2008年7月分


・本
 『FLIP-FLAP』/とよ田みのる(講談社)
 『四十七人目の男(上・下)』/スティーヴン・ハンター(扶桑社)
 『ノノノノ(1〜2)』/岡本倫(集英社)
 『前世療法』/セバスチャン・フィツェック(柏書房)
 『少女ファイト(4)』/日本橋ヨヲコ(講談社)
 『新宿スワン(1〜13)』/和久井健(講談社)
 『Damons(12)』/米原秀幸(秋田書店)
 『放課後ウインド・オーケストラ(1)』/宇佐悠一郎(集英社)
 『神のみぞ知るセカイ(1)』/若木民喜(小学館)
 『っポイ!(26)』/やまざき貴子(白泉社)
 『天才たちの値段』/門井慶喜(文藝春秋)
 『ちはやふる(1)』/末次由紀(講談社)
 『AURA〜魔竜院光牙最後の闘い〜』/田中ロミオ(小学館)
 『ウルフガイ−狼の紋章−(1)』/平井和正、田畑由秋、余湖裕輝、泉谷あゆみ(秋田書店)
 『ブラック・ラグーン シェイターネ・バーディ』/虚淵玄(小学館)
 『レヴィアタンの恋人(U〜V)』/犬村小六(小学館)


2008-07-30.

『ブラック・ラグーン(8)』を読んでロベルタさんの18禁ぶりに息を荒くした焼津です、こんばんは。

 ロベ公ったら眼鏡外して三つ編みも解いて完全に復讐獣モード・オンですよ。格好良いったらありゃしない。また例のシーンでギャップを示すように旧来のメイド服姿で微笑むカットを混ぜる演出も淫靡汁を滲ませる。話の方も緊迫感が高まってきて、既刊随一の盛り上がりを見せます。バラライカや張といった今回あまり動きのない連中にすらちゃんと「見せ場」が用意されているんだから実に心憎い。正直に言ってしまえばブララグは「アクション派手だけどセリフ量多すぎて読むの疲れるマンガ」という印象が強く、既刊の内容にもノり切れないところがあった(双子編や日本編は後味悪いので特に)けれど、ようやくこの密度と濃度に体が慣れてきた気がします。

終わり方が気に入らなかった漫画(暇人\(^o^)/速報)

 打ち切り系なら『P2!』『フルセット!』、折角面白くなってきたのに、噫……結末で腰砕け、という意味では岡田芽武の『ニライカナイ』とか士貴智志の『神・風』とか。ああいう派手な話はスケール膨らんでいる最中が一番楽しくて、収束させたりケリをつけたりする段階に入ると興奮が萎んでしまう罠。何年経っても何年経っても続編が出ないよ、の筆頭は『風林火嶄』3巻(機馬軍団)単体の終わり方としては嫌いじゃないんですが、あれでシリーズ完結というのはムゴい。小川雅史自身は現在“ウルトラジャンプエッグ”というWEBマガジンで『キン肉マンレディー』なる連載をしている=生存は確認されているわけですから、必ずしも再開が絶望的とは言い切れませんけども。

「ご飯を炊きたかった…」炊飯器持参で住居侵入の49歳無職逮捕(【2ch】ネタちゃんねる m9( ゚д゚)っ)

 読めば読むほど切なくなるわ……。

・犬村小六の『レヴィアタンの恋人(U〜V)』読んだー。

 沙也加の鉄鎖が唸り、近づこうとした兵士の首に巻きついた。そのまま鞍上から両手でぐいっと引っ張る。こきん、と澄んだ音を立てて兵士の頸椎が砕け、その両膝が地に落ちた。が、鎖が死体の首に巻き付いたままほどけない。沙也加は後方を振り返り、
「雨宮っ」
「ははぁ、姫様っ」
 雨宮はいそいそと死体へ歩み寄ると、絡まった鎖を首から抜き取り、血糊のついた分銅を両手でうやうやしく掲げ持って鞍上の沙也加へ返した。

 四肢が千切れ飛んだり内蔵が撒き散らされたりと凄惨な描写てんこ盛りのくせに、たまにこうして緊張感ないシーンが挟まる近未来戦記ファンタジー。近未来とは申してもウイルスのせいで一旦人類が滅亡しかかった世界なので、文明レベルは進化するどころかむしろ後退しています。銃火器が供給されず、剣や弓や鉾といった前時代的な武装で戦っているあたりからして荒廃ぶりは『北斗の拳』よりもヒドい。代わりに「特進種」と呼ばれる超能力者や「グリル」と呼ばれるキメラ生物が運用されており、ひと薙ぎで多数の敵兵士を蹴散らかすとかいった無双シリーズっぽい爽快感を味わえる仕組みになっています。

 1巻で話はひと区切りつきましたので、2巻は新章の雰囲気で幕開けする。隅田川水系に属する白河ってコロニーとの緊張が高まり、徐々に状況が悪化していって「では戦るか」という運びに。あくまで準備段階で、本格的な戦争は3巻から始まります。つまり2巻と3巻は前後編で、まとめて一つの章という扱い。当然、話として盛り上がるのは3巻なわけですが、2巻もただの前フリに終始せず、ヒロインたる久坂ユーキの過去を綴る形で物語の空白を埋めていく。1巻では名前しか出てこなかった澁澤美歌子も登場し、ストーリーの全体像がおぼろげながら見えてきます。

 戦記モノであるからしてとにかく死人が転がりまくるこのシリーズ、詳密にグロテスクな描写を施すところよりも残酷な場面をあっさり流すあたりが逆に怖かったりしますが、上記引用部みたいにややブラックな笑いの要素が様々な箇所に仕込まれており、和むっつーかこう、カオスな空気に当てられて肩の力が抜けますね。鳥辺野ミゲルなんか「死ね死ね、うんこ、うんこ死ねぇぇぇっ」と叫びつつ虐殺するわけで、普通なら受け入れられないんですけれど、ここまで混沌を極める戦場にあっては「まぁこういう奴もいていいのかも」と思わされる。不思議。ミゲちんは人間的には最低極まりないけど、キャラクターとしては結構美味しいんですよね。あと新キャラの百武沙也加は金髪インテールの容姿に相応しくベッタベタなツンデレお嬢様で笑った。

 1巻で不満に感じた「戦記部分の薄さ」が見事に払拭され、話の面白さがグンッと一気に伸び上がりました。血沸き肉躍り骨砕け臓物こぼれるグチャグチャな泥濘っぷりに耽溺。まだまだ全容は明かされていませんし、これからの展開が楽しみですから、どうか打ち切られずに続きますように……と祈るばかり。4巻は確か9月予定だったかな。ワクワクしながら待つとします。話題になった単発作品『とある飛行士への追憶』もなるべく早めに崩しておこうっと。

・拍手レス。

 あのニンジャのせいで、鬼哭街の浦東地獄変の追撃シーンがあやつに変換されて仕方がないです。なんか違和感ないし、しかも生き残れそうですし。
 シャドーファルコンはあれで終わらせるのは勿体ない気もするけど、終わらせなかったら収拾がつかない気も若干。

 カレンの6連コンボに漢を見た
 もっと激しく乳揺れしてほし……いえ溜飲が下がりましたね。

 ツヴァイがインフェルノを脱けた後(アインは同行せず)、岡島録郎の戸籍を得てサラリーマンになり、タイでラグーン商会に襲われる、というクロスオーバーSSがあってですね。
 両作品の違和感がほとんど無いことに驚嘆してたんですが、今回のノベライズ及び座談会を読んで確信しました。コイツラ脳内で同じ世界を飼ってる人種だと。
 個人的に、これまで読んだSS内でベスト5に入る名作だったんですが、色々あってサイト閉鎖して読めなくなってます。

 クロスオーバーSSと言えば「鬼哭街」×「リベリオン」のがあったけど、アレはどうなったんだろう。

 むしろトゥーハンドクイーンの絵は大人しかったと思う人間も居たりしますよ、ほら此処に。
 むしろ原作最新刊におけるロベ公のサービスシーンが期待よりも大人しくてショボーン。

 地獄の釜的な話。フロスト気質が文庫なのに分冊で片方1150円。いや買うけど。文庫の価格上昇に心が磨耗して、ハードカバー買う事に抵抗がなくなりました(あれ?どうせ文庫落ちしても300円しか変わらないジャン)これで最新作をすばやく楽しめます
 金銭感覚というか心理的財布がおかしくなってきましたね。ハードカバーなんて中高生時代は「雲上本」という位置付けだったのに今は平気で買える。あと『フロスト気質』、新聞に載っていた広告を母に見せたらやけに興味を示して折半購入する運びに。普段はロマンティック・サスペンスやヒストリカル・ロマンを中心に読む人だけど、エド・マクベインとかディック・フランシスとかギャビン・ライアルなんかも好きという……当方が海外ミステリにハマったのは明らかにその影響。


2008-07-27.

『夏目友人帳』を読んで「なにこのブサイクな招き猫」と眉を顰めたニャンコ先生――気づけばいつしかゾッコンLOVEってる焼津です、こんばんは。ハァハァ……ニャンコ先生のご尊顔、この絶妙な不細工さ加減がたまンねェ。「美人よりもちょいブスの方が却って男好きする」みたいな理屈でしょうか。エロマンガで言えば「端整な画風よりも若干稚拙な絵柄の方がむしろヌケる」というあれ。ともあれそんな調子でニャンコ先生に見惚れつつ読み進めています。内容も一話完結方式で短編集みたいな構成になっているから、ちまちまと崩していっても充分楽しめてグッド。今は5巻のはじめあたりですが、高飛車かつ間の抜けている人魚娘が可愛い。傲慢な目つきと生意気な口元、波打つ長髪がさりげに蠱惑的だわ。

笠井潔の新刊にして矢吹駆シリーズ「日本篇」第1弾、『青銅の悲劇 瀕死の王』が発売

 分厚い本スキーなので本屋で実物を確認した瞬間、思わずエレクトしかけました。なんというサイコロ本……! ページ数自体は前作の『オイディプス症候群』よりも少ないけれど、紙質の関係もあってか厚みでは引けを取らない。シリーズ通算7冊目で、当方は3冊目の『薔薇の女』までしか進捗していないため読むのは当分先のことになりそう。

 これ1冊で軽く2000円は吹っ飛んだものの、まだまだ地獄の釜は蓋を開いたばかり。月末に来る『ディスコ探偵水曜日』なんて上巻だけで2000円オーバーですよ。ハードカバー買いは一度タガが外れると両手に持てる限りの冊数を積んでドカッとレジへ運んでしまうわけで、下手すりゃエロゲー購入費並みの蕩尽となりかねないから恐ろしい。今月は購買予定のソフトが一本もなかったからどうにか資金を確保できたけど、財布を覗き込んで冷や汗の出る瞬間が幾度かありました。

ねーちんの すごい 格好(ジンガイマキョウ)

 とある元女教皇の発禁寸前コス。圧倒的、肉。

 まずはこの幻想に跪いてやる――!

 もともとエロい格好してる人だけどここまで来ると「エロい」の次元さえ突き抜けているような。

真紅「あなたがむかなかったジュンね」「厳選!駆け流し」経由)

 「ホーケイメイデン」「むきますか むきませんか」「ローザミスティンカス」……シモネタ好きにはたまらぬ下世話なワード・チョイス、そして歯切れ良い会話文。サクサクとクリスピーな感触で読めました。

・虚淵玄の『ブラック・ラグーン シェイターネ・バーディ』読んだー。

 広江礼威のB級ワイルドアクションコミック『ブラック・ラグーン』を虚淵御大がノベライズするという、「夢のコラボ」ってより「なにこの違和感がない組み合わせ」と空恐ろしくなる企画によって生み出された一冊。御大のノベライズ能力は『Fate/Zero』で証明済だから特に不安はなく、原作の新刊と同等かそれ以上に期待して待ち望んでおりました。時系列的にはロックたちが日本へ行ってヤクザとドンパチする前、つまり4巻あたりに位置する模様。原作を知らない読者でも付いていけるよう配慮されていますが、内容をより理解するためにもせめて3巻くらいまで目を通しておいた方が吉かと。

 シェイターネ・バーディ――熱砂渦巻く地で、恐れを知らぬはずのムジャヒディンたちが憎悪と畏怖を込めて呼んだ、その名。悪魔の風。アフガニスタン戦争で死んだ「ことになっている」ソビエトの狙撃兵。ヘロイン漬けのジャンキーでありながらドラグノフを操る腕には今もなお悪魔が憑いている。「ある任務」を帯びてマフィアどもが巣食う街ロアナプラに降り立ったそいつを、レヴィたち「ブラックラグーン」の面々は狩り出さなければならない。ロシアン・マフィア「ホテル・モスクワ」の幹部であり、同じアフガンツィ(アフガン帰還兵)でもあるバラライカは、彼の正体を知りつつも口を噤んでいたが……。

 アフガンツィとか黒いチューリップ(遺体搬送機)とかいった用語が出てくることもあって船戸与一の『緋色の時代』を連想した本書、お察しいただいた通りバラライカが今回重要な位置を占めている。もちろん二丁拳銃のレヴィは相も変わらず獅子奮迅の活躍を見せますし、張兄貴や「ですだよ」さんも登場しますけれど、一番美味しいところを持って行くのは火傷顔の姐御。絶対に欠かせない存在であり、もはや「象徴」に域に達しています。翻って本編主人公のロックこと岡島緑郎は今回ヒロイン役かな。攫われて囚われの身に。そしてある意味穢されるっつーか「存在レイプ」とも言うべき辱めを受けます。みんなあの後はロックの顔見ただけで思い出し笑いしますよね、きっと。

 もともと冒険小説とハードボイルドをこよなく愛好し、本棚にもそれ系の奴をぎっしりと詰め込んでいる作家だけにツボを外すことはなく、手堅いストーリー構成と巧妙に用意された見せ場でしっかり楽しませてくれました。それと今まで「小説作品はどことなく文章に硬い感じが残るなー」と思っていましたけど、だいぶこなれてきたのか文章から硬さが抜けて随分と読みやすくなった。これから虚淵スキーはもちろんのこと、虚淵をまったく知らない読者にも安心して薦められる。オリキャラは「亡霊狙撃兵」のみならずクールJもどきや巨乳パイレーツ女、それどころか金髪碧眼にして黒装束を纏うマスターニンジャまで出してくる節操のなさだが、それでも全員上手に使ってキッチリまとめてしまうのだから心憎いばかり。お間抜けなくせして熱く、燃えるのに萌えるという不思議な境地に至ってます。

 原作好きなら問答無用でイチ押し、原作が好きじゃなくてもとりあえずプッシュ、原作をまったく知らないんだったら1〜4巻+本書のセットで購入してほしい……ってなところでしょうか。一見やりすぎなようでいて肝心な場面では出しゃばらず、あくまで「ブラクラ節」を貫いて過不足なく幕を引く。模範的なノベライズ作品に仕上がっています。ワイズクラック的な遣り取りの数々も目に心地良い。「言って」が「行って」みたいな誤植があるのは残念でしたけど、堪能しました。ちなみに一枚、サービスショットとも受け取れるレヴィの蠱惑的なイラストが収録されています。あれを素直に喜べる層は果たしてどの程度の厚さなんだろうか。個人的にはちょっとヒきました。それはそれとして香港編を熱烈期待。

・拍手レス。

 それなんて、ロベルタ? 優とのいちゃいちゃなシーンはないことに絶望
 まだだ、まだFDという希望が……。

・やっべ、またギアス見逃した……「後でネット配信の方を視聴すればいいや」という考えがあるせいでついつい忘れちゃうのですよね、毎回。実際、あと30分くらいで見られるわけですからホント便利な世の中になったものだ。


2008-07-25.

・「急に新刊が来たので……」という塩梅で夏の読書計画が早くもグダグダになっている焼津です、こんばんは。

 積読家にとってネット書店とは近場にない本を調達してくれる心強い輜重隊でもある一方、恐ろしいマスドライバー屋さんでもあります。第三部すら読み終わっていないのに、“氷と炎の歌”第四部『乱鴉の饗宴(上・下)』を着弾させたりとか。「ああ、なんて逞しい装丁……」と分厚さに見蕩れてウットリしている場合じゃねぇ。「新刊を優先的に崩せばいずれ積読は減る」と考えて頑張ってはいますけど、届く量がもう明らかにこちらの読書速度を上回ってますよ。加えて「急に読みたくなった」という理由で読書計画を変更することなんてザラですから、にっちもさっちもヴォイニッチ。

おや、しゃんぐりらのようすが……

 サブキャラ止まりだった鏡花がTOPを飾っていますね。もしやこれはFD発表の前駆現象? それにつけても麗華のはいてなさが気に掛かる。

スタッフ表記に濃厚な火薬臭が漂う『それは舞い散る桜のように 完全版』

 かぐらとひかり姐さんが攻略対象に昇格――というのが目玉みたいですけれど、見覚えのないライター名や「チームBasiL」という表記に言い知れぬ不安を抱かされる。「主人公・桜井舞人にボイスが付く」というのもなんだか。

PS2移植版『恋する乙女と守護の楯 -The shield of AIGIS-』の追加ヒロイン2名を紹介する記事

 どっちも当方好みじゃないか。本気で逆移植を検討してくれないかしら?

 若菜の日傘は防弾仕様で、しかも石突から麻酔弾を射出するギミックとかあるんじゃないかと妄想。「厳しく躾けられましたので、武芸十八般も嗜み程度には……」な猛者撫子で襲い掛かる暗殺者を逆さまに圧倒し追い詰める超展開が来たら噴くこと確実だが、それだと妙子の立場がないからあくまで守られる側かな。でも「ヒロインが守られる」タイプのシナリオは既にPC版で出尽くした印象が強いし、どのくらい差異を醸せるかが要となりそう。りおの方はアイギスと絡めればいくらでも話の膨らませようはあるでしょうね。

・原作:平井和正、脚本:田畑由秋、作監:余湖裕輝、作画:泉谷あゆみの『ウルフガイ−狼の紋章−(1)』読んだー。

 バイレオンス小説が好きな割に菊地秀行や平井和正の本をほとんど読んだことがない、言うなれば片手落ちのキングである我が身を羞じて……ってわけじゃありませんが「あのウルフガイが新たに漫画化する」という話を聞いて渡りに舟とばかりに買ってみた一冊です。しかしまぁ、ズラズラと名前が並んで凄いクレジットになってますね。『紅 kure-nai』ばり。田畑由秋と余湖裕輝は『アクメツ』のコンビで、泉谷あゆみは『月光魔術團』のイラストとかを描いていた人。実は当方の読んだことがある平井作品は『月光魔術團』だけで、しかも途中の巻までしか目を通していないんですけれど、「地獄の蜷川」と呼ばれていたスケバンキャラが気に入ってました。どれくらい気に入っていたかと申せば、高校時代の黒歴史ノートに「地獄の皆川」というパクリヒロインが出てくるほど。

 話を戻しましてこのマンガ版、原作『狼の紋章(エンブレム)』はヤングウルフガイの第1弾であり、もともとマンガ用の原作として書かれたものを小説化したものとのことですが、一番最初の版は1971年に刊行……つまり既に37年が経過しています。当方が生まれるよりもずっと前。さすがに70年代当時の話をそのままやるのは得策でないと考えたのか、時代設定を現代に変えてやや「翻案」に近い形となっている。そのへんのスタイルは『孤高の人』と似通っているかも。

 物は試し、という軽い気持ちで読み始めたものの、迫力に満ちた画の数々に圧倒されてすぐに没頭しました。思った以上に面白かった。期待した以上に暗くて熱い。あえて悪く言えば「大ゴマ連発であっという間に読み終わってしまう」し、「最初から最後までひたすら凄惨なバイオレンスシーンが続き、非常に低俗な印象を与える」けども、もちろんそれがイイのです。直前まで別のマンガを手に取っていて「あー、読むのだりぃなー」とかなりグダグダなテンションだったのにこれをめくった途端、完全に頭が「三度の飯よりマンガが好き」のモードに切り換わった。話自体は特段すげぇわけじゃない(不気味な転校生として主人公がやってくる→学園を牛耳る不良に目をつけられる→漂う対決の予感→次巻につづく)ものの、率直で回りくどいところのない筋運びに引き込まれ、待ち受ける爽快なインパクトに打ちのめされる。画面を通じてごくごく単純に「力強さ」を伝える、正拳突きみたいな代物。映画版では松田優作が演じたという敵役・羽黒獰も、中学生だってのに全身から化け物じみた禍々しさを滲ませていて、ホントたまらない。主人公にしろ敵にしろ、バイオレンスものである以上はこういう「問答無用」なオーラがまさしく欲しかったんですよ。2巻と3巻も早く買わないとな。

・拍手レス。

 Black Lagoonことブラクラですが、最新巻の巻末に広江氏と虚淵氏の対談が掲載されています。
 おかげでいつもの巻末漫画は無いわけですが、ビッチビッチ言い過ぎだと思います。
 僕こんなにビッチが連呼される対談見たの初めてだよママン・・・

 ビッチ熱が高まるのはB級アクション的には良き哉。

 奴隷少女に戻ったCCには萌えたが、いろいろな意味でダメだと悟った>ギアス
 コードギアスというよりコードカオスになってきた……だがそれがいい。

 「姉者ーっ」と叫ぶ巨躯妹……アレですね。最近一家に、火付けと謀略が趣味のぐんしーは加わったんですね。熊なんて相手にならねえ一家だな
 そして県下三分の計を策し、北校・南校・西校で均衡を保ちながら争う「三學志」が幕を上げる。


2008-07-22.

・そういえばCLAMPの『X』っていつごろ完結したのかな、と気になってぐぐり、完結どころかもう6年以上も連載を休止しているのだと今更になって知った焼津です、こんばんは。

 少女マンガながら気合いの入った伝奇バトルもので結構好きでした。積んでいる巻があったからこれを機会にと崩してみましたけど、星史郎と昴流の因縁は既刊部分で一応決着していたんですね。あのへんは最後まで引っ張るかと思っていただけに意外。桜塚護に関する小エピソードも見られて満足しましたが、おかげで手が止まってしまった。蔵書整理する上で一番厄介なのは、「見つけた本をついつい読み耽ってしまう」というトラップが随所に仕掛けられているところ。ほぼ毎日のように滞る……。

・田中ロミオの『AURA〜魔竜院光牙最後の闘い〜』読んだー。

 タイトルからして凄まじいオーラが伝わってくる、田中ロミオ4冊目の小説。単発作品としてはこれが初になる。もともとは“PC Angel”に連載していたコラムだったというが、そっちは読んでいないのでよく知りません。お察しの通り、俗に「邪気眼」や「中二病」と呼ばれる、ある種の精神様式を題材に採っています。思春期の少年少女がマンガやアニメ、ゲームといったフィクションに感化されて二番煎じの妄想を育み、奇怪な言説を唱え、余人の理解を阻む行動で以って「自分は特別な存在である」と証明しようとする。そんな、痛々しくも涙ぐましく、甘ったれで排他的、何よりも見当違いな「踏み外し」と「掛け違い」に真っ向から挑む。いっぱしの黒歴史ホルダーであれば、ページを繰るごとにリアリティ満載のペインに苛まれて「やめてください、やめてください」と泣き崩れること必至です。

 高校デビュー、それが拭いがたい「罪」を犯した佐藤一郎の突破口だった。過去を忘れ、徹底的に自己改造し、上辺を取り繕って、薄い関係ながらもクラスメイトとのフレンドシップを築く。連れ立って買い物に行き、女子にも気安く声を掛ける。どこまでも「普通」で、ひたすらに「ありふれた高校生」でしかない姿だったが、それこそ彼の望む新生活だった。いつまでも続くと思っていた――早々に瓦解した。夜の校舎で出逢った、青いローブを纏った魔女。彼女と教室で再会した瞬間に、すべては終わりを告げる。あろうことか、彼女は「夜の校舎」のみならず朝の教室にまで例のローブを着用して登校してきたのだ。違う、これはいわゆる「非日常」とは違う。つまり、そう――「非常識」だ。かくして一郎は「佐藤良子」という最悪の現象と関わり合うハメに……。

 出逢いのシーンまではOK。ライトノベルのお約束からすれば、まだまだイケる範囲でしょう。しかし、登校する段階で制服に着替えてこなかった時点でアウトー。「異能を持った転生少女とともに繰り広げる超常バトル」は坂道を転がり落ち、「イタいコスプレ女の面倒を診させられる、臑に傷持つ少年の物語」が幕を上げます。違う意味で「僕の平穏な日常は音を立てて脆くも崩れ去った」。こまごまとした専門用語や背景設定が上滑りしていく居たたまれなさもさることながら、「クラスの半分以上がそっち系」という驚愕のシチュエーションでか弱い読者の心を迎え撃つ。自分は吸血鬼だと思っている人とか、転生戦士の人とか、超能力者とか、スーパーサムライの末裔(もちろん片目に眼帯)とか、「それが世界の選択か……ラ・ヨダソウ・スティアーナ」と嘯く諜報員――はいなかったか。まさに『ちゅーにびょう☆まっしぐら』であり「ゼンイン☆ジャキガン!」であり「今いるセカイにサヨナラしようか」。本書にもっと分かりやすいタイトルを付けるとすれば『妄想戦士が多すぎる』あたりが妥当かもしれません。

 もともと器用なシナリオライティングの腕を持っているロミオだけあって巧い具合に作風を変え、今回のテーマに沿った軽妙な語り口でテンポ良くダーッとストーリーを押し流していく。細部を端折って要約してしまうと短編程度に収まりそうな物語ですが、肌に突き刺さる間断なき痛みと、それを超えてまで何かを手に入れようとする激しい熱意がビンビンに伝わってくることを考えると、やはりこの尺が最適です。主人公がイタイタしい過去を抱え持っていることは読み出してすぐに分かりますが、最後の最後まで引っ張って詳細を明かさない、という試みも成功している。自己嫌悪の鋭利さと、容赦ない同族嫌悪の滴りに痺れた。クライマックスが盛り上がる反面、オチは若干拍子抜けだったけれど。

 「実らなかった妄想に意味はあるのかな」を問う、フィクション由来のイミテーションにまみれた青春小説。ライク・ア・ローリング・マジックストーン。決して宝石ではない、紛い物の「魔石」だけが放つ輝きとそれを見詰める人々の騒々しい息遣い、是非とも目を凝らして堪能してください。日々の暮らしは辛いし地味だし華々しさとは無縁で、それどころか鼻っ柱を折られて己が身の矮小さを思い知らされることが山ほどある。しかし現実とは、闘える。水に溶け込めない砂も砂なりに足掻けるのだと、魔竜院光牙サンは教えてくれる。あえて現実とは闘わず「この光彩がヤバ過ぎるファングを程よく包んでくれる」「アウラが俺にもっと輝けと囁いている」方面に進んでくれたら、それはそれで面白かったのだが。

女子中学生、テント襲うヒグマをキックで撃退 「寝ぼけて妹と間違えた」(痛いニュース(ノ∀`))

 素手でヒグマを押し返し、蹴り一つで追い払う――妄想戦士も慄く現実の武勇伝。

 しかし「妹と間違えた」って。思わず「姉者ーっ」と叫ぶ巨躯妹を想像してしまった。片手に蛇矛とか青龍偃月刀な。

・拍手レス。

 お風呂場で頭を洗いながらだるまさんがころんだをすると出ます
 放熱と食糧のせいか冷蔵庫付近でもよく見かけますね。

 虚淵センセのブラック・ラグーンが素敵過ぎる。忍者だよNINJA!もう最高っス!
 あまりにも相性が良すぎてノベライズだということをつい忘れてしまう。


2008-07-20.

・夜中、微かな物音が背後で響き、「もう怪談の季節だし、そーゆーのが出たっておかしくないよなぁ……」と振り向いたら。

 コックローチでした。

 マンマ、マンマ、マンマ、キエエエエエエエエ!とベイビーヘッド・ハングマンみたいな奇声を心の中で上げ、カサソソッと鳴る特有のノイズにSAN値を蝕まれつつ、殺虫剤噴霧にてファッキンゴキ野郎――邪気眼風に申せば「幽き音立て飛翔す六脚黒太子ヘクサポーダ・ブラックプリンス」を討滅した焼津です、こんばんは。積読のラビリンスに逃げ込まれたらいろんな意味でヤバいところでしたが、「机の下」というノーウェア・トゥ・ハイドな場所へノコノコやってきてくれたおかげで悠々と駆除できました。死骸を摘むときにボロリと脚がもげて、むしろそっち片付けるのに苦労したほど。ゴキの脚って結構硬いっスねぇ……ティッシュ越しでなければ針みたく指に刺さっていたかもしれない。

・末次由紀の『ちはやふる(1)』読んだー。

 いざ万雷の拍が鳴り響く戦畳へ。

 競技かるたを題材に採った世にも珍しい少女マンガです。いえ、『むすめふさほせ』みたいな前例はある(こっちはロマンス重視でかるた要素薄め)のですが、どう考えても主流じゃないよなぁ、と。薦められて買ったみたまでは良かったものの、イマイチ気が乗らなくて放置していた一冊であり、今回読み出したのも「よし、読もう」的な気合いが入ったものではなく「試しに冒頭だけ目を通してみよっか」と至って気軽な心境からで、実のところそんなに期待していなかったんですよ。それがどうだ、本編が始まるやほんの2ページで容易く引き込まれた。

 お願い だれも
 息をしないで

 なに、この肌にビリビリと伝わってくる緊張感。俯き、呼吸を止めて集中しているとおぼしきヒロインの横顔。表情の見えぬかんばせから迸る静寂なる鬼気。凛と漲る迫力に気圧されて「このマンガは絶対にすごい」と確信した次第です。物語はプロローグの6年前に遡り、「まだ情熱を知らない私」――小学生時代のストーリーがゆるゆると紡ぎ出される。コンプレックスというほどではないが一つ年上のお姉ちゃんが自慢で、「自分自身の夢」を持っていなかった当時のヒロインが一人の少年、そして「かるた」と出会って「お姉ちゃんが日本一になってほしい」みたいな他人任せのドリームから脱却し、オリジナルの大望を抱くようになります。成長物語として読んでも心地良い。

 少女マンガであるからして人間関係ひいてはロマンス要素がまぶされているのは当たり前ですけれど、まだ小学生編ということもあって色恋は淡く、そんなに重いファクターじゃありません。メインはあくまでかるた。躍動感に満ちた描写で、男性読者が抱きがちな「どうせ少女マンガだろ」っていう偏見をそれこそ札のように叩きのめし弾き飛ばしてくれます。熱い。想像以上に熱かった。憧れの対象である姉から応援されず、それどころか「ぷっ、ダサッ」と馬鹿にされるシチュエーションはナイス逆境。嘲られながらもグングンかるたに魅せられ、「百枚の友達」へのめり込んでいくヒロインのひたむきさに濡れろ。「正々堂々とやって負けて かっこ悪いことあるか――!!」など、決めゼリフ級の言い回しが頻繁に出てくることもあってホント痺れますわ。やりすぎてちょっとクサくなっている部分もあるにしろ、勢いと情熱の溢れる描きっぷりに惚れました。作者は例の盗作騒ぎで話題になった人で以前の作品は読んだことないんですけれど、本書を堪能するにつけあのまま筆を折らずによく復帰してくれたと感謝したくなります。

 喜怒哀楽の表現がストレートで、じかに心へ響いてくるような一作。かるたマンガと言えば竹下けんじろうの『かるた』がたった2冊で「第一部・完」、つまり打ち切られてしまったという残念な記憶があり、本書巻末の予告ページに「クライマックス!」の字を見たとき思わずドキリとしましたが、「小学生編」のクライマックスであって、新章「高校生編」も始まるみたいなので安心しました。2巻は再来月発売予定とのことで、んっげー楽しみ。

・拍手レス。

 ore
 オレ……ンジ?

 どっちかっつーと、どこまで墜ちるのかが楽しみです>ウザクの人
 リフレインと同じ効果を与えるギアスとかに目覚めそうな気が。

 ロミオに新刊、パネェ出来ですよ。流石厨二病患者の厨房批判は凄い
 げに同族嫌悪はすさまじ。

 月道、消えてますよ
 もともと消え癖のあるサイトですから。

 AURAを三分の一ほど読んで出た言葉「助けて!!」ギギギ…暗黒時代を思い出させないで…(泣
 おもひでボロボロですね。高校デビュー時の当方はと言えば、強烈な麻耶雄嵩信者でした……既に10年が経つけどあんまり変わってないな、そのへん。

・夕方はうっかりギアスを視聴し忘れてしまったので、これから見に行くとします。


2008-07-17.

・処分しすぎた反動か、アホのように衝動買いしまくって新たな本の整理に追われている焼津です、こんばんは。どれぐらい使ったかと申せば、その……福沢さんがメルタウェイするくらい。自重を理解出来ぬ当方の本性が剥き出しになっていたのだ。いや、懐かしい本をなにげなくひょいっと開いたら万札が挟まってたんですよ。ヘソクリのつもりで隠したまま忘れてたんでしょうね。ザ・臨時収入。すかさず貯金――するわけがありません。くふっ、買えるのぅ、ちょーっと欲しかった本どもがこれで根こそぎ買えるのぅ……! ともろ悪人顔を晒しながら書店に駆け込みました。

 神々しい鳳凰を背負い 微笑む諭吉の顔さえ
 淫らな欲望に汚され 恥辱と苦痛に歪んでいる
 積読はいつか棚を下って 地を埋め山となった

 どうやら床を拝める日は未来永劫訪れない模様です。

「小女子焼き殺す」 2ちゃんねるに殺害予告をした23歳無職を逮捕…「小女子(こうなご)は小魚だ」と否認(痛いニュース(ノ∀`))

 カズフサ(『ラブやん』)を連想せずにはいられない。

お前らって読書速度どれぐらい?「GF団」経由)

 何度かやってみましたが、だいたい1000前後。速読にはあまり興味がなく、むしろ歳をとるにつれてじっくり読むようになってきましたからスピードは下がる一方です。結局のところ、無闇に早く読もうとしたり徒に遅読しようとしないで、それぞれ固有の「最適な速度」を見つけ出すのが一番じゃないでしょうか。と何の面白みもない意見を言ってみる。

その特典、本当に欲しいですか?「独り言以外の何か」経由)

 『トリコロMW-1056(1)』特装版くらいの豪華さだったら話は別ですけど、ほとんどの場合は置き場に困るような品だったりしますから、売り場に限定版と通常版の両方並べられていたら通常版の方を選ぶというのが基本方針です。逆に考えるんだ。通常版は「安さ」が特典と考えるんだ。

 なので特典に関して悩まされることはあまりないのですが、積読の膨大量については切実に憂慮せねばならず、「その本、本当に読みたいのか?」と自問することは必須。とはいえもちろん、書店の平台でインクと紙の匂い馨しき新刊群を前にすれば「頭がフットーしそうだよおっっ」と人事不省に陥るゆえ無理×無理×無理のムリキューブ。

・門井慶喜の『天才たちの値段』読了。

 贋作を前にすれば苦味を感じ、本物に臨めばたちまち甘味を生じさせる魔法の舌――生まれつきそれを持っているのだと嘯く男・神永美有。眼力ならぬ舌力で、幾多もの美術品にまつわる謎をバッサバッサと鮮やかに切り伏せてみせる。連作形式で送る、薀蓄要素多めの美術ミステリです。神永が中心人物ながら主人公を務めるのは佐々木という大学教員で、まず佐々木が迷推理を披露し、その後おもむろに神永が真相を明かすというパターンになっている。言わば「間抜けな警部と天才私立探偵」の対比であり、終始徹底して主人公が道化役を務めるため「主人公がカッコ良くなきゃイヤだ」という人には辛いかもしれません。とにかく佐々木は締まらない、決まらない、なんともカッコ悪い奴なんだけど、それゆえにラストで滲むほろ苦くも甘酸っぱい風味が引き立つって面もあって、あながちダメダメとも言い切れない。苦笑しつつも最終的には受け入れてしまう、そんなタイプだ。

 「天才たちの値段」 … 冒頭一発目。ボッティチェリの「秋」が見つかった。ギリシャ神話のデュオニュソス祭を題材に採ったその画はなるほど、確かにボッティチェリの作風と似ていなくもなかったが、どちらかと言えば贋作臭さの方が強く匂い立っていた。であるにも関わらず、「魔法の舌」を持つ神永美有はこれを真作と断定し、掻き集めてきた大金を積んで画商から購おうとする……。発掘された巨匠の幻の一品、果たして真贋如何に? という割合よくあるネタをキッチリ丁寧に捌いた好編。シンプルにまとまっており、特に長々と述べるような感想はないが、開始を告げる作品としては上々の出来映えでしょう。まったりと寛いで薀蓄に聞き惚れてください。

 「紙の上の島」 … 学生の実家で土蔵が取り壊され、中に収められていた品々の整理を始めたところ、一枚の奇妙な地図が見つかった。入手の経緯からポルトガル人の手によるもので、日本のどこかを描いた地図だと思われるが、具体的な地名は分からない。学生から持ち込まれた謎を解き明かそうとする佐々木だったが……。地図ってことで「メルカトル図法」云々といった用語が出てきます。ここで咄嗟にメルカトル鮎を連想してしまうのは麻耶儲として必然であり当然。さておき、古びた地図にどれくらいの価値があるのか判定する話ですけれど、地図を持ち込んだ学生には双子の姉がいてワケアリだったりと、微妙に人情めいた部分も混ざってくる。変化をつける役には立っているが、これ美術とかいった方面はあんまり関係ないんじゃないかな……と思ってしまった。歴史が絡んできて過去に想いを馳せるあたりは面白かった。

 「早朝ねはん」 … 食中毒によって衰弱した仏陀が入滅する様を描く、涅槃図。今回見つかったのは、よりによって仏陀が苦悶の表情を浮かべながら組体操の「一人扇」みたいな格好をして寂滅するというものだった。こんな涅槃図、見たことがない。呆れつつも興味をそそられた佐々木は、この涅槃図を欲しがっているという人物を訪ねに行くが……。真贋如何に、ではなく「この格好ってなんなの? 死ぬの?」という疑問に立ち向かう、本書の中ではもっともミステリらしい一編。イイ意味で展開が慌しく、雰囲気がまったりとしている他の作品に比べてスピード感も高いです。何より謎が面白い。だって、仏陀が組体操ですよ。想像するだに笑える。というか、ちょうどこれ読んでる頃に『聖☆おにいさん』も並行して崩してましたから笑撃度倍増。こう、どーしても中村光の絵が脳裏に浮かんでしまって仕方がなかった。

 「論点はフェルメール」 … フェルメールの「天秤を持つ女」を模写したとおぼしきその絵画は、お世辞にも出来が良いとは言いかねた。筆遣いからして大雑把で、バランスも悪く、また細部に利かせたアレンジが悪い方向にしか作用していなかった。これを描いた作者とフェルメール、どっちが上かと聞かれたら迷わずフェルメールに票を投じただろう。しかし、予定されているディベートにおいて、佐々木はこの作者を擁護し「フェルメールよりも上だ」と主張して論拠を示さねばならない立場にいた……。シチュエーションの面白さで言えば一番かな。無理難題に等しい厄介な仕事を持ち込まれ、どうしたものかと頭を抱える主人公はまさしくピエロ。今回ばかりは神永に頼るわけにもいかず(何せ、神永はディベートの敵側に付いているから)、絶体絶命の危機に瀕した佐々木が知恵を絞る。薀蓄要素が濃すぎて謎解きの面白さは減ってしまった気がしないでもないが、オイシかったのでヨシとします。

 「遺言の色」 … トリを飾るエピソードは「佐々木自身の事件」とでも言うべきもの。遺産相続問題に巻き込まれ、伯母と骨肉の争いを繰り広げてしまいそうな状況に陥った佐々木。祖母が残した相続の「試験」は、青・赤・緑、三色の木箱から「アタリ」を見つけ出すといった内容だった。西洋骨董品の熱心な蒐集家であった祖母は、ヒントとして三つのガラス工芸品も用意し、「謎を解いた相続人に遺産をすべてやる」というゲームじみたルールを制定していた。遺言パズル。それを解き明かすため、美術コンサルタントも行っている神永に協力を求める佐々木だったが……。締め括りに相応しい力の入った話で、ズドンと来るような衝撃こそないものの、ジワジワと染み渡ってくる。そっけない幕切れですが、ビタースイートな余韻といい、非常に後味が良くて好きです。

 あくまで美術品の謎を巡るのが眼目であって、殺人とかおどろおどろしい犯罪要素は一切絡んでこず、血腥い展開が嫌いな人にはうってつけ。あっさりとした文章で読みやすい反面、登場人物たちが個性的な割にはうまくキャラクターを活かし切れなかった憾みがあると申しますか、結局神永がモヤモヤとした印象のままで終わってしまって勿体なかった。一つか二つくらいは神永やイヴォンヌを起用した他視点エピソードがあっても良かったんじゃないかなぁ。面白いけどインパクトが薄い、という感じ。ヒネリが利いていてバラエティにも富んでいましたから、一冊の短編集としてはまずまず満足の行く出来でした。

・拍手レス。

 スザクも他のアニメに出てたなら正統派ヒーロー路線でいけたんでしょうけど。
 優秀な参謀役がつかないかぎり、他のアニメでもポシャりそうな予感。

 ヘイトvsスワロウは作中でもベストバウトだと思う次第。スワロウの最期がなんとも切ない。
 「復讐対象ではないライバルキャラ」という位置付けの半端さから不安を抱いてましたが、そいつを見事な往生で解消してくれました。

 焼津さんもおかえりねこねこソフト!しましたか?
 ねこねこ活動再開……ねこ繋がりでSTUDIOねこぱんちも復活して『うそ×モテ』の続編出したりしないかなぁ。


2008-07-15.

・腰椎が悲鳴を上げる勢いで蔵書の整理に励んでいる焼津です、こんばんは。書店の仕事は体力勝負だという話を目一杯痛感しております。

 なくしたと思った本がひょっこり出てきたり、買った覚えがない本が出てきたと思ったら「あ、これちょうど読みたかった奴だ」でタナボタだったり、嬉しいイベントも発生する一方、積んだ書籍の重みで歪んでいる本や、酸化・褪色・埃堆積で古色蒼然とした雰囲気を放つ本があったりとかで、悲しみに暮れることもしばしば。特に困るのは、買ったときは読む気満々だったけど今となってはページを開く気にもなれない類の処遇。読まずに捨てるのは忍びなく、ついつい元の場所に戻してしまう。一生掛けても全部読み切れるかどうか疑わしい(日々新刊が発行されていることを考えると尚更に)量だってのに、どうもこう、「いつか読みたくなる日が来るかもしれない」という不安を拭えないんですよ。実際、中学生や高校生の頃に廉売コーナーかなんかで見掛けて軽い気持ちで買ったまま放置していた本がいざ読んでみりゃ猛烈に面白くて、過去の自分に「アリガトウ!」と言いたくなることが何度かありました。人はみな己の蔵書を読み尽くすまで死ねないとか、そういうルールがこの世にあれば何の問題もないんだけどなぁ。

・積読消化のため、崩しやすい本――つまり漫画をガッツンガッツン手に取って読み耽る。

 まず和久井健の『新宿スワン(1〜13)』

 急に読みたくなって今月まとめ買いした奴。歌舞伎町の「スカウト」を題材にした作品で、ドラマ化もしたらしいんですが、そっちは全然知りません。女の子に声を掛けて風俗やキャバクラ、AVの仕事を斡旋するという如何にも青年誌らしい内容で最初は割と地味な「仕事モノ」路線ですけれど、先輩役としてロンパリ顔の凶獣が出てきたり、敵対するスカウト集団と抗争になったりで、だんだんバイオレンス要素が強くなっていく。登場するヤクザにぐぁーっと怪物感が漂うあたりは演出としてうまく嵌まっているなぁ。個人的には灰沢が胸キュン。トキメキというより圧迫されるニュアンスで。主人公が追い詰められたり、無力感を覚えたりする描写も多く、基本的にはドスが付くほど黒い内容ながら、節目節目でギャグ回を仕込んでガス抜きする配慮が置かれているのは嬉しい。『闇金ウシジマくん』よりは生々しい箇所が少なくて爽快、かと言って『嘘喰い』ほど派手にブッ飛ぶこともなく、ちょうどいいポジションかもしれない。個性的なキャラクターと話運びにおけるテンポの良さで一気に読ませてくれました。

 米原秀幸の『Damons(12)』

 前巻はちょっと褒めにくい意味で壮絶な急展開を迎えたからこの巻でも話がグチャグチャになっているんじゃないか……と懸念しましたけど、辛うじて持ち直してくれた、という印象。回収する気があるのかどうか疑問だった伏線の一つ、「ゼスモスVSゼスモス」を遂に消化します。ヨネコーらしい「絶望的な状況下でのバトル」を展開し、ハラハラすることしきり。次で最終巻とのことだし、途中で購入を打ち切ろうかと真剣に考え込んだ時期もある作品ながら、腹を据えてラストまで付き合うことに致します。あとひと踏ん張り。

 宇佐悠一郎の『放課後ウインド・オーケストラ(1)』

 吹奏楽部にスポットを当てた部活マンガ。主人公が仄かな想いを寄せている少女はトランペッターで、成り行きから彼女と一緒に吹奏楽部に入部することに……といった調子で学園ラブコメの王道を突き進みます。もちろん、と言ってもいいのか、主人公たちの入る吹奏楽部は「お約束」通り廃部の危機に瀕して(というか既に潰されていて、サルベージする形で部活を開始する)おり、校長から「成果を出せなければもっぺん潰す」と宣告されるわけです。おお、ベタベタな逆境だ。そんなにすごく特徴のあるマンガでもなし、読み出して即座にハマるってことはないでしょうけれども、部を存続させる目的とその方法が明瞭になってくる後半が面白くていつしか夢中になっているっつー寸法。普段は穏やかで優しい性格をしているのにこと吹奏楽に関してはガラリと人が変わり、「スイソーガク部なんて、ブスとモヤシ男のやる部活だよねー」な具合でプゲラれようものなら怒気も露わに自転車のカゴで相手を撥ね飛ばすヒロインの造型はやや極端だが、メリハリをつける役には立っている。巻き込まれ型の主人公がキョドりつつもちゃんと地道な努力を重ねるところにも好感が持てます。まだ現時点では傑作と言い切れないものの、文章の末尾を「続きが楽しみ」で括るに値する出来。関係ないけど、吹奏楽部のマンガと言えば『小桧山中学吹奏楽部』が好きだったなぁ……今更でもいいから続き出ないかな、あれ。

 若木民喜の『神のみぞ知るセカイ(1)』

 ギャルゲーが大好きで攻略したヒロイン数は実に一万、付いた二つ名は「落とし神」。そんなオタク少年が何の因果か悪魔の手先。死にたくなければ、3D――紛うことなき現実の婦女子を全力で攻略しなければならない……という、『ギャルゴ!!!!!』以上にギャルゴ(ギャルゲーゴッド)らしい主人公が出てくるラブコメ。「現実なんてクソゲー」と断じて憚らない彼ですが、人は時としてどうしようもなくクソゲーにハマってしまう瞬間があるものです。『機動戦士ガンダムF91 フォーミュラー戦記0122』とか(マゾヒスティックなほどストレスが溜まるゲームシステムながら妙に中毒性が高く、数年がかりでクリアしました)。主人公は生粋のギャルゲオタであるからして、『Bバージン』みたいな自己改造路線は取らず、あくまでギャルゲの文法に則って現実のヒロインたちを「攻略」する。フィクションの内部で更にフィクションを持ち出して免罪符とする行為――たとえば「実はこれまでの内容は作中人物の書いた物語で、矛盾や齟齬、現実にありえない展開があったのはそのため」だとか「実はこれまでの内容は全部お芝居で、死んだはずのキャラクターも生きててケロリとしている」だとかは、ぶっちゃけ根本的な解決になっておらず、下手な言い逃れでしかない。が、このマンガはフィクションの内部でフィクションを持ち出しつつ密かに「たたかわなきゃ げんじつと」っぽいメッセージを織り込んでいる節があるように感じられる(我ながら断定を避けまくった迂遠極まりない言い回しだ……)ところが面白かった。細かい説明は省きますがヒロインたちは「攻略」されるたびに記憶を失い、主人公との思い出は軒並み忘れてしまうのですけれど、「想い」の欠片的なものが残って「なぜかあいつのことが気になる……」という「フラグ立ちかけ」状態に戻るのも心憎い。弱めのハーレム・シチュエーションっスね。設定からしてただのネタ漫画なんじゃないかと疑っていましたが、なんだ、ラブコメとしてもそこそこイケるじゃないですか。こういうネタを実際のギャルゲーやエロゲーでやってみても楽しそう。でも下手するとまどろっこしいだけで終わりそうな予感もヒシヒシと……以前に某ゲームで「陵辱ゲームの遣り口を模倣してヒロインを陵辱する」というシナリオをプレーしたときは「そんな設定要らないってば! 普通に犯ってくれ!」と思ったものでした。

 やまざき貴子の『っポイ!(26)』

 連載開始から17年、遂に主人公たち一同が中学校を卒業――感無量であります。当方個人が読み出したのはおよそ10年くらい前で、連載当初から付き合っている筋金入りの古参ファンらにしてみれば「君のいる場所は我々はすでに7年以上前に通過しているッ!」ってなもんでしょうけれど、それにしたって胸にジーンと広がってくる諸々の感情は半端な量じゃねぇです。この『っポイ!』、基本路線としてはドタバタ系の「恋と友情」式学園コメディながら、定期的にやや長めのシリアスエピソードが挟まる構成となっています。結構重たいし、ポエムめいた言い回しが頻出するし、いささか説教臭くもある。けどそういう青臭い部分をごまかさず、キッチリと向き合って捌いてみせるからこそ10年経ってもまだ追いたい気持ちでいられるのでしょう。しかし17年掛けて作中の経過が1年足らずとは、改めて考えてみるに凄いマンガだ。何にせよ、卒業後もまだ続くみたいでひと安心。あと50年ほど費やして高校卒業まで漕ぎ着けてほしい。

川上亮の新作『コミケ襲撃』、8月1日発売予定

 別名義(秋口ぎぐる)とはいえ8年以上も前にデビューしている作家がなんで「新進気鋭」なんだよ! とまずそこからツッコミたくなる。誰がどう考えても「タランティーノ好き」としか思えない作家だけに内容はほぼ鉄板でしょう。ちなみに5年前から使っている川上亮名義では『僕らA.I.』の「あとがき」が名作ともっぱらの評判です。

・拍手レス。

 しょうけつなんて言葉初めて知ったんだぜ
 「猖獗」は確か『月下の棋士』で覚えたような記憶が。

 今回のギアスを見て、狂る義という通り名をつけた人は天才だと思いました。
 今回のアレには絶句。ヴォルテール式に言えば「名誉でもなければブリタニア的でもなく、そもそも人ですらない」。


2008-07-12.

『花より男子』を「花男」と略されると松本大洋のアレしか連想できなくなる焼津です、こんばんは。

 松本大洋の新作『竹光侍』は最初読んだ感じ「合わないかな……」と思いましたけど、2巻あたりからグッと面白くなりました。さておき、話を戻しまして『花より男子』。息が長い作品と申しますか、未だ人気の衰えが見えないなんて不思議だな……と他人事目線で眺めつつ、ふと気になって調べてみたら、連載開始時期は92年。当方が現在進行形で熱中している『っポイ!』の方が古い(91年)んだから驚いた。91年っつったら、チャンピオンで『グラップラー刃牙』の連載がスタートした頃ですよ。というか、『っポイ!』の1巻と『グラップラー刃牙』の1巻は同月発売ですよ。やはり同月発売のジョジョ25巻では「エフメガァッ!!」とかやってたあたりですよ。そういったことを考えるとなんかこう、あんまり不思議でもなくなってきました。人間の心理とは異なものですね。

ぼとむれすの『おまかせ!とらぶる天使』、遂に発売中止?

 延期界の巨星、墜つ――いや、そもそも昇ってなかったか。公式サイトでは「RSKの取扱は中止になったKEDO、販売自体はする予定だYO」と謳っていますが、これまでがこれまでだけに疑いの眼差しを向けられるのも致し方なし。

TYPE-MOON、8月8日に『Fate/Zero material』を発売

 ビジュアルブック系統は基本的に買わない性格ながら、虚淵御大の手掛けたFate/Zeroなら仕方がない、儲の一人として購入に走るのみです。ただ、これもZeroと一緒で同人扱いなのか……いい加減に一般売りしちくれー。地方民だと同人扱いの商品を確保するのにえらく難儀するですよ。今回、取扱店舗にAmazonがあるのが救いと言えば救い。

 ちなみに「マテリアルシリーズ第三弾」ということは第一弾と第二弾があるわけですけれど、第一弾が初回版に付いてきた(用語辞典の部分だけ公式で配布されている)『Fate/side material』ならば、第二弾はハテ、なんだったっけ? しばらくコテンと首を傾げましたが、ひょっとすると『Character Material』のことでしょうか。TYPE-MOONでmaterialeが付くものは、たとえばオフィシャル通販の特典として作られた小冊子シリーズ「Fate/side side materiale(1〜3)」があるし、つい先日にも『Fate/complete material』だかいう本が発売されて、しかもこれは「Art material」「Character material」「World material」の3部構成っつーんですから、把握するのにちょい時間が掛かりました。ややこしい。

・日本橋ヨヲコの『少女ファイト(4)』読んだー。

 非常に密度の高い女子バレー漫画の4巻目。やたらコマ割が細かく、登場するキャラクター数も膨大なんだけれど、読んでいて一向に苦にならないから不思議です。くっきりとして見易い絵柄、しっかりと整理されて把握し易いネームが実に気持ちいい。3巻のベットバレー編で少し落ちたかな……と思ったが、今回で難なく取り戻した。合宿がメインなのでひたすらバレー漬け、それでいて読者を飽きさせない理想的なスポ根に仕上がっている。フィジカル面のみならずメンタル面にも踏み込んでおり、進むにつれてひとりひとりの輪郭がドンドン明瞭になっていく。まことに満足。1冊読むだけで普通のコミックス2、3巻分の楽しみを味わえるんだから、なんともオトクな作品ですね。そしてカバー裏には例によってお遊びが。

・拍手レス。

 なん…だと…。3000冊はうらやましいという気持ちとそんなに積んだら生活できないとの両方の気持ちが混在。
 最近は本屋に行くよりも積んでる本を整理する時の方が驚きに満ちてて楽しい。


2008-07-09.

・俺、あと3000冊処分したら結婚するんだ……死亡フラグっぽく言ってみても一向に不要本の山が片付かない焼津です、こんばんは。結婚は嘘ッパチながら3000冊は割とリアルな数字。それくらいマスマーダーしなければ床が見えてこないという現実。ちなみに「マーダー」は「殺人」という意味であって、「殺人者」は「マーダラー」なんですよ……と、ミスオタだった頃の残滓めいた豆知識。

・セバスチャン・フィツェックの『前世療法』読了。

 ほんの数時間前、この一風変わった待ち合わせに同意したとき、約束の相手がまさか死に神だとはロベルト・シュテルンには知る由もなかった。まして、その死に神がスニーカーを履いた身長一四一センチの子どもだとは想像もしなかった。死に神が、人気のない工場跡地に微笑みながら姿を現し、自分の人生に入り込んでくるとは。

 『治療島』『ラジオ・キラー』につづく、フィツェックの第3長編。原題は "Das Kind" 、ただ単に「子ども」という意味です。患者を催眠状態に導いて、「前世の記憶」を探り当てて掘り返すことで治療に役立てる……という日本でも割合以前から話題になっている「前世療法」を題材にとったスリラー。雰囲気がサイコ・ホラーがかっている点では『治療島』と一緒だが、スーパーナチュラルな要素を意欲的に組み込んでいるあたりが新機軸か。一度走り出したら停止不能なノンストップぶりはテロリストによるラジオ局占拠事件を描いた『ラジオ・キラー』とも通じるところがあります。

 聞いてください、弁護士さん。僕は15年前、人を殺しました――ついこないだ10歳の誕生日を迎えたばかりの少年ジーモン・ザックスは、「ありえない罪」を告白し始める。今の自分に生まれ変わる前、つまり前世において彼はある男の脳天に斧を振り下ろし、殺害したのだと云う。話を聞いた弁護士ロベルト・シュテルンはもちろん鵜呑みにしなかった。いかがわしい「前世療法」のせいでこの少年は奇怪な妄想を抱いてしまったのだと、哀れみさえした。なんとか説得しようと試みるシュテルン。しかし、ジーモンの言った場所から本当に死体が発見されるや、言葉を詰まらせた。すっかり肉が落ちて白骨化した頭蓋骨には、斧か何によって刻まれたとおぼしき亀裂がありありと残っていたのだった。そして少年は告げる。自分が死に追いやった人々はこれ以外にもまだまだ沢山いるのだと……。

 昔子どもを殺した男が所帯を持って子宝に恵まれたら、その子の顔がだんだん殺した子に似てきて……みたいな感じで最後に「おまえが殺ったのさ!」と糾弾される怪談は聞いたことがありますけれど、子どもが「殺人鬼の生まれ変わり」というパターンはあんまり覚えがないですね。悪役とかで箔を付けるためにそういう設定が為されていることはあるにしても。脳腫瘍を患っていてもう先が長くない、と言われている少年が喋り出した「前世の記憶」をもとにストーリーが進行していく本書は、「この(つまり作中の)世界において前世や生まれ変わりというものは実在するのか?」という疑問が常に付きまとう。証言自体に誤りがなくて信憑性を高めていく一方、事件の背後に何者かの黒い意志が潜んでいるような禍々しさが要所要所で漂っています。もっとも安易で受け容れやすい説明としては「少年が嘘をついている、自分の意志、あるいは誰かの指示に従って前世云々といった話をしている」というものですが、読者がすぐにそうした考えを抱くだろうと見抜けない作者じゃありません。早速ジーモンを高精度の嘘発見器に掛け、「彼は嘘をついてない」と証明してみせる。無論どんなに精度が高かろうと完璧に否定することはできませんが、「少なくともそう簡単に剥がれ落ちるメッキ加工ではない」と太鼓判を押してくれたわけで、じゃあいったい何なんだ……と頭を抱える読者を、謎が渦巻く迷宮の奥深くへと誘ってくれます。進めば進むほど、こんがらがる。

 最後の最後まで「前世」や「生まれ変わり」といったガジェットが肯定されるのか、それとも否定されるのか、読めそうで読めない宙ぶらりん状態を味わうものの、ジーモンが「殺した」と言っている死体たちが何者であるか判明するにつれ、事件は別の様相を帯びてきて「前世とか、そういうことはひとまず措くとしよう」と態度保留せざるを得ない緊迫した雰囲気が流れ出す。このへんの配慮は実にうまい。タイトルがもろに「前世療法」なせいでどうしてもそこに目が行ってしまうけれど、もともとの題名がそれとはまったく無関係なことを思い出せば、他に注目すべきファクターが存在する事実は容易に看破できるでしょう。「少なくとも、10回の絶叫をお約束します」という帯の売り文句はいかにも安っぽいし、ちっとフカシすぎな気がしないでもありませんが、落ち着きそうで落ち着かない終始慌しい展開はサスペンス好きにとって美味しいことこの上なし。ただ、これで3作目ということもあってか全体で新鮮味に欠けるきらいがあり、前2作に比べて勢いが減衰している印象は否めません。450ページというボリュームも腰を据えて読むには短く、暇潰しとして一気呵成にページをめくるには少々長ったらしい。中途半端というほどではないが、やや収まりの悪い分量だった。

 それでも終盤の畳み掛けは鮮やかなもので、つい引き込まれてしまう。前世とか催眠とかそういった要素が嫌いで、フィツェックが書いたものでなければ確実に本書を跨いで通ったであろう当方も「くやしい……けどページめくっちゃう!」と夢中になって読み耽った次第。正直、「フィツェック作品にしては物足りない」と思うんですけれど、それでもなおサスペンス小説としては読み応えがある部類に属します。というか、前作の『ラジオ・キラー』が別格すぎるだけかもしれないな。次回作の『ハート・ブレイカー』は「被害者を殺しはしないが、精神的に破壊してしまう力を持ったサイコパス」が眼目となるトリッキイな一編のようで、早くも翻訳される日が待ち遠しい。原書が秋予定とのことだから、来年の初めから春頃には読めるだろうか……。

・拍手レス。

 「んでもって」というサイト様にてバカテスの秀吉漫画がありますよ。更新内容の上をクリックしたらみれるようです。絵の方もいいのでオススメです
 俺も一緒に秀吉とおしっこしに行きた(ry  3P目の二コマ目の秀吉の尻を見てテンション上がったのは内緒です(黙れ

 全力で保存しました。保存と言えば「性別:秀吉」の種を如何にして保存すべきか、解決策を導き出すことが人類全体の課題だと思います。

 沃野読ませていただきました。主人公やヒロインの設定もとても面白く、最後まで一気に読み切ってしまいました。私はこの作品、とても好きです。
 ありがとうございます。こうしてご感想をいただけると、ついオタオタしてしまうほどの嬉しさを覚えます。

 エルフェンリートを投げ出すなんてもったいないことを。
 当時はまだいたいけな大学生でしたから……。

 ときどきパクっちゃお とかオススメなんです
 積ゲーの山に埋もれて順調に行方不明。発掘作業が待たれます。


2008-07-07.

・前回の更新で「たぶんこれがスワガー・サーガの完結編になるんだろうな」と無責任なことを書きましたが、すみません、完結どころかamazonでもう新作の予約が始まっているらしいので訂正させてください。のっけから平謝りの焼津です、こんばんは。

 タイトルは“Night of Thunder”、和訳すると『雷鳴の夜』でしょうか。既にそういう本が出ていますけどね……今度は舞台がアメリカに戻るみたいですけれど、米amazonのあらすじに「his swift sword」という一節が出てくるところを見るとまた刀を振り回すのか? それとも「sword」はただの比喩なのか。気になるところです。

暁WORKSの『るいは智を呼ぶ』、時間を見つけてどうにか一周。

 一周目は固定でるいルート、クリアしたら「新しい選択肢」が追加されて次なるルートへ……という構成になっているみたいです。どのへんに選択肢が追加されるのかな、と思ったら結構序盤だった。やはりルートごとにストーリーが根底から変わってくるのかな? さておき、るいルート。体験版が終了した範囲からさほど進まないところで終わったし、「呪い」に関しても有耶無耶な雰囲気で幕を閉じてしまって拍子抜けでしたが、同じ痣を持つ者たちが手を組んで事態の解決を図る、っつー協力と共闘の物語としてはツボを押さえていて良かった。見せ場で入るカットインがやたら格好イイうえ、地味キャラのイヨ子さんも「おっぱい眼鏡」という記号を突き抜けて魅力を発してくれるんだからもうたまらない。伊代は単体で見ると少し弱い反面、「群れ」の中に混ざると欠かせない位置を取ってくる。作戦会議や車両待機のCGも相俟って白鞘株は急上昇です。

 積みたくありませんので、二周目もサカサカやっていく予定。かなり早い段階で分岐するということからして、今度は花鶏ルートだろうか。本職のレズの底力、是非とも見せてもらいましょう。

・岡本倫の『ノノノノ(1〜2)』読んだー。

「……危ないじゃない」

「そりゃ危ないよ このスキージャンプは」
「保険に入ってないと大会にも出られない競技なんだぜ?」

「………」
「それ本当に……スポーツなの?」

 ドジっ子秘書だろうがロリキャラだろうが、容赦区別一切なしで首がもげたり胴体ねじ切られたり、とにかく血みどろになって凄惨な死を遂げていく……そんな、可愛い絵柄に反する残酷絶頂描写で話題を喚んだ凶気のスローターコミック『エルフェンリート』の岡本倫によるスキージャンプ漫画です。ブッ殺し系の作品もそれなりに嗜んでいる当方ながら、エルフェンに関しては稚拙な画風と過剰なエログロの洪水に酩酊して3、4巻くらいでギブアップしてしまった。以来作者に対して苦手意識を持っていたわけですけれど、さすがにスポーツもので殺戮の嵐が吹き荒れるわけなかろう……『アストロ球団』『地獄甲子園』じゃあるまいし……と自分を説得しつつ、恐々と手を伸ばしてみた次第。

 そしたら、なぁんだ……めっさ面白いじゃないですか! 主人公を始めとして個性の際立ったキャラクターが登場し、ヌルい文句を垂れることなく熱い大口をバンバン叩いてくれる。エルフェンの1巻や2巻を描いた人とは同一人物に見えない画力に加え、死体こそ転がらないけどイイ感じに人格が破綻した野郎が次々と顔を出すもんだから手に汗握ってしまう。1巻はまだ普通にスポ根やってますけれど、2巻には青々とした髭+茫々たる胸毛で「これでもか!」とばかりにホモ臭を放つ先輩が出てきて主人公をガチレイプしようとするから侮れない。あのシーン、明らかに文脈がギャグじゃなくて完全無欠の陵辱エロ路線でしたよ……主人公の尻と涙目がエロすぎる。虎がどこまで行っても虎のように、岡本倫はどこまで行っても岡本倫か。上等な料理に蜂蜜をぶちまける――というより、味噌汁に砒素を盛るが如き蛮行を随所で繰り広げてくれます。

 タイトルの「ノノノノ」はジャンプ台やスキー板を模している部分もあるんでしょうが、他にもっと直接的な意味があって分かった瞬間「ああ!」と膝を打つこと請け合い。2巻の表紙を飾っているヒロイン興梠みかげの使い方も巧妙で、エルフェンで抱いた「インパクト任せ」という先入観も淡雪のように溶け去りました。3巻がすげー楽しみであると同時に、断念していたエルフェンをもっかい最初から読みたくなってきた。

・拍手レス。

 やるゲームが無いんでしたら「ひまわり」(http://blank-note.sakura.ne.jp/product/himawari/)が良かったですよ
 『ひまわり』はヒロインの名前を見るたびに禁書目録の「アックア」を思い出します。


2008-07-05.

・最近頓に話題となっている『FLIP-FLAP』を半ば冷やかしの感覚で買って読んだら途方もない熱量が襲い掛かってきて呆然とした焼津です、こんばんは。なんかこう、胸郭をブッ叩かれたような衝撃と申しますか……心臓をじかに揺さぶる勢いで繰り出されるコマのひとつひとつに忘我いたしました。

 ピンボールを題材にした一冊完結のコミックで、片想いの少女に「このハイスコアを抜いたら付き合ってあげます」と焚き付けられたことがキッカケとなってピンボール道に入門した主人公が己の恋路を叶えるためにひたすらピンボるという、ただそれだけのストーリーなのに、胸奥から走り出した鼓動が最後の一ページに突き当たってもなお止まらず残響を引きずっていく激アツの青春モノに仕上がっています。正直、とよ田みのるの絵柄はクセがあってあまり好みでないし、前作の『ラブロマ』もいまひとつ合わなかったので大して期待してなかったのだけれど、恥ずべき浅見であったと言わざるを得ない。ここぞという場面での盛り上げ方が凄すぎて、絵柄の好みとかどうでも良くなりますわ。あと、ヒロインの山田さんが程好く個性的で程好く魅力的に描けていたこともポイントを稼いでいる。主人公は片想いしているわけだから最初から好感度MAXでしょうけれど、読者であるこちらは冒頭だと「ふーん」で、読めば読むほどに惚れていく仕組みとなっています。真剣な表情で、かつ心の底から楽しそうに台を揺らす彼女の微笑みを目に留めて恋に落ちぬ理屈などあろうか。

 川上稔の『連射王』と同じく「実生活において意味のないゲームに対して本気になる」ことを突き詰めた作品であり、終始シンプルでいてダイナミックな姿勢が貫かれていて、思わず掌に心地良い汗をかいてしまいました。偏れ青春。巻末には読切版が収録されているし、カバーを剥がせば本体にもオマケマンガが載っていて、全1冊ながらも満足度は高い。ピンボールなんてファミコンのアレと、カゼがサターンで出していた奴くらいしか熱中した覚えのない人間ですが、本を閉じたところで「近場に台を置いているゲーセンはないか……」とうずうずした次第。とりあえずWindows付属のピンボールを数年ぶりに起動させて熱を収めた、って野郎は当方だけじゃないはず。

 余談。まさか装丁がこんなギンギラギンだとは知らず、一番最初に探しに入った書店では思いっきり見落としてしまいましたよ。二番目に寄った本屋で面陳されているのを発見し、ようやく買えました。ご所望の方は「煌びやかな銀光を放つちょっとケバいカバー」を目印にしてください。そうしないと「盗まれた手紙」方式でスルーすることになりかねません。

「エロゲー」に見い出した面白さは「エロゲー」にしか見い出せない「独り言以外の何か」経由)

 絵と文章と音とエロ、すべてが揃って相乗している「全部乗せ」な贅沢さと、アニメや映画とは違いこっち側で好きなだけ物語の進行速度を制御できて「自分のペースで進められる」という気侭なプレー感覚、そして何より「擬似ネバーエンディング」とも言うべき、明確な終わりを意識せずにダラダラと日常シーンが続く緩〜いムードがエロゲーを愛好する最大の理由です。枚数制限や時間制限が皆無……とまで行かなくても「ないに等しい」と表現可能なエロゲーは、残りページ数や上映時間みたいなものをほとんど気にする必要がなくて伸び伸びと堪能できるあたりが強み。今では一周するのに十時間以上掛かるなんてのもザラだし、「いつまでも遊んでいられる」と錯覚させられる際限のなさ、締まりのなさ、道のりの遠さ――そういったものが途方もない安心感を与えてくれる。

 エロゲーはぼくを広いところに連れていってくれるんだ。(←『CARNIVAL』のパクリ)

学校のプール授業で偶然にもチンコがマンコに刺さる確立っていくら?(ワラノート)

 「盲亀の浮木」という喩え話もありますし、『彼女×彼女×彼女』の世界ならあるいは……。

・スティーヴン・ハンターの『四十七人目の男(上・下)』読了。

「きみはただの女優ではなく、アメリカとの戦いにおける前線の兵士、ひとりの侍なのだ。いいかね、さくらちゃん、きみが自身のなかに侍の魂を見いだすことはとても大事な職分であって、それを果たすために、カメラの前であそこをあらわにし、われわれにその映像を配給させなくてはならない。完璧な痴女になれ。実際、痴女というのは肉欲を武器にする侍なんだ」

 とんでもない珍作になるだろうことはタイトルを目にした時点で明瞭だったハンター最新長編。原題 "The 47th Samurai" 。『狩りのとき』から9年、ボブ・リー・スワガーが復活して久々に主役を務める作品でもあります。しかし、天才狙撃手であったはずの彼は今回銃を捨ててしまいます。舞台が日本なので銃火器を調達するのが難しいという事情もありますが、それとはまた別の理由で異なる武器を選ぶ。異なる武器――KATANA、すなわち刀。そう、あの「ボブ・ザ・ネイラー」が日本刀を携え、せせこましいトーキョーで大立ち回り、暴れに暴れて『ラストサムライ』のトム・クルーズもかくやという殺陣を披露してくれる(『ラストサムライ』に関しては作中で否定的な書き方されてるけど)んですよ! 釘(ネイル)は釘でも目釘ってわけでさぁ! ……説明して心が痛くなってきました。サムライ映画にハマった作者がその終着点として本作品を手掛けた模様。スワガー・サーガにまつわる輝かしい思い出が、読了する頃にはハイライトの失せたレイプ目を晒し過去のものと成り果てることさえ脇に措けば、抱腹絶倒間違いなしの一作であります。今年のバカミスはこれでキマリ。ああ、『極大射程』は当方が海外ミステリの間合いに引きずりこまれる契機をつくった大傑作だってぇのに……。

 かつて日本軍と海兵隊が激戦を繰り広げたイオージマ――そこでボブ・リー・スワガーの父アールは戦利品として一振りの軍刀を持ち去っていった。父の手から別の人間へ譲り渡されていたそれを本来の持ち主に返却すべく、ボブは遥々日本にやってきた。自衛隊員として修羅場を潜り抜けた過去を持つフィリップ・ヤノは、互いの父親が殺し合った大戦期の悪夢を水に流し、ボブを丁重にもてなしてくれる。親交を深め、無事に刀を返し終えたボブが帰国の途に就こうとした矢先、ヤノの家が火事で全焼するという惨事が発生した。ただの古ぼけた刀にしか見えなかったあれが、実は文化遺産に匹敵する可能性を秘めたものであると既に知っているボブは「ただの事故ではない」と直感し、己の正義とブシドーを貫徹するため、敢えて従軍の友だった銃器を捨ててサムライの魂たるカタナを手に取るが……。

 巻頭の献辞に黒澤明と並んで北村龍平の名が記されていたり、ボブがサムライ映画に没頭するあたりで『七人の侍』どころか『修羅雪姫』まで挙げられていたりと、良くも悪くも節操のないノンブレーキな熱意が全編において貫かれています。一方、ヤクザの組名が「新撰組」でそこの親分が「近藤勇」とか、日本人が読むとギャグにしか思えない噴飯級のネーミングが困りもの。悪役の近藤勇が奪った日本刀の切れ味を試すため真夜中の新宿遊歩道公園付近で韓国人娼婦相手に辻斬りを行い、「これが《斬り捨て御免》である」みたいな解説が流れたりと、どうにもこうにも全体的にズレています。微妙に合っているところもある(AVの解説で「ブッカケ」やら「電車で痴漢」やら)けれど、あっちこっちにツッコミどころが潜んでいて、とにかくもーう笑い疲れる。「殺人現場に残された8番と9番のアイアン、3番のウッド……893、これはゴルフクラブを用いた『ヤクザ』の署名だ!」とか、ねぇよ。あと「われわれは侍だ!」と鼓舞する声に一同が「侍!」と唱和するシーンの間抜けさは筆舌に尽くしがたい。まさしくサムラァイ、サムラァイ、ブシドォーゥ……のワールド。原文自体がアレなのでしょうが、翻訳の方もわざとズレを広げる方向でやっているに違いない。真顔で読まれることは想定していない感じですね。

 「痴女=侍」論という、藤崎竜太が『ひめしょ!』の中で唱えた「メイド=侍」論をも上回るオバカ論を展開している箇所から知れる通り、日本刀やヤクザと並行してAV業界がストーリーに絡んでくる。純国産のエロスに拘る「ショーグンAV」と、洋モノで維新を起こそうとしている「インペリアルAV」……どう見ても幕府と朝廷、攘夷派と開国派の見立てです、ありがとうございました。そして何より、「47」の数字で真っ先に連想される赤穂浪士が物語の核心に関わってきます。吉良上野介を単に「キラ」って書かれると種やデスノを思い浮かべてしまうなぁ……様々な要素がズレ放題だし、オバカだし、強引でもあるのだが、それでも物語が本格的に動き始めると俄に盛り上がってくる。腐ってもハンター、腐ってもスワガーと言うべきか。バカバカしさがいつしか爽快感に変じ、いっそ清々しいほどの気持ちになってくるから不思議なものです。Time to 斬。形は違えど鋼に心通わせるは同じ、荒ぶるスワガー家の血統、その猛き遺伝子は老いつつある六十男をも易々とブレイドスターに変貌させる。ボブの すごい 一閃。グラップラーの範馬刃牙とて宮本武蔵の境地に達するんだから、超絶スナイパーのボブ・リー・スワガーがミフネ・トシローのディメンジョンに覚醒しても別におかしかないよね。相変わらず戦闘シーンに迫力があり、殺陣の描写には若干不満が残るものの、B級アクションや俗っぽいバイオレンスとしてはなかなか。にしても「女教師が高校生に口淫(ブロージョブ)するやつ」って言い回しが頻出しますけど、いったい何度書けば気が済むんだ。なんなの? 女教師AVってそんなに珍しいものなの?

 一言でまとめてしまえば「時代劇を無理矢理現代でやった」。これに尽きます。不自然さがプンプンと漂う「シンジュク」や「カブキチョー」を舞台にして、ただひたすらにチャンバラとアメリカン武士道に明け暮れている。あらゆる意味で間違った現代、誰かが(主に作者が)選択を誤った世界。これもまた一つの『刃鳴散らす』。ボブの年齢的にも限界が来ているから、たぶんこれがスワガー・サーガの完結編になるんだろうな……そう考えるとガッカリするどころかむしろホッとする、なんともしょっぱい出来映えでした。

(追加) 別に完結編でも何でもなく、9月に新作“Night of Thunder”の原書が刊行されるみたいです。軽率なことを書いて申し訳ありませんでした。

・拍手レス。

 けれど輝く夜空のようなとはいかなくとも最後には桜花が幸せになりますように。
 朝陽も昇りますように。

 『向日葵の咲かない夏』が文庫落ちですか。どうもあれがエロゲタイトルに見える私がいます
 エロゲーのタイトルで「ひまわり」が付くとろくな出来にならない、というジンクスがありましたっけ。車輪以前の頃に。

 ジョージ・R・R・マーティンついに出るんですね!フレイ遅参公の末路に期待したい
 「遅参公」という響きは脳が覚えているけど、どんなキャラだったかはまるで記憶にありませぬ。また再読すべきか……。

 『老人と宇宙』(ジョン・スコルジー)はおもしろいよ\(^o^)/
 続編も出ましたね。一冊目は既に買っていますが、読む目処は当分立ちそうにない罠。

 「それ散る」には随分笑わせてもらいましたよ。 感動はなんか違う気もしますが。
 感動と言うより「( ゜Д゜)ポカーン」。それでも夢中になれるソフトではありました。

 キラ☆キラ カーテンコールも延期してますね……まあ瀬戸口さんがほとんど関わってなそさうですが
 ピリオドのFDも夏予定だったはずが9月に……つくづくエロゲーは予定を立てることが難しいですなぁ。


2008-07-02.

『それは舞い散る桜のように 完全版』……だと……?

 ぶっちゃけ現状何がどう完全になるのかサッパリ分かりませんので、過度の期待は禁物としたいところですが……続報が楽しみという心情は否定しがたい。

コンビニ強盗チャンバラで御用

 「日本刀のようなものを持った男」という表現が二つ名っぽく見える罠。ちなみに今やっている(というより停滞している)『るいは智を呼ぶ』にも「バールのようなもの」が出てまいりました。関係ないけどやたらバキネタ(とJOJOネタ)が多いっスね、るい智。最近ようやく12巻と13巻を読んだせいもあってグルグルパンチの件には噴いた。それから体験版ではほぼアウト・オブ・サイトだった巨乳眼鏡の白鞘伊代がメキメキと伸びてきてたまらない感じに。伊代かわいいよ。空気読めないところも含めて魅了されてしまいます。

・今月の購買計画をチラッと。

(本)

 『孤高の人(2)』/高野洋、坂本眞一(集英社)
 『AURA〜魔竜院光牙最後の闘い〜』/田中ロミオ(小学館)
 『乱鴉の饗宴(上・下)』/ジョージ・R・R・マーティン(早川書房)
 『フロスト気質(上・下)』/R・D・ウィングフィールド(東京創元社)
 『ディスコ探偵水曜日(上・下)』/舞城王太郎(新潮社)
 『アイスウィンド・サーガ 暗黒竜の冥宮』/R・A・サルバトーレ(アスキー・メディアワークス)

 文庫化情報……は今月特にめぼしいものはないかな。強いて書けば金庸の『雪山飛孤』とか道尾秀介の『向日葵の咲かない夏』とか。それと福井晴敏に釣られて購入した『シャドウ・ダイバー』も上下2分冊で文庫化されますね。まだ読んでないので悔しいような、ハードカバーは全1冊だったから分厚い本好きとしては悔いなしのような……他には図子慧の『ラザロ・ラザロ』や永瀬隼介の『デッドウォーター』など、「なぜ今頃になって?」と首を傾げたくなる懐かしい本が来ます。

 さて、今月はかなり予定が多いです。総計金額を目にすれば硝子体が沸騰して弾け散るレベルに易々と達しています。数多の諭吉さんズが翼生やして編隊組んで颯爽と茜色の空に飛び去っていくことは早くも確定。『孤高の人』は一応新田次郎原作だけど、別物と考えた方がいいでしょう。孤独な少年が「山登り」の魅力と魔力に取り憑かれるクライミング・コミック。画力の高さとシンプルに燃えるストーリーがガッチリ噛み合っており、今密かに注目している一作。ブレイクするにはまだ足りない感じながら個人的にはとても好き。『AURA〜魔竜院光牙最後の闘い〜』はタイトルだけ見れば猫も跨いで通りそう。もちろん、作者がロミオだからこそ槍を手挟み全速力で突っ込むのです。かなり意図的な邪気眼みたいで、ドーンと大きくブチかましてくれることを期待。ガガガ文庫は虚淵の新刊も同時発売で、血潮が滾る。『乱鴉の饗宴』は“氷と炎の歌”第4部、遂に出ます。イヤッホーウ、マーティン最高! 今月でもっとも嬉しいニュースといいますか、聞いたときは頭がおかしくなりそうなほど喜びました。“氷と炎の歌”は当方最愛と述べても過言ではない超スケールの大河ファンタジーであり、あまりにも大事にしすぎて第3部をまだ読んでなかったりするぜ。第4部もこのまま積んじゃいそうだな……なんという本末転倒。

 『フロスト気質』は前作から実に7年ぶりの刊行となるフロスト警部の第4長編。作者死亡のため原書は6作目の "A Killing Frost" で既に完結となっています。分冊のせいもあって上下併せると2000円を軽く超える驚きの価格。しかしそれでも買ってしまうのがファンのSa-Ga。なぁに、『乱鴉の饗宴』なんか上下一気に買うと6000円弱ですよ。ハハ、ちょっとしたエロゲー並み……海外小説は高騰に次ぐ高騰でホントきついわ。『ディスコ探偵水曜日』は舞城王太郎久々の新作。ふざけたタイトルですが、舞城なんだからしょうがない。それにしても奈津川サーガの再開はまだか。『アイスウィンド・サーガ 暗黒竜の冥宮』は待望の復刊。サルバトーレを代表するドリッズド・シリーズ最初の(作中の時系列に沿えば2番目の)エピソードに当たる“アイスウィンド・サーガ”の第2部であり、現在絶版でプレミア化している文庫版の3巻と4巻に相当します。第1部に相当する巻は旧バージョン、復刊バージョンともに絶版しており、一見さんには優しくない仕様となっている。“アイスウィンド・サーガ”は第1部のところだけ所有している当方からすると第2部の復刊は掛け値なしの朗報であり、また残る第3部の復刊が悲願。是非とも身命を賭して布教に努めたい。他にも笠井潔の矢吹駆シリーズ最新刊『青銅の悲劇 瀕死の王』やら町田康の連作時代小説『宿屋めぐり』やら小川一水の歴史SFにして初のハードカバーとなる『風の邦、星の渚』やら、期待作てんこ盛りにつき財布が保つのかどうか本気で心配です。

(ゲーム)

 なし

 『ティンクルくるせいだーす』が大型延期(7/25→9/26)をブチかましたため0本となりました。このズルズルと発売が延びる感覚は以前に味わったことがある……と既視感(ゲットー)が絶賛発動中。ああ、デジャヴる喃。代わりとして先月から飛んできた『タユタマ』も視野に入れてみましたが、まだG線もるい智も終わっていませんからここは大人しく見送ります。今月は積みゲー崩し一徹。でも『リトルバスターズ!エクスタシー』あたりは押さえておこうかな……いや、売り切れることはないだろうし、様子見でいいか。


>>back