2010年4月分


・本
 『零崎人識の人間関係(全4冊)』/西尾維新(講談社)
 『ストップ!!ひばりくん!コンプリート・エディション(1〜3)』/江口寿史(小学館クリエイティブ)

・ドラマCD
 『Dies irae 〜Verfaulen segen〜』(light)


2010-04-29.

・今更ながら読み終えた『ダブル・ジョーカー』が前作同様に安定した面白さで恙無く楽しんだ焼津です、こんばんは。

 一編一編は「飛び抜けて凄い」というわけでもないのですけれど、ちょっとずつ趣向を変えて読ませてくれることもあり、一冊あたりの満足度はなかなかのもの。ライバルが登場してあっさり退場する表題作といい、微妙にお約束やタイミングを外してくるあたりが心憎い。第一次世界大戦期の話題にも触れる「柩」は特にまとまりが良かったように思う。長らくマイナー作家として地道に活動してきた柳広司もこの“D機関”シリーズのおかげでだいぶ評価が高まったみたいで他人事ながら嬉しいかぎりだ。来月には新刊『キング&クイーン』(新シリーズ?)も出るようで楽しみ。

アワーズ掲載の『それでも町は廻っている』TBSにてTVアニメ化決定!(今日もやられやく)

 それ町がアニメ化か……複雑な気分。しかし「それまち」と略すとたまに『それは舞い散る桜のように』と間違えそうになる。

・江口寿史の『ストップ!!ひばりくん!コンプリート・エディション(1〜3)』読んだー。

 1冊あたり1470円(税込)なので全巻揃えると4410円――値段を見ずに軽い気持ちでレジに運んだら仰天すること間違いなしでしょう。『ストップ!!ひばりくん!』とはかつて“週刊少年ジャンプ”に連載されて人気を博しながらも「悪名高いぶっちぎり最終回」(作者談)によって中断したまま再開の目処が立たないで現在に至っているギャグ漫画であり、近頃流行っている美少女と見分けがつかない美少年「男の娘」や「女装少年」を扱った、いわゆる“わぁい”系の源流に当たる一作でもあります。当方は今まで読んだことなかったのですが、さすがにタイトルくらいは知っていました。しかし掲載時期を見て驚いたの何の。初回がジャンプに載ったのは1981年……う、生まれる前じゃねぇか。確かに表現技法(特にドタバタコメディ的な演出)や作中の時事ネタは古臭いと思ったものの、まさか30年近く前の漫画だったなんて。せいぜい20年くらい前だと思い込んでいました。

 主人公・坂本耕作は身寄りを亡くし、母親の知人である大空いばりの家に引き取られることになった。大空家が「関東大空組」を構えるヤクザ一家だなんてことは、露ほども知らずに。彼を迎える三姉妹、つぐみ、つばめ、すずめのすべてが美少女だったが、誰よりも可憐で美しかったのはひばり――耕作と同い年の長男であった……という設定。つまり「女装少年」要素にプラスして「ヤクザ一家でドタバタ」が絡んでくる。そういう意味では「あまり男の娘ネタに徹していない」と言えるかもしれない。実際、耕作とひばりの関係は1巻から3巻までほぼ横這いで、ほとんど変化がありません。ひばりが冗談めかして迫る→耕作が慌てて逃げる・押しのける、ひたすらこの繰り返し。だんだんひばりに冗談めかした雰囲気がなくなっていったり、耕作も徐々にひばりに嫌悪感を覚えなくなっていったり、キスをしたりもするのだが、進展らしい進展は見受けられず、「恋愛モノ」どころか「ラブコメ」と評するのもやや躊躇われる。Wikipediaの記述によるともともとが「ラブコメのアンチテーゼとして描いたギャグ漫画」らしいですからね。三角関係やら何やらと恋のもつれを導入するエピソードもあるにせよ、あくまで「ヤクザの息子なのに女装が異様に似合う少年が中心となって引き起こされるドタバタ劇」ゆえ、今の読者が「男の娘モノ」を期待して読むと違和感が生ずるやもしれませぬ。昨今隆盛を極めている女装少年マンガの中で比較的ストひばに近い内容の漫画と言えば『プラナス・ガール』なんかがありますけれど、読み比べてみれば「需要の違い」が見えてきて面白いかも。この業界も随分な紆余曲折を経てきたものですな。

 「知ってるけど読んだことないなぁ」と済ませるのもなんだから、と一念発起して購入したものの、値段に見合う内容だったかと問われれば正直返答に困る。多少の加筆はあるにしても最終回がぶん投げであることに変わりはないし……ただ、「風化が早い」のが常識であるギャグ漫画のくせして今でもテンポ良く読めるあたりはさすが。『究極超人あ〜る』同様、経年劣化を押し返して余りある熱気と疾走感に満ちた作品であります。メインヒロイン(?)のひばりもさることながら、妹のすずめには現在もなお通用するであろう鮮烈なロリ可愛さが漲っている。「姉妹のような姉弟」であるひばりとつばめの関係も美味しい。作者はあとがきで「『ストップ!!ひばりくん!』自体はこれでおしまい、仮に続きを描くとしてもタイトルは『ストップ!!ひばりくん!』じゃない」というようなことを書いており、ほんの僅かとはいえファンに期待を持たせているあたり優しいのか残酷なのか。にしても作中でシャブをキメるシーンが平気で出てくるなんて、この頃の少年漫画はえらく自由だったんだな……。

・拍手レス。

 ドラマCDが発売されてまず一番に「これで某所の怒りの日SSの続きが書かれるのか」と思った自分は道がっていないはず
 Diesって人気の割にはあまりSSって見かけないですね。設定がガチガチに固まっているせいで書きにくいからかしら。

 Dies iraeのドラマCDで一番残念だったのは戒の創造名とか詠唱がなかったこと。そんな気はしてたけどさぁ!かなり残念です。
 櫻井家の創造名って覚えにくいから別に出てこなくてもいいや、と思った当方は物臭。

 正田御大のベアトリスの扱いを見るに、きっと焼津殿のレビューを見ているのはなかろうか
 いやだってカップル人気投票とかED後ドラマCDのあれを見聞きするとそう思います

 初登場したドラマCDの「わん!」というセリフで「べーやん=犬キャラ」確定でしたし、単にネタが被っただけかと。


2010-04-24.

・古橋秀之が原案・設定協力したコミック『黒きレ・ヴォルゥ(上・下)』を、危うく忘れかけていましたがどうにか思い出して積読の山から掘り出し目を通し終えた焼津です、こんばんは。

 連載時は「渋川六歩」名義でクレジットされていたが、「“渋川”より“古橋”のほうが、単行本がちょっと余分に売れるかも」ってなことで正体明かしとなったらしい。20世紀初頭を舞台に怪盗紳士「リュパン」と名探偵「ホームズ」が相見える時代活劇です。なるべく事前情報なしで読んだ方が面白い作品ですから、これ以上の解説はオミットさせていただきます。全2巻ということもあって展開がやや慌しく、少し物足りなさが残るところもあったが、とにかく全編通して画力およびテンションが高かったため退屈せずに楽しめました。「マンガの原案なら古橋も大人しくしているかな」と穏当な予想をしていたにも関わらず趣味全開で笑うことしきり。登場人物数からするとちょっと短い気もするにせよ、結果としては丁度良い具合に話が凝縮されたのではないでしょうか。正直あんまり期待してなかったのでホッとしつつ熱中して体温を上げさせてもらった。で、それはそれとして古橋の小説新刊まだー?

チャールズ・ストロスの未翻訳短編およびエッセイを集めた単行本『雪玉に地獄で勝算はあるか?』

 ストロスの初期短編3つとエッセイ2つに大石まさるのイラストを添えてご提供とな。『おいでませり』で大石熱が高まりに高まっているし、買わずにゃいられない組み合わせでしょう、これ。同人誌みたいなので、一度買い逃すと入手しづらくなるかもしれません。興味のある方はこの機会にどうぞ。

light、『Dies irae 〜Acta est Fabula〜』のカップル人気投票結果発表、webラジオも更新

 そして2枚組ドラマCDとドラマCD付きサントラも発売されましたが、ええい、チェックし切れるか! こっちは『暁の護衛〜罪深き終末論〜』も抱えているんだ! やっと薫が出てきて面白くなってきたところなんだよ……最近のDies関連は動きありすぎで付き合う方も大変だ。正田崇は働きすぎるか働かなさすぎるかのふたつにひとつしかないのか。カップル人気投票は締め切って集計&結果発表するまで1日ちょいしかないのにキッチリ短評まで付けて上げてるんだからすごい。ここまでやったら正田も禿げるんじゃないか。同じことを王雀孫がやろうとしたらどうなることか。コメントも「CS化? 何それ美味しいの?」と依然好き放題。ってか、普通に雑談が紛れ込んでるじゃないかこのコメント群。lightはシナリオライターを放任すること夥しいわ。当方はいくつかのパターンを組み合わせて散発的に投票してきましたが、希望していたパターンの1つが無事トップで通りました。SSが完成する日を切望しつつ、まずはいろいろ崩さなきゃな……。

・ドラマCD『Dies irae 〜Verfaulen segen〜』を聴きました。

 CD2枚組という大ボリュームで送る『Dies irae』の番外編です。本編から遡ること11年、黒円卓の騎士であったベアトリスと櫻井戒が如何なる経緯で「欠けた」のかを語っている。このふたりに関しては本編でもそれなりに触れられており、「だいたいこういうことがあったんだろうな」という程度のことは察せられていましたが、詳細は明らかにされておりませなんだゆえ、いろいろと気になっていた次第です。螢ルートでちょろっと名前が挙がった双頭鷲(ドッペルアドラー)の面々も登場し、「あくまで番外編」「オチは分かりきっている」ってな状況を跳ね返すように魅惑的な未知の数々でユーザーの心を攻め立ててきます。では以下、リアルタイム形式で感想を綴らんとす。ネタバレ全開ですから未聴者は注意されたし。

(1枚目)/約75分

・トラック1 … 9分くらい。ベアトリスとアルフレートの遣り取り。プロローグですが、ある程度ストーリーが進行しているらしく、事前情報なしに聴くと状況が分かりにくいかも。「ふたりはベアトリスが人間だった頃からの知り合いである」「ベアトリスは聖餐杯(トリファ)を斃すためにアルフレートを手引きしている」「双頭鷲の策略が功を奏して黒円卓メンバーの防御力は著しく低下している」「アルフレートはベアトリスを生かしておくつもりはない」、このへんの事情はあらかじめ仕込んでおいた方がいいかも。なくたって別に最後まで聴き終えた後でもっぺんリピートすりゃ良いわけですが。感想としては、「……ひょっとしてベアトリス、あんまり強くない?」。いくら防御力0とはいえ、爺のアルフレートに押されるというのはなんだか……この時点でアルフレートの強さがどれくらいなのか把握できないため、少し戸惑いますね。

・トラック2 … 2分弱。主題歌「アインザッツ」が流れます。要するにオープニングです。曲が終わったところで戒の声によるタイトルコール。「Verfaulen segen」の発音がイケメンすぎて参りました。

・トラック3 … 8分くらい。下級生に告白されて困るイケメン主人公、という古臭いラブコメ展開の冒頭に苦笑したのも束の間、下級生の名前が出てきて驚愕する。ほんじょう……だと……? 「実家が病院」と言っているから間違いなく本城恵梨依の関係者でしょうな。恵梨依とは10歳くらい年齢差がある――姉と考えるのが妥当か? 「恵梨奈」と「恵梨依」で名前も似てるし。このトラックで大半のセリフを占領している霧咲鏡花のCVはlightのwebラジオでパーソナリティをやっている水霧けいと。webラジオでDiesの話題を扱い出した当初は基本的な情報すら仕入れていなかったらしく、随分とトンチンカンな受け答えをしてファンをイラつかせたものでしたが、さすがに本職の声優だけあって演技はしっかりしています。香純的な喧し屋ポジションを適度な騒がしさでキチッとこなしている。鏡花がベアトリスの悪口を言い始めたところですかさず本人登場、ドタバタな雰囲気のままチャンチャン。単なる日常パートと言ってしまえばそれまでだが、なかなか楽しくてほのぼのとしたムードに浸かることができました。しかし「ベーやん」と呼ぶとヴィルヘルム(ベイ中尉)を連想してしまってややこしいな。

・トラック4 … 7分半。日常パートの続き。鏡花とベアトリスの掛け合いメイン。戒が時折口を挟む感じ。神父たちのいる教会について言及されたり、ベアトリスの死に場所となる博物館についても触れられたり、伏線というか仄めかしの章。

・トラック5 … 10分半。鏡花が去り、戒とベアトリスが会話を交わす。一週間に渡るベアトリスの不在を怪しむ戒と、その疑惑を躱そうとするベアトリス。彼女の不在は恐らくこのショートストーリー絡みでしょうね。ベアトリスは戒に対し「自分の望みは家族の蘇生」と言ってますが、これは周りを欺くための「見せかせの願い」であり、彼女が上官のエレオノーレ同様死者の眠りを妨げることを良しとしない性分なのは螢ルート13章で語った通り。戒もベアトリスの言葉は鵜呑みにせず、食い下がります。口調からすると深刻でほんのり険悪な遣り取りに響きますが、お互い微妙に惚気合っているふうに聴こえるのは気のせいか? 後半で緊迫したムードに突入し、日常パートはこれで終わり、ということを告げる。ベアトリスの「早すぎる……!」が邪気眼系ごっこ遊びのセリフ(「始まったか……」とか)みたいで少し笑った。

・トラック6 … 5分ちょっと。ジェーン・ドゥとアルフレート登場。「何なら売女呼ばわりでも構いませんことよ」がジェーン・ドゥのイメージに合いすぎる。ボイスドラマだというのに半裸姿のジェーンがきっちり脳裏に浮かんだ。会話の中でフォルカーの名前が挙がりますが、彼のキャラ紹介は読んでなかったので「チャウシェスクの子供たち」だとは知らなかった。当方も詳しくないのでぐぐった結果の引き写しになりますが、チャウシェクス政権下のルーマニアでは「法律で女性に5人以上子供を産むことを強要した」らしく、それで大量のストリートチルドレンが道に溢れたそうです。『ハイペリオン』のダン・シモンズもこれを題材に「ドラキュラの子供たち」という短編を書いている(更に話を膨らませたのが『夜の子供たち』)。フォルカーはストリートチルドレン時代に魔女(ルサルカ)と出会い、恋焦がれ、常時勃起しているような変態となった模様。戒対策として既に手は打っている、というのはやはり鏡花のことを指しているのかしら。

・トラック7 … 11分ほど。O Tannenbaumが口ずさまれる、ってそういえばこれクリスマス前のエピソードだったっけ。幼少時代の螢と玲愛が遭遇するトラック。この頃の螢はまだ普通の子供だったから随分と柔らかい印象をしているが、玲愛は大して変わらんな。あのローテンション・ポイズンは11年の時を超えて健在。一方、螢は喋れば喋るほど「柔らかい」を通り越して「かわいそう、頭が」という印象に近づいていく。「あぶなくないよ!」と叫びながら竹刀をバシンバシン叩きつける様子がこう、なんというか、もののあはれを誘う。逆算して6歳そこらだから仕方ないとはいえ、あまりにも……「きっと将来、いろんな人から頭の出来を心配される」という玲愛の予言がドンピシャでぐうの音も出ない。すげぇじゃんテレジア、預言者テレジアじゃん。愉快な遣り取りをするふたりのもとへ訪れるのが双頭鷲の首魁、ジークリンデ。リアルタイムで書いているから先のことは分かりませんが、たぶんシュピーネさんの手で討たれることになるだろうと予測している。「猛禽に毒は効かないと知りなさい」なんてカッコいいセリフをおっしゃってくれますけれど、脅かしている相手が幼児たちというのがどうも……ショボいですよ、リンデさん……幼稚園のバスをジャックして悦に入っている怪人みたいと申しますか、「ああ、小物やな」と確信した次第。死ぬほど怯えて泣きじゃくっている螢はとことん不憫な役割で、正田崇の業(あい)を感じずにはいられなかった。ベイやマレウスの名前を挙げる戒に「この子たちの前であいつらの話をしないで」と責めるベアトリスに場違いながら和んでしまう。確かにあのふたりは存在からして教育に悪そうだ。

・トラック8 … 8分半。上機嫌に歌うルサルカと荒れるヴィルヘルム(まだ昼だから眠いらしい)。そして涼しげな声のシュピーネさん。……あれ? シュピーネさんってこんなに若々しい声してたっけ? あの鼻に掛かった変態臭い声は確かに聞き覚えがあるものですが……と耳を澄ましているうちにだんだんテンションが上がってきて「ああ、これやっぱシュピーネさんだわ」と納得。「形成(笑)」とか呼ばれてネタ扱いされ続けてきたシュピーネさん、こうして厚遇されて長ゼリフを喋っているのを聴くと実に感慨深い。彼はドラマCDやクンフト・ファーブラの追加部分に出演してなかったもんなぁ。「お久しゅうございます」な気持ちが湧き出でることは否定できません。後半、遂にフォルカー推参。読み上げているのはたぶん新約聖書の一部であるコリント人への手紙。「死よ、汝の棘は何処にある」はウッドハウスのジーヴスものにもたびたび引用されることからして英語圏では割とポピュラーな言い回しなのかもしれない。日本だと島尾敏雄の『死の棘』も「死の棘は罪である。罪の力は律法である」から来ているとか。最後に例の防御力0化術式が発動。「ハリストス」は「キリスト」の意で、斉唱された「アリグリア」は「歓喜」の意味っぽい。キリスト教絡み? 詳細は解説待ち。

・トラック9 … 5分弱。神父の独白とともに幕開け。相も変わらず狂気(せいぎ)が疾走しています。明らかに双頭鷲の連中よりも狂った匂いを発散させてやがる。分かり切ったことながら「やっぱりこいつがラスボスか……」と実感させられた。滲み出る厭らしさに鳥肌が立つ。今回は「物の役にも立たない」らしいが、存在感は抜群だ。

・トラック10 … 8分半。最終トラックなので、2枚目への繋ぎみたいな内容です。ベアトリスの目論見を開陳しつつ双頭鷲の面々が割り込んでくる、予告編とか総集編とかそういったノリ。お膳立ては揃った……さあ、あとはシュピーネさんの無双とルサルカのビッチぶりとヴィルヘルムの横から掻っ攫われブルースを心待ちにするのみ。

(2枚目)/約79分

・トラック1 … 11分半。居残り組が6人も集まって会話するだなんて感動ものだな。黒円卓の面々に掛けられた術が何であるかこの時点では判明していないが、「防御力と痛覚が剥奪されている」ことだけは分かっている状態。文字通り痛くも痒くもないため、「相手の攻撃を避ける」という本能的な回避行動すらうまく働かない。結構な危機なのに、危機を危機として実感できないせいでのんびりしちゃっているベイとルサルカ。ふたりに対しシュピーネさんは「私は単に今も昔も臆病な男というだけのこと。銃など向けられたら反射的に体が動く……ただそれだけに過ぎません」と、特段責めるでも勝ち誇るでもなく謙遜してみせます。自己主張が強いようでいて意外としゃしゃり出ないあたりシュピーネさんの良いところだ。本編でもわざわざ校内放送使って直接顔を合わせることを控えましたし。ともあれ、戒に圧迫を掛ける神父が心底厭らしいです。こいつが面接官だったらメルクリウスのニート野郎は「おやおや? 怒らせて良いのかね? 使うぞ。超新星爆発」とか言い出しそうだ。戒と神父の会話は本編螢ルート12章で挿入された回想シーンとほぼ一緒ですが、ゲーム本編では地の文があり、ドラマCDには「間」の表現があるため受ける印象が僅かに異なります。見比べ、聞き比べてみると楽しいかも。「ベイにも、マレウスにも、誰にもベアトリスを傷つけさせない」――おいおい、ナチュラルにシュピーネさんの名前を省いてんのはどういうことだよ、舐めてんのかよ、お前は何様だよ戒。とイチャもんつけているうちに彼はトバルカインを襲名することに同意。神父は「あの子をカインにはしない」と誓ってますが、これマリィルートだと約束を破ってますね。螢がカイン化したのは神父の死後だったからしょうがないっちゃしょうがないか。

・トラック2 … 9分。雨降る中で眠りに就いている玲愛、彼女へ語りかけるように迷いを晒すリザ。つくづくリザには雨のイメージが付きまとうな。雨女なのか。途中から場面が切り替わってバトルシーンに移行。久々の戦闘とあってかベイも楽しそうだ。しかし「気合で一発くらい当ててみろやぁ!」ってセリフがすごく脳筋臭いな。銃弾って気合で当てるようなもんじゃないと思うけど、根性論を愛するチンピラにはそんな理屈通じないか。何せ生まれつきじゃなく根性で吸血鬼になった奴だもんな。よし、また今度玲愛ルートのシュライバー戦をやり直すときがあれば「気合で一発くらい当ててみろやぁ!」と叱咤してやろう。まぁベイの攻撃は当たらないけど。一方、飛来する銃弾をヒョイヒョイと避けるシュピーネさんの演技は実に愉快で頬が緩む。武張っているわけじゃないけど戦うのが不得手ってわけでもないんですよね、彼。フォルカーが再登場し、双頭鷲の仕掛けた「危機感破壊」という秘策の正体が何であるかを遂に明かす。断頭台、ボワ・ド・ジュスティス――ロベスピエール愛用という曰くつきの、詰まるところマリィが宿っているギロチンです。ベアトリスが博物館で死んだこと、博物館の奥まったところに展示目的ではなさそうなギロチンが置かれていたこと、そこにマリィが宿っていること。なるほど、繋がった。犯人はメルクリウスだ! 聴く前から分かっていたこととはいえ、奴の神算鬼謀ぶりにはどこまでも驚かされる。手際の良さはぐんしーをも上回るな。このトラックはルサルカとフォルカーが激突する寸前のところで終わり。「あなた、私に溺れてるのね」「だったら泥の底まで沈めてあげる」と水底の魔女に化していくルサルカがカッコ良かった。ぶっちゃけ本編ではあんまり魔女っぽさがなかったもんなぁ。それだけに嬉しかったです。

・トラック3 … 5分半。ベイとジェーン・ドゥの組み合わせ。ふたりが出会ったのは戦時下のベトナムであり、ジェーンの部隊はもともと櫻井鈴(このときまだ普通の人間)と交戦していたとのこと。ベイはそこへ横殴りしてきたらしい。ジェーンは割とベイ好みの女であるものの、彼は優先順位を守ってベアトリスを狩りに行こうとする。が、それをジェーンが「行かせない!」と阻む。ホント、ベイはヤンデレ系にモテるよなぁ。精神が不安定な女性の心に訴えかけるものが何かあるのかしら。ヤンデレに対してチンピラ口調でブチキレる、という通常エロゲーのドラマCDではありえない展開も愉快痛快。しぶとく付きまとってくる女に「鬱陶しいんだよォ、この変態がァァッ!」と蹴りを入れたり弁当を投げ捨てたりするベイ主人公のゲームを夢想してしまった。狙ったヒロインは決して攻略できない、必ず寝取られる、そして病んでる娘にばかり好かれる。地獄のようなソフトだな。

・トラック4 … 12分弱。シュピーネさん絶好調。ベラベラと喋り倒してくれます。鏡花が双頭鷲の一員であることはとっくの昔に把握済みであり、その情報を戒だけにリークしていた……つまり、戒が鏡花と親しくしていた理由はここにあったわけだ。戒の渇望も明かされます。大枠は予想通りでしたが、具体的な言葉にされると結構身勝手だな。好きな人々が汚れぬよう、独りで穢れを一手に引き受ける。発想がどこぞのボディチョッパーみたいで、ひょっとして戒ってノウ互換じゃね? と思ったりしました。あいつも妹いましたし。螢の性格はアスト寄りだけど。

・トラック5 … 8分。神父とジークリンデ、ルサルカとフォルカー、ベイとジェーンの順。劣勢の割に痛痒ともしていないリンデさんと、絶対無敵の鎧がなかったらお前なんてカスだろ、な聖餐杯。互いに余裕ぶって接している様はまるで狐と狸の化かし合いだ。リンデさんはイメージ的に狸の方だな。「あらあらどうしましょう」と言いながらおなかをポンポコリン。ルサルカはビッチ全開、フルバレルオープンで「え〜、キモ〜い。十回二十回突っ込ませてあげたくらいで勘違いしちゃう男ってサイテー」と処女崇拝者や純愛主義者が聞いたら七孔噴血しそうなセリフを吐き散らす。フォルカーの「兄弟」がなぜ死んだかも判明、過去の経緯から「集団の和」を嫌うルサルカが思いっきり八つ当たりかましたみたいです。ジェーンはいきなり死に際、ベイの渇望がなぜ癒されないかを教えますが、この時点じゃピンと来なくて彼は聞き流してしまう。彼女の言葉を理解するには、もう11年待たねばなりません。にしてもフォルカーとジェーン、変態のくせにあっさりやられてやがんな。ドラマCDで戦闘シーンを表現するのは難しいから端折り気味になってしまうのは仕方ないことながら、あまりの瞬殺に拍子抜けしてしまった。

・トラック6 … 7分弱。ふたたび神父とジークリンデ。ジークリンデはレーベンスボルンの落とし子にして精神感応、思念同調、透視、予知、スプーン曲げをこなす芸達者だそうな。神父の古巣である東方正教会所属で、周囲の心に重なりすぎて「本来の人格」と呼べるものがほとんどなくなっているジークリンデは神父に「極めつけに歪んだ鏡」を見ている気分に陥らせる。互いにチクチクとやり合うような会話は陰険ではあるものの到底バトルと称するに値する域ではなく、緊迫感には欠けるが「ここからどう転がるんだろう」と続きを気にさせてくれる。

・トラック7 … 7分弱。ベアトリスとアルフレート、1枚目のトラック1、要するにプロローグの続き。戦い決着の場面から始まります。負けず嫌いのアルフレート爺さんがなかなか渋い最期を演じてくれます。胸を痛めつつ「ヴァルハラを落とす」と誓うベアトリスを包囲するかのようにルサルカ、シュピーネ、ベイの3人が揃って出現。うちひとりがいくら形成(笑)とはいえ、この状況で一向に怖じず怯まぬベアトリスはなかなか豪胆と申せましょう。てか口調で騙されそうになるけど言ってることが普通にキツいな。可愛い顔して毒舌吐きです。そして満を持して始まるベアトリスVSヴィルヘルム戦。ルサルカの解説からするとふたりともいきなり創造位階に突入して薔薇の夜と雷速剣舞をぶつけ合っているみたいですが、尺の関係もあってか詠唱シーンは割愛されています。せめて「ブリアー」以降のトコだけでも入れて欲しかった。「トールトーテンタンツ――」「ローゼンカヴァリエ――」「「ヴァルキュリア!/シュヴァルツヴァルド!」」って感じで。

・トラック8 … 16分。ああ、ヴィルヘルムがかわいそう……毒化した戒に「引っ込んでろ」と鎧袖一触で速攻退場させられてます。穢れを満身に詰め込んだ戒に触れると創造ベイは土に還ってしまうそうです。さすがにこれは同情してまうな。せいぜいおなかのねーちゃんかーちゃんの「よしよし」してもらっとけ、ヴィルヘルム。さて、ベイと入れ替わりでベアトリスと対峙する戒。戦いたくない男女がともに「退いてくれ」と懇願しながら創造位階を衝突させる場面は哀切極まりない。場面は変わり、神父とリンデ。ジークリンデは双頭鷲の壊滅を認めながら己の勝利を宣言する。彼女は双頭鷲だけで黒円卓をどうにかできるとは露ほども思っておらず、予知の力も駆使してもっと長期的な目で見た勝ちパターンを掴み取らんと狙っていた模様。そういう意味では、鷲は翼破れ地に墜ちながらも過たず蛇を討っていたことになる、のか? リンデ退場後、BeforeStoryで描かれた場面に移り、最後は螢のモノローグで〆。順当ではあるが正直物足りなさが残るか。

・トラック9 … 2分。エンディング曲「Uber den Himmel」。

・トラック10 … 1分ちょっと。戒がベアトリスに向けて心情を告白。螢ルート13章におけるベアトリスの散り際と対応していますね。

(まとめ)

 というわけで両方併せて150分を超える大作だったわけで、聴きどころはいっぱいありましたけど、本当に番外編ってノリでした。ほとんどネタは本編で出尽くしているのだから目新しい情報に欠くのは当然なんですが……防御力0になっても黒円卓の面々はまったく危なげがなく、バトル物としては盛り上がりに欠く印象が否めません。ただやはり個々のキャラクターはしっかりと立っていますし、ファンが聴いたら胸を躍らせずにはいられない。シュピーネさんのセリフがいっぱい聴けたことは大きな収穫でした。些細なところで本編と繋がっている事項や照応している部分が見受けられるのは芸が細かいというか凝り性というか。結論、期待を寄せすぎると「あれ? こんなもん?」と肩透かしを食うところもあるにせよ、ファンなら聴いておいても絶対に損しない内容。今回は感想を書くためにかなり細切れな聴き方をしたから味わい尽くせていない面もあり、従ってこの次はちゃんと通して聴くことにいたします。にしてもこれ、人気投票の前に発売してたらもっとシュピーネさん絡みの票が増えたはずなのに……惜しい。


2010-04-20.

・P・G・ウッドハウスの“ジーヴス”シリーズを読むのに忙しくて更新をサボっていた焼津です、こんばんは。

 毎度毎度似たような展開(恋に悩む若者たちが主人公に胸の内を打ち明け、「なんとかしてやろう」と介入した途端に事態が混迷化、恋人たちは不幸な行き違いや些細な勘違いによって壊滅的な仲違いをし始める。「もうダメだ」と匙を投げかけたところで執事のジーヴスが登場、サッと機知を働かせ、鮮やかに事態を収束。みんなの恋は無事に花を咲かせ実を結びましたとさ、めでたしめでたし)で、いくらかシチュエーションが変化する程度のことであり、「大いなるマンネリ」と言えなくもない作風だけど、それでも面白いのだから夢中で読み耽ってしまう。8冊目の『ジーヴスと恋の季節』は成り行きで身元を詐称してドタバタ喜劇を演ずるハメになる様子を面白おかしく描いており、個人的に最高傑作と見做している『よしきた、ジーヴス』の次くらいに気に入った。バートラム・ウースターは極めつけのたわけであり、「他人の言葉に踊らされすぎだろ」とイライラすることも多いけれど、前言撤回芸とも呼ぶべき「さっき言ってたことと違うじゃん!」な遣り取りの嵐に吹き出してしまって結局憎めない。

 間が空くと「どんな話だったっけ?」と筋立てを忘れてしまうこともしばしばだが、少なくとも読んでいる間はたっぷり楽しいスープに頭の天辺まで浸れるシリーズです。11冊目に当たる最新刊も来月に発売される予定なので、既刊はどんどん崩していくとしよう。

桜坂洋の『All You Need Is Kill』がハリウッド映画化

 確かに実写化しやすい素材ではありますが、なんてこった、この儲けでまた桜坂洋が新作書かなくなっちゃうんじゃないかしら……『ラビドリータ(仮)』はいつまで宙に浮かせておくつもりなんだよ。にしても、スーパーダッシュの作品がハリウッド映画化とは、予想の遥か上空を突き抜けていってくれたものだ。映画化権だけ取得しておいて結局映画は完成しない、というパターンに陥る可能性もまだ振り払えませんが、とりあえず注目しておきましょうか。

ABHARが破産手続き開始

 買わなかったけど『水平線まで何マイル?』は発売前から注目していたソフトだっただけに無常を感じまする。

・拍手レス。

 エイプリルフールネタの、ジークリンデはシュピーネに殺されるって言葉が何か事実になりそうですね。SSのベアトリスへの対抗策を見る限りじゃ、シュピーネさんでも無双できそうですし、創造まで達した連中やシスター相手なら精神的にダメージが与えられそうなジークリンデの口撃も、自他共にゲスを名乗れそうなシュピーネさんの前では無効化される予感……!
 トリファに思う存分口撃加えてドヤ顔のジークリンデを背後から襲って「情けないですね聖餐杯、これしきの女児に弄ばれるとは……」と嘯くシュピーネさんが目に浮かぶ。そしてこのときの軽視が「私の糸は聖餐杯であっても脱出不可能」という誤った信仰へと導く。

 延期といえば、オバイブのDEARDROPSも延期しましたねー
 いつまで経っても発売間近という雰囲気がまったく漂わなかったから「ああやっぱり」ではありました。

(追記) 『Steins;Gate』のPC移植が決定したそうな。18禁ではなく15歳以上推奨で、もちろんエロなし。イベントCGの追加はあるけどシナリオの追加はなし、だとか。発売は7月30日……年内に間に合ってほしいという期待はあったが、思ったよりも早い。公式での発表を待つばかり。


2010-04-16.

・Dies方面に関して動きがあったので差し当たってそのことだけ更新する焼津です、こんばんは。

lightの『Dies irae 〜Acta est Fabula〜』、カップル人気投票の中間発表

 やっぱり主人公だけあって蓮を軸にしたカップルが強いな。例によって正田崇のコメントが付いてますが、螢ルートED後の展開をあっさりバラすなど大盤振る舞い。おいおい、書く気がないからってそんなにお手軽く晒さないでくれよ……一瞬見落としかけたではないですか。他のコメントも「なんだよ、なんだよ、なんだよもう……! そこに踏み込んだら戦争だろうが!」などと書きたい放題で、だんだんDiesがギャグコメディのように感じられてくる不思議。あと、ドラマCD関連のSSムービーも来ているので忘れずにチェックしときましょう。

 SSはドラマCDで登場する新キャラの顔見せみたいなノリ。人物紹介系の当たり障りのない代物かと思いきや、フォルカー、おまえ……こいつ、ドラマCDではシュピーネさんと絡む予定なんですよね。シナリオ書いた正田も実際の演技を聞いて反則扱いするほど凄かったらしいが、これはかなり期待できますな。変態方向に関しては。SSではメインの位置にいるジークリンデも、神父と絡んだらどんなふうになることやら。ムービーは主要キャラが順々に喋っていくありがちな形式。「ああ、己が死ぬかもしれないと、そんな気持ちに囚われる甘美」とほざく神父の狂いっぷりがドス黒すぎて新キャラの印象が霞むぜ。シュピーネさんはチラリとも映らなくて残念。双頭鷲自体は黒円卓にとって噛ませ犬ですらない雑魚らしいけれど、いっぺん本編のことは忘れてドラマCDのストーリーを骨の髄まで楽しむとしよう。なにせ発売まであと一週間。「もうそんなに間近なのか……」と素で驚くが、既に予約は入れており、万事抜かりなし。あとはもうちょっと積読の類を片付けておかないと……今月の電撃文庫の新刊、まだ一冊も読み終えてなかったりする。

ASa Projectの『アッチむいて恋』、マスターアップ

 Diesのニュースだけ報じるつもりだったが、ついでだからこっちも。再延期はないようで少しホッとしました。


2010-04-15.

・絵と「アニメ化決定」の惹句に釣られて買った『おとめ妖怪ざくろ』が割かし面白くて気分の良い焼津です、こんばんは。

 基本的なノリは少女マンガですね。背景の描き込みがあっさりしていて白い感じ。太陰暦から太陽暦に改暦された頃が舞台だから明治時代か。帝国陸軍の若き軍人たちが「妖人」と手を組んであやかし絡みの事件を解決して回ります。見た目は王子様だけど中身は「妖怪こあいよ〜」なヘタレ野郎と性格はキツいけど情愛の深いヒロインなど、あらかじめカップリングが固定されているのでゴチャゴチャと恋愛模様が錯綜することもなく終始イチャイチャしっぱなし。話の面白さを堪能するよりも、キャラ同士のイチャイチャぶりを眺めてニヤニヤと悦に入る、そういうタイプの作品だとご理解いただきたい。登場人物の個性はやや薄いものの、表情の描写が巧くて絶えずさりげない魅力を引き出してくれます。明治浪漫だとか剣戟バトルだとかに期待して読み出せばガッカリするやもしれませんが、「男でも気軽に読めるような少女マンガっぽいイチャイチャ譚を希望致したく候」という方には是非ともオススメしたい。最近読んだものの中では他に『マイガール』(コハルがいい子すぎて生きていくのがつらい)や『血まみれスケバンチェーンソー』(テンションの高さだけで成り立っているような超絶B級バイオレンス)が面白かった。このふたつを並べて書くのもどうかとは思いますが。

ASa Projectの新作『アッチむいて恋』、発売延期(4/23→4/30)

 なかなかマスターアップ宣言が来ないから危惧しておりましたが、やはり延期か。「一部音声の収録漏れ」が原因とのこと。一週間くらいなら待てないこともないが、こう、土壇場で延期かまされるとなんだか不安になるな……一方、しゃんぐりらの『暁の護衛〜罪深き終末論〜』はギリギリでマスターアップ。そういえば最近、護衛のライターが「衣笠彰悟」ではなく「衣笠彰梧」だということにやっと気付きました。「衣笠は誤字が多い」と散々書いておきながら自分自身がこの体たらくとは、赤っ恥すぎて死ねる。

暁WORKSの『るいは智を呼ぶファンディスク−明日のむこうに視える風−』、白鞘伊代役の声優を変更

 なんだか近頃キャスト変更するソフトが多いような印象を受けるのは気のせいかしら? この変更に伴ってフルボイスエディションの方も新キャストになるらしく、「主人公の和久津智に声が付く&白鞘伊代の声が変わる」と結構な違いが出てくることになりますね。伊代は華やかさに欠ける反面、ジワジワと滲み出す多湿的な魅力を持ったキャラだけにここに来てのキャスト変更は「うーん……」な感じだが、せっかくだから新キャストにも馴染めるといいな。

“チャンピオンRED”で連載される村正コミック、タイトルは『装甲悪鬼村正 鏖(みなごろし)』(MOON PHASE 雑記)

 違和感なさすぎて逆に反応に困るわ。

・ダン・ブラウンの『ロスト・シンボル』をようやく読み終えたけど、『天使と悪魔』『ダ・ヴィンチ・コード』に比べるとイマイチでした。CIAに追われながらワシントンDCを駆け回る――というシチュエーション自体が既存のラングドン教授シリーズの焼き直しみたいに見えますし、そもそもワシントンDCという舞台からしてダン・ブラウンの作風に合わない気がする。バチカン市国やパリを縦横無尽に走り回った1作目や2作目の方がずっと活き活きとしていたように思う。

・近藤史恵の『エデン』は面白かった。ロードレース小説で、『サクリファイス』の続編。主人公がヨーロッパに渡り、ツール・ド・フランスに参加する。サクサク読みやすい文体と長すぎず短すぎない分量で一気に読ませてくれました。淡々とした描写が多くて一見地味に映りますけど、時折ハッとするような一文が紛れ込んでいて、かのフミエイズムは健在。さすがに『ガーデン』ほどの清々しいまでの中二病感はないけれど、本質的な部分は変わってないな、と少し安心する。『サクリファイス』よりもミステリ要素が希薄になって単なる青春小説と化してしまった面もあるにせよ、ロードレース部分の面白さは鉄板であり、今後も何らかの形でロードレース小説を続けていってほしいものです。ちなみに、『エデン』は『サクリファイス』の続編ですが、前作の内容に関してはかなりボカして書いているため逆順に読んでもたぶん大丈夫です。

・拍手レス。

 アデン・アラビアについてですが、僕は篠田 浩一郎の訳の方を読みました。言い回しが特徴的なので、訳者によって雰囲気が180度変わりそうな文章ですよね。厭味が結局自虐になってるのには苦笑せざるを得なかったなぁ。
 書けば書くほどブーメランとなり、怒りの底がなくなるあたりやるせない。

 人気投票ページやばいですねw色々と裏のキャラ関係がwカイン二人もなかなか面白い人達だったようですな
 櫻井鈴のイメージは女ヴィルヘルムというより超人タカさんでした。「ベトナムでガッツ!」みたいな。

 るい智は水鏡さんの声優業廃業で伊代役が変わるそうですが大丈夫なんでしょうか。犬山さんは好きなんだが合う合わないはまた別の話ですし
 ルパンやドラえもんやサザエさんの声優交替よりは慣れられる、かも。

 人気投票はヴィルヘルムの女の趣味にちょっと驚き。螢にキツイのは鈴の影響もあるんですかね?
 カイン化する前の状態でヴィルヘルムに「形成」を出させたくらいですからよっぽどの女傑だったんでしょうなぁ。


2010-04-09.

・ポール・ニザンの「アデン、アラビア」目当てに『池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-10』読んだらむしろ併録されているジャン・ルオーの「名誉の戦場」の方を気に入ってしまった焼津です、こんばんは。

 「アデン、アラビア」は何と言っても書き出しの「僕は二十歳だった。それが人生でもっとも美しいときだなんて誰にも言わせない」に惹かれた。しかし内容は読みにくいというか、これといってストーリー性がなく、またパリの若者がアラビアの街に行ったというのにまったく紀行文めいた旅情色もなく、知識人やブルジョワ階級に対する厭味をネチネチと執拗に延々と絶え間なく書き連ねた「小説風アジビラ」ってな趣でした。非常に印象的な言い回しが多くて面白かったけど、「読んでて疲れる」というのが正直なところ。「名誉の戦場」は五部から成る自伝的小説群の第一部。母方と父方、それぞれの家族にまつわる思い出を並べ立てる、それだけと言ってしまえばそれだけの内容なのに、文体の良さもあってぐいぐいと惹き込まれた。登場人物が膨大につき、頭の中で整理するか紙に書き出して家系図を作らないと混乱するものの、たとえ混乱しながらであっても充分楽しめる逞しい輝きがある。圧巻は何と言っても第一次世界大戦のイープルを描く件でしょう。「イペリット(マスタードガスの異称)」の語源となった地を舞台に、毒ガスに襲われる兵士たちの姿を温もりすら窺わせる優しげな筆致で克明に描く。

 あれほど典雅だった戦いの規則が、この測量士たちの喧嘩においては、修羅場のバランスシートと豚小屋の美学を生み出した。

 モーセを追うファラオ軍の戦車をひと呑みにした紅海のように、垂直になって押し寄せる満ち潮。

 士官が発砲を命じた。士官は、あの擬餌針(ルアー)のうしろには大規模な攻撃が隠れていると予測した。人が風を殺そうとしたのは、おそらくこれが初めてだろう。一斉射撃は緊張を解き放ちはしたが、規則正しく湧き出てくる過酷で巨大な緞帳の進撃を遅らせることはできなかった。そしていま、それは手に触れられるほど近く、男たちは怯えた目の前にかよわき一本の腕をあげて身を守ろうとしながら自問する。あいつら、おれたちの不幸のために今度はどんな新しい残虐非道を考え出したのか。ガスの最初のひと筋が塹壕に流れこんできた。

 ほら、このとおり。地球はもはや宇宙の彼方からうっとりとながめる、あの一様ですばらしい青い球ではない。イープルの上空には、緑がかったおぞましいしみが広がっていた。

 若干省略して引用しましたが、こんな調子が改行のないみっしりとした文章で4ページに渡って続きます。「戦争の記憶」が家族史に直結する事実を淡々とした態度で示しており、非凡な読み口を味わわせていただきました。五部作なんだから、残りの四作も読んでみたいな、と願いましたが……どうも翻訳されているのは「名誉の戦場」だけで、後は全部未訳らしい。ガッカリ。関係ないけど「アデン、アラビア」というタイトルを発音するたび「いい気分」を付け足したくなるのはなぜだろう。気がつくと無意識に口ずさんでいる不思議。「アデン、アラビア、いい気分」……あ、書いたら理由が分かっちゃった。

Navelの『俺たちに翼はない AfterStory』、イントロダクションを公開

 4つの章それぞれの後日談を核としたうえで、おまけのHシナリオ、主人公以外のキャラクターたちをメインに据えた短編、そしてこれまで雑誌等に公開してきた小説をすべてゲーム化するそうです。残らずチェックしてきた当方涙目……ということは別になく、「あれに声が付くのか!」とむしろ嬉々としている。つくづく儲は度し難い。Hシーン以外は主人公もフルボイスになる模様であり、とてもワクワクするぞ。年内に間に合うかどうかは依然として半信半疑ながら、心待ちにしています。

暁WORKSの『るいは智を呼ぶファンディスク−明日のむこうに視える風−』、発売予定日が9月23日に決定

 タイトルがそのまんまなんでわざわざ解説する必要もなさそうですが、一昨年に発売されたるい智のFDです。主人公の智に声を当てた『るいは智を呼ぶ−フルボイスエディション−』も同時発売。旧製品購入者向けに差分パッチも無料配布されるそうなので、既にるい智を持っている人は焦らずパッチを待ちましょう。あくまで全バージョンをコレクションしたいとおっしゃるのならば止めはしませんけども。それにしても相変わらず智が可愛くて理性が蕩けそうだ。この笑顔(下の方)を見ていると性別なんてどーだってよくなってくるわ。

lightの『Dies irae 〜Acta est Fabula〜』、カップル人気投票開始。他に壁紙配布やwebラジオも更新。

 各キャラに正田崇直々のコメント「つまりテンプレってな」も付いているんで、投票する気がなくてもファンの方々はちゃんと見ておくようにしましょう。蓮についてのコメント「最強クラスの病気持ち。たまに何言ってるのか俺自身も分からなくなるよ」からいきなり笑わされるが、不人気ヒロインの香純に対して「可愛いなあ、おまえ。ローキックしたい」と異形の愛を迸らせていて戦慄することしきり。やはり正田の愛は破壊の業(あい)か。見所満載のコメント群につき、いちいち引用していたらキリがないです。当方はDiesを4本持っている(07年版、クンフト、アペンド、完全版)のでその気になれば1日に4回投票できますが、さすがにメンドいので使うIDは1個だけにしとく。見たい組み合わせ多すぎてなかなか絞り切れないあたりが悩みどころ。

 壁紙はドラマCDのジャケット類。酒盛りの絵が素晴らしくて即保存しました。ラジオは重すぎてまだ落ちてきません、明日聞くことにします。

・拍手レス。

 クビシメから8年経ってるってことに驚いた。 しかも中二の一番香ばしい時期ってのがまた…
 あれから8年経ってますけど西尾はまだ20代。つくづく恐ろしい若さだ。


2010-04-06.

・先月下旬に4冊同時刊行された『零崎人識の人間関係』をようやっと読み終わった焼津です、こんばんは。

 “戯言”シリーズのスピンオフである“人間”シリーズ(巷では“零崎”シリーズと呼ばれることも)の完結編です。なので、“戯言”シリーズも“人間”シリーズも知らない人が読んだら次から次へと出てくるキャラクターを覚え切れずに混乱すること必定。ブランクが長かったせいもあり、両シリーズ全部に目を通している(ただし『ザレゴトディクショナル』は古本屋でパラ読みした程度)当方すら時折「あれ? こいつ誰だっけ」と戸惑う瞬間がありました。けど、そもそも細かいこと気にしないでスラスラと読めるタイプの話ですから、とりあえずシリーズの大枠、概要を把握さえしていれば楽しめることは楽しめる。「4冊同時刊行」と書くと凄そうだけど、分量は『刀語』と同等かそれよりマシ、ってレベルであって、総計してもせいぜい750ページに過ぎません。平均すると1冊あたり200ページにも満たない。読むのが早い人なら買ったその日に読了してしまうかも。それでいて4000円を超える金額なのですから、つくづく文三もボッタクリ路線を突き進んでくれたものだ。付録のトレカは邪魔臭いし……。

 愚痴はさておき。タイトル通り、「零崎一賊」の鬼子・零崎人識を主人公とした連作です。4冊それぞれに副題が付けられているもののナンバリングは打たれておらず、どこからどういう風に読めばいいのか分かりませんが、作中の時期もバラバラなので、どこからどういう風に読んでも構わないっぽい。当方は通り番号をなぞって『匂宮出夢との関係』『無桐伊織との関係』『零崎双識との関係』『戯言遣いとの関係』の順に読みました(どうもこれが発表順であるらしい)が、個人的に推奨する読み方は『匂宮出夢との関係』→『戯言遣いとの関係』→『零崎双識との関係』→『無桐伊織との関係』かな。伊織が好きなので伊織をトリに持ってきたのであり、出夢が好きなら出夢を最後に持ってきても宜しいのではないかと。基本、好きなように手に取ればいいはずです。作中の時系列はたぶん、『匂宮出夢との関係』→『零崎双識との関係』→『戯言遣いとの関係』→『無桐伊織との関係』じゃないかと思います。

 『匂宮出夢との関係』は人識がまだ「汀目俊希」として二重生活を送っていた頃、つまり中学時代のエピソードなので、『人間関係』の中ではもっとも古い。この時期に関しては『零崎軋識の人間ノック』でも触れられてますね、というか『人間ノック』に収録されている「狙撃手襲来」「竹取山決戦」の続編みたいなムード。“戯言”シリーズのヒロインである玖渚友の兄、つまり玖渚直を暗殺するべく人識と出夢(+α)が「直木三銃士」と戦う。直木賞で有名な直木三十五をもじっている、とわざわざ解説されないと気付かない。掛け合いとバトルがそこそこの比率で混じっており、ごく標準的な仕上がり。人識よりも出夢の方が主人公に近い描かれ方なので、出夢ファンには嬉しいかもしれません。

 『無桐伊織との関係』は“戯言”シリーズと“人間”シリーズ、両方の後日談に当たる。まだ怪我も癒えぬ哀川潤が人識と伊織(+α)を引き連れて「生涯無敗」の男が住む島へ乗り込む。そして当然のようにバトる。形式自体は『匂宮出夢との関係』と似通っているが、バトルに達するまでの前置きが長く、戦闘そのものの比率は低くなっています。テンポの緩やかさ、掛け合いのユルさで言えばもっとも“戯言”シリーズに近いと言えます。伊織のユルユルな発言が満載されていて、伊織スキーたる当方の胸がひどく熱くなりました。『零崎双識の人間試験』で登場した伊織ですけれど、他だとあんまり出番がなくて、『零崎曲識の人間人間』にあった「クラッシュクラシックの面会」くらいしか顔を出さなかったんですよ。それだけにほぼ出ずっぱりの今回は嬉しかった。「パンツじゃないから恥ずかしくないもん」ネタはどうかと思いましたが。そういえばあれ、Blu-ray Boxが発売されるそうな。予約しようかどうか迷い中。

 『零崎双識との関係』は人識が全国を放浪していた17歳の春に起こった椿事を描くエピソード。傑作極まりない成り行きから人識が双識のコスプレをすることになります。これもバトル多めというか、ぶっちゃけバトル要素以外ないも同然。ネタバレになりますがここだけの話、タイトルに冠されている双識がほとんど出てこないですし。人によってはちょっとガッカリするかもしれない。ただ、プロローグだけとはいえトキことボルトキープこと零崎曲識がゲスト出演したこと、「殺し名」に比べて触れられることが少ない「呪い名」大盤振る舞いなこともあって個人的には嬉しいこと尽くめだった。双識が子荻ちゃんを人間試験しちゃう場面も。『人間関係』中、もっとも零崎っぽさが醸されていると思いまする。

 『戯言遣いとの関係』は『クビシメロマンチスト』の時節を8年後になって振り返るっちゅう、『クビシメロマンチスト』の裏エピソードに相当する内容を孕んでいます。“戯言”シリーズ第2弾『クビシメロマンチスト』は零崎人識が初登場した巻で、彼がもっとも殺人鬼らしかった時期を描いていますが、彼の行った連続殺人は本筋と大して関係がなく、結局南極ほぼスルーの形で有耶無耶にされておりました。「あの京都での連続殺人はなんだったのか?」がようやく、紐解かれます。新書版のクビシメが刊行されたのは2002年5月。ざっと8年は間を置いた超ロングパスですね。懐かしいってか、「え? 今更その話?」と困惑する気分は否めない。読みたかったと言えば読みたかったエピソードではあるのですが、正直もっと早く目にしたかったよ。

 個人的な満足度で不等号を付けていくと、『無桐伊織との関係』>『零崎双識との関係』>『匂宮出夢との関係』>『戯言遣いとの関係』。1冊1冊が薄いとはいえ、合わせれば京極本に匹敵するボリュームとなるのですから、読み応えはなかなかのものでした。コスパにさえ目を瞑れば満足可能。“戯言”シリーズは完結済だし、“人間”シリーズもこれで終了となりましたが、次の“メフィスト”には『哀川潤の失敗』とやらが一挙掲載されるそう。彼女のエピソードに関しては『緋色の英雄(ヒーロー)』というタイトルが告知されていましたけど、その一部分なのか、あるいは改題されたのか、それともまったく別物なのか。ともあれ、“戯言”や“人間”の世界はまだまだ継続する模様だ。

『Dies irae Original Sound Track「Neuen Welt Symphonie」』の楽曲コメント

 リンク先の一番下に表記がある通り、コメントしているのはシナリオライターの正田崇です。「曲のイメージ」のほか、「どういうふうに発注したのか」とか「実は没曲の流用」とか裏事情も明かされていて興味深い。メルクリウスのテーマ曲「ΩEWIGKEIT」について「もはやギャグ」と語ってますが、確かにあれは到底エロゲーの曲とは思えない代物でした。Fabulaプレムービーver.4のBGMとして使われていますので、興味のある方は是非ご一聴あれ。

・拍手レス。

 lightのスタッフ日記、ニート以外の連中も色々書いてますよ
 翌日気付きました。一日限りでなくて良かったです。

 メッセサンオー「Atziluth(流出)--」  日付変わってからとか洒落にならんっすわ
 店頭しか使ってなかったので被害はないですけど、思わず唖然とするニュースではありました。

 4月馬鹿企画といえば今年の型月も凄かった。凛や黒桜登場時の熱さは異常、心胆サムカラシニコフ。それと最後のアヴェンジャーに変わる所は流石キノコだと言わざるをえない流れでした。
 型月はチラッと見た程度でしたが、反響が凄かったらしいですね。しかし、まほよとかはどうなってんのかと小一時間問い詰めたい。

 ディエス・サントラページのザミ姐さん(この時はまだエレ姐さんか?)が美人過ぎてヤバいです。あと、何気にロートスさんハーレム状態w
 ルサルカの幸せそうな顔が可愛すぎて生きていくのがツラララい。

 Diesで二つ小ネタを。ED後ドラマCDの乾杯絵の下側に白い奴2人います
 我らが形成(笑)殿はそこの柱の裏で(元)獣殿に捕まってたりしてww
 ルサルカの持つビールの残りがきっと彼らの分に違いない…といいなぁ(遠い目)
 それとカインの体重=あの二人+1キロ(きっと初代2代分)かもしれない

 ルサルカが持ってるジョッキは全部自分で飲むつもりなのだと解釈してました。つーかベアトリス、一人だけ既に出来上がっているところからしてアルコールには弱いのか……。


2010-04-01.

・エド・マクベイン編のアンソロジー『十の罪業 BLACK』に収録されているジェフリー・ディーヴァーの中篇「永遠」にこんな遣り取りがあった。

「神話における蓮(ロータス)の意味をご存じですか?」
「知らない」
「不死です」
「ほう?」
「古代の人々が干上がった川床の水溜りに育つ蓮を見て、あれは不死の植物だと考えた」

 当然の如く『Dies irae』の主人公・藤井蓮を連想した焼津です、こんばんは。蓮というネーミングに関しては『オデュッセイア』のロートパゴイ(蓮の実を食べて浮世の憂さを忘れる人たち)と掛けていることがエピローグで明かされたけれど、まさか「蓮」自体がエイヴィヒカイト(永遠)の象徴だったとは……Diesは終わった後の発見が多くて嬉しいような困るような。もっぺん頭からやり返したくなってくる。ちなみに『十の罪業 BLACK』の収録作ではアン・ペリーの「人質」が面白かったです。緊迫感溢れるシチュエーションと綿密な心情描写の二枚重ね。アン・ペリーは作品数が多い割にほとんど邦訳されていない、日本では不遇な作家ですが、そのうち大々的な翻訳作業が始まるものと期待しています。期待するだけならタダだ。

・危うく素で忘れそうになっていましたが、本日はエイプリル・フール。各社がこぞってネタを仕込みに掛かる日です。では面白かったネタをチラッとご紹介。

ALL-TiME、『恋とオルゴールとピアノと -ワンチャンスありますよね-』

 「約2時間ほど前倒しで情報公開解禁!!」って、つまりフライングじゃないか……エア箒ならぬエア竹刀が出現。

ニトロプラス、新会社株式会社ニトロプラス フィルムスを設立

 キルビルパロの『SONICOMI』を初めとして洋画ネタがズラリ。ウルヴァリン茶々丸が普通に素晴らしくて即保存しました。雪車町と所長のシャーロックホームズパロは理解するまで2、3秒掛かったが、髪形がちょっと違っていたりうっすら髭を生やしていたりと芸が細かい。

Circus、白河ことり4つの大発表

 『ラブプラス』風のことりが器用、素で感心してしまった。似たようなネタではフロントウイングの『ラヴプラス』があります。

Navel、『SUPER KARUO BRASSIERES』

 要はマリオパロ。去年の力作「鷹は舞い降りた」に比べるとさすがに見劣りしますが、見る方にとってもあれをもっぺんやるのは結構しんどいし、仕方ないか。

key、『Rewrite』が18禁(Sexy!!)に

 なんという一発ネタ……ネタか本気か判断に迷うが、スタッフ日誌の記述からしてマジっぽい? そういえば『Rewrite』ってもともとエイプリルフールに発表されたゲームだったっけ。

goo、ストリート魚マップ

 一番笑ったのはこれかな。「サカナックル」とか、バカバカしいくせして写真が妙にカッコいいぜ。

10mile、『ラ・メガネ』

 「半年以上の沈黙を破り、10mileが再起動! 流通からも忘れ去られたあの企画が帰ってきた!」が痛々しい。それにしても『餓狼伝説』ネタとは懐かしくて涙が出ちゃう。

・今月の購入予定。

(本)

 『臨場 スペシャルブック』/横山秀夫(光文社)
 『タビと道づれ(6)』/たなかのか(マッグガーデン)
 『第七女子会彷徨(2)』/つばな(徳間書店)
 『エコー・パーク(上・下)』/マイクル・コナリー(講談社)
 『野生の探偵たち(上・下)』/ロベルト・ボラーニョ(白水社)
 『ボーダー』/垣根涼介(文藝春秋)

 今月は小川勝己の怪作『眩暈を愛して夢を見よ』が8年半の時を越えて遂に文庫化されます。実験的と申しますか、やりたい放題やりまくった内容ゆえに毀誉褒貶が著しい奇書ですけれど、一度読んだら忘れられない粘着質な異様さがパンパンに詰まっている。小川勝己は半端に器用なせいでいまひとつブレイクし切らないまま現在に至ってる作家ですが、彼の作品は一冊か二冊は読んでみても損がないと思います。個人的にはこれと『彼岸の奴隷』がオススメ。

 『臨場 スペシャルブック』はドラマ化した小説の続編、というより「未収録短編も入った公式ガイドブック」ですね。大半は埋め草だろうと察せられる。文庫なので値段はせいぜい5、600円でしょうけれど……ちゃんと一冊分書いて『臨場2』としてハードカバーで出して欲しかった、ってのがファンの本音。ずっと発売未定の『64(ロクヨン)』といい、横山秀夫は今どうなってるんだろう。なんだか心配。『タビと道づれ』は確かこれで完結。前巻でだいたいの真相は明かされましたので、まとめに掛かるのだろうと推測されます。さして期待せずに「絵買い」したシリーズではありますが、もう終わっちゃうのかと思うと少し寂しいな。『第七女子会彷徨』は期待の新人つばなのコミックス2冊目。タイトルから内容が想像しにくいでしょうが、未来の日本を舞台にしたSF日常コメディです。未来のテクノロジーを巡ってやや頭の緩い女子高生が右往左往する、その様を眺めて寛ぐ――という趣旨。一個一個のエピソードは短めながら、非常に話が濃密なので読み応えがあります。是非とも布教したいマンガだ。ああそうそう、なんとなく思い出しましたが古賀亮一の『電撃テンジカーズ』の2巻も今月出ます、忘れずにチェックを。

 『エコー・パーク』はハリー・ボッシュ・シリーズの最新刊。これで、えーと、12作目になるんだっけ? 原書の最新刊(“Nine Dragons”、シリーズ第14弾)が中国絡みの話ということで興味を抱いているのだけど、そこに到達するまでまだ時間が掛かりそうだ。コナリーといえばジョン・コナリー、邦訳では2作目までしか刊行されなかったけど、原書の方はチャーリー・パーカー・シリーズの9冊目がそろそろ出るみたいですね。こういうニュースを知るたび、学生時代に原書で読めるくらい英語を身につけていれば……いや、今からでも……と考えてしまう。だが、断言しよう。その場合、絶対に原書も積んでいた、と。『野生の探偵たち』は上下合わせて900ページ、値段も6000円近くになる大長編。内容は……あらすじ読んでもいまひとつピンと来ないな。同作者の短編集『通話』も読んでみたが、南米を舞台にした散発的な回想録といった感じだった。でもなんか、「上下合わせて900ページ」とか聞いただけで買いたくなってしまうわけです。病気だろう、それも手遅れも。直前に理性が働いて購入を取りやめるやもしれませんが、「買わずに後悔より買って後悔」路線に切り替えつつある昨今、うまく凌げるか不安。『ボーダー』は副題が「ヒートアイランド4」。たぶん『聖域(サンクチュアリ)』の改題。シリーズ1作目の『ヒートアイランド』でアキとコンビを組んでいたカオルが主人公らしい。カオルは結構好きだったので期待している。ちなみにシリーズの順番は『ヒートアイランド』→『ギャングスター・レッスン』→『サウダージ』→『ボーダー』ですが、『サウダージ』はアキの出番がほとんどない(柿沢と桃井の出番もあんまりない)うえに性格も丸くなっているので、飛ばしても構わないんじゃないかな。近頃は垣根の作風自体が丸くなってしまったし、もう昔みたいな熱いクライム・サスペンスは望めないか……と思うとションボリします。『ゆりかごで眠れ』も前半は良かったんですけど、後半で一気にスケールがショボくなってガッカリしました。

(ゲーム)

 『暁の護衛〜罪深き終末論〜』(しゃんぐりら)
 『アッチむいて恋』(ASa Project)

 『暁の護衛〜罪深き終末論〜』は三部作の完結編です。『アッチむいて恋』は主人公が女装して二重生活を送る学園モノ。他に『DEARDROPS』も気になっていますが、『罪深き終末論』は相当なボリュームらしいし、到底手が回りそうにありません。アチ恋とて積むかもしれず。『エヴォリミット』は迷っているうちに延期したのでまた来月に検討。あと、月末に『いたいけな彼女〜りにゅーある〜』が発売されるそうな。「りにゅーある」と言っても内容の追加はないみたいで、単なる廉価版と思った方が良い感じ。『いたいけな彼女』はかれこれ6年半も前のエロゲーですし、出た当時ですら「システムや演出がショボい」と呆れたぐらいなので過剰な期待は禁物ですけれど、「女の子が丹精込めてつくったお弁当をこれ見よがしに捨てる」などという他では味わえない要素がギュッと凝縮された一本。ヒロインが他の男に犯られるのは絶対にダメ、というのでなければ是非とも体験してみてほしい。ほのかはいろんな意味で忘れられないヒロインの一人だ。「なの」という語尾を見ると彼女の面影が甦る。

・拍手レス。

 末期少女病はいつまでも待ち続けますw
 待つわ、いつまでも待つわ、たとえおろちが振り向いてくれなくても。

(追記) 意表を衝いてlightがエイプリルフールネタをかましてきましたよ。ドラマCDの内容に関して虚実入り混じった予告をしている模様。発売一ヶ月を切って真偽も分からぬネタバレぶち撒けるとは、さすがニート、歪みなき極悪っぷりだ。新年度も職に就くつもりはないらしい。


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