説は本編シナリオを担当した矢上総一郎であります。「設定に関する質問もなかったのに」「これくらいの力量がある方だったらもう少し、自由に書かれても面白かったろうに」といった言葉から察するに、どうもノベライズに当たって執筆者と開発者の間で協力体制が築かれていたわけではないみたいですね。先述した通り原作ファンには不評で、ために広崎はノベライズから外され、代わりに選ばれた榊涼介が仕切り直すことになった……という噂もありますが、発売から2年経っても増刷されていたことを考えると別に売上が悪かったわけではないんだろうし、広崎本人も「首になったわけじゃないと思いますよ」と言及している。違う事情があったのではないだろうか。

・拍手レス。

 >富士見ミステリー文庫   私は……今でも希望を捨てきれないんです……SHI-NOの短編集が出るんじゃ無いかっていう……儚い希望を……
 どこかで新装版や完全版が出ることを祈りましょう。明日香々一も復活する業界なんだから、まだ希望を捨てなくてイイはず。

 ラノベで格闘モノというと、学園武芸帳「月に笑く」が代表格ですかね。学園武芸帳もガンオーバーも続いてほしかったなあ。あ、リアルバウトハイスクールはバトル物枠で。
 学園武芸帳は好きでした。もっと続いて欲しかったのに、2冊目でシリーズ打ち切りとは……リアルバウトハイスクールは格闘モノというより格ゲー的フィクションですね。

 榊ガンパレはなんだかんだずっと面白いのがスゴいんですよね。文句を付けながら日常Vも買ったし。焼津さんの感想を楽しみにしてます。
 榊ガンパレがすごく長いから原作のストーリーも長大なんだろうな、と思っていたら原作準拠は最初の10冊くらいで、あとの20冊以上はオリジナルなんですね。今は日常1を読んでいるところですがなかなか面白くて「これはアタリを引いたな」と満足。

 富士見ミステリー文庫もそんなに推理小説だった記憶がなかったりすます。正直、桜庭さんや深見さんぐらいしか思いつかない。
 なぜか霞流一が出していたっけな……もう少し路線を確定させるようなヒット作があれば、ホラー文庫くらいの位置に立てていたかもしれません。

 ルパンは奇岩城でのホームズの書き方がトラウマになってしまい読めなくなりました。どこかにショルメと訳した原作はないだろうか? 紹介されたコミックはショルメと訳されているそうですが。
 英語読みするとヘルロック・ショルメスですけど仏語読みでは「エルロック・ショルメ」なんですっけ。


2013-04-13.

・古本屋で『ガンパレード・マーチ』の小説版を20冊くらい見かけ、「面白いって評判は聞いていたけど、なかなか手を出す機会がなかったんだよな……この際まとめ買いしてしまうか」と勇を鼓して一括購入。足りない巻は新刊書店で買えばいいや、なに、20冊も買ったんだから残りは数冊だろう……と鼻歌交じりに(実際に鼻歌をハミングしたわけではないが、心情的に)向かったところ、「買った巻は20冊だったが、足りない巻も20冊だった」と知って衝撃を受けた焼津です、こんばんは。

 小説版ガンパレ、現在の既刊は40冊……! マジかよ、って呆然としました。まさかそんなに出ていたとは知らなんだ。一応、新刊情報には目を通していたけど、購入予定がないんで見た端から忘れていたんですよね。40冊の中には関連作である『ガンパレード・オーケストラ』も3冊ほど含まれていますが、どちらにしろ膨大な量であることに変わりはない。とりあえず20冊読んでみて、面白かったら残りを買うってことにしようかな……と日和りかけたものの、「ままよ」とばかりに全巻揃えてしまった。もはや観念して読むしかない。てなわけで今月、というか今年度は「ガンパレ強化年度」に突入します。果たして40冊読み終えられるのか。また読み終えたとしてもゲーム本編(2000年に購入したが、なんと12年以上も未開封のまま積みっぱなし)やドラマCD、アニメが後に控えている。更にアルファ・システムは「様々な作品が共通の世界観を有している(無名世界観)」って設定なので、極めようとすれば気が遠くなるほどの巡行を経なければならない。今のところ極めるつもりは全然なかったりするが。ウィキペディアで「無名世界観」の項目読んでもサッパリ意味が分からないし、ひとまずガンパレに専念します。

新訂版コナン全集最終巻『龍の刻』、5月末に発売(東京創元社)

 おっ、遂に出るのか。前巻が発売されたのは4年も前だったから、てっきり打ち切りになってしまったのかと思っていた。新訂版の刊行が開始されたのは2006年だから、かれこれ7年近く掛かったことになりますね。コナンって何? ドイル? 名探偵? 未来少年? 滋賀県? と首を傾げた方はこちらを参照されたし。他のコナンと区別するために“コナン・サーガ”とか“英雄コナン”と呼ばれたりする。シュワちゃんが主演した『コナン・ザ・グレート』の原作でもあります。最近も『コナン・ザ・バーバリアン』ってリメイク映画があった。『CONAN』という洋ゲーまであり、アメリカ本国では大人気らしいけれど、日本ではあまり読み継がれなかったのか年々「マイナーな古典ファンタジー」としての扱いが加速していきます。作者のロバート・E・ハワードはラヴクラフトとの親交も深く、クトゥルー神話作品を何編か書いているし、コナンシリーズもクトゥルー神話に対して影響を及ぼした部分があるらしい。当方は新訂版1巻の冒頭をちょろっと読んだだけなので詳しいことは知りませんが……このコナンシリーズって訳のせいか原文のせいか、今読むと古色蒼然たる印象を拭うことができませんけれど、あっさりとしたライトノベル調テキストに慣れている昨今の読者からすればむしろ却って新鮮かも。実際「おお、古々しい……」と呻きながらもワクワクさせられたことは否定できない。あんまり真面目に収集してなかったけど、これを機に全巻集めてみるかな。そしてクトゥルーブームに並行してコナンブームが訪れることを祈ろう。とりあえずコナンベースのライトノベルが出ないかしら。コナンの子孫が現代にタイムスリップしてきたコナンと繰り広げるドタバタメディ『俺の祖先がこんなに野蛮なわけがない』とか『英雄たちがキンメリアから来るそうですよ?』とか『やはりお前のハイボリア時代はまちがっている。』とか『コナンが滋賀県にいたころ…』とか。

月刊ヒーローズにアルセーヌ・ルパン降臨! 森田崇の『アバンチュリエ』、移籍して連載再開

 先月から連載再開してたみたいなので、今更ですが、つい最近知ったばかりなもので。三世のおかげもあって知名度はシャーロック・ホームズと並ぶくらいなのに、ホームズに比べて意外と作品を読まれていない“怪盗ルパン”の原作エピソードを、可能なかぎり(できれば最後まで)コミカライズしようという企画がこの『アバンチュリエ』なのです。リンク先にもありますが「アバンチュリエ」は仏語で「冒険者」の意味、アバンチュールと同じ語源ですね。再開に伴って『怪盗ルパン伝 アバンチュリエ』と副題も付きました。『アバンチュリエ』は「タイトル見ただけではルパン物と分からない」という難点があったのでこの変更は英断だと思います。それでもまだ現状だと「原作に忠実なコミカライズ」ではなく「ルパンを題材に取ったオリジナル漫画」という印象を与えてしまいますが、「アバンチュリエ」の部分は森田崇にとって大切なのでどうしても外したくないそうです。原作ルパンは読んだことない、という方も試しに『アバンチュリエ』を読んでみては如何だろう。ちなみに月刊ヒーローズはパチンコ・パチスロ会社のフィールズが絡んでいるので、そのうち「CR怪盗ルパン」とか出るかもしれませんね。三世の方はとっくに実現していますが。

木多康昭『喧嘩商売』再開のお知らせ!(萌えオタニュース速報)

 割と本気で諦めかけていただけに嬉しい。『喧嘩商売』はタイトル通りバイオレンス色の強い漫画で、主人公の高校生・佐藤十兵衛が最強を目指して様々な格闘家や喧嘩師を相手にバトルに明け暮れる、まさに闘争三昧といった風味の作品です。この手の漫画においてはお約束である「最強決定トーナメント戦」が開催されることになり、何巻も費やして「これからトーナメントに出場する選手」を紹介し、いよいよあともうちょっとでトーナメントが始まる……ってところで話がぷっつり。2年前に出た24巻が現在の最新刊です。もう出場選手の大半を忘れかけているが、そんなのは再読すれば済むことだ。悲願の再開にワクワクを隠し切れません。せめてトーナメント戦だけは終わらせてくれよ、木多。

【訃報】『ゼロの使い魔』作者・ヤマグチノボルさん死去(萌えオタニュース速報)

 先月の殊能の死をまだ引き摺っているというのに、またしても訃報で肩が落ちます。癌を告白したのが2011年7月頃で、あれから約2年。結局『ゼロの使い魔』は未完となってしまいました。ヤマグチノボルはもともとテキストサイトの管理人だったらしく、桑島由一とともにエロゲー界へ入り、いくつものエロゲーシナリオを手掛けた後でライトノベル業界に参入、『ゼロの使い魔』でブレイクを果たします。そのため「ライトノベル作家」として触れられることが多いけれど、最初に出会ったのがエロゲーだったせいで、やはり当方にとっては「エロゲーライターとしてのヤマグチ」が印象深い。『グリーングリーン』のギャグテキストはとても楽しかった。「開始から10分くらいは野郎しか出てこない」というエロゲーにあるまじき仕様だったけれど、それでもユーザーを惹き込むだけの魅力がありました。ヤマグチ本人が手掛けたスニーカー版ノベライズ『グリーングリーン 鐘ノ音ファンタスティック』の巻末解説はなぜか虚淵玄が担当しています。世間ではどうしてもゼロ魔のイメージが強かったものの、『描きかけのラブレター』『遠く6マイルの彼女』などファンタジー要素が絡まない恋愛物にも光るものがありました。あともう一冊加えて“日立三部作”(ヤマグチノボルの出身地である茨城県日立市を舞台にした三部作)にする予定だったそうですが……今はただ冥福を祈るばかりです。

・拍手レス。

 賀東招二のコップクラフトはハードボイルドと言っていいような。ロリついてますけど
 コップクラフトは刑事物、特にそれもバディ物の流れを汲んでいますね。分類上はハードボイルドより警察小説に近いかも。

 純粋な推理小説もみなですね。大抵何か超人的な力が絡むような気がします。
 富士見ミステリー文庫……その名前は忘れない。

 ヤマグチノボル逝去…………だと…………。今年は本当に衝撃の訃報が多い。焼津さんもご自愛ください
 ヤマグチノボル、やっぱ駄目でしたね… 只々惜しい
 ヤマグチノボル先生の訃報にショックが隠せません。なんでだよ、何とか生き延びたって言ってたじゃないかよ・・・最近、40台のまだ働き盛りの方の訃報が多くて、非常に悲しいです。

 覚悟していたつもりだったけど、全然覚悟できてなくてショックを堪え切れない。「もう続きを読めない」という喪失感に力が抜ける一方です。


2013-04-09.

・4月に入ってからずっと更新をサボってましたが、その間何をしていたのか? と申しますれば、ぶっちゃけインフルエンザに罹患して寝込んでいた焼津です、こんばんは。

 関節痛がひどいうえ39度も熱があったので「ひょっとして……」と病院に行ったら案の定、陽性反応が出ました。もらった薬を服用して横になったあたりが症状のピークで、あまりのしんどさに起き上がることができなくなり、ほとんど気絶するように寝入ってしまった次第。翌日から快方に向かったものの、3日間くらいは37度台から38度台の熱が続き、薬で解熱してどうにか寝起きできるような状態を保つ。4日目になってようやく熱も自然と下がりました。当方には花粉症もあるから、ずっと鼻水地獄でもあった。当然治療している間は仕事も休みましたが、本を読む元気もなく、ゴホゴホ咳しながら延々と臥せっていたわけであります。病み上がりでまだ本調子じゃないけれど、少しずつ更新を再開していきたいと思います。

TVアニメ『てーきゅう』第2期決定!2013年7月より放送(萌えオタニュース速報)

 ツッコミが追いつかない超ハイテンポカオスギャグアニメの再臨だ。「てーきゅう」は「庭球(テニス)」のことですが、テニスやってるシーンはほとんどありません。だってこれ回ごとの本編が2分足らずですからね、まともなテニス描写なんかイチイチできるわけがない。奇人変人が次々と出てきて摩訶不思議なことを仕出かす、一種のナンセンスコメディですけれど、半ばヤケクソ気味で短い尺に早口言葉並みのセリフを叩き込むのだから本当に観ていてツッコミが間に合いません。驚いているうちに本編が終わってしまう。だからもう一度観返してしまう。そしていつしか骨の髄までハマっちゃうという寸法。カオスぶりは『あいまいみー』も相当でしたが、あれはまだ尺に余裕がある分テンポは比較的ゆっくり目でした。こっちは尺的に余裕とか全然ないです、オープニング除けば1分半程度ですよ。1クールやったって30分アニメ1本分に満たない。よくこれで作品として成立させられたものだなぁ、とつくづく感心する。2期目には「元海兵隊員なのに、なぜかシールズにいた」ボビーも出てくるかな。

『ストレンジ・ムーン』電撃文庫6月刊に渡瀬草一郎新作(主にライトノベルを読むよ^0^/)

 こ、このタイトルはもしや『パラサイトムーン』の関連作!? 2001年に開始し、2003年の6巻を最後にパタッと刊行が止まったシリーズです。どうも打ち切りらしい、とファンは悲嘆に暮れていたものですが、まさか10年も経ってからこういうニュースが飛び込んでくるとは。今更だけど、当方が7年くらい前に書いた「沃野」はこのパラムンにかなり影響を受けています。希崎心弥という他人の感情を「色」で認識することができる少年がいて、その能力のせいもあって「迷宮神群」と呼ばれる超越的な存在を巡る伝奇ストーリーに巻き込まれていくわけですが、確か中学生時代の回想だったかな……幼馴染みのヒロイン・露草弓がどぎついピンク色の感情を放っている、みたいな描写があったんです。「すわエロ展開か」と期待に胸を膨らませて読み進めましたけど、時間経過とともにその色はだんだん弱まっていった、とか何とかであっさり流されてしまったんですよね。「渡瀬ェ……なぜ端折った! 読者が一番読みたいところはそこだろうが!」と無念のあまり切歯扼腕、血の涙を流したことは未だに忘れられない。折りに触れてこのシーンの細部を妄想してきたこともあり、「沃野」の1話目はすんなりと書けた。渡瀬草一郎がパラムンで当方に血涙を流させたからこそ、「沃野」は生まれた――と言えなくもない。キッチリ描写されていたら、たぶん満足して妄想とか逞しくしていなかったでしょう。作品に対する不満がイマジネーションを喚ぶ、という点からすると、読者はむしろ「不満に思ったところ」を大切に抱えておいた方が良いのかもしれない。そんなことより、まさかの復活で当方大歓喜ですよ。また迷宮神群を巡る伝奇譚に淫することができるなんて、夢のようだ。よかった、エイプリルフールネタじゃなくて本当によかった。現在全巻積んでる『輪環の魔導師』も実は迷宮神群繋がりの話だと、ついさっき知ったばかりなのでストムンが始まる前に崩しておかないと。

『悪の華』アニメのキャラ作画が凄いことになっている(萌えオタニュース速報)

 あの原作をアニメ化するだけでも冒険だと感心していたが、これはまた実験的な精神を発露させてくれたものだ。個人的には類似系統の絵柄で『さくらの唄』をやってほしいな、と希望してみる。『惡の華』が『さくらの唄』の影響下にあることは作者自らも認めているし、このアニメがヒットすればその流れで、って事態もありえなくはない。もしそうなったら『月光の囁き』も同じ要領でお願いしたい。「実験を試みることはいいことだ」というのが当方の思いですけれど、原作の絵柄が好きなファンはちょと気の毒かな……絵も内容の一部ですし、媒体が違うとはいえここまでガラリと絵柄を変えられるのは、小説で喩えるといきなりクランチ文体にされるようなもんですからね。そういや冲方もシュピーゲルでクランチ文体を始めたときはかなり賛否両論だったな。編集すら「ファン皆殺し文体」と称していたそうですし。

【画像あり】太宰治 「はああぁ!喰らえ『人間失格』!」 イケメン文豪が能力バトルする漫画が発売 (暇人\(^o^)/速報)

 ザッと見た感じでは清涼院流水のJDCに発想が近いかな、と思いました。あと、『制覇するフィロソフィア』って作品があったっけなぁ。哲学を能力代わりにして戦うライトノベルです。公式のサンプルから引用すると、

「たとえば問おう。時の流れとは何ぞや」
「……誰にも等しく流れているものだとしか言えない。あなたはそれを掴んでいる。しかし、おれはまだ掴めぬ。それゆえに、あなたの時の流れをおれは把握できぬ。だから、あなたの動きが見えなくなる」
「愚か者め」
 塾長は叱責するように言った。
「時は、流れるようなものではない。時の流れなど、ない」

 こんな感じ。作者の定金はインタビューで「2巻と3巻のお話はだいたい考えてる」「売れなかったら多分出ない」と語っており、結果として1冊しか出なかったことを考えると売れなかった模様。ここしばらく新刊自体がないけど、ブログによると近々出せるのではないか、みたいな口ぶりが。これは期待していいのか。

戦場で重傷の兵士が「おっぱいを見せてくれ」と懇願 そのとき女性兵士の決断は!? (暇人\(^o^)/速報)

 ヨランタのおっぱいも見ないまま死ねるかぁああぁぁ!!!(『エクストラ・イグジステンス』) つまり、あえて見せないことで生への執着心を煽ったわけですね。このことをヨランタおっぱい延命理論、略してヨっぱい理論と名付けます。そして更新後3分で忘れます。

ラノベであんまり見ないジャンルってある?(ぶく速)

 ハードボイルドかな。「要素としてのハードボイルド」はチラホラ見かけるとしても、「様式としてのハードボイルド」はあまり見かけない気がする。当方が「ライトノベルでハードボイルド」と言われると、一気に火浦功か、そこまで行かなくても『ポート・タウン・ブルース』くらいまで遡ってしまう……って、あれももう20年以上前になるのかよ。ライトノベルの主人公は中高生くらいが主体だから、「ハードボイルドに適するキャラ」はちょっと高齢でマッチングしないんですよね。「学生ハードボイルド」みたいなものとてなくはなく、『ポートタウン・ブルース』の作者も『無理は承知で私立探偵(ハードボイルド)』という学園ハードボイルド・コメディを書いているけれど、「無理は承知で」ってタイトルが匂わせているくらいジャンル的に場違いなイメージを持たれている感は否めない。ハードボイルドは「中高年のライトノベル」とも言われるし、「俺TUEEEEE!」な主人公が異性にモテモテで暗い過去背負っていたりトラウマを持っていたりと、結構近接した部分がある割になかなか混じり合わない。似てるからむしろ混ぜる必要がないのかもしれない。あとリンク先にも触れられていますが、「純粋な格闘モノ」は本当に少ないですね。超能力とか魔法とかを省いた、肉弾戦メインのバトルを文章でねっとりと描写する小説はもっと読みたいところだ。チャンバラは剣豪小説、銃撃戦は冒険小説あたりで補えるものの、格闘モノは一般小説でもだんだんレアになってきている。

・拍手レス。

 絶品になってもいないのに新装版がでるとなんか妙な勘ぐりをしてしまう。
 新装版くらいならまだいいけど、ちょっと追加しただけの完全版や増補版を短い期間に出すのはやめてほしい。

 俺修羅最新刊の後書きで、次はるるルの予定って言ってましたよ
 マジっスか!? 嬉しいです。俺修羅もちゃんと読まないとな……。

 型月のエイプリルフールゲーム、スタッフのなかに某ミステリ作家の息子の名前があったけど、ほんとに業界入りしたんだね。
 型月は本当にさっちん大好きだな……某息子さんはスパイ部以来名前見かけなかったけどまだ業界に残ってたのか。

 White Albom2アニメ化らしいっすね。ストーリーは丸戸サンに丸投げだそうな。
 もし1クールならICだけなんだろうけど、それでも原作をほぼ四分の一に圧縮するからこれは丸戸サン以外では無理でしょう。もし成功したら虚淵御大と同じ道になりますね。FDがないのなら次の丸戸エロゲはいつ見られるのやら。

 とりあえずICだけアニメ化して売れたらその続きを……みたいな形式のようですね。ノベライズも今んとこICだけですっけ。丸戸がブレイクしたらRippleのあおいシナリオをアニメ化してほしいな、あのゲームはやったことないから。


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