2005年3月分


・本
 『陰摩羅鬼の瑕』/京極夏彦(講談社)
 『四畳半神話大系』/森見登美彦(太田出版)
 『LIFE:ERRORS(1・2)』/綱島志朗(マッグガーデン)
 『Hyper Hybrid Organization 01-01』/高畑京一郎(メディアワークス)
 『シンシア・ザ・ミッション(1)』/高遠るい(スタジオDNA)
 『デュラララ!!×2』/成田良悟(メディアワークス)
 『Hyper Hybrid Organization 01-02』/高畑京一郎(メディアワークス)
 『電波的な彼女−愚か者の選択−』/片山憲太郎(集英社)


2005-03-31.

・疲れのあまり昨日は更新し損なったので、初めて朝に更新。おはようございます、焼津です。

『パルフェ』、はじめました。(リンク先、声が出るので注意)

 『ショコラ』の続編というか姉妹編というか、話そのもののダイレクトな繋がりはなさげなんですけれど、世界設定は共通しているし、時系列上でも『ショコラ』の後に位置している。『ショコラ』をしといた方がいっそう楽しめるけれど、していなくても別に問題はないといった仕様です。やはり、「単価が高い」&「開発に時間が掛かる」エロゲーでストレートな続編モノはやりにくいのか。

 シナリオが丸戸史明なので「安牌」と踏んで購入しました。この人が書く一つ一つのシーン、一つ一つの遣り取り、それらをひっくるめて構成されるシチュエーションはあくまで理詰めで無駄がなく、非常にスマートな印象があって好きです。とはいえ理詰め過ぎてベタベタなわざとらしさが鼻に付く部分もありますし、基本的に地味な作風なので、儲化するまでには至っておりませぬ。当方はトータル・バランス型よりも一点突破型、端整よりも荒削りに入れ込む習性ゆえ。

 失敗に終わった喫茶店「ファミーユ」の経営を、もう一度やり直そう──と仲間を集めて奮起する王道的な協力共闘ストーリー。序盤は戦力が不十分だったりして、歯痒い気持ちをプレーヤーに抱かせつつも先を期待させることで中断する機会も与えずクリックさせ続ける。なんというか、普通に面白いですよ。ひとりひとりのキャラがはっきりとした輪郭を有していて捉えやすいし、あざとさ、わざとらしさを感じさせることがあっても、訳の分からなさ、退屈さを味わわせることは一切ない。地味ながらとても手堅いです。

 差し当たってカトレアこと花鳥玲愛に狙いを絞ってプレーしていこうかと。自負心が強く好戦的でありながらおせっかい焼きのツンデレ有望少女。やべぇ、当方の嗜好から言ってほぼ完璧だ。あと、プレーするまでノーチェックだったかすりさんも意外に魅力的。かすりさん以上に姉の紬さんがバリバリ魅力的ですが。かすりルートでは主人公の義姉・恵麻と紬さんとの間で「姑戦争」を勃発させてほしいものだ。扱い的にメインヒロインっぽい由飛も気になるところ。容姿とか性格以上に、その握撃が。

・片山憲太郎の『電波的な彼女−愚か者の選択−』

 SD文庫は巻数を付けないことがままあるので分かりにくいですが、2巻目です。「前世の絆」と言い張り、金髪の不良少年に不滅の忠誠を誓う過剰前髪フェイスのヒロイン。今回は彼女の見せ場が割と少なかったせいもあり、微妙にタイトルが羊頭狗肉化しています。刃物を持つと性格が変わる新キャラ・斬島雪姫を指して「電波的な彼女」という見方もアリだが、なんにしろこのシリーズはジャンル的に言えばラブコメではなくサスペンスであって、今回も主眼は三角関係よりも猟奇犯罪。いたいけな子供たちの両目を刳り抜いて放置する「えぐり魔」の犯行を止めようと、パツキン少年の主人公が必死になる。

 ライトノベルとしてはそんなにテンションの高くない作風です。もちろんギャグ要素も混入されていますし、飄々たる姿勢も窺えますが、派手に壊れている感じはしません。ごく丁寧に分かりやすい、抑制の利いたテンポで話が進んでいく。淡々としているようでいて緩急も見極めており、読んでいてなかなか飽きさせない。新人にしてはスタイルがきっちりしているし、勘所を押さえた堅実さがサスペンスを盛り上がる土台となっています。

 さて、子供の目ん玉を抉り出す奴が今回の対決相手なだけに、もちろんストーリーは気持ちいいものになるわけないんですけれど、義憤に駆られる主人公に対し、ヒロインの堕花雨や新キャラの斬島雪姫は一歩引いたスタンスを取って割かしドライな見方(自分や身内と関係ない事件にいちいち深刻ぶってめげていてもしゃーない、みたいな)をしており、そうした温度差が逆に救いとなっている。喧嘩はそこそこ強いけど推理力も捜査力もない主人公はぶっちゃけ「無能」のレッテルを貼られてもおかしくないんですが、彼が自分の無能さ、愚かさを噛み締めながらそれでもがむしゃらに立ち向かっていくことで、事件そのものへの興味を持たない雨や雪姫を動かして解決に導く……そんな迂遠な構成のおかげで誰もかれもが傷つき苦悩するという重々しい展開を回避できるわけです。

 陰惨な事件に心を痛める、見た目は不良なくせして案外ナイーヴな少年を、陰惨な事件くらいでは動じなくなってしまった電波気味の少女が助け守り従い連れ添って行く──意外とロマンのあるシチュエーションだと思います。「理想の国をつくろうと願う王と、彼のために感情を殺し、ただ一振りの剣となることを誓う女騎士」の構図を限りなくスケールダウンさせて日常の風景に溶け込ませたような印象。高校生が不滅の忠誠を誓う、なんてすごく嘘っぽく見えるけど、嘘っぽいおかげで読んでいて気楽だ。

 この調子で進んでいくと主人公がヒロインの助けを借りて伝説とか成し遂げちゃいそうな雰囲気も僅かに漂いますが、やっぱり落ち着いた作風に相応しく伝説も何も全然始まらない気もします。差し当たって当方が望むことは、「電波的な彼女」であるヒロインとの恋愛方面も今後はきっちし押し進めて欲しいってことです。


2005-03-28.

『苺ましまろ(4)』が2ヶ月も延期していると知らず、書店で必死に探した焼津です、こんばんは。とても悲しい。

毛羽毛現

 なんでしょう、このモサモサした可愛らしさ。モリゾーとの二択だったら断然こっちを選びますね、ええ。

・高畑京一郎の『Hyper Hybrid Organization 01-02』読了。

 女性キャラクターが一人も登場しないとは、また思い切った仕様だなぁ。とにかく男・男・男と、徹頭徹尾、野郎に固められた巻です。それで暑苦しいかと言えばさにあらず、丹念に練り込まれ絞り込まれた文章のおかげで雰囲気はサラサラと粘り気がなく、軽快に読み通せるようになっている。「かっこいい男が書きたい」からって「萌え」どころか女性まで排除するのはやりすぎな気もしますけど、率直に言って面白かったのでそのへんに関しては文句なし。さすが「ウホッ! ヤクザだらけのカチコミ大血戦(ポロリもあるよ。指とか)」な番外編で好評を博する高畑。

 鬼軍曹にビシバシとシゴかれる泥臭い展開はいささか時代錯誤にも見えるが、その古臭さをギャグとして受け止められないよう細心の注意を払った造りは「巧い」の一言に尽きる。「イー! イー!」叫んでライダーに吹っ飛ばされるショッカーの戦闘員も、民間人に比べればずっと強いわけで、彼らにも当然熱いドラマがあって然るべきだろう。むしろ、血ヘドを吐くほど努力してもライダーには敵わず雑兵として使い潰される逆境こそ燃える。

 次は『01-03』。現段階における本編最新刊です。読むのが楽しみであると同時に、凄く勿体ない気もしてジレンマに苛まれる。けど積むくらいなら読んでやれ。たとえ今年中に新刊が出るかどうか危ういとしても当方は後悔しません。……たぶん。

・そして「ガールズ・ドント・クライ」第六話掲載。タイトルに(上)が付いているのは第七話のタイトルを考えるのが面倒で「いいや、(下)にしちゃえ」と思ったことが主な理由だったりします。にしてもこのSS、作者である当方自身たまに忘れそうになるほど放置気味ですが、一応完結させる意志はありますゆえ是非ともロンゲスト・アイで見守ってください。


2005-03-24.

・レゴドラ(レゴブロックによる等身大ドラえもん)に感動した焼津です、こんばんは。このドラえもんがいれば10年は現実と戦える気がする。

『SEVEN BRIDGE』、コンプリート。

 進めば進むほど余裕がなくなっていったのか、終わり1時間の展開はほとんどダイジェストに近かったし、物語の核心を一人のキャラにべらべら喋らせるクライマックスも無理矢理風呂敷を畳もうとしている感じでガックリ来たが、その後のエンディングは良かったので個人的には終始トントン。「期待に見合うほどの面白さだったか?」と訊かれると微妙ではあるものの、「はかった喃 はかってくれた喃」と憤怒にまみれて仕置きしたくなるほど悪くもなかった。後半が駆け足とはいえ全体が短いわけではなく集中してやり込んだとしても十時間以上掛かっただろうし、それを最後まで投げ出さずにプレーできたからには「アタリ」の部類に属するでしょう。

 やっぱり、あのスタッフロールにヤラレましたね。個人的に弱いです、ああいうの。「冒険は終わっても、ふたりの人生はずっと続いていく」みたいな。冷静に振り返ればその「冒険」自体はところどころで消化不良になっているわけですけど、当人たちにしてみりゃもう終わった話で、「どうでもいい」とまで行かないにしても瑣末事だと。クセと魅力を兼ね揃えたキャラが多かった割にほとんど活かせなかった憾みがあり、それはやっぱり瑕疵。でもエマに(*´Д`)ハァハァした当方は他のキャラをブッチされてもさして気にならないわけで。なんだかんだ文句を述べても楽しめたことは確かなんです、はい。クゥ・クランとエマの互いを引き寄せ合う感覚が最高。

 星空めておがライアーを退社したらしく、今後はこうしたノリの嘘屋ゲーを味わうことができないかもしれないということがとても残念。とりあえず、ライアーへの注目はしばらく継続する方針ですが。

・成田良悟の『デュラララ!!×2』読了。

 首を斬り飛ばせば死ぬ、なんて思ったら大間違い。

 池袋という、馴染みがある人にもない人にも一定の度合いでイメージしやすい雰囲気を与える街を舞台にした、各種思惑入り乱れ群像劇。やってることはいつもの成田。クライム・ムービー調に奇遇な事件が重なったり奇人の関係が絡み合ったり奇跡が起こったり起こらなかったりして騒々しいけど最後にはまとまるようにまとまっている。しかしいつも通りとはいえ、不思議とマンネリ感を覚えず楽しむことができた。ひたすら割り切ったエンターテインメント精神の中に、ネタになるなら何でも試してやろうというチャレンジ精神が見え隠れするあたりがポイントなのだろうか。

 噴火するのに「平和島」、暴れ狂うのに「静雄」という、名が体を現していない割に結構字面がイラストとしっくり来る平和島静雄。前回はチョイ役だったくせにやけに目立っていたが、今回はかなりメインに近い位置まで出張ってきて大活躍するもんだからインパクトは強い。ようやく彼が活かされた、ってな感慨すら湧きます。

 そして誤字が多いところもいつもの成田。電撃文庫はライトノベルの中でも誤字率の高いレーベルとして有名だ(というほどでもない?)が、にしてもせっかく盛り上がっている場面で「関節」を「間接」とか書いて水を差すのはやめてほしいな、と。

 視覚的な方向での効果を狙い、とにかくインパクトを与えること、とにかく「絵になる」ことを目指したかのような内容。成田良悟は演出力のある作家だと思います。同時に、悪ノリの好きそうな作家だとも。「妖刀狗肉」といい、「ムラマサブレード」で「くびをはねられた!」といい、頻出するレーベル内輪ネタといい。まだ続くみたいなので「×3」も期待します。

・明後日の更新はちょっとお休み。週明けまで所用に掛かります。


2005-03-22.

・「ドン引き」の「ドン」はなんなんだ、と不意に気になって「ドン引き」を調べてみたら辞書に載っていました。なるほど、そういう意味だったのか。しかし相変わらず「ドン」が分からない。壁にドンとぶつかるくらい引くとかそんなのだろうか。

・高遠るいの『シンシア・ザ・ミッション(1)』読了。

 帯の紹介によれば美少女ゲームのアンソロジーで活躍しているマンガ家とのこと。アンソロジーを全然読まない当方はもちろん知りませんでしたが、「まいじゃー推進委員会!」で取り上げられていたのでなんとなく気になって他の新刊を買うついでに購入。ほとんど衝動買い。まあ、これがハズレでも他の奴で埋め合わせられるからいいや、と軽い心境で手にしたわけです。ゼロサムコミックス自体、読んでいるのは『クラブクライム』だけでレーベル認知も薄いし、大した期待はなかった。

 が、予想以上にガチなアクション展開に驚き。ヒロインのシンシアが香港マフィアの凶手で、短躯ながら瞠目の殺人術を披露してみせる。しかもこのマンガ、連作形式になっているためエピソードごとにヒロインが変わり、なかなか次の展開を予想させない。つうか、予想できるかこんなマンガ。斜め上というか、絶妙な超展開を繰り出して読み手を翻弄する。ひたすら無茶苦茶にやりたい放題。タイトルになっている割にシンシアがどんどん存在希薄化していく程度は序の口。華道を窮めた黒長髪令嬢がなぜか路上の喧嘩番長で、華道部の部室に置いたサンドバッグをボコスカ殴っているシーンがあったりするが、それさえももはや感覚が麻痺したせいで普通の光景に見えてくる。闘争と血飛沫の連打。残虐行為手当付きまくり。連作形式といい派手な暴れようといい、先月読んだ『ニードレス ゼロ』を思い出すノリですけども、むしろあれ以上好き勝手に伸び伸びと描いている印象すら受けます。既存作品を持ち出す安易な感想で申し訳ありませんが、『バキ』『パタリロ!』を無理矢理混ぜ合わせて固めたような独特のカオス臭が漂っている。立て続けに味わうと癖になります。

 「なんか変だ」と思いつつ、どこが変なのか巧く指摘できない。特定部位を「ここがおかしい!」と持ち出しても枝葉末節的なツッコミにしかならず、全体の「奇妙な味」を説明するには程遠いし。ギャグとかシリアスとか、そういう問題ではない気がする。でも、なんであれ、読んでいる間は楽しかった。ヒロインたちが狂ってるくらい最強で男キャラどもはヤラレ役ばっかりだけど、野郎は野郎で「ヤラレの美学」を体現する見事な散りっぷりで魅せる。「暴力少女群像劇」のコピーが生温く映るこのマンガ、期待を上回るアタリ。きっと何度も読み返すことになるだろう。一番好きなのは「魔弾のアラヤ」で、次が「紫水ほたるの最初の犯罪」。続刊にも大期待だ。


2005-03-20.

・「遺体安置」が「痛いアンチ」と変換されてトホホな週末。こんばんは、焼津です。

・文庫版『傀儡后』の表紙イラストに騙される人が気の毒な件について。

 というか、もしかして山本ヤマト? 『アシャワンの乙女たち』でも描いていたし。皮膚がドロリとゼリー状になる「麗腐病」、その原因とも言われる、肌に直張りするドラッグ「ネイキッド・スキン」、冒頭で触れられるナイロンの逸話など、とにかく肌や皮膚と接する緊密な感覚が全編を支配し付きまとう、とてもフェティッシュな長編なので、「ダークなSF」と覚悟してからでさえも裏切られます。牧野は好きな作家ですけど、これはちょっと「肌」に合わなかった。

Navelの新作『俺たちに翼はない』、シナリオは王雀孫。

 発売はたぶん『Tick! Tack!(仮)』の後になるでしょうから、ブランド4作目に当たりますね。『それは舞い散る桜のように』からもう2年半経ったが、ようやく待ちに待った王雀孫シナリオ作品が拝めるのか。期待。

ニトロプラス、サイトを改装。『塵骸魔京』の特設ページも開設

 乳や尻に目が行くのは♂のSa-Gaか。ともあれ、にしー絵のオリジナル新作たる塵骸魔京には『天使ノ二挺拳銃』をスルーした当方も期待。と、期待しているのは確かとしても買うかどうかは不明確。あと画面右のディフォルメ沙耶が可愛いのぅ、(*´Д`)ハァハァ。

「スター・ウォーズ」最終章、ティッシュ必要とルーカス監督

 てっきりX指定映画になるのかと思った。アメリカってハンカチを使う習慣がないらしいし、こういう言い回しになっているのも仕方ない気はしますが、やはり「ティッシュ」と言われると自涜を連想してしまう。まあ、物語で泣くことも自涜の一種と位置づけることは可能ですけれど。ヌくのも泣くのもどの道カタルシス。

・なんだかんだで一ヶ月近くも放置していた『SEVEN BRIDGE』、ようやく再開。

 このまま放っておくと通販で予約していた来週の新作が届いてますます崩しにくくなるので連休を活かすべく一念発起。やりながらなんとなく感じていた「後半の展開は駆け足で消化不良気味になるのではないか」という曖昧な不安を肯定するかのように、巷では「未完成作品」との噂がまことしやかに流れていて「それなら投げちゃおうかな」と思う反面、自分の目で確かめもせずに信じるのはアレだとも思い、板挟みに陥ってました。

 なるほど。第四章のあたりを機に、主要女性キャラに付いていたボイスが途切れ途切れになります。いわゆるパートボイス。うちのサイトに来ている層を考えればPC版『デモンベイン』状態と表現した方が通じやすいでしょうか。エロシーンしか声が再生されず、それ以外のイベントでは軒並み無声。予算の問題か、はたまた開発期間の関係か。どちらにしろ、「あれ? 声が出てないぞ?」と気付いたときの焦りにも似た気持ちは快いものではない。この点についてはフォローする気が毛頭ゼロだ。

 加えて章ごとの展開も駆け足になる。第一章と第二章を基準として「1」にするなら、第三章は「2/3」、第四章と第五章は「1/2」といったところ。前述したパートボイス化も影響しているだろうが、ねちっこいとも言えたストーリーが徐々に淡白になっていく事実は否めなかった。けれど個人的には最初のあたりはちょっと長いと感じたし、まあそのへんは最初だからと受け入れることができたものの、ずっとあのノリが続くようではダレてしまうなぁ……と思っていただけに、ピッチが上がって丁度良くなった印象すら受けます。このへんに関しては擁護いたしたく。盛り上がるシーンはキッチリ盛り上げてくれますし。

 『腐り姫』『Forest』で培われたストーリーテリングは充分に円熟しており、熱中していることにも自覚できず気が付けばすっかり何時間もやり込んでいた次第。思わせぶりに仄めかす「神をも殺した魔法大戦」「自動人形の歌声に誘われ戦場を馳せたゴーレム」「十字架のテロリストと化した赤枝騎士団」などといった背景や、舞台調とも言えるどことなく演劇的なテキストはいかにも複雑そうな物語を想像させるが、本編そのものはごくストレートで、主人公の成長(というより人並みに後退)する過程を綴り、人の心を読む力がある彼をして「心がない」と言わしめるヒロイン・エマへ抱く恐怖心と庇護欲の入り混じったアンビバレントな感情に折り合いをつけていかせるところは恋愛モノの王道を辿っている。ヒネてスカして道化になることではなく、ただ単にカッコ悪くなることで歩幅に合った望みを見出すのはありきたりながらそう簡単には切って捨てられない魅力があるかと。

 にしてもテルツォとかカイとか、脇役に近い男キャラがなにげにイイ味出しまくってるな。陰気で情けないテルツォがぐっと背筋を伸ばしたり、お茶目を窺わせるカイの表情がすっと醒めて瞳の色が薄らいだりと、「変貌」によって生まれるギャップが立ち絵でうまいこと演出されていた。燃えるシーンも多いだけに、彼らにボイスがないことは悔やまれる。


2005-03-18.

・家業とはいえ日中あまりにも忙しいので内心「暇になーれ☆」と念じている不孝者。その名は焼津です、こんばんは。

 帰郷して早一ヶ月半が過ぎました。やはり東京と実家は環境が違うしいろいろ不便に思うこともあるが、「本さえあれば幸せ」という度し難い書痴ゆえに大して苦痛でもなし。

・高畑京一郎の『Hyper Hybrid Organization 01-01』読了。

 それを目にした瞬間、藤岡の全身に熱く燃えたぎっていたものが、一気に凍り付いた。

 ほぼ年一冊のペースに対し、「01-01」と大仰なノンブル。作者のライフワークになるのではないか、と噂されるシリーズの第1弾。正直、今から十年経っても完結しているかどうか疑わしい。

 番外編の扱いとなっている『00-01』『00-02』は既に読み終えてますが、本編はこの巻が行方不明になっていたせいで読み出すことができず、「いっそ買い直そうか」と迷ったものの、実家でようやく発見し着手。230ページほどの短い分量ながら、簡潔な文章と明瞭なテーマで魅了されました。現在『01-02』も読み始めています。

 設定は至ってストレート。ヤクザやマフィアを襲う謎の組織ユニコーンは、超人的な能力を保有し「改造人間」と俗称される存在によって警察の介入すら阻んでいたが、ただひとり、同じ「改造人間」であるガーディアンの横槍を遮ることができずにいた……と、いわゆる「正義の味方」なヒーロー物のお約束を踏襲しています。もっとぶっちゃければ『仮面ライダー』。それも平成ではなく昭和の方。虫っぽく変身して悪と戦うノリが往年のライダーを想起させないと言えば嘘になる。

 しかし、まんま仮面ライダーをトレースしたシナリオかと言えばさにあらず。このH2O、ライダーとはまた違ったアプローチをしてみせます。ネタバレ込みで申しますと、主人公は「正義の味方」の過失によって恋人を喪う。故にヒーローになることを希望するのではなく、「悪の組織」と位置づけられているユニコーンに入ることを心に決めるのです。つまり「戦闘員志願者」。ギャグではなくあくまでシリアスでこういった切り口を示すことが面白い。『仮面ライダーSPIRITS』を読んだ直後に目を通しただけに、余計ズーンと来るものがありました。

 こんなヒキをかまされて、2巻を読まずに済ませられるものか。しかし、リアルタイムではこのヒキから1年半待たされた挙げ句、やっと2巻が出たわけで。やはり高畑作品のアキレス腱は刊行速度の遅さ。これまでは単発作品でしたから待たされても渇くことはなかったけれど、単発どころか一話完結方式でもないストーリーとなると……考えただけで恐ろしい。新刊速報の度に「高畑の新作は来ないのか……」と落胆する人々をこれまでは他人事のように見ていましたが、この分では遠からず当方も嘆く身となりそうだ。

 刊行ペースの遅い、けれど確実に面白いシリーズの新作を、ひたすら待って待って待たされる──この苦しみは緩慢に続く拷問にも似ています。やっと新刊が出て渇きが癒されるのも一瞬のこと。生半可に救われたせいで前より一層深い渇きに苛まれながら続きを欲するようになる。まだ既刊は読み切っていませんが、もはや未来のビジョンが易々と幻視されます。デビューから早十年。文庫で数えても10冊しか出していない高畑はライトノベル界隈の基準と照らし合わせれば「遅筆」の部類に入る。遅筆だっていいじゃないか、面白いんなら……そう考える人は甘い。実際そう考えていた当方は「甘かった」と後悔しつつあります。H2Oを読めば嫌でも実感する。

 それでもやっぱり、面白いんだよなぁ。方向は違えど、『仮面ライダーSPIRITS』が楽しめる人にはうってつけのシリーズ。ああ、当方が3巻を読み終わるくらいの頃に「『Hyper Hybrid Organization 01-04』、年内発売決定!」とか速報が流れないかしらん。希望さえあれば待てる。待てるのだ。


2005-03-16.

・怪奇! 眼鏡の上から目薬を差す男!

 ってな具合で衆人環視の中、屈辱を味わった焼津です。こんばんは。しっぱいしっぱい。にしても花粉症なのでこの時期はつらい。

『パルフェ』『ゆのはな』がマスターアップ。というかまだしてなかったのか……とっくに終わっていると思い込んで予約しちゃってましたが、まあ、良かった良かった。例によって例の如く、土壇場で延期したソフトもあるようですが。どうなるんだろ、『お嬢様組曲』。発売前にコンシューマ移植を宣言しておきながら、肝心のPC版を延期とは……。

・綱島志朗の『LIFE:ERRORS(1・2)』読了。

 憎しみに克つものは──

 綱島志朗著作の既刊コミックスは全部揃ったことだし、いい加減読み頃かと思い着手。「結末が悲惨」という噂は聞き及んでいましたが、正に違わぬ内容でした。ヒロインが早々に殺されリビング・デッド化。のみならず全編に渡ってひたすら派手なアクションシーンが続き、ストーリーがあるんだかないいんだか、判然としない不安定な状態のまま進んでいく。はっきり言って1巻を読んだ時点では当方の感想が入り込んでいく余地はありませんでした。ボーッと見ている間にあれよあれよと過ぎ去ってページが尽きた印象。

 2巻あたりからようやく筋というか作者の狙いみたいなものが飲み込めて朧げながら得心できるようになってきましたけど、設定が壮大な割に尺は恐ろしく短く、クライマックスにはかなり細部を端折った強引な展開が待ち受けていました。もはやプロットを意識するよりも単にフィーリングで解釈した方が良い領域に達している。お約束を拒否した「悲惨」なラストは好悪の分かれるところでしょうが、個人的には肩を持ちたいかな。テーマを徹底しきれていない歯痒さは感じるものの。


2005-03-14.

・スパムメールの件名→「暴露:あなたの携帯電話が盗聴器になっているとしたら? 」

 携帯電話を持っていない焼津です、こんばんは。

・森見登美彦の『四畳半神話大系』読了。

 この手記の主な登場人物は私である。
 まことにやるせないことながら、ほとんど私だけである。

 『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞しながらも、なぜか2冊目の本作は新潮社ではなく太田出版から出ています。タイトルはえらく方針が変わったように見えますが、内容に関してはほとんど変化ナシで直球ストレートに京大生のダメライフを描いている。まんま同じノリです。滝本竜彦みたくダメっぽさを面白おかしく痛快に綴りますが、気持ち程度滝本よりサラリとしていて甘い風味かもしれず。ホント、気持ち程度に。

 崩壊寸前の木造アパートの四畳半部屋に下宿している大学3回生の主人公が、無為に過ごしてしまったこれまでの大学生活2年間を振り返るという形式の連作長編。ネガティヴな状況を無根拠極まりない自己肯定と阿呆そのものの行動で凌ぐノリが楽しい。アクの強いキャラクターたちが寄り集まった結果、変にまったりした空気が漂っています。肌に馴染むこと馴染むこと。「やんぬるかな」「風紀紊乱」等、文語体が基調になっているテキストは表現を凝りに凝ることで砕けた雰囲気をつくり、奇怪な展開のストーリーと併せて抱腹絶倒の物語を仕上げてみせる。「血で血を洗うような戦い」を「汚い汁で汚い汁を洗うような、みっともない戦い」と言い換えるなど、全編に渡って独特のセンスが炸裂。「私は綿密に物事を分析して分析して分析し尽くした挙げ句、おもむろに万全の策を取る。むしろ万全の策が手遅れになるほど分析する人間である」と本末転倒気味な主人公もイイ味を出しまくり。

 そしてこの小説、ただの長編小説ではなく連作形式になっているところがミソで、ちょっとした仕掛けがあります。二話目に入った時点でだいたい分かりますが、ある意味「豪快な手抜き」とも言える構成に爆笑しました。いえ、最初は理解が及ばず「???」と疑問符だらけだったものの、一度気づいてしまえばこれほど分かりやすいものもない。ふざけてるっちゃこれほどふざけたもんもありませんけれど、いまひとつ憎めなくて笑ってしまうあたり、得な作風をしている。そのまま有耶無耶なエピローグに向かっていくかと思えばさにあらず、意外にきっちりしたオチがついたりするから、侮れない強かな作風でもある。ただ、千円札の通し番号、みんな同じなんじゃ……パラレルワールドだから番号がちょっとずつズレてたりするのか

 「妖怪」とか「ぬらりひょん」とか「繊細な私にだけ見える地獄からの使者かと思った」とか「他人の不幸をおかずにして飯が三杯喰える」とか散々な言われような友人・小津が、なんというか、率直に言って、萌え。阿呆ってどうしてこんなに愛らしいんだろう。寡黙な黒髪乙女である香織さんの次くらいに胸キュンのキャラでした。でもやはり当方は香織さん(*´Д`)ハァハァ


2005-03-12.

・寝ても覚めても剣牙虎の姿が脳裏に浮かび胸が締め付けられる焼津です、こんばんは。剣牙虎モード。これはコミック版『皇国の守護者』を買えというお告げなのか。よし買おう。

ジェンガ崩し「モノグラフ」経由)

 以前、地元の本屋もこの積み方していました。新書版『絡新婦の理』を。文字通り、「圧巻」でした。

・京極夏彦の『陰摩羅鬼の瑕』読了。

 つまり、「志村〜! 後ろ、後ろ!」的な部分が今回の読みどころではなかったのか。

 長編京極堂シリーズとしては5年ぶりに刊行された本作、分量は大したものですが、起こる事件はこれまでに比べて地味でおとなしい。元伯爵家に嫁入りした新婦が殺される。それも一度ではなく、年を隔てて二度三度四度と。そして五回目の婚礼となる日。花嫁は守り通せるのか……と、そんな感じで悲惨ではあるが凄惨ではないし、猟奇要素も薄い。僻地の洋館という閉ざされた世界が舞台である点は興趣をそそるが、同作者の『鉄鼠の檻』や「赤えいの島」(『後巷説百物語』収録)に見られた閉鎖性を思うと物足りないところもある。文章そのものに劣化はなかったものの、設定面でのインパクトを考えるとかなり微妙な印象でした。

 恐らく、これまでの京極堂シリーズを読み通してきた方ならば、解決編を待たずに途中で真相に気づくと思います。要はあんまりにも基本的すぎて誰も察知できなかったド凄い盲点があっただけなんですから。ある意味トンデモですが、京極作品としてはむしろ真っ当な部類。明らかにワトソン以下の関口君さえも真相を喝破してしまいますから、ミステリとしての難度は低い。

 けれど、作者の意図はやっぱり読者に真相を奪取させることだったんじゃないだろうか。真相を先読みされることを恐れるならここまで引き伸ばしたりせず、せいぜい中編くらいでまとめるはず。「気づかれても構わん、むしろ気づいてくれ」という心情があったからこそ、ダラダラしているように映るくらい執拗に多視点で綴ったんだろう。結果として本作は驚くほどの伏線にまみれている。全編これ伏線尽くし。分かる前と分かった後では確実に世界が違って見えます。

 この、世界が一変する感覚。真相に気づいた以降は、勘違いに勘違いを重ねて見当違いの行動をする登場人物たちがコメディアンみたいに思えてくる。壮大な仕掛けです。「鳥の館」で起こったのは事件ではなく、コントだったのだと判明するのだ。思いっきり真相に抵触する手掛かりが出てきても、みんな気づかないでスルーしてしまう。それが一度ならまだしも、二度三度四度、五度を超えて限りなく。もどかしい。同時に滑稽でもある。型に嵌まった繰り返しネタは「いつになったらパターンが崩れるのか」と期待ないし不安する点においてエキサイティングな感覚が生じます。ドリフのコントで「志村〜! 後ろ、後ろ!」と観客が叫ぶ場面で、自分は本当に志村がすぐ背後の異常に気づいてほしかったのか? 気づかない志村を期待し、一方で不安に思うからこそ、あのネタは成立していた。この陰摩羅鬼における事件も、「いつになったらみんな異常に気づくのか」と、期待と不安の間で振幅するゆえに憑物落としが成立する。コントはオチさえあればいいわけではない。オチに至る過程もまた重要だし、観客が「どこを面白がればいいのか?」と首を傾げないよう、解釈法、楽しむための視点を用意する必要がある。笑いのツボに嵌めんと、罠を張り巡らすのです。京極の手法も、気づかせことで術中に陥れる類のものなのだ。

 でもやっぱり長すぎるとは思いますけどね。待たせた期間も話の尺も。


2005-03-10.

・誤字とはいえ、「ベストセラー」より「ペストセラー」の方が凄そうな気のする焼津です、こんばんは。

・昔の通学路付近を移動していたら、途中に古本屋ができていた。店舗自体は当方が高校生だったときに新本屋だったところだが、卒業するより先に潰れて、代わりにカメラ屋が入った。大学生になってから帰郷すると紳士服店へ変貌。そして何年かぶりに訪れてみたら「古」と「新」の違いはあるにせよ元の本屋に戻っていたという次第。

 新本屋だった当時はあまり利用しなかった(学校から近いけど帰り道と逆方向で品揃えもイマイチだった)が、つい懐かしくなって入店。店内は古本屋特有のゴミゴミした雰囲気が支配的で、正直ほとんどノスタルジーは感じなかった。折角入ったんだし、と惰性的に文庫本をいくつか買って退出。店そのものには驚いたが、収穫は大したことなし。

 そういえば、うちの高校の近くには古本屋が二つあったけど、両方とも在学中になくなったんだよなぁ。本の虫だった当方はしょっちゅう入り浸っていたけど、店内で同じ制服を見かけた記憶はあまりない。特に後でできた方はいつ行ってもガラガラで、結局開店から半年も持たなかったという有様。今度の店もいつまで持つだろうか、と黒い期待をしてみる。

・京極夏彦の『陰摩羅鬼の瑕』読中。

 刊行されるや勢い込んで買いに行った割に、かれこれ1年半近く積んでいた。そろそろ崩し頃か、と着手。京極節を味わうのは久々。語り口はイイけど相変わらず展開がとろいなぁ。300ページは読んだのにまだ事件が起こらない。昔は「100ページ経過しても死体が転がらない」というだけで小ネタにできたものなのに。最近だと『ネコソギラジカル(上)』が丸々一冊死人が出ない話だったっけ。あれをミステリと見做すのはどうかって気もするけど。

 そんなことはさておき。久々すぎてところどころで覚えてない情報に出会い、困惑させられました。以前にも登場したらしいけど、このキャラ、誰? みたいな。安和寅吉さえうろ覚えで、益田龍一に至っては存在すら忘却していた。それでも読み進めるうちにだんだん思い出してくる。この、記憶の淵からぼんやりと曖昧に甦ってくる感覚が面白い。道端で親しげに声を掛けられ、「この人、誰?」と思いながらもさも知っているように振る舞い、当たり障りのない会話をしつつ必死で思い出そうとしているときのスリルみたいな。ある種の未視感が徐々に既視感へと摩り替わっていく奇妙さ。復習してシリーズをきっちり理解しようとする楽しみ方もあれば、あえてうろ覚えの状態で臨むこともアリかと。姑獲鳥の話題が出たところでは全然覚えてなかったせいで逆にすごく懐かしさ紛いの気分を味わったり。

 とはいえ今回、これまでの作品に比べて随分テンション低い気がする。後半でちゃんと挽回してくれるだろうか。にしても、タイトルがエロ……いえ、なんでもありませn。


2005-03-08.

・今日もっとも寒かったダジャレ→「鬼平はん、課長」

 次点で「覆水ボーン・スプレマシー」。

カッパノベルスのサイトが開設

 既刊リスト、古い作品が結構抜けてるな……。

電撃文庫の新刊速報、5月予定に高野和と三枝零一の名前が。

 『七姫物語』『ウィザーズ・ブレイン』の新刊がやっと来るのか……どっちも1年以上待たせるもんですからやきもきすることしきり。今から楽しみだ。

『あやかしびと』は6月予定

 それにしてもジャンル名が「学園青春恋愛伝奇バトルAVG」というのは凄くゴチャ混ぜ臭いですね。ストーリー自体は単純明快のようだけど。差し当たって期待。

『幼なじみな彼女』、マスターアップ

 『ANGEL TYPE』のために回避しようかどうかで迷ってましたが、よろしいでしょう。こっちに行きます。折角だから天使よりも幼なじみを選ぶぜ。

・エキサイトメールは文字化けがひどくなってきたのでYahooメールに変更。さりげなくアドレスが変わっています。すげぇ安直というかなんのヒネリもないんですが。


2005-03-07.

・更新することも忘れて書き耽っていたモノが、朝読み返してみるとあまりにもひどい出来だった件について。

 というわけですみません、焼津です。掲載して閲覧者をビックリさせるつもりが自分をビックリさせてしまいました。

・クローズアップ現代を視聴。若手作家特集でした。『野ブタ。をプロデュース』は気になりつつもスルーしていた作品なので紹介が面白かったら読んでみようと思いましたが、やっぱりスルーしたままにします。全体的に食指をそそる紹介がなかったですね。あと冒頭で出た『黒冷水』を見て思い出しましたが、羽田圭介の新作はまだかなぁ……。

『夜のピクニック』が第26回吉川英治文学新人賞を受賞

 『夜のピクニック』は面白かった。直前に十数キロ歩かされた経験があるだけに。けど、意外なことに、恩田陸が文学賞を貰うのはこれが初めて。デビュー作『六番目の小夜子』も日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作だったし。ファンにすら「器用だけど広げた風呂敷を畳むのが下手」と言われていた分、なかなか高評価を獲得できなかったのか。個人的には『ライオンハート』が好きです。運命に引き裂かれながらも時空を越え、結ばれないと知りつつ出会うことを決してやめない恋人たちの話。

『最も危険な場所』は読み終わり。クライマックスの盛り上がりがこれまでに比べて弱かったものの、危うく徹夜しかけるほど吸引力に満ちた場面が豊富にあり、堪能しました。老練のガンマンが飄々と見得を切り、恐ろしいくらいのクイックドロウを繰り広げるシーンにはハァハァ。

 現在は『虚の王』を読んでいます。馳作品にしては薄味というかヌルいノリ。今読むと微妙、というより当時読んでも微妙だった気が。でも数十ページと読み進めているうちに慣れてきてまったり楽しめるようになる。こういうヌルさも嫌いじゃないです。


2005-03-04.

・「いっぱいいっぱい」の最初の「い」を別の字に変えると何になりますか? という問題に「失敗いっぱい」などと逃げを打つことなく自信を持って「おっぱいいっぱい」と答えたい焼津です、こんばんは。

67時間で単独世界一周飛行に成功 米の冒険家

 記事の内容はともかく、「シャンパンシャワーの祝福」というより至近距離で暗殺しているようにしか見えない写真が小ツボ。

・現在、スティーヴン・ハンターの『最も危険な場所』を読んでいます。

 原題が「Pale Horse Coming」だけに黙示録を意識した描写がチラホラ。『極大射程』で活躍したボブ・リー・スワガーの父アール・リー・スワガーが主役を務めるシリーズの第2作で、今回は洪水で道路が壊滅して以来、長い川を船で遡っていくしか経路のない孤立した町・ティーブズが舞台。そのティーブズにおいて唯一の「目玉」、あまりの恐ろしさゆえに負の伝説として囁かれている黒人犯罪者専用収容所へ、白人でしかも警察官のアールが放り込まれてしまう。脱獄犯と保安官の対決を描いた『ダーティホワイトボーイズ』の逆パターンか。

 久々に読むハンター作品だけど相変わらずストーリーテリングに優れており、ハラハラしながら熱中。海外小説特有の異邦感はやはり好き。そろそろ他の積んでいる海外小説も崩しにかかろうか。


2005-03-02.

・事務仕事のやりすぎで「目が、目がー!」な焼津です、こんばんは。息子だからって酷使しやがって両親め。月変わったからしっかりマンガを図書費で落としてやります。

5月刊行予定の角川スニーカー文庫に竹井十日が

 「10日」だったので最初は気づかなかったんですが、改めて見直しビックリ。でもあらすじを読んでみると竹井っぽい感じもする。明らかにポケモンをパロったタイトルがアレですが、虚淵に引き続きオリジナル小説デビューとなる彼に期待。桑島といいヤマグチといい、エロゲーライターの書くライトノベルはなんだか当たり前のように好き。

 とりあえず、「新作はどうなってんだ」とツッコミたいが……ドラマCDばっかりだからなぁ、ここのところ。

(追記) 消えてる……昼頃に見たときはちゃんとあったのに。情報を出すつもりがなかったのにうっかり載せてしまい慌てて修正、とかいう流れだろうか。

・今月のよてーい。

[本]

 『ディバイデッド・フロント3』/高瀬彼方(角川書店)
 『デュラララ!!×2』/成田良悟(メディアワークス)
 『ヴァンパイア十字界(4)』/原作:城平京、漫画:木村有里(スクウェア・エニックス)
 『新本格魔法少女りすか2』/西尾維新(講談社)
 『PumpkinScissors(3)』/岩永亮太郎(講談社)
 『SchoolRumble(8)』/小林尽(講談社)
 『いでじゅう(11)』/モリタイシ(講談社)
 『ハチミツとクローバー(7)』/羽海野チカ(講談社)
 『もっけ(4)』/熊倉隆敏(講談社)
 『BLACK BLOOD BROTHERS 3』/あざの耕平(富士見書房)
 『太陽の簒奪者』/野尻抱介(早川書房)
 『電波的な彼女2』/片山憲太郎(集英社)
 『ゼロの使い魔4』/ヤマグチノボル(メディアファクトリー)
 『ホーンテッド!3』/平坂読(メディアファクトリー)
 『苺ましまろ(4)』/ばらスィー(メディアワークス)

 ライトノベルとマンガばっかだ。当方らしい。デバフロは今日の昼に抜けて購入済み。三軒回ってようやくラスイチを確保できた次第。完結編なので心して読みます。パッと見ではタイトルの意味が『ガガガガ』並みに意味不明なデュラララ、前巻はちょっと消化不良なところもありましたけど、魅力的なキャラが多いので期待してます。ヴァンパイア十字界、ミステリ畑の原作者が送る伝奇ファンタジー。木村有里の画力もメキメキ上がってきてます。西尾、正直りすかよりネコソギの中巻を読みたいわけですが、仕方ないので繋ぎに。パンプキンシザーズは戦争が終結してなおも「零距離まで接近し戦車を撃滅する歩兵」としての狂気に蝕まれている主人公に燃え。スクランはだんだんラブコメとして面白くなってきているので普通に楽しみ。

 いでじゅうは先月一気に買い込んでハマったマンガ。ギャグとラブコメの比率がイイ感じ。ハチクロも先月ハマった。偶然読んだ母まで魅了されている始末。もっけ、『蟲師』と並ぶアフタヌーンの妖怪マンガ。妖怪と日常的に関わる姉妹にハァハァ。BBBは『Dクラッカーズ』の作者によるシリーズ。ええと、まだ読み出してません……。太陽の簒奪者はJコレクションで出たときに人気があったので。にしてもなんで『どーなつ』だけ文庫化しないんだろ。同じJコレ第1回配本なのに。電波的な彼女は文章のキレで言えば去年の新人で一、二を争うものの、ストーリーが惜しかった作品。順当に期待。ゼロの使い魔は進むにつれ確実に面白くなってきているシリーズにつき、最新刊の4巻にもあくまで大期待。ホーンテッド、センスに関しちゃかなりの光沢を見せている。センス以上のものを今後望めるかどうか。苺ましまろは待望の新刊。萌え特化傾向のマンガは苦手ですが、これに関しては例外です。

[ゲーム]

 『パルフェ』(戯画)
 『ゆのはな』(PULLTOP)
 『幼なじみな彼女』(イージーオー)

 行くならばこの3つ。『ショコラ』の正統続編たる『パルフェ』、丸谷秀人がライターを務める『ゆのはな』はほぼ確定で、丸1年の不気味な沈黙を破って遂に発売される『幼なじみな彼女』はちょっと迷ってます。差し当たってマスターアップ報告があるまで予約控え。

[SS]

 GDC、さすがに今月は更新します。……たぶん。「魔法少女忌譚修」の第7話はもう少しお待ちいただければ。


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