2009年5月分


・本
 『時間の歩き方(1)』/榎本ナリコ(朝日新聞社)
 『お兄ちゃんのことなんかぜんぜん好きじゃないんだからねっ!!(1)』/草野紅壱(双葉社)
 『嵐ノ花 叢ノ歌(1)』/東冬(徳間書店)
 『女装少年アンソロジー』/アンソロジー(スクウェア・エニックス)
 『野球の国のアリス』/北村薫(講談社)
 『ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!』/田尾典丈(エンターブレイン)
 『アスラクライン(1〜12)』/三雲岳斗(アスキー・メディアワークス)
 『アマルフィ』/真保裕一(扶桑社)

・ゲーム
 『装甲悪鬼村正』体験版(ニトロプラス)
 『Trample on “Schatten!!”〜かげふみのうた〜』体験版(TAIL WIND)
 『桜吹雪〜千年の恋をしました〜』体験版(Silver Bullet)
 『鬼うた。』体験版(130cm)


2009-05-31.

暁WORKSの新作『コミュ−黒い竜と優しい王国−』、公式ページがオープン

 タイトルでだいたい想像がつくでしょうが、例によって個性的な面子が寄り集まって共同体を築くパターンの話となっております。『るい智』における絆が「呪い」であったのに対し、今回は「アバター(鋼の怪物)」。5人の仲間が力を合わせることで巨大ロボットじみた化け物を操れるという、バトル系少年コミックみたいな展開になっている模様。アバターの操作には5人が協力し合う――つまり文字通り「伍を組む」ことが必要不可欠で、バトる際に意見や方針が一致しないとマズいことになるらしい。そしてアバター対決に敗北してアバターを破壊されると、コミュ(5人一組のチーム)全員が死亡してしまう。「戦うたびに操縦者が死亡、負ければ世界は滅亡」という『ぼくらの』における条件よりはマシながら、結構シビアでハードな設定だ。最近の巨大ロボットものは最先端科学がどうのこうのっつータイプよりも、こういう生々しい「代償」やら「生贄」やら、犠牲的な要素を核とするストーリーが多いように感じられるのは気のせいだろうか。『アスラクライン』も見た目に反してエグい設定のオンパレードだし。

我が世の春が来たか。『さくらさくら』、遂にマスターアップせり。

 今年中に発売するかどうかすら疑問視された一本ではありましたが、ようやく年貢の納め時に達した模様です。来月を震えて待て。

『Garden』、シナリオの進捗状況

 要約しますと、「現時点で6割程度まで進行」「シナリオは導入編/絵里香編/瑠璃編の3部に分かれる」「順序としては導入編(1周目)→絵里香編(2周目)→瑠璃編(3周目)と読み進めていく形になる」「ループゲーをプレーするような感覚に近い」「各編に大きな分岐はない」ってな塩梅でしょうか。恐らく各編とも大まかな展開は共通していて、それぞれ細部がどう描かれるかという、微妙な異なりをプレーヤーが発見して楽しむ形になるのではないかと。なんだか話が漠然としていて分かるような分からないような何とも言いがたい雰囲気ですが、今の段階でシナリオが6割ということは少なくとも7月には間に合わないだろうな……『Dies irae』の完全版ともども、今年中に駆け込めるかどうかの接戦になりそう。

 僅かなりとも希望の光明が見える、という点では安堵したい心持ちながら、まだまだ待たされることを思えばいささか気が遠くなるぜ。そしてスレでは早速「導入編→導尿編」と弄られていて笑った。

・真保裕一の『アマルフィ』読了。

 著者の最新長編。同題映画『アマルフィ 女神の報酬』の原作として書き下ろされたサスペンス小説ですが、あとがきによれば小説版は「当初のプロットを基に仕上げ」たそうで、映画とは違う点がいくつかあるとのこと。公式サイトのあらすじを読むと「フリーライター佐伯」や「“世界の歌姫”サラ・ブライトマン」など、小説には登場しないキャラクターの名前が出てくるので、ストーリーが本当にだいぶ異なるんじゃないだろうか。タイトルの「アマルフィ」はイタリアの地名であり、詳しいことはWikipediaあたりで調べてください。

 「邦人保護」という任務を果たすため、世界各地を行ったり来たりしている外交官・黒田康作。ギリシャでの任務を終えた直後、人遣いの荒い上司から「イタリアへ向かい、調印式の警備に当たれ」という指令が下る。休む暇もなくローマにやってきた黒田だったが、着いて早々に「邦人少女の誘拐事件」に関わる経緯となった。すべてを警察任せにして自らの重い腰を上げようとしない大使館の態度に業を煮やし、本来の仕事をほっぽり出して攫われた少女の母親に付き添い、誘拐犯との交渉に全精力を傾ける黒田。だが、身代金の受け渡しに失敗し、犯人からの連絡は途絶えてしまう。まだ手遅れではないはずだと粘るうち、新たな突破口が見えてきて……。

 ぶっちゃけ、アマルフィそんなに関係ないよね――というのが読み終わった後すぐに湧き上がった感想です。なるほど、そりゃプロットも変更されるわな。恐らく映画はもっとアマルフィを中心とした物語になるはずです。さて、それはそれとしてこの小説版。外交官でありながらテロリストにも臆さず立ち向かい、同僚たちに顔を顰められようが痛痒だにせず「英雄気取り」の行動を繰り返す主人公のキャラがプロローグ時点で既にしっかり立っていて、エンターテインメント的には申し分ない。本当にこんな外交官がいたらどうかとは思いますが、それはそれ。「少女の誘拐」が発覚してからが本番となるわけで、よくある誘拐サスペンスと勘違いしそうになるものの、さすが舞台を日本ではなくイタリアに移しただけあって後半に差し掛かるや否や「これでもか!」とばかりに派手な展開の連続となります。なかなか誘拐事件が進展を見せないせいで中だるみに襲われる場面もあるにせよ、そこさえ抜けてしまえば怒涛の勢いで一気に読める。真保裕一の作品は後半で失速してしまうパターンが意外に多かったりするけれど、少なくとも今回に関しちゃそういう心配は無用であり、「凡作化するんじゃないか」という思いも杞憂のままフィニッシュとなりました。

 クライマックスで夢中になれる反面、冷静な精神状態に戻るとやっぱり「アマルフィってそんなに関係ないんじゃ……」という念が湧いてくるが、海外舞台の疾走感溢れるサスペンス小説としては充分な仕上がりを誇っている。過剰に期待するとアレかもですけれど、まずまず安心して読める一冊ではないでしょうか。映画原作ってんで変な色眼鏡を掛けて見る必要もないです。事件が片付いた後、またしても主人公は上司からの電話で次なる任地に足を向けるんですが、いっそシリーズ化してくんないかな、これ。続きもちょっと見たい気がする。

・拍手レス。

 >凌辱エロゲ規制
 嘘屋の作品にも影響でそうで儲の俺涙目

 逆風の季節が近づきつつありますね。

 好き好き大好きは、雑誌でヒロインのビジュアルが気に入ってヌル凌辱を期待して買ったら。鬱々としたラバーフェチ談義が始まって挫折した記憶が・・・
 ラバーフェチはまだ耐えられたけど、首長族に耐えられなかった……。

 「さくらさくら」マスターアップ…ままままだ慌てるような時間じゃ(ry
 結局『よつのは』よりも延期がヒドい作品になっちゃったなぁ。


2009-05-28.

作家・栗本薫、死去

 愕然とした。賛否の分かれる人ではありましたが、十数年前に読んだ『絃の聖域』の感動は忘れがたい。ちょうど読書することに飽きかけていた時期に出会ったもので、浅からぬ衝撃を受けました。たぶん、あれがなければ小説というものに耽溺することはなかったでしょう。

 どうぞ安らかに。

130cmの『鬼うた。』、体験版をプレー。

 なぜか知りませんがここ最近体験版熱が高まっています。さて、本作は13cmの姉妹ブランド「130cm」が送る5番目のソフト。タイトルは「鬼が来たりて、甘えさせろとのたもうた。」の略であるとともに、メインヒロインである鬼・姫歌の特技が歌ということも掛けた、いわゆるダブルミーミングになっている。「嫉妬と依存」がテーマであるらしい。また制作サイドのこだわりから主要キャラクターすべてを黒髪――それも「青みがかった」「赤みがかった」と逃げを打つことは一切なし、「インクでも零したの?」と錯覚するほど黒々とした御髪――にしており、非常にマニアックというかストライクゾーンの狭いつくりになっています。割と明るい内容であるにも関わらず、出るキャラ出るキャラみんな髪の毛黒いんで画面がベッタリしてしまい、絵的にポップな感じが全然しない。不必要なほど重たい印象を放つ場面さえある。「なんて無駄なこだわりだ……」と嘆く向きもありましょう。だからこそ喝采したい。ベッタリ黒髪スキーの一人として感涙に咽びながら惜しみなく拍手を送りたい。ブラボー、おおブラボー。くろかみは正義!

 内容紹介に移ります。実家が神社で姉が巫女というそれなりにエロゲーらしい環境に身を置いている主人公はある夜、神社に忍び込んできた賽銭泥棒を取り押さえようとして逆襲に遭い、あっさり刺し殺されてしまう。そこで死ねば物語はさっさと終わるところだったが、村の守り神であり数百年と続く時を生きてきた鬼の姫「姫歌」によって命を救われ、代わりに彼女を家で養うことになった。しかし家には「小春」という、顔とスタイルは抜群だが他は軒並みロースペックでやたら手の掛かるポンコツ姉が既にいて、ふたりは主人公の寵愛を懸けて真正面から挑み合うことに……と、こんなノリのストーリー。始まって早々にプチ修羅場シーンが幕上げするのだからステキです。双方が繰り広げる愛の争奪戦は体験版だとあくまでコメディの範囲に収まる嫉妬として描かれており、プレーする側がビビるほどのドロドロした展開には入りませんが、製品版ではどうなるか分からんね。13cmや130cmを甘く見るのは死を意味しますからね。かの『ネコっかわいがり!』で打ちのめされた方も少なくないという話。

 メインを務める姫歌にはさして関心をそそられなかったが、主人公の姉、ダメでバカでヘッポコで弟の世話がなくなったら3日で死にそうな小春は胸にギューンて来た。見た目はしっかりしてそうなのに、中身はそこらにいる「甘えん坊の妹」より3倍くらいヒドいよ。言動がひたすらキモいよ、ウザいよ。でも可愛くてエロいから股間がギューンてなりますよ。依存症としか思えないほど高濃度にベタベタと擦り寄ってくる姿は素でヤバいものをフィールさせるけれど、当方はそんな愚姉が大好きです。嫉妬剥き出しのジト目がたまらんです。そして「これがバカ姉じゃなく、妹だったら、可愛いと思えたんだろうか?」と考える主人公は鋭い。そう、妹の嫉妬はある程度「可愛いもの」として許容されるのですが、姉の嫉妬は匙加減が難しく、少しでも過剰ならば「気持ち悪いもの」に堕してしまう。嫉妬する姉は美しいが、嫉妬しすぎる姉は醜い。もちろん、小春の妬心は余裕で過剰の域に達しています。『鬼うた。』はかなり自覚的に「嫉妬しすぎる姉の気持ち悪さ」を描いていて、小春が繰り出すウザ甘ボイスに眉を顰めるのも当然の仕掛けと言える。小春自身がもたらす強い不快感によって、むしろ近親相姦に伴う必然的な悪臭――「血の繋がった者同士で睦み合うなんて気持ち悪い」は対消滅し、跡形もなくなってしまうのだ。いや、理屈はどうでもいい。ハル姉のキモカワウザエロさは『鬼うた。』の御神体と呼ぶに相応しい代物だと、そう認識するだけで充分です。いいから試しに予約特典ドラマCDのサンプルデータの中級(真ん中の奴)聴いてみなさいよ。声優さんの熱演も相俟って鳥肌立つほどのキ○ガイっぷりがビンビンに伝わってきますよ。これはもう『厭な小説』に「厭な姉」というタイトルで収録されていても全然違和感がねぇ。厭だ。こんな姉は厭だ。

 物語の向かい先に具体的な目標がないので、のんべんだらりと日常描写を垂れ流す学園コメディに化している面はありますが、130cm『鬼うた。』は愚姉で持つ。結構気になるところで終わっていたから製品版をプレーしたい気持ちもあります。ただ、13cmって当方が初めてシナリオに挫折したゲーム『好き好き大好き!』を生み出したところだからな……あれがトラウマになったのか、まだ一本も13cmのソフトはクリアしたことがありません。カノギ(『彼女たちの流儀』)もいま一歩というところで踏み切れなかったし、どうも苦手意識の強いブランドなんですよね。

・拍手レス。

 温帯が…orz やはりグインは未完になったか
 『大菩薩峠』を超える未完巨編となってしまいましたね。

 ゴクドーくんシリーズはまず出ないだろうなあ。続き。
 外伝の下巻が出ず終いでしたっけ。仮に出たとしても、読む気になるかどうか……。


2009-05-25.

・“鉄球姫エミリー”シリーズの最終巻『鉄球王エミリー』を程好い充実感とともに読み終えた焼津です、こんばんは。

 素直に欲を申せば「もっと続きが読みたかった」という気持ちもありますが、それはさておき、この巻の面白さはなかなかのものでした。ほぼ全編が戦場シーンということもあり、このシリーズが誇る魅力の一つである「バトル描写の熱さ」を存分に味わうことができたし、何より作者が作者だけにどんな終わり方を迎えるのだかまったく先が読めない緊張感に満ちていて手に汗握った次第。これで完結してしまうのは寂しいが、少なくとも「どうしようもない打ち切りエンド」ではなくて、それなりにケリのつく結末で締められたことを寿ぎたい。「脈絡を無視していきなり全員頓死」とか、冗談抜きでありえそうな雰囲気だったからな……新シリーズの準備も既に始まっている(タイトルは『神剣アオイ(仮)』、現代を舞台にした伝奇アクションになるとのことだ)そうで、今後はそちらを楽しみにしたい。

 あと、スーパーダッシュ公式ホームページの特集ページにて書き下ろし短編が公開されています。「エミリーの『セリーナに「ひゃっ!?」とか、「きゃっ!?」とか言わせたい作戦』」(『戦場のエミリー』特集)および「『鉄球姫』エミリー対『盾』のマティアス」(『鉄球王エミリー』特集)。単行本にまとめられることは恐らくないでしょうから、この機会をお見逃しなく。

暁WORKS、『るい智』スタッフの新作を告知、タイトルは『コミュ−黒い竜と優しい王国−』

 公式ホームページは今月末に開設予定とのこと。年内ぐらいに出そうなので、早く『るい智』終わらせとかないとな……まとまった時間取れなくてチマチマとしか進められないけど、この前やっと2周目をクリアしたんですよね。智ちんの可愛さが留まるところを知らなくて困った。

読まず嫌いだった漫画を読んでみると面白かったやつ(アルファルファモザイク)

 実はジョジョもバキもヘルシングもシグルイもすべて読まず嫌いしていた過去を持っていたりします。最近読んだ漫画だと『プリズマ☆イリヤ』。設定改変型のスピンオフ作品ということでなかなか食指が動かなかったが、いざ読んでみれば案外しっかりとした出来で楽しめた。たった2巻で終わってしまったことが残念だったけれど、続編の連載もスタートしたと知るや喜悦の笑みが漏れました。小説では今野敏とか林トモアキかな。冊数を重ねるごとに味わいを増していく作家も少なくないので、最初に読み出した一冊のみで良し悪しを見極めるのは難しい。それから、アニメ化決定を契機に興味本位で手を伸ばした葵せきなの『生徒会の一存』シリーズも予想に反してジャストフィット。しょーもない会話がひたすら続く、それだけと言ってしまえばただそれだけの内容ながら、4コマ漫画感覚でチマチマと細かく読んでいけるのでちょっとした息抜きにもってこいです。エロゲーでは『こんな娘がいたら僕はもう…!!』。タイトルで避けていましたが、実際にプレーしたら想像したノリと全然違っていて驚いた。加えて「りあるりー」でお馴染みのOPムービーもかなり中毒性が高く、気づけばすっかりハマっていた次第。

SilverBulletの『桜吹雪〜千年の恋をしました〜』、体験版をプレー。

 もう一ヶ月も前に発売しているので、「なんで今更体験版?」って感じであり、甚だしく時期外れの雰囲気が漂うけれども、とにかくプレー致しました。一応発売前から興味はあって体験版をDLしてたんですが、なんとなくほったらかしにしていて今に至る次第。さて、本作はSilverBullet第3弾となるソフト。「さくらふぶき」と読みたくなりますが正解は「はなふぶき」。ブランドデビュー作である『雪影』にシナリオライターの一人として参加した日野亘が企画を務めています。あれです、『るいは智を呼ぶ』のライターですよ。ピンでシナリオ書いたソフトは今のところ一本もないが、テキストにかなり癖のあるライターなんで、チラッと目を通しただけで「ああ、るい智の人だ」ってピンと来るくらいだ。何度か田中ロミオ監修のエロゲーに加わったせいか、ロミオ節に近いテイストを振り撒いています。ただ、ロミオ以上に激しく好悪の分かれる作風であって、合わない人はプロローグの時点で早くも投げ出したくなること請け合い。個性が強いってのもありますが、全体的に如何ともしがたいほど荒削りで、るい智で幾分か耐性の付いた当方でもいくつか苦痛を覚える箇所がございました。しかし、るい智のときもそうでしたけど、進むにつれて「こりゃナシだな」という思いが淡く消え去っていき、気がつけば苦痛が反転して快楽に変わっているから不思議なものです。複数ライター制ゆえ具体的にどこを誰が担当しているのかよく分かりませんが、そこかしこに立ち昇るアクの強さは日野亘に起因すると考えて間違いはないでしょう。

 ケータイの電波も届かないような山奥に位置する全寮制の由緒正しい学園で、「花仙祭」なる大掛かりな学園祭を取り仕切る実行委員という大役に任命されてしまった主人公の明日はどっちだ? ってな具合の、平たく書けば「学園祭に向けて張り切る、ああこれぞ青春」系学園ストーリーです。実行委員長であるメインヒロインに脅され、最終的に「利害が一致する」ということで話を受けた主人公、しかし肝心の実行委員会に所属する実行委は委員長と主人公、まだたったの二人しかいないのであった。仕事を始める以前に労力が足りていない、ならば、まず必要となるのは人手の確保。週刊少年マンガよろしく仲間集め展開に突入し、ヒロイン勢を引き込んで充分メンバーが揃ったところで体験版は幕となります。要約すれば簡単な流れに見えますが、これが結構長かった……体験版だからすぐ終わるだろう、と甘く考えていたのに、裏切られた。さすがにるい智体験版ほどは長くなかったものの、3時間くらいは掛かったんじゃないかな。最近は大ボリュームな体験版が増えてきて、「あれ、これもしかして製品版?」と錯覚しちゃうこともしばしばです。あまりの長さに疲れ切って「もう体験版だけでいいや」と満足することまであり、本末転倒な気がしないでもない。

 んで、『桜吹雪』。テキストも個性的ながら、登場するヒロインたちも一筋縄じゃいかない。メインヒロインたる桜森紅紗からして既にオーソドックスな娘にあらず。一言で申せば「年上ロリで色気不足な不思議ちゃん系ローテンション小悪魔」、るい智でいう茜子さんに近い。どう考えてもサブキャラのポジションが妥当であり、普通のエロゲーなら「なんでこの子が攻略できないんだ!」と抗議が殺到してFDあたりで救済されるところだろうに、よりによってハナからメインヒロイン待遇とは。目の付け所が違う。凡百のメーカーならば青山ゆかりボイスの生徒会長をメインに選んでいたことでしょう。まあ、こっちはこっちで「なんでサブキャラなん? なんで攻略できへんの?」と詰る声が多いらしく、銀弾の選択が秀逸だったかどうか一概に判断することはできません。他のヒロインはダダ甘なブラコン腹違い姉、毒舌絶頂デビルマンレディー、殺害通告サムライガールと、メインほどではないにしろ若干濃い。外しすぎというほど外しておらず、「学園モノは好きだけど、最近やや飽き気味……」という倦怠感を味わっている御仁にはちょうどイイかもしれないラインナップ。個人的にはキング・オブ・マイペースな悪死紅紗たんとキモ姉チックな雪花に胸が高鳴りました。嫉妬する姉は美しい。

 やり始めは「うーん、パスした方が賢明かな」という感触を抱いたのに、終わる頃には「よし、買おう」って意見がぐるりと回転している、そんな奇妙な現象に出くわしました。より詳密に説明しますと、「隣り合わせの灰と青春」っつーワードが出てきた時点で「このソフトは信頼していい」と思えた。ベニ松好きに悪い奴はいない、はず。某所のレビューによると既読/未読の判定がいい加減、ディスクレス起動できない、という難点があるらしいが、公式サイトを見るに修正パッチで対応済のようなので迷いも消えた。正直、麒麟寺の髪型には未だ違和感が拭えないし、場面切り替えの演出がウザかったりするんだけども、あえて突っ込んでみようじゃないか……って威勢の良いことを書いてみたものの、今月はもう『花と乙女に祝福を』予約して余裕がないんだよな……また来月改めて購入を検討させてもらうとします。

・拍手レス。

 スニーカーのラグナロクも青春の一部として読んだ者としては続き読みたいですなー
 噂によれば書いてることは書いてるらしいですね、ラグナロク。

 何年も続きが翻訳されない海外ミステリのスレ。これは伸びない。
 伸びない代わり、想像を超えた年寄り率の高さに慄然とするでしょうね。

 「紅」は漫画版の方で満足できてるからもういいかな……。
 とか言ってると本編まですぐに追いついちゃいそうでおそろしい。

 片山憲太郎の「悪の方が強い世界」に魅せられている身としては小説版も諦め切れないです。

 なんだかやけに未完の作品にばかり手を出してしまうと思っていたのだが…それがデフォだったんだと気づかされたよ。綺麗に完結する作品に手を出せたら運が良いんだな
 完結してからまとめ買い、という手が堅実で賢明。しかし、リアルタイムで楽しむというのもそれはそれで得がたい体験であり、ジレンマ。


2009-05-22.

・『オイレンシュピーネ』『スプライトシュピーネ』、ふたつ合わせてシュピーネ共闘戦線――というおぞましい企画がふと脳裏をよぎった焼津です、こんばんは。

 黒蜘蛛(シュバルツ・シュピーネ)、紅蜘蛛(ロート・シュピーネ)、白蜘蛛(ヴァイス・シュピーネ)、全匹出撃! ってか。ああ、ご丁寧にも黒化(ニグレド)・赤化(ルベド)・白化(アルベド)にも対応してるじゃん。首領閣下と並んでいる三騎士全員がシュピーネっつーこれ並みに厭な絵面を思い浮かべてしまいましたよ。背後に控える閣下までもが一気にザコ臭く見えてくるほどでしたよ。これで更に特甲児童のコスチューム纏ったシュピーネを想像……したら憤死してしまいそうなのでやめておきます。

何年も続きが出ないライトノベル(日刊スレッドガイド)

 当方が3年以上新刊を待っているもの。秋山瑞人の『E.G.コンバット』、かれこれ10年近く、デストロイの季節はまだか……『ミナミノミナミノ』はもう諦めた。片山憲太郎の『電波的な彼女』、なんだかんだで『紅』もひと区切りついたんだからそろそろ再開してくれまいか。でも「醜悪祭ふたたび」な事態は勘弁な。『ソウルアンダーテイカー』、「20世紀のラストヒーロー」こと江藤比呂雄の伝説を綴るつもりが、そもそもまだ開幕すらしていないという。『ダブルブリッド』も無事完結したくらいだから、まだ望みはある……と思いたい。高畑京一郎の『Hyper Hybrid Organization』、本編は6年近く、外伝から数えても4年近く止まっています。仮面ライダーチックな変身ヒーローアクションを、「悪の組織の戦闘員」視点から綴る異色シリーズ。ギャグは一切なし、女性キャラもほとんどいない(2巻なんて男しか出てこない)非常にむさ苦しい内容ながら、ストーリーは問答無用で面白い。今更でもいいから再開希望。高橋弥七郎の『A/Bエクストリーム』、個人的にはシャナより好きなんだけど、とにかく売れないらしくて続きが出せないそうな。『アプラクサスの夢』が刊行されただけでも僥倖、と見做すべきか。梅津裕一の『闇魔術師ネフィリス』、ガチなダークヒーローもので、しかも「お嬢様はマゾ」という当方のツボを突きまくったシリーズ。巻末広告には「全2巻」と表記されていたけど認めんよ、断固として認めんよ。佐藤大輔の『皇国の守護者』、作者が作者だけに期待する気も失せるんですが、それでもなお待ってしまう罪深い魅力に溢れた架空戦記。古橋秀之の“ケイオスヘキサ”シリーズ、東方編はいつか必ずやって来ると、信じています。大塚英志の『摩陀羅 天使篇』、分かってんねんで、出るわけないのは分かってんねんで……でも忘れられないんだから仕方ないじゃない。

 それにしてもスレを眺めると懐かしいタイトルばかり上がって、弥が上にも時の流れを実感されられますなぁ。自分が「オッサン」と呼ばれる世代に差し掛かりつつあることを知って、少し涙。

『Dies irae』今後の製品展開について

 情報更新。表も付いて分かりやすくなりました。結局、2007年版でユーザー登録を済ませればdie Wiederkunftとアペンド版の両方、つまり完全版のデータを追加パッチとして受け取れるみたいですね。具体的にどういう配布形式になるかまだハッキリしないけれど、まずはひと安心といったところか。

『俺たちに翼はない パーフェクトビジュアルブック』、2009年6月30日発売決定

 王雀孫書き下ろし小説2編収録!

 3990円(税込)となかなかにイイ値段をしているが、この文字列を見れば焼津は買うしかないのであった。ああ、こうして来月も本代が嵩む……。

・三雲岳斗の『アスラクライン(1〜12)』読み終わったー。

 「三つの新人賞を持つ男」にして「未完の王」、三雲岳斗が誇る現在最長のシリーズです。唯一アニメ化を果たしたシリーズでもある。三雲のシリーズ作品は今の時点で9つくらいあって、うち完結しているのが2つ、継続しているっぽいのが3つ、どうも打ち切り臭いのが3つか4つほどあって「なんか微妙な戦績」という印象を与えます。数えてみて自分で驚いたが、当方は50冊ある彼の著書のうち40冊に目を通しており、熱心なファンとは言えぬにしても「それなり」のランクに属する読者なんでしょうけれど、ぶっちゃけ過去の作品に対してあまり高い評価は下してこなかった。無論、読み続けている以上は「箸にも棒にも掛からない作家」なんて思っていたわけじゃない。しかし、「アタリハズレの多い作家だな」とは感じていた。面白い作品とそうでない作品との差が激しいってのもありますが、シリーズものにおいて「テコ入れに失敗しやすい」という性質を持っているのが大きい。溜めて溜めて、ここで一気にバネを開放して跳躍――っつータイミングでちょうどコケてしまう。ミステリもSFもロボットバトルも能力バトルもひと通りソツなくこなせますし、沢山のキャラクターをさしたる困難もなく捌き切る腕もあるのだけども、逆にそのせいで器用貧乏に陥っている気がしてなりませんでした。

 しかし、『アスラクライン』は違う。「スクールパンク」の名目のもと、巨大ロボあり特殊能力ありクリーチャーありラブコメあり世界滅亡ありと、随分欲張って張り切った内容ながらも見事確変を起こし、テコ入れと跳躍に成功している。狙いに狙い、満を持して放った勝負球です。1巻が刊行されてから4年近く、アニメ化を果たし、冊数も12冊とかなりの量になってきたので、そろそろこの機会にまとめて読んでしまおうか……と至って軽い気持ちで思い立ち、近所の本屋で大人買いしてきたのですが、我が判断まったくもって正解でした。1巻だけだとまだそんなに盛り上がっては来ず、2巻でもまだまだゆったりスローペースが続くので、もし1冊ずつ買って読んでいたのであれば3巻へ到達する前に見切っていたかもしれない。そうならなくて、本当に良かった。アスクラが「おっ?」という変化を見せ始めるのは3巻が終わったあたりから、本格的に面白くなり始めるのは7巻あたり、伏線が発動しまくって怒涛の展開に雪崩れ込むのが10巻以降。いささかスロースターター気味でありつつも、しっかり着実に物語を膨らませていってくれます。三雲岳斗の長所、「大人数のキャラクターを使いこなす」が存分に発揮された形ですね。

 では、1巻ごとの大まかな内容と感想を逐次的に書いていきましょう。まず最初の1冊目、『アスラクライン』。副タイトルはなし。幼馴染みの幽霊が取り憑いているややヘタレな少年・夏目智春が、「悪魔」の少女やサイボーグ上級生、終いには機械仕掛けの悪魔「機巧魔神(アスラ・マキーナ)」と出会う……ってな、シリーズ全体のプロローグに当たる巻です。語られる要素も少なく、「悪魔」とは何か? 「機巧魔神(アスラ・マキーナ)」とは何か? も不明のまま閉幕となる。しかし一方、「世界は既に一度滅びていて、今は二巡目の世界を人類がプレーしている」というシリーズの根幹を成す重要な設定にはちゃんと触れられています。滅亡を回避するため強制的にリセットボタン押したせいで、世界にいろいろと齟齬(バグ)が生じておかしくなっている、と。「二巡目」と言っても所謂ループものではなく、「同じ事をぐるぐると繰り返しているようでいて、実は螺旋状に推進している」というのが『アスラクライン』の基本思想であり、つまり「未来は変えられる」って立場に佇んでいるわけです。やがて来る世界の滅亡、それに抗うことはできるのか、そして機巧魔神(アスラ・マキーナ)への生贄となっている幽霊少女・操緒を救い出すことができるのか……という具合に大まかな目標は提示されていますけども、この時点では目標が遠く漠然としていて掴みどころがなく、読者の心を燃え上がらせるまでには至らない。幽霊のくせして薄幸ムードが希薄、しょっちゅう主人公のことをからかう陽気な操緒と、パッツン前髪+巫女服の組み合わせにトロ臭い喋りと巨乳属性までオマケしてあざとく人気を狙う奏、ダブルヒロイン制でラブコメ濃度を高めて「1巻目の盛り上がり不足」を埋め合わせしようと試みるも、まだキャラの魅力は充分に引き出されていない。「うーん、微妙だなぁ」と感じてもしょうがないことです。いいから2巻目をさっさと読みましょう。

 2冊目、『アスラクライン2 夜とUMAとDカップ』。副題が付いたかと思えばいきなり頭の悪さ全開です。新入生のオリエンテーション合宿として、隣県に位置する「土琵湖」へ向かうことになった主人公たち一行。しかし、土琵湖には「ドビュッシー」なるUMAが存在しているとの噂があって……やべえ、あらすじまで頭が悪い。後半には覆面ライダーまで登場してくるし、これはもうギャグ回と見做しても差し支えなかろう。焼きおにぎりに笑った。カッコいいロボット・アクションや能力バトルを期待した人はガッカリかもしれんが、ラブコメに目を転じれば操緒と奏の三角関係が1巻よりだいぶハッキリしてきて、実に面白い。操緒のヤキモチがウザいとか、奏の健気さが重たいとか、智春のニブチンでヘタレなところにイライラするとか、そういうこと言わないでいいから3巻目をさっさと読みましょう。んで、『アスラクライン3 やまいはきから』。「一人機甲師団」の異名を取る先輩、黒崎朱浬がなぜか主人公の下宿先の門前で血まみれになって倒れていた。深い傷ではなかったのか、やがて目を覚ます先輩だったが、なんと彼女は記憶喪失になっていた。しかもその挙措は温和の一言に尽き、「別人じゃないのか、これ?」と疑うほど普段の性格から懸け離れていた……。先輩、ハンテンダケの章。「頼れるセンパイ」や「できるオンナ」のイメージ強かった朱浬さんが突然戦力外になってしまう。普段の行動からは窺えない「先輩の違う面」が覗けるという意味では興味深い。この巻では「スタビライザ」という小道具が出てきて新たな展開を迎え、「次はどうなるの?」とワクワクさせてくれる。また、最新刊までひと通り目を通した後で読み返すと、真日和の意味ありげなセリフの真意が分かったりして、しんみりとします。

 このペースで書いてると長くなりそうだから、そろそろペース上げていきます。『アスラクライン4 秘密の転校生のヒミツ』。前巻に出てきたアイテム「スタビライザ」の効果に加え、後々重要キャラとなってくる金髪ロリっ娘・アニアが初登場し、シリーズが新たな局面に達するテコ入れ巻です。「アスラクライン」の意味するところも判明し、漠然としていた目標(「世界を救う」と「操緒を救う」)にようやく近づいたような手応えを覚えます。『アスラクライン5 洛高アンダーワールド』。これまで謎に包まれていた第二生徒会(巡礼者商連合)がお目見えする巻であるとともに、「一巡目の世界」の遺跡に侵入する展開もあって結構重要な一冊です。「一巡目の世界」そのもののシーンが披露されるのも、確かこれが初めてだったはず。巻末ショートはオマケ程度の内容、息抜き感覚で読めます。『アスラクライン6 おしえて生徒会長!』。智春がそれまで無意識に避けていた兄、直貴とまっすぐ向かい合おうと決意し、行動を起こす巻。「三人目の生徒会長」や「科學部の部長」など、この期に及んで重要キャラクターが新規投入されるが、恐ろしいことに6巻目でも依然としてなお重要なキャラクターが出揃ってなかったりするんですよね……シリーズに直結する重要なエピソードも収録されているものの、連作形式ということもあって、読み口は短編集に近い。巻末の短編「ウィズ・ユー」は「二人三脚のために智春と奏の足を縛ったら、いろいろあって紐が取れなくなった」という、「鍵をなくしたせいでふたりを結ぶ手錠が外れない」の亜種へ分類されるベタベタにラブコメチックなシチュを60ページも費やして書いている。もっとも学園モノらしい雰囲気を放つ一冊、と言えるでしょう。

 『アスラクライン7 凍えて眠れ』。この巻から一気に物語が大きく動き出します。本格的な襲撃事件が相次ぎ、遂に主要陣から「退場者」が発生する。それまでが比較的明るいムードを保った学園ストーリーだっただけに、のっぴきならないシリアス展開の連続で息詰まるばかり。ラストシーンも非常に物悲しい。『アスラクライン8 真夏の夜のナイトメア』。シリアスモード、継続中。ちょうど期間が夏休みということで前半は楽しいイベントが盛り込まれていますけど、後半は7巻を上回る勢いで重々しい話を繰り広げる。悪魔四家・花鳥風月の「鳥」、そのもう一翼が姿を現して、さすがにそろそろ重要キャラの参入はここらへんで打ち止め……と言ってもいいのかどうか、迷うところ。『アスラクライン9 KLEIN Re-MIX』。前巻でとりあえず一旦決着がついたこともあって、今回は小休止的なエピソードを詰め合わせた短編集風味の一冊となっている。読み応えたっぷりの400ページ。収録されているエピソードすべてが「智春の女装」を含むっつー、ちょっとやりすぎな気配漂う内容だが、当方は一向に構わん。シリアス要素が無視できないほど強くなってきたことを考えれば、こういう能天気な番外編寄せ集めは貴重。

 『アスラクライン10 科學部カイメツ』。二桁の大台に乗った記念すべき巻であり、中身もごっついハードでメチャクチャ激しい展開となっています。ネタバレが怖いので詳しいことは書けませんが、副題に「カイメツ」と冠したのも伊達じゃない。夢中になって読み耽りました。この10巻を読んで心底「アスクラにハマった!」という感触を得た次第です。三雲って、ここまでやる男だったんだなぁ。『アスラクライン11 めぐりあい異世界』。すべての発端である「一巡目の世界」、その謎に迫る……というわけで「異世界」編です。いろいろと大変なことになってしまった「二巡目の世界」をうっちゃり、機巧魔神(アスラ・マキーナ)誕生の経緯や世界滅亡にメスを入れる。話もややこしくなってきて、整理しながら読まないと頭の中がこんがらがります。ガラッとノリが変わるせいで若干テンションも下がり気味になるけれど、シリーズの繋ぎや溜めに当たる結節ポイントだと捉えればOK。そして最新刊『アスラクライン12 世界崩壊カウントダウン』は「やっぱりややこしいぜ!」と頭を抱えつつ読み進めた。世界滅亡の原因がようやっと説明された挙句、「倒すべき敵は『神』だ!」と物凄い発言が飛び出し、もはや話の規模が『デモンベイン』並みになってくる。匙加減を間違えれば「電波」や「超展開」と謗られかねない危険水域に差し掛かりながらも、うまくオールを操って面白く且つ刺激的に盛り上げてくれる。ますます続きが楽しみになってきた。すごいわ、これ。何がすごいって、作者があとがきで「ここしばらく妙にスケール大きめの話が続いてたので、そろそろ智春たちも日常生活に戻してあげたいところ」と書いているところ。おいおい……ひょっとして「『神』を倒して世界を救う」のは最終目標じゃなくて単なる通過点なのか!? 考えてみたら義妹ネタが未消化のままだし、世界を救済してもまだ先は長そうだ。是非とも好き勝手やらかしてくれ、ガクト。

 端折り気味とはいえ、さすがに12冊分も感想書くと疲れた……結論としては、「全巻揃えて読むべし」。間違っても1巻だけ読んでシリーズ全体を占う真似はしないでほしい。できれば7巻まで、最低でもせめて3巻までは揃えてまとめ読みしないと判定するのは厳しい。「面白ぇ!」って熱中できるようになるまでが長いけれど、ヘタレでニブチンな主人公がなぜかモテモテ、大人がほとんど出てこず10代の少年少女が世界の存亡を懸けて異能や巨大ロボで戦っちゃう、そういう状況に耐えられる素質があるならばひとまずオススメしておきたい。「女の陰でバトルの解説」なシーンも多いけど、一応主人公が活躍するシーンも用意されています。

 余談。個人的に好きなキャラクターは水無神操緒、嵩月奏、鳳島氷羽子の3人。操緒は最初ちょっとウザったく感じていたのに、気づけばいつしか「だいじょうぶ、操緒がついてるよ」の決めゼリフにほろっと来るようになっていた。奏は「わたしが夏目くんを守ります」と宣言し命を懸けて戦うあたり、健気すぎてむしろ怖い、だがその怖さにゾクゾクする。氷羽子はネタバレになりそうなのであれこれ言えないけれど、いろいろ想像の余地があってムラムラワクワクします。あ、ちなみに解説し忘れていましたが、アスクラの世界では「悪魔との契約=肉体交渉」という設定になっていて、さりげにエロいです。

・拍手レス。

 おっぱい猿の惑星はちょっと見てみたい
 河瀬直美作品が相性良さそう。「につつまれて」とか。

 さくらさくらが出るのは秋桜の頃ですかねえ
 幾多もの季節が過ぎ去り、「千歳桜」と呼ばれるようになった頃に発売するかも。


2009-05-19.

『魔王(8)』の「こういう時はね、「協力するから正体を教えろ」って、言わないとダメなんだよ?」と囁く子の表情がスズメバチ以上にエロいと思う焼津です、こんばんは。

 表紙を飾っているアンダーソンの出番がまったくなかったりするのはアレだが、ともあれ『魔王』、第2部に入ってから滅法面白くなってきました。原作の面影は既になきに等しいけれど、疾風怒濤の展開で魅せてくれるから問題ない。続きが楽しみ作品。

映画のタイトルの前に「おっぱい」を付けると来場者数が減る(VIPPERな俺)

 『おっぱいリベリオン』。「パイ=カタを極めた者は無敵となる!」「奴こそが最強のグラマラス・クラリックだ……」なバカアクションか、あるいは「感情を高ぶらせ人々を争いに導くすべての元凶、『おっぱい』を完全に禁じたディストピア」を舞台に乳房の感動を取り戻していくレジスタンスおっぱい映画か。『おっぱいウォッチメン』。監視者というより視姦者じゃねぇのか、それ。「誰が視姦者を視姦するのか?」。活動を禁止されたにも関わらず、おっぱい求めて夜の街を彷徨い歩き、非合法の覗き行為を黙々と続けるロールシャッハ……覗きがバレて警官隊に囲まれ、そのまま収監される流れがあまりにも容易に思い浮かぶ。「絶対に妥協しない、たとえ世界が滅んでも、俺はおっぱいに妥協しない!」 もはや変態という名のヒーローだな。『おっぱい村の写真集』。これは却って観客動員数が増えそうな気も……キャッチコピーは「乳を世界で一番愛した村。」か?

CROSSNETのOHP、突然の閉鎖

 それらしい前触れもなかったし、リンク先にはこれといった説明がないので、何が何だか……去年の5月もMeteorが突然解散して驚かされたけど、今回は「ホームページを終了」としか書いてないんでブランド自体がどうなるのかよく分かりません。

TAIL WINDの『Trample on “Schatten!!”〜かげふみのうた〜』、体験版をプレー。

 『Re:』より3年ぶりに川原誠が原画を務めるエロゲー。3つも体験版があるのでクリアするまで時間が掛かった……3種類ある体験版ですが、第1弾はβ版っつーか「つくりかけ」というムードが濃厚な先行公開品であり、ここぞという場面で「活目せよ!」なんつー誤字が飛び出したりして腰が砕けます。また収録範囲が第2弾とも被っているので「あえてプロトタイプを見たい」ってんでなければプレーする必要はありません。第2弾は「真・体験版」と言われるだけあってしっかりした出来になっている。第3弾は戦闘シーンを寄せ集めた、半ばトレーラームービーに近い代物。雰囲気を掴みたいなら第3弾をプレーし、詳しい内容が知りたいなら第2弾をプレー、ってなところですかね。基本は宇宙刑事とか、ああいう変身ヒーローアクションに昔の少年マンガ的テイストを混ぜた一品です。「影装!」という掛け声で変身するのは序の口、己の通り名や必殺技を叫んで自己主張しまくる、良く言えば単純明快に熱い、悪く言えば小学生のごっこ遊びをイイ歳こいた大人がやってるみたいで非常に暑苦しいゲーム内容となっています。メインヒロインであるキザイア・緋乃神の時代がかったセリフ回しといい、ガキンガキーンズシュッズシャッドグワァァァンな戦闘エフェクトといい、自分で自分を「プリンセス!」とか「アサシン!」とか称しちゃうノリといい、熱血アニメや特撮のテンションに付いていけない人にはやや辛いか。反面、ベッタベタなヒーローアクションが好きなら「へえ、結構頑張ってるじゃない」とニヤつくかもしれませぬ。当方自身、こういうちょっとバカっぽくてエネルギッシュな燃えは嫌いじゃない。

 人間が影の化け物「シャッテン」に変貌してしまうという怪現象が続発する街で、「ゼルクレイダー」なる変身ヒーローを粛々とこなす者たちがいた――ってな具合で、ストーリーそのものには何の新味もないが、やはり見所は演出の数々。やたらカットインを挟み、うるさいくらいの効果音を鳴らしまくって、くどいほどバトルシーンを盛り上げてくれる。燃え描写に関してこだわりのある御仁にはツッコミどころが大量に存在すると思えて仕方ないかもしれないが、細かいことを気にしないで眺めていたらそれなりに楽しい。吹っ飛ばされるシャッテンや路地の奥からズンズンやってくるシャッテンがギャグにしか見えないが、気にしない気にしない。あとシャッテンっていう化け物は人間の変質した姿であって、今のところ元に戻す方法はなく、シャッテンを封じることは元となった人間を殺すことに等しい……なんて重い設定のくせして、戦闘の最中でも軽口を叩き合っていたりするが、実は最後の最後でみんな元に戻ったりするのかもね。不定形の影ということで触手エロっぽいシーンも用意されているけど、触手系には興味が湧かないので軒並みスキップした。普通のエロシーンもあるものの、弥栄ふうり(「いやさか」ではなく「やさか」)ってヒロインに関してはHの対象が主人公じゃなく嵯王子巡というショタっぽい少年に固定されている模様。フローチャートを介して複数の視点によるシナリオが読める(『11eyes』にも似たシステムあったっけ)仕様になっており、主人公の成長ストーリーのみならず群像劇の路線を打ち出すって狙いもあるのだろうか。正直、どっちつかずになりそうな不安が強いけども。「妄想Hモード」なるエロシチュの水増しも堂々と行っているくらいだし、なんか熱意が空回りしてないかなー。

 シナリオだけ見ると厳しいところだけど、やはり川原誠原画のCGは魅惑的だし、戦闘シーンの演出も凝っているので、ついつい購入しようかと迷ってしまう。『蠅声の王 シナリオU』が延期したせいで燃えゲー不足に陥っている現在、考えが「買う」の方に傾きつつあります。ううん、悩ましい。

・拍手レス。

 なんで毎度毎度、発売日を決めては延期するかなあ。>さくらさくら
 やっぱり「発売日:未定」じゃ予約とれんからだろうか。

 主に金融機関を納得させるためです。エロゲー業界ではかつてジェリーフィッシュが『LOVERS』の延期理由で「取引金融機関が〜」とぶっちゃけたことも。

 スニーカーでヒデオアフター(仮)ことレイセンがとうとうスタートしました。何がいいたいのかというと睡蓮かわいいよ睡蓮。
 嗚呼、早く文庫にまとまってくれー。


2009-05-16.

『お・り・が・み』に目を通しておいたおかげで『ミスマルカ興国物語』の最新刊をより楽しむことができ、ただいま満悦状態の焼津です、こんばんは。

 時代が隔たっているせいもあってこれまでは共通事項があんまりなかったけど、今回遂に「あのキャラ」が登場しましたからヒートアップすることしきり。一応伏せておいたものの、表紙を見たら誰のことだかバレバレという罠。そこそこシリアスな雰囲気の中で破壊的なギャグを飛び出させて緊張感台無しにする芸も冴え渡っています。薄笑い→半笑い→本笑い→激笑いのコンボを決めさせていただいた。長らく謹慎モードに置かれていた帝国三番姫・ルナスも次巻でようやく復帰するみたいであり、メチャ楽しみ。ぶっちゃけミスマルカはほとんどルナス目当てで読み続けていたようなもんだもんなぁ……1巻にルナスが出てきたからこそ2巻を読む気になったし、ひいては『お・り・が・み』や『戦闘城塞マスラヲ』へ手を伸ばすことにも繋がった。ルナス様々です。

「Dies irae」の今後の製品展開につきまして

 整理すると都合4種類の『Dies irae』が存在することになりますね。便宜上、2007年末に発売されて阿鼻叫喚を招いた例のバージョンを「旧版」、今年7月に発売される予定のdie Wiederkunftを「新版」、玲愛・螢ルートを収録したものを「アペンド版」、シリーズの打ち止めとなるべきラストオーダーを「完全版」と呼ぶことにしますと、今までの情報を総合したうえで押さえるべきポイントは、

・旧版、新版、アペンド版、完全版はすべて個別のパッケージで発売される(それぞれの初回版には特典が付く)
・旧版でユーザー登録した人には新版とアペンド版の内容に相当する修正パッチをネットで無料配布(新版発売前に登録すると粗品が貰える)
・アペンド版は新版か、修正パッチ適用済の旧版がないと動作しない(単体では遊べない)
・新版で6章冒頭以降をすべて書き直すため、完全版には旧版の6章冒頭以降は一切収録されない(新版+アペンド版=完全版)

 ざっとこの4つか。つまり、断言されてはいませんが、「新版を買ってユーザー登録してもアペンド版は無料配布されない」、「旧版で正田崇以外のライターが書いたパートは全部なかったことにする」ってことであり、もし旧版を購入していない状態で『Dies irae』に注目している方は新版やアペンド版を買わずに完全版まで待った方が賢明ですね。玲愛と螢のシナリオが見たいからってアペンド版だけ買わないように注意しないといけません。こうして考えると、新版やアペンド版を買うのって重度の儲だけじゃね? 完全版は新規層が手を伸ばす可能性がまだ少なからずありますけど……遣り口のあくどさに憤るより先に「そもそも成立するのか、この商法?」と心配になってくるぜ。ややこしくて把握し切れず、間違ってアペンド版だけ購入しちゃうとか、変な買い方して泣きを見るユーザーが出てきそうだなぁとは思います。あと気になるのは、アペンド版と完全版の初回特典が両方「通称:白本」になってるけど、これは2つとも一緒の特典を同梱するってこと? ひょっとしたら同時発売する予定なんかな。

 そして、もっとも目を惹く情報は「新版・アペンド版・完全版、すべて今年中の発売を目指している」ってことながら、「どうせまた延期するんだろ……」という疑心は消え去らない。それでも待ってしまうファンの悲しさよ。

桜が散っても逃げ足は健在、ハイクオソフトの新作『さくらさくら』よ何処まで延びる(5/29→6/26)

 あまりにも予想通りで落胆する気にもなれない。つーか、いい加減そろそろ『さくらさくら』を「新作」と呼ぶことに違和感が拭えなくなってきたんだが。

・田尾典丈の『ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!』読んだー。

 第10回えんため大賞「優秀賞」受賞作。「もし、ギャルゲーのキャラが現実世界に現れたら……」という、ギャルゲヲタなら一度は膨らませたことのある妄想をベースにして描く、ある意味でファンタジー色バリバリな学園モノです。怪しげなメールに添付されていたアプリケーションを起動したら『エターナル イノセンス』というギャルゲーのヒロインたちが現実世界に投影された――と、非常にやっつけ臭い冒頭ながら、各所に思考実験的な面白さを備えているため次第に盛り上がってきます。本名プレーすら実行できないチキンの当方もワクワクしながら読み進めました。

 この孤独で無味乾燥な日常を変えてくれるなら、相手が謎のスパムメールだろうと構わず縋ってやる――綴られた指示に従い、一番のお気に入りであるギャルゲー『エターナル イノセンス』のディスクを設置して正体不明のプログラムを動かした翌日、都筑武紀の世界は本当に一変した。朝、優しげな声で起こしに来る幼馴染みの少女。布団に潜り込む甘えん坊の義妹。胸を揉んでもまったく怒らない「甘やかしすぎだろ……」な義姉。非公認のファンクラブすら築かれている学園のアイドル。現実に存在するはずのない『エターナル イノセンス』のヒロインたちが、自分の周りに降臨していた。穏やかに、そして輝かしく流れていく日々。しかし、世界は「現実」と「ゲームシナリオ」の狭間で軋みを上げる。フラグが乱立し、イベントが多発して、事態はやがてバグかと疑うような未知の展開、即ち、原作には用意されていなかった「複数同時攻略ルート」へ突き進んでいく。数多の障害を乗り越え、都筑武紀は無事にトゥルーエンドへと辿り着くことができるのか……。

 スイートと見せかけて割合ビターな一品です。ゲーム通りの関係(義妹とか義姉とか幼馴染みとか)に収まったヒロインたちがシナリオ通りの言動を行い、主人公がそれに合わせることで互いの仲を深めていくあたりはまんま「攻略」という概念が適用されるノリで、ちょっと『神のみぞ知るセカイ』っぽい「擬似ギャルゲー感覚」を味わえるけれど、架空の物語を現実世界に投影した影響でいくつか齟齬が生じてしまう――という予想外でいながらごく妥当な要素が読者の興味を引っ張る。ゲーム中では端折られていた箇所が補完されたり、シナリオの矛盾点が修正されたり、現実世界の人間が干渉することでブレが生じたり、「特定のルートでしか起こらないはずのイベント」が並行して発動したりなど、「整合性の甘いシナリオを無理矢理に起用した悪弊」が表面化してきて主人公やヒロインたちを窮地に追いやるわけです。序盤は「ギャルゲーのテンプレに従って書きました」と言わんばかりに型通りな展開で、まんまギャルゲーマーの妄想を具現化したような雰囲気に正直「キメェ」という感想が拭えなかった(若干嫉妬と羨望が混じっていたことは認めます)けれど、そのツケを支払うべくどんどんシビアな状況に推移していくので、見た目に反してとってもスリリングな読み応えを有している。「明るく楽しいギャルゲーライクなコメディ」を想像して読むと、意外な重さと暗さに驚くかもしれません。

 一応、主人公の努力もあって最悪の状況は免れ、それなりに幸せを取り戻していくが、最後の最後に待ち受けるエンディングをハッピーと見做すかアンハッピーと見做すかは意見の分かれるところでしょう。「架空の物語を現実化する」というテーマの話だと、なんだかんだあっても行き着く先は「現実に帰還する」か「架空と共存する」か二つに一つなんですけれど、結局のところどっちを選んでもスッキリしないんですよね。帰還しちゃうと寂しくて物足りないし、かと言って共存するのもなんだかヌルい感じがして納得いかない。クリエイトされた存在は真に生命を得ることができるのか否か? 落としどころの難しいネタだと思います。今月末には続編も出るそうだが、楽しい延長戦となるか単なる蛇足と化すか。とりあえず買ってみて自身の目で確かめんとす。ところで、現在FBonlineに掲載されている特別短編「梅雨が明けるころに」はエピローグの手前に位置するエピソードであり、ネタバレ満載なので注意。そもそも本編読んでないと意味不明かも。

 文章は淡々としていて全体的にテンションが低めだし、ギャグもおとなしめで威力が低く、アッパー系のドタバタコメディを期待すると肩透かしかもしれない。逆に、アッパー系ライトノベルを苦手とする人なら却ってテンポ良く落ち着いて読めるはず。単純に学園モノとしての魅力を問われると返答に窮するものの、「ギャルゲーワールドが現実世界にカムイン」という一見してバカバカしく思えるアイデアをキチンと活かして描き切った点は誉めておきたい。ぶっちゃけもっと頭からっぽにして読める痛快で能天気でオバカでちょいエロな御都合主義ハーレム譚だと思っていたぜ。具体的には「ヒロインのみんな、俺に力を分けてくれ! うおおおお、エターナル・イノセンス・ブリザードォォォォォ!」でラスボスを一撃で倒しちゃう、みたいな。

・拍手レス。

 “誠意物”と変換されたこのIMEは間違いなくうしおスピリッツ…あと「野球の国のアリス」だなんてタイトル勝ちにも程があると思います。
 タイトルと言えば来月刊行予定の恩田陸の新作『六月の夜と昼のあわひに』をずっと『六月の夜と昼のあわびに』と思い込んでいて、さっき間違いに気づいてショックを受けました。

 ディエス発売日決定!発売日決定!発売日決定!
 しかし何気に7月は激戦区な罠。

 どうせ延(ry しかし7月はお朱門ちゃん久々の新作『きっと、澄みわたる朝色よりも、』、Tony原画の大作『仏蘭西少女』、ライアーソフトの姉妹ブランドによる『紅殻町博物誌』、ゼロ魔のイラストレーターが原画を手掛ける『ANGEL MAGISTER』と、早くも注目作が集結しつつありますね。


2009-05-13.

『Dies Irae』のラスボス、ラインハルト・ハイドリヒは「黄金の獣」という異名を持ち、最強の聖遺物「ロンギヌスの槍」を保有しているので、ある意味「獣の槍」だよな……と、蔵の中で槍喰らって磔にされている首領閣下を想像してしまった焼津です、こんばんは。『れんとめふぃすとふぇれす』、ラスボスは「白面のニート」か? ところでさっき聖遺物を「征夷物」と誤変換してしまったが、むしろこっちの方が実情に沿っている気がしてきました。

LOST SCRIPT新作『蠅声の王 シナリオU』、発売延期(5/29→6/26)

 なんとなくこうなる気はしていた。スタッフ日記によると、製作の遅延よりも「営業不足による告知の不徹底」が原因とのこと。で、結局今月は『花と乙女に祝福を』の一本に絞られたか……最近になって『ステルラ エクエス コーデックス』も気になってきたが、公開されているCGの枚数がやけに少ないことからボリュームに対する懸念が生じており、ちょっと迷っています。

『ドラゴンボール』を全巻一気読みできる、という不幸―マンガの楽しみ方は「続きが気なる!」にこそある「独り言以外の何か」経由)

 人気の出てきたマンガは途中から展開の引き伸ばしに入るのが常だし、リアルタイムで読んでいるとだんだん追うのがツラくなってくるんですよねー。根が飽きっぽいこともあり、最近は「続きが気になる!」という原動力よりも「まとめて一気に読める!」という至福の方を優先させるようになってきました。

 とはいえ、リアルタイムで何年も追っかけてきたマンガが最終回を迎えるのと、数年分の連載を3、4日で全巻読み終えるのとでは、思い入れの度合いが全然違ってくることは確かです。完結までずっと新刊を買い続け、読み続ける――というのは結構労力の要ることで、ハッキリ言ってしまえば、ひたすら不便の連続だ。やっと新刊が出た、と喜んでページをめくり始めても、読み終われば「また次の新刊を待たなきゃいけない……」と憂鬱になる。連載ペースの遅いマンガは待っても待ってもなかなか次の巻が発売されない。既刊を読み返して餓えや渇きを癒そうとしても充分には癒せず、新刊を待望する想いはますます募るばかり。待ちに待った末にようやく刊行の予定が告知されたって、間近になって延期することさえあるんですよ。根気が持たずに脱落しちゃうケースも珍しくありません。しかし、不便だからこそ、耐え抜いて最後まで読み切ったときの感動は言葉に尽くせないものがある。そう信じるからこそ、マンガじゃないけど、『Dies Irae』のリメイク版だって待てるんです。

 脱線しましたが、とにかく読書環境が快適に整いすぎているようじゃ「感慨」ってものとは無縁になってしまう。待ち侘びる想いはプライスレス。時には不便を承知で挑むのも、こう、胸の奥がワクワクするものです。

めろめろキュート最新作『魔法少女の大切なこと。』

 「原画:よう太」って、『SH@PPLE』のイラストレーターじゃないですか。「男の子が魔法少女に!」というあらすじは『おと×まほ』を彷彿とさせるけれど。タイトルは『魔法遣いに大切なこと。』のパロディかな。内容が内容だけに、あのライターが参加しているのでは……と期待したが、藤崎竜太の名前はなし。残念。でもとりあえずチェックは継続する。それが当方のSa-Ga。

・北村薫の『野球の国のアリス』読んだー。

 叢書「講談社ミステリーランド」の一冊。豪華執筆陣を採用した「児童書の皮を被った大人向け叢書」ですが、内容としては普通に児童書として読めます。『不思議の国のアリス』および『鏡の国のアリス』を下敷きに、鏡の向こうに存在する「あらゆるものがあべこべの世界」に迷い込んでしまった少女アリスが、野球で大活躍する。ジュニア向けに易しい言葉遣い、簡潔明瞭なキャラクターを起用しているものの、読めそうで微妙に読めない展開が歳を食った「大きなお友達」相手をも持て成してくれます。北村薫は「日常の謎」というミステリの一ジャンルを築く上で重要な役割を果たした功労者ですが、今回はミステリ要素がほとんどなく、青春物、スポーツ物としての様相が濃い。読み出しから読み終わりまで、一貫して爽やかな雰囲気に包まれている。

 鏡に映る世界は右が左で左が右、こっちとあっちのシンメトリー。「大変だ、大変だ。遅れちまう、遅れちまうぞっ!」と叫びながら走る宇佐木さんに釣られて「鏡の向こうにある世界」へと来てしまったアリスは、そこが左右のみならず、いろんな事が逆さまになっていると知って仰天する。野球好きの小学生であるアリスが「こっち」では野球になんてまるで興味のない女の子、ということになっていて、読書好きの物静かなインドア少年が「こっち」では廃部寸前だった野球部を立て直すほどの野球好きになっていた。しかも世間は頂上決戦ならぬ底辺決戦、「弱小球児たちの惨めなブービー争い」に熱中しており、アリスの学校の野球部も「最終戦」――勝ち抜け試合で一度も勝利を収めることができずに負け残ってしまったチーム同士が戦う最後の試合へ赴くハメとなっていた。これは天の配剤、とばかり「チームに加えて」と頼み込むアリスだったが……。

 ミステリーランドは字が大きく、一ページあたりの文字量も少なく、また紙が厚いため、見た目以上にボリュームがない。どれも長編というよりも、中編に近いです。なので本によっては「物足りない」という感想が残るのですけれど、これに関してはそういう不満もなくスッキリと読み終えることができた。比較的易しい、砕けた文章となっているにせよ、根幹の部分がしっかりしているので気持ちよく目を通せる。ギャグが若干サムいのも、愛敬ってことで一つ。児童書やライトノベルでよくある異世界探訪譚、「ゆきてかえりし」の型に分類される物語であり、目新しさこそないものの「舞台があべこべの世界である必要性」が用意されていて構成的には抜かりありません。後半がトントン拍子に進むため、ちょっと御都合臭いかな、という気もしますけど読者のハートをくすぐるポイントはしっかり押さえている。ただ、鏡を介して「ふたりのアリス」が存在するにも関わらず、残り一方のアリスについてはチラッと触れられる程度に留まっているのがやや残念だったか。両サイドで双方向的に影響し合う展開を期待していたんだけど、さすがにそれをやる余裕はなかったと見えます。

 いまひとつ締まりのないタイトルで読む意欲が湧かないかもしれませんが、当方を信じろ。じゃなくて、作者である北村薫を信じろ。この人の手掛ける話は基本、ハズレなしです。直木賞には何度か候補に上がりつつも受賞を逃していますが、もう賞を取るとか取らないとかいう次元は通り越した領域の作家ゆえ、最近じゃノミネートされるたび「他の作品を候補に選べばいいのに」と思ってしまいます、逆に。

・拍手レス。

 まりあ†ほりっくの最大の問題は、被害者が同時に、最大のヘンタイなことですよねー
 鞠也よりも主人公の方が女子校にいちゃいけない人間に見える不思議。

 女装少年なら青い花ははずせない
 志村貴子は好みの作風している割にあんまり作品読んでないなぁ。なんでだろ。

 天原埜乃っつーと爆死した妖刀事件のイメージが強すぎて……
 アレは嘘屋にしてはめずらしく純粋につまらなかった……

 ムービーは結構良かったんですけどねぇ。妖刀を題材にして何がやりたかったのか、いまいち不明。

 た、大変です!! プラナス・ガールにニマニマが止まりません!!なんてことをしてくれるんですか!?
 …本当にありがとうございます。

 布 教 成 功 。あれは本当に頬が緩みます。


2009-05-10.

・設定はツボだけど狙いがあざとすぎる気がして食わず嫌いを貫いていた『まりあ†ほりっく』、なんとなく大人買いしてまとめ読みしたらあっさり気に入ってしまった焼津です、こんばんは。うん、この女装少年マジメな味。

 ミッション系のお嬢様女子校を舞台に、男嫌いの長身巨乳百合っ娘が優等生兼美少女の仮面を被った極悪女装少年(&傲岸毒舌メイド)と出会い、成り行きでルームメイトになってしまうという人生悲喜劇をコミカルに描いたギャグマンガ。特にこれといったストーリーはなく、ショートコメディっぽいドタバタ騒動を始終繰り返す。緩いと言えば緩いノリだが、作風と絵柄が一分の隙もなく完全にマッチしており、一度この世界に馴染むとひたすら和んで寛いでしまう。主人公の姉と妹が存在を仄めかされるばかりで一向に登場する気配がないのは辛いし、主人公の記憶になんか重要なものが潜んでいる感じがするにも関わらず、スルーするばかりで全然切り込んで行かないものだから「ああ勿体つけやがって!」と焦れるのですけれど、まあ鞠也の可愛さを前にすれば変態トーテムポールさんの過去とか些細な事項か。それにつけても抱き枕カバーエロすぎじゃね?

lightのwebラジオにて『Dies irae』情報がチラホラと

 『螢ルート』は完成しています!!

 まじで!

 衝撃のあまり一瞬だけガルーダ化してしまいましたが、これは朗報なり。Gユウスケの絵柄の変化の度合いについても触れられていますが、ぶっちゃけ「怒りの日」を経験した人でGユウスケの絵柄変化を責める者はまずいない気がします。むしろ最近の絵柄の方が好き、という当方には複雑な心境を齎してくれるぜ。

 んでは、例によってラジオ上の発言内容を要約。「(Gユウスケの絵柄について)昔と比べて髪の描き方が柔らかくなったが、可能なかぎり絵柄は戻すつもりでいる」「『負けた方がショボい』と思われたくないので双方を強そうに書いていったら、勝負がつかなくなってきた」「行き詰まっても正田崇は基本的に愚痴るだけで、Gユウスケとかにアイデアや助言を求めたりしない」「Gユウスケが仕事している後ろでネタに詰まった正田が踊っていたりする」「Gユウスケが気づいてくれないと、いやらしい感じで尻とか触りにいく」「正田はGユウスケの『集中しているから話しかけるな』オーラが通用しない唯一の相手」「Gユウスケのポジションは『お母さん』」「正田はパッと見ヤンキーっぽい、初めて会う声優の9割は『本当にライターさん?』と思う」「正田とGユウスケとディレクターのまゆきは全員同い年」「(Gユウスケ、現在の作業を訊かれて)最近は久々にラインハルト様の絵を描いている、なんか『様』を付けたくなる」「『様』は付けるが憧れない」「あの生き様はイヤすぎる(正田の弁)」「『Dies Irae』は友達になりたいキャラがいない」「正田はシュピーネを一番愛してる。半分冗談だが、思考がもっとも一般人に近いキャラではある」「新装版(die Wiederkunft)を出した後に螢ルートと玲愛ルートの入った追加パッケージを発売する」「螢ルートは書き上がったが玲愛ルートはまだ途中、新装版のシナリオが終わってから改めて取り掛かる」「螢ルート・玲愛ルートの追加パッケージはタイトルが変わる、『Dies Irae』はそのままだが『Also sprach Zarathustra』を別の何かに差し替える、新OPなども付く」「螢ルートでは『Die Morgendammerung 』のエレオノーレとベアトリスが……」「Gユウスケが調子こいてマリィの絵増やした」。雑談的なネタを別にすると、やはり「螢ルートのシナリオが既に完成している」が一番大きい情報か。追加パッケージは副題変更ということですが、たぶんそっちもドイツ語でしょうね。ニーチェ繋がりで「Jenseits von Gut und Böse」とか「Wille zur Macht」あたりかな。「Ecce homo」はラテン語だからなさそう。

ぼとむれすが数ヶ月ぶりに更新

 バカなっ、まだ生きてやがったのかっ! ぼとむれす……さすが底無しっ! と熱血少年漫画ノリはいいとして、とにかく更新が来ただけでビックリなブランドですよ。相変わらず発売を信じる気にはなれませんが、「ひょっとして……」という思いをチラリとでも抱かせるのが怖いわ。

raiL-soft第2弾『紅殻町博物誌』のテーマは「FUTURE RETRO」

 Liar-softの姉妹ブランドで、去年の夏に『霞外籠逗留記』を出したところですね。今回も依然としてマニアックというか、マーケティングを考慮していない素晴らしく趣味的なソフトに仕上がりそう。「FUTURE RETRO」はいわゆる「懐かしき未来像」で、昔人類が思い描いた「実現しそうで実現しなかった未来」の姿を再現する懐古主義的な試みだそうです。あらすじの字からして読みづらいし、幅広い層を惹き寄せることは叶わないかもしれないが、とりあえず応援してみたい雰囲気だ。原画が個人的に好きな天原埜乃ってのもありますけど。

『女装少年アンソロジー』読んだー。

 全力で表紙に釣られました。上で書いたまりほりといい、最近まとめ買いした『SH@PPLE』といい、今月末に発売する予定で目を付けている『花と乙女に祝福を』といい、己はどうしてここまで女装少年が好きなのか。我がことながらただただ訝るばかりです。さて本書、タイトルそのまんまに「女装少年」をテーマとした短編漫画8つを収録している。知っている漫画家は水兵ききと椿あすくらいか。そして、何度眺め返しても、表紙イラストを手掛けたTiv(『犬憑きさん』の人ですね)の作品は載っていない。載っていないのだ。この手の「表紙だけ」トラップ、雑誌やアンソロジーではよくあることです。ですからそんな、いちいち落胆して激しい失望リアクション取るだなんて疲れることするわけ……ち、ち、ちくしょおおおおおおおおおおおおおお!!! たいけんばんにだまされたっ!(←成句)

 気を取り直して、収録内容。冒頭を飾るのは佳月玲茅の「ボクは妹のメイドさん」。優秀でサドい妹に調教される美少年ダメ兄貴の受難ストーリー。当方は女装少年モノを「自分の意思で好んで女装を行うモノ」と「不本意だけど仕方なく女装しているモノ」の二種に分けて考えることにしており、本作は後者に当たる。妹に逆らえないから甘んじてメイド服の着用に耐える兄、彼は女装をやめさせてもらおうとドジっ子なりに頑張るけれど……と、まあそんなノリです。割とエロエロ。結局最後まで妹がデレないままSっぽく締めているので、読者にM属性がないとやや辛いか。ところで、女装少年モノの分類は「女とラブコメる(♂×♀)か、男とイチャイチャする(♂×♂)か」という性別カップリングによる識別法を採用する向きもありますが……そんなの、当方にとっては些細な違いでしかない。なので、二つ目に収録されている松本トモキの「プラナス・ガール1.5」も容易に受け容れられた。ってか、えっ、「1.5」って何? と読んだ後ぐぐってみたら、どうも“ガンガンJOKER”に連載されている作品の番外編みたいですね。現在「ガンガンONLINE」で1話と2話(両方とも“ガンガンパワード”に掲載された読切版、連載は3話以降)が読めますので、先に読んだ方がベターかも。読まなくてもだいたいの筋は分かりますが。タイトルの「プラナス」は恐らくPrunus(植物分類項目で「サクラ属」、本来は「スモモの木」を意味するラテン語)でしょう。えーと、これは「自発的な女装」に属するタイプ。女子の制服を着ているけど性別は♂という藍川絆が主人公を惑わせるっつー感じで、やってることは「古臭いラブコメ」に近いが、その分手堅い魅力に満ちている。一人称が「ボク」だったり、キャラデザも若干男の子っぽさを残していたりと、微妙な匙加減が心憎い。絆が服装倒錯者(クロスドレッサー)なのか性同一性障害(トランスジェンダー)なのかはハッキリしておらず、主人公に寄せる好意が恋愛感情に基づいているかどうかも不明確であり、そこが良い意味でもどかしさを齎してくれます。いずれ単行本が出るだろうけど、必ず買わねばなるまい、と焼津は固く心に誓うのであった。

 3編目は水兵ききの「オトコの娘アイドル☆アキラ」。タイトルで『ぷる萌えンジェル アイドルあいこ』を思い出した。歌う事が大好きな主人公、念願の芸能界デビューを果たしたまでは良かったが、よりによって事務所は「オトコの娘」として売り出す方針を打ち立てて……という、分類するなら「不本意な女装」に属する作品だけど、主人公がそんなに激しく嫌がっていないところを見るに両者の中間、「なしくずしの女装」に位置すると語るべきか。『なしくずしの死』みたいでちょっとカッコイイな。作者にしては大人しめの内容で、発禁を喰らいそうなほどのエロさはないが、クマさんパンツ丸出しで満面の笑顔を浮かべて歌う主人公に言い知れぬ変態臭を覚えた次第。4編目は柚木涼太の「ミックス*リリィズ」。双子の姉とのトランプに負け、罰ゲームとして姉の学校へ女装して赴くハメになった主人公の命運や如何に……という、これまたベタベタなシチュというか、『SH@PPLE』同様の双子入れ替わりモノ。ずばり「不本意な女装」です。女装少年モノと双子入れ替わりモノって異様なくらい親和性が高いですよねー。ぶっちゃけ双子でも二卵性だったら普通の姉弟程度にしか似ないはずですが、そんなツッコミは野暮というもの。姉の知人に出くわして動揺する、更衣室で無防備な裸に囲まれドキドキ、百合っ娘に迫られて正体バレの危機に瀕す、ってな具合でこの手のシチュが要求するイベントをひと通りこなしています。もっともテーマに忠実で、且つもっともエロい作品に仕上がっている。いろいろ細かいところで当方の好みとは合わなかったが、それなりに楽しむことができた。

 5編目は塒祇岩之助「きせかえっ子」。タイトルは「取り替えっ子(チェンジリング、ヨーロッパの民間伝承)」を意識したものか? 姉と妹に強要されて嫌々ながら女装する主人公の姿を描いたドタバタ劇。姉妹間で少し対立があるみたいで、三角関係めいたムードもほのかに漂っている。軽めの「不本意な女装」コメディながら、病んだ目つきと病んだ言動、いわゆる「ヤンデレ」を表す記号がチラッと出てくるせいもあり、ややまとまりのない印象を受けた。6編目は香月アイネの「おもちゃじゃないモン!」。男なのに「女子ビーチバレー部」に勧誘されてしまった主人公、なんとか入部を辞退しようと健気に頑張るが……というわけで、題名通り玩具の如く弄られます。2ページ丸ごと使っての着せ替えショーが華々しい。主人公を玩具にする先輩、主人公を「クラスメートの男子とよく似ている子」と思い込んでいる同級生、ふたりのヒロインに心が揺れるあたりは面白い。が、なにぶん読切作品なので深いところまでは突っ込まず、物足りなさが残ってしまう。ビーチバレーとか、全然関係ないし。悪くないんだけど、モヤモヤするなぁ。

 7編目は野澤綾子の「女装少年注意報!?」。「自発的な女装」で、「女装が趣味」と明言しているところから察するに服装倒錯者だと思われます。女装してこっそりメイド喫茶で働いていた主人公、しかしある日、店にやってきた幼馴染みの少年がその姿を見咎めて……エロ漫画なら「みんなには黙っててやるから、とりあえずしゃぶれよ(ジッパーを下ろす音とともに)」となりそうな展開。幼馴染みの方は主人公に対して独占欲を抱いているみたいだが、主人公自身は「女装大好き!」の一点張りで恋心もクソもなく、見事にすれ違ったまま終わるので不完全燃焼気味です。可愛いことは可愛い。でもインパクトが弱い。そんな感じ。ラストを担当するのは椿あすの「Charmant Boy」。「チャーマント」ではなく「シャルマン」と読む。これもやはり「女装はただのシュミ」とおっしゃる「自発的な女装」タイプのストーリー。幼馴染みの少女からの相談を受け、「女の子アレルギー」になってしまった少年に女装姿で接近してみる主人公だったが……と、このアンソロジーの中で唯一「女装少年」が従の位置に置かれている。女の子アレルギーの少年に想いを寄せる幼馴染みの少女が出てくる一方、主人公にそっくりな双子の妹も登場し、「他人の恋路を応援する『愛のキューピッド』譚」と「双子入れ替わりモノ」を兼用、更にそのうえで「女装趣味の弟を心配する兄」まで話に絡ませる。凝っていると言えば凝っているが、さすがにゴチャゴチャしすぎ。作画のクオリティが一定ラインを超えているおかげでどうにか保っているものの、要点が掴み辛く、読むのにちょいと苦労した。最後のまとまりは良いにせよ、他の収録作と比べて「浮いている」という感触は否めません。

 総論。ニッチ狙いのアンソロジーとしてはそんなに悪くないんじゃないかな、ってところ。ただ、「女装少年」も「ツンデレ」なんかと同じで掘り下げが重要になってくるジャンルであり、単発読切で魅力を伝えるのは難しいですよね。「こんな可愛い子が女の子のはずがない」のゾーンに達しているのはほんのひと握り。当方が一番好みとする「内面的には男なんだけど、事情があって女性らしく振る舞わねばならない」シチュ、言うなれば「不本意な女装」の極地とも呼べる路線に該当する作品はなかったし、ほぼすべての女装少年が「内面的にも少女に近い男の娘」で、忌憚なく申してしまえば「ただチ○コが付いてるだけ」ってな印象が強い。個人的には「プラナス・ガール」の存在を知ることができたのが最たる収穫です。いいわ〜、これ。ジワジワ利いてくる。ビジュアル的にツボったのはやっぱりTivの表紙絵ですが。ち、ち、ちく(略)。あ、そうそう、女装と言えば、こないだ読んだ『グリードパケット∞(2)』に兄弟揃って女装して女子校に通うシーンがあって笑った。

・拍手レス。

 真打の劔冑は害虫で統一するとか何とか。あと超速スキップが速過ぎます。13秒って。
 害虫……ハナチラで触れられた「屍肉を喰らって肥え太る蟲がいる」のイメージを敷衍したのかしら。

 ディエス追加パッケージ、螢ルートは既に完成している……だと!?
 べっくらこきましたねー。


2009-05-07.

・「おかしいな、そろそろ届くはずなんだけどな……」と訝って調べてみたら、いつの間にか『四方世界の王』5巻が2ヶ月先まで延期していて驚愕の焼津です、こんばんは。

 えっ、大河ノベルって毎月刊行が原則じゃなかったの? 島荘のクラシックなんちゃらかんちゃらは開始前から予め途中の休止期間を設けていた(それでもまだ終わらないらしい)けど、『四方世界の王』は事前にそういうアナウンスが全然なかったので、きっと不測の事態でも起こったんでしょうね。遅筆家疑惑のある定金伸治が作者を務めているんですから不測もクソもなく「やっぱり」って気もしますけど、BOXにしろファウストにしろ、ずるずると延期するパターンがすっかり定着してきて呆れるより他なし。大河ノベルなんて元より「1冊1冊が薄いくせして高い」という難点があるんだから、刊行ペースまで維持できなくなったら潔くさっさとやめればいいのに……今後は従来の2冊分を1冊にまとめて「全12冊」を「全8冊」に短縮してくんないかなー。

業界初! 産卵系美少女登場! 「たま日和」1巻が発売

 咄嗟にコケコッコーを連想してしまった。ベーゼ富樫こと富樫つか沙も引退して久しいな……。

・連休で崩したマンガの感想をいくつか。

 榎本ナリコの『時間の歩き方(1)』

 著者初となるらしい長編コミック。扉を開けるだけで「別の時空間」に接続してしまう天然のタイムスリップ能力を持った少女が、遥か未来からやってきたタラベラー(タイムトラベラー)と出会う時間SF。主人公は「憧れの先輩の死」を回避すべく時空を超えてひたすら奔走するのですが、「いくつかの事象は予め定められており、また時間は自浄作用を持っているため、容易には改変できない」、つまり世界の弾力性が高くタイムパラドックスが生じにくい設定になっていて、あれこれと事故を阻止しても別の事故が新たに発生しちゃって、結局「先輩の死」という事象自体は揺るがない。それでも諦めず、突破口はあるはずだと奮闘します。

 頻繁に過去と未来を行き来するんで、なかなかややこしい。たとえば「同一タラベラーは同一時間軸に併存できない」という決まりがあって、これは要するに「1分後の自分と10分後の自分と1時間後の自分を今ここに集合させる」なんて真似はできない(「一度来た時間」にふたたびタラベルすると前回のタラベルが「なかったこと」にされてしまう)ってことであり、一見して「ははあ、同じ時間に『ふたりの自分』が存在することはできないっつーワケね」と思い込みそうになりますが、それは錯誤。「その時間純正の『自分』と、他の時間からタラベルしてきた『自分』とが出会うことは可能」なんです。「あの時間の自分と会いたい!」って思えば会いに行けるし、期せずして自分自身とばったり遭遇することもある。

 ……頭がこんがらがってきましたか? 説明している当方も混乱して、何度も文章を書き直すハメに陥りました。でもこんなのは序の口であり、「ホールド」という「時間から締め出しを食らう」現象も絡んできて一層物語は複雑になります。徹底してネチネチと考え込むか、「こまけぇこたぁいいんだよ!」と読み飛ばす勢いを発揮するか、なんにしろ極端な態度を貫いた方が楽しめるストーリーでありましょう。とりあえず、タイムトラベル妄想に耽ったことのある人なら読んで損なし。

 草野紅壱の『お兄ちゃんのことなんかぜんぜん好きじゃないんだからねっ!!(1)』

 タイトルから察するに、ヒロインはごくありふれた「素直になれないツンデレ妹」だろうな……なんてヌルい考えを抱いて読み出したら、ガチで近親相姦願望を持った超ブラコン変態妹でした。か、看板に偽りがありすぎる! でもエロくて可愛いので良しとする。自分のパンツをガン見する兄貴を眺めることで欲情したり、「何で私より先にお兄ちゃんがお風呂使ってるのよっ!!」と激昂するフリして家族を油断させた直後すかさずカゴから兄の服を取り出しすーはーすーはーくんかくんかしたりと、いろんな要素が初期値でMAXに達しています。ここまで露骨にやってなお嫌味がないあたりに作者の腕を感じた。本職だけあってエロ描写はしっかりしており、ソフトエロ程度のレベルながらも充分ドキドキさせてくれる。『こえでおしごと!』同様、エロマンガ家特有の味や技を一切スポイルせずに活用しまくった「本番なしだからこそ燃える」系統の作品です。ライバルに当たる「妹の知らない幼馴染みキャラ」も登場してきて、次巻以降の修羅場がとっても楽しみだ。にしても主人公、「女の子の裸が…見たかっただけなんだっ…」って、それ本音すぎるだろう……言い訳するならもうちょっとオブラートに包め。

 東冬の『嵐ノ花 叢ノ歌(1)』

 「あらしのはな むらくものうた」と読む。1939年のハルビンを舞台に、科学と魔術が交錯し、様々な思惑を秘めた人間たちが蠢動する様子を描く、これからおもむろに壮大になっていく予定っぽい伝奇ロマン。中国神話や記紀神話をベースに、「炎帝の裔」やら「土蜘蛛の鬼っ子」やらといった特殊な出自を持った少年少女が時代の荒波に翻弄される。神話や民俗学、オカルトに馴染みがないと何が何だかさっぱり分からず、かなり取っ付きづらい印象を与えます。背景設定どころか用語に関する説明すらろくろく行わないまま、執拗に視点を切り替えちゃあ多種多様なキャラクターたちに次々と意味ありげな言葉を口にさせ、いつまで経っても一向に筋を絞り込まない。「付けて来れない奴は置いてけぼりにする」、典型的な俺ワールド臭全開ストーリーだ。

 巨大ロボ風味の人型無軌道車「金剛蔵王」をゴーレムと言ったりジャガーノートと言ったりデウス・エクス・マキナと言ったりなど、複数のイメージを重ねようとして装飾過剰に陥っている感が否めない。そのうえ「梁山泊」と書いて「エデン」と読ませたり(英語版『水滸伝』では実際に「EDEN」表記らしい)、神農一族が「渾沌」と名づけている人喰いの獣を陸軍がなぜか「ウェンカムイ」とアイヌ語で呼んだり、終いにはパラケルススの一族が出てきて「太歳」の正体が「ホムンクルス」であることを暗に認め、しかもそれを「ヒルコ」と呼んでいると明らかにしたりと、ひたすらゴチャゴチャで統一感に欠けること夥しいです。大塚英志やみなぎ得一でももうちょっと整理して書いてるよ……絵に関しては新人離れした画力を誇っているものの、いまひとつ動きに乏しいし、見た目が良くても喜怒哀楽が伝わって来ず、あんまり感情移入できるキャラクターがいないので「表紙に騙された」と落胆する人が続出しそうな気配が漂います。キャラクターの魅力については如何ともしがたいところですが、設定やストーリーは何度か読み返せば頭に浸透してきますゆえ、忍耐強く接すれば「これはこれで」と思えるやもしれません。正直言って「まとめ切れるのかなぁ」という不安が付き纏いますけれど、なんだかんだで伝奇は大好物ですから差し当たって続きを追うことにします。

ニトロプラスの『装甲悪鬼村正』、体験版をプレー。

 エロゲーであるにも関わらずチャンバラ劇がメインというイカれたソフト、『刃鳴散らす』のシナリオを手掛けた奈良原一鉄。彼が4年ぶりにメインライターを務める新作であります。ニトロプラス10周年を記念する作品でもあり、物語の尺が比較的小規模であった『刃鳴散らす』に対し、今回は『デモンベイン』にも匹敵する大作に仕上がるそうだ。その証拠に、まず体験版からして長い。音声なしで約3時間と、結構なボリュームを誇っている。

 さて『村正』、設定がコチャコチャしているので、漫然と説明していったら長くなってしまいそうです。なるべく手短にまとめる方針で行きましょう。えっとですね、舞台となるのは1940年の日本ですが、どうもパラレル・ワールドらしく世界大戦はとうに終結していて、国名も日本じゃなく「大和」と称されています。戦後の大和では「六波羅幕府」とやらの専横が罷り通り、人々は圧政に喘いでいる。六波羅に属する武者は「劔冑(ツルギ)」と呼ばれる、強化装甲というか、要はロボットみたいな鎧を纏って大地を駆け、飛行ユニットもあるので大空すら翔ぶ。大海を泳ぐかどうかは知らない。劔冑は基本的に六波羅によって管理されており、戦後に行われた劔冑狩りのせいで民間の所持者はほぼいなくなっていますが、何振かの劔冑があたかも亡霊の如く在野に潜んでいるらしい。大和に戦乱を招いたとされる呪われた劔冑、妖甲「村正」。各地で街を壊滅させ人々を虐殺し劔冑さえも粉砕する謎の劔冑「銀星号」。村正は銀星号の行方を追っているみたいだが、両者にどんな因縁があるのか、詳しいことは何も分からない……と、大雑把な背景はこんなところかしら。「これは英雄の物語ではない」っつーテロップが出てくるくらいで、かなり陰鬱な雰囲気に包まれたストーリーとなっています。プロローグからしてアレだもんなぁ。奈良原らしいと言えば奈良原らしいが、より一層手加減がなくなって肌寒いばかりです。

 プロローグの後の本編では新田雄飛という少年が主人公を務める。両親を失い、幼馴染みの少女・小夏の家族とともに暮らしている、割とオーソドックスなキャラだ。彼は学園に通っているが、リツという親しい友人が登校してこず、連絡がつかないまま翌日を迎えたため、彼女を探し出そうと友人たちとともに探偵活動に乗り出すが……という、これまたジュブナイル小説の如きオーソドックス展開。一応授業という形で大和の歴史や、人々が今現在置かれている状況、そして劔冑のあれこれをレクチャーされていくが、え? いつになったらロボットバトル始まるの? と首を傾げるほど悠長な筋運び。テキストがややくどいのと、ギャグが寒いのとが重なって、ここらへんで辟易するプレーヤーも出て来そう。しかしながら、『刃鳴散らす』でしっかり調教された当方は別に仔細なかった。むしろ、友人が失踪したとおぼしき場所の付近を実地検分して状況を推理するあたりに楽しさを覚えるほど。雄飛が「力はないくせして無駄に熱血」タイプの主人公だから少しウザったさを覚えるところもあったけど、彼自身が誰よりも己の無力を痛感していて、それでもなお諦観を抱かない姿勢には好感が持てた。後半、いよいよ劔冑の関与が見えてきて、事件の真相に迫っていくが……。

 『村正』体験版はWEB版以前に雑誌の付録版が既に出ており、そっちをプレーした人の感想を漏れ聞いていたせいもあって、だいたいどんな話になるのかは最初から知っていました。ところどころで厭な予感を膨らませる要素はあったし、「あの奈良原だもんな……」という思いは常に脳裏のどこかに漂っていた。けど、なんつーか、ここまでやるとは……ぶっちゃけ、体験版のせいでギブアップする人も出てくるんじゃないですか。ニトロでも一、二を争うほどのダークさですよ。ロボットバトルということで『デモンベイン』じみたノリを期待した人にとっては、間違いなく壮絶な地雷。あれもダークと言えばダークで、後半はバンバン人が死ぬし世界もヒドいことになっていくけど、『村正』とは根本的に陰湿さが異なります。残虐描写がどうこうとか、そういう次元に留まりません。割かし善悪がハッキリと分かれていたデモベに対し、こっちは善悪不問、見事な卓袱台返しで「英雄不在の物語」たることを強調してみせる。若干ネタバレして具体的に書けば、体験版のクライマックスで村正と相対する劔冑、これは紛うことなく敵であり、普通なら悪役として存分に邪悪さを発揮するはずなのですが……適性に欠いているんでしょう、悲しいほどザコいです。「ケチな悪役」ですらなく、ただ単に「駒として利用された頭のおかしい人」でしかない。倒されたときにスカッとするどころか、ちょっと哀れみさえ湧いてくる。こんな奴の凶刃に掛かった被害者たちのことを思うとどうにもやりきれず、勧善懲悪の気分になんて浸れません。そしてプレーし終わった直後には、少しオエッとなりました。もともとそのときに体調が悪かったせいもありますが、あれこれ思い返してドス黒いもので胸がいっぱいになったことは確かです。ニトロめ、随分とえげつない勝負球を投げやがるぜ。あ、そうそう、エロシーンもあることはありましたがテキストは異様にあっさりしていました。ハナチラという前例も参照にすると、以降もずっと薄めテキストが続くんじゃないかと予測されます。

 そして、肝心要の戦闘描写について。劔冑は飛行ユニットも積める関係上、地上戦のみならず空中戦も可能であり、あたかも戦闘機同士がぶつかり合うような激しいエアリアル・バトルまでお目見えするのはさすがに意表を突かれた。しかも、相手の背後を取ることに腐心するドッグファイトではなく、真正面から突撃し合う馬上槍試合じみたブルファイトが眼目なので、巴戦とは異なる妙味が生まれています。ただ、体験版で描かれるのは「牛突きのイロハ」とも言うべき代物で、空中戦のセオリーや劔冑を扱う上での基本注意事項を確認する意味合いが強く、説明的なセリフが先行することもあって純粋に燃える闘争シーンにはなっていません。本番はこれから、ってところでしょう。村正の必殺技もされ竜の「爆炸刀」(鞘の中でニトロを炸裂させてその爆圧で抜刀する技)を上回るイカレっぷりで噴きましたし。ところで劔冑は「村正」を始めとして実在の刀剣の銘を用いていますが、そうなると今後は「虎徹」とか有名どころがバンバン出てくるんだろうか。個人的には「大般若長光」が見たいかも。

 全体としては期待以上の出来。ただ、やっぱりロボットだと人体に比べてダメージ描写が分かりづらく、剣戟要素の取り込みを得意とする奈良原が御し切れるジャンルなのか、未だ不鮮明と感じられます。「殺るか殺られるか」という緊迫感、真剣勝負の血腥さを、難攻不落の武具たる劔冑でどこまで表現できるのか。外野から「変態! 変態! 変態!」と詰られかねないほどのこだわりっぷりを是非とも見せてほしいものです。関係ないけど、「陰義(シノギ)」が「陰嚢(フグリ)」に見えて仕方なかった。

・拍手レス。

 リアルさについての議論には必ず「読み手の抗議」が含まれるものだと思います。一言で言えば「そんなくだらないものを見せるんじゃない」という。
 特に、「詳しい」と自負する分野に関しては寛容さを失うのが人の常。

 「無料であれだけのレベルのものが読める」という事でなら許せても、プロで金を取るとなると許せなくなるアラもあるものです。加筆修正熱烈希望>SAO
 良くなるに越したことはないけれど、年単位で待つのは辛いから早めに目処を立ててほしいものです。

 蠅声さんはモロに続き物なので1やってからの方がいいように思えますです。どうせ安いし。
 そして黒の断章以来の大槻所長の信者としては長靴をはいたデコの超展開マジオススメ。どうせ安いし。

 480円で叩き売られたとかいう話も聞きました、デコ。蠅声1はやりかけで放置しているけど、いっそ最初からやり直そうかな……。

 境ホラの2上・下巻が6、7月に連続刊行だそうです、上巻の表紙はさんでお値段なんと998円なり!いったいどれだけ分厚いんでしょうか(;・∀・)
 1巻の下より厚くなりそうですね。800ページ超えるかな?

 さわやか雰囲気なサンデーの中で異彩を放ってますよね。 虫の話とか。
 ダヴィンチの「変態だー!」ぶりは実にサンデーらしい。でも「嘔吐カノン」はあんまりだと思う。

 SAOは電撃版1の段階で時代設定やキャラ設定がいじられているとの事なので、やっぱり改稿はあるでしょうね。話としての完成度が上がるのなら改稿は歓迎したいです。でも2シリーズあわせて年1冊ペースとかは勘弁な!
 改稿は望むところですが、『空の園丁』ばりに待たされたら泣く。切なくてやりきれない。

 初めまして!実は去年からレビューを中心に見させてもらってました。この度何度も紹介されていた俺つばをやってみたので拍手を伝えたいと思いました。ベタ褒めされているのでワクワクしていたら期待以上のものですごく楽しめました。ガルーダがイカス! 熱いキャラが好きです○チガイ
 ○チガイには愛すら覚えます。 ディエス・イレ情報ですとか色々お世話になっています。これからもぬるっと頑張ってください。

 ことあるごとに俺翼俺翼と、バカの一つ覚えみたく連呼してきた甲斐がありましたわー。ガルーダさんはカッコイイ見せ場もあったのに攻略可能なヒロインがいなくて泣ける。では今後もぬるっと頑張ったり頑張らなかったりして、さすらいの管理人を続けていこうと思います。


2009-05-01.

・人の薦めで読み出した『トラウマイスタ』、最初の2巻くらいは「フツーかな」という感想でしたが、3巻目で一気に面白くなって購読の継続を心に決めた焼津です、こんばんは。

 トラウマを力に変えて戦うアクションもの、分かりやすく言えばJOJOのスタンドを踏襲した異能バトル系マンガです。絵柄もちょっと荒木飛呂彦っぽいところがある。「トラウマを力に〜」という設定自体はもう既にあまり珍しくないけれど、話の方は少年マンガらしい熱さを込めて徐々に盛り上がっていく。主人公のアートマン(スタンドみたいなの)であるゲルニカが「見た目は怖いくせして臆病かつ甘えん坊」というキャラ付けになっており、そこらへんがちょっと「子供っぽいマンガ」っつー印象を強めていますが、「致命的なほど戦力の離れた強敵が出てくる」みたいな悲壮極まりない窮地へ追い込まれる展開もあり、決してヌルい内容には仕上がってはいない。4巻から先がすごく楽しみだ。キンタマ100人蹴りの実績を持ついさましいチビ、ファーブルのフラグもなんだか微妙に立ちそうで、こりゃそのうち修羅場モード(△関係! △関係!)も来るかな?

人気作家作品の無断掲載で、雑誌『ザ・スニーカー』が謝罪

 公式のお詫び文章はこちら。浅井ラボがblogで何回か話題に上げていたものの、まさか今頃になって謝罪が為されるとは……角川書店の対応速度は『Dies Irae』の再開発並みだな。

物語の「リアルさ」ってのはなんなのだろうかという話(独り言以外の何か)

 創作とはフィクションなのだから追い求めるべきは「リアリティ」ではなく「虚構内リアリティ」だ、みたいなことを言ったのは確か山口雅也だったかな。結局、作者とは一種のネゴシエーターであり、個々の「リアリティ」に篭城する読者に向けて粘り強く交渉と説得を続け、ある意味で妥協的とも言える「虚構内リアリティ」を受け容れさせることが肝要なのです。たとえば『ドスペラード』における主張、「雑巾とスクール水着は『両方とも布である』という点では同じだが、決して『雑巾=スク水』ではない……その差は如何にして生じるのか? 答えは簡単、地・水・火・風を超えた第五元素『萌』の有無によってだ!」(要約)はいくらでもツッコミの入れようがある(そもそもこの主張と萌魔法の有する異常極まりなき破壊力とに明白な因果関係を感じられない)のに、目にした瞬間「なるほど!」とつい納得してしまう。唱える言説の説得力はひとえに作者の交渉術に掛かっています。

 しかし、これとは別に読者は必ずしも「リアルさ」に魅力を感じるわけじゃない、という問題があって、つまり意図的に「嘘臭さ」を嗜好する人も少なくないわけです。本物のメロンよりも「このわざとらしいメロン味!」の方が好き、みたいな。『デスペラード』の重力を無視した吹っ飛び方最高、みたいな。あえてフェイクを求めるのもフィクションの楽しみなんです。『とある魔術の禁書目録』とか、リアリティ目当てで手を伸ばす方はそれほどおられないでしょう。あの作品は「設定がフレキシブル」と揶揄されるくらい疑問点多いし「キャラの口癖がわざとらしすぎる」と指摘されても反論できないけれど、そういう隙のあるところも含めてコドモハートを刺激する要素に満ちている。

 とはいえ、最低限の調査はしてほしいな、という系統の願いはあります。少し前に地元近辺が舞台になる小説を読んでワクワクしていたら、地理の説明が間違っていた(うちの県の所在地なのに、隣県扱いになっていた)ので一気にガクーッときました。「おいおい、これはパラレル日本のハナシなのかよ!」と思わずツッコんじゃう始末。県境に位置するところなので、たぶん地図上で眺めて勘違いされたんでしょうね。同じ流れで行くと、海外モノのニッポン描写も大抵アレだよなぁ。もっと調べてほしいよなぁ。『四十七人目の男』は凄まじすぎて泣いた。

・今月の購入予定。

(本)

 『貧乏神が!(3)』/助野嘉昭(集英社)
 『義珍の拳』/今野敏(集英社)
 『鉄球王エミリー』/八薙玉造(集英社)
 『わたしたちのかえりみち』/みなすきぽぷり(コアマガジン)
 『1Q84(1〜2)』/村上春樹(新潮社)

 『貧乏神が!』はなにげに2ヶ月連続刊行。やっぱり人気があるのか? アニメ化を視野に入れてるのか? ともあれ期待。『義珍の拳』は実在の琉球空手家・船越義珍の生涯を元にした格闘小説。新刊情報サイトでは『義挙の拳』と間違われていてズッコケた。今野敏は今月『武士猿』という新刊も出すらしい。『鉄球王エミリー』は“鉄球姫エミリー”シリーズ第5弾。王ってことは、いよいよエミリーが即位するのか? この作者は何を仕出かすか分かったもんじゃないから、安易な推測は禁物ですが……『わたしたちのかえりみち』、予定より遅れたらしいが、作者2年ぶりの新刊。みなすきぽぷり好きを公言するのは「僕はロリコン〜、禁断の果実ぅ〜」と高らかに歌うも同然ですが、だったらなんだってんだよおォッ。当方自身の幼女に対する性的関心は全盛期に比べてもうだいぶ低くなったけど、あの明るいくせして陰惨な妄念溢れる筆致がメッチャ好きなんです。あくまで作風がツボなのであって、幼女のことなんかぜんぜん好きじゃないんだからねっ。うむ、我ながら実に嘘くさい言い訳だな。『1Q84』はオーウェルの『1984年』のもじりかな? 合計2000枚にも及ぶ大長編とのことで、特別村上春樹ファンじゃない人間でもワクワクしてしまう。それにしても村上春樹、「村上」とだけ書くと村上龍と混同しそうになるし、「春樹」と書くと角川春樹を連想してしまうし、有名な作家の割に略しづらいなぁ。あと、馳星周の大長編『煉獄の使徒(上・下)』も今月だったかな。悪徳刑事モノらしく、たぶん「いつもの馳」な感じになると思います。

(ゲーム)

 『蠅声の王 シナリオU』(LOSTSCRIPT)

 儲、と呼べる練度ではないけれど大槻涼樹スキー(略してスズスキー)なので一応押さえておこうかと。無印の『蠅声の王』はまだクリアしてません。他のソフトでは『花と乙女に祝福を』が気になるところかな。女装してお嬢様学園に通う、「またかよ!」なパターン。食傷? するもんですか。好物は食べ飽きないのだった。『さくらさくら』は……今度こそ出る、んですかねぇ(三信七疑の目)。あとは『Trample on "Schatten!!"』が久々の川原誠原画作品なんで注目しています。

・拍手レス。

 SAOは、サイトで4
 の途中まで読みましたが、だいぶ中だるみしている部分があるように感じたので刊行する際には多少、改稿してほしいです。

 大幅な改稿が必要となると刊行も延びちゃうかな……。

 妹2巻は前半の地味子云々のくだりでギブしてしまった。
 当方は冒頭のゲームをする場面で既にギブりました。地味子も、キャラとしては嫌いじゃないけど、彼女絡みの話は恐ろしく面白みに欠けるのでツライ。

 パッチのDLを待つくらいなら新パケで買い直してしまいそうな自分が心底イヤです。
 こちらも似た心境。幸か不幸か、今年は欲しいエロゲーがほとんどないので経済的な遣り繰りは簡単についてしまう。

・連休の間は更新をお休みさせていただいて、次は7日あたりに更新を行う予定。え? 何処か遠くへ旅行に赴くのかって? まっさかー、地元の本屋ぐらいには行くかもしれませんけど、基本ただ引き篭もってPC断ちしてひたすら読書に耽るだけの黄昏週間ですよ。漫画の新刊だけでも30冊くらい積んでますもの、消化に励まねば。


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