2010年8月分


・本
 『猫物語(黒)』/西尾維新(講談社)
 『なみだめネズミ イグナートのぼうけん』/乙一、小松田大全(集英社)
 『シー・マスト・ダイ』/石川あまね(小学館)


2010-08-26.

・「沙村広明先生も思わず応援の最新刊」という露骨に釣り臭いキャッチコピーで目を引いた『やみのさんしまい(1)』、「たまにはあえてハズレ籤を引くってのも悪くない」とまったく期待しないで読んだところこれが意外とええ塩梅でハマっちまった焼津です、こんばんは。

 新人だけに画力は際立って巧いわけじゃない。やや下手に感じられるところもある。けども、何と言いますか、妙に安心できる「下手味」なんですよね。緩めのオカルトギャグという内容ともマッチしていて非常に寛げました。ぐぐってみたところ、作者は「よぉしゅん」名義で新都社のWEB漫画を描いていたんだとか。そちらもチラッと眺めてみましたが、結構絵柄が違いますね。最初から知っていなければ同一作者とは気づかなかったと思います。で、『やみのさんしまい』。無理矢理喩えると「『でろでろ』『みなみけ』を混ぜて4コマにしたような作品」つー具合になるだろうか。線とベタの目立つ絵柄からして押切蓮介を連想させますが、作風自体はそんなに似ていない。『ぼくと姉とオバケたち』が辛うじて近いかな、と言える程度。脱力するようなネタが多く、決してゲラゲラ笑えるわけじゃないんだけど、読めば読むほど小さな幸福感が湧き上がってきて、それを噛み締めるのが楽しい。ささやかな充足を覚える。オカルトマニアだったり人格変動で絶えず口調がブレたりする異常な姉たちのせいで自分まで悪魔チャイルドの扱いを受ける普通の女子小学生・マコちゃんが気の毒すぎて可愛いです。不憫萌えとでも申しましょうか。ダウナーな顔つきのせいで変に大人びて見えますが、歯医者へ行くのを嫌がってダダこねるなど、時折覗かせる歳相応のリアクションにキュンとも来る。そして何より、「陰気なロングストレート黒髪美女」が常にむしゃぶりついていたいほど大好きな当方はキコねぇの闇引力に抗えない。頭脳面が残念なのもむしろ魅力的だ。

 というわけで予想外のアタリを引くことができて上機嫌な今日この頃。穴埋めの代原として始まった漫画らしいが、しばらくは打ち切られずに続いて欲しいものです。

【BD?】『空の境界』公式サイトで謎のカウントダウン開始【終章?】(今日もやられやく)

 BD化だったら嬉しい。が、さすがにそろそろ資金繰りも苦しくなってきたな……本当に5万円くらいする場合、amazon値引き価格でも買えるかどうか微妙なところだわ。

・石川あまねの『シー・マスト・ダイ』読んだー。

 第4回小学館ライトノベル大賞「優秀賞」受賞作。応募時のタイトルは『サイ』。ガガガ文庫は5月に「優秀賞」受賞作『黄昏世界の絶対逃走』、6月に「審査員特別賞」受賞作『いばらの呪い師』、7月に「ガガガ賞」受賞作『ななかさんは現実』、そして今月にこれを刊行しており、来月は「ガガガ賞」受賞作『Wandervogel』を出す予定となっている。再来月に新人がデビューする予定はなく、ラッシュは9月で終わりとなる模様だ。しかし優秀賞だの審査員特別賞だのガガガ賞だの、さっぱり序列が分からないが、賞金の多さで並べると「ガガガ大賞(200万)>ガガガ賞(100万)>優秀賞(50万)>審査員特別賞(30万)」ってなふうになります。実は第2回まで賞金10万円の「期待賞」というのもありましたが、第3回から廃止になって代わりに審査員特別賞が設けられました。この場合の審査員は「ゲスト審査員」のことを意味しており、第3回は田中ロミオ、第4回は竜騎士07が務め、来月末に応募が締め切られる第5回は麻枝准が担当する手筈となっている。以上、小学館ライトノベル大賞に関する大雑把な解説は終わり。以下、『シー・マスト・ダイ』の紹介に戻ります。

 さて、タイトルを見て『野獣死すべし(The Beast Must Die)』を思い出すか『ロミオ・マスト・ダイ』を連想するかで層が分かれそうな本書。内容を端的に説明してしまえば、「教室に突然テロリストが飛び込んできたら……」という中学生レベルの妄想を「愛を取るか、世界を取るか」なセカイ系二択で和えた、良くも悪くも少年ハート震えまくりで燃え尽きるほど股間ヒートしたオーナニック農法使用の素材活き活き(あるいは逝き逝き)天然ライトノベルです。静謐なるムード漂うラストが賢者タイムのように見えてくるから不思議。ここまでイくともう気持ちイイよね。同レーベルの『ケモノガリ』といい勝負です。若年層を中心に超能力者が全世界規模で発生している近未来が舞台であり、フル武装のテロリストが飛び込んできた教室(正確に書けば理科室)には超能力を持った生徒が複数存在していて、隙を見て逆襲しようとする展開なんかも仕込まれているわけですが……正直言って本書、アクションものやバイオレンスものとして読むと少々地味です。超能力が出てこない(主人公のスペックはほとんど超能力者並みだが、一応建前として)『ケモノガリ』よりも更にバトルのスケールが小さい。暴力描写も粘着質なところがなくてごくごくあっさりしている。あらすじを読んで「リア中どもが本職のテロリストたちを相手に壮絶な異能戦を繰り広げるわけだな」と思い胸を熱くしていると「あれれー?」って首を傾げるハメになるので、注意。むしろ、「普段妄想している事態が現実で起こったとき、少年は本当に勇気を振り絞ることができるのか?」という心理的な部分が読みどころであり、湧き上がる不快感を捻じ曲げ、絶望を叩き折って疾走するストーリーに固唾を呑むこと請け合いです。あと、主人公の好きな子がテレパスで、オッパイをガン見していたことなんかが相手にバレてしまうあたりにもニヤニヤすること請け合い。

 内容自体はノンストップ・サスペンスなのに文章がいささかモッサリしているせいで勢いが減速してしまう場面があることや、どうしても超能力関連の描写で説明臭さが強くなってしまって物語への集中力が散り気味になること、「いくらなんでもムチャクチャだろこいつ……」なキャラが出てくること、結末に読み手が納得するか「突飛過ぎる」と難色を示すかで賛否両論になりそうなことなど、いかにも新人らしい荒削りな箇所が山盛りとなっているが、個人的にはそのへん些細な問題であった。「中学生レベルの妄想」を、妄想する当人以外が賞味してもなんとか楽しめるよう工夫を凝らして調理した痕跡があちこちに窺え、素直に「よくやってくれた」と感謝を述べたくなる出来になっています。また、フィクションのお約束たる「主人公補正」という御都合主義についてとことん突き止めた作品であるとも言える。何度も読み返したくなるタイプの本ではないかもしれません。しかし、「一度きりの面白さ」だからこそ、却って掛け替えのない興奮を味わえることもあります。そう、一度だけ、一度だけでいい。ガガガ文庫のライトノベルをまだ一度も手に取ったことがない人は、たった一度のお試しのつもりで本書を読んでみてほしい。そうしたらきっと、分かるはずだ。「ああ、ガガガってこんなんなんだ」と。ええ、ぶっちゃけ、こんなんなんですよね……「ガガガの申し子」と述べるより他ない。

・拍手レス。

 ディエスのサブエピソードは、受容する順番によっても印象が変わりそうですね。
 その意味では、発表順に体験できた我々07年版ユーザーは勝ち組……なの…かなあ。

 勝ちか負けかで言ったら痛み分け。

 鷲介afterのみさきちがすごく気になる。というかそこはしっかり書かないといかんと思うのだが焼津さん的にはどうなの?
 辛気臭い想像しか浮かばないっスね。三人全員が傷つくだけの展開になりそう。ゆえに見たい。

 レイセン2の発売日も決まったのでマスラヲから読み直してましたが、やっぱり5巻が異常過ぎる。
 4巻ラストから5巻に掛けての跳躍っぷりは『ノノノノ』で言うとアナル皇帝レベル。あんなに面白くなると誰が予想し得ただろう。


2010-08-22.

・本編としては8年ぶりとなる新刊『キマイラ9 玄象変』を買ったその日に読み終えた焼津です、こんばんは。

 玄造さんの長い長い昔話もやっと終わり(語り残した部分はあるが、現時点でこれ以上語るつもりはない――という感じで終わる)、やっとこさストーリーは現代に復帰する。龍王院弘の出番もあったけど、相変わらずほとんど動きのないままページが尽きてしまって「次までまた何年も待たされるのか……」と思い憂鬱になる。先月刊行された『天海の秘宝(上・下)』は、内容はともかく分量に関してはまずまずだっただけにより強く不満が漂う。ちなみに『天海の秘宝』、終盤の展開はどうかと思ったが、盗賊団の連中があっさり殺される噛ませ犬とならず、どいつもこいつもも死ぬ寸前までしぶとく足掻いてくれる点は良かった。富樫倫太郎の『女郎蜘蛛』とか『蟻地獄』とかを彷彿とさせてくれました。いっそ夢枕獏も伝奇要素ナシの江戸暗黒小説書いてくんないかな。

“洋画の吹き替え=お子様向け”はもう過去の話…洋画レンタル、字幕派?吹き替え派?(痛いニュース(ノ∀`) )

 当方は断然字幕派です。だって吹き替えじゃ「ファック!」とか「ファッキン!」みたいな洋画定番のセリフが聞けないじゃないですか。「クソ!」とか「チクショウ!」じゃ今ひとつ盛り上がらない。あと、712の「ドイツ軍将校が英語で喋るだけで萎える」にも頷いた。『ワルキューレ』はそれが原因でリタイアしてしまった次第。そのくせ『300(スリーハンドレッド)』の「でぃす、いず、すぱるたぁぁぁぁ!」は平気だったりと、割合いい加減な感覚ですが……VHSと違ってDVDは1本でどちらでも好きな方が観れる(聴ける)から、両方試してみて合う方を取ればいいんじゃないですかね、詰まるところ。昔は字幕版を借りようと思ったのに間違えて吹替版を借りてきちゃったりとか、字幕版がすべて貸出中で吹替版だけ残っていてどうしようか煩悶したりしたなぁ、懐かしい。

light、『Dies irae 〜Acta est Fabula〜』のルサルカ×ロートスムービー

 「感謝キャンペーンパッケージ発売記念」と銘打ってますが、どちらかと言えばカップル人気投票記念、ひいてはDies完結記念ムービーといった風情。ノリとしては香純ラジオとかベアトリスラジオとかあんなの。ルサルカとロートスが感謝と総括を行っています。他のキャラは本編のセリフを使い回して繋いだ模様。オチは予想通り「シュピーネェ……」でした。彼もすっかり弄られキャラとして定着してきた印象がありますね。次回作発売までの穴埋めとしてシュピーネラジオでもやらないかしら。毎回ゲストを拘束してお連れするも、お帰りの際にあっさり引き千切られてミギャアアな感じ。

・あと昨日、正田崇がTwitterでDies中心の質問を受付していた模様。結構な数の回答がありますので、詳しくは実物を見に行かれたし。作品中では明かしきれない設定が解説されていてかなり興味深い。個人的に「ほう」と思ったのは、ジークリンデがどのくらい先まで未来を視ていたか、というもの。『Verfaulen segen』は螢ルートに直結していて、「スケルツォ流出で黄金・水銀が総アボンするところ」までは視ていたらしいが、「その後のちゃぶ台返しまでは読みきれていない」とのこと。リンデちゃん空回りか……というより、つくづくニートの反則ぶりがえげつない。次回作の「神」は「メルがカスに見えるくらい強いです」っつー話だが、それをどうやって表現するつもりなのか。興味が尽きませんな。

・拍手レス。

 焼津殿、正田卿のtwitterが色々裏話を語りまくっておりますぞ。あとlightの方でムービーが配信開始。
 よもやルサルカ祭りがここまで続くとは。ある意味星を掴みやがったよこの魔女。
 11eyes-Resona Forma-のリーゼロッテといい、魔女へスポットライト当てるのが最近のトレンディなのだろうか。

 執念深いロリビッチババアというキャラでここまで昇り詰めるとはさすがルっさんパねぇ。魔女……とは少し違うけれど藤原祐の新作『煉獄姫』に出てくる最終鏖殺兵器な毒々ロリ姫もかなり可愛いです。

 Dies iraeの記念ムービー見ました?あれで終わりかと思うと哀しいですね〜
 「感じさせてもらおうぜぇ、まだ始まったばかりじゃねぇか」から幾星霜。遂に閉幕(カーテン・フォール)の時が近づいているのだと実感致します。

 Diesですがまだボイスドラマは残ってましたねw
 それにしてもDiesのボイスドラマ、というかサブエピソードは散らばりすぎ。カウントダウンボイスやショップ特典ミニドラマ、香純ラジオやベアトリスラジオはまだしも、Before Storyの3話とOriginal Short Storyの2話は見逃せないし、『Wehrwolf』『Die Morgendammerung』『Verfaulen segen』、それに「ボーナストラック〜1945〜」『Neuen Welt Symphonie』『Zwei Wirklichkeit』もファンなら聴いておいた方がいい(『ein jagen Nachtmusik』の「Anfang」は本編に組み込まれたから別にいいや)のに、あっちこっちバラけちゃってるのが難点。


2010-08-18.

・タイトルとサークル名が英数字で表記された同人誌は洋書っぽく見える。こんばんは、とらのあなの通販でじっくり数時間かけて同人誌を吟味し選定した焼津です。

 幸い「迷っているうちに売り切れる」ということもなく、買いたいものはすべて注文し終えました。同人誌は割高だし、表紙に釣られて泣かされることもしばしばなので、なるべく手を出さないように心がけていたのですが……「男は30越えたら同人ね」な『のりりん』気分でついフラフラと虎穴に入り込んでしまった次第。30越すのはもう少し先だけど、ここはひとつ前借り的なアレで。1万円以上なら送料無料になるものの、さすがにそこまで買いたい本はなかった。正確に書けば「なかった」というより「見つからなかった」ですな。表紙とサンプルだけを頼りに、自分の好みに合う同人誌を探すってのはなかなか骨が折れる仕事です。とら通販にamazonみたいな「この商品を買った人はこんな商品も買っています」機能が実装されていたらあるいはもっと恐ろしい買い物になっていたかもしれない。あれはつくづく悪魔の機能だと思います。普段チェックしていないようなジャンルに属する商品のページであれを眺めると新鮮な情報だらけで地獄の蓋が開くというか財布の底が抜けるというか。

ことわざの一部を興奮にかえると変態になる (ニュース速報BIP)

 予想を超える汎用性の高さに興奮しました。「臭いモノに興奮」とか、元のことわざとはまた違った深みが湧いてくる。

・榎木津無代の『ご主人さん&メイドさま2』、相変わらず勢い任せでやってることが前作とほとんど一緒な気もしますけれど、自分でも不思議なくらい没頭して楽しむことができた。

 格別キャラがイイとか、設定がイイとか、ましてやストーリーが面白いというわけではない。若干のパロディとネットスラングを交えた小ネタも極めて秀逸――とまでは行かず、無呼吸連打で繰り出される主人公の変態的活動の数々も「笑える」というよりは「疲れる」です。とにかく無闇にテンションが高くて、おバカ系ライトノベルにしては読むのに労力を要するっつーか、エレジードレインを受けながらページをめくっている気分に陥る次第です。何せ、今回の敵役は「ラスプー・チンチコ」という名前で、しまぱんを変態仮面の如く顔に被った挙句「プ――チンチンチン!」と笑うんですよ。他も似たり寄ったりだから、真夏のガリガリ君みたいにSAN値が削られていきます。一言でまとめると、「暑苦しい」。これを休憩ナシで読み通すのは、吸精月光を浴びながら暴れ回ることができるシュライバー並みの狂的元気がなければ難しい。あまりのくだらなさに疲弊し、疲れ切ったおかげで逆にホッとしてストレスが抜けていくような、なんとも形容しがたいサウナめいた魅力。読み終えて心地良い疲労感が湧き上がるか、それとも漠然たる徒労感が漂うかは人によりけりながら、当方は是非とも3巻が読みたいと思った。あと同月刊行の『ソードアート・オンライン5』は依然としてキリト女殺し無双でした。

・拍手レス。

 焼津十選を読んでおります。今のところ戻り川心中と第三の時効がなかなかのヒットでした。次は王妃の離婚だ…
 『王妃の離婚』は大長編が多い佐藤賢一作品の中で比較的スマートなボリュームにまとまった傑作ゆえ重ねてオススメしたい。ちなみに『戻り川心中』というか“花葬”シリーズは全10編構想の連作で、講談社文庫版や光文社文庫版は5編のみ収録していますが、ハルキ文庫版は更に「菊の塵」「花緋文字」「夕萩心中」の3編も収録している(講談社文庫版および光文社文庫版は『夕萩心中』所収)ため「ハルキ文庫版が完全版」とも言われますが、残りの「桜の舞」と「夜の自画像」が漏れているので厳密には完全版じゃありません。「桜の舞」は予告だけで結局書かれなかったものの、「夜の自画像」は『幻影城の時代 完全版』にて発表され、『ザ・ベストミステリーズ2009』にも掲載されました。いつか「桜の舞」を加えた真の完全版『花葬』が出ることを夢見るばかりです。


2010-08-13.

・GA文庫の『くりぽと すくすく☆魔法少女塾』(全4巻)というシリーズがなかなか良いロリコンノベルで堪能した焼津です、こんばんは。

 タイトルは「Qliphoth」を可愛らしく表記したもの。退魔師の家系に生まれついた現役高校生の主人公が、魔女を育てる私塾でバイトすることになって……っつー、『ロウきゅーぶ!』を現代ファンタジーに置き換えたような話です。良い子揃いの『ロウきゅーぶ!』に対して『くりぽと』は問題児ばかりであり、主人公が馴染むまでに「このクソガキどもがぁ!」な過程が用意されていたりしますけれど、そこさえ凌げればあとはまったり楽しめる。おバカで生意気だけど愛情に飢えていて2巻では早くも主人公と同衾する星神りりすがなんともエロ可愛い。1巻の前半では「真性ロリコンストーカー」呼ばわりするほど本気で嫌悪していたのに、2巻以降は口じゃあ「真性」だの「ロリコン」だのと罵りつつも平気で膝に座ったりする、そのギャップに胸くすぐられる。主人公が真性の扉を開いてロリコン道に覚醒する前に早期終了してしまい、「りりすに3回キスされたら魂を奪われる」というスリーストライク制は結局大して意味のない設定に成り下がってしまったが、いろいろとアンバランスなところが多かった前作『超自宅警備少女ちのり』よりも随分な進歩が窺える出来で、次回作も期待したくなりました。ニャル子もTVアニメ化するっていうし、GA文庫はレーベルとして地味に伸びてきている印象。

ライアーソフトの新作『紫影のソナーニル』で桜井光とAKIRAのコンビがふたたび

 知らない間に情報が出ていた。シャルノスがきっかけで桜井スチパンにハマった身だから朗報です。しかし毎年11月発売というのもすっかり恒例になってきましたね。相変わらず半端じゃない安定感だ。

ニトロプラス公式アンソロジーディスク『装甲悪鬼村正 邪念編』、コミックマーケット78にて販売中

 地方民ゆえ指を咥えて報告レスを眺めるばかり。一般流通版はamazonやsofmap等で予約が始まっておりますので、早速ポチりました。パッと見た感じ10パーセント値引き&送料無料なamazonが一番オトクでしたが、konozamaが発動しないかどうか心配だったことと、sofmapのポイントが溜まってきていることから迷った末にソフの方を選択。しかしアフつばがまだ片付いてないから、届いてもすぐにプレー開始できるか微妙なところだ。

light、『Dies irae』累計5万本突破感謝キャンペーン版パッケージを公開

 もう何のゲームか分かんねぇなコレ。あくまでパケ絵が新しくなるだけで、中身はパッチを適用した通常版プラスおまけのドラマCD。ゆめゆめFDと勘違いして購入されませぬよう注意されたし。それにしても最近、ルサルカに対してヴィクトーリア(勝利の女神)が微笑みすぎではないか。香純との差の付き方は慢心、環境の違い程度では説明できませんよ。

『マルドゥック・スクランブル』新装版について(主にライトノベルを読むよ^0^/)

 まとめると、

1. 『マルドゥック・スクランブル』のストーリーはそのまま、文章を全面的に改稿した「改訂新版」を出す。
2. 「改訂新版」はハードカバー版(全1冊)と文庫版(全3冊)の2バージョンを刊行する、それぞれの合計金額はほぼ一緒。
3. ハードカバー版は若干ダイジェスト加工されているが、文庫版は全文ノーカットで収録する。
4. イラストなしのハードカバー版、イラストありの文庫版で客層を分ける。
5. ハードカバー版は当初8月下旬の発売予定だったが、延期して9月になる、文庫版は10月を予定している。

 こんな感じか。マルスクは好きな作品なのでリライト版を出すなら是非買いたいところだけど、こういう売り方されるとどう購入すればいいのか迷いますな。分厚い本スキーとしては全1冊のハードカバーに心惹かれるが、文庫版も文庫版で「全文ノーカット」の誘惑を仕掛けてくる。何ならまとめて買ってもいいかな、とグラつきかけたが、「5.」の事実を知って気が変わった。なにさりげなく延期かましてくれちゃってんの……ハードカバー版は『神の棘2』と一緒に予約したから、そっちが遅れると釣られて『神の棘2』の発送も遅れるじゃないですか。早川書房は一度告知した発売予定日や予定価格をちょくちょく変更することがあるため、予約を入れる際は注意が必要。1680円で予約した本が2520円になったときはさすがに愕然としました。今回の件に関しては「改稿程度なら延期することもなかろう」と安易に信用した当方が甘かった。正直、早川の予定はライトノベルで言うとMF文庫J並みにアテにならない(そのMF文庫Jは今月もちゃんと2作品延期しています)。早川クオリティなら「『神の棘2』も延期して結局マルスクのハードカバー版と同時発売」というルートもありうるので、まだ焦る段階じゃありませんが……いざとなったらハードカバー版はキャンセルして文庫版だけ買うことにします。やっぱり四六判は嵩張るし、なるべく所有冊数を減らしたいところ。

Frontwingの10周年記念プロジェクト『グリザイアの果実』始動

 そうか、フロントウィングも今月で10周年になるのか……ブランドデビュー作の『カナリア 〜この想いを歌に乗せて〜』は片倉真二の絵に惹かれたものでした。買わなかったけど。ここのソフトはSurviveとか姉妹ブランドの分を含めても4本くらいしか買ったことがなく、その半数は今も積んでいて、もう半数はプレーしたけど完クリせずに途中で投げ出してしまった。なので別にファンとかそういうわけでは全然ないんですが、「10周年」と聞くと妙に感慨深いのだから不思議。久々に藤崎竜太がライターをやるみたいなので、とりあえず注目しておこう。でも今冬予定だからって『余寒お見舞い申し上げます。』みたいな仕上がりになるのだけは勘弁な。

・拍手レス。

 エスターをご覧になられていたとは。核心の部分はエロゲーとかじゃ割とありがちかもしれないけど、実写で扱うとホラーになりかねない典型ですね。ともあれ脚本良し、役者の演技良し、女の子の可愛さも花丸な良作だと思います。
 エスターは終わってみると非常に均整の取れた素晴らしい映画だと分かりますが、観る前に気付くのが難しい作品ですね。それにしても原題の "Orphan" を見るたびにオーフェンを連想してしまう……「我は放つ怒りの足刀!」


2010-08-08.

・前半が少々タルかったせいで放置していた『エスター』、片付けるつもりで再生した後半が滅法面白くて引き込まれた焼津です、こんばんは。

 というか、何なのamazonのこの価格……75パーセントオフって……そんなに売れてないのですか? 発売日に3000円弱で買った身としては涙目にならざるをえない。ともあれ『エスター』、分類すればサスペンスに当たる映画ですが、可能ならば予備知識まったくナシで見ていただきたい。度肝を抜くってほどじゃないかもしれませんけれど、終盤の展開に「おおっ」と来てハラハラすること請け合いです。登場人物に「あー、違う違う、そうじゃない! それはマズいって! もっとうまく立ち回らないと!」みたいな感じでツッコミを入れながら鑑賞するのが好きな人にはうってつけでしょう。

Navelの『俺たちに翼はない AfterStory』、「その後のタカシ」と「その後の鷲介」をクリア。

 一章の後日談と二章の後日談です。どちらも様々なキャラとの掛け合いを楽しむような日常イベントが中心で、さほどストーリー性は高くない……と申しますか、「その後の鷲介」はぶっちゃけ「フラグの折れたエンジェル」を膨らませた内容で、当初はガッカリとまで行かないにしても少しアテが外れた感じがした。冷静に考えればあれ、独立したエピソードとして消化するには異色というか据わりが悪い代物なんで、鷲介の後日談に組み込むより他にないんですよね。ごくごく納得できる処置、と言い切っても差し支えない。追加部分もそれなりに多いので文句が出るほどでもなかった。というか日和子さんが可愛すぎて細かいことはどうでもよくなった。「その後のタカシ」にしろ「その後の鷲介」にしろ、今やってる「その後の隼人」にしろ、主人公とヒロインとのイチャイチャ描写がさりげなく濃厚で笑み崩れずにはいられない。エフッエフッエフッ、と瞳孔が開き切る勢いで堪能させてもらっています。ああ、一ユーザーとして俺翼のこういう面が見たかったんだ。プレリュードに比べればマシだけど本編と比較すると短いとか、全体的にノリがヌルくて弛緩しているとか、そういうのは脇に措いてしまって構わない。キャッキャウフフこそ正義。惚気こそ権能。「エロゲーのシナリオはもっとバカップル期間を延長して描くべき」って昔から常々主張してきた身としてはたまらぬ御馳走であります。胸の奥から湧き上がる精神的な甘ったるさに酔い痴れることしきり。まだ途中なので確定的ではありませんが、「フルプライスだしアクチ付きなんで儲以外には薦めにくいけど、儲ならとりあえず買っとけ。少なくともプレリュードよりはコスパもいい」って結論に落ち着きそうな気配です。うん、まあ、普通よりやや上寄りかな。

・ちょっと前に今野敏の『潜入捜査』シリーズ全6冊をまとめ買いしまして、中身はまだ読んでないのですが、最終巻の「作者の言葉」に「初出のときは、バイオレンス物のノベルスが全盛の時代で、とんでもないタイトルをつけられ、表紙には上半身裸で、髪の毛を逆立てたぎょっとするようなイラストが描かれていました」とあり、旧タイトルが不本意なものだったと知って軽く驚きました。ちなみにシリーズの旧タイトルは、1巻から順に『聖王獣拳伝』『聖王獣拳伝2』『覇拳聖獣鬼』『覇拳必殺鬼』『覇拳飛龍鬼』『覇拳葬魔鬼』でした。確かにひどい。でも、てっきり作者がノリノリでわざとこういう題名を付けているのかと思ってました。

 作品のタイトルはもちろん作者自身も考えるものだけれど、編集者や出版社の意向で決められてしまうこともしばしばあるそうです。林トモアキも『戦闘城塞マスラヲ』の「戦闘城塞」部分は勝手に付けられたのだとか。復刊や再刊で題名が変更になるケースも案外そういう事情が絡んでいるのかもしれない。ただ、普通にタイトルを考えるの苦手な作家もいるし、一概に「作家以外が題名を付けるなんて……」とも責められない。某ハードボイルド作家の場合だと担当編集者にタイトル案を出させ、どれもパッとしないので「もっといいの考えてくれ」とせっついた末に送られてきたものをやっと採用した、なんてエピソードもありますし。他にも麻耶雄嵩なんかはタイトル付けが苦手なことを公言しており、『母さん、この酒は強いね』や『海峡に吠える』、『東京育ち』、『窓際族の憂鬱な午後』など、毎回いい加減な仮タイトルを公表するほどです。なんでそんな仮タイトルなの? と訊かれると「受け狙いです」と即答する始末。特に『母さん、この酒は強いね』は「お酒を飲む話にしようと思ってたけど、なりませんでした」とコメントしたり……これで十年来の熱心なファンがごろごろいるのですから大したものだ。

・作:乙一、絵:小松田大全の『なみだめネズミ イグナートのぼうけん』読んだー。

 ぼくのあし、うごけ!

 絵本と漫画を折衷したような一冊です。ほんの100ページ足らずで、文章だけ抜き出してまとめたら短編程度のボリュームにしかならないが、イラストと文章が互いを補い合うようにして描かれているため、読後の満足感はまずまず。「乙一」の名前に釣られて衝動買いしたものの、それは正解だったと断言し得る。いつも金欠だった学生時代なら立ち読みで済ませていたに違いないけれど、イイ話はやっぱり自宅でゴロリと寝っ転がって楽しみたいものですな。

 泣き虫で臆病なネズミのイグナートが、生まれてはじめてできた友だちである人間の女の子ナタリアを救い出すために奮起する、それだけと言ってしまえばただそれだけの話。イグナートは臆病だから怖気づいて「ナタリアのことはわすれてしまおう」と逃げ出しかけることもある。彼女を救うためには、彼の母親を食べてしまった、この世で何よりも恐ろしい「猫」という存在に立ち向かわねばならない。絵柄はコミカルだけど、状況は過酷です。ちっぽけで、みすぼらしくて、いつもビクビクして涙目で震えているネズミが勇気を振り絞って、孤立無援の囚われ少女を解き放とうと七転八倒する様は、ベタベタながらも目頭が熱くなる。歳を取るとこーゆーのにめっきり弱くなるんですよねぇ……。

 立ち竦みそうになる己を叱咤して、

 さあ ぼくのあし うごけ!
 いま うごかなかったら ぼくは ゆるさない!

 と男の子魂を炸裂させるイグナートさんの雄姿に目尻が濡れた。

 端的に書けば自己肯定の物語なんですけれど、こうも直球だと「清々しい」と素直な感想を述べるしかありません。読み終わった後でもう一回読み返したくなる、望外に素晴らしい出来でした。

・拍手レス。

 よりにもよって抱き枕……っ!せめて、せめてタペストリーかボスターで……っ!<ルサルカ
 いっそ布団カバーにすれば、ナハツェーラーの水底に沈む気分が味わえたのではなかろうか。


2010-08-04.

・「汚して、堕として、僕だけの玩具にしてやる」な『PandoraHearts(12)』にザ・ワールドを喰らった気分の焼津です、こんばんは。

 な……何を言ってるのかわからねーと思うが、当方も何が起きたのかわからなかった……「絵が好み」という理由だけで斜め読みし続けて最近ストーリーがよく分からなくなってきたパンツだけど、久々に大きな衝撃を味わいました。マジかよエイダえろすぎじゃん。相対的にアリスの印象がガンガン薄まっていくが、剥製だろうと構わず齧ってみるその食いしん坊魂は某10万3000冊の人にも負けていない。だから待っていればそのうちアニメ2期目が来るさ、きっと。あと、今回の巻末おまけマンガでは幼き日のオズ、エイダ、ギルの三人組をふたたび見ることができてとってもオトクでした。

麻耶雄嵩の新作『隻眼の少女』、9月発売予定

 今年の大本命。無論、速攻で予約を入れました。この作品、ファンは何年待たされたことか……「352ページで1995円(税込)って少し高くね?」なんて疑問も泡のように消えていく嬉しさです。あと滝本竜彦の『僕のエア』も遂に出るみたいですよ。

・先月に衝動買いした『万能鑑定士Qの事件簿(T〜W)』が「トリビア満載の通俗ミステリ」といった感じでなかなか面白く、期待以上に楽しめたのですが、そもそもこのシリーズを4冊まとめて買った理由はカバーイラストに惹かれたからで、イラストを担当しているのはこちらのページにもある通り清原紘――乙一のコミカライズを何度か手掛けた人ですね。

 で、その清原紘の新刊が『コインランドリーの女』というギャグ漫画なんですけれど、タイトルをぐぐったらまったく同じ題名のAVが引っ掛かって噴きました。『時間封鎖』(同題の陵辱ゲーがある)に比べたらまだマシな範疇の被りかもしれませんが、一般向けなのに検索するとアダルトが出てくるってのは気まずいというか難儀だよなぁ。ちなみに『万能鑑定士Qの事件簿』は文庫版のほか『万能鑑定士Q』というハードカバーも出てますが、こちらはシリーズ開始を記念して発刊されたもので、内容は文庫版のTとUに相当します。つまり合本。amazonレビューにも書いてあるようにTとUは続きモノだから1冊にまとめた方が自然なのですが、ぶっちゃけ高いし、V以降は出さないみたいなので基本的にスルーして構わないだろうと思います。興味のある方はまずTを読んでみてください。そしてポルナレフの気分を存分に味わうべし。

・拍手レス。

 西尾ちゃんは去年末の時点で今年のスケジュールは全部埋まってたという噂ですし、来年も余裕とか全くなさそうですね。ていうか同時進行が2桁届きそうってどういう事なんだろうか・・・
 西尾も来年で30だけど、まだ20代なんですよね……つくづくこの作家自身が化物じみてやがります。

 あれ?アフつばは「二人でネタ出し」→「東ノ助がプロット作成(どの程度かは不明)」→「王が文章として仕上げる」って聞いたような。でもそれだと一年半というこの早さが説明つかん…………ッ!
 「王は自分でテキストを書くと納得行くまで手直しするので時間が掛かる」からまず東ノ助がベースとなる文章を仕上げた、というふうに聞きましたが、うろ覚えなので違うかもしれません。何にしろ納期に間に合わせたことは評価すべき。現在「その後のタカシ」を終えたところですが、思ったより短かった。内容はまずまず。

 lightでルサルカが面白い事にwwwあとルサルカ繋がりで動画紹介[鍵山雛の野望]87,108章等々で彼女大活躍してます。ひょっとすると最終決戦では練炭とタッグ組む可能性がありそうで今後が楽しみです。あと現在では、dies勢はルサルカのみプレイヤー側、マリィルートの三人+ベイが敵側という既知外な事になってます。
 コミケの出展情報がルサルカ一色すなぁ。

 そういえば村正もコミカライズが2シリーズやってますね
 両方とも単行本待ち。邪念編も出るしバルドにも参戦するしで追いかけるのが大変だ。


2010-08-01.

・「本当に発売されるのか、延期しないのか」と散々疑われた『俺たちに翼はない AfterStory』を無事ゲットしたけどあんまりプレーする暇がない焼津です、こんばんは。でも時間を見つけてちょこちょこやってる。

「あ、すみません。グレタなんとかは評判良くなかったんで、今回なかったことに」

 冒頭のアテンションからぶっちゃけすぎで笑った。今回は王雀孫の役割がネタ出しの手伝いと推敲だけで、テキスト自体はほとんど東ノ助が執筆したという噂(だからこそ本編から1年半という王にあるまじき異例の早さで発売されたのだ、とも)だったから実のところそんなに期待を寄せていなかったのだが、正直もっと東ノ助を信用すべきだったかもしれない。ノリは本編より少々ゆるいというか砕けた感じになっているが、おかげで寛いでプレーできる面もあり、これはこれでいいかも。恋人同士になってからのイチャイチャ惚気イベントがたっぷりと拝めるのはやはり嬉しく、頬が緩んでしまうわー。期待しすぎなければ充分楽しめそうな感じだ。

・代わりに、というわけではないが、『猫物語(黒)』は読み終わった。

 華麗に整合性を無視するなど、力業が冴え渡る一冊。『傷物語』以降顕著になってきているメタネタ(アニメ版では〜みたいなことを本文の中で触れる)が相変わらず健在で、さすがにここまで来るとくどすぎる気がしてならないが、細かいことはいいのだ。それでいいのだ。それでいいんだ。妹がもう少しで兄を殺害しそうになっていた(凶器はバール)けど、そんなことは気にすることじゃないんだ。西尾は上遠野ネタ好きだから「百面相のバール」とかダジャレを言うんじゃないかって、そんなことを思って予想が外れてガッカリしたけど、とにかく今回は月火ちゃんのプッシュが目立ちましたな。『偽物語(下)』のあまりにもあまりな目立たなさを反省した結果だろうか。掛け合いの描写などは今回も軽妙で楽しいことは楽しかったが、『化物語』の頃に比べると手癖で書いている印象が強く、やや一本調子になってしまったきらいはある。“物語”シリーズの執筆は趣味だなんだと言いつつ、あれだけの密度とテンションを保つのはやっぱりキツいんでしょうね。

 ちなみにこの“物語”シリーズ、刊行順は『化物語(上・下)』→『傷物語』→『偽物語(上・下)』→『猫物語(黒)』ですが、時系列に沿って並べ替えると『傷物語』→『猫物語(黒)』→『化物語(上・下)』→『偽物語(上・下)』になります。『傷物語』が春休みのエピソードだったのに対し、『猫物語(黒)』はGWのエピソードを綴っており、『化物語(下)』に収録された「つばさキャット」の前日譚めいた内容に仕上がっている。アニメのBD・DVD最終巻も「つばさキャット」の後半なんで、タイミングを合わせる感じになってますね。『傷物語』同様に羽川翼以外の主要ヒロインズがほとんど登場しない構成ゆえ、アニメ版の『化物語』でファンになった人からすると少々寂しく地味なエピソードに映りそうだが、語られるかどうかも怪しかった「悪夢のGW」がようやくこうして形になってくれてホッとした古参も多いのではなかろうか。タイトルの『(黒)』から推測される通り『(白)』も近く刊行予定ですが、GWのことは黒で一応落着しましたから、白は『偽物語』前後の話になるかもしれない。詳しいことは不明。巻末広告はストーリーに関して一切触れておらず、ただ10月に出す予定と告げているだけ。作者自身は「10月刊行は無理」というようなことをコメントしていましたので、せいぜい年内発売を願うとしましょう。

 そして年末から怒涛の“物語”ラッシュがスタートする。八九寺真宵の後日談とおぼしき「まよいキョンシー」を収録する『傾物語』、神原駿河がエクストリームな活躍を見せそうな「するがデビル」収録の『花物語』、千石撫子がラスボスとして真価発揮するだろう「なでこメドゥーサ」を収録する『囮物語』――以上3作のタイトルにはすべて「化」の字が入っており、「『化物語』の派生エピソード」を強調しているようなムードが漂います。そして「しのぶタイム」の『鬼物語』と「ひたぎエンド」の『恋物語』で“物語”シリーズを締めくくるみたいです。たぶん5作それぞれが1冊完結だと思いますが、『猫物語』がいつの間にか2冊に膨らんでいたことを考えると、正直どうなるか分かりません。とりあえず「2011年12月で終了」という予定は鵜呑みしない方が吉です。「3年以内にまとまれば御の字だな」程度に思っておくべき。

真・恋姫無双 萌将伝の陰に、炎上しない地雷が一つ(ニロカンまとめブログ)

 パッケージの表を堂々と飾っているキャラが本編にまったく出てこないとは、なかなか思い切った実験をするものですね。「ゲシュペンスト・ヘルディン(存在を無視された少女)」とでも名づけようか。あるいは「隠れすぎヒロイン」。薄紫色の髪をしたこの子の正体はある程度推測されていますが、本編でネタにしなかった理由はいったい何なのか。「不在が存在を際立たせる」系の試みなのか。疑問が募るばかりだ。

・今月の購入予定。

(本)

 『音もなく少女は』/ボストン・テラン(文藝春秋)
 『神歌』/山下卓(徳間書店)
 『キマイラ9 玄象変』/夢枕獏(朝日新聞出版)
 『STEINS;GATE 連鎖円環のウロボロス1』/海羽超史郎(富士見書房)
 『五番目の女(上・下)』/ヘニング・マンケル(東京創元社)

 今月は「久々の新刊」ラッシュです。“フルメタル・パニック!”の最終巻『ずっと、スタンド・バイ・ミー(下)』も出ます。『音もなく少女は』は『神は銃弾』でこのミス海外編1位を獲得した(そして翌年の『死者を侮るなかれ』であっさりベスト20圏外に転落した)ボストン・テランの邦訳4冊目。前作『凶器の貴公子』が2005年8月刊ですから、ちょうど5年ぶりだ。訳者泣かせの非常に特徴的な文体で知られるテランは日本だとデビュー作の『神は銃弾』以外大して話題にならなかったが、個人的には神銃よりも2作目の『死者を侮るなかれ』の方が傑作だと思っている。今回の詳しいストーリーは知らないけれど、耳の聞こえない少女が銃を握る話らしく、テランらしい暴力と熱気に満ちた小説であることを期待しています。『神歌』は約1年半ぶりの新刊。そんなに久々ってほどじゃないけれど、「山下卓」という名前を見ただけでつい「久々の新刊だなぁ」と思ってしまう不思議。ハードカバーの単発長編みたいです。どんどんライトノベルから遠ざかっている気がしてならないが、正直もう果南云々に付き合うのも疲れてきたので近年の単発化傾向は歓迎したい。『キマイラ9 玄象変』はいったい何年ぶりだ? 調べたら約8年半ぶりでした、なキマイラ・吼シリーズ本編の最新刊。巻数表記は「9」ですが、新装版は旧作2冊を合本することで1冊に仕立てているので、本編のみに限れば17冊目、外伝も含めれば18冊目となります。関連シリーズの“闇狩り師”も合わせるともっと行く。このシリーズもそろそろ30年近いですね。当方が既刊をまとめて読んだのは3年前で、それでもだいぶ記憶が薄れかかっているのですから、リアルタイムで追ってきている読者ともなればさぞかし大変でしょう。amazonによれば232ページ――ソノラマ文庫に換算して1.5冊分という実に微妙なボリューム。きっと話もほとんど進まないのでしょうが、それでも買わずにいられません。

 『STEINS;GATE 連鎖円環のウロボロス1』はタイトルを見ての通りシュタゲーのノベライズ、であると同時に、「読みにくい」「分かりづらい」が合言葉だった海羽超史郎9年ぶりの新刊であります。まさかの復活に恐れおののくばかり。たぶん、作者が海羽でなければ、まだプレーもしていないゲームのノベライズなんてスルーしていたに違いない。819円(税込)という価格から結構なボリュームが見込めるのではないか、また「1」ということはそう長くないブランクを置いて「2」も出すつもりじゃないのか、と期待が膨らむ。内容に関しては「ゲーム本編とは似て非なる世界線で語られる」とのことで、どうやら忠実なノベライズではなく、海羽イズム満載のパラレル的な代物になりそう。果たして海羽の文章は9年の時を経てちっとは読みやすくなっているのだろうか。戦々恐々としております。『五番目の女(上・下)』は3年半ぶりのヴァランダー・シリーズ。ヴァランダー・シリーズは原書だと全10作で既に完結済ですが、これは6作目。日本での完結はまだまだ先ですね。最近何かと話題になっているスウェーデン・ミステリの先駆的存在であり、地味なストーリーの警察小説ながらもじっくりと読ませます。シリーズ通してヴァランダーの人生が進行していくため、いきなり最新刊を読むよりも最初から手を付けていった方が宜しいかと。細かいネタが次の巻に引き継がれている、なんてこともしばしばありますし。かっこいい刑事のスカッとするような活躍をお求めならオススメしにくいものの、ちょっとダメっぽい中年オヤジが哀愁を漂わせながら頑張る話に肩入れしてしまう方には是非とも推しておきたい。しかし歳を取ると警察小説が無性に面白く感じられるのはなんででしょうね。ほか、有川浩の『阪急電車』が文庫化。絶版で入手困難だったバルガス=リョサの『緑の家』は2分冊(上下巻)で岩波文庫から再刊されます。全1冊の新潮文庫版を持ってますけど、古本屋の廉売コーナーで買った奴だから状態が悪いし、この際買い直そうかな……と検討中。でも分冊されているのが心理的にネックだったり。800ページ超えてるから仕方ないっちゃ仕方ないが、『幻のアフリカ』みたいな男気を見せてほしかった。

(ゲーム)

 『STEINS;GATE』(ニトロプラス)

 本当はノベライズ版よりも先に出るはずだったんでしょうね……なのにアクチ導入のためか何なのか、延期してくれやがって移植版の発売の方が後になってしまった。ともあれ、コミカライズは2シリーズが並行して連載されるわ、キャラソンは8枚も出る予定だわ、アニメ化も決まるわで、依然として勢いの衰える兆しを見せない『STEINS;GATE』。いよいよPCでプレーできるとあって感無量です。シュタゲ目当てにXbox買おうかな、って何度か迷いましたからね。最近のニトロはゲームシステム以外に関しては不安要素がないので期待させてもらいます。逆に言うと、やっぱりシステムが懸念材料なんですよね……これでまた例によってモッサリ挙動のゲームに仕上がっていたら泣きますよ。当方がかつて『CHAOS;HEAD』を回避した理由は内容への不安ではなく体験版のあまりにもあまりなモッサリ加減にストレスを覚えたからでしたし。シュタゲの他は『装甲悪鬼村正 邪念編』(声が出ます、注意)一般販売分を押さえる程度かな。DVDは『serial experiments lain』の廉価版がマストバイ。

・拍手レス。

 に、西尾維新…西尾維新っ!
 いくら『刀語』(12ヶ月連続刊行)の実績があるからって無茶というか過労死しかねないペース。あと著書がそろそろ50冊に到達しそう(『めだかボックス』を含めない場合)ですね。


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