2009年8月分


・本
 『第七女子会彷徨(1)』/つばな(徳間書店)
 『明日泥棒(1〜4)』/原作:外薗昌也、作画:別天荒人(集英社)
 『とんぬらさん(1)』/セレビィ量産型(一迅社)
 『ソードアート・オンライン2』/川原礫(アスキー・メディアワークス)
 『ケモノガリ』/東出祐一郎(小学館)

・ゲーム
 『コミュ〜黒い竜とやさしい王国〜』体験版(暁WORKS)

・ドラマCD
 『「Dies irae」サウンドトラック「ein jagen Nachtmusik」』収録のサウンドドラマ「Anfang」
 『「俺たちに翼はない」ドラマCDセカンドシーズン第一巻「夢ラジオ・空色スクールデイズ」』
 『「化物語」オリジナルドラマCD「佰物語」』


2009-08-29.

・連載時から概要を聞いて期待していた『刻刻』が期待通りに面白くて満足している焼津です、こんばんは。

 何せ1巻・2巻同時刊行で、両方併せて購入すると1460円(税込)になるんですから、これでつまらなかったらもう……『刻刻』はタイトルで想像できるかもしれませんが、「時間停止」をテーマにした伝奇サスペンスです。「時間を止める石」を代々密かに受け継いできた家の娘が主人公(と言っても、群像劇要素が強いため、あくまで「一応の」主人公でしかない)。時間停止を題材に扱ったフィクション作品は数多く、エロゲーでさえ複数の例を思い出せるのですが、このマンガは「ありふれた時間停止モノ」のパターンを外しに掛かっているところがスリリングで引き込まれます。

 具体的に言いますと、ほら、大抵の時間停止モノって車に撥ねられそうになった瞬間とか、通り魔に刺されそうになった瞬間とか、命の危険に晒された際に覚醒するパターンが多い気するじゃないですか。しかし『刻刻』は「主人公の兄と甥が何者かに誘拐され、急いで身代金を届けようとするが、家の車は外出中の母が使っており、このままでは指定された時刻までに受け渡し場所へ到達することできない! パニクる主人公を尻目に、祖父はおもむろに『石』を取り出す。主人公たちは時間を止め、いざふたりの救出に向かうが……」って、こう来るわけです。導入からして「これは従来の時間停止モノとは違う」と予感させてくれる。特殊設定を下敷きとしているだけに、話が長期化するにつれて腰砕けの展開に陥りそうな不安もやや漂うけれど、少なくとも現時点ではストーリーの緊密さを充分に保っている。派手な衝撃こそ欠けるものの、今後が楽しみな作品です。

「完全限定生産版!!! 秋田禎信BOX」

 オーフェンの後日談くらいは出るだろうな、と考えていましたが、エンハウの続きまで来るとは想定外だった。合計1200ページの3巻組で7350円(税込)――高いとも安いとも普通とも言いかねる、実に微妙な価格設定だ。ハードカバーの国産小説に換算すると4、5冊分の値段に相当する。秋田ファンと名乗れるほど熱心じゃないけれど、一応オーフェンにもエンハウにもハマった時期がある人間ゆえ、これは迷う。発売が12月22日で予約締切が10月30日、もう少し検討するとしてみよう。

 これに乗じてEGFと猫球続編とイリヤ番外編とミナミノ続編と「おれはミサイル」を始めとする未収録作品を集めた『秋山瑞人BOX』、ケイオスヘキサ東方編とタツモリ完結編とノウェム続編とシスマゲ番外編とデモベのスピンオフ新作と人狼日記と未収録作品を集めた『古橋秀之BOX』も是非発売してほしいですね。ホントにそんなもの刊行されたら天変地異が起きそうですが。

ケロQ、すかぢ総指揮による六年ぶりの新作『素晴らしき日々 〜不連続存在〜』の発売日を変更(2009年9月25日→2010年2月26日)

 そして6年が7年となり、7年が8年となって、やがて100年の時が過ぎ、1000年の刻が流れ、シャルノスの王は百億の夜を、ひとりで……ともあれ、年内発売すら不可能になったとは、あまりにも予想通りで泣くに泣けず笑うに笑えない。『陰と影』まであと何マイル?

エロゲのシナリオを●話に区切る意味、ありますか?「独り言以外の何か」経由)

 学園モノだと話数以前に日付で区切っていることが多いですね。ただ、「○月×日」と言われるよりは「第○話の後半」と言われた方が伝わりやすいと申しますか、そのゲームに関してあれこれ語る際、あらかじめ話数分けされていると便利だったりする。「ヒロインが失踪して戻ってくるのってどのあたりだったっけ?」「××ルートの○話目だね」みたいな。あと、個人的に「何話もぶっ通しでプレイする」ことがあまりないので、区切りがあれば「今日は○話まで進めよう」「せめて○話だけは終わらせよう」とモチベーションを維持する役に立つ。

 が、「必須」と言い切るほどの意味を感じないことも確か。エロゲーの「途切れなさ」って他のメディアでは表現しにくい強みの一つですし、下手なアイキャッチ類は入れない方が得策と思える。『A Profile』なんかはアイキャッチにも意図が篭められていて「巧いなぁ」と感じ入りましたが、無理矢理区切ろうとして却ってテンポが悪くなるケースもありますから、「ストーリーの目標が明確かつ達成までの道のりが段階化されている」話でもないかぎり話数分けの必要性は低いかもしれない。『Dies irae』の団員数とスワスチカ数を確認する幕間演出は個人的に結構好き。

暁WORKS、『るいは智を呼ぶファンディスク(仮)』発売決定、智を含めフルボイス

 発売時期は不明ながら、『コミュ』も発売しないうちからるい智FDが決定とは……嬉しすぎるじゃあないか。「見てみたいショートストーリーや、シチュエーション」を9月末日まで募集しているみたいなので、智ちんへ注ぐ熱い妄想を具現化したい方はドロドロの欲望凝り固めてテキストに落とし込み送信するといい。当方は某ガチレズ子さんがグラサン掛けて銃弾を曲芸回避する「花鶏っくす」を構想三秒執筆五分くらいで書いてみたが、あまりのくだらなさに卒倒しつつ削除。そもそもるい智はまだコンプしていないんだから、自重しておこう……それにしても花王アトリックスという表記が花城花鶏を連想させて仕方ない。「アトリックス 尿素10%クリーム」とか言われたら違う妄想が浮かんでくるじゃないですか。

暁WORKSの『コミュ〜黒い竜とやさしい王国〜』、体験版をプレー。

 長らく待ち望んでいた『真剣で私に恋しなさい!』が昨日発売されたばかりだというのに、空気も読まず『コミュ』の体験版を終わらせた当方。いや、想像していたよりずっとボリュームあったんですよ、この体験版。おかげでマジこいの報告は延期せざるを得なくなってしまった。さて、本作『コミュ〜黒い竜とやさしい王国〜』は暁WORKSにとって4本目のソフト(暁WORKS‐黒‐という姉妹ブランドもソフト出してますが、そっちは省いて勘定)に当たります。2作目にして出世作『るいは智を呼ぶ』を手掛けたスタッフによる新作だけあって、注目度はなかなか高い。

 概要。「アバター」と呼ばれる金属質の怪獣を、5人1組の集団「コミュ」が操り、バトルとか繰り広げたりする現代伝奇アクション。ノリとしては所謂「能力モノ」に近いが、5人1組の集団ってところがミソで、全員の意志が一致団結しないとアバターをうまく動かすことは出来ない。感覚的には「巨大ロボに5人で乗り込んで操縦する、意見がぶつかったときは多数決」って具合。厳密には搭乗するわけじゃなく、鉄人28号みたいに外から動かすんですけどね。ちなみにリモコンとかもなしで、コミュのメンバーそれぞれが直に命令を送って操作します。アバター同士が戦った場合、勝てばレベルアップしてステータス強化、負ければ――該当するコミュ、即座に全滅。「敗北がメンバー全員の死に繋がる」っつー実にきっついお膳立てであります。

 アバターやらコミュやら、更に複数のコミュが集まって形成される結社(カバル)やら、いちいち細かい設定が厨二病患者の心をくすぐります。ここまでジャキジャキガンガンされると気持ちいい。ぶっちゃけ、バトル描写にしろ設定群にしろ、「よくあるライトノベル」と比べて際立った興奮要素はなく、そんなに派手で激しい燃焼度を誇っているわけじゃないんですが、ストーリーを構成するあらゆるポイントが水準以上のクオリティに達しており、とても均整の取れた話に仕上がっている。片方が「個性強い」と評判のライターだけに、今回もあちこちで好悪の分かれそうなクセの強さが見受けられるものの、『るい智』より丸くなって前回の「読みにくい文章・分かりにくいストーリー」という問題点も無事改善されているし、一層広範囲のユーザーを引き込めそうな気配が漂っております。既存のライトノベルだと、強いて言えば『Dクラッカーズ』が持つテイストに近いか?

 とはいえ、グルカナイフを常備する近接戦メインの魔女やら、「気に入った男はとりあえずヤッちゃう」という超ビッチな偽メイドや、「少年っぽい少女」という印象なのに性別が♂だったりするチンピラと、相変わらず万人受けするとは言いがたいキャラクターを布陣している。てか、今回は登場するキャラクターがやたら多い。立ち絵のある奴だけでも15人超えていて、更に名前だけの奴や、名前のない奴も含めると何名になるんだか知れたものではない。各コミュが扱うアバターにしろ、分類だけで6種もあるし、またコミュに所属するユニット(メンバーのひとりひとりを指す個別単位)にも8つのクラスがあるなど、細かすぎて設定倒れにならないかと心配になる作り込みようだ。どうも体験版の範囲までが共通ルートで、以降は個別ルートに入っていくみたい(ちなみに攻略ヒロインは5人、うち1人は「他ルートと比べボリューム半分のおまけルート」、また春日部春は攻略対象外とのこと)だから、バラ撒いた設定や伏線や謎なんかはそれぞれのルートでちょぼちょぼ拾っていくんだろうけれど、果たして拾い切れるのだろうか? ちょっと心配。あと「神代」というキャラがルビだと「こうじろ」なのにボイスだと「かみしろ」になっていたり、「〜するな」というセリフの「な」の字がテキストから抜けて「〜する」になっていたり、ちょこちょこミスが散見された。このへんは是非とも直してほしい。

 少なくとも体験版の範囲に限ってはよく出来ていて、「面白くなるツボ」をきっちり押さえたうえで物語を進めている印象があります。話の転がし方も割合納得でき、「はぁ? なんでそうなんの? 意味わかんね」と首を傾げることはほとんどなかった。唐突に「殺し矢」とか出てくる回想シーンはさすがにどうかと思ったけど……それと「優しい王国」のニュアンスも若干分かりにくかったが、あれは「一切の善悪を問わず、いかなる間違いも許し、すべてを免罪する」意味での優しさ、つまり「寛容すぎて無慈悲な世界」程度に受け取っておけばいいんだろうか。概ね許容できる内容だったし、体験版にしては長い分量でありながら最後まで退屈させられることがなかった。スタッフの前作『るい智』はバトルをメインにしたゲームじゃなかったから一抹の不安を感じたけれど、今回でバトルものもそれなりにイケる様子だと確認できて、まずはひと安心といったところか。物凄く燃える! とまでは行かなくても、程好く順当に盛り上がってくれる。キャラも、クセはあるがなかなか魅力的だ。厨二系バトルを希求する向きへ薦めるに足る一本となってくれるでしょう、たぶん。ところで当方は好きなヒロイン、カゴメ一択で。行住坐臥、ガハラさんばりに悪口雑言と殺害通告を撒き散らしながらも、本人曰く「ツンデレじゃない、常にデレデレだからな」――ヤバいですね、これ。クルデレですよ、クルデレ。クルーエルなデレデレ。グルカナイフという異常極まりない装備にまったく違和感を覚えさせないほどの存在感放つんだからまったくもってたまらない。そのまま『ケモノガリ』に出演できそうなヒロインであります。他のキャラたちも可愛くて、基本的に嫌いな子っていないんですけどね。真雪とか、属性自体は「眼鏡ロリ」と激しく微妙なのに、声優の演技も相俟って不思議とチャームされる。四宮夜子も、サブキャラながらイイ味出してます。ニトロの『村正』ともども、10月の期待作。

・拍手レス。

 あや、さすが道尾さんは既読でしたか。道尾さんの文庫でオススメをお聞きしてもいいでしょうか。向日葵とシャドウは読みました。あっとさせられっぱなしです。悔しいでも(。身近に感じさせる会話のタッチがすごく読みやすく染みてきます。
 最初は「ちょっと地味かなー」と思うんですけど、読んでるうちにどんどん引き込まれていきますね。向日葵とシャドウ以外で文庫化しているのは『背の眼(上・下)』と『片眼の猿』だけですが、強いて言えば『背の眼』の方がオススメ。デビュー作だけあって一長一短、「荒削りな力作」という印象が強いですけど……『背の眼』と同じ真備シリーズで、もうそろそろ文庫化されるであろう『骸の爪』と、比較的最近に刊行された『龍神の雨』、直木賞候補作の『カラスの親指』あたりは推しておきたい。


2009-08-26.

「ただの新装版ではないですよ! エピソードが追加され、ストーリーが大幅に改稿されています」との弁に釣られて『ストーム・ブリング・ワールド1』を購入した焼津です、こんばんは。旧版は読了済、結構面白かった記憶があります。

 「クランチ文体になっていたらどうしよう」と不安になり、冒頭だけちょろっと読んでみましたが、さすがに文体そのものは従来通りだった。だいぶ記憶が薄れかかっているので新鮮な気持ちで読めそう。2巻は10月発売とのことですが、もちろん幻になっていた3巻も12月頃には発売してくれるんですよね? 望み薄と知りつつも期待せずにはいられない。

ライアーソフトの新作『白光のヴァルーシア』、情報公開スタート

 ※本作はライアーソフト初の「フルボイス作品」となります。

 やっと、と言うべきか、遂に、と言うべきか。「パートボイスが当たり前」とされてきたライアーにも変革の時が訪れた様子です。数えに数えて26作目、10年目の真実――というか、なにげにここも先月で10周年を迎えていたんですね。リアルタイムでこそないものの、ブランドデビュー作たる『ちょ〜イタ』をプレーしてライアーソフトに興味を持った身としては感慨深い。ヴァルーシアは砂漠の大都市を舞台に謎の妖物と謎の巨像が闊歩する、いかにも桜井光といった趣の話。発売日も11月20日に決まったようで、そろそろ予定を組み始めないといけないな……現在、11月の注目作は3本ほど。ギリギリ大丈夫、かな。

・東出祐一郎の『ケモノガリ』読んだー。

「じゃ、じゃあわたしは楼樹くんにとって……隣の家の憧れの美少女かな?」何故か期待に満ちた目で僕を見るあやな。
「隣の家の…………少女…………かなぁ」

 それケッチャムじゃん! とツッコまずにはいられない東出祐一郎初のオリジナル・ライトノベルです。商業小説としては自作のノベライズである『Bullet Butlers』に続く第2弾であり、他に同人で出版したクロスオーバー大作『吸血大殲』なんかもありますが、同人方面は追及し始めるとキリがないのでひとまず置いておきましょう。さて本書、要約すれば「修学旅行にやってきた高校生ひとクラス分を丸ごと拉致って『獲物』にして人狩り(マンハント)、終いにはカトル・カールばりの怪人たちが虐殺ショーを繰り広げるホラー・アクション」となります。ライトノベルにしては随分アグレッシブだよね? 海外ミステリやB級アクション映画をこよなく愛する作者の手で書かれただけあって、ひとたびページをめくれば血に酔い肉に焦がれ臓物に淫する最低最悪のストーリーが待ち構えている。折込口絵から引用しますと「ようこそ、寒々しい絶望の日々へ」――これがまさにしっくりと来る。よくある学園能力バトルと思って読み出した人は、あまりの展開に嫌悪感を隠し切れなくなるかもしれません。作者が作者なので、いろいろとお察しください。剥き出しの蛮性、それなりに悪趣味。

 目を覚ましたとき、自分が囚われの身であることに気づいた――だから周りの連中を「敵」と定め、躊躇なく殺害し、脱走した。途中でクラスメイトたちと合流し、正体不明の「敵」から逃れようと協力し合うが、「敵」は想像を遥かに絶して強大かつ凶悪だった。死なずに済んだと息をついたのも束の間、次々と追っ手が放たれ、彼らはたやすく追い詰められていく。助けを呼ぶか――相手は街ごと買い占めて人狩りを行っている特権集団なのに? ただひたすら逃げるか――どこまでも追いかけてくるのに? 覚悟を決めて迎え撃つか――貧弱な武装ごときで嬲り殺しのプロを相手に? あるいは、すべてを――諦めるか。八方塞がりの状況の中、「普通の男子高校生」に過ぎなかった筈の赤神楼樹は秘めたる資質を覚醒させていくが……。

 ナチュラル・ボーン・キラーかよ、と目を疑うほど主人公があっさり事態に順応して「敵」を殺しまくる一方、味方サイドの人間も非常にあっさりと殺されるので、のっけから好みが盛大に分かれる話となっています。「なにこの中二病、まんまテロリスト迎撃妄想じゃね?」と揶揄されても返す言葉がありません。ちなみに「ただの少年でしかない俺様がテロリストどもを軽く撃滅しちゃるぜ、濡れろよお前ら」的妄想を凝り固めたライトノベルは『COOLDOWN』が好きです、ヒロインのオナニー癖にも興奮しました。話を戻して『ケモノガリ』、「警察は信用できるのか」「相手はこの国の中枢に食い込んでいやがる」みたいな議論を現役高校生が行ってしまうノリに居たたまれないものを感じる方にはオススメできませんが、今もなお心のドコかで邪気眼が健在な方であれば、連打されるバイオレンスとむず痒いセリフの数々に勃起が収まらなくなること請け合い。下手なAV見るよりもずっと官能的です。

 綴られる物語が「14歳の少年が抱く妄想」並みであること自体は否定し切れないにせよ、妄想そのものの純度は高い、と断言できます。一応、超能力とかそういう要素は存在しない世界なので、「秘めたる資質を覚醒」と言っても突然サイコキネシスが出現するようなことはなく、狩られる身の主人公は「狩り返す」ためにあれこれと工夫を凝らす。そこらへん、単純にワクワクします。主人公は別段運動能力が優れているというわけでもなくて、また格闘技を習得したりもしていないのだけど、「覚醒」した途端にプロさえ凌駕する狩猟本能を発揮する――このあたり嘘臭さを感じないでもないが、「生きるか死ぬか、ギリギリのエッジで応酬を繰り広げる殺し合いにおいて基礎体力だの格闘センスだのは笑止千万、瑣末事、むしろ邪魔。小賢しいわ、生存本能がすべてだ!」と叫ばんばかりの視点はなかなか男の子らしい野蛮なロマンに満ち溢れていて、ボカァ嫌いじゃないなぁ。もう少し文章にねちっこさが欲しかったところだけど、現状でも充分なB級&中二性能を誇っています。

 監視カメラの有無を「見られているという感覚」で判別するとか、いくら何でも行き過ぎっつーか都合良すぎで「生存本能旺盛」じゃ片付けられないチート能力もあったりしましたけど、ライトノベルでサスペンス映画ばりの迫力を体現してみせるって試みにはひとまず拍手を送りたい。殺戮劇を300ページ以内にまとめようとしたせいで幾分か大雑把になっているところはありますが、なんとかキルゾーンを脱して生き延びることができた――そんなありふれたラストシーンで終わらず、取って返して徹底的な「反撃」を加える終章までキッチリと描き込んだところ。個人的には最高でした。決して万人向けとは言いがたい作品ながら、作家・東出祐一郎の出発点としては悪くない出来。ガガガスレでは「沈黙のホステル」「少年セガール」と形容されていて笑った。ちなみに本書、もしコミカライズするとしたら石渡洋司に描いてほしいものだ。なんとなく『ユキオ』を彷彿としましたし。

・虚淵御大の『アイゼンフリューゲル』も読み終わったけど、こっちはまだ開幕編で大して感想書くことがないですな。

 直訳すると「鉄の翼」。1章のタイトルも「鋼鉄(くろがね)の翼」となっています。ドラゴンが蒼穹を裂いて飛翔する異世界を舞台に、人の手が作り出したアイゼンフリューゲル――つまり航空機によって竜どもを追い抜いて後塵の憂き目に遭わさんとする、ファンタジー版プロジェクトXです。ライトノベルでプロジェクトXというと小川一水を彷彿としますが、虚淵玄の硬質で煤けた文体はともすれば容易くダークサイドに墜ちてしまいそうな危うい気配を漂わせ、違うニュアンスで読者をドキドキさせる。虚淵にしては血腥い要素が比較的少ない(皆無ではない)爽やかなノリの作品だけれど、血沸き肉躍る興奮に満ちた面白さは相変わらずで、単純明快に引き込まれました。文章の一つ一つに力が漲っており、本編たった220ページという薄い分量、しかも話が途中で終わっている(ノベルゲーだったら体験版の範囲が終わってOPムービーが流れ出すあたりで〆となっている)のに、それでも密度が非常に高く「買って良かった」&「続きがすごく気になる、今すぐ読みたい」と思わせる出来に仕上がっています。これで続刊がなかったら、秋山瑞人並みにヒドい仕打ちとなるぞ……TO BE CONTINUEDのページに書かれている「Wird fortgesetzt」は続編のタイトルか? と思って翻訳機に掛けたら「それは続けられます」――まんまTO BE CONTINUEDの意味じゃねぇか。早とちりしそうになった自分が恥ずかしい。

・拍手レス。

 lightはデビュー作の『White Angel』から思いっきり踏み抜きましたね…(嘆息)
 ですが、正田と早狩と嘘屋がシナリオのタイトルとR.U.R.U.Rは認めざるをえない。あと『紅』は音楽だけは最高です。

 「ソフ倫卓第一位、破壊光――ライトハルト・グリーンウッド・レートブラック・ハットリヒ。愛すべからざるlight(メフィストフェレス)……などとユーザーに呪われ(しゅくふくされ)た、曰く悪魔のようなブランドらしいよ」 ホント、ここは音楽いいし、たまに独特な傑作が出るしで、危険と知りつつも魅入られてしまいます。

 あおりの「舞台はついに現実世界へ!!」で、つい笑ってしまいました…もうオンライン関係ねぇ…
 じゃあ3巻以降は『ソードアート・オフライン』で仕切り直し。

 道尾秀介さんの「向日葵の咲かない」が面白かったと思いますテスト
 道尾作品は『カラスの親指』が好き。でもそろそろ真備シリーズを本格的に再開してほしい。

 なんでか川原礫が肌に合わないんすけど楽しむ方法ないっすかね。いや、無茶は承知で。
 あらかじめ精神破壊(メンチサイド)級の地雷作品を喰らっておけばOK。どんな料理だってたちまちご馳走と化す。

 当初は初冬と告知されていたアクセルワールド3が10月発売になったことを考えると、SAO3巻の晩冬も12月かもしれず。ここまで、AW>SAO>AW……と2ヶ月に1冊ペースですし。この驚異的なペースでも、web版SAO4が始まるのは単純計算で2011年になるという。隔月刊川原が一度途切れた時の反動が怖いです。
 ついていく方も大変ですね。ちょっと気を緩めたら、あっという間に積読の山。杉井光の本なんか、もう16冊も積んで……。


2009-08-23.

lightのwebラジオ「Happy light Cafe」第19回を公開

 前回、前々回と2回続けてDies特集をやった反動か、今回はDiesに関するニュースがあんまりなかったですね。めぼしい情報は「ファーブラが終わってひと段落ついてからドラマCDを出す予定、何ヶ月か掛かるかもしれない」くらいか。「Dies騒動の煽りを喰らったせいで制作が停滞していた」と噂の(あくまで噂であり、真偽は存じません)『R.U.R.U.R』移植版も遂に発売が決まった模様。PS2だった予定がPSPに変更とのこと。年内発売を目指しているらしいが、大詰めのDiesを抱えた状態で社員割けるのか? lightの制作ラインは基本的に一本しかないってどこかで聞いた気がするので、少し心配。

 現在lightはDiesの他に4つの新作企画を進めているらしく、ひとつはさかここ(『さかしき人にみるこころ』)シリーズの第3弾、ひとつはイベントで告知した通称「羽企画」。残るふたつは、「どちらもウチらしいタイトル」とのこと。片方は「『またこんなのつくるの?』と言われそうなSFっぽいハードボイルド(スペースオペラ要素もあり?)」、もう片方は「格好いい男の話、アウトロー気味。使っている用語やモチーフがDiesとかぶるが、男キャラの数はDiesより少なめ。人形系のヒロインが多く出てくる、ジャンルは伝奇モノ。Diesとは方向性が違う」だとか。関わるスタッフについては言及されなかったが、いったい誰がシナリオ書くんだろう? 原画はlightなら心配しなくてもいいだろうけど、ライターは……正直、心配だ。

 それにしても、来年でlightも10周年を迎えるのか。ニトロプラスが今年で10周年を迎えるという話を聞いて時の流れを感じたものでしたが、またしても……といったところでしょうか。なにげに『White Angel』発売当時からlightを知っていただけあって「そんなに経つのかよ」と驚きの念を隠せない。『White Angel』、練餡(CARNELIAN)の原画に惹かれて発売前から注目していましたが、発売日に買った人の「なんじゃこりゃあ! 練餡の無駄遣いじゃねぇか!」という怒りに満ちた叫びに臆してスルー。もはや「立ち絵のジャギがひどい」と評判だったことしか覚えていません。そんな始まりだったせいもあって、lightにはずっと良い印象を抱いてなかったんですよね。姉妹ブランドのRateblackは迷走しっぱなしだったし、雰囲気の良さに釣られて買った『僕と、僕らの夏』は積んでいるうちに完全版が出ちゃったし、伝奇ゲーということで体験版をやってみた『紅(くれない)』は実にアレな出来だったし……ぶっちゃけ『紅』を基準にしたら2007年版の『Dies irae』後半シナリオさえも傑作となってしまう。2004年初頭の『PARADISE LOST』という転機が来るまではろくろく熱心にチェックしていなかったわけで、つくづく正田崇に会ったが運の尽きでした。

・川原礫の『ソードアート・オンライン2』読んだー。

 WEB連載当時からの話題作で、早くも電撃文庫の看板作品になりつつあるらしいデスゲーム・ファンタジー第2弾。副題「アインクラッド」。前巻でグランド・クエストが終了し、仮想世界アインクラッドは崩壊して現実世界に戻ったはずなのに、なんでまたアインクラッドが出てくるの? と首を傾げましたが、今回は時間を遡って所謂ところの「過去編」を上演する番外的な内容となっています。4つのエピソードから成り立っていて、気分としては短編集とかそんな感じ。極端な話、こっちを読んでから1巻に取り掛かっても充分イケる。が、こっから読み出すと基本的な設定や世界観を飲み込みづらいって難点がありますゆえ、素直に1巻→2巻の順で攻略していった方が宜しいでしょう。

 これは、ゲームであっても遊びではない――クリアするまで生きて脱出することが不可能な、「プレーヤーの命を人質に取った」ヴァーチャル・リアリティ系MMORPG『ソードアート・オンライン』。ゲーム上の死が現実の死に直結する、理不尽なまでに過酷なルールを物ともせず戦場の最前線で幾多ものデッド・ラインを超え、やがてゲームをクリアへと導いていくソロプレーの剣士キリト。彼と出会った4人の少女の思い出、その一つ一つを切々と綴っていく……。

 表紙を飾る脇見せロリっ娘が今回のヒロイン役なのかと思っていたら、出番は最初の短編だけで、あとはチラッと存在を仄めかされる程度でした。やや残念。無敵の超剣士キリト様が行く先々でモンスターを瞬殺しながら女の子とのフラグを立てていく「俺TUEEEE! カモンMYハーレム!」なイケイケ活躍譚めいた雰囲気があり、「お前はいずれ嫁が出来るんだから自重しろ」とツッコミを入れたくなりますが、全編新規キャラでやるとなると話の繋がりが薄くなってしまうし、果たして収拾がつくかどうかも怪しくなりますので、キリト様モテモテ王国建立はやむなきことと受け容れました。フラグを立ててもくっつくわけじゃないんで少し虚しいものがありますね。SAOにまだ続きがある以上、決して無駄なフラグとも言い切れませんが……。

 ビーストテイマー(気性の穏やかなモンスターを飼い慣らして使役する)の少女シリカを主人公に据えて語られる「黒の剣士」を皮切りに、鍛冶師の少女でアスナとも知り合いなリズベットのエピソード「心の温度」、キリトが新婚生活を送っていた頃に遭遇した謎の少女ユイの正体を探る「朝霧の少女」、かつてキリトの失策で全滅に追い込んでしまったギルド《月夜の黒猫団》への追憶と追悼を記す「赤鼻のトナカイ」と、相互に密接な関係のない話ばかりだが、キリトが必ず登場するという点では全編共通している。聞くところによればWEB版は最初の3編を「黒の剣士」「朝霧の少女」「心の温度」の順で2003年に、そして「赤鼻のトナカイ」を2007年に公開したらしい。作中の時間に沿って並べれば「赤鼻のトナカイ」→「黒の剣士」→「心の温度(本編)」→「朝霧の少女」→「心の温度(エピローグ)」となります。

 先述したようにキリトがモテモテなんで、ハーレム系が苦手な方だと鼻に付くかもしれませんが、アインクラッドというSAOの世界が「本当に存在するんじゃないか」と錯覚するほど細かく描写されていて、エピソードとして描かれる以上の広がりを実感させてくれますから、個人的にはフラグ乱立とか大して気にならなかった。夢中になって設定の一つ一つを堪能しちゃった次第です。MMORPGは大抵中世ファンタジーチックな世界をベースにしていますが、本物の中世ファンタジーと違って階級社会や世襲制に囚われず、職業選択の自由と能力重視主義に基づく「好きな役職に従事して構わない」って大らかな気風に溢れているところが心地良いですね。複数の人間が関わってくるのだから、自然にいろいろとしがらみは生じますけど、根本的なところで「心の領土」を得られるあたりに安らぐ。「先祖代々の〜」「親父譲りの〜」という、絶え間なき人の営みがもたらす歴史の重みもまた捨てがたいが、「誰に迫られたわけでもなく自分で好きに選んだ役割」っていう身軽な個人主義――煩わしき浮世に身を窶す者にはたまらないでしょう。

 最前線で戦ってダンジョンを制覇しボスキャラを討伐する「攻略組」は、現実なら「廃人組」に当たるのかな……と考えてふと思ったが、生活のほぼすべてをMMORPGに捧げてしまうド廃人プレーヤーにとって「死ぬかクリアするまで脱出不可能」なアインクラッドって天国じゃね? 楽しすぎてむしろ攻略を疎かにしてしまい、やがて攻略組から抜け出して下層の都市で「俺TUEEEE!」をやることになりそうな気がします。キリトもどっちかってーとそっち寄りですね、攻略に意欲を燃やしているという違いがあるだけで。そういう廃人キャラをメインに持ってくると話が進まなくなってしまうだろうけど、「現実に帰りたくない」とSAOにしがみつく姿はちょっと見たかった気がするな。クリアのお報せが来た瞬間、半狂乱になって泣き喚くの。溜め込んだアイテムとか身に付けたスキルとか、全部無駄になるよね。もはやトレードだって出来ないだろうし、現実社会じゃ何の役にも立たないよね。浅い人付き合いしかしてなかったらオフ会で痛みを分かち合うような仲間も得られないだろうし、あるいは「俺はかつて『疾風のなんたら』とあらゆるギルドから畏怖され云々」と虚栄心を捨てきれずに失笑されたりして。帰還することで却って喪失感を味わい、呆然とするんだろうな……そんな思いを抱いて軽く背筋をゾクゾクさせる当方は悪趣味でしょうか。訊くまでもないですね、はい。でも、もし自分が彼らの立場だったら……とか一旦想像し出すと、そういう暗澹たるシミュレーションが脳内を駆け巡って止めようにも止まらなくなる。つくづくこのSAOは美味しいお膳立てをしてくれます。

 過去に遡った番外編だらけで、1巻の続きが気になっていた人はガッカリかもしれませんが、もうちょっとアインクラッドの世界が見たくて未練を残していた読者にはうってつけの一冊でした。特に「赤鼻のトナカイ」はキリトの歩んだ道のりを辿るうえで欠かせないエピソードであり、「全滅したパーティとの思い出? ふん、そんなあざといネタで泣くものか」と身構えていた当方も正直ちょっと涙腺が緩んだ。だがしかし「赤鼻のトナカイ」は未だに『螺旋回廊』を想起させるため感動台無し。ともあれ次の3巻は現実世界に舞台を移すとのことですから、たぶん1巻のダイレクトな続きになるでしょう。「晩冬」とのことで、刊行は1月か2月くらい? 仮に1月刊行としたら、川原礫はデビュー1年間で6冊もの本を出すことになるな……いくらSAOの原型が出来上がっているとはいえ、なかなか驚異的な数字だ。「初冬」予定だった『アクセル・ワールド』の3巻が10月に出るくらいなので、もっと早まる可能性とてなきにしもあらず。何であれ楽しみです。

・拍手レス。

 「され竜」の加筆部分、単純に読むと話がつまりはアレ系だよ、とゆーことになりますが、さて。
 され竜7巻、コルッペンのところで泣きそうになるのをグッと堪えました。

 あのすみません、朝色は完全放置でしょうか(アララギ風に)
 すんごい微速ながら進めてますよ。いま青姉たちの名前が分かったあたり。


2009-08-20.

アイスウィンド・サーガ最終巻『冥界の門』、9月29日発売決定

 紹介するたびに解説が必要な気がしてしまう不憫なシリーズですが、とにかく最終巻ですよ。アイスウィンド・サーガとは“D&D(ダンジョンズ&ドラゴンズ)”というTRPGの世界観の一つ「フォーゴトン・レルム」を舞台にしたファンタジー小説であり、ダークエルフの剣士ドリッズト・ドゥアーデンが活躍するシリーズの一番最初に書かれたエピソードですけど、次に書かれた『ダークエルフ物語』が過去編だったため、作中の時系列に沿えば2番目の話に当たります。この『アイスウィンド・サーガ』、原書では3部作だったのですが、翻訳する過程で分冊されたりまた元に戻されたりとグチャグチャな経緯を辿ったため、全容を把握するのがちょっと面倒です。文庫本が全6冊で単行本が全5冊――第1部が文庫本だと2冊、単行本だと3冊あり、第2部と第3部はそれぞれ文庫本だと2冊、単行本だと1冊あるってことになります。

 「第1部(2冊 or 3冊)」 「第2部(2冊 or 1冊)」 「第3部(2冊 or 1冊)」

 つまりこういう感じであり、もっとも効率良く収集すれば全4冊、もっとも効率悪く収集すれば全7冊になってしまうわけです。ああややこしい。今回出る『冥界の門』は丸ごと第3部を収録する内容で、文庫版の5巻目と6巻目に相当します。去年出た『暗黒竜の冥宮』が第2部で、これは比較的容易に買えるから問題ないんですけれど、肝心の第1部(2冊 or 3冊)が今は入手困難なんですよね……そもそも過去編で、シリーズの出発点となるべき『ダークエルフ物語』自体がもうとっくに品薄。「残念ながら現在絶版で、入手困難ですが、いつかそれらも復刊できれば、と思っております」とブログではコメントされていますが、この『冥界の門』も16年掛かってようやく復刻されたぐらいなので、道のりは険しそう。

 かつては文庫本全6巻セットがオークションに出品されれば1万円突破した末の落札もあったほどで、コアなファンたちが『アイスウィンド・サーガ』に寄せる熱意は並大抵じゃないと存分に窺い知れるでしょう。この続編となるシーズン3、『ドロウの遺産』4部作も翻訳版が第2部まで刊行済ですが、こっちもこっちで最後まで刊行されるかどうか先が危ぶまれたりしていて、ファンをドキドキハラハラさせている。『ダークエルフ物語』3部作を読了し、『アイスウィンド・サーガ』3部作を第2部まで揃え、もちろん『ドロウの遺産』も既刊は査収済な当方にとって『冥界の門』は重要なミッシング・リンク、これさえ手に入れれば邦訳最新刊『星なき夜』まで一気に辿り着けますよ。まさに悲願の一冊。だから2625円(税込)という『うみねこのなく頃に』に匹敵する価格にも怯みません、是が非でも購入に走らせていただきます。

130cm、『鬼うた。すぴんおふ!(仮)』の制作決定を告知

 専用ページの扱いからして姉がメインになりそうな雰囲気だが、あの『鬼うた。』だけに、蓋を開けてみるまで分からない。まだ詳しい内容も決まってないみたいなので、しばらくは続報待ちといったところですかね。この『鬼うた。』、個人的に体験版ではそこそこ惹かれましたが、肝心の本編が期待した内容とはどうも違っているらしい――との報告を受け、結局回避しちゃったソフトであります。もし、小春(姉の名前)を焦点に据えてしっかりと偏執的な内容に仕上げてくれるなら、本編バイパスしてスピンオフの方に直行してみようかな。なんだかんだ言って小春のキャラは結構ツボに入っている。タイトルは『愚か姉νtype』、略称は「おねうた」か「おにゅうた」で一つ。パッケージは落涙するアイアンマンみたいな仮面を付けた姫歌が「オロカアネメ!」と叫んでいるイラスト。

・脚本:西尾維新の『オリジナルドラマCD 佰物語』聴いたー。

 タイトル通り100個にも上るショートエピソードを寄せ集めたドラマCDです。再生するといきなり「思い出のアルバム」が合唱で流れてきて驚きましたが、それ以降は会話中心のショートエピソード……ってか、ストーリー性皆無なんで、これはもう「単なる日常のひとコマを掻き集めただけ」と言った方がいいか? 特にオチのない遣り取りも多く、「佰物語」というより「100のお題に沿った会話断片集」といった趣。掛け合いとしてはテンポが良いけど、ギャグ面では抱腹絶倒というほどでもなく、なんだかまったりとした印象ですね。

 音楽CDは規格の関係上トラック数が99個までとなっており、仕方なく複数の話をまとめてブチ込んでいるトラックもありますが、基本的に1トラックあたりだいたい30秒前後(結構バラつきがあって、ほんの数秒で終わるものや、反対に1分を超えるものもある)の小ネタが収録されています。また付属冊子として脚本そのまんまを印刷したシナリオブックが同梱されており、てっきりCDだけだと思っていた当方はちょっと得した気分。先にサウンドドラマを聴いておいてからシナリオブックを読むと、当然内容は一緒なんですが、意外なくらい印象が異なる。音声と活字では与えられるイメージが違う、という事実を鮮やかに再認識させてくれた。「脚本読みながら音声聴いたらノベルゲーみたいになるのではないか」と考えたものの、やっぱり違うんですよねぇ、なんかこう、感触が。紙媒体と電子媒体の差を改めて痛感したりしましたが、それはともかく、地の文がないせいか主人公である阿良々木暦のキャラが別人っぽく感じられる。阿良々木シリーズは会話文が中心の小説だったけど、それでも地の文があるとないとでは全然雰囲気が違う。主人公のキャラクターを確立するうえで地の文やモノローグの果たす役割が如何に大切であるか、これまた再認識させてくれた。あと「撫子」の読みが「なでしこ」ではなく「なでこ」であることを今更知って驚愕した。

 案外大人しい内容ばっかりで、もっとドッカンドッカン来るようなネタの連続を期待していただけに拍子抜けしましたけど、声優とキャラのイメージはぴったり重なっていたし、ダラダラ聴く分にはこれぐらいが丁度良いのかもしれません。学園絡みの話が多く、シリーズの隙間を補完する意味合いがあっていろいろと興味深い一方、アクラ木さんの友達いないロンリネスエピソードが大量で胸が痛くなるな……「人間強度が下がる」ネタが来たときはさすがに噴きましたが。期待しすぎるとちょっとガッカリするかもしれないものの、アニメ版のキャストが気に入っている人なら聴いて損はない一枚。シナリオブックが付いているので、ゴチゴチの原作主義者はCDを聴かずに脚本だけ読むって手もアリです。140ページくらいあって、そこそこ読み応えはある。でもやっぱりCD聴いて楽しむのが一番でしょう、何せ3000円近い価格するんですから。ちなみに当方、アニメは未見ですが、このキャストなら少し観たいかも……と思いました。火燐の声と演技が特にイイ。

作家・山門敬弘氏 訃報

 『風の聖痕(スティグマ)』の作者ですね。設定が『風使い』を連想させるとか、自己中のキャラが多いとかで賛否両論でしたけど、それなりに勢いのある内容で割と楽しんだ記憶があります。途中で読むのをやめてしまったから最近の動向は知らなかったのですが、まさか亡くなっておられたとは……ご冥福を。

 今年は知った作家の訃報が多くて気が沈みます。

・拍手レス。

 ウルトラマンのWikiで怪獣の設定にはあはあしてるだけで夏がおわります
 今夏はDies irae絡みでぎゃあぎゃあ騒いでいるうちに終わっていった印象。


2009-08-17.

ハリー・ポッターの最新作を流出させた云々という記事を目にした瞬間、うっかり流出位階に至ったハリー・ポッターを連想してしまった焼津です、こんばんは。『ハリー・ポッターとナチスの騎士団』。微妙に食い合わせが悪いな。

漫画→400円 ラノベ→700円 CD→1000円 アニメDVD→5000円(VIPPERな俺)

 きららの単行本→860円 海外小説(文庫)→1000円 分厚い海外小説(ハードカバー)→3000円。海外小説(文庫)までは割と気軽に買えるようになりましたが、海外モノのハードカバーは2000円とか3000円とか平気で超える作品が多くて困る。いつか「諭吉1枚で足りるんなら安いものだよ」と嘯ける身分になってみたいわ。無理か。ちなみにエロゲーは実売価格が未だに7000円前後と、相変わらずフルプライスが主流のままですが、あらゆるところでボリュームの長大化が顕著になってきた昨今の情勢を考慮しますと、そんなにコスパ悪くないんですよね。アタリさえ引けばたっぷりと楽しめるわけで、むしろお得なジャンルと言える。でも一番安上がりなのは、ネット上の記事とか動画とかCGを見てダラダラと過ごすこと。ディスプレイの前であっという間に過ぎ去る時間→プライスレス。

・セレビィ量産型の『とんぬらさん(1)』読んだー。

 絵柄とタイトルの響き、字面に惹かれて購入。「トンヌラさん」だったら買わなかったかもしれない。タイトルがタイトルだけにパロネタもちょこちょこ混ざっていました(ボコボコにされた姿がヤムチャ、消しゴムにはてなようせい、テレビ番組で『天神乱漫』など)が、元ネタを知らない人にとっては気にならない程度の軽い扱いになっており、「パロディで笑いを取ってばっかりのギャグマンガにはもう飽きた」という方でも安心して読める内容になっています。かと言って小ネタがつまらないわけではなく、母さんの使っている掃除機のロゴが「TOSHIBA」ならぬ「TOSHIMA」で「年増」とも読める仕掛けが施されているなど、細かいところまで気配りの行き届いた面白設計につき、いちいち読み込むのが楽しい。あ、ちなみに作者は『天神乱漫』のSD絵を担当した人らしく、作中の『天神乱漫』ネタは本家本元とも言えるわけで、パロディと呼ぶべきかどうかは判断に迷うところ。

 メインとなるのは一之瀬三姉妹。更に言えば、その真ん中に位置する中学生・市乃がヒロイン。彼女は妹である五月乃が拾ってきた異様にふてぶてしいデブ猫、「とんぬらさん」が人語を解し自ら操る存在――つまり「喋る猫」であることを知って、大いに仰天する。こんなデタラメ極まりないものがあっていいのだろうか? 面構えといい口調といい佇まいといい、とにかく何もかもが不敵なとんぬらさんの振る舞いに頭を痛めながらも、徐々に受け容れていくホームドラマチックなギャグコメディです。「人情」と「ギャグ」の二項分類で言えば、ギャグ重視路線。毎回ほぼ必ずサービスショットが用意されていたりして、イイ意味で頭が悪い。厳格な母親がとんぬらさんの肢体に魅了されて堕ちていくあたりとか、妙にエロいですよ。というか、お母さんのキャラが最高だ。34歳の三白眼、普通なら人気が出そうにない造型ながら、割と苦労性な人でつい肩入れしてしまう。隠れヒロインとも呼ぶべき存在です。

 もちろん、メインを張る三姉妹、雛乃(高校生)、市乃(中学生)、五月乃(小学生)も充分に魅力的で、「表紙のおかっぱ髪とむっちりした太ももに釣られて買った」って人も含めてしっかり満足させてくれる。目が大きめに描かれているせいか全体的にヒラメ顔の傾向が強く、ちょっと好みが分かれる絵柄かもしれませんが、そこを越えればもう桃源郷ですよ。一人一人のキャラクターは「体は大人だけど、だらしない性格をしている長女」「姉に比べて発育がやや残念ながら、しっかり者の次女」「動物大好きで、まだ甘えん坊なところが抜け切らない三女」と、割合平凡な域に留まる。これといって濃い特徴があるわけじゃない。しかし、「だらしない姉」と「甘えたがりの妹」に挟まれ、加えて厳格無比(だったはず)の母とふてぶてしい猫にも悩まされる市乃の立ち位置が美味しくて、ぐいぐいと読まされてしまう。愉快な人間関係(猫もいるが)を絡めることで個々のキャラが二倍にも三倍にも活きてくるわけです。ふざけた猫と楽しい人々が協和する、実に王道楽土的なホームコメディと言えましょう。

 ネタ・キャラ・ギャグのキレ、あらゆるものが丁度良くて素晴らしい一冊。とんぬらさんは見ての通りまったく可愛くないし、全編通して寝そべりスタイルがほとんどデフォ姿勢になっているあたりは異常なんだけど、貫禄溢れるセリフ回しをはじめとしてこれ以上にないほど作品のド真ん中に屹立しており、ヒロインたちの存在を度外視してさえ「読み応えはある!」と確信させる精神的支柱になっています。不敵で素敵、もはや無敵。不思議動物系コメディに食傷気味な方が相手であってもガードの隙間へ捻じ込むようにオススメしたくなる、それくらいにハマってしまった。当然、2巻目にも大期待です。どうでもいいけど、犬に近寄られて動揺するとんぬらさんの姿でなぜか境ホラの「はなさんかじじい」を思い出してしまった。あそこの犬語を翻訳すると「へへへ じゅうごの こむすめじゃねえんだからよう」になったりするのかしら。


2009-08-14.

・先月に既刊15冊を一気読みしてハマった『でろでろ』という怪奇ギャグマンガが今月出た新刊で完結したと知って呆然とする焼津です、こんばんは。

 50巻はないにしても30巻くらいまでは続くものと思い込んでいたのに……ショートギャグが主体でありながら全16巻という長大な分量を最後までマンネリなしで持て成してくれた点では稀有な作品だと思いますし、最終巻も程好い調子で幕を下ろしてくれましたけど、正直言ってまだまだまだまだ続きを読みたい気持ちでいっぱいですよ。サザエさん現象が発動して季節ループしているとか細けぇことはイイんだよ。もっと耳雄や留渦のふざけた妖怪とともに過ごす可笑しな日常を味わいたかった。ああ寂しい。同じ妖怪モノである『もっけ』も終わってしまったし、なんだか無性に遠い目をしたくなるなぁ……。

みなとそふとの新作『真剣で私に恋しなさい!』、マスターアップ

 よし、これで月末の予定が本決まり。マジこいが来る前にシャルノスとるい智とコミュ体験版を終わらせておきたいがさてはて……。

ライアーソフトの新作はスチームパンクADV『白光(ひかり)のヴァルーシア』、今秋発売予定

 更新履歴を見ると先月末に情報公開がスタートしていたらしい。最近こまめにチェックしてなかったので全然気づかなかった。さておき、桜井光シナリオのスチームパンク・シリーズ第4弾です。『蒼天のセレナリア』→『赫炎のインガノック』→『漆黒のシャルノス』と、これまでずっと同一の世界観をもとに展開してきたので、今回も何らかの繋がりがあるはず。「砂漠の〜」という言葉から察するに、今回の舞台は中東とかそのへん? 原画が大石竜子なんでインガノック・コンビ再結成といった趣だが、今年の秋は個人的にいろいろと注目作が重なって身動き取れるかどうか怪しいんだよなー。購入しようと思っているソフトが既に5本くらい、購入するべきか迷っているソフトもやはり5本くらいあって、ああ、これはまさしくインガノックのときと同じだわ。あの頃もやたら注目作が短い期間に集中したものでした。まぁ、うちいくつかは延期しましたけど……もうちょっと詳しい情報が明らかになるまで「検討」のところに置いておくとしよう。

全巻揃えて後悔した漫画(VIPPERな俺)

 最近はまとめ買いすることが多くなったけど、一括購入したマンガの1巻をパラリと読んで「まずい、この作風は好みに合わない!」と直感したときの絶望感はすごいものがある。エロゲーも、今こそ体験版のおかげで嗜好チェックする機会が増えて被害は減ってきましたけど、買って5分で後悔するソフトに出くわすことが昔はしばしばありました。体験版やってたって後悔するソフトもあるっちゃありますけどね……怒りの庭とか……。

・原作:外薗昌也、作画:別天荒人の『明日泥棒(1〜4)』読んだー。

 小松左京に同題のSF小説があるんでアレのコミカライズだろうか、と長らく思っていましたが、別にそんなことはなかった。左京の方は「あすどろぼう」で、こっちは「あしたどろぼう」です。原作の外薗昌也は『犬神』で、作画の別天荒人は『プリンススタンダード』でイメージが止まっており、最近の作品はチェックしていなかったが、つい先月に刊行された4巻で完結したと聞き及び、「試しに読んでみるか」と手を伸ばした次第。マンガで全4巻って、ちょうど手を付けやすい冊数なんですよね。3巻以下だと「物足りなくなるんじゃないか」という心配に駆られるし、かと言って5巻以上ともなればまとめて買う際に決心が要る。4巻くらいが軽い気持ちで一気買いできる限度かと。

 東京上空にいきなりUFOがやってきて、そこからメイド服を着た女の子が送り込まれる――という、突拍子もないがありふれているっちゃありふれているシーンを起点にストーリーが進んでいます。メイド服の子は、初めて目にする美少女……ではなく、主人公の記憶にバッチリと焼きついている「思い出の人」だったわけで、これは単なる再会モノなのかと申せばさにあらず。9年前に別れた元カノ、天堂明日と瓜二つだが、どう考えても本人とは思えない。なぜならば、その子は9年前の明日をそっくりそのままコピーしたような容姿で、まったく成長というものをしていなかったからです。別に天堂明日が故人となっているわけでもなく、あくまで疎遠になっただけであり、やがて本物の明日――順当に歳を取った三十路前バージョンのヒロインも登場する。そこからタイトルの「明日泥棒」へと繋がっていきます。

 数人の男女が地球の命運を握ってしまう、いわゆる「セカイ系」を地で行くようなノリで、東京上空に浮かぶUFOや「9年前の明日」が現れた理由もSFチックというかオカルトチックに明かされていきますが、正直そのへんはどうでもいい。「ツングースカ大爆発なんて久しぶりに聞いたなぁ」と懐かしんだりしながら読めばいい。ポイントは、「バージョン違いの同一ヒロインを巡る修羅場」が描かれる点、ここに尽きる。「大人になった明日」と「9年前の明日」、更にはガングロ女子高生だった時代の「黒明日」まで交わり、優柔不断気味な主人公をこれでもかとばかりに悩ませる。全体的にドタバタ色が強く、また銃を乱射するようなアクションやスペクタクル系のシーンもふんだんに用意されているため、ラブコメ要素がやや弱くなっているのは残念だけど、「現実の彼女」と、「理想の彼女」――若くて生気に溢れ、本物は料理下手なのに美味しい料理をつくれてしまう、主人公の願望が多分に混入した存在――、そして主人公の知らない「過去の彼女」、3つのタイプが勢揃いするシチュエーションはなかなか派手で面白みがあります。そういえば、主人公の妻が辿った性遍歴を各時代に分けて掘り下げるエロゲーあったっけ……初回特典がオナホールという、なんとも始末に困る代物だったので購入は見送りましたけど。

 導入としては面白い1巻、少し迷走気味になってくる2巻、間延びしてきた3巻、終幕に向けていささか慌しく足早になる4巻と、ペース配分がいま一歩で構成面にやや難を感じるものの、オチの持っていき方がキレイで爽やかな読後感が残るから、終始トントンといったところか。「全巻揃えて後悔した」ということはなかった。ギミック部分に期待を掛けすぎると少々辛いものがあるにせよ、4巻ラスト付近、「将来の自分へ贈るメッセージ」を発掘する場面はあざとくも心地良かった。けれど、SF的な説明はうっちゃって、ひたすらラブコメに徹した方が良かったのではないか……という気がしなくもない。主人公の存在がちょっと希薄。このネタは調理次第でもっと盛り上がったはず。そういう意味では勿体ない素材ですね。

・拍手レス。

 『俺の妹が〜』4巻、おもしろいことになってますね。これは新鮮。
 各所でそういう評判を耳にしますので気にはなってるんですが……読み出すまでもう少し掛かりそう。


2009-08-11.

・アニメ化が決まったらしい『ムダヅモ無き改革』の2巻を読んで愕然とした焼津です、こんばんは。

 1巻も相当にアレな展開を見せたものだったが、2巻はそんなレベルじゃねぇ。もはや1巻とは比較にならぬ壮絶極まりないシチュエーションで読み手の度肝を抜きます。まさか、よりによって戦う相手がナチス第四帝国(月面)とは……麻雀マンガどころか、政治ネタマンガですらなくなっていますよ。時期的にちょうど似たような題材を扱っている作品にハマっているところなんで、終始爆笑しながら楽しみました。それにしてもティモシェンコ首相がキャラ立ちしすぎですね。このまま敵役の魔女として『大魔法峠』に出てきても不思議ではない存在感。あと某キャラの言動が非常にオプーナさんを彷彿とさせる代物だったが、Wikipediaによると本気でああいうことを言った(書いた)みたいだ。破天荒なギャグマンガを好む方には是非とも推しておきたい。

・るい智とかと一緒にのんびり進めていた『漆黒のシャルノス』、やっと第7幕に到達。

 開始当初はいまいちストーリーが分からなかった(ヒロインであるメアリを様々な形で狙う様々な勢力があることは嗅ぎ取れるものの、具体的にどういう理由で狙っているのかいまひとつ呑み込めなかった)が、さすがにこのあたりまで来ると大まかな枠組みが見えてきますね。直接的な説明が少ないので「たぶんこうじゃないかなー」と予想を積み重ねている要素が多く、見えそうで見えない箇所があったりしてもどかしいが、もどかしい反面、意味の読み取れなかった部分が徐々に咀嚼できるようになってくると妙な快感が湧き上がってくる。見た目は煌びやかなくせして何気にスルメゲーというか、ジワジワ盛り上がってくるタイプの物語だ。体験版は第2幕まで収録していましたが、もし収録箇所が第1幕のみだったら、製品版にたぶん手を伸ばしてはいなかったでしょう。そして何より、ヒロインのメアリがこんなに可愛くなければ、第1幕の途中で投げ出していたかもしれない。正直に申し上げますと、第4幕くらいまでは「メアリかわいいよメアリ」の一点張りで本筋にあまり注意を払っていなかったが、第5幕あたりでようやく遅まきながら興味を示し始めた次第。演出とはいえ「繰り返し」が多いシナリオ(バンクめいたテキストやテンプレに近い文章もてんこ盛り)だけになかなか馴染めなかったし、短く、且つきれぎれなセンテンスを乱発する桜井光の作風にも辟易していた(一つ一つのテキストを絞り過ぎていて、味気ないというか物足りないというか)ものだが、気づけば慣れていました。すべては順応力の御心のままに。ポイントとしては足りない箇所を妄想で満たす、いわゆる「脳内補完」をほぼ随時発動させることが重要であり、パズルの穴を埋め続けるが如く常に考えを巡らせていればフワァッと気持ち良くトリップできる。そういう観点に立てば、シャルノスはなかなか脳内補完のし甲斐があるゲームだと言えます。

 話の雰囲気から察するに、そろそろ折り返しを過ぎてクライマックスに向かっていくところかな? メアリの可愛さ据え置きのままストーリーが好調になってきてくれているんでありがたい、実にありがたい。「メアリに悪い虫が付いている」と睨んでお冠になるアーシェも愉快であり、程好くテンション上がった。というかあそこ、表情変化のパターンがやけに豊富で笑った。

・拍手レス。

 "Acta est Fabula"の元ネタを考えれば、やはりニート参戦でしょうね。
 玲愛ルートも途中まで執筆済みとの話でしたが、間に合わなければ来年のクリスマスまで延ばしてもいいかとw

 完全版発売延期、今年のクリスマスに出るのは螢ルートアペンドディスクだけとか……それでも買ってしまいそうな自分が憎い。

 焼津さんの感想に釣られて怒りの日購入即攻略しました。濡れた。@暁
 Diesはホンマ中二病が不治の宿痾であることを実感させてくれるソフトやでー。

 もう二次元から離れられない。
 「日の光は要らねえ」 ならば部屋こそ我が世界。 「俺の嫁がいねえなら」 脳内で無限に入れ替えて新生させ続けるものになりたい。 「この、二次の夜に無敵であるため」 愛しい現実よ、枯れ落ちろ。 「それが、俺の想像(かつぼう)だ」

 地震、大丈夫ですか?焼津が一番怪我人多いみたいでちょっと心配に。
 まさかこんな形で焼津市が報道されるとは……今はもう静岡県民じゃないですし、当方に被害はありませんが、心配ですね。


2009-08-08.

・「アニメ化したら国際問題に発展しかねん」と書いていた『ムダヅモ無き改革』が本当にアニメ化決定して目を疑った焼津です、こんばんは。

 いやはやぶっ魂消た。『ヘタリア』ですらあれだけ揉めたのに……プーチンを「元KGBの暗殺者」扱いしたり北のパンチパーマ将軍に「一族全員粛清すっぞコラァ!」と言わせたりと、ギッチギチに危険なネタ盛り込んだ原作をどう調理するというのでしょう。「アニメ化中止」の報がいつ舞い込んできても不思議じゃないな、と思いつつ静観させていただく。

lightのwebラジオ「Happy light Cafe」第18回配信

 事前予約キャンペーンの粗品第2弾が決まったみたいです。「Dies irae ファンブック(仮)」、カラー表紙のB4サイズ小冊子とのことで、ファン向けパンフレットみたいな具合になるのかな? 中身の企画はこれから考えるということで、詳細不明。とりあえず粗品はこれで打ち止めになるみたいです。他、完全版に関する情報も正田崇(シナリオライター)やまゆき(ディレクター)の口からいろいろと語られており、以下恒例の要約。今回ネタ多いのでクンフト編とファーブラ編に分けます。

 (クンフト編) 「シュライバーの死に様、声優さんスゲェな、と」「スゴい狂人演技」「(実際に聴いたとき)自分でやっといて泣きそうになった」「いろいろと締め付けが厳しくなってきた昨今、俺は何をやってるんだ、と」「コンシューマ化する気ないだろ、うんないよ、みたいな。仮にお声が掛かってもあそこは変える気ない」「メルと神父が変態」「メルと神父は格好良くするつもりで書いていたが、音響と声優さんが揃って『こいつは変態だ』と言うので『分かったよ、変態にしよう』と」「ドラマCDあたりから変態っぷりが加速した」「神父は格好良いのと狂人と変態が絶妙なバランス」「ラインハルトも最後の方は変態入ってる」「メルクリウスとマリィが最後の会話を交わすあたり、俺はマジでムカついてた」「マリィが事態を打開するためにあれこれ案を出すが、それを片っ端からメルが『イヤだ、ダメだ、認めぬ』と否定していく」「『このクソガキが!』と思って。だから最後はスカッとした」「正田は深夜に社内を行ったり来たりして、そこらじゅうで踊って、足掻き抜いた」「(クンフトの名勝負は?と訊かれて)マキナ対トリファ、一番面倒臭かった」「複数組のバトルが同時進行するんで、詰め将棋勝負みたいな感じに」「途中で理屈が合わなくなったり……なにげにあそこが一番時間掛かった」「(香純ルートラストの)ヴィルヘルム可愛い、あいつ的にハッピーエンド、本懐遂げてる」

 (ファーブラ編) 「ファーブラでは面白いバトルの組み合わせが見れる」「イザークもファーブラで本領発揮、超精神攻撃とか。イザーク超書きてぇ」「(現時点で書き上がっている)香純・マリィ・螢の3ルートだと螢ルートが好き、自分の中で一番よく出来てる」「恋愛的なものがもっともうまく書けてる」「螢と蓮の相性が悪くて、ふたりして超ツンデレカップル、可愛くてしょうがない」「マリィルートや香純ルートでは『好きだ』とか『愛してる』といったセリフが割と出てくるが、螢ルートでは一言も言わない」「お互いのいるところで面と向かって言わないが、離れたところでメロメロ、本人がいないことをいいことに『俺の女』とか」「螢は唯一一緒に戦えるヒロインなので、そういう意味じゃ使いやすかった。香純は帰るべき場所だし、マリィは武器だし」「螢のボコられ具合が半端ない、クンフトのボコられ具合が可愛いくらいボコられる」「戦うヒロインだから痛い目見てもらおうかと。4回ぐらいボコられるかな、絶対勝てそうにない相手とばっかり戦わされる」「蓮の声は増やそうという話が出ている、フルボイスかどうかも検討中」「螢ルートとマリィルートは量的にほぼ一緒、玲愛ルートはたぶんもっと長くなる、一番派手になりそう」「敵の強さが香純ルート<螢ルート<マリィルート<玲愛ルートの順」「マリィルートも大概だったが玲愛ルートはあれより上、既に出来ているネタを冗談めかして話したらGユウスケの顔が引き攣ってた」「クンフトで背景設定を説明し切れなかったキャラもファーブラで補完される」「螢ルートだとエレオノーレ、ベアトリス、カイン、玲愛ルートだとルサルカ、シュライバー、イザーク、メルクリウスを掘り下げる」「敵の強キャラひとりずつにテーマ曲が付く、というのが正田の願望」「新しい主題歌は作曲・与猶啓至、作詞・榊原ゆいで」「ドラマCDは、余力があればもう一枚くらい」「ドラマCDは好き、ノベルゲームだとテキストの見た目(漢字と仮名の配分など)も気にしないといけないが、ドラマだと音だけに集中できるから楽っちゃ楽、テンポだけ考えればいい」「ファーブラにてDies世界真の最強決定戦が描かれる、戦っちゃいけない人が戦う」

 なんつーか、正田自分でハードル上げまくってね? 玲愛シナリオはまだプロット段階のはずなのに、ここまで大言壮語しちゃってもいいのか。また逃亡してクリスマスに怒りの日が再来したらマジ洒落にならんよ……それはそれとして螢ルート、蓮と螢のダブルツンデレカップルか。男ツンデレというと、個人的には『Dクラッカーズ』の物部景と『おたく☆まっしぐら』の本郷明が二強ですけれど、果たしてここに藤井蓮を加えて「三強」とすることができるのか。ああ是非とも食い込んできてほしい。そして玲愛ルートは、想像以上に凄いことになりそうですね。マリィルートよりも敵が強いとか何それこわすぎ。「真の最強決定戦が描かれる」「戦っちゃいけない人が戦う」って、もしかしてメルクリウス出撃フラグ来た? 水銀の王をブッちめて既知感(ゲットー)を破壊、未知の結末へと辿り着くのか……考えただけで異様なくらいワクワクしてしまうぜ。

TOPCAT、『果てしなく青い、この空の下で…。[完全版]』を10月30日に発売

 9年以上前に発売されたエロゲーですね。当方も一応所持していますが、未開封で積んでいる。たかみち絵に釣られて購入したこともあり、パッケージを眺めているだけで満足してしまった。主な変更点は「フルボイス化」「以前公開したおまけシナリオをゲーム内に収録」「Hシーンのボリュームを増量」「演出とシステムを強化」「デジタル原画集や録り下ろしドラマを追加」ってところみたい。つーか、旧版には「既読・未読スキップ」や「メッセージ履歴」もなかったのか……? それとも単に「該当する機能を更に強化しましたよ」というだけの話なのか。ともあれ、5040円(税込)とそこそこ安い値段ですし、旧版も未プレーですから、この際『装甲悪鬼 村正』のついでに買っちゃおうかなー。

暁WORKSの『コミュ−黒い竜と優しい王国−』、体験版配布開始

 容量600MB超――最近の体験版は本当にデカいな。購入は確定しているし、るい智まだ終わってないし、できれば発売までプレーを控えたいところでしたが……やんぬるかな、欲望には勝てなかった。今回も製品版で使える「体験版終了地点のセーブデータ」が配布されるみたいなので、頑張ってクリアするとしよう。

『俺たちに翼はない』のドラマCDセカンドシーズン第一巻『夢ラジオ・空色スクールデイズ』聴いたー。

 さて始まりましたよ、ドラマCD第2期。全5巻だった第1期に対して今回は全4巻の予定らしい。「第1巻→1章のエピソード」「第2巻→2章のエピソード」といった感じで照応していくのかしら。少なくともこの1巻目は1章である「羽田鷹志編」に関連したストーリーとなっています。しょっぱなから雄々しい声のホーク卿が登場し、濡れながら噴きました。インタビュー風の構成というのも、サウンドドラマならではの試みで面白い。セカンドシーズンのおかげか、制約が減って伸び伸びした脚本と化しており、好き勝手やらかしてくれてる雰囲気が素晴らしいです。若干本編と違うノリも垣間見られますが、つまらないところはなかった。

 「12月の白い空は――」とか言ってるし、羽田班集結してるし、本編からそんなに時間の離れた話ではないみたい。一応、ヒロインである渡来明日香とは彼氏彼女の関係に落ち着いているので、分類上は「後日談」となるでしょう。コンプのSSよりも前だろうか後だろうか。ともあれ、ある日針生先輩がビデオカメラを持ってきて「ショートフィルム撮ろうぜ」ってことになるエピソードを皮切りに、羽田鷹志周りの愉快な日常を軽快な調子でポンポンと語っていきます。高内さんが本編を裏切る可愛さ発揮しまくっててヤベェ、見えちゃう、グラムサイトで高内ルートが見えてきちゃうわ。こまごましたショートエピソードの寄せ集めといった趣ゆえ、小ネタがいちいち笑えて仕方ないです。「ぶっちゃけどうしたら萌えキャラになれるのか教えてよ」「整形!」は触れたよ、タブーに触れたよ、マジで。ホント心底テンポ良く進んでいくので、50分があっという間に過ぎ去り、「え? もう終わり!? 早くね!?」と驚愕すること請け合いです。体感時間、せいぜい20分程度。意外なところで俺たちのハリューによる名言が紛れ込んだりとか、瞠目すべき箇所をいちいちピックアップしていったらキリがない。「過去すら贖わずに惰眠など貪れるものか……この十字架を降ろさなければ、どのみち俺たちに明日はないんだ!」とか、なにこのクライマックスで出て来そうな悲壮感に満ちたセリフ。本編以上の熱気に包まれていてビックリしました。解説役の鷹志ともども、ほとんどキャラ崩壊レベルに達しているものの、抱腹絶倒したことは確かであり別にいいや。一種の番外編と受け止めておこう。

 よく考えると鷹志と明日香がイチャイチャするラブコメチックなイベントが全然なかったが、そんなこと気にならないくらい夢中で楽しんだ次第。おまけとして出演した声優さんたちのコメントが入ってますが、すっげぇ和気藹々としていて聴きながらニヤニヤしてしまう。本編やってないとネタが分からなくて笑いどころが見えない箇所とかあったりするかもしれませんが、脚本と声優が良いのでたとえ未プレーでもそれなりに魅力を味わえるはず。興味を抱いた方はamazon等で視聴してみてください。プレー済ならどうなのか、と申せば……買う他ないでしょッ!

・拍手レス。

 妹に何て呼ばれたい派ですか?
 妹に拠りますけど「お兄ちゃん」「兄さん」あたりが手堅いかな。

 東出祐一郎作の
 東出祐一郎作の「ケモノガリ」 『スティーブン・キング×中二病×B級映画の面白さ』だそーですよ。なんかもう、どういう客層狙ってるのか丸分かりだ。そして東出祐一郎氏は書いてる間楽しくて仕方無かったに違いない。

 虚淵御大のアイフルもまだ読み終えていないくらいで、ケモガリ崩しはもう少し先になりそうな気配。スティキンと言えば来月に『悪霊の島』(原題 "Duma Key" )とかいう大作が出ますね。


2009-08-05.

『「Dies irae」サウンドトラック「ein jagen Nachtmusik」』収録のサウンドドラマ「Anfang」を聴いた焼津です、こんばんは。

 クンフトの出来が良かったら聴きたくなるかも、という己の心理を見越して『Dies irae Also sprach Zarathustra -die Wiederkunft-』が発売する前に通販で注文しておいたサントラです。タイトルを自動翻訳に突っ込むと「セレナーデを与えてください」になりました。2枚組で、1枚目はゲーム本編で使用したBGM、2枚目はボーカル曲とサウンドドラマ「Anfang」が収録されている。「Anfang」は英語だと「Beginning」、つまり「始まり」や「発端」といった意味でしょうね。『Dies irae』における敵、「聖槍十三騎士団」の首領と副首領が邂逅した日の遣り取りを明かしています。ここから2枚目のドラマCD『Die Morgendammerung』へと繋がっていく。

 1939年、ミュンヘンのビアホールが爆破されたヒトラー暗殺未遂事件でテロの首謀者として捕らえられたカール・エルンスト・クラフトことメルクリウスが、既にゲシュタポを掌握して「第三帝国の首斬り役人」として恐れられていたラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒから取り調べを受けて「死か服従か」の二択を迫られた末、宣伝省の一員に収まるまでがストーリーの範囲。基本的にメルクリウスとラインハルトが会話するだけで、動きらしい動きはほとんどないが、陰険と傲慢の衝突、互いの言葉の切れ端に漂う飢餓と渇望が聴きどころ。時間にしても20分程度、ごく短い内容であくまでオマケ止まりの代物ながら、悔しいことにファンなら充分楽しめてしまう。「ノストラダムスになれというなら喜んで……事実あれもまた私だ」と嘯いたりとか、ニートは本当に相変わらずだなぁ、ってニヤニヤしたり。歯痒いばかりの面白さ。それにしてもラインハルトが「斬首官」と呼ばれていたって話は本編でも触れられていたが、まさかその連想から蓮とマリィの聖遺物(ギロチン)を引っ張ってきたのではあるまいな……Diesのネタは疑い出すとキリがないですね。

劇場版「     」一番見たくないタイトル考えたやつが優勝(VIPPERな俺)

 劇場版「終わらない夏休み」。一応白倉由美の方ですが、タイトルで敬遠する人が出てくるはず。

・つばなの『第七女子会彷徨(1)』読んだー。

 デビューは一昨年ですが、これが初単行本となります。何ヶ月か前に調べ物でGoogleを使っていた際、たまたまこのマンガに関する記事を書いたブログがヒットして存在を知りました。「ほほう、なかなか良さげではないか」と注目し、そのときはまだ単行本が出ていなかったのでひとまず記憶に留めておくだけにしておきましたが、つい先月これといった契機もなく不意に思い出して検索したところ、この1巻が発売直前だった――という渡りに舟な経緯で速攻予約し、購入致しました。発売が先月20日頃なので軽く2週間は経過しておりますけれど、何もずっと積んでいたわけではなく、ぽつりぽつりと読み進めてようやく読み終わった次第です。本編は150ページ程度と、別段そんなにボリュームがあるわけではないにしろ、1つ1つのエピソードが高密度(コマ割りが小さく、ネームが多めで、ネタも細かい)なのでたっぷり楽しめます。期待以上に良い買い物をしました。

 舞台は未来の日本、「1000年後」とかいうほど壮大な遠未来ではないが、少なくとも現在から5年以上は経過している近未来、アンドロイドを始めとする「いかにも未来にありそうな道具」を焦点に据え、おバカな女子高生とそれに振り回される友人の「その時代では平凡なんだけど、読み手からすると非凡極まりない日常」を淡々と綴る、なんつーか、とってもシュールでユルいSFコメディです。感覚としては藤子・F・不二雄のマンガに近い。ヒロインのおバカっぷりは、帯文を手掛けている石黒正数の歩鳥を彷彿とさせる。故に、石黒正数が好きな読者であれば帯文に釣られてもまず大丈夫でしょう。1編1編は10ページ前後のショートコミックながら、先にも述べた通り密度が高く、読み応えは抜群です。絵柄が垢抜けないというか「ちょっと怖い、気持ち悪い」と拒否反応を示す方もおられるやもしれませんので、可能なら中身をチョロっと確認しておいた方が良いかもしれない。個人的にはむしろ好きな部類。

 とにかく発想が面白い。「私達の顔は個人情報の塊!」なる惹句とともに発売された「顔隠し君」――喉のあたりに装着してスイッチを押すと、不定形の膜みたいなものが発生して顔を隠してくれる、もちろん装着者自身は普通に周りを見ることができる――とか、バカバカしいんだけど「ありそう……いや、なさそうか?」と考えさせられ、妙に悩ませてくれる。「顔隠し君」の詳しい原理は触れられないまま、「ただそういう発明品がある」という流れのみで進んでいくため、ガチなSFを期待するとやや肩透かしだけど、在りし日の『ドラえもん』を想起させるようなノリで語られるエピソードがひどく心地良い。藤子臭漂うSF(すこしふしぎ)って、当方ぐらいの世代からするとすっごくノスタルジーを感じるんですよね。別にレトロフューチャーを気取っているわけでもないのに、不思議と懐かしくて心が落ち着く。シリーズの核心に触れている第08話「友達選定/Wander7」にしても、「入学と同時に『友達』が一人組み与えられる制度」……なんていう、マリみての姉妹(スール)制度をデチューンして生々しくしたような、半端にリアリティのある「二人の出会い」が回想形式で語られており、並みの手つきで調理してしまえば煮え切らずイヤ〜な後味を残してしまうか、あるいは不必要なまでにクサい感動ムードを醸すところだけど、つばなは強靭なセンスでいとも容易く「自然な日常」の中に収拾してしまう。実に鮮やか。ナンセンスで惚けた風情が濃厚だから分かりにくいものの、この作風はかなりしたたかです。ある回のオチに相当するコマで、

「私たち二人で一つでしょ!?」
「そうだよ! だから早く来い!」

 と、なにげない遣り取りに見せかけて二人を結ぶ絆の深さ(って書くと大袈裟だけど、そこに存在することがごく自然なものとして描かれている、という意味合いでの深さ)を見せ付けてくれる。ニヤニヤせずにはいられません。サクッと一発でハマってしまいました。今年において「アタリ」と請け合える新人のひとりであり、これは是非とも2巻目以降を渇望せねばなるまい。

・拍手レス。

 ”焼津ってなんて読むのかなって思ったら、ああた
 「ショーツ」って読めるじゃないですか。この変態!

 あやまれ! 静岡県にあやまれ! ……勝手にHNにしている当方が謝るべきでしょうかね?

 シンフォニックレインは良いゲームでした。
 思えばあれで「しろ」という絵師を知りました。


2009-08-02.

・最初にインストールして以来かれこれ1年以上経っている『るいは智を呼ぶ』、やっと3周目をクリアした焼津です、こんばんは。

 るい→花鶏→こよりの順で進みましたが、ぶっちゃけ他の2ルートに比べるとこよりルートはあんまり面白くなかった……おかげでテンションが下がってしまったけれど、なんとかクリアしましたし、4周目以降で持ち直してくれることを期待します。目指せ『コミュ』発売前コンプ。

light、『Dies irae 〜Acta est Fabula〜』専用ページを公開

 いわゆる「完全版」です。2つの陣営が向かい合って睨み合っている構図はベタながら素直にワクワクさせられるな。両サイドともイイ感じに拮抗しそうな雰囲気あるし。エリーはパッと見が軍服っぽいので一瞬「誰?」と思いましたけど。しかし、マキナの目立たなさとシュピーネの偉そうな表情がつくづく笑える。

 2007年に発売された旧バージョン収録の香純ルートとマリィルートを書き直した『die Wiederkunft』に対し、今回の『Acta est Fabula』は螢ルートと玲愛ルート、完全新規のシナリオを追加するわけで、ああ未知が止まらない。マリィルートがメインという構成なので、螢ルートと玲愛ルートは香純ルートと同じくサブの位置づけであろうと推測され、内容的にもオマケ程度だろう……と悲観していた時期もありましたが、『die Wiederkunft』が期待以上の厨二臭い出来映えだったこともあり、アペンドたる残り2ルートにも大いに期待を寄せられる。というか、クンフトのせいでだいぶハードルが上がっちまったな。半端な仕上がりではもう満足できない。期待しすぎるとしっぺ返しを喰らうことになるのは重々承知の上で、なお焦がれるほどに渇望したい。

 現在専用ページには「2009年12月発売予定」とあるだけで詳しい日程や予価は不明のまま、アペンドにまつわる具体的な情報も記載されておらず、まだまだ続報待ちと言った塩梅です。これでもし「アペンド:9240円」「完全版:12600円」とかだったら、なるほど確かに途轍もねぇ未知ではあるぜ……。

CUFFSの『Garden』瑠璃シナリオ、テキスト作成はほぼ完了の模様

 延期自体は予想に違わず。ただ、シナリオが概ね上がっているというのは予想外だった。無声シナリオパッチを9月末、音声パッチを11月配布とのこと。そしてパッチが完成し次第、『Garden』のスタッフは新作ソフトの製作に取り掛かるらしい。いろいろと心中複雑ながら、近年のエロゲー界を代表する2大スワスチカが遂に閉じられようとしていることを、まずは寿ぎたい。

Navel、『俺たちに翼はない』人気投票ようやくの結果発表

 投票〆切が5月31日だったくせに今ごろ結果発表って……と呆れつつも、王雀孫自らのコメントで楽しませてもらった。4章路地裏のイベントは「語り手の幻覚含みで誇張されて」いることが判明したりと、相変わらず裏設定が無駄に細かい。優勝キャラの短編公開はまた後日みたいですが、のんびり待つとしようか。

ニトロプラスの『装甲悪鬼村正』、プロモーションムービーを公開

 次から次へと注目作の情報が押し寄せてきて大変だなもう。スラッシュダークな雰囲気がやや抑え目というか、「さすがに奈良原節全開はまずい」と心得たムービーになっています。体験版知らずにこれ見て買った人がいたら阿鼻叫喚にならね? ネタバレ防止のためか、イベントCGもそんなに多く出なかったですね。ともあれ、「湊斗さんはもう殺さなくていい」「それは――わたしがやります」という囁きとともに「村正」のロゴへドバッと返り血が浴びせられる演出は禍々しくて良かった。さて、登場キャラのうち何人が生き残るんだろうか……。

・今月の購入予定。

(本)

 『ムダヅモ無き改革(2)』/大和田秀樹(竹書房)
 『光の大社員(2)』/OYSTER(双葉社)
 『男爵校長DS(2)』/OYSTER(双葉社)
 『獣の奏者(3・4)』/上橋菜穂子(講談社)
 『されど罪人は竜と踊る7』/浅井ラボ(小学館)
 『プラナス・ガール(1)』/松本トモキ(スクウェア・エニックス)
 『機動戦士ガンダムUC(9・10)』/福井晴敏(角川書店)
 『追想五断章』/米澤穂信(集英社)
 『GA(3)』/きゆづきさとこ(芳文社)
 『ダブル・ジョーカー』/柳広司(新潮社)
 『グーラグ57(上・下)』/トム・ロブ・スミス(新潮社)

 引き続き今月も予定枠を増量中。夏の商戦ゆえにか、各社勝負球を仕込みまくってますね。『ムダヅモ無き改革(2)』は様々な国家元首たちが正直賭けちゃいけないようなものまで賭けて命懸けの麻雀を打つ大バカコミックです。麻雀設定の無意味さは『咲』を軽く凌駕するレベル。もしアニメ化したら国際問題に発展しかねんな……今でも充分その危険性を孕んでますが。『光の大社員(2)』と『男爵校長DS(2)』はOYSTERの4コママンガで、なんと同時発売です。4コマはページが溜まりにくいせいでなかなか単行本出ないんですけれど、先月の『毎週火曜はチュースデイ!』に続いて新刊がやってくるなんて……しかも2冊一気に。エネルギュッシュかつ卓越したセンスを持つ4コマ作家・OYSTERの真価を是非見せてもらおう。『獣の奏者(3・4)』は今アニメをやっている(のかな? 見てないです)作品の続編。4巻で完結とのこと。

 『されど罪人は竜と踊る7』はいよいよアナピア編に突入するみたい。『くちづけでは長く、愛には短すぎて』の改稿版に当たるのではないかと。前編なのでスッキリしないまま話が終わりますが、たぶんそう間をおかずに後編も出ると思います。つっても、その後編を読んだって「スッキリ」という読後感は得にくいでしょう。スニーカー版はこのアナピア編が終了したところで話が止まってしまったので、9巻か10巻あたりからは完全に未知感で覆われた世界となるはず。そっちも読みたいが、ジオルグ咒式事務所時代のエピソードもまとめてほしい気分。『プラナス・ガール(1)』は待望の一書。「男だと言い張るけど可愛い女の子にしか見えない」という藍川絆に翻弄される倒錯ラブコメです。内容は手堅くて斬新さに欠けるし、設定ほど冒険したストーリーではないけれど、ヒロイン?である絆が可愛すぎて冒険とか斬新さとかどーでもよくなる。この手のジャンルでよく引き合いに出される『ストップ!!ひばりくん!』も先月から完全版の刊行が始まったみたいで注目。1冊あたり1470円(税込)と、なまら高いけど。『機動戦士ガンダムUC(9・10)』はこれで完結。福井ガンダムは大好物ながら、まだ1巻の途中までしか読んでおりません。全巻揃った暁には一気読みにチャレンジするかな。

 『追想五断章』はよねぽの新作。5つの短編が絡み合うような話かな? よねぽにはそろそろ古典部シリーズと紺屋シリーズを再起動してもらいたいわ。『GA(3)』は『棺担ぎのクロ。(3)』が発売日未定となった代わりに刊行されるきゆづき4コママンガ。芸術科アートデザイン(GA)クラスに所属する高校生たちの日常と青春を描いたほんわかコメディであり、画力の高さおよび題材として「芸術科」を選んでいることに意味のある話運びから一部で熱狂的な人気を獲得しています。テレビアニメも放映中みたいですが、そっちの評判はどうなんだろ。それはそれとしてクロ3巻も出てくれまいか。『ダブル・ジョーカー』は去年話題になった『ジョーカー・ゲーム』の続編。“D機関”シリーズと呼ぶべきか、“魔王・結城中佐”シリーズと呼ぶべきか。いまどき稀少なエスピオナージュ(諜報)ものであり、ゴチゴチのスパイ小説好きからすると物足りない箇所やツッコミどころが多いらしいが、「頭脳戦主体、殺し合いよりも騙し合いが肝のサスペンス」に惹かれるならば一読する価値あり。『グーラグ57(上・下)』はこれまた去年に話題を喚んだ『チャイルド44』の続編。原題は「The Secret Speech」らしいが、邦題は今後ずっと「カタカナ+2桁の数字」の法則に沿ってやってくつもりなんだろうか。海外ミステリ市場において話題作の続編は冷遇されやすい傾向にありますが、なんとか踏ん張ってほしいものです。もうこれ以上海外ミステリが衰退するのを見るのは嫌なんですよ……。

(ゲーム)

 『真剣で私に恋しなさい!』(みなとそふと)

 必要最低限しかOHPに足を運ばず、長らく情報を遮断してきたマジこいがいよいよ発売。容量は約7GB、かなりの大作みたいです。前作きみあるは体験版が合わなかったせいでテンション下がってしまい購入を見送りましたが、今回は「体験版をプレーしない」という逆転した発想で背水の陣を敷いてみた。一応『つよきす』のファンではあるし、たぶんイケる、はず……制作も佳境の様子で、延期することもなげな気配ですし早めに予約入れておこうかな。他は特に注目作とかないです。強いて言えば『だめがね』というのがちょっと気になっている。

 あとゲームではないですが、『俺たちに翼はない』のドラマCDもセカンドシーズンが始まりますね。今回は主人公たちも喋るそう。ドラマCDといえば『化物語』のショートショートを100話収録した『佰物語』も延期の末にやっと今月発売する。それと洋画でガイ・リッチー監督の『ロックンローラ』がDVD化。『ロックンローラ』は日本での上映館がたった2つしかなく、もちろん当方は見れなかったんですけれど、3000円も掛けないでDVDが買えるのだから世の中楽になったもんだ。

・拍手レス。

 腐臭のするダークヒーロー、ありかもしれない…
 私の場合、歌い手を突き抜けてフォーニを連想してしまうわけですが。合掌。

 『シンフォニック=レイン』は冒頭だけプレーしたまま放置してたな……探せばまだどこかにあるとは思いますが。


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